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佐竹(新)
委員 私はあえて日中
貿易を一つの例として取り上げたわけでありますが、東南アジアの問題にいたしましても、あるいは対米
関係の問題にいたしましても、先般中崎君がここで相当長時間にわたって
質問をされましたから、私は重複を避けますが、
アメリカにおいてはわが国の
貿易に対して非常に圧迫を加えておるというようなことに対しては、外務省から出向されておるところの
通産省の役人がおられるのであるから、そういうもので外交的な解決をするということも一つの道でありましょう。しかしこういう問題は、わが国に益する方は遅々として進まない。そういう交渉を重点に置いてやってもらって、そうして
貿易の拡大強化をはかってもらうことが主でなければなりません。しかしながらそういう面においては、きわめて消極的であって、そうして今度新しい
市場を
開拓していくという面に対しましてはいろいろな摩擦があって、早く言ったならば
アメリカに遠慮するというか、気がねをするというか、
アメリカ大使館に行ってみたり、いろいろ出先と交渉をしなければなかなかやれないというようなことをえてして聞くのであります。そういうことでありましたならば、いつまでたっても、
貿易の拡大とか促進とか言われましても、なかなかはかどらないのであります。私は最近の新聞にも——四月十五日の読売新聞に「
日本漁船を捕獲、中共、強硬
方針を示唆」というのが出ておりますが、その内容を見てみますと、今度は中共の方面から渤海湾のエビを
日本へ
輸入したい。これはもちろん民間の
貿易協定によりまして、丙種に属しておるものでございますけれ
ども、
通産省の方ではエビを今度は公表の中に加えておられぬのでありますが、せっかくわが国の民間協定によりまして、青島の町の見えるところまで
日本の漁船が行ってエビを取れるようになる。この協定が結ばれました後においては、
日本の漁船がラインを越して相当行っております。そういうようなことに対して一つも摩擦が起っていない。こういうふうに非常に好意的な態度を示しておるわけでございます。しかし、ことしは渤海湾のエビが非常に豊富であります。私も中共に足かけ十年ほど戦争中おりまして渤海湾のエビも扱ったことがありまして、あの青鳥沿岸の渤海湾の状態は、ずっと手にとるように詳しく知っておりますが、漁期は、五月から六月ごろが一番たくさんとれる時期であります。従って本年は非常にたくさんとれて、青島にも相当水揚げしたものがあるわけです。御承知のように向うはまだ
日本ほど冷凍設備が完備しておりません。従って向うでとったたくさんのエビを
日本に持っていって、ぜひ買ってもらいたいと中共の方が言っておりますけれ
ども、
通産省の方では、大体においてエビを公表の中に入れてもいいんじゃないかというお
考えであったわけでありますが、やはりどこからか妨害が入りまして、——おそらく
大臣にも記憶があるでありましょう。
大臣もその方がよかろうというお
考えをお持ちになっておった。しかしながら一下僚の属僚が強硬論をとりましたために、ついにこれが今回の公表に入れられない。話に聞けば、九月ごろに追加公表するという
お話でありますけれ
ども、そういうことは非常に
考え違いじゃないかと私は思う。もちろんその理由としては、中共から入ってきた豚毛を
日本の
商社が
アメリカに
輸出します場合に、黒の豚毛が入っておったということで、
アメリカから非常に文句を言われた。いわゆるクレームが出た。そういうようなことで今度エビを入れるなれば、これがまた
アメリカへ年間十二、三万
ドル出ておる。そこで
アメリカの方からこれは相当やかましく言われるというようなことで、渤海湾のエビは入れない方がよかろうということなんです。しかしながらこれは
貿易商でありましても、どこを調べてみてもわかりますように、渤海湾のエビが
アメリカへ
輸出された事実は、水産
業者や水産庁でお聞きになりましても、ないのであります。そんなものを
輸出した例はない。また渤海湾のエビというのは、こんな大きなエビで、
日本に持ってきたら天ぷらエビです。そうして
アメリカへ
輸出しますのはカン詰にする大正エビという小さいエビです。そういうようなことがわかり切っておる。水産庁も入れた方がよかろうということを言っているのに、どういうところに意図があるのか知らないが、理由は
アメリカがどうだこうだというようなことで、これを入れさせない、そうするなれば向うには
日本との協定を守ってもらえぬということになる。こういう
日本の漁船を捕獲するというような問題が、
貿易圧迫の報復だというようなことが新聞に出されておりますように、
日本にとっては、ますます不利になる。せっかく漁船がラインを越えて漁撈を営もうとしても、御承知のように今
日本の海上は四面楚歌であります。北洋漁業についても、当面の問題は
通産大臣も御承知の通りであります。わずかの役人の
考え方によってこういうことにされるということは、ますます新
市場開拓を逆に持っていっておるということになる。私はこういう点に対しては、非常に遺憾であると思います。
通産大臣はよくおわかりのことでございますが、これはささいなことであっても、こういう事態に対して、やはり
日本の国に何ら支障のないことだったらやったらいいじゃないか。それをなぜやられないのか、この点に対して
大臣の御所見を伺いたいと思います。