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1956-04-07 第24回国会 衆議院 社会労働委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月七日(土曜日)    午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 佐々木秀世君    理事 大坪 保雄君 理事 藤本 捨助君    理事 滝井 義高君       安藤  覺君    植村 武一君       加藤鐐五郎君    亀山 孝一君       川崎 秀二君    楠美 省吾君       熊谷 憲一君    小島 徹三君       小林  郁君    小山 長規君       田子 一民君    田中 正巳君       床次 徳二君    中山 マサ君       灘尾 弘吉君    林   博君       坊  秀男君    松浦周太郎君       山本 勝市君    吉田 重延君       亘  四郎君    阿部 五郎君       井堀 繁雄君    石村 英雄君       栗原 俊夫君    小平  忠君       島上善五郎君    多賀谷真稔君       堂森 芳夫君    中村 英男君       長谷川 保君    八木 一男君       柳田 秀一君    山口シヅエ君       石野 久男君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         厚 生 大 臣 小林 英三君  出席政府委員         大蔵事務官         (主計局次長) 宮川新一郎君         厚生事務官         (保険局長)  高田 正巳君  委員外出席者         厚生事務官         (保険局健康保         険課長)    小沢 辰男君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 四月七日  委員小川半次君、大橋武夫君、荻野豊平君、加  藤鐐五郎君、草野一郎平君、高橋等君、中村三  之丞君、仲川房次郎君、古川丈吉君、岡良一君、  岡本隆一君、山口シヅエ君、吉川兼光君及び中  原健次辞任につき、その補欠として坊秀男君、  床次徳二君、松浦周太郎君、楠美省吾君、安藤  覺君、小山長規君、灘尾弘吉君、山本勝市君、  吉田重延君、石村英雄君、中村英男君、島上善  五郎君、小平忠君及び石野久男君が議長指名  で委員に選任された。 同日  委員安藤覺君、楠美省吾君、小山長規君、床次  徳二君、灘尾弘吉君、坊秀男君、松浦周太郎君、  山本勝市君、吉田重延君及び石野久男辞任に  つき、その補欠として草野一郎平君、加藤鐐五  郎君、高橋等君、大橋武夫君、中村三之丞君、  小川半次君、荻野豊平君、仲川房次郎君、古川  丈吉君及び中原健次君が議長指名委員に選  任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出第七八号)  厚生年金保険法の一部を改正する法律案内閣  提出第七九号)  船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第八五号)  健康保険法等の一部を改正する法律案岡良一  君外十二名提出衆法第三三号)
  2. 佐々木秀世

    佐々木委員長 これより会議を開きます。  内閣提出健康保険法等の一部を改正する法律案厚生年金保険法の一部を改正する法律案船員保険法の一部を改正する法律案及び岡良一君外十二名提出健康保険法等の一部を改正する法律案、以上四法案を一括して議題とし審査を進めます。  まず内閣提出健康保険法等の一部を改正する法律案及び船員保険法の一部を改正する法律案の両法案に対し、それぞれ藤本捨助君外十名より修正案委員長のもとに提出されておりますので、その審査を進めます。まず提出者より趣旨説明を聴取することといたします。藤本捨助君
  3. 藤本捨助

    藤本委員 健康保険法等の一部を改正する法律案の一部修正案につきまして、その提案理由を御説明いたします。  政府提案健康保険法等の一部を改正する法律案は、健康保険財政根本的に立て直し、わが国の医療保険促進発展をはかる趣旨に出たものでありますが、その内容中、被保険者に対する一部負担がやや重きに過ぎるためこれを極力最底限度に軽減し、また医療機関に関する諸規定につきましても若干厳に過ぎると思われる点がありますので、これを是正して、制度運営上支障を来たすことのないよう修正を行わんとするものであります。  修正案内容を要約いたしますと、第一に、一部負担について外来分の再診の際、その日に処方せんの交付、薬剤の支給、注射、補綴等が行われた場合は、三十円となっているのを二十円に改め、また入院分の一部負担期間を六カ月から三カ月に改めることといたしました。  第二に、事業主、被保険者保険医療機関または保険薬局等に対する質問検査のため、その事業所あるいは施設へ立り入り得る規定については、現行法通りとすることといたしました。  第三に、保険医療機関保険薬局指定有効期間の二年を三年に改めることといたしました。  第四に、第九条ノ二の規定による医師歯科医師等に対する検査規定に違反した場合の罰則については、罰金過料に改めることといたしました等であります。  以上がこの修正案提案した理由並びに修正案要旨であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。  次に船員保険法の一部を改正する法律案の一部修正案につきまして、その提案理由を御説明いたします。  政府提案船員保険法の一部を改正する法律案は、船員保険事業の健全なる発達と、その合理化をはかる趣旨に出たものでありますが、その内容中、医療機関に関する諸規定が若干厳に過ぎると思われる点がありますので、健康保険法等の一部を改正する法律案の一部修正案に準じこれを是正して、制度運営上支障を来たすことのないよう修正を行わんとするものであります。  修正案内容を要約いたしますと、第一に、事業主に対する質問検査のため、その事業所または船舶へ立ち入り得る規定については、おおむね現行法通りとすることといたしました。  第二に、第九条ノ三の規定による医師歯科医師等に対する検査規定に違反した場合の罰則については、罰金過料に改めることといたしました。  以上がこの修正案提案した理由並びに修正案要旨であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。  次に附帯決議案につきまして、その案文を朗読いたします。   一、政府は、社会保障制度確立に資するため、医療面における国民保険制度の実現を目標として、此際格段準備調査に専念すべきであり、今回健康保険法案改正にあたって、国庫政府管掌健康保険医療給付費の一部を補助する途を開いたこと及び患者の一部負担措置を講じたことは、かかる将来の大いなる制度確立のための布石を敷き、財政的基盤を整備したものとして、時宜に適するものと認められるが、政府は更に進んで最も近い将来において、恒久的に定率による国庫負担制度を設け、社会保障に関する国の責務を明確にすべきである。   二、政府は今回健康保険法等の一部改正に当り、診療報酬の請求に関しいわゆる官給明細書(レセプト)方式を採用せんとする意向のようであるが、かくては医療担当者に対し徒らに繁雑なる事務負担を加重するのみならず、ひいては被保険者受診率の低下を招来し、医療保険本来の使命に背馳するが如き結果を齎す虞がないでもない。よって政府はかかる施策を避け、更に有効適切なる行政措置等を検討し、もって所期の目的達成につき善処すべきことを要望する。   三、戦後における医師会歯科医師会薬剤師会の三団体については、従前における国民医療法等の如き特別の法制がなく、為に各地に結成せられた会の間には何等の連絡統制の方法がない実情であって、国民医療発達普及並びに公衆衛生の向上を図るべき之等団体本来の使命にかんがみるときは、真に遺憾なる状態にあるものと言わざるを得ない。よって政府は速かに医師歯科医師及び薬剤師関係団体の性格、事業会員等に関する適当なる施策につき調査研究の上、我が国医療の健全なる発達に資すべき制度を樹立すべきことを要望する。   なお、右制度確立されるにいたる間においても、政府は、関係行政の実施に当り、これら関係者の意見を充分尊重するよう、極力留意されたい。   右決議する。  以上であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御決議あらんことをお願いいたします。
  4. 佐々木秀世

    佐々木委員長 以上で説明は終りました。  なお両修正案のうち、健康保険法等の一部を改正する法律案に対する修正案及びただいま議題としておりまする岡良一君外十二名提出健康保険法等の一部を改正する法律案予算を伴うものでありますので、この際国会法第五十七条の三により内閣の発言を求めます。小林厚生大臣
  5. 小林英三

    小林国務大臣 ただいま議題となっておりまする藤本捨助君外十名提出修正案につきましては、諸般の情勢もあり、厚生省といたしましては、これによって善処いたしたいと存じます。  次に岡良一君外十二名提出健康保険法等の一部を改正する法律案につきましては、健康保険及び船員保険疾病部門給付費に対する十分の二の定率国庫負担を法定することは、今日の国家財政上困難であると存じまするので、同意いたしかねるのでございます。
  6. 佐々木秀世

    佐々木委員長 次に藤本捨助君外十名提出健康保険法等の一部を改正する法律案及び船員保険法の一部を改正する法律案に対する修正案の、両案についての質疑の通告がありますので順次これを許可いたします。長谷川保君。
  7. 長谷川保

    長谷川(保)委員 ただいま御提案になられました、今回提案されております政府案健康保険法改正法案に対します自民党修正案を伺っておりまして、なるほど世論を幾分反映せられまして政府案よりは一歩前進と思われますけれども、しかし正直に申しまして全く五十歩百歩という感を出ないのであります。私どもはこの程度の修正案に対しましてはどうも実に残念に思うのであります。もう一歩進んで、健康保険法改悪に対しましてこれを阻止するという態度自民党の良識はあると思うのであります。これを見て私はむしろ遺憾の意を表せざるを得ないのであります。これらについては後ほど討論ではっきりすると思いますから、私はこの政府案に対します五十歩百歩という自民党案について、これらの中に盛られております考え方根本が、むしろ政府及び与党社会保障に対する考え方、そこに根本がある、私どもの非常な不満としますものがそこにあると思いますので、この際大蔵大臣に対しまして質問をいたしたいと思うのであります。  私ども約四十日にわたりまして政府提案健康保険法改悪案その他を審議いたしました。これはどう申しましても改悪というよりほかにない。この長き間質問応答を熱心に繰り返しまして、この今回の、たとえば健康保険法患者の一部負担強化、あるいはまた継続給付の資格を延長したというようなことにつきましていろいろ御説明を伺ったのでありますけれども、何ら私どもを納得させる合理的なものはついに見出すことができなかったのであります。しょせん、率直に申しますならば、これらのいわゆる改正案健康保険財政赤字を埋めるそのためには、健康保険法という日本社会保障制度の中核をなしておりますものが後退をしようと、あるいは患者負担がふえて生活が困難になろうと、受診率が下ろうと、そのようなことは一切目をつぶる、ただ健康保険赤字を埋めるために、そうしてそれに対して国庫負担をしないということのために一路これをやったとしかわれわれには考えられないのであります。私どもは年々同様に感ずるのでありますけれども、結局厚生省といたしましては、厚生行政を推進させ、あるいは社会保障制度を推進させようという意図がある程度あるということは、私ども認めるにやぶさかでないのでありますけれども、いつでも大蔵省にこれを予算の面で削られてしまってどうにもならないというのが実情である。今回の改悪案を決して厚生当局自体も改善とは考えてはおらない。けれども結局は大蔵省に削られてしまってどうにもならない。ついに、内輪のことはよくわかりませんけれども厚生大臣も大きな決意をもって最後は大蔵省に迫って、ようよう三十億円は何とかしてもらったけれども、あとがどうしようもないからこういうような改悪をやらざるを得ない、これが実情であると私は思うのであります。これは社会保障制度を金看板といたしました鳩山内閣にとりましても、あるいは与党にとりましても、また日本政治全体から申しましても私は残念なことだと思います。ある人は、結局今日の大蔵大臣及び大蔵省は、金融ということはお考えになるけれどもほんとうの意味で政治ということをお考えになっておらぬのだという酷評をなさる方さえもあるのであります。この際私は、私どもの年々の不満をここに含めまして、一体大蔵大臣は、日本社会保障制度進歩ということについてどういうお考えを持っておられるのか、そのお考え根本態度を伺いたいと思うのであります。
  8. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 社会保障制度進歩念願といたしておりますことに私はだれにも変りはないのです。そういうような社会保障についての考え方は、社会党であろうと保守主義であろうと、これは少しも変らないと思う。みんなが社会保障の拡充をこいねがっておる。ただそのときにおける国の財政事情、言いかえれば国力の関係、それからこの社会保障が長期にわたって健全なる発達をしなくてはならぬというような見地からして、受診率等が下らないように、あるいは正当な受診を妨げないというような限界において、ある時期において、国のある段階において一部負担というようなものはやむを得ない、こういうことも私はやむを得ないのじゃないかと思う。同時にまたこれは何も日本だけではない、世界社会保障制度を見ても一部負担制度というものは、私はあると思うのであります。要するに今後においては国の力の伸長とともに社会保障はますます拡充されていくのであります。ただ、こういう日本の今日の国情から一挙にできない、こういうふうに御了解願いたいと思います。
  9. 長谷川保

    長谷川(保)委員 ただいまお答えの中にありましたような、世界各国を見ても一部負担制度はあるんだ、こういうようなお話、これも当委員会におきまして厚生大臣からもお話があり、また与党の議員からもいろいろお話がありました。確かにそういういうものもあります。しかしここで私どもが深く考えておかなければならぬことは、よく日本のこの健康保険制度などは非常に進歩しておると申しますけれども、私ども世界各国社会保障制度を見まして必ずしもそうは言えないと思う。今日、ただいまのようなお話が一部負担強化をいたしますることについての例としてよく引かれるのでありまして、先般もこの委員会自民党野澤委員からもその話がありました。たとえばソ連では診療費は無料だけれども、しかし薬をもらうときには薬剤費を払うという制度になってきているというようなことを例に引かれました。けれども、われわれはこのソ連あるいはその他の国の社会保障制度を見ますと、そう簡単には言えない。たとえばソ連の——ただいまのようなお話でありますが、これはソ連と申しますと、ソ連以外の東欧の国ほとんど全部同じでありますけれども、この健康保険料支払いにおきまして全然被保険者支払いはないのであります。保険料は全部雇い主が払う、こういうふうに大きく違っておるのであります。全部雇い主が払う。東欧請国はみなそうです。中共もそうです。そういうようにもう根本が違っておるのであります。日本でも保険料を全部雇い主が払うということであれば、使用者が払うということであれば、それはある程度そういうようなことができると思うのです。また西欧諸国で、デンマークとかあるいはスエーデンとかその他の国々の社会保障制度を調べてみましても、そこには日本と非常に事情の変ったところがあります。まず保険料が安い、あるいはまたエンゲル係数が全然違います。こういう情勢日本情勢とを一緒にするわけにはいきません。ただ一部負担をやっているからというようなことではできない。一緒考え方にはならない。たとえばソ連の一九五三年、それから一九五五年はさらにふえておりますけれども、五三年の狭義社会保障費用というものは四百三十九億ルーブルであります。公定のドル換算でもって計算して参りますれば三兆八千六百十億円、これは二億二千五百万人という人口です。日本の九千万人という人口にかえて勘定してみますと、一九五三年度の狭義社会保障費用は一兆五千四百億円になります。こういう大きな費用を出しております。そこにやはり徹底した国民の健康を守る、ほんとう国民生活を見ていくというそういう政治根本態度ができています。私の知る限りにおきましては、東欧諸国においてはみなそうであります。だから、九千万人について一兆五千四百億円という大きな社会保障費用を出しております。これに対して一体日本社会保障費は幾らでありますか。もちろん今日本の総予算が約一兆円をわずかに越すという規模、これだけの予算では比較になりませんが、私は態度を言うておるのです。こういうように国民生活ほんとうによくめんどうを見ていこうという態度、こういう政治根本的なイデオロギーと申しますか、その態度というもの、考え方が違っておる。ここに日本社会保障制度が決して他国に比して優秀でないのにかかわらず、なお改悪していこうというような点が出てくる。私は大蔵省厚生予算をしきりにお切りになるそういうことについて、こういう政治根本的な考え方というのは違うところに出てきているのであって、この際そういうお考え方はやめてもらわなければならぬ。もっと他国社会保障ほんとうによく比べてみて、日本政治が一体どこに間違いがあるかということをお考えになっていただきたい、そうしてこういう改悪をやめていただきたい、こう思うのであります。こういう日本社会保障制度を十分だとお考えになるか、少くとも今日の財政において十分だとお考えになるか。この点は厚生大臣もしばしば、どうも今やむを得ませんというお言葉でありますけれども、私はやむを得ないという考え方それ自体がこういう社会保障制度に対しまする認識政治の中におきまするこの重要性認識の違いだと思うのです。できないのではない、やろうとしないのだということに結局あると思うのです。でありますから私はこの際、こういう改悪はすべきでないというこのお考え大蔵大臣に期待するのでありますけれども大蔵大臣はそういうふうにお考えになりませんでしょうか。
  10. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 国民福祉念願するというこの根本的政治態度、これはソ連であろうと世界のどこの国であろうと変ることは絶対ありません。日本においてはいかにも国民福祉念願せぬかのようなお話は、私は絶対に受け入れることができない。私ども国民福祉念願をして政治をやっておる。ただ、今ソ連の例を引かれましたが、私は今日ソ連日本は非常に国が違うと思っておるのです。日本は今未曽有の、二千何百年来ない敗戦をしておるのですから、そのこととロシヤの国と一緒にするということは、これは私はとうていできないと思う。また国柄が違うということもこれまた考えなくてはならないと思うのでありますが、そういうことはしばらくおきまして、決して、私どもは一たとえは大蔵大臣はいかにも厚生省予算を削るかのように言われるが、はなはだもって私は当らぬと思う。私はむしろ厚生的な予算は、たとえば例をとって言いますと、今回の予算においては、むろん乏しくはありますけれども、前年度に比べて、これは自然的な増加だからというようなお話もありますけれども、とにかく百億以上を増加いたしました。これは約一〇%の増加になる。また全体の予算歳出増というものは二%それがしの増加なんです。厚生予算については一〇%を増加している、こういうふうにしまして、そうして昨年度三十年度と三十一年度との国民所得に対する厚生省予算のパーセンテージを見ても増加しておる。おそらくこれは一%以上も三十年度に比べてやはり増加しておる。これはもう年年できるだけ増加しておる。そうして今回また三十億円を国庫補助にしたことも、これは非常に改悪のように言いますけれども、今日の財政からすれば、赤字補てんに限らずに、この健康保険の健全な発達のために三十億を一つ補助しよう、何もこれは今年限りではない、この態度は私は従来に比べて確かに前進だと思う。これは後退したかのようなお言葉があったけれども、私は承服できない。
  11. 長谷川保

    長谷川(保)委員 そういうお考え自体が、いかにも金融家らしい考え方なんです。制度自体が後退していることは明らかです。今回の健康保険赤字六十数億円の原因は一体どこにありますか。この原因はすでに論じ尽されて明らかなように、一番大きな問題は結核です。あるいは医学の進歩診療の頻度の増加、あるいは間接的には日本労働者の低賃金が考えられます。すなわちこの三つが大きな原因です。  第一の大きな原因結核です。大蔵大臣は、今日結核病床をせっかく大きな金を入れてお作りになりました。その結核病床が約二十二万床あります。ところが昨年及び一昨年の厚生省調査によって、今すぐ入院をして治療を要する患者が百三十五万人あるということが発表されております。百三十五万人に二十二万床でありますから、いつでも一ぱいになっているのが当りまえです。しかるに今日厚生省が私の方に下さいました資料によっても、わずかに八十数パーセントくらいしか病床がふさがっておらぬ。私の計算ではどんなに少くても三万数千床というものがあいている。こんなことは一体どこからきたのです。また先般来当委員会で問題にいたしましたつき添い婦の廃止の問題、全国でたった三億円の予算を浮かすために、重症患者からつき添い婦という制度をとってしまった。暖かいみそ汁を飲みたいといっても飲めないようにしてしまった。口に合うものを何とか作って、一さじでも御飯を食べて、おかゆを食べて、そして何とか回復していこうという重症者に、たった三億円の予算を浮かすためにそれができないようにしてしまった。その他あらゆる点において、生活保護の打ち切り、医療扶助の打ち切りということが行われているのです。こういう事実を大蔵大臣御存じにならないのじゃないかと思うのですけれども御存じになれば、これで国民福祉を守っているつもりだなんということは言えないはずです。こういうことを大蔵大臣御存じないと思いますが、御存じでしょうか。
  12. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 そういう事実を承知いたしておりますから、非常な心配をいたすのであります。私は今日の、たとえば結核対策にしても予算面から見て満足すべきことをしておるとは何も申していないのであります。ほんとうはしたいという熱意に燃えておるが、何さま予算というものは国運を総合的に伸張させなければならない、どこか一部分だけにお金をつぎ込んでいいのなら、それは私は社会保障をやりますよ。国運の伸張をはかる上からそういうわけには行きがたい、やはりすべてを総合的に見ていかなければならぬのであります。だから今の段階ではできるだけのことをいたしておる。私は今ここに数字的なものを持っておりませんが、この間委員会でもお話しいたしましたが、結核対策にしても、三十年度の予算と三十一年度の予算をずっと比べてみると、やはり三十一年度にできるだけの思いやりはしてあるということが数字的に表われておると私は思うのであります。どうぞ一つ御了承をいただきたい。
  13. 長谷川保

    長谷川(保)委員 結核対策費はきわめてわずかふえておりますが、問題はほかの問題ではないのです。今のような結核患者が一ぱいおるのに、療養所に入れないようにしていく、医療権を打ち切って貧しい患者が入れないようにしていく、結核療養所から追い出していく、あるいは結核療養所でつき添い婦をとられて療養生活ができないから出ていかざるを得ない、あるいは死んでいく。私はおそらくこれによって重症患者の病状の増悪と死が相当に出てくると思って、今全国の病院に頼んで調べてもらっておりますけれども、こういう問題はせっぱ詰まった問題です。国民の生命の問題です。私は、国民の生命を守るということにつきましては、一人の国民の生命を守るのにでも国家の総力を傾けるべきものだと思います。それでなかったら民主主義国家ではないと思います。今日こういう事実がまざまざと目の前に出てきている。当然入り切れなくて困るべき療養所に三万五千ベッド、あるいはそれ以上のベッドがあいてしまっておる。しかも患者がないというのじゃない、患者は一ぱいある、療養ができなくなっておる、こういう事実を目の前においておきながら、なおこの程度しか予算ができませんというようなことは許されません。そんなばかなことはない。国民の生命を守るのだったら、まず何よりも第一にそれを考えなければならぬと思う。そういう考え方自体の中に、今日の社会保障制度の進展がすっかりはばまれておる、厚生予算がいつでもすっかり切られていってしまう根本原因があると思うのです。だから、そういう考え方を改めてもらわなければ、日本国民福祉ということ、ことに生命は守れません。それで私は今日わざわざこの問題の最後の締めくくりとして、大蔵大臣のお考えを今までと変えてもらわなければならぬと思って来てもらった。この生命の問題は違うじゃありませんか。今日なるほど社会保障の金は少しふえております。これは認めます。しかしそのふえ方が、あるいは全体の総額がいかにも少いというのです。私が先ほどソ連の例を申し上げましたのも、先ほどソ連の話がこの委員会で出ましたから私は申し上げた。それは全体では少い。今日医学の進歩、高度の医学をどんどん健康保険等に取り入れておる。これが今日ともするとブレーキをかけられようとしておる、こういうことは根本的な間違いです。たとえば先般私は人口研究所の出した書物を見ておった。昭和十年を一〇〇としまして昭和二十八年の死亡率は五二・九です。驚くべき低下をしております。この点では世界の最高水準に達しております。実数から申しますならば、昭和十年百十五万二千人死にましたのが、昭和二十八年には七十七万二千人である。人口があんなにふえたにかかわらず、三十八万人死亡実数が減りました。死亡率から申しますならば、今申しましたように、約半数になっておる。こんなとうといことが行われておる。結核だけを申しましても、十年前に私どもはいつも日本結核の死亡率は日露戦争で死んだ戦病死者よりはるかに多いということを聞かされておりました。その後死亡実数がずっと減って、一九四三年十七万一千人でありました結核の死亡実数が、十年後の五三年には五万七千人になっておる。こういうように十年間に死亡者の実数が十一万四千人減っておる。こういう大きなことが行われてきたのは、何と申しましても医学の進歩診療の頻度がずっとふえてきて、国民がみんな医者にかかれるようになってきたからです。それを今度の改悪は、診療の頻度を減らそうとするものであることは間違いない。またそうでないとおっしゃっても自然そうなります。ことに私ども、これは少し古い統計でありますから、ここで引くのもどうかと思いますけれども、これも人口研究所の発表でありますが、貧乏人と金持ちとでは死亡者の率が非常に違う。貧乏人は非常にひどい。たとえば乳児死亡率を見ましても、これは昭和十四年の統計しか載っておりませんから、少し古いのですが、乳児死亡率の指数が、ABCDと国民を四階級に分けて、男で申しますならば、Aのクラスを一〇〇といたしますと、最下級のDのクラスでは一九一、こういうように貧乏人はひどく死んでいる。今度の一部負担というのは、先ほどの修正案理由説明にもありましたけれども、ことに貧乏人の負担が多くなってくるという率が、どう考えても強いのです。これはすでに論じられたことでありますから申し上げませんけれども、こういうように考えて参りますと、ことにまた今日の健康保険赤字原因結核にある。健康保険の被保険者本人の入院を調べて参りますと、その五十何パーセントというものが結核入院である。ここに問題がある。当然こういう結核の治療のための費用がかさみまして健康保険赤字になっているのでありますから、こんなものは国が見るのが当りまえだと私は思う。これを健康保険独自でやっていこうとする、そこにこういうような改悪をしていく。何と申しましてもこれは後退です。そんな後退をさせぬでいいじゃないか。まだ現状で置くというのならわかります。制度としては、だれが何と申しましても明らかに後退です。三十億円出したなら、もう三十数億円出せば、こ  んな後退はせぬでいい。なぜそれができないか。実に私は残念に思う。こう  いうように実情を御認識いただけば、私はわずか残りの三十億ばかりの金を惜しんでこういう制度の後退をさせる必要はないと思うのです。この際大蔵大臣認識をぜひとも新たにしてもらいたい。こういうような後退をさせないでも何とかやっていこう、鳩山内閣が掲げました金看板通り、この改悪をやめてもらいたいと思う。何とかそういう方法はできませんか。今回のことは予算がどうしようもないと一応おっしゃるなら、この制度はこの年度だけにして、来年度は何とか変えようというような御意思はないか。いつでも厚生予算大蔵省へいって削られてしまいますから、私はこの際、最後にこのことを念を押して大蔵大臣の御意見を承わっておきたい。
  14. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 社会保障に関します根本的な考え方は、繰り返し申しますように、あなたも私も一向違いはない。従いまして、私が認識を改める必要はごうもない。ただ今日のこの予算、いわゆる国の力の関係から、いたしたいのでありますが、そこまで手が及びかねておる、こういうことなんです。それで今日では健康保険等の財政が非常に窮迫しておる、それでこれはほうっておけませんものですから、国の方もみんなでとりあえず健康保険の立て直しを考えよう、しかもその場合に患者等が受診をしにくくならない程度に一つ考えてもらおう、こういうふうに今日やっておるのでありまして、金額なんかはともかくといたしまして、考え方は、やはりここで国庫から財政補助をするという、それも何も赤  字補てんではない、健康保険の健全な  発達のためにやろうとしているのです  から、これは少くとも考え方としては前進に間違いはないと思う。確かに前進をいたしている、かように考えている。今後のことは、財政の許す範囲におきましてこの社会保障というものはやはり考えていかなければならぬ、かように考えております。
  15. 長谷川保

    長谷川(保)委員 受診率を下げないというようなお話でありますけれども、ただいま申しましたように、現実に下ってしまっている。さらにまた下っていく。これは医療扶助を引き締めた、健康保険を引き締めていった、そういうところから、先ほど来申しておりますように、結核療養所の問題だけを考えましても、事実そうなっている。そういうような国民の生命を侵すようなことを政治がしてはいけない。少くとも自民党進歩的な保守政党を目ざしているでしょう。だからそういうことをしてはいけない。私はこう考えているわけです。けれども、これ以上あなたと議論したところが、今日におきましてはこれは滲透しないと思いますし、もう時間もありませんから、私の大蔵大臣に対する質問をこれで終っておきますけれども、どうか今までのようなお考え方でなしに、もっと国民の生命を大事にするお考え方に変ってもらいたい。そうしなければ、お掲げになりました社会保障制度の向上というようなことは看板倒れになってしまう。何よりもまず国民の生命を大事にするということをもっと十分に考えていただきたいということを私は御注文申し上げておきたいと思うのであります。  次に、時間がありませんから、もう  一言だけ伺いたいのでありますが、これは自民党の方の提案者と厚生大臣と両方に伺いたいと思うのであります。今回の政府提案改正案や、あるいは自民党さんの修正案を見まして、やはり官僚支配と申しますか、そういう傾向が少しも是正されておらない、それが強化されている。なるほど、政府案に比べれば自民党修正案は世論に押されましてある程度それを直されております。その点はけっこうですけれども根本的に申しますとやはり直っておらぬ。やはり政府管掌健康保険におきまして、保険者とその監督機関とが一緒であるということは大きな間違いであるということは、たびたび識者からも、学界からも、あるいは当委員会におきましても指摘されておる。これは確かに根本的な欠陥だと思います。ほんとうに民主的にそして正しいものとして健康保険を経営して参りますためには、やはりいわゆる人民民主主義諸国がやっておりますような、労働組合にこれを管理させる、労働組合がこの経営に当るということをして、そうして政府がこれを監督するという立場に立つべきだと思う。それをしないから、いろいろな点で今回出てきますような欠陥もほんとうはそこから出てきております。根本問題として私は労働組合に管理経営させるという方針をとるべきだと思う。それが民主主義の前進のためにも、また被保険君たちの福祉のためにもそういくべきだと思う。せっかくこれを出されておりますのに、そういう根本問題が何ら考えられておらないということは残念だと思います。そこまでお考えになる御意思はないか、自民党の代表の方、及び将来政府はそういうようにこれを持っていくお考えはないか、厚生大臣に伺いたい。
  16. 小林英三

    小林国務大臣 今の政府管掌健康保険制度につきまして労働組合にこれをまかす意思がないかという長谷川さんの御質問でありますが、長谷川さんがどういう意図でそういうことをおっしゃったかは存じませんけれども、私どもといたしましては、ただいまそういうような意思は持っておりません。
  17. 藤本捨助

    藤本委員 先刻来る社会保障の重要でありますこと、またその内容につきまして、内外及び古今の事例を引用されまして非常に貴重な御意見の御開陳がございましたからつつしんで拝聴いたしました。さらに結核につきましても仰せの通りこの健康保険財政を危機に導いた大きなファクターであります。でありますから健康保険財政を立て直すことに対しましては、もとより仰せのごとく結核対策ということが重要な問題になります。それにつきましてまた今お述べになりました管掌機構につきましての御意見等につきましては、いろいろ事情がございますから、党といたしましてはこの健康保険法改正案を御通過願いまして、引続き息をもつかず根本的な調査をいたしまして、社会保障、わけてもその中心課題であります医療保障制度の総合政策を立てまして、御趣旨に沿うような前進をいたしたいと思っております。そういうわけで今お述べになりました御意見に対しましては、大い今後検討いたしまして、われわれとしてもとるべきところがありますれば大いにとり、わが国における社会保障制度前進確立をはかることに努力いたしたいと思っております。
  18. 長谷川保

    長谷川(保)委員 私が先般中華人民共和国に参りましたときに、労働組合が実際に健康保険を、向うでは労働保険あるいは労働保険を受ける前の六カ月間の無料医療でありますが、その福祉資金の管理をしております実情を見て参りました。実に自主的にりっぱにやっております。私が今回のこの保険法の改悪等を見ますと、どうも人民を犯罪人視しておるような考え方がどこかのすみに残っておる。そのことから官僚のいろいろな検査とか統制とかがやかましくされた点があることを残念に思うのです。少しの間違いはどこにもございます。大蔵省自体にも井上局長事件その他があるわけです、どこにもある、そういうことだけを問題にしてそれを土台にしたら何事もできない。少しの間違いはありますけれども根本問題としては、私どもも官吏諸君を正しい調査、行政を行う正しい人だと考えております。また官吏諸君も当然人民を考え国民考えると思うが、そういう根本考え方において欠けるものがある、そこから順次官僚統制があらゆる面へ伸びてきていることを私は憂えるのです。これでは民主主義がくずれます。労働組合が労働保険、健康保険等を管理する、これは東欧諸国、いわゆる人民民主主義諸国は全部やって、うまくいっているのです。ですから当局におかれましても与党におかれましてもそういう実情を十分お調べいただいて、今後の日本社会保障制度の進展のために資せられたい、このことを最後にお願いをいたしまして私の質問を終ります。
  19. 佐々木秀世

    佐々木委員長 滝井義高君。
  20. 滝井義高

    ○滝井委員 ただいま政府与党の方から御提案になりました健康保険法の一部を改正する法律案に対する修正並びにそれに関連をして出ております附帯決議について特に大蔵大臣厚生大臣、それから代表者で出ておられます藤本先生に御質問いたしたいと思いますが、時間の関係大蔵大臣の分を先にやらしていただきたいと思います。アメリカ大使とお会いになるそうでありますが、これは一国の重要な問題でございますので、一つしばらくがまんしていただきたいと思います。  まず昨日鳩山総理に来ていただきまして御質問申し上げましたところ、鳩山総理も社会保障はいじめないという御説明がございました。同時に三十五年を目途として全日本国民に社会保険の組織を与えてしまうんだ、いわば昭和三十五年には八千九百万の国民が社会保険の温いふところの中に抱かれる姿ができる、こういう御意向の表明がございました。また本日与党から出ております附帯決議の中においても、社会保障制度確立に資するために、医療面における国民保険制度の実現を目標として、この際格段の準備調査に専念すべきであるということが出ているわけです。そこで一国の財政をお預かりになっておる大蔵大臣にこの際特に御所見を承わっておかなければならぬのは、大臣も御存じのように現在八千九百二十七万の国民がおりますが、なおその中で三千万の国民というものは医療保障の恩恵を受けていない。そこで大蔵省としてはこの三千万の国民に具体的にどうして医療保障を受けしめるかどうか、その財政上の責任が大蔵省にあるのですが、今から五カ年のうちにそれだけの財政負担をし得るだけの日本財政状態であるかどうか、これをまず大蔵大臣に御答弁を伺って、それから厚生大臣にあとでお伺いしたいのでありますが、これについて御所見を承わっておきたいと思います。
  21. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 先ほどからたびたび御答弁申し上げまして、大蔵大臣としても、また政府としても、社会保障にどういう熱意を傾けておるかということはおわかりかと思うのであります。なお今御指摘のように、今日三千万に及ぶ同胞が医療の恩恵を受けていない、何とかしたい。これはもう全く私も同感であります。今度政府でこういう人たちに対しまして一応五カ年の計画で手を差し伸べるようにしたいという意向であります。これにつきましては具体的にどういうふうに国家がそれに関与するか、これにはいろいろ問題があり、今後の財政については広範なことについて検討を加えなければならぬ。ただ今日そういうものについては十分大蔵大臣としても協力し、努力する、こういうことを申し上げたいのであります。
  22. 滝井義高

    ○滝井委員 政府はすでに政策として、総理大臣自身もおっしゃった、三十五年で全国民を医療保障の中に入れますということをおっしゃっております。そういたしますと、これはやはり来年度からその具体的な財政的な措置というものが講ぜられていかなければならぬ。そうでなければそれは絵にかいたもちになり、いわば公約違反になるわけであります。私は一国の大蔵大臣としてはこれだけのものが閣議決定され、内閣の政策として打ち出されたからには、それにはその見通しがなければならぬ。今の御答弁で五カ年間でやるということはよいが、それについては何とか努力しようということでは工合が悪い、その努力に限界というもの、見通しというものがなければならぬと思います。五カ年の後には全国民を医療保障のふところに抱きかかえていくような財政的の見通しがあるかどうかをお尋ねしておる。財政の見通しがあれば具体的に大蔵大臣にお尋ねするが、財政の担当者として現在の日本財政の状態の中からそういうことが可能であるか、不可能であるかお尋ねしておる。可能なら可能、不可能なら不可能と言っていただけばそれでよいのです。一体どちらなのですか。
  23. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 まだ五カ年でやるという具体的な案はないのであります。従いまして年度的に見まして、財政がどういうふうに対応するかということは私は今日ここで申し上げかねる、あるいはできるとも申せるし、できないとも申さなければならぬかと思います。
  24. 滝井義高

    ○滝井委員 できるかもわからない、できないかもわからぬということになれば、これは厚生省はやるとおっしゃった。これは全く閣内不統一じゃありませんか。
  25. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 そうじゃないのです。どういうふうにしてやるかということがはっきりしないと、資金関係はこれとどう対応するかわかりませんですよ。
  26. 滝井義高

    ○滝井委員 そういたしますと、やるということについてはこれは間違いないのですね。財政負担はどうなるかわからぬ、それは十円になるか、百億になるか、あるいは年間千億になるかわからぬけれども、とにかくやるということについては大蔵大臣は責任をもって厚生省が決定をし、閣議決定をされたものをやるということには間違いないはずなんです。これは昨日総理もやるとおっしゃった。だから大蔵大臣もその財政上の具体案が決定すれば、五カ年の後には全国民が医療保障の中に入る、このことについて間違いなくお引き受けいたします。その具体案ができたならば——これは財政負担がどのくらいになるか、やってみなければわからぬが、やることについては間違いない、こういうことを了解して差しつかえありませんか。
  27. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は総理の御答弁の速記録をまだ読んでおりませんから何とも申し上げかねる。それがやるという意味かどういうふうな具体的なかつ性格の内容を持つか、これは要するに閣議にもかかりました。その上でとくと御返答申し上げることであろうと思います。
  28. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、厚生省はことしの予算に医療保障のための五カ年計画の調査費等をとって始めておりますよ。ことしの予算はもう通過した。それは大臣は御存じのはずだ。そうしますと今の大臣のような御答弁では、まだ具体案がきまらないし、やるかやらぬかわからないような御答弁なんですが、これはどうですか。鳩山総理もやるとおっしゃった。厚生省もやるといってことしは予算も出した。だからあなたの答弁だけがはっきりしない。どうですか、あなたがやるかやらぬかそれをまず承わりたい、私は医療保障を五カ年の後にはやるならやる、やらないならやらない、やらないならばこれは引っ込めてもらわなければならぬ。これはどうですか、やるかやらぬか、それだけ言って下さい。財政上の問題は、今言ったように負担がどれくらいになるかということは別問題です。もう少し明白に御答弁を願わなければ、今の御答弁では納得できません。
  29. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 考え方としては私はやりたいのですよ。しかし財政的に、これだけが国政のすべてではないのですから、これはやはり慎重に考えて1総理もおそらくやりたい、いやそういうことを目途として進みたいというようなお考えであったろうと思います。従いまして具体的にどういう年次計画になるか、こういうものをはっきりしないと、大蔵大臣が、一国の財政をになっておる者としてそう軽々にやるということは言えません。
  30. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますとあなたに全く御相談なく厚生省はこういう医療保障の委員を作っているのですか。そうして調査費もとっていますよ。そうしてしかも昨日は、日本人口が老齢化の現象が出てきた、従って老人の対策についても考えるということまで総理はつけ加えられた。(「それは少しよけいだった」と呼ぶ者あり)よけいだったとおっしゃるけれどもつけ加えられた。そうして目途としてやりたいということをはっきりおっしゃった。だから私が念を押したら、総理はその通りやりますということをおっしゃった。しかも厚生省は総理のやりたいという言葉を裏づけをして、今年度の予算にはちゃんと医療保障体系確立のために九百二十六万三千円を計上しておる。だからあなたの方で今になって、そのときになってみなければやるかやらぬかわからないというような御答弁では困るので、大蔵省としてやるならばやるということをはっきりしてもらわないと困る。
  31. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 いいえ、やらぬというのじゃないですよ。どういうふうな形で、どういうふうな内容でやるかということがはっきりしませんと、同じやるのでもやり方はいろいろある。財政負担のこれに関与する形式も、あるいはまたどういうふうな程度にいくかということもその内容によって違ってくるのです。どうぞわれわれが社会保障に何か不熱心で、何か三千万の人が困っておるのに、手を伸べるのを逃げるかのようにお考えにならないで、私はほんとうを言うと早く何とかしてやりたい。ただしかしそれだけではなくて、いろいろなことを政府はやらなければならぬ、やはり財政というものは総合性を持っていますから……それはまた一つあなた方によくわかっていただいて、御同情を願わなければならないと思います。
  32. 滝井義高

    ○滝井委員 それならもう少し質問をもとに戻します。現在未組織の三千万の国民を医療保障制度の中に入れるという方針は大蔵大臣も確認をせられるのでしょうね。
  33. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は入れたいのです。
  34. 滝井義高

    ○滝井委員 これは重大です。今そういう答弁をされるなら、私たちは健康保険審議を中止しますよ。私たちはそういうことを五カ年の後にやることを前提にしてこの法案審議している。今のあなたのはやることが前提じゃない。財政の状態もあるから三千万の国民はどうなるかわからない。厚生大臣はやるといってわれわれに言明しておる。あなたのお考えは、三千万の国民をやりたいができない場合はしかたがない、こういうことですか。
  35. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私の答弁が短かかったので、あるいは御不満をお招きいたしまして大へん相済みません。私もやはり五カ年の後にそういうことがやれるようにそれを目途として努力をする、協力をする、これは先ほどから申し上げております。それは一品で言えば、やりたい意思がなければできませんから、やりたいと言ったのです。どうぞ誤解のないように……。
  36. 滝井義高

    ○滝井委員 わかりました。それならばもとに返って、五カ年の後には三千万国民をできるだけ努力をしてやっていく、こういうことであることがわかりました。そこでこれは一応やるという方針が明白になってきますれば、具体的に私は財政負担をどうしてくれ、こうしてくれということは申しません。具体的に計画ができなければできぬことはわかっておる。先日私は当委員会で大臣にも御質問申し上げた通り、現在全国の多くの医療機関というものは赤字で苦しんでおる。たとえば公的な医療機関で、税金を払っていない日赤病院をこの前ここに持ってきました。日赤も健康保険だけではやっていけません。従ってこれは特一等とか特等とか一等とか、八つも九つもの段階をつけて、社会保険の組織の中にある健康保険法に従う被保険者だけではまかなっていけない、それだけでは赤字になるので、三千万の未組織の国民負担を転稼して、そして税金を払わない公的医療機関が今まかなわれております。これが現状です。そして今度社会保険になりますと、その三千万の未組織の国民をこの赤字で苦しんでおる医療機関の中に、こう入れてもらうことになります。そうしますと医療機関はやっていけないことになる。この対策というものが現実に徐々に打ち出されていかなければならぬということが一つ。とともに社会保険経済というものは、今でさえもまかなえないのですね。そのために一部負担を持ってきましたが、その三千万がこれに入ってくると、ますます社会保険自体赤字を拡大していくという形が出てくる。医療機関赤字で苦しむ。社会保険自体の組織が赤字になる、こういうことになる。赤字になる理由が具体的に出てくるのですが、それはあとで御説明します。こういう状態があるから、おそらく大臣はなかなか御答弁ができにくいだろうと思いますが、そういうことを大臣は一つお考えになってやってもらわなければならぬが、そういうこともお考えになって御答弁だと思いますが、そういう点、御検討になったことはありますか。
  37. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私、ほんとうに信念をもってやるつもりでおるのですが、いろいろとどういうふうに持っていくか、具体的の計画については、私率直に言うて、今あなたに十分申し上げるだけの知識を持っておりません。残念ですけれども……。今後勉強します。しかし今日のままの形で社会保障がいいのかどうかということは、やはり問題があるんじゃありませんか。私よくわからないのですけれども……。そうしてみると今赤字だから、ただこのままでいって、赤字はふえるがそれでいいのかという問いに対して、私、はいとは言いかねます。私はそういう点について、根本的に、一つ三千万の人を医療保険に入れて、そして国民だれもが医療を受けられるような形にするためには、一体社会保障制度というものはどうあるべきかということが取り上げられなくてはならぬのじゃないかということだけを御答弁申し上げます。
  38. 佐々木秀世

    佐々木委員長 滝井君に申し上げますが、大蔵大臣へのお約束の時間が参りましたので……。
  39. 滝井義高

    ○滝井委員 もうちょっとです。
  40. 佐々木秀世

    佐々木委員長 先ほど始まる前に、一時間という約束をしまして、あなたは了承されたのですから、その方針で一つ進んで下さい。
  41. 滝井義高

    ○滝井委員 大蔵大臣に申し上げますが、現在残っておる三千万の国民というものは、どういうところが残っておるかというと、五人以下の健康保険保険料負担することのできないきわめて零細な企業の事業所が残っておる、それから非常に組織しにくい高い医療水準にある大都市が残っておる、それから同時に貧しい地方自治体が残っておるということなんです。そうしますと、三千万国民をこの社会保険の組織の中に入れてくるということは、厚生省がすでに五カ年計画で出しておるように最低に見積っても一年に三百四十五億の金が要ります。これを毎年々々五カ年出していく、それが累進的にふえてくる。組織がふえていきますから負担率が多くなる。しかもこれらの層は現在すでにデフレ政策の影響を受けて賃金が横ばいです。だから保険料を出せといっても、保険料率を上げてそれ以上出せない層です。物価も上りつつあります。そうすると、どうしても社会保障のあり方を考えなければならないと思います。これはどう考えても、社会保障というものが貧乏と病気と老齢、こういうものを救うものである限りにおいては、こういう層あるいはこういう自治体に健康保険国民健康保険を普及しようとするならば財政負担が伴わなければできない。これはどう社会保障を変えようと、社会保障前進の方向に向う限りにおいてはそれをやらなければならぬ。これは大臣、詳しいことはわからなくても常識論ですね。そういう点は、いよいよ来年度から着々やられることになるのですが、そういうことは当然お考えいただけるでしょうね。
  42. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お話の点は非常にありがたく拝聴いたしまして、十分そういう点に考慮を払いたい。むろん財政負担が将来において伴わない社会保障でしたら、大蔵大臣としてはほんとうに楽なんですが、そこに財政負担が伴うものであるごとにおいて、他の総合的な国税との関係でどういうふうに調和さするか、一般国民は税金をまけてくれ、まけてくれと言っているのですから、そういう点も十分考える。一方社会保障をやるためにいろいろな税金をとるという考え方も一つの方法かもしれませんよ。とれるところから税金をうんととって貧乏なものを何とかしてやる、そういう点もいろいろ考えまして、これは政府の政策としてやるということになれば、そういう点は大蔵大臣の手腕を振うところでしょうが……。
  43. 滝井義高

    ○滝井委員 きわめて抽象的な御答弁をされておるのですが、私は実はまじめに具体的に御質問を申し上げておるのです。現在日本の医療にはいろいろ矛盾がありますよ。たとえば医師の数が、四十七の医科大学から出てきてふえておるということもあります。それから医療が昔のようにお金持だけに最高の医療が行くというのではなくて、生活保護を伴う貧しい層にも同じような医療が行っている。各界各層、老若男女を問わず医療が行っている。そればかりではなくして、制度自体にもいろいろ検討すべき問題があります。社会保障根本的に検討しなければならぬという問題があります。たとえば今の健康保険は、平均寿命が四十六才というビスマルク時代にできたものです。現在のこの生活水準の低い日本において平均寿命というものがもうすでに六十六にまでなってきた。こういう点で制度自体にも根本的にメスを入れなければならぬ。とにかくいろいろ問題はありますが、私たちが根本的に考えなければならぬ点は、国民所得増加に医療費の増加というものが並行していないということです。医療費の方が飛躍的に増加しておるということです。この点に非常な問題がある。この点は大臣の当座の御答弁ではどうにもならぬ問題です。もはや日本社会保障制度根本的にメスを入れなければならぬ段階にきております。その証拠には、国民所得というものは、たとえば二十九年から三十年にかけて九%上りましたが、三十年から三十一年にかけては五%しか上っておりません。ところが医療費は、二十六年から二十七年にかけて三二%上りました。それから二十七年から二十八年にかけては三五%上って、二十九年は、厚生省の統計は少し数字が間違っておると私は見ておりますが、これは一〇%上っておる。私が厚生省のほかの数字を探したのでは二〇%、それから二十九年から三十年にかけては四〇%上っておる、こういう上り方です。しかもこの総医療費というものは社会保険の関係だけです。なお三千万国民の医療がこれに加わってくる、そうしますと、昭和三十年度の医療費というものは、最低に見積っても三千八百億くらいになる、三千万国民の医療費が、一人千円と見積っても三千八百億くらいになる。これを三十一年に同じように三割上げたとすれば、これは約四千五百億か五千億になってくる。こういう場合にどういう負担の方法を考えていくかということが一番根本のところだと思います。しかし私はここで答弁を求めません。大臣の方で十分御検討になって取り組んでいただかなければならぬ。この前の単価の問題のようにうっかり答弁せられて、それは百十三億になるんですよと言われると、あわてて、それはどうも間違っております、取り消しますというのではなしに、真剣に取り組まなければならぬ。  そこで今度政府が一部負担をやられておりますが、この一部負担大蔵省としては恒久的な制度としてやるのか、それとも当面のここ一年か二年の暫定的な政策として一部負担を打ち出しておるのか、これを承わりたい。
  44. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今回の補助は社会保障確立を促進しよう、健康保険の健全な発達に資そう、こういう考え方で出ておるのであります。従いまして、今のところは、今年も来年もそれでやる、こういうふうに考えておるわけであります。  そこで根本的に日本の国は力が弱いのですから、一方社会保障をいろいろやって、一方財政が破綻してしまえばどうにもならない。ですから、やはり金のある人が特に国家から補助を受けることはやめてもらう、そして原因が何であろうと、同胞としてお困りになっている人、階級が何であろうとだれであろうとお困りになっている人には国家から出す。とにかくそういうふうなことを考えなければ、今国自体が弱いのですから、理想的なことを言っても現実がそう参りません。しかし皆さん方の御意見はまじめによくお聞きしまして善処していきたい、こう考えております。
  45. 佐々木秀世

    佐々木委員長 滝井君に申し上げますが、大蔵大臣に何回も催促がきておりますから……。
  46. 滝井義高

    ○滝井委員 しかしここは予算に触れる大事な問題ですから……。
  47. 佐々木秀世

    佐々木委員長 それも国内関係ならいいのですが、渉外関係のお約束ですから……。
  48. 滝井義高

    ○滝井委員 アメリカ関係で……。それがやはり日本が隷属国になろうとしておる証拠ですよ。もう少し大蔵大臣考えてもらわなければならぬ。ここが国民にとって一番大事なところです。大体今の御答弁で恒久的な制度だということがわかりました。  第二にお尋ねしますが、七十条ノ三で国が補助することになっておるが、この補助の基準というものはどこに置くかということです。厚生大臣は、それは被保険者の一部負担に見合う国の負担として出ておる、こうおつしゃいました。従って私は被保険者の一部負担に見合う国の負担として出しておるもの、これが一つの基準だ、こう心得ておりますが、恒久化すれば来年も三十億出てくる、こういうことになりますが、一部負担の基準はそういうところに大蔵省は置いておるかどうかということが一つ。  第二番目は、いわゆる医療費体係の新点数を採用するつもりで、厚生省健康保険法のいろいろ仕組みをとってきました。ところが医療費体係が変ったために今度は暫定案が出てきました。従ってこれはことしの健康保険財政に大きな影響を及ぼします。しかも暫定案が出て大きな影響を及ぼしたばかりでなくして、健康保険法改正政府案自体与党によって修正を受けました。このために五億六千五百万円の一部負担が減額になることになります。これは明らかに予算に影響を受けているのです。そればかりではございません、結核予防法は新体係と密接不可分の関係がある。生活保護法も健康保険に関する限りはそうです。そうしますと、これは予算は通過しております。しかも現実にこれは見通しのつく修正案でございます。従って当然これは予算修正が行われることになる。予備費を使うというわけには参りません。予備費は予見すべからざる場合ですから。この点一つ予算との関係をお伺いしたい。  さらにもう一つは、あなたの所管である国家公務員の共済組合、あるいは地方公務員の共済組合というものは、与党自体修正をして、厚生大臣はその修正案については善処いたしますということを申されました。いわゆるのむということです。従って当然社会保障の均衡の上からいって、国家公務員の共済組合の修正案も今度政府みずからがおやりにならなければならぬと思うが、この点はどうか。この三点だけ明確に御答弁願って私の質問を終ります。あとは厚生大臣に聞きます。
  49. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今三つお尋ねがあったようですが、一つは基準のことですが、これは厚生大臣が御答弁したのでいいと思いますが、それは一つの原因で、まず私の考えでは財政的見地もあります。同時にまた先ほどからしばしば問題になっておる三千万の人がなお医療の恩恵も受けていないというような点、他の保険との関連等々を考えまして、結果的に見れば患者負担とほぼ似た国庫負担になっておりますが、そういう点もむろん考慮には入れております。そういういろいろなことを考えてやったわけであります。それから補正予算を組むということは私は考えておりません。また必要もないと思っております。これは関係当局とそれぞれ相談しまして、大体この程度の金額なら全体の収支の関係において調整ができる、こういう見通しのもとで修正にも実はやむを得ないといって応じたわけであります。  それから次に共済組合、これは十分検討を加えていきたいと考えております。
  50. 滝井義高

    ○滝井委員 少し逆戻りしなければならぬことになりますが、逆からいきますが、共済組合等については調整ができるということでございますが、主計局の次長がおられますのでお伺いしたい。これは当然政府の方で修正案を今度お出しいただけるでしょうね。
  51. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 政府管掌健康保険の一部負担のあり方につきまして、今回修正案が出たわけであります。政府としてはもともと原案でいきたいところでございまして、本来ならばいやなところでございますが、諸般の情勢上やむを得ないものと考えておる次第でございまして、共済組合法に関しましてはただいま国会に御提案申し上げて、まだ十分な審議に入っておりませんが、これにつきましても政府自身の方から修正案を出すことは果して適当かどうか、この辺十分検討いたしたいと考えております。
  52. 滝井義高

    ○滝井委員 厚生省は、今健康保険のこの与党修正案が出たために、それについては善処するということは、のむということなのですね。そうしますと当然あなたの方も、それと一連の関係で出てきた共済組合については、やはり同じ修正案与党から出ればのまなければならぬということになると思うのですが、そういうめんどうなことをされるならば、政府の方は善処すると言われたからには、政府みずからが男らしく修正案を出していいんじゃないでしょうか。
  53. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 結果的には、与党から修正案が、あるいは国会から修正案が出ました場合には、健保の条文で共済組合につきましても引用している関係上、これは政府としてもこれに同調するよりいたし方ないと考えております。
  54. 滝井義高

    ○滝井委員 そこでこの一部負担の問題にいくわけですが、私今まで大臣の一部負担に対する質問をずっと聞いておりましたところ、やはり被保険者の一部負担に見合う国の負担を出すということが厚生大臣の今までの基本的な御答弁でございました。ところが今の大蔵大臣の御答弁では、そういう一部負担に見合うばかりでなくて、やはり財政的な見地を考える、あるいは他の保険との関連も考えるということを御答弁になってきた。こうなりますと一部負担の基準というものがくずれてくることになるわけであります。しかもこれは恒久的な、来年もやる再来年もやるという恒久的な制度になってきたわけなんです。そうしますと、与党みずからが今回の附帯決議においても定率国庫負担というものを要請をしておるわけです。そこでこれは当然ここに明白に基準を打ち出して、おかないと、また来年度予算編成をやるときにごたごたが起ってきます。そこでこれは藤本さんと厚生大臣と両方からお答えを願いたいのですが、与党定率国庫負担という制度確立しようということをおっしゃっておる。大蔵大臣は来年は財政状態を見てやるんだ、こうおっしゃっておる。厚生大臣患者に見合う一部負担だ、こうおっしゃった。一体どれがほんとうなのか。どれがほんとうに今後の一部負担制度に裏づけされるところのものとなっていくのか。これは国庫負担あるいは補助金と一部負担とは車の両輪の関係で、政府、すなわち厚生省大蔵省自民党の政策審議会ですか、これでは決定されておるはずなんですから、そこらの意思統一がなければどうも納得がいかないのです。三者おられるのですから、そこらの明白な意思統一をした答弁をお願いをしたい。
  55. 小林英三

    小林国務大臣 この問題につきましては、私委員会においてたびたびお答え申し上げておりますように、私といたしましては、三十一年度の健康保険財政につきましては、医療費の一割国庫負担ということを大蔵省にも要求しておったのでありますが、本年度におきましては、まず三十億円、これは保険財政の収支全体を見合いまして三十億円と決定いたしたのであります。その後、たびたび申し上げましたように、党と大蔵省厚生省とで相談をいたしまして、いわゆる社会保障確立の見地からいたしましてこれの法制化をいたしたのであります。従いまして、私ども厚生省当局といたしましては、将来は定率国庫負担を得たい、こういう気持で努力をして参りたい、こう考えておるのであります。
  56. 藤本捨助

    藤本委員 滝井さんも御承知のように、社会保障というのは非常に幅がございまして、その中でも医療保障はその中核でございます。その中でも健康保険がまたその中核でございますし、それから先ほど御指摘になりました未組織の勤務者等三千万国民が、今の健康保険あるいはその他の医療保障の対象になっておらぬのでありますから、これにも医療保障の恩恵を均霑さすということになりますと、非常な問題になります。あるいは結核の問題もそうであります。そこでわれわれといたしましては、先ほど申しましたように医療保障に対し、あるいはもっと言うならば社会保障全体につきまして総合政策を立てるということがまず第一に重要な問題であろうと思います。さらにまた福祉社会建設のためには、社会保障のほかに完全雇用とかいろいろの重大問題がありますので、従って財政事情考えなければならぬということに  なります。そこでどれを重点にするか、あるいはどこにどれほどの予算を盛るかというようなことは、そういう総合政策と見合ってきまるべき問題であろうと思います。本年も健康保険財政の立て直しに対しましては、党としては最初は定率国庫負担を要請いたす考えでございました。その努力もいろいろいたしましたが、本年の財政事情から申しますとどうもそういうように参りませんで、結局健康保険事業  の執行に要する一部の補助ということになりました。しかし今後は財政事情その他国家の施策をいろんな面から考慮いたしながら、すみやかに国庫負担ということに邁進いたしまして、国の社会保障制度に対する責任を明確にいたしたい、そして先ほど御指摘になりましたように年々変っていくということでなしに、心配なく義務として国が負担するようにいたしたいというような考えを持っておるのであります。
  57. 滝井義高

    ○滝井委員 大蔵省、今の御答弁はどうですか。将来ということは来年も含まれていると思いますが、与党はやはり定率とおっしゃっておるのです。今の大蔵大臣の答弁では、やはり来年も再来年もそれに見合った、財政全般を調整した補助だという御答弁ですが、これは違うのです。こういうように違うところに混迷があるのですが、あなたは大臣のかわりにお残りなんだから、今のように将来ということは、財政を預かっておる方としては、それは  一割になるのか二割になるのか五分になるのかわかりませんが、しかし来年度は七十条ノ三が単に社会保険の執行に要する費用を補助するということじゃなくて、その執行に要する費用が、たとえば一割とか二割とかの定率国庫負担としてやれる御自信が財政的に見てあるのかどうか。あなたの方がないと言えば、こちらがいくらやるやると言ってもそれは砂上の楼閣なんで、われわれは相手とすることができないわけです。その点一つ責任ある答弁をお願いしたい。
  58. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 前回の当委員会において大蔵大臣から申し上げましたように、社会保障、特に医療保障の確立発展のために今後十分検討して参りたいと考えております。(「検討じゃだめだ」と呼ぶ者あり)政府管掌健康保険につきまして一定率負担制度にするかどうかにつきましては、もちろん財政事情全体のバランスも考えなければなりませんし、他の保険との均衡ということも十分考えなければなりませんので、ただいますぐ一定率負担に直すということは明言することができませんが、その辺のところは十分厚生当局とも話し合いまして検討して参りたいと考えております。
  59. 滝井義高

    ○滝井委員 まあきわめて善意ある御答弁でございますから、この点はそれ以上追及いたしたくありません。ただ大蔵当局にも考えていただかなければならぬし、厚生省にもがんばっていただかなければならぬことは、たとえば今年の防衛庁の予算を見ても、予算外の国庫負担として百四十二億八千二百万円があるし、そのほか継続費として二十七億一千八百万円がある。この継続費の二十七億一千八百万円というものは何かということを調べてみますと、潜水艦を一隻作る金なんです。三十一年から三十三年までに潜水艦を作るために三十七億一千八百万円という継続費が計上されて、わずかに二十三億の金を国が計上できないということはどうしても言えないのです。こういう点はもう少しあなた方厚生省の方に、社会保障を推進しようとする熱意があり、大蔵省にそれに協力する熱意があるならば、これは継続費の形ででも五十億出してくれておれば問題はない。こういう点をもう少しく考えていただかなければならぬ。  そこで今度はさいぜんの予算関係ですが、まあ五億そこらの修正による予算の減というものは、これは全体の収支の関係から見て、調整ができるという大臣の御答弁があったわけであります。そこで私はこれは予測のできないものではない、もう今からはっきり予測ができておるものであるので、予備費を使うというわけにはいかぬと思います。予測すべからざるものではない、予測することができる。もう修正の意向というものは、参議院に予算が通る前から出ておった。そうしますと、この五億の調整というものを具体的にどういう場合におやりになるのか。二十三億というものは患者負担し得る少くともぎりぎりのものであり、二十三億がなければ、社会保険というものはやっていけないということで、一部負担をやられておる。ところがそれを五億あまり削る、こういうことになったわけでありますが、具体的にこの調整はどうおやりになるか、これをおやりになり得る技術的な点を一つ御説明願いたいと思います。
  60. 小林英三

    小林国務大臣 ただいまのこの修正案につきまして、十七億八千六百万円となりましたその差額につきましては、ただいま私が善処すると申し上げたのでありますが、今後十分に検討いたしたいと思っております。さしずめといたしましては、行政の処置等によりまして、予算減のための節約はいたして参りたい、ただいまのところはそう考えております。
  61. 滝井義高

    ○滝井委員 それは大へんな御発言でございます。それは行政措置でおやりになるとおっしゃいますが、すでに行政的な措置によって六億の節約をやっておる。その上にまた五億六千五百万円というものを加えれば、行政措置によって十一億をこえる金を何とかしなければならぬ。これは薬価引き下げが三億、継続給付あるいは受給要件の改正、完全寝具の廃止等、こういうこまかいところまで手をつけられてやられておるのに、それでなお五億加えられるというならば、ますます医療内容を低下し、あるいは受診率を低下せしめる方向になっていかざるを得ない。だから、これは予算ですよ。その大事な国の予算を行政措置でやるというわけに参らぬと思います。これは大へんなことです。しかもそればかりじゃない、あとにまだある。これはもう少し具体的にやらなければ政府与党が話し合ってやっておることですから、われわれは納得できません。そういう行政措置などという抽象的なことではだめです。それじゃ行政措置とは具体的にどういうことをやるのですか、これはもっと明確に御答弁を願いたい。
  62. 小林英三

    小林国務大臣 この五億数千万円の歳出の増につきましては、行政の努力等によりまして、検討してみたいと思います。なおただいまこの際のことでございますから、今後私どもといたしましては、この問題について、十分に検討して参りたいと思います。なおその他の点につきましては、一応局長から答弁させたいと思います。
  63. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 この御修正はただいま拝聴をいたしましたので、今具体的にこの何をどうしてどうしてということを申し上げるわけには、ただいまのところ参りません。ただ歳出全体が約五百億程度のものでございますので、その一%程度のものでございます。従いまして歳出全体の中でわれわれの行政上の努力によりまして、これを吸収して参るということ以外には申し上げられないと存じます。
  64. 滝井義高

    ○滝井委員 どうも局長の答弁もおかしいです。五百億程度の歳入歳出の予算の中で五億六千五百万円はわずか一%にしか当らぬ、だから何とかできるのだ、こういう御答弁でございました。問題はわずかに十円の問題なんですよ。五億の問題というよりか、それをだんだん還元していったならば、一部負担は再診のときは十円やるのだ、注射、投薬があったときは三十円やるのだという、この十円、三十円の金勘定の問題がこんなに全国を沸き立たせておるときに、今与党修正をしたその五億が、総予算のわずか一%でありますから何とかできます、そういう無責任な答弁では私たちは了承できない。それならば二十三億も初めから削って出したらいいじゃないか。二十三億だって総予算のパーセントから、いったら、これは一割以下ですよ。そういう不見識な答弁はありません。それならば一つ二十三億を修正をなさい。わずかに総予算の五%にしか当ら  ぬのだから行政努力でやれるはずだ、  一%がやれて五%がやれぬはずがな  い。   それならば私は大蔵省にお尋ねします。大体こういう予算の状態が許されていいと思うのですか。この法律を出すときは政府与党というものは話し合って出ているはずなんだ。それを与党が世論に押されてみずから不完全な修正をして、その五億六千五百万円の財政措置さえもまだわからぬ、こういう状態は、私は許されぬと思うのです。だから大蔵省はいかなる処置をもってこれをやるか。それを今、わずかに一%だから全部の調整ができますといえば、一兆三百四十九億円の一%ならばどうでもなるという答弁と同じです。それならば、一兆三百四十九億円がどうにでもなるならば、その中から一つ社会保険に持ってきて下さい。
  65. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 今回の政府管掌健康保険財政立て直しの対策といたしまして国家が財政援助をいたしまするほかに、患者さんに一部負担をしていただくのが適当と考えまして御提案申し上げたのでありますが、今回出ました修正によりまして、御指摘の通り五億六千五百万円の給付費増を来たすわけでありますが、これにつきましては滝井先生御指摘のように、すでに二十三億五千百万円の一部負担による給付費の減のほかに、行政努力によりまして若干の経費節減をできるような予算を組んだのでありますが、その行政努力をさらにもう少し強化することによりまして、五億円程度のものは予算補正を行わないで何とか処理できるのじゃないか、かように考えましていたしたものであります。
  66. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、行政努力というのは具体的にどういうものか一つあげてもらいたいと思います。
  67. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 先ほど私の御答弁申し上げましたことは、少し言葉が足りませんので若干誤解を受けたようでありますが、私は五億数千万円の歳出減をいたすことは決して簡単だというふうな意味合いで申し上げたわけではございません。これは当然私ども保険を運営いたしまするものとしては、相当な困難な問題であろうと考えます。従いましてこれをいかにするかということにつきましては、先ほどお答えいたしましたように、今後われわれが一年間にわたってこれを歳出全体の中に吸収をして参るという努力をいたすということ以外には、ただいま申し上げられないのであります。(発言する者あり)今これをどうする、何をこうするということは、ただいま修正案を拝見したばかりでございますから、私どもといたしましては今お答えできないのであります。   〔発言する者あり〕
  68. 佐々木秀世

    佐々木委員長 御静粛に願います。
  69. 滝井義高

    ○滝井委員 この修正案はあなたたちがお立ち会いの上でお作りになったはずです。委員会に出てこなかったので一体どこに行っておるのだといったら、修正案の方に行って立ち会っておると言った。それを今見たばかりだという、そういう詭弁はやめてもらいたい。今の五億六千五百万円は御答弁できぬようですが……。   〔「関連、関連」と呼ぶ者あり〕
  70. 佐々木秀世

    佐々木委員長 多賀谷君。
  71. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ちょっと修正案提出者質問いたしますが、あなたの方では修正の結果必要な経費、昭和三十一年度約五億六千五百万円、こういう経費がここに書かれている。ところが今の話を聞くと予算の増額を必要としないという。そうすると経費は要らない。この修正の結果必要とする経費は零、こういうことになるじゃないですか。これはどうですか、提案者の方はどういうようにお考えですか。
  72. 藤本捨助

    藤本委員 今回の健康保険法等の一部を改正する法律案は、すでに御承知のように単なる健保の赤字対策ではございませんので、この保険財政を立て直すことによりまして医療保障制度前進をはかりたい、かような意味でございます。そのためには各般の事情からいたしまして、また他とのバランスの関係もございまして相当金が要るのでございます。そういうわけでありますから、まず国も負担するそれから被保険者にも負担していただく、あるいは標準報酬の改訂もいたす、こういうようないわゆる三者三泣きというか五音五泣きというか、そういうような意味を含めまして二十三億五千百万円というような一部負担をお願いいたすことにいたしたのであります。しかしそれに対してできるだけ最小限度でいこう。この健保の財政の立て直しと今後の医療保障の前進のために、御協力願う最小限度でいこうというような意味におきまして今度十円減らしまして、それから御承知の入院期間も六ヵ月を三カ月にしたのであります。そうしてただいま御指摘のように五億六千五百万円減ります。言いかえまずと医療給付費がそれだけふえるのでありますけれども、しかしこの歳出面は非常に広いのでございます。従いましてその方面に  一段と行政努力を加えますならばそれくらいは出てくる。そこで両者が見合いますのでバランスがとれる。これは推測でありますが、私どもはそういうことを考えております。(発言する者あり)さらに今具体的に示せということもございますが、私がここでかりにそういう面も行政努力の一部でないかということを指摘いたしますならば、多賀谷さんがきのうお述べになりましたような労災保険関係問題を、あるいは健康保険に持ってくるようなことを阻止するという行政努力もその一つであろうかと思うのであります。要するに歳出面は広いので、その中でいろいろ今後努力いたしますならば、まずこれくらいは歳出減が出てくるであろう、それで見合う。そこで今申しましたように修正をしないといたしますればお示のようになりますが、この修正によりまして努力するならば今申し上げたようになると思うのであります。
  73. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 努力をすればあるいは現在の予算の範囲でまかなえるということでありますれば、修正をされてもこの文書を添付される必要はない。あなたの方は衆議院規則に基いて修正の動議を出されたと思いますが、百四十三条には「予算の増額を伴うもの又は予算を伴うこととなるものについては、修正の結果必要とする経費を明らかにした文書を添えなければならない。」とある。この経費は当然予算の増額、あるいは減額の場合もあるのでありましょうが、要するにそういう経費ですよ。予算関係のないものなら出さなくともいいのです。この修正案でも、あなたの方は予算関係がない、現在の予算でできるというのならば、この経費でいいじゃないですか。しかもあなたの方で五億六千五百万円という経費についての文書をここで添付されておる。こういうことについてあなたの方では、いや、この経費は零になるかもしれない、こういうことならばこの健康保険法等の一部を改正する法律案に対する修正案というものは、われわれは正式なものではないとかように考えざるを得ない、かように考えるわけです。いかがでありますか。
  74. 藤本捨助

    藤本委員 お答えいたします。今申しましたように、修正をいたしましたら五億六千五百万円という支出が、言いかえますと医療給付の費用がふえるということをお示ししたにすぎないのであります。
  75. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 衆議院規則で要求する添付しなければならない必要なる経費というものは、そういうものじゃないのですよ。ですから私はあなた方が出されたこの動議に対してこれを正式のものと認めるわけにはいかない。そこで聞いておるわけです。
  76. 藤本捨助

    藤本委員 修正の結果さように支出がふえますけれども、行政努力によりましてそれくらい出るだろう、バランスがとれる、そこで従来の慣例によりましてさようなものをつけたのであります。
  77. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 経費を必ず文書に添付しなければならないということは、今度衆議院規則の改正によって初めてできた問題であります。ですからこれは慣例といたしましてもごく新しいもので、たとえば今までこの衆議院規則によって修正動議が出て、その修正案文に添付された経費の文書というのは、必ず予算関係がある。あなたの方は予算関係のないこういうものを出されて、しかも経費はあるいは零になるかもしれない、これは全くインチキきわまるものじゃないですか。また厚生大臣においてもいやしくも国会において与党が必要なる経費としてこれに五億六千五百万円という金額をかけた以上、これは行政措置でできるというのは言語道断である。一体提案者並びに厚生大臣は衆議院規則をどういうように考えておるか、お聞かせ願いたいと思います。   〔「休憩々々」と呼ぶ者あり〕
  78. 佐々木秀世

    佐々木委員長 暫時休憩いたします。    午後零時四十三分休憩      ————◇—————    午後一時十三分開議
  79. 佐々木秀世

    佐々木委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。  質問を続行いたします。多賀谷真稔君。
  80. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 先ほど質問をいたしましたその答弁を、責任ある大臣並びに提案者から承わりたい。   〔「もう一度質問しろ」と呼び、その他発言する者多し〕
  81. 佐々木秀世

    佐々木委員長 多賀谷君、重大な問題でありますから、はなはだ迷惑ですが、もう一度繰り返して下さい。
  82. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 提案者から修正案が出ておりますが、その修正案に、「本修正の結果必要とする経費昭和三十一年度約五億六千五百万円」こういう文書が添付されております。これは国会法による添付でございますが、先ほどの答弁を聞いておりますと、予算関係はなくて、行政措置でできる、すなわちこの健康保険会計のいろいろな操作で節約ができる、こういう御答弁であった。しからば節約ができるならば、必要なる経費は当然零でなくてはならない、かように考えるわけであります。そこで零でないところの五億六千五百万円、こういうものは全く私は虚偽の記載である、こう言わざるを得ない。ですからこれに対して大臣並びに提案者から御説明願いたいと思います。
  83. 小林英三

    小林国務大臣 ただいま御審議中でございます藤本捨助君外十名の修正案が成立いたしますると、五億六千五百万円の歳出増となる計算になりますが、政府といたしましては、国会の御意思を尊重いたしまして、でき得る限り歳出全体につきましての節減に努め、既定予算内でまかなうべく努力いたしたいと存じます。なお年度末までにどうしても吸収できないというような場合におきましては、予備費の流用によるしかるべき措置につきまして考慮いたしたいと存ずる次第でございます。(拍手)
  84. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私はその答弁にはきわめて不満足であります。なぜかといえば、長期間論議が展開されておるのに、この保険会計の収入の問題にいたしましても、あるいはその支出の問題にいたしましても、ぎりぎり一ぱいで、できない、こういう答弁を私は今まで承わっておるのであります。それをあるいは収入並びに支出において今までの答弁と全く違った答弁がここに出ておる。すなわち支出が何とか押えられる、こういうならば、今まで長い間審議したことがむだになるじゃないか。一体国会を欺瞞するもはなはだしい、こう言わざるを得ない。具体的にどういう点があなたの方では支出が減ずるか、これをお聞かせ願うとともに、私たちはこういうあいまいな予算修正案は虚偽の修正案であり、動議として認めるわけにいかない、かような考えるわけですが、まず最初に支出減に対する明快なる具体的な措置をお聞かせ願いたい。
  85. 小林英三

    小林国務大臣 多賀谷さんの御質問にお答えいたしたいと存じます。私どもといたしましては、ただいま御審議を願っております原案と申しますか、改正案につきましては、これによってぜひ健康保険進歩向上をはかりたいというつもりで御審議を願っているのでございますが、いろいろの客観的情勢からいたしまして、ただいま藤本君外十名の修正案が出ておるのでありまして、せっかくの修正案でございますから、ただいま私から御答弁申し上げましたように、できるだけ歳出の、いわゆる行政努力によりまして国会の修正案の御趣旨に沿いたいと存ずるのであります。しかし万一これができない場合におきましては、ただいま申しましたように予備費の流用等によりまして考慮いたしたいと考えているのであります。
  86. 藤本捨助

    藤本委員 政府の原案によりますれば、被保険者負担範囲の拡張は二十三億五千百万円でございました。しかし最小限度にこれをとどめるというような意味で修正いたしまして、そのために五億六千五百万円の医療給付の増が出たのであります。行政努力によりまして、あるいはまた今度の御改正によりましていろいろの運営その他の合理化も行われますから、従いましてここに大体この支出増になります経費に対しまして、これに見合うべき支出の減が出るだろう、こう予定いたしているのであります。その結果予算の変動はない。もし万一この努力が十分効果が出ない場合におきましては予備費を考慮すいたというようなことを考えておるのであります。
  87. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 提案者に衆議院規則百四十三条の説明を聞きたい。百四十三条は「修正案法律案に対するもので、予算の増額を伴うもの又は予算を伴うこととなるものについては、修正の結果必要とする経費を明らかにした文書を添えなければならない。」、修正の結果必要とする経費であります。あなたの方は結局今のお話によりますと、修正の結果必要とする経費が五億六千五百万円というわけではないようです。行政努力でやるというならば初めからあなたの方は零とお書きになればいい。これは修正の結果必要なる経費でありまして、必要なる経費が五億六千五百万円ということになれば、当然それに対する歳出その他の面における予算の補正がなくちゃならぬ。あなたの方で行政の努力、節減ということになれば、五億六千五百万円というのは大インチキである。いやしくも国会の修正案を出すときに、衆議院規則に明記されておる経費を明定しないで修正案が成立しますか。それは無効の修正案です。この点どのようにお考えになりますか。
  88. 藤本捨助

    藤本委員 多賀谷さんのお尋ねに御答弁いたします。この五億六千五百万円、これは修正をいたしますとこれだけの支出増になるということをお示ししたにすぎないのでありまして、これに見合うだけの支出の減に努力する、それが行政努力であります。
  89. 柳田秀一

    ○柳田委員 それならばお尋ねしますが、この委員会の冒頭に委員長は衆議院規則によって予算修正を伴うから、関係大臣のこれに対する意見を求めるとわざわざ言っているじゃないですか。なぜそういうことを言ったのですか。あなたはきょう委員会の冒頭に衆議院規則によって厚生大臣にわざわざ意見を述べさせておるでしょう。それによって大臣は善処すると言ったでしょう。なぜそういうことを言うんですか。もしも今の藤本君の答弁のごとくならば、なぜあなたはわざわざこの委員会の冒頭において……。
  90. 佐々木秀世

    佐々木委員長 委員長の職務は提出された修正案を公平に取り扱うことです。修正案には予算を伴うという紙がついておりますからそれをそのまま政府にただすことは当然だろうと思います。それに対する質疑答弁を行なっているのでありますから、それを納得されるされないは委員提出された方々との間にきまるべきものであって、私が判断すべきものではございません。
  91. 柳田秀一

    ○柳田委員 その委員長の取り計らいによって、厚生大臣は善処しますと言っている。だから提案者と政府とが表裏一体となって、それについて善処しますと言っておる。今の藤本君の答弁はそれと自家撞着しているじゃないか、それはどうですか。
  92. 小林英三

    小林国務大臣 先ほど委員長の御指名によりまして、この修正案に対して私が善処いたしますということを答弁いたしたのであります。これは私はこの修正案全体につきまして申し上げておるのでございます。それを一つ御了承願いたいと思います。
  93. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は一つ冷静に聞いて  おきたいと思う。これは与野党ともそ  の立場を異にした場合にいろいろ問題  が起ることですから、この解釈をこの  際はっきりしておきたいと思うので  す。と申しますのは必要なる経費五億  六千五百万円の中で実は行政努力に  よって節減をされるものがあるなら  ば、その節減される分をあなたの方で  は予定をして、この程度は節減できる  からというので、あるいは三億節減できれば二億六千五百万円と書いて出されるべきが至当である、かように考えるわけです。ですからいやしくも必要  なる経費ということになりますと、さっき歳出という言葉を使われ、歳入という言葉を使われましたが、要する  に増減する、行政努力によって増減する分については、あらかじめあなたの方でそれを考慮して、この程度はできる、この程度は経費として計上する必要はない、こういうことならば私は明らかにその中から削減されて提出されるのが至当である、かように申し上げておるのであります。ですから私は保険経済のトータルにおいて話をしておるわけであますから、あるいはこれについて行政努力の余地があると与党がお考えになれば、五億六千五百万円というのはうそであって、またこれを訂正されて、あるいは二億とか三億とか、こういうふうに書かれるのが衆議院規則の趣旨である、かように考えるわけですが、それを一言お聞かせ願いたい。
  94. 藤本捨助

    藤本委員 今回の修正によりまして、ただいま御指摘のように、五億六千五百万円の支出の増がでるのでありますが、これに対しましては行政努力によりましてその支出の増を防止する。しかしこれに明示いたしましたのは経費の増を示したのでありまして、新し  い予算の増を示したのではござません。しかし行政努力の結果、なおかつ年度末までにいろいろ不均衡が生ずるような場合におきましてはその場合に考慮いたすのが適当であろうと思います。
  95. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 経費と予算は全然別個だという話ですが、それはそういう場合もあるのです。ところが今度の場合は経費と予算というのは直結しておる。ただあなたの方で逆に収入増のことを修正案で書かれるということになれば、歳出はこうだけれども、収入増があるからこうだ、こういうことで了解できるのですが、今度の場合は要するに収入の方はふえてこない。従って結局予算にそのまま関係がある、こういうことになるのです。あるいは保険料を上げるという手もあるじゃないかというけれども保険料の引き上げというものは川崎前大臣のときに千分の六十に一ぱい一ぱい上げられておる。それでこれは法律の改正がなければできません。八方手を尽したのであります。この予算と直接関係ある経費になってきておるのであります。それが行政努力ができるというなら、あなたの方で初めから行政努力でできるというふうに考えられて、その分をこれから削除して提出されるのが至当ではないか、こういうふうに考え、またそれを衆議院規則は求めておるのである。われわれはこれだけ経費を計上したけれども、実際はそうではないかもしれない、あるいは行政努力でできるということが初めから見通しがつく、そういうことならばこれは私は経費増といわけには参らない。こう申しておるのであります。その点を一つ、これは感情を抜きにして、お互いに、われわれが修正案を出すときにもこういう問題がありますので、この際明確にしておきたいと思いまして、御質問を申し上げたわけであります。
  96. 藤本捨助

    藤本委員 私は行政努力によりまして、それだけの節減を出す、そうしてバランスを合わすということでございますので、御指摘のように新しい予算の計上は必要がない。かように存ずるのであります。
  97. 佐々木秀世

    佐々木委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  98. 佐々木秀世

    佐々木委員長 速記を始めて。滝井義高君。
  99. 滝井義高

    ○滝井委員 ただいま五億六千五百万円の経費を必要とするということに相なったわけでございますが、どうもその点が非常にわれわれとしては明確を欠くわけでございます。しかもそれを補うために政府の方においては十七億九千九百万円の予備費から流用していくのだ、こういう御答弁がございました。ところがこの予備費というものは不測の事態に使うものなんです。昨年は九億七千九百三十九万八千円の予備費を計上したのです。ところが保険経済はこういうことではどうにはもならぬということで、ことしは実は十七億ではとても少いのだが、まあまあ十七億でということで、実は予備費を十七億ことしは一計上している。その少いといって計上した予備費からもう年度早々からすでに五億六千五百万円をとるというなら、これは明らかに今までの答弁をずっと通じてみても大へんなことなんです。過去の実績を見てみましても、二十九年の赤字、三十年の赤字から見ても、予備費を使う状態というものをよく御説明していただけばすぐに底をつくことははっきりしている。まず議論を進める上からいって、この予備費の使い方が過去にどういう工合になっておったか、二十九年、三十年の状態を明白にしてもらえばわかる。少くともあなた方が見積っておる保険料の徴収の状態においても、決算の上から会計検査院が十一億七、八千万円というものは未納欠損になるというものまであなた方の歳入の中に加えての話なんです。そうしますと歳入というものはごらんの通り、これは努力に努力を重ねて九二%なんです。ところが過去において九二%の保険料の徴収があったことはないのです。そういう水増しに水増しを重ねた予算で、ここに初めて五百何がしという厚生保険特別会計の健康保険勘定というものが出てきておる。こういうような客観的な情勢から考えて、五億六千五百万円を予備費で使うなどという、こういう暴論を、今までの議論の過程からいって、ここで窮余の一策として言うということは、われわれ一カ年かかって社会保険法の審議をやった者としてはどうしても納得がいかない。だからまず納得がいくかいかないか、過去の予備費の使い方というものをここで御説明になれば一番よくわかる。御説明願いたい。
  100. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 本年度は今滝井先生が御指摘になりましたように、たしか十億弱の予備費がございます。本年は昨年の法律が審議未了に——衆議院で修正されまして、なお参議院でこれが成立をいたしませんで、六、七億の歳入欠陥がございます。従いましてそれだけが入って参りませんので、結局予備金は使えないという格好に、金額は若干違いますけれども、歳入欠陥が相当大きくございまするので、予備金は歳出の予備金としては使えないという格好に相なっておるわけでございます。
  101. 滝井義高

    ○滝井委員 私は予備金の使えないときのことを尋ねているのではなく、二十九年はどれだけ使ったかということなんです。二十九年なら二十九年の実績を見たらわかるはずなんです。二十九年においては四百万台の被保険者だった。本年は五百三十一万と三十万以上の被保険者がふえてきておるのです。このように被保険者が末広がりになっておる現状、医療給付は末広がりの増大をする情勢にきておる。この中から五億以上の金をとられてしまったということになれば、この厚生保険が行き詰まることは明らかなんです。だからまず二十九年の実績を御説明願いたい。おそらく二十九年には十八億くらい使っておるはずです。
  102. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 二十九年は予備金を使っておるはずでございますが、ただいま御指摘の十八億円というのは、実は積立金よりの受け入れを十八億円いたしました。予備金が幾らございましたか、手元に予算書がございませんので、予備金の額はわかりませんけれども、二十九年度は予備金を費消いたしております。
  103. 滝井義高

    ○滝井委員 今政府から御説明があったように、積立金も食い、しかも予備金もおそらく十七、八億使っておると私は記憶しておるが、使っておるわけです。それで今年度の始まりです。初めで予備金でやる、こういう点で非常に問題のある御答弁。そればかりじゃございません。さらにこの予算の基礎に大きな変動を与えるファクターが今度は昨年とは違って入ってきた。しかも政府健康保険予算を組む場合には新医療費体系で組んでおった。いわゆる初診料十二点の場合に組んでおる。十二点といえば初診料百五十円で組んでおった。ところが百五十円の初診料が今度新医療費体系がたな上げになったために初診料は四点五十円になった。従って今度のこの暫定案においては四点になりました。法律においては初診料が五十円。従って保険経済は、本人が一人医者にかかりますと、新体系では本人が五十円負担だから百円払わなければならない。ところが今度の暫定案ではどういうことになるかというと、保険経済は一文も出さなくてもいいことになる。こういう大きな修正が出てきた上に、しかも暫定案においては、今までの薬の代が二点であったのが二・二点と〇・二点だけふえてきたということです。しかもこの変化は何をもたらすかというと、投薬注射をやった場合には、政府案においては三十円が本人の負担でありました。これだけでも、新体系でいった場合と暫定案でいった場合とは明らかに違っておる。ところがさらにその上に、今度はこの自民党の、いわゆる与党修正案によってどういう変化が出るかと申しますと、これは三十円いわば保険経済が得をするはずであったが、今度は二十円しか得でないことになって、そこにまた十円開きが出てきた。この厚生保険特別会計全体からいえばもはやむちゃくちゃなのです。総医療費が変らぬどころではなくて、総医療費は全く混迷の状態にある。どういう工合にこの会計がなるかわれわれは全くわかりません。だから私はこの予算ほんとうに今の修正案も加えてやろうとするならば、この予算の変化の状態を政府は明白にする責任がある。そうしなければこの財政対策を得ておりまするところの厚生保険の会計はどういう工合になるかわからぬ。暫定案は政府が今から十日も前にのまれた案なんですから、当然予算の変更を考えられておるはずなんです。そういう御説明も同時にいただかぬと、これは単に今の修正案だけの変化ではないのです。非常に大きな変化がこの予算自体に来ているということ。そればかりじゃなくて、この医療費体系の変化というものは、結核予防法に大きな変化が来ておる。結核予防法に変化が来るばかりではなくて、生活保護法に変化が来る。わずかに二点から二・二点になっただけでも、結核予防法と生活保護法に変化が来る。この健康保険法改正は、単に厚生保険特別会計ばかりではなくて、一般会計に重大な影響を及ぼす。だから、これはもうだんだんはっきりしてきましたが、力でこれを押し通すわけにはいかない情勢が出てきておる。だから、大蔵省結核予防法、生活保護法、それからこの全部の関係について明白な——すでに予算は通っておりますから、通ったものについて明白な御答弁がいただけないと、これは非常に工合が悪くなってきておる。だから、この明白な御答弁ができれば今してもらいたい、できなければ、打ち合せてでもしてもらわなければならない。まず大蔵省にお聞きしたい。
  104. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 滝井先生からいいろ御指摘の点がございましたが、新医療費体系の変更に伴います予算修正につきましては、厚生省とわれわれ相談いたしまして、医療体系の変更によりまして総医療費に影響を来たさない範囲において行うということにいたしておりますので、私どもといたしましては、その関係におきましては予算修正を必要としないと考えております。ただ、今問題になっております一部負担の緩和の問題につきましては、五億六千五百万に相当するものが一部負担の緩和になりますので、それだけが給付費の増となって現われて参ります。その関係におきまして、ただいますでに国会の御協賛を経ました歳出予算のうち、保険給付費の歳出根拠が変って参りますので、この金額が変るのではないかという問題が起って参るかと存じます。しかしながらこの点につきましては、先ほど私からも答弁申し上げ、厚生大臣からも御答弁がありましたように、行政努力によりましてこの給付費五百十七億でございますか、この中においてまかなうように善処して参る、いよいよ足りない場合に予備費をもってこれに充てることにいたしますれば、必ずしも今日予算補正の必要がない、かように考えておる次第であります。
  105. 滝井義高

    ○滝井委員 総医療費に変化がないということが前提であったわけです。ところが今度のこの修正案だけでも、総医療費に変化が及んでくるわけです。そういう情勢がある上に、さらにかてて加えて、健康保険というものの予算を組む考え方というものは、新体系で組んでおったのです。ところがそれが新体系はこわれて、暫定案になった。しかも暫定案になったときには、この政府提案の一部負担考えておった。ところが新体系と暫定案との差が出てきておるわけです。これで明らかに総医療費に一つの変化が起る。どうしてかといえば、受診率に変化が出てくる。たとえば百円患者負担する場合と五十円負担する場合とは受診率に変化が来る。受診率に変化が来るということはどういうことかといえば、明らかに総医療費に変化が来る。いかに抗弁されようとも、そういうことは明らかです。たとえば三つばかりの例を考えても、一部負担の場合、すぐそういう例が出てくる。従ってこれはそういうことになる。しかもその上に、今度の入院料においても、それから再診の場合の投薬、注射がある場合においても違ってきた。これは提案者にもお尋ねしますが、その点、あなたの方で全然変化がないという御答弁はどうしてもできないと思うのですが……。
  106. 藤本捨助

    藤本委員 今滝井さんから予算が混迷に陥ったというような御指摘でございますけれども、仰せのように、修正によりまして五億六千六百万の支出の増は出ます。これをこのまま何らの行政努力もいたさずほうっておきますと、御説のように、直ちに予備金の問題も起るでありましょうが、これから大いに努力をいたしますし、また今度の法の改正によりまして組織はもとより運営も合理化されますので、その方でまた支出の減も考えられますから、あなたの御心配のような点はないものと思います。  それからさらにもう一点は、新医療費体系で今度の予算は編成しておりません。でございますから、それによる予算の増というようなことは考えておりません。
  107. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、今まで厚生省は新医療費体系と予算との関係を盛んに御論議になって、新医療費体係で健康保険なんかをやってこられたのです。今あなたは新医療費体系でやっていないというと、答弁が食い違ってくるわけですが、新医療費体系でやっていないとおっしゃっているのです。
  108. 藤本捨助

    藤本委員 御承知のように、新医療費体系は物と技術を分けまして、医療費全体のワクの間においては何ら増減がないというような建前で参っておりますから、かりにこれでやりましても予算の増とはならぬと私ども考えております。
  109. 滝井義高

    ○滝井委員 私は新医療費体系のことを尋ねております。新医療費体系で、予算というものは、私たちは、暫定の基礎が組まれておったと思うが、旧体系で組んでおったのですか。
  110. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 その点につきましては、たびたび委員会で御説明を申し上げたと思うのでありますが、三十一年度の健康保険の医療給付の見積りといわゆる予算というものは、私どもは過去の実績によって組んでおるのであります。この実績は旧点数の時代でございまして、新医療費体系なんというものは過去に行われたことはないのであります。従って新点数で組もうとしても組めないのであります。これは従来の点数で組んでおる。ただ新医療費体系がかりに実施されるとするならば、旧点数で払う場合と新点数で払った場合と金額に相違ができるということであれば、これは予算に影響があるから、従って新医療費体系は旧点数で払う場合と変りのないようにするというのが新医療費体系の趣旨であったのです。だから別に新点数で組んだのだとおっしゃるのは、滝井先生がそうおっしゃっておるのであります。これは何回も説明を申し上げたことでございます。
  111. 滝井義高

    ○滝井委員 処方せんが一五%だけは薬店にいくとこういう言明があった、これは一体どういうことになるのですか。医者に療養給付費が支払われる場合と薬剤師に支払われる場合と違いますよ。一五%だけ処方せんが医者から薬局に出ていくということは、これは明らかに新医療費体系で組んでおることです。当然影響が出てくることになる。
  112. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 処方せんが一五%薬局にいくだろうということは、新医療費体系の御説明のときに、これは何%いくか、これはたれもわからないわけであります。しかしながら総医療費が変らないという検定をいたす場合においては、何%いくかということを計算しなければ、検定ができません。そのときに新医療費体系で使った仮定でありますということを言っておるのであります。別に保険の見積りで処方せんが何%外へ出るとかいうことは、一度も御説明を申し上げたつもりはありません。
  113. 滝井義高

    ○滝井委員 そうおっしゃるけれども、一五%だけ薬局に出ていった場合と出ていかない場合では違いますよ。一五%だけ薬局に出ていかなくて、医者のうちにきたら二・二点になるではありませんか。
  114. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 わかりました。従って今回の暫定案では患者が医者のところに参りまして、調剤も何も全部してもらって、お医者さんに全部お払いする場合と、処方料だけをお医者様にお払いをして薬局にいきます場合と、そのいずれの場合にも患者として支払う医療費には変りがないという格好に暫定案はなっております。従って処方せんが何%出ましょうとも、今回の暫定案では関係はありません。ただ新医療費体系のときに検定ができなかったと申しますのは、新医療費体系のときには文書料としての処方せんを一点計上しておりました。従ってこれがどういう影響を及ぼすであろうかという検定のときに、さような仮定を置いて検定をしただけだという問題で、ございます。従ってこれはあくまでも新医療費体系に関連をする問題でございまして、別に健保の予算に関連をいたすべきものとは私は考えておりません。
  115. 滝井義高

    ○滝井委員 私はこれ以上努力いたしません。今政府の御答弁の通り、厚生保険特別会計に影響がないということでございますから、いずれこれは年度末になれば事実がはっきりすると思います。そのときに、今の御言明が違ったときには、一つ御責任を明白にしていただきたいということをここで申しておきます。  次に官給請求明細書でございます。これは、私はその様式を出してもらいたいということを要請いたしておりました。なぜならば、竜を描いてひとみを点ずるということがございますが、この官給請求明細書はいわばそのひとみに相当するものだと思っております。従ってこの附帯決議の中においても明らかにそういうことがあるのでございますが、この点に対する厚生当局の御見解を承わっておきたいと思います。
  116. 小林英三

    小林国務大臣 ただいまの修正案の中に附帯決議がついております。私どもは附帯決議につきましても、国会の意向を十分に尊重いたしたいと思っております。
  117. 植村武一

    ○植村委員 ただいま議題に上りまして審査いたしております健康保険等の一部を改正する法律案に対する修正案、並びに船員保険法の一部を改正する法律案に対する修正案の両案につきましては、大体質疑が終了したと思われますので、この際両案についての質疑を打ち切られんことの動議を提出いたします。
  118. 佐々木秀世

    佐々木委員長 ただいまの植村君の動議について採決いたします。植村君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  119. 佐々木秀世

    佐々木委員長 起立多数。よって本動議は可決されました。両修正案についての質疑は終了いたしました。  次に岡良一君外十二名提出健康保険法等の一部を改正する法律案につきましては、発言の通告もありませんし、提出者諸君より趣旨説明、質疑は省略して、直ちに討論採決されたい旨のお申し出がありますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  120. 佐々木秀世

    佐々木委員長 御異議なしと認め、そのように決します。  これより内閣提出健康保険法等の一部を改正する法律案及び同案に対する修正案厚生年金保険法の一部を改正する法律案船員保険法の一部を改正する法律案及び同案に対する修正案岡良一君外十二名提出健康保険法等の一部を改正する法律案、以上大案を一括して討論に付します。井堀繁雄君。
  121. 井堀繁雄

    ○井堀委員 ただいま議題になりました健康保険法等の一部を改正する法律案、右に対する藤本君外十名提出修正案厚生年金保険法の一部を改正する法律案船員保険法の一部を改正せる法律案、右に対する藤本君外十名提出修正案岡良一君外十二名の提出されております健康保険法等の一部を改正する法律案について討論を行わんとするものであります。  まず政府提案の原案に対しまして反対の意思を明らかにし、続いてこれに対する修正案、さらに厚生年金保険法の一部を改正する法律案の原案、船員保険法の一部を改正する法律案の原案、さらにこれに対する修正案に対しまして反対の意思を明らかにいたし、さらに岡良一君外十二名提出健康保険法等の一部を改正する法律案についてはこれを支持し、皆さんの御同意を得たいと思います。  われわれが政府原案に反対をいたしますのは、申すまでもなく今日本の民族が理想といたしておりますのは福祉国家の建設でありまして、福祉国家建設は社会保障制度確立にあることは今さら申すまでもありません。社会保険はその社会保障制度の中核をなすものでありまして、ことにわが国の健康保険法は、社会保険制度の中におきましても最も古い歴史と長い経験を持つものでありまして、この間に多くの特徴を積み重ねまして、今日の医療保険の中核をなすに至りましたことは、周知の通りであります。この健康保険法改正は以上のような関係からいたしまして、よほど慎重に取り組まなければならないのでありまして、その盛衰は、直ちにわが国社会保障制度の消長を決する重大な事柄であります。しかるにここに提案されておりまする原案につきましては、われわれはかかる態度をもちまして、真剣に原案並びに修正案について質疑を続けて参りましたが、その質疑を通じまして明らかになりましたことは、まことに遺憾千万と申すべきでありまして、かかる日本の民族の願望しておりまする福祉国家の理想に対しましては、全く逆コースをとる健康保険法改悪を意図するにほかならぬことが明確になったのであります。もちろん政府趣旨弁明の中におきましては、健康保険の経営上、多くの赤字をあげて、その赤字の解消の急務なることを説いております点においては、私どもも同感であります。しかしここで健康保険赤字問題を解決しようとするためには、いかなる処置をなすべきかというその方法におきまして、全く本末を転倒した提案であると申さなければならぬのであります。われわれの主張いたしたいことは、健康保険法改正に当りましては、たびたべ質疑の中で政府も表明されましたように、国民のすべてに医療の恩典を浴せしめるということは社会保障制度の第一段階であります。この点については、政府もわれわれも意見を同じゅういたしたのでありますが、その実行については、全くそれとは反する改正案であることを遺憾に思うのであります。  まず健康保険法改正に当りまして取り上げなければならぬことは、適用範囲を拡大いたしまして、健康保険の適用事業所の範囲が拡大されることによって、三千万に近いところの社会保険の恩典から除外されております人々をこれに吸収する道を講ずべきであります。この点について何らの改善を試みようとする意図すらないことを私どもは発見して、これは社会保障制度を主張する資格をみずから放棄するものであることを遺憾ながら認めたのであります。さらに私どもの強調いたさなければならぬことは、三千万に及ぶところの、経済的苦境の中に医療の恩典からはずされております人々というものがどういう階層であるかということを直視しなければならぬのであります。これは言うまでもなく、健康保険は生産に直結いたしますところの事業所に雇用されておりまする人々を対象にする保険でありますから、そういう生産の第一線をになう人たちの健康保全のための健康保険使命というものは、この点にとりあえず抜本的な措置を講ずべきでありまして、その金額を予定いたしましても、ごく小額な予算によってなしとげられることが、この質疑応答の中において明らかにされたのであります。でありますから、予算上の理由をもってこの範囲拡大をはばむことはできないということが明らかになったのであります。そこでこの点において私は今回の改正案というものが、全く本末を転倒しておる事実を指摘したいのであります。  第二の問題は、今日進歩せる近代医学の成果を適正に医療に取り入れるということは、国策上最も緊急なことであります。ところが今日病苦に悩む多くの人々が多数あるにもかかわらず、これらの人々が医療の恩典に浴することができないで、いたずらに苦境の中に呻吟しております事実は目をおおうことはできないのでありまして、これをこの保険のワクの中において処理するということが改善の第二として考えられなければならぬのでありますが、この点についても何らの方針が意図されていない。意図どころではなく、こういうものに対する政府の所信すら伺うことができなかったことをまことに遺憾に思う。のみならず、それとは逆に今日赤字を補てんするために、近代医学の成果を適正に医療に取り入れるという国民的な国家的な要請に逆行いたします医療の制限をいたして、保険財源の赤字を補てんしようとするがごときことは、保険の精神をじゅうりんするのみならず、日本福祉国家への理想をはばむところのおそるべき反動的な傾向であると申さなければならぬと思うのであります。  第三にあげなければなりませんことは、日本の最も恥ずべき国民病ともいわれます結核対策健康保険関係であります。申すまでもなく、世界のいずれの民族に比較いたしましても、近代国家を志向いたします国民においては、日本ほど結核によって多くの国民が生命を断たれ、あるいはそのために経済的貧困の苦境に転落せしめられているというこの社会的事実を一刻も早く解決しなければならぬことは、たびたび国会においても、あるいは世論の中においても強く取り上げられ、かっては結核対策のための立法措置を購ぜられたことは事実でございまして、この対策を、今日健康保険改正とにらみ合せて積極的に取り上げることが、今当面しております健康保険赤字問題を解決する唯一の方法であると私は指摘したのでございます。ところが、この点に対する政府の答弁はきわめてあいまいであったことを遺憾に思うのであります。すなわち結核の対策が、現在の法規をもっていたしましても、結核予防法の予算化の方法によって健康保険の中における負担を軽減することによって、健康保険も正常なる経済を保持することができる。また結核も一元的な、しかも徹底した医療とさらに患者の保護が期せられていることは、あまりにも明白な論理であります。このことが今回取り上げられなかったということは、いかにも健康保険改正とは申しながら、医療保険の中核を理想的に押し詰める立場からいたしますれば、これまた大失態であると申さなければなりません。その意味において、社会保険の改正を意図する政府の意思が那辺にあるやをわれわれは疑ったのでございます。  第四にあげなければならぬことは、政府管掌健康保険と組合管掌の健康保険とは、全く同じ立場に立つ保険経営の中において大きな誤差が出てきていることであります。これはいろいろ原因があることでありますが、本委員会においては、この問題を爼上に上せて論議する必要を重視いたしたのでありますけれども、時間の許さないところで、この問題に言及することができなかったことを非常に残念に思います。しかしここでわれわれの言い得ることは、今日政府管掌健康保険の弱点は、政府提案趣旨の中で述べられたように、また一、二論議がかわされたことによって明らかになりましたのは、今日の政府管掌の被保険者の多くが、中小企業、零細企業の雇い主、すなわち低賃金の被保険者を対象とするところに、保険経済の上に非常なマイナスのある点を主張され、われわれもこれを認めているのであります。そこで、この事実をどうして処理するかという問題に対して、何らの対策がなかったということは、事実を指摘しておりながら、その方法をこの改正案の中に持ち込まなかったということは、意識的に放棄したのであるか、あるいはそれを措置するだけの能力に欠けているのであるか、そのいずれかに落ちるのでありますが、ここでわれわれが指摘しなければなりませんことは、その原因は申すまでもなく、政府の経済、財政金融、産業その他一般の政策が、日本の戦後の自立経済達成から始まりまして、健全財政に急速な切りかえを必要とした事実をわれわれは承認するものでありますが、その政策転換の場合に、当然そのしわ寄せが健康保険に寄ってくるであろうことはだれしも想像のできることであります。言いかえますならば、デフレ政策をとり金融政策を引き締めをやろうとすれば、中小企業、零細企業がその被害を真正面に受けてくるという論理はあまりにも共通した過去の幾多の事例でわかり切っていることであります。それが日本の場合においては極端に現われてきたのでありまして、それが今日中小企業の破産、倒産となり、あるいは賃金の遅払い不払いというような事態が続出いたしまして、健康保険財政に重大な影響を及ぼしたことは明らかな事実でありまして、すなわち昭和二十九年度から急速に十億に余る黒字を食いつぶして四十億に近い赤字を出したというこの極端な現われ方は、これと全く時期を同じうしております。さらに三十年度に入り今年度に入り赤字を累積してきたことがここに起因することは、いにかしても否定することのできない強い事実となって現われてきたのであります。この問題の解決には私は二つあると思う。一つは政府の政策全余が、大資本、金融資本あるいは独占資本といわれる大手筋に対する保護は手厚く行われたのであるが、その結果が零細企業にしわ寄せをされて、それが極端なる収奪の状態にまで政策の破綻が及んだのであります。でありますからここに中小企業対策、零細企業対策に対するところの措置に急速なる補正を行うべき全般的な対策が必要であったことは言うまでもありません。この点においては政府管掌である限りにおいては当然政府はこの赤字対策のためのかわるべき措置をもって臨むというのが責任政治の立場であります。この点において今日の政府健康保険の上に現われた態度というものは無責任きわまるものであるといわなければなりません。次にこの他の対策といたしまして、健康保険改正の際直接の関係を持つものでありまして、これはその方法において困難であるといたしますならば、政策の破綻から来るところの欠陥を埋めるためには当然国庫負担をもってその赤字を補うということはあまり好むところではありませんけれども、余儀ない措置としてとるべきものであります。それを行わないで、ここに政府改正案を一つ一つ検討いたしますと、いずれもそれを医療担当者の犠牲を強要する、その犠牲も出血を意味するような極端なやり方をいたしている。今日政府管掌の被保険者の収入が低いということは以上の理由で明らかなのに、その低い収入のものにさらに一度に三千円を四千円に引き上げるというようなことはまるで社会保障制度などを考慮している者の措置ではありません。それも金額に見ますと、わずかに九千万円程度だということを政府はわれわれの質問に答えました。今日九千万円ばかりの財源をそういう過酷な、残酷な、残忍な収奪を行うなどということは、社会保障制度をあずかる人々の考え得るところであってはならぬのであります。こういうことで品に社会保障制度、あるいは福祉国家を主張するなどはさたの限りであると事実は教えておるのであります。こういう点からいたしまして、今日政府健康保険改正というものを根本的な立場においてなされるなどということは、以上の事実だけを指摘いたしましても、大へんな誤まりを犯しておるということを指摘しなければならぬのであります。  そこで、ごく簡単に政府原案に対し反対する理由を、原則的には以上の立場でありますが、個々の問題について申し上げます。それはここに出されております提案の中で、標準報酬の問題でありますが、標準報酬の最低を引き上げたということは、一方には零細企業に重圧を及ぼすことになりますし、この際見落してはならぬことは、健康保険改正事務的に煩雑を避けるという以外にわれわれは何らの根拠を認めることができないと思われるのは、この比較的短期保険である健康保険と、長期保険の性格を持つ厚生年金保険の改正を同率に扱った点であります。ここにも厚生省の感覚は厚生行政をあずかる人々の感覚であろうかということを疑うのであります。今世論は社会保険の統合をいっております。それは言うまでもなく社会保障制度確立を目指す福祉国家への熱望であることは、先ほど来述べたことと共通すると思います。そして厚生年金は、言うまでもなく国民年金の基礎的条件を育てる大切な社会保険の一つであると思います。この厚生年金保険というものを改善するという意図をこの際持つのでなければ、私は福祉国家すなわち国民年金制度を論ずる資格を許されないと思うのであります。今日軍人の恩給を復活し、官吏の恩給制度も改善しようとすることに私は反対するものではありません。しかしながらものにはおよそ順序が必要であります。今日日本経済をしょって立ち、福祉国家を志向する立場からものを判断するならば、国民全体に少くとも、低いものでもけっこう、程度の低いものでもよろしいけれども、年金制度を持たないで恩給制度を云々するということは、福祉国家を担任する人々の考え方でない。こういう点で、今日軍人恩給の復活をはかり、あるいは官公吏の恩給制度の改善をはかるということは、国民の税を巻き上げて、国民の意図せざるところにこの負担が及ぶのだという非難を受けたら、どうして答弁するだろう。健康保険改正をやるならば、この際にこそこの年金保険というものを、その程度は低くてもよろしい。これが国民年金全体の改善に役立つような方向というものが取り上げられてこそ、私はこれを改正案として論議する勇気を持つのであります。ところが何です。この改正は標準報酬の改訂に名をかりて、先ほど来申し上げる零細企業はもちろん、被保険者あるいは雇い主負担困難の中にさらにそれを加重する以外に何の改善があろう。しかもその積立金の運用を見てごらんなさい。一千四百億に余る金が今日官僚独善の中に運営がまかされておるではないか。年利三分や、最高六分である。今日市中の利回りを見てごらんなさい。そんな安い利回りでどこに金融がなされておりますか。今日国民全体の福祉のために少しでも良心的な好意を持つものがありまするならば、こういう際にこそこれらの莫大な積立金をこの保険の発達のために還元する——たびたびこれは、これらの諮問機関でありまする社会保険審議会、社会保障制度審議会がその積立金に対して政府に勧告をいたしておるが、馬耳東風である。何らの誠意を示しておらぬのである。そういう答申をこの際にこそ、いささかでもいいから形の上に表わしてこそ社会保障制度に対する良心的な態度であると申さなければならぬのです。どろなわ式に、改善をし促進をしなければならぬ問題を、それをじゅうりんするがごとき態度というものは、まことに私は政府態度に対して遺憾の意を表せざるを得ないのであります。今後かりそめにも社会保障制度を口にしてはならぬ。(拍手)  そこで次にもう一つあげなければなりませんことは船員保険の問題であります。船員保険の一部改正案についてでありますが、これは従来あまりこの委員会でも論議をなされなかった。それは一つには海上労働者という特殊性にあったからと思うのであります。しかしこの点は、日本の全労働者の中から比較いたしますと、わずか十七万程度の人員ではありますけれども、そのになうところの任務を正視いたしますならば、この保険制度に対しては無関心でおれないのであります。かつて日本経済が隆々と発展を遂げた際における重要な外貨獲得の任務を果して参りましたのは、日本船による物資の輸送でありました。日本の今後の輸出貿易振興の政策を押し進めようとする考えがあるものといたしますならば、船員労働に対する注意を怠ってはならぬのであります。海上労働者は俗にいうように板子一枚下が地獄であります。船に乗ってしまいますと自由は全くその仕事の中に投入されてしまうのでありまして、こういう特殊労働であります。こういう特殊労働の関係を認める法律といたしましては船員法がございまするが、その船員法によりますと、勤務中、すなわち乗船しておりまする場合におきましては、その疾病災害などに対しましてはその船の所有者が一切の補償の責めに任ずるという規定があるのであります。それとこの船員保険法の問題とを関連なしに考えることは許されません。この法律があるということは、以上私が言及いたしましたような船員の国家的使命というものを高く評価しておるからであります。その保護の必要性を強調している法律であることは申すまでもありません。でありますからこの法律の精神にマッチする改正が行われてくるものでなければならぬのでありますのに、そういうものとの関係を全く無視したとは申し上げませんけれども、船員局長をここに招きまして意見を徴したのでありますが、この意見によりますと、これらの保護のために当っておりまする行政的役割を果す保護監督官はわずかに四十八名、十七万に対して四十八名の保護監督官がおる。その労務官に対して今度の改正は重大なる負担を課すものであります。すなわちその保護をそういう人々によることによって、一部負担改正などによるものとこの法と矛盾しないように処置するなどと、苦しい答弁をしなければならぬような改正であります。この点は船員保険に対する思慮が足りないのではないか。いな船員保険の特殊性というものを考慮していない結果から出てきた改正案であるといっても言い過ぎではないのであります。こういう点をあげて申し上げますと、船員の場合におきましてはまだ問題がたくさんあります。たとえば、十七万のうち、その使用の性質からいたしまして、下は五トンくらいの小さな漁船あるいは機帆船、大きいのは一万トン級の汽船、従って給与の状態も高額高級船員と漁夫のごときは格段の開きがあるのであります。これを健康保険や厚生年金の標準報酬と同率に扱ったところに大失態があるのであります。もしこれを多少でもそういう特殊性を考慮して改正をしようというのでありますれば、高級船員に対して高額負担をさせるということと、健康保険や厚生年金とは事が違うと思う。こういう点は引き上げてもよろしい。それから給付面におきましても改善を要すべきものが多々あるにもかかわらず、こういう点に対しましては全くもってどろなわ式、火事場どろぼう式の厚生年金の取扱いと同列に置いておったところを指摘しなければならぬのであります。  以上のようにあげて参りますと、今日政府の原案というものは時代に逆行するところの改悪と言われても返す言葉はないと思う。こういうようなものに対してさすがに与党の人々も相済まぬと思ったのであろうと思いますが、修正案を意図された点については御同慶にたえない。ところが残念ながらその修正内容を拝見いたしまして驚くことは、一体何のための修正であるのか疑わざるを得ない。のみならずこれは法律違反の疑いをかもすような火事場どろぼう式の提案をしてお茶を濁そうとするがごとき傾向を私はまことに残念に思うのであります。先ほど来あげられておりますように、その修正案の見るべきものは一部負担の三十円を二十円に改めるとか、入院の一部を六ヵ月を三ヵ月に、この点はないよりましだ、少しでもという色けをつけざるを得ない。ところが数字でありますから二十円を三十円にしたのが予算に響いてきまして、五億何がし要るという説明が問題になりまして、これは言うまでもなく、国会法の命ずるところによってこういう修正案を出すときには健康保険特別会計というものは補正さるべきことを予測しなければならぬのであります。当然私は補正されるであろうことを今日見通しておるのであります。というのは、先ほど来論議がありましたが、私は発言を差し控えました。しかしこの改正は言うまでもなく行政努力によってけ出すとかあるいは予備費を当てにしているようなことを言っておりますが、もしそういうことができるようになりますならば、国会はもう何も特別予算に対してとやかく論議せぬでもよろしい、官僚にまかしておけばいいのであります。割合に官僚の方が正直かもわかりません。しかしそれは人間ではない、制度であります。三権分立をわれわれが強調いたしますのはここにあるのでありまして、この制度を侵すようなことをしては大へんな失態である。ただ修正案を通せばいい、何とかお茶を濁すというような考え方がもしあるとするならば、これは悔いを後に残しますから、後日でけっこうでありますから、万遺憾なきことを僕は委員長に希望しておきますが、この扱い方は言うまでもなく、なるほど金額は五億円でありますから、今日の厚生省の多くの会計の中、すなわち健康保険その他この特別会計三つありますから、そこら辺の中で上手にやれば何とかやりくりができるという意味だろうと思うのでありますが、そういうやりくりはしていい場合と悪い場合とある。してならぬということを法律が命じておりますのは、今度の修正案は言うまでもなく予算単価を変更してきておる。たとい金額は二十円と三十円の違い、六ヵ月と三ヵ月の違い、金額が五億六千万円でありましても、その五億六千万円をはじき出さなければならぬということは——政府予算原案はこの議会で通過しておりますが、その通過したものは三十円で通過しておるのであります。六カ月で通過しておるのであります。それから六ヵ月が三ヵ月に変ったということは、それは行政官の自由裁量にまかされることでは断じてないのであります。金額が小さいから自由裁量にまかせるということをするならば、程度の差によって今日の三権分立というものはくずされてしまう。三権分立というものは程度によって判断をすべきものではないのであります。こういう点は非常なあやまちを犯しておる。こういうところにも、今日与党の皆さんが世論に耐えかねて、政府の破廉恥的行為に対してはしんぼうし切れずに修正を出そうとした意図に対しては、多少れんびんの情を持つのでありますが、しかし功をあせって実際を踏みそこなっては角をためて牛を殺す大きな失敗をしでかすことを私は指摘しておきたい。そのほかにおきましては医師医療機関担当者が、今日あちらでもこちらでも、いな全国的な傾向において保険医の総辞退という非常措置をもって政府に猛省を促そうとするこの運動というものは、政治家としては無関心でおられぬはずであります。特に政府はこういう問題についてほおかぶりをすることは断じて許されません。そういう事態に、これで相手方を納得させようというつもりであるかもしれませんが、ここら辺はなかなかそうは問屋がおろさぬのではないかと私どもは心ひそかに政府のために憂えを残すものであります。本来こういう改正をする場合には、社会党のごとくこういう問題に十分日ごろから意を配っております野党の協力を求める一番よき機会であったと私は思うのであります。それを多数決で押し切るがごときはあまりにも芸のなき仕事であることを残念に思う次第でありまして、修正案にいたしましても、原案にいたしましても一考だにすべき余地のないまことに愚劣な改正改悪であるということを断ぜざるを得ないのであります。こういう点に比較いたしますと、社会党岡良一君外十二名が提案いたしました健康保険法改正案こそは皆さんの協力を求めるよき旗じるしを掲げたものであることにお気づきにならなかったということは、二大政党を指向する現国会においてはまことに遺憾千万であると申さなければなりません。  以上、いろいろ述べたのでありますが、こういう点からいたしまして残念ながらわれわれは百歩、二百歩譲りましても修正案あるいは附帯決議等についていささかでも前進の道があるならばこれはとるべきものという、こちらは大いに寛大な態度で臨んだのでありますが、それがいれられなかったということは、政府並びに与党の皆様に対して今後社会保障制度に対しまして真摯なる態度をもって国民の願望にこたえられんことを希望いたしまして、政府原案に対しまして反対、並びに修正案に対しましても反対、社会党提案修正案について双手をあげて賛成の討論を終る次第でございます。
  122. 佐々木秀世

    佐々木委員長 直四郎君。
  123. 亘四郎

    ○亘委員 私は自由民主党を代表いたしまして、政府提案にかかる健康保険法等の一部を改正する法律案厚生年金保険法の一部を改正する法律案船員保険法の一部を改正する法律案について修正案並びに修正部分を除く原案、附帯決議に賛成いたさんとするものであります。  わが国医療保障の中核をなす健康保険制度、特に政府管掌分の保険財政は近年異常なる医療費の増加を見た反面、これをまかなうべき保険料収入の増加が伴わないため、二十九年度以降巨額の赤字を生じておるのであります。かかる不均衡を是正し、保険財政の健全化をはかるため政府はもとよりわが党においても鋭意苦心を払って参ったことは各位の御承知の通りであります。今回政府提案の三法案はまさに崩壊に瀕せんとする医療社会保険制度のいわば地固めの策とも申すべきもので、やがて全国民を対象とする医療社会保障制度への全面的発展をはかるための第一段階としてきわめて重要なる意義を有するものであります。特に各方面から熱烈に要望されておった医療給付費に対する国庫負担を法律上明文化されましたことは、それが単なる赤字対策としての臨時補給金的性格のものではなく、恒久的国庫負担制度であるだけに、かの国民健康保険におけるがごとき定率国庫負担をかねて待望しておったわれわれとしてきわめて時宜に適する措置として衷心より賛意を表するのみならず、先ほどの附帯決議にもありましたように、最も近い将来において、政府がいま一そうの英断をもって定率化実現に踏み切るべきことを期待してやまぬものであります。  次に国庫負担に見合うものとして患者の一部負担の範囲を拡張しておりますが、ともかくも健康保険等の財政建て直しという重要な目的を達成するがためには、すべての関係者において若干の負担増がかかって参りますことは、保険財政の現状からすれば真にやむを得ないところでございましょう。特に税金を負担しながらも医療保険の恩典に浴し得ない国民が今日なお三千万人もあることに思いをいたせば、むしろ当然ではないかと思料せられるのであります。しかしながら他面において一部負担割の拡張は受診率の低下を来たし、いわゆる医療の本質たる早期発見、早期治療の趣旨に反する措置として強い反対論もございますので、われわれ政府与党といたしましては慎重研究の結果、修正案にありますような措置を講ずることとして、患者負担が過重にならぬよう十分に留意をいたしたのであります。この程度のものであれば、被保険者間の受益の均衡の点から申しましても、またいわゆる保険の乱用防止という面からいたしましても、決して無理はないものと存ずる次第であとます。  さらに保険医制度について機関指定方式を採用し、医師薬剤師等の登録制とあわせてその合理化をはかっている点は、わが国医療機関の実態に即せしめたものでありますが、これらの指定、登録またはその取り消し等の措置については慎重を期すべきことは申すまでもないことでありまして、その際各地における医療協議会の意見は十二分に尊重せられることを希望するものであります。  医療担当者の積極的協力を得ることは医療保険本来の目的を達する上においてきわめて肝要でありまして、今回検査につきまして問題であった立ち入り権限に関する規定を削除せる修正を行いましたのも、無用の摩擦を避けんとするにほかならぬものでございます。もちろん保険財政建て直しの意味においていわゆる不正診療、不正請求等の弊害の防止にはあくまで邁進すべきものと字じますが、本修正の趣意の存するところは当局において特段の考慮を払っていただきたいものでございます。  以上に述べましたるほか、今回の改正案においては標準報酬等級区分の改訂、継続給付受診資格制限等の諸措置を講じておるのでありますが、いずれも保険財政の健全化、保険運営の正常化をねらったもので、現段階においては適当と認められる次第でございます。  しかしながら今回の改正案を大観いたしまするに、わが党年来の理想であり主張であった社会保障前進と医療保障の拡大という点より見ますれば、いまだ不満とするものが決して少くないのであります。たとえば三千万人に上る未適用者に対する医療保険の拡充のごときは、きわめて急を要する問題であります。また健康保険等の医療保険を今日の財政的危機に陥らしめたその主要なる因子としての結核に対する施策のごときは、さらに数段の強化改善を希望いたすところであります。厚生年金積立金の運用についても、当面の問題として検討せらるべきものがございましょう。  これらの不満の諸点は、次の機会において優先的に解決せらるべき重要な宿題として残しながらも、医療保障の充実拡充への第一段階の意味において、私は政府提案の三法律案に賛成いたすものでございます。
  124. 佐々木秀世

  125. 石野久男

    石野委員 私はただいま議題になっております健康保険法等の一部を改正する法律案、右案に対する修正案に対しまして反対をいたします。さらに厚生年金保険法案、船員保険法の一部を改正する法律案藤本君外十名の提出する右案に対する修正案、これらに対して反対をし、岡良一君外十二名の提出になる健康保険法等の一部を改正する法律案に賛成するものでございます。以下その趣旨を申し述べたいと思います。  社会保障制度の問題を特に強調したのは、昨年の選挙のときにおける鳩山内閣の大きなスローガンであり、公約でございました。しかしそれらの問題は今はほごのようになってしまっております。われわれが社会保障制度の問題を考え、特に保険経済の問題を考えます場合に、今日日本におけるところの保険経済、保険財政の問題は国民の貧困の問題と切り離してこれを考えることはできないと思います。従って私たちは今日の特に健康保険における赤字の問題に関する考え方については、これをどのように確立するかということについて政府ほんとうに勤労大衆の立場に立ってそれを考えるか、それともまたごく一部の富裕階層を代表するという立場に立って考えるかということによって、その対策には非常に大きな相違がくるものだと考えます。私たちは今日の健康保険赤字の問題はもはや被保険者やあるいは医療担当者の犠牲においてそれを建て直すというような考え方をすべきでないと考えております。これはむしろ国がそれ自体の立場でこれに当っていくべき問題であり、またそういうような考え方をすべきである、こういうように考えております。ところが社会保障制度を説き、あるいはまたいろいろお考えを説いておるかのような口ぶりをしておる自民党並びに鳩山内閣ではそれができない、そして結局はごうごうたる世論の反対を買うような改正案が出るようになったものと考えるのであります。今回提出されておりますこの改正案はそのような立場から踏み出されておるものだと考えます。  特に健康保険については、政府政府管掌健康保険赤字対策として患者に二十三億五千万円の負担を強要するとともに、保険医に対する官僚統制を打ち立てようとする意図がここにあるものだとわれわれは思います。このため被保険者は他方では標準報酬の引き上げで従来より高い保険料を支払わなければならなくなりながら、医療費の一部を自己負担することになって、結局自分たちはもう金の都合によってもし金がなければ医者にかかれなくなるというような状態に追い込まれる結果になるのであります。政府はこうして受診率を人為的に引き下げようとしておるのであります。受診率の上昇は早期治療の意味では歓迎さるべきものであります。それにもかかわらず政府のやり方は全く逆の立場をとっているものだといわなければなりません。  政府管掌健康保険赤字根本の一つは、中小企業の今日の困難な経営状態と中小企業労働者の極端な低賃金状態、労働状態にあるのであります。赤字だからといってこれを患者負担でまかなうとか、あるいは一日三十円、四十円くらい何だというような考え方政府与党の各位にもしありとするならばこれはとんでもない認識だといわなければいけない。諸君は中小企業とその労働者の深刻な生活状態をはっきりと知っていないからこういうようなことがされるのだとわれわれは考える。政府はいわゆる健康保険全体の立場からして、患者の一部負担は当然でやむを得ないのだというように考えているのかもしれないけれども、それが健康保険国民全部に適用され、かつまた国民の健康を守る根本的な衛生政策が確立されており、しかも財政上真にやむを得ないというような場合においてのみそういうことは考えられるかもしれません。しかし現在はそうなっていないのです。今日の実情は社会保険の恩恵にまだ浴してない三千万の人がおるという実情である。驚いたことには厚生省はこういう実情のもとで二十九年度の末に通達、保発第八七号で、五人未満の事業所の被用者が健康保険に加入するのを事実上禁止しているというような実態を出しております。また最近では強制加入になっている五人以上の事業所に対する加入の勧誘もほとんど中止しているというような始末であります。こういうやり方で政府赤字の対策をやろうとしておるわけである。私たちは、こういうようなやり方には反対せざるを得ないのです。政府国民の健康を守る衛生政策、特にわが国において結核対策が緊急であるということもわかっておるにもかかわらず、ほとんどこれに対して意を用いていないといわなければいけない。政府管掌健康保険赤字の大きな部分が国民病だといわれておる結核治療費の増大に基いておることは、諸君の明確に指摘しているところであります。政府結核対策は、全くこういうことに対しては考えないお座なりな形で、問題に対して本質的に根本的に取り組もうとする熱意も努力も見せていないといわなければいけません。現に本年度予算では病床整備費は四億一千万円少くなっているし、八千床増加という厚生省の当初要求すら削られた始末であったし、現在要入院患者は百三十万人を越えておるというのに、増床費の大幅な削減で厚生省が立てた二十六万床整備計画は全く御破算となってしまったような事実である。これはただ一つの例にすぎないけれども、もし結核対策政府が本腰を入れておって、結核予防法を強化し、国庫負担を大幅に増加して今日の健保にだけ依存するやり方をやめれば、健康保険赤字などはそのことだけで容易に解消するのであることは自明なのであります。結局政府の政策は結核対策を全くなおざりにしておるし、そしてそのしわが健康保険によってくると、健康保険赤字患者負担だとか、あるいは診療の縮小とその内容の低下によって切り抜けようというようなずるいやり方をしておる。国民衛生政策について全く無誠意、無能力であるといわなければいけないというように考えます。  今度の改正案はこういうような立場からみまして、私たちはこれに賛成することはできないのです。私たちはそういうような建前から、この健康保険法が今日、ごうごうたる反対を受けておる、そういう実情を直視して、いま一度与党がいみじくもこれに対して修正の動議を出すというような立場をとったそのほんとうの気持に基いて、これはむしろ社会党が提案しておる修正案の方向にその考え方を持っていかなければならぬ、そしてそれによってこの際は少くとも——十分でなくとも私はやはり社会党の考えておるような、国庫がこの赤字負担していくという考え方の上に立つあり方にその趣旨を持っていっていただきたい。むしろそれより与党にお願いしたいのです。私たちはそういうような立場から、この政府並びに与党の出しておる修正案に対てしは反対して、社会党から出しておる修正案に賛成の表明をいたします。(拍手)
  126. 佐々木秀世

    佐々木委員長 以上で討論は終局いたしました。  次に六案について順次採決いたします。第一に内閣提出健康保険法等の一部を改正する法律案について採決いたします。まず本案に対する修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  127. 佐々木秀世

    佐々木委員長 起立多数。よって本修正案は可決されました。  次にただいま可決されました修正部分を除く原案について採決いたします。賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  128. 佐々木秀世

    佐々木委員長 起立多数。よってただいまの修正部分を除く残りの原案は、原案の通り可決されました。  右の結果、本案は修正議決すべきものと決しました。  第二に、厚生年金保険法の一部を改正する法律案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  129. 佐々木秀世

    佐々木委員長 起立多数。よって本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  第三に、船員保険法の一部を改正する法律案について採決いたします。本案に対する修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  130. 佐々木秀世

    佐々木委員長 起立多数。よって本修正案は可決されました。  次にただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  131. 佐々木秀世

    佐々木委員長 起立多数。よってただいまの修正部分を除く原案は、原案の通り可決せられました。  右の結果、本案は修正議決すべきものと決しました。  第四に、内閣提出健康保険法の一部を改正する法律案について、附帯決議を付すべきであるとの動議が出ておりますので採決いたします。藤本君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  132. 佐々木秀世

    佐々木委員長 起立多数。よって本動議は可決せられ、内閣提出健康保険法等の一部を改正する法律案は附帯決議を付することに決しました。  第五に、岡良一君外十二名提出健康保険法等の一部を改正する法律案につきましては、ただいま内閣提出健康保険法等の一部を改正する法律案及び船員保険法の一部を改正する法律案が議決されました結果、議決を要しないものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  133. 佐々木秀世

    佐々木委員長 起立多数。よって本案は議決を要しないものと決しました。  なおただいま議決いただきました各案に対する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  134. 佐々木秀世

    佐々木委員長 御異議なしと認め、そのように決します。  次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時十九分散会