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大館参考人 御
指名の
国産自動車常務の大
館愛雄でございます。時間がございませんので、簡単に結論から申し上げます。
この
法案のねらいと申しますか、
趣旨と申しますか、まことにけっこうだと存じます。これは非常に卑近な例なのでございますが、私は、
自動車をやっているのでありますが、
自動車のヘッド・ランプ、これをかりに月に千個買う
自動車業者と、それから五百個買う
自動車業者と、どちらが安く買うかといえば、千個買う方が安くなるはずでございます。それからかりに
AB両社がともに五百個ずつ買うとすれば、
支払いのいい方が安くなるにきまっているのでございます。われわれが車の
原価を下げようと思えば、下
請工葉育成のために相当
努力しなければならぬ。従って
支払いを促進することが
原価の軽減につながるものでございますから、
趣旨としてはまことにけっこうだと思います。ただこの
法案が施行されまして、それが
運用される上においてわれわれ多少の危惧の念がある点だけを二つ申し上げさせていただきたいと思います。
そこで
自動車業と
下請の
関係を簡単に御説明いたしますと、大体
自動車に組みつけるもの、
自動車商品の一部をなすもの、これは連続的に同じようなものが引き続いて
発注され、
納入されて
代金が支払われるということであります。それと同じようなものは、それを生産する上における
消耗品でございます。油でありますとか、あるいは
工具でありますとか、そういう連続的に
発注納入されるもの、それと今度は断続的に、一時的にやるもの、この二通りになると思います。断続的に
発注されるものといいますと、たとえば
設備の一部であるとか、配線の一部であるとか、あるいは
形式が変ったときの型の類であるとか、
治工具の類であるとか、こういう類でございます。今申し上げたこういう断続的に
発注されるものにつきましては、
発注の
形式も
契約の
方法も
代金の
支払いの
方法もいわゆる
世間一般で行われている
取引と同歳でございまして、この
法案でいっております
取引の
内容というものが、
法案が予想されておる
状態と同じ
状態でやり得ると思います。しかしながら、先ほど申し上げました
自動車に組みつけるもの、
自動車の一部になるもの、これにつきましては、普通の
取引内容とやや異なった
取引になるわけでございます。と申しますことは、かりに私の方で六カ月の
生産計画を立てます。そしてそれに対する概略の
注文をいたします。たとえばそれを六千個といたしますと、六千個分の
注文を発します。しかし実際に納められるのは、五千八百二十個で
おしまいになるかもしれない、あるいは六千三十個で
おしまいになるかもしれない。
契約の
内容としまして、この
法案が非常にスティックに行われて、六千個の
注文に対して五千八百二十個では、
あと足りないじゃないか、それもまた引き取れということでは、
注文が非常にやりにくくなると思います。それからもう
一つ、今の例で申し上げました六千個、これを月に一千個ずつ
納入するという初めの予約をいたします。そして月によりましては八百個、その次の月は千二百個というような
納入になると思います。あらかじめ
単価はきめておりますが、これを来月から、あるいは再来月から二倍にするから
単価を変更しないか、その六千個の
契約の途中で、一月当りあるいは一口当りでもけっこうなのでございますが、数量が非常に増加した場合、あらためて
単価の引き下げということがお互いに協議されなければいけない。
最初の六千個の
契約のうち三千個だけ
納入されて、
あと来月から倍にするから幾ら安くなるか、こういう交渉もしなければいけないわけです。実際にそれは安くなるはずでございます。その場合に、
最初の六千個は
生産壁がふえたにもかかわらず、同じ
単価でだまって買わなければいけないというようにこの
法案が命じていると、これは非常にややこしいことになると思います。われわれとしては非常に迷惑をすることになります。
それから次に、今申し上げましたような
種類のものでは大体どのくらいあるかと申しますと、これは一番
皆さんおなじみが深いと思いますので例にとるのでございますが、
ダットサンの乗用車、これを私の方が
部分品として購入いたしている点数は、約千二百五十
種類でございます。それをどのくらいの店に
発注しておるかというと、大体百三十軒の工場、
商品に
発注しておるわけでございます。その内訳を申しますと、この
法案の
対象とされています
資本金一万円以下の店の数としては、パーセンテージにして約六五%を占めております。
部品の数としては七五%を占めております。
金額としましては四七%でございます。これはたとえばタイヤでありますとか蓄電池、バッテリーでありますとか、そういう非常に大きな店から買っている比較的痛いものがあるから、こういう結果になっておるわけであります。
さて今申し上げましたように、この
法案の
対象になっている店の数が大体百近くある、その
部品の
種類が大体千点近くある。これは私
どもは
車種一つではございませんで、
ダットサンでは
トラックもやっておりますし、日産と申します
トラックもやっておりますし、
バスもやっております。その同じ
バスの中にも、大きいもの小さいもの、あるいはエンジンが前にあるもの、
うしろについているもの、いろいろあります。
部品の数といたしましては、
会社全体としては、
本法の
対象になっている店に
発注になっている
種類は、おそらく五千を越えるのではないかと思います。これはわれわれといたしましては、大体
自動車に組みつけるものでございますから、手から口へという
状態で供給されるのが理想的なのでございます。たとえば本日五十台の車を組むとすれば、それに組みつける
部品が五十個昨日の午後四時に入ってくれれば、それが理想的な形態であります。こういう
材料管理をやらないと、
材料が寝ているために生ずるロスというのは非常なものなのでございます。従いましてこの
納入の
契約につきましても、非常にこまかく、ほとんど毎日入れていただくのが、われわれとしては一番理想的なのでございますが、さて五千点の
品物がそういうふうに入って来るとすれば、この
法案が予想しているような
帳簿であるとかあるいは記録であるとか、そういうものをそろえるための
努力は大へんなものなのであります。私の方は、御
承知と存じますが、IBMと申します特殊な
会計機を使って自動的にやっておるので、そのために
契約の
方法、
発注の
方法なんか非常に簡略にされております。
品物が入って来るのも、それが検査されるのも、それが
支払いに回るのも、非常に自動的にやっておりますので、この
法案を御立案なさった方が
考えられておるような
帳簿とか
書類の
作成とか、何でございましたかありましたが、そういうものを御満足させるものがあるいはできないのではないか。それをやるためには、おそらく数十名、百名近い
事務員をかかえて、毎日その
仕事をやらせなければいけないのではないかと予想されるのでございます。先ほど約五千点近くなるだろうと申し上げましたが、それの購買をやっておる人数は二十名
足らずでございます。店の数にして二、三百を相手にいたしまして、約二十名
足らずがやっておるのでございます。それにこの
法案は
運用される上に非常にこまかくて、あるいは
事業場に立ち入って
帳簿を見てもいいというような条項もございますが、そういう方が御理解になれるような
書類の準備をしろということになりますと、大
混乱を起すおそれがあります。でき得べくんばこの
運用につきましては、各
会社の実情に応じて、そうして
報告のごときも特殊な
方法で
報告しろという御
注文が抜かれて、真実を表わしている
報告ならばどういう
形式でもよろしい、お前さんのところでやっているような
報告でよろしい、こういうことでないと、実際上私の方はえらい
人件費を食う結果になると思います。私のおそれますのは、この
運用につきまして、
書類の
作成、
報告等について特殊な
形式を御
注文されないということと、それからこの
法案によりますと、
主管官庁以外に
公正取引委員会あるいは中小
企業庁、三者並行して
監督を受けることになっておりますが、この
監督の間に食い違いがないようにしていただきたい、御
注文がばらばらにならないようにしていただきたい、こういうふうに存じます。
非常に簡単でございますが……。