運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1956-04-20 第24回国会 衆議院 商工委員会 第37号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月二十日(金曜日)    午後一時三十七分開議  出席委員    委員長 神田  博君    理事 小笠 公韶君 理事 鹿野 彦吉君    理事 小平 久雄君 理事 笹本 一雄君    理事 中崎  敏君 理事 永井勝次郎君       秋田 大助君    阿左美廣治君       宇田 耕一君    内田 常雄君       大倉 三郎君    椎名悦三郎君       篠田 弘作君    島村 一郎君       田中 角榮君    中村庸一郎君       野田 武夫君    淵上房太郎君       前田 正男君    南  好雄君       伊藤卯四郎君    加藤 清二君       佐々木良作君    佐竹 新市君       多賀谷真稔君    田中 武夫君       田中 利勝君    帆足  計君       松尾トシ子君    松平 忠久君  出席国務大臣         通商産業大臣  石橋 湛山君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     横田 正俊君         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局経済部         長)      坂根 哲夫君         通商産業政務次         官       川野 芳滿君         通商産業事務官         (大臣官房長) 岩武 照彦君         通商産業事務官         (中小企業庁振         興部長)    秋山 武夫君  委員外出席者         参  考  人         (三菱日本重工         業株式会社横浜         造船所所長) 御厨 虎男君         参  考  人         (三菱日本重工         業株式会社横浜         造船所資材部         長)      河合 邦雄君         参  考  人         (日産自動車株         式会社常務取締         役)      大館 愛雄君         参  考  人         (株式会社太田         鉄工所社長)  太田 義雄君         参  考  人         (株式会社共栄         特殊鋳工所社         長)      山中 武夫君         参  考  人         (全国金属労働         組合書記長)  滝  貞雄君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 本日の会議に付した案件  下請代金支払遅延等防止法案内閣提出第一三  三号)     —————————————
  2. 神田博

    神田委員長 これより会議を開きます。  本日は、まず下請代金支払遅延等防止法案について、御出席参考人各位より意見を伺うことにいたします。  この際、委員諸君にお諮りいたしますが、本日参考人として出席されることになっておりました方々のうち、日産自動車株式会社経理部長石原俊君は都合により出席できず、同社常務取締役館愛雄君が出席したい旨の申し出がありました。また三菱日本重工業株式会社横浜造船所から資材部長河合邦雄君に参考意見を求むることになっておりましたが、都合により同造船所所長御厨虎男君より参考意見を述べたいとの申し出がありますので、この際それぞれ参考人を変更し、意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 神田博

    神田委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  本日は本法施行の際直接その適用を受けることになっている親事業者及び下請事業者並びに本法案に特に関心を持っておられる下請事業会社関係労働組合方々にそれぞれ御出席を願ったのでありますが、御出席参考人三菱日本重工業株式会社横浜造船所所長御厨虎男君、日産自動車株式会社常務取締役館愛雄君、株式会社太田鉄工所社長太田義雄君、株式会社共栄特殊鋳工所社長山中武夫君、全国金属労働組合書記長滝貞雄君、以上五名の方々であります。  この際委員長より参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。本日は御多忙中にもかかわらず、本委員会に御出席下さいまして、厚くお礼を申し上げます。申すまでもなく本法案親事業者下請事業者との下請関係において、特に代金支払い遅延等を防止することにより、下請事業者の利益を保護しようとするものでありますが、この際本案についてそれぞれの立場から忌憚のない意見を承わって、本案審査参考といたしたいと存じます。御意見開陳の時間は一人おおむね十分程度にお願いいたしたいと存じます。なお勝手ながらその順序は委員長におまかせ願いたいと存じます。また御意見発表の後委員の側から種々質疑もあろうかと存じますので、お含みの上お願いいたします。  それではまず御厨大館参考人より意見を承わり、次に太田山中、滝各参考人より意見を承わることにいたします。  最初御厨参考人にお願いいたします。
  4. 御厨虎男

    御厨参考人 私ただいま委員長から御指名をいただきました三菱日本重工業横浜造船所所長御厨でございます。実は造船につきましては造船工業会というわれわれの団体がございますが、造船全体の意見ということになりますと工業会を通じてお話し申し上げた方がいいと存じますが、本日は私横浜造船所立場といたしましてお話申し上げることにいたしたいと存じます。  われわれ本問題につきましては深くいろいろ関心を持っておるものでございまして、今回のこの法案を逐条拝見いたしまして、いわゆる法の精神と申しますか、われわれといたしましてもよくわかるような感じがいたすのであります。もちろん各民情に明るい委員さんの方々が、運輸省あるいは造船工業会あるいはそれに関係する方面からいろいろ御意見も聴取されて、練りに練った最終的の法案が本日拝見させていただいておりますものだと考える次第であります。これにつきましては私といたしまして異存はございません。ただ親会社立場から少しく所見を申し上げたいことがございますので、しばらくお時間をいただきたいと思います。  実は海運とか造船とか申しますと、御承知の通り非常に変動の多い業界でございまして、好況のときあるいは不況のときで非常に状況が変ってくるわけであります。たとえば今回は、海運にしましても造船にいたしましても、だんだん上り坂になっているような状況になっておりますが、一朝これが悪くなりますと非常に窮境に追い込まれる。こういう上り坂のときにお作りになった法案でございますが、不況の場合のときも十分考えていただきたい。と申しますることは、ほんとうに経営の方が造船としましてもむずかしくなって参りますと、なかなか従業員あるいは関連産業に対する支払いという問題が非常に窮屈になって参ります。親会社善意であくまで最善の努力をしているのでございますが、関連工業に十分支払えないというような事情も今までの歴史を顧みますと多々あったわけでございます。一方われわれの注文をもらっております海運界の方にいたしましても、運賃が非常に下っているというときは実際赤字でもって船の運航をやらなければならない。そういう場合には造船所あたりはどういう立場になっているかと申しますとい計画造船の問題は別としまして、たとえば修繕船その他の修繕代金というようなものも相当長期間にわたりまして船主から払っていただけない。半年以上停滞しているというような場合が往々にして今まであったわけであります。そういう場合がございますので、そのときにはこういう法案はどういう運用をなさるかということでございますが、この法案精神もよくわかっておりますし、実際にわれわれとして異存はございませんが、ただそういう不況時に当っての法の運用ということにつきまして十分お考えいただきたいと思うのでございます。簡単でございますが、私はこれで一応終ります。
  5. 神田博

    神田委員長 次に大館参考人にお願いをいたします。
  6. 大館愛雄

    大館参考人 御指名国産自動車常務の大館愛雄でございます。時間がございませんので、簡単に結論から申し上げます。  この法案のねらいと申しますか、趣旨と申しますか、まことにけっこうだと存じます。これは非常に卑近な例なのでございますが、私は、自動車をやっているのでありますが、自動車のヘッド・ランプ、これをかりに月に千個買う自動車業者と、それから五百個買う自動車業者と、どちらが安く買うかといえば、千個買う方が安くなるはずでございます。それからかりにAB両社がともに五百個ずつ買うとすれば、支払いのいい方が安くなるにきまっているのでございます。われわれが車の原価を下げようと思えば、下請工葉育成のために相当努力しなければならぬ。従って支払いを促進することが原価の軽減につながるものでございますから、趣旨としてはまことにけっこうだと思います。ただこの法案が施行されまして、それが運用される上においてわれわれ多少の危惧の念がある点だけを二つ申し上げさせていただきたいと思います。  そこで自動車業下請関係を簡単に御説明いたしますと、大体自動車に組みつけるもの、自動車商品の一部をなすもの、これは連続的に同じようなものが引き続いて発注され、納入されて代金が支払われるということであります。それと同じようなものは、それを生産する上における消耗品でございます。油でありますとか、あるいは工具でありますとか、そういう連続的に発注納入されるもの、それと今度は断続的に、一時的にやるもの、この二通りになると思います。断続的に発注されるものといいますと、たとえば設備の一部であるとか、配線の一部であるとか、あるいは形式が変ったときの型の類であるとか、治工具の類であるとか、こういう類でございます。今申し上げたこういう断続的に発注されるものにつきましては、発注形式契約方法代金支払い方法もいわゆる世間一般で行われている取引と同歳でございまして、この法案でいっております取引内容というものが、法案が予想されておる状態と同じ状態でやり得ると思います。しかしながら、先ほど申し上げました自動車に組みつけるもの、自動車の一部になるもの、これにつきましては、普通の取引内容とやや異なった取引になるわけでございます。と申しますことは、かりに私の方で六カ月の生産計画を立てます。そしてそれに対する概略の注文をいたします。たとえばそれを六千個といたしますと、六千個分の注文を発します。しかし実際に納められるのは、五千八百二十個でおしまいになるかもしれない、あるいは六千三十個でおしまいになるかもしれない。契約内容としまして、この法案が非常にスティックに行われて、六千個の注文に対して五千八百二十個では、あと足りないじゃないか、それもまた引き取れということでは、注文が非常にやりにくくなると思います。それからもう一つ、今の例で申し上げました六千個、これを月に一千個ずつ納入するという初めの予約をいたします。そして月によりましては八百個、その次の月は千二百個というような納入になると思います。あらかじめ単価はきめておりますが、これを来月から、あるいは再来月から二倍にするから単価を変更しないか、その六千個の契約の途中で、一月当りあるいは一口当りでもけっこうなのでございますが、数量が非常に増加した場合、あらためて単価の引き下げということがお互いに協議されなければいけない。最初の六千個の契約のうち三千個だけ納入されて、あと来月から倍にするから幾ら安くなるか、こういう交渉もしなければいけないわけです。実際にそれは安くなるはずでございます。その場合に、最初の六千個は生産壁がふえたにもかかわらず、同じ単価でだまって買わなければいけないというようにこの法案が命じていると、これは非常にややこしいことになると思います。われわれとしては非常に迷惑をすることになります。  それから次に、今申し上げましたような種類のものでは大体どのくらいあるかと申しますと、これは一番皆さんおなじみが深いと思いますので例にとるのでございますが、ダットサンの乗用車、これを私の方が部分品として購入いたしている点数は、約千二百五十種類でございます。それをどのくらいの店に発注しておるかというと、大体百三十軒の工場、商品発注しておるわけでございます。その内訳を申しますと、この法案対象とされています資本金一万円以下の店の数としては、パーセンテージにして約六五%を占めております。部品の数としては七五%を占めております。金額としましては四七%でございます。これはたとえばタイヤでありますとか蓄電池、バッテリーでありますとか、そういう非常に大きな店から買っている比較的痛いものがあるから、こういう結果になっておるわけであります。  さて今申し上げましたように、この法案対象になっている店の数が大体百近くある、その部品種類が大体千点近くある。これは私ども車種一つではございませんで、ダットサンではトラックもやっておりますし、日産と申しますトラックもやっておりますし、バスもやっております。その同じバスの中にも、大きいもの小さいもの、あるいはエンジンが前にあるもの、うしろについているもの、いろいろあります。部品の数といたしましては、会社全体としては、本法対象になっている店に発注になっている種類は、おそらく五千を越えるのではないかと思います。これはわれわれといたしましては、大体自動車に組みつけるものでございますから、手から口へという状態で供給されるのが理想的なのでございます。たとえば本日五十台の車を組むとすれば、それに組みつける部品が五十個昨日の午後四時に入ってくれれば、それが理想的な形態であります。こういう材料管理をやらないと、材料が寝ているために生ずるロスというのは非常なものなのでございます。従いましてこの納入契約につきましても、非常にこまかく、ほとんど毎日入れていただくのが、われわれとしては一番理想的なのでございますが、さて五千点の品物がそういうふうに入って来るとすれば、この法案が予想しているような帳簿であるとかあるいは記録であるとか、そういうものをそろえるための努力は大へんなものなのであります。私の方は、御承知と存じますが、IBMと申します特殊な会計機を使って自動的にやっておるので、そのために契約方法発注方法なんか非常に簡略にされております。品物が入って来るのも、それが検査されるのも、それが支払いに回るのも、非常に自動的にやっておりますので、この法案を御立案なさった方が考えられておるような帳簿とか書類作成とか、何でございましたかありましたが、そういうものを御満足させるものがあるいはできないのではないか。それをやるためには、おそらく数十名、百名近い事務員をかかえて、毎日その仕事をやらせなければいけないのではないかと予想されるのでございます。先ほど約五千点近くなるだろうと申し上げましたが、それの購買をやっておる人数は二十名足らずでございます。店の数にして二、三百を相手にいたしまして、約二十名足らずがやっておるのでございます。それにこの法案運用される上に非常にこまかくて、あるいは事業場に立ち入って帳簿を見てもいいというような条項もございますが、そういう方が御理解になれるような書類の準備をしろということになりますと、大混乱を起すおそれがあります。でき得べくんばこの運用につきましては、各会社の実情に応じて、そうして報告のごときも特殊な方法報告しろという御注文が抜かれて、真実を表わしている報告ならばどういう形式でもよろしい、お前さんのところでやっているような報告でよろしい、こういうことでないと、実際上私の方はえらい人件費を食う結果になると思います。私のおそれますのは、この運用につきまして、書類作成報告等について特殊な形式を御注文されないということと、それからこの法案によりますと、主管官庁以外に公正取引委員会あるいは中小企業庁、三者並行して監督を受けることになっておりますが、この監督の間に食い違いがないようにしていただきたい、御注文がばらばらにならないようにしていただきたい、こういうふうに存じます。  非常に簡単でございますが……。
  7. 神田博

    神田委員長 それでは御厨大館参考人に対する質疑の通告がありますので、これを許します。田中武夫君。
  8. 田中武夫

    田中(武)委員 ただいま御厨大館参考人は、いわゆる親会社立場から、この法案についての参考意見を聞かしていただいたわけなんですが、お二人とも大体趣旨には賛成である、だが運営についてよく考えてもらいたい、ことに大館参考人からは、書類報告あるいは立ち入り検査等の問題についてよく考えてもらいたい、こういうような御意見があったわけなんですが、御厨参考人の方からは、運用について考えてもらいたい、こういうようなことだけであって、別に具体的な意見は出てなかったのですが、まず運用について、大館参考人と同じようなお考えか、それとも特例に何かこの運用について御意見があるのか、聞かしていただきたい、
  9. 御厨虎男

    御厨参考人 ただいま自動車の方からお話がございました帳簿の問題でございますが、これはやはりわれわれの方も同じでございまして、実は造船の方も現在手持ち工事が非常に多いのでございます。私ども造船所といたしましても、現在船の注文を受けておりますのが約三百億あります。従って、こういう下請関係仕事というのはそれにコーポレートしまして、相当膨大な金額にもなりますし、業種も非常に多いということで、書類上の処理につきましては、非常に複雑な事業であるだけに問題が多いわけです。そのときに帳簿作成とか何とかいうことになりますと、先ほどもお話がございましたように非常に混乱を招くおそれがある。それから公正取引委員会その他監督官庁がふえますと、やはり入れかわり立ちかわりいろいろ調査の御要求もおありになると思います。そういった関係の向きで、やはり統一された方式をもちましてそういう場合はぜひお願いしたいということでございます。  それからもう一つ、先ほど私が申しましたのは、親会社が非常に不況に陥った場合に、ほんとう善意で、あらゆる努力をいたしましてもなおかつ支払い関係をこの法案によりまして強行しなくちゃいかぬということは非常につらいような場合がある。そういうときにはどういう法の解釈のもとにこれを運用していただくか、これはむしろ御質問でございますが、それだけでございます。
  10. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほど大館参考人も言われたし、今またあなたも言われたように、そのために特別の人件費を多く要するような複雑なこともどうかと思うのです。といって、またほんのおざなりなことであるなら法の質的は達せられないと思う。その辺については、今後行政的にいろいろ考えられることと思うのです。さて、われわれがこういう法案について関心を持ち、ぜひこういう法律を作りたい、こういうような気持を持っておりますのは、きょう見えているあなた方の会社ではそういうことはないと思うのですが、大体一般的に言いまして、親企業が経済的な強い立場を利用して、弱い立場下請企業に無理な値段なり無理な条件で注文を押しつける。それに文句を言えばすぐ発注をとめてしまう。また一年近くもほんとう約手等でお茶を濁して、現金を払ってやらない。そのくせ親企業が二割近い配当をしておるということもある。そこに問題がありも公正な取引をやらすということでそういうことを考えているのです。大体自分のところの下請がうまくやっていくといいますか、下請企業が繁栄することが、また親企業の繁栄でもあり、下請が倒れるならばやはり親企業も困る、こう思うので、これは両参考人にちょっと御意見を承わりたいのですが、お宅等では今まで下請に対してどのような措置というか、指導をしておられましたか。
  11. 御厨虎男

    御厨参考人 私どもの現状を申し上げますと、下請というのは造船所にとりまして非常に大事なものであります。従って、横浜造船所におきましては、下請に対しまして十分技術指導をする。それから設備を無償で貸与する。金融面につきましては、金がなくて因るという場合に一時的に前金を渡してまで下請を擁護していくような考えで日常の業務を処理しているわけであります。下請自分の腕みたいなもので、自分の腕をかわいがりませんとよい仕事ができないわけでありますから、できる限りのことはやっているわけであります。
  12. 大館愛雄

    大館参考人 今の御質問の要旨は、下請はどういうふうに処遇しているかということですか。
  13. 田中武夫

    田中(武)委員 そういったことです。また支払い等についてもどういうような……。
  14. 大館愛雄

    大館参考人 処遇につきましては、今三菱御厨さんが申された通りです。具体的な例を申し上げますと、たとえば新型に変更すると部品業者も新しく型をこしらえなければいかぬ。あるいは鋳物の型を変えれば鋳物をこしらえなければならぬ。これは一つ部品単価に比較いたしまして非常に商いものにつくわけであります。そういう新しく投資する能力のある下請につきましては、それを何個で償却するかということで単価を別にきめて、何個分は高く買ってやるということをやっております。またその資力のないものにつきましては、そういうものを貸し付けて、納入されたものから償還さすということをやっております。  次に支払い状況でございますが、これは私のところだけを申し上げますれば、現在では支払い状況が最もよい会社一つだと自負しております。実際どんなことをやっているかと申しますと、先ほど自動的に処理されているということを申し上げましたが、月に二回支払いをやっております。それは、前月の五日までに納入されたものについて翌月の五日に全部払っております。二十日までに納入されたものについて翌月の二十日に全部払っております。もちろん途中で不良品処理なんという問題がございますが、最初からわかっている不良品については代金を払いませんが、途中からわかりました不良品あとから差し引くということをやっております。
  15. 田中武夫

    田中(武)委員 本日見えている二社等であれば、たって法律も要らないと思うのですが、自動車の方より造船の方にそういう傾向が強いと思うのです。造船の親企業自体注文がまちまちで、計画も一年を通じて平均した計画が立たないと思う。従って、下請に対する発注もある一定の期間にどざっとされる。いつ幾日までに上げろということで、受けてきた方は相当無理をしなくては間に合わないというようなことで、下請から言うならば仕事の量が平均しない。またいつどういうものがくるかわからぬというようなことで、労働者も平均した常用を雇っておれないというような状態、あるいは注文がきたときには無理に期限を切られるというようなことから、そこに労働強化とか労働基準法違反が行われがちだと思うのです。これはお二人にお尋ねしたいのですが、注文の仕方、時期というようなことについて無理を生ずる点があろうと思うのですが、ことに労働強化とか労働基準法違反問題等のような注文状況についてはいかがでしょうか。
  16. 御厨虎男

    御厨参考人 今御質問のございましたような点は、実は私ども造船所についてはほとんどそういう点はございません。現在手持ち工事が非常に多いために下請仕事量のむらがあるということでなくて、継続いたしまして大体一定仕事が平均してあるということでございます。ちょうど一年くらい前の工事量が非常に少いときはそういう傾向がどこの造船所でもあったと思います。私どもでも若干そういう傾向がございましたが、現在はそういうことはございません。
  17. 田中武夫

    田中(武)委員 自動車の方はいかがでしょうか。
  18. 大館愛雄

    大館参考人 大館でございます。お尋ねになりました点につきまして、先ほど申し上げました断続的な注文、特にこういうものを買いたい、これは私どもの方で自家用に使いますもの、こういうものにつきましては、たとえば工作機械なんかの例をとりますと、これなんかは非常にお忙しいときにわれわれは注文が出せないということはあると思います。ただ先ほど私がくどくどしく申し上げました自動車に組みつける部分品につきましては、これの消長はもちろんございます。自動車そのものの売れ行きがいい場合、悪い場合で消長はございますが、それは私の方自身がその波をなるべくかぶらないようにしなければ、私の方の工業自体が成り立たないので、従ってその波にわれわれ工業国体が同じ程度に吸収してもらうことに結果としてなるわけでございますし、われわれの方が、自分自身平均しなければいけないのでございますから、著しい御不便を下請にかけることはないと思います。
  19. 田中武夫

    田中(武)委員 きょうのお二人の会社ではそういう御心配はないと思うのですが、こういう法律ができますと、私たちの心配するのは、今までと違って相当支払い面においても考えていかねばならない、こういうことになりますので、今までなら二百日といったような約手で払っているようなところでも、そうはできないと思います。そのかわりに、今度は逆に最初注文に当って、今までよりか単価をたたくのではないか、こういうようなことも考えられるのです。お二人のところはそういうことはないと思うのですが、一般的にどうでしょう。お宅だけじゃなしに、親企業全体の立場から見てこういうような傾向が現われるのではないかと思うのですが、どんなものでしょう。
  20. 御厨虎男

    御厨参考人 どうもちょっとどういう工合にお答えしたらいいかわかりませんが、結局契約ということになりますと、自由契約でございまして、いろいろ契約方法があるわけでございます。契約の条件はどういう条件を出そうと、これはお互い満足がいけば契約が成立するわけでございますから、その契約条件によってすべてが規制されるということになります。それから大体見積り合せとか、入札とかそういうことになりますので、今のような御心配はないのじゃないかと思います。
  21. 田中武夫

    田中(武)委員 この法律によると、受注の際に支払いの条件とか、その他の問題について、単価とか、書類でということになっておるのですが、大体今まで書類でやっておられるのですか。
  22. 御厨虎男

    御厨参考人 全部書類でやっております。
  23. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは最後に希望ですが、これはお二人の今までの参考意見では申し上げるまでもないと思うのですが、やはり運営ということを言われましたが、われわれもそれが大事だと思っております。下請立場といいますか、中小企業立場からいえば、やはりこの法律ができても、親企業さんの方でこれを尊重していただく、またそういう精神の上に立って注文をし、支払いをしていただかなければ、この法律ができたって死文になると思うのです。たとえば労働法準法があっても、守る気がないとどんどん犯されていくのと同じことだと思うのです。きょうは親企業のお二人の方が代表で見えておられますが、私たちの立場としては、もしこの法律がこのままあるいは何らかの格好において成立した場合に、十分尊重し、むしろ公取とか企業庁とかいうようなところから監督だとかあるいは検査だとかいうようなことでなく、親企業からこれを尊重し、この通りに一つやろう、こういう気持になっていただきたい、このことをお願いいたしまして終ります。
  24. 大館愛雄

    大館参考人 今最初お尋ねのありました点で、すべての注文書類でやっておるかというような点がございましたけれども、これは先ほど私から申し上げました通り、組みつける小さな部品については、納期が何日でそれをいつ支払うかというこまかいことはやっておらないのです。これは習慣として、入ってきたら金がもらえるということで流れているので、これは一枚一枚こういう注文番を書けという御注文があると非常に困りますというのが、先ほど申し上げた点でございます。  それからもう一つ、これは親工場全体としての立場から、非常に口はばったいことを申し上げて恐縮でございますが、かりにそういうふうに連続して同じものを納入しておる工業があるといたしまして、それがいつも確実に二百日かかって——二百日は少し長いのでありますが、九十日か何かの手形で払っておる。この法律ができたために一ぺんにそれを六十日に詰めるといたしますと、その工業につきましては、一カ月だけは二カ月分の支払いをしなければいけないことになります。そういう点が資金繰りの上からその工業に非常に迷惑をかけるのではないかということは考えられます。これはそういう実例は他にはあると思います。
  25. 田中武夫

    田中(武)委員 終りましたのですが、今のお話でちょっと申し上げたいと思うのです。一つ一つ小さなもので一々書類ということはできない。しかし相手方といいますか、下請との間に一つの期間とかを区切って、その間にこういう品物をやろうというような、いわゆる何というか相関的な契約書というものをお作りになるのですか。
  26. 大館愛雄

    大館参考人 それは作ります。先ほど申し上げましたように、月に約三百入れるというのが、二百八十五個で終りになる月もあるし、三百三個で終りになる月もあると思う。そういうわけでこの法律の第三条というものを余裕を持って考えていただかないと、契約内容と違うじゃないかということで一々突っ込まれたらやり切れないと思います。
  27. 松平忠久

    ○松平委員 ちょっと関連して御質問申し上げたいと思います。非常にいい支払い条件のようなお話であったのですが、好況の時代もあるかもしれませんが、不況の時代になるとそうでもない。最近いろいろ聞いてみますと、たとえば日産さんにいたしましても、非常にいい下請に対してはいい条件でやる。ただしそうでない新しいようなものに対しては相当きつい条件だということです。たとえば検収してから二カ月はブランクにしておく、支払わない。そしてあとで現金ないし手形ということでブランクになっておる会社があちらこちらにあると思うのです。それでこれは新しかったり、あるいは相手の信用状態ということで、むしろ親会社の方が危惧の念を持って一応そういうような条件を出して、そうしてそれをのむならばやれ、そういうことからも、あるいは今言ったようなそういうむずかしい条件を出すかもしれませんが、もう一つは、あなたの方なんかにしても部長さんとか課長さんとかあるいは係長、そういう人が自分の手柄にしようと思って相当下請に対して圧迫をするという傾向が今まで私はあったんじゃないかと思うのです。そこで会社の首脳部はそういうことのないようにという注意を与えておる会社もありますけれども、中にはそうではなくて、部長、課長、ことに課長、係長というようなところにそういうことをやらせて、いい条件でやった者が抜擢されてだんだん上へ上っていく、こういう傾向が私は大会社にあると思うのです。そういうことについてはどうでしょうか。事実そういうような状態があるかどうか、これを大館さんに一つ先にお伺いしたいと思うのです。
  28. 大館愛雄

    大館参考人 今お話がありました点、私ちょっと気がつかないのでございますが、新しいところでも、先ほど申し上げましたように、特別にそれだけを抜き出して特別扱いをするということは、これは事務上のトラブルが非常に多いものですから原則としてはないはずであります。非常に多い数を全部同じように扱わないと事務的に大へんでありますから、ないと思います。それから部課長が下請をいじめはしないかというお話、これは少くとも代金支払いについては部課長は自分の持ち分の範囲の代金支払い状況がよければ非常に購買が楽なものですから、これは大体部課長全部が寄りまして支払いの予算を取り合うわけですから、その点については特にいじめて腕を見せようということはおそらくないと思います。
  29. 松平忠久

    ○松平委員 そこで御厨さんにお尋ねしたいのですが、造船は今まで相当不況であった。最近好況になってきたわけです。そこでズレがあると思うのでありますが、あなたの方の支払いというものは平均いたしまして今のところは大体どの程度のサイトの手形をお出しになっておるか、また検収にどの程度の時間がかかり、検収から手形を出すまでにどのくらい時間がかかるということについて、去年の場合とことしの場合とについてお尋ねしたいのです。
  30. 御厨虎男

    御厨参考人 これにつきましてはちょうど私ども契約の当事者の資材部長の河合がおりますから河合から御説明申し上げさせます。
  31. 神田博

    神田委員長 この際松平君の質疑に対し、特に三菱日本重工業株式会社横浜造船所資材部長河合邦雄君より参考人として答弁を求めることにいたしたいと存じますが御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  32. 神田博

    神田委員長 御異議なしと認めます。それでは河合参考人
  33. 河合邦雄

    河合参考人 ただいまの御質問にお答えいたします。実は造船自動車工業とは性質が大分違うのでありますが、月に二回の支払いというようなことを開きまして、こんな早い業者の支払いはないのじゃないか、こういうように非常にうらやましく感じたのでありますが、私の方は下請の業者が品物納入しまして、検収の期間は一週間ないし二週間、このくらいの標準になっております。検収が終ってから支払いの期間は一カ月ないし二カ月、その間に大半はキャッシュで払っております。一部約手の場合もあります。この約手のサイトは六十日が標準になっております。従いまして大部分の品物納入してから一カ月半には金になりますし、おそくも三カ月ないし四カ月目にはキャッシュで入る、こういうことになっております。
  34. 松平忠久

    ○松平委員 今のお話を伺いますと、検収してから一カ月ないし二カ月というのはブランクになっておるわけですが、その間は何も出さない、こういうわけでありますか。
  35. 河合邦雄

    河合参考人 それにつきまして私の方は整理上、月に一回の支払いですから、たとえば三月の納入は三月の二十五日をもって締め切りまして、その後に対しては四月の末に払うというわけです。その間に特別の事情のない限りは払いません。下請業者が特に金に困るとかいう特別の事情になったときには、その間臨時払いにしまして、月に一回の払いですから、中間的に払うこともあり得ると思います。
  36. 松平忠久

    ○松平委員 それは現在の状況であろうと思いますが、昨年あたりはどうでしたか。
  37. 河合邦雄

    河合参考人 昨年は下請に対しましてはそれよりも一カ月ぐらいはおくれておりました。ということは原則としまして納入してから二カ月目に払うというのが普通だったのです。最近は一カ月後に大半払うというふうに変っております。去年とことしと比べまして大分改善されておるということが言えると思います。
  38. 松平忠久

    ○松平委員 今のような状況について大館さんにも伺いたいのですが、やはり昨年と比べましてことしあたりの払いというものは漸次よくなってきておるのではないかと思うのでありますが、お宅あたりの支払い条件を今お聞きすると二回ということであったわけですが、昨年と比べまして支払い条件はよくなってきておるわけでありますか。それからもう一つ伺いたいのは、その支払いはキャッシュであるかあるいは手形であるか、手形とすればどの程度の期限ということを具体的にお伺いしておきたい。
  39. 大館愛雄

    大館参考人 昨年と比べましてほとんど変化ございません。ただ昭和二十四年ごろでございますか、非常な不況の時代には今よりも支払いが遅延した事実はもちろんございますが、昨年とはほとんど大差ないと思います。それからもう一つ、これも最初申しました趣旨から、中小企業に対してはほとんど優先して支払っておる、それでないと私ども困るものですから、大企業の方にがまんしていただく、むしろその方が常道でございます。大企業の方がそれだけ耐える力があるものですから、私どもの方はむしろ中小企業の方を育成しなければいかぬ立場になっております。実情はそうなっております。
  40. 田中武夫

    田中(武)委員 一ぺん終ったのですが、もう一つお伺いいたします。先ほどの松平委員からの御質問に関連してお尋ねしたいのですが、部課長とかあるいは係長あるいは直接の担当者と下請との関係なのですが、そういうようないじめるようなことはないということでありました。お宅あたりはそうかと思うのですが、下請の側から言えば、注文をもらうためにあるいはそういうことに何らか手かげんを加えてもらうために、交際費を相当使うとか、ひどいのになるとリベートを要求する係員がおるというようなことで、下請から言えばそういった出費も相当なものだ、こういうふうにも考えられるし、また聞いておりますが、これは一般的に言ってそういうようなことはあるのでしょうか。
  41. 河合邦雄

    河合参考人 私は実は資材担当で、ものを買う立場にあるのでありますが、景気の悪いときの資材というのは非常に楽なわけです。机にすわっておって業者が売り込みに来るわけです。最近はあらゆる業種が強くなりまして、われわれはぜひ一つこの値段でやっていただきたいという工合に懇願に歩いておるという状況でございます。従いまして担当者あるいは私たち初め、メーカーをおどかして不当に値引きするということはあり得ないのでありまして、予算が少いために何とかこの予算まで負けてくれないかというふうにきげんをとりとりお願いする立場になっております。  それから取引をするために交際費が要るとかあるいはリベートというお話がありましたけれども、そういったことばわれわれの会社では絶対に考え得ない、ということは、一担当者の考えだけでメーカーをきめ、注文できないことになっております。主として入札制をとっておりますし、一定金額以上は課長、部長あるいは所長室の承認を得なくてはいかぬというような購買の手続ができておりまして、その間に一個人の力でその業者に特別のフェイヴァを与えるというような余地はなくなっております。従いまして担当者も非常に明朗に、そういう余地がないのですから疑われることもなければ、またやり方も堂々とやるというのがわれわれの会社の実情でございます。
  42. 神田博

    神田委員長 永井君。
  43. 永井勝次郎

    ○永井委員 御厨さん、大館さんお二人にお尋ねいたしておきますが、この法律を出しますゆえんのものは、親企業下請に対して支払いその他で非常に圧迫をしておる。経済的な搾取が行われておる。これに対して、公正取引という立場で、その弱い下請立場を法的に守ってやろう、こういう趣旨でございます。ところがそういうことで支払いの遅延が促進される、こういうことになると、先ほど大館さんもちょっとお話があったように、支払いが早くなれば単価を切り下げる、こういうことになってくる。従ってこの法律が実施されますと、親企業立場の共通な立場として、単価の切り下げ——現金で払うんだ、そのかわり安くせよ、こういうふうに単価の切り下げが並行して行われてくるのではないか。それから現金ならばどこでも買えるんだというので、お前のところから取引しないぞ、お前は下請時代は相当うるさかった、こういうことで、この法律が実施に入りますと、下請の選別ということが、一方的に親企業立場でセレクションされるんじゃないか、こういう心配が下請に相当あると思うのですが、一般的な傾向としてこの点はどうですか。  それからもう一つは、現金で払うならば、自分たちの条列を強化していく。系列化が相当促進されて、そうして一般下請というところははじき出されるのではないか。下請は非常に弱いですから、この法律が出された自分たちの立場を守ってくれるのはけっこうだけれども単価の切り下げでたたかれるんじゃないか、それから親企業の系列化が強化されて、はじき出されてくるんじゃないか、こういう心配が実際にあるようでありますが、この二つの点について、親企業立場で一般的な傾向として、どういうふうにこの法律の実施が発展していくのか、この点についてどういうふうにお考えですか、お二人にお伺いします。
  44. 大館愛雄

    大館参考人 私意見を申し上げます最初に、ほかの条件が同じであれば、金払いのいいところが安くものが買えるということを申し上げました。その事実は起ると思います。ただしこの法案が理想的に施行されまして、だれもかれもがそうなったら、その利点はなくなります。特に現金で払うからといって値切っても、その値切りに応ずるものはなくなるはずです。今そういう差別がありますから、支払いの悪い部分といい部分とありまして、その間の相対関係支払いのいい方が単価が安いということを申し上げたのであります。  もう一つ、どうせ現金で買うんだから、どこでも買えるじゃないかというお話、これは断続的に、たとえばいすを買うという場合ならば、それは起ると思いますが、われわれのように同じものを続けて購入している場合には、それをやろうと思ってもできません。最初に相当投資しなければ、その部品は安くならないはずですから、そういうものを投資したところが、一番いいものを安く入れるはずでございまして、新しいものがぽかっと入ってきても、競争できるはずがありませんから、今まで入ってきたところを排除して、新しいところろに簡単に切りかえることはできません。従ってそういう意味のことを系列化とおっしゃるんでしたら、そういう意味の系列は、私のように同じようなものを連続してやっておるところではある程度すでに成り立っておる。それも都合によってはもっと強化しなければいけない部分もあるし、断続的な買い方をするものについては、そういうことはない、こういうふうにお答えするほかはないと思います。
  45. 永井勝次郎

    ○永井委員 系列化というのは言葉が足りなかったかと思いますが、自分の直属の系列を発展さしていく傾向が出てくるのではないか、こういうことに対する下請の心配がありますが、その点はどうでしょうか。いいところへちゃんとひもをつけておく。そうしてずっと系列を作っていく。あとははじき出していく、こういうことが出てきはしないか。
  46. 大館愛雄

    大館参考人 それは代金支払いの遅速とはちょっと結びつかないと思います。これは単価が安くて良質の品物を供給できるところが生き残って、どうしても原価の高いところ、品質の悪いところは、自然に脱落することは起ると思います。
  47. 御厨虎男

    御厨参考人 今大館さんからお話があったところとほとんど大同小異でありますが、ただちょっと考え方としまして、これもお聞きになっておられると思いますが、実は下請を圧迫するとかいろいろなお話が行われているのでありますが、現在の状況といたしますと、下請の市場は非常に狭うございまして、われわれ各造船所は争奪戦なんでございます。従ってむしろ親会社立場は逆のような、ある意味におきましては、そういう状況になっております。
  48. 神田博

    神田委員長 御厨河合大館、三参考人には、御多忙中のところ長時間にわたり種々意見を述べていただきまして、まことにありがとうございました。それではどうぞお引き取り下さい。太田参考人は万やむを得ない所用のため退席いたしましたので、御了承願います。  それでは次に山中参考人にお願いいたします。
  49. 山中武夫

    山中参考人 私は下請側としまして、一言私見を申し述べさしていただきます。先ほどからお話を聞いておりますと、三菱さんにしましても日産さんにしましても、われわれ関東の下請としましては、最も支払いのいい会社の方なんです。ああいった支払いのいい、また約束を違えない会社本案を非常に必要であるということを言っておられるのでして、いわんやわれわれ下請としまして、もっとひどいところがたくさんございまして、それらのわれわれ下請への約束違反ということを何とかこういった法をもって縛ってもらえぬだろうか。実を言いますと、こういう案が今ごろ出るというのがそもそもおそいという気がします。あまりこきおろして言うのもどうかと思いますが、大体現状を申し上げますと、需要と供給がアンバランスになっておりますので、われわれ下請としては親をどこに見つけようか、この労苦というのは大へんなんです。親の方は下請を選択する自由を持っておりますが、われわれ下請の方が親を見つけるには、友人知己はもちろんのこと、親戚すべてを動員して、そこに連係をつけて仕事をやらせていただくという関係上非常に弱いのです。もう親様々というのが実は現況なんです。この弱点を親が巧みにつかみまして、われわれ下請に不当なしわを寄せられているのじゃないかというように私は考えております。  この案の第三条のところでちょっと申し上げたいのは、「給付の内容及び下請代金の額を記載した書面」、これに必ず支払いの時期を入れてほしい。支払い時期というのがまた非常に大事だと思うのです。契約ですから、これは納入後何日にどういう手形でやるということはやむを得ぬと思いますが、支払いの時期をいわないでやるものですから、水かけ論でどうにもならなくなるのです。御承知のように昨年一昨年と、いわゆる台風手形というのがありまして——これは二百十日、七カ月、それがついにお産手形というものが出だした。お産手形は十カ月だそうです。実際問題としてこういう契約では、今の資金状況では下請はできないと思うのです。物を作って十カ月先にそれが換金されるというのでは、私は契約というものは成り立たぬと思っておりますけれども、現実にそういうことが行われるということは、結局支払いの時期というものがうやむやに延ばされてしまって、ついそういうことになってしまったのではないか。必ず支払いの時期というものを御考慮願いたいというように考えております。  それから第四条のところの法文だと、「下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付の受領を拒むこと。」とか大へんむずかしいですが、これをちょっとわれわれの卑近な例で申し上げますと、第四条の一というのは——大体安く買いたいというのはお互いさまなんですが、数量を非常に多くしまして、たとえば一カ月に五十個要るものは六カ月分になると三百個、そうするとその三百個をお前のところに注文するからこういう値引きをせぬかということがあるわけです。三百個流せば何とかそういう値段で追いつくでしょうというところでわれわれが引き受ける。そうしてその三面個をまっしぐらに生産して五十個納め百個納めると、待ったと言われるわけです。わしのところは五十個しか要らないので、君のところで三百個作るのは君の勝手だ。わしのところでは五十個毎月納めてもらえればよい、こういう条件が作ってから出てくるわけです。これは非常に困るのです。なるほど御要望に沿って大量生産でコスト低下ということは可能なのですが、それを今度下請がいかに資金的に乗り越えていくかということが非常に困難になる。こういうことが大体第一項のよくある例です。  それから一番目のところですが、これは先ほどいろいろ御質問がございましたが、大体われわれの考えております親工場が、資金がゆったりあるところはいいのですが、資金のない、信用のみでやっていこうという親工場というのは、発注する人と納期を督促する人、いわゆる倉庫と金を払うのと係が分散している。ですから発注する側は金のことはあんまりタッチされない。まあ抽象的な、いや、うちはなかなか支払いがいいよという程度で確約しない。資金の方は資金の方でワクがあるとかないとかいうことでそれをときどき延ばされる、こういうことが非常に多いのです。これは先ほども言うように、支払いの時期をちゃんと双方——親工場で十分内部的に打ち合せをされてやってくれればいいのですが、その点なかなかうまくいきません。それで先ほども言ったように、少いワクで下請を追っ払うと、なかなかお前腕があるぞと言われ、重役のお気に入りになる。これは当然だと私も思うのです。そういう点も二番の実例だと思っているのです。  三番には、最近は物が上り出しましたから、しょっちゅう見積書をとる。値段が上ったから見積書を出せということで、われわれも見積書で価格改訂をしてもらう。そうするとその見積書をとりまして注文書をくれる。ところが注文書には、数量のみがうたってあって単価がうたってない。そうすると、あれで認めてくれたのだなということで下請は一応仕事をする。そうして納める。そうしていよいよ支払いのときになりますと、昔のままの単価で仕切ってある。こういうことが最近非常に多い例ですが、やはり契約が初めにがっちりしていないということでこういうことが起ります。おそらくそういうものがこの例であろうと思います。  四番目には、言葉が私悪いのですが、大体要らなくなったものをいかに下請に返そうかということで因縁をつけたらどうにもなりません。また実際私は鋳造をやっておりますが、鋳造というのは、買うまいとなったらどういう理由でもつきますから、とにかくいろいろ因縁をつけられて、ここが曲っている、ここにきずがあるというようなことで返される。これは大体泣き寝入りになりますね。私四つのあれで例をあげたのですが、この競争の激しい、しかも親工場にはわれわれはすべてを捨てて従属していかなければならぬという今日、こういうようなことをやられて下請が成り立つかということです。これはもう今日の下請の現状としては、実際破滅的な四つの項目です。一つ一つ破滅に導くものであろうというように考えております。従って先ほどのお話にもあったように、親工場は下請というものなしではいかぬ。これは私もそうだと思います。親がなければいかぬと同じように、下請がなければならぬというにもかかわらず、そういった不当な行為によって下請のみがつぶれていかなければならぬという実情ですから、何とかここを法をもって阻止していただきたいとわれわれは切に願う次第であります。いろいろ言いたいことはありますが、皆さん方の質問でだいぶやりとりがありましたので、大体この辺で終りたいと思います。
  50. 神田博

    神田委員長 次に滝参考人にお願いいたします。
  51. 滝貞雄

    ○滝参考人 労働組合立場から、この問題に対する意見を申し上げたいと思います。  全国金属労働組合は、この法案関係いたしまするような中小企業をほとんど大部分を含めておりますので、この法案に対して大きな関心を持っております。結論から先に申しますと、内容あるいは今後の運営の問題でいろいろ不満あるいは危惧を持っておりますが、現段階におきましては、一応この趣旨に賛成いたしまして、一日も早くこれを実施していただきたいというのが結論でございます。ただ私たちが心配いたしておりますのは、この法案が成立しただけで下請工場に対する支払いの問題が解決したというようには考えておらないのであります。最も重要な見のがすことのできない問題といいますのは、下請工場の立場が親工場に対して隷属しているという事実であります。社会的、経済的立場が非常に弱い。そういったことが現実の状態でありますので、その隷属関係というものが解決せない限り、この法案の完全な実施というものはおそらく不可能ではなかろうかと考えておるのであります。言いかえましたならば、親工場と下請工場との立場が対等な立場に立ったときに、初めてこの法案が完全に実施されるんだ、こういうように考えておるわけであります。一例を申し上げますならば、中小企業庁長官の違反の事実を認めるまでの過程でありますが、おそらく下請工場からの申請なり何なりがなければ調査ということは行われないであろうというふうに考えますが、現在の下請工場で親工場のきげんを損じてまでこれをあえて申請するだけの力を持っておるというような下請工場はあまりないのじゃないだろうかというふうに考えておるわけであります。従いまして現実の問題として、従来通り遅延をいたしましても泣き寝入りの状態で済まされるという事実が今後多く起ってくるのではないだろうか。一応法的にはこういうふうに保障されながらも、実質面におきましては何ら以前と変らないというような状態が起ってくる危険性が多分にある、こういうふうに考えております。結局下請工場が自由な立場自分たちの権利を主張し得るというような状態にならなければ、こういったものは防止されないのではなかろうか、こういうふうに考えておるわけであります。労働組合のように、資本家に対しまして対等な立場に立って堂々と権利と自由を主張できるような立場に立っておる労働組合でさえ、賃金の遅払いが現実の問題として当然のように行われておる。まして組織を持っていない弱い中小下請企業が対等の立場に立って支払いを請求するだけの力というものを持っておらないということはこれは事実でありまして、おそらくこの法案の完全な実施ということは不可能ではないだろうかというふうに考えております。要は下請工場の弱い立場を解決する、こういった問題がこの法案を実施する重要な問題であると考えるのであります。もちろん現在の産業構造から見まして、こういう問題を一朝一夕に解決するということはむずかしい問題ではありますけれども、私たちが考えて賛成いたしましたのは、一応全面的な解決への一歩前進という意味でこの下請代金支払い遅延促進法案に賛成いたしておるのでありまして、これだけで決して下請問題の全面的な解決というふうには考えておらないわけであります。労働組合が労働三法で権利と自由を保障されておりますと同様に、下請関係におきましても、どういう名称になりますか、下請工業法といいますか、中小企業法といいますか、そういった全般的な権利を保障できるような措置をとる法案といいますか、そうしたものを早急に実施される準備をしていただくことを条件にいたしまして、その第一段階としてこの下請代金支払遅延等防止法に賛成いたしたい、こういうふうに考えております。  それから特殊な例ではありますけれども、やはりこの下請代金の問題でありますが、会社更生法の適用全社の下請は非常に悲惨な目にあっております。オオタ自動車にいたしましても高砂鉄工あるいは理研製鋼にいたしましても、支払いがわずか一割ないし二割しか支払われておられぬ。その反面大口債権とか銀行とかは百パーセント支払われておる。これはこの法案とは面接関係はないかもしれませんが、下請代金という意味で関連がございますので、この次には更生法適用会社に関する下請代金の問題についての法案を早急に一つ作っていただきたい、こういうふうに考えております。これとは関係がないかもしれませんが、労働組合といたしましては最悪の場合におきましても下請工場の労働者の賃金だけは確保できるというような形に持っていっていただきたい、こういうふうに考えております。要は労働組合といたしましては一応賛成はいたしておりますけれども、これの実施のためには全面的な権利と自由を保障するような法案が次に出されたときに初めてこれが実施できるのだ、そういう意味で、まず一歩前進というふうな意味でこの法案に賛成いたしたい、こういうふうに考えております。
  52. 神田博

    神田委員長 以上各参考人に対する質疑を許します。質疑の通告がありますからこれを許します。小、平久雄君。
  53. 小平久雄

    ○小平(久)委員 一点だけ承わっておきます。今滝参考人お話ですが、私も根本的な問題として同感なんです。そこで具体的に親工場と下請企業とが対等の立場でいろいろな条件を交渉できるというところへ持っていかなければならぬ、これはその通りだと思うのですが、それには具体的にどんなふうなことをあなた方組合の立場でお考えになっておるか。また山中さんそういう点を非常に御体験だろうと思うが、あなた方事業主として、具体的にどんなふうに一つしてくれたならばもう少し全体としての下請企業というものの立場が強くなるか、そういう御希望等がありましたらこの際承わりたい。
  54. 滝貞雄

    ○滝参考人 これは労働者と資本家の立場考えていただいてもよくおわかりと思うのですが、労働者個々の場合は資本家に対して対抗し得るだけの力を持っておらないわけです。現在対等の立場に立ち得るのは、労働組合という組織ができ、しかもそれが全国的につながった強力な組織を持っておるから、どうにかこうにか対等の立場に立ち得ると思うのです。現在の中小企業にもこれは自己批判してもらわなければならぬ大問題だと思いますが、中小企業自体が組織化されておらない。一応全国的な組織は持っておりますけれども、実質的には利害の反した組織がお互いの利益のために、ただ連絡のために集まっておるというような中小企業組織が多いのであって、中小企業全体の利益のために積極的に動いているという中小企業組織というものは現在ないように思っております。そうした協同組合といいますか、協同的な組織というものをもっと強化していく、一時的な利益ではなく恒久的な利益を確保するための組織というものを強化していく、そういう方向に中小企業自体も進んでもらわなければこういう問題は解決しないのではないかと思います。現在私たちの方で考えておりますのは、中小企業の技術水準が非常に低い。この技術水準を高めるために、中小企業個々ばらばらで技術水準の向上の研究をやるのでなくして、中小企業全体の共同の技術水準研究会といいますか、協議会といいますか、そうしたものを作ってお互いの技術交換をやっていくことによって中小企業自体の技術水準を上げていこう、これと同様に親工場に対する力も個々にやるのでなくして、全般的にいわゆる協同組合といいますか、そうした形で下請工場の力を結集していく必要があるのではないか、こういうふうに考えております。
  55. 山中武夫

    山中参考人 私は同感です。全くその通り考えております。今の御意見の通りです。
  56. 小平久雄

    ○小平(久)委員 あと一点滝さんに承わりますが、中小企業、特に下請の場合、大企業の争議などによって非常に苦しい立場にい追込まれることが非常に多いですね。それは具体的にいうと、たとえば大企業の方が、親企業の方が争議をやっているという場合には資材の配給もしないとか、あるいはもちろん支払いも停止するとか、そういうことで、このストライキでもなければ下請の方の仕事も続けられるし、あるいは代金も入る。大企業がストライキをやっているために、そういうことがたとい一時的にせよストップされてしまう。日産自動車でしたか、非常に長い間やったことがありましたね、そういう場合にはそれに関連する下請企業というものは非常な苦しみをしたわけです。そういう際に、あなた方組合の立場においてどういうお考えで行動なさっておるのか、また今後なさろうとせられるのか、そういう点を一つ参考のために聞いておきたい。
  57. 滝貞雄

    ○滝参考人 実は私最近それを体験してきたのです。ここに来ます前に、約半月ほど山形のハッピー・ミシンの争議に参りました。これは約六カ月間ストライキをやったわけなんですが、その間下請企業仕事というものは全然ストップされた。下請企業から私たちの方に、ストライキをすみやかにやめろという強硬な抗議が参りました。実際にその内容を申し上げますと、組合がストライキをやったわけではなくて、会社がロック・アウトをやっているわけです。しかもその意図は、組合をこの際徹底的に御用化するんだ、そういう意味において、争議を挑発しておるのはむしろ会社であったわけなんです。日産の場合でも、国産の組合組織を解体するために会社側はああいう手段を取ったわけなんです。実際組合と会社との問題だけであったならば、ああいうような大きな争議にはならなかっただろうと思うのです。結局資本家側の責任においてこういう問題が行われておるというのが多いわけなんです。実際問題としまして、労働組合が一カ月も二カ月も戦うだけの経済力を持っておるかというと、持っておらないわけです。ほんとうのところは、会社の挑発によってやむを得ず戦っておるというのが実態なんです。従いましてそういう問題については、私たちよりもむしろ資本家の方々に責任を持ってもらうのがほんとうじゃないだろうかと思います。一例を申し上げますならば、労働組合会社都合によって失業する場合には、六〇%の賃金が保障されておるわけです。長期にわたるストライキは、ほとんどの場合、資本家側の挑発によって行われておるのでありまするから、当然下請に対するその間の補償の義務というものは資本家側が持つべきではないだろうか、こういうふうに私たちは考えておるわけなんです。   〔委員長退席、小平(久)委員長代理着席〕
  58. 小平久雄

    ○小平(久)委員長代理 次は中崎敏君。
  59. 中崎敏

    ○中崎委員 山中さんにお尋ねしますが、先ほどのあなたの発言によると、この法案の中に支払いの時期を明示した方がいいではないかということですが、かりにそういうようにするとすれば、どういうふうに書き込めばいいのか、どういう規定をすればいいのか、具体的な意見を聞いておきたい。
  60. 山中武夫

    山中参考人 大体三菱さんの例をとりましても、支払い期日というところだけは、注文書にそういう印刷はしてありますけれども、それにいつと書いたことはありません。これは私の知っている範囲ではほとんどないと言っていいと思います。支払日と印刷はしてあるのですけれども、その日が書いてない。ただし三菱さんの場合とか、非常に資金的にゆったりとした親工場に、習慣的に窓口に書いておるわけなんです。いわゆるいつ締め切りで、検収がいつで、いつどういう状況で支払う、これはそれでけっこうだと思うのです。昔よくそういうことはあったのです。必ず事務所に入ると、支払い日何日、納品締め切り何日とたいてい書いてあったものが、それがほとんどない。ですからそういう慣習で支払われているならば私もけっこうだと思うのですが、それがないのが多いのです。ですからあるとき払いといいますか、われわれが非常に苦労するのは、とにかく経理部長の自宅にまでみやげものを持って行って、さんざんお願いして、では何とか考慮しようとか、それをもっとくどく行きますと、幾らくらい値引きせんかということが出てくるわけです。五%値引きすれば半額現金で払おうかとか、優先して払ってやろうかとか、要するに値引きということが大体条件になるのが従来の行き方じゃないか、こういうふうに考えております。
  61. 中崎敏

    ○中崎委員 支払いの実際において、過去の実績から見て、たとえばお産の支払いだとか台風支払いとか、いろいろ相当長いものもあるようでありますが、たとえば六十日、九十日というのが、現在割合いい状態における支払いの実情ではないかと思うのですが、それをたとえば納品後九十日とかいうような、もう少し具体的に、こうした支払いの期日を定めるようなことをこの法律案の中に盛り込むことがいいのか悪いのか、またそれをやることが実際に適しておるのかどうなのか、そこらの点は一体どういうお考えなんですか。
  62. 山中武夫

    山中参考人 そういうことをうたわれると、四条の二にありますような下請代金を遅滞なく支払うという論争点がなくなるわけです。ですからそういう支払い条件というものを、やはり注文書の中には入れるように一つしむけてもらえぬだろうかというのが私の意見なんです。いつ支払うのだかわからぬというのでは闘争の仕方がないわけです。闘争という言葉はおかしいですが、とかくうやむやになってしまうわけです。現実には大体納入後五カ月とか六カ月目に換金しておるのが最近の実績です。ですからはなはだしいお得意さんになると、うちは九十口以上の手形は絶対に出さぬのだ、銀行とそういう話し合いになっているんだから、百日の手形は家は出さぬのだ、これはけっこうなんです。ですから支払いは、もう一カ月待ってくれ、こういうことになるわけです。いやそれでは困るから何とか形がないと、われわれ銀行にも行けぬからと言ったときに、それでは百二十日にやってくれんかとか、百五十日にやってくれんか、百六十国と、だんだん延びちゃうわけです。
  63. 中崎敏

    ○中崎委員 実際に下請関係が生ずるとき、あるいは具体的な注文をもらう際において、支払いの期日というものはおよそきまっておって、たとえば検収を六十日とか九十日とか、あるいはもう少し長いとか、具体的な取りきめがなされる、あるいは慣習的に、この会社の会計というものは、今張り出してあるものも、ないものもあるようでありますが、大体五日締め切りの六十日払いとか九十日払いということがその際においてはさまっておる。ただ実際この会計の経理の都合とか、あるいは何とかの事情で、実はそういうことになっておるんだが延ばしてくれということで、ずるずる延ばしていかれるというのが実情ではないかと思うのでありますが、いずれにしても、下請契約をする際に、あるいは具体的な注文の出る際において、いつ何日に支払えるものであるかということを大体予定されておるのが実情ではないかと思うのでありますが、その点いかがですか。
  64. 山中武夫

    山中参考人 先ほど言いましたように、資材の購入担当者というのは、もちろんそういうことを言うのです。われわれもいつ支払うかわからぬような受注契約はできないのですから、大体いつ支払えるか、どういう条件ですかということは聞いてやる。しかしそれが現実の支払いになると、今度は担当者が全然違う。これは経理の方が担当しておるということになるものですから、前の口約束というのが参考にならないわけなんです。これは実際問題としまして困る。ですから私は、書類にきめたものはもう絶対に守らなければならぬとは言いませんが、やはり親と子の仲ですし、いろいろその辺の事情はお互いにあるのですから、それは折れ合っていくのが下請立場ですが、しかし意地悪くされたときにどうにもならぬ、どうにも持っていきようがないということが困るのではないか、こう私は思うのです。
  65. 中崎敏

    ○中崎委員 その点ちょっと公取の委員長にお聞きしておきたいのですが、今この支払いの時期について、山中参考人からの発言があったのでありますが、この法律案によって今のような支払いの時期をきわめて一方的に下請業者が押しつけられるといいますか、実情は困るような状態に追い込まれておる問題を、解決し得るような一つの自信というか、成算を持っておられるかどうかを一つお聞きしておきたい。
  66. 横田正俊

    ○横田政府委員 ただいまお話の途中で伺いまして、いきさつを詳しく存じ上げませんが、今度の法律が成立いたしますれば、結局支払いのおくれているものに対しましては、勧告をいたすことになるのでございます。法律の規定の上で、しからばどのくらいの期間を過ぎておるものが遅延ということになるかにつきましては、実質的にははっきりした基準が出ておりませんでございます。これはいずれ後ほどいろいろ申し上げる機会があるかと思いますが、その場合々々によりまして、客観的にいろいろ判定いたしまして、大体この取引についてはこのくらいの長さの期間内に支払われるべきであるということになりますれば、最初契約がどうありましょうとも、それに関係なく客観的にきまりました期間を基準にいたしまして、おくれておるかどうかを判定いたしまして、その判定に基きまして適当な勧告をいたす、大体こういう段取りになろうかと思うのでございます。ただ具体的の場合につきまして、果して何日が妥当であるかというようなことにつきましては、相当むずかしい問題でございますが、大体そういうようなやり方でやって参ることになると思います。
  67. 中崎敏

    ○中崎委員 ただいま公取委員長の言われた問題は、そうしたような問題を解決する一部分に当るのではないかと思うのでありますが、もし少し広い範囲において、今具体的に問題となったのは、当事者、たとえばある親会社発注をやるというふうなその担当の方では、何月何日におよそ代金を払うという話し合いがされておる。ところが今度は経理の担当の方ではそれはどうであるかよくわからぬのだが、経理の都合ではこういうことだということで、一方的にされるような関係で、勢い下請親会社との力の関係において押し切られてしまって、ずるずるになるというふうな実例もある。そこでそうしたようなことがないように、期日というものがはっきりきまったようなものについては、はっきり契約の中に支払い期日を織り込まなければならぬ。そういうことを案の内容にまずすべきであるというように規定しておいたら、その問題が解決つくのじゃないかというふうな発言もあるのでありますが、その点もあわせて一つお聞きしておきたいのであります。
  68. 横田正俊

    ○横田政府委員 請負代金下請代金の文書化ということにつきましては、御承知のように規定をいたしたわけでございますが、その他の支払い期日あるいは支払いの条件等につきましては、この文書化をきわめて厳格に要求いたしますることは、現在の実情の上からいたしまして、非常に困難ではないか。また無理にこれをいたしますと、むしろその期日が長めになるおそれがあるのではないかというような考慮からいたしまして、実は今回の法案にはその点まで盛ってないのでございますが、この点はもちろんそういうような一つ考え方もなし得ることではございますが、この法案にはそこまでの考慮が払ってないのであります。
  69. 中崎敏

    ○中崎委員 大体この法案に対してかりに手を加えるとすれば、またこういう一つの気持を表現すれば、たとえばその当事者の間において支払い期日が一応定まった場合においては、これをはっきり契約の中に織り込む、明らかに書き込むということを必要とする。ただしその期日が著しく客観的に見て不当であるというふうな場合においては、これは公取の権限において適当に短縮することができるというふうな意味の規定を置いたら一体どういうことになるのかということをお聞きしたいのであります。
  70. 横田正俊

    ○横田政府委員 そういうお考えも確かに一つの案でございまして、われわれといたしましても一応その点も検討いたしました。先ほど申し上げましたように、むしろあまりその点をやかましく言いますと、長めになるおそれがあるのではないかという点に非常に不安がございましたので、文書化の点は代金額の限度にとどめた次第でございます。
  71. 中崎敏

    ○中崎委員 次にこの法案によりますると、一千万円を境としてそのこえたものの親会社と、それ以下の一千万円以下の資本金をもってする企業体を下請として一応規定されておるのでありますが、われわれは中小企業ということを考える場合においては、資本金従業員とを一応対象として、普通の場合においては三百人以下の従業員を持つような場合が中小企業の範疇に今まで入っておるとされておったわけであります。ところがこの案の内容によると、従業員の数というものは何らこの対象になっていないということにもなるのでありますが、これについて山中さんなり、あるいは滝さんはこれでいいとお考えになっているのか、あるいは人員の点についてもそうしたようなものを考慮の中に入れたような案にしたのがいいのか、そこらの点を一つお聞きしたい。   〔小平(久)委員長代理退席、委員長着席〕
  72. 山中武夫

    山中参考人 お答えします。大体中小企業を一千万円というので抑えること自体が非常に間違っておると思うのですが、そうかといって、これはもう種々さまざまな形態がございますので、従業員のみをもっていうのも、あるいは資本金のみをもっていうのも、いずれも当らないと思うのです。ですけれども、それでは親事業とあるいは下請事業者というものの区別ができないでしょう。せっかくこういうようにうたってございますから、私としては何ら異議はございません。これで私も別に従業員をきめたから下請が非常に明らかになった、親が明らかになったとかいうものでもありませんし、ですからこれは一つ事業というのと下請事業というのを区別したという一つの数字だ、こういうように私は考えておるわけです。
  73. 滝貞雄

    ○滝参考人 私は先ほどの趣旨に賛成を申し上げましたが、部分的にはいろいろなそうした疑問も持っておるわけなんです。大体下請工場が一千万円だとか、三百人だとか規定すること自体に疑問があると思うのです。一千万円以上の下請工場もあるでしょうし、また非常に苦しい場合には一千万円以下の観工場の状態考えなければならぬと思うのです。しかし一応一千万円という形で線を引いて、あとは運営の問題でこういう問題を解決していただくようにしていただきたい、そういうように考えているわけです。しかしその運営の問題も先ほど申し上げましたように、中小企業立場というものが非常に弱い場合には、おそらくその運営も下請企業に対して不利な運営がなされるであろうと思いますので、要は下請企業立場をもっと強くするための法案というものが早急に準備されなければ、どのような法案が作られましても、実質的には何ら効果のない法案になるのではないかと考えておるわけであります。  それから先ほどからいろいろお話のありました長期約手の問題ですが、これは実質的な支払いの遅延なんです。現在の、約手さえ払えばそれで支払いしたというような空気自体がすでに間違っておるのでありまして、この約手の問題につきましても、相当な制限を加える必要があるのではないだらうかと思うのです。  それからもう一つ、現在の下請企業状態を見ますと、現金支払いの交換条件として単価の切り下げというものは、当然これは行われると思います。先ほどから親企業だとかいうような発言で、下請工場と観工場との間を親子のような感覚でお話しておられる方がありましたが、これは当然利害が反する、極端に言いましたならば、むしろ敵だというふうに考えなければならないと思うのであります。従いまして親企業下請企業との立場をもう少しはっきりと割り切って考える必要があるのではないだろうか。先ほど資本家側から非常にいい話がたくさんありましたが、現実の問題として現金支払いの交換条件として単価の切り下げあるいは検査規格の厳重化ということは当然行われますから、そうした問題についてもある程度の制限なり法的な措置をとる必要があるのではないだろうか、こういうふうに考えております。
  74. 中崎敏

    ○中崎委員 これは資本金を一千万円を境として親子の関係を律するという案でありますが、たとえば、資本金を一応の線としても、その他社会通念あるいは経済機構等の一般の状況から判断して親子の——親子のといいますか下請工場と観工場との関係と認め得るようなものも、あわせてその対象にするというふうに、もう少しこの範囲を広げた考え方というものは、実情に即するのか即しないのか、そこを両参考人にお聞きしたいと思います。
  75. 山中武夫

    山中参考人 これは業種によって違うのでして、たとえばわれわれの鋳造業からいいますと、一千万であろうが二千万であろうが、あるいは五百人の人を持っておろうが、どこまでも注文をいただかないと生産ができない。自分のみで物を作ってそれを売りつけることができないという、こういった宿命にありますから、それで私は、こういうものを一千万で抑えるとか三百人で抑えるとかいうことが意味をなさぬというわけなんです。これは業種によって違うと思うのです。ですから、たとえば自動車部品を作っておるといいましても、部品を作る以上は自分の方で勝手に作ってというわけにはいかぬと思うのです。これはどこまでもどこかの親、いわゆる発注というものを、受注を受けなければ仕事ができない。ですから、これはどんなに大きくてもやはり下請じゃないか、こういうふうに私は考えておるわけです。
  76. 滝貞雄

    ○滝参考人 私は、物を注文する場合には遅滞なく金を払うのは当然だと思います。従いましてこれは全面的に親工場と下請工場の問題に適応されるべきだと思うのです。しかし実際問題として、現在中小下請工場にそれを請求し得るだけの力がないために、こういう法案ができたのだろうと考えております。従いまして、一千万円という線が妥当かどうかという問題については、またいろいろ問題があるだろうと思いますけれども、中小企業を救済するという意味から、こういう法案になったのじゃないだろうかと実は考えておったのですが、親工場であっても注文を出した以上は当然支払うのが普通じゃないだろうかというふうに考えております。
  77. 中崎敏

    ○中崎委員 滝さんにお尋ねしますが、この違反した者に対する処罰が非常に軽い、ある意味においては不徹底であるように思いますけれども、これについてはどういうふうなお考えでありますか。
  78. 滝貞雄

    ○滝参考人 三万円でございましたね。三万円ぐらいだったら払ってでも遅延しようというような事実が起り得るだろうという懸念も持っております。
  79. 神田博

    神田委員長 次は多賀谷真稔君。
  80. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 山中参考人にちょっとお尋ねします。実はこの法案とは直接には関係ないのですけれども、今労働組合の滝参考人からお話がありました、最近会社更生法が下請企業をむしろ圧迫する。要するに、ある企業が倒産寸前になった、しかしそれは更生の余地があるというような会社に対しましては、特に債務についていろいろな処置がなされるようになっております。そのうちで租税債権と従業員の給料であります共益債権、これについては優先的に認められる、こういうことになりまして、結局下請代金は全然考えられていない。こういうところから、最近日本パルプが法律の適用を受けて下請企業が倒産をした。さらに園池製作所が最近更生手続を踏みまして、その下請企業が倒産に瀕しておる。あるいはまたオオタ自動車の更生計画では、その下請代金は二割しか払ってもらえない、八割は切り捨てになっておる、こういうような状態になりますと、むしろ会社更正法が下請企業を圧迫する、何とかして改正をしてもらいたい、こういう声があるやに聞いておるわけですが、参考人としてはどういうような御意見であるか、お聞かせ願いたいと思います。
  81. 山中武夫

    山中参考人 私の方は実はオオタに相当迷惑をかけられたものですが、実情を申し上げますと、私全体的に数字を知っておりませんが、たまたまオオタの下請をもって協同組合を作りまして、私がちょうど理事長でそれをやっておったのですが、昨年の一月末に、三十三社の組合員を持つ協同組合が千三百万円の不渡りを食ったわけです、御承知のように不渡りを食うと、これはすでにわれわれが売掛代金を回収したものの不渡りを食うわけでして、代金を回収しないという額は相当程度あるわけなんです。従って千三百万円の不渡りを食ったということは、おそらくその倍額の売り掛けが焦げついてしまっていると言っても私は無理がないと思います。そうしてその千三百万円の不渡りを、そのままでは全員がつぶれなければなりませんので、中金さんで全部割ってございましたが、中金さんにお願いをして、二年間でこれを返済するようにさしてくれぬかとこんこんと頼みまして、そのうちに必ず更生もするだろうからというのでやったのですが、やっと昨年末ごろから、管財人も正式にきまりまして、動き出したというわけで、今日まで一年間に千三百万円を中金にきれいさっぱり返しました。ということは、われわれの最後の頼みの綱である工場が担保に入っておるということなんです。これがどうにもならない、次の手が打てないというあれでして、この担保を引き出したいばかりに、そうしてそれをもっと有効に使いたいばかりに千三百万円を返してきた。金利だけでも月に大へんな額になりました。とにかく十何万円も金利だけでも払っていかなければならない。従って三十三社ありましたのが、協同組合というのは二月の末にならないと整理ができませんので、昨年の月末に不渡りを食いまして、三月末に約九社に減ってしまいました。そしてそれが今日私の方は、もうつぶれてしまいましたが、とにかく不渡りを出さないで銀行信用を待てどうにか業をつないでおるというのが三社あるのみです。こういう実情です。大体オオタの場合は私は横断しておるのですけれども、あれだけの会社の再建を、とにかく八割カットしまして、五年すえ置きですか、それで四年間で払っていこう、四億の資本を十分の一の四千万円にしまして、これで次に来た人が再建できなかったら私はどうかと思うのです。これはだれでもできると思います。一年間休んだといっても、一応オオタという車の信用というものがありますし、設備もございますし、優秀な労働者をすぐって、それをとにかく三分の一以下にカットして、それを全部やったら引き受けるということではもう話にならぬと思います。しかしそれに対して一たび更生法が出ますと、われわれどうにもならぬということです。ですからわれわれもちろんあれを承認しておりませんが、三分の二ですか、承認すればそれは法は通る。あれは実際言って承認のうちに入りませんですね。白紙委任状をとにかく持ち回って判をつけ、何か知らぬがもうどうにもならぬというところですね。ですからこれはもう私自体はもう少し更生法というものはほんとうに債権者を保護するといいますか、そういったものにならぬものか、こう思っております。これから乗り出し得る事業欲のある人を保護するというのにはどうも私は当らぬ、こういうように私は率直なところ考えます。
  82. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 今下請企業からの更生法に対する改正の要望がありましたが、これは別の機会に政府にも聞きたいと思いますので、一応次の問題について参考人にお聞きしたいと思いますが、実は今度の法案下請代金と書いてあって、下請関係が書いてあるのですが、下請というのは交際上私はどうも実情がよくわからないのですが、はっきりつかめるのですか。たとえばこれは売買だとか、請負じゃないのだとか、品物納入する場合にこれは売買契約納入するものだとか、あるいは請負で納入するものだとかあるいは委託の場合もあるでしょう。そこで下請という概念が実際上あなたの方ではっきりしておるのかどうか。一つ業者の立場として、たとえば実際納入の伝票にははっきりそういうことが明示されておるのか、あるいは実際脱法しようと思えばこれは下請じゃないといって幾らでも脱法できるのか、あるいは企業間の従属関係においてもう確立しておるのか、その点が私たち自身立法者として非常に心もとないのですけれども、業者としてその実情をお聞かせ願いたい、かように思います。
  83. 山中武夫

    山中参考人 私の下請という考え方を申し上げますと、注文を受けてその要望に沿って製品を作る、しかしその製品が他に売買できぬというときに私は下請だ、こう自分では解釈しておるのです。ですからたとえばパン屋にとにかく注文する、パンを作る、これは発注した側がパンを要らぬと言ったらそのパンをどこかへ売りに行けばいい、しかし実際下請じゃない、こう私は解釈しておるのです。ほんとう注文を受けて、注文といいますか、その指示を与えられて契約をして、そうしてそれを実行して作る、しかしそれが他には持っていけない、ほかの需要家にそれが当てはまらないというわけです。そういう場合を下請屋、こういうように私は考えておるわけです。
  84. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうしますとあなたの企業の生産量のうちで大体どの程度が下請に入るのか、あるいはどの程度は普通の売買でいくことができる、品物も実は存じてないのですけれども、大体どういう比率になっておるのかを伺いたい。
  85. 山中武夫

    山中参考人 お答えします。私の方は鋳物ですから鋳造しておるのですが、現在は全部品発注生産です。一品といえどもストックも何もできません。それは見込みでやることはけっこうですが、いつ買ってくれるかわかりません。もっとこれを具体的に申し上げますと、大体中型のディーゼルのシリンダー、それからシリンダー・カバーを私の方は専門に作っておるのですが、親工場が大体五社ございますが、同じ二百五十馬力のディーゼル・エンジンにしましても、その五社で共通する部分は一品たりともありません。こういう実情ですから、厳格といってはおかしいですが、一品たりとも作っておいて売るということはできない、注文票を見てからでないと作れない、こういう始末です。
  86. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 あなたの方の会社でははっきり概念が確立し、また製品の性格上他に売ることはできない、こういうものですから、その点においては非常に好都合だと思うのです。しかしこれは後に政府に聞くわけですが、他に転売できない品物、こう限定しますと、この法律というのはわれわれが意図するよりもきわめて狭い範囲にしか適用がない、こういうことになります。他に転売されても実際にそういう足元を見られてたたき値で売買しなければならぬというような状態になると、われわれ立法者としてはそういう状態が現出することは非常に困るわけですが、あなたのような企業だけではなくて、他には相当はっきりしない、またこの法律下請という概念をもって律すれば、あるいはそれば下請じゃないんだと逃げられるおそれもなきにしもあらず、いわゆる脱法的な行為もできるんじゃなかろうか、こういうように思うのですが、その点同業者間あるいはあなたの方でそういう一般的な、俗に下請と言っておる企業内には大体そういうおそれがあるかないか、その点ちょっとむずかしいですけれどもお聞かせ願いたい。
  87. 山中武夫

    山中参考人 それではこれはまた実例で申し上げますが、オオタ自動車の場合で言いますと、鉄板も使いますし、われわれの鋳物も使いますし、その他いろいろ完成部品も使っておられますが、鉄板なんかを納めておられる方はこれはおかしいなと思ったら引き取れます。そうしてそれをほかに販売するわけです。ところがわれわれの場合は引き取ってもどうにもならないわけです。こういうわけですから他に転売のできるものをやっておられる方はその点ある程度こういう不幸な事態になったとき、それがカバーできると思うのです。ところがほんとうの、私が先ほど申し上げたような意味の下請になりますと、これはどうにもならないのです。持ってきてみたところで仕方がない、スクラップにしかなりません。そうかといってちょっとでも加工してありますと、これはもう他のものでわれわれ引き取れない、こういうところに弱みがある。ですからこういう法がほしいというわけです。
  88. 神田博

    神田委員長 この際参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。本日は御多用中のところ、長時間にわたり、本案審査のため貴重なる御意見の御開陳をいただき、厚くお礼を申し上げます。  ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  89. 神田博

    神田委員長 それでは速記を始めて。  引き続き、下請代金支払遅延等防止法案を議題とし、審査を進めます。質疑に入ります。質疑の通告がありますから順次これを許します。田中武夫君。
  90. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣が見えないようでございますので、大臣に対する質問あとにいたしまして、公正取引委員長に御質問いたしたいと思います。  私、先日本会議において、この問題の質問をいたしたのでありますが、本会議では再質問もできませんし、徹底を欠いた点もあろうと思いますので、そういうような点もあわせて御質問したいと思います。  その前に一言申し上げたいのは、この法案は先日本委員会を通過いたしました百貨店法案と同じように、わが社会党では二十二国会において下請関係調整法、こういう法案の名で、われわれから考えるならば、もっと下請代金支払いを促進するという点においてはより強化した、より完備したものを提出したわけでございますが、これは前国会の最終日に、同じような百貨店法案、砂糖法案等とからみまして、審議未了になったわけであります。今日こうして提出せられたのでありますが、まずお伺いいたしたいのは、あの当時すなわち二十二国会の終りと今日とで、下請代金支払い状況については、何らかの変化がきておるか、それとも同じような状態であるのか。その当時と今日提出せられましたこの時期との、そういう関係についての比較といいますか、経過、そういうものをお伺いいたしたい。
  91. 横田正俊

    ○横田政府委員 この下請代金支払い遅延の問題につきましては、公正取引委員会がこの問題に特に着眼いたしましたのが昭和二十八年ごろからでございまして、二十八年、二十九年、三十年、大体三回にわたりましてかなり広範な調査をいたしたのでございます。第一回の二十八年の当時は、御承知のように非常な金融引き締め等の関係がございまして、かなり親企業にも困難な事情がございまして、それが支払い遅延ということのかなり大きな原因をなしておったように見受けられるのでございますが、さすがに二十九年になりますと、だいぶその点が改善せられた形が見えて参りました。しかしさらに三十年になりまして、その点がもっと改善せられてよいはずでございまするが、これは少くとも公正取引委員会で調べました範囲におきましては、かえって二十九年度よりは、一般的にならして考えてみますると、あまりおもしろくない状態が三十年度の方にむしろ見えておる。その意味におきまして、前国会当時よりも、あるいはその支払い状況が少し悪くなっているというふうにも言えるかと思います。これはもう少しこまかくいろいろ数字的に申し上げればありますが、そういうような常に予期に反して、最近はよかるべきものがなかなか思うようによくなっておらないというふうに大体観察ができるかと思います。
  92. 田中武夫

    田中(武)委員 ただいまの横田公取委員長お話であると、下請代金支払い状況は、昨年よりか本年の方がおもしろくない状況、すなわち悪いというようにお認めになっておるわけです。それならばあの当時社会党として提出した法案内容は御承知の通りと思います。あれには下請代金支払いに関して、たとえば検収あるいは支払いの期日等について、はっきりと明確な期間を設けておったわけですが、本法案によりますと、遅滞なくというような抽象的な言葉で表現せられておる。検収また期間問題については具体的な規定を持っていないわけです。去年よりかなお状況がよくないと御判断をしておられて、なおわれわれが提出した法案よりか抽象的な規定になさったことについては、この法案作成に当って社会党のいわゆる期日、検収等についての期間を定めたものと対比せられてお考えになったか。もしお考えになったとしたならば、なぜそのような抽象的な規定にせられたかをお伺いいたしたい。
  93. 横田正俊

    ○横田政府委員 前国会に社会党から御提出になりました法案につきましても、公正取引委員会として一応の意見を持っていたのでございまするが、御承知のような状態で、ほとんど内容の審議に入らずに前国会が終ったような状況で、われわれの意見を申し上げる機会もなかったわけでございます。われわれといたしまして、約三年の経験に徴しまして、いろいろ考える点がございますのは、検収の問題につきましても、支払いの時期の問題につきましても、公正取引委員会としては、運用一つの基準として、支払い遅延に関する認定基準を定め、その中において検収はおよそ十日、支払いは検収終了後三十日というような一応の基準を作っていろいろやってみたのでございますが、大体この基準は現在でもそう苦しく間違った基準ではないと考えております。しかし実際に当ってみますと、なかなか個々のケースに当って十日とか三十日ということを形式的に当てはめていくということは、現実に仕事を取り扱っている者の感じを率直に申しますと、非常に困難だそうでございまして、従ってわれわれとしては、それらの一応きめましたような基準を法案に盛ること自体がかなり困難で、また下手にこの期間をきめますると、かえってそれは相当長めなものになるおそれもございますので、はなはだ隔靴掻痒の感がおありかと存じますが、本法案におきましても遅滞なくというような、いささかはっきりしない表現を用いておるわけでございます。従って社会党の前回の案に対しましても、こういう基準を作りますることは、いろいろなよい面もないではないのでございますが、やはり多少実情に即しないというようなうらみがあるのじゃないかというので、前回の御案に対してもそういう批判を実はひそかにいたしておったわけでございます。  そういうようなことで、今度の法案につきましても、一応今までの経験の上に立ちました取扱いで発足をいたしまして、実際の取扱い上、ある時期には大体このくらいの基準、またある時期にはこのくらいの基準というような具体的な基準がおのずからだんだんできていくというふうに運用して参りたいというのが、われわれがこの法案の中にあまり具体的な数字を掲げませんでした主たる理由でございます。
  94. 田中武夫

    田中(武)委員 ただいまのお話ですと、一応検収については何日、支払いについては何日と基準を立てた、今でもそれはそう間違っていないと思っている、だがこれを画一的に法規に盛ることはどうかと思ったので、こういうことだったと思いますが、しかし今あなたが言われたように、その基準が現在でも間違いでないと考えておられるならば、私は法案に入れた方がいいのではないかと思う。そうして画一的に入れることはどうかと思われるという部面は確かにあろうと思います。そういうことに対しては例外の規定なんかも考えられると思う。先ほどの山中参考人意見によりましても、本法案の第三条の中に、書面で契約せよと書いてあるが、期日という言葉が入っていないということに対して、これを入れてもらいたいというような意見も出ております。また滝参考人からは、こういうことがきまることによって、いわゆる検査の厳重化ということによって、いろいろな下請の圧迫ということも考えられるということを言っております。従って検収に対して一定の期間を設けなければ、受注からということでなく、検収が終ってからということになると、検収をせずにほっておくことによって、代金支払いについておのずから向うにつけ入れられるという結果にもなろうと思います。先ほど運用に当ってある程度の基準ができてくると考えている、また作りたいと思っているということでしたが、それでは本法運用に当って、そういう基準を作るために、どのような指導、どのような方法考えられているか、承わりたいと思います。
  95. 横田正俊

    ○横田政府委員 実は公取といたしまして今まで扱いましたものは、大体機械工業を中心といたしまして、種類はたしか十八種類以上に及んでおったかと思いますが、今回の法案に比べますと相当その範囲は限定されておりますのと、なお三年間の経験でありまして、またいろいろ経済情勢が変化しているというような点もありますので、今ここで早急に、この法案の中にただいま仰せられましたような趣旨のはっきりした数字を掲げますことは、先ほども申し上げましたように困難であります。なお今後の扱いといたしましては、個々のケースケースにつきまして実情をよく見まして、いろいろの業界にはおのおのそれぞれの事情がありましょうから、その各業界につきまして、最も適切な期間というようなものを発見することについては、実務を通じて発見し、かつしかるべき期間短縮というような方向にそれを指導していくというようなふうにやりたいと考えているわけであります。
  96. 田中武夫

    田中(武)委員 実務を通じて期間短縮の方法で導くようにしたいということなんですが、具体的にこうすればそういうようになるんだという確信ですね、こういうことについて具体的な方法一つ言っていただきたいと思います。ただ指導面を通じてとか、そういうような言葉では、私、十分今公取委員長のあなたが考えておられるような方向へ行きかねるんじゃないか。   〔委員長退席、小平(久)委員長代理着席〕 少くとも法規に基いて指導しても、そういうことが往々にしてやりにくいところに、法規からそういう点がぼかされておって、そうしてほんとうの行政指導、こういうことができるでしょうか、そういうことの確信のほどはいかがでしょう。
  97. 横田正俊

    ○横田政府委員 実はこの前の認定基準につきましても、これは確定的なものではございませんが、一応当時の状況からいたしまして、そういう認定基準は作りましたけれども、それがどうも周知徹底しておらないということが方々から言われまして、この周知徹底にはいろいろ努力をその後いたしたのでございますが、ただいま申しました今後の方針につきましても、逐次各業種について適当な期間というようなものが考えられて参りますれば、おのずからそれをだんだん周知徹底させるようなふうにいたし、あるいは今回盛られております公取の行政措置の一つとして、勧告と並びまして公表という制度もございます。それらの制度を通じまして、そういうことをだんだんその業界に徹底させていくというふうにやりたいと考えておる次第でございます。
  98. 田中武夫

    田中(武)委員 この問題につきましては、結局は公取委員長であるあなたの腹、それから公取委員会の機能組織、こういう問題によって所期の目的が達せられることになるかどうかということになろうと思います。ところが私、本会議のときも申しましたように、これは横田さんでなく、むしろ政府に申し上げるのですが、政府が最近出してきているところの法案は、そのほとんどがいわゆる独禁法緩和、公正取引委員会を骨抜きにするというふうな法律案が多いわけなんです。そういうように一角々々から現在切りくずされていって、失礼ですが有名無実化せられつつある公取委員会において、今委員長考えておられるような強い行政的な措置、強い監督指導ができるということはわれわれ考えられないのですが、これにつきましてはむしろ私、通産大臣はおられないので次官にお伺いしたいのですが、次官として今後このようなことについてより一そう政府として、公取委員会の機能強化ということを考えていかねば所期の目的が達せられないと思うが、そういうことについてどういうふうに考えておられるか、それをお伺いいたします。  その前に一言申し上げたいのですが、政府は中小企業関係法律は今国会にも数案出されました。名前はなるほどいいのです。中小企業振興助成法あるいは百貨店法、この下請法案、名前はなかなかいいのですが、内容を見てみますと、あの際も私は羊頭狗肉を掲げる、こう申しましたが、法案の名前だけは確かにいいのですが、内容は何だかぼやけておる。百貨店法においてもしかりであります。下請のこの法案についても、遅滞なくとか、そういったような抽象的な言葉で、きめ手がない、こういうことなんです。一体政府は中小企業の問題について、どのように考えておられるか、また先ほど申しました公取委員会の強化、このような点についてはどのように考えておられるのか、お尋ねします。
  99. 川野芳滿

    ○川野政府委員 下請代金の遅延の問題につきましては、独禁法の関係において実はある程度の取締りはできるわけであります。しかし実際問題といたしましては、いろいろの欠点がある。どういう欠点かと申しますと、御承知のように審査、審判の手続をとってやらなければならないというような点等がございまして、従いまして独禁法の関係のみをもって取り締るということは、実は相当の時日を食う、こういう点等も考えられまして、従いまして現在の独禁法を実は厳格にやりましても、そういうような関係である程度のそこに遺憾の点がある、そういう関係で実は今回の法案と両々待ちまして、そして取り締っていった方が、その効果を表わすのではなかろうかというような観点から、今回の法案を提案するということになったのであります。なお中小企業振興の問題でございますが、これはなかなかむずかしい問題でございます。従って政府におきましても、いろいろな施策を実は行なっておるのでありますが、しかしまだ完全なる効果の表われておらない点を非常に遺憾に存じております。しかしこの問題につきましては、かねて大臣からも御説明申し上げましたように、中小企業の協同化の問題あるいは組織化の問題、こういう問題を通じ、さらに中小企業の個々の実態を診断いたしまして、そうして診断に基いて適切なる施策を講ずる、あるいは当委員会におきましても問題になりました金融の問題、あるいはまた税金の問題、いろいろな問題が実はあろうかと考えますが、これらの点につきましても今後さらに検討をいたしまして、そうして中小企業振興のために努力をいたしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  100. 田中武夫

    田中(武)委員 今次官は、独禁法の規定、公正取引委員会の機能、こういうことだけでは足りないので、この法案を出して両々相待ってと、こういうように言われました。またその御答弁の中に、公取委員会の審判手続、こういうことになると、いろいろと日数もかかり、手もかかる、こういうこともみずから認められているわけです。ところが百貨店法においては顧客の関係その他というような、いわゆる百貨店の販売方法について、すべて公取委員会の勧告にまかす、こういうような規定になっている。こうなれば語るに落ちるで、私の申し上げたように、名前だけはいい名前を掲げているが、実際の内容はしり抜けになっている、また今言われたむずかしい審判手続に待たねばならないというようなところに逃げ込んでいる、こういうことになるわけですが、私が今伺っているのは、大体先ほどあげた中小企業振興助成法、甘貨店法、この法案と、中小企業に関する法案は名前はいいが、内容がもう一つ締められていない、こういうこと、そこでそういうことについて一般的に政府として中小企業の問題をどういうふうに考えているのか。こういうことをお伺いしておったところですが、幸い大臣が見えましたから大臣から伺いたいと思います。
  101. 小平久雄

    ○小平(久)委員長代理 田中君もう一ペん繰り返して申し上げて下さい。
  102. 田中武夫

    田中(武)委員 本国会で政府はなかなか名前のいい法案をたくさん打ち出されている。中小企業振興助成法、百貨店法、それからこの法、ところが名前はいいのだが、中身は間が抜けている、こう申し上げている。百貨店法にしても、先日私が申し上げましたように、勧告ということで逃げ込んでいる。これにおいても遅滞なく支払わねばならぬ、こういうことで逃げ込んでおられて、何ら具体的にはっきりしたきめ手というものを法律に盛り込んでおられない。ここに私がいつか本会議で申し上げたように、欺瞞性はないとあなたは言われたが、私は欺瞞性があると思うのですが、この中小企業の施策に対する政府の欺瞞性がある、こう私は申し上げておるのですが、欺瞞性がないとおっしゃるなら、その真実性を一つ披瀝していただきたい。
  103. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 こういう経済行為についての法律は、むしろある程度幅がある方がいいのじゃないかと私は思うのです。今御審議願っておる下請代金法案は、むしろ比較して申せば、百貨店法案などよりはもっとその点においてはっきりしておるものと思います。これは公取の活動を、われわれの方でも支援といいますか協力して、公取が活動できるようになっておりますから、その点においては、御指摘のことがほかの法案よりは、むしろ下請代金の方が御趣旨に沿うておるのじゃないかと考えております。いずれにしても経済法案というものは、そうあまりきっちりせずに、ある程度の幅を持たせる必要がある、かように考えております。
  104. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣おいでになる前に、横田公取委員長に私お伺いしておったところなんですが、昨年とことしと比べて、下請代金支払い状況はより悪化しておる、こういうことを公取委員長も認めておられる。昨年の二十二国会では、われわれ社会党から提出いたしました下請関係調整法では、検収、支払いについてはっきり期日を限ったものを出しております。ところがこれには、先ほども申し上げておりますように、遅滞なくというように抽象的になっておる。そこでどういうようにせられるのか、こうお伺いしたら、横田委員長は、今後の公正取引委員会指導によって、はっきりと期間をより短かくするように指導したい、こういうことでありました。そこでお伺いしたいのですが、これは前にも申し上げましたが、政府のやっておられる新しい経済立法は、独禁法の緩和というものが多いと思うのです。従ってその裏を返せば、公正取引委員会を弱体化するというか、骨抜きにするというか、そういうように現政府の経済方針というものが進んでおると思います。そういうふうな中にあって、果して公正取引委員長は、純真な気持でこうやりたいと考えておられるか。現在の機能なり、また今後も骨を抜かれるであろうと思われる公正取引委員会において、今公正取引委員長が考えておられるような強力な行政措置がやれるか、こういうことに対してわれわれ危惧の念を持つわけなんです。そこで今度の法律によって、一そう公正取引委員会も忙しくなり、またそうでなければやれないと思うのです。また百貨店法にしても、やはりそういう面があります。これをほんとうに立法せられて、そして実施をせられるような御意思があるなら、公正取引委員会を強化しなければならない。そういうことについては、担当大臣としてどのように今後公正取引委員会について考えておられるのか。これがはっきりしなければ、幾ら法律を作ってもほんと言うに強力な実施ができない、こういうような結果に終るのじゃないか。そこに公正取引委員会を強化するのだ、独禁法をより強化するのだ、こういうはっきりした大臣の決意がなければ、この法律なり百貨店法その他の中小企業関係法律は、やはり名前だけで中身がなくなってしまう、こう申し上げているのですが、大臣の決意のほどをお伺いいたします。
  105. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 今まで独禁法の適用を一部解除し、あるいは緩和するような法案が出たことも事実であります。しかしそれはやはり輸出入に関する問題とか、あるいは中小企業に関する問題で、やむを得ざる範囲において独禁法の一部の適用緩和ということをやっただけでありまして、政府としては、独禁法そのものを弱体化そうというような考えは毛頭ない。それは今までの法案をごらん下さればわかるだろうと思います。今の下請の問題も、これは公収の人員をふやすとか何とかいうことをするかしないかは、ほかの関係がありますから、今ここで述べませんが、しかしこれには、ここにも書いてあるように、通産省の方の中小企業庁とか何とかいうものが公取にお手伝いをして、そして必要な場合には、公取に資料を提供する、あるいは報告するというようなことをしているのでありますから、こういう意味においては、この法案は公取を強化する法案とも考えられるわけであります。これは政府としては、むろんそういうことで十分公取に活動をしてもらうように考えているわけであります。
  106. 田中武夫

    田中(武)委員 日本語は便利なもので、やむを得ない事情、こういう言葉がどんな場合にも出てくるわけです。これを乱用しておられるのが、現在の政府だと思う。そうでないとおっしゃるかもわかりませんが、われわれはそう感じております。そこで幾ら法律を作っても、やはりその裏づけがなければいけない。本会議の場合にも私例を上げましたが、労働基準法があっても、現在それが破られているということは、これは周知の事実です。なぜそういう状態が起るのかというと、労働基準監督署の監督官が少いから、監督が十分行われない、こういうことなんです。この法案によりますと、一千万円以下の企業の中で、下請仕事をしているもので土木と建築、これを除くすべてが適用になるわけですから、膨大なものだと思います。それをほんとうに現在の公取委員会の機能、人員でやれるかということがわれわれ疑問です。それについて公取委員長とそれから大臣と双方から、やれるのかどうか、やれないとするなら、大臣はどのような人員その他の点について考えているのか、こういう点についてまず大臣から御答弁を願って、それからその自信のほどを、一つ横田委員長からお伺いしたい。
  107. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 ただいまも申し上げましたように、この法案の実施については、公取の人員だけでなく、通産省の方から手伝って、その力を合せてやろう、こういうのでありますから……。公取が今の人員でやれるかやれないかということは、私の判断じゃなく、むしろ公取委員長の判断を待たなければなりませんが、しかしこの結果によって、もし公取委員会の方がどうしてもうまくいかぬ、こういうふうなら、それは通産省の方においてもむろん考えなければならぬと思います。
  108. 横田正俊

    ○横田政府委員 この法案を実施するにつきましては、私どもの気持を率直に申させていただきますれば、人員ももっとほしゅうございますし、従って予算ももっとあることが望ましいのでございまして、実はこの法案の提出に、それらの裏づけの措置が伴っておりませんことは、ある意味におきまして、私どもの怠慢でございまして、この点はこの法案作成を非常に急ぎましたような関係からいたしまして、そういうことになったことにつきましては、私としてはなはだ申しわけなく思っているわけでございます。しかし先ほど来申しましたように、この仕事は実は昭和二十八年から中小企業庁と公取と全く一体となりましてやって参った仕事であって、特に中小企業庁といたしましては、人を借していただいて、一体となってやっているというようなこともございます。従ってこの法案が幸いに成立して、これを実施するに当りましては、大体今までのやり方を続け、なお、さらに密接な関係を強化するという方面をもちまして、人員や何かの足りない点を補いつつ一応発足させていただきまして、なお、大体公取が最後の結論を下す立場にございますので、人手の不足あるいは予算の不足ということは目に見えておるような気もいたしまするが、一応これで発足いたしまして、いよいよいけなくなった際には、人員につきましても予算につきましても、それぞれ政府の担当部門に向いまして、しかるべく要求をいたし、了解してもらいたいというふうに考えておりますが、本会議におきましても河野行政管理庁長官からああいうお話もございましたので、われわれの仕事がもし正しいしっかりしたものであるということがわかりますれば、政府におきましても十分の考慮を払ってくれるものと私は確信をしておる次第でございます。
  109. 田中武夫

    田中(武)委員 大資本の暴力といいますか、跳梁ばっこぶりは目に余るものがあろうと思います。そういうところから圧迫を受けておる中小企業、これを守っていくというか保護育成していくためには、独禁法の強化と公正取引委員会の機能の強化が第一だと思うのです。今公正取引委員長から、人員、予算の点についても希望的な意見が出たと思いますが、これについては大臣よう聞いておいていただきたいと思います。また先ほどこの席上で参考人に来ていただいて、いろいろ意見を開いたわけなんです。きょうは参議院の関係で大臣あちらの方へ行かれたので、やむを得ないと思うのですが、ああいう中小企業者のなまなまとした切々たる訴えを、大臣みずから聞いてもらいたい、このように思うわけです。この際に出ておりました意見は、いわゆる台風手形、お産手形、こういうこともあったのです。台風とは二百十日を意味しておじ、お産とは十月十日の十カ月、そういうような状態が現実に起っておる。そういうことを憂えて、格好だけではあるがこういう法案も出たわけなんです。そこで検収と期日について明確にできないのか、こういうことをお伺いしたのが質問の始まりなんですが、その際参考人の希望意見というか、これは中小企業者の代表的意見だとも考えられるのですが、第三条に支払い期日というのが明確に入れてないことが不満である、こういうような意見も出ております。われわれは社会党原案のように、検収及び支払い期日について明確な独立規定を持つことを望んでおりますが、それは例としても、少くともこの法案の中に第三条あたりに期日というようなことくらい入れても悪くないじゃないか、こう思いますが、そういうような点についてはどのように考えられますか。
  110. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 下請業者の声は、きょうは不幸にしてここへ出席ができませんでしたが、通産省としても折々その方面の人を呼んで意見を聞いております。何とかしなければならぬということは痛切に感じております。ですから、したいと思っておりまして、この法案はただその一部であります。ただこういう経済的のことは、いかにいいことでありましても、あまり断層があるようなやり方をすることは、またほかにいろいろな悪影響も生ずる懸念がございますから、なるべく断層を起さない限りにおいて、従ってすっと見ると、なまぬるいような点もございますが、むしろその点は一応なまぬるい法案になっている方がいいのじゃないか。気持ちにおいては、お話の通りわれわれもその通りに感じておるのでありますから、実施において決して御懸念のような、大企業を助けるためにという考えは持っておりませんから、どうかその点は御了承願いたいと思います。   〔「了解々々」と呼ぶ者あり〕
  111. 田中武夫

    田中(武)委員 ところが了解できないからお伺いいたしておるわけなんです。今まで政府なり自民党の諸君のやられている点が、大資本擁護という感じが強い、だから申し上げているわけです。御懸念のないようにと、こういうふうにおっしゃっておられますが、先ほど大臣は、こういう経済立法というか、こういう規定はあまりかっちりとしない方がいいんだ、こうおっしゃっております。これは自由競争というか自由主義経済というか、山本博士の思想をもってすれば正しいかもしれませんが、少くともそういったような圧迫の現状に対して、中小企業の保護政策という点から、国家がこれに干渉しようというような場合、こういうはっきりしない点は避くべきじゃないか、こう思うわけであります。やはり大臣の腹の底は、この方がいいのだ、はっきりしない方がいいということなら、力の強い者が勝てるということで、やはり力の強い者の方に幾らか道を開いておるということは争えないと思いますが、そうじゃないでしょうか。
  112. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 山本博士云々の御指摘がありましたが、山本君が主張しておられるようなごく純粋の自由主義からいうと、これも今の社会層として断層を作ることになりますから、こういう法案はいけないのだろうと思います。しかし純粋といいますか、あるいは原始的といいますか、そういう自由主義には私は賛成しない。そうかといって、政府が干渉して、ある部分の自由を束縛するという場合には、あまりまた一ぺんに厳格なやり方をしますと、そのところだけはよさそうに見えましても、ほかに必ず弊害が起ると私は思います。下請業者がかえって困難をするというような場面も起りがちになりますので、それらの点を考慮して、できるだけ一つ効果があるようにと思いまして、表面の文章を見ますと、なまぬるく感ずるような法案を出したわけであります。
  113. 田中武夫

    田中(武)委員 大体私正直で、あまり同じことを食い下るということは性に合わないのです。普通の人なら、ここで一時間くらい同じ問題を繰り返すと思うのですが、きょうはだいぶ人も少いし、そういうことはやめたいと思うんです。ただ先ほどからの質問の中で申し上げていること、あるいは横田委員長の御答弁の中にありました強力な行政指導によってはっきりしていきたいんだ、こういうことだけははっきりと銘記しておいていただきたい。  方面を変えたいと思うんですが、先日もちょっとお伺いしたんですが、先ほども申しましたように台風手形、お産、手形というような状況支払いをやっておりながら、一方においてはその親企業自体は、二割もの高率な配当をやっているというところも現にあると思うんです。そこで本法まっ正面でそういう規定ができるかどうかは別といたしまして、あのときも伺いましたが、そういうような、いわゆる下請はしぼらなくちゃ損だというような考え方で注文を出し、企業を通常しているような親企業に対して、支払い期間を制限するとか、何らかの措置を講ずるということについて、本会議のときにはその気持がないように言われたが、その後中小企業の声もよく聞いておると現に言われたのですが、お聞きになってからも、気持は変っておられないかどうかをお聞きしておきたい。
  114. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 私はやはり一般に中小企業者、下請業者というものは、第一の必要はそれ自身の基礎を強くしなければならぬと思うのです。今なぜ下請業者が親企業者にお話のような目にあっているかというと、結局下請業者の経済的基礎が弱いということです。うっかりすれば、お前がそんなやかましいことを言うなら、ほかのところへ下請させるということを言ってくると、すぐに参っちゃうというような姿であることが根本的の欠点だと思う。ですからこれは先般通過しました予算の中にもありますように、下請だけじゃない、中小企業の実態の調査を今年はいたしたいと思います。今参議院でも申してきたんですが、とにかく中小企業というものが、実を言うと、はなはだ怠慢でありますけれども、実態がつかめておらないのです。もっともっと中小企業の改善すべきところは、金融もあるでしょうが、金融ばかりでなく、そのほかの面において、下請業者の基盤を強くするということをやらなければいかぬと思いますので、幸いにして——率いかどうか知らぬけれども、私どもがなおやるならば、下請業者のほんとうの調査をして、皆さんの御意見も伺い、どうして下請業者あるいは一般の中小企業者を強くするかという研究をし、実施をしたいと思います。ただ、親企業を押えたら下請企業が必ず助かるかというと、そうばかりも言えないので、やむを得ないから親企業を押えて一応下請企業への風当りを幾らかやわらかくするという程度のものだろうと思うのです。
  115. 田中武夫

    田中(武)委員 今の大臣の御答弁は、先日の百貨店法のときの御答弁と同じ趣旨に行われている。言われる通り、それは一方だけで問題は解決しない。中小企業の保護育成の面についてはあらゆる手を打たねばいかぬ。その一番初めの前提というか、漸進的に作った法律においてなおこれだというところにわれわれは危惧の念を持っているわけです。それから、先ほど私がお伺いいたしました、そういうけしからぬ親企業に対しては、配当制限その他何らかの措置が考えられないかということについては、まっ正面の御答弁がなかったように思います。そこを一つお伺いいたします。  それから委員長、どうでしょう。まだ私だいぶ質問があるのですが、こう見ておりますと定足数を欠いておりますし、私が質問していなければ動議を出したいところなんですが、きょうはこの辺で終えて、あらためて質問を継続することにしたいと思いますが……。
  116. 小平久雄

    ○小平(久)委員長代理 けっこうです。
  117. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 ただいまのところでは、支払いが悪いからその親企業の配当を制限するとかなんとかいうところまでは実は考えておりません。同時に、これは研究いたしますが、そういうことが果して下請業者を救うゆえんになるかどうか、十分検討しなければならぬと考えております。
  118. 小平久雄

    ○小平(久)委員長代理 本日はこの程度にいたします。次会は来たる二十四日午前十時より開会することとします。  これにて散会いたします。    午後四時三十二分散会