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1956-02-25 第24回国会 衆議院 商工委員会重化学工業に関する小委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月二十五日(土曜日)    午前十時四十四分開議  出席小委員   小委員長 小平 久雄君    小笠 公韶君  椎名悦三郎君    田中 龍夫君  伊藤卯四郎君    佐竹 新市君  多賀谷真稔君  出席政府委員    通商産業事務官 鈴木 義雄君    (重工業局長)  小委員外出席者    議     員 菅  太郎君    議     員 島村 一郎君    議     員 小松  幹君    議     員 田中 利勝君    参  考  人    (産業機械協会    副会長)    大塚  肇君    参  考  人    (日本鉄鋼連盟    専務理事)   岡村  武君    参  考  人    (日本機械工業    連合会会長   倉田 主税君     ————————————— 本日の会議に付した案件  鉄鋼業に関する件  機械工業に関する件     —————————————
  2. 小平久雄

    小平委員長 これより会議を開きます。  本日は鉄鋼業及び機械工業に関する問題につき、参考人各位より御意見を伺うことにいたします。御出席参考人は、日本鉄鋼連盟専務理事岡村武君、産業機械協会会長大塚肇君及び日本機械工業連合会会長倉田主税君、以上御三名の方々であります。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。本日は御多用中にもかかわらず特に本小委員会に御出席下さいまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。申すまでもなく、鉄鋼業機械工業は、ともに戦争及びその終結によって致命的な打撃を受けたのでありますが、戦後着々復興に努め、今日の飛躍を見たのであります。しかしながら、いまだ解決を迫られておる諸問題が山積いたしておると考えるのであります。参考人各位には、本日は鉄鋼業及び機械工業の概況並びにこれらの問題点につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を拝承いたしたいと存じます。  なお、御意見発表の時間は、別に制限をいたすわけではありませんが、おおむね十五分ないし二十分程度にお願いいたしたいと存じます。なお、勝手ながら御発言の順序は小委員長におまかせを願いたいと存じます。なお、御意見の御開陳が終りましたならば、小委員より質疑もあろうかと存じますので、あらかじめお含みを願いたいと存じます。  それでは最初倉田参考人よりお願いをいたします。倉田主税君。
  3. 倉田主悦

    倉田参考人 機械工業現状につきましては非常に造詣の深い皆様方でございますので、私が申し上げるのはおこがましいと思うのでありますが、当面の問題点としまして、技術の問題あるいはまた需要問題等が結論としては非常に大きく機械工業というものを左右しておる、こういうふうに思っておるのでありますが、なおこれ以外に金利の問題であるとかあるいは国産採用の問題あるいは輸出奨励の問題あるいは過当競争防止といったふうな問題について、私どもは常に悩んでおるのであります。この現状につきましては、時間が許しませんから、ごく簡単に申し上げたいと思うのでありますが、技術の問題について、よく日本技術が非常におくれておるというようなことを皆さんからも聞きますし、またわれわれもそういう点で認めておる点もむろんございますが、必ずしもすべてがおくれておるとは考えておりません。たとえば電気工業造船車両光学工業等においてはその差は非常に少い、むしろすぐれておるものもあるかとわれわれは自負しておるのであります。しかしまた全般的に見ますと、生産加工技術といったような面においても必ずしも進んではおりません。特に技術の面に参りますと研究というものが非常に大事でありまして、研究を十分いたしまして生産をいたすということでないとほんとうのいいものができないのでありますが、企業に余裕がないためにそういう面にやむを得ず熱心になれない、そういう方面に投資ができないので、これを怠っておるということから、国際水準に達するような優良な品物ができないという点があることは、大いに残念に思っておるのであります。しかしこれは主として大企業においては相当研究費に金をかけておりますから、必ずしもそうでないと思いますが、中小企業等に至りますと、そういう点で大へん見劣りがするかと思っております。また需要の問題は、これはもう御承知の通りでありまして、海外需要が相当開けておった戦時中の機械工業能力が、そういうものを失った今日においては、当然この能力が過剰になっておるということはもう明らかでございまして、こういう面からどうしても最後に申しましたような過当競争といいますか、競争が非常に激しいということから無謀な赤字の注文をとってやる、こういう面が非常に憂えられておるのであります。それからまた材料の問題につきましても、材料使用量においてはっきりした見通しが立たぬせいもありますが、安定性がない、品質の問題、価格問題等についても国際競争ができるような状態になっていないといった点が問題であります。なお国際競争となりますと、金利の問題が出て参ります。金利の問題は、これは概して国内金利の問題と比較いたしましてもよくわかることでありまして、およそ倍くらいの金利を負担している。これを累積して金利計算をいたしてみますと、非常に思い半ばに過ぎる金利の負担があるのでございます。一例をあげますと、かつて私ども電源開発会社の佐久間の発電所の見積りをしましたときに、ドイツの大使がシーメンス会社の代弁をしまして、七年間の延払いに対する金利は無利子でよろしいというようなことを言うたのを思い出しまして、思い半ばに過ぎるのでございます。  また国産愛用の問題につきましては、国をあげてどうも舶来品の思想が横浴しておりまして、私ども微力ながら国産愛用を叫びましても、なかなか応じられない。特にこれは単に物を愛するということばかりでなく、技術の面に訪いても、国産技術を大いに尊車するといえば語弊がありますが、認識をしていただきたいというふうな気がするのであります。ここで名前をあげると大へん差しさわりがありますが、某氏が原子力委員として海外から帰られましたときの講演を聞いたことがあります。そのときいろいろな話のうちに、たった一つ例をあげますが、ゲルマニウムの分析アメリカでは非常に進んでいる、こういうお話がありました。しからばどれくらいの品位までできておりますかと聞いたら、それは問題にならぬほど進んでいる、こういう話で、問題にならぬといっても問題にならぬので、私どもイレブンナインまで分析を上げているのであるが、幾らでしょうか、いや、それは君らのものよりはるかに品位がよかった、こういう話。それじゃいかぬから、一つ教えていただきたい、そうしたら、手帳を出して見られましたが、やはりアメリカでもイレブンナインであったのであります。ああいう私どもが大いに尊敬している、エンジニアの方であり、国会議員であり、またほんとうに、今外国から帰ってきたばかりの方が、国内ほんとう真相をお知りにならないで、ああいうふうに宣伝されますと、大へんわれわれは迷惑をするから、一つども中央研究所を見ていただきたいということを申し上げたのでありますが、これらは、国内技術がどの程度まで進んでいるかということの認識をしていただかなかったということに基因のするだろうと思います。なお銀行のある頭取が、アメリカから輸入した発電機を見まして、その性能、その無人発電所状況が非常に進んでいると言うて、非常にほめられました。それで私これも間違っていやしないかと思いましたので、東京電力に私どもが納めている最近の発電所を見てもらいまして、東京電力高井社長にこれを説明してもらいましたところが、認識がすっかり変りまして、やはりこれくらいのものができているのだということを認識していただいたのであります。  なお、輸出奨励の問題でありますが、この問題は、もうたびたび私ども研究もしておりますし、この間もドイツのミッションが来ましたときも、いろいろ話し合ってみましたけれども、なかなか真相を話してくれません。しかし、私ども国際競争をやっております面で見まして、どうしても納得がいかない。材料代を積算しても、すでに入札価格を超過するというような値段が出ておりますので、こういう点では、どうしても何か隠れたる奨励法がある。これはもうはっきりしているように私ども思いますが、それが真相がつかめない。しかしいろいろやっておりますと、たとえば日本でもできました輸出入銀行のような問題、あるいは輸出保険の問題とか、あるいは輸出免税の問題とか、いろいろそういう措置がとられつつありますので、こういう面もだんだん変ってはきておりますが、まだまだそういう点でわれわれが何かしら非常に考えなければならぬ問題がある。そういう問題が解決しませんと、いかに機械工業輸出、いわゆるプラント輸出であるとかなんとかいうことを非常に期待されておりますが、その期待に対してなかなかおこたえができないのじゃないか、こういう点を非常に心配いたして陥ります。最近の貿易の実績といいますか、こういう面ではだんだん機械工業も伸びてきつつありますが、なお今日機械工業は、期待されている状態からいいまして、先ほど申したような問題をどうしても解決しなければ、その期待に沿うことができない。  しかし、わが国の国内産業よりも、主として機械工業が今日課せられました輸出の問題について、私は特に皆さんに申し上げてみたいと思います。従来の輸出市場というものは、御承知のようにきわめて限られたところでありまして、満洲とか朝鮮、中国というような方面にわれわれの輸出は盛んであったのでありまして、欧米あるいは中南米あるいは中近東、東南アジアといった方面には非常に少なかったのであります。しかも戦後まるでめくら貿易みたいな格好になっておりまして、形において、歴史の新しい、また後進国のすべての国家が、ほとんど自給自足といいますか、自立ということにだんだん徹底してきまして、価格だけでもなかなか競争ができないというような状況もありますが、まだまだ価格の面においてさえわれわれが国際競争に勝ち得る自信がない状態で、こういう点でわれわれはまだ勉強しなければならぬという実情であります。それにはどうしても材料問題、鉄鋼とか、銅とか、あるいはそういう素材の価格が、どうもわれわれの期待するような価格にならないとか、あるいは量が不安定であるとかいうような問題、あるいはまた機械工業特異性と申しますか、機械工業鉄鋼業とかあるいは繊維工業と違います点は、部品を各中小企業あるいは下請けというような形において作りましたものを、アッセンブルする形において、これをまとめまして、そうしたものが製品となって出ていく。これが一体となったいわゆる部品、それからアッセンブルしたものがほんとう一体となって出ていくような形を持っておりますので、そういう部品生産の部門が技術的あるいはすべての点において弱体であっては、機械工業は伸びていかない。どうしてもこういう面の質の問題、価格問題等が一致して向上して参りませんと、機械工業も伸びていかない。こういう面からコストを下げて輸出を拡大して操業度を上げていくといったような、合理化といいますか、そういう面が並行的に進めていかれなければ、輸出市場が開拓できていかないという気がしております。こういう面が全部そろって参りまして、そして機械工業振興していく。それでこの機械工業振興していくために私どもが考えております問題は、今までは、今申しましたようなことも考えましても、いろいろの計画が立たない。今日仕事をやるにしましても、明日、来年はどうなるのかということの一つ計画が立たないのでございましたが、最近五カ年計画といったものが策定されましたので、こういう面から一応見通しがついた。こういう見通しをもとにして、基本的な計画が立っていくということになりまして、非常に機械工業の考え方がやりよくなってきた、こう私どもは考えております。どうしても、先ほども言いましたような合理化を遂行していかなければなりません。その合理化をするためには、設備近代化あるいは生産分野の確立であるとか、あるいは品質性能の向上とか、新技術の育成でありますとか——技術の問題も、ほんとう技術という面におきましても、加工技術というものが非常に日本ではおくれておる、こういう点もどうしてもわれわれとしては進めなければならぬ問題である。なお以上のような合理化を進めましても、さっき申しましたように国産技術の信頼というようなことと相待って、国産愛用をどうしてもはかっていただかなければ、国民あげてこれを推進しなければ機械工業は伸びていかないのじゃないか。  輸出を促進します直接の仕事としましては、海外共同受注態勢を整備するとか、海外市場を調査するとか、開発のコンサルタントをやるとか、あるいは海外にサービス・センターを設けるとか、輸出検査制度機関を強化するとかいうようなことをやりまして、なおかつ残る問題は、さっき申しました原材料価格の安定の問題であります。こういう問題を何とか調整しまして、そして輸出を促進するというようなことに持っていくことが非常に私どもとしては必要であり、その一連の機械工業振興というようなことを考えまして、機械工業部品その他そういう方面の基礎的なものから合理化し、また品質価格をよくしていくというようなことが絶対に必要であるように考えている次第であります。
  4. 小平久雄

  5. 大塚肇

    大塚参考人 私は今倉田参考人と同じライン生活をしておる同じく機械工業を営んでおりますものであります。ただ違うところは、倉田氏は大企業ラインにおられ、私はどちらかというと中小企業におるわけであります。従いまして今述べられたことは全面的に同時に私の意見でもあります。従ってなるべく重複を避けまして、私の考えているところ、また中小企業関係のあるところを申し上げたいと思うのであります。  現在非常に輸出が伸びておる、ことにその中で造船車両、そういう部面が相当に伸びていることは非常に仕合せでありますが、私たちはこれは果して日本技術が買われて、そのために船がよけい出ていっているのかどうかという点を常に反省をしておるわけであります。これは国際的の事情でたまたま船がよけい出ていっているのではないかというような疑問を持つわけであります。それはなぜかと申しますと、私たちみたいに、機械工業でもう三十年あるいはそれ以上の生活をして、私自身技術者でありますし、われわれから見まして機械工業というものが非常に恵まれないものであり、かつまたこれを高度化することが今の日本状況で必要であるにかかわらず、今までなおざりにされていた、こういう点が悩みなのであります。それがあるからそういうことを申すわけであります。  具体的にもつと申しますと、私たち戦時中よく陸軍なり軍部が、日本の船は世界一だ、あるいは日本飛行機はどの国の飛行機にも負けないものだとか、そういうことを非常に呼号されているときにおいて、あるいは私の友人が潜水艦関係を持って海軍におりまして、非常に自慢をしておりましたときにおいて、私はひそかに、そんなわけはない、こう思っておったのであります。それはなぜかといいますと、日本でできます機械があらゆる種類の機械工作機械も含めて決して完全なものでないということをよく自覚をしておったからであります。従ってあの戦争は私、物量に負けたとは思はないで、機械性能に負けたとさえ思っておるわけであります。それは今日まで続いておりますので、さきに申しましたように、果して日本技術を買われて船なり車両なりが出ていくのか、そしてその成果が、かりにそれをきっかけに伸びて今後もくるようになればはなはだ仕合せだが、出したためにかえっていい認識ばかり得られない心配がありはしないかということをひそかに考えている一人であります。  そこでどうしても何が一番必要なのか。機械というものは一般の方々からは比較的知識を持たれにくいものであります。見かけは非常にりっぱな日本機関車が動いておる、日本自動車が町を走っておる。皆さん方はけっこうこのごろはいい車が走っておるじゃないかと言われますが、あれを専門的に分析してみるならば、決してすぐれた自動車が町を走っておるのではないのです。幾多の欠陥を含んだ車が動いておるわけであります。どうしてもこういう点を伸ばしていかなければ、さきに述べられた価格の点やあるいは市場等の問題は別にして、それ自体のりっぱなものを作り上げる努力をしていかなければ、とうてい日本機械工業というものは伸びない。雑貨工業と言いますけれども雑貨工業の裏には機械工業があることを知らなければなりません。従ってそういう状況でこれを放置しておきますと、どうしてもいつまでたっても戦時中のおくれは取り戻せません。今日でも取り戻しておりません。むろん先ほど倉田氏の言われたように、日本でも外国に負けないだけの技術を作りつつある企業機械工業にもありますけれども、これは一般的の量の裏づけがなければとうていやっていけないと思います。日本輸出というものは、繊維がどういうふうに変るかわからない今日、機械工業による輸出振興ということが非常に大切な線だと私は考えております。  それからもう一つは、この機械工業の構成の中に中小企業が非常にたくさん入っておる、中小企業機械工業がたくさんあるということであります。これが見のがし得ない重大な点でありまして、たとえば造船は七割これを下請に出しておるとさえ言われるくらい、現に造船がいんしんのために、下請機械工業にかなり仕事が流れておる実情であります。この下請技術が問題なのであります。日本機械工業、ことに中小機械工業はその設備戦時中からのもの炉ほとんどそのまま残っておりまして、ごく特殊のものを除いてはなかなか設備更新等ができないのであります。これは大企業でもそうでありますが、中小企業はことに自分資本力自分合理化をやるというようなことはとうていできません。今日税金を払ってやっと一ぱい一ぱいというような状態で、税金を払うのに苦しんでおるような状態で、資本の蓄積を自分企業内に持つなんということはとうていできない。設備更新なんということは思いも寄らないことであります。東京都においては、貸付機械という制度を持って、年々二億もしくは三億の機械を五カ年賦で貸し付けておりますが、これは東京中小企業を潤しておる一つ機械工業振興策です。とにかくそういうふうに何らかの手が打たれなければ自分の力だけではとうてい伸びていけないのが中小企業であります。しかも先ほどお話ししましたように、大企業下請となって、手足となって働いておるのが中小企業実情であります。これをぜひ振興をして高いレベルに持っていかなければ、大企業によってできる、あるいは中小企業機械工業間接的生産として出ていくところの雑貨工業はとうていやはり伸びない、こういうことであります。私も外国中小企業を見て参ったのですが——むろん学問的に見てきたわけではございませんが、私の感じでは中小企業アメリカにもある。意外なくらい小さなものもあるけれども、しっかりした設備を持ってやっているということが一つの目立った特徴として私の目に映ったわけであります。りっぱなものだけをやっている。人数は少い人数でやっているところもあるし、日本町工場式のものもありますけれども設備だけりっぱなものを持っているという印象を受けたのであります。これが日本実情に比べるならば、非常にその差がはっきりしているということがわかるのであります。それとあわせてこれを高い設備技術の線に持っていくことが必要だということはおわかりになったと思いますが、これは自分ではできませんので、やはりこれに国が何らか措置をして、そして中小企業の持っております重要な使命の基礎的なもの、つまり大企業注文を受けて部品あるいはユニットのものを作っておりますが、その部品もしくはユニットというようなものの十分いいものを作らせるようにしむけることが非常に必要なことだと思うのでありまして、そういうふうにこの際ぜひお願いしたい。今は重大な段階でありまして、外国技術侵入外国機械侵入に対して、私ども業者としてはできる限りの努力をしてこれを防いでいるつもりであります。産業機械協会でも最高性能を発揮させるように会員を指導して、一緒になってこれをやっておりますけれども幾ら業者努力しましても、国産の、自分たち機械がいいんだといいましても、なかなか買ってくれません。これは相手の購入者が官庁もしくは公共体の場合もありますし、あるいは私企業の場合もありますけれども、なかなか採用をしてくれない。先ほど倉田さんのお話のように、十分外国品に負けないものができているにかかわらず、最初採用を逡巡してしまう。この実情にみな悩んでおるのです。その線をどうやって突破できるかということにわれわれは常に頭を痛くしておるのですが、これまた幾ら業者自分たちが声を高くいたしましても、無条件で採用されませんので、こういう点についてやはりしかるべき措置をお考えを願いたい、こう思うのであります。私の申し上げることは大体以上でございます。
  6. 小平久雄

    小平委員長 それでは、倉田大塚参考人におかれては時間の都合もおありのようでありますから、両参考人の御意見に対して御質疑があれば、この際許したいと思います。
  7. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)小委員 先ほど倉田さんから非常に熱心に述べられまして、この日本科学技術、そういうものは国際水準にある、従って決して負けていないから競争にも十分たえられると思うが、その材料に関するもののあるいは品質か、あるいは量か、あるいはそういう価格かというようなものに十分備えることができないから、そういうところでうまくいかないんだ、こういうように伺ったのですが、それは日本製作機械を、作るいろいろな鉄材というか、そういう材料外国品に劣っておるというのか、あるいは量が計画的に要求されてもこれが手に入らないというのか、あるいはそれらのものが外国ものと比較して価格が高いという点で思う計画競争がやれないのか、こういう点についてもう少しお尋ねしたいと思います。
  8. 倉田主悦

    倉田参考人 今お話しになりましたように、技術が劣ってないというふうにおとりいただくとはなはだ間違うと思うのであります。あるものにおいては劣ってないものもある。しかし全般的に言いますと、劣っておる面もある。これは申し上げませんでしたが、ことに電子工業であるとかあるいは通信工業であるとかいったような方面では、なかなかそうすべてがその域に達しているとは考えておりません。しかし競争にたえ得る。性能上でも現在パキスタンやインドあたり競争しまして、性能比較においてもまさっておるというようなことでビッドに成功したような、例もありますから、そういう例から言えば必ずしも劣っているとは思いません。しかしあとのお話の、材料値段とか量とかいうものが意に満たないためにできないのかという御質問でございますが、この点もいろいろな場合がありまして、時期と物と場所によりまして一がいに言いにくいのでございます。ある場合、ある時期においては、この量が間に合わぬからできないというような場合があってみたり、あるいはまた価格が思うようにいかぬからできなかったというような場合もありまして、一がいには言えないのであります。それともう一つは、さっきも言いましたドイツ製品価格なんていうようなものが非常に安いというときに、ドイツ価格それ自体を検討してみましても、材料、工賃といったようなものを分析してみると、材料と積算しただけでそういう価格が出てこないというような実例もあるくらいです。われわれの場合におきましても、それじゃ鉄鋼価格が高いからもう輸出ができないかというと、国際価格鉄鋼値段幾らだというようなことを検討してみますと、必ずしもそれが高いのではない、そういう場合もあるのです。非常に複雑で、これはもう商売のいろいろなかけ引き、あるいはまたいろいろな政策もありまして、私もはっきりそれは申し上げることができないのです。その問題は、鉄鋼価格とか機械価格ということじゃなくして、こういうものを総合した輸出価格幾らであるか、それをどうしたらそういうものができるかというようなことが今私どもが一番悩んでおる問題で、そういう問題を研究しなければ輸出も順調に伸びないのじゃないかというふうに今考えております。
  9. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)小委員 だんだん突っ込んではなはだ失礼ですが、今の品質の問題は、これはあなたも専門家で一番詳しいわけですけれども日本のものも外国と比べて劣っておらないものもある。われわれは鉄材なんかもそうだと思っております。しかし劣っているものもあるのは事実です。それで、価格の点においては市場に持っていけば最近はやや太刀打ちができるようになってきた。外国のものを日本で買うということになってくると、外国のものの方が相当高くなってくるのじゃないかとわれわれも思うのです。それで、工場から直接あなたの方で買われるということでなくして、問屋の手を通じなければならぬというところにいろいろ不便があるということがありますか。たとえば八幡製鉄というか、ああいうところのものはほとんど一応問屋を通じなければならないようになっておりますが、そういう点から、価格の問題なり量の問題に不便というものがありましょうか、どうでしょうか。
  10. 倉田主悦

    倉田参考人 価格の問題は、問屋を経たからどうとかあるいは直接買ったからどうとかいうことは割合に少いのじゃないかと思っております。それは実質はあるのかもしれませんが、しかし表面上は私どもはそういう点では何しておりません。量の問題は、これはやはり直接でないとなかなかうまく話し合いがつかぬ問題が多いのです。
  11. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)小委員 そうすると、外国との競争の上において今あなたがお述べになったような点が、あなた方の一つの組織、機関として解決できるという計画見通しがありましょうか。やはり国の力でそういう点を援助、協力してもらわなければできぬというのであるか。さらにまた市場の問題も、やはり自分らの実績、機関だけでは市場競争というか、そういうものになかなか困難だから、そうい参点においてもっと国の力をかしてもらいたい。あるいは輸出機械に、サービスにいろいろな技術者をくっつけていくということは、自分たちでは困難だから国の力をかしてもらいたい。そうでなければ、外国市場で対等に取り組めるという状態を作ることがなかなか困難だ、そういう点がございましょうか、どうですか。
  12. 倉田主悦

    倉田参考人 先ほども申しましたように、戦後のめくら貿易からだんだん進展してきまして、商社もだんだん強くなり、あるいはまた業者もだんだん市場を開拓していくというような順序を経てきておりますから、だんだん強化されておりますけれども、現在外国競争するというためには、何かここで強力な力がなければ、ただ一企業、一商社ではなかなかいきにくいという面は多分にあります。
  13. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)小委員 国産機械愛用の問題ですが、われわれはしろうとだからよくわかりませんけれども、やはり近代的な化学工業の設備、あるいは近代的な建築工事の機械というものは、御存じのように向うの機械技術者を相当入れて、これでなければやれないのだ、また能率的じゃないのだということが相当に言われておるようです。そういう点について、日進月歩の現状において、その設備を作って工事をやる、能率を上げる必要は、やはりその結果から出てくるものにおいて、価値を相当見なければならぬということは、言うまでもないと思うのですが、そういうのに相当おくれておるという点等があるために、最近は大きなのはほとんどといっていいくらい外国機械技術というものを入れてやっておるようです。その点はどうですか。
  14. 倉田主悦

    倉田参考人 お説の通りでありまして、たとえば電源開発が一番いい例だと思うのですが、これは一年前までは六万六千キロ、七万キロぐらいの火力発電をやっていたわけです。その時期には、国産ではなかなかむずかしいというので、これ一つという意味で入ってきた。その直後、もうそれ以上は輸入をなかなか許していただけないということから、われわれも作らしてもらおうということで今作って、それを同時くらいに運転して性能を発揮しておるわけです。それではそういう程度技術がとまっておればいいのでありますけれども、もうそれ以上に、今度は十二万五千キロをやるということになりますと、またこれ一つはというわけで入ってくる。それから国内で十三万五千キロを作ってここまできている。ところが今度は一つ十七万キロを輸入しようということになると、十七万キロが、これ一つという意味で入ってくる。われわれも十七万キロ製作という時期にすぐ達すると思いますけれども、そうなったときに、また二十万キロになるのじゃないか。そうなると永久にわれわれはそういうものが作れないのじゃないかということを、実は非常におそれているのです。  それから土建機械のようなものも、今までは国内の工事というものは非常に小規模でありまして、佐久間を境として非常に大規模な土木工事をやるということが非常に国内の土建業を刺激したわけであります。ああいう形になりますと、それまでわれわれも日本でああいうものを作っても需要はなし、またそういうことが計画されているということも考えなかったものですから、そういう勉強をしなかったのです。それが一たん入ってきてみますと、あのくらいのものはみな作るということになるのですが、その時期にはもう一歩飛躍したものができるということで、すべてわれわれは次の事業、次の製品といったものに対する研究を怠るわけにいかない。そういうものを研究しなければ、次の飛躍ができていかないというので、さっきもちょっと研究の問題に触れましたけれども、次々の製品研究していく、同時に国産を愛用をしていただく。またそういうものを試作的に国内で作って、需要者とメーカーとが共同分担くらいのつもりで、この試作を伸ばすような程度まで国産愛用がいきますと、ずっと伸びていくと思います。
  15. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)小委員 これは私ごとを雷って失礼と思いますが、戦前私もドイツの方を一年ばかりぶらぶら回ったことがありました。その私がドイツに行っておりますときに、ドイツの連中から、ドイツも原料が不足である、日本も同じように不足である。ところが日本では優秀なる技術と労働を外国輸出するのでなくて、原料がないくせにして原料を輸出しておる。ドイツでは原料を二割、技術と優秀な労働を八割輸出しておる。日本はそれと逆じゃないかと言って何回かひやかされたことがありました。私はそのひやかされたとき、何か非常に屈辱のようなものを感じたことがありました。それでドイツの当時のやり方としては、アメリカは原料、材料をむとんちゃくに考えて、能率さえ上ればいいというやり方、従って非常に能率のいい機械ができる。ところがドイツはその機械を輸入して、今度は原料や材料をあまり使わないで能率の上るように、その機械ドイツに合うようなものに製作する。アメリカドイツが精密なものにしたものをまたさらにお互いに奪い合いをして技術競争をしておることを、私はしみじみ見て参りました。今倉田さんのお話を伺っても、そういう点に一つの悩みを持っておられるように感じたのです。日本ではやはりアメリカドイツの二つの技術というものをあなた方のところで相当研究されておることだろうと思うのですが、そういう点についてあなた方の個々もしくは一つの組織として、それに対応するものを備えられる、あるいは日本では国の力を相当かりなければ競争態勢を作ることがなかなか困難だというような点等、そういう点はどういうふうにお考えになっておられるか。ドイツにもアメリカにも負けない、向うが優秀なものを製作したら、今度はこっちがそれをまねして作るということでなく、さらに向うから出てくるであろうというものより、さらに進歩的なものを作って打ち勝っていく、そうして国際競争に勝っていく、そういうようなことについてどうしたらいいというお考えを持っておられるか、そういう点を一つお聞かせ願いたいと思います。
  16. 倉田主悦

    倉田参考人 今の海外から入ってきました機械等の問題については、これは一例をあげますと、たとえばドイツから、戦後、今日でも石炭を掘るために等を非常に輸入してやったのですが、やはりドイツのものを持ってきても必ずしもすぐ日本に使えない。炭質が違うとか、脈の大きさが違うとか、いろいろ事情が違いまして、そのまま使えないというようなことで、私どもはコール・カッターをかりに作るにしましても、ほんとうに石炭を掘る経験がないものですから、その点で非常に劣っておるので、考え直しまして、設計技術者を炭鉱に派遣して、長い間勉強させまして、緒に掘るというところまでやって、ドイツから持ってきたもののいいところをとりながら、日本式のコール・カッターを設計するというようなことをして、国内にそれを広めるように考えておるのです。しかしこれも、炭鉱といっても、すべての炭鉱が同じ条件ではありませんから、非常にめんどうな問題になりまして、そういうふうになって、一カ所では成功しても、それがほかの炭鉱にいきますと必ずしも成功しないというような点も非常にむずかしい問題でありまして、そういう点では非常な悩みを持っております。たとえば石油化学のような問題にいたしましても、みな競って外国から特許を買ってくるというような形になりますが、そうしないで、何か優秀なものを一つ買ってきて、そしてメーカーと生産者が一緒になって一つのものをでっち上げたら、その次には国産化でいけるような形ができないだろうかというようなことを研究しまして、精製業者あたりともいろいろ相談してみますけれども、こういう面では、これは日本人の特性といいますか、そういう点の話し合いがなかなかうまくいかない、そしていたずらと言っては語弊がありますが、各社とも競って外国からたくさんの特許を買ってきて、同じようなことをやられるということは、私ども非常に残念に思っております。しかし何とかしてわれわれも勉強しながら、そういう会社と結びつくなら結びついて、そういうものを基礎にして次の製品を開拓していくというようなことがわれわれの任務であると考えて勉強はしております。そういうふうにしましてこれからすべてを何か強力な力でやらなければならぬかどうかということは、まだまだわれわれも勉強が足りないし、協力の態勢が足りないのじゃないかという反省をしながら、目下輸出の問題について、鉄鋼の問題なんかはこれから大いに一つそういう面をやってみたいと私は思っておりますけれども、これもやはり国をあげて援助をしていただければ、非常に早急に結果が得られるんじゃないかというふうには考えております。
  17. 小平久雄

  18. 椎名悦三郎

    ○椎名(悦)小委員 時間もあまりございませんから、簡単に大塚さんにお尋ねいたしますが、日本の人口過剰の問題を解決するために、機会庫業に振興というものがどうしても必要だ、この面からいっても相当大切だと思うのです。それで中小企業との結びつきがこの業界には特に目立つのでありまして、そういう意味において雇用の関係に貢献するところが相当多かろうと思う。中小企業救済と申しますか、振興と申しますか、そういうような声が非常に盛んである現今におきましては、その面から私は機械工業振興が相当大切なものであると考えておるのであります。先ほどからお話を承わって肥ると、相当持っておる設備がいたんでおる。それで私は一つ疑問を持っておるのですが、その機械を次から次と改善するだけの能力がなくて、ただ食いつぶしをしておるということを従来からとっておるとすると、一体今持っておる設備というのはいつ改善するかということです。それでおそらく戦争中−に例の膨大なる臨軍費によって、軍が相当な奨励助長をした、その波に乗って持っておる設備であるかどうかという問題、もしもそうだとすると、何か特別のアクシデントというか、僥幸をつかまないと、だんだん日がたつに従って滅びていくというような、まことに心細い状況であるのではないのか、その点をちょっとお尋ねしたい。
  19. 大塚肇

    大塚参考人 おっしゃる通りであります。機械工業は、戦時中非常に異様に膨張した一つの産業だと言えると思う。そのために現在必要な需要量に数倍する設備がある。大企業もそうですが、中小企業がことにそういう点ではっきりしている。従って今日これは日本の悩みですが、さっき倉田氏が言われたけれども日本に市場がない、需要がないということが根本的な悩みであるけれども、それがはっきり現われていますので、ことに中小企業は、中小企業同士の非常な競争と、それから大企業から非常にたたかれて、安く下請を受けているという実情で、機械をかえるどころでなくて、先ほど私が申し上げましたように、税金を無事に払っていればいいというような段階に坤吟し、昨日も高崎で中小企業の座談会をやつてきたのですが、同じ意見をそこで言われておった とても浮び上れない、こういうことです。しかし今のそういう作業の形態が残っておるからといって、これを全面的にただ無条件で救済するということはできない。中小企業といっても非常に幅があります。その中の三〇%なりは自力で、これは救済でなく振興策で立ち直ってくることと思います。どうしてもほんとうに社会政策的に救済しなければならぬという中小企業機械工業というものが三、三割ある。あとは中間層だ。結局持っている設備はといえば、これは大企業が一番新しいの、で、戦後に買った機械もある。中小企業は順々に、上からおりてきた機械、つまり大企業が要らなくなって取りかえた機械を、その下に属するものが買う。またそれを出したのはその下の一番小さいところが買っていく、そういうふうにだんだん動いているのが実情であります。工作機械は、持つことは二十年、三十年くらい平気で、ことに汎用の工作機械はよく持つのであります。非常に古い機械が中に入っておる。おそらく探しましたら、大正以前の機械がまだあるところがあるはずであります。さっき椎名さんのおっしゃったように、おそらく戦争中の機械がまず大部分である。それ以前のもむろんあります。私のところでもありますが、戦争中の機械がまず犬部分です。これが非常に粗悪品で、材質も悪いし工作も悪い、間に合せで作ったようなもので、一般に出ておりますのは非常に悪いのであります。これもライフが来ている。二十年くらい前の機械が動いている状態である。これをどうかして取りかえていかなければだめだと中小企業自体思いながら、余力がある、あるいは比較的中以上にいて、いろいろそういう企業努力ができるような、経営の比較的恵まれているところは、自力で機械を入れかえる。それから先ほどちょっと触れましたように、国もこれを助長して金を出しておりますが、あまり多額てないので、全国的に見るとそれほどの効果は上っていないと思いますが、貸付機械という制度を都道府県でやって陥ります。そういう機械を入れて、これは年六分、五年賦で都道府県が貸し付けております。これが非常にいい方法で、これを入れて能率化をやっておる。しかしこれも非常に条件がやかましゅございまして、都で厳重な審査をして、約六分の一か五分の一くらいの合格者しかないわけです。だれもかれもこれを借りられない。つまりこれの資格ということになると、ほんとうにほしい下の方の中小企業者にとってはそれを借りるのは高嶺の花になってしまう。結局中以上のものが何とかそういった現在行われている政策の範疇に入る、あるいは自力でものがやれるところのほかのものが問題であります。今日私たちが勝平な意見を申すねらば、管財局が持っている古い機械をこの際思い切ってスクラップ化して処分するという方法をとられたならば、これは一つの方法じゃないかと思うわけです。
  20. 椎名悦三郎

    ○椎名(悦)小委員 特に戦争というような異常な景気要因でもない限りにおいては浮び上らないというようなものは今日においては二割そこらの程度である、あとは自力で、あるいはまた多少の呼び水の政策によってこれが救済されるということでございますが、いずれにいたしましても、二割といっても相当な部分だろうと思います。とにかくこれはどうしても機械工業全体の振興によってこれらの連中を浮び上らしていくという以外にはないと思う。その点について体どのくらいかと私も疑問に思って曲ったので一言お伺いしたわけであります。  これらの問題に関連して独禁法があるわけです。最近はだいぶ修正されて参りましたけれども、どうしても業界の団体の力によってそういう連中が自分の進路活路を切り開いていく必要があるだろう、かりにそういう人たちの立場に立ちまして、現任の独禁法に対してどういう考え方をしておられるか、一つ腹蔵なく、今の制度に気がねをして意見を言われるのでなしに、腹一ぱいのところをお聞かせ願いたいと思います。
  21. 大塚肇

    大塚参考人 御質問でございますが、独禁法との関係は、私直接に機械工業振興について独禁法の特にこういう線がじゃまになるという具体的なことをすぐ申し上げられないのですけれども、元来中小企業にあの独禁法というものがじゃまになっているということは確かなのであります。たとえば協同組合の活動にしましても、今日の憲法の考え方が流れてきており、自由加入の自由脱退というような原則で、組合の理事長に何も権限がない。たとえば機械工業のある協同組合で何かやろうと思いましても、非常にいい考えがあってそれを強制的にやろうと思っても、現在では何もできない。これはやはりもう少し協同組合等に一つのものを遂行する力を与えるように持っていかなければ、今日一般中小企業を救済するのに協同組合を作ればいいと言っておられますけれども、そんなことではとうていうまくいかぬと思っております。これは独禁法についてどうだというはっきりしたお答えになるかどうかはわかりませんが、そんなふうに思って泊ります。
  22. 椎名悦三郎

    ○椎名(悦)小委員 私の郷里は東北でありますが、御知の通りの単作地帯であって、農地解放が行われました後も相当に細分化されつつあり、農村の二、三男対策についてはあらゆる方面で非常に頭を悩ましている、日常に感じている苦悩なんであります。これらの状況機械工業振興発達、それの下請工業というような問題とからんで、一体どの程度までこういう問題を緩和する可能性があるか。たとえば北陸地方なんかは大河内さんの理研の機械工業方面振興させて陥るとか、長岡地方では石油工業の関連地帯ですから、その方面関係機械がだんだん発達しておるというように、それぞれその地方の立地条件に関連して発達しておる過去の実績はあるわけでありますけれども、それを離れてもある程度やれるものかやれないものか、そういう点についてごく簡単な御見解だけでけっこうですから……。立地条件というものがなければ、全然だめなものか、農村なるがゆえに下請工業というものが落ちついてやれないのか、ただ地理的に離れておって、運搬あるいは目が届かぬというようなことで全然不可能なのかどうか、少しとっぴかもしれませんが、そういった問題について少しお述べいただきたいと思います。
  23. 大塚肇

    大塚参考人 日本の人口問題、それと今の生産性の問題、こうあわせて考えますと、大企業生産性を採用し、オートメーションが行き渡るということになれば、当然この線からはどう申しましても労働者というものは現在よりもふえるとは思われないので、やはり中小企業方面が吸収することが一番よい方法だと思います。今の御質問の点は、たとえば理研が成功したのも、あれは特殊な精密加工であり、ことに小さなもの、また部分的に工程を分解してやれるようなものは検査もできるし、運搬にも金がかからぬし、今後農村等でやればできるものだと私は考えております。そういう点で興味の多い問題だと思います。
  24. 小笠公韶

    ○小笠小委員 ちょっとお伺いしたいのですが、どなたに伺ってよいか、どなたでもけっこうでありますが、お二人のお話を伺っておりまして、私は一つ抜けておるところがあると思うのであります。それは倉田さんのお話を聞いておりますと、アッセンブル工業としての日本機械輸出振興上三つばかりの点が足りない、こういうことをあげられてこれらをよくしていかなければならぬという話が中心であったように思います。それから大塚さんの曲語は、もっぱら下請企業あるいは中小企業現状についての機械の老朽性を中心としてのお話であったように思います。日本機械工業というものが将来大きな希望を託されておりながら、今日まだ立ちおくれた産業部門にあることは事実であります。その事実は一直から申しますと、矢ほどの倉田さんのお話のように、いわゆるでき上ったアッセンブルされた機械工業の発達は部品生産部門の均衡のとれた発達に待たなければならぬ。そういうことになると思います。そういうときに部品生産部門としての中小企業機械工業というものはこれは過剰、であるという事実を私は率直に認めるのであります。そういう点から見ると、このアッセンブル工業と過剰の下請中小機械工業との結びつきの関係をどう見るか、それは系列化の問題もありましょう、そういう問題についてどう考えておるか、ここに倉田さんの、お誠の部品生産部門の質並びに量の均衡化、アッセンブル工業との均衡化をとっていく、こういう意味において、どういう形をとっていったら一番いいのか、そこに日本機械工業振興一つの重大な問題があるのじゃないかと思うのです。そういう点についてどう考えていったらいいだろうか、お教えを願いたいと思うのです。
  25. 倉田主悦

    倉田参考人 御指摘の点は私ども非常に悩んでおる問題ですが、今お話のように、中小企業を系列化する一つの流れと、共通部品部門を育成助長して能率化し、技術の向上をはかるという面とをやっていきますためには、もちろん機械の基礎はやはり部品でありますから、この部品が優秀でなければいかぬ。そういうことから、どうしても共通部品などの性能をよくし、ほんとう価格が低廉になるような指導をしていかなければならぬ。そうしますと、残る問題は何としても過剰能力ということになるのです。これをどうするかといえば、今農村対策もありましたように、海外にプラントなり、あるいはわれわれのやっております機械興発会社あたりで工場なりプラントなりを設置して、工業移民を少しやっていく。そればささやかなものかもしれませんが、だんだんそういう面にでも活路を見出す以外には、今私は考えを持っておりません。
  26. 大塚肇

    大塚参考人 さすがに御前歴からいいところをつかんでおられると思いますが、これは私たち中小企業関係者として非常に問題になるところだと思います。しかし逆に、それではこの振興策をやらないでうっちゃって幸いたらどういうことになるか。それで振興策をやつて下さいということを私たちが言っておるわけですが、機械工業のレベルを上げるためにはどうしても振興策をとらなければならない。私が先ほど申しましたように、中小企業の中で中以上に嘱するものが有資格者だと思うのです。それでは非常に多いマゾョリティはどうするのかという問題が出てくると思います。この点については、むしろ私たちにも今言ったような方法がありますし、仕事をできるだけ中小企業に吸収する。できることはやるにいたしましても、これはわれわれだけではとうてい処理できる問題ではありませんので、かりに中小企業の対象に振興策がわたる場合は、同時に、その振興策の対象にならないものについても、振興策とは別途の方法で通産省あたりに何か考えていただきたいということをわれわれは言っておるわけです。
  27. 小笠公韶

    ○小笠小委員 私が伺いたいと思ったのは今の点のお答えでけっこうなんです。実はこういう感じがしております。これは機械工業にしてもほかの工業にしても同じ問題ですが、中小企業対策の考え方の一つとして、今度の繊維設備制限臨時措置法で、明らかに過剰設備というものの廃棄その他の措置をとる、すなわちその機能を失わせようという考え方で法案を提出いたしております。機械も同じような問題が部分的にあるのではないか。今度鈴木局長が御苦労の上近く機械振興法を出すことになりますが、それには上述の法案のような面が落ちているのです。そういう意味で、ここらの点をどうお考えになっておるのか一ぺん伺いたかったのですが、私のはそれだけでけっこうです。
  28. 田中龍夫

    田中(龍)小委員 私はちょっとおくれて来ましたので、せっかくの倉田さんのお話を十分に伺う機会がなかったのでありますが、御質問申し上げたいと思いますことは、機械輸出の問題なんであります。先般も資料をちょうだいしましたが、機械輸出が非常に伸びているということでありますが、今度伸びておりますのは造船であって、あとの諸機械というものは、昭和二十八年と比較して半々くらいにプラスになったりマイナスになったりしています。日本海外に対する機械輸出という問題については、通産省も非常に力を入れておられるし、また業界におかれても活発にやっておると思うのでありますが、その間に、制度上にチェックするような面があるのではないかと思います。たとえて言うならば、ドイツあたりが機械の売り込みをする、そうした場合に、アフター・サービスといいますか何といいますか、エンジニアがぐるぐる回って歩いて、その会社の製品に対する信用の保持のため、実に懇切丁寧な指導もするし修理もするしというような話を、海外に出ると方々で聞くのでありますが、日本の場合では、通産省がそういうアフター・サービスの閥題についてセンターを設けるというようなお話も先般聞きましたけれども、まだまだ非常に欠けるところがあるのではないかと思うのであります。その際に、会社側なり何なりの方で、そういうふうな技術者なり何なりを派遣しようと思う場合に——これは御質問でありますけれども、合渡航制限が為為管理や何かの関係で非常にきびしいと思うのですが、そういうふうな面から、派遣しようと思ってもできない。これは渡航、審議会の方でチェックされるといったようなことはないので、ありましょうかどうか、その点ちょっと伺いたいと思います。
  29. 倉田主悦

    倉田参考人 その点、確かにあるのでございます。商売になりますと、見積りをしていよいよネゴシエーションをやるというようなときには、すぐにでも飛んでいかねばならぬ。これは海外に十分なスタッフがおってやっておれはいいのですが、新しい者が海外の支店あるいは出張所等で交渉をやっておりますときには、ネゴシエーションをやるときにどうしても技術者が行かなければ話ができないのです。技術者が行かなければどうしてもだめだというようなときに、即日でも飛んでいきたいような場合があるのであります。ところが、渡航審議会と申しますか、これがいろいろな部局にまたがっておりまして、大蔵省とかあるいは日銀とかあっちこっちにまたがっておりますから、どんなに早くても一週間かかる。ほとんど破格の取扱いをしても確かに  一週間ぐらいかかるだろうと思います。そうでなければ大体一カ月ぐらいかかるような状態で、だんだん改善されつつあるのでありますが、こういう点ではもっともっと迅速に行けるようなことをわれわれ希望しております。
  30. 田中龍夫

    田中(龍)小委員 それにつきまして、たとえば手続はおそいが、やってはくれるが、さらにまた海外に駐在する職員を今度は増員をして、そういうふうな会社としてのサービス・センターを作ろうと思うときに、その面ではやはり制限がある、制約を受けるというようなことも伴うのだろううと思います。  もう少しざっくばらんに承わりますが、重機械相談室というようなものを通産省の方であっちこっちにこしらえております。リオのところにはお宅の方がおられると思いますが、重機械相談室あたりで聞いたり向うの方の在留邦人から聞きますというと——これはもうざっくばらんに業界としての御意見を承わりたいのです。重機械相談室というものは非常にいいはずのものなんだけれども、民間でもないし、役所でもないので、在外公館あたりがいろいろ通商上の問題なり、あるいはまた交渉なんかをするような場合に、どうも重機械相談室の方は在外公館の方から連絡を受けない。それから民間の企業会社がいろいろ進出しょうと思うと、今度はまた重機械相談室の方からその契約等に対していろいろな批判を受けたりなんかしておりまして、何のことはない、役所でもないし民間でもない、中間のものであって、ファンクションからするならば非常にいい制度であるはずなんだが、現実には目の中にごみが入ったような感じを受ける。それからまた大使館あたりに行ってみても、これもまあ日本流のものの考え方なんでしょうけれども、役所の方からの予算で出ておる職員ならば、あくまでも在外公館としての立場をとるが、予算的にいって切れておる関係から、在外公館としてもそういうような処遇をしたくてもなかなかできないといったようないろいろな批判を実は聞いておるのでありますが、業界側とされましては、一体どういうふうな形に持っていったならばもっともっと理想的な姿になるか、機械輸出等についても、どうしたらばうんと伸びるかといったような御意見でもありますれば承わりたいと思います。一つざっくばらんにおっしゃっていただきたい。
  31. 倉田主悦

    倉田参考人 海外重機相談室はお説のような点もございました。しかしあまり性急にこれを批判することはどうかと思っておったのですが、あれはもう解散しました。それで今は海外プラント技術協会という形に変りまして発足いたしております。そしてこれの指導者として電気工業会の会長をやっております三菱の高杉氏が会長で、産業機械協会会長の丹羽氏が副会長といろ形において発足しまして、もっぱら海外の市場並びに開発の調査それからコンサルティングというような面に発展いたしていこうというような格好で今運営しております。
  32. 田中龍夫

    田中(龍)小委員 そうしますと、在外公館との関係といいますか、予算関係なり待遇関係なり何なりというものは、どんなふうになったのでございましょうか。つまり在外公館からすれば、たとえば技術顧問とか、技術職員というふうな形で、技術領事といいますか、そういうふうな格好で解決されたのでありましょうか、どうでしょうか。
  33. 倉田主悦

    倉田参考人 今の状態は、そういう問題は昔のままにしておいて、主として受注といいますか、見積りの前の、海外の市場なりあるいは開発計画なりの調大食あるいはコンサルティングという方面に主力を置いております。そういう、商売に直接関係するような話はだんだん遠ざかるといいますか、そういう面でなく、海外開発の調査をする、コンサルティングをやるという方面に主力を置いておりますから、前の形が改善されたとは思わないのであります。そのままの形になっております。
  34. 田中龍夫

    田中(龍)小委員 もう一つは、これは役所の方の機構の問題とも関係いたしますが、在外公館における通産省出身の方と純粋の外務省の方とは、いろいろな意味でむずかしい関係にあると思うのです。ところが向うの方の受注なんかについて方々で聞きますと、在外公館なり領事館は、もっと経済関係について事情がわかって、そうして本国の方との連絡もよくやってほしいということを非常に強く言われておったのであります。ことに最近はプラント輸出だけではなくて、今度は会社がある程度企業進出をするというような場合、ことに中南米とか東南アジア方面企業進出する場合、大蔵省の見解が資本逃避なりとして制約するような間違った面がかつてはあったように思います。しかしこのごろは、そういう面について民間側としてお考えになった場合に、非常に積極的になったか、それともこの点については為替管理があまり厳格過ぎて思うように伸びないというような状態でありますか、承わりたい。
  35. 倉田主悦

    倉田参考人 これはほか様のことはあまり存じないのでありますが、私どもの立場からは資本逃避とかなんとかいうようなことは毛頭考えておりません。海外開発に貢献して産業を伸ばし、また先ほど申し上げた工業移民とかいうような意味において、あるいは国内の過剰生産設備でも海外に持っていければよいという意味でのみ考えておりますから、その問題はちょっと考えたことはございません。
  36. 小平久雄

    小平委員長 それでは倉田大塚参考人に対する質疑はこの程度にいたしたいと思います。両君には御多忙のところ長い間貴重な御意見をちょうだいいたしましてまことにありがとうございました。  それでは次に、大へんお待たせをいたして恐縮でありましたが、岡村参考人より御意見を承わりたいと思います。岡村武君。
  37. 岡村武

    岡村参考人 鉄鋼業の現況と問題点につきまして述べるため本日まことに格好な機会をお与えいただきましたことを厚く御礼申し上げます。きわめて簡単に御説明申し上げまして、むしろお尋ねにお答えさせていただくことによって説明の補足をさせていただきたいと思います。  鉄鋼業がおかげをもちましてただいまのところではきわめて順調な過程をたどりつつあることは、私ども鉄鋼人といたしましてまことに欣快でございます。一昨年の秋ごろから、それまで萎靡沈滞の極にありましたわが国の鉄鋼業が、輸出の顕著な増進を契機といたしまして、急速な立ち直りを見せて参りました。昨年一ぱい生産の面でも輸出の面でも鉄鋼業はまことに順調でございました。この景況は今年にまで持ち越され、さらに相当長い間続くのではないかというような見通しが普遍的のようであります。昨年は普通鋼の生産でも七百万トンに近い数字を確保いたしたのでございまするが、これは日本鉄鋼史始まりまして以来の大増産でありまして、戦時中あれほどドライブをかけました昭和十六、七年ごろの鉄鋼生産にまさること、さらに大きいものがあるのでございます。また輸出の面でも、現案に船積みをいたしました数量は、二百二十万トン程度に達しております。金額で申し上げまするならば、約二億七千五百万ドルでございます。なお鉄鉱石、粘結炭、スクラップ、マンガン鉱石等の原料を輸入をいたしまするが、その量は昨年は一億二千万ドルでごさいまするから、差引一億五千五百万ドル程度の外貨を鉄鋼業がかせいだ計算になるわけでございます。この輸出の実績は、繊維工業に次ぐものと存ぜられ出るのでございます。  今年に入りましてからも生産のテンポは依然として落ちておらないのでございます。もともと鉄鋼業と申すものは高低起伏の多い産業でございまするが、私どもの見方といたしましては、これは他の産業も同様かとも存ぜられまするが、戦後十年の粒々苦心の経常の結果が実を結びまして、鉄鋼業は今や安定段階に入っておるのではないだろうか。従って将来多少の浮沈はございましょうが、断層的な崩壊あるいは沸き立つような大ブーム、こういうものに出会うことはまずないであろう。そのかわりほぼ安定した状況で少しずつその生産を増強し、また輸出を確保し得るのではないか、こう考えておるのでございます。経済五カ年計画におきましても、大体さような見地から、過大な生産の増強を五年後に期待されておりませんし、輸出の量も二百万トン以内に押えるというお見通しからできておるようでございます。大体かような見方が至当ではないか、こう存ずるのでございます。  しかしながら一見かように順風満帆のように見えまする鉄鋼業も、いろいろな悩みを現在持ち、また将来にわたって心配しておる問題が多々あるのでございます。昨年は、はからずもかような好況の一つの副産物、あおりとも存ぜられまするが、せっかくスクラップ価格の安定のためにお許しを願って作りましたスクラップ・カルテルが、十月その運営の上で破綻を見せました。昨年の暮れまでその業務の一部を停止せざるを得ないような事態に相なったのでございます。これからさらに派生いたしまするいろいろな問題をいかに収拾するか、いかにこれを安定せしめるかという当面の策だけにとどまりまして、根本的な問題についての対策を練るいとまが少くとも業界側としてはなかったのであります。しかしながらこれらの諸問題もやっと落着をいたしまして、ことし初めからは、今申しましたような安定した生産を続けつつある現況でございますので、この際私どもはもう少し遠い将来をにらんで、抜本的な対策を講じておく必要があるのではないだろうか、かような見地から寄り寄りいろいろな相談をいたし、また政府にも申し上げまして、その御指示を仰いでおるのであります。  その第一の問題はい鉄源の不足という問題でございまして、これは現在直面いたしまする、また将来われわれがことごとく苦悩を味わうであろうと思われる最も大逆な問題でございます。現在のような景気でありますると、作れば作るだけ国内でも売れる。また輸出もきく、まことにありがたい時節でございまするが、満つれば欠くる世のならいでございますか、かような増産がほしいままにできないところに大きな悩みがあるのでございます。つまり作ろうにもその原料が足らないためにやむを得ず生産を抑制せざるを得ないという事態でございます。上からばその不足する原料は何かと申しますと、その一番大きな問題は、何と申しましてもスクラップでございます。このスクラップは、現在どうやらこうやら間に合わせておりますが、不足がちであることは明瞭でございますし、そのために先ほど申しましたスクラップ・カルテルの破綻というふうな大問題まで引き起したのでございますが、将来にわたってこのスクラップの国内の収集量あるいは出回り量が急速に増強するという見通しは現在のところございません。これは、いかに金に糸目をつけないで買いあさりましても、一定の期間内に出てくるスクラップの量はきまっておるのでございます。幾らスクラップの相場が高いからと申しまして、現在便っておる自動車であるとか、あるいは線路を取りはずしてスクラップにするというわけには参りません。少くもスクラップは、いわゆる市中の老廃くず、役に立たなくなった鉄で作りました、あるいは鉄を含みます機械器具、什器、交通機関、そういうものでございますから、これには自然に限度があるわけでございます。のみならず、将来のスクラップになりまする潜在的なスクラップも、現在のところ非常に少い。戦争中無理に資源の回収をやりましたそのたたりが現在われわれを見舞っておるとも思いまするし、また戦争中何百万トンと作りました鉄鋼は、そのほとんど全部が兵器、弾薬、艦船等になりまして、現在雲散霧消しておる、あるいは海中に没してその姿を見せぬという状態でございますと、将来スクラップとして現われてくるものも、その供給源は非常に乏しいということが申せます。戦争後一時ちまたにあふれておりましたいわゆる戦災くずも現在ほとんど底を払ってない。わずかに政府のお手持ちの二十数万台の機械類が残っておるだけでございます。  かように見ますると、国内のスクラップの将来の見通しはまず悲観的でございます。上からはこれを輸入すればいいではないかということになりますと、戦争前は、なるほどアメリカから二、三百万トンのスクラップを自由に、しかもきわめて安い価格で、また安い運賃で運んで参ったことは事実でございますし、またこのことが、日本鉄鋼業に今日まで持ち越されておるいろいろな悩みの種をまいたわけでもございまするが、現在はことごとくその様相が一変いたしまして、アメリカ自体も必ずしもスクラップが潤沢とは申せないのであります。現在アメリカ自体鉄鋼業の操業率は一〇〇%近いものでございますので、自分のところで使うスクラップの手当にまず一ぱいでございます。なかなか外国に出すだけのゆとりは量的にないわけでございまするが、自由世界に駈ける相互扶助の建前から、西欧諸国モンタン・ユニオンを組織しております六カ国、あるいはイギリスという国に対しましては、年間三、四百万トンのスクラップを送っておりまするし、また日本に対しましても百万トン前後のスクラップを輸出することを認めておりますが、これも国内需要を節してまで輸出をするというだけのゆとりがございませんので、足らぬ分をアメリカから幾らでも入れるという期待は、現在でもそうでございますが、将来も持てないということになりますと、スクラップは内外ともその使用し得る限度が自然にきまってくるわけでございます。そこで、入手し得るスクラップで生産し得る程度にとどめておけばよろしいかどうかという点になりますと、現在の需要状況はそれを許さないのでございます。輸出の増強を考えましても、そのスクラップの制約を乗り越えて増産の大目的を達成しなければならないという段階にございますので、何とかスクラップの悩みを克服しなければならぬ情勢にあるわけであります。  それからもう一つの原料不足の悩みは、銑鉄でございます。銑鉄とスクラップがその供給の面において欠くることがなければ、大体鉄鋼は思うだけの数量が作れるわけでございますが、この銑鉄も現在のところ十分とは申せない。そのために鋳物の銑鉄の不足を来たしまして、いろいろと鋳物屋さんの方から国会方面にもまことに真摯な陳情があったように伺うのでございますが、この需要者に対して十分差し上げることのできない銑鉄の生産状況なのであります。しからばこれを増産し得るかと申しますとなるほど現在日本の持って陥りまする溶鉱炉は全部が稼働いたしておりません。まだ休んでおります炉が、十基ばかりございますが、これは車庫に入れておる自動車を、ちりを払ってガソリンを入れればすぐ動き出すという種類のものとは違いまして、現在ございます十基の休止中の溶鉱炉は、まず新しく作りますのと同様の手をかけなければできないとお心得下さってけっこうかと思うのでございます。もしそれだけの手をかけるなら、むしろ最も斬新な能率のいい溶鉱炉を新しく作った方が有利であるという結論にもなるわけでございます。この見地から、現在日本の溶鉱炉は全部手一ぱい働いておる、こう見るべきであると思うのでございます。そこでその溶鉱炉に食わせまする原料の方はどうかといいますと、まず石炭の方は心配ございません。国内炭については、価格の面とか品質の面で難はございますが、他のものに比べますればさほどの心配はないと思いまするし、またどうしても入れなければならぬ輸入炭は、これは現在のところほとんど全部が米国炭でございますが、これもアメリカはあまりの増産にもてあましぎみ場の石炭がたくさんございますから、これまた金さえ出せば心配はないわけであります。ただ鉱石は、現在何とかかんとか間に合わせておりますが、将来はなかなかめんどうな問題が生起、するものと考えるのであります。鉱石のような大量に、しかもコンスタントに入ってこなければならぬ原料は、ほかの品物のように、出物をあさって買ってくる、いわゆるスポツト買いがききません。やはりこれは日本が金と技術と資材を出して、相当な投資をいたしまして、資源の開発をやらなければ、 コンスタントな大量の鉄鉱石の供給は望み得ないわけであります。現在は何とかかんとか繰り合せがついておりますが、これ以上の銑鉄の増産を企図いたしますためには、どうしても今申し上げたような根本にさかのぼって、国内ではさほど期待は持てない鉄鉱石の海外資源の開発を、今から着手しておかなければならぬという大問題にわれわれは逢着いたしておるわけであります。五カ年計画によりますと、昭和三十五年度には、現在よりも約百五十万トンよけいに銑鉄を作らなければならないことになっておりますが、この銑鉄を増産いたしますためには、一日に千トンの銑鉄を作り得る溶鉱炉を大体五本程度作らなければならないわけでありますが、この建設もなかなか容易ならぬ問題でございまして、一本の千トン炉、これを運営いたしますに必要ないろいろなアクセサリーを考えますと、一本について軽く百億円程度の資金を投入しなければならないわけでありまして、また第一これに食わせます鉄鉱石の調達、これはなかなか困難な問題をはらむものと思うのであります。しかしながらどうしてもこれらの困難な問題を乗り越えて、鉄鉱石は、日本の関連産業及び輸出面で期待されます生産を増強いたさなければならぬわけでありますから、質の問題もさることながら、量の問題と取り組みまして、現在鉄鋼業は真撃な検討を続けておるわけでございます。かような銑鉄の増産をいたしましても、なお残る問題は、これとかみ合うスクラップの不足をいかんせんという問題でございます。この点の解決は、これは設備の面と技術の面と両方またがると思いますが、要するにきわめて簡単な理屈で、スクラップをあまり使わない製鋼方式を確立するということに帰着せざるを得ないわけであります。窮すれば通ずるわけでありまして、たとえば戦争前の満州の鞍山製鉄などは、ほとんどスクラップの期待が持てませんために、もちろん百製鋼量の制約はございましたが、ある程度のはがねは作っておりました。その際には、はがねのスクラップを志まり所要いたしませんところの製鋼式——混銑炉を使います方式によってこの問題を解決いたしておったのでおりますが、現在は技術もさらに進みまして、いわゆる転炉製鋼方式を採用することによりまして、ほとんどスクラップを使わないで、熱い、溶けた銑鉄だけではがねができる技術が確立されておるのであります。現在も日本鋼管は五基のトーマス転炉を持っておりますが、これからこれらの大手のメーカーで作ろうという転炉は、さらに進みました酸素上吹転炉、オーストリアの技術でございますが、これをそれぞれ数基備えつける計画が着々と進行いたしておるのであります。そういたしますと、これらの転炉で作られます肝については、ほとんどスクラップが車らないということによって、スクラップをそれだけ浮かすことができるわけであります。もちろん現在の計画ではまだまだ足りないのでありますが、現在着手中のこれらの転炉の実績をにらんだ上で、さらにこの種の製鋼方式を普及徹底させますならば、まことに回りくどい方法ではありますが、結局根本的にこのスクラップ不足の問題を解決し得るのではないか、こう存じておるわけであります。かような方向に鉄鋼業は進んでおるのでございますが、先ほど倉田さんからお話がございました、またお尋の中にも含まれておったかと思いますが、現在鉄鋼業にまつわる一つの問題でもございますので、これにちょっと触れますならば、それは鉄鋼の供給不足の問題でございます。なるほど今引っぱりだこではございまするが、しかし非常な需給のアンバランスかと申すと、そうではないのであります。ともすればやはり思惑的な仮需要が伴いがちでございまして、不足の声を聞くと先物の手当を急ぐというふうな心理的な影響がかさみまして、不必要な需給のアンバランスの声をちまたに流すようなことも多分に影響をいたしておるかとも思いまするが、現実にはそれほど大きなアンバランスはございません。ただ造船用の鋼材については足らぬことは事実でございまするが、この造船用の鋼材は規格がめんどうでございまして、その規格に適合する造船用鋼材を作り得る設備にはその能力の限度がございます。これを現在もっぱら拡充に努めておりまするが、現在のところではとうてい間に合わない。従って輸出すればもっと高い値段で売れるのでございまするが、それを全部断わりまして、ほとんど全量を国内造船業に投入しておるという現状でございます。  それからもう一つの問題は鉄鋼価格の問題でございますが、これもいわゆる高鉄価問題とかいうものがしばしば取り上げられ、私どももしばしばさようなことをお尋ねをこうむるのでありまするが、結論的に申しますると、国内価格、つまりそれぞれの国で機械業者、造船業者などが入手する鋼材その他の鉄鋼製品価格は、日本は決して高くないということが申し上げられると思うのであります。国によって違いまするが、フランス、ベルギー、ルクセンブルグ等の国内価格日本よりはだいぶ高うございます。西独のそれはほぼ匹敵しておるかと思います。イギリスは著しく日本よりは安いのでございまするが、イギリスの鉄鋼業は実質的にはほとんど国営のもとに行われておると申してもよろしいのでございまして、日本に比べますれば半分以下の安い石炭が得られるといったふうな有形無形の恩恵を与えられておる鉄鋼業でございまするから、これとの比較は無理かと思うのでございます。アメリカと比べますと、アメリカ日本よりなるほど数字の上では安うございまするが、これは大体生産地における価格でございまするから、国内があのように広く、需要地まで運ぶには何百マイル何千マイルを、鉄道その他の運送機関で運ばなければならぬ消費者の実情から申しますると、それらの輸送費を加えた場合には、果して日本のより安いかどうかきわめて疑問であり、多くの場合は日本よりは高いのではないだろうか、かよう察せられろと思うのでございます。  第三の問題、これも先ほど倉田さんから触れられました品質の問題でございまするが、少くとも普通鋼につきましては、いささかも日本鉄鋼外国に劣るとはわれわれ考えておりません。むしろ優秀な面が多々あるのではないかと思うのでございます。現に現在日本で使っておりまするいろいろな原料、銑鉄を作りまする鉄鉱石にしても、石炭にいたしましても、それを総合的にながめた場合には、日本鉄鋼業は最も優秀な原料を使っておるのでございます。アメリカよりもイギリスよりもドイツよりも優秀な原料を使っておるので、原単位は著しく低いし、これらの優秀な原料から作りました銑鉄の製品もまた優秀ならざるを得ないのでございます。ただスクラップは洗いざらいさらって参りますために、その品質の面で劣ることは事実でございましょうが、これは世界的な現象でございます。現在はアメリカでも昔のような一級、特級のぱりっとしたスクラップだけを使っておるわけでございません。やはりひしゃげたカンでございますとか、ひどいスクラップを使っているので、日本だけが不利益な条件でないと思います。かような点から見まして、日本鉄鋼は原料面から見まして劣っておるものと思いませんし、また製鋼の技術設備あるいは圧延の技術設備におきましても、戦後十年のおくれを今や取り返しまして、ある品種では最も進んだ圧延設備まで持っておるような現状でございます。ただ特殊鋼になりますと、これはもちろん優秀なものも多々ございますが、外国に比べて総じてまさっているということは申し上げられない。これは数量的には普通鋼より使い方は少いのでありますが、たとえば自動車にいたしましても、自動車に使います鋼の大部分は特殊鋼であります。その特殊鋼がまだいまだしの感あることは否定できないと思うのでございますが。これはまたお使いになる方の工夫も足らざる点があるのではないかと思うのでございます。これは供給と需要と両々相待って適材適所の優秀な鋼質を発見して、少しでもいいものを作り出すという努力を重ねるならば、この特殊鋼の部面にしましても十分外国製品と太刀打ちできるようなものが製出し得る、かように思う次第であります。  なお最後に、これまた先ほどお尋ねになりましたと同じような御質問が、あるいは鉄鋼業の立場からいかがか、こういうようなお尋ねになるかと思いますので、触れたいと思うのでございますが、独禁法の問題でございます。この独禁法につきましては、鉄鋼業はむしろあらゆる産業のまっ先かけて全面的な撤廃あるいは大幅な改正をお願いして参っておるのでございます。現在一、二度の改正は実現いたしましたが、なおこの程度ではとうてい私ども期待は満足できないのでございます。大体イギリスのカルテル監視法の程度まで現在の日本は後退すべきである。世界でこれほど峻厳な独禁法を持っておる国はおそらくないであろう。西独ですらアメリカから押しつけられた独禁法を御辞退するという断固たる態度に出ておるのでございますが、日本の独禁法は非常に不必要に峻厳な内容を持っており、市場のきわめて狭=な、しかも戦後なお完全に立ち直ったとは申せない、いわば病み上りの日本産業に適用するには、あまりに強過ぎる内容ではないか。これを大幅に改正して、でき得べくんば撤廃をしてもらうことによって、鉄鋼業のみならずあらゆる産業の本格的な立ち直り、進展が見られるのではないか、かように存じておるのであります。その理由といたしましてはいろいろございまするが、それに触れるいとまがございませんので、結論だけ申し上げた次第でございます。  大体鉄鋼業といたしましてはさような現況にございますし、現在持っておりまする、また将来提起すべき問題は多々ございまするが、そのおもなものはただいま申し上げました通りであります。またお尋ねがございましたら申し上げたいと思います。
  38. 小平久雄

    小平委員長 これより岡村参考人の御意見に対する質疑に入りますが、時間も経過いたしておりますので質疑答弁ともで送るだけ簡明にお願いいたしたいと思います。御質疑ございませんか。
  39. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)小委員 おっしゃったように、鉄鋼界は想像しなかったほど非常に景気がよくなったのでありますが、ところが御存じのようにこれは日本の実力で外国市場を圧倒して地位をかち得ているのじゃなくて、向うの方の鉄鋼需要が非常に高いのでその恩恵を受けて伸びてきておるということでありますので外国との関係が一応おもしろくなくなれば、イの一番にそれが日本に響いてくることは申し上げるまでもない。ところがごく最近になって鉄鋼界は少し調子が悪くなってきはせぬか、というようなことがあちこちで言われるようになってきている。われわれの見るところではそれが今すぐ急にくるとは考えておりませんけれども、しかし決して安定しておるとはわれわれも考えていない。その方面において特に岡村さんなど専門家ですからよく御承知でしょうが、今多少はいいといっても、これとて何年も続くとはわれわれにもちょっと考えられない。一般的に言われているのは、大体九月、十月ごろまでは今の調子で伸びて、あとは横ばい状態になるのじゃないかということが常識的な見方のようでありますが、今おっしゃつたような一つ計画、これは政府のそういう五カ年計画一つの線もありますが、そういうようなことで今の程度で伸ばしていって、あとの、心配の点については何かお考えになっておられるかどうか。
  40. 岡村武

    岡村参考人 伊藤さんのお尋ねまことにごもっともだと存ずるのでございます。私どもも過去においてそういう苦難をしばしばなめておりますから、むちゃな生産の拡充を設備の面でやるということは毛頭考えておらないのでございまして、いわゆる過剰設備であるとか二重投資というふうな非難を鉄鋼業が浴びておりましたのは、つい二年ばかり前のことでございますから、むしろかような苦い薬を今までなめておりますので、不必要に慎重な態度で臨んでおる、こう申してもいいのじゃないかと思うのであります。なるほど相当大幅な設備の増強等もやっておりますが、これはむしろ鉄鋼業の構造の切りかえ、こういう言葉が当るかどうかわかりませんが、そういうふうな事柄に使われるものが多いのでございまして、先ほどもお話し申し上げましたような転炉の増設というふうな問題は、全くかような見地から来ておるのであります。昭和三十五年の五カ年計画完成後における鋼材の生産量は、大体七百九十万トン程度でございまして、現在に比べますとわずかに百万トン程度の増強にしかならない、これはほとんど横ばい程度の数字でございまして、これが一躍千万トンになるとかあるいは九百万トンの生産を企図するということでございますと、先を見ない無定見のそしりを免れぬと思いますが、今のところではそれほど大幅の増産ということにはなりませんので、おそらく多少の不況が将来ありましても、それに持ちこたえられるだけの力は失わない、こう私どもは思っておるわけであります。
  41. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 それからスクラップを使わない製鋼法つまり転炉による鋼材の製品ですが、アメリカなりあるいは欧州の最も転炉を用いている国などで、大体スクラップを使っての従来からの製鋼法による製品と、それから使わない転炉方式の製品との割合はどういうふうになっているか、それからスクラップを使っての製鋼法と転炉方式山との価格の問題はどうなっておるか、その辺の点をお知らせ願いたい。
  42. 岡村武

    岡村参考人 まことに適切なお尋ねだと存じますが、転炉の一番発達をいたしておりますところは西欧のフランスでございまして、フランスで作ります鋼の六〇%は転炉でこしらえております。しかもいわゆるトーマス転炉という、副産物としてトーマス燐肥を作る転炉でございます。その品質は今までは御心配のように普通の平炉で作る鋼よりは劣っておる、用途が限られておるというふうに見られて賄ったのでございます。そのために転炉鋼と平炉鋼の値幅は常時五ドル程度あったのでございます。ところが最近の転炉鋼は非常に品質が改善されまして、そういうふうな心配がなくなってきておるのでございます。ほかの国も転炉をやつております。ベネルックス、ドイツ等もございますが、フランスが何といいましても一番多い。アメリカは、これは原料関係から参るのでありますがあまり転炉はございません。ところがこの転炉鋼は最近は今まで使えないといわれておった大型のレールにもどしどし使われておるのでございまして、昨年フランスは一時間三百三十九キロという世界で一番の機関車のスピード記録を打ち立てておりますが、この運転に使われましたレールは転炉鋼であったわけでございます。今まで一番適さないといわれて細ったこういう重軌条にさえ転炉鋼が使えるという現段階におきましては、転炉鋼が品質上劣るという問題はほぼ解決をしておる。この問題が起ったのは燐を含みやすいトーマス転炉の場合でございまして、日本で今計画をいたしております転炉は燐を含む心配がない製鋼法でございますで今計画をいたしております転炉は隣を含む心配がない製鋼法でございますから、ご心配の品質の問題は起らないと思うのでございます。  それからコストでございますが、結局これは設備費に大きく左右されるものと思うのでございますけれども、スクラップが非常に安い場合でございますと、銑鉄オンリーから作る場合には安いスクラップをまぜる平炉鋼の方がはるかに有利でございますが、現在のように、将来もそうかと思いますがスクラップの値段がそう下らない、今のようにスクラップの方が高いという変則的な状況においては、むしろ転炉の法が有利である、問題を決定するのはむしろ償却費等の建設費が問題になるのではないか、従いましてコストの面でも著しく不利であるとは申しませんし、かりにスクラップが下りまして、多少コストが悪化いたしましても、これはスクラップ節減の立場から、ある程度の犠牲をしのんでもメーカーとしてはやらなければならぬと考えております。
  43. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)小委員 日本鋼管、八幡、富士は転炉を使っておりますか。
  44. 岡村武

    岡村参考人 まだやっておりません。八幡は当初転炉の一種であるベッセマー転炉を試験的にやったことがございます。また今までずっと実験も小型の設備で続けて参ったのでありますが、今度初めて本格的に工作技術を導入いたしまして作ることになっております。従って八幡、富士、日本鋼管、この三社の計画が現在具体化しておるわけであります。
  45. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)小委員 日本でも——日本でというよりさつきお伺いしたフランスの関係、あるいはその他欧州の国々は相当転炉による鋼材が輸出に出ておりますか。
  46. 岡村武

    岡村参考人 フランスは日本にとっては輸出の一番大きな競争相手でございまして、何と申しましてもこれが強敵かと思うのであります。その他の国もございますが、イギリスなどは大体英連邦自治領内へ送り込むのに精一ぱいの状況でございまして、その他にはあまり出てないようであります。それから西独は、むしろ現在は鉄鋼の輸入国であって、製品機械で大いに輸出をしておるという現況でございます。またアメリカは隣接諸国、カナダあるいはメキシコ等に輸出をするものが大部分でございまして、積極的な輸出策は講じておらない。結局日本としのぎを削る運命にあるのは何と申しましてもフランスあるいは製品の四分の一を輸出しておるベルギー、ルクセンブルグ、こういうことになるものと思います。
  47. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)小委員 日本鋼管、八幡、富士、そういうところで転炉設備をする計画資金というものは大体どのくらいと一応見ておりますか。
  48. 岡村武

    岡村参考人 どうも私その数字を記憶しておらないのですが…。
  49. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)小委員 それではそれはあとで政府の方からでも伺います。そうするとフランスの品質の点も伺いましたが、価格の点においても、スクラップを使って作る鋼材とそう変りないという数字が出ておるようでありますかどうですか。
  50. 岡村武

    岡村参考人 現状においてはむしろ有利ではないかと思われます。
  51. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)小委員 もう一、二点伺わしてもらいたいのですが、鉱石の問題ですが、これはやはりマレー半島の関係が一番多いのでありますか。その他の国はどこどこでございますか。
  52. 岡村武

    岡村参考人 お説のようにマレーに依存する程度は非常に商うございますが、量的に一番多いのはやはりフィリピンであると思います。それから現在とっておりますのはインドの、ゴア、インドの東北部から若干、この三つが一番まとまっておるようであります。
  53. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)小委員 どこの鉱石が価格及びカロリーにおいて一番安いというふうにお考えですか。
  54. 岡村武

    岡村参考人 品質から申しますると、これは一がいにどこがいいとか悪いとかは申せませんので、これらのいろいろな種類の鉄鉱石をまぜ合せて銑鉄を作るに適当なものを得るというのが普通のやり方でございまして、フィリピンならフィリピンの鉱石だけを使う場合はまずございません。ただその中に含まれておる鉄分は五八%から六〇%くらいでございまして、この点ではさほどの優劣はないかと思います。それから価格でございますが、これはこういう国際商標的なものでありますと、コストによってきまるのではなくて、いかにコストが安くても、日本で買い得る限度までは値段を上げて参りますので、日本着のシフ価格は大体似たりよったりでありまして、非常に安いまた非常に高いというものはまずございません。ほぼ同じにお心得下さってけっこうかと思います。
  55. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)小委員 もう一点、船賃、特に外国の船賃が最近だいぶ高くなっておるようです。それで日本の原鉱を入れる点においてもまた輸出においても日本製品が相当外国の船賃かせぎの犠牲になっておることはわれわれ大きな問題だと思っております。船賃がとめどもなく上ってきておるようですが、これに対する一つの対策として日本のその方面に向く特殊な船の建造——世界各国もこれに相当重点を置いて輸送船を建造してやっておるようですが、これは造船会社というよりむしろ製鉄会社などで主として考えなければならない問題だと思うのです。そういうことについての一つの対策というか、何かお考えになっておられるでしょうか。
  56. 岡村武

    岡村参考人 これはまことに適切なお尋ねで、この問題はお尋ねがあるまでもなくむしろ私の方から問題点の中に入れて御説明申し上げるべきであったと思うのでありますが、なるほど現在海上運賃は非常に高低が激しうございまして、アメリカから持って参りまするスクラップや石炭の運賃が、トン当り二十ドルもするような現状は何とか早く改めなければいかぬと思うのでございますが、それにはやはり日本の商船隊の再編特に鉱石専用船の建造が何より必要かと思うのでございまして、この鉱石専用船を使いますると、荷役が非常に早く能率的に行われ、航海日数も短縮をされまするし、コストも下って非常に安くなりまするため、これは日本鉄鋼業の将来のためにはぜひ今から着手をして鉱石専用船の建造を進めていかなければならぬ、こう考えておるのでありまして、寄り寄り具体的なまた総合的な鉱石専用船の建造計画も練っておりまするし、さらに現在まで半専用船の建造も二はいやって相当の実績を上げておる模様でございますが、これをもっと百尺竿頭を進めた純粋の専用船にまで持っていく必要があると思います。ただこの場合には仕出地、仕向地における荷役設備がこれにマッチするように改善増強されなければならないわけでございまして、今日すぐ作りましてもなかなかはかが行かぬだろうと思うのでございます。この場合には自然相当の資金がかかりますので、海外の鉄鉱資源の開発と申し、あるいは鉱石専用船の建造と申し、これは本来ならば鉄鋼業企業者の負担にのみまかせてやるべき問題にあらずして、むしろ政府の方がもっと積極的な御施策を、特に資金面における御援助が必要ではないだろうか、こう考えているわけでございます。
  57. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)小委員 今のそういう専門輸送船を作るということになれば、相当の大型のものでなければならぬと思いますが、現在製鉄所の大きなもののあるところの各港は、それを十分受け入れ得るだけの港でないと思うのです。現在の船でさえも限られたトン数のものでなければ入らない、さらに少し大型のものは上荷を取らなければ入らないというようなことで、その港の条件も私は伴っておらないと思うのであります。だから、外国の船賃のかせぎの犠牲にならないように競争態勢を確立しなければならない、そのためには大型の専用輸送船を作らなければならないということは鉄鋼競争の上において絶対的なものでありますが、そうすれば今度は港にそれに伴う浚渫、あるいはそれに伴う設備を作ること、そういう条件が伴わなければ、これは解決しないことだと思うのです。それらについてあなたの方で、国の方でこういうふうにやってもらいたいという、いろいろな御注文もあるのじゃないかという気もするのですけれども、もしそういう計画等が作られてありましたら、それを一つわれわれの方に出していただけば、われわれがこの問題を審議解決していく上において何かと便宜じゃないかと思うのです。この点一つ、お差しつかえなかったら、ぜひあなた方の計画の資料をいただきたいと思います。
  58. 岡村武

    岡村参考人 これも全く仰せの通りでありまして、専用船を作りましても、現在の各製鉄所のある港の水深では十分とは申せないのであります。現在のように十メートルか十一メートルの水深でございますと、それに許容される鉱石船の大きさは、重量トンで一万五千トン、総トンで一万トン程度に限られるわけであります。ところがこれは大きくなればなるほど運送効率も上り、コストも安くなるのでありまして、現にアメリカあたりでは、大西洋岸では七万トンの船を使っております。また太平洋岸では三万トンから三万五千トン程度の大型の鉱石専用船を便っているわけであります。こういう大きなものを使いますと、もっともっとコストも下るわけでございますが、今の港は、この一万五千トンの船ですらなかなか入港に不便を感じているので、仰せのように洞海湾が挾くて浅いために、八幡に入ります一万五千トンの鉱石船も門司で二割程度の瀬取りをして、船足を軽くして入っております。そこでこれはスーパ・ータンカーの場合も同様と思いますが、この港の水深を何とか深くしていただくということは、これはぜひ鉄鉱石の立場からもお願いをしなければならない問題でございますが、あまりに大きい問題でございますし、また肝心の鉱石専用船建造の具体的な総合計画もまだはっきりとは打ち出しておらない段階でございます。あるいはそれに先行すべき問題かとも思われるのでありますが、まだそこまで及び得ないわけでありますが、しかし仰せの通りもっと大型の船が使えるように、港の水深を何とか深めていただくということは、お願いいたしたいことだと存じます。
  59. 椎名悦三郎

    ○椎名(悦)小委員 今の鉄源の確保ということは、非常に、重要な問題で、それに関する質問応答も詳しくあったわけでありますが、それに関達して、従来国内の資源としてあまり活用されなかったもので、最近の技術の発達によってだんだん活用の範囲が広められつつあるところの、あるいは砂鉄、あるいはまた磁硫鉄鉱、これらの問題が、もしもいうがごとく可能であるならば、現在の鉄源の確保に非常に大きな寄与をすることと思うのであります。これに関して、時間もありませんから、概括的な御意見だけでけっこうですから、承わりたいと思います。
  60. 岡村武

    岡村参考人 今お尋ねの砂鉄あるいは磁硫鉄鉱等の利用の問題でございますが、これも現在できるだけ使っております。本来の鉄鉱石は一年に百万トンに満たない程度しか生産されませんが、現在使っておりますいわゆる代用鉱石は、砂鉄も百万トン近うございますし、また硫酸津を一直万トン程度は使っておりますので、むしろ本格的な鉱石よりも砂鉄あるいは硫酸津の使用量の方が、国内資源としては多いわけでございます。磁磁鉄鉱は今のままでは使い切れないと思いますが、これは採算の問題、つまり硫黄を取ります採算の問題と、それから硫黄を多少残すその残燈の利用の技術的な問題がからみ合うのでございます。そこで少くともこれは技術的には研さんを積めば解決できる、こういう見通しで、それを時間の問題と一応考え、今からその磁硫鉄鉱の基本的な調査をしておく必要があるということから、すでに二年前から通産省、鉄鋼業界、地方庁、鉱山企業者、この四者が金を出し合いまして、その資源調査を現在やっているわけであります。すでに相当進捗をいたしましたが、これが完成をいたしますれば、この技術的な問題の解決と相待って、磁硫鉄鉱が大きく浮び上ってくるだろう、その目を実は私ども期待をしているわけでございます。
  61. 椎名悦三郎

    ○椎名(悦)小委員 今わかっている程度では、大体どれくらいの埋蔵量ですか。
  62. 岡村武

    岡村参考人 その具体的な数字も実は私は存じませんし、また今の調査が完成をいたさなければ、総合的には申し上げられないと思いますが、磁硫鉄鉱は御承知のように非常に賦存量が多いのでございますから、国内の鉄鉱資源として最も大きく期待できるのは磁硫鉄鉱ではないだろうかと私ども思っております。
  63. 多賀谷真稔

    ○多賀谷小委員 ほとんど問題点が出し尽されたので一言だけお聞きしたいと思います。  海外の鉱山開発でございますが、具体的に現在は買鉱だけでやるのか、あるいはこちらから投資をして開発する、こういう形態が行われているのかどうか、あるいは国際事情によってそれが困難であるのか、また将来そういう形態で行われようという話が進んでいるのかどうか、こういう点をお聞かせ願いたい。
  64. 岡村武

    岡村参考人 これは買鉱だけいたす場合はほとんどございません。フイリピンにいたしましても、マレーにいたしましても、インドにいたしましても、大手の山の開発には、必ず日本の業界から相当の資金、技術設備機械等の投資をいたしております。現在政府間で折衝中のインドの新しい鉄鉱資源の開発につきましても、これはインド政府の投資もございますし、あるいはアメリカの大統領資金の導入も期待されておりますが、やはりわが方で相当の資材その他の投資をいたさなければならないのでございまして、これは将来も同様であると存じます。従って先ほど申し上げましたように、これを一鉄鋼会社、業界だけにゆだねられることなく、もっと積極的な国家的な助成がお願いできぬであろうか、こう考えているわけであります。
  65. 小平久雄

    小平委員長 それでは他に御質疑もないようでありますから、この程度にとどめます。  岡村参考人には、大へん御多用のところ、長い間貴重な御意見を御開陳願いまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  本日の会議はこの程度とし、次会は追って公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時十三分散会