運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1956-03-28 第24回国会 衆議院 社会労働委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月二十八日(水曜日)    午前十一時四分開議  出席委員    委員長 佐々木秀世君    理事 大坪 保雄君 理事 中川 俊思君    理事 野澤 清人君 理事 藤本 捨助君    理事 岡  良一君 理事 滝井 義高君       植村 武一君    小川 半次君       大橋 武夫君    加藤鐐五郎君       亀山 孝一君    草野一郎平君       久野 忠治君    熊谷 憲一君       小島 徹三君    小林  郁君       田中 正巳君    田子 一民君       仲川房次郎君    中村三之丞君       林   博君    八田 貞義君       古川 丈吉君    亘  四郎君       阿部 五郎君    岡本 隆一君       栗原 俊夫君    堂森 芳夫君       長谷川 保君    八木 一男君       柳田 秀一君    中原 健次君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 小林 英三君  出席政府委員         厚生政務次官  山下 春江君         厚 生 技 官         (医務局長)  曽田 長宗君         厚生事務官         (薬務局長)  森本  潔君         厚生事務官         (保険局長)  高田 正巳君  委員外出席者         厚生事務官         (保険局健康保         険課長)    小沢 辰男君         厚 生 技 官         (保険局医療課         長)      館林 宣夫君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 三月二十七日  委員亀山孝一君及び田子一民辞任につき、そ  の補欠として淺香忠雄君及び前田房之助君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員淺香忠雄君及び前田房之助辞任につき、  その補欠として亀山孝一君及び田子一民君が議  長の指名委員に選任された。 同月二十八日  委員中山マサ辞任につき、その補欠として古  川丈吉君が議長の指名委員に選任された。     ————————————— 三月二十六日  国民健康保険法の一部を改正する法律案岡良  一君外二十五名提出衆法第二六号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出第七八号)  厚生年金保険法の一部を改正する法律案内閣  提出第七九号)  船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第八五号)     —————————————
  2. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 これより会議を開きます。  内閣提出健康保険法等の一部を改正する法律案厚生年金保険法の一部を改正する法律案及び船員保険法の一部を改正する法律案の三法案を一括議題とし、審査を進めます。質疑を続行いたします。滝井義高君。
  3. 滝井義高

    滝井委員 大臣にお尋ねしますが、暫定案はすでに告示されたものでしょうかどうか、それをまず先に御答弁願って、それから入りたいと思います。
  4. 小林英三

    小林国務大臣 二十七日付をもちまして告示をいたしました。
  5. 滝井義高

    滝井委員 そういう点はまた再び国会軽視に私はなると思うのです。少くともまだ私なんかは質問の続行中なんです。そもそも調剤料だけを質問をして、まだわれわれはこれでどうだという結論を出さないうちにやる、こういうことはどうも——自分の方の都合でするときにはだんだんと延ばしていく。しかも自分の方でまとまったらそれを勝手にやっていく。もしあなた方が今後そういう態度をおとりになるということになれば、われわれ野党としても今後政府には何も協力ができないということになる。少くとも私は質疑が進行中なんです。何もきょう一日待って、二十八日まで待っても、事態はそう急迫するものではないと思う。厚生省の今度とっている次官通牒その他は、すでにきょうも新聞に出ているように、理事自身声明をしているように、そういう事態に油をそそぐものだと言っている。この点は、大臣告示をされたということになれば、私はそれ以上のことはここでは申しません。これは今後の厚生行政を遂行する上に何ら国会の意思を尊重せずして、厚生省はやっていくものであるという一つの大きな具体的な証拠になったという点だけを一応申し述べておきます。  そこでこれは大臣、専門的になるから御答弁できないかと思いますが、暫定案における麻薬加算の問題です。大体現行においては薬剤師麻薬調剤した場合には二円、医師は一点です。ところがこれが今回の暫定案では医師は〇・二点、薬剤師は二円になった。今まで一点やっておったのにどうしてこれが〇・二点、すなわちこれをお金に直せば二円三十銭、乙地、それから甲地二円五十銭ということになったか。約五分の一に下ってしまった。こういう麻薬というようなきわめて大事な薬の調剤がどうして五分の一に切り下げられなければならなかったか。その具体的な根拠をお示し願いたい。
  6. 高田正巳

    高田(正)政府委員 医師麻薬調剤をされました場合には、調剤料の注に書いてあります〇・二点と、それから三枚目の半ぺらの紙に書いてあります、麻薬または毒薬を処方したる場合は一処方につき処方調剤料〇・八点という加算と、両方加えますので、一点の加算になるわけでございます。従来と同じでございます。
  7. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、医師自分の家で麻薬調剤した場合には、普通薬点数にプラスの一点ということになると了解して差しつかえありませんか。
  8. 高田正巳

    高田(正)政府委員 さようでございます。
  9. 滝井義高

    滝井委員 その通りだそうでございます。そこで次にお尋ねしますが、この調剤料やあるいは麻薬加算等を見てもおわかりのように、医師薬剤師とをなぜ支払いを一本にすることができないかということです。一方はお金で行き、一方は点数で行っている。今後薬剤師諸君医療機関の中に完全に融合一体化していく、一つの広義の医療担当機関になるわけなんです。   〔委員長退席藤本委員長代理着席〕 そうしますと一方はお金でいき、一方は点数でいくということになりますならば、これは明らかに審査事務からいってもあるいは基金事務からいっても大へんなことなのです。おそらくこういうことを私は基金では四月一日からやれないと思う。私は基金でいろいろ地方の状態を聞いてみましたが、これはとても不可能だと言っております。先日私が処方せん局長にお示ししましたら、薬剤師が一々処方を書くということも局長自身御存じなかったように、まず局長なんか下部の事務機構というものをよく見なければいかぬ。とてもこれでは、こういうように一方の機関からはお金で出て、一方からは点数で出ている、しかもそれには一部負担が加わっている、こういう点は基金事務をきわめて不可能にしている、私はこれはおそらく基金の人をここに呼んで聞いてみてもできぬと言うだろうと思う。前の局長であった久下さんを呼んで聞いてみても不可能だと言うはずです。これはとても大へんです。人間を少くとも六、七百人増してもらわなければできませんというのが基金の実情だと思います。これはもう四月一日ですよ、四月一日からさっそく実施をして、少くとももう五月の五日には基金にこれの審査が殺到していくのです。そうするとそれから一カ月の後には支払いを開始しなければならぬという、こういう事態になったときに、これはとても不可能です。しかも今申したように医師薬剤師とが、一方はお金で一方は点数でやる、こういうことはもうこの際やめなければならぬことだと思う。たといこれが暫定案であってもやめなければならぬことだと思うのです。現在やっている健康保険でも、現実片一方お金片一方点数であるところから、薬剤師諸君はこれを一本化してくれ、医者のものと薬剤師のものとを一本化して、同じようにしてくれという要求が非常に強いのです。こういう点から私はどうしても納得がいかないのです。そこでまず第一になぜこれを一本化できないのか、点数なら点数お金ならお金でできないのかということ、第二番目にこれで基金事務処理が可能かどうかということです。
  10. 高田正巳

    高田(正)政府委員 医師にお支払いをする場合と薬剤師にお支払いする場合とを一本にした方がいいのじゃないかという、こういう滝井先生の御趣旨でございますが、これはごもっともな御趣旨だと存じます。ただ医師薬剤師とを一本にすると申しますよりは・医師のお支払いの中に、他は全部点数で支払うわけでございますから、その中に金がまぎれ込んできますとこれは事務が非常に複雑になる。それから薬剤師の方も同様でございまして、点数と金との両方でやるということが一番事務的にめんどうなことであるのであります。そこでこの際医師は他の支払いがすべて点数でございますので、それで点数で表現をいたしたわけでございます。その方がむしろ医師事務というものが非常に簡単になるし、また基金事務もその方が簡単である。薬剤師の方は薬価が金で支払われることになりますし、従ってその関係から調剤料だけを点数にいたしますと、これも医師と同じような煩雑な問題が起ってくるという関係から、実はかようにしたわけでございます。なおまた薬剤師の方につきましては、現行点数表につきましても調剤料薬価も金で払うという形になっておりますので、それを踏襲をいたしたようなわけでございます。ただ将来の基本的な点数改正の問題としましては、この点につきましては今後十分検討をいたすべきものだと私ども考えております。できれば両方同じような格好にいたしたい、かような考えをいたしておりますので、今の滝井先生の御指摘はごもっともな御指摘と存じますが、将来の基本的な改正に当りましてはその辺も検討をいたしたい、かように考えております。  なお基金事務でございますが、若干この事務が増加するということはやむを得ないことでありますが、しかしこれは必ずしもこの点数表改正によって事務が増加するということではないのでございまして、いわゆる分業になって薬局の方からも請求書が出てくる、医師薬局両方から出てくるという、分業による事務量の増加ということに帰着するかと思うのであります。従いまして基金としましては相当骨の折れることだと存じますけれども基金事務処理が不可能であるというところまでは私ども考えておりません。基金としましては、新しい医薬制度に即して若干の事務量が増加しても、それに対して大いに努力をしてこれを処理すべきものである、かように考えておるわけでございます。
  11. 滝井義高

    滝井委員 分業によって基金事務量が増加することはもちろんでございます。分業関係なくても、今回の健康保険法の一部負担によっても飛躍的に増加する。一部負担だけでも五、六百人は増加するというのは、久下さんあたりが言っておるところです。私はいずれあと基金の問題について具体的に質問に入りますが、これだけでも五、六百人は増加する。そうしますとそれに分業がいくのですから、とても今のものではできません。そこでそれに今度は基金の人員をふやすということになれば、これは貴重な被保険者から出した保険料基金が食うのです。私はここに問題があると思う。たとえば昨日医師の総辞退について健康保険中央会とかあるいは健康保険組合とかいろいろ反対声明を出しましたが、それらの団体がだんだん多くなっていくということは保険料を食うところの虫が多くなることを意味する。いろいろな団体ができて、健康保険のなけなしの金を食っていく。基金が少くとも一枚の健康保険請求書の中から十二円五十銭とか十三円とかとっておる、一点だけとっておる、こういうところにメスを加えなければならぬ。しかもその中には、これはあなた方の前で言うのはお気の毒ですけれども、みな厚生省役人か銀行の古手が入っているじゃありませんか。しかもそれらの連中が保険医がどうしたこうしたといばった顔で言っておる。むしろそういうものを少くすることが現在の健康保険の会計の赤字を埋める最も大事なところです。保険局長であった人が基金理事にすわって何万円の金をとっておるということが合理的でしょうか、こういうことの方が不合理だ。あるいは健康保険連合会に元の内務省の古手が入っていってやるというようなこと——この前も岡本君が言いましたが、何々委員会というものを見ると、同じ人が五つも六つも委員をやっておる。みんな厚生省役人を卒業した人で、しかもそれも何々屋さんなんだ。いわゆる委員会屋さんになって牛耳っておるという、こういう姿、しかもそれが七万も八万も給料をとっておる。こういう事態は明らかにメスを入れなければならぬ。いずれ私は基金製薬業と同じようにメスを入れますが、今度の健康保険改正で一部負担がつくことによって、あるいは今申しますように薬剤師諸君の出す請求書お金であり、医師の出すものが点数であるということのために・基金事務は飛躍的に増加します。いずれこれはあとで私は具体的に基金の予算をやる場合にやりますが、これは明らかなんです。そこでこの際せっかく暫定案を作るなら、何もむずかしいことはない、薬剤師諸君のこの麻薬加算二円というようなものを医師と同じように〇・二点にして、薬価についても点数にしたらいい。薬価原価計算にするために、薬剤師の今後の保険請求書は、もう月末になったら大へんになるのです。そういう警告だけを一応発しておきます。  そこで次に移りますが、次は処方薬剤料という新語をなぜ作るかということです。こういうことをやらなくても、一昨日の委員会でございましたか、あなた方は紙芝居のようなものを示した、何もああいうことをしなくても、薬価調剤料処方せん料、こうやったらいいじゃないですか、こんなわからない処方薬剤料というような新語を作って、そしてますます混迷に陥れる。そんな必要はない。薬価というものは平均価格でいくのならいくと、こうやったらいい。そうしてしかもそれには処方せん料を一点加えるなら加える、あるいは調剤技術料というものは〇・五点であると、こういう工合にぴしっと出したらいい。こんなむずかしいやり方をする必要は少しもない。そこでお尋ねしますが、処方薬剤料という新語をお作りになっておって、しかもその場合に甲地乙地が同じようになっているということです。少くとも新医療費体系の精神なりあなた方の今までの考え方からいけば、甲地乙地というものは薬が違う、薬価基準においてみても、甲地乙地の薬の購入価格というものは違うはずなのです。購入価格が違うのに同じような一・七点というのは一体どういうことなのですか。
  12. 高田正巳

    高田(正)政府委員 この甲地乙地と申しますのは、十一円五十銭、十二円五十銭の単価甲地乙地でございます。今先生が御指摘になりました薬価基準の方は、今までは甲地乙地がございましたが、これはむしろ逆で、大都市の方が安い甲地乙地でございます。
  13. 滝井義高

    滝井委員 それを一緒にしておくのはおかしいじゃないですか。
  14. 高田正巳

    高田(正)政府委員 そこで薬の点につきましては、甲地乙地をなべて平均価格を出しまして、そうして十一円五十銭と十二円五十銭の甲地乙地につきましては、それらの価格単価で割った数字がここに並んでおるわけでございます。そこでこの最初の十五円以下のものが甲地乙地が一・七点というふうに同点数になっておりまして、三十円、四十五円、それより高いものはそれぞれ点数が違っておりますが、これは端数整理関係でかようになったわけでございます。
  15. 滝井義高

    滝井委員 あなた方が新体系を出したときには、甲地は〇・七点、乙地は〇・八点にしてきているはずなのです。しかもあなた方の方は平均をとっているのですよ。平均をとって甲地は〇・七点、乙地は〇・八点であったはずなのです。ところが今度のときは一緒にして〇・七、〇・七にしてきている、おかしいじゃないですか。
  16. 館林宣夫

    館林説明員 先般お配りいたしました新点数表におきます〇・七と〇・八は、〇・八の方は誤植でございまして、〇・七が正しいのでありまして、これは端数計算薬価八円二十一銭を十二円五十銭で割りますと〇・六五になるわけでございます。それから十一円五十銭で割りますと〇・七一になりますので、四捨五入計算をいたしまして〇・七となっております。
  17. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、われわれの手元にもらったものは〇・八になっているが、それは誤まりであったというわけですね。誤植であったならばそれでよろしいとして、それならば一体今までのいわゆる薬治料二点というものを調剤技術料薬価といわば処方せん料と、こういうように三つに分けた形になったのですが、今までの五点の処方せん料はどこに消えたのですか。
  18. 高田正巳

    高田(正)政府委員 今までの処方せん料は、処方料というよりは文書料という形で、証明書を出すとかなんとかいう場合の文書料と同じような形でこれが設けられておったわけであります。しかもこの処方せん料というものは、現実処方せんがほとんど出ておりませんので、これが現実に動いていなかったということも御存じ通りでございます。今回の建前で参りますと、処方薬剤料が十五円以下の場合には一点、三十円以下の場合には一・五点、ずっと高くなりますと八点くらいになるわけでございますが、これにその処方の内容の日数がかけられますので、日数によりましては、あるいは薬の金額によりましては、二十点にも三十点にもなるわけでございます。そういうふうなことで、これが外に出たときには処方薬剤料という形で、処方せん文書料ではございませんけれども、そういう形でお医者様に残るわけでございますので、言ってみれば、従来の処方せん料というものがそういう形に変ってきたとも見られるわけでございますので、文書料としての処方せん料というものは廃止をした、こういうことになるわけでございます。
  19. 滝井義高

    滝井委員 それはあなた方が勝手に廃止されたのであって、今まであった処方せん料というものを廃止する理論的な根拠というものは今のような御説明では出ない。これは現実にあった潜在技術料を一点という形で出しきている。この潜在技術料は、入っては潜在技術料になり、出ては処方せん料になるのです。そうでしょう。入った場合、いわゆる病院の中でやる場合は潜在技術料なのです。出ては処方せん料すなわち文書料になるのです。今までの五点というものは、あなた方は文書料考えておったかもしれないが、全国の医師諸君は、あれは明らかに技術料的な処方せん料だと考えておる。その技術料がどこかに消えちゃって、そうして今まであった潜在技術料というものが、出ては文書料である処方せん料になるというのは筋が通らない。だからこの五点というものをあなた方が抹殺するについては、抹殺する理論的な根拠を与えておかないと、これは将来医療費体系をわれわれが審議する上においてきわめて重大な影響を及ぼしてくる。これが既得権になる。そういう点をもっと明白にしてもらわなければいけないということなのです。もう少し明白に説明して下さい。
  20. 高田正巳

    高田(正)政府委員 この今井試案は、お配りをいたしました答申書の中にも書いてございまするように、一応四つの原則といいますか、柱といいますか、そういうふうなものを満たすもので作るべしということとが、全員一致の御意見として立てられておるわけでございます。その中に、患者医師調剤を求めた場合にも薬剤師調剤を求めた場合にも、患者の側から見たならばお支払いをする医療費に相違がないという原則一つございます。かりにこういう分け方をいたしまして、さらに文書料である処方せん料というものをつけますと、薬局に行った場合にはそれだけこぶがつくわけでございます。従いまして患者の側から見ますれば、処方せんをいただいて薬局に行った場合にはそれだけ支払いが多くなるという結果になるわけでございます。さような観点から単なる文書料としての従来の処方せん料というものは、その意味からもこの原則に触れて参りまするので削られた、かように私は考える次第でございます。
  21. 滝井義高

    滝井委員 処方せん料が消えたことについては納得ができませんので、納得ができないということにとどめておきます。そしていずれ新しい医療費体系ができたときにもう一回この亡霊は迷い出てくるということを御記憶願っておきます。  その次は処方せん値段なのですが、これが薬の値段が違うに従って違っておる。こういう奇想天外な思想をあなた方は平気でおのみになっておる。私はこの思想というものは保険医療機関保険医の二重指定と同じような奇想天外な思想だと思っておる。なぜこれがあなた方得意のお家芸で最高が八点で最低が一点なら、一と八と足して、どうして四・五点にしないのですか。これはお得意なわけじゃありませんか。四・五点にしたらいいじゃありませんか。薬の値段が上るにつれて処方せん値段が上るということになれば、これは大へんなことになりますよ。なぜならば、よそ行き処方になってしまう。自分のうちでやる薬というものは、最小限度の経費で患者にいいものをやるかもしれぬが、よそ行き処方については、これは大へんなものになる。アメリカ自体においても、分業が行われても、その処方というものは第一流メーカーの作った薬の処方というものが必ず出ておる。たとへば日本でいえばビタミンと書いて、これは武田製薬ビタミンでなければならぬということになる。これは薬屋さんの場合でも同じです。薬屋さんはいろいろビタミンをそろえて売っております。ところがその場合に、たとえばAという会社から出ておるビタミンを売っておっても、これはどうしても武田ビタミンでなければならぬということになると、武田ビタミンでなければ患者さんは買わない。だからどこの薬局でも武田の製品というものはそろえておかなければならぬ、——これはあとで具体的な例を示しますが、あなた方が保険経済のことばかり考えておりますのは、森を見て山を見ざる考えなんです。今度は一点の処方というものは絶対出ない。私は今から太鼓判を押しておく。必ずこれは三点、四点という処方になってしまう。その場合に保険経済の上に——あなた方は、おそらく現実においては十五円以下の薬が六割か七割出ておるから、一点にしておけば大丈夫だ、そうすれば算術計算が合うという、そういう目先だけの考えを持っておるけれども、出ていく処方というものは、高貴薬ばかりが出ていきますよ。そうしてその処方せん料というものがウナギ登りに上っていくということは、火を見るより明らかだ。それならば、今からでもおそくはないから、一と八を足して四・五にした方が早い。あるいは四点にした方がいい。三点にした方がいい。大臣、この問題は局長の答弁の段階ではないのです。こういうように、これはきわめて重大なことになんです。私をして言わしめれば、この暫定案の一番の欠陥は、平均薬価をとっておること、〇・七点という医療費体系思想を、すでにここに持ってきておるということ、これが暫定案一つの特色である。これはあなた方の見方からすれば特徴かもしれませんが、私たち医療費体系というものを現在納得できない者にとっては、これは非常に重大な点なんです。第二に重大な点は、処方せんの問題です。これが値段が上るにつれて処方せん料が八点にまで上るということです。この点はきわめて保険経済に重大な影響を及ぼす点なんです。しかも現在の五点というものを、さいぜん私は一応亡霊として残しておきましたが、これを切ってしまっておるということなんです。しかも八点というものは、現在の薬価の中に入っておる技術料というものを出してきての八点です。だからこれは重大なんです。大臣、どうですかね。告示をされても、まだ取り消す時間的な余裕は十分あるのです。そこで処方せんについては、薬の値段が上るにつれて上るというような処方せん料のとり方をすると、この一点でも医薬分業の円滑なる実施に重大なる支障を来たすと私は見ております。そこで、この点について一つ大臣の御見解をお伺しておきたいと思います。
  22. 高田正巳

    高田(正)政府委員 お答えをいたします。滝井先生の今の御質問は、全くごもっともな御質問だと私も考えます。従いまして、私ども考えております基本的な点数表改正におきましては、潜在技術料の方も、これは処方せん料文書料として一点つけておりますが、その方もこれは平均的な考え方をしております。すなわち安い薬を処方なさった場合にも、高い薬を処方なさった場合にも、基本的な点数ではこれが診察料になっておりまして、この暫定案のように処方料というような形では載っておりませんけれども、診察料に繰り入れてありますけれども、その診察料は平均的な診察料になっておるわけでございます。従いまして今の先生の御質問は、御趣旨まことにごもっともで、その点は私どもも、この暫定案につきましての不合理なものの一カ所だと考えております。ただこの暫定案をやむを得ないと考えましたのは、滝井先生御存じのように、現行の制度がそうなっておるのでございます。現行制度が高い薬を盛れば盛るほど医者潜在技術料が大きいという形になっております。その現行制度をあまりこわしたくない。これは暫定案でありますから、なるべく現行制度に近いところに持っていきたいということで、試案を作られました公益委員の方が各団体といろいろと下話をされまして、そうしてあまり現行制度をこわしたくないというところで、こういう案が出て参りましたのでございますので、私どもは理論的には確かに今先生指摘通りの不合理がございまするけれども、この答申案が出て参りました経緯を尊重いたしまして、暫定案といたしましてはやむを得ない、こういう考え方をいたしておるのでございます。ただこのきめ方は、高い薬を盛れば盛るほど潜在技術料が多いという現行の傾斜よりは、やや傾斜がなだらかになっております。従って安い薬を盛られた場合の方が若干処方料が大きくなるというような現行の傾斜よりは、少し傾斜がなだらかになっております。その点に非常な試案作成に至りますまでの経緯といろいろな配慮があるものと私ども考えまして、先ほど申し上げましたように、あまり現行制度と隔たったことを一時に暫定案で行うということは、別の意味でいろいろ問題がございますので、理屈としては先生のおっしゃった通りであるけれども、実情に即した案としましてこれを受け入れた次第でございます。  なお平均薬価のことについて御質問がございましたが、滝井先生の御趣旨はどういうことであるか、平均薬価で払うのはまずいから、そのものずばりの価格でもって払えという御趣旨であるとしますれば、これは先ほど来先生の御質問になっておる、事務が非常に複雑になって参るわけでございます。それぞれの薬の価格そのものずばりで払うということになりますと、盛ります処方の内容によって非常に異なってくる。これに一つ一つ計算をしなければねらぬ。これは一昨年の新医療費体系に基く点数表思想がそうなっておりましたが、それでは非常に事務が複雑になって参りまして、お医者さんも非常にお困りになるということで、平均単価を払うというふうな考え方を、基本的な点数表の方でもいたしております。それをこの暫定案にも取り入れておる、こういうことでございます。
  23. 八田貞義

    ○八田委員 今の質問に関連しまして、今、現状に沿うような制度を打ち立てるために、薬価にスライドした処方料というものを作ったんだ、こう言われたのでありますが、しからばどのような現状分析をされたか、項目別にあげてもらいたい。どのような現状分析をして薬価にスライドすることが正しいとお考えになったか、その現状分析の内容について御答弁を願いたい。
  24. 高田正巳

    高田(正)政府委員 八田先生の御質問をあるいは取り違えてお答えするかもしれませんが、私現状と申しましたのは、御存じのように現行薬治料のきめ方は、薬の原価が十五円以下の場合は二点、十五円から三十円までは四点、それから上の十五円は六点というふうに参ります。そういたしますと、二点ということは甲地で言えば二十五円であります。それから四点ということは五十円であります。その上は七十五円、そういう刻み方になっております。そういたしまして、十五円以下の薬の平均価格を加重平均してとりまして、調剤料をのけますと、あと潜在技術料というものが残ってくるわけであります。それから四点の薬、すなわち十五円から三十円までの薬の平均価格というものも出ております。それを引いて、調剤料を引きますと、潜在技術料というものが残ってくるわけであります。ずっとそういう分析をしてみますと、高い薬になればなるほど潜在技術料も大きいというしかけに今のしかけはなっておるわけでございます。それが現状である、それをはなはだしく、一時に、しかも暫定案で変えるようなことはどうであろうかという、いろいろ暫定案が生まれますまでの経緯から申しまして、あまりその現状は動かしたくない、ただ現状よりは若干下の方が上って上の方が下ったように、若干カーブが変っておりますけれども、それは端数整理関係等でお医者様に残ります処方薬剤料をまるく一点とか一・五点とかいうふうにいたしましたために、結果的に価格が若干下っておるということになるわけでございます。そういう意味で、現状とあまり隔たりのないようなことになっておるのだ、今滝井先生が御指摘の理屈は、理屈としては確かに理があるということを御答弁申し上げたわけでございます。
  25. 八田貞義

    ○八田委員 私の質問の仕方が悪かったかと思いますが、私の質問しているのは、現状の薬治料支払い方についてお伺いしているのじゃないのです。今あなたは、現状に沿うと言ったが、薬治料の払い方についての方針をお話しになったのです。私は、ただその方針に従って、一体現状はどのようになっているか、その分析を伺っているのです。ですからこういうような質問をしなければならぬ。具体的に申しますと、たとえば現在の処方せんの発行高はどれくらいあるか、そういう調査がなければならぬ。さらにまた、治療日数が幾らと計算されての現状分析か、そういったものも基礎としなければならぬ。さらにまた、この暫定案によってどれくらいの処方せんが発行されると推定するかということであります。こういうようなことについてあなたに一々こまかい点を聞きたいのでありますが、関連質問でありますから、ただこういうような分析を基礎としてやらなければ——あなたが今お話しになったのはただ単に方針だけのことであって、現状分析とはならないのです。その点で厚生行政の判断とか、保険行政の判断とか、すべての判断というものは実地についてはっきりとした判断をしようとしなければだめなんだ。あなた方が上の方にあって、方針だけの説明で、それで現状分析だというならば、非常に実際と離れている、こういうことを私は言っているのであります。  しからば最後の一点をしぼって、この暫定案処方料一点という計算は、一体これでもってどれくらい処方せんの発行が起るか。また現在でもいいですが、現在一体十五円以下の薬を処方されているのはどれくらいあるか、パーセントでいいからちょっと御答弁願いたい。
  26. 館林宣夫

    館林説明員 現在医師の手元で投薬されてある場合も含めまして、十五円以下の処分が行われる回数はおおむね七、八割程度でございます。
  27. 八田貞義

    ○八田委員 そこで私は申し上げたい。もしも十五円以下の処方が七割くらい行われている場合には、それはちょっと問題がありますよ。滝井委員はこう言っている。このような七割の頻度がある、だからこれを基礎にして総医療費のワクに変化がないというようなことが計画された、こう言っている。そうなりますと、よそ行き処方せんが使われているということはそこに意味があるのですよ。あなた方がそのような考えで律していった場合に、国民処方というものについてどういうふうにお考えになっているかをさらに追及しなければならなくなってくる。薬局に国民処方というものがある。その国民処方にあげられているところの調剤料、薬剤料は一体全部で幾らになりますか。国民処方のいろいろな処方せんの中で十五円の薬剤を使ったものは何種類ありますか。三十円以下の薬剤を使った場合は何種類ありますか。そういったような分析をやっておりますか。お答えができないでしょう。
  28. 高田正巳

    高田(正)政府委員 八田先生が御指摘になっておりますところの国民処方と仰せられているのは、国民医薬品集の第二部のことだと思います。これが俗に国民処方といわれておりますが、先生御存じのように国民医薬品集の第二部というものは廃止されまして、今日ではございません。さようなことでございます。
  29. 八田貞義

    ○八田委員 それは制度の中にはありませんけれども、現在生きている。ですから、あなた方が国民処方的な考え暫定案を律するということは非常な間違いだと私は言うのです。そこによそ行き処方せんがどうしてもできてくるのです。この点については、関連質問であるからこれくらいにしますが、そういう点について現状分析というものを真剣になってやらないと非常な混乱を起してくるということを、私はあなた方にここで申し上げておきます。
  30. 滝井義高

    滝井委員 そこで、今までは処方せんが大して出なかったのですが、日本の病院の現状から考えて、いよいよ四月一日から病院からは相当の処方せんが出ると実は私は見ております。あなた方も、分業になったら十五点ぐらいは出るとお考えになっているということを聞き及んでおりますが、私は、都会地においてはそれ以上出るであろうと考えている。公的医療機関保険医の総辞退に関してすでに声明を発したように、現在の公的医療機関は、その人的な状態においても施設の状態においても、もはや超満員です。医療従業員にあの低賃金のベースでこれ以上医療をやらせるということはほとんど不可能である。従ってどんどん出ていきます。これは確実です。これは一部負担とも関係しますが、実は東京のある病院でこういうことが起った。そのことを一カ月くらい前の朝日か毎日の新聞に投書しておるのを御披露しておきますが、それは、自分の子供が病気で朝早く病院に行った、見てみたところが、九時であるのに受付は超満員であった、長い行列を作ってようやく医療券をもらって小児科に行った、そこで診察が終って、さて金を払おうと思ってまた受付に帰ってみたら、ここはまだ超満員である、きょうは金を払わずに帰ろうと思って金を払わずに帰ったが、だれ一人としてとがめる者がない、だから病院の廊下は普通の道路と同じだ、往来と同じだ、この受付の混乱を少くとも大病院というものは何とかしてもらわなければ、病人を背負った母親は大へんだという、こういう意味の投書があった。半額を払う家族だけでこの現状だ。これに今度は本人が十円、二十円、三十円の一部負担を払うにおいては、この病院の受付というものは大へんです。従ってもはや今度は、処方せんをもらって薬局の窓口で作ってもらうよりか、外の薬局に行った方がいいというので、どんどん薬局に行きます。これは確実です。私はそういう見通しを持っておる。そこでこれは幸い医務局長さんがおいでになりましたからお尋ねしますが、あなた方の主張というものは、今まで処方せん料というものをやるべきでないという主張でございました。ところが途中から思想転換をして、処方せん料は一点をやろうというのが新医療費体系の精神になりました。ところがその一点をやった思想というものは、院内処方には処方せん料は出さない、院外だけだというのがあなた方の御主張であったわけです。ところが今回は、院内外を通じて処方せん料を認めたということですね。これは実質的にそうなる。こういう点は、私は厚生省は少くとも主体的な、日本の医療行政に対して一つの識見を持っておられるならば、一貫した主張を持っておられるならば、医療協議会がどんな答申を出しても、これは厚生省独自の立場で曲直理非を判断して施行しなければならぬ、またそれが大臣の一貫せられた答弁であったはずです。すでに院内外にわたって処方せん料を認めておるという点、この点は、厚生省というものが今までの主張を大きく変えておるということなんです。医療費体系において、その医療費体系の本来の精神を貫くことがなく、中途半端な医療費体系を作り、しかもその作った医療費体系というものは、少くとも厚生省が全力をあげて作った最良のものであると言明をしておられたが、いつの間にかこれをたな上げをし、しかも出てきた暫定案というものは、不合理性があるのを認めておりながら、その不合理性さえも主体的に修正することができない。あるいは処方せん料についても、院の内外を通じて認めるという醜態をさらけ出しておるということなんです。一体厚生省は、厚生行政をやる主体的な力というものを持っておるのか。しかも健康保険法というものを出しておって、与党の内部から修正をやろうという動きが起っておるということ自体、一体厚生大臣は、ほんとうに厚生行政というものを推進しようとする熱意と政治力とをお持ちなんですか。私はこういう点について、厚生行政はわからないのです。大体、厚生省は何をやろうとしておるのかわかりません。これでは日本の医療機関が混乱に陥る。しかもその医療機関から診療を受けようとする全国の八千九百万の国民が、厚生省はたよりにならない、どうしたらいいんだという混迷の中に陥ることは、理の当然ではありませんか。私たち国会議員がそういうわからない状態なんです。厚生省は端促すべからざるものを持っておる。どういう方向をやるのか、まさに大海の中に漂っている小舟みたいな状態じゃありませんか、厚生行政はこれではいけないと私は思う。そこで、幸い暫定案も強行告示をされたらしいので、ここらあたりで厚生省は立ち直ってもし健康保険法改正が悪いというのならば、御撤回を願って、与党と話し合っていいものを作ってお出しなさい。そのときそのとき、行き当りばったりの政治というものは、少くとも政局安定を願い、絶対多数を持っておる政党のとるべき態度ではない。少くとも厚生大臣は政党内閣大臣のはずなんだ。しかもその政党内閣大臣が、そのとき——少数党の内閣ならそういうことはあり得ます。しかし過半数を占めておる大臣としては、私はどうも納得がいかない。これは余談にわたりましたが、処方せん料が院の内外にわたって出る姿というものはどうしてそうなったのか、これは医務局長がおいでになっておるので、一つ御答弁を願いたい。
  31. 曽田長宗

    ○曽田政府委員 処方せん料を出したらどうかということに対しまして、私どもは従来処方せん料というものは認めたくないということを主張いたしておったのであります。それが昨年の暮れにお示しいたしました点数表の中には、外に処方せんが出ますときに一点支払うとの建前をとったのがけしからぬというような御意向でございますが、私どもとしては、この一点は、外に出ます処方せんは、院内で使いますものよりもより手数のかかるということを予想いたしておりまして——ほかにも多少の理由がございますが、大体そういうことを主としまして、特別に手間や経費がよけいかかるというところから、この一点を特に認めようという考え方にしたわけでございます。今回の暫定案と申しますのは、これは再々厚生大臣あるいは保険局長からお話がございましたように、私どもとしてはこの暫定案は、私どもが原案として出しましたものよりも一そう不完全なものであるというふうに考えておるのであります。しかしこの私どもの原案の御審議が十分に結論に到達していない今日、またその早急な見通しがつかないというような状況下におきましては、何とかその筋とか理屈とかだけではなしに、さしあたりの事態に応ずる暫定措置としていかような措置をとるがいいかということを、関係の方々がお集まりになって、協議会で御相談になったのであります。ここでもってまず暫定案としてこれでいこうということを皆様方が御賛成になったものであるならば、私どもとしましては、必ずしも理論的に御賛成申し上げるという意味でなくとも、しばらくの間の仕事を何とか進めていくという限りにおいて、さらにこれに手を加えるというようなことまではしなくてもよいのではなかろうか、こういう考え方から、いわゆるこの処方せんという形で御答申がありましたものに一応従おうということに考えた次第でございます。決して理論的にこれが正しいというふうに考えた意味ではございません。
  32. 滝井義高

    滝井委員 まあこの不合理は認められました。そうしますと、関係者が寄って相談をされて、その多数の者がよろしいといったら、今後は不合理なものでも何でも認めるということになりますと、健康保険法なんというものは、医療担当者も被保険者も、——事業主の一部だけは賛成しておるのですが、数は反対している方が多いわけです。御相談になって、反対ということになったらこれは撤回しますか。今のような論理からいきますれば、不合理であろうと何であろうと、保険経済が赤字になろうと何であろうと、そういう人たちがみな反対するものはみな撤回することになりますよ。それ以上私は言いますまい。  これは大臣にお尋ねすることになるが、もはや暫定案告示されたそうでございますが、告示をされたということになれば、暫定案と予算の関係が出てきます。残念なことには予算は昨日通過しました。通過したけれども、われわれは予算委員会の開会を要求いたしておりますから、いずれ予算委員会が開かれればそこでやることになると思いますが、開会されないと困るので、ここで一つ大臣にお尋ねしておかなければならぬ。暫定案で予算にどういう変化が起ってくるか。
  33. 小林英三

    小林国務大臣 別に変化はないと考えます。
  34. 滝井義高

    滝井委員 大臣、それは変化がないことはないのです。それならちょっと方向を変えますが、あなたの方は結核予防法、生活保護法というものは全部新点数で組んでおります。一番新点数影響を受けたのは結核予防法です。結核予防法はパス、マイシンあるいは外科手術、入院、一切これを新点数でことしの予算は組んでいるはずです。今までの新体系でいけば、パス等の抗生物質は原価計算でいきます。ところが今度のは、薬価の中に依然として潜在技術料というものが入っておる形でいきます。だから今まではストレプトマイシンを注射すれば十八点でございました。ところが今度はこれが違ってくる。この暫定案でいけば違ってくる。だから明らかに結核予防法においては、入院においても点数が違ってきました。手術においても違ってきました。全面的に変っております。結核予防法は健康保険法と密接不可分の関係にあるものなんです。日本の健康保険の赤字というものは今から結核予防法にしょってもらわなければならぬ。そういうものなんですが、そうすればこの予算というものは重大な変化を来たします。これでも来たさないというのですか。
  35. 小林英三

    小林国務大臣 先ほどから保険局長からもいろいろ御説明申し上げましたように、暫定案はあくまでも暫定案でありますが、ただこの暫定案を作成されましたときに、医療協議会において御審議願いましたそもそも最初の申し合せというものが、先般御説明申し上げましたように四つの骨がございます。その骨の第二項にも、そういう予算に変更を来たさないとともに、各社会保険及び各種医療機関医療費に極力変動を来たさないように配慮するという建前のもとに暫定案の答申を得たのであります。厚生省におきましても、この暫定案につきまして今滝井さんの御質問のようなことについて検討いたしたのでありますが、今滝井さんが非常に御心配願っているようなことはない、こういうふうに考えてこれの研究をいたしたのであります。委細につきましては事務当局から説明いたさせます。
  36. 高田正巳

    高田(正)政府委員 結核予防法の予算の組み方がどういうふうな組み方になっておりますか、私所管局長でございませんので存じておりませんけれども、私どもの方の健康保険の特別会計の予算につきましては、先生のおっしゃるように別に新点数で組んだとか旧点数で組んだとかいうふうな組み方をいたしておりません。というのは、過去の医療費の実績というものを分析して、その積み上げの上に来年の医療費を推定しておるわけでございます。従いまして、過去の医療費というものは旧点数で支払われた時代の医療費でございますので、その意味ではどっちかというとむしろ旧点数によったんだということになるかと思います。しかし私が最初申し上げたように、新点数とか旧点数とかいうことに関係なく・過去の医療費の実績というものを分析して積み上げて組んだものでございまして、この暫定案というものは、私が前回来御説明申し上げておりますように現行薬治料というものを分析してこういうふうに分けたわけでございますから、従って処方せんがどれだけ出ましょうとも、あるいは出ませんでも関係がない。処方せんの出方につきましては、分業では患者の自由意思というものが非常に尊重されておりますので、だれしも推定ができない。従って、ごらんの通りどれだけ処方せんが出ても出なくても影響がないようなしかけになっておりますので、私は予算には影響がないというように考えておる次第でございます。
  37. 滝井義高

    滝井委員 予算に影響がないと言われるが、結核予防法の予算を組む場合に基礎になっておるものは、パスを例にとれば、パス一グラムの代というものがちゃんと基礎になっておる。しかもそのパス一グラムの代というものを医療費に持っていく場合には、その原価を基礎にして、それに技術料を加え頻度を加えて積み上げていって、そして結核予防法の予算というものができてきた。しかも各都道府県においては、それに見合ったものをやはり予算に組んでおるわけです。その算定の基礎というものは、当然結核予防法における外科手術の点数とか、あるいは抗生物質の点数というものを基礎にしてできておるわけです。それで、あなた方が旧点数で組んでおるというならば変化がないかもしれません。しかし新点数というものは、一部負担というものを伴って大きな変化を与えるのです。それを具体的に言うと、この前から何回も言うように十二点というものでも、初診の十二点をとる場合と、今回のように変えないでいく場合とは非常に違ってくるのです。保険経済そのものからいっても違ってくるのです。たとえば十二点の場合ならば、東京でいえば百五十円ですから、そのうち五十円を本人が払って、百円というものは保険経済医者に支払わなければならないのです。ところが今度家族に当てはめてみると、さらに違ってくる。家族は現在初診料は四点ですから、二十五円払えば済む。しかし今度は百五十一円の半分を払わなければならぬから、払う額が多くなる。従いまして、払う額が多くなれば患者に心理的な影響を及ぼして受診率が低下してくるのだ。そればかりじゃありません。本人においても支払い額が違ってくる。たとえば本人が二日分薬をもらったとしますと、今度の点数で四・四点で五十円六十銭、それで家族は五十円六十銭の半額の二十五円三十銭を払えばいいのに、本人は五十円六十銭のうちから三十円を払う。本人の方の、支払いが家族よりは多くなる、そういうことが保険制度にあるかということなんです。薬をもらった場合に、家族より本人が多く支払う制度というものを健康保険法に作ったら大へんなことなんです。しかもそれは明らかに初診等において頻度の変化が起ってくるし、支払いの額がそういう工合に違ってくるのに、それをもって予算に変化がないという強弁をされるということはけしからぬと思います。しかも新体系では初診料四点をとっておった、今度それがなくなる、だから明らかにこれは大きな変化が起ってくる。たとえば再診をして三点をとって、そして薬を十五円以下なら〇・七点やって、そのほか調剤技術料〇・六点とる、こういうような形で計算をしてもだんだん違ってくる。今までの新体系の組み方と、暫定案でいった場合は、明らかに予算に大きな変化がある。幾らあなた方が起らぬといっても、一人の患者をとってみても起るのですから、五百万の患者が出た場合に起らぬとは絶対に言えない。しかもさいぜん申し上げましたように、処方せんというものが非常に変化を持つということになって、ますます起ってくることは確実です。その点であなた方が予算に絶対変化が起らないというなら、積み上げの基礎というものをもう一回資料として出していただいて、そうしてやりたいと思いますから、起らないという資料を明後日までに出していただきたい。
  38. 八田貞義

    ○八田委員 今滝井委員のこまかい質問に対して、積み上げ計算でそういうような予算を立てておるので、その見通しに間違いがないという答弁がありました。そうなりますと、私も関連して質問をいたしたくなる。あなた方は個々の積み上げ計算で間違いないとおっしゃるならば、まず二十九年度について伺いたい。健康保険改正の参考資料としてあなた方がお出しになった二十九年度の決算ですね、いろいろな点がありますが、一点だけ、決算については正しいというように言っておられるのであります。そうしますと、二十九年度の被保険者五百四万という数は、あとの方に示されておるところの二番目の政府管掌健康保険適用状況調べの二十九年度を見ますと、この場合には四百九十二万となっているのです。ところが二十九年度の決算には五百四万となっている。一体五百四万の数字はどこから持ってくるのですか。そうしますと昭和三十年度六月に持つてこなければならない。昭和三十年度六月には五百五万となっておりますから、これは五百四万とあまり差がないからこの点をつかんだというふうに考えられます。ところがこれに出された数字を見ると一体どこにありますか。昭和二十九年度末において四百九十二万ですよ。三十年の三月においても四百九十四万です。ところが不思議なことには、あなたが勝手に——勝手にといったら悪いかもしれないけれども、何か積算の基礎があるのでしょうけれども、五百四万に対して標準報酬月額をかけていけば保険料収入にぴたっとなってくるのです。これはマジックですよ。どうですか。これを納得のいくように——そういうとあなたは、こうです、こうですということを言いますけれども、この数字がぴたっと合うようにはっきり説明して下さい。これは表面に出た数字だけでもってこれをやっているのですよ。こういう数字を出してくるからには積算の基礎をちゃんと示してくれなければならない。こんなふうにあなた方が出してきた数字が違うじゃありませんか。前の七人委員会の報告におきましても、本文に上っている数字は一体どこからしぼってきたかわからない。あなた方のくれた統計数字が他の本文の数字と合うのだろうと思って計算してみても絶対に合わない。この数字はどこからきたかということをあなた方に質問しておる。学界におきましては、学位論文というものは引用文献のページ数が一つ違っても、この論文は価値がないと言われているのです。この七人委員会の報告は、あなた方は健康保険に対するところのバイブルだというふうに礼賛される。ところがバイブルだというふうに礼賛される本の根拠となる数字がみんなばらばらであっては信用できましょうか。しかもまたあなた方が出してこられたところのこの資料においても数字が合わない。一体私たちはどれを信じて国会で審議したらいいのでしょう。
  39. 小沢辰男

    ○小沢説明員 お手元の九十二ページの二十九年度末被保険者総数四百九十二万五千八百二十二人という数字は、二十九年度の二月の被保険者数でございます。年度末の合計と年間の平均の被保険者数とはおのずから違うわけでございます。これを今申し上げますから平均していただいて間違いがあるかどうか御検算を願いたいと思いますが、二十九年度三月末は四百九十八万八千百六十四人、四月が五百四万八千九百五十五人、五月が五百八万八千六百九人、六月が五百九万一千百二十一人、七月が五百九万八千九百五十四人、八月が五百九万五千二百五十二人、九月が五百八万九千四百七十二人、十月が五百五万二千六百三十七人、十一月が五百五万三千五百八十三人、十二月が五百五万一千九百九十三人、一月がちょっと減りまして四百九十三万四千六百五十一人、二月が四百九十二万五千八百二十二人、これを年間平均いたしますと、五百四万三千二百十八人になります。それが予算上の、数字として出ているわけでございます。従いまして年度末の数字だけをとらえて数字が違うということを言われても、私どもとしてはちょっと困るわけでございます。それから七人委員会の数字とお前たちの使っている数字が方々で違う、あるいは七人委員会の報告書の本文と別表の数字がいろいろ違うと言われますが、この実態は一つも変更はないのでございまして、ただ、たとえば私なら私の写真をとる場合に、前からとる場合と横からとる場合といろいろございますが、そういうような違いでございまして、七人委員会のある表の数字は四月から三月までとりましたり、ある数字は調定額をとって、実際の別表では保険料の場合に実収入をとったり、いろいろしておりますので、そういう違いが現われてくるわけでございますので、個々の表の数字に御疑念がございましたら、また御説明申し上げたいと思います。
  40. 藤本捨助

    藤本委員長代理 保険局長、今小沢保険課長が読み上げられた数字は資料にしてこの次の委員会に出したまえ。
  41. 八田貞義

    ○八田委員 今の説明では私は納得がいかない。あなた方はそういう説明をしますが、われわれはこの本を読んだ場合に、この内容に含みがあるということを知らぬですよ。それではいかぬじゃないですか。私らはこの本を読めば全部わかるのだということで読んだ。ところがこの中にはいろいろな含みがございます、こういうことは何ですか。そのようなことで国会で審議できますか。予算でありますとか、含みがございますとかいう言葉は国会で言うべき言葉でありません。権威のあるものならば、ちゃんと数字が会うようにして出してもらわなければだめだ。(「その通り」)こういうことをあなた方に質問をすると、そういう含みがあめるとかなんとか言うけれども、これは非常にいかぬですよ。こういうような答弁を今までやっておられて、それで通ったかもしれないけれども、私はそれでは許さぬ。関連質問であるからきょうはこれでよしますけれども、ほんとうに私は絶対に許しません。
  42. 滝井義高

    滝井委員 そこで次に入ります。一応暫定案のことはそれくらいにしまして、資料を要求したいのは、こういう工合に変ってきましたから当然担当規程が変らなければならぬ。たとえば処方せん料というものをわれわれが自由に十日分やったり、一日分やったり、——一日分ずつやれば医者だからうんと収入があるのです。あるいは十日分をやればそうでない、患者の方が得になる。こういう工合に自由時代のままでは大へんなんです。そこで当然担当規程というものが変ってきておるはずです。それを一つ明日資料として配付を願いたい。  その次に移ります。そこでいよいよ四月一日から医薬分業になるわけでございます。これは薬剤師諸君の方にもどんどん処方せんが参ります。そこで全国の薬局の整備は万遺憾はないと思いますが、大丈夫でございましょうか。
  43. 森本潔

    ○森本政府委員 薬局の整備につきましては、現行法におきましても一定の規格をきめておりまして、その規格に会ったもののみ登録をいたしております。従いまして、この新しい医薬制度改正法ができますのと関係なく、一応薬局というものは従来通り整備をして参っておる、かように考えます。
  44. 滝井義高

    滝井委員 いずれあとで具体的な例を引きますが、少くとも十人ぐらいの医者から千差万別の処方せんがやって参ります。まあ十人になるか、二十人になるか、百人になるかわかりませんが、とにかく各科の医者から千差万別の処方せんがやってくると思います。そこでそれらの薬局調剤に応ずるだけの最小限度の薬剤をそろえるためには——これは医療費体系当時の論議ですが、最低二十万はかかるといわれております。そこでこの二十万を倹約していくためにもある程度小さな、たとえば五百グラム入りとか、百グラム入りというものは買えないので、五十グラム入りとかあるいは三十グラム入り、こういう小包装をしなければならぬ、こういう要求が薬剤師の皆さんからあったことを私は記憶をいたしております。そこで今の薬価基準でいけば、包装は大包装になっております。全国の薬局諸君——あとで具体的に例をお示ししますが、大包装を買ってやるのでは、これは一年に二回か三回しか来ぬような薬では、薬局は損なんです。薬局にとっては大へんなことなんです。従ってまず政府が全国の薬店に、少くとも処方せんがきても十分に調剤に応じ得るだけの態勢を整えさせるためには、政府みずからが薬局諸君に融資のあっせんをこの際やらなければならぬと思うが、一体政府はこの医薬分業を目睫に控えていかなる融資対策をとろうとしておるのか、これは一つ厚生大臣にお尋ねをいたしたい。
  45. 森本潔

    ○森本政府委員 ただいまお話のように、薬局につきましては従来も登録でやっておりますが、新しく医薬品を整備しますとか、そういう問題が現実に起って参ると思うのでございます。それにつきまして関係薬局の希望もございましたりいたしますので、最初政府の融資というふうなことも考えてもおりましたが、これもなかなか困難な事情がございますので関係の省と折衝いたしまして、商工組合中金あるいは国民金融公庫、この二カ所より所要の資金を借り入れるように処置をいたしました。個、の薬局におきまして折衝を遂げて所要額を借りるように、関係方面と折衝を遂げまして通牒を出しております。この通牒によりまして各薬局におきましては、それぞれの所要数を各機関の担当の支部に申し入れをいたしまして借り入れの準備を進めております。
  46. 滝井義高

    滝井委員 借り入れの通牒だけで金が借りられるならこんな楽な世の中はございません。少くとも中小企業金融公庫から百万円の金を借りようとするならば、これは現実において五百万円くらいの担保がなければできないのです。政府が、しからば、全国の一万七千の薬局は中小企業公庫から金を借りなさい、政府がその信用保証をするとでもおっしゃるのですか。そこまで政府が言ってくれればこれは急速に整備します。これはだから言うのです。今ここにサンデー毎日というのがあります。これはきわめて大衆的な本です。大衆的な本の中に書いておるものは当然われわれはこれに目を通して見る必要がある。これには「薬価は安定せず」と書いてある。いいですか。そしてこの中に、三軒の薬局にかぜ薬の処方せんを持っていって、処方を頼んだ。すなわちサルファゾール——これはどうもサルファゾールという薬はないんじゃないかと思う。あるいはこれはサルファジンの間違いではないかと思うのですが、とにかくサルファゾールでよろしい。サルファゾール三グラム、ロートエキス〇・〇三グラム、重曹三グラム、いずれも二日分をお願いした。ところがある一つの店に行ったら、その二日分を六十円で作ってくれました。一つの店は百三十円で作ってくれました。一つの店は二百四十円で作ってくれた。ばらばらです。しかも処方というものは、その医師が少くともサルファゾールの末と書いておれば末でやらなければならぬ。ところがそれが百三十円の店では、「サルファゾールの粉末がなかったんで錠剤をつぶして上げました。従って一錠九円のものが十二錠で百八円、それにロートエキス、重曹を加えて百三十円ですが——これも一応もっともな計算だ。」こういうことに実はなっておるのです。あるいは二百四十円の店はサルファゾールがやはり錠剤で、ロートエキスが劇薬なのでその危険に対する精神的負担をも加えて値を出した、だから二百四十円だ、こういうように言っておる。こういうようにばらばらなのです。これを原価計算したそうですが、これは真偽のほどはわかりませんが、大体「薬価基準による原価計算を依頼したら、十二円三十六銭、健康保険によれば二点で二十三円、現金買いでも二十五円のはずとのこと」こうなっておるのです。こういうようにばらばらなのです。それで、粉末で作ってくれというのを錠剤でやれば、これは明らかに処方の違反なんですね。これは普通の自由な調剤でこうなのです。いわんや統制のワクの中に入る健康保険においては、こういうことは許されない。これをやればその薬局は一刀両断のもとに保険薬剤師の指定を取り消され、二カ年間はサムス准将の嘆いたところのクマのいを売る番頭さんに転落しなければならぬということになる。この事態というものは、私はこれは厚生大臣並びに薬務局長はいよいよ四月一日から医薬分業実施せらるるとするならば、当然それだけ全国の特に一万七千の開局薬剤師諸君の財政的な裏打ちをせずしてこれをやろうとするならば、無謀もはなはだしいと言わなければならぬ。いわば求めて罪人を作ると、言わなければならない。この防止の方策というものを、具体的に目睫の間に迫りまして、強行告示をさえもあえてした厚生省ですから、まさか万々手落ちはないと私は心得ておりますが、今のような一片の通牒で百万円——少くとも百万円はかかる。京都あたりは九十万の金を信用保証で借りなければならぬといって、薬剤師団体はてんてこ舞いをしておるが、金は集まりません。厚生大臣と業務局長はこの事態に対して、強行告示をやられた大臣なんですから、明白な御答弁ができると思います。一つ明白に御答弁を願いたい。あいまいな答弁ではだめです。
  47. 森本潔

    ○森本政府委員 ただいま一片の通牒では整備ができないだろうというようなお話でございましたが、ただいまから急にこの薬品の整備をするわけではございませんので、従来からすでに整備をいたしておりますし、それからこの四月一日の医薬分業実施というものはすでに数年前から予定せられておったところでございます。従いましてここ数年間に従来よりも増して整備を進めております。大体現状におきましてはおおむね所要の薬剤、これは大体二、三百種類だと思いますが、繁用薬品と申しますものは大体その程度のものは整備できておると考えております。なお、それにしても足らぬものがございますならば、先ほど申しましたような商工中金あるいは国民金融公庫につきまして、関係機関より融資の道を了承を得ておりますので、それぞれ所要数が買える、かように考えております。
  48. 滝井義高

    滝井委員 それならば私はもう端的にお尋ねしますが、それまで通牒を出して商工中金等の協力を得るというのは、担保なしで貸しますか。国民の生命を預かる医療機関が、その法律で定められたところの義務を遂行できないという場合に、担保がなければできないということになれば、その医療機関というものは保険医の指定がなくなるのです。保険薬剤師の指定というものはできないことになる。これではその薬剤師というものは、千載一遇の一好機に保険薬剤師になることができないということは気の毒なんです。だからあなた方が、政府が信用保証する、全国の中小企業金融公庫はできていないとろはお貸しなさい、こういうことをあなた方が保証されれば私は納得します。しかし今のよう血ことでは納得できません。強行告示をなさったのですから強行告示をやった厚生省が、日本の一万七千の薬局がもし不完全であった——この事態は不完全なことを示している。サンデー毎日の三月二十五日号に不完全な事態が出てきておる。その不完全な事態が出てきておるのに、一週間の後に迫って強行告示までやっておるということは、準備ができておるという客観的な把握があったからこそやっていると思う。ところが現実にそれができてないとするならば、当然これは政府が信用保証をやるという声明を出すべきです。これは事人命に関しますから、夜中に薬店に行ったら薬がなかったから医者のところに戻った、そのためにその赤ちゃんが死んだというならば、その薬剤師は罪に問われます。殺人罪ですよ。そういう事態に一人の善良なる薬剤師を追い込むということは、私どもは許されぬと思う。それが人命に関係しないことなら私はこういうことは申し上げません。ところが人命に関することであるがゆえに、私はきょうはここではっきり——強行告示までされた大臣なんですから、勇将のもとに弱卒はないのです。この強行告示をされた勇将のもとにおける薬務局長も、私は勇敢に大蔵省なり中小企業金融公庫に向って要求しなければならぬと思う。それができないとすればこれは大へんです。どうしますか。
  49. 森本潔

    ○森本政府委員 ただいまの担保の問題でございますが、これはあえて政府が担保あるいは保証をするということをしなくても、それぞれの薬局におきましての担保力はあると考えます。また自分のところ一つで担保がない場合でも、それぞれ他の協同組合その他の力によりまして、担保力を持つわけでございます。従って絶対に政府の担保保証が要るという考え方は、必要なかろうと考えます。
  50. 滝井義高

    滝井委員 それぞれの薬局が担保力があるという証拠があるならばお出しなさい。あなたは薬業新聞を読んでごらんなさいよ。京都なんかどうしておりますか。みんな九十万の保証をどうして作るかということで薬剤師の連中はてんてこ舞いではありませんか。担保力があるなんてあなたがおっしゃるなら、ある証拠を出して下さい。全国薬店の財産の状況がわかっているはずだから、至急出して下さい。それがはっきりして、担保力があるというならばよろしい。しかし担保力があっても、なかなか現在の銀行は、中小企業には金を貸さないのが現実じゃありませんか。それをあなたが担保力があるという御断言をいただいたのですから、それを出していただきたい。  そこでもう少し内容に入りますが、そういう状態の薬局でございますが、浦和市内の薬局協同組合長は「よく売れる薬は別として、物によっては年に〇・〇一グラムしか出ないなんてものもあります。こんなときは最低の二五グラム包装を使っても、二四・九九グラムは無駄になってしまいます。いくら高くいただいても追っつくものじゃありません。しかし店の信用にもかかわるので断わるわけにも行かず、結局、手持ちの薬のあるところとないところでは、どうしても薬代に差が出て来るのは仕方がないでしょう。」こう言っている。これが現状なんです。いいですか、〇・〇一グラムですよ。耳かき一ぱいにもならない微量な薬を使うことが、現実における医療の中には再三にわたってある。ところが二十五グラムの包装があればいいのですが、薬価基準においては大包装になっておる。二十五グラムのものを買っても薬局は損です。そこで私は、こういう点から日本の医療が具体的に急激に低下するところを今から説明します。  そういう事態薬局の中において、今度は薬というものは十五円刻みでやっていきました。薬価は一・七点。前体系では、たとえば二十五円の薬も一・七点、ところが皮下注射は一・六点になります。静脈注射は一・八点です。いわばものの原価が同じであっても、それが今度は具体的に人間のからだに与えら計る場合には値段が違っておった。こういう点は医療費体系における一つの大きな不合理な点でございましたが、さらにこの点を今度は暫定案が不合理の輪をかけた。薬は一・七点になっている、皮下注射は二十五円のものなら四点です。静脈は六点です。こういう不合理が出てきました。この不合理によってどういう形が出るかというと、薬は平均で一・七点ですから、小数点以下のものを使いました。〇・五点というような小数点以下を使いました。小数点以下のものにかけ算をするものは、円ではない、銭の単位です。十一円五十銭、十二円五十銭という銭の単位をかけた。今大体銭の単位を扱うところは八百屋くらいしかありません。今度は医者の計算では五厘が出るのですよ。二十七円四十七銭五厘と出ます。こういうむずかしい計算を医者にやらせることになりました。そこで今までは銭勘定についてはあまり熱心でなかった医者も、今度は銭勘定に一生懸命にならなければねらぬ。だから二十五円の薬を使っても一・七点、薬価平均でやっておりますから一・七点です。そうしますと、これはそろばんをはじいて、あの患者には二十五円の薬を自分の過去の医学的な経験からいって注射を打たなければならぬと思っておっても、これは平均でいっておりますから、平均以下の注射を使うことになる。平均以下の注射を使うというのが、これがとうとうたる現在の風潮なんですよ。現在の社会的な風潮はそういうふうになっておる。医は仁術なりといわれておったその倫理が変ってきつつあるのが現在の姿なんです。そこでそういうことになると、二十五円の平均薬価を使わなければ、これはなおらないと思っておっても、以下のものを使う形が出てくる。以下のものに迎合するように、薬屋製薬業者はさらにそれに輪をかけた計算をすることは明らかです。これはマーチャント、商売人です。輪をかけた計算をします。そこでできるだけ、少しは質が悪くても安いものを作ってこようとします。これは競争です。そうしますと、今までならばまあまあ潜在技術料があったから、それはいいでしょう。ところが今度はそうでなくて、平均価格でいって、そうして潜在技術料というようなものは処方せん料という形に姿を変えさしてしまうということになりますと、これは二十五円以下の薬を使うことはどういう影響患者に出てくるか。明らかに一週間でなおったものが十日になる。さらに今度は薬剤師諸君に行った場合に、これがどういう結果が現われてくるかというと、今申した通り、たとえばグレラン、歯が痛いというので医者がグレランという処方を書きました。ところがグレランは薬価基準は百錠になっております。これは一錠が六円二十五銭です。ところがこれが十錠とか二十錠入りになると、十錠入りなら百円です。そうしますと、二割の利益を薬店が得ているとしましても八十円、一錠八円になります。そうしますと、医者がグレランという処方を書いて出しても、薬局が損をしてグレランをやらなければならぬ。こういう不合理性を含んでいるということです。これは薬剤師が神ならぬ限りは、中には、もうおれはグレランばかり、こんなに医者処方をやって損ばかりしては大へんだ、ときにはアスピリンをと、こういう薬剤師が、五万になんなんとする薬剤師の中に一人もないということを、私はここでは断言がしかねます。医者においても同じです。今言ったように二十五円が原価のものを使えばこの病気はなおると思っても、その経済が苦しければ、赤貧洗うがごとき医療機関の内容であれば、それは二十五円以下のものを使い、その一切のしわが患者に転嫁されて、薬剤師の側からと医師の側からと、急速に日本の医療は低下をして、健康保険は隆々たる黒字になって、あなた方役人は自己の繁栄を讃歌することができるかもしれないけれども、日本の八千万の国民大衆というものは、これは大へんなんです。私は医療というものはそういう微妙なものだと思っております。微妙であるがゆえに私は声をからしてあなた方に御忠告を申し上げている。保険経済のみが黒字であって、現在の医療機関が赤字であるということ自体、あるいは薬剤師諸君に担保力があるなんというこういう楽観的なあなた方のする厚生行政は、日本の大衆の医療を学問的良心の上に行うべき姿というものは、どこにも、暫定案の中にも体系の中にも健康保険改正の中にも出ていないということです。あなたは、しからばそういう場合に、薬剤師は損をして下さいと全国の薬剤師に言えますか、そういうことを言えるならいい。これは一例としてグレランを例に引きましたが、グレランばかりではないのです。これは全国の薬店が百錠のグレランを全部買わなければ、六円二十五銭の薬価ではやれないということです。それをもし十錠のものを買えば八円です。だからこういう点をあなたは全国の薬店に、損をしたら補償しようというだけの施策を、これだけのことをやろうとすれば、お持ちだろうと思う。これは盲点になっているかしれないけれども、重大な点です。こういう点が、これを実施するならば医療内容が急激に低下をして、一切のしわがか弱い被保険者諸君にかかるという具体的な理由です。こういう微妙な点を大臣一つよくお考えにならなければいかぬと思う。これは単にもののやりとりではない。これはとうふ屋に行ったが、とうふが少し腐っておったというようなものではないのです。日々弱い病人というものを対象として行われる現実であるということを無視してはいかぬと思う。あなた方にこういう矛盾を快刀乱麻のごとくうまくさばき得る方法があれば、私はこの機会を通じて全国の保険医なり、薬剤師なりあるいは被保険者に宣明をしてもらいたいと思います。
  51. 高田正巳

    高田(正)政府委員 滝井先生の御質問、非常に広範にわたりまして、私あるいは御質問趣旨を十分に把握しておらないかと思いますが、滝井先生が今矛盾であると仰せになりましたことは、これは私の聞き違いかもしれませんが、一つには暫定案では処方料が薬の価格に従ってずっと逓増するようになっておるということを仰せになったように考えるのでございますが、それは現在でもそうなっておるので、その逓増の仕方を、むしろ暫定案はカーブを下げたのだということを私は申し上げたつもりでございます。  それから第二点としまして、平均価格で払うから、たとえば十五円から三一十円までのものを、かりに平均価格が二十五円といたしますれば、二十五円で払うから、医者は二十五円以下のものを使いたがるであろう、こういう御指摘があったと思います。なるほどあるいはそういうことがあるかもしれませんが、そうしませんと今度は逆に滝井先生の御質問になっておるように、非常にめんどうになってくるのであります。そのものずばりの、たとえば十八円の薬を使えば十八円、二十円のものを使えば二十円、二十三円のものを使えば二十三円というふうな払い方にしますと、これはお医者様に非常な事務負担になる。従って一昨年の新医療費体系におきましてはそういうしかけになっておりましたのを、今回の分ではそういう事務をお医者様にかけるのは大へんである、だから従来も十五円刻みになっておるのだから、従来の刻み方と同じような刻み方をして、それぞれの段階の中の平均価格支払いをしたらお医者様の事務がはぶけるだろう、こういうことで実は暫定案も、そういう立場をとっておるわけでございます。  それから薬局が損をするじゃないかという仰せでございましたが、その前に医者と同じような払い方を薬局にもしたらいいじゃないかという御指摘がございました。その二つは実は両立しない要請でございまして、かりに今のように薬局の方にも平均価格で払うといたしますれば、平均価格より高いものはいつも薬局に出て、平均価格より安いものは自分のところで調剤するということも、こういうことはないと思いますけれども、あるかもしれないので、薬局の方とお医者様の方とは払い方を変えまして、薬局の方ではそのものずばりの値段で払う、平均価格で払うということをしないというようなことになっておるわけであります。私が御質問趣旨を取り違えておるかもしれませんが、前仰せになりました御質問趣旨あと仰せになりました御質問趣旨とを総合して考えますと、どちらに滝井先生のほんとうの御趣旨があるのか、ほとんどわからなくなるような点があるのでございますけれども、そういうことを仰せになったものと私が拝承しまして今のようなお答えを申し上げたわけであります。
  52. 滝井義高

    滝井委員 私は平均薬価をとれということは一回も申したことはございません。あなた方の平均薬価をとっている矛盾を私は指摘しておるわけです。私は当委員会で十時間ばかりやっておりますが、今の平均薬価をとれということは一回も言ったことはございません。私は平均薬価をとることの矛盾性を指摘して、同時にあなた方がお金点数と別々にしておるから、それは点数一本に統一すべきであるということを主張しただけです。それを薬剤師諸君お金で払う分を医者と同じ点数にしろということは、そのまま私が平均薬価を認めているといろ今の御答弁でございますが、私は平均薬価にしろということは一回も言ったことはございません。これはその支払いのときに平均薬価以下のもので払うということが出てくる矛盾を指摘しておる。その矛盾がこの中にある。同時に薬剤師諸君においても、薬の包装が、経済力のない薬店はどうしても小包装にしなければならない。ところが小包装では損をする。この点はあなた方が何と抗弁されようともすでに現実に浦和の薬店ではっきり言っておる。そういう点について、厚生省は小包装の薬をもっと安くして全国の薬店に配付する、これだけの処置というものを医薬分業を目腱に控えてやらなければならぬ。処方せんが出ても、さいぜん御指摘申し上げたように、粉末と書いても、錠剤をわざわざくずしてやらなければならぬ、粉末をわざわざ固めて錠剤にしたものを、また今度は手数をかけて粉末にしなければならぬという矛盾が起ってくる。これは明らかに日本の労働力の損失ではありませんか。二重にも、三重にもロスを来たす、こういうことです。私はその矛盾を指摘しておるのであって、決して平均薬価がよろしいということは一回も主張いたしておりませんから、その点は局長一つ間違えないようこ……。  そこで今申し上げたような状態ですから、こういうものを実施した結果・薬剤師諸君に過失が起ったり、あるいはそのために人命に非常な問題が起きる、こういうことは、いずれあさってあなたの方から全国の薬店の担保力がどの程度あるかということを指摘していただくことになっておりますが、そういうことではあと一週間ですから、なかなか間に合わない。ですから、全国の薬店の諸君を罪に落さないためにも速急に何らかの手を打ってもらわなければならぬ。同時に日本の医療の内容が四月一日から急激に低下するときに、せっかく医薬分業ができて、全国の国民諸君が喜んでおるときに、粉末がなかった、錠剤にしたら保険料が高くなった、これでは大へんです。  もう一つ伺いたいのですが、これは保険局長に伺いたいが、医師処方せんで、たとえば麻薬なんかを、処方せんを持って行った場合に、麻薬そのもので書いた場合に、現在薬価基準には麻薬そのもの、たとえば燐酸コデイン五グラムのもので十倍散、百倍散、そういうふうな散剤になっておるものがある。これは一体どっちの薬価基準でわれわれは請求したらいいのですか。医者が燐酸モルヒネと書いておった場合に、モルヒネそのものをずばり用いるのか、それともモルヒネ散で用いるのか、その場合に薬価の基準が違います。どちらを請求したらいいか。これはよほどよく答弁をしてもらっておかないと、たまたまなかったのでモルヒネ散でやって監査にかかった場合には不当請求です。大臣健康保険はこういうところに重大な点があるのです。今言ったように薬はやりましたよ、しかし錠剤でやったらだめです。不当請求です。お家断絶です。(笑声) だから、私はここを言っておる。被保険者保険者と療養担当者の違いはここである。従ってもう一週間に控えておりますから、全国の薬剤師諸君のためにもここらあたりを明白にしておかないと、薬はなかった、子供は死にかかっておる、早く頓服を飲ませなければならぬというときには重大問題です。ちょって待って下さい。私のところには末がないということは言えない。どうしますか。どっちですか。
  53. 館林宣夫

    館林説明員 燐酸コデイン等におきましては、百倍散でございますと、麻薬の取扱いがないと思います。従いまして麻薬加算点数がそこにつかない結果になるわけであります。従いまして百倍散を特に使います場合には、その旨処方せんに明記してもらいたいわけであります。
  54. 滝井義高

    滝井委員 だから処方せんに明記しなければならぬことになるわけです。私は医者は明記すると思います。あるいは塩酸モルヒネとだけ書くでしょう。われわれも書きます。モルヒネ散と書く必要はない。しかし薬剤師諸君は散しか使えないのです。そこなんです。行ったが薬はないということになった場合にどうするかということです。その場合に、その処方せんで作ってもらえぬから、すごすごと重い子供を背中中負いながら帰らなければならないじゃないですか。そんな情ない行政というものはありはしないですよ。
  55. 高田正巳

    高田(正)政府委員 滝井先生の御質問趣旨が私十分にわからないのですが……。
  56. 滝井義高

    滝井委員 処方せんに塩酸モルヒネと書くのです。あるいは燐酸コデイン〇・〇一と書くのです。そうしますとこれは〇・〇一では大へんなんです。どこでも十倍散にしてしまっている。あるいはロートエキスもそうでしょう。そうするとこれは薬価基準値段が違うのです。十倍散にした場合ともとの場合とはみんな値段が違うのです。その場合に処方せんには明らかに書いてありますからその値段でいかなければならない。ところが十倍散にしているのは値段が高いのですから、どっちで請求したらいいのですか。こういうことを言っているのです。患者からお金を半額もらわなければならぬ、健康保険の方に請求書を出さなければならないが、どっちの値段で請求したらいいのか、それを尋ねているのです。値段は二つあるのだから……。
  57. 高田正巳

    高田(正)政府委員 それは十倍散なり、百倍散なり、あるいはそのものずばりの——私しろうとでありまして恐縮でありますが、燐酸コデインというものはそのものずばりの倍散でないものも薬価基準にございますが、実際にそういうものがあるのでございましょうか。そのものずばりのものがあるでありましょうか。これは非常に微量を取り扱うものでありまして、私ども常識的に考えまして、そういう〇・〇一なんというものを秤量することはなかなかむずかしいと思いますので、そういう関係でみな倍散が使ってあるわけであります。それで私はお医者様が処方をなさる場合にも、院内処方も同じでございますが、やはりそこに十倍散で処方するとか、百倍散で処方するとか、十倍散で幾らというようなことを処方にお書きいただくのではないだろうかと思いますが、そういうことではございませんですか。
  58. 滝井義高

    滝井委員 そんなことはない。ロートエキスは二十五グラムが百二十二円です。ロートエキス散は五百グラムが二百九十五円です。値段が違うのです。この場合に医者はロートエキス散とは書きません。ロートエキス〇・〇六と処方では書くのです。その場合に、薬局はロートエキス散で作ってよいのですけれども患者お金をもらうときはどっちで請求するのかというのです。あるいは保険に請求するときはどっちで請求するのかというのです。
  59. 館林宣夫

    館林説明員 従来でございましても、かりに十五円以上の処方になります場合には、処方内容が請求書の中に明記されてくることになっておりまして、その場合にかりに燐酸コデインとありましても、原末の価格でなくて、おおむね十倍散の価格が承認されておるわけでございますので、やはり処方を切りました場合におきましては、ただいま局長からお答え申し上げましたように、〇・〇一の単位の秤量が容易でございませんので、そのような際に普通十倍散を使うことは一応許容されたものとして、そのような価格で取り扱うことは認めざるを得ないと思います。こまかく申しますれば、処方せんの内容に疑問を生じます場合には、これを処方した医師に問い合せることになっておりますけれども、一応十倍散と断わってないからわざわざ十倍散でよろしいかということを問い合せなくても、そのような場合にはおおむね許容されてよいのではないか、かように私ども考えるわけであります。
  60. 滝井義高

    滝井委員 あなた方はここではそうおっしゃるでしょう。ところが出先はそうはいかないんですよ。こういうような微妙な点はよほどよく周知徹底させておかないと、今言ったように薬剤師諸君というものは無実の罪に問われるのです。今ロートエキスだけを取り上げたが、こういうものは幾らでもある。たとえばオーレオマイシンのようなものでも薬店で売っておるものについていろいろ形が違っておる。末もあれば、錠剤、カプセルに入っておるものもある。そういう場合に末がない、赤痢の患者にどうしても早く飲ませなければならないという場合には大へんなんですよ。その場合に、それがないような場合にはカプセルに入っておるもの、錠剤でもよろしいということを言っておけば問題はない。言っていないと大へんです。ところがこれを言っておくと、今度は保険経済が大へんなんです。そればっかり使う。だからどっちにしてもこの問題というものはもろ刃の剣みたいになる。だからそこらあたりの取扱いをよほどしておかないと、今度はたまたま散剤を持たずにカブセルや錠剤ばかりをうんと買っておった薬局というものは現実にストックがあるのですから、処方せんが出てくるとそれをどんどん使うようになる。ところが錠剤と末の価格には何倍という差がある。そこらあたりの指導というものをどういう工合にやるかということです。だからあなたから常識的に、そういう場合にはカプセルなり錠剤を使ってよろしい、散剤でなくともよろしい、こういう御言明をここでしていただけば四月一日から間に合いますから、できれば一つ御言明をいただきたい。どうですか御言明ができますか。
  61. 館林宣夫

    館林説明員 粉末でよろしい場合に特にカプセルを使うことが医療上においてその秤量がむずかしいというような技術上の難点がありますれば、これは許容されるということになると思いますが、わざわざ錠剤をすりつぶして粉末にしてまで錠剤を使うという理由は乏しいかと存じますので、やはりそのような場合には粉末を使うのが至当かと思います。
  62. 滝井義高

    滝井委員 粉末を使うのが至当だと言っても、今言ったように、製薬企業の現状から見ても御存じのように、だんだん末から錠剤の方へ行く傾向を持っておる。その傾向の中において、今度薬剤師諸君に向って末でなければいけないということになると、さいぜん申し上げましたように小さな包装というものを作らなければならない。ところがあなた方の三億の薬価対策というものは包装を大きくするというのがあなた方の方針です。これはちゃんとあなた方が説明してくれておる。そういう点が現場においてはその思想と反対じゃないですか。だからこれはむしろ包装を小さくして値段を安くするということに修正されなければいけない。製薬企業にもそう言われなければならない。そうしますと薬の値段が高くなってくる。だからこういう矛盾というものをあなた方は急速に解決していただかなければいけないと思います。答弁が明白にできないようでありますが、そういう高貴薬あるいは麻薬類、あるいは今言ったような十倍散、百倍散にしなければならぬもの、こういうものに対する取扱い並びにこの薬局に対する融資の問題、これらの問題を一括して明後日お願いいたします。
  63. 森本潔

    ○森本政府委員 ただいまの御質問に対してなおお答えいたしておきます。高貴薬でありますとか、平生あまり使わないところの薬、こういうものが使用される場合、これは現在も将来もそうでありますが、これにつきましては個々の薬局等においてそれらのものを全部整備することは困難であります。日常繁用されますところの医薬品、これは三、四百種類だと思いますが、これは薬局も整備すべきだと思いますが、希用な、まれにしか使われない医薬品につきましては、現実において、個々の薬局に整備することは困難でございますので、薬局の協同組合、あるいは適当なグループごとに、共同でさような薬品を整備しておく、そして必要な場合に、その共同でたくわえておるところから持ち帰ってそれを使用する、かような方法しかなかろうかと思います。そういう考えで指導いたしております。  それから薬局におきます薬価の問題でございますが、これはただいまお話のように、薬局においては大包装は使いにくい。そのような場合におきましては、現実に使用されます大きさの包装、これを研究いたしまして、薬価の基準を改訂する必要があろうかと考えております。  それから薬局の融資につきまして、各薬局とも担保力があるというようにお聞き取りを願ったのでございますが、私の申しましたのは、大体、医薬分業に伴いましてさらにプラスして整備されなければならない医薬品というものは、そうたくさんはないであろう、従いまして、その額はそう多くはないという考えでございます。従って大部分の薬局におきましては、その医薬品のみについていえば、多額の金は要しないであろうと思います。しかし、かりに要するといたしましても、大部分の薬局は自己の担保力をもって融資の道が開けるであろう、しかし全部の薬局が担保力があって、そういう心配はない、かような意味で申したわけではございません。
  64. 八田貞義

    ○八田委員 関連して一点だけ、大臣に簡単に質問さしていただきたいと思います。今滝井委員からいろいろと質問がありまして、暫定案には非常に矛盾があるということです。大臣は今、四月一日から医薬分業に入ることについては周知徹底いたしております——暫定案につきましては周知徹底しておらぬわけです。そこで大臣は、一体告示をいつお出しになりますか。(「もうきのう出した」と呼ぶ者あり)きのう出した。そうすると、それは四月一日から発効するのでございますか。(「その通り」と呼ぶ者あり)そこで問題がある。今いろいろなこまかい質問がありましたが、私もさらにたくさんの質問があるのです。矛盾がたくさんあるのです。四月一日といったら、もう期間がないんですよ。それで周知徹底ができますか。矛盾を包蔵した、すなおでない暫定案を施行すれば、非常な混乱が起って参ります。これは大臣一つ何とか五月一日から発効するというように、暫定案の施行を一カ月延ばされる御意思があるかどうか。
  65. 小林英三

    小林国務大臣 そういう意思は持っておりません。  それから周知徹底方につきましては、十分に努力いたします。
  66. 藤本捨助

    藤本委員長代理 午前中はこの程度にとどめ、午後二時半まで休憩いたします。    午後一時四分散会      ————◇—————    午後三時二十一分開議
  67. 藤本捨助

    藤本委員長代理 休憩前に引続き再開いたします。  午前中の質疑を続行いたします。滝井君。
  68. 滝井義高

    滝井委員 先日標準報酬の等級区分の改訂について御質問を申しておる途中から、井堀委員が関連をして質問をしたのでございますが、そこでなお私の標準報酬について残っておる点について御説明をいただきたい点は、標準報酬というものに対して一定の保険料率をかけて、そこに保険経済をまかなっていく保険料の額が出てきておるわけなんですが、そうしますと、その出てきた保険料でまかなうところの医療というものは、これはいかに保険料が高い人であっても、保険料の低い人であっても、これは同じフラットの医療が支給されるわけでございます。ところが今度傷病手当金になりますと、いわばその二十四級に分けた標準報酬が支給をされていく。こういう入るときのものは一定の率で、しかもその段階のある平均報酬にかけて入っていくけれども、出ていくものは一方はフラットであり、一方は段階があるという、こういう矛盾のある要素が出てきておるということなんです。そこでこれは数理計算の上から考えてみても、どうもここには一つの矛盾があるわけなんです。出ていくものは二本建になるわけですから。この矛盾というものはやはり将来私たちは考えなければならない問題だと思うのです。と申しますのは、少くとも健康保険というものが医療を対象としておる疾病、そういうものを中心としておる社会保険であるとするならば、そこに今度は別に生活をカバーする賃金の六割というものが疾病とともに補償されていくという、こういう姿というものはやはり私は考えなければならぬ問題だと思う。しかもそれが数理統計の上からいってどの程度の保険料であればいいかという点に非常に大きな誤差と申しますか、見通しの誤りと申しますか、そういう点が出てくると思う。こういう点は多分七人委員会等においても抽象的な形で私は指摘をされておったと思うのですが、この点厚生省はどうお考えになっておるか、これを一つ説明願いたい。
  69. 高田正巳

    高田(正)政府委員 傷病手当金だけではございませんで、ほかに分娩費とか、家族も入れますと十数項目にわたりますか、そういうような現金給付のあれがございます。しかしその中で一番大きな部分を占めますのは今御指摘の傷病手当金でございます。それで医療はいわばフラットで、そうして傷病手当金の方は、標準報酬に応じた支給をしておるが、それは矛盾ではないかという仰せでございます。しかしながらこの傷病手当金というものは今先生も仰せになりましたように、病気で休んでおります間に賃金がもらえればこれは問題ございませんが、もらえなかった場合の生活のカバーという意味で、この健康保険が発足いたしましてからずっと今日までこういう制度はあるわけでございます。七人委員会でも私の記憶によりますればこの傷病手当金の制度をどうのこうのということは申しておられなかったと思います。七人委員会では私の記憶に残っておりますのは、標準報酬をとる場合におきまして、傷病手当金の基準となる標準報酬と、それから保険料を徴収する基準になる標準報酬とを区別して考えたらどうかというふうな御提言がございましたけれども、この傷病手当金の制度そのものについての御提言は、私の記憶によりますればなかったように思うのでございます。さようなことでございまして、制度発足以来ございまするこの建前は、別に私どもはそこに大きな矛盾がある——医療というものは、標準報酬に比例して、医療の給付というようなことはできませんので、これはもう病状に応じてフラットで給付するよりほかに方法がない、そういうふうな観点から申しまして、特別に大きな矛盾とは私自身は感じておりません。ただ将来社会保障の全面的な検討をいたす際等におきましては、この健康保険制度の中に包含されておりまする傷病手当金制度をどういうふうに考えていくかということにつきましては、全面的な一つ検討の中におきまして、十分検討の対象になり得るもの、全体的な制度の立て方と関連をいたしまして検討の対象になり得るもの、かように考えておるわけであります。
  70. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、あなた方の今度の健康保険改正は全面的な改正じゃないのですかね。どうも私は、これは昨年流産をいたしました健康保険法改正よりもさらに今度は大幅な改正になっておると思うのです。そういう点から見ると、ここ当分の間は、少くともあなたが保険局長である間は、これ以上の改正はないと私は思っておる。そうすると、これはやはり少くとも相当大幅な全面的な改正だと思うのです。そうすると、今のようなお言葉でいくと、どうもこういうととは、当分のお茶を濁しただけだという、暫定案と同じような形になってしまうわけですね。私はそうはいかぬと思う。こういう百億になんなんとする赤字の出ておる現在の保険財敵を立て直すという場合においては、やはりその収入の根源というものは標準報酬なんですね。そこでその標準報酬をきめるに当って数理的に計算をする場合に、今あなたが具体的に御指摘になったように、傷病手当金を支給する標準報酬と、それから医療給付をやる標準報酬というものが、明らかに違っておっても差しつかえないことになるわけなんです。と申しますのは、医療はフラットであるが、標準報酬は少くとも報酬にある程度比例をして支払われていっておるのですから、そういう点でこれは明らかに数理計算の上からいっても、科学的な、そこに適正妥当な保険料の額が必ずしも出ておるとは限らないのです。これはこういう点にいわば矛盾を私ははらんでおると思うのです。しかしそれを全面的な改正まで待つんだ、こうおっしゃられればそれ以上何も言う必要はないと思いますが、これは明らかに矛盾だと思うのです。そこでこれはあなたの方は全面改正のときは検討しなければならぬとおっしゃっておられるからそれ以上のことはここで言いたくございませんが、明らかに矛盾があるということです。  次に言いたいのは、そういうようにしてこの標準報酬を一応われわれから言わしめればきわめて不正確な形でおきめになっておるわけなんでございますが、問題はその一万一千という平均がことしは一万二千二百五十二円になっておるようですが、こういう零細な所得層が恩典を受けておるその健康保険というものに、わずかに三十億の金を出して、それ以上は出せないのだ、他の保険にも出していない、こういうことをおっしゃった。そこで問題は税金と保険料との関係をここらあたりで考えてみる必要があると思う。現在あなた方は保険料はもはや限界にきておるとおっしゃっておる。なるほど保険料健康保険と厚生年金と失業保険を合せれば一一一になります。被保険者負担するものは、この半額だから五五・五になります。ここでわれわれが国庫負担考える場合に、その一般会計に入ってくるお金、税金をこの際思い起してみる必要があると思う。現在日本における所得税を納めておる階層は一体どういう階層であるかということなのです。私はここに三十年度の分析を持ってきておりませんが、二十九年をとってみても、勤労者の納税というものが八百十二万人、申告納税は二百二十五万、現在二割の国庫負担をやっておる国民健康保険の恩典に浴しておる主として農村、これは六十九万人なのです。そうしてみますと、勤労者階層が納めたところの所得税というものは、零細な所得階層が集まっておる同じ勤労者階層がやっておる政府管掌の健康保険に国が再分配の形で、納めたその税金の中からこの健康保険の特別会計につぎ込むということは、理論的にも筋が通らないことはないはずです。この点他の保険との関係があるということ、国民健康保険は半額自分が持っておるから、こうおっしゃいます。しかしよく考えてみれば、自分の納めた税金を自分がもらうといういわゆる所得の再分配の形にすぎぬということなのです。こういう現状から考えてみると、今の標準報酬の関係、あるいはそれを今度は税金と結びつけて考え関係考えてみると、同じ勤労者の中で、組合管掌の分は少くとも一万六千をこえるもの、政府管掌の分は一万一千円で、五千円の差がある。その差は年間にすれば一人の勤労者について六万円。だから六万円の五百万人分にしますと三千億円で、三千億円の千分の六十五とすると約百九十五億すなわち約二百億になる。これは健康保険の組合管掌と政府管掌とのこの格差のために政府管掌をレベル・アップするため、国が二百億を出しても理論的筋が通らないことはない。なぜならば、その二百億の金は主として勤労者階級が源泉徴収で納められた金なのだから。あなた方の言う五カ年の後には日本の全国民を皆保険にする、社会保障制度審議会が答申したように被用者保険と国民保険の二本建にするという目標からいけば、やはりここに二百億ぐらいは出してもいいという理論が出てくるのです。これらの日本の納税者の数から見ても、当然これは出しても無理はないものだと思う。しかもその標準報酬が一万一、二千という低額所得層であるという点から考えて、出しても理論的には筋が通らないことはない。その点はどうしますか。
  71. 高田正巳

    高田(正)政府委員 ただいまの滝井先生の仰せは、御趣旨ごもっともとは存じますが、税金というものは、たとえばある人が出した税金をこの問題だけに使うというふうに限定したものではないのでありまして、一般の国の所要に対してどこに税源があるかということを探してとっておるものであります。目的税でありますれば別でありますが、そういうわけでございまして、先生の仰せのような理屈に税金を考えますることはいささかどうであろうか。一応お気持としては私どもそういう御議論もあり得るかと存じまするけれども現実の税制と国の諸施策との関係は必ずしも先生の仰せのようには参らないものだ、かように考えております。
  72. 滝井義高

    滝井委員 そういう考え方もあるということを一つ御記憶になって下さったそうでございますから、それでけっこうだと思います。  そこで、あなた方が財政対策をした場合としない場合における標準報酬が違ってきたわけですね。財政対策をしない場合は一万二千二十二円になっておる。した場合は一万二千二百五十二円になっておる。それだけの開きが出てきたわけですね。これは一体どういうわけでできたかということとともに、この前私が資料として要求いたしましたが、九十五億の赤字のときには一体どういう関係になるのか、七十一億のときはどうだ、六十六億のときはどうだということをお聞きをしたのです。そのときに、七十二億の赤字のときの数をもらったが、標準報酬についてはそれを示してくれなかった。だから、おそらくあなた方の標準報酬のとり方は、財政対策をしたときとしないときとで準備に変化をしていっているはずです。だから、九十五億のときはどの程度の標準報酬、七十一億のときはどの程度の標準報酬をとった、それで、財政対策をしないときは一万二千二十二円、したときは一万二千二百五十二円、こういう工合に変遷してきているはずです。従って、それらの変遷をした根拠一つお示し願いたいと思います。これは、七人委員会においても、毎月の勤労統計をおとりになって、一万二千円ちょっとこえる額を多分お出しになっておりました。ところが、あなた方のこれは、財政対策をしたときとしないときだけを見ても月に二百円以上違うのです。年間にすると二千円をこえるのです。これを五百万人とすると莫大な額——何十億となります。こういうように違うということもおかしいことで、それを一つ納得のいくように御説明願いたい。
  73. 高田正巳

    高田(正)政府委員 財政対策をやる前とやったあと平均標準報酬月額が二百円余り違う、その理由はどうかという御質問でございます。財政対策の中に、御存じのように今回御審議を願っております標準報酬の等級区分、現行の三千円から三万六千円までというのを、四千円から五万二千円までに改訂いたすことが入っております。そのことによって、現在その各級に区別できろ被保険者がどのくらいおるかという調査によりまして、その新しい標準報酬の等級区分で平均月額を出しますと今のように上るわけでございます。そのことが一番大きな理由であります。  なお七十一億のときはどうかというお話でございますが、これはやはり一万二千二十二円という財政対策をやる前の標準報酬に押えております。九十五億という数字は、これはずっと前の私どもの推算見込みでございまして、今日の状態におきましてはあまり論議の対象にならないと存じまするけれども、そのときにおきましても標準報酬につきましては大体同額程度の推定をいたしておるわけでございます。
  74. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、あなた方の、この健康保険法等の一部を改正する法律案に関する参考資料の九一ページに見込み額と予定額というのがありますね。この見込み額の方は二十三億の一部負担や何かやらなかったときの案ですか。
  75. 高田正巳

    高田(正)政府委員 さようでございます。標準報酬の等級改訂区分の変更とか、あるいは一部負担とか、そういうふうな今回御審議を願っておりますことをやらないとして、どういう見込みになるかという数字が、その見込み額というところにあげてあるわけでございます。
  76. 滝井義高

    滝井委員 わかりました。そうしますと、大きい変化を見れば、三千円を四千円に上げたところと、三万六千円の限界を五万二千円にしたというこの二つのために二百円の差が出てきた、こういうことなんですか。いわゆる大ざっぱな説明丁としては……。
  77. 高田正巳

    高田(正)政府委員 大体大ざっぱに申しますと今先生がおっしゃるようなことでございます。
  78. 滝井義高

    滝井委員 それならば、これもあとでよろしいから、一つ資料を出して下さい。そうしないと、ぼくら計数の計算がわかりかねるのです。そこで、次には一部負担です。今度の改正で一部負担が出ておるわけですが、先日与党の中村委員から、一部負担は家計にどういう影響を及ぼすかということについて御質問があったが、答弁がなかったのです。家計にどういう影響を及ぼすかと言ってもなかなかむずかしいことになるのですが、この前それに対して大臣から、外来は一人平均二百十七円だ、大して影響はありませんという御答弁があったのです。ところが、たとえば二十三億を五百万人——五百三十一万人と見ておるようでありますが、三十一万を切り捨てて五百万と見ましても、年間一人四百六十円なんですね。半額にしても、月三十八円の半額で、十九円になるのです。これは小さくない。一人平均外来が一年間二百十七円だというのに、これに約二百円以上のものが加わってくると、一人の負担は、これは入院外来を加えることになりますけれども、外来だけに換算すると、四百円以上になることになると倍になるのです。小さくないのです。だから家計に及ぼす影響についてある程度数字的な説明をしていただく必要があると思うのです。
  79. 高田正巳

    高田(正)政府委員 家計に及ぼす影響はどうかという御質問でございますが、これは非常にめんどうな問題でございまして、家計の方の分析からいたさなければなかなかお答えいたしかねますが、大臣がこの前申しました数字は、私どもの資料によりますれば、入院外患者一人当りの平均負担額を推定いたしますと二百十七円四十二銭、歯科におきましては百二十七円五十六銭、入院におきましては千五百二十二円五十七銭という数字で、これを全部に平均をいたしますと患者一人当りは二百二十七円三十五銭ということに私どもの推計では数字が出ております。これが家計に及ぼす影響という御質問の御趣旨が私よくわかりませんですが、とにかくそれだけのものが家計の負担になるということでございます。
  80. 滝井義高

    滝井委員 今の二十三億を負担しますと二百二十七円、今あなたの御説明になった外来、歯科、入院のほかにふえる、こういうことなんですか。
  81. 高田正巳

    高田(正)政府委員 入院患者の場合にどれだけ一部負担がふえるか、一般診療の外来でどれだけふえるか、歯科でどれだけふえるかということをそれぞれ計算いたしましたのが先ほど申し上げました数字で、それらを全体的に平均をしてみると二百二十七円という数字が出てくるわけであります。
  82. 滝井義高

    滝井委員 全部平均して二百二十七円三十五銭だそうでございますから、二十三億が家計にどういう影響を及ぼしてくるかということなんです。一万一千円を取っている零細な層、これが入院をすれば六割になってしまって、六千円かそこらにしかならないのです。あるいは独身者になりますと二千四百円くらいしかもらえないのです。そういう点から一部負担平均的に見ていくと、これは相当大きく家計を圧迫することになるわけです。このほかに、あなた方の総医療費の中に出ているあの百五十七億とかあるいは百六十八億とかいう薬局に支払う売薬代が入ってくるのです。売薬の分も当然家計に入ってくることになる、医療費としては。そういう零細な所得階層ほど売薬を多く買っている。少くとも健康保険考える場合には、健康保険だけだというような針の穴から天をのぞくような施策ではだめだと思う。やはり一カ月一万一千円の賃金を取っている勤労者の家計にいかなる影響を一部負担が及ぼしてくるかという総合的な観察の上に立たなければいけないので、健康保険だけの数字を割算して二百二十七円三十五銭ということでは済まされないと思うのです。そこで、そういう点でどういうことになるのかもうちょっと御説明願いたい。
  83. 高田正巳

    高田(正)政府委員 先ほど申しました数字に誤解があるといけませんので、もう一度言い直さしていただきます。二百二十七円というのは従来の初診料四点、一部負担分を含めて二百二十七円でございます。これを分解いたしますと、従来のものが約四十七円、今回の一部負担として拡張されました部分で負担がありますのが百八十円、これを足しますと二百二十七円何がしになる、こういうことでございます。
  84. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、今回の二十三億というものを含めて二百二十七円三十五銭、こうですか。さいぜんそうですがと言ったら、そうでないと言い、今またそういう説明をされたのですが、ちょっとはっきり……。
  85. 高田正巳

    高田(正)政府委員 百八十円三十一銭という数字が出ておりますが、二十三億分は百八十円三十一銭に当るのです。従来の初診料一部負担を願っております分が四十七円という金額に当るわけであります。
  86. 滝井義高

    滝井委員 それでようやくわかりました。従来の四十七円の負担が、今回の一部負担によって百八十円だけ家計に影響を及ぼしてくる、こういうことになる。そう早く言ってくれればすぐわかるのですが、回りくどい御答弁をなさるものですから……。しからば、今度は医療機関にはどういう影響が一部負担によって及んでくるかということです。これを一つ説明願いたい。乱診乱療を防ぐというようなお言葉もよくお使いになったと思うのですが、その結果どういう影響医療機関に及んでくるか、これを御説明願いたい。
  87. 高田正巳

    高田(正)政府委員 私ども医療機関に及ぼす影響といたしましては、そういうものを窓口でおとりを願うという事務と申しますか、そういうものが付加される、こういうふうに考えておるわけであります。その他の影響につきましては、これは結局推定でございまして、どういう影響があるかというふうなことにつきましては、それぞれ個人々々の推定をいたすよりほかしょうがないわけであります。それらの推定につきましては、私どもとしましては、何とも今申し上げられない次第でございます。
  88. 滝井義高

    滝井委員 医務局長さんはおいでではないですね、統計学の大家でなかなか推計が得意なんですから……。  やはりこういう政策をお立てになったときには、その政策がどういう影響を及ぼすかということは、当然保険局としても私はお立て願わなければならぬと思う。それで初めて一部負担をやったときには、あとでまたお尋ねしますが、黒字が出るとか、赤字がどういう事情で減少するとか、こういう見通しが立つのです。そのための政策というものは、私は現在の客観的な百億の赤字の中でとられておる政策だと思う。従って医療機関にどういう影響を及ぼすか、これがわからずしては、今の御答弁ではちょっとナンセンスだと思います。現在少くとも病院においては一四%、診療所においては七%の赤字がある。この赤字が増加するか減少するか、少くともこういう点まではやはり明らかにされなければならぬと思うのです。それを、将来は推計でございますからそれはどうもわかりませんということではなくて、まあ推計でも、あなた方のいわゆる可能な範囲の推計というものはできるはずだと思う。この点一つもう少し明白にしていただきたいと思うのですが、わからなければ——医務局の方でも当然こういう医療機関の赤字というものを宣明されておりますから、だからそれが今度はこの一部負担によって、いかにその赤字が変化して動いていくかということは、当然あなた方医療機関を扱う医務局なり、保険局なりとしてやっておかなければならぬと思うのですが、わかりませんか。
  89. 高田正巳

    高田(正)政府委員 現在の医療機関の経営状態が赤であるか、黒であるかというふうなことにつきましては、いろいろ議論のあるところでございます。従いまして医療機関の経営にこの一部負担がどういうふうな影響を及ぼすだろうかということにつきましては、私どもとしては正確な資料を持ち合せておりません。さっき申しましたようにあくまでもこうなるであろう、ああなるであろうという想定の上に立っての議論でございまして、これらをいろいろ具体的に数字的に推定をいたすことは不可能でございまするので、私どもといたしましては、先ほど申し上げましたこと以上には申し上げられないだろう、かように思います。
  90. 滝井義高

    滝井委員 そうしますとどうですか、一部負担をやったために医療機関の収入というものに増加は来たさない、少くとも医療機関の収入が減収するであろうということは考えられますか。増加をするとお考えになるか、減少するとお考えになるか、どっちをお考えになりますか。
  91. 高田正巳

    高田(正)政府委員 医療機関の収入は同じであろうと思います。
  92. 滝井義高

    滝井委員 同じということをおっしゃったので、私たちは具体的に今度はそうでないことを一つ証明しなければならぬと思うのです。そこであなた方が医師の総辞退に伴って動員をしようとしておる赤十字について具体的に見ていけば、一番よくわかる。公的医療機関とは何ぞやということなんです。公的医療機関というのは、無税なのだから少くとも医療で利潤を取ってはいけない機関だろうと思う。ところがその公的医療機関というものが、現在は開業医以上の営業を始めたということです。国立病院もそうです。国立病院も現在はもう公的医療機関ではありません。これは保険局長が一番よく知っておると思うのです。今私は人道と博愛を目的としておる赤十字社の実体を見てみたいと思うのです。いいですか。昨年、三十年の九月に点数の改訂をやられました。その結果開放性の結核患者の入院については、二点の加算があったのを削除いたしました。その二点の削除の結果、赤十字にどういう変化が現われたかというと、今まで赤十字の初診料は一般患者は五十円でございました。ところが二点の削除をされたために、赤十字はやっていけなくなった。そこで二点の削除に見合うだけの金をどこからか出してこなければならぬので、いかなる対策をとったかと申しますと、普通患者で五十円の初診料を百円に昨年の九月以来上げました。その結果ちょうど赤十字はとんとんになったのです。いいですか。健康保険をあなた方が切るならば、そのしわ寄せは一体どこへいくかということなんです。健康保険を切ったために、あなた方が金科玉条のごとくに、三千万人の国民に早く保険を作らなければならないという、その未組織の三千万人の国民に転嫁されておるということなんです。一体これはどういうことなんですか。保険局長現実にやってみて、二点を削ったためにそういう結果が出てきた。これは一体どういうことですか。
  93. 高田正巳

    高田(正)政府委員 昨年の九月に結核性の患者について二点削除いたしましたというお話でございますが、あれは従来開放性の結核であって、しかも従ってそこに特別な措置をいろいろ必要とするもの、こういうものに対しては、特別な加算を認めてもよろしいということになっておったのを、開放性の結核と申しましても、非常に医学が進歩いたしまして、いろいろ検査とか何とかいうことも進歩いたしまして、区別ができないように実際の運用がなって参りましたので、これを従来の規定の趣旨を非常に厳格に体するような格好に変えたわけでございます。従って今まで二点を何でもかんでも加算をしておったような運用について、それをやめたという改正が、昨年の九月の改正でございます。それは私どもやったのでございますが、その結果、今の日赤が五十円から百円に自由診療の初診料を上げたという仰せでございますが、私はそのことにつきましては、今まで聞いておらないのでございましたが、それとこの二点削除との問題がどういう関係であるのか、私も聞いておりません。従ってただいま、お前がそういうことで片一方保険点数を削っておるからこういう結果になるという仰せでございますが、赤十字がなぜこれを上げたかということについては、私どもは聞いてみなければ何ともお答えができないと思います。
  94. 滝井義高

    滝井委員 公的医療機関がこの通りでございます。とにかく五十円の初診料を百円に上げておる。このことなんです。上げなければやっていけないから、上げていることは確実なんです。いいですか、赤十字社というところは厚生省のお役人が行っているのですよ。副社長は多分元の厚生次官でしょう。あなた方のいわば先輩が行っておるところです。しかもあなた方が保険医の総辞退に対して動員しようとするその医療機関ですよ。その医療機関が開放性結核患者のわずかに二点加算を削除したがゆえに、五十円の初診料を倍の百円にしてしまった。百円にしなければやっていけない。さらにこの人道と博愛をもって鳴っておるはずの赤十字の人件費を見ると、大学を卒業して五年ないし六年たっても医者の給料が三千円か五千円ですよ。これが公的医療機関の実体なんです。あなた方は国立病院のわずかになけなしの一万円以下の金をとるつき添い婦のわずかに四千人の、その者のためにわずかの金も出さずにそれを首切って、これが公的医療機関なりと掲げていっている。こういう実態が公的医療機関です。  さらに驚くべきことは入院料なんです。これは人道と博愛をもってなっている病院なんですよ。私はここには健康保険患者が一ぱい詰まっておると考えておりました。ところが驚くなかれ、公的医療機関というものが、開業医以上の営利主義です。私はここに日本赤十字社中央病院入院案内というものをもらってきました。人道と博愛をもってなる病院の特別室A、一室の収容人員が一人です。一日の入院料が二千二百円、冬季一日の暖房料が百円です。特別室B、二人、一日の入院料千円、冬季一日の暖房料が百円です。そうして特一等、甲一等、乙一等、特二等、甲二等、乙二等、三等というのがずっとあります。三等は一室の収容人員が八人から十六人です。一日の入院料が四百七十円、これは健康保険以上です。健康保険では入れません。しかも冬季一日の暖房料が五十円つくから、五百二十円です。健康保険は三等で五百二十円で入れますか。差額を取られる。これでは一万一千円の政府管掌の諸君が、大臣、入れますか。それに入院をしたら一日に差額徴収をとられて、その上にあなたの政府原案によれば、一日三十円ずつの入院料を、差額徴収のほかにとられるでしょう。それじゃ大へんじゃありませんか。これでは健康保険というものは、あなた方は日本の社会保障を前進せしめるというけれども厚生省の次官をしておった人が、そこの副社長か何か知らぬけれども、大幹部に入っておって、しかもその人道博愛をもって目的としておる医療機関が、五年、六年大学を通って修業した医者には、わずか五千円か六千円の金を出して、しかも六百ばかりベッドのあるうちで、健康保険患者が入れるのは百ばかりしかない。あとは特別室とか特一等とか甲一等とか、まるっきり階級を六つも七つもつけてやっている。しかもこの公的医療機関を、保険医の辞退に対して、大臣は動員せられる。これは動員したって、政府管掌の健康保険の被保険者は、入ることはできません。こういう病院が、人道と博愛をもってやっておる。国立病院も同じだ。国立病院も差額徴収をとっている。とっていないとは言わせない。国立病院もとっております。三等で、健康保険に全部国立病院が開放しておりますか。開放しておらないはずだ。差額徴収をとっている。差額徴収をとらなければ、現在の公的医療機関、税金を払わない医療機関は、やっていけないのですよ。この点は何とあなた方が抗弁しようと、ちゃんと私はもらってきておる。大臣保険では三等に入れません。どうして病人を赤十字の三等に入れてくれますか。一万一千の給料で、しかも病気で休んだときには、その六割しかもらえませんから六千六百円です。六千六百円の中から差額を出し、家族の生活費を出し、しかも今度は一部負担を九百円ずつ出さなければならぬ。これでどうしてできますか。どうするのです。これが税金のない公的医療機関です。国立病院も同じです。国立病院も差額徴収をいたしております。これを御答弁願います。
  95. 高田正巳

    高田(正)政府委員 ただいま保険の取扱いにおきましては、入院の部屋代といいますか、入院料だけにつきましては、ただいまのような取扱いをいたしております。すなわちある意味における差額徴収を認めておるということ、しかし保険をお支払いする額は一本でございます。今滝井先生の御質問は、保険ということに関連をしてでございまするが、要は日本赤十字社の経営する病院の経営方針が、日本赤十字社の本来の目的に合うか合わないかというふうな点についての御意見のように拝聴いたしました。(「そうじゃない、公的医療機関のことを言っておる公的医療機関ですら保険では経営できないじゃないかということを言っているのです」と呼ぶ者あり)さような御意見でございますので、私どもといたしましては、最初申し上げましたように、入院料だけにつきましては、これはそういう扱いをいたしております。しかし保険は、お支払いをするのは一本でございます。
  96. 滝井義高

    滝井委員 あなたはそうおっしゃいますけれども、病院に行って、保険患者と一般の患者と二人並んだ場合に、薬価平均薬価でいっておる。片っ方はどんな薬を使ってもいいのですよ。医療に大幅な差ができるのです。そうしますと保険患者というものは、公的医療機関だから、博愛と人道をもってなる赤十字だから、おそらくまさか高いお金を出しておる人とわれわれ貧乏人とは差別待遇はしないであろうといった場合に、明らかに差別待遇が行われてくるじゃないですか。目の前で行われてくる。医療というものはきわめて人情の機微をついておかなければいけないのです。私はその人情の機微をあなたに御説明しておる。御質問しておる。明らかにこれならば、健康保険患者は赤十字に行ってもしおしおとしてしか帰ってきません。健康保険では三等に入院ができないのだから……。しかもそれが厚生省のあなた方の先輩が行って大幹部になっておられるところなんですよ。しかもあなた方は公的医療機関だといって、保険医の総辞退には業務命令まで出そうかとさえ考えておるところなんですよ。こういうところでこのていたらくなんです。これは一体どういうことになるのですか。こういうことで、しかもあなた方はわずかに零細な開業医がちょっと悪いことをすれば、四十三条を発動してやる。大きな大医療機関というものは何でもない。しかもこの赤十字の一点単価は何ほどなるかというと、一点単価は二十円になっておる。自費を入れますと二十円でなければやっていけない。こういう東京の、厚生省の足元の博愛と人道をもってなっておる公的医療機関がこのままに放置されておって、顧みて他を言うなんということは私はおかしいと思うのです。あなた方は人にえりを正さしめるならば、まずみずからが正してこなければいかぬと思うのです。隗より始めなければいかぬです。みずからの足下に、しかもあなた方の先輩が行っておってこのざまなんです。入れぬじゃありませんか。どうですか、三等に一つ入れるようにしてくれませんか。保険証を持って行けば入れるようにしてくれませんか。これはどうです。公的医療機関ならば特等とか特一等とか、おやめさせにならぬですか。おやめさせになったらどうです。局長の答弁は要りませんから、大臣に、この点はきわめて重大な点でございますから、この公的医療機関を今後私たちはやはり正さなければならぬと思う。国立病院も同じです。大臣は国立病院が差額徴収をやっておることをお聞きになっておると思います。国立病院も差額徴収をやっておりますよ。だからそういう差額徴収を公的医療機関は一切やめさせる、こういうことができるかどうか——局長ではなくて、大臣にお尋ねしておる。あなたには朝から大がい聞いておるのだから、大臣に……。一番大事なところです。保険行政の基本に関する問題ですから……。
  97. 小林英三

    小林国務大臣 今滝井さんのお尋ねになりました国立病院あるいは赤十字病院等におきまする差額徴収の問題につきまして、今私はつまびらかにしておりませんから、一応局長から答弁させます。
  98. 高田正巳

    高田(正)政府委員 大病院も国立病院も私立の私的医療機関も、小さい診療所でございましょうと、私ども保険の立場からこれを区別しては取り扱っておりません。同じような取り扱いでございます。従いまして個人病院でございましょうとも、非常にりっぱな一人部屋というようなものにつきましては入院料に差額を設けておられます。しかしながら保険がお払いする入院料というものは大体きまっておりますから、いわゆる普通で申せば、大部屋の料金をお払いするわけでございます。従ってその差額について病院の方で患者からお取りになることは、この部分だけについては先ほど申し上げましたように取り扱い上認めております。これは日赤でございましょうと、国立病院でございましょうと、私立の病院でございましょうと、あるいは小さい有償の診療所でございましょうと、同じことでございます。それで今のその点はまず御了承を得たいと思いますが、日赤でも保険の愚考を扱ってもらっておりますので、その契約の内容がどういうことになっておりまするか、すなわち保険でお願いをしました場合に、普通の大部屋で治療を受けました場合に、それだけで差額徴収をしないということになっておりまするか、その点は——あるいは滝井先生は今の入院案内ということは一般の自由診療の場合の入院案内ではないだろうかという、その点は不明確でございますが、保険患者であれば、保険点数で本人から差額徴収をしないという扱いにしておりまするか、その点私ただいまよく承知をいたしませんので、調査をしてお答えを申し上げたいと存じます。
  99. 滝井義高

    滝井委員 実情はそういう実情だということなんです。公的医療機関も営利主義でなければやっていけない段階、保険がやっていけないという段階なのです。だから赤十字社の経営を、あなた方の言うように今の点の点数のままで三千万人の未組織の国民を保険の形で再編成してごらんなさい、やっていけません。それが私の言いたいところなのです。やっていけない。今言ったようにわずかに二点の開放性結核患者の削除が行われたというだけで五十円を十円上げなければならなかった、たまたまその額が一致しておった、こういうことなんです。そこで公的医療機関がそういう実態であるということを御認識いただいたならば、しからば今度、一部負担というものをあなた方の案内のように初診の場合五十円、再診十円、注射投薬価の場合三十円、入院三十円を課したらどういう影響が出るかということなんです。そこで私自身も経験がありますし、割合統計的なあれがありますが、これはあなた方の手元にも行っておるかと思いますが、尼崎でやったことがある。去年の一月から三月まで三カ月の間で被扶養者の半額負担医者の窓口で支払わずに、基金から確定通知があった後に組合から医師に支払う、こういう形をとった。それからいま一つの方法は、今度は四月からは先に患者が窓口で半額だけを払っておいて、そうして今度は確定の後に組合から患者に払う、こういう方法をとってきた。いわゆる患者医者に行ったときには半額をまず払わぬでもよろしい、そしてそれはあと医療機関に払うという方式、先に患者が払っておいてあとから患者お金をもらうという療養費払いの形なんですね、そういう療養費払いの形はちょっと考えると患者が金をもらうという点は同じなのです。ところが患者が金をもらうということについては同じだが、先に現金を出すかどうかということによってどの程度の影響が出てきたかと申しますと、これは実に大へん影響が出てきました。それは件数においては二五・六%減った、それから点数においては三四・二%減った、それだけの変化で減りました。これは私自身で経験があります。私自身が勘定から差し引くことを約束をして治療をしたときには、みんな早く病気を見せてくれます。ところが今度は現金で払わせることになるとばったり来なくなる。これはもう私自身が経験をいたしております。これが今度は一部負担という場合を考えてみると、どういう結果が大体出てくるかということなんです。さいぜん私は薬で御説明申し上げました今度の暫定案で言っても、おそらく一部負担をやった場合には、現在の本人と家族との状態を考えてみると、本人は今一件当りの実日数というものは五・八日です。そうしますと家族は四・五日で、これは一・三だけの開きがある。今度の簡単な投薬とか注射だけのいわゆる十五円ぐらいのところならば、三十円負担をしますと本人の負担の方が多くなります。多くなる場合が出てくる。そうしますとその一部負担の結果はどういう結果が出てくるかと申しますと、これは推定になりますが、私はおそらくそう誤まりなきものと考えます。本人の五・八日の一件当りの実日数というものがおそらく四・五ぐらいに下ると見ております。四・五に下ると一体どの程度の金になるか。詳しい計算は時間がかかるから言いませんが、昭和三十一年度の医療費に換算をしてそれを見ていきますと、少くとも三十三億九千五百七十九万四千百五十九円——三十三億ぐらいになって減収します。しかもこれは外来だけです。これにさらに入院がプラス・アルファとして加わり、歯科がプラス・ベータとして加わっていく。そうしますと患者は二十三億払い、さらに今度は病院に行かない低下の分ができて、その他のものはどこか売薬そのほかで必ずまかなわれてくる、こういう形になる。そうしますと医療機関の面というよりか、保険財政の浮く金は二十三億と今の三十三億、五十七億浮くのです。五十七億にさらに入院、歯科が加わると、五十七億よりはるかにこえたものが一部負担によって浮いてくる、こういう格好になってくる。これは私が午前中にも申したように保険経済にとってはなるほど黒字が出て、あなた方は万々歳です。あなた方は、保険局長の首も飛ばずに済むでしょう。末長く名保険局長といわれるかもしれません。しかし無事の大衆というものは泣かなければならぬということです一将功なり万卒枯るとはまさにこのことなのです。こういう点はやはり大臣なり保険局長にほんとうに良心があるならば、もつと私は考えてもらわなければならぬと思う。ただ推計で、どうも事務だけがふえてあとは減りませんなんという答弁は、どこからも出てこないと私は思う。前に現金を払うかあとで払うかだけでもって、最前申しましたように二、三割の違いが出てくる。しかも具体的な数字でこうやってみますと、やはりこれは医療機関から言えば二、三十億の減収、保険経済から言えば黒字の形が出てくるということなのであります。こういう点は、あなた方はそれでもなお減らぬとでも申されますか。さいぜんの赤十字の例、今のような状態、こういうことからお考えになっても、私は明らかに受診率の低下を来たし、日本社会保障制度の急激な後退を来たす、しかもその社会保障の行われておる健康保険そのものは急激に内容の低下を伴っておるということは、これは午前中に私が指摘した通りです。それを今度は薬剤師諸君医者両方からの医療の低下ですから早いですよ。それでもなおあなた方が責任を持って、日本の医療を隆々たる発展の方向にさせてみせるのだという御答弁をいただければ、私はじっと傍観させていただきたいと思う。そういうことができますか、まず御答弁をいただきたいと思います。
  100. 小林英三

    小林国務大臣 今の滝井さんの御意見は、これはあなたのごらんになった推定による御見解だろうと思う。私どもはそうは思わない。いつも申し上げているように、健康保険のこの改正案というものは、これはいわゆる社会保障の確立の促進のために、また高度の医療制度というものを保ちながら健康保険の発達、向上をはかるということで、改正案を出したのでありまして、今のあなたの御意見によりますと、あなたの推理です。これは見解の相違だろうと思います。
  101. 滝井義高

    滝井委員 それならばあなたの方の推計を出してみて下さい。推計ができないから私は例をあげたのに、大臣は逆襲してきた。だから一つ厚生省の推計を出して下さいというのです。絶対に受診率が下らぬなら下らぬ、これでよろしいです。それならば私は了承いたしましょう。あなたの方の推計を一つ出して下さい。今局長事務が繁雑になるだけで、他は何も変化はありませんという答弁だった。大臣も、事務が複雑になるだけで他に影響はない、これならば私はその答弁を了承いたします。私はその答弁には反対でありますが、厚生省がそういう御答弁であればそういう御答弁をいただきたい。
  102. 小林英三

    小林国務大臣 これはもうたびたび事務当局からもお答え申し上げておりますように、三十一年度の財政計画にいたしましても、その他の収入見積りにいたしましても、支出見積りにいたしましても、やはりこういうふうないろいろな今日までの積み上げました数字に基きまする推定でございまして、厚生省といたしましてはこういうように推定しておる、こういうことであります。
  103. 滝井義高

    滝井委員 その推計を私は言ってくれというのです。だから、あなたの方でこの一部負担をやっても日本の医療機関の減収はない、受診率も低下しないという御答弁があればいいのですよ。保険局長は、収入は少しも変らない、変化はありませんという答弁だった。その通りならば、私もその通りだ、こう言って下さればけっこうです。大臣は初めわれわれには推計があるのだ、こうおっしゃったから、推計があるのならその根拠を示して下さいというのです。私は推計の根拠を示した。それでは大臣の推計の根拠一つ示して下さい。
  104. 小林英三

    小林国務大臣 今私が申し上げておりまするように、厚生省といたしましてはいろいろな数字に基きまして、そういう推定のもとに予算を立てたのであります。ですからあなたの推定と私の方の推定とは見解であるということを申し上げました。
  105. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、医療機関の収入は同じだ、決して受診率の低下はない、こう理解して差しつかえありませんね。——そういう御答弁をいただいたので、確認をいたしておきます。  そこで、それならば、大臣に御答弁に立っていただいたのでお尋ねいたしますが、あなたの方で財政対策をした場合としない場合とでは、医療給付費が違っております。財政対策をしない場合は八千三百四十七円八十一銭三厘です。した場合は七千七百九十七円七十九銭八厘です。五百五十円の違いはどうして出ましたか。大臣、御答弁。
  106. 小林英三

    小林国務大臣 数字に関する問題ですから、事務当局から……。
  107. 高田正巳

    高田(正)政府委員 それは二十三億五千万円ほどの一部負担がまずございますので、その関係で給付費はそれだけ減るわけでございます。しかしそれは患者から医療機関に支払われるわけでございますから、別にお医者様の収入には影響はない、そういう推定をいたしておるわけでございます。
  108. 滝井義高

    滝井委員 二十三億じゃありません。いいですか。これは八千三百四十七円八十一銭三厘と七千七百九十七円七十九銭八厘ですから、腰だめ的な計算をしても五百五十円違いますね。五百万にしても五百五十円ならば二十七億五千万円ですよ。違うじゃありませんか。
  109. 高田正巳

    高田(正)政府委員 私は一番大きなものを申し上げたわけでありまして、支出面の対策といたしましては、そのほかに薬価の引き下げその他で六億というものを見ております。従いまして二十三億五千百万円とその六億とを足しましただけが、財政対策をやる前とあととでは医療給付費に対して違いが出てきているわけであります。
  110. 滝井義高

    滝井委員 この前は薬価対策というものがきわめてあいまいもこたるものだったですね。薬価対策については明白な御答弁をいただいておりませ一ん。三億というものは全くばく然たるものだった。ばく然たるそういうものを持ってきて、あたかも金科玉条のごとく大臣は断定をされた。減らない。医療機関は同じだ、受診率は下らない、こう言った。今のようなばく然たる答弁ではわれわれは納得できない。そういうばく然たるものを持っておりながら、われわれが数字をもっていえば数字でもって答えるのが当然なんです。その推計がまるきりいいかげんな推計では私は困ると思う。従ってもうちょっと明白に、薬価ならその六億なら六億をもっと具体的にしてもらわなければ困る。この前も三億というものを突き詰めていったら何が何だかわからぬで雲散霧消してしまったではないか。それは全く推計であります。腰だめ的推計であります。こういう薬務局長の御答弁があったはずであります。これは明らかに医療給付費を五百五十円も低く見ている。それはなるほど二十三億の違いがあったかもしれませんけれども、私はどうもそういう点が納得いかないのです。しかもこれは薬価対策その他においてもあいまいもこたるものである。数字を積み上げていたものなら、積み上げていったものらしく、もっときちんとした御説明が願いたいと思います。薬価対策をやるならば、三億というものが具体的にどうして出てくるか。少くとも一部負担については、あなた方は最新の投薬、注射ならば、十円のときは幾らだというふうに正確に出してくれた。薬価のときには六億幾らというものがある。しかも突き詰めていくとはっきりしないということでは困る。医療機関の所得が減少をしない、こういう御言明がありましたから、その点をもっと具体的にしてもらわなければならぬと思うのです。正確な数字でやって下さい。どうも厚生省の数字というものは出たとこ勝負で、いつもいつも変遷をしていくことは、与党の内部でも定評になっている。いつも違う。だからどれを見たらほんとうだかわからぬということは、与党の諸君もみな言っている。いわんや野党のわれわれに至っては何もわからない、示されないのだから。だからこれはそういうように五百五十円も財政対策をしたときとしないときとでは違う。しかもそれは二十三億の一部負担がおもなものだ、こういうようになっているようでありますが、もう少しそこらあたりを具体的に詳細に一つ説明を願いたい。
  111. 高田正巳

    高田(正)政府委員 今先生が御指摘の財政対策をやる前の医療給付費は、お手元の資料にありますように、四百四十三億二千六百八十八万七千円、財政対策後の医療給付費は四百十四億六百三十万九千円ということになっております。それでこの差額を五百三十一万で割りますと、一人当りの医療給付費の八千三百四十七円幾らと七千七百九十七円幾らとの差額が出てくるわけであります。それで今の四百四十三億何がしと四百十四億何がしとの差額は、先ほど私が申し上げましたように二十三億五千幾らのあれと一部負担の拡張分と、それから薬価等と申しましたが、薬価等の引き下げによる影響を推定三億、継続給付の受給要件の改正二億五千万円、それから完全寝具の取扱いの変更で五千万円、こういう六億という推定をいたしているのであります。それで二十三億数千万円の一部負担については正確な資料を出したけれども薬価の三億については正確な資料を出さぬじゃないかという御質問でございましたが、一部負担の推計の金額につきましては、過去にさような医療の頻度というものを調査いたしまして、その資料がございます。それから新しい予算におきましても、それを使って予算の推計をいたしておるわけでございます。従いまして、それらの資料を使いまして必要の推計が正確にできたわけでございます。ところが、薬価の問題につきましては、先般も当委員会で御説明を申し上げましたように、現在の保険の建前では薬価が下りましても——政府管掌で使いまする薬の全体の値段が下ったということになりましても、それがそのまま保険の財政にはね返らないようなしかけになっております。十五円刻みで払うというかっこうになっておりまするので、十四円の薬が十円に下っても保険から払う金は同じでございます。ただ十八円のものが十四円に下れば保険料を支払う金が変ってくる、こういうふうなしかけになっておりまするので、これについては正確な推計ができない、推計すべき資料がない、こういうわけでございまして、そのことを先般も御説明を申し上げたような次第なのでございます。
  112. 滝井義高

    滝井委員 そういうところはどうも納得がいきかねます。そこでこれはまたいずれ個人ででもゆっくり聞かしていただくことにしまして次に移りますが、今御説明いただいたように医療給付の方は一応二十三億、それから薬価、継続給付その他で六億出ておる。そういたしますと、その次の傷病手当金が、これは財政対策をした場合としない場合は、三十円五十銭、したときの方が今度は増加をしておる。それを一年間に直すと、五百万人にして一億六百五十万円くらいになる。これは一体どういうことなんです。
  113. 高田正巳

    高田(正)政府委員 それは先ほど滝井先生の仰せのように、傷病手当金の支給というものは、標準報酬の六割とか四割とかいうことでやりまするので、財政対策の方でこの標準報酬の等級区分を改定をいたしております。従って保険料は増徴になりますると、同時に支出の方もふえるわけでございます。
  114. 滝井義高

    滝井委員 今のようにそういう推定ができておるわけですから、これはおそらく三千円から四千円に上った十一万の人の中に何人病人ができる、それから五千円から六千円ですか、そういうワクのところに何人できる、こういう積み重ねができて、そうしてこういうものが出てくるわけです。そういうところではそれほどの統計の頭脳を働かして御推計のできるあなた方なんです。それが一部負担をしたために現在の日本の医療機関の所得にどんな影響を及ぼすかという推計はどうも私たちはできませんというのはおかしいのですよ。これは私計算してみたら一人で三十円五十銭の増加になっている。財政対策をしたときの方が五百万人にしても一億六百五十万円の増加なんです。保険局長はどうもわからぬ、医務局長さんどうですか。一部負担をした場合に、現在の日本の医療機関というものは、あなたの二十七年の自慢の御統計では、とにかく病院においては一五%、それから普通の診療所については七%の赤字だ。それでこれを一部負担をしたらどういう影響を及ぼすかということをお聞きしたところが、一部負担をしてもちっとも変りません、収入は同じであります、受診率の低下もないというような御答弁であった。ところが今言ったように、これは傷病手当金その他も段階を上げて、こう変って、なかなかこまかいところまで数字をはじいてこられておる。ところがその一部負担をしたために医療機関に及ぼす影響だけは変らぬとおっしゃる。ほかのものは全部変ってしまった。医務局長は専門家として医療関係の担当者、責任者である。一部負担をしても医療機関の所得は変化がないというあなたの御証明がいただけるならば私も安心ができると思いますが、受診率にも所得にも変化がないという、こういう御断定ができますか、どうですか。
  115. 曽田長宗

    ○曽田政府委員 一応医療機関の収入ということになりますれば、支払われる報酬が幾らであるかということが直接に響いてくるわけでありますが、ただいま問題になっております点については、医師に支払われる報酬というものには変化はない、ただその支払い負担するものが、保険組合の基金で払います分と、それから患者負担する分と、こういうところに苦手の変化を生じてくるということになりますので、その影響が間接に響いてくるかどうか。今御質問のありましたように、診療の頻度に影響があると考えるかどうかというお考えにつきましては、私はこれは影響が絶対にないとは申し上げかねる。しかしそれではどれだけの影響があるかということになりますれば、これは私ども今まで手にしておりますだけの資料では、確たる推定をするわけにいかない、確たる資料はないとしても、どの程度のものかということになりますれば、これは私どもとしても明確に申し上げるわけにいかず、またある程度めいめいが胸のうちに持っておる数字がありましても、これがきわめてわずかのものと考えるか、あるいはこれがわずかじゃなしに相当大きいじゃないかということは、またいろいろな方々の御意見によって違うところであろうと考えるのであります。
  116. 滝井義高

    滝井委員 私の胸の中に持っておる数字は、現在本人の一件当りの平均日数は五・八日、家族は四・五日、その差が一・三日ありますが、一部負担の三十円を注射投薬を受けるたびごとに負担するとすれば、大体において、本人が家族よりも多く負担する場合が、簡単な治療投薬の場合多くなってくると私は思う。だから私は現在家族が半額負担しても一・三日だけ本人より少いから、今後病気は簡単な治療が多いのですから、そうしますと、そのたびごとに三十円負担すれば、おそらく家族くらいになるであろうというのが私の胸のうちの数字です。それをお金に直すと、約三十三億くらいになる。あなたの胸のうちの数字をお聞かせ願いたいと思います。これをもって私は政府の責め道具にいたす所存はありません。これは将来の参考にぜひ御答弁を願っておきたい。そこであなたの胸のうちの数字、どの程度の受診率の低下になるかということを御説明願いたい。政府の見解でなくて、統計学者としての見解でもけっこうだと思います。一つあなたの胸のうちの数字を、私の胸のうちを聞かしたのだから、どうぞお願いいたします。
  117. 曽田長宗

    ○曽田政府委員 私非常に不敏でございまして、確たる数字を胸のうちに描く段階まで至っておりません。
  118. 滝井義高

    滝井委員 はなはだ不親切な御答弁でございます。これが赤字に悩んでおり、しかも公的医療機関と銘を打ちながら、営利主義を発揮しておる日本の医療行政担当の最高の責任者なんですね。困ったことだと思います。  そこで大臣にお尋ねしますが、そういうように現在の日本の貧しい所得階層の家計に及ぼす影響というものも、今まで四十七円のものが百八十円ということになると、これは四倍以上の増加になってきました。しかもわれわれの見るところでは、医療機関も相当の受診率の低下によって減収になる、こういうことなんです。しかし一面保険経済はそれによってある程度の黒字になっていくであろう、そういう情勢でございますので、大臣にお尋ねしたいのは、大臣は一部負担ではなくて保険料を上げることをお考えになったことがあるかどうか、これを一つ大臣にお聞きしたいと思います。
  119. 小林英三

    小林国務大臣 保険料を上げるということも今滝井さんがおっしゃいますように一つ考え方かもしれません。しかしこの問題につきましては、もうすでに三十年度におきまして千分の五上げておるのであります。ただいまの段階におきましては、さらにこれを千分の四上げるとかあるいは千分の五上げるとかということは私はどうかと思っております。
  120. 滝井義高

    滝井委員 これは保険局長でけっこうだと思いますが、二十三億をカバーするためには、保険料にしてどの程度引き上げたらまかないができるのでしょうか。
  121. 高田正巳

    高田(正)政府委員 そういう計算をしたことがあるのでありますが、私は今覚えておりませんので、また後ほどお答えをいたしたいと思います。
  122. 小沢辰男

    ○小沢説明員 千分の三・八くらいだったと思います。
  123. 滝井義高

    滝井委員 千分の三・八というのは、事業主と被保険者両方負担で三・八ということですね。
  124. 小沢辰男

    ○小沢説明員 二十三億を料率に引き直した場合の総計でございますから、この半々が負担分になるわけであります。
  125. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、千分の一・九というとお金に直したらどのくらいになりますか。
  126. 小沢辰男

    ○小沢説明員 実は御承知の通り、標準報酬に料率をかけるものですから、千分の三・八が十円か十五円か七円か八円かということはちょっとわかりません。
  127. 滝井義高

    滝井委員 大臣、今お聞きのように千分の三・八なのです。おそらく十円か十二円になると思う。わずかです。そうすると一カ月にこれだけ日本の病人が負担するならこれはむずかしいです。しかし健康に働いておる一万一千の給料の諸君負担をしていくのです。病人が負担をすれば一人が百八十円になるのですよ。これは標準報酬を六割しかもらっていないときの金から負担するのです。負担の困難さからいえば一万一千の六割で一部負担をするときと、一万一千そのもので健康なときに保険料千分の三・八負担するのとでは、その三・八を負担する方がずっと楽なのです。これは感情論でなくして、やはり政策というものは理性に立った政策でなくてはいかぬと思う。理性的な、合理的な、論理的な筋からいっても、この際保険料を上げるということが——こんなにごうごうたる反対の中においてもし政府が窮余の一策をとるとすれば、われわれは反対であっても、これの方が筋が通っていると思うのです。大臣はそうお思いになりませんか。
  128. 小林英三

    小林国務大臣 料率の引き上げという問題につきましては、今私が申し上げましたようにもうすでに千分の五上げているのでありまして、滝井さんの御意見でありますとこの方を上げた方がいいのじゃないかということですが、これは見解の相違でございます。ただいまの改正案によりますると、かりに在来の場合におきまして平均一人当り二百十七円、齒科の場合におきましてお医者さんにかかる人が百二十八円というような平均率も出ておりまして、むしろ、受益者というと語弊があるかもしれませんが、受益者がこのくらいの負担ならば今日の向上進歩しておる健康保険としてはいいのじゃないか、こういう見解のもとにこういうふうな一部負担をやらすようにいたしたのであります。
  129. 滝井義高

    滝井委員 見解の相違とおっしゃいますけれども、これは見解の相違という問題ではないのです。昨年保険料を上げたというのは、法律で、大臣お読みになってもわかるように健康保険法の七十一条の四で明らかにあなた方は千分の五十五から六十五の範囲内においては保険料を自由に上げ得るのです。全権委任されておる。今度は全権委任の範囲外で、客観的な経済情勢と患者負担力等を見て、二十三億が必要なら千分の三・八を上げたらどうだというので、これは見解の相違とか何とかいう問題じゃない。この前と違うのです。去年上げたとかおっしゃいますが、それまでは上げてもよろしいということなんです。だから、上げることに反対しても、川崎君はこれは法律でまかされておるといって、私たちの党がこの条文を削除する法律案を出したって、審議をしない前にやってしまった。こういう故事来歴のある条文なんです。だから今度は一つ法律でその千分の六十五というワクを三・八だけお広げになったらどうだということなんです。一部負担というものは、どう論議をしたところで、一万一千円をとる健康人が払うよりか現在病人でその六割の六千六百円しかもらわない人がこれを負担する方がひどいことは明らかなんです。それならば、社会保障制度を前進させるためには、貧乏な経済的に苦しい人にやらせるか楽な人にやらせるかといったならば、楽な人にやってもらった方がいいのです。これは保険の原理にも合うのです。その点もう少し伺いたい。
  130. 小林英三

    小林国務大臣 これは全く見解の相違だと思います。あの際千分の五上げました事態におきましても、あなたの方はもちろんでありますが、非常な反対があった。私はあらゆる点を勘案いたしまして、今日のこの際におきましては、むしろ現在の方法の方がよろしい、こういう観点に立って改正案を出したのであります。
  131. 滝井義高

    滝井委員 見解の相違ならばそれでよろしゅうございましょう。そうしますと、これはくどいようでございますが、私は、一つの対策として非常に極端な、保険料を上げるということは悪いが、悪い中でもまあ比較的いいだろうという問題を今やっておるわけです。その次には、最もいいことは、組合と政府との統合です。これはわれわれがぜひ大臣にこの前からやってもらうようにした、これは七人委員会でも御答申になっております。七人委員会でも、これをやれば現在の千分の五十八を六十九にすれば全体の事務費がまかない得るというのです。法定給付ならば現在の保険料を下げてもいいのです。千分の五十八にしてもいいのです。大臣、この点はどうです。これはちっとも手よごさずですぐできることです。
  132. 小林英三

    小林国務大臣 滝井さんの今の御意見は一応私はごもっともだと思います。ただこれは、滝井さんが御自分が行政の立場におられないでお考えになりますとそうなので、私もそう考える。しかし、組合は三十年の歴史を持って今日まで発達しておりますし、これを簡単に今すぐ健保の発達のために二つを一緒にしてぐるぐる回しにすればいいじゃないかという考えではいくまいと思う。この問題につきましては、私は当委員会においてたびたび意見を申し上げておりますように、今の三千万人の適用を受けてない方々もあることでありますから、われわれといたしましては昭和三十五年を目途として、こういう問題のすべてを勘案して国民皆保に向っていこうという考えを持っておるのでありまして、今の滝井さんのお話になりましたような問題もあわせて今後研究していくべき問題だと考えております。
  133. 滝井義高

    滝井委員 これであと八田さんがやられるそうですからやめますが、実は私は組合と政府管掌との統合の問題というのは、ずいぶんこの委員会で何回も主張いたしました。川崎厚生大臣の当時においても草葉厚生大臣の当時においてもしました。どの大臣も今の大臣の御答弁のようなことを言われますが、しかし一向これが緒につかないのです。今度はこういう画期的な健康保険改正をやられようとしておる大臣でございますから、これは私は御無理は申し上げませんが、一つほんとうに裸になって政府管掌と組合管掌とをどういう工合にやれば具体的に統合ができて、組合の、現在付加給付という既得権を持っておられる諸君も満足の形で手をつないでいけるかということを、一つ具体的に御研究になっていただきたいということを私は御希望申し上げておきます。これ以上申し上げません。それで次は保険医保険医療機関の問題になるのですが、八田さんが関連してやられるそうですから、あとでやります。
  134. 八田貞義

    ○八田委員 時間があまりないようですから、問題の要点をしぼって質問いたしたいと思います。   〔藤本委員長代理退席、野澤委員長代理着席〕 大臣は御出席はなかったようでありますが、去る十六日と十七日の二日間にわたりまして、衆議院の社会労働委員会で九人の公述人を招きまして健保改正案についての公聴会をやった。その際簡単に申しますと、同法案に賛成いたしましたのはただ一人でありまして、残りの八人の方はいずれも反対いたしました。その反対の論点の第一となるものはどういうことかと申しますと、まず全労会議書記長の和田氏は、第一段として国庫負担、第二段は保険料率の引き上げ、第三段としては借入金で赤字解消を考えるべきだ、こういうことを述べておられるのです。これに対しまして私いろいろと分析的に質問いたしたいのでありますが、まず第一に保険料率の引き上げにつきまして、ただいま厚生大臣はこれに対して反対であるというような見解がありました。そこで私は保険料率の引き上げがどうしてできないかということを大臣にお伺いいたしたいのであります。
  135. 小林英三

    小林国務大臣 私は今滝井さんの御質問に対しまして申し上げましたのは、できるとかできないとかいう問題ではございませんで、つまり保険料率はすでに厚生省にまかされております範囲内において、千分の五を上げてしまった。しかし法律改正等によりましてこれはできないことはないことは事実であります。ただ私はあの当時におきましても、この料率引き上げということは相当の反対がありましたし、直ちにこれをさらに千分の三・八にいたしましても、九にいたしましても、一部負担に見合うだけの金額を上げるということは、今日の段階においては無理だろう、むしろただいま改正案に出しておりますような一部負担の方がよろしいんだろう、こういう観点に立って改正案を御審議願っておるわけであります。
  136. 八田貞義

    ○八田委員 大臣は現段階においては保険料率の引き上げはもうできない、こういうふうなお考えで、むしろ患者自身の一部負担の方が正しいのだ、こういうふうな御見解をお漏らしになったが、保険料率の引き上げに応じ切れないような経済状態にある今日の中小企業者の勤労者に対して一部負担が、できましょうか。その点見解の相違ではなくて、私は実際について申し上げている。保険料率の引き上げに応じ切れないような零細な所得者であるところの勤労階級に対して、患者一部負担というようなものが果して払えましょうか。大臣の御見解を伺いたい。
  137. 小林英三

    小林国務大臣 私は今われわれが考えております程度の一部負担であれば、支払うことができると考えております。
  138. 八田貞義

    ○八田委員 それでは私は大臣に、二十三億円に見合うような保険料率の引き上げについて事務当局から説明があったようですが、少し詳しく私の計算したところを申し上げてみたいと思います。現在政府管掌の事業所数は昭和三十年の六月の調査によりますと、二十三万八千七百七十七個所ある。被保険者数は、やはり昭和三十年の六月の計算によりますと五百八万五千六百三十二人であります。そこで一部負担の二十三億円という金をそのまま表面的な数字として考えれば、非常に高額なものに考えられますが、これを事業所数で割った場合、一体どのくらいの金になるとお考えになりますか。計算によりますと、一事業所当り八百三円の負担をすれば、二十三億円という金額が浮いてくるのです。そこで五百八万五千六百三十二人という被保険者数に対して今の事業所数で割りますと、今日一事業所当り二一・三人の従業員がいるということになります。そうしますと事業主が月々八百三円の負担をすることによって二一・三人の自分の従業員に一部負担というような不幸を押上つけるような、踏んだりけったりするようなことを避け得るのであります。自分の従業員が患者になった場合、その一部負担を肩がわりするということは、事業主の人道愛によれば当然の責務であると考える。しかも人道愛に目覚めた処置のためにどれだけの金を負担しなければならぬかといえば、八百三円であります。大臣いかがでしょうか。大臣のお考えをお伺いしたい。
  139. 小林英三

    小林国務大臣 今の八田さんの御意見は、二十三万事業所があるとすれば一軒の事業所で平均千円ずつ出せば一部負担はなくていいじゃないか、こういう意味でございますか。
  140. 八田貞義

    ○八田委員 そうです。
  141. 小林英三

    小林国務大臣 そこで私は今の料率の引き上げという問題よりも、受益者の諸君がわずかの一部負担によって健康保険制度というものが向上、進歩するのだから、むしろその方の一部負担で二十三億円を減収する方がよろしいということを先ほどから申し上げておるわけであります。
  142. 八田貞義

    ○八田委員 大臣は受益者という言葉を使っておられますけれども、これは非常な間違いであります。資金委員会でもそのような不謹慎な言葉を使っております。患者保険の利益を受けるのだから、健康保険の赤字を当然一部負担すべきだという意見あります事。これは非常な誤まりであると申さなければなりません。こういう受益者という思想は、患者が病気のためにもっと費用のかかるところを、健康保険のために出費が少くて済むという意味であります。なるほどこのような考えでいうならば、あたかも利益を受けるかのごとく錯覚を起します。さらに経済観から見た判断を下せば、患者の利益は大損が小さい損で済んだだけの消極的な利益ということになるわけであります。実際は病気をすれば収入は減り、幾ら健康保険でも出費がふえがちであります。患者は受益者丁というよりも、むしろ病気の被害者であります。低賃金の中小企業の労働者の中でも、経済的に一段と弱い病気の被害者である患者に、さらに負担をかけるということは、社会保障の後退であります。大臣いかがでしょうか。患者がほんとうの受益者でしょうか。
  143. 小林英三

    小林国務大臣 受益者という言葉は、先ほども滝井さんに対する御答弁のときも、語弊があると申し上げたのであります。私は今の八田さんのおっしゃるように病気にかかられて、そうして被保険者としておかかりになるということはむしろ不幸なことでありますから、受益者という言葉は言い過ぎだと思います。ただ私が申し上げましたのは、一方においては健康体の方もあります。これは少しもかからないで、保険料だけは納めておる方でありますから、その方に対して対比的に受益者という言葉を使ったわけでありますが、八田さんのおっしゃるように利益を受ける方じゃない、むしろ不幸なんだ、保険料を取られておっても健康体である者は幸福なんだ、こういう意味から考えましても、今八田さんのおっしゃる通りに受益者という言葉は穏当じゃないと考えております。
  144. 八田貞義

    ○八田委員 受益者のお考えは御撤回願ったわけでありますが、大臣にもう一点患者負担のところでお伺いいたしたいのは、組合管掌の方の保険料率は、政府管掌の保険料率に比べて高いか低いか、この点に対して事務当局から十分伺っておると思いますが、これに対する大臣の御見解を承わりたい。
  145. 小林英三

    小林国務大臣 今八田さんのおっしゃるのは、組合管掌の料率が政府管掌よりも高いか安いかということでございますか。——これは組合によりまして、許された範囲内においてそれぞれの組合で決定するのでございますから、政府管掌よりも高いものもありましょうし、低いものもあると考えます。
  146. 八田貞義

    ○八田委員 私は平均の率を伺っておるのです。
  147. 高田正巳

    高田(正)政府委員 お手元にお配りしてあります資料に載っておりますが、その資料の九十九ページに「9、組合管掌健康保険料率調」というところに書いてございますように、三十年の二月末では保険料率は六二・二二、三十年四月一日では六三・一五、三十年十月末では六三・二四ということになっております。
  148. 八田貞義

    ○八田委員 今局長説明されましたが、三十年二月末には六二・二二、三十年四月一日には六三・一五、三十年十月末には六三・二四となっております。これについてさらにこまかい分析の表は次のような表になっているのです。被保険者保険者の事業主との料率の折半の場合、あるいは一対二、一対三とかいうふうに料率の区分ができているのです。しかも組合管掌はこのほかに付加給付を行なっているところが非常に多い。そこで大臣にさらにこまかい点を御認識願うために申し上げたいのでありますが、標準報酬月額につきまして政府管掌は昭和三十年八月には一万一千百五十五円であります。組合管掌の方は一万七千百六十六円でございます。そこでこれらの被保険者分の保険料率について計算いたしてみますると、政府管掌の方は事業主と被保険者とが半々でありますから、三・二五%ずつであります。ところが組合管掌におけるこの料率の保険料の払い方の負担の割合をこの分析表によって計算いたしますと、組合管掌の被保険者分の保険料率というものは二・二四%となります。事業主の方は三・九八%となって参りまして、先ほど説明のあった三十年二月末において六二・二二となってくるわけであります。このように分析して参りますと、政府管掌の被保険者というものは、組合管掌の被保険者よりも六割も賃金が安いのにかかわらず、組合管掌の被保険者よりはるかに高い率で保険料を払い、しかもより少い給付を受けているということになって参ります。大臣は今のこの数字に対しましていかにお考えになりましょうか。
  149. 小林英三

    小林国務大臣 これは組合の方がすべて大きな企業のもとにできているものでありますので、財政的に非常に恵まれているのでありますから、政府管掌よりもはるかに給付もいいということはよく承知をいたしております。
  150. 八田貞義

    ○八田委員 大臣、このような実態になると政府管掌の被保険者というものは高い率の保険料を払って低い給付を受けている。この現実をお考えになったら二一・五人分の一カ月の補償が人命尊重という、そのにしきの御旗のものを守るための費用が事業主八百五円で済むのです。これを一部負担に持ってくることは私は人道上許すべきものでないと考える。現在組合管掌の事業主は高い負担をやっておるのです。私は中小企業が実際においてどのような状態に置かれているかは十分知っております。知っておりますけれども、八百三円くらいの月々の負担ができないはずはないのです。自分の使っておる従業員の生命を守るために、不幸から早く幸福に返すための人道主義に基いたら、友愛精神に燃えたならば、八百三円くらいの負担はやるべきであります。大臣、もう一回その点御答弁願いたい。
  151. 小林英三

    小林国務大臣 今の八田さんの御意見も、これくらいのものは中小企業の事業主が払ってもいいじゃないかというお考え方はあるのでございますが、私はむしろこういうふうな零細な政府管掌の二十三万事業場でありまするし、健保の赤字対策のためにも国庫がことしは三十億も金を出した、組合には出さないのでありまして、そういうことにいたしたということも一つ御了承を願いたいと思います。
  152. 八田貞義

    ○八田委員 時間がないということでございますから簡単にお尋ねいたしますが、大臣、どうもその点について私と大臣と社会保障に対する考えが非常に差があると思うのです。社会政策は果敢に実施しなければ社会党に負けます。私は社会主義と社会政策は違うと思う。社会政策を果敢に行うような政策をしない限り社会党に負ける。この点は大臣にはっきりとお願いしなければならぬ。そこで私は一部負担問題についてもいろいろと矛盾撞着があということを申し上げてみたいのでありますが、それはもう少しあとへ回しまして、そこで国庫補助として三十億円が出て参ったのでありますが、この経緯につきましては私は大臣とともに大蔵省に行って三十億円を取ったのでございます。その間の経緯はよく知っております。ただ私は三十億円というこの国庫補助がどのような基礎数字から出された三十億円であるか、その後大臣事務当局からいろいろ説明されておられると思いますが、三十億円の国庫補助の基礎となった点について大臣の御答弁をお願いいたします。
  153. 小林英三

    小林国務大臣 これはむしろ八田さんの今御意見のありましたように、八田さんみずからも私ども一緒に大蔵省に行かれまして、いろいろ御折衝を下さいましたお一人でございますからよくその当時の御事情も御承知だと思いますが、私はこの健保の赤字が出てくる問題につきましていろいろ検討してみました。ぜひ一つ四十億、医療費の一割くらいな政府の補助をさしたい、負担をさしたいというので、かなり大蔵省等にも折衝をいたしたのであります。これはたびたび私は当時大蔵大臣とも会いまして懇談をいたしたのであります。大蔵大臣といたしましても、一方においては先ほど申し上げたように三千万人という社会保険の適用を受けてない方もある。これらは国民として税金は取られながら自費で医療費を払わなくてはならない人が三千万人現にいるのだというような観点もございましたし、本年は三十億円、この三十億円も最初はもっと少かったのでありまして、私は被保険者の一部負担に相当見合う程度以上のものは国が補助してくれなくちゃ困るということで最後に、八田さんもいろいろ御心配を願いまして、三十億円になったというのは御承知の通りでございます。これがさらに大蔵、厚生並びに党との折衝によりまして、一時的のものでなしに、いわゆる社会保障の確立の見地からいたしまして健康保険財政に対して国が毎年補助するという法制化になったわけでございまして、私といたしましてはできるだけ多くの補助を国から出してもらいたいという最初からの主張であったのでありますが、国家財政の見地並びにただいま申し上げましたような未適用者の三千万人ということを考えましたりいたしまして、本年は三十億円にきまったわけでございます。
  154. 八田貞義

    ○八田委員 患者一部負担に見合う金として三十億円を出してもらったのだ、こういうふうに思想統一を厚生省でやっておられますが、そうしますと、患者一部負担の二十三億、こういう原案を作っておられるわけです。しかし患者一部負担の二十三億という金、これは一体どういう患者が一番金を使っておるのですか。医療給費の大額な金額を食っているのは一体どういうものでございますか。
  155. 小林英三

    小林国務大臣 これは八田さんもよく御承知のように、結核というものが非常に健保の赤字の大きなウエートになっていることは事実でございます。
  156. 八田貞義

    ○八田委員 結核が医療給費の上昇を来たしたということについては、大臣の赤字対策について、保険財政についていろいろとお話になったところも私は了承いたしておるのであります。ただ私は大臣に御参考までに申し上げたいのでありまするが、なぜ結核に対するストマイ、パスというような療養費を負担したから上ったかというと、これを言葉を悪く言うならば、二十七、八年のころにおいて十分とした結核対策を立てて、そうしてストマイ、パスを受け入れるべきだったのです。ところが全然そういった体系なしに無計画にそのまま結核の治療法を健康保険の中に導入した。もしもその当時厚生当局において結核の科学療法をそのまま入れれば医療費が上ってくることは当然なんです。これは対策を立てて受け入れるべきじゃありませんか。ところが対策を立てないで今日の赤字を生んできた、こういうふうに解釈せざるを得ないのです。もしもはっきりとした対策をとっておったならばこのような赤字の累増はなかったはずでございます。一体大臣いかがでしょうか。その当時において、医療費の増高と結核というものを結びつけて、ほんとうに対策を立てて、完璧な対策のもとに受け入れたかどうか、大臣事務当局からどういうふうな御説明を受けておられますか。
  157. 小林英三

    小林国務大臣 今の結核というものが健保の財政の上に非常に大きなウェートになっていることは、今八田さんのおっしゃいますように、既往におきまして、もっと結核対策というものと健康保険とマッチしていろいろ深い考え方があったならば、今日の健康保険の財政というものはこうまでならなかっただろうという考え方、これは私もある程度まで同感でございます。ただ私は現実の問題といたしまして、今日の日本の国内の健康保険にかかっておられます結核患者、ただいまこれをどうするこうするという問題につきましては、私はそれらの患者というものは、現実の問題として、今日、健康保険、あるいは結核予防法、あるいは結核医療というような扶助によらなければやっていけない人がたくさんあるのであります。しかしいずれにいたしましても、近い将来におきまして、結核の問題につきましてはよほど研究いたしまして、これらもあわせて今日の——先ほど滝井さんの御質問にもありました組合の問題、あるいは政府管掌の健保の問題、あるいは国民保険の問題、あるいは結核対策といたしまして、結核のみに特別何か保険負担をさせるとか、いろいろな問題が多々あると思うのでありますが、これらの問題はやはり至急に総合的に研究をいたして、そうして近い将来に解決すべき問題であると考えております。
  158. 八田貞義

    ○八田委員 将来の対策をお述べ下さいましたことは、私は非常にありがたく思います。しかし今日の医療費の増高が無計画な結核対策にあったということがはっきりとわかるのです。こういった無計画によって、ストマイ、パスを入れたということの責任を私は追及いたしたいのであります。簡単に言うならば、当時製事業者が、販売量の増高をねらうために、強力な圧迫を厚生省に加えて、そうして厚生省がそのままストマイ、パスを受け入れたと解釈されても、これは一言の弁解の余地もないと私は思うのです。しかもその後において医療費の増高に対してこういうような説明をしておる。ストマイ、ハスを入れたことはヒューマニズームの精神にのっとって入れたのである。ところが事務当局の無計画な何らの対策もない状態において入れたから今日の赤字が出てきたのです。自分が間違っておった対策のために今日の赤字が生まれたことに対して、ヒューマニズムの精神だといってごまかしておる。そこに私は自分として非常な憤激を持っておるのです。どうか大臣、決して大臣の責任とは申しません、過去においてそういうような無計画によってストマイ、パスをそのまま入れてしまったということについて、私は大臣に御認識願いたいということを申し上げておるわけです。  そこで、その観点から申しますと、この一部負担につきましても問題があるのであります。患者医療費の大部分、三分の一は結核と考えましても、再診日に患者負担をおっかぶせるということは医療の特質をゆがめて参ります。しかも再診の外来患者は赤字に対してどのような重さを加えているかと申しますと、これは事務当局から聞いてみればほとんど圧迫を与えていない。みな結核入院患者がずっと大きな圧迫を加えて今日に来ておる。こまかい数字を申し上げますると、時間をとりまするので別の機会に譲りますが、こういった点に大臣の御認識をいただきたいのであります。  そこで大臣は、先ほど国庫負担につきまして、患者一部負担に見合う金と正して三十億円を出したのであるというふうに言われておりますが、その後において結核対策につきましても私はなはだ納得できない点を言われております。国庫が三十億円を補助するというふうにきまったのは、そういうふうな患者一部負担に見合うようなものじゃないはずであります。というのは、大臣もすでに御承知のように、昭和二十五年、社会保障制度審議会の勧告によりまして、結核につきまして五〇%、他の疾病などについて二〇%の国庫負担を出すべきであるということの勧告が起きておるのであります。しかし国家財政の現状などから考えまして、とうていこの数字の国庫負担はできない、まず二五%程度の国庫負担が現下の財政状況から見て妥当だろうということで、われわれの考えはそこに結ばれておるのであります。そこで私は三十億円に対して基礎となりました数字について申し上げてみたいと思うのでありますが、二十九年度分の診療費総額は二百九十三億八千五百七十九万七千円と出ております。これは本人分も家族分も含めた診療費総額であります。その中で結核診療費はどれくらい含まれているかと申しますると、百十三億四千五百四十七万四千円となっております。従ってこの総診療費に対する結核診療費の割合と申しますのは三八・六%であります。その二五%の金額を計算いたしますると二十八億三千六百三十六万九千円となって参ります。ですからその二五%の国庫補助という観点から申しますると、昭和二十九年度においては二十八億円の国庫補助をやらなければならぬわけである。そこで三十一年度はどういうふうになるかと申しますと、その二割増しの三十三億円ということになってくるわけであります。こういう数字から申せば、国庫補助三十億円はまだ少い。しかも患者一部負担というものが敏な結核患者の方に大きなウエートが置かれておるが、外来分は全然今までの保険財政に圧迫を加えていない。ただ結核患者保険財政に圧迫を如えている。ここに大臣の御認識を願いたい。  時間がないからやめますが、ただ一点だけお伺いいたします。入院一日について三十円という根拠はどこから出たのですか。
  159. 高田正巳

    高田(正)政府委員 十円とか三十円とかいう他の場合におきましても御説明をいたしましたように、別に積上計算はございません。三十円くらいは御負担を願うことが、在宅患者とのつり合いというようなことからも妥当ではあるまいか、こういうふうな考えでおります。
  160. 八田貞義

    ○八田委員 在宅患者というものとのつり合いで、一日三十円の負担というのは、在宅患者と入院患者と共通する何かがあるのでございますか。それをちょっと説明して下さい。
  161. 高田正巳

    高田(正)政府委員 今申し上げましたように、特別な科学的な根拠といいますか、別にそういうものはないのでございます。
  162. 八田貞義

    ○八田委員 在宅患者と入院患者と共通するものがございます、こうおっしゃったのだから、それは一体どういうものでございますか。
  163. 高田正巳

    高田(正)政府委員 共通するものという意味じゃなくて、在宅患者とのつり合いからいっても——今日入院をいたしますると、すべての生活といいますか、とにかく入院しておれば、医療も受けられるしそこで生活もできる。しかも入院費、医療の給付費も、一カ月おりますると一万数千円も給付を受けるわけです。ところが在宅患者であって、入りたくてもベッドの関係で入れないという人もたくさんあるわけです。それらの被保険者の中のつり合いというようなことも、これを考えましたときには、考慮の中には入っております。しかし特に三十円の基礎がこれこれであるという基礎は、他の一部負担の金額におきましてもございませんということを申し上げておるのでございます。
  164. 八田貞義

    ○八田委員 三十円という金額においてはっきりした数字を出しておるのですから、在宅患者と入院患者とにおいて、三十円という何か共通するものがなければならぬと思う。私はあなた方から、三十円についての基礎の説明を受けたことがあります。それを一つみんなにはっきりとおっしゃって下さい。この改正案を見ますると、一号の「受クル際」という言葉が二号、三号にも重複しています。この場合三十円を「受クル際」ということが、初診料の場合、それから再診料の場合、それから入院の場合というように重複しております。従ってあなたは、それを比較されての上のことでしょう。それで三十円という数字を出してこられた。あるいはまた在宅患者の場合と比較して、この点は入院しようがしまいが同じだから、三十円は妥当であろうと言われるならば、そのあなたのお考えを率直に漏らしていただきたい。三十円の基礎ですね。
  165. 高田正巳

    高田(正)政府委員 私ども三十円の基礎は、こういう基礎だという御説明をしたことはないので、私が今御説明をしたような御説明しかしておらないのでございます。七人委員会の御意見では、何か今先生が御期待をしておられるような御意見が出ておりました。しかし私どもは、そういうふうな御説明はいたしておりません。
  166. 八田貞義

    ○八田委員 そうすると、七人委員会ではなま米代と言っておりましたね。局長そうでしょう。それをちょっと……。
  167. 高田正巳

    高田(正)政府委員 私も正確には覚えておりませんが、七人委員会の報告書の文章に、米代ということがあるかどうか、膨大な報告書でございますから、私も一々覚えておりませんが、そういうふうなお考えがあったやに承知いたしております。
  168. 八田貞義

    ○八田委員 そうしますと保健局長は、七人委員会にはそういうことがあるかもしれないけれども自分はその考えに基いてやったのじゃない、こういうことですね。
  169. 高田正巳

    高田(正)政府委員 私は七人委員会の御答申等も読みましたし、それらの御意見につきましては、十分敬意を持って険討させていただいているわけでございます。しかしこの三十円の基礎、たとえば入院の場合の三十円、あるいは注射、投薬いずれかを受けた再診の場合の三十円というこの三十円の基礎が、一体どういう積上計算かという御質問に対しましては、それは何もございません。まあ入院の際には一日三十円くらいは、一つ何とか御負担を願いたい、こういう数字でございます。
  170. 八田貞義

    ○八田委員 そうしますと、何ら積み上げ数字の根拠がないのだとおっしゃいますと、要するにあなた方は、バランス計算、たけでもってやっていくというような非常に重大な誤まりを、厚生施策として犯していることにはなりませんか。
  171. 高田正巳

    高田(正)政府委員 大へん申しわけございませんが、今医務局長と話をしておりましたので御質問を聞き漏らしましたから、もう一度……。
  172. 八田貞義

    ○八田委員 ただいまあなたから、一部負担につきまして、別に積上計算によってできたものじゃない、ただいろいろなことから考えてこれがいいのだ、こういうような御答弁があったのです。それでは結局赤字を克服するためのバランス計算じゃないか、こういうように申さざるを得ないわけです。それでは患者の一部負担の内容分析において、私は厚生施策として誤まりを犯しておりはしないかということを言っているのです。一部負担を課する以上は、一体どこに課すのが正しいのか、しかも保健財政に対してどのような圧迫を加えているかという分析をやっておって、その上において国民経済、保健経済の中で、そこに人命尊重というものを取りまぜて、一部負担というものを出してこなければならぬと私は思う。そうしなければ正しい厚生施策は行われない。こういう意味のことを申しているのです。
  173. 高田正巳

    高田(正)政府委員 八田先生の仰せの通り、一部負担をどういうところにかけていくかということにつきましては、これはいろいろ御議論のあるところでございます。私どもも研究をいろいろいたして、この案を考えたわけでございます。結局私ども考え方としましては、今御審議を願っておりますように、初診料というようなものは現行通りで、再診の際に十円あるいは注射、投薬があった場合には三十円、入院については三十円というふうに散らすことが、負担をされる方から申しましても、また負担をお願いする方から申しても、一番妥当な案であろうということを考えて、原案を御提出申し上げたわけでございます。ここに至りますまでには、一部負担のやり方についてはいろいろな案がございました。私どもは案の数といたしましては、おそらく数十にわたるものを検討いたしました。しかしそれにはそれぞれ一長一短がございまして、長所もあるけれども必ず短所もあるというようなことで、結局今御審議をいただいております案が一番よかろう、こういう考えのもとに御審議をお願い申し上げているわけでございます。
  174. 八田貞義

    ○八田委員 時間がないから簡単にしますけれども、今の保健局長の答弁では、どうしてもあなたは赤字対策、財政対策としての考えによって、経済的な見方を離れておらぬ、こういうふうに私は考えるのであります。というのは、この保健財政において一体一番大切なものは何か、大きな支払いになっているものは医療費です。そうしたならば、保健財政のワクはありましても、医療の特質というものはゆがめられてはならぬ。ところが、今あなたがいろいろなことをおっしゃいましたけれども、結局再診日に負担をかけるということは、保険財政に対して再診の外来患者は大きな圧迫を加えておらない。むしろ医療の特質からいうならば、再診においてはおっくうがらずにどんどん言ってこなければならない、受診率を上げていかなければならない。治療というものは一回の投薬によってそれでもうおしまいというものではありません。経過観察ということが一番大切です。ところが経過観察に対してこの負担を与えるということは、受診率を抑制することとなり、しかも医療の特質をすっかりゆがめてしまうことになる。保険行政というものが大切なら、この医療行政の面において、医療の特質を忘れて打ち出した患者の一部負担というものは、私はどうしてものめないのです。これについては、あとでまた時間をかけまして分析的にこまかくやって参りますが、特に入院一日三十円ということについて、どうもぴったりする御返答が得られていない。そこで大臣に御参考までに申し上げておきますが、この一日三十円ということにいたしますと、これは結核患者でございます。しかも今目標準報酬の正しい金額がつかまれていない。これから保険局におきまして正しい標準報酬というものをつかまれるようにやられるでありましょうが、まだまだ監督の網をのがれて不当に過小申告をしておる者が相当に見られるのであります。月二万円の収入者が八千円というような申告をしておることもあるのであります。この一日三十円ということにいたしますと、傷病手当金と結びつけて考えなければならない。そこで局長にお尋ねしたいのですが、傷病手当金は入院の場合、独身者の場合は四〇%、妻帯者の場合は六〇%になっておりますが、この差は一体どういう思想から出て参ったものでございましようか。
  175. 高田正巳

    高田(正)政府委員 傷病手当金というのは御存じのように、病気になりまして賃金がもらえない場合に、その生活を少しでもカバーしてやろう、こういう考え方に制度の趣旨はなっておるのであります。従いまして家族持ちの場合には標準報酬の六割、それから独身者が入院した場合には四割となっておりますのは、入院すればその人には家族がございません、従って病院の方で全部見てもらえますので、二割くらいの区別をつけることがかえって公平であろう、こういう観念から出ておるものと存じます。
  176. 八田貞義

    ○八田委員 ちょっとはっきり聞き取れなかったのですが、独身者というのは入院の手当を受けるから四〇%でいいだろう、看護の手当を病院から受けるから四〇%でいいだろう、こういうお考えですか。
  177. 高田正巳

    高田(正)政府委員 今私もそういう言葉を使いましたけれども、独身者というのは家族のない者という意味でございます。従って家族のない人は入院をされますれば、そこで医療も生活も一切見てもらえる、傷病手当金も、いわゆる家族が別に外に生活をしておらないわけでありますから、若干の相違があってもよかろう、こういう考え方に出たものと存じます。
  178. 八田貞義

    ○八田委員 これでやめますが、ただいまの説明ではどうも二〇%の差をつけたことが納得できません。そこでこの次までに局長一つ保険局の中にあって、その通りどうしてこの差をつけたかについて十分御検討しておいていただきたい。それをお聞きしてからまたいろいろ申し上げたいと思います。本日はこれだけにいたします。
  179. 野澤清人

    ○野澤委員長代理 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十五分散会