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1956-04-24 第24回国会 衆議院 商工委員会 第38号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月二十四日(火曜日)     午前十時五十三分開議  出席委員    委員長 神田  博君    理事 鹿野 彦吉君 理事 小平 久雄君    理事 笹本 一雄君 理事 長谷川四郎君    理事 中崎  敏君 理事 永井勝次郎君       秋田 大助君    阿左美廣治君       宇田 耕一君    内田 常雄君       大倉 三郎君    菅  太郎君       菅野和太郎君    椎名悦三郎君       島村 一郎君    鈴木周次郎君       田中 角榮君    田中 龍夫君       中村庸一郎君    野田 武夫君       淵上房太郎君    南  好雄君       山本 勝市君    加藤 清二君       佐々木良作君    佐竹 新市君       多賀谷真稔君    田中 武夫君       田中 利勝君    帆足  計君       松尾トシ子君    松平 忠久君  出席国務大臣         通商産業大臣  石橋 湛山君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     横田 正俊君         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局経済部         長)      坂根 哲夫君         通商産業政務次         官       川野 芳滿君         通商産業事務官         (大臣官房長) 岩武 照彦君         中小企業庁長官 佐久  洋君         通商産業事務官         (中小企業庁振         興部長)    秋山 武夫君  委員外出席者         検     事         (民事局参事         官)      吉田  昂君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 四月二十日  機械工業振興臨時措置法案内閣提出第九八  号)(参議院送付) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  下請代金支払遅延等防止法案内閣提出第一三  三号)     —————————————
  2. 鹿野彦吉

    鹿野委員長代理 これより会議を開きます。  委員長は所用のため暫時出席がおくれますので、私が委員長の指名により委員長の職務を行うことにいたします。  下請代金支払遅延等防止法案を議題とし、審査を進めます。  質疑を継続いたします。質疑の通告がありますので、順次これを許します。松尾トシ子君。
  3. 松尾トシ子

    松尾委員 下請代金支払遅延等防止法案について、少々大まかなところをお尋ねいたしたいと存じます。こまかいところはいずれ同僚田中委員より御質問があると思います。  親企業下請代金支払い状況がずっと前から悪くて、本年になりましてもまだ非常に悪い。これが中小企業の窮迫に拍車をかけていることは皆さん御存じ通りで、善処するための要望が強くなされまして、去る二十二特別国会におきましても、社会党から下請関係調整法案と題して提出をいたしたわけであります。ところがこのときには子供考えるような法律だといって、皆さんの御賛成を得ることができなくて、審議未了になったわけであります。聞くところによりますと、今度政府が提案になったこの法律おとな考える非常によいものだといっておられるそうですので、よく読ましていただいたわけです。この前の委員会のとき通産大臣は、経済行為は幅を持たせなくちゃいけないとおっしゃいました。おとな考え法律というのが、幅を持たせるのかどうかということを私はじっくり考えました。そのような方法中小企業の今の困窮を救っていかれて、よみがえることができるなら、大へんいいと思うのですけれども現状ではなかなか複雑で、これではうまくいかないのじゃないかというような考えも起るわけであります。と申しますのは、去る四月の二十日に、この法案を審議するに当りまして、公聴会を開いて、いわゆる親会社中小企業代表者をお呼びして意見を聞いたわけであります。それによりますと、親企業の言うのには、下請への代金はだんだんうまくいっているというようなことを言っておりました。同時に、現状においてはうまく支払いがいっているけれども、この法律は必要だということを認めていたわけです。私もはてなと思って、下請代表者の言い分を聞いてみますと、全くこれは弱い者いじめで四苦八苦している様子でございまして、子供をいじめているまま親が第三者に体裁のいい言いわけを、うそを言っているような気がしないわけでもなかったわけです。そこでこの法律内容について、この名前の通り効果を上げるものではなくてはならないと思います。それでまことに恐縮ですが、開き直るような格好でおかしいんですけれども、この法律のねらいを一つお聞かせをまず願いたいと思います。
  4. 石橋湛山

    石橋国務大臣 なお具体的には公取委員長がここに見えておりますから、また委員長からもいろいろお話があると思いますが、御指摘のように下請代金支払い工合が悪くて、下請業者が困難しておるということは、相当長い事実であります。何とかこれをしなきゃならぬ。今までも公取委員会におきましても、あるいはわれわれの方の中小企業庁におきましても、相当努力しておるのでありますけれども、なかなかいろいろの経済事情もありましてうまく参りません。そこでそれをこの法律によってさらに、補充と申しますか、充実と申しますか、今までやっておりましたのを一そう効果あらしめるように、この法律によっていたしたいと存ずるのであります。ですから、私どもとしてはむろん相当効果を上げ得ると信じておりますが、しかし中小企業下請企業というようなものは、単にこれだけで救われるものではありませんで、いろいろの方面から手を打たなければなりません。一番大切なことは、私どもとしては、下請企業というものが経済的にしっかりした根拠を持って、親企業相当対抗のできるだけの権威経済的に持つ必要があると思うのであります。それはなかなか一朝一夕にもできますまいが、そういう方向に、いろいろの方法によりまして下請企業ないし広く中小企業の基盤を強化することに努力いたしたいと存ずるのであります。その一環としてこの法律案が必要だと考えるわけであります。
  5. 横田正俊

    横田政府委員 今回の法案を提案いたしました主たる理由につきましては、本会議等におきましても一応申し上げたのでございますが、要するに、前回も申し上げましたように、昭和二十八年から三年ほどにわたりまして、いろいろこの問題と取っ組んで参ったわけでございますが、御承知のようにこの取引関係につきましては、昭和二十八年の独禁法の改正によりましてこれを独占禁止法上のいわゆる不公正な取引方法として取り上げ得る態勢を整えまして、その上でいろいろやって参ったわけでございますが、この問題は、公正取引委員会のいわゆる表門からの手続と申しますか、審査審判というような正式の手続を経てやりましたのでは、どうも十分な効果が上らないというところにかんがみまして、従来やって参りましたことをそのまま法律の形にいたしたいということで、いわゆる勧告を中心といたします一種の行政措置と申しますか、そういうものをもあわせて規定いたして、その線に沿って正式にこの問題を取り上げて参りたいというのがこの法案の主たるねらいでございまして、この法律ができました上は、法律上の手続といたしまして、公正取引委員会でさらに新たなる決意を持って、この下請関係の是正に努めて参りたいと考えております。
  6. 松尾トシ子

    松尾委員 大臣の御答弁の中に、この法律だけで救済をすることはできないので、経済的にもっと強くすることが必要であるというお言葉がありましたが、将来そういう特別の法律を作る御意思があるかどうかということと、それから、何といいましてもこれは一般商取引なんですが、この商取引の中から特に特殊な下請という用語を使っておるわけはどこにあるかということと、もう一つは、下請とは一体どういうものか、その概念をちょっと御説明願いたい。
  7. 横田正俊

    横田政府委員 他にどういう方法考えておるかということにつきましては、通産大臣からお答え申し上げると思います。  なぜこの下請という問題を取り上げたか、その概念をというお話でございますが、これは実際問題として、いろいろ扱って参りまして、ここに法律で取り上げましたような取引関係に一番弊害が多いように見受けられましたので、一応この下請というものを取り上げることにいたしたわけでございます。なお、この下請意味は、法律上の用語といたしますと、通常民法等でいう請負のもう一つ下の段階、いわゆる下請負ということになるのでございますが、実際の親と子の関係というものはもう少し複雑でございまして、民法下請のまたその下ということでは取締りができませんので、これは二条に相当詳細に定義が掲げてございますように、今申しましたような意味下請よりはよほど範囲が広まっておりまして、要するに、親企業が販売し、あるいは請け負いました仕事につきまして、それをさらにいろいろな形において下に、いわゆる下請に出すというような関係をかなり網羅的にここに掲げたわけでございます。こまかいことは第二条にいろいろ規定がございますので、もしこれについてさらに具体的に御説明する必要がございましたら、御説明をいたしたいと思います。
  8. 石橋湛山

    石橋国務大臣 下請というのは、御承知のように、機械生産にいたしましても、あるいはそのほかの製造業にいたしましても、ことに機械のごときは非常にたくさんの部品を使いますので、それを全部親工場が供給するということは非常に不経済でありますし、またいいものもできない。びょうびょう専門メーカーが作るということがかえってよろしいのであります。そこでそういうふうに専門化する必要がある。そこに、たとえば造船なりあるいは大きな機械を作る親工場に対して下請機械業者がおのずから現われる。あるいは商品にいたしましても、百貨店が売るものをすべて自分で作るというわけにいきませんし、それは不経済でありましていいものもできませんから、自然各方面メーカーに納入させるということから、経済的な必要上から下請企業親企業というものはどこの国でも現われる。ことに機械工業のごときものを発達させようとすれば、どうしても下請業というものが発達しなければ、自動車あるいは船舶もできないのであります。そういう意味から、経済上の必要に根拠するのであります。しかし日本の場合においては、その下請業がいわゆる中小で、非常に弱小なものが多いために、せっかく専門的にいいものを作ろうとしてもそれができないというようなこともありますし、あるいは金融上の故障もありますし、いろいろのことから、親企業に対して十分権威を持つだけの下請業というものが割合少い。ないことはありませんけれども、これが比較的少いということからいろいろの弊害も現われている。ですから、われわれの通産行政としましては、今度の国会に出した機械法案どもその一つでありますが、中小下請をやるような機械産業に対してぜひその設備の改善を促し、特に専門化を今までよりも一そう確立しまして、いいものを作り、同時に、あまり大ぜいの同じような下請業者があって、互いに競争して親企業につけ込まれるというようなことがないようにする、そういうことが経済政策としては根本的に必要であろうと考えております。今度これも予算でお願いして幾らかいただいたわけでありますが、そういう下請企業あるいは一般中小企業の実態も今まで十分の調査もございませんので、十分調査いたしまして、マーケットに関する問題だとか、あるいは原料の問題だとか設備の問題だとかいうものについて、なおこまかく下請企業ないし中小企業の強化をはかるような施策を今後いたしたい、かように考えております。
  9. 松尾トシ子

    松尾委員 それは行政措置でやって、法律は別に考えていないわけですね。  その次に続けますが、親企業下請企業資本金でやっているのはどうかと思うのです。と申しますのは、この法律は一千万円資本金を見ておりますけれども対象になるのは一千万円以上の人ですが、いわゆる親であって下請であるというような二重の性格になるような場合が、一千万円以下の人たちに出てくるのではないかという気がするのです。もっとわかりやすく申しますと、資本金を九百万円にしておくと、親であってもいわゆるこの法律対象の親にはならないということになるのではないかというような気がいたすわけであります。ところが日本下請企業というものは、大臣もおっしゃったように、多くは零細企業でありますから非常に資金繰りに四苦八苦している。現状から思うと、むしろ一千万円以下で親になる。法律的には子供であるが実質的には親会社みたいなものがあると思うのでありますけれども、こういうものはどういうふうに措置していらっしゃるのですか。
  10. 横田正俊

    横田政府委員 この親企業下請企業の規模の大きさを資本額できめましたのは、いろいろ研究をいたしました結果でございまして、一つは、今まで三年間に扱いましたいろいろな関係から見まして、大体この辺がいいのではないかということ。もう一つは、要するにこの関係は、独禁法的に申しますと、いわゆる優越した地位を乱用いたしまして、下請に迷惑をかけるということを取り締るという点から見ますると、大体一千万円以上のものということになりますれば、これは資本額でございますから、相当しっかりした企業ということに認められますので、そういうものの下請企業がございましても、それは特に取り上げてどうするという必要はないのではないかということと、逆に親企業の場合でございますと、一千万円にも足らないような企業は、概して地位を乱用して下請をいじめるとかいうことも、まあないことはないと思いますが、これは少いのではないかというような点からいたしまして、両方面から考え合せまして、一応ここに線を引いたわけでございます。
  11. 松尾トシ子

    松尾委員 九百万というようなことがあり得ますけれども、いわゆる資本金をおきめになるときに、全部の実情に照らしてはっきりした線を引くことはむずかしいので、そういう点はわかることはわかるけれども、どうもぼうっとしておるのではないかという気がいたします。  その次にお尋ねしたいのは罰則なんですけれども、この罰則はちょっとなまぬるいのではないかという気がします。というのは下請代金遅延総額に対して三万円という罰金は、銀行金利の方が安くついたりなんかする場合とか、そういったようなことで罰金を払った方が得だということが出てくることがあり得るかもしれぬという心配があるわけです。もう少し強くするためにやたらに罰金の額を上げたってやはり効果は上らないと思いますから、別な行政措置でこれを取り締る、おきゅうをすえるような格好はできないものかと私は思うのです。たとえば配当制限を行なったり、またその会社輸入資材なんかを使っている場合には、それを制限したり、またその会社が材料を輸入する場合なんかは輸入許可の点を辛くしたりというような方法行政措置で、もう少し苦痛を与えるような方法はないものかと思いますけれども、その点はいかがですか。
  12. 横田正俊

    横田政府委員 罰則につきましてはなるほどお説のように、第一罰せられます場合は、第五条の書類を作成しなかったり保存しなかったり、うそを書いたというような場合と、それから公取その他の役所が調べをいたします際に、その調べを妨げたりいたしました者に対してそれぞれ三万円以下の罰金、これはほかの場合にもよくある程度のものでございまして、いわゆる支払い遅延あるいは勧告に従わなかったことというようなことに対しましては、別段の罰則はないのでございます。しかしこの点は、実はこの法案背後には、常に大体において不公正な取引方法による、独占禁止法本来の規定に基く取締りというものが背後に控えておるというふうにお考え願いたいのでございまして、もしはなはだふらちな親企業がございますれば、この法案にも出ておりますように、勧告というようななまぬるいことでなしに、これは成規手続によりまして審判対象といたしまして審結をいたして、審結に従わない場合につきましては重きは体刑、罰金あるいはそれを閉鎖するというような制裁方法もございますので、この法案自体にはそういう罰則を設けなかったのでございます。なおそういう罰則以外に配当制限とかあるいは輸出入等関係において、いろいろな不利益を与えるということも一つのお考えかとは存じますが、しかしこれもやはり非常に問題でございまして、前回もその点について通産大臣からお答えがあったと思いまするが、そこまでいくのはやはり相当行き過ぎである。なるほどそういうようなけしからぬというような事情勧告の際にも十二分にしんしゃくいたします。なお公表というような方法もございますので、そういうような方法によって適正に親企業自粛自戒を求めたいというふうに私は考えております。     〔鹿野委員長代理退席委員長着席
  13. 松尾トシ子

    松尾委員 そういったような不合理が行われましたときに、公取委が前と違って非常に英断をふるって取締りをするということでございますから、いささか期待をかけておりますけれども、この法律の中には、支払いの不当なるときの不当に悪いという基準が示されておらないのでございます。この間の参考人お話を聞いてみますと、下請業者代表の一人がこういうことを言っておりました。大きな企業の中で発注と納品をするときの経理が別々になっておるものがある。そうしてさて検収後に会計支払い方を要求いたしますと、それがなかなかすぐに支払われない。しかも発注をされるときにこの三つの部門が関連がない、単独になっておるような格好なんで、いかに社会の信用の高い会社といえども会社内容充実がどの辺にあるかということがつかめない、まことに工合が悪い。こういう点を強く申しますと、自分のうちはそういう条件でやってないからといって断わられて、結局仕事がなくなってしまうということを申しておりました。中にはひどいのになると、では特に払ってやるから値引きをしろ、ひどいものは三割から五割くらい値引きをさせられて一部現金でもらうというような格好であるとか言っておりましたが、私の聞くところによりますと、検収から一カ月くらい据え置いて、その後に三カ月手形とかあるいは現金の一部分とかいうのも聞いておりまして、なかなか中小企業下請資金繰りの悪いところでは、この点が非常に悪くて大きな損失をしているし、発展もしないし、しまいには倒産するということになってしまうと思います。こういうような状態にある支払い状態ですから、やはり経済行為は幅を持たせなければやりにくいことはわかりますけれども、不当なる支払い条件基準をお示しになっておく方が下請業者にしてみれば満足がいくんじゃないかと思っておるのでありますが、この点はいかがですか。
  14. 横田正俊

    横田政府委員 どのくらいおくれたらばいわゆる遅滞なく支払わないということになるという点につきましてはわれわれといたしましてもなるたけみんなにわかる具体的な基準というものを指定いたしたいのでございますが、前回も申し上げましたように、この関係は非常に複雑でございまして、その取引性格、その業界のいろいろな取引の慣行とか、いろいろなものがございまして、ちょうど政府支払い遅延防止に関しまするあの法律のように、十五日あるいは三十日というふうな期間をここにはっきりうたいますことは、どうも実情に沿わないように思われますので、ここは今までの経験並びに今後この問題をもう少し掘り下げて参りまして、いろいろの業界について、またそのときどきの経済情勢に応じました適当な期間というものを、いわば慣例法的に築き上げていきたいというのが私どものねらいでございます。なるほど先ほどのお言葉の中にございましたように、検収の係とそれから手形を切る方の会計の係との間の連絡がはなはだ悪く、そのために支払いがおくれておったというような事例も、公取が三年間やって参りましたうちに相当ございまして、公取といたしましてはそういう機構的なまずい面につきましても種々注意をいたし、その点で非常に改善された会社もあるように聞いております。そういう点は今後も十分留意いたしまして、あらゆる面から支払いが合理的に行われるように、いろいろやって参りたいというふうに考えております。
  15. 松尾トシ子

    松尾委員 基準をきめないで行政措置であらゆる方面から一つ大いにやっていきたいとおっしゃいますけれども、私はこの法律は、本委員会通りまして、きょう本会議を通過するであろう百貨店法と同じように、中小企業に対する画期的な二大法案だと思いますから、私個人は賛成しているわけです。けれどもこまかい点は一つ大いに行政措置で、通産省並びに公収等の御指導、御監督によって中小企業効果あらしめるように努力を賜わりたいと思います。  あとこまかいことは田中委員がお聞きなさるでしょうから、私はこれで終ります。
  16. 神田博

    神田委員長 次は田中武夫君。
  17. 田中武夫

    田中(武)委員 先日の質問に引き続きまして、松尾委員質問下請を二つやりたいと思います。大体こういう法律を出して下請代金支払い遅延を防止するということの第一番の理由といいますか、流れていく末は、結局下請金融の問題だと思う。そこで、下請関係企業者金融の問題について若干お伺いいたしたいと思います。  先日も申し上げたように、いわゆる台風手形お産手形といったような手形をもらってやっておる、しかもこれらの零細な企業者が常に大資本を擁しておるところの親企業に対して百万円近い下請代金の債権を持っておる、しかもその下請業者は日歩五銭といったような高利の金を借りて運転しておるというような実情であります。そこで、そういったお産手形とか台風手形というような長期の手形を直ちに金融化するという道はないかどうか。もっと具体的に申し上げますならば、Aという親企業が発行した手形を持っていって、Bという下請企業者がその手形政府金融機関等で直ちに融通を受けるというような措置考えられないかどうか、お伺いしたい。
  18. 石橋湛山

    石橋国務大臣 私もこまかいことは知りませんが、現在でもそういう手形はある程度金融をされているものと思います。けれども、そういう手形であるから特別の待遇をして金融をするということは、これまた信用の問題もありますから困難じゃないかと思います。ですから一つ一つの業態について一つ研究をして、何かほかにその救済の道をはからなければならぬ、かように考えております。
  19. 田中武夫

    田中(武)委員 何かほかにというように大臣はおっしゃったのですが、具体的に一例でもいいですから、こういうようなことがあるじゃないかというようなことがあればお示し願いたいと思います。
  20. 石橋湛山

    石橋国務大臣 今特にいい例はありません。けれども、ただいま玩具の輸出というようなものについての実情を聞くと、私どもは何かそこに手の打ちようがあるのじゃないかというふうな感じを抱いております。ですからそういう実情をもう少し研究して、一つできるだけ具体的にやりたい、かように考えて今調査を進めるように督促しておるところであります。
  21. 田中武夫

    田中(武)委員 いつも大臣答弁具体性を欠いておるわけです。先日も本会議で私が質問いたしましたときに、旧民主党選挙公約パンフレット——政策要綱というのですが、その十四ページに中小企業向け金融機関たる中小企業金融公庫、商工組合中央金庫及び国民金融公庫につき、その運用を改善して能率化を期するとともに、その資金源の増強をはかる、こういうように選挙において、大臣も旧民主党党員として公約されておるわけであります。ところが一例をあげますならば、昨年の二十二国会の場合であったかと思いますが、政府中小企業金融公庫への出資金を削って、そうして頭から六分五厘の利子のついている運用部資金に振りかえるということをなされた、そういうことは明らかに今申し上げました公約の違反だとも思いますが、今後どのように具体的なことを考えておられるか。本会議でも聞いたのですが、うまいこと大臣答弁を逃げられ、本会議だもんですから、それ以上聞かれなかったのですが、今度は具体的に一つお聞きしたいと思います。
  22. 石橋湛山

    石橋国務大臣 それは政府資金を必ず出すということは、これは一般の財政上の関係もありますから、どれだけを出して、毎年々々増額するということは、どこの党が政府を引き受けても、なかなかむずかしかろうと思います。しかしその中でやはり中小企業金融公庫やあるいは商工中金や、国民金融公庫に対して、低利な資金をできるだけ豊富に供給することに努力していくことは、決してその公約に反しておらないと思うのであります。全体のバランスもございますから、どれだけ出せばそれで十分だということは、なかなか言いにくいと思いますが、とにかくやっておらないことはないのであります。やっておると私は言えると思います。
  23. 田中武夫

    田中(武)委員 なるほど二十二国会の場合には、十億円の政府出資金を削っても、二十億円運用部資金に回したのだから、資金源はふえたということは言えると思います。ところが一方六分五厘の利子がついておる。そこで当委員会中小企業者の金融の問題でいろいろ論議されたときに、いわゆる政府機関であるところのこれら中小企業関係金融機関が、能率が悪いとかあるいは手続がめんどうだとかいろいろな問題が出たと思います。それで今後運用を改善してその能率化を期すとあるが、これは資金の関係じゃない。能率化を期するとか運用の改善、そういう点は大臣がやろうと思うならば、行政的にいつでもやれると思います。その具体的な方法一つお示し願いたいと思います。
  24. 石橋湛山

    石橋国務大臣 これは確かにやっております。それでそのために、各金融機関の自己努力によって金利もある程度下げております。たとえば商工中金にいたしましても供給する資金の金利の関係からばかりでなく、運営上において、経営上において、内容を改善しまして、そのために何がしかの金利を下げるような努力はいたしておりますことは、御承知通りでございます。
  25. 田中武夫

    田中(武)委員 いつかもこの委員会で問題になったのは、いわゆる借り入れを申し入れても、手続がめんどうでとやかく言われたりして、窓口ではどうも思うように時期的にも金が回ってこない、それは能率の問題が一つあると思います。そういう点について、改善の方法をお考えであれば、お示し願いたいと思います。
  26. 石橋湛山

    石橋国務大臣 これも絶えずやかましく言うておりまして、ある程度の改善は行われているものと私は信じておるのであります。決して等閑に付して、皆さんの御要求にかかわらず改善をしないということはございません。改善をしてある程度の効果はおさめておるものと存じております。
  27. 田中武夫

    田中(武)委員 金融の問題はこの程度にしておいて、次に移りたいと思います。  先ほど言ったような長期の手形をもらっても、そのうちに親会社が破産をするとか会社更生法の更生手続を開始するとか、こういうような場合があると思います。たとえば最近の例ではオオタ自動車が更生手続を開始したために、八〇%は切り捨てられて、二〇%は四カ年すえ置きとされた。こういうことに対して、本法の趣旨からいって下請業者というか、下請代金の保護という上から、先取特権を認めようという意見もあるのですが、こういうことについてのお考えはどうか。たとえば民法三百六条の一般先取特権の中に一号から四号までありますが、その中に下請代金というような言葉を入れるか、これにふさわしいような言葉を入れて、下請代金の先取特権を認めるとか、あるいは会社更生法の百十九条によりますと、親会社自体の労働者の賃金は、更生手続開始前六カ月の間に発生したと認められるものはその保護を受けることができるようになっている。しかし下請業者の場合にはそれが適用されない。そこで下請業者でも、その中にはやはり数多くの労働者を抱えている場合があるわけですし、その下請代金の多くの部分はこの労働者の賃金なのですから、やはり同じように保護を受けることができるようにしてもらいたい。その親会社会社更生法によりその更生手続を開始した場合に、親会社の労働者の賃金はその手続開始前六カ月間までの分は共益債権としてそれを請求することができる、しかし下請労働者にはそうした場合その保護が受けられない、こういうことになるので、この点やはり下請業者の場合にも会社更生法百十九条の適用を受けられるような方法を考慮してもらいたい。あるいはまた会社更生法百十二条の中を見ますと、手続開始後も裁判所の許可を得て、あるいは少額の場合は任意に支払うことができるようになっておりますが、この中でもやはり下請代金が適用を受けるような方法を考慮してもらいたい。こういうようなことについて、もしできるならば本法の附則で会社更生法の一部を改正するというようなことも考えられると思うのですが、そういうことはできないとおっしゃるかもわかりませんけれども政府はこのごろよくそういうやり方で他の法律を改正しております。たとえば最近問題になっている貴金属なんかの法律で、大蔵省設置法の一部を改正する法律案と同じ趣旨の附則がついておるということもありますから、そういうような点について、会社更生法と民法一般先取特権の問題等に関連し、かつまた下請事業の労働者の賃金の問題、これらについて大臣及び取引委員長双方からのお考えを伺いたい。
  28. 石橋湛山

    石橋国務大臣 御指摘のような法律上の手続ができるかどうか、私は今研究しておりませんから、即座にここでお答えすることはできませんが、しかし御趣旨はきわめて重要だと思いますから、十分研究をいたしまして、できるだけのことはいたしたいと思います。
  29. 横田正俊

    横田政府委員 この下請代金の先取特権の問題につきましては、実際問題といたしましてただいま申されましたような困った面がございまして、たしか二十八年の最初の調査のときだったと思いますが、自分の使っておる労働者にはたっぷり賃金を支払いながら、実質的にはそれと同性質とも言えるような下請事業者自体あるいはそれの使う者に対して一向賃金の支払いがないというのは、ちょうど兄弟がある場合に、兄貴だけうんと食わして、弟にはちっとも食わせないというのと同じであるというような非常に悲痛な訴えがあったことは御承知通りであります。まさにその通りだと思うのでありまして、この点は私どもも趣旨といたしましてはまことに御同感でございますが、ただ法律技術上の問題といたしまして、これを民法なりあるいは会社更生法なりに盛り込むにつきましては、やはり法務省におきまして十分に研究してもらわなければならないように思われるのでございます。もちろんこの法案を提案いたします際にも法務省といろいろ折衝はいたしたのでございますが、この法案自体についても必ずしも法務省は全面的に釈然としてないような面があるのでございますが、その上に持って参りまして、先取特権の問題がもし出て参りますと、これはやはり法律技術的にいろいろ他の諸種の債権との権衡の問題というようなものもございますので、そう簡単に法務省としても結論を下し得ないのではないかと思われますから、この点につきましてはそういう一つの困った問題であるということを十分に承知の上で、その点は後の問題といたしまして一応この法案を出したわけでございまして、もし附則等におきまして改正というようなことになりますと、またこれは政府の問題といたしましてもなおいろいろ議論があることと思います。そのためにこの法案の成立が万一おくれるというようなことになりますと、私どもといたしましてはまことに残念千万でございますので、御趣旨は重々よくわかりますが、この点については今後政府として十分に研究して善処するということで、この法案一つお通しを願いたい、これは私の率直なお願いでございます。
  30. 田中武夫

    田中(武)委員 ただいま大臣からもよく研究したいという御答弁があり、公正取引委員長からも同趣旨の御答弁がありました。そうすると下請代金の先取特権の問題は民法の三百六条あるいは会社更生法の共益債権ということに関連する問題として一応肯定といいますか、趣旨としてはよくわかる、こういうように言われたと了解いたします。従いまして通産大臣及び公正取引委員会において今後本法案の改正等も考えていただいて、先取特権の問題も研究していただく、こういうことの確約があったのだと了承してよろしいでしょうか。
  31. 石橋湛山

    石橋国務大臣 その研究はさっそくいたします。ただ今公正取引委員長が申しました通り、今すぐにそれをやるとまたいろいろのめんどうが起りまして、せっかく諸君の御批判において、完全無欠とは言えないまでも、とにかく下請代金支払いに対してある程度の有効性を持つこの法案に支障を来たさないようにお願いをしたい、かように考えます。
  32. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 関連して。ただいま会社更生法と、それから生ずるところの下請事業の犠牲をいかに少くするかの問題に関して、同僚田中委員から御質問がありましたについて、その趣旨はよくわかる、だから早急に研究してと、こういうお話でございますが、すでにこの会社更生法はただいま公取委の委員長が言われましたように両三年以前に成立している法律でございます。しかもこの法律を審議される場合に私どもはこのことあるを指摘いたしまして、善処方を要望しておいたはずでございます。しかるに今日に至るもなお、その精神はよくわかるが、具体的措置としてはこれから研究しなければならないというようなことでは、私はその言葉は額面通りいただけないのでございます。三年たってもまだできぬということであれば、今度の日鉄法がまた同じようなことでございますけれども、由来保守党の政策が上に厚く下に薄い、そういう政策が行われておると言いますと、中に、そんなばかなことはない、こういって反撃される方がありますが、反撃されるなら私はこれを一番いい例として出したい。会社更生法が行われるときには、親会社がぶっ倒れる、ぶっ倒してはかわいそうだからというので、借金を全部たな上げにする、たな上げにしたおかげはどうかというと、せっかく下請の納めたところの品代金は永久にたな上げなのです。いつの日に返してもらえるかわかりゃしません。要は下請に払わなければならないその親企業の借金を払わずにおいて、そうしてこの会社を更生していく、こういう法律なのです。これではあなた、上に厚く下に薄いというよりも、もっとひどくて、上を生かして下を殺す法律だ、こう言われてもやむを得ぬじゃないですか。このことはすでにこの会社更生法が通るときに指摘して、これじゃ片手落ちだから早急に直すべきであると言うたにもかかわりませず、今日に至ってもまだ研究しなければならぬ、こういうことなのです。そこで私は一体研究はいつの日に完成して、いつの日にこのアンバランスを是正することができるか、これを承わりたい。
  33. 石橋湛山

    石橋国務大臣 私はこの会社更生法が立法されたときのいきさつは存じませんが、全体を生かさなければいけないのですから、親企業をつぶしてしまえば結局子の方もつぶれるということでありますから、バランスをとってやらなければならぬと思います。だから親企業を助けるだけを目的にして下請企業に困難を与えるというような考え方で立法してはならないということは当然でありますから、われわれはそのつもりでかかるつもりであります。今の問題はさっそく役所としては研究を始めまして、いつ何日というお約束もできかねますけれども、なるべく近い機会に何らかの結論を出すようにいたしたいと思います。
  34. 中崎敏

    ○中崎委員 議事進行。この問題については法務大臣の意見を一応聞いておく必要があるかと思うのです。そこで委員長の方で、一つここへ法務大臣の御出席をお取り計らい願いたいと思います。
  35. 神田博

    神田委員長 了承いたしました。
  36. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 もうすでに今日、三年たっているのですよ。三年たてば生まれた子供もはうようになりますよ。ところが依然としてまだ研究しなければいかぬ、こういう御答弁でございます。そこで大臣は、もしよい案があったとするならば、それを早急に実行するところの意思がございますかございませんか。
  37. 石橋湛山

    石橋国務大臣 よい案ならばむろん実行する意思があります。
  38. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは私がここに、お粗末でございますが、政府としては最もやりやすいという案を一つ提案してみます。それはやがてわが党としては立法措置を講じて今国会提出する用意がございます。私どものほんとうの目的は、この会社更生法の一部改正をやり、今提出されております下請代金支払い遅延の防止法案にそれを付加してもらいたい、こういうことですが、公取委員長の今の意見を聞きますと、そうなると延びるから、まあまあとりあえずこれを通してくれ、こういう御意見のようでございます。まあ生みの親の公取としてみればごもっともなことだと思う。せっかくいい案を作って通産省へ持って行ったら、そこでほとんど手をちぎられ足をちぎられ、骨抜きにされてここに出てきた案だから、これは無理はない。せめてこれくらいは無事に通してもらいたいという親心はよくわかります。従って今これを付加しよう、修正をしようとは考えておりませんけれども、一番簡単なことは、会社更生法の一部改正をやればいいのです。そこで私は申し上げたい。どう改正するかといえば、しごく簡単です。二割だけは支払うがあと八割は払わないというのでしょう。その八割分の金額を政府保証をする、そうしてそのときの金利は親企業が持つ、こうすれば下請もいやいやながらまあついていける。それでないと、親企業は助けたけれども下請企業は殺した。親は生かしたけれども子供は殺した。子供を生かすために親が犠牲になったという、こういう親子の愛情美談は聞いたことがありますけれども子供を殺して親だけが安閑として暮していくという、そういう精神は日本精神にも反すると思います。いかに民主主義でもそういうことはあり得ないと思いますが、まさか私の尊敬しておる通産大臣がそういう日本道徳に逆行するようなことをやれとはおっしゃらないだろうと思いますが、いかがでございますか。
  39. 石橋湛山

    石橋国務大臣 御意見は尊重いたしまして、承わっておきます。
  40. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 承わるだけだったら、精神論だったらこれは倫理学の先生にまかしておけばいい。われわれはあくまで具体的に中小企業を指導育成強化しようとしておる。あなたはその最高責任者だ。あなたの時代にこれができたということになると、下請も、なるほど自民党はよい、これは自民党に投票しなければいかぬということになる。それがあなたの時代にできないとなると、あなたの出した手形は、から手形はいけないいけないと言いながら、結局から手形を出したことになってしまう。期日が無期限だ、三カ月手形、六カ月手形ではいけない、ましていわんや台風手形お産手形ではいけないといってこの法律を出したのでしょう。従ってあなたの出した手形もそんないつの日やらわからないような手形では困る。せめて三カ月、四カ月先にはこれを実行に移す。それだったら今国会においてもまだおそくはないです。五月十七日まである。ひょっとしたら六月三日まである。今からでもおそくないから、やる、こういう御答弁をいただくなら質問を終りますが、それがいただけなかったらいつまででもやります。     〔委員長退席、小平(久)委員長代理着席〕
  41. 石橋湛山

    石橋国務大臣 ただいま申し上げました通り、御趣意は十分承わって善処いたします。
  42. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 期日は……。
  43. 石橋湛山

    石橋国務大臣 できればお話のようにいたしますが、これはなお研究いたしませんと、法律のことを今ここでとやかく申し上げかねますから、十分研究いたしましてやるということで御了承願います。
  44. 田中武夫

    田中(武)委員 下請代金の先取特権の問題及びこれと関連しての会社更生法の改正の問題等については加藤ベテランからだいぶ御質問がありましたから次に移りたいと思います。  われわれが今こうして本法案を審議しておるということは、根本的な問題としては、親企業下請企業とのいわば従属的な、封建的な関係といいますか、下請関係親企業に対して経済的に弱い、従って文句の一つも言えない、不公正な取引を押しつけられているところにある。そこでそれらの問題について若干伺いたいと思いますが、先日私大臣にお伺いしたときにも明確な答弁を得られなかった。たとえば昨年二月発足いたしました日本生産性本部、あれの事業計画の中に、下請企業専門化というようなことを掲げて、その推進をされておるようですが、この裏には、いわゆる親企業に対する下請企業の従属関係の強化、こういうことが含まれておるように考えるわけです。そこで大臣としては、親企業下請企業との従属関係をどのように理解しておられるか。いわゆる封建的な——先ほど親子の関係というお話もあったが、私は親子という言葉はそのままでいいと思うのですが、いわゆる封建的な観念の親子であってはいけない、もっと近代的な形態に置く、少くとも同等の立場に立って契約ができるようにしなくちゃならないと思うのですが、大臣はどのようにお考えになっておりますか。
  45. 石橋湛山

    石橋国務大臣 もちろんお話しの通りでありまして、昔流の親子とかあるいは男女関係というような意味の従属関係ではなくて、経済的に対等の位置にある、人間としては同じものだ、こういう考えであります。しかしながら技術的あるいは経済的には、親企業親企業下請下請でありますから、ある意味において従属関係はありますけれども、その従属関係はどこまでも経済的なものだ、かような考えであります。
  46. 田中武夫

    田中(武)委員 下請企業親企業に対して経済的に対等の立場に立って、対等契約ができるように導いてやらなければならない。そのためには下請企業すなわち中小企業の組織化とか、あるいはその組織の育成強化とか、そういうようなことが必要じゃないかと思う。この法律ができましても、やはりそういった裏づけをし、またそのようなことについての育成保護を加えなければ、十分にこの法の目的は達せられない。そこで大臣は行政的措置として、こういう組織化あるいはこれの組織の育成強化、これについてどのように具体的な方策をお考えになっておりますか。
  47. 石橋湛山

    石橋国務大臣 その点は先ほど松尾さんにもお答えしたかと思いますが、下請企業ないし中小企業の実態をもう少しわれわれは調査しまして、そのマーケッティングの問題とか、あるいはデザインの問題、あるいは原料の問題、あるいは金融の問題とかいうようなことについて、もう少し具体的に検討しまして、下請企業が十分親企業経済的に同等の立場に立って契約ができ、仕事ができるように、今までもそのつもりでやってきっておるのでありますが、なお一そうそういう点について調査して、その具体的な結果について、そういう考案をいたしたい、かように考えております。
  48. 田中武夫

    田中(武)委員 この法案の第一条に、目的がうたってあるわけなんです。一応読んでみますと、「この法律は、下請代金の支払遅延等を防止することによって、親事業者の下請事業者に対する取引を公正ならしめるとともに、下請事業者の利益を保護し、もって国民経済の健全な発達に寄与することを目的とする。」こうなっているわけです。前の国会でわが党が提出した下請関係調整法——これと同趣旨の法案なんですが、それには今私が質問しているような、いわゆる対等契約をせしめるため、あるいは封建的な従属関係を清算し、地位の向上をせしめるため、こういうような目的で、文章はこれで満点とは思いませんが、「親企業下請企業との間に存する取引関係の後進性を是正し、」という言葉を入れておるわけなんです。今言っておりますような趣旨、いわゆる下請企業の対等契約ができるように封建的な従属関係を是正する、こういったような文句というか、文章を第一条の目的に入れるというようなことを考えておるのですが、この点いかがでしょうか。この政府案の一条だけでは、そういう点が明確に出てないと思う。
  49. 石橋湛山

    石橋国務大臣 文章はあるいは御趣旨のようなことが入れられるかもしれませんが、私どもとしてはこういう考えであります。この下請代金支払い遅延の防止ということだけでは、今のお話のような下請企業者の後進性あるいは封建性、そういうものの改善というところまではなかなかいきにくい。むしろこの法律は消極的のものであって、ただ消極的に下請業者の利益を保護する。一そう下請業者の位置を高めるとか強化するということは、別途の——法律によらぬでもいいでありましょうが、別途の施策によるべきである、かように考えましたから、特に後進性云々とうたってもあまり効果はないのじゃないか、かように考えます。
  50. 田中武夫

    田中(武)委員 文章に別にこだわるわけじゃないのですが、要はこの法律の目的は、下請関係代金支払い遅延等を防止する、こういうことですが、その基礎は下請親企業との従来の関係を是正する。そうして対等契約ができるというような関係にまで、下請企業地位経済的に向上せしめるというところにある、そういう趣旨に沿うような目的を明確にしていただきたいと思うわけです。
  51. 石橋湛山

    石橋国務大臣 大きなねらいはむろんそこにございますが、この法案そのものがそこまではなかなかいきにくいんじゃないかと考えます。
  52. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは大臣にもそういう気持が十分にあるということで、今後大臣の手腕に待つということにいたしまして、次に移ります。  第二条の第五号ですが、下請代金の定義がうたってあるわけです。これによると、「親事業者が製造委託又は修理委託をした場合」、こうなっておるのですが、下請代金はいわゆる製造委託、修理委託以外にもあると思いますが、そういう場合はこの法によるところの下請代金にならないという解釈ですか、たとえば売買というような関係で。そういう点はどうですか。
  53. 横田正俊

    横田政府委員 下請代金は、おっしゃる通り、この法律規定しております製造委託または修理委託の場合に限るわけでございまして、なるほど正確にはこの中に入らないもので、やはり公取として取り上げるのが妥当なものがあるいは若干あるかもしれませんが、この定義を弾力的に運用して参りますれば、大体われわれの考えておる是正ということには支障はないのではないかと考えておるわけでございます。あるいは、今売買のお話がございましたが、いわゆる売買というような名前を用いましても、その実体においてこの定義にございますような、それが製造委託であるという場合につきましては、そういう名義にとらわれないで取り締っていけるというふうに考えておる次第でございます。ただ法律的に申しますれば、純然たる売買契約というものは、なるほどこの中からは抜けることになるかと思いますが、大体いわゆる下請関係として是正を必要とするというものは、この定義でまかなえるというふうに考えておるわけでございます。
  54. 田中武夫

    田中(武)委員 たとえば親会社から下請に対して材料を支給して、その材料に加工するだけの仕事をして納めるという場合と、それから資材その他材料全部を下請の責任において調達し、そうして物を作って納めるという場合がある。この場合の製造委託というのは、この双方を含んでおるのか、あるいは最初申しました、いわゆる材料をもらって加工する、こういうことだけが製造委託のように考えられるのですか、そういうことについての解釈はどのように思われるでしょうか。
  55. 横田正俊

    横田政府委員 結論的に申しますと、ただいま仰せられました両方がこの製造委託の中に入るわけでございます。ことに加工はやはり製造の中に含めるということになっております。今申されました、材料が親から出ました場合にいたしましても、子の方で材料を調達をいたしました場合も、いずれもこの製造委託に入ると考えます。
  56. 田中武夫

    田中(武)委員 資材一切を下請の手で調達し、まかなって物を納めるという場合は、一つの売買契約のように考えられる。こういう場合もいわゆる二条五項の下請代金である、こういうことで、こういう製造委託、修理委託といったことにこだわらず、広く下請関係であると考えられる代金はすべて適用を受ける、このように解釈してよろしいのですね。
  57. 横田正俊

    横田政府委員 大体そういうふうにお考え願っていいかと思います。いわゆる見込み生産で作ったものを買うというような場合は、これは純然たる売買である場合があると思いますが、大体委託に基きます場合は、かりに売買というような言葉を使いましても、こういう材料を使うとか、あるいはこういうデザインを用いるとか、あるいは製造方法はこういうふうにするとか、大体そこら辺に何らか親の方の希望が入っておるわけでございまして、そういうような場合は問題なとすべてこの下請関係に入るわけであります。
  58. 田中武夫

    田中(武)委員 それから三条に「下請事業者の給付の内容及び下請代金の額を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない。」となっておりますが、これはあくまで双務契約だと思うのですが、これはどういうようなことを想定しておられるのですか。
  59. 横田正俊

    横田政府委員 これはいわゆる下請契約の文書化という、そこまで進んだという規定ではございません。主たるねらいは、下請代金をあいまいにいたしておきまして、そして後になって親がある金額を押しつけるというようなことは困りますので、最初に少くとも下請代金というものははっきりさせて、下請人がそれを心得ておって製作に取りかかる、こういう趣旨におきまして契約そのものを文書化するのではなくて、後になって、代金はこうなっておりますということを下請の方ではっきりとした証拠をもって主張できるようなことにしておきたいというのがこのねらいでございます。従いまして、注文書のようなものでもけっこうでございますし、要するに、何らかの文書によりまして、下請代金給付の内容下請代金の額がはっきりいたしておるものを下請人に渡しておく、こういうことをその規定はうたっておるわけであります。
  60. 田中武夫

    田中(武)委員 「交付しなければならない。」とありますが、これから見ますと、一方的に親企業が書面をこしらえて渡すようなことになると思うのです。この三条の趣旨が、今横田委員長も言われたように、下請契約をやった場合に、後に紛争が起らないように書面ではっきりしておこう、こういう趣旨ならばよくわかるのです。しかしこの文章から受ける感じは、一方的契約のような感じを受ける。少くともこれは双務契約であるから、やはり書面で契約書を作るというような表現の方がいいのじゃないかと思うのです。これですと、片務契約といいますか、一方的な契約のような感じを受けるのですが、どうでしょう。
  61. 横田正俊

    横田政府委員 決して一方的に契約が成立するという趣旨ではございませんので、やはり契約はあくまでも両方の合意によってできます。ただその内容及び代金の額を何らかの文書でもって、後に下請企業者が主張できるように、証拠としてそれを提出できるようなものを手に持たせておきたい、こういうことでございまして、決してこの第三条によって契約そのものが一方的であるということを言っておるわけではございません。
  62. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、この書面というのは、形式はどのようなものであろうとも、いわゆる一つの双務契約書である、こう理解してよろしいのですね。
  63. 横田正俊

    横田政府委員 契約書ではなくて、この規定が実施されました場合には、おそらく注文書のようなものが主としてこれに該当することになると思います。あるいは注文を出しても下請が受けなければそれまででございますが、大体において親が出しましたその話がきまって、それに基いて何かそういう制規の注文書のようなものが渡る、そういう場合が少くとも第三条の実際の動きになろうかと思います。
  64. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、この書面によって、後に紛争が生じた場合に裁判上の証拠書類として提出できる、こういうような裁判所において証拠となり得る性格があるわけでしょう。
  65. 横田正俊

    横田政府委員 裁判所の問題になりました場合にももちろん役に立つと思いますが、主として私どもがねらっておりますのは、その次に出て参ります第四条についての勧告をいたします際、ことに下請代金値引きを強要いたしましたような場合にこの文書が下請側から出て参りますると、非常に有力なる資料になりまして、私ども勧告手続に非常に役立つというふうに考えているわけであります。
  66. 田中武夫

    田中(武)委員 そうしますと、この書面というものは、本法に基いて公正取引委員会勧告をする場合には役立つ、しかし裁判上の挙証の書類としては別に契約書でも作っておかなければいけない、こういうことになるわけですか。
  67. 横田正俊

    横田政府委員 裁判上の問題になりますと、給付の内容下請代金の点につきましては、これだけの裁判上の問題としましてももちろんこれはある程度の証拠にはなり得ると思いますが、しかしさらに一歩を進めまして、そのほかに契約書ができておればもちろんそれに越したことはないのでございます。この三条でこういうものを交付しなければならないといっておりますることは、別に正式の契約書を作ることをやめなければならぬという趣旨ももちろんございませんし、むしろそういうこととは別に、少くともこういうものは交付しなければならないという趣旨でございます。
  68. 田中武夫

    田中(武)委員 第三条の書面があるから別に契約書は望まなくてもいいという趣旨ではない、こういう点をはっきりしていただいておれば、あとで紛争が生ずるような場合は、下請の方も契約書を正式に作るということになると思う。こういう書面があるからこれで万全だと思っておって、いざ鎌倉という場合にその証拠力に問題があるということになると困ると思うので、明らかにしておきたいと思って聞いたわけであります。  次に、先日この第三条に関して、これに期日を明示することはどうかということを御質問したのでありますが、これは第四条の第二号の「下請代金を遅滞なく支払わないこと。」ということと関連してくるのでありますが、もし第三条の書面に期日が書いてあるとすれば、第四条の二号の「遅滞なく」ということは、期日が過ぎてから後ということになってくるわけですが、そういうことになるのか。それとも期日を明確にせよということを第三条にかりに入れて、それがあまりに長い期日が書いてあった場合は、その期日以前に第四条の二号が動くということになるのか。それはどういうことになるのか承わりたい。
  69. 横田正俊

    横田政府委員 期日がきまりましても、その期日が不当に長いものでございますれば、その約定のいかんにかかわらず第二号に触れる場合はもちろんあると思うのでございます。なお、そういう長い期日をきめました場合には、直ちに第四条の第二号に触れることになって公取勧告ということになるかと申しますと、この規定の建前上、一応そうきめましても、そのことだけで直ちに勧告ということにはつながって参らないように思います。ただしそれは時期の問題でございまして、当然にその期日が守られるというようなことになって参りますれば、必然的に四条の二号が動いてくるということは目に見えておりますので、あるいは正式の勧告ということは困難といたしましても、そういうものがございました場合には、公正取引委員会の方にもしそういうことがわかりますれば、一種の行政的な措置といたしまして、未然にそういうことにつきましては親企業に注意を促すという程度のことは、もちろんできると考えております。
  70. 小平久雄

    ○小平(久)委員長代理 ちょっと田中君に申し上げますが、大臣はきょうどうしても十二時半までしかいられないのです。ですから、その他の方で大臣質問される方があれば、先にお願いしたいと思います。——それでは松平忠久君。
  71. 松平忠久

    ○松平委員 ちょっと石橋通産大臣にお伺いしたいと思いますが、下請代金支払い遅延ということは、単に下請代金というようなことではなくて、一般日本商取引というものは、戦前と戦後においては、非常に商業道徳というか、そういうものの低下があると思います。混乱というようなことから、自然そういう現象も起っておるし、もう一つは、資本主義的な考え方、営利というものを極端に考えて、独善的な人たち、いわゆる三等重役というものが出てくるというふうに考えるわけでありますが、そういう一般取引の秩序を確立していくということが、やはり最も必要ではないか。ことに外国貿易においては必要であって、それについては所要の措置を講ぜられておるわけでございますが、こういう下請代金遅延も含めまして、一般代金支払い遅延、もしくはそのほかの商業行為の不道徳性と申しますか、そういうものの是正ということに関しまして、何か具体的な方法をお考えになってるかどうか。実は今回出した法案も、その趣旨に合致しておると思いますが、広く全般に失われたところの商業道徳の確立、新たなる秩序の回復ということについて、何らかお考えになっておるか、その点をお伺いしたいと思います。
  72. 石橋湛山

    石橋国務大臣 これはなかなか大きな問題でありますが、一々法律であれをしてはいけない、これをしてはいけないというようなことで、御趣旨のように全般の商業道徳と申しますか、それの秩序が回復するものではないと思います。これはやはり一つ経済界全般の景気、不景気にもよりましょうつまりお互いに支払い等を秩序あるようにしましてもやっていけるというような経済社会を作ることが、一つ必要だと思います。同時に、やはり道徳問題でありますから、みんなの心組みをそういう方にしむけていく、こういう一種の社会運動的なことで、全体の経済の向上と同時に、道徳的の方面は社会運動的な方法によってみんなの心がけを改めるということが必要であろうと思います。従って経済上の、みんなが支払いをちゃんとしても生活していけるというような事態を作ることについては、これは経済制度としてやり得ることでありますし、やらなければならぬことでありますから、そういう方面については、特に今後注意をしていきたい、かように考えております。
  73. 松平忠久

    ○松平委員 今大臣のおっしゃったことは、御意見と申しますか、お考えを述べたわけで、私の聞いておるところは、通産大臣としてそういうことを将来においても強力にやってもらわなければならぬと思うのでありまして、その点を伺っておるのでありますが、個人の考えとして同感だというような意味の回答しかなかったのであります。場合によっては法律も出さなければならぬだろうし、あるいは法律以外の国民的な運動も起さなければなりませんが、しかしやはり何か具体的なことを考えないと、弱肉強食と申しますか、そういう現象ばかり出てしまつて、結局資本の少いもの、力のないものはうだつが上らないというような結果になるわけであります。そこでそういうようなお考えであるならば、もう少し具体的に大きな国民運動を起していくなり、あるいは所要の法律の整備をするなり、通産省としてもう少し積極的に行政措置をとるなりということが、私は必要ではないかという意味でお伺いしたわけでありますが、もっと具体的に何か計画がございましたならば、それを承わりたい。
  74. 石橋湛山

    石橋国務大臣 これは事柄がいろいろ多岐にわたりますから、一々のことにどういうふうにするということも今急に思い出せませんし、ここでお答えすることもできません。たとえば支払いの問題のごときは、銀行の組織あるいは金融の難易というようなことと非常に関連いたしますから、われわれとしてもできるだけ金融の疎通をはかって支払いのできるようにする。これは親企業で特に悪意で長くひっぱるものもあります、あるいはまたある人間がそういうことを始めますと、一種の流行で、あれが長いからおれのところも長くていいというような傾向になりがちであります。これは銀行その他の金融機関とも十分打ち合せまして、支払いができるようにする。根本は一時の非常な金融難で、支払いが実際親企業においても困難であったところから、だんだんかような悪風が起ってきておると思います。その根本を洗うということはぜひ必要だと思いまして、これには相当努力をしております。直接の所管は大蔵省に関しますので、大蔵大臣の方とも打ち合せまして、金融の改善ということについては特に協力をしていきたいと思います。
  75. 松平忠久

    ○松平委員 もう一、二点大臣に伺いたいのです。そういうお考えであるとするならば、大きな資本を持っておる者の横暴と申しますか、支払いに関しましてもそういうことがあるような気が私はするのです。それを是正させていくということにしなければならぬわけであります。中には相当悪質なものもある、あるいは中には、ここでも問題になりましたけれども、部課長や何かが自分の手柄顔に相手をいじめつけるということが出世の道であるというように考えておる親企業もまだ相当あると思います。そこでそういうものを是正するということは経済罰というか、そういうものを強化していくのが順当であるというふうに考えて、私どもの前に出した下請企業法案にいたしましても、たとえば支払い遅延したというような場合には、一つ罰則的な意味でそれに利息をかけるということの方がかえってぴんとくるのではないかというふうに考えて、そういう案も出したわけでありますが、それらの経済罰則の一種であるところの、要するに支払い遅延したものはそれだけ何か利息を負担しなければならないのだという思想を植えつけていく必要があるのじゃないか、こういうふうに思うのですが、今回の法案の中にはそういうものが抜けておるわけであります。それについてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  76. 石橋湛山

    石橋国務大臣 これは通産省の当局や公正取引委員の実際経験によってこの法案を作ったのでありまして、私一々そういうこまかいことは存じませんが、しかし支払い遅延したものに延滞利子をかけるということがどれだけの効果があるかは、相当研究の余地があると思います。中には租税のごときものも延滞をした方が金利が安いというような時期も——まあその時期にもよりますが、金融事情いかんによってはそういうことも起りますから、延滞利子があるのをいいことにして合法的に延滞するという人間も起りがちでありますから、やはりこれは全体の経済界の状況がそういうことの必要がない、またそういうことをすることは、結局大きな意味において損だというような社会状態を作る必要があるんじゃないか。下請業者をあまりいじめればいい部品が得られないとか、委託加工する場合にもいい加工をしてもらえないというような状態を作ることが一番必要で、先ほど申しましたように、そういう意味において私は、中小企業経済的ないし技術的の強化が最も必要じゃないかと考えております。
  77. 松平忠久

    ○松平委員 最後に一つ伺いたいのですが、日本の産業の特徴は下請産業が非常に多いということであろうと思うのですが、日本の将来を考えまして、大企業のもとにそういう下請企業をずっと育てていくという産業形態がいいのか、あるいはまたそうではなくて、何でも自分である程度やっていくというような、一貫作業的な方向へ行くのがいいか。これは業種によって非常に違うと思うのですが、大きな考え方で日本の産業構造を考えてみた場合において、一体これはどういうふうに整備をしていくのがいいというふうにお考えになっているか。最近系列化の問題も出てきておりますし、整備されるものは整備されるというような方向にもあるのであります。また一方には一貫作業的な考え方の企業も出てきているわけであります。なかなか大きな問題であろうと思うのですが、こういう中小企業を中心とする下請企業的なものは将来どういうふうにこれをやっていこうという根本的なお考え通産大臣にはあるかどうか、それを最後にお伺いしたいと思います。
  78. 石橋湛山

    石橋国務大臣 現状におきましては、日本中小企業者が非常に多いということで、おのずからそこに下請企業というものも起るのでありますが、これは業態にもよりましょうけれども、たとえば、ことにこれから日本としても発達させたいと思いますところの機械工業とかなんとかいうものにおきましては、下請制度というものはこれは日本だけじゃない、どこの国でも必要なものじゃないか。全部の部品を大きなメーカーが一貫して作るということは、これは経済的にも不利益でありましょうし、またいいものを作るゆえんでもないと思うのです。ただ日本はいかにも中小企業者が現在多過ぎるものですから、下請業者の間に一種の過当競争があって、そこに親企業からつけ込まれるすきがあるということだけは疑いをいれないのですから、これを改める方法は、全体の産業規模が大きくなって、現在の中小企業が全部下請をしましても十分消化できるだけの産業規模になる。さもなければ、下請中小企業の方を相当合同するとか、整理するとかいうことをするということでありますが、どうもただ整理をする、減らすということはなかなかむずかしいことでありますので、あまり好ましいことではありません。しかし現在は御承知のように、組合を作らせるとか、あるいは特にある程度の補助金等を与えて専門化を推進するとかいうことで、ある程度は整理の方面に向っておりますが、理想は産業全体を大きくして、中小企業者が十分仕事があるようにするということだろうと考えております。
  79. 中崎敏

    ○中崎委員 大臣、時間を何だか早くおたちのようですから、ごく取りまとめて簡単に質問してみたいと思います。この法律案が提案されまして、どうもわれわれの見た感じでは、非常になまぬるい感じなんです。実際においてこれが法律になって、従前に比べて下請業者に対して実質的にいかなる利益がもたらされたか。形だけは一応法律ができることになったとしても、実質的に真に下請業者がこれによって救われるというような効果が期待できるのかどうか、その点をお尋ねしたい。
  80. 石橋湛山

    石橋国務大臣 それは実際に当っている公正取引委員長にお聞き願う方がいいのかと思いますが、この法案は先ほど委員長から申し上げた通り、今まで実はやっておりましたことを法文化して、さらに有効にしようというのが大体においてこの法律案を作ったねらいであると思います。従って御質問のようにこれはやることは今までと大して違いはないかもしれませんが、私はこの法律によって一そう有効に行われるもの、かように考えております。
  81. 中崎敏

    ○中崎委員 今まで公取でやっておったことと言われるのでありますが、やっておったことであるのなら、私的独禁法並びに公正取引の保護に関する法律、こういう法律がりっぱに現存しておって、これで十分にやればやれる。それが実際においてどうしたせいか、こういう法律を別に作っちゃって、しかもこれが何ら実体的な性質を持たない、なまぬるい法律であるとすれば、結局においてないのもあるのも同じじゃないか。場合によれば逆にこの法律のできることによって弱体化するのじゃないか。たとえば第八条などを見ますと、独禁法並びに公正取引の確保に関する法律の適用を除外している。ある意味においてちゃんとその二つの法律によって、それに違反したものは当然処罰すべきものを、これによって逆に免除しているというような形もできてきて、逆に弱くなってきているということさえも現にあるのだということになると、何のことかわからないと思うのでありますが、この点においてほんとうに、今まで運用の上において公取が怠慢であるというか十分にやらなかったことをあなたがほんとうに腹をすえてやるというお考え方になるならば、こういう法律はなくてもいいのじゃないかと思うのであります。これはきわめてなまぬるいから、社会党が出したようなああいうことになれば、また実際においてより目的を達するかもしれませんが、こういうなまぬるいような法律案によれば大した効果はねらえないのじゃないかと思うのでありますが、この点いかがでありますか。
  82. 石橋湛山

    石橋国務大臣 その点も詳細については委員長からお答えを願いますが、この法律によりまして、今までむろんやっていないのじゃありませんけれども中小企業庁その他通産省の方から公取の活動に援助をしてそうして公取の活動をもっと有効ならしめるというところがねらいであります。それからこの第八条の解釈は委員長からしていただく方がいいかと思います。勧告に従った場合は公取の……。
  83. 中崎敏

    ○中崎委員 独禁法で除外されるということになるわけですね。
  84. 石橋湛山

    石橋国務大臣 そのときには公取が特にその上に勧告に従ったものを処罰する必要もなければ指示する必要もないと思う。従ってこれは一種のボーナスで、だから勧告に従わせる一つ規定ではないかと思います。
  85. 中崎敏

    ○中崎委員 その点ですね。言いかえますと、こういう規定があれば、かりに勧告を受けるまではじっとして従わないで——本来からいえば私的独占禁止法に触れるからそういうことをやっちゃならぬということで自分たちが自省というか順法精神を発揮してやるにかかわらず、勧告を受けるまではじっとしてやらないという結果になる。悪いことを奨励するような結果になる法律なんであります。そういう意味においてどうも適当でないと思うのであります。これは後ほど大臣が行かれた後に公取委員長にも十分に質問してみたいと思います。  次に六条でありますが、これは中小企業庁長官が、親会社が不当だと認められるようなことをやったような場合に、その事実があると認めるときは、公正取引委員会に対して勧告をすることができるということになっておるが、そういうことがあったら中小企業庁長官は必ずやらなければならぬとしたらどうか。そういうことを発見しても、場合によれば自分の方で目をつぶってまた知らぬ顔をしているということになると、何だか屋上屋を重ねて、逆に意味がなくなるから、必ずこれを勧告しなければならぬということにしたらどうかと思うのでありますが、この点いかがでしょうか。
  86. 石橋湛山

    石橋国務大臣 これは「公正取引委員会に対し、この法律規定に従い適当な措置をとるべきことを求めることができる。」とあるので、私はこれで一向差しつかえないのじゃないか、求めなければならぬということと大差はないのだと思います。中小企業庁としましては終始注意をいたしまして、公正取引委員会の直接の手をわずらわす必要があると認める場合には中小企業庁がそういう処置をとる。しかしこれは必ずしも中小企業庁の権限でもありますまいから……。なおその点は一つ専門家に聞いてもらいましょう。
  87. 中崎敏

    ○中崎委員 それから最後に、親会社下請会社に対して手形を出したところ不渡りになった。ところが元来下請会社というものは経済的な力が十分にないから、ことに思わざるときに不渡りを出されると、今度はそれを見返りにして自分の方で小切手や手形を切ると、それがまた不渡りになる。ところがその理由いかんにかかわらず、その子会社自分手形、小切手を不渡りにしたという、結果的にそういうことによって、やはり手形交換所で首をちょん切られてしまうのです。とうとう取引停止になっちゃって、重要な、いわば死刑の宣言を受けるような形になる。だからそうしたような場合においては、いわゆる自分の責任によらないで、親会社のこうした不渡りによって子会社手形、小切手を不渡りにせざるを得ないというような、こういうことが明らかになった場合においては、手形交換所において何らか救済の道があるのかないのか。これは単なる経済行為とも見られますが、こういうふうなものについては行政措置どもあわせて含んで、何らかそういうものについての措置を講ずる必要があるのじゃないか。政府は一体これに対してどういうふうな措置を講ずるような考え方を持っておるか、あるいは今日までどういう努力をされたかということをお聞きしたいのであります。
  88. 石橋湛山

    石橋国務大臣 それは場合々々によってそういうのを救済しなければならぬことについては行政的な措置も相当とっておると思いますが、しかし一般的に、そういう手形が不渡りになったからといって、これを特別に扱って中小企業者を救済するということは、これは金融の建前からいいますと非常に悪用される懸念がありますから、一般的にはできないだろうと思います。
  89. 中崎敏

    ○中崎委員 この法律案によりますと、親会社下請事業者に対して発注した、そういうような場合においては、直ちにそれを証明するような必要な事項を書いた書類を交付する——交付するという文句がいいか悪いかは問題でしょう、いわゆる対等な立場に立っていない考え方に立っておると思うのでありますが、いずれにしても書類を交付するのは事実なのです。その書類が偽造だなんていうことになるとこれは問題でしょうが、そういう書類を持って、こういう事情によって、ちょうどこの辺で手形を受け取ったということは明らかになるのだから、それによって不渡りになったということは、たとえば手形交換所へ行っても取引所へ行っても銀行へ行ってもこの書類で証明は十分できると思う。そういうふうな場合におきましては手形交換所が、例の不渡りをやったことによって取引を停止しないような、そういう申し合せといいますか、政府側においてあっせんしあるいは指導するようなことはできることではないかと思うのでありますが、この点いかがですか、お聞きしたいと思います。
  90. 石橋湛山

    石橋国務大臣 今も申し上げますように、そういう書類を持って相談所なりあるいは企業庁などへかけ込んできた場合には、できるだけの処置はとれると思います。しかしながら書類があるからもうこの手形は有効だ、こういうことで一般的にこれを救済するわけにはいかぬと思います。これはもうそうすれば、その書類を悪用されるということは幾らでもあることでありますから、金融機関としてはそれだけの書類によって、そのもとの書類があるからこの手形は有効だというようなわけには、これはいかないだろうと思います。
  91. 中崎敏

    ○中崎委員 そうでなしに、親会社が子会社に対して不渡り手形を出した、それがために子会社は結果的に自分手形や小切手を不渡りにしなければならなくなった。そういう場合は一般的に言えることなのです。手形交換所においてその証明がはっきりされた場合においては、これは不渡りを出した子会社を処分しないで、取引を停止しないで、さらに取引を続けてやるというふうな措置を講ずるように、大蔵省などを通じて、たとえば中小企業庁ども介在して、そして一応話し合いを進めてみて、具体的にこの点はここまでいけるのじゃないかというふうな問題が、抽象的に、一般的にあり得るのじゃないかと思うのでありますが、そういうふうな努力をまずやってみるような考え方があるかないかということを聞いておるのであります。
  92. 石橋湛山

    石橋国務大臣 これは技術的の問題になりますから、ここできっちりと結論を出してお答えするわけにもいきませんが、御趣意は一つ研究いたしましょうが、非常にむずかしいことだろうと私は想像するのです。それだけであります。
  93. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 関連質問大臣に簡単にお尋ねするのですが、結局この法律が出ましても、親会社に対して下請会社が紛争を起すというのは、いよいよ最後のどたんばだと思うのです。そうでないと、そういうことで親会社の名前を外に発表するようなことは、親会社に遠慮して、なかなかできない。だから私はこう考えるのです。最後のどたんばには、公取委もありますけれども、各地方の通産局に相談所のようなものを設けて紛争の調停をする、この法律を生かすようによく相談に乗ってやって、両者の意見を聞いてやるというような親切があってしかるべきだと思う。金融の問題であなたの言われておるようなことも相当にあるでしょう。しかし中央だけに何しておくだけでなく、法律ができましても、下請業者のよりどころというものをこしらえてやることがこの法を生かすゆえんではないかと思います。そういう点に対しては別に人をふやすということでなしに、通産局の内部にこういう紛争処理の相談にあずかってやるところを設けてやる。そういうことにして、こしらえた法律を生かすというようにしなければ、ただこしらえっぱなしでは親切でないと思う。そういう点に対しては下請業者は非常に期待を持っているのです。最後のどたんばにいったときに、これはこうすべきだということを通産局の中で相談に乗ってやる。法はありますけれども、法ばかりではものを言わぬのでありまして、人為的に物事を解決する、紛争を処理してやる相談機関くらいは、あなたの方の省内でできることであると思いますが、大臣のお考えを伺いたいと思います。
  94. 石橋湛山

    石橋国務大臣 その点はかねがね注意してやらせるようにしておりまして、中小企業庁や地方の通産局やあるいは各商業会議所等にあります相談所などを利用するように常に申しております。またこれをできるだけ利用するように機構を整備しております。なおこの法律によっていきなり公取委に訴え出ると、お話のように下請業者が首になるという懸念がありますので、ふだん書類を備えておいて、通産省の方で調査して、そしてこれはいかぬと思う場合には一般的に公取に話をして処理をしてもらうというようなことで、ちょっとそこにクッションを置きまして、いきなりどの下請が訴え出たということがわからぬようにするということもこの法律一つのねらいであります。
  95. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 通産大臣は非常に下情にも通じておりますし、こういうこともおわかりだろうと思うのですが、ここで法案を通過さしても、そういう答弁はされても官庁の仕事はなかなかそういうことはやらないのです。だから大臣の方で、やはり地方の通産局に対して、省内で研究されて、もっと処理のしやすいような場所を一つ置いてやるということは私は大事な問題だと思う。通産省でも地方の通産局でも相当人が余っているのですから、そういうように一つの親切な処理場所をこしらえてやることは、非常に下請業者のあれになると思うのです。それで商工会議所なりあるいは地方では——親会社がどういうような状態かということは地方が一番よくわかっている。だからそういうことを最後に生かす意味において、われわれの申し上げていることをぜひあなた方でやっていただきたいと思う。それでないと、そういうより場所がないことになると、これはこしらえてもなかなかむずかしい問題だと思う。この点だけはぜひ実施に移していただきたい、かように思うわけであります。
  96. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほど質問中に大臣への質問が中に入ったので、十分明確にならなかった点だけをまず明確にしていただきたい、このように思います。  第三条で下請代金の額、こうくると、先日も質問したのですが、支払い期日ということがぜひほしい感じがするわけなんです。そこで先ほどお伺いしたわけなんですが、かりに支払い期日を記載せよとした場合に、その期日があまり長ければ、期日がこなくとも四条二号の遅滞なくというところとのあれで期日前に勧告ができるのかどうか、これをお伺いしたのです。公取委員長から御答弁があったのですが、明確にわからなかったので、簡単でよろしいですから、この第三条にかりに支払い期日ということを入れて、その期日を親会社が何月何日と書いた場合に、その期日がこなければ四条の二号の遅滞なく支払わないことの勧告が発動できるのかできないのか、その点なんです。これは簡単でけっこうです。
  97. 横田正俊

    横田政府委員 先ほどの私の御説明は少し不十分でございましたので、もう一ぺんはっきり申し上げますと、先ほど申しましたように、この日をどうきめましても、それが客観的な標準に照らしましてきわめて長過ぎるということになりますれば、結局第二号の問題になるのでございますが、しかし契約をしたその瞬間にすぐに違反になるかと申しますと、これは先ほど申しましたように、二号は「遅滞なく支払わないこと」ということになっておりますから、直ちにこの第四条に違反するという事態にはならないのでございますが、しかし結局その約束が守られる、そのままでいきますれば遅滞することになりますので、その遅滞は四条に基きます正式の勧告でなく、行政的な一つの指導といたしまして適当な是正を親企業に命じて勧告をするということができるのではないかと思います。しかしさらに進みまして、客観的にその期日以後になっては、やはりこれは第二号の遅滞なく支払わないことになるという場合に至りますれば、これは契約上の期間が二、三カ月先にきまっておりましても、この段階になりますれば、すでに第四条の第二号違反でございますから、第七条の規定に基いて正式の勧告ができる、こういうふうに考えております。
  98. 田中武夫

    田中(武)委員 答弁が長いので、わかっておることがしまいまでいくとわからなくなってしまったのです。それではもっと具体的にお伺いしてみますから、簡単に言っていただきたいと思うのです。それは私の考えとしては、第三条に支払い期日ということを入れた方がいいのじゃないか、こういう感じを持っておるわけです。ところがもしこれを入れた場合に長く先の期日を指定されたような場合に、第四条の第二号の遅滞なくということの動きが、期日が伴わないと遅滞なく支払わなかったということにならない、こういうことになるので、期日ということをかりに修正案として出した場合に、かえって中小企業下請業者に結果的に悪くなるのじゃないかという危惧もあるわけです。しかしながら今委員長の言われたように、期日ということをかりに修正として入れた場合も、常識的に考えた場合に、あまりにも先の期日を指定した場合に、その期日以前に遅滞なくということで勧告ができる、こういうことがあるから、第三条に期日ということを入れた方がいいのじゃないか、こうも考えられるのです。それでは入れるべきであるということ、これははっきり申しまして党の態度ではございません、私の考え方としてはこれを修正したいという考え方を持っておるのです。これはした方がいいか、あるいはそれを運用されるおそれがないかということを心配しておるのでお伺いしておるわけです。
  99. 横田正俊

    横田政府委員 今仰せられましたような心配は、かりにここに期日ということを入れましても、今おっしゃったような心配は私はないと思います。ただ前回申しましたのは、ここに期日を書かなければならないということになりますと、違反にはならない程度でぎりぎりの長い期日を——むしろ親が今まで金を払っておったものまでがそのぎりぎりの期日を書くようになりはしないかということが、私どものあるいは杞憂かもしれませんが、心配でございまして、その意味において期日を書かなくてもよろしい、書かなければならないということにしなかったわけでございます。今田中さんの御心配のような趣旨では、これは期日というものを入れましてもそういう御心配はないと思います。
  100. 田中武夫

    田中(武)委員 委員長答弁によると、半分聞いておると入れてもいいように思うのですが、あとずっと聞いておると入れぬ方がいいのじゃないかという感じが出てくるのです。まあ結論として期日を入れたとして、第四条第二号の発動が期日を入れたためにおくれるようなことはない、こういうように了承いたしますが、それでよろしゅうございましょうね。
  101. 横田正俊

    横田政府委員 そうです。
  102. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 関連して一つお伺いします。公取委員長にお聞かせ願いたいのですが、今田中委員質問は、要するに支払い期日というのを第三条に入れれば実際契約をするときに、その圧力によって、支払い期日を、延期した期日が明記されるじゃないか、そうすると法の精神が死んでしまうのじゃないか。なぜかというと、第四条が発動していくには少くとも支払い期日前に支払えということは言えませんから、支払い期日が終って、そうしてその後において遅滞なく支払ったかどうかという問題になると思うのです。そうすると契約の当初において、すでにこの下請企業は弱い立場にあるから、明示することによって、長い、たとえば極端に言うと六カ月あるいは一年後に払う、こういうことを契約として書いたとします。そうすると第四条によって発動しようにも、公取の入っていく余地がなくなるのじゃないか、支払い期日を書くことがかえって法の精神を阻害しやしないか、こういうことを聞いていると思うのです。ところが委員長の方はいや、その点においては御心配ございません、こういうことですからどうも理解できないのですが、その点を一つ明確にお答えを願いたい。
  103. 横田正俊

    横田政府委員 この点は非常にむずかしい問題が含まれておりますが、要するにわれわれといたしましては約定の期日がどうありましょうとも、この第二号の「遅滞なく」ということが、諸般の事情に照らしまして非常におくれておるということになれば、約定の期間いかんにかかわらず支払いを怠ったことになると思います。従いまして勧告対象になる、こういうふうに考えております。
  104. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 よくわかりました。要するに支払いの期日というものが極端に一カ年なら一カ年と書いてあっても、第二号のように「下請事業者の給付を受領した後、下請代金を遅滞なく支払わないこと。」というような場合には、いや、これは三カ月で払わなければならぬ、こういうように公取としては考える、そういうように理解してよろしいのですか。
  105. 横田正俊

    横田政府委員 その通りでございます。
  106. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは質問を続けます。  第四条によりますと、一号から四号まで親事業がしてはならない事項を書いているわけですが、この四つの事項だけですべてが解決するとも思われない。そこでたとえば、先日も私申しましたが、こういう法律が出た、そうするとこれまでと違って代金はある程度早く払わなければならない、そこで前金で払ってやるから、あるいは近い期間代金を払ってやるから従来よりは単価を安くせよ、こういう不公正な取引を押しつけてくるような危険もあるのじゃないか。そこで単価の切り下げというようなことその他も考えられるので、何かこの四つの事項以外に、まだ一般的に考えられるいろいろな問題を含めた、たとえば、右各号に準ずるような行為というような言葉が正しいかどうかわかりませんが、そういったこの四つの事項以外のことにも勧告ができる、こういうような措置が必要じゃないかと思うのですが、公正取引委員長としてはこの四つの事項で大体のところ押えられると考えておられるか。先ほど私が申しましたように、従来よりか単価を切り下げて注文をするということが押しつけられる可能性が出てくると思いますが、それらの点については防止の方法があるのか、どういうように考えておられるか承わりたい。
  107. 横田正俊

    横田政府委員 大体公取といたしましては、さしあたりこの第四条の一号ないし四号について勧告をすれば足りるもの、こう考えておりますが、ただいまのうちのいわゆる代金の単価の買いたたきと申しますか、単価を最初から不当に下げて注文をするということに対しましても、なるほど現実にそういう事情があるようでもございますし、あるいは将来そういう方向に問題がいくかもしれない心配もないではないのでございますが、しかし一体下請代金がどれくらいであったならばそれがいわゆる公正な額であるかということになりますと、それは個々の具体的な場合につきまして非常に困難なことでございますし、一種の統制価格というようなものでもございませんと、この点はどうもはっきりいたさないのでございます。従いましてこの問題について一々公取がこれを取り上げてこの単価が低過ぎるとかいうことを言って参るということは、実際に困難が伴うのでございます。ただ極端なものにつきまして、だれが見てもそれがいかにも過酷であるというようなもの、あるいは自分の系統の事業には正当な単価で出しておって、全く同じ製品をほかのものに委託します場合には非常に違った値段で下請に出すというような、いわゆる明白な差別的な扱いというようなものに対しましては、やはり公正取引委員会としましても、場合によりましては、これはこの法律では表面に出て参りませんが、いわゆる不公正な取引方法といたしまして、独禁法本来の規定を働かせることができるのではないかというふうに考えております。いずれにいたしましてもこの単価の問題は実際問題として非常に困難な問題でございますので、この点は一応われわれといたしましてももう少し研究さしていただきまして、あるいは将来そういう弊害がきわめて顕著に出て参りますというような場合には、またこの法律の問題としても考えてみたいというふうに考えております。
  108. 田中武夫

    田中(武)委員 今横田委員長は本来の独禁法でというようなお話もありましたが、本来の独禁法に基くのならばこの法律もあまり要らないということになると思います。ここで四条に列記してある四つの事項はいわゆる親事業と下請事業との間における公正取引の具体的な事例だと思います。こういうことをしてはいかぬということだと思うのです。そうすると一つ一つ具体的な事例をあげた場合、まだそれ以外にあるかもわからぬから、大体こういうような規定をした場合には右に準ずるとか、あるいはその他何々とかいうような、最後に一般的な網をかぶせるような規定があるわけなんです。私の言っているのは単価を切り下げて注文するかもわからない、こういうことは一つの事例であります、そのほかにもあるかもわからない、だからそういうような一切の不公正な問題について最後にけじめをつけるような意味規定が必要じゃないか、こう申し上げておるのですが、それはどうなんでしょう。
  109. 横田正俊

    横田政府委員 それは一つ規定の仕方としましてはあるいはそういう仕方もあるかもしれませんが、われわれとしましては、大体この四号までで一応足りるというふうに考えております。そういういわば落ち穂拾い的な、すべてをそこに網羅するようなものを一号つけ加えることにつきましては、この法律の建前の問題としましてもまたいろいろ考えなければならぬ点もございますので、一応この四号で発足さしていただきまして、なおいろいろやってみましてそういうものが出て参りましたら、その場合にこの法律を改正するなり適当な措置をとれば足りるのではないかと考えております。
  110. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは次に六条の関係について、先ほど中崎さんからも質問があったようですが、この六条を見ますと、「調査し、その事実があると認めるときは、」と上に制限があるわけなんです。そうすると最後に「求めることができる。」というのは、上に前提を作っておいて「できる。」ということはあまりにも弱過ぎるのじゃないか、こういうように私も感じるわけで、先ほど中崎委員からも同じような趣旨の質問大臣になされたと思うのです。「調査し、その事実があると認める」ここまできたら必ず求めねばならぬというのがほんとうじゃないかと思うのですが、どうなんでしょう。
  111. 横田正俊

    横田政府委員 これは大体中小企業庁長官の権限の規定でございますが、本法に基く措置と申しますのは、要するに公正取引委員会が職権で本来みずからやるべきことでございまして、ただ実際問題としましてなかなか公取だけでやれない実情もございますので、中小企業庁長官の方でいろいろ発見をいたしました場合にそれを公取の方へ知らしていく、公取がそれに基いて活動をする、こういう仕組みになっておるわけでございまして、ちょうどこの第六条と同じような規定中小企業庁設置法の中にございまして、それを独占禁止法に違反する事実があると認めた場合に中小企業庁長官公取の方にやはり適当な措置をとるべきことを求めるというような趣旨にできておったわけでございます。要するに公取が主である。従って中小企業庁長官としましては措置を求めるという形で規定されたものと考えております。
  112. 田中武夫

    田中(武)委員 それではこの六条によって中小企業庁長官から公正取引委員会に対して要求があるなしにかかわらず、別個な立場から常に公正取引委員会は動いている。それ以外に中小企業庁長官が気づいたときに知らしてもらうのだ、そういうことなんですね。中小企業庁長官が言うてこなければ公正取引委員会が動かない、そういうことじゃないのですね。
  113. 横田正俊

    横田政府委員 そういうことではないのでございまして、それは本来公取がどんどん独自の見解で取り上げるべきものは取り上げなければならないのでございますが、それを横から中小企業庁長官に援助してもらう、こういう趣旨でございます。
  114. 田中武夫

    田中(武)委員 この下請代金の問題とその先取特権の問題、あるいはそれと会社更生法による親会社手続を開始せられた場合の問題等に関連して法務省の方に質問がありますので、それを急いでおられるようでありますから、私の質問もう一つで終って法務省の質問に入りたいと思います。  最後に罰則の問題ですが、先ほど松尾委員からも質問があったと思うのですが、三万円以下の罰金というのはあまりにも軽過ぎるんじゃないか。たとえば百万円近い下請代金を滞納しておる場合、利子だけでも三万円以上だと思うのです。そうするならあえて犯して経済的に得な方をとろうという親企業も多いと思う。これはたとい一万円でも五千円でも罰金というようなことを受けるならば名誉にも関するし、会社信用にもかかわるからそういうことはやらないだろう、こう善意に解釈もできますが、そういうような良心的な親企業ならばそうそ下請企業代金をほっとくわけもなかろう、ほっとくようなものなら経済的に考え罰金が安くつく、こういうことになったらあえて犯すということもあろうと思うのですが、軽過ぎると思いませんか。
  115. 横田正俊

    横田政府委員 この罰則は先ほども申しましたように支払い遅延しておることそれ自体の罰則ではございませんので、いわゆる書類の作成、保存義務に違反した場合及び公取その他の官庁から報告を求められて調査に参りました際にそれに従わないとが、妨げる、そういうような場合の規定でございまして、そういう規定といたしますと、この三万円以下の罰金というのは普通の、ほかの同様の場合に規定されたものとこれは同じものでございまして、やはり法務省の刑事局の方に来てもらって相談いたしました結果設けられたものでございます。問題は支払い遅延そのものに対して何らか刑事上制裁を加えるべきではないかという御趣旨だと考えます。それは先ほども申しましたように支払い遅延そのものに刑罰制裁を加えることはかなり行き過ぎではないかということで、これは公表の手続なりあるいは場合によってきわめて悪質なものにつきましては、独占禁止法に立ち戻りまして審決をいたしますので、審決に従わなかった場合にその審決違反の罰則が別にございますからそれで制裁を加えれば足るのではないか、こういう考え方でございます。
  116. 田中武夫

    田中(武)委員 そうするとこの支払い遅延を、いわゆる本来の目的の勧告に違反した場合は、独禁法に戻って、それによって処罰する、そういうことですね。  まだあるのですが、会社更生法関係の問題がありますので、質問を留保いたしまして、バトンを多賀谷委員にお渡しいたします。
  117. 小平久雄

    ○小平(久)委員長代理 多賀谷君。
  118. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実は法務省にお聞きいたしたいのですが、これは下請企業の納入代金の保護といいますか、これについてお聞きいたしたいと思うのです。一般的にある企業が倒産をする場合に、下請企業代金を確保する、こういう道がどういう点にあるか、これをまずお伺いいたしたいと思います。
  119. 吉田昂

    ○吉田説明員 現行法におきましては、この点に関しまして別にございません。
  120. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 現在の法制では下請代金の保護に関する規定はない、こういうお話であったわけでありますが、実は会社更生法ができまして、そうして経営の行き詰まった会社で、まだ会社の更生の余地のある会社につきましては、この法律の適用をして、そうして再建をするわけでありますが、御存じの通りこの法律下請企業を圧迫する法案である、こういう声が起っておるわけであります。日本パルプにいたしましてもこの法律の適用を受けましたおかげで、かなりの下請企業が倒産をして問題になりました。また最近園池製作所が近く更生手続を始めることになっておりますが、その下請企業が、代金支払いが得られないのではなかろうかというので、非常に社会問題化しつつあります。さらに昨年一月更生手続を始めましたオオタ自動車の更生計画案は、このほどまとまったわけでございまするけれども、これにいたしましても下請代金は八割までが切り捨てになっておる。しかもその残りの二割が四年間据え置きで、さらに五年間の年賦で支払う、こういうような状態になっておるわけでありますが、この親企業を更生させる、それによってあらゆる関連の企業はどうでもいいのだ、こういうことでは相ならぬと思うのでありまして、法務省としては、この法案実施についていろいろ要望なり陳情なりがきておると思うのですが、一体どういうように改正をされるおつもりであるか、お聞かせ願いたいと思います。
  121. 吉田昂

    ○吉田説明員 会社更生法の百十九条につきましては、今お話のように、改正の要望が参っておりますが、いろいろ問題がありますので、法務省としてはまだ態度を決しておりません。どういう点に問題があるかということを二、三拾って申し上げてみたいと思います。会社更生法の百十九条の中で、更生手続開始前の六カ月間の会社の使用員の給料について共益債権としておりますが、それを共益債権としたというのは、民法の三百六条、商法の二百九十五条、破産法の三十九条、などと同趣旨の規定でございます。従って会社更生法の百十九条を改正するといたしますれば、民法、商法、破産法の改正も同時に考えなければならないというわけなのであります。今会社更生法をかりに先に改正するといたしましても、あとで民法、商法、破産法の改正も同時に考えていかなければならないということになるわけであります。ところがこの更生会社下請企業が更生会社の事業に依存しているといたしましても、同様な立場にあるのは必ずしも下請企業だけに限らない。たとえば代理店とか特約店とかいうようなものがあります。こういうものの立場も考えなければならないということになります。それで、そういうことになりますと、共益債権に入れるべきものが非常に大きくなる。そうすると、あまり共益債権の範囲を広げますと、今度は会社自身の更生が不可能になるということが考えられるのであります。ですから、その辺の両者のかね合いをどの辺に求めるかという点に非常にむずかしい問題があろうかと考えるのであります。  それから下請企業一般的に中小企業でありましょうが、しかし必ずしも中小企業に限るものでもない。また中小企業だとしますれば、どの点にどういうような方法でその範囲を限ったらよろしいかということに、非常な困難があろうかと考えられるのであります。一定の資本金で限るということも考えられないことはないのでありますが、更生手続対象になっている会社自体の方は別に資本金で限定されていないわけであります。それから下請代金のうちの使用人の賃金に相当する部分と申しましても、実際問題としてその範囲を確定することは困難だろうと考えられるのであります。ですから、実際支払いの際にとかくもんちゃくが起るのではないかということも考えられるわけであります。そのような問題がありますので、会社更生法の改正についてはまだ結論が出ていないというのが実情であります。
  122. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 今六カ月間の下請企業の従業員の給料の問題を取り上げられて、その法改正の困難な点を指摘されたわけですが、私は今お話しになっている点がわからないことはございませんけれども、しかし今本委員会にかかっております下請代金支払遅延等防止法案もその点は同じでありまして、たとえば下請というのは何かといいますと、これもやはり同じような法律上の困難さがある。さらに資本金の問題だって、これは更生法には資本金制限はないけれども下請についてはその制限をするについていろいろ困難性がある、こう言われましても、これは親会社よりも大きいような会社にその特別の処置を与える必要はないのですから、これも技術的にできると思うのです。あるいは代金の中で賃金に相当する部分がどのくらい入っておるが、これは事実上に困難でしょうけれども、これは政令でその場合をいろいろ考慮してお定めになったらいい、こういうふうに考えるわけで、私はこういう法案はなるほど技術的には若干の困難性はあるといたしましても、やはり作る必要があるのではなかろうか、こういうように考えるわけです。そこで法務省の方は、こういう点が非常に困難だからということで、とかくそういう法案については法務省というところは積極的でないのです。これは省の性格にもあるでしょうが、一つその点を十分考慮を願いたい、かように考えるわけでございます。  それで、作業としてはかなり進んでおるかどうか、これをお聞かせ願いたいと思います。
  123. 吉田昂

    ○吉田説明員 会社更生法自身にもかなり問題がありますので、これらと一緒に検討しております。
  124. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 通産省の政務次官にお尋ねいたしますが、まあ会社更生法は法務省所管でございますけれども、これは法務省の方は法手続だけの問題でして、実際この利害関係を受けるのは通産省関係、ことに中小企業関係が今問題になっております点であります。そこで政府としては、ことに通産省としてはこれを推進する意図はないか。これと申しますのは、下請代金の確保について何らか処置をする、こういうことを考えられておるかどうか、推進する意図はないかどうか、これをお聞かせ願いたいと思います。
  125. 川野芳滿

    ○川野政府委員 その問題につきましては先ほど大臣からもお答えがあったと私は考えましたが、できるだけ検討してみたいと存じます。
  126. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 もう一つお尋ねいたしたいのですが、この退職手当の問題であります。これは更生手続開始前の退職手当は共益債権にはならないのですが、開始後の退職手当は共益債権になる、こういうことで非常に矛盾をした取扱いになっておる。この点についてはどういうようにお考えになるか、これをお聞かせ願いたい。
  127. 吉田昂

    ○吉田説明員 更生手続開始後の退職金が共益債権になるかどうかということにつきましては、現在必ずしも通説があるわけではないのでありまして、意見が分れております。われわれはこれを共益債権だというふうに考えております。ですが、更生手続開始前の退職金については、今お話のように共益債権になっていないことは明らかなんであります。ただ、これを共益債権とすべきかどうかということは、給料の六カ月分と限られておりますから、金額の点で考えなければならないのじゃないか。つまり共益債権になる額があまりに大きくなって参りますと、更生が非常に困難になってくるということを頭に置いて考えなければならないのじゃないかというふうに考えます。もっともこの点についてはまだ十分な検討をいたしておりません。
  128. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実は下請代金の点につきまして大臣の方から、その点は研究してみようという話ですから、私はぜひ一つ通産省としては推進をしてもらいたいと思うのであります。このことは、この前の炭鉱の買い上げの場合の関連産業の支払い代金の問題が非常に大きな問題になって、われわれも附帯決議をつけたわけですが、何さま附帯決議はつけましても法律で実際上盛ってないものですから、事実上は私は大した効果はないだろう、まあ残念ながらかように考えざるを得ない。その際も、他に法律がないから、そういうのは法体系の中にないから、こういうことで、結局その関連産業の代金支払いに対する何らかの法的処置がとられなかった。ですから私は、やはり通産省としては、ことに会社更生法という法律があるのですから、この法案の中における下請代金の確保という面については十分御考慮願いたい、かように考えて、この点に対する質問は終ります。
  129. 中崎敏

    ○中崎委員 関連して。この下請関係法案についての実体といいますか、本旨といいますか、これは下請業者が特定の親会社なら親会社の注文によって部品その他の物品を製造する、もしくは修理するというふうな意味に解釈されておって、その品物をよそへ持っていっても容易に処分もできない、それで目的を達しないようなものである。言いかえれば特定の部品、物品等を下請する場合をいうわけなのです。従いまして親会社が破産といいますか、会社更生法によって措置をされる場合において、単なる物品の売買とかいうようなこととは違う関係に置かれておるのがこの法案にいうところの下請関係だと思うのです。そういう特殊の関係もあるので、単に物品を買ってきた、それが共益債権として扱われるというものではなしに、特に労力などが——ことに修理などという場合には大部分が私は労力ではないかと思うのでありますが、それはむしろ会社更生法の適用を受ける親会社の労力に対する給与とほとんど同じような、それに準じた考え方をしていいのじゃないか、そういう意味において、先ほど民事局の参事官から、他の一般の債権などとの関係もあって、この問題はなかなか簡単には割り切れないというふうな発言もあったのでありますが、私はむしろ親会社の労力に対する労賃に準ずるほとんど同じような意味を持つものだというふうな解釈でいいのじゃないか、こういうように思えるわけでありますが、その点いかがでありますか。
  130. 吉田昂

    ○吉田説明員 ただいまお話しの労賃に準ずるものというものの範囲がどういう範囲であるかという点について相当困難な問題があるのじゃないかというように考えておるわけであります。
  131. 中崎敏

    ○中崎委員 その点は、たとえば一般的に一つの規格品とか、そういう類のものを作って納める、どこへ持っていってもすぐ間に合うというふうな一般的な物品などの売買の中に含まれておる労賃と、それからこういう品物を特殊に作ってくれと言われて、下請業者がそれを製造するために労務費が要るわけでありますが、そういう類のものとは性質的に違うのではないか。その点は親会社自分のところで仕事をやるために労務者を使って仕事をやらしている場合と、他のところで一般的な品物を作って、それを親会社なり子会社に入れるために使われる労務者の場合とは非常に大きな違いがあると思う。その中間的というよりも、むしろ親会社自分のところで労務者を雇って、そうして目的の仕事をやらせるのに近いような関係にあるのじゃないか、そういう考え方の点がそこにあるのじゃないかということをお聞きしておる。
  132. 吉田昂

    ○吉田説明員 やはり同じような立場にあるものがほかにも考えられるのではないかと考えているのであります。たとえば、これは事業会社じゃありませんが、代理店でありますれば、これはほとんど本人は会社に依存して仕事をして、その会社のためにだけ働いているわけなのでありますから、やはり賃金に準ずるものになり得る可能性があるわけなのです。ですからただ下請業者下請代金というものだけに限るわけにもいかないのじゃないかというふうに考えているわけであります。
  133. 中崎敏

    ○中崎委員 物事はすべて限りのない一つの幅を持っておるのでありまして、少くとも特別の法律を作って、そうしてある特定の下請関係だけをまず第一に国家的に保護するといいますか、一つ措置をしよう。あなたが先ほど言われるように、下請といっても一千万円をこえるような業態もある。さらに人間からいってもいろいろ千差万別あるけれども、少くとも一千万円を限度として、それ以下の関係をもって律するという一つのワクができておる、そのワクを法律によって保護する、一つの特定のものとしてそれだけを取り上げていって措置を講ずるということはあり得ていいと思う。すべて物事はいろいろの幅はありますが、その中でこれだけの範囲を特に保護しようという法律ができて、この法律の裏づけになるような範囲においてそういう労務者をもあわせて保護するのだという考え方はあっていいのではないかと思うのでありますが、さらにそのほかに今言ったように代理店というものを含めてあなたの方はお考えになるというなら、それはまたあっていい、それを全然除外しろという意味ではないけれども、少くとも第一に、この法律によって保護を受ける労務者は、どうしても親会社と同じように、対等の立場において保護すべきではないか、あるいはこれに準ずる立場において保護すべきではないかということを言っておるのであります。それをもう一度お聞きしたい。
  134. 吉田昂

    ○吉田説明員 下請企業を入れるとすれば代理店の手数料も入れなければならないのではないかということを申し上げたのは、下請代金をこの際共益債権といたしますならば、将来代理店の手数料も同じような立場からこれを共益債権にしなければならぬじゃないかというふうな問題が出て参った場合に、それはできないと言えないという状態になるのではないかと考えられるのであります。そういたしますと、だんだんとそれが広がっていくということが考えられますので、やはり下請代金を共益債権とするといたしましたならば、この際、代理店はどうか、特約店はどうか、あるいはそれに類するようなものはどうかということをあわせて考えておかなければならないというふうに考えるわけなのであります。
  135. 中崎敏

    ○中崎委員 あなたの方で将来この法律を改正される場合においてどの範囲をどうしようかというふうなことを検討されることは当然必要だと思うのでありますが、われわれの立場で主張するのは、その中において、少くとも下請のこの範疇に入るところの会社の労務者については、それだけを絶対条件として考慮すべきものではないかということを言うておるのであります。そしてまたもう一つ、先ほどのあなたの説によると、いろいろ範囲を広げていくと、結局親会社会社更生法によって更生さすというその趣旨から遠ざかっていく場合もあり得る、これはその通りでしょう。それだからといってどんどんつぶしていって、他のものはどうでもいいので、親会社だけを残せばいいという考え方も行き過ぎではないかという点もあるので、そこらの点も一つあわせて考慮して、そうしてすみやかな機会において何らか具体的にもう一歩進んだ方向に研究努力してみるというふうなことが言えるかどうかをお聞きしたいのであります。
  136. 吉田昂

    ○吉田説明員 先ほど申し上げるのを落したのでありますが、この会社更生法は親会社だけを助けるという法律ではない。つまり個々の会社についてその会社を助けるということを考えておるわけなのでございますから、たとえば下請業者でありましょうと、この更生法の要件にかなうときは、会社更生法の救済を受けることができるわけであります。ただ必ずしも会社更生法に限らず、調停の方法救済を受けることも可能でありますし、和議の方法救済を受けることも可能なわけであります。
  137. 小平久雄

    ○小平(久)委員長代理 本日はこの程度にとどめます。  次会は明二十五日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。     午後一時三十分散会