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1956-05-02 第24回国会 衆議院 商工委員会 第42号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月二日(水曜日)     午後零時十二分開議  出席委員    委員長 神田  博君    理事 小笠 公韶君 理事 鹿野 彦吉君    理事 小平 久雄君 理事 笹本 一雄君    理事 長谷川四郎君 理事 中崎  敏君       秋田 大助君    阿左美廣治君       内田 常雄君    菅  太郎君       菅野和太郎君    椎名悦三郎君       首藤 新八君    田中 角榮君       田中 龍夫君    野田 武夫君       森山 欽司君    山本 勝市君       伊藤卯四郎君    加藤 清二君       佐々木良作君    佐竹 新市君       多賀谷真稔君    田中 武夫君       田中 利勝君    帆足  計君       松尾トシ子君  出席国務大臣         通商産業大臣  石橋 湛山君  出席政府委員         通商産業政務次         官       川野 芳滿君         通商産業事務官         (大臣官房長) 岩武 照彦君         通商産業事務官         (通商局長)  板垣  修君         通商産業事務官         (通商局次長) 樋詰 誠明君         通商産業事務官         (繊維局長)  小室 恒夫君  委員外出席者         外務事務官         (経済局第三課         長)      吉良 秀通君         大蔵事務官         (為替局外資課         長)      小島要太郎君         通商産業事務官         (軽工業局日用         品課長)    馬場 一也君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 四月二十八日  委員八木昇君辞任につき、その補欠として水谷  長三郎君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  外貨予算に関する件     —————————————
  2. 神田博

    神田委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。繊維工業設備臨時措置法案審査のため、本委員会参考人の出願を求めその意見を徴するようにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 神田博

    神田委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  なおその日時及び参考人選定等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 神田博

    神田委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  この際理事会の申し合せにより、外貨予算に関して調査を進めたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 神田博

    神田委員長 御異議なしと認め、外貨予算に関しての調査を進めます。質疑を継続いたします。質疑の通告がありますから順次これを許します。  ちょっと速記を待って下さい。   〔速記中止
  6. 神田博

    神田委員長 速記を始めて。田中武夫君。
  7. 田中武夫

    田中(武)委員 私は原皮輸入の問題について少しお伺いいたしたいと思います。先日来の疲れもありましてあまり用意もしてありませんので、これは委員長に一応法案の審議を終りましたらまたこういう機会をもっと与えていただくことにして、きょうは大臣もくたびれておられると思いますので、簡単にお伺いいたします。  原皮の問題につきましては、これは戦争中は軍需品として、戦後は二、三年輸入が禁止せられておった、その後輸入ができるようになって、昭和二十六年ごろにはたくさん入ってきまして、これが思惑輸入というようなこともあり、その結果内地原皮生産業者にも相当大きな影響を与えた。それで私の見ておるところでは、数字の点についてはあとでまたお伺いしたいと思うのですが、最近の原皮の総輸入量は、昭和二十八年で五万九千四百二十六トン、月平均四千九百五十二トン、二十九年は二十八年のあとを受けて若干減りまして、四万六千四百三十三トン、月平均三千八百六十九トン、三十年は途中九月までしか知らないのですが、月平均で五千二百三十六トン、こういうことで、すでに大方二十八年を上回って輸入せられておるわけです。そこで三十年の下半期といいますか、九月以降の輸入状況、それから三十一年度の輸入計画、これは先日もらった資料にもちょっと書いてありましたが、そういうのはどういうことになっておりますか、お伺いしたいと思います。
  8. 板垣修

    板垣政府委員 お答えいたします。原皮買付状況につきましては、三十年度は結局輸入が六万五千五百トンであります。そして三十一年度の買付計画といたしましては、大体消費計画を三十年度並みに見まして、それに在庫などの増加をはかるために、買付量といたしましては前年度より二万二千トン上回ります五万九千トンを計上いたしております。そのほかに外数といたしまして、自動承認制で四千トンばかり入り、結局合計六万三千トンの年度買付計画を持っております。
  9. 田中武夫

    田中(武)委員 そうしますと、原皮輸入は昨年より今年はなおふえてくる、こういうことになるわけですが、これはドル地域だけですか。ポンド地域からも入っておるのですか。従来はドル地域だけであったのを、ポンド地域からも輸入計画があるやに聞いておりますが、どうですか。
  10. 板垣修

    板垣政府委員 原皮ドル地域原皮に対する需要が強いわけでありますが、ポンド地域からも割当で多少入っておりまして、両方入っております。
  11. 田中武夫

    田中(武)委員 輸入原皮をふやされるということから、内地原皮が大きな値下りをしておる、こういうことを聞いておるのですが、日本の皮の需給関係はどのようになっておりますか。
  12. 板垣修

    板垣政府委員 ただいまの原皮輸入がふえて国内原皮を圧迫しないかというお尋ねにつきましては、私ども外貨予算を組む際には、まず年間の消費量を推定いたしまして、それから内地産の原皮生産量を引きまして、その残りを輸入に割り当てておるという方式をとっておりますので、特に内地産の原皮影響を与えるということはないような措置をとっております。
  13. 田中武夫

    田中(武)委員 内地原皮価格が暴落の傾向にあるというふうにいわれておるのですが、どのような価格の線をたどっておるのか、それから今後の内地原皮価格の見通し、それと輸入との関係、そういうようなことについてお伺いいたします。
  14. 馬場一也

    馬場説明員 お話内地原皮につきましては、ただいま通商局長から説明せられましたように、農林省の統計によりまして、大体全体の原皮所要量から生産量だけを差し引いて輸入予算を組んでおりますので、その点で需給に与える影響は問題ないと思います。  それから価格でありますが、内地原皮価格内地屠殺業者集荷機構が必ずしも完備しておりませんし、そういう点でたとえばストック能力も非常に不足でありますので、季節的な価格の波は輸入原皮に比べて若干大きいわけでありますが、全体の所要量需給状況からいたしますれば、ただいま申しましたように、全体の所要量からそれだけ天引きして計算しておりますので、季節的な変動を除けば、輸入原皮に圧迫されて内地原皮価格が変動するというようなことはないように考えております。
  15. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣はことしの一月六日ですか、大阪で原材料輸入は今後AA制に持っていきたいというような話をせられたのであります。また昨年以来原皮については、スターリング地域について、日英協定の経過及びさきのガット加入関係から現行の外国為替管理制度をこのままの姿で維持することは対外的に困難になるとの見地から、当局ドル地域はしばらくおくとしても、スターリング地域AA制に移行する可能性が強いということを聞いております。また通産省としても、AA制スターリング地域からさらにドル地域にも及ぼしたい、こういう意向があるように聞いておるのですが、原皮の今後の輸入方式といいますか、こういうものについてはどのように考えておられますか。
  16. 石橋湛山

    石橋国務大臣 私は特に原皮のことについて深い知識を持ちませんが、一般的に申しまして、日本原材料輸入はできればやはりAA制にして、いつも申しますように、原材料を豊富にするということで貿易一般に、日本産業の強味を国際的につけるというような意味で、ごく原則論と申しますか、大ざっぱに申しましてそれがいいと思います。原皮については今ちょっと聞いたのでありますが、ドル地域についてはちょっと困難でありますが、ポンド地域についてはできるだけAA制にするようにすればいいんじゃないか。むろんそれは時期がございますから、ある時期を限って、国内産業には急激の変化を与えないという用意は常に怠らずしておりますが、大体において、原皮のみならず、一般のものについてもAA制の方に逐次持っていきたい、このように考えております。
  17. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣の談話とか、通産省の態度、ただいま申しましたAA制に移行する、こういうことについて、関西の原皮業者からは時期が尚早である、こういう陳情も出したように聞いております。また全国の業者の協会ですかの結論もこれに一致した。すなわち当分の間はまだAA制にしてもらったら時期が早い、こういうように通産省の方へも陳情しておると思うのですが、問題は、先ほども申しておるように原皮輸入が少し多過ぎるのではないか。そのために内地原皮値下りをしておる。ことに内地原皮生産者は、中小企業というより、むしろ零細企業者が多くて、そういうような関係から、ことに思惑輸入というようなものがあって、相当困っておるといいますか、大きな打撃を受けているということを聞いたので、この質問をしているわけなんです。そういうことについて、大臣は大きな観点からどのように考えておられるか、承わりたい。
  18. 石橋湛山

    石橋国務大臣 皮革についての陳情というものは、私の手元にはまだ何も参っておりません。あるいは事務当局の方には多少あるのかもしれませんが、まだ何も聞いておりません。しかし、繰り返して申しておるように、むろん無理をするつもりはありません。これはまた大ざっぱな感想でございますが、日本皮革工業というものはもっともっと進歩すべきものだと思う。これは実際においては原皮の問題もありましょう、あるいは技術の問題等があると思いますが、国内原皮生産、それから皮革工業全体の状況を十分にらみ合せて適当の処置はとるつもりでおりますが、まだ直接に当業者から何も言ってきてはおりません。
  19. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣が聞いておられないということですが、私の聞いておるところでは、通産省の方にもそういう意見陳情しておるということです。それじゃここであらためて申し上げますけれども、私も実は控えをもらっておるのですが、AA制にしてもらうことは時期尚早である。それから、内地原皮生産業者打撃を与えたり、またこれが困るような数量輸入、ことに思惑的な輸入、あるいは輸入の時期、数量をうまく調整してもらいたい、こういうことなんですが、そういうことについて大臣はよく聞いていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  20. 石橋湛山

    石橋国務大臣 事務当局の方へは何か当業者のいろいろな陳情があるようでありますが、私の方にはまだ入っておらない。そこまでいっておらない。しかし、これは全体の方針として、先年も——これは私どもの知らないときのことでありますが、原皮についてはずいぶん思惑があって、そのために日本皮革工業界が非常な混乱に陥った歴史もございますから、十分そういう点については事務当局注意を払っておるつもりであります。
  21. 田中武夫

    田中(武)委員 ただいま大臣から今後も注意する、こういうお答えをいただいたのでけっこうでございますが、重ねてお願いいたしておきます。内地生産業者打撃を与えるような輸入は一つ考えてもらいたい、そういうことのないように一つやってもらいたいと思います。  それから、ついでですからお伺いします。これは通産省よりかむしろ農林省じゃないかと思うのですが、原皮生産に関して一つ問題になっておるのは、屠殺検資料というのがあるそうでありまして、これは大動物幾ら、小動物幾らということで、各府県等では詳細にきめておりますが、手数料がまちまちである。それでこれについて業者がお願いしたいという点は、これが一頭一頭にかかってくるので、物品税的な存在である。病気の牛を殺すとかいうようなことはいけないし、それを食用にすることはいけないので、これを検査する必要がある。これを環境衛生関係なり大衆衛生関係からやられるのなら、国家の手で検査してもらうようにして物品税的な性格を持つこういう検査手数料というようなものはなくしてもらいたい、こういうような意見といいますか陳情が出ておると思います。これは通産省じゃなしに農林省関係じゃないかと思うんですけれども……。
  22. 石橋湛山

    石橋国務大臣 今事務の方へ聞きましたら、まだそういう問題はきておらぬそうでありますが、お話十分頭の中に入れて今後そういう機会がありましたならば適当に処置するようにいたします。
  23. 田中武夫

    田中(武)委員 私は、あと佐竹さんから重要な質問があるそうですし、先ほど申しましたように先日来の疲れのために、あまり用意しておりませんから、この問題については次会にでも質問機会を与えていただくことにして、きょうはこれで終ります。
  24. 帆足計

    帆足委員 ただいまの原皮輸入に関連しまして、最近国際収支が有利なものですから、外国品を有利に輸入しますためにポンドなりドルを豊富に使わすような方針になさったことは、私はいいと思うのですが、それじゃいつまでも国際収支が有利であるかというと、必ずしもそう無条件に楽観は許されないと思うのです。やはり外貨は大事にしなければならぬと思うのです。従いまして原料買付に当りましては、一方では、外貨を上手に使って、安く適時に輸入する。他方で、それほど障害がなくてバーターのできるところは、原料輸入します場合に、輸出と結びつけて輸入できるようなところは、やはり外貨は節約して輸入をする。この両方の長所を活用して相補うようにすることがいいんじゃないかと思うのですが、それについて大臣はどのようにお考えでしょうか。バーターを非常に軽く見るようなお考えでしょうか、伺いたい。
  25. 石橋湛山

    石橋国務大臣 為替につきましては、もし必要があれば、詳しいことは事務当局から……。
  26. 帆足計

    帆足委員 私は原則を聞いておるのです。
  27. 石橋湛山

    石橋国務大臣 それは、私が今知っておる限りにおきましては、日本生産業者の方の状況を見合いまして、バーターもしくは一般的な輸入方式をとっておるわけであります。皮革について今バーター方式をとることは、かえって当業者に差しつかえが起るというような点もあるようでありますから、それらの点を現在研究しているという段階であります。また一般的に申しまして、これはむろんお話のように、急激にどういう方式に一定してしまわにゃならぬということでありませんから、それぞれの業者あるいは日本全体の貿易の上から考えましてバーターを必要とすればむろんバーターでやっていかなければなりませんが、バーター原則とするというわけにも参りますまいから、結局はAA制に近いものになっていくだろうとは考えておりますが、今のところでは、お話のように国際貿易ほんとうのノーマルじゃありませんから、その実際に即応して、バーターもしくはAA制その他を適当にあんばいをしていきたい、かように考えております。
  28. 帆足計

    帆足委員 通産大臣は、経済のことに御堪能ですから、当然ただいまのような良識ある御答弁のあるものとわれわれは期待していたわけです。従いまして、これは長短相補って、バーター及びストレートでやるべきものと思いますが、そういう原則で新市場からものを買いますとき、たとえば中国に対して原皮輸入は去年までなかったわけです。今までは馬の皮とか羊の皮とか鹿の皮を買っておったわけです。初めて牛の皮を買うわけです。従って過去の実績というものがないわけです。その場合にたまたまポンド貨が豊かであるからポンドで有利に買い付けるということも私はいいことだと思いますけれども、しかし同時に今バーターで買い得る条件もあるようなのです。特に牛は乙類になっておりまして、乙類の方はむしろ輸出が進んでおって輸入がおくれているようにわれわれは聞いていたのですが、そうしますと必ずしもすべてを大事な外貨を使わなくても、やっぱり輸出振興の一環として、向うがバーターでいいというのはバーターにして、足らない部分をお金で補うというふうに長短相補ったらよさそうなものだと私は思うのです。  それから第二に、これは中国に限らず、新市場開拓のときにいつでもそうですが、新市場開拓のときは、たいてい中堅中小が一生懸命になって開拓をするのですが、新事場開拓をするまでは莫大な宣伝費電報料というものを使うのです。そうしていよいよバーターならバーター貿易が開けたとなると、今度は大きな業者がきて過去の実績があるということのためにとってしまうというのが従来のしきたりなんです。大豆の場合にもいろいろ問題がありまして、たとえばアメリカから輸入している実績を持っているからといって、大事業者が、中国その他新市場開拓をした場合に、その過去の実績で新市場輸入権を一手にとってしまうということは私は行き過ぎだと思うのです。それはアメリカ市場なり香港市場から中国に振りかえたというときに、香港なりアメリカに対して大きな実績を持った商社も、やはり尊重してそのグループに入れることは必要ですけれども中国市場なりその他新市場開拓するために努力した商社もやはり入れるべきものだ。その商社の信用が中堅どころとあれば当然入れるべきだ。大体過去ののれんなどというものは大したことでないのです。資格資格なんて言いますけれども、豆を入れるにしろ、牛を入れるにしろ、米を入れるにしろ、貿易商のやれるようなことは一人前の貿易商ならだれでもやれるのです。従って私はそういう場合は、二割とか三割のものはこの市場実績を持っているものを尊重する。七割なり六割なりはその商品の過去の実績のあるものを尊重する、こういうことの方が公正合理のように思うのです。今度原皮が初めて中国から輸入されるようになりましたが、今まで相当の商社が鹿の皮とか羊の皮とか輸入しておったのです。そうして原皮輸入のために非常に努力してきておるのです。しかるにいざ輸入ができるようになると、アルゼンチンその他から輸入しておった十社ばかりの商社商品別知識を持っているために指定されまして、その指定された商社だけが九〇何%を占めておる。そうして中国に対して実績のある商社資格がないという名目のもとにそれに入っていないのです。私はある程度の制限はどうしても貿易は仕方がないと思うのです。制限する以上不公平も仕方がありません。しかしやはり憲法の条章に従って二割や三割というものは新規業者のために道を開くべきである。すなわち市場別努力をしたものも商品別努力をしたものに準じて多少の道を与える必要がある。それから同時にまたバーターを獲得し得た商社はこれは輸出についての実績でありますから、実績をあわせて獲得したので、今外貨が豊富だからといって外貨を粗末にする必要がないのですから、そういうものに一割なり二割なり、そういう商社が何社あるか知りませんけれども、一割なり二割道を開いておくということが、小さな心づかいですけれども今後の貿易進出のためにも必要ですし、論理を通すためにも必要ですし、それから業界の努力を認める上にも必要である。私は財閥専制のやり方はやはり抑制して、大中小所を得せしむるように行政指導していただきたいと思います。私は個個のことを今申し上げるわけじゃありません。個々のことは事務官がなさればいいのです。しかし私が申し上げました原則が妥当なものであるとしたならば、大臣からそういうことは大いに心に置かねばならぬという御返答があれば、良識ある事務官の方が個々のことはなさるのです。われわれは議員ですから個々のことに口を差しはさむ意思はありません。しかし新市場開拓のときいつも起る問題ですから、この原則についてはもう少しそういう点を公正合理にやっていただきたい。
  29. 石橋湛山

    石橋国務大臣 私ども外貨をむだにはむろんしません。外貨がいささかあるからといって、これをただむやみに使えばいいというようなことは考えておりません。それから今の輸入あるいは輸出するときの割当制は実際には非常にむずかしいことでありますから、ずいぶん注意しておるつもりでありましても、そういう今までのほんとう実績というものを場合によると無視するようなことが起りがちと思います。今の御注意はしごくごもっともと思いますから、十分お話の趣旨が尊重されるように事務的にも処理をいたしたい、かように考えております。
  30. 帆足計

    帆足委員 実は中国商品見本市のことでありますが、一番よい会場を借りておりました。ところがフランスは正式に政府使節を北京に派遣するようでございます。英国代理大使もおりますから、まずトラクター輸出権を獲得してしまいました。トラクターは全中国農業機械中核をなしております。従いましてトラクター輸出中国農村中核をとられたということになるわけです。そうして各国が殺到してこの見本市を貸してくれといってきました。そのために昨日電報が参りまして、商品見本市会場支払代金の七割、二千万円の保証料を即刻納めて下さらなければやむを得ず他国に貸さざるを得なくなった。そうしてわれわれは他国の内政に干渉するのでなく、純商業上の見地から全世界と仲よくして貿易をするのであるから、日本のためだけに会場をただ貸しして金を待っておるわけにいかぬということで、主催者が非常に困っておるという電報が来ました。この解決につきましては、公けの席上で論議しますには、まだ御準備もあろうと思いますが、政府の側におきましても、政治問題を離れて純商業的見地から多少補助金を出す方途も御研究中ということに従来なっておりましたので、その方針責任者の方に御内示下さいますれば金融の方法もあろうと思いますけれども、そのために非常に団長たち困っておるようでございますから、ちょっとお耳に入れまして御善処を願いたいと思います。特にフランス英国進出がいかに目ざましいか。石橋さんの御指導のもとでこれがもはや手おくれになりかけておるというアジアの市場状況をわれわれは非常に憂慮いたしております。最近のフランスの意気込みは驚くべきものである。フランスのみならず英国トラクターをとったということは、今や中国の新農業機械需要に対してくさびを打ったものである。アメリカはついにここにおいて立ちおくれたと、ファイナンシャル・タイムズは論じております。こういう状況をお耳に入れまして一つ大臣の御善処をお願いします。
  31. 石橋湛山

    石橋国務大臣 まだ聞いておりませんから………。
  32. 神田博

    神田委員長 この際暫時時休憩いたします。    午後一時九分休憩      ————◇—————    午後三時二十六分開議
  33. 鹿野彦吉

    鹿野委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  外貨予算に関して質疑を継続いたすことにいたします。佐竹新市君。
  34. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 大臣がおられませんので、政務次官責任のある答弁をしていただきたいと思うのであります。  まず第一にお聞きしたいのは、輸出輸入貿易行政に対しまして衆議院におきましてあるいは本委員会におきまして、たびたび本会議での決議あるいは委員会附帯決議、こういうものがなされておるのでありますが、これを通産省の方では的確に貿易行政の上で守られてそうしてこの貿易行政を行なっておられるかどうか、もし守られていなかったらどういうような御処置に相なるのであるか、この点を御答弁をお願いしたいと思います。
  35. 川野芳滿

    川野政府委員 本委員会におきまして、私が政務次官に就任いたす以前におきまする決議につきましては、実はつまびらかにいたしておらないところも多々あろうかと考えます。しかし通商産業省といたしましては、当委員会決議を尊重いたしまして、できるだけ実行に移しておると存じております。また、まだ移しておらない決議等がございますならば、今後誠意をもちましてその決議の趣旨を尊重して実行に移したい、かように考えておる次第であります。
  36. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 私はどうも通産行政全般にわたりまして非常に遺憾に思いますのは、御承知のように通産省は、外務省から出向しておられる役人の人、あるいは農水産関係では農林省から出向しておられる役人の人がおられるわけであります。元来の通産省はえ抜きの人もおられる。こういうように、通産行政がおのおの一本になるということより、外務省は外務省、農林省農林省通産省通産省と、交錯した事務行政が行われることにおきまして、一つの問題でも考え方が違うということで、事務の上において錯誤を来たしておる例が幾らもあるのでありますが、今後通産省としてはどういうように事務官を一本にしてやるか、そういうことについての具体的な方策をお尋ねしたいのであります。
  37. 川野芳滿

    川野政府委員 貿易の進展は経済、外交に負うところも多大であろうかと考えます。ゆえに通商産業省といたしましては、外務省等と緊密なる連携のもとに、貿易進展のために実はいろいろと施策を講じておる次第であります。しかし省が違いますと、あるいは連携の点においていささか欠くるところがあるのでなかろうか、こういう点から一部におきましてはいろいろの議論が生じておりまして、先般貿易省を作ったらどうか、すなわち通商産業省の通商局と外務省の経済局と大蔵省の為替局等を含めたところの貿易省を作ったらどうか、こういうような意見が出ております等は、ただいま佐竹委員の仰せられる意味の、すなわち連携の点において一部欠くるところがあるから、従ってそういう点を補うために貿易省を作ったらと、こういうような意見になって現われたのではなかろうか、かように考えておる次第であります。しかし現在の機構のもとにおきましては、一つできるだけ関係各省と緊密なる連携をとりまして目的の達成をいたしたい、かように考えておる次第であります。
  38. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 私は今川野政務次官から言われました貿易省設置には賛成でございます。今までのあり方でありますと、私が先刻申し上げましたように、おのおの自分の所属する省の考え方にとらわれて、農林省なら農林省、あるいは外務省なら外務省の意向というものが貿易行政面にひどく反映いたしますと、せっかく成るものでも成らないというような状態になり、これがために日本輸出輸入貿易に対して多大の支障を来たしておるということは、川野政務次官もある意味において今お認めになった通りでございます。  そこで私は具体的な問題に入って申し上げたいと思うのでありますが、先般も衆議院の本会議におきまして、自民、社会両党全会一致をもちまして、日中貿易促進に関する決議案が上程されまして、わが党の商工委員帆足君がこれを説明されまして、満場一致で決議されたのであります。しかしながらきょう午前中の委員会帆足君の発言の通り、日中貿易促進は決議されましたが、具体的に、今度は貿易商の上で輸入あるいは輸出の問題でいろいろ事務の面に入って参りますとなかなかそれが行われない、こういうことは、ややもすれば通産省の内部におけるいわゆるなわ張り争いになってしまっておるということであります。これが一番大きな原因であります。午前中の委員会におきまして帆足君の質問に対しまして通産大臣は、できるだけそういう方面には考えてみようということを言われますけれども、これはこの委員会における一片の通産大臣答弁でありまして、やはり通産省の内部においては依然として外務省なりあるいは農林省なりの一つのなわ張り争いが現にあるということ、これはいなむことのできない事実でございます。特に馬の問題が農林水産委員会において通商局の諸君も呼び出されてやられる。またノリの問題が大きく農林水産委員会で持ち出されて、執拗に通産当局に対して責任を問われております。あるいはレモンの問題でもそうであります。ことごとく、通産省あるいは農林省、外務省と従来の通産省はえ抜きの人の間のいろいろな意見関係がありまして、本来の通産省というものはいつも弱い立場において物事を押しつけられて、悪いことはその責任の全部を背負わされておる、促進すべきことはなわ張り争いで一向に進んでいない、こういう実情であります。  そこで、今回野政務次官に私は質問したのでありますが、通産大臣がおいでになりましたから、この際もう一度通産大臣質問をいたしておきたいと思いますることは、衆議院の本会議におきましても、全会一致で日中の貿易促進案が決議されております。あるいは本委員会におきましてもいろいろな問題に対しまして附帯決議をつけまして、そうして通産当局に対してこれを実施されるように要望いたしております。しかしこういう委員会決議、本会議決議というものが、今度は事務の面に入って参りますと一向に顧られない。こういうことに対しまして、通産大臣は今後あなたの省内の問題に対しましてどう統一化をはかろうとするのであるか、具体的に御説明願いたいと思います。
  39. 石橋湛山

    石橋国務大臣 日中貿易につきましても決して放擲しておくわけではありません。絶えず解決に努力しております。これは今度の行政機構改革では間に合わないか、あるいはどうなるか、まだ結論ありませんが、実は通商問題、賠償問題ともからむのですが、外務省、大蔵省あるいは農林省、いろいろ関係するところが多い事柄は決定することにひまがかかりまして、またいつでも中途半端な決定になる傾きがありますので、行政機構改革においても、貿易閣僚懇談会というものを立法化するなり行政化するなり、今でもそういうものが全然ないわけではないけれども、もう少しそれをはっきりしたものにして、そうした各省にまたがるような重要な問題はその懇談会において決定をするようにしたい。これは私考えておりまして、その提案もいたしておるのですが、行政機構改革の中にまだ正式には取り入れられておらぬようでありますが、なおその問題については主張するつもりでおります。そういうような何らかの方法によって行政を統一化し強力化するということをする必要があるとは感じておりますが、しかしさしずめとしては、今のお話の中共に関することについては、とりあえず今通産省において原案を作りまして、今度の見本市の問題——近く輸出入組合の代表者も中共に参りまして、今後の貿易について話しすることになっておりますから、その場合に、何がしかの、持って行くべきおみやげということでなくても、多少今まで懸案の一、二のものは解決する必要に迫られておるのでありまして、そういうものについては近いうちに外務省、大蔵省とも十分打ち合せをして何らか政府全体としての一つの意見をきめるようにただいまやろうとして、数日のうちにその議題を各省に提出するつもりでおるようなわけであります。そういうことで、できるだけ御要望に沿うような解決の方向に進みたいと考えております。
  40. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 私はあえて日中貿易を一つの例として取り上げたわけでありますが、東南アジアの問題にいたしましても、あるいは対米関係の問題にいたしましても、先般中崎君がここで相当長時間にわたって質問をされましたから、私は重複を避けますが、アメリカにおいてはわが国の貿易に対して非常に圧迫を加えておるというようなことに対しては、外務省から出向されておるところの通産省の役人がおられるのであるから、そういうもので外交的な解決をするということも一つの道でありましょう。しかしこういう問題は、わが国に益する方は遅々として進まない。そういう交渉を重点に置いてやってもらって、そうして貿易の拡大強化をはかってもらうことが主でなければなりません。しかしながらそういう面においては、きわめて消極的であって、そうして今度新しい市場開拓していくという面に対しましてはいろいろな摩擦があって、早く言ったならばアメリカに遠慮するというか、気がねをするというか、アメリカ大使館に行ってみたり、いろいろ出先と交渉をしなければなかなかやれないというようなことをえてして聞くのであります。そういうことでありましたならば、いつまでたっても、貿易の拡大とか促進とか言われましても、なかなかはかどらないのであります。私は最近の新聞にも——四月十五日の読売新聞に「日本漁船を捕獲、中共、強硬方針を示唆」というのが出ておりますが、その内容を見てみますと、今度は中共の方面から渤海湾のエビを日本輸入したい。これはもちろん民間の貿易協定によりまして、丙種に属しておるものでございますけれども通産省の方ではエビを今度は公表の中に加えておられぬのでありますが、せっかくわが国の民間協定によりまして、青島の町の見えるところまで日本の漁船が行ってエビを取れるようになる。この協定が結ばれました後においては、日本の漁船がラインを越して相当行っております。そういうようなことに対して一つも摩擦が起っていない。こういうふうに非常に好意的な態度を示しておるわけでございます。しかし、ことしは渤海湾のエビが非常に豊富であります。私も中共に足かけ十年ほど戦争中おりまして渤海湾のエビも扱ったことがありまして、あの青鳥沿岸の渤海湾の状態は、ずっと手にとるように詳しく知っておりますが、漁期は、五月から六月ごろが一番たくさんとれる時期であります。従って本年は非常にたくさんとれて、青島にも相当水揚げしたものがあるわけです。御承知のように向うはまだ日本ほど冷凍設備が完備しておりません。従って向うでとったたくさんのエビを日本に持っていって、ぜひ買ってもらいたいと中共の方が言っておりますけれども通産省の方では、大体においてエビを公表の中に入れてもいいんじゃないかというお考えであったわけでありますが、やはりどこからか妨害が入りまして、——おそらく大臣にも記憶があるでありましょう。大臣もその方がよかろうというお考えをお持ちになっておった。しかしながら一下僚の属僚が強硬論をとりましたために、ついにこれが今回の公表に入れられない。話に聞けば、九月ごろに追加公表するというお話でありますけれども、そういうことは非常に考え違いじゃないかと私は思う。もちろんその理由としては、中共から入ってきた豚毛を日本商社アメリカ輸出します場合に、黒の豚毛が入っておったということで、アメリカから非常に文句を言われた。いわゆるクレームが出た。そういうようなことで今度エビを入れるなれば、これがまたアメリカへ年間十二、三万ドル出ておる。そこでアメリカの方からこれは相当やかましく言われるというようなことで、渤海湾のエビは入れない方がよかろうということなんです。しかしながらこれは貿易商でありましても、どこを調べてみてもわかりますように、渤海湾のエビがアメリカ輸出された事実は、水産業者や水産庁でお聞きになりましても、ないのであります。そんなものを輸出した例はない。また渤海湾のエビというのは、こんな大きなエビで、日本に持ってきたら天ぷらエビです。そうしてアメリカ輸出しますのはカン詰にする大正エビという小さいエビです。そういうようなことがわかり切っておる。水産庁も入れた方がよかろうということを言っているのに、どういうところに意図があるのか知らないが、理由はアメリカがどうだこうだというようなことで、これを入れさせない、そうするなれば向うには日本との協定を守ってもらえぬということになる。こういう日本の漁船を捕獲するというような問題が、貿易圧迫の報復だというようなことが新聞に出されておりますように、日本にとっては、ますます不利になる。せっかく漁船がラインを越えて漁撈を営もうとしても、御承知のように今日本の海上は四面楚歌であります。北洋漁業についても、当面の問題は通産大臣も御承知の通りであります。わずかの役人の考え方によってこういうことにされるということは、ますます新市場開拓を逆に持っていっておるということになる。私はこういう点に対しては、非常に遺憾であると思います。通産大臣はよくおわかりのことでございますが、これはささいなことであっても、こういう事態に対して、やはり日本の国に何ら支障のないことだったらやったらいいじゃないか。それをなぜやられないのか、この点に対して大臣の御所見を伺いたいと思います。
  41. 石橋湛山

    石橋国務大臣 エビは今まで輸入する方へ入っておらないのです。そこでやるとすれば新しくその門戸を開くことになる。大体においてこれは少し議論はあります。原産地証明、つまりアメリカにそれが出るか出ないか、少し似たものがあるとかないとか、技術的に多少議論があるようでありますから、今検討しておりますが、大して出るものでなければ、原産地証明のできるものならば、エビを入れることは一向差しつかえないと思う。その方向で今研究しております。  それから豚毛の方は、御承知のように、日本には豚毛のあまりいい生産はないのでありまして、豚毛のものを出すとすれば、どうしても中共のものがまざる傾きが多いものですから、これはよけいむずかしいのですが、エビの方はそれほどのことはあるまいという結論にほぼなっておりますが、なおまた研究いたしまして、差しつかえなければ、むろん入れるつもりであります。
  42. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 通産大臣はそうおっしゃいますが、しからば板垣局長に私はお尋ねするのでありますが、なぜそれを入れられないのか。今通産大臣の御答弁のように、今回の公表になぜ発表されなかったのか。豚毛の黒がアメリカに持っていくものに入ったというようなことは、今後業者にやかましく言ってやればいいことなのであって、これをごっちゃにして物事を考えるのはおかしいと思う。もう一つ私は申し上げますが、サンキストの問題なんかのときは、一体どうでございますか。法外もない、二ドルか三ドルというような何を許しておって、現地を調査してみたら、これは間違いであった、不都合な届出をしておったから、許可の取り消しをするというようなことなんです。こういう特定の商社に対してこれが委員会で問題になれば、調査されてそういう処置をとられる。こういうところに通産省の一貫しないものがある、煮え切らないものがある。通産大臣は将来わが国の総理大臣になられようというようなうわさもある人でありますから、これは十分に政治力を発揮してもらって、今こそ通産行政を本体に返してもらう時だと思う。私は今のいき方は邪道だと思う。板垣通産局長は何がゆえにこれを公表されなかったか、その理由をはっきりとしていただきたい。
  43. 板垣修

    板垣政府委員 エビの問題につきましては、私も三月ごろになりましてから問題の所在を知ったわけでありますが、できれば入れる方向で研究したいということでいろいろ検討いたしましたけれども、一方バーターの方の輸入発表を、エビだけのためにいつまでも延ばすわけにもいかない非常に差し迫った事情がありましたので、今回は見送ることにしたわけであります。急に決定し得なかった理由といたしましては、先ほど御指摘の通りアメリカに気がねをしたという問題ではなくて、アメリカにエビを出しておる日本業者の問題、これは金額といたしましてはわずか二十万ドル足らずの少いものでありますが、貿易をやっておる通商当局といたしましては、それじゃアメリカへのエビの輸出はどうなってもいいのだということは言えません。従ってやはりその関係は円満に、支障がないのだという見通しが相当はっきりしてからでないときめられませんので、ただいま大臣が御答弁いたしました通り、なお引き続き検討いたしまして、できますれば次の期に入れる方向に向って努めたいというように考えている次第でございます。
  44. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 次の時期といいましても、エビの最盛期は今です。この五月から六月なんです。このたびの公表に加えられてこそ、中共は非常に好感を持つのであります。これが九月になると、私はおってよく知っているのですが、もうあまりとれないのです。だんだん減ってくるのです。とれても中国国内で消費するくらいです。出そうというのは五月、六月のこの最盛期です。このときが一番向うはありがたがるのです。今あなたはいろいろな事情といわれましたが、いろいろな事情ということを具体的に言われなければわからぬ。通産大臣も私に対するお話ではよかろうということに話が落ちついておった。通産省の方でもそういう意見があった。わずか一、二の課長の反対によってこれがくるっと変ったのであります。その事情はどういう事情でありますか。それではさらに私はお尋ねいたしますが、何か豚の黒毛に関して、これをアメリカ輸出したことについて、これが中共から入ってきたということで、アメリカの方から抗議があったかどうか。そういうことを理由にしておいでになりますが、しからばエビの問題に対してアメリカの大使館から何かやかましく言った実例があるか、またあなた方はそれに対して折衝された実例があるのですか。あるならばわれわれはアメリカの大使館に行って、よく調べてみなければならぬと考えるが、どうですか。
  45. 板垣修

    板垣政府委員 エビにつきましては、今までは輸入を禁止しておりますから何も問題はないわけであります。従ってもしエビを中共から入れるということになりますと、ただいまお話のように、豚毛の問題で原産地証明の問題が日米間の懸案になっております。従ってそういう時期に中共からエビを入れるということになりますと、わずかの金額でありますが、アメリカに入れているエビも調査しますれば、あるいは渤海湾のエビはアメリカに出ないかもしれませんが、しかし私ども調査では、やはりインド洋のエビも出ておりますし、あるいは渤海湾の一部のものも将来中共から入ることになると、アメリカに出るのかもしれず、この点もう少し調査を要する次第で、その際またあらためてアメリカへのエビの輸出を継続します場合においては、原産地証明の問題をアメリカと交渉しなければなりません。それには豚毛の原産地証明の問題がもめている時期にやるということは、非常に事柄を紛糾させるおそれがあるということで、従ってエビの問題につきましては、もう少し事態がはっきりしてから、いよいよ自信がついてから中共から入れるなら入れるということになります次第で、その点は先ほど申し上げました事情があって、しばらく今期は見送らざるを得ないという関係になっておる次第でございます。
  46. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 それはアメリカへ年間に十二、三万ドルエビが輸出されておるのです。これは業者も言っているし、生産者も言っているが、かつて渤海湾のエビがカン詰になるなんということは、およそナンセンスなんです。つけたりです。こんな大きなてんぷらエブをカン詰にして出すということは、ナンセンスです。現にマルはなんか、カナダ、メキシコの沖へ船で行って向うの政府から頼まれてどんどんとっている。日本のエビは大正エビとか小さいエビです。これでなければアメリカに向かないのです。それが原産地証明とか、アメリカで文句がつくとかいうことは、私から言うならば、それはただ相手がいわゆる中共であるということで、非常に外務省が卑屈になっておられると思うのです。あえて私は卑屈と言います。そういうようなことをやって、日本のいわゆる漁船が、先般も果して中共であるかあるいは韓国であるかわからないけれども、国籍不明のものに拿捕されていってしまっているという事実もあるわけなのです。そういうようなことがだんだんと重なりますと、ますますわが国のいわゆる漁獲の範囲が狭められていって、もとの中共の民間協定が破棄されるような形になって、進出することもできないという結果になるのです。やはり海の問題のことは海の問題で、打てば響くというように取引をする。これをことしの公表の中に加えてやるということが、これがいわゆる国会の日中貿易促進の決議の趣意に沿うと、私はかように考えるのです。アメリカの大使館から、具体的にどういうような問題があったのですか。そういうことがないのですか。あるであろう、豚毛の問題について、さらにそういうことが出てくるであろうという卑屈的な考え方は、貿易行政の面では、促進する意味からいってもやめてもらわなければいけないと私は考えるのです。  重ねて板垣通商局長にお尋ねいたしますが、この問題は、そういうような対米関係とかいうような大きな問題ではないのです。これはあなたの方でお作りになった問題です。事情を言えといわれるならば私は詳しくすっぱ抜きます。すっぱ抜いてもいいと思うのです。しかし、そういうことでなしに、私はもう時期も時期であるし、このくらいのことを加えたって、このくらいのことが通産省の計らいでできず、アメリカに気がねをするようなことでは、ことごとくそういうことに言いがかりをつけてやるという結果になって、貿易の促進はできないと思うが、まだ板垣通商局長はそういうお考えでおられるのかどうか。
  47. 板垣修

    板垣政府委員 私ども貿易振興をやっておりますのに、別に外国に気がねするとか、そういうことは考えておりません。また、たまたま私は外務省から出向しておりますが、決して外務省のような考えでやっているのでなくして、完全な通産省の人間としてやっております。なお、かりに外務省とか農林省とかいう問題は別にいたしましても、通産省貿易をやります際には、これは対外関係がございますので、通産省固有の人間でも、やはり外交関係あるいは相手方の関係というものをどうしても考慮して貿易政策なり輸出入の関係をきめていかなければならぬと考えます。エビの問題につきましては、私どもはあまり大きな事柄と思いません。でき得ればこういうことは片づけたかったのでありますが、ただいま申し上げますように、金額は少くても対米輸出はどうなってもいいということまで踏み切れませんので、もう少し事情を調べてからやりたい、それにはちょっと時日が間に合わなかったために今期は見送らざるを得なかったという事情にあるわけでございます。
  48. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 関連して、今豚毛の品質表示の問題から、それと同じようなケースになるといけないからというのでエビにも考慮を払った、こういうことでございますが、豚毛の問題は、これは私は根拠が違うと思うんです。と申しますのは、豚毛でも羊毛でもそうでございますが、専門家が見て、これを重慶の黒の豚毛であるか、あるいは山東の豚毛であるかの区別ができないような人は、これは業界にはおらないのですよ。重慶の豚毛というものは、一体何に使うかといえば、これは紡機の部分品なんです。終戦直後は、日本が作ります紡機の部分品である材料は重慶の豚毛です。これは重慶から直接置いたかったのですけれども、買えないので、こっちへはアメリカ大陸をぐるっと回ってきたのです。それをこちらで加工して、一つにはブラシにしてしまい、一つの段階には、ブラシにする直前のスタイルにして、今度また太平洋を渡ってアメリカへ渡して、アメリカから諸外国へ売られていったんですよ。それが今度は重慶から直接豚毛が、日本と中共との協定によって、はいれるようになってきた。そこでアメリカの方が今までのようにうまい汁が吸えなくなってきたんです、だから今までうまい汁を吸っておった人たちがけちをつけてきた、そういう問題であって、日本が作った豚毛の加工品及びその材料が、品質表示をしないとわからないというような、そんなばかな人間は、インポーターの中にもエージェントの中にも一人もおりません。羊毛だったら、豪州の羊毛は八百種類もある。これは手にとらなくても荷姿のうちで見分けるのが普通なのです。それをましていわんや、品質表示をしなければわからないというような、そんなけちのつけ方は、つけたにしてもよほど下手なやつがつけたのであって、どうかしていますよ。しろうとのしろうとのまた大しろうとです。それがエビにまで影響するということは、私はとうてい考えられないことだと思うのですが、外務省なり通産省というところはややこしいところなのだから、いろいろなことでおじけづいたのかもわからないのですが、あまり豚毛の紡機の部分品にけちをつけないようにしていただきたい。
  49. 板垣修

    板垣政府委員 ちょっと御説明しますが、ただいまの豚毛に関係しまして背後事情は私は存じませんが、アメリカと問題になっておりますのは、いずれにしましても、日本からアメリカへ行っております豚毛の中に中共産のものが入っておるというところに問題が起ったわけでございます。しかも最近アメリカは外国資産管理規則の法の励行が非常にやかましくなりまして、ともかくはっきり励行しろ、入ったことについて責任を追及するという態度に出て、非常に紛糾しておりますので、そういう問題がエビの場合に波及するかもしれぬということでございます。それを非常に心配し過ぎておるという点になりますれば、それはまた見解の問題になりますが、そういう事情にあるのでございます。
  50. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 私は、これは再々申します通りに、日本の近海でとれる大正エビを輸出しておるのであります。だから原産地証明の必要も何も要りはしない。こういうことはつけたりです。渤海湾のエビとは明らかに違う。これは日本通産省だけがそういうことを言うておる。農林省の水産課へ行って聞いてごらんなさい。水産課でもそんなことは言いはしない。日本のカン詰業界に行ってごらんなさい。そういうことは言わない。貿易業者に問うてごらんなさい。それは全然違います。渤海湾のエビをカン詰にしたら、向うは受け取らぬのは当りまえです。これは商品ではない。今加藤さんの言われたように、豚毛にかこつけてあなたの方で拒まれるなら、公表したら困るという具体的な問題をここであげて言ってごらんなさい。そういうようなことはあなたのつけたりのことなんで、そういうことはわれわれはこの委員会で納得できません。だから通産大臣が、明らかに言えと言えば、これは問題を出しますが、しかし私はここで通商局の内部のからくりまで言う必要はないと思います。具体的に言えと言えば言いますが、しかしこれは通産省のつけたりなんですから、通産大臣はこれに対してどういう御処置をとられるのか。私は今回即時追加公表をされてしかるべきだと思いますが、通産大臣はどのように考えられますか。
  51. 石橋湛山

    石橋国務大臣 原産地証明の問題は厄介でして、いろいろのトラブルがありますけれども、つい政府としても神経過敏になりましょう。神経過敏過ぎるという批評があるなら、そうかもしれません。しかしそれ以上に、今度のエビの問題につきましても、何かうしろにあるらしいお話でありますが、そういうものがあると思いません。もしあるというなら、公表していただいてけっこうです。ただエビについては私もいろいろな報告を聞いております。その渤海湾のエビが果して出るか出ないか、議論がありますが、確かに通産省の中にもそう商品の専門家ばかりがそろっているわけでありませんし、われわれも渤海湾のエビと日本から輸出するエビとの区別を実は目で見ておらぬ。通産大臣は実物を知らないのです。通産省の役人の中にも知らない者がだいぶ多いので、従って渤海湾のエビは出ないという説もあります。しかしそういう疑いを抱かれる懸念があるんじゃないかという説もあります。それだけのことで、新しく入れるのですから、今まで入ったものを禁止するなというのなら、これはまた別であります。今まで入らなかったものを特に入れる、こういうことになるから、その場合には自然今まで出ておったエビのことも考慮してやらなければならないというだけのことで、今回はとめたのでありまして、私自身はそのうしろに何かあると思いません。もしあるなら、何かの機会にお知らせを願えればけっこうです。
  52. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 私は別の機会にそれは通産大臣と会ってお話ししましょう。しかしながら、いわゆる民間協定の期限が一応切りかえられるときに、こういうものを向うからとってもらいたいと言ってきているのであるから、これを加えてやるということは、いわゆる海の上における操業が安全に行われるということだ。少くとも今日民間の協定ではありますけれども、渤海湾の、青島のあかりの見えるところまで日本の漁船が行って漁獲ができるということは、少くともこの民間協定が非常に好意を持って受けられておるということなんです。それにことしの非常な豊漁期に対しまして、日本からメキシコやアルゼンチンの依頼を受けまして、現にマルはの漁船がエビをとりに行っております。こういうようにしてやらなくても、日本の零細な漁民が、海が狭くて困っておるのでありますから、ラインを越えて行かれるというところに私は中日の協定の意義があると思う。これまでもささいなことで向うにいやな感じを起させるようなことをし、また日本の新聞で、こういうように日本の漁船を捕獲する、この中心は何と書いてあるか。その他問題がありますが、エビの問題が主として読売新聞では扱われている。こういう世論になったものであるから、アメリカがこう言うだろう、こういうふうにひっかけてくるだろう、こういう気がねをする必要はごうもない。本会議においても満場一致で議決されたのであるから、決議されたことは尊重して、それの促進のできるようにされても、ごうも通産省のいわゆるやり過ぎ行為ではない、私はこういうように考える。これは通産大臣が大きな立場に立って、これはこうすべきだ——通産省の内部のいろいろなことは、私より以上に通産大臣はよく知っておられるから、円滑に言葉をそういうふうに回されて、摩擦しないように考えをせられるということは、これは私は多といたします。しかしながらこの段階に至って、少くともこういうような世論がすでに新聞にまで現われるというような状態になっている。しかも近くは中共において見本市場も開かれ、わが国の商品をますます向うべ持って行って宣伝をいたして、そうして将来は日本からの品物がどんどん中共に行き、中共からの原材料日本に取るというようにして、近いところで貿易をやっていくということが、わが国の将来の産業の促進の意味におきましても、貿易拡大の意味におきましても必要であるから、私は申し上げているわけです。問題はささいなことでありますけれども、こういうことが通産行政の中に一貫して、ややもすればアメリカからこういうようなことを言われるだろう、こういうようなことでは、何をやっても——アメリカと中共、アメリカとソ連というものは対立関係にありますから、もちろん外交関係を全然考えずに貿易をやれというような、そんな乱暴なことは申しません。もちろん外交の円満な上に貿易も円満にやっていかなければなりませんけれども、こういうわが国にとってはきわめて重大なことは、やはりある程度自主性を持って大臣のお考えの中でこれを実施してもらいたい、こういうふうに考えますので、重ねて大臣の御答弁をお願いするわけであります。
  53. 石橋湛山

    石橋国務大臣 エビだけではありません。中共貿易についてはもっともっと大きな観点から考えなければならぬと思います。ですから、むしろエビというようなささいなことによってつまらないトラブルを起すよりも、全体のことを考えなければならぬとも考えたわけです。私はむろん専門家でありませんから、どんなエビが入っているか知りませんけれども、そんな疑惑があるというのですから、一応はエビの問題は見送りにして、今度の見本市の問題にいたしましても、あるいは全体の貿易の支払いの問題にいたしましても、あるいはそのほかの問題にしても、政府方針をきめなければならぬ、かように考えているのであります。そういうことは逐次中共との貿易もできるだけよい方に持っていきたい、こういうように考えております。
  54. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 私はこれ以上追及しようとは思いません。しかしながら、一言申し上げておきますけれども、私が最初に質問を申し上げましたように、最近における通産省のやり方というものは、馬の問題にいたしましても、あるいはレモンの問題にいたしましても、そのほか、ノリの問題にいたしましても、ことごとく通産省のいわゆる自主性を失ったようなことにおいて許可をされ、あるいは外貨割当をされておるということによって、この商工委員会でなしに、農林水産委員会等においてトラブルが起されておるわけであります。こういう通産行政の一貫せざることにおいて、どこからそれが力で押してくるのか知らないけれども、われわれが考えたなれば、これは通産省としてこういうことを当然受け入れるべきものでないというようなものが平気で行われておるわけであります。書類が一貫しておるからということで逃げられたりしておる例もありますけれども、それでは通らないわけであります。  特に私はついでだから申し上げたいと思うのでありますが、参議院の農林水産委員会においても、あるいは衆議院の農林水産委員会においても、これらの委員会生産者の立場に立っておりますから、韓国ノリの輸入の問題に関連して、相当各方面から、各委員から質問の矢が放たれておるわけであります。私はこの速記録を一々ずっと目を通してみましたが、私の目を通した点においては、どうしても、通産当局は何と言われても、これは大きなミスであったと思う。決して通産当局はこれを妥当なやり方であったとはお考えにならないと思うのです。従って私は、衆議院の農林水産委員会や参議院の農林水産委員会で、通産当局にただされたことに対しては重複を避けますが、一体あなた方はいいと思ってあのときにあれを入れられたのでありますか、どうでありますか。
  55. 石橋湛山

    石橋国務大臣 御存知のように、通産省の取り扱う品物は非常に数が多いのです。大きなものもあれば、小さなものもある。水産物もあれば農産物もあるというふうに、数限りないもので、とても品物の名前だけ覚えるのだって容易ならないようなたくさんのものを取り扱っておりますから、その中には、過誤も起るだろう——過誤が起っていいというわけじゃありませんが、過誤も起るだろうと思う。今お話のありましたレモンとか、あるいは馬とかいうことが、この間じゅうだいぶ問題になりましたが、これも調べてみますと、一応筋の通ったやり方をしておるのです。しかしながら、たとえばレモンのごときも、だんだん調べると、ずいぶん不都合ではないかと思われるふしがあります。あるいはノリも同様であります。これについては近いうちに、調べました結果によって断固たる処置をとるようにいたしております。だから、通産省としてはむろん初めから間違った処置をしておるわけではございませんが、結果において、あるいは当業者に誤まられたとか、あるいはごまかされたとか、ひっかけられたというようなことがあります。そういう場合には発見次第厳重に処分をすることにしておりますので、レモンやノリなどはどういうことになりますか、まだ処分は発表いたしておりませんが、ただいまその方向で研究をいたしつつあるような次第であります。レモンのごときは、私がちょっと出かけます前に決裁をいたしておいたのでありますが、輸入の取り消しをいたしました。そういうふうにして初めから処置をするつもりであります。
  56. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 レモンの問題は、この委員会が開かれる前に樋詰次長から、藤井商店に対して、許可の全般を取り消したということで私も了承いたしました。しかしながらノリの問題は、これは国内生産業者に大きく影響する問題でございまして、いわゆる生産期には入れない。これは需給安定協議会というものを作って、そこで話をして 一定の時期、生産期は入れないということで、通商局長の指示が出ました。大体農林水産委員会において、ノリの問題でやかましく言ったのは私なんです。こういうようにして需給安定協議会ができましたが、それはともかくとして、いわゆる生産期には入れないという、通商局長みずからが指示を出しておきながら——この指示が出たのは昨年の十一月二日ですが、その後においてまた入れておるわけです。この入れたノリというものは、私はその関係をよく知っておるのです。これはなるほど東和商事が通産省に対してうまいことを言っておりまするが、実際はああいった形式で入れようとしたものでも何でもないのです。御承知のように朝鮮は、向うを出るときに、にせのいわゆる輸出証明を作ってきましてそうしてノリが非常にたくさんできておりまするから、日本へこれを何とかして売り込みたいので、一品に言えば密輸船なんです。密輸船に積んできた。そのときに、あれはみなで五百万枚ですか、そのうちの百五十万枚ほど積んでおる船、私はそれを扱っておる朝鮮人も知っております。私の方へ来て、これを何とかしてもらえぬかと言うて来たから、よく知っておるのです。ところがそういうような生産時期には、ノリの輸入はわが国の生産業者、ノリの産地を痛めるものであるから、とても通産省で入れやしないといって私は言下に断わった。それが十一月の半ばころでありました。ところが越えて一月になりましたところが、その朝鮮人にばったり大阪で会いましたから、あのノリはどうなったかと言ったところが、まあある政治家の名前と、それから東和商事の中村という、これはやはり朝鮮人でありますが、これらの人に御厄介になって全部買うてもらうことになりまして、もう通関してしまいまして、そうして商売になりまして、わしの方では文房具を積み込んでまた朝鮮に帰ろう思うて今品物を集めておるんです。こういうことだった。だからこれは完全に通産省をだまくらかした。何も正規のもので入ったんでも何でもない。もちろん向うで、偽造であろうと何であろうと輸出証明を持っておれば、これを入れられるということもありますけれども、少くともそういうような局長の指示が出た後においてこれを入れられるというようなことは落度——あまりに故意の落度と私は考える。事務的に見てあまりに故意の落度であると思うのですが、あなた方の方はどのようにお考えになっておりますか、御答弁を願いたい。
  57. 板垣修

    板垣政府委員 今御指摘の通り、今となって判明したところによりますと、完全に私どもはだまされたわけでありますが、あれを許可しました当時の経過におきましては、東和商事の債権回収という要求は正当であり、また通商局長名で通関させないという指示を出しましたけれども、その後に東和商事だけ一応通関線を越えさすという例外措置をとったことは、確かに問題があるかもしれませんが、私どもといたしましては、通関線は越えさせますが、倉荷証券を寄託さす。なおその上に、市販しないという念書を入れさせて、これで十分町に流れ出ないことを確保できるように信じて——この信じたことが私ども確かに過失であったかもしれませんが、しかし行政をやりますわれわれとしては、商社を一々、これは札つきだから危ないというわけで、初めから悪人扱いすることはできません。やはり筋に乗る限りにおきましては許可せざるを得ないという点で、こういう結果になったことは、私どもは不明を恥ずる次第でございますが、われわれの許可をしました当時においては、十分われわれの目的は達し得られるというつもりでやった次第でございます。
  58. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 筋の通るといったって、筋は全然通っておらぬ。あなたがなんぼ言われても、筋の通っておらぬものを許可された。通関すれば当然市場に出して差しつかえないということになる。保税させたと言われますが、保税したということは、これはあなた方の取締りの対象にも何にもならないわけであります。保税倉庫に入れさせただけだということであります。通関をして税金をとっておれば、これを商品として売ろうが何しようが、通関さすこと自体が、通商局長の指示があった後にあなた方がやろうとしておられるのであるから、これは筋が通っていない。その筋の通っていないノリが市場に出て莫大なもうけをさせておるわけです。その後においてどこをどう回るものか知らぬが、入ってきたノリがいつの間にか上っておるということは、言いかえますならば、あのときの倉荷証券というものを巧妙に使っておるのじゃないかというような考えもされるわけです。だからあなた方が指示を出されましても、それが何にもならない。こういう措置を行われて、そうして通産行政はこれでいいんだ、そうは言われませんけれども、迷惑をこうむるのは日本生産業者であります。これはまだ今後農林水産委員会において、あるいは参議院の農林水産委員会において、政治的な問題を残されておるようですが、相当に私はついてくることだと思う。あの委員会は当然生産業者を保護する立場に立って発言しておるのでありますから……。今度の韓国ノリのやり方は何と言われても通産省のあなた方の責任になるわけです。全国の生産者に対してこれだけ大きな迷惑をかけられて、もし損害の補償というようなことを言ってきたら一体どうされるのです。入れてはならないとあなたの方で指示しておきながら、ある特定の商社にだまされて密輸品を入れたというだけじゃ済まぬのですよ。その責任はどうされるのですか。ただあとで許可を取り消したんだということでは責任は済まぬ。現実に生産者が迷惑を受けている。農林水産委員会ではすでにそういう発言をしている委員もおられます。問題は残されておると思うが、損害賠償をしてくれと言ったらだれが補償をするのか、役人の手落ちにおいて国が損害の補償をしなければならないという結果になる。これは大きな問題になってくればそういう結果になってくるかもしれない。特に参議院の選挙などもあることです。一体だれが責任をとるんです。役所の方はそれはそれで仕方がない、自分たちが商社にだまされたんですと言う。それで責任が済むと思うのですか。通産大臣、どうお考えになりますか。
  59. 石橋湛山

    石橋国務大臣 そういう手続の問題は私にはややこしくてわかりませんが、とにかく先方の言うことを信じて手続をした、ところがその信用を裏切ったということなんですから、詐欺だか何だか知らぬが、そういうことをやるやつにかかってはいたし方がない、ということではないかもしれませんが、結局役所はやられたということなんです。それによっていかなる損害を与えたという問題が起りましたら、そのときになってまた検討しなければならぬことでありますが、今のところ別段それに対してどういう損害を受けたということも知りませんし、むろん負うだけの責任は負わなければならぬと思いますが、現状においてはその通りで、そういう悪いやつが出てきたらしょうがないと言いっぱなすこともできませんけれども、実際においては政府の役人などというのは無力ですからやむを得ないのです。
  60. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 これは下僚のやった事務的なことでありますから、通産大臣は事情がよくおわかりにならぬからそういう話で片づけられるのですが、事はそう簡単には解決つかないのです。通商局は十一月の二日にノリは入れてはならぬという通牒を主税局の方へ出しておるわけです。通牒を発した後に、いかなる事情があろうと——東和商事が問題になりましたのは今に始まったことではないのです。東和商事が無為替でノリをたくさん輸入した結果、農林水産委員会板垣さんも御承知のようにもみにもんでやかましく言った。決議を尊重するというのはそこなんです。参議院の農林水産委員会においても本院の農林水産委員会においても生産期には入れないという決議をしておるのです。これは通商局長も知っておられるはずです。その決議があり、自分の省で通知を出しておいて、そういう特定のいわくつきの業者になぜ許可をしたのか。しかもそれは正規なものじゃない、密輸品なんです。朝鮮の共産党の関係日本に対して密偵を放していると新聞にはいろいろと書かれて、それが非鉄金属を積んできた船であり、韓国の密輸船である。そういうものを認める結果になるじゃないか。通産大臣はそういうことは数が多いことでむずかしいことだと言われるが、そういうことでは済まされぬ問題だ。それならそういう決議をしたことがむだになる。それなら何のために衆議院の委員会において決議をしたんです。何のためにそういう決議に基いて生産期には入れないという通牒を発しておいたのか。通商局みずからが密輸の船のものを入れさせる許可を与えるとは何ごとです。いかなる事情があっても、生産期の後に入れさしたらいいじゃないですか。それだから私はその責任は一体だれにあるのかと聞いている。事務的な手落ちだけでは私は済まされないと思う。これに対する御答弁を願います。
  61. 板垣修

    板垣政府委員 ただいま密輸入の品物をわざわざ入れさしたというお話がございましたが、これは全然ないのであります。私どもといたしましても、通関線を越えさす措置はとるが、これは東和商事だけでなく、他の通関を差しとめたものも同じような方式で倉庫証券を寄託し、あるいは市販しないという約束がとり得るものなら、他の未通関分についても同様の措置をとらせたわけでございます。しかしながら一方のは値ぎめということもできませんで、そういう措置をとったものは一つもございませんでした。私が申しました東和商事に無為替輸入を許可しましたのは、あくまでも生産期には入れないという線は貫くつもりで、そのために倉庫証券をとり、念書を入れさしたのでありまして、私どもが過当に商社を信じたのでああいうことになったということであります。その結果については十分責任を感じておりますが、私ども最初から密輸入の品物を入れさすつもりで許可をしたわけではございません。そのことだけは申し上げておきます。
  62. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 それはそうでしょう、何ぼだれが考えても、これが密輸品であったら許可はされない。だまされたことははっきりしておる。しかしながら、たといだまされたにしましても、あなた方が保管しておく、保管しておくといっても、いわゆる倉荷証券を預けられたのは一カ月後じゃないですか。向うは通関さしたその晩に持っていって第三者の手に渡って市場に出しておるじゃないか、すぐ倉荷証券をとったのじゃないのだ、一カ月後に倉荷証券をとって、その間に向うは操作さしてしまっておる。そういう商人の手に乗り、この中村がそういう大胆なやり方をやったというのは、これは通産省で問題になったときにたれかが一枚加わったということなのであります。それはあなたが面接にはやられぬかもしれませんが、たれかが一枚加わっておる、これは世間の評判でございます。東和商事とだれだれとの関係においては選挙費用も相当出しておるという事実もわれわれは知っておる。だからあなたが密輸入を承認して入れられるということはないでしょうが、しかし事務的にはそういうことをあなたがさせたという責任がある。その問題ですよ。何も受け付けさえしなければ問題はない。朝鮮に持って帰るよりしようがなかった。どうにもならなかったら沖繩へでも何とかして回したいということを言っておった。それをみな日本に陸揚げさしてしまった。それは困る、困ってからにやったのです。それは朝鮮のいわゆる焦げつき——ちょうどサンキストと同じように、焦げつき債権のために云々というようなことをこの委員会であなた方は言っておりますが、問題は初めから役所をだまそうとかかったので、かかったことは結果においては生産者に大きな迷惑を及ぼし、まるきり通産省は何しておるのかという結果の責任をあなた方はかぶらなければならなくなった、だからその責任はどうなるのかということを言っておる。その責任もわれわれは知らぬということになったら、今後に問題はますます大きくなっていきます。これに対して通産大臣はどうお考えになるかというのです。通産大臣は下僚のやったことであるからといっても、下僚のやったことでも通産大臣はおのずからその責任を負わなければならぬということになる。この委員会だけであなた方が済むと思ったら大きな間違いです。
  63. 石橋湛山

    石橋国務大臣 これはむろん通産省が所管省でありますから、責任は私が負います。
  64. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 通産大臣は、責任は私が負うと言うが、具体的にはどういうことをされるのですか。
  65. 石橋湛山

    石橋国務大臣 それは今具体的にはどういう責任を負えばいいかわかりません。けれども負うべき責任は負います。
  66. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 具体的には今言ったように、もうはっきりわかっておる問題ではありませんか。この問題は明らかになっておる。レモンにいたしましても、あるいは今の韓国ノリの問題にいたしましても、これは事務的には明らかに失敗であるということは、私はこの委員会できょう初めて質問したのですが、どの委員会においても平あやまりにあやまっておられる。悪かった——残された問題は今後どうなるか知らぬが、通産大臣責任を負う段階にきているのです。責任を負うといっても、そう簡単には通産大臣済みませんよ。ただ委員会で私が負いますと言っただけでは簡単には済まされませんよ。
  67. 石橋湛山

    石橋国務大臣 ともかくそういうように失敗があったのなら、だれかが責任を負わなければなりませんでしょうから、それは負うよりほかないわけであります。どういう責任を負ったらいいか、それはわかりません。私今具体的なことを知りませんから……。しかし決して逃げ隠れはいたしません。
  68. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 具体的なことはわからぬと言っても、これは具体的に今私が申し上げた通りであります。こういう問題を局長が指示をしておいて、そうしてその指示があるにかかわらず入れてならないものを入れさせておる。それを単に保税しておくだけならまだいいが、通関をした。通関をすれば市場へ出して売ってもいいということになる。違法ではありません。それは倉庫手形をとるとかいわゆる倉荷証券を取り上げるとかということは形式の問題です。通関させたら品物を売ってもよいということになる。これは役所と役所の口頭の話である。それを現に裏切って五百万枚からのノリを市場に出して売っておるじゃありませんか。だから全国のノリ組合が農林委員会や水産委員会、両方の委員会でやかましく言っておる。この問題は明らかに通産当局の失敗であるのであって、これについてこれだけのことがきめられたにかかわらず、ノリの市場相場を非常に乱れさせた責任は一体どうするのか。そのために何億という損害をしたということを生産組合の方からやかましく言っておる。だからそういう生産組合の方からやかましく言うということは、これはだれが責任を負うかというと、通産大臣が一人だけでそういう責任を負うべき問題ではない。事金銭の問題になってくるからどうしても国ということになってくる。予算から出さなければならない。予算は国民のものである。そうするとそういう責任通産大臣が負うというならはっきり言って下さい。われわれは今後水産委員会とも連絡をとって——そういうことは通産大臣として軽率だと思う。もう少し通産大臣としての発言のしようがありはしないか。この点について具体的にまだ事情がおわかりにならなければ、私はまたさらに言ってもいいのですが、その点私は通産大臣責任を負うとここで言っておかれたら、これは速記に残る問題でありますから、責任とは一体具体的にどういう責任を負われますか。今言ったように補償の問題などが出てきたときにどうされますか。
  69. 石橋湛山

    石橋国務大臣 これはある省の所管として負うべき責任は負わなければならぬということを申し上げたわけであります。そこに経済上の損害の賠償までの責任があるかどうか、それは私法律上のことはわかりません。第一議論をし始めれば、そういうある生産者を保護するために特に輸入を制限するとか、それをどうするとかということまでも議論の種になりましょうけれども、私はそんなことを議論しようと思っておらない。けれども今政治上の責任はやはり負わなければならぬでしょう。もしそこに政治上の大きな手違いがあったらこれは申しわけないことです。政治上の責任を負うということ以外に申し上げられないということであります。
  70. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 私はこういう問題は、責任ということになったら、そういう経済上の問題は別として政治上の責任は負わなければならぬということは、これは話が違うと思う。この問題はいわゆる経済上の問題で打撃を与えておるということに端を発して起きておる。その震源地はどこかというと、ことごとく通産当局にある。それをただ政治上の責任だけを——経済上の責任は自分ではわからぬ、こういうようなことを言われては——経済上の問題があればこそ需給安定協議会というものを開いて、この時期からこの時期には入れないようにしようじゃないか、こういうような申し合せができて、そこで通商局長が指示をされたのです。指示をされた後に通関をして入れたということになれば、当然それには経済上の問題が伴うことになる。結果においては、政治上の責任だけで、経済上の責任は自分は知らぬということは、通産大臣としては責任をとるといってもこれは責任じゃない。やはり経済上の問題が当然起きる問題に対しては、通産大臣でいけなければその下の責任者はどうするかという問題がここに具体的にならなければ、問題は解決しないと思う。何と言われてもこの問題は単なる責任では解決つかない。これは通産当局が大きな失敗をしたのだ、何といっても事務的に失敗をしたのです。その結果第三者に大きな迷惑をかけた。だから私は単なる政治的な責任だけでは解決がつかないと思うのです。
  71. 石橋湛山

    石橋国務大臣 あなたとただ議論をするだけが能じゃありませんが、それじゃどうすればいいのです。政治上の責任だけ負ったのでは足りない、経済上の責任も負えといったって役人や何ぞに、今の何千万円、何億円の損害があったか知らないが、それを負えと言ったって実際問題としてそんなことはできますまい。そうすればどうなるのでしょう。
  72. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 私はそこで通産大臣責任ということを言うのです。これがなるかならないか知りませんよ、知りませんけれども、こういうことによってノリのできる時期にそういうノリが市場に入ってきた。これは商売のことですから宣伝されるのです。密輸があすこにも入った、ここにも入ったということで値下げを起して、現に全ノリ組合の方から一億数千万円の被害を受けたと言ってきておる。それだけの被害があるかないかわかりませんが、そういう被害を受けたということがこの本院の委員会の記録に残っておる。これを陳情しておる。そういう問題があったときに、通産大臣が一億数千万円の金を——通産大臣はお金持ちでしょうが、それを弁償せよというようなことを、まして板垣さんに迫ったところでできないでしょう。けれども責任を負うというからには、当然この問題は経済下の問題まで——それを許可されたときに、そういう原因が発しておるのである。そういう問題がすでに委員会でも問題になっておる。これの補償ということになってくると、これはまたそこの責任まで考えなければならない問題になってきやしないか、私はこう言うのです。そういうことで単なる責任ではないということです。だからもう少し——これ以上通産大臣に言っても通産大臣は事情を詳しくお知りにならないでしょうが、事情は私が今言った通りです。今議会の問題になっておる馬の問題にしても、サンキストの問題にしても、韓国ノリの問題にしても、これはあとまた加藤君がいろいろな問題を出されるでしょうけれども、これはことごとく通産省がミスをやっておるのです。私はそこを言うのです。通産省は窓口だ、いかなる第三者が入って運動をしてこようが、そういうことによってちょっとこのくらいのことはよかろうと思ってやることが大きな失態をでかす結果になる。私は通産行政全般に対してとやかく言うものではありません。しかしながら、特に最近はそういう問題があまりにも多く、通産一省が問題の渦中に入っておるということは相当に考えてもらわなければならぬ問題だ、こういうように考えるのですが、これに対してどういうようにお考えになりますか。
  73. 石橋湛山

    石橋国務大臣 先ほど申し上げました馬とか、レモンとかというものが、どういう事情でああいうことになったのか実はよくわかりません。いろいろな手続上の問題だと思います。しかし私の調べた限りにおいては、一応手続にさしたる誤まりはなかったのでありますが、結果において今のその手続等を悪用して、自分の利益をはかろうというような者があったということはどうも認めざるを得ません。そこでそういう者に対しては、今までの過ぎてしまったことまでを追及してこれを吐き出させるというわけには行政上いかないようでありますが、今後行政措置としてできる限りの処分をしてレモンの輸入等を停止する、かようなことをいたしただけであります。それ以上の責任をどうするか。責任を負えといえば切りなしになりましょうが、決して逃げ隠れをいたすわけでありません。できるだけのことはいたしたい、かように考えております。
  74. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 私は、加藤氏が次に質問されますし、あまりおそくなりますので終りますけれども、バナナの法案は参議院の委員会をまだ通過しておりません。しかし大臣は本委員会におきまして、大体五月十五日ごろを目途として何とか割当を開始したい、こう言われておるのです。それには参議院の方を法律が通過しなければなりません。今市場相場は一万三千円からしております。これはなぜかといいますと、華商あたりが向うから積み込みますのに五千かごくらい積み込んで入るものを、国内市場相場を上げるために二千かごくらいに少くして入れておる。全芭連がその通りであります。そういうようになりますと、農林省のお考えになったような市場相場を安くさせたいためにこういう措置をとるということと逆になってきておるわけであります。でありますから、これが参議院の農林水産委員会を通過し次第、日台協定がどういうようになったか知りませんが、可及的に割当を開始されないと、これは非常に高値になって参ります。従って消費者に非常に迷惑をかけるという結果になって参りますから、その点はどうぞ御一考をお願いしたいと思うのであります。その他いろいろ私は資料を持ってきて質問を申し上げたいと思っておりますが、またの機会に譲りまして本日はこの程度で私の質問を打ち切ります。
  75. 鹿野彦吉

    鹿野委員長代理 加藤清二君。
  76. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私もこの外貨問題にからむいろいろな問題について承わりたいことがございますが、きょうは二点だけであとに譲れということでございますので、委員長の御意見に従いまして二点だけ承わりたいと存じます。第一点は、アメリカ国の日貨排斥の問題でございます。第二点は、商社外貨保有にからまる問題でございます。  そこで第一点のアメリカ国の日貨排斥の問題はきのうきょうに始まったのではなくして、本委員会におきましてもすでに数回にわたって審議をされ、大臣もこれについて善処するというお答えをいただいておりますが、どこがどう間違っておりますのか、アメリカは特に繊維が非常ににくいと見えまして、去年は絹織物の制限を実施をいたしました。今年はまたワンダラー・ブラウスに始まる綿製品の禁止をいたしておるようでございますが、これについては連日のように新聞、雑誌、週間雑誌までが取り上げておりますし、業界毛繊維設備の制限を行われるに当って、輸出の品目が次々に削られたり、その数量が次々に制限を受けていくようでは、一体いかに内地生産を制限し、それで足りなくて設備の制限をいたしましたとしても、これは追っつかないことである。従って政府アメリカ国に対する善処方を要望する声が今日業界にはほうはいとしてわき起っておるわけでございますが、これについて一体政府当局はどのように対処をしておられますか、まず第一番に可燃性織物、いわゆる三匁以下、五匁以下の軽目羽二重のその後の状況日本政府のとられた処置等を承わりたいのでございます。
  77. 石橋湛山

    石橋国務大臣 それはもう加藤君初め多くの方々から指摘されたところであります。われわれも指摘を受けるまでもなく十分に心得ており、痛感しておるのでございますから、こちらでも毎日毎時あらゆる方法を通じてアメリカ政府の反省を求め、あるいはアメリカの世論の転換をはかるために努力をいたしております。
  78. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 だんだんの御努力は漏れ承わる程度でございますが、一向に効果が上らないようでございます。去年の十一月から十二月にかけまして、私はこの問題についてどうするんだと大臣にお尋ねしたところ、いや、輸出管理令を変えて十九品目の制限をするんだ、それはやがて相手国に好感を持たせる結果となって、必ずやアメリカ国も反省するであろう、いや、そういうことは期待はずれに終る、もし法律でもって制限をしてきた日にはあなたはどうしますかと聞いたら、いや、それはそのときの話で、君、そういうむずかしいことを言うな、こういうあなたのお話でありました。案の定法律で制限をして参りました。可燃性繊維の問題がいまだ解決しないやさきに、今度は木綿の制限はおろか、とんでもない法律が各州にできまして禁止される状況になって参りました。これについて具体的にどう対処していらっしゃいますか、お尋ねいたします。
  79. 石橋湛山

    石橋国務大臣 こまかい必要があれば繊維局長から話させますが、アメリカでもどこの国でも排斥する方の消極的な運動は割合に起る。それに反して、アメリカの中央政府はむろん日本政府と相当に協力してやっておるのでありますが、そういう世論を動かし、積極的に貿易を円滑化するということについてはどうもなかなか効果が出にくい傾きがありますし、ひまがかかります。だからこちらから見ておるとまことにもどかしい。われわれ当事者としてもまことに遺憾千万でありますが、これは非常な力をもってやっておる次第であります。むろん相手のあることでありますから、前途の見通しがどうなるということは急には言えません。これは加藤君の言われる通り、今まで申し上げましたところがいささか期待はずれになっておるという点も確かにございます。ですから今後においても、いつ幾日までにどういう効果が上るだろうということはなかなか言えませんが、私は大局においては、時間はある程度かかるかもしれませんけれどもアメリカの傾向も、日本に対して今のような状況をいつまでも続けて、また地方の法律によっても、どこの州もどこの州もというふうに、こぞって全部が日本の排斥をするというようなことにはなっていかないように、こちらも努力しておりまするし、またそうはおそらくならないだろう、こう考えております。
  80. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私は具体的にどう対処しておられるかということを承わりたいのでございます。時間がないので、要点だけを承わればけっこうでございますが、どのような手を打っていらっしゃいまするかということが聞きたいのです。なぜかならば、あなたは効果はなかなか上らないとおっしゃって見えますが、効果は向う側に上っているのです。すなわちサウス・カロライナ州におきましては、御承知の通り四インチの文字の大きさまで、しかもよく人に見えるところ、こういう法律なんです。それに違反した者は十カ月以上の禁固か百ドル——私の言うことが違うとおっしゃるならば、あなたの方が出されまして資料によって読んでみましょうか。三月八日に南カロライナ州がまず先鞭をつけて、どう先鞭をつけたかというと、出入口のドアの人目につきやすい場所でなければならない、字の大きさは四インチ以上でなければならない、こういうことなんです。おまけのことに罰則は十カ月以上の禁固だ。何べん言ったってだめだ、ちゃんと書いてある。それから百ドル以下の罰金もついている。  その次にアラバマ州では、罰金は四分の一に減っているんですけれども、同じことが行われている、ついでのことに、今度はミシシッピーにもそれが波及している。こういう状態で、効果は向うに上っている。このおかげで店の方は、とてもそんな看板まで上げて売ることはごめんこむうる、日本商品は売りませんと、こういう看板を上げ出しておる。うそだと思いなさるなら、向うの商社から来ている電報を見せましょうか。効果は効果でも、向うに逆効果が上っている。それに対して、日本政府はどのような手をお打ちになったか、こういうことが具体的に聞きたいのです。
  81. 石橋湛山

    石橋国務大臣 日本政府としてはほかに手の打ちようはないのでございまして、大使館を通じて、正式にアメリカ政府に反省を求めて——アメリカ政府の力は地方政府にはなかなか及ばないのだそうでありますが、いろいろな方法によって、地方政府にもアメリカ政府の命令をなるべく及ぼすようにしてもらうということと、あとは民間の商工会議所その他を通じて、先方の考え方を変えてもらうという運動をしておるのであります。それ以上には、どうも日本が力をもってどうするということは、これは好ましいことでもありませんし、またできもしませんし、また一部で言われるように、リタリエーションの方法をとるということも、今のところでは、われわれとしては好んでおりませんし、またやるべきことではないと思って、差し控えておるようなわけであります。リタリエーションに出るか、それとも向うの反省を求めるか、これははなはだなまぬるいことでありますけれども、そういう方法でもってアメリカ政府に要求し、またアメリカ政府とできるだけ協力してアメリカの世論を転換する、こういうこと以外には私は行きようがないと思いまして、さようにいたしておるわけであります。
  82. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは手を打たれまする一つのきっかけを私申し上げてみたいと存じます。  お断わりしておきますが、私材料はたくさん現地からも受け取っておりまするが、それではあなたの方が誤まりだとおっしゃるといけないから、内閣官房の調査室から発行したそのものによってお尋ねしていきます。  第一にこのことが大きな法律違反であると私は考えまするが、大臣は一体これについてどうお考えでございますか。まずどう違反するかといえば、大統領の条約締結権の大きな制限であると思う。しかもこの大統領の締結いたしましたところの条約を制限をし、破壊をしてくるものである、こう思うんです。すなわち日米友好通商航海条約なるものは、本委員会において、あなたたちがぜひこれを認めてくれとおっしゃってここで審議した問題でございます。その十六条には御承知の通り、日本商品アメリカ商品日本国内において受けていると同等の待遇を受けなければならない、受けてしかるべきである。またアメリカ人が日本国内において受ける問題について、内国人と同等の待遇によって生命財産を保障されなければならない。これを審議いたしまするときに、まるで双葉山とふんどしかつぎを同じ土俵場で争わせるようなものだ、だからこんなことじゃだめなんだ、これはハンディキャップが違うんだから、言葉は平等であっても、結果としては平等でないことが起きてくる、それについて日本政府としてはどう対処するのか、ということを私が質問いたしました場合に、いや、そんなことはありません、アメリカ国は紳士だ、だからそんな心配は毛頭ございませんということでございましたが、アメリカ商品日本国内において受けている待遇と、日本商品アメリカ国内において受けている待遇とは、今度のサウス・カロライナ以下の各州において行われた法律によって、すっかり差別が行われるという結果に相なっておるのでございます。これはやがて日米友好通商航海条約第十六条の違反、こういうことになり、このことはすでにアメリカの大統領も認めていることなんです。これについて日本関係大臣は、一体どのようにお考えでございましょうか。
  83. 石橋湛山

    石橋国務大臣 法律上においてアメリカの今とっておる態度、もっともこれはアメリカの州法と国法との相違もございましょう。州法と国法とがどういう関係に立つかということは、相当アメリカでも問題であろうと思いますが、とにかく日本から申しても、アメリカが今、日本商品に対して差別待遇を与えることが不都合な非合理なやり方であるということは、日本政府もむろん認めておるのでありますから、そういう法律上の抗議は、むろん日本政府としては何回となしに大使を通してアメリカ政府に申しておることであります。しかしながらそれにもかかわらず、アメリカがなお日本の満足するがごとき方法をとってくれないということでありますから、これは今の日本としては、その反省を求めるという以外には行きようはない、そのほかに何か一つ名案がありましたらお教えを願いたい。
  84. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 数回谷大使をしてとおっしゃいましたが、われわれの聞くところによると、これはわずか一回でございます。申し入れをしただけであって、その効果は上っておりません。新聞発表はわずか一回でございます。それだけでもって事が足りるなんと考えたら、とんでもない大間違いである。谷大使に何回やらされたか、それからその結果はどうなったかを承わりたい。  次に、日米友好通商航海条約の違反のみならず、これはアメリカ国の終戦後における極東政策の違反ということにもなってくるわけでございます。が、これについては一体大臣はどうようにお考えでございましょうか。すなわち日本が健全な経済態勢を確立するよう援助する。これがアメリカのいわゆる表看板であったはずでございます。ところがこの問題については、もしこのようなことをして日本経済的に独立できないような立場に追い込めば、日本の進むべき道は二つしかない。その一つは他国経済援助を求めるか、ないしは共産主義化するかのいずれかであるということは、すでにアメリカの国会におきましても、アメリカの民主党議員が述べている点でございます。むしろ日本政府よりもアメリカ大臣アメリカの国会議員の方が、この問題について御熱心のようでございます。先ほど、事アメリカに関してはまことに神経過敏になるのがわが省の得意であるというお説でございましたが、これほど向うが国会においてもあるいは公聴会においても真剣になっているのを、なぜそう神経過敏になられるのか。さわらぬ神にたたりなしと考えていらっしゃるのか。
  85. 石橋湛山

    石橋国務大臣 そんなことも私どもはよく承知しております。しかしそれはアメリカが自分で日本を尊重しようとか、日本貿易を尊重しなければならぬと言っているのですから、むろんそれを全然無視しているわけではありません。だから日本政府としては何回やったかと言いますが、これは谷大使が最近において、少くも二回は公式に申し出ております。そのほか非公式には何回となしにその話をしております。決してそのくらいな話をしない日本政府でもございません。ただそれ以上に強くどれだけ出るか、こういう問題でございます。
  86. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 アメリカ国内において反対しているのは同種の業界だけです。あとは学者も消費者も、これに関連する繊維産業の労組も、特に綿花を作っているお百姓さんたちは、農林大臣を筆頭に掲げて、日本の綿製品をアメリカが買わないというような制限は、絶対に行うべきでないというところの決議を行いまして、政府に働きかけている事実をあなたは御存じでございましょうか。これはどうしてそうなるかといえば、一つには米国が日本に対して当然行わなければならないところの国家的の義務の違反であると同時に、日本と同じように、他の国と締結しているところの条約をも他の国からこのような目で見られる。すなわち条約は条約だが、アメリカの利害に関係した場合には、いつでも弊履のごとく捨て去られる条約であると考えられるのは、これはおそるべき結果を招来するとの見解から、ずいぶん反対運動が起っているのです。しかもその反対運動の中にはボイコットをされてもやむを得ない状態になる、こういうことまで言うておるのです。従ってこれと相呼応する意味におきましても、なお日本政府はボイコットするくらいのことは当然考えてもしかるべきだと思う。なぜかならば、アメリカ輸出するその綿製品の材料は、アメリカ国から買った綿の百分の一なんです。去年伸びたというても、それは二十五分の一にしかすぎない。だからこの際余剰綿花なんかを買いませんで、のみならずアメリカ総体の輸出の三分の一以上を買っている日本国としては、一番いいきめ手を持っているはずなんです。あなたのところのような高い綿花は買いません。よそから二割方安い綿花は幾らでも買いまする、こういう状況なんですから、よそから買いますと言えばそれでおしまいになります。それだけの勇気はありませんか。大臣あなたはアメリカ国に対しては親切かもしれぬけれども日本の業界と日本の消費者を救う意味において、高い綿花は買いませんというくらいの勇気はございませんか。
  87. 石橋湛山

    石橋国務大臣 別段この問題に関連せずに、アメリカ綿はなかなか日本で買いにくいので困っている状況です。しかしながら日本政府としては、今の場合、あなたのおっしゃるようにそう勇ましくリタリエーションの方法によって、日本の綿布を買わぬから、もうアメリカの綿花は買わぬというような経済的の対抗策といいますか、一種の戦争的な行動に出ることはいまだ早い……。
  88. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 向うはじゃんじゃんやっているのでしょう。たとえば先ほどどなたかからお話になった豚毛のごときものまで、かつて映画の話が出ました折に日本輸入映画はほとんど占領当時そのままの状況によって、マッカーサーの指令通り今もって動いている。それを押しつけられている業界は反対している。だからこの際ジョンストンが来たときくらいは、あなた何か言いなさいと言いましたら、いや、君に言われるまでもなく、おれの方の綿製品は買えという、映画を買ってもいいから綿製品だけは同じように買ってくれと私が頼んだら、いや映画なんか買うことはやめてでもいいから、綿製品は買ってもらうように言うよと、あなたは委員会でおっしゃったでしょう。あの言葉はどこへいきましたか。
  89. 石橋湛山

    石橋国務大臣 言っていますよ。
  90. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それではどういう効果が上ったか、ジョンストンは何という返事をしましたか。
  91. 石橋湛山

    石橋国務大臣 むろんジョンストンなどがそれに対してまともに答えるべきことではありますまい。率直におっしゃって下さい。どうしろというのですか。
  92. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 はっきり言いましょう。今申し上げた通りきめ手は幾つかあるのだから、日本が買った原綿の二十五分の一や百分の一を買うことをごめんだと言うくらいだったら、こちらも材料は安いところから買いましょうと言ってもらったら、これは実績が上るや上らぬは別として、及ぼす影響は甚大である。やがてアメリカ国内におけるお百姓さんたちの言うていることを実質的に裏づける結果が生じてくる。アメリカは世論の国でございますから、まさかアメリカの綿業者を助けるためにアメリカ国のお百姓を殺すようなことは、アメリカとしてもいたさないでしょう。
  93. 石橋湛山

    石橋国務大臣 先ほどから申しますように、これはもう民間でどういう議論をなさろうと、どういう運動をなさろうと、それはけっこうとまで申し上げませんが、政府としてはできるだけ慎重な態度をとりたい。それからアメリカの綿花のことにつきましては、現に値段の上において実質的に日本は買いにくいのであります。これは買わせることは容易でないという状況にきておりますから、これはお話しするまでもなく必要以上の米綿は入らないと思います。  それから綿作地が日本の製品に果して好意があるかというと、これはいろいろ論議もあるようであります。綿作地でも日本の綿製品に対する相当の排撃運動みたいなことが起っているということは遺憾ながら事実であります。いろいろ錯雑しておりまして、一がいに申し上げられないように思うのであります。しかしそれはとにかくとして、今の場合においては、これは申し上げておきますが、政府としてはどこまでも穏便な方法によりましてアメリカの反省を求める、こういう一手でいきたいと思います。
  94. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私の申し上げました方法が穏便を欠くということであるならば、私は承わりたい。大臣はいかなる穏便な策をもってこの空気を挽回しようとしていらっしゃるのか。いかにして輸出振興をはかろうとしているのか、それを承わりたい。
  95. 石橋湛山

    石橋国務大臣 これは平和の交渉というのはむずかしいものでありまして、はたから気をもんで見る、あるいは強硬な主張をする側から見れば、平和なんというものはなまぬるいのであります。でありますから、ほんとうに決意をして力で押していくというような決意をするか、それとも穏便で参るかということ以外にはないのであります。少くとも現在の日本政府としては、穏便な処置によってアメリカ政府の反省を求め、アメリカの国民の反省を求めていくという方法以外にはないのであります。
  96. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 アメリカ国が日本と結んだ、しかもアメリカ国が結んでくれというたところの日米友好通商航海条約や、あるいはアメリカ国が日本に対して向うから言うてきたところの極東政策に違反するような行為をあえてしているということが歴然としておりながらも、なお日本政府当局としては、アメリカ国にその非を鳴らすこともできない。それに対して何らの報復手段もとれない、ただ穏便にして時間をかけてということでございますが、すでに政府がとられました穏便なる策であるワンダラー・ブラウス以下十九品目の制限に対しては、何ら効果がなかったということを如実に証明しておる。それでもって向うの歓心を買って、好転するのだと、十九品目制限のときにあなたはおっしゃった。けれども、それ以後の向うの空気は、ますます悪化の一途をたどっている。今にして何らかの変った方途に出でなければ、あなたが次に行おうとしておる繊維の設備制限をどれだけやったって、向うは商売ですから、要は日本の繊維製品がおそろしいのだから、この空気はやがてカナダにも波及し、またイギリスにも波及して、日本製品がレーバー・ダンピングをやっているのだという声を、日本政府みずからが認めた結果を世界市場に公表するような結果に終るのじゃないかということを私はおそれるわけでございます。その結果制限を余儀なくさせられた日本の業界が一体どう動くかの問題でございますが、いろいろのアメリカの議員の先覚者が言うておる通り、制限をされて職を失った人が行く先なくなったあとは、やむなく過激思想にいく、のみならず、アメリカに好意を抱いていたところの中立的な政治家までが、遂に同情的にそちらへおもむかなければならないという結果を私はおそれるわけでございます。これに対して大臣は、それでもなお穏便主義の方がよろしいとおっしゃるのでございますか。
  97. 石橋湛山

    石橋国務大臣 現にお話のように、アメリカの中にも正しい論を吐く人がいるのであります。アメリカの中にそういう論を吐く人がいるのであります。ですからそういう人と協力していくということが、今の日本政府としてはなすべき道だと思う。もしアメリカ全体がもう日本の綿布を入れないのだ、日本の綿布を入れない方がアメリカ経済あるいはアメリカの政治のためにいいということが事実なら、これはいたし方がないでしょう。そうなれば、無理に日本の綿布を入れようたって入らない。日本の綿布は、経済的に、政治的に考えても排斥してアメリカが何ら損失がないということになればおしまいです。それを無理に買わせようとしても買わせられるものではない。幸いにして現在はまださようになっておらぬと思う。消費者の中にも日本の綿布をほしがっている者がたくさんおる。また政治家その他の識者にも、政治的の考慮の上からいっても、日本との貿易を円滑にしなければならぬという考え方を持っておる人がたくさんおる。ですからわれわれはそういう人たちと協力して、何とかアメリカないしはアメリカのみならず世界の形勢を変えていくということに努力すべきである。これを気を短かくしてやれば前の太平洋戦争を繰り返すことになります。
  98. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 大臣が五時から所用があるとかいうお話でございますので、話はこれからでありますけれども、きょうはこの程度にとどめたいと思います。要はアメリカ日本製品の排斥からして、日本の繊維業界には死活問題に直面をしているあまたのわれらの兄弟がおるということを、大臣はよく認識をしていただきたい。そこで穏便主義ではいけないというならば、これは大臣やむを得ません、私が大臣だったら強硬手段をとりますよ、これはもうやむを得ません。そこで穏便主義でいくならば、せめてこのくらいのことはやれるかやれないかをここで御返事を願いたい。すなわち国際問題がもつれました場合には、必ず国の代表を先方の国に送るなり、あるいは相手国を呼んで話し合いの場を作るなりして——穏便ということはそういうことなんです、そういう機会を設けてこられたのが過去の実例のようでございますが、本問題に関してアメリカの当事者をこちらに招致して、日本国内の実情をよく知らせるとか、あるいは大臣みずから陣頭に立って、ちょうど農林大臣のように漁業問題解決のためにソ連へ行ったように、あなた自身がアメリカに行く勇気はないのか。なかったらせめてこのことに熱心な議員を本委員会から与党、野党を問わずあまねくすぐって行かせるだけの雅量があるのかないのか。それをもないというのであれば、あなたはこの結果から生ずるところの犠牲者、すなわちワンダラー・ブラウス以下を作っている業界は死んでもまたやむを得ぬ、こう考えていらっしゃる人だと思うてもやむを得ないと思いますが、いかがでございますか。
  99. 石橋湛山

    石橋国務大臣 加藤君の論理はなかなか飛躍しておるから、そういう議員を出さなければ云々と言われますが、それは出すくらいのことはわけないことでありますが、それにしても十分に検討をして、どういうふうな方法でいくか、向うの方をどのように説得するか、また日本としてはどういう処置をとるかという十分の用意を必要といたします。それからまた普通の外交ルートを通しての交渉ならば、先ほどからのお話を聞いていると大分御懸念のようでございますが、一々きょうはだれが行ってどういう談判をしたかということは、発表すべきものでもございませんから、そうはなばなしい発表はいたしませんが、これはもう決して油断なくやっているつもりでございます。また必要の時期になりましたならば、これは私が出かけて行ってどれだけの効能があるかは知りませんが、私自身も出かけることについて考えないわけではございませんが、適当なミッションを出すということは今までもやっておることでありますし、今後もそういう方法は講じていきたいと思っております。
  100. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 日本から行くことを何ぼかきつい態度のように言われますが、アメリカの方は、日本に映画を売るためにたびたびジョンストンを送っておりますよ。これはしかもさきに大統領選挙に出た人であって、いつも向うの全権を委任されてくる人なんです、政府代表なんです。映画までがそうなんです、その他の物件についても、たとえば綿花を買わせるにしても、あるいは向うの古てこの機械を買わせるにしても、すべて向うの商社やインポーターだけではなしに、政府代表というものがちゃんとついてくるのです。それを日本はようやらないというのだったらあなたはよほど老いぼれた、と言ったら怒られるかもしれぬが、私は大臣はもっと骨のある、もっとしっかりした人だと思っておったのですが、もしそれをもようやられないというならば、今まで抱いていた尊敬の念に対して私は将来その考え方を変えなければならぬと思うのです。
  101. 石橋湛山

    石橋国務大臣 それは加藤君がどういうふうにお考え下さるか、これは私の知らないことでありますが、日本政府としては、これはもう公館がある限りにおいては日本から相当のミッションも送っておりますし、政府の者も相当行っております。決して加藤君が言われるように全然何もせずにいるわけではございません。やるだけのことはやっているつもりでございます。しかし今後これでもなお足らないということであるならば、それについて十分あらゆる方法を講じたいと思っております。
  102. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 外貨割当制度や、それから商社外貨保有の問題、交互計算等々、質問がまだありますが、これはいずれも火曜日に譲ることとして、本日は私の質問はこれで終ることにいたします。
  103. 佐竹新市

    佐竹(新)委員 議事進行について。きょうは大臣が非常にお忙しいそうでありますし、時間も相当に過ぎましたので、後日、この外貨割当はまだわれわれの方では質問者が残っておるし、私もきょうは三分の一くらいしかよう質問をしなかったのですが、これは非常に重要な問題でございますので、本件の審議を終了いたします前に、来週の初めごろに、外貨割当について、一日くらいゆっくり時間をとって十二分に質疑をする、こういうことにして、本日はこの程度で散会せられるよう望みます。
  104. 鹿野彦吉

    鹿野委員長代理 佐竹君の外貨問題に関しての発言については、追って理事会にお諮りいたした上で善処いたしたいと思います。  本日はこの程度にとどめまして、次会は来る七日午後一時より開会いたすことといたしまして、これにて散会いたします。    午後五時二十一分散会