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1956-04-04 第24回国会 衆議院 商工委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月四日(水曜日)    午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 神田  博君    理事 小笠 公韶君 理事 鹿野 彦吉君    理事 小平 久雄君 理事 笹本 一雄君    理事 長谷川四郎君 理事 中崎  敏君    理事 永井勝次郎君       秋田 大助君    阿左美廣治君       内田 常雄君    大倉 三郎君       菅野和太郎君    椎名悦三郎君       島村 一郎君    首藤 新八君       鈴木周次郎君    田中 角榮君       田中 龍夫君    中村庸一郎君       野田 武夫君    淵上房太郎君       南  好雄君    森山 欽司君       山本 勝市君    伊藤卯四郎君       加藤 清二君    佐竹 新市君       多賀谷真稔君    田中 武夫君       松平 忠久君  出席国務大臣         通商産業大臣  石橋 湛山君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁計         画部長)    大來佐武郎君         通商産業政務次         官       川野 芳滿君         通商産業事務官         (大臣官房長) 岩武 照彦君         通商産業事務官         (通商局長)  板垣  修君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      川上 爲治君         中小企業庁長官 佐久  洋君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   鳩山威一郎君         大蔵事務官         (為替局総務課         長)      佐々木庸一君         通商産業事務官         (公益事業局公         益事業課長)  須賀井敏行君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 四月三日  韓国のり輸入反対に関する請願(吉川兼光君  紹介)(第一八〇五号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  輸出保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第六八号)(参議院送付電源開発促進法の一  部を改正する法律案内閣提出第一四四号)     —————————————
  2. 神田博

    神田委員長 これより会議を開きます。  輸出保険法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。質疑を継続いたします。中崎敏君。
  3. 中崎敏

    中崎委員 輸出保険法の一部の改正の中で参議院から修正してこちらへ回付された、保険填補率五〇%を六〇%に引き上げるという趣旨、及びその実情についてあわせて説明してもらいたい。
  4. 板垣修

    板垣政府委員 御承知のように最初提案におきましては、填補率は百分の五十ということになっておったわけでございます。この填補率の問題につきましては、実は通産省といたしましては業界の強い要望もありまして、業界としてはできるだけ多く、九〇%くらいの填補率を要望しておったわけでありますが、私ども政府部内におきまして大蔵省と種々討議をいたしました結果、本制度は世界でも類例のない最初のテスト・ケースとしての投資保険制度でもありまするし、相当保険の担保危険の発生の理由もしぼってはございまするけれども、それでもあるいは不測の財政上の損害の生ずるおそれがあるかもしれぬということで、着実に進もうというところで五〇%というところにいたした次第でございます。しかしこれが参議院におきまして参考人意見ども徴せられ、六〇%ということに国会修正になった次第でございます。この点につきましては、私ども国会修正参議院修正でございまするので、それをのむということにいたした次第でございます。
  5. 中崎敏

    中崎委員 これによりまして特別会計における数字上の問題はどういうふうに検討されたのか、またその際においてどういうふうな処置をされるのかを聞きたいのであります。
  6. 板垣修

    板垣政府委員 この投資保険制度を創設するに当りまして、予算上の引き受け限度は三十億円ときめております。当初の政府案におきましては、填補率が五〇%でございますので、この三十億の引き受け限度でも相当余裕は見ておった次第でございます。しからば今度六〇%になった場合にどうなるかという計算をいたしますと、大体私どもといたしましては、予算引き受け限度を変更せずして、この予算範囲内でやり得るという推定を立てております。と申しますのは、現在まですでに許可済み既投資分が過去五、六カ年間に二十八億円くらいありますが、その二十八億円につきましては、今度の保険制度ができますと、大体八割くらいがこの保険にかけてくるだろうという計算で、それのまた六〇%の填補でございますので、大体十三億円くらいの金額になります。そうしますと、残り十七億円の引き受け限度がございますので、今後一カ年間に、かりに三十億円程度投資がありましても、十分まかなえるということになります。過去五カ年間で二十八億円の投資でございますので、今後一カ年間に三十億円以上も越えることはないというふうに、一応私ども推定をいたしております。
  7. 中崎敏

    中崎委員 今回この法律案改正趣旨は、ことに最近における中南米東南アジア等諸国に対する本邦人技術提供並びに現物出資等による海外投資が盛んになるような状況になっているということでありますが、過去におけるところの中南米並び東南アジア等に対する技術提供並びに現物出資等が一体どういうふうになっているか。そしてまた、今後どういうふうな程度にこれが進む方向にあるのか。さらに政府はそれを積極的に、どういうふうに具体的にやろうという策を持っているのか。ことにフィリピンに対しては賠償の妥結の問題と関連して、一体どういうふうに進めていこうとするのか。そうしたことについて一つ具体的な説明を要求したいと思います。
  8. 板垣修

    板垣政府委員 一応簡単に過去の技術提携及び投資状況を申し上げますと、技術提携につきましては、昭和二十五年度から三十年度までの大体六カ年間に五十八件技術提携が行われておりまして、国別に見ますれば、インド台湾ビルマ等が一番多くなっております。これを業種別に見ますと、機械工業ほか十九件、漁業が十一件という工合で、これが首位を占めておりまして、その他化学、医薬品、繊維建設事業等がございます。それから海外投資を見ますと、年度別数字は省略いたしまして、総額で過去六カ年間に三十六件、先ほど申しました約二十八億円という金額になっております。これを国別に見ますと、特に多いという国はございませんが、琉球が特に多いのですが、これは十件。これは特殊の地域でございますが、これを除きますと、インドが八件ということで、インドが一番多くなっておりまして、その他中南米諸国が二、三件ずつございます。これを業種別に見ますと、水産業が一番多く十一件、次に紡績、繊維関係の四件、それから窯業、ガラス関係四件となっておりまして、その他機械工業鉱業等が二件ぐらいある次第であります。こういう工合にして過去五年間ぐらいの状況は、何といいましても日本の実力がまだ十分でございませんでしたので、海外投資の必要は叫ばれながら十分という状況にはなっていなかった次第であります。しかしながら御承知のように最近日本貿易が非常に伸びて参りました。ところがこのくらいの大きさになりますと、東南アジアなりあるいは中南米地域というものは、やはり貿易と並行して海外投資という方向に向っていかなければならぬというように政府としても考えておりますし、幸いに民間におきましても、海外投資の熱意が非常に強くなって参りましたことはまことに喜ばしい次第でございます。この情勢にかんがみまして、政府といたしましてはいろいろなことをやらなくちゃならぬわけでありますが、その第一の着手といたしまして、このたび海外投資保険制度の創設ということを考えた次第でございます。しかしながら今後ともなお海外投資を促進いたしますためには、たとえば租税協定を結びまして、二重課税制度を防止するというようなこともやらなくちゃなりませんし、さらには何といいましても投資民間の場合コマーシャル・ベースで行われるものではありましょうけれども、やはり政府といたしましても、これにいろいろと資金的な援助をする必要がある。従ってこれが唯一の機関でありますところの現在の輸出入銀行資金源を拡充する。現在においても輸出入銀行を通じて海外投資をなす道は開かれておりますが、何といいましても資金源が十分ではございませんので、その方面の資金源をもっと拡充するというようなことがもっと必要になって参ると思います。
  9. 中崎敏

    中崎委員 この投資の形態でありますが、たとえばアメリカあたり日本との間に技術提携をやるような場合には、別個の一つ会社を作らせるというような形において、はなはだしいのは五〇%を越える外国資本が入り込んでいて、実際においては企業の主導権を握っているというような例もかれこれあるようであります。最近においては五〇%を越えるという例はほとんど一応なくなっているというふうにも承知しているのでありますが、逆に今度は日本がこれらの諸外国技術提供をするとか、あるいは投資によって事業共同経営をやる、あるいは一つ技術特許料等を取って実際に技術指導をやるというようないろいろな形もあると思うのでありますが、これらが容易になし得るように政府としての体系はどういうふうに整えられているか。たとえばさらに通商航海の自由とかあるいは事業経営上における内国人に準ずるような待遇を与えるというような、そういう話し合いの上に、また状況下において進んでいるのか。それらの見通し方針等一つ明らかにしていただきたい。
  10. 板垣修

    板垣政府委員 海外投資につきましては、何といいましてもその投資をせんとする相手国外資の取扱い方に関する法制というものが一番重要なことになるわけであります。一般的に、ただいま御指摘がありましたように、東電アジア諸国ではまだ通商航海条約など結ばれていないところもございますので、こういう面につきましては至急外務省におきまして通商国交回復並びに通商航海条約の締結ということが、やはり今後これらの地域海外投資を促進していく前提条件になると思います。それ以外につきましては、先ほども申しましたように、二重課税の防止のための協定を結ぶというような点が必要になって参るわけであります。しかしながら外資に関します各国の国内法制が諸外国に対して無差別に行われています限りは、やはり日本といたしましてもそれに従わなくちゃならぬわけでございます。従って現在日本が今後海外投資をやります国々、主として東南アジア中南米諸国におきます外資の方の関係はどうなっているかという状況を簡単に申し上げますと、現在までのところ外資法に相当する法律があります国は、台湾、ボリビア、チリー、パラグァイ、イランというような国々がございます。それから外資導入法というような単独立法はありませんが、他の法令で規定しております国がビルマ、フイリピン、タイ、ブラジルというような国がございますが、外資に関する法律の全然無制定のような国がございます。そういうところはインド、パキスタン、セイロン、マレー、メキシコというような国になっております。しかしながらこういうような法律の無制定の国、インドとかセイロンというような国におきましては、事実上におきまして日本外資を非常に歓迎しておるわけであります。むしろ向うの国の方が日本投資を盛んに慫慂してきているという状態でございますので、ただいま御指摘のような意味の不便ないし障害は今のところ全然ないと考えております。
  11. 中崎敏

    中崎委員 国際事情というものは変化するものでありまして、たとえばある段階において外資導入を必要と認められる場合においては、今言ったように言葉を巧みにして、そうして大いに外資導入も喜んでやられましょうけれども、ある時期、ある段階になったら逆にそれはじゃまになってしまって締め出しを食わそうというようなこともあり得るわけでありまして、それと並行的に、言いかえればただ向うが歓迎しておるからということでうちょうてんになってまんまとそれに乗っていくというよりも、並行的に、安心して将来ともにその外資を保護するのだという、そういう態勢を整えていく必要があると思うのでありますが、それについてはどういうふうな心がまえ、用意を持っておられるのか、お聞きしたいのであります。
  12. 板垣修

    板垣政府委員 海外における投資の国家的な保護ということになりますと、これは非常に問題なわけでありまして、従来とも資本というものは常に非常に強大でありますので、やはり日本政治威力ないし軍事的支配のあった国に一番投資ができて参った。たとえば満洲というようなところが多かったことは御存じの通りであります。しかしながら戦後におきましては情勢がすっかり変りましたので、日本といたしましてはそういうような勢力圏を設けて、軍事まではいかなくても、政治的な支配力のもとに日本資本を出すということは不適当でもあり、不可能になった次第でございます。従いまして今後の日本海外進出はあくまでも民間商業ベースでなければならない。ところが商業ベースだけでは非常な不安がありますので、ただいま御提案を申し上げております投資保険というようなことで一部をカバーするということになります。それでも確かに後進国地域に対する投資というものは非常な不安を伴うわけであります。そのためには、やはり投資をする前に投資をせんとする投資者がその国の治安状態なり、あるいは政情なり将来の経済状態というものを十分に考慮に入れて投資をするでありましょうし、また政府といたしましても、投資はずっと許可制度になっておりますので、許可をいたす際にいろいろと助言を与え、示唆を与えて万全を期したいというふうに考えております。
  13. 中崎敏

    中崎委員 たとえばインドネシアとかあるいはアルゼンチンというような通商関係のかつて割合に緊密であったところで、焦げつき債権の回収できないような状態のものが相当あるわけでありますけれども、一体これが現在どういうふうな状態であるのか、またどういうふうな見通しの上に立ってこの回収をされようとするのかをこの際説明願いたいのであります。
  14. 板垣修

    板垣政府委員 ただいまインドネシア韓国、この両国日本焦げつき債権を持っておりますが、インドネシアにつきましては、一億八千万ドル、韓国につきましては四千八百万ドルばかりの焦げつき債権ができております。これらの焦げつき債権をどうするかという問題は非常にむずかしい問題でありまして、韓国につきましてはただいま再開されんとしております日韓の基本的な国交回復というような点等と関連しなければ決定はなかなかむずかしい状況になっておりまして、インドネシアにつきましても、賠償問題の解決が先決になっております。この賠償問題が解決すれば国交回復し、同時に今のたな上げ債権の問題も解決されるであろうと私どもは信じております。将来たな上げ債権を現金で回収するということは、インドネシアの現在の外貨事情から見ましてなかなか困難で為ろうというふうに考えますので、ただいま御質問の点もおそらくこの投資の問題というような点にあるいは御関連をお待ちになっておると思いますが、実は私どもといたしましては、前々からこのたな上げ債権投資に振りかえることができないかという点を政府として交渉いたしております。今までのところ実を結んでおりませんが、あるいはそういう方向解決ができれば、一番両国経済提携のためにもいいんじゃないかというふうに考えております。
  15. 中崎敏

    中崎委員 今後海外投資を活溌に、しかも組織的に有効にやるためには、一つ投資会社とかこうした機関を設けて、そうしてそこでそうしたような問題を扱う、あるいはまたこれは侵略的では困るのでありますし、武力を背景としての外交ということは考えられないのでありますから、おのずからそこには制約があると思うのでありますが、たとえばタイとかそのほかの東南アジア諸国等一つ投資会社みたいなものを作って、そうして一元的にそうしたようなことを扱うような機関なり機構考えられるかどうか。また考えておるのかどうかをお聞きしたい。
  16. 板垣修

    板垣政府委員 先ほど申し上げましたように、海外投資が非常に必要になって参りましたが、何といいましても、民間の力だけでは足りない点がある。しからばどうしても政府がやはり資金を多少投入することが必要じゃないかということは通産省といたしましては考えておる次第でございます。これは何といいましても国の財政力の問題もございますので、ただいまのところこういうことが実現可能であるかどうかということは何とも申し上げられませんが、御承知のように、たとえば経済企画庁あたりでも、何らかそういう方向考えられやせぬかというような点で一応構想も練っておりますし、先般アメリカから来朝しましたジョンストン氏の構想でも、これはアメリカ資本が入るわけでありますが、何らかそういう東南アジアのための国際的な投資機関でも作って、これに日本も参加するというような構想もだいぶぼつぼつ起っておりますので、私どもといたしましては、できるだけ民間ベース投資を補完する意味合いにおいて、何らか政府資金を投入するような事態が実現することを非常に希望いたしておる次第でございます。
  17. 中崎敏

    中崎委員 今通商局長からお話がありました、先般来朝したジョンストンを中心にした海外投資一つ機構を設けるということもあったように聞いておるのでありますが、そうしたアメリカを加えたようなものも一応の考え方でありますし、さらに日本単独投資を受ける国との間の話し合いにおいて進めていくというようなこともあり得ると思いますが、一体この可能性についてどういうふうな見通しを持っておられるのか。先般新聞等によれば、もちろん決定的でないけれども、相当進んだ考慮が払われるような情勢もあるようでありますし、そこらのところをもう少しはっきり御説明願いたい。
  18. 板垣修

    板垣政府委員 その可能性につきましては、私からお答えをする立場にないわけでございますが、一応私の今得ておる印象では、日本側単独投資会社というようなものができる可能性が、この一年間ぐらいは、財政上の関係からないのじゃないかというような印象を得ております。これはただ単なる事務当局意見でありまして、政府の最高の方においてもっと積極的なお考えがあるかどうかまだ私は承知いたしておりません。それから今お話し申し上げましたアメリカ計画というものもまだジョンストンだけの個人的な計画であって、アメリカ政府とか、大きな財界というところはまだ何も聞いていないのでありますが、しかしこれはジョンストン氏のアメリカにおける財界的な地位などにかんがみまして、もしアメリカが相当積極的に動くということになれば、あるいはこの方は実現の可能性が絶対にないわけではないというような印象を得ております。
  19. 中崎敏

    中崎委員 フィリピンとの賠償協定も一応進んでおるようでありますが、そういたしますと、政府の方である意味においてフィリピンへの投資の責任を感ずるようなことになるのじゃないかと思うのであります。そういうような際においても、具体的にどういうふうに考えておるのか。さらにまた条件によってはそうした投資会社ども考えられるのか、どうなのか。これは高碕長官などにお聞きしたいのでありますが、通産大臣も見えていないし、政務次官にでも、もしここで何らか具体的に表現し得るものがあれば一つお聞きしておきたいと思います。
  20. 川野芳滿

    川野政府委員 ただいまのお尋ねの件でございますが、実は答弁の材料を持ちませんので、あしからず御了承いただきたいと思います。
  21. 中崎敏

    中崎委員 それでは僕はこれで一応終ります。
  22. 神田博

    神田委員長 次は加藤清二君。
  23. 加藤清二

    加藤(清)委員 最初委員長お尋ねいたしますが、本法案を早く上げることについて私は協力しようと思っております。従いまして、答弁いかんによっては五分でも十分でも早く切り上げて終ります。  この問題を審議するときに、前々から話し合いになっていました外貨割当の問題でございますが、これを慎重審議する機会を与えていただきたいというように要望して御了解を願っておったのでございます。それはこの法律と同時にということになっておりましたが、きょうこの法律案を上げた場合に、外貨一般質問はいずれの機会に与えていただけますか。その答弁いかんによって長くなるか、短かくなるかきまるのであります。
  24. 神田博

    神田委員長 加藤君のお尋ねにお答えいたします。ただいま外貨予算関係輸出法案審議の際にという一応の理事会の線がございましたこと、その通りでございまして、これは三月中にぜひそういうような扱いをいたしたいということであったのでありますが、御承知のように輸出保険法の一部を改正する法案参議院から予備審査のままになって時日を経過してしまったというような関係でございます。しかし外貨予算の調査は、私非常に重要だと考えておりますので、この輸出保険法の一部を改正する法律案審議外に適当な日をきめまして、十分やっていただきたいという考えでおりますので、本日は輸出保険法の一部を改正する法律案審議という狭い範囲で御質疑をお願いいたしたいと思います。
  25. 加藤清二

    加藤(清)委員 別に与えていただけるということであれば、そのように私も御協力申し上げまして、本日は簡単に片づけるつもりでございます。  御承知通り三十一年度上期外貨予算は、すでに新聞に発表になっておりますが、これは実は発表する前に審議しないと効果が薄らぐわけでございます。済んでしまったあとでは、どうもビールの気の抜けたようなものでして、死んだ子の年を数えるようなものです。それでもなお今からでもおそくないというものの中の、とりあえずやっておかなければならぬというものだけについて御質問さしていただきまして、あと委員長のお言葉通りいたしますから、早急にその機会を作っていただきたい。
  26. 神田博

    神田委員長 承知いたしました。
  27. 加藤清二

    加藤(清)委員 第一にお尋ねいたしたいことは、本法案趣旨輸出入の取引をスムーズにして、大臣のいうところの拡大均衡をますます助長させ、日本貿易を盛んにしようというところにあると思うわけでございますが、商社なりメーカーなりの自由な羽ばたきをよりよく助長するには、だれが考えましても、外貨割当の方式がいろいろな支障を来たしておることは皆さん御承知通りでございますが、その自由な度合いをだんだんふやすために、AA制をふやすということは前々から大臣の公約でございますが、本年度の上期予算決定を見ますと、去年の一五%程度に対して、ことしはわずか五%ふえて二〇%程度と相なっておるわけでございますが、これは私の誤まりでございますか、それとも事実でございますか。もし事実とするならば、さようなAA制になった理由と、もう一つは何と何品目がAA制に許されたのか。現在の基本方針等とあわせてお伺いしたいものでございます。
  28. 板垣修

    板垣政府委員 今後日本外貨予算をできる限り合理化し、自由化していとうという方針を持っておりますことは、ただいま御指摘通りでございます。それの最も大きな根幹になりますのが、AA制度の採用ということになるわけでございますが、またその見地に立ちまして、本年上期の外貨予算を編成する際におきまして、全般にわたって根本的な検討をいたした次第でございます。しかしながら何といいましても、このAA制を急に採用するということは、国内産業政策上、ことに通商政策上いろいろな障害がございますので、大方針といたしましては、できるだけ早い機会AA制を拡大していきたいという方針決定されましたけれども、この実施につきましては、やはりある程度準備期間を置いて、逐次実施に移していくということになった次第でございます。従いましてこの上期予算におきましては、ごく若干、十数品目がAA制度になるという内定がされました。そのパーセントが、ただいま御指摘通りこの上期予算の総額に対して二〇%程度ということになった次第でございますが、さらに今後準備期を置いて、ある部分は本年度の下期において、さらにまたもう一年の準備を要するものは三十二年度よりAA制をもっと拡大していきたいというように考えておる次第でございます。  それからなお今申しました上期より実施いたしますAA制度の品目につきましては、ごく小さい化学薬品等の五十三品目等を除きますと、やや大きなものでは八つばかりあるわけでございますが、これは実はまだ内定をいたしただけでございまして、発表いたしておりません。これはただいまやっております対外通商交渉とのかけ引きの関係がございますので、その関係を見ましてから至急実施に移す、その際正式に発表することになっておりますから、この席でその品目を申し上げることは御了承を願いたいと考えてあります。
  29. 加藤清二

    加藤(清)委員 外貨予算の割当が直ちに貿易に響きますし、また相手国にこちらの手のうちを見られて貿易上不利を招くという結果を招来するおそれのあることはよく存じておりまするが、ややともすると、国会での審議新聞発表のされないうちに、一部商社にこれが知れ渡りまして、その商社と特別なコネクションのある向うのインポーターとの間に話が早くまとまってしまって、まあいえば抜けがけの巧名をされてしまうということが、過去においてはなきにしもあらずでございました。局長の御趣旨まことにごもっともでございまするので、私はその趣旨に賛成いたしまして、今ここで何品目ということをお尋ねすることを差し控えまするが、この点はある特定ということでなくて、日本貿易総体が有利に導かれていくよう一つくれぐれも御留意願いたい。今までも御留意願っておることを感謝しておりまするけれども一つぜひその点御留意願いたいと思う。ここに通商局とか外貨割当を疑われてくる一つの原因も介在しておると思いまするし、またこの発表を早耳早聞きで、早く聞くか聞かないということによって商権を奪われてしまうというような商社も出来した例もございまするから、ぜひこの点は御留意願いまして、できる限り秘中の秘にしておかれまして、発表なさるときには一つ一斉にやっていただきたい。しかもその時期をよくねらってやっていただかないと、国内商品の値上り、値下りに影響がございまして、これはやがて原料高の製品安に苦しむところの下請加工に一そう苦しみを倍加させる、こういう結果も生じてきておるのでございますから、発表の時期というものをなお一そう心得てやっていただきたい。こういうことをお願いするわけでございます。  引き続きまして、私のお尋ねしたい点は、AA制の拡大が、外貨保有高の増加に伴って、これがだいぶ世論として起ってきておるようでございまするが、ただ問題は扱わせる場合の相手方いかんによりましては、ここに問題をかもし出すおそれがなきにしもあらずです。たとえばこの間のバナナの加工業者のごとき、一番最近のいい例でございます。それにつきまして、ちょうどただいま重油の外貨割当につきまして、全漁連の方からは直接外貨をもらいたいという要望が出ておるようでございます。それから日本商工会議所の方からは、まかりならぬという陳情が出ているようでございます。これはもうきのう、きょうでなしに、先年来からの声のようでございますが、ほんとうに貴重な外貨を有効に使って、より安く消費者に貴重な物資を使わせるという立場に立つならば、一体その裁きはどうされたらよろしいのか。また方針はきまっているのかいないのか。いなければいないで将来どのようにするか、あるいは今日方針がきまっておるとすれば、どういう結論を下そうとしていらっしゃいまするか、この点を一つお漏らし願いたい。
  30. 板垣修

    板垣政府委員 御指摘通り、重油のうちで特に海上重油、通産省でA重油と称しているものにつきましては、従来石炭との関係で重油全体の輸入量が規制されておりました関係上、重油の値段が相当高いということで、このA重油を使っておる漁業関係者が非常に高い重油で困っておるということで、しばしばこの問題について昨年来陳情があった次第でございます。これに対しましては、現在の輸入制度通産省といたしましても、できる限り重油取扱い業者に価格を下げるように交渉しておりましたし、ある程度成巧しておるわけでございまするけれども、これにも限度がある。従って非常に通産省としても困った次第でございますが、やむを得ず現行の輸入制度上、全漁連に若干のひもつき外貨をやるということで、昨年決着を見た次第でございます。本年度も引き続きこれを維持し、さらにもう少しふやしてもらいたいという要望がある次第でございますが、こういうようなやり方を言いたしますることは、輸入制度にいろいろ障害を与えますので、できる限りすっきりした方策をとりたいということで、実は今度の外貨予算を編成するに際しても、根本的検討を加えた次第でございまするが、石炭との関係をどうするかという根本問題もございまするので、まだ結論には達しておりませんが、しかしできるだけ早い機会に何らかの解決策を見出したいというふうに考えております。
  31. 加藤清二

    加藤(清)委員 それではもう一つお尋ねいたしますが、今日塩の輸入量が、どういうもののめぐり合せか減ったようでございまして、そのおかげで塩から作ります苛性ソーダの値段までが相当はね上って参っております。かつて、あなたが局長になられました当初のころには、塩の輸入をスペインの十五ドルから中共の九ドル塩に切りかえられましたおかげで、一般に専売価格が二割程度下りまして、その結果は苛性ソーダに好影響を及ぼしました。と同時に、それから生産されるところのスフ、人絹にまで、そのコストを安くするという好結果を来たした。これはやがてスフ、人絹の輸出を伸ばす、こういう非常にいい結果を生みましたので、さすが新しい局長は腕が達者だというわけで、私どももその処置のよさを歓迎したわけでございまするが、つい昭和三十年の下期あたりから、塩の輸入がとだえたと申しましょうか、需要と供給の関係で減ったと申しましょうか、あるいは供給がそのままであっても需要がふえたのかもしれませんが、いずれにいたしましても、苛性ソーダがべらぼうに値上りをして参りました。これは結果的に見ますれば、さきの好結果の逆な現象をだんだん来たしまして、今年度の夏におきますスフ、人絹の織物は、最低一割高、最高は三割高ぐらいいくんじゃないか。これはやがて輸出にも影響を及ぼしまして、苛性ソーダそのものの輸出も減少するが、それから生ずる化学繊維の生産高となって、これの輸出を削減させるという結果を憂えておる次第でございますが、果して今年度の上期における塩の外貨割当はふえたでございましょうか、減ったでございましょうか。それからまた、これも直接メーカーに割り当ててもらいたいということで、化学会社の方が盛んにそのことを申し出ておる由を私ども存じておりまするが、これに対する対策はいかようになっておりまするか。国内問題でございますから、決して外国に影響はございませんので、この点は一つはっきりお答え願いたいと思います。
  32. 板垣修

    板垣政府委員 塩の輸入状況が非常に悪いということにつきましては、実は私よく存じませんが、従来の外貨割当におきまして、日本の生産に必要な原材料であるところの塩の輸入につきまして、外貨上の制約をした覚えは全然ございませんので、あるいは一時的な船の関係とか、不円滑というようなことではないかと存じます。なお、私の聞いておるところによりますと、実は昨年来非常に国内の塩の増産が出てきたというような関係で、全体として、あるいは専売公社あたりで外塩の依存度が減ってきておるというような事情は多少あるかもしれませんが、しかしながら、何といいましても国外塩は安いことでもありますし、重要な原材料でありますので、今後もこれを減らすというようなことは毛頭考えておりません。今度の上期予算でもたっぷり組んでおりますし、それから国内の需要がありますれば、幾らでも外貨を割り当てるという方針で進んでおります。  第二に、今の塩の自己輸入問題につきましては、実は通産省といたしましては、できる限り早くとの自己輸入問題を解決したいという方針で専売公社とも折衝をしてきておる次第であります。しかしながら、昨年までは業界自身の足並みがそろわなかったために、この運動は十分効果的でなかったわけでありますが、最近幸いア法、電解両方とも足並みがそろいまして、一致してただいま塩の自己輸入問題につきまして促進方の運動を進めております。通産省といたしましても、ただいま大蔵省と交渉いたしております。多少まだ財政上の問題がございますので、急に結論が出るかどうかはわかりませんが、ぜひ本年度内には実現したいというふうに私ども考えております。
  33. 加藤清二

    加藤(清)委員 そうすると、本年度中に塩のメーカーの自己輸入を許す、こういうことでございますね。
  34. 板垣修

    板垣政府委員 通産省はそういうふうにしたいということでございますが、これは大蔵省とも関係がございますので、今許すということまでは言い切れません。
  35. 加藤清二

    加藤(清)委員 通産省としてはそういう方針である。しからば大蔵省は一体どういう考え方でおるか、これはわからないのでございますか、御相談をなさっていらっしゃるのですか。
  36. 板垣修

    板垣政府委員 昨年以来ずっと専売公社及び大蔵省と交渉しておりますが、最近におきましては専売公社あたりもだいぶ検討しようという方向には動いております。しかし、何といいましても財政収入との関係がございますので、まだ腹をきめるところまでは至ってないというのが実情であります。
  37. 加藤清二

    加藤(清)委員 この問題では、全芭連とバナナのインポーターとの間のような問題はまず起きないだろう、これこそは業界も、やがてそれから生ずる化学繊維の消費者も歓迎をする施策ではないかと思いますので、こういうものこそ勇気をふるってすみやかにやっていただきたいものだ、特に原料高の製品安で苦しんでおります絹、人絹業者あたりは大歓迎じゃないかと思うわけです。ないしょないしょの手でバナナのあれなどをおやりになるほどの腹がまえを持っていらっしゃるならば、こういうことこそ一つ早急にやっていただく方が国家のためにいいじゃないかと思いますので、どうぞ一つ……。  もう一つは、それに続きまして塩でございますが、ことしはふんだんにふやしたということでございますけれども、私の目の誤まりか、新聞の活字の誤まりか——私は本委員会委員でありながら、通産省からはデータをもらわずに、新聞社からデータをもらっておりますので、このデータの誤まりかもしれませんが、去年は二百五十万トンということになっていますが、ことしは二百四十万トンで、十万トン減っているように出ております。先ほどはふやしたというお話ですが、これはどっちがほんとうでありますか。十万トン違いますと、砂糖の値段でも一ぺんにがらっと百円が七十五円に変るのでございますが、どうですか。
  38. 板垣修

    板垣政府委員 昨年度数字は私今覚えておりませんが、本年度は一応年間買付量二百四十万トンと算定しているのは事実でございます。しかしながら、この表の中に食用塩なども入っておりますので、ソーダ工業用塩の需要増加は十分織り込んでおる次第でございます。
  39. 神田博

    神田委員長 ちょっと加藤君に御相談いたしますが、外貨割当の方は後日たっぷりやる時間をとりたいと思いますので……。
  40. 加藤清二

    加藤(清)委員 もうすぐ終ります。これは当初にやっておかないと、あとで組まれませんと何ともならなくなる。そこでさしあたってやらなければならぬことだけやっておきますが、協力して必ずきょう上げますからそう御心配なさらないで下さい。決して引き延ばしのためにやっているのではありません。これをやったら保守党も大喜びのはずなんです。  それでは承わりますが、去年は二百五十万トンで、ことしは二百四十万トンで、確かに十万トン減っているのです。減っている場合に、工業塩をこれでふやしたとなりますと、食用塩の方の内地生産が去年よりも十万トンなり二十万トンなりふえている。少くとも最低十万トン以上ふえているということならば、工業塩をふやしたということはわかります。ところがこれだけではわかりませんから、おそれ入りますが至急細目を御提出願いたい。  それから輸出先でございますが、十五ドルよりは九ドルの方が安いということはだれしも考えていることでありますし、この九ドルの輸入は、今まででもココムなりパリ・リストなりに別に差しつかえはなかったはずでございますから、でき得べくんば一つ九ドル塩、中共塩をなるべくふやすように——ひもつきのアルゼンチン羊毛を余分に買えといって御命令なさるほど御親切でございますから、せめて塩くらいは安いところを押えていただきたいものだと思うわけでございます。  次に、AA制の問題で、あと二点で終ります。  先般通産大臣は、時計のやみ輸入が非常に多いが、これはだんだん除去すべきである、それは需給のバランスがとれていないからであるが、内地生産が足りないのだから、すでに必需品となってきている時計の輸入は増額をはかるのだ、こういうことを言うておられました。去年はたしか百二十万ドルと心得ておりますが、大臣の言葉だと、ことしはふやすと言われまして、数字は事務担当者に答えさせるということで答弁が終っているわけでございますけれども、事務担当の最高責任者である局長さんは、この点をどのようになさったでございましょうか。
  41. 板垣修

    板垣政府委員 腕時計の密輸が多い原因は、現在のところまだどうしても国内の生産が十分及ばないために、しかも輸入の方を非常にしぼっているというために起っているという事情でございますが、できる限りこういう方面を除くために、輸入を多少ふやすというのがわれわれの方針でございます。しかしながら、本年度腕時計をどれくらい入れるか、どれくらいふやすかということにつきましては、まだ全然研究をいたしておりません。
  42. 神田博

    神田委員長 ちょっと加藤君に御相談しますが、輸出保険法のことをやっているのですから、輸入の外貨割当の方は適当の機会を作りますから……。
  43. 加藤清二

    加藤(清)委員 その通り。だからいま二点と言ったのだから、いま二点で終ります。  今の問題ですが、国内産業が過剰設備だとか生産過剰だとかいわれておりますが、事ウオッチに関しましては、国内産業は非常に温室育ちになっているようでございます。そこで、やがてよいものを輸入していくということは、需給のバランスの調整のみならず、内地生産をよりよく向上させ、刺激するという意味においても必要だと思いますので、これは早急にやっていただきたい。つい先週も産経にやみ輸入のことがでかでかと出ておったわけですが、まず一月に一度くらい時計のやみ輸入が新聞に出ないことはございません。それから小売の方は、毎月々々税務関係の方々のために、各地区でやみ輸入やみ輸入といって内地生産のものまでも引き上げられていっている、こういう状況でございまして、内地の経済を混乱させる基を作っておるようでございますから、経済を安定化する意味においても、この際は、せっかくふんだんになった外貨はサンキストなんかにあまりよけい使わないで、こういうところに使われた方がよいではないか、こう思うわけでございます。  最後に、それではこれで終りますが、去年来再三本委員会審議になり、お約束を相願っている問題でありますが、それはトルコとの貿易、半期間六百万ドルの取引ですが、これが全然行われていないのは施策に考えねければならない点があったからだ、こういうことで進んできまして、一年経過した今日これを改正する、こういうことでございました。しかし新聞発表によりますると、改正はしたけれども、過去の六社の独占をそのまま許して、商権を許して、新しく加入する者にはその商権の譲渡を認める、新しくトルコ貿易をやろうとするものは、過去の空文的な実績、ワン・ダラーも輸出をしなかったこの実績を買わなければいけないというように、新聞及び通産公報四月三日号には発表されております。通産公報四月三日号には、対トルコ貿易実施要領一部改正、二月以降輸入実績証明の譲渡を認む、こういうことで出ているようでございますが、私は今までこういう商権が認められたという例をあまり知らないのでございますけれども、これはどこかで発表の間違いがあったのではございませんか。こうなりますと、大臣答弁とはだいぶ違ったスタイルになってきたようでございますが、この点一つ伺いたい。
  44. 板垣修

    板垣政府委員 トルコとの関係につきましては、本年初めトルコにおきまして通商交渉をやりまして、従来の日本側の商社限定方策というものを改訂する約束をいたしました。その後いかにトルコ貿易を阻害せずに新しい制度に移行するかということにつきまして、いろいろと方法を考えておったのでございますが、ただいま御指摘になりました通り、多少不満ではございますが、やはり過渡的な措置といたしまして、そういう制度をとるしか方法はないので、そういう意味におきまして今度の方針決定された次第でございます。と申しますのは、今までやっておりました六社は、すでに輸入の面におきまして、非常に割高な綿花を買っておる次第でございます。この際、御指摘のようにもし自由に輸入なり輸出を新しい商社にさせるということになりますと、その関係が、非常に高いものを買って、一方非常に安い値段のものを出すという関係で、トルコとの貿易関係がたちまち麻痺してしまうということがございますので、やむを得ずその六社に商権を認めたわけではございませんが、六社がすでに入れた綿花その他の割高な物資の見返りといたしまして、輸出をさせるという制度を暫定的にとった次第でございます。しかしながらわれわれといたしましては、あくまで六社の商権をそのまま維持するということでなくて、この六社の懇談会は解散をさせまして、従来の商社限定方策から、新しく商社の協調態勢に移していくという考え方で進んだ次第でございます。従って、さしあたり当分の間は、輸出の方はやはり輸出権の譲渡をしてもらうという形でなくてはなりませんし、輸入の方も輸入の実務委託という形でやって参りますが、この形でしばらく進みまして、もし商社間の協調態勢がとれるということになりますれば、今後はその新しい商社も、自由な立場におきまして輸入をし、輸出をするということになっていこうと思います。しかしながら、今後ともトルコとの貿易をやっていきますためには、どうしても輸出と輸入とは結びつけなければならない、輸出と輸入が離れては、輸入は高く輸出は安いということになりますので、トルコ貿易がストップしてしまうことは明瞭でございますから、そういう事態に移る過渡的措置といたしまして、そういう制度考えたのであります。
  45. 加藤清二

    加藤(清)委員 これは重大問題です。なぜならば、大臣答弁と食い違っておる。食い違っておる理由を皆さんにわかっていただくために詳細申し上げますが、よく聞いていただきたい。何も時間かせぎをやるつもりでやるのではないですから、このことだけはまじめに聞くだけ聞いてみて下さい。たとえばこういうことなんです。このトルコとの貿易はどうして六社に限定させられたか、すでにその限定したというところにあやまちがある、これは御承知通り公取の違反にも関係してくる問題です。ところが私はそこはつかなかった、がまあ政府がおやりになったことだから、それは認めましょう。しかし一年間やった後において実績が上らなかったらどうするかということは、去年の選挙が終った三月に質問しておるわけです。ところがどうかというと、買うには買ったけれども、ワン・ダラーも輸出ができてないのです。どうしてできないかは、これは施策の誤りがあるのだが、そこをきょうつくのが目的ではないから、そこは差し控えます。トルコ国のガヴァメント・オフィスもちゃんとそれを認めて発表しておる。そこでこれは改正すべきであるというので改正を迫ったところが、半年延ばされ、一年延ばされた、一年有余、今まで延びてきたわけです。それでつい先般通商局次長が今の局長と同じようなことを言われた。ふやすにはふやす、六社に限定したためにトルコ国政府と間が合わぬで買ってくれないのだ、だから買ってくれる相手をふやさなければならない、何も日本商品がいやだから買わないのじゃないのだ、インポーターやエージェントと政府とのつながりにおいて間違いがあるからということで、ほんとうに向うが喜んで買ってくれる商社をふやす、こういうことをはっきり言われた。大臣も言われた。ところがその際に次長のおっしゃったことには、今まで輸入をして欠損をしている分があるから、これを補てんするということを引き受ける商社があるならば、いつでも許します、こういう答弁をなさった。そこで私は、それは近ごろおかしな話を聞くものだ、自分が好きこのんで六社協定をやって金比羅会談までやって、ほかのものは許さない、おれらだけでやるのだといって、自分が好んで入ってそうして輸入して損しておきながら、今度この欠損の補てんを認めてくれなければ、ほかのものは仲間に入れないのだ。冗談も休み休み言いなさいといって大臣に尋ねたところ、それはおれは知らなかった、ちょっと近ごろ聞かぬ話だ、善処する、こういう答弁があった。ところが今承わってみると、やはり同じことを言っていらっしゃる、欠損があったからだ、こういうことなんです。しからば私は承わらなければならない。輸入して欠損があったというならば、輸入された品物は一体何と何であったかということを聞きたい。私から答えてみましょうか、これはアヘンなんだ、葉タバコなんです、これは全部専売品なんです、専売局で売って欠損があったというためしは聞いたことはない、一体どこに欠損があったと言いたい。短繊維を買ったとおっしゃる、短繊維はほんの一部分です、買った紡績も私は知っておる、どこへ納まったかも知っておる、幾ら欠損があったと言いたい。これを商権確保の基礎にして、そうしてこれを補てんしなければいけないというならば、しからばここにデータとして、トルコからいつのいっかどれだけの短繊維を買ったから、しかもそれをどの紡績に幾らで売ったからこれだけの欠損が生じたというものを、紡績の買手側の契約書も出してここへ提出願いたい。それでなければここに欠損を生じたなんということは、私は額面通り受け取ることはできません。なぜかならば、葉タバコや麻薬は政府が買い取っておるのです。ちゃんともうかっておるのです。これでもって欠損したというようなことは私はどうしても考えられない。もしかりに欠損したとしても、はっきり言えば日ト協定によって輸出と輸入と半年間に六百万ドルやります、やるからわれわれだけにやらしてくれということでやった以上、それが実現されなかった暁には、少くとも毛製品の輸出についてはペナルティがついているのです。現在ペナルティでずいぶん罰金を取られた人もあるのです。にもかかわりませず、日トの協定を打ち破って六百ドルはおろかワン・ダラーも出ていない。そうしたらこれは罰金をかけてしかるべきなんです。それに権限を認めさしてなおこれを売り買いしなければいけない、こういうような制度が行われるということは今日の日本の行政上から考えて、私はどうしても理解に苦しむものであります。  それからもし万一その六社があっためておって、ほかの新しい有能な人や、あるいはトルコ国と話し合いがはっきりできて、すでに引き合いまでもらっておる商社が、それじゃ商権を買いましょう、それを受け取りましょうという場合に、これは売らないのだといったらどうなりますか、わしは譲らぬといったらどうなりますか。商権を認めた以上譲らぬということも言えるわけなんです。現に今までの商社間の商取引においては当然起り得ることが予想される。ないしょないしょで四国の金比羅で固めて作ったのだから、何が簡単に渡せるものですか。ほんとうに仕事ができない、欠損するからいやだというなら吐き出すはずなんです。なぜそれをかかえているのか、そこらあたりから推察して、渡さないといったらどうなりますか。そうしたらまた一年間日ト協定は棒に振らなければならない、こういうことになってくるわけです。ここらあたりの消息をはっきりとしてもらいたい。
  46. 板垣修

    板垣政府委員 私はこの過去の既成の六社の損失を補てんするということは申しません。それは損失補てんという意味ではありませんで、六社が輸出ができなかったという点は、必ずしも商社自体の輸出力が足りないとかいうような意味ではなくて、むしろ日本とトルコとの間の通商交渉の停頓からきているのが大きな理由でありまして、六社といたしましては、先ほどアヘンとか葉タバコのお話がありましたが、これはもちろん入れておりますが、やはり綿花も相当多量に入れている。これは国際価格よりも三割も高いものを、入れるだけは先に入れてしまった。ところが輸出をしようとしたところが、トルコ政府側においては日本政府の限定方策は困るということで、輸入ライセンスをおろさなかったのであります。従ってこの六社が出そうにも出せないという事情が確かにあります。従ってこういう状態にかんがみまして、現在輸入先行になって残っておりますすでに入れた綿花の見返り分の輸出だけは、やはり従来の輸出入の引き続きといたしまして輸出を認めてやるという方策を過渡的にはとらざるを得ないということで今度の措置になった次第でございます。しかしながらこの六社の商権をそのまま維持するということではなくて、協調態勢のもとに今後円滑に輸出入が結びついてやっていく、これがしばらくたちますればおそらく新規業者も自分の立場において輸入をし、輸出をするという態勢に移り得ると私は考えております。  それから今第二の御指摘の点の、売らなかったらどうするかという点につきましては、これは確かに重大な問題でございますので、私どもといたしましても、そういうことが起らないように、十分指導もいたしておりますし、もしこの暫定的な制度が円滑にいかないという場合がありましたら、私どもといたしましては、さらに根本的な検討を加える覚悟がございます。
  47. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは承わりますが、日本・トルコ間の協定実施し得なかった、やりますと言うて引き受けておきながらようやり得なかった。これについてはペナルティのかわりに商権を確保させてあるというほどの御親切がありますならば、私は承わらなければならぬことが出てくる。それは、トルコから輸入された原綿の量というものは、アルゼンチンから輸入された原毛の量から比べましたならばこれはほんとうの九牛の一毛でございます。ところで高く買わされたという点においては同じことでございます。アルゼンチンから二割高で買っております。その際にこのアルゼンチン羊毛を買い入れたところの商社は、一体政府から何か補償してもらったのですか。紡績から何か補償してもらったのですか。このしわ寄せは全部紡績なり機場なり最終の仕上げ部門が補っておりますよ。なるほど機械輸出であるとか、その他の輸出においてある程度の補いは行われておることは承知しておりますが、しかしこれは紡績自体、機場自体が補っている方がはるかに多いのでございます。その際に政府は一体どのような情心をここにかけたのでございますか。何がゆえに九牛の一毛であるところのトルコの原綿輸入だけをそのようなことをしてやらなければならないのか。同じ時期において同じ年において同じ繊維を入れておきながら、どういう相違があるのか。私は理解に苦しむ。  それから譲渡しなければするように何とかする、こういうことでございますが、そんなことを言っていた日には商機を逸してしまいます。引き合いがあったとたんに勝負をつけぬことには勝負にならないのです。これは商機を逸したら輸出入貿易が行われないというくらいなことは、あなたは専門家ですからよく御存じのはずなんです。なぜそういうことをしなければならないのか。ワクを広げろと言うたらあっさりと広げたらいいじゃないですか。自分が六百万ドルの輸出入は引き受けますと言って引き受けた人ですから、それで輸入だけやって輸出ができなかったら自己が悪かったと反省しなければならない。なるほどあなたのおっしゃる通り政府に手落ちがあった。政府に手落ちがあったからといって、新しく加入する商社にその責任をしわ寄せしなければならないという理由はどこにもない。もし新しく入るものに責任をある程度分担させなければならないということであるならば、私は承わる。去年六社協定が結ばれて金比羅で会談が行われたときに新しく商権がここに生じたわけであるが、その商権は、政府は売買譲渡したのですか。それをお聞きしたい。
  48. 板垣修

    板垣政府委員 トルコとの貿易におきまして輸出と輸入をどうしても結びつけなければならぬということになりますければ、これはどうしたって輸出の調整から輸出権制度をとらざるを得なくなる次第でございます。そういたしますと、ただいま御指摘がございましたけれども、輸入がなければ輸出ができないのであります。従って今単純にワクを広げろと申されますけれども、広げて新しく入った商社というものがいかなる形で輸出をするかというやはり何か輸出権というものがなければならない。その商社がもしものを入れまして、それに見合いのものを出すということならよろしゅうございますけれども、ただ単に拡大するということは実は不可能な状況になっておる次第でございます。政府といたしましても、その六社の商権を売った買ったといいますけれども、これは一つの行政措置といたしまして世界的な日本商社の過剰競争にかんがみまして、できれば市場協定なりあるいは市場的な商社の活動の規制というようなことが必要であると考えた次第でございまして、それを第一にトルコのような小じんまりとしたところに適用しようとした。これがまた相手方の反対もありまして、漸次またもとへ戻るということになった次第でありますが、それは別に政府といたしまして商権を特定のものに与えるとか与えないとかいうことでなくて、もっと大きな、過剰競争を防止しつつ特定の市場を確保しようという一つの行政方針の現われであったわけであります。しかし実際上こういうことを強行することは非常に困難だということになりまして、われわれといたしましては、現在ではそのような措置を強行する考えはございませんけれども一つの行政措置の現われであったわけでございます。
  49. 加藤清二

    加藤(清)委員 この問題については、これではまだ満足できません。というのは大臣答弁と食い違っているから、大臣にこの質問を譲るということにいたしまして、私は今日この問題は保留をいたします。  それから為替局総務課長さんが来て、先ほどの塩の問題をお答えいただくそうですからどうぞ。
  50. 佐々木庸一

    ○佐々木説明員 塩の問題は、むしろ専売公社関係でございますので……。
  51. 神田博

    神田委員長 専売公社でないとできないそうですから……。
  52. 加藤清二

    加藤(清)委員 了解。それでは日を改めて……。
  53. 神田博

    神田委員長 次は内田常雄君。
  54. 内田常雄

    ○内田委員 私は議題になっております輸出保険法の一部改正法律案につきまして、与党議員といたしまして、この法律の成立を促進する意味におきまして、ごく簡単に質問をいたしたいのであります。  この輸出保険法改正は、輸出保険の対象を拡大いたすとともに、今回新たに海外投資保険を創設するということが内容になっておるようでありまして、これはわれわれの政策の一端を実現するものでありますから、私は衷心より賛成するものでありますが、第一にお伺いしたいことは、今回創設される海外投資保険の損害に対する填補率というものが、この法律原案に現われているところは非常に低い。百分の五十ということで、損害が百あっても実際は保険金支払いは五十しかしないという非常にけちな仕組みになっておるのであります。言うまでもなく、この輸出保険海外投資保険ばかりじゃなしに、従来から四つも五つもいろいろ内容の保険があるのでありますが、これらの保険における填補率は、それぞれ九〇%とか八〇%になっておるわけでありまして、今回せっかく創設せられる海外投資保険填補率が百分の五十ということでは、この保険を創設せられる意味がほとんどないわけであります。このことは経済界、産業界一般に非常に非難をしておるのでありまして、私の伺っているところでも、通産省の当初の案というものは、むしろ百分の八十、九十どころではなしに、百分の百ということで、お出しになっておる。それが政府部内に、おける折衝の結果とうとう百分の五十に下げられたというように伺っております。幸いこれは参議院における、おそらく各派一致の修正案だろうと思いますが、衆議院には百分の六十ということで、填補率六割になって修正送付をされました。私は百分の六十でもまだ低い、ほんとうならば百分の八十、九十くらいに衆議院において修正案を出しまして、これはわが党ばかりでなしに、社会党の諸君にも打ち合せましたところが、御賛成であるという趣旨でありますから、もう一ぺん参議院に送り返したいくらいでありますが、私は与党議員でありまして、この法律がすみやかに成立することを期待いたしますから、今回は百分の六十でも私は個人的には一応これで引き下ろうと思います。  そこでお伺いしたいことは、大臣はおられませんが、川野通産政務次官もおられますし、担当の板垣局長もおられるのでありますが、あなた方は百分の五十というけちなことで、この法律の目的が達せられると考えておられるのか。ほんとうは通産省の原案というものは、初めは幾らであったのか。どういう経緯で百分の五十で往生されたのか、それをお聞かせ願いたいのであります。
  55. 板垣修

    板垣政府委員 御指摘通り通産省といたしましては、業界の要望も非常に強かったので、填補率の問題につきましては、別に九十とか百とかいうところまで確定した案ではありませんが、できるだけ従来の保険と同じような率でもって填補率を定めたいということで、政府部内で大蔵省と折衝を始めたのであります。しかしながらやはり一面考えますと、この制度は世界にも類例のない新しい制度でありますし、日本投資いたします地域が、政情不安でもあり、経済状態もよくないという地域も非常に多いので、やはり当初としましては慎重にやった方がいいのじゃないか。特に投資のコマーシャル・ベースというようなこともありまして、半分は政府が持つが、あとの半分は業者自体も負担をしていくというような形でいいのじゃないかというところで、大蔵省と最後の妥結を見まして、今回の政府提案では五〇%ということになった次第でございます。従って私どもとしては、そういう事情のもとにおきまして、参議院においてできる限り原案でお通しを願ったわけでございますが、参議院においては六〇%の修正になりました。六〇%ならばどうやら現在の予算範囲内でやれる見通しがつきましたので、やむを得ないと考えますが、今の御質問の五〇%、六〇%で法律目的を達するかどうかという問題につきましては、実は今後実施をしてみないとはっきりとは言えませんが、私どもとしましては、今のところそれでやっていけるというふうに考えております。
  56. 内田常雄

    ○内田委員 この海外投資ということは、今のわれわれの自由民主党の内閣といたしましても、幾つかの政策の中で経済政策としては一番大切な政策として、通商産業大臣でも口を開けば海外投資ということを言いますし、また高碕経済企画庁長官も常に同じようなことを言っておられる。なお先般岸幹事長が、三月二十五日でありますか、山口県の自民党支部連合会結成大会に行かれましたときも、新聞に伝えられるところによると、あたかも岸幹事長が内閣総理大臣になったような格好で施政方針のごときものを述べておられるのでありますが、その際大いに海外投資を盛んにする、また拡大経済をやるのだというので、石橋通産大臣の昔の考えに近いようなことを、将来ある岸幹事長が述べられておるのであります。これは岸さんのことを申すのではありませんが、自由民主党内閣としてもわが国の経済の自立とか発展とかいうことをはかるためには、どうしても中南米とが東南アジアに対する投資を積極的にする以外に日本の生きる道はないのであります。貿易一つを例にとりましても、貿易はただ売りさえすればいいということでは今日なかなかいかないので、繊維を売ろうとすれば、その繊維を製品にする織機をこちらから持っていかなければこれは売れない。化学薬品を売ろうと思えば、化学薬品を処理する装置を日本からブラント輸出なり、あるいはブラント輸出されるものを投資の形で持っていかなければ、これらの化学薬品等の輸出は伸びないという格好にありますことは、通産省でも十分御承知であると思う。従ってこの輸出保険方式は、今度の海外投資保険の創設によって初めて仏を作って魂を入れたという格好になるのでありまして、今までの輸出代金保険、プラント輸出に対する保険などとこの海外投資保険と両々相待って初めて保険の目的を達することは、釈迦に説法、あなた方も十分おわかりのところと思います。ことに今板垣君から採算ベースというようなお話がありましたけれども、元来輸出保険というものは、この保険法の冒頭に書いてありますように、一般の保険でカバーできないものをこの政府勘定の保険でやるのだということであります。従って普通の営利保険会社ベースと同じような考え方で、非常にティミッドな気持で始められるということでは、日本がこれから伸びていく大政策にも反することで、これは初めから考えてかからなければならぬところだと思います。政府部内において御折衝の結果とうとう五十になった、今後実績を見るというお話でありますが、大蔵省の諸君もおられるようでありますが、どうも通産省なり大蔵省なりは、言葉は壮にして、やることとはいつもこの通りでありまして、こういうやり方ではとても日本は伸びない。日計足らずして歳計余りありということわざと申しますか、荘子の言葉があるのでありますが、これは一日々々のそろばんでは損をするようでありましても、全体として歳計において余りがあるような政策をしなければ、とても日本は伸びない。私の申すことはそのくらいにいたしまして、これはぜひ来年あたりにおいては——参議院修正の百分の六十でわれわれが満足をしましても、政府側から積極的に、この法律におけるほかの保険と同じように、少くとも百分の八十くらいには上げていただきたい。上げてみても、決して予算に響くものではないと思います。現在輸出保険特別会計におけるいろいろな収支じりを見ましても、相当の、何十億かの繰越金が常にある。いわゆる責任準備金がたまり過ぎているような格好でありまして、ここで填補率を広げてみましても、さして予算に影響を及ぼすものではないと思います。来年度において、政府側の方でこれを積極的にお引き上げになるおつもりがあるのかどうかをお答え願いたいと思います。
  57. 板垣修

    板垣政府委員 投資の重要性については、御指摘通りども考えております。ただいろいろと財政などの都合もありまして、今回の新制度の発足に当りましては、御指摘通り、どちらかというとやや憶病な出発の仕方をしたということは事実でございます。しかしながら、今後この投資制度実施状況を見まして、で承るならば填補率の引き上げというような点も考究をしたいと思っておりますが、ただいまのところ、これができるかできぬかということを申し上げるところまでは至っておりません。
  58. 内田常雄

    ○内田委員 本国会においては私は六十で満足いたしますが、来国会においてあなた方がこれを引き上げないならば、そのときこそ私は勇敢に七十か八十の修正案を出して、全委員の賛成を得て、衆議院も参議院も通すつもりであるということを宣言すると申しますか、予告を申し上げ政府の十分の御理解、御戒心を得たいと思うのであります。  質問を簡単にいたしますために、その次に移りますが、第二番目に、この保険はいわゆる元本保険といいますか、投資をした元本が特殊の危険つまり戦争とか革命とかいうようなことに関連をして、あるいはまた投資先の政府などの収用とか没収によってその元本がなくなった場合だけの危険を担保するだけの仕組みになっておりまして、他の輸出保険、プラント輸出などの場合のように、元本あるいは収益の送金不能の危険を担保といたしておらないのでありますが、どういうわけで、せっかく投資保険を作りながら、その投資の回収不能あるいは利益の送金不能の場合を担保の範囲に入れないのか、その趣旨を承わりたいと思います。
  59. 板垣修

    板垣政府委員 その点は先ほどの填補率の問題と同じように、これは全く新しい制度であり、政府といたしましては、当初やはり慎重な出発の仕方をするという一つの流れでございまして、為替制限等の事由による送金問題を取り上げなかったのは、やはり為替制限というようなことは、日本投資相手国である後進地域においては、非常にひんぱんに起りやすいというような関係からいたしまして、この事由をただいま認めますることは、財政上不測の損害を招くおそれがあるということで、当初は着実に出発しようということで、今回はこれを見合せた次第でございます。
  60. 内田常雄

    ○内田委員 おっしゃることは非常にティミッドであるというか、私が冒頭に申し上げましたように、政府を構成されておる各大臣や岸幹事長の演説会でおっしゃることと、あなたのおっしゃることは全く違うのでありまして、政府の役人である以上は政府に忠実に、もっと積極的に方針を打ち出さなければいけない。われわれ代議士も応援しているし、決して心配は要らないのでありますから、せっかく制度を作りました以上は、この制度が動くようにぜひ今後考え直していただきたいのであります。またこの元本の送金関係については、投資先においてはかような危険が起りやすいと申されますが、現に輸出代金保険などにおいては、プラント輸出に対する年賦払いにおいて、送金不能を担保の目的に入れておるのであります。プラント輸出というものは、二年や三年で代金を回収できるものではなしに、数年の長きにわたって回収するものでありますから、さような場合には、その送金の危険を担保しながら、同じような元本やら収益の送金支障については、これを保険の目的に入れないということは、どうも考え方が一致しないのでありまして、創設早々だから何もかも手足をもぎとって、ただ二項目だけを置いたということでは、どうも趣旨が一貫しないと私は思います。どうか一つ、この次は勇敢に考え直していただきたいと思います。  なお予算に支障を来たすおそれがあるというようなことを申されましたから、ちょっと関連をして一点お聞きいたしたいのでありますが、本年度特別会計予算総則に、この輸出保険法の各種保険保険金額の支払いの限度というものが示されております。たとえば普通輸出保険については、支払い保険金額予算上の限度は五百九十億円まで、それから輸出代金保険については四百四十億円まで、かようにきめられてありますが、今回新設の海外投資保険については、わずかに三十億ということになっておるのであります。私はここでこの三十億はどういう根拠から出たかというようなことを伺いますと長くなりますからやめますが、要するに一般のプラント輸出その他の保険項目について数百億の金額が示されておるのに、海外投資保険についてはわずかに三十億ということで、これも内輪に出発したということでありましょう。保険範囲が非常に狭いから三十億で足りるということでありましょうが、万一この保険の事故の発生等が多かった場合には、この予算総則における海外投資保険保険金額支払い総額の限度三十億というものは、同じ輸出保険の他の項目における、たとえば輸出代金保険の四百四十億というものを彼此流通して支払うことがで奉ることになっておるのであるか、その場合には保険事故が発生しても、予算総則における作文上の拘束があるから——作文上というのは、保険会計そのものの収支においては、さっきも申しますように、前年度繰越金あるいは本年度においても剰余金が何十億かたくわえられておりますから、保険会計の収支に響くことはないと思いますが、予算総則で要りもしない制約があることは妨げだと思いますが、この場合に、作文上の金額の相互流用ということはできることになっておるのですか、できないことになっておるのですか。
  61. 板垣修

    板垣政府委員 ただいま御指摘になりました三十億は、予算上の引き受け限度でございます。これの計算の根拠といたしましては、従来、過去五カ年間の投資の総額が二十八億でございますので、多少余裕を見て三十億で十分ではないか、かように考えておるのでございます。しかして今まで五カ年間で二十八億、従って今後一年間に三十億以上にならないだろうという推定のもとになっておる次第でございます。さしあたりこの一年間はそれで十分ではないかと考えております。  なお次にただいまの彼此流通の点は、法律上はできないことになっておりますので、必要が起りました場合には補正予算を組む必要が起ってくるのであります。
  62. 内田常雄

    ○内田委員 与党委員でありますから、質問を簡単にしてすぐ終りますが、その次に保険料は元本百円につき一円五十銭というようなことであるように伺って飾ります。これは法律にはないので、政令か省令かでおきめになることではないかと思いますが、その通りであるかどうか。これはやってみて、保険でカバーする範囲が非常に狭いのでありますから、百円に対して一円五十銭ということは若干高過ぎるといえば、これはあなた方の内部的の計算で、法律じゃありませんから、いつでもお改めになれる。百円について一円二十銭とか一円にするということはおやりになるつもりであるか。この点業界一般の理解を得しむる意味において、私は代表して伺っておきます。
  63. 板垣修

    板垣政府委員 保険料率は政令で定むることになっておりますが、ただいまのところ、私どもで内定をいたしております金額は、御指摘通り一円五十銭というふうになっております。業界あたりから多少高いんじゃないかという意見も出ておるのでありますが、私どもといたしましては、アメリカのMSA法における民間保証——これは投資保険的な唯一ものでありますが、そういうものの料率とも比較勘案いたしまして、一円五十銭くらいが妥当じゃないかというところで考えた次第でございます。ただいま御指摘通り実施いたしまして高いということになりますれば、なお再検討はいたしたいと思います。
  64. 内田常雄

    ○内田委員 この保険会計においては、三十年度の剰余金が三十数億あります。それから三十一年度予算におきましても、翌年度に繰り越しになるものが四十数億載っております。これはおそらく支払い責任準備金という趣旨でありましょうが、これは窮屈ではなしに、必ず余裕があるのでありまして、海外投資保険ということは、運用によっては非常に妙味があるし、場合によっては国の輸出奨励策にもなり、また海外発展策の助成にもなるわけであります。うっかりこの輸出に補助金などを出しますと、これはガットの精神に反するとか、あるいはその他いろいろ問題を起しますけれども保険の運用によりまして輸出を伸ばす、あるいは日本の国策を達成するということは、外国にも刺激を与えないでやれる妙味のあるところでありますから、ぜひこの予算の剰余金ともにらみ合せまして、保険料率等を政令できめる際には、なお一円五十銭ということにとらわれないで一つ十分考えていただきたい。  私の質問はこれで終りますが、最後に、いつかの機会にぜひ伺いたいと思っていたことを申し上げておきます。それは、この海外投資に関しまして、国会には関係なしに、政府部内でいろいろ施策を研究されておるようであります。たとえば先般アメリカの国際開発諮問委員会の議長のエリック・ジョンストンという人が来まして、この人が石橋通商産業大臣や高碕企画庁長官とも会っております。そうして何か東南アジア開発公社設立案というようなものの打ち合せをしたりしておる。もちろんこのエリック・ジョンストンは、アメリカに帰ったらアメリカ政府の要人ではないのかもしれませんし、アメリカ国会では賛成を得られなかったというようなことも伝えられておるので、本物かどうかわかりませんが、とにかくアメリカ国会では、日本政府と一緒にやる、こういう作案に対して国会が関心を持っておる。しかるに日本の国会議員はだれも知らぬ。これを国会で取り上げるとすればこの委員会でありましょうから、高碕さんや石橋通商産業大臣関係せられると思われるこの東南アジア開発公社の構想等に関しまして、いつかの機会一つ構想を承わったり、またわれわれに議論をさせていただきたい。これは輸出保険などの問題とも、海外投資保険などの問題とも密接に関連を持っておる問題でありますから、委員長にもお願いいたすのでありますが、この委員会の機能を高める意味におきましても、国会議員が職責を尽す意味におきましても、政府だけでこっそりやって、新聞記者だけが知っているということがないようにいろいろお話し願いたい。さらにまた、これは逆のケースでございますが、MSA法の四百二十二条で今までの余剰農産物の問題とは別に、MSA援助の方式としてアメリカから農産物を入れて、その金を円でとめておいて、その円でいろいろな装置や機械をアメリカ勘定で東南アジア等投資をする、それに日本も一緒に乗っかっていくというような案も、先般政府部内では外国人と打ち合わされたようでありますが、ぜひ一つ日本人とも打ち合せていただきたい。ことにわれわれ与党の代議士とも十分お打ち合せをいただかないと——私はふだん黙っておりますし、社会党の方がたくさん質問されるものですから控えておりますが、これでは国会議員の職責が勤まりませんので、なるべく社会党の質問を短かくしていただいて、その間にぜひわれわれの意見をはさむようにしていただきたいと思います。  私は与党議員でありますから、これで終ります。
  65. 神田博

    神田委員長 次は佐竹新市君。
  66. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 私は、きょうこういう重要な法案審議を終了するのであるなれば、通商産業大臣が出席しておっていただきたいと思ったのでありますが、出席されておりません。事務当局質問いたしましても責任ある答弁を得られませんが、幸い川野政務次官がおられますから、川野政務次官から簡単に御答弁を願います。  御承知のように、海外投資の問題はもうおそきに失する感がある。率直に申し上げますなれば、今日までどの政府も——占領中は別であります。曲りなりにも独立をいたしました今日におきましては、われわれが将来最も注目しなければならないのは、中南米もありますけれども東南アジアでございます。この東南アジアに対してのわが国のいわゆる工業進出というものは一つもなされてありません。一つも手が打たれていない。私も二、三年前東南アジア全体を回ってみましたが、インドネシアにおきましても、ビルマにおきましても、日本技術者を迎えるという声もありますし、小さい資本なら持ってきていただいて、そうして資本技術と提携してやりたいというようなことも聞いて帰ったのであります。政府に対しても、当時の政府は吉田政府でありましたが、われわれが帰って報告もいたしましたけれども、何らの手が打たれない。もう今日おそきに失する感がある。なぜかと申しますなれば、御承知のように、シンガポールあるいは香港あたりは西欧の中継ぎ港といってもいい港でありますが、今日すでに西ドイツの技術を入れまして、華僑資本とつないで相当の工場ができたといっております。こういうようになりますと、わが国の工業進出というものは果してできるのかということを言わざるを得ないのであります。そこでわれわれが考えねばならない点は、ソ連、中共、東南アジアは陸続きでございまして、しかも東南アジアに散在いたしまする華僑勢力というものは、今日はほとんど中共勢力に包含されているといってもあえて過言ではありません。この華僑資本は中共資本につながっております。そういたしますと、これは外交問題とかね合いまして、わが国の進出がますますむずかしくなってくる可能性があるのではないかと思うが、政府は一体外国に対しまして今後どのような手を打ってわが国の工業進出をなされようとするのであるか、いわゆる海外投資をなされていこうとするのであるか。こういうことに対して具体的にどういうお考えを持っておられるかということを一応御質問申し上げたいと思うのであります。
  67. 川野芳滿

    川野政府委員 東南アジアに対しまする技術の交流等は、すでにある程度今日実行いたしておる次第であります。なお、ビルマ並びにフィリピン等の賠償問題等が解決するならば、さらにこういう面に向って工業的に進出が促進されるであろう、こういうふうに考えておる次第であります。御説ごもっともでございまして、さらに今後そういう面に努力をいたしたいと考える次第であります。
  68. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 私は、政務次官に深く質問をいたしましても、時間が長くなるばかりでありますから、もう一度簡単に申し上げますが、もちろんビルマフィリピンあるいはインドネシア賠償などの問題も将来あるのでございます。しかしながら、これらを通じて、具体的に申し上げますなれば、インドネシアにおきましてもビルマにおきましても、われわれが要路の人に会った範囲内においては、いわゆる親日感というものが必ずしも深まっておりません。この点は非常に重要な問題であります。それは多少の手は打っておられるでしょう。全然手が打ってないことはないと私は申し上げるが、幾らこちらから働きかけていきましても、いま少し——われわれが考えまするのに、たとえて言うなれば外交官の問題でありますが、依然としてわが国の外交は官僚外交であって、ビルマにおきましても、あるいはインドネシアにおきましても、インドにおきましても、われわれが会った外交官は、早く言ったならば、いわゆるアメリカの文書の下請外交官程度のものでありまして、何ら自主性を持っていない。そうしてまた一面におきまして、工業進出をいたしますのに必要な具体的な工業技術の問題であるとか、あるいは経済的な問題であるとか、そういう総合された一貫されたわが国の海外進出をいたしまするために向うで相当の手を打つには、人的にも不足でございますが、依然として戦争前の帝国陸軍、帝国海軍の上に乗ったところの外交官のあり方が今日のあり方であります。こういうことでやったならば、だんだん他の国に押されてくる。中共が東南アジアの華僑勢力を通じてどんどん産業政策を遂行いたしまして、わが国の進出する場所がほとんどなくなってくるような状態になると私は思う。何といたしましてもわが国は、この最も近い東南アジアなり中共方面に接近感を持っていかなければならぬし、経済的提携が必要であります。ところが、それが何といっても後手々々でありまして、こういうことであったならばどうしてもわが国は四面楚歌の状態に追い込まれる、こういう感じがしてならないのです。従ってわれわれ社会党が絶えず主張しておりますように、中共との問題、あるいはソ連との問題、こういう一貫した外交問題が片づき、そうして東南アジアに非常な親日感を持たしてくるという方向へ国策が一貫していかなければならないと私は思うのであります。台湾のバナナ、朝鮮のノリを相手にしておったのではだめです。やっぱりそういう方向に向って進んでいかなければいけない。それにはやはりこういう貿易方面に対しまして、あるいは海外に対する投資関係におきまして、通産省なり、経済企画庁なりが、もう少し外務省あたりの出先に対して、そういう経済的な考え方に明るい、技術的な考え方に明るい——特に行き詰まっておるわが国の中小企業の進出には、ちょうど絶好の場所なんです。そうして技術を通じて、生産を通じて、親日感を持ってこさせるようにするということであります。たとえばインドネシアに行きましたら、小さいメリヤス工場がありましたが、そこにもわが国の技術者が行きました。それが工場長で、人を使っておりました。その工場に入ってみると、非常に親日感が強い。こういうようになっていきますれば、やはり日本の品物も買おうという考え方を持ちます。そういう点に対しまして、ただ国内の問題だけであって、海外のことは波に押されたような形になっていることは、非常に不愉快きわまることであります。でありますから、私は通産大臣に対しまして深くこの点に関して質問しようと思っておったのでありますが、出席されませんから、今後政府は一段と考え方を転換されまして、海外投資に具体的な手を打たれまして、ちょうど東南アジアはいいのでありますから、わが国の工業技術が進出できるように処置せられんことを要望いたしまして、私の質問を終ります。
  69. 神田博

    神田委員長 これにて本案に関する質疑は終局いたしました。  引き続き本案を討論に付します。討論の通告がありますので、これを許します。松平忠久君。
  70. 松平忠久

    ○松平委員 ただいま議題となりました輸出保険法の一部を改正する法律案について、若干の希望意見を付して、日本社会党を代表いたしまして賛成の意向を表明せんとするものであります。  ただいま同僚議員からも、質疑の間においていろいろな意見、ことに希望が述べられたのでありますが、わが国における自立経済の達成ということは、アメリカへの依存度をなるべく早く低下させて、そうしてアメリカ以外の国との間の貿易を増していくことにあるのであります。しかもその方向は、与野党ともに一致した見解としては、東南アジアにある。しかるに最近の東南アジアにおける状況は、ソ連を中心といたしまして、いわゆる経済的な条件というものを全然考慮に入れない一つ海外投資というものが相当大幅に行われんとしております。これに対してアメリカ自体も、この対抗の意味を持って、かなりの積極政策を東南アジアにはとらなければならないような状況に置かれておるのであります。従って日本がその間隙を縫って海外に進出していくということに関しましては、相当の保護政策をとっていかなければならぬことは、これは申すまでもありません。従ってこれらの間隙を縫うために、われわれはあらゆる手段を尽して海外投資がスムーズにいくようにしなければならぬのであります。しかるに東南アジアにおきましては、いろいろな政情の不安等もありますし、また経済がとにかく浅いために、いろいろな国内関係に基く経済的な不安というものがあると思うのであります。先ほども内田議員が申されましたが、為替の変動であるとか、あるいは突然の何らかの事情によるところの物価の値上りとか値下りとかいうようなことは、ほかの地域よりも多くこの地域には散見せられるところであろうと思うのであります。従って今回政府が提出されたこの法律案というものは、実際はおそきに失する措置でありますが、しかしともかくお出しになったということはまことにけっこうであると思うのであります。しかしながら、その補てん率を五〇%を六〇%にするというようなことを国会にまかしたような結果になっておる。しかもその予算関係におきまして、国会においてどこかに予算があるかというのでもって見つけ出して、そうして三十数億円あるというふうなことでもって補てん率を上げるということになっておるのでありまして、これは政府はあまりに消極的であり、むしろ怠慢に過ぎたのではないか、こういうふうに私は感じておるのであります。従って本案に対しましては、私たちは次の点について十分なる政府考慮を促したいと思うのであります。  第一点といたしましては、保険の補てん率であります。これは今回の修正によりまして六〇%に決定したのでありますが、しかし業界その他におきましては相当程度の向上を希望しておる。今や日本賠償問題その他の関係解決される段階にきておりますし、また解決しなければならぬ時期でありますが、これらと歩調を合せまして、どうしてもこれは相当程度引き上げていかなければならぬ。従って来年度からはどうしてもこれを引き上げていくということに政府自体が、ことに通産省において努力をしていただきたいと思うのが第一点であります。  第二点といたしまして、法案の予想しておる戦争とか内乱とかいうような特別な原因以外に、経済的ないろいろな危険率というものがあるのであります。この経済的な危険率というものもやはりこの原因の一つに加えていかなければならない。すなわち為替の変動であるとか、あるいは突然の物価の値下りということからくるいろいろな損害、それらのものもこれにぜひ含ましていただかなければならない。こういうことをぜひ次回においては考えていただきたいと思うのであります。  第三点としては料率の低下であります。ただいまお聞きしますと、MSAのことを考慮に入れて現在の料率を決定したということでありますが、料率は安いほどいいのでありまして、ことに日本の今後のあの地域における進出ということから考えるならば、どうしてもあらゆる点で一つの助成政策といいますか、保護政策というか、そういうことを強力に実施していかなければならぬと思うのであります。従って第三としては、この料率の低下ということをぜひ次回においては考えていただきたい。  以上、三点希望を申し上げまして、私は本案に賛成の意を表明するものであります。
  71. 神田博

    神田委員長 これにて討論は終局いたしました。  輸出保険法の一部を改正する法律案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔総員起立〕
  72. 神田博

    神田委員長 起立総員。よって本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  73. 神田博

    神田委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  暫時休憩いたします。    午後一時三十分休憩      ————◇—————    午後二時二十七分開議
  74. 神田博

    神田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  電源開発促進法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑に入ります。質疑の通告がありますので順次これを許します。小平久雄君。
  75. 小平久雄

    ○小平(久)委員 ただいま議題になりました電源開発促進法の一部を改正する法律案でありますが、一見してこれはきわめて当然なことであり、法案自体もまたきわめて簡単なように見えますが、よく考えてみるとなかなか複雑な問題であるようにも思われます。そこで私は簡単に二、三の点について承わります。  第一に、今回の改正案の内容は三、四点あるようですが、一番大きな問題はいわゆる下流増の調整をやる、こういうことであると思うのであります。そこでちょうだいした参考書類等を見ますと、たとえば旧日発法にもそういう点についての規定があったようでありますし、またアメリカにも同様の趣旨の立法があるようであります。そこで今度の改正案を一読しまして感じますことは、原則として利益の調整をするということ自体はわれわれは当然であろうという気がしますが、どういう方法でやるかということになると、なかなかこれは実際問題として相当複雑な問題をはらんでおると思うのであります。本改正案によりますと、もっぱら関係者の協議によってきめるというところに、うまく当局があっさり逃げたといえば逃げた、自主性を重んじたといえば重んじた、こういう建前になっておるようでありますが、大体外国などにおいては、こういう点はどんなふうに規定しておるのかという点が第一点。つまり実際問題としての調整のやり方をどういうふうにして曲るかということ。  それから、旧日発時代にも同様の規定があったようでありますが、そのときには、このちょうだいした参考資料を見ても、裁定の方法があったようであります。というのは、当時やはり裁定する必要があるという認識のもとにそういう法制上の仕組みになって賄ったのだと思う。実際の例として関係者の協議がととのわないで裁定に持ち込んだというような例もあったのかどうか。つまり、旧日発時代における調整問題というものの実情というものはどんなふうであったのか、その点をまず御説明願いたいと思います。
  76. 川上為治

    ○川上政府委員 外国におきまして、具体的に下流増を返す場合にどういう基準でやっておるかということにつきましては、これはアメリカにおきましてもいろいろな方法でやっておりますが、やはり下流の方で大体どれくらい利益がある、言いかえれば河川の発電がどれくらいふえるということを算定しまして、それから上の方の上流におきまして費用が大体どれくらいかかったということを算定いたしまして、そして下流の方の利益に応じまして上流の方の建設費を負担しているというような状況になっておるようであります。  私の方といたしましては一応基準というのは考えて、試案を持っておるわけでございますけれども、その試案についてここで発表することがいいかどうかという点につきましては、いろいろ疑問もありますので、一応試案として持っているわけです。しかしながらいろいろ発電所によりまして千差万別でありますので、ある発電所に対しましてどういうようなやり方をとるかという点につきましては、一応その基準に基いてそれぞれやってもらおうというふうに考えていたわけでございます。私どもの方といたしましては、かりに裁定をするということになりますれば、もちろんそういう基準がなければできませんので、先ほども申し上げましたように一応の基準案というものは実は持っておるわけでございます。裁定につきましては、最初どもといたしましてはやはりこの裁定の規定を置いた方がよくはないかというふうに考えておりました。それから裁定する場合におきましては、何か諮問の機関を置いて、その諮問機関に諮問をいたしまして、その上で裁定をするということが一番いい方法ではないか、また民主的ではないかというふうに考えていたわけですが、実はそういう裁定まで持ち込まなくても、行政指導によりまして何とか話し合いはつくのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。旧日発法におきましては、裁定とかそういうような文句は全然入っておりません。ただ下流増を返すべしということになっておりましたが、当時におきましてはどこでそういう問題があってどういうことになったかという点につきましては、そういう具体的な例がほとんどなかったというように聞いております。ただ、最近のいろいろな開発の状況によりますと、方々にそういう具体的な問題が出て参りますので、やはりどうしてもこういう規定を置かなければならないのじゃないかというふうに考えておるわけであります。
  77. 小平久雄

    ○小平(久)委員 今の御答弁のうち、旧日発時代にはそういうことはなかったというのは、裁定までいった事実がなかったということですね。これで見ますと、裁定に関する規定はあったようですね。
  78. 川上為治

    ○川上政府委員 そうです。
  79. 小平久雄

    ○小平(久)委員 それから裁定の制度を設けなかったという趣旨は、もっぱら行政指導で何とか話がつくだろうという趣旨のようですが、ただ実際問題とすると、業者間の利害というものが非常に輻湊するのであって、容易にしかも短期間に話し合いがつくかどうかということは、私は非常に疑問だと思う。下流増の負担をさせるということ自体は、すでにいろいろ問題がある。いわゆる公平の観念からすれば当然だとあっさり言えばそれまでですが、しかしなかなかそうあっさりばかり割り切れない点もある。これにはむしろ反対だという空気のあることも御承知通りなんです。従って今度は内容的に立ち入って、どうしからば負担し合うかということになると、そう簡単に片づかないのではないかという気がします。そこでアメリカの連邦動力法ですか、その第十条の規定など見ますと、むしろ当局が積極的にいわば主導権を握って割合をきめていくという内容になっておるようです。どうも今度の案を見ますと、何か下流増の利益を受けたものに負担させるということだけ規定しておって、あとはお前らで相談しろ、こういったようなことで、自主性がないというか、どうもそういう立場の規定になっておるような気がいたします。逆に言えば業者の自主性を重んじたということになるかもしれぬが、そういう点で何か齒の抜けたような感じがするのですが、これで十分本法の目的を達するだけの確信があるのかどうか。特に今の局長の話を聞いておると、何か試案を持っておるが、出さぬ方がいいということですが、業者にきかせるなら、あえて試案も要らぬのじゃないかという気がいたします。ほんとうにそういう点で、本法の目的を達する確信のほどを、もう一度お示しを願いたいと思います。
  80. 川上為治

    ○川上政府委員 役所の方で裁定するということにつきましては、いろいろその意見もありましたので、私の方としましては、業者の間におきましていろいろ話し合いをしてもらって、そうして適当なところで話をつけてもらうということにしてあるわけです。従来からもこういう問題につきましては、たとえば多目的ダムの場合におきましては、いろいろやはり問題があったわけでございまして、そのつどやはり話し合いをいたしまして、そうして話がついておる例もあるわけなんですが、最近のごとく方々でダムができますと、問題が起きて参りますので、私の方としましては、なるべく行政指導によりまして、自主的に話し合いがつくように持っていきたいと考えておるわけでございます。それでどうしてもそういう話し合いがつかぬという場合が起り得るかどうかという問題でありますが、起り得るということになれば、裁定というのを置いて相当強制的にやった方がよくはないかということにもなるわけでありますけれども、一応今までの事情から考え、またわれわれとしましても極力あっせんするということにいたしますならば、大体話し合いがつくのではないだろうかというふうに考えるわけでございます。その話し合いがつくというのは、結局額そのものについての話し合いの問題でありますとか、あるいはその支払う方法、そういう問題についての話し合いというわけでございまして、やはりこの法律におきましては、下流増を返せということは、はっきりときめてあります。そういう規定がないと、返していいのかどうかというような問題になって、なかなか話し合いがつかぬということになりますので、その部分につきましては、この法律で縛っておるわけですから、あとはその額とかあるいはその支払いの方法、そういう点についてお互いに話し合いをさせるということになるわけなんですか。その点につきましては行政指導によりまして話し合いがつくんじゃないかというふうに考えおります。たとえばほかの問題で例をとりますと佐久間が近いうちに発電を開始するわけなんですが、佐久間の料金なりあるいはその配分なり、そういう問題につきましては電発とそれから電力会社との間にいろいろ話をしてきたのですが、結局これは役所の認可事項ということになっていますので、この問題については役所が中へ入りまして、そして話をつけさしておるということになっておりますので、この法律によりまして下流増を返せということになっておりますれば、あとの問題につきましては私は行政指導で何とか話はつけられるというふうに考えておるわけでございます。
  81. 小平久雄

    ○小平(久)委員 下流増を返せというまずその基礎だけをきめておくのだ、その他は両者の協議にまかせ、かつ行政指導でやるのだ、こういう趣旨のようですが、今までの実際の例等から見て、かつ当局が強調される行政指導ということがほんとうに効果的に行われるならば、あえて本法を作らぬでもできそうな気もするのですが、その点はおきまして、大体最近の電源開発関係ですが、これは電力の再編成等も関係しまして、大体一つの水系というものは同じ電力事業者にやらせるというような方向にいっておると思います。そういうことになると一体こういう法律ができても今度は実際問題としてこの法律を適用しなければならぬというような場合は、ごくまれな場合になってくるんじゃないかという気がするのですが、それでもなおかつこういう法律が必要なのか、つまり何か普遍性に乏しいような気がするのですね。従ってどうしてもこういう法律を作らなければならぬさしあたってのというか、最も必要だと思われる理由というのはどこにあるのか、そこを一つ御説明願いたいと思います。
  82. 川上為治

    ○川上政府委員 今先生がおっしゃいましたように、やはり一会社一水系という方針が最も私はいいんじゃないかというふうに考えますけれども、その上流におきまして厖大な費用を要するダムあるいは発電所というものにつきましては、果してその下流の会社の方で建設し得るかどうか非常に疑問な点があるわけでございまして、そのためにあるいは佐久間、只見川あるいは美幌、熊野、そうした方面につきましては電発がやるということに相なったわけでございまして、今後におきましても私は一会社一水系ということはなかなかむずかしいんじゃないかというふうに考えるのでございまして、例外的な場合が多分に出てくると考えるのであります。これは電発だけではなくて、県営発電につきましても上の方で多目的のダムの大きなものを作りますと、結局下流を別な会社がやる、あるいは東京電力とかあるいは中部電力というものと関係が出てくるわけなんですが、そういう県営関係のダムなりあるいはその発電所というものが、現在においても相当ありますし、また建設を進めつつあるわけでございまして、これは資料としてお配りしてあるかとも思うのですが、電源開発六カ年計画に基いて一応きまっておる地点だけでも三十カ所近くのそういう関係のものがあるということになっておりますし、また今後さらに電源開発を進めていきますと、そういう事例がもっとふえてくるのではないかというふうに考えるわけでございまして、そういう点から見ますると、やはりこういう法律を作りましてそういう関係の調整をしなければならないのではないかというふうに考えるわけであります。  またもし行政指導でいけるんだったら、何もこういう法律を作らなくてもいいんじゃないかというようなお話なんですけれども、この下流増を受ける方が、その上流のものにつきまして負担するということをやはり法律で一応縛っておきませんと、いろいろ問題がありまして、返すとか返さぬとかいうような根本の問題でなかなか話がつかないというような問題もありますので、私の方としましては、やはりこういう法律を作っておいた方がよくはないかというふうに考えるわけでございます。
  83. 小平久雄

    ○小平(久)委員 次に下流増の問題ですが、本法案によりますと、大体増加利益の調整というものは、電気事業者間だけでやる、こういう趣旨のようですが、われわれが聞いておるところでは、また必要を感じておるのは、むしろもう少し広い範囲で、ダム等を作った場合における受益者全般の間における利益の調整ということの方がより必要に迫られておるんじゃないかという気がするのです。それなのに本法案ではただ電気事業者間の利益の調整ということになっておるようですが、そこでもう少し広い範囲で規定することができなかったか。というのは、今言う通り同じ立法化するならば、全般的な受益者の調整ということができなかったものかという気がするのです。現在多目的ダムなどを作っても、大体政令か省令か何かその基準があって、それぞれの分担を一応はきめておるようですが、県営の発電などの場合、要するに折衝の相手方というものは中央の官庁なんです。それであるからこれは何としても地方のお役人は中央へ出て来て、各省相手に相撲をとったんじゃどうもこれはなかなかかないっこない。さらにまたひとりそればかりでなく、いわゆる補償の問題等も、これは受益者というより被害者の方かもしれませんが、むしろ補償の問題、そういう面をほんとうに立法化していくということの方が、電源開発にむしろより積極的に資するのではないかという気がするのでありますが、そういった総合的な立法にしなかった理由というものは、一体どういうところにあるのか、その点を伺っておきたい。この点は大臣からもう少し根本的に——電源開発に伴う補償の問題についての法案等がむしろ必要だと思うし、さらにまた受益者全般の調整に対する法案が必要だと思いますが、これは大臣から簡単でよろしゅうございますから御所見を承わっておきたいと思います。
  84. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 それは問題になりまして研究をしたのです。けれどもなかなか問題が複雑で急にはまとまりませんので、とりあえず下流増の問題だけを今度取り上げた、こういうわけであります。次の国会等においてさらにその研究の結果によって提案をいたしたいと考えております。
  85. 内田常雄

    ○内田委員 ただいまの小平君の御質問に関連して、私はこの法律案の解釈というか運用上の問題をちょっとお伺いいたしたいのですが、今の下流増加利益の負担の問題について、この法律案によると、電気事業者と電源開発株式会社ということになっておりますが、自家発なんかの場合について、上流で電気事業者または電源開発会社がダム等の大きな施設をする。それが自家発電に著しい利益を与えるような場合には、自家発電から下流増利益の負担というようなことを考えてもいいようにわれわれには一応思われるのですが、これを除かれるようにしか法律は読めないと思いますけれども、どう解釈したらよろしいのでありますか。
  86. 川上為治

    ○川上政府委員 この法律によりましては、自家発は含んでおりません。従いまして自家発に対しましては法律上の強制はしないということに相なるわけであります。しかしながらその趣旨につきましては、自家発というのは電源開発についての責任を負担してない。豊富低廉なる電力を開発しなければならぬという義務を負担していない、これが現行法の建前でございまして、従いまして現在の公益事業令とかあるいはその他のいろいろな法令によりましても、電気事業者に対するいろいろな法的な自家発に対する規制というものは違っておるわけでありまして、自家発につきましては、単なる保安的な問題であるとか、そういう面からの取締りがあるだけでありまして、それ以外に電気の供給等につきましての電気事業者と同様な措置は何ら講ぜられておりません。従いまして、そういう自家発に対しまして、法的に上の方のダムに対しまして協力をしろということは無理ではないかというふうに考えましたので、法的には私どもの方としましては、自家発は除いたわけでございます。しかし実際問題としましては、下流の方の自家発が利益を受ける場合におきましては、上の方に返すようにというような行政指導は今後もいたすわけでございまして、従来ともその点につきましては行政指導で返すような措置を講じておるわけでございます。そういう措置は今後もとっていきたいと考えます。
  87. 内田常雄

    ○内田委員 お伺いした意味は、たとえば卑近な例をとりますと、富士川の流域において上流では県営発電ダム設置が計画されて着工されておる。下流には日本軽金属の自家発電があるという具体的な問題があるものですからお伺いしたのですが、県営水力発電というものはこの法律による電気事業者と当然解されるものと考えてよろしゅうございますか。
  88. 川上為治

    ○川上政府委員 それは当然電気事業者というふうに解釈いたしております。
  89. 内田常雄

    ○内田委員 もう一点。この法律の第六条の二の四項でありますが、下流増の負担の関係を律する地域は、総合的に発電水力の有効利用を図る必要があると認められる河川又は湖沼ということになっておりますのは、政府において特定の河川、湖沼を現在想定せられておるということでございますか。たとえば今の富士川流域というものは想定せられておるとかおらないとか、その辺のことについてお聞きいたしたいと思います。
  90. 川上為治

    ○川上政府委員 第六条の四項につきましては、これは第一項のところの政令によって、地点、工事につきましては指定をするということになっておるのでありますが、そういう政令によって定める場合におきましては、この第四項のようなところでなければならないというふうになっておるわけでございまして、総合的に開発し、また下流増が相当大きく出るというような地点だけを強制的にやりたいと考えておるわけでございまして、それ以外のものにつきましては、もちろん下流増がある程度出ました場合におきましては話し合いでやっていこうというふうに行政指導をしていきたいと考えておるわけでございます。
  91. 内田常雄

    ○内田委員 今きまっておるのは…。
  92. 川上為治

    ○川上政府委員 私の方としましては、具体的にどの地域どの地域というのは大体想定はつけております。今お話がありました富士川水域につきましてはどうかという問題につきましては、私どもとしましては、大体あの地点についてもやるべきじゃないかというように考えております。
  93. 小平久雄

    ○小平(久)委員 今自家発電の場合との関係を内田君から関連質問がありましたが、どうも私はそこは割り切れぬ気持でおるわけであります。自家発電が必ずしも利益を得る場合ばかりでなく、逆に自家発電の方で上流にやり、今度は下流の一般の電気事業者が利益を得るという場合もあろうと思うのです。そういう場合でも、たとえば自家用事業者としてはやはり一応下流の電気事業者に負担してもらった方が安くもいくという場合も想定されるのじゃないかと思う。また今の局長の説明によると、何か自家用の方は法的に有効に水力開発をやる義務を負っていないから、それに負担をさせるということを義務づけるわけにいかぬというような趣旨のようですが、考えてみると、何か逆のような気がする。片方は義務を負っているからかけなくてもよさそうなものである、片方は義務を負っていないのだからこの法律によって負わせるようにしてはどうかというようなことも考えられるのですがその点は略します。  次に本法で問題になるダムですが、この法案をただ一読したところによりますと、電気事業者が発電のためにだけ作るダム、あるいはその関係の施設というふうにもとれますが、多目的のダムであって、その一部を発電のために県が負担をしておるというような場合に、その下流にまた電気事業者の発電所があって、それが受益するというような場合、つまり多目的ダムの場合でも本法は適用になるのかどうか、その点が一点。  それからこの法案は元来今後できるダムについてだけ適用になるのか、あるいはすでに従来より存するダム、下流増の問題が現に過去の事態として起っておる場合、そこにまで、この法案が成立したならばさかのぼるのかどうか。これは法律的にいうと、さかのぼらないような気もしますが、その辺の実際の取扱いはどうなるのですか。
  94. 川上為治

    ○川上政府委員 この法律によりましては、多目的ダムにつきましても、下流の方で電力業者の方に受益がありますときは適用されることになっております。  それから従来のむのをどうするか、将来だけの問題かという点につきましては、この法律では将来のものだけというふうに考えております。従来のものにつきましては、これは大体話し合いによりまして解決を見ておりまして、現在係争中のものもありませんで、ほとんど問題がないじゃないかというふうに考えておりまして、しかも従来はそう大きなものがあったわけではありませんで、これからどんどんできるものが非常に大きなものが多くありますので、私の方としましては、今後のものだけだというふうに法律ではしぼっていきたいと考えております。
  95. 小平久雄

    ○小平(久)委員 それと関連しまして、多目的ダムの場合、一部を国で持ち一部を県で持つ、あるいは一部を電気事業者が持つというようないろいろな場合があると思いますが、今度この法律ができて、さらに下流増の受益者たる電気事業者が一部をまた負担するということになった場合には、そのままですか。今度下流増の利益を受けて負担することになる電気事業者その人もそのダムの一部を持ち分的に持つとうことにでもなるのか、あるいはそのダムについての管理権とかその他について何か発言権なり何らかの権利を持つことになるのか、ただ負担しっぱなしで、ダムについて何らの権利も取得されないのかどうか、またしないとすれば、どうしてさせないのか、そういう点を御説明を願いたい。
  96. 川上為治

    ○川上政府委員 この法律の思想というのは、いわゆる受益者負担というような考え方でございまして、たとえば道路を作る場合におきまして、それによって利益を受ける付近の人は、これに対してある程度の負担をするというようなことと全く同じでありまして、そういう受益者負担という考え方でこの法律は組み立ててございますので、従いまして持ち分を持つとか、あるいは管理権を持つとか、あるいは共有権を持つというような問題は、との法律からは出てこないわけでございます。あるいはこれは業者間におきまして、持ち分を持たせるとか、あるいは共有権を持たせるというような話し合いになれば問題は別ですが、そうでない限りにおいては、この法律そのものからは持ち分を持つというようなことには相ならぬわけでございます。従いまして、その管理権というようなことにつきましても、持ち得るということにはならないわけでございます。
  97. 小平久雄

    ○小平(久)委員 現在はどうなってるんですか。たとえば県の施工する多目的ダムの一部を県が持ちますね、そのときは県は出しっぱなしで、そのダムについての管理権も持ち分も何もないのですか。幾らかあるんじゃないですか。
  98. 川上為治

    ○川上政府委員 これは、共同建設というような場合におきましては、いわゆる受益者負担ということでなくして、ダムについての共同建設というような考え方でいきますというと、これは共有権なりあるいは持ち分を持つということが行われるわけでございまして、現在におきましての県営のものにつきましては、共有権というようなことにはなっておりません。ただ今後、たとえば愛知用水でも、これは発電所を作る問題があるわけですが、その際においてどうするかという問題については、これは協定によりまして持ち分を持たせようというような話し合いを現在進めておりますけれども、今のところは全然話がついておりません。
  99. 小平久雄

    ○小平(久)委員 その点もどうもやや割り切れぬような気持がしますが、先に進みまして、この法案によりますと、要するに下流増のために著しい利益を受ける、こういうことになっております。これは法律などでは始終使われる言葉のようですが、具体的に何かあなたの方で、どの程度の利益をこえた場合にはこの法律が適用になる、これは一々実際問題にぶつからなければわからぬといえばそれまででしょうが、何らか、この程度になったならばこれが適用になるんだという、模範的な例でもあったら、この際お示し願いたいと思います。
  100. 川上為治

    ○川上政府委員 これは私の方としましては、大体どの程度利益があったらという基準は別に作っておりませんけれども、非常に著しい例としましては、たとえば東北の只見川系の田子倉などいい例ではないかと思います。これは上流におきましてダムができますと、下の方で年間一億六千万キロワットという非常に大きな数字ですが、それで自然に利益を受けるというようなことになりまして、これは詳細に当っておりませんけれども、大体下流の方で発電端で七、八億あるいはそれ以下かもしれませんが、その程度の利益が出てくる。これは非常に著しい例ではないかと考えております。それから御母衣ができますというと、これまた関西電力方面におきまして、相当大きい利益が出てくるのではないかと考えておるのであります。
  101. 小平久雄

    ○小平(久)委員 そこで先ほどの質問とも関連するんですが、一体今回の調整をやった場合、下流増の利益を返す、その返す方は、協議によるというんですが、その方は協議ですからいろいろの場合ができてくると思います。しかしいずれにしても、何らかの方法で受益者の方は負担をしなければならぬ。そうなると、その負担した金というものは会社の経理の上からいうとどういうふうになるんでしょうか。先ほどから言うように、負担はするが何も権利はないのだということになると、資産的支出でなく、経費的支出ということになるとも考えられますので、これは電力料金とも関係してきましょうが、どういう方針でこれを処理されるのかお聞きしたい。
  102. 川上為治

    ○川上政府委員 負担する場合におきましての方法ですが、この方法につきましては、いろいろ話し合いによって違ってくると思いますけれども、あるいはその額をかりに五億なら五億ときめますと、それを十年なら十年で返すというような方法もありましょうし、あるいは一ぺんに返すというようなこともありましょうが、その際におきましては、ダムの工事費というものがかりに百億かかって、下の方から五億とるということになりますれば、五億落して九十五億ということで料金を計算していくことになろうかと思います。従いまして、下流増を返すということになりますれば、下の方へ渡す電気は安くなるということになるかと思うのであります。
  103. 小平久雄

    ○小平(久)委員 それはダム施工者の方の立場ですな。負担金を課せられる方、受益者の方の支出する費用は、どういうことになりますか。
  104. 川上為治

    ○川上政府委員 下の方が負担する場合におきましては、これは現在道路なんかに受益者負担として出しておるのと同じようなことになってくるわけでありまして、それに税金はかからないということになってくると思います。
  105. 小平久雄

    ○小平(久)委員 出資するんだから税金がかからないのは当りまえだと思うんだが、どういうふうに見るんですか。これは負担金を課せられる方です。つまりその支出は、今局長のお話のように、一時に払える人は払うかもしれないし、払えない人は何年かかかって払うかもしれない。そういう場合、かりに一時に払うとすれば、それは一体資産の勘定としてとっておいて逐次償却できるものなのか、また逆に何年間で払うという場合、その年その年費用として落していくということをまるまる認めるのか、つまり一方のダムについて持ち分というものを認めないということになると、本来資産じゃないという気がする。そういう点はどういうことになりますか。
  106. 川上為治

    ○川上政府委員 無形固定資産というような格好になってくるんじゃないかと思います。それによって償却するということになるかと思います。
  107. 小平久雄

    ○小平(久)委員 別に今経理上の論争をするつもりじゃないのですが、こういう負担を新たにかけるということになれば、結局電気料金に関連してくる問題だと思う。同じ会社なら問題はないでしょうし、もともとこういう問題は起らぬかもしれませんが、違う会社間において、違う事業者間において金をやったり取ったりすると、それがやがてはこの電気料金に響き、一般大衆にも関係のあることだから、どういう経理方法をとらせて働かせるのかということを聞いておるわけです。多分こうなんでしょうというのじゃどうもちょっと心細いのだが、よくわかりませんか。
  108. 須賀井敏行

    ○須賀井説明員 局長にかわりましてお答え申し上げます。  ただいま局長からお答えいたしましたように、一応それは経費として支出するのではなくて、資産として計上しておる。そうして名前は何とつけますか、一応利用権といいますか、そういった権利として持ちまして、あとで償却をしていく。そういたしますれば、年々経費で出すのじゃなくて、権利として残っておりますので、負担した会社の方もこれによって適正に償却していける、大体そういう考え方であります。大体そういう考え方でやれば、課税の対象にもならないというふうに大蔵省との間で了解を得ております。  ちょっと補足いたしますが、現在電気事業においても、電気施設の利用権というようなものは、他に類似のもので同じような立て方をしておる前例もございますので、大体それにならってやっていきたいと思います。
  109. 小平久雄

    ○小平(久)委員 その点はそのくらいにしておきましょう。  結局それと関連するのですが、先ほどもちょっと触れましたが、ダムに対する負担金を負担する事業者の発言権というものは全然ないのですか。しかし協定等によって持つととは何にも差しつかえないだろうと思うのだが、そういう点はどうですか。発電事業者の都合によって、上流に新規に作るダムの水をただ利用している、つまり一方的にダムを監理されるということになれば、これがいかに監理されるかによって受益者の利益というものが非常に違ってくるのじゃないかと思うのです。そういう点で負担だけはさせるが、しかし何ら発言権は得させないのだというのでは、法律によって負担金を義務づけるというようなことができるかどうかという気になってくるので、くどいようですが、その点を重ねて御答弁願いたいと思います。
  110. 川上為治

    ○川上政府委員 この法律は、先ほど申し上げましたように受益者負担という思想から行っておりますので、持ち分とか、共有権とか、そういうことはないと思いますし、また法律的な発言権というのはないわけなんですが、実際の問題としましては、上のダムと下の方とはきわめて密接な関係がありますし、また同時に、電気事業者として豊富低廉な電気を出すというような意味からいっても、両方緊密な関係を持ってやっていかなければなりませんので、上の方と大体管理についての協約なり規定というものを作って、それによって運営をしていくことに相なるわけでございまして、従来におきましてもそういうような協約なりあるいは規定によってやっておるわけでございます。また行政指導といたしましても、そういう措置をとっていきたいというふうに考えております。
  111. 小平久雄

    ○小平(久)委員 最後に一つ。本法の根本思想が受益者負担ということから出発しているのだという重ね重ねの御説明ですが、ところが先ほどは、ちょうど道路を作ったようなものだというお話であったけれども、道路ができれば、公道である限りは、自由に、自分の走りたいときに走れるわけだ。しかしどうも水の問題は、自分がほしいときにほしいだけの水をもらうというものじゃない。なるほど受益という概念はあるいは同じかもしれぬが、その利益に浴し得るものでも、人のものは自主的に受益されない。道路の場合ならば、自分が歩きたいと思うときに歩けるし、自転車でき行たいと思うときは自転車で行けるし、車で行きたいときは車を使えるわけですが、しかし水の場合には、自分がほしいと思うだけ、また思うときに、そうは使えないのです。また権利としても、そういう権利は法的には何ら発言権も得させないのです。こういうことで、いわゆる受益者負担といった場合、道路などに対する受益者負担、都市計画における受益者負担といったような観念と若干違うのじゃないかと思う。あまりにそれに徹していくということは、利益がそこに出るということだけにあまりに目がくらんで——と言っては語弊があるかもしれないが、そこに重きを置き過ぎるのではないか。そこに生まれる利益というものの質的な価値というか、そういうものももう少し何か考慮してやる必要があるのじゃないかというような気がするのです。これ以上のことはこの際やめて、私はこの程度でやめますが、ただ、私の感想ではそういう感想を持っているということだけ申し上げておきたい。
  112. 鹿野彦吉

    ○鹿野委員 今の受益者負担の問題について、ちょっと間連して私伺いたいと思うのであります。  私は、経済企画庁長官に基本的な問題で質問いたしたいと思っておりましたから、この問題はあさってに延ばそうと思っておりましたが、今の受益者負担ということになると、問題はどういうふうに変ってくるか。たとえば只見川の工事に三百億なら三百億かかるというようなときに、受益者負担という観念からいくと、五億か十億ぐらい負担すればいいのだというようなことになりませんか。問題はそういうことじゃなくて、今問題になっているのは、先ほどおっしゃったように、東北電力が二十億の全体の利益の中から六億なり七億のものが出るのだから、そういうようなものに対して相当額の工事費を負担しなければならないというようなことで、そういう考え方に基いてこの法案は出されているのじゃありませんか。ここのところが非常に大きな問題になると思うのです。受益者負担というような観念で負担するならば問題は何も起らない、話し合いで簡単につくのではまりませんかね。ここのところが非常に大きな問題になってくると思うのであります。公共事業の受益者負担というものは、たとえばここに、ある特定の人が概算して百万円なら百万円の利益をいろいろの形において受けるというような場合に、受益者が一人で受けるのだから、二万円の負担をしなければならないとか、三千円の負担をしなければならないというようなことが普通の観念上行われている問題でございます。ところがこの場合は、そうした受益者負担だから、もっともっと飛び抜けて非常に多額の工事費を負担しなければならないというような基本に立っているのと違いますか。ここが非常に大きな問題なんです。ですから、多くの金額を負担するというようなことになるとすれば、持ち分というような問題や管理権に対する参与というような問題もやはり当然出てこなければならない問題であって、これは非常にむずかしい問題だと思いますから、簡単に受益者負担というようなことにきめられないのじゃないかと思うのですけれども、いかがでございましょう。そういう点を一つ承わりたい。
  113. 川上為治

    ○川上政府委員 どの程度受益になるかという問題になりますと、いろいろこれは計算の仕方もあるわけなんですが、たとえば発電端でとるかあるいは送電端でとるかというようなことによっても非常に違って参りますし、送電端でとるということになると非常に大きな利益になる。発電端でとれば、その間にそれよりも少くなるということになるわけですけれども、では、下流増においてどの程度出るかという点につきましては、これは私あまり申し上げることは、ここではどうかと思うのですが、先ほども申し上げましたように、今の計画でいきますと、下流の方では年間一億五、六千万キロワット・アワーというものがただでふえてくるということになりますと、その分だけは非常に大きな利益を受けることになると思うのです。じゃそれをどの程度上の方に払うかという問題でありますけれども、私どもとしましては、上の方の工事費の半分も払えとか、あるいはその六割も払えとか、そういうようなことは毛頭考えていないのでありまして、これは具体的に、下の方で果してどの程度の利益が出るかということを算定した上で、そのうちの一部を上の方のために出して負担をするということを考えておるわけでございまして、非常に大きなものを負担させるというようなことは考えておりません。しかしながらやはりこういう法律がありませんと、では何も負担しなくてもいいじゃないかということになりましても、これは非常にやはり困る問題であります。私どもの方としましては、やはり法律によって負担をしろということにしまして、あと話し合いでやっていくということが最もよくはないかというふうに考えておるわけでございます。
  114. 鹿野彦吉

    ○鹿野委員 よくわかります。もしそういうようなことであるとするならば、この問題はそう大きい問題でなくなると私は思うのです。ということは、下流増によって利益を受けたからある程度のものを受益者負担として返さなければならぬということは、これは常識としてだれでも考えるところの問題です。ですから、たとえばどれほどのものが利益として出るかということは、これは計算はお互いに問題じゃありませんので、どのような計算によっても、一応常識として、出てくるところの利益のうちどの程度のものを負担するのかということが問題になってくると思うのですけれども、ただ公共事業に対する受益者負担というような観念でいくとするならば、これはごくわずかのものを負担する程度にとどまる。このことがはっきりさえしておれば、私は大した問題にならないと思うのです。少くともこの問題は、私は東北電力と関係はございませんが、東北出身の議員としまして、非常に大きな関心を持って参りましたことは、ある程度の工事費の負担をしなくちゃならないという前提に立って考えてきたものであって、ほんとうに受益者負担というような程度であったならば、これは大した問題じゃなくなる、こう思います。ですからその点は、あなたが立案者として、一般の公共事業における受益者負担と同程度のものを負担すればいいのだということを、ここではっきり言っていただければ、私は大した問題じゃないと思いますが、その点いかがですか。
  115. 川上為治

    ○川上政府委員 道路に対する受益者負担の割合と同じようにこの電力についても負担するということは、私ちょっと申し上げかねると思うのです。下の方で出た利益を全部上の方へ返せというようなことは、われわれとしては毛頭考えていないのでありまして、先ほど申し上げましたように、送電端でとるか発電端でとるかという問題であっても、送電端をとることは技術的にもなかなかむずかしい問題もありますので、発電端でとるということになりますと、送電端と発電端の差額ということは相当な利益があるわけですから、それはとらないわけでありまして、結局、これはどの程度、どういう方法で負担するかという具体的な問題になりますし、地点によっても非常に違いますので、はっきりとここで、じゃ道路と同じ程度の負担をさせるということも申し上げかねると思うのです。
  116. 鹿野彦吉

    ○鹿野委員 問題は、今度は受益者負担という言葉の定義をきめていかなくては一ならないと思うのです。ですから、先ほど同僚の小平君から質問がありましたように、これは持ち分とか管理権というふうな問題を解決しなくてはならない段階にどうしたって入ると私は思うのです。ですから、この問題を全然なくして、ただ受益者負担の程度だということになれば、これはほんとうに簡単に済む問題だし、なかなか簡単に済まないからこそ、いろいろな人々がいろいろと知恵をしぼってやっておることだと思いますので、問題は二年先、三年先になるんだから、とりあえず利益を受けるものについてはある程度負担するのが当りまえだという程度でこの法案を出されておるのならおるのだというようなことをはっきりさしていただくことが、議論に終止符を打つことになるんじゃないかと思うのです。これは非常にむずかしい問題で、受益者負担であるということにして、持ち分は認めないのだ、こういうようなことで、しかも負担をする金額は、一般的な観念の公共事業の受益者負担の場合とある程度違うんだというようなことになってくると、大へんむずかしくなるんじゃないかと思います。はっきりすればどっちでもかまわないと思うのですが、その点はよほどしっかりした基礎に立っていただきたいと思う。結局この問題は電源開発促進法の根本に触れてくる問題であって、普通の場合において、ある特定の営利会社と営利会社とがありまして、そうしてこの営利会社が工事をするために下流増が生まれてくるというようなことであれば、こうした問題が当然起ってくるけれども、そうでなく、電源開発促進法というものは、営利会社ではどうにもならないから、国家の力をもって開発するということから生まれたところの問題でございますから、ほんとうはこうした下流増の問題というようなことが複雑な問題として起ってくるはずはない。何ゆえに複雑な問題として起ってくるかということを追及いたしますならば、電源開発促進法の根本にいろいろな不備があるということにさかのぼらなければならない。ですから、私はこの基本の問題について一応経済企画庁長官にただしたいと考えておるわけでございまして、基本ておいてそういうふうな問題があることは何人も認めざるを得ないと思う。しかしながら、現実の問題としては、下流増の問題を何とか解決しなくちゃならないというような必要に迫られた結果、こうした法案が出されたことと思いますけれども、そうしたならば、これはやはり基本的には数年後に解決をするというような目安をつけるとか、あるいは基本的にどうするとかいうふうな問題についても、私たちよりも、今までこの点について大いに研究をなされておるあなた方の方から率直に出していただく方がいいのじゃないかと思います。なお本日はこの程度にいたしまして、この基本的な問題は、あさって経済企画庁長官にお尋ねいたす際に触れることにいたしますが、あなたの方でも、その点について一そうの御研究をお願いいたしておきます。
  117. 小平久雄

    ○小平(久)委員 補足的に一点だけ承わっておきたいと思います。結局この受益者負担という問題ですが、方向を変えて考えると、先ほど来受益者受益者と盛んに話が出ているのですが、電気事業の場合は言うまでもなく公益事業であり、その料金等も当局の認可を得なければ定まらぬことになっておる。ですから同じ企業体であっても、電気事業の場合には、非常に利益を受けたからといって並はずれた配当ができるわけでもなかろうし、そういうことは当局が認められなかろうと思う。かりに電気事業者が利益を受けても、それは結局電気料金の低下ということになっていくのじゃないか。あるいは赤字を埋めるという場合もありましょうが、いずれにしても金業体としての電気事業者のいわゆる私腹をこやすような利益には、結果的にはどうしてもならぬのじゃないか。なお今後開発するというような地点を考えれば、言うまでもなくどちらかというと未開発の地方だと言えると思う。そういうことになれば、先ほど来局長のいう受益者負担というようなことだけにあまりとらわれて、その会社が特にもうかるから、それがけしからぬとまでは言われぬでも、当然出すべきだとあまりに簡単に割り切っているような気がするのです。料金の認可制というようなことを考えれば、もうかればそれだけ料金を安くしてやる、未開発の地方を潤してやるということは、政策的に当然考えるべきことじゃないかというように考えるのです。そういう点については一体どういうふうに当局は考えておるか、承わっておきたい。
  118. 川上為治

    ○川上政府委員 その点は一応ごもっともだと思います。すなわち、下流の方で相当もうかるということになるならば、それだけ下流の方の電気料金を安くさしたらどうかということになるのですが、私どもの方といたしましても一応そういうことは考えられますけれども、発電所ができるごとに電気料金を改訂するという問題も出てきますし、なかなか複雑な問題がそこに出てくるのです。それからもし負担しないということになりますと、上の方では負担の分だけはやはり高く売るということになりますので、その点は同じような問題になってくると思うのです。そういうことで、やはり一応下の方で利益があるならば、そのうちの一部を上の方に返して、上の建設費を負担するということにした方が一番いいのじゃないかというふうに考えまして、こういう措置をとったわけであります。
  119. 小平久雄

    ○小平(久)委員 そうすると、少くとも負担金を課することによって電気料金が上るというととはないわけですね。もちろんこの法律からいっても、利益の範囲内ということになっておるからそうだと思うが、この地点に他のものが開発したにしろ、発電所がどんどん開発されていくといえば、地方の人の素朴な考え方からすれば、これだけ発電所がふえていくのだから少しは電気料金も安くなるのじゃないかということになると思う。またそういうことにこたえることも、これは政治の面からいえば必要なことじゃないかという気がするのです。従ってただ業者だけの協議にまかしておくというようなことは、根本においてどうか。そういうことの政治的な考慮も加味して、むしろ政府が積極的に指導的に、同じ負担するにしても負担さしていくということの方が適当じゃないかという気がするのですが、どうでしょう。
  120. 川上為治

    ○川上政府委員 これはまことにおっしゃる通り考えられるわけですが、ただやはりこういう問題につきましては、自主的に両方で話し合いをして、話がなかなかつかぬというような場合におきまして、政府の方が中に入って調整してやるというようなふうにした方が、今の世の中ではいいのじゃないかというふうに考えまして、そういう措置をとったわけです。
  121. 神田博

    神田委員長 大臣どうですか、一つこの問題について……。
  122. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 実は私自身割合に簡単に考えておった、さっきからの話の受益者負担ということに考えておったのです。しかし御議論によりまして、だいぶその点がはっきりしましたし、非常に参考になりました。なおよく研究いたしまして、明後日また答弁することにいたします。
  123. 阿左美廣治

    ○阿左美委員 一つ簡単にお伺いいたしますが、秩父二瀬ダム、あれは国営で、発電所は県営でやることになっておりますが、この法案の適用を受けることになるのですか。
  124. 川上為治

    ○川上政府委員 これは一応適用を受けることになっておりますが、これは下流の方で果して非常に著しい利益があるかどうかという点をもっと検討してみませんとわかりませんけれども、一応私どもの方としては考えております。
  125. 阿左美廣治

    ○阿左美委員 この計画は県営で、発電所を作りますのみならず、土地改良をすることになっておる。これは非常に大きな計画でございまして、それで受益者負担ということになりますと、土地改良というような方面も、ダムを利用してやるということになりますれば、これも受益者負担ということはいたさなければならぬということになりますか。
  126. 川上為治

    ○川上政府委員 この法律では電気事業者だけの問題に限定しておりますので、そういう土地改良による受益者の方は、別にこの法律によって負担しなければならぬということにはならないわけでございます。
  127. 小笠公韶

    ○小笠委員 私この質疑応答を聞いておりまして、非常にミス・リードする答弁があるのではないかと考えております。それは何かというと、第六条の二の規定の根拠を受益者負担という観念で割り切っておるところに問題があると思います。この第六条の二の規定というものは、新しい義務関係を規定したものであります。それはあくまで政策的に日本の電源の開発をし、しかも豊富に国民全体に利益を均霑させようという電発法の目的に沿って考えておる。そこで新しい権利義務の構成をするに当って、たまたま法理論として受益者負担の理論とかあるいは不当利得の理論とかいろいろあるのに、通俗的に受益者負担の理論をとったにすぎないと思います。ここの点ははっきりしていただかないと、単純なる公共事業の受益者負担の観念にとらわれるならば、すなわち六条の二の規定というものは全然違ってくるのではないかと考えます。そこに政策がなく、単純なる法理論の繰り返しにすぎない。それでたとえばもし単純なる受益者負担の理論でいくならば、開発が満額になったときには、もう負担しなくてもいいというふうな問題も、当然理論的には起り得ると思います。たまたまそこには政策論として割り切ってはありますが、この六条の二の立法の考え方、基礎について、もっと統一的なはっきりした御説明をぜひ願わないと、次から次と疑問を生ずるのではないか。たまたまこの法理論の過程をそのまますべての実態だとお考えになっておるところにミス・リードしているのではないかと思います。次のときまでにお考えおきを願いたいと思います。
  128. 神田博

    神田委員長 政府は十分一つ研究されて、答弁を統一することをお願いいたします。  本日はこの程度にとどめます。次会は明後六日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。   午後三時三十九分散会      ————◇—————