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1956-03-23 第24回国会 衆議院 商工委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月二十三日(金曜日)    午前十一時八分開議  出席委員    委員長 神田  博君    理事 小笠 公韶君 理事 鹿野 彦吉君    理事 小平 久雄君 理事 笹本 一雄君    理事 中崎  敏君       秋田 大助君    阿左美廣治君       宇田 耕一君    内田 常雄君       大倉 三郎君    菅  太郎君       菅野和太郎君    椎名悦三郎君       篠田 弘作君    島村 一郎君       鈴木周次郎君    田中 角榮君       田中 龍夫君    中村庸一郎君       野田 武夫君    淵上房太郎君       前田 正男君    南  好雄君       森山 欽司君    山本 勝市君       伊藤卯四郎君    加藤 清二君       佐々木良作君    佐竹 新市君       多賀谷真稔君    田中 武夫君       帆足  計君  出席政府委員         法制局参事官         (第三部長)  西村健次郎君         経済企画政務次         官       齋藤 憲三君         総理府事務官         (経済企画庁開         発部長)    植田 俊雄君         農林事務官         (農林経済局         長)      安田善一郎君         通商産業政務次         官       川野 芳滿君         通商産業事務官         (大臣官房長) 岩武 照彦君         通商産業事務官         (通商局次長) 樋詰 誠明君         通商産業事務官         (企業局長)  徳永 久次君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      川上 爲治君  委員外出席者         参  考  人         (東京部中央卸         売市場業務部         長)      石井 孝義君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 三月二十二日  電源開発促進法の一部を改正する法律案内閣  提出第一四四号) 同日  ダム新設に伴う下流増受益者負担法制化反対  に関する請願(山下春江君外三名紹介)(第一  五七一号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  離島振興法の一部を改正する法律案内閣提出  第一二七号)  工業用水法案内閣提出第一二八号)  電源開発促進法の一部を改正する法律案内閣  提出第一四四号)  通商産業基本施策に関する件     —————————————
  2. 神田博

    神田委員長 これより会議を開きます。  昨二十二日本委員会に付託されました電源開発促進法の一部を改正する法律案議題とし、審査に入ります。まずその趣旨の説明を求めます。齋藤経済企画政務次官
  3. 齋藤憲三

    齋藤(憲)政府委員 ただいま議題となりました電源開発促進法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  電源開発促進法電源開発をすみやかに行い、電気の供給を増加し、もってわが国産業の発展に寄与することを目的として制定されましたが、その後同法の運用の結果若干の修正を要すべき点が見受けられるに至りましたので、ここにこの改正法案提出いたしたのであります。  次にこの法案の内容につきまして、簡単にその概略を御説明申し上げます。  改正案の第一点は、第六条の改正でございます。現行法第六条は、公共事業電源開発とが密接な関係がある場合においては、国または地方公共団体電源開発を行う者に対して公共事業施行委託することができ、その場合の費用負担については政令で定める旨の規定でございますが、国または地方公共団体電源開発を行う者から電源開発施行委託を受けることが適当な場合も多いのでございまして、その場合におきましても、従来の政令に従って費用負担をすることが妥当と考えますので、その旨の改正をいたしたいと考えております。  第二点は、電源開発に伴う増加利益の調整に関する規定追加でございます。公益事業者である電気事業者電源開発を行う場合におきましては、乏しいわが国発電水力の最も有効な利用を確保できますように、他の発電所に与える影響をも考え合わせて有効な開発を行うことは、国家的要請であるといわなければなりません。従いまして、電気事業者がこの要請に応じてダムや貯水池などを設置または改良いたしました場合には、その河川の流量が調整され、他の電気事業者発電所が大きな利益を受けることとなります。このような場合におきましては、利益を受ける電気事業者に、その発電所における利益増加を見込んで構築したダム等工事費の一部を負担させるものとすることは、電気開発促進に資するとともに、公平の理念からもきわめて適切な措置と考えられます。それゆえ改正案におきましては、第六条の次に一カ条を追加いたしまして、電気事業者は、発電水力有効利用に資する他の電気事業者ダム等工事により著しい利益を受けるときは、その受ける利益に応じその受益の限度において、そのダム等工事費の一部を負担させるものとし、負担額等は、当事者の協議により定めることにいたしました。  第三点は、電源開発株式会社社債に対する政府保証規定追加でございます。同会社は、昭和三十一年度におきまして、約四百四十億円の資金を要しますが、うち約七十億円を社債発行によってまかなう必要がございます。このような事情に対応いたしまして、本法案におきましては、同会社社債の消化を容易にするとともに、発行条件をできるだけ有利にするため、第二十七条を改正いたしまして、同会社社債に対して政府保証できることといたしました。  その他電源開発株式会社監督規定に関しまして、主務官庁通商産業大臣と改めたこと、通商産業大臣大蔵省所管事項関係する事項について認可をするに当り、大蔵大臣に協議すべき旨の規定を加えたこと、その他字句の修正を行なったこと等でございます。  以上が法案の概要でございますが、慎重御審議の上すみやかに可決あらんことを切に希望いたします。
  4. 神田博

    神田委員長 本案に関する質疑は後日に行うことにいたします。     —————————————
  5. 神田博

    神田委員長 前回に引き続き、通商産業基本施策に関して調査を進めます。バナナ等輸入問題に関する質疑を継続いたします。質疑を続行いたします前に、昨日の理事会の申し合せにより、林法制局長官出席を求めておりましたが、長官参議院予算委員会出席中でありますので、代理として法制局第三部長西村健次郎君が出席されております。この際西村政府委員より中央卸売市場法第十七条の解釈等について意見を求めます。西村政府委員
  6. 西村健次郎

    西村政府委員 私、実は昨日この委員会で御質問がありました際に出席しておりませんで、間接に承わっておりますので、あるいは御質問とぴったりしない点があるかと存じますが、もしそうでありましたら後ほどまたあらためてお答えいたしたいと思います。  私の承わったところによりますと、第一点は、主務大臣が、市場開設者である地方公共団体に対し条例で定めておる業務規程変更するという命令を出す根拠を与えている中央卸売市場法の十七条そのものが、地方自治本旨と関連して悪法違反のおそれがあるのではないかというようなお尋ね、あるいはこれは私の聞いたことが違っているのかもしれませんが、この点につきましては一般的に申し上げまして、当該地方公共団体にかかわるだけの事務であります場合には、それが国家的あるいは公益的な利害関係のないものにつきまして国家がいろいろな干渉を加えることは、あるいはこれは地方自治本旨という問題に触れてくるかと思いますけれども、いやしくも国家的な利害関係ある、公益的な利害関係あることについて国がその法律に基いていろいろ規制を加えるということは当然容認されておりますし、いろいろな立法の分野においてもそういうことはとられておると思います。中央卸売市場業務というものは、御承知のように、単にその地方公共団体利害のみでなく、もっと広い地域及びひいては国家的な利害関係のある事務というべきでありまして、それゆえにこそ中央卸売市場法をもっていろいろな規制を加えておるのであります。この法律の十七条に基きまして主務大臣がその業務規程変更について命令を下すことは当然認められて、その点については何ら疑いを存しない、かように思っております。  それから第二点としまして、しからば十七条の規定によりまして、具体的な業務規程変更というものの命令、これは私の伺いますところによりますと、具体的な東京条例で定められております業務規程におきまして、たしか仲買い場外取引場外における買付禁止しておる。それにつきましてその買付の下にカッコをつけて、輸入を除くというふうなことを指示した。これが一体十七条にいう監督上必要なる命令範囲内に入るのかどうかという御疑問だろうと存じます。この点につきましては、この十七条は御承知のような条文でございまして、要するにこの十七条の趣旨は、中央卸売市場業務を適正に運営していくために必要な監督を加えていくというために、要すれば主務大臣は、その場合においては業務規程変更命令できる。これはちゃんと明文がございます。その場合におきまして考えられますことは、大体大ざっぱに言って二通りに分けられるのじゃないかと思います。一つは、業務規程の場合においてなお規制が足らないという場合においては、これこれを加うべしという命令もできましょうし、また逆に必要以上の規制があると認められた場合におきましては、その部分については除くべしということもこれは当然容認されるのじゃないか。そういたしますと、この場合におきましても、その買付の下に輸入を除くということを入れることは十七条の規定によりまして委任された権限範囲外というわけには参らないのじゃないか、これは明らかに十七条の規定に基いてなされた命令である、こういうふうに解せざるを得ない、こう存ずる次第であります。
  7. 神田博

    神田委員長 なおこの際昨日に引き続き、本問題について参考人東京中央卸売市場業務部長石井孝義君に適宜質疑を行うことにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 神田博

    神田委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。質疑を継続いたします。多賀谷真稔君。
  9. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 形式的な十七条に対する法制局の見解を伺いましたが、第一項で述べられましたように、この法律そのもの地方自治体の自主性を根本的に阻害するのじゃないか、こういう質問はいたしておらないのであります。明文の中に書いてありますし、これだけではありません、他の経済立法あるいは社会保障立法にもそういう規定は幾つもありますので、そういうことを聞いてはおりません。ただ二項で形式的なお話がございましたが、もちろん業務規程変更という明文がありますので、お話が形式的になるのは当然かと存じます。  私、この際法制局にお尋ねいたしたいのですが、卸売市場法というものの立法の根本的な趣旨は、法制局ではどういうふうに把握されておるか、まず法の精神をお聞きしたい。
  10. 西村健次郎

    西村政府委員 同法の根本精神というお話で、一口に申しますのはなかなかむずかしいかと思いますが、要するに市場法というものは先ほど申しましたように、大消費地における生鮮食料品取引と申しますものは全国的な影響を及ぼすというところからこそ、この法律をもって直接に主務大臣監督をするということになっております。その監督の仕方としましては、その市場開設者がまず第一にいろいろ業務規程を作り、やっていく、そしてその運営については、これは市場業務というものは御承知のように各都市の各市場によっていろいろ違いますので、それゆえにこそ十七条のような規定が、これは全部が画一的には参らないというところで、一つ監督命令というような形で随時機動的なものが必要になってくるのじゃないか、こういうふうに私は存じております。
  11. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 法制局につきましてはいずれ質問の際にときどきお聞きいたしますので、今は法制局には質問をいたしませんで農林省にいたしますから、御了承願いたいと思います。  そこで経済局長にお尋ねいたしますが、市場法におきましては卸売人業務についていろいろ制約を加えておる。さらに仲買人業務についても制約を加えておる。あなたの力では施行規則を出されて、その施行規則によって仲買人には条文は少いのですが、卸売人にはかなり詳細な規定がある。こういうように卸売人仲買人におのおの市場外業務においてまで制約を加えておるのはどういう理由であるのか、お聞かせ願いたい。
  12. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 中央卸売市場はその集荷または生産物出荷と申しますか、そういうものが関係県の多くが遠隔の地から委託販売されまして、大消費地中央卸売市場という設備、また設備には地区がございますが、そこの卸売人委託販売されますので、一つ中央卸売市場生鮮食料品の模範的な公正取引流通の円滑をはかる場としまして、模範的市場とでもいうべき性格を持っておりますこととあわせまして、関係県も多いという性質がありますので、そこで監督を厳重にいたしていく、こういうことに理解いたしております。
  13. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 卸売人並びに仲買人に対してかなり業務制約をしておる。これはどういう意味制約をされておるか、具体的に一つ——具体的にといいましてももちろん抽象的になってもけっこうですが、一応どういう根拠でそういうことをされておるか、お聞かせ願いたい。
  14. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 現行法におきましては、卸売人については法律の文章で直接に規定がございます。それから仲買人には、法律に特にございませんが、関係法令業務規程をもって規定いたしております。この両者はまず第一には、他方公共団体民法公益法人開設者となるように、開設者として限定がされておりますが、あわせまして取引せり売りでできますように、卸売人委託販売で行われますように、その他いろいろの取引上の規制もいたしておりますが、卸売人について見ますと、委託出荷者がしていきましたならば断ることができない、あわせまして、それに照応しまして、相当の信用力を持ち、保証金市場利用に関しましては積み立てまして、市場使用料については第一担保になりまして、委託販売をして参りました。出荷者に対ましては第二順位の担保となるような保証もする必要があるようにできておるのでおります。仲買人はまた市場内部業務規程で定めますところのせり売りを中心にしました公開明朗な取引当事者としまして、取引の相手方ともなり、価格形成者の一人ともなる、また分荷という重要なこともやっておりますので、これは買い取りでやるわけでございますから、これまた資格要件がおのずから規制されなければならぬという建前で、そういうふうになっておると思っております。
  15. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私が質問していることを十分御承知の上でポイントをはずして全部お話しになっているような気がする。私はそういうことを聞いておるのではなくて、むしろあなたの方の施行規則卸売人業務禁止がいろいろ条項において分けられておる。すなわち、施行規則の二十条では市場外におけるところの業務禁止が掲げてあって、さらにその次には委託原則が掲げられておる。二十二条においては市場外における物品の卸売禁止、さらに二十四条においては卸売人売買参加禁止が掲げられておる。さらに仲買人については、きわめて簡単ではありますが、条文が設けられておる。そして業務規程にはかなり詳細な禁止規定がある、こういうのが結局——時間がありませんから私の方から話して議論を進めていきたいと思いますが、結局先ほどお話しになりました取引公開明朗ということに主眼を置いて、仲買人場外買付をやってはならない、委託販売の引き受けをやってはならない、あるいは営業所を持って販売してはならない、こういう規定を設けておる。これは業務規程、さらに卸売人については、市場外における業務のあらゆる面を禁止しておる。こういうことはやはり買手買手であり、売手売手であるという理論に立っておるのである。これは取引の公正明朗という面、さらに公開という原則せり売りという原則、こういうものを徴すると、市場法というものが目ざしておる立法趣旨が私ははっきり浮び上ってくると思うのです。  そこで私はお聞きしたいのですが、仲直人市場外における一切の買付を行うことができない、こういう規定市場方精神からするならば、この東京条例にあります三十六条のしかも二号の規定はきわめて妥当な規定であり、私はきわめて立法趣旨に適合したりっぱな規定であると考えるのです。ところがむしろ政府の方、命令を出された力が私は立法趣旨に反しておる、かように解するわけですが、これに対する答弁をお願いいたしたい。
  16. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 なかなか御研究になっておりまして、その趣旨の通りだと思うのでありますが、市場そのもの設備をまず置きまして、それに地区を置きまして、しかしその市場で行われる取引流通取引の、少くとも指定地域また広くは地域外を含めまして独占機構ではないということを前提にいたしまして、その上でなるべく多くそこへ入荷があるようにしまして、市場の中の取引が公正に値するようなもので、そうして生鮮食料品流通の円滑と取引公正化とをはかろうとしておるのだと思います。その手段の一つとしまして、卸売人については、その指定区域内にのみ販売を行うことを禁止しておりますし、仲買人は主として場内で働くものであるという建前からしまして、場外買付をしないように建前が今はできておると思います。また売手買手とが対峙しまして、公開競争主義取引をすることになっておりますから、それで卸売人仲買人との兼業でありますとか、あるいは売買参加人との兼業でありますとかを禁止する建前でできておると思うのであります。その目的のために、Aという人間、Bという人間卸売人である場合に、他の営業をどれだけ禁止するかとか、Bという仲買人が他の営業——また業態と申しますか、業態のような営業をする場合に、どの程度禁止するかは、中央卸売市場法の期待するような、中央卸売市場内の取引に必要な範囲規制をすることは必要と思うのであります。その目的で現在施行規則業務規程もできております現行法規法令については、業務規程も含めてそのまま有効で、守っていただかなければならぬものだ、これは当然のことでありますが、立法論になりますと、どの程度までそれを制限すればいいかということについては、全く他の意見がないわけではないと思いますが、今のところはお話趣旨でやっておるものと思っております。
  17. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 取引公開、明朗で、売手買手兼業はできない、あるいは卸売仲買人兼業はできない、こういう御趣旨だと思う。ところが、あなたの方の今度の命令書というのは、この買付については輸入業を含めな、い、こういうことになっておる。そうすると、バナナでなくても、あらゆるものが今度は適用されるのですから、インポーターとして輸入業をやる、あるいは本人が直接御売をやらなくても、委託販売をして市場にその品物がおりてくる。本人仲買人です。ですから、自分が売った品物自分で買うという、いわば一種ののみ行為がここに考えられる。のみ行為禁止は、この法律精神だけではなくて、証券取引法の百二十九条にもあるし、同じような趣旨がやはり民法法人代表権制限にもある。あるいはまた、これは逆ですけれども、弁護人だって、委託を受けた弁護人反対側弁護も兼ねるということはできない。こういう趣旨と同じなんです。そのことをあなたの方では、のみ行為を許さなければならない、こういう命令業務命令監督命令と称して出しておる。そこに私は非常に問題があると思うのです。むしろ条例の方が、法律精神を体していい条例ができておる。それをあなたの方は、その条例はいいからけしからぬ、こういうように悪い条例に直せといって、しかもこの十七条の命令というのは、十八条の強制処分権限を持った命令です。この命令を聞かなければ、その市場は全部つぶしますよ。要するに、その命令を聞かないものは市場認可取り消しをする、さらに業務停止を命ずる、あるいは開設者たるものが法人である場合には、法人の解散をするという強力な権限をもって命令を発動しているわけです。ですから、のみ行為をしなければこういう権限を発動して開設禁止をするぞ、あるいは取り消しをするぞ、停止をするぞ、こういったあなたの方の命令は、権限乱用命令で、不当な命令である、かように考えるのですが、農林省はどういうふうにお考えであるか。
  18. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 先ほどからだんだんお話があります開設者仲買人売買参加人に関します制限的規定は、中央卸売市場の中におきまする取引を明朗化するために作ってあると存じております。そういう場合におきまして、たまたま卸売業者が、卸売人中央市場のところで扱われておりますものが許可を受けまして別の立場において輸入実務を取り扱う。輸入の経験があるとか、輸入資格があるとか、言いかえますと、輸入業者であったり、輸入実務者である、こういうこと等もあります。また仲買人になりました人が、その輸入業務をしておったり、適格性を持っている場合もあります。業務規程において定めました買付ということは、おそらく輸入を含むと解すべきことでありますが、多少疑義もございます。そこで市場内の取引はあくまで従来の施行規則とか条例による業務規程に従ってやってもらわなければなりませんけれども、輸入者範囲輸入代行者実務者範囲を広げる輸入方式ができて、その資格を得るということになりますならば、輸入者として働いて持って来たものを卸、仲買を通じて売るという市場内の取引はそうしていただきたい、こういうふうに考えているわけであります。
  19. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、仲買人であるAというものが、今度のあなたの方の改正によって輸入業者になり得るのですから、輸入業者になる、そうして販売委託をする、あるいは直接その市場でなくて、ほかの市場卸売人となり得る、あるいはまたその市場販売委託をする、こういうことになりますと、結局同一人が売買行為の両当事者になり得る、こういうことになりはしませんか。
  20. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 卸売人仲買人になれなくて、仲買人卸売人になるべきでないと思います。ならないのが法の適正な運用だと思います。しかし他の中央卸売市場なんかでは、仲買人規制をいたしますのに、他の市場市町村長開設者などの許可を得ればそこから買ってもよろしいという規定でもありますれば、都市条例地域的効力が限定されているわけであります。それで、ある市場仲買人でありましても、その都市地域外で他の業務をするということなどはあるわけです。そういうことを彼此勘案いたしますと、市場運営市場取引上絶対必要な事項と、その他の事項とは分れる場合があるので、その場合はあまり強い規制をする要があるかどうかは研究の余地もある、そういうことであります。
  21. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 あなたの方で認めておられ、かつ今度の業務規程改正については何ら命令を下されてない。東京都の条例の三十六条第一項の第一号を見て下さい。「本市場内又は外において販売委託の引受をすること」はできない。要するにこれは市場外においても売手になることはできないという意味なんです。ころがあなたの方で輸入買付に含まないということになれば売手になり得る。そこで私はこれはあなたの方でのみ行為を強制した命令である、こう考えざるを得ないじゃないですか。これは全く市場原則を破壊するものです。こういうことは、市場法趣旨に相応したりっぱな条例を作っておるのにかかわらず、命令によってこれを悪くせよというような政府がどこの世界にありますか、全くわれわれは理解に苦しむんです。もう一回説明して下さい。
  22. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 決してそういう趣旨では、ございませんので、仲買人売手である卸売人になるようにとは思っておるわけではございません。それはそういうことをしてはならない、輸入する場合だけできる、こういうことになっております。
  23. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 バナナのように国内で比較的生産のないものはそうなんですが、ところがバナナだけではないのです。今度のは全部の品物がそういうことができるかということになっておる。条例にはそういうことはない。全部の物資についてそういうことにせよという命令が農林大臣から出ておる。農林省はそのバナナ輸入方式に関連をする取引についてとあって、業務規程改正は、これは全部の物資について適用されるものであるということを言うておる。ですから、この問題はきわめて重大な問題になる。国内の物産と競合する輸入物産がそういうことができるとするならば、これは市場の大撹乱ですよ。大撹乱をせよという命令をあなたは出しておる、これを僕は聞いておるんです。
  24. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 その点になりましたら、御質問意味が実はやっとわかりましたが、そういうことを申しておるのではございません。そういうふうに申しましたら間違いで、ございます。それはバナナのようなもので、国産がないもので、輸入に関する限りは、国内の青果物や魚のように生産があって、それを卸売人出荷人から委託販売を受けてるようなことの一歩前の別の業務のことで、そういう業務を営むことがある。だからバナナについてそうである。きのう申しましたのは、サンキストなどが入ってくる場合には考え得るかもしれないが、いずれもその個々の業態において輸入方式などと関連して、それがそういうふうにきまりましたならば、そういうことがあるかもしれぬが、研究の余地があるという意味で申し上げたのであります。全部どの品目についても仲買人卸売人と同じ行為ができるようにして、あなたのおっしゃるようなのみ行為をやれということを決して申しておるわけではございません。
  25. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私はのみ行為をやれということを言っておるのじゃないですよ。のみ行為ができないという市場条例が今まであった。それをあなたはのみ行為ができるというように改正をされた、こういうことを言っておる。  さらにもう一つは、今あなたはバナナとかサンキストという例をあげられましたが、なるほど外貨の割当は制限をするから実際はそういうことは起らないかもしれませんが、あなたの方は自由経済を建前としておる、しかも営利主義でいく、そうすると、どんどん品物が入ってくることを予想して法律条例を作らなければならぬ。そうすると、あなたの方で出された通牒は、東京都の業務規程の第三六条第二号ということを銘打っておられる。そうして「買付」を「買付輸入を含まない。)」というふうに条例を改めるということになれば全部の物資にいくことになるでしょう。一つ一つの個々の問題について競合するのではない。改めるということは、バナナだけではなしに全部のものに適用するという条例改正になるのではありませんか。そういうことを指示されておるじゃありませんか。
  26. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 ただいま御指摘の卸売人仲買人というようなもので法に基いて流通の円滑及び取引の公正をはかるために規定してあるものは、この輸入行為を含まなくてもいいだろうという規定です。また今回きまりましたのは、バナナの外貨割当はジェトロが受けまして、その輸入実務を行う場合でございますので、輸入実務の入札し得る資格を得られるのは、室の施設の利用者あるいは所有者で、市町村長または市場開設者からそういう権限が明確に与えられている者というはっきりした規定があって、通産省がおやりになりますので、そこでその中には仲買人である場合もあるし、卸売人、加工業者である場合もあるわけであります。権利を得ればその他の者もあるわけであります。そういう場合に仲買人と重複する場合もあるから除いておいた方がいいということはないわけです。
  27. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 法制局にお尋ねいたしますが、この三十農経第五千四十二号、昭和三十年十二月十四日、農林大臣から東京都知事安井誠一郎にあてたこの業務規程変更命令に基いて、記として業務規程第三十六条第二号の「買付」を「買付輸入を含まない。)」と改める、こういうことを命令し、それに従って都では条例改正を行われた。そうしますと、今局長の言うようにバナナだけだ、ほかのものは含まないということでなしに、これは全部の物資に適用されるものであると思うが、法制局の見解を伺いたい。
  28. 西村健次郎

    西村政府委員 実はこの農経なんとかいうのは、きのういただいてまだ全部読んでいないのですが、たしか改正のあれは、「買付輸入を含まない。)」そこだけを私よく伺ったのですが、もちろんこれが三十六条に入った場合においては、別段特別な制限というものはそこからはうかがえないと思いますけれども……。
  29. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ちょっとこれを見て下さい。都合のいいところは見て、都合の悪いところは見ないなんてあるものですか。
  30. 西村健次郎

    西村政府委員 記の方の第一号で、具体的に業務規程を「買付輸入を含まない。)に、収めること。」こう改めた限り、あの三十六条を見ましただけでは別に輸入したものだけだというふうには条例としては出てこないと思います。
  31. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 条例を変えた以上は、だれが見ましても、これは法科の一年生が見れば当然全部の物資に適用されるということは明瞭であります。たまたまバナナに関して出された通牒であることはわかるわけですが、あなたの方の命令書というのは、全部の物資ということになる。そこでこれを一つやれば全部の物資に影響があるということは、農林省としては当然考えざるを得ないでしょう。だから私はそれをお尋ねしておる。これはきわめて大きな問題です。市場を崩壊する命令書をあなたは出しておる、それをお尋ねしておる。
  32. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 すべてのものを含むわけじゃありませんので、輸入するものを含むわけでございます。それだから輸入により買い付けたバナナ中央市場に搬入し場内にて取引させる場合は、正規のルートで従来行われておらなかったことが多いから、行われるように指導をお願いしたい、こういう精神をつけ加えたわけであります。
  33. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それならばなおさらのみ行為ができます。自分インポーターとして買って参った以上は、取引段階として、卸、仲買い、小売、こういう段階を通じなさいよといっている。だから自分の方でインポーターとして輸入をしたのが、自分卸売人になれぬから、販売委託をします。販売委託をすれば今度は卸売人が来て、そうして同一の仲買人がせるということになるじゃありませんか。これは全く市場を破壊する通牒です。しかもあなたの方が出された命令書というのは、これを聞かなければ、その市場認可を取り消すぞ、その役人は首を切るぞ、業務停止するぞという、非常に大きな権限を持っているものじゃありませんか。一体これはどうですか。
  34. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 そういう御心配がないようなつもりでございましたが、なお研究をいたします。(「法規上そうなるじゃないか」と呼ぶ者あり)そういうつもりでないという気持をこの三項において表わしておりますから、もしそういうおそれがありましたら、適切な措置を考究の上、とるべきだと思います。
  35. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 仲買人は今度インポーターになるけれども、今まで仲買人は加工業者であって自分市場は通じない、あるいは通じておるものもあるが、通じない。こういうふうにやみで流れていけばしょうがないかもしれない。しかしあなたの方は通牒の三項で、そういう取引はいけませんよ、今度はバナナは全部、卸から仲買人市場を通じて小売、こういう段階を踏みなさいよというのです。じゃ一体仲買人である輸入業者は、持った品物をどうしますか。売れぬじゃないですか。売れぬですよ。市場を通じて売りなさいというのですが、本人仲買人ですから、品物を買うてきても売れませんよ。腐る以外に方法はない。
  36. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 それだから私どもの方の趣旨は、卸に売りまして、卸から仲買人に売っていただきたいということを言っているわけであります、それが適当でない場合は、なお研究してみたいと思っております。
  37. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 卸に売って、結局卸に委託販売するのでしょう。あるいはそのまま売るんでしょう。そうして、卸が、結局輸入業者であったもともとの売り手の仲買人せり売りするのでしょう。そういうことになるんでしょう。あなたはこういう通牒を出しているじゃないですか。
  38. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 それはいつでもそうじゃありませんで、加工業者がそういう場合もあるから、そういうことが生ずる場合もありますから、よく取り調べまして、なお明瞭にいたしたいと思います。
  39. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 加工業者が卸の場合がありますね。   〔発言する者多し〕
  40. 神田博

    神田委員長 静粛に願います。
  41. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 加工業者が卸の場合は、これは条例変更しなくてもできるのですから、ほとんど問題ない。あなたの方で、加工業者が卸の場合がありますから、こう言われますならその通りです。しかし、この条文で今論争しているところは、その問題じゃありません。加工業者である仲買人、加工業者が仲買人であった場合に問題が起き、あなたの方は条例を変えられた。だから私は、加工業者で仲買人である場合のみを限ってお話をしているのですよ。あなたの方はその問題について命令を出されたのですから、問題を限定して論争したい、こう言い寄ると、すぐほかの話をされるので困る。あなた方は、加工業者が仲買人になったら困るから条例を変えられた。あくまでもその方面でお話を願いたい。今もお話がありますように、全く不当な——これは大臣の責任になりますよ。大臣が判を押しておるけれども、いやしくも東京都という一つ法人格に命令を出すのに、お前のところはいいことをしておるからけしからぬ、悪いことをせいという命令を出すような行政官庁が一体ありますか。  さらに私はもう一点、ここで法制局にお尋ねしたい。実は東京都の条例の三十六条のような条項が、大阪にも、よそにもあるわけです。ところが、よその方は業務規程変更命令は出されないで、これは首長の認可によって除外例が認められておるわけです。首長の自由裁量にまかされておるわけですね。そういうようなところには、先ほど申しました東京都に出された命令書と同じような命令書が出されておる。それは二項に書いてある。一項は東京都に当るのです。二項は大阪その他に当る命令だと考えるわけですが、業務規程において、開設者許可または承認により仲買人場外買付禁止の除外例を認めているところにおいては、これは業務規程改正が行われるまでの経過処置として、仲買人輸入業務許可または承認する、こうなっておる。要するに自治体の首長、これは法人格である開設者ですが、開設者の自由な、どこからも侵されないこの認可権限に対して、中央の行政官庁が、お前はこうしろというような命令を出すのは、これはいかに十七条という法律がありましても、全く自治権を侵すものだと私は考える。これについて法制局はどういうふうにお考えであるか、お聞かせ願いたい。
  42. 西村健次郎

    西村政府委員 名古屋や京都につきましては、東京都の条例の三十六条に対応する三十七条とか三十八条で、ただし首長の許可を受けた場合にはこの限りでないということになっておるが、この許可を与えるべしという指令を農林大臣が出したということについてのお尋ねだと思いますが、もともとこの業務規程というものはやはり農林大臣の認可にかかわるものでありまして、それだからこそ十七条で、この業務規程それ自体の変更命令も出せることになっております。従いましてこの首長の許可ということも、要するにこれは農林大臣の監督下におけるもので、地方公共団体固有の、疑うべからざる権限というふうには私は考えておらないわけであります。あくまでもこの中央卸売市場に基く一つ業務規程でありまして、これにつきまして許可を与えるという場合には許可を与えるでしょう。もちろんこの通牒には業務規程改正されるまでの経過措置だということもはっきりうたってあります。この点は、東京都の条例改正命令に関連して、そういう御心配のような疑いはないと思います。
  43. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私はこの認可権限開設者にあると思うのです。開設者にあって、その条文運用するのは開設者ですから、このいい悪いは別として、業務規程変更を命ずるということは一応できると思うのです。ところが一応業務規程というものをはっきり書いて、そこに首長は左に掲ぐるもの以外でも許可することができるとある。その許可に対して、純然たる開設者の意思で動くべき問題について、これとこれとを許可してやってくれ、こういうことができるでしょうかね。私は非常に不思議に思うのです。
  44. 西村健次郎

    西村政府委員 その点も、私の申し上げ方が少し足りなかったかもしれませんが、その開設者許可をするという権限業務規程に基いておるわけであります。業務規定そのものは農林大臣の認可に基いておる。そういう意味で、私はその処置が具体的な場合にどうであったかという問題は、私は申し上げる筋合いではございませんけれども、今申しましたような変更命令というものに関する限りにおきましては、これが違法だというふうには私は断ぜられないと思っております。   〔委員長退席、小平(久)委員長代理着席〕
  45. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 議事進行について。これはきわめて重要な問題と思いますので、ただ安田経済局長を呼んで、ここで議論しただけではわかりませんから、やはり農林大臣命令でこれが発せられておるのでありますから、農林大臣の出席を求めます。
  46. 小平久雄

    ○小平(久)委員長代理 速記をとめて。   〔速記中止〕   〔小平(久)委員長代理退席、委員長着席〕   〔速記中止〕
  47. 神田博

    神田委員長 速記を始めてください。  バナナ等輸入問題に関する質疑は一応この程度にいたします。     —————————————
  48. 神田博

    神田委員長 次に離島振興法の一部を改正する法律案議題とし審査を進めるに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  49. 神田博

    神田委員長 御異議なしと認め質疑に入ります。質疑の通告がありますので順次これを許します。中崎敏君。
  50. 中崎敏

    ○中崎委員 離島振興法は、その法律目的にありますように、本土より隔絶せる特殊の事情にある離島が、その後進性を除去して近代的な状態において生活し得るような立場に引き上げるという考え方の上に立った法律であるのでありますが、その後の実情を見ますと、依然としてこれらの離島の人々というものは恵まれていないのであります。と一申しますのは政府一つの離島振興計画を立ててやってはおるものの、その予算なども至ってスズメの涙で話にならぬというふうな状態でありまするから、その計画そのものも必ずしも実情に即していないというような点もあるように見受けられるのであります。そこで今日までにこの離島振興の計画はどの程度まで進められておるかという点について一つ御説明を願いたいと思うのであります。
  51. 植田俊雄

    ○植田政府委員 維持の振興計画は、ただいままでに四十五島を指定いたしておりまして、内地の四十島につきましては、昭和二十八年度以降国費で二百四十三億、北海道の五島につきましては、国費で三十四億の事業を実施することに相なっておるわけでございます。指定も若干おくれておりました関係で、ただいままで予定通りの進捗をいたしておりませんが、現在までのところ、国費で二十八年度が九億、二十九年度が十二億、三十年度が十三億と、逐次増加の傾向に相なっております。これは内地分でございます。三十一年度といたしましては十五億程度の国費の支出ができるのではないかと考えておるわけでございます。特に三十一年度以降におきましては、離島分の事業費といたしまして、道路、港湾、漁港、電気導入、林道開拓、土地改良につきまして新しく事項を立てまして、その金額が内地で八億一千万円、北海道で一億一千万円に相なっております。こういうふうに事項を立てましたことによりまして、離島分の事業費が確保されることに相なるわけでございます。政府といたしましても今年度新しい制度を立てたわけでございますが、この事項を立てたということをよりどころにいたしまして、三十二年度以降におきましても、できるだけ予算の増額をはかって参りたいと考えておる次第でございます。
  52. 中崎敏

    ○中崎委員 離島の振興には、今お説の通りに、道路、港湾、電気、こうしたようなものがまず必要だと思うのでありますが、それについても、たとえば離島振興法がなくても、当然その道路でも港湾でもつけらるべきものがあるのでありますが、そういう数のものも今の予算の中に織り込まれておるのかどうか、この離島振興法がなくても、元来普通の、通り一ぺんにその港湾の費用も出されておるはずでありますが、離島振興法だというのでそういう類のものもこのワクの中にはめ込んで一緒にしてしまう、そうしてその際ほかに離島振興法のワクから持っていかれるということになるならば、結局においてはこれだけの——たとえば三十一年度に十五億円の予算があるといっても、十億なら十億、本来の一般のワクの中にはめ込まれということになれば、ただ五億しか出てこないという結果になるのだが、そこのところは一体どうなるのです。
  53. 植田俊雄

    ○植田政府委員 ただいまのところは予算の立て方から申しまして非常に微妙な点でございます。今回事項を立てましたのは、離島の予算を確保し、これをできるだけ増額するように持っていきたいという意味で立てたのでございまして、本年度内地分で申しますと八億一千万円の事項を立てたわけであります。これを同じ項目につきまして、三十年度どの程度の実績が各省から支出されたかと申しますと、六億九千万円でございまして、この事項を立てた項目においても増額になっておるわけでございます。ただし予算におきましては、これは各省の道路なら道路の予算に組み込まれておるわけでございますから、従いましてただいま中崎委員が仰せられましたように、各省の予算から支出になっておるわけでございます。ただそれではこういう事項を立てなくても、あるいはもう少し申しまして、離島振興法がなくてもそれだけの予算がつくはずであったかどうかということになりますと、これは簡単に割り切るわけには参らぬものかと存じますけれども、しかし離島の予算が二十八年度から逐次増大する傾向を見ますと、各省も離島振興には非常に協力的態度を示しておるのでありまして、各省の事業予算の中から離島に配付されるものが逐次増加されるという傾向を示しておるのじゃないか、こういう意味から申しまして、離島振興法の意義は相当高いと申せるのではないかと考えておる次第でございます。
  54. 中崎敏

    ○中崎委員 たとえば漁港の整備につきましても、離島の立場からいいますと、元来取り残されて立ちおくれておるのでありますから、一般の漁港の整備計画からいえば必ずしもその計画に入ってないものがある。これを、その整備計画の中になくても、ここだけは特に引き上げてここまで持ってきてやるのだという考え方でなければ、この法律趣旨というものは徹底しないと思う。そこでたとえば漁港の場合においても、離島の漁港を一つ取り上げて、離島の立場から振興すべきであるという結論が出ても、それが農林省へいった場合においては、御案内の通り一般の漁港整備計画というものが立てられており、その中へ入ってないからどうにもこれはできぬのだというような結果になって、結局離島振興法趣旨というものが達せられない。そういう意味において、離島振興については別のワクを設けて、漁港整備計画よりもほかのワク内において処理されなければその目的は達せられないと思うのでありますが、その点はどうでありましょう。
  55. 植田俊雄

    ○植田政府委員 ただいまお話しのようなこともあろうかと存じます。その点にかんがみまして政府は今回事項を立てたわけでございます。事項は予算法上の拘束はございませんけれども、大蔵省も、個所ごとの予算を積み上げたものでございますので、関係の各省といたしましてもこの金額を下回る予算を離島につけることはあるまい、むしろこれよりも実情によりましてはふやすことも考えられるわけでございます。なお個々の事業につきまして、本土と離島との関係は、経済効果という点から申しますれば離島の方が落ちる。従って各省の基準からいってとかく離島の方があと回しになる事例もときどきございまして、私ども非常に苦慮いたしておるのであります。そういう意味から申しまして、今回離島の事項を立てたということは、離島のワクを確保することになったわけでございますので、一つの進歩ではないかと考えておるわけでございます。  なお離島の予算を一括して企画庁なら企画庁に計上するが適当であるかどうかという問題につきましては、離島という一つ地域行政をやる立場と、港湾なら港湾、漁港なら漁港ということを縦に全国的視野でながめる役所との間の一つ権限上の大きな問題でございますので、この点は相当慎重に考慮しなければ決定できない問題かと考えておるわけでございます。
  56. 中崎敏

    ○中崎委員 この問題はきわめてむずかしい、困難ではあるけれども、当然はっきり割り切らねばならぬ問題だと思う。言いかえますと、離島振興法という特別の法律を作って、別の事情のもとにあるものを一つ救い上げていく事業をやろうというわけなのです。それがワク全体としては多少予算はあっても、実際仕事をやる場合においてはほかのワクに吸収されていって、一緒にごちゃごちゃにされてしまう。プールにされてしまうということであれば、たとえばそれ自身の十億なら十億全部ワクを別にすればそれでいけるものを、ほかのワクの中に持ち込まれて、三億、五億、二億、一億という程度になるようなおそれも多分にある。それではこの法律を作ってしかも予算をこうしてとっていくというような意味もないので、この点はどこまでも一応切り離して別ワクの予算をとる。これは港湾に限らないのだけれども、少くともこうした離島を振興するための予算は、全体としてやはり一切別ワクにして、そうして同じ農林省なら農林省、建設省なら建設省でいくにしても、それだけは切り離して一切の措置をする。これは大蔵省の方がなかなかうまくいかぬ点もあるように聞いておるのでありますが、十分に話し合いをして、そうしてその線に沿うて努力されることが必要だと思うのであります。それについての努力と今後の見通しと決意を一つ政務次官の方からお聞きしたいと思います。
  57. 齋藤憲三

    齋藤(憲)政府委員 私も経済企画庁に参りましてから日が浅いので十分御答弁ができるかどうかわかりませんが、離島振興法に基く離島振興対策が経済企画庁に所属いたしておるのでありますが、その実態を調べてみますと、ただいまお説のように、離島振興に関する予算は各省につけかえになって、実際の面といたしましては、経済企画庁は実施面にはタッチしないというのが建前になっております。常に論議されておりますることは、こういう状態で果して離島振興の徹底が期せられるかどうかということ、従いまして原則といたしまして離島振興の問題が経済企画庁に所掌事務としてあるのがいいか悪いかということ、もし離島振興を徹底的にやるというならば、今お説のように離島振興に関する予算を一括して経済企画庁に計上し、経済企画庁が離島の状態を徹底的に調査して適切な仕事をやる、こういう建前からの各省つけかえならば私は徹底するのではないか、さように考えておるのでございますが、今のところはまだ離島振興に関する徹底した施策の結論に向います途上でございまして、将来この点に関しましては十分調査をしてその徹底を期したい、かように考えているのでございます。
  58. 中崎敏

    ○中崎委員 ただいま政務次官からお話の問題でありますが、これは離島振興だけの問題ではなく、国土総合開発にしても、あるいは急傾斜地帯農業振興など、一連のこうしたような問題についても言えるんじゃないかと思うのでおります。いずれにしても、こうしたような、特に後進地域開発のために、さらにまた国土のような、国全体のレベルをずっと引を上げるためにできている特別立法に基く措置が、あっちこっち、ちょうどもちをちぎるようにばらばらに扱われておるというところに、非常な、ものの有効適切な処理というものができぬ点があるというように考えておるのでありまして、根本的に言えば、経済企画庁なら企画庁というものを、こうした面についてはやはり実施官庁とでもするというような考え方が望ましいのでありますが、これは国の機構全体の関係もありますので、今後の研究にまかすとしても、とりあえず、私が申しましたように、それぞれの今の各省に分けるにしても、ワクだけは設けてやるということが、これは可能なことだと思う。だから私はこの点について、これはできることであるし、根本的にそう国の機構を変えなければならぬという問題でなく、運用上の問題であって、これに関連する法規の改正だけでもできるのじゃないかと思うのでありますが、この点を一つ十分に検討願っておきたいと思うのでありまして、その決意といいますか、一応やってみるというふうにお考えになるかどうか、その考え方を聞いてみたいと思います。
  59. 齋藤憲三

    齋藤(憲)政府委員 ただいま御指摘の国土総合開発全般に関しましても、今御議論のような点が多々あるのであります。従いまして、経済企画庁といたしましては、この国土総合開発全般に関しましても、本年度は、年来の希望であります国土総合開発特別調整費というものを五億円、今予算要求をいたしておるのであります。もちろん、この五億円で国土総合開発全般に対する調整が可能であるかと言うと、これはまことに微々たるものでございますが、できる限りこの五億円をもちまして国土総合開発全般に対する調整をやっていきたいという考えがあるのであります。従いまして、政府としても、この五億円の本年度の予算が通過いたしまして、この調整費を国土総合開発目的に向って使い得るよう、効果が上りましたならば、来年度はさらにこの調整費の増額をはかって、国土総合開発に万全を期していきたい、そう考えておるのであります。従いまして、この離島振興に関しましても、でき得るならば、お説のように、離島振興に関する予算というものは、一括経済企画庁なら企画庁に計上いたしまして、経済企画庁の離島振興に関する計画に基いて各省につけかえてこれを行わしめる、そういうふうに努力していきたいと考えております。
  60. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 関連して。問題の中心は、今中崎委員からのお話で大体ポイントは得ていると思いますけれども、一つお伺いしておきたいのは、この目的を見ますと、大へんたくさん並べてあるわけです。国土総合開発の場合には、大体経済的な価値を中心として指定をして、そして最も経済的な効果を上げるための計画というところに焦点がしぼれると思います。ただし、この離島の場合は、取り残されておる、おくれておる島民の保護対策とか、ちょうど農民の保護対策みたいなものが加わるような意味での保護対策的な意味もあるのじゃなかろうか。特に後進性を除去する云々というふうに書いてありますから、従ってこれまで四十数島を指定して計画を進められておるようでありますが、大体国土総合開発と同じような意味で、経済開発、つまり経済効果の点を一番重要視して、そこに焦点をしぼって指定がされておるのか、あるいはおくれておる島民保護という点に焦点を合せて指定がされておるのか、大体どちらを重点に扱っておられますか。
  61. 植田俊雄

    ○植田政府委員 離島振興法には、ただいまお話になりました経済開発の面と島民保護の面と両方ございます。たとえば電気導入でございますと、本土からの送電線がございませんから、簡単な重油等を使いました発電でございますので、これはどうしても島民保護、社会福祉ということになろうかと存じます。漁港の整備あるいは港湾の整備、道路整備ということになりますと、島民保護の面もございますが、それよりもむしろ経済開発という点に置いているわけです。両方の目的を持っているものと心得ております。
  62. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 国土総合開発の場合、特定地域法律には書いてないけれども、たとえば水産と農林と電源、こういうような形で、大体重立った異種の産業三つくらいを組み合せてできるものというのが特別指定の基準になっておったと思います。この離島振興の指定をする場合の基準を一体どこに求めておられますか。
  63. 植田俊雄

    ○植田政府委員 どういう事業をするかという基準は離島振興法の四条に書いてございまして、多分お手元にあるかと存じますが、先ほど申しましたような予算の内容のことを実施いたしているわけでございます。指定の基準は離島の審議会で御決定になっているわけでございますが、外海に面する島であること、本土との交通が不安定であること、島民の生活が強く本土に依存していること、一町村以上の行政区画を有する島であること、こういうような条件がきまっておりまして、この条件に該当いたしておりますところを審議会で決定されまして、それに基いて内閣総理大臣が指定いたしているわけでございます。従いまして先ほど佐々木委員のお話になりましたような特定地域の場合の、この島嶼における開発目標が何と何であるかというような形のものはないわけでございます。その点が、特定地域のいわゆるその地域だけの開発目標を発電と土地改良と何々というふうにあげているのに比べますと、こちらは全面的でございます。
  64. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 そういうことでしょうけれども、これが大体四十五島くらい指定されておるわけであります。その場合に、先ほど言いましたように、経済開発を中心にした考え方と、これまでの災害であるとか、風水害だとか、そういうものから守るという意味で考える場合とは全然質が違う。どっちにしても、やかましいところからくらいな考えで話が進んでおるのか、何か総合開発のときみたいな尺度、基準をもって指定されておるのか、どちらでしょうか。
  65. 植田俊雄

    ○植田政府委員 佐々木委員のよく御承知の通り、特定の地域の場合の尺度というような厳密なものはございません。御承知の通り離島民の生活程度は非常に低いわけでございます。また本土との交通も悪いものでございますから、港湾の設備、それに接続します道路ということが第一番になろうかと存じます。また離島は耕地も非常に少うございますので、どうしても漁業に従事しなければならぬ。そのためには漁港が不足する、こういうようなことで、交通施設、それから生産方面に入りますと漁港ということが第一義的に取り上げられなければならぬ場合が多いようでございます。
  66. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 この問題はおそらくはっきりしないだろうと思います。しかし御承知のように、総合開発の場合においても、十九の特定地域を作ってみても、それでさえもあまり特定地域らしい仕事になっていない現状でございまして、そのうまくいかない原因の一番中心的な点は、先ほど齋藤政務次官と中崎委員との間に意見交換がされたようなところに一番重点があると思います。しかし離島振興の場合を見ますと、島の数にしても四十五、それから目的にいたしましても、経済開発をやるかと思えば、何か風水害対策みたいなものがあったり、貧困保護みたいなものがあったり、さっぱり基準がないようであります。しいて求めれば今言ったような中から、重要なところから並べるということになるだろうと思うのです。総合開発の場合でさえもほとんど重点的な仕事ができないのに、その上に目的もこれだけ広げ、指定の数もだんだん多くなる一方で、むしろだんだんと離島振興法意味を失なってきて、それがそのまま従来の建設行政なり農村行政なり厚生行政なりのもとのところに戻ってしまう危険を感ずるのでありますけれども、それにつきまして数が非常に多くなる傾向、重点的にうまくやりがたい事情等につきましてはどの程度にしぼられて今後の方針を立てていかれるのか、その辺御意見がありましたらお伺いしたいと思います。
  67. 植田俊雄

    ○植田政府委員 総合開発事業のむずかしさはただいま佐々木委員から御指摘されました通りでございまして、特定地域の計画においても同様のことが申せるのでございますが、離島振興にもお話のようなことがあろうかと存ずるわけでございます。一つの点は今後島がふえやしないかという問題でございますが、先ほど申しました基準から申しまして、現在四十五島を指定いたしております。この基準から漏れている島はおそらくないものと心得ておりますので、私どもとしましてはこの四十五島を対象にして考えて参りたいと思っておる次第でございます。  次にそれでは各省の事業との差があまりないんじゃないかということでございますが、先ほども申しましたように、とかく離島で実施いたします事業の経済性と本土で実施いたします事業の経済性とを比較します場合におきましては、離島の場合が劣るのが割合に多いのでございます。とかくまた本土の力と離島の方とどちらに事業を実施するかということの判断の問題になりましても、場合によっては離島の方が弱くて事業の実施がおくれがちでございます。この際におきまして、離島振興法がございまして、離島振興に対する認識も相当深まって参っておりますし、それから私ども企画庁といたしましても、予算は各省についておりますけれども、計画は十分承知いたしておりまして、時々各省の実施機関とも連絡いたしまして、離島に対する予算が増額されることを要望いたしておりますので、こういう二つの面から申しまして、離島振興法の意義は決して捨てたものではないと考えております。
  68. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 捨てたものではなくて、ゼロではないでしょうけれども、もう少し目的にうたわれておるような意味で、もっと効果があるように善処をお願いいたしたいと思います。特にこれはだんだんと重点的なほんとうの仕事ができるのじゃないと、ナンセンスですから、その辺の事情は企画庁としては十分知っておられると思うけれども、実施官庁の方がむずかしかったり地元の方がむずかしかったりしてできがたいのだろうと思いますが、しかしやるのならばやはり目的通りに重点的な方法がとられないとほとんど意味がなくなって、一連の同じようなこういう法律ばかり次々と作って効果がないようになりますから、十分気をつけられたいと思います。特に御承知のように国土総合開発法にしましても、この離島振興法にしましても、これは離島振興法でなくて離島振興手続法なんです。この計画樹立のための手続を定めただけであって、実際には離島を振興するために加わったものはほとんどないような格好であります。先ほど中崎委員と齋藤政務次官の意見交換がありましたように、これなら金目からいって大したことはないのだから、国土総合開発ができなければ、これだけでも実施官庁から取り上げて、サンプル的にやってみるぐらいなつもりでかかってもらわぬことにはどうしようもないと思います。善処をお願いいたしたいと思います。  それからちょっと簡単なことで、あるいは私不勉強で思い違いをしておるかもしれませんが、この中で聞いておきたいと思うのですけれども、離島振興の一つの対象に電気導入があったはずです。この電気導入は、今お話のように大体対象の事業が公共事業の場合には国費を中心にして地元の費用を加え、あるいはなるべくたくさん国庫負担にするから仕事はしやすい。しかし電気導入の場合は、御承知のように今電気会社の供給圏か法律によって確定しているわけであります。従いまして今これはどういう手続でやっておられるのか、おそらく何とか法というものがあって、電気事業との問に補助をやるとか何とかいう問題があるのではないかと思いますが、どうなっておりますか。
  69. 植田俊雄

    ○植田政府委員 農山漁村電気導入法に基いて補助が行なわれておるわけであります。内地の開拓村にもこの補助が参りますが、離島に参りますものは送電線によります場合におきましても、先ほど申しましたように、自家発電的な簡単な火力発電による場合と、それから元は火力発電でありましても、それを重力会社の手で経営しておる場合もございます。電力会社がどうしても採算が合わないというので、村営等でやっておる場合もございます。その点におきまして電力会社との間にこの補助金の問題は起っていないと存じます。その補助率につきましては三分の一でございます。あとは地元の町村負担であります。
  70. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 この農山漁村電気導入促進法というのは、今お話がありましたように、本土にも同じように施行されておる法律でしょう。
  71. 植田俊雄

    ○植田政府委員 本土におきましては開拓地だけでございます。これは農林省から補助が参っております。
  72. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 この法律の対象になっておるのと、あるいはそのほかにもう一つ融資対象になる農林省関係のものがあったでしょう。いずれにしましても私が気になるのは、この法律の対象になる電気導入も、それからおくれた農村の振興のために融資をする法律であったか、措置であったか知りませんが、そういうものがあったと思いますが、両方ひっくるめて現在のところ非常にやりにくくて、電力政策が二、三年前には、たとえば離島でも、農村でも、勝手に自家発、小さい発電所でもなるべく作れという方針だった。ところが最近においてはなるべく作るなという方針に変ってきた。ところが離島であるとか、山の奥の小さい村では二、三年ずれてそういう話が入ってくる。みな発電所を作ればよいというので、農業協同組合か何かで小さい五、六キロ程度のものを作りかける、そうすると今度は話が違ってきたそうだということで、非常に混乱しておる部面が多い。県自身でもその指導に困っておる問題が多いと思います。おそらくその問題は離島振興の四十五島の中の一つ一つということでなくて、一般の問題だと思いますが、この離島振興法の対象になって指定されておるものについても特別にそれより違った方法はないわけでありますから、同じ問題が出ておるのだろうと思います。従ってこの問題につきましてはやはりおくれたところをなるべくおくれを取り戻すということには、光を与えることが一番最初だと思いますから、もう少しこれにつきましては農林省及び通産省と関連さして、実情を調べて推進されることが必要であろうかと思います。あまり時間もなさそうでありますし、大して本質的に問題のある法律でもなく、関連の質問をしただけでありますから、これで質問をやめておきたいと思いますが、先ほどお話がありましたように、これは繰り返しておかしいようですが、総合開発のうまくいっていない例は、昨年私この委員会においても具体的に指摘して、そして総合開発計画は樹立されておるけれども、その中に建設省がやる部分、農林省がやる部分、それから電源開発会社がやる部分やいろいろあって、そのタイミングが全然違って非常に不経済な格好になっておる。同じことが、離島振興の対象になる島におきましても私はあるだろうと思う。特にこれは島が多いから、なおさらたくさんあるだろうと思います。従いまして、先ほどお話のように、少し強引ではあるけれども、この予算を直接に計画官庁で取り上げるくらいの意気込みを見せて、計画の立案と実施が一本になれるような形で推進をされるように希望をいたしまして質問を終りたいと思います。
  73. 中崎敏

    ○中崎委員 時間の関係でしぼって質問したいと思います。今佐々木君からお話がありましたように、電気の問題は、ことに離島の場合には非常に立ちおくれておりまして、いまだランプなどでやっておるような地区も相当あるようにうかがわれるのでありますが、そこだけ取り残されておることは事実であります。そこで政府の方でも離島振興について、電気の供給には相当身を入れておられると思うのでありますが、ことに電力会社が採算の合う場合はやるのだが、採算が合わぬ場合には電力会社でやらないで、現に町村営のものもある。これは概して今言ったように、やっても割が悪い、電力会社がかまってくれないから、しびれを切らしてやむを得ずやるというような結果のものが多いと思うのであります。これは通産省との関係があると思いますが、そういう場合においても、まず政府の方で一応離島振興の線に沿って計画した地区については、電力会社が責任を持ってその計画に従って開発する義務をつけさせる、言いかえれば、電力の供給というものは独占的なものであるから自分で勝手にやって、国家にあまり協力しないという考え方でなしに、金額は大したことがないのだから、その一端として電力会社が責任を持って、この計画の線に沿うてやるというような方向に、一つ今後改めていくという考え方ができるのかどうか、聞きたいと思います。
  74. 植田俊雄

    ○植田政府委員 離島につきましては、電力会社が経営してやってくれたところもございます。しかし多くの場合離島で火力発電所を設けまして——おそらくこれは水力に期待できるところはございませんから、どうしても火力になりますが、火力で経営しますと、大体においてなかなかそろばんの合わない場合も多い。そこで電力会社としては自分で経営するのをいやがって、かまってくれないから、町村でやらざるを得ない場合が多いだろうと思いますが、電力会社に対する指導は通産省の関係でございますので、どの程度まで電力会社が協力してくれるかにつきましては、一つ通産省とも話し合いまして、御趣旨のことができるだけ実現するように努力して参りたいと存じます。
  75. 中崎敏

    ○中崎委員 現にそうした貧弱町村においてこの電気の補助率が三分の一程度ということでありますが、これはあまりに低いのではないか。言いかえますと、電力会社さえやらないようなものをその町や村で責任を持ってやるのであるから、これは全額負担とまでは言わないにしても、少くとも五割ないし六割くらい出すのが当然だと思うのでありますが、この補助率の引上げ等について今後格段の考慮を払われるかどうか、一つ伺いたい。
  76. 齋藤憲三

    齋藤(憲)政府委員 御説の通り離島の一人当りの年間所得は大体その県の三分の一の所得になっておる、まことに低いのであります。それでございますから、割の合わない電気自分でもってやるということには非常に困難を感じておると考えるのであります。政府といたしましても、十分離島における電気事情を調査いたしまして、今後御期待に沿うように努力いたしたいと存じます。
  77. 中崎敏

    ○中崎委員 終りました。
  78. 神田博

    神田委員長 本案について他に御質疑はありませんか。——質疑がないようでありますから、これにて本案についての質疑を終局することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  79. 神田博

    神田委員長 御異議なしと認めます。よって本案についての質疑は終局いたしました。  本案については、討論の通告がありませんので、これを省略し、直ちに採決に入るに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  80. 神田博

    神田委員長 御異議なしと認めます。  それでは離島振興法の一部を改正する法律案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔総員起立〕
  81. 神田博

    神田委員長 起立総員。よって本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。本案についての委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  82. 神田博

    神田委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決定いたしました。  暫時休憩いたします。    午後一時六分休憩      ————◇—————    午後三時五十五分開議
  83. 神田博

    神田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  工業用水法案議題とし審査を進めます。質疑に入る前に、この際徳永企業局長より本案について補足説明をいたしたい旨の申し出があります。これを許します。徳永政府委員
  84. 徳永久次

    ○徳永政府委員 この工業用水法案に関しましては、実はこの提案理由の際にもあら筋を申し上げてあるのであります。通産省といたしまして、従来企業の合理化等にいろいろな努力をいたしておったのでありますが、日本の鉱工業の発展が戦前及び戦後を通じまして、既成の工業地帯、たとえば京浜にしても、あるいは阪神にしても、あるいは北九州、名古屋地区とか、そういう地帯を考えてみますと、工場があまりに伸び過ぎまして、その土地の持っておりましたその以前の立地条件というものがある意味の限界にきたような現象を呈しておったのであります。むしろ限界を越してマイナスが出つつあるという段階になって、水に関係ある点で申し上げますれば、工業のためにくみ上げます水のために地盤沈下を起しているという現象も起っているわけでございます。尼崎につきましては、先般のジェーン台風のときには暴風の被害が、地盤が下っておりましたために、より大きな潮水をかぶせているという現象を起したのでございます。そればかりではなしに、地盤の沈下のことからきまして、機械設備そのものががたがたになるというような現象で、事業者側としましては、据え付けをいたしました設備にまた上台を築き上げたりというようなよけいな苦労をしなければならぬという現象を呈しておったわけであります。一口に抽象的に申し上げますと、工業生産の外部条件というものが日本ではある程度おろそかにされておりましたために、企業が一生懸命にいろいろ内部的に経営だとか生産技術とか設備の近代化というような努力をしただけでは不十分で、外部条件の制約のために日本の産業の国際的な競争力というものが弱くなっているということが言える段階に来たのじゃないだろうかと考えるわけであります。従いましてこういう方面に日本は現在努力いたしているわけでありますが、将来も工業、貿易立国という線で日本の産業を伸ばしていきますためには、政府としてしますことは企業の外部条件をいいものを作り上げまして、日本の工業者の国際的な競争力をいい条件のもとに貫いてやるということであり、それから内部的な条件はむしろ業者が自分でやることでありますが、それをしやすいように政府はいろいろな形で援助してやるというようなことで進みますけれども、外部条件になりますと、業者が自分でできることではございませんので、直接政府がしなければならぬ、あるいは政府の直接責任に属する範囲事項であるというように考えてよろしいのじゃなかろうかと思うわけでございます。そういう日本の企業の国際的な競争力の外部条件を整えるその一環としての工業用水政策ということで通産省は取り上げたわけであります。このためには予算折衝の際から委員の皆様に非常な応援もいただきましてある程度ことしから実を結ぶことに相なったのでございますが、ことしは第一年度でございましたので、それほど思うにまかしたところまで実は予算が十分ついたというわけではございません。しかし事務的に考えてみましても、初年度としましては私どもは新しい仕事に取りかかるというようなことでございますので、いろいろふなれな点もあり、勉強しなければならぬ点もありますので、ことしがその第一着手ということでこの程度の予算でもそれを十分効果があるように使いたい、引き続き翌年以降におきまして、ことしから発足します工業用水対策を充実して参りたいと考えておるわけでございます。  ことに工業用水の問題につきましては、日本の工業の構造といいますか、戦前のいわゆる軽工業から、だんだん日本の産業も高度化いたしまして、非常に水を使う産業が発達してきたのであります。製鉄業とか、繊維につきましても、化繊、パルプというようなものは、非常にたくさんの水の要る産業でございまして、いわゆる重化学工業が日本の産業の大きな部分を占めるようになりまして、この必要性が特に増してきたということも言えるかと思うわけであります。戦前のいわゆる綿紡績等の工業中心の時代でございますれば、工業用水の問題はそれほど深刻じゃなかったのです。ただ染色面等におきまして水が相当要るという段階であったのでありますが、産業構造の複雑化、高度化に伴いまして、水の重要性が非常に増してきたということもあるわけでございます。そんなことから戦前は、工業用水を何とかしなければ産業が発達しないのだという点は、ある程度見忘れられておったということも言えるかと思うわけでございます。  それからいま一つ水の問題を考えました際の考え方でございますが、水が工業のために大事であるとしまして、ただ物理的に水を供給するだけでは目的を達しないのじゃなかろうかということを考えたのでございます。と申しますと、今まで日本の工業者が水を工業用水に利用いたします際に、地下水を取りましたり、あるいは海水を利用いたしましたり、地表水を利用いたしましたりしておるわけでありますが、それが割合に安い値段で供給されておるわけであります。これを限界にきて足りなくなったからといって工業用水道を作ったとしましても、それが非常に高い値段でありますれば、現実には経済的には利用価値がないという現象が起るわけであります。利用価値のない、経済的には高過ぎるものを業者に無理やり使わすということになりますれば、これまた同じく日本の産業に国際的に見て割高なものを使わすことになりますので、その点も解決しなければならぬ、そういう問題を含んだ仕事だと思うわけでございます。  そういう今申し上げましたような事情から、予算で考えましたことは、水の足りなくなった地域は地下水を過度にくみ上げ過ぎておりまして、その結果といたしまして地盤沈下等の現象を起しております。そういうところに新しい工業用水道をしく、それに政府が財政的な援助をしてでき上った工業用水道によります水の供給は、今まで事業者が利用しておった水よりもそれほど高くない、そう大差のない値段で供給できるということが政策の中心眼目になるのではないかと考えておるわけであります。それが予算上現われました工業用水道の設置助成という制度であります。これは、実はいろいろな計算をいたしてみたわけでありますが、財政の方からは四分の一国庫補助をいたしまして、それから別に約三分の一につきまして、地元の公共団体が金を出し、それも資金運用部で六分五厘ぐらいの長期の低利の金を供給してもらう。それからいま一つ、約三分の一ぐらいを地元の利益を受けます工業者が、公共団体の水道工事のために募集いたします債券を引き受けるという形にしまして、地方財政が今は赤字で困っておりまして、債券もなかなか出せないわけでありますが、それをスムーズに出せるようにしよう、そういうことを考えておりまして、それらでかれこれ計算いたしてみますと、三円五十銭あるいは四円近くぐらいなところ、新しい工業用水道による工業用水の料金はトン当り大体その程度の値段で済むというような計算ができるわけであります。従来事業者は工業用水を地下水でやっておりますと、その値段が場所によって違いますけれども、おおむね二、三円ということでございまして、先ほど申しました三円五十銭から四円五十銭ぐらいの間という、それくらいの見当にございますから、地下水よりは少し高いのでございますけれども、これは事業者として工業的に経済的に利用し得る範囲ではなかろうかと考えたわけであります。普通の上水道になりますと、大体単価というものは十円ぐらいということのようでございますが、十円ともなりますと、産業によりまして、水を使う量の非常に少い産業でございますと、がまんをして使うということがございますが、生産の単位当り水の使用量が多い産業でございますれば、十円という高い水では、その地域には産業は成り立たないというのが通例でございます。そのために場所によりまして、その種の産業の発展が制約されておるという所も現実にあるわけでありますし、やむを得ず使っておるとしますれば、それだけ国際的に見まして、日本の工業の競争条件が非常に不利である、ちょうどいわば電力料金が国際的に見て高過ぎたら日本の産業が不利であるのと同じようなものであると考えるわけであります。今申しましたようなことで、実は工業用水道の設置を助成することになりました。ところでこの予算が本年度は、全体の補助金が一億八千万円でございまして、スタートといたしましてどの辺から着手するかということが問題になるわけでありますが、工業用水の不足に悩み、またその弊害の出ておる場所から優先すべきであろうというつもりで、三十一年度といたしましては、私は尼崎市と川崎と四日市、この三カ地点というものが助成の対象地域と考えておるわけであります。ほかに実は地盤沈下を起しておる場所としましては大阪市の西の方もございまするし、あるいは川崎と隣合せの横浜もあるわけであります。この辺は予算の関係上少し不十分でございまして、次年度回しということに考えておるわけでございます。そこでこういう場所にはともかく工業用水道ができることになりましたので、井戸にあります水のくみ上げというものをある程度調節いたしましても、事業者は困らないと申しますか、かわりの水が得られるということになりますれば、そのくみ上げを抑制するようなことにいたしますれば地盤沈下がとまりまするし、地盤沈下がとまりますれば、それによりまして先ほど申し上げました工場の土台がゆるんで据え付けた機械ががたがたになるというような現象も解決できるわけでございます。そういうことが実行できるような法律いうのが、この工業用水法案の骨子でございます。従いましてこの中身は非常に簡単でございまして、中身の骨子といたしましてはある地域を指定をいたしまして——その地域を指定しますのは地盤沈下の起っておる場所、それから工業的に大事な場所、それからかわりの工業用水道がすでにあるか、近くできるときまっておるような場所を選びまして、そういう場所でも既成の井戸は既得権として一応尊重いたします。新規に井戸を掘る際には許可を受けて掘るということにいたしております。それからその新規にいたします際にも使用料の少い人を抑えるということでは産業人に不当な迷惑をかけますし、実益に乏しいということになりまするので、既成の対象にいたしますものも個人の井戸を掘ったり、普通の飲料用のために井戸を掘っておるものは問題にいたしておりません。それから工業用のものにつきましても、インチの大きさ二インチ以下のものは自由といたしております。二インチ以下と申しますと一日のくみ上げ量九百トンに達しないものということにいたしておりまして、いわゆる大部分の中小企業者の掘りまする井戸というものは適用外になるということになっておるわけであります。またそういうことにいたしましたのは、実際的に地盤沈下に害を与えておりますものは、二インチをこえまする大きな井戸を掘って、大量に水をくみ上げておるものということでございまするので、それで目的にも沿うのではないかというように考えたわけでございます。それから既成の井戸というものは、一応従来の既得権を尊重しておるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、かわりの工業用水道ができまして、水が供給できるようになりましたならば、既成の井戸につきましても、これは法律の第十四条でございますが、使用量を減らしなさいという勧告ができるということにいたしております。その場合には、具体的にそれぞれの方法を示してというか、あなたのところは、こういう用途のものは工業用水道に切りかえていいではありませんかとか、あるいは使いました水の再利用といいますか、そういうことにつきましての技術的な手段、方法を示しまして、こうやればこうできるはずですよという形で指示ができるという規定を置いたわけであります。この規定を置いておりますが、規定を発動しなくてもおのずからこれらの三地点におきましては、産業界の協力を得られるものと私ども期待をいたしておるわけでございます。法の構成といたしまして、既得権につきましても、かわりができたから調整しますよというのは、法の構成上望ましいと考えて、そういう建前をとったわけでございます。実態的な骨子はきわめて単純な法案でございますが、これの実行に関連しましてあとは審議会の規定を置くとか、関係者との連絡をすることの規定を置くとか、あるいは調査のために立ち入りの規定を置くとかというようなことで、条文としては二十数二カ条ということになったわけでございます。  法を作りました趣旨なり内容というものは、おおむね以上の通りでございます。
  85. 神田博

    神田委員長 これより質疑に入ります。質疑の通告がありますので、これを許します。小平久雄君。
  86. 小平久雄

    ○小平(久)委員 数年来問題になっておったこの工業用水の法案が上程されたことは非常にけっこうなことであります。そこでただいま詳しく御説明を聞きましたことに関連して一、二伺っておきたいと思いますが、この提案の理由書にも書いてあります通り、工業用水を豊富低廉に確保ができるよう施策をする、ここが一番のねらいのようでありますが、その点については先ほど、現在は大体トン当り二円か三円についておるとか、あるいは今後三円五十銭ないし四円五十銭ぐらいになるだろうとかいう説明がありましたが、この法案目的は特に水源を確保して、結局は重化学工業等における対外競争力を強化する、こういう関係のようでありますので、外国にも同じような立法があるかどうか、あるいはまた外国における工業用水というものはトン当りどのくらいでできておるのか、そういうことについて調査がありましたら一つお知らせを願いたい。
  87. 徳永久次

    ○徳永政府委員 工業用水の問題は、諸外国でもだんだんと日本と同じように利用のある限界がきておるようでありまして、問題の重要性が強調されつつあるという状況のようであります。しかしながら工業用水道につきましての、いわば政府としましての助成の措置というものの詳細というものは実はわかってないのでありますが、アメリカの場合につきましての例で申し上げますれば、これは連邦の施策というより州の施策ということになっておるようでありまして、その間まちまちな事態になっておるようであります。そして州の施策といたしました際に、日本でいいますれば府県がやるということになるのでございましょうが、日本と同じように非常に大がかりな工事もやっておる。そしてそれを供給する料金としては非常に安い値段で提供しておるというケースもあります。それからある州におきましては——これは私どもも将来もっと研究しなければならないのでありますが、いわゆる下水の再利用、下水を浄化しましてさらにそれを工業用水に使うというような措置をやっておる州もあるということでございますが、それもやはり水が豊富なようで十分でないからということであろうと思います。  それからイギリスにおきましては、御承知のように日本と若干似ておるといいますか、工場がある個所に密集し過ぎておりまして、工場の地方分散的なことを法律でやっておりまして、そのためにはある工業地帯に政府が相当の金をかけまして、立地条件を整備した場所を、新しい工業地帯の開発といったらいいのでしょうか、そういう場所を作りまして、工場が来やすいような条件にし、そのかわりに来るものをまた適正配置のような意味制限するというようなことをやっておるようであります。日本と同じような、この法律に出ておりますような、地下水をくみ上げ過ぎて地盤沈下を起す、そのための対策を規定をしておるという例は実は具体的には見当らないのであります。これは地盤の関係、日本の地質構造の違いからでもあろうかと思いますが、むしろ外国の場合は新しい工業用水の供給、確保のために何百マイルという水道を作って、しかも安い値段で供給してやったり、それから下水からの再生利用といったようなことをしてやったり、工業用水の確保のためにはいろいろなことをしておることはあるのでございますが、この法律とぴたっとしたようなケースは外国にはないのであります。
  88. 小平久雄

    ○小平(久)委員 大体外国の例はわかりましたが、外国では一体工業用水がどのくらいについておるのか。特に豊富低廉ということを本法もねらっておる。また対外的な競争力を養おうというのが根底の考え方のようですから、水を多く使う重立った産業別にでももしわかっていればこの際お聞きしておきたいと思います。
  89. 徳永久次

    ○徳永政府委員 各国別の用水コストがどの程度かということは、今資料はございませんが、調べる手がかりもありますので、調べまして、資料として御報告申し上げます。
  90. 小平久雄

    ○小平(久)委員 それからこの法案と直接の関係は、あるといえばある、ないといえばないかもしれませんが、地下水の使用を規制しよう、こういうことですが、これは所有権との関係はどういうことなのですか。私は法律の専門家でないからわからぬが、大体所有権というものは地下に及ぶというふうにわれわれは承知しておるのだが、ある工場が敷地を持っていて、そこから地下水をとるということは、その敷地の所有権の当然の権利じゃないかというふうにも考えるのだが、それを規制するということはどういう関係になるか、その点お聞きしておきたいと思います。
  91. 徳永久次

    ○徳永政府委員 今お尋ねの点は、私も法律を作ります際にいろいろと同じような疑問を持って、検討いたしたのでありますが、結局結論的に申し上げますと、法律解釈上の問題といたしましては、公益上の必要からある程度押えてよろしいし、押えるという建前になったわけであります。そう申しますると、地下水がその人の土地の所有権の中身、利用権の中身をなしておるごとく見えますわけでございますけれども、それをくみ上げますことによりまして地盤沈下というような現象を起す、人がぜいぜい迷惑するという現象を起すわけであります。地盤沈下といいますと、いかにも一般の人はかまわないように見えるのでございますが、それが工場地帯の場合でありましたら、先ほど私が申し上げました工場の機械ががたがたになるというだけでございませんで、水そのものが、井戸が今ありますところに近いところにまた井戸を掘られますと、隣の井戸の水も減るというような現象を起すわけであります。地盤の構造は一様ではございませんが、地下水はおおむねつながっておるのでありますから、当然そういう現象になるのだと思うのでありますが、結局そういう意味から、地元としまして産業家はほどほどに調節することを考えてもらいたいという要望も実はあるわけであります。そういう実態はありますが、法律解釈の問題といたしましては、結局所有権というものも百パーセント公益にさわらない範囲という制約で考えて、今申しましたようないろいろな弊害が出る、それを調節する。ある意味におきましては所有権の制限になるわけでございますが、これは憲法上も法律上も許されるものということになっております。ただ実態上は、それによりまして、水の場合は、工業者同士相互に裨益する面もあるということであります。  それからこの法律は、先ほど御説明申し上げましたように、既得権につきましては権力的に抑えるという仕組みをとっておりません既得権で掘っておりますものは、無制限にくみ上げてきているわけです。それが地下水のある一定量以上のものをくみ上げているからこそ、地盤沈下が起っているわけでありますが、それを権力的に抑えるということにつきましては、公益上の立場からそこまで押えていいんじゃないかということも法律上は言えます。私どもはそれによって産業が成り立っているという限りにおきましては、公益上のためとはいえ、水の使用量を変えてしまうようになれば、工場は命の根をとめられるということになりますので、かわりの水をやってからしかとめないという形に、公益上の必要からでございますが、非常におだやかな建前規制をして、既得権を尊重し、新規のものだけは許可を要する。だから既設のものは権力的には抑えない、かわりの水で調節してもらう、そういう程度に考えております。
  92. 小平久雄

    ○小平(久)委員 既設のものはやんわり、こういうことですが、新規のものは、ある程度以上のものは許可が要るわけですね。公共のためといえばそれまででしょうが、ただ今お話の中で、他に被害を及ぼすという場合があります。たとえば鉱害などの場合ももちろんそういうことが起っているのですが、そういう場合には賠償の問題が起るわけです。地下水を利用したために地盤沈下が起ったという場合には、考えようによると、一面に賠償の問題が起きるということであって、水そのものを使うことを頭から制限するというのはどうかというふうにも解されるのですが、そん辺どんな風に御解釈になりますか。
  93. 徳永久次

    ○徳永政府委員 新設のものにつきまして押えます場合に、この法律では、かわりの水がある場所というか、工業用水のある場所ということを要件にいたしております。従いまして、押えることは抑えるけれども、利用する水がなくて工場が成り立たないということにはならないという法律上の建前にいたしているわけであります。方針のみならず、指定の要件として、工業用水のあるところということにいたしております。今その点は法律的に非常に楽な建前になっているわけです。法律論としてお話の点を突き詰めてみますと、地下の現象でありますだけに、そこの水を掘った場合の相当因果関係といいますか、その関係というものは、なかなか水は百パーセントは証明しにくいというむずかしい問題があるわけであります。大数観察的には間違いない。地下水の過度くみ上げからこういうふうになったということは言えますけれども、それを具体的に言えば、新しく掘りました井戸から起った被害はどれとどれであるというような関係は、なかなか捕捉しがたいむずかしい問題も伴いますので、その辺を常識的に解決するというために、またその地域全体の工業の全般の振興という観点のもとに、そういうむずかしい論争に巻き込まれないような法律構成にいたしたのであります。
  94. 小平久雄

    ○小平(久)委員 その点はそのくらいにして、水利権という観点からすると、河川だけきめておいて、水利権というものは河川の水の権利だろうと思うのですが、しかもあれはいろいろ議論はあるようですが、都道府県知事が多分水利権の許可権を持っている。この場合、通産大臣が直接水の利用について権利を持つ立場にはなっているようですが、なぜ地方長官にまかせるような措置に出なかったのか。一般の水利権については直接は都道府県知事、その監督権といいますか、それは建設大臣が持っている。そういう点からして、建設大臣の権限、それらについてどのような話し合いになっているか、その辺を一つ御説明願いたい。
  95. 徳永久次

    ○徳永政府委員 水利権の及びます範囲といたしましては、従来いわれておりますのは、河川の水の利用、これは明治以来からそうなっているわけです。地下水につきましては、いわゆる水利権という観念は全然ございません。先ほどお尋ねのありましたような、一所有権の内容というごとき扱いに従来されておりました。さような関係から、むしろ水利権と同じものという扱いをされなかった。そこで結局これをどう考えたらいいかという点になるわけでありますが、この工業用水というものは、ある意味では土地に付着したもので、そこで利用できるものは、すぐ隣では若干利用できるかもしれませんが、その地下にある水は遠くから利用し得るわけでなく、やはりその土地か、あるいはすぐ近くでしかその水は利用できないという性質を持っておって、ある意味において代替性のないものであると言えると思います。代替性のない水であって、工業には絶対不可欠なものということになる。そういたしますと、ほかの工業原料なんかよりは、もっと工業生産にとっては致命的なものであるということが言える。その工業生産に不可欠な前提条件になるものということになりますので、これのどこのものを認め、どこのはある程度規制するというようなことにつきましては、やはり産業官庁がこれを処理するということが最も適当じゃないかということを考えているのであります。ことに地質調査所というものを通産省が持っておりまして、地下の状況は、百パーセント地上にあるごとく、たなごころをさすごとくには見わけできないにいたしましても、ある程度は状況を把握いたしております。その意味で通産省がこの処理をすることが適当でないかと考えております。ただ、この法律は通産大臣と書いてありますが、運用の問題につきましては地方の通産局に大部分のものをまかすつもりでおります。それぞれ地域的な問題でございますし、本省といたしましては一般訓令は出しますけれども、すべて運用は通産局にまかすというつもりでおります。建設省との関係につきましては、実は最初申し上げました地盤沈下等の防止対策と関連を持っておりますので、その点につきまして、場所をどうするか、あるいは地域の指定をどうするか、あるいは過度くみ上げにならないような一般的基準はどうなっておるかということは相談してやろうというような建前になっております。
  96. 小平久雄

    ○小平(久)委員 質問がちょっともとへ戻るかと思いますが、先ほど来地盤沈下等の事態が発生しておるというような話がありましたが、実例としてそのために非常に紛争が起ったとか、あるいはその土地の産業に著しい影響を与えたとか、あるいは一般民衆から非常に苦情が出て賠償の問題が起きたとか、そういう実例がもしありましたらこの際御説明を願いたいと思います。
  97. 徳永久次

    ○徳永政府委員 この地下水の過度くみ上げによります弊害というものは、実はあちこちに出ておるわけでございますが、それはただいわゆる個人同士の賠償というようなそういう紛争というものはいわゆる私法上の権利の争いという形ではあまり出ておりません。ただ地盤が沈下して、雨が降った場合に水たまりが多くなるとか、満潮時の場合に海水が流れ込んでくるとか、井戸水が塩辛くなったとか、いろいろなことがありますので、いわゆる一般的な公共事業対策をやれという要請というものは盛んに出ております。そのために非常に顕著な例でございますが、大阪府の例を実は調べてみました。大阪府では地盤沈下防止のための措置といたしまして防潮堤を作り、あるいは橋が傾いた、その橋のかさ上げをやるとか、地盛りをやるとか、それらの対策のために百六十億くらいの金を使っております。それだけの大へんな国費をむだ使いしておるということは、ある意味では言えるかと思います。幸いにいたしまして先ほどのように水の因果関係というものは非常にはっきりしないものですから、個人間の争いという形ではまだ現われていないのであります。
  98. 神田博

    神田委員長 本日はこの程度にとどめます。次会は来たる二十七日午前十時五十分より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十四分散会      ————◇—————