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1956-05-18 第24回国会 衆議院 商工委員会大蔵委員会社会労働委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月十八日(金曜日)     午後二時二十八分開議  出席委員   商工委員会    委員長 神田  博君    理事 小笠 公韶君 理事 鹿野 彦吉君    理事 小平 久雄君 理事 笹本 一雄君    理事 長谷川四郎君 理事 永井勝次郎君       阿左美廣治君    椎名悦三郎君       島村 一郎君    鈴木周次郎君       田中 龍夫君    野田 武夫君       濱野 清吾君    南  好雄君       森山 欽司君    加藤 清二君       多賀谷真稔君    田中 武夫君       松尾トシ子君  大蔵委員会    委員長 松原喜之次君    理事 黒金 泰美君 理事 高見 三郎君    理事 藤枝 泉介君 理事 石村 英雄君    理事 春日 一幸君       奧村又十郎君    川島正次郎君       吉川 久衛君    杉浦 武雄君       竹内 俊吉君    内藤 友明君       中山 榮一君    古川 丈吉君       前田房之助君    有馬 輝武君       石山 權作君    井上 良二君       木原津與志君    平岡忠次郎君  社会労働委員会    理事 大坪 保雄君 理事 中川 俊忠君    理事 野澤 清人君 理事 藤本 捨助君    理事 滝井 義高君       植村 武一君    内田 常雄君       小川 半次君    荻野 豊平君       大橋 武夫君    加藤鐐五郎君       亀山 孝一君    草野一郎平君       熊谷 憲一君    小島 徹三君       小林  郁君    田中 正巳君       中山 マサ君    八田 貞義君       古川 丈吉君    眞崎 勝次君       横山 利秋君  出席国務大臣         通商産業大臣  石橋 湛山君  出席政府委員         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局経済部         長)      坂根 哲夫君         大蔵事務官         (主税局長)  渡邊喜久造君         通商産業事務官         (企業局長)  徳永 久次君         通商産業事務官         (重工業局長) 鈴木 義雄君         通商産業事務官         (繊維局長)  小室 恒夫君         労働政務次官  武藤 常介君         労働事務官         (労政局長)  中西  實君  委員外出席者         労働事務官         (労政局労政課         長)      大野雄二郎君         労働事務官         (職業安定局失         業対策部長)  渋谷 直藏君         商工委員会専門         員       越田 清七君         大蔵委員会専門         員       権木 文也君         社会労働委員会         専 門 員 川井 章知君     ————————————— 本日の会議に付した案件  繊維工業設備臨時措置法案内閣提出第八三  号)     —————————————   〔神田商工委員長委員長席に着く〕
  2. 神田博

    神田委員長 これより商工委員会大蔵委員会社会労働委員会連合審査会開会いたします。  先例により議案の付託を受けました商工委員会委員長であります私が委員長の職務を行います。  この際諸君に一言申し上げます。本日は商工委員会大蔵委員会との連合審査会開会を公報で御通知申しておりましたが、さらに本日午前中に社会労働委員会からも、同様正式に連合審査会開会申し入れがあり、商工委員もこの申し入れを正式に受諾いたしましたので、三委員長において協議の上、三委員会同時に連合審再会を開くことになりましたので御了承を願います。  それでは繊維工業設備臨時措置法案を議題とし、その趣旨説明を求めます。石橋通商産業大臣
  3. 石橋湛山

    石橋国務大臣 先例によりまして提案理由を申し上げます。繊維工業設備臨時措置法案につきまして、その提出理由及びその概要を御説明申し上げます。  繊維産業は、わが国民の生活上欠くべからざる衣料の供給を満たすと同時に、輸出産業としてもまた第一位を占める重要産業であります。しかるに、近年わが繊維製品輸出数量が急増し、その価格がまた過当競争により乱調を呈する傾向があるのに対し、国際的批判がきわめて強く、ために先般ガット加入の際における欧州諸国の三十五条援用問題、米国における日本綿製品輸入阻止運動など、まことに遺憾な現象を見るに至りましたことは、御承知通りであります。これをこのままに放置することは、今後の輸出貿易及び繊維産業の発達のために著しい悪影響を及ぼす懸念があります。もちろん、欧米におけるかような動きは、先方の誤解等に基くところも少くありませんから、わが国としてはその誤解等を解くことに努力することが必要であります。しかしそれにいたしましても、わが方もまた、できる限り相手国産業経済界を過当に刺激しない方策をとることが肝要であると信じます。政府は、かような見地から、従来より輸出行政面において貿易体制を整備し、輸出品価格、品質の規制を行うとともに、生産行政面においても、中小企業安定法の発動あるいは行政勧告によって生産調整を行う等の方法を用い、もって輸出貿易及び産業の健全な発展に努めて参りました。しかし今や繊維産業に関しては、輸出面における過当競争等の根源となっている過剰設備問題を解決し、産業構造根本を改善することが焦眉の急であることを痛感されるに至りました。  ことに注意すべきは、わが繊維産業中小企業によって構成せられる割合がきわめて大きく、特に繊布等の加工部門においてはその生産者のほとんどが小規模業者であり、それらが全国に散在して、わが国中小企業の中でも生産上、雇用上重要な一部門をなしております。しかもこれらの中小企業は、数年来の継続的な不況に悩んでおりまして、自立不能の状態に立ち至っているものが少くありません。従って中小企業根本対策としても、また、繊維産業における過剰設備問題の解決が必要となって参りました。この過剰設備問題は、繊維産業の今後の運命を決する重大案件であり、合成繊維などの育成対策との調整をはかる必要もありますので、政府は、昨年八月閣議決定をもって繊維産業総合対策審議会を設置し、このための総合対策を諮問したのであります。同審議会は、学識経験者業界人労働者代表等数十名よりなる委員をもって構成され、その後、右の諮問に対して、慎重に審議を進めて参りました結果、先ごろ政府に対し、繊維工業設備調整などに関する法律の制定を必要とするとの答申を提出したのであります。よって政府は、この答申趣旨に従い、さらに検討を重ねました結果、ここに成案を得ましたので、これを法案として上程することにいたしたのでございます。  本法案は、繊維製品生産及び輸出の正常な発展に寄与するため、繊維工業設備に関する規制を行い、繊維工業合理化をはかろうとするもので、全文四十九条よりなっておりますが、その骨子は次の通りであります。  まず第一に、本案には繊維工業設備登録制実施することを規定しています。すなわちこの登録によって、現有設備実情を正確に明らかにし、各業種における設備の過不足に応じて、設備の今後の転換及び新増設調整するのに必要な資料を得たいと存ずるのであります。ただし、本法によって登録実施する業種は、さしあたり各種紡績業及び染色加工業であります。織物業については、現在中小企業安定法命令に従って行なっている設備登録によっていく方針で、本法適用から除いてあります。登録の対象となる設備は、紡績業における精紡機及び染色加工業における織物幅出機でありまして、法律に定められた繊維製品の製造または加工を行おうとする者は、その使用する精紡機または織物幅出機について、業種ごと登録を受けなければなりません。  第二に、本法施行後においても、昭和三十五年度繊維製品需給を参酌して、設備不足である美禰があるときは、その不足範囲内で、今後新増設される設備新規登録を行なっていきます。その際には、原則として設置計画の段階で申請を受け付け、定められた数の範囲内で調整して仮登録を行い、設備の完成を待って登録を行います。  第三に、過剰設備処理ですが、本法による登録制適用する業種及び中小企業安定法命令に従って登録を行う業種のうち、昭和三十五年度繊維製品需給を参酌して過剰設備処理する必要があると認められるものについては、処理すべき設備の数を定め、その業種に属する事業者に対し、廃棄、格納、転換その他の方法によって過剰設備処理するための共同行為実施すべき旨、通商産業大臣は指示することができます。この指示に基いて事業者が行う共同行為については、独禁法の適用を除外することになっています。  第四に、本法運用に当っては、繊維関係事業者のほか、関連事業者繊維関係労働者一般消費者などに影響するところが少くありませんので、本法中の重要事項審議するため、学識経験者消費者代表業界人労働者代表など、繊維工業学識経験のある者よりなる審議会を設けて、この審議会の活用によって本法実施の適正をはかりたいと思います。  以上が本法案骨子でありますが、なお本法による過剰設備処理に関する共同行為をいたします際に、設備の売却を希望する事業者のために、調整組合連合会その他適当な民間機関において、その買い上げを行う必要があると思われます。その場合、賢い上げに委する資金は、原則として残存設備からの分担金でまかなうものといたしますが、しかし織物業のごとく、中小企業者が大部分である業種については、業界だけでこれを負担することは困難かと考えられます。よって政府として、その設備処理に必要な経費の一部を補助するため、昭和三十一年度予算案に一億二千万円の補助金を計上してございます。この補助金運用によって、織物業に対する本法適用に際しては十分な効果を上げ得ることを期待しております。  最後に、本法実施に伴って繊維産業設備近代化がおくれ、あるいは、ひいて繊維機械工業に対して好ましからざる打撃を与えないため、繊維工業設備の入れかえ等を極力促進する考えであります。また、過剰設備処理に伴って労務者失退職を招くことは避けなければならないので、設備処理程度方法等については十分慎重を期し、適正な実施をはかって参りたい所存でございます。  何とぞ御審議の上、御協賛下さらんことをお願いいたします。
  4. 神田博

    神田委員長 この際、質疑の通告がありますので、順次これを許します。横山利秋君。
  5. 横山利秋

    横山委員 繊維工業設備臨時措置法案についての委員会審議を読んでみまして、この審議を通じて私ども考えられる特徴が幾つかあります。議論の分れるところばかりにさておくといたしましても、共通的な問題として特徴がございますのは、第一に、この法案というものは、国内の問題でなくして、国外の問題から必要が起っておる、こういう点が第一の特徴であろうかと思う。第二審目に、この法案というものは、目的の産業をよくするために、関連いたしますよその産業犠牲において立案されておる、こういう点が大いに議論をされております。第三番目に、その審議に際して、立案に際して犠牲となるべき産業の声がすなおに反映する機会が与えられなかったという点が、討議の中で明らかにされておるように私は考えます。第四番目に、立案した当時政府考えておった事情と、今日の経済事情というものが、大いに変っておるという点が指摘をされておるわけでありまして、この点についても、政府の御答弁をずっと読んでおりますと、間接的にそれを首肯をして見える節がございます。第五番目に問題になっておりまして注意を引きますのは、この法案によって規制を受ける人々に対する救済措置がきわめて不十分であるという点が、私ども注意を引くところであります。  私は、この特徴となります五つの点の中で、主として第五点について御質問をいたしたいと思うのであります。重工業局長の御答弁を拝見いたしますと、関連する紡機メーカーあるいは下請関係、その他からいろいろな意見が出ている、確かにこの影響が非常に深刻であるということについて、われわれとしても何らかの措置を必要とすることは認める、この場合は、対策は、安定法第二十九条の織機の場合も同様で、その当時もどうするかについて議論をしたが、対策はやはり二つだ、一つ設備更新を大いに行うことだ、第二番目は輸出振興だ、そして設備更新については、臨時紡織機更新打合会をやっておる、その中で問題になった耐用年数については、短縮するように大蔵省努力をしたい、輸出振興については、輸出会議に諮って今後の輸出目標をきめる、さしあたり輸出市場開拓調査及びアフターサービス実施ということで、ある程度補助金を交付しよう、その額は大体二千万円、こういうことに尽きておるのであります。このほかに何らかの対策があろうかと思って、ずっと速記録も拝見いたしましたが、何らないのであります。ただいま大臣は、「本法実施に伴って繊維産業設備近代化がおくれ、あるいは、ひいて繊維機械工業に対して好ましからざる打撃を与えないため、繊維工業設備の入れかえ等を極力促進する考えであります。また、過剰設備処理に伴って労務者失退職を招くことは避けなければならないので、設備処理程度方法等については十分慎重を期し、適正な実施をはかって参りたい所存でございます。」と言っておられますが、この大臣言葉の裏打ちをいたしておりますのが、局長の言っております以上の方法だといたしまするならば、これによって打撃を受ける関連産業並びにその労働者は、何らなすところなく失業のちまたに投げ出され、あるいは労使の紛争を激化させるということに尽きると私は思うのであります。この点について、非常に憂慮にたえないのでありますが、まず大臣から、その点についてどういうふうに考えておるのか、所信を承わりたいと思うのであります。
  6. 石橋湛山

    石橋国務大臣 ただいま提案説明の中に申しましたように、設備の整備についてはそういう点を十分注意して、急激なことの起らぬようにということが一つ、それから制限されるのは新増設がある程度規制される、繊細業界状況によってはむろん新増設も許される、特に重工業局長から申し上げましたように、設備更新ということに力を入れて、その点から実際の織機メーカー、その方面の労務者失業状態を激化しないように、できるだけ苦痛を多く与えないようにやっていくということ以外には、これは御指摘通り別段名案はございませんが、それによってやっていこう、それなら繊維工業をほうっておいてよいかというと、そうも参らない、繊維工業にある程度規制を行う必要が内外の事情から申してあると思います。そこでこれをやります場合にはある程度の波乱、ある程度の問題が起るということはこれは予期しなければならない。その問題はできるだけ小範囲にとどめる、大いなる影響がないようにとどめるということが今のわれわれの考えであります。それ以上に特に何がある、こう言われると、実はそれ以上には私の方ではございません。
  7. 横山利秋

    横山委員 率直な御答弁をいただいて事態が明白になったようた気がいたします。最後におっしゃるように、それ以上には何ものもない、こういうことが私は非常に重要な言葉だと思うのです。あなたの言うそれ以上には何もない。それではそれ以前に関連産業業界なりあるいは労働者を納得させる何ものかがあるかというと、これはまたきわめてばく然たるお話であります。きょうあなたの方とそれから労働省一緒においでを願いましたゆえんのものは、この法案について労働省とどういうお打ち合せをなさっておるか、急激なことはやらぬとか、設備更新努力をしたいと言っておるのだが、どのくらいの犠牲というものがこの法案によって現われるものか。通産省としては労働省にどういうふうに御相談をなさっており、どういう準備をされておるものか、その点についてまずあなたの方から承わりたいと思います。
  8. 小室恒夫

    小室政府委員 昨年の八月二日に閣議決定で、繊維産業総合対策審議会を設けて、ここで繊維総合対策審議して参ったわけであります。その審議会には労働省も御参加願って、事務的にも連絡をとって参ったわけであります。それから法案によって紡績設備は新増設が全部実質的な許可制にかかるわけでありますが、しかしながら法律案にも盛られておりますように、これは年々の各糸の需給関係を精密に推定いたしまして、新増設が必要であれば秩序立った新増設を行う。まず現在のところ綿紡績についてはすでに過剰設備も相当あるということが審議会答申にもございますし、本法施行後に新増設を認めていく考えはございませんけれども、しかしながら綿紡績については今日まででもあまり新増設は行われておらないのであります。私どもとしては、原綿の外貨割当その他の運用に際しても、過剰設備がさらに過剰になるような運用はいたしてきておりません。この綿紡績についてはまず新増設を認めがたいわけでありますが、スフ紡績その他については、それぞれの需給関係を見て、秩序立った新増設を必要とすれば認めていきたい、こういう考えでございますから、絶対的に紡績設備の新増設がストップする、こういうわけではありません。
  9. 横山利秋

    横山委員 時間がかかるばかりですから、もう少し具体的に私は言うてもらいたいと思うのです。あなたの答弁では納得ができません。少くともこの法律案を出すについて、大体この辺でこのくらい新増設をしたい、繊維製品生産はこのくらいに抑えたいという尺度があるはずであります。その尺度がなければ労働省が入っておったって何の役にも立たぬのです。私のお伺いしているのは、労働省に、このくらいの犠牲があるから、首切りが出るだろうから、この点について労働省は手配してもらいたい、こういうふうにしなければならぬはずだ。それはどのくらいに見積っておるのか、出席はどのくらいで、新増設はどういうふうにするのか、従ってそれが中小企業労働者に対する影響をどういうふうに見ているのか、こういうことを具体的に承わりたいと言っているのです。
  10. 小室恒夫

    小室政府委員 御承知かと思いまするが、本法が立案され、また提案されていく過程におきまして、新増設の制限を見越しまして、各種紡績設備が、相当かけ込み的に新増設発注をされておるわけであります。これは本法施行の際に確認いたしますので、そのときにはっきりした数字が現われて参ります。私ども一応の推定は持っておりますが、この辺の数字がはっきりいたしませんと、そのあと需給計算もなかなか確実にはつかみがたい点があるわけでございます。しかしながら今申し上げたように綿紡績以外のものについては、これは慎重に至急糸需給等計算をいたして、また同時に関連する機械産業等状況をも考慮して新増設ワク等をきわめてみたい、こういう考えでおります。
  11. 横山利秋

    横山委員 何度言っても同じでありますが、それではいかぬというのです。わからぬというのです。あなた方が労働省にその審議会に来てもらいたいというて、労働省にこの法案関係ありとしたゆえんのものは、私が聞いておるところにあるのでありましょう。それだったらこの法案が出ると、あなたの答弁を推察していきますと、どのくらいの首切りが出るかわからぬ、どのくらい中小企業影響を与えるかわからぬけれども、だれかが言ったように五人や十人倒れたってしょうがないじゃないかとでも言いそうな気持に見えるというのです。そうでなければ、このくらいのしわ寄せがあるから、この点については政府としてはこのくらいのことはできる、あとの方についてば残念ながらできないとか、こういうふうな具体的な話がなければだめじゃないか、こう言ってておるのですから、重ねて答弁を要求しておきます。
  12. 小室恒夫

    小室政府委員 この年度におきましてて、あるいは昨年度の終りごろにおきましては、先ほど申したような事情で異常な紡機設備発注がありました。そのために、この年度紡織機メーカー受注総額というものは、平年度に比べて相当上回った数字になると思います。ごく最近はそのために、紡織機メーカーは相当過度に繁忙であります。そういう状況でありまして、問題はこの一時的な発注が一段落したあとに、どうしてもこれは反動と申しますか、一段落したあとですから一時的に発注の谷ができる、この時期が過ぎれば——これはまあ三カ月か六カ月か一年、いずれにしてもそれほど長くない時期がたてば、これはまた平生に復して平年度並み発注受注が行われるという感じがいたすのであります。三年五年先のことはなかなか見通しがつきにくいのでありますが、そこでその谷をできるだけ浅くしたい、そういう意味でその時期に紡機更新等発注をできるだけ集中的に行わしめるように、紡績会社等に協力してもらいたい。その意味紡績会社機械メーカーとが席を同じくして、できるだけ両方実情を話し合って、そうしてその谷ができるだけ浅くなるようにいたしたい、こういうのが紡織機更新打合会を設置した理由でございます。
  13. 横山利秋

    横山委員 重工業局長は来ているのですか。
  14. 神田博

    神田委員長 見えております。
  15. 横山利秋

    横山委員 それではあなたにお伺いをしたいのです。今の繊維局長の話ですと、かけ込み増設があるから、そのあと危険区域である、その谷を浅くするということ、それからその谷の期間も短かくしたい。こういうことに尽きる。それから同時にもう一つ言われたのは、谷を終っても、これを平年並みというふうなきわめて抽象的な言葉をおっしゃいました。同じ政府機関でございましてもやはりあなたの立場もあるだろうと思うのでありますが、そういうようなことが一体簡単にいくものであるかどうか、担当局長として所信一つ承わりたいと思います。
  16. 鈴木義雄

    鈴木(義)政府委員 本案関係いたしまして紡織機メーカーに対する対策でございますが、現在は、先ほど来申し上げておりますかけ込み増設と申しますか、さような関係紡機メーカー等は相当活況を呈しております。しかしながらこれが一段落いたしますと、ある程度これが落ちることは確かに事実だろう思います。しかし、われわれといたしましては、ここでかような影響をできるだけ防止するために、先ほど来お話申し上げておりま紡織機更新促進打合会を設けまして、繊維産業メーカーと、また通産省関係局なりが一緒になりまして、大いに更新を促進したい。その対策として、一つの問題としては償却の短縮問題を取り上げて大蔵省に折衝し、また繊維産業資金あるいは更新補助金というふうなものを考えていただいて、それによって設備更新をはかっていただく。一方同時に、これは輸出の問題でありますが、昨年は輸出関係が相当苦しゅうございました。しかしこの間あたり輸出会議を開いて打ち合せいたしてみますと、輸出関係業者あたりお話を聞きましても相当積極的でございまして、前途は相当あるようでございます。従いましてさような目標を細部に立てまして、これに対しまして市場調査あるいはアフターサービスに対して具体的対策を立て、政府としてはこれに対して助成する、かような方法を講じまして、輸出の面においても大いに努力していく。かような両方対策をとりまして、できるだけこの影響の少いように努力いたしたい。これで最善の努力を尽して影響を緩和していきたい、かように考えております。
  17. 横山利秋

    横山委員 かりにそういうふうな方法をとるとして、谷を浅く、期間を短かく、そして次が平年度並み、あなたのおっしゃることによれば、平年度並みでなく、輸出振興するからもっと上へいくのだというようなお話のようでありますが、かりにそうだとしたら、それによって中小企業の倒産なりあるいは労働者の解雇というものはどのくらい出ると推定なさっておりますか。
  18. 鈴木義雄

    鈴木(義)政府委員 われわれといたしましてもできるだけ対策を講じまして、その影響を緩和しよう、こういうことでございます。どの程度影響があるかという事情につきましては、地方の通産局を通じて調べておりますが、的確にどうこうということの数字は得ておりません。結局申しますと、やはり対策をどう講ずるかということによると思います。われわれといたしましてもできるだけ更新を大いに進め、さらに先ほど繊維局長からお話がありました通り、今後の問題としては全部の増設がオール・ストップでございませんで、あるものにつきましては増設が認められる部分があるわけであります。さような今後の事情も期待し、さらに輸出も伸ばす、さようなことで、できるだけ繊維機械室業への影響を緩和し、将来はさらに伸ばすように努力していごたい、こう考えております。
  19. 横山利秋

    横山委員 そこで大臣にお伺いします。ただいま両局長お話だと、結局これによって関連産業及び労働者に直接どのくらいの期間か、どのくらいり深さか、あなたの方はわからぬとおっしゃる。わからぬけれども期せずしてお二人とも相当の影響があることは、これは明らかな立場に立ってのお話であります。そういうことを今どうしても国内事情によってやらなければならぬものであるかどうか。先ほど言った目的の第一、つまり国内の事情でなくて国外の事情においてこれをやる、しかもその国外の事情についてはあなたが先ほどおっしゃったように、「欧米におけるかような動きは、先方の誤解等に基くところも少くありませんから、わが国としてはその誤解等と解くことに努力することが必要であります。」ということを一番先に言っておるのであります。この一番最初に言うておられることについて、何もしないで、そしてこそこそと自分のうちの中だけやる。自分の方は悪くない、向うが悪いにかかわらず、向うの悪いことは二の次にしておいて、自分のうちのやらぬでもいいことをやって、そしてどういう犠牲が出るかもわからぬけれども、その犠牲についてはなすところなしという傾向を私は遺憾とせざるを得ないのであります。この点については大臣はどう考えるかということが第一です。  それから第二番目は、今両局長がおっしゃるようなことをいたしたにいたしましても、倒産と解雇というものはどうしても出るということについては、あなたもおわかりになっているところだと思う。このどうしても出るという問題について、大臣はどうお考えでありますか。
  20. 石橋湛山

    石橋国務大臣 この法案はいかにも日本の繊維産業の性質上、海外の輸出ということが非常に重大な部分を占めておりますから、従って海外輸出振興する、あるいはこれをなめらかにするということが、この法案のねらいとなっております。しかし外国のためにやるのではなく、結局これは日本の繊維産業の基盤をかたくし、今後の輸出等におきましても故障のないようにしていきたいというのがねらいでありますから、ある意味におきましては輸出産業のためにやっていると見えますし、同時に日本の繊維産業そのものの基盤を強固にするという、両面があるわけてあります。これは両面といいますけれども、同じことをさすものと私は思っております。  そこで海外の輸出——なるほどさっきて申しましたように、アメリカその他における日本の繊維製品の排斥運動というものにはずいぶん間違ったことがあることは明白でありますから、それについて何もしておらないということはないのでありまして、しております。これはそれぞれの機関を通じ、あるいは民間の動き、あるいは通産省そのものでも人をやりましたし、いろいろな機会あるごとに、またそのときどきに必要な方策は十分講じておるつもりであります。ただしこれは相手があることであります。これはどこの国にもあるのでありますが、同業者の反抗というものは、理屈があってもなくても、直接に自分の商売が圧迫されるということになりますと、しゃにむに運動をやりますので、そういうものを頭から押えるわけにはむろんいきませんから、これを漸次納得させるとか、緩和するということには相当時間がかかります。ですから始終やっておりますけれども、ただ時間がかかって十分な効果をいまだ発揮することができないということは事実であります。これははなはだ遺憾でありますが、しかしやっておらないのじゃない、やっておる。やっておりますが、それにつけても、先ほど申しましたようにその裏づけとしては何と申しましても日本の繊維製品が急激に発達し、急激に輸出がされている。その背景は何かというと、日本の繊維工業設備が過剰であるということも、確かにこれは遺憾ながら事実なんです。過当競争があるということも事実なんです。ですからこれは日本の側においても、海外の納得を得るためにはやはりこちらも相当の努力をしなければならぬ。そこで今までも過当競争等につきましては、幾つかの商社等の関係法律もありますが、とにかくいろいろな方法でもって過当競争が起らないように、あるいは行政指導によりましてもそういうことをやって参りましたが、これにはやはり設備の上にある程度の手をつけるということが必要であると考えて、この法案が出たわけであります。海外の日本品排斥の運動を放擲しておいて、ただこっちの方で繊維製品設備を減らそうとしているわけでは絶対にないのであります。  それからこれによって関連産業等にいかなる影響があるかということは、先ほど局長等からお答えした通りでありますが、こういう法案がなくて、平時におきましても繊維産業あるいはこれに関連する機械産業というものは、ずいぶん景気の波のひどい産業でございます。従ってわれわれとしてはどうかして日本の繊維産業あるいはそれに関連する機械産業等においてもそういう景気の波をできるだけ減らす、できるだけなくす、これは絶滅するということはなかなか、容易でありますまいが、とにかく景気の波をなくして、みなが安心してその業務に従事ができるということが理想であります。この法案はそういうことにも寄与するものと私は考えておるわけであります。実際やってみまして、そのときどきにいろいろの影響が現われてくる、これは予測しろと申しましても、数学的になかなか予測しにくいと思います。ですからこれは実際の事情に応じて、そのときどきに適切な方法を講じていくということが、実際上の処置としては——これは初めから数学的にいろいろなことを申しましたところが、元来が波乱の比較的多い産業を相手にしておることでありますから、なかなかそう的確なものをつかめと申しましてもつかみにくいであろう、これはつかめるものならむろんつかまないというのじゃない、つかむだけの処置は各事務当局においてもしておりますが、正確なものはなかなかつかんにくいわけでありますから、そこでそのときどきに対して適切な処置をしていく。その大体は、先ほどから申しましたように資金等のめんどうもできるだけ見て、あるいは機械の耐用年数というようなものも改革をしてもらって、できるだけ機械の更新等によっていわば平時よりも追加的な需要を機械等に起すということをやっていこう、こういうわけであります。
  21. 横山利秋

    横山委員 大臣はいろいろな問題をそこへ提供されたのです。しかし私の質問には触れていないのです。私の質問は、そういういろいろなことをやっても、ここに首切りになって路頭に迷う人が出るということは明白だ、企業がつぶれるということが出ることは明白だ、それをどうするのだと言って聞いておるのが、私の一番聞きたかったことなんです。あなたはああもやろう、こうもやろうと言うておるけれども、それは何ら今ここにあなたがそれを立証し得る数字もなければ、具体策はあってもそれで全部吸収できるということでもない。そういう救済対策がはっきりしておれば、私もそうかというて議論ができるけれども、それが具体的でない、しかも具体的でなくて、かつそれが浅い具体性でありますから、それに漏れて路頭に迷う人ができるのじゃないか、それをどうするのだ、目に見えているではないか、飯が食えぬようになってから、もう死にそうになってから、何とか適切な措置をしますと今あなたが言ったってだめではないか、一番明白なその問題についてどうするのだと言って聞いておるのが第一であります。
  22. 石橋湛山

    石橋国務大臣 先ほども申し上げますように、それを的確に数字的につかめと言いましても、これは実際やってみなければ、どういう影響が現われるかということは実際は的確にあらかじめそうつかめるものではないと私は思うのであります。従って先ほども申し上げましたように、実施の場合においてできるだけそういう波乱が急激に起らないような実施上の考慮をしていく。それから今の関連産業等についても、この間の繊維産業審議会においても、労働代表等を入れて十分労働者の方面からも審議をしてもらったのであります。今後におきましても、労務者あるいは関連産業者の声が審議会等に現われるようにして、そしてそれらの各種の方面からの十分な検討をしつつ、この法案実施をはかっていく、こういうことが私は一番適切だと思うのであります。
  23. 横山利秋

    横山委員 冗談をおっしゃい。あなたは適切な方途を何とかすると言うておるのだけれども、今局長が言っておるように、かけ込み増産をやっている、だからこの法律が通ればここから谷ができてるということをはっきり言っておるじゃありませんか。その谷ができるとはっきり言っておることに対して、事が起ってから適切な処置をとると言ったてだめですよ。あなたがそれほどはっきり言うなら、では倒産しそうな企業に対しては責任を持つ、首切りになりそうな労働者に対しては責任を持つ、こういうふうに言えますか、言って下さい。それだったら私は安心しましょう。
  24. 石橋湛山

    石橋国務大臣 政府の政策としてはむろん大いなる失業者を作ることはなすべからざることですから、そういう意味においては責任を持つと申せるのであります。それからさっき局長が言ったように、今の繊維機械は少しアブノーマルなんです。非常なかけ込み増産といいますか、それがありまして、だから最近の非常な昼夜兼行で臨時工まで入れてやっておるという繊維機械の生産のまま、これを今後いつまでも続けるということはおそらくできないだろうと思います。ですから局長がそのことを申したのでありまして、今のかけ込みでやっておる増産についての影響は起るだろう、これはまあある程度やむを得ない、そこでこれはノーマルに戻して、そのノーマルの程度において安定させるということ以外には実際はやりようはあるまいと思います。
  25. 横山利秋

    横山委員 大臣は今非常に重大なことをおっしゃいました。私が倒産及び解雇に対して責任を持つかと聞きましたら、あなたは政府の施策によってできたことに対しては責任を持つ。これはもう非常に重大なことでありまして、私は今大臣がおっしゃったことに対して各関係の次官あるいは局長から裏打ちをいただきたいのでありますから、そのつもりでこれから御答弁を願いたいのであります。  労働省にお伺いをいたしたいと思います。先ほどからの通産側の答弁を聞いておりますと、これに対してどのくらいの犠牲が出るかということは実態としてはわからない模様であります。しかしながらどういう実態があってもこれに対して責任を持つというお話でありまするから、労働省側としては同じ政府の一部門として非常な注意、慎重性をもってこの法案に対処しなければならぬと私は存ずるのであります。その点について労働省側はこれによって生ずるであろう倒産、それによって生ずる中小企業の紛争また解雇問題等についてどのような準備を整えておられるか、それについて伺いたいと思います。
  26. 武藤常介

    ○武藤政府委員 ただいまの横山さんの御質問にお答え申し上げます。  本法案実施せられます暁には、労働省としていろいろ通産省の方の今日までの立案その他委員会等の状況を拝見いたしまして、まずとりあえず打撃を受けるのは繊維機械の製造業ではないか、こういうことに考えるのでありまするが、通産省におかれましては去る二月以来省議を開かれまして、これが対策としてただいまお話にありましたように、あるいは老朽機械の更新であるとかあるいは輸出であるとか、こういう方面に力をいたされてまず大した失業はないだろう、こういうふうなお話は伺っておりまするが、労働省といたしましては、やはりこういう転換期には多少の離職者が出ることはやむを得ないだろう、これに対しましては、まず第一にわれわれの持っておるところの職業安定機関の強力な動員によりまして、職業のあっせんに十分の力をいたし、またこれによっても十分にいかない部分は、御承知のように失業救済機関、失対事業あるいはただいまは御承知のように特別失対あるいは臨時就労等のことがありますので、これらをみな動員いたしまして万全の策を講じよう、こういうふうなことでただいま計画をいたしておるような次第でございます。
  27. 横山利秋

    横山委員 何を一体次官は答えておるのですか。そんなことは当然のことじゃありませんか。そんなことは今答弁を聞かなくてもそういう機関が政府機関であるというぐらいのことはだれしも知っておるのであります。かりにそういう機関を利用するにいたしましても、今大臣のお答えの趣旨によるならば、そういう機関に対して特別な措置をとるとかあるいは離職者に対して特別な融資をやる、そういうふうな話になってしかるべきではないですか、今あなたの答弁なんかは何もしないというのと同じじゃないですか、もう少し具体的に建設的に大臣答弁の裏打ちを願いたいと思います。
  28. 武藤常介

    ○武藤政府委員 横山さんの御質問に重ねてお答え申し上げます。その他想像以上の離職者が出たり、なかなかこれが解決に困難であるというような場合には、かつて石炭等におきまして行いましたように、各県あるいは中央に連絡協議会を置きましてこれに対処しようという陣立てをいたしております。
  29. 横山利秋

    横山委員 どうも質問のしようがないというような気持であります。今この法案審議最後の段階になっておるのに、そのときに出ましたら職業安定所だ、失業救済機関だ、出たら石炭国管のように、連絡協議会だと言う。一体それでは労働省としても先ほどおっしゃったように、通産省は大したことはないと思うというけれども、わしの方としては相当考えておるというなら、考えておるらしく、どのくらいの数が出ると見るか、機械メーカー傘下の労働者はどのくらいであって、これによってどれくらいの倒産なりあるいは解雇が出て、どういうふうにこれの解決をしなければならぬかという点について、もう少し具体的になされなければならぬと思うのですが、一体労働省は、本法案に対して省議を開いてこの措置について協議したことがありますか。
  30. 渋谷直藏

    ○渋谷説明員 この法案実施によりまして、関連産業の方に失業問題その他で相当影響が予想されるわけでございますが、当然労働省としては協議をしております。それから通産省に対しましても、ただいま種々御質問がありますような点につきまして、どの程度の規模で、失業者がどの時期にどの地域に出るかということにつきましても、種々問い合せをいたしておるのでございますが、先ほどから通産省の方から答弁がありましたように、ただいまのところでは、どの程度失業者がどの地域に具体的に出るかということについては目下のところなかなかつかみにくいという状況なのでございます。
  31. 横山利秋

    横山委員 失業対策部長答弁にしてはまことにおそまつだと思うのです。この間商工委員会において参考人がずいぶん出てやっておりますが、そのうちの市長及び石垣参考人の公述を要約いたしますと、「現在では、下請の労働者も合せまして二十万くらいはある。そこで二十九条の織機の例から参りますと、とりあえず私どもは、半年ないし一年はゼロにひとしい数字で、ほとんど注文はないだろう。織機のときにそういうふうでありましたので、おそらくそういう状態にならざるを得ないだろう、こう想像いたしますと、少くともその二十万のうちの八割くらいは、これは完全に失業をする、こういうふうな見通しを立てておるわけでございます。それからもう一つは、地域的にどうかということでございますが、私どもは大体、先ほども説明がありましたように刈谷を中心とする地帯、それから名古屋——豊和工業の場合は、これは名古屋市から少し離れておるわけですが、大体名古屋市を中心としたその周辺、それから関西、それから北陸は石川が特に大きいのですが、石川を中心としたその周辺、こういうふうなところから相当数の失業者が出る」、と関連産業を代表して言うておるのであります。かりに政府機関としてこの数に多少の意見があるといたしましても、ただいまの答弁では、まるきり対策どころではない、対策となる根拠の数字すら全然御存じがないようであります。そういうことではあなたが今後何をやるといっても私どもは信用するわけには参らぬのであります。こういう点についてあなたは概略なりともその地域、その数字、それらについてはつかんでいなければうそでありましょう。その概略であろうとも、大体このくらいの計算が出るだろう、それに対してどういう具体的な措置をしなければならぬかということはお考えになっていなければ、何のために税金で給料をとっておられるのかわからぬ。重ねて、もう一ぺん答弁をわずらわしたい。
  32. 渋谷直藏

    ○渋谷説明員 大体この紡機メーカーの集団的におります地域はもちろん承知いたしております。それから具体的に刈谷市、さらには川西市からは、この法案実施に移されました場合にどのような影響があるかということについての陳情も受けております。ただ私が申し上げましたのは、この法律実施によりまして、具体的に失業者がどの程度出るかという点につきましては、今のところ的確な見通しが立てにくいということを申し上げておるわけでございます。
  33. 横山利秋

    横山委員 そういうことではもう一ペん大臣に返っていかなければならぬと思うのです。どういうことになるかわからぬ、けれども犠牲が出ることは明白だ、これは政府、与野党を通じてだれしも見解に異なるところはない。出ることは事実でありましょう。出るその規模というものが相当深刻になるということは、もう今日まで重ね重ね言われておるところであります。しかも今日までその例がないとは言わせません。そこで一つお伺いしたいのだが、先ほど通産側としては、その谷底が浅くかつ期間を短かくしたいということを言っておるのであります。浅くかつ期間が短かいといたしますならば、これは失業対策部長の言う解雇に伴う転職の問題でなくして、かつて労働省がとった帰休の問題ということにも問題が浮かんでくるわけですが、そういう点については、この問題の解決についてどういうふうにお考えでありましょう。  それからもう一つ労政局長にお伺いしたいのは、この問題は、ほとんどが零細な中小企業側に頻発する労働争議が関連するのであります。今日政府、与党の中でも、中小企業の争議についてはいろいろと、とかくの御批判なりあるいは御意見をお持ちのようであります。しかしながら、今日の全日本における中小企業状況及びその傘下に働いております労働者状況というものは、まことに悲惨なるものがあるわけであります。ここにこれがしわ寄せされていくとなりますと、ただでさえ複雑であり、非常に解決のむずかしい中小企業で、本法案が及ぼす影響というものははかりがたい、まことに陰惨な、しかも倒れるかどうかというところまで紛争が続きます。しかもこれは倒れるおそれがあるのでありますから、中小企業労働者側としては、倒してはならぬという立場で、やはりそこに労働争議の中心点を今日まで求めておるのでありますが、しかし今度は、これは倒れるという立場になりますと、その争議たるやますます深刻、陰惨になって参ります。こういう中小企業における労働紛争の対策労政局長としてはどうお考えになるかという二点についてお伺いをしたい。
  34. 中西實

    ○中西政府委員 紛争議の原因につきましてはこの際考えられるのは、結局は失業犠牲者が出るというところにあるのじゃなかろうかと思うのでありまして、従って紛争処理対策といたしまして、ことさらに特別なことは考えられないのでございます。問題は、なるべく失業者が出ないように措置されること、それからもしも出た場合にはこれが円滑に他方面に配置されることというふうに、紛争議の原因になる問題を的確に解決していくということ以外には、特にこれのための紛争解決というか、調整の方途というものはないんではなかろうかというふうに考えております。
  35. 渋谷直藏

    ○渋谷説明員 一時帰休制の御質問だと存じますが、この点につきましては、ただいま問題になっております関連産業失業と申しますか、しわ寄せの期間がどの程度であるのか、またそれがどの程度期間がたちましたならば復帰する見通しがあるのか、そういうような具体的な状況を見て、その上で検討することになるだろうと存じます。
  36. 横山利秋

    横山委員 それではもう一ぺん大臣にお伺いします。今あなたもお聞きになったように、労働省側ではまるっきり対策がないというても私は過言でないと存ずるのであります。少くともこの法案によって、機械メーカー及びその傘下の下請企業並びに労働者が今日まで国会にどのくらい参ったかわかりません。まさに深刻な不安におびえておるのであります。あなたは先ほど、政治家として、大臣としてその倒産及び解雇については責任をとる、こうおっしゃいましたけれども、この裏打ちをしてもらうべき労働省側としては、全く今の答弁では対策がない。わずかにあなたの方の省として、谷をなるべく浅くしよう、なるべく短かくしょう、そしてその谷が済んだあとについては平年よりももっと機械の更新を促進してやろう、こういうことでありましてそこで救われた者はいいんだけれども、救われない者が出ることははっきりいたしておるのであります。その救われない者に対する対策たるや、全くゼロにひとしいのでありまして、そのときになってからやります——どろぼうを見てからなわをないます、あるいはまた一つ死にそうになったら飯をやります、しかもくれるかくれぬかわからぬのでありますが、そういうことでは私どもは安心をしてこの法案に参画するわけには参らないのであります。先ほどあなたは声を大にして、これは外国に対する問題で、外国もやっておるけれども、国内として整備しなければならぬとおっしゃいました。私はその言葉を了といたしますが、しかし外国に対する誤解を解くために全力を注ぐのが今日先決であり、大臣の主張されるところであるならば、今国内においてどうしてもこれをやらなければならぬという段階ではまだないのではないかと私は思うわけであります。重ねてお伺いしますが、今の労働省答弁では、私はあなたの言葉の裏打ちにはなりません。なりませんけれども、なおかつあなたは、この倒産及び解雇に対しては責任を持つ、政府の施策としてできた問題については責任を持つという言葉を繰り返しなさいますかどうか。
  37. 石橋湛山

    石橋国務大臣 むろん政府としては、政府実施いたしました政策によって大いなるそういう失業者が出るということは、第一これは希望いたしません、これは防止しなければならぬ、そういう責任を持っております。ですから政府としては、むろん責任を負わなければなりません。  それから今労働省側の答弁がはっきりしないというお話、これはまことにごもっともでございますが、しかしこれは労働省側はおそらく失業者が出てからの処置でございますから、今どれほどの失業者が出るか、どこにどれだけのものが出るかということは、まだ的確につかめない段階にございますので、従って労働省側としてこれに対してどれだけの処置をするという的確なことをここで申し上げることができなかったものと私は察するのであります。問題は失業者を作らずに——さっき申しましたように、これは失業者を作ったら、もう作ってから救済したのじゃ実はおもしろくない。失業者を作らないということが第一のわれわれの責任でなければならぬ。そこでいかにも繊維産業臨時措置の問題は、これはあとで申し上げますが、実行いたします結果、全然どこにも何にも波乱がないとまで断言することは、これは行き過ぎでありましょうから、そういう断言は必ずしもいたしませんけれども、しかしどれだけの失業者が出るかというのも見込みであります、それから出ないというのも見込みであります。これは悲観的に非常に大きく考えられたら、大へんな、今従業しておる機械産業の職工のみでは全部失業するようにも、これは一応算術の上では出るかもしれませんが、必ずしもそういうことでも実際はないと思う。これは経済界の波は複雑であります。現にある部面においては、最近の輸出振興等によって景気も多少回復して参りました。さすがに非常に弱っておりました中小企業の方面にも、十分とは申しませんけれども、ある程度の潤いが来つつあるようであります。機械のごときも、機械メーカーの、ことに部品製作下請企業においては、必ずしも紡機だけをやっておるわけではありませんで、いろいろな機械の部品を作り得るわけでありますから、現にそういう方面にも設備投資が、三十年度に比較いたしますと三十一年度はかなり大幅に伸びる見込みであります。これも見込みでありますから、見込み通りにいくかいかぬかと言われれば、これは見込みだと言うほかはありませんが、ずいぶん伸びる見込みであります。設備投資が行われれば、自然機械の需要もふえるわけであります。また輸出についても、先ほど局長から申し上げたと思いますが、一時ずいぶん紡機輸出がありました。それが一応マキシマムにいって停滞しておりましたが、最近はまた再び紡機織機類、染色機械類の輸出の見込みが大分出て参りました。ですから国内における設備投資と、それから輸出がどれほど伸びるか、これも相当伸びる見込みでありますが、それが的確に幾ら幾ら伸びるというところまではなかなか申し上げかねるわけであります。こういうわけで、私どもはぜひともそういうマーケットを作って、そうして失業者を出す前に追加需要をできるだけ起して、追加需要によって関連産業の仕事の減ることを防ぐ、失業者の出ることを防ぐ、こういう方法を極力やっていきたいと考えております。  それから最後に、何もこんなものをやらぬでもいいじゃないかというお話のようでございますが、これは先ほども申し上げましたように、日本の繊維産業というものは日本の産業の中の最も重要な産業でございます。しかも、残念ながらその繊維産業というものがかなり弱体な小企業者によって構成されておる部分が多いということが、日本の繊維産業の弱点であります。従って過当競争というものが起って、海外にも安売り競争が始まるというようなことでは、いたずらに貿易上の損失をするばかりでなく、海外のマーケットを必要以上に刺激して、いろいろの波乱を起して参ります。これをどうしても調整いたしまして、日本の繊維産業というものが安定するようにするということが私はこの際必要だと思うのです。それによってある程度の波乱も生じましょうが、その生ずることに対しては、先ほども申しましたように、できるだけの処置を講じつつ、かつまた急激に整備をいたして、それによって波乱を大きくしないような処置を講じつつ、とにかく日本の繊維産業というものを早い機会に立て直す、そして安定した基盤の上にこれを持っていくということが、ぜひ必要だと思う。それには、むろん今度の法案だけでできるとは考えません。なお中小企業等については、あるいは協同組合等の強化、あるいけ設備更新というようなことについていろいろな方法を講じなければなりません。通商産業省としても、従来も協同組合等の助成をいたして参っておりましたが、なお一つこれを強力にいたしたいと思っております。それから機械設備更新については、数年来補助金を出して、府県と連合してやっております。これは府県によっては相当の効果を上げておりますが、その機械設備更新の大部分は何かというと、繊維機械でございます。こういうわけで、そういういろいろの施策を通じて機械の需要をできるだけ増し、繊維産業の基盤を強化する、こういうことをいたしたいと考えてこの法案を提出した次第であります。
  38. 横山利秋

    横山委員 大臣が今おっしゃったように、繊維産業を安定したい、そういう点については必ずしも、私は否定するものではございません。ただこの間からいろいろ質問も出、公述も出ておる中で一番ぴんとくる話は、自分のところの安定をするためにと言っては失礼でありますが、繊維産業の安定をするために、ほかの産業犠牲にせぬでもいいじゃないかということが、一番ぴんとくる話であります。繊維産業を安定するためには、大臣もおっしゃっておられたように、第一に「輸出行政面において貿易体制を整備し、輸出品価格、品質の規制を行うとともに、生産行政面においても中小企業安定法の発動あるいは行政勧告によって出産調整を行う等の方法を用い、もって輸出貿易及び産業の健全な発展に努める」、こういうことで、これはそのものずばりであります。ここが危いというならばここを立て直すというのでありますが、そこを立て直すためにこっちを犠牲にするということはどうしても納得ができない、それがかりに効果をおさめたって、こちらの方はこちらの産業として独立性を持っておる、お前のところがこちらの犠牲になれということについてごうごうたる不平、不満というものが出て参りましたのは当然のことといわなければならないのです。こちらの方に犠牲をしいるならば、こちらの方に何かそれに対する手当が十分にあるならばそうも文句は言いますまい。けれどもその手当たるや、先ほどからいろいろこちらの面からお伺いをしておるのだけれども、手当が不十分で、出たらということだけにある。そこにこの法案根本的な、イデオロギーを抜きにして立法論として私は問題があるのではないかと思うわけです。そういう点についてあなたはもっと親切にそれらに対して説明をする義務があると思うのですが、いかがでございますか。
  39. 石橋湛山

    石橋国務大臣 繊維産業の立て直しをする、そのために繊維産業はこの法案によって相当の犠牲を払うと思います。これはやはり繊維産業自身が立ち直るためには、繊維産業にもそれだけの負担をしてもらわなければならぬと考えております。それに関連する産業といいますと、主としては、繊維機械の生産者であろうと思いますが、これは私もしばしば多数の陳情を承わりました、ごもっともであります。ですから先ほど申し上げましたように、できるだけのことはいたします。しかしながらそれでは繊維産業をほおっておいて、繊維産業そのものが不安定になった場合に、果して関連産業の機械産業だけが繁栄することができるかというと、そうはいかぬと思う。やはり日本の繊維産業というものがしっかりして、輸出をいたしまするにしても日本の繊維産業というものがりっぱに発達をしてりっぱな機械を使うような日本の繊維産業にして、初めて輸出機械も、りっぱな輸出機械ができるのだと思いますから、日本の繊維機械についてはどうしても日本の繊維産業というものがやはりしっかりしなければいかぬ。こういうわけですから、どうか繊維機械産業のもとをなすところの繊維産業をまず確立するということに一つ御協力を願いたい。いろいろ御不満もありましょう、いろいろ御不便あるいはある程度犠牲もありましょうが、それはわれわれ政府といたしましてもできるだけのことはいたします。先ほども申し上げましたように、それは具体的でないというおしかりがあるかもしれませんが、とにかく追加需要を起す以外には救いようがないのです。失業者が出てから失業者に失業手当をやったって、失業対策をやったってこれはおそいのでありますから、どうか機械産業に対して内外の追加需要をできるだけ起すようにして仕事をふやす、仕事を継続する。但し先ほども申し上げましたように、最近は特に私の聞くところではこの法案のために一時的の一つの思惑から、繊維機械の注文が常態を越えて非常にふえておる。そのために機械メーカーも特に夜昼ぶっ通しに仕事をするとか、あるいは急に仕事をふやすということをしておるようでありますが、これをこのまま続けさせろ、こう言われてもこれはなかなかむずかしいのでありますから、それはその点についてある程度の波乱がございましょう。しかしながらこれがノーマルに戻るように——むろんわれわれ政府といたしまして、繊維産業だけよければいいとは言わない、繊維産業をよくするにはやはり機械産業もよくしなければいかぬのでありますから、そういう点について人間のやることでありますから、万全というか、水も漏らさないように、必ず一人も失業者を出さない、一人も困る人を出さない、そんな大きなことは申しませんけれども、しかしながら政府の力の及ぶ限りできるだけのことはする、これはもう政府の責任でありますからやります。どうかそれで御協力を願いたい、こう申し上げるわけであります。
  40. 横山利秋

    横山委員 まあ大臣答弁それ自体としては私は了承するにやぶさかではないのですが、しかしそれを裏打ちすべき先ほどからお伺いしておる手当の問題について全く不十分である。大臣も今お話の中に、この点については予算面とか、あるいはまた失業救済とか、あるいは帰休制度とか、いろいろな面で、質疑応答の中で明らかになったように、きわめて不十分であるということは、あなたも御存じであろうと思います。今の、ないしは本日まで行われておりました質疑応答をもってその政府の施策をもってこの法案をやろうとなさっておられるのでありますか、お伺いいたします。
  41. 石橋湛山

    石橋国務大臣 先ほど申し上げましたように、とにかく繊維産業の安定、確立は相当急を要する、日本産業全体の上から申しましても急を要することと存じますので、どうか一つ御協賛の上でこの法案は実行さしていただきたいと思います。これが日本のためにいいと私は確信しております。それに伴うところの種々なる波乱については、これはむろんわれわれは責任を負って万全の措置を講じなければならぬと思います。
  42. 横山利秋

    横山委員 先ほど大臣繊維機械の耐用年数の問題についてお触れになりました。これは今日まで当委員会においても、あなたの方の側から何回となく言われておることであります。通産側としては、この機械の耐用年数をどのくらい圧縮をしたいと考えておられるのであるか、その具体的なあなたの意見を一つ述べてほしい。
  43. 小室恒夫

    小室政府委員 機械の耐用年数は、繊維機械のみならず、各種の機械の横のバランスというか、そういう点もありますし、また共通の部品等もあります。なかなか各種各様の機械機器があるのでありますから、これを目下詳細に検討中でありますが、おおむね私ども考えとしては二十二年のものを十六、七年に圧縮していただいたらどうか、こういうふうな考え方でおります。
  44. 横山利秋

    横山委員 聞くところによりますと、またこの速記録を見ますと、それは単に通産省の一方的意見であって、大蔵省と交渉しておりますといっても、何もしていないような話を私は間接的に聞いておるのであります。この法案にこれは関連もいたしますが、この耐用年数の問題は、その独自の問題として、この法案にも関連なく、その必要性は言われているところであります。一体今日まで通産省としてはこの耐用年数の短縮について大蔵省とどういう交渉をし、どういうふうな具体策を持ってやってこられたか、さらに詳しく説明してもらいたい。
  45. 小室恒夫

    小室政府委員 ただいま申し上げたような結論になるような、相当膨大な資料でありますが、大蔵省の方にも渡し、また主税局長ともお会いしてお話いたしております。もっともこれはなかなか専門的な事項でございますから、きのうからきょう、きょうからあすというふうに、簡単に結論が出ないということは、私ども考えておるわけであります。
  46. 横山利秋

    横山委員 確かにこれは専門的な問題で、しかも相当大きな問題であります。だからあなたの方で簡単に耐用年数を圧縮をしたいという希望的な意見だけでは、これは絵にかいたぼたもちであります。だから私はよけいに注意を払って、あなたの方の答弁を聞いておるわけであります。ほんとうにこの問題が必要であり、ほんとうにこの問題を十六年にすることが不可欠の問題であって、やらねばならぬと、通産側としてはかたい決意を持って立っておられるのであるかどうか。どうも本法案に伴って、日ごろ業界が言っておりますこの問題を、まあこの機会になだめる一つの手段として取り上げた感じが私にはしてならぬのであります。そうではなくしてこの問題はこの問題独自の理由があり、必要性があると考えてあなたの方として、不抜の決心をもってこの問題に当っておるのかどうか、きわめて失礼な言い方でありますが、この所信のほどを明確に一つ答えて下さい。
  47. 石橋湛山

    石橋国務大臣 その点私からお答えいたします。これは大蔵省の所管の事項でありますから、むろん大蔵省と話し合いをして納得を受けなければ実行に移すわけには参りません。しかしながらこれは繊維機械だけでなく、機械全体に、先ほどお話もありましたように、耐用年数については再検討を要する時期に迫っております。ですから通産大臣としましても、単にこの法案の問題だけでなく、機械の耐用年数については十分大蔵大臣と話し合って耐用年数の減少をこの際検討してもらいたい、かように考えております。しかしこれだけじゃありませんから、ほかにもいろいろな手をやらなければなりませんから——耐用年数の問題さえ解決すればいいというなら死にもの狂いで耐用年数だけにかかりますが、そうばかりでもない、これは一つの重要な案件だ、こう考え努力しているわけであります。
  48. 横山利秋

    横山委員 大臣の明確なる御決心を伺いまして了承いたしました。そこでそちらにおいでになる主税局長にお伺いしたいのであります。通産省としては非常に不抜の決心をもって当っておられるのであります。あなたは先ほどからそこでにやにや笑って聞いていらっしゃるのでありますが、一つこの問題についてのあなたの考えを聞かしてもらいたいと思うのであります。
  49. 渡邊喜久造

    ○渡邊政府委員 耐用年数につきまして通産省から申し入れのあることはその通りであります。耐用年数の問題につきましては、幾つかの観点があるわけでございまして一応現在定めてある耐用年数、これはここ数年間ずっとやってきた問題でありますが、これをさらに見直して相当改訂する必要があるかどうか、これはひとり現在ここで問題になっている繊維機械だけの問題ではありません、こういう問題が一つあります。それからさらにこの問題と関連しまして、特に繊維機械について一応の申し入れがあります。いろいろな観点があるわけでございますが、われわれといたしましては、一応虚心坦懐な気持で通産省の話を伺いまして、その上で改訂すべきものは改訂するという結論を出したい。現在といたしましては、まだ全般的に一応通産省お話を伺ったという段階でございます。
  50. 横山利秋

    横山委員 次の質問者も参りましたから、私の質問を打ち切ることにいたしますが、今の主税局長お話通産省側のお話では、非常な食い違いがございます。大蔵省側としては白紙で臨んでいるのだ、検討しているにすぎないのだ、こういうような御答弁の模様でありまして、本問題について意見が違うと言えば言えるのでありますけれども、あまりにも食い違いが強過ぎるのであります。私はこういう公式の場面で通産省側が非常な決意を示しておっしゃったのでありますから、少くとも大蔵省側に、すでに事前の連絡もあり、その大体の大蔵省側の了解を得てでなければ、これほどまでの強い御発言というものは、しかも大臣がなさるはずはあるまいと思っております。この点については、本法案の所管が通産省側で、もっとも耐用年数については大蔵省側でありますが、あまりにも主税局長の御答弁は冷静過ぎるといいますか、他人ごとのような感じがしてなりません。従って百歩譲ってもあなたの今の検討という問題が、検討の結果よければやる、悪ければやめる、こういう立場に立っての今の御答弁であるものか、それとも耐用年数は少くとも通産省側の気持を了として検討いたしておるものか、右か左かどちらであるか、これだけ一つはっきりしてもらいたいと思います。
  51. 渡邊喜久造

    ○渡邊政府委員 耐用年数の問題は、各業種に非常に広範に影響する問題でございますし、従いましてその全体について見直す問題が一つございます。それから現在問題になっておるこの法案に関連しての問題、これはそれ自身としていろいろ問題をはらんでいると思いますが、通産側として、耐用年数を短縮することによって、この法案の施行を円滑にやっていきたい、そうした通産側のお気持は、われわれの方としましてもできるだけその方向で考えていきたいと思いますが、ただ耐用年数という問題になりますと、税制全体の問題になりますから、その面とにらみ合せながら考えていくいろいろな問題があるわけでございまして、現在の段階におきましては、まだ通産側ともそれほど話を詰めるまで至っておりません。しかし、いろいろなお話を伺っておりますから、よく検討してみたい、かように考えております。
  52. 横山利秋

    横山委員 それでは不十分であります。私にはもういろいろな質問をする余裕もございませんし、簡単にそのものずばりで——私どちらでもいいと思うのです。あなたが検討した結果、悪ければこんなことをやらぬのだ、よければやるんだ、こういう立場に立ってのお話か、それとも、少くともこの機械メーカーなり、一般の業界なり、あるいは通産省が要望しておるその趣旨を尊重して検討しておるのか、どちらか明確に答えていただければ私は終ります。
  53. 渡邊喜久造

    ○渡邊政府委員 ちょっと今の御質問がよくわからないのですが、要するにわれわれの方としましては、一応通産省の方からお話がございますから、それをよく伺って、そしてなるほどごもっともということになれば、その方向でもってものを考えていきたい。ただまだ話を詰めていませんから、従ってそれが御希望のような結論が出るか出ないか、この点については、通産省ととくと相談してみたい、こういう段階であるわけです。
  54. 横山利秋

    横山委員 それじゃ大臣に伺いたい。今の主税局長お話は、私はいささかけしからぬと思うのでありますが、あなたは今の答弁を聞いてどういうお感じを持っていらっしゃいますか。あなたの今の感じだけお答えいただいて、私の質問を終りたいと思います。
  55. 石橋湛山

    石橋国務大臣 ただいまの主税局長答弁はそれで満足であります。というのは、事務当局としてあれ以上のことは言えぬと思うのです。これを言えというのは無理だと思う。実際耐用年数というのは非常に技術上の問題ですから、技術的に検討しなければ、大蔵省としてイエスとかノーとかいう結論はなかなか出せますまい。また事務当局が結論を出したからといって、すぐ主税局長一個で直ちにこれをここに発表することはできないでありましょうから、今の局長言葉は、私は十分今の通産省が希望していることは了承されているものと了解いたします。
  56. 神田博

    神田委員長 次は春日一幸君。
  57. 春日一幸

    ○春日委員 まず石橋通産大臣にお伺いいたしたいと思います。  法律の各条章についての専門的な事項につきましては、当然商工委員の各位においておおむねつまびらかにされておると思いますので、私は独禁法の関係、その他今主税局長答弁されております耐用年数に対する税法上の優遇措置の問題、こういうような問題に触れて特にお伺いをいたしたいと存ずるのであります。ただこの機会に一言申し述べておきたいことは、あなたは今渡邊主税局長は一属吏であるから、従ってこういうような問題について政策的な答弁はできないであろう、こういうように軽くあしらっておられるのでありますけれども、しかしあなたも経済閣僚として、わけて当初よりこの鳩山内剛の主要メンバーとして、十分こういうような経済上の諸問題について重大な関連を持つ税法上の諸問題については、当然閣議においてそれぞれ参画されておると思うのであります。ところが御承知通り、一萬田大蔵大臣は、税制については全然造詣がない。私は大蔵委員会としてすでに数次国会いささか努力をいたしておりますが、わが国における税制上の措置万般、これは政策面もまた技術面も含めてもっぱら一にかかって渡邊喜久造君の手によってこれがなされておる。従いまして渡邊君の見解こそは、従来の経緯にかんがみまして、これはそのまま大蔵省の見解であり、一萬田大蔵大臣はこれをそのままうのみにして出してきている経過にかんがみまして、あなたはそのように、これは一局長答弁だから、これ以上言えないなどというようなことで渡邊君に相対しておられては、あなたが必要とされている問題の解決はつかないんじゃないか。私はあなたよりも古くから渡邊君の税制上に対するいろいろな権能をよく了知いたしておりますので、この機会にあなたにこの警告を申し述べて、今後渡邊君に対するにさらに別な配慮をもって処せられることを強く要望しておきたいと存ずるのであります。  そこで私はこの際伺っておきたいことは、この法案の上程理由が、説明するところによりますと、これはわが国繊維産業輸出が急増したこと、その価格過当競争によって乱調を呈してきている、これが欧州諸国のガット第三十五条適用等の問題等もあり、わけてアメリカが輸入阻止運動をしてきている、だからこれに対応するの策といたしましてこの法案の成立を特に必要とするものであるとうたわれているわけである。これをわかりやすくあなたにお伺いするとすると、この真のねらいとするところは一体何であるか、それはすなわちアメリカの損じたごきげんを取り結ぶためのものであるか、さらに具体的に言うならば、過当競争でアメリカへじゃんじゃん出ていったので、アメリカの繊維業者が怒った。これをなくするためには、アメリカに輸出がきかなくなるようにする、すなわち値段を高くしてそうしてアメリカに輸出があまりきかないように、貿易があまり伸びないように、国際的な紛争を阻止することに、すなわち輸出量の減退を策してこの法案考えられているものであるか、この一点をお伺いいたしたいと思います。  なおこの上程理由の中には、わが国繊維産業自体として内蔵するところのいろいろな理由の中にも、やはり長期かつ継続的に不安定な状態にあるので、そのことはやはりそのこととして別途の必要もあるのであるが、しかし国際的な関連において特にかくかくの処置をすることが必要であるということが述べられている。少くとも私どもの見解をもってするならば、われわれはどうしても輸出の増進をはからなければならぬ。これは行財政の万般を通じて輸出振興のために施策が集中されなければならぬと思っているのであるが、しかしながらこの法律では、伸びているこの輸出を削減して、外国のそこねたごきげんをこれによって取りつくろう、すなわちみずから謹慎の意を輸出の減退によって表明したい、こういうように考えられているように思われるが、この点の経緯、真のねらいはどこにウエートが置かれているか、これをお伺いをいたしたいと思うのであります。
  58. 石橋湛山

    石橋国務大臣 この法案ができました経過から申しますと、いかにも当面の問題として輸出に対していろいろな反撃が海外から起っているということが一つの大いなる問題であります。そういうところから考えられておりましたから、従って説明もそういう点が少し強調されている傾きがございます。しかしながら、これはほんとうは輸出するにいたしましても、また輸出が安定するにいたしましても、国内の繊維産業そのものが安定しなければいけないのでありますから、そういう意味で、どっちが表か裏かと申しますと、むしろある意味においては、根本は日本自体が日本の繊維産業に対して十分な安定をするような機構にするということが、むしろ根本と申していいと思います。しかしさしずめは輸出問題がなかなか大きな問題になっておりますから、そこで輸出の面から見ても、いわゆる過当競争でもって現に損失をし、また過当競争のためにいろいろの非難を海外から受けるということは非常な不利益でありますから、それを静める、あるいは損失を減少するという上から申しましても、この法案が必要だ、かように考えておるわけであります。
  59. 春日一幸

    ○春日委員 私はこの点は特に明確にしておかねばならぬと思うのでありますが、これは過当競争を防遏いたしますためには、現にここにも述べられておりまする通り、やはり貿易体制上の諸整備とか、あるいは輸出組合法等によって、いろいろ有効適切な行政措置がとられておるわけであります。私はあくまでこの貿易面、国際的な面については、一は海外との関連において一は国内において過当競争を防遏する立場において、既存の法律、そして多くの産業がひとしく受けておるその法律範囲においてさらに足らざるところを補うところの措置がとらるべきであると私は考えます。これが一つであります。少くとも今国民が、あらゆる経済人が輸出振興のために一生懸命に努力をいたしておりますときに、伸び過ぎて相手のごきげんが悪くなったから、一つ輸出をもう少し減らすためにというような施策が、あなたの政策の中のただの一角にでも現われるということになれば、この全国民の輸出振興に対する努力に対して、まるで冷水を浴びせかけるようなものであって、影響するところまことに甚大であろうと思うのであります。だからこういうような表現については、十分あなたが意を用いられて、いやしくも輸出削減のためにこういう政策をとるというような印象を国民に与えるかのごときことは、私は厳にこれを慎しまなければならぬと考えます。わけて今のあなたの御答弁によりますと、どこにウエートがあるというわけではないが、本来の立場をいうならば、これは繊維産業そのものの根底を安定させるところに重点があるのであって、当面しておるそういう国際的な問題は従だと言われておる。そうだとするならば、これはそのように正直に初めからうたい出していかなければなりません。私どもがこの問題において民間から、あるいは労働団体から、あるいは機械産業メーカー等からいろいろと陳情を受けまして、その陳情にこたえて、ときには大蔵大臣に、ときには労働大臣にその陳情のあっせんをいたしております。そういうときに大臣たちは、あなたの閣議におけるところのいろいろな説明が非常に印象深くそれらの大臣の脳裏に刻みつけられておる。すなわちこれは対米関係において、あるいは欧州関係においてそれぞれ経済上の秩序を調整していくことのために必要欠くべからざる法律として、国内的にはずいぶん問題もある法律ではあるが、しかし国際的に、特に対米関係においてこの法律上の措置がとられるのでなければ、その前途に非常に不安なものがあるというような事柄が、それらの人々に印象づけられて、ならば閣議はこれを了承しよう、またわが国際的な問題優先という立場から、国内においていろいろなそういう渋滞が生ずることありとしても、これはやむを得ず忍ぶべきではないかというようなふうに取られておるのです。だから私はこういうような提案理由説明というものは、むしろカンニングであると思う。私は、悪くいうならば、これはトラの威をかるキツネというようなものであって、アメリカが怒っておる、そして今後対米関係が悪くなるから、一つわが国繊維産業が自粛しなければならぬということがうたわれている。これはだれが読んだって字の通りですから、その印象を受けざるを得ないのです。実際がそうでないならば、私はこういうような表現をとるべきではなくして、基幹産業としてのこの繊維産業の基礎を確立することのために、この法律が必要なんだ。なお従属的な関係として、国際的にこんな現象も調整し得る面があるというふうにうたい直さなければ、これはまるでアメリカの威をかりているものだと思う。私は、政策マンとしてあなたは相当胆力のある人だと思われるけれども、このようなインチキな表現をもって国民の目をたぶらかすべきではないと思う。もう少しあなたの経歴からいい、われわれ社会党のグループでもあなたの人柄に対しては何となく敬意を表しておる者が、少しくらいはおるような気がするんだが、実際問題としてこういうような表現で、こんな法律を出すべきではない。私はまず冒頭にこのことを警告しておきたい。  さらに私がお伺いいたしたいのは、生産が急増した、これがいろいろな過当商品をはくための過当競争の原因になっておると言われておりまするが、だとするならば、これは輸出の面において新販路の開拓、これは当然あなたの職責においてなされなければならぬと思います。のみならず、われわれが当面いたしております国際経済問題といたしまして、特にビルマの賠償問題もありましょうし、フィリピンに対する役務賠償もありましょう。あるいは関連して近くはインドネシアとの賠償問題等もあるでありましょうが、こういうようなところに日本製の繊維製品を適当に振り向けていくという道も残されておるのであろうし、さらにこういうような賠償解決からくるとろの、これは高碕さんをもって言わしむれば、この段階を通じて正常貿易の躍進の道もあると言われておる。私はこの生産の急増と、それからアメリカあるいはヨーロッパ諸国のいろいろの関税障壁、こういうような問題があるならば、その面をやはり、新販路の開拓とか、当面しておるところの賠償の役務などと関連させて、これを消化することこそは、通産大臣たるあなたの責任でなければならぬ。われわれはしろうとではありまするけれども、概念的に考えて私どもが日本の繊維類の生産量と消費量、輸出量等をいろいろ調べてみたけれども、過剰であるとおぼしき数量の消化は、これらの政策を有機的に関連させることによって必ずしも不可能ではないと私は考える。こういうような問題について大臣はどのような検討をされたのであるか、一つお伺いしたいと思います。
  60. 石橋湛山

    石橋国務大臣 表現の仕方についての御批判は承わっておきます。しかしせっかくのお言葉ですけれども、これは決してアメリカあたりが日本の繊維品の輸出に対して処置してきたから、これに対して向うのごきげんを伺うためというような意味は毛頭持っておりません。これはどうしても日本の繊維産業そのものを——そうでなくても、これは日本の繊維産業過当競争に陥れ、これはアメリカだけではない、ほかでもいろいろ問題を起しておる。海外に行って、日本の製品の出るところに行きますと、必ず苦情を聞くというようなありさまでありますので、どうしても日本の産業、ことに繊維産業は重要でありますから、繊維産業の基盤をもっと強固なものにして、そうしていわゆる過当競争というようなことによって実際に日本の貿易に損害を来たし、またつまらない批評を受けることのないようにいたさなければならぬということで、この法案を出しておるのでありまして、たまたま表現の仕方がいかがでありましたか、表現の仕方が悪かったとすれば相済みませんが、とにかく気持は決して海外諸国に対して慰撫策あるいは申しわけというようなことのためにこんな法案考えたものではございませんことを、どうぞ御了承願いたい。  それから私は、過当競争になるような産業状態でありましては、いかなる場合でもよろしくないと思いますから、やはりその点において日本の繊維産業というものは相当の整理を行う必要があると考えます。そしてこれはやがて日本の貿易を大いに伸ばす一つの大いなる方法だと考えております。決してこれによって日本の輸出を減らそうというようなことは夢にも——今春日君のお言葉で初めてそういう御批評もあり得るかと思ったわけでございまして、夢にもそういうことは考えたことがないのです。現に繊維品の輸出はふえつつありますし、また今後もふえると思います。また今後産業自身が十分整備されれば一そうふえる機会をふやすものだと考えてやっておるのでありましてむろん貿易の拡大ということに反対する気持もないし、この法案はそれをねらっておるわけではございません。
  61. 春日一幸

    ○春日委員 限られた時間でありますからお互いに言葉じりをとろうとは思いませんけれども提案理由説明の中にわが国繊維産業輸出数量が急増した、そこで国際的批判がきわめて悪く、この国際的な批判にこたえるためにかくかくの措置をとる、こういう工合に言っている。急増したのが悪いから急増しないようにというならば減らすようにせざるを得ない。読んで字の通りの解釈はそこに落ちつかざるを得ない。また結果的にもそういうことを防ぐための措置にこれがなっておるんだから、現実にはやはり輸出数量が相当減ってこなければ、アメリカのごきげんもヨーロッパのごきげんも直らない。だからそういうような政策が果してわが国の貿易政策として適切妥当なものであるかどうか。これはそうしなければ何ともしようがない形になるというならば別であるけれども、もう少し他の方法を——ただいまも申し上げましたような役務と賠償との関係、新販路開拓、特にあなたの所管であります大陸貿易など、あるいは河野農相によって日ソの国交回復の門口も最近開かれるかもしれないというような段階においては、私は繊維産業の販路の配慮をし、一つは賠償、次は新販路、特に日中貿易、日ソ貿易こういう方向へ向けることによって私は別の方策をこらしていくべきじゃないかと考えておるのでありますが、こういう方面に対する検討はいかがされましたか、この点を一つ伺っておきたいと思います。
  62. 石橋湛山

    石橋国務大臣 お話通り政府としても新販路の開拓、貿易と繊維品を結びつける方途はある程度見つけられましょう。ただ繊維品等の商品で賠償を行うことには問題があると思います。とにかくそれらのあらゆる方法を講じて、日本の軽工業品の輸出をはかっていくことは、御承知通りでありますが、これに全努力を注いでおると申してもよろしいと思うのであります。これはやっておるのであります。しかしそれだけでは足りない、その上にさらにこの法案のごとく繊維産業の国内における体制の整備もあります。
  63. 春日一幸

    ○春日委員 それでは次にお伺いいたしますが、本年の一月、すなわち小室君の手元においてこの法律案審議会答申を基としていろいろ検討され、おおむね政府の案として草案が固まったとおぼしきころ、すなわち本年一月における大阪三品の綿糸相場は、ポンド百九十二円二十銭、ところが本日におきましては二百十五円五十銭、これは相当に上っておる。それから名古屋現物について申しますと、毛糸については一月は千円であったものが今においては千百五円、現物の綿糸は、大阪において二十番手で一月六日では七万四千五百円だったものが五月四日では八万九千五百円、こういう工合に相当大幅な足取りで値上りをしてきておる。そこで私が特に大臣に伺いたいことは、この法律の制定を特に必要とする理由は、長期かつ継続的に業界が非常に不況であった、こういうことだから、とにもかくにもこれをやろうということで考えられたんだが、その当時の相場と現在の相場を比べるとだんだんと上ってきておる。そしてまた急速にこれが下るというような情勢もありません。経済は現実の問題でありますから、現実の客観情勢、背景が、があっと変ってきており、繊維産業の現状は、いんしん産業とは言えないであろうとも、大いに情勢が緩和されておるわけなんです。そこであなた方が一月のころに作ったこの法律案を現客観情勢、現実的な背景に照らして相当修正しなければならぬような面がありはしないか、こういうような問題についてかれこれ比較検討されたことがあるかどうか、この点について一つ答弁を願いたいと存じます。
  64. 石橋湛山

    石橋国務大臣 この法案はたまたまそういうお話のような時期にできましたが、これは不況対策としての法案ではございません。日本の繊維産業そのものの機構、むしろ体質を強化する、こういう法案でありますから、その面から見まして、たとえば景気の動きによりましてこれからのあるいは紡機、その他の設備のたな上げとか、廃業というものについて、実際に需要があるという見込みがあればある程度の変化はあるかもしれませんけれども法案そのものには変化はありません。
  65. 春日一幸

    ○春日委員 そういたしますと、これは明らかに不況対策ではなくして、需要と供給の調整をはかるため、計画経済に向っていくための案であり、そういうような施策を通じて大いに安定せしめようということでありましょう。これはもとよりわが党が提唱いたしておりまする計画経済とたまたま軌を一にするものであって、この基本的な理念については私どもは何らの異論のないところであります。けれども私がこの際申し上げたいことは、現在の日本における経済秩序は自由にして公正なる競争、これを基としての独占禁止法、これが根幹になって日本の経済秩序は守られておると思うのでございます。そこでそういうような基盤の中においてただ一つ繊維産業だけを計画経済にしていって、そうしてこれだけを安定して、他の産業というものがそれによって大きくしわ寄せを受けて、いろいろな混乱、崩壊、危機にさらされていってそれで全体的の日本の経済秩序が保ち得るかどうか、高度の国家経済の立場においてそれが適切なことであるかどうか、この点について国会は特に深遠なる検討を加えなければならぬと思います。私の申し述べたいことは、こういうような方式はいうなれば、わが国の経済行政の歴史の中では、戦争中に東条内閣の閣僚であった岸信介君が商工大臣としてあの国家統制をずっとしいたのであるが、あのとき一切の経済現象に対してその統制機構を加えていって、それで一応の経済的権衡というものがはかられたと思います。現在どんな産業だろうと、八百屋さんであろうと、げた屋さんであろうと、新増設、新規開店を禁止されればその産業は安定することはきまっておりますよ。あなたのところにもずいぶん陳情がいっておるだろうと思うが、陶磁器産業ども輸出産業として大きな国際的関連を持つ産業であるが、これなども増設規制して、そうして製作を抑制していけば、その産業は現実の問題として当然安定する。国民は法律の前で平等であるという立場において繊維産業だけがこういうような法律の制定によって新増設規制を受けるということならば、他の貿易産業もいろいろありましょう、ミシン産業もあろうし、ベニヤ産業もあり、陶磁器産業あり、幾らもある。そういうものが、おれたちは法律の前に平等でなければならぬから、おれたちに対してもそういう設備制限の法律で新しい競争者がめちゃめちゃにふえることを抑制してくれ、そうして安売りによる国外の非難をこれによって緩和してくれ、内部的には国内における産業の基礎を固めてくれといってあなたのところに言ってきたら、あなたはそれを受けて行政措置をとりますか。もしとらないということならば、これは繊維業者のみに対する特別の恩典ということであって、国民は断じてこれを許さないでありましょう。私があなたに申し上げたいことは、日本の経済秩序は自由にして公正なる競争という独禁法というものが経済憲章として、これは日本の経済諸立法の基をなす憲法である、この憲法の上に立たれておるときには、法律のアローアンスというものはおのずから限界があります。たとえば安定法だとか、あるいはまた輸出組合法だとか、いろいろな調整機関があって、他の産業はその法律範囲内においてそれぞれ苦しみ、それぞれ問題の解決をはかりつつある。ひとり繊維産業だけに、かくのごとき単独立法によって格別の恩典を与えるということは、これは将来同様の立場にある他の産業影響するところ甚大であると思うが、これらの関連産業から同様な申請、陳情が行われた場合、大臣はこれに対して同様の応待をするのであるか、この点を一つ伺っておきたいと思います。
  66. 石橋湛山

    石橋国務大臣 ただいまのわれわれの機構はお話のように、できるだけ個人のイニシアチブを生かしていく、いわゆる自由主義の立場に立っておるのでありますが、しかしながらこれは言うまでもなく、今日の社会においては自由主義といってもレッセフェールではないのでありますから、必要に応じて国家がある程度の助成をする、あるいは規制するということは、これは繊維産業だけでなく、あらゆる面に現に行われつつあるところであります。ことに重要な産業繊維工業、多くの中小企業者がこれによって生活をしておるようなものについては、特にそういう点について、国家がある程度の力を加えるということはやむを得ないことだと思います。
  67. 春日一幸

    ○春日委員 東条内閣の末におきまする岸商工大臣がやったときの経済的な背景と、今日とは、これはまた全然違っておるのです。わが国は平和的文化国家を指向する立場におきまして、特に経済的な秩序は、自由にして公正なる競争という独禁法の精神によって貫かれなければなりません。ところがこの法律によってこういう規制を行うということは、その独禁法の精神を根本的にこの型に変えてしまうものである。ただ問題は、このこと自体が悪いとは言わないけれども、このような類型の措置が次々ととられていくならば、これは同時的にかつ並行的に行われることによって、経済秩序というものはあるいは別の形をもってその権衡がはかられるかもしれないけれども一つや二つの産業が安定して、それに関連する産業犠牲になって、あるいは崩壊して、それでもって国の経済政策が安泰ということはあり得ないではありませんか。だから私の申し上げるのは、こういう思い切ったことをやるときには、少くともそれに深刻な関連を持っておる関連産業に対する施策が、同時かつ並行的に総合施策として講じられるのでなければ、よってもたらす弊害だけ多くして、国民経済の全体的立場から来るところの大きな弊害がそこに残って、もって経済の混乱を起すような憂いなしとはしないということを申し上げておるわけなんです。この点は私の考え方とあなたの考え方とは違うかもしれませんけれども、これはずいぶん乱暴な、思い切ったことをよくもやられたものである。それからこんなことをされて、同様の立場にある他の産業の団体が同様の陳情をしてくれば、国家はやはり同様の措置をしなければならぬ、こういうような面から大きな変動が日本の経済秩序のうちにもたらされざるを得ない、こういうような問題等を十分考えられて、私はさらにこの法案を検討されなければならぬと存ずるのであります。  そこで私は、このことを一つ強く御検討願うことにいたしまして、次にお伺いをいたしたいことは、消費者に及ぼす影響について大臣はいかに検討されておるかということであります。申し上げるまでもなく、商品の価格形成というものは、これは現象的には需給関係に待つものでありましょうけれども、この価格形成はマテリアル、プラス、レーバー・、チャージ、タックス、プロフィットというようなもので大体価格ができてくると思う。ところがその繊維関係産業においては、やはり三品市場における建値相場、すなわち三品市場において価格の公定がなされた。それでそういうような立場から価格形成という面についても、これはその産業の安定と、それから繊維のごとく直接需要者の利害に大きな関連を持つものについては、この三品の機構についてもこの際特に深い検討がなされなければならぬと私は存ずるのであります。そこで私どもがいろいろ調査したところによりますと、こういうような現象が生じて参っております。綿糸相場は最近ずっと強調であります。これは供給減と輸出増大、従ってこのために内需は非常に圧縮されておることが原因である。たとえば三十年の一月の月初めの在庫は四十二万八千一百コリ、綿糸生産高は十七万六千八百コリ、この供給高合計は六十万四千九百コリに対しまして、輸出実績は特需の一百コリを含めて五万一千八百コリ、またその月末の在庫高は四十三万六千九百コリであったので、差引推定内需は十一万六千二百コリであった、これに対しまして本年三月の月初在庫は三十四万二千八百コリ減少をいたしまして、綿糸生産高は若干ふえまして、十八万五千コリ、供給高合計は、その累計が五十二万七千八百コリ減少しておるのであります。一方輸出実績は特需一百コリを含めまして十万四千六百コリ、約倍にふえておるわけです。そうして月末在庫は三十四万二千六百コリとなっておるので、差引推定内需は八万六百コリ減少しておる、かくのごとくに圧縮されてきた、こういうような状況が現在の綿糸相場に反映をされまして、そうしてこれが引き続いて強調の一途をたどっておる、こういう結果になってきておるわけであります。こういうような現実に当面しております。このとき現実に生産量がこれで一応抑制されてくる、そうして輸出は一応ふえていく傾向にある。こういう場合に、これはどうしても内需が圧迫を受けるので、そこで、この三品における取引は単なる原料のつなぎというようなことでなしに、これはやはりスペキュレーションたらざるを得ない。すなわちここに仮想取引というものが生まれてきて、この上もしも三品における値段がどんどん上っていったならば、一体大臣として国民の前にどういう責任をとられるのであるか、これはもとより現在その商品取引法の中においていろいろそういう過当騰貴とか、あるいは仮想取引を規制する措置はいろいろありますけれども、しかし現実の効果というものは、これは非常に注意を要する問題ではないかと思う。すでにこの法律ができるということだけでもって、この三品に対する取引の指数というものが変ってきておるということは あなたの方で十分お調べになっておると思う。   〔委員長退席、小平(久)委員長代理着席〕 すなわちこの法律案と関連をして、この三品取引に対してやはり法律上、行政上もあなたの方で調整を加える意思はないか、あるいは足らざる法の欠陥等があれば、この際これを補完する研究をされたことがあるか、あるいはそういうような過当騰貴、仮想取引というものの心配は絶対にないのであるか、この点を一つお伺いしたいのであります。
  68. 石橋湛山

    石橋国務大臣 三品の問題については十分検討する必要があると思いますが、これは必ずしも綿糸だけではありません。しかしながらこれは結局現物の需給に支配されるのだと思いますから、われわれとしては、三品だけが今後現物と非常に違った動きをするだろうとは思っておりません。
  69. 春日一幸

    ○春日委員 これは重大な問題でありまして、特にその株式の証券取引業においてあるいは米穀取引において、少くとも国民生活に重大な関連のあります。ところの取引所法というものは、政府の監督もさることながら、あくまでも経済現象として、経済人がその恣意をほしいままに走らして、いろいろなとんでもない現象が生じてくる。近くは昨年における大豆の現象などはその最もよき例でありますけれども生産原価とか、あるいは需給関係とかいうようなものをはるかに飛び越えて、もっぱらスペキュレーションだけによってその価格の公定がなされた。もしもこの繊維産業にして、生産がここで押えられてしまったのだから、さあ、こういうふうに品物を買い占めていけ、売り惜しんでいけということになっていって、この上さらに二割にも三割にもなっていったら、あなたは国民の前で腹かき切ってもその罪は償えない。だから、この取引所法について十分の検討をされていやしくも仮想取引だとか、スペキュレーションによって市場の混乱あるいは繊維製品のこれ以上の暴騰が起らないように、これは当然今の答弁の中にも示されましたけれども一つ十分検討されて、消費者に与える影響と、さらにはこの産業自体に与える大きな影響等を十分考えられて、万全の措置を講ぜられることを強く要望いたします。  次は、これはただいまもちょっと触れたのでありますが、すべからく国の施策というものは総合的でなければならぬ。もとより繊維産業は大事であるけれども、これだけが安定することを念ずるの余り、これに関連するところの他の産業が、この規制を受けて衰滅するというようなことがあっては大へんであります。のみならず、この法律は五カ年の時限立法であり、五カ年後にこの法律によって繊維産業は大いに安定をする、国際間の関係も非常に好転する、そこで輸出がどんどんふえてくる、外国の感情を悪くすることなくして、正常な形において貿易がどんどん伸びていくから、それでは五カ年後において一つ増設しようと思ったときに、この法律規制を受けて、もしこの繊維関係の生産業繊維機械業が衰滅してしまってなくなっておったとするならば、それは実に重大なことだと思う。また、外国においてはどんどんと日進月歩の機械が作られていき、新しい需要によってそれぞれの生産量の維持がされておるとき、次々とこれによって大きな衝撃を受けたところの繊維機械産業の諸君が、あるものは転業し、廃業して、そうしてわずかな生産量しかなくなってしまって、五年後にフリーになったときに、この繊維機械の産業自体がほとんど衰滅して、あるいは非常な低位に衰亡してしまう、こういうようなことになっては大へんなことだと思われる。だから私が本審査会において、いろいろなわが党の強い要望的な質問をしておるにもかかわらず、政府の方はてんとしてその必要なる要綱を法律措置の中に加えようとはしていないようであるが、だとするならば、この際どうしてもなさなければならないことが一つあると思うのです。この法案を成立せしめることのためには、どうしても同時的に行わなければならぬことがあると思う。それは、いうならば、まず繊維機械工業の安定振興に関する法律措置というようなものでありましょう。やはり繊維産業をささえるものは繊維機械産業でありましょうから、繊維産業というものが大事で、これを安定させなければならないならば、同じようなボリュームを持つ繊維機械産業も安定されなければならないので、繊維機械産業安定に関する同様の法律考えられなければならぬと私は思うが、このことをあえて考えなかったところの理由は何であるか、まずその点をお伺いいたしたいのであります。
  70. 石橋湛山

    石橋国務大臣 御心配ありがとうございますが、先ほどからもしばしば申し上げますように、もしお話のように繊維機械産業が五年後において全部衰滅してしまうようなことがあったら大へんなことでありますから、むろんさようなことにするようなつもりはありません。先ほど申しましたように、更新その他によって繊維機械工業をもっと発達するように指導していきたい、かように考えております。(春日委員「どういう方法でやりますか」と呼ぶ)それは、先ほどから申しましたように、まずできるだけ更新速度を早くさせて機械の更新をするということであります。あるいはまた海外への輸出を促進する、こういうことであります。
  71. 春日一幸

    ○春日委員 それで、これと同じような形態を持つところの、繊維産業をささえるところの基礎が繊維機械産業である。それだけでささえられているわけではないが、これは重要な要素であります。従って、繊維機械産業は同様の法律形態をもってこれが安定が策されなければならぬとは思うが、そのことがなし得ずして本日に至った。そこで大臣の抱負としては、これは設備更新を促進する行政措置を講ずるということでやっていきたいということであるが、これもわれわれは別に形式論を論ずるものではなく、同様の法律効果が上りさえすればそれでも私どもは了承できると思う。そこで、あなたの言われたところの、繊維機械の設備更新に関するところの効果ある行政措置とは一体何であるか、具体的にそれをお示し願いたいと存じます。
  72. 小室恒夫

    小室政府委員 繊維機械工業全体ができるだけ受注できるような態勢に持っていくわけでありますが、綿紡績機械もスフ紡績機械もありますし、毛紡績機械もありますので、紡績機械全体の機械工業の状況を見て、また綿スフの市況、またその他の市況も見て新増設調整を加えていきたいと思うのであります。それからまた、更新の時期ができるだけ機械工業の谷間に相当する時期に集中するように、今繊維局の持っているいろいろな行政的な役割をこの面へ総動員して、紡績業界がそういう態勢になるように努めていきたい、こういうふうに考えております。
  73. 春日一幸

    ○春日委員 大臣が御答弁できない技術的な問題であるとして担当局長から答弁されたものこれはいたずらに一つのものの見方を述べたにすぎないものであって、何ら本員をして満足せしめる答弁ではありません。いわんやこれに対して陳情している機械産業の本人たちに対しては、これはくそのつんばりにもならぬ。こんなことでは、本委員会を特に合同審査会として開いて私がここへ来て質問する意義というものは全然ありません。もう一歩踏み込んで、大臣もやはり日本経済の責任を負うという大きな責任感の上に立って、ある程度ふところのひもを解いて応待をしていただくのでなければ、かけ合い漫才みたいなもので、言うだけのしゃれになってしまう。こんなことであってはならぬと思う。私が今申し上げたいことは、機械の安定振興に関する単独立法ができなければ、それと同じ経済効果の上り得るところの行政措置を講じろということなんだが、小室君によってはそれが今具体的には示されていない。そこで私は、この質疑応答を通じて何らかの成果を得なければなりませんから、単なるいやがらせ質問ではなく、お互いに私どもがそのしわ寄せを受けたところの機械産業を何とかして救済していかなければ国会議員たるの職責は果しがたいという、こういう決意の上に立って質問しております。だから一つあなたの方もその気持になって答えていただきたい。  その前に一つお伺いをいたしたいのだが、この法律案を拝見したところによりますと、この過剰設備処理については大臣の強制買い上げですか、この権限の発動によって何らかの措置が講じられておるのだが、しかしこの際考えなければならぬことは、陳腐化設備というものもあると思うのです。その過剰設備のほかに陳腐化設備というものがある。すなわち今大臣がお考えになっておるような、この繊維工業設備更新に関する何らかの法律措置、行政措置をとろうとされるならば、すでにこの法律案の中に考えておるところの過剰設備処理に関する法律の規定のほかに、私はこの際あわせて、この陳腐化設備についても同様の措置を講ずることははなはだ効果的であると思うが、この点についてどういう工合にお考えになっておるか、これをあわせておやりになる意思はないのかどうか。特になし得ない理由があるとするならばその理由いかん、これを一つ答弁願いたい。
  74. 石橋湛山

    石橋国務大臣 これは過剰設備たな上げ等の場合にも、むろん陳腐化の問題は頭へ置いて処理するわけであります。なおその設備更新という場合は、言うまでもなく古くなっておるところの機械を新しいものにかえるということでありますから、これは行政指導でやれると私は信じて、今までも各府県と連合して、そうしてある程度補助金を出してこの繊維機械の更新はいたしておりまして、相当の効果を上げていると思います。同じ方法によって今回のような場合もやっていける、かように考えて、それをやるつもりでおります。
  75. 春日一幸

    ○春日委員 この趣旨説明によりますと、転換に対する政府補償ではなく、こういう強権の発動によって買い上げをする場合は、これはやはり政府からそれぞれの補償があるのでございましょう、これを一つ答弁願いたい。
  76. 小室恒夫

    小室政府委員 設備の買い上げについては、いわゆる強権発動は考えておりません。ただし中小企業共同行為によって過剰設備処理しようという場合には、これは別途予算に計上した補助金中小企業の組合に対して交付する、こういうことになっております。強制的な買い上げは実施しないという原案でございます。
  77. 春日一幸

    ○春日委員 そういたしますと、この陳腐化設備については、何らかその更新について法的に強制できるというような措置を講ずるのでなければ、これは繊維機械に対して何ら貢献するところはないと思うが、この点はどういう工合の措置をとろうとしておられますか、この点をお伺いいたします。
  78. 小室恒夫

    小室政府委員 陳腐化した機械設備を強制的に取りかえさせるというわけには参りません。しかしながら陳腐化したものを取りかえることは、当該企業としてもいずれやらなければならぬことでありますから、これが機械工業の最も必要とする時期に更新需要が集中する、この行政的な指導でありますが、これはいろいろな手段があると思いますが、そういう手段を動員して紡績業者を説得していきたいと思います。紡績業者自身の方もそういうような協力をしたいというような考えでおります。
  79. 春日一幸

    ○春日委員 それでは今大臣が言われたように、繊細工業の設備更新を促進せしめて、それによってその機械の注文を刺激するような行政措置ということは、具体的には一体何をさされるのですか。私どもはこの際そういうような過剰のもを買い上げることもそうだが、しかしその陳腐化しておるもの、それに今繊維局長答弁によりますと、企業家が買いたいと思えば買えるように、買いたくなければしかたがないから、強制的な措置をとらないというのであるならば、今まで通りのことであって、何にも事新しいことはない。すなわちこの法律によって犠牲を受ける機械メーカーに対して何らのフェーバーは及ばないじゃありませんか。私の申し上げるのはこの法律に従属して、自然的に機械メーカーがいろいろな被害を受けてくる、しわ寄せを受けてくる。だから少しでもいろいろな面を通じて、この問題の解決をはかるための一つの具体的な方策として、その陳腐化しておるところの機械を更新せしめる。更新せしめるためには政府がこれを買い上げるとか、あるいはその一部の代金を政府が補償するとか、何らかの財政措置を講ずることによって私は初めてその効果を上げると思うし、わけて機械メーカーの苦渋もこれによって一部緩和される面があると思うのだが、そういうような方策をとられる意思はないか、この際一つお伺いいたします。
  80. 石橋湛山

    石橋国務大臣 ただ財政資金だけを出して効果があるものでもないと思います。そこで更新いたします場合も、言うまでもなく、陳腐化しておる機械から最初に更新するという方針をとって指導していくのであります。なおそれについてはいろいろまだ検討しておる部面もございます。あるいはある程度陳腐化機械の更新というようなことを強制する方法がないかということは、事務的にはただいま検討しておりますが、 できるだけあらゆる方法によってこれをやっていくということ以外には実際はないと思います。
  81. 春日一幸

    ○春日委員 この説明によりますと、設備の売却を希望する事業者のために、過剰設備調整組合連合会その他適当なる民間機関においてその買い上げを行う必要があると思われる、その場合買い上げに要する資金は、原則として残存設備からの分担金でまかなうものとするが、しかし織物業のごとく、中小企業者が大部分である業種については、業界だけでこれを負担することは困難、よって政府としてはその設備処理に必要な経費の一部を補助するため、本年度予算案に一億二千万円計上しておる。こういう工合に述べられております。そこで問題は、この法律案が国会に上程されるときには、機械業者が、こんなにも因った結果にたるということについて、小室局長のところで、ほんとうに十分機械業者とひざつき合せて話し合いをされたことがあるかどうか。繊維業者とは十分検討されたであろうが、機械業者に事ほどさような衝撃を与えた、そのような大きな困惑を彼らに与えるとはお考えにならなかったのではないかと思うのです。そういうような意味合いから、ここにわずか一億二千万円の財政措置がとられておりますけれども、この金額は、その後におけるいろいろな陳情またその後いろいろと検討されたところに従って、私は相当実情に即してふやしていかなければならぬのではないかと思う。一億二千万円というこの額は、ただいま申し上げました陳腐化機械の更新を特に強制するような行政措置をおとりになるとするならば、そのような場合にも当然考えられなければならぬでありましょうけれども、相当額予備費その他の中からこれを一つふやすことによって、その効果をおさめる。よってもってこの機械メーカーたちの陳情にこたえていく、彼らの困難を救済していく、こういうような方法をおとりになる意図はありませんか。またそんな可能性はありませんか。一つこの点をお伺いいたしたい。
  82. 石橋湛山

    石橋国務大臣 機械メーカーの前途につきましては、先ほどからもいろいろ問答がありましてお答えしてあるのであります。紡績あるいは織機等については輸出もございます。そういう面でも相当の救済が——実際これはマーケットさえ作ればいいのであります。需要を起さなければならないのでありますから、需要を起す道は極力やりますし、また本年度の見通しとしては、相当内外の需要はふえるのではないかという見込みであります。  それから一億二千万円は立案当時はこれで一応やれるということで計上したわけであります。これはむろん政府の全体の財政の上から見合わなければなりませんけれども、もしこんど必要な場合にはもちろん考慮の余地はあると思います。
  83. 春日一幸

    ○春日委員 結局これを対象とするところのこの項目における資金をふやしていただくということは当然考えていただかなければなりませんが、特に私どもの主張といたしまして陳腐化設備更新いたしまする場合においては、特別に政府からこれに対して助成金を与える等の措置によって機械メーカーに対する需要を一つ刺激していただくための行政措置をとられたい。これは業界からの強い要望でもあるし、またこのことによって相当の効果を上げ得ることと考えますので、この点をさらに御検討あらんことを強く要望いたします。  次に、今庄でいろいろと伺って参りました範囲内におきましては、結局腹が減っておった人が飯を食ったら腹がふくれた、平常状態になったという解決点はない、はなはだ困った法律を思いつかれたものであります。けれども今から何としてもこれは仕方がない、与党はこれを多数で押し切ろうとしておる様子でもありますから、あらゆる施策をこらしてこの寄ったしわを救済していかなければならぬと思いますが、結局最後は今申し上げましたようにこれは間接的な効果しか上らないのではありますが、税法上の優遇措置に落ちついてくるのではないかと思われますので、こういうような問題については   〔小平(久)委員長代理退席、神田委員長着席〕 現在税法の中におきまして普通償却、特別償却、これはいろいろな法律が設けられてそれぞれの措置が講じられておりますが、われわれの検討した範囲内では、設備更新を一番大きく刺激する有効な方策といたしましては、やはり税法上の特別償却、耐用年数に対する特別の措置ということであろうと考えます。そこで私は渡邊主税局長に、これは一萬田大蔵大臣の代理たるの意味においてぜひ一つお伺いいたしておきたいのでありますが、これは現在法人税法等でずっと規定もされており、租税特別措置法でもずっと規定されております。私どもの検討した範囲内では、政府にその意思が決定しさえすれば、法律措置を講ずることなくして、大蔵省令というようなものの、いわゆる委任事項の範囲内において同様の効果を上げ得る措置がとられ得ると考えまするが、かりに通産大臣、大蔵大臣が話されてどうしてもさような方面で問題の解決をはかろうという決定が行われさえすれば、法律の修正によらずして政令でそういう効果を上げることができるかどうか、この点について渡邊局長から御答弁を願いたいと思います。
  84. 渡邊喜久造

    ○渡邊政府委員 減価償却の一般の耐用年数につきましては、御承知のように大蔵省令できまっております。従いまして現在の大蔵省令できめられております耐用年数が不適当であるという意味におきまして直すことは大蔵省令でできるわけであります。それから現在におきまして毛紡績関係、いろいろな特別な機械につきまして重要機械につきましては五割増し償却といったような制度が認められております。それから合理化機械の償却といったような制度、ただそれはそれぞれ日本産業の再建といったような一応の目途を持ったものでございまして、それが今話題になっております問題にまともに該当するかどうかという点についてはさらに検討する余地があろうというふうに思っております。
  85. 春日一幸

    ○春日委員 小室局長にお尋ねをいたしますが、この繊維工業設備臨時措置法案によって登録される繊維機械の中で、すでに今申されましたいろいろな法律関係において特別償却を認められておりまする機械というものは一体何種類くらいあるか、これを一つ答弁願いたい。
  86. 小室恒夫

    小室政府委員 ただいま主税局長から申されたように、わが国の経済再建上紡績、繊維関係の機械のうちで、特に合理化上必要である機械ということで、あるいは五割増し償却が認められておるわけであります。これでは染色加工設備の一部がその対象になっておりますが、紡績機械自体ではきわめて少いだろうと想像します。
  87. 春日一幸

    ○春日委員 私どもの調査が最終的な、有権的なものであるかは別といたしまして、これは通産省の原局は一体どんな状態になっておるかぐらいの的確な資料はとっておいてもらわなければならぬ。現在日本経済の再建に資する指定機械、これの中には繊維機械が二十八種類で約百品目、合理化促進法の規定による指定事業用機械、これが繊維機械が四種類で三十一品目、それから共同事業用指定機械の三年間五割増し特別償却、これの繊維機械は二十種類で約百六十品目がされておるけれども、この法律によって登録される機械の中で特別償却を認められておるものは、リング精紡機、それからミュール精紡機、織物幅出し機、これらが共同事業用指定機械というものに該当されておるのにすぎないので、ほとんどそのフェーバーは現在受けていないわけなんです。従ってこの法律適用して、政令でこの一、二、三の項目の中に該当機械が加えられさえすれば、私は相当の効果が上るのではないかと思う。特にまた社内に留保されたところのそれらの損金算入蓄積資金が、ひもつきでもって、その設備更新の場合にのみこれが活用できるという特別の政令の規制を加えていきさえすれば、あるいは法律の作業として困難な面はあるかもしれないけれども、そういうような操作をすることによってすなわち単独の繊維機械安定法もできない、あるいは的確なる行政措置も、すでに予算が通ってしまった現在間に合わないということであるならば、この措置だけが残されておるのです。そしてこの措置は、幸いに法律事項でない政令事項としてその目的が果し得る、こういうことであるならば——一つ大臣は特にそういう方面に理解も深いと思うのだが、特に繊維機械産業地帯においては、これは大きなセンセーション、ほんとうにパニック寸前を思わせるような恐慌に巻き込まれて、みんなが困っておるのです。だから問題の解決は、一にかかってあなたと大蔵省との話し合いによって、この特別償却、割増し償却の中に、これらの該当機械をずっと的確に入れていかれることによって、私は相当の効果が上り得ると考えます。従って一つ法律措置もできない、行政措置も財政措置も今としてはできないということであるならば、この税制措置にあなたのベストを尽して、そうしてこの法律が成立することによって犠牲を受ける人々に対して、税制の面においてこの償いをするの意思はないかどうか。これはあなたの決意によってなし得ることであると考えますが、この際あなたの決意をお示しを願いたいと思います。
  88. 石橋湛山

    石橋国務大臣 その問題は、ただいまも事務当局をして大蔵省とも話し合いをさせておるさなかでございます。十分御趣旨に従いましてできるだけのことをしたい、かように考えております。
  89. 春日一幸

    ○春日委員 結局私どももやはり法律を取り扱っておる経験にかんがみまして、あるいは法律の修正ができない、またここを直せばあそこがはみ出るという形で困難ではないかという想定に基いて、しばしば渡邊主税局長に対しても、政府内部における交渉いかんということで話を進めて参りました。ところが大蔵省の方においては話を聞いたことはあるけれども、ひざ詰め談判とか、あるいは現実にこの法律の成否を期しての話し合いというものは受けていないということで、これは困ったことだ。しかし大臣間の話し合いでもできておるかもしれないと思って、本日を待っておったわけです。ところが、小室君には非常に悪いんだが、今の御答弁によっても明らかにされた通り、どの機械が適用され、どの機械が除外されておるかということすらまだ資料が出されてはいない、検討が行われていない。いわば大臣間における交渉などというものは全然されていないということなんです。これは重大なことであろうと思う。私は長い時間をかけて質問をして参りましたが、一つには繊維産業の安定と同時に、理想的なことを言えば、総合施策として繊維機械産業の安定のための単独立法をやれというのだが、これもできない。あるいは過剰設備の買い上げのための財政措置とか、あるいは陳腐化設備更新強制に対する財政上の援助とか、こういうこともできない。一もできない、二もできないとするならば、石橋さん、三くらいのことは一つやっていただかなければ、もののおさまりがつきませんよ。失礼ながらわが日本社会党は、三百名の多数に対してわれわれ百五十四名の少数でもって、あの選挙区法をあんな工合に骨抜きにしたが、その威力は今もなおわれら日本社会党の中に含まれておる。この第三の措置をあなたがとることなくしてこの法律を通し得ると思ったら、これは委員長も無事ではおさまるまいし、通産大臣に対してもこれまたわれわれは不信任案をもって戦わなければならぬと思う。本日までどういうものが租税上の特別優遇を受けておるか、品目別の研究もされていないということは、聡明な小室君にしては至らざるもはなはだしいと断ぜざるを得ない。これは一つすべからく資料を作られて、渡邊主税局長とあなたとが一晩ゆっくり話し合って、そうして的確な業者の要請にこたえ得るの成案を得られて、そうして石橋・萬田の会議によってよき成果をおさめられることを強く要望し、そのことなくしては本法案は断じて通さないものであることを強く申し述べて、私の質問を終ります。
  90. 神田博

    神田委員長 他に御質疑はありませんか。——質疑はないようでありますので、本連合審査会は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時五分散会