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1956-10-17 第24回国会 衆議院 商工委員会 第63号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年十月十七日(水曜日)     午後一時四十二分開議  出席委員    委員長 神田  博君    理事 小笠 公韶君 理事 小平 久雄君    理事 笹本 一雄君 理事 長谷川四郎君    理事 中崎  敏君 理事 永井勝次郎君       宇田 耕一君    内田 常雄君       菅野和太郎君    椎名悦三郎君       鈴木周次郎君    中村庸一郎君       南  好雄君    神近 市子君       佐々木良作君    佐竹 新市君       多賀谷真稔君    田中 武夫君       田中 利勝君    松尾トシ子君       松平 忠久君    水谷長三郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  石橋 湛山君         国 務 大 臣 高碕達之助君  委員外出席者         総理府事務官         (経済企画庁次         長)      上野 幸七君         総理府事務官         (経済企画庁長         官官房企画課         長)      磯野 太郎君         総理府事務官         (経済企画庁調         整部長)    小出 栄一君         総理府事務官         (経済企画庁計         画部長)    大来佐武郎君         総理府事務官         (経済企画庁調         査部長)    藤巻 吉生君         通商産業政務次         官       川野 芳滿君         通商産業事務官         (大臣官房長) 松尾 金蔵君         通商産業事務官         (重工業局次         長)      大堀  弘君         通商産業事務官         (石炭局長)  讃岐 喜八君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      岩武 照彦君         運輸事務官         (大臣官房企画         課長)     有田  毅君         運輸事務官         (海運局内航課         長)      小田部 康君         運輸事務官         (海運局海運調         整部長)    辻  章男君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      権田 良彦君         運輸事務官         (鉄道監督局国         有鉄道部長)  細田 吉蔵君         日本国有鉄道副         総裁      小倉 俊夫君         日本国有鉄道常         務理事     石井 昭正君         日本国有鉄道常         務理事     藤井松太郎君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 七月十三日  委員淵上房太郎辞任につき、その補欠として  福田篤泰君が議長指名委員に選任された。 同月十七日  委員山本勝市君辞任につき、その補欠として、  遠藤三郎君が議長指名委員に選任された。 同月二十三日  委員福田篤泰辞任につき、その補欠として淵  上房太郎君が議長指名委員に選任された。 同月二十四日  委員松岡松平辞任につき、その補欠として本  名武君が議長指名委員に選任された。 同日  委員本名武辞任につき、その補欠として松岡  松平君が議長指名委員に選任された。 八月一日  委員田中利勝辞任につき、その補欠として中  村英男君が議長指名委員に選任された。 同月三十日  委員中村英男辞任につき、その補欠として井  手以誠君議長指名委員に選任された。 九月三日  委員遠藤三郎君及び井手以誠君辞任につき、そ  の補欠として山本勝市君及び田中利勝君が議長  の指名委員に選任された。 同月十日  委員松尾トシ子辞任につき、その補欠として  神近市子君が議長指名委員に選任された。 同月二十四日  委員松岡松平辞任につき、その補欠として宇  田耕一君が議長指名委員に選任された。 十月十日  委員永井勝次郎辞任につき、その補欠として  小川豊明君が議長指名委員に選任された。 同月十一日  委員小川豊明辞任につき、その補欠として永  井勝次郎君が議長指名委員に選任された。 同月十二日  委員田中武夫辞任につき、その補欠として櫻  井奎夫君議長指名委員に選任された。 同月十五日  委員櫻井奎夫君辞任につき、その補欠として加  賀田進君が議長指名委員に選任された。 同月十七日  委員加賀田進君及び帆足計辞任につき、その  補欠として田中武夫君及び松尾トシ子君が議長  の指名委員に選任された。 同日  理事永井勝次郎委員辞任につき、その補欠と  して同君理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  小委員会における参考人出頭要求に関する件  長期経済計画に関する件  鉄鋼石炭及び電力需給に関する件  石炭その他鉱工業物資輸送状況に関する説明  聴取     —————————————
  2. 神田博

    神田委員長 これより会議を開きます。  まず理事補欠選任についてお諮りいたします。理事永井勝次郎君は去る十日委員辞任されましたが、去る十一日再び委員に選任されております。この際委員長において同君を再び理事指名することに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 神田博

    神田委員長 御異議なしと認め、永井勝次郎君を理事指名いたします。
  4. 神田博

    神田委員長 この際参考人出頭要求の件についてお諮りいたします。日本経済総合的施策並びに国土総合開発に関する小委員長より日本経済総合的基本施策及び国土総合的利用並びに開発等基本施策に関し調査のため、中小企業に関する小委員長より中小企業に関し調査のため、木材利用合理化に関する小委員長より木材利用合理化に関し調査のため、総合燃料対策及び地下資源開発に関する小委員長より総合燃料対策及び地下資源開発に関し調査のため、貿易振興に関する小委員長より貿易振興に関し調査のため、重化学工業に関する小委員長より重化学工業に関し調査のため、それぞれ各小委員会において参考人より意見を聴取いたしたい旨の申し出がありますが、以上各小委員長より申し出通り参考人出頭を求めることに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 神田博

    神田委員長 御異議なしと認めさよう決定いたします。  なお参考人の選定及び日時につきましては委員長において小委員長と協議の上決定いたしたいと任じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 神田博

    神田委員長 御異議なしと認めさよう決定いたします。
  7. 神田博

    神田委員長 この際御報告申し上げます。さきに農林水産委員会より東北及び北陸地方の水書により農村等における商業機構の受けた損害の救済措置の確立に関する件について諸君のお手元に配付いたしました通り申し入れがありましたので御報告申し上げておきます。     —————————————
  8. 神田博

    神田委員長 それでは長期経済計画並びに鉄鋼石炭及び電力需給に関する諸問題について調査を進めます。  まず最近の経済動向と今後の見通し並びに長期経済計画達成度、すなわち実績と今後の対策等について経済企画庁当局より説明を求めます。高碕国務大臣
  9. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 経済長期計画の過去の実績、またこのあり方につきまして一言御報告申し上げたいと存じます。  第一次鳩山内閣が成立いたしました翌年、三十年の一月の十八日にいわゆる経済長期六カ年計画を作ったのであります。これを概括的に申しますと、その当時六カ年の後、昭和三十五年度に達成する目標は、今日からこれを見ますと、六年の計画のもの、つまり三十五年度を目標といたしておりましたものが、三年の後の今日すでにこれを突破しておる、こういう状態でございます。これは一面からいえば、その計画はいかにもずさんだというおしかりもあるだろうと思いますけれども、当時われわれが考えておりました情勢からいたしますと、日本経済がいかに急速に発展したかということをこれが物語っておるものと存ずるのであります。引き続きまして昭和三十年の十二月二十三日にいわゆる第一次五カ年計画というものを発表いたしたのでございます。その目標と現在の実情とを比較いたしますと、これまた非常な勢い日本経済が伸びたのでございます。これを簡単に申しますと、約予定の倍伸びておるわけです。国民の所得におきましてもまた鉱工生産におきましても、また輸出状況にいたしましても、約倍伸びておる、これはわれわれが想像しておるよりも非常な勢い発展なのでございます。  この基礎的な数字につきましては、各省間の意見はもちろん、民間の有識者からの意見もとりまして検討いたしました結果がそういうわけなのでございます。これは一に海外情勢がわれわれの判断よりも好況であったということ、一つ日本豊作に恵まれたこと、こういう点がおもなる理由でございます。世界的の形勢から申しますと、日本経済がかくのごとく短期間に発達したということは一つの驚異でございまして、過去五カ年において、アメリカの経済は、経済規模が約五カ年間平均いたしますと、一年に三……。四%の発達をしておるわけであります。イギリスのごときは二・七%、ドイツは急速の発展をいたしておりますが、それでも約一〇・五%でございます。それに比較いたしまして日本は九・四%、ドイツに次ぐ発達でございます。特に最近の三カ年の情勢を見ますと、ドイツよりも日本経済の方が非常に急速な発展をしております。昭和二十九年ごろは世界の経済学者日本経済を批評して、薄氷の上に舞踏を続けている経済だと言ったでございます。当時ドイツ経済は奇跡的の発達をしておるといってほめられたのであります。今日の経済学者日本経済について全然異なった見解を持ちまして、ちょうどドイツのあの急速に発達を遂げた経済状態と同じ一つの奇跡的な発達である、こういうふうに言っておるわけなのでございます。これは一に輸出貿易に力を注いだということと、日本物価があまり急激な暴騰をしなかったということが一つ理由だと私は存じております。もちろん豊作であったということもこれは大きな理由でございます。そういう状態でございますが、現状におきましてこの日本経済をながめましたときにおきましては、ここに急激に発達した結果、からだが大きくなって着物が小さい。あまり赤ん坊が急に大きくなったから着物が小さくなる。そこに各方面に隘路を来たしておりますが、特に御承知のごとく鉄鋼生産高あるいは電力だとかあるいは輸送力だとかいうものに隘路を来たしておるわけなんでございまして、今後の経済計画などにおきましても、この点もよほど考慮されておると存じておるわけであります。そこでそういうふうなずさんなる経済計画をもってしても何も役に立たぬじゃないか、こういうおしかりを受けるかも存じませんが、こういうものさしがあってこそ伸び過ぎたとかあるいはへこんだということがわかるのでありまして、この経済計画をもって、そのまま政府の力をもって強制してやったということになれば、今日の発達は見なかったことだと存じますから、ここにやはり自由経済のいいところもある、こういうわけであります。自由経済をそのままにしておいたならばあとで間違いがあるだろうから、ここに一つものさしを作るというのがわれわれの目的であります。ものさしを作るのでありますから、そのものさしを作るということについて、幸いにさしよりも実際はよけいになったというわけでありますけれども、場合によればこれはさしよりも小さくなるということも考えなければならぬ。ところがものさしがないということは、これはノー・ズロースですからこれはいけない。ものさしは絶対に必要である。でありますから、この計画を立てるわれわれといたしましては、できるだけ正確なものを作らなければならぬ。それにはどうしても日本経済海外情勢によって動くものであるということを考えなければならぬ。そこで今回われわれは外国の経済動向をどういうふうに見るか、これらのためにわれわれは新しい力を注ぎたい。同時に経済の前途に対して、どういうふうな変化を来たすかということの見通しを立てるということにつきましては、新しい経済的の検討を加えましてやっていきたい、こういうことで、今度の予算等にもその問題につきましては幾らか要求いたしたいと思いますから、どうか一つ御協力願いたいと思うのであります。  そこでさしずめの問題といたしまして、鉄鋼生産、これは計画を大きくしなければならぬ、電力長期計画を立てなければならぬ、これも急速に間に合わぬわけでありますから、さしあたりこれはその計画を縮めて早く実行に移すように進めたいと存じておりますが、この点につきましては通産大臣からまたよく御説明があることと存じます。  そこで問題の輸送関係でございますが、これは非常に大きな問題だと思っております。現在日本貨物輸送状態から申しますと、キロだけでなくてトン・キロ、これで勘定いたしますと、鉄道に依存いたしておりますことが約六〇%でございます。船便に依存いたしておりますことが約三〇%、自動車に依存いたしておりますことが約二〇%、こういうわけなんでございまして、鉄道が大部分を占めておるわけであります。これはなぜそういうふうになっておるかと申しますと、鉄道運賃が比較的安いのでございます。貨物輸送運賃が比較的安いのでございます。船の方は国際的の運賃に動かされまして、国際的の価格が高くなると、国内航路の船が海外航路の船に就航する、こういうわけで、その点につきましてはどうしても国際的の価格に左右されるわけで、今日といたしますと、外航に従事しておる船を国内に回したい、こういう気もいたすのでありますけれども、これはせっかく外貨をかせいでおるものでありますし、ごれもできない、こういうわけでございます。それじゃ自動車の方はどうだ、これをふやせばどうだ、こういう意見になりますが、これはまたおもしろい数字がございまして、昭和六年、八年ごろのあの不景気な時代におきましては、日本道路とそれの上を走る車の投資割合を見ますと、道路の上を走る車の方、つまり自動車がおもなのでございますが、それの投資額が二に対して道の方には八を使っておる、二対八の割合で道ができておったわけです。ところが最近の状態を見ますと、自動車の方に使う金が七になりまして、道の方には三しか使っていない。もとは二対八であったものが今日は七対三になっている。頭の上だけが大まくなってしまって足の方がちっともできていないというような状態であります。貨物輸送自動車によらなければならないといって自動車の数をどんどんふやしたけれども、道がこれに伴っておらなかったというような状態でありますから、この点も考慮いたしまして、来年度の予算等におきましても、できるだけ道路の完成に力を注ぎたい。これがこの輸送問題を解決する一つの方法だというふうに存ずるわけでございます。また鉄道の方におきましては、昭和六年、八年ごろにおきましては、貨車の方の二に対して鉄道は八という割合いで投資しておったのでありますが、今日ではこれが自動車とだいぶ違いまして、一つ企業体でやっている関係上四対六という工合になって、これでもまだ貨車等不足しておるわけでございます。ただしこの問題は、戦争中を見ますとこれはまるで逆でありまして、鉄道等に金をかけずに貨車にかけるということをやった結果、七対三というふうになっておったこともありますので、少しく無理をすれば、貨車さえふやせば多少輸送は緩和するであろうと思っております。いずれにいたしましても、鉄道運賃は非常に値が安いということは事実でありますから、これらの点を考慮いたしましてよく検討を加えたいと思っております。船の問題につきましては、これはどうしても造船の数をふやし船の数をふやしていくこと以外にないというふうに考えております。いずれにいたしましてもこの輸送問題は急速に解決しなければならない問題でありながら、なかなか急速にはできないことでありますから、この点は長期計画におきましてできるだけ確実なる数字を盛っていきたいと存ずるわけでございます。  こういうふうなわけでございますから、来年度の予算におきましてもそういう点をよく考慮いたしまして、隘路である点に十分の投資をするということにいたしますれば、大体から申しまして日本経済は、先刻申し上げました通り非常に楽観すべき状態にあるわけでありますが、一面また悲観する問題も多々あるわけでありますから、来年度におきましてもその点をよく考慮いたしまして、必要欠くべからざるものに対しては投資を十分にするし、また不要のものについては緊縮をするという大体の方針をもって進みたいと存ずるわけであります。  なお長期経済計画につきましては、先刻申し上げました欠陥のないように十分努力いたしまして、確実なるものさしを作ることに努力いたしたいと存じますから、よく御協力を願いたいと存じます。  以上をもちまして私の経済計画につきましての御説明を終らせていただきたいと思います。
  10. 神田博

  11. 藤巻吉生

    藤巻説明員 お手元海外経済情勢と書いてありますメモのようなプリントがお配りしてありますが簡単にこのプリントにつきまして、海外経済情勢を御説明いたしたいと存じます。  最初に米国でございます。そごに数字が載っておりますからそれをごらん願いますとわかりますが、その大ざっぱな概観を五ページに書いてございますからごらん願いたいのでございます。  米国経済は空前の好況を維持しております。七月の鉄鋼ストによりまして鉱工業生産指数も一・二六と若干落ちたのでございますが、その後直ちに生産が上りまして、八月にはすでに一四一の六月の水準に戻っておるわけでございます。鉄鋼業操業度もすでに一〇〇%以上という非常な高い水準に上っております。その結果雇用史上最高の記録という雇用者の数を数えております。八月には六千六百七十五万人という数になっております。なお賃金も上っておりまして、八月の製造工業労働者週平均賃金は七十九ドル七十九セント、昨年八月は七十六ドル三十三セントでございましたのでだいぶ上っておるわけでございます。これは前月に比べましても一ドル以上増加になっております。かように生産賃金も上りましたので個人の所得もその表に出ておりますような非常に高い額に達しております。なおまた小売売れ行きも異常なほどの売れ行きを示しております。毎年八月は小売が下るわけでございますが、一向下らないという情勢でございます。設備抗資も第四・四半期は三百八十億にはね上るというような予想をされておるようなブームでございます。連銀当局のいうところによりますと、投資物理的生産能力の範囲を越えておるくらいであるということであります。その結果として物価の方は、卸売物価消費者物価ともに小刻みではありますが、ジリ高で上ってきております。  結局米国経済は非常に好況でございますが、インフレの懸念が非常に濃厚であるということで、政府あるいは連銀当局がいろいろ手を打っております。その措置を六ページ、七ページに項目を拾って書いております。大統領選挙のあります関係もありましょうか、政府の方で手を打つというよりも連銀当局公定歩合引き上げ等方策をとって、経済引き締めをやっておるというようでございます。  次に英国につきましては同じように工業生産指数雇用等数字が載っておりまして、十一ページに概観を掲げておりますが、昨年以来の金融引き締めあるいは月賦販売の制限、購買税引き上げ等インフレ抑制策が功を奏しまして、耐久消費財生産販売が減少しております。なお投資ブームは続いてはおりますが、その勢いは鈍化しておるように見受けられます。それから鉱工業生産も横ばいから若干低下する気配を見せております。物価はその結果大して上っておりませんで、小康状態というようなところでございます。  貿易関係英国にとりましては重大でございますが、七月までは非常に好転しておりまして、金ドル準備も七月には非常にふえたのでございますけれども、八月には十ページの表にございますように、準備高が一億二千九百万ドルも減りまして、期末の準備高もだいぶ減って参ったのでございます。これが今後下半期は減少期に入るわけでございますので、この程度の準備では心細いのではないかということがいわれております。なお英国につきましては平均失業率が一%だという超完全雇用のために、賃上げから物価騰貴という悪循環の危険が強いようで、これに対して政府は財政、金融等措置を講じまして、経済引き締め方策を講じておりますが、その措置は十一ページから十二ページにかけまして掲げてあります通り公定歩合引き上げ購買税引き上げ住宅補助金削減、こういういろいろな手を打っておるようでございます。  次に西独につきましては同じように数字を掲げ、十七ページに概観を掲げておりますが、西独経済投資も旺盛でございますし、輸出が非常に好調でございまして、これに消費ブームが重なっておるという状態でございます。ただ鉱工業生産は最近とみに鈍化しておるということでございまして、一時言われておりましたような過熱症状はややおさまっておるのではないかというふうに考えております。物価小康状態ということでございます。しかし今後の見通しといたしましては、第一に減税の問題がございます。本年十月から年間二十五億マルクの減税をすることになっております、第二には軍事支出が増大するのではないかということが心配されております。第三には社会保障費農業補助金増額等がございます。これによりまして再び過熱症状が現われるのではないかという心配もございます。  国際収支は非常な好調で、七月末の金外貨準備の総額が、百五十六億八千五百万ポンド、ポンドとなっておるのはマルクの間違いでありまして、御訂正を願いますが、約百二十七億ドルの金外貨準備を持っております。  西独につきまして一番心配の点はやはり労働力不足の問題でございまして、特に徴兵法で約五十万人の壮丁を労働市場からとっていくといたしますと、なお熟練労働者不足ということが心配されるわけでございます。これから賃上げ物価騰貴という悪循環が起るのではないかという心配をやはり持っておるようでございます。これに対しまして公定歩合引き上げ、あるいは政府建築支出削減等、いろいろ手を打っておるようでございます。  なおそのあとソ連につきましても若干触れておりますが、ソ連工業生産も非常に上っておるようでありまして、本年上半期の総生産額は前年同期の一二%増し、第六次の五カ年計画年間増産予定から見ても非常に順調でございます。特に基礎物資のうち石油、ガス、電力増産は目立っております。それから機械設備につきましては発電用設備増産が目立っておるようでございます。なお消費財につきましては耐久消費財の冷蔵庫、洗濯機ミシン等増産あるいは食糧につきましては肉類、酪農製品増産が顕著であるように見受けられます。農業生産につきましては畜産の振興ということが非常に目につくということを言われております。  投資消費につきましてもだいぶ高い水準でご、さいまして、小売の売上も前年同期に比べまして五%増しという数字になっております。  ソ連圏経済計画につきまして注目すべき点は、一つは第六次五カ年計画と時間的な歩調を合わせておることでございます。東独、ポーランド、チェコ、ハンガリー、ルーマニア、アルバニア等の諸国はソ連と同じように本年から新五カ年計画に入るわけであります。中共とブルガリアだげが時期が食い違っておりますが、そのほかの国は時期を合せておるということ、それから時期の点だけではなくて、内容につきましてもソ連の五カ年計画ソ連圏の諸国の五カ年計画との間に調整をはかっておるようでございまして、一つソ連圏内の各国の生産の専門化と申しますか、国によりまして地域的に生産の適したものを生産するというような、生産の分担をはかること、二つには協同化といいますか、個々の部品の総合調達等もやっておるようであります。時期的にあるいは内容的にソ連圏一つの大きな民主主義市場として平和的な経済競争をいどみかけているという点が注目されております。  最後に東南アジアにつきましては、昨年は非常に貿易好況でございましたが、本年の第一・四半期を見ますと、年率にいたしまして五億五千二百万ドルばかり入超であります。第二・四半期になりますとなおふえまして、九億七千百万ドルばかりの入超になるように推定されております。これが二十一ページの表にこまかく数字が載せてございますが、大ざっぱに申し上げまして、輸出の減少の目立つ国はインドネシア、マレー・シンガポール等の原料輸出国でございます。食糧の輸出国の輸出は大して減らなかったわけでございます。これがちょうど昨年と逆の状況になっております。輸入はインドネシア、インド、香港等で非常に大きく増加いたしております。特にインドネシアの輸入増は大きいので、外貨事情が非常に悪化いたしまして大幅な輸入制限を実施することになっております。  以上きわめて簡単でございますが、海外の最近の情勢を御報告申し上げた次第であります。
  12. 神田博

    神田委員長 次は長期計画経済とその実績について、大来計画部長
  13. 大来佐武郎

    ○大来説明員 それではこの三つの資料に基きましてごく簡単に御説明申し上げます。  第一に、主要経済指標の成長率、これはわが国の資料でございますが、過去五年間は二十六年から三十年に至ります毎年の経済諸指標の成長率、対前年の増加率を出してございます。それが二十五年に対して三十年に幾ら伸びたか、その間において年率どれだけ伸びたか、それから五年計画ではどれだけの伸びを予定しておったか、これだけをこの表に示してございます。  一番上の欄は国民所得の実質高でございまして、過去五年間では一五六・四%、五割六分ふえまして、年率では九・四分、五年計画では年率五%の伸びということを予定いたしてありますので、実質的にはだいぶ高いわけであります。なお三十一年は空欄になっておりますが、今一応の推定ではこれが一〇・五という程度になっております。従って三十年、三十一年の二年間に一割をこえる増加がございまして、先ほど大臣がお話になりましたように、この二年間で、五年計画で考えておった四年分、倍のスピードで拡大しておるということになるわけでございます。  消費、支出及び総生産も大体国民所得にほぼパラレルにいっておりますが、鉱工業生産指数がやはり過去五年間に二〇一・二、ちょうど倍になっております。年率にして一五五%、五年計画が七・四であります。これもやはり国民所得と同じようにほぼ倍のスピードになっております。ことに三十一年の四−八月対前年二〇%増となっております。もっともこれは年間を通じて予測しますれば、一六ぐらいになるのではないかと予想されておるわけでありますが、工業は全般に伸びております。過去五年間では生産消費財を問わず一般的に伸びておりまして、特にその中でも化学の二八二・二%、約三倍伸びておるのが大きいのであります。食品とか金属とか印刷というのも二〇〇をこえております。しかしこの三十一年になりまして、特に機械、金属の伸びが大きいことは、この表でもごらんの通りであります。  それから農林水産につきましては、統計の関係上三年しかあげておりませんでしたが、大体林産、水産が、過去においては五年計画目標をやや下回って、農産はこれを上回っておる。ただ農産につきましては、ちょうど三十年が豊作になっておりますので、少しこの数字が大きく出ておるわけであります。  それから国内貨物輸送量、これは国鉄が五年間に一一八%ということになっておりますが、ここでごらんになりますように、二十七年から三十年までマイナス五・八、プラス四・三マイナス一・一、プラス二・六というように国鉄輸送力は過去四年間ほとんど横ばいだったのでありますが、二十年は動乱の関係もございまして、二割伸びましたが、その後四年間横ばいであります。それでことしになりましてから、ことしの上半期四−九月で八・八%ということで、国鉄は輸送力があまりふえない、結局輸送力がトラック等に移動しておったという点があると思うのであります。これはやはりどうにか国鉄がやっていけるのじゃないかというような情勢が見られた原因だと考えられます。トラックはここにございますが、やはり非常な伸びを示しております。ただ先ほど大臣がお話になりましたように、トラックはトンで行きますと全輸送力の六割ぐらいになりますが、トン・キロ輸送の距離をかけまして割合でいきますと一割にしかなりませんが、やはり輸送力としましては、いまだに国鉄が主体を占めておるというのが実情でございます。それから内航汽船が去年は一六%ふえておりますのに——これは輸送統計が非常におくれまして、四月しかありませんが、ことしは六%しかふえていない。これは内航汽船が外に回っておる、近海航路に回っておるということを現わしておるわけでございます。それにかわりまして機帆船は、昨年の一八・九からことしは二六、まだ余力がございますので、だいぶ動き出しておるという状況でございます。この輸送力の伸びは、五年計画はやや低きに過ぎたのではないか、経済の規模の拡大を考慮いたしましてもやや低きに過ぎたような見積りでございまして、今後さらに検討を要する部面だと考えております。  エネルギーにつきましては、電気が年率九・四、これはたまたま国民所得の増加率とほとんど一致しておりますが、大体一割弱のテンポで伸びております。石炭が二・八という実績でありますが、ただここにごらんになりますように、ことしの四−八月を見ますと、一四・四という非常な伸びをしております。国鉄の輸送の二五%は石炭だそうでございまして、この石炭の伸びというの、かやはり輸送力逼迫に非常に影響しておるように見えます。それから石油につきましては、五年間実績は年率四一%、非常に大きな伸びでございますが、これは初めが小さかったという点もございますが、最近二年をとりましても大体二割三分というような伸びを示しております。  貿易の点でございますが、ここにございますように、これは輸出の為替ベースのドル指数と、それから物価の変動を差し引きました数量指数と両方あげてございますが、大体輸出が一七%程度、輸入は金額でいえば一四・五、数量でいえば一九・三というふうな伸びを示しております。これも五年計画予定いたしました輸出八・七、輸入七・四という年率よりはかなり高くなっております。ことに輸出がこの表にございますように、数量指数で見ましても二十九年度三三%、三十年度三〇・六%、ことしの一−六が一九%というような非常な伸びで、輸出はこの三年間で倍になったわけでございます。  それから最後に雇用数字を掲げてございますが、雇用の新たな供給増加、生産年齢人口に達する労働力の増加は、年率二%でございますが、実績はかなりこれを上回っております。第一次、つまり農林水産業の雇用は、二十九、三十と停滞ぎみでありまして、三十一年はまだ暫定的な数字でございますが、四−七月だとマイナス二%くらい、つまり最近の情勢では農業人口がやや減退傾向を示し出したということが見られるわけでございます。  これを概観いたしますと、大体経済規模全体の拡大が非常に早い、ことに三十年、三十一年が早い。そのために輸送力電力等の不足が表面化してきた。ただ各指数間の横の関係を見ますと、この計画に掲げられております数字とそれほど大きな狂いはないように見られるわけであります。大体すべてが計画の二倍くらいなテンポになっておるということでございます。今後経済の拡大率がどの程度でいくか、非常に検討を要することでございますが、いずれにしても年率五%の伸びというものはやや低きに過ぎたようでございます。日本経済力、成長力をややアンダーエスティメートしたきみがあるわけであります。しかしそうかといって、現在の一割というのが今後もずっと続くということはあまりに楽観的なんじゃないか、どこかその両者の中間ぐらいのところで実際の伸びは今後起るのではないかと考えられるわけでございます。  次に、これを諸外国の例と比較いたしますと、第一表、第二表で、産業総合指数、輸出数量指数というのがございまして、世界の生産が、鉱工業生産でございますが、ここにごらんになりますように、五年間で一三一%、年率にいたしますと五・六%で拡大し、またその第二表の輸出数量指数で見ますと、世界の輸出量が五年間に一三三%、年率五・九%で、伸びております。戦後の世界のこういうかなり急速な拡大というものがやはり日本経済成長率を早める一つの有力な原因だったのじゃないかと思われるわけであります。ほかの国と比較いたしますと、これも大臣が申されましたように、日本はこの産業総合指数では五年間に二一三で、約二倍を上回っております。西ドイツは一七九という数字になっております。国民所得の方では、これは後ほど申し上げますが、西ドイツの方がやや日本を上回っておりますが、生産の方では日本のテンポがやや早い。それから貿易の方では五年間日本が二〇七、西ドイツが二五八ということになりますが、これは一九五三年を一〇〇とする指数でございますから、その後三年を見ますと、日本は一八九、ドイツは一四〇ということで、最近三年は日本輸出の伸びがはるかに高い、世界各国のどこに比べても高いということになっております。日本は、いわゆる自由世界の中で最も高い成長率を西ドイツと並んで示しておりまして、この表には共産圏諸国の指数は掲げていませんが、世界各国における国民生産の成長率の資料の方には、三十カ国の、共産圏諸国を含めた各国の経済成長率のデータを、この国民総生産から人口一人当りということで説明しております。統計上国民総生産であったり、物的純生産であったり、国民所得であったり、特に共産圏の諸国は、国民所得の作り方が他の国々と違いまして物的純生産という形でやっておりまして、たとえばうしろのグラフの方があるいはわかりいいかと思いますが、第三図の八ページにハンガリー、ソ連、ブルガリア、東ドイツ、チェコスロバキアというような国々の成長率がグラフと表で示してございます。共産圏諸国は大体一割を上回っておりますが、物的純生産というのは日本やアメリカ、イギリス等がやっております国民所得よりはやや大きく出るようでありまして、この点から見ますと、最近の日本経済の成長率は共産圏諸国とほぼ匹敵しているということになるわけでございます。  以上が大体この資料に基く御説明でありまして、五年計画が、予想いたしましたよりはかなり実績は上回っております。これは考えようによっては実績の方がよかったのでございますから幸いなんでありますが、しかしあまりに離れて参りますと、計画としての役割が薄らいでくる。企画庁といたしましては、将来もしも改訂が必要になった場合には、これまでの計画よりさらに一歩進んだものができますように、目下事務的にいろいろな面からデータを集めましたり、計画の方法論の研究を進めておるわけでございます。  以上概略御説明申し上げました。
  14. 神田博

    神田委員長 次は最近の経済動向について、小出調整部長
  15. 小出栄一

    ○小出説明員 資料は、「最近の経済動向について」という表題の横書の文章がございます。これにつきまして御説明をいたします。  この資料は、今年度に入りまして、最近まで、ものによりましては八月ころまでの各経済の指標につきましての経済動向実績を基礎にいたしまして、本年度に入りましてから最近までの日本経済動向はどういうふうになっておるかということを概観いたしまして、これを基礎にいたしまして、今年度下半期の経済動向と、さらに続いては来年度の経済情勢見通しの参考資料にいたしたい、こういう趣旨のものでございます。簡単に読みながら御説明をいたします。  「最近の経済動向について」。最初はごくかいつまんだ概観でございますが、四月−九月の実績をもとに最近の経済動向を見ますと、輸出は、御承知のように昨年来引き続き高水準を持続しております上に、昨年度下記から増勢に転じました設備投資が、最近では二十八年度出時の活況をしのぐ勢いを示しております。一方消費支出の方も着実なる増加が見られます。そのために鉱工業生産は逐月増加を続けまして、雇用情勢にも好転の横様が認められます。一方本年度の米作は、三年連続豊作の見込みが濃厚となりつつありまして、全般的に見て、本年度の経済は昨年度をさらに上回る発展が期待される状況であります。一口に申しますれば、大体本年度も非常に調子がよろしいということでございますが、しかしこのような経済拡大に伴いまして、今春以来原材料を中心に輸入は急激にふえております。このために、七月には国際収支が一年ニカ月ぶりに赤字に転じたのであります。また昨年来緩慢を続けて参りました金融市況も、このところ小締り状態に推移いたしまして、鉄鋼その他一部商品の物価高騰を反映いたしまして、卸売物価も漸次ジリ高である。ここまでがごく概括的に申しました本年度の上期の経済情勢でございます。  以下これをそれぞれの指標に基きまして分析して申し上げますと、第一に輸出及び特需でございます。輸出、特需の関係につきましては、為替ベースで三十年度は二十九年度に比べまして三一%の輸出が増加したのでございますが、本年度に入りましてからも依然好調でございまして、四月−九月の実績は前年同期を一五%上回っております。月平均にすると一億一百万ドル、これを年に直しますと二十四億四千万ドルということになります。それから特需の方は、当初だんだん減るだろうと予想されておりましたのが、大体固定化する傾向にございまして、四月−九月の平均では五千万ドル、昨年同期の六%増加でございまして、年率にすれば六億ドルということになります。  ここで先般九月末に下半期の外貨予算を編成いたしました際に、そのべースになりました本年度年間を通じましての国際収支見通しでございますが、そのときの一応の各省間の打ち合せによりますと、大体国際収支の本年度の見通しは、輸出が二十四億六千万ドル、特需の受け取りが五億五千万ドル、貿易外の受け取りが一億四千万ドル、合計いたしまして、受け取りの方が三十二億五千万ドルでございます。これに対しまして支払いの方は、輸入が二十八億四千万ドル、貿易外の支払いが五億二千万ドル、合計で三十三億六千万ドルの支払いであります。従って実質収支におきましては年間を通じまして一億一千万ドルの赤字ということになりますけれども、ユーザンスその他の形式収支におきましては約三千百万ドルの黒字、こういうことでございまして、国際収支は必ずしも楽観を許さないというような見通しでございします。  次は投資及び消費でございます。こういうふうな海外の有効需要が非常にふえているということに加えまして、本年度に入りましてから内需の方も非常に増加しておりまして、特に注目されております設備投資動向でありますが、これについては、一つの目安となります民需向け海運を除きました機械受注額、これは経済企画庁で調査しております機械受注調査というのがほとんど客観的な唯一の資料でございますが、これによりますと、四月−七月の実績は月平均三百二十億円というふうに、設備投資は昨年同期の二・六倍でございます。特に七月のことき昨年同期の二・六倍というような非常に大きな受注額になっております。三十年度年間平均に対しましても約八割増というような水準になります。そのほかに東京商工会議所の調べでありますとか、あるいは通産省の調べというようなものによりましても、昨年に比べまして設備投資額が二割以上ふえているというような状況でございます。  一方建築投資も非常に盛んでございまして、三ページにございますように、建築活動もこのところ活況を呈しておりまして、四月−七月の着工統計によりますと、住宅は昨年同期に比べまして三一%増、非住宅は一五%増というような状況で、建築着工の総数から見ましても、七月だけで昨年同期の四割以上ふえているというようなことで、建築投資もなかなか活発でございまして、こういうふうな投資活動が盛んであるという一方、また消費もなかなか活発でございまして、消費水準を昨年同期と比べますと、都市においては四月−七月平均で約一割ふえております。それから農村におきましても四月−六月平均で四%、従って四月六月で総合いたしますと八%増ということであります。百貨店の売上高、これも百貨店法による売場面積拡張の関係もございますけれども、しかし実績といたしましては、四月−八月で前年同期の二割以上ふえているというようなことでございます。  第三は鉱工業生産でございますが、こういうふうな内外の有効需要がふえております関係から、三十一年度に入りましても鉱工業生産は活況を呈しておりまして、七月には生産指数が二三〇・六というふうに戦後最後の水準であり、四月−八月平均でも前年同期を二割以上上回っております。三十年度年間平均に対しても一割五分だけ高い。特に投資活動が活発でございますので、それを反映しまして、金属とか機械というような耐久財関係生産が非常に活発でございます。  それから在庫の関係、出荷も従って非常に好調でございます。製品荘重は最近はやや増加の傾向が見られますけれども、四月−八月平均の製品在庫の指数といたしましては一昨年よりも一一%だけ低い。この間に生産が大幅にふえておりますので従って在庫率といたしましてはきわめて低いということになります。原材料在庫の方は、これは昨年度において急激に生産が伸びまして、それに対して特に輸入原材料の手当が追っついていないというような在庫調整の面もございまして、特に輸入原材料を中心にいたしまして相当に原材料子爵が積極的になっております。従って四月−八月平均の原材料在庫指数は、昨年よりもさらに二割ふえているというような状況でございます。こういうように生産、出荷は増加しておりますか、申すまでもなく輸送はこれに追っつかないということでありまして、貨物輸送も、もちろん貨物輸送量それ自体は非常に伸びておりまして、四月−九月の国鉄の貨物輸送量は前年度同期を九%上回っております。四月から八月ころまで比較的貨物輸送の閑散期でございますけれども、それにもかかわらず、昨年のピークである十月−十一月の水準に匹敵するだけの輸送を行なっております。しかし駅頭在荷は非常にふえておりまして、最近の数字におきましては約百七十万トンに近い駅頭在荷、昨年のピークの十一月におきましても百一万トンの駅頭在荷でありましたので、非常に在荷がふえている。従って輸送逼迫ということが問題になってきたわけでございます。  第四は農林水産の関係でございますが、これも大体好調でございまして、御承知のように麦類は、先般農林省から発表されました作況指数では、作付面積が減っております関係もありますが、実収高は昨年よりやや下回っておりますが、大体横ばいである。それから菜種の作付面積は大幅にふえまして、推定実収高が二百六十四万トンというふうに、昨年よりも一四%上回って、戦前戦後を通じての最高でございます。繭も、春蚕は霜害等のために昨年よりかなり下回るという予想でありましたけれども、夏秋蚕は昨年より上回るという見込みでございます。米は、御承知のように先般の作況で七千万石突破ということは大体確実でございまして、昨年に次ぐ大盤作である、こういうようなことでございます。  次は国際収支でございますが、国際収支は、先ほど輸出の際に申し上げましたので重複を避けますが、食糧輸入は豊作で非常に減っておりますけれども、鉱工業生産のための原材料輸入が非常にふえております。その関係で輸入が非常にふえまして、八月のごときは季節的な減少期であるにもかかわりませず、前月よりも千三百万ドルもふえまして、戦後最高の一億八千九百万ドルというようなところまでいっております。四−九月の月平均では為替ベースで二億九百万ドルというふうに、輸入の方も昨年よりは三割以上ふえておるということでございます。通関実績におきましても同様月平均で一億七千二百一万ドルというふうに前年同期を三割以上回っております。  こういうようなことで、先ほど申しましたように国際収支は七月には一たん久しぶりに赤字に転じましたけれども、八月に収支とんとんに戻りまして、九月には叫び黒字に転じておる。しかし年度全体を通じますと、必ずしも非常に大きな黒字ということにはならないわけでございます。  次は財政金融でございますが、財政資金の対民間収支の関係は、四−九月でもって四百三十七億程度の揚超でございます。昨年の同期は千百十七億円の払超でございましたので、差し引きますと千五百五十四億円だけ財政資金の引き揚げが昨年よりは多くなった計算でございます。こういうふうになりました原因は、第一に外為会計が従来払超でありましたが、輸入の増加あるいはユーザンスの決済増ということで五月以降揚超に転じたということ、それに景気がよろしいので一般会計の税収入、専売収入がふえ、また特別会計の方におきましても国鉄、電電公社の収入がふえたというようなことが上期の揚超の原因でございますが、もちろん第三・四半期に入りましてからは財政資金の払超の時期に入ってくるわけでございます。こういうような財政収支の揚超によりまして、金融機関の手元は資金繰りが苦しくなったという反面におきまして、先ほど申しました原材料の輸入増加あるいは設備投資の活発ということによりまして、銀行の貸し出しは増加して参りまして、貸し出し増加が預金増加を上回るというような状況でございます。先ほど申しました機械受注の状況は非常にふえております関係上、銀行の設備資金の貸し出しも非常にふえまして、七月には二百三十七億円というふうに昨年同月を七八%上回るというような状況になっております。貸し出しのふえております業種につきましては、大体繊維関係、石油精製、一般機械、建設業、百貨店というような方面でございます。基礎的な産業であります電力、海運あるいは鉄鋼というようなところはもちろん貸し出し等もございますけれども、自己資金あるいは社債というふうな面における資金手当が相当大きなウエートを占めておるというような状況であります。  第七は物価でございます。物価は、まず卸売物価でございますが、御承知のように鉄鋼を中心にいたしまして非常に上ってきている。それから木材、それから最近におきましては、石炭輸送の逼迫も拍車をかけまして、石炭価格もやや高という傾向でございます。こういうような基礎財の物価が上ってきているという反面におきまして、消費財の方、特に繊維関係、セメント、家用電気器具、揮発油というような消費財を中心とする商品は軟調でございます。従って全体を総合いたしますと、総合指数はジリ高という傾向でございまして、七月には前月より二・六%上回りました。八月にはさらに二・五%上り、九月半ばの卸売物怖指数は朝鮮動乱直前を一〇〇としまして一七〇・九というところまで上ってきているわけであります。消費物価の方は豊作のために食糧の価格が下っている。それから被服費が下っております。しかし一方住居費が上っているというようなことで、全体としましては大体弱含みの横ばいというような推移でございます。  最後に第八の雇用賃金でございますか、これも非常に好転いたしまして、労働力調査によりますと、就業者数は四−七月平均で八十六万人増加しております。先ほども話がありましたが、農林業関係は三十八万人減少いたしまして、非農林業関係で百二十四万人増加しております。しかもその就業状態の内容を見ますと自営業者、これは大体横ばいでございますが、主として家族従業者が減少しておりまして、そのかわりに雇用の常用的な雇用がふえている。特に四−七月の平均雇用者は前年同期に比べまして九・五%増加しております。こういうふうに就業状態はさらに改善されているのであります。それから特にまた従来は中小企業の面におきまして雇用者がふえている。大企業は停滞しておりましたのが大企業におきましても雇用者がふえておりまして、規模三十人以上を対象としております毎月勤労統計の雇用指数によりましても、四−七月平均で前年同期の四・三%増というところでございます。従って失業情勢も好転しまして完全失業者数は本年三月の百六万人をピークといたしまして、だんだん減りまして、四−七月平均で六十二万人というふうに昨年同期よりも七万人減っております。最後に賃金もやはり上昇しておりまして、四−七月平均で前年同期の約一割増加、一方消費物価は大体安定しておりますが、これがやはり都市の消費水準を高める一つの背景にもなっております。  大体以上のような情勢が、非常に急いで申し上げましておわかりにくかったかと思いますが、最近までの各指標につきましての経済動向であります。従って今後のこういうような上期の情勢をベースにいたしまして、現在から以降、本年度下半期から来年度にかけまして問題になるであろうと思われる点につきまして、ごく簡単に触れてみますと、一つ鉄鋼価格の問題であり、一つ電力生産の伸びに対して電力の供給が追っつかない、電力需給関係の問題、さらには輸送の問題というの、か通常現在険路というふうな表現で呼ばれておるものでございますが、それぞれにつきましてこれは通産省の方から詳しいお話があったと思いますが、大体の状況概観いたしますと、まず鉄鋼でございますが、これは御承知のように最近すでにもうやや値下り傾向を示しております。実際に指定取引が行われますのは、数量から申しますれば八割くらいを占めておって、残りの二割くらいが市中相場であります。市中相場が非常に高い状況でございましたのは、先般御承知のように下期の外貨予算を組みます際に、鋼材五十万トンの輸入ということを発表いたしまして、需給関係の面からいたしますと、今年度は昨年度よりも大体二百五十万トン程度の供給増加になる。これは一方輸入の増加、輸出の減少、それから生産隘路であったアメリカからのスクラップの輸入が増加するというようなことによって生産増も見込まれるというようなことで、大体年度間にいたしまして、二百五十万トン程度昨年よりも供給増になるというようなこと、そういうようなことから需給関係が——この二百五十万トンというのは、前年に比べまして約四割の供給増加でございます。しかも輸入鋼材の入着等の効果の現われますのは、第四・四半期において集中して現われるというようなことで、すでに下り始めておりますし、鋼材の価格の問題も大体鎮静に向っておるのではないかというふうな見通しでございます。もちろん三十二年度以降の長期対策の問題といたしましては、いろいろ問題があろうかと思います。長期的に見ますと、鉄鋼原料の獲得の問題等について、相当長期的な手を打たなければならぬというようなことになろうかと思いますが、さしあたり三十二年度の見通しといたしましても、鋼材におきましては大体本年度よりも一割増しの九百二十万トンくらいの生産になり、一方需要の方も一割増ということになりますと、やはりその間五十万トン程度の輸入ということが必要になるかもしれませんけれども、大体来年度に関してはある程度の見通しが立っておるというような状況でございます。それから電力につきましては、これは非常に最近の実績から見ますと、特に電灯需用の伸びが六%程度の伸びでございましたけれども、これは従来から計画しておりました数字とほぼ予想通りでございますが、電力の伸びが非常に大きくて、第一・四半期の実績におきまして、前年度同期に比べまして二割増加しております。これは計画よりも八%上回っておりまして、特に東北、北陸、中国、四国というような面において非常に伸びが著しい。産業的に見ますと鉄鋼関係、カーバイト、それから機械、ソーダ、非鉄、セメントというような面において急激に三〇%以上の伸びを示しておるというようなことで、結局今年度年間を通じまして、キロワット・アワーにおいてはある程度の不足を生ずるというような見込みでございます。これもやはり下期の水の状況にもよりますけれども、かりに二、三%程度の豊水が見込まれますれば、大体さしあたりの問題としては生産に大きな支障を来たさないで切り抜けられるのではないかというような見通しでございます。来年度の見通しといたしましても、大体需用が一九%くらい本年度よりさらに伸びるであろう。供給の方は十三%くらい伸びるという見通しでございまして、需用端におきまして二十七億キロワット・アワー程度の不足というような計算が一応できるのでございますが、これに対しましてはそれぞれ地区別、各電力会社別にそれぞれの対策を立てることによりまして、さしあたりはより大きな支障は来たさないだろうと思われます。しかしながら長期的に見ますと、電源開発六カ年計画において、昭和三十五年度においては六百九十二億キロワット・アワー予定されておりますのが、今の見込みでは八百億キロワット・アワーくらいに近づくであろうというような予想でございますので、やはり電源開発計画の繰り上げ実施というようなことによりまして、今から長期的な対策の手を打たなければ、将来の需用に追いつかないのではないかということが懸念される状況でございます。  輸送関係につきましては、先ほど計画部長からお話がございましたような、海陸を通じましての従来の実績になっておりますが、国鉄の輸送が一番大きなネックになっております。もちろん海上転移というようなものも考えられますけれども、これはやはり限度があるわけでございまして、国鉄それ自体の輸送力を増強するということがやはり一つの大きなポイントになるかと思うのであります。従来の実績、三十一年度の輸送量は大体一億七千万トンないし一億七千二百万トンというふうな、昨年よりは一割以上の輸送増加を来たしておりまして、非常に輸送に努力しておりますけれども、輸送要請が非常に大きいということで、年間を通じまして大体輸送に対して、実際運ぶ数量といたしまして、三百三十万トンくらい積み残すというような計算の見込みでございます。特に本年度は季節的な農産物がいずれも豊作でございまして、リンゴ、バレイショ、野菜、ミカン、サンマというようなものが大量に殺到して参ります関係上、これが全体の二六%を占めております。石炭輸送あるいは木材というような定量的な重要物資の輸送に支障を来たさないように調整をはかることが必要であろう、 かように考えられるのであります。  大へん簡単でございますが、一応従来の実績を基礎にいたまして、最近の動向について説明いたしました。
  16. 神田博

    神田委員長 次に鉄鋼石炭及び電力需給の現況とその対策について通商産業省当局の説を求めます。石橋通産大臣
  17. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 ただいまの問題については、詳細はそれぞ当局から御説明を申し上げさせますが、今まで経企長官初め各方面から詳細な報告がありましたように、日本経済の伸張ぶりはすばらしいものでありまして、列国から驚嘆の眼をもって見られるような情勢であることは幸いであります。  同時に一部分に多少のネックが現われつつあることは、今の報告の中にもありましたが、鉄にいたしましても、あるいは輸送力にしましても、電力にしましても、さしずめこの一、二年は多少の困難はあるにいたしましても、何とか切り抜けていかれるたろうというふうに考えられておりますが、その先の長期の問題に至っては、今から十分そのつもりで、国内生産力の増強、従ってそれに必要な投資をやる。  それから貿易状況も、今は非常に伸びておりますが、これを長く継続させ、なお一そう伸ばして日本の必要なる労力を与えるということにするためには、なお一そうの助長をしなければなりません。それには国内生産設備合理化に相当の力を注がなければならぬと同時に、海外の市場の確保ということがきわめて必要であることは申し上げるまでもありません。海外市場確保のためには、単に宣伝とか売り込みとかということばかりでなく、進んで日本から海外投資を行なって、その投資をバックにして日本の商品の輸出をはかるということをいたさなければなりません。ことに日本輸出するためには、向うから輸入するものがなければならぬ。その輸入するものが、いつも申しますように非常に乏しいのであります。東南アジア諸国にいたしましても、あるいは中南米等にいたしましても、日本さしずめ持ってくるというものになりますと、なかなか選択が困難であります。どこもみな米を売りたい、あるいは砂糖を売りたいということになりまして、困っている状況でありますから、日本の必要とする地下資源の開発というようなものを、海外の地下資源の開発、たとえばインドの鉄鉱石の開発というようなことには日本が十分力をかしていかなければならぬ。それにはやはり日本からの投資を必要とするわけでありますから、そういう方面へ今後一そう努力を払っていきたい、かように考えているわけであります。いろいろのこまかい問題につきましては、ただいま申し上げますように、それぞれ係から御説明を申し上げます。
  18. 神田博

    神田委員長 次は鉄鋼需給について大堀重工業局次長。
  19. 大堀弘

    ○大堀説明員 お手元に「鉄鋼需給の現状と見透し」という資料をお配りしてございますから、それを中心に御説明申し上げたいと思います。先ほど企画庁の調整部長から大体のお話がございましたので、数字等について補足しながら、その資料を中心に御説明申し上げたいと思います。  最初のページに、鋼材の国内市中価格推移状況というものがございます。最近鋼材が非常に高騰しておりますが、この六−十月までの価格の推移を書いてございます。九月がこれを見ますとピークになっておりまして、十月に入りましてから若干市中相場は下って参っております。これはもちろん市中の価格でございまして、建値で販売をされております。八割程度のものはそれぞれ建値で取引されているわけでございますが、市中相場としてこういった高騰を見ているわけでございます。  ちょっとここへつけ加え願いたいと思うのでありますが、昨十月十六日現在でとりますと、丸棒が九万三千円とありますが八万八千円に下っております。厚板が十二万二千円が十一万円に下っております。薄板が十万一千円とありますが、これは九万円に下っております。このところ約一週間にわたって各品種について連日値段が下って参っております。これは後ほど指数の関係とあわせて御説明申し上げたいと思いますが、これは現状でございます。  次のぺ−ジに参りまして、鉄鋼の需要に関係のあります鉱工業生産指数、機械工業の年産指数、機械の受注高、建築着工坪数は、先ほど御説明がございましたから省略さしていただきますが、ここにありますように昨年の同期に比べまして四割程度上っておる、こういう数字が出ておるわけでございます。  ここで私どもの鉄鋼の対策といたしましては、需要が非常伸びておりますので、いかに供給をふやしていくかということが中心になって参りまして、昨年度の鋼材の生産が六百八十九万トン、約六百九十万トン程度でありますが、本年度は約八百二十万トンの生産を現在実行いたしておるわけでございます。その間に生産をふやします問題としては、溶鉱炉の生産はフル稼働になっておりますので、問題はスクラップの入手をいかにして確保するかということ、さらに必要に応じて銑鉄を輸入いたしまして鋼材の生産をふやしていく、こういう考え方で、本年当初から逐月生産を上げて参りまして、先ほど申し上げましたように、昨年の六百九十万トンから現在の計画は八百三十万トンのべースまで上げて生産をやらしておるわけでございます。スクラップの問題につきましは、国内のスクラップの供給力は限度がございますし、一方輸入にいたしましても、アメリカくず以外の輸入は非常に困難でございます。従いまして、アメリカくずの輸入をいかに確保するかということが一番問題でありますが、今年の春から夏にかけまして、アメリカのくずの輸出が百二十万トン程度に押えられるのではないかということがありましたが、私どもとしましては外交折衝その他の交渉をいたしまして、今日百八十万トン以上輸入を確保できるという見通しを得たわけでございます。これはもう確実に入手できる予定でございます。昨年度のアメリカくずの輸入が九十万トンでございます。これを本年度倍以上にふやしまして、またあわせて現在までに八十五、六万トンの銑鉄の輸入を確保いたしております。国内の高炉の生産をフル稼働し、さらにスクラップ、銑鉄の輸入をはかって鋼材の生産を現在の状況からいたしますれば最高限度まで上げておるわけであります。これが生産増加の対策でございますが、同時に鉄鋼需給関係するものといたしましては、鋼材の輸出と輸入という問題があり、昨年は約二百万トン輸出されておりますが、本年度はこれが百三十万トン以下に落ちるであろうというふうに推測いたしております。従いまして、輸出の減少分だけ国内の供給増として現われるわけであります。お手元にある資料の三ページの生産の増加というのが最初申し上げたもので、輸出の減少による国内供給増というのがただいまの輸出関係でございます。昨年は船積みで百九十七万トン、契約ベースで二百十二万トン輸出があったわけでありますが、本年は大体百三十万トンに減少する見通しでございます。もちろん、その間半製品の輸出は抑制いたしておりますし、製品につきましても、厚板その他について自主的な規制を行なって抑制をいたしております。そういうところで国内に七十万トンよけい出荷されることになるわけであります。  さらに四ページの4のところに書いてございます鋼材の輸入でございます。先ほど申し上げましたように、生産をふやすと同時に、さらに足りないものでありますから、本年の六月以降鋼材の輸入を案施いたしておりますが、ここにありますように、三回までで七十万トン相当額の外貨を割り当ててございます。これは金額の関係で、右にありますように現実には六十四万九千トンでありますが、すでにこれだけの外貨を割り当ていたしてございます。下期は先ほどお話がございましたように、この上にさらに五十万トンの輸入の発表をいたしておりまして、入れられるだけ入れたいという考えでやっております。これがこの割り当てのうち本年十二月末ないし来年の三月末までに国内に到着するものがどのくらいあるであろうかという推測でございますが、今日まで銀行へLCを開設したものが約十六万トン程度でございまして、少くとも三月末までに四十万トン程度到著するであろうというふうに考えております。  以上申し上げましたことを総括いたしまして、生産の増と、輸出の減少と、鋼材の輸入、この三者を合せまして国内の供給力の増として出ております数字が四ページの下から五ページの上に書いてございますが、生産の増加が昨年に比べて宵四十万トン、輸出減少による供給増が七十万トン、輸入が約四十万トン、合計いたしまして二百五十万トン増加になるわけで、あります。先ほどもちょっとございましたように、下期に参りますと生産が上って参るわけでございます。輸出も上期の間は六、七月まで前年度からの繰り越し等もありまして若干出ておるわけでありますが、八、九月とだんだんに減って参っております。従いまして、輸出減少の国内に対する影響も十月以降に現われるではないか、かように考えております。輸入鋼材も十二月末から来年の三月にかけて現物が到着することになりますので、下期にかけましては、需給関係から参りますと供給が相当増加されるという形で出て参ります。こういう全体的な関係から見まして、今日の市中相場は非常に高いのでございますが、これは下らなければならぬと考えているわけでございます。最近若干この傾向が出ておりますが、今後さらに建値の線まで引き下げるように努力をいたしたいと考えております。  最後に対策がいろいろ書いてございますが、結局根本は需要供給の関係で供給力をふやすということでございます。当面小品の需要家に対する関係、あるいは輸出用鋼材の問題、それから中間需要家に対する鋼材の確保、そういった問題がございますので、この資料の五ページに項目が書いてございますが、小品需要家に対するあっせんを若干増加して参りますとか、あるいは輸出機械に対する鋼材のあっせんを十月以来いたしております。さらに輸入鋼材と国内鋼材をプールいたしまして、比較的低い値段で市中に売り出す、こういった制度をあわせて実施いたしまして、できるだけ市中相場の引き下げに努力したいということで現在実行しているわけでございます。  次に需給の現状を概要申し上げますと、長期の問題といたしましては、来年度以降私どもの考え方といたしましては、スクラップの供給が非常に先行き悪い、見通しがありませんので、結局鉄鋼の供給をふやしますためには、溶鉱炉を建てる、同時にスクラップを使わないで精巧なインゴットができますように転炉方式を採用いたしまして、高炉の増設及び転炉の建設ということを最優先に考えておるわけでございますが、同時に、高炉をよけい建てますので海外から鉱石の輸入の確保をはからなければいかぬ。従って海外の鉄鉱石資源を十分今日から手を打ちまして、大きな鉱山を確保して安定した鉱石のソースを求めていきたい。同時に先方及び日本側の港湾の設備、さらにこの間に行われます鉱石の専用船の問題、これを整備いたしまして、鉱石を安い安定したコストで、安定した方法によって国内に運んでくる、こういう対策を中心に今後の大きな方法を進めて参りたいと考えて、現在そういう計画で進めておるわけでございます。  はなはだ簡単でございますが説明を終ります。
  20. 神田博

    神田委員長 次は石炭の事情について讃岐石炭局長
  21. 岩武照彦

    ○讃岐説明員 お手元に「最近における石炭事情について」という資料がありますが、急いで作りましたものですからミス・プリントがございます。先ほど正誤表をお手元にお届けいたしておきましたが、これによって御了承をお願いいたしたいと思います。  初めに石炭生産、需要、炭価の状況を簡単に申し上げまして、御要求であります輸送問題等を御説明申し上げたいと思うわけでございます。表で見ていただきますと、四枚目に一ページという数字が書いてございます。その第二段でございますが、二の「昭和三十年度実績、三十一年度実績及び見通し」というのがございます。昭和三十年度におきましては、合理化実施計画に基きまして、生産を四千三百万トンと計画いたしたのでございますが、ストライキ等の影響がございまして、生産が四千二百五十一万五千、消費が四千四百五十七万五千という数字になっております。本年度に入りまして、先ほど来経企庁から御説明がございましたように、一般鉱工業の伸びに従いまして、上期の生産が二千三百八万七千という数字になっております。それは昨年同期に比べますと、一二%の増加でございます。下期に入りましてもますますその需要が増加して参りまして、最近の生産状況から見ますれば二千四百九十一万三千というふうに予想されるのでありまして、年間合計いたしますと四千八百万トンくらいの生産があるということになるのであります。需要も伸びておりますし、当初生産を四千六百三十万トン、消費四千五百五十万トンという計画で、御承知のように本年六月ごろ三十一年度の合理化実施計測が設定されたのでございますが、需要量四千七百五十万トンで、生産四千八百万トンぐらいが現在の実勢でございますので、合理化実施計画も改訂しなければならぬじゃないかというふうに考えておるような次第でございます。  次に詳しい資料が出ておりますが、これは省略さしていただきまして、次に生産能率の点でございますが、活発な生産合理化の進捗を反快いたしまして、生産能率も着実に伸張しておるのでございます。本年四月以来九月までに——二ページの三に「地区別石炭生産能率の推移」というふうに出てございますが、これをごらん願いますと、全国欄に本年四月から九月まで一三・六、一四・一、一四・〇、一四・〇、二一・一、二二・八と、着実に能率の向上を示しておるのでありまして、三十年度の平均一二・九、二十九年度の一・五に比べますと非常な能率の上り方でございます。本年度の実施計画では一四・五トンを目標とするようにきめられておりますので、この目標に達するのも間もないことではないかというふうに期待されておる次第でございます。  次に貯炭の状況でございます。四ページをごらん願いますと、本年の九月末で百九十一万四千という数字が出てございます。三十年度の三月までは百十六万六千でございましたが、六月ごろの三百五十二万四千に比べますと相当の減り方でございます。貯炭は大体月生産の半月分が適当な正常貯炭だといわれておりますが、生産を四千八百万に押えますと、月生産は四百万トンでございます。その半分の二百万トンぐらいが正常貯炭ということができるかと存じますが、大体それに近い数字、ややそれより弱いというのが現状ではないかと存じます。  次に石炭価格の問題でございますが、六ページに「石炭価格の推移」というのが出てございます。これは少し詳し過ぎるかと存じますが、先ほどの経済企画庁の御説明によりますと、最近の価格の上昇の顕著なものに石炭があげられておるようでございます。事実昨年より石炭価格が上昇しておるのでございまして、最近新聞等にも出ます大手、大品消費者の炭価交渉等から見まして多少上りつつある。たとえば国鉄では本年度上期に五十四円値上げで、下期百円ということが発表されておりまして、現在ガス、電力鉄鋼等の炭価交渉が行われておるわけでございますが、これらの大品につきましては、御承知の通り五十円ないし百円の値上げが交渉されておるのでございまして、一時の非常に安かった不況時代の値段に比べますと、回復していることは確かでございます。これを昨年度発表しました四千九十三円という標準炭価に比べますと、ようやくこの標準炭価に近づいたというのが実情でございまして、統計的に見まして相当の値上りということは言えるかと思いますが、ようやくにして正常なる価格に回復したと申し上げるのが穏当じゃないかというふうに考える次第でございます。  次に合理化法の関係で、七ページに「石炭鉱業整備事業団業務進捗状況」というのがございます。この機会に簡単に御説明申し上げておきますと、昨年十一月に石炭鉱業整備事業団が発足いたしまして買い上げの事務を始めたのでございますが、今日まで申し込んだ炭鉱で合計で七十四件、年間生産数量にしまして百八万五千百三十六トン、約百万トンでございまして、合理化法制定当時、計画として申し上げております三百炭鉱の三百万トンという計画から申しますと、約三分の一に達している状況でございます。それから労務者数は七十四件で七千百四十七人ということになっております。以下は買い上げ申し込みのありました山の整備事業団における手続の順序に件数を記載しておるのでございますが、資格審査中が八件、申し込み撤回が一件、申し込みの拒絶が二件、申し込みの受理が六十三件、こういうことになっております。申し込み受理後の進捗状況といたしましては、評価中及び評価完了が二十一件、評価額の通知、済んだのが十三件、申し込みの撤回が五件、契約締結が三件、買収代金支払いが二十一件、処理の完全に完了したものが二十二件ということになっておりまして、これは昭和三十一年十月六日現在の資料でございます。  その次の八ページに契約締結の済んだ炭鉱を列挙してございます。申し込みの済んだものは全部でこれだけでございます。  その次のページでございます。ページ数がちょっと書いてございませんが、「昭和三十一年度石炭貨車輸送実績及び見込表」というのがございます。北海道、常磐、本土、山口、九州と地域別に分けまして、出炭の見込み、貯炭、供給、山元消費、要輸送量、これらのものを計算しまして、要輸送量というものが四千六百四万七千トン、それで国鉄を経由しない数字を一千万トンあげまして、次の欄が要貨車輸送量でございます。これには正炭、雑炭等、それからさらに港送り、沿線というふうな数字をあげてございまして、その次に中継その他というのがございます。結局最後の欄の総輸送量AプラスBというのが国鉄に輸送をお願いする数字でございます。本年度の全国計が四千五百九十七万七千トンというふうになっております。先ほど来経済企画庁からも御説明のありましたように、昨年度も四千万トンをこえる国鉄輸送量がございました。本年度は四千五百万トンをこえる輸送量でございまして、国鉄の総輸送量の約四分の一に当っております。そんなわけで石炭関係といたしましては国鉄との連係を非常に密にいたしておりまして、中央におきましては輸送対策協議会を持っておりまして、各地におきましては現地で貨車会議、これを毎月実施いたしておりまして、輸送の点には十分連絡を密にし、万遺憾なきを期している次第でございますが、事実国鉄も総輸送量の四分の一のお客さんだというわけで、非常に待遇もいいのでございます。事実また上期におきましては、数字でごらんの通り二千百四十六万四千トンの輸送実績を示しております。これは要輸送量の二千百五十五万トンに対しましては九九・六%というふうに、ほとんど一〇〇%に近い輸送実績を示したのでございまして、この点はわれわれも感謝している次第でございますが、十月に入りまして、次のページに数字が出ておりますが、やはり北海道、常磐、本土、山口、九州という地域別に分けまして、出炭、貯炭、供給、山元消費とか、そういう数字がございますが、結局最後の合計欄、これが要輸送量でございます。それで地域別に要請と査定というのがございますが、要請が運んでほしいという数字でございまして、各現地で輸送の要請をした数字でございます。査定は現地でこれだけしか運べないということにきめられた数字でございます。これを全国合計いたしますと、十月といたしまして四百十七万六千六百トンの要請をいたしましたのに対しまして、査定が三百九十一万八千二百トンとなっております。その差二十五万八千四百トン、これが積み残されているわけでございます。十月になりまして突然二十五万八千四百トンの積み残りが生じた。国鉄は石炭に対して非常に同情的な立場をとっていてくれるにもかかわらず、これだけの積み残りがあるということでございます。一カ月約二十六万トンの積み残りがございますが、これを下期六カ月合計いたしまするに、約百五十六万トン程度になるわけでございます。のみならず下期に入りましてからは、石炭は毎年下期が増産されるわけでございます。その他農産物等の輸送貨物も激増するように聞いておりますので、十月のベースでさらにこれ以上悪くなるのじゃないかという予想もされるわけでございますが、十月のベースで参りましても百五十六万トン余り積み残りが山元にでき工場には運ばれない、こういうことになるのじゃないかと存じまして、非常に心配しているような次第でございます。この点は国鉄の貨車輸送だけでございます。  次のページを開いていただきますと、さらに「港頭傍出見込量並に能力不足状況」というのがございます。問題は北海道の室蘭、小樽、留萌、それから九州では苅田、唐津が問題の点でございまして、室蘭におきましては三十一年度で八十一万五千トンの能力不足が生じまして、小樽においては三十六万七千、留萌では八万六千ということになっております。これは貯炭場から船に積み込む場合の荷役能力の不足でございまして、これを機械化することによって非常に能力が増すというように聞いております。現在のところこの不足分は、資料にもございます通り、非常に不経済な沖積みでやっておるわけであります。それだけ経費もかかるし、日数もかかるということでございます。こういうわけでわれわれといたしましては室蘭に第二貯炭場の補助ベルト・コンベアを設けること、それから第三貯炭場の新設について一日も早く着工してくれるように頼んでおるわけでございます。同様に小樽、苅田、唐津等におきましても、積み込みの荷役の機械化等の問題があるわけでございます。これらの点が早急に実現されることを期待している次第でございます。先ほど来の御説明によりますと、石炭が昨年より増産されまして四千八百万トンにもなったから輸送全体に影響を及ぼしておるというような説明もございましたが、この石炭生産は需要に対応しまして絶対に確保しなければならないものでございます。輸送の問題はそういう解釈もできるかと存じますが、われわれといたしましては甘パーセントの輸送を実現したいと考えておるような次第でございます。  簡単でございますが、以上で御説明を終ります。
  22. 神田博

    神田委員長 次は電力需給について岩武公益事業局長。
  23. 岩武照彦

    ○岩武説明員 お手元昭和三十二年度電力需給見通し(第一次案)という表をお配りしてあると思います。  それでは電気の需給見通しと開発計画の概要を申し上げます。  電気の需用につきましては、先ほど来経済企画庁の方から大幅に需用が伸びておるというふうな御説明がありました。その通りでございます。三十一年度、本年度の下期につきましても、前年度に比べまして十数パーセント伸びておりますが、これは御説明がありましたように、地域的にはあるいは若干の不足もござまいすし、またキロワットの方も少し窮屈なところもございますが、これは幸いに本年の終りにおきまして新鋭火力が三基ばかり完成いたしますので、それらの稼働と相持ちまして、何とか大過なきを期したいと思っております。幸い御承知のように十月も相当水が出ております。年末までは大体大丈夫で、年を越して例年一月の終りから二月にかけて渇水になりますので、その辺におきましては、あるいは漕手のロード調整ということが起るかと思っておりますが、これも大きな支障なくしていけるだろうと思っております。もちろん対策につきましては、貯炭の増加とかあるいはある種の負荷抑制ということにつきまして十分気を配っております。そう大きな障害なくしていけるだろうと思っております。問題は三十二年度でございまして、お手元にあります表をごらん願うとおわかりになりますが、水力、火力その他というように供給力を見ておりますが、全国的に申しますと、水力の方は、これはいわゆる平水−過去の平均の水の出量を見てやっておりますが、発電所の完成等も相当ございますので、ことしの計画に比べて約二%程度はふえるかと思っております。火力は明年度も新鋭火力が相当入りますので、大幅にふえまして約五十億キロワット・アワー、二百億程度になるかと思っております。それから受電でございますが、これは電発並びに府県の公宮電気からの受電でございます。これも約十億キロワット・アワー程度ふえるかと思います。これも大体水力でございますから平水ベースに見ております。それから融通でございます。これは後刻もう一ぺん御説明いたしますが、目下各電力会社相互間でこの融通の話し合いを進めておりますので、その結果を見なければ最終のものはできませんが、ここにあげておりますのは、ことしの計画通りの融通が行えるものとしての数字でございます。ただし、不足地帯の東北並びに北陸から、逆に東京あるいは関西の方に送る電気は、特殊のものを除き考えないということになっておりますので、これは実際的にはもう少し各月あるいは各時間別のロードを計算いたしませんとそう一切送らぬというわけには参らないこともあろうかと思いますが、一応こういう計算をすれば大体この程度の数字が出るというのがこの欄の数字でございます。そうしますと供給力が合計六百六十五億キロワット・アワー、ことしの計画に比べて二一%の増加でございます。それからいつもよく問題になりますロスの問題でございますが、これは送電ロスを一六・七、ことしよりも一・二%下げる。最終の目標を一三%台に考えて逐年下げて参るということでございますが、おそらく一三%台が技術的なミニマムだろうと思っております。総合ロスというのは、このほかに変電所のロス、あるいは配電ロスー配電ロスにつきましてはさらに改善したいと思いますが、これもなかなか一挙に参りませんので、逐次下げていきたい、こういう計算でございます。そういたしますと需用端におきましての供給力が五百三十九億キロワット・アワー、他方需用の方でございますが、これはいろいろな見方がございまして、われわれも出先の通産局を督励いたしましていろいろ固めておりますが、大口産業の増加等もございますので、一応五百六十六億、前年の計画に対し一九%の増、こういうふうになっております。  この中身につきましては、別途年度別需用電力量比較表というのをお配りしてあるかと思いますので、大体御説明いたしますると、電灯関係は、これはわれわれ例年やっておりますが、年率大体六%でふえております。これはそう違わないかと思っております。それから業務用は、これは官庁、公共団体等の比較的電圧の高いものの需用でございますが、これはいろいろな計算等を見まして、特殊な変化の動きはないかと思っております。それから小口電力でございますが、これは五百キロワット以下の中小企業に属するものでございまして、本年は非常に伸びて参っております。一三%まで伸びております。これはだんだんふえて参りますれば、五百キロワット・アワー以上になりまして、大口になります。明年は若干伸びが鈍化するだろうと思っております。  それから問題は大口電力でございます。これの見方につきましては、はなはだ動向が把握しがたいのでございますが、各産業団体方面の投資動向あるいは生産状況等も考えまして、またわれわれの総合的な物資需給の見地からの数字等とかみ合せまして、一応三百四十八億キロワット・アワーになっております。この中におきまして需用増加の著しいものは、先ほど経済企画庁から御説明がありましたように、鉄鋼関係におきまして、特に電気銑、フェロアロイの類が非常にふえております。それから化学工業におきましてはカーバイド、それから電解ソーダ、これは大体合成繊維の原料が中心でございます。それから化学肥料であります硫安、尿素の増加もございます。それから紙パルプの自然増加も相当ございます。その他機械工業等は軒並みに鶴川がふえて参っております。そういうことで、結局今年の実績よりもさらに二五%程度ふえるのではないかと思っております。そういうふうに一応目標を立てまして——前の表に戻りましてバランスをとりますと、全国合計で二十七億程度の不足になるのではないだろうかと思っております。地域別に申しますと、東北あるいは北陸といった地帯が十億、七億キロワット・アワー程度になりますし、その他東京、中部それから関西、中国というふうに軒並みに不足という数字が一応出るわけでございます。やや需給の安定いたしておりますのが北海道と九州の両端というような一応の状況であります。これはここに書いてございますように第一次の一応の見通しでございます。われわれさらにこれをもう少し供給力を出す余地はないか、それから融通についてもう少し考える余地はないかという点を検討いたしております。水力につきましてはもう少し発電所の停止を減らす必要はないか、火力につきましては修理検査の期間等の短縮は考えられないか、それから融通につきましては、先ほど申し上げましたように、月別あるいは時間別の計算をやり直す必要があるかと思っております。それからそれを一応検討を続けてみたいと思っておりますが、いずれにしましても全国的にはこの数字はそう大きく動かないのではないかと思っております。それで特殊の対策といたしましては、先ほど申し上げました火力の修理検査期間の短縮のほかに、水力におきましては、たとえば貯水池調節等におきまして観光あるいは農業水利等の関係から水の使用を制限されておるところがあるわけでありますが、こういうのをもう少し何とか話し合いで電気の不足のときに使えるような方法にできないものかという点も具体的に検討したのでございます。火力の場合は今申し上げた通りであります。  それで明年度大体百万キロの発電所が完成いたしますが、この完成の繰り上げにつきましても目下力を入れさせておりますが、これもあと一年分でございますから、そう目立って早くするというのはなかなかむずかしいのであります。せいぜい一カ月程度の繰り上げにとどまるのではないかと思っております。この方も力を入れたいと思っております。そういうことをいたしまして、できるだけ供給力をふやし、各地域間のバランスのとれていないを少くするということにいたしたいと思いますが、やはりどうしても全国的に見ますれば供給力が相当大幅にふえるということが期待できませんので、勢いある種の需用の調整を行わざるを得ないだろうと思っております。具体的には、たとえばできるだけ豊水期の深夜に稼働するように調整して参る、あるいは場合によりましては休日の振りかえあるいは特殊電力の活用といような問題によりまして、できるだけ産業界の需用に対処して参りたいと考えております。  先々の問題でございますが、大体三十三年度は、あるいは三十二年度ほど苦しくはないのではないだろうかという見方も相当ございます。それは三十二年度には火力を含めまして約百四十万キロ近いものが完成いたす予定でございます。それからむしろ完成のあれから見ますと、三十二年度と三十四年度が苦しくなり、三十三年度と三十五年度は一服するのではないか、こういうふうな傾向がございまして、従って後刻申し上げますが、現在の開発の繰り上げの主力を二十四年度完成のものに力を入れたいと考えております。開発の方でございますが、結局この供給不足に対しましては、明年度の応急的な措置はともかくといたしまして、やはり基本的には開発計画を相当大幅に進めて参らざるを得ないわけでございます。  これを簡単に申し上げますと、現在の開発計画経済企画庁の五カ年計画に合せたものでありまして、これはちょうど、三十年度を含めまして三十五年までの六カ年に六百万キロの発電所ふやすというようになっております。そのうちすでに一三十年度におきまして百十万キロ程度完成、三十一年度にも今申し上げましたように百十万キロ程度完成いたします。そうしますと、残りますものは四百万キロでございます。四カ年間に四百万キロというのが現在残っております開発計画でございます。そういたしまして、ことしの着工は百七十万キロ着工しております。そういたしますと、もう開発計画の着手は今年度で一ばいになっておるということであります。結局この開発計画は少し小さいのではないかと思いますのでそれを最近の需要の増加の傾向を考えまして、もう少し大きく改訂いたしまして、開発のテンポを進めて覆りたいということで、目下具体的に経済企画庁等とも検討中でございます。大体の考えといたしましては、三十五年度におきまして当初の経済計画で見ました需要は小さ過ぎて、これが約一割程度ふえるのではないだろうか。そういたしますと、先ほど経済企画庁からお話がありましたように、キロワットアワーにいたしまして、自家発を含めて八百億になるわけであります。それに見合います設備出力ば現在の計画の残っております四百万キロに足しますに大体三百万キロということになりまして、合計七百万キロ程度を四カ年間に完成するということになりまして、年間平均百五十万キロをこえるわけでございます。これは相当急ピッチな開発でございます。もちろんこの内容、完成時期等につきましてはもう少しわれわれのかも具体的に検討いたしまして、何とかこの計画ができるようにしたいと思っておりますが、結局早目に繰り上げてやるという必要があるわけでございます。それを一年早めまして、ことしのうちにもう少し追加着工ができないかということで今検討して、ある程度進めつつあるのでありますが、これはことしの百七十万キロの新規着手に加えまして、水火力を合せまして約八十万キロ前後のものを本年度内に着工の運びにいたしたいと考えております。これは水力はなかなか大きいものは間に合いませんで、北陸地方の小さい水力が中心になりまするが、火力を応急の問題といたしまして各地で取り上げて参りたいと思っております。それからもちろん現在の開発計画に上っておりまするものはこれを繰り上げまして、三十工年度に間に合うのはなかなかありませんが、少くとも三十二年度にはものをいうようにしたいと思っております。この関係で工事資金も約百二十億前後増加するかと思っておりますが、これにつきましては開発銀行の融資の増加も目下具体的に交渉しております。多分三十億ないし四十億円の追加融資が見込めるのではないかと思っております。  それから明年度でありますが、これも先ほど申し上げましたように、まだ具体的な地点があまり上っておりませんので、われわれの希望的な数字になるかもしれませんが、これも水火力合せまして着工二百万キロという線で少くとも新規のものは着工いたしませんと、四カ年間七百万キロ近いものはなりませんので、これも急ぎたいと思っております。この関係につきましては、やはり九電力、それから電源開発会社、府県の公営等それぞれ工事資金の増加もありますので、財政資金の問題あるいは市中資金調達の問題につきましては、十分な手を打ちたいと考えております。まだ実は具体的な数字等固めておりませんので、お手元に表としてお配りできないのを残念に思っておりますが、大体そういうふうなことで、需用の増加に対応いたしまして急ピッチで電源開発の計画を進めたい、こういうふうに考えております。  簡単でございますが、一応御説明を終ります。
  24. 神田博

    神田委員長 次に石炭その他鉱工業物資輸送の現況とその対策について、運輸省並びに国鉄当局より説明を求めます。  まず運輸省陸運関係について権田鉄道監督局長。
  25. 権田良彦

    ○権田説明員 それでは私から簡単に御説明を申し上げます。ただいまお手元に現下の緊急輸送対策と書いてございます刷りものをお配りいたしておりますので、それに従いまして簡単に御説明を申し上げます。  すでに御案内の通り、陸上輸送力が非常に逼迫しておりますのは、一つには、経済自立五カ年計画で予想いたしました経済発展のテンポが予想以上に伸びておりますのと、これに加えて相次ぐ農産物の豊作と、また基本物資である重要物資の増産が著しく行われております反面、輸送機関に対しまする投下資本がただいままでのところ非常に不足をいたしておりまして、輸送力増強が立ちおくれましたために、すでに弾力性を失ってこういう状態を引き起したのでございまして、端的に国鉄の輸送力不足という問題が惹起されております。国鉄の輸送力の現状につきましては、引き続いて日本国有鉄道小倉副総裁から御説明申し上げますが、この国有鉄道輸送力不足に加えまして、他の陸運がいかなる状況に相なっておるかということを簡単に申し上げます。  まず沿岸航路、内海航運の関係でございまするが、昭和三十年度におきましては、内航貨物は約五千九百十五万トンばかり運んでおりまして、対前年一割四分くらいの増加でございますが、本年度に入りましても引き続き増加傾向は増しております。私どもはその増加割合を約二割程度と見ておりますので、三十一年度の年間輸送量は七千万トンに近づくものと考えております。従って内航輸送におきましてもかなりその状況は困難になるとは思いますか、しかしながら国有鉄道輸送力逼迫に比べますれば、まだこの内航稼働船腹は月平均約七十三万一千重量トンでございますので、これに外航大型船の内航就航あるいは内外航稼働しております中小型船の内航就航の増加が期待せられますので、ある程度輸送要請には応じ得ると思っております。油を送ります油送船また内海におきまする機帆船等におきましても、横付率ないし稼行率の向上によって船腹需要に応じ得ると思います。委員長から陸運と御指定がございましたが、この内航海運は陸運とあわせているいろ対策上の対象体になりますので、ついでに御説明申し上げたわけでございます。  次にトラックでございますが、最近の貨物自動車輸送は、これまた対前年度一割五分くらいの増送となっておりまして、本年度におきましては、その年間推定輸送量は約一億七千三百十五万トンくらいに達するものと存ぜられます。これに対して年間の営業用トラックの普通車の輸送能力が約一億九千万トンくらいと推定いたしておりますので、月間にいたしまして、百三十八万トンくらいの余剰輸送力はあると存じておるのであります。従いましてこの陸運、内航海運合せまして、この逼迫いたしました国鉄輸送力を解決いたします対策といたしましては、これらのものの総合輸送力を発揮せしめたいと考えておるのでございまして、関係各省をもちまして構成いたしました緊急輸送対策連絡会議というものもでき上りまして、本月の二十四日にこの実行について精細な打合せをいたす予定でございます。  以下なお簡単にこれらの緊急対策を若干御説明申し上げますと、国鉄につきましては、今持っております力をなお発揮せしめますために貨車運掛効率の向上、なお夜間荷役をもっと荷主の協力を得て大きくやっていただく、あるいは積みおろし、配達に従事いたします小運送業者を大いに督励いたしまして通運力の強化をはかる、またあるいは休祭日にありましても、これまた荷主の御協力を得て、休祭日でも平常日通りの仕事をしていただく、あるいはいろいろ車種が異なっておりますが、これを相互融通使用していただく、また車もだいぶ古くなって参っておりますが、この際廃車を少し延ばすとか、これらの車の年齢を引き延ばす工事を緊急施策として行う。これはほんとにせっぱ詰まった対策でございますが、なお石炭車につきましては若干の増し積みをするというようなことを講じて、とにかく持てるだけの力は出させたいと思っておるのであります。  しかしながら、これをもっていたしましては、後ほど詳しく説明があるかと思いますが、この第三・四半期におきましても、国鉄輸送力というものが輸送要請に対して約三百三十万トンはかりの送り不足が現われる結果となるのであります。これらにつきましては、ただいま申し上げました他の交通機関を督励いたしまして、これに転貨をいたさせたい。この点については運賃の問題、諸掛りの問題、あるいは取引単位の関係がございましてなかなか困難なものもございますけれども、具体的に一つ片をつけていきたい。ただいままでのところ、たとえば松尾鉱業の硫化鉱であるとか、大船渡のセメントでございますとか、宇部港の肥料でありますとか、門司港の中継にかかる工業塩につきましては一部の海送転移をすでに実行いたし、また細倉鉱山の硫化鉱、亜鉛、鉛の一部につきましてもトラック転移をすでに実施いたしておりますが、なおこのようなことを出先の地方海運局をも動員いたしまして、この内航海運を行政指導によって輸送し得る貨物の集荷を促進せしめたいと思っております。  なお内航関係の海運業者あるいは地方機帆船組合等に対しましては、こういった適格貨物の所在についてこれを周知連絡し、その引取方の手配をいたさせたいと思っております。ただ内航海運につきましては、御承知の通りに港湾施設がいまだ整わざるものがございまして、この荷役が非常に不合理な作業をせざるを得ないようになっておりまして、これが先ほども申しました諸掛り高騰の理由に相なりまして、転移を妨げておる点にもなっておりますので、これらについても接岸施設の整備とともに船舶の稼行率を上昇せしめるために、荷役機械の近代化をいたしたいと思っておるのであります。  それからトラックにつきましては、先ほどの余剰輸送力を動員いたしますために、これまた出先の地方陸運局並びに陸運事務所、地方トラック業者と各地方の鉄道管理局との緊密な連係によりまして、この余剰輸送力を動員いたしまして、特に輸送繁忙地帯へ他の地区からトラックを回すというような措置を講じたいと思っております。さらに短距離の五十キロ以内くらいの荷物につきましては、通運事業者の窓口におきましてこれをトラックにおいて運んで参るように荷主を勧奨いたしたいと存じておるのであります。これらの緊急対策を講じましても、なお国有鉄道輸送力不足をすることが明白でございますので、根本的にはぜひこの際経済自立五カ年計画に見合いますところの国鉄の輸送力整備五カ年計画というものを私ども持っておりますので、これを強力に推進して輸送力を増強して参りたい。特にこの鉄道輸送力及び陸運、内航海運の輸送力というものは多額の資金と相当期間の日時を要しまして、一朝一夕にしてその輸送力の拡充ができませんのですが、ぜひここで根本的な対策を打ち立てたい。このためには運輸省といたしましては、国鉄運賃を是正いたします等の措置によって、今後の投下資金の確保をはかりたい。なお民間資金の活用というようなことについて一そうその度合をこれらの輸送力整備に役に立つように措置いたしたいと考えておる次第でございます。  はなはだ簡単でございますが、全般的な説明にかえさせていただきます。
  26. 神田博

    神田委員長 次は、国鉄側の小倉副総裁。
  27. 小倉俊夫

    ○小倉説明員 私から鉄道の現状を御説明申し上げまして、なお石炭輸送関係につきましては石井常務理事から御説明いたさせることにいたします。  お手元に「鉄道輸送の現状」という小冊子を御配付申し上げてありますが、これにつきましてごく大局的に御説明申し上げたいと存じます。  第一は旅客輸送でありますが、これはごく簡単にさせていただきます。ただ旅客輸送も現在非常な混雑を来たしておりまして、急行列車も座席がないために長途の旅行に困る。また通勤輸送はラッシュには定員の三倍くらいの混雑をいたしております。これも何とか打開いたさなければならないと考えておりますことだけを申し上げておきます。  主として貨物輸送について申し上げますが、四ページに貨物輸送の現状という見出しで書いてありますが、実はこの小冊子は本年の六月時分に作成いたしましたので、そのときまでの現状でございます。その後九月、十月と最近になりましてますます出荷が旺盛でございまして、国鉄といたしましては能力の限度まで運んでおりますが、それにいたしましてもどんどん滞貨がたまる一方であります。これを書きましたときの現状よりもさらに一そう現在の一般輸送力が逼迫しておるということを御承知願いたいと存じます。  第一に車両と輸送量との関係でございますが、輸送トン数は二十年度におきましては一億六千万トンでございまして、これを昭和十一年度に比較いたしますと一六四%になっております。ところがこれのみではございませんで輸送距離が非常に延びております。結局鉄道輸送力をきめますのは、数量と輸送キロとをかけ合せたものになりますので、それを私どもはトン・キロと申しておりますが、そこに掲げてあります通り、トン・キロでは戦前の二六一%、二・六倍になっております。ところがこれを運びます貨棄の方は戦後資金不足のために、なかなか輸送力を満足させるだけの新造車ができませんので、現在では戦前と大して違いはなく、ここに書いてありますように、戦争直後の昭和二十一年度に比べて一万両以上も少くなり、これは新造よりも廃車が多かったためでありますが、現在十万六千両となっております。それから輸送力を端的に表わしますのが貨物列車の走行キロでありますが、これは昭和十一年度に比べて一六二%で六割二分しか上っておりません。従いまして貨物の方では二六倍にもなっておりますのに、輸送力では貨車も大してふえないし、それから貨物列車の輸送キロもせいぜいふやしまして六割一分増をいたしただけでありますので、どうしてもここに無理が来たわけでございます。どうしてかように施設の方がおくれましたかと申しますと、戦後に資金が不足でございまして、老朽施設の取りかえもなかなかできないし、輸送力を増強する改良工事も思うにまかせずということで中途半端な工事を続けて参りましたので、結局貨物輸送量の増加に追いつかなかった、これが第一点でございますが、もう一点は最近非常に急激に貨物が増加いたしたいということでございます。経済自立五カ年計画が毎年対前年度二・五%の貨物輸送力の増強という想定でございましたが、最近の私どもの実績によりますと、大体七%ないし八%の増強になっておりまして、最近非常に急激な出荷のために輸送力がとうていこれに追随し得ないというのが第二点であります。それで最近におきましては、各所におきまして、はなはだ申しわけのないことでございますが、取引を阻害するような徴候が見えて参りました。つまり売買にクレームがつく。輸送力がないために適当に送れない、そのために苦情がつきまして取引の解除、契約の解除あるいは延滞利息、賠償といったようなお客様の取引を阻害するような実情が出て参りまして、非常に憂慮し、また相済まなく考えておる次第でございます。それでこの傾向はますます強くなって参りまして、今年は米も非常な豊作でございますし、昨年の古米がたまっておる上に新米の輸送、あるいは季節物のくだもの類、水産物、こういうものが非常に豊作、豊漁でありますので、そういうものも一時にかぶって参りまして、この年末には非常に輸送力不足するのではないかと憂えている次第でございます。それでただいまは国鉄の全輸送力を動員いたしております。普通でありますれば五、六、七、八月は夏枯れの時期でございまして、どちらかと申しますとこの期間に車両の修繕、線路の保守ということをいたして年末の輸送に備えるのでございますが、今年はそういう余裕が全然なく、フルに列車を動かしております。大体鉄道輸送貨物列車の走行キロで申しまして 日三十七、八万から四十一、三万キロというところでございますが、最近は四十五万キロを突破いたし、私どもがこの年末に計画いたしておりますのは、何とかしてこれを五十万に上げたいということで現場を督励いたしている次第でございます。でありますからして、対前年度よりも非常に増送をいたしております。鉄道輸送量は昨年よりも相当に上っておりますにもかかわりませず、駅頭滞貨あるいは計画輸送の滞貨は日々上って参りまして、ただいまは百五十万トン以上、百六十万トンの声も聞いております。大体滞貨は普通でありますれば六、七十万トン、昨年の上半期は大体そのくらいでございましたが、今年の上半期にはそれが七、八十万トンでございまして、それからどんどん滞貨が上って参りまして、最近は百六十万トンの線を突破するというふうで、このままで続きますと年末において二百万トンをこえるのではないか、何とかこれに対処していきたいということで、職員一同がんばっておる次第でございます。  この「鉄道輸送の現状」の中で表をごらん下さいますと、十二ページに別表九、「貨物輸送量の推移」というのがあります。これは昭和十一年度輸送トン数を指数で申しまして一〇〇といたしますと、三十年度は一六四になっております。しかしこれも先ほど申しました通り輸送キロが伸びておりますので、トンキロで現わしますと、昭和十一年度は一〇〇でありまして、三十年度は二六一となっております。これはその下に書いてございます貨物輸送キロの推移というのをごらん下さいますとわかりますが、昭和十一年度では一トン当りの貨物平均輸送距離が一六七キロでありましたのが、三十年度は平均二六五・六キロになっております。これはやはり鉄道貨物といたしまして、石炭、木材、それから農産物、北海道物資というようなものが距離が長いのでございまして、こういう種類の貨物がふえたということであります。そのためにかように貨物の足と申しておりますが、足が長くなったために先ほどの表のように数量は一六四に対しまてトン・キロが二六一になっております。これに対しまして貨車数は昭和十一年度を一〇〇といたしますと、三十年度は一四五、四割五分の増強にしかなっておりません。それでよくこれだけのものを運べたと仰せられるかもしれませんが、これは貨車能率をごらん下さいますと、昭和十一年度を一〇〇にいたしますと、一八〇%、つまり八割だけよけいに稼働させて運んだのでございます。大体そういうことでありまするが、鉄道輸送力と申しますれば決して貨車の数によりまして現わされるものではありませんので、むしろ列車をどのくらい動かすかということでありまするが、この列車を動かすにはもちろん機関車、車両が必要でございますが、もう一つには線路容量がございます。単線、複線おのずからその上に走らせる貨物列車の数というものに限度があります。国鉄は貧乏人のやりくりと申しますか、極度に動かしておりまして、諸外国に類のないほど列車を一本の線路の上で動かしておりますが、これももう限度に参りまして、これ以上は一本も列車を入れるわけにはいかぬという幹線までできております。これは北陸線の例でございますが、北陸線はもう一本も列車が入らない。しかしほかはどうかと申しますと、東海道線でも東北線でもその他の線区においてもほとんどぎりぎりの線まできておる次第でございます。これをこのままに放置いたすわけにも参りませんで、私ども輸送の責任者といたしましては何とかしてこれを増強いたしていきたい。このままで放置いたしますれば、国力発展の一大隘路となるということで日夜焦慮いたしまして、これに対処するため五カ年計画を策定いたした次第でございます。これには車両ももちろんふやして参りますが、そのほかに線路容量をふやす意味において線路の増設をしていきたい。それから線路だけが十分ございましても列車を組成し、整理するというヤードがもうフルの能力になっておりますので、これも拡張いたしていきたい。それからスピードを上げまして、線路容量をふやすため電化、ディーゼル化をいたしていきたい、かようないろいろな工夫をいたしまして少しでも早くピッチを上げまして、国力発展のための貨物増送に対処していきたい、かように考えておる次第でございます。
  28. 神田博

    神田委員長 次は石炭輸送について、石井常務理事
  29. 石井昭正

    ○石井説明員 ごく簡単に鉄道石炭輸送状況について御説明を申し上げます。御承知の通り石炭は国鉄貨物のうちで発送トン数にいたしまして四分の一の大宗を占めておるのでありまして、この消長が鉄道貨物輸送量の一番大きな要素となっておるわけであります。本年の石炭輸送計画は、当初通産省の出炭計画とお打ち合せをいたしまして、年間四千五百五十万トンという見通しで、年度当初は、その出炭見込みに応じました輸送計画を立てておったわけでございます。この四千五百五十万トンというものに対しましては、私ども本年度におきましては現在の能力をもって十分お運びできる、かように考えておるわけであります。ところが年初に入りましてから非常に石炭の需要も出て参りましたし、かつまた生産も強調でございますので、五月に大体年間四千六百八十六万トンベースまで上げなければならぬということでございまして、いろいろこれに対しまして手を打って参ったわけでございます。ところが最近におきましては四千八百万トン程度のぺースで出炭があり、また需要があるようでございますので、これにつきましては十分努力をして御要請にも応じたいと考えて計画をしておりますが、何分にも他の貨物の要請もきわめて強く、全般といたしまして輸送力が逼迫しておりますので、四千八百万トンのペースに対する御希望には、この輸送繁忙期においては若干御要請に応じ得ない点もあるかというような感じをいたしておるわけでございます。実績を申し上げますと、第一・四半期では昨年のこれは北海道、常磐、山口、九州の四大坑所発のトン数でございますが、私どもの方で輸送いたしましたトン数が、昨年第一・四半期は七百九十四万トンでございます。本年の第一・四半期は実に九百五万六千トンになっております。それから第二・四半期におきましては八百二十八万五千トンが昨年の実績でございますが、本年は九百九万トンというように、非常に驚異的な数字でございますが、本年の第三・四半期にはおそらく一千万トンをこすということで私どもの方は計画を立てて参っております。そこで大体今までのところは、前年の輸送計画で参りますと、これはもちろん石炭の業界あるいは需要者から見れば、十分御満足を得た数字ではございませんが、一応私どもの方の輸送能力その他等を御勘案願って、いろいろ業界とも御相談申し上げてやって参った数字に対しまして、第一・四半期と第二・四半期を通じました上半期におきましては、実績はその御要請の大体九八%に到達いたしておるわけであります。私どもの輸送目標から見ますと、九九%、ほとんど一〇〇%に近い輸送を行なっておるわけでございます。ところが第三・四半期に入りましては、遺憾ながら他の貨物が非常に輻湊いたしますので、御要請に対して九六%程度の目標を立ててやっておりまして、この目標の達成だけはぜひいたしたい、かように考えております。  そこでそのために打ちました手は、石炭列車を増発して参りまして、北海道関係では六百四十四キロ、常磐炭関係では五百九十六キロ、それから九州炭につきましては列車を五本増発いたしまして、全部で千二百三十九キロの列車増発をいたしております。それから石炭車につきましては千五百両を新造の計画をしておりまして、現在までに百両入っておりますが、これはできるだけ早期に入手するように、ただいま業者の方と資材入手等についてせっかく折衝を続けておる次第であります。それから先ほどお話がありました、石炭車に増し積みをするということも千三十両のセム車に対して行なっておりますが、何分にも車両が間に合いかねる点もございますので、古い石炭車で、もう実は使えるか使えないかのせとぎわにきておるものがございます。これを延命工事を実施いたしまして、千四十車というものを延命して使って、この繁忙期を切り抜けるつもりでおるわけであります。なお石炭は、セム車、無蓋車の能力も相当関係しておりますので、無蓋車につきましては、現在計画しております計画に、さらに本年度の予算内におきましては五百両の新規発注を期待しておりますし、それからまた関東地方の常磐炭の輸送に充てるために、現在西武鉄道で砂利を運んで、遊んでおります無蓋車がございますが、これを急速二百両借り受けまして、これを常磐炭の増送に充てる、あるいはセメント等の増送に向けるという窮余の一策もやっておる次第でございます。  設備関係といたしましては、根本的な設備につきましては長期計画に待たなければなりませんが、さしあたって問題となっておりますのは、北海道の室蘭でございまして、北海道全体といたしますと小樽、室欄等については相当の能力があるのでありますが、何と申しましても配船、仕向地等の関係で室蘭に集中するわけであります。現在室蘭の能力が非常に行き詰まっておるわけでありますが、この点につきましては貯炭場の計画も今後の計画として実現するように十分努力いたしたいと思っておりますが、さしあたりベルト・コンベヤを貯炭場に建設する。それから強風対策といたしまして、冬季非常に強風が吹くときに、クレーンが使えないというものを補強いたしまして、ある程度の強風に耐えられるようにいたしたいという点で工事を勘案いたしておりまして、これも何とかできるだけ早い機会に実施するようにただいまいろいろ検討をいたしておる次第でございます。  ごく簡略でありましたが、現況につきまして御説明申し上げたような次第でございます。
  30. 神田博

    神田委員長 本日はこの程度にとどめます。  次会は明十八日午前十時より開会する予定であります。  これにて散会いたします。    午後四時三十分散会