○高田(正)
政府委員 薬務局長からお答え申し上げましたように、医業につきましても、製薬業につきましても、今日はマル公はないのでございます。いわゆる公定価格というものはないのでございます。それで、保険が支払いをいたします場合には、先ほどから申し上げておりますように、保険のしかけとして両方について、マル公といいますか、基準があるわけであります。それで瀧井先生の御
主張は、おそらくその際に、保険の基準を作る場合に、医業の方についてはタイム・スタディなどをやって、
原価計算的なことをやって
点数をきめようとしておる、こういう仰せだろうと思います。しかし今出しておりまする、あるいは一昨年ごらんに入れましたいわゆる新
医療費体系に基く
点数表というのがございますが、それにつきましてはそういう計算の
基礎を求めてやったわけでございます。これは二十六年以来の臨時診療報酬調査会の、そういうふうなことにしないと合理的な
医療費の計算ができないから、ことに
分業に関連をしてさようにすべきであるというような御
答申に即して、そういう分析をいたしておるわけでございます。ところが、これは瀧井先生もよく御存じのように、これから
改正しようとする
点数と違いまして、現行の
点数はさような
原価計算方式に基いたものとは私
ども考えておりません。いろいろないきさつから過去の集積が現行の
点数になっておるわけでございます。さようなことでございまするので、今の
点数というものは、別に、先生の仰せのような正確な
原価計算を
基礎として云々というような組み立て方にはなりておらないと私は存じます。しからば、薬の方の値段については基準を設けているということは医業と同様であるけれ
ども、しかしその基準を設けるについての根拠というものが、現実の取引価格を調査して、そうして午前中に私がお答えをいたしましたように、それについていろいろな値段のあるところの、九〇%の薬が買い得る値段というところに筋を引いて、その基準のとり方がけしからぬといいますか、その際にそれぞれ
原価計算等をやってやるべきではないかという仰せだろうと御想像いたします。そうしてこれは確かに
一つの御
意見でございますけれ
ども、先ほど来
薬務局長がお答えを申し上げておりまするように、さような際に
原価計算などをして薬価基準をきめることが妥当であるか、現実の取引価格というものを基準に調査をいたしまして、それを基準にしてきめることが妥当であるかということになりますると、これは議論の分れるところであろうと思います。もし
原価計算等をしてやるということになりますると、これは非常にめんどうなことに相なるわけであります。しかも現在の薬の値段というものは、
滝井先生もよく御存じのように、ここ数年来非常なテンポで下りつつあります。かようなときにいわゆる公定価格的なものを作りますと——物が上るときには公定価格を置きますることは値段を押える
一つの手助けになりますけれ
ども、物が下っている現実においてそういうふうなことをいたしまして、
原価計算をして適当なマル公を作るには、どうしても正当な利潤というものを保証いたさなければなりません。さようなことであるとか、あるいはまた
原価計算の困難性というようなものでのるとか、そういう計算をいたしまして、現実にそれを薬価基準として移しまするときには時間的なギャップというものがございます。そうするとマル公的なことを考えると、今のような
客観情勢におきましては、マル公を作ることによってむしろ物の値下りをとめる。物は現実に下るかもしれませんけれ
ども、保険で払う薬価というものは、物がどんどん下っておるから、下るようにそれにスライドして迅速にきめていくという方がむしろ有利であって、それをくぎづけにするということは逆な作用を及ぼすようなことにならないかと私
どもは心配をいたすのでございます。御存じのように、およそマル公制度ができまする際には、マル公制度が非常に効果を発揮します。る場合には、物が足りなくて需要が多い場合が多いのでございます。しかし、今日の製薬の事情あるいはこれに対する需要の関係を申しますと、むしろ物が余って買手の方が少いという状況なんでございます。かようなときには、簡単な経済の原則からいいまして、自由競争にまかしておいた方がむしろ保険としては有利であって、これを下手にマル公みたいなものを作りますと、むしろ下るものをくぎづけするようなことになるおそれがある。全般的に申しますとそういう心配があるのでございます。さようなことでございまして、これは将来の研究問題だと思いますけれ
ども、現実の事態といたしましては、今のように取引値段を押えて、そうして適時に時期に応じて薬価基準を
改正していくということの方がむしろ保険経済の——これは一般の製薬産業に対する
方針というものではございませんけれ
ども、保険経済の立場からいいますると、むしろその方がどっちかというと安上りになるというような見方を私
どもはしているわけでございます。従いまして、製薬業について統制的にマル公制度をやるかどうか、それがいいかどうかというような大局的な産業施策と申しますか、そういうようなこととは別といたしまして、私
どもとしては、保険の立場から、今さようなことをやらない方が保険のためには、支払いが財政的な観点からむしろ有利ではないかというような見解を持っておるわけでございます。しかしながら、この点につきましてはなお将来とも研究をいたしたい、かように存じておる次第でございます。