○
滝井委員 それぞれの
薬局が担保力があるという証拠があるならばお出しなさい。あなたは薬業新聞を読んでごらんなさいよ。京都なんかどうしておりますか。みんな九十万の保証をどうして作るかということで
薬剤師の連中はてんてこ舞いではありませんか。担保力があるなんてあなたがおっしゃるなら、ある証拠を出して下さい。全国薬店の財産の状況がわかっているはずだから、至急出して下さい。それがはっきりして、担保力があるというならばよろしい。しかし担保力があっても、なかなか現在の銀行は、中小企業には金を貸さないのが
現実じゃありませんか。それをあなたが担保力があるという御断言をいただいたのですから、それを出していただきたい。
そこでもう少し内容に入りますが、そういう状態の
薬局でございますが、浦和市内の
薬局協同組合長は「よく売れる薬は別として、物によっては年に〇・〇一グラムしか出ないなんてものもあります。こんなときは最低の二五グラム包装を使っても、二四・九九グラムは無駄になってしまいます。いくら高くいただいても追っつくものじゃありません。しかし店の信用にもかかわるので断わるわけにも行かず、結局、手持ちの薬のあるところとないところでは、どうしても薬代に差が出て来るのは仕方がないでしょう。」こう言っている。これが現状なんです。いいですか、〇・〇一グラムですよ。耳かき一ぱいにもならない微量な薬を使うことが、
現実における医療の中には再三にわたってある。ところが二十五グラムの包装があればいいのですが、
薬価基準においては大包装になっておる。二十五グラムのものを買っても
薬局は損です。そこで私は、こういう点から日本の医療が具体的に急激に低下するところを今から
説明します。
そういう
事態の
薬局の中において、今度は薬というものは十五円刻みでやっていきました。
薬価は一・七点。前
体系では、たとえば二十五円の薬も一・七点、ところが皮下注射は一・六点になります。静脈注射は一・八点です。いわばものの原価が同じであっても、それが今度は具体的に人間のからだに与えら計る場合には
値段が違っておった。こういう点は
医療費体系における
一つの大きな不合理な点でございましたが、さらにこの点を今度は
暫定案が不合理の輪をかけた。薬は一・七点になっている、皮下注射は二十五円のものなら四点です。静脈は六点です。こういう不合理が出てきました。この不合理によってどういう形が出るかというと、薬は
平均で一・七点ですから、小数点以下のものを使いました。〇・五点というような小数点以下を使いました。小数点以下のものにかけ算をするものは、円ではない、銭の単位です。十一円五十銭、十二円五十銭という銭の単位をかけた。今大体銭の単位を扱うところは八百屋くらいしかありません。今度は
医者の計算では五厘が出るのですよ。二十七円四十七銭五厘と出ます。こういうむずかしい計算を
医者にやらせることになりました。そこで今までは銭勘定についてはあまり熱心でなかった
医者も、今度は銭勘定に一生懸命にならなければねらぬ。だから二十五円の薬を使っても一・七点、
薬価は
平均でやっておりますから一・七点です。そうしますと、これはそろばんをはじいて、あの
患者には二十五円の薬を
自分の過去の医学的な経験からいって注射を打たなければならぬと思っておっても、これは
平均でいっておりますから、
平均以下の注射を使うことになる。
平均以下の注射を使うというのが、これがとうとうたる現在の風潮なんですよ。現在の社会的な風潮はそういうふうになっておる。医は仁術なりといわれておったその倫理が変ってきつつあるのが現在の姿なんです。そこでそういうことになると、二十五円の
平均薬価を使わなければ、これはなおらないと思っておっても、以下のものを使う形が出てくる。以下のものに迎合するように、
薬屋、
製薬業者はさらにそれに輪をかけた計算をすることは明らかです。これはマーチャント、商売人です。輪をかけた計算をします。そこでできるだけ、少しは質が悪くても安いものを作ってこようとします。これは競争です。そうしますと、今までならばまあまあ
潜在技術料があったから、それはいいでしょう。ところが今度はそうでなくて、
平均価格でいって、そうして
潜在技術料というようなものは
処方せん料という形に姿を変えさしてしまうということになりますと、これは二十五円以下の薬を使うことはどういう
影響が
患者に出てくるか。明らかに一週間でなおったものが十日になる。さらに今度は
薬剤師諸君に行った場合に、これがどういう結果が現われてくるかというと、今申した
通り、たとえばグレラン、歯が痛いというので
医者がグレランという
処方を書きました。ところがグレランは
薬価基準は百錠になっております。これは一錠が六円二十五銭です。ところがこれが十錠とか二十錠入りになると、十錠入りなら百円です。そうしますと、二割の利益を薬店が得ているとしましても八十円、一錠八円になります。そうしますと、
医者がグレランという
処方を書いて出しても、
薬局が損をしてグレランをやらなければならぬ。こういう不合理性を含んでいるということです。これは
薬剤師が神ならぬ限りは、中には、もうおれはグレランばかり、こんなに
医者の
処方をやって損ばかりしては大
へんだ、ときにはアスピリンをと、こういう
薬剤師が、五万になんなんとする
薬剤師の中に一人もないということを、私はここでは断言がしかねます。
医者においても同じです。今言ったように二十五円が原価のものを使えばこの病気はなおると思っても、その経済が苦しければ、赤貧洗うがごとき
医療機関の内容であれば、それは二十五円以下のものを使い、その一切のしわが
患者に転嫁されて、
薬剤師の側からと
医師の側からと、急速に日本の医療は低下をして、
健康保険は隆々たる黒字になって、あなた方
役人は自己の繁栄を讃歌することができるかもしれないけれ
ども、日本の八千万の国民大衆というものは、これは大
へんなんです。私は医療というものはそういう微妙なものだと思っております。微妙であるがゆえに私は声をからしてあなた方に御忠告を申し上げている。
保険経済のみが黒字であって、現在の
医療機関が赤字であるということ自体、あるいは
薬剤師諸君に担保力があるなんというこういう楽観的なあなた方のする
厚生行政は、日本の大衆の医療を学問的良心の上に行うべき姿というものは、どこにも、
暫定案の中にも
体系の中にも
健康保険改正の中にも出ていないということです。あなたは、しからばそういう場合に、
薬剤師は損をして下さいと全国の
薬剤師に言えますか、そういうことを言えるならいい。これは一例としてグレランを例に引きましたが、グレランばかりではないのです。これは全国の薬店が百錠のグレランを全部買わなければ、六円二十五銭の
薬価ではやれないということです。それをもし十錠のものを買えば八円です。だからこういう点をあなたは全国の薬店に、損をしたら補償しようというだけの施策を、これだけのことをやろうとすれば、お持ちだろうと思う。これは盲点になっているかしれないけれ
ども、重大な点です。こういう点が、これを
実施するならば医療内容が急激に低下をして、一切のしわがか弱い被
保険者諸君にかかるという具体的な理由です。こういう微妙な点を
大臣も
一つよくお
考えにならなければいかぬと思う。これは単にもののやりとりではない。これはとうふ屋に行ったが、とうふが少し腐っておったというようなものではないのです。日々弱い病人というものを対象として行われる
現実であるということを無視してはいかぬと思う。あなた方にこういう矛盾を快刀乱麻のごとくうまくさばき得る方法があれば、私はこの機会を通じて全国の
保険医なり、
薬剤師なりあるいは被
保険者に宣明をしてもらいたいと思います。