○井堀
委員 ただいま
議題になりました
健康保険法等の一部を
改正する
法律案、右に対する
藤本君外十名
提出の
修正案、
厚生年金保険法の一部を
改正する
法律案、
船員保険法の一部を
改正せる
法律案、右に対する
藤本君外十名
提出の
修正案、
岡良一君外十二名の
提出されております
健康保険法等の一部を
改正する
法律案について討論を行わんとするものであります。
まず
政府提案の原案に対しまして反対の意思を明らかにし、続いてこれに対する
修正案、さらに
厚生年金保険法の一部を
改正する
法律案の原案、
船員保険法の一部を
改正する
法律案の原案、さらにこれに対する
修正案に対しまして反対の意思を明らかにいたし、さらに
岡良一君外十二名
提出の
健康保険法等の一部を
改正する
法律案についてはこれを支持し、皆さんの御同意を得たいと思います。
われわれが
政府原案に反対をいたしますのは、申すまでもなく今
日本の民族が理想といたしておりますのは
福祉国家の建設でありまして、
福祉国家建設は
社会保障制度の
確立にあることは今さら申すまでもありません。社会保険はその
社会保障制度の中核をなすものでありまして、ことにわが国の
健康保険法は、社会
保険制度の中におきましても最も古い歴史と長い経験を持つものでありまして、この間に多くの特徴を積み重ねまして、今日の
医療保険の中核をなすに至りましたことは、周知の
通りであります。この
健康保険法の
改正は以上のような
関係からいたしまして、よほど慎重に取り組まなければならないのでありまして、その盛衰は、直ちにわが国
社会保障制度の消長を決する重大な事柄であります。しかるにここに
提案されておりまする原案につきましては、われわれはかかる
態度をもちまして、真剣に原案並びに
修正案について質疑を続けて参りましたが、その質疑を通じまして明らかになりましたことは、まことに遺憾千万と申すべきでありまして、かかる
日本の民族の願望しておりまする
福祉国家の理想に対しましては、全く逆コースをとる
健康保険法の
改悪を意図するにほかならぬことが明確になったのであります。もちろん
政府の
趣旨弁明の中におきましては、
健康保険の経営上、多くの
赤字をあげて、その
赤字の解消の急務なることを説いております点においては、私
どもも同感であります。しかしここで
健康保険の
赤字問題を解決しようとするためには、いかなる処置をなすべきかというその方法におきまして、全く本末を転倒した
提案であると申さなければならぬのであります。われわれの主張いたしたいことは、
健康保険法の
改正に当りましては、たびたべ質疑の中で
政府も表明されましたように、
国民のすべてに医療の恩典を浴せしめるということは
社会保障制度の第一
段階であります。この点については、
政府もわれわれも意見を同じゅういたしたのでありますが、その実行については、全くそれとは反する
改正案であることを遺憾に思うのであります。
まず
健康保険法の
改正に当りまして取り上げなければならぬことは、適用範囲を拡大いたしまして、
健康保険の適用
事業所の範囲が拡大されることによって、三千万に近いところの社会保険の恩典から除外されております人々をこれに吸収する道を講ずべきであります。この点について何らの改善を試みようとする意図すらないことを私
どもは発見して、これは
社会保障制度を主張する資格をみずから放棄するものであることを遺憾ながら認めたのであります。さらに私
どもの強調いたさなければならぬことは、三千万に及ぶところの、経済的苦境の中に医療の恩典からはずされております人々というものがどういう階層であるかということを直視しなければならぬのであります。これは言うまでもなく、
健康保険は生産に直結いたしますところの
事業所に雇用されておりまする人々を対象にする保険でありますから、そういう生産の第一線をになう人たちの健康保全のための
健康保険の
使命というものは、この点にとりあえず抜本的な
措置を講ずべきでありまして、その金額を予定いたしましても、ごく小額な
予算によってなしとげられることが、この質疑応答の中において明らかにされたのであります。でありますから、
予算上の
理由をもってこの範囲拡大をはばむことはできないということが明らかになったのであります。そこでこの点において私は今回の
改正案というものが、全く本末を転倒しておる事実を指摘したいのであります。
第二の問題は、今日
進歩せる近代医学の成果を適正に医療に取り入れるということは、国策上最も緊急なことであります。ところが今日病苦に悩む多くの人々が多数あるにもかかわらず、これらの人々が医療の恩典に浴することができないで、いたずらに苦境の中に呻吟しております事実は目をおおうことはできないのでありまして、これをこの保険のワクの中において処理するということが改善の第二として
考えられなければならぬのでありますが、この点についても何らの方針が意図されていない。意図どころではなく、こういうものに対する
政府の所信すら伺うことができなかったことをまことに遺憾に思う。のみならず、それとは逆に今日
赤字を補てんするために、近代医学の成果を適正に医療に取り入れるという
国民的な国家的な要請に逆行いたします医療の制限をいたして、保険財源の
赤字を補てんしようとするがごときことは、保険の精神をじゅうりんするのみならず、
日本の
福祉国家への理想をはばむところのおそるべき反動的な傾向であると申さなければならぬと思うのであります。
第三にあげなければなりませんことは、
日本の最も恥ずべき
国民病ともいわれます
結核対策と
健康保険の
関係であります。申すまでもなく、
世界のいずれの民族に比較いたしましても、近代国家を志向いたします
国民においては、
日本ほど
結核によって多くの
国民が生命を断たれ、あるいはそのために経済的貧困の苦境に転落せしめられているというこの社会的事実を一刻も早く解決しなければならぬことは、たびたび国会においても、あるいは世論の中においても強く取り上げられ、かっては
結核対策のための立法
措置を購ぜられたことは事実でございまして、この対策を、今日
健康保険の
改正とにらみ合せて積極的に取り上げることが、今当面しております
健康保険の
赤字問題を解決する唯一の方法であると私は指摘したのでございます。ところが、この点に対する
政府の答弁はきわめてあいまいであったことを遺憾に思うのであります。すなわち
結核の対策が、現在の法規をもっていたしましても、
結核予防法の
予算化の方法によって
健康保険の中における
負担を軽減することによって、
健康保険も正常なる経済を保持することができる。また
結核も一元的な、しかも徹底した医療とさらに
患者の保護が期せられていることは、あまりにも明白な論理であります。このことが今回取り上げられなかったということは、いかにも
健康保険の
改正とは申しながら、
医療保険の中核を理想的に押し詰める立場からいたしますれば、これまた大失態であると申さなければなりません。その意味において、社会保険の
改正を意図する
政府の意思が那辺にあるやをわれわれは疑ったのでございます。
第四にあげなければならぬことは、
政府管掌の
健康保険と組合管掌の
健康保険とは、全く同じ立場に立つ保険経営の中において大きな誤差が出てきていることであります。これはいろいろ
原因があることでありますが、本
委員会においては、この問題を爼上に上せて論議する必要を重視いたしたのでありますけれ
ども、時間の許さないところで、この問題に言及することができなかったことを非常に残念に思います。しかしここでわれわれの言い得ることは、今日
政府管掌の
健康保険の弱点は、
政府も
提案趣旨の中で述べられたように、また一、二論議がかわされたことによって明らかになりましたのは、今日の
政府管掌の被
保険者の多くが、中小企業、零細企業の
雇い主、すなわち低賃金の被
保険者を対象とするところに、保険経済の上に非常なマイナスのある点を主張され、われわれもこれを認めているのであります。そこで、この事実をどうして処理するかという問題に対して、何らの対策がなかったということは、事実を指摘しておりながら、その方法をこの
改正案の中に持ち込まなかったということは、意識的に放棄したのであるか、あるいはそれを
措置するだけの能力に欠けているのであるか、そのいずれかに落ちるのでありますが、ここでわれわれが指摘しなければなりませんことは、その
原因は申すまでもなく、
政府の経済、
財政、
金融、産業その他一般の政策が、
日本の戦後の自立経済達成から始まりまして、健全
財政に急速な切りかえを必要とした事実をわれわれは承認するものでありますが、その政策転換の場合に、当然そのしわ寄せが
健康保険に寄ってくるであろうことはだれしも想像のできることであります。言いかえますならば、デフレ政策をとり
金融政策を引き締めをやろうとすれば、中小企業、零細企業がその被害を真正面に受けてくるという論理はあまりにも共通した過去の幾多の事例でわかり切っていることであります。それが
日本の場合においては極端に現われてきたのでありまして、それが今日中小企業の破産、倒産となり、あるいは賃金の遅払い不払いというような事態が続出いたしまして、
健康保険財政に重大な影響を及ぼしたことは明らかな事実でありまして、すなわち昭和二十九年度から急速に十億に余る黒字を食いつぶして四十億に近い
赤字を出したというこの極端な現われ方は、これと全く時期を同じうしております。さらに三十年度に入り今年度に入り
赤字を累積してきたことがここに起因することは、いにかしても否定することのできない強い事実となって現われてきたのであります。この問題の解決には私は二つあると思う。一つは
政府の政策全余が、大資本、
金融資本あるいは独占資本といわれる大手筋に対する保護は手厚く行われたのであるが、その結果が零細企業にしわ寄せをされて、それが極端なる収奪の状態にまで政策の破綻が及んだのであります。でありますからここに中小企業対策、零細企業対策に対するところの
措置に急速なる補正を行うべき全般的な対策が必要であったことは言うまでもありません。この点においては
政府管掌である限りにおいては当然
政府はこの
赤字対策のためのかわるべき
措置をもって臨むというのが責任
政治の立場であります。この点において今日の
政府の
健康保険の上に現われた
態度というものは無責任きわまるものであるといわなければなりません。次にこの他の対策といたしまして、
健康保険改正の際直接の
関係を持つものでありまして、これはその方法において困難であるといたしますならば、政策の破綻から来るところの欠陥を埋めるためには当然
国庫の
負担をもってその
赤字を補うということはあまり好むところではありませんけれ
ども、余儀ない
措置としてとるべきものであります。それを行わないで、ここに
政府改正案を一つ一つ検討いたしますと、いずれもそれを
医療担当者の犠牲を強要する、その犠牲も出血を意味するような極端なやり方をいたしている。今日
政府管掌の被
保険者の収入が低いということは以上の
理由で明らかなのに、その低い収入のものにさらに一度に三千円を四千円に引き上げるというようなことはまるで
社会保障制度などを考慮している者の
措置ではありません。それも金額に見ますと、わずかに九千万円程度だということを
政府はわれわれの
質問に答えました。今日九千万円ばかりの財源をそういう過酷な、残酷な、残忍な収奪を行うなどということは、
社会保障制度をあずかる人々の
考え得るところであってはならぬのであります。こういうことで品に
社会保障制度、あるいは
福祉国家を主張するなどはさたの限りであると事実は教えておるのであります。こういう点からいたしまして、今日
政府が
健康保険改正というものを
根本的な立場においてなされるなどということは、以上の事実だけを指摘いたしましても、大へんな誤まりを犯しておるということを指摘しなければならぬのであります。
そこで、ごく簡単に
政府原案に対し反対する
理由を、原則的には以上の立場でありますが、個々の問題について申し上げます。それはここに出されております
提案の中で、標準報酬の問題でありますが、標準報酬の最低を引き上げたということは、一方には零細企業に重圧を及ぼすことになりますし、この際見落してはならぬことは、
健康保険の
改正は
事務的に煩雑を避けるという以外にわれわれは何らの根拠を認めることができないと思われるのは、この比較的短期保険である
健康保険と、長期保険の性格を持つ厚生年金保険の
改正を同率に扱った点であります。ここにも
厚生省の感覚は
厚生行政をあずかる人々の感覚であろうかということを疑うのであります。今世論は社会保険の統合をいっております。それは言うまでもなく
社会保障制度の
確立を目指す
福祉国家への熱望であることは、先ほど来述べたことと共通すると思います。そして厚生年金は、言うまでもなく
国民年金の基礎的条件を育てる大切な社会保険の一つであると思います。この厚生年金保険というものを改善するという意図をこの際持つのでなければ、私は
福祉国家すなわち
国民年金
制度を論ずる資格を許されないと思うのであります。今日軍人の恩給を復活し、官吏の恩給
制度も改善しようとすることに私は反対するものではありません。しかしながらものにはおよそ順序が必要であります。今日
日本経済をしょって立ち、
福祉国家を志向する立場からものを判断するならば、
国民全体に少くとも、低いものでもけっこう、程度の低いものでもよろしいけれ
ども、年金
制度を持たないで恩給
制度を云々するということは、
福祉国家を担任する人々の
考え方でない。こういう点で、今日軍人恩給の復活をはかり、あるいは官公吏の恩給
制度の改善をはかるということは、
国民の税を巻き上げて、
国民の意図せざるところにこの
負担が及ぶのだという非難を受けたら、どうして答弁するだろう。
健康保険の
改正をやるならば、この際にこそこの年金保険というものを、その程度は低くてもよろしい。これが
国民年金全体の改善に役立つような方向というものが取り上げられてこそ、私はこれを
改正案として論議する勇気を持つのであります。ところが何です。この
改正は標準報酬の改訂に名をかりて、先ほど来申し上げる零細企業はもちろん、被
保険者あるいは
雇い主の
負担困難の中にさらにそれを加重する以外に何の改善があろう。しかもその積立金の運用を見てごらんなさい。一千四百億に余る金が今日官僚独善の中に運営がまかされておるではないか。年利三分や、最高六分である。今日市中の利回りを見てごらんなさい。そんな安い利回りでどこに
金融がなされておりますか。今日
国民全体の
福祉のために少しでも良心的な好意を持つものがありまするならば、こういう際にこそこれらの莫大な積立金をこの保険の
発達のために還元する——たびたびこれは、これらの諮問機関でありまする社会保険
審議会、
社会保障制度審議会がその積立金に対して
政府に勧告をいたしておるが、馬耳東風である。何らの誠意を示しておらぬのである。そういう答申をこの際にこそ、いささかでもいいから形の上に表わしてこそ
社会保障制度に対する良心的な
態度であると申さなければならぬのです。どろなわ式に、改善をし促進をしなければならぬ問題を、それをじゅうりんするがごとき
態度というものは、まことに私は
政府の
態度に対して遺憾の意を表せざるを得ないのであります。今後かりそめにも
社会保障制度を口にしてはならぬ。(拍手)
そこで次にもう一つあげなければなりませんことは
船員保険の問題であります。
船員保険の一部
改正案についてでありますが、これは従来あまりこの
委員会でも論議をなされなかった。それは一つには海上
労働者という特殊性にあったからと思うのであります。しかしこの点は、
日本の全
労働者の中から比較いたしますと、わずか十七万程度の人員ではありますけれ
ども、そのになうところの任務を正視いたしますならば、この
保険制度に対しては無関心でおれないのであります。かつて
日本経済が隆々と発展を遂げた際における重要な外貨獲得の任務を果して参りましたのは、
日本船による物資の輸送でありました。
日本の今後の輸出貿易振興の政策を押し進めようとする
考えがあるものといたしますならば、船員労働に対する注意を怠ってはならぬのであります。海上
労働者は俗にいうように板子一枚下が地獄であります。船に乗ってしまいますと自由は全くその仕事の中に投入されてしまうのでありまして、こういう特殊労働であります。こういう特殊労働の
関係を認める法律といたしましては船員法がございまするが、その船員法によりますと、勤務中、すなわち乗船しておりまする場合におきましては、その疾病災害などに対しましてはその船の所有者が一切の補償の責めに任ずるという
規定があるのであります。それとこの
船員保険法の問題とを関連なしに
考えることは許されません。この法律があるということは、以上私が言及いたしましたような船員の国家的
使命というものを高く評価しておるからであります。その保護の必要性を強調している法律であることは申すまでもありません。でありますからこの法律の精神にマッチする
改正が行われてくるものでなければならぬのでありますのに、そういうものとの
関係を全く無視したとは申し上げませんけれ
ども、船員局長をここに招きまして意見を徴したのでありますが、この意見によりますと、これらの保護のために当っておりまする行政的役割を果す保護監督官はわずかに四十八名、十七万に対して四十八名の保護監督官がおる。その労務官に対して今度の
改正は重大なる
負担を課すものであります。すなわちその保護をそういう人々によることによって、一部
負担の
改正などによるものとこの法と矛盾しないように処置するなどと、苦しい答弁をしなければならぬような
改正であります。この点は
船員保険に対する思慮が足りないのではないか。いな
船員保険の特殊性というものを考慮していない結果から出てきた
改正案であるといっても言い過ぎではないのであります。こういう点をあげて申し上げますと、船員の場合におきましてはまだ問題がたくさんあります。たとえば、十七万のうち、その使用の性質からいたしまして、下は五トンくらいの小さな漁船あるいは機帆船、大きいのは一万トン級の汽船、従って給与の状態も高額高級船員と漁夫のごときは格段の開きがあるのであります。これを
健康保険や厚生年金の標準報酬と同率に扱ったところに大失態があるのであります。もしこれを多少でもそういう特殊性を考慮して
改正をしようというのでありますれば、高級船員に対して高額
負担をさせるということと、
健康保険や厚生年金とは事が違うと思う。こういう点は引き上げてもよろしい。それから給付面におきましても改善を要すべきものが多々あるにもかかわらず、こういう点に対しましては全くもってどろなわ式、火事場どろぼう式の厚生年金の取扱いと同列に置いておったところを指摘しなければならぬのであります。
以上のようにあげて参りますと、今日
政府の原案というものは時代に逆行するところの
改悪と言われても返す
言葉はないと思う。こういうようなものに対してさすがに
与党の人々も相済まぬと思ったのであろうと思いますが、
修正案を意図された点については御同慶にたえない。ところが残念ながらその
修正の
内容を拝見いたしまして驚くことは、一体何のための
修正であるのか疑わざるを得ない。のみならずこれは法律違反の疑いをかもすような火事場どろぼう式の
提案をしてお茶を濁そうとするがごとき傾向を私はまことに残念に思うのであります。先ほど来あげられておりますように、その
修正案の見るべきものは一部
負担の三十円を二十円に改めるとか、
入院の一部を六ヵ月を三ヵ月に、この点はないよりましだ、少しでもという色けをつけざるを得ない。ところが数字でありますから二十円を三十円にしたのが
予算に響いてきまして、五億何がし要るという
説明が問題になりまして、これは言うまでもなく、
国会法の命ずるところによってこういう
修正案を出すときには
健康保険特別会計というものは補正さるべきことを予測しなければならぬのであります。当然私は補正されるであろうことを今日見通しておるのであります。というのは、先ほど来論議がありましたが、私は発言を差し控えました。しかしこの
改正は言うまでもなく行政努力によってけ出すとかあるいは予備費を当てにしているようなことを言っておりますが、もしそういうことができるようになりますならば、国会はもう何も特別
予算に対してとやかく論議せぬでもよろしい、官僚にまかしておけばいいのであります。割合に官僚の方が正直かもわかりません。しかしそれは人間ではない、
制度であります。三権分立をわれわれが強調いたしますのはここにあるのでありまして、この
制度を侵すようなことをしては大へんな失態である。ただ
修正案を通せばいい、何とかお茶を濁すというような
考え方がもしあるとするならば、これは悔いを後に残しますから、後日でけっこうでありますから、万遺憾なきことを僕は
委員長に希望しておきますが、この扱い方は言うまでもなく、なるほど金額は五億円でありますから、今日の
厚生省の多くの会計の中、すなわち
健康保険その他この特別会計三つありますから、そこら辺の中で上手にやれば何とかやりくりができるという意味だろうと思うのでありますが、そういうやりくりはしていい場合と悪い場合とある。してならぬということを法律が命じておりますのは、今度の
修正案は言うまでもなく
予算単価を変更してきておる。たとい金額は二十円と三十円の違い、六ヵ月と三ヵ月の違い、金額が五億六千万円でありましても、その五億六千万円をはじき出さなければならぬということは——
政府の
予算原案はこの議会で通過しておりますが、その通過したものは三十円で通過しておるのであります。六カ月で通過しておるのであります。それから六ヵ月が三ヵ月に変ったということは、それは行政官の自由裁量にまかされることでは断じてないのであります。金額が小さいから自由裁量にまかせるということをするならば、程度の差によって今日の三権分立というものはくずされてしまう。三権分立というものは程度によって判断をすべきものではないのであります。こういう点は非常なあやまちを犯しておる。こういうところにも、今日
与党の皆さんが世論に耐えかねて、
政府の破廉恥的行為に対してはしんぼうし切れずに
修正を出そうとした意図に対しては、多少れんびんの情を持つのでありますが、しかし功をあせって実際を踏みそこなっては角をためて牛を殺す大きな失敗をしでかすことを私は指摘しておきたい。そのほかにおきましては
医師の
医療機関担当者が、今日あちらでもこちらでも、いな全国的な傾向において保険医の総辞退という非常
措置をもって
政府に猛省を促そうとするこの運動というものは、
政治家としては無関心でおられぬはずであります。特に
政府はこういう問題についてほおかぶりをすることは断じて許されません。そういう事態に、これで相手方を納得させようというつもりであるかもしれませんが、ここら辺はなかなかそうは問屋がおろさぬのではないかと私
どもは心ひそかに
政府のために憂えを残すものであります。本来こういう
改正をする場合には、社会党のごとくこういう問題に十分日ごろから意を配っております野党の協力を求める一番よき機会であったと私は思うのであります。それを多数決で押し切るがごときはあまりにも芸のなき仕事であることを残念に思う次第でありまして、
修正案にいたしましても、原案にいたしましても一考だにすべき余地のないまことに愚劣な
改正、
改悪であるということを断ぜざるを得ないのであります。こういう点に比較いたしますと、社会党
岡良一君外十二名が
提案いたしました
健康保険法の
改正案こそは皆さんの協力を求めるよき旗じるしを掲げたものであることにお気づきにならなかったということは、二大政党を指向する現国会においてはまことに遺憾千万であると申さなければなりません。
以上、いろいろ述べたのでありますが、こういう点からいたしまして残念ながらわれわれは百歩、二百歩譲りましても
修正案あるいは附帯決議等についていささかでも
前進の道があるならばこれはとるべきものという、こちらは大いに寛大な
態度で臨んだのでありますが、それがいれられなかったということは、
政府並びに
与党の皆様に対して今後
社会保障制度に対しまして真摯なる
態度をもって
国民の願望にこたえられんことを希望いたしまして、
政府原案に対しまして反対、並びに
修正案に対しましても反対、社会党
提案の
修正案について双手をあげて賛成の討論を終る次第でございます。