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1956-04-20 第24回国会 衆議院 社会労働委員会 第35号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月二十日(金曜日)    午後一時四十九分開議  出席委員    委員長 佐々木秀世君    理事 大坪 保雄君 理事 中川 俊思君    理事 滝井 義高君       植村 武一君    大橋 武夫君       加藤鐐五郎君    草野一郎平君       熊谷 憲一君    小島 徹三君       小林  郁君    田中 正巳君       田子 一民君    中村三之丞君       中山 マサ君    八田 貞義君       亘  四郎君    岡  良一君       堂森 芳夫君    八木 一男君       山口シヅエ君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 小林 英三君         国 務 大 臣 正力松太郎君  出席政府委員         厚 生 技 官         (公衆衛生局環         境衛生部長)  楠本 正康君  委員外出席者         総理府技官         (原子力局アイ         ソトープ課長) 鈴木 嘉一君         農 林 技 官         (水産庁生産部         海洋第二課長) 増田 正一君         農 林 技 官         (水産庁調査研         究部研究第一課         長)      亘理 信一君         運輸事務官         (海運局海運調         整部海務課長) 井上  弘君         運 輸 技 官         (中央気象台観         測部長)    川畑 幸夫君         運 輸 技 官 守田康太郎君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 本日の会議に付した案件 公衆衛生水爆実験対策)に関する件     —————————————
  2. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 これより会議を開きます。公衆衛生に関し、水爆実験対策の問題について調査を進めます。発言の通告がありますので、順次これを許します。岡良一君。
  3. 岡良一

    岡委員 いよいよ水爆実験も強行される時期に相なりました。そこで先般も関係政府当局の各位に、いわゆる水爆実験影響調査に関する態勢がどの程度まで進められているかということをお尋ねいたしましたが、当時はまだ研究段階というようなことでありましたが、もう今ではすでに態勢もでき上っておらねばなるまいと存じます。そこで正力国務大臣なり、小林厚生大臣なりには、政府としての責任ある所信についてお伺いいたしたいと思うのですが、その前にビキニ水爆実験以来、直接現地検討してこられた楠本環境衛生部長なり、またその経験にかんがみて、ここ二・三年来気象関係において幾たびかの水爆実験に伴う放射能移動性についての測定調査をやっておられる気象台関係の方々から、きわめて技術的な点で御教示願いたいと思うわけです。なおあらかじめお断わりいたしておかなければなりませんのは、社会党としての立場からは、水爆実験には反対という立場をとっております。もちろん国会といえども水爆実験反対の決議はいたしております。そこでその影響調査についても、私どもはこういう役割を負うべきであるという信念を持っておることをあらかじめ申し上げておきたいのです。それを簡単に申し上げれば、われわれはやってくれるなと繰り返し申したにもかかわらず、無理にやる。やった結果どういう影響が起ってくるかということを、日本科学者諸君の良心にかけて、できるだけ的確な調査をやってもらいたい。その調査資料を全世界に公開してもらいたい。それによって単に原水爆に対するとりとめのない不安ではなく、科学的にかくもおそるべき障害が起り得るのであるということを全人類が知るということ、そのことがかえってまた大国をして現在の無謀な非人道的な原水爆実験を断念せしめるための重要な契機に一なろう、こういうような気持から、今度の政府水爆実験影響調査に対する質疑もいたすということをあらかじめ御了承願いたいのであります。アメリカは、この四月二十日から八月三十一日まで危険区域設定いたしまして、マーシャル群島水爆実験をやることに相なっております。これまでの、たとえばビキニのあの日本福竜丸の漁夫の体験から見て、四十二万平方マイル程度危険区域設定されておるが、果してこれで安全なものであるかどうか、危険区域外を航行する船舶、漁船、あるいはその乗組員等に対しては障害はないと見得るかどうか、この点は持にビキニ問題、その後の放射能とおぼしきものによる障害を受けた幾多の事例を御承知楠本環境衛生部長から御説明願いたい。
  4. 楠本正康

    楠本政府委員 お答え申し上げます。最初に御意見のございました日本科学力を発揮いたしまして十分なる資料を整えこれを世界に公表するという点につきましては、全く同感に存じております。幸いにも御承知のように新たに国連科学委員会が設けられましてここに日本からも代表が出ております。すでに第一回の会合は終っております。この国連科学委員会は、世界各国のこの方面資料を持ち寄りまして、これに検討を加えて適正な判断をするということに相なっておりますので、私どもといたしましては、今回調査をいたしますもの、及び過去において調査をいたしました資料につきましても、これを国連に提供いたしまして公平な判断を仰ぐたまたまよい公開の機会ではないか、かように考えておる次第であります。次に御指摘のビキニの一昨年の実験にかんがみて、現在すでに設定されております危険区域で十分安全かということでございますが、結論から申し上げますと、私どもはあの程度危険区域設定でおおむね安全ではないかと予測をいたしております。と申しますのは、前回ビキニ実験におきましては、危険区域設定がきわめて狭かったこと、しかもその狭い危険区域からわずか十九マイルの距離におきまして福竜丸降灰を受けたわけでございます。しかも福竜丸降灰はその後においていろいろ厳密に調査いたしましたところ、大体三百レントゲンないし五百レントゲン程度照射を受けたものと考えられます。従って現在〇・三レントゲンというものが一応最大許容量とされておる点から見ますと、非常に膨大な照射を受けたものと考えられます。これらの事例は別といたしまして、その他いろいろ調査をいたして参りましたが、その他の事例につきましてはいまだ的確に被害ありと確認されたものはございません。かような点から考えまして、さように予測をいたしております。しかしながら、何と申しましても原爆種類あるいはその性能等から考えまして、どういう元素が新たに加わるかもはかり知れず、さようなことから考えて私どもとしては、先般お答え申し上げましたように、とりあえず実験直後に向うの現地を十分に調査いたしまして、その実態を把握いたしまして、順次に国内対策を整えたい、かように考えておる次第でございます。
  5. 岡良一

    岡委員 関連してお尋ねいたしますが、今度の調査の結果は、先般都築博士等が御参加の国連放射能障害に対する国際的な委員会に提示をするというお話でありましたが、たとえば昨年の八月八日私どもも列席したあの原子力平和利用国際会議では、長崎、広島の原爆被害に関する医学的な報告というものは拒否されておる。これは明らかに非常に政治的なものではないかと実は私は思っておるのであります。非常に遺憾なアメリカの態度であると思っておったのであります。そこでこの水爆実験影響に対するわが方の調査というものが、果して都築氏を通じて国際委員会に提供し得るかどうか、必ずできるという御確信がありますか。
  6. 楠本正康

    楠本政府委員 ただいまお話のございましたような点は私どももまことに遺憾に存じております。しかしながら、今回国連設定されました科学委員会は、私どもの聞く範囲におきましては、政治的な意図というよりも、むしろ純学問的な立場からこれに検討を加えようということだと承知いたしおります。なおすでに資料収集等も一応八月一ばいというふうに期限、つけられております関係もございますので、今回はこの科学委員会については、資料についても学問的な立場から十分に検討を願えるものと、かように考えておる次第であります。
  7. 岡良一

    岡委員 幸い正力国務大臣もお見えになりましたので、この際大臣に特にお願いをし、強く要望いたしたいと思いますことは、実は今楠本環境衛生部長との話し合いの結果として私が主張しておりますことは、今度いよいよ原子力委員会の藤岡さんが一応責任者となられて、きわめて総合的な・組織的な水爆実験影響調査を開始される。その結果得られた科学的な資料というものはこれは国連にもこのような原水爆放射能被害に対して調査をする国際的な科学委員会ができて、都築博士日本を代表して参加した。中泉博士も参加した。こういう委員会にやはり堂々として報告をする。そうしてその被害実態というものを、あるいは実験の結果生ずる影響実態というものを科学的に十分明らかにしたものは、これはあくまでも国際的な場における検討にゆだねるということをぜひしていただきたいと実はお願いしているわけです。この点は私どもとしてはぜびともそうあるべきだと信じておるのでありますが、正力国務大臣の御所見を承わりたい。
  8. 正力松太郎

    正力国務大臣 なるたけそういうふうにしたいと思っております。
  9. 岡良一

    岡委員 なるたけしたいということでは困るので、ぜひしていただかなければならぬと思うのです。  それで今楠本部長も言われましたが、去年の八月八日から開かれた原子力平和利用に関する国際会議は純粋な科学的な会議と言われておった。科学的な会議であるから日本原爆症の病理なり臨床についてのデータを出した。それが拒否された。問題は純粋な科学者会議でありながら、ある大国の政治的な意図によって、科学者諸君の粒々築き上げた報告というものが拒否された。要するに科学者会議であり国境を越えた科学の真実を伝え、交換をする会議でありながら、事実上はやはり政治的な意図によってそれが拒否されるという事態が起っている。このことが私どもには非常に残念でたまらない。しかも国連がイニシアチブをとって設けている委員会国連が主催をした平和利用会議ではあったけれども、事実は政治的な意図によって科学者の良心的な業績の発表が拒まれているという事態は繰り返したくない。これは今後の問題であります。しかし八月八日までにデータを出せということになっているのであるから、ぜひともこの点はやはりはっきりさせて堂々と提出をするということについては、政府としても格段な御努力を願いたいと思う。  それから今部長お話にありましたが、現在の四十二万平方マイル程度なら、大体危険区域としてあの程度のものが指定をされておれば、立ち寄らなければまあまあ間違いはなかろう、こういうお話でありました。しかしこれには私はいろいろな条件があろうと思うのです。たとえば実験をされる水爆規模というものも大きな条件になりはしないかと思う。またそのときにおける気象関係等も重要な理由になるのじゃないでしょうか。従って四十二万平方マイルというものが危険区域として指定されたから、それ以外のところを通れば絶対大丈夫ということであれば、何もわれわれの方だって、大がかりに国費を投じて調査をする必要はないということなのです。そういうわけで、これはもう大丈夫だと言い切るのはいささか危険ではないでしょうか。
  10. 楠本正康

    楠本政府委員 大丈夫と申し上げたわけではございませんので、この前のビキニ経験からいたしますれば、安全が予測されるということを申し上げたわけでございます。しかしながらそれをもってこれが万事終れりという考え方では毛頭ございません。従いまして私どもは厳密な調査を綿密に行いたい、かように考えておるわけでごさいます。
  11. 岡良一

    岡委員 これは観測部長にお尋ねいたしましたが、実は外電の報ずるところによると、前回ビキニでずいぶん住民も迷惑をいたしました。現に二百数十名というものが放射能の灰をかぶって被害を受けておる。ということから、現地住民が、今度はぜひやめてくれということを直接国連信託統治理事会へ提訴いたしております。その結果、信託統治理事会でも一応問題になったが、結局信託統治理事会としては水爆実験もよろしいという決定を与えるに至った。その際におけるアメリカ政府実験に関する見解についての文書は、新聞の伝えるところによると、こういうことが書いてある。一品に申せば、天候の予知に最大、細心の工夫を加える。新しい計算器等降下灰の型を予知することにする。そのほか、周辺のロンゲリク、タラワ、ウェーキ、ミィドウイィなど十六の島々天候公共保健専門家を配置する、それから実験の結果できた放射能を帯びた雲は、飛行機でその行方を追跡する。こういうようなことで現地住民の直接的な被害を防止するということを、アメリカ政府としては公式に信託統治理事会に申し出ておる。そこでこの放射能を帯びた灰が飛来することについては、その気団を追うて科学的に今日までいろいろと追求をしてこられた気象台立場から見て、こういうようなことで一体危険区域内といえども被害が防止し得るものなのか。放射能を帯びた気団飛行機で追跡する、あるいは気象観測所をあの危険区域周辺に十六カ所置く、あるいは被害の最も少なかるべき期待を持って、日時を選んで実験をするという——日を選ぶことはできるかもしれないが、そのことによって、事実あの周辺島々の原住民に対する被害を予防することが一体可能なのかどうか。これは専門川畑観測部長の率直な御意見を聞かしていただきたいと思う。
  12. 川畑幸夫

    川畑説明員 この被害の点につきましては、私たち医学関係いたしておりませんので、人体障害のことはわかりません。風のことにつきましては、一応あの付近赤道の低気圧地帯になっておりまして、大ていの風が、まず五月ごろでありますと、東から吹いて西の方へ流れます。それからずっと流れまして、フィリピン付近で北へ曲るというような経路をたどると思います。従って日本内地に参りますには、少くとも大体三週間前後を要するのではないかと考えております。ただその現地付近でありますと、非常に雲も濃いわけでありまして、どういうことになりますか、ことに爆発規模とその種類によりましてどういうことか、私たちにはわかりません。日本までとなりますと、相当時間がかかって、どんどん減衰いたすものでありますから、そう大きなものはこないのではないかと想像はいたしております。
  13. 岡良一

    岡委員 あの危険区域内に住む住民被害を防止するためにこういう方策を講じたということを、アメリカ政府としては公式に信託統治理事会発表しておる。その結果信託統治理事会としても、アメリカ水爆実験に対しては多数決でこれを容認している。その内容は先ほど申し上げたようなことなんで、飛行機放射能を帯びた気団行方を追跡するとか、気象観測所を十六カ所設けるとか、何か最新式な機械でもっていろいろ放射能の灰の形を予知する。そういうようなことで一体あの危険区域内においてでも、危険区域内に住む住民の危険というものは防止できるかどうか。アメリカの言っていることはほとんど気象上のことを中心に言っておるのですが、こういうことで、やれるものなんでしょうか。
  14. 川畑幸夫

    川畑説明員 現在の段階におきましては、そういうような観測以外には方法がないかと存じております。何かうまい方法があればよろしいのでありますが、危険度を判定する方法と申しますか、気象学的な気流の流れの状態をつかみますのには、今のような方法以外にはちょっと方法がなかろうかと存じます。
  15. 岡良一

    岡委員 従って問題はこのような方法を講じて、現地住民被害を防止するということはほとんど不可能なのではないか、少くとも可能であるとは科学的に言えないのではないかということをお聞きしたい。問題は気象学的な観測の興味の対象にはこういう方法手段はなるかもしれません。しかしそれによってその地域における住民被害を完全に防ぎ得るという保証にはならないのではないかという点です。その点率直な一つ意見をお聞きしたい。
  16. 川畑幸夫

    川畑説明員 お答え申し上げます。その危険度の点につきましては、どれだけのカウント数あるいはレントゲンからどういうふうな障害が起るというようなことにつきましては、先ほど申しましたように私たちはしろうとでございまして、ただこういうような放射能が幾らくらいの強さのものがこちらへ流れるであろうということの以外は勉強いたしておりませんので……。
  17. 岡良一

    岡委員 そこで問題は、何と申しましても、やはり実験回数水爆の爆弾の規模、これは何といっても実験影響調査するためには最初の大前提でなければならぬ。これは正力国務大臣はわざわざ英国からクリストフア・ヒントン卿を呼んで、原子力発電所には非常に力こぶを入れておられるが、これはいかがでしょうか。新聞なんかでは五月一日にやるのを八日ほど延ばそう、あるいはストローズ委員長の方では、正月の発表では、今度はビキニに比べて小型だ。そうかと思うと同じ原子力委員会委員が、この間三月二十五日ですかに、とほうもない大きなものだということを言っておる。そうかと思うと、回数なんかでも、ニューヨーク・タイムスなんかを見ると、ハンソン・ボールドウィン氏などは十二回くらいやろうなんていうことを言っておられる。実にアメリカ側でも相当情報を流しておる。しかもそれがきわめて規模も小さく被害も少いというかと思うと、いや前古未曽有のことをやるのだということを言っておる。これは正力国務大臣一つ政治力で、いつやるか、どの程度のものをやるのかくらいのことは、ぜひ政府としてもアメリカにかけ合って、その情報を入手する。現に漏らしておるくらいのことは堂々やっていいのではないかと私は思うのですがいかがでしょうか。これがはっきりしないと、せっかくの影響調査というものも、最初条件がきわめて漠然たるところから出発するということでは、ほんとうの調査の目的を達し得ない。これは政府としても国費を投じて、大がかりな国家的規模調査をやろうというならば、これくらいの要求をしても私はいいと思う。全然ひた隠しに隠しているのではなく、日本新聞にさえもワシントンの情報として流れてきておるくらいなんです。これは当然原子力委員会なりアメリカに交渉してしかるべきだと思う。その政治力正力国務大臣は十二分にお持ちだろうと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  18. 正力松太郎

    正力国務大臣 今の提案はまことにごもっともと存じます。外務大臣ともよくその点は打ち合せをいたします。
  19. 岡良一

    岡委員 これはぜひまじめにかけ合ってみるべきことだと私は思うのです。言わないときめてかからないで、初めは何も言わないような格好であったけれども、すでに規模についてもアメリカ原子力委員会委員が漏らしておる。漏らしたのが一昨年よりも規模が小さいという人もいれば、ほかの人はそうではない、これまでにない大きなものだということを言っておる。さらにハンソン・ボールドウィンといえば、これは国際的な量高峰をいく軍事評論家、そのボールドゥィンがニューヨーク・タイムズの社説で十二回やると言っておる。それならばかけ合って、はっきりした実験規模回数等、わが方の科学的調査の基礎となるような資料についての提供をアメリカ政府に私は求めていいと思う。こういう点、発電には脱兎のごとく水爆調査には処女のことしではいかぬから、どうか一つやっていただきたい。  それから今観測部長からのお話があったのですが、かりに五月八日に実験があったといたしましよう。五月八日に実験が行われたとすると、その灰は、その当日の風向きによれば、まず西の方へ流れてフィリピンあたりに突き当る。それから今度は北の方にいって日本の方に参るというお話でありました。そうすると、危険区域外でもその期間航行する場合には、風向きいかんにより、船の位置いかんによっては、放射能を含んだ灰が十分あるとおぼしき危険なる空気の中で航行しなければならぬことになるわけですね。そういうことになるんじゃないでしょうか。
  20. 川畑幸夫

    川畑説明員 全くおっしゃる通りであると思います。ビキニより西の方の海面はずっと灰が流れるものと考えられます。しかし必ずしも西ばかりとは限りませんで、その日によりましては、また爆発の大きさによって、灰が非常に高く上る場合と低く上る場合とでは、風の方向は低いところと高いところと違いますので必ずしもそうとは限りませんが、一般的には東から流れる。そうしてある程度のところで台風と同じように北へ曲るというように思います。
  21. 岡良一

    岡委員 大体二、三週間で日本内地に到達するであろうというお話でございましたが、そこで船がその危険区域をかりに回避しながら航行しておったとしても、何といってもカジキやマグロの本場ですから、赤道以南の漁場へ行くでしょう。その場合に、やはり船は無電を持っておるとすれば、いつ爆発があって、その結果灰はこのような風向きにおいてはどうという専門的な予報を船に与えてやるというくらいなことは、私は国としてすべきだと思うのですが、こういう点はあなたの方の現在の施設規模などでやれますか。
  22. 川畑幸夫

    川畑説明員 ただいま先生のおっしゃいましたような要望は各方面から私たち受けておりまして、それで一応爆発がありましたらば、大体今までの数回の経験でございますと、その速度がほとんどきまっておりまして、時速約千キロであります。従って日本に到着いたしますのが三時間半から四時間後でありまして、それからそれを調べて確実に爆発の時刻及び規模が推定できましたら、何らかの方法で船に対しても一般の方に対してもお知らせ申し上げたいと思っております。  それからもう一つは風のことでございますけれども、風につきましては、現在中央気象台が持っておりますところの船舶向けの特殊な気象放送がございます。コール・サインはJMCと申しますが、これにつきましては、本日から実験の終る期間まで、ビキニ中心としまして太平洋の全域の風の実況は、今までよりもずっと詳しく放送する手配をして、本日から放送をいたしているはずでございます。
  23. 岡良一

    岡委員 そうするとこれはシベリアで実験が行われたとおぼしきということと違って、はっきりマーシャル群島のサンゴ礁で行われるという地域はわかっているわけですから、たとえば五月八日現在における風向きなり判断は、低いところも高いところも中くらいのところもあなたの方ではキャッチができる。しかもいつ起されたかということは、三時間くらい後にはあなたの方の圧力計ではっきりわかる。詳しくはわからないけれども、いつ起ったかということははっきりわかる。そうすれば、そのときにおけるその周辺風向きによって船は危険区域に近づきつつあるか、あるいはそういうことに関する情報は総合的にあなた方の方で予告として流すという態勢はできていますか。
  24. 川畑幸夫

    川畑説明員 ちょっと補足して申し上げますが、三時間ないし四時間くらいで気圧の波は到着すると思いますが、今回機械を改めまして新しい機械にいたしましたので、その機械についての記録経験がございませんので、最初の間は少し手間取るかと思います。測候所の技術の者がよくその記録になれましたら、だんだん早くなると思います。それで、風は長年の観測結果でわかってはおりますが、実際の今日の状況を非常に正確にということになりますと、一般太平洋の中では観測が非常に少いのでありまして、ことに、船の観測はございまして、海面近くの風は毎日船から電報でいただいておりますが、高い空の風はほとんど観測がございませんので、ある種の推定とか、ある種の統計とかの結果を使いますので、かなり不正確なものにならざるを得ない現況でございます。
  25. 岡良一

    岡委員 それでは大体船の問題について気象台としても、私どもの考えを率直に申し上げると、それじゃまだまだ手ぬるいと思うのですが、そういう手ぬるい条件の中でいよいよ船に乗っていきます。運輸省の方ではこれら乗組員の防護について、どういう対策を講じておられますか。
  26. 井上弘

    ○井上説明員 危険区域付近を航行する船が相当ございます。それについて私どもとしては、まず危険が及ぶような場合には迂回の措置をとらなければならないと思います。権威ある筋から危険区域の拡大というような情報が入りましたならば、海上保安庁の水路部より航路告示という形で船舶に通達がいきまして、万全の措置を講ずるようにやることになっております。次に乗組員の健康の問題でございますが、これにつきましては、みな相当関心を持っておりまして、出航する船舶、おのおの自発的に相当慎重な準備をして行っているように見受けられます。
  27. 岡良一

    岡委員 その乗組員が万全の措置をとるというのは、一体どういうことを具体的にやらせようというわけですか。
  28. 楠本正康

    楠本政府委員 今のところは、ただいま気象台の方からもお話がございましたように、風向きの様子あるいは気象現象等によりまして、危険区域外においても場合によればあるいは注意を要するところがあるかもしれない。かようなときには、現在漁船に対しては水産庁が絶えずいろいろな無電連絡をいたしております。なお一般の船に対しては、海上保安庁の方が絶えずいろいろ連絡をいたしておりますので、これらの通信網を総合的に働かしまして、逐次漁船に一般的な気象現象の観測等に基く注意を与えておくということをすでに準備いたしております。なお御参考までに、現在爆弾の実験をいたします前の海水あるいは海域の条件を知ることも必要でありますので、これらはやはり今の通信網を動員いたしまして、しかるべき船に対しましては通常の状態のサンプルを取るように一々連絡をいたしているような次第でございます。
  29. 岡良一

    岡委員 たとえばこの前のビキニのときに、私も焼津まで出かけて行って、船から上ったばかりの漁師からいろいろ話を聞いた。それはどのことは今ではないと思いますが、あの当時なんか、とにかくうっすらと夜が明けそうになったところ、白い灰が積っておったので、それを取ってなめてみるのがいたというような実に乱暴なのがいる。しかしそれは漁師というものは無知だと申すのではないけれども、割合に漁に一生懸命になっているというと油断をしがちではないかと思うのですよ。だからこれはどういうふうに防御するか。知らすだけでは何にもならない。知らしてその結果、彼らがそれを、万一にも放射能を含んだ灰が降りかからないように、かかったものはそれを落すように、ということについて適切な指導がやはり政府側の責任においてなされてしかるべきだと私は思うのです。こういう点は具体的にどういう処置をとっておられるか。
  30. 楠本正康

    楠本政府委員 私どもは目下の対策といたしましては、かような危険にさらされてしまってはもちろん対策もございましょうが、あまりに消極的でございますので、従ってどんな船においてもかような危険にさらされないことを目標として実は種々対策を講じております。従って南方を航行する船舶とは絶えず密接な連絡をとっていくような方法もその一つ方法でございます。なおしかし、かようなことはもちろん望ましくないことであるが、万が一にももし危険にさらされた場合どうするかという御指摘かと存じますが、私どもはかようなことがないように努めて参りたいと考えております。しかし御指摘の点もございますので、今後しからば南方の方にどういう連絡をすればいいかというようなこともあらためて研究してもけっこうでございます。一たん灰をかぶりますと、もちろん清水で洗うとか海水で洗うとかいろいろなこともございますが、かようほ事態は引き起したくないというのが私どもの気持でございます。
  31. 岡良一

    岡委員 そういうことは起させたくないというのがみなの希望なんだけれども、それがしかし起りゃしないかというところに周到なる事前の注意なり指導なりが必要ではないかと思う。現に先ほどもお話のようにとにかく日本に来るまで三週間かかる、放射能の灰の気団が。それは多く、エニウェトクかビキニか知らないが、マーシャル群島の環礁からフィリピンまで行って、そうして黒潮に乗って日本に来るのだということならば、危険区域外でも船はやはり放射能を帯びた気団の下を通過するかもしれない。もし雨にでも会えば、その船は放射能を帯びた雨によってたたかれなければならない。こういうことは当然考えられるのじゃないか。だからいかにそれを避けろと言ったってなかなかこれは避けられないと思います。いわんや今度はまだ英国の方でもモンテベロでやる。来年の二月にはクリスマス島でやる。太平洋水爆実験の全くのヒノキ舞台になる。しかも放射能を帯びた灰が成層圏に上れば一年半ぐらいかかってゆっくり降ってくるということが科学的に言われている。そうならば危険にさらされないであろう万全の対策を講ずるというような白昼夢で問題を考えるべきではない。もっと切実な問題としてこの問題をわれわれは考えなければならぬと思う。そういう対策をお聞きしているのです。
  32. 楠本正康

    楠本政府委員 まず私どもといたしましては、くどいようでございますが、かような灰をかぶるようなことがほいようにいたしたい。そのためには危険区域外においても万一さような事態が予知できますならばこれを通報したいということを申し上げたわけであります。しかしながら御指摘のように、さような措置をとってもなおかつ相当量な被害を受けた場合にどうするかということにつきましては、ただいま申し上げましたように、さっそく対策を立てて現地あるいは今後出る船に徹底をはかってもけっこうでございます。その点は御指摘もありましたので、さっそく研究をいたしたいと存じます。なお何がゆえに南方に調査船を出しますかというと、絶えず現地を航行いたしまして、これによって現在の危険区域以外の状況等を精密に判断いたしますので、この点からもかなり予防的な指導ができるものと実は考えておる次第でございます。
  33. 岡良一

    岡委員 前回ビキニ実験経験とされた結論からいえば、まあ少し前回はあわて過ぎた、しかしそれはどのこともないであろうというふうな考え方がどうも厚生省にあるように私は思うのですが、これが僕は危険じゃないかと思うのです。というのは、たとえば同様な趣旨のことをアメリカ原子力委員会のリビーさんなんかが言っておる。ストロンチウム九〇がこわいといったって、五百五十発ぐらい破裂させなければ人間には何の影響もないのだということを放言しておられる。しかしこれは地球全体に同様な密度でストロソチウム九〇を含んだ粉塵がいくならそれはそうも言えるだろうけれども、先ほど来気象台の方からも御発表のように、特に五月、六月の時期はこちらへ向けてやってこようという危険性が非常に多いということになる。集団的な密度の濃い放射能を帯びた気団がこちらへやってくる。あるいは南太平洋へ行こうとする船の航路をそれらの気団が襲う。灰が降ってくるといったって一ミクロン、〇・五ミクロンの灰なんか目に見えるようなものじゃないのだから、福竜丸の船員炉物語っているように、マグロの上に五本の指の跡が薄く白くつくほど灰が降ったというようなそういう状態がきているのじゃないのですよ。それにしてもやはり人間の許容量を越えるものが降ってこないとは言えない。これは少くともくる、起り得ることなんでありますから、それに対する対策としては、これは少し手ぬるいのじゃないかと思いますが、この問題はそうといたしまして、正力さんはお急ぎでございましょうか。
  34. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 今委員会があるそうです。
  35. 岡良一

    岡委員 それでは正力さんの方に一、二お尋ねいたします。  第一の点でありますが、原子力委員会が今度水爆実験の結果生ずる影響について国家的な規模調査を開始された。その目的は一体いかなることを目的とされるかということを、委員長としての責任ある御所信を承わりたい。
  36. 正力松太郎

    正力国務大臣 水爆の方の調査研究は、これはみな厚生省の方でなにしておりまして、私の方は藤岡委員がただ個人としてあの団長を引き受けただけであります。
  37. 岡良一

    岡委員 そうすれば原子力委員会として先般正規に国家的組織において今度行われる水爆実験影響調査しようということを御決定になり、その総合的な結び目として世話役ではあるが、中心的な世話役として常勤の藤岡委員が選ばれておるとすれば、これは当然原子力委員会としてはまるまる全部の責任があるかないかということは別といたしましても、とにかく執行の最も重要な責任というものは、やはり当然常勤の委員である藤岡さんにあり、その責任を原子力委員会として負わしめたのであるから、原子力委員会としては、やはり当然それに伴う責任というものはあるわけではないのでしょうか。
  38. 正力松太郎

    正力国務大臣 それはもちろんあることはありますけれども、要するにこちらの藤岡委員平和利用についての参考資料一つとりたいという意味もありまして、やったわけであります。責任はもちろんないとは言いません。
  39. 岡良一

    岡委員 その辺をあいまいにせずに、これはやはり原子力委員会の正規の決定で藤岡さんが選ばれた。しかも二名の常動のうちの一名でおられるわけなんですから、いろいろ原子力委員会としては重大な責任が私はあろうと思うのです。しかしそれはそれといたしまして、とにかく原子力基本法、原子力委員会設置法等に基いて今度発足をいたしました原子力委員会として、今度行われる水爆実験影響調査という国家的規模における行事に対して、これはいかなる目的を持つものであるかという点についての御所信を承わりたい。
  40. 正力松太郎

    正力国務大臣 藤岡委員を選びましたのは、先ほど申し上げましたように、平和的利用に対して大いに参考になりやせぬかという点を主としてやっておるわけであります。
  41. 岡良一

    岡委員 具体的に平和利用の参考というのはどういうものを意味するのでしょうか。
  42. 鈴木嘉一

    ○鈴木説明員 御説明申し上げます。原子力委員会では三月の九日にこの問題について決定をいたしておるのでございますが、そのときの決定の要旨を申し上げますと、四月二十日以降南太平洋においてアメリカ合衆国によって原爆実験が行われるよしであるが、その影響調査研究により、今後の原子力平和利用に伴う放射線障害防止についての貴重な資料が得られると思われるので、この機会に国家的規模において、その影響調査研究を行うことを適当と認める、そういうような決定になっておりまして、将来原子炉の廃棄物等で海洋が汚染されるかもしれないというときの放射線障害防止の問題についての資料が得られるという点でございます。
  43. 岡良一

    岡委員 そこで私が正力国務大臣に率直に所信を承わりたいのは、今の程度では、私は国家的規模においてこの調査を行う使命としてはまことにもの足らないと思うのです。これは先ほども申し上げたことなのですが、この実験影響調査というものを日本科学者ができるだけその力を集めて、その良心をかけて、国は財政的にも多くのバック・アップをしてさせる、そういうことによって得られた科学資料というものは、今度はばく然たる不安として水爆実験はやめてもらいたいというのではなく、科学的にこのようなおそるべき影響を与えるのであるということを明らかにすることによって、大国日本の衆参両院の決議にもかかわら、ず水爆実験をやる。アメリカも英国もやる、ソビエトもやる、こういうような事態、そういう非人道的な大国の野望を断念せしめるがための国家的行事というものが、この水爆実験影響調査の大きな目標として掲げられなければならないと私は思うのです。この点の御所信を承わりたい。
  44. 正力松太郎

    正力国務大臣 今の御趣旨はまことにごもっともであります。従ってその趣意に沿うようにできるだけ考究してやります。
  45. 岡良一

    岡委員 正力国務大臣は非常に答弁がお上手になられた、しかしいずれ考究するとか検討いたしましてとかいうのはもう古いのですよ。特にあなたのような野人の正力松太郎氏ですからやはりやりましょうといって胸をたたくぐらいに意気込んでもらわなければ、そういう古いタイプの答弁上手に逃げ込まれたのでは私はあなたのために非常に遺憾だと思います。それはそうといたしまして、それでは正力さんにお尋ねをいたしたいのですが、これはあるいは楠本さんでもいい。アメリカの方から共同の調査をやってもいいという申し入れが来たと新聞に伝えられているのですが、公式に来たのかあるいはまたアメリカの団体がプライベートにそういう意向を示しておるのですか。
  46. 鈴木嘉一

    ○鈴木説明員 かわりまして御説明いたします。三月十日付の外務省アジヤ局長からの書面でございますが、それによりますと「米側は今回も実験終了後その影響科学的海洋調査を行う計画の趣きにて、右に関する日本側の希望につき非公式に照会越した」云々とございまして非公式ということになっております。
  47. 岡良一

    岡委員 それではアメリカ調査を行うというのは八月三十一日以降ということでございますね。
  48. 鈴木嘉一

    ○鈴木説明員 そうでございます。
  49. 岡良一

    岡委員 私はこれはアメリカも加えてもいいと思うのですが、太平洋の波に洗われる国々は共同的な調査をやるべきだと思うのです。日本だけがやつきにならないで、特に水爆実験の禁止については御存じのコロンボ八ヵ国なども非常に大きな関心を示しておる。インドとかビルマとかセイロンとかインドネシアとか、これらの国々では今度モンテベロあたりでアメリカがやるということになると当然被害圏内に入りますけれども、こういう国々に呼びかけて、そうして水爆実験影響調査はアジアの諸国の共同的な作業として進めていくというくらいに踏み切るべきだと私は思うのです。これは一つ高邁なる正力国務大臣の御抱負を聞かしていただきたい。
  50. 正力松太郎

    正力国務大臣 毎度ごもっともな御注意ばかりいただきましてありがとう存じますが、一できるだけまた考えてやります。
  51. 岡良一

    岡委員 正力さんとはぼくは郷里が山一つ隔てたところだからあまり……。楠本さんにお尋ねをいたしますが、第七京丸事件というのがありましたね。アメリカ前回ビキニ実験の後拡大した危険区域よりもさらに離れたところを航行しておった第七京丸の乗組員二十二名が著明な白血球の減少という症状を呈したという事件がついせんだって新聞発表されておりました。あの事例はその後どういうことになっておりますか。あれは果してビキニ被害であったのか。ビキニでないまでも放射能被害であろうと私は思うのです、いろんな条件を考えてみて。あれはその後どういうふうに御調査になっておりますか。   〔委員長退席、中川委員長代理着席〕
  52. 楠本正康

    楠本政府委員 この問題につきましては、かねて原爆対策連絡協議会の医学部会におきましていろいろ精細に検討いたしましたが、結論的には、これは放射能症と関係なしということでございます。
  53. 岡良一

    岡委員 それでは一体なぜああいうふうに集団的に、船長は三千五百まで減った。他の諸君も著明な減少を来たしたと新聞では言われておるのですが、何によって起ったのですか。医学的にどうも不可解だと思うのです。
  54. 楠本正康

    楠本政府委員 放射能関係のないことは明らかに確認されましたが、しからばどうしてそのような症状が現われたかということにつきましては、いろいろ不明な点もございまして、なおこれを検討いたしておるところでございます。
  55. 岡良一

    岡委員 気象台は帰られましたか。楠本さんでもけっこうですが、たとえば雨の中に含まれた放射能の粉塵あるいはまた空気中を降下してくる放射能灰、こういうものを集めるにはどういう方法でお集めになるのですか。それからそれは確実なものかどうかということと、もう一つはこれから実験が始まりますと、あっちの大学でもこっちの大学でも、何万カウントあったというようなことで、非常なセンセーションを起す、これはきわめて危険なことだと思うのです。従って雨ならばどういう方法ではかる、そうしてどの程度までならば差しつかえがないという許容度のようなものをはっきり示されなければならぬと思う。こういう点について厚生省としてもこれまでのいろいろな御研究また作業の結果として結論を得られたものがあると思うのですが、御発表願いたいと思います。
  56. 楠本正康

    楠本政府委員 現在大気の中の汚染状況の一つといたしまして放射能ちりを調べますが、これはもちろん先ほどもお話がございましたように、目に見えるものでもございません。そこでこれを集塵装置を施して集めるわけでございますが、現在はいろいろな方法がとられております。たとえば電気集塵機であるとかあるいはコーヒー・ポット式の集塵器であるとかあるいはアメリカで広く行われておりますのは、一種のハエとり紙・ガムド・ペ一パーというものによって集める仕組みになっております。いずれも陰圧を利用して大量の空気中から目に見えない粉塵を集める装置でございます。日本におきましても現在私ども場所を指定いたしまして常時観測をいたしております。一方雨につきましては、これは降雨時の時間的経過によってそれぞれ調べておりますが、一応今は一リットルの雨水を集めましてこれを単位として計算をいたしておる次第でございます。なおどの程度までならば安全かということでございますが、これは放射能の性質にもよりまして一がいには言えませんが、ただ今国際的にきめられております基準におきましては、何もかもわからないときにはストロンチウム等の相当猛毒のものも含まれるという条件を入れまして、どの程度かというものをまず最初の検査の終らないときには使うわけでございますが、今日は大体——はなはだ専門的になって相済みませんが、十のマイナス十乗マイクロキューリーでございまして、これをカウントに直すということは必ずしも適当な措置でございませんが、外部照射の場合ですと数万カウント程度に相当いたします。内部照射つまり飲んだり何かいたします場合はこれはカウントに直すと、はなはだ乱暴なんでありますけれども、一応二十カウント、これはきわめてもう乱暴な話でございまして誤解ないようにお願いいたしたいと思いますが、この程度と約換算をされることになっております。
  57. 岡良一

    岡委員 さてそこでこの二十日からいよいよ実験がいつ何どき開始されるかわからないという状態にあるわけなので、そこで空気中の粉塵を採集する施設というものは国には一体何ヵ所あるか、そしてそれはすでに活動を開始しておるのですか。
  58. 楠本正康

    楠本政府委員 私どもは一昨年のビキニ実験以来気象台と協力をいたしまして、気象台におきまして全国で十三ヵ所に観測所を設けまして、降雨並びに一部におきましては放射能塵を調べるために大気を調べております。なお立教大学その他二・三の地点においては、特にちりに中心を置きまして精密な検討を今日まで続けてきておりま女。その結果、かりにも多少恕限度に近、つくという危険信号が現われます場合には、厚生省に報告をしていただくことになっております。厚生省はその報告に基きましてそれぞれ適切な対策を立てるという仕組みで進んできております。なお当初は雨水のほかに私どもは全国で八ヵ所の水道水源等を調査の対象にいたしておりましたが、約半年経過いたしましたが何ら異常がありませんでしたので、約半年の経過で途中で調査を打ち切っております。従って現在は国内のアンテナといたしましては大気及び雨でございます。
  59. 岡良一

    岡委員 そこで先ほどの気象台お話によれば、去年の四月一日からか、全国十ヵ所の気象台気圧計を備えて実験の時期の推定もし、またそれに伴う従来の経験から推しての放射能気団の移動、またそれに伴うわが国内における雨の放射能あるいは大気の粉塵の測定をやっておるというようなことをお話しだったようでありますが、それは何ヵ所あって、それがいつでもちゃんと活動し、そしてそれは厚生省なら厚生省の方に報告する、そうするとそれに対する万全の措置が直ちに通報されるという、そういう機動的な、有機的なものができておるのですか。二十日に実験を開始するということなのですから、ただ学問的興味といってもいいような形でやっておられるということでは困るので、特に粉塵の問題は私は重要だと思うのです。これは調査のためにも重要だと思うのですが、その万全の態勢はできておるのでしょうか。
  60. 楠本正康

    楠本政府委員 この調査方法でございますが、降雨につきましては気象台の方からお話があるかと存じますが、粉塵等につきましては、たとえば立教大学の調査所で行なっておりますのは、二十四時間欠かすことなく、刻々に粉塵キ集めておるというやり方で、しかも一日一日計算をしていくというやり方をいたしておる次第でございます。調査方法等につきましては十分に徹底した対策を立てておるという自信を持っております。
  61. 守田康太郎

    ○守田説明員 中央気象台においてやっております業務について、今の御質問にお答え申し上げます。中央気象台でやっております業務は、今御質問にありましたような、単に研究の趣味といったようなことではございませんで、ちゃんと業務規程声作りまして業務としてやっております。従って普通の日常観測がきめられた時間にきめられた形式でやっておりますのと全く同様な組織でやっております。雨につきましては毎日一回きまった時間に採取します方法と、それから一雨ごとの、降り始めの、特に放射能の強い部分だけを一定量採取して比較するという二つの方法が全山国の十四ヵ所で行われております。それから塵芥については、全国の五ヵ所で集塵器を用いて、定量的に一定量の空気についてその中の塵芥の放射能を測定する、そろいった測定の結果に基いて、雨水の場合でありますと、リットル当り千カウント以上の放射能観測されましたら、中央気象台の普通の気象専用の電信によって電報で報告されるようになっております。そういうわけで、観測結果は直ちに業務組織によって中央気象台がそれを集め、そして関係方面にすぐ連絡するという組織ができております。
  62. 岡良一

    岡委員 灰を集めることについてのテクニックを、少し文献を調べてみると、現に〇・五ミクロン以下の粉塵などというものはよほど精密なものでないと集まらない。ただぼやっとおさらの上に水を入れて、そうして落ちてくるのを集めるというような素朴なものでは、放射能灰を集めてほんとうの化学的な分析をやることはできないというふうに私は聞いておるのですが、立教大学が一番進んだ装置を持ち、ひときわ目立った活動をしておられるようだけれども、これは立教大学だけで学問的な研究としてやっておられる、その方のウエートが多いんじゃないか。国としてそこまでやらなければならぬ。気象台の方のお話もお聞きしましたが、これはどういう方法でやっておられるか知らないが、これだってきわめて素朴な方法じゃないのでしょうか。これは放射能粉塵の影響調査には何としても大事な調査なわけなのですが、そういうことでは非常に手ぬるいのではないかと私は思うのです。一体現在の科学の技術の段階で、気象台のやっておられる粉塵の集め方で果して化学的な信憑性のあるデータが出るのかどうか。立教大学、血教大学と言われるが、あなた方とそう関係があるわけでもないし、そこに一つあるだけの話で、九州にもどこにもなければならないはずのものが、そこでやっておるというだけの話で、そこにおまかせしているということでは、私は政府としては責任が足らぬと思うのだが、いかがですか。
  63. 楠本正康

    楠本政府委員 厚生省といたしましては現在予防衛生研究所あるいは衛生試験所に精密な検査のできる装置がしてございます。なお北海道あるいは福井、鹿児島等の重要地点におきましては地方衛生研究所でもこの装置をし、技術を持っているわけでございます。なお立教大学と申し上げましたのは、立教大学の田島教授が厚生省の連絡協議会の重要なメンバーでございますので申し上げたわけでございますが、なお大学では地域的には新潟大学がやはり立教大学と同様な仕事ができる形になっております。しかし国の予算あるいは地方の予算等もなかなか苦しい現状でございまするので、御指摘のようにこれらの精密な調査が徹底的にできるように調査網をもう少しく拡充する必要ありとは考えておりますが、いまだそこまでいきませんのはまことに残念と存じております。なおかような仕組みで集めました灰は、微量分析によって成分がわかって参ります。これらはこの前のビキニ降灰のほかに、その後アメリカ大陸において行われましたもの、あるいはソ連において行われましたもの等につきましても、かような方法で集塵いたしまして、さらにこれを分析して結果を得ておる次第でございます。
  64. 岡良一

    岡委員 それから最後に日本の国民とすれば三度、三度どうしても欠くことのできない蛋白食料としての魚類ですね。これについての前回ビキニの体験があるわけです。これはあなた方にとってはきわめて苦々しい体験でもあったわけです。俊鶴丸がまたあなた方の当時とられた対策についていささか修正を要求したような実績もあったように聞いておりますが、前回の魚の取扱いはこうであった、今度はこうしたいという具体的、総合的な案はおありだろうと思う、その点を一つお聞かせ願いたい。
  65. 楠本正康

    楠本政府委員 前回は御承知のように南方水域から入って参りますマグロ類を五つの港に集結いたしまして、陸揚げ前にすべて一尾々々全品検査をいたしまして、十センチの距離で百カウントを数えたものは廃棄処分にしたわけであります。ところがその後いろいろ調査を進めて参りましたところが、大体私ども経験がなかったために今から考えますとはなはだ申しわけない結果でございましたが、かような測定方法等についても多分に疑義がございます。のみならず、当初は主として表面に付着いたしました放射能がはかられております。その後いろいろ調べてみますると、むしろ表面というよりも内部に放射能が沈着しておるということが明らかになってきた、しかもそれが筋肉ではなくて、むしろ骨髄であるとか、あるいは肝臓等の内臓臓器に沈着するということがだんだんわかってきました。また一方だんだん調べております間に、これらの放射性物質も、ストロンチウムのようなものはきわめて痕跡的でありまして、大部分は亜鉛の六五であるということもわかってきました。従って食用として魚肉を用いることは別に危険がないという結論に到達いたしました。なお、その途中においては、御指摘のように調査研究段階におきまして、若干基準等を変えたこともございますが、いずれにいたしましても、このような経験を持っておりますので、今回は特に南方に船を出しまして、そこで漁獲した魚類を精密に検査いたしまして、大体この前の様子とどうかというような点、及びこの前は大体プランクトンその他小魚類が主として汚染されました。これをえさとしておりますマグロが二次的に被害を受けておるということが明らかになって参りました。なおその間には、いろいろな生物による放射能の選択性がある、たとえばストロンチウムをきらって亜鉛をとるというような、放射能種類による選択性があることも明らかになって参りました。こうなって参りますと、今直ちに陸揚港で検査をするということは、まことに非科学的な措置でありますので、まず私どもは南方におきましてこれらの選択性の問題、あるいは二次汚染の問題、あるいはそれらの汚染物の計測等をいたしまして、それらの結果を総合して国内の対策に移りたい、かような考えで進んでおるわけでございます。
  66. 岡良一

    岡委員 そうすると、かりに五月八日に水爆の第一回実験があり、そして三週間ですから、五月の月末には放射能気団がやってきて、そこで空気の中から放射能のちりを集めてこれを分析してみる。ところがストロンチウム九〇が現にあったとします。一方船は新聞で見ると、中旬に早ければ出る。おそらく一カ月以上はかかると思います。帰ってきて、その結果として大したことがないかあるか、いずれにしてもその結果を待たなければ、魚に対しての廃棄処分をどの程度でするかという結果は出ない。万一出てきたらどうなるのですか。というのは、たとえばプランクトンが亜鉛六五が好きでストロンチウム九〇がきらいだというけれども、そういう都合のいいプランクトンばかりかどうか、そんなことはわかりっこない。科学的なデータとしては試験管の中でプランクトンを培養して、ストロンチウム九〇なり亜鉛を与えて確かめるというなら話はわかるけれども、俊鶻丸が去年出ていった経験・ビンを下げてすくい上げた中で、そういうことがあったからというくらいでは、場合によれば人命にも影響がある問題を事もなげに船が帰ってきてからということでは、私は少し責任がなさ過ぎるのじゃないかと思うのです。問題は、とにかく俊鶻丸が今度再びチャーターされていくという話を聞いておりますが、いずれにしても、船が出かけていって、帰ってきたその結果を一つ報告を求める、同時に前回報告もあることだから、これも重要な参考として、そこで魚の取扱いについては最終的な結論は出す、それまでは魚は打っちゃっておいて、どんどん陸揚げさせて、どんどんおすし屋へでも、食ぜんへでも上せていいのだ、こういう取扱いをなさる御方針ですか。
  67. 楠本正康

    楠本政府委員 船は約二カ月近く出ますので、帰ってきましてすっかりデータを整理いたしますには、かなり時間がかかります。しかし実際の操作は、船の中でもある程度の試験研究はできます。その結果は無電で内地に報告をよこすことになっております。それから一方そこで得られたサンプルは、こちらに帰ります漁船あるいは他の船等に委託いたしまして、さらに精密な検査を要するサンプルは、内地の試験研究機関に送って参る仕組みになっております。従ってその間のズレというものは、約二週間程度は御指摘のように放置された期間が出るわけでございます。そこで問題は、この前のときの経験では約十万貫の廃棄をいたし費したが、それらの中で最も汚染の強いものをたくさん選んで調べたわけでございます。これらのものを現在の国際的に認められております許容量からいたしますと、その最も汚染の強かったものでも二百五十グラムずつ毎日一生食べていても差しつかえないという程度の汚染でございます。従って今回・二週間程度そこにズレが出たとしても、私どもといたしましては、国民の保健上何ら支障がないという判断のもとに、さような方法を講じているわけでございます。
  68. 岡良一

    岡委員 その前提は、魚の放射能を持つ元素は主として亜鉛六五であろうという前提じゃないのですか。ストロンチウム九〇だったら、そうはいかないのではないですか。
  69. 楠本正康

    楠本政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、これは国際的に、中の元素分析が済まずに、とにかく放射能が現われたというときには、大体その危険なものを中心として考えて、元素分析のできてない場合の一定の許容量がきめてございます。これは先ほども申しましたように、十のマイナス十乗マイクロキュリーでございますので、これらから考えまして、これを上回るようなものがかりに出たとすれば、それはもちろん対策を講じなければならぬと思いますが、こんなものはこの前の経験では出ない。しかも、言い落しまして大へん失礼いたしましたが、大体生物の汚染は、そのピークが実験後五、六カ月後に現われております。当初はほとんど汚染がない、全くないというわけでありませんが、汚染がきわめて乏しい。日を追うに従って激しくなり、ピークは六カ月以後ということになっております。従って今回は、当初の実験直後、さらに引き続きましてピーク時の六ヵ月後ぐらいの二回の調査を実施したいというのは、その理由からでございます。従いまして、かれこれ考えまして、先生の御指摘のような危険は絶対にないという確信のもとに調査を進めているわけでございます。
  70. 岡良一

    岡委員 私の言うのは間違いなのでしょうか、問題は五月八日に第一回の実験があり、そこで三週間日に集められたちりの中からは、元素分析してストロンチウム九〇が発見されたという事実が明らかになった。ところが魚は船からの報告を待って処置するのであるからということで、そのまま放置してある。私は十のマイナス十乗マイクロキュリーもあるかないかという総カウント数を言うのじゃないのですよ。総カウント数が少しくらい高くても、元素によっては大した影響はない。しかしその元素が、半減期二十八年のストロンチウム九〇などであれば、これがまかり間違って体内に摂取されて、骨に沈着するということになれば、幼弱な骨髄細胞がやられるということは必至です。そうなってくれば、〇・五ミクロンのストロンチウム九〇でも致命的な影響を及ぼす可能性があるんじゃないでしょうか。そこのところをどうさばかれるか。
  71. 楠本正康

    楠本政府委員 もちろんストロンチウムとか亜鉛各種の放射性物質によって、それぞれ許容される量は違います。しかしながら、ただいま申し上げました一定の許容量というものは、汚染が何の原因によるかわからないというときに当てはめられる基準から考えて、それ以上はいくまいということを申し上げているわけでございます。従ってこれはもちろんストロンチウムであるかもしれませんが、かりにあったとしても、その程度ならばよろしい、こういうことになるわけでございます。  第二点は先ほど言い落しましたが、魚類の汚染はピークが半年後であります。当初はきわめて汚染の程度が低いというようなことから考えまして、かりに二週間のブランクができましても、これは支障ないという判断をいたしておる次第でございます。
  72. 岡良一

    岡委員 前段の点で、たといストロンチウム九〇であったとしても、それほどに乏しいカウントであれば、人体に影響はない、そう医学的に言い得るのでしょうか。  いま一つは、魚類の汚染は六カ月をピークとすると言われますが、魚類の汚染が六カ月目をピークとするということは、一体どういう根拠なんでしょう。私はそれは非常に可変的なものだと思うのですよ。とってこられたマグロの漁場の位置の問題もありましょうし、当時の海流の流れの問題もありましょうし、気象的な条件とか、いろいろな条件があるのじゃないでしょうか。だから、そういう非常に可変的な、大洋を回遊する魚の汚染度というものを、六カ月目がピークだと言い切るということは、そのことも私は科学的な根拠としては少し薄弱なのじゃないのだろうかと思うのですが、何か納得のいく御説明があれば承わりたい。
  73. 楠本正康

    楠本政府委員 私ども前回約十万貫のマグロを廃棄しております。全体では二千数百万貫を検査いたしております。従って、二千数百万貫を検査した結論として、半年後にピークが現われてくるということを言っても、まず間違いないことじゃないか、かように考えておる次第でございます。
  74. 岡良一

    岡委員 こういう話は楠本さんとひざ詰め談判でお話をしなければならぬような専門的な話だから、この程度でやめますが、厚生大臣もお見えだから特に私が希望おくのは、どうも対策としては科学的にも不用意な点があるのじゃないかということ、もう一つは、何といっても楠本さんなり気象台の方々なり、それぞれ良心的な方々がやろうにも、予算の制約があってやりきれないということですね。こういうところに、今日の先に押し寄せておる水爆実験に対する国民の不安を解消するに足る、十分なる対策というものが立ち得ないんじゃないかということをきょういろいろお話を伺って感じました。他の方もありますから、私は一応この程度で質問をやめます。
  75. 中川俊思

    ○中川委員長代理 八田君。
  76. 八田貞義

    ○八田委員 岡委員からいろいろとこまかい点が質問されましたので、私は時間を節約する意味で二、三の点について質問いたしたいと思うのであります。この問題につきまして冒頭に、私はこういうことを申し上げてみたいと思うのであります。水爆実験被害というものを、かつて広島、長崎に行われた原爆被害とか、あるいは一昨年のビキニ環礁におけるところの水爆実験の死の灰による被害、これと結びつけて誇大な災害を予想して、対策を立てることはもちろん大切でありますけれども、それが行政上の混迷となるようなことがあっては、非常なる問題が起ってくる。そういう観点から考えまして二、三質問いたしてみたいと思うのであります。もちろんいろいろと考えていけば、実験上の問題あるいは研究上の問題が行政上に結びつけなければならぬ問題が起って参りますけれども、まだまだ意見一致を見ないような、まだ十分に定説となっていないような学説も出ておるわけでありますから、それを一々行政上に結びつけては、行政の混乱が起ってくる、かような観点から申し上げてみたいと思うのであります。  まず第一に質問いたしたいのは、調査船を今度の水爆実験危険水域にお出しになるようでありますが、一体いっから調査船をお出しになって、一体どのような調査方法をとってこられるか、それについてちょっとお知らせ願いたいと思います。
  77. 楠本正康

    楠本政府委員 大体調査船は来月のおそくも半ばには出港できるものと考えております。なお各種の専門家約十六名に船に乗っていただきまして調査を進めていきたいと思うのであります。現在調査項目として考えております点は、マグロその他捕獲物の調査、あるいはプランクトンの調査、そういった生物的の調査を一方でいたします。  二は大気、雨水、海水等の主として気象的な論査、さらにこれに関連いたしまして、船体の各部におきます調査あるいは船の居室におきます影響調査というようなものを調べて参りたい。  第三には、人体に対する影響調査でございますが、これは健康診断・ことに白血球、尿その他の調査を船の上において実施をいたし、なお動植物等に対します実験的な調査をも、現地においていたしたいと考えておるわけであります。それから一方気象関係におきましては、高層気象観測を定点的にいたしたいという考えを持っております。さらにこれら汚染物件におきましては、それぞれ元素分析を実施いたしたいのでありますが、ただ船の上では場合によりますと、バック・グランドにかなりの放射能を認めましたときに不正確となりますので、一部内地に直送いたしまして元素分析を実施しなければならぬ、かように考えておる次第でございます。
  78. 八田貞義

    ○八田委員 来月の半ばに派遣せられるということですが、どうでしょうか、水爆実験のやられる日はわかっていないわけですね。危険水域の中に入っていかれるわけですね、どうなんですか。
  79. 楠本正康

    楠本政府委員 今のところは、八月の末まで危険水域の中が立ち入り禁止になっておりますので、調査は結局危険水域外において実施されることになると思います。
  80. 八田貞義

    ○八田委員 危険水域外において今のような項目についておやりになるということで了解いたします。  それから今まで昨年のビキニ環礁の水爆実験以来本問題について各地の研究者が、雨水とか食物からいろいろな放射能物質の検出を行なってカウントで計算しておるのでありますが、その場合にストロンチウム九〇が大気の中にどれだけふえていっているとか、あるいは空気の中にどれくらいストロンチウム九〇が含まれているとか、そういった成績はございますか。
  81. 楠本正康

    楠本政府委員 大気の粉塵あるいは雨等を調査いたしました結果は、もちろんできる範囲におきまして元素分析をいたしております。たとえばバイカル湖の水爆実験の結果の元素分析を、これは雨について実施をいたしておりますが、ウラニウム、ストロンチウム、ジルコニウム、バリウムというようなものが証明されております。これらの量につきましては、ストロンチウムその他被害の多い放射性物質は、むしろこれらの成績から見ますと、ビキニ実験のときよりも若干多いようであります。しかし今回どういうような内容のものが実験されるかということは、今後の調査に待たなければならぬと思います。
  82. 八田貞義

    ○八田委員 楠本部長もすでにアメリカ原子力委員会のリビー博士によって空気中のストロンチウム九〇の含有量の成績を御存じのことと思いますが、この成績によりますと、一平方マイル一から一・五ミリキューリーのストロンチウム九〇が降下しておる、こういうことをリビー博士が言っておるわけで、あります。この状態では、今後水爆実験をしなくても十年くらいはこういった状態が続くであろう、こういうふうに言っておるわけでありますが、こういった仮定のもとに、さらにストロンチウムの半減期を考えあわせてみると、土壌の中のストロンチウムの含量の飽和状態は一九六六年になるだろう、こういうことをリビー博士は言っておるわけであります。そしてリビー博士のその報告の中で人間に対する最大許容量というものは、人体全体について一マイクロキューリー、こういうふうに言っておって、さらにこれの人体の中のカルシウムの量から計算すると、人体の中のカルシウムの量は千グラムと言われておりますから、そういった計算のかね合いをやっていくと、少くとも千百メガトンの原水爆の核分裂が起るのだ、こういうようなことを言っておるようであります。これについて楠本さんはどうお考えになるか知りませんが、ただこれらの結論から、リピー博士は人体に対する影響というものはそう考えられない、こういうような結論を出しておるようであります。ところがこれに対して私が心配いたすのは、人体に対してセシウムの二二七の含量がだんだんとふえてきておるということがアメリカあたりの報告に出ておるわけであります。そうしますと、リビー博士の言うようなストロンチウム九〇についてだけの結論をもって安心するわけにはいかぬわけでございます。そこでわが国内の研究者が果して人体内におけるセシウム一三七の含量についてやっておられるような報告があるでしょうか、これは私ども調べればわかるのでありますが、ちょっとお聞きしたいと思うのであります。
  83. 楠本正康

    楠本政府委員 日本におきましては、まだセシウムの人体内における含量というものを調べられた試験はないように承知いたしております。
  84. 八田貞義

    ○八田委員 そこで問題を端折って参りますが、昨年原爆マグロの検査の場合十センチの距離において百カウントというふうにされておったのでありますが、今後ともこういった一これは私行政上の一つの恕限度であるというふうに解釈しておるわけでありますが、今後とも十センチにおいて百カウントといったマグロの検査をされていくお考えであるか、これをお聞きしたいと思います。
  85. 楠本正康

    楠本政府委員 この点につきましては、先ほどの岡先生の御質問のときにもお答え申し上げましたが、まことにずさんなやり方でございまして、今後はさらに検討を加えまして、はかり方を一定にしなければならぬわけでございますが、目下学術会議の中にこれらの測定方法委員会を設けましてせっかく検討を加えておるわけでございます。いずれ今回の実験に間に合いますようにぜひその結論を急ぎたい、かように考えておる次第でございます。
  86. 八田貞義

    ○八田委員 そこで今の十センチ百カウントという測定基準でございますが、これは国際的な根本数字としては、一週間に三百ミリレントゲンの数字、これが基礎になっておるわけです。私は昨年もこの問題についていろいろと頭を悩ましたのでありますが、先ほどの答弁にありましたように、筋肉にはこういった放射性物質の結びつきが少いということであります。そこでこの十センチ百カウントという基準は、少くとも職業上常に放射線を受けておる人の恕限度から計算された数字ですね、そうすると百カウント以上の場合はその魚は破棄しなければならぬが、どうしてこれ以上の場合にはその肉は食っていかぬのか、一週間の恕限度をとって、そうして計算されて十センチ百カウント、ところが百カウント以上のものは一回しか食わないわけです。ですから、私はここに問題があると思うのです。筋肉の場合にはほとんど問題がない。内臓とか骨を捨ててしまえば、筋肉をよく洗って食べれば問題はないわけです。しかも十センチ百カウントというのは一週間のレントゲンに対するところの害を計算された数字でございますから、一回に食べる分においては問題はない、こう考えております。それですから、今後十センチ百カウントに対してもうすでに厚生省においていろいろ学者の方と討議されておると思うのでございますが、一体どのくらいの数字を今後出していかれるのか、あるいは今の見通し、これはむずかしいかもしれぬと思いますが、お知らせ願いたいと思います。
  87. 楠本正康

    楠本政府委員 この許容量の基準につきましては、まことに議論の多いところでもございまして、またこれがはっきりしないために、かえって国民にいたずらに不安を与えるというようなこともございます。私どもといたしましても、これも先ほど申し上げました測定方法の基準と同様に目下厚生省におきまして各方面専門家にお集まりをいただきまして検討を加えており、これも実は早く結論を出したいと思っておるわけでございますが、まだあと十日くらいはかかるのじゃなかろうかと思っております。大体の考え方といたしましては、今のところの各学者の検討の方向は、現在国際的に認められております一つの基準がございます。これをどんなふうにそれぞれの品物に当てはめていったらいいだろうかというようなことで、多分その国際基準が基礎となって行われるかと存じます。なおこの国際基準は、必ずしも三百ミリ・レントゲン毎週というようなことよりも、むしろそれぞれの放射線の性質によりまして、これを規定をしていくことに相なっておりますので、おそらくさような方向で決定を見るのではないか、かように考えております。
  88. 八田貞義

    ○八田委員 そこで恕限度の問題をもう一点だけお尋ねいたしたいのですが、これはりビー博士の楽観論に対しまして、アメリカのマサチューセッツ工科大学の教授を中心とする原子科学者のメンバーは、今年の三月初めに、放射性落下物の影響を遺伝学的に考えまして、それがすでに危険な状態になっておることを指摘しておるわけであります。これはニューヨーク・タイムズ紙上にも掲載されておるのでありますが、ここで私が考えてみたいと思うのは、いろいろな生物には、大体あるきまった頻度で、きまった格好の突然変異というものがずっと出てきておるわけであります。それが何のためにできるかということについては、またはっきりしておりませんけれども、とにかくこういった突然変異がある頻度で、あるきまった格好で、ある生物の中に見られておる。ところがこういった生物に対して放射線を与えると、今まで起ったと同じような突然変異の頻度がふえてくるということは確かであるというふうにいわれておるわけでございます。そこで恕限度をきめていく場合に、初代の突然変異を防止するか、あるいは二代、三代にわたっての突然変異を防護するか、こういうような点から考えて参りますと、この恕限度というものは非常に問題が複雑になって広い幅を持たせなければならぬということになってくるわけでございます。ただ私としては食品衛生の面から考えますると、こういったいろいろな実験上のこまかい点を一々加えて参りますと、行政上において判断しかねるような問題が非常に輻湊してくるわけです。そこで私は十センチ、百カウントという線が、少くとも過去の実験から見てそう間違った線ではない、こういうふうに考えておるわけであります。これについていろいろ学者の方の御意見を拝聴されまして、正しい線を出していただくことをお願いいたしたいのであります。ただこの問題につきまして、ビキニの問題で今日騒いでおるわけでありますが、国内においてこれ以上の放射線の障害を受けている職業というものがあるわけなんです。特に今日のポータブルのレントゲン発生装置、これは非常に莫大な三百から四百くらいのレントゲンの散乱線を出しておるということで、今日においてはポータブルのレントゲン装置を使っておる医師あるいは医療担当者あるいは患者に対する対策というものの方がむしろ大切じゃないか、私はそういうふうに考える。目を外に奪われて、いろいろな学者の意見を拝聴されることはいいのでありますけれども、ただそれを誇大に行政の中に結びつけていきますと非常な迷惑が起ってくる。足下で、国内において非常な、三百というような大きな放射線量の被害を受けておる。こういうことに対して公衆衛生上どういうふうなお考えをお持ちですか。
  89. 楠本正康

    楠本政府委員 ただいま御指摘の、むしろ国内における医療関係者等にかなりの障害が及んでおるではないかというお話は全くごもっともでございまして、事実かなり悲惨な事例も多数に見られておるわけであります。しかもこの場合医師というよりも、実際に医師の助手として働いておるか弱い対象に、かようなものが多い実情で、まことにその通りに思っております。そこで厚生省といたしましては、ことしの初めに医療法の施行規則の一部を改正いたしまして、これらの防御の措置を講じた次第でございまして、私どもといたしましては、今後もこれら医療関係者の中から出るかような犠牲者の絶滅を期して、逐次法令、取締り、施設の基準・その他を整備していきたい考えでございます。
  90. 八田貞義

    ○八田委員 そこで、日本の市販におけるポータブル装置でヘョドよりの漏れがはなはだしいのが非常に多い。ある研究者の報告を見ますると、大体十七種くらいの市販のポータブル装置について調べたところ、国産品でいいといわれるものはたった三つしかない。あとはほとんど漏洩の程度がはなはだしい。とうてい放射能雨などで騒ぐ程度のものではない。非常な高い量が散乱されておるということがいわれておるわけであります。現にこういった障害でもって白血球数が二千台となった、そして全身症状が現われてきたというようなことが報告されておるわけであります。さらにまた患者の場合におきましても、全部の歯のレントゲン写真をとる場合に、一回、二回やる場合、あるいは二十回、三十回というような撮映をする場合がある。そうしますと被検者の顔面に照射される線量というものは百から三百レントゲン、このくらいに及んでくるわけであります。ですから患者に対しても放射線量の被害というものは非常に大きなものである。国内においてこういった現実が実際にあるわけであります。今医療法によって市販ポータブルのこういったものに対して、一つの規制を加えておるというのでありますが、実際の医療法の内容を見ますと、これは単にそういったものを使うなというだけのことでございまして、それを作る業者に対するところの何らの規制がない。これは私は間違いじゃないかと思う。それを使うなと言っても、メーカーがどんどん作っておればこれは何ともしょうがない。こういうことについて今後公衆衛生面——医務局長が来ておられませんから、その監督、指導について質問をできないのでありますけれども、ぜひとも曽田局長にもお話しになって、こういった不完全なポータブル装置を作っておるメーカーに対して規制を加えるということは私は非常に必要だと思う。この点を一つぜひともお願いをいたしたいのであります。
  91. 楠本正康

    楠本政府委員 まことに御指摘の通りでございまして、一応厚生省としては、最近御承知のようにポータブル・レントゲンのJIS規格を作りまして、その規格に従って製造をするように、安全なものを製造するようにいたしております。従ってだいぶ進歩はして参りましたが、さらにこれらのJISの規格を改良いたすとともに一方ではJIS以外のものは使わないことにでも規制することが、今後の研究の方向じゃないか、かように考えておる次第であります。
  92. 中川俊思

    ○中川委員長代理 次会は来たる二十四日火曜日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十二分散会