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1956-06-03 第24回国会 衆議院 商工委員会総合燃料対策及び地下資源開発に関する小委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年六月三日(日曜日)     午前十一時十八分開議  出席小委員    小委員長 小笠 公韶君       菅  太郎君    首藤 新八君       長谷川四郎君    山本 勝市君       多賀谷真稔君  小委員外出席者         商工委員長   神田  博君         議     員 阿左美廣治君         通商産業事務官         (石炭局鉱害課         長)      佐藤 京三君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 三月十三日  多賀谷真稔君同月十二日委員辞任につき、委員  長の指名で小委員に補欠選任された。 同月二十日  野田武夫君同月十六日委員辞任につき、委員長  の指名で小委員に補欠選任された。 同日  淵上房太郎君同月十七日委員辞任につき、委員  長の指名で小委員に補欠選任された。 同月二十九日  田中利勝君同月二十七日委員辞任につき、委員  長の指名で小委員に補欠選任された。 五月三十日  多賀谷真稔君同月六日委員辞任につき、委員長  の指名で小委員に補欠選任された。 同日  菅太郎君同月十一日委員辞任につき、委員長の  指名で小委員に補欠撰任された。 同日  内田常雄君同月十四日委員辞任につき、委員長  の指名で小委員に補欠選任された。 六月一日  小委員野田武夫君同日小委員辞任につき、その  補欠として山本勝市君が委員長指名で小委員  に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  鉱害賠償及び鉱害復旧制度に関する件     —————————————
  2. 小笠公韶

    小笠委員長 これより会議を開きます。  鉱害賠償及び鉱害復旧制度に関して調査を進めます。質疑の通告がありますので、これを許します。多賀谷真稔君。
  3. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実は先日商工委員会におきまして、鉱害につきましての、ことに復旧をめぐりましていろいろ参考人を招致し、その実情を聞き、また要望事項も聞いたわけでありますが、政府においては、和解仲介制度についてどういうようにお考えであるのか。和解仲介がなかなか実効を見ていないというのが参考人の一致しての意見であります。むしろあっせん調停、仲裁という労働委員会のようなシステムにしてもらいたい、こういうようなことでありましたが、和解仲介に対してどの程度予算を見、人的配置をされておるのか、実情はどの程度運営されておるのか、これをお聞かせ願いたいと思うのです。
  4. 佐藤京三

    佐藤説明員 和解仲介につきましては、申し立てによって和解仲介の受付をするわけでございます。それで今まで和解仲介申し立てのありましたのは、参考人からお話のありましたように、二十件程度でございます。それで和解仲介以外に、実際陳情の形で通産局に持ち出されておりますものは三百件程度でございます。それでたしか鉱業法の御審議を願った際に、商工委員会の方で附帯決議がございました際に、当局はそういう紛争については誠意をもってあっせんすべきだという御決議もございましたので、通産局では陳情を受けた際には極力調停あっせんの労をとっておるというのが現状でございます。  それから御質問和解仲介制度でございますが、これは和解仲介には、中立側鉱業権者側被害者側の代表を十五人選んでおりまして、具体的な案件が上った場合に、三人ないし五人の方を御委嘱いたしまして、あっせんの労をとっていただいております。  それから予算につきましては、遺憾ながら今まで和解仲介委員予算としてはまだ獲得できていないような実情でございまして、今後その点は十分考えなければならぬ問題だと思っております。  それからいま一つ和解仲介委員の委嘱に当って、民主的な方法をとってもらいたいという御要望もございましたので、この点につきましては、過日通産局長あてに通牒を出しまして、任命に当っては県知事のあらかじめ承認を得て任命してもらいたいということにいたしております。
  5. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 本日はあまり意見を言わないで、一応実情を聞きたいと思います。実は家屋復旧が、いわば臨鉱法の中からは補助その他の対象になっていないわけでありますが、家屋墓地復旧というものは非常な社会問題になっておる。最も紛争の激しいのはこの点でありますけれども、特別鉱害復旧が三十二年度で終りますと、家庭の復旧が実際停滞をするというような状態になって参ります。非常に家屋復旧がおくれていくと思うのですけれども、家屋復旧は現在においてどの程度金額に上るものであるか、今から復旧をいたしますと、どの程度かかるもの、であるか。もっともつは鉱害が進行いたしますから、現在点においてはどうであるか。これを進行しないものと仮定して、大体わかりましたらお聞かせ願いたいと思います。
  6. 佐藤京三

    佐藤説明員 家屋につきましては、特鉱法復旧いたします以外に、各炭鉱が自己復旧しているものがございます。二十八年、九年両年度の私の方で調査しました結果によりますと、家屋の自己復旧しておりますものが約四億円程度戸数にして三千戸程度になっているような調査の結果になっております。それでその三千戸自己復旧しているうちで、内容がおそらく補修程度のものもこの統計に入っているのではないかと思います。特鉱のように完全に復旧している戸数がどの程度なのか、その点がまだつまびらかでございませんので、その点を調査いたすことにしております。
  7. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ですから復旧を要する経費は、古い統計でもけっこうですが、大体どれくらいあるわけですか。復旧を要する被害状態は、金額でも戸数でもいいですが、大体どのくらいですか。
  8. 佐藤京三

    佐藤説明員 大体復旧を、要する家屋戸数なのですが、二十六年に臨鉱法を作る準備として調査したものがございます。それ以外には調査いたしておりません。
  9. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そのときのでけっこうです。
  10. 佐藤京三

    佐藤説明員 今ちょっと手元に資料がございませんが、あとでお届けしてもけっこうだと思います。
  11. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 臨鉱法改正の大きな問題は、やはり家屋だろうと思う。ですから資料をとるというのも、なかなか官庁が一々回ってとるわけではないので、困難な点もあるだろうと思うのですけれども、大体どの程度であるかということがわからなければ、なかなかな政策の樹立はできないと思いますから、一ついつの時点でもよろしゅうございますから、どのくらい要するのだということと、戸数、それ以上わかればけっこうですが、大体でけっこうですから、お調べ願いたい、かように思っております。  それから供託金制度ですが、供託金制度が実際扱いとして効力を見るのは、結局いつになるわけですか。供託金を入れておりますね、そうすると、賠償責任というものは、普通は被害が発生したときから生ずるのですけれども、実際問題としては、被害が発生していよいよ話がつかなければ普通渡しません。ところが賠償能力がないような、供託金を使わなければならぬような炭鉱というものは、おそらく廃山のとき、あるいは山を処理するときに、供託金というものが初めて担保の効力を有すると思うのですが、その前に用意してそういう供託金を使うというようなことがありますか。
  12. 佐藤京三

    佐藤説明員 それで家屋調査の件なんですが、実は最近のうちに九州地区の五十炭鉱ほどを選んで、主として大手、それから中小の中の中炭鉱対象にするわけなんですが、通産局とこちらから参りまして、詳細に調べてみたいという気がしております。  それから供託金でございますが、大体今供託させておりますのは、三年間後の予想採掘地域にありまする被害物件算定しまして、そうして供託金額を決定しておるわけでございます。それで御質問のどういう処理をするかという問題なんですが、鉱業権者の方でこっちで予想した物件復旧したという場合の証明がありますれば、取り戻しさせております。その証明方法としましては、当該被害者復旧してもらったというふうな証明をつけた場合にやるようにいたしております。ただ取扱い上は、炭鉱によりまして若干違う点もございますので、逆用上その辺はケースケースによって考えておるような状況でございます。
  13. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうすると、たとえば三年後に被害が発生するだろう、こう予想される地区トン当り幾ら、こういってとるのですか、そうすると毎年毎年供託金トン当りは違ってくるわけですか、各炭鉱ごとに。
  14. 佐藤京三

    佐藤説明員 お説のように違って参ります。それで今までやっておりましたのは、三年間を固定した考えでおったわけなんですが、一応三年間の予想被害を出しましてやりますが、年々の施業案に変更があった場合にはまた修正するというようなやり方をいたしております。
  15. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 その供託金は、実際の被害が予想される金額のどのくらいに当るわけですか。大体供託金を積み立てる場合の……。
  16. 佐藤京三

    佐藤説明員 大体目安としましては、三割程度という目安にいたしております。
  17. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実は私も炭鉱の経理の細部にわたっては知りませんけれども、トン当り現在七円平均九州でとっておるという話ですが、少くとも実際に年々賠償しておるのは、少いところで百円あるいは五百円というところもあるわけです。ですから三割程度でなくて、ずっと小さいのじゃないですか。被害というものは、たとえば深部採掘をすると、深部採掘を二メートルするとしますと、深部になると、その二メートルがさらに上層部採掘跡の分まで加速度的に加重して被害が出てきますから、ただ二メートル深部を掘ったからといって、二メートルの被害というわけじゃないと私は思う。ですから実際は、トン当り百円ないし五百円くらい賠償費を年々出しておるというような状態において、五円あるいは七円くらいではあまり効果がないと皆さんおっしゃっておるのですが、その通りだろうと私は思うのです。とにかく特別鉱害でも三十円というような、特別鉱害に要する支出金だけでもそれだけ要るんですから、五円とか七円という数字、三分の一という数字はないでしょう。ずっと低い数字じゃないですか。
  18. 佐藤京三

    佐藤説明員 それで今の賠償状況から申しますと、年々補償賠償費が相当多いわけなんです。年々申しますのは米麦の補償なんでございますが、供託金の場合はそういう補償金額は要りませんで、ただ復旧費換算額を入れておるわけでございます。それからいま一つは、確かにおっしいます通り三割程度目標にはいたしておりまするが、現実に発生しました鉱害から見ますと安いという感じはいたします。それで昨年またあらためて再調査することにいたしまして若干今年度から上る予定にいたしておりますのと、今後特鉱法とのにらみ合い等も考えまして、もう少し上げるような方向には考えております。
  19. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 どうも供託金制度というのはあまり実際の効果が瀞いのではなかろうかと思うのです。そこで鉱害引当金制度を設けてくれというような話も出てきておると思うのです。どうも実際からあまり離れた金額で、しかも実際運営としてあまり効果がないような気もするわけであります。ですからあるいは鉱害引当金というような制度をここに拡充し、それを確立して供託金をほんの閉山後の、逆意がとまった後の賠償、こういうものだけに判定の基礎を置くか、何とかもう少しはっきりしなければ供託金もある程度取る、引当金も許す、そのほかに納付金もあるんだ、こういうことでもうまくいかないだろうし、供託金なら供託金現実即妙に大きく出して、それから年々払ってやる、供託金をそのまま払ってやるというのはおかしいんですけれども、供託金を申請してもらえるときは翌年度の少くとも支出金くらいには見合う、見合わなくともその半分くらいにはなる、こういう工合にして運営しなければ、実際供託金制度の価値がないのじゃなかろうかと思うのです。むしろ私は供託金制度というのは、山が閉山をしたときには労務者の賃金も払わなければならぬ、今までの債務も全部払わなくちゃならぬ、どうにもこうにもならない、賠償の費用なんかに充てる余裕がない、こういう場合に供託金制度というものが効果を現わす、こういうようにしても私はいいんじゃなかろうかと思うのです。実際小山のような場合には、山が閉山した場合には賠償なんかはほったらかしになっておるというのが実情ですね。ですからそういう場合には、なぜ供託金制度があるのにそれが効果を見なかったのかという疑問に逢着せざるを得ないのです。もう少し再検討される必要はないでしょうか。
  20. 佐藤京三

    佐藤説明員 二十九年度当時の炭況不況閉山した中小炭鉱がたくさんございまして、その際に一番悩んだのはお説のように鉱害の問題が残りまして、しかも供託金が十分じゃなかったという事実がたくさんございました。それでその点につきまして供託金とあわせまして引当金については私の方でも事務的には研究いたしておったわけでございます。お話のようにその点については今でも研究を進めて、何らかの成果を上げたいと思っております。
  21. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実は鉱業権が設定される、あるいは鉱業権の中からある部分を租鉱権にゆだねる、こういうような場合に地元人々が小さな企業家といいますか、小資本の企業家がそれをする場合に非常に反対するわけです。それでせっかく租鉱権制度がありましても、租鉱権に一部をゆだねるという場合には猛烈に地元反対をする。名前を言っては失礼ですけれども、議員の中で炭鉱をやられておる人が租鉱権を設定しようとして猛烈に地元から反対を食った、しかし業者間はそういうわけにいきませんので、租鉱権を設定してその後ずっと採掘をやって、もう数年たって後に廃山の処置をした。ところが鉱害賠償は全然してないというわけで、元の鉱業権者に対して盛んに賠償の請求をしてくる、こういう実情があるわけです。ですから私はそういう場合に、せっかく供託金制度があるのでもう少し活用を見たらどうか、こういうように思うわけですけれども、これは何とか研究していただきたいと思います。  それから今度の臨時石炭合理化法案に伴う閉山の場合の鉱害処置は、実際はそういうふうになってるか。具体的に申しますと、木曽本洞を中心とする三山がそれの対象になろうとしておる。それの場合に鉱害の問題はどう言うように扱われておるか、これをお尋ねいたしたい。
  22. 佐藤京三

    佐藤説明員 それで前段の問題なのですが、実はその租鉱権者租鉱権を設定するという場合に、従来は鉱害問題と離れて公的な手続関係だけで処理されておったというのが実情であったと思っております。しかし鉱害問題が非常にやかましくなったのと、あとに非常に問題を残すものですから、施業案認可の場合なり租鉱権認可の場合には、鉱害面から相当チェックいたしまして、そうして供託金が最高の二十円になる場合には、しかもなお足りぬという場合には被害者賠償の協定をさせまして、そうして契約書を見た上で認可をするというような事例をとっている例がございます。  それから今の合理化法によって処理される電害問題なのですが、現実に今出てきておりますのが木曽本洞のようでございます。それで木曽本洞の合理化法による鉱害賠償につきましては、鉱害がもう安定しているというものについては当該鉱業権者処理してもらいたいという格好になっております。それから買い上げ後に発生するであろうという鉱害については、整備事業団処理するという建前にいたしております。その際に売り渡し代金その他で将来発生するであろう被害金額あるいは復旧資金額は積み立てるということにいたしております。それで木曽につきましても、だいぶ長い間鉱害処理関係について時日を要しておったようでございますけれども、最近その話をだいぶしかけておるような状況でございます。
  23. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 木曽本洞については話をしかけておるような状態で、まだ決定してないのですか。被害者同意をしてないのですか、どういうのですか。
  24. 佐藤京三

    佐藤説明員 木曽の問題で、私たち承知しております最も大きい問題は鉄道復旧問題でございます。それで最近鉄道の方からも鉄道の案を持って参りまして、大体鉄道の方の態度もきまったようでございますので、現地で鉱業権者あるいは通産局と相談して、おそらく最近のうちに決定になるのじゃなかろうかと思います。それからその他の問題については、私たちの承知している範囲ではあまり問題がないように聞いておりますけれども、まだ完全に被害者同意を得たというふうな話までは聞いておりません。
  25. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 鉄道とかあるいは道路とか河川という問題は、これはいわば公共物でして、またその鉱業権者がその復旧をしなくても、あるいはどうにもならない場合には、当然その管理者である人々がする能力を持っているのだから、比較的問題がないのです。ところが家屋とか墓地とかたんぼとかいう純然たる私有物の場合になりますと、この被害者というのは非常に悲惨な人々である。こういうような状態ですから、これはどうしても問題を解決して当然買収するという形をとらなければいけない。実際できないという場合には、それを政府としては引き受ける、事業団としては引き受けるということがなくてはならないのですが、合理化法を審議する場合に私たちは次のように質問をしたわけです。それはすでに炭鉱を買収してくれという申請をする人々は、何ヵ月も労賃を払っていない状態である。労賃も払えない、資材代も払えないから、ましてや鉱害復旧まで考えているはずがない。そこでそういう場合にはほっておいてもどうにもならない。そこで買い上げようというのですから、買い上げて鉱害処理が十分できていない場合には、政府が引き継いだらどうか。最終責任政府にあるだろう。既往の分についても新しい鉱業権者連帯責任になっているはずです。ですから連帯責任というのは、一方の方が結局債務を支払う能力がないということになれば、当然受け継いだ後者の方が支払わざるを得ないということになるのですから、どうにもならない場合には事業団がかぶるべきである。かぶるのが法の建前であると考えるわけですが、どういうように考えておられますか。
  26. 佐藤京三

    佐藤説明員 確かに御説の通り鉱業法上は、事業団連帯責任があるわけでございます。先ほど申しました安定鉱害については当該鉱業権者が片づけるわけであります。これは私個人考えでございますが、いたずらに家屋等打ち切り賠償というようなことで不満を残すような格好処理でなく、やはり復旧してしまうということが一番よろしいのだということは、それぞれ意見としては申し述べてございます。
  27. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 打ち切り賠償をしても著しく金額が少かった場合はまた請求することができるというのは、例の昭和十五年の鉱業法制定のときの経過措置であったと思うのです。私はその後進行分については当然事業団がやらなければならぬと思うのです。この鉱害処理をはっきりしなけれ、ばならぬ。ところがこれをはっきりするには、かなり時間を要するわけです。一方労務者の方は首を切られたが、まだ離職金がもらえない。手続が済まない理由は、実は被掛者加害者の間の紛争処理できないからだということになると、全く法が死んでしまうわけです。ですから適当に事業団としてはこれを打ち切って、取れそうなものからそれを早く支払ってやらせてどうしでもだめだということになれば事業団がかぶるという意思がなければ事実問題として長引くだけで 長引けば関係者が非常に困るだけであると考えるわけです。一つ鉱害課の方からも、さらに局長並びに事業団に対して、あまり紛争が長引くことによって労働者その他に迷惑をかけることのないように、連帯責任という一つの法の建前があるのですから、内部関係によって関係者に迷惑をかけることのないように、早く処理していただきたいと考えるわけです。  次に知事及び市長にこの前質問したのですが、十分答弁が得られなくてはっきりしなかったのであります。知事市長の言うことが違うし、参考人ですからあまりきめつけてもいけないと思って適当に聞いておったわけですが、例の加害者不明の場合の市町村負担分、これは率からいいますとかなり大きな率である。しかも一般の復旧二〇%程度あるという話ですが、大体どのくらい復旧しておるのですか。その加害者不明の被害についてどの程度復旧しておりますか。
  28. 佐藤京三

    佐藤説明員 理論的には加害者不明の鉱害ということは考えられないわけです。それで今出ておりますのは無資力関係だろうと思います。それで実績からいえば二〇%に近い程度のものになっているようでございます。その日取も大きい比率を占めるのは水道関係で次は学校ということになっておりまして取扱い上私の方でも非常に困っているわけであります。水道とか学校が多いのだということについても、問題としてはあるのではなかろうかと思っております。
  29. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 加害者不明の鉱害はないというのですが、実際問題としてはだれか加害者がいるわけです。明治何年から掘っているのでその後廃山になっているが、汚濁水というか、鉱害水というか、非常に硫黄分を含んだ水、こういう問題は加害者不明と思います。何人も昔から掘っておって、みなボタ山にして捨石を積み立てているのを雨が洗って、硫黄分を含んだ水がどんどん流れてくる。それが川底が上りますから、雨量が多くなると田畑に流れて結局稲が腐るという問題がある。こういう問題は加害者不明の一つの例だろうと思います。現実の問題として加害者不明でないこともないと思います、無資力という点もかなりあるが、今お話のような水道とか学校とかいう公共物が問題になってくる。あなたの方は、個人的な家屋あるいは私有物については加害者がおらぬということはないというのでやられている、実際は問題にされてないのです。これが問題だと思う。水道とか学校とかいうのは公けの施設ですからだれかがやる。そういう場合は石炭局としても事業団としても、仕方がないから何とかして工事に着手するが、個人私有物の場合ですと、だれかがおるはずだとかいってなかなかこの該当のものとしては許可しないというのが実情ではないか。と申しますのは、結局地元負担といいましても市町村及び県が持つのですから、県が持つという場合には、学校とか水道の場合にのみ加害者不明、資力がないということでやらざるを得ないからやるのですから、私有物の場合にかなり泣いている被害者が多いのではなかろうか、こういうように考えられるわけです。ですからこの問題はどの程度数字が出ているかわかりましたらお知らせ願いたいと思います。
  30. 佐藤京三

    佐藤説明員 今申し上げましたのは、現行法によって基本金額として上ってきた問題で、その背後関係を申し上げれば、今多賀谷さんのお話通りだと思います。従って加害者不明あるいは無資力で泣いている被害者私有物がどのくらいになるかという調査はまだいたしておりませんので、数字的にはどうもはっきりいたしません。
  31. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これも本名の鉱害課にその調査をお願いするのも、なかなか実際問題としては調査の仕方がむずかしいと思うのですけれども、一つできるだけ資料を出していただきたいと思います。  もう一つは、県及び市町村負担分地方交付税算定基礎である財政標準需要額算定基礎に入っておるかどうか、こういうことを聞いたのですけれども、どちらかといえばえらい人なものだから事務的なことがわからなかった。こういう点はやはりわれわれとしては問題ではないかと思うのです。算定基礎に十分入っておって地元負担は困る困ると言ってもらっても、むしろ困る。それが当然どこかの中に入ってはっきり数字が出ておればそういう議論は成り立たないと思うのです。しかし、あまり入っていない、あるいは算定基礎をずっと減らしておるということでありますならば、地元負担というものを検討せざるを得ない、こういうように考えるわけですが、どういうように自治庁では扱っておるか、あなたの方でわかりましたら、お知らせ願いたい。
  32. 佐藤京三

    佐藤説明員 この地元負担の分を数字的に申し上げますと、二十八年から三十年度の三カ年間、臨鉱、特鉱合せまして七億三千七百万円でございまして、これが事業費に対しまして一二・五%に当ります。それで特別交付税はそのうち三億円認めてもらっております。そして計算基礎にははっきり自治庁と打ち合せいたしまして入れてもらっております。ただ、計算基礎には入りますけれども、特別交付税が地方公共団体にいけば地方公共団体の長の責任においていろいろ処理するわけで、必ずしもその分が鉱害負担分に回るという性格のものではございませんが、自治庁と私の方での話し合いでははっきりした数字で入っております。
  33. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 特別交付税の算定基礎に入っておるという話ですが、七億三千万円のうち三億円程度しか認めていないということになりますと、あとの四億三千万円程度がいわゆる自腹を切っておると考えざるを得ないのです。このうちでも、たとえば県であるとか市であるとかこういう地元が管理をする分については、地元負担というのも、これはあながち市町村の言い分ばかりは聞いておれないという気持はする。ところが全然そういうことでなくて、今の加害者不明というような場合に地元負担というのは確かにおかしいという気持がするわけです。なるほど民生の安定という面から見れば、地方の負担ということも考えられないこともない。その要素が若干あるから。しかし普通の地元負担と違いまして加害者不明の農地あたりの復旧をした場合に、受益者の負担と言えないのですから、これは単に地元に押しつけるということではいかない。こういうように私は考えますが、鉱害課としてはどういうふうにお考えですか。
  34. 佐藤京三

    佐藤説明員 今の問題は、臨鉱法の六十六条によって納付義務者にかわって維持管理するものが国庫補助の差額を負担するのだというような運営をいたしておるわけでございます。それでこの点につきましては私の方でも検討して、大蔵省の方に予算措置としてお願いしていきたい、こういう考えをいたしております。  それから先ほどちょっと申し落したのでございますが、この特別交付税のほかに、地方公共団体の負担分の差額については起債において見てもらいたいというようなことを自治庁と話しておりまして、今の三カ年間の実績からいいますと、起債で約三億五千万円程度認めてもらっております。起債の点につきましては、もちろん地方公共団体の負債になるわけでございますので、実質的に負担が軽くなったというわけではございません。けれども、当面工事遂行の上においては非常に助かるだろうということで、起債ワクと特別交付税の両方を自治庁に折衝いたしております。ですから、三カ年間の実績から考えますと、事業費に対して一・四%の負担というような数字になっております。
  35. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それから、復旧事業団の事業運営について金がないわけで、あるいは先に工事をやらなければならぬ場合もあるでしょうし、その資金の運営は実は県に来た金を回してもらっておる、だんだん県も金が少くなってくるのでこの運営がむずかしくなってくる、何とかして資金部の金を直接貸してもらうようにしたらどうかという意見がございましたが、実際非常に困っておると思うのですけれども、どういう実情ですか。
  36. 佐藤京三

    佐藤説明員 この事業団の資金の問題なんですが、二十九、三十、三十一年度と三年度にわたって預金部資金から事業団に貸してもらえるような交渉をいたしまして、ただ借りる経路として県を通じておるだけでありまして、県のワクを食っておるわけではございません。一応大蔵省と自治庁との話し合いをつけまして、事業団に回せる額はこういう額だということで県経由で借りておるという実情でございます。直接貸してくれということは私たちも大蔵省に再三再四折衝もいたしたわけでございますけれども、まだその実現を見ていないということでございまして、県経由にしても実質的に借りられるのだからという安易な気持ではございませんので、直貸についてはその後大蔵省とは話し合いをしておるわけであります。実情から申しますと、今の三十、三十一年度、二億借りているわけなんですが、今の運用からいいますと不足するとは思いません。
  37. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 最後に、欧州の鉱害復旧制度についてすでに政府としても委員を派遣して調査をされたと思うのですが、幸いにして今度本小委員会に鉱害復旧に関する班が設けられることになるそうでありますので、一つその委員の万にでも、報若書がございましたら資料として参考までに出していただきたい、かように考えるわけです。
  38. 佐藤京三

    佐藤説明員 その当時の資料が、ございますので、いろいろ整理しましてお届けいたします。
  39. 山本勝市

    山本(勝)小委員 関連して。鉱害問題については長い間の問題であるし、おそらく通産省の方ではヨーロッパの事情なんかすでに綿密に調べておられるのだろうと思います。調べた上でまたああいう法律もできたのだろうと思うのです。しかし、これは実際非常にむずかしくて手をやいておるのじゃないかという感じを持っております。今多賀谷君がいろいろこまかい質問をされましたけれども、こまかくその被害関係者に対する影響力を調べていくということは非常にむずかしいのじゃないか。何か係の方では、これは年々に問題は解決していく、そしてあるところへ行ったらもうそんな心配は要らない、あとはずっと事務的にはかどっていくというような見通しがあるのかどうか。そうじゃなくて、その日その日実際どうにもならぬが、そうかといって打ち切るわけにもいかぬし、じんぜんとして係の方がその場をどうにかやっていくよりほかないというものなのか、少くとも戦争中政府が命令していろいろやらしたというような特別な災害問題だけでも、これは何年かたてば問題は解決してしまうという性質のもか、そうではなしに、もういつまでも引っぱっていくものか、こうすればいいんだけれども大蔵省の方で聞かぬとか政府で聞かぬから、こういうふうな実情になったのであって、こうしてこうしてこうすればちゃんと片づいてしまう、そうしてそのあとは新しく出てきたものはこうしてすっと片づいていく、とそれはべらぼうな金などを予想して解決していくというのはだめですけれども、そういう実際に当っておられる方としては、確信の持てる解決策があるのかないのかということをまず一つ聞きたい。
  40. 佐藤京三

    佐藤説明員 今のお話なんでございますけれども、今通産局陳情処理しているのが年間三百件から三百五十件あるわけなんです。その内容を調べてみますと、鉱害の認否の判定が困難だというやつが約半数あるわけです。それですから、地下採掘と地表に現われる因果関係が数学的にぴちっと出てこないという点で苦しんでおるということが多いわけでございます。それからいま一つは、鉱業権者がその賠償処理するについて資金が十分でないというのが二つの基本の問題じゃなかろうかというふうに思っております。それからあと現行法対象になっておりながら、補助を受けていないというような問題もございますけれども、鉱害問題の中心をなすのはその二つの点にあるのじゃなかろうかというふうに私は考えております。
  41. 山本勝市

    山本(勝)小委員 その今の認否の問題が非常にむずかしいという、確かにそうだろうと思いますが、しかしこれをむずかしい、むずかしいといってただ引っぱっていく、その案件が片づかないというのでは、結局いつまでたってもそのむずかしさが緩和しないでいくということになって、多賀谷委員が言ったように、もう法律でやったって片がつかぬということにもなるんじゃないかと思うのです。理論的に言うと、きちんとわからぬけれども、ちょうどいなかで何か事件が起ったときに、自動車なら自動車が家の中へ居眠り運転で入ってきたようなときでも、それはわからぬが、しかし話をして幾らでおさめておこう。厳密な計算などわからぬけれども、ことに人が死んだような場合など、金で計算などできやしないが、払う方の人も金が少いのだし、金持ならよけいとったらいいけれども、少いのだからこの返で手を打とうというようなことで片づけていくことはできないかどうか。たとえば炭坑を掘っていって、炭坑ができたというので大ぜい人が集まってきて家を建てた、坑夫もたくさんいるので、店もできた、ふろ庵もできた。ところが炭坑がだんだん掘っていって棒が尽きてしまって、その炭坑が消えてしまったら、ふろ屋も栄えないし岡死人も栄えないというのは、これは法律上言う鉱害じゃないでしょうけれども、しかし因果関係はあります。それから私ども住んでおるところでも、工場ができてきて水道をうんと深く掘ってたくさん使うために、昔は百二十尺くらい掘ったらどんどん吹いておったやつが、今は幾ら掘ったって吹かぬようになってしまう、そのほかに水が悪くなってどうにもならぬ。そういう場合は別の法律で片づけようとしておりますけれども、むずかしさはやはり鉱害と同じようなむずかしさがあります。その辺は全部飲用に適せずという水なんです。それをしかたがないからみなあきらめて飲んでおるのですが、賠償も要求しません、またできもしない。何かその場で片づけてしまって、あとへ残さぬような簡易な方法で、手を打ってしまう。そうしてあとはあきらめる。どうせもうかると思って来たのがもうからないのだから、あきらめてしまう。私ちょっとしばらく通産省におったときに九州へ行ってああいう鉱害問題を見たが、これはむずかしいなと思った。ボタ山の話も出ましたけれども、その後あのボタ山の土を利用して、れんがかわらを作ることを発明した人がある。それで通産省の方でそれの補助金をもらってくれといって頼まれたことがあるのですが、そういうボタ山を急に財産に変えるような方法でもあって、そういう方法をうんと考えてやらぬと、そこから硫黄が流れてきたが、加害者不明だということでいつまでやっていたって、これでは奔命に疲れてしまいはしないか。また同じようなケースがほかに幾らでもある。煙突を立てたために、すすが入ってきて、目に見えないけれども胸を悪くしたという者も出て、これも被掛者だということになってくる。どこかで筋を引くことをその局に当る人に考えてもらわねばいかぬが、ただじんぜんとして過ごしているのではなかろうかという感じを受けてきたのですが、その辺はどうですか、そんなことはありませんか。
  42. 佐藤京三

    佐藤説明員 今のお話に三点あると思います。鉱害の認否がなかなか困難だということの対策なんですが、これにつきましては、ここ三年間くらい測量を実施することにいたしまして、この測量の目的は地下採掘と地表陥没の因果関係をはっきりしたいというので、これは工業技術院の試験研究でやることにいたしております。それから現実にどの程度の沈下があるかというようなことは通産局の方でやることにいたしまして、逐次予算的にはふえております。絶対額としてはそう大きい数字ではございませんけれども、今後の方向としてはそういう測量関係に力を入れてやるというふうに考えて進んでおります。それから実際の解決方法に当りましては、認否が十分じゃないからそのままにするということではなくて、ある程度推測されることもございますので、その範囲においては鉱業権者に慫慂いたしきて、極力賠償あるいは見舞金というようなことで出させる処置を講じております。従って利害相反する立場に両方あるわけでございますけれども、今までの実績から申しますと、半数程度は解決しているということでございます。(山本(勝)小委員特別鉱害はどうです」と呼ぶ)今私が申し上げましたのは特別鉱害以外の一般鉱害についてのことですが、特別鉱害の点につきましては、最初に鉱害物件を認定してございますので、これに関しましては問題がなく進行しているわけでございます。
  43. 小笠公韶

    小笠委員長 この際小委員各位の御了承を得たいと存じます。ただいま調査を進めております鉱害問題は、本小委員会の調査事項のうち当面の重要案件であります。商工委員会におきましても案件の重要性にかんがみ、特に先般来多数の参考人意見を聴取し、鋭意調査検討を進めておりますが、本小委員会といたしましても、明日からは閉会となりますが、当小委員会も引き続き調査を進めることに相なることと存じますので、閉会中には特に本問題に重点を置いて調査を進めることにいたしたいと存じます。よって先般来の打ち合せにより、この小委員会に便宜鉱害問題特別調査班のごときものを作りまして、これを中心に調査を進めたいと存じます。  なおその委員として、    淵上房太郎君  菅  太郎君    野田 武夫君  伊藤卯四郎君    多賀谷真稔君  山本 勝市君    小笠 公韻君  以上七名が当ることとし、私が僭越ながら班長の役を務めたいと存じます。ので御了承願います。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時十一分散会