○帆足
委員 モスクワでヴァルガ教授に会いましたときにいろいろ話が出まして、自分は友だちとして言うけれ
ども、経済学というものはやはり公式から出発すべきでなくて、具体的な資料、現実の動きの中から今後の見通しを立てねばならぬと思う。それについて
日本経済の一番の重点はどこにあるかというと、やはり貿易だと思う。
日本質易の重点はどこにあるかというと、結局アメリカの景気変動に非常に大きな影響を受けるということを言っておりました。私は他山の石として、やはりいいところをついておると思って帰って参りました。ちょうど戦争後今日十一年目でありますし、確かに世界は大きな曲り角に来ておりますので、私は今後とも両大臣の事務当局から資料を十分いただきまして、十分に検討し、整理整頓いたしまして、気がつきましたことがありますれば、大臣にも御参考に申し上げたいと思います。
貿易が非常に重要であるので、当然北アジアの貿易に私などは重点を置いておるのですが、中国との貿易だけが非常に重要であるということではございません。しかし先ほど申し上げましたように、戦争が大体避け得るようになりつつあるとすれば、いかなるすき間をも
利用して貿易を拡大せねばならぬ、それが
日本国民のために絶対にいいことであると私は信じて、中国貿易という、多少世論からときどき非難される方面の仕事に重点を注いで参ったのですが、昨年は
輸出入合計一億ドルに達しまして、
輸入が七千万ドル、
輸出が三千万ドル、差額がいわゆる逆トーマス残などといって、為替当局に御迷惑をかけておるわけですが、これはココムの緩和がされましたならば解決つく問題です。そうなりますと、最小
限度自然発生的に、自然の運行にまかせましても、去年七十万ドルの
輸入は今年一億ドルの
輸入になり得る。
輸入が一億ドルとすると、ココムが緩和されれば
輸出も一億ドルになり得ますから、日中貿易はきわめて控え目に見ましても一億ドルというものはすでにワクの中に入っておる
状況になっております。時たまたま中国では、来年度において第一次五カ年計画は終りまして、再来年からは第二次五カ年計画が始まる。特に中国における農業の改革が全国的に今行われる技術的準備をしておる段階のようでございます。四年前に私が北京を訪れましたときには、満州すなわち東北にあります施設の修理復旧等に全力を注ぎまして、
日本の技師を
相当数流用し、
日本の技術、
日本の部品を使って復興しておりましたけれ
ども、今日第一次五カ年計画の終りに臨みまして、もう諸国包囲の中でありますので、ソ連の技術また機械、それからチェコスロバキア、鉱山
関係などはポーランド等から非常にたくさんの機械と技師が参っておりまして、四、五年前に参りましたときにはロシヤ語の技術書もあまり多く見当りませんでしたけれ
ども、今日北京の町の書店には、ロシヤの産業技術に関する専門書が、もうぎっしり詰まっておるような
状況でございます。従いまして、第二次五カ年計画のときに、
日本の機械、
工業技術が、そして中国の国土に適応したものが
輸出されませんと、もはや時期を失するおそれがあるということを痛感いたしました。従いまして中国のあの膨大な国土における需要に
日本商品が入って参りますには、この一両年の間に態度を決しませんと、すでに時期おくれになるという重大な転換期に今面しておることを、特に大臣に御了承願いたいのでございます。
それから第二には、以前には進出口公司が大体取引の相手でございましたが、中国の建設も進み、その建設に必要な
物資の数量と秘教が膨大な
金額になるに及びまして、各業種別及び地方別の公司、地方別の貿易
会社が非常にたくさんできまして、そのほか現場の企画、
工場の建設企画、それから農村の購買組合等の購買力が非常にふえまして、現実には下からの発注によって
物資の需要がきまる。そのために、従来取引の中心でありました進出品公司は、むしろ発注の総合調整をしているような機構に移りつつあるのではなかろうかというような点も想像できるようになりました。またもう一つは、
日本が敗れましたときに、二十才前後でありました青年が、今は三十才前後になっております。四十、五十の今日の中国の指導者諸君は、
日本のことをよく知っておりまして、
日本のすぐれた風土、
日本の国民の勤勉、
日本の技術の優秀性などを知っておりますので、
日本に対して深い理解も持ち、
日本との貿易の拡大を切望しておりますけれ
ども、二十才以下の青年たちは、戦争中の
日本の軍人の野蛮な行いや、知能の低い支那浪人の印象などしか念頭になくて、技術における
日本のすぐれた実態というものはほとんど知らないのであります。
それから第三には、中国では漢字の制限が急激に行われまして、ことしの一月からは漢字の字数も千字前後に制限しまして、人民日報、大公報、すべて横書きになってしまいました。驚くべき改革が断行されました。言葉も北京官話一つに統一されまして、数年後にはローマ字または適当なる音標文字にかえることになっております。こうなりますと、もしじんぜんそのままの
状況で推移いたしますと、機械は相互に規格の統一、同一系統の技術を要求いたしますので、
日本から全く遮断されたソ連、東欧諸因、または一部西欧諸国の機械技術が入り、もしくは音標文字にかわるとするならば、六千年にわたる同文同種の民族よと私たちが呼びかけてみたところで、数年後にはそういうことはもう過去のことであって、三十年前に別れた恋人にあのときの接吻の味はどうだったと言ってみても、その娘はもうすでにとついでしまって、六人も子供がおる、そういう他人の奥さんに対して同文同種よと呼びかけるようなあわれな姿になるようなことを私は心配いたします。英国はすでに中国を承認しておりまして、代理公使を北京に置きまして、
相当額の貿易をしております。現在東西貿易の総額は、昨年度四十億ドルの中で、
日本の占めている地位はわずかに一億ドル、これは私は通産大臣の責任かないとはいえないと思います。また去年の数字ではなくて、一昨年の数字を見ましても、すでに英国は一億数千万ドルを
輸出し、二億ドル以上のものを
輸入しております。しかしもしことしの秋に
日本の商品見本市を北京、上海で開くことができるならば、そしてちょうど転換期の小国に、地方分公司や業種別公司や、地方の経済建設の現場が今や盛り上ってきた中国に、それから三十台前後の
日本を知らない今の主任級の多くの青年たちに、
日本商品の生活必需品
関係、建設
関係、両面における最近のすばらしい成果を見せることができたならば、中国の人たちは、戦後の
日本はこれほどすばらしい技術と
製品を持つようになっておるのか、それではソ連、東欧諸国だけではなくて、また遠い、はるかに離れた西欧諸国に半を頼むのではなくて、もう一ぺん
日本の
工業を百認識して、平和の基礎の上に
日本経済と提携しようという気持か油然として起ることは、火を見るよりも明らかであります。もしこの機会を失したならば、次の機会をとらえることは私は非常に困難だと思います。従いまして二カ月、三カ月、四カ月、北京、上海で
日本商品の見本市を今度開くことができれば、それは英国が代理公使を置いておるよりも、もっと重要な役割を果し得ると思います。従いまして、通産大臣のところには、今度の商品見本市を成功させてもらいたいという陳情がたびたび参っておるので、大臣もその意義については十分御
承知でございましょうけれ
ども、私が先ほど御
指摘申し上げましたような諸点をもあわせ考慮下さいまして、なるほど
説明を聞いてみると、自分が
考えた以上に重要な役割があった、また重要なポイントに立っておるということを御勘案下さいまして、何とかこの見本市が成功するように、物心両面に御指導を得たいと思う次第です。この問題についての予算
措置については、先日総理にも申し上げてありまして、これは私は、しようと思えばできることで、さした問題でない、当然して下さることと思います。
もう一つは、ココム
輸出制限のために、その見本市に出品ができないのではないかということを非常に御心配下さっておるということも伺っております。しかしこの問題につきましては、今この展覧会を見に来る人たちは大体技師長が引率しまして、中国の展覧会では
日本のようにただ遊びに来るのではないのです。みな手帳を持って、大学ノートを片手にして、それから鉛筆を片手にして、隊を組んで何万という大衆が見に来ます。あるいは農村の購買組合の人々が見に来、あるいは
工場の建設現場の技師たちが隊を組んで見に来る。その人たちに
日本の新興
製品、
日本の
工業の実態を見せるわけですから、これは非常に慎重な配慮が必要で、ある。もしココムの制限のために、最近の
日本の電子顕微鏡とか
日本のすぐれたトラックとか
日本の大型の脱穀機とかポンプとか、それから各種の電気機械などというものが展覧できないで、そうして展覧するものといえば、北海道のワカメ、コンブ、ナマコ、それからサメのひれのほしたのとかみやこ腰巻とか自転車とか越中宮山の反魂丹などを並べたのでは、
日本の実情を何にも知らぬ、三十代の青年は、
日本ではこういうものしかできない、わが偉大なる隣邦ソ連ではあれほど偉大なものを作るのに、
日本ではこれほどのものしか作れないのかといって、逆に認識を誤まらせるおそれがあることを私は大臣とともに心配するものであります。従いまして、これは何とかして
日本のすぐれたものを申さねば——決して軍需品ではありません、平和建設資材、日用生活
物資の中のすぐれたものを出して、そうしてかつてアジアの窓であり、アジアの星であった
日本は、戦後においても平和の建設においては著しい進歩を示しておるということを見てもらう必要があると思うのです。ココムの制限というのは
輸出に対する制限であって、
輸出ということは売ることなんです。アメリカが苦労しておる今日、戦略
物資を売ってはならぬというわけで、それは
日本はどこの国よりも正確に守っておるわけです。この戦略
物資というのは、本来ソ連に対して戦略
物資一覧表というのができたのであって、それはバズーカ砲とかオネスト・ジョンなどをソ連に売ってはならぬというのであるから、たれしも当然のことと思って、戦略
物資一覧表を見もしないで大体承認してしまったのです。ところがその後それが北朝鮮と中国に適用されるようになって、北朝鮮と中国への適用は、ソ連への戦略
物資がおおむね妥当なものであったために、そのときに錯覚に陥って一覧表を十分に検討するいとまもなく、各国が承認してしまった。ところがそれの
内容は木造船から通常のトラック、大型オート三輪に至るまで平和の
物資が全部含まっていたわけで、戦略
物資という名をつけるのにはそもそも非常な無理があったわけです。従いまして、すでに英国がアイゼンハワーに対して、それは今日の段階では無理であるからといって強い交渉を続けておることは大臣の知られる
通りです。こういう
事情でありますから、今度の北京元本市に出しますのは売るのでないのです。私が大臣に金時計を出して、この時計を売ろうということと、この時計は非常にいい時計だから見ておいて下さい、他日大量
生産になったらお売りしましょうけれ
ども、今は売れません、しかしお見せしましょうということ、売ることとは範疇が違うと思うのです。従いまして私は別に三百代言的な
法律解釈論を言うわけではありませんけれ
ども、ココムの
輸出禁止という条項には、この展覧会に見せるだけならひっかからないと解釈するのがむしる至当ではあるまいか、少くともそういう解釈を私
どもが主張するだけの根拠はあるのでないか。私
どもは今日の時代に禁止されているものを、約束を破って
輸出するような卑怯なことはいたしません。約束は守る国民です。しかし、他百出し得る
状況になったら出しますが、今のところは出せませんけれ
ども、
日本工業の実態を見てもらうために中国に展覧会を開きたいと思います、こういうことではないかと思うのです。すでに中国では、ソ連やポーランド、チェコスロバキアの機械
工業展覧会がたびたび開かれまして、私は三度も北京に参りましたためにその展覧会のどれも見学してきましたが、非常にすぐれた展覧会です。アメリカ国務省は、せめて中国がユーゴスラビア
程度に自主性を持ってもらいたい、世界に各国の市場があることを中国に知ってもらって、ソ連一辺倒というような片寄った政策を改めてもらいたいということをたびたび言っておる。そうであるとするならば、中国にソ連の展覧会だけ見せずに、
日本の展覧会を見せることがその
趣旨にも沿うものではないか、もし希望であるならばアメリカの工作機械を展覧しても一向差しつかえないと思います。こういうことは大体法規に触れない問題で、国際約束に触れない問題ですから、本来ならば
日本の通産大臣は自主的におきめになってしかるべきことである。ただ国際儀礼として、無用な摩擦を防ぐために、一応アメリカその他にも話をしておくというなら、今春ダレスが来ました折に、ダレスさんのごきげんのよいようなときに、通産大臣から上手にこれをお話なさるならば、パリのココム
委員会などにかけないでもそれは解決つくのではあるまいか。従いましてこの問題について通産大臣だけに重荷を負わすことは大へん御無礼でありますけれ
ども、この問題が解決しませんと、せっかくこの二十九日には宿谷君が見本市
委員長として北京に行くわけですから、よほど通産大臣がバック・アップして下さいませんと、この展覧会の開催は一応むずかしいということになりはしないかと思って心配いたします。もちろん外務当局の
立場になりますと、長い間アメリカ大使館の外局のような
立場に立っておるので、アメリカ大使館のごきげんを害しまして、どうもあの局長は少し桃色じゃないかね、ココム
会議に必要以上に熱心じゃないかねなどと言われると、ほかの同僚から足を引っぱられるというようなこともありて、活発な行動を今日の外務省に期待することは無理であって、外務省の方々は、せめて合理的に慎重にふるまっていただくこと以上に望むことは、サラリーマンであるから困難であろうと思いますけれ
ども、
通産省の
立場からいえばそれほど遠慮することもないのでありますから、外務省のやむを得ず弱腰になり、慎重になり過ぎる態度を
通産省の方で牽制、教育されて、何とか上手にダレス公使あたりに一つ了解をしていただくことが必要でないかと思いまして、るる述べた次節でございます。これに対しまして最終結論をお伺いしようとは存じませんが、一つ御努力下さるお気持だけでも聞かしていただき、それからできますれば、湯川
経済局長から先日アイク、イーデン交渉のときの結果で、外務省当局にわかっておることをお尋ねしたい。と申しますのは、先日新聞に出ましたのを見ますと、イーデンはロンドンの飛行場に帰りしまして、こういうふうに答えております。これはロンドンのロイター通信ですが、極東政策について私とアイゼンハワー大統領との間に若干の意見の相違があったことを私は認める、われわれはこれらの問題について討議したけれ
ども、われわれは英国としてその
立場を引っ込めたことはないし、米国
政府もあまりその見解を修正しようともしなかった、しかし中共に対するいわゆる戦略
物資の加商制限については、再検討をすることについては同意した、こういうふうに新聞に出ております。私は同じように貿易国、島国としてのイギリスが、和戦の問題についてほぼあらかたの見通しをつけて——七つの海を支配しておる英国ですから、視野はおのずから広くなるわけですから、和戦の問題については、戦争を避けなければならぬし、避け得るであろうという見通しをつけて、平和と通商拡大に非常な努力をしておる。この英国の
立場は同じような島国として、貿易の国としての
日本の
立場とつながるものもある。一面は商売がたきですけれ
ども、他面共通の
立場もあるわけですから、このイーデンの交渉の機会に、便乗してといえばいやな言葉ですが、この機会をとらえて、そうして
日本に課せられておる不当な制限の緩和のために、非常に上手な努力をするための絶好の機会でありますから、その点について通産大臣のお気持を伺い、湯川さんの御努力や、ただいま入っております情報、実情も一つ伺いたいと思います。