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1956-05-29 第24回国会 衆議院 商工委員会 第57号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月二十九日(火曜日)     午前十時四十六分開議  出席委員    委員長 神田  博君    理事 小笠 公韶君 理事 鹿野 彦吉君    理事 小平 久雄君 理事 笹本 一雄君    理事 中崎  敏君 理事 永井勝次郎君       秋田 大助君    阿左美廣治君       宇田 耕一君    内田 常雄君       大倉 三郎君    菅  太郎君       菅野和太郎君    島村 一郎君       首藤 新八君    鈴木周次郎君       野田 武夫君    淵上房太郎君       前田 正男君    南  好雄君       森山 欽司君    伊藤卯四郎君       佐竹 新市君    多賀谷真稔君       帆足  計君    松尾トシ子君       松平 忠久君  出席国務大臣         通商産業大臣  石橋 湛山君  出席政府委員         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局経済部         長)      坂根 哲夫君         法務政務次官  松原 一彦君         通商産業政務次         官       川野 芳滿君         通商産業事務官         (大臣官房長) 岩武 照彦君         通商産業事務官         (企業局長)  徳永 久次君         通商産業事務官         (重工業局長) 鈴木 義雄君  委員外出席者         議     員 山本 勝市君         検     事 香川 保一君         専  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 五月二十五日  鉱害賠償及び鉱害復旧制度強化に関する請願(  伊藤卯四郎紹介)(第二三三一号) 同月二十八日  鉱害賠償及び鉱害復旧制度強化に関する請願(  淵上房太郎紹介)(第二四五六号)  外国ラミー委託加工貿易禁止に関する請願(  瀬戸山三男紹介)(第二四五七号)  中小企業における信用保険制度の運用に関する  請願森三樹二君紹介)(第二四八〇号)  重油の消費規制緩和に関する請願森三樹二君  紹介)(第二五〇四号) の審査を本委員会に付託された。 同日  離島振興法適用範囲拡大に関する陳情書  (第八五二号)  中国における日本見本市開催陳情書  (第八五三号)  木造船の中共向輸出統制緩和に関する陳情書  (第八五四号)  外産こんにゃくの輸入反対に関する陳情書  (第八五五号)  屋外灯施設費及び維持費低減化に関する陳情  書(第八六0号)  日朝貿易促進に関する陳情書  (第八六八号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  機械工業振興臨時措置法案内閣提出第九八  号)(参議院送付)  日本製鉄株式会社法廃止法の一部を改正する法  律案内閣提出第八八号)(参議院送付)     ―――――――――――――
  2. 神田博

    神田委員長 これより会議を開きます。  まず日本製鉄株式会社法廃止法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。質疑を継続いたします。質疑の通告がありますから順次これを許します。多賀谷真稔君。
  3. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 法務政務次官にお尋ねいたしますが、実は本委員会に旧日鉄法廃止法の一部を改正する法律案が出ておるわけです。実はこの法案の最も問題になっておりますのは、公企業でありました関係上、一般担保先取得権が規定されておる、それを延期してもらいたい、こういうことでございます。この法案は実は昭和二十七年第十三回国会において提案をされまして、その際は、富士八幡と二つ分離されました製鉄会社は、今後工業財団組成手続をとる、こういう前提で延期をされたわけでございます。ところがさらに昭和二十九年に第十五回国会におきましては、いや今度は企業担保法政府において成立を見るような状態になっておる。そこで企業担保法が出れば、これは全部包括されるのでこの問題はなくなる。よってそれを二年延期してもらいたいということで二年延期をしたわけであります。ところが本年になりましてまたこの法案が出て参りまして、われわれ議員としてはこの法案の取扱いに非常に苦慮しておるわけであります。国会権威におきましても、二年延期し、また二年延期をし、さらに延期をする。しかも延期の大きな理由は、政府企業担保法を作るといいながら作っていないところに問題があるわけです。私たちは早く企業担保法を作っていただきたい。もし作ることが不可能であるならば、不可能であるということを早くおっしゃっていただかなければ、現在八幡富士も、いわば景気は非常に上昇しております。そこで財団組成のごとく費用も莫大にかかり、手続もかなりかかり、時間も要するものは、できないならできないと言ってやらなければ親切心が足らない。今後不況になったときに工業財団手続をせよと言いましても非常に無理であろう。ですから早く政府としては態度を決定していただきたい、かようにわれわれは考えておるのであります。そこで今まで私たち法務省の参事官の方あるいは通産省の企業局、さらに一般の方々の意見を聞き、とにかく政府の決意さえあればこれは可能である、こういう判断をしておるのであります。そこで担当官庁であります法務省としては、早急にこれを出す意思があるかどうか、少くともこれは次の通常国会までに私たちは出してもらいたい、かように考えるわけですが、どういうようにお考えであるか御言明を願いたい、かように考えます。
  4. 松原一彦

    松原政府委員 お答え申し上げます。法務省でもって企業担保法を計画いたしておりますことは、今お話の通りでございまして、法務省としては、提出意思をもって鋭意その調査に従事いたしております。ただし、これは新しい法案でありますのと、経済界における複雑な事情等がございまして、まだ経済界との調整がついておりません。そういう意味におきまして、若干伸びてはおりますけれども、なるべく至急に提案いたしたいと、目下努力中でございます。
  5. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 実はわれわれは、この法案を二年間だけ延期をいたしたい、かように考えておるわけです。そこで、少くともこの二年間のうちに法案成立しなければ、またこの問題を延期するかどうかという問題に逢着せざるを得ない。そこで次の通常国会か、おそくともその次の通常国会提出し、その国会において成立を見なければ、さらにわれわれはこの問題を審議しなければならないし、国会権威にもかかわると思うのです。聞くところによりますと、二十九年ごろは非常に活発に議論をされておりましたが、その後はどうも停頓状態で、それ以上は作業は進捗しておりませんし、あるいは作業は一応完成しておるかもしれませんが、経済界意見をその後聞かれるというようなこともない状態であります。また経団連といたしましては、まだ意思統一はしておりませんが、現在経済がかような上昇期にありますし、資本の組み入れ等も十分できつつある今日においては、ぜひ一つ作りたいというような意向も、先日も参考人としてお述べになりました。そこで、私は少くとも次の国会には頭を出してもらいたい、かように考えるのですが、もう一度御答弁を願いたい。
  6. 松原一彦

    松原政府委員 お説の通りに、若干の停頓は見ておりまするが、これは経済界の複雑な事情のために、その対象についてもまだいろいろ異論があるのでございます。この法案としては、一般会社対象としておりますが、経済界においては、二十億ないし四十億というような線においてやりたいという希望も出ておる。従って、ただいま即行ということはできませんが、鋭意御希望のような線に沿うて進めたいということを努力しておるということだけを申し上げておきます。確実に次の国会に提案し得るかどうかということは、相手もあることでございまして、直ちにここで言明いたすわけには参りませんが、精一ぱい希望に沿うて努力する、かようにお答え申し上げます。
  7. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 では、私はこの日鉄法廃止法有効期間中に、政府態度をはっきりしてもらいたい。と申しますのは、できないならできないでまた方法があるのですから、私たち八幡富士会社に対しては、早く組成手続をしなさい、こう言わざるを得ないのです。一つすみやかに意思決定を願いたい、かように希望をいたしまして、法務省に対する質問を終ります。
  8. 神田博

  9. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 通産大臣に、今後の日本鉄鋼政策の重要な点について何点かお伺いをしておきたい。おそらく私がお伺いすることは、大臣はみな賛成です。ただもたもたしてやらないでおる点を鞭撻するだけの意味の質問しますから、その意味で御答弁を願いたいと思います。  第一点は、銑鉄、厚板、棒鋼にしても、最近の設備近代化合理化によって、欧州各国とやや同じような価格になってきております。これはまことに力強く喜んでおるのであります。しかし、日本のものが安値であるから輸出がどんどん現在伸びておるというわけではありません。それは特に欧州各国内需不足をして、輸出に余力がないためでありまして、そういう関係日本輸出が伸びておるわけであります。この絶好な機会輸出を伸ばすことと、そのためにはさらに設備近代化によって、品質においても、価格においても、世界各国との市場競争において十分打ち勝てる生産態勢の実力を作り、世界鉄鋼市場確保に全力を注ぐべきであると思うのであります。この点について政府はどのような処置をとられておるのであるか、この点を一つ伺っておきたいと思うのであります。それは自然のままにまかせる形で置かれるのか。輸出については、大臣御存じのように、相当干渉をしておられる点が昨年来、今年度においてもわれわれは見ることができるのであります。だから、むしろ奨励の意味より干渉意味をとられておるという点をはなはだ遺憾に思っておるのでありますが、こういう点について大臣はどのようにお考えになっておるか、これをまず先にお伺いいたします。
  10. 石橋湛山

    石橋国務大臣 御説のように、現在の日本鉄鋼輸出、これは鉄だけでありません、ほかのものも大体似たものでありますが、海外の市況のいいことに刺激されて輸出が伸びておる。この機会日本産業十分基礎が固まるように至急にしなければならぬということを常に考えております。鉄につきましてもむろんそうであります。ただ御承知のように、鉄鋼世界的に今供給が窮屈であります。従って鉄鋼そのもの輸出しますと、国内機械その他の産業供給する鉄鋼不足を来たす、その方の価格の高騰を来たすということが起って参りますので、これもまた非常に困る、この際機械その他の工業も大いに発達させ、海外市場も確保しなければならぬので、そこで鉄産業そのものを助長しようとすれば、むろん輸出はとめてはならないが、同時に国内のその他の鉄を使うところの工業の問題を考えると、無制限に鉄を輸出するわけにはいかない、こういう矛盾を感じておるわけであります。今の政府の施策は、その矛盾の間において鉄鋼業もでき、製鉄業もできるだけ国内に大いなる支障を来たさない限りにおいては鉄そのもの輸出もこれを許し、できるようにいたしまして、製鉄業の助長をはかると同時に、そのためにはなはだしく国内機械産業その他に支障を来たさないように、常にそれぞれの企業者とも話し合いまして、適当なところで輸出を行なっていく、こういうのが現状であります。いかにも割り切れないところは確かにございます。
  11. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 大臣内需輸出の点において割り切ることのできないという悩みを持っておられる点は明らかになったわけであります。この点をやはりできるだけ早く解決をして、堂々たる態勢をとっておかなければ、将来日本鉄鋼界に非常な不安を与えるのじゃないかという点を考えるのであります。  漸次お尋ねをしていきますが、世界各国鉄鋼界はやがて内需が余って、輸出市場に非常な競争が深刻に起ってくることを予期することができます。それはおそらく大臣も同様の感じを持たれるだろうと思うのでありますが、今その準備態勢を整えておくということが、私は日本鉄鋼界の将来のために、重要な一つの計画でなければならぬと思う。輸出が減ったからといって、急に設備を縮小するということは、この産業の性質上なかなかできない。これは大臣も同様に認められるだろうと思うのであります。産業規模を縮小すれば、従って生産コストが高くなることは明らかであります。こういう状態が出て参りますと、鉄が高くなれば、基幹産業でありますから、その影響するところはもろもろの日本の全産業影響が及んでくる。そうすれば、従って日本の物価高という問題も起ってくるわけであります。こういう点も思い合せて、私は十分対策を立てておかなければならぬということを痛切に感じておるのであります。輸出が減った場合に、内需対策についての一つ考え方というものをお持ちになっておるかどうかという点であります。今大臣がおっしゃった内需輸出との矛盾、それをそのまま放任しておくということになれば、不況にたたかれるということになり、今申したような日本の全産業、全物価に非常な影響を与えてくるわけでありますから、輸出を貫いて日本鉄鋼界を守り抜く、その場合に内需においてこれを守り得るのか、これらの点について相当明確な政府鉄鋼政策というものを持っていなければ、私はしばしば鉄鋼界に不安を与えるような状態を引き起すおそれがあると思うが、こういう点においての大臣考えというものを用意されて進められておるのかどうか、この点を承わっておきたい。
  12. 石橋湛山

    石橋国務大臣 経済界世界的変動があるということは、ある程度予期しなければならぬと思います。しかし現状において考えられる限りにおきましては、日本の鉄が余ってくるというような時期はなかなか来そうにもないのであります。まだまだ日本製鉄業は、その仕事を拡張する必要があるだろうと考えております。これから機械工業その他を大いに発達させる、国内施設も改善するということになりますと、内需もなかなか大きなものでありますから、今の日本製鉄能力が急に余ってくるというようなことはちょっと想像ができません。しかしながらむろん経済界変動はありますから、これにはいつも深い注意をして、誤まりないようにしなければならぬというふうに考えておりますが、今のところでは、日本製鉄業は、ある程度の輸出と、なお起り得るところの国内需要とによって、御心配のようなことはないというように考えておる次第であります。
  13. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 大体楽観論石橋通産大臣の得意とするところでありまして、これは大臣自身も認めておられるようであります。ところが経済界の予期しておりますのは、本年の十月ごろから鉄鋼界も横ばいになってくるのじゃないか、先ほどお尋ねしたように、世界主要鉄鋼国で、内需に余ってくれば、必ず輸出競争が激しくなってくるということは、動かすことのできないものであるということは、経済界の一致するところです。そういう点からわれわれが考えますと、今大臣が言われたように、そう手放しに楽観論を持っておられることは、危険千万であると私は思う。この点は十分一つ今からお考えになっておかないと、日本鉄鋼界にも非常に波の絶えずあることはお認めになるでしょう。そうすると、そのときに当って青息吐息をつくというだけでは、日本産業経済界に与える影響が、あまりに悲惨だということを警告するのであります。  さらにお尋ねいたしますが、日本製鉄産業は、国内の資源が不足であるから、国際的市場競争立地条件が非常に不利であるということを、われわれはしばしば政府側から聞かされてきております。なるほどそれは原料の点から、また戦後の輸送船不足している今日、これは私も認めます。そこで私は、これは具体的なことになりますので、おわかりにならなければ、政府委員でもよろしゅうございますが、鉄鉱石輸入量国内鉄鉱石との比率はどうなっておるか。われわれも大体においてわからぬことはありませんけれども、一応明確な点を、政府から伺っておきたいと思います。それから原料炭で、輸入原料炭国内原料炭との比率、これも一つ伺っておきたい。それから船の割合でありますが、現在これは何も鉄鉱ばかりじゃありません。日本輸出入の業については、外国船の船賃かせぎの犠牲にしばしばされておるということは、これは論の余地のないところであります。そこで外国船国内船との比率が、この鉄鉱石関係においてどういう比率になっておるか、この三点について、一つ具体的にお示し願いたいと思います。
  14. 鈴木義雄

    鈴木(義)政府委員 具体的な数字をもって御説明申し上げますと、三十一年度の予定でございますが、大体鉄鉱石需要は約千百万トンでございます。そのうち輸入鉱に依存いたしますものが、七百三十万トン、かようになっております。これ以外は国内鉱でございまして、その主たるものは、国内鉄鉱石が約百万トン、それから硫酸滓が百三十万トン、砂鉄が七十五万トン、その他七十三万トン、かようになっております。それから原料炭関係は、需要量が六百五十万トン、そのうち三百九十万トンが国内炭輸入炭が二百六十万トンで、大体六〇%、四〇%の比率になっております。それから船の方の関係はできるだけ国内船を使う予定でございますが、現在その比率がどういうふうになっておりますか、手元に数字がございませんが、また別に調べましてお答えいたします。
  15. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 日本の場合は東南アジアインド中国などの大きな鉄鉱石供給地があるわけです世界各国とも百パーセントの製鉄原料を持っている国はいずれの国もありません。この困難を、業界の諸君の苦心というか努力というか、その他経済外交上の問題等もありますが、今まで私どもが見るところでは、業界苦心努力にまかすのみであって、経済外交上からこれらの困難な問題について妥結をしてやるということについての努力が欠けていることを、われわれはしばしば感じているわけです。私は、基幹産業であるこれに対する政府の協力の仕方についてはなはだ遺憾であると、絶えず思っているわけです。そこで特に東南アジアとの関係においては有無相通ずるというか、そういう点があるわけです。これは何も鉄鋼ばかりではありません。ほかの産業においてもしかりであります。ところがこういう点については、もちろんココム問題等があるからということを多分言われるだろうと思うが、何といっても日本の恵まれているのは東南アジア地区にきわめて近い地域に、しかも船で運べるところに豊富な優秀な鉄鉱石のあるということが、これは非常な有利な条件だと私は言えると思う。特に海南島のごときは、従来から最優秀な鉄鉱石であると言われている。鉄鉱石それ自身が鉄であるとも言われるくらいな優秀なものがあるわけである。日本基幹産業鉄鋼業を完全ならしめるためには、こういう点にも十分手を打って、日本地の利基礎として、世界競争に十分備えるということを考えることが最重要だと思う。こういう点についてどのような方策を今日、今後とろうとしておられるか、一つ具体的にお示し願いたい。
  16. 石橋湛山

    石橋国務大臣 努力は幾らいたしましても、これで十分だ、もうこれ以上は必要ないということはありませんから、これは切りがないことであります。しかし伊藤君の言われるほど、われわれはそういう問題について努力していないわけではない。相当の努力は絶えずいたしているつもりであります。
  17. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 目に見えない。
  18. 石橋湛山

    石橋国務大臣 ただし、これはなかなか、目に見えるということは、相手がありますから……。それからまた、いろいろの国際関係で実ははなばなしくやれない悩みがある。非常にやってはおります。中国方面のことは、御承知のような事情貿易がはなはだ遺憾ながら、まだもたもたしておりますが、そのほかの東南アジア諸国に対しては、インドにしてもその他にしても、できるだけ話し合いをしまして、そこから鉄鉱石等供給を受けるように、しかも相当有利な条件で長期にわたって安定した供給を受けるような努力は絶えずいたしているのでございます。現にそういう話が進んでいるものも一、二あるわけであります。
  19. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 どうも、努力はされていると言われるけれども、努力の結果が目に見えてこぬと、努力されたということを認めるわけにはいかぬ。問題はやはりココムの問題にあると思うのですが、次から次へいろいろそういう点に切り込んでいきますと、これは議論になりますから、きょうはその議論はいたしません。いずれ機会があったら、大臣と大いに議論をいたしましょう。  次にお尋ねしたいのは、海上運賃陸上鉄道運賃に比較して、あるものによっては十分の一だとも言い、あるいは十分の二だとも言う。それほど陸上運賃というものは高く海上運賃は安いわけです。そこで日本製鉄工場の全部は御存じのように海岸線にあるわけです。この点は私は日本鉄鋼界が非常に恵まれた地域にあると喜んでいるのですが、ところが大陸内に製鉄工場を持っている諸外国と比較をして、日本はこの点にいかに有利であるかは言うまでもありませんが、しかしこの地の利を有効に活用しておらぬと私は常に遺憾に思っている一人です。一つの例を漸次あげていきますが、八幡製鉄所の一例を見ても明瞭です。八幡製鉄所のありますところの岸壁に一万トン級の荷役船は荷を積んだまま製鉄所の構内にはいれない。そこでここの洞海湾に入港するためには、六里も七里も離れている関門の門司港において上荷を取りまして軽くしてからはいってくる。それから荷を積んだものの出ていく場合においてもやはり満船ができないで、ある程度積んで、それで今度外へ出てまた荷役をしていくという二重の手数と経費をかけているわけです。そこで洞海湾という港は若松、戸畑、八幡の三市の大工業都市にあるわけです。従ってここは大臣御存じか知れませんが、水産関係なども相当基地としてやっているわけです。さらにはまたここは日本の全石炭の大部分といってもいいほどのものを産出する所でもあるわけです。こういう非常に重要な工業地帯、ここに出入りする船の数は、一、二を争っていることは御存じだと思う。大阪洞海湾か、今は二位になっているようでありますが、それほどの船の出入りの多い工業港というわけであります。ところがここにおいて、大臣も絶えず陳情を受けておられると思うが、横浜なり大阪なり神戸なり関門というところには国庫支出金かたしか七割五分だったと思いますが、そういうように国庫資金で港の修理改築等をやっておるわけであります。ところがこの洞海湾においては五割である。そこでその大部分会社等が負担をしておる。こういうことで、つまりこういう日本で一、二を争う工業港であるから、やはり大阪なり神戸なり横浜なり関門なり、こういうところと同等の国庫支出をもって改修等をしてもらいたい。そしてでき得るなら二万トン級の船が鉄鉱石を積んだまま出入りができるようにしてもらいたいということは、これはずいぶん長い間私は運輸省やら通産大臣等陳情をしておると思うのであります。ところがいまだこれは一向らちがあかぬのであります。せっかくの地の利を得た港を利用することができないでおるということは、はなはだ政治として怠慢であると思う。この点について石橋通産大臣は、どのようにこれを受けてどういうように処理をしようとしておられるか、今後どうして解決をやろうとしておられるか、さらにまた運輸大臣などともそういう点について十分話し合いをしておられるかどうか、事務当局などもそういう点において関係各省との間に十分話し合いをしておるかどうか、そこの妥結の見通しというのをどういうようにしておられるか、こういう点を具体的にお聞かせを願いたい。
  20. 石橋湛山

    石橋国務大臣 必要があればこまかいことについては事務当局から申し上げると思いますが、洞海湾のことは私も聞いております。何しろ船がだんだん必要上大きくなりますし、日本工業に直接結びついておりますこういう港湾が、実は洞海湾だけでなく至るところ非常に今になりますと狭くなり、あるいは浅くなって、航行上不便を来たしておるということは、洞海湾についてもむろん聞いておりますが、ほかのところについてもしばしば陳情を受けております。何とかこれについては解決をしなければならぬと考えておりますが、しかし港湾の問題は、今言うように横浜とか何とかいうようなところにまず追われておりまして、そういうところまで十分な手が届きかねておりますというのが今の日本現状であると思います。しかし工業方面をあずかる通産省としては、ぜひともこれらの港湾の施設については考えてもらわなければなりませんから、むろん運輸大臣とも折々そういう話はしておりますが、なお一つ十分関係各省と打ち合せまして、あるいはまた財政当局とも話し合いまして、できるだけのことをいたしたいと思います。
  21. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 事務当局は何かこういうことについて話し合われたことがありますか。——何もないか、そんなだらしのないことじゃだめじゃないか。これはもう何年押しかけてきていますか。これは単に港は運輸省だというわけにはいかぬのだ。工業の港であるものは、港のよしあしというもの、大きい船が出入りするかしないかということが、日本産業に与える一番大きな問題なんだ。それは生産コスト問題等に直ちに影響してくる。これが外国競争との間に打ち勝てるか勝てないかという大きな土俵なんです。そういうことについて事務当局をそうやかましく言ってもしようがないけれども、もう少し真剣にやってもらいたい。自分のところの管轄でないからというようなことで知らぬ顔をしておってもらっちゃ困る。大臣もこの点一つ十分事務当局にももう少し目をきかしてやってもらわなければ困る、これは強く私は大臣に要望しておきます。さきに洞海湾の問題だけを言ったのですが、それは一例に話をしたのでありまして、その他、鉄鋼全体の立場から見ますと、先ほど申し上げたように、北は輪西から南は八幡に至るまで、ほとんど港に製鉄工場があるわけです。従って大きな船が着けるようにということは、輪西から、あるいは今度川鉄が御存じのように千葉にも大きな製鉄工場を作った、その他広畑なり八幡なり、海岸線全体に大きな製鉄工場がありますが、このいずれも私が今言っているようなことを訴えているはずです。この点を私は深く通産当局は大臣初め事務当局も関心を持ってもらいたい。これを強く要望するゆえんは、先ほど申し上げたように、やはり鉄が安く生産されて安く売られることは、日の機械工業なりあるいは造船なり、ありとあらゆるところの日本産業に与えるところの影響が大きいということからであります。このことを生産主管庁である通産省は深く考えてもらわなければならぬということを、強く私は要望いたしておきます。  さらにお尋ねいたしますのは、日本の製鉄品は外国の船賃かせぎの犠牲になっているということはしばしば言われているところであります。この結果がつまり生産品の高値となってもおり、従ってこれが輸出競争においても日本鉄鋼品がたえず不利な窮地に立たされてきたことは、これは御存じであると思う。この鉄鋼品の高値は国内的にももちろん、さきにも申し上げるようにあらゆる機械産業、造船業にも大きな影響を与えているわけである。諸外国はこの製鉄基幹産業に非常な関心を持つために、従来製鉄業に使っておった専用船というのは五万トン級くらいの船を一応最高として使っておった。ところが最近だんだん調べてみますと八万トン級の船でなければ各国との間の競争に打ち勝てないということで、御存じのように七万トン、八万トン級の専用船を競って今作っている。これは御存じでしょう。ところが日本ではどうかというと、一万トン級の船でさえも荷役をしたままで出入りするのに困難であるという状態である。そこで日本鉄鋼界においても三万トン級の船が荷役のまま岸壁に横着けになり得なければこの世界競争に打ち勝てないというのが一つ悩みというか、計画になっている。これもおそらく御存じだろう。こういう点について一体どのようにお考えになっているか。現在一万トン級でやっているか、それを三万トン級の船を工場の岸壁に横着けするということになれば、相当港を掘らなければならない。また護岸工事をやらなければならぬ。こういう点について、これは運輸省の管轄だから通産省はそれは考えなくてもいいというお考えであるならば、これは何をか言わんやである。この点は単に運輸省の問題でなくて、一番関心を持って力を注がなければならぬのは通産省だ。この点について大臣はどう考えているか。つまり三万トン級の船が横着けになるようにその準備というか——自民党は経済五カ年計画なんというものを持っておられるが、その五カ年計画をこの間読んでみると、そんなことは書いてない。一体五カ年計画というのは——私はここでそれを論じようとは思わぬが、五カ年計画を自民党なり政府がお立てになるならば、外国が八万トン級の船を作って競争するというときに、日本では一万トン級ではだめだから、せめて三万トン級をということで業界が真剣になっておるときに、これに関心を持たぬわけにはいかぬでしょう。これについて一体どういう計画を立ててこれを実現さすか、世界鉄鋼界の八万トン級の船に対して、日本は三万トン級の船を作って、そして工場岸壁にも着けて競争できるような準備態勢というものを持っておられるのかどうか。持っておられるならここではっきりして下さい。
  22. 石橋湛山

    石橋国務大臣 この問題はむろん通産省でも、興味というか関心を持たないわけではない。けれども直接の主管省は運輸省であるから運輸省にまとめてもらおうと思うが、しかしながら工業港それぞれにつきましては常に船の問題が出て参ります。また相手方の原料を輸入しようとすれば、相手方の港湾の問題も考えなければならぬ、現在の世界の情勢はお話のようにだんだん船が大きくなってくる。少くとも三、四万トン級の船でなければいかぬというのは大勢のようでありますから、日本としてもむろんそれに応じた施設をしなければならぬということは言うまでもありません。しかし今までがそうでなかったものですから、日本の港湾も、八幡あたりでありましても、元来が今の工業に比較すると少し規模が少さ過ぎた、それからまたインドその他東南アジア諸国においても三、四万トン級の船が直ちに横着けができるような港というものはきわめて少いものですから、そういうことの改善をしないと日本鉄鉱石などは十分安くならないということはむろんでありますから、そういうことには努力をいたすつもりであります。
  23. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 どうもたよりにならぬことおびただしい。これはもう少し、ほんとうに石橋通産大臣産業経済については鳩山内閣のピカ一だと言われているのだから、もう少し政治力を持ってやってくれなければならぬ。これは私がしばしば大臣に注文しておることです。この問題についてはもっと真剣に大臣考えてやってもらいたい。  さらにもう一、二点お伺いしますが、現在のところでは鉄鋼の増産はその原料である銑鉄の増産によらなければならぬということは言うまでもありませんが、現在では高炉銑の年産は現状設備のままで三十年度の生産計画は、これは数字が幾らか私の方が違っておるかわかりませんが、五百十万トンか二十万トンでないか、それが三十五年度の目標では大体現在より百六、七十万トン以上の増産をするぞ、これは自民党の五カ年計画ですが、政府がそういうことを言っておるようであります。これを達成するためには千トン溶鉱炉を少くとも五本は作らなければならぬだろうということは業界権威者が明らかにしておるところです。従ってこれは通産省の方でもお認めになっておると思います。この溶鉱炉の一本当りの建設費が、現在の物価で見てやはり五十億円以上かかるのじゃないか、五本作るということになればやはり二百五、六十億、こういうものを要することはきわめて明らかにされておるようであります。この建設資金の調達について政府はどういうようにお考えになっておるか。つまり増産計画は立てられておる。それを今度は建設しなければならぬということは明らかである。従ってこの資金調達について、私はやはり具体的なものがあるはずだと思います。でありますからこの点について一つ具体的にこれをお示し願いたいと思います。  それから日本鉄鋼業者は、わずかな建設資金を調達するために、世界銀行にむずかしい条件をつけられておることは、これは通産省お認めになっておると思います。そうして世界銀行に百度参りをして、その金を無理な条件下に借りておることをお認めになっておるでしょう。こういうような状態でありますから、従って船舶計画についての設備資金、こういうものについての一貫した計画を私はきょうここで伺っておきたいと思うのであります。現在十本からの旧式溶鉱炉、この古い溶鉱炉が十本ほど、今役に立たないのがあるわけです。これは非能率で問題にならぬから、この十本は今もう使わないで休んでおるのです。こういうものをやはり新式に切りかえるということがコストを安くして増産計画を立てるために、これは無視できないことだということは申し上げるまでもありません。こういう点についての取扱いをどういうようにお考えになっておりますか。特に最近は中共、インド等も製鉄増産には非常に積極的です。これは大臣御存じ通りであります。これと競争するためには、やはり新式溶鉱炉を初め、鉄鋼生産にも非常な近代化の優秀な設備をもって生産させる以外にない。これが私は日本鉄鋼界における世界競争の上における、日本の生命線があるかどうかという点だと思うのであるが、こういう点についての計画について、具体的にお示しを願い、今後どういうことを、これを実現さすためにやろうとしておるか、それを一つ具体的にお聞かせ願いたいと思います。
  24. 鈴木義雄

    鈴木(義)政府委員 ただいまの御質問は、今後の高炉設備資金の問題その他の点についてのお尋ねでございますか、今各社から案が出ております。総計いたしまして千億をこえる計画でございます。これは高炉ばかりでなしに、今後のいろいろの計画を全部通じまして、各社の合計では千億をこえております。かようなわけでありますか、その中で比較的資金計画も容易になってきておりますので、自己の増資とかあるいは市中銀行、長期銀行からの借り入れとか、さようなことでできるものが相当ございます。しかしながら特殊の場合におきましては、やはり開銀とか、さようなものを考えていきたい、かように考えております。それから古い設備につきましては、今後巻きかえの都度できるだけ許す限り大型化に進んでいきたい、かように考えております。それから先ほどの点、つけ加えて申し上げますが、専用船の問題でございますか、これも実はただいまいろいろ研究しておりまして、問題はやはりさっき大臣が申し上げました通り海外供給先であります港湾関係設備によりますので、かような点を従来ずっと検討してきております。現在まで鉄鋼業界と通産省で話し合っております問題は、とりあえずはフィリピンあるいはゴアあたりからくるものに対しまして、十五隻程度のものを二万トンぐらいの船で考えていったらどうかということが今問題になっております。これらにつきまして運輸省と目下折衝したいと考えております。そのほかにインドあるいはその他各方面で大量の鉱石が出ます場合には、さらに専用船の型の大きいものを研究いたしたい、かように考えております。これらの資金につきましては、もちろん開銀等の問題も考慮していきたい、かように考えておる次第であります。
  25. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 局長にお伺いしますが、そうすると五カ年計画というものをお立てになっておるようであるが、それに対する、今私が申し上げた、つまり、十トン溶鉱炉の建設の問題、あるいは旧式溶鉱炉の取りかえの問題、その他第三次合理化計画というか、そういうものが漸次実施されていくことになりますが、そうするとその計画実施については、その年度内において事を欠かないような資金計画というものは伴なっていけるというように、われわれはこれを十分信用してよろしいのでございますか。
  26. 鈴木義雄

    鈴木(義)政府委員 通産省といたしましては、目的に沿いましてできるだけ努力する、それによって所要の資金は確保したい、かように考えております。
  27. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 それだけ伺っておけば、一生懸命やられるだろうから、やられなかったらそのかわりにあとがありますから、一つ十分気をつけてやっていただきたい。さらにお伺いしますが、今後の鉄鋼生産対策は、一番問題になるのはスクラップです。このくず鉄が一番問題になるわけですが、そこでこれが一番鉄鋼界の大きな悩みになっておることは御存じ通り。そこでこれを打開するためにはこの転炉問題、御存じのようにくず鉄を使わないで鉄鋼材を作るこの生産方式。これは欧州各国では盛んに競ってやっておるのであります。日本でもまたこれを受け入れることについてかなり民間の中でも争いがあるようです。そこでわが国のごとく、百五十万トン以上というか、あるいは二百万トン近くのくず鉄を外国から買わなければならぬという国においては、特にこの転炉問題、転炉による鉄鋼生産の完成については、私はこれは至上命令ともいうほど関心を持って努力をしなければならぬことだと思うのです。これについて政府はどういうふうな対策を持ってこれに臨んでおられるか。聞くところによれば、民間鉄鋼業者は、この転炉のパテントの独占の奪い合いを血眼になってやっておるようなことも、しばしばわれわれ新聞などでも見たことがあります。また内面の動きにもそういうものをわれわれは感じることがあるのでありますが、政府はこの解決を一体どういうようにしようとしておられるのか。この転炉のパテントのごときは、民間の奪い合いにまかすことでなくて、必要があれば国がこれを持って、そして民間の設備、能力等に応じてこれを与えていく、そしてこの転炉による鉄鋼生産を国が一つの計画方針に基いてやらしていくことが、私は非常に意義があると思うのであるが、こういう点について、どういう方策を持ってこれに臨んでおられるか、また今後やろうとして、おられるかという点を伺いたい。
  28. 鈴木義雄

    鈴木(義)政府委員 上吹転炉の技術の問題でございますが、これは初めはいろいろ議論がございましたが、結局現在は日本鋼管が幹事役になりまして、これがオーストリアの会社から技術を修得いたしました。ただしこれはほかの会社にも使わせる、こういうことでございます。とりあえずは日本鋼管と八幡製鉄が直ちに転炉の設備にかかりまして、それからさらにおくれまして、他の会社が今後これをやるような場合には、技術についてはできるだけ均霑させる、かような話し合いで目下進んでおる状態でございます。
  29. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 日本鉄鋼製品価格の中に占めておる内訳ですが、いわゆる原鉱石の代金あるいは輸送の代金、労働賃金等のおもなるものが生産費の比率の中に含まれておる。これが鉄鋼主要国の鉄鋼製品に含まれておるものとの比較等においてどういうようになっておるか。これは一応数字の問題になりますから、今お出しができなければ、今後で、この会期中でよろしゅうございますが、これを一つ提出を願いたいと思うわけでございます。  それから主要鉄鋼生産諸国の鉄鋼労働者の月収、生産比率に伴う月収等と、わが国の鉄鋼労働者の生産比率に伴う月収との比率関係がどうなっておるかをお伺いしたいのであるが、これも数字の問題になりますから、今ここでお示しができなければ後日でよろしゅうございますが、こういう点とも合わしてお伺いしたいのであります。この点どうですか。
  30. 鈴木義雄

    鈴木(義)政府委員 今手元にございませんので、取り調べまして提出させていただきます。
  31. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 明年からこの特別償却を廃止するということを聞いておる。これは御存じのように、日本鉄鋼関係には特別償却の問題がとにかく今日まで与えられておったわけです。ところが鉄鋼界もある程度立ち直ったから、この特別償却というものはやめてやった方がよくないかということを聞くのでありますが、そういうようになっておるかどうかを一つ伺います。  それから、やはりこういう基幹産業においては、ある償却を十分早くなさしめておくことが、絶えず設備近代化というか設備の国際水準と競ってやれる基礎条件だと私は思う。どうも日本産業界というか、日本の資本家の諸君は、社外配当のみに興味を持ち、社外配当で株主をつって、そうしてやるというきわめて不健全な経営のやり方をしてきておるのである。私は、日本企業の非常な脆弱性というか、弱さがここにあると思う。やはり償却というものがまず主として行われてあるというところに、設備近代化というか、絶えざる一つの力の上に立って新たなるものが作られていくと思う。ところが償却を十分やらないで、配当にばかりやっちまったら、これはもう問題にならぬことは申すまでもありません。特に基幹産業においては非常に重要な問題としてこの償却を取り上げなければならぬというところから、この特別償却の問題というものが与えられてあったと思うのです。この点については私は特に基幹産業鉄鋼業などにおいては重要であると思うのであるが、大臣はどういうようにお考えになっておるか、対大蔵省との関係においてそういう話し合いがどういうように進行しつつあるかを伺っておきたい。
  32. 徳永久次

    ○徳永政府委員 租税上の償却につきまして、設備近代化を促進するために、ある種の機械につきましては普通償却以上の償却を認めるという制度があるわけであります。これは今お話のように日本のように、産業近代化のおくれております国におきまして、近代化を促進するために有効適切な措置であるというふうに私ども考えております。今のお尋ねの中に政府としてやめることにしてないかというお話がありましたが、その点につきましては、まだ政府部内で具体的に問題になっておる段階ではありません。ただ御案内の通り、税制調査会というのができておりまして、そこで各種の租税特別措置につきまして具体的に実情を見て、世の中のある程度の変化に応じて過去において定めたものを今後そのまま踏襲してよろしいかどうか。情勢の変化に応じて考え直すものもありはしないかというような検討が逐次なされつつあるわけであります。その中の一つの問題点になっておることは確かでございますけれども、しかし通産省といたしましては、鉄鋼業のような基礎産業——鉄鋼業に限りませんけれども、日本設備近代化をもっともっと伸ばさなければならないというような事情から、この制度はまだまだ存続し、十分活用させていくべきものであるというふうに考えておりますので、税制調査会の答申も待ち、その後におきまして政府部内の議論になろうかと思いますが、ただいまさようなことを考えておりますような状況であります。
  33. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 この問題は徳永政府委員答弁だけで済ませておくということは、あまりに問題が大き過ぎる。そこで今私がお尋ねした問題についての大臣考え方自体をはっきり伺っておかないと、徳永政府委員がこういうことを言ったじゃないかということでは、後日責任が重過ぎるから、これは大臣から責任ある答弁を伺っておきたい。
  34. 石橋湛山

    石橋国務大臣 ただいまどうなっておるかという事情を申し上げるために局長から答弁さしたのでありますが、租税臨時措置法については、これは全体としてやはり一度検討する必要のある時期に来ておると思います。製鉄業を助長しようというような観点から申せば、これは臨時措置としてなるべく税制上の便宜をある程度与えるということは必要でありますが、同時に、これは租税全般のほかの問題とも関連して見なければならぬし、他の産業考えてみなければなりませんから、鉄は大切だから、こう言って鉄に必ず今まで行われておる臨時措置法を継続しなければならぬということは申し上げかねると思います。なお十分検討した上で結論を出したい、かように考えております。
  35. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 今の問題についても、ここでこれ以上言うと議論になりますからやめますが、日本産業に対する従来の資本主義的な考え方でやるこの償却の問題については深く考えなければならぬ。特に基幹産業においてはしかりであるという点を、一つ日本産業の基盤を固める意味において十分考えておいてもらいたいということを私は要望いたしておきます。  いま一点、最後にお尋ねしようと思うのは、これは先日から、また先ほど多賀谷委員から十分質問をし論議がかわされてあることですから、私はこれ以上お尋ねする必要もありませんけれども、ただ一点だけ明らかにしておきたいと思いますのは、御存じのように、政府日本製鉄株式会社廃止法については、自後の処置について十分自信が得られておらぬので、同法案をこの国会に提案してからもう七年にもなる、そうしてそれがだんだん延び延びになって、その後国会における同法案の一部改正案を三回も出しておる。政府はこの点については深く考えていただかなければならぬと思う。本来からいくならば、政府は一体この問題についてなぜもっと真剣に取り組んでやらぬのかということを責められても私は弁解の余地はないと思う。こういう延び延びのだらしのないやり方というものは、これは今までの法律案の中にほとんどないといってもいい。もちろんこういう企業担保法というか、これはわが国においても新たに、作ろうとすることでありましょうから、いろいろ用意、準備の要ることはわかります。しかし世界各国においてもそれぞれこの企業担保法のようなものを作りまして、そうしてどの程度のところで線を引いてやるかというようなことも相当参考になる法律というものがあるのです。従って今度、本日さらにまた延期することのこの法案をわれわれは通してやろうとするのです。だから政府国会に対して、われわれに対して甘えてもらっては困る。こんなに七年間もたって、三回もやって、さらにまたこれを延ばしていくというような不勉強では許されぬと思う。だから今度は、この企業担保法を作られるのなら作って、できるだけ早い機会にこれを提案される、その場合には債権者である銀行側と債務者である企業者側との間に、法案を出した、またここで反対、賛成の陳情に押しかけられてきてごたごたするようなことは、はなはだいけませんから、この法案をお出しになる場合には、その事前にこういう関係者との間においても十分意見を聞いて、その上に立って、国家的見地から、私はかくのごとき担保法が日本のために、日本の企業界のために、経済界のために一番よろしい、こういうふうに自信を持ってすみやかに国会一つお出しになることを強く要望いたしておきます。  以上をもって私の質問を終ることにいたします。
  36. 神田博

    神田委員長 次は鹿野彦吉君。
  37. 鹿野彦吉

    ○鹿野委員 私は重工業局長に、簡単な問題でございますが、お尋ねをいたしたいと思います。  日本の木炭銑鉄の生産量が相当余っておる、そのために生産設備がありながら稼働していない、四〇%ないし五〇%くらいきり稼働していないという現状に対しまして、非常に大量のものが輸入されておる。本年二月ごろ千五百トンという大量のものが輸入されて、木炭銑鉄メーカーが非常に困っておるというような訴えを聞くわけでございますが、どういう事情で輸入されたのか、お尋ねいたしたいと思います。
  38. 鈴木義雄

    鈴木(義)政府委員 木炭銑がこの春入りましたのは、実はスエーデンからでございますが、これは大体強度の強い鋳物に使います強靱鋳鉄に使うわけでありますが、さような関係で品質上の関係もございます。またスエーデンとの貿易関係、そういうことも考慮して千五百トン輸入を許したわけであります。もちろん申請は三千トンでございますが、国内の業者のことも考えまして、大体千五百トン、かようなことでこの春許可いたしたわけであります。
  39. 鹿野彦吉

    ○鹿野委員 申請が三千トンになっておるということでございますが、聞くところによりますと千五百トンのものも持て余してなかなか引受け手がないので、通産当局の係の人が、いろいろな事情から引き受けろというようなことを各方面に言うておるということも聞いておるわけでございますが、そうしたことは実際ありましたのかどうか。実際上三千トンのものが必要な状態にあるかどうか、お聞きいたしたいと思います。
  40. 鈴木義雄

    鈴木(義)政府委員 実はまだ輸入許可したものが入ってきておりません。事情を申し上げますとただいまお話の通りのような事情でございませんで、むしろ鋳物メーカーは品質の関係その他の関係で、ぜひ早く入荷してほしいということで待っておるように聞いております。
  41. 鹿野彦吉

    ○鹿野委員 なおこの問題については、私とあなたとそうしたことについて議論をする必要がございませんので、十分一つ実情を調査していただいて——メーカー側に言わせますと不必要に需要者に押しつけておるということが非常に顕著だということもございますから、一つ実情を御調査の上今後善処していただきたいとともに、せっかく生産力が相当多いのでございますから、銑鉄が足りない日本において、そうした必要以上の輸入をして、同席品を圧迫するようなことのないように希望いたしたいのですが、今年度これからの輸入についての御計画はどういうようになっておりますか。
  42. 鈴木義雄

    鈴木(義)政府委員 スエーデンからの木炭銑の輸入は、先ほど申し上げました千五百トンが許されただけでございまして、今後今のところ向うからのオファーもありませんので、当分ないとわれわれも考えております。
  43. 鹿野彦吉

    ○鹿野委員 私はこれで終ります。
  44. 神田博

  45. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ちょっと法務省の参事官にお尋ねいたしますが、先ほど法務政務次官も、また経団連の方からも、資本金で企業担保の適用を制限する、あるいは適用は資本金できめる。二十億とか四十億とかいう話が出ましたけれども、私は制度として、法律の建前から資本金でその法律の適用者をきめるということは避くべきである、かように考えるわけであります。それは担保力があるかないかということは銀行が判断をすればいいのであって、銀行の判断によって企業担保を設定して、こんな企業担保では貸せないなら貸せない、こういうふうに銀行あるいはほかの人が判断すべきであって、法律によって資本金の程度によってその適用を変えるということは慎しむべきであると考えるが、一体あなたの方ではどういうようにお考えであるか、これは一言でけっこうですからお聞かせ願いたい。
  46. 香川保一

    ○香川説明員 お答えいたします。お説の通り企業担保法案に対しましては、金融界からは時期尚早だ、かりに近い将来に企業担保制度が創設されるにしても、企業担保制度を利用できる債務者と申しますか、株式会社の範囲は資本金で二十億ないし四十億以上の会社に限るべきだというふうに意見が出ておりますが、お説の通り私どもといたしましては、その二十億、四十億で限るべきだという理由が企業担保法案の、弱い担保力と申しますか、そういう面からいって債務者の信用度のバロメーターにしようというふうな考え方をいたしました場合に、法律でもって二十億ないし四十億で切るのは妥当でない。それ以下の会社でありましても十分信用度のあるものもありますれば、さらに企業担保制度によって恩恵をこうむると申しますか、新しい担保の道が開ける企業もたくさんあるわけでございますから、そういう企業にも企業担保制度を利用させるべきだ、こういう考え方で現在のところ、主として金融側との意見の調整がとれておらぬのが現状であります。
  47. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私たち企業担保法法案提出を願っておるのですけれども、しかしその内容によっては逆に反対せざるを得ないような場合も起り得る。たとえば、今問題になっております資本金によってその適用を区別するというようなことがありますと、現在の工業財団その他の設定が、手続がかかる、あるいは経費もかかる、こういうことからこの法律の成立を願っておるのでありまして、大企業であり、しかも相当の人員を擁し、あるいは相当の資産を有するもののみが適用を受ける、こういうことでは、われわれの意図と全く逆の方向にいく可能性もあるわけです。中小企業保護育成ということを主張されておる自民党でも反対をされる、こういうことになりますと、せっかくお出しになったものがむだになる、こういうことも考えられますので、その点を十分勘案の上法律を提出されんことをお願いして質問を終ります。
  48. 神田博

    神田委員長 これにて質疑は終局いたしました。  これより討論に入ります。討論はないようでありますので直ちに採決に入ります。日本製鉄株式会社法廃止法の一部を改正する法律案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔総員起立〕
  49. 神田博

    神田委員長 起立総員。よって本案は原案通り可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 神田博

    神田委員長 御異議なしと認めさよう決定いたします。     —————————————
  51. 神田博

    神田委員長 次に機械工業振興臨時措置法案を議題とし、審査を進めます。質疑を継続いたします。質疑の通告がありますので、これを許します。多賀谷真稔君。
  52. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 大臣にお聞かせ願いたいと思うのですが、大蔵大臣が見えておればなおけっこうであったのですが、見えておりませんので通産大臣に御質問申し上げます。私たちは最初、本法案が事業団の構想をもって提出をされるだろう、かように予想をしておったのですが、事業団の構想がなくなっております。しかし政府は今までの質疑において、事業団構想がなくなったけれども、その精神は貫いておる、こうおっしゃっておるけれども、私たちは、事業団構想の最も大きな点は、投資のリスクを政府によってカバーしてやるという点にあったと思うのです。せっかく新鋭設備を据えましても、あるいは需要がないという場合もある、あるいはまたその相手方が大企業であり、その大企業と競争していかなきゃならぬという場合もあるのです、品種によりましては。またそういう場合が多い。そういたしますと、結局せっかく投資をしてもその投資が犠牲になる。こういう場合には、事業団構想によりますと、それは政府の貸付でありますから、当然リスクは政府が持つ、こういうことになるわけですけれども、今度の場合の資金の融資でありますと、その企業がリスクを負わなきゃならぬ、こういうことになるわけです。この点を一体どういうようにお考えであるのか、これをお聞かせ願いたい。  さらに時間がございませんのでもう一点御答弁願いたいことは、百億という予定の金が本年は十五億しか出ていない。初年度に、法律を出した、いわば開店早々のときに十五億である。三年間継続でありますが、果してその次にどの程度出るのか、ちょっと考えましても八十五億ですから、八十五億の半分ということが果して第二年目は出るのかどうか、私は非常な危惧を持つわけです。この点通産大臣の政治力に待たなければならぬと思いますが、どういうようにお考えであるか、お聞かせ願いたい。
  53. 石橋湛山

    石橋国務大臣 事業団構想につきましては、省内においても非常に研究して、なかなか議論があった。いろいろ論議の末、大蔵省当局の意見も聞きました末に、とにかく出発においては今回の法案のようなところから出発するのが最も妥当であろうということで、思い切って、今の事業団でもって全然リスクを負うという方式でなく、とにかく事業者に一応のリスクを負ってもらうという方式でいく方が、かえって健全じゃないか、とにかくこれで出発して実行して、その上でなお検討しよう、こういうことで法案を作ったわけでございます。それから金の問題は、もちろん必要があれば、大蔵大臣も実施する上においてできるだけ考慮するということは考えておりますから、金の上でいろいろ支障を来たすということはないと確信をいたしております。
  54. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 では最初の予定通り三カ年間で百億という金額あるいは百億かっきりでなくても、少くとも資金の面で本法案が十分な成果を上げ得ないという状態のないことを大臣が確約されましたので、私はその点を期待しているわけです。なおリスクの問題も、全然リスクを負わないという精神ではないようでございますから、あるいは将来リスクの問題が起り、企業によってはせっかく投資はしたけれども負担が非常に過重になる、こういう場合につきましては、また法の改正なりその他をしていただいて、このリスクを私企業に負わして、せっかく芽が出たものをつむということのないように希望いたしまして、質問を終ります。
  55. 神田博

    神田委員長 これにて討論は終局いたしました。引き続き本案を討論に付します。討論の通告がありますので順次これを許します。小平久雄君。
  56. 小平久雄

    ○小平(久)委員 私は自由民主党を代表いたしまして、機械工業振興臨時措置法案につき賛成の意見を述べたいと思います。  わが国の機械工業が戦後十年を経ながら、その合理化近代化が最もおくれているということが一般に指摘されておりながら、今日までそれの振興策について何ら法的な手が打たれなかったということは、われわれの非常に残念に思っておったところでありますが、今回ここに本法案をもちまして、特に基礎部門あるいは共通部門等の合理化への一歩を踏み出すことになりましたことは、われわれの心から賛意を表するところであります。ただ本法成立の上におきましても、これが実施に当りましては幾つかの注意を要する事項があると思います。それらの点につきましては、質疑を通じて大体明らかにされておりますので、私はごく簡単にそれらの幾つかを拾い上げまして、これを指摘しておきたいと思うのであります。  まず第一には特定機械ないしは特定機械工業の指定でありますが、これにつきましては当初から非常に多くのものをやるということも果して妥当であるかどうか。同時にまた今後の機械工業の発達に伴って、現に当局が予定しているもの以外についてもこれは重視をしなければならぬというものがおそらく現われるであろう。こういう点も心に置きまして、今後これが指定に誤まりのないようにぜひとも配意をしていただきたい、こういうことを一つ申し上げておきたいと思うのであります。  次に本法の目的達成が十分にできるかどうかということは、ただいまの質疑にもございましたが、何と申しましても資金の確保の点であろうと思います。本年度は十五億開銀の融資によってやるということでございますが、明年度以降の資金の確保ということにつきましては、まだはっきりした見通しもない。今後これはもっぱら通産大臣初め当局の御努力に待つ以外にはないのであります。従って明年度以降の資金の確保という点については特に一つ努力を願いたいと存じます。同時にまたこの貸し出し条件等につきましても現在の一般市中金融機関なりあるいは中小企業の金融公庫なり、これらに比べますならば若干の好条件と言うことはできますが、しかし一面この資金を借りて設備を改善する側に立ちますならば、おそらく私は相当の不安もあるのじゃないか。せっかく資金を借りて設備の改善をしても、それをフルに動かすだけの果して仕事が得られるのかどうか。従ってまた償却等についても十分これができるかどうかという点に相当の不安があるのじゃないか、そう思いますので、それらの実情をも勘案したしまして貸し出し条件等につきましても今後一段と一つ御研究を願いたいと思います。  次には特定機械工業として指定をされる業界の内部において、また指定をされざる業界との関係において、そういった内外の関係において相当機械業界全般に本法の適用が影響を及ぼすであろう。ある部面にはプラスであり、ある部面にはマイナスという影響が起るのではないかというふうに考えられますので、この間の調整ということには特にこれまた意を用いてもらいたい。特に指定に入らないような業者についての対策については、特段の意を用いていただきたい。申すまでもなく機械工業は、いわゆる総合工業でありまして、どの一部門が貧弱でありましても機械工業全体としての能率は上らぬ。いい機械が安くはできない。こういう結果にもなりますので、今申す通り機械工業全般のレベルの向上ということに意を用いていただきたいと存ずるのであります。さらには本法の目的も、せんじ詰めればわが国機械工業のレベルを上げて、そうして国内需要を満たすことはもちろんのこと、さらに近来ようやく輸出の面でも相当の向上を見て来ましたわが国の機械というものを、さらにこれが輸出を増大するというところがねらいであろうと思いますが、この間の輸出の増進策等についても、従来の政策だけでは必ずしも満足ではないと考えますので、これに力をいたしていただきたい。また国内におきましても、国産愛用というか、輸入機械をなるべく抑制して、国内機械を使ってほしいという声がずいぶんありますが、しかし一面また需要者側から申しますと、何と申しましても国産機械に対する信用度というものがまだまだ低い。従ってこういう実情にかんがみますときには、何とかしてせっかく国産機械を使う者が安心して使える、こういった施策を、これは国の施策といたしましてもぜひともやるべきではないか。そういう点につきましても今後一つ留意をしていただいて、今回のこの法案によって合理化等を行う際の機械も、なるべく国産機械一つ間に合せる、より多く国産機械を使わせる、こういう方向に一つ努力を願いたい。それについても、先ほど申しました通り、国産機械の信用というものについて、政府が何らかの保証という言葉が適当かどうか知りませんが、安心感を与えるような策をぜひともとつていただきたい、こういうことを考えるのであります。  これと関連して一言いたしておきたいと思いますことは、申すまでもなくわが国の機械工業というものは戦時中を通じて、軍の需要というものを中心にして伸びた、極論すればそうも言えるのじゃないかと思う。こういう関係があればこそ、戦後他の産業に比べて一番立ちおくれておる、復興がおくれておる、こういう事情でありますので、防衛庁あるいは自衛隊の需要関係、これはもちろん米国との関係等もあることは万々承知いたしておりますが、防衛庁の調達においての国産機械の利用というものが、私はいかにも少いのじゃないかという気がするのであります。もちろん国家財政の関係もありましょうしいたしますが、わが国の国産機械のレベルを上げるという建前からいたしましても、あるいはその事業の振興をはかるという建前からいたしましても防衛庁がより多く国産機械を使う、単にアメリカの中古ものばかりで間に合せるということでなく、もっとこの国産機械を使うということに特に通産当局は骨を折るべきじゃないか、こういうことを私は日ごろ感じておりますので、この際申し上げておきたいのであります。  それから最後に工作機械業界の指導について一言申し上げておきたいのですが、この法案通りますならば、何と申しましても工作機械業界には一つの新たなる需要が起るということは争えない事実だと思う。そこで業界の側において、あたかも新しい需要がここに起るからということで漫然と臨まれることは私はどうかと思う。ただ売ればよろしいというような安易な気持で、本法本来の目的に沿わないような機械業界に提供されるということでは、はなはだ心外であります。そういう点から考えましても、一方において国産機械をなるべく採用すると同時に、工作機械業界には一つこの際当局において十分の指導、監督をされて、本法の目的が十分達成せられるような機械一つ供給させる、こういうことにぜひとも御配慮を願いたいと存じます。  大体以上が本法についての私どもの考えでありますが、最後に先ほど申します通り機械業界全般のレベルを上げる、全部を合理化するということが、何と申しましても最終のねらいでなければならぬと思います。そういう立場から考えますときに、いろいろの問題があると思いますが、質疑の間にも問題になりましたように、特に産業機械の償却年数の短縮というような問題については、通産当局としては一段の努力を払っていただきたい、そしてこの業界がより容易に設備の更新が、むしろ法の援助を待つまでもなく自発的にできるという方向に全般的なる御指導をお願いしたい、こういうことを最後に申し上げまして、私は本法案に対する賛成の討論を終るものであります。
  57. 神田博

    神田委員長 次は多賀谷真稔君。
  58. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となっております機械工業設備臨時措置法案に対して、賛成の意を表するものでございます。  日本産業構造を高度化し、重化学工業に重点を置き、その上に立って経済自立の達成をする意味において、機械工業の振興は最も緊要なものであります。機械工業は付加価値率がきわめて高く、外貨獲得率がまた高いのでありまして、わが国のごとく人口過剰にして原料少き国におきましては、最重点的に考慮を払ってしかるべき産業でございます。しかも近時中国インド、ビルマを初めといたしまして、アジアの諸国家は工業化の方向に進みつつあるのでありまして、その趨勢にかんがみましても、資本財の輸出が十分期待されているのであります。しかしわが国の機械工業は、幾多の欠点を持っておるのであります。  第一には、わが国の機械工業は軍需を根幹として膨張してきたのでありまして、これを輸出本位の市場条件を前提としてきたものに再編成する必要があると思うのであります。  第二は、設備の老朽陳腐化がはなはだしく、かつ今日まで更新が最もおくれておるのであります。しかも競争国の技術、品質、研究、資本、営業がわが国に比して非常に進んでおるということであります。本法案は、わが国の機械工業の中心で、ことに最も劣弱なる部門でありますところの基礎部分品及び部品部門を中心として合理化計画を策定し、その設備を更新する資金の確保をせんとする法案でありまして、これは若干おそきに失する感はございますけれども、われわれは賛意を表する次第であります。さらに本法が生産分野の専門化、規格の統一に一歩を進められておるということは、まことに時宜に適した処置であると思うのであります。分業が徹底した部門ほど国際競争力が強いのでありまして、ことに中小機械工業が独立的な専門メーカーになることの基本としては、分業の徹底化、生産分野の協定の促進、統一規格の設定が必要であると考えるのであります。この点につきまして、需要者側の本法に対する協力態勢が一段と必要に感ずるのでございます。  次に私は本法案について、若干の意見をこの際述べておきたいと思うのであります。第一には、最初本法は振興事業団の構想をもって出発されておったのでございますけれども、事情により現在のような法案になってしまいました。そこで私たちはその事業団構想の中心である投資のリスクをどういうようにするか、すなわち需要が果してあるかどうか、大メーカーとの競争に勝ち得るかどうか、こういうような問題について全部企業にその負担を負わすことは今後果して伸び得るかどうかという点を考えますと、若干疑問たらざるを得ないのでありまして、この犠牲を今後政府において何らかカバーをしてやるという処置も講ずる必要があるのではなかろうかと考えておるのであります。さらにまた資金の確保につきまして、最初政府は三十億を予定されておったと聞いておりますが、それが十五億になっておる。果して今後百億の構想を持って出発された本法が十分なる資金の確保ができるかどうか、この点についても大臣の一そうの御努力をお願いいたしたいと考えるのであります。  次に本法の線に沿わないところの中小企業についても、十分な考慮が必要ではないかと考えております。これは先ほど小平委員からも言われましたが、本法は六分五厘の開発銀行の資金で、しかも十年間で償還をする、こういう条件になっておりますけれども、中小企業金融公庫から受けますところの本法外の中小企業につきましては九分五厘であり、さらに五年返済である、こういう条件を見ましても、私は本法適用外の中小企業対策も十分考慮していただきたい、かようにお願いをする次第であります。  さらに第三として、輸出市場の開拓と確保に一そうの努力を払っていただきたい、かように思うのであります。わが国の機械工業輸出の歴史は非常に浅いのでありまして、ことに戦前にはほとんどその輸出の経験を持っておりません。そこで日本の製品に対する信用度が非常に低いのでありまして、同種、同等のものでありましても、欧米諸国に比して五%ないし一五%くらいの低い価格で売らなければ十分買ってもらえない、こういうハンディキャップがあるのであります。そういうハンディキャップをどういうようにカバーしてやるかということがやはり輸出振興の対策の一つでなくてはならないと思うのであります。そこで輸出価格の大幅の引き下げに対する臨時的処置もやはり考慮をしなければならない、かように考えるのでございます。さらにそれに対するサービスとか、ことにアフター・サービスの問題とか、あるいは事前における宣伝の問題、こういうことも一つ十分考慮していただきたい、かように考えております。  さらにまたこの機械工業輸出の点をいろいろ検討してみますと、独占的な優良メーカーが、十分輸出に対する対策が立っていない、かように考えるのであります。それは利潤が内需に比して低いとか、あるいはアフター・サービスが必要であって非常に手間がかかるとか、あるいはまた取引が継続的でなくて不安定であるとかいうようないろいろなことがあって、とかく独占資本あるいは優良メーカーは内需にその利潤を求めたがる、こういうような傾向にあることは否定できないのでございます。そこでこれらの優良メーカーの輸出への動員態勢を立てる必要がある、かように考えるのであります。でありますから、その点につきましても十分御考慮願いたい、かように考えておる次第であります。  さらにまたカメラとか、ミシンという、日本製品で現在よく輸出されております製品、しかも外国において好評でありますところの製品につきましては、超重点的に政策をとる必要があると考えられるのであります。これはスイスの時計が全輸出量の四五%を占めておる、あるいはドイツの光学機械が非常に輸出率の高い度合いを占めておる、こういう点から見ましても、日本一つこれらの製品を超重点的に振興して、そうして今申しましたような状態にまで水準を上げる必要があるのではなかろうか、かように考えておる次第であります。  さらに第五点といたしまして、国産化の推進の問題でございます。これは先ほど小平委員がるる御説明になられましたから申し上げませんけれども、言うはやすくして行うはなかなか難いのでございまして、この点についても格段の努力をお願いいたしたい、かように考えております。  第六点といたしましては、材質の問題でございます。耐久性を生命といたしますところのこれらの技術的な商品は、素材という点が非常に問題でありまして、その良否、適否をきめる有力な要素が素材でございまして、特殊鋼その他の研究あるいは振興についても格段の努力をしていただきたい、かようにお願いをする次第であります。  以上希望条件を述べまして本法案に賛成の意を表する次第であります。
  59. 神田博

    神田委員長 これにて討論は終局いたしました。  機械工業振興臨時措置法案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔総員起立〕
  60. 神田博

    神田委員長 起立総員。よって本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  この際小笠公韶君より本案に対し附帯決議を付したいとの提案がされております。小笠公韶君に発言を許します。小笠公韶君
  61. 小笠公韶

    ○小笠委員 ただいま可決になりました、機械工業振興臨時措置法案に対して次の附帯決議を付したいと存じます。まず附帯決議案を朗読いたします。   政府は、本法施行に当り、機械工業のわが国産業に占める位置および将来加重されるべき重要性に鑑み、左記事項を中心として、その速かな発達に遺憾なき措置を講ずべきである。  一、本法による合理化施策の策定に当っては、特に規格の統一(特に部品)に留意してその互換性の確保に努めること。  二、本法施行に必要な資金の確保について一段の努力を重ねるとともに、指定業種以外のものについても、その設備近代化のため、所要資金の確保に努めること。  三、機械の販路増大を図る方策として、機械に関する総合対策を樹立し、之を計画的に推進すること。このため、特に一般産業設備機械の耐用年数の短縮、技術研究機関の充実、輸出振興の積極的助成など必要な措置を強力にとること。  ただいま討論があり、本法案の審議の過程におきましてクローズ・アップされました問題点は、まず第一に日本の国の機械工業が立ちおくれておる。しかもこれは手のかけ方によって、将来日本産業として最も強く伸びるものであり、伸ばさなければならぬものであるということが一つ、もう一つは、日本機械工業振興の一つの大きなかぎとして、一般産業設備の更新、近代化を促進すること、そのために耐用命数等の短縮をはかってこれを誘引するということ、さらにこれによって日本の使用する機械を国産化の方向に向けるということ、また本法案の使命は、かかって必要なる資金の供給が確保できるかどうか、こういうふうな問題にあったと思うのであります。これらの点につきまして、政府は今後本法の施行に当りまして特に十分なる御配慮を願いたい、こういうような趣旨において本附帯決議案を提出いたしたいと思うのであります。  特に、日本機械製品の一つの欠点は、互換性の少いことであります。部品の統一という問題、今日終戦後JISマーク、標準化運動は行われておりますが、まだ微弱たるを禁じ得ません。そういう意味におきまして、機械工業の発達、その海外への進出の基礎は、りっぱな規格、統一したものを出していくということにありますので、その点も特に御配慮を願いたい、こういうような趣旨であります。  以上簡単に附帯決議提出の理由を御説明申し上げたわけでありますが、何分各位の御賛同をお願い申し上げたいと存じます。
  62. 神田博

    神田委員長 ただいまの小笠公韶君提出にかかる附帯決議案について採決いたします。本附帯決議案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔総員起立〕
  63. 神田博

    神田委員長 起立総員。よって本案には、小笠公韶君提案の通り、附帯決議を付することに決しました。  ただいまの附帯決議に対し、通商産業大臣より発言を求められております。これを許します。石橋通商産業大臣
  64. 石橋湛山

    石橋国務大臣 通商産業大臣として最も重きを置きました法案一つであります機械工業振興臨時措置法案について、非常に御熱意のある御検討をいただきまして、本日この法案が無事通過しましたことを厚くお礼を申し上げます。同時に今小笠委員より提出せられ、皆さんの御賛同を得ました附帯決議は、もちろん私どもの異論のないところであるのみならず、最も自分たちも推進したいと思うところでございますから、十分御趣意を尊重して善処いたすつもりであります。一言ごあいさつ申し上げます。
  65. 神田博

    神田委員長 お諮りいたします。本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  66. 神田博

    神田委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  67. 神田博

    神田委員長 この際お諮りいたします。鉱害賠償及び鉱害復旧制度に関する問題調査のため、来たる六月一日、参考人の出頭を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  68. 神田博

    神田委員長 御異議なしと認めます。  なお、参考人の選定等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  69. 神田博

    神田委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  70. 神田博

    神田委員長 この際佐竹君に発言を許します。佐竹新市君。
  71. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 先般本委員会におきまして、資料として、佐久間ダム発電所工事に関する資料をいただいたのでございます。その後われわれは微細にこの契約の内容にわたって検討いたしてみましたところが、われわれといたしましては幾多の疑点がございますので、電源開発会社は本委員会の所管にもなっておりまするし、もう会期もわずかでございまするが、あすは外貨の問題、明後日は一日あいておりますが、これは申し合せによりまして、外貨の問題が長くなればさらに明後日もやろう、今日の午後も外貨の問題をやらないか、こういうことでありました。この三日間の間に、委員長におかれましては、工事請負の責任者である電源開発の総裁小坂氏、その他技術関係の人、公益事業局の人、これらの方々を本委員会に呼ばれまして、われわれが疑点を持っている点を明細に聞いておきたい。このことによって国民の誤解を招いている点は——世間にいろいろ流布されておりますが、私たちはそういうことには一向関知いたしません。問題は、この工事の契約の内容について私たちが種々検討いたしましたところ、どうしても疑点があるわけでございます。これは所管委員会でございますので、大臣の出席を求めまして、ぜひとも検討いたしたいと思いますので、委員長は急速に理事会にかけられてこれを決定していただきたいと考えます。
  72. 神田博

    神田委員長 ただいまの佐竹君の発言につきましては、いずれ理事会を開いて御相談いたすことにいたしたいと思います。  本日はこの程度にとどめます。次会は明三十日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。    午後零時四十三分散会