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1956-03-19 第24回国会 衆議院 社会労働委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月十九日(月曜日)    午前十一時十二分開議  出席委員    委員長 佐々木秀世君    理事 大坪 保雄君 理事 中川 俊思君    理事 野澤 清人君 理事 藤本 捨助君    理事 岡  良一君 理事 滝井 義高君       植村 武一君    小川 半次君       荻野 豊平君    亀山 孝一君       川崎 秀二君    草野一郎平君       熊谷 憲一君    小島 徹三君       小林  郁君    高橋  等君       田中 正巳君    田子 一民君       中村三之丞君    八田 貞義君       林   博君    亘  四郎君       阿部 五郎君    井堀 繁雄君       岡本 隆一君    栗原 俊夫君       堂森 芳夫君    長谷川 保君       八木 一男君    柳田 秀一君       吉川 兼光君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 小林 英三君  出席政府委員         大蔵事務官         (主計局次長) 宮川新一郎君         厚生政務次官  山下 春江君         厚生事務官         (薬務局長)  森本  潔君         厚生事務官         (保険局長)  高田 正巳君  委員外出席者         法制局参事官  眞田 秀夫君         厚生事務官         (薬務局薬事課         長)      尾崎 重毅君         厚生事務官         (保険局健康保         険課長)    小沢 辰男君         厚 生 技 官         (保険局医療課         長)      館林 宣夫君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 三月十四日  委員松田鐵藏辞任につき、その補欠として熊  谷憲一君が議長指名委員に選任された。 同月十五日  委員林博辞任につき、その補欠として石田博  英君が議長指名委員に選任された。 同日  委員石田博英辞任につき、その補欠として林  博君が議長指名委員に選任された。 同月十九日  委員赤松勇辞任につき、その補欠として吉川  兼光君が議長指名委員に選出された。     ————————————— 三月十六日  石部町の簡易水道敷設費国庫補助に関する請願  (堤康次郎紹介)(第一三六九号)  療術既得権存続に関する請願吉田賢一君紹  介)(第一三七〇号)  同(久保田鶴松紹介)(第一三七一号)  同(横錢重吉紹介)(第一三七二号)  同(稲富稜人君紹介)(第一三七三号)  同(小川豊明紹介)(第一三七四号)  同(山口丈太郎紹介)(第一三七五号)  同(古井喜實紹介)(第一三七六号)  同外一件(川野芳滿紹介)(第一三七七号)  同外一件(小山長規紹介)(第一四二九号)  同(岡崎英城紹介)(第一四三〇号)  同(根本龍太郎紹介)(第一四三一号)  同(井手以誠君紹介)(第一四三二号)  同(田原春次紹介)(第一四三三号)  日本赤十字社法改正に関する請願五島虎雄  君紹介)(第一三七八号)  同(帆足計紹介)(第一三七九号)  同(山花秀雄紹介)(第一三八〇号)  同(武藤運十郎紹介)(第一三八一号)  同(井手以誠君紹介)(第一四二五号)  同(飛鳥田一雄紹介)(第一四二六号)  同(下川儀太郎紹介)(第一四二七号)  同(岡本隆一紹介)(第一四二八号)  健康保険法改正反対に関する請願外二件(加  賀田進紹介)(第一三八二号)  同(石村英雄紹介)(第一三八三号)  同(山口丈太郎紹介)(第一三八四号)  同(中原健次紹介)(第一三八五号)  同(井岡大治紹介)(第一三八六号)  同(關谷勝利紹介)(第一三八七号)  同(安平鹿一君外一名紹介)(第一四四〇号)  同(西村力弥紹介)(第一四四一号)  同(山崎始男紹介)(第一四四二号)  同(山花秀雄紹介)(第一四四三号)  同(長谷川保紹介)(第一四四四号)  同(猪俣浩三君外一名紹介)(第一四四五号)  同(石田宥全君外一名紹介)(第一四四六号)  同(加賀田進紹介)(第一四四七号)  同(伊藤好道君外二名紹介)(第一四四八号)  同(武藤運十郎紹介)(第一四四九号)  同外二件(和田博雄紹介)(第一四五〇号)  同(坊秀男紹介)(第一四五一号)  同(久保田鶴松君外二名紹介)(第一四五二  号)  同(長谷川保紹介)(第一四五三号)  同(山下榮二君外一名紹介)(第一四五四号)  同外三件(岡本隆一紹介)(第一四五五号)  同外二件(柳田秀一紹介)(第一四五六号)  同(中居英太郎紹介)(第一四五七号)  同(原茂紹介)(第一四五八号)  同(伊瀬幸太郎紹介)(第一四五九号)  同(小松幹紹介)(第一四六〇号)  同(原彪君外一名紹介)(第一四六一号)  同(永井勝次郎君外四名紹介)(第一四六二  号)  教護院国営化に関する請願中川俊思君紹  介)(第一三八八号)  美容師法制定に関する請願外十五件(福田昌子  君紹介)(第一三八九号)  同(河野金昇紹介)(第一四二三号)  同(岡本隆一紹介)(第一四二四号)  国立療養所下志津病院重症患者救護措置に関  する請願吉川兼光紹介)(第一四三四号)  国立療養所付添廃止反対に関する請願赤松  勇君紹介)(第一四三五号)  健康保険における医療給付費の二割国庫負担に  関する請願坂本泰良君外一名紹介)(第一四  三六号)  同(伊藤好道紹介)(第一四三七号)  同(米田吉盛紹介)(第一四三八号)  同(志村茂治紹介)(第一四三九号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出第七八号)  厚生年金保険法の一部を改正する法律案内閣  提出第七九号)  船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第八五号)     —————————————
  2. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 これより会議を開きます。  内閣提出健康保険法等の一部を改正する法律案厚生年金保険法の一部を改正する法律案及び船員保険法の一部を改正する法律案の三法律案一括議題とし審査を進めます。質疑を続行いたします。滝井君。
  3. 滝井義高

    滝井委員 厚生大臣にお尋ねしたいんですが、十六日と七日に公聴会をやったのでございますが、その公聴会の結果重要な二、三の点についてまず大臣のお答えを願いたいと思うのです。それは先般来問題になっておりました現在の医薬分業を四月一月から実施していくためには、新医療費体系ではもはやどうにもならないということがはっきりして参ったわけでございます。そこで大臣としては暫定案を作っていただくようになっておる。その暫定案は二十日ごろまでにはできて国会報告をするであろう、こういう先般来の委員会の御説明でございました。先般の公聴会におきましては十七日に中央社会保険医療協議会が開かれる予定であったが、これが突然延期になったという委員の御発言があったのでございます。かねがね大臣が何度も御言明になっておった通りに、これはやはり二十日くらいにやらなければ間に合わないのでございますが、大体いつ国会に御報告をいただけましょうか。きわめて時日が切迫いたしておりますので、明確な御答弁を願いたいと思います。同時にこれは昭和三十一年度の健康保険予算にも関連を持ってくる問題でございます。従って参議院で予算自然成立をする情勢にございますので、その自然成立の前にわれわれはやはりこの予算案に対する態度を明白にしなければならぬ、こういう考え方もあるわけでございます。そこで一つ医薬分業に突入するための医療費支払いの方式の暫定案をいつ大臣責任を持って国会報告できますか、御言明願いたいと思います。
  4. 小林英三

    小林国務大臣 医薬分業がスタートいたしますために暫定案作成医療協議会にお願いいたしておりますことは御承知の通りであります。私といたしましては、二十日前後には医療協議会において暫定案作成ができるだろうという見通しを持っておったわけでありますが、二十二、二十三日に開かれることになっておりますし、この暫定案にいたしましても相当な検討が要るのでございますから、先般の医療協議会の日にちを変更されましたことにつきましても、そういうふうないろんな含みがあって延期されたものと考えております。従いまして医療協議会の方からそういう答申といいますか勧告といいますか、そういう案が出ました暁におきましては、厚生省で十分検討いたしましてやっていきたいと思っております。
  5. 滝井義高

    滝井委員 どうも大臣、だいぶん答弁が違ってきたんですが、私たちが初めからこの新体系を問題にしたときは、少くとも三月の初旬までにはやらなければならぬということが大臣の御言明でございました。それがだんだん延びて十五日になり、二十日になり、今度は二十日前後になり、今また二十二、三日になったのでございます。一体それで全国の十万以上の療養担当者に間違わないような趣旨徹底ができますか。もしその趣旨徹底ができずに療養担当者が請求を間違えたならば、この健康保険法の四十三条によって医者はお家断絶ですよ。その場合は責任をとりますか。
  6. 小林英三

    小林国務大臣 お尋ねの新医療費体系のいわゆる基本的の問題につきましては、私の考えといたしましてはたびたび委員会等におきまして御答弁申し上げましたように、三月の上旬ごろまでには決定をいたしまして、これを告示をいたしたい、こういうつもりできたのでありますが、先般の当委員会におきまして申し上げましたように、現在厚生省諮問をいたしておりますいわゆる根本的の問題につきましては四月一日からの医薬分業にあらゆる観点から間に合わない、しかも十分に慎重審議する必要がありますので、これを一時延期をいたしております。暫定的の問題につきましては私がこの間も医療協議会に参りましたときにも二十日前後にはぜひ一つ答申をもらいたいということでありましたから、私は医療協議会諸君も十分努力していただいて、四月一日からの医薬分業には間に合うものと考えております。
  7. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、四月一日の分業には暫定案で間に合うという御答弁をいただいたのでありますから、当然それは大臣責任を持って間に合う、しかも大衆に周知徹底ができることを御確信になっての御答弁だと了承して差しつかえありませんか。
  8. 小林英三

    小林国務大臣 その通りであります。
  9. 滝井義高

    滝井委員 そうしますとその暫定案性格であります。四月一日から間に合うとしてその暫定案性格というものはどういう性格のものなのでありますか。
  10. 小林英三

    小林国務大臣 性格ということでありますが、やはり私は医薬分業実施していくに差しつかえない程度暫定案と考えております。
  11. 滝井義高

    滝井委員 医薬分業に差しつかえない暫定案と申しますと、先般私が当委員会大臣から御言明を得ております物と技術とを分けるという、この新医療費体系基本精神暫定案に持ち込む、こういうことと了解して差しつかえありませんか。
  12. 小林英三

    小林国務大臣 たびたび申し上げておりますように、基本的な問題は先に譲りまして、医薬分業に差しつかえない程度暫定的措置をいたしたい・こういうことでございます。
  13. 滝井義高

    滝井委員 大臣はそのときそのときの場当りの答弁ではいけません。私は一貫した質問をしておるつもりでございますから、きちんと一貫した答弁をしてもらいたい。  先般私がここで大臣にお尋ねしたときに、新体系精神を受け継いだ、物と技術とを分離したその精神というものを暫定案には盛っていくか、こういうことを申しましたところ、大臣からその通りだという御答弁があった。大臣の方から、物と技術とを分けたもので暫定案を作るのだという答弁があったのでありますが、それはその通りかということを私はお尋ねしておるわけであります。
  14. 小林英三

    小林国務大臣 これは線の引き方をどこで引くかということは、医療協議会におきましても十分検討されると思いますが、やはり少くとも物と技術とを分けるという精神は変らないつもりでおります。
  15. 滝井義高

    滝井委員 その通りに私は確認いたしておきますから、一つお間違いないようにしていただきたいと思います。  そこで実は十六、十七日の公聴会においては、それと違った意見療養担当者から出て参りました。中央社会保険医療協議会における局長発言その他を見てみますと、やはり十六、十七日の医療担当者発言と同じ意味のことが言われております。それは暫定案というものは条件をつけぬということを言っておる。暫定案というものは条件をつけません、どんな案でもいいですから、医薬分業のできるものをやってくれ、こういう発言もある。またそういう発言大臣みずからがされた、次官もされたということを、古畑竹中等の、十六、十七日の公聴会公述人諸君も言われておる。もし大臣が今のように、物と技術とを分けた暫定案で四月一日から分業に入るとするならば、私は暫定案はできないと断言してはばからぬと思います。もし物と技術とを分けたものでなければのめぬということになると、当然そういう結論になろと思います。これは大臣諮問機関がそういう答申をしても、現行点数でそのまま突入するのだ、変えるものは調剤技術料だ——すなわち現在四円の薬剤師調剤技術料は五円でよろしいという説もありますよ、公益委員は五円でよろしいと言っておる。われわれは新医療費体系の七円にすべきだと思っておりますが、五円でよろしいという意見公益委員の中にも相当有力です。これは明らかに物と技術とを分けずに、現行体系で四月一日から分業に突入するということで、大臣の今の御言明と違うのです。しかしこれは違ってもけっこうだと思いますが、大臣方針が物と技術とを分けたものでなければならないという方針であるならば、おそらく出てくる答申案というものは不満なものになってくると思うのでございます。大臣はその場合もあくまで物と技術とをわけたものにみずからそれを変えて国会に持ってくるだろうと期待しておるのですが、その通りですか。
  16. 小林英三

    小林国務大臣 これはこの前の本委員会におきまして、滝井さんが私に御質問がありましたときに、私の考え方というものは、この前の予算委員会におきます考え方と同じように、暫定案におきましては、この物と技術とを最低線どこで線を引くか知りませんけれども、そういう精神暫定案を作っていただきたいというつもりであるのであります。しかし暫定案はどこまでも暫定案でございますから、医療協議会におきまして、こういう線で暫定的にやってもらいたいという建議あるいは勧告等がありました場合には、それはそのときに十分厚生省といたしましても、前後の関係を検討いたしまして、そうして考慮いたしたいと思っております。なおこの問題につきましては、局長からも御答弁申し上げます。
  17. 滝井義高

    滝井委員 局長答弁は要りません。大臣の明確な責任ある答弁をいただいておかなければ、もう間に合わないのです。そんなのんきなことじゃいけませんから、責任ある御答弁をいただきたい。もし暫定案現行点数でいくということになったときにどうしますか、それをのむならのむ、のまないならのまないと、明白に言って下さい。
  18. 小林英三

    小林国務大臣 私は今の滝井さんの御意見のような暫定案が、現行点数そのまま出てくるというようには考えられないと思います。
  19. 滝井義高

    滝井委員 暫定案がそのままといいますが、日本医師会議決をいたしました。日本医師会方針をきめている。現行点数でいく、修正するには調剤技術以外にはないという決定をしていろ。古畑氏もここでそういう言明をしました。もしそれと違った場合には日本医師会は総辞退とはっきりしている。その場合に大臣はどうされますか。その場合も大臣は、物と技術とを分けた新医療費体系精神でなければならないと突っぱねて、強行告示をされますか。その場合を一つお聞きしておきたい。
  20. 小林英三

    小林国務大臣 ただいまお答え申し上げておりますように、現行点数そのままで答申が参りますというようには私は考えておりません。
  21. 滝井義高

    滝井委員 あなたが考えていないといっても、療養担当者は、竹中氏も、それから古畑氏も、それから全労の和田君も、それから宮尾さんも、公述人はそうは言わなかったのです。そう医療費が伸びなければいいのだ、宮尾さんは最後に言葉を濁しました。そうなろと、大臣は一切を社会保険医療協議会におまかせしますと言っておきながら、医療協議会はおそらく物と技術との基本精神を無視しないで出てくろだろうとあなたは期待されておっても、向うの客観情勢は必ずしもそういうものでないことは個々の公述人から明白にされている。大臣公述をお聞きにおいでになっていなかったけれども、そういうことになっている。これは予算にも関連する重要な問題だから私はあとで大臣を呼んでいろのですが、一番大事なごとですから、これを大臣一つ明白にして下さい。これがなければ健康保険の問題には入れません、予算の問題と関連しているのだから。
  22. 小林英三

    小林国務大臣 私はこの間の参考人の御意見を拝聴いたしておりませんけれども医療協議会というものは四者構成になりまして、公聴会等においてどういう御意見があったか知りませんが、私どもといたしましては、現行点数そのままにおいてやるという御答申医療協議会から出てくるとは考えておらないのであります。
  23. 滝井義高

    滝井委員 現行点数ということは、いわゆる医師側のものは現行点数薬剤師側のものは現在の四円です。一日の調剤料は四円ですよ。それを五円にすればよいという意見公益委員の中に濃厚なんです。われわれはそれを新医療費体系の七円の線に持っていくべきだという主張をしているのです。これは現行点数のままではない。そういう点において、調剤技術料の点においては変っている。そういうものが出る情勢が非常に濃厚になってきたということです。これは公述人がみなそうおっしゃったのですからはっきりしている。それで日本医師会もそれ以外の線が出たが、総辞退という議決をしている。だからそうなった場合に、大臣としては、あくまで現行点数調剤技術料を変えたものではだめだと——だめならだめとおっしゃって下さればそれでけっこうです。あくまで物と技術とを分けた暫定案を今度厚生省独自でお作りになってけっこうです。諮問機関の言うことを聞く必要はないのです。諮問機関諮問機関です。そこで、四月一日から突入せんとする医薬分業大臣態度を聞いている。大臣医療協議会からどんな結論が出てこようと物と技術を分けて勇往邁進していくのか、それとも物と技術を分けないものが医療協議会から出てきたら、それをのむのか。勇往邁進するか、医療協議会に屈服するか、言葉が悪いのですが、そういう形でいくか、どっちですか。
  24. 小林英三

    小林国務大臣 私の考え方は先ほどから申し上げておりますように、医療協議会そのもの現行点数そのままの答申をしてくるものとは考えておらないのであります。
  25. 滝井義高

    滝井委員 よろしい。それならば現行点数で私が申しますように、調剤技術料だけの変化があった、こういう形で出たのは明らかに現行点数でないのです。そういう形で出たときは大臣どうしますか。具体的に聞きましょう。
  26. 小林英三

    小林国務大臣 医療協議会諸君には、私みずから参りましていろいろお願いもしてきてございますが、医療協議会は今後できるだけ早く何かの成案を得て御答申願うものと思いますから、その御答申のありましたことに対して十分検討いたしたいと思っております。
  27. 滝井義高

    滝井委員 では国会議員として要求します。大臣は四月一日の医薬分業はどうするつもりか、どういう形で医薬分業に入るつもりか、大臣責任ある答弁をいただきたい。中央社会保険医療協議会大臣諮問機関でございますので、私ども国会議員の関知するところではありません。国会議員として厚生大臣小林さんに一つお尋ねいたします。どういう形で四月一日からの医薬分業責任ある形でやっていくか、それを御答弁願いたい。
  28. 小林英三

    小林国務大臣 医薬分業が四月一日から実施されることになろことは間違いないことと思います。
  29. 滝井義高

    滝井委員 どういう形ですか。具体的に入るのには入る点数が要りますよ。どういう点数で入りますか。明白に一つ大臣責任ある御答弁をいただきたい。これでなければいかぬという、これで自分は行くのだというあなたの御信念があるはずです。
  30. 小林英三

    小林国務大臣 それは今滝井さんにお答え申し上げておりますように、医療協議会答申がありました場合におきまして、厚生省で検討して決定していくべきことだと思っております。
  31. 滝井義高

    滝井委員 それならば大臣に申しておきますが、健康保険法は五月一日から実施です。医薬分業は四月一日から実施です。私たち大臣に要求いたします。五月一日の健康保険は騒ぐ必要がありませんから、医療費体系は今から大臣はいかなる心がまえをもって検討されていくかお尋ねしたいと思います。そこで大臣は今の中央社会保険医療協議会にかけておる新点数というものは、六月ごろにはできるであろうという御答弁がございましたが、大臣六月ごろにできますか。
  32. 小林英三

    小林国務大臣 今の滝井さんのその問題についての御意見は、相当食い違いがあると思っております。私は前回の当委員会において申し上げましたように、医療協議会で基本的な新点数を作るという問題につきましては、これは引き続いてやっていただくのでありますが、これは医療協議会の立場上、諮問いたしておるのでありますから、こういう重大な問題、画期的な点数表のことでありますから、何月何日までにこれをやれというふうに期日を切るということは私はいたしたくなかったのであります。しかしその席上におきまして、いろいろな委員から期日を切ってやれというような御意見も相当多数あったのであります。しかし私はその問題には触れたくなかったのでありますが、しいてこちらの希望を言ってもらいたというのであればという意味で、軽く六月末ごろまでということを申し上げたのでありまして、私といたしましては期日を切ろことはいたしたくなかったのであります。そういういろいろな御希望があったから、私の方の希望を申し上げれば暫定的な問題については三月二十日ごろ、基本的な新点数表作成につきましては六月の末ごろまでにやっていただければということです。私は最初できるだけ早くと申し上げておったのでありますが、できるだけ早くだけではいかぬから、政府希望を言え、こういう発言が相当あったものでありますから、希望を言えとおっしゃれば、このくらいのものだということを申し上げたのでありまして、別にその六月の末というのは他意のない私の希望であります。
  33. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、六月の末というのは、軽くちょっと言うただけで何も根拠があるわけでない、こういうことですね。私はそうだと思います。
  34. 小林英三

    小林国務大臣 その通りでございます。
  35. 滝井義高

    滝井委員 だから結局今の新体系というものは、とにかく期限を切る意思はないのだ、こういうことに結論的にはなると思います。私はそれがほんとうだと思います。それはきょう曽田さんがおりませんからわかりませんが、曽田さんがいるとはっきりする。曽田さんは一年三カ月の医薬分業延期では新医療費体系はできないという年来の主張であった。できないから政府としては二十七年の三月と十月のあの原価計算を使わざるを得なかった。あれが一、二年あるいは三年の期限があれば、もっと根本的にあれをやりかえてりっぱな新体系ができるのだが、それがなかったためにああいう頻度の調査だけの不完全な二十七年の原価計算基礎にしなければならなかったというのが曽田さんの御答弁であった。ですから今のようにこれが三カ月や四カ月でできるものではありません。だからこれは中央社会保険医療協議会にかかっておるだけのことであって、あんな基礎においてはっきりしない新体系では審議ができない。そこで今の大臣の御答弁でこれには他意がないということがはっきりしてきたので、そう了解をしておきます。そうなりますと、暫定案というものは相当長期にわたって実施をすることになるということは今の大臣の御答弁ではっきりして参りましたので、この暫定案をどういう形で作るかということがますます重要になってくる。昭和三十一年度の予算に密接不可分に関係してくる。だからこれは医療協議会結論が出ればすぐに国会の方に御報告になって審議していけるように先般お約束を得ておりますが、その通り確認して差しつかえないかどうか、もう一回ここで聞いておきたいと思います。
  36. 小林英三

    小林国務大臣 今の滝井さんの御意見は私の答弁と相当食い違っておると思います。六月にやるやらないの問題については、私は御希望があったから申し上げたというだけでありまして、それが長くかかるとか短かくなるとかいうような問題を申し上げておるのではない。そういう基本的な問題でありましても、医療協議会において六月よりももっと早く御答申があるかもしれない。あるいはもっとひまがかかろかもしれません。私が申し上げたのは、期限を切ったのではないという一つの例を申し上げたのでありまして、その点は御了承を願いたいと思います。なお医療協議会から暫定案が出ました場合においては、厚生省として十分検討いたしますし、国会にも御報告を申し上げる機会もあるかと存じます。
  37. 滝井義高

    滝井委員 これはおそらく参議院でも問題になると思いますが、当然国会の審議にかけて、やはり国会がよろしいと言ったら告示をしていただけるでしょうね。二十六年以来の審議の関係で、全然国会の意思を無視してそのままやるということはないと思いますが、これはこの前にも言っておるように、紳士的に十分に審議をさせていただけるものと理解しておるのですが、大臣はそう理解して差しつかえありませんか。
  38. 小林英三

    小林国務大臣 今の滝井さんの御意見は、国会の御審議については私は十分に措置いたしたいと思いますけれども、ただ国会の御審議ということは、国会決定なさる意味ではないと私は解釈をいたしております。従いまして四月一日からスタートいたしまする医薬分業に間に合うように厚生省としてはやってもらいたいと思います。
  39. 滝井義高

    滝井委員 少しくどいようでございますけれども大臣は参議院の委員長もされておりましたし、参議院の先週のあの空気は私も行って傍聴しましたが、よく大臣御存じだと思う。十二回、十三回にわたって参議院が重要法案と同じ取扱いをしておるものを、暫定案ができたからといって衆議院、参議院の審議にかけぬで、大臣がぽっと告示をするということになれば、それはなるほど法律とは違うかもしれません。しかしそのときには重要な大臣の政治的な責任追及の問題が起ることだけは一つ御了承願っておきたいと思います。  そこで次の質問に入ります。薬価対策なのでございますが、ちょっと委員長に伺いますが、大蔵大臣は出ていただけますか。
  40. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 滝井君に申し上げますが、大蔵大臣はきょうダレス長官との会談をやっておりますので、明日の午後間違いなく出るそうでありますから御了承願いたいと思います。
  41. 滝井義高

    滝井委員 それでは薬価対策について伺いますが、健康保険の赤字対策として三億円だけ薬価対策が出ておるわけです。そこでこの三億円の内訳を御説明願いたい。
  42. 小林英三

    小林国務大臣 これは薬務局長から答弁させたいと思います。   〔「委員長、十八名しかいない、定足数不足だ。」と呼ぶ者あり〕
  43. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 ちょっと申し上げますが、定員はおります。委員長を入れて間違いなく二十人おりますからお数え願いたい。
  44. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 お答えいたします。薬務局長が参りましてもう少し詳細にお答えをすると存じますが、三億と推定をいたしましたのは、保険経済にはね返る部分が三億くらいあるだろう、こういう推定でございます。薬価全体がどのくらい下るかということにつきましては、これはもう少し多く見込んでおるのでございますが、御存じのように薬価が下りましても今の保険の支払いのしかけでは、直ちにそれがその通りにはね返るということは申せませんので、従って御存じのように、保険の薬価の支払いは薬価基準で支払うということになっております。しかもその薬価基準によって六十円までは十五円きざみ、それ以上になりますと十円きざみのあれで点数がきまっております。従いまして薬価が、かりに例を上げますと、十四円のものが十三円に下っても保険経済にははね返りません。しかしながら十六円のものが十五円以下に落ちますと保険経済としては支払いが少くなる、こういうふうなしかけになっておりますので、従って一体どの程度保険経済として得をするかということはもっぱら推定になるわけでございます。従いまして私どもとしましては、薬務局の方の御尽力その他で薬価が下って参ります上、なお薬価基準の立て方について若干の合理化をいたしたい、かようなことを考えておりますので、まずそれらで三億程度のものが保険経済として得になるのではあるまいか、こういう推定を立てた次第でございます。
  45. 滝井義高

    滝井委員 推定で三億の額を出されては困るのであって、一部負担については綿密詳細な二十三億何がしの金が出てきた。それと同じものが当然薬価についても出なければいかない、それを私は聞いておる。そういうものが出なくて、ただ三億というものを腰だめ的に予算書の中に出してくることは不都合千万である。あなたの方から出た資料においても、薬価の引き下げは三億、いわゆる行政措置による六億の中の半分を占めておる。この三億の内訳がはっきりわからぬはずはない。先般薬務局長は三つの線を出した。優良薬品を安く提供する。それから現在の薬価基準を三本立にして病院、薬局、診療所を別にする。包装を大きくする。こういう三本立で三億出しますと言った。この三本立でどういう工合に三億になるかということを具体的にお聞かせ願わなければならぬと思う。
  46. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 お答えいたします。一部負担の二十三億五千百万円というのもあくまでも推定でございます。ただこれにつきましては、過去のさような医療の行われる頻度というものが統計上ございますので、過去のいろいろな資料の数字を使いまして推定をいたしたわけでございます。なお今の保険経済として、薬価が下る場合にそれがどの程度はね返るかということは、薬務局長が以前にお答えをいたしましたように、なお滝井先生がおっしゃいましたように、厚生省といたしましては、いい薬がなるべく安価に提供されるようにいろいろな努力をいたしております。その努力をさらに続けるということで政府管掌健康保険で使う薬について約この程度くらい、あるいは薬価基準を病院と診療所と分けることによりまして、そこにも保険経済として得をする分が出てくるであろう、あるいはまた今の薬の包装が比較的小さく包装されておりまして、医師向けについてもそれが医師との取引の単位になっておる。これは大きくすることによって薬の単位当りの値段を落すことができるであろう、こういうふうなことをあれこれ行いまして、薬としましては相当下るであろう。下るけれども、先ほど私が申し上げましたようにそれが保険経済にどういうはね返りがくるか、保険経済の得としてどう現われるかということにつきましては、これは率直に申しまして的確な一部負担の金額を推計いたしまするような資料がないのでございます。従って大体この程度に見積っておけばまた間違いはないであろうという全くの推定の数字でございます。これ以上には推定をより正確にいたす資料がないのでございます。御了承いただきたいと思います。
  47. 滝井義高

    滝井委員 大臣にお尋ねいたします。今度の健康保険の赤字を解決していくためには、日経連の牛尾さんは五音泣きということを申したのです。保険者、被保険者、療養担当者それから製薬業者そういう人たちが全部泣かなければならないのだ。今までは保険者と被保険者と国と、こういう三者泣きだといっておった。それに今度はあなたの方がこの健康保険法改正することによって、療養担当者が加わった。さらにそれに製薬業も加わらなければならぬ、こういう論が出てきた。公述人の皆さんは、全部賛成だとおっしゃった。ところが、今保険局長から御説明があったように、薬価については資料も何もなしにやっておった、推定である。そうおっしゃったのです。大臣も今お聞きの通りなんです。そういうことではいかぬと思うのです。五者泣きならば、大臣、具体的に製薬業にはどういう工合に泣かせるか。今のようにただ薬を少し安くするくらいなら、日本の産業はどの産業も合理化をやっているので、物を安くしなければならぬことは当然なんです。あに製薬業のみならんや。そうしますと、大臣はどういう工合に製薬業に泣いてもらいますか。療養担当者、保険者、国——国は三十億だけ泣きました。みんな泣いてもらわなければならぬ。これは基本方針ですから、大臣にお尋ねします。
  48. 小林英三

    小林国務大臣 まず薬務局長答弁をさせまして、その上に私が答弁をいたします。
  49. 森本潔

    ○森本政府委員 先ほど保険局長から御説明があったかと思うのでございますが、ただいま考えておりますところは、直接に薬価に響きますのは薬価基準のきめ方でございます。前年度の薬価と、それから本年度の薬価のきめ方につきましていろいろ検討いたしましたところ、最近におきます薬の値下りの傾向がございます。かような点を考慮いたします。それから、その値下りとは別にいたしまして、従来薬価のきめ方が、病院、診療所、薬局等を通じまして一本でございました。と申しますと、これは不合理な点炉あるのでございまして、たとえば病院等におきましては大口で購入する、従って値段が比較的安い。それから、診療所におきましては、小口で購入いたしますので、同じ薬品についても高い。こういう事情がございます。それで、それぞれの購入機関別に現実の購入価格が違っておりますので、それらの点を考慮いたしまして、二本あるいは三本立ての薬価基準を作ってはどうだろうかという点でございます。それから根本的には薬価の対策としては、企業の合理化でありますとか、あるいは輸出の振興、かような方法によって長期にかつ自然な形において値下りをはかっていく、こういうことも考えております。
  50. 滝井義高

    滝井委員 きわめて抽象的なことしかないようでございますが、具体的に聞いていきましょう。薬価基準はどうしてきめますか。
  51. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 お答えいたします。薬価基準は、御存じのように中央社会保険医療協議会諮問をいたしまして決定をいたしますいわゆる点数表、この中に薬価の部分については、厚生大臣これを定めるということで、委任をされております。この具体的なきめ方としましては、年にたしか三回であったと思いますが、大調査が一回、小調査が二回、年に三回、全国的に実際の取引値段を買い方と売り方と両方で調査をいたしまして、現実の売買価格を押えるわけであります。そして、これは御存じのように公定価格はございませんので、値段の高低があるわけでございますが、それに一定のラインを引きまして、これは九〇%バルク・ラインということになっております。言葉をかえて申しますと、消費される薬の九〇%が購入し得る値段ということでございます。そういうところにその線を求めましてそれを告示をいたす、かような運びに相なっております。
  52. 滝井義高

    滝井委員 中央社会保険医療協議会諮問をしていないのですね。
  53. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 今申し上げましたように薬価基準そのものを実態の調査に基きまして数字を出すだけでございます。数字をそのまま操作を加えないで告示をいたすわけでございます。この薬価基準そのものを中央社会保険医療協議会には諮問いたしておりません。ただし先ほど申し上げたようにそれは厚生大臣が独自で定めなさいという中央社会保険医療協議会答申を得てさような措置をいたしているわけでございます。
  54. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと今までそういう答申をしょっちゅう中央社会保険医療協議会に出しておりますか。
  55. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 先ほど申し上げましたようにいわゆる点数表、今度の新医療費体系に基く点数表が問題になっておりますが、現行の点数表に、これは告示でございますが、各医療行為の点数を定めますと同時に、さような条項が入っているのでございます。
  56. 滝井義高

    滝井委員 どうもそこらあたりが私はでたらめだと思います。日本の医療の中で薬の原価について約三割を占めるものがそういう形で大衆の討議も経ずして、わずかに数人の人できめられるというところに実は問題がある。そこでお尋ねします。そういう形であなた方が自信を持っておきめになっているならば、一つビタミン十ミリグラム一cc十七円八十銭の原価計算をお示し願いたい。この薬価基準の。
  57. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 今申し上げましたように薬価基準の比較というものは原価計算から定められるものではございません。現実に取引される価格を調査いたし、その現実の取引される価格の九〇%バルク・ラインというものを引いているわけでございます。従って個々の薬についての原価計算をいたしまして基準を定めるものではございません。
  58. 滝井義高

    滝井委員 大臣にお尋ねします。もう局長はよろしい。いいですか。医療費体系というものであなたは物と技術とを分けるとしょっちゅう信念的におっしゃっていろ。医療費体系というものは、医者の所得Sはイコール技術料(G)プラス人件費(N)プラス諸経費(M)プラス薬価(K)です。こうなっていろんですよ。そうしますと、そのGもこれは一分間の技術料四円三十六銭とストップ・ウォッチを押して出てきましたよ。それから人件費のNも原価計算をして出て参りましたよ。それからM諸経費も同じように出てきましたよ。そうするとKだけ薬価だけは現実にされているだけで何も原価計算をしないでいいんですか。そんなばかなことはない。(「それは医者がやるのじゃない」「根本じゃないか」と呼び、その他発言する者あり)
  59. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 速記が取りにくいから静粛に願います。
  60. 滝井義高

    滝井委員 だから私は少くともこの十七円八十銭の——黙って聞いてくれ、一つこの十七円八十銭のG、M、Nをこまかに——大きな八百何十億の総医療費を言う必要はないのですから、ビタミンB十ミリグラム一ccの原価を出して下さい。——製薬会社のを一つ出してみましょう。厚生省から出た薬価基準の八十五、六ページにビタミンB注射液十ミリグラム、一cc百七十三円、これが東京、大阪、京都、神奈川、愛知、兵庫です。その他の地域になると百七十八円、これは各製薬会社全部あります。だからこの前いただきました資料によりまして、国家機関から補助を受けている会社の方でけっこうですから出して下さい。製薬企業に対する開発銀行融資状況、三共がまず受けております。三共から今言ったビタミンB注射液が出ております。一つ三共でけっこうですから御説明願いたい。
  61. 小林英三

    小林国務大臣 今お尋ねの件は相当専門的になりますからむしろ局長から答弁さしたいと思います。
  62. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 薬価基準のそれぞれの価格につきましては、今私が御説明申し上げたようなことで定まっておりますので、それぞれの薬の原価計算をいたしておりません。それで、それじゃけしからぬじゃないか、こういう御質問でございます。御存じのように今の日本の国のやり方は、ものの公定価格を定めないというやり方になっておるわけでございます。従って薬も一つの商品でございまして、これについて公定価格制度は日本経済の全般としてとっておらない、それに即してとっておらないわけであります。それと同じように、今医療費のことを申されましたけれども医療費の問題につきましても、政府が診療報酬を幾ら払わなければならぬとかなんとかいうことは定めておりません。御存じの通りであります。ただ保険がやります場合には、幾ら支払いますということは、保険のしかけといたしまして定めなければなりません。従いまして保険としましては診療報酬はこれだけ払う、こういう払い方で一つ医療を担当していただきたい、それでよろしい、それじゃおれを保険医にしてくれ、こういうことで点数表をきめておるわけであります。  それから薬価につきましても、従って保険は自由勝手に払うわけじゃございません。そこに薬価基準という一つの基準を設けて、たといそれより以上に値段のするものであっても薬価基準で払うというしかけにいたしているわけでございます。従いまして保険の診療報酬の点数をきめるからして、薬の売買価格に統制を加えなければならないという御議論には若干の飛躍があるのではないかというふうに私どもは考えておるのでございます。
  63. 滝井義高

    滝井委員 あなたはどうも変な論理を用いますよ。医療というものは自由だと言うが、今、日本の医者で健康保険をやらずに、国民健康保険健康保険実施している区域で自由で食えますか。東京とか大阪のような大都市は、たまたま国民健康保険がないから食える。国民健康保険健康保険がなくてその地域の医者は自由診療なんかありゃしませんよ。国民健康保険なり健康保険のいわゆる健康保険の単価でいかなければ食えやしませんよ。その使っている薬は売買価格で自由にほっておいてよろしい、こういうことをおっしゃるならばあなたの方のことしの予算を見てごらんなさい。あなたの方のことしの予算の薬事関係を見ると、薬事工業生産動態調査費九十八万七千円、医薬品等価格調査費百二十三万円、薬事工業生産動態調査委託費百七十六万五千円、公定書調査研究委託費四十三万円、薬価基準調査委託費九十万七千円、社会医療薬価調査委託費三十四万円、こういう工合にこれだけの金を出して具体的に調査をやっておるはずです。従って薬事工業の生産動態なり医薬品等の価格の調査ということは当然薬事工業の生産動態を調査するなら、原価まで入っていなければならぬ。それはないとは言わせませんよ。医者の使う薬を野放しにしておって、医者は水も漏らさぬようにクモの網で張って張って張りめぐらして、しかもそれの使う薬は日本の支払われた医療費の中の三割というものを占めておるにもかかわらず、その三割を全くノー・タッチでいってあなた方は医療行政ができますか。それで今のああいうでたらめな答弁をするならば、私は今後保険局長答弁は求めません。私はもうおととし以来その原価を出せということは忠告しておる。小島元委員長もおるが忠告している。それが今はなってわからぬ。赤字対策の三億というものは腰だめ的な数字でありますとか、その答弁は何事ですか。そういうことは許されません。だから私は、多くを言う必要はないから、一番世間に膾炙をしておるビタミンBの百七十三円の原価計算一つここに出してもらいたい。これはなんだったら私らは一つ委員長に要求して、開発銀行の融資を受けておるところは、いわゆる国政調査権がありますから調査委員会を作って調査を早急にやりたいと思います。このビタミンの粉末は一グラムが六十三銭しかいたしませんよ。六十三銭のものが十七円八十銭にどうしてなりますか。薬九層倍どころじゃないですよ。六十三銭のものがどうしてこうなりますか。それを厚生省がわからぬはずはない、こういうことなんです。どうですか。大臣責任ある答弁を求めろ。六十三銭の粉末がわずかにアンプルに入れて水にした場合にどうして十七円八十銭になりますか。これは一つ委員会で明快に御答弁をいただけますか。
  64. 森本潔

    ○森本政府委員 ……。
  65. 滝井義高

    滝井委員 ちょっと待って下さい。大臣答弁を求めておるのですから、あなたはいいのだ。事務的な答弁は求めません。
  66. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 滝井君に申し上げます。一応発言を許しましたから、それから大臣答弁を願うことにいたします。
  67. 森本潔

    ○森本政府委員 ただいま薬事関係の予算について御質問がございましたが、ちょっと内容を……。
  68. 滝井義高

    滝井委員 いや、予算はあとで大蔵大臣が出たときに聞きます。どうして百七十三円が出るかということです。
  69. 森本潔

    ○森本政府委員 その点につきましては、これは先ほども保険局長が申しましたように、現実の取引価格を基礎にしてやっております。それから原価計算というものは私の方ではとっておりません。
  70. 滝井義高

    滝井委員 それならば主計局長でもよいから呼んでくれませんか。
  71. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 そういたします。
  72. 滝井義高

    滝井委員 昭和三十年度にも薬事工業の生産動態調査費として九十八万七千円出ております。この金は一体何に使っていますか。
  73. 森本潔

    ○森本政府委員 この薬事工業生産動態調査でございますが、これは各薬品の毎月におきますところの生産数量でございます、これをまとめております。それによりまして各企業におきまして需給の観点からしまして、過不足を来たすというようなこともございます。あるいは輸出の観点から見て、むしろこの方は奨励すべきであるということになっております。企業の指導助成という面の資料に使っておりまして、結局とっておりますのは、各メーカーにおけるところの各種薬品の生産量でございます。それを調査いたしております。
  74. 滝井義高

    滝井委員 大臣にお尋ねしますが、医療費体系というものはさいぜん私が御説明申し上げましたように、水も漏らさぬ原価計算方式をとっておる。医者の一分間時間というものは四円三十六銭と出ておる。これくらいストップ・ウォッチで綿密にやっておって、その医療機関が使うところの医薬品というものは、今言ったように厚生省自身が再々にわたる私の警告にもかかわらず原価計算もやっていない。これはあとから質問しますが、流通過程もそういう答弁ならばおそらくまだやっていないだろうと思う。これは少くとも二十七年のこの調査には、医薬品の材料費というものは病院においては二四・九五%、診療所においては二八・八〇%であり、約三割近くというものは原材料費になっている。その原材料費の原価計算をやらずして、他の一切の医者の使うものだけはそれを基礎にした原価計算をやるということは、これだけでもこれは不合理きわまる医療費体系でしょう。しかもこの昭和二十七年の総医療費の約千五百四十九億の中でわかっておるものは、その医者の使う分と、売薬と申しますか、この薬局で売られる百八十八億以外はわかっていない。あと三、四百億というものは薬がどこにいったのかわからないのですよ。全然わからない。ここが健康保険の一番の盲点なのです。五音泣かせというのはここなのです。製薬業が泣かずしてどうして日本の医療がりっぱにできますか。医者が泣き、国が泣き、療養担当者が泣き、保険者、被保険者が泣いて、製薬業者はわずか三億です。しかもそれは企業の合理化だけで三億出していくということになれば、これは問題ですよ。どうですか大臣、これは責任をもって大臣健康保険法の審議の過程中にやれるかどうか。これだけ一つ大臣にお伺いしておきたい。
  75. 小林英三

    小林国務大臣 今の御質疑に対する答弁は事務当局からいたさせます。
  76. 滝井義高

    滝井委員 これは事務当局の答弁ではないのですよ。健康保険をわれわれが今からどういう工合に立て直していくかという一番根本の問題です。だから大臣、今答弁できなければあとでけっこうですから、よく事務当局と御相談になって御答弁を願いたい。  次に、少し技術的なことになりますが、一昨日の委員会で野澤委員から、現在の診療報酬請求事務のことについていろいろと公述人に御質問がございました。その中で、毎日々々医療担当者が事務をやっておれば、月末になって二日、三日徹夜なんかする必要はないじゃないかという御質問があったのです。これは私は実は非常に認識不足だと思う。そこで今から具体的にあなた方にやってもらいたいと私は思うのです。厚生省のこの統計というか、医療費体系基礎になったところを見ますと、どういうことになっておるかというと、医師の調剤時間は一・八秒です。薬剤師の調剤時間は二十三二秒ですよ。そこで私は大臣一つまのあたりに見てもらいたいと思いますが、夜十時ごろにぜんそくが起りました。そしてむすこのオートバイのうしろに乗せてもらって医者に行きました。そして注射を打ってもらって、どうにかぜんそくがおさまったが、薬をもらいにいかなければならない。そこでまた半みちある薬局に夜中に、今度は処方せんに従って薬をもらいにいきました。そこでまず薬剤師は二十三秒ですから、二十三秒でできたといたします。そこで今度は家族ですから、半額のお金を払わなければなりません。そこで厚生省の事務当局でよろしいです。から、この処方で何ぼ払えばよろしいか、そして時間がどのくらいかかるかやってもらいたい。燐酸コデイン〇・〇六、塩酸フェドナリン〇・〇四、ブロチン二・〇、ブロムワレリル尿素は〇・五、これは一日分でよろしい。家族半額です。薬価基準もこの中にあります。その間に質問を続けておりますから、何ぼかかるかをだれかやってみて下さい。
  77. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 滝井君に申し上げますが、それは質問一つの資料になると思いますから、委員長の方からその件はいずれ……。
  78. 滝井義高

    滝井委員 いや、この面前でやってもらわないと工合が悪い。私は患者として——質問はやります。
  79. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 質問はやっていただいて、これは質問する一つの資料になりますから、その点ははからいますから……。
  80. 滝井義高

    滝井委員 いや、ちょっと待って下さい。これは向うは薬剤師は二十三秒と出しておる。これだけが医療費体系の計算になっておる。ところがこれは健康保険の事務に関連するのです。今度健康保険薬剤師はこれを請求書に書かなければならぬ。患者は待っている。患者から半額の金を薬剤師はとらなければならない。一体何ぼ私は払ったらいいか。薬局に行って払わなければなりません。だから一つそこでけっこうです、質問をやっておりますから、一つ委員長お願いします、何分かかるかやって下さい。
  81. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 龍井君に申し上げますが、これはあとであれしますから、今直ちにということはちょっとお待ち願いたいと思います。
  82. 滝井義高

    滝井委員 いや、みんなの前でこれをやってもらいたい。
  83. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 これは資料になりますから、やはり資料は委員会としてきめることにいたしますから一つ——それはやらせないというのじゃございません。ただ時期だけは委員長におまかせを願いたいと思うのです。
  84. 滝井義高

    滝井委員 いや、質問はやるのですから……。(「そんな引き延ばし作戦をやるのじゃない」と呼び、その他発言する者あり)質問は続けてやるのです。
  85. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 龍井君に申し上げます。ただいまこれの担当がちょっといないそうですから、今資料だけ預けてありますから……。
  86. 滝井義高

    滝井委員 今そこで言っているように、あの薬価基準で〇・〇何ぼまで引いていかなければなりません。そうしてそれに今度は零コンマ以下の点数をかける。これは現実に薬剤師は全部やっている。しかもそれを全部報酬請求書に書かなければならない。四月一日から医薬分業をやるのですよ。これは全部やらなければならぬ。患者を待たしておってこの計算をやってごらんなさい。十分以上かかる。計算だけでかかる。それで夜中に患者を待たせて……(「十分かかったらどうするんだと言えばいい」と呼ぶ者あり)いや、それはそう言ってもなかなかやらぬ。私はそれをこの前からずいぶん忠告しておる。しておるがやはりその通りやってきておる。そこでこういうように調剤報酬の請求書には全部一人の患者について書かなければならぬ。そうしてこれを一人々々やらなければならぬ。そうすると月末にいったら薬剤師は手をあげます。医師の方は十五円刻みですから表を作っておればすぐできる。薬剤師諸君の方は何十の医療機関から持ってくる千差万別の処方せんを一つ一つやらなければならぬ。これは絶対やれぬ。三十人、五十人ものたくさんの患者がきたらできっこありません。これは大へんなんです。だから私はあえて、これは少し常識はずれかとも思いますけれども、実はまのあたりにそこでやってみてもらえばわかるだろう。何も私は質問を続けないというのではない、質問を続けているから、ちょっと事務当局で何分かかるか計算してみてくれ、そういうことなのです。こういう点は薬価の基準をどういう工合にきめるかということと非常に重要な関係があるのです。医師の方は十五円刻みになっておるが、薬剤師は現行においても原価なのです。薬価基準なのです。だから四月一日から分業実施すれば健康保険法では当然原価でいくから今の計算をやらなければならぬことになる、これは大へんなのです。そういう点を実は今言いたかったのです。  そこで憲法論はお昼からに譲りますので、お昼から大臣一つ十分用意してきて下さい。  次に予算に関する事項についてでありますが、今回三十億のお金を国から厚生保険特別会計の中の健康保険勘定に入れていただくことになったのでございますが、その三十億の性格について今からお尋ねしたいと思うわけなのです。法律では七十条の三に「国庫ハ第七十条ニ規定スル費用ノ外予算ノ範囲内ニ於テ政府ノ管掌スル健康保険事業ノ執行ニ要スル費用ノ一部ヲ補助ス」こうなっておるわけでございます。そこでこの七十条による保険事業の執行に要する費用の一部補助金のことなのでございますが、三月五日の中村三之丞委員の御質問に対して、大臣健康保険の続く限り引き続いてやる、こういう御説明がございました。そうしますとこれは当然健康保険会計が黒字の場合においても出るものと理解してさしつかえないか、この点を一つ明確にしていただきたい。
  87. 小林英三

    小林国務大臣 国庫の補助というものは、社会保障の確立の促進の意味におきまして国庫が健康保険の事業に補助するのでありまして、黒字になりましたからすぐこれを国庫が補助しないというのではありません。
  88. 滝井義高

    滝井委員 実は大蔵大臣も来てもらわなければならぬと思いますが、大蔵大臣はそうはおっしゃらなかったのですね。これは計画的に出すものではない、来年度は状況によって国庫から出す、こういうことになっております。大臣の御答弁と大蔵大臣の御答弁は食い違うことになるわけです。これはいずれ大蔵大臣に来ていただかなければならぬところなのでございます。そこで、大臣に黒字でも出す、こういう御確認を得ておりますから、今度大蔵大臣の出たときもその通り一つはっきりと御言明をいただきたい、こう御要請しておきます。
  89. 小島徹三

    ○小島委員 関連して。ちょっと大臣にお尋ねしたいのですが、それは現在の健康保険のやり方が現在のままで続けられておる場合においてのお話であって、万一現在の健康保険のやり方というものが根本的に変ってきた場合においても大臣は現在のような意思でおられまするかどうか、承わっておきたいと思います。
  90. 小林英三

    小林国務大臣 今のお尋ねのような問題は、将来健康保険あるいはその他のいろいろな社会保険の問題を総合的に勘案いたしましてやっていこうという場合におきましては、もちろん国庫の補助という問題もいろいろ再検討すべきであろう。あるいはふえるかもしれませんし減るかもしれません。これは再検討すべき問題だと考えております。
  91. 滝井義高

    滝井委員 だから黒字でも出すという確認はよろしいですね。——その言質を得ておきます。  そこで次に移りますが、昨年厚生保険特別会計の健康勘定の中に一般会計から十億円入れましたね。この十億円はいかなる法律的な基礎によって入れたか、御説明願いたい。
  92. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 お答えをいたします。特別会計法の改正をいたしまして、これの受け入れの規定がございます。法律的な根拠といたしましてはそれでございます。
  93. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、本年の三十億はいかなる法律的な根拠によって入れたのか。
  94. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 今御審議を願っておりまする七十条の三でございますが、それと、また特別会計法の改正の御審議を願っておりますが、両法によって三十億国庫から出るのでございます。
  95. 滝井義高

    滝井委員 昨年の十億の条文をお示し願いたい。
  96. 小沢辰男

    ○小沢説明員 条文を読み上げるだけでございますので、私からお答えいたします。厚生保険特別会計法の第十八条の六の中に「政府ハ本会計ノ健康勘定ノ歳入不足ヲ補填スルタメ必要アルトキハ昭和三十年度以降七箇年度間毎年度一般会計ヨリ十億円ヲ限リ同勘定ニ繰入ルルコトヲ得」という条文でございます。あわせて申し上げますが、この規定も一年繰り延べをいたしましたので、現在大蔵委員会に付託いたしてございます厚生保険特別会計法の一部改正でこの規定もやはり若干の改正をいたすことになります。
  97. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、今年の三十億は、健康保険法のこの改正の七十条の三と厚生保険特別会計法の一部改正のどの条文で健康保険勘定に入るのですか。
  98. 小沢辰男

    ○小沢説明員 厚生保険特別会計法の第三条に「健康勘定ニ於テハ健康保険事業経営上ノ保険料、積立金ヨリ生ズル収入、借入金及附属雑収入ヲ以テ其ノ歳入トシ」という規定がございます。それに「一般会計ヨリノ受入金」というものを一つ加えます。第三条は国の方から三十億の受け入れの規定を明確にいたすことになっております。
  99. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、昨年はなぜ三条に一般会計からの受入金というものがつけ加えられなかったのでしょうか。ことしは健康保険法改正と厚生保険特別会計法で三条につけ加えているが、去年の十億もやはり一般会計から入ったことは同じじゃないですか。去年はどういう技術的な根拠で一般会計からの受入金が十億入りましたか。
  100. 小沢辰男

    ○小沢説明員 去年の国庫からの支出は臨時のものでございまして、従いまして厚生保険特別会計の附則で先ほど申し上げましたような規定を置いたのであります。
  101. 滝井義高

    滝井委員 附則でどういう規定を置いてありますか。それから臨時のものだとおっしゃったのですが、これは臨時のものじゃないのです。一般会計から七カ年間は確実に入るものなのです。だからことしは明らかに十億だけは三十億に加えて繰り延べしたので、法律は来年度からやはり六ケ年間でしたか、変えておるわけです。だからこれは臨時のものではないはずなんです。当然三条の改正を去年はやらなければならぬはずなんです。それをやっておらないで十億を入れて、今年今度は三十億というものを入れている。今年のところこそ三十億は臨時のものじゃないですか。
  102. 小沢辰男

    ○小沢説明員 七年間は確かに法律上はっきりいたしておりますが、あくまでも七年の臨時の措置でございます。
  103. 滝井義高

    滝井委員 そうしますとお尋ねしますが、来年度においてもここの一般会計からの受け入れというものは二本建になると了解して差しつかえありませんか。
  104. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 さようでございます。今御審議を願っております健康保険法の七十条の三、実体法としてはこれでございます。それから特別会計法の何条でございましたか、「歳入トシ」というところに「一般会計ヨリノ受入金」というものが入ります。その両方に基いて一般会計からの補助金を受け入れるわけでございます。
  105. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、これはどうも大蔵大臣がおらぬとなかなか工合が悪いのですが……。
  106. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 主計局の次長が来ております。
  107. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと二本建になりまして、一方は厚生保険特別会計法の一部改正をする十八条の六に規定をしており、「歳入不足ヲ補填スルタメ」というきちっとした限界があるわけです。そうしますと、実は黒字か赤字かで三十億入れるか入れぬかはここに関連をしてくるわけです。大臣は今、黒字でも入れるのだ、こういうことでございますから、当然この厚生保険特別会計の一般会計からの受け入れというものは、赤字補てんのための十億とプラス・アルファーとしての七十条から入る二本建になってくるわけなんです。ところが大蔵大臣予算委員会における見解は実はそうではなかったのです。これは計画的に入るものではないという御答弁があった。そうして今度来ましたところのこの三月発行の予算書では、実は説明を変更してきております。予算が衆議院を通った後に予算の説明書というものを国会の何らの承認も得ずして変更してきている。これは一月に発行した前の予算の説明書では臨時の補給金になっている。今度のものは臨時の補給金を抜いてきている。そうしますと、これは説明としては厚生大臣のいう説明の通りです。ところが予算委員会における大蔵大臣答弁はいつの間にかだれかがこういうふうに改ざんをしてきている。これは与党諸君は御存じでしょう。与党諸君は、自由民主党政策審議会及び大蔵、厚生両当局の打ち合せ了解事項というもので御存じかもしれません。私たち野党はそういうことは知らない。衆議院の予算が通ったあとに参議院で審議中のものをいつの間にか説明を変えてきている、だれが一体変えたのですか。
  108. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 御答弁申し上げます。ただいま滝井先生のお読みになりました予算の説明書は、大蔵省主計局で予算審議の便宜のために刊行いたしたものでございます。それでごらんになりますように当初未定稿として出してございます。従いましてさらに精細を加えますために修正をいたしたものでございます。
  109. 滝井義高

    滝井委員 宮川さん、予算委員会で大蔵大臣の言質を得ておるのですよ。三十億というものは計画的に入れるものではない、来年度の状況を見てやるんだ、こういうことなんです。補給金なんですそういうことでわれわれは言質を得てきておる。ところが今厚生大臣答弁は、黒字になっても恒常的に入れるのだ、こういう工合に変ってきた。だから大蔵大臣の御答弁厚生大臣の御答弁とは食い違ってきておる、こういうことなんです。だから食い違った具体的な証拠として私たちは何か見つけたいと思ったら、今度は変ってきた。この三十一年度の予算の説明書には、あなたの方も今度は同調をして抜いてきた、こういうことなんです。だから予算委員会答弁と違うので、これはおかしいから大蔵大臣の御出席をいただきたい。だからあなたの方も、黒字でもこれは毎年入れますという大臣にかわった御言明が初めからいただければ、この問題だけについては解消するわけですが、いただけますか。これは大臣にかわった御答弁だと了解して御答弁をいただきたい。そうでなければ御答弁は要りません。大臣の御答弁としてですか。それははっきりしておいて下さいよ。
  110. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 大臣としての答弁というと非常にむずかしい問題になるのでございますが、将来健康保険全体につきましては、全般にわたりまして総合検討いたさなければならぬと思いますが、今回御審議願っておりまする法律の規定いたしましたゆえんのものは、単に今年度限りのものといたさず、御承知のような政府管掌健康保険の実情にかんがみまして、かつ健康保険赤字の重要な部分を占めておりまするので、毎年度やる考えでおります。ただし三十億にいたしますか、あるいはさらに増額いたしますか、減額いたしますかは、そのときの財政状態並びにその他の健康保険の実情とにらみ合わして総合的にやって参りたい、かように考えている次第でございます。
  111. 滝井義高

    滝井委員 そういう工合にあなたの方は逃げられるのです。あなたは今度来られたのでわからないかと思いますが、去年の厚生保険特別会計法の一部改正を審議するときに、この十億というものは毎年入れるという約束をしたのです。というのは、あの十八条の六をごらんになると「同勘定ニ繰入ルルコトヲ得」とこうなっておって、繰り入れるか繰り入れぬかは、主計局のいわゆる手心にあることになっている。だから私たちは、これはへまをしておると繰り延べになるぞと言っておったら、案の定今年は繰り延べになっちゃった。それから今のような御答弁では、明らかに大臣と明白に食い違っておる。大臣は、健康保険が続く限りにおいては毎年入れます、こういうことなんです。その額はいいです、額は幾らでもいいんですが、とにかく毎年繰り入れますという。しかも健康保険が黒字であっても入れるという。いいですか。いま一つは、この厚生保険特別会計法の一部改正の第十八条の六の十億と二本建で参る、こういう三つの条件がある。この三つの条件をあなた方の御確認をいただきますればけっこうなんです。だから、大臣答弁として、よろしいその通り確認した、あるいは確認しない、とこうなるのか。それを一つ明白にしていただければけっこうなんです。
  112. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 先ほど御説明申し上げましたように、必ずしも今年限りでやめるつもりはございません。多少黒字になりましても、政府管掌の健康保険に対する繰り入れば続行いたすべきものと考えております。しかしながら、非常に財政状態がよくなりまして、相当大きな黒字を出している、そういう政府の方で財政補給をするほどの必要もない、しかも国民健康保険なりその他の方がむしろ財政補助をいたさねぱならぬという事情がありますときは、あるいはその政府管掌の健康保険への繰り入れというものはやめてもいいのではないか、かように考えますけれども、その辺のところは、もっとさらに将来の実情をよく見ないとはっきりいたしませんので、先ほど御答弁申し上げたようなことを申し上げた次第でございます。
  113. 滝井義高

    滝井委員 非常によくなるとか、悪くなろということは、なかなかむずかしいです。そこで問題は、たとい黒字になっても現在の政府管掌の健康保険というものは、これは一万一千のきわめて低い標準報酬しか持たない、低額所得層が集まったところの健康保険政府管掌の健康保険。そこでたまたま、今度のようなむりな法律の改正をやって黒字が出て、そうして来年は黒字が出たといってばっさり打ち切られるのでは、健康保険の発達というものはあり得ない。だから私はそういうことを懸念している。今あなた方のおっしゃるように、ある程度黒字が出たということになればこれは検討しなければならぬというように、御言質についても、これはあいまいもこたるものです。今のような情勢なら、来年度についても黒字が出ると思います、これは断言してはばからぬ。おそらく来年も黒字が出ます。そういう客観情勢が法律の審議の過程であるわけですから、ここが一番大事です。だからくどいようですけれども、十億の赤字補てんと、そのほかに黒字が出ても引き続き、三十億になるか十億になるか、もっとふえるかもわかりませんが、そういう健康保険の七十条に基く額とそれから今度は引き続いて黒字でもやるという三つの原則を大蔵省に私は確認をしてもらわなければならぬと思う。その確認ができるかできないかということです。
  114. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 ただいまの点につきましては、お説のように一部負担等によりまして、あるいは来年度、今年度のように赤字を見ないで、政府管掌健康保険勘定が決算できるかもしれません。しかしながら御承知のように、一部負担を実行いたしました上で出てくる黒字でございますので、健康保険の前進ということから申しまして、今年黒字が出たから、来年ぴったりやめるべき性質のものでないと思います。なおまた十億、あと六十億の借入金の返済が残っておりますが、これにつきましても三十億の繰り入れとあわせて考えまして善処して参りたい、かように考えます。
  115. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 午前中はこの程度にとどめ、午後二時半まで休憩いたします。    午後零時四十八分休憩      ————◇—————    午後三時四分開議
  116. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 休憩前に引き続き再開いたします。  午前中の質疑を続行いたします。滝井義高君。
  117. 滝井義高

    滝井委員 午前中にお願いしておきました製薬企業に対する政府態度、御相談ができておると思いますが、原価計算その他を明白に資料として出していただけましょうか。
  118. 森本潔

    ○森本政府委員 お答えいたします。一般の医薬品に対しまして原価計算によって薬価をきめるということは、適当でないというふうに考えております。と申します理由は、第一に医薬品というものは数が非常に多うございます。それからまた、製造の過程も非常に複雑でありまして、最初の原料から製造して小分けする段階、非常に多うございます。従いまして、これを原価計算するということ自体が非常に困難でございます。  それから現行法によりますと、原価計算を出させるということは、戦時中と違いまして統制撤廃の現在はできないのであります。かりに原価計算書的なものをとりましても、これはこちらで十分審査をしなければその信憑性というものは出て参りません。間違った数字を出すことがある。しかし、それについて法律の根拠がございませんので取り調べることができません。かように現行法上原価計算をとるということはできないのであります。  それからかりにそういう方策をとるしましても、先ほど申しましたように、この原価計算書を審査すということが非常に大へんなことでございます。統制経済の時代におきましてこの原価計算専門の職員が数百人おりまして、これをやっておったのでございます。今こういうような諸君を置いてさような原価計算をするということ自体が適当であるかどうかといえば、むしろ不適当でありまするし、困難であるというふうに考えております。  それから現在の一般の薬価のきめ方と申しますものは、多くの会社がそれぞれの製法をもちまして、優良品をより安価に提供しようという自由競争の原則に立ちましてやっておるのでございます。こういうことによりまして、だんだんと優良品がふえて参り、また薬価というものも自然に下っております。この薬価という面から見ましても、マル公的な価格をきめるということ、かりに原価計算的なことをやるといたしましても、その結果としましては薬価の引き下げには役立たない、むしろ過去のように自然の薬価の引き下げということができないのじゃないかと思います。かように一般の物価というものがマル公をきめてない、そういう時期におきまして薬価のみについてマル公的なものをきめていくということは適当ではないであろうというように考えております。保険で使用いたします薬価基準のきめ方については午前中保険局長から申し上げた通りでありますが、一般の医薬品に対しての考え方は以上の通りでございます。
  119. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、政府方針は製薬についてはノー・タッチだ、自由競争で、いかに薬が高かろうと安かろうとそのまま野放しだ、しかしその薬を使う医業については、あるいは薬剤師の使うその薬については、薬剤師の事務費から家賃から何から全部徹底的に調べてやる、これは統制経済だ、しかしその下のものは野放しだ、こういうふうに了解して差しつかえありませんか。
  120. 森本潔

    ○森本政府委員 ただいま申しましたことは、原価計算的な方法によって薬価をきめましても、これは安くならないという前提が一つございます。それからもう一つの問題としましては、現在薬価というものが果して高いかどうかという問題が一つございます。これにつきましてはこういう観察をいたしております。他の企業も同様でございますが、会社の経理の分析等をいたしました結果によりますと、他の一般の会社と同様な利益率あるいは配当率を示しておるのでありまして、かような点から見ましても薬価というものが不当に高いという結論は出てこないのではないか、かような二点からさように申し上げたわけでございます。
  121. 滝井義高

    滝井委員 私は薬価と現在の医療との関係をお尋ねしておる。あなた方はストップ・ウオッチまで使われて実に綿密詳細な資料をお出しになった。これは現在日本が資本主義の自由競争なれば医業についても自由経済であるべきでありましょう。しかし医業について徹底的にメスを入れられた厚生当局が、なぜあなた方の所管にある薬価についてメスを入れることができないのでしょうか。その点を述べて下さい。
  122. 森本潔

    ○森本政府委員 現在におきましても医療についてはマル公ではありません。それから医薬品につきましてもマル公はございません。ただ保険において支払いをする場合に、医療につきましても医薬品につきましても支払いの基準があるということであります。その意味におきましては、医療におきましても医薬品についても同様であると考えております。
  123. 滝井義高

    滝井委員 大臣にお尋ねしますが、医療にマル公がなければ十一円五十銭以上取っても差しつかえありませんね。
  124. 小林英三

    小林国務大臣 自由診療の場合におきましてはそういうことも成り立つと思います。
  125. 滝井義高

    滝井委員 さいぜんから私はくどいように申しておりますが、国民健康保険健康保険のできておるところは自由診療はないのですよ。医者は自由診療では食っていけません。そういう客観的な情勢があるのです。その中で保険治療というものは十一円五十銭、しかもその十一円五十銭にかけるところの点数というものがあって、このワクの中を一歩でも誤まれば、さいぜんから申しますようにお家断絶です。法律で保険を取り消されるのです。一方そういう非常に強い鉄のワクをはめて締め上げておきながら、その中で使うところの薬品というものは野放しで、原価計算もできません、何にもできないというのなら、厚生省はおかしいじゃありませんか。これは片手落ちだといわなければならぬ。大臣はこの前私の質問に対して、原則的に薬も原価計算をやるべきだという御答弁をここでなさっておるじゃありませんか。あれは取り消しですか。
  126. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 薬務局長からお答え申し上げましたように、医業につきましても、製薬業につきましても、今日はマル公はないのでございます。いわゆる公定価格というものはないのでございます。それで、保険が支払いをいたします場合には、先ほどから申し上げておりますように、保険のしかけとして両方について、マル公といいますか、基準があるわけであります。それで瀧井先生の御主張は、おそらくその際に、保険の基準を作る場合に、医業の方についてはタイム・スタディなどをやって、原価計算的なことをやって点数をきめようとしておる、こういう仰せだろうと思います。しかし今出しておりまする、あるいは一昨年ごらんに入れましたいわゆる新医療費体系に基く点数表というのがございますが、それにつきましてはそういう計算の基礎を求めてやったわけでございます。これは二十六年以来の臨時診療報酬調査会の、そういうふうなことにしないと合理的な医療費の計算ができないから、ことに分業に関連をしてさようにすべきであるというような御答申に即して、そういう分析をいたしておるわけでございます。ところが、これは瀧井先生もよく御存じのように、これから改正しようとする点数と違いまして、現行の点数はさような原価計算方式に基いたものとは私ども考えておりません。いろいろないきさつから過去の集積が現行の点数になっておるわけでございます。さようなことでございまするので、今の点数というものは、別に、先生の仰せのような正確な原価計算基礎として云々というような組み立て方にはなりておらないと私は存じます。しからば、薬の方の値段については基準を設けているということは医業と同様であるけれども、しかしその基準を設けるについての根拠というものが、現実の取引価格を調査して、そうして午前中に私がお答えをいたしましたように、それについていろいろな値段のあるところの、九〇%の薬が買い得る値段というところに筋を引いて、その基準のとり方がけしからぬといいますか、その際にそれぞれ原価計算等をやってやるべきではないかという仰せだろうと御想像いたします。そうしてこれは確かに一つの御意見でございますけれども、先ほど来薬務局長がお答えを申し上げておりまするように、さような際に原価計算などをして薬価基準をきめることが妥当であるか、現実の取引価格というものを基準に調査をいたしまして、それを基準にしてきめることが妥当であるかということになりますると、これは議論の分れるところであろうと思います。もし原価計算等をしてやるということになりますると、これは非常にめんどうなことに相なるわけであります。しかも現在の薬の値段というものは、滝井先生もよく御存じのように、ここ数年来非常なテンポで下りつつあります。かようなときにいわゆる公定価格的なものを作りますと——物が上るときには公定価格を置きますることは値段を押える一つの手助けになりますけれども、物が下っている現実においてそういうふうなことをいたしまして、原価計算をして適当なマル公を作るには、どうしても正当な利潤というものを保証いたさなければなりません。さようなことであるとか、あるいはまた原価計算の困難性というようなものでのるとか、そういう計算をいたしまして、現実にそれを薬価基準として移しまするときには時間的なギャップというものがございます。そうするとマル公的なことを考えると、今のような客観情勢におきましては、マル公を作ることによってむしろ物の値下りをとめる。物は現実に下るかもしれませんけれども、保険で払う薬価というものは、物がどんどん下っておるから、下るようにそれにスライドして迅速にきめていくという方がむしろ有利であって、それをくぎづけにするということは逆な作用を及ぼすようなことにならないかと私どもは心配をいたすのでございます。御存じのように、およそマル公制度ができまする際には、マル公制度が非常に効果を発揮します。る場合には、物が足りなくて需要が多い場合が多いのでございます。しかし、今日の製薬の事情あるいはこれに対する需要の関係を申しますと、むしろ物が余って買手の方が少いという状況なんでございます。かようなときには、簡単な経済の原則からいいまして、自由競争にまかしておいた方がむしろ保険としては有利であって、これを下手にマル公みたいなものを作りますと、むしろ下るものをくぎづけするようなことになるおそれがある。全般的に申しますとそういう心配があるのでございます。さようなことでございまして、これは将来の研究問題だと思いますけれども、現実の事態といたしましては、今のように取引値段を押えて、そうして適時に時期に応じて薬価基準を改正していくということの方がむしろ保険経済の——これは一般の製薬産業に対する方針というものではございませんけれども、保険経済の立場からいいますると、むしろその方がどっちかというと安上りになるというような見方を私どもはしているわけでございます。従いまして、製薬業について統制的にマル公制度をやるかどうか、それがいいかどうかというような大局的な産業施策と申しますか、そういうようなこととは別といたしまして、私どもとしては、保険の立場から、今さようなことをやらない方が保険のためには、支払いが財政的な観点からむしろ有利ではないかというような見解を持っておるわけでございます。しかしながら、この点につきましてはなお将来とも研究をいたしたい、かように存じておる次第でございます。
  127. 滝井義高

    滝井委員 薬については、原価計算などをやるのが妥当か、あるいは取引価格がよいか、こういう二点がなお疑問だとおっしゃいました。原価計算などときわめて軽く扱っておりますが、それでは医療はなぜ原価計算をやったんですか。なぜ自由取引にまかしておけないのですか。
  128. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 それは滝井先生よく御存じのように、二十六年の臨時診療報酬調査会で御答申になりましたその方針に即して、厚生省としては、先ほど私が申し上げましたように現行の支払い体系というものが、必ずしも合理的な形で積み上げられておりませんので、それをより合理化するためにそういうふうな方向で行くべきであるという御答申がございまして、それに即して、私どもとしてはさような方向で研究を数年来続けて参り、それを一昨年の秋並びに昨年の冬にごらんに入れているようないきさつなのでございます。特に医療についてなぜ原価計算で行わなければならないか。もっとも二十六年の御答申も必ずしも全体を原価計算方式によるべしという御答申ではございません。医療報酬の一定の部分についてはさような方針が適当であろう、こういう御答申でございました。それに即して私どもとしては研究をして参っておる次第でございます。
  129. 滝井義高

    滝井委員 二十六年の答申は医療だけではございませんよ。これは適正な技術料と適正な薬価の基準になっている。適正な技術料というものを原価計算をしたならば、適正な薬価の基準に  ついても当然原価計算をすべきです。ところが独断的に、適正な技術料については今言ったように原価計算をしたが、薬価の基準は原価計算をやらぬでいいという答申ではございません。
  130. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 あのときの御答申の中身を私詳細に記憶しておりませんで、私の記憶違いかもしれませんけれども、あの薬価というのは、いわゆる薬治料という意味の薬価ではないかと考えております。医薬品の取引値段そのものについての薬価というのではなくして、お医者様が薬価として患者からお取りになる薬価という意味であったように私は記憶をいたしております。なおその点については、取り調べまして、間違っておりましたならば後日訂正いたしたいと思います。
  131. 滝井義高

    滝井委員 それではお尋ねします。過去の速記録を読んでみると、あなたの御答弁では、大体医療費体系というものは、あなたは新たな診療報酬の支払い方式だと申しております。あなたの診療報酬の支払い方式というものは、これは二つの条件がある。それは大きくは適正な技術料と適正な薬価基準という条件なんです。ところが適正な技術料と適正な薬価の基準というものには、さらにそこに一つの基準が出てきている。いかなる基準かという一と、まず第一に国民医療の向上がなくてはならぬというのが、第一の適正な薬価の基準です。適正な技術料をきめる第一の基準です。そうしますと国民医療の向上をはかるということは、製薬業にメスを入れずして、どうして国民医療の向上がはかれますか、これが第一です。第二は、国民の経済的な負担力を勘案するということが第二です。国民の経済的な負担ということは当然製薬業にメスを入れなければならぬ。さらに第三は、三師の医師、歯科医師、薬剤師の専門的地位の確立をすること。四番目は、技術料は原則として国民所得の向上に比例して上るというのが、これがいわば適正な薬価の基準と適正な技術料の決定をする四本の柱になっておる。これらの答申を見たらはっきりわかる。そうしますと、国民の医療の向上や国民の経済的な負担力を考える場合に、あなたの言うように製薬業を野放しでよろしいということは、どこからもあの答申案からは出てこない。むしろKという薬価についての分析が足りないところにこそ、あの医療費体系に大きな欠陥がある。だからわれわれは二十六年以来あなた方の方にKの分析については詳細にやってこいという忠告を発しておる。当然今度健康保険法をこんなに大幅に改正をやり、綿密な医療費体系を立てようとするならば、しかもその薬の原価を使おうとする医師について、これだけの厳重な締めくくりをやろうとするならば、製薬業にメスを入れずして、どうして健康保険法の運営がうまくできますか。当然これは政府はやらなければならぬ。二十六年以来の歴史的経過から見てやらなければならぬ。私はこれは再三にわたってあなた方に御警告を申し上げておる。それを今日の御答弁のように、まるきり製薬業を野放しにして、原価計算ができません、こういうことで、もし医師の原価計算ができておれば、これは不完全なものであってものの役に立たない、私はこのごろから言っておる、どうしますか、これは今言ったように、粉末でわずかに六十二銭のものが、注射液になれば十七円八十銭になる、この過程というものを、あなた方が御説明できない限りは、医療について原価計算をするということはナンセンスです。それは御存じのように、あなたの御説明にもあったように、昭和二十七年には六百二十八億の薬が生産をされました。これは薬の原価です。ところが実際に医療に使われておる薬というものはその中の二六・八七%です。これは病院と診療所と合せたパーセントです。これはあなたの方から出ておる医療費体系の数です。それを千二百九十八億円という医療機関に支払われた額から見てみますと、薬というものは三百四十八億しか使われていない。ところがそれだけの薬が使われておるけれども、六百二十八億の中で三百四十八億を引いた残りはどこに行ったかわからないのです。その薬がどこに行ったか、だれが使ったかわからない。あなた方ちっともわれわれに報告しないじゃないですか。これだけの莫大な薬がやみからやみに葬られているのですが、しかもあなた方は国民の総医療費というものを二十七年に千五百四十九億と出してきて、国民の総医療費を問題にし、しかも国民所得と国民の総医療費を問題にするときは、社会保険だけをあなた方は問題にしてきておる。ところがいよいよ楽の原価の問題になると、医療一般をあなた方は論議をされる。この論理の矛盾ははなはだしいのです。少くともわれわれがここで論議するときには、あなた方が総医療費と国民所得の関係を、社会保険あるいは生活保護法全般を含んだものでやって、一般診療を考えていない。ところがいよいよ薬の原価の問題になると顧みて一般診療を言うがごときは、これは実に不見識もはなはだしいと思う。当然健康保険のワクの中で、国民所得と国民医療費との関係を論ずるときには、製薬業をここに持ってこないでどうしてこれが論議できますか。局長ではもうだめです。大臣その点一つ……。政治的な論議になりましたから、あなたの確固不抜の、製薬業に対してメスを加えるかどうか。加えることができないならば、ここであなたは医療費体系を撤回しなさい。しっかりした御言明をいただきたい。これは重大でございます。
  132. 小林英三

    小林国務大臣 この問題につきましては、薬務局長または保険局長の方が的確なる答弁が得られると思いますから……。
  133. 滝井義高

    滝井委員 そういう大臣ならおやめなさい。大臣おやめなさい。日本の医療の革命をやる場合に、日本の医療の一番中枢をなすところの製薬業に対して、あなたが何の見識もないというならばおやめなさい。明白な御答弁一つもらわなければ許されません。
  134. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 お答えいたしいます。繰り返してお答え申し上げておりますようなこと、今さようなことを保険の立場からやりますことはむしろ不利であるという結論に、私どもとしては到達をいたしたわけであります。実は滝井先生もよく御承知のように・七人委員会でもこの問題は取り上げていろいろああしたら、こうしたらというふうな御案が報告されております。この七人委員会の御報告でも、滝井先生のおっしゃるようなマル公制度等にすることは下の下策であるということは、七人委員会が申しておりますが、そのほかにたとえば広告の問題でございますとか、あるいは一手に買い入れをする問題でありますとか、あるいは薬価基準の、先ほど私が申しました九〇%バルク・ラインをもう少し下げたらどうかとかいろいろ具体的な御提案があったわけでございます。私どもといたしましても、さような問題についていろいろ検討をいたしてみたわけでございますが、たとえば公的な買い入れの問題にいたしましても、今直ちにこれをやりますことが果して——具体的な事務の問題になるわけでございますが、中央で買い入れを一括してやり、そうしてこれを全国に配るというようなことにいたしますれば、中央の買い入れ値段は末端の別々の買い入れ値段よりは安くなるだろうと思います。しかしながらいつも御指摘のように、これを数万の保険医にお届けするというようなことになりますと、これをだれがやるかということによりまして、いろいろ複雑しためんどうな問題が実は起きてくるわけでございます。そこで、ちょうど昔戦争中に医薬品の配給統制というふうな仕事をやった者が役所にもまだたくさん残っておりますので、それらの者に何とか一ついかぬか、そのことによって保険財政が少しでもプラスになればやりたいものだがということでいろいろ検討してもらったのでありますが、昔のことを知っておる者から申しますと、昔のように物が足りなくて、買い手、需要が多いときにはそういうことをやっても一つ意味があるけれども、しかしそれも大へんな煩雑であって、途中で物品にやれこわれたとかなんとかということでいろいろ問題が起る、それでこれは大へんなことである。従って今のように物が余って、買い手の少いようなときには、さような配給統制的なことをやらないで、むしろそれは業者の自由競争ということにまかせておいて、末端まで届けてもらうというやり方の方が結局保険財政としてはプラスになるのではないかというふうな一応の検討の結論が出たわけでございます。しかしながら、この問題は将来も大いに研究をする必要がございますので、今後の研究問題として譲ったわけでございます。今直ちにこれをやって果してうまくいくかどうかということにつきましては、むしろマイナスの要素になることの方が多かろう、こういうふうな判断をいたしたわけでございます。一例をあげますとさようなことでございますが、その他薬価基準のバルク・ラインの問題等につきましては、製薬業といいますよりは、むしろこれを購入なさってお使いなさるお医者様の利害の問題でございまして、これをあまり下げるということにつきましては、いろいろとまた問題が起きろ、さようなことで私どもといたしましては、この面について十分将来研究しなければならぬ、しかし今直ちにかようなことに手をつけるのは早急である、こういうふうな結論に到達いたしたわけでございます。
  135. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、厚生省方針としては製薬企業は野放しでいく、研究するというが現実においては野放しでいく、こう理解して差しつかえありませんか。
  136. 森本潔

    ○森本政府委員 野放しとおっしゃいますが、その意味といたしましては、私たちはかように考えております。医薬品の規格、品質その他につきましては、これは薬事法によりまして、無害有効、優良なる医薬品を作るように確保いたします。第二の企業的な面に対して価格あるいは配給統制的なことをする、こういう点につきましては、他の一般の企業と同様に、自由経済のもとにおいて、自由競争でやらすのが適当であろう、こういうふうに考えております。
  137. 滝井義高

    滝井委員 大臣、今の通りでございます。自由企業でやらせるということですが、医療はどうして自由企業ができないのでしょうか。保険の統制の中に入らなければ食っていけないのですが、医療だけはどういう論理から今のような健康保険で締めて締めて締め上げなければならぬ理論が出てくるのでしょう。資本主義の自由経済のもとにおいて、医療だけどうしてそうしなければならぬのですか、これを一つ御説明願いたい。私は納得いかないのです。
  138. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 お答えいたします。診療担当者にお支払いをいたします診療報酬というものは、これは直接保険が療養の給付をお願いいたしまして、よしきたやろうということでやっていただいておるわけでございます。従いましてこれには、こういう給付をしていただいたらこういう値段はお支払いをしなければならぬというきまりがなければ、これはちょっとできないことでございます。これは直接の関係であります。薬の値段というものは、取引の価格と、それから保険が薬の値段として診療担当者にお払いをする値段とは別でございまして、後者の方につきましては、御指摘の薬価基準で、どういう薬をお買い求めになろうと、この薬は幾ら、この薬は幾らということできめてあるわけであります。従って診療担当者が直接の契約の相手方でありますので、これに対してお払いをする金というものがきめてなければ契約になり得ないわけでございます。従ってその意味できめてございます。しかしながら、その根底になる薬の実際の取引価格にメスを入れるかどうか、公定価格的な政府の介入するものになるかどうかということは、関連はありますが一応別個のものとして、そのことが国民の立場から申しまして得か損かということの検討をしてみなければならぬと存じます。これは診療の材料といたしましては一番大きなものでありますので、滝井先生御指摘のように、大きな関連のあるものとして十分検討いたさなければなりませんが、しかし理屈といたしましては、お医者さんが医療を経営なさる場合に必要ないろいろなものがございます。たとえば建物なんかについても、これの償却ということを考えていかなければなりませんので、医療経営の一つの重大なる資料になるわけであります。これは医療というものの資料といいますと、材料といいますか、言葉が適当でありませんが、医療を経営していく上においての前提になるいろいろの物品について統制を加えていくかどうかという第二段の問題になるかと思うのであります。従いまして診療報酬なり薬価基準というものは直接の保険の関係でございますので、これは支払いの基準を明らかにしておきませんと契約に工合が悪いわけであります。間接のものについては、それぞれまた第二段として研究をいたしていくべきものと私どもは考えておるわけでございます。
  139. 滝井義高

    滝井委員 健康保険法のワクの中に医者が招かれざる客として入ってくる、こういうことなんですね。いわゆる保険者と被保険者と二人でいろいろなことを話し合って、そこで十一円五十銭でおいらの診療を受け持つ者は手をあげろ、それでは一つ十一円五十銭でやりましょうと言って、加入はしていないのだが医者が入ってきた、そこでお前は十一円五十銭でやる、こういうふうにいわばきめておるわけですね。今のあなたの答弁では、きまりがなければならぬ、だから十一円五十銭というものをきめて、診療担当者で契約する人はそれでやってもらうのだ、こういうことですね。保険はそういう建前になっておるでしょう。いわば招かれざる客として医者は入ってきておる。自分で進んで入ってきたのだからそうでしょう。これでよかったら保険医になれということでしょう。
  140. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 お答えいたします。私はさようなことを申し上げたつもりはないのでございまして、もしさように聞えましたら、私の言葉の足りなかったゆえだろうと思います。保険の運営について診療担当者が招かれざる客とかなんとかいうことでは全然ございません。保険の運営につきましては、今の健康保険では医療を給付するわけでございますので、この医療を給付していただくのは、結局お医者様あるいは薬剤師ということになるわけでございますから、これはもうお客さんではなくして、御主人の一人だと私は思っております。決してさような意味で私は申し上げたわけではないのでございます。ただ保険給付をいたします場合には、被保険者が病気になったときにお医者様に行きまして、そうしてお医者様に見てもらって治療を受けて、そのお金をお医者様に払わなければならぬ。そうすると、この保険者とお医者様との間には、ちゃんときまった支払いの基準というものがなければ動かぬことは自明の理でございます。さような意味合いにおきまして、これはどうしてもきめておかなければならぬ。それから薬価の取引値段につきましては、いわゆる現実の経済価格というものは別といたしまして、保険がお医者様に払う薬価というものは、たとい安い薬をお買いになろうと、これだけの値段を払いますというきまりがなければならぬ。そこに薬価基準というものがあるわけでございます。従いまして、私申し上げましたことは、決して招かれざる客とかなんとかということを申し上げたのではないのでございまして、そういう関係を御説明申し上げただけでございます。むしろ保険のしかけの中における診療担当者の御地位というものは、お客さんでなくして、御主人の一人だと私は存じております。
  141. 滝井義高

    滝井委員 まあわれわれはこの法文を読んで、招かれざる客というふうに感じているのでそう申したわけですが、とにかくそういうことは抜きにして、医者は十一円五十銭以下でやらなければならぬことは確実なんです。乙地区においては十一円五十銭以上をこえてはいけないのです。こえてやれば、これはあなたの方で保険者に向ってけしからぬというのです。たとえば国民健康保険は十一円五十銭でやりたいという方は幾らもあろが、あなたの方はそれを認可しないのです。十一円五十銭でやるということがあなた方の建前です。だからそれと同じように、製薬業についても、ここに原価計算が必要なんです。原価計算はできぬというけれども、できないはずはない。ビタミンというものが現実に取引をされて、バルク・ライン九〇%でいくということで、おそらく十七円八十銭になったんでしょう。ところが十七円八十銭が適正妥当な基準価格であるかどうかということは、疑問なんです。あなた方についても、われわれについてもそうです。今度あなた方の出しておる医療費体系においては、原価計算についてはこれが適当なものだという信念を持って出しておられるところが、薬価基準については、これは適正なものであるかどうかということはわからない。現実の取引価格だけでは、いわば資本主義経済における需要供給の関係だけで適正ということが言えるわけです。そこで私は何も——あなたはさいぜんの私の主張を取り違えて、私が公定価格でも作れというようなことを言っているように言いますが、私はそういうことを言っているのではない。十七円八十銭の原価計算、それになる価格の基礎を示してくれということを言っている。十七円八十銭の中には、いわゆる人件費が幾らで、製薬技術料が幾らか。人件費というのは技術料が幾らで、いわゆる人件費が幾ら入って、諸経費が幾ら入って、それに医療における材料費といいますか、そういうものが幾ら入っているか。これを出れば、十七円八十銭が適正なものであるかどうか、医療と同じメスが加えられる。そうすればわれわれとしては、ビタミン十七円八十銭は薬価基準で定められておるが、これは高い。一つ医者に売る人は十五円で売ってくれ。保険に使うビタミンは十五円ということを言いさえすればいいのです。そうすると、製薬会社は苦心して十五円で作ります。それより高いものは売りません。そこを言っているわけです。現実に、大きな武田あたりでも、自分のところで作ったビタミンが売れなくなりますと、品を引き上げております。独占価格をやっている。値段が上りますと、ちくちく出します。いわゆる独占価格として、需要供給を十社がほとんど独占的にやっているのではありませんか。見てごらんなさい。抗生物資だって何だって、一体国立療養所のストレプトマイシン等は、二十九年と三十年とはどういう工合か。買い入れ価格が違っておるはずです。それからまず御説明願いたい。  あなた方は自分で買うときには製薬業者を押えに押えて安く買っているはずです。これはいわゆる七人委員会がああいう報告を出して以来、製薬業は大恐慌を来たしておりますよ。そうして今までは薬を非常に安く投げ売りをしておりました。ところが、七人委員会があの報告を出して以来、薬価基準以下の投売りはぴたっとやめてしまった。そうしてその飛ばっちりが厚生省国立療養所にきているはずです。われ、われは別の方面で調べております。きておるはずです。こういうからくりがあるのです。そういうふうに薬価基準は十七円八十銭ですけれども、これは正規のルートであって、実際に——われわれのところにも製薬会社から幾らでもはがきがきます。ビタミンは十七円八十銭だけれども、自分のところは十円で売ります、しかも大量に売りますといって、何ぼでもはがきがきますよ。衛生材料その他は……。これは一体どうしたことですか。こういうものは、基準価格がきめられているだけではありませんか。それ以下でどんどん大きな病院で買ってやっている。厚生省自身だって、国立病院では買っているはずです。買っていないならいないと言って下さい。買っておるなら買っておると言って下さい。安く買っておるはずです。どうです。
  142. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 国立病院なり療養所なりが買っておりますものは、需要者の一人として買っておるはずです。その値段については私は所管が違いますので存じませんけれども、買っておるわけでございます。これは一般の公立病院でお買いになったりあるいはプライベートな病院でお買いになったり、あるいはまた小さい個人の診療所がお買いになるのと同じような立場で購入をいたしておるわけであります。その際に、国立病院なり療養所なりが買う場合には、個人のお客様がお買いになるのよりはおそらく安く買っているだろうと想像いたしております。その取引価格というものは、先ほど来申し上げておりますように、別にマル公でございませんので、売り手と買い手との金払いの程度だとかあるいは購入量の程度だとか、そういうふうな売り手と買い手との普通の経済原則で、値段はそれぞれ、その場合その場合できまって参るわけでございます。従って国立病院のように一手に大きく買い入れるところでは、安く買っているだろうと思います。それから購入量の非常に少い、また金払いの悪いようなところでは高く買っているだろうと思います。これは何も国立病院だからということではございませんので、大口の需要者ということで、従って国立でなくても、私立の病院でも、大口に買われ、金払いのいいところは安く買っているわけであります。そういうような事情でございますので、保険が払います場合には、そういう大口需要者のようなものを標準にしてはいけない。だから、先ほど申し上げましたように、大体使用されておる薬の九〇%が購入できる値段で保険としては診療担当者側にお払いをするという建前をとっておるわけであります。従って大口で、多量にお買いになるところでは、そこに薬の現実の購入価格と、それから保険から受け取る金というものとの開きが出てくるわけでございます。その事実はその通りでございます。ただ、これは保険というしかけで、実際の購入価格ぴたりを払うわけに参りませんので、そういうような一つの基準を設けてお払いをするという建前をとらざるを得ないので、さような建前をとっておる、こういうことなのでございます。
  143. 滝井義高

    滝井委員 今そういう御答弁のあった通り、大口は非常に安く買っておるといえば、原価計算というものはそこからくずれてきている。医療というものは原価計算をしなければならぬ。しかもその基礎になるものは薬価基準であるにもかかわらず、薬価基準よりか不当に安く買うところがある。あるいは不当に安く売るところもある。売ってもなおもうけておる。そういう不当に安く売ってもなおもうけておるというようなものが許されるかどうかということなんです。しかも、それが実際には十七円八十銭よりも不当に安く売っておって、そうして帳面づらは十七円八十銭で計算しなければならぬというのでは、患者がばかを見ておるわけである。国立病院は当然十七円八十銭で計算したもので御請求になっているはずなんです。買ったものは安く買っているはずなんです。ですから患者は搾取されておる。そういうことは同時に、一方きわめて合理的な形をとっている薬価基準自体がでたらめだということになる。十七円八十銭では実際に売買されていない。それはバルク・ライン九〇をとっているかもしれないけれども、大病院はみんなそうではない。だからそういう二重の原価計算という点においても矛盾が出てくる。安く買っておっても薬価基準の値段で記帳していくというインチキが行われている。それが実際は堂々と出ておる。この薬価基準自体もうそだということになって、まるきりうその累積ではありませんか。どうして十七円八十銭になるかという道行き炉はっきりしてこなければ、この論議は尽きないのであります。だからあなた方に私が言いたいのは、何もわれわれはここで製薬の公定価格を設定しようというのではありません。この薬価基準に出ておる値段が合理的なものであるかどうかということなんです。取引が九〇%されておるとあなた方はおっしゃるけれども、実際はそうではない。何かまた薬の本場以外に何とか町というものがあって、そこでは大量の薬がテレビあるいは、ミシンとかと抱き合せで売られているということはあなた方も御存じでしょう。幾らでも売られている。二十七年の三百億以上の薬がどういう形でどこに流れていったか、どういう流通過程をとったかわからないじゃありませんか。御説明ができますか。できないではありませんか。だからこういう点をもっと明白にしていただきたい。きょうはどうも明白な答弁ができませんので、二十七年の薬の流通過程を明白に分析して、次回もう一ぺん質問いたしますから御答弁願いたいと思います。詳細な資料をわれわれも用意して質問いたしますから、それをぜひお願いしておきます。
  144. 森本潔

    ○森本政府委員 ただいま昭和二十七年の医薬品が約六百億生産されて、それが異常に使われたのは約半分ではないかというお話でありました。これは実はどこのルートでどこへいって、だれが消費したということの調べは事実上困難でもございますし、いたしておりませんが、大観してみますと、今お話のような六百億の中で三百億というものは、保険その他の社会医療、調査のつくところだと思いますが、そういうようなところに三百億ほど医師の手を通じて使われております。それからそのほかに各家庭薬的なものがあります。いわゆる売薬であります。さようなものはその調査にはおそらく載っておらないと思うのでありますが、そういうところで個人が買ったものも入っております。そうして結論的に申しますと、大体年々生産されますところの医薬品は、一定率の在庫は残しまして年々消費されておる。別に横流しとかさようなことはないのでありまして、医療機関で医師によって費消された額が約半分くらいある。それから家庭薬という形で各個人の家庭に薬局等で消費されたのが総数の約半分くらいある、かように推定して大体間違いないと思います。ただどこの薬局から個人に幾らいったか、あるいはどういう病院でどれだけ使ったかというような調査は事実上不可能でございますし、いたしてもおりませんのでお答えできないと思いますが、大観した結論といたしましては、今申したようなことではないかと思います。
  145. 滝井義高

    滝井委員 実は薬局から売られた薬はわかっておる。二十七年百八十八億というのはわかっておる。国民総医療費の中に入ってきている。百八十八億としてもなお小売価格で三百九十二億というのはどこへいったのかわからないのです。二十八年では四百三十九億がどこへ行ったかわからない。これだけまさか在庫があるはずがない。だからあなた方は少くとも開局薬剤師諸君を保険薬剤師として今度指定します。そうしますと、その開局薬剤師諸君調剤技術料を七円に見積るためには、当然七円に見積った理論的な根拠がなくちゃなりません。これは病院の薬剤師諸君技術料だけを計算しては正確なものではないので、当然開局薬剤師のものを加味して七円というものはできておるはずなんです。二十九年のときにはそれが調査してなかったので調査してもらうようにと私はお願いしておるはずなんです。薬剤師の中でどういう形でその薬が売られておるか、病院でどういう形で使われておるかを調べたら出ないはずはない。それをあなた方はやっていない。やっていないのはあなた方の怠慢です。三百億ないし四百億の薬がどこへ行ったかわからぬのです。従って私は厚生省の全機能を発揮されてそれを調べてくれというのです。あなた方は国民の総医療費を問題にするけれども、国民の総医療費の中には、当然こういう買われた薬がどこかへ消えてなくなっておる。だれか買っておる。買ったならば買った人のふところの中から支払われておるはずです。それがあなた方の総医療費の中には、二十七年で百八十八億、二十八年は百五十七億しか出ていない。あとの三百億ないし四百億は、どこでだれが買ったか、総医療費の中にどういうふうに加えられていくかということは当然問題になってくる。そういうことを問題にせずに総医療費を論じ、健康保険改正を論議しようとしておるところに大きな間違いが起ってくる。これはいずれ資料として要求いたして次会にもう一回御質問申し上げますから、薬務局の全力をあげて、ビタミンだけでよろしいですから、十七円八十銭のビタミンはどうしてそういう価格になるか、それから今言った二十七年二十八年の流通過程、これは医療費体系でありますから次回までにぜひ出していただきたい。それでまた質問します。  次に移ります。次には健康保険法改正と憲法との関係でございますが、条文上のこまかい点は、いずれ逐条的にやっていただくときに御質問申し上げたいと思います。そこで憲法に関連する重要と思われる三、四の点のみについて大臣の御答弁をいただきたいと思います。これはすでに一昨日のこの場所における公聴会において毛利公述人から相当詳細にわたって御説明があり、私も御質問申し上げたので、厚生当局は明確に御答弁ができるだけの御準備はあると思います。そこで十四ページの四十三条の十をごらんいただきますと、「診療録其ノ他ノ帳簿書類ノ提出若ハ提示ヲ命ジ」とあります。この提出を命ずるということは差し押えと同じか違うか、これを一つ答弁願いたい。
  146. 小林英三

    小林国務大臣 お尋ねの点は、刑事上の問題における差し押えという意味とは全然別のものと思います。
  147. 滝井義高

    滝井委員 どうして刑事上の差し押えと違うか、理論的な根拠を明白にしていただきたい。
  148. 小林英三

    小林国務大臣 今お尋ねの憲法の規定あるいは刑事訴訟法の規定、これは刑事上の手続について規定したものでございまして、健康保険法に規定されておりまする各種検査、これは行政上に関する検査でありまするから、憲法あるいは刑事訴訟法に規定してある問題とは矛盾するものではないというように私は考えております。
  149. 滝井義高

    滝井委員 この四十三条の十をよくお読みになっていただくと、とにかく診療録その他帳簿、書類、何でも提出を命ずることができる。ところが大臣の今おっしゃった刑事訴訟法の九十九条の二項では、これを読んでみますと、「裁判所は、差し押えるべき物を指定し、所有者、所持者又は保管者にその物の提出を命ずることができる。」こういうふうになっているわけです。そうすると、少くともそういう診療録や帳簿なり書類の提出を命ずる場合には——裁判所は物を指定している。この物とこの物というように指定してきている。あなた方のこの条文は何も指定していない。しかもこれは憲法三十五条で、裁判官の令状なくしては差し押えをすることができない。全くこれは私は憲法違反だと思う。憲法三十五条では、令状が要るのです。特定の物を差し押えるときでさえも令状が要るのです。ところが、診療録とか、そのところにあるその他の書類、帳簿、その家の会計であろうと、貯金通帳であろうと何でもかんでもみんな持っていくことができるのですね。ここなんです、私が招かれざる客と言うのは。お願いしますと言って入っていったのだから、こういうことを言うのかもしれないけれども、もしも診療担当者が健康保険の御主人であるならば、こんなことは言えないはずである。悪いことをした犯人でさえも、その家に検察官なり警察官が行って物を差し押えをする場合には一あるいは税務署が差し押えをする場合があるかもしれませんが、差し押えする場合には、憲法三十五条では明らかに裁判官の令状を持っていくのです。ところが、善良な医者の家に行く場合に、何の令状もなくして、どんなものでも持ってきてもいいということは、ちょっとおかしいじゃないですか。
  150. 小林英三

    小林国務大臣 先ほど私がお答え申し上げましたように、そういうふうな場合は行政上の問題でございまして、健康保険改正案にありますような検査という問題は、これは刑事訴訟法と異なるのでありますから、従って行政上の問題でございますから強制力はないのでございます。
  151. 滝井義高

    滝井委員 それはちょっと重大ですよ。まあよろしい。それならば、強制力はないとおっしゃるけれども、四十三条の十の先を読んでみると「開設者若ハ管理者、保険医、保険薬剤師其ノ他ノ従業者ニ対シ出頭ヲ求メ」とある。この出頭に応じない場合は、四十三条の十二の五、四十三条の十三の二によって、医療機関だったら指定の取り消し、保険医だったら登録の取り消しになる。これは一体どういうことですか。
  152. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 お答えいたします。刑事訴訟法でいろいろ人を引っぱったり、それから物を差し押えたり——たとえば人を引っぱる場合には、その人が拒んでも実力をもってやれるということでございます。ところが行政上の、たとえば物を提出せしめたり、あるいはどうこうというようなことにつきましては、それを拒んだ場合には実力をもってこれをそうさせることはできないわけでございます。この点が非常に違うわけでございます。ただ、さようなことを拒んだ場合には、あるいは罰則の適用があるとかあるいは契約解除の事由になるとかいうようなことはございますけれども、そのことは、そうさせることを別のことで担保しているということでございまして、その行為そのものを直接強制する力は行政法規にはないわけでございます。
  153. 滝井義高

    滝井委員 それは詭弁です。いいですか。四十三条の十二の五や四十三条の十三の二によって、登録を取り消されたり、指定を取り消されたら、その医者は罰金どころではありません。食えません。その医療機関の前にはペンペングサが生えて、死んでしまわなければなりません。  それから、あなた方は行政手続と刑事訴訟の刑事手続とを別々にされておりますけれども、悪いことをした犯人でさえも、刑事手続において憲法で認められている権利があるのに、行政手続でそれを認めぬというのは、均衡を失するじゃありませんか。行政手続の方が軽視されて、刑事手続の方があまりにも保護されているじゃありませんか。悪いことをした場合でも、それが憲法で保護されている。悪いことをしないのに、単に出頭を命じたのに出頭しなかった、あるいは帳面を出せと言ったのに出さなかったということで、すっぽり取り消されるということは、これの方がひどい。しかも行政手続と刑事手続の均衡を失する。
  154. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 今御指摘になっております四十三条ノ十というのは、御承知のように監査の規定でございます。それでこの監査というのは監査要綱というものがございまして、滝井先生も御存じだと思いますが、不正の行為があるという疑いのあった場合にやるわけでございます。そのためには監査要綱の中にも書いてございますように事前に二カ月間ぐらい書面でその人の請求書等を調べて、そうしてさらに、できればその医療を受けました患者の方々にも聞いて、これはどうもおかしいというような場合に監査をいたすのでございます。しかもその際には、監査要綱によりますと、医師会とか歯科医師会とかいうようなところに御連絡いたしまして、今までは立ち会いでこれを実施しているようなわけでございます。これはそういう場合に適用される法律の条文でございまして、しかも従来は、監査の規定に違反した、この監査を拒んだとかなんとかいう場合には罰則がついておりました。ところが、今回の四十三条ノ十の監査の規定につきましては、これを拒んだといたしましても罰則はついておりません。現行法は罰則で担保しておりましたが、落しました。たださような場合には契約の解除ができる、いわゆる指定の取り消しができる、そういうことにいたしたわけであります。その規定の働きますのはさような場合でございまして、刑事訴訟法とは非常に違いますし、しかも罰則でやっているわけでもございません。少くともそういうような悪いことをする人については、もうお願いをしない、こういう契約の解除をするということでございます。今滝井先生は、刑事訴訟法と比較をして云々というような仰せでございますが、この規定の趣旨は今のようなことでございまして、御指摘のように、別にこれが非常にふらちなものだとは私ども立案当局として考えていない次第でございます。
  155. 滝井義高

    滝井委員 あなたは今、不正の疑いがあると言ったが、条文のどこにも不正の疑い云々というようなことはありません。不正があった場合としか書いてない。今までは監査要綱というものがあって、監査を受けるものの選考基準というものは、診療内容や、診療報酬の請求に不正または不当があったことを疑うに足る理由があって、監査を行う必要があると認められるものというふうに厳重な条件があったのです。あるいは、故意または重大なる過失というなら別ですけれども、今度のは不正があったということで、あなたは不正の疑いと言ったが、そんなことはない。あなた方の方で一方的に不正があると認めれば、それでどんどんやれる。私が警察的なにおいがするというのは、こういう点なんです。これはあまりにも取り締る役人の権限を一方的に強化して、少くとも日本の医療を進展をするお客さんだという言葉をあなたは持ったが、これはお客さんに対する言葉じゃないですよ。(「主人だよ」と呼ぶ者あり)主人に対する言葉じゃないですよ。あなたはやはりこういう条文は主人に対する条文だとお思いですか。
  156. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 なるほど疑いがあるときとかいうことは書いてございません。ただ「必要アリト認ムルトキハ」という、しぼりだけはしてあるわけでございます。しかしこれはかように変えたというのではございません。従来の規定も「必要アリト認ムル場合」とか、「命令ヲ以テ定ムル場合」とか、こういうことになっておるわけであります。それでこの「必要アリト認ムルトキハ」ということにつきまして、やたらに行政官庁が勝手に「必要」ということでやっては工合が悪いからということで、中央医療協議会に、監査をやる場合はこういう場合であるということを諮問をいたしまして、その答申を得てやっておるわけでございます。それでこの監査要綱というものは今度もこの前と条文は変っておりません。「必要アリト認ムルトキハ」というふうにしぼってあるわけでございます。今後も従来の監査要綱が生きて参りますし、またこれを改正しようといたしまする場合には、私どもといたしましては医療協議会諮問をいたしまして改正をいたすつもりでございます。
  157. 滝井義高

    滝井委員 医療協議会のことが出ましたが、これは毛利さんもいっておりましたが、医療協議会に「諮問」をする場合と「議ニ依ル」場合と二つあるのです。一体これはどう違うのですか。
  158. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 お答えをいたします。従来においては医療協議会にすべて諮問ということになっておったわけであります。今回医療機関の指定を拒む場合につきましてだけ「医療協議会ノ議ニ依ル」ということにいたしたわけでございます。その趣旨は、指定をする場合とかあるいはいろいろ他の行政行為をやります場合にはすべて諮問でございますが、医療機関の指定を拒否する場合におきましては、これは単に諮問ということでは、何と申しますか先生が御指摘のように官僚独善ということになるかもわからない。だから特に拒むということは重大でございますので、そのときには特別に医療協議会の決議による。これは従って普通の諮問でありますれば医療協議会答申を得て、それに対して都道府県知事が別の行政行為をやりましても、法律上有効でございますけれども、この場合には「議ニ依ル」ということにいたしまして、別の行政行為ができない、その決議によらなければならない、こういうふうに法律上も強く拒む場合を縛ったわけでございます、従来の保険医の指定あるいは保険医の指定を拒否するという場合は、法律上の担保はただ地方医療協議会にかけることになっておったと思いますが、それは「諮問」……。今回特にさように強く民主的にいたしたわけでございます。
  159. 滝井義高

    滝井委員 諮問でもそれはやはり決議をしなければ諮問にならぬでしょう。
  160. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 諮問の場合にはその医療協議会が、諮問機関が決議をして答申をなさるわけでございますが、その答申に法律上行政官庁は縛られないというのでございます。法律上でございますよ、これは。しかし「議ニ依ル」ということは、その医療協議会の決議に行政官庁たる都道府県知事は縛られるということでございます。従って非常に相違がございます。なお先ほど私が申しましたたことに苦干間違いがございましたが、従来の保険医の指定等につきましては、法律では指定の大綱について地方医療協議会諮問をするということになっておったと記憶いたします。しかし現実には個々のケースをすべて諮問をいたしております。今回の改正では大綱でなくして、指定そのものにつきましても一つ一つ諮問をしなければならぬということにいたしましたし、さらに指定を拒否する場合におきましては今のように「議ニ依ル」ということに法律上縛ったわけであります。
  161. 滝井義高

    滝井委員 今までの慣行では中央社会保険医療協議会においても他の諮問機関と違って、その議事の進め方というものは多くそのまま大臣を左右している。だから「議ニ依ル」というのと「諮問」というのと今までの慣行では同じだった。今までの中央社会保険医療協議会の運営の仕方は諮問でも縛ってきた。これはその委員会性格、慣行というものがあるわけです。あなた方は「議ニ依ル」ことは縛るし「諮問」は縛らぬとおっしゃるけれども大臣諮問機関であることについての本質は変らぬのです。ところがその大臣諮問機関が法律によって、その議決によって大臣を縛るということは諮問機関性格としておかしいじゃないですか。
  162. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 お答えをいたします。その限りにおきましては、今の条文の運用の範囲におきましては、滝井先生がおっしゃるように中央社会保険医療協議会諮問機関ではなくなるわけでございます。その限りにおきましては、その部分におきましては中央社会保険医療協議会の決議によって、その議によって行政官庁は拘束を受けるわけでございますから、その限度におきましては諮問機関ではなくなる、こういうことに法律上相なるかと存じます。
  163. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、多分あれは、中央社会保険医療協議会と社会保険審査会とが一しょになっておったかと思いますが、この法律も当然そういうような任務の改正が行われるようなことになりますか。
  164. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 ちょっと今審査会とか何とかおっしゃいましたので御質問意味が……。
  165. 滝井義高

    滝井委員 あの法律は医療協議会と社会保険審査会とが一しょになっているのですね。だからその本法がこういうことになり、一つの大きな任務の変革を来たしているわけですから、従って拒否した場合の変化によって中央社会保険医療協議会と社会保険審査会のあの法律を変えなければならぬかということです。
  166. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 お答えいたします。今の指定したり指定を拒んだりする場合には地方の医療協議会でございます。しかし今御指摘のように法律は中央も地方も一本になっておりますし、審査会はこれは別になっております。社会保険審査官並びに社会保険審査会というのは、これはいろいろ異議がありました場合に採決をいたしますような、一種の行政上の不服処理機関という形になっております。それは全然別でございます。いずれにいたしましても地方医療協議会をきめたその法律自体について変更を加える必要はないかという仰せでございますれば、別にその法律に手を触れなくても、こちらの法律の方でさような権限を部分的に認めておりますれば、それで十分に足りるものと私は考えております。
  167. 滝井義高

    滝井委員 変える必要がなければそれでいいのです。  次に、同じような質問ですが、四十三条の十に「当該職員ヲシテ関係者ニ対シ質問ヲ為シ」と、こうあるわけです。その質問に答えなければやはり医療機関は指定を取り消される。保険医は登録を取り消されることになるわけです。これはやはり憲法三十八条の「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」、これに違反する疑いがある。あなた方はそれは行政手続だからとおそらくおっしゃるかもしれません。しかしこれは今までのと少し趣きを異にしていると私は思うのです。単に質問にその主人公が答えなかったからといって、一刀両断に保険医をやめさせたら大へんです。一つ明白に御答弁願いたい。
  168. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 お答えいたします。憲法三十八条との関係を滝井先生は御指摘になると拝承いたしますが、憲法三十八条との関係につきましては、これは学説あるいは実際の解釈上、刑事責任に関する場合の規定と解釈されております。すなわち何かしゃべりますることがその内容によって、その人が有罪になったり無罪になったり、あるいはその量刑に関係があるというふうな場合に適用される規定であると存じます。健康保険法の今回の質問ということに関連いたしましては、この規定は、従来の健康保険法にも罰則のところに、本法による質問に答えない場合にはたしか六カ月以下の懲役、一万円以下の罰金に処すというふうな規定があったと存じます。そうして今回は今御指摘の六十三条の十でありますか、そこに質問をし得るという法律上の根拠を明らかにしたわけでございますが、これにつきましても、先ほど申し上げましたように、この監査の関係の規定でございますので、罰則はここの規定では課さないことに相なっております。ただ契約の解除の対象になるというふうに変更をいたしました。なお他の規定に質問ということが規定されておる条文がございますけれども、この場合におきましても、現行法よりは罰則を軽くいたしまして、体刑を除いて罰金刑だけにしております。  若干の御説明を申し上げたわけでございますが、この健康保険法質問ということ、それに答えるということは、何もその答える内容によって罪が重くなったり軽くなったり、刑事上の責任に影響を及ぼす問題ではございません。従いまして憲法三十八条の規定には違反しないものと私どもは解釈いたしております。
  169. 滝井義高

    滝井委員 どうも今の答弁は納得がいかないのです。三十八条の「何人も」ということは刑事手続上の、たとえば証人とか被疑者とか被告人とかというだけではないのです。「何人も」ということは、一般人を言っているのです。「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」、もし保険医が当該官吏から質問があって、自分で不利益だと思えば黙っておっていいはずではありませんか。黙っておれば保険医の指定を取り消され、医療機関は指定を取り消され、そればかりでなく、今言ったように九条の二で一万円の罰金がくる。これは明らかに刑事犯罪人よりも一般人の方が重くなってきておる。行政手続の方が重くなって、刑事手続の方がむしろ軽いという形になって、行政手続と刑事手続の均衡を失しておるのです。こういう点はもっとわかりやすくしてもらわぬと、われわれしろうとにはわからぬ。  私はこの質問の問題についていろいろ調べてみた。なるほど最近の一般的な学説は刑事手続だけだという論もあります。しかしなお一説には行政手続にもこれを適用するのだという説があるのです。しかも健康保険のような人間の生命をあずかるジェントルマンでなければならない医師に対して、こういう疑いのかかるような条文で、ものを処理し、ものをやっていこうとするならば、あなた方は健康保険行政をやる能力なしと断定しても差しつかえない。こういう規定をはっきりしてきたならば、おそらくこれだけでも全国十一万の療養担当者は総辞退ですよ。私はこれは明らかに憲法違反だと思います。もっと明白に、わかりやすく御答弁願いたい。  それから質問をして答えなかった場合にこういうように非常に激しい罰を受ける他の法律があれば同時に御説明を願いたい。
  170. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 憲法上の解釈につきましては、そこに法制局の真田参事官という専門家もおられますので、また足りないところは補足して御説明をいただきたいと思います。私が先ほど申し上げた通りでございまして、別に憲法の違反ということには私どもは考えておりません。  なおこういう先例があるかという仰せでございますが、これはたくさんございます。一、二思いつきました例をあげてみますれば、住民登録法でありますとか、あるいは電波法でございますとか、商品取引所法でございますとか、現行の失業保険法にも厚生年金保険法にも同趣旨の規定がございます。それで今滝井先生の仰せでは、かようなことははなはだけしからぬじゃないかという仰せでございますが、この質問というのは、先ほど申しましたように、憲法三十八条で保障いたしておるように何も刑事上の責任云々ということではなく、それに関連をして質問をするわけではないのでございまして、これは聞きに行く、問い合せに行くということでございまして、この問い合せを拒否する、問い合せに行っても答えないということは、その答えないこと自体の方がどうかしておるのじゃないか。われわれとしましては、保険の運営上多数の方々の金を保険者が預かって保険を運営しておるわけでございますから、いろいろ聞きたいところがありましたならば、伺っていろいろ問い合せをする、またその問い合せをした場合にお答えをいただくということは、別に先生が仰せになるほどの問題とは私どもは考えておらないのでございます。保険を少しでもむだなく健全に運用いたします必要上、かような規定も私どもはほしいと思う次第でございます。
  171. 滝井義高

    滝井委員 今の答弁では納得がいきません。これ以上伺っても水かけ論になりますから次に移ります。  四十三条の十の二項「質問又ハ検査ヲ為スニ付必要アルトキハ当該職員ハ保険医療機関又ハ保険薬局ノ施設ニ立入ルコトヲ得」、これは自由に人の住居の中に立ち入るのですね。これは憲法三十五条の住居に対する侵入であって、やはり裁判官の令状がなければならぬと思う。ところがこれは令状もなくして立ち入ることになるわけです。しかも検査をする者は、刑事訴訟法においてさえも特定の物件を指示して立ち入っていくわけです。ところがこの立ち入りというものは、医者のうちに行って貯金通帳から何から全部調べます。また診療録であろうとその他の帳簿書類であろうと全部調べます。これも明らかに、いわゆる犯罪捜査よりももっと重くなっている。この点一つ明白にしてもらいたい。
  172. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 お答えいたします。刑事手続との関係いかんという点につきましては、先ほど物件の提出その他について大臣並びに私がお答えいたしましたことと同様でございます。従いまして刑事訴訟法等で立ち入りという場合には、いわゆる直接強制力を持っておるわけでございまして、それを拒否した場合には実力をもってそれを排除して中に入るという合法性を持っておるわけでございます。ところがこの場合におきましては、拒否されれば実力をもって入るということはできないのでございます。それから住居云々という仰せがございましたが、この規定は住居に立ち入ることができるということを規定した条文ではございません。あくまでも医療機関でございます。従いまして、かりに個人で経営されております診療所というようなものを想定いたしますれば、その住宅になっているところにのこのこと入っていくのではなく、その診察室なり調剤室なりというたいわゆる医療機関、診療所に立ち入るわけでございます。なおその場合にいろいろ物を検査することができる、貯金通帳も云々というような仰せでございますが、この規定は保険給付に関連をして必要のあるものということは当然法文の解釈上出てくるわけでございまして、全然関係のない個人の私室のタンスの奥をひっくり返すなどということは、この規定をもって合法化されないものと私どもは解釈しております。
  173. 滝井義高

    滝井委員 あなたがそういうように合法化されないと言っても、破防法などは幾らでも拡張解釈ができますよ。現実においてさえも、地方における技官というものは貯金通帳から学校の卒業年次から所得から全部調べますよ。いわんやこういう規定ができてごらんなさい、大手を振って入ってきますよ。だからそれはあなただけのことであって、こういう不確実な形で法律ができれば、いくらでも拡張解釈ができるということです。この検査は保険の給付に関係のあるものだけだといっても、必ずお前の貯金は幾らだ、所得は幾らだ、税務署の申告を持ってこいということになってくるのです。現実にそうなんですから、必ずそうなってきます。だからこの条項についても、私たちは明らかに行き過ぎだと思います。そういうことがだんだん重なってきて、差し押えとか出頭強制、あるいは質問、検査、立ち入りというようなことをずっとやっておいて、それに違反すればばっさり首を切る、同時にそれは「犯罪捜査ノ為認メラレタルモノト解スルコトヲ得ズ」で、語るに落ちているのです。ところが、もしやってみて不正があればどうしますか。刑事訴訟法の二百三十九条は、「何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる。」次の一項は、「官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。」こうなっておる。従って当然これは告発をするのです。告発をしたならば、犯罪捜査でないと言っておったその帳簿書類その他の検査が、いよい上犯罪捜査にならざるを得ないじゃないですか、結果においては同じことになるじゃないですか、これはどういうことですか。
  174. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 お答えをいたします。四十三条の十で準用をされております九条の四項、「犯罪捜査ノ為認メラレタルモノト解スルコトヲ得ズ」という立法例は、最近のこういうふうな行政権による検査権等についていろいろ規定を設けます際に必ず入っておる例文的な条文でありまして、先ほど申し上げましたように刑事上の問題と違いましてこれは間接の強制力、すなわち罰則で逮捕されたりするような強制力しか持たない規定でございまして、これを間違って直接拒むものを実力をもって入り込めるような、すなわち刑事上令状を持っていくような場合と混同してはならないぞということを明確に規定いたした条文でございます。  それから公務員法で職務執行上犯罪を見つけた場合には告発をしなければならぬ、こういうことがございますが、この規定はさような場合にも適用される場合があると存じますけれども、そのために立ち入りとか、その他いろいろ出頭を求めたり質問をいたしましたり、物件の提出なり提示なりをさせるという根拠規定、この規定の目的はそれではございませんので、あくまでも行政上の調査といいますか、検査といいますか、そういうためにこの規定は認められておるわけでございます。そしてたまたまそこへ参りまして、犯罪を見つけた場合には告発をしなければならぬという義務が公務員法上公務員に課されておりますのは、別の公務員の義務でございまして、別にこの間に彼此矛盾するものは法律的にないと私ども考えておる次第でございます。
  175. 滝井義高

    滝井委員 あなた方は矛盾がないかもしれないけれども、受ける方の立場からいえば、質問に応じなければ首になるし、応じて、悪いものがあればこれは明らかに告発をされるのです。これはもろ刃の剣ですよ。応じなければばっさりやられるのです。罰金か、あるいは保険医をやめるということは現在の段階では医師法の免許を取り消されることと同じです。それでやらなければやめさせるし、やって犯罪があれば告発をされるのです。告発されれば、明らかに憲法のさいぜんから論議している条章と正面衝突してくるのです。この矛盾を一体どうするのですか。
  176. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 お答えいたします。私先ほど公務員法と申しましたのは間違いでございまして、刑事訴訟法に公務員に対してそういう義務があるわけでございます。  そこで今ここに改正をいたそうといたしております健康保険法上のいろいろな調査なり検査なりの権限と申しますものは、あくまでもその目的は行政上の調査であり、検査であるわけでございます。それを、たとえばさような調査なり検査なり四十三条の十にきめてありますことをゆえなく拒まれました場合には、先ほど申し上げましたように罰則は今回とりましたけれども、契約の解除すなわち指定の取り消しの対象になるということは御指摘の通りでございます。そのことと、そういう調査の目的で行ってみた、そうしたらそこに何か犯罪が発見された、あるいは犯罪が行われるところであったというふうな場合に、公務員が他の規定によりましてそれを告発をする義務を負っておりますことと私は何らの矛盾はないと思うものでございます。受ける方はちょっとそういうわけにはいかぬじゃないかという仰せでございますが、犯罪が行われておるような場合に、それがどんな機会におきましても見つけられた場合に告発されるということは、これは当然なことであろうと私は思うのでございます。ただ一般の民衆には別に告発の義務を課しておりませんが、公務員にはそういう義務を刑事訴訟法は課しておる、こういうことであろうと私は存ずるわけでございます。従いましてその刑事訴訟法の規定と、かような行政上の調査、検査権というものの規定と、これが矛盾いたして何ともならぬ、法律上解釈できないというようなことは私はないものと心得ておる、こういうわけでございます。
  177. 滝井義高

    滝井委員 あなたはゆえなく質問に答えなかった、こうおっしゃったが、「故ナク」とはないのです。そういうことがあればいいのです。これは十七ページの二行目をごらん願いたい。「同条同項ノ規定ニ依ル質問ニ対シテ答弁セズ」これだけなのです。とにかく質問に答えなかったらそれでだめなのです。ゆえなくも何もないのです。有無を言わさないのです。ゆえなくならばそれは問題はない。ゆえなくじゃないのです。質問に答えなかったならばもうこれは、だめなのです。
  178. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 お答えいたします。あとの罰則の方につきましては、これは罰則でございますので、この罰則の条文の用語例といたしまして、「故ナク」ということがはっきりと明記してございます。
  179. 滝井義高

    滝井委員 何ページですか。
  180. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 たとえば八十七条、八十八条等に罰則が定めてございますが、これらにつきましてはいずれも「故ナク」ということが書いてあります。  それから今の先生御指摘の、ないじゃないかという四十三条の十二、これは契約の解除の規定でございます。この方法には、これは罰則ではございませんので「故ナク」という言葉が入っておりませんけれども、これは当然ゆえなくということで、正当な事由があれば、違法性といいますか、契約解除の対象にならないことはこれは当然でございます。
  181. 滝井義高

    滝井委員 そういう工合にこの一つ一つを見ていくとなかなかわかりにくいところが多いのです。八十八条にはなるほど「事業主以外ノ者故ナク」と書いておるが、しかし今私が読みました十七ベージの方には、「質問ニ対シテ答弁セズ」とあって「故ナク」はない。こういうように条文自体がきわめてずさんで、ばらばらで、あなた方の権限ばかりを強化することをねらうのに一生懸命になるので、条文がこういうずさんになっておるのです。  そこで、その次に入りますが、それならば、そういうふうにいろいろ条文をお作りになっておりますが、大体九条の二と四十三条の十との関係、これはどっちも同じようなことを書いてあるのです。ところがよく読んでみますと、四十三条の十の方が立ち入検査などがあって非常に範囲が広くなっておる。これは両条文の適用はどういう工合に違ってくるのですか。
  182. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 今の御質問にお答えをいたします前に、少し申し足りないところがございますのですが、四十三条の十二、すなわち契約の解除をいたします場合、いわゆる行政処分的な場合になぜ「故ナク」を入れてないかという先ほどのお尋ねでございますが、これはゆえなくということは当然でございまして、行政処分の場合には「故ナク」というような言葉を入れないのが普通の法律の取扱い、条文の整理の慣例だそうでございます。なお罰則の場合には、これは罰則でございまするので、これについては通常はゆえなくという言葉を入れるけれども、しかし罰則についても入っておらないようなものもあるそうでございます。ただ、いずれにいたしましても規定の性質上、当然ゆえなく質問に答えなかったという場合であることは間違いがございません。  それから四十三条の十と九条の二との比較でございますが、これは九条の二の方はいわゆる指定医療機関という限定はございませんで、一般的に医療機関についていろいろ問い合せをしたり調査をしたりする必要のある場合がございます。たとえば傷病手当金の支給というふうなことにつきまして、それを診断していただきましたお医者様に問い合せをする必要がある場合が現実の問題としてたくさんございます。さような場合の規定でございます。従いましてこれは保険というしかけ、保険医療機関とかなんとかいう特別な関係のない方々に対する規定でございます。それらも含む規定でございます。従ってその書き方にも、「保険給付ヲ行フニ付必要アリト認ムルトキハ」というふうなしぼり方がしてあるわけでございます。それから四十三条の十の方は、これはそこにもはっきり書いてありますように、「保険医療機関若ハ保険薬局」というふうに、保険と契約をいたしまして特別な権利なり義務を持っておる特別な医療機関に対する規定でございます。しかもこの規定の働きまするのは、先ほど申し上げましたように監査の場合でございます。従ってそのことからいたしまして、九条の二の方はそれほど立ち入って調査をする必要も多くの場合にないし、またあまり立ち入ることはどうであろうか。全然保険と関係のないそこいらの医療機関、全然保険医療機関になんかなっておられない医療機関に対しても質問をするわけでございますので、従ってそれにいろいろとむずかしい権限を規定することはいかがであろうか。四十三条の十の方は、特別に保険に対して義務を負い権利を持っておられる医療機関でございまするし、しかもそれが働きますのは監査というふうな場合でございますので、従いまして十分に調査なり監査をいたす必要ありと、かように考えまして、この間に法律の条文に区別を設けたわけでございます。ただし九条の二の方につきましては先ほど申し上げましたように、罰則で担保をいたしておりますが、四十三条の十の方は罰則の担保はございません。さような違いがあるわけでございます。
  183. 滝井義高

    滝井委員 全般のこの法文の取扱いを見てみますと、医療担当者と事業主と被保険者に対する法律の取扱いが不正をやった場合にみんな違うのです。医師が不正をやればこれは医療機関の指定を取り消される、あるいは罰金がとられる。医療機関の指定を取り消されるということは、現在の日本の医療の状態から見ると、もう医者がその医師としての働きが全然できないことを意味するのです。ところが被保険者が傷病手当金をインチキをしてとったという場合には、これは金を返すかあるいは一万円の罰金くらいですか、それくらいで、被保険者の保険証まで取り上げられて、お前は被保険者じゃないということまでは言われない。あるいは事業主がインチキな保険証を出した場合に、お前の事業場は保険は適用しないとは言われないのですね。片一方は保険から締め出され——ここが私は招かれざる客というのです。お前は保険に対してはノー・タッチだということになる。ところが現在保険に関係のある事業主なり保険者あるいは被保険者が悪いことをしても罰金くらいで済むということなのです。刑罰もちょっとありますが、あまりにも刑罰の取扱い方が療養担当者に峻厳苛烈である、こういうことなのです。これは一体どういうことなのですか。
  184. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 お答えいたします。私どもは事業主、被保険者、療養担当者、保険者等について、それぞれ取扱いを別の規定で——一緒のものもありますけれども、別の規定でいたしておりますが、それぞれの対象に対する規定として、その間に十分理由のある規定を書いておるつもりでございます。今被保険者がいろいろ不正をやった場合に、金を直接取り立てるような規定は今度入っておるけれども、被保険者でなくするというふうな規定は入ってないじゃないかという仰せでございますけれども、さような場合には金を取り立てるだけでなく、いろいろ別の、刑法でございますけれども、詐欺罪とかそういう罪としてこれは十分問わるべきものでありまして、さような観点で十分なる責任をとらせるような法律機構にはなっておるわけでございます。ただ被保険者でなくしてしまう、あるいは保険給付をやめてしまうということにつきましては、私ども実はそこまでいきたかったのでありますけれども、しかしその点はどうであろうか。たしか現行法には傷病手当金のことにつきましては何かそういうふうな種類の規定があったと私記憶をいたしますが、療養の給付というような場合に、不正をやったからといってその人間を全然療養の給付を受けられないようなことにするには、病人の生活、いわゆる被保険者の生活からいいましてあまり酷ではないか、こういう意味合いで私どもはさようなことを規定することを差し控えたのでございます。しかしそれにはそういう事由があるわけでございまして、今の保険医療機関炉いろいろ不正な行為炉ありました場合に、これは繰り返して申し上げておりますように、別に罰則では担保いたしておりません。ただ契約を解除しよう、こういうことでございますので、この程度のことは不正があった場合にはやむを得ないのではないか、幾ら不正をやってもそういうこと炉できないということの方がむしろ条理上おかしいことであって、不正炉あったならば契約関係は解除してしまおうということは、これは法律の建前として当然の建前ではあるまいか、さようなことでなければ、幾ら保険を健全に運営いたそうと努力をいたしましても、さような人も契約の解除はできないのだということであれば、保険の運用というものはなかなか健全にはなし得ないことであろうかと存ずるのでございます。従いまして、さような不正のありました場合に保険医療機関をやめてもらいたいということは従来もやっておることでございまして、当りまえのことではないかと考えるのであります。例もたくさんあります。しかし従来もあったと申しましたけれども、全国の診療担当者の多くの方はさようなことはないのであります。その中のほんの一部分の方にさようなことがあるわけでございまして、金曜日、土曜日の公述人発言を聞いておりましても、いろいろ世上乱診乱療等があるということを申しておられましたけれども、むしろ大部分の方々にとりましては迷惑千万な話で、その中の一部の間違った方々に対しましては十分に調べて、さような方は保険の関係から契約を解除してもらって、保険としては関係のないようにしていくということは、むしろそれらのまじめな診療担当機関の方々に対する行政官庁の義務でもあろうかと考えるわけであります。
  185. 滝井義高

    滝井委員 法律論として言っておるので、一つ誤解なく御説明願いたいと思います。法律論の取扱いを私は今しているわけであります。今あなたの方は、被保険者についても被保険者でなくするという考えがあったが、そこまではということです。事業主と被保険者は悪いことをしても保険から閉め出されないのですけれども、医者だけはなぜ閉め出されなければならないかということです。療養担当者でなくなったら食えないということですよ。医者をやめよということです。ところが被保険者は保険がなくなっても自由診療で幾らもかかれる。ところが健康保険と国民健康保険のある医師は自由診療がないのですから。そこです。その取扱いがきわめて不均衡であるということです。私は現実論でなくて法律論、いわゆる立法の建前を言っておる。それがどうしてそういうことになっておるか。事業主なんか悪いことをしても何のことはない。
  186. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 お答えいたします。現行の六十四条に、「保険者ハ詐欺其ノ他不正ノ行為ニ依リ保険給付ヲ受ケ又ハ受ケムトシタル者ニ対シテハ六月以内ノ期間ヲ定メ其ノ者ニ支給スベキ傷病手当金又ハ出産手当金ノ全部又ハ一部ヲ支給セザル旨ノ決定ヲ為スコトヲ得」こういうことになっておりまして、今申し上げましたような療養の給付については、この場合にはここに含ませないといることに私どもはいたしておるわけでございます。それから六十五条に、保険給付を受ける者の診断を保険者が必要ありと認めるときはいたすという規定がございますが、その二項に、「正当ノ理由ナクシテ前項ノ診断ヲ拒ミタル者ニ対シ保険給付ノ全部又ハ一部ヲ為ササルコトヲ得」この規定は明らかに被保険者が保険者のなそうとする診断を正当な理由がなくして拒んだような場合には療養の給付をもやめてしまうという規定でございます。従って被保険者に対しては療養の給付を全般的にストップをする規定が全然ないわけではないのであります。しかしこの現行法の程度で足りるものと私どもは考えたわけでございます。
  187. 滝井義高

    滝井委員 事業主はどういうことなのですか。
  188. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 事業主を保険の外へほうり出すということは一体どういうことになるのでございましょうか。——事業主には医師の場合等よりは罰則がずっと重くなっております。しかし事業主はむしろ保険料を取り立てたり何かすることについて義務を課されて、それらの義務に従わない場合には罰則を受けることになっておりますが、これを保険の外にほうり出してしまったら、保険が困ってしまうわけであります。保険料の取り立てもできないわけになる。事業主を保険の外へほうり出せという仰せは、先生どういうことを意味しておられましょうか。
  189. 滝井義高

    滝井委員 局長さん、いいですか。ここにAという炭鉱があって、保険医が一人おります。その一人の保険医が首になったら、そこの地域の炭坑の住民はだれにかかりますか。事業主の場合と同じではないですか。本質的にちっとも違いはしない。どこが違いますか。
  190. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 お答えをいたします。そこに他に医療機関がないような場合には、その医療機関の取り消しというようなことにつきましては、十分にそれらの関係を考慮してやらなければならぬことは当然でございます。ただその場合にも窮通の道はあるわけでございます。別に保険医療機関ということの契約関係を解除されましても、被保険者はそのお医者様にかかれば、かかれないということはございません。ほかに医療機関がないというような場合には当然そのお医者様にかかって、保険といたしましては療養費払いという方法でそれをカバーして参るという道があるわけでございますが、もちろんお医者様が一人しかいないというふうな場合、これを取り消し云々というようなことは、十分慎重に行われなければならないと思うのでございます。  なお、被保険者をたとえば被保険者でなくしてしまえという被保険者の問題についての仰せがその前にございましたけれども、私が申し上げるまでもなく、健康保険というものはいろいろな目的もございますけれども、一番大きな目的は、たびたび御指摘のように、被保険者保護ということを主たる目的といたしておるわけでございます。従って不正の行為があったからといって、直ちに被保険者でなくするということは、保険の目的から申しましても十分に考究しなければならない筋合いのものではなかろうかと考えております。
  191. 滝井義高

    滝井委員 私は純粋な法律論として、いわゆる法の適用の均衡性の問題を言っているのです。私は招かれざる客と言ったけれども、あなたはそれは御主人だとおっしゃった。その御主人であるべき療養担当者が悪いことをちょっとしたら首を切って保険のワク外にほうり出されてしまって、飯が食えなくなる。ところが質問にも答えないというのと同じような性質の、傷病手当金をインチキしたとか、あるいは標準報酬をインチキしたというものは罰せられるけれども、保険の外にはほうり出されない。ところが片一方はほうり出されて飯が食えなくなる。こういう法の取扱い上の不均衡を私は言っておるだけのことです。もちろん健康保険法が保護立法であることはよく存じております。ただ問題は、なぜこういう矛盾が出てくるかというと、結局健康保険法がおくれておるのです。これは昭和二年にできた当時のいわゆる労務管理の思想を主としてあるからおくれておる。むしろ現実の日本においてあなた方がほんとうに社会保障を推進しようとするならば、医師たる者は保険医たるべしという一項を入れなければならない。そうしましたならば、招かれざる客も主人公になって、事業主や療養担当者や被保険者が一緒になってこれを守っていくことができる。それがないので、いわゆる土俵といるものは保険者と被保険者の土俵になって、その土俵の中に招かれざる客の療養担当者が入ってきておる。これが現在の健康保険法の型なんです。だからそういうおくれた立法を現在の社会保障が進展しようとしておる。二十世紀の後半にこれを無理やりに適用しようとし、改正しようとするところにこういう無理が出てきておる。だからこの法律というものは根本的に書き直さなければならないときにきておるにもかかわらず、あなた方はそれを根本的にやろうとしない。それは医療国営にはならぬ。それは全部指定を受けるべしといっても、行かねばそれまでの話です。だからその点をあなた方が考えていないところに問題がある。そこに製薬業にもメスを入れられないところがある。そうして一方あなた方は全国民を皆保険にすると言っておる。全国民を皆保険にしてしまえば、自由診療というものはありません。まああるものは特殊な風変りの医者だけで、ほんとうに希望してなるものだけである。五年後にあなた方がほんとうに残りの三千万の国民を保険組織でやろうとするならば、この立法ではどうにもならぬところまできておる。こういう点に実はこの立法の一つの大きな矛盾がある。そこで言いたいのは、こういう綿密なものをやっても、これは井堀さんがこの前に、法律家と科学者との競争は科学者が勝つということを言ってくれたが、私はこの前公聴会にも申しました。なぜあなた方は患者の台帳を作らないかということです。被保険者の台帳さえ作れば、何もこんなむずかしいことをやらなくても、被保険者の側においても、療養担当者の側においても一挙に悪をなくすことができます。盲腸を一ぺん切った患者が二度も三度も盲腸を切るということはない。それをあなた方がわずか五、六億の予算を節約して大蔵省に主張できないところに、こういう自分の権限だけを強くしてやろうという問題があると思う。私はこれは患者台帳あるいは被保険者台帳と申しますか、それさえ作れば何も要らないと思う。あとは医師会に自主的に監査をやれ、これだけでけっこう現在の悪は防げると私は思う。その点一つ局長の御見解を承わりたい。
  192. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 お答えいたします。滝井先生の御質問の医療機関の指定の取り消し、すなわち契約関係を解除するということに関しまして、ちょっと工合が悪ければすぐやる、保険の外にほうり出すというふうな全般的な印象で私は拝承したわけでございますが、私どもは決してさようなことを考えておらないのでございまして、四十三条の十二でございましたか、そこに法律上の要件としてかような場合、かような場合というふうに非常にこまかく縛って法律にも規定をいたしておるつもりでございます。さらにこれにつきましては、医療協議会、地方医療協議会というふうな諮問機関に諮ってこれをいたすのでございまして、従来もさようでございましたが、今後この改正が実現をいたしました暁におきましても、ちょっと悪いことがあったからすぐ取り消すというようなことは決して行う意思もございませんし、またさようなことは医療協議会でなかなか通るはずがない、私はかように考えております。この点につきましては、私どもとしましては、いろいろ質問を通じての先生方の御構想を十分体しまして運用をいたしたい、かように考えるものでございます。  それから医師たる者は全部保険医たるべしというふうにした方が進歩だという仰せでございましたが、これははなはだお医者様を縛ることになるのでございまして、これこそ憲法上の問題が起ってきはしないだろうかと私どもは考えます。むしろそれは御本人の自由意思にまかしておく方が、現在の憲法にも即した行き方であり、また民主的な行き方であろうかと私は考えておるわけでございます。  それから台帳を作ったならば非常にいいじゃないかという仰せでございます。これはまことにごもっとも血仰せでございまして、私どもとしましては、実はそれがやりたいのでございます。厚生省はやりたいけれども、大蔵省でなかなか金をくれないだろうというようなこともちょっとお話にございましたが、そんな関係ではございません。実は被保険者の台帳は、昔健康保険がまだ被保険者の数が非常に少い時分にはこのことをやっておったのでございます。従いまして当時は非常に管理が行き届いておった。ところが今日政府管掌だけでも五百三十万というふうな大きなものになりますし、それに家族の診療というものも昭和二十何年かに給付されることになりましたし、それを合せますると千数百万というような数になりまして、これらのものを台帳で一々整理をいたすことは、非常に事務的に困難でございます。しかもこれを整理をいたしますには、診療担当者に被保険者なり家族がかかりまして、そうして医療を受けまして、その請求書が基金の方に回りまして、そして基金の方で支払ったあとでその請求書を保険官署の方が回収をいたしまして、そうしてその請求書に基いていろいろと台帳を加除いたすわけでございます。従ってさようなことをいたしまする場合には、実際に医療が行われましてから台帳が整理されるまでに相当な年月を要するのでございます。今、一カ月の請求書というものは非常に多数になっておりまするので、これを事務的処理をいたします場合に、非常に多数の人間と非常な時間を要する。従ってそれが記入が済んだ時分には、もう次の給付が行われておるようなことが多々あるわけでございます。そうして、それが今度回ってきて次の給付を記入いたしました場合には、もう実際の行為は半年も前に行われたというようなことになりまして、いろいろやろうとしても、あとの祭でどうにもならぬというふうなことになりはしないか。これは理論的には先生仰せの通り被保険者台帳というものを整理いたしまして、十分にこれに加除記入をいたしていくということにまって、保険のむだなり健全なる運営というものは、理論的には確かにはかれるわけでございまして、私どももそれを希望いたしまするけれども、現実の取扱いといたしまして、かように膨大になって参りますると、それが非常に困難であり、またやってみたところがあとの祭というようなことで、あまり効果が上らない、こういうふうな観点から、私どもはこのやり方を放棄いたしたのでございます。これをいたしますには、人間の増員も相当しなければならないと私は考えております。さようなわけ合いで、全般的な被保険者台帳の整理というようなことは今日考えていないのでございますけれども、しかし、結核患者等長期の療養者につきましては、今日すでにさような整理をいたしております。しかしながら、これを全般に及ぼしますることは非常に困難性がある。理論的には大へん私ども希望するところでございまするが、技術的に非常にむずかしい。かような事情を申し上げまして御了承いただきたいと存じます。
  193. 滝井義高

    滝井委員 現在健康保険組合では現実にやっておるのですね。健康保険組合がやっておって、かつては政府もやっておって、現在それができないはずは私はないと思うのです。できないということ自身がおかしいと思うのです。療養担当者には実に汗牛充棟もただならざる義務を課しておいて、そしてその跡始末の事務をあなた方ができないといって、その事務的なことを放棄して、そしていたずらに立法をもって権力で取り締ろうとするその考え方が間違っていると思う。少くとも医者が全部やっておって、薬剤師諸君もおそらくこれからは一生懸命事務をやる。そして技術診療報酬の請求というものは、これは社会保険の出張所に返ってくるのですから、そこで一枚一枚ずっとその被保険者、被扶養者を見ていって台帳に記入して、何病にかかったかということを書いていけば、すぐできますよ。これはそんなに事務はうんとかかるものではない。しかも医者には一々保険証にその病気の初診から今度は終ったときから転帰から、その金から、一々全部保険証に書かしておきながら、自分の方は何もしていないというのは、これはしりが抜けておる。医者には厳重に事務をやれやれ、やらなければといって監査の対象にしながら、あなたの方が何にもやっておらぬというのはおかしいじゃないですか。私はこういう法律を作るひまがあるならば、その事務をあなた方の方が一生懸命にやるべきだと思う。それをやったら、事業主の不正も、医者の不正も、被保険者の不正も一挙に防げる。それは組合の宮尾さんが来てここで証言をしているのです。私はその証言を取ろうと思って宮尾さんに、やるべきだといって、質問したのです。だから、あなたはこの法律を撤回して、それをやりますと言った方がいい。
  194. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 お答えいたします。組合では御指摘の通りそういう整理をいたしております。それは御承知のように、三百二十万程度の被保険者を約一千弱の組合でやっているわけでございます。平均三千五、六百人ぐらいの組合員数、被保険者数ということに相なるわけでございます。しかもそれが御承知のように、組合の場合におきましては、一つの事業場にいるわけでございまして、これは保険料を取り立てるにいたしましても、会社の給与課でございますか、人事課でございますか、給与を取る課へ行って組合がもらってくればいいということになるわけです。また滞納を整理するというふうな問題も現実の保険としては起らないわけでございます。ところが政府管掌の方の健康保険は、御承知のように今百幾つの保険官署でやっておりますけれども、被保険者がたしか一官署当り五万がらみになっていると思います。数字は若干私の記憶違いがあるかもしれません。しかもその五万程度の被保険者が大体二十人から二十一人ぐらいの平均の事業場に分散しているわけです。そういうような状態にあって、今の被保険者台帳をやるということにつきましては、これは確かに先生仰せのように、非常に効果のある方法ではございますけれども、これを実施いたしますには、なかなか困難な事情があると私は考えるわけでございます。この際保険官署を非常に多くふやし、人間を大増員をしてやるということでありますれば、あるいは可能になるかもしれません。従いまして私どもといたしましては、被保険者台帳の整理ということは私どもの念願としているところでございますので、将来の研究問題として十分に研究をいたしたい。かようには考えておりますが、今直ちにこれを実施いたしまして、そうして諸般の法律改正をやらないというようなことは、私どもは考えておらないのでございます。なお被保険者台帳の整理をいたしましても、今回のような法律の改正というものは必要だと、私自身は信じているのでございます。
  195. 滝井義高

    滝井委員 事務的なことですから、いずれも御研究を願っておきたいと思います。  最後に、宮尾公述人からこういう御発言がありました。現在の社会保険は架空請求、水増し請求というものが、あることが常識になっている。少くとも一割はある。こういう御発言をいただいたのです。一割としますと、政府管掌と組合とを合せますと約七十億あるわけですが、日本の医療費昭和三十年二千八百億、これは主として社会保険を中心とするものが総医療費になっているのですから、二百八十億あることになっている。大体そういう話がありましたので、さらに追及いたしましたところ、架空請求、水増し請求のほかに過剰診療までもその中に入っているのだという御訂正がありましたが、政府は現在の日本の社会医療費の中に一割のそういう架空請求や水増し請求や過剰診療があるとお認めになるか。これが今度の健康保険制度を改正しなければならぬ大きな理由になったのだというところの保険者側の御発言があった。今度の法律というものは、政府すなわち保険者である。その保険者の意図というものが相当大きく動いておる立法なんです。宮尾さんもまたこの立法についてはある程度御賛成になっておる点もありました。そういう点で、保険者の発言というものは、私どもはきわめて重視しなければならぬ発言だと思いますが、政府の見ておるところを率直に御説明願いたいと思います。
  196. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 お答えいたします。仮空請求、水増し請求、あるいは過剰診療といいますか、濃厚診療といいますか、さようなもののみならず、被保険者の保険証の不正使用とか、いろいろこの保険のむだというものは私はあると思います。ただそれがどれだけあるかということは私にはわかりません。これはわかっておる適当な数字があれば、さようなものは排除する措置をとるべきである。わからないからその措置がとれないわけです。従いまして、どれだけあるかということは、私責任をもってお答えをいたすような材料を持っておりません。
  197. 滝井義高

    滝井委員 これは川崎さんもそこにおられますが、川崎さんの当時から、やはり赤字の一つの原因としては、医療の不適正というものがあげられておる。不適正とは、乱診乱療、こういうことになっておる。そうしますと、政府自身もおあげになっておる。私は何も医療担当者の立場を守ろうとは思いません。これはやはりわれわれがほんとうに日本の社会保障の進展を愛するがゆえに、そういうものがあれば、これはメスを入れなければならぬと思うのです。そこで私は率直に実はお聞きをしておるわけです。長年薬務局長もやられておるし、また今度保険行政にも通暁されておるから、保険局長に高田さんがなられておると思うのですが、それを一つ率直に御遠慮なく、あなたの保険行政を通じての勘と申しますか、そういうもので言うことは不見識かと思いますが、やはり宮尾さんという保険者が、少くとも組合管掌の責任者が、そういうものが一割はあることが常識になっている、こうおっしゃった。あなたの方でどの程度のものがあるということを言えないはずはないと思うのですが、これは政府だから遠慮しておるということでなく、お互いによくしなければならぬ。財政が苦しければ、その財政の苦しさを切り抜けるための具体策を今研究中なのですから、これは御遠慮なく率直に言っていただきたいと思う。
  198. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 お答えいたします。私もあまり保険行政のくろうとではないのですが、今申し上げましたように、さような保険のむだがあるということは事実でございます。監査なり調査なりでさようなものを摘発をして排除したり、あるいは指定の取り消しをしたりやっておりますが、この件数は相当たくさんございますけれども、しかしそれらは見つけたものでございます。従って全体がどれだけあるかということは、私にはほんとうに申し上げろ資料を持ち合せておりません。宮尾さんが一割見当あるだろうということを仰せになったのは、宮尾さんの勘でおっしゃったのだろうと思います。おそらく宮尾さんも、さような的確な資料をお持ちかどうか私は存じておりませんけれども、勘であることは、あの当日の御発言を私はあそこで聞いておりまして、さように拝承したのであります。私はまだ新米でございますので、さような勘も宮尾さんほど敏感になっておりません。どれだけあるかということは、とても私がこの席で申し上げるだけの資料もございませんし、また自信もございません。
  199. 滝井義高

    滝井委員 厚生省の中には統計学の大家もおられます。氷山の一角が出れば、その海中に沈んでいる氷山の根が太いだろう、こういう推定は得意なところです。あなたは方は犬の遠ぼえみたいに、かかる法律を作るときには、あるようなことをおっしゃるけれども、いよいよここで面と向ってやり始めると、どうもしり込みされるのですが、私は遠慮は要らないと思うのです。統計の大家もいらっしゃることだから、これはやはり統計的に少数例から大数観察というものができるわけです。そういう統計上の大家もおられるから、そういうことでやはりこれは一つ資料として——この前出してもらったのは八百何十万円しかなかったので、実はうんざりしている。全国的に審査、監査もやられているし、いろいろ調査もされているのですから、その中から、保険者、被保険者、事業主、療養担当者、こういうものの不正がどういう工合に具体的にあるのかという・ある程度確実な監査、審査の科学的な基礎に基いた推計ができないことはないと私は思う。そういうことをあなた方がやっていないというとも、やはり一つの大きな怠慢なんです。だから、なければやむを得ませんが、あれば、資料として次会にでも出してもらいたいと思います。
  200. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 お答えいたします。八百何十万円という先生の仰せでありますが、これはおそらく過去に監査をいたしましてひっかかってきた、しかもその中で返納を命じた金額、あるいは返納を命じただけでなく、受け取った金かもしれません。そういう金であります。この監査の結果、こういう悪いことがあった、ああいう悪いことがあったというふうなことをあげろと仰せになれば、そういうふうな資料は、これは整理をいたしますれば整理できないことはございませんので、あるのでありますけれども、しかしながら全体に保険の無駄が幾らあるかということにつきましては、これは全然資料もございませんし、また先生は今仰せのようにいろいろ推計もできるだろうということでございますけれども、この推計は非常に困難な、一つの統計学上のルールに乗ってくる推計になり得るかどうかということも私非常に疑問に思います。従いましてさようなことは私ども資料としても御提出できませんし、またこの席で申せと仰せになりましても、申し上げるわけには参りません。しかし、これは監査の結果出てきているわけでございまして、あることはあるということでございます。
  201. 滝井義高

    滝井委員 これで終ります。
  202. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 次会は明二十日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十八分散会