○
天日参考人 九州鉱害復旧事業団の
理事長をいたしております
天日であります。
鉱害問題につきまして
陳述をお聞き取り願いますことを非常にありがたく存じます。
御承知のごとく長年にわたりまして累積いたしました
鉱害を
計画的に
復旧いたしまして、あるいは
国土の
保全あるいは
農水産物の増産あるいは
民生の安定等々の目的を達するために二十七年に
臨時石炭鉱害復旧法が
制定公布になりまして、またその
法律に基きまして私
ども関係しております
鉱害復旧事業団が設立いたされたのであります。微力を傾注いたしましてこの
復旧事業の
推進に努力いたして参っておるわけであります。すでに
事業年度といたしまして四
年度をけみしまして、ただいま第五次の
年度に入っておるわけでございます。
関係各方面の御支援、御協力によりまして、
復旧事業も進捗を見てはおるわけでございます。また先年二十八年の大水害に
九州地方が見舞われました際に、
石炭業者もはなはだ困窮な
状態に陥りまして、この
鉱害復旧事業が頓挫を来たしはせぬかというおそれがありました際に、
事業団に対しまして
貸付金の借り入れの方法なり、また
市町村営の
土木個所につきまして
国庫補助がつけられまするような方法を、この
委員会におかれまして御
解決をいただきましたので、当時危機に瀕しました
鉱害復旧事業も、幸いにして
推進を続けることができたのであります。またその後
炭鉱の
状況によりまして、集団的に大量の
失業者が続出いたしました際に、
政府におかれまして
失業救済の見地からしまして、かような
失業者を努めて
鉱害復旧事業に吸収するようにとの
措置をとられまして、
鉱害復旧事業の繰り上げ
促進をはかられました等の
関係で、これまた
復旧事業の
推進に非常に
効果があったのでございます。
しかしながら翻って見ますると、当時
全国における
鉱害量は約二百三十億と想定されておりまして、またそのうちでいわゆる
鉱害が
安定状態にありまして、
復旧に適するとみなされるものがおおむね百億と想定されたのでありますが、これに対しましてわれわれ
事業団におきまして、
復旧業務として
推進して参りましたものが、三十一
年度の
見込みを加えましておおむね二十七億円余の
状況でございます。かような点を考えてみますと、今後
相当ピッチを上げませんと、この
法律の予定されておる期間内に
鉱害復旧の
残量を
遂行いたしますことは、はなはだ困難多きを覚えるのであります。
また昨年
公布になりました
石炭鉱業合理化臨時措置法、この
法律に基きまして、お聞きのごとく
炭鉱が買い上げになりまするので、その際には、
鉱害を伴わぬ
炭鉱はきわめて希有の例でありまして、ほとんど全部が
鉱害問題を持っておりますので、かような点からいたしましても、
鉱害復旧事業の一段の
推進をいたさなければならぬのでございます。申し述べましたごとく、四年経過いたしました結果、当暗いわゆる
臨鉱法が御
審議になりました際にも
委員会におかれまして御
指摘になりましたごとく、この
臨時石炭鉱害復旧法案の中には再
検討を要する
部分が少くない、かように明瞭に御
指摘になっておったのでありまするが、果せるかな御先見の通り、いろいろ
運営の結果改善を要すべき点があるやに想像いたすのであります。
他の
参考人の方からそれぞれ
陳述もありますので、私はもっぱら
事業団の
立場におきまして見ましたる諸点を、しかもそのおもなるものについてお聞き取りをお願いいたしたいと思うのであります。以下はなはだ事務的なことになりまして恐縮でありますが、実際の問題でございますから御清聴をお願いいたしたいと思うのであります。
第一点は、
復旧基本
計画及び
実施計画につきまして、
関係者の同意を得られない場合の
措置についてでございます。と申しまするのは、この
法律の建前といたしまして
復旧基本
計画というものを作るのでございますが、その基本
計画を作ります際には、
復旧費用の
負担区分、
関係者それぞれが幾ばくの費用を
負担するかということでございますが、その
関係者の
負担区分に関する同意書をつけなければならないのでございます。また
農地または農業用の施設の
復旧につきましては、その
実施計画におきましては
被害者の同意書をつけねば認可にならないのでありまして、
法律上これが要求されておるのでございます。しかるに基本
計画におきまして、
関係者の
負担区分に関する同意書が得られない場合の多くの例はかようなところからくるのであります。すなわち
賠償義務者に資金がないということであります。
賠償義務者に
負担いたさねばならない資金がないということからいたしまして、同意がなかなか得られないという
実情でございます。かような点を
解決いたしまして、
復旧事業を
推進いたしますためには、やはり何らかの裏づけの増強が必要であると思うのでありまして、この点は他の
参考人もお述べになりました
鉱業権者、すなわち
石炭鉱業を営む向きに対しまして、
鉱害賠償あいば
鉱害賠償の引当金を積み立てる
制度を適切といたすかと思うのであります。もとより会社経理の
関係からいたしまして、この引当金は非課税の
措置をいたされることが、最も早く容易に資金の造成に役立ち得ると思うのであります。なおこの引当金につきましては、御承知のごとく
鉱業法上に
担保といたしまして供託という
制度がありますことばお聞き取りの通りでございますが、これらと彼此勘案いたしまして、適切な御
措置をとられることが望ましいと思うのであります。また一方におきまして同意書が得られない場合の他の例といたしましては、
農地または
農業用施設の
実施計画の際に、先刻申し上げました通り、いわゆる
被害者側の同意が必要なのでありますが、間々いたしますというと、特定の地域におきまする
相当多数の、いわゆる
被害者の方たちの同意は得られましたけれ
ども、そのうちで少数の方の同意が得られない場合があるのであります。そのために多数の
方々が
復旧の
促進を希望されるにもかかわらず、当該地区におきましては、
復旧事業が進められないという
事態に当面いたします。かような場合を芟除いたしますためには、正当の理由なくして同意を拒む向きがあります場合に対する、対処方法をあわせて考究願わねばならない、かように考えるのであります。
第二点でありますが、第二点はわれわれ
鉱害復旧事業団に対しまして、
政府資金を直接に貸し付ける方法を明らかにしていただきたいということでございます。と申しますのは、われわれ
復旧事業団といたしましては、あるいは
賠償義務者が当座
負担すべき金がありませんために、これに立てかえねばならぬことがございます。またそうやっておるわけであります。そういたしませんと
復旧工事が
推進いたさないわけであります。しかるにわれわれの方で所要の資金を借り入れますことは、先刻申し上げた通り、当
委員会の御尽力によりまして、その道が開かれたのではありますが、毎年これは難渋いたしておるのであります。と申しますのは、この借入金は
関係の県を通して貸付をしていただくことになっておるのであります。しかるところ最近の諸情勢からいたしまして、資金運用部の金を貸し付けをいただくにいたしましても、
関係県の県債、つまり
地方債のワクが次第に圧縮されつつある
状況でありますので、県を通してわれわれの方でお借りするというこ
とも次第に困難を加えつつあるのであります。仄聞いたすところによりますと、明年あたりはなお一そう困難を来たすというふうにも開き及ぶのであります。また幸いに
相当の時日をかけました後にきまって借り入れることができましても、手続といたしましては
関係諸県の県議会の御承認、議決をいただかなければならぬ等の
関係で
相当日時を要しますので、おくれるというような
事態にも当面いたすのであります。かような次第でありますから、
事業団に対しまして、もとより低利にして長期の性質を希望するわけでありますが、
財政資金、
政府資金を直接貸し付けられることを明らかにお定め願いたい、かように願うのであります。かよういたしますれば、あるいは
復旧費用の延納を認めて、立てかえて工専を進めるなり、また専業団自体が工肝施工処となって工専の
推進をはかりますなり、またいろいろ問題になっておりまする
家屋の
復旧につきまして、貸付業務を
法律の希望されるがごとくに
遂行いたすというふうなことにも大いに力を得るわけであります。なお仄聞いたすところによりますると、余剰農産物の見返り円資金というものがございまして、これが低利にかつ長期に適切な方面に貸し付けられておるやにも承知いたすのでありまして、われわれ
事業団といたしましては、最も大きな
部分が
農地の
復旧でありますから、彼此
関係もとよりないというわけではありませんので、かような
関係も御考慮お願いいたしたい、かように考えるわけであります。
第三でありますが、これは
農地及び
農業用施設の
復旧につきましての、いわゆる暫定
補償金の支払いという問題でございます。はなはだ事務的で恐縮でありますが、少しく説明を加えさせていただきますならば、こういうことであります。
農地及び
農業用施設の
復旧につきましては、いわゆる被害処と
賠償義務者とが、
復旧計画と、それから俗に暫定補慣金と申しておりまするが、この二つにつきまして合意が成り立ったものを、われわれ
復旧事業団といたしましては、
復旧基本
計画に取り上げて参りまして、それを主務大臣の認可を受けまして、しかる上でこの両者の合意に基く
賠償義務者の
負担ずる金額を、すなわち
復旧費と
補償費であります、これを納付金として収納いたしております。この
補償金と申しますのは、
農地または
農業用施設が本来持っておった効用が、また回復せない
部分があると認められました際に支払う
補償金のことであります。この
補償金につきましては、
法律の建前といたしまして、農林大臣の効用回復についての、検査の上で幾ばくの金額を払えということを通知されることに
法律の建前がなっております。しこうしてその支払い方の命令を受けるのはわが
事業団であります。しかるところ、今申し述べました通り、
被害者または
賠償義務者の合意になりました
全額を収納いたしておるわけでありますから、その後に至りましてこれより上回った金額の支払いを指示せられますると、
事業団にはさような支払いに充てるべき資金の造成の方法を持っておらぬわけであります。これはむしろ難きをしているという形になるわけであります。かようなことがありますから、願わくば
法律の建前に従って、農林大臣の通知される金額を、
事業団が支払いの責めを全うさせていただくためには、この不足額につきましては
国家から補給をしていただかなければ、他に道がないわけであります。この点とくと御考究お願いいたしたい、かように考えるわけであります。なお暫定
補償金の算定の基準でありますとか方法等につきましては、非常に精細緻密なものができておりますけれ
ども、これらも施行後の経験等に徴しまして、
相当簡素化をおはかり願う方が適切である、かように考えているわけであります。
第四でありますが、これは
鉱害復旧につきまして、
財政的な御
措置を
強化していただきたいということであります。一般
鉱害につきましても、なお工事として残っておりますものが
九州でなお七十三億円、中国で約二億円余に相なるはずでございます。
九州につきましては二五%が進捗して七五%が残っておるというような格好であります。宇部につきましては、この比率が逆になっておるわけであります。かような
状況でありますので、またいわゆる特別
鉱害につきましては、表でごらんのごとく、かなり開きのある、すなわち高い比率の補助金が交付されておりますから、これらの点を御勘考願いまして、一般
鉱害につきましても、
補助率の引き上げを大幅に願って、よってもつて一般
鉱害の
復旧を
推進いたしたい、かように念願いたすわけであります。
なお
福岡県の一例をとりますと、
福岡県における
鉱害による農産物の減収は、私の想定によりますると、米で年間十五万石余となります。麦で九万石をこえると思います。これを金銭換算にいたしますと、おおむね年間二十億見当になろうかと思うのであります。この推定は必ずしも放漫なものではないと自信いたします。と申しますのは、
九州の大学の経済学の教授の方で二十二億というような数字を出しておられる方がありますからして、さよう御承知をお願いいたしたいと思うのであります。なおこの補助につきましては、いわゆる
市町村役場でありますとか、公会堂でありますとか、あるいは公衆衛生施設とか申しますような公用及び
公共用の施設についても補助をつけられることがまことに望ましいのであります。
次は先刻も他の
参考人の方からお述べがありましたので簡略にいたしまするけれ
ども、
賠償義務者が不明であるとか、または無資力という
状況にありまして、そのために
地方公共団体の
負担が
相当増大いたしておることが多いのでありますから、かような点につきましては、
地方財政の最近の
状況等から勘案されまして適切な御
措置をお願いいたしたい、かように思うのであります。また
家屋の
復旧等につきましては、他の
参考人の御
陳述に尽きておりますから多くを申し上げませんが、
福岡通商産業局の
昭和二十九
年度に取り扱われました
鉱害紛争事件は、三百五十七件に上るという公けの報告であります。しかるにこの三百五十七件の
紛争事件のうちで、百七十二件半分が
家屋に関する問題だそうであります。いかに
家屋問題が大きな問題であるかということを御推察願えることと思うのであります。
以上数点を申し述べたのでありますが、これらに対しまする
財政的な点につきましては、御承知のごとく特別
鉱害に関する
法律がこの三十一
年度をもって満了いたすわけでありまして、この方面に本
年度ば約九億六十万円ほどの国費がつけられておりました
関係等を考えますると、これらの一
部分をお回しになりますならば、私申し述べた点は
相当改善され得る、かように考えるのであります。
なお自余の点につきましては、細目がございまするが省略いたすことにいたしまして、ただ事務的のことでありますけれ
ども、
復旧基本
計画と
実施計画と、いずれもがそれぞれ主務大臣の認可を両方
ともいただく仕組みになっておりますから、これは
双方にらみ合せまして
相当簡素化をしていただくことが業務の進捗をはかる上において大事だと思うのであります。
はなはだ
事業団の
立場からいたしまして細目のことを申し上げて恐縮でございますが、一つ十分御勘考を願いたいと思います。
御静聴ありがとうございました。