運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1956-05-25 第24回国会 衆議院 社会労働委員会 第49号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月二十五日(金曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 佐々木秀世君    理事 大坪 保雄君 理事 中川 俊思君    理事 野澤 清人君 理事 藤本 捨助君    理事 滝井 義高君       植村 武一君    小川 半次君       草野一郎平君    熊谷 憲一君       小島 徹三君    小林  郁君       田子 一民君    田中 正巳君       中村三之丞君    八田 貞義君       林   博君    亘  四郎君       井堀 繁雄君    長谷川 保君       八木 一男君    山口シヅエ君  出席政府委員         厚生政務次官  山下 春江君         厚 生 技 官         (公衆衛生局環         境衛生部長)  楠本 正康君         厚生事務官         (薬務局長)  森本  潔君  委員外出席者         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 五月二十三日  委員大橋武夫君、岡良一君及び前田榮之助君辞  任につき、その補欠として南條徳男君、大西正  道君及び堂森芳夫君が議長指名委員選任  された。 同月二十五日  委員大西正道辞任につき、その補欠として岡  良一君が議長指名委員選任された。 同 日  理事岡良一君同月二十三日委員辞任につき、そ  の補欠として同君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事の互選  へい獣処理場等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第一二〇号)(参議院送付)  採血及び供血あっせん業取締法案内閣提出第  一二二号)(参議院送付)     —————————————
  2. 佐々木秀世

    佐々木委員長 これより会議を開きます。  この際、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。去る二十三日理事岡良一君が委員辞任せられたのに伴い、理事に欠員を生じておりますので、その補欠選任を行わねばなりませんが、選挙の手続を省略して委員長において指名するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 佐々木秀世

    佐々木委員長 御異議なしと認め、理事岡良一君を指名いたします。     —————————————
  4. 佐々木秀世

    佐々木委員長 へい獣処理場等に関する法律の一部を改正する法律案及び採血及び供血あっせん業取締法案の二法案一括議題とし、審査を進めます。発言の通告がありますのでこれを許します。滝井義高君。
  5. 滝井義高

    滝井委員 まずへい獣処理場の方から先に御質問いたしたいと思うのですが、環境衛生を良好にしていくためには、当然国民衛生思想というものが向上しなければならぬと思うのです。現在の日本厚生行政を見てみますと、健康保険とか生活保護というような、いわば救貧的な政策というものがある程度進んでおります。進んでおると言うよりかやらざるを得ないところに追い込まれておるようでありますが、その防貧的な面、これを医学の方で言えば予防的な面がむしろ欠けておる。ここ数年来の厚生省における予算使用状況を見ましても、現実病気になった医療をどうしていくか、あるいは現実に貧乏になって食えなくなった大衆をどうするかというようなことに追い回されて、貧乏に転落することを防ぎ、病気になることを防ぐ政策というものがきわめて看板倒れになつて、これがどうも予算面においても実施を見ない情勢がだんだん出てきました。おそらくこういう情勢はますます今後強くなるのじゃないかと思うのです。そういう中でここにへい獣処理場等に関する法律の一部を改正する法律案が出ておるわけですが、この提案理由の中に、蚊とハエのいない生活実践運動をさらに実効あらしめるためにということになっておるわけでありますが、日本においてそういうように貧乏になったり病気になったりすることを防ぐためには、やはり生活実践運動というものが強く実施せられてこなければならぬと思うのです。ところが実践するには、これは戦争中のように信念だけではいけない、やはり実践というものは理性によって導かれていかなければならない。かつてのように、竹やりで戦争に勝つというわけには参らぬと思います。だから強い信念なり実行力というものは、科学というか理性というもののともしびによって導かれる運動でなくてはならぬと思いますが、蚊とハエのいない生活実践運動というものは、厚生省は一体どういう指導をして、具体的にどういう運動を展開しようとしておるのか、この点をまず政務次官から明白に願いたいと思います。
  6. 山下春江

    山下(春)政府委員 滝井先生の御指摘通りでありまして、厚生省仕事救貧政策に追い回されているということであってはならないのでありまして、ボーダー・ラインにいる者を転落させないといういわゆる予防的厚生行政、すなわち常にそういうことに一つの大きな理想のともしびをともしていかなければならないということは御指摘通りで、私どももさように考えております。予算上から見て、そういうことは宣伝倒れになっていて、何も実行できない状態ではないかということも、これまた遺憾ながら御指摘通りでございます。しかしながら蚊とハエがいるということが、今事実病気になったその施策をどうするかというような問題に追い回されている非常に大きな原因であることも実はよく了承いたしておりますので、数年来、幸いにしてそういうことを厚生省が唱えますことに世論の非常に強い支持をいただいておりますので、ことしこそはということで予算面におきましても、強力にこれを獲得しようと努力いたしましたが、諸般の情勢上まだその段階に至りませんで、まことにささいな予算でございまして、何を申しましても実行するのがなかなか困難だというような状態になっておるのであります。しかしながら、私ども厚生省は、この問題はいろいろな日本の産業上から見ても、あるいは衛生上の見地から見ても、何としても徹底的にやらねばならないということで、予算はございませんけれども、その熱意はさますことなく、諸施策を進めておるのでございまして、あらゆる厚生行政の基幹をなす非常に重大な要素を持っておる問題として今後も推進いたしますし、三十二年度の予算におきましては、是が非でもこういう面の予算を獲得して御期待に沿うようにいたしたいと思っております。具体的な方法等につきましては、楠本環境衛生部長が多年この問題に非常に魂をつぎ込みまして研さんをいたしておりますので、お聞き取りを賜わりたいと思っております。
  7. 楠本正康

    楠本政府委員 蚊とハエのいない実践運動につきまして事務的な具体的な点を補足いたしたいと思います。ただいま滝井先生が御指摘になりました通り、現在新生活運動等の名のもとにいろいろな運動が展開されております。しかしながら実際にお説のように、これには一つ実践の場が伴わなければならぬ、理性が伴わなければならぬ、技術性が伴わなければならぬというような点がございます。また一方せっかく実践運動をいたしましても、その効果がてきめんに現われなければ熱意がさめてしまいます。そこでどうしても、やったらやっただけの効果がぱっと現われるということが必要だと存じます。また一方実践運動には社会連帯性ということが必要でございまして、地域社会が一丸となってやらなければならない条件が必要と存じます。かような点から考えまして、蚊とハエの駆除こそ実践運動教育の場、実践の場としてきわめてすぐれたものであるという考え方から事業を進めてきましところが、当初期待した以上に効果が上っております。たとえますれば、ただいま政務次官からお話がございましたように畜産を中心とした生産の増強並びに現在厚生省が非常に苦慮いたしております医療費の大幅な軽減、これらにきわめて大きな効果があるばかりでなく、さらに進みまして、地域社会連帯意識が自然のうちに達成されまして、お互いの協力的ないい社会を作ろうという熱意が盛り上ってきて、それは意外な方面に大きく発展いたしております。かような点から私どもといたしましては、今後これを実践の場、衛生教育の場、地域社会育成実践の場といたしまして、地域社会中心としてこの運動を育て上げたいという考え方でございます。しかしながら何と申しましても国民協力だけにたよって仕事をして、おのずから一定限界に達します。やはり公共の場所であるとか、あるいは個人の力ではどうにもならない場所もございますので、そのような所につきましては、今後政府の力において国民協力にお手伝いをするなり、あるいは若干法規の整備等もいたしまして、かような個人の力ではどうにもならない点だけは、国の力において解決していく以外に方法はなかろうと存じております。これがまた国民実践運動をより効果的にする理由かと考えます。さようなことから今回、現在蚊とハエの発生の温床のごとき感のございますへい獣処理場等、一貫した一つの非衛生的な状態に対しまして若干の手を加えるのが、この法案の改正の一つの目的でもあったわけでございます。  以上、はなはだ専門的にわたりまして恐縮でございますが、一言述べさせていただきました。
  8. 滝井義高

    滝井委員 いろいろ政務次官並びに環境衛生部長から御説明いただきましたが、蚊とハエのいない生活実践運動と、こう書くと蚊とハエのいないような社会を作ることはきわめて簡単なようでございますが、私は蚊とハエのいないような生活環境というものは、なかなかそう簡単にはできないと思うのです。この法律でへい獣の処理家畜飼育することによって、そこに飲料水を汚染したりあるいは悪臭を放つ、あるいは蚊やハエ根源地を作るというような、こういうちょっとしたことでも、なかなか実践がむずかしいということです。こういうことは、単に法律でやってもできるものではない。これは当然やはり今御説明のありました衛生教育と申しますか、そういうものをひっくるめた、地域社会における社会教育というものが、非常に向上してこなければならぬ。ところが現在の日本文部行政を見てみましても、学校教育というものについては非常に力を入れます。しかし社会教育に対する予算というものは実に少い。公民館や図書館等運動というものは、もうほとんど地方自治体にまかせられておる。ところが最近の地方自治体の財政の窮乏のために、社会教育に対する予算というものは、ますます削減されておるという現状なんです。そうして厚生省における予防的な経費というものは、旧態依然たる情勢である。一方、精神教育的な面における社会教育予算というものも、非常に圧迫されておるということになれば、これはいくら蚊とハエのいないような社会環境を作ろうとしても、百年河清を待つにひとしいことになってしまう。しからばこの法律で規定をするような状態が、法律の制定だけでできてくるかというと、なかなかできてこないということなんです。そういうことで、厚生省なり文部省というものは、国民教育する前に、内閣自身における大臣なり、まあ鳩山総理教育しなければ、これは結局だめだということなんですよ。私は、そういう結論になってくると思う。幸い山下さんは十分御理解がいっておるようでありますが、かつてわれわれが炭鉱病院に勤めておったときに炭鉱衛生行政というものは、炭鉱労働者教育するんじゃない、おやじ教育だということが言われたんです。私は現在の日本のこういう施策もまさにそうだと思うのです。古い頭を持っておる現在の内閣首脳部の頭の切りかえが先じゃないかと思うのです。こういう点に対する努力というものを、これはお役人にもやってもらわなければならぬし、われわれもまた、その努力をしなければならぬと思うのですが、そういう点に対する感想だけを一つ承わりたいのです。
  9. 山下春江

    山下(春)政府委員 これは遺憾ながら滝井先生の御叱正を是認せざるを得ないような点を、今回の予算編成に当って私ども多少感じたのでありますが、党の方でもこういうことを強く要請しておりました。しかしながらいざ予算ということになりますと、どうも今仰せられた国民教育社会教育というような面に対する理解が非常に薄いために、のみならずわれわれが微力であった点もありまして、ゼロよりはましだという程度でございます。非常に大切な場面でございます二の費用が、ろくにとれなかったということは、幾らか認識が足らぬのかいなと、実は私も思ったのであります。たとえば今回非常に長い歴史をけみしてようやっと国の意思決定をいたしました売春防止法にしても、この法律ができたから日本売春行為が全然なくなるということは、それはなかなか期待し得ないことであります。この法律通りますと同時に、われわれはもうすでに青少年教育あるいは社会教育というものに、非常な勢いを持ってその中に飛び込んでいかなければいけない。これは内閣認識が不足だというだけでなく、役所としても反省しなければならないことでありまして、役所仕事も、ただ法律の中に書いてある通りを実行するというだけではいけないのであります。すべての指導的立場にある人たちが、その裏にありますバック・グラウンドを完全に作り上げていくという熱意がないと、なかなか効果を上げていかない、政府行政庁の方も、両方そういう気持にならなければ効果が上げられないと思いますので、今後は政府首脳部にも、そういう点を深く認識してもらい、われわれ行政府のものも法律の面だけでなく、国民のそういったような教育に全力を傾けるべく努力をいたす覚悟でございます。
  10. 滝井義高

    滝井委員 ぜひそうしていただきたいと思うのです。ある程度公衆衛生思想が普及し、公衆道徳が進んでくると、町のまん中に豚を十頭も飼って、そうしてその悪臭と汚水が、他人の家に迷惑をかけるというようなことは、炎は法律規制をしなくても、これはなくなってくることなんです。ところが現実日本がそうでないので、この法律もやむを得ないと思うのであります。そこで二、三法律の点についてお尋ねしたいのですが、この法律の中には、清掃法に規定する特別清掃地域のうちで、都道府県知事指定をする一定区域において、一定数以上の牛、馬、それから豚、綿羊ヤギ、犬、鵜、アヒル等飼育する施設を設けた有は、届出義務を課することになつ、おるようでございますが、この特別清掃地域の中の都道府県知事指定をする一定区域基準は、これはどういう工合にして定めていくのか、これをちょっと御説明願いたいと思い放す。
  11. 楠本正康

    楠本政府委員 お答え申し上げます。基準の内容といたしましては、まず人口密度を考えまして、一平方キロメートル当り三千人以上の地域を第一に、第二は市街地を形成しております戸数が、全戸数の五割以上である地域、さらに第三といたしまして、観光地等であるために、特に清潔を保持するに必要な地域、かような三点を基準にいたしております。
  12. 滝井義高

    滝井委員 今環境衛生部長から御指摘になったその三点を一応の基準として、特別清掃地域を選び出すとすればどの程度都市がそういう基準に当てはまることになりますか。大きな五大都市ぐらいは常識でわかるのですが、そうでなくてたとえば福岡市ぐらいのようなところとか、そういう基準に当てはまる一番最低の都市は大体どのくらいのところがそれに当てはまるのか、そういうことを御説明いただくと、われわれは抽象的な概念から具体的な、あの程度のものがこの法律にひっかかるのだなということがわかるのですが、いかがですか。
  13. 楠本正康

    楠本政府委員 全国的な調査をしてございません。しかしながら合併市を除きました以前の旧市あるいは東京都の区という地域におきましては、おおむねこの指定箇所に入るわけでございます。ただし特別清掃地域対象人口が現在約三千五百万人でございますので、それより若干下回りましておおむね一千万人ないし五百万人程度でございますから、約三千万人が対象地域になるわけでございます。なおこれらのきわめてこまかい地域指定につきましては、目下各府県から資料を集めておりますので、いずれ資料をもってお答えいたしたいと存じます。
  14. 滝井義高

    滝井委員 どうも少しわれわれが聞きたいと思う大事なところがまだわかっていないようでございますが、これは一番私たちの知りたいところでございますので、わかり次第一つ教えていただきたいと思います。そこでそういうような指定をされた区域におきましては、さいぜん私が申し上げましたような家畜家禽というものは、飼育する施設を設ける場合には届出義務ができることになりますが、その一定数以上の家畜あるいは家禽、これは何か資料を見ると綿羊や何かは四頭ぐらいで、鶏は百羽というようなものが出ておったように記憶しておるのですが、そういう一定数以上というのはここに出ております牛、馬、豚、綿羊ヤギ犬、鶏、アヒル等で違ってくると思うのですが、そういう政令ができておればちょっと御説明願いたいと思います。
  15. 楠本正康

    楠本政府委員 現在の法律におきましては、お手元の資料にも掲げてございますように、牛、馬、その他の大動物は一頭でも届出を要することに相ります。また小動物ヤギ綿羊等につきましては四頭、それから犬は十頭、アヒルが五十羽、鶏が百羽という基準を設けてございますが、これらは従来私どもが一万件余りのいろいろな陳情なり苦情を受けておりますけれども、これらの実態調査いたしますと、大体鶏の場合には百羽以上が特に苦情が出ておる。アヒルの場合には大体五十羽以上を飼っているようなところに特に苦情が多いというところから、さような数字決定した次第でございます。
  16. 滝井義高

    滝井委員 ちょっと聞き落しましたが、豚は何頭ですか。
  17. 楠本正康

    楠本政府委員 豚は大動物として一頭でございます。
  18. 滝井義高

    滝井委員 問題は今の一定区域指定をどういうところに持っていくかということと、その指定された区域の中において飼うところの家畜あるいは家禽の数をどういう限界に置くかということですね。この関係がきわめて重要なことになってくるのですが一おそらく豚は一頭でもその地域の中に飼われておるということになると、これはなかなか悪臭を放って大へんなことにもなると思うのです。これは動物自身の習性にもよるのです。ヤギ四頭と豚一頭がかけ合うかどうかわかりませんが、とにかくそういう点でこの基準というものはきわめて重要なことになるのですが、こういう一定数基準決定に当っては、何か具体的な、その指定される地域内の家畜家禽飼育状態でも調査をされて、こういう基準を出したのか、それともまあ大体この程度のものならいいだろうというような腰だめ的な数字として出してきたものなのか、やはりこういうことをきめるためにも、何かそこに科学的な根拠がないと問題があると思う。というのは、先日もちょっと問題を聞いたのですが、朝鮮方たちが相当多くのものを飼っておるというようなこともありました。たとえばそういう朝鮮の方の問題じゃなくて、療養所なんかに行っても、療養所残飯等をもって豚を飼っているのです。ところがそれが、非常に病室の近くに飼っているために、その豚の鳴き声と悪臭療養がよくできないということも聞いたことがあるのです。こういうような関係があって、さいぜんの基準の中には、比較的閑静な地としては観光地だけが出てきたわけなんですが、そうしますとたとえば療養所のようなそういう病院等のあるところについても考えなければならぬというような問題も出てくると思うのです。そこでまず第一に、牛馬なら一頭とか、あるいはヤギなら四頭というようなそういう基準は何か具体的な調査によっ出てきたのかどうか、そういう点を一つ説明願いたい。
  19. 楠本正康

    楠本政府委員 まずどうしてこうした数をあげたかという問題でございますが、実際問題は、ただいまもお答えを申し上げましたように、私どもは過去数年来多数の陳情苦情等処理いたしております。その場合に特に苦情の強い、また多い対象を選んで調査をいたしてみますと、大体さような数字にたっております、豚のごときものはたとい一頭でも大分苦情が出て参っておるので、豚、牛等につきましては一頭でもこの対象といたしたわけでございます。  なおこれらの点につきましては、どのくらいの地域が適用されるかということが重大な問題でございますが、その点はただいまお答え申し上げましたように現在調査中でございますが、一応私ども特別清掃地域内からさらに若干除外をしていくのが今回の考え方でございます。特別清掃地域はすでに過去二年余り実施をいたしております関係ではっきりいたしておりますが、それらの中の家畜の数等は調査が十分できております。またそれらの中の実情も十分調べてございまして、さような実態調査の面から特別清掃地域内からさらに除外すべき点を求めたわけでございます。従いましてこの除外した点につきましては、おおむね問題がなかろうかと存じます。ただこの特別清掃地域内でかような指定を受ける地域につきましては、一応問題が残るわけでございますので、かような措置をとって厳格な規制をいたしたいと考えでおるわけであります。その場合、先ほど総括的な基準といたしまして、観光地等であるためということを申し上げましたが、もちろんこの中には必要な病院施設等、あるいは教育施設というようなものは当然含めて考えておる次第でございまして、従って特別清掃地域の中におきますれば、たとい人口密度等が少くとも、療養所等の場合にはこれが適用を受けるわけでございます。
  20. 滝井義高

    滝井委員 実情調査の結果こういう数が出たという御説明でございます。できるだけ実情に基いた一定数基準というものはきめていただかなければならぬ、こう思うわけです。そこでそういう特定清掃地域の中の一定地域の中における一定数というものがはっきりわかってきましたが、そうしますと、その地域における家畜畜舎構造設備基準というものが政令で定められることになっておるわけなんです、これは畜舎構造設備ということになりますと、おそらくこの畜舎の中には鶏舎等も含まれておると思うのですが、これはそれぞれ動物によって畜舎が違うわですね。豚とヤギはよく似たような畜舎ですが、牛、馬は違うわけですね。そうすると、現在こういう衛生関係で見ると、病院診療所あるいは薬局等一つ構造設備を備えておかなければならぬ一定基準があるわけです。そういう病院診療所薬局と同じような、厳重な構造設備畜舎に要求するということは、現夫の日本の農村の状態から考えて、あるいは都市におけるこういうヤギや鶏やアヒルを飼うということは、何といってもこれは苦しい家計の補いとして、内職としてやっている。これは家庭の主婦が家事の内職にやっておるというようなことがあるわけなんです。そうしますと、これは少くとも中流以下のサラリーマンなり、零細な国民層家計の補助的な意味においてやっておる。そういう養鶏や家畜飼育について、構造設備について一定基準を設けて、その基準の許可をとらなければならぬということになると、これはやはり国民生活に重大な影響を及ぼす法律であるという要素を一面含んでおることになる。私たち公衆衛生を向上する意味において規制を加えなければならないが、その規制のために、今度は貧しい大衆生活を圧迫するということがあってはならぬと思うのです。そういう関係の配慮というものが、当然この構造設備という面において配慮されなければならぬと思うのですが、その構造設備基準というようなものを政令で定めるのは、一体これはどういうことで定めるのか、どういう基準を持とうとするのか、その点を一つ説明願いたい。
  21. 楠本正康

    楠本政府委員 基準の点につきましては、動物種類が多様にわたっておりますので、それぞれ動物種類に応じて基準を分けていかなければならぬことは、申すまでもございませんが、一応総括的にはこの汚物処理をどうするか、汚物処理施設、及び排水並びに給水の施設、さらに臭気の発散を防止するためにどういう施設をするかというような点を考えまして基準を作りますほか、構造面におきましては、床の構造あるいは畜舎全体の構造、かようなものを一応それぞれ基準にとって参る考え方でございます。ただし、これらがあまり著しく過当になりますと、多少国民生活を圧迫する面も出て参りますので、これらの点はむしろこの処理基準、つまり衛生上の取扱いの注意によって解決するようにいたしたいと考えまして、今回は特に取扱いの規定を強化いたした次第でございます。取扱いならば、本人の心次第で大して経費もかけずにできますので、かような二本建で問題の解決をはかっているのでございます。
  22. 滝井義高

    滝井委員 今説明いただいたような汚物処理とか、排水、給水の施設、臭気の発散防止、床、畜舎全体の構造というようなことになりますと、これは非常にむずかしくなってきて、日本国民の三分の一を占めている三千五百万の国民が住んでいる清掃地域というものにおいては、家庭の主婦なり何なりが、家計の補助的な意味において、内職意味において家畜家禽飼育ができないということにもなりかねないのですが、この点はやはり私たちがこの法律の一番注意をしておかなければならない点だと思うのです。かつて鶏一羽飼って卵を毎日一つ生ませることの方が、学校の先生の給料よりかよいのだという漫画を見たことがある。終戦後にそういう時代があった。非常に卵が不足して、卵の値段が上ったときにはそういうこともあったくらいに、一羽の鶏を飼うといっても、これは家計にとっては非常に重大なことなんです。そういう意味から、鶏なら百羽以上になるとそういうところはかからないと思うのですが、百羽も飼っているということは、養鶏を職業とする人もあるでしょうが、そうでなくてやはりあくまでも内職としている人も相当あると私は思う。こういう点でいつか私は小説を読んだことがあるのですが、鶏どろぼうというのが都市においては一番よいのだ。家庭がどこでも鶏三羽四羽飼っていないところはないのだということで、鶏どろぼうをやるという何か小説を読んだことがあるのですが、そういう点で都市には相当鶏を飼っているのですが、こういう点で今度は取扱いの規定の強化をしたということになりますが、だんだんそういう取扱いの規定を強化するということになると、養鶏をやらなくなってくるということにもなる。ここに専門員室の方からもらいました資料を見てみましても、家畜伝染病予防法の十一条に「化製場においては、農林大臣が家畜の伝染性疾病の発生を予防するために」とあって、化製場についての構造基準を書いている資料があるのですが、化製場なんということになると、これは一つの職業になって、これは相当強い基準をもっても大衆生活を圧迫することはないと思う。ところが家畜家禽ということになりますと、牛一頭、馬一頭といっても、牛や馬を持つ人というものは、牛ならば当然乳をしぼるとか、あるいは農業にとって一番大事な農耕用の家畜として飼っていると思うのです。そういう点でこれはあまり厳重な基準をするということになると、それらの三千五百万の国民は、牛や馬やヤギも飼えないというような結果も出てきて、これは農業委員会等の関係も出てくると思うのですが、そういう点の調整、いわゆる農林省等との調整につきましては、この法律を作るについては十分連絡の上こういうことにしたのかどうか、その点を一つお伺いしたいと思います。
  23. 楠本正康

    楠本政府委員 これはまことに御指摘通りでございまして、実は私どもは取扱いの観点あるいは単なる衛生上の観点から申しますと、少くとも特別清掃地域においてはかようなものを飼わないことが一番手つとり早い方法だと存じます。しかしこれらの点につきましては、国民生活の点等からも考えまして慎重に考えなければならぬという立場から、さらに特別清掃地域内のごく一部を限りましてかような規制をいたすことといたしたわけでございます。御参考までに申し上げますと、現在全国にかような対象になります家畜類の総数は約一千万余りになっておりますが、しかしながらそれらのうち、特別清掃地域内に飼われておりますものが、約四十八万頭あるいは八万羽でございますが、しかしながら今回のこの法律によりまして特別清掃地域内を若干さらに除外するものが出て参りますので、部分調査の成績から集計いたしますと、大体二十四万頭程度対象になって参ります。これは全国数のわずかに二・五%にすぎませんので、かような観点から考えましても、著しい国民生活の圧迫とはならぬと考えております。なお私どもはこれらの内容を定めます場合には農林省とも十分連絡いたし、相談をいたしまして、その結果かようなことで調整をつけたわけでございまして、完全に意見は一致をいたしております。
  24. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、今の御説明で大体わかったのですが、特別清掃地域の中で四十八万頭あって、そのうち対象になるものが二十四万頭と申しますが、この二十四万頭というものは牛や馬や豚は一頭、ヤギは四頭、犬は十頭という、この基準に当てはまる数が二十四万なんですか。
  25. 楠本正康

    楠本政府委員 さようでございます。
  26. 滝井義高

    滝井委員 大体それでわかりました。二十四万を飼っておる人たちが、一応この法律対象になるということになるわけなんですが、そうしますと、対象地域の人口は三千万人でございますが、この中で今度は、これを人数にいたしますと二十四万を飼っておる人の数というものが出てくると思いますが、これはどの程度の世帯になるのですか。
  27. 楠本正康

    楠本政府委員 この件数は明らかになっておりませんが、大体牛、馬等は特別清掃地域の中においては、一頭程度が普通でございます。また豚にいたしましても、そう多数に飼っておるというところもございません。ただ家禽類につきましては、これは五十羽以上ないし百羽ということに相なっておりますので、これらの点から考えますと、必ずしも件数はさように著しく多くはない。もちろん私どもが従来調べました範囲におきましては、先ほど先生の御指摘家計の助けに、多少内職的にしておるというものは、これはもっぱら家禽類でございますが、この場合は鶏ならば百羽をこえるというようなものは、ほとんど見られないのでございまして、要は職業的に行なっておるものが主たる対象であるということは当然でございます。
  28. 滝井義高

    滝井委員 どの程度の世帯が、そういう二十四万の家畜家禽対象になるものなのか、ちょっとはっきりわからないのです。どうしてそういうことを申すかと申しますと、実はわが国においては蛋白資源の確保の上からやはり畜産の奨励というものが、国の相当重要な国策でなければならぬと思うのです。そうしますと、法律でいろいろ規制を加えて構造設備等に基準を与えるということになって、もしこの数が非常に少くなるということになれば、畜産奨励の意味から、政府はある程度そういう構造基準設備基準に合致するような、ものに改造せしめるためには、ある程度の奨励的な補助金というものも、場合によっては考えなければならぬところが出てくると思うのです。そういう意味で、私はどの程度対象になるか、その世帯が知りたいと思ったわけであります。そうしないと現実において、必ずしも養鶏等が非常にもうかるというような仕事ではない。蛋白資源は、日本は四方海で、李承晩ラインや日ソの漁業関係あるいはいろいろの面から八方ふさがりですから、やはりこれは当然畜産によって蛋白資源を補給するということも考えておかなければならぬ、そういう大きな土俵の中における一つ法律規制、こういうことを考えておかないと、単に厚生行政の面だけからものを判断をいたしてやっておると、日本の大きな畜産行政というものを誤まる傾向が出てくると思う。そういう意味で、私はやはりもっと明白にそういう点をしていただきまして、そうして構造設備等に義務的なものを課するとするならば、規制をするとするならば、それに対してやはりある程度の反対的な給付という面も考慮することが、政治としては必要じゃないかという点から、私は今のような点を御質問するわけなんです。そういう点は、当然もしこの構造設備法律的に規制することによって養鶏業者なりあるいは養豚業者等が相当の打撃を受ける、そうして日本の蛋白資源、特に都市における蛋白資源の供給の上においてそれが一つの険路となるということになれば、補助金等も考えなければならぬと思うのですが、そういう点は考慮をし、検討したことがあるのですか。
  29. 山下春江

    山下(春)政府委員 先ほどから滝井先生の御質問を伺っておりますが、その中で、最後におっしゃった蛋白給源としての考え方あるいは内職にやって家計の助けにしておるというような点を全部総合いたしまして——私の申し上げるのはまことに常識論でございますが、楠本部長が、長年研究いたしました相当明確なデータもあるのでありますが、その規制がやや厳重な規制だということは、これは環境衛生の立場からも考えたのでございますが、そういう規制をいたしました畜舎等において、たとえば乳牛一頭を飼っておるといたしましても、この乳牛はそういう家庭であれば、相当せっぱ詰まった−これがあるときは一斗出るあるときは五升しか出ないということになれば、家計の計算も立たないわけになりますが、それが常に一斗なら一斗ずっと平均して出るためには、その規制の上に立って、畜舎構造した中で飼い決すことが、蚊やハエの妨害を受けますことによって、非常にその生産が不順になるということがデータに出ておるのでございますが、そういう意味からいって、むしろ家計の助けにするためには、鶏がある日は産んでいたが、ある日は産んでいないというようなことが、蚊とハエに災いされているという点が研究の結果データにはっきり出てくるところかろ見ますると、ぜひともこれはそういうふうになさることが、最初ちょっときついようでも、結局家計の上には平均的な数字が出てくるということになろうと思います。しかしながらこれまで、特に豚のごときは、畜舎などについてほとんど考えずに、そこらのすみにちょっとした掘立小屋でということであろうと思いますから、それを改造するについては、多少の困難を伴おうと思いますが、今申したようなデータによって、収入を平均的に安全に確保するためには、そういうところで飼育することが環境衛生上よいのみではなく、経済的にもその方がよいというデータが出ておるのです。しかしながらなお困難な問題が実施の上に起って参りましたら、研究いたしたいと思っております。
  30. 滝井義高

    滝井委員 これでへい獣の方は終りたいと思いますが、今度の法律によりまして、少くとも広義の家庭から出る悪臭、悪液というものは、清掃地域というような大都市的な形態を備えておるところのものは、取締りができるようになりました。そこで、これと関連して問題なのは、政治というものは、こういう小さな養鶏や家畜をしておるものを規制することは、きわめて早期に確実に行われてくるのですが、同じそれらの清掃地域における工場、鉱山等の世にいう鉱害については、政府はどう考えておるかということです。私は、まずそういう弱い者をいじめるような法律というものはいつも先に出てくるけれども、大きいものの害を規制をしていく法律というものは、これは調整々々でなかなか出てこない。むしろわれわれは、豚や鶏から出てくるところの悪臭よりも、工場の煙突から出てくるところの煤煙の方が、さらに大きく大衆に公害を与えておることは、だれが見ても常識だと思うのです。ところがそういうものが遅々として出ないというところに、私はやはりさいぜん申しました内閣首脳部おやじ教育というものが必要なわけです。これは前国会以来、少くとも鉱害防止というものは問題になっておった。ところが、むしろ問題にならなかったこういうへい獣処理場等に関する法律の一部を改正する法律案の方が先に出て、大きな鉱害の防止法がなかなか出ないということは、矛盾しておると思うのです。そこでこれを機会に内閣としては、今度の国会には間に合いませんが、各省の間の調整をやり、あるいはそれらの工場、鉱山を経営しておる業者との折衝を終えて、少くとも次の通常国会には、鉱害防止に関する法律が出せるか出せないか、この点を一つお聞きしたい。
  31. 山下春江

    山下(春)政府委員 小さいところ先にいじめてかかったというお言葉でございますが、実は厚生省は、蚊とハエをなくするということに対しては、異常な熱意を持っておりまして、これはぜひともやりたい。今日では、そのことについて相当な皆様の御理解も得られるようになったことを、非常に喜んでおりますので、決してさようないじめてかかったのではございません。お説の鉱害ということに対しても取っ組んでおります。現に川崎で学校の子供に木の葉を書かせたら、褐色の木の葉を書いたということでございます。緑というものは、子供にはっきり認識をされていない。それは、朝夕見る木がみんな灰がたまりまして、緑の色をしていないからだというようなことを、私は川崎のPTAの役員の方から聞きまして、非常に遺憾千万に思いました。この問題については各方面と折衝をいたしまして、日本のいわゆる工業生産ということに対しても、やはり配慮をいたさなければならぬが、さりとて煤煙等による鉱害をそのまま放置しておく意思は毛頭ございませんので、これに対しては十分研究をして進めておりまして、近いうちにその成案を得て、御審議を願うようにいたす考えを持っております。
  32. 滝井義高

    滝井委員 緑の葉を褐色に書いた子供があるそうですが、私の方の地域では、川の流れを黒に書く子供がやはりあるのです。というのは、川が炭鉱から出る悪水のために、まつ黒なんです。従って黒い色で川を書く子供があるのです。そういうように、やはりなかなか子供の教育の上においても大問題であるように、それ以上に、都市環境衛生というものに非常に大きな害を与えておるのが、やはり工場、鉱山から出る煤煙や廃液だと思うのです。と同時に、最近は先般の委員会でも問題になりました、放射能を含んでおるところのちりの問題等も、重要な問題としてやはり環境衛生上、急速に取り扱わなければならぬ問題です。そこでせめて次の通常国会には、政府が責任を持って、そういうものを出せるか出せないかということの明言を一つ得たいと思います。それはどうしてかというと、こういう家計の重要な支柱としてやっておるところの家畜家禽飼育についてこれだけのものが出たのですし、政府は今度の国会には出すというお約束が前にもあったにもかかわらず出てこない。これは私は調整できないむずかしい問題があれば、そのできない問題は、次の法律の修正に譲ってもよろしいのです。日本環境衛生をりっぱにするためには、まず何よりも家畜悪臭よりか、工場鉱山から出る煤煙や汚水の方が先なんです。これは日本の水産業にも大きな影響を与えておりますし、そのほかたとえば出てくる煤煙のために、特に花弁、園芸あるいは高級野菜等の栽培等には重要な影響を与えておる。そういう点で、家畜というものは小範囲にしか影響が及ばない、しかし工場鉱山というものは、実に広範囲にわたって悪影響を及ぼしておりますから、政府は次の国会には、そういうものを出すか出さないかということの明言を得ておきたいと思います。
  33. 山下春江

    山下(春)政府委員 次の通常国会に必ず提案をいたすことを目標として、ただいま作業を進めつつでございますので、提案をいたす覚悟でございます。
  34. 滝井義高

    滝井委員 ぜひ一つ次の通常国会には、むずかしい問題は保留してもけっこうですから出していただきたい、また出すという御言明を得たので、次に移りたいと思います。  次には採血及び供血あっせん業取締法案について肝心の要点だけをお尋ねいたします。  最近採血及び供血というものが、あらゆる意味においてクローズ・アップをされて参りました。今までは採血をするということは、多く医師のみが、急に貧血あるいは出血をした患者等に対して輸血するということが、われわれの普通常識的に行われておったことなんです。ところが最近は大衆の窮乏化につれて、あるいは学生のアルバイト等が非常に多くなったために、学生あるいはニコヨンの諸君が、生活費をかせぐために供血をやる、こういう新たな事態がそれに加えられてきた。いま一つは、血液によって作るところの血液製剤は、多く緊急なる輸血をやる場合に、生血が得られないので、その生血のかわりに形を変えて、保存して使用ができるという形で作るというか、とにかくそういうなまの血液以外の保存血液あるいは人血漿というようなもので、輸血の形を作っていくということでしておったわけですが、最近はそれらのものがさらに今度は化粧品にも用いられてくる、輸血、供血ということを中心として、問題が非常に広がってきたわけです。一方においては生活のかてとして血液を売るという新しい事態が起ってきている。一方その血液を使うという面においてはこれが人間の生命を救うばかりでなくして、実にお化粧にまでそれが原料として使われる、こういう非常に幅が広くなってきたということなんです。ここにおそらく採血及び供血あっせん業取締りの法律が政治の舞台に登場してこなければならぬということが起ったと思うのです。そこで問題は、そういう意味から考えてみますと、まず第一にわれわれが考えなければならぬのは、そういう学生やニコヨン諸君がアルバイトのかわりとして、あるいは生活をささえるかてとして血液を売っておる、それらの諸君をいかにして保護をし、ありせん業者から搾取をされないような姿を作るかということが、まず第一にわれわれが考えなければならない問題だと思うのです。そこで当然これは保健衛生やその他それらの人を保護する立場から対策が打ち出されなければなりませんが、その対策を御説明する前に、学生やニコヨン諸君がどういう形で供血をしておるか、供血者の実態と申しますか、そういうところをまず御説明いただきたいと私は思うのであります。
  35. 森本潔

    ○森本政府委員 ただいま御質問の供血者の実態でございますが、これは全国こ約百五十ほどの供血あっせん業者がございます。これは通常輸血協会とかいう名前を用いておりまして、多くは会員制度でございますけれども、そのあっせん業者に供血を希望する者を会員として登録をさせておきます、そうしてそれがなま血の輸血の必要な場合病院診療所よりその輸血協会へ連絡をいたしまして、その要求がありましたときに、協会の方では登録をしておる者をあっせんして出しておる、こういう形になっております。その数字はこの資料にもございますように、百五十のあっせん業者につきまして、約五万人ぐらいの会員と申しますか、常時なま血を提供する者があるようでございます。その内訳は学生が五〇%それから労働者が約三〇%、無職の者一二%、その他、こういうような状況でございます。
  36. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと現在一応供血あっせん業と申しますか、そういうものは百五十ある。それに五万人の会員がおって、学生がその中の半分、約二万五千人を占めておるということですが、問題はこれが会員制度であるということです。まあ春画や何かを見るのにもよく会員制度というものがあるけれども、私は人間というものはだんだん一つの刺激を求めるとさらに強い刺激を求めるようになると思うのです。これが私は会員制度というものを維持していく一つ要素になっていると思うのです。簡単な刺激ではいけない、だんだん強い刺激をやって、その会員を逃がさないようにする。こういうようにだんだん強い刺激を求めなければならぬというのは、もう一つの人間の習性としてそういうものがあるわけです。春画や何かで強い刺激を求めるくらいならば、風紀は乱すかもしれませんが、まあまあ生命には関係ないでしょう。しかしこれは会員制度であって、一カ月に一回でしょうが、少くとも二百か三百とるでしょう。会員制度であるということ、しかもその会員である人たちが学生と労務者の非常に生活に困っておる層であるというところに問題があるのです。そうしますと、これらの五万人の人たちはいわゆる搾取という言葉がほんとうによく当てはまると思うのですが、これはもう血を吸われちゃってあとはなきにひとしい状態だ。おそらくこの会員制度の中にも、私ちょっと今資料か統計か何かで見たのですが、だんだん血液が薄くなって、とれない状態の者が出てきておるはずなんです。これは私たち自身がわれわれの同胞をきわめて反省をしない形で殺していくようなものなんです。吸い取って貧血にしていくという、こういう事態は私は許されぬと思うのです。これに対する保護的なことを今質問したら御答弁なかったのですが、こういう五万人の会員について、供血なり採血をするに当って、衛生的に見て厚生省は何か具体的に保護をやっておるのかどうか、あるいは規制を加えておるかどうかということです。こういう点、一つ説明を願いたい。
  37. 森本潔

    ○森本政府委員 ただいまの供血をする者に対する経済上あるいは健康上の保護の問題でありますが、その点が実は今回提案いたされましたこの法案一つの大きな題目でございます。まず第一は、健康上の保護ということが必要でございます。この点につきましては、一応現行法におきましては、医師が採血いたします場合に本人の健康診断をいたしまして、その者が支障がないという場合に限って採血するようになっております。それとほぼ同様の趣旨のことをこの法律の中にもうたっておるわけであります。それから経済上の保護の問題でありますが、これは従来は野放しでございまして、それにつきまして何らかの措置を講じなければならぬということは従来から問題になっておるわけでございます。従いましてこの法案の第七条におきまして問題になりますのはあっせんの手数料の問題でございますが、これにつきましては従来野放しでありましたものについて、一定基準をこえて手数料を請求してはならぬ、あるいはいかなる名白であっても基準以上の報酬を請求しれはならぬという規定をいたしまして、被採血者の経済的な保護をはかる、かようにいたしておるわけであります。
  38. 滝井義高

    滝井委員 事前の体格検査というものが血液を提供する場合には必要なことは当然でございます。ところかそれだけのことでは——ここに会員になっておる五万人の諸君は、現実に食えないから血液まで売っている。私は血液を売るというところに行くまでには、やはり普通のアルバイトで行き詰まり、あるいはニコヨンの諸君ならばあぶれが続く、こういうことのために、もうそれ以外には道がない、一番簡単な方法はここなんです。その次には、女性なら売淫ということになるかもしれません。しかしもしこれが男性の血を売っておる人ならば、私はこれは一種の、御婦人でいえば売淫だと思うんですよ。失礼な言い分ですけれども、それと同じ程度にまで転落しているのじゃないかと思うのです。そうしますと、これは事前の体格検査を必要とするというのだが、体格検査ではねられれば食っていけない層なんです。従って私はこういう面から考えて、少くとも百五十のそういうあっせん業をやっておる人のもとに五万人の会員があるというこの実態は、もっと会員のほかに臨時的に提供しておる人が相当あると思うのです。こういう臨時的に血液を提供しておる会員以外の層というものは、一体どの程度あるのか。たとえば急に私なら私の家族が、手術の結果、輸血を必要とする。たまたま患者の血液型がAであったが、だれかAの人はいないかといって探す、そういうものではなくして、生活が困っておるために、ちょいちょい血を売るというような層が大体どの程度あると推定せられるのか。常習的な会員は五万とはっきりした。その以外に、常習ではなくして、生活が困っておるためにときどき血を売るという層がどの程度あると御推定になっておりますか。
  39. 森本潔

    ○森本政府委員 血を取ります場合には、およそ三つの場合が考えられるわけでございます。今の輸血協会等におきまして、直接生血をあっせんする場合が一つ。それから手術に際しまして縁故者等から輸血をする場合が一つ、この場合はほとんど問題はないと思います。それからもう一つの場合は、先ほどお話がございましたように、血液銀行におきまして血を取りまして、それを保存血という形にしておく、そしてそれを患者に使う、こういう場合がございます。そうして先ほど申しました百五十のあっせん業者があって、五万人の会員があってやっておる、こう申しましたのは、これは大体生血の輸血の場合でございます。それから、第二の縁故者等によります輸血の場合、これはちょっと数字がわかりません。それから第三の血液銀行等に行きまして血を売るという数字は、延べ数約六十万と推定いたしております。この数字は血液銀行の保存血の製造能力の数字から逆算いたしまして、延べ約六十万という数字を持っております。延べでございますので、実数にいたしますとどのくらいになりますか、はっきりしたことは申し上げられませんが、延べではかようになる、かように考えております。
  40. 滝井義高

    滝井委員 六十万くらい血液銀行にやっておるということでございますが、この五万人の会員制度でも、これを延べにしたら、私はこれは相当の数になると思うのです。たとえばこの五万人の人が一カ月一回ずつ十二カ月やれば、これだけでももう六十万人になることになるのです。そうしますと、このあっせん業と血液銀行との関係はどうなっているのですか。
  41. 森本潔

    ○森本政府委員 あっせん業と血液銀行は、ほとんど実際上関係はございません。あっせん業者はほとんど直接病院診療所等へ参ります。それから血液銀行へ参りますのは、全然別個のルートで参っておりますので、両者の間には関係がないと思います。
  42. 滝井義高

    滝井委員 そこで少し端折って急ぎますが、今のように大体血液を供給しておる側の実態がおぼろげながらわかってきたわけなんですが、何せ供給をする個々の人々の生活実態を見ると、きわめて生活の困窮者が多い、あるいは学生である、こういうことなんです。こういう実態を私は私企業にまかしておくということは、これは非常に大問題だと思うのです。その人たちが非常に強いものであるならば、私は私企業にまかしておいて差しつかえないと思う。ところが実態は、学生やニコヨンや労働者の諸君であるということになりますと、これはやはり大問題だと思うのです。ちょっと参議院の記録を読んでおりましたら、参議院でもこれは何か国営の問題が出ておったようでございますが、やはりこれは何らかの公的な機関で——国営という必要はないと思うのです。何か於けの機関でこれを一手に引き受けてやる必要があるのじゃないか。たとえば地方であるならば保健所を中心にやるとか、何かこういう形をとる以外には、現在のような供血者が存在する限りにおいては、非常に問題だと思う。こういう法律をお作りになるならば、当然厚生省も次の段階においては何かそういうものをお考えになっていると思うのですが、それに対する構想はどうですか。
  43. 山下春江

    山下(春)政府委員 この問題は、私個人といたしましては非常にいやな問題でございまして、私は、血を高く買いますというポスターを見ますと、全く情なくなってくるのが、いつでも私に与える感じでございますが、滝井先生はお医者様でございますから、相当科学的にものをお考えになっていると思いますが、私は少しセンチメンタリストで、こういうことは何とか最小限度に食いとめなければならない、人命を助けるためにやむを得ざる措置だという、その措置がだんだん人命を断っているということは、これは大へんなことだと私は思います。これは個人考え方でございますが、人命を救うために必要なことでございますが、滝井先生指摘通り、どうしてもこれはその健康上の観点と、それからその救済の観点と両方含めた意味をあわせつつ、公的機関で行わねばならないし、行うべきものと固く信じておりますので、すみやかにそういうふうな措置に移行するようにいたしたいと思っております。
  44. 滝井義高

    滝井委員 ぜひ厚生省も一はだも二はだも脱いでいただいて、私はある程度公的な性格なものに供血というものはやるべきだと思うのです。公的なもので取り扱うようにぜひこれはしていただきたいと思います。  そこで一体しからば現状の私企業にまかされている供血のあっせん手数料というものは、大体幾らぐらいが相場になっているのか。それから一回の採血量というものは、常識で考えられますが、現状ではどの程度のものが一回に採血されているか。その買い入れり価格は、四百円とか四百五十円とか、いろいろあります。これは健康保険と普通とは違うと思いますが、そういう血液の買い入れ価格を、全国的に見た平均的な値段でけっこうですが、これを教えていただきたい。
  45. 森本潔

    ○森本政府委員 採血量でございますが、一人につきまして大体月一回二百CCないし三百CCという量でございます。一回の採血の価格でございますが、これはそれぞれの場所によって非常に違っておりますし、供給の多いところは安い、それから供血者の少いところは高い、こういう状況でございます。一応百CCにつきまして、低いところが二百五十円、高いところが五百円、こういう開きがございます。  それから手数料につきましても、これも正確な数字はつかめませんが、種種雑多でございますが、安いところは一割、あるいは高いところは二割、一心名目上の手数料はさようになっているようであります。
  46. 滝井義高

    滝井委員 大体あっせん手数料、採血量、買い入れ価格等が常識的にわかりました。そこでそういう形であっせんをされてくる血液の用途なんですひ、この法律を見ますと、血液製剤またはこれらの副次的製造物、こうなっております。血液製剤またはこれらの副次的製造物というのはどういうものか、これが一つ。またそれ以外の物とは一体どういうものなのか、これを御説明願いたいと思います。
  47. 森本潔

    ○森本政府委員 血液製剤というのはどんなものかということにつきましては、この法律の別表にございますように、六種類を考えております。一つが保存血液、次が人赤血球沈層——これは別表に載っております。これが血液製剤そのものでございます。それから血液製剤を作ります場合に副産物としてできるものがございます。それは一つの例を申し上げますと、血液よりガンマー・グロブリンというもの——これは血液製剤になりますが、それを作ります。その残りの血漿よりプラスマン・パック、これがよく化粧品に混入されておる、こういうものでございます。通常一般に副産物として使われておりますのは、このパックだけのように考えておりますが、これが副産物として出てくるわけでございます。  それ以外の物は、この法律では禁止をいたすことになっておりますし、現在でもほとんど作られておりません。通常これは化粧品に使われておるという話がございますが、それは今申しましたガンマー・グロブリンを作った残りの血漿よりプラスマン・バッグが化粧品に使われるということをさしておるのでございまして、それ以外の物は現在におきまして実際使われているものはないように考えております。
  48. 滝井義高

    滝井委員 それ以外の物は現在ないそうですが、そういう論議があったので、ちょっと私もどういうものか考えつかなかったのでお聞きをしたわけです。それ以外の物がなければけっこうです。  次には需要と供給の関係でございますが、現在血液の値段というものは供給の多いところが安くて、非常に供給の少いところは高い。これはきわめて経済の原則に当てはまった動きをしておるのですが、全般的に見て血液の需要と供給の関係というものはどういう状態にあるのか、これは均衡がとれているのかとれていないのかということであります。と申しますのは、この法律においても第四条の第二項に、「厚生大臣は、前項の許可の申請があった場合において、次の各号の一に該当するときは、同項の許可を与えないことができる。」と書いて、その一号に「製造しようとする血液製剤等の供給がすでに需要を満たしていると認めるとき。」こういうことで、経済の原則がここに入っておるわけなんです。需要と供給の均衡の問題が入っておるわけです。これは当然厚生省が、法律の中に需要と供給の均衡がうまくとれておるかとれていないかによって、許可をしたり許可をしなかったりするという、こういう経済原則をここに持ち込んできておる。そのためには当然需要と供給との関係を絶えず厚生省は把握をしておかなければならないことになる。もし需要と供給の関係が均衡がとれているという認識に立つとしますと、同じ百グラムの血液が、ある地域においては二百五十円であり、ある地域においては倍の五百円もするということはちょっと許されぬような感じがするのです。需要と供給の関係がきわめてアンバランスであるために、地域によって高かったり低かったりすることになる。ところがこれを厚生大臣が需要と供給のバランスをじっと見て、そうしてその状態によって血液の製剤を作ったりすることが調整できるような法律の書き方になると、これはやはりなかなかそういう点等の問題があると思うのです。それでまずその均衡の問題を御説明願いたい。
  49. 森本潔

    ○森本政府委員 まず最初に現状を申し上げたいと思います。おもに保存血について申し上げますならば、血液製剤の大部分は保存血でございますから、これについて申し上げればいいのでありますが、必要量でございます。保存血の必要量というものの推定になりますが、これは大体一応のめどといたしまして入院患者の二%というものが外科手術その他の関係によりまして、血液の補充を要するということになっております。従いまして現在五十万ベットがございますれば、それの二%が一日にいるだろう、こういう推定ができるわけであります。現在日本全国におきますところの血液の生産量を見ますと、大体その所要量の三分の一が保存血でまかなわれておるという状況でございます。従いまして全国的に見ますれば、現在におきましては、需要に対しまして保存血の供給力は、三分の一であるという一応の目標でございます。それからこれを地域別に一つ考えてみると、この保存血は非常に保存期間が短こうございまして、一応二十一日ということになっております。従いましてただいまの輸送状況からいたしますと、どこか一カ所で作って、全国くまなく配給するということは、事実上不可能でございます。従いまして、たとえば北海道に一つのブラッド・バンクを持って保存しておるということになると、大体北海道ブラッド・バンクは北海道地域の需要をまかなっておるというように、大体ブロックごとに供給する圏内がきまっておるわけでございます。従いまして現在においてもそうでございますが、将来におきましても、各地域ごとにそういう需要と供給の問題が起ってくると思います。全国的に見まして、製造いたしたものが各地区にうまく参りまして供給超過になるという場合には、それ以上製造する必要はないわけであります。それから各地区ごとにつきましても、そういうように需要と供給が見合うかどうか、こういう判断をしなければならぬという考えでございますが、一応のめどといたしましては、一つのブラッド・バンクの供給圏というもの、その供給能力というものと、それからその供給圏におきまするところの需要量の推定、この両者をにらみ合せて需給のバランスの状況を考えたい、かように考えております。
  50. 滝井義高

    滝井委員 今需給のバランスの御説明がありましたが、少くとも需要血の三分の一程度が保存血であり、しかも保存血が二十一日間の寿命がある、こういうことになりますと、これはわれわれがすぐに連想することは人工受精の問題です。これは優秀な種を飛行機で持って行くことが考えられておるわけです。人工受精というものは、保存血よりもっと受精の可能の期間は短かいわけです。そうしますとやはり東京なら東京に公的の一つの血液銀行を作って、そして各地域に支店を置けば、内地の航空路も相当発達したのですから、それによってこれは地方の需要を一々満たすことも技術的には可能だと思うのです。保存血が多く使われておるというこういう現状から見て、しかも足りないものはその縁故者その他の鮮血を用いることによって、これは緊急の間には合うと思うのです。これが三日か四日ということになるとなかなかですが、まあ三週間もてるということになれば、私はそういうことも可能だと思うのです。そういう点から考えても、やはり技術的にも公営でやることが可能だということが出てくる感じがするのです。そこで、そういうことになると、当然問題になってくるのは血液銀行です。現在血液銀行の実情がどういう状態であるのか。まあ何か大実業家が血液銀行を作るのだということを新聞等で見たことがあるのですが、そういう血液銀行の実情、またその血液銀行に対して厚生省はどういう監督の仕方をやっておるのか、これをちょっとお聞きしておきたいと思います。
  51. 森本潔

    ○森本政府委員 血液銀行の数でございますが、これは二種類ございまして、一つは一般の医療機関全部に供給するための血液銀行、もう一つは院内の患者のみに対して供給するところの血液銀行でございます。それで一般に問題になりますのは、一般に供給するところの血液銀行でございまして、院内需要のものは、さほど問題になっておりません。一般に供給するところの血液銀行の数は二十三ございまして、これは製造所の数でございます。そのうち、先ほども公立でやってはどうかという御意見がありましたが、そういう公的なものでやっておるもの、すなわち都道府県立であるとかあるいは市立、それから公益法人、これで経営しておりますのが二十三のうち十二、それから会社でやっておりますものが十一、こういう内訳になっております。それから院内需要のための製造所でありますが、これが日赤、国立病院その他の病院を合せまして二十九カ所ございまして、これが血液銀行の現状であるわけです。  それから先ほどお話がございましたが、大きなブラッド・バンクを作って、一カ所でまかなうという考え方でございますが、これは一般の普通のものからいたしますれば、そういうことが可能でございますけれども、血液の供給となりますと、なかなか簡単に集まるものではございません。やはり各ブロックごとにそういう施設が必要ではないだろうか、供血者の確保という面から見ましても、各所に分散させておく方法がいいじゃないだろうかと考えております。
  52. 滝井義高

    滝井委員 血液銀行で一般的なものが今二十三カ所あることになっておりまして、供血者を広く募るために、その機関を分散させなければならぬということですが、この血液銀行に供給しておる人たちは、さいぜん六十万ということでございました。この六十万の層は、やはり学生や勤労者が多いのですか。
  53. 森本潔

    ○森本政府委員 血液銀行に対する供給者の階層でございますが、若干異なった比率になっておりまして、日雇い労働者が三二%、日雇い労働者以外の労働者と考えられますものが約三〇%、無職のものが一八%でございまして、学生は二・七彩程度でございます。従いまして輸血協会と血液銀行におきます供血者の比率は、よほど異なっております。
  54. 滝井義高

    滝井委員 まあ学生がいないというだけで、ほとんど生活困窮者的な日雇い労務者あるいは普通の労働者、あるいは無職という、これだけでも八割なんです。そうしますと、ますます供血あっせん業についておる、その会員に属する諸君と、血液銀行にいっておる諸君とは、きわめて類似の層であるということが明白になってきた。そうすると、まあ院内でやっておる日赤、国立病院等の二十九カ所のものは、そう私は問題はないと思うのですが、一般的なものという中の会社ですね。会社でやっておる十一のものは、一体これはどういう実体のものなんですか。しかもそこから供給される血液銀行に占める比率は、どういう形になっておりますか。
  55. 森本潔

    ○森本政府委員 この保存血の供給総数の中の、株式会社で製造する量でございますが、ちょっとただいま手元に正確な数量を持っておりませんので、これは別途調べればわかりますから、後ほどお知らせいたします。  それからこれに対する監督でございますが、これは多く薬事法によりまして、医薬品の製造業という一つの型に該当するものであります。その面で現在におきましては、一般の医薬品の製造業と同様な規制をいたしておるわけであります。それから今後この採血法ができますれば、採血者の健康保護、それから採血量の問題等について、新たに規制をする、こういうことになります。
  56. 滝井義高

    滝井委員 それでは、血液製剤のこまかいことにつきましては、いずれまた、薬価基準等に関する小委員会でお聞きする機会もありますので、これでやめにします。  御存じのように健康保険では、生血にしても保存血にしても、百二十CCまでは幾ら、二百CCまでは幾らときちんときまっておって、百二十CCの生血四十五点、保存血は二百CC三十三点ぐらいだと思います。しかし血液を供給する方の値段というものはまちまちなんです。それを病院なり診療所が血液を受け取って、今度患者にやるときには、ぴちっと健康保険の値段がきまっておる。ところがあっせん業者には公定価格がなくて、需要供給によって高低があるということは、これは非常に矛盾があると思うのです。当然これはこういう血液にも、公定価格といっておかしいのですが、何かやはりやらなければならぬ段階にあると思うのです。ちょうどこれは、血液というものが薬と同じ取扱いをされておると思います。薬というものは野放し、ところがたびその薬が医者にくると、ぴちっと点数できめられておる、健康保険については血液も同じようにきめられてきておる。これはやはり薬と同じ効果を持つものだから、薬と同じ扱いになるんでしょうね、これが薬価基準に出るところを見ると。こういう点から普通の薬よりか、さらに血液の供給における値段の公定化ということは、非常に必要なことじゃないかと思います。それで公定の値段がきめられておると、供給する側もその値段さえ知っておけば、そう搾取されることもない。こういう点でやはりこれは野放しであることに問題があると思う。野放しであるがゆえに、それが人間の生命を救う以外のお化粧等に流れていく可能性も出てくる。これはきわめて簡単に、医者でなくてもたれでもが血液がとれる、こういう点でやはり値段等についても、おそらく血液銀行についても野放しだと思うのです。供血する血液の値段というものは二百五十円から五百円の間を上下してきているだろうと思うのですが、そういう点で健康保険法においては、明らかに使用するときには、生血、保存血においては四十五点とか三十三点とかいうようにぴちっときめられている。こういう点で何かあなたの方で、その血液の値段を天下に周知せしめる意味において、百グラム大体この程度だという方法を、この際とることが必要だと思うのですが、そういう点はどうですか。
  57. 森本潔

    ○森本政府委員 これは非常にむずかしい問題だと思うのでございまして、ともかく血百CCは金何円なりと言ってしまうことは、非常にむずかしい問題でございます。ただ供血しようという人が、この程度の金をいただけるならば自分の血でも差し上げましょうという気持がもとになってきまってくる問題だと考えております。さような意味におきまして、マル公をきめるという考え方はにわかにとりがたいというのが一つでございます。それからもう一つは、先ほども申しましたように土地によりまして相当開きがあるわけでございます。供血する人が多い場合あるいは安く売ってもいいという人が多いところは安くなりますし、そういうことをするのはいやだという人が多い場所、また血なんか売りたくないという人があるところにおきましては、なかなか相当の金を出しても買えない、こういうように特殊事情がございますので、これを一律にする、あるいはまた各地域ごとにきめるということは非常に問題だと思います一しかし非常に買い入れ価格が安い、そのためにだれが見てもああ安い価格で売るのはむずかしいじゃないかという場合もあろうと思います。さような場合を予想いたしまして、法律の五条におきまして、血液の買い入れ価格につきまして必要な指示をすることができる、かような規定も一応入れておるわけでございます。ただいまお話のように地域ごとに血の価格を一定するということは非常に困難だと思います。ただ非常に安く買ったものについては、被採血者の保護という面からして適当な指示をしたらどうか、かように考えております。
  58. 滝井義高

    滝井委員 もうこれで終りますが、この三条の「次の各号に掲げる物を製造する者がその原料とする目的で採血する場合を除いては、」云々と書いて、一号に「血液製剤」、二号に「医学的検査、学術研究等のために必要がある物として政令指定する者、」こうなっておるのですが、「血液製剤」はわかるのですけれども、「政令指定する物」というものがどういうものかということと、それからこれは関係がありませんが、さいぜん化粧品製造に用いるものは残澤物でプラスマン・パックですか、それを化粧品に混入するようですけれども、それ以外には化粧品の製造には何も用いていないというのが実情ですかどうか。この二点をお尋ねして、私は終ります。
  59. 森本潔

    ○森本政府委員 第一点の法律第三条弟一項第二号の「医学的検査、学術研究等のために必要がある物として政分で指定する物」というものでありますが、これは現在これに該当するものは現実にはございません。ただ予想されますものは法医学上の判定用血清を作るというようなことがあるのじゃないだろうか、これは治療用でもございませんので、医学的検査というものに該当するのじゃないかと思いますが、これも現在は作られておりませんけれども、将来こういうものがあり得るのじゃなかろうかという点からいたしまして、これを書き入れたのでございます。さしあたり指定する物としてはこれに該当するものは現実にございません。  第二番目の点で、血液製剤の製造に伴って副産物として得られるものは現在どんなものがあるかということでございますが、現実にございますのは先ほど申しましたガンマー・グロブリンを製造する際に残ります血清からブラスマン・パックが作られる、現実にはこの一例があるだけでございます。
  60. 佐々木秀世

    佐々木委員長 八田貞義君。
  61. 八田貞義

    ○八田委員 時間がないようですから、問題点を端折って質問して参ります。  まずへい獣処理場等に関する法律の方から質問さしていただきますが、概念的に、清掃区域内のこういった畜舎を現在持ってやっておられる自家営業的よ方々、こういったものをいわゆる公衆衛生上はなはだ好ましくない施設であるということで清掃区域内から一掃したいというお考えのもとに、新たにへい獣の法律の中に畜舎というものを入れられたのかどうか、その点です。
  62. 楠本正康

    楠本政府委員 単なる衛生上の立場から申しますれば、特別清掃地域内におきまして畜舎等を設けることは望ましくないことは申すまでもございません。しかし先ほど来お話もございましたように、国民生活と相当関連の深い仕事でもありますので、やむを得ないものとしてこの存在はある程度認めていこう、しかしながら他に迷惑を及ぼさないように、衛生的な基準あるいは取扱いの注意を順守する、またこれを順守させるように指導するということがこの法律の建前でございます。
  63. 八田貞義

    ○八田委員 そうすると現在の施設片行政指導によってだんだん改良していく、そこでこれから新しく出願しようとする者に対してどういうお考えですか。
  64. 楠本正康

    楠本政府委員 畜舎につきましては、新しくできる場合にも定められました一定基準に従っておれば、これは当然実行できるわけでございます。しかしながら実際問題といたしますと、基準等を定めてある一定規制をしなければならぬということになりまするので、勢い営業的に実施する者は特別清掃地域指定地域以外の場所に行くだろうということを期待いたしております。
  65. 八田貞義

    ○八田委員 そこで生活保護費の問題で、乱給という問題が取り上げられておるわけなんです。朝鮮人の生活保護費の乱用についてあとで問題になると思いますが、その乱給の中で朝鮮人が養豚業を非常に広く行なっておって、これが非常に問題になっておると思うのです。実際に朝鮮人による養豚業が何らの規制なく今日まで行われてきておる。これは行政指導によっても監督によってもなかなか規制しがたいのです。そこで六大都市の中で養豚業を営んでおる朝鮮人の数、また生活保護費をもらっておる朝鮮人で、しかも養豚業を営んでおる人、こういったことについてすでに調査されておると思うのですが、その点をはっきりしてもらいたい。何も養豚業ばかりではありません。朝鮮人が生活保護費をもらいながら養鶏業その他のいろんなことをやって、公衆衛生上非常に問題を蔵しておる点がたくさんあるのです。それらについて一つはっきりとお知らせ願いたいのです。
  66. 楠本正康

    楠本政府委員 従来各地に問題を起しておりまして、私どもは逐次処理いたした例が多いのでございますが、これらは御指摘のように主として第三国人等の施設が多いわけでございます。しかしながらそれらのこまかい現在施設をしておる者の数あるいはそのうちさらに生活保護費の対象となっている者の数等は、いまだ調べてございません。まことにごもっともな御指摘でございますので、至急調査して、資料をもってお答え申し上げたいと存じます。
  67. 八田貞義

    ○八田委員 そこで法の中に入って参りますが、第三条でございます。「へい獣取扱陽文は化製場を設けようとする者とこうなっておりますが、このへい獣処理場を設けようとする者というのは、一体法律上どういう人をいっているのですか。これはあとになりますと管理者をあげている場合があります。ところが現行法は「所有者又は管理者」となっているが、そうしますとこの処理場について私は非常に異議があるのです。畜舎の点について、単に「設けようとする者」と書いてありまして、何ら人格ですか、そういうものがはっきりしていないわけです。そこで私はへい獣処理場は許可制度にする、畜舎については届出制度にする、こうなっておるのですが、一体「設けようとする者」というものについて、はっきりと区分されていなければならぬと思うのです。たとえば管理者あるいは所有者あるいは開設者あるいは全然しろうとで一しろうとというと変な言葉になりましょうが、自家営業的な方、こういったように分けて明細しておかぬと、いろいろな問題が起ってくると思うのです。一体この法律の中において「設けようとする者」に対するところの明確な資格規定というものがないわけです。あるものもありますけれども、ないものもある。
  68. 楠本正康

    楠本政府委員 これらの「者」と書いてありますものは、実際にその経営に当りますところの管理者をさしてございます。今回の改正によりまして、管理者と改めましたのも、目的が他の目的で作られましたものが、また所有者がかわりますと、あるいは管理者がかわったために、目的変更として畜舎になるようなものも出ておりますので、かえって取締りに不便いたす。責任を明らかにいたします意味で、管理者と考えている次第でございます。
  69. 八田貞義

    ○八田委員 管理者が開設者であってもいい、あるいは申請者であってもいい、こういうふな広い意味の管理でございますね。私はこの法文を読んでみて、へい獣処理場というような管理者の場合、この場合は、たとえばいろいろな設置条件とか、あるいは公衆衛生学的な条件を付してあるのですから、そのためのへい獣処理場の管理ということになれば、やはり専門家でなければならぬと私は思うのです。そこでへい獣処理場の場合に言うところの管理者は、獣医師をさしているのですか。全然そういった身分的なものについては触れていない。
  70. 楠本正康

    楠本政府委員 身分的なものは全然この法案ではさしてございません。
  71. 八田貞義

    ○八田委員 それから時間がないので簡単にするようにということでありますから、簡単にいたしますが、第四条 の問題です。この設置場所の点でございますけれどもいろいろな設置場所について一、二、三と分けて、こういうところに設置してはならぬ、こういうふうに書いてございますが、「人家が密集している場所」「飲料水が汚染される虞のある場所」あるいは「その他都道府県知事公衆衛生上書を生ずる虞のある場所として指定する場所」こういうふうに書いてありますけれども、具体的の例示ということになりますと、これは非常にお困りになると思うのでありますが、この中で一番人家が密集している場所の除外例としまして、先ほど滝井君もちょっと触れておられましたが、病院、結核療養所などにおいて、盛んに養豚業とかあるいは養鶏業が行われているのです。すると非常に患者に対する面から考えまして、ある規制を加えなければならぬ、こう思うのであります。ところがこの場合、一体結核療養所における養豚業に対して、設置場所としてどこの部分に入って参りますか。また今までそういったことに対して、具体的に何か、これは非常に公衆衛生上悪いというような指示を与えられておったことがあるかどうか、お知らせ願いたいと思います。
  72. 楠本正康

    楠本政府委員 この第四条に示してございます、法律上当然の措置として場所の制限がしてございますが、この第四条は、これは化製場及びへい獣処理場にのみ適用される規定でございまして、先ほど話の出ました畜舎の点につきましては、これは特別清掃地域の中において特に衛生上支障の生ずる場所ということで、たとえば観光地であるとか、あるいは病院の近くであるとか、場所を選んだわけでございまして、従いまして第四条の場所の制限は、これは畜舎にはこの法律では関係がないというように相なっております。
  73. 八田貞義

    ○八田委員 刑罰規定の問題ですが、第十条に今度刑罰規定を設けられているのでありますが、懲役六カ月であったものが今度一年に直した。あるいは罰金刑を非常に多く改正したという、この根拠でございます。これについてお伺いいたしたいと思います。
  74. 楠本正康

    楠本政府委員 これには二つの理由かございます。第一は、罰則は他の法案との関連あるいは他のさまざまな罰則との調整をはかっていく必要がございます。従来、法務省の専門当局に言わせますと、若干この点に欠けていた点があるかに指摘されておりましたので、この点を他の法令との関連において整理したことが一つでございます。第二点は、従来これらの施設がややもすると傍若無人に他に迷惑をかけておりますにもかかわらず、比較的罰則が軽かったという点から、この点を整理したのが第二の理由でございます。しかしながら私どもはいたずらに罰則を強化することによって問題を解決しようという趣旨では毛頭ございません。
  75. 八田貞義

    ○八田委員 そこで私、罰則規定といろいろな畜舎構造設備基準との関係において、いろいろと質問をいたさなければならぬのですけれども、時間がありませんので、それは省略いたしますが、ただ畜舎構造設備基準政令でお定めになる以上、やはり罰則規定との見合いにおいてお考えをやっていただきませんと、ただ経済法規のバランスをとるからこういう方法をとったんだというふうであると、私は畜舎構造設備基準についてもう少し詳しくお聞きしなければならぬ問題が起ってくるわけです。その点については、時間がございませんので、あとで政令でお定めになるそうでございますから、その点についてはまたいろいろとお知らせ願いたいと思うのです。  そこでこの法をずっと見ておりまして、畜舎設備においてアヒルとか鶏とか犬とか入ってきております。ネコについてはこれは規定がないのですが、ネコはどういうふうにお考えになって承りますか。
  76. 楠本正康

    楠本政府委員 ネコにつきましては、従来私どもほとんど苦情処理したこともございませんです。またネコは大体実情からみても、各家庭でネコが好きといっても、そう多数に商売的にこれを飼うということもないようであります。のみならず、ネコは多少集団的になりましても、犬ほどは周囲に迷惑をかけないもののように考えておる次第でございます。
  77. 八田貞義

    ○八田委員 ネコの問題になるといろいろ実は意見があるのですけれども、ただここで私思うのですが、畜舎の問題についていろいろ規制を行なっておられますが、アヒルとか、犬とか、それからヤギ、こういったものは外にずっと出る場合があるのです。ところが最近有機燐製剤とか殺鼠剤をまくので、家畜の被害がたくさんに上っておるわけです。たとえば有機燐製剤をいろいろなふうにまいておくと、そこに入った犬は死ぬわけです。そういった犬が死んだ場合、これは営業をしている人にとっては非常な問題です。そういうことに対して、たとえば補償と申しますか、何か保護的な面がございましょうか。
  78. 楠本正康

    楠本政府委員 御指摘のように、最近農薬あるいは殺鼠剤等によりまして犬、鶏等の被害がかなり出ておりまして、まことに遺憾に存じておる次第でございます。しかしながらこれらのうち、有機燐製剤の農薬及び殺鼠剤のうちのフラトールだけはきわめて危険性が多いことを考えまして、私どもといたしましては、その散布その他につきましていろいろ規制を設けまして、農林当局その他とも十分連絡をして指導いたしておきますが、いまだ徹底の域に達しないことをまことに残念に存じておる次第であります。
  79. 八田貞義

    ○八田委員 そこで、へい獣処理場畜舎の問題に関係いたしまして、日本はこれからどんどん蛋白資源を得るという意味で酪農方面に大いに進出していかなければならぬわけです。特に先ほど滝井委員も言っておりましたように、わが国は魚資源にたよっておりますが、肉資源にたよることが非常に少い。肉の消費というものを諸外国と比較してみれば、たとえば豪州の一年間の肉の消費というものは百十二キロ、アメリカは七十六キロです。ところが日本はわずかに四キロ、こういうように肉の消費高というものは非常に少い。だから、肉消費を大いに高めて、蛋白資源において、豊富な状態に導きたい、こういうことでありますが、一番隘路となっているのは飼料の問題です。飼料について、雑草の資源を大いに利用していこうということが今日考えられておるわけです。大体こういった牧草地帯というものがわが国において五百万町歩くらいあるといわれておるが、この草資源の利用について厚生省は一体どういうふうにお考えになっておるか、またこの草資源の利用について今までは全然考えておらなかったが、今後は大いに指導啓発していかなければならぬというふうにお考えになるかどうか、その点一つお知らせ願いたい。
  80. 楠本正康

    楠本政府委員 全く御指摘通りでございまして、日本の畜産の振興しない点は、その重大な原因といたしましては飼料問題にあるわけでございます。従いまして、飼料といたしましても、なかんずく採草地の開発が不十分であるということによることは御指摘通りでございます。しかしながら、これら採草地の開発問題等につきましては、主としてこれは農林省の所管に属しておりまして、私どもといたしましては、絶えず畜産を振興いたしまして、国民の食生活を改善するという建前で種々農林省と折衝をいたしておる次第でございます。従いまして、今後もよく農林当局と連絡をいたしまして、日本に最もたくさんございましてしかもまだ未開発の採草地の開発及び牧草のいろいろな改良について農林省に強く申し入れをし、相ともに畜産の振興をいたして参りたい、かように考えております。
  81. 八田貞義

    ○八田委員 へい獣処理場の問題についてはこれくらいにいたしまして、次に、採血及び供血のあっせん業取締法について二、三点質問さしていただきます。  この採血及び供血あっせん業取締法の目的のところで、第一条に、「被採血者の保護を図ること」というふうに書いてございますが、被採血者の保護というのは、一体どういうことをお考えになってこういう条文ができたか、それは具体的にどのような保護を加えようとするのか、この点についてお知らせ願いたい。
  82. 森本潔

    ○森本政府委員 この被採血者の保護につきましては、経済的な保護と健康上の保護と二つあると思います。それでこの条文の書き方といたしましては、健康上の保護につきましては、主として、その前にございますように、「血液製剤の製造等に伴う採血によって生ずる保健衛生上の危害を防止し、」いうところで読んでおります。ただいま御指摘の「被採血者の保護を図ること」という文句につきましては、これは主として経済上の保護と考えております。具体的には第七条にございますところのあっせん手数料が問題になっていると思いますが、従来被採血者か高いあっせん料を取られている、あるいはその他の名目によって金銭を取られているという事情がございますので、適正な手数料をきめて、業者としても仕事がやっていけるようにし、被採血者としても暴利をむさぼられぬよりにする、こういうふうにしたいと思っておるのであります。それに関連いたしまして、第五条に、「血液の買入価格等に関し必要な指示をすることができる。」という規定がございますが、これもそういう気持でございまして、買い入れ価格というのは一応自由でございますけれども、非常に安い価格で買えるというような場合におきましては、被採血者の経済上の保護になりませんので、適当な指示を加えたらどうかということです。  一応直接に考えますのはこの二ケ条であろうと考えております。
  83. 八田貞義

    ○八田委員 非常に消極的な保護だけを今教えていただいたのですけれども、これは先ほど滝井委員もちょっと触れておりましたが、供血行為というのは、言葉は悪いけれども、からだを張ってやる仕事であって、売春行為と全く同じである。売春法におきましては、あっせん業者を厳重に取り締って、ああいったものをわが国からなくそう、こういう意欲が少くとも法律の上に生きておるわけです。ところが、同じようにからだを張って生活の資を得ようとするところのこういう同じような業務に対してあっせん業者を認められた理由についてですが、実際を言うならば、こういうものは公的事業として国家でもってやるべき仕事であって、あっせん業者の存在を許すような法律の作成という点について私は非常に疑問を持つのですが、一体どうして給血あっせん業者を認められたのですか。
  84. 森本潔

    ○森本政府委員 ごもっともな御質問でございます。この点につきましては、給血あっせん業者という業態を禁止するという考え方一つあります。いろいろ研究はいたしたのでございますが、結論といたしまして、現在の通り許可制にして置いておく方が適当ではなかろうかということになったわけでございます。  第一の理由といたしましては、今後血液の利用は、生血という形でなしに、保存血という形においてやって参りたい。生血の場合におきましては、多くの場合、血液型の問題であるとかあるいは病菌の問題でありますとか、いろいろ事故が起っておりますので、そういう事故が起ることのほとんどないところの保存血という方法で血液を使用したらよいのではないかと思います。従いまして、ここ数年の間に、おそらく大部分のものは保存血という形で供給されなければならないと考えます。さようになりますと、保存血の普及によりまして、輸血業あっせん協会というような形のものは自然になくなっていくだろう、こういう見通しが一つございます。  それから第二には、先ほど申しましたように、現在百五十名ばかりの既存の業者があるわけでございます。これに対しまして禁止をするということは、一応現在持っておりますところの営業の自由を剥奪する、こういう措置になろうかと思うのでございます。許可制にすることも一つの営業の自由に対する制限ではありますけれども、禁止と制限の間にはおのずから差があろうと思うのでございます。そういう点からいたしまして、許可制にしてこれを厳重に監督していけば、現在考えておるような弊害は最小限度にとどめられる、あるいはなくなるじゃないか。従いまして、禁止までいかずに許可制で監督をすればよいじゃないだろうか、こういう考えであります。  それから現実の問題といたしまして、現在多くの医療機関におきましては、生血を使っておるというのが実情であります。ある面におきましては、こういうものの存在が病院側としては便利だという点もございますので、かかる場合には、当分の間こういうものを認めておくのも適当じゃなかろうか。およそ右申しましたような三つの理由によりまして、許可制によって規制をするという考え方になったわけでございます。
  85. 八田貞義

    ○八田委員 第四条の問題ですが、第四条のところで「病院又は診療所の開設者が、当該病院又は診療所における診療のために用いられる血液製剤のみの原料とする目的で採血しようとするときは、この限りでない。」こういうふうに書いてございますが、ここで私問題にいたしたいのは、病院または診療所の開設者、こういうことが書いてございますね。これは医療法との関係を考えなければならぬわけです。開設者というのは、非医者でも開設者たり得るわけです。現在の病院診療所の運営機構というのは、診療行為に関する一切の責任者、管理者においてやることになっておるわけです。採血という行為は、明らかに医療を前提とした行為でございます。これに対して、非医者であってもいいような開設者を許したということ、この点について、特別に開設者だけをあげておられるところに、何か意味があると思うのでございますが、なぜ管理者を除かれたか、この点について御答弁を願いたい。
  86. 森本潔

    ○森本政府委員 第四条の規定は、採血する際に、採血を業としてやろうとする者は許可を受けなければならないという程度でございまして、ただし書きにおきまして、院内需要のために病院または診療所等の医療機関が採血する場合には、許可が要らない、こういう規定でございます。それでただいま御指摘になりました病院または診療所の開設者の中には、非医師もあるではないかということでありますが、これは医療法によりその通りでございます。しかしながら、現実採血をいたします者は、医師に限られておるわけでございます。この法律第十四条におきまして、この採血をする行為は、はっきり医業に該当するということをうたっておりますので、その点においては、現実採血をする者は医師であるということが明らかであります。ただ、そういう採血行為を業としてやることについての許可を受ける者は、病院を管理経営する責任者であるところの開設者が受けるものである、こういう考えでこういう表示をしたわけでございます。
  87. 八田貞義

    ○八田委員 どうもそこの点がはっきりしない、業としてやる場合は開設者であろうと管理者であろうとかまわないのだというお考えであります。ところが業とするといわれましても、非医者がたとえば業としてやる場合に、血液製剤のみの原料について開設者が考える場合がありましょう。ところがそれ以外の目的をもって医師に強要するという場合もあり得るわけであります。そういう場合に一体医師としてどうしたらいいのだというよな、いろいろな困難な立場に陥る場合も考えられるわけです。私としては、むしろ開設者というのは、ばく然としたいろいろな点において管理の面において問題にせざるを得ないような点がたくさんあげられてくるわけです。そういった開設者に与えるよりは、むしろ管理者としてはっきりと与えられた方がいいのじゃないか。採血するのは医師です、しかも医療行為の前提です。そういう大切な人体に対して、非医者であるところの開設者、これは業として他の業を考えておる場合もあり得ると考える、そういう場合に対して私は疑問を生じてくるのです。というのは、先ほど第三条について政令であらたに指定するもの、これはかまわないのだとこういうようなこともありますが、そうしますと、今日の給血をやる常習者になっておられる人々は、大体五万人ほど数字があげられておりますが、この人々の大部分は、全血比重をはかって参りますと、これは規定外の人が多いのです。大体給血をやっておる人々の比重をはかってみますと、基準を非常に下回っておるのです。こういったものは一体どういうふうにされるのですか。先ほどあなたはそういった基準に合わないものは化粧品に回す、もちろんほかのいろいろな用途も考えられますけれども、特にプラスマン・パックは化粧品に用いるのだ、こういうことを言っておられる。ところがプラスマンをちゃんと代用血液として営業しておる会社があるわけです。そうすると、いろいろなふうに結びつけて参りますと、開設者という点について非常な問題を残すという点が考えられてくるわけです。  ただ、時間がございませんから、問題点をしぼって参りますが、プラスマン・パックを化粧品に使っておるというが、一体どんな化粧品に使っておるのですか。また化粧品にプラスマン・パックを使わなければならぬというような用途は、目的は、一体どこにあるか、薬務局長は監督長官として何かお考えがあるのだと思います。どうしてこういったものを化粧品に使わなければならぬか。しからば一体どんな化粧品にこういうものを使っておるか、そういった会社名あるいはどれくらいこういったものが使われておるかということを御調査になりましたか。
  88. 森本潔

    ○森本政府委員 このプラスマン・パックという化粧品は顔に塗りますおしろいのような薬でございます。そういう用途に使われておる。それを認めていいかどうかという問題でございますが、これは先ほど申しましたように、ガンマー・グロブリンと申しますものは、これははしかの治療に必要なものでございます。血清であります。これはどうしても必要である。それを取りました残りは捨てるか、何かに利用するかということになるわけであります。捨ててしまうのはあまり意味のないことでございます。かりに使用する用途がございますれば——ただいま申しましたように、かりに化粧品でありましてもそういうことに使えるならばこれに使ったらいいのではないか、そういうことになるかと思います。そういう意味で現在認めておるわけでございます。それからなお今申しましたプラスマン・パックを製造しておる会社の名前あるいは数量等、ただいま手元にございませんが、調べればわかることでございますので、後ほどお答え申し上げたいと思います。
  89. 八田貞義

    ○八田委員 それと関連しまして、今日、化粧品に対するところのそういった法律はないわけでございますね。いろいろ化粧品に対しては問題がたくさんにあるのです。これからいろいろとそういった抜け道を防ぐための法律を作らなければならぬ。さらにまた化粧品によっていろいろな障害が起っておるのだ、それで化粧品に関する法律をお作りになる考えがあるかどうか。
  90. 森本潔

    ○森本政府委員 化粧品の規制につきましては現行の薬事法の対象になっておることでございます。薬事法の中には医薬品と用具、それから化粧品、三種類対象になっております。従いまして化粧品を製造しようとする者は登録をしなければならぬ、それから一定のものにつきましては全部一定基準を作りまして、それに従ったものでなければ作ってはいかぬというような規制方法もございます。一応現在の薬事法の運用の方法によりまして、化粧品製造について必要なものは規制ができる、こういう建前になっております。
  91. 八田貞義

    ○八田委員 それは局長、非常に簡単に考えておられるのです。今日、時間がございませんから私あまり触れませんけれども、今日いろいろな化粧品の中にペニシリンなんかの抗生物質を入れて、抗生物質の乱用によって、今日非常にペニシリン・ショック死というものが起ってきているわけです。そういうものに対しては何ら押えていないのじゃありませんか。ひげそりクリームの中にペニシリンを入れておる、こういうこともわかっているわけです。これが私はペニシリンの乱用だと言っている。そういう場合に何か薬事法に照らしてこれを押えられる条項がございますか。
  92. 森本潔

    ○森本政府委員 それは先ほど申し上げましたように、化粧品につきましても必要な基準を作って規制することができますので、ただいまお話のようなものにつきましても必要があれば考えます。  なおペニシリン云々のことでありますが、これはなお真にそれが必要であればさような規制をする必要があろうかと考えております。
  93. 八田貞義

    ○八田委員 あと一つだけにとどめますが、この給血をする人の健康保持に対する義務規定がこの中にないわけです。給血する人は自分の血を病人に与えるわけですから、やはり権利ばかりではなくて義務規定が必要であろうと私は考えるのです。その義務規定がどこにもないのですが、一体、給血する人の義務規定はどこにございますか。
  94. 森本潔

    ○森本政府委員 給血する人の多くは、普通のしろうとでございます。あるいは自分の健康である、あるいは自分の血液に病毒はないと考えておるといたしましても、これは医師の診断によらなければわからないわけでございます。従いましてそういう最後の、健康上支障ありゃいなや、この血液は純潔でありゃいなや、この判定は医師に待つよりほかないと思います。そういう意味におきまして、被採血者にそういう義務を課すのは無理であろうと思います。採血する医師におきまして採血する場合には健康診断をする、それから健康診断をした結果、採血をしても支障がないという判断を下したならば採血をする、こういうふうに採血者の義務というような形でこの法律の十三条に規定をしておるわけであります。
  95. 八田貞義

    ○八田委員 その点非常にばく然としておるのですが、これは医療の問題ですから、採血者だけに義務を課して、給血者には何らの義務を課さないということは、これは全く問題があるのですが、この点については時間がございませんから私深く追及をいたしませんけれども、やはり血を提供する者と、それをとってやる人との間には——給血者にも健康である、また健康を守るという義務があるわけです。これらについて、やはり法である以上は義務規定を置くべきです。それができなかったならば、保護という問題についてあまりにも消極的な面だけを考えておられるからそういうことになったと私は思うのですが、この点について十分に政令等において研究されることを希望いたしまして、時間がございませんので私の質問を終ります。
  96. 野澤清人

    ○野澤委員 一つだけ基本的な問題ですから次官または局長でけっこうですが伺いたい、この採血及び流血あっ七ん業取締法というのは、大体自然発生した業態に対する取締りの法律だと思うのです。そこでむしろこれは血を提供する人も、また給血する人も国家的に管理する必要があるのじゃないか、そういう面から公的機関で製造する、従って自由営業だというような局長のお考えであったが、その考え方は経過的に正しいと思うのです。それでなしに、少くとも公的機関によってこれをやるか、半公営でやるかという基本的な問題について厚生当局としてどういうお考えでおるのか、あるいは予算措置等をしましても府県単位に血液の製造銀行を持つ、こういう考え方が最も正しい行き方だと思うのですが、これに対する御見解だけを承わって私はやめたいと存じます。
  97. 山下春江

    山下(春)政府委員 非常に人道上の重大な問題でございますから御指摘通り私は公的な機関によって保護その他の面をよく考えつつ行うべきものと考えますので、御趣旨に沿って考えを固めたいと存じております。
  98. 佐々木秀世

    佐々木委員長 他に御発言はありませんか。——なければ両案に対する質疑は終了したものと認めます。  次に両案を一括して討論に付するのでありますが、討論の通告もありませんので、これを省略し、直ちに採決することに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  99. 佐々木秀世

    佐々木委員長 御異議なしと認め、そのように決します。  両案を一括して採決いたします。両案を原案通り可決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔総員起立〕
  100. 佐々木秀世

    佐々木委員長 起立総員、よって両案は原案の通り可決すべきものと決しました。  なおただいま議決いたしました二法案に対する委員会報告書の作成等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  101. 佐々木秀世

    佐々木委員長 御異議なしと認め、そのように決します。  次会は来たる二十九日火曜日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時十分散会      ————◇—————