○曾田
政府委員 全般的な結核対策につきましては
公衆衛生局長が担当でごさいますけれ
ども、このベッドの対策等については私
どもも国立の療養所等をおあずかりいたしておりますので、かわってある
程度御説明申し上げたいと思うのであります。御
承知のように、
大臣も今申されましたようにさしあたりとしましては私
ども二十六万床計画というのをただいま持っておるわけであります。もちろんこれも御指摘ございましたように、先般の結核の
実態調査によりましては百万をこえるかなり多数の要
入院患者かあるという数字も出ておるのでありますけれ
ども、あれは特に選ばれました地区についてきわめて精細な調査をいたした場合、その結果を九千万近い今日に延ばしました場合に、あのくらいの数に推定されるという
意味でありまして、今日現実につかまれておる患者、入院を要する者はさように多いものではございません。もちろんこれは明らかであります。これは見つけ出したときにおそらくこれだけのものであろうというふうに
考えられるのでありまして、現実につかんでおる数字はそれだけないのであります。一方におきましては、さような隠れておる患者をいかにして見つけ出すかということが
一つ大切な仕事になってくるのでありまして御
承知のように検診の範囲あるいは検診の
やり方を精細にいたすためにいろいろと予算も組んであるわけであります。しかし今日において、今申し上げたようにつかまれております者はそれだけない。また見つかりました患者につきましても、先ほ
ども一つの要因として御指摘になりましたが、いろいろ経済的な問題、あるいは経済的な問題がなくとも、家庭的な
事情で入院ができない、あるいは入院を希望しないという方もございます。それからまた先般の調査はある一時点における状況を調べたものでございまして、年々どのくらい新たに発生しておるかということについては、その後の調査も繰り返しておりますが、まだ的確につかみ得ない状況であります。これは計画としましては五年後にもう一ぺん同じような調査を行なって、そして初めてこの推移がわかると思うのであります。ほかに毎年々々報告されております患者の数、これは医師から報告がございますが、こういうもの、あるいは年々の調査によって新たにツベルクリンの陽転して参ります者の数、こういうものからいろいろ理論的に推計できないことはないのであります。私
ども考えておりますのは、先般つかまれました非常にたくさんの患者でありますが、あの患者の大部分はむしろ過去において発生いたしました。私
どもの近い過去と申しますれば言うまでもなく戦争でありまして、戦争中あるいは戦争後のあのきびしい生活、こういうもので患者が非常に悪化いたしまして、その後新しい治療を施しましてもなかなか短期間になおらないというものがたくさん累積しておるのであります。その後に年々新たに出てくる患者、これは新しい治療法によりまして割合に短期間に治癒でき、また治癒し得る見込みがあるわけであります。こういうように今までたまっておりましたものを
相当な期間背負い込んでいかなければならぬというところが私
どもの今日遭遇しておる結核問題の辛いところであるというふうに
考えられるのであります。このたまっておりました患者を、いわばなしくずしに新しい治療
方法で治癒せしめていく、あるいはこれを固定化していく、少くとも他に危険のない
状態にまで持っていくことが必要になってくるのでありまして、これはあまりはっきりした数字を申し上げることはいかがかと思いますけれ
ども、私
どもは十万ないし十五万のベッドが、今日次から次へと出て参ります患者のうち、ぜひ入院を必要として処理して参らなければならぬベッドとして必要な
程度ではないかというふうに見ておるわけであります。二十六万と申しますればそれを約十万こえるわけでありますが、この十万が今申し上げましたように二十万、三十万でありますればそれはなおけっこうであります。しかしながらこれは少くともどの
程度のものが必要かということで、二十六万と一応目安をつけて増床を
考えていっております。御
承知のように過去におきましては年々大体三万前後の増床を見ております。ところが最近になりまして増床の勢いが鈍ってきております。昨年の八月で見ますと、その前年同期に比べまして二万七千ばかりベッドがふえております。その前の年二十九年の八月では、その前年同期に比べますと、三万三千のベッドがふえておったわけであります。このように
ベッドの増が幾分減ってきておるわけであります。そのもとは、皆さんからも御指摘を受けておりますが、
入院患者の割合と申しますか、要するに病床の利用率が最近顕著に下ってきておる。このことは昨年からも申しておったのでありますが、この事実は二十七年を最高といたしましてすでに二十八年に見られた傾向で、二十九年、三十年、今日までこれは続いておるのであります。このいろいろな要因としまして、あるいは入院したいのだが経済的に制約があるために入れないという方があることも、
一つのファクターとしてはあるでございましょうが、全般として結核の患者が峠を越しまして、むしろ低下の道に入ってきたのではないかというふうに見る見方も、かなりな学者がその点をさらに詳細検討されておるような状況でありまして、私
どもとしましてもいろいろな点がございまして、まだ十分な結論とは申しませんけれ
ども、さような傾向も否定できないというような状況でございますので、もちろん私
ども結核対策のために特に技術
行政をやっております者としてはもっともっとほしいのであります。しかしながらある
程度の予算をちょうだいいたすといたしますならば、それをできるだけ有効に
使用して参るという
意味におきましては、結核の病床の増ということもさりながら、他にたとえば患者の
医療費の公費
負担とかなんとかいう面で多少なりそちらに方向を伸ばしていくべきではないかというように
考えたような次第でございましてベッド自身としましては確かに増床が押えられましたこと、これは私
どもとしても遺憾ではございますが、それを補うだけの仕事を他にやって参りたい。たとえば結核療養所におきましては、増末は一応要求はいたしましたけれ
ども、これは私
ども今回は思いとどまりましてそのかわり既存の病床の整備に昨年の増床分とほぼ同じ
程度の整備費をちょうだいいたしまして、腐朽いたしましたところを改築して、そうして患者に対するサービスの
向上改善ということに充てたいと
考えた次第であります。