○小出
説明員 資料は、「最近の
経済動向について」という表題の横書の文章がございます。これにつきまして御
説明をいたします。
この資料は、今年度に入りまして、最近まで、ものによりましては八月ころまでの各
経済の指標につきましての
経済動向の
実績を基礎にいたしまして、本年度に入りましてから最近までの
日本の
経済の
動向はどういうふうになっておるかということを
概観いたしまして、これを基礎にいたしまして、今年度下半期の
経済動向と、さらに続いては来年度の
経済情勢の
見通しの参考資料にいたしたい、こういう趣旨のものでございます。簡単に読みながら御
説明をいたします。
「最近の
経済動向について」。最初はごくかいつまんだ
概観でございますが、四月−九月の
実績をもとに最近の
経済動向を見ますと、
輸出は、御承知のように昨年来引き続き高
水準を持続しております上に、昨年度下記から増勢に転じました
設備投資が、最近では二十八年度出時の活況をしのぐ
勢いを示しております。一方
消費支出の方も着実なる増加が見られます。そのために
鉱工業生産は逐月増加を続けまして、
雇用情勢にも好転の横様が認められます。一方本年度の米作は、三年連続
豊作の見込みが濃厚となりつつありまして、全般的に見て、本年度の
経済は昨年度をさらに上回る
発展が期待される
状況であります。一口に申しますれば、大体本年度も非常に調子がよろしいということでございますが、しかしこのような
経済拡大に伴いまして、今春以来原材料を中心に輸入は急激にふえております。このために、七月には
国際収支が一年ニカ月ぶりに赤字に転じたのであります。また昨年来緩慢を続けて参りました
金融市況も、このところ小締り
状態に推移いたしまして、
鉄鋼その他一部商品の
物価高騰を反映いたしまして、
卸売物価も漸次ジリ高である。ここまでがごく概括的に申しました本年度の上期の
経済情勢でございます。
以下これをそれぞれの指標に基きまして分析して申し上げますと、第一に
輸出及び特需でございます。
輸出、特需の
関係につきましては、為替ベースで三十年度は二十九年度に比べまして三一%の
輸出が増加したのでございますが、本年度に入りましてからも依然好調でございまして、四月−九月の
実績は前年同期を一五%上回っております。月
平均にすると一億一百万ドル、これを年に直しますと二十四億四千万ドルということになります。それから特需の方は、当初だんだん減るだろうと予想されておりましたのが、大体固定化する傾向にございまして、四月−九月の
平均では五千万ドル、昨年同期の六%増加でございまして、年率にすれば六億ドルということになります。
ここで先般九月末に下半期の
外貨予算を編成いたしました際に、そのべースになりました本年度
年間を通じましての
国際収支の
見通しでございますが、そのときの一応の各省間の打ち合せによりますと、大体
国際収支の本年度の
見通しは、
輸出が二十四億六千万ドル、特需の受け取りが五億五千万ドル、
貿易外の受け取りが一億四千万ドル、合計いたしまして、受け取りの方が三十二億五千万ドルでございます。これに対しまして支払いの方は、輸入が二十八億四千万ドル、
貿易外の支払いが五億二千万ドル、合計で三十三億六千万ドルの支払いであります。従って実質収支におきましては
年間を通じまして一億一千万ドルの赤字ということになりますけれども、ユーザンスその他の形式収支におきましては約三千百万ドルの黒字、こういうことでございまして、
国際収支は必ずしも楽観を許さないというような
見通しでございします。
次は
投資及び
消費でございます。こういうふうな
海外の有効需要が非常にふえているということに加えまして、本年度に入りましてから内需の方も非常に増加しておりまして、特に注目されております
設備投資の
動向でありますが、これについては、
一つの目安となります民需向け海運を除きました機械受注額、これは
経済企画庁で
調査しております機械受注
調査というのがほとんど客観的な唯一の資料でございますが、これによりますと、四月−七月の
実績は月
平均三百二十億円というふうに、
設備投資は昨年同期の二・六倍でございます。特に七月のことき昨年同期の二・六倍というような非常に大きな受注額になっております。三十年度
年間平均に対しましても約八割増というような
水準になります。そのほかに東京商工
会議所の調べでありますとか、あるいは通産省の調べというようなものによりましても、昨年に比べまして
設備投資額が二割以上ふえているというような
状況でございます。
一方建築
投資も非常に盛んでございまして、三ページにございますように、建築活動もこのところ活況を呈しておりまして、四月−七月の着工統計によりますと、住宅は昨年同期に比べまして三一%増、非住宅は一五%増というような
状況で、建築着工の総数から見ましても、七月だけで昨年同期の四割以上ふえているというようなことで、建築
投資もなかなか活発でございまして、こういうふうな
投資活動が盛んであるという一方、また
消費もなかなか活発でございまして、
消費水準を昨年同期と比べますと、都市においては四月−七月
平均で約一割ふえております。それから農村におきましても四月−六月
平均で四%、従って四月六月で総合いたしますと八%増ということであります。百貨店の売上高、これも百貨店法による売場面積拡張の
関係もございますけれども、しかし
実績といたしましては、四月−八月で前年同期の二割以上ふえているというようなことでございます。
第三は
鉱工業生産でございますが、こういうふうな内外の有効需要がふえております
関係から、三十一年度に入りましても
鉱工業生産は活況を呈しておりまして、七月には
生産指数が二三〇・六というふうに戦後最後の
水準であり、四月−八月
平均でも前年同期を二割以上上回っております。三十年度
年間平均に対しても一割五分だけ高い。特に
投資活動が活発でございますので、それを反映しまして、金属とか機械というような耐久財
関係の
生産が非常に活発でございます。
それから在庫の
関係、出荷も従って非常に好調でございます。製品荘重は最近はやや増加の傾向が見られますけれども、四月−八月
平均の製品在庫の指数といたしましては一昨年よりも一一%だけ低い。この間に
生産が大幅にふえておりますので従って在庫率といたしましてはきわめて低いということになります。原材料在庫の方は、これは昨年度において急激に
生産が伸びまして、それに対して特に輸入原材料の手当が追っついていないというような在庫調整の面もございまして、特に輸入原材料を中心にいたしまして相当に原材料子爵が積極的になっております。従って四月−八月
平均の原材料在庫指数は、昨年よりもさらに二割ふえているというような
状況でございます。こういうように
生産、出荷は増加しておりますか、申すまでもなく
輸送はこれに追っつかないということでありまして、
貨物輸送も、もちろん
貨物輸送量それ自体は非常に伸びておりまして、四月−九月の国鉄の
貨物輸送量は前年度同期を九%上回っております。四月から八月ころまで比較的
貨物輸送の閑散期でございますけれども、それにもかかわらず、昨年のピークである十月−十一月の
水準に匹敵するだけの
輸送を行なっております。しかし駅頭在荷は非常にふえておりまして、最近の
数字におきましては約百七十万トンに近い駅頭在荷、昨年のピークの十一月におきましても百一万トンの駅頭在荷でありましたので、非常に在荷がふえている。従って
輸送逼迫ということが問題になってきたわけでございます。
第四は農林水産の
関係でございますが、これも大体好調でございまして、御承知のように麦類は、先般農林省から発表されました作況指数では、作付面積が減っております
関係もありますが、実収高は昨年よりやや下回っておりますが、大体横ばいである。それから菜種の作付面積は大幅にふえまして、推定実収高が二百六十四万トンというふうに、昨年よりも一四%上回って、戦前戦後を通じての最高でございます。繭も、春蚕は霜害等のために昨年よりかなり下回るという予想でありましたけれども、夏秋蚕は昨年より上回るという見込みでございます。米は、御承知のように先般の作況で七千万石突破ということは大体確実でございまして、昨年に次ぐ大盤作である、こういうようなことでございます。
次は
国際収支でございますが、
国際収支は、先ほど
輸出の際に申し上げましたので重複を避けますが、食糧輸入は
豊作で非常に減っておりますけれども、
鉱工業生産のための原材料輸入が非常にふえております。その
関係で輸入が非常にふえまして、八月のごときは季節的な
減少期であるにもかかわりませず、前月よりも千三百万ドルもふえまして、戦後最高の一億八千九百万ドルというようなところまでいっております。四−九月の月
平均では為替ベースで二億九百万ドルというふうに、輸入の方も昨年よりは三割以上ふえておるということでございます。通関
実績におきましても同様月
平均で一億七千二百一万ドルというふうに前年同期を三割以上回っております。
こういうようなことで、先ほど申しましたように
国際収支は七月には一たん久しぶりに赤字に転じましたけれども、八月に収支とんとんに戻りまして、九月には叫び黒字に転じておる。しかし年度全体を通じますと、必ずしも非常に大きな黒字ということにはならないわけでございます。
次は財政
金融でございますが、財政資金の対民間収支の
関係は、四−九月でもって四百三十七億程度の揚超でございます。昨年の同期は千百十七億円の払超でございましたので、差し引きますと千五百五十四億円だけ財政資金の引き揚げが昨年よりは多くなった計算でございます。こういうふうになりました原因は、第一に外為会計が従来払超でありましたが、輸入の増加あるいはユーザンスの決済増ということで五月以降揚超に転じたということ、それに景気がよろしいので一般会計の税収入、専売収入がふえ、また特別会計の方におきましても国鉄、電電公社の収入がふえたというようなことが上期の揚超の原因でございますが、もちろん第三・四半期に入りましてからは財政資金の払超の時期に入ってくるわけでございます。こういうような財政収支の揚超によりまして、
金融機関の
手元は資金繰りが苦しくなったという反面におきまして、先ほど申しました原材料の輸入増加あるいは
設備投資の活発ということによりまして、銀行の貸し出しは増加して参りまして、貸し出し増加が預金増加を上回るというような
状況でございます。先ほど申しました機械受注の
状況は非常にふえております
関係上、銀行の
設備資金の貸し出しも非常にふえまして、七月には二百三十七億円というふうに昨年同月を七八%上回るというような
状況になっております。貸し出しのふえております業種につきましては、大体繊維
関係、石油精製、一般機械、建設業、百貨店というような方面でございます。基礎的な産業であります
電力、海運あるいは
鉄鋼というようなところはもちろん貸し出し等もございますけれども、自己資金あるいは社債というふうな面における資金手当が相当大きなウエートを占めておるというような
状況であります。
第七は
物価でございます。
物価は、まず
卸売物価でございますが、御承知のように
鉄鋼を中心にいたしまして非常に上ってきている。それから木材、それから最近におきましては、
石炭輸送の逼迫も拍車をかけまして、
石炭価格もやや高という傾向でございます。こういうような基礎財の
物価が上ってきているという反面におきまして、
消費財の方、特に繊維
関係、セメント、家用電気器具、揮発油というような
消費財を中心とする商品は軟調でございます。従って全体を総合いたしますと、総合指数はジリ高という傾向でございまして、七月には前月より二・六%上回りました。八月にはさらに二・五%上り、九月半ばの卸売物怖指数は朝鮮動乱直前を一〇〇としまして一七〇・九というところまで上ってきているわけであります。
消費者
物価の方は
豊作のために食糧の
価格が下っている。それから被服費が下っております。しかし一方住居費が上っているというようなことで、全体としましては大体弱含みの横ばいというような推移でございます。
最後に第八の
雇用賃金でございますか、これも非常に好転いたしまして、
労働力調査によりますと、就業者数は四−七月
平均で八十六万人増加しております。先ほども話がありましたが、農林業
関係は三十八万人減少いたしまして、非農林業
関係で百二十四万人増加しております。しかもその就業
状態の内容を見ますと自営業者、これは大体横ばいでございますが、主として家族従業者が減少しておりまして、そのかわりに
雇用の常用的な
雇用がふえている。特に四−七月の
平均で
雇用者は前年同期に比べまして九・五%増加しております。こういうふうに就業
状態はさらに改善されているのであります。それから特にまた従来は
中小企業の面におきまして
雇用者がふえている。大企業は停滞しておりましたのが大企業におきましても
雇用者がふえておりまして、規模三十人以上を対象としております毎月勤労統計の
雇用指数によりましても、四−七月
平均で前年同期の四・三%増というところでございます。従って失業
情勢も好転しまして完全失業者数は本年三月の百六万人をピークといたしまして、だんだん減りまして、四−七月
平均で六十二万人というふうに昨年同期よりも七万人減っております。最後に
賃金もやはり上昇しておりまして、四−七月
平均で前年同期の約一割増加、一方
消費者
物価は大体安定しておりますが、これがやはり都市の
消費水準を高める
一つの背景にもなっております。
大体以上のような
情勢が、非常に急いで申し上げましておわかりにくかったかと思いますが、最近までの各指標につきましての
経済動向であります。従って今後のこういうような上期の
情勢をベースにいたしまして、現在から以降、本年度下半期から来年度にかけまして問題になるであろうと思われる点につきまして、ごく簡単に触れてみますと、
一つは
鉄鋼価格の問題であり、
一つは
電力生産の伸びに対して
電力の供給が追っつかない、
電力の
需給関係の問題、さらには
輸送の問題というの、か通常現在険路というふうな表現で呼ばれておるものでございますが、それぞれにつきましてこれは通産省の方から詳しいお話があったと思いますが、大体の
状況を
概観いたしますと、まず
鉄鋼でございますが、これは御承知のように最近すでにもうやや値下り傾向を示しております。実際に指定取引が行われますのは、数量から申しますれば八割くらいを占めておって、残りの二割くらいが市中相場であります。市中相場が非常に高い
状況でございましたのは、先般御承知のように下期の
外貨予算を組みます際に、鋼材五十万トンの輸入ということを発表いたしまして、
需給関係の面からいたしますと、今年度は昨年度よりも大体二百五十万トン程度の供給増加になる。これは一方輸入の増加、
輸出の減少、それから
生産の
隘路であったアメリカからのスクラップの輸入が増加するというようなことによって
生産増も見込まれるというようなことで、大体年度間にいたしまして、二百五十万トン程度昨年よりも供給増になるというようなこと、そういうようなことから
需給関係が——この二百五十万トンというのは、前年に比べまして約四割の供給増加でございます。しかも輸入鋼材の入着等の効果の現われますのは、第四・四半期において集中して現われるというようなことで、すでに下り始めておりますし、鋼材の
価格の問題も大体鎮静に向っておるのではないかというふうな
見通しでございます。もちろん三十二年度以降の長期対策の問題といたしましては、いろいろ問題があろうかと思います。長期的に見ますと、
鉄鋼原料の獲得の問題等について、相当長期的な手を打たなければならぬというようなことになろうかと思いますが、
さしあたり三十二年度の
見通しといたしましても、鋼材におきましては大体本年度よりも一割増しの九百二十万トンくらいの
生産になり、一方需要の方も一割増ということになりますと、やはりその間五十万トン程度の輸入ということが必要になるかもしれませんけれども、大体来年度に関してはある程度の
見通しが立っておるというような
状況でございます。それから
電力につきましては、これは非常に最近の
実績から見ますと、特に電灯需用の伸びが六%程度の伸びでございましたけれども、これは従来から
計画しておりました
数字とほぼ予想
通りでございますが、
電力の伸びが非常に大きくて、第一・四半期の
実績におきまして、前年度同期に比べまして二割増加しております。これは
計画よりも八%上回っておりまして、特に東北、北陸、中国、四国というような面において非常に伸びが著しい。産業的に見ますと
鉄鋼関係、カーバイト、それから機械、ソーダ、非鉄、セメントというような面において急激に三〇%以上の伸びを示しておるというようなことで、結局今年度
年間を通じまして、
キロワット・アワーにおいてはある程度の
不足を生ずるというような見込みでございます。これもやはり下期の水の
状況にもよりますけれども、かりに二、三%程度の豊水が見込まれますれば、大体
さしあたりの問題としては
生産に大きな支障を来たさないで切り抜けられるのではないかというような
見通しでございます。来年度の
見通しといたしましても、大体需用が一九%くらい本年度よりさらに伸びるであろう。供給の方は十三%くらい伸びるという
見通しでございまして、需用端におきまして二十七億
キロワット・アワー程度の
不足というような計算が一応できるのでございますが、これに対しましてはそれぞれ地区別、各
電力会社別にそれぞれの対策を立てることによりまして、
さしあたりはより大きな支障は来たさないだろうと思われます。しかしながら長期的に見ますと、電源開発六カ年
計画において、
昭和三十五年度においては六百九十二億
キロワット・アワー
予定されておりますのが、今の見込みでは八百億
キロワット・アワーくらいに近づくであろうというような予想でございますので、やはり電源開発
計画の繰り上げ実施というようなことによりまして、今から長期的な対策の手を打たなければ、将来の需用に追いつかないのではないかということが懸念される
状況でございます。
輸送関係につきましては、先ほど計
画部長からお話がございましたような、海陸を通じましての従来の
実績になっておりますが、国鉄の
輸送が一番大きなネックになっております。もちろん海上転移というようなものも考えられますけれども、これはやはり限度があるわけでございまして、国鉄それ自体の
輸送力を増強するということがやはり
一つの大きなポイントになるかと思うのであります。従来の
実績、三十一年度の
輸送量は大体一億七千万トンないし一億七千二百万トンというふうな、昨年よりは一割以上の
輸送増加を来たしておりまして、非常に
輸送に努力しておりますけれども、
輸送要請が非常に大きいということで、
年間を通じまして大体
輸送に対して、実際運ぶ数量といたしまして、三百三十万トンくらい積み残すというような計算の見込みでございます。特に本年度は季節的な農産物がいずれも
豊作でございまして、リンゴ、バレイショ、野菜、ミカン、サンマというようなものが大量に殺到して参ります
関係上、これが全体の二六%を占めております。
石炭の
輸送あるいは木材というような定量的な重要物資の
輸送に支障を来たさないように調整をはかることが必要であろう、 かように考えられるのであります。
大へん簡単でございますが、一応従来の
実績を基礎にいたまして、最近の
動向について
説明いたしました。