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齋藤(憲)
政府委員 長谷川委員の御
指摘の点につきましては、私よりは
長谷川委員の方がよほど勉強せられておりますので、私から御
答弁を申し上げることはいかがかと存じますが、この
石油化学と石炭
化学は世界的に見て両立するか、あるいは石炭
化学の方が
石油化学に圧倒されて、石炭
化学というものはとうてい成り立たないのではないかというような、いろいろな議論があるのであります。しかし
わが国といたしましては、また
ペトロール・
ケミカルというものの実体を実際の工業としてやっておるとは言えないのであります。同時に石炭
化学の面におきましても、単に
タール工業が主たる
現状でございまして、まだ石炭
化学の実体も把握しておらないのではないかと
考えられるのであります。
御
承知の
通り、アメリカにおきましては、一九二五年には
化学原料として
石油化学というものはわずか〇・一%であったと記憶しておるのであります。それが一九四五年には
化学原料の五〇%を
石油化学が占めて、全有機合成
化学製品の七三%の率を今日では占めておると言われておるくらいに発達いたしておるのであります。この
日本の有機合成
化学製品とアメリカの有機合成
化学製品の比較をいたしますと、大体
価格において二対一といわれておるのであります。そうでありますから、そういう有機合成
化学製品をもって世界
市場で輸贏を争うということになりますと、
日本の商品は二倍の
価格を持っておるということでございますから、これはとうてい角逐ができない。従って
日本におきましても、ただいま御
指摘になっておられますように、
石油の
廃ガスを利用するか、この
廃ガスの総合的な
ペトロール・
ケミカルをやるか、または
部門的な
ペトロール・
ケミカルをやるか、こういうことはまだ
日本全体としては
決定しておらないのではないか。今御
指摘のイソプロだけがまず
対象となって、ようやく
石油化学の初段階に足を踏みかけるか踏みかけないかというような段階に今あるのではないか。私はそう
考えるのであります。
これと対応いたしまして、しからばどういうふうな方向に
石油化学と石炭
化学とが並立して今後発展すべきものであるかということに対しましても、これはいろいろな学者の説によりますと、
石油化学と石炭
化学はその持つべき
分野に十分区別がある。すなわち
タール工業を主としていく分には、この石炭
化学も成り立つのではないかというふうに
考えられているものがあるのでございますが、これもまた
政府が
一つのテスト・
プランを立ててやってみないことにはわからないのではないかと私は思うのであります。同時に
カーバイド工業でございますが、今日いろいろ論議されておりまする
カーバイド工業におきましても、従来の
カーバイド工業では
廃ガスの利用ができない、密閉炉をもっていたしますると、一トンから三百立米の
廃ガスが出るから、この
廃ガスの利用ということも
考えていくと、そこには石炭を主材とした
化学工業が成り立つのじゃないかというふうにも言われておるのであります。しかし何にいたしましても、今日までの
日本の
石油化学工業及び石炭
化学工業というものは、ほとんどとるに足らざる段階であって、今後この点に対して十分な
化学技術的な検討を加えまして、果して
石油化学工業というものはどういう採算率になるのか。たとえて申しますれば、原油の精製が三百万バーレル以上の製油
工場であれば、どれだけのコストになるか。それ以下では世界的に成り立たないのか、また低品位炭のガス化をやった場合にはそれによってどういうふうな石炭
化学工業が生まれてくるかというようなことは、ほとんど未解決の問題ではないかと
考えておるのであります。しかし世界的に
考えてみますと、どうしてもこのペトロ・
ケミカルというものをやらなければならぬし、また
日本の実情から申しますと、低品位炭の活用ということもやらなければならぬ。低品位炭の活用をやるにはどうしても、低品位炭を
原料としたところの石炭
化学工業をやらなければならない、こういうような状態に立ち至っておりますので、その問題に対しましては、将来急速に解決していくべき大きな
日本の生産体制の
一つであると
考えておるのであります。またこれと相対比いたしまして、醗酵工業はどういう
分野に食い入っていくのかというようなことも非常に大きな問題だと
考えておりますので、せっかくこれから
一つ勉強いたしまして、何らかの結論を生み出したい、さように
考えておる次第であります。