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1956-03-20 第24回国会 衆議院 社会労働委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月二十日(火曜日)    午前十一時六分開議 出席委員    委員長 佐々木秀世君    理事 大坪 保雄君 理事 中川 俊思君    理事 野澤 清人君 理事 藤本 捨助君    理事 岡  良一君 理事 滝井 義高君       植村 武一君    小川 半次君       荻野 豊平君    加藤鐐五郎君       亀山 孝一君    川崎 秀二君       久野 忠治君    草野一郎平君       熊谷 憲一君    小島 徹三君       小林  郁君    田子 一民君       田中 正巳君    渡海元三郎君       中垣 國男君    中村三之丞君       仲川房次郎君    八田 貞義君       林   博君    亘  四郎君       吉田 重延君    阿部 五郎君       井堀 繁雄君    岡本 隆一君       栗原 俊夫君    堂森 芳夫君       長谷川 保君    八木 一男君       山口シヅエ君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         厚 生 大 臣 小林 英三君  出席政府委員         大蔵事務官         (主計局次長) 宮川新一郎君         厚生政務次官  山下 春江君         厚 生 技 官         (医務局長)  曽根田長宗君         厚生事務官         (社会局長)  安田  巖君         厚生事務官         (保険局長)  高田 正巳君         運輸事務官         (船員局長)  安西 正道君  委員外出席者         厚 生 技 官         (医務局国立療         養所課長)   尾崎 嘉篤君         厚生事務官         (保険局健康保         険課長)    小沢 辰男君         専  門  員 川井 章知君     ――――――――――――― 三月二十日  委員大橋武夫君、加藤鐐五郎君、高橋等君及び  千葉三郎辞任につき、その補欠として渡海元  三郎君、吉田重延君、中垣國男君及び仲川房次  郎君が議長指名委員に選任された。 同 日  委員渡海元三郎君、中垣國男君及び吉田重延君  辞任につき、その補欠として大橋武夫君、高橋  等君及び加藤鐐五郎君が議長指名委員に選  任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  健康保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第七八号)  厚生年金保険法の一部を改正する法律案内閣  提出第七九号)  船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第八五号)  附添婦制度に関する件     ―――――――――――――
  2. 佐々木秀世

    佐々木委員長 これより会議を開きます。  内閣提出健康保険法等の一部を改正する法律案厚生年金保険法の一部を改正する法律案及び船員保険法の一部を改正する法律案の三案を一括議題とし、審査を進めます。  質疑を続行いたしますが、日程に追加して、つき添い婦制度に関する件につき調査を進めます。発言の通告がありますので、これを許します。八木一男君。
  3. 八木一男

    八木一男委員 ただいま議題になりましたつき添い婦問題について厚生大臣に御質問を申し上げたいと存じます。  厚生大臣は、このつき添い婦問題が問題になりましたときに、参議院社会労働委員長をやっておいでになりましたので、参議院審議の工合については十分によく御存じだと思いますけれども、同時に、そのときにおきまして衆議院においてもこれが非常に慎重に審議せられまして、社会労働委員会として一つ決議をいたしたわけでございます。その決議読み上げさせていただきます。   昭和三十年度において政府国立療養所看護要員充実を計る意図であるが、これに伴って直ちに現行附添婦制度を全面的に廃止するが如きことは、実状にそわざるものと考えられる。   よって、政府はこの実情を考慮の上、療養所管理実態の改善のため充分なる方途を講ずべきである。  こういう決議満場一致でいたしたわけでございます。この決議につきまして厚生大臣はどのように理解しておいでになるか、その理解の内容を伺わせていただきたいと思います。
  4. 小林英三

    小林国務大臣 国立療養所のつき添い婦等に関連した問題につきまして、当時当委員会におきまして今お読みになりましたような決議があったこともよく承知いたしております。また、参議院社会労働委員会におきまして同様の趣旨決議がありましたこともよく承知いたしておるのであります。従いまして、私は就任以来今日まで、国会委員会決議に沿うようにいたしておるつもりでございます。
  5. 八木一男

    八木一男委員 衆議院決議をもう一回御熟読願いますと、「昭和三十年度において政府国立療養所看護要員充実を計る意図であるが、」という最初出だしになっておるわけでございまして、この最初出だしにつきましては、昨年の五月、六月において国会で問題になったと同じことを現在厚生省はやっているように思うわけでございます。そしてそのあとに続くものは、そういうふうに新看護体制になるわけであるけれども、それに伴って現行つき添い制度を全面的に廃止することは現状に沿わざるものというふうに衆議院社会労働委員会では解しているわけでありますが、現在厚生省でやっておられるつき添い制度の新看護体制への切りかえにつきましては、昨年の春に厚生省が計画しておられたものと何ら変りのない方法でやっておられるように思うわけでございます。そしてまたつき添い制度は、私どもの方で調べました実態によりますと、全面的に廃止するような方向に進んでやっておられると思うわけでございますが、厚生大臣はこれについてどうお考えになっておりますか。
  6. 小林英三

    小林国務大臣 昨年に計画いたしました厚生省のいわゆる看護要員の配置につきまして、先般も当委員会において、場所によりましては非常に不適正な場所もあるというようなことも御指摘を受けておるのでありますが、三十一年度におきましては、御承知のように二百八人の看護要員も新たに置くことになっておりますし、これが完成いたしますれば、各療養所とも大体適当な完全看護が行われるものだと思っております。しかし今お聞きのような、先般もおっしゃったような問題もありますから、一応二百八名を配置いたしまして、それでもなお心配するような問題がありました場合には、適当に善処いたしたいものだと思っております。
  7. 八木一男

    八木一男委員 前半の厚生大臣の御答弁にはなはだ不満でございますが、後半はやや満足するものでございます。厚生大臣衆議院決議また参議院決議について、ほんとうに真剣に考えていただいておらないのではないかと思うわけでございまして、衆議院決議を御熟読願いますと、この文章は非常に複雑になっておりますから、いろいろと解釈の相違が出るような文章になっておりますが、これを最小公約数立場解釈いたしましても、厚生省原案完全看護体制をやる、それでつき添い制度を全部やめてしまうことはいけないということになっておるわけでございます。それなのに現在各療養所においては、つき添い制度が全面的に切りかえさせられているような状態にあるわけであります。厚生大臣は二百八名という増員をしたことで足れりというように考えおいでになるようでありますけれども、少くとも衆議院社会労働委員会では、そうではなしに、三十年度に新看護体制によってつき添い制度をやめてはいけない、直ちにという文句も、全面的にという文句も入っておりますが、とにかくあの原案においてつき添い制度をやめてはいけないということを書いてあるわけであります。それが現在ではやめる方向に強硬に向って進んでいる、あすあさってから東療では大幅な切りかえをやろうとされておる、そのような状態は、衆議院決議を完全に無視するような方向に進んでおるものといわなければならないと思いますが、これについて厚生大臣のお考えはどうでありますか。
  8. 小林英三

    小林国務大臣 衆議院決議も存じておりますし、参議院決議も存じておりますが、要は完全看護ということを対象としてのお考えであると存じまして、昨年以来試験的と申すと語弊があるかもしれませんが、一時にやりませんで、試験的にやりました結果も参照いたしまして、あくまでも完全看護ということを保持しつつ今日やりつつあるわけであります。もちろんつき添いの諸君のうちからもできるだけ採用もいたしまして、今日その方針を進めつつあるわけでありまして、厚生省といたしましては、衆議院並び参議院決議にありますようないわゆる完全看護、どこまでも完全看護ということを念頭に置きまして、そうしてその方針を進めつつあるわけでありまして、ただいま私がお答えいたしましたように、来年度の二百八名を配置いたしまして、それでもなお完全看護という問題に憂うべき点がありました場合には、そのときはそのときで一つ善処いたしたい、こういう考えを持っております。
  9. 八木一男

    八木一男委員 厚生大臣国会決議を曲げて解釈しておよるうに考えるわけでありますが、完全看護ということを目ざして厚生省が新看護体制を計画したということは明らかであります。ところがそれは完全看護にならない、看護内容が低下するということで、これは与野党を問わず、いろいろと真剣な審議がせられまして、その結果としてこの決議案ができてそれが満場一致で通った。だから完全看護という題目を掲げようが、掲げまいが、現在において直ちにつき添い制度を廃止することはいけないということを言っておるわけであります。それを完全看護の建前であればやってもいいという御解釈は違うのでありまして、そのときの与党の方々もすべてこの社会労働委員会決議には御賛成になったわけでありますから、この満場一致決議大臣なり厚生省解釈完全看護のためならばやってもいいというふうにすりかえて解釈せられることは、国会決議を非常に無視することであると思います。その点で参議院決議衆議院決議とについてはいささか文章が違います。厚生大臣参議院文章を頭に非常によくしまっておいでになるわけでありますけれども衆議院決議をもう一回お読みになりますと、このつき添い制度をやめることはいけないということを国会が明らかに意思表示したことをおわかりになっていただけるはずでありますので、それをもう一回お読みになりまして善処願いたいと思うわけであります。現在私ども考えておりますのは、この間から長谷川委員がこの看護制度について安田社会局長質問をいたしまたしところ、安田社会局長はつき添い看護がどうしても必要であるという場合に、それを出させないという意図ではない、その看護券を切ることは原則的にいいのだということを答えられておるのでございます。それについて実際にどうするかについては、医務局相談をしてやっていきたいという答弁でありました。これは社会局長答弁でありますけれども厚生大臣といたされましては、そのような狭いことでなしに、当然このつき添い制度というものは現行法で残っているわけでありますから、看護券生活保護でも健康保険の方でも必要の場合にはどんどん切るように、そうして気の毒な患者が非常に不幸な目にならないように、旨くなおるように切るという態度をおきめ願いたいと思うのでございます。実際に必要なものはそういうふうに切っていく、国立療養所においても現在の常勤労務者をもっと充実していただくと同時に、必要なものについては看護券を切ってつき添い制度を残していただくということの二本建をぜひお考えになっていただきたいと思うし、またそれをお考えになっていただきませんことには、国会の御決議を完全にじゅうりんされたと申し上げても間違いないわけであります。前から厚生大臣国会決議を尊重すると常々言っておられます。厚生大臣の一般の厚生行政についての所信を御披瀝になったあとで、私は厚生大臣にそういうことをお伺いいたしましたところ、厚生大臣ははっきりとそれをやっていこうと御決意になったわけでございます。もし社会局長なり医務局長なりがそれに反対であっても、厚生大臣がいいと思ったときには断固としてやるということを御返事になっているわけでございます。今安田さんはいろいろ耳打ちされましたけれども、それがもし否定的な耳打ちでありました場合には、厚生大臣ほんとう大臣という職責から考えてこの問題を御判断になって、そのような、この問題を意地でも通そうとする厚生官僚のいろいろな意見に支配されないで、厚生大臣としてこの問題をおきめになる御意図を御発表願いたいと思うわけでございます。
  10. 小林英三

    小林国務大臣 今の御質問に対しまして、社会局長並びに医務局長が前回の委員会で申し上げましたことにつきまして、行き違いがあると困りますから、一応社会局長並びに医務局長からも所見を述べさせまして、その上で私から申し上げます。
  11. 安田巖

    安田(巖)政府委員 この前私が生活保護のつき添いのことで申し上げましたことをもう一度申し上げてみたいと思います。生活保護で入院をいたしました場合、つき添いをつけるというのは例外的な措置になっておりまして、この前も申しましたように普通の看護力では足りない、常時看護を要するという場合とか大きな手術を受けましたために同様に常時看護を要するというような場合につけることになっておるわけでございます。それで新しい看護体制がしかれますと、その医療機関責任を持って病人のめんどうを見ていただけるわけでございますから、生活保護法を運用いたしておりますものの立場といたしますと、非常に賛成的な立場になるわけでございます。現在のように一々そういう例外的なケースに申請をとりまして、それを一々また福祉事務所等審査をするということよりもはるかに合理的で、患者のためにもなるというような見解を実はとっております。そこで御質問のような場合に私ども考えといたしましては、これは一つ一つケースで要る要らないということではなくして、どの療養所において看護体制がどの程度切りかえられたかということをめどにして、それをつけていきたいということでございますのでそういった具体的な問題につきましては医務局責任を持っておりますから、医務局長とも十分相談をいたして遺憾なきを期したい、こういう趣旨答弁をしたつもりでございます。
  12. 曽根田長宗

    曽根田政府委員 私ども立場といたしましては、三十年度におきまして相当数看護要員増員していただきました。この正規の療養所職員増員をできるだけ有効に配置いたしまして、勤務体制というものを整えまして、できるだけ患者のお世話をいたしたい、こういうように考えております。従来かちの仕事の量、こういうものから考えていきまして、大体この人数でもって従来程度看護は必ずできるというふうに考えておるのでありますしかしながら何しろ生き身の病気のことでございますので、患者さんの状態にいかような事情が起るかということは必ずしもはっきりと申し上げかねるのであります。きわめて例外的なことかも知れませんけれども、どうしても所の職員のやりくりでは十分な手が尽せないというような事情が生じますれば、さような特定事情のもとにおいては外からのつき添い婦をお願いしなければならぬ、こういうように考えております。かような場合には社会局の方においてもぜひ一つ協力していただきたいということを社会局の方にも申し伝えまして、さような場合には十分協力をいたそうという返事を私ども受け取っておる次第であります。
  13. 八木一男

    八木一男委員 今の医務局長の御意見につきまして、社会局長並びに保険局長から、医務局長の御意見について御賛成であるかどうか、御答弁を願いたい。
  14. 安田巖

    安田(巖)政府委員 つき添いをつけるかつけないかということにつきましては、原則的にはその場その場のそのケースそのケースの必要で考えるわけでありますが、ただ、今完全看護ではございません、この場合完全看護とは申しませんけれども、かりに完全看護療養所なり病院があった場合には、その当該病院でどういうふうなことが起りましても、一応それは病院で始末をしていただくというふうなやり方をとっているわけでございます。これは生活保護法一つ病院と契約をいたしておりまして、今の制度といたしましてはそういうふうなことで御了承願っているわけであります。今度の場合は過渡的にそういう問題が起るであろう。でありますからその病院療養所ごとに私どもはそういうことを考えて参りますけれども、そういう過渡的な問題に対しましてはこれは医務局十分相談をして対処したい、こういうことでございます。
  15. 高田正巳

    高田(正)政府委員 ただいま社会局長お答えを申し上げましたと同じ私ども考えでございます。
  16. 八木一男

    八木一男委員 厚生大臣にお伺いいたしたいわけでございますが、社会局並びに保険局医務局とが、そういう問題が起ったときに相談をするということを今三局長からお話があったわけでございますが、ところで相談がまとまるところとまとまらないところとが場合によってある。その場合に、たとえばこういう状態のときにはつけないと生命に非常に危険がある、あるいは回復が非常におくれるという場合に、医務局がそういう御主張をなさる、ところが保険局並びに社会局の方では別な金銭的な立場からこれについてなかなか御承知なさらぬという場合に、厚生大臣はどのような裁断をなさるか。
  17. 小林英三

    小林国務大臣 これはやはり私が先ほどから申し上げておりますように、どこまでも完全看護ということを目的といたしましてやるべきものでありまして、先般八木さんから申されたようないろいろ特定場所における憂うべき事態等がありますような場合を想像いたしまして、いずれにいたしましても完全看護ということを念頭に置きまして将来処置していきたい、こういうふうに考えております。
  18. 八木一男

    八木一男委員 厚生大臣にぜひお願いしたいのですが、今までの何といいますか、マンネリズムに陥らないで、ほんとう厚生行政をよくするという立場小林厚生大臣はお考え願いたいと思います。完全看護という言葉をよくおっしゃいますが、完全看護目的は何かといえば、これは患者病気が早くなおるように看護してやる、死なないように看護してやるということであります。ですから死なないようにとか、病気が早くなおるようにということが、完全看護制度とかそういうことよりはるかに上位にあるべきはずでございます。ところが厚生大臣の御答弁完全看護ということを柱に置いて御答弁になりますけれども、そういうものをつけたならば死ぬのが死ななくて済む、非常に長く重態になるものが早く回復するという場合には、厚生大臣としてつけてやるように行政をし向けるつもりでございますか、それともそういう病人はほったらかして、死んでもかまわない、重態になってもかまわないというような行政をおとりになるつもりか、この点をはっきりお伺いしたい。
  19. 小林英三

    小林国務大臣 ただいま八木さんのおっしゃいました前段の方を考えております。
  20. 八木一男

    八木一男委員 そういうことで助かる病人を助けるという方向厚生大臣はおっしゃっておられますので、曽根田医務局長安田社会局長高田保険局長は、どうか御相談の際に今の大臣の御所信方針に従ってそういう問題をきめていかれる、これは厚生大臣厚生省最高方針を今明らかにされたわけですから、そういうことを念頭に置いて、御協議の際にそれを貫かれるようにやっていただく必要があるわけです。  どうか三局長にそういうお気持でやっていただくことを心からお願いするわけでございます。  ところで厚生大臣に申し上げたわけでございますが、各所の療養所におきまして非常に痛ましい事実が起っております。この前長谷川委員から申し上げましたように、数名の人がこの新看護体制に切りかわりましたために死亡をなさっているわけでございます。ある場所では便所に参りましてそこで喀血して、帰ってくるまでに窒息して死んでしまったといり事例がございます。ある場合には個室から大部屋に移され、その大部屋のかどのベットに移されたために、非常にやかましくて安静がとれず容態が重態になって急速になくなったというような事例がございます。このような事例は明らかに新看護体制のために起ったことでございまして、そういう場合にやはり新看護体制を強行することをやめるとかあるいはまた二重につき添い制度を残しておきましたならば、そういう患者個室に置くとか、便所に一人で行くような状態に置かないということによって、こういう人たちの命がなくなるような危険を救うことができるわけです。そういう場合に対処いたしましてぜひ四月以降必要なものについてはつき添い制度を残すという態度厚生大臣勇往邁進を願いたいと忌うわけでございます。それについて御意見一つお聞かせ願いたい。
  21. 小林英三

    小林国務大臣 この問題につきましては先ほど八木さんの御質問お答えした通りに向って参りたいと思っております。
  22. 八木一男

    八木一男委員 厚生大臣の強い御所信を伺いまして、その点については非常に心強く存じております。厚生大臣は今健康保険法の問題で非常に重要な職責におありになるわけでございますが、私ども考えでは、その問題は大きい小さいはありますけれども、この問題で御所信に邁進されて、小林さんの行政によって、そのままにほっといたならば命がなくなる人が助かったというようなことになりましたならば、ほかの問題がどうあろうとも小林厚生大臣の大きい業績になると私どもは思うわけでございます。そういう意味で、この点についてほんとう小林さんの人情味あふれた行政をぜひお願いしたいと思うわけでございます。この際特に申し添えたいわけでございます。が、小林さんに、私前に療養所実態お話え申し上げたことがないのでありますけれども喀血患者につきましては、親族に結核患者がおられない方は、喀血をするような人は非常にだめなんじゃないか、あるいはその時助かっても一月か二月後になるんじゃないかというような考え方のもとに、いろいろなことを考えておられる方もなきにしもあらずと思います。ところがそういうわけではなくて、喀血というものはその場を救いましたならばあとどんどん回復するわけでございます。御承知通り血が気管支の一部分を閉塞いたしまして、半分首を締められたような格好で喀血患者はなくなるわけございます。そこでその場にすぐつき添いがおって、その血を出してやるとができましたならば、その人はその場で命を失うことを免れる。喀血をするような患者が現在胸郭成形手術とか肺切除手術をやりましたときには、その後に回復してりっぱに社会の一員として人生を送っていけるような事実がございます。いろいろな人がそういうことで再生の喜びをになっておるわけでございます。そこでこの新看護体制で、そういうような助かる命がちょっとしたことでなくなる人が中にあるわけでございます。非常に残念なことでございます。この程度でいいというようないろいろな厚生省側基準をきめたいというようなお考えがあるように私ども考えるわけでございますが、その基準のきめ方が過酷であるために助かる命なのに死んでいく人がたくさんある、そういう事例がたくさんあるわけであります。厚生大臣は、今まで起ったことにつきましてはいたしかたないわけでございますが、それを例といたしまして、今後そういうものは絶対に起らないようにぜひ考えていただきたいと思います。厚生大臣はそういう死人を出さないようにしたいというお考えを確かに持っていらっしゃると思います。もちろん医務局長社会局長保険局長もそういう考えはおありだと思うのでございますけれども、ほかの大きな問題とからみ合せによってその問題はしかたがないというようなお考えになっていらっしゃる気味がないとは言われないと思います。もし三局長にそういうお考えがありましたならば、人命というものはほかのどんな大きな問題よりも尊いという立場を、もう一回繰り返して思い起していただいて、無慈悲な行政にならないようにしていただきたいのでございます。それをぜひお願いしたいわけでございます。それには四月から二本建ということをとっていただくのが最も必要ではないかと思うのであります。そのほかにまた命の問題は別条ない、だからこの程度の、たとえば常勤でやっていけるんだというお考え厚生省側と所側にあるように見受けられますけれども結核患者というものは、非常に不幸なものでございまして、厚生省側から見れば、たとえば生活保護でこれを療養さしているのだ、ほんとうなら死んでしまうところを生活保護でただで病院に入ることができる。薬ももらえればいろいろ処置もしてもらえる。だからぜいたくだというような考え方を持っておられる方も、厚生省の中には一人や二人はおられるのではないかと僕は思うのでございますが、そういう考えは大間違いで、憲法の条章を引きずり出すまでもなく、すべての人が健康にして文化的な生活をする権利を持っているはずであります。ところがこの人たちは、そういう不幸な目にあって、療養をしている。国家の手で療養さしてやるのだからあとはぜいたくは言うなという考え方があるかもしれませんが、患者は非常に不幸でございます。経済的な立場もその間に失います。その間いつでも生命の恐怖にさらされております。それなのに規格的な看護とか規格的な処置によりまして、苦痛も訴えることのできないような状態に今追いやろうとしているわけであります。常勤が八人に一人いればいいというような考え方は、病人立場にならない人はそのようなことを考えられるかもしれませんけれども病人立場になったらほんとうにたまったものではないわけでございます。二時間も三時間も四時間も五時間もかかる手術を受けて、身動きできない、痛くてたまらないといっても、さすってもらえない。手術あと汗でぐしょぐしょになったので、それを取りかえてもらおうと思っても、今度の新看護体制になると一日に一回あるかなしでございますから、その汗でぐしょぐしょになって気持が悪くても、取りかえてくれませんので寝ることもできません。寝なければそのときの苦痛は忘れられないわけであります。ところが患者はなおればいいのだ、苦痛があっても苦痛などはがまんすべきだというような考え方が今度の新看護体制の中に横溢しているように私どもは思います。患者というものは生命の危険にさらされて、そうして経済的基盤を失って、あとの就職もわからない非常に不幸なものでございます。その不幸な人人に痛いのはお前らの勝手だ、それを忍べというような行政は、非常に過酷だと思うわけであります。現在の新看護体制の説明を先ほど来聞いておりますが、患者の幸福を追及する人権をじゅうりんしたやり方だと私どもは思うわけでございます。厚生省立場として大蔵省に予算要求してもなかなか通らないという立場もあるでしょう。しかしそちらの方に押されのではなく、患者の不幸が少しでも少くなるという立場に立って、厚生省の方から大蔵省の方に押し返していただくのがほんとうではないかと思うのでありますけれども、現在の厚生行政は、大蔵省の主計局から押されて、弱い患者だとかつき添い婦だとかという方に力を向けていくというようなやり方をやっておられるのが、厚生省のやり方でございます。厚生省局長さんにしても、課長さんにしても中にはさまってつらい立場にあるかもしれませんが、同じ苦労をするなら弱い者のために苦労をすべきであって、強い、財布をにぎっている大蔵省のために苦労をするというような態度を直していただきたいと思います。厚生大臣厚生省行政をぜひそういう方向に持っていっていただきたいと思うわけでございます。  今度はつき添い婦の問題について申し上げますけれども、御承知の通り、つき添い婦というものは、非常に不幸な状態にございます。その大多数が夫を失った人でございます。戦争で夫を失った者でございます。みずから好んで失ったのではないのでございます。そうして現在夫がある人も、夫が病気で、戦前、戦時中、戦後の無理のために重い結核になって、夫の結核を療養させるためにつき添い婦になっている人が大部分でございます。その人たちは二人、三人の子供をかかえて、子供を養わなければならない母親である人たちが大部分でございます。仕事がない間休んで食いつなぎのできるような財産を持っている人はほとんどございません。現在所に泊っている人がおられますけれども、新看護体制で追い出されようとしているが、かかるべき家のある人はほとんどありません。そうしてどうにもこうにもならないときに助けてくれる人がほとんどないような状態でございます。そういう人を皆さん方のやり方で路頭にほうり出すことになるわけでございます。どこの官庁でも、内閣全体で行政整理を考えておるときに、その官庁では自分の官庁から首切りは出ないように一生懸命考えるのが通例であります。どこの局長さんでも、どこの大臣でも自分のところから首切りを出さないために必死にがんばるのがほんとうでございます。ところがこのつき添い制度に関する限り、直接雇用ではないからといって、厚生省のやり方で数千人のこういう非常に不幸な人が路頭にほうり出されるような方法をみずから作っておるわけでございます。実に何と言っていいかわからないような状態でございます。小林厚生大臣は、大臣になられる前にこの新看護体制がきめられわけでございます。ですから大臣としては計画については責任がございません。しかし実施についてはどうか間違いがないようにしていただきたい。つき添い婦についての厚生省側の調べはいろいろ精密なものもございますでしょうけれども、底に流れるものは、会社の社長の立場であって、つき添い婦を切って、新しく学校を出た准看護婦をそこに採用したいという、古い者を切り捨てて、能率があって、おとなしく働く者を新しく雇いたいという強欲非道な――慈愛の深い社長もおりますけれども、最も強欲非道な社長の立場としてこのつき添い婦の首切りをやっておるように私どもは思うわけでございます。厚生大臣はそういうお考えはないと思う。これは医務局並びに療養所の所管の方に対しては非常に暴言であるかもしれませんけれども、私どもはそう感ずるわけでございます。厚生大臣はそういう私ども意見を十分考えて、御自分の厚生省の中の医務局であり、療養所課ではありますけれども、そのやり方の中には、やはり切る立場としての報告があるということを参酌されまして、それは割り引きして考えてしただきたい。直接つき添い婦の声を聞いてから両方を参酌して御判断願いたい。また重症患者につき添い婦をつけてほしいという声を直接に何カ所も前ぶれなしに聞いてからやっていただきたいと思います。厚生省は大蔵省に弱くても、管理しておる療養所課にはなかなか強い官庁であります。にらみが非常にきく官庁であります。東京療養所についてもだいぶ強いにらみがきいておるように私は聞いております。そのにらみがきいて、ぜん立てができたところに厚生大臣が行かれましても、実情はわかりません。だから厚生大臣は私どもと一緒に突発的にどこかの療養所に行って患者の声やつき添い婦の声を聞いて、この問題を処理してほしいと思うわけでございますが、そういうお気持がおありになるかどうか、ぜひおありになっていただきたいと思います。それをちょっと伺いたいと思います。
  23. 小林英三

    小林国務大臣 国立療養所看護の問題につきまして、先般の委員会において八木さんの指摘されましたような事態につきましては、私はどういうような原因からそういうようなことが起ったかということをまず第一番に調査をさしております。  それから今御意見がございました人命の貴重なことでありますとか、患者自体の心持ちになってみるというような問題につきましては、私のみならず厚生省のこれを担当いたしておりますものといたしまして、その心持ちにおいて決して八木さんのお心持に劣るものではないと思っております。先ほどから申し上げておりますように、十分な看護という問題につきましては今後引き続き意を用いるつもりでありますし、三十一年度には二百数名の要員も配置することになっております。この上において、さらに十分な看護が足りないという場面がありました場合には、先ほど来申し上げておりますように善処いたしたいと思っております。  それからつき添い婦の問題につきましては、私がたびたび申し上げておりますように、その立場にも十分御同情申し上げます。しかし国立療養所の十分な看護体制をいたしますためにも、つき添い婦の今までおられた方を全部が全部採用するというわけには、これは分けのためでございますから、病人でありますとか老齢、今後引き続き任にたえないという方にはお気の毒でありますけれども、しかしできるだけそれらの方の中から採用をして新しい要員にするということにつきましては、私は最初からその通りに命じておるわけでございます。いずれにいたしましても、今後これらの療養所の十分な看護ということに頭を向けたいと思っております。
  24. 八木一男

    八木一男委員 厚生大臣の今の御答弁は、この問題についての御理解が大へんあって、大体において私満足するものでございますが、厚生大臣は最後に常勤労働者につき添い婦からできるだけたくさん採用するということを言われました。それは非常にけっこうな意見でございまして、私どもは全員採用していただきたいわけでございます。厚生省としてはできるだけ、この点の差はございますけれども、そういう趣旨で大いにやっていっていただきたいと思うのでございます。しかし現状において、このできるだけというのが実現されておりません。これは数字をごらんになるとわかるわけでございますけれども、ところによって非常に高率の採用率のところもありますけれども、ほとんど採用していないようなところもございます。それで全体として約四割くらいの数字になると私は思うわけでございますけれども、つき添い看護婦の方が今度の常勤の定員よりもはるかに多いわけでございます。四千数百名といわれたつき添い婦に対して二千二百七十名、新しく増員の定数を入れましても二百八名のプラスでございますから、つき添い婦の方がはるかに多いわけでございます。そこで非常に高齢者を取り去る、あるいは現在病気で動けない人を別な方法で救うとして、その問題についての横すべりを認めないといたしましても、全員常勤の方につき添い婦を採用されてしかるべきではないかと思うわけでございます。しかもつき添い婦は今までほんとう看護のことについて実際に何年間も挺身してきた人々でございます。十分な技術を持っております。そうしてその中に今言ったように高齢者と病気の人を除いた場合にも、二千二百七十名プラス二百八名をはるかに上回る数字の働き得る能力を持った、働きたくてしようがない、働けなかったらほんとうに路頭に迷うような人がおるわけでございます。ところがそれが四割しか採られておらない、実に無慈悲なことだと思うわけでございます。厚生省は准看護婦の卒業生が困るからほかの人の処置は考えておれない。今まで働いておった人をおっぽり出して新しい人を使う。それは新しい人ですから何も知らない。療養所の所長なり副所長なりの言うことを、それが不当であってもそのまま言うことを聞くような人を使いたいのかもしれません。それは社長というような意味の厚生当局としてはそういうことをやりたいかもしれません。一般的にはそういうことは許される問題ではない。現在職場にある人を追い出してほかの方から採っていく。今この世の中の就職の非常に苦しいときに、とががない人を追っ払って新しい人を採っていく。大幅に六割も新しい人にかえて四割しか古い人を残さない、そのようなことは許さるべき問題ではないと思うわけでございます。ところが厚生省は、そこが病気療養所であるという立場から、一般の社会から隔絶されております状態を活用いたしまして、このようなことを強化されようとしておるわけでございます。この常勤の採用の方向が違った方向に向っておりますので、厚生大臣は至急にそれを是正される御意思をお示し願いたいと思います。
  25. 小林英三

    小林国務大臣 この問題につきましても十分に善処いたしたいと思います。
  26. 八木一男

    八木一男委員 十分に善処していただく御意図については私どもも非常に感謝するわけでございますが、事は急でございます。ことし中に厚生省はこの問題を打ち切りたいというように考えておるわけでございますし、現に東京の大きな療養所である東京療養所では、あす、あさって切りかえを強行しようとしております。そうしてほかではどんどん切りかえが進んでおるところもございますから、御善処なさる時期を考慮していただきたいわけでございますが、すぐ実行していただいて、その結果について社会労働委員会で、特にこういうふうに処置をしたということをおっしゃっていただきたいと思いますが、近々において、たとえば二十二日とか二十三日くらいにそのことを私どもに御連絡下さる御意図がございますか。
  27. 小林英三

    小林国務大臣 私は、今申し上げました件につきましては、事務当局にも先般来私の意図も伝えておりますので、多分事務当局もそういう方針によって善処しつつあると思いますから、一応医務局長からも御答弁を申し上げたいと思います。
  28. 曽根田長宗

    曽根田政府委員 もちろん最近の状況につきまして報告のお求めがございますれば、いつでも私ども御報告を申し上げたいと考えております。実は先般御質問がございまして、このつき添い婦の就職の状況、採用の状況というようなことにつきましては、一月末のことを御報告申し上げましたので、その後と申しましても、もちろん私どもに集まりましただけのことは申し上げますけれども、特に全般的に新しいことかどれほどございますかはわかりませんが、私のところにあるだけのものを報告しろということに対しましては、いつでも御報告申し上げたいと思います。
  29. 八木一男

    八木一男委員 今の大臣医務局長お答えが私どものお願いとちょっと違うのですよ。実は常勤につき添いの採用率が四割前後で非常に十分でない、私どもは全員をとっていただきたい、大臣はできるだけとる、そこに少しの差がございまするけれども、できるだけというお言葉に対して四割ということは非常に少いわけです。そうして、それの是正をお願いしたいということを申し上げたのですが、大臣の方で善処するとおっしゃる、その善処するということについては急速にやっていただきたい。急速にやっていただいて、やっていただいた結果についてこの社労委その他の場において御連絡を願いたいということを申して、大臣から医務局長に御答弁を委嘱されたわけでございますが、そういう点で、現在四割くらいしかないので、これを私ども全員と申すのですけれども、とにかくできるだけたくさんに採用の率を変えていただき、どこが何人の予定であったのが何人に変った、そういう樹報告を近日中にいただきたい。ですから、きょう、あす、あさってあたりに医務局から療養所あたりに緊急に通達をお出し下さって、そうして常勤については厚生大臣はでき得る限りにつき添い婦はとるような方針だ。そうして、所側はそれを十分に了解して平均四割というようなことではなしに、九割とか九割九分とかとるようにという指令を厳重にお流しになって、その結果、しからば何名の予定のところを何名にいたしますと増員した報告があった、そのきめた御報告を二、三日中にいただきたい、そういう具体的なことでございます。そういう点について……。
  30. 曽根田長宗

    曽根田政府委員 大臣が先ほど御答弁申し上げました御趣旨は、私どもも十分にそれに従って善処いたしたいと考えておるのでありますが、ただいま八木先生のおっしゃいました御希望について、私この際率直に申し上げておかなければならぬのじゃないかと思うのであります。と申しますのは、私どもできるだけ従来のつき添い婦さんの中から新しい常勤労務者を採用するようにということを所にも申しておるのであります。しかしながら所のいろいろな事情をもう少し砕いて申しますれば、私どもとしては、ここでも御答弁申し上げておるのでありますが、やはり私どもとして第一の関心を持ちますのは、患者さんに対するお世話なのであります。患者さんのお世話をどうすれば一番よくできるかということが最大関心事なのでありまして、またそのことには患者さんの意思自身もくみ取らなければならぬのであります。この辺の事情は各所におきまして、所長初め幹部がいろいろどの程度、あるいはどういう方には残っていただきたいというようなことを具体的に検討いたすというような事情になっておりますので、私どもから九割九分程度までは採用しろというようなことは申し上げかねるのであります。私どもとしては極力先生方の御趣旨、御注意というようなものを伝えまして、よくその処置が御趣旨に沿うように努力してくれということは、私どもできるだけ間違いなく伝えたい、かように考えております。
  31. 長谷川保

    長谷川(保)委員 関連質問……。どうもこの問題は最初からずっといきさつを考えて参りますと、ただいま局長から療養所側の意向等を聞いてというようなお話もいろいろあるのがありますけれども、私はどうもほんとうはそういうところに目標があるのじゃない、むしろそうではなくして率直に申せばあの全国看護労働組合をつぶすというのがほんとう目的じゃないか。これは重大なる労働法の違反だと思う。どうも最初からのいきさつをずっと見ていますと、あの全看労という組合があるために自分たちの自由な勝手なことができない。いろいろな点でしばしば組織の力をもって厚生省側の不当を突かれ、あるいは療養所の管理者たちの不当な点を突かれ、これがいわゆる日本患者同盟の諸君と一緒になって有力な勢力になる。だからずっと今までの問答を聞いておりますと、結局この組合をつぶすというのが私は目的じゃないかと思う。少くとも重要な目標の一つだと思う。これは明らかに不当労働行為です。今日もちろん経営者の側にしてみますれば、頑迷なるあるいは前時代的な経営者の側にしてみますれば、組合なんかない方がいいけれども、そういうことでは民主主義が発達しないことは申すまでもない。民主主義の立場をとりますれば、こういう不当労働行為は断じて許すべきではない。私は明らかにそういうふうに思われる。だから常動労務者にかえるというと非常に名はいいけれども、そうではなくしてむしろこの組合をつぶそうというのが目的だと思う。どうもそういうように思われてならない。ずっと今までの質問応答のいきさつを聞いておって、また厚生省側のやり方を見てそう思う。そこにある意味では療養所の管理者側の一つの弱味がある。しかし今日もしこれをいたしましたのでは、実際において看護体制がくずれるという立場から、療養所の管理者といたしましては、何とかしてそうさせないようにというように、十分看護のできるつき添い婦を残したいという気持が一緒になって、そこに療養所の管理者のジレンマがあったと思う。ところが、厚生省は引き続きこの組合をつぶそうという秘密の協定をしているに違いないと私は信ずる。こういうような気がしてしようがない。もしそういうことであるならば、絶対に許すことはできない不当労働行為である。そういう気持はどうでしょうか、管理者側にあるに違いないと思う。ここで皆さん、もちろんありますとは絶対お答えできないところでありましょけれども、しかしほんとうの日本の民主主義の発達ということ、その重大さを考えまして考え直しをしてもらわなければならぬ。もちろん組合の行き過ぎがあれば、これは是正する。あくまで民主主義的な組合として是正することは必要である。この点、もしそういうことがあれば私ども協力するにやぶさかでない。けれども、組合があれば経営者あり、管理者というものがあり、都合の悪いことがあって言ってくるのが当りまえで、それがあればこそ組合というものの意味がある。どうも私は今日までのいきさつを見ておってそういうことが感じられる。その点についてはどう感じられますか、厚生大臣に伺いたい。
  32. 小林英三

    小林国務大臣 今の長谷川さんの御質問を途中から聞きましたが、多分厚生省の今の看護要員に入れかえるということは、今のつき添い婦の全看労をつぶす目的ではないかというような意味にちょっと聞いておりましたが、そうでありますか。
  33. 長谷川保

    長谷川(保)委員 その通りであります。
  34. 小林英三

    小林国務大臣 厚生省といたしましては、そういうような意図は全然ないことを申し上げておきます。
  35. 八木一男

    八木一男委員 今厚生大臣はそう申されたわけでございますけれども、療食所なり、また厚生省の関係では、長谷川先生の言われましたように、そういうにおいが私どもには明らかにわかるわけであります。たとえば東京療養所におきましては、あした、あさって切りかえを強行しようとしておる。そこで前に二十六人採用された者のうち四名が、今度の常勤の給料では家族をどうしても食わせられないからといって、どういう方向か知らないけれども、ほかに職を求めていかれた。欠員が四角出たということ……。療養所課長、よく聞いておいて下さい。もう一つ、二百八名の割当分の将来きめる分についていろいろと話があったところ、つき添い婦としては、あとは年とった人ばかりで、そうでなければえらくなり過ぎた人が多いので採れないというようなことを言っているように伺っているわけであります。そのえらくなり過ぎたから採れないという言葉の中から、先ほど長谷川委員の言われましたように、組合の幹部なり、それに協力したいろいろなもののわかった組合員なりは、所側にとっても、厚生省側にとっても非常にやりにくい、そういう者は採らないでおこうということが十分にうかがい取れるわけでございます。ですから、厚生大臣はそういうことばないというふうにお信じなさっておられますけれども厚生省の下部では、あるいは療養所では、そういうような傾向があるわけでございます。あなたはお信じになっておられますが、こういうことはよくないことでございますし、厚生省側または所側がその組合に対して、不当労働行為に類するようなやり方を現在非常にとっておるように見受けられますので、どうか大臣からそういうことのないように厳重に御指導を願いたいと思うわけでございます。  さらに、先ほど厚生大臣答弁に代行して医務局長が常勤の数について言われましたけれども、とにかく現在の四割ということは非常に低率だ、九割九分というのがわれわれの要望でありまして、厚生省は九割九分ということについては工合が悪いということでありましたが、少くとも九割とか、九割五分ということは実現可能であります。また厚生省側立場としてもそういうことはむしろ可能であると思いますから、そういう点について至急に、先ほど申されたように、その通牒をいつ出されたか、どのような通牒を出されたかということをあさっての社会労働委員会の機会に御連絡を願いたいと思うわけでございます。それについての医務局長の御用意はどうでありまますか。
  36. 曽根田長宗

    曽根田政府委員 実はこれもすでに申し上げましたように、私ども百八十ばかりの療養所のうち、百四十幾つは一月の末までに大体切りかえをやっておるのであります。でありますから、そのときにすでに採用いたしました者に、またもう一ぺん、それこそやめてもらうというわけにもいきかねますので、さような事情もあって、あらためて通牒を出すというようなことはいかがかと考えられるのでありまして、まだこの切りかえの済んでおりません施設は今のところきわめてわずかだと思うのでありますが、さようなところについては個々に私どもがよく指導いたしたい、こういうように考えておる次第であります。
  37. 佐々木秀世

    佐々木委員長 八木君に申し上げます。この問題は大体一人三十分くらいずつという、かたい約束じゃないが、話し合いだったのですが一十時五十八分から始めまして一時間以上たっておりますから、結論をお急ぎ願いたいと思います。
  38. 八木一男

    八木一男委員 あと五、六分で終ります。  今の医務局長お話でございますが、医務局長が通牒を出された所の数はどのくらいであるか、その所はどこどこであるか、そしてそこにどういうふうな通牒を出されたか、医務局長や療養所課長が全国に今すぐに行くということでは間に合いませんから、とにかく書面で、または電話で言われてもいいですが、言われたときはどういうことをおっしゃったかということをあさっての社会労働委員会の機会にぜひお示しを願いたい。お約束を願ったことを御連絡願うことは当然であります。そうでなければ私どもはお約束をほごにされるような気がいたすのであります。あさって御報告を願いたい。  最後に厚生大臣にもう一回だけお願いをいたしたいのでございますが、先ほどは厚生大臣より相当に満足な答弁をしていただきまして、その点については、厚生大臣ほんとうに人命を尊重するとか、気の毒な人の立場考えてやるとか、そういう立場におきまして考えていくという御処置に対しましては同感であります。厚生大臣の御決心に対してほんとうに敬意を表するものでございます。しかしながら、厚生省のこの事務を担当しておられる方々にはなかなかがんこなところがございます。その方々ももちろん公務員としてほんとう職責を果しておられるという立場に立って、自信を持ってやっておられるのでございましょうけれども、自分のとった立場を固執するということはだれしもありがちなものでございます。やはり面子の問題もあり、人の意見を聞かないで、自分たちの考えたことが一番いいのだというような考えに陥りやすいものでございますが、この問題に関する限りは、現在の厚生省の方々の考え方は少しかたくな過ぎると私は思います。参議院社会労働委員会決議も、衆議院社会労働委員会決議も完全に果されておりませんで、このままでは国会の権威が失墜するわけでございますが、大臣はそのようなお考えはないか。大臣は、決議を尊重して、人命を尊重して、そうしてこのようなよい厚生行政をおやりになるお考えがあるが、ところが、大臣以外の厚生省のこの問題を担当される方のために国会決議が無視されて、大臣所信がひん曲げられて、実際には間違った行政が行われるとしたら、これはゆゆしき事態であります。そういうような状態が現に各所に起りつつあるわけでございまして、今までのことはとにかく、これからそういうことを食いとめるために急速にやらなければならない。大臣は、きょうこの会議が終りになったあとで、この問題の関係の方に、国会の意思を尊重しないようなやり方に厳重な御注意をなされまして、そうしてまた、その方々の御意見以外に、たとえばたくさんの患者がどのような叫びを上げているか、つき添い婦がどのような要望を持っているかということをもう一回至急に御検討になって、この誤まりを至急に是正していただきたいと思うのであります。これをやっていただきましたならば、小林さんが厚生大臣になられたことに対しまして私ども非常に敬意を表したいと思うのでございます。小林さんがきょう今この問題にほんとうに真剣に取りかかって下さいましたならば、看護の不十分のために死ぬ人が一人、二人、三人助かるのでございます。あすまで延ばされればそのために死ぬ人が出るでございましょう。どうか人の命を救うつもりで、いかに部下がかわゆくても、部下が独断に陥り過ぎて、自分の誤まったことを厚生官僚の権威にかけて無理やりに通そうとする態度をもしとられまするならば、大臣である小林さんからその間違いを厳重に注意されまして、その方向を正道に戻すようにしていただきたいと思うのでございます。その御決意をしていただけるものと今までの御答弁で確信するものでございますが、その御決意をもう一回おっしゃっていただきたいことと、この問題についての直接の関係者の人のほんとうの声をぜひ聞いていただくということを特にお願いいたしまして、この問題についての大臣の満足な御答弁をいただきましたならば、私の質問をここで打ち切りたいと思います。御答弁によってはもう一回質問いたします。
  39. 小林英三

    小林国務大臣 八木さんのこの問題につきましての御意見に対しまして、私は先ほどからたびたび御答弁申し上げておる通りでございまして、十分にこの問題に対しては善処をいたしたいと思います。なお先ほどの御意見の中にございましたように、機会がございましたならばできるだけ私もみずから措置をしていきたいと思っております。
  40. 佐々木秀世

    佐々木委員長 栗原俊夫君。
  41. 栗原俊夫

    ○栗原委員 持ち時間三十分程度というお話でございますから、簡単に質問しますから、答弁の方も簡単、率直にお願いいたしたいと思います。  まず第一に、四月一日から新看護体制に入るということを伺っておりますが、これは一斉に全部そうするおつもりで、その段取りを進めておるのでありましょうか、お答えを願いたいと思います。
  42. 曽根田長宗

    曽根田政府委員 大体そのつもりで準備を整えて参ったのでありますが、私どもとしては、一つの施設もなるべく脱落させたくないと考えておりました。しかし、さればといって、この国会の御決議もございますし、私どもとしては無理をしないようにということで考えておるのでありますが、ただいままで入っております状況によりましては、ほとんど全部の施設が一応実施には入るもの、こういうように見ております。
  43. 栗原俊夫

    ○栗原委員 その新看護体制というものは、ばかばかしい質問でおそれ入りますが、患者のためにやることだろうと思いますけれども患者のためにやるのですか。それとも予算の方の関係でしようことなしにやる体制なのでありましょうか、はっきりとしていただきたいと思います。
  44. 曽根田長宗

    曽根田政府委員 再々申しておりますように、患者のためでございます。
  45. 栗原俊夫

    ○栗原委員 表向き患者のためによくなれかしと思ってやることであろうと思うのですが、聞くところによると、新看護体制によって、金が二、三億浮くとかという話を聞くのであります。患者のためによりよい施設をして金が浮いてくるというのは、一体どういう根拠でありましょうか。一つその点を明らかにしていただきたいのでございます。
  46. 曽根田長宗

    曽根田政府委員 私ども必ずしも金が浮いて参るとは考えておりません。
  47. 栗原俊夫

    ○栗原委員 そうしますと、今考えておる新看護体制というものは、これで患者に十分であるのであって、もし予算にたっぷり余裕があっても、もうこれで十分なんだ、これ以上する必要はないんだ、こういう構想で各末端施設に御指示しておるのでありましようか。
  48. 曽根田長宗

    曽根田政府委員 御承知のように私ども病院ばかりでございませんで、民間の病院あるいは公立病院も含めまして、私ども今日の病院施設は必ずしも十分ではないと思うのでございます。その意味におきましては、私どもも将来ますますこの充実をはかって参りたい、こういうように考えておるのであります。しかしながら今までやって参りました状況から考えますならば、私どもこれで決して看護力が低下するということは予想いたしておりません。
  49. 栗原俊夫

    ○栗原委員 実は先般群馬県の大日向の療養所へ行って参ったんですが、その前日療養所側と患者側の人が話し合って、そうして療養所側から新看護体制実態を示して協力を求めましたところが、話し合いがうまくつかなかった。その翌日私はおじゃましたわけでありますが、その内容を聞いてみますと大体一度の重症が五十名、二度の重症が六十名、従来四十七名のつき添い婦がこれのみとりをしてきたところが、今回示された新看護体制によりますと、準看護婦を十八名、それから、つき添い婦の中から四名採用して、さらにメッセンジャーを二名、合計二十四名で、新しい看護体制に移るんだ、こういう話であり、なおいろいろな施設の面を見ますと、重症を大部屋に入れる。その六人の部屋等も、ほんとうにカーテンを下げただけで、インタフォーンもなければ、ナースフォーンもない。あかりも一つのままだというような姿です。また個室をめぐってみますというと長い棒を持っている。何に使うのかと聞いたら、これはつき添い婦がいなくなるとどうにも処置ないので、いよいよのときにはこの棒でガラスをたたいてでもめんどう見てもらわなければならぬ、こういうような状況で、悲痛な叫びを上げております。  なお療養所長の先生にも会って話を聞いてみますと、まあこれで何とかいけるんだろう、いけるとこまでいってみます、こういうことを言っておるわけでありますが、これでほんとうに当局として十分みとりがしていけるとお考えになっておるのでありましょうか、この点一つ明らかにしていただきたいと思います。
  50. 曽根田長宗

    曽根田政府委員 各施設に対しましてどれだけの常勤労務者を配置するか、またその人数を配置いたしました場合にかような看護体制をとるかというようなことにつきましては、一々私どもの本省の職員あるいは医務出張所の者がよく所と連絡をとって体制を整えておるわけであります。その際に不十分なところがあれば、どういうふうにそこを打開していくかというようなことについて検討をして、見通しがつくまでは、あまりに無理をして突入しないようにということを申してあるような次第であります。さような意味において、私も今六日向荘の具体的なことを存じておらぬのでありますが、私の聞いておりますのでは、一応の案が立ったのであるけれども、その後いろいろ再検討をし、また患者さんたちといろいろ話をしてみて、まだ直ちに入ることが無理だと思うから、しばらくその時期を延ばしておるという報告だけを聞いておる状況であります。
  51. 栗原俊夫

    ○栗原委員 ただいま曽根田さんのお話もその状況を見ておると言い、当の責任者である荘長も、いけると思うから、やってみて工合が悪かったら何とかしよう、こう言うんですが、工合が悪いことがわかったときというのは、どういうときがわかったのですか。私の見解によれば、人の死んだときがわかったときである、こう考えるのですが、人を死なして実験をした結果、うまくないからと手を打とうとするのですか、この点を明らかにしていただきたい。
  52. 曽根田長宗

    曽根田政府委員 さような意味ではありません。とにかく今までよりも患者さんたちが非常に不便になった――中には便利になったという方もあるかと思いますが、その両方を勘案して、非常に工合が悪いということがあれば新しい手を打たなければならぬ、かように考えております。
  53. 栗原俊夫

    ○栗原委員 二月八日に養療所課長の名前で何とか示達を出したというお話を聞いておりますが、どんな文章のものを示達として出したのですか、その要点を一つ述べていただきたいと思います。
  54. 尾崎嘉篤

    ○尾崎説明員 二月八日に医務出張所あてに出しました内輪でございますが、切りかえに対しまして、出張所長が各施設を監督いたしまして、十分な準備をさして、十分準備が整っておることを確認してからこの実施に入るわけでございます。もしその状況を確認する方法といたしましては、施設における準備状況とか実施計画の報告をとるとか、そして不十分な場合にはここを直せ、こういうように直せというようなことを指示し、必要があったときにはその実施の日取りを延期さす、こういうようなことをしようというのが第二点です。第三点は、準備が遅延しておる施設についてはそれを促進させる。これらを注意して各施設を督励し、またあやまちなきを期せということをいったのであります。
  55. 栗原俊夫

    ○栗原委員 二月八日にただいまのような通達を出すに至った原因は何ですか。
  56. 尾崎嘉篤

    ○尾崎説明員 このことは従来も口頭で相当注意しておったことでございますが、一部の施設におきまして私たちが気がつきましたので、もう少し準備をせよということで実施に入ろうとするのをストップをかけた療養所があったわけであります。そういうこともありましたので、さらに一そう注意をしなければいかぬと思っておりましたところ、いろいろ社会党の先生方からのお話もあって――ちょうど同じころであったと思いますが、こちらの方がちょっと先に手配をしておったようなところもありましたけれども、とにかく一緒になりました。
  57. 栗原俊夫

    ○栗原委員 ただいまの説明によると、社会党の先生方からお話もあったというような言葉もありましたが、社会党が言おうと与党の自民党が言おうと、確信を持っておったらこんなものを出す必要はないのです。そうじゃなしに、政府がこういうものを出さざるを得ないような事態が起ったからじゃないですか。たとえば人が死んだり――あるいはそれは皆さんから言わせれば寿命だと言うかもしれませんが、少くとも新看護体制ということをとったこととからんで、重大な事故と考えられるものが次から次と出て、相当頑迷といわれる厚生省も、面子を捨ててもこういうことを出さなければいかぬという立場に追い込まれたのじゃないですか。この点は人の命のことですから、率直に言って下さい、あなたそうして安全の見通しがなければすぐ突入するなということが、通達の趣旨の中の大きな一つの山だと思います。その方の面子より人の命の方が大事なんですから。
  58. 尾崎嘉篤

    ○尾崎説明員 ただいまのお話でございますが、このことは昨年の七、八月ごろの全国の主務課長会議におきましても所長会議におきましても、相当強く口頭で指示しておいたことでありまして、私たちは実は必要なりと思っておったのでございます。しかし現実に中野療養所でございましたか、二月一日に切りかえをしようとしておったのでありますが、そこの状態を見まして私はこれは無理だ、延ばせといったような例がございます。それですぐにその点の起案をしたのでございますが、決して死亡者が多かったからとか犠牲者が多かったからというのではございません。現実にわれわれの方の統計によりますと、国立療養所における死亡者数が、切りかえ前におきまして月に二百四、五十名であったのでございますが、これはつき添い制度をやっておるときであります。私どもが今わかっております新しいデータとして、十一月現在におきましては二百名を切りまして百八十数名だったと思いますが、それくらいに減ってきておりまして、つき添い制度を切りかえたらかえって死亡者は減っておるというようなデータも出ておるのであります。これが必ずしも看護体制の切りかえだけによるとは思いませんが、そういうようなデータもあるので、私どもは今悪い状態が起っておるとは決して考えておりません。
  59. 栗原俊夫

    ○栗原委員 新看護体制によるいろいろな切りかえ等は、十分準備が完了して、そうして安全の見通しがなければすぐ突入するなということが、通達の趣旨の中の大きな一つの山だと思います。その施設ということの中には、部屋の施設もあるでしょう、しかしそうしたものが整ってもどうしても手が足らないということがあると思いますが、しかし実際はちゃんと員数のワクがきまっておる。従って、地元で要求するだけの数を自由に与えておるのではないと思う。そういう点でこれならばいいということがほんとうに完備するまでは、新看護体制に入らなくてもいい、そういう中にはそうした人のことも含まれておるのかどうか、この点についてお伺いいたします。
  60. 曽根田長宗

    曽根田政府委員 もちろん物的な設備だけではございませんで、いろいろ勤務の態勢と申しますか、時間割等の人繰りの計画とかあるいは患者さん等にどの程度に御了解を得ておるか、よく趣旨を説明して納得してもらっているかというようなところを総合的に勘案して、判断すべきものだ、かように考えております。
  61. 滝井義高

    ○滝井委員 関連してお尋ねいたしますが、今の二月八日の通達は、医務出張所によっては非常に解釈が違っておる。医務出張所どまりであって、いわゆる療養所施設にはいっていないところがあります。しかもある出張所長のごときは、今あなたのお示しになった第三項、すなわち準備がおくれている施設については、その促進について具体的に指示するようにという、こればかりを活用して、そうしてどんどんつき添い婦を常勤に切りかえようとするところがある。だからもし一項、二項、三項というものが総括的に運用せられるならば、これは常勤労務者に切りかえてはいけない、そういうことがあるならば、すみやかにそういう意図でない、これは施設を十分にやってからやるべきだということを一これは大臣に言ってもらわなければならぬ。大臣一つ下部の全国の国立療養所に徹底させる御言明ができますか。これは医務出張所長にしか流していない、従って医務出張所長が握りつぶしたところがある。それで、医務出張所長から全国立療養所に徹底をせしめよという御指令を大臣から出していただけますか。
  62. 小林英三

    小林国務大臣 今の御質問でありますが、医務出張所だけでとまっているというような御質問の点がございましたから、まずその問題を詳細に承知いたしました上で答弁いたします。
  63. 尾崎嘉篤

    ○尾崎説明員 これは医務出張所長へあての指令でございまして、医務出張所長はこういう点を注意をせよという点につきまして、その医務出張所長の行動と申しますか、各施設を監督し、指導いたします注意をしたのでありまして、それを流す必要はないと私ども考えております。
  64. 滝井義高

    ○滝井委員 医務出張所長は現場の施設を直接握っているわけじゃない。つき添いを常勤に切りかえることが必要であるかどうかという認定はそこの施設長がやるべきものであるが、それならば医務出張所長がやるのですか。
  65. 尾崎嘉篤

    ○尾崎説明員 その常勤切りかえの準備ができているかどうかはもちろん施設長が考えてやるのでありますが、それを監督し、指導する立場に出張所長がおります。そこで出張所長は各施設の長が十分だと思ってやっておりましても、そこの準備が監督者として見れば不十分だというときにはそれをとめるとか、そこをもう少し直してからやれ、こういうようなことを言えというのであります。
  66. 滝井義高

    ○滝井委員 それが役人のいわゆる机上論というものなんです。現実に生きている人間を預かっているその施設長に何の通達もせぬで、そうしてあなた方は予算は三月末しかないのだから、四月一日から常勤労務者に切りかえられるのだ、こうなったら現場の病院長はどうなるのですか、あなた方の言う通りやらなければいかぬでしょう。そうするとあなた方がその方針とは幾分違ったような通達を流しても途中の出張所長が握ってしまったら、下はあなたたちの今までの基本方針の通りにいくにきまっている。ここに医療行政の大きな混乱が起っている。しかも尾崎さんは愛知の療養所に行ってどういうことを言ったかというと、現在国立病院には非常な空床が起っております。これは率直に申しまして、あなた方は今予算の折衝で全国の療養所の空床がうんとできたといえば大蔵省から大なたをふるわれるから言えないでしょう。私たちが調べたところでは少くとも全国の国立療養所の二割ぐらいは空床ができていると思う。おそらく三万床ぐらい出ている、全国の病院を見ると六万五千の空床があると言われている。しかもあなたは愛知に行ってこういうことを言っている。空床をつぶさないような療養所職員は減らす、こうあなたは言っている。これは速記をとってきている。こういう圧力を一方においてはかけてきておいて、しかも通達が下部の施設にいかずに中途でとまっておって、そしてここの委員会でわれわれが論議をしても現場においてはわれわれの論議がうまく浸透していって、つき添い婦を常勤に切りかえる無理な状態が抑制されるということは絶対にできないのです。今まで私は黙っておった、しかしあなた方はここでこういううまいことを答弁しておるけれども、実際にやっていることは違うのじゃありませんか。人間の命を預かる厚生行政がそういう非人道的な方向であってはいかぬと私は思うのです。実際に空床があって、空床を埋め切らぬような療養所は人間を減らすのだ、こうおっしゃっている。ところが一方では空床ができるように医療権を抑制し、つき添いを断ち切るようなことをしておる。だから重症者が入らないのです。これはあなた方がそういう事態を作っておいて、そして一方には首切りをやろうとしている、こういう事態はどうしますか。ちゃんと愛知療養所から私どものところにきている。これは患者と尾崎さんの話がきている。これはどうしますか。今言ったように流した通達というものは途中で握られて下にいかない。
  67. 曽根田長宗

    曽根田政府委員 ……。
  68. 滝井義高

    ○滝井委員 いや大臣です。これはもう事務的な段階を過ぎました。
  69. 小林英三

    小林国務大臣 事務的な段階といいますけれども、とにかくこの問題は、今あなたのおっしゃることと厚生省が実際やっていることとは食い違いがあるかもしれませんから、一応医務局長答弁させます。
  70. 曽根田長宗

    曽根田政府委員 滝井先生の御質問はかなりいろいろな問題に触れておりますので、私のお答えが肯綮に当っておるかどうかわかりませんが、この空床が相当あるのじゃないか、この空床はある程度ございます。またいずれかというとふえる傾向を示しておるのであります。このことは、かつて別の機会にも私ども考え方を申し上げたので、今は申し上げませんが、ただしその数の推定等につきましては、私どもいささか意見を異にしております。  それからその空床があった場合には、人員を減らすぞと尾崎課長がおどしたというお言葉がございましたが、おそらくそれは必ずしもそういう意味ではございませんで、かなり各地の療養所の間にこの空床率と申しますか、病床の利用率、こういうようなものに変動が起ってきております。ちょうだいいたしました定員については、この適正な配置をはかっていくということは当然のことと考えるのであります。また今日までにおきましても、その仕事の繁閑等によりまして、時々定員の配置等を考えております。そのことが少しどぎつくとられたのじゃないか、こういうように思っておるわけであります。またこの空床が徐々にできていくということにつきましては、もちろん私はほかにも原因があると思うのでありますけれども、この空床ができましたならば非常に治癒のしにくい、相当長期入院をさせなければいかぬような重症患者をも収容しなければならぬ。従来はベッドが非常に不足でございましたために、できるだけそのベッドを回転させるというような意味で比較的短期の入院で治療効果の上る患者さんを先に入れるという方針をとっておりましたが、最近においてはさような方針は改むべきだということを私どもも感じておるのでありまして、実は各施設を通じてベッドがあいてきたのであれば、今の重症患者、あるいは入院いたしますとかなり治癒までに長期間かかるというような患者さんもどんどん入院していただくというようにすべきであるということも伝えておるわけであります。かようになりますと、前にも申し上げましたように確かに長期の入院のためには入院費というものが患者の負担にかかってくるのでありますので、どうしても結核予防法等においてもこの持殊治療の公費負担ということだけでなしに、やはり入院料の公費負担という筋を出していただかなければならぬというようなことで、明年度の予算に不十分ながらもその頭を出していただいたというような状況になっておるのであります。
  71. 滝井義高

    ○滝井委員 今の答弁は事務的なことで、何ら基本方針は言っておらぬ。今の答弁ではわからぬ。私が言っておるのは、今言ったように、空床ができればそこの職員は減らすぞということをおっしゃっておる。そういうおどしをかけておきながら、一方においては、この通達というものは下部にもいっておらぬ、徹底しておらぬ。従って下部においてはどんどん切りかえていくのですよ。だからそういう無理をさせてはいけないので、この通達を出されたならばこの下部の施設長まで徹底をするように、少くとも医務出張所長にもう一ぺん下部に徹底させる通達を出されるかどうかということなんです、これは施設長までいく必要がなければ通達を出す必要はありませんが、少くとも出張所長には下部に徹底せしめよ、下部に徹底しなければこれは空文ですよ。だからそれだけ大臣、できましょうかということなんでんです。
  72. 小林英三

    小林国務大臣 私は、今の滝井さんの御質問ですけれども、医務出張所長が通達をもらった場合におきましては、その出張所長が施設長その他の下部に浸透させるということは当然なんでありまして、滝井さんのおっしゃるように下部にも浸透していないようなところがありました場合には、それはそのところの医務出張所長の手落ちであると思います。なおこういう問題につきましては、十分に今後間違いのないようにいたしたいと思います。
  73. 滝井義高

    ○滝井委員 大臣はお認めになったようでございます。実は近畿なんかではわざわざ医務出張所長のところまで患者が行って、ようやく医務出張所長に約束させておるのが現状なんです。大臣の今おっしゃるように、当然医務出張所長が下部に浸透させるのが官吏として当然の職務だということであります。私たちもそういう確認をしております。そういうことをしないならば医務出張所長は十分職責を追及さるべきである、こういう考え方になられると思いますので、今の大臣の御言明をもう一回医務局長なり療養所の課長なりによく言い含めて、下部が一糸乱れず大臣の威令が行われるようにしていただくことを希望いたしておきます。
  74. 佐々木秀世

    佐々木委員長 栗原君。栗原君に申し上げておきますが、約束の時間がきておりますから簡潔に願います。
  75. 栗原俊夫

    ○栗原委員 時間がなくなったような状況ですから急いで質問をさしていただきます。  先ほど来各局長から話を聞いて参りましたが、これらを取りまとめて厚生大臣お答えを願いたいのです。患者のために新医療費体系を作って四月一日からこれをやろうとしておる。ところがその過程において、あちらこちらで新看護体制による人命に関する事故が出るので、二月八日にただいま論議になったようにあわててやってはいかぬ、施設が十分完備されなくてはあわてて入るなという通達まで出ておる。こういう状態の中で、もしも四月一日になってもなかなかほんとうに安心できる段取りができなかった場合には、二月八日の通達の内容を四月一日をこえてまでもやる考え方があるかどうか。この点も厚生大臣態度をはっきりしていただきたいと思います。
  76. 小林英三

    小林国務大臣 先ほどから申し上げておりまする通達というものは、十分な看護というものを前提に考えるのでございまして、慎重の上にも慎重にいたすべくやったものと考えておりますから、今お聞きのような問題は私どももそういたしたいと思っております。
  77. 栗原俊夫

    ○栗原委員 ただいまの答弁は非常に言葉が少いので、わかったといえばわかったようなんですが、いま一度確認をさしていただきます。つまりほんとうに新看護体制の段取りができない、まだだということであるならば、二月八日の通達というものは四月から先へまたがってもこれはやむを得ないのだ、それほど命というものは大事にしてやっていくのだ、このように理解していいのですか。
  78. 小林英三

    小林国務大臣 その通りであります。
  79. 栗原俊夫

    ○栗原委員 そこで厚生大臣にお尋ねしますが、実は先ほども申し上げました大日向のこれは具体的な例でありますが、話し合いが決裂してまだ新看護体制に入っていない、その一つの大きな理由は、新看護体制に入ったところで、あるいは新潟でもあるいは千葉でも、あちらこちらでこうした体制の中から事故が出たのではないか。患者にこのような死というような事故が出ておる。これで重症患者は非常に戦々きょうきょうとしておる。さらにどうしても手術をしなければならぬ患者は、これまた手術の時期にきておりながら手術を逡巡しておる、こういうような状況なんです。そうして新しい体制によると、手術あとは三日間は一対一で看護をつけるというようなことだそうでありますが、患者はこれではどうしても死の恐怖でたまらない。成形手術をしたあと二週間程度肺切除をしたあと三週間程度は何とかわれわれの命のめんどうを見てくれるために、つき添いというようなやり方を続けてもらいたい、こういう切々たる要望があるわけです。もちろん一方療養所立場、あるいは厚生省立場からすればそんなことをしなくても大丈夫なんだ、こう言うかもしれません。しかし片一方では命をかけてやっているのです。しかもこの新しい体制によって、今までより以上に予算を食って、もうこれ以上金は出せぬ、こういう段階になればともかくも、新しい体制によって金が浮いたという状況なんです。その陰に重症患者が、手術患者が、ほんとうに死の恐怖に追い込まれておる、これではいかぬと思うのです。そこで二月八日のこの通達の内容を拡大して、ぜひともこうした大きな手術をしたその直後のみとりあるいは丁度というような重症患者の中でどうにもならぬ特殊な患者がおります。こういう患者には施設の方の意見によって一律に一切をはずすのでなくて、どこまでも命を大事にするという立場に立ってつき添い婦もつけられるのだ、こういう立場をぜひ考えていただきたい、こう思うのですが、厚生大臣考え方はいかがでございます。
  80. 小林英三

    小林国務大臣 先ほどもこの問題につきましては、八木さんの御質問お答え申し上げましたように、三十一年度におきましては二百八人の新しい看護要員も配置することになっておりまするし、配置いたしました上におきまして憂うべきような、今後の運営について欠くるような点がございました場合には、私は今お聞きのような問題もあわせて善処いたしたいということを申し上げたのであります。ただこの新しい要員を配置いたしましても、また従来の職員でございましても、病院の運営ということにつきましては、先ほどもお話のような憂うべき点をなくするというような運営の方法もまたあると思うのであります。たとえばそういうような急患等につきましては、別に看護婦の中で遊撃隊というものを作りまして、そういうものに対処するとかいろいろな方法があると思うのであります。いずれにいたしましても四月一日から新しい要員を配置いたしました後におきましては、十分な着護体制がとれないという場合におきましては、人命は非常に尊重すべきでありまするし、そういう問題につきまして先ほど八木さんにお答え申し上げました通り、十分に考えたいと思っております。
  81. 栗原俊夫

    ○栗原委員 大分厚生大臣考え方は良心的な考え方を発表してくれておるのですが、ともかくも命を大事にする、こういうことで進めておる。そこでさらにお尋ねしたいことは、一方においては先ほども盛んに言われておりましたつき添い婦の問題があるわけであります。私ども精神病院へ行ったときに、何か薬を注射して昏睡状態にする治療の様子を聞いたときに、やはりこれだけやればいいというようなさし方をせずに、だんだんその量をふやして昏睡状態を求めるインシュリン・ショックというような治療の話も聞きましたが、今度の問題もそれによく似ていると思うのです。厚生省の方では、これで間違いないのだというようなことですぱっと変えて、そうして患者を死の恐怖に追い込むような情勢になっておる。そこで私は一つぜひ考えてもらいたいことは、新しい看護の体制に入ることもいいでしょうが、つき添い婦の中で常勤にとれるものは筒一ぱいとってもらう、いろいろの事情で常勤にとり得ない者はつき添い婦として残す。つまり先ほども申しました重患に対してはつき添い婦もつけられるという二本建の制度によってつき添い婦を残す、こういうことによってつき添い婦の問題も解消する、患者の死の恐怖も解消できる。こういう方向でいわば一石二鳥と申しますか、こういう方向でぜひやっていただきたい。先ほど新しい体制でやってみて、二百八人を増配してみて、それでうまくないときはというようなお話ですが、それがわかった場合にはやはりそこには死という現実の証明が出てくるわけです。人の命を実験台に乗せたようなやり方で一度に体制を切り変えるのでなしに、新しい体制プラスつき添い婦という、そうした二本建の中から順次その方向へ移行できるものならば移行することもけっこうでありましょう。いきなり新しい体制にして、悪かったら逆戻りしていく、こういうことではなしに、順次そちらの方へ進んでいく、こういう方向をとってもらいたい、こう思うのですが、お考えはいかがでしょう。
  82. 小林英三

    小林国務大臣 私が先ほど来申し上げておりますことは、人命を試験台にしてやっていこうというのではないのでございまして、そういう問題につきましては今後十分にあらゆる療養所におきまして注意をさせますし、また十分な手当もいたさせまして、四月一日から新しい看護体制になりました場合におきまして、人員の配置後におきまして、さらにそういう方面に憂うべき点があるような場合におきましては考慮をいたしたい、こういうことを申し上げておるのであります。
  83. 栗原俊夫

    ○栗原委員 もちろん人の命を試験台に乗せるようなことが厚生大臣の品から言えるはずはありませんが、しかし実際はそうなるのですよ。四月一日から実施しようとしておる新しい看護の体制もけっこうだとは思うのですが、すでに実施してきた中から二月八日の通達を出さざるを得ない事態も起ってき、その後においてもやはり所々に、ほんとう患者が死の恐怖へさらに追い込まれるような事態が起ってきておる、こういう現実に目をおおうことなく、患者本位に、命を中心に考えて、四月一日以降の問題についても、必要な部面、特に手術あとあるいは一度重症患者、こういうものについてはつき添い婦もまたつけられるのだ、こういう方向をぜひとも打ち出すように努力していただきたいし、また事態を直視して、当面そうせざるを得ない、こういうことを大臣からぜひ言っていただきたいと思うのですが、一つ人の命を目の前に置いてはっきりとこの点を明らかにしていただきたいと思うのです。
  84. 小林英三

    小林国務大臣 貴重な人命の問題につきましては、われわれも常日ごろこれを一番の重要な問題として考えておるのでありまして、先ほどの御質問に対しまして私が申し上げました通りでございます。     ―――――――――――――
  85. 佐々木秀世

    佐々木委員長 次に健康保険法等の一部を改正する法律案等、保険三案について質疑に移ります。岡本隆一君。
  86. 岡本隆一

    ○岡本委員 夕べ京都から、三月二十日総辞退決行す、京都府医師会、こういう電報が参っておるのでありますが、それで私の順番でありませんけれどもこの問題について緊急に質問をさしていただきたいと思います。これは大臣のところにもきておると思いますが、大臣承知でありましょうか。
  87. 小林英三

    小林国務大臣 承知をいたしております。
  88. 岡本隆一

    ○岡本委員 先日本会議で私は政府が頑迷な態度を改めなければ非常事態がやってくるということを忠告いたしたのでありますが、良識のある医師の諸君は総辞退などというふうなことはなさらないと思うというふうな御答弁よりなかった。しかしながらその良識のある医師が本日総辞退をし始めたのです。京都府が第一波、やがて大阪、東京というふうな大都市がこれに続きまして、その波紋は全国に広がると思うのでありますが、これに対して大臣はどう対処するか、またこれをどういうふうに理解しておられるか、あなたの御意見を承わりたいと思います。
  89. 小林英三

    小林国務大臣 今の京都府の問題は、本日午後二時までに――私の知り得たところによりますと、京都府の約七、八割ということを承知いたしております。
  90. 岡本隆一

    ○岡本委員 そうじゃない、九割五分です。
  91. 小林英三

    小林国務大臣 私が知り得たところによりますと七、八割ということを聞いております。この数はいずれにいたしましても、一応知事のところに総辞退の届出をするということを私も承知いたしております。保険医または保険薬剤師は保険医または保険薬剤師たることを辞することができるということが健康保険法の四十三条の三の第四項にあるのでありますが、ただし第五項に「前項ノ規定ニ依リ保険医又ハ保険薬剤師ヲ辞セントスル者ハ其ノ辞セントスル日前一月以上ノ予告期間ヲ設クベシ」という条文があります。今の京都の医師会の諸君がどういう御意図で知事のもとに届出をされるかということは私存じ上げておりませんが、多分今日の健康保険の改正案ということについてのことだろうと存じます。しかし私はこの問題につきましては、今日まで医師会の諸君にお目にかかりましたところによりますと、誤解が多々あると思います。私は健康保険法の改正は、健保制度の進歩向上のためには非常に必要なものだと確信をいたしておりまして、なお相当の猶予期間もあることでございますから、十分にこれらの諸君の理解を得ましてそれらのことを期間内に思いとどまっていただくこともできると確信をいたしております。従いまして今この問題について私がどういう処置をするかということは考えていないのであります。
  92. 岡本隆一

    ○岡本委員 非常に医師諸君に誤解がある。だから話し合えばわかってもらえる――二・二六事件ですか五・一五事件ですか、あの話せばわかるというお考えかもしれませんが、私は話し合いの段階というものはすでに過ぎておると思う。健康保険の改悪の問題は昨年の二十二国会から続いておるのです。二十二国会で論議されて、され尽してそれが今度に持ち越されている。そして健保改悪の法案の趣旨というものも前国会提出されたものも、今国会提出されたものも、よけいもののこぶが一つついただけです。つまり一部負担というこぶがついてきたのです。しかしながら前国会以来健保赤字対策というものに対して政府がどういう意図を持っておるかということを考えれば、それは一貫した方針で、同じ考え方なのです。そういうような方針で進んできて一年間論議を尽してきて、しかもなお政府は既定方針で進んでいく、こういうことなのです。それではもう話せばわかるというのんきな事態でないと私は思うのですが、大臣は話せばわかるとおっしゃる。それではどういう点で話をおつけになるつもりか。大臣の話をつけるという、その構想を聞かしてもらいたい。
  93. 小林英三

    小林国務大臣 私は健康保険の改正案をめぐりまして、従来療養担当者の各位が各地で反対運動をなさっておることもよく承知しております。また私は今日まで医療担当者に千人前後はお目にかかっておると思います。それらの諸君にお目にかかりまして、今日こうすることがよろしいだのという問題につきましていろいろ語り合いました。時間の許す限り語り合っておりますが、多くの場合におきましては、自分たちは自分たちの立場上ここへ陳情に来たのだ、よくその点はわかるというような方々が多いのでございまして、今日の国家財政あるいはいろいろな関係からいたしまして、医療担当者の諸君がこうすることが健康保険の将来のためよろしいのだという御理解を得ていただければ、私はその間この問題もおのずから解決するのではなかろうかということを確信いたしておるわけであります。
  94. 岡本隆一

    ○岡本委員 大臣は大へんなことをおっしゃったと思うのです。自分たちの立場上こういうことを言いにきたのだ。それじゃあなたのところに陳情に言った医師諸君というものは、心にもないことをあなたのところに言ってきておる、自分はほんとうは反対していない、今度の健保改悪には賛成なのだ。しかしながらたとえば役員であるとか何かの理由でもって行けというようなことで、しょうことなしに来ているのだ、こういうふうな意味に私は解釈いたしますが、あなたのところに参りました日本医師会の代表の諸君がほんとうにそう言ったということを、あなたはここではっきり言明できますか。それは大へんな問題ですよ。日本医師会の幹部の諸君のだれとだれとがあなたにそういうことを申しましたか、ここではっきりと言明してもらいたい。
  95. 小林英三

    小林国務大臣 私は日本医師会の幹部がどう言ったとか、あるいは各県の医療担当者の代表がどう言ったとかいうことを申しておるのではないのであります。私がたくさんの人々にお目にかかりまして胸襟を開いていろいろ語り合いました程度において、健保の改正案のこういう点がいかぬとか、ああいう点はこうしてもらいたいとかいろいろ陳情はございました。しかし私どもは私どもとして、こういうようにすることが健康保険制度の将来のため一番いいのだということをお話ししますと、理解される方が相当あるのであります。従いまして今日の健康保険というもののこういう改正をいたしましたということにつきましては、私自身といたしましては、細部の問題は別でございます。これは国会審議によるのでございますが、たとえば一部負担を中心といたしましての健保の改正というものは、今日の健康保険の向上発達のために一番よろしいことだと信じておりまして、また私が千人近くの方々にお目にかかりました人の中にもそういう方面において相当御理解をなさっていただいておる方もあるのであります。これは健康保険の改正全体についてではないのでありますが、そういう私の考え方に対しては相当御理解を得られている方もたくさんあるのであります。従いまして京都府の医師会の総辞退という問題につきましても、だんだんと理解を得られる時期に達するものだと確信をいたしております。
  96. 岡本隆一

    ○岡本委員 そうしますと、あなたは、京都府は早まってやってしまったけれども、これから話をしたら東京や大阪その他全国の各都道府県へは絶対に波及していかないだろうというふうな見通しをお持ちになっていらっしゃいますか。
  97. 小林英三

    小林国務大臣 私が申し上げているのは、そういうことではないのでありまして、今の医療担当者の諸君が、たとい京都のようにそういうことがございましても、私はだんだんと御理解を得ていただくことができる、こういうふうに考えております。
  98. 岡本隆一

    ○岡本委員 あなたがお会いになった人の中には弱い意見を吐く人があったかもしれぬ。しかしながら現実はあなたが考えていられるほど甘いものではない。それが証拠に、総辞退なんというふうなものは起りっこない、かつてこういうふうなお話があったのに現実に起きておる。あなたはこの前起らぬと思っていたところが、今起ってきた。話せばわかってもらえるというその話がつかないのなら、現実に全国の保険医が総辞退するということになる。あなたはそういう事態は絶対に起さないという自信がおありになりますか。それを一つ承わりたい。
  99. 小林英三

    小林国務大臣 ただいま私が申し上げましたように、健康保険医を辞せんとする前に一カ月以上の予告期間が要るのでありまして、この予告期間の範囲内におきまして皆様方の御理解を得るべく努力いたしますし、また得ていただけるものだと思っております。
  100. 岡本隆一

    ○岡本委員 どうもあなたは自分の意見賛成のなにだけが頭の中に入って、反対の意見というものは頭の中に入りにくいらしい。どうも商売が鋳物屋だから、穴はあいているけれども、その穴はちっちゃいから鋭いやつより入らぬわけですね。だから一方的な意見だけが頭の中に入って、反対の意見というものは頭の中に入らない。きびしい現実というものが、すでにこの中へ出てきているのです。だから、あなたは話せばわかるというふうに思っておられるけれども、両方の意見の相違というものは非常に大きい。これは話せばわかる程度の開きじゃない。御承知のように今度の健保の改悪の三大要件というものは、一部負担、その次には官給請求書の発行、もう一点は二重指定あるいは審査、監査の強化というふうな問題、この三つのうちいずれが実施されても、その三点ともに反対だというのが今の療養担当者の強い意見です。しかしながらこの三つを抜いたら、この健保改悪案というものは全く骨抜きなんです。またそれでは二つ引っ込めるから一つだけはしんぼうしてもらいたいというふうな妥協案をあなたの方でお出しになったとしても、その妥協案というものは今とてものまれるような空気というものはない。だから、そういう事態が起れば、あなたの方で健保改悪案を引っ込めるというふうなお考えであるとするなれば、なるほど話はつくでしょう。だけれども、今の厚生省の鋳物のごとき石頭ではなかなかそれは……(「失敬なことを言うな。そんなことは質問と何の関係があるか。」と呼ぶ者あり)あなたの方のそういうふうなお考え方では、なかなかそういうふうな妥協というものはできないと私は思う。そういうことになると、勢い四月に入れば全国的にどんどんと総辞退というものが出始めてくると思うのです。そこでそれでもなおあなたに話をつけるだけの御自信があるかということをもう一度承わっておきたい。
  101. 小林英三

    小林国務大臣 私は鋳物工場ばかりから生まれたのではなしに、すべての方面の事業にも関係いたしております。従いまして、私がたまたま関係いたしております鋳物工場がございましても、私の頭というものは、今岡本さんがおっしゃったようにかたくなになっているわけではないのであります。ただ問題といたしましては、京都府の医師会の諸君の八割方が、きょうの二時までに知事のところに総辞退の辞表を持って来るということは聞いておりますけれども、これにはやはり先ほど申し上げましたように、一カ月間以上予告期間もあるのでありまして、この間におきまして、十分に私も理解を得て、そういうことのないように努力いたしたいと思っております。こういう問題につきまして、できるかできないかということにつきましては、私と岡本さんとの間の見解の相違だろうと思っております。
  102. 佐々木秀世

    佐々木委員長 岡本君に申し上げますが、国会は御承知の通り、お互いに品位を重んじて、用語に十分御注意して御質問いただきたいと思います。
  103. 岡本隆一

    ○岡本委員 そこで私は総辞退態勢というものについての理解の問題を、一つあなたに伺いたいと思うのです。総辞退態勢というものは、これは単に保険医をやめますよというところの一つの予告である、予告であるから、その予告期間の間にあなたは話し合いがつく、こういうふうに思っていられる。しかしながら、私はそういうふうな理解はしてないのです。これはもう背水の陣をしいたということなんです。こういうことをやられたんでは、これは全く保険医たることができない。だからこういうことをやられるのだったら、やめるより仕方がないというところの背水の陣をしいたということなんです。そこで、背水の陣をしいたところの医師諸君が、どういうふうな行動に出てくるかということは、私は想像に余りあると思うのです。すでに総辞退態勢をとらない以前においても、大阪、京都あるいは兵庫あるいは滋賀というふうなところで、どんどんやはり一日じゅう、朝から夜おそくまで全部の医師が集まって、そしていろいろそれについての対策を考え、協議して、無医地帯、医師の空白地帯、真空地帯というものができて、そのためにいろいろな不慮の事故が起っておるのです。そういう事故が、総辞退態勢をとらない前ですら起っているのに、総辞退態勢をやり、もうあと一カ月たてば自動的に保険医でなくなる。自動的に全部の開業医が保険医でなくなれば、なるほどある程度その他の公的医療機関はありますから、勢いそこへ患者は流れていくが、非常に一面被保険者の方に大きな迷惑をかける、迷惑はかけるが、同時にまたきびしい医師にとってのより一層の生活難というものが出てくるのです。そういうふうな状態に置かれた中において出てくることは、再び、三たび、四たび、やはり至るところでもって悪法反対の医師大会が開かれ、そのために至るところで無医地帯、空白地帯というものが出て、非常な緊急情勢というものが出てくるのです。四月の半ばごろになれば、全国一斉に医師大会が開かれて、しかも二日、三日かけたところの医師大会が開かれて、そのために日本じゅうどこへ行っても開業医の門は閉ざされておる、そういうふうな緊急事態も私は出てくると思うのです。良識のある医者はそんなことしないだろうと、あなたはそうお考えでしょう。しかしながら、いかに良識あろうとも、背水の陣をしいて、しかもがけっぷちに立たされた、こういうふうな状態になれば、これは必ず出てくる空気だと私は思うのです。そういうことをあなたは予想に入れ、考えの中に入れて話せばわかるということをおっしゃるのかどうか。一つそういうことをお勘定の中に入れておられるかどうかということを、この際承わっておきたいと思います。
  104. 小林英三

    小林国務大臣 その問題については、私が先ほどから岡本さんの御質問に対してお答え申し上げている通りでございます。
  105. 岡本隆一

    ○岡本委員 その問題については私はお答えをいただいたと思っておりませんから、あるいは私の聞き漏らしかもしれませんが、もう一度承わりたい。
  106. 小林英三

    小林国務大臣 岡本さんの、京都府の医師会の保険医辞退の問題につきましての御質問以来、私が岡本さんに御答弁申し上げている通りでございます。
  107. 岡本隆一

    ○岡本委員 それではやはり、話せばわかる、話せばそういう事態が起らないというふうな意味に私は受け取ります。が、それで間違いございませんか。――私は厚生大臣がきわめて楽観的な、きわめてのんびりした、春先に向うから春風たいとうたる気分にすでになっておられるのかもしれないが、これは私は非常に危険な考えだと思うのです。もうそういう緊急事態が目に見えているだけに、私は特にこの機会に御忠告申し上げておきますけれども、もしも政府の方で緊急に態度をお変えになって、真剣にこの事態に処するような道をお講じにならないことには、なるほど医師側、療養担当者の側も大きく傷つくかもしれませんが、同時に政府もまた大きく傷つくような大きな事態が起ってくるということを、特にお考えになって善処されんことを要望いたしまして、私の質問を終ります。
  108. 長谷川保

    長谷川(保)委員 関連して。先ほど来岡本委員から申し上げておりますように、事態は非常に大へんだと思うのです。これはおそらく厚生省としては、いや、一カ月の間にこういう大きな問題は何とか解決するよという気持であることは、考えられるのでありますけれども、しかし事態は非常に急迫している。もう次々に毎日あとを追って全国の医師会が辞退する。そればかりでございません。先ほどから岡本さんから申し上げますように、三つのことが中心であります、一部負担の強化及び監査の強化、機関の二重指定。あとの二つは明らかに医師の人格を無視している、医師を犯罪人扱いしているということに対する医師の憤激であります。最初の一部負担の強化の問題は、医師会が単に自分たちの利害という問題だけでなしに、日本の社会保障の後退に対する憤激である。これは明らかであります。この点におきましては、今日労働組合も、全労働組合がまっこうから反対している。おそらく私は、この医師の保険医辞退ということが進んで参りますと、この一週間を出ずして、もし医師がそういう態度をとるならば、全国の被保険者は保険料支払いのボイコットをするということをやってくると思います。これについては源泉で取っていくからというようなお気やすい気持もあるでしょうけれども、これは断固としてそういう態度をとってくると私は思います。そうなって参りますと、日本の保険制度は全く崩壊の危機に立つ、少くとも一時大混乱に陥ってしまうということが考えられる。こういう事情からして、厚生当局は直ちにこの事態の収拾に当らなければならぬ。この事態の収拾のためには、もし当局が必要であればわれわれは委員会をしばらく休んでもけっこうです。すみやかにこの対策をとられて、こう事態に他の医師会等が入っていかないように、あるいは保険料支払のボイコットをするというような、絶対そこまで入らないように、すみやかに当局は緊急対策を立てられることを私は希望したい。それで当局においてはそういう態勢をすでにとっておられるかどうか。事が非常に重大でありますからお伺いしたい。
  109. 小林英三

    小林国務大臣 今の長谷川さんの御員問でございますが、これは多分現在われわれが出しております健康保険法の一部改正法律案を撤回しろという意味と解します。私は先ほどから申し上げておりますように、これを撤回する意思はないのでございます。
  110. 長谷川保

    長谷川(保)委員 こういう事態に対して、単に撤回するということだけでなしに、厚生省はすみやかに緊急対策を立てるべきであると思うのです。それで必要があれば、われわれは委員会を少し休んでもけっこうです。すみやかにその対策を立てられて、この委員会を通して天下に発表せられるように願いたいと思うのです。そういう用意があるかどうか。
  111. 小林英三

    小林国務大臣 京都府の医師会の辞退の問題は、先ほど岡本さんに私の見解を申し上げた通りでありますが、今長谷川さんのおっしゃいますことは、あなたのいろいろなことを想定された問題でありますから、厚生省といたしましてはすべての問題た勘案いたしまして、厚生省自体としては、将来考うへき問題は考えようと思います。今あなたのおっしゃいましたことに対しまして、御想定に対しましてどうこうしようという考えはございません。
  112. 長谷川保

    長谷川(保)委員 今事態は起っていりのですから、さらにこれが健康保険組合あるいは被保険者等にも、これは労働組合にとりましては重大な問題ですから、広がっていくのは当然です。そういうことになっていくと思うから、緊急対策をお立てにならなければならぬ。緊急対策をお立てになる用意がおありだと思いますけれども、そのことは至急やっていただきたい。その緊急対策を至急当委員会を通して天下に発表していただきたいと思う。
  113. 小林英三

    小林国務大臣 今長谷川さんのおっしゃったような問題を、私は今直ちに当委員会に差し出そうという気持はございません。
  114. 滝井義高

    ○滝井委員 私ちょっとこの機会にお尋ねしておきたいのですが、大臣は大体総辞退ということを、どういうときをあわてなければならぬ事態だと思っているのですか。京都が入っても、知事のところに辞表を持っていっても、必要がない、今ちっともあわてていないですね。この前私の質問に対して大臣は、総辞退は起らない、こうおっしゃった。きょう知事のもとに辞表を預けてしまったということは、すでに総辞退に入ったと私は見たい。大臣は大体どういうとぎが総辞退とお考えになるか。
  115. 小林英三

    小林国務大臣 私は先ほどから岡本さんの御質問につきましてお答え申し上げましたように、健康保険のこういう際には、法律にも予告期間を与えておるのであります。予告期間がなくて、きょう知事の手元に辞退をしたい、あすからもうないという場合は、これは総辞退を決行されたときでありまして、なおその間に相当の猶予期間があるのです。すべての問題はいろんな観点から――どういう意味でそういうことをなさったかわかりませんけれども、とにかくいろいろな意味があると思います。従いまして、私はそういうふうな緊急な問題が起りました場合におきましては、そのときはそのときといたしましての考えをきめたいと思います。
  116. 滝井義高

    ○滝井委員 そのときそのときとおっしゃいますが、私らはこの事態によっては大臣の食言にもなると思う。責任も追及しなければならぬ。国会は重大段階に入っておりますから、大臣は多くの食言があるのです。この前も、総辞退が起らないということが私に対する大臣の御答弁であった。私らは現実に京都が全部辞表を出したということは、これは総辞退に突入した、こう見なければならぬと思うのです。これは詳しく見なければわかりませんが、あるいは五月一日にその辞表が大臣のところに来て、六月一日から保険医でなくなる、こういうのかもしれません。あるいは一カ月前ですから、五月一日から、こういうことになるかもしれません。それはどういうことか、詳しく調べてみなければわからぬが、大臣は発動したときからが総辞退だ、こう御理解ですか。もっと具体的に申し上げますならば、五月一日に大臣のところに持ってきます。それがいよいよ保険医をやめて保険診療に従事しなくなるのは六月一日、こうなりますと大臣は、それは六月一日からが総辞退だ、六月一日までは総辞退でないのだから、それまでは静観しておってよろしい、こういう意味ですか。
  117. 小林英三

    小林国務大臣 私が先ほどから申し上げておりますのは、京都府の辞退の問題についてでありまして、予告期間内におきましては、医療担当者というものはやはりお医者さんとしてその職務に従事しなければならぬことになっております。ですから、たとえばきょうお出しになりましても、あすから医療を辞退するわけでないのでございます。従いましてそういうふうなことから考えまして、全般的に緊急欠くべからざるような問題が起りましたような場合には、それよりよほど前にそれに対する処置を講ぜなければならぬ、こう考えております。
  118. 滝井義高

    ○滝井委員 私はその処置を尋ねているのではないのです。四十三条ノ三に「前項ノ規定ニ依リ保険医又ハ保険薬剤師ヲ辞セントスル者ハ其ノ辞セントスル日前一月以上ノ予告期間ヲ設クベシ」こうなっているわけです。法律的には、保険医が保険医でなくなるためには一カ月以上の期間が要るわけです。だから五月一日とか、あるいは四月二十九日に出せば、六月一日からでなければ保険医ではなくならないわけです。六月一日になると初めて保険診療に従事することができない、こういうことになるわけです。そこで大臣は、保険医の辞退というものは、今の例では、六月一日がきたならば総辞退をした、こういう認識なのか。それとも、辞表を預けたときが、いよいよ総辞退態勢が固まってその緒についた、こういうきわめて重大な事態に直面した、こうお考えになるのか、これは大臣のお言葉によって私たちも党議として態度をきめなければならぬ。重大ですから――また重大であると言うとみんな笑いますが(笑声)ほんとうに重大なんです。そこで大臣の明白な御答弁をいただいておきたい、こう申しているわけです。
  119. 小林英三

    小林国務大臣 京都府の場合におきましては、一カ月以上というのでありますから、一カ月になっておりますか、あるいは五十日になっておりますか、それはわかりません。しかしこの総辞退というものを一カ月あるいは四十日たってから後に考うべきであるか、あるいはそういう届出を都道府県知事に出した場合が期日であるかという問題につきましては、これはいろいろの御意見があると思います。
  120. 滝井義高

    ○滝井委員 いろいろ見解があるが、私はほかの人の見解を聞いているんじゃなくて、大臣の見解を明白にして下さいと言っているわけです。
  121. 小林英三

    小林国務大臣 最後の期日が来たときというように私は考えております。
  122. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと大臣は、最後の日にちが来て、保険医の資格がなくなったときからが総辞退だ、それまでは総辞退と認めない、従って情勢は重大段階ではない。いわゆる保険医の資格がなくなってからが初めて重大段階になって、厚生省は動き出さなければいかぬ、いわゆる緊急対策を講じなければならぬ、こういうふうに解釈されるのですが、そう解釈してさしつかえありませんか。
  123. 小林英三

    小林国務大臣 その通りであります。
  124. 佐々木秀世

    佐々木委員長 午前はこの程度にとどめ、午後三時まで休憩いたします。    午後一時三十一分休憩      ――――◇―――――    午後三時五十七分開議
  125. 佐々木秀世

    佐々木委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。  午前中の質疑を続行いたします。滝井義高君。
  126. 滝井義高

    ○滝井委員 きょうは主として大蔵大臣にお尋ねをしたのですが、現在この健康保険法の改正におきまして、国が三十億の補助を七十条でやることになっておると思うのですが、この三十億というお金は、厚生大臣の御説明によれば健康保険が続く限り引き続き補助金というものは出すものだ、額は三十億という定額にきまってはいないが、健康保険の続く限りとにかく引き続き国が出すものである、こういう御答弁を得ております。これについて大蔵大臣その通りなのかどうか一つ御所見を承わりたいと思います。
  127. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今回三十億国庫補助をいたしましたのは、社会保障の確立を促進していきたい、そういう意味から出したのでありまして、単に赤字の補填というわけでありません。従いまして本年に限らず後年にわたってこの補助金は出すつもりでおります。
  128. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、大蔵大臣の今の御答弁は二月十一日の予算委員会における私に対する答弁と食い違ってきたわけです。二月十一日における予算委員会では三十億というこの補助金は計画的に出すものではない。そのときの財政の状況、すなわち来年度における健康保険の勘定の状況によって国庫から出すものである、こういう御説明を得ておるのでございます。そうしますと、大臣は予算委員会の御答弁は修正をして、今のように、何と申しますか、いわば政策転換をやられたということなんですか。
  129. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は予算委員会において答弁したと同じ意味の答弁をしたつもりでおりますが、金額の点は今後の財政の状況に応じて変化をする、かように御了承を願います。
  130. 滝井義高

    ○滝井委員 おなたは予算委員会と同じだとおっしゃいますが、あなたの方から出しております主計局の三十一年度の予算の説明書、これはわれわれが衆議院でいただいたものですが、これには、私が予算委員会で御指摘申し上げたように、三十七ぺージに、「薬価対策等の措置を講ずるとともに、一般会計から財政再建のための臨時の補給金として三十億円をこの会計の健康勘定へ繰り入れることとしている。」こういうことになっております。この趣旨であなたは二月十一日の予算委員会で私に御答弁をしていただいた。ところが今度は三月になって大蔵省から同じものが出てきました。これにはどう書いてあるかというと、「薬価対策等の措置を講ずるとともに、一般会計から三十億円をこの会計の健康勘定へ繰り入れることとしている。」こういう工合に、臨時の補給金という言葉を抜いてしまった。予算が衆議院を通るときには、これは計画的に入れるものではない、こういう御答弁を予算委員会でされておいて、通ったあとに今度はこういうふうに変えて出てきておるというのはおかしいじゃありませんか、これはどういうことなのですか。
  131. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ただいま読み上げられたのは私の予算委員会における答弁じゃないと思います。未定稿の参考のものだと思います。このことは予算委員会で御答弁する前に与党、政府できまりまして、私の答弁は食い違っていないと思っております。しかしなお速記録はよく見ます。
  132. 滝井義高

    ○滝井委員 さいぜんも私が申し上げましたように、速記録を持ってきても構いませんが、私は速記録を写してきたのです。二月十一日に大臣は私に対して、この三十億という金は計画的に出すものではない、こう御言明になっているのです。従ってその計画的に出すものではないということは、明らかにこれに臨時補給金と書いてあるのと符合しているのです。ところがその後自由民主党の政策審議会及び大蔵厚生両当局間の打ち合せ了解事項というもので法案の中に補助金というものは成文として入っていなかった、いなかったのを今度は後に話し合いで七十条に入れてきておる。通ったあとに入れてきておる。従ってこれにつじつまを合わすために、今度は三十一年の三月に出たものにはちゃんとこうなっておる。だからこれは大蔵大臣にここで率直に、計画的に入れるものである、こういうことに御答弁の修正を願えれば私は何も追及する必要はない。前に出したこの説明は間違っておって、健康勘定が黒字の場合でも、健康勘定が続く限りはその補助金は出すものであるという御言明をいただければ、私は先に進みます。そうではなくて、大臣がどうも奥歯にもののはさまったような言い方では……。
  133. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 決して奥歯にもののはさまったようなことを申しておるつもりはございません。若干私の記憶の不確かな点はあるかもしれませんが、しかしこれは率直に申しまして財政上の関係から、当初、この予算編成当時は、これは小林さん非常に御努力なさったのですが、私もはなはだ残念に思ったのですけれども、実はこういうふうな措置はほんとうのところなかったのです。その後与党と政府と話し合いまして、この三十億の補助をする、それも赤字補てんじゃない、一回限りじゃないということをきめて――これは予算が通った後ではありません、前にそういうことをきめて、そうしてこの法案を出した、こういうことになっておる。これはありのままの姿で、もしも私の答弁に速記録で何か間違いがありますれば、それは今申し上げたのが、その通りでありますから、しかるべく考えなくちゃならぬので、私はそういうふうなのが前にきまりましてから、今御答弁申し上げたのと同じ趣旨の御答弁をいたしておるつもりであります。
  134. 滝井義高

    ○滝井委員 大臣がその通りの答弁と言われても、私実は速記録を写してきたのだから、これは私の方が確かなのです。また私があなたにお尋ねをしたのだから、がんばっても同じですし、答弁は、一年限りでない、ずっと出すのだ、こういう御答弁を得たのですからけっこうです。それならばこれは補助金です。今度は赤字の補てん金でないのです。御確認を得ましたから、お尋ねいたしますが、そうしますと、健康保険の会計の中に昨年は一般会計よりの受け入れが十億円あったわけです。今年は三十億受け入れた。ところが昨年受け入れました十億と三としの三十億とは性格が違うわけなのです。大臣、性格が違うことは御存じでしょうね。――そうしますと二本建になるわけです。厚生保険特別会計に基くいわゆる赤字補てんのための十億円ずつ毎年入れるやっと、それからたとい健康保険の勘定が黒字になっても日本の社会保障を進展せしめるために国が幾らかの補助を年々歳々出していくというもの、こういう二本建になるわけです。これはお認めになるでしょうね。
  135. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 大体そういうふうにお考え下さってけっこうと思います。
  136. 滝井義高

    ○滝井委員 御言明をいただいてありがとうございました。ぜひ一つそうしていただきたいと思います。なぜ私がこういう念を押すかと申しますと、昨年この厚生保険特別会計の十億ずつを七カ年間入れるというのをきめたのです。ところがことしはもうそれを繰り延べて入れないのですね。そういうことのないように一つ来年から一般会計から厚生保険の特別会計の中の健康勘定に二本建で入れていただくことを御確認を得ましたから、次の質問に進みます。  そこでこれは厚生大臣質問することになるのですが、厚生大臣も御存じのように、今度の健康保険法の改正によりまして各保険は一部負担の率が非常に違って参りました。御存じのように、国民健康保険は二分の一ずつ負担をしていきます。それから健康保険でも政府管掌の分は家族はその要した費用の半額を負担します。本人は、この法律できめられるように、初診のときには五十円以内を払い、それから再診のときには十円、注射、投薬があれば三十円、入院が三十円、こういうように一部負担が違って参りました。ところが健康保険でも組合管掌のものになると、九百七の組合がそれぞれ勝手に一部負担を払わなかったり払ったり、そういうことができる状態ができて参りました。さらに日雇い労働者は五十円以内で払うことになりました。船員保険は百円の初診料を払うごとになりました。こういうように実にちりぢりばらばらな負担になった。事務の複雑怪奇はまさにきわまれりという状態になってきた。これで医者がたとえば日雇い労働者あるいは船員保険で一部負担のとり間違いをやると、この健康保険法の四十三条でばっさりやられることになる。こういう複雑な一部負担の状態を作っておいて、そうして日本の社会保障が進展をし事務が簡素化されるとは初診のことからしてもいえない。大臣これは一体どういうおつもりなのですか。
  137. 小林英三

    小林国務大臣 滝井さんの今の御質問の中に多少お考え違いがあるような点もあると思うのであります。それは、日雇い労働者には一部負担はありません。
  138. 滝井義高

    ○滝井委員 初診料が一部負担になる。考え違いはない。
  139. 小林英三

    小林国務大臣 それから組合の問題につきましてもやはり一部負担はやるのであります。
  140. 滝井義高

    ○滝井委員 そういう工合に一部負担が、額が違うのですよ。みんな同じじゃないんです。組合が九百七あれば、九百七がみな額が違ってもよろしいが、そういう工合にちりぢりばらばらに負担の額が違って、もしそれの一部負担の額を取り違えたならば医者は不正になるのですよ。請求に不正があったといってばっさりやられるのです。これはまた一体どうなるかというのです。こういう複雑怪奇な負担の状態を作っていいか。七つも八つも日本は社会保険がありますよ。その七つ八つもある社会保険が全部、支払う一部負担というものが違ってくる。これでいいかというのです。
  141. 高田正巳

    高田(正)政府委員 大へん専門的な部面にわたりますので、私からお答え申し上げます。組合管掌の被保険者といえども、今度は一部負担は一律にいたすのでございます。これは今滝井先生の仰せでは、組合によって額が違ったりなんかするという仰せでございますが、法律はさような建前になっておりません。健康保険法の適用を受けるものは一律に同じような額を一部負担するのでございます。ただ組合管掌におきましては、組合の事情がいろいろありまするので、付則で当分の間一部負担をしたものを払い戻してやることもできる、従ってこれは医師には関係のないことでございます。従いまして、今の組合が九百もあって、それが一々一部負担の額が変るというふうな事態にはならないわけでございます。  それから国保が二分の一、家族がやはり二分の一、健保は今度広がる、船員が若干異なっておるというふうな仰せでございますが、これは従来ともそうなんで、健保は初診療五十円なら五十円、四十六円なら四十六円、国保は二分の一、家族は二分の一ということは、従来ともばらばらでございます。今回違いましたのは、船員が新たに一部負担の制度ができまして、そしてその船員の一部負担の制度が、健保とは若干船員保険の特殊事情に基いて、方法を一部変えております。それだけでございまして、ばらばらであることは従来とも別に変りはないわけでございます。
  142. 滝井義高

    ○滝井委員 その従来のばらばらの不合理を是正することが、いわゆる法の合理化をすることでなくちゃならぬのです。その合理化をやるという建前を法律改正の理由にうたっておるけれども、やっていないということなんです。ますますそれの複雑怪奇さを促進しようとしているのが、あなた方の試みなんです。複雑怪奇を促進して、それに間違った保険医は首を切る、こういうことなんです。これは明らかに、保険医の何か欠点を見つけてやろうとする意図しかないのだということに、もし私たちが少し曲って考えれば、そういうことになる。  まあそれはそれとして、そこで大蔵大臣にお尋ねしたいのですが、しからば一体国家公務員の共済組合法では、一部負担はどういう工合になるのか、やるのかやらぬのか。この点一つ大蔵大臣の御見解を承わりたい。
  143. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 一部負担をやります準備をいたしております。
  144. 滝井義高

    ○滝井委員 一部負担をやる所存だそうでございますが、どういう工合に一部負担をおやりになる御所見でございますか。
  145. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 いまだ国会に御提案申し上げておりませんが、大体組合管掌健康保険の例にならいまして、実施いたす考え方でおります。
  146. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと一部負担を、一応患者に、医療機関に行った場合に健康保険と同じように支払わして、あとは組合でその一部負担を支払ったものについては本人にその分を返す、こういうことになるのですか。
  147. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 大体さように考えております。
  148. 滝井義高

    ○滝井委員 そういうことは厚生省も十分了解してのことでしょうね。
  149. 高田正巳

    高田(正)政府委員 共済組合は大蔵省の御所管でございますので、またこれの運用につきましては、共済組合何とか審議会というような審議会もございまして、それらの関係機関に諮問され、御意見を徴されて大蔵省が御決定になることでございます。従いまして私どもとしてはこれにとやかくのあれは申しませんけれども、今のような御決定の経緯につきましては、私どもも十分御連絡を受けて承知をいたしております。
  150. 滝井義高

    ○滝井委員 それでは本論に入りたいと思います。これは大蔵大臣厚生大臣両方にお尋ねすることになるのですが、大蔵大臣厚生大臣も御存じのように、現在健康保険の会計は赤字で苦しんでおります。ところが健康保険が赤字であるとともに日本の医療機関が全部赤字だということなんです。一体これをどうするかということです。健康保険の会計が黒字になっても日本の医療機関が赤字であるならば、この法律の改正の目的は達成することはできない。一体日本の医療機関の赤字をどうして埋めるか。これは一つ厚生大臣と大蔵大臣の両方から御答弁を願いたいと思う。
  151. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 厚生大臣がどういうふうに赤字を解決するか、いろいろのお考えがございましょうから、それをお伺いした上で、財源のことも必要があれば考えなければなりませんが、私といたしましては、そういう案が出ますれば、財政の許す限りにおいて、漸を追うてその御要求にも応じて、りっぱな医療対策といいますか、これを強化充実していきたい、かように考えております。
  152. 小林英三

    小林国務大臣 今の健康保険の一部改正という問題につきましては、私はたびたび当委員会において申し上げておりますように、社会保障の確立促進のために、しかも将来の健康保険の向上発展のためにやるのでありまして、今の滝井さんのおっしゃるような医療機関の赤字という問題につきましては、私ども今滝井さんのおっしゃるような工合には存じていないのであります。
  153. 滝井義高

    ○滝井委員 どうも厚生大臣答弁は私はわからぬのですが、日本の医療機関が赤字であることは大臣も御存じだと思いますが、この赤字をどうして解消するかということを私は質問している。その解消の方法いかんということです。
  154. 小林英三

    小林国務大臣 日本の医療機関が赤字であるという問題につきましても、私は的確には存じていないのであります。
  155. 滝井義高

    ○滝井委員 では医務局長を呼んでもらいます。大臣は医療費体系を御存じだと思います。現在の医療費体系というものは昭和二十七年の三月と十月に日本の医療機関を調査をして出たのが医療費体系です。そこでこの医療費体系で出た結論は、全国の医療機関の九四%を占める診療所は、基金の統計でもはっきりしておりますが、月収六万円以下が六三・七%を占めている。この六万円以下の月収の中から家賃、従業員の給料その他の経費、税金、それから医師の生活費、こういうものを全部支払うわけです。従って日本の医療機関の中の六三%が六万円以下の収入だということを、まず第一に知っていただきたいということです。そこで、どういうことがそこで行われているかというと、もう看護婦なんか雇えない。だから見習いをかわりに雇っております。あるいは見習いも雇えないので、家族労働でやり始めました。最近の医療費体系の調査においても、家族労働のふえておることは御存じの通りです。それから医療施設の整備をはかる金がない、こういう状態が出てきておることは、これは中小企業金融公庫なんかに借り入れが殺到しておる状態を見てもおわかりだと思います。そのような医療機関の収入の実態を調査したのが、二十七年の調査なんです。その調査の結果、どういう結果が出たかというと、この百五十五の公私立の病院では、給料は平均以下のベースです。それで、しかも一四%の赤字が出たしこれは今医務局長が来ればわかりますが、厚生省医務局長の方から出た統計ではっきりわかってきた。しかも調査をした二百十七の診療所は、七%の赤字であったのです。この七%の診療所の赤字、一四%の病院の赤字、これを放置しておっては、日本の社会保障の前進というものはあり得ない。これはあなたの方から出た資料ではっきりしている。この赤字の出た医療機関をどういう工合にして建て直していくかということは、現在の健康保険法の改正よりさらに急務中の急務です。一体これをどうするか。この対策なくしてこの健康保険法の改正を期することは、木によって魚を求むるたぐいです。明白に具体的にあなたの方の統計、調査を基礎にして御説明を申し上げました。実態のわからぬことはない。これはあなたの方から出た実態です。どういう工合に赤字を解消してくれますか。
  156. 小林英三

    小林国務大臣 今滝井さんのお述べになりました医療機関の赤字の実態という問題につきましては、その当時これを調査した医務局長が参りまして、どういうふうにして資料が集まったか、またどういう実態であったかということにつきまして十分に説明を申しました上で、私から意見を申し上げたいと思います。
  157. 滝井義高

    ○滝井委員 医務局長が来なくても、保険局長がおられます。医療費体系というものは二十七年を基礎にしてできて、保険局の点数になっておりますから、局長も、具体的な計数は医務局長が来なければわかりませんが、すでにその調査をした原価計算を基礎にして動いておるものが点数なんですから、これは保険局長でも知っていると思います。保険局長一つ明白な御証言をお願いしたいと思います。
  158. 高田正巳

    高田(正)政府委員 二十七年の調査の内容等につきまして、私は詳細には存じておりませんが、そのときの調査の結果集まりましたデータによりますと、生の数字を見れば、今滝井先生が御指摘になりましたように、そのパーセンテージが正しいかどうか私存じませんけれども、若干赤ということになっておるということは、私も聞いております。  それで、それじゃその医療機関の赤字をどうしたらいいかという御直間でございますが、これは私ども保険行政をやっておる者といたしましては、昨日も申し上げましたように、医療機関というものが健全に運用されまして、これが健全に発達をしていくということが、保険の仕掛けから申しましても非常に大事なことでございます。従いまして、医療機関がさようなことのないようにいってくれるということを、非常に念願をいたしております。これをどうするか、どうしたらそれが解消できるかという問題になりますると、これはむしろ医務局の御所管になると思いまするが、その点については医務局長からお答えを申し上げ示す。
  159. 滝井義高

    ○滝井委員 大臣、今局長から御答弁があった通り、そういう赤字であった、こういうことなんですね。その赤字の対策をどうするかということが、現在の厚生行政では、昨日来私が要請をしておりまする製薬企業にメスを入れることとともに、一番大事な点なんです。それで大臣答弁ができればやっていただきたい。できなければ次に進みたいと思いますが、どうですか、その点についてあとで御説明いただけますか。
  160. 小林英三

    小林国務大臣 この問題につきましては、私が先ほど申し上げましたように、その資料を収集いたしました実態と、その資料を集めてどういうふうな赤字であるという断案を下したか、あるいはそういう結果につきましては私がここで軽率に断定的に申し上げることはまずいと思います。その当時の模様等十分聴取いたしました上にいたしたいと思います。
  161. 滝井義高

    ○滝井委員 大臣、ここでそういう答弁をすると、みな笑うんですよ。大臣、恥かしいです。なぜならば、今新医療費体系というものをおやりになっている。新医療費体系というものは厚生省で作った最上のものであると、あなたは参議院等で御答弁になって、おる。その最上のものの基礎になっているそれを、今になって知りませんというなら、大臣、新医療費体系をいじる価値がない。私きのうから悪口ばかり言ってはなはだ恐縮だけれども厚生行政を愛するがゆえに言うんです。大臣はもう少し勉強されて、ほんとう厚生行政のどこに研究しなければならぬポイントがあるのか、焦点はどこにあるかということをしっかり腹に入れて委員会答弁に出てもらわなければいかぬ。そうしなければ、今のような御答弁で、日本の医療機関の本質と実態を知らずして、こういう健康保険法の改正を出したり、あるいは医療費体系を出すというなら、潜越至極です。これは大臣を補佐する事務当局以下も責任重大だと思います。今のような答弁では。だから私は次に進みます。  そこで日本の医療機関の赤字を急速に解決しなければ、りっぱな治療はできない、りっぱな医療行政はできない。そこで私はあなたにお尋ねしたいのです。これは大蔵大臣厚生大臣両方から御答弁をいただきたいのですが、昭和二十六年十二月七日閣議了解事項として、社会保険診療報酬の単価に関する件というものがきまっております。単価及び点数については根本的に検討しこれが適正をはかる、こういう閣議了解事項がきまっておることを御存じでしょうか。
  162. 小林英三

    小林国務大臣 滝井さんのおっしゃることは、私も存じております。
  163. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 よく存じております。
  164. 滝井義高

    ○滝井委員 よく存じておるというお二人の御答弁でありました。今回政府は中央社会保険医療協議会に点数の改正を御諮問になっておる。これは、もう両大臣承知の通りでございます。現在その点数改正をめぐって上を下への大騒ぎですからね。ところが、ここでは点数だけのことは言ってない。単価及び点数についてなんです。点数について根本的な改訂が出たけれども、なぜ単価について閣議了解までしておるのに根本的な検討をしておかないのですか。
  165. 小林英三

    小林国務大臣 今の滝井さんの御質問は、単価の問題について新医療費体系とどういう関係があるかというのですか。
  166. 滝井義高

    ○滝井委員 あなたの方は今回、点数の根本的な改訂について、中央社会保険医療協議会に御諮問になっておる。ところが単価については一言半句もいわないのはなぜかということです。現在の日本の医療機関が赤字であるということははっきりしているのに、点数というものは問題にしたけれども、単価というものは問題にしてない。診療報酬というものは、点数と単価をかけたものが診療報酬ですよ。ここに初診料が四点とか、十二点とかいうことをきめるけれども、四点、十二点だけでは医者は支払いができない。四点、十二点をきめたならば、その四点、十二点に十一円五十銭なり十二円五十銭をかけて診療報酬の額がきまる。点数だけきめておいても一方単価がきまらなければ仕方がない。だからなぜ単価についてやらなかったか、こういうことなんです。これは大臣の明白な御答弁をいただきたい。政治的な問題ですから、事務当局の御答弁は必要ございません。
  167. 高田正巳

    高田(正)政府委員 仰せの通り診療報酬というものは、単価に点数をかけてきまるものでございます。しからば今回の点数表の改正についてなぜ単価も同時に問題にしないかという御質問でございますが、これは滝井先生よく御存じのように、二十六年に現行の単価がきまりました際に、今の閣議決定に基いたものと存じますが、臨時医療保険審議会を設けまして、それぞれの利害関係者が集まって、ここで妥当な単価問題について検討して参ろう、こういうことで出発いたしたのであります。ところがこの臨時医療保険審議会はまだその結論を出し得ないのでございます。最近比較的審議状態が促進いたされまして、近く単価決定についてのルールというようなものについての小委員会の総会に対する御報告があるやに私も承知いたしておりますけれども、まだ全般的な結論は出ていないわけであります。それで単価問題はさような経緯になっておりますことは滝井先生もよく御存じの通りでございます。今申し上げた通りでございます。  今回の点数表の改正になぜ単価問題を一緒に解決しようとしないのかという御質問に対しましては、一昨年の新医療費体系を御審議いただきました場合にも、医務局長等からるる御説明を申し上げた通りでございまして、点数表の改正というものは支払い方式の変更であって、この支払い方式を変更したるがために今まで赤字であったものが黒字になったり、黒字であったものが赤字になったりというふうなことはねらっておらないのであります。しかも総医療費というものについては変化がないようにという制約が一つあるのでございますから、従いまして、点数表の改正というものはよく悪く、ワク内操作というようなことが言われておりますけれども、結局そういうねらいでもって点数の配分を変えていくということでございます。私どもとしましては、単価の問題は別個の問題として一昨年から考えておるわけでございます。一昨年の新医療曲体系を受けましていろいろと御意見を拝聴して作り上げたものが今回のものでございますので、従いまして、単価問題と点数表改正の関連は、今私が申し上げた通り、一昨年通り踏襲をいたしておる、かような次第でございます。
  168. 佐々木秀世

    佐々木委員長 ちょっと滝井君にお願い申し上げますが、大蔵大臣は十五分前に出ますので、それにつきまして井堀君から大蔵大臣にきょうぜひ質問をしたいという申し込みがありますので、できましたら井堀君にお譲り願って、それからお続け願いたいと思います。
  169. 滝井義高

    ○滝井委員 ちょっとこの点大事な点ですから……。これはきのうの薬価の問題と同じで、あなた方は勝手にそう言うだけで、いやしくも点数だけでは技術料は出てきません。少くとも点数と単価をかけなければ技術料というものは出てこない。これは三師の専門家、技術者としての生活を考慮するという点数ではない、それは言わずともわかっておることで、あなたは独善的にそういうことをおっしゃるだけだ。  そこで時間がございませんから急ぎますが、単価の問題は別だ、別だとおっしゃいますけれども、私は衆議院に初めて当選してきて以来この問題をあなた方に質問した。ところが今の通りのことをおっしゃった。一歩も前進しておりません。そこで二十八年二月十三日に向井大蔵大臣内閣総理大臣吉田茂殿として社会保険診療報酬に対する課税上の取扱い等に関する件という文書を出しております。これはどういうことが書いてあるかというと、社会保険診療報酬については関係各省においてすみやかに根本的な検討を加えるものとする。なおこの場合要すれば臨時医療保険審議会その他民間の公正な意見を徴するものとする。こうなっておる。これは両大臣御存じでしょう。これは大蔵大臣にまず第一番に知ってもらっておかなければならぬと思う。こういうことを事務で引き継いでおられるはずです。厚生省は折に触れて大蔵省と交渉しておりますというのが当時の館林医療課長の答弁でございました。これは大蔵省と折衝しておるはずだし、向井大蔵大臣から吉田総理大臣に出しておる文書ですから、大蔵大臣よく御存じだと思いますが、御存じでしょうか。
  170. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これはもう大蔵省にある書類なので、よく承知いたしております。
  171. 滝井義高

    ○滝井委員 大蔵省にある書類で大臣御存じないのですか。
  172. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 大蔵省にある書類ですから、それは申すまでもなく承知いたしております、とこう申しました。
  173. 滝井義高

    ○滝井委員 これは根本的な検討を加えるものとする、要すればこの場合臨時医療保険審議会の意見を聞け、こういうことで、臨時医療保険審議会の意見を聞くのはつけたりで、聞いても聞かなくてもいい、すみやかに関係各省で協議しろということです。関係各省といえば、主として厚生省と大蔵省がやったことと思いますが、何月何日にどういう交渉をやったか、一つ御説明願いたい。
  174. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これはその通牒ですか、それに基いてやっておると思います。これは結局事務当局がやっておると思いますから、よく説明させます。
  175. 滝井義高

    ○滝井委員 これは大蔵省が主管ですから、大蔵省の説明を先に求めます。
  176. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 この問題は御承知のように点数単価の問題、課税上の問題、いろいろ総合してきめられる問題でございます。私昨年着任したばかりでございますが、その後どの程度具体的に各省間で話し合いをしたか了承しておりませんが、よく事情を調査いたしまして、この上ともさらに関係省の話し合いを進めるように善処いたしたいと思います。
  177. 滝井義高

    ○滝井委員 責任ある大蔵当局は知らぬそうでございます。主計同次長も大蔵大臣も知らぬようでございます。それならば厚生省は直接の責任者ですから、二十八年二月十三日以来大蔵省とどういうような折衝をし、またどういう結果になっておるかを具体的に明白に御説明願いたい。
  178. 高田正巳

    高田(正)政府委員 私も二十八年以来のことをを詳細には存じておりません。私としましては一応存じておりますることは各省相談の結果、この臨時医療保険審議会の結果を待ってやろうということに一応申し合せをしておるというようなことを聞いております。私どもといたしましてはこの審議会の御結論を待って具体的に取り運びたい、かような心組みでおります。しかしこの臨時医療保険審議会は御存じのようになかなか結論が出にくいような状態でございまするので、その模様によりましては、しかもこの健保がただいま当面しておるような状態が一段落をいたしまして、健保というものが完全に健全な軌道に乗って参りました際におきましては、臨時医療保険審議会の御審議の状況ともにらみ合せまして、私どもはまじめにこの問題に取り組みたい、私自身はかように心組んでおる次第でございます。
  179. 滝井義高

    ○滝井委員 臨時医療保険審議会というのはほとんど開かれておりません。私は二、三カ月前にも警告を発しております。少くとも現在の日本の客観的な経済情勢が単価の引き上げを許さぬ情勢にあるならば、こういう客観情勢で許さないということを明白に言ってくれ、いたずらにわれわれから追及をされて、絶えず使うものは諮問機関を隠れみのとして逃げてしまう。そういう態度というものはいけないのです。だからこそ大蔵省自身でも要すれば臨時医療保険審議会その他へ聞けということで付録にしかしていない。主体はやはり関係各省で話し合えということになっております。それを今のように――この前も今のような御答弁だった。私が持ち出すのはきょうで三度目ですよ。二十九年の医療費体系を審議するときも私は持ち出しております。当時の館林医療課長は二十九年の十一月ごろに折に触れて大蔵省と折衝していると答弁している。折に触れてとは具体的に言ってくれといったらそれは答弁ができなかった。今のあなたの答弁は大蔵省と話し合った結果臨時医療保険審議会の結論が出てからやるなどという違った答弁をやっておる。政府自身の答弁はまちまちじゃありませんか。だからそういう点で私は今のような答弁では満足ができません。そこでもしそういうことであるならば臨時医療保険審議会にわれわれはたよる必要はありません。これはあなたの内部の問題ですから少くとも二十六年の十二月の七日に閣議了解事項をし、しかも二十八年二月十三日に向井大蔵大臣がこういう書面を総理大臣に送っておるのに、今までそのまま放置しているということは、明らかにこれは関係各省の怠慢以外の何ものでもないと思うのです。しかもそれが現在の日本の医療機関というものは赤字に苦んでおるということはあなた方自身が出しておる資料でも明白じゃありませんか。しかもその赤字の医療機関をはうっておいて点数だけの改正を出してくるということは何事ですか。それならば点数を撤回しなさい。明らかにここには単価及び点数について根本的に検討し、これが適正をはかると書いてある。点数を適正化したならば、当然単価も適正化しなければならぬ。これがこのかけ算によって適正な技術料が出るじゃありませんか。それをあなたは保険の担当局長でありながら、単価だけで日本の医療費体系ができ、日本の支払い方式ができるなどという矛盾した御答弁をするということは言語道断です。そういうことは許されませんよ。二十六年の十二月七日以来大蔵省と厚生省は何月何日と何月何日にどういう折衝をしたかということを、明後日の委員会までに、これは絶対出してもらってもう一ぺん質問を継続します。折に触れてやっているというのは館林さんの答弁でございますから、それでどういう御交渉をやっておるのか、一つあれを出してもらってなお私は続けたいと思います。では井堀さんの質問がございますので……。
  180. 佐々木秀世

    佐々木委員長 井堀君。
  181. 井堀繁雄

    ○井堀委員 大蔵大臣は何か先約があるそうでございますので次会おいでをいただいて御答弁を願いまするために御注文申し上げておきたいと思います。健康保険の改正の問題はすでに御案内と思いまするが、赤字解消のための指置としてかなり思い切った改正を必要としておるということをわれわれも承知しておるのであります。ところが現在の改正政府原案は被保険者と医療担当者にかなりの犠牲をしておりますことは御案内の通りだと思う。しかし今回の健康保険の赤字の原因についてまだ十分な究明が行われていないのでありますが、これは政府も提案理由で明らかにしておりまするように、政府管掌の健康保険の被保険者の対象がおおむね中小企業に依存しておるということを説明をされておる。そこでたとえば同じ健康保険の中でも組合管掌の場合においてはおおむね小康を保っておるわけであります。政府管掌のもののみが危機に当面しておるということは、言うまでもなくその保険財源の基礎をなすものがすなわち報酬実額の中に非常な差額ができておるということだ。すなわち中小企業における報酬実額が大企業に比較してはなはだしく較差を生じておるということは、これは周知の事実であります。こういう事実に基いて発生したところの赤字というものはどこで支弁しなければならぬかということが、この問題の解決のかぎだと私は思う。これは他の政府の政策とも関連があり、ことに財政を預かる大蔵大臣といたしましては、この赤字の解決については私は大蔵省所管の中においてしかるべき案を持つべきものだと思うのであります。この点について具体的な事例をあげて一々お尋ねをいたす予定でありますから、この点御準備をいただきたい。  それから今回の改正案の中に厚生年金法の改正が出てきております。厚生年金の積立金は今日一千億をはるかに突破したという報告資料をわれわれはいただいておるわけでありますが、これの運営が大蔵省の方に一手にまかされておるわけです。この一千三百億を突破する積立金というものが保険の総合的な解決の役割を持つものだと思うのですが、これをどういうように活用しようとしておるか、またしなければならぬかについて十分案を練って御答弁をいただきたい。私は具体的事例をあげてお尋ねをするつもりであります。この二点について御用意を願って次会に御出席いただきたいことを希望しておきます。
  182. 滝井義高

    ○滝井委員 昨日私は本日の午後までに日本の製薬企業における昭和二十七年、二十八年の製薬品の流通過程ともしますか、三百億ないし四百億の薬品がどこに消えておるかわからぬ、これに対する資料を出してもらいたいということと、十ミリグラム・一CCのビタミンの基準価格が十七円八十銭になっておるが、それがどうして十七円八十銭になっておるか、それを出してくれと言っておいたが手元に来ないのですが、厚生省、持ってきておるでしょうか。
  183. 高田正巳

    高田(正)政府委員 先ほどの先生の御質問に対しましてお答えを申し上げたいことがございますので、それを先にお答え申し上げます。臨時医療保険審議会は、総会は実は最近開かれておりませんけれども、先ほど私が申し上げました小委員会の方は――私回数は記憶いたしておりませんけれども、私が保険局に参りましてからも開かれております。それで今先ほど申し上げましたように、単価決定のルールというふうなものについて利害関係者を代表される方々の御意見をまとめようと今努力をいたされておる段階でございます。なお私どもの方の医療課長が折に触れて大蔵省と折衝しておるということを申したというお話でございますが、私はその席におりませんで、よくわかりませんけれども、これは先ほど私が申し上げましたように、各省相談の結果、この審議会の結論を待ってからやらなければどうにもしょうがないじゃないかということで、この審議会の進行状況なりあるいはその模様なりを話し合って、そういう話をしておるというような意味であろうと私は了承をいたします。従いまして何月何日にどういうふうに会合をしてどうこうというふうな、ただいま滝井先生の御要求になりまするような資料は、御提出申し上げられないだろうと私存じます。それからこの正しい技術料というものは、これは単価と点数をかけたものであるから、従って点数表の改正だけをやってもしょうがないじゃないか、同一時に単価をやらなければ意味がないというふうな御議論、これは一応その御趣旨そのものは私十分了解ができるところであります。しかし単価を同時に解決しないならば、点数表の改正も引っ込めてしまえという御議論につきましては、私は点数表だけでもより合理的にすべきものである、かように存じておるわけでございまして、その点については私ども意見を異にいたしておるわけでございます。なお医療保険審議会という諮問機関の陰に隠れてお前たちはいつまでも単価問題をほうっておくじゃないか、こういうふうな御指摘につきましては、私先ほど申し上げましたように、今単価の問題をどうこうしょうといたしましても、たとえば政府管掌がかょうな赤字を出しておるということであれば、この意味からも現実問題としては非常に困難なことである。従ってなお政府管掌だけでなく、単価の問題は全体の医療費に関係をいたすわけでございますので、これは国民経済力等々とも十分ににらみ合せて検討しなければならぬ問題である。従って健康保険のただいまの当面の問題の解決がつきました暁におきましては、私どもは先ほど申し上げましたように、決してこの審議会の陰に隠れてどうこうというようなことを考えてはおらないのでありまして、これはまじめにこの問題と取り組んで参りたい、かような意欲を持っておりますることを御了承いただきたいと存じます。  それから第二の御質問につきましては、ただいま薬務局長が参っておりませんが、一つの医薬品のすべてがどこへどう流れて行ったかということについての資料を出せ、それからビタミンの注射薬の原価計算の資料を出せという仰せでございまするが、昨日も薬務局長お答え申し上げましたように、あらゆる医薬品の流通過程の調査というようなものは厚生省はいたしておりません。実は私かつて薬務局におります時分に、覚醒剤問題が非常にやかましゅうございまして、その原料となる塩酸エフェドリンかなんかの行方を、しかも六カ月くらいの間に輸入されたもの、生産されたものを調べたことがございます。ところがメーカーから問屋に行き、またその次の問屋に行くというような三段階ぐらいになりますと、最初生産されたり、輸入されたりするところは十数カ所でございまするけれども、数千というような数に上って取引が錯綜いたしておるわけでございます。従いまして一品をあげましてもこういうことでございますから、数多い医薬品の流通過程を全部調べ上げるということは、これは非常にむずかしいことでございまするし、また厚生省はさような調査をいたしておりません。従っておそらく薬務局は御提出できないのではあるまいか、かように想像をいたしております。なお原価計算につきましても、昨日薬務局長が申しましたようにさようなことをやっておらない、こういう答弁をいたしておりましたので、これもおそらく御提出することができないのではないか、かように想像いたします。
  184. 滝井義高

    ○滝井委員 まず後段の方から入りたいと思いますが、今委員長もお聞きのように、日本の医療を遂行する上にきわめて重要な医薬品について、日本の厚生行政、特に薬務行政というものは全くなっておりません。そこで国会としては、すみやかに当社会労働委員会に日本の製薬業を徹底的に調査研究をしますところの委員会一つ作っていただくように、この場で一つ委員の諸君にお諮りを願いたい。
  185. 佐々木秀世

    佐々木委員長 新しき提案でありますから、これは理事会に諮りまして、十分御相談の上取り計らいたいと思います。
  186. 滝井義高

    ○滝井委員 ぜひそうお願いしたいと思います。今のような厚生省の薬務行政では、私たちはまかしておくわけには参りません。そこでわれわれは今国会中に徹底的に日本の製薬業を調べたい、こう思います。  そこで前段の問題でございますが、単価の問題、これについてもきわめて熱意を持っておりません。すでに二十六年この問題が紛糾して以来五カ年の歳月を経過しておりまして、点数については二千数百万円の莫大な血税をもって作りました。しかもその作ったものは現実に医薬分業を目前に控えて、物の役に立たないというものではありませんか。厚生省は医療審議会で撤回にひとしい状態でたな上げすると言っておるじゃありませんか。二千数百万円の血税を使って、物の役に立たないものを作っておりながら、一方においては大事な単価の問題を放置しておる。この責任というものは重大です。これは今のような御答弁で、それさえもできない、臨時医療保険審議会が結論が出るまでは知りませんといって、ほおかむりをあな方がやれるものなら一つずっとやってごらんなさい。いずれこれはまた機会を改めて私はやり直します。そこで次に進みます。今から各論に入らしていただきます。まず第一に各論で問題になりますのは、標準報酬の等級区分の改訂でございます。これで予算面では五億六千四百八十五万八千円出ることになっております。これは基本的な問題ですから大臣に伺いますが、三千円しか給料を取っていない人をなぜ一体標準報酬を四千円にして保険料を取らなければなりませんか。この理由を一つ御説明を願います。
  187. 小林英三

    小林国務大臣 従来三千円から三万六千円ですか、この等級区分を四千円から五万二千円にしたのでありますが、元の標準報酬の時代から、全体にわたる今回の健康保険の改正案を出した上におきまして、このくらいなところであれば適当であろう、こういうことで標準報酬の区分の改正をいたしたのであります。
  188. 滝井義高

    ○滝井委員 どうも大臣答弁がみなピントが狂うのですね。三千円しか給料を取っていない人をなぜ四千円に引き上げて標準報酬の額にしなければならないか、こういうことを私はお尋ねしているのです。
  189. 小林英三

    小林国務大臣 大体千円の違いであります場合におきましては、パーセンテージにおきましても大体全体の人員に対しまして確かに二%内外だと思うのでありますが、しかも一カ月にいたしますと大体三十二円五十銭でありますから、一年に大体三百九十円になりますか、そのくらいな程度でございまして、全国の線をやや向上したという程度でございます。
  190. 滝井義高

    ○滝井委員 大臣は月に三十円ちょっとこえた額だ、年間にしても三百円ちょっとこえた額だ、とこうおっしゃいますけれども、三千円しか給料を取っていない勤労者諸君にとっては、これは大金なんです。しかもこれは病気になれば、その人たちは一部負担を出さなければならない。しかもその一部負担というものは四千円の六割ですから、二千四百円しかもらわぬことになるわけです。こういうことになってしまう。これは三百円こえる額というものは、そう簡単な、大してものの数でない金じゃないわけですね。しかもそれらの諸君というのが十一万八千八百七十三人もおるのですよ。しかもその層から取る額というものはおそらくわずかな額だと思います。これはどうしてですか。そういう社会保険を合理化し、しかも日本の社会保障の進展のためにこの法律を改正しようとするなら、そういう低額所得層の給料以上に標準報酬を引き上げて、そうしてそれから保険料を取らなければならないほど日本の厚生行政というものは落ちぶれておるのですか。
  191. 高田正巳

    高田(正)政府委員 事務的な御質問と存じますので、私からお許しを得てお答え申し上げたいと思います。保険で標準報酬の制度をとっておりますのは、一つには個々の賃金の何%ということになりますと非常に事務的に繁雑でございますので、何円から何円までは何円と一定の標準報酬にきめる、こういうことをいたして事務の簡素化をはかっておるわけであります。  もう一つ、標準報酬の思想の中には、賃金の実態に即してその通りに取るというよりは――医療保険の給付面の方はフラットである。言ってみれば療養の給付その他につきましては、傷病手当金は別でございますけれども、医療保険の支出の大部分をなします医療給付の方はフラットである。こういう観点から、実際に受け取っておる賃金よりは下の方は若干背伸びをしてもらい、上の方は頭打ちをするというふうな建前を、保険としましては取ってきておるわけでございます。それで今御指摘の三千円を四千円に変更いたしますことによって、従来の三千円に当るものが四千円になるじゃないか、それは気の毒じゃないかという仰せでございますが、さような面もありますけれども、今申し上げましたように、給付の方は平等に一人平均大体一万円くらいの給付を受けておるわけでございます。従いましてさような要素がありますと同時に、過去の標準報酬の改正の歴史を振り返ってみましても、二十四年の五月、二十八年の十一月と、最近におきまして二回改正をいたしておりますけれども、二十四年の五月におきましては、三百円から千八百円でありましたものを、下の方を三百円から二千円に引き上げております。この場合に、二千円に満たないいわゆる従来の引き上げられて保険料が高くなる方々の数は、全体の八%ほどでございました。それから二十八年の十一月の改正で一番下を二千円、その次が二千五百円でございましたのを、三千円という現行のあれに引き上げたわけでございます。この場合にもやはり被保険者の二%程度はそれより下の実収であったと一いう実績があるわけでございます。今回三千円を四千円にいたしまして、従来の三千円の方々が二・二%ぐらいあるわけでございます。かような過去の標準報酬の改訂の際に、下を引き上げるためにそれより下の人がどのくらいになるかというパーセンテージにおきましても、今回の改正は過去の改正から申しまして決して非常識なものではないということが一つと、それから二十四年の改正をいたしました二千円から平均標準報酬の当時の指数と今日の指数をとってみましても、大体最低は平均標準報酬の指数が二〇九という指数を示しております。そういたしますと二十四年の最低の二千円にこの二〇九の指数を乗じますと四千百八十円という数字が出て参ります。従いましてそれを四千円に切ったということでございます。なお毎勤統計の平均賃金の指数は、二十四年の五月の改正当時と比較しますと二一四ぐらいになっております。従いましてこの指数を用いますれば四千百八十円がさらに高くなるということでございまして、それらを考え合せまして、私どもとしましては最低を四千円ということに今回御提案を申し上げたわけでございます。
  192. 滝井義高

    ○滝井委員 厚生省は単価の問題についても諮問機関のことをなかなかやかましく言われましたが、七人委員会はこういうものはどうすべきであるということを御答申になっておりましたか。
  193. 高田正巳

    高田(正)政府委員 七人委員会におきましては、最低をたしか五千円くらいまでに引き上げて、そうしてそれに満たないものについての保険料については、国が貸してやるという考え方をしたらどうかというふうな御提案がございました。ただしこれにはまた上の方につきましては、上は青天井にしていけ、そして標準報酬というものを、現金給付すなわち傷病手当金等この標準報酬と、保険料徴収の基準になる標準報酬とは、別なものに考えていく方法はどうかという趣旨の御提案が、七人委員会にはございました。それで私の方としましては、それも確かに一つの御提案でございますが、標準報酬を二つに扱いますことは、すなわち言葉をかえて申せば、保険料を徴収する際の標準報酬と現金給付をする際の標準報酬を区別して取り扱いますことは、現行の健康保険法の建前に別の新しい考え方を導入することでございます。従ってこれは将来の研究問題にいたしたいと私ども考えまして、今直ちにさようなことをやることはいかがかと存ずるのでございます。なお公述人の公述にもありましたように、最低の標準報酬を三千円を四千円に引き上げましたことにつきましては、保険料を納める方からいうと不利であるけれども、傷病手当金その他の現金給付をもらう際にはこれは非常に有利になることであるから、非常に賛成である。むしろ労働者側におきまして、五千円くらいにしたらどうかというような意見社会保険審議会にはあったわけでございます。それらのこともいろいろ考え合せまして、私どもとしましては、四千円ということを決定をいたした次第でございます。
  194. 滝井義高

    ○滝井委員 そういうわけで、少くともあなた方が諮問機関、諮問機関と寝てもさめても言っておられた諮問機関は、その差額についてはやはり国が見るべきである、こういうことを言われている。なぜそういういい意見を御採用にならぬのです。こういう零細な所得層に三千円のものを四千円にして、保険料を取るのです。それが一年間わずか三百円をちょっとこえる額かもしれない。しかしそれはあまり問題ではないじゃないですか。それは上を青天井にしなくてもいいのです。公述人の和田君が言っておったように、これは五万二千円、五万五千円あるいは五万七千円なりにしたらいいと思う。そういう強いものに対してはあなた方は何ら手を触れることはできない。日経連というものがにらみをきかしておるものだからやる気がないが、しかし零細な十一万勤労者というものはものの数でないと考えたのか、それについては千円を平気で上げていく。この無情さというものは、私たちやはり許すことができないと思うのです。あなた方が御諮問になった七人委員会は、その分は国が負担すべきだ、こうおっしゃっている。だからわずかにこの額は七百五十六万という額だそうでございますが、七百五十六万円くらいなら厚生省は国庫負担してもいいじゃありませんか。そのくらいのことは予備費の中をちょっと切ってもできるものじゃないか。それはどうですか。
  195. 高田正巳

    高田(正)政府委員 この七人委員会はさような御提案をなさっておりますると同時に、健康保険財政についての定率の負担であるとかあるいは今回の三十億の補助というふうなことについては、むしろ消極的な御意見であるわけであります。そういうことでなく、今の低額のところに足してやるというふうな方向にものを考えたらどうかという御意見でございます。従いまして、私どもとしましては、いろいろ研究をいたしたのでございまするが、しかし厚生省としましては定率一割負担ということを要求をいたし、それが結局三十億ということになったわけでございまするが、かような形で要求をいたす。それがまた現在の健康保険というものについては妥当だという考え方をしたわけです。従いまして国庫負担を全然要求しないのじゃありませんで、国庫負担は国庫負担として別の形で要求をしておるということでございます。  なおこの諮問機関についての仰せでございますが、正式の諮問機関は社会保険審議会でございまして、それについては今のところこの標準報酬最低を引き上げることにつきましては、一部の反対はございましたが、多数の御賛成があったわけでございます。
  196. 井堀繁雄

    ○井堀委員 関連して。標準報酬の問題については、さきに厚生省に資料の提出方を希望しておきました。この資料を持たないで論議をすることは、時間にむだがあると思いまして要求しておきましたが、私どもの手元には今日まで要求いたしました資料が配付されておりません。厚生省の方はこの点について何か困難な事情でもおありですか、お答えをいただきたい。
  197. 小沢辰男

    ○小沢説明員 資料作成の問題でございますので私からお答えいたします。先生からの御要求は各被保険者別に実態の賃金といいますか実際受け取っておる賃金の状況が標準報酬とどういうような違いがあるかというような資料を出せというお話であったわけです。ところが私ども実は標準報酬の把握につきましては、年々非常に努力をいたして参っておりますが、実際の調査も大五体割見当の人数を実施いたしておるのであります。これはそうした実質の賃金との開きがございました場合には直ちに標準報酬の改訂をやっております。また先ほど局長が申し上げましたように、標準報酬の等級区分というものを設けましたのも一つの事務的な保険の区分といいますか、そういうやり方からして三千円未満のものあるいは三千五百円から四千円のものというふうにやっておりますので、先生のおっしゃるような実際に四千円もらっておるのに標準報酬が三千円になっておるというような例がもしあるとすれば、直ちに私どもとしてはそれを四千円の等級に把握するわけでございます。従ってそういう資料を出せと言われましても私どもとしては手元にないのであります。しかしもしおっしゃることが報酬月額の最高を現在三万六千円で押えておりますけれども、三万六千円以上の人がどれくらいおるかという推定の数でございましたならば、それは私どもの手元でわかります。それはいつでもお出しできるということを申し上げておきます。
  198. 井堀繁雄

    ○井堀委員 課長の答弁は私の要求いたしました事柄を聞き違えておると思うのです。私の要求いたしましたのは速記録をごらんいただけばわかりますが、川崎厚生大臣の節にも、こういうことは非常に出しにくいものと思いますから、相当時間を必要と思うので、そういう配慮まで加えて注文いたしておる。それは今回提案されております健康保険がいかに重大な社会的な影響を持つかということを事前に明らかにしてあるわけです。現に医療担当者の間から異常な反撃が起っておる。被保険者の間からは全く怨嗟の的になっておることは否定できまい。こういう事態をわれわれは事前に察知して、その善後措置を講ずるためには実態を正確に把握することが大切だと思うのです。すなわち機準報酬は言うまでもなく保険財源の唯一のものなんです。その標準報酬というものが事実に最も適合したものであるかいなかということが何よりも大前提になるのです。この前提がくずれてきますと、他の問題についてはあなた方はどこを足場にしてわれわれの討議にこたえてくれるのか、事務当局にそういうことを申し上げてもなんでしょうから、厚生大臣にお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、これは小林さん、重大な事柄です。多くを論議するまでもありません。今日健康保険の赤字がどこに原因したかということはあなた自身がこの法案提案の節に明らかにされております。それはさっきも私大蔵大臣に希望しておきましたが、あなたはこう言っておるじゃありませんか。要するに医療費の逐年増高するという事実、これはもうわれわれはよく知っておる。これに反して、「特に賃金水準の低い中小企業を対象とした政府管掌健康保険においては、」この前提のもとに赤字の累積したことをあなたは強調されておる。またその通りである。このことは言うまでもなく健康保険組合と政府管掌の保険とを比較しただけでも明らかなように、あなた方が提供しておりますこの標準報酬の表を拝見いたしましても、格段の開きができてきておる。当然なことであります。そこで要するに健康保険組合と政府管掌の標準報酬というものが正確であるかいなかということが問題になる。私は健康保険組合に対しては、高い信憑力を持つものと思う。これは言うまでもなく経理を担当する方の側と保険を管理する方の側とが同一人で行われておるのでありますから、それは利害が共通するわけでありますが、政府管掌の場合はそうはいかぬのであります。ことにそれが中小企業であるということになりますと、私どもは他の場合にいろいろだ政府の持っております資料を検討しておりますが、先ほど毎勤統計の例をちょっと言われておりましたが、毎動統計は三十人未満の事業所はカットされている一ところが健康保険は五人以上の事業所を対象にするのであって、その実情はどうなっているかということについては、労働省が昭和二十八年に実態調査を行なったのが、今日一番われわれとしては手がかりになる資料なのであります。要するに、その資料を御検討いただけばわかるでしょう。さっき滝井君の質問に対してあっさり答えておりましたが、また小林厚生大臣はわずかの負担で済むようなことを言っておりましたが、とんでもない、それはこういうことになるのであります。実態調査の上に現われたものを見ますと、今ここで三千円を四千円に引き上げる、すなわち三千五百円を四千五百円に引き上げる。そうすると、三千五百円以下のものがどういう実態になるか、四千五百円以下のものがどういう関係の中に置かれておるかという、三千五百円と四千五百円の間だけを見ることは、ある程度できるかもしれない。三千五百円以下のものに対してどう把握しているか。要するに労働省の実態調査の上から見ましても、非常な開きが出てきている。そういうものを十ぱ一からげにしておられるということは、言語道断だ。特に私が厚生大臣に御回答いただきたいと思うのは、今日日本の中小企業の置かれておる範囲と言い、その量と言い、あるいは日本産業に貢献しておる実態から言って、その地位はかなり高い地位にある。この問題を把握しなければ、健康保険実態というものはくずれる。政府管掌の一番大切な点なのです。この実態をわれわれに資料も提供しないで、こんな大胆な改正案を出されて、無責任な論議をするなら別でありますが責任ある論議をしようとするにおいては、少くともこの標準報酬三千円以下、すなわち標準報酬四千円、一級でありますが、これ以下の実態くらいを明らかにする義務があります。どうしてそういう資料をお出しにならぬか。また厚生大臣はそのことについて御相談を受けなかったのか。これは川崎厚生大臣に、私はじゅんじゅんと理由を明らかにして、その資料を提出することを要求しておいた。今の事務当局の答弁は何ですか。厚生大臣のこの点に対する御見解を一つ明らかにしていただきたい。
  199. 小沢辰男

    ○小沢説明員 私はやはり誤解していないように思うのでございます。と申しますのは、井堀先生がおっしゃるように、標準報酬を的確に把握するということが一番大事だ、これは確かにその通りであります。しかもそれが果して正しいつかみ方であるかをしっかりと見なければいけないというお説でございます。そういたしますと、標準報酬をつかんだ場合に、それが正しいかどうかということをほんとうにはっきりするためには、たとえば私なら私の標準報酬を四千円と把握した場合に、実際私がいただいておる賃金というものが四千円でなくて、五千円であるという場合に、初めて私どもの標準報酬の四千円のつかみ方が間違いだったということになるわけであります。それとどういう違いがあるか、その違いは現実にはあるだろう、従ってその違いを示すような資料を御要求になったものと私ども考えておるのでございます。ところが、私どもとしては、もしもこれが実際に調査をいたしまして、私なら私の標準報酬は五千円であるべきだということがわかりますと、直ちに改訂をいたしておるのでございます。従いまして現在なるほど保険管掌の陣容も非常に貧弱でございますので、先ほど申し上げましたように、人員からいたしますと、約五割程度しか実態調査が行われていない。あるいは事業所の数から言いますと、三六%程度の事業所の実態調査しか現実にはできていない。しかしこれも私が申しましたのは、一月以来十二月までの調査の数字でございます。その後もできるだけ機会を見ましては調査をやっておるのでございます。もしもその違いがわかれば、標準報酬の改訂ということをやるわけでございます。私どもに出て参りますのは、その改訂をやった結果の俸給区分による人員でございますので、それが現実の賃金とどういうふうに違うかというような資料については、遺憾ながら私ども手持ちがないのであります。それがもしわかれば、そのつど改訂をいたしておるというのが実際で、そういうことによりまして、できるだけ保険料収入の確保をはかっておるのであります。ちなみに毎勤との今までの把握というか、上昇実績を比較いたしてみますと、先生のおっしゃるように、毎勤統計は三十人以上のところでございまして、比較的容易につかみやすく、また賃金の実態がはっきりいたしておるのでございますが、標準報酬の昭和二十八年から今年までの前年比を見てみますと、大体毎勤の方よりも上昇実績の方は割合によくなっておるのでございます。こういうような小さな事業所を相手にしてわれわれの努力はまだ十分とは申せませんので、来年の視察員制度等を置きまして、できるだけこの把握に努めるようにいたしておるのでございますが、毎年毎年の標準報酬の上昇実績というものは、前年同期の比率を毎勤と比べてみましても、決して悪くないのでございます。そういう実情で、私どももこの標準報酬の把握というものが、保険料収入の全くの基礎で、しかも収入では保険料以外には国庫負担しかないのでございますから、これについては相当真剣に取り組んでおるつもりでございます。遺憾ながらまだ百パーセントの実態調査までいかない点はおしかりをこうむりまして、まことに私どもとして申しわけないと思っておりますけれども、せい一ぱいの努力をいたしておるつもりでございます。
  200. 井堀繁雄

    ○井堀委員 あなたをしかったわけでも何でもない。そういうことではない。あなたにお尋ねしておるのではない。これは事務当局では、今日の厚生省の構成では、私は困難だと思うから、大臣に前回委員会の要請として出した。それは今までやっておる調査の結果を報告せよということではないのです。あなたが今御答弁なさっておるのは、今与えられた仕事を百パーセント完成しておるという答えにすぎないのであって、そのことを私は疑いもしなければ、否定もしない。よくやっておると私も感心しておる。そうではない。問題は、健康保険法を改正しようとするからには、この問題からいかなければならぬという、いわば保険行政責任の地位にある、すなわち法案提出責任者である厚生大臣としては、これはどうしてもやらなければならぬのだという意味で、注文しておる。だからあなたが御答弁することは意味がないことなんです。そこで今大臣にお尋ねするのですが、川崎前厚生大臣から事務引き継ぎをなされるときに、前回健康保険の一部改正の問題が同様この委員会審議された節に、その点を私は指摘して、当然厚生行政の中で最も重要な部分の一つだと思う、この健康保険の改正に当っては、この数字をはずしては論議ができないのだということを言った。そこでこれはこの資料がないとするならば、私は厚生大臣にちょっとこの点だけでいいから答えていただきたいと思いますが、あなたも長い間事業をされておるから、よく御存じだと思いますが、日本の今の全体の産業構造からわれわれが資料をあとう限り分析してみておると、総括して申し上げられることは、政府管掌の対象になる中小企業等協同組合法の定義によりますと、常時三百人の従業員を雇用しておる以下のものを言っておるようであります。三百人以下の事業所というものはどういうふうになるかということを、それこそ事業所統計、あるいは毎勤統計等の政府の統計を見ても、パーセンテージで言いますと、その事業所だけで九九・九%になる。さらに従業員の割合でいきますと、八三・九%、これは日本の健康保険は言うまでもなく、社会保障一本ではないのであります。工場法から発展してきた重大な労働力の保全のための大きな役割をしておるものでありますから、こういう本質を忘れてはならぬのであります。ですから産業構造の中に置かれております保険の地位というものをはっきりつかんで、この中から問題を摘出してこないと、角をためて牛を殺すことになってしまう。小林さんは、この点については何も専門的なことでありませんので格別に心配は要らぬことでありますから、率直にお答えいただけると思うのであります。すなわちこういうように日本の中小企業の地位は非常に大きな役割を担任しておるのであります。そうしてそれがはなはだしく混乱の状態に置かれておるのであります。この状態を立て直すためには、あらゆる政策が総合的に推進されねばならぬことはいうまでもありませんけれども、その中で健康保険の役割というものはきわめて重大でありますから、あらゆる機会に社会保障制度審議会においても、社会保険審議会においても、七人委員会においても、口をそろえて言っているではありませんか。今日五人未満の事業場に雇用されます人々を、適用範囲を拡大して、こういうものまでも包容していくべきだということを言っておる。ところが今五人以上の事業場ですら正確な資料をつかみ得ないようなことで、どうしてそれ以下の労働者をこの中に包容することができましょう。こういう点をまじめに考えなければいけないと思う。ですからこういう法案を出すからには、少くともこの場合においては三百人未満の政府管掌の対象になる被保険者の実態、その事業所の実情、そこからくる標準報酬というものが報酬実額とどういう関連を持ってくるか――私は報酬実額と標準報酬との差額を洗い上げてそれをきびしく取り立てよと言っているわけではありません。そんなことは問題ではないのです。そうではなくて、あるがままの姿をよく認識したらどうか。私は微力ではありますけれども、私どもの手元で調べただけを見ましても、今ここに改正されます三千五百円を四千五百円に引き上げるということは重大で、こんなことをしたら、零細企業の事業所における生活を脅威するきわめて露骨なものになってくると私は思う。小林厚生大臣はこの点にお気づきであるかどうか、この点をまずお答え願いたい。お気づきであれば、その点に対して善処さるべきだと思いまするからお尋ねしたい。そういう点に対してもお考えがないとするならば、こういうことを議論すること自体がかなりむだがあると思う。これはもちろんあなたはよく御存じおきのことだと思いますから正確にお答え願いたい。
  201. 小林英三

    小林国務大臣 今の井堀さんの御意見のように、日本の中小企業というものが、工場数におきましても九十数パーセント、従業員におきましても八十数パーセントを占めておることは、私もよく承知しております。ただ私は中小企業という問題については、単に今井堀さんのおっしゃったように三百人以下が中小企業であって、大体それ以上が大企業であるというような分け方もありますけれども、日本の産業全体について考うべきことでありまして、井堀さんの御質問とは多少それていると思いますが、私はこの機会に申し上げます。業種によりましては百人でありましても百人以上でありましても、むしろ日本全体から見まして大企業であるというようにいろいろ考え方が違うと思います。従って私はいろいろの厚生行政の面におきまして従来とりつつありました大企業あるいは中小企業というような考え方につきまして、日本の産業の実態全体にわたって考え方を多少是正していくべき問題があるのじゃないかと考えております。  それから今井堀さんのおっしゃいました三千五百円から四千五百円、千円上げるのは標準報酬の区分の立て方において非常に大きな重大な問題ではないかと考えます。もちろんこれは重大な点につきましては異論はないのであります。ただ先ほど保険局長からもるる説明いたしましたように、医療費という問題がフラットでありまして、今回の改正におきまして、千円といえども下の方における千円は重大であるということはわれわれもよく承知いたしておりますけれども、大体三千円、四千円程度の労働者の諸君は、それによって自分の一家の生計を立てているという人はきわめて少いと思う。たとえば女工の方あるいは両親が生計を立てておられて自分は独身でやっておられるというような部類の方が大部分であると思います。第一の問題点は、医療費はフラットであって、最低から最高に至るまで同じように医療費をやるのでありますから、今までの三千五百円から四千五百円に上げることにつきましては、井堀のおっしゃることには全面的には反対ではないのでありますが、私はそういうような気持でこの標準報酬を決定いたしたのであります。
  202. 井堀繁雄

    ○井堀委員 あなたと議論する気持は一つもありません。ただ事実を正確にあなたに認識してほしいから申し上げているのです。あなたは今三千五百円を四千五百円に千円の差額と言いますけれども、それ以下のものは全部そこまで上ってくるのであります。極端なことを言いますと、二千円のものが四千五百円に上ってくる。それでもあなたは、御本人の負担は必ずしも世帯主でないという意味で、その負担はそう重圧を受けないというように言われました。あるいはそういうものもあると思いますが、しかし全体から見ると必ずしもそうではない。小額所得者の実生活はあまりにもみじめ過ぎる。生活保護法にもひっかからないし、歯を食い縛っているこういう人たちこそが、非常に大切な対象だと思います。それにお気づきにならぬようでは、厚生行政をお預かりする立場としてはどうかと思う。要するにもう少し実態をよくお調べいただきたい。  いま一つ申し上げたいことは、これは雇い主が負担するのですから、その雇用されている労働者が少い給料の中から負担するということもかなりきびしいことでありますが、あなたは三百人は大きいと言う。その通りです。私も三百人をもって中小企業の線を引くのはどうかと思います。中小企業という言葉は少しずさんだと思う。ここで今そう言われたから、お考えいただくために、私の方で資料を提供いたしましょう。今言う政府管掌の健康保険の一番問題になるところは、五人以上の事業所下ありますが、五人から十人まで、十人から二十人まで、二十人から三十人まで、すなわち三十人未満の事業所の実態を労働省の二十八年十月の実態調査の上に現われてきたものを見ても、おびただしい数字に上る。しかも経営者は、いずれも政府管掌健康保険の徴収のために、さっき事務当局が報酬実額と標準報酬との差額を問題にされたが、これは労働者をいざなってごまかそうとしている。ごまかすという言葉は適当ではないのでありますが、それほど国庫負担は苦しい。この苦しいところに一番大きな圧力がこの改正によって加わってくることを厚生大臣がお気づきにならぬとするならば、これは大へんな失態だ。その数字をあげましょう。当然この程度の数字はあなたの方で出すべきだ。あなたは数が大したこともないように言われますが、これも二人以上五人までの人々を、これを健康保険の対象にしたいというので調べておりますが、その数は三百九十四万四千人をはるかにこえておる。さらに全体の雇用労働者の二二・四%を占めておる。そこで今政府管掌の中でありまする五人以上十人までの人々がどのくらいおるかと申しますと、二百三十六万八千人、それが全体の雇用労働者の一三・四%を占めておる。さらに十人から二十人までが二百二十一万五千人、それが全体の二二・六%、さらに二十人から三十人、それの数が百十六万八千人、それが全体に対して六・六%、さらに三十人から五十人までが百三十一万九千人、全体に対して七・五%、ここら辺の事業者がこの改正で一番圧力を受けるのです。これは税に苦しんでおります。資金に苦しんでおります。労務管理に苦しんでおります。これがその生産の面を見ますときわめて重大な仕事をしておる。これにもし健康保険の改正によって圧力というものが加わってくるようなことになりますと、これは角をためて牛を殺す結果になるのです。でありまするから標準報酬をただ一階級すりかえた、三千五百円を四千五百円に変えたことが何でもないように言われるとするならばこれはとてつもない見当違いをしておる。実際をあなたの方は握っておらぬからそういうことを言われる。これは小林厚生大臣といたしましては認識を新たにしてもらわなければいけません。これに対する御知識がありましたら、私の今出した統計に対して疑いがあるなら、また違った見方をしておるならお答えをしていただきたい。このことがはっきりしなければ、標準報酬をわずか一クラス動かすなどと軽々しく言われては困る。もし私の言うことに同調できますならば標準報酬切りかえについてはお考えをいただかなければならない。この点についてお尋ねいたします。
  203. 小林英三

    小林国務大臣 今井堀さんの御指摘になりました貴重なデータを私ここへ記載いたしたのであります。この問題につきましては十分に検討をいたしたいと思います。ただ私がここで申し上げてみたいと思いますことは、先ほどもちょっと触れたのでありますが、従業員の数が少い事業所であるから低所得者ばかりであるという考え方ばかりではないと思うのであります。たとえば十人の従業員を持っております工場といえども、業態によりましてはあるいは業種によりましては相当の高額所得者もあり得るということは考えられるのでありまして、今井堀さんの貴重な数字を私も十分体得いたしたいと思っておりますが、ただそういう観念だけではいけないということだけを申し上げておきたいと思うのであります。
  204. 井堀繁雄

    ○井堀委員 あなたは私の忠告をまるで的はずれに受けておいでのようです。なるほど例外としては少数の労働者を雇用しても大きな収益をあげておるりっぱな事業があります。しかしそれは全体的のものではありません。それならまた資料を出しましょう。これは国税庁が民間給考の実態調査をやっている資料です。これも信憑力のかなり高い資料です。これを規模別、階級別に見てみましょう。これを見ましてもわかりますように、十人未満の事業所、三十人未満の事業所、百人未満の事業所、二千人未満の事業所、それをこえる事業所、というふうに雇用労働者の数によって階級をつけて規模別に調査をしております。それを見ますと明らかに小規模ほど所得は減じております。これはもちろん調査の目的が異なるのでありますが、参考に申し上げておきましょう。これは重役も入っておるのですよ。社長も入れば全部入る。すなわち給与所得税を納める対象になる人々を全部網羅しております。そこで課税の対象になる者だけでありますけれども、十人未満の事業所の場合においては、これは二十九年の一番率のいいものをとっておりますが、百二十七万九千、それの月額平均であります。低いものもありまするが、これが年間十四万六千円と押えておる。ところが三十人になりますと十六万一千百、それが百人になりますと十九万二千五百、千人になると二十二万五千、それが一千人をこえる場合におきましては二十六万六千円というふうに高率に累進的に上っていっておる。このパーセンテージを見ていきましても非常におもしろい数字が出ておる。でありまするからあなたが言うように例外はあります。しかし全体的に見ますると規模の大きいほど所得は高い。規模の小さいほど従業員も雇い主も含めて所得は低いということは、これは大蔵省の給与の実態調査の上に現われた正直な統計なのです。でありまするからあなた方にこういう資料を出しなさい、こう言うのです。いいかげんに役所が狭い窓口で物事を判断されますとあやまちがあるからそのあやまちをなからしめるために私は資料要求をしつこくお願いした。それも出さない。厚生大臣は認識を新たにしてもらいたい。今日の中小企業対策は重大な段階にきておる。一方では中小企業対策にふんばってみたところで肝心な労務管理の中でも最も重要な部分であります労働力の保全の上において、労働の資質を向上する上において、労働の生産性を高める上において健康保険の関与する部面というものは重大なのです。いささかも後退を許しません。改善は大いに期待されておる現状であります。それを厚生大臣の言われるように小さな工場でもいい給料を取る人がおる、そんな人は取ったらいいのです。そんな人まで遠慮せいと言っておるのではありません。これは小林さん認識を新たにしてもらわなければいけません。あなたは中小企業問題に対してはかなり深い造詣を持っておいでになるから、これが健康保険の改正の方には大きな働きをしておるものと私は期待しておりましたがまことに残念しごくである。これは私はそういうことがあってはならぬから統計を出せというのです。統計を出せば小林さんのように中小企業に対して体験を持っておられる方はこれはえらいことだ、こういうことをしてはならぬということで事務当局に対して-ここのところが私は重要だと思うのです。この点については私関連質問でありまするから、詳しい資料を持っておりまするからまたお尋ねいたしたい。何もあなたを攻撃するのじゃありませんよ。健康保険をいいものにしていきたいという一念からいささかもあやまってはならぬと思うので、十分その点を御検討いただきましてこの次に私は標準報酬の問題について全体をお尋ねしたいと思いますからこれ以上何もしょうとは思いませんが、もしあなたも何か言っていただけるなら言っていただきたい。
  205. 小林英三

    小林国務大臣 今の人数によりまする収入の表につきましても貴重な統計を教えていただきまして非常に感謝をいたしております。この統計というものはすべての業種を平均いたしているものであろうと思いますが、ただ私どもでこの標準報酬をいわゆる三千円から四千円にいたしましたこの階級というものは、先ほど局長から御答弁申し上げましたように約十一万人でございますが、このうちで男子の者は三万六千人、それから女子が八万三千人ということになっておりまして、先ほど私が申し上げましたように大体におきまして女子が八割方を占めているのでございます。
  206. 井堀繁雄

    ○井堀委員 これは規模別によるいろいろな実情については、あなたの方が少し努力をされますならば、大蔵省の統計資料もありますし、労働省の統計資料もとれると思いますから、至急にそれを取り寄せられて、そうしてこの級の千円の開きがどういう結果になるかということについて御調査をいただいて、この部分だけでけっこうでありますから、この資料を出して、それが一体負担にどういう形になって響いてくるかをもつと展開していただきたい。私の方も計算しております。しかし私の計算が正しいか、あなた方がこれから御調査して、出していただく資料が正しいか、その点を明らかにしていかないと、ただ単に一級上に上げるということで、答申されておりますものの中にもごく簡単には書いてありますけれども、いろいろな意味が含まれているので、この点を要するに明らかにしていきたい。  それからついででありますからもう一つ標準報酬関係で伺いますが、厚生年金の方も、これと同様に引き上げてきておる。厚生年金の場合には、これは意味は違うと思う。あなたの方の資料によりますと、千三百何ぼかの積立金を持っておりますが、この積立金と、さらにこれに今言うように――あなたは今の健康保険はわずかだというが、厚生年金保険は上るのです。健康保険も上る。これは同じ雇い主が負担するのですよ。この点がどういうように零細企業に響いてくるかということを、もっと真剣に数字に合わして――被保険者だけではないのです。被保険者即雇い主で、今日の雇い主がどういう状態にあるかということをもう少し労働省から資料をおとりなさい。賃金未払いの状態を見てごらんなさい。基準法で当然支払わなければならない賃金がどれだけたまっておるか。おそらくその七〇%までが三十人未満の零細事業者なんです。基準法で通貨をもって期日を定めて支払いなさい、払わなければ処罰を受けるというものが、今日未払いになっておる。そういうところにぐっとかけていくのです。これはさめれば強制するのですよ。だからその点の関係――千円以下のものがどういうふうに響いてくるかということを、厚生年金と健康保険の両方を合せて、数字上で一つ御検討いただきます。この次に私の方も資料を出します。そのときにつき合わしていきたいと思います。この点はこのくらいにして三三。
  207. 佐々木秀世

    佐々木委員長 井堀委員にお願いいたします。大体六時ごろまでというお話し合いでございますから、あなたの関連質問で運輸省の船員局長を呼んでおるのでありますが、その部門に対しての御質問がいただけるなら、そう進めていただきたいと思います。
  208. 井堀繁雄

    ○井堀委員 それでは船員保険のことについて船員局長にお尋ねをいたします。今度の船員保険の改正案と船員法との関係は非常に深いのでありますから、この関係について一、二お尋ねいたしたい。船員法の八十九条によりますと災害補償の点でありますが、これはかつて健康保険法の前身でありました工場法にもありましたが、公傷病の場合における雇い主の全額負担の規定であります。これは海上労働者の特殊事情を考慮しての保護立法であることは疑う余地がありませんが、この船員保険法の改正と八十九条との関係が出てきますので、まず船員局長お答えをいただきたいのは、この船員法八十九条の規定は何を意味するか、また今度の保険の改正によっていささかもその精神がそこなわれるものではないと考えるのでありますが、これに対する御所見を一つ明確にしていただきたいと思います。
  209. 安西正道

    ○安西政府委員 ただいま井堀先生からお話がございましたように、船員法八十九条は、その第一項で船員が職務上の傷病にかかりましたときには、その傷病がなおるまで船舶所有者が自分の費用で療養を施しまたは必要な費用を負担する義務を課しております。また職務外の傷病につきましても、船員が雇い入れ契約存続中傷病にかかりましたときには、船舶所有者は三カ月の範囲内におきまして、その療養に関する費用を負担しなければならないというように規定してございます。従って今回の船員保険法の改正によりまして一部負担制度が規定されておりますが、この点につきましては船員保険沖の第二十九条の三におきまして、一そういった被保険者が一部負担金を出しましたときには、事前にあるいはまた事後に船舶所有者は、必ずこの一部負細金の費用を弁償しなければならない〃いう規定を置いてありまして、船員沖八十九条と矛盾のないように規定されてあります。
  210. 井堀繁雄

    ○井堀委員 それでは実際問題について一、二お尋ねをいたしたいと思いますが、今度の改正によって被保険者である船員が、当然船主が負担すべきものを立てかえ払いをして一時負担をする、こういうことになるわけですね。今日船員の実態からいってそういうようなことが、果してこの法律の精神からいって災害保護の上について何らの支障がないとお思いになりますか、そういうことをされる方がいいとお思いになりますか、その点だけでけっこうであります。
  211. 安西正道

    ○安西政府委員 船員行政を担当いたしております運輸省といたしましては、一部負担制によりまして船員の生活が少しでも脅かされるというようなことは好ましくないと考えております。しかしながら船員保険の運用上ある程度の負担はこの際やむを得ないというように考えております。ただ一部負担制の実施につきましては、船員保険の医療給付の相当部分が船員法八十九条に規定する災害補償に相当する給付でございます。従いましてこの船員法の八十九条の基本的方針がくずれないために船員保険法にただいま申し上げましたように、一部負担が実質的に被保険者である船員の負担に帰することのないように必要な条文を置いておりますし、また同時に一部負担の償還の点につきましては、これを職務上の災害とみなして船員労務官の職務権限の範囲内に属しまして、船員労務官が実際上これを監査するというような建前にいたしております。従いまして船員労務官の運用上遺憾のないように処置する考えでございます。
  212. 井堀繁雄

    ○井堀委員 船員労務官は一体幾人くらいおいででしょうか。
  213. 安西正道

    ○安西政府委員 船員労務官は全国で専任が八十四名おります。それ以外に兼任が八十二名置いてありまして、全体で百六十名でございます。
  214. 井堀繁雄

    ○井堀委員 この八十人の保護を受ける船員の数は何名ほどですか。
  215. 安西正道

    ○安西政府委員 全体で約十八万名ございます。
  216. 井堀繁雄

    ○井堀委員 十八万名の船員、ことにこの場合は陸上の労働者と異なりまして、船に乗って出ていく仕事なんです。ここに問題がある。労務官というものは、要するにこの全体のための管理監督をやる立場に置かれていることは申すまでもない。その人数がわずかに八十四名。それで一体全体の――これからこの法案が通ったと仮定しますと、港々に船が着きますと、港でそれぞれみな医者が変っていくわけです。あちらで初診料こちらで初診料、それを一体船主に請求――たとえば百円と仮定しますと、百円くらいはということでしんぼうするような結果になるという事実を私どもはおそれる。また雇い主も、たび重なって催促されるということは、だれだって、借りた金でさえ催促されればいい気持はしない、そういうものを一々労務官お世話なさいますか、またできますか、その点について一つ……。
  217. 安西正道

    ○安西政府委員 ただいま御指摘のございますように、船員の数に比較いたしまして船員労務官の数が非常に少いというような点につきましては、御指摘の通りでございます。船員の労働関係について発生いたしますいろいろな問題につきまして、完全にカバーできるかという御指摘でございまするが、これはいろいろ財政上の制約もございまするし、何分少数での現状でございまするが、しかしながら一面におきまして、船員労務官の活動によりまして、これは船員保険法の問題ではございませんが、その他の問題につきましても、違反件数が年を追うて漸次少くなっておるような現状でもございます。今回の船員保険法の一部負担の実施に関連いたしまする問題につきましても、あるいは運輸省といたしまして、いろいろと船員と船主に対しまして啓蒙運動を強化いたしましたり、あるいはまた船員は泣き寝入りなどをしないように、匿名などの手段でいろいろと労務官に申告する制度を設けたいというように考えております。また船員労務官自身も、みずからの職権で、できるだけこういった問題を中心にして一生懸命調査させる所存でございますので、不十分ではございますけれども、一生懸命努力するつもりでおりますから、御了承願います。
  218. 井堀繁雄

    ○井堀委員 今あなたは努力をなされると言う。その熱意は私ども疑うわけではありません。しかし今も申し上げるように、十八万の人、しかもこれは船で絶えず活動して、絶えず対象になる人、それを八十四人の定員をふやさない。しかも立てかえはいろいろ複雑になってくると思う。これは特にあなたは専門ですから言うまでもありませんが、一万トン級のような大きな汽船があるかと思えば、わずか五トンのような小さな漁船のようなものもある。その繁雑な種類まちまちなものを八十四人の人で、雇い主の負担を完全確実に実施せしめるなどということは、一体大胆に言っていいことでしょうか。私は常識上あなたの御答弁についてなお疑いを持つのです。今まででさえとかく問題があるのです。これはあなたのところだけじゃありません。労働基準法の監督の衝にある監督署は、全国にかなりあるのです。それでさえもうまくいかぬのです。ましてや八十四人で、しかもあちらの港こちらの港、漁船あり、帆船あり、あるいは汽船あり、何かこの際こういうことをやることによって、事務の繁雑はもちろんでありますが、そういう事柄を、一々法の完璧を期するために、一体どういうような啓蒙運動をやるのか、そんなお話をするくらいでやれる問題じゃない。特に私ども懸念することは、金額が大きなものになると、これは訴訟もやるかもしれません。そうすると、結果において泣き寝入りになるという事実を私ども懸念されるのです。こういう問題をあなたの方は厚生省お話し合いになったと思うのですが、確実に保護できるとお引き受けになれるのですか。その点念を押すために申し上げたわけであります。もし確実にできるというなら、ここで証言して下さい。あとで必ず問題になります。困難なら困難とおっしゃって下さい。今審議しておる最中ですから、一つ明確な御答弁を願います。
  219. 安西正道

    ○安西政府委員 先ほど申し上げましたように、またただいま御質問のありましたように、船員の数は非常に多うございます。しかしながら船員の労働問題を所管いたします海運局がありまして、そこではできるだけ現状の把握をさせておりますし、また同時に当の船主なり船員なりと不断に十分な連絡をとって、いろいろと船員の事情を聞いたり、あるいは船主との間に入っていろいろと仲介あっせんをしております。従いまして、もちろんわずかの労務官の数でございますので、十分なことはなかなかできかねるとは存じますが、精一ぱい努力する考えでございます。
  220. 井堀繁雄

    ○井堀委員 きょうは何かほかの都合もあるようでありますから、あとで船員保険の問題についてこちらで審議いたしますので、御迷惑かもしれませんが、また出ていただいて、御答弁いただくことがあろうと思いますから、きょうはこの程度にいたします。
  221. 佐々木秀世

    佐々木委員長 次会は明後二十二日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時七分散会