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1956-05-21 第24回国会 衆議院 商工委員会 第53号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月二十一日(月曜日)     午後一時五十分開議  出席委員    委員長 神田  博君    理事 小笠 公韶君 理事 鹿野 彦吉君    理事 笹本 一雄君 理事 長谷川四郎君    理事 中崎  敏君 理事 永井勝次郎君       秋田 大助君    阿左美廣治君       宇田 耕一君    内田 常雄君       大倉 三郎君    菅  太郎君       椎名悦三郎君    島村 一郎君       首藤 新八君    田中 龍夫君       中村庸一郎君    野田 武夫君       淵上房太郎君    南  好雄君       森山 欽司君    伊藤卯四郎君       加藤 清二君    佐竹 新市君       多賀谷真稔君    田中 武夫君       田中 利勝君    帆足  計君       松尾トシ子君  出席国務大臣         通商産業大臣  石橋 湛山君  出席政府委員         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局経済部         長)      坂根 哲夫君         通商産業政務次         官       川野 芳滿君         通商産業事務官         (大臣官房長) 岩武 照彦君         通商産業事務官         (通商局長)  板垣  修君         通商産業事務官         (重工業局長) 鈴木 義雄君         通商産業事務官         (繊維局長)  小室 恒夫君  委員外出席者         外務事務官         (経済局次長) 西山  昭君         外務事務官         (経済局第三課         長)      吉良 秀通君         外務事務官         (経済局第七課         長)      二階 重人君         大蔵事務官         (主税局税制第         一課長)    白石 正雄君         労働事務官         (職業安定局失         業対策部長)  澁谷 直藏君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 五月二十一日  委員濱野清吾君辞任につき、その補欠として菅  太郎君が議長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  繊維工業設備臨時措置法案内閣提出第八三  号)  中共貿易に関する件     —————————————
  2. 鹿野彦吉

    鹿野委員長代理 これより会議を開きます。  神田委員長が所用のため暫時おくれますので、委員長指名によってその間私が委員長の職務を行うことにいたします。  繊維工業設備臨時措置法案議題となし、質疑を継続いたします。質疑の通告がありますので、順次これを許します。田中武夫君。
  3. 田中武夫

    田中(武)委員 ただいま議題になっております繊維工業設備制限法案につきましては、先日来いろいろと質問をいたしたわけなんです。その質問過程においても、大体いろいろの方面からお伺をしたのですけれども、まだ一つ明確にならない点がありますので、最終的に一、二の点をお伺いいたしたいと思います。何と申しましてもこの法案が通った場合に、繊維機械製作関係の工場あるいはその下請、これらに関連しているところの労働者に及ぼす影響ということについてわれわれは最も頭を痛めているわけです。それにつきましては、政府委員からいろいろ御答弁をいただいておりますが、まだ明確にならない点がありますので、再度お伺いいたしたいと思うわけです。  まず、大臣がお見えでないので、次官にお伺いするのですが、この法案が実施せられた場合に、必ず大きな影響がこれら機械メーカーに及ぶであろうということは先日来の質疑応答の中からもはっきりしていると思います。また繊維局長も、一時的ではあるが谷があるということはやむを得ないだろう、こういうふうに言っておられます。そういたしますと、この法律実施によって受けるところのこれら機械メーカー経営者あるいはその下請、ひいてはそのことによって首切り人員整理等が予想せられますが、これらに関連する労働者における犠牲に対して政府はどのような補償といいますか、どのような手を考えておられますか、もう一度はっきりとお伺いいたします。
  4. 川野芳滿

    川野政府委員 この問題につきましては、先般来たびたび御答弁申し上げましたように、今回の繊維工業機械規制等によりましてそういう事態が起らないように努めて機械更新をやり、さらに外国市場等も拡大させまして、そうして機械工業に飛ばっちりを受けないようにいたしたい、こういう考えで先般来御答弁申し上げましたような種々の施策を実は考えておる、かような次第でございます。
  5. 田中武夫

    田中(武)委員 ただいまの次官の御答弁ですが、同じようなことなら先日来伺っておることです。ところがそれによってもまだ具体的にはっきりしない面があるのでお伺いしておるのですが、今の御答弁をもっと具体化してお聞かせ願いたいと思います。
  6. 川野芳滿

    川野政府委員 たびたび御答弁申し上げましたように、実は機械更新の促進をはかりまして、そうしてできるだけ失業等の出ませんようにやりたいと思っております。なお設備更新につきましては、政府といたしましてもできるだけ更新を促進する意味におきまして、いろいろ金融の面なり、あるいはまた税法上の優遇の措置を講ずるとともに、さらに原綿の割当等におきましても、設備更新をいたしたものにつきましては御考慮を申し上げたい、かように考えまして設備更新をさらに促進いたしたいと考えておる次第であります。
  7. 田中武夫

    田中(武)委員 この繊維機械更新についての考え方は今伺ったわけですが、これは先日来何回も言われておるように、やはり間接的にこれの犠牲を受けるところにあくまでも援助をする、こういう結果になると思いますが、直接的にこの機械部門が受ける影響犠牲に対してどのように考えておられるか、こういうことをお伺いしておるわけです。  それではこちらから具体的にお伺いいたしたいと思います。ただいま次官は、紡績機械輸出のことを言われましたが、輸出するためにはまず紡績機械技術向上ということが考えられると思います。そういうようなことについて何か具体的な施策をお考えになっておりますか。
  8. 鈴木義雄

    鈴木(義)政府委員 紡績機械技術向上の問題につきましては、前にも御説明申し上げたかと存じますけれども、技術関係奨励金研究費、そういうようなものを交付しておりまして、今後もそれを続けたいと思っております。今年度は今申請が出ておりますが、五、六件その点で考慮いたしたいと思います。さらに今後もそういう施策を続けて、できるだけ技術向上に努めたい、かように考えております。
  9. 田中武夫

    田中(武)委員 ただいまの予算はどの程度ですか。それから昨年に比べて本年度はどういうふうなことになっておりますか。なおこういう法律が通ることによって受けるであろう犠牲考えられるだけに、そういうようなことも考えて今の予算が組み立てられておるかどうか、この点をお伺いいたします。
  10. 鈴木義雄

    鈴木(義)政府委員 金額的には今手元にちょっと資料がございませんが、従来大体二十七年から三十年までの間に二十五件、応用研究補助金を出しております。工業化試験につきましては二十七年に一件、二十八年に二件、二十九年に二件、三十年度はございません。三十一年度は大体六件を応用研究としまして予定しております。
  11. 田中武夫

    田中(武)委員 先日来の質疑応答の中でもはっきりしておるのですが、この法律が実施せられると、若干の期間であると繊維局長は言われておるが、やはり機械メーカーの方にいわゆる谷がくるであろう、こう考えられる。その間それが受ける犠牲はしばらくおくとしても、やはり技術的に後退するといいますか、少くとも技術がそこでストップする、こういうことが考えられると思うのです。従いまして、今重工業局長も言われました技術振興についての面からも、この法律が通ることによってそういう矛盾があるということから、一そうのこの面の積極的な推進といいますか、予算の増額というようなこともお考え願いたいと思います。  それから設備更新ということになりますと、合理化というような点からも高性能な機械を入れようとすると思うのです。そうした場合に外国の高性能な機械を入れる、こういうことになりまして、いわゆる国産をもって更新をせずに、外国製品設備更新するというような面はないでしょうか、この点はいかがでしょうか。
  12. 小室恒夫

    小室政府委員 本法案で新増設の制限考えておりますのは、紡績設備及び染色加工設備でありますが、まず紡績設備については、新鋭の設備外国から入れるということは、ただいまほとんど問題になっておりません。染色加工設備の一部で現に輸入を実施しているものもありますが、問題は紡績設備の方に集中しておると思います。その点については、今言ったようなことから悪影響が起るということは私はないと思います。
  13. 田中武夫

    田中(武)委員 そう大した悪影響は起らないと思っているということでありますが、国産品紡績機械を奨励する、そして外国のそのような機械輸入制限していく、こういうことについては、どのようにお考えになっているか。
  14. 小室恒夫

    小室政府委員 この繊維機械類輸入につきましては、現在外貨割当に際しまして、重工業局と十分打ち合せをとげておりまして、国内でできるもの、また国内で買った方がいいもの、そういうものを外国から入れるということは実際上いたしておりません。
  15. 田中武夫

    田中(武)委員 私がお伺いしているのは、この法律によって犠牲を受ける、こういうところからなおこれを保護してやるという立場に立って、まず、先ほどお伺いしたように、紡績機械技術向上ということに一つ重点を置いた施策をとっていただきたい。そして先ほど次官も言われたように、日本紡績機械外国へどんどん輸出できるように——それには高性能ないい機械が必要だと思います。そういうような点について積極的な政策をとってもらいたい。なお逆に、外国からそういう機械が入ってくるとするならば、それの制限措置等考えてもらいたい、こういうことを言っておるわけなんです。これらのことについて、最終的にもう一度御答弁願いたいと思います。輸出についてどのような振興策考えておられるか。輸入制限の問題については今御答弁がありました。技術のことは先ほどお伺いいたしましたが、機械輸出方面、そのことについて積極的な施策としてはどのようなことが考えられるか。
  16. 鈴木義雄

    鈴木(義)政府委員 輸出振興策といたしましては、従来輸出会議に諮りまして、いろいろの方策を立てております。そこでやはり何と申しましても一番重要なのは市場調査アフターサービスでございますが、今年度市場調査の一番具体的な計画を立てまして、市場調査に出かける準備もいたしておりますし、同時にまたアフターサービスも、適当な国を選びまして、それに対して業界でしかるべく視察を計画中でございます。これに対して、通産省といたしましては二千万円の補助金を予定して交付しよう、こういうことでございます。さらにわれわれといたしましては、いろいろ安売りというような問題も心配されますので、業界輸出態勢を整えてこれに対して対処しよう、こういうふうなことも考えております。さらにそのほか国内的に技術向上をはかって、大いにコストを安くして、これによって輸出を大いに奨励しよう、こういうことでございます。
  17. 田中武夫

    田中(武)委員 ただいまの紡績機械輸出関連してですが、しばらくの間谷ができて受注もうんと減るだろう、あるいはなくなるかもわからない。こういう間の一つ対策として、今問題になっております日比賠償の問題、あるいはその他ビルマとかインドネシアといったような方面へ、賠償の対象としてこういう機械を出していく。そのためにはその間に作られておるところの紡績機械政府が買い上げて、これを賠償物資に充てるというようなことも一つ救済策かとも考えられますが、かようなことについてはできますか。それともどういうようなことをすればできるか、一つお伺いいたしたい。     〔鹿野委員長代理退席委員長着席
  18. 鈴木義雄

    鈴木(義)政府委員 紡績あるいはその他の繊維機械につきまして、賠償方面にわれわれとして大いに今後期待いたしたいと思っております。また経済協力関係で、ビルマ等にも紡績機械等需要が出ております。しかしこれをどういうふうにやるかということも問題でございますけれども、賠償関係で大体の方式がビルマの場合も、また今度のフィリピンの場合にもたしかそうだと思いますが、業界に直接向うの政府が交渉することになっておりまして、政府は介入しないで、ただ支払いだけをするわけでございますので、その点なかなか問題があるのじゃないか、こういろ感じがいたします。それからもう一つは、これらの機械注文生産でございますから、相手方の所要とする設計なり要望によって作らなければならないので、それを見越してあらかじめ作っておくことが果していいかどうかというような問題、それからかたがた、国が買い上げるとなりますと、予算問題等もございますので、これらについては今後十分研究いたしたいと思いますけれども、なかなかむずかしい問題があるのじゃないか、こういう感じがいたします。
  19. 田中武夫

    田中(武)委員 賠償物資紡績機械を充ててはどうかという問題について研究もしたいと思うが、結果的には、予算等関係もあって、むずかしいんじゃないか、こういうような御答弁です。先日来われわれが申し上げているように、一つ産業合理化のために、これに関連する産業犠牲にする。そういうような関連産業犠牲の上に一つ産業合理化せられ、発展していくということは望ましくない。従って、先日も大臣見えのときに、まま子扱い等々の話も出たわけです。予算の問題あるいは技術問題等、あるいは今おっしゃったような直接注文であるとか、あるいは補償問題等もあろうと思うのですが、こういうような関連から、この法律によって犠牲を受けることが、たとい少い期間にもせよ、はっきりしているところの紡績機械については、特に研究をしていただきたい。このように考えるわけですが、いかがでしょう。
  20. 鈴木義雄

    鈴木(義)政府委員 お話の通りわれわれといたしましても、できるだけこの法案によりまして影響を受けます繊維機械維持と申しますか、そういうことについて万全を期したいと思っております。このような考え方から、これに対して積極的な方針をとって、今注文を受けております相当の活況を呈しているのが急に落ちるということのないようにできるだけ努力したい。それから同時に輸出についても対策を、たまたま輸出は本年度は昨年度に比べますと、この前も申し上げましたが、インド等需要が相当ございまして、昨年よりは見通しがよくなっておる、こういう状況であります。さようなわけでわれわれといたしましてもできるだけ対策考えたい、かように考えております。
  21. 田中武夫

    田中(武)委員 できるだけ対策考えたい、こういうことでございますので、今これ以上具体的なことをお伺いするのもどうかと思いますが、私といたしましてはそのように犠牲を受けるということがはっきりしておる。それだけにその間の技術振興の問題、それからその間仕事がとまるであろうということが予想せられますので、それをたまたま今問題になっておる賠償引当物資としてこの急場をしのいでいこうということ、それが先ほど言われておる紡績機械海外輸出の問題と関連しておると思いますので、ぜひ強力な措置をお考え願いたいと思う。  それから先日私質問いたしましたときに、この法律と並行して、犠牲を受けるであろう紡績機械産業に対し特別な保護立法育成立法等考えられないか、こう言ったところ、重工業局長から、ただいま立法措置等考えていない、こういうことでありましたが、それ似来いろいろとこの委員会質問を通じて、この法律実施の際、その後の繊維機械メーカーに及ぼす影響等もはっきりしてきたと思います。もし先日来何らか考えが変られて、何とか法律的な措置が必要とあればする、してもよいというお考えを持っておられるか。また今はないとしても、もしこの法律が実施せられた暁、われわれが心配しておるようなことが不幸にして起きた場合、直ちに救済のできるような措置としての立法等もお考えになる用意があるかどうか、重ねてお伺いいたします。
  22. 鈴木義雄

    鈴木(義)政府委員 この問題はこの前通産大臣からお答えしたと思いますが、われわれといたしましては、現在繊維機械メーカーに対する対策としましては、何をおいてもやはり需要維持するということが大事だという観点から見ますと、先ほど来申し上げておりますことを繰り返すわけになりますが、何としても設備維持更新をするということを積極的にやる。それから輸出について大いに手を伸ばす、さようなことになると思います。従いまして内容としては法律をもって規定するような事項にならないで、やはり行政的に強力に措置していくということになるのではないか、かように考えております。  それから別の問題といたしまして、将来繊維機械産業合理化するという事態になりますれば、あるいは需要がふえれば、国内の方も繊維産業はよくなっていく。それによって繊維機械需要もふえていく。そしてさらに繊維機械産業競争力を付与するというようなために、繊維機械産業自身設備更新あるいは合理化をやる事態が参りますれば、これは別に今提案しております機械工業振興法案の中で取り上げて措置できる、かように考えております。従ってこの法案関連する問題としては、先ほど来申し上げました設備更新輸出振興にできるだけ努力していきたい、かように考えておる次第であります。
  23. 田中武夫

    田中(武)委員 同じような答弁なり質問を繰り返しておることになると思いますが、それだけ重要だから言っておるのです。繊維産業繊維機械メーカーとは多くの因果関係があって、繊維産業が発達しない限り需要もないから、機械メーカーの方もよくならない。だから一方をよくして一方がそのお流れをくんでよくなる、こういうことは当然のことだと思うのです。しかし先日来論議せられておるところは、法律をもって繊維産業保護する、しかしそれによって影響を受けるところの機械メーカーに対しては直接犠牲保護してやる、こういう手はやらずにやはりこちらの方の産業をよくしてあくまでもお流れをちょうだいするというか、おこぼれをもらうということしか考えられていない。もう一つ何かぴんとこない。何といいますか、積極的でないということで、われわれはこの法律実施後に起る紡績機械メーカー関係下請労働者に及ぼす影響を憂慮しているわけなんです。そこで何か直接やる、こういうことを必要とするのではないか。そこでそのような、たとえば紡績機械振興助成法とか何とかいうことが考えられないか、こういうことを言っているわけです。たまたま大臣がお見えになりましたから、もう一度そういうことについてお伺いいたしたい。間接的救済でなく直接救済考えられないか、こういうことです。
  24. 石橋湛山

    石橋国務大臣 なお十分考えますが、今のところでは間接救済といいますか、今の紡績業を立て直して、おのずから機械メーカーの方もその恩恵を受ける、かように考えてやっておるわけであります。
  25. 田中武夫

    田中(武)委員 どうもくつの上からかゆいところをかくようで直接にぴんとこないのですが、どうでしょう直接にこれを救済するというようなことは考えられませんですか。先ほど大臣がお見えにならない前から質問しておるわけですが、たとえば、この法律実施によって機械メーカーで大きな打撃を受ける、こういうことは大臣もお認めになっておるはずです。また繊維局長も、ある期間ではあるが大きな谷ができるということは認めておられるわけです。そうすると、その間受注が減り、あるいはなくなることによって当然経営打撃を受け、またそれによって労働者首切りあるいはその他の犠牲を受ける、これも当然であります。それはしばらくおくとしても、その間に生産をやらないということによって日本の持つ紡績機械技術といいますか、これがストップするというか後退するという結果になるが、この技術向上振興ということ、それから紡績機械輸出の問題、逆に紡績機械外国から入ってきて、それによって日本紡績機械メーカーは困るのではないか、こういうような三つを先ほどからお伺いしておったわけです。この技術振興の問題、それから輸出振興の問題、輸入制限問題等について大臣からもう一度お考えを承わりたい。
  26. 石橋湛山

    石橋国務大臣 先日来申し上げておりますように、今御指摘のような心配は、これはわれわれとしても起したら大へんなのです。紡績機械技術上の衰退というようなことは絶対に起させない処置を施すつもりでおります。しかし機械産業全体としては別に法案も——完全なものとは申しませんけれども、本年とにかく一応機械産業そのもの振興についての法案は別に御審議願ったわけであります。こういうことでございまして、紡績機械だけを取り出してどうということにすると、何々機械も取り出してどうということになるかと思いますが、今のところは紡績機械だけ取り出してお話のような特別な法律的措置をするということはいかがなものかと思うのであります。そういうわけでこの法案には結びつけなかったわけであります。
  27. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣もっと色けのある答弁はできないですか。これじゃ同じことばかりやっておると思うのです。機械工業臨時措置法は前から提出になっておることはわかっております。これは一般機械の問題、しかも機械の部品の問題である。大臣紡績機械だけじゃなく一般的機械として考えると言われるが、一般的行政としてはそうだと思うのです。しかしながら今審議せられておるこの繊維設備制限の問題は、直接関係があるから申し上げておるわけです。機械全般の問題は機械工業臨時措置法によって考えられる。しかしこの法律によって直接影響を受け、犠牲を受けるということはわかっておる。だからこれには特別な法が必要じゃないか、こう申し上げておるのです。だからこの法律のうらはらをなすところの救済といいますか、保護立法考えられないか、考えてくれということを言っておるわけです。どうでしょう。大臣先ほどからそんなことがあったら大へんだ、こうおっしゃっておりますが、そういうことが起ることがはっきりしておるし、また各国の体験からもそういうことが現われておるので申し上げておるわけです。それじゃ、この間もちょっと申し上げかけたのですが、もしこの法律実施の結果、この機械メーカー関係において倒産、破産するものが現われる、あるいは多くの労働者が首を切られて、その結果大きな労働争議が起きた場合には、全部大臣責任をもって解決する自信がありますか。
  28. 石橋湛山

    石橋国務大臣 全般的に申しまして、この間も申し上げたように、そういうことが起ることは政府責任でありますから、むろん責任をもって解決する覚悟を持っておりますが、この法案に特に結びつけてお話のような法律を作る必要は、実際問題としてないんじゃないか、これはそうでなくてもやれるのではないか、かように確信するわけであります。
  29. 田中武夫

    田中(武)委員 われわれはそれによってこういう犠牲があるだろうと申し上げ、大臣はそういうことはなかろうと思うと言われる、これではいつまでたっても水かけ論だと思います。しかしそれでは具体的に起った場合、はっきりと大臣としては善処していただきたい。首切りが現われるであろうということははっきりしているわけです。それでありながら、その必要はなかろうということは、親愛なる石橋通産大臣としては、もうちょっと答弁の仕方があるのではないでしょうか。
  30. 石橋湛山

    石橋国務大臣 どうも同じことを繰り返すので相済みませんが、この間も申し上げますように、現在の紡績方面機械は非常な繁栄をしておる、これは御承知の通りの特殊事情によって起っておるわけであります。これをこのまま続けるということは、なかなか保証し切れないのではないか。日本繊維産業全体の上から見て、どれだけの機械日本維持されなければならないかということは、おのずからノーマルな状態があろうと思います。その程度においては、政府としてはどんなことをしても維持をしなければならない。そこで、残念ながら法律の形には今回はなりませんが、とにかく輸出あるいは国内機械の入れかえ等について、あらゆる法律、あらゆる制度を利用して、極力これを実施する、本日のところは、かようにお答えする以外に、せっかくでありますが、方法はないのであります。
  31. 田中武夫

    田中(武)委員 同じようなことばかりをやりとりしていることになるのですが、おっしゃるように、現在では機械メーカーに相当な注文が来ていることは事実です。それもこの法律が実施されるであろうという見通しの上に立っての、からブームといいますか、受注だったと思います。それがこの法律が通ることによって、がたっと急激に減り、なくなり、その受ける影響が大きく来るのではないか、こう考えるわけです。そこを何とかうまく調整していくという手は考えられないか、こう申し上げているわけであります。従って、こういうように不安定であるから、紡績機械メーカーでは、労働者も臨時工というものが相当入っておると思います。今労働問題に関連して臨時工問題が大きな社会問題ともなっておるわけです。そういうような問題にも影響がありますので、急激な谷ができる、そういうことについて、ぜひ予防策を考えてもらいたい、こう申し上げているわけです。その一つの方法として、先ほど重工業局長にはお伺いいたしましたが、はっきりした御答弁は得られなかったのですが、日比賠償の問題、あるいはビルマとの賠償その他の問題等関連して、その間受注がなくなるであろうと考えられる期間政府がそれらの機械を買い取っていく、あるいは何らかの補償をしていって賠償物資に充てるというような手も考えられるのです。大体のことは重工業局長にもお伺いしたのですが、政治的な面からの、大臣としてのそういうような措置についてのお考えをお伺いいたします。できるかどうか。やる気があるのかないのか。
  32. 石橋湛山

    石橋国務大臣 それは先ほどから申しましたように、あらゆる手段を講ずるつもりでありますから、もし日比賠償等もこれに利用ができるならば、むろん利用いたしますが、私はどうも賠償問題にこれを今すぐ結びつけて、とやかく申し上げるわけにはいかないと思います。
  33. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣はあらゆる手段を講ずると言われるが、ほんとうにその気があるならば、立法措置を講ずることも、あるいは賠償の問題について積極的な方法をとることも、みなあらゆる手段に入ると思います。今後この法律実施後において、そういうわれわれが憂慮するような事態が起きた場合には、どんどん大臣のところに参りまして、あらゆる手段をとってもらうようにお願いいたしますが、そのときにはやっていただけますか。
  34. 石橋湛山

    石橋国務大臣 今の私の答えをよく御承知なかったかもしれませんが、しかし賠償等に結びつけてプラントを輸出するということになると、向うの需要で、希望のあることでありますから、日本側としては賠償物資にどういうものを出すかについて議論がありましょう。われわれとしてはむろん繊維関係のプラントを輸出することは差しつかえないと考えております。しかしこれは向うの受け取る方の側の要求によることでありますから、法律によって賠償には必ず繊維関係のプラントを輸出するということをきめるわけにはいかぬと思います。しかしこれはむろんお話申し上げるまでもないことであります。先ほどから繰り返して言うように、日本繊維機械産業維持ということについては万全の措置を講じなければならぬ、それだけのことはいたすつもりであります。
  35. 田中武夫

    田中(武)委員 言葉じりを拾うわけではありませんが、それでは万全の措置を講じて、受ける犠牲ができるだけないようにやっていく、こういう御答弁をはっきり承わった、このように了解いたしてよろしいのですか。われわれが何回も同じような質問を繰り返し、この法案審議に対して一番心配しており、かつまた不満に思う点は、一つ産業合理化、これの振興のために、その関連産業犠牲にする、それが行政的に望ましくない。従ってこれによって受けるところの犠牲に対して、政府の方ではっきりとした対策を立ててもらいたい、こういう問題について、またそのことによって起るであろうと予想せられる労働問題等についても善処してもらいたい、こういうことを何回も申し上げておるわけであります。その点についてはっきりしたわれわれの見通しがない限り、本法案に対して釈然として審議がはかられないわけであります。だからこういうことを申し上げておるわけでありますが、幾らやっても同じことを繰り返しておるわけでありますので、これはあまりにも総合的であり、抽象的でありますが、あらゆる手段を講じて、受けるであろう犠牲に対しては大臣として行政的な措置をとる、こういうような御答弁があったものと了解いたしまして、私の質問を終ります。
  36. 神田博

    神田委員長 次は加藤清二君。
  37. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 ただいま本委員会に上程されておりまする繊維設備制限に関する法律は、私の目からもってすれば、今国会に上程されておりまする法律の中で、及ぼす経済的な影響をながめて見ますると、この法律が一番最右翼である、こう思われるのでございます。すなわち御承知の通り、繊維の仕事は、その材料だけでも外貨の三分の一を費しております。また輸出で獲得いたしまするところの二十余億の外貨のうち、約三分の一は繊維でかせいでおるのでございます。こう見て参りますると、この法律日本経済に及ぼす影響が非常に大きいのでございます。しかもこの繊維産業というのはきのう、きょう発達したものでなくして、紀元二千六百年の昔から歴史に現われていることは、皆さんよく御存じでございます。歴史的に発達しておりますればこそ、この産業はまさに国民産業というて差しつかえないのでございます。そこで本法案がいよいよ通過するに当っては、私は、与党、野党を問わずに、国民立法としてこの法律を通したい、これは私のみならず、政府の賢明なる方も、そのようにお考えではないか、こう思うわけでございます。さてそういう大きな法律が、委員長の命によって粛々と彼岸に近づきつつある。もうあすの今ごろは通過を見なければなりません。しかしながら、日暮れて道遠しでございます。そこで、私は今から要点をかいつまんで質問をいたしますので、これの関係責任者は 一つぜひ要点をそのものずばりとお答え願いたいのでございます。的をはずして、とんでもない方向にいかれますと、私はやむなくこの法律と心中をしなければならぬと考えておるのでございます。そこで、機械産業犠牲につきましては、いろいろ御質問がありましたので、なるべく今までの質問になかった点だけを拾って御質問いたします。  第一点は、この法律によって機場部門がどのような影響を受けるかということでございますが、御承知の通り設備を登録して余った分は政府が買い上げるということになっておるようでございますが、この買上資金は一億二千万と聞いておりますけれども、この一億二千万はちっとも動きませんか、動くものでございますか。
  38. 小室恒夫

    小室政府委員 本年度においては一億二千万円、まず動かぬと思います。
  39. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 大体一台幾らで買い上げるつもりでございますか。
  40. 小室恒夫

    小室政府委員 時価によって買い上げるつもりでございます。
  41. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 時価とは一体何をさすのでございますか。
  42. 小室恒夫

    小室政府委員 老朽機械の時価でございます。
  43. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 時価と申しましても段々がございますが、これはスクラップの値段でお買いになるのでございますか、使える機械としてお買いになるのでございますか。
  44. 小室恒夫

    小室政府委員 審議会の意見をよく聞きまして、さらに当該業界関係者の意見も十分徴した上できめたいと思います。
  45. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 平均幾らになりますか。
  46. 小室恒夫

    小室政府委員 非常に古いものもありますし、比較的新しいものもありますので、平均幾らということの計算は、今日なかなかむずかしいのでございます。
  47. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 平均幾らかわからなかったら、台数は一体どの程度でございますか。
  48. 小室恒夫

    小室政府委員 大体一万二千台程度を綿糸布、絹、人絹を通じて買い上げさせるようにいたしたい、こう思っております。
  49. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 一万二千台という数字は、どこからはじき出されたのでございますか。
  50. 小室恒夫

    小室政府委員 政府において一台当り一万円助成いたしたい、こういう簡単な計算であります。
  51. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 先礼なことを言おうと思ったけれども、もうきょうが最後でございますからやめておきましょう。一体クモの巣の張った機械が何台あるかつかめずに、一億二千万で一台一万円で買うなんてチンプンカンプンな話ですよ。隠し田のあることを御存じない、幽霊人口のあることを御存じない、こんなことは過去の実績でよくわかっておるはずなんです。それを白々しくも一台一万円で買うなんてとんでもない話なんです。まあやってごらんなさい、ほんとうに予算をつけたら一台三千円にもなりません。一億二千万だけであったならば、それは売りませんよ。大体今の綿織機、毛織機の目方がどれくらいあるとお思いなさる。毛織機のいいものになったら、トン以上ありますよ。スクラップの値段にして、最低二万七千円ですよ。しかもこれに砲金が加わりますと、四万円余になりますよ。だれが一万円で売るのです、冗談じゃないです。くず屋に売った方が早いですよ。何で政府に頼んで、そんなに安く買ってもらわなければならぬのですか。冗談も休み休み言ってもらわなければいかぬ。私の言った通りになるから、見てごらんなさい。二十九条のときにも、私の言った通りになった。ですから、みえや酔狂で言ったのじゃないのだ。よろしゅうございますか。  さて、それでは承わりたいのだが、それはあなたが行政措置ないしは組合の自主性によって、一万二千台にちょん切ればできますよ。そういう操作をやりますか、やりませんか。
  52. 小室恒夫

    小室政府委員 法律の施行もだいぶおくれておりますし、いろいろな準備にも時間を要しますので、実際運用できるのは半年くらいがせいぜいかとも思います。そういうふうに考えてみますと、一万二千台を一億二千万円で——別に一台一万円で買い上げるとは申しません。政府が一台当り平均して一万円程度のものを、事務費まで含めて助成いたしたい、こういうことを言っておるのでありますから、大体いいのではないかと思っております。
  53. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それならば話がわかる。そうすると助成でございますから、かりにスクラップにして三万円のものを一万円の助成をするということになりますと、これは組合が自主的にやる場合に、組合が二万円ないしは二万五千円というものを支弁しなければならぬことになりますよ。その財源はどこからとられますか。
  54. 小室恒夫

    小室政府委員 むろんスクラップで売って、スクラップの代金、それに今の助成の金、そのほか業界の共同負担のお金が加わって、そうして適当な価格でもって買い上げる……。
  55. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 共同負担の金でございまするが、その金をどういうように徴収されようとしていらっしゃいますか。
  56. 小室恒夫

    小室政府委員 これはなかなか大事な点でございまするから、審議会等において、十分各界の意見も承わった上でやりたいと思いますけれども、しかし確実にそのお金がとれる方法でなければなりませんから、そういう方法で考えるわけであります。
  57. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 確実にとれるという具体案をここで示してもらわぬと、もう法律が実行されてしまうのであります。本年実施の法律ならばゆっくりかまえてもいいが、あした法律が通るのです。ここで具体的にはっきりと出してもらいたい。
  58. 小室恒夫

    小室政府委員 せっかくの審議会でございまするから、十分そういう大事な問題を審議会で審議していただくつもりでございますけれども、私どもの今の考え方としては、これは生産数量に応じて、検査の機会その他においてとったら一番適切じゃなかろうか、こういう感じでおります。
  59. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 そうすると、検査手数料と同じようにとるというわけでありますが、大体の目算でございますが、どのくらい——たとえばヤールについてどれだけとか、一反についてどれだけとか、単位に対する賦課金というものの考え方があるでしょうが、それはどういう単位にどういう金がかかるのでございましょうか。
  60. 小室恒夫

    小室政府委員 生産したものを検査いたします際に、ヤール当り幾らという検査手数料が現在ございますけれども、それに対して幾らかよけい払ってもらうという形になると思います。これはしかしながらどういう機械をどの程度の額で買い上げるかという大体のめどがつきました上で、できるだけ業界の共同負担が少くて済めばよろしい、そういう感じも持っております。
  61. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 毛の織機はどんなに古くても三万円以上になりますが、古い新しいはスクラップの問題ですから問題じゃない、目方の問題になってくる。それを別に使うといえば、これは機械の能率とか何かが加算されますけれども、これは封緘して捨ててしまうのですから、スクラップの値段です。スクラップにしてもなお三方円、そういたしますと大臣、これは大臣に聞かぬといけない。一万円を政府が出す、あと二万円は自己負担でやる、こういう勘定が出てくる。その自己負担の場合、今単位からとるとおっしゃいましたが、大体想像して、綿だったら小幅物一反、毛だったら五十六インチ幅物で一メートルというのが基準でございますが、これかないしは五十メートル巻のもの一本という単位にして幾ら、こういうことになると思いますが、それを大体ここで発表してもらいたい。それでないと、これは事実実行に移さなければならないのですからね。それが今まで繊維局長の各地区における発表会とか説明会にもはっきりしていない。だからあいまいもことして機場は迷っている。どうしたらいいだろう、一体幾らになりましょうと迷っているわけです。だからこれをはっきりして下さい。
  62. 小室恒夫

    小室政府委員 実情をよく調べました上で、大体の基準を立てたい、ここではちょっと発表いたしかねます。
  63. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは、発表いたしかねるという理由が聞きたい。
  64. 小室恒夫

    小室政府委員 これは法律が通りましたら、直ちに各地においてその辺の実施調査をいたしまして、大体どういうものが出て参りますか、見当もつけて、その上で業者の負担金が幾らくらいになるかという計算を立てたい、こういうことであります。
  65. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 これははっきりしておいてもらわぬと因るのです。機場はたびたびうそを言われているのだから。あいまいもこでは、もう取りつく島がない。どうしていいか、わけがわからぬ。これはやがて業界に混乱を起すもとになります。だからこれだけははっきりしておいてもらいたい。うそは今までないとおっしゃるならば、はっきり言いましょうか。繊維局長がつい先だって品質標示法は組合の任意にまかせますと言うておいてからに、法律で出してきたときは何です。体刑罰がついておったじゃないか。体刑罰がつくような任意ということがどこにあるか。これは何も小室君を言うているのではないのですよ。歴代の繊維局長はそういうことをやってきた。あなたはいい人だけれども、そういう仲間に入ると、やっぱりそのように見られる。あなたはそんな悪い人じゃないということを私は知っている。だから、この際新機軸を開いて、そういう疑いをさらりと晴らすように、はっきり言うてもらいたい。
  66. 小室恒夫

    小室政府委員 過剰設備の処理は、御承知のように共同行為で……。
  67. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 いや、単位について幾らか、それだけでいい。
  68. 小室恒夫

    小室政府委員 それはただいま申し上げたように、ただいまのところは、実情を調査した上でないとお答えできません。
  69. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それではこっちから答えましょう。大体小幅物一反について五円くらいということになっておったようでございますが、そういう腹があるかないか。ここの答えいかん。御承知の意匠センターの方に去年まで一円ずつ出しておりましたね。ことし三円出してくれということで、とんでもない話だということになった。双方歩み寄りをして二円になったことを、あなたよく御存じでしょう。それに一体幾ら追い打ちをかけるのですか、それを聞きたい。
  70. 小室恒夫

    小室政府委員 過剰織機の状況、各地における実情をよく調べた上で計算を立てたい。それを審議会に諮ってその上できめます。
  71. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 もうこの問題で押し問答しておったって、よう答えぬらしい。大臣に答えてもらいたい。業界としてはわずか一円でけんかをやるのですよ。これが実態なんです。特に申し上げておかなければならぬことは、先ほど来いろいろな答弁がなされておったけれども、チンプンカンプンな答弁が多いんだ。わしは黙って聞いておった。あえて食いつきたかったけれども、やめておった。それはどういうことかというと、三台や五台を持って糸を買うてきて、それで作って売っているという答弁である。とんでもない話。機場はそんな実態ではない。機場というものは、ほとんどは、小さいところは委託加工をやっているんですよ。自分で糸を買う金もなければ、勇気もない。また買いに行ったって売ってくれないのだ。好きな糸はちっとも買えない状況なんです。今特にそうなんです。だからやむなく系列の中に入って、賃加工に追やられてしまっているのが実態なんです。そこで、一体一反幾らくらいの工賃がもらえるかというと、まあ木綿小幅物で五十円もらえたらいい方です。五十円から六十円。そこから女工哀史も出てくれば、あるいは労働基準法が守られないということも出てくるわけなんです。簡単に言っておきます。大臣ならおわかりでしょうから。それで手形も払えなければ、税金も納められないという結果が出てくるのです、頭が少いから。そこへもってきて追い打ちに、今も二円出しているというのに、それに三円も五円もかけて、大臣取れると思いますか。税金さえ納まらぬですよ。銀行ががんと言われても出せませんよ。出したいけれども出せない。それをもし出させようとすれば、結局十二時間働いている者は十六時間働かなければならない。お父さん、お母さん、娘も働かして、女学校へ行っているのをやめさして、そうして働かして、よそから雇った女工さんは十六時間では足らないから、二十時間くらい働かさなければならないという勘定ができてしまう。なお追い打ちをかけますか。やれると思いますか、大臣
  72. 石橋湛山

    石橋国務大臣 現状は加藤君お話の通りでございましょう。そこで、そういう状況が困るから、この法案によって何とかもっと立て直すようにしたい。またわれわれもその整理のためには金が要る。これは元来なら残存業者がそれだけの残った利益を得る理屈でありますから、そこで負担をしていただきたいのであるけれども、しかし何といっても今の諸君は大体中小企業というよりは零細の人が多いのですから、負担をし切れないであろうというので、政府がお助けしよう、助成をしよう、こういうことで初年度一億二千万円の予算をとった。こういうわけで、お話のような状況を何とか打開させるための処置でありますから、これは政府だけにおっしゃるよりは、当業者の皆さんもやはり共同してやってもらわなければなかなかうまくいかないと思います。     〔委員長退席、鹿野委員長代理着席〕
  73. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 共同でやるから、政府が一出すことで業界が二くらい出さなければならぬことになるのでしょう。これは共同以外の何ものです。政府がみんな持ってくれれば政府にたよっていくのです。政府は一しか出さぬ、というので業界が二ぐらい持ちましょうという、これが共同でしょう。ところが二を政府の原案としては考えている。だからそれを言えない。いくら言えといっても言えないのです。二持たせると言うたら、大へんなことになるから。ところが業界、機場の指導者としては、大臣の言う通り共同作業でいこうという考えなんです。いい考えなんです。果してそれが持てますかと聞いている。あなた、持てると思いますか。負担ができると思いますか。今五十円や六十円の一反の工賃で、そこから税金から経費から何から全部差引いて、金利まで払って、それに一割程度の追い討ちをかけられたら払えると思いますか。そんなに残りがあると思いますか。紡績と違いますよ。紡績のように半期に百五十億も投融資を返すようなあり余った金と違うのですよ。
  74. 石橋湛山

    石橋国務大臣 ですから先ほどから申し上げますように、現状においてはお話のようでありましょう。なかかな負担力がないでありましょう。しかしながら負担力があるようにするのがこの法案のねらいなのであります。そこでこれはその場合々々によって、むろん状況を見なければ何とも言えませんが、しかしこれは将来のために、たとえば本年度一億二千万円の助成のほか、また続けてやらなければならぬ。続けて予算も助成金も出さなければいかぬ。なお融資とかそのほかの方法によって話し合いがつかない、つまりそれだけのそろばんが立たない、お話のようなればそろばんが立たない、何をしてもだめだということになると、非常に悲観的なことになるのですが、私どもはそこまで日本繊維産業を悲観したくないのです。
  75. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 とんでもない言いがかりだ、私が悲観しているなんと。あなたの方は悲観してこれ以上制限しようと言っているけれども、ぼくなんかちっともそんなことは考えていない。私は未来永劫、あなたがどこの大臣に行こうと、繊維局長がどこの局長に変って行こうと、私は繊維から離れません。一生ついて回ります。冗談じゃないですよ。私が悲観的に見ているなどととんでもない。悲観的に見ているのはそっち側なんです。悲観的に見ているから縮小している。まあそんなことは別として、今修正案の中に追い討ちをかけて、出せないからアウトサイダーになって逃げる、アウトサイダーになってもなお取れるようにしようじゃないか、こういう修正案が各方面から要望として出ている。私は金がなければ万やむを得ぬと思う。しかしその前に、そんな病人に追い打ちをかけて生血をしぼるようなことをやる前に、政府は一億二千万をふやすだけの愛情はないのかというのだ。そんな金は幾らでもあるはずじゃないか。防衛庁の中古エンジンを見てごらんなさい。とんでもない話なんだ。ああいうところへはどんどんふんだんに、ことし一年で使えないほどよけいにやっておきながら、こういうところでは病人の生血を追い打ちをかけてしぼるというような、そんなばかなやり方がありますか。大臣、あなたはほんとうに業界を指導、育成したい、悲観的に見ていないというならば、それをやってみたらどうです。やる勇気はありませんか。
  76. 石橋湛山

    石橋国務大臣 今度の一億二千万円はとにかく初年度の歳出として出した、これはこのままじゃない、これだけでもっておしまいにしよう、こう考えておるのではありません。初年度の成績を見まして、なお今後については別途考えることにします。
  77. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 ありがとうございました。そのお言葉を絶対にお忘れにならないように一つお願いをしたいものでございます。しかし来年のことを言うと鬼が笑いまするが、あなたは来年のことをすでにアメリカとはお約束なさっていらっしゃいます。事繊維に関してお約束なさっていらっしゃいます。外国と事繊維に関して約束ができるなら、これと約束ができぬはずはございませんが、一体数量はどの程度、金額はどの程度いただけるでございましょう。
  78. 石橋湛山

    石橋国務大臣 私は外国とそういう予算関係する約束が今政府として進んでいるとは知りません。だから繊維産業の整備についての予算は、これはさっき申しますように初年度をやってみて、その実績を見ましてその上で決定しなければなりません、そこで今幾ら幾らということは申し上げかねます。
  79. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 業界は通商局に対しては、あるいは通産省に対してはお偉い方だと思うておるのです。だからおそろしいので言いたいことが言えないのです。僕みたいなばかでないとほんとうのことをよう言わないのです。来れば手をすり合わせておるだけの話なんです。そこで私がかわりに言いますが、大臣、ほんとうにやる気があるのですか。あなたが来年は別途考慮するということは、一億二千万にプラス・アルファするということか、一億二千万でおしまいということか、そこをはっきりしてもらいたい。やる気があるなら、数字が言えなかったらプラス・アルファをつけるかつけないか、これだけでいいです。
  80. 石橋湛山

    石橋国務大臣 日本繊維産業の立ち直りのために、必要であればむろんプラス・アルファをつけます。必要であればです。
  81. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それじゃ一つ頼みというよりも、本省の義務を果してもらいたいことがございます。あなたはこれほど気の毒な業界を助けてやろう、よくしてやろうと口で言いながら、それとは逆なことをやっていらっしゃる。よう反省してもらいたい。不渡りは出しちゃいけないと言いながら、あなたは不渡りを出していらっしゃる。銀行を正常化しなくちゃいけないと口で言いながら、あなたはそれとは反したことをやっていらっしゃる。はっきりとやってもらいたいことを申し上げましょうか。あなたは業界に対して、ことに繊維業界に対して二十三億の借金をしょい込んでおる。それを払うと言うた。にもかかわらず、一年たち二年たち三年たってもなお返していないじゃないか。さあこれ、どうしてくれる。払ってもらいたい。
  82. 石橋湛山

    石橋国務大臣 その二十三億というのは何ですか、前の消費税のことやなんかですか。
  83. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 何ですかというような言いようは盗人たけだけしいという気になっちゃう。しかしこれは大臣、あなたが作った借金ではない。前の大臣が作ったんだ。前の大臣は、ちょうど繊維局長が時折業界にうそを言うたように、時折うそをおっしゃった。石橋さんもそうだと言いませんが、遺憾ながら前の事務を引き継いでいらっしゃるはずなんだ。シャウプ勧告のときに政府へ納め過ぎたはずの繊維消費税が返してもらえなかった。いまだに返してもらえない。大蔵省は来ておりますか。大蔵省はわれわれ中小企業が税金を滞納するというと、日歩六銭から四銭で追い打ちをかけて、金利まで取り、手数料まで取って取り上げておきながら、政府が借りっぱなしの、返さなければならぬところの二十三億に対してはどうしてくれたか。さあ、はっきり答弁してもらいたい。大蔵省と通産省。これは二十三億じゃない、両方合せると三十三億だ。
  84. 石橋湛山

    石橋国務大臣 こまかいことはまた必要に応じて事務当局から申し上げますが、これは決して返さないとわれわれは考えておらない。その準備もしておりますが、これは実際上の技術的といいますか、手続の上で非常にめんどうがありまして、そこで何か四、五年先のことになるようでありますが、今日まで遅延しているわけであります。
  85. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 中小企業は一月二月の手形で倒れていくのですよ、五年も六年を待てますか、こっちが出した金ですよ。三十三億です。あとから調査の結果出てきた。こいつはとんでもない話なんだ。今から考えてやるというが、一体いつの日にやってくれますか。これくらいは日にちを言えるでしょう。大蔵省おりますか。大蔵省、答弁してくれませんか。金利は幾らつけたらいい。トイチくらいの金利をつけてくれるのか。大蔵省、答弁してくれ。——大蔵省に出るように言うておいたじゃないか、大蔵省はだめじゃないか。最後の最終仕上げをやるというのに何をやっておる。  では先へいきますが、こういう状態なんだね。何も大臣、僕は石橋さんが悪いと思っていないのですよ。あなたは数ある与党の中でも一番尊敬できる人であるし、わが党の人気もいいのですよ。だけど悲しいですね。金を握っていないのだからね。子の借金が払えないのだから親の身になってみればつらいでしょう。親の身じゃない、むすこだね。親の借金をしょって、さあ返せと言われて、ちょっと困ったというところでしょう。あんたの個人の財布からはとてもまかないきれぬ。どこからピンはねしたって取れるものでない。そこでこれは大臣、よく大蔵省と折衝の結果早期に返すということは、大臣責任ある事務を遂行する上における大事な仕事だと思いますが、大臣としてはいかがお考えでございましょうか。
  86. 石橋湛山

    石橋国務大臣 その問題は当業者からも聞いておりますし、また事務当局からも、あるいは今の法務大臣の牧野君からも関係があって聞いております。そこで何とか話し合いをつけて解決をしたいということで努力をいたしておるわけでありますが、さっき申すようにいろいろ手続上あるいは技術上の難点があって、その点行きつかえていることははなはだ残念であります。お話のように何らかの解決を早期にするような話し合いをいたします。
  87. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それではこの問題についてはもうあと一点だけでやめますが、さきに日英会談から生ずるところの毛製品買付について、この外貨割当について通産省はピンはねをしている。去年は輸出振興に使うということだったが、IMFその他からがちゃがちゃ言われて、ことしはその借金の穴埋めにするということを係官は言うておる。またことしもいわゆるあの二百五十万ポンドの一%は取られているのですが、話に聞くというと、せっかくこうやって集めた金がそこへ戻らぬでよそへいってしまうらしい。どこへいってしまったかということを私は知っている。一覧表を持っている。こういうふうで、あそこでうそを言い、ここでうそを言い——初めからやるときにうそを言うつもりじゃなかったろうが、結果としてうそがあちらでもこちらでも出来してきている。そこでこのたびのこの法律がうそになつちゃ困ると思うのだ。そこでこの問題は早急にやってもらいたい。何もこれは社会党が言うておると思ってくれたら困りますよ。業界の一様なる切なる希望でございますから、これは何党かに党の問題じゃございません。これは何だったら阿左美さんからもこの件について意見が承わりたいというところですが、もう一致した意見なんですから、これは一つぜひ大臣の良識によって、大臣の命のあるうちに一つ目鼻をつけていただきたい。そこでどうです。罪滅ぼしを一つやっていただけませんか。それは、こういうことで無理やりに赤紙張られたり、青紙張られたりして機械まで税務署の方に持っていかれちゃったんですよ。そうやって出した金が、返してもらうべきものが返してもらえない。そこで機場の機械というものは陳腐化しちゃっているんだから、この陳腐化に対して、税金を三十三億も取り上げている罪滅ぼしに、企業合理化促進法の業種指定なり、租税特別措置法をこれに与えて、せめてもの大臣の情心を具体化するということを一つやってもらいたいと思いますが、それはできませんか。
  88. 石橋湛山

    石橋国務大臣 実際の問題としてはどういうことになりますか、今すぐに御即答申し上げかねますが、なお一つこの問題については、租税に関しては大蔵省でありますから、大蔵省とよく話をいたします。
  89. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 今大臣一人でできる答えじゃないのですから、ただそういう犠牲を救う何ものもないとこの前の答弁でおっしゃった。考えてはおるが、まだ具体策がない、それじゃ私が具体策を持っているから出したらのんでくれますかと言ったら、まるのみはできぬけれども、聞いてみてよかったらのむとおっしゃいましたね、この間の委員会で。だから私は今具体策を出しておるわけなんです。それをのんでもらいたい。大臣はそれをのんで努力する情心があるかないか、こういうことを聞いておるわけです。
  90. 石橋湛山

    石橋国務大臣 ちょっとその具体策というのを、失礼ですけれども、もう一ぺん伺わしていただきたい。はっきりしませんでしたから……。
  91. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 急げ急げと言うもんだから、簡単に言いましたが、設備が陳腐化しているのですよ。機場の機械の程度を調べてみますと、御存じでございましょうが、耐用年数は金属製品について二十三年、半木製つまり絹の機場は大体十五年、こういうことに相なっておるわけでございます。ところが税金やら金利やらに追われて、原料高の製品安で、耐用年数は済んだけれども、なかなか設備更新ができないというのが現状なんです。そこでただいまの機械を見ますと、古てこの機械がずっとあるわけでございます。新しいものでも終戦後ガチャ万コラ千時代に作ったのだからガチャガチャのものがある。まあ言うと、自動車を思い浮べてもらうと一番よくわかる。終戦後できた自動車を思い浮べていただくといいのです。自動車の世界は年々——歳々——五十年製なんと言ったらこれは古じゃ、こういうことになっているが、機械の方は一九五六年にもなりながら一九二〇年ごろのがたくさんあるわけなんです。二十年以上経過しているものが毛機では六〇%以上になっておるのです。綿機もしかり、絹機もしかりなんです。去年はいろいろして絹機だけはある程度更新ができたということですが、これの更新を促進させる必要が十分にございます。なぜかならばそれは外地において市場競争をしなければならぬ、これはあなたの御存じの通り。そのときに糸が抜けたとか、糸が切れたとか、いわゆるペケ製品では全然だめなんだから、古い機械だとどうしてもそうなる。織りむらができる。これは糸と織機が悪いからなんです。これはやがてキャンセルの基になって、さなきだに市場で争わなければならぬ今日の状況に適合していない。あなたの金看板である拡大均衡を促進する意味においても機場の設備——機場だけじゃないのだが、機場の設備更新する必要がここに迫ってきておる。かてて加えて機械の進歩速度というものは十年から十二、三年で一週期が来ているということなんです。それを二十何年でほっておくというのは、これは手落ちであるが、これが明治初年にできたそのままになっておる。終戦直後できた憲法をもう変えなければならぬというならば、明治初年にできたこの法律をまず先に変えてからものを言ってもらいたい。これが本旨なんです。いかがでございましょう。
  92. 石橋湛山

    石橋国務大臣 耐用年数の問題は、この間からもしばしばここで話が出ましたように、まだ決定しませんけれども、これは大蔵省と目下交渉中でありますが、必ずこれはある程度の改正を加えたいと思います。  それから陳腐化した織機の更改、取りかえということは、これはこの間からも申し上げた通り、あらゆる方法を講じてこれを促進したいと熱願しておりますから、必ずその方法を講ずるつもりでおります。
  93. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 大蔵省が来ておるそうでございますから、一つさっきの三十三億の貸しを返してもらえるかもらえないかを頼みます。
  94. 白石正雄

    ○白石説明員 お答えいたします。織物消費税の廃止の際におきまする三十億円程度の数字につきましては、私今ここにはっきりしたことを承知していないわけでございますが、三十億円程度の問題につきましては、当時におきましていろいろ検討の結果、一応解決した問題だと考えておるわけでございます。なおその間におきまして、その後いろいろの問題が陳情せられておりますことは承知いたしておるわけでございますが、何しろ金額におきましても相当多額の問題でありますし、今直ちにこれをどうするというところにまでは至っていないものと私承知している次第でございます。  次に耐用年数の問題といたしまして、繊維関係機械につきまして耐用年数を至急短縮せよという問題でございますが、これにつきましては通産当局からもいろいろお話し合いを受けておりますので、それにつきまして慎重目下検討中でございます。
  95. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 もうあなた、この法律が通ってしまうというのに、今ごろ目下慎重検討中と言われちゃこれは話にも何にもならぬわけなんだね。  それから今の三十三億の問題ですね。二十三億プラス十億の問題、これはきのうきょう出た問題と違うですよ。何せ金額が大きいから、とんでもない話なんだ。一兆億予算からいったら一体九牛の一毛だと言いたいけれども、もっとそれより少い額なんだ。問題は、ないないと言うのは予算がないのじゃなくして、このことを実行するところの意思がないのか、それを取り上げられて困っておる中小企業に対する愛情がないのか、いずれかなんだ。冗談じゃないですよ。しかしそういうことを主税局の白石さんに言うてみたって始まらぬことだ、これは大蔵大臣に言わなければならぬことだ。あなたこそえらいいいつらの皮なんで、気の毒だと思うのです。あなたが悪いのじゃないのですが、事務当局としてもこれについて促進方を要望すると同時に、大臣、この問題は、あしたこの法律が上るというならやむを得ませんが、一つぜひやれる場所、すなわち参議院の方において審議になります折にある程度の御回答を願いたい、こう思うわけでございます。それはやる気があったらやれるのです、けっこうやれる。もうあんた、防衛庁の入札のいざこざから出てくるところの妙ちくりんな金というものは、二十三億どころの騒ぎじゃないのですよ。片やふんだんに国民の血税を使いながら、国民の血税をしぼり上げておいて、余分に取り上げておいてからに、それを返すことができないとは、一体どこの国の政府でございますか。  次に外貨の問題についてお尋ねいたします。先般本委員会において参考人も申しておりましたが、紡績側代表は一様に外貨はやはり設備にと、こういうことを言うておるようでございますが、大臣は一体どうされようとしていらっしゃるのか、この点を一つお答え願いたいのでございます。なぜこんなことを言うかというと、ここだけはちょっと詳しく申し上げますが、それは今日糸値が非常に高くなってきております。毛も綿も絹もみんな糸高でございます。しかし状況は糸安の材料ばかりです。なぜ糸安の材料がふんだんにあるときに糸高になったか、現物も三品も先物もそうなってきたかと調べてみますと、これはこの設備制限をする法律の問題と、一つには外貨の割当がどちらに動くかということに帰着すると思うんです。もっともほかの材料をあげろと言ったら、時間をかけていいのだったら幾らでも材料をあげますよ。しかし時間がないから簡単にしぼって言うとそこに落ちついてくる。つまり大臣がこれをどちらに持っていくかということによって、大きな影響がくるわけなんです。そこで私の考え方としては、この際犠牲になる機械産業が何ら直接潤うことがなければ、せめて潤う産業がよりよくなって、それから機械屋に流れていくように、外貨の割当制度を考究する、つまり紡機や織機の、材料を食う能率に従って外貨を与える、これがほんとうの設備割当だと思う。今までは、病人であろうと、老人であろうと、血気盛んの人であろうと、同じように米の配給が行われておったと同じことなのです。それを働きに応じて外貨を与えたらいかがでございますか、こういうことですから、これは理論も通っておると思うのですよ。大臣いかがですか。
  96. 石橋湛山

    石橋国務大臣 これは御承知のように外貨割当ということそれ自身がもういろいろめんどうのあることで、弊害もあることでございますから、できるだけ早く外貨割当というようなことはやめたがいいと思います。しかしこれも今の日本の現状ではすぐにやめるわけにはいきません。ところがこの設備割当とか能率割当とかいうこれもまた非常に、今まで紡績業にそれがあるというよりは、他の面においてもずいぶん問題がありましたので、なるべくできるだけ早く為替の点も自由化の方向に向わせるのがよろしい、こういう建前から、設備割当というよりはむしろ商社割当が適当である、かように考えております。しかし紡績等についてはいきなりそうもいきませんので、御承知のように一応設備の能率とそれからそれを見合って、内示書といいますか注文書といいますか、実際にこれを使用する人の注文に応じて外貨の割当をする。これは割当は商社にする、こういう方針をとっておるわけでございます。
  97. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それで七月一日から商社割当に移行をされますか、されませんか、そこのところをはっきりお答えいただきたい。それが安定のもとなんです。
  98. 石橋湛山

    石橋国務大臣 それはいたしたいと思います。但し御承知のようにこれも中京地区が非常にいろいろな特殊な事情がありまして、そのためにここ一年か一年余り延ばしておるわけであります。しかしながら中京地区も、これも全国一般に歩調を合せて、その方針でやれない理屈はないのじゃないか。もし中京地区の経済上の機構に欠陥があるなら、何とかその欠陥を早く直してもらいたいということは、かねがね私は中京地区の諸君には申しておることでありますから、それでそれを見合って、無理にいたすつもりもございませんが、できればこの七月からいわゆる商社割当——商社割当という言葉は正確でないようでありますが、とにかくいわゆる商者割当にいたしたい、かように考えております。
  99. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 繊維産業界を紡績、機場、最終仕上げ、それから機械部門、こう分けてみまして、機場の部門でも聞きたいことはたくさんありますが、私は今話を紡績部門に向けているわけでございます。そこで一つ外貨の割当のことだけはよく御考慮願いたいが、大臣はこれをもし実行するならば公聴会を行なってから実施に移す、こういう確約をこの間本委員会でされたわけですね。そこでその公聴会は、七月から行われるなら一体いつ実施されるのでございますか。
  100. 石橋湛山

    石橋国務大臣 公聴会云々ということは私ちょっと記憶がありません。今聞いてみましたが、聞いた者もないようであります。それはとにかくとして、七月一日からできればいわゆる商社割当というものに移行したい、かように考えております。
  101. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私はここへ記録を持ってきませんが、あなたはちゃんとやると言うた。そんなことは記録を見ればわかる。私の発言の中にちゃんと入っているのだ。こういうふうに言うておる。七月一日から実施するかしないか、こういうことについてあなたは、そうやりたいと思うが、いろいろの事情があるから、それを勘案して実施するものならすると、こう言う。そのいろいろの事情をよく聞いてもらうために、あなたは直接その声を聞く気はないかと言ったら、聞く気はあるという。それじゃあ一つ公聴会をやって下さい、私がそう言ったら、それもよい方法だ、だから研究して実行に移すと、こう言われた。何だったら古証文を持ってきますよ。何も私はうそを言いませんよ。だれも聞いた者がない——冗談じゃない、そういうでたらめを言う。だから信用が置けなくなってくるというのだ。私がそんなことでうそを言えるものですか、そうでしょう。だから私はきょうは、あのときにそんならいつやるかと聞きたかったけれども、まだ研究してないだろう、もう今となったら研究も済んでおるだろうから、一体いつ行われるだろうかと、こう聞いておるわけです。私たちは何も無理のない話で、ちゃんと時間的に間隔を置いて聞いておる。今になってから、あなた知らぬなんて、そんなばかな——じゃあ今でもいいです、それを実施するに当って、直接関係業界の意見を聞く気はないのですか。
  102. 石橋湛山

    石橋国務大臣 今のお話によっても、私がそのことを確約したというお言葉はなかったと思います。公聴会は必ず開きますとかなんとかいうことは申し上げたつもりはありません。しかしながら私はそんなことがなくても、当業者の事情はむろん十分聞くつもりがあります。また今まで聞いたからこの実施を勘案もし、研究もしてきたわけでありまして、先ほど申しましたように何もしいて無理なことをするつもりはない、結局使用者が背後にあって、そして手続上商社に為替を割り当てるということでありますから、実質から申しますと設備割当と大した違いのないようなことにはなっておるのです。だが、まあ一歩でも自由為替の方向へ近づけたいというだけのことでありますから、その場合においてむろん無理なことをして、今までやっておった制度をすぐに七月一日からすっかり変えなくちゃらならないというほどに強くも考えておらぬのです。しかしできればそれをやりたい、かようなことであります。公聴会を開くというようなことは今考えておりません。公聴会となるとなかなかやっかいですから考えておりませんが、当業者の意見を聞くということは考えております。今までも聞いておりましたが、これからも聞くつもりであります。
  103. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 その場の空気によってかくのごとくに大臣答弁が変るということは今後の大臣答弁の言質について信頼を置くことが薄らいでくる。信頼度に影響すると私は思うのでございます。そういうことでありますればこれから証文を取りかわさなければならぬということになってくる。しかしそれでもなお私は質問を続けます。あなた以外にないのだからしようがない。  さてそれで紡績の問題で今一番問題になっている点は、これは輸出輸入の問題でございます。機場で一番問題になっているのは、原料高の製品安ということなんだ。機械屋で一番問題になっているのはこれやったらあと注文がなくなるんで困るという問題なんです。そこでお尋ねしたいのでございまするが、輸出輸入のバランスをよりよくとるということが正確に行われれば別に設備制限を今しなくてもいい、こういう答えも出てくるわけなんです。過剰生産だから過剰設備だ、だから過剰設備を削るのだ、こういうことのようでございまするが、大臣は一体ワンダラー・ブラウスを初めとする日貨排斥についてその後一体どのような措置をおとりになりましたか。かつて私が質問いたしました折に、谷大使に二回交渉させたというお答えでありました。その交渉の結果はいかが相なりましたか。この問題の答えはやがて自粛をして自分みずからがこの繊維設備制限しても、なおその効果は期することができないという結果が生じてくるわけでございます。どうですか。
  104. 石橋湛山

    石橋国務大臣 続けて大使等からはこの問題をアメリカ政府に向って抗議を申し込んでおります。またダレス長官からも——これは新聞にも出ておったと思いますが、日本輸出制限するようなことはしたくない、これは世界的にも非常に不幸なことだという意味の言明をしている。ことにアメリカの政府としては日本の綿布等の輸出についてえげつない運動をアメリカ人が起すことは好まない。これを何とか修正しようという努力を続けてきておられる。私どもとしては、よくおっしゃるのですが、何もこっちで制限をして、アメリカのなすままに、向うの輸入制限については何らの処置も講ぜずに、それに歩調を合せて日本輸出を減らそうなどということは考えておりません。そのためにこういう法案を出したということもございません。だからお話のように輸出問題もさることながら、日本のことに織布部門における設備の陳腐化というものは早く解消して、そうしてどこへ持ち出しても十分な競争力があるような日本産業にしなければならぬということが一つ。それからアメリカに対してはむろん宣伝あるいは抗議等は続けていたさなければなりませんが、それにはアメリカの世論を鎮静するためには、日本もこれだけのことをしているのだということがわかることは確かに必要なことである、こういうふうに考えてやっております。
  105. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 アメリカの日貨排斥の思惑を緩和するというこのことが目的のうちの一つにあるということは今まで方々から答弁をされておる。だから私はそんなことを聞いておるのじゃないのであって、ワンダラー・ブラウスのあの禁止、日貨排斥の問題について、日本政府としてはその後どのような手を打たれてどういう結果が生じてきておりますか。こう聞いておる。外務省は来ておられるはずじゃないですか。おられたら答弁して下さい。
  106. 吉良秀通

    吉良説明員 お答え申し上げます。その後政府としていかなる措置をとり、かつまたどういう効果があったかという御質問でございますが、この問題につきましては引き続きアメリカ政府に対しまして善処方の要望を続けております。ただ目下のところは何ら目ざましき効果は出ておりません。将来においてこの努力の効果は現われるものと確信しております。
  107. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 将来において現われるとはよくもまあお答えになったものでございます。かつて十九品目を制限する場合に、私が何がゆえにそういうことをしなければならないかと、去年の十一月本委員会のみならず、貿易小委員会において再三お尋ねしたのです。そうしたらこれはアメリカの気持を緩和することだとこう言われた。ところがアメリカは果して緩和してくれたですか。十九品目の輸出管理令をやって、自粛して、もうそんなにたくさんあなたの方へ売りませんよというて、新聞に出したら、向うの緩和剤になるという話だった。ところがその後追い打ちをかけて、あの州もこの州もと日貨排斥をやってきたじゃございませんか。そういう折に大臣は一体どうしますかというたら、そんなことにはなりませんという答弁をせられた。なってきたじゃないですか。とんでもない話なんだ。そんなから頼みで貿易はできませんよ。あなただって実際官吏をやめて商売やってごらんなさい。そんなから頼みでどうして一体仕事ができる。しかしこれはさっきの大蔵省と同じであなたに責任はない、重光さんにあるのです。しかし重光さんおらぬからしようがない。大臣、その効果はどうなっているのですか。
  108. 石橋湛山

    石橋国務大臣 これは相手のあることでありますからそんなに急に効果を、さあきのうがきょうというようなことを言われても、こんな効果がありますということを申し上げることはできません。
  109. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 そんなら聞きますがね。その思惑による自粛の方法というものをまたぞろ今後追い打ちをかけなさるつもりですか、この辺でやめるつもりか。つまり輸出管理令で十九品目をやめた。それから機械設備制限法を立法して、これでまだこれでもどうですかといって、ここらあたりでそういうことはやめるつもりですか。もっともっとこの法律が通ってしまっても、なお向うが次々と攻撃をかけてきたらだんだんだんだんジリ貧でうしろへ下るつもりですか。
  110. 石橋湛山

    石橋国務大臣 ただいまのところこの上なお何らかの手を打つ必要はないと思います。ただしこれは秩序ある貿易の増進をやるということが日本自体としても必要なんでありまして、ただむやみに数量だけふやして、そうして貿易率を悪化するということは不利益だと思います。でありますから、これは現に日本の貿易は減っておるかといえば減ってはおりません。減ってはおらぬですが、秩序ある貿易の増進をするということが必要だと思います。どこの国でも、日本の国でも急激に外国の商品が入ってくれば当業者の反撃が強いのです。現に日本自身が経験しておる。それと同じように、どこの国でもそういう反撃がある。そこで急激な膨張ということはある程度自粛する必要がある、かように考えております。
  111. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 ではアメリカ輸出の貿易量というものはここ一、二年はもう伸びない、足踏み状態でございますか、伸びますか、どっちでございますか。簡単にどうぞお答え下さい。
  112. 石橋湛山

    石橋国務大臣 アメリカに対する、ことに繊維品の輸出は、私は伸びないとは思いませんけれども、かつて一両年前まで行われたような急激な増加は一時緩和するだろうと思います。
  113. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 伸びないとは思わないが、急激には伸びない。なるほどうまく逃げたものでございますね。この間から答弁を聞いておりますと、大臣は形式的にお答えになることが大へんお上手のようでございますし、それをまねた繊維局長もまた形式的、抽象的に言うてはするりするりと逃げて、ウナギのしっぽをつかんだような結果を生じてきておるようです。だから私は具体的に聞きます。伸ばす気もなくてジリ貧になろうということを日本政府は具体的に行なっていらっしゃる。吉田さんは強き者に向ってはイエス・マン、弱き者に向ってはワン・マンということであったが、それと相似たことが今日通産省においても行われておる。先般ダレス長官から対米綿製品輸出規制についてどうするかという質問があったはずでございます。それに対して日本政府はことしの輸出制限を来年も続けるという御答弁をなすっていらっしゃる、二カ条にわたって。よろしゅうございますか、この点ははっきり開いておってもらいたい。一九五六年がまだ半ばを過ぎていないときに、何がゆえに来年度の分までそのような言質を与えなければならないのか。そういうことをやられたおかげで、ダレス長官はアメリカにおいて十六日、アメリカの記者団にこれを公表しておる。しかもそれを受け継いで、ウィークス米商務長官は業界と懇談し、その一部始終を発表しておるではないか。これでは、ことしのみならず来年までも、輸出規制について一札とられたと同じじゃございませんか。来年まであなたが大臣をやるかやらないか、わからないじゃございませんか。あなたがもし総理大臣になっておればけっこうでございます。しかしながら吉田内閣長しといえども六年だった。鳩山内閣長しといえどもあとどれだけ続くかわからぬ。私は続くことを希望します。希望しますけれども、(「反対」と呼ぶ者あり、笑声)しかしながらあなたが現在そういうことを来年まで規制して、その効果をどうしようというのです。もし天下が変ったらどうしますか。はっきりしてもらいたい。
  114. 石橋湛山

    石橋国務大臣 来年は野放しでどんどんアメリカへ出しますということも今言うべき時期ではないのです。そういうことを言うにはそのような覚悟を持たなければならぬ。だからその点はそういう覚悟を持つかどうか……。
  115. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 この問題は一札とられておるはずでございます。それは書類でもって答弁されたのですか、谷大使との会談でございますか、その点だけを、知っておっても聞いておく。はっきりしておかなければいかぬから……。
  116. 石橋湛山

    石橋国務大臣 これは外務省から言うたことでありまして、私は別に通産省として何ら書類を出しておりません。
  117. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 外務大臣の臨席を要望いたします。——あなた答えられればいいです。責任ある答弁できますか、外務大臣と思って答えて下さい。
  118. 吉良秀通

    吉良説明員 ただいまの御質問の件についてお答えいたします。わが方の実施しておりますところの自粛調整措置は、もちろんアメリカにおきます反対運動を少しでもやわらげるためにとったものでありますが、建前としては民間の自発的調整措置ということで出発しておりますところ、アメリカの業界といたしましては、日本業界の一方的な自粛措置では、日本の一方的な都合でいつまた変えられるかもしれないという不安が潜在的に非常にございまして、従ってわが方がせっかく実施しておりましたのにかかわりませず、アメリカの方では輸入制限法を議会に出すとか、御承知の通りエスケープ・クローズを発動するとか、この反対運動はなかなか根強いものがございます。そこでアメリカ政府の方から、アメリカの業界はこのような事情で、いまだに非常に不安におびえているが——現在の調整措置というのは、まだ日本政府としては先方政府に正式に通告したものでもございませんし、そのことで何も言っていなかったのですが、あらためてアメリカ政府の方から、今日本がとっておられる調整措置というものはどういうふうな内容のものであるか、それからアメリカの業界ではこれをいつ変えられるかもしれないということで不安を持っているのだが、現在の調整措置の将来について、日本政府及び業界としてはどういうふうな考えを持っておるかという質問を正式の書類で受け取ることになりましたので、それでわが方としても、先方政府が正式に書類で問い合せていることでございますから、業界と諮りまして、業界の意向としても、アメリカの業界が心配するように、にわかにこれを一方的に変える意図もないということを、アメリカ政府日本政府を通じて伝達してもらうことが、現在の情勢から見て有効であるというふうなことになりましたので、こういう業界の意向を政府がアメリカ政府に取り次いだのでございます。そういうふうな経過であります。御了承願います。
  119. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 そういう答弁を言われると、私は一日くらいやりたい。——あなたここで答弁なさるときにほんとうのことを答えて下さい。もっともあなたは一部局の専門家でありまするから、総体のことの見通しが少しきかないかもしれませんけれども、アメリカに輸出しなくてもいいなどというばかなことを考えている業者は一人もおりやしません。そんなばかなことを考えておるのはおりません。ただ政府の方からハッパをかけられると、やむなくそれでは縮めましょう、こういうことなのです。それでは日本政府はアメリカ政府、ダレスさんにそれを尋ねられたというのでへ来年のことまでワクをかけて、今日の輸出管理令はこれでけっこうでございます、一億五千ヤードで自粛いたします、来年もさようつかまつりまする、こういうことを書類でもってお答えになったということですが、それだけだったら、日本政府はどこの国の政府だと言いたい。なぜかならば、すでに日貨排斥をやっておることは、日米友好通商航海条約第十六条違反ではないか。その点ちゃんと認めておるはずではないか。何がゆえにその違反をついて、その問題を促進していかれないのか。やはりイエス・マンなのか。向うから言われれば、追い打ちをかけられてくれば、向うが悪いことをやる、日米通商航海条約違反をやる、しかもなおその上この条約の問題については、アメリカ政府は州政府の意向を盛り上げるために条約の締結権についてまでも干渉しているではないか。そのことをあなたは額面通り受け取っちゃって、そうして波打ちぎわから向うへ向いたらへえへえ頭を下げている、波打ちぎわから内輪を向いたら鬼の顔をして業界をたたきつぶすというところがどこにありますか。一体それはどこの国の政府です。月給はどこの国の政府からもらっているのだと言いたい。外務大臣答弁を聞きたい。     〔「外務大臣を呼ばなければだめだ」と呼ぶ者あり〕
  120. 石橋湛山

    石橋国務大臣 この問題は、外務大臣をお呼びになるまでもないだろうと思います。常識で考えればそうなるでしょう。それはさっきから言うように、どこの国でも業界というものは政府の言うままにならない。ですから、こういうふうに平時ならいろいろ危険な——平時というか、昔なら非常に危険な状態になる、こういう危険な状態になるときには、これを防ぐために、両国政府が共同して各国の世論を押える必要があると思います。その必要上ダレスがこういう質問をしてきた。それに対して日本も現在制限していると申しますが、実際成績からいえば、ある程度の制限というものが必ずしもすぐに輸出の非常な縮小を来たすということにはなっておらないようであります。でありますから、現在日本がとっておる政策は、なお続けてやるつもりだというだけのことを返答したのでありまして、それによってお話のように、何で向うの言いなりになる、そして国の中に対しては非常な強硬な態度をとっておるというようなことは毛頭ございません。
  121. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 毛頭ございませんって、今審議している法律がその一つじゃございませんか。過剰生産だから自粛して設備制限しろ、過剰生産の原因は過剰設備だ。過剰生産はどこから出てくるのです。内地需要と外地需要でしょう。それを少く見積れば過剰になる。それを多く見積れば、生産が過剰でないということになる。そんないいかげんな言いのがれをしてくれちゃ困りますよ。あなたこそは、保守党数あるイエス・マンの中の良識だと思う。せめて大臣くらいは良識ある答弁をしてくれなかったら、私らはどこをたよって質問をし、どこをたよって法律を通していくのですか。  さてそこで大臣にお尋ねしたいのですが、あなたはこれに対して、内地に向ってはワン・マン、やるかやらぬかは別として、イエス・マンは続けるということをおっしゃっておる。報復手段はとらない、こうおっしゃっていらっしゃる。しかしながらとれる材料は幾らでもある。今やイギリスはソ連と手を結び、フランスまでがまた協約を結んで共産圏とも貿易をやろうとしているときに、わずかアメリカからもろうたもののおかげで、隣邦中共、ソ連とは貿易もやらさしてもらえぬ。その上なお追い打ちをかけられて、せめてアメリカに輸出ができるかと思うたら、それもいけないと言われ、へえっといって引き下ってくる、何と悲しい現実ですか。一寸の虫にも五分の魂、かりに牛車に向うカマキリであっても、祖国を愛する精神があるならば、アメリカさん、ダレスさん、そりゃちと無理じゃござんせんかくらいのことは言ったってしかるべきだと思うが、それでもあなたは泣く泣く引き下るのですか。何かここらあたりで一つくらい大臣のよさを、日本人の意地のあるところを示してよさそうなものだと思うが、大臣、やっぱり何ごともさわらぬ神にたたりなしで、イエス・マンで引き下られますか。
  122. 石橋湛山

    石橋国務大臣 そんなお話のような腹は公開の席で申すべきものではないと思います。
  123. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでもこの間大臣は、ジョンストンが映画を売りに来たときに、ワンダラー・ブラウスは買ってくれと言うと言った。あのジョンストンは映画を無理やりに買わせに来ているのですよ。あれはマッカーサーの占領政策そのままの方式でもって、なるほど先っちょの方を少し変えたけれども、数量の方は従来よりもふえてきておる。無理に買わせているのです。こういうことをやっているのじゃないか。それを、ほんとうに終戦直後のやり方で、悪い法律だから憲法も変えるというほどの勇気があるならば、なぜこれをお変えになりませんかと言うたら、いや、おれはそんな映画なんか買うと言わぬ、買わぬでもワンダラー・ブラウスだけは買ってくれと言う、あなたはそう言いなさった。それもうそでしたか。
  124. 石橋湛山

    石橋国務大臣 そんなことを言ったとか言わないとかいってもしようがありませんが、言うてあります。映画だって何もこっちが政治的にのまされておるわけでもない。言うてはおります。だから言うだけのことは、日本政府として、これは私だけじゃない、だれでもみな言うております。
  125. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは報復手段でもなければ何でもないのだが、これ以上向うが追い打ちをかけてきたときに、なおイエスと引き下るのですか。それとももうここらあたりでかんべんしてちょうだいと言われますか。
  126. 石橋湛山

    石橋国務大臣 これもちょっとお答えできないのですが、追い打ちをかけるといって、どんな追い打ちをかけるか、その事柄次第だろうと思います。ただ追い打ちをかけるといっても、向うが何をしてくるのかわかりませんし、また想像でこんな追い打ちをかけるだろう。とても日本がのめないような追い打ちがかかった場合は、むろんのまない。
  127. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは言いますが、日本の綿業界はアメリカの綿業政策のおかげで大きな犠牲をしょっております。アメリカの綿の輸出については、御承知の通り支持価格というものがございます。一般世界プライスよりも高く買わされておるのでございます。しかも余剰農産物とも相なりますと、古い、ひねの綿や、あるいはカード下、コーマ落ち等々、およそ一般市場においてはくずと考えられるものまでも買わされておるのでございます。この支持価格改訂につきましては、業界ではすでに数年来、このくらいは改訂してもらいたいという要望がどんどん政府の方にも出ておるはずでございます。それくらいは一つ何とかなりそうでございますか、それもやる勇気がございませんか。わが子の言うことは全然聞かずに、よそのおえら方の言うことだけを聞いて引き下られるのでございますか。私は、ほんとうに良識ある大臣だから、命ある間に、せめてこのくらいのことをやられたら、ああ、なるほど通産大臣石橋さんは偉かった、歴史に名が残ると思いますし、わが綿業界の古き歴史の一ページを飾るということになると思いますが、千載青史にあなたの名を残すこともあえていやだとおっしゃるのでございますか、どういう名を残されますか。
  128. 石橋湛山

    石橋国務大臣 余剰農産物は無理に買わされておるのじゃありません。だから日本でもっていやな物は買わなければいいのです。
  129. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 支持価格というものがちゃんとあるのです。農産物でなくても、ほかの物でもあるのです。それではもう少し説明しましょう。アメリカの綿製品業者が日本のワンダラー・ブラウスを入れてくれては困るという理由の一つに、支持価格制度というものがある。それはアメリカの綿耕作者を生かすために、特別に高く買ってやる、日本でいうと二重価格制度みたいなものがあるわけです。それは原綿をよその国に売るときも適用されるのです。それで高く買わされるのです。事実ですよ。それを改訂してもらいたい。だからアメリカの綿加工業者もその高い材料で加工しておるものだから、日本がよその国から安く綿花を買い入れて、これに加工して、そうして入れてくれては困るとまことしやかに言うておる。その実はワンダラー・ブラウスの材料はアメリカのカリフォルニア、サウス・カロライナの方でできたものだけれども、そういうふうに言うておる。それで日本のワンダラー・ブラウスその他の日貨排斥の原因は、一つにはアメリカの綿業政策の失政というところからきているということは、業界の識者はみな知っているところなんです。それをこっちにまで犠牲をしょわされては困るわけなんです。それがあるいはメキシコ綿や、あるいはブラジル綿のように、あなたの言うところの拡大均衡をするために高く買ってやるというのならまだあきらめもつくんだ。そうしておいて中共貿易もいけないと言われちゃ立つ瀬がないというわけなんだが、せめてその支持価格の改訂要求ぐらいはやる勇気ありませんか。
  130. 石橋湛山

    石橋国務大臣 支持価格なるものは日本にもございまして、たとえばサツマイモとかなんとかいうものは、小さなものでございますが、支持価格をやっておりますし、農産物保護ということはどこの国でもやっておるのです。これは国内政策でありますから、アメリカの国内農業政策に対して、日本からとやかく言うわけにはいかぬと思います。しかしそれがお話のように高い綿花になり、従ってそれが間接的な影響日本に及ぼすということについては、むろんアメリカに注意を促すだけの値打はあると思いますから、これはやっております。
  131. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それではだんだん時間が何ですから適当なところでやめますが、一つぜひやって下さいよ。このくらいなことはやっても、別に向うだってもう百も承知の上の仕事でございますから、このくらいは一つやってもらいたいものだと思うわけでございます。  申し上げたいことがたくさんございまするが、最後に毛製品の問題についてお尋ねをしたいと存じます。本法案が通過いたしますると、業界がある程度安定して拡大均衡が行われ、輸出振興が行われる、こういうことに相なっておるわけでございまするが、ただいまこの毛の輸出のための原糸が非常に払底をいたしまして、輸出振興とはおよそ逆な結果を招来しております。このことは昭和二十九年度において四千二百万ドル、昭和三十年度において四千四百万ドル余の輸出、つまり繊維製品輸出では非常に優位に立つところの毛製品の輸出の将来に、大きな影を投げかけているものでございまするが、これに対して大臣はどのような措置をとられようとしておられまするか。
  132. 石橋湛山

    石橋国務大臣 必要な原料は、糸目をつけずに入れるつもりでおります。
  133. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私のお尋ねしているのは、今内地の糸高で、輸出のために糸を買っておる機場が、その糸が買えない。そういう状況はやがて輸出振興に大きな阻害があるが、これはどうか、こういう質問です。
  134. 小室恒夫

    小室政府委員 最近毛糸に限らず、各種繊維が値段が上っておりまして、それがやはり輸出にも悪影響はあると存じます。そこで需給を緩和するために必要な輸入原料はどんどん入れるようにいたしたい、こういう意味で大臣から御答弁があったのです。結論だけを申し上げたものですから、食い違ったようなわけでございます。
  135. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 そうするとあなたの要旨とするところは、大臣の答えたところの原毛の手当をする、こういうことですか。
  136. 小室恒夫

    小室政府委員 原毛の手当はもちろんいたしますが、内地における価格が非常に上っておりますと、どうしても輸出に流れるべきものが内地の方へ流れてしまう、そういう結果に相なりますから、それを防止したい、こういう意味でございます。
  137. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 いみじくも繊維局長がいいことを言うてくれましたが、事毛製品の業界におきましては、御承知の通り非常に内地高でございます。内地の値段がぼんぼん上ってきたのです。そのおかげで輸出をすると損をするのです。で紡績が今選択売りということをやっておる。この結果は輸出の糸が払底してしまって、輸出が停頓しているという状況に追い込まれているのです。その原因が一体どこにあるかというと、この法律にあるのです。品物が余り過ぎておる、それは設備が多いんだということを言うてみえるが、足りな過ぎるんです。だから綿ともとは状況がすっかり違うのです。綿はレーバー・ダンピングだ、ソーシャル・ダンピングだと言われている、毛の方はそうじゃないのです。それに同じような追い打ちをかけるものだか、ら、同じようなことをやらせるものだから、毛だけぶうんとはね上って、ちっとも輸出ができぬようになっちゃった、さあどうしてくれますかということです。
  138. 小室恒夫

    小室政府委員 お話の通り、綿糸と毛糸を同じ扱いにするつもりはありませんし、過剰設備の処理とか、あるいは絶対的な拡張の禁止とかいうことを毛糸紡績について考えているわけではございません。もっとも毛糸も梳毛と紡毛があって、紡毛の方のカードをふやすということも考えておりませんけれども、しかし梳毛については、今後の需給状況をよく見て、輸出に阻害のないように運用をしていきたい、こういうふうに考えております。
  139. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 しからば、本法案をなぜ毛にまでひっかけるのですか。
  140. 小室恒夫

    小室政府委員 紡績設備の性質として、大体いかなる繊維でも紡績できるような関係に各種の紡績設備がなっておりますので、綿紡だけを押えるということでなくて、スフ紡、毛紡その他関連設備についても、同じように一応規制のワクの中におさめていかなければならぬ、しかしあとは運用の妙に相なる、こういうように考えております。
  141. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 そんなとんでもない答弁で納得できません。毛紡の隣は何紡ですか、スフ紡ですよ、スフ紡の隣は何紡ですか、綿紡ですよ。綿ともは両翼ですよ。まん中だけはそのままにしてある。何で両わきをかけなければならぬのですか。スフ紡はやってもいいということになっております、スフ紡はひっかかっていない、化繊紡もそのままですよ。綿ともは全然違うのです。     〔鹿野委員長代理退席委員長着席紡績の種類も、機械設備もみんな違う、それからその性質も違えば、商業状態も違えば、価格の程度も違えば、決して過剰生産でもない。私はかつて品質表示法を出されますときに言いました。今日の国民感情からいけば、純毛、純綿にあこがれておる、そのやさきにこんなことをやる、これはスフが入っておりますということをやったら、一そうスフが売れなくなります、それは、純毛に走りたいからである、そう言いましたところ、前の繊維局長は、そんなことはあなたの心配だけですよ、こういうことだった。その心配だけですよが、私の心配通りになっていった。現にどうです、きのう、きょうの新聞を見ても、ことしの冬もの、秋ものは高級品ということになっておる。まじりものはあまり作らぬことになる。作らぬということは、売れぬということですよ。今まで輸出に高級品が向いておった、ところが内地の者が高級品を使うようになってきた。しかもそれが内地高になっているから、何も輸出で苦労せぬでも、内地に回した方がもうけが多い、こういうことになる。だから横浜の港までいった輸出用の毛製品が、あそこから逆に帰ってきて、東京の銀座で売られておる、メイド・イン・イングランドという名前になって。そういう状況なんですよ。ですから、具体的にそういうようにようわかってやらなければならない。だから私の考え方からいくと、こんな状況下において、毛の紡績なんかにこんなワクをかけたら、需給の関係から一そう糸値を高くして、機場にとっては、原料高の製品安に追い打ちをかける、こういう結果が生じてくる。だから機場の方では、一宮地方ではおれの方だけはごめんしてもらいたいということを理事長以下言っておる。うそじゃありません。これは井上君がおるから、ようわかっておる。はっきり答弁してもらいたい。なぜこれにかけなければならないか。
  142. 小室恒夫

    小室政府委員 ただいま野放しにしておるというお話でしたが、スフ紡についても新増設は登録許可制にかけるわけでございます。ただ需給等から見て、スフ紡は今後の新増設はあり得るだろう。今の毛紡についても毛の需給関係を見て、綿と同じ扱いをいたした。それだけの話です。
  143. 神田博

    神田委員長 加藤君、簡単にお願いします。
  144. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 急げということでございまするから、委員長に協力をいたしまして結論を急ぎますが、品質表示法の折にも言いました。それから二十九条の折にも私が言いました。その心配が現実となって現われてきているのが、今日の状態でございます。繊維局ないし通産省が、先刻答弁のような、繊維業界をより平和にするために考えられた意図というものは、善意はくみ取りまするが、その方法いかんが一そうこれを混乱に陥れる基になるので申し上げるのであります。そこで一つだけ大臣に承わりたいのですか、大臣、毛製品は足りないのであります。過去の施策が悪かったから。品質表示法なんというたわけたものを出しなさるから。ところが綿製品は多過ぎる、こういうことなんです。過剰生産だということでございますが、大臣に最後に聞いておきたい。あなたはほんとうにそう思っていらっしゃるのですか、綿製品が過剰だと思っていらっしゃるのですか。
  145. 石橋湛山

    石橋国務大臣 それは過剰か過剰でないかということは、さっき加藤君も言われたように相対的のものですから、需要が伸びれば現在の生産でも過剰でないし、需要が減れば生産が減ってもまた過剰になりましょう。今の毛と綿、スフの関係については、局長からお答えした通り、われわれはとにかくこの法律によって、どの紡績でも必要がある場合には規制ができるように、一応登録しておくということになっておりますけれども、取扱いはおのずからそれぞれ専門的な検討をした上でやるのでありますから、御心配のような、特に毛が不足の場合にさらにその不足をひどくするようなことは絶対にやることはない、かようにお答えしていいと思います。
  146. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 政府のおやりになっていることに、非常に私は矛盾を感ずるのです。それはどういうことかというと、第一番が生産過剰、それは設備が多いから設備制限する、こう言いながら、それだったら、通産局長もいらっしゃるからおわかりになると思うが、ほんとうに生産過剰だ、こういうことであれば、その生産過剰をとどめるのは、それをセーブする、それにブレーキをかけることは、こんな機械設備のところでやる必要はないのですよ。政府が実権を握っていらっしゃるものが一つある。それは外貨なんです。外貨を少くしたら一ぺんに減るのですよ。通商局長そうでしょう。製品が多過ぎる。そうしたら、外貨を減らしたら製品は自然に少くなる、外国から入れておるのですから。ところが大臣、その外貨は、多い多いという綿の外貨割当もふえているのですよ。毛がふえるのは足りぬというのだからわかる。ところが綿もふえているのですよ。これは一体どういうことです。その買い先がアメリカであるということになれば、あなたたちが幾ら自粛をおやりになったとしても、アメリカの同じ加工業者から見れば、あれはうそじゃ、こういうことになってくるわけです。機械制限した、輸出はふやさないと言うけれども、材料はよけい食うておるじゃないか。その材料を捨ててしまえば別ですよ。それを加工するでしょう。余分に買えば、製品は余分にできます。なぜこういう矛盾したことをおやりになるんですか。私は不思議でかなわない。どういうわけですか、大臣
  147. 石橋湛山

    石橋国務大臣 われわれは糸の供給をしいて減らそうということは考えておりません。従って紡績綿糸の方におきましても、需給の状況に応じては、外資の割当をふやすこともあり得るわけであります。それから機械設備の登録とか規制とかいうものは、なるほど輸出の問題が大きい。過剰設備を減らして過当競争を減らすということに大いなるねらいはむろんあるのでございますが、同時に日本紡績業そのものの質をよくしよう。先ほど加藤君から言われたように、日本の、ことに織布面においては確かに過剰設備もあり、それからその設備が非常に古い、陳腐化しておる、こういうものの改良が一つの大いなるねらいになっておるわけでありますから、必ずしも供給だけ減らせばそれでよろしい、こう考えておるわけではありません。
  148. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 綿の方は矛盾しておるということがはっきりしておるけれども、毛の方は少いので、特に内地高で材料が少いので、輸出振興もできない、こういう状況になっておりますですが、外貨の割当を商社の方に持っていくという場合に、私が考えますことは、原毛をただふやすだけではなく、輸出用の原毛を確保するという制度、これを加味されるということが輸出を安定させる基となると思いますが、これは一体いかがでございましょうか。
  149. 石橋湛山

    石橋国務大臣 お説は承わっておきますが、同じものについて、これは輸出製品だ、これは内地製品だという区別をあまりやって、一方を押えて、一方を助長するという政策はよろしくないと私は思います。毛製品なら毛製品の輸出を大いに助長することが、やはり内需というものに相当観点を置いて、両方を見てやる、両方がふえるようにすることが必要だと考えます。
  150. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは、これがほんとうの最後でございます。私今までいろいろ御質問を申し上げましたが、その意図するところはほかでもございません。ほんとうにあなたたちの目的と私の目的とは一致しております。目的だけは。国内繊維産業を安定させて、そうしてこの産業の上に国家経済を安定させる。繊維産業はあくまで日本産業の中心である、私はこう考えておるのです。その中心を安定させることは、やがて日本の経済を安定させるもとである、そう考えておりますが、最後に、このことが行われることによって、業界というものは生きておりますので、大臣御承知の通り、どういうふうにでもふくれたりへこんだりするものでございます。そこですでに本法案が上程され、審議されるということだけでもって値上りがきておる。それはちょうど品質表示をやって化繊を奨励しようという目的だ、こういう話だったが、そんなことは逆になりますよと言うたと同じような、目的とは逆な結果が生じてきておる。つまり毛の方においては内地高の選択売りが行われるために輸出ができない。それからもう一つは、このおかげで綿の畑にいきますと柄物の輸出か非常に困難になります。その理由はやめます。もう一つは絹の方でもそうですが、糸の選択買いができないために、輸出しようとしているもの、すなわち商社から指定されたスタイルのものができにくい状況に追い込まれておるのでございます。あえて私は毛に一例をとったのでございますが、等々、柄物輸出には非常な困難な点が生じてきておるのでございます。もう一点、この法律が通って、機械産業大臣のような抽象論だけ、念願だけで事が済んだとなりますと、機械産業は縮小されるだけでなくて、その結果機械輸出が非常にできにくくなる。日進月歩のこの時代に、研究部門も経済単位にならないために削っていかなければならない。それと機械が数多く出ればコストが安くつきますが、数少くなりますと単位のコストが高くなるということは、何も自動車産業だけのことではございません。繊維産業でも同じことでございます。コストは高くなるわ、おまけに研究は進まないわということになりますと、およそ金属機械輸出の中で優位を占めて参りました機械産業が、これからは低下の一途をたどる結果になり、やがては内地の必要な機械まで外国に仰がなければならないということに相なりますので、田中君が言われましたように機械輸入だけはごめんしてくれ、こういう論が出てくるわけでございます。等々あなたの一枚看板である輸出拡大、拡大均衡に大きな影を宿している。これを事前に除去する策を講じない限りにおいては、この法律をせっかく作っても、害のみ多くして効果が少かったという結果に終ることを憂うるものでございます。これから生ずる直接被害者である機械産業下請企業、労働者等のことは、すでに再三述べられましたので、私はきょうはやめますが、それ以外にも、今私が申し述べましたような大きな悪影響を宿しているものであります。賢明なる大臣は、この点に思いをいたされまして、せっかく通る法律ならば、万遺憾なきょうよき施策を施して実施されますよう要望するものでございます。以上。     —————————————
  151. 神田博

    神田委員長 この際帆足計君より中共との貿易問題並びに中共において開催される予定の日本見木市の問題について質疑をいたしたいとの申し出があります。これを許します。帆足計君。
  152. 帆足計

    ○帆足委員 時間も移りましたので要点だけ御質問いたします。ことしになりまして電気誘導弾が歴史の舞台に登場いたしまして、防衛基地とか、攻撃基地とかいうような軍事的な概念にもだんだん変化が出て参り始めておるようです。水爆と電気誘導弾と相待ちまして、もはや人類は戦争の手段に訴えることができない段階で、私は歴史を長い目で見るならば、これは人類の夜明け、世界平和の前夜であろうと思っております。世界が平和に進んでいくとすれば、結局万国は再び貿易によって、万国通商によって生きるべき道を探さねばならぬわけで、武力とか領土の侵略とかいうようなものが世界から消えていくことは敗戦国の日本にとっては、まことに有利な条件であると思います。従いまして力の外交よりも平和の外交、そうしてその経済的帰結としては貿易政策に島国日本としては全力を注がねばならぬのですが、私は石橋通産大臣はこの問題に対して前から見通しを持っておられたように拝察いたしますが、歴代の内閣がこの問題について先見を持っていなかったということはきわめて遺憾であって、特に前の外務大臣の岡崎さんのごとき愚物に数年も外交をゆだねていたということは、日本民族として取り返しのつかぬくらい残念なことであったと思います。私はこういうふうに考えまして五年前に中国、ソ連との貿易の準備に着手した方がよかろう、戦争になるのであれば、その仮想敵国と貿易をするということは利敵行為だといって一部の人に非難されることもあろうが、世界が全体として平和にいくことが必然の道であるとすれば、まだ世人の気のつかないうちに心ある君たちが語り合って貿易への準備を進めることが必要であると考えまして、当時世界経済懇談会というものができましたが、そのときに石橋通産大臣は積極的に参加して下さいまして、そうして世界のすべての国との貿易の必要ということについて理解を示されましたことは記憶の新たなところでございます。最近に至りましてこの風潮はますます大きくなりまして、二十日の新聞ですが、ロンドンのドーフリンガーという新聞記者の電報によれば、これはロンドン欧州総局発となっておりますが、英国が中国との貿易に対して積極的に乗り出してきた。そうしてこれに書いておりますことは、英国はアメリカとの間に意見の一致を待たずして、もうしびれをきらして、中共との貿易を独自の方針で開拓するために、例外条項というものを活用して輸出の方針をきめた。あとでアメリカその他列国にただ通告すれば事足りるという態度で押し切ろうとしておる。フランスもこれに共鳴し、各国も続々とそのあとを追うであろうという記事が出ております。それで今後五カ年計画、二回の五カ年計画で百五十万台のトラクターを、中国の需要に対して英国は一手に引き受けたい考えで、すでに六十台のトラクター、百万ドルほどの金額のものを中国に輸出するようになったと言われております。この新聞記事によりますと、中国委員会に参加しておる、すなわちココム及びチンコムに参加しておる各国に対して、中共に対して輸出する品目のうちなかなか正常な手段で許可を得ないものは例外輸出ということにして、しかしその場合にその輸出する権限は自国の意思で輸出し得るのであって、委員会はこれに対して単に関心を寄せるという態度を示すだけである。従って原則的には各国がそれだれ貿易に関する自主権を持っているわけであるから、イギリスとしては輸出したい禁輸品を中共に売るのに何の気がねも要らないことになる。しかしイギリスはただ穏当な範囲にこれを制限するように自主的な注意は払うけれども、一々アメリカの許可を求める必要はないものと解釈するという意味のことが出ておるのでございます。  そこでお尋ねいたしたいのですが、外務省並びに通産省におきましては、最近の英国とソ連との貿易協定並びに英国の中国市場に対する最近の政策などを詳細にお調べになり、また情報を御入手になられたかどうか。それからアメリカとの協議を待たずして、ただ自分の意思を関係国に通達すれば事足りると書いてありますが、こういうふうな情報は一体どういう意味を持つのであるか、そのことにつきまして、事務的な問題は局長から、政治的な問題は大臣からお答えを願いたいと思います。
  153. 石橋湛山

    石橋国務大臣 お話のように詳細のことは事務当局からお話し申し上げさせたいと思いますが、なるほど中共に対する貿易については、いろいろな動きが最近あることは事実であります。アメリカあたりの態度も、一時から見るとかなり変っておるかにも推察できますが、しかしながら今のところで直ちに今読み上げられた新聞記事のように英国やフランスが行動するかどうかということはまだはっきりいたしません。それから日本日本として、これはアメリカに一々許可を受けるということよりは、ココムの問題でありましょうが、ココムというものの協定、あの機関をどうするかということになろうかと思いますが、日本としてはただいまのところ、ココムの申し立てについてはやはりできるだけ十分これを尊重し、また各国の意向も参酌しまして、そして日本の中共その他に対する貿易については、できるだけ各国におくれないようには行動したいと準備は常にいたしております。
  154. 帆足計

    ○帆足委員 それではちょっとお尋ねしますが、六十台のトラクターはすでに英国に対して許可されたのでしょうか。
  155. 板垣修

    ○板垣政府委員 外務省に入りました情報によりますと、ココムから許可を受けたそうです。
  156. 帆足計

    ○帆足委員 私はこれはきわめて重大な問題であって、中国の農業五カ年計画の要綱はたしかことしの二月ごろ発表されておりますが、あの四百余州を震駭するほどの大きな変化、農業機械化の問題が今や始まろうとしておりますが、これに対して早くも英国が適切な措置を行なった。しかるにわが国はわずかばかりの木造船を中国に輸出しよう、木で作った船を輸出しようというのが、うわさに聞きますと許可になっていないということです。鉄で作ったところの、激しい馬力を持っているところのトラクターが許可になって、そして木で作った木造船の方は許可にならない、まことに不合理なように思いますが、その辺の事情はどのようになっておりますか。また政府当局はどのようにお考えでしょうか。
  157. 板垣修

    ○板垣政府委員 大造船につきましては、実は政府といたしましても昨年以来ココムに対していろいろと説明をして緩和方について努力をして参ったわけでありますが、戦略性の見地からいまだ許可を得るに至っておりません。トラクターの方は許可になっておる。しかしながらこれは、われわれの方の解釈は別といたしまして、一応ココム諸国の解釈によれば、今度許可されましたトラクターは車輪つきでありますのでブルドーザーのような使用にたえない、従って戦略性は比較的薄いというようなことで許可になっておるようでございます。木造船につきまして今お話のように、われわれの方から見れば、戦略性が薄いではないかという議論が立つと思いますけれども、ココムの大多数の国におきましては、木造船はアンチマグネティックという形で従来から非常に戦略性が高いという関係になっております。そういうふうな関係で、われわれの努力にもかかわらずまだ許可を取りつけるまでには至っていない状況であります。
  158. 帆足計

    ○帆足委員 私はココムの委員には大した人物が委員になっていないからと思いますが、今日ソ連に水爆、電気誘導弾、超音ジェット機が大量生産されておりますときに、木造船がわずかばかり中国に輸出されることが戦略的にいいか悪いかなどを論議している、その文化水準の低さ、その常識の低さというものは驚くべきものではないかと思うのです。共産圏の中でポーランド、チェコスロバキアも相当の鉄を作っておりますし軍需品も作っております。ソ連は今では誘導弾においてはアメリカをしのぐほどの生産もしております。そういう国からどしどし無制限に軍需品が入るときに、日本のようなちっぽけな国からわずかばかりの船とか自動車を出すのに、それが戦略物資であるとかないとか論議していることはまさに滑稽であって、私はそういうことを言っておるのじゃなくて、アメリカが中国と自分が貿易できないものだから、ほかの国に貿易をさせたくないというようなことにも客観的には変ってしまっているので、五年前ならばそういう論議も多少論理性を持ったと思うのですが、今日では私はまことに滑稽なことだと思うのです。現にチェコスロバキアあたりからは、エジプトあたりにどんどん軍需品を輸出している。すなわちココムの禁輸品をソ連、東欧諸国が逆に自由主義諸国に輸出しているときに、こういう論議が行われるということは、まことに時代錯誤もはなはだしい。しかしそのことをこの委員会でわめいてみたところで仕方のないことでありますから、私は原水爆を受けた国、そして原子力の観点から、あるいはジェット機、電気誘導弾の観点から世界を考え得る立場に立っている皆さんとしては、特に政府としてはもう少し高邁な立場から発言権を強力に行使する必要がある。大体外務省などというものが見通しを持っていないから、こういうことになったと思うのです。今度河野さんがモスクワに行きまして、どうやら両国間の話のきっかけをきめてきました。そのときに河野農林大臣が言うことには、ロシヤの事情もわからぬような連中が、時代感覚で十年ずれているような連中が何を言ったところでそれは何の役にも立たないと言っておる。しかしソ連の実情や中国の実情がわからないというのは、外務省の愚物どもが不当に旅券を出さないで、そして見せないようにして、見ざる、聞かざる、言わざるというようなやり方をしておったから、こういうことになった。私は外務省というものはまことに罪深き役所だと思います。罪深いというのは、日本国民に罪が深いというだけでなくて、知的教養において非常に欠くるところのある点でもっと勉強してもらわねばならぬと思います。  そこでお尋ねしますが、ココムの担当官は、英国は二十人おる、米国は三十人おる、西独は十六人おる。しかるに日本の代表は五人しかいない、こう言われております。そこでこういう問題が起ってもとかく立ちおくれになるのではないか。またパリからロンドンまではすぐ電話がかかって、その日か翌日に訓令がすぐ来るけれども、日本の場合は非常な日数がかかるという点でも、これは通産大臣の意思によったことではないですけれども、結局外務省が愚昧であるために、こういう問題について従来努力が足りなかったことは周知の事実であって、また努力をすればアメリカの大使館ににらまれるから努力しない方がいいというのは当りまえでしょう。かつて岡崎外務大臣のもとで働いていたのでは何もできないに違いありませんから当然なことでありますけれども、現在一体日本の代表は何人ココムにおるのでしょうか、またどの程度の学識教養のある人がおるのでしょうか、一つ御説明願いたいと思います。
  159. 西山昭

    ○西山説明員 お答えします。各国の代表の数等についてお話がございまして、日本の代表がどれくらいいるかという御質問がございますが、この種の数は公開の席上で申し上げないことになっておりますので、御了承願いたいと思います。ただ私どもとしましては、参事官、一等書記官級の者を常駐の代表者として接触さしておるということを申し上げることで御了承願いたいと思います。
  160. 帆足計

    ○帆足委員 このココムの委員またはそこへ出ている人の数をすら言わないというのは、陰でごそごそ何か悪いことでもしているのですか。どういう理由でそういうことになっているのですか。またなぜそういうことをあなた方は了承しているのですか。これは天下公知のことだから、こういう人間が出ておるということを公表してもよさそうなものだと思うけれども、どういうことでそういうことになったのでしょうか。またそれに対して抗議をされたことがあるかどうか。
  161. 西山昭

    ○西山説明員 お答えします。ココムの会議の内容につきましては、一般に公表しない建前になっておりまして、その方針で進んでおるわけでございまして、また何人出席しておるということを発表いたしましても、積極的な意味はないと考えております。
  162. 帆足計

    ○帆足委員 積極的な意味はない、そういうばかなことをだれが考えているのですか。英国人は二十人、日本人は五人程度しかいない。日本の割当は一体だれがきめたのですか。
  163. 西山昭

    ○西山説明員 政府といたしましてそのように発表しない建前をとっておるわけでございまして、数の問題よりも、しょっちゅう本国と連絡をとっておりまして、ココムの審議におきましては遺憾なきを期しておる次第でございます。
  164. 帆足計

    ○帆足委員 事務的なこと以外に事務官の方にお尋ねしても仕方がありませんけれども、チンコムというのがありますが、これはまた別の委員会ですか。同じ委員会で、同じメンバーがやっておりますか、ちょつとその点を承わりたい。
  165. 西山昭

    ○西山説明員 チンコムと申しますのは、チャイナ、コミティの略称でございまして、通常中共関係の審議につきましてはチンコムが担当するわけでございますが、事実上ココムもチンコムも同じ代表によって討議されておりますので、通常ココムといいましても、中共関係につきましてはチンコムも同様に考えられておるわけでございます。
  166. 帆足計

    ○帆足委員 中国との貿易、すなわちチンコムの問題になりますと、日本と中国との関係は、過失においてイギリスとインドとの関係のように密接な関係があったので、日本は一番深い利害関係国でありますから、対等の資格で、委員の数なども大体同じで論ずるくらいでなければならぬのじゃないかと私は思いますが、こういう点においても、過去の外務省の政策も、それから今日の重光さんの政策も鳩山さんの線に沿うていないわけですけれども、事務をとられている方にこういうことをここでやかましく言ってみたところで自己満足でつまらないことでありますから、あまりぎゃあぎゃあ申しません。しかしまことに私どもは遺憾である。やはり外交の本質は経済外交であり、外交の基礎になるものは経済外交ですから、もう少し強く外交の面にも通産大臣として発言していただきたいとわれわれは希望する次第です。ところでそれと連関いたしまして、今度は中国との貿易の問題で、通商局長が一昨日新聞記者にお話しになったのでは、商務駐在員の問題については、中国からの商務駐在員を一定の限界においては認めてもよいという御発言があったそうで、新聞に大きく報道されておりましたが、今日までの政府当局の御見解をお示し願いたいと思います。
  167. 板垣修

    ○板垣政府委員 新聞に出ましたのは、少し言葉の表現が正確ではございませんでしたが、通産省の考え方といたしましては、商人ベース、個人、民間人のベースならば交換してもいいではないか、輸出入組合なり、そういうところの者が北京に行きまして常駐するということは、両国間の国交なり商談を促進する上において非常に便利ではないか、こう思っております。ただそれを交換することについては、国交未回復の国でございますので、その資格なり権限なりをどうするかというようなことで自然いろいろな問題が起きますので、これはもちろん通産省だけではきめられません。外務省といたしまして、全般の外交方針の見地から決定さるべきことと思いますので、今お話しの新聞の私の見解は、別に政府の見解というものではございませんで、私の個人的な見解でございます。
  168. 帆足計

    ○帆足委員 その問題につきまして昨年末中国側から提案があったのですが、たとえば、相互に見本市を開くというような場合に、見本市の事務局のようなものを——見本市というものは民間的性格のものですから、そういう事務局のようなものをお互いに常駐さしてはどうであろうというのです。これは大体において今の通商局長の御意見の趣旨に沿うような線のことだと思うのですが、昨年末の中国と日本との民間同士の書面のやりとりの際にそういうことも話題に上ったのでありますけれども、考慮の余地がありましょうか、お尋ねをしておきたいと思います。
  169. 板垣修

    ○板垣政府委員 この点については、外務省ともまだ十分には打ち合せておりませんので、至急検討していきたいと思っております。
  170. 帆足計

    ○帆足委員 現在ソ連の駐在員が日本におりまして、事実上の問題として、これも何かと連絡に役に立っているわけです。現にそういう例があるわけですから、当然通商局長のただいまの御見解の線に沿うて可能なことのように私は思いますが、その場合に、住居及び人身の不可侵ということは確保されるものと考えてよいでしょうか。
  171. 西山昭

    ○西山説明員 お答えします。私は直接その衝の責任者でございませんので即答いたしかねますが、通常の民間ベースでもし入ることができるようになりました場合には、そのような意味で、当然通常与えられている待遇は確保されると思いますが、現実に具体的な場合といたしまして、どのような待遇か、その辺のことにつきましてはまだ十分検討した結果を私承知しておりません。
  172. 帆足計

    ○帆足委員 御承知のように昨年の五月に、民間で中国側と貿易協定を結びまして、その大綱については鳩山総理も賛成であるという御意見を伺ったのです。そのときに相互に商務駐在員を置こうということと、それから直接の支払い協定を結ぼうということを約束し、今後の具体策については相談するということになっております。御承知の通りのことでありますから、一つ通産省においては、いろいろな角度からこの問題を御検討願いたいと思います。そしてお尋ねに参りましたときにも、技術的な諸問題についてお答えができるように御準備をしておいていただきたい。と申しますのは、英国はすでに中国を承認いたしておりますけれども、エジプトも最近中国承認ということになりましたし、またフランスは今ソ連に使節が参っておりますが、中国にも使節を出しまして、そして民間の貿易協定に対してこれを援助する態勢を政府としてとっておりますし、フランス銀行と中国銀行との間に口座を設けまして、貿易取引を容易にするような措置を行なっておるということですが、それも御研究になったかどうか、ただいまのところ何かお考えがありましたら伺っておきたいと思います。
  173. 板垣修

    ○板垣政府委員 民間ベースの駐在員の交換の問題、それから支払い協定の問題につきましては、引き続き今まで検討しておりましたが、今後も検討したいと思います。ことに今お尋ねの支払い協定の問題につきましては、研究中でございますが、おそらくこれは外務省の関係できめてもらわなければいかぬと思います。政府間の協定というような形はおそらくむずかしいと思いますが、何らか今お尋ねのような趣旨を実現するような方向でもって、事実上の措置を検討いたしたいと思います。
  174. 帆足計

    ○帆足委員 これは専門家の意見を聞きましても、政府政府との間の直接の協定でなくても、両国の通貨の支払い決済のために、技術的に適切な措置がとれるという意見が多いようですから、一つ至急大蔵省当局とも相談して準備をお進め願いたいと思います。日中貿易促進決議が一カ月前に衆議院を満場一致で通過しておることですから……。私は通産省当局には始終御接触しておりますし、御熱意をもって努力して下さっておりますけれども、大蔵省や特に外務省においては従来態度が消極的であったと思うのです。これはだれでも否定することができない事実であって、外務省という場所は全く先見の明のないところで、腹のきまってないところでありますから、仕方のないことでしょうが、国会の決議がすでになされておることでありますから、一つ外務省当局ももう少し積極的に、そして時間の問題も考えて、事務的に事を急いでいただきたいと思うのです。そうでありませんと、第四次貿易協定が中国との間で今審議が始まろうとしておりますから、それにどうしても間に合わなくてはなりませんので、一つ研究を急いでいただきたいと思います。  それからその次に、ことしの秋、上海、北京で日本商品の見本市が開かれますが、それに対しまして通産省、外務省の事務当局でも非常に御努力下さって、なかなか困難だといわれていたココム禁輸商品の相当部分が展示を許されるということになったそうでありまして、これで見本市は正式に成立するようになった次第でありまして、御同慶の至りでありますが、その辺の事情を要点だけ一つ御説明願いたいと思います。
  175. 板垣修

    ○板垣政府委員 この秋開かれまする中共における見本市に対しまして、従来禁輸品になっておるものも出したいという要望が非常に主催者の方からありましたので、政府としても持ち帰りを条件として何とかこの希望を達したいということで、実はココム等におきまして非常な努力をいたしたのでございます。当初はなかなかむずかしいと思ったのでありますが、しかしココムにおきましても大多数の国それぞれ意見が違いまして、統一的な基準はできなかったわけでございますが、大多数の意見の国の中で、この範囲ならば、あるいはこういう条件ならばよかろうという線が大体推定がつきましたので、日本政府といたしましては、ココムを構成いたしております大多数の国の意見を尊重いたして、この際持ち帰りを厳重に条件といたしまして、禁輸品を一部出品させることを許可しようということになりました。その適当な範囲で当ってみますと、大体今業者の方から、こういうものを見本市に展示したいという、いろいろな品物の七〇%近くはカバーできるということになっておる次第でございます。
  176. 帆足計

    ○帆足委員 こういうことの相談はパリのココム委員会で相談するのですか、それともアメリカの国務省なり大使館の方に先に内意を伺ってやるようになるのですか。事務手続並びに実力関係はどういうことになってきまるのでございましょう。
  177. 板垣修

    ○板垣政府委員 もちろんこういう中共に対する輸出の問題は、パリのココムでやっておりますので、私どもココムにおいて議論をしたわけであります。ただアメリカ関係は、特別な日米関係にかんがみまして、一応の相談はいたしましたが、アメリカへ特に相談をしなくてはならぬという義務があるわけではございません。
  178. 帆足計

    ○帆足委員 それできまりましたことは、たとえば発表しにくいことでもありますればまた別でございますが、何か個条書にでもして、こういうリストの第何条と何条についてはいいとか、第何項については都合が悪いとかいうようなことですか。発表して差しつかえのない範囲においてどういうきまり方をしたのか。われわれに理解しやすいように一つ御説明を願いたい。
  179. 板垣修

    ○板垣政府委員 今申し上げましたように、これはココムにおきましても、日本が中共に禁輸品を出していいという承認があったわけではございませんので、日本政府の独自の決定でやっておるわけであります。従いまして日本政府の品物を選定する基準といたしましては、ココムにおける論議を通じまして大多数の国が、この辺ならばいいだろうという基準が大体わかりましたので、それでやるわけでございます。しかし具体的な基準をこの公けの席上で申し上げますことは、ココムのいろいろな基準問題に触れますので、ちょっと差し控えさしていただきたいと思います。
  180. 帆足計

    ○帆足委員 そういうことでしたら……。非常にお骨折りの結果だと思いますが、私は卒然としてこの問題を見まして、一人の平均的教養のある市民として見ます場合、多少輸出ということと展覧会ということとが、やはり委員会などにおいても、概念の上で混同されておるのじゃないかという気もいたします。というのは直接の軍需品でなくて、こういう建設資材について、その実情を知るということは、直接貿易とは関係がないわけです。商行為ではないわけです。従ってそのことはアメリカにおるソ連の商務官でも、また共産圏の国の商務官は世界各国におりますが、そういう人たちは、各国の展覧会を自分で見ることができるわけです。そういうものがたまたま上海、北京で開かれるというだけのことであって、技術の専門家は、今日世界各国どこでも行けるわけですから、そこの商品陳列所でそれを見ることができるわけです。そればかりでなくて、現在まだ困難だといわれておる電子顕微鏡だとかテレビなどというものは、モスクワに行けば幾らでも見せてもらうことができるし、技術も青写真ももちろん公開されているわけです。チェコスロバキアでも同じであります。従って北京、上海で日本のテレビを見せてはならぬという理由がどうも私は納得できない。それは移動式のテレビなどを大量に輸出する、そうするとそれが何か国境紛争などがあった場合に、軍事に使われるおそれがあるからそういうものはまだ輸出しないというのならば多少の意味があると思います。しかしそれでも中国で軍事的に必要なものであるならば、チェコスロバキア、ソ連が無条件に大量に支給し得る余剰能力を持っておるのです。ロシヤでは百数十万の陸上部隊を今度減らそうという、そうすると直ちに兵器の余剰を生ずるわけですから、今さらそういうことを言うことも時代錯誤のことでございます。その上、展覧会というものは物を見せる会であります。今日ユネスコなどでも技術の交流をやっておる。一番機密に属する原子力の技術の交流、展覧会をジュネーヴでやって、共産陣営も資本主義陣営も最高の機密を握っている学者、技術者がその展覧会に出席している。そういうときに日本のちゃちな顕微鏡やテレビくらいを上海で見せることがいけないなんという感覚が、花の都のパリで発生するというのは一体どこから来たことか、私どもには全く理解できないことです。小学校のころより家のおばあさんから、お前理屈ばかり言うけれども、世の中は理屈通りではないよということをよく聞かされました。高等学校のときも学生課に呼ばれて、よく世の中は理屈通りいかぬから、帆足君もう少し君も人生を信じてみたらどうかというくだらぬ忠言を俗物の学生課長から言われました。今日私は、閣僚の一人としての石橋さんから通産行政でそういうことを聞かされるのではどうも困ると思うのです。もちろんそう言ったところで、なかなか思い通りにならないでしょう。しかし国会で説明し得る程度の根拠がなければちょっと困難だと私は思う。従って私どものようなきわめて常識的な市民、政治家が理解し得ないようなことがココムで行われているということは、これはココムを一押しすれば、もう一押し政府が強く押せば、日本の意見が通るということにもなるのではないか。これはいかに通産省の実際に当っている皆様ががんばっても——先ほどから私たびたび外務省をあしざまに言って済みませんけれども、やはり悪いことは悪いと言わなければならぬ。外務省は勉強が足りないのです。時代おくれです。英語の勉強だけしても仕方のないことで、学生時代に哲学でも経済原論でもしっかり勉強していないからそういうことになる。私は外交官試験の試験の仕方から変えなければ直らぬのではないかと思います。そこでなるべく政府が御努力になって、困難なことはさぞかし困難であろうと思うのですけれども、しかし普通の文明人の常識で理解しがたいようなことが、外交や通商経済政策の上で行われていることを国会議員が黙っているわけに参りませんからあえて言うのですが、全く非常識もほどがあると私は思うのです。輸出制限の方はまだ仕方がない、まだ多少の、尾骸骨ほどの理屈が残っておりますが、展覧会がいけないなら、それなら一体何のためにジュネーヴで原子力展覧会を開いたのか。原子力展覧会を開かせておきながら、日本のテレビを持っていって見せるくらいのことがいけないという。それも御無理ごもっともと言って、石橋さんほどの方が下ってこられるということは、どうしても私は論理的に納得できません。あえてこれは通産大臣の御答弁をわずらわしたいのですが、先日このことは池田副幹事長にも言いました。それで池田君も、それは僕も同意見だと言っておりました。従いまして第一段階で成功いたしましたから、これはわれらひとしくその労をねぎらうのでありますけれども、そういうテレビなどというものは展覧会をにぎやかにするために必要な余興のようなものです。そういうものがいけないなどという感覚はどこから出たか。私は、外務省の代表にもう少し気骨があり弁の立つのがおって、たとえばわれわれをしてフランス語を熟達せしめたようなのがおって、ちゃちゃくちゃらにやっつけてしまえば返す言葉もないと思います。非常識の程度があまり極端ですから申し上げるのですが、この問題は池田君ももう一ぺん再検討しようと言っております。大へん御苦労でありますけれども、他にもそういう品目があると思いますから御研究していただきたいのです。これは政治問題ですから通商大臣の御感想を一つ聞きたいと思います。
  181. 石橋湛山

    石橋国務大臣 御説のようにずいぶん不合理なおかしなことが多いのです。この展覧会ばかりではなくて、今の世の中には不合理なおかしなことが非常に多いのですから、一ぺんにぶちこわす、突き破るということはなかなか困難でありますので、日本としてもいろいろの立場もありますから、逐次これの解決を促すというのが穏当な行き方だろうと思って、今回もできるだけの範囲で、解釈の差しつかえない限りにおいて便宜をはかるようにいたしたい、かように考えております。
  182. 帆足計

    ○帆足委員 この前のゲリマンダーの問題がありましたときに、心ならずも石橋通産大臣に対する不信任案の賛成演説をせよという命令が参りまして、私と加藤君とは非常に苦慮いたしまして、それでは仕方がないから、どうせ不信任案を出すならば一体どういう点をついたらよかろうということを二人で熟慮いたしました。そのときに、石橋さんは気骨のある方だといわれておったのに、どうも大臣になってから少し軟弱になって多少軟弱外交の傾向がある、この点を一つ警告を発しようじゃないかということで意見を一致させたのですが、幸いにして不信任案など出さないで済んだわけであります。私はただいまの御回答を承わってどうも満足でありません。もう少しやれると思うのです。きまった範囲でやろうとおっしゃらずに、きまったことでは一応やるけれども、あとの問題でそういうはなはだしく支障の起るような今のテレビの問題などは、展覧会にはまことにふさわしいアクセサリーであるので、そういうことはもう少し研究しようというふうにしていただきたいと思います。  時間がございませんから、あと二点だけお伺いいたしますが、展覧会が開かれることになりますと、単に見せるだけではなくて、商品別に向うの技術者と日本技術者または貿易業者とその展覧されておる商品を中心として懇談会などを開いて、将来の需要供給について十分理解し合うということが伴う方が能率が上ると思います。そのためには、そういう商品の知識を持ち技術を持っておる人たち、経済界に根のある人たちが相当数往来をする必要があると思います。そのために、ただいまの計画一つとしては、長崎から上海に旅客船を出したらどうか、そうしてその旅客船に夜は泊って昼は展覧会場に行くなり、上海近郊を見物するなり、中国の商売人と懇談会でも開くというようにすれば、香港から飛行機で行って、また広東からはるばる北京まで行くとか上海まで行くとかいうようなむだをしないで済みます。現在日本船はほとんど毎週ひっきりなしに上海、天津の港を往復しておるわけですから、そのくらいの便宜は展覧会会期中に開いていただけばけっこうだと思いますが、この問題についてはまたもや外務省がおそらくなかなか承知せぬのじゃないかと思います。しかし展覧会のときに専門家が行かなければ展覧会の効果は非常に薄いと思うのです。従いまして展覧会の会期中だけ遊覧船を回すようなことも考えていただいたらどうかと思いますが、一応通産大臣のお耳に入れて、さらに具体的な案はあらためて民間から提出するでしょうけれども、公式の委員会の席で通産大臣の御理解を得ておきたいと思うのです。御回答願えますれば幸いでございます。
  183. 石橋湛山

    石橋国務大臣 そのお話は初めて今伺ったのであります。これはいろいろ入出国の関係がありますから、ここでとやかく申し上げかねますけれども、承わって十分研究いたしたいと思います。
  184. 帆足計

    ○帆足委員 最後に、ただいまの御回答も私非常に不満足で、通産大臣ともあれば、承わっておくでなくて、展覧会があれば確かに相当の人が行かなければならぬだろう、また見物人も行かなければならぬだろうから、一隻くらいの大型汽船はそれはやってもいいだろう。しかし外務省が、重光がやぼだからどう言うか知らぬが、われわれとしては賛成だくらいの御回答があってけっこうだと思うのです。  その次に展覧会に対する補助金の問題ですが、承わりますところによりますと、通産省ではこれに対して非常な御理解を示されまして、予算をおきめ下さったそうですが、私どもはそのほかに——時間がありませんから一緒に述べておきますと、予想される補助金では多少足らないと思うのです。これは中国という大きな市場を相手の展覧会ですし、会場がソ連の機械展覧会が行われた場所ですから、相当りっぱにやらないと恥かしいと思うのです。幸いにココム制限品の展示も許されましたので、私どもほっとしました。もしそれが許されないで、クラゲとか、ナマコとか、腰巻きとか、ズロースとか並んだらどうしようと思って、団長の宿谷さんも神経衰弱症になるんじゃないかと思っていましたら、やっとこれで展覧会を成立するに至りまして、御同慶の至りですが、通産省の補助金だけでは足らないと思うのです。従いまして、今後は大蔵省当局とわれわれ折衝して、予備金からあと二、三千万円でも支出していただかねばならぬと思っておりますが、その節は通産省当局からも側面からお口添えなり、御協力も御理解もいただきたいと思っておる次第ですが、助成金のいきさつにつきましてお答えを願いたいと思います。
  185. 石橋湛山

    石橋国務大臣 先般一応申しました四千万円というのは、通産省として支出のできるマキシマムの金額でございます。なおそれ以上お入り用であるということでありますれば、これはまた別途に考えなければならぬと思います。これまた、どうも答えが不満足と言われるでありましょうけれども、この場所で、それが増額の場合はなお一つ大いにやりましょうともお答えいたしかねますが、しかし私としては、せっかく展覧会をする限りはなるべく成功するようにいたしたいと思います。
  186. 帆足計

    ○帆足委員 結局、一カ月前に日中貿易促進決議案というものが衆議院を満場一致通過しておるということを御確認願いたいと思うのです。与党の方々も、国民への体裁上、決議案には満場一致賛成したけれども、実施においては消極的というのでは、これは民主政治のルールに対して相済まぬと思うのです。いやしくも一つの決議案が国会を満場一致で通過した以上、これは国民の最高の意思ですから、それに沿うて、効果が表われた、他の政策よりも重点が置かれたという証拠が上るのがほんとうだと思うのです。そういう点につきまして、せっかくの御努力でありますけれども、政府全体としての動きはまだ非常に不満足なこと御承知の通りでありますので、一つ——日本は世界のどこの国とも貿易をふやさねばなりません。単に中国だけが必要なわけではありませんけれども、隣邦中国はその中で一番大きな潜在市場でありますから、一段と大臣並びに局長の御理解をお願いいたしまして、質問を終ります。
  187. 神田博

    神田委員長 本日はこの程度にとどめます。次会は明二十二日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。     午後五時五分散会