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1956-05-22 第24回国会 衆議院 商工委員会 第54号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月二十二日(火曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 神田  博君    理事 小笠 公韶君 理事 鹿野 彦吉君    理事 小平 久雄君 理事 笹本 一雄君    理事 長谷川四郎君 理事 中崎  敏君    理事 永井勝次郎君       秋田 大助君    阿左美廣治君       宇田 耕一君    内田 常雄君       大倉 三郎君    菅  太郎君       菅野和太郎君    椎名悦三郎君       島村 一郎君    首藤 新八君       鈴木周次郎君    田中 角榮君       田中 龍夫君    野田 武夫君       淵上房太郎君    南  好雄君       森山 欽司君    加藤 清二君       多賀谷真稔君    田中 武夫君       松尾トシ子君  出席国務大臣         通商産業大臣  石橋 湛山君  出席政府委員         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局経済部         長)      坂根 哲夫君         通商産業政務次         官       川野 芳滿君         通商産業事務官         (大臣官房長) 岩武 照彦君         通商産業事務官         (重工業局長) 鈴木 義雄君         通商産業事務官         (繊維局長)  小室 恒夫君  委員外出席者         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  繊維工業設備臨時措置法案内閣提出第八三  号)     —————————————
  2. 神田博

    神田委員長 これより会議を開きます。  繊維工業設備臨時措置法案を議題とし、質疑を継続いたします。質疑通告がありますからこれを許します。多賀谷真稔君。
  3. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 繊維機械の、更新について、政府はどういうような御処置を考えられているか、ごく簡単でよろしゅうございますから、御答弁願います。
  4. 小室恒夫

    小室政府委員 これはすでに設置しております紡織機更新促進打合会及び特に本法によって設置いたします審議会において、毎年の繊維設備更新計画を樹立いたしまして、これをできるだけ促進するように計らいたい、こういうふうに思っております。その際税制上の措置、それから金融上の措置あるいはまた原綿割当等行政措置を講じて実効を確保したい、こういう考えでございます。
  5. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 今お話の税制上の耐用年数等の短縮並びに更新促進のための予算的措置あるいは更新をした場合の原綿割当の勘案、こういう点はこの法案成立後に機械産業として受ける打撃を防止するに十分役立つような早急さをもっておやりになるつもりであるかどうか、間に合いますかどうか、それをお聞かせ願いたい。
  6. 小室恒夫

    小室政府委員 更新計画に即して具体的に繊維機械を発注いたしますのは紡績会社でございますが、紡績会社は最近割合業績もよろしゅうございますし、お金もございますから、私ども協力してできるだけ機械工業立場も考えて発注するつもりでございますから、行政指導、特に原綿割当等もあわせて考慮いたしますならば、急場の問題はこれでもって進められると思いますが、特に税制上の措置等については、できるだけ早い機会に大蔵省との間の話し合いをつけたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  7. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 繊維機械輸出の増大に関する計画をちょっと御説明願いたい。
  8. 鈴木義雄

    鈴木(義)政府委員 繊維機械輸出につきましては、輸出会議に諮りまして努力目標をきめます。それに基きまして市場開拓あるいはアフター・サービス等について計画を立て、これに対して国としては約二千万円の金額を今年度において補助しよう、かような計画を立てております。
  9. 神田博

    神田委員長 他に質疑はございませんか。   〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 神田博

    神田委員長 御質疑がなければ、これにて本案に対する質疑は終局いたしました。  この際、小笠公韶君より本案に対する修正案が提出されております。まず本修正案趣旨について提出者説明を求めます。小笠公韶君
  11. 小笠公韶

    小笠委員 繊維工業設備臨時措置法案に対しまして、修正の動議を提出いたしたいと思うのであります。まず第一に修正案文を朗読いたします。  繊維工業設備臨時措置法案の一部を次のように修正する。  目次中「第三十条」を「第三十一条」に、「第三十一条−第三十八条」を「第三十二条−第三十九条」に、「第三十九条−第四十五条」を「第四十条−第四十六条」に、「第四十六条−第四十九条」を「第四十七条−第五十条」に改める。  第四十七条中「第三十九条」を「第四十条」に、「第四十条」を「第四十一条」に改め、同条を第四十八条とし、以下順次一条ずつ繰り下げる。  第四十六条第二号の次に次の一号を加え、同条を第四十七条とする。  三 第三十一条第一項の規定による命令に違反した者  第三十三条を第三十四条とし、以下第四十五条までを順次一条ずつ繰り下げる。  第三十二条に次の一項を加え、同条を第三十三条とする。 2 審議会は、この法律実施に伴い繊維機械工業その他の関連事業が受ける影響に対処するための措置繊維工業設備更新に関する措置を含む。)について、通商産業大臣に建議することができる。  第三十一条を第三十二条とする。  第三十条を次のように改める。  (調整組合等による過剰設備処理)第三十条 調整組合又は調整組合連合会は、中小企業安定法第十五条又は第二十六条に規定する事業のほか、第二十四条第一項の規定による指示に係る織機処理に関する事業を行うことができる。 2 調整組合又は調整組合連合会は、前項の事業を行おうとするときは、過剰設備処理に関する規程(以下「設備処理規程」という。」を定めてこれをしなければならない。 3 中小企業安定法第十六条から第二十二条まで、第二十七条、第三十条(第三項を除く。)、第三十一条第一項及び第三項、第三十二条、第三十八条、第三十九条、第四十一条(第二十九条の四の規定に係る部分を除く。)並びに第四十二条の規定は、前二項の場合に準用する。この場合において、これらの規定中「第二十九条第二項の規定による命令」とあるのは「繊維工業設備臨時措置法第三十一条第一項の規定による命令」と、第三十一条第一項中「この法律」とあるのは「繊維工業設備臨時措置法第三十条」と読み替えるものとする。第三章中第三十条の次に次の一条を加える。  (織機過剰設備処理命令)第三十一条 通商産業大臣は、調整組合又は調整組合連合会設備処理規程をもって織機処理実施した場合において、当該指示に係る織機織物製造の用に供している者で当該設備処理規定適用を受けないものの事業活動が第一条の目的を達成  するのに著しく障害となっており、かつ、次の各号に該当すると認めるときは、繊維工業設備審議会意見をきいて、当該指示に係る織機織物製造の用に供している者のすべてに対し、当該調整組合又は調整組合連合会設備処理規程の全部又は一部を指定し、その定に従うべきことを通商産業省令をもって命ずることができる。  一 当該調整組合又は調整組合連合会(会員たる調整組合を含む。)が、本項の規定による命令に係る設備処理規程を公正かつ能率的に運用するに十分なものであること。  二 当該指示に係る織機織物製造の用に供している者で当該設備処理規程適用を受けないものの数が、当該指示に係る織機織物製造の用に供している者の総数に比して極めて少い場合であること。  三 当該設備処理規程が、過剰設備処理に伴う各事業者の負担の公平を確保し、かつ、相当の対価をもってその処理が行われるような内容のものであること。 2 中小企業安定法第二十九条第三項、第二十九条の三から第二十九条の六まで、第三十条第三項、第三十一条、第三十一条の二、第四十一条中第二十九条の四の規定に係る部分、第四十二条並びに第四十三条の規定は、第一項の規定による命令について準用する。   附則第一項中「二月」を「三月」に改める。  以上が修正案文であります。  この修正案文を提出いたしました理由について、簡単に申し上げます。繊維工業設備臨時措置法案に関します長時間にわたる論議の跡を振り返ってみまするときに、問題は二つあると考えるのであります。第一点は、本法案目的を円滑に実施するために、中小企業を主たる構成分子といたしております織布部門におきましては、本原案におきましては自主的なる共同行為をもって本案目的を達成せんといたしておるのでありますが、今日の日本中小企業実態を顧みますとき、多数のしかも地域的に分散いたしております中小企業が同一共同行為をとるに当りましては、何らか外からの指示がなければその目的を円滑に果し得ることが困難であります。この意味におきまして、修正案の第三十一条のごとき条件を整えておりますためには、全体的な立場から通商産業大臣調整組合または同連合会に所属しておらない者にも命令を出して、同一行同をとらしめることとする必要があると考えるのであります。これによりまして真に本法適用目的を十分に達成し得ると考えるのであります。本修正案の第一点は、この理由に基くのであります。  第二の、審議の経過におきまして指摘せられましたものは、繊維工業関連産業であります繊維機械工業の問題であります。設備制限によりまして多かれ少かれ制限を受くることは当然のことであります。本原案におきましてはこれらに対する配慮規定が見当らないのであります。そこでこの問題ははっきりと取り上げて、責任を持って政府処理するために何らかの規定を必要とすると考えるのであります。本件は日本中小企業構造におきますAの中小企業部門とBの中小企業部門の相剋問題でありまして、日本中小企業におきます解決上最も困難なる問題の一面を露呈いたしておるのであります。この意味におきまして、繊維工業の安定をはかると同時に、これら関連機械工業の安定をはかるために、私は第三十二条におきます繊維工業審議会に特にこれらの問題を審議させ、中小企業相互間の調整をとり、全体的日本経済発展努力をする必要があると考えまして、審議会の任務にこれらの事項をうたうことにいたしたのであります。本条文の活用は今後の運用に待つところ多大でありますが、非常に重大なる意味を持つものと私は考えるのであります。  修正の第三点といたしまして、施行期日の問題であります。原案によりますれば、本法案が国会を通過いたしまして公布されましたならば、二カ月以内においてこれが施行に移らんとするものでありますが、今日の中小企業実態、また関連機械工業実態等を考えますとき、本法施行を若干延ばすことが適当ではないかという配慮によりまして、一カ月を延ばして、この間に繊維工業自体、また関連機械工業におきます適当なる行政措置準備を完了せしむる必要ありと考えまして、三カ月と修正をいたしたのであります。  以上簡単に修正案文並びにその提案理由を御説明申し上げた次第でありますが、何とぞ皆様の御賛成あらんことをお願いいたします。
  12. 神田博

    神田委員長 本修正案に対する質疑があればこれを許します。——ないようでありますので、原案並びにこれに対する修正案を一括して討論に付します。討論通告がありますから順次これを許します。阿左美廣治君。
  13. 阿左美廣治

    阿左美委員 私は自由民主党を代表いたしまして、繊維工業設備臨時措置法案に対し、修正部分を除く原案及び修正案賛成討論をいたすものであります。  本法案は、今まで十数回にわたって当委員会で討議され、また過日は関係業界から参考人を多数招致して、その意見を聴取したのでありますが、紡績業界織物生産業界及び染色加工業界並びに輸出商社の各代表では、それぞれ賛成意見があり、一日も早く本法案の通過を熱望しておるのであります。また労務者関係代表よりも、原則的に賛意を表しております。ただ紡機メーカー及び織機メーカー側の一部からは反対の意見があるようですが、これらの機械メーカーは目先のみに走り、多少考え方が浅いのではないかと思われます。  申し上ぐるまでもなく、わが国繊維産業輸出上重要なる地位を占めておるのでありますが、昨年来その輸出数量及び輸出価格の無秩序に対し、国際的批判がきわめて強くなりつつあります。すなわちガット加入の際における欧州各国の三十五条援用問題、また米国における日本綿布綿製品輸入阻止問題等はその一例でありますが、これを放置することは今後の輸出振興上に重大な悪影響を及ぼすことは必然であります。  政府においては、従来輸出行政面においては貿易管理体制強化して、価格品質の規制を行うとともに、生産行政面においては紡績操短勧告とか中小企業安定法運用によって生産調整実施して輸出確保努力しているのでありますが、これら一連の措置は概して一時の糊塗的な政策にすぎず根本的な問題解決とはなっていない現状であります。  わが国繊維産業はその構造面において中小企業の占める割合がきわめて多く、特に織布等加工部門においてはそのほとんどすべてが小規模業者で。あり、多数の者が全国にわたり散在しわが国中小企業のうちでも生産上、雇用上重要なる一部門をなしております。しかもここ数年来継続的な不況に悩んでおり、政府の糊塗的な政策ではもはや打開できない段階にありますが、その根本的な原因は何といっても設備過剰に起因していることは明瞭となっております。この設備過剰という病巣を切除して繊維産業構造面におけるいわゆる体質改善を行わない限り、根本的な解決はできないと考えられます。政府においても昨年八月繊維産業対外貿易上及び国民経済上とその生活上重要なる地位を占めている実情にかんがみ、閣議決定をもって繊維産業総合対策審議会を設置して通産大臣の諮問に対し学識経験者及び各関係業界より数十名の委員を任命上六カ月の長きにわたり、あらゆる角度から昭和三十五年までの繊維需給計画を立案し、これに基き長期対策を慎重に検討した結論もまた、この過剰設備処理するという答申がなされております。本法案は、この審議会答申案趣旨を十分尊重し、その線に沿って設備問題の処理を立案したものであることを認められるのであります。従って本法実施輸出振興に寄与するとともに、また一面中小企業部門における長年の宿痾をも快癒に導くという一石二鳥の効果が期待せられ、わが国繊維工業の根本的問題をある程度解決するものと確信いたす次第であります。  以上の見地から、私は本法案に対し賛成をするものであります。(拍手
  14. 神田博

    神田委員長 次は多賀谷真稔君。
  15. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は日本社会党を代表し、小笠公韶君より提出されました修正案に反対し、さらにその修正部分を除く原案にも反対いたしたいと考えておるのであります。  不況恐慌資本主義の生んだ産物であり、災害であります。恐慌資本の破壊であります。また一方恐慌労働者中小企業者の犠牲においてする資本の休息でもあるのであります。恐慌から恐慌へは資本の生命の大きな循環であり、かくして資本主義は発達して参りました。繊維もその例に漏れなかったのであります。いな、繊維こそは、その周期的に襲ってくるところの過剰生産恐慌の波に常にほんろうされて参りました。日本紡績はわずか七十年の歴史の間、その綿糸生産高においても、また綿布の輸出高においても、世界に冠たる実績を示し、わが国産業の大宗として日本経済発展主導的役割を演じたのであります。しかしこの間の目ざましい発展歴史には、周期的に襲って参ります恐慌の波に対して常に操短をもってこれを切り抜け、恐慌操短、繁栄の連続であったのであります。紡績歴史操短歴史であったといわれているのであります。明治二十三年、一八九〇年の世界恐慌の際初めての操短を行なって以来、戦前十一回、戦後二回の操短を経験いたしました。それはあたかも動物が冬ごもりをして春の活動の時期を待つごとく、好況に乗じては活躍し、不況を迎えては操短し、操短の間に整理と準備を行い、操短の期間を経過するころにはたくみに需給の調節が行われ、増錘の計画となり、また飛躍する、増錘完了の暁にはまた生産過剰となり操短をする、これの繰り返しであったのであります。しこうして操短共同操短というカルテル行為を生み、トラストと発展していったのであります。不況のうちに独占と集中が進み、独占資本強化の体制が確立してきたのであります。一方その操短の被害は一般消費者はもちろん織物業などの中小企業者の倒産となって現われ、さらに労働者の低賃金と労働強化、解雇に拍車をかけて参りました。  私は本法案をもってこの紡績の宿命たる操短歴史を繰り返さないための計画経済への転換と理解すべきものであるか、はたまた本法案そのもの強制操短の一種であり、独占資本カルテル行為を、法律の名をかりて行なっているものと理解すべきであるか。遺憾ながら繊維製品の正常な輸出発展に寄与するという副次的目的のみを主目的のごとく掲げられた政府のごまかしの説明では、とうてい理解することはできないのでございます。(拍手)しかしながら、独占禁止法不況カルテル許可条件に満たない現況において、操短カルテル行為が認められない点、並びに限時立法の形式をとっている点より考慮いたしましてこれを推察いたしますと、後者の色彩がまことに強いことを遺憾に感ずるのでございます。以下私は次の諸点において本法案賛成することのできない旨を明らかにいたしたいと思います。  第一は、本法案は織布部門すなわち中小企業からなる機屋を救済するものであると政府は答弁をしておられますが、果してそうでありましょうか。中小機屋の苦境は、糸高製品安という言葉が端的に表わしておるのであります。中小機屋は何ゆえ割高の糸を買い、安くしか織物が売られないのでしょうか、これらの機屋は工賃さえ満足に払えない赤字生産を続けておる。さらに機屋は通常三十日の手形で糸を買い、四十五日ないし六十日間の手形で織物を売っておる、こういう現状である。全く自転車操業であります。機屋がこのような苦境に追い込まれた原因はどういう点にあるでしょうか。政府綿糸生産に対して織機が多過ぎると説明をしておる。なるほど原糸供給部門に対して織布段階生産技術が比較的簡易であり設備も簡単でありますために、無計画に増設し供給部門より過剰になりやすいことは私は否定いたしません。その論拠に基いて昭和二十九年十一月中小企業安定法二十九条を発動して設備制限命令を出されましたが、その結果は、糸高製品安が解消され、機屋不況は解消されたでしょうか。私は機屋不況の最大なる原因は別の点にあると思うのであります。紡績資本の力による機屋支配機構を見のがしてはならないと思うのであります。紡績中小機屋に対する支配を三つの形式で行なっております。  一つには、十大紡は強力なる自家織布部門を持って織物までの一貫生産を行い、中小機屋の強力な競争者となって今や市場に現われてきております。織物生産高紡績兼営は大体全体の三割強を占めており、紡績は兼営織布の操業確保のために優先的に原糸を回し、製品市場を押えておるのが現状であります。  第二には、十大紡は有力な機屋を賃織り工場として下請に出しておるという事実であります。まず下請の工賃をたたき、大量生産に適しない特殊の織布についてはこれを委託加工に出す、さらに市況の変化に応じて下請を適宜調節して危険の分散をはかる、そうしてその下請に危険を負担せしめる、こういうやり方をしております。機屋下請生産は全生産量の五割にも達しておるのであります。  さらに第三は、紡績会社は糸の販売価格をつり上げ、出荷操作を行うに非常に有利な条件を持っているという点であります。公正取引委員会の調査によれば、昭和二十九年紡績が販売いたしました綿糸のうち二五%は自家織布用とし、一九%は賃織り用と固定し、自由に販売した糸はわずか五四%にすぎなかったのであります。昭和二十九年は綿製品全体は過剰でありましたけれども、綿糸市場は常に供給不足という現象が続いておったのであります。紡績出荷量を思うように操作し、自分の思う価格で糸を売りつけておる、こういうような状態でございます。政府は、本法案過剰設備処理補助金まで出して機屋を救済するものであると主張されておりますが、私は前述のごとき紡績資本力による支配の前に、さらに原糸供給部門設備制限と相待って、織機の処分はますます織物業の規模というものを縮小し、さらに中小企業の整理への方向に進むという危険を包蔵しておると思うのであります。  さらに第二点は、供給部門設備制限による販売価格のつり上げであります。設備制限を行うときは独占価格が形成せられ、現在においても綿系は在庫少く値上りを見、操短は廃止されんとしておる今日において、さらに百二十万錘程度設備処理されるときは、値上りを見ることは必至であり、さらに三品市場における思惑的な作用はそれを一そう拍車をかけ、高騰への方向にたどることは明らかである。  さらに私は近時における繊維輸出の伸び悩みの背景を考えてみたいと思います。戦後における世界の繊維産業構造の変動がそこに伏在しておると思います。すなわち、一つには後進国における綿業の勃興であります。かつての綿花生産国綿製品輸入国自立態勢を整え、インドのごときは輸出産業への性格を確立してきたということであります。第二は、化学繊維の異常なる発達であります。さらに米国の日本繊維輸入制限等の問題が起り、ここに綿製品の需要の限界を考えた紡績資本家製品市場の拡大をほとんどあきらめて、むしろ設備制限することを主張して参りました。これはすなわち狭められた市場において利潤を獲得し、そして支出を少くし、販売価格を上げていこうという考え方であります。これは低賃金となって現われ、価格の高騰になって現われることは必至でありますが、これに対して政府は何らの対策を持っておらぬということは、はなはだ深く遺憾に考える点であります。なるほど繊維は現在繊維業者から見れば安いかもしれませんけれども、一般家庭から見ますとまだ衣料は決して安くない、高い現況にあると考えるのであります。  さらに私は第三の点において、本法案独占化がますます強化をされるであろうということを指摘いたしたい。十大紡と新紡と新々紡その他の中小紡との関係を述べてみますと、十大紡と中小紡との対立は非常な激化の一路をたどっております。労働生産性を見ましても、綿紡一コリ当り労働時間を比較しますならば、十大紡が五十一・八時間、中小紡は七十五・五時間もかかっておる。一万錘当り十大紡が百二十一・九人を要するのに対して中小紡は百五十・四人を使っておるのであります。これらの労働効率の差はなるほど設備の不備にもよるでしょう。熟練度の低位にも基因すると思いますけれども、私は最大の原因は何といっても原綿の入手にあると思うのであります。原綿輸入割当は、当初十大紡の設備が多かった時分は設備に対して行われ、中小紡設備がかなりふえてきたころになりますと、輸出入リンク原綿割当制を実施してきたのである。そうして十大紡は優良な均一な品質の原綿を入手し、中小紡は質の悪いさらに均一でない原綿しか入手できなかった。ここに私は、生産工程における糸切れが多く、生産を非常に阻害しておると思うのであります。もちろん輸出振興に対して対策があるとともに、さらに中小紡が常に操短破りをしておるのを何とか防ぐために、今まで自由であったポンド地域からの綿花輸入を抑制してそれを割当制にした、こういう点にもあると考えますけれども、私はこの点において、やはり十大紡の原綿入手が常に有利な立場にあったということは否定できないのであります。結局これらの政策は、中小紡を圧迫し、その圧迫はさらに労働者の犠牲に転嫁されて参りました。労働者の低賃金と労働強化の上に操業が続けられたのであります。近江絹糸の争議は、中小紡労働の実態を露呈したものでありますけれども、私はさらに十大紡が原綿割当において有利な地位を占めておるだけでなくて、次のようなシステムによって私はさらにさらに強大な独占化の方向をたどっておるということを指摘いたしたい。すなわち染色加工工場、縫製工場にまで手を伸ばし、これを系列化し、自家商標のワイシャツ、ブラウス、作業服まで、いわゆる二次製品市場まで手を伸ばして参ったのであります。すなわち紡績がアメリカのサンフォライズ加工特許を買って材料を輸入したのがその手始めであると私たちは考えておるのでございます。さらに縫製業者の製品を市場から駆逐して、第二次製品の市場独占化をはかりつつあるのであります。さらに、本法案が十大紡を独占化せしめる大きな役割を演じておるのは、高能率の機械を本法からはずしておるという点であります。すなわち高価な高能率の機械の輸入運転によって、ますます繊維市場を最終製品まで十大紡は独占化する傾向をたどることは、はなはだ遺憾だと考えます。  さらに第四点といたしまして、本法案関連産業を倒産させ、並びに労働者の失業分野への投入に対して何ら対策を考えていないという点でございます。関連産業なかんずく繊維機械メーカーは、その一、二を除きましてはほとんど中小企業であります。そうして機械産業の性格からいって、大部分がまたその下請であります。さらにまた繊維機械産業の発生の過程からいいまして、ほとんどが紡績会社に隷属しておるという関係にあり対等の地位にない、こういう点があるのでございます。本法律の規制によって、私は紡糸あるいは織機生産においてはほとんど増設は考えられない、こういうように考えるのでありまして、そういたしますと全く壊滅をする。そこでこれらに対して政府は何らかの処置を講ずべきである。しかるに本法案にはこれが十分に考えられていない、かように考えるのであります。国内の注文が皆無となるという状態は、輸出の場合は買いたたかれるという現象を呈してきておることは今までの例にも十分あるわけであります。私たちは今この繊維機械輸出をしようとする場合には、相当の買いたたかれを予想しなければならないと思うのであります。これらに対する法的救済の処置が何ら考慮されていない。  さらに労働者の首切りの問題であります。日本の経済の政策において、今最も重大なことは人の経済であります。今や日本経済は物の経済から人の経済へと移っております。雇用の問題をどうするかということが、今日本経済の最大の課題であります。こういうような不況の時期に、しかも昨年から本年にかけまして、昨年の三月は八十四万でありました完全失業者が今や百六万になっておる。こういうような上昇の一路をたどっておるときに、さらに首切りを増大するような法案を出すことは為政者として慎しまなければならないと私は思います。しかもその労働者の失業に対して何ら対策がないということは遺憾であります。その失業の発生して参ります状態を見ると、これは地域的、集団的に現われてくるのであります。そこでその所在の町村の財政は全く逼迫して参ります。こういう点にも何らの考慮が払われていないのであります。さらにその設備更新の問題でございますが、先ほど小笠公韶君より出されました修正案には、若干その規定を見ることができますけれども、私はこの点についてもやはり明確なる規定の挿入が必要ではないかと考えます。すなわち更新の処置に対しまして何ら十分な対策がなされていない。現在日本の機械の中で綿スフ織機にいたしましても二十年以上たっておるものが約二五%もございます。人絹製造業におきましても十五年以上たっております半木製機械が三〇%を越えるという状態でございます。でありますからこれらの処置も十分考えてなさるべきはずであるのに、こういうことを全然考慮せずして繊維のみを考えて出されたということは非常に遺憾でございます。  さらに私は第五点といたしまして次の点を指摘いたしたいのであります。それは本法案輸出の正常化に寄与するためであるということでございます。しかしながら、日本輸出があるいはソーシャル・ダンピングの非難を受け、あるいはガットの三十五条の援用を受け、あるいはまた現在アメリカにおいて行われておるような輸入禁止の処置がとられるというのは、私はむしろ過剰設備から来ておるのではなくて日本の低賃金から来ておると思うのであります。この低賃金の問題は今さら申し上げるまでもございませんけれども、なるほど十大紡におきましては若干賃金もよいかと思いますけれども、しかしながら、さらに織布面あるいは中小紡、あるいは家内工業というような点に及びますと、日本紡績あるいは織布に携わるところの人々は非常な安い賃金で働いておるのであります。そういう点を解決しなければ、依然として日本はソーシャル・ダンピングの非難を受けることは免れ得ない、かように考えるのであります。これに対する総合的な対策が欠除しておるという点を指摘いたしたい。  さらに第六点といたしまして、繊維輸出に対する対策、あるいは将来酢酸繊維、合成繊維等、化学繊維が伸びて参りますが、これに対する十分な育成の措置、総合的施策が欠けておるということをはなはだ遺憾に考えるのであります。  最後に私は、繊維安定政策そのものの必要は認めますけれども、本法案は総合対策に欠除しており、関連産業労働者を全然顧みていない。縮小された市場の規模においてますます独占化を強化し、カルテルによる販売価格のつり上げは結局中小企業や消費者に恐慌の負担を転嫁するものであり、カルテルと同時に個々の資本内部におきましては合理化が進み、労働者の犠牲において利潤追求が確保されるという法案の形態に、立法者の意思がどうありましても、行かざるを得ない状態にあるということを申し上げておきたいと思うのであります。  以上をもちまして、小笠公韶君よりなる修正案に反対し、修正部分を除く原案に反対の意を表するものであります。(拍手)
  16. 神田博

    神田委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決いたします。まず修正案について採決いたします。本修正案賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  17. 神田博

    神田委員長 起立多数。よって本修正案は可決せられました。  次に、修正部分を除いた原案について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  18. 神田博

    神田委員長 起立多数。よって本案小笠公韶君提出の修正案の通り、修正議決すべきものと決しました。  この際、小笠公韶君より本案に対し附帯決議を付したいとの提案がなされております。発言を許します。小笠公韶君
  19. 小笠公韶

    小笠委員 ただいま修正議決になりました繊維工業設備臨時措置法案に対しまして、附帯決議の動議を提出いたしたいと思うのであります。  まず附帯決議を朗読いたします。     附帯決議   政府は、本法案施行に当り、関係繊維機械業者に及ぼすべき影響を除去するため、左の措置を中心として必要な措置を強力に実施せられたい。  (一)繊維機械更新計画を毎年樹立し、これを強力に実施すること。  (二)繊維機械の耐用年数を短縮し、その近代化を促進すること。  (三)繊維機械設備更新促進のため必要な予算的措置を採ると共に、所要資金の確保に努めること。  (四)繊維機械輸出の増大を図るため、積極的な措置を講ずること。  以上であります。  本附帯決議の提出理由を簡単に申し上げます。先ほど修正案提出の理由のときに申し上げましたように、日本中小企業の構造を見まするときに、相互依存の関係に立つ分野が強いのであります。従いまして、その一部に必要なる措置をとりますれば、他の部分に影響があることは当然でございます。しかして、このことは日本中小企業対策がいかに困難であるかを裏書きするものだと私は考えるのであります。従来の中小企業対策が、各種各様の中小企業の共通の点あるいは一般的問題の解決並びにその促進にのみ従事して参ったゆえんも、またここにあると私は考えるのであります。こういうふうな見地から見まするとき、本法案繊維関係中小企業にとりましては、画期的なる政策方向を示しておるものと私は考えるのであります。また同時に、それだけに、先ほど申し上げましたように、関連事業に及ぼす影響も大きいものがあるのであります。日本の産業を、調和をとりつつ安定せしめる意味におきまして、かつ日本中小企業問題の解決を強く進めるという見地から見まするとき、両者の調和を十分にはかって参らなければならぬ、こういうふうな考え方のもとに、当面問題になりました繊維機械工業の問題に、十分なる配慮を加えていただきたい、こういう趣旨で、以上列記いたしましたような四点を提出いたした次第であります。特にこの案文にも書いてありますように、列記をいたしましたこの四点に限ることはございません。これらの重要な事項を中心として、調和対策を強く進めていただきたい、こういう趣旨であります。特に先ほど多賀谷真稔君から、世界繊維産業構造の変化のお話があったようでありますが、すでにしかりであります。この意味から考えますとき、日本繊維産業の前途を見まするときに、本法案施行といなとにかかわらず、繊維機械の産業といたしましては、当然に後進諸国への輸出産業として成り立っていくべき使命と運命を持つものと私は考えるのであります。この意味におきまして、第四項に掲げておりまするいわゆる産業の性格切りかえのために——犠牲に対する応急措置のほかに、性格切りかえのために政府において特段の御努力を願いたい。特にこの点をお願い申し上げまして、私の本付帯決議の提案の理由といたします。
  20. 神田博

    神田委員長 ただいまの小笠公韶君。提出にかかる附帯決議案について採決いたします。本附帯決議案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  21. 神田博

    神田委員長 起立多数。よって本案には小笠公韶君提案の通り附帯決議を付することに決しました。  ただいまの附帯決議に対し、通商産業大臣より発言を求められております。これを許します。石橋通商産業大臣
  22. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 繊維工業設備臨時措置法案につきましては、長いこと御審議をいただきまして、おかげさまで本日委員会で可決されましたことを御礼を申し上げます。  同時にこの繊維機械についての附帯決議は、先般来私どもからも申し上げておりますように、この趣旨政府も十分やるつもりでおりましたところであります。なお衆議院からかような附帯決議をつけられましたことは、われわれとして仕事のやりやすくなることはありがとうございます。残念ながら社会党の諸君から御賛成が得られませんでしたが、趣意については必ずしも不賛成でなかったように了承いたします。その間に、反対ではありましたが、諸君から述べられました御意見は十分にこの中にくみ入れられておるものと政府としても了承いたします。ありがとうございました。
  23. 神田博

    神田委員長 お諮りいたします。本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 神田博

    神田委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  25. 神田博

    神田委員長 この際お諮りいたします。機械工業振興臨時措置法案並びに日本製鉄株式会社法廃止法の一部を改正する法律案審査のため参考人の出頭を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  26. 神田博

    神田委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  なおそれぞれの参考人の選定並びに意見聴取の日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 神田博

    神田委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  本日はこれでとどめます。次会は明二十三日午前十時より開会することにし、これにて散会いたします。    午前十一時三十八分散会