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森本政府委員 製薬企業の現状につきまして御説明いたします。お手元に
参考資料がいっておると思いますが、これによって御説明申し上げたいと思います。
まず
最初に、順序は逆になりますが、三番目の
医薬品の
品目数について申し上げます。一番下にございますが、ここには現在
わが国において薬がどのくらい作られておるかということが書いてございます。ここにございますように、薬の
種類といたしましては、
薬局方に記載されておる薬が
一つ、それから
国民医薬品集に収載されておる
医薬品が
一つ、その
二つを合せまして
公定書医薬品と申しておりますが、そのほかに
公定書外医薬品というのがございます。それから
公定書外の
医薬品の中に、
通常家庭薬といわれておるのがございますが、それが第四番目のところにあげてあります。
法律上からいきまずと、
公定書医薬品と
公定書外の
医薬品の
二つになるわけでございます。
公定書につきましては
薬局方と
国民医薬品集の
二つがある、
公定書外は一本でありますが、通常いわれております
家庭薬というのを特に別にして書いております。それで
公定書の
薬局方に載っております薬の
種類としましては六百二十七
種類ございますが、これを
社別、
商標別に
品目として掲載いたしますと、四千二百六十七
品目になるわけであります。それから
国民医薬品集の薬としましては、
医薬品集に載っておるものが四百七十二
種類、それが今申しましたように
社別、
商標別にいたしますと八百八十一
品目になります。それから
公定書外の
医薬品でございますが、新しく
公定書にない薬を作ります場合には、一々
許可を受けて
製造するわけでありますが、現在までに
許可をとっているものは約六万
種類ございます。ところが、この六万の中で
現実に作られておられぬものが相当ありまして、現在作られておりますものは、この
品目にございますように、
家庭薬でないものが四千五百四十五、それから
家庭薬と称されるものが九千百七十七ということになるのであります。それで、
現実に作られております
種類は、この
品目数によってごらん願いますように、約二万
種類薬がある、かようにお考え願っていいと思うのでございます。このようにたくさんの薬があるということでございます。
それから次に、それらの薬はどの
程度生産されているかということでございますが、これは
最初の一のところへ返っていただきまして、ここにございますように、
昭和二十五年が合計いたしまして三百十九億でございます。以下
生産額が向上いたしまして、
昭和三十年、最近になりますと八百四十億という
生産額でございます。この
生産額を今申しました四種の種別に分けてみますと、
薬局方に載っておりますものが百四十億、それから
医薬品集に載っておりますものが四十三億、それから
公定書外医薬品が五百九億、それから
家庭薬と称されるものが百四十六億、こういうような数字になっております。
その次に二万もたくさん薬がある中で、どういう薬が一番たくさん作られておるかということは次の表によって御説明いたしますと、一応
生産金額、これは
メーカー価格でありますが、初め十億円以上のものをとってみますと、ここにございますように、一番多いのが
総合ビタミン錠で、これが三十三億、それから
ストマイが十九億、なお、
複合ストマイがございまして、これが十二億、合せて三十一億でございます。それからクロラムフェニコールが二十三億、
パスが二十四億、
ペニシリンが十四億、それから
ハッカゴム膏、これはこうやくみたいなものでありますが、これが二十七億、それから抗
ヒスタミン含有錠が十一億。一応こういうものが
生産量の一番多いものとなっております。これらを合せますと、七
種類で約百五十億ぐらいになるのであります。
それから次に参りまして、これを作っておりまするところの
メーカーの数はどのくらいあるだろうかということでございますが、
昭和三十一年三月現在におきまして約三千、すなわち二千九百十四ヵ所ございます。ここで約二万
種類のものを作っているわけでございますが、ところが、
メーカーと申しましても、大中小いろいろなものがございます。その右にございます
生産規模別製造所、
生産額というところをごらんになりますと、大きさから申しますと、九人以下のところが
製造所総数の六九%、約七割が九人以下の小さな
工場でございます。その
生産額が四一%、だから大体
家庭工業的な小
企業で半分ぐらいが生産されておるという
状況でございます。途中を略しまして、三百人以上の
従業員を持っておる
製造所は、
個所数にしまして十二カ所、それからそれの
生産金額が全体の約一割、それから五百人以上の
従業員を持っているところになりますと、これも
総数が十カ所でありまして、その
生産金額が二六%ということでございます。でございますので、小ない
メーカーが非常に多いということが
一つと、それから百人以上の
比較的大きな
工場におきまして、
生産額の六、七〇%を占めておる、こういう実情でございます。
それから次に参りまして、この歪さ上りました薬がどういうように扱われておるかという問題でございますが、これは七番目の
医薬品流通系統図でごらん願いますように、
二つの
系統がございまして、
一つは
一般の薬、
一つは
家庭配置薬の
系統、この
二つございます。それで
一般の薬から申しますと、
製造業者から元
卸業者へ参ります。元
卸業者から
卸業者に参ります。大
病院等は直接
卸業者から入れる。それから
卸業者は
小売業者、
薬局、それから
医師向きの
販売業者に卸すわけでございます。それから
医師向きの
販売業者、これは多くの場合
小売業者が
薬局と兼ねておる場合が多いのでございますが、そこから
病院、
診療所に持っていく。それから
小売業者から
一般の
消費者へいくというのが
系統でございます。これは薬のみならず、
一般商品の
流通系統と同じものでございます。
法律上は別にこういう区別があるわけではございません。それから
家庭の
配置薬につきましては、
メーカーがございまして、それが
配置業者に持っていく。
配置業者は
消費者へ直接持っていく、こういう
方法で回っております。
それで今申しましたこの
流通系統にありますところのもの、すなわち
医薬品の
販売業者の数でございますが、六番目にございますように、
薬局が一万八千ほどございます。それから
医薬品の
輸入販売業、これは
外国のものを扱うのでございますが、これが三百六十三、それから
医薬品の
販売業というのがございますが、これは先ほど申しました元卸、卸、それから
薬局はのけまして、
小売業、すべての各
段階の
販売業者を含んでおるわけでございます。これの
総数が約八万八千、全
品目と申しますのは
薬剤師がおる、あるいは
管理薬剤師がおりまして、すべての
医薬品を扱うところの
販売業者であります。これが約四千五百、それから次の
指定医薬品以外のものを扱う
販売業者、これは
薬剤師のおらぬところであります。これは
指定医薬品と申しまして、
薬剤師でなければ取り扱ってはいけない
医薬品、その
医薬品以外のものを取り扱う、
通常薬種商といっております。これが約一万三千、
限定品目と申しますのは
医薬品として、蚊取り線香でありますとか、
除虫剤のように特別な取扱いがそう必要でないもの、
種目を限定して扱っておるわけであります。従って
化粧品であるとか
雑貨屋等で、他の
商品と兼業して売っておる場合が多いのであります。これが非常に多くて約六万九千カ所、それから
配置の
販売業の
登録を受けておるものが約千四百、こういう
状況で、
流通系統において
関係しておるものは、今申しましたように非常に多いのでございます。
八番目に
医薬品の
輸出入でございますが、これは
昭和二十五年ごろから
輸出入というものが実際始まったのであります。当時は
輸出入とも約五億
程度、それが逐年増加して、
昭和三十年には
輸出が三十億、
輸入が三十五億という
状況になっております。これは
生産金額の大体四%であります。
戦前におきましての
わが国の
輸出のパーセントを見ますと、
生産額に対して二〇%ないし三〇%の
輸出額があったのです。それにしても現在四%ですので、まだまだ
戦前に復していないという
状況であります。
それからどういうものが
輸出されておるかという点でございますが、ここにございますように
主力は
ビタミン、
スルファ剤、
ペニシリン、
ストマイ、
家庭薬その他
一般薬品というのであります。それから
輸出先はどこであろうかということでございますが、これはやはりここにございますように
中共、
台湾、
米国、この三カ所が大
部分でございます。それで
米国に出ます
種目は大体
ビタミン耳がおもであります。
中共、
台湾その他につきましては
各種のものが出ております。それからどこから
輸入するのが多いかという点でありますが、これは
米国からの
輸入が一番多く、その次はドイツ、その他は少いのです。
米国から
輸入するおもなものは
ビタミン類であります。
ビタミン耳以外の
ビタミン。これは
わが国ではまだ十分作れませんので、
ビタミンB1以外の
ビタミン類が大
部分であります。もう
一つは新しくできました
抗生物質、これが
アメリカから
輸入されます。その他の国から入りますのは非常に
種類が多いのでありますが、
各種の
医薬品であります。
それから次に、この
薬価の問題に関連して参りますが、薬が高くなったか安くなったかというような点でございます。この点につきましては、なかなか正確なつかみ方はできませんけれども、一応こういうような検討もしてみたわけでございます。まず
一つの
見方としましては、他の
物価との
比較の問題であります。これはここに書いてありませんが、
昭和九−十一年を一としました場合の
物価指数を見てみますと、
一般の
卸売物価指数は
昭和二十八年におきまして三五一、それから
消費財だけの
卸売物価指数は三二七、それから
医薬品の
価格指数は一六〇という
一つの調べがございます。これによりますと、
一般の
物価は
昭和二十八年におきましては、
昭和九−十一年の
基準年度に比べれば三百五十倍くらいになっております。ところが薬につきましては百六十倍
程度の
値上りになっておりますので、
値上り率が非常に少い、他の半分くらいであるという
見方が非常に強いのであります。それから諸
外国におきますところの
物価との
比較であります。これも全部のものは非常に困難でございますので、おもな
医薬品だけちょっと調べてみますと、
日本を一〇〇としてみますと、
ペニシリンにつきましては
イギリスが一五〇、
アメリカが一五〇、
ストマイにつきましては
イギリスが七七、
アメリカが一〇四、それから
パスにつきましては
イギリスが一八七、
アメリカが二一九、それからダイアジンは
イギリスが二〇七、
アメリカが二四七というように日、英、米それぞれの国につきまして
卸売価格の比率を調べますと今のようになっておりまして、少くとも
主要医薬品については、
外国に比して
わが国は高いという見当は出ないのではないかという
感じがいたします。それからもう
一つの
見方がここにございます。表の中にあります
医薬品卸売価格指数の
推移でございます。主要なものについてここにありますように、約十
種類くらいあげておりますが、
昭和二十八年を一〇〇といたしますと、
一般的に申しますれば、これら
主要医薬品につきましては
昭和三十年におきまして約
半値に下っておるのであります。ここに
指数がございますように、極端なのは一七%、大
部分は四〇ないし五〇という
指数でございます。こういうように少くとも
主要医薬品につきましては二、三年のうちに
半値に下っておるという結論が出ておるのでございます。
それから次にございます
薬価基準、これは
健康保険の
薬価基準で、
健康保険に使います
薬価というものはどの
程度下っておるかということを調べてみたのでありますが、
昭和二十七年を一〇〇といたしますと、
昭和三十年の
薬価基準の平均の
値下り指数は八三ということになっておるのでございます。他の
一般物価の
指数、それから
外国の
指数わが国だけの
医薬品の
価格の
傾向というものから見まして、これが非常に
値上りをしておるということはない、むしろ安くなっておるという
感じがいたすのでございます。それでこれは、結局どういうことでこういうことになるかと申しますと、多くの
医薬品が多くの会社で作られており、そうしてこれが
品質の改良と安く売らなければならないという
二つの点で競争しておるわけでありまして、これが極端に現われてきたものじゃないだろうかという考察をいたしております。
以上大体
メーカーの数であるとか、薬の
種類、
価格の
傾向等を申し上げたのでありますが、
医薬品として大事なことは
品質がまずよいか悪いかという問題であります。これは
薬品の
最初の
製造を
許可する場合に、これが
保健衛生上支障があるかないか、有効がどうかということを
検査をして
許可をする、それから市販されました後においても、あるものについては検定を行い、あるものについては
抜き取り検査を行なって常時
薬事監視をして
品質の確保をはかるということでございまして、
品質の面については今言ったような
方法で監督しておる、こういう
状況であります。
ざっと申し上げまして、
あとは
一つ御
質問によってお答えした方がよいかと思います。