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1956-04-19 第24回国会 衆議院 商工委員会 第36号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月十九日(木曜日)    午前十時五十二分開議  出席委員    委員長 神田  博君    理事 小笠 公韶君 理事 鹿野 彦吉君    理事 小平 久雄君 理事 笹本 一雄君    理事 長谷川四郎君 理事 中崎  敏君    理事 永井勝次郎君       秋田 大助君    阿左美廣治君       宇田 耕一君    内田 常雄君       菅  太郎君    椎名悦三郎君       篠田 弘作君    島村 一郎君       田中 角榮君    田中 龍夫君       中村庸一郎君    野田 武夫君       南  好雄君    山本 勝市君       伊藤卯四郎君    加藤 清二君       佐々木良作君    佐竹 新市君       多賀谷真稔君    田中 武夫君       田中 利勝君    帆足  計君       松尾トシ子君    松平 忠久君  出席国務大臣         通商産業大臣  石橋 湛山君  出席政府委員         通商産業事務官         (大臣官房長) 岩武 照彦君         通商産業事務官         (通商局長)  板垣  修君         通商産業事務官         (通商局次長) 樋詰 誠明君  委員外出席者         大蔵事務官         (為替局資金課         長)      片桐 良雄君         大蔵事務官         (為替局管理課         長)      江上 竜彦君         農林事務官         (水産庁生産部         水産課長)   小池 弥六君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 四月十八日  委員山本勝市君及び多賀谷真稔辞任につき、  その補欠として菊池義郎君及び福田昌子君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員菊池義郎君及び福田昌子辞任につき、そ  の補欠として山本勝市君及び多賀谷真稔君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  外貨予算に関する件     —————————————
  2. 神田博

    神田委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。理事会の申し合せにより、外貨予算に関して調査を進めたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 神田博

    神田委員長 御異議なしと認めます。  外貨予算に関して調査を進めます。まず政府より説明を求めます。石橋通商産業大臣
  4. 石橋湛山

    石橋国務大臣 三十一年度上期の輸入貨物外貨予算編成方針につきまして、ごく一般的な概要だけを申し上げます。  昭和三十一年度上期輸入貨物外貨予算編成方針につきまして、その最大の特色は国内物価の上昇を抑制し、経済の安定した発展を確保するため、予算規模をできるだけ拡大をすることに主眼を置いて編成したいということであります。すなわち従来国内物価がとかく国際水準を離れて強含みになりがちでありました原因の一つが、何と申しましても輸入が押えられていることにあることは否定ができません。ところが幸い昨年来輸出の状況はきわめて好調でありまして、手持外貨増大いたしました。これ以上外貨をふやすために無理に輸入を引き締めるという必要は感ぜられなくなりましたので、この際国内物価の安定を維持する方針を貫くことを第一義といたしまして、思い切って予算規模拡大をはかったわけであります。その結果上期輸入予算の総額は、予備費五千万ドルも含めまして十五億四千三百万ドルに上り、前年度同期の修正最終予算に対しましても、三億八千三百万ドル増額となったのでありますが、さらに本年度年間予算規模といたしましては、三十億ドルを突破する、戦後最大予算規模予定している次第でございます。  次に自動承認制適用につきましては、経済正常化を促進する見地から、通商上及び産業上の諸問題との調整をはかりつつ、逐次これを拡大して参る方針でありまして、近日中に鉄鉱石鉄くず、米材、松やに等を全地域または一部地域について自動承認制に移すことにいたしておりますが、さしあたり自動承認制適用が困難な品目につきましても、割当予算増ワク商社割当増額等によりまして、実質的に自動承認制適用した場合とほぼ同様の効果を上げるように取り計らいまして、かつできるだけ早い機会に、可能ならばここ一、二期の間に、これらの主要なる品目につきまして自動承認制に移行し得るように目下検討準備を進めておる次第であります。なお本期予算編成に際して、一たび自動承認制に移行した品目につきましては、今後国際収支上の理由により、これを再び外貨割当制に戻すということは絶対にしないという方針を確立いたしました。これによりまして思惑買付、その他輸入面に混乱を起す危険を防止することに遺憾なきを期しておる次第であります。  第三に品目別予算策定方針といたしましては、鉱工業原材料生活必需品等につきましては、極力ゆとりのある金額を計上いたしました。その反面、不要不急と認められる物資につきましては、通商協定上その他特別の必要のある場合に限る方針を継続しております。  最後支払い通貨の問題につきましては、米ドル収支は当面好調を続けておりますが、しかし特需収入が漸減する傾向がありますことや、それからドル支払い制限緩和をいたしますことが、非ドル地域に対する貿易に及ぼす影響等を考慮いたしまして、カナダドル及びスイス・フランスを含むところの米ドル及びこれに準ずる清算勘定を通ずる輸入には、なお慎重を期することにいたしました。他面スターリング及び上記ドル以外の清算勘定地域からの輸入は、これらの通貨地域に対する輸出貿易維持伸張をはかるため、引き続きこれを促進する方針をとった次第であります。  以上が昭和三十一年度上期輸入貨物外貨予算編成の大体の方針でございます。
  5. 神田博

    神田委員長 次に板垣政府委員よりの補足説明を求めます。板垣通商局長
  6. 板垣修

    板垣政府委員 私より輸入外貨予算内容といたしまして、主要な品目につきまして概要説明いたします。お手元に配付いたしました資料の最後の二ページ、六ページにございます。これによりまして御説明を申し上げたいと思います。  まず第一に食糧でございますが、食糧のうち米につきましては、御承知のように三十年度産米は非常な豊作でありましたが、三十一年度産米につきましては大体平年作というふうに見ておりまして、政府集荷予定量を二千三百五十万石と見込みまして、それに希望配給制度が継続されるわけでありますが、その消費増豊作による政府の昨年からの手持米をもってまかなう、こういう計算のもとに需給計画策定いたしました。本年度年間外米買付量を百二十三万トンと算定をいたしました。上期におきまして五十一万トンを計上いたした次第でございます。三十年度年間買付実績は百三十三万一千トンでありました。これに対して今度の予算では十万トンばかり減るということになるわけでありますが、これは昨年度中の外米在庫手持ち充実するために相当多量に買付が行われましたので、これによって十分まかない得るという予定でございますし、従って本年度消費量といたしましては、昨年度と大体同じであるというふうに見ております。なお買付時期につきましてはまだ決定をいたしておりません。今後随時各国通商協定その他の関係を見まして決定して参ることになる次第でございます。  次に大麦及び小麦につきましては、外麦消費増大傾向に即応いたしますとともに、在庫手持ち充実をはかるために今年度年間買付量といたしましては、大麦が八十八万トン、小麦が二百四十八万トンというふうにいたしました。小麦のこの数量のうちには飼料用としまして十一万トンを含んでおります。それで上期におきましては大麦については四十五万トン、小麦については百三十五万トンを計上いたしました。  次に、大豆につきましては、三十一年度における国産大豆の出回りを二十二万トンというふうに計算いたしました。それから菜種の生産を二百四十九万六千石とそれぞれ前年度に比し若干増加するものと見込んでおりますが、最近における特に製油部門における需要の充足、それから国産大豆価格の安定を確保することに主眼を置きまして、年間買付量を六十六万五千トンというふうに算定をいたしました。この中には自動承認制及び加工貿易原材料予算による買付見込み分の四万トンを含んでおりますので、品目別予算といたしましては六十二万五千トンになる次第でございます。このうち上期におきましては三十一万トンを品目別予算として計上いたしまして、そのほかに二万トンを自動承認制及び加工貿易原材料予算に見込んでおります。  砂糖につきましては、三十一年度における粗糖の溶糖量が三十年度の百八万トンの推定実績から百十三万トン程度に増加するものと想定いたしまして、本年度年間買付量を百十四万トンと算定いたしました。このうち上期におきましては五十六万トン分を計上いたしております。  なお買付地域につきましては、台湾、インドネシア等との買付交渉の成り行きとも見合いまして、従来通り別途これを定めることといたしたいと存じます。  次に、専売物資のうち特に塩につきまして申し上げたいと思いますが、化学繊維等の増産に伴うソーダ工業用塩需要増加に対応いたしまして、三十一年度年間消費量を二百八十二万トン——三十年度推定実績は二百六十五万五千トンでありましたが、こう見込みまして、輸入塩年間買付量を二百四十万トンとことしは算定いたしました。上期においては運賃の季節的な割安等事情を考慮いたしまして、このうち百三十五万トンを計上した次第でございます。年間買付予定量が昨年の実績の二百四十二万八千トンに比しまして若干減りましたのは、実は三十年度の下期におきまして在庫充実をはかるため相当大幅な買付を増加した結果でございまして、本年度実績的な処理といたしましては、本年度は昨年度よりもずっとふえておる次第であります。  それから繊維原料のうち原綿につきましては、三十年度中綿糸の操短が実施され、過剰在庫の払い出しもおおむね完了いたしましたので、三十一年度の全綿糸生産輸出が若干減少し、内需が若干増加するものというふうに見込みまして、前年度に比し約五%増しの二百三十二万コリ月平均にいたしますと、十九が三千コリ予定いたしました。これに応じまして年間買付量といたしましては、最近やや強調を呈しております綿糸価格の現況をも照らし合せまして、二百三十八万五千俵、このうち純粋の紡績用は二百十五万俵でありますが、前年度に比しまして十四万三千俵を買付増いたしまして、このうち上期分といたしまして百十二万俵、うち紡績用として百万俵を計上しております。  原毛につきましては、最近における内需増加傾向及び紡績の混毛率の実勢に即応いたしまして、予算を今期は大幅に増加する措置をとりました。年間買付量を三十年度の六十九万五千俵からずっと上げまして、八十五万俵というふうにいたしました。このほかに外貨資金特別割当制度、例のマル特によるもの、及び求償バーター取引制度による買付分がこのワク外に別にあります。八十五万俵に引き上げましたが、そのうち上期におきましては約半分の四十万俵を計上いたしております。  次に、肥料原料のうち燐鉱石及びカリ塩につきましては、近年における肥料需要増加傾向を勘案いたしまして、十分な予算措置を講ずる方針をとりまして、年間買付量燐鉱石が百五十一万六千トン、カリ塩が五十一万三千トンと算定をいたしまして、上期においては燐鉱石が八十三万六千トン、カリ塩が二十五万八千トンを計上いたしております。  それから鉄鋼原料鉄鋼需要が非常に増勢になっておりますので、三十一年度鉄鋼生産原料手当の可能な限度において極力増大し、高炉銑が五百七十七万三千トン、普通鋼鋼材が七百三十万トンの年間生産を計画いたしました。これに必要なる鉄鋼原料といたしまして、鉄鉱石が七百三十四万四千トン、製鉄用コークス用炭が二百九十六万六千トン、鉄鋼くずスクラップが百七十六万トンに上る年間買付を想定いたしております。このうち上期におきましては、鉄鉱石が四百三十八万八千トン、このうち三十一年度からポンド地域の一部、すなわちインド、ゴア等を残しまして全面的にただいま御説明がありましたように、自動承認制適用することといたしましたので、割当予算計上分といたしましてはこのうち百五万トンだけになり、あとはAAになる次第でございます。それからコークス用炭といたしましては、百五十三万一千トンを計上いたします。それからスクラップにつきましては八十一万トン、このうち割当予算に計上しておる分は五十八万トンでございます。なお三十一年度におきましては、鉄鋼需給及び価格の安定に万全を期するため、上記鉄鋼原料手当を行うほかに、年度間を通じまして銑鉄を五万トン、それから半製品を五万トン、鋼材を十万トン程度買い付ける予定にいたしております。  それから石油類につきましては、最近各油種ともかなり在庫増大を示しておりますが、この機会石油需給円滑化を一般に徹底することにいたしまして、三十一年度年間消費揮発油三百七万キロ、それから灯油を六十五万キロ、軽油を百万キロ、それから重油を五百八十万キロと見込みまして、年間買付量を、原油におきまして七千三百七十九万バーレル、このうち自動承認制予算による、すなわちインドネシアから入れる分が三百二十一万バーレル、それから揮発油が九万キロリットル、軽油が十三万キロリットル、重油が百三万キロリットルと策定をいたしまして、このうち上期においては原油が四千百三万バーレル、そのうち自動承認制の分が百六十一万バーレル揮発油が五万キロリットル、軽油が五万キロリットル、重油が四十万キロリットルというように計上いたしております。この原油輸入の結果、原油処理量年間平均一日当り十八万五千バーレルに上りまして、三十年度実績に対しまして、一五・六%程度引き上げられる見込みになる次第でございます。  最後に、機械類につきましては、最近非常に機械類輸入需要がふえております。三十年度下期以降とみに活発化いたしましたので、昨年度下期の割当予算は総計一億三千万ドルに達したのであります。従って引き続き三十一年度におきましてもこの程度水準維持するものと見込まれますので、年間一億ドル予算を想定いたしまして、そのうち上期においては約半分の一億一千五百万ドルを計上いたしておる次第でございます。  以上おもな物資割当内容につきまして御説明申し上げました。
  7. 神田博

    神田委員長 質疑に入ります。質疑の通告がありますから順次これを許します。中崎敏君。
  8. 中崎敏

    中崎委員 外貨に関する問題は、国民生活並びに国家の経済の上に重要な要素を占めておるものでありますが、今回商工委員会においてこれに関する大体の政府方針などが具体的に示されたということは、そうした重要性を国会において審議する機会を与えられたということについて一歩前進だというふうに考えて、この点については敬意を表するもであります。  そこでこの方針上の問題についてもいろいろ質疑がしたいのでありますが、まず第一に、AA制に関する考え方の問題であります。これは世界の大勢から言いましても、漸次貿易自由化方向に気分的には進みつつあるということは一応言えると思うのでありますが、実際におきましては、まず第一に、共産主義諸国との間における政策を含んだ通商関係の大きなる制約、制限があると同時に、各国それぞれやはり国家主義的な考え方の上に立って依然としてこの貿易政策がとられておる関係もありまして、あながち日本国内において強く貿易自由化が叫ばれておるほどには、海外のそれぞれの国においては真剣に深刻に取り上げられていないのではないかというふうな気持もしておるのでありますが、この点についての大体の各国間の情勢について、ことに米英などの主要国におけるところのそういう実際にとらわれておる政策並びに考え方の大綱について、一つ説明を願いたいと思うのであります。
  9. 板垣修

    板垣政府委員 貿易自由化日本外貨割当制度自由化との関連につきましての御指摘は、私どもも大体同じ考えでおるわけでありますが、しかしながら、やはり世界的に貿易自由化がどの程度進んでおるかどうかという点は、見方によって非常に違いますが、私ども見方といたしましては、やはり最近は相当テンポを早めておるように感じます。大体世界の動向と申しますると、ドル地域主眼をなしまするアメリカとかカナダとかあるいはメキシコというようなところが完全な貿易自由化、全然数量制限為替制限もない体制をとっておることは、御承知通りでありますが、その次に最近特に貿易自由化として言われておりますのは、欧州諸国における貿易自由化でございます。これは分析の仕方によっていろいろ違いますが、少くとも欧州諸国の内部におきましては、貿易自由化がこの二、三年来非常に進んで参りまして、最近ではこの自由化率が八〇%、九〇%に進んでおるわけであります。ただ、これらの地域の対ドル地域への自由化という点につきましては、まだいろいろ問題があって、そう高くはなっておらないわけでございます。しかし非常に進んでおるわけであります。ただ、日本と特に貿易関係の深い東南アジアであるとかあるいは中南米とか——最近は南米あたりは少し自由化方向へ進んで参りましたが、東南アジア地域はまだそう自由化が進んでおるとは思いません。従いまして御指摘通り、私ども国内事情及び外の貿易自由化の趨勢にかんがみまして、漸次自動承認制拡大をはかっていきたいというふうに思いまするが、しかしこのやり方といたしましては、ただいま申しましたように、国内産業政策との関係あるいはそういう後進地域との日本貿易維持通商政策上の観点、これもかみ合せまして、慎重に漸進的にやっていきたいというふうに考えます。ただ最近の形勢は、われわれが予想したよりはテンポが少し早くなっておるという事情にあり、従ってそういう点もかみ合せて、われわれのテンポも少し早めなければなりませんし、また日本の現在の外貨事情が幾分好転したという事情から言いましても、またそれに応じ得る態勢になってきたのじゃないかというふうに私ども考えておる次第でございます。
  10. 中崎敏

    中崎委員 次に、いわゆる自動承認制の問題でありますが、これについては今通商局長が言いましたように、国内産業との関係を一体どうするかということが一番大きな問題だと思うのです。ことに日本のような非常に資源少い国において、しかも人口の多い国において、そして中小企業者と多数の潜在並びに顕在失業者の多い状態において、こうした国内産業を一体どういう地位に置くかということはきわめて大きな問題だと思うのでありまして、これは世界のどの国にも比較して大きく取り上げて、また重要視して考えなければならぬ問題だと思うのでありますが、要は、まず第一に、この国内産業、ことに中小企業者立場失業者の吸収を一体どうするか、逆にまた、失業者をどんどん出さないような方向に持っていくんだというような考えなどをあわせて強く取り上げていかなければならぬと思うのであります。そういう意味合いにおいて、一応外貨事情は相当好転しておるとは言いながら、ただ外貨があるんだからどんどん手放し自動承認制をやって、そうしてある意味において大きなる一郎産業あるいは輸入業者などを特に太らかして、多くの大衆のスケールにおける経済の動きというのを大きく封殺するというふうな考え方は、間違っておるのではないかと考えるのであります。この点について、その段階的に一体どういうふうな処置をするのか、また将来どういうふうに考えておるのかということについて、一応の基本方針大臣から御説明願いたいと思うのであります。
  11. 石橋湛山

    石橋国務大臣 今のお尋ねは、経済政策上きわめて根本に触れる問題でありまして、つまり日本中小企業者といいますか、あるいは失業者その他を含めて、いわゆる完全雇用を実現するために日本経済をどういうふうに持っていくか。これはまあ極端に言えば、閉鎖経済によって完全雇用を実現するか、あるいはそうでなく、国際貿易立場に立ってこの完全雇用を実現するという方向へ持っていくかという問題だろうと思うのであります。さしずめ日本国内中小企業者とかいうようなものの安定をはかるということの観点から言えば、つまり閉鎖経済でいけば、国内の問題は一番簡単に片づくのでありますが、しかし日本事情として、私はどうもそうはいかないのじゃないか。やはり閉鎖経済でなく、国際貿易を大いに盛んにして、そうしてその立場完全雇用を実現する、こういう方向にいかなければならぬのではないかと思うのであります。そうとしますと、やはり原材料あるいは必要な生活品というようなものもできるだけ安く手に入れる工夫が必要なんでありまして、それには単に自動承認制によって自由に品物を入れるというだけでなく、さらに外国投資あるいは例の賠償等を利用して、そうして東南アジアその他の地域の開発を行なって、日本原材料輸入市場を開拓し、あわせて輸出市場を開拓するというふうなことをむろん強力にやらなければなりませんが、どうも貿易を行いつつやるということに考えますと、ただ輸入制限して国内中小企業者等を温存するということでありますと、いつまでも日本産業というものは温室育ちというようなことになりまして、海外における競争力が養われないという懸念がありますから、やはり一ぺんに開放しまして、そうしてこの国内産業がつぶれるような方策はむろんわれわれとしてはとれませんから、逐次これはやらなければなりませんけれども、しかし大体の方針としては、少くとも現在ここで自動承認制拡大して、できるだけ海外との交通を盛んにして国内産業の力を養うと同時に、一方においては、先ほど申しましたように、積極的に海外投資その他の方法によって日本のマーケットを広げるということに努力する、こういうのが私は日本の行くべき道だろうと思う。大体そういうような考え方で進んでいるわけであります。
  12. 中崎敏

    中崎委員 まず原材料、ことに日本では非常に資源が少いのでありますから、加工によって日本経済をまかなわなければならぬ。国内における経済もそうでありますし、これを加工品として輸出することによって国の経済をさらに進展させていくということが、第一のねらいであるべきであると思うのでありまして、ことに原材料の少い日本において、この原材料を必要な範囲において輸入する、その限度においてはAA制拡大も当然だと思うのでありますが、ただ考えなければなりませんのは、現在においてもあれだけに輸出入のバランスというものは相当に好転しておる。言いかえれば、外貨も相当大幅に蓄積されるというような状態になっておる。従って、これはAA制がああいう状態においてさえも、なおかつあれだけ進んだ。言いかえれば、AA制制限しておるために、だんだん外貨事情も窮屈になっておる、蓄積の外貨がだんだん減ってくるという状態になれば、また何らか新しい方策考えなければならぬと思うのでありますが、そうでなくして、とにかく輸出は、鉄鋼を中心とするところの、外国に新しい市場が生まれておるというようなこともあるにはあるでございましょうが、それにしても、そのほかの点についても漸次輸出というものが振興されて、そうして平常の状態においてもなおかつこのバランス状態というものは十分に保てるという見通しの上に立っている。さらにそれを伸展させるためにということによって、AA制をあまり無鉄砲に——先ほど言いましたように、必要な原材料AA制拡大ということは考えられるのでありますが、さらに製品まで、あるいは半製品までどんどん手放しAA制に移行するような状態になるということは、逆に国内経済に大きな圧迫を加え、ことに中小企業や労働者等についての完全雇用方向が逆な方向に行く。言いかえれば、大資本集中というふうな傾向がますます助長されるようになるのじゃないか。そうなると、多数の中小企業者なり、あるいは失業者というものが逆に余分に出るのではないかというような心配をするのでありますが、そういう意味において、あまりに原料材の範囲を越えて、製品あるいは進んだところの半製品輸入というようなものにAA制というものを一ぺんに手放しに許されるということになると、逆に好ましくないような悪影響があるのではないかと思うのでありますが、この点についてのお考えを伺いたい。
  13. 石橋湛山

    石橋国務大臣 無鉄砲に手放しということはわれわれも考えておらないのです。ですから苦心をしておるわけです。しかし、海外からの輸入をチェックして、その保護のもとにようやく活動しておるという状況では、海外に対する競争力がいつまでもできませんから、そこでわれわれとしては、先の見通しとしては、もうどんどんAA制になるんだ、貿易自由化方向へ急速に進むのだぞという一つのかけ声をかけて、中小企業者にも、その他の人たちにも勉強してもらいたい、こう思っておりますから、そこで中小企業の保護のためにはいつまでも輸入制限しているぞというようなことはおもしろくないというだけでありまして、決してお話のように無鉄砲に手放しに、いきなり何でもやってしまう、こういう考えは持っておらぬのであります。
  14. 中崎敏

    中崎委員 次に、地域別に見た通商関係なのでありますが、まず第一に、ことにアメリカ合衆国との間における輸出入の概況は一体どうなっているか。たとえば輸出がどうで、輸入総額は昨年は一体どうであったか、本年は一体どういうふうな見通しになるのか、それを一つお聞きしてみたいのであります。
  15. 板垣修

    板垣政府委員 ただいま手元に詳細な資料がございませんが、大体を申し上げますと、三十年度、すなわち昨年度のアメリカへの輸出額は、その前の年より非常にふえまして、約二億二千万ドルばかりふえまして五億二千万ドル程度に相なりました。輸入の方は従来とあまり変りませんで、大体八億ドル程度であろうと考えます。本年度見込みにつきましては、御承知のようにアメリカにおける日本品に対する熾烈な輸入制限運動などもございますので、これに対しましてはいろいろ対策を講じておりますが、少くとも本年度に関する限りは非常に大きくふえることはちょっと望み薄だろうというところで、ただいまのところは大体横ばい程度を予想しております。輸入につきましては従来と余り変らないと存じます。と申しますのは、アメリカからは大体どうしても日本で必要な生活必需物資ないし原材料輸入しておりますので、大体そう大きな動きはないと存じます。従って全体といたしましては、依然やはりアメリカに対しては入超の形をとることは、御承知通りであります。
  16. 中崎敏

    中崎委員 今通商局長説明によりますと、三十年度においては輸入が約八億ドル輸出が五億二千万ドル、差引一億八千万ドル内外の輸入超過なんであります。言いかえますと、アメリカからそれだけよけいに日本が買いつけてやっているというような状態なんです。ことに最近における繊維製品の締め出し、いわゆる日貨排斥といいますか、こういう不自然な、しかもこれは通商航海条約違反だというふうにいわれているのであります。こういうふうなことがやられているということに対しましては、非常に遺憾にたえないのでありまして、このことは国会においてもしばしば論議されているのでありますが、そこで政府にまずお聞きしたいことは、現在日本がアメリカに対して自主的に自制しているといいますか、そういうふうな品目並びに程度が一体どういう状態であるのか。それにかかわらず、アメリカにおける、ことに繊維製品を中心とする日貨排斥といいますか、そういう状態が一体どういうふうになっているか、どういう州においてどういうふうな法律が作られたとか、作られるとか、実施されたというようなことも聞いているのでありますが、そういうことに対する状態はどうなのか、さらに全体としてこういうふうなアメリカが日本製品を排斥するような動きというものは一体どういうふうな見通しになるのか。これは繊維製品に限らず、そのほか一体どういう見通しになるのか、それについて具体的なあらましの説明をお聞きしたいのであります。
  17. 板垣修

    板垣政府委員 昨年来アメリカにおきまして特に繊維品を中心といたしまして制限運動が起っていることは、御指摘通りであります。その前からも、アメリカにおきましては、いろいろな形におきましは、マグロとか、合板とか、あるいは陶磁器とかいうものにつきまして似たような問題が起っているような次第でありまして、これにつきましては、随時日本といたしましては、政府のベースにおいても、あるいは民間のベースにおいてもいろいろとこれに対策を講じてきておったわけであります。これに対します日本の自主的措置といたしましては、まず数量的な自主的調整をやっておりますものは、マグロであるとか、あるいは合板であるとか、あるいはごく最近には、昨年の暮れ行われました綿製品に対する自主的規制措置をとってきておるわけであります。こういうことはわれわれといたしましてはあまり好しまくないのでありますが、マグロであるとか、合板であるとか陶磁器というふうなものにつきまして、やはりどうしても日本側とすれば過当競争の結果、ダンピングの疑いを受けるような事態もときどき生じた、こういうような関係から、日本といたしまして反省なり価格の規制ということは、輸出取引秩序の維持という点からぜひ必要なのです。それと同時にアメリカ側に対しましても、日本の品物が急激に伸びることによって向うに反対運動が起ることを未然に防止する、こういう両方の意味を含めてとっておる次第であります。ところが最近綿製品などにつきましては、そういうような日本側の自主的措置にかかわらず、アメリカの議会におきましては、いろいろな形の日本品の輸入制限法案を審議中でございますし、それがさらに進みまして、御承知通りサウスカロライナ州におきまして日本品ボイコット類似の法律がしかれ、さらに最近アラバマ州においても、若干サウスカロライナ州よりも弱い形でございますが、似たような法案が通過したということは、私どもといたしましてまことに遺憾に存じておる次第でございまして、これに対しましては、ただいま外務省を通じましてアメリカ政府に対して厳粛なる注意を喚起しておる次第でございまするが、アメリカ側の態度といたしましては、これは非常に遺憾なことであると言っておりますが、これを是正するためには、アメリカの連邦と州法との関係上急に行政処置はできないという悩みもあるようであります。しかしこれに対しましては、アメリカ政府としまして何らか善処する措置をとられることを私どもは期待しておる次第でございます。こういうような情勢でございまして、今後一年間の、特に綿製品輸出の見通しにつきましては、従来よりもあまり明るい期待は持てないのでございますが、しかしながらわれわれのとりました自主的措置も、昨年より減らしたわけではございません。大体昨年より多少上回る程度で自主的規制措置をとっておりますし、大体この程度のところで本年度は推移するものと考えますし、なお輸入制限法案などにつきましては、われわれといたしましてもアメリカ政府の善処を期待しておる次第でございます。
  18. 中崎敏

    中崎委員 昨年よりやや上回る程度において自主的措置をとっておるということでありますが、今説明のように、アメリカが各州において、独自の立場においてそれぞれいろいろの制限的な法的措置まで講じてやっておる。しかもアメリカ政府としては、国内的にもそういうものにはこれという応急の対策がないということになると、一体どういうことになるか、次から次へと各州が燎原の火のようにこういうふうな措置を講じていく。しかも日本においては自主的な措置をとって、これならば輸出入取引の秩序の維持においては万遺憾ないような程度であると認定して、もちろん向うの情勢も判断し、向うの関係者等とも話し合いの上で当然やっておることと思うのでありますが、それにもかかわらず、何らそうしたことについて適当な見通しもなく、各州がそれぞれの立場においてやるということになれば、一体どういうことになるのか、そこの点。またこれは通産大臣にお聞きしたいのでありますが、今通商局長は何らかの措置を期待しておるというふうななまやさしい答弁であるのでありますが、ことに日本と米国との関係というものは、相当緊密な関係においてつながれておる。それにもかかわらず、こういうふうな、通商航海条約にも違反し、さらに国際信義をも裏切っておるというふうなことが野放しでやられておるということについては、単に一片の抗議とか懇請、陳情をしたというふうなことでこの問題を処置していいのかどうか。何らか報復掛向というか、これに対するところの措置政府としても強力に講ずべきではないかと思うのでありますが、一体これについての根本的な解決の方法、応急の措置をその後お考えになっておるか、そこの信念のほどをお伺いしたいのであります。
  19. 石橋湛山

    石橋国務大臣 もう少し情勢を見なければ前途の判斯ははっきりしたことはわかりませんが、私の考えでは今局長も申しましたように、アメリカ政府としては今日アメリカの州あるいは民間等でいろいろと日本の綿布その他に対する輸入阻止の運動をしておることに対しては、政府は非常に困ったことだという感じを抱いて、極力これを押えようとして努力しております。そこで日本政府としても、こういう場合にはアメリカ政府に協力して、アメリカ政府がやりいいように、つまりあの輸入制限の不合理なアメリカ国内の動きをアメリカ政府が押えるためには、日本政府もこれに協力してやって、押えいいようにやらなければいかぬと思うのです。その場合に報復措置というようなものが非常に有力なものであるならばでありますが、これがもし報復措置というようなことのために、かえってアメリカ国内の感情を刺激するというようなことがありますと、アメリカ政府としては非常に困る。従って私でもとしては、なるべくそういう報復措置というようなことをとらずに、アメリカ政府自体が国内のああいう動きを押え得るように協力しつつ、それを期待するという方針で今やっているわけであります。報復ということは今考えておりません。
  20. 松平忠久

    ○松平委員 関連。ただいまの問題は、日本としても非常に重大な問題であるわけでありますが、石橋通産大臣のお話によると、アメリカ政府のやりいいように日本が協力する、これは私その考え方はわかるのであります。しかし過去において、通商関係においてアメリカとの間に起ったいざこざ等を見ますと、州法と通商条約との関係が非常にあったと私は記憶いたしております。たとえばジッパーの問題にいたしましても、あるいはまた品質等の問題にいたしましても、マグロのカン詰の問題にいたしましても、そのような問題が、州法と条約との関係があの国では非常にむずかしいことになっておることは事実であります。しかしながらそのようなアメリカ政府のやりいいような方法をとるということも一つの方法でありますけれども、アメリカ国内のいろいろ過去のやり方を見ておりますと、ああいう民主主義の国でありますから、相当民間外交といいますか、そういうものを活用してアメリカの反省を促すということが必要ではないか、つまり政府政府というやり方ではアメリカに対する外交はだめなんであります。従ってわが国においてはそれと対応する措置考えてやらなければならぬというふうに考えておるのであります。その意味において業者等からいろいろな声が出ておると思うのでありますが、そういう声をまとめて向うに反映するということをお考えになってやっておることがありますかどうか。あるいはまた向うの国会でいろいろな案が今まで出ておりますが、それらの国会議員に対して日本側から反省を促すというような、正規の外務省を通じての外交ということではなく、ほかの方法を併用していく必要が相当あると思うのでありますが、その点に対しての大臣の見解あるいは、おとりになったかどうか知りませんが、その措置等についてお伺いしたいのです。
  21. 石橋湛山

    石橋国務大臣 私がただいまアメリカの政府に働きよいように云々と言いましたのは、とりあえずのことを申したのであります。むろん今お尋ねのように民間外交と申しますか、民間の動きとしてアメリカの世論を動かす努力はいたしております。具体的には政府委員から説明いたさせます。
  22. 板垣修

    板垣政府委員 御指摘のように、ああいうアメリカのような大きな民生国に対しましては、政府ベースだけではだめなことは御承知通りでありまして、私どもといたしましても、民間ベースからの働きかけ、民間外交といいますか、働きかけは非常に力を入れておる次第でございます。むしろ政府から指導するということでなしに、日本側の民間自体におきまして、従来ともこういう方面につきましては非常な働きかけをやっておりまして、最近におきましても、綿製品、特に綿製品制限運動に対しまして、現地におきましてはニューヨークにおきます日本人の商工会談所、これが中心になりまして非常な工作をやっておりますし、最近は日本紡績業界からも人がわざわざアメリカに参りまして、工作の内容につきましてはここで申し上げることを差し控えますが、ワシントン、ニューヨークにおきまして非常な働きかけをやっております。それから向うの特にセネターに対しましても、これは官のベースにおいても、民間のベースにおいてもやっておりますし、その点につきまして、業界はみずから相当多額の金を出してやっておる次第でございまして、こういうものが両々相まって向うに働きかけておる。それから日本側としまして、御承知のように経団連とか、日本商工会議所とか、こういうところからも最近アメリカに呼びかけまして、これが相当大きな反響を呼んでおることは御承知通りでございます。ただこういう運動の効果につきましては、御承知のようにどこの国でも同じなんでありますが、やはり消費者の組織というものが非常に弱い。私先般ニューヨークにおいて、アメリカ側の日本品のインポーターともいろいろ懇談したのでありますが、もう少し働きかけをやれと向うから言われました。しかし何といたしましても、日本品を買うことによって一番利益を受ける消費者の組織がないから、その声がちっとも響かない、かえって反対する一部の生産業者の声だけが強く出ておる。これを向うの議会にも働きかけようということで、非常に困難な点はございますが、やはりああいう民主不義の国でありますから、一般の消費者にも呼びかけ、さらに向うの議会にも呼びかければ相当効果があることは現実でありますし、従来やっておりますので、今後ともそういう方向に一段の努力をいたしたいというふうに考えます。
  23. 中崎敏

    中崎委員 政府間同士の交渉のほかにいろいろな方面からの働きかけ、これはけっこうと思うのでありますが、結局においては、一国と一国との条約、協定等において取りきめられても、それを無視されておるというふうなこういうあり方というものは、真の民主主義のあり方ではないと思う。国家と国家との間で条約その他の取りきめをしたが、それが平気でじゅうりんされ、無視された法律が作られた。これが実際に行われるというふうな国を対象にして、いろいろな取りきめをするということには、大きなるところの不安がある。ことに日本に対する、日本品の排斥などということはきのうきょうに起ったことではない。もう相当長い間にわたって行われておる。それがますますひどくなってきておる。まるっきり傍若無人とでも言うべき状態になってきておる。そういうふうな状態であるにかかわらず、しかも板垣通商局長もこの前の国会において、こうしたような問題があって、そうしていろいろあの手この手で連絡をとっておる、いろいろな手を尽しておるというにかかわらず、ますますひどくなってきておる。それにもかかわらず、依然として手をこまねいて、そうして今度は石橋さんが言うように何らこの報復措置もとらない、こういうふうな腰の弱いことでは一体どうするのだ。一国の経済を担当しておるところの通産大臣が、そういうふうな弱腰で、どういうことをやられても、法律をじゅうりんして、無視して、勝手ほうだいなことをやられておっても、なおかつ手をこまねいておって、これに対する手を何ら打たないのか、そこを私は聞きたいのだ。先ほどから通産大臣の信念が聞きたい。腹をきめたところが聞きたい、こう言うのです。ことに明らかに法律に違反してやっておるのだから、これについては、いよいよ向うが聞かない場合においては、万策尽きた場合においては、報復処置も考えるのだ、これくらいなことがなぜ言えないのか。それが同時に民主主義の国といわれておるところのアメリカ国民にも、アメリカの政府にも国会にもそういうことが反映して、何らか彼らも反省する時期が早く来るのではないかとさえ考えるのだが、その信念を一つここではっきり聞きたいのであります。
  24. 石橋湛山

    石橋国務大臣 今の御質問の中に万策尽きてというような言葉がありましたが、われわれはまだ万策尽きておるとは思わない。万策を尽しまして、その上になおいけないならば考えなければならないことでありますが、そう初めからあまり気負い立って報復云々ということはかえって事をまとめるゆえんではないと考えております。
  25. 田中武夫

    田中(武)委員 ただいまの質問に関連してお尋ねいたしますが、アメリカの綿製品輸入制限につきましては、当委員会においても、本国会に入りましてからも一月十三日に一回、それからその後また一回、ことに撻州織の問題等を取り上げて質問をし要請をいたしました。そのときは通商局長もそういうことについて善処いたしますと答えております。また大臣も同じような答弁をせられたと思います。ところが今の御答弁によると、その後何ら答弁内容が変っておらない。実際具体的にどのように善処しておるのか。あのときに私は、アメリカも相当日本にむちゃなことを言うてきておるのだから、こちらも少々腰を入れてやってもよいのじゃないかということを申し上げたと思いますが、まだ何ら手を打たれておらぬような御答弁のようでありますので、具体的にどういうことをやったのか、それと同時に今後どのような決心を持っておられるのか、もっとはっきり言っていただきたいと思います。
  26. 石橋湛山

    石橋国務大臣 それは一々具体的には申し上げられませんが、これはやっておりますよ。外務省同士、あるいは政府委員が言いましたように、民間の方でもやっておりますし、また通産省としても人が幾度か参りまして話し合いをしておるのであります。しかし先ほどからお話がありますように、国本品を何か不当廉売でもしておるかのごとくに誤解をしておる。これはアメリカの非常に長い深い誤解でありますので、これを解くのには、やはり一月や二月では効果は上らないと思います。われわれもかなりしんぼう強くやらなければいけないだろうと思います。
  27. 中崎敏

    中崎委員 由来この鳩山内閣は、ことにアメリカに対して非常に腰が弱い。特に重光外務大臣のごときは、まるきり何だがアメリカ自身に隷属しておるのではないかとさえ思われるような考えを持たれている。この話はよけいなことかもしれませんが、ソ連に対する関係においても、鳩山内閣の公約の一枚看板であるところのソ連との関係正常化する問題さえも、重光外務大臣のなした態度なども手伝って、この問題が今行き詰まっておるということもそうであります。そのほかありとあらゆる面において、ほとんどアメリカにろくによう言わぬのではないかという感じを国民は持っておる。ことにこの問題について私たちのまず言いたいことは、アメリカに対してこの輸出入取引の秩序を害さないように——いわゆるダンピングとかあるいは業者間におけるところの無用の売り急ぎなどの競争があるということは、アメリカに対する関係もあるので、その点は実質的にあらゆる努力と施策を加えて今日に至っておることは今説明通りです。   〔委員長退席、小平(久)委員長代理着席〕 しかもこの輸出入の状態を見ると、輸入が八億ドル輸出が五億二十万、ドル、逆に一億八千万ドルという輸入超過で、よけいアメリカから買ってやっておる。そういうように、日本はアメリカの経済に大きなるところの協力と貢献をしておる。であるから、少くとも日本が八億ドル輸入をすれば、アメリカに八億ドル買わせるのだ、こういうふうな努力と、さらに具体的な施策があるのではないか。たとえば日本の電源開発などの機械施設などについても、現在日本においては、あんな機械設備までアメリカから輸入する必要はないというくらいまで、日本の機械工業も発達しておる。それにもかかわらずやたらに高い機械を——ある人に言わせれば、リベートがついておるとさえ言うのであるが、そういうような高い機械をどんどんアメリカから買い込んで、今度は日本産業経済に大きな圧迫を加えておる。日本の大きな機械業者の間でも、日本においてはすでに完全にそういうような機械もできるというような、そういう状況にあるにもかかわらず、何だか知らぬが、MSAなどのひもつきなどを含めて、政府の方は、必要でないものをアメリカなどからどんどん買っておる、こういうことも言っておる。だから、そういうようなものをまず買い控えるということが一つの方法でもあるし、あわせて、たとえば綿なら綿を輸入する、それについては、アメリカから一体幾らのものを買うのか、そういうようなことをもう少し具的体にとりきめて、話がつかなければ、アメリカだけに綿があるわけではないのだから、そのうちのある部分をよその方から買うというようなこともあるのではないか。言いかえると、通商政策の基本的な問題について、もう少しアメリカと十分な話し合いをして、こういう一方的な行き過ぎのような、しかも法律まで無視、じゅうりんしてやるような、こういう民主主義の国のあり方については、もう少し具体的な施策の上において考える必要があるのではないか。報復の措置ということは、非常手段であるから、これは第二段としても、まず第一段において尽すべき手は山ほどある一体この点についてどういうような努力をして——現在アメリカはこういうような行き過ぎの措置をとっておるが、今後さらにこういうような問題をとらえて、政府の施策だからこの機械は買わないといえば買わないでいい、そういうような措置は十分講ずる余地はあると思うが、それについて具体的にどう考えておるか、聞きたいのであります。
  28. 石橋湛山

    石橋国務大臣 今機械のお話がありましたが、実は機械は、国産でできるものは、少し厳重過ぎるほど輸入制限しておる、私はもう少し入れてもいいと思うほど当局としては制限しております。今の火力発電の問題は、日本ではできないのです。十二万何千キロぐらいまではできるようになりましたが、ああいうものは日進月歩で、こちらが十三万何千キロができるときになると、需要家の方は十五万何千キロ、さらに十七万何千キロというようにどんどん大きくなる。そうすると、電力の方から申せば、その方がそれだけ能率がいいから、能率のいいものを使いたい。それで、最初に十二万何千キロがアメリカならアメリカから入ってくる、そして日本のメーカーも青写真によってその十二万何千キロができるようになると、実際の電力需要はそれより先に行ってしまう。こういうようなことでありまして、実際必要であるから入れておるので、必要以外のものは入れておりません。ですから、そういうことで、先ほども一般方針で申し上げました通り、もしそういうようなものを入れるとしても、できるだけスターリング地域から入れて、ドルの方は節約したいという大体の方針で、外貨予算もそういうふうに組んでおります。  それから一言で申して、アメリカからの輸入が多いと申しますが、なるほどアメリカからの物資貿易においては、それだけ日本輸入超過でありますが、それはどうして払われておるかというと、やはりいろいろな形で、日本貿易外のドルが入っておる、それで支払われておるのでありますから、全体の上から申せば、必ずしも日本輸入超過とは言えない。いろいろの形で——金融その他の形で、あるいは特需というようなもので、それだけのドルが入っておる、それで支払われておるわけであります。
  29. 中崎敏

    中崎委員 たとえば機械類にしても、私たちの聞いており、また調査した範囲においては、必ずしもアメリカから買わなくてもいい、また日本においても相当間に合う、そういうようなものもかれこれある。ただ業者あたりからいいますと、たとえば値段がある程度安いとかいうことで、輸入した方が都合がいいということはあり得る。ところが今高い石炭などをアメリカから買い込んで、今度はコストも高くつくのだから、日本製品がある段階において高いのは当然であるが、そういうようなそろばん勘定からのみ推していって都合がいいというような機械もたくさんある。であるから、そういうふうなものは多少値段は高くても、国内的には国の経済を潤すのだから、ちょうど血液が人間のからだを循環するような状態においていくのであるから、多少高くてもがまんする。そういうふうなことを考えれば、ことさら今アメリカから輸入せぬでもよいものがある、機械のごときはその一例であります、アメリカからでなくても、求償貿易等の形において他の国から輸入する、そういうような余地もあるのではないかということを考えてみたときに、いろいろ特需などの関係もあるけれども、特需の関係といえども、その関係において日本に入ってくるようなそういう状態にあるわけです。特需といえば、やはりアメリカならアメリカの軍隊が日本に駐留して、一面において日本の利益だというけれども、私ども立場からいえば利益だとは思ってない。アメリカの国策を遂行する上において、ことさら日本に押しつけて彼らは駐留しておる、そういう関係から起ってくるようなものもあり得るかもしれぬけれども、それは別の要素を持っておるとしても、いずれにしても、日本が向うに持っていって金を出すことは、結果においてやはり五億二千万ドル、八億ドルに相違がない。そういうことを総合的に考えてみたときに、全体の政策を調整をすべき面が十分ある。そういう問題から全体的に考えて、たとえばドイツなりあるいはイギリスなりチェコなり、そういうような国からも買い得るような機械があるならば、必ずしもアメリカに持っていく必要はないではないか。そういうことを政策的に考えてみて、片貿易みたいな状態を打開すること、あわせてそれで一方的の、アメリカの行き過ぎた間違ったやり方を反省させると同時に、日本経済、ひいて自分の国を守るのだ、こういうふうな一石二鳥の考え方があるのではないか。外務大臣だけにこの交渉はまかせておけないというのが国民の現在偽わらない気持であるから、通産大臣の腹の中を一つお聞きしいのであります。
  30. 石橋湛山

    石橋国務大臣 同じことを繰り返すわけでありますが、アメリカに対してクローズド・エコノミーをやることもよくない。しかしながらドルとそのほかの通貨との関係はお話のような点もありますので、われわれとしては、機械のごときはドイツあるいはそのほかの国、ことにスターリング地域からの輸入をむしろ振興して、なるべくドルは使わないようにするというのが大体の方針であります。そういうことはやっておるのであります。やっておって、なお発電機械のごときはやはりアメリカのものを入れざるを得ないという場合に限って入れておるわけでありますから、お話の通りに実行されておるのであります。これは御承知を願いたいと思います。
  31. 中崎敏

    中崎委員 次にAA制の問題に関連しておるのでありますが、石油、これはほとんど英米の石油の世界市場独占の一つの大きな力の影響を受けて、日本の石油も英米石油資本の大きなる被害者、犠牲者であるというのが現実の姿であります。ところで、ことに国内においてこれらの石油を原料にして加工したところのいわゆる加工製品、こういうふうなものが現在においてはほとんど国産で間に合っておる、たとえば切削油とか焼き入れ油とか、そのほかの石油を原料とするところの加工油というものは、国産品で十分に間に合っておるのであるが、それなのにかかわらず政府は今年度は石油製品、こうした加工品までAA制を広げ——今までAA制でなかったのだけれども、これをAA制に広げて、そして輸入をするということを聞いておるのだが、一体これはどういう考え方の上に立って、どの範囲をどういうようにしようとするのかをお聞きしたい。
  32. 石橋湛山

    石橋国務大臣 石油製品をすべてAA制にするつもりはないのであります。ただ特殊潤滑油というものについては、いろいろの事情からAA制にするのが適当であろう、かように考えておるのでありますが、なお具体的には今研究をしておるわけであります。
  33. 中崎敏

    中崎委員 鉱山局長おりますか。
  34. 小平久雄

    ○小平(久)委員長代理 石油課長が来ています。
  35. 中崎敏

    中崎委員 潤滑油と申しましても、いろいろ解釈の観念の上に開きがあるのではないかと思うのであります。ただいま申しましたように日本国内においては相当長い間から、ことに戦争の当時から国産品をもって間に合わそうとして、あらゆる苦労と努力を払って、たとえば切削油や焼き入れ油、鋳型油、あるいは伸銅油というような——これは潤滑油の部類に入れれば入れられるようなものではないかと思うのでありますが、そういう類のものが国産的にはほとんど一応整っておる。一体これについてはどういうようにAA制にしようとするのか、その具体的な範疇と範囲をお聞きしたいのであります。
  36. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 潤滑油につきましては今大臣からも申し方げたのでございますが、特殊潤滑油、たとえば防錆油とか、あるいはケーブル・オイルといったようなもので、日本にまだ適品ができないといったようなもの、これも従来から特殊潤滑油として認めてきたわけでございますが、それらのものにつきましてはむしろ特定の人間だけに割り当て利益を与えるというよりも、AA制にした方がいいのじゃないかということで、その点は日本でどうしてもできないという特殊潤滑油につきましては今後AAでいきたいというふうに考えております。ただ特殊潤滑油と国内でできます一般の潤滑油を、税関でこれは特殊潤滑油であるといったような認定が果してできるかどうかということにつきましては、非常に技術的に困難な問題がございますので、われわれといたしましてもできるだけ国内でできるというもの、今一般潤滑油を作っておるわけでありまするが、そういうところに対する影響等も考慮しまして、できるだけ国内の中小企業等には影響がないというような格好にしながら、ほんとうにほしいものは自由に入ってくるという格好にできれば一番いいと思っておりまして、現在いかなる格好でやれば一般産業界に摩擦混乱を起さないでやれるかということにつきまして、通商局並びに鉱山局で鋭意検討いたしております。まだ結論を得るには至っておりませんが、できるだけ早い機会に結論を出したいということで検討いたしております。
  37. 中崎敏

    中崎委員 もしそういうことであるならば、これは相当品種などは多いと思いますが数量は大したことはないと思います。それをわざわざAA制に切りかえなければならぬのか。AA制に切りかえることによって国内において生産されているところの——これは何日軒という企業体がこれに携わっておるのでありますが、その何をどう見分けするか。いわゆるAA制にするということになれば全部AA制になってしまう。今度はある種のものだけをAA制にするということになれば、税関で見分けがつかなくなるということになると、どうしても一応原局においてそういうものの見定めをして、判断をしてもらわなければならぬのだが、そこを一体どういうようにするのか。今まで必要な限度においてはAA制にされておるのだが、それを今回石油製品の潤滑油についてさらに広げなければならぬという、その根拠と理由がどうしてもわからないのだが、これを一つ説明を願いたいのであります。
  38. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 われわれは国内に無用の摩擦混乱を起して、非常な無理をしてまで自由化するということは、これは必ずしも適当だと思っておりませんが、できるだけ必要なものを、ほんとうに必要な時期にほしいという方に円滑に入るという格好にすべきじゃないか。そこで国内の潤滑油を作っておられる方々が今度のAA制ということによって非常に打撃を受けて、業界が壊滅的な混乱を受けるということにでもなればいろいろ社会上の問題も起りますので、そういう点がないように、そして今お話のございましたように、潤滑油の中にはいろいろ種類がございますので、そこでほんとうに入れてしかるべきだというものは自由に入る、国内でできるものはできるだけ税関の線のところでチェックできるという合理的な方法がないものかということで今検討しておるのでありまして、重ねて申し上げますが、できるだけ国内には悪影響のないといったような方法でやるのが一番いい、こう思っております。さらにこの影響の判断等につきましてある程度潤滑油等が入ってくるということになりましても、大体国内の業者は十分太刀打ちしてやっていける、むしろある程度刺激剤にでもなるということになれば、そのあたりはいろいろ考慮してやっていきたいと思っております。いずれにいたしましてもまだ慎重に検討いたしておりますので、こういう企画のもとにこうやる、あるいは全部野放しにしてやるのだということについては、最終的な結論は得ておらないわけであります。
  39. 中崎敏

    中崎委員 ちょっと聞いたのでありますが、先般石油課長か何かが業者を集めて、何でもAA制にいくのだというふうなことを前提として話をしておられたようであります。この点についてはニュアンスの点において今樋詰次長の言われるのとやや違っておるのではないかというふうな感じもするのであります。この点については、今日まで国内のこうした中小のたくさんの業者が非常な苦労をしてようやく地歩をかち得て、外貨の節約の上に大きな貢献をしてきておって、今日において大きな支障なく運営されているところに、ことさらにAA制の名のもとにそうしたような国内におけるところの中小企業者の地歩を危うからしめるような、こういう印象を持つような施策には賛成できないのであります。そこでほんとうに国内でもできないし、その刺激の上においても必要であるというふうなものについては、むしろそれを拾い上げて、過渡的にAA制に持っていかれるということには異議はないのでありますが、全体的に特殊潤滑油、そうしたようなものをAA制に持っていくのだというふうな、こういう考え方には今言ったような理由で賛成できないのであります。そこで少くとも、もう一度あらためて、業者に押しつけるというような考え方でなしに、どういうものがほんとうにやむを得ずして需要家の側から輸入の懇請があり、これだけの範囲のものは必要であるからというようなことで考えてもらうというふうなことが必要ではないかと思うのでありますが、そういうふうな点についてもう一度通商局長の責任のある答弁をお聞きしたいのであります。
  40. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 今の先生の御意見等も十分に参考にさしていただきまして、できるだけ皆さんにも迷惑がかからないで、産業界にいい結果が出るという方向で研究させてもらいたいと思います。
  41. 中崎敏

    中崎委員 次に油の問題でありますが、ことにその中でも亜麻仁油とヒマシ油についてであります。御承知通りに亜麻仁あるいはヒマにいたしましても国内においてほとんど種が生産されていないので、ほとんど外国からの輸入に仰ぐものであります。そしてこれらは全部食料品ではなくして工業用の原料油になるところのもとなのであります。その亜麻仁の種なりヒマの種なりについて輸入の窓口は通商局でやっているのでありますが、結局搾油するところの業者の監督主務官庁が農林省であるという関係から、ここに非常に不円滑な状態を来たしておるのであります。ことに亜麻仁油につきましてはこうした搾油業者が、自分たちの利潤追求の考え方ども大きく影響いたしまして、種の買付などについても自分たち本位にやっておるような関係もありまして、結局そのしぼったところの亜麻仁油というものが著しく高い、最近は一ドラムについて一万円も高いというふうなことになっておるのであります。御承知通りこの亜麻仁油はほとんど塗料の原料に使われるのでありますが、その原料が非常に高いために塗料が高くなる。従って輸出の上においても非常に大きな支障を来たして、塗料の輸出もなかなか困難になっている。国内においても結局においてその原料油が高いために、塗料の製品価格が非常に上っている。そこでまたまた逆に外国から塗料の製品輸入するというような、こういうことを刺激する結果になってきている。そこで塗料業界などにおいては、もともと搾油に関するところの主務官庁が農林省であるために、農林省の立場からあまりに一方的に原料油の側に保護を与え過ぎている。であるから食料に関係のない原料油、亜麻仁油、ヒマシ油などについてはむしろ通産省もまたあわせてその所管の大臣でやっていいのじいないか。言いかえますとこれは食料用にもしぼる、工業用にもしぼる、だから一つの業者が両方の仕事をやるのだけれども、工業用に関するところのものは何ら農林省の食料に関係はないのだから、工業用に関する限りにおいては通産省もその管轄を担当すべきじゃないか、言いかえれば両方の共同管理といいますか、両方でそれを監督すべきじゃないかという意見も出てきている。そういうのでありますから、本来の性質からいっても私が言った通りじゃないかと思うのでありますが、一体この問題について通産大臣はどういうふうにお考えになるか、聞きたいのであります。
  42. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 所管問題の関係もあるようでございますから、私から便宜御答弁いたしますが、実は搾油という業界の所管をどういたしますかという問題につきましては、戦前から非常にむずかしい問題がありまして、農林、通産両省の間において問題が絶えなかったわけでございます。それで一応戦争中、たしか昭和十五年だったと思いますが、いろいろ原料関係におきましても、搾油業界は植物油の原料、あるいは動物油脂の原料を使うのにも非常にむずかしい問題が起って参りまして、また用途にいたしましても工業用、食料用両方あるのでありまして、なかなか分けにくいのでありますが、一応搾油工程のある中間製品の段階までを農林省、それ以後の工程を行うものを当時の商工省というふうにきめたのであります。実は私当時その裁定問題に関与いたしまして、便宜そのようにいたしたわけでありますが、大体戦後におきましてもその線を一応守りまして、若干の変更はあるようでありますが、そういう関係になっております。現在それをある程度搾油関係につきましても、工業用の原料として用いる段階のものを通産省の所管にしたらどうかというお話でございますが、そういうふうに業界の実情が原料関係並びに用途の関係から非常に錯雑しておりますので、まあこの際あまり権限問題を持ち出すのもどうかということで、一応戦前の当時の裁定の線でやっておるわけでございます。これは実は実情に即しまして通産省としましてもいろいろ製品の用途の問題あるいはそれから高度に加工いたします段階の問題、また原料輸入という問題もございますので、実質的にはある程度両方でめんどうを見ておるということになっておりますが、一応建前としましては、その辺で線を切りませんと、いつも共管になりますと話がうまく進まないこともございますので、きわめて機械的な割り切り方でございますが、その辺のところでまあまあということでやっておるような次第でございます。
  43. 中崎敏

    中崎委員 時間の関係がありますのできわめて簡単に申し上げたいのでありますが、たとえば亜麻仁油の場合においては種で輸入してどんどん品物が入ってくれば搾油業者が高く売れない、もうからないから、それでバナナと同じように輸入について数量などを調節して、いつでも市場が払底して足りないような状態に追い込む。であるからこれを亜麻仁油で輸入してくると、結局これは幾らでも輸入ができるから、従って値段がやたらに高くなくて、原料として使うところの塗料業者にも適正な価格において手に入る。ヒマシ油についても同じであります。インドは御承知のようにヒマシ油の種では輸出しない、ところがしぼった油では輸出することになっておる。ところが日本の搾油業者がそれでは自分たちがうまくないからというので、今度は油で輸入するということを極力反対しておって、農林省が終始そういう政策をとって搾油業者の利益を温存するために、一般の原料として使う加工業者の立場考えてくれない、こういうような問題があって、ヒマシ油も現存非常に高い値段になっておる。従って純然たる工業原料油において、こういうふうな農林省あるいは搾油業者の一方的な利益を守るために、多数の日本加工業というようなものと国民生活の上に大きな悪影響を来たしておる。一体これをどういうふうにするかということを、もう少し通産大臣に身を入れて農林大臣との間の調整をやってもらって、適正な措置を講じてもらいたい。言いかえればもう油では輸入しないという考え方を改めて、必要においては輸入をするのだ、やむを得ないのだというふうな考え方の上に立ってやってもらいたいと思うのですが、この点について一つ通産大臣の意見を聞いておきたいのであります。
  44. 石橋湛山

    石橋国務大臣 ただいまの亜麻仁油及びヒマシ油の点については私は実は存じませんが、御指摘のような事実がありますればなお一つ研究しまして——これもなかなか製油業者などの関係するところが多いのでしょう、また製品輸入すれば、その製造業者がどうとかこうとかという問題も起るのでありましょうが、これらも一つ研究いたしまして、適正に処理することにいたします。
  45. 中崎敏

    中崎委員 問題はまだあるのですが、一応私はこれでやめておきたいと思います。
  46. 小平久雄

    ○小平(久)委員長代理 この際午後一時半まで休憩いたします。    午後零時十九分休憩      ————◇—————   〔休憩後は開会に至らなかった〕