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1956-02-14 第24回国会 衆議院 社会労働委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月十四日(火曜日)    午前十一時十二分開議  出席委員    委員長  佐々木秀世君    理事 大坪 保雄君 理事 中川 俊思君    理事 野澤 清人君 理事 藤本 捨助君    理事 岡  良一君       植村 武一君    越智  茂君       加藤鐐五郎君    亀山 孝一君       熊谷 憲一君    小島 徹三君       小林  郁君    高橋  等君       田中 正巳君    田子 一民君       中村三之丞君    中山 マサ君       八田 貞義君    亘  四郎君       岡本 隆一君    栗原 俊夫君       滝井 義高君    長谷川 保君       三宅 正一君    八木 一男君       山口シヅエ君    吉川 兼光君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 小林 英三君  出席政府委員         厚生政務次官  山下 春江君         厚生事務官         (大臣官房会計         課長)     堀岡 吉次君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      山口 正義君         厚 生 技 官         (医務局長)  曾田 長宗君         厚生事務官         (薬務局長)  森本  潔君         厚生事務官         (社会局長)  安田  巖君         厚生事務官         (児童局長)  高田 浩運君         厚生事務官         (保険局長)  高田 正巳委員外出席者         厚生事務官         (保険局健康保         険課長)    小沢 辰男君         厚 生 技 官         (保険局医療課         長)      館林 宣夫君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 二月十四日 委員矢尾喜三郎君辞任につき、その補欠として井 堀繁雄君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 二月十三日 夫帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法律 案(内閣提出第四一号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  社会保障制度医療制度及び公衆衛生に関する件     —————————————
  2. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 これより会議を開きます。  社会保障制度医療制度及び公衆衛生に関する件につき調査を進めます。昭和三十一年度厚生省関係予算を中心とする厚生行政につき質疑を続行いたします。八木一男君。
  3. 八木一男

    八木一男委員 ただいま主題になりました件に関しまして厚生大臣に少しく御質問をいたしたいと存じます。  まず第一に、厚生大臣の御所信を伺いたいと思うわけでございますが、ただいま日本政治立憲政治になっておりますが、実態としては方々で言われますように、政治を動かす相当大きな力が公務員諸君、いわゆる官僚といわれる諸君によってその原案が作られます関係上、動かされているというような実態があることをいなめないと思うわけでございます。そこにおいて公務員諸君は、国民に奉仕する立場から、公平な立場からいろいろと一生懸命考え原案を作られて、まじめに物事を推進しておられると思うのでございますけれども、しかしながらそこにしばしば独断があり、またマンネリズムがあるということも現実の問題として否定できないと思うわけでございます。そういう場合におきまして、行政官庁の長である国務大臣がこういう問題を発見されましたときには、非常な勇断をもってこの独断とかマンネリズムの弊害をなくするようにされることが大臣としての大事な職分であろうと思うわけでございますが、その点についての御所信一つはっきりとお伺いいたしたいと思うわけでございます。
  4. 小林英三

    小林国務大臣 私の大臣といたしましての考え方並びに態度につきましては、今御意見通りでございます。
  5. 八木一男

    八木一男委員 次に、当然のことでございますけれども、念のため伺っておきたいことは、大臣国会のもろもろの意向を尊重して、その仕事を進めていかれるお気持があるであろうと思いますけれども、その点につきましてもう一回はっきりと御答弁を伺いたいと思います。  もう一つは、行政を進められる点におきましていろいろと設けられている審議会とか、そのような諮問機関の非常に権威あるものの意見を尊重される御意思があるか。  それからまたいろいろと行政上に関係のある国民意見を非常によく聞いて、それを取り入れて物事を処理していかれる、そういうお気持を強く持っておられるかどうか、もう一回伺いたいと思います。
  6. 小林英三

    小林国務大臣 お答えいたします。一つの問題、たとえば今回世上にいろいろ問題にされておりますような新医療体系の問題、このような問題につきましては、もちろん私は法制によってきまっております審議会の御意見等につきましては十分に尊重いたしていきたいと思いますし、またこれに対します国会における御意見等につきましても十分尊重して参りたいと思っております。それからこういう問題につきましては、ことに今回の新医療費体系のような、こういう画期的な改正の問題につきましては、私はでき得る限り、国内のあらゆる関係諸団体あるいはそれらの関係者等の御意見も徴しましてそうしていいことであればどんどん取り入れることにはやぶさかではないつもりでやっておるのでございます。
  7. 八木一男

    八木一男委員 実は昨日社会保障制度審議会答申が出ましたので、もちろん厚生大臣もこの内容はよくお読み下さったと思うわけでございますか、この社会保障制度審議会健康保険改正案を主といたしました諮問案に刑する答申案におきましては、今度の非常に問題になっております一部負担につきましても、今度の政府改正案が悪いということを明らかに答えておるわけでございます。こういう非常に権威のある、非常に熱心な答申を尊重されまして、現在出そうといたされておりまする政府案を出すことをとどめる御意思がありますかどうか。
  8. 小林英三

    小林国務大臣 今の御質問は、健保改正案の一部負担の問題だろうと存じますが、これにつきましては一方社会保険審議会にも諮問をいたしておりまして、これに対しまする答申も参っております。同時に今お尋ねのような社会保障審議会答申も参っておるのでありますが、こういう問題につきましては、私どもは十分に双方の御意見も尊重いたし、十分にそれらの問題をしんしゃくいたしまして、そうして対処していきたいものだと考えております。
  9. 八木一男

    八木一男委員 そういたしますと、社会保障制度審議会答申趣旨を尊重して、この健康保険改正案を提出することを思いとどまられるか、あるいは提出されても、その点については削除されて提出される、そういう御意見でございますか。
  10. 小林英三

    小林国務大臣 両審議会のいろいろり意見を尊重いたしまして、私どもが両審議会答申につきまして十分に考慮をいたし、進んでいきたいものだと考えております。
  11. 八木一男

    八木一男委員 さっき尊重すると言われましたけれども考慮というのはどの程度でございましょうか。
  12. 小林英三

    小林国務大臣 私が尊重すると申しましたのは、概括的のことを申し上げたのでありまして、これは両審議会ともこの健康保険改正の問題あるいは一部負担問題等につきましては、この問題はこう思うとか、あの問題はこう思うとか、というようにいろいろの条項につきましての答申が出ておるのでありまして、私どもといたしまして今日の健保赤字対策につきましては、両審議会意見も十分しんしゃくいたしまして、善処いたしたいと考えております。
  13. 八木一男

    八木一男委員 この健康保険改正案の一部負担について、政府原案を変えられることは確かでございましょうか。
  14. 小林英三

    小林国務大臣 政府原案と申しますか、一部負担の問題につきましていろいろの方法があるのであります。たとえば先般御承知のような毎日三十円ずつ初診料からとっていくという方法、あるいは病院におきましては入院患者の六ヵ月分に対しまして三十円をちょうだいするとかいうような案もある、そのほかにもいろいろの案があるのでありまして、両審議会答申に基きまして一部負担をする、その形につきましては目下いろいろ検討中でございます。
  15. 八木一男

    八木一男委員 社会保障制度審議会では財政対策としては根本的に反対であるという文言もあることは大臣も御承知だと思いますが、振りかえをなさっても二十三億というような財源を補てんするための一部負担であれば、社会保障制度審議会の慎重な討議を尊重したことにならないということをどうかよく御記憶願いたいと思います。この健康保険改正案につきまして、私はこのような改正案厚生省がよくも準備されたと、実際心からあきれるものでございます。鳩山内閣社会保障制度を非常に拡大すると常々言ってこられた内閣でございますし、その社会保障のおもな担当者であります厚生大臣としては、このような実質上の改悪案を出すことをほんとうに命がけで阻止しなければならないのに、そういう点で非常に御努力が足りなくて、このような非常に悪い案を用意されておる点について非常に残念に思うわけでございます。この点につきまして厚生大臣の基本的な考えを伺いたいわけでございますが、厚生大臣社会保障制度を後退させる御意思があるのではありませんか。
  16. 小林英三

    小林国務大臣 そういう意思は毛頭ございません。
  17. 八木一男

    八木一男委員 現に健康保険というものが社会保障制度の大きな柱であることは明らかでございます。この健康保険法において昨年の六月に世界一高い料率が五%値上げになった。そして今度は標準報酬も上げようというわけです。両面でたくさんとって、そして給付についてはこのような一部負担という非常な改悪をしよう、両面だけでなくて、三面、四面、方々から改悪をしているわけであります。これをもし改憲でないと言われるならば、厚生大臣健康保険並びに社会保障に対する御認識がはなはだ薄いのではないかと思うわけでございますが、その点について伺いたい。
  18. 小林英三

    小林国務大臣 いろいろ御質問なさっている点と私の考えとは意見相違があるかと思いますけれども、私はたびたびこの委員会でも申し上げておりますように、今日の健康保険内容は、数年前、いわゆる黒字で行っておりました当時から考えますと相当レベル向上いたしておるのであります。今日の健康保険を健全なる財政に建て直しますためには、こういう姿の健康保険の上におきましては、国庫負担をし、被保険者にも一部負担をしてもらって、標準報酬も一部レベル・アップをして健全な姿に直す、そうしてりっぱな健保として再出発していく、過年度のように借金でいつまでも糊塗していくことはいけない、これがひいては被険者のためにもなる、こういうふうに考えておるのでございます。
  19. 八木一男

    八木一男委員 ただいましベルが向上したと言われますけれども、こんなものは実質向上ではございません。たとえば厚生大臣はこの間堂森委員質問に対しましてか、社会保障制度審議会でありましたか、ストレプトマイシンとかバスとかいうものを非常に使ったことが赤字一つ原因になったということで、そういうことがレベル向上のように思っておられるかもしれませんが、ストレプトマイシンやパスの使用でも、現在の医学常識からすれば、現在の健康保険の制限は少いのでございます。半年以上は支給できないことになっておりますけれども、その両方の使用は、今は一年以上ということが医学上通例になっております。医学上の常識まで達しておらないわけであります。そういう点で厚生大臣認識が非常に薄いのではないか。原案を作られる官吏の方はいろいろやられておりまするけれども、もっと大きな角度からこの問題を大臣としては御研究願いたいと思います。レベル向上したと言われまするけれどもレベルはいくらでも向上させなければならないわけでございます。進歩した医療国民がどんどん受けられるということにするのが厚生大臣の任務でございまして、レベル向上したからある程度ストップしてもいい、そのようなことは厚生大臣の言うことではございません。いろいろと諸外国の例などあげて説明される方もございまして、諸外国イギリスとかニュージーランドの例があって、その例に達しているから相当高い程度だという方もございます。しかしながらイギリスニュージーランドとは日本事情が違う点を厚生大臣一つ考えていただきたい。日本は非常に貧困である。日本は非常に病気が多い状態にある。その点でイギリスとかニュージーランドとか、そのよらな国よりもこういう内容はもっともっと高くならなければいけないのだということをはっきりと頭に入れておいていただきたいと思うのでございます。その意味で、このような点でとめることは社会保障制度の非常な後退でございます。いろいろとほかとのバランスという問題を主張しておられますけれども、高いところに並べていくことが厚生行政の最もいいやり方でございまして、よくなったものを低くするのでは何にもならないわけでございます。そのようなことをなさるのならば、社会保障制度の拡充をはかるという看板をはっきりおろすということをここで言っていただきたいと思うわけでございます。
  20. 小林英三

    小林国務大臣 八木さんの御質問の中に、現在の健保レベル・アップしているのは抗生物質等を使うためであるというように私が申し上げたようにおっしゃったようでありますけれども、そうではないのであります。私が抗生物質使用一つの理由に申し上げましたのは——健保が何がゆえに赤字になったのであるかということを、私は就任早々検討いたしました。それにはいろいろな原因があるのでありまして、たとえば今申し上げましたような抗生物質の採用も、二十九年度の赤字が出ました前の年に採用いたしておる。これは当然でございます。それからたびたび申し上げますような点数の改正もいたし、また二年間の給付期間に三年間に延ばすとか、そういうふうな、原因一つにあげたのであります。それらがやはり二十九年度からぼつぼつ出てくる。私が健康保険内容レベル・アップしたと申し上げておりますのは、抗生物質を採用したということでなくして、最近非常に医術進歩いたし、また医者の技術も進歩をいたしました。それからまた従来健康保険というものには多くかからなかったのが、最近は進んでかかるようになってきて受診率も多くなった。また診療所でありますとか、病院でありますとか、そういうものも毎年たくさん全国に新設、増設されておりまするし、保険医も年には六千人もそれ以上もふえておるというようなことで、つまりレベル・アップいたしておるということは、今日の健康保険医術進歩その他によりまして非常にレベル・アップしておるということを私は申し上げたのであります。ただ問題は、この赤字になっております。るものを——たとえば昭和三十一年度におきましては六十数億円の赤字になろうとしておる。これをいかにして解決するか。従来の通り借金によって一時を糊塗するかあるいは全額国庫負担をさすべきであるか、あるいは私が今申し上げておりますような、国庫負担をし、今日のような健康保険状態であるから、このくらいな程度は被保険者に持たすべきであるというような問題があると思う。八木さんのお考えでありますと、一部負担をしちゃいかぬというのでありますから、多分全額国庫負担でこれを解消すべきである、こういう御意見であろうと思うのでございまして、私はそこには見解相違があると思います。こういうような健康保険状態におきましては、私は今まででも一部負担しているのであるから、初診料五十円もらっているのでありますから、その初診料五十円もらっている一部負担をもう少し拡大をしてそうして国家からも負担し、一部を負担させ、また標準報酬も上げて、そうして健保を健全なる姿にして、お互いの被保険者のためにもなるようにしたい、こういうわけでありますから、御質問の御趣旨とよほど私ども意見とは見解相違があります。しかし私はこれによって健保状態を後退させたいという考えは持っておりません。
  21. 八木一男

    八木一男委員 大へんとんでもない御意見を伺ったわけでございまするが、私は財政が苦しいから少ししんぼうしてくれというようなお話を伺うかと思ったら、一部負担が当然いいような意味を含んだ御答弁を伺って非常に心外でございます。きのうも同僚の長谷川委員からの御質問もありました通り、一部負担というのは、現在の非常に貧困労働階級にとりましては非常に大きな負担でございまして、これによって受診が減るということは明らかであると私どもは思うわけでございます。受診は減らないという意味でしたら、政府として減らない証拠をはっきりとあげていただきたいと思うわけでございますけれども、こういうことによりまして、ほんとうに大事な早期診療ということが阻害されまして、保険ほんとうの一番大事なことが実際に価値がなくなることになると思うわけでございますが、その点についていかがでございますか。
  22. 小林英三

    小林国務大臣 今八木さんのおっしゃった中に、私が国家財政の云々にかかわらず、今日の健保状態においてはむしろ一部負担さす方がいいんだというようにおっしゃったようでありますが、私は必ずしもそう申し上げているのではない。一方におきましては、国家財政もかなり苦しいし、また今日のような健保状態においては、多少の負担はしていただくことによって健保軌道に乗せていきたい、こういうのであります。
  23. 八木一男

    八木一男委員 そこのところ、よく聞きとれません、もう一回はっきり言って下さい。
  24. 小林英三

    小林国務大臣 多少の負担はしていただいて、そうして健保を健全な状態にすることが、被保険者のためにもなるということを申し上げているのであります。
  25. 八木一男

    八木一男委員 そこがちょっとはっきりしないのですけれども財政上で仕方がないからそういうふうにしたいという御意見なんですか。一部負担を認められるのですか。一部負担がいいと思うのですか。
  26. 小林英三

    小林国務大臣 これは、国の財政状態というものも、私はある程度まで考えに入れなくてはなりませんし、また今日の健保状態からして、国も一部負担し、また被保険者にも一部負担させて、健保を健全な状態軌道に乗せていくということを申し上げているのであります。
  27. 八木一男

    八木一男委員 そのような、やむを得ないとかいうことでなくて、一部負担という思想が健康保険上にいいものであるかどうか、その点について厚生大臣のはっきりとした御見解を承わりたいと思います。
  28. 小林英三

    小林国務大臣 今日のような日本財政状態においては一部負担もやむを得ないことだと思います。
  29. 八木一男

    八木一男委員 そういうことを聞いているのじゃないのです。健康保険という制度において、一部負担というものが、よいものであるか、よくないものであるか、そういう根本理念について伺っているのです。財政関係なしにお答え願いたい。
  30. 小林英三

    小林国務大臣 それは、社会保障の中核でありまする健康保険でありまするから、一部負担をさすということは避けるべき問題とは存じます。しかし先ほどからたびたび御説明申し上げているように、今日の状態においては一部負担またやむなしという考え方でございます。
  31. 八木一男

    八木一男委員 今日の状態においては、一部負担またやむなしということは、大臣の心の内を解釈して言いますと、財政上の問題その他で、一部負担やむなしというわけですから、一部負担は柔的にいけないけれども、今の鳩山内閣の政策としては仕方がない、そういう御意見でございますか。一部負担はいけないということをわかっておいでになるわけでございますね。
  32. 小林英三

    小林国務大臣 お互い意見の交換をしておりますと、いろいろと誤解もあるようでありますから、はっきり申し上げますが、私は今日の一部負担という問題は、これはできるだけ避けたいとは思います。しかし今日の日本財政状態からも考えまして、また一方においては健康保険というものが、数年前よりもよほどレベル・アップいたしておりまするから、一部負担をしていただいて、この問題を解決いたしたい、こういうのであります。
  33. 八木一男

    八木一男委員 今の御答弁で、一部負担はいけないものであるけれども、今日の財政上のことから仕方がないという御意見だと伺いましたけれども、それにもし間違いがございましたら、大臣から御訂正願いたいと思いますが、そういう御意見で非常に安心をいたしました。厚生省を預かっておられる大臣が、一部負担がいいなんというお考えを持っておられるとしたら、それは日本のためにゆゆしき一大事だと思いますが、そうでないと聞いて安心したわけでございますが、さらにそれでいいかどうか、一つ……。
  34. 小林英三

    小林国務大臣 その通りであります。
  35. 八木一男

    八木一男委員 それでございます。と、こういう一部負担が一番大きな問題でございまするけれども健康保険改悪原因は、一に財政にかかってきたようなことになるわけでございます。それで今まで国庫負担をしてこういう問題を解決すべきであるという意見は、社会保障制度審議会社会保険審議会から何回も答申が出されておるわけでございまして、今度の健康保険改正案に関しての諮問関係する答申案においても、両審議会国庫負担ということを大きくうたっているわけでございます。この点につきまして政府法文化していない点、それから額が少い点は非常に遺憾でございまするが、その点について厚生大臣としては、通したかったけれども、どうにもならなかったというようなことの実情をお聞かせ願えれば、非常にありがたいと思います。
  36. 小林英三

    小林国務大臣 今の御質問趣旨がちょっと私聞き取れなかったのですが、もう少しはっきりと突き進んでおっしゃって下さい。
  37. 八木一男

    八木一男委員 社会保障制度審議会並びに社会保険審議会において、国庫負担をちゃんと法制上明らかにきめておかなければならないという答申案が出ておるのでございまして、さらに、社会保険審議会では二割の国庫負担という定率もうたっているわけでございます。こういう点につきましての厚生大臣の御見解と、それからもしこういう点の実現に御努力になって何らかの事情でこれがうまくいかないというような経過がございまして、これを御説明下さる御意思がございましたら、その点に関してもあわせて御説明願いたいと思います。
  38. 小林英三

    小林国務大臣 今の国庫負担という問題を法制化いたしたいという考え方は、私並びに厚生省全体といたしましても、最初からあったのでございます。ただ問題は、いろいろ大蔵省との関係もございまして八木さんでありましたか、先般の予算委員会において御質問になったときに、大蔵大臣は、保険財政の建て直しのために措置する考えである、こういうことを言ったように思っております。私は、とにかく国家が出しておるのであるから国庫負担だということを言ったのでありますが、この問題に対しましては、私も社会保障制度審議会あるいは社会保険審議会等答申もあることでありますから、できる限り法文の上にそういうことも入れたいということで、目下努力中であります。
  39. 八木一男

    八木一男委員 法文の中にお入れになる御努力については、その御努力をどんどん強く推進していただきたいと思うわけでございまするが、そこにおいて、国庫負担について、もっともっと強力な態度でいっていただきたいと思うわけでございます。健康保険保険だから、給付について保険料でまかなわなければいけないというような、ごく狭い意味保険学的な意見がいろいろとこういう問題に影響を与えているように思うわけでございますけれども、そうした問題ではないと私ども考えるわけでございます。といいますのは、医療がどんどん進歩してきて、その医療を受ければ病気が早くなおる、あるいは死なないで済むというときに、これはどうしてもその進歩した医療を受けられるように持っていくことが政治やり方ではないかと思う。ところが個人財政保険財政も非常に乏しい。だからそういうことができにくいというときには、もっと大きな立場からこれを補てんする、そういうことができるようにしていくことが政治の常道ではないかと思うわけでございます。一部の学者の中には保険料で取っても税金で取っても同じであるから、国庫負担ということはあまり意味ないということをおっしゃる単音がおりますけれども、こういうものは保険学に局限しておるものでございまして、非常に間違った意見だと思います。現在の税金では累進率がございますし、負担ができないような非常に貧困な家庭には税金がかかっておりません。そういう意味において、税金で取ったり保険料で取った財源から国庫負担をするのとでは大いに意味が違うわけでございます。国庫においても、保険というのが命を助ける、病気をなおすという一番大事なところにお金をよりたくさん出すことによって、不急不要のところに出る金が減るわけでございまして、その意味においても大きく違うわけでございます。このようなわけで保険だから保険料でまかなえとか、税金でもあるいは保険料でも同じだというようなたわいのない、社会の実情に合わないような俗論に惑わされないで、一つ強硬に国庫負担が多額に実現するように、ぜひ御努力を願いたいと思うわけでございます。  そのような意味厚生大臣も、今度ここに国庫負担をうたわれるそうでございますから、あと数日の間出されるまでに非常な御努力を期待するわけでございます。厚生大臣はどうかほんとうに強硬にやっていただきたいと思います。大臣といたされましては、もちろん厚生省を担当されました以上、この厚生行政に挺身しようという御意欲がおありかと存じますけれども、これは非常になまいきな言い分でございますけれども、この健康保険改正という問題は非常に重大な問題でございます。この意味で、もし大臣国庫負担は多くしよう、一部負担というようなものはいかないというような意見にブレーキをかけるような、今までのマンネリズムを排して断じて行われることが、大臣が十年間厚生大臣をやられるよりはずっと国のために役に立つと思うわけでございます。ほんとう大臣が辞表をたたきつけてまた次の人がたたきつけて、またその次の人がたたきつけてやるならば、このような改悪はとまり、国庫負担が実現するわけでございます。どうか国民のために大きく勇気を出してそうして大臣がこれをやろうとすることを阻止するような公務員がもしおられるとしたならば、その者たちに対しては断固たる態度で臨まれまして、今の御所信を貫徹していただきたいと思うわけでございます。一つこの点についてお願いしたいと思います。  これから幾分健康保険のほかの点について申し上げたいと思うわけでございます。継続給付の問題あるいはまた家族の範囲の問題で非常にこの諮問案改悪になっております。この問題につきましては非常に弱い面に当りが強いと思うわけでございます。原案といたしましては逆選択を防ぐとかというようなものを考えておられるようでございますけれども厚生行政の本質から見ましてそれは本筋が違うと思うわけでございます。もしこのようなものを原案を作った人が主張せられましたときには、厚生大臣はこれをたしなめていただきたい。国民を悪者扱いして、悪いものを防ぐために、そういう口実のもとにほんとうの正当な権利を今まで持っていた人、そうして非常に気の毒な人が既得権が奪われる、そのことの方がずっと悪いことだということをどうか大臣は打ち出していただきたいと思うわけでございます。国民を悪者扱いにして逆選択があるからこういうことをやるのだ、こういうことによって今まで続けて見てもらえるような立場にあった人が、今年は継続給付の要件が強くなったためにだめになる、そのときは失業のときです。職を失って病気になっている、そこでそのようなことがだめになるようなことがあれば、非常に惨たんたる運命がその人たちを襲ってくる危険性があるわけであります。この東京の中失で、部屋の中で案を考えておりますときに、そういう人たちに思いをいたすことが非常に乏しくて、間違った意見も出ることもございますけれども、こういうことが非常に間違っておるので、どうか大臣からそういう間違いを直すように、強力に御指示を願いたいと思うのでございます。  それからもう一つは、家族のことについてでございますが、この点についても非常に不幸な人、たとえばみなしごだとか不具の人とか、そういう人たちが親戚の好意によって、三等親よりもっと遠い、たとえばいとこの好意によっていろいろと扶養されている。そしてその人の保険によって病気になったときに見てもらえるというようなことを、ここではずすことになるのですから、一番気の毒な人たちを突き放すような結果になるのです。しかもこの人数は三千八百人という厚生省当局の御発表でございまして、財政にはごくわずかしか影響がありません。厚生省考え方は、特にこういう気の毒な人たちに対する思いやりがなくてはならないと思うわけでございますが、この原案ははなはだ苛酷であると思うわけでございます。この二点についてお直しになる大臣の御決心をぜひ御被瀝願いたいと存じます。
  40. 小林英三

    小林国務大臣 今お尋ねのような点につきましては、目下十分に検討中でございます。いずれ国会にも御審議願うと思いますが、私といたしましても、今御意見のような問題につきましては、十分に掘り下げて考えて参りたい存じます。
  41. 八木一男

    八木一男委員 ただいま伺いましたけれども、今の二点と、先ほどの一部負担財政関係で提案しておるからいけないものであるということをどうぞお忘れなく、また聞いておられる厚生省関係の方は、大臣がこの御意見であるということを、しかも社会労働委員会で明言されたということをはっきりと御記憶願いまして、その点についてこれまで提出されていない案の処理をしていただくことを要望しますとともに、それがほんとうに実現されるかどうかを、われわれは厳重に監視することを申し添えておくわけであります。健康保険の問題につきましてはこのくらいで他委員にあとはゆだねまして、次に新医療費体系の問題でちょっとお伺いいたしたいと存じます。新医療費体系の非常に精密な点につきましては、同僚委員がさらに御質問をなさると思いますので、この点については触れませんけれども、この問題と健康体険の一部負担の問題で、非常に今世の中が騒がしくなっております。それにつきましては、大臣はどのようにお考えでございましょうか。
  42. 小林英三

    小林国務大臣 今八木さんの御質問は、世間で騒がしくなっておるという問題についての私の所見でしょうか、それとも別の御質問でございましょうか、ちょっと明らかにしていただきたいのですが、もう一度恐れ入ります。
  43. 八木一男

    八木一男委員 もっとはっきりした言葉で御質問申し上げます。一部負担の問題と、新医療費体系の問題で、非常にこの案が不合理であるために、関係者のこれに対する非常な不満の声が高く、そしてこれが強行されるならば、保険医の総辞退をしようじゃないかというような決議をされたような団体もあるように承わっておるわけでございます。こういう重大な問題につきまして、大臣は現在の状態をどのように考えておられるか、このまま政府考え方を押し切っていこうとされましたときに、ほんとう意味保険その他に非常な悪影響を及ぼさないと考えておられるのかどうか、その点について伺いたい。
  44. 小林英三

    小林国務大臣 今御質問の中にありました、新医療費体系の問題、それから健康保険赤字対策の問題、これは私ども常に申し上げておるように全然別個の問題でございます。それから今の新医療費体系の問題につきましては、これも常に私の意見として私の考え方を申し上げておるのでありますが、これは近くスタートいたすことになっております医薬分業に関連いたしまして、新医療費体系を兼ねて厚生省が発表したわけでございます。ただいま医療協議会に答申を求めているわけでありますが、この問題につきましては、画期的の改正でございますから、医療協議会の答申はもちろんでありますが、すべての関係団体、すべての関係者の御意見も十分拝聴いたしたいと思います。厚生省が発表いたしました新点数等も、厚生省といたしましては、これでりっぱにやっていける、こういう確信のもとに作りましたことはもちろんでございますけれども、これは私がたびたび申し上げておりますように、人間の作りましたものでございますから、場合によりましては改むべき点もあるかと思います。そういう点もございますから、医療協議会の答申、それから関係各界の方々、全国の関係者の方々、私は努めてこれらの方にも折衝もし、弁解もし、いろいろと慎重に御意見を聴取しているのでありましてできるだけりっぱなものにして実施いたしたい、こう考えておるのであります。
  45. 八木一男

    八木一男委員 この問題が健康保険関係がないというお考えは、私どもとしては断じて納得ができないわけでございます。ただし健康保険の一部負担制度については、全部撤回される御決心のようでございますから、この場合には関係が非常に少くなります。そういう意味において了承したいと思います。  次に新医療費体系につきましては、非常に粗雑な計算がやられているように思うわけでありまして特に技術料などにつきまして時間計算というようなことをやっておられるように承わるわけであります。さらにまた非常に頻度の高いものに対しては点数をぐっと下げて、現在開業しておられる医師の方々の収入が具体的にうんと減るというような内容を示しておるように思うわけでございます。この点につきまして、十分強い決心で再検討されませんことには、非常に重大な事態が起るのではないかと思うわけでございます。開業しておいでになる医師の方々、その他すべての医師の方も、現在社会保険が非常に進歩いたしましたので、社会保険というもののいろいろのきめ方によりましてその御生活に非常に影響が多いものでございます。こういう方々が、やはり生活というものに後顧の憂いなく医療に邁進されるようになりませんことには、日本医療行政上非常なマイナスが起ると思うわけでございます。この点につきましては、同僚委員がさらにこまかくいろいろと御質問になると思いますので、この辺にとどめたいと思うわけでありますが、どうもこの案が実態に沿わない財政対策であって、ほんとう関係者に合わない問題であるように思うわけでございますので、この点についてほんとうに十分なる御再考を願いたいと思うわけであります。  さらにこの問題につきましての最後に、もし政府がこれを強行されて、不一にして保険医の総辞退というものが起りました場合の責任を、どのように考えておいでになるでしょうか。
  46. 小林英三

    小林国務大臣 今八木さんの前段のお言葉の中に、健保の一部負担を撤回するというようなお言葉がありましたが、私は撤回するということは申し上げておりません。ただ一部負担の形はいろいろありますから、その形はいろいろ検討中だということを申し上げたのであります。  それから今の御意見でございますが、先ほど新医療費体系について申し上げましたように、私今日の考え方というものは、いろいろ御意見を拝聴して、できるだけいい形にしてこれを実施したいということを申し上げておるのであります。医師の方々がいろいろ会議を開かれましてこの問題を取り上げておられることは、お医者さんといたしましては画期的の問題でありますから、私は全くそういうこともやむを得ない場合もあると思いまして、できるだけ各方面の御理解を得まして、厚生省といたしましては、先ほど申し上げておりますように、是正するところがあれば十分に是正してやって参りたい、こう考えております。進退等の問題あるいはその他の責任等の問題につきましては、ただいま別に考えておりません。
  47. 八木一男

    八木一男委員 私の今の質問の重点は、総辞退が起りました場合に、その責任はどうされるかということをおもに伺ったわけでございまして、たとえばその場合に、健保の被保険者が見てもらおうと思いましても、その地区においては保険医がいないということになりますと、非常に困ったことが起る。もちろんお医者様は人の命を十分に大事にされるお気持でございますから、自由診療はされると思いますけれども、その金の問題で非常に困った問題が起ると思うわけでございます。このような問題が起りましたときに、厚生省としては、被保険者が困らないように、どういうふうにうまく処置されるお考えを持っておられるかということです。
  48. 小林英三

    小林国務大臣 全国の医療担当者諸君はみなりっぱなインテリの方々でありますし、いろいろの事態も聞いておりますけれども、これはいろいろ誤解もありますから、それらの方々とも十分に意見の交換をいたしつつあるわけでありまして従いまして私どもといたしましても、厚生省の最初の案を絶対に強行するなんというような考え方は毛頭ないということは先ほどから申し上げておる通りでありますから、今八木さんのおっしゃったような事態は起らない、こういうように確信をいたしております。
  49. 八木一男

    八木一男委員 厚生省は何と言われましても、総辞退を決議しておる団体があるのであります。起った場合どうするかということを考えておかなければ重大な問題が起ります。被保険者は今のままで保険医の先生方にかかって診療してもらえると思っておりますが、お医者さんは総辞退をされる、これは法律上許されたことであります。そこで今までは見てもらえたのに、金の問題で事実上見てもらえなくなる。金を出せば自由診療で見てもらえますけれども、金はそれほど潤沢ではありません。その場合に厚生省はどうされますか。この問題を検討されておかないで厚生行政の責任は保たれません。
  50. 小林英三

    小林国務大臣 八木さんの御意見、そういうお考えもあるかもしれないと思います。私は先ほどから申し上げておりますように、新医療費体系というものにつきましては虚心たんかいな気持でいるのであります。十分に意見を徴して、そうしてそれらの意見で大いに傾聴すべき点がありますならば、改めてもよろしいということを申し上げておるのであります。従って八木さんが今おっしゃったような事態は私は起らないと確信をいたしております。
  51. 八木一男

    八木一男委員 十分に改めて、問題が起らないようにやられる御配慮は、これは私も賛成でございます。当然そうなければならないと思います。しかし確信をされましても、事態が起った場合にはその場で問題を処理しょうと考えてもだめなんであります。もしそういうことが起ったときにどうするかということを今から考えておかれないと、これは厚生省としての、厚生大臣としての責任がとれないと思います。今すぐ関係の方と御相談になってもけっこうであります。この点についてどうか御答弁を願いたいと思います。
  52. 小林英三

    小林国務大臣 私が先ほど申し上げておりますように、私自身といたしましては、そういう事態が起らないと確信をいたしておるのであります。従ってそういう決心を今する必要はないと思います。
  53. 八木一男

    八木一男委員 起らないという確信はあなた一人だけのことでございます。総辞退をしてはいけないという法律は日本にはない、それで、しようということを方々で決議しておる。その場合にはそういうことが起るかもしれないという前提に立って、いろんな準備をするというのは厚生省の責任であります。自分お一人の確信くらいで厚生行政の大事な点をおろそかにされては国民はたまったものではない。保険医方々は辞退されて、保険診療はされない。そのときに被保険者はどうするんですか。厚生大臣の確信くらいで済む問題じゃありません。
  54. 小林英三

    小林国務大臣 先ほどからたびたび申し上げておりますように、私はそういう事態が起らないように理解も得ますし、またいろいろと意見の交換もいたしたいと思っておりますから、私自身といたしましてはそういう事態は起らないと確信をいたしております。従いましてそれに対してただいまこういうことを善処しようとか、ああいうことを考えようとかということもただいまは考えていないのでございます。
  55. 八木一男

    八木一男委員 ただいまでは考えておられなかったことは私も別にとやかく申しません。しかしうかつで考えておられないとともありますから、賢明な厚生大臣がほかのことは一生懸命やられてこの点は抜けていても、そればかりをとやかく申し上げるわけではございませんけれども、しかし厚生大臣の確信だけでこの問題を考える必要がないと言うことは大きな間違でございます。法律上で別に禁止されていない、そしてその団体では決議をしている。それを厚生大臣一人、自分の主観でそういうことは起らない——起さないような御努力はけっこうです。されてけっこうですが、努力が実を結ぶかどうかは神様でなければわからない。厚生大臣がそれほど神がかりになってもらっては困ります。ですから起ったらどうするかということを即時考えなければならぬ。あしたまでどうかよく御研究になりまして、あしたにでも一つ答弁をはっきりお願いしたいと思います。あした御答弁を願えましょうか。
  56. 小林英三

    小林国務大臣 私の申し上げておりますことは、ただいま申し上げている通りと変りありません。ただいままではそういう考えを持っておりませんということをお答え申し上げます。
  57. 八木一男

    八木一男委員 その問題についての答弁をする考えを持っておられないのですか。
  58. 小林英三

    小林国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、私は起らないと信じておりますから、従いまして今からそういう何らかの決意をするということは考えておりません。
  59. 八木一男

    八木一男委員 それでは厚生大臣、はっきり聞いて下さい、起らないと確信されて起ったらどうなされますか。即時辞職されますか。
  60. 小林英三

    小林国務大臣 あなたのお考えと私の考えとは違うのであります。私はそういうように考えて起らないと信じているのでありますから、従いまして私はそういうことを考えていないのであります。
  61. 八木一男

    八木一男委員 宗教と政治とは違いますよ。起さないと信ずるのはかまいません。あなたの勝手です。しかし起さないと信じてその処置についての答弁もなさらない、それについての研究もなさらないで、もし起ったときには、これはあなたの信じたところが間違っておった、あなたが不敏であった。だから当然あなたとしては責任をとらなければならないわけです。それについての考えをはっきり言ってもらわなければわれわれは承服できない。
  62. 小林英三

    小林国務大臣 八木さんに再び申し上げますが、私はただいまのところ八木さんのおっしゃるような事態は起らないと確信しているのであります。従いましてただいまのところそういうお答えを申し上げることはできないのであります。
  63. 八木一男

    八木一男委員 確信することは勝子だけれども、確信をしたことによって厚生行政上に非常に不都合なことが起った。そうしたら厚生大臣は確信なれたことが悪い、それについては責任をとられるのは当然だ、それがおいやだったら今から確信があっても、十分の一くらいはそういうことがあるのじゃないかと反省されまして、即時準備をされ、研究されるのが厚生大臣の責任だと思います。今答弁をしていただきたいとは申しません。今晩帰って御研究になって、あすでけっこうです、七の点についての御処置、御研究について御答弁願えるかどうか、もう一ぺんだけお答え願います。
  64. 小林英三

    小林国務大臣 八木さん自身もそういう問題にぶつかられた場合にどういうことをおっしゃるかということはおのずからきまっておると思いますが、しかし将来の問題はこれは別問題といたしまして、あすそれに対する答弁をしろということは、そういうことをおっしゃる八木さんが無理ではないかと思います。従いまして私はただいまのところそういうことに対する答弁をしようとは思っておりません。
  65. 八木一男

    八木一男委員 私は何も厚生大臣が万能な人だとは思いませんから、そんなに飛び切り完全な案をあすまで作れということを言っておるのじゃない、こうこうこういうことで考える、こういうことで検討して参りたいという答弁は当然あってしかるべきだと思いますが、それもできないのでございますか。
  66. 小林英三

    小林国務大臣 先ほどからたびたび申し上げておる通りであります。
  67. 八木一男

    八木一男委員 そういうことを考える、何というか、考えても考えがつかないというために御答弁ができないのでありますか。
  68. 小林英三

    小林国務大臣 私は何度申し上げても同じでありますが、私の八木さんに対する答弁は先ほど申し上げた通りでございます。
  69. 八木一男

    八木一男委員 この問題につきましては私どももう一回答弁につきまして検討いたしまして、重大なる覚悟のあることを留保いたしておきます。次に日雇労働者健康保険法のことをお伺いいたしたいと存じます。日雇労働者健康保険法は急速に国庫負担の増車によりまして内容をよくしろということが社会保障制度審議会で前々から合印が出ておるわけでございます。また社会労働委員会の前身でございます衆議院の厚生委員会においてもさようなことが種々論議されました。附帯決議その他でそういうことが明らかにされておるわけであります。ところが今回日雇労働者健康保険法につきましては改正案の御準備がまだないように承わっておるわけでありますが、この点につきましての経過並びに御所信を伺いたいと思います。
  70. 小林英三

    小林国務大臣 一応この問題につきましては所管局長から答弁させまして、その上で私からお答え申し上げます。
  71. 高田正巳

    高田(正)政府委員 日雇労働者の健康保険給付の改善につきましては八木先生よく御存じのように、この二十八年十一月に施行いたしまして以来、逐次改正をいたして参っております。ことに前国会におきましては先生に非常に御尽力をいただいたわけでありますが、歯科の補綴問題とか、いろいろと改善をして参っておるわけであります。それで実は私どもの希望といたしましてはこの国会でも傷病手当金の支給というような問題につきまして改善をいたしたいというつもりで実は希望いたしたのであります。それには国庫負担の現行一割を三割ということにしていただきませんと、なかなかそれができませんので、実はその線でいろいろと努力をいたしたのでございますが、大へん私どもの力の足らないところで、それが実現いたしません。従いましてただいまのところ日雇労働者に傷病手当金の支給ということはこの国会ではそういう改正を提出をいたす運びに至っておりません。なおつけ加えて申し上げておきたいと思いますが、その点は不成功に終りましたが、若干サービスの面で少し改善をいたしたいという心組みで予算の中に計上をされておるものがございます。それは御存じのように日雇い労働者は受診につきましていろいろ御要望もありますように非常に不便を感じておられますので、それらのことも考え合せまして、巡回診療の非常に完備した自動車で職場を回って、巡回診療をいたしたい それで約四千万円程度の費用を計上いたしております。これは給付といたしましてはございませんけれども、福祉施設としてさようなことを実施いたしたいと思います。これが実施いたされますればある程度のあれになるものと私どもは期待をいたしておるような次第であります。大体そういうふうな実情でございます。
  72. 八木一男

    八木一男委員 日雇労働者健康保険法においては、厚生省でいろいろ御委嘱になって調べられた七人委員会においても、五人以下の事業所の労働者の問題とかねて、この問題は国庫負担をたくさんにして解決するようにという答申がございました また昨日の社会保障制度審議会答申においてもこの問題がまた再び言われているわけでございます。この点で前進をさせることが必要でありますけれども厚生省の方で原案を出すまでの運びにならなかったことを非常に遺憾に思うわけであります。御承知通り傷病手当金や出産手当金のこの保険の被保険者に対する影響は、他の保険の被保険者に対するものよりもずっと重要でございます。たとえば毎月月給をとる人であれば、病気になっても直ちに傷病手当金がなくても月給が引き続きしばらくは入るのでありますが、日雇いの諸君は即時収入がなくなるわけでございます。その意味で傷病手当金や出産手当金は絶対不可欠のものでございます。特にこの日雇い労働者の対象になっている人はいわゆるボーダー・ラインの人が多いのでありまして、もしこの保険において給付が十分になければ、生活保護法の適用を受けなければならないような状態にある人が非常に多いのでございますから、その意味でここに大きな国庫負担をされまして給付内容をよくしたところで、財政上もあまり関係ないわけであります。われわれ財政の問題をあまり言うのははなはだ不愉快でありますが、財政の問題を離れましてこの問題を即時よくしなければ、そういう特に気の毒な人々に対する政府の施策としてはなはだ不十分であると思いますので、私どもといたしましては日本社会党から独自の完璧な改正案を今国会に提出する予定でございます。その内容が非常によいものでございますので、政府といたされましてはそれに十分に御協力を願いたいということを申し添えておく次第であります。  次に、この問題はさておきまして、結核の問題で少しく御質問を申し上げたいと思うわけであります。結核の問題で昨日同僚の長谷川委員からいろいろと御質問があったわけでございますが、本年度の結核対策費が実質上非常に減っておりますのを大へん遺憾とするわけでございます。総額は三億か四億ほどふえておりましても、これは国立療養所の運営費の方でふえているだけでありまして実質上の結核対策の費用としては減っておるような結果になっております。現在結核問題が非常に重要でありますときに、政府はこの結核問題をなおざりにするつもりでこの予算を組まれたのであるか、この点厚生大臣の明確なる御答弁を願いたいと思います。
  73. 小林英三

    小林国務大臣 厚生省といたしましてはますますこの結核対策ということを推進していきたいと存じておるのでありますから、お聞きのようななおざりにするというような考え方は、毛頭持っておりません。
  74. 八木一男

    八木一男委員 厚生大臣ははなはだ信念の強い方でございますけれども、そういう信念だけでは世の中は進まないわけでございまして現実に財政支出をもって裏づけをしていただかないことには、われわれは納得ができないのであります。現に結核のベッドの増設は昨年度よりも激減をいたしております。各療養所においてベッドがあいておるからこれでいいのだというようなお考えなのかもしれませんけれども、各療養所でベッドがあいておりますのは生活保護法の締めつけとか健康保険の締めつけであいておるわけであります。政府としてはそういう締めつけで現在のベッドをあかして、そしてまた一方にふやさなければならぬベッドの増設の費用を削減する、このような結核問題を実に軽視した措置をとっておられるように思うわけでございますが、その点先ほどの厚生大臣の御所信とは全然反対の結果が予算に出ております点につきまして、御所信が間違っておったのか、それともそうでないのか、はっきりと伺いたいと思います。
  75. 小林英三

    小林国務大臣 私は先ほど、結核対策につきましてはなおざりにしておりません、どんどん推進をしていきたいということを申し上げております。今お聞きのようにベッドが減っておりますことは事実でございますけれども、これは八木さんも御承知のように三十年度は九千床作りまして本年度が三千床になっておりますから、多分このことを御指摘じゃないかと思いますけれども、われわれといたしましては三十三年までに二十六万床のベッドを作ることを目標として参っております。もうただいまでは大体二十三万床くらいはどんどんふえておりまして、ことに今までは一年半が回転率であったのでありますが、最近は四百六日くらいにこれがつぼまって参っているというような関係もございますしいたしまして、大体ことしは三千床でよかろう、こういうことでいたしたのでございます。
  76. 八木一男

    八木一男委員 厚生大臣は、結核問題の根本的な調査がありましたときに、入院を要する患者が日本全体で百二十七万人という数字が出ましたことを御承知でございますか。
  77. 小林英三

    小林国務大臣 今結核患者の数を大体私どもは二百七十万人くらいに考えておりますから、かりにその半分が要入院者といたしますと、八木さんのおっしゃったような数字が出てくるものだと思います。
  78. 八木一男

    八木一男委員 そういたしますとベッドの増床ということはどんどん進めなければならないことなのに昨年度よりも減らす、予算の総額は昨年度よりふえておるはずであります、これは厚生省が非常に腰が弱いか、なまけていたか、結核問題を袖にしたか、いずれかの現われだと思うのでございますが、これはどうですか。
  79. 小林英三

    小林国務大臣 私は大体ベッドの減床の問題につきましても申し上げましたが、さらに御納得をしていただきますために、担当局長からもこの問題を一応御説明申し上げたいと思います。
  80. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 全般的な結核対策につきましては公衆衛生局長が担当でごさいますけれども、このベッドの対策等については私どもも国立の療養所等をおあずかりいたしておりますので、かわってある程度御説明申し上げたいと思うのであります。御承知のように、大臣も今申されましたようにさしあたりとしましては私ども二十六万床計画というのをただいま持っておるわけであります。もちろんこれも御指摘ございましたように、先般の結核の実態調査によりましては百万をこえるかなり多数の要入院患者かあるという数字も出ておるのでありますけれども、あれは特に選ばれました地区についてきわめて精細な調査をいたした場合、その結果を九千万近い今日に延ばしました場合に、あのくらいの数に推定されるという意味でありまして、今日現実につかまれておる患者、入院を要する者はさように多いものではございません。もちろんこれは明らかであります。これは見つけ出したときにおそらくこれだけのものであろうというふうに考えられるのでありまして、現実につかんでおる数字はそれだけないのであります。一方におきましては、さような隠れておる患者をいかにして見つけ出すかということが一つ大切な仕事になってくるのでありまして御承知のように検診の範囲あるいは検診のやり方を精細にいたすためにいろいろと予算も組んであるわけであります。しかし今日において、今申し上げたようにつかまれております者はそれだけない。また見つかりました患者につきましても、先ほども一つの要因として御指摘になりましたが、いろいろ経済的な問題、あるいは経済的な問題がなくとも、家庭的な事情で入院ができない、あるいは入院を希望しないという方もございます。それからまた先般の調査はある一時点における状況を調べたものでございまして、年々どのくらい新たに発生しておるかということについては、その後の調査も繰り返しておりますが、まだ的確につかみ得ない状況であります。これは計画としましては五年後にもう一ぺん同じような調査を行なって、そして初めてこの推移がわかると思うのであります。ほかに毎年々々報告されております患者の数、これは医師から報告がございますが、こういうもの、あるいは年々の調査によって新たにツベルクリンの陽転して参ります者の数、こういうものからいろいろ理論的に推計できないことはないのであります。私ども考えておりますのは、先般つかまれました非常にたくさんの患者でありますが、あの患者の大部分はむしろ過去において発生いたしました。私どもの近い過去と申しますれば言うまでもなく戦争でありまして、戦争中あるいは戦争後のあのきびしい生活、こういうもので患者が非常に悪化いたしまして、その後新しい治療を施しましてもなかなか短期間になおらないというものがたくさん累積しておるのであります。その後に年々新たに出てくる患者、これは新しい治療法によりまして割合に短期間に治癒でき、また治癒し得る見込みがあるわけであります。こういうように今までたまっておりましたものを相当な期間背負い込んでいかなければならぬというところが私どもの今日遭遇しておる結核問題の辛いところであるというふうに考えられるのであります。このたまっておりました患者を、いわばなしくずしに新しい治療方法で治癒せしめていく、あるいはこれを固定化していく、少くとも他に危険のない状態にまで持っていくことが必要になってくるのでありまして、これはあまりはっきりした数字を申し上げることはいかがかと思いますけれども、私どもは十万ないし十五万のベッドが、今日次から次へと出て参ります患者のうち、ぜひ入院を必要として処理して参らなければならぬベッドとして必要な程度ではないかというふうに見ておるわけであります。二十六万と申しますればそれを約十万こえるわけでありますが、この十万が今申し上げましたように二十万、三十万でありますればそれはなおけっこうであります。しかしながらこれは少くともどの程度のものが必要かということで、二十六万と一応目安をつけて増床を考えていっております。御承知のように過去におきましては年々大体三万前後の増床を見ております。ところが最近になりまして増床の勢いが鈍ってきております。昨年の八月で見ますと、その前年同期に比べまして二万七千ばかりベッドがふえております。その前の年二十九年の八月では、その前年同期に比べますと、三万三千のベッドがふえておったわけであります。このように  ベッドの増が幾分減ってきておるわけであります。そのもとは、皆さんからも御指摘を受けておりますが、入院患者の割合と申しますか、要するに病床の利用率が最近顕著に下ってきておる。このことは昨年からも申しておったのでありますが、この事実は二十七年を最高といたしましてすでに二十八年に見られた傾向で、二十九年、三十年、今日までこれは続いておるのであります。このいろいろな要因としまして、あるいは入院したいのだが経済的に制約があるために入れないという方があることも、一つのファクターとしてはあるでございましょうが、全般として結核の患者が峠を越しまして、むしろ低下の道に入ってきたのではないかというふうに見る見方も、かなりな学者がその点をさらに詳細検討されておるような状況でありまして、私どもとしましてもいろいろな点がございまして、まだ十分な結論とは申しませんけれども、さような傾向も否定できないというような状況でございますので、もちろん私ども結核対策のために特に技術行政をやっております者としてはもっともっとほしいのであります。しかしながらある程度の予算をちょうだいいたすといたしますならば、それをできるだけ有効に使用して参るという意味におきましては、結核の病床の増ということもさりながら、他にたとえば患者の医療費の公費負担とかなんとかいう面で多少なりそちらに方向を伸ばしていくべきではないかというように考えたような次第でございましてベッド自身としましては確かに増床が押えられましたこと、これは私どもとしても遺憾ではございますが、それを補うだけの仕事を他にやって参りたい。たとえば結核療養所におきましては、増末は一応要求はいたしましたけれども、これは私ども今回は思いとどまりましてそのかわり既存の病床の整備に昨年の増床分とほぼ同じ程度の整備費をちょうだいいたしまして、腐朽いたしましたところを改築して、そうして患者に対するサービスの向上改善ということに充てたいと考えた次第であります。
  81. 八木一男

    八木一男委員 ただいま医務局長の御説明を伺って、ほんとうにもうあぜんとしてりつ然としたわけであります。百三十何万名という数字は一応概数として出たけれども、つかめないつかめないということは、厚生省が今までなまけていたからつかめなかった。検診を全国にできないからつかめなかった。そういう重大な責任を抜きにして、つかめないから減っているのだ、そのようなことは非常な独断であります。  それからもう一つはベッドが少くて済むということ、これは健康保険と生活保護の方で締め出して、どんどんと追い出しているからあいておるわけでありまして、それを種にして、あいあいたから必要がないのじゃないかという、そのようなことは実に悪らつなやり方でないかと思うわけであります。現に新しい患者は別の意味でどんどん出ております。今病床をふやすことを少くし、あるいはまだ病院にいなければならない人を、どんどん病床から追い出すような措置で、これから新しく、特に結核菌の耐性菌を持った患者がどんどんふえたような場合には、厚生省はどういうような責任をとるか。日本国民の何十万、何百万、何千万に非常な大きな悪影響を来たすようなことがそこに包蔵されているわけであります。ちょっとやそっとの金の問題じゃない。大蔵省ならともかく、厚生省の人が、そう簡単に、この問題を悪い方にほったらかして、責任が保てると思ってもらっては因るのでございます。事務当局が、非常に精密な点もございまするけれども、こういうふうに大事なことを十分に研究していない点もずいぶんあるわけでございます。厚生大臣はどうかその点について厳重に御監督を願いたいと思うわけです。結核問題というのは伝染という要素を含んでおりますので、現在の問題だけで考えてはいけない。将来伝染で患者がふえた場合には、現在よりもずっと大きな問題が起るわけです。それを食いとめなければならない。予防措置でも、ちょっとくらいふやしたことを言っておられるけれども国民全部に健康診断をしようという考えはない。四千二百万人のツベルクリンくらいで済ましている。そういうことでこの問題を片づけようとしていることは、実に厚生省当局としては腹がまえができていない証拠であります。とにかく厚生大臣は、厚生行政において結核問題を重視すると言いながら、具体的に金の面において後退しております。予算の総額はふえておるのに、この重大な問題で金の面で後退していることは、厚生大臣がいかに信念を持ってこの問題をゆるがせにしていないと言われましても、それがうそであることの明らかな証拠であります。厚生省は結核問題をなおざりにし、非常に軽視しているということを、私どもは世の中に訴えたいと思うわけであります。その点について厚生大臣は何か御異論がございましょうか。
  82. 小林英三

    小林国務大臣 八木さんのおっしゃいましたような、結核対策について後退でありますとか、あるいはこの問題について非常に冷淡であるとかいうようなことは全然われわれは考えておりません。八木さんも御承知のように、死亡率は最近非常に少くなりましたけれども、患者の数というものは依然として減っていないのであります。そこで私どもは結核対策として、何と申しましても一番必要なことは、いわゆる予防の問題、それから健康診断の問題——健康診断の問題といたしましては、御承知のように、予算にもございますように、三十年度よりも約一千万人の増員を見込みまして、これを実施いたしたいと思います。予防接種の問題といたしましても、昨年よりも約七十五万人を増加対象といたしましてやって参りたい、このように思っております。  なお医療費の公費負担の問題につきましても、社会保険に入っていないそのほかの方々が結核で手術するというような場合につきましては、公費負担にするとか、その他、外科手術に伴うところの入院を加えまして、対象人員を昨年よりも四万人も多く見込む、あるいはアフター・ケアの問題についても十分にやっていくとか、いろいろ全般的に結核対策について考えているのでございます。
  83. 八木一男

    八木一男委員 予防措置とか何とか数字を並べておられますけれども、これが四千二百万人を対象として、国民全部を対象にしていないという点で、非常に完全でないことは明らかであります。厚生大臣としては、今の結核の予防について、たとえば。パスを早期に飲めば予防が非常に有効であるというようなことも、いろいろと諸研究で出ているわけでございます。そういう問題を積極的に取り上げて、結核を完全に早期間に撲滅するというような重大な決心でかからなければならないのに、一%とか二%の一部分の増額、総体では三億ほどの後退、そのようなことでお茶を濁しておられるようなことでは、実にこの問題に対する責任を果しておられないわけでございます。断固としてこの問題を反省されまして、もっと積極的に推進される必要があるということを御警告申し上げておくわけでございます。  次につき添い婦問題につきまして少しく触れたいと存じます。長谷川委員から昨日触れられましたので、あまり重複することは避けたいと思いますけれども小林厚生大臣にこの問題で御質問することは初めてでございますので、幾分時間をとることを御了解願いたいと思います。
  84. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 八大君に申し上げますが、申し合せの時間がきておりますので、もし幾分時間をとるということになりましたなら、休憩後にお願いしたいと思います。
  85. 八木一男

    八木一男委員 できるだけ簡単に申し上げます。  このつき添い問題につきましては、一般の問題と非常に違う点があるということを厚生大臣は深く考えていただきたいと思うのでございます。厚生省はいろいろと厚生行政について公務員としての公正な立場物事考えておられるのでございますけれども、この問題に関する限りは、それと違った要素があるわけでございます。つき添いの問題で、たとえばつき添い制度がなくなると、看護の内容が低下するというようなことで患者が困るわけでありますが、もう一歩つき添い婦の人たちが失業するという問題に関しますと、厚生省が会社の社長の立場にあって、つき添いの人々は労働者の立場にある、そういう立場があるわけでございます。こういうような立場があります。ときに、厚生省見解が一方的になるということは当然でございます。社長は経理の関係上首を切りたい、首を切るのが正当であるといっても、社会的に見たらそれは重大な労働問題でございます。でございますから、普通の立場と、たとえば森永の問題がどうであったかという問題と、このつき添い問題とは違うのでございます。ですから厚生大臣が、これの現局である医務局とか、あるいは関係局の意見をそのままうのみにされてこの問題を判断されると、重大な間違いが生ずるわけであります。厚生大臣といたされましては、この問題に関する限り、ほんとう関係者の意見を十分に聴取されてこの問題を処理しなければならないと思いますけれども、なかなかにたとえば問題の非常に関係の深い患者である手術後の患者とか、あるいはまた重症患者が、直接に厚生大臣にその考え方内容をお訴えする機会に恵まれておらないわけであります。またつき添い婦の諸君も毎日の仕事が忙しくて、なかなかにそれをお訴えする機会がない。それにもかかわらず、厚生省側としてはそれを積極的に聞いてやろうという態度が非常に乏しい。この前つき添い婦の諸君が参りましたときに、厚生大臣に会っていただきたいということを参議院の重盛社会労働委員長から申し入れましたとき、厚生大臣は会って下さいましたが、わずかそれは十一分か二分、そのようなことで現状を十二分に厚生大臣に知っていただくわけには参らないのであります。こういうところにこの問題の普通の問題とは非常に違ったところがあるのでございまして、ただいまいろいろの問題が起っておりますので、厚生大臣方々の療養所にみずから行かれまして、この問題を聞き、この問題に対する考え方をまとめて、間違った点を矯正していただきたいと思うわけです。前もって療養所に大臣が行かれるからというような連絡なしに、たとえば厚生大臣がそのことをしようとおっしゃいましたならば、私ども即時お伴いたしまして、前もってでなしに、突発的にどこかの療養所に参りまして、実際にその人たちの意見を聞いてそうして厚生大臣のお考えをおまとめになる材料を作っていただきたいと思うわけでございます。そういうふうな御決心があるかどうか。
  86. 小林英三

    小林国務大臣 今の八木さんの御質問に対してさらにお伺いいたしたいと思うのですが、つき添い婦の問題についてでしょうか、それともあるいはつき添い婦というものにかわるべき、厚生省所管の厚生省の雇用関係にありますいわゆるつき添い看護人、こういう問題についてでございましょうか。
  87. 八木一男

    八木一男委員 両方にまたがる問題でございまして、たとえばつき添い婦制度をやめてそうして常勤労働者にかえる、その数が少い、労働力が少い、そのために看護が低下する、そのために重症患者が非常に困る、また前からおった病院の医師、看護婦というような人たちが労働強化になる、そういうために、たとえば手術回数を減す、重症患者の入院をはばむというような現象が起っているわけです。総体についての問題です。
  88. 小林英三

    小林国務大臣 この前の国会で、つき添い婦をなくして、そうして法制厚生省の直接の雇用関係にあるつき添い看護婦といいますか、それを二千何百人置く、こういう問題についてのことだろうと思いますが、この問題は私もこの間八木さんのおっしゃったように従来のつき添い婦の方々の陳情を受け、いろいろ御意見を聞き、また私が御意見を聞く時間がありませんでしたときは担当の局長からもいろいろ聞いたのでございます。これはつき添い婦の方々がおっしゃっていることを全面的に私が信頼していいか悪いかということも考えなければならぬ。つき添い婦の方々がおっしゃっていることには事実の通りのこともありましょうし、あるいは誇大なこともありましょうし、いろいろの問題があると思います。今までのつき添い婦の処置の問題につきましても、できるだけ採用できる人は採用し、全部を全部使うということは厚生省としてはできませんけれども、使えるだけの人はなるたけ使ってあげる、そうしてそのほかの処置もしてあげるということにつきましては、厚生省といたしましても相当努力をしてきたのでありますが、なおつき添い婦が廃止されました国立療養所につきまして、今八木さんのお説のようなことがもしあるといたしますならば、これは十分に検討しなくてはならぬと思います。この前の委員会におきまして、どなたか御質問になりました点につきましても、私はその真偽あるいはどの程度までであるかということも十分検討いたしたのでありますが、なおこの問題につきましては御心配のような点のないように十分善処いたしたいと思います。
  89. 八木一男

    八木一男委員 この問題については実ははっきり申しますと、ここにおられる局長さんなども関係がおありになりますが、その方々が首切り役をしておられるわけです。その方々意見を聞いておられたのではほんとう実態がわからない。大臣が社会労働委員会委員長をしておられたときもそういうことを聞いておられたわけでありますから、大臣に就任されましたら水戸黄門ではないけれども、みずから突発的に行って実態を確かめて間違いのないようにされることが大臣としての責任ではないかと思うわけです。ほかの問題は局長さんや課長さんが調べたことをもとにして判断されてもいい問題もありますけれども、こういう問題は普通の問題とは違うということを心に置いて、大臣としてはできるだけ意見を聞く、そうして善処していただきたいと思うわけでございます。この問題で参議院の社会労働委員会の決議と今おっしゃった厚生大臣の御所信と全然相反したような事実が起っております。ここに証拠がございますけれども、十二月四日の岩手日日新聞で、国立岩手療養所において雑仕婦十名募集、年令二十才より三十五才までの市内在住、通勤可能の者で、十五日までに履歴書を提出してほしい、十六日療養所において面接試験を行う。大臣厚生省当局もこういう人たちに対しまして現在のつき添い婦の中から極力採る。われわれは百パーセント採るべきだと言いましたけれども、少くとも厚生当局は極力採るように配慮するということを常々方々で明快に御答弁になっておるはずでございます。ところが現実にそういう人たちを首切っておいてほかから人を募集する、職業安定所にそれを依頼する、そういうような不都合なことが起っているわけです。そういうことについて大臣は、これは一事が万事でございまして、氷山の一角でございましてこの問題に関する限り、すべての点で、たとえば看護の低下、たとえば重症者の締め出し、手術の延期、あるいはつき添い婦のむざんな首切り、そうしてその失業対策を全然顧みないというようなことが各所において現実に起っているわけでありますから、この問題については厳重に処置していただきたいと存じますが、それについてもう一回御所信を伺いたい。
  90. 小林英三

    小林国務大臣 厚生省といたしましては、国立病院の雑仕婦といいますか、新たに入れます雇用関係である者につきましても、看護の万全ということから考えますと、最もりっぱな人をできるだけ選ぶということは当然のことでございます。しかしながら、一方国会委員会の決議等もございますから、できるだけそれらのつき添い婦の中からりっぱな人を同情的に採用していくということは、これまた必要と思いまして、私は大臣転任早々この問題は特に事務当局にも注意をしておいた問題でございまして、私もこれには相当関心を持っておるのでございます。ただいまのお話のような件につきましては、どういう点からそういうことが起ったかということは存じ上げませんけれども、この問題については一応調べてみて善処いたしたいと思っております。
  91. 八木一男

    八木一男委員 まだ質問申し上げたいこともございましたけれども、お約束の時間が参りましたので、残りの問題につきましては、次の機会にさせていただきまして、今まで申しました結核問題については厚生行政に非常に欠くる点があると思いますので、厚生大臣はこの問題について強く反省していただきまして、そうして結核行政がよくなり、結核の患者がなくなるような方向に、大蔵省の主計局などを問題にせず、進むような決意を披瀝して邁進していただくことを要望しまして質問を終りたいと思います。
  92. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 お約束の時間が参りましたので、次の質問は休憩後にいたすはずでありますが、議事進行について発言を求められておりますので、それを許します。岡良一君。
  93. 岡良一

    ○岡委員 先ほど小林厚生大臣八木委員との間の質疑応答の中で、医師が総辞退を万一にも決行したときに、その対策の用意があるか、かつはまたのことにかかわる責任について大臣はどういう所信を持っているかということについては、大臣の御答弁がありませんでした。そこで私どもは問答無益というようなことは、やはり民主主義のルールから見てきわめて遺憾でありますので、この点きわめて遺憾に存じます。しかし質疑応答の内容を分析いたしてみますと、小林厚生大臣は、そのような最悪な事態は起らないであろうという前提に立っておられます。八木君はそれぞれ各都道府県等において日本医師会あるいは日本歯科医師会の諸団体等正規の機関において万一の場合には総辞退を決行するという決意をしておる、双方そういう前提に立っておられるのであります。ところが厚生大臣の御発言の中には、彼らをして総辞退を決意せしむるに至った新医療費体系については関係者の意見をくんで修正することにやぶさかではないという御発言がありました。そこで問題は、小林厚生大臣は新医療費体系医療担当者の総辞退の決意の大きな原因になっておることは御承知通りでありますので、しかも今指摘いたしましたように、これについては関係者の意見を聴取して修正するにやぶさかではない、一方またこのような事態は起らないであろうという確信を持っておられる、この二つを結びつけて、あらためて後刻あるいは明日、八木委員に御答弁を願いたいことは、厚生省当局としては新医療費体系については関係団体等の意見を十分採用してこれを修正し、総辞退というような不幸な事態を回避する用意があるかいなかという点についてはっきりとした厚生省としての御見解をきょうの午後あるいは明日八木委員に発表していただきたいと存じます。  なお委員長にお願いをいたしますが、昨日の例もありますので、どうか午後の再開は政府側もわれわれもお互いに時間厳守でお運び願いたいと存じます。
  94. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 岡委員に申し上げますが、前段の問題は厚生大臣に対しての答弁要求でありますが、御承知通りその答弁を強制するわけには参りませんから、その点一つお含みの上御承知願いたいと思います。  では午前中はこの程度にとどめ、午後二時まで休憩いたします。    午後零時四十九分休憩      ————◇—————    午後二時五十五分開議
  95. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 休憩前に引き続きまして会議を開きます。  午前中の質疑を続行いたします。岡良一君。
  96. 岡良一

    ○岡委員 昨日来厚生行政社会保障制度について長谷川君また八木君等からいろいろ厚生大臣の御答弁を伺ったのでありますが、われわれを十分に納得せしめ得なかったことはまことに遺憾に存じます。私は他に同僚の質問もありますので、社会保障制度行政についてのごく基本的な点について大臣の明確な、かつ責任のある御答弁を求めたいのであります。まず第一の点は、先般昭和三十一年岐厚生省所管一般会計についての説明を承わりました。そこで、この予算は昨年度が八百四十六億、本年度が九百三億と、五十七億の増になっております。これに労働省所管の社会保障関係予算を加えますと千百三十三億ということで、前年度に比べて約百二十二億の増ということに相なっております。大臣にまずお伺いいたしたいのは、このように社会保障関係の予算が百二十二億の増に相なったということは、わが国の社会保障制度の健全な発達を意味するものであるかどうかという点についての御所信を承わりたいと思います。
  97. 小林英三

    小林国務大臣 いろいろ御議論があると思いますが、私はわが国の社会保障行政進歩をいたしつつあるものだと考えます。
  98. 岡良一

    ○岡委員 一兆三百四十九億の予算の中で社会保障費といたしまして千百三十三億の規模のものが認められておる。国の総予算との関係においてこの程度でもって日本社会保障制度の運営は全きを得る、このようにお考えでございますか。
  99. 小林英三

    小林国務大臣 国家財政の一兆三百四十九億円のうちといたしまして大体この程度社会保障費において参りますことは、決して現内閣社会保障の問題につきまして仰せのような消極的のものではないというように考えております。
  100. 岡良一

    ○岡委員 私どもは年来国を守る前に、守るに足る国を作れということを主張しております。再軍備よりも生活の安定をということを主張しております。そこでお伺いをいたしまするが、本年度の予算の中において防衛関係費千四百五億、会社保障費千百三十三億というこのウェートにおいて、果して大臣はこれが守るに足る国を作るための予算として妥当である、このように思われまするか。
  101. 小林英三

    小林国務大臣 御承知のように防衛費は八十億円の増を来たしておるのでありまして、私は日本の国が独立いたしておりまする以上は、国家財政の許す範囲内におきましてみずからの力において国を守る費用を漸増していくことは、当然のことだと思います。防衛費自体の八十億円の増加というものは、ちょうど防衛費といたしましては六%の前進であります。しかし一方社会保障全般から見まするというと、約一二%の進歩をいたしておりますから、そういうふうな国家財政全般から見まして、社会保障制度に要する経費というものは後退をいたしていないわけでございます。
  102. 岡良一

    ○岡委員 防衛関係費が八%の増加であり、社会保障関係費が一二%の増である、そうおっしゃいました。それではいわゆる政府の呼号しておられます経済五カ年計画において、その五カ年度を通じての社会保障総予算は何千何百億に策定をされておりますか。
  103. 小林英三

    小林国務大臣 社会保障制度全般の五カ年計画という問題でございますけれども、これはやはり国の財政というものの伸びによって私は逐年年次計画を立てて進んでいくべきだと考えております。
  104. 岡良一

    ○岡委員 国の経済五カ年計画の策定をされるに当りましては、すでに厚生省よりも関係の方が御出席であります。その財政規模というものもすでに一応策定されておりまするが、大臣はそれを御存じないのでありますか。
  105. 小林英三

    小林国務大臣 今手元にございませんから、後刻またお答えいたします。
  106. 岡良一

    ○岡委員 至急にお示しを願いたいと思いまするが、私の承知するところでは、六千五、六百億程度であります。文教関係費をも含めて、二兆何百億ということになっております。でありまするから、今はなるほど千百三十三億、前年度よりも一二%増であります。しかし五カ年後のこれが、どう考えてみましても、六千五百億のワク内で千五百億をこえるという可能性はありません。ところが最終的に発表されておる国の防衛計画というものは、わが国だけの防衛計画でも二千百五十億ということを堂々と発表されております。それなれば防衛関係費と社会保障の比率というものは大幅に社会保障が低められてくる、レベル・ダウンされてくるということが、すでに数字をもって明らかになっておるではありませんか。そのような傾向の初年度の予算としてわれわれはこれを理解しなければならない。このようなことでこのままに行くならば、国を守るための予算のために、守るに足る国を作るための予算というものが大幅に圧縮されていくという懸念を私は持つのでありまするが、これについての大臣の明確なる御所信を承わりたい。
  107. 小林英三

    小林国務大臣 お説ではございまするが、私はやはり経済五カ年計画ということは、将来こういう目途でやっていきたいということで立てられたことでありまして、私どもといたしましては、現実な国家財政というものを考えましたそのもとにおきましてやっていくのでありまして、本年度におきましては、もちろん経済五カ年計画の一環として第一年度の社会保障というものを立てたのであります。しかし、これとても経済審議庁は経済審議庁としての一つの立て方を持っております。それにマッチしてわれわれはやっていこうとしたのでありますけれども、いろいろ国の財政の差し繰りの問題につきまして、そのお互いの間に多少の変更を来たしたことは、これは現実の問題でありまするから、やむを得ないことと思います。
  108. 岡良一

    ○岡委員 私はやはり経済建設計画を遂行していく過程においては、労働者の生活——環境の異動もあれば、あるいは失業の事態も起り得るであろうし、いろいろな条件が起って、これに伴う裏づけとしての社会保障制度の確立ということは、当然伴わねばならないと思います。私はおそらくそういう理由からいたしまして、厚生省社会保障制年五カ年計画というものをすでに新聞で発表しておられるのだと思う。社会保障制度についての年次計画というものは、そのつどそのつどの国の財政事情によって動かされるものであると大臣はおっしゃるのであるか、それともやはり画然たる年次計画のもとに厚生省としては社会保障制度の推進に当られようという御決心であるのか、その点をいま一度はっきり伺いたいと思います。
  109. 小林英三

    小林国務大臣 厚生省社会保障費に対する五カ年計画というものは、前大臣の時代においてそのアウトラインだけは発表されたことを私は承知いたしております。もちろん私が大臣になりましても、大体その見通しというものは踏襲していくべきものと考えますけれども、私は本年度の経済五カ年計画の一環としての厚生省予算が現実に決定いたしました目上は、それに基きまして、私は私としての見通しを立てて、それに向って進んでいくべきものだと考えております。
  110. 岡良一

    ○岡委員 さらに社会保障費が一二%の増とおっしゃる。一体千百三十三億の今年度の社会保障関係費の中で、失業関係の費用、生活保護関係の費用は、締めて何百億でありますか、これは政府委員でもけっこうでありますから、具体的の数字をお示し願いたい。
  111. 堀岡吉次

    ○堀岡政府委員 失業保険の数字は、今ちょっとはっきり存じておりませんが、生活保護は三百六十二億七千八百万円であります。
  112. 岡良一

    ○岡委員 失業対策の費用は失業対策費といたしまして、昭和三十一年度予算の説明の中に三百五十一億六千七百万円と出ております。生活保護の費用は、先ほどいただきました資料によって、三百六十二億七千八百余万円と相なっております。これを合算いたしますと、七百十億ばかりに相なります。千百三十三億の中で七百十億ということになると、わが国の社会保障関係費の中では、生活保護の費用は失業対策の費用六〇%をこえております。このような姿がはたして健全なわが国社会保障制度の姿であるかどうか、この点についての大臣の御答弁を願います。
  113. 山下春江

    ○山下(春)政府委員 ただいま岡先生の御質問に対しまして私の考えを申し上げたいと思います。国民の最低生活を保障するということは、憲法の精神からいえば第一義でございます。そこで失業対策と生活保護費というものは、国民の最低の生活を保障しなければならない憲法の義務を果すための社会保険その他の疾病等に要します費用が、その次になった形が出たということも、人口の多い、困窮しておる日本状態としてはやむを得ない姿であると存じます。
  114. 岡良一

    ○岡委員 まことに山下政務次官の傾聴すべき御意見であると思いますが、憲法は国民の最低生活の保障ではありません。健康で文化的な最低の生活の保障をうたっているのでありまして、そのように悪用とは申しませんが誤用されては非常に迷惑であります。そこで重ねてお尋ねをいたしますが、要するに生活保護費が増大をいたしたということは、その趣旨のいかんにかかわらず、現に予算内容においても二・五%の被保護者がふえてくるという想定のもとにこの予算が組み立てられている。このことは日本の大衆に貧困が増大をしたという事実を示すものにほかなりません。失業対策費においても、その失業対策事業に参加する人員というものの増を見越して、この予算はふえております。このことはいかに政府が呼号せられても、日本においては完全雇用どころか、失業者がますます増大しつつあるという事実を示すものである。いわゆる社会保障関係予算において一二%増をうたわれまするけれども、その増は、わが国における国民の生活がより一段と広汎に貧窮を来たしたということ、わが国において働く意思を持ち、働けるからだを持ち、養わねばならない家族を持っておる者が、働く場を失いつつあるという事実を、この予算は数字をもって明確に示しておるものといわなければならないと思う。この点についての大臣並びに山下政務次官の御見解を承わりたい。
  115. 小林英三

    小林国務大臣 今の岡さんの御質問でございますが、私にどういうことをお伺いになったか、ちょっと私はわからないのですが、どういう点を御指摘になったのでございましょうか。
  116. 岡良一

    ○岡委員 生活保護費は、先般大臣みずから御説明になりましたように、総額が三百六十二億七千八百余万円に相なっております。しかも前年度の予算に比べますると、約十五億ばかりの増かと存じまするが、生活保護費を受ける人たちは大体昨年度に比べて二・五%増加するという、いわば積算の基礎にそういう数字をお求めになって、三百六十二億、十五億の増ということに相なっておる。同様なことが失業対策においても行われて、失業対策費も非常に増加しております。六、七十億増加しておる。そういう事実とそういう数字がある。日本社会保障関係費千百三十三億の中には、三百六十億の失業対策、これがしかもその百二十二億の増の大きな部分を占めている数字としてここにある。生活保護費の十五億の増にある。そこで問題は、日本の千百三十三億という総社会保障関係費の中で、貧乏な、生活保護費をもらわなければあすの日のやり繰りができない人間がふえるという見通しが、ここに立てられている。働く場所がないから、どうしても失業対策事業をやってそこに吸収しなければならない人間がふえてきたということを、この予算は数字の上に事実として認めておる。この予算というものは、そういう深刻な事実を物語っているものと私は思うのであるが、大臣はいかようにお考えになるか、こうお尋ねしておるのです。
  117. 小林英三

    小林国務大臣 お説の通りだと思います。
  118. 岡良一

    ○岡委員 私はまだ寡聞にして諸外国の予算の例等は存じておりませんが、しかしながらそれにしても、社会保障関係費の中で生活困窮者に対する保護費、あるいは失業者に対するところの対策費が、社会保障関係費の七〇%に近いウエートを占めるという予算は、おそらくないと私は思う。このような社会保障関係費の増というものは、果して社会保障制度に対する政府の熱意が、今大臣の御指摘のごとく満たされておるとあなたは言い切られるのかどうか。むしろ現内閣の失政の結果が、こうした大衆の貧困を呼び、失業者の増大を招いておる。その跡始末としてこのような費用が不可欠なものになった。私はそう理解するのであるが、この点に対する大臣の明確な御所見を承わりたい。
  119. 小林英三

    小林国務大臣 生活保護費並びに失業対策費が社会保障に関する経費の大きなウエートを持っておるということは、政治貧困であるというように思う、こういう御質問のように考えるのでありますが、私はそうではないと思います。これはやはり敗戦によりまして、日本が一敗地にまみれて、そうして国土は四十数パーセントを失い、あるいは北支の権益、満州の権益あるいは南方の権益あるいは樺太を失い、あるいは今回の南千島の漁業権等も失っておる。いろいろな問題から、日本の当時の領土以外のたくさんな国富を失ったのでありまして、今日まで吉田内閣あるいは現内閣に至ります間におきまして衣食住とも今日までの回復をしてきた。これはやはり国民の耐乏生活その他非常な御努力によるものでありまして、同時にまた私はその当時より今日までやって参りました保守党内閣の大きな治績であると考えております。従いまして今日日本の国が独立いたしましてまさに四年でありますが、ただいま再建途上にあるのであります。これに対しましていろいろな政府の施策が要るのでありまして、私はこの八千九百万人の、一つの血のつながりのもとにおります国民が、それぞれの持場々々を守って、そうして自分の責任を全うし、また政府もいい施策を行いましたならば、私は、将来日本というものはきわめて明るいものでありまして、ただいま御質問になりましたようなことも、だんだん改善されて参って、国の財政がふえ、国の産業が上って、そうして国民の中に失業者がたくさんないような状態になりましたならば、私は御質問のありましたようなことはなくなることと思うのでありまして、今御質問のようにこれが直ちに政府の施策よろしきを得ないということではないと考えておるのであります。
  120. 岡良一

    ○岡委員 一昨年の暮れに第一次鳩山内閣が成立をいたしましたときの十大政綱の中には、防衛費よりも生活の安定ということがうたわれておりました。防衛分担金の削減の交渉に当っても、このような趣旨のことが総理みずからの言葉として新聞に伝えられておりました。そこで今大臣は、敗戦後の苦しい諸般の事情から生活困窮者と失業者がふえておるが、逐次現内閣の政策によって改善をせられるものでなければならないと申しますが、生活保護費は逐年増加しておるじゃありませんか。失業対策費もふえておるじゃありませんか。このことは生活困窮者と失業者が日本の国においてふえつつあることを物語るものである。この点どうお考えになりますか。
  121. 小林英三

    小林国務大臣 今の、生活保護費がふえていく、それに対してどうかという御質問でありますが、これは内容をもう少し掘り下げて御説明申し上げればその問題もおわかりになると思いますので、一応社会局長から答弁をいたさせます。
  122. 安田巖

    ○安田(巖)政府委員 生活保護費がだんだんふえるというお話でございまして、それだけ困った人がふえるのじゃないかというような御質問趣旨だと思います。そこで、そういう困窮世帯がふえるかどうかということは、やはり金額を見る前に世帯数であるとか人数を見なければならぬと思うのです。そういたしますと、人数は、生活保護が始まりましたころは、御承知のように終戦直後の混乱時期でございますので三百万をこえたことがあるのです。それからだんだん減りまして、現在百九十四万から百九十五万でありますけれども、大体二百万を上下する。あるいはドッジ予算のときに少しふえる、朝鮮事変のときに減ってくる、また今度の均衡予算のときに多少ふえてくるということで、しかし大体は二百万を前後する。現状におきましては百九十五万である、こういうふうな状況でありますから、それだけ落ちついてきたと言えば、落ちついてきたということが言えるのじゃないかと思う。そこで問題の費用がふえるというのは、実は生活保護法の中の医療扶助の費用がだんだんとふえて参りまして、現在では生活保歳費の五二・三%くらいまで上ってきたわけであります。これはなぜ上ったということは、いろいろ理由がございましょうけれども、やはり大部分は、社会保険の方の金額が上ったのと同じような理由によるものでありますから、一口に言いますと、医療内容向上した、こういうふうに考えられるのじゃないかというふうに思っております。
  123. 岡良一

    ○岡委員 社会局長の御存じの通り、生活保護法は数年前大改革をいたしまして、その結果といたしまして生活保護法の適用についてはかなりきびしい基準が設けられて従ってそれまで生活保護法の適用を受けてきた人たちがかなり落されたということは、私どもその当時法律の制定に当っていろいろ政府との間に話し合いをかわしたわけであります。しかし、たとえば現に完全雇用と言いながら、昨年度に比べて適用人員の二・五%増を見なければならぬ、われわれはそれは足らないから五%にしろと言っているのです。事実そうなると思うのです。昨年にしたって一昨年にしたって予算の補正では、生活保護法の予算を補正しておられるじゃないか。また失業者にしたって同様昨年度に比べればさらに増加するものと見込んでおられる。去年とことしと比べてみたところで、政府の方では余儀なく失業対策並びに生活保護費において予算の増加をしなければならぬ。ということは、言葉をかえて言えば、それだけ日本の国内に貧困者がふえた、失業者がふえたということではありませんか。大臣、どう思われますか。
  124. 小林英三

    小林国務大臣 昨年度の予算におきまして五%ということを見込んだのでありますが、それはやはり昨年度におきましてはデフレ的の傾向が今日よりもはるかに高かったように思います。ただいまのところにおきましては経済界も大体横ばい状況になっておりますので、昨年度の五彩に対しまして今年年度は二・〇五%でいくだろう、こういう見通しから二・〇五%増を見込んだわけであります。
  125. 岡良一

    ○岡委員 大臣は私の質問に御答弁になっておられない。それにもかかわらずなぜ——今お示しのお言葉を拝借すれば、大蔵大臣もそう言っておられるように、日本の経済事情というものはきわめて健全化の道をたどってきておる。そうして生活水準もあるいはまた経済の実態も横ばいの状態、安定の状態にきた、こう言っておられる。安定の状態にきたと言いながら、一方では生活保護法の適用を広げなければならぬ。失業者はふえるであろうという見通しを立てる。これでは政府の施策というものは、口に称せられるところと事実予算の執行面においてと、完全に矛盾するではありませんか。その点についての大臣の御所見を承わります。
  126. 小林英三

    小林国務大臣 日本の経済というものは先ほど御質問のありましたように、また大蔵大臣が申しますように、輸出はふえて参って健全な経済の道をたどりつつあることは申し上げるまでもないことでありますが、しかしながら一方厚生省当局といたしましては、一応今申し上げましたような考え方によって生活保護費の予算を獲得しておくということは、これは当然なことでありまして、これによりまして、実際問題といたしまして生活保護の対象になる方が少くなるというようなことはありますが、これは大へんにけっこうなことと思います。
  127. 岡良一

    ○岡委員 その希望的観測で予算ができた、予算とは違った希望的観測を大臣が述べられるということは、私は非常に不可解に思う。しかしこういう問答はいつまで続けてもいたし方がありませんが、経済が安定したと言いまするが、しかし現に日本の経済というものは事実安定したかどうか。この点もわれわれが生活保護法の適用人員の五%増を要求しておる一つのモメントでありますので申し上げておきますが、決して日本の経済は私は健全な意味で安定したとは思っておりません。たとえば底の浅い日本経済であってみれば、外国貿易に依存していることは今さら申し上げるまでもありません。最近日本が輸出の大宗としておるアメリカにおいても、一ドル・ブラウスの輸入禁止さえやろうとしておる。東南アジア諸国にしたって外貨事情が悪いから、輸入の制限についてはやっきになってきております。昨年の秋からことしにかけては御存じのように、西ヨーロッパの諸国だって公定歩合の引き上げをやっているじゃないですか。底の浅い日本の経済が、特に日本の頼みとする貿易事情においても、客観的な条件は決して楽観を許さない。そういう許さない条件の中で、一体生活保護法の適用が二・五%増で足れりと思われるかどうか、この点をもう一ぺん明らかにしていただきたい。
  128. 小林英三

    小林国務大臣 大体この程度ならば足りるだろう、こういう見通しのもとに本年度の予算を計上いたしたのであります。
  129. 岡良一

    ○岡委員 私はこの予算を拝見いたしまして率直に申しまして、現在の内閣では社会保障を唱える資格を喪失しつつあるものであるということを正直のところ考えます。なぜと申しますると、原則的に申しましても、なぜ失業者が出るか。失業者が出るということはもちろん政策の貧困でありまするが、政策の基礎が資本主義の政策、軌道に乗っておる政策のもとにおいては失業者が出ることは、これは経済学の原理なんです。なぜ生活保護法の予算をふやさなければならないか、なぜ日本の国内において貧困者がさらに拡大をしなければならないか。富の独占が促進をされる資本主義の経済の中においては、このような事態が起ることは必然なんです。要するに、資本主義の政権というものが存続する限りにおいて、失業の増大というものと貧困というものは、これは防ぐことができない。これは経済学のプリンシプルだと私は思う。このような事態が、現にわが国が社会保障関係費を計上するときにおいて、失業対策費、生活保護費の増額を必然的にいたさなければならない羽目に陥ってきておる、このように私は考えるのでありますが、大臣と山下政務次官の御所見を承わっておきたい。
  130. 小林英三

    小林国務大臣 資本主義経済なるがゆえに今日のように生活困窮者が出たり、あるいは失業者が出るのだというような御見解につきましては、私は異論があると思うのであります。必ずしもそうではないのでありまして、そういうことになりますと・アメリカのような資本主義の国家というものは、やはり今岡さんがおっしゃったようなことにならざるを得ないのであります。現在のような状態については、やはり日本が今までにないような戦敗のうき目にあいまして、ようやく復興の緒につくとしておる状態でありますので、今後国民の御努力政府の施策よろしきを得ますならば、私は日本の将来は非常に希望の持てる国家になることができる、こういうように考えておるのであります。
  131. 岡良一

    ○岡委員 大臣はアメリカを例に引かれましたが、アメリカの社会保障の予算というものは一体どれくらい見積られておるのですか、アメリカの総予算の中におけるウェートはどのくらいになりますか、御存じでありますか。
  132. 小林英三

    小林国務大臣 私はアメリカの社会保障費というものは存じません。ただ今あなたのおっしゃったいわゆる資本主義経済のもとにおいては失業者が出るとか、あるいは生活困窮者がたくさん出るのだということについてのみ例として申し上げたのでありまして、アメリカの社会保障経費がどのくらいかということは存じていないのであります。
  133. 岡良一

    ○岡委員 アメリカの社会保障制度というものがきわめて未熟であるということはすでに知れ渡っておることであります。アメリカにはそれを必要としないもろもろの条件があるのです。国土が広いとか、国土に比較して入口が少いとか、資源が豊富であるとか、いろいろな条件がある。だから社会保障制度というものが発達しておる国は、どの国でも貧困の度が非常に激しくて、あるいは人が多いとか、資源か乏しいとか、領土が狭いとかいうアメリカと反対の条件にある国々に社会保障制度というものはいち早く伸びておる。西ドイツを見ても五千八百万の人口であの狭い領土である、英国も五千一百万の人口であんな狭い島である。こういう条件にある国こそ社会保障制度というものを最も堅実に育てなければならない。日本は、その意味においては西ドイツよりも、英国よりも資源の条件において恵まれておらない。してみれば、こういう国土においてこそほんとうに健全な社会保障制度というものを育て上げなければならぬ。ところが案に相違してますます貧困者が増大する、ますます失業者が増大する。これは明らかに大臣が要望される事態と逆な状態にものことが進んでおるではありませんか、この点もう一度御所見を伺いたい。
  134. 山下春江

    ○山下(春)政府委員 岡先生の御議論では、資本主義の持っておる悪弊の累積がかくのごとく日本貧困にしたのだという御議論でございました。しかしながら私どもは今日まで利潤追求の資本主義をもって党の政策としておるのではありませんで、進歩的な労使協調による利潤の再配分を公平に行わんと欲する修正資本主義を掲げて参ったのであります。決して資本家のみが利潤追求をしておらないのです。アメリカの実情あるいはドイツの例をお引きになりましたが、ドイツにおいては、岡先生御承知通り公共事業費を含めまして総予算の三〇%を社会保障費にとっておるのであります。御承知のように唯一の誇るべき国の財産と考えられるアウトバーンを持っておるドイツにおきましては、それらによって日本よりははるかにすぐれた社会保障制度を打ち立てておられるかに見えますけれども内容はさほど大きな隔たりを持っておらない。それがなおよく見えるということは、日本全体の持つ貧困さから来るのでございまして、決して政策の貧困から来るのではない。先生御指摘の社会主義を打ち立てれば日本の失業者がなくなる、貧困者がなくなるという御説は、いま少しく御議論を承わらなければ承服できかねます。
  135. 岡良一

    ○岡委員 社会主義か資本主義かということになると、だれか大学の先生でもお出ましを願って、その公述でも聞かなければならぬことになるから、この辺でやめておきたいと思います。ただ申し上げたいことは、今英国、ドイツの話が政務次官から出ましたが、御存じのように英国ではビヴァリッジ勧告が一九四四年に出まして、労働党が天下をとってから初めて社会保障制度というものが事実政策の上で実践された、ここに社会保障制度に対する保守党と社会主義政党との大きな質的違いがある。西ドイツにいたしましても、今アデナウアーの政権は資本主義の政権でありますけれども、西ドイツで現在行われている社会保障制度のごときは英国にまさるとも劣らない社会保障制度であり、相当な予算を国がさいておることも御承知通りであります。従って資本主義の政権といえども、ドイツのアデナウアー政権のごとく社会保障制度のために国の予算を相当さく勇気と努力があればりっぱにできる。しかもあの国は、あのように隆々として貿易の上においても、経済の上においても実力を伸ばしている。ところが、それと同じ条件に置かれておる日本は、このように貧弱な予算を持ち、しかもその予算のふたをあけてみれば、生活困窮者と失業対策費に社会保障関係費の七〇%近いものをとられておる。これでは社会保障制度は、われわれの所期するようになかなか健全に発展しないだろうと私は思う。この点について重ねて大臣と政務次官の御所見を伺いたいと思います。
  136. 山下春江

    ○山下(春)政府委員 岡先生の御説の通りだと私は思います。社会保障費の内容にかくのごときものを非常に多く含まなければならない日本の実情まことに遺憾と存ずるのでありますが、守るに値する国を作るためには社会党の先生方ともよく御相談をいたしまして、すみやかに日本の産業の再建をはかりまして、貧困者を少くすることに大いに努力いたす所存でございます。
  137. 岡良一

    ○岡委員 われわれは大いに協力を申し上げる寛容の精神を持っておりますので、たとえば伝えられる健康保険法改悪のごときもあきらめていただきたいし、新医療費体系のごときも、一つまた厚生省の奥深く納めていただきたいし、憲法調査会設置法案のごときも決して十六日に出すようなことは思わないでいただきたい。(笑声)  それはそれといたしまして、それでは細目について一つお伺いいたしたいと思います。そこで失業対策や生活保護というような費用を考えるよりも、もっと健全に国民が相互信頼、相互扶助の形において社会保障制度というものを国民自身が築き上げなければならぬ。私は決して政府が築けというのではありません。国民自身の力によってこれを盛り育てていくということになれば、やはり義務的に支出しなければならない生活保護費とか、あるいは失業対策費というものよりも社会保険制度の方が社会保障の中核だと思うが、この点についての大臣の御所見を承わりたい。
  138. 小林英三

    小林国務大臣 もちろん岡さんのおっしゃったこともきわめて重要な案件だろうと存じます。
  139. 岡良一

    ○岡委員 そこで私どもは、現在のいわゆる政府管掌なり組合管掌の健康保険には大きな関心を示し、昨日来長谷川君も八木君もいろいろと厚生省の御所見をただしておるわけであります。何しろ昭和二年に発足いたしましてから満三十年以上の歴史を持っておる。私どもは何とかこれを中核として日本社会保険を育てていきたいと考えておるわけであります。  そこでお尋ねをいたしますが、先ほど来政府の経済建設計画というふうなお言葉もありましたが、政府は経済建設をやろうという意気込みで、すでに五カ年計画等も発表されておりますが、この場合不可欠な条件は労働者の協力を得ることだと私は信じます。この点についての大臣の御所見はいかがでありましょう。
  140. 小林英三

    小林国務大臣 その通りだろうと思います。
  141. 岡良一

    ○岡委員 健康保険には、政府管掌、組合管掌合せて約七百万に近い被保険者、労働者が参加しております。労働者にとっては生活の元手は健康であります。そしてまた大臣が御指摘のごとく、わが国の経済建設の生産の源泉はやはり労働者の健康でなければならない。これは大原則だと私は思いますが、かように大臣はお考えでございましょうか、重ねてお伺いいたします。
  142. 小林英三

    小林国務大臣 大体におきましてお説の通りだろうと思います。
  143. 岡良一

    ○岡委員 大体におきましてというその前提条件についての内容をお伺いいたしたい。
  144. 山下春江

    ○山下(春)政府委員 岡先生の労働の原動力は健康であるということに対しましては全く同感でございます。従いまして、私ただいま厚生省におりましても、一人の議員として考えますときには、この問題が何事にも優先しなければならないという信念を持っております。従いまして、きのう滝井先生から、国保が伸び悩んでおるではないかという御指摘がございましたが、私ども厚生省では、今回非常に重要な健保改正というものに逢着いたしておりますので、予算面その他の面から伸び悩んでおるように見えますけれども、過般社会党におかれましても、社会保障の中核である国民健康保険健保と二本立くらいに整理統合すべきであるという御議論が出ておりました。私全く同感でございましたが、それには、国保の伸ばし方というものに対しては、すでに定率二割国庫負担というものがございますので、これは滝井先生御指摘のごとく、本年度百五十億を必要としようとも、私どもは強力に推し進めて、まず働く者の健康を守る、そのことが防貧政策の最大の原因であるということはまことに同感でございます。農村におきましては、農家の転落は約八五%が疾病であるというようなデータも私持っておりますので、その点は全く同感でございます。予算のいかんにかかわらず、議会の御協力を賜わりまして、本年度は強力に推進をして参りたいと存じます。
  145. 岡良一

    ○岡委員 大臣と次官からこもごも御丁重な御答弁をいただいてまことにけっこうでありますが、しかしここは夫婦善哉のスクリーンではありません。われわれはよろしく頼みまっせくらいじゃ済まされない。政務次官は、私があとから質問しようということにまで触れてお答えになりましたが、そこで今健康保険赤字がいろいろ問題となり、昨日来いろいろわれわれの同僚からお尋ねもありましたように、保険料の収入と療養給付費その他の支出がアンバランスになってきた。その最も大きな原因を三つだけ保険局長あるいは小沢課長からお聞かせ願いたい。
  146. 小沢辰男

    ○小沢説明員 御説の通り保険料収入と支出の面とのアンバランスになってきたのがもちろんこの赤字原因でございますが、その中でも特に医療給付費が非常に増高して参ったのでございます。その原因は何かということですが、私どもといたしましては、疾病の治療面において、非常に発達をいたしました近代医学をできるだけ保険でも採用するようにいたしておりましたので、そのために医療内容が非常に向上すると同時に、それが結局医療費の増大を来たしてきたというふうに考えておるのでございます。もちろん直接的には、御承知給付期間の延長を二十八年度末から行いましたり、あるいはまた全面的に抗生物質の採用をいたしました結果でございまして、そういうような給付内容の改善というものをどんどん行なってきたのでございますが、ある一定の限度で給付費が頭打ちをするというような傾向は現在のところ示しておりません。大体毎年一割以上の増高を示してきているのであります。もっとも二十九年度は、そういうような給付内容の改善を二十八年度末から行いましたために急激に膨張したのでございまして、それが二十九年度の赤字の一番大きな原因であったろうと思うのでありますが、やはり今年度も、二十九年度の医療費と比べまして約九形程度の増高を示しておるのであります。また私ども来年度の見込みをいたす際におきましても、やはり同様の推移をたどるものとして一割見当の給付費の増高を見込んでおるのであります。大体医療費の増大というものはもちろん正しい姿ではございますが、とにかくそれが収入とのアンバランスを非常に生じてきた原因であろう、かように考えております。
  147. 岡良一

    ○岡委員 今の小沢課長のお示しのように、何と申しましても医療給付内容向上ということがやはり一番大きな赤字原因になっている。私は赤字という言葉を使いたくないのでありますが、財政収支のアンバランスは、医療給付内容向上ということが一番大きい。そこで私は大臣にお尋ねいたしますが、健康保険が、被保険者やその扶養家族に対しまして、近代医学の発展に伴う適正な医療を与えるということは当然な話であろうと思いますが、いかがでございましょうか。
  148. 小林英三

    小林国務大臣 その通りだろうと思います。
  149. 岡良一

    ○岡委員 それでは健康保険制度が、その本来の趣旨に従って与える医療内容においてきわめて適正であり、日進月歩の治療医学進歩に伴って医療内容というものが向上してきて、その結果保険財政においては支出と収入の間にアンバランスが起っている。これは健康保険制度のためには当然喜ぶべき現象であろうと私は思いますが、いかがでございましょうか。
  150. 小林英三

    小林国務大臣 まことに喜ぶべき現象であろうと思います。
  151. 岡良一

    ○岡委員 してみれば、国が法律をもって強制的に設立をし、五人以上の事業場においてはあらゆる労働者が強制的に加入しなければならない、このような健康保険制度において、そのように好ましき現象のために財政収支のアンバランスが起ってきた。昨年は九十億、ことしは六十七億五千万円。これはいわば健康保険制度の発展に伴う必然的な財政需要であり、この必然的な財政需要というものは、当然国がこれに対して負担の責めに任ずるということが社会保険制度の重大な原則でなければならぬと思うが、この点についての大臣の御所見はいかがですか。
  152. 小林英三

    小林国務大臣 岡さんの今までの御質問に対しましては大体私は同感であったのでありますが、今の御説の点につきましては、私は多少の見解相違を持っておるのであります。大体けさの本委員会におきましても申し述べました通りに、またただいま保険課長からも赤字原因というのは医療費の向上にあるということであったのでありますが、しかし私はたびたび申し上げますように、また岡さんもおっしゃるように、今日の健康保険が数年前よりも非常に向上進歩してきているということはまことに望ましいことでありますけれども、ただこの健康保険赤字が、二十九年におきまして約四十億円、本年度が六十億円、また三十一年度は六十六、七億円出ようとしている。この問題を、どこまでも全額を国庫負担すべきであるか、あるいは今までの一部負担初診料が五十円であったものを、多少これを被保険者に持っていただくべきであるかどうかという問題につきましては、岡さんと私との間に議論が分れてくる問題だと思うのでありますが、私はけさほども申し上げましたように、国の財政が何らの心配ないような状態におきましては、そういうことが全部どんなに膨張していきましても、医療費が向上しても、どんなことがあっても国が全部負担するということができまするならば望ましいのでありますが、今日の国家財政といたしましては、たとい十億の金といえども容易ならざる金でありまして、私は今日のように数年前から健康保険そのものが非常にレベル・アップしているのであって、今後もなおいろいろな新しい手術等ができましても、これを取り入れてりっぱな健康保険内容にしていくという建前からいたしましても……。  それからもう一つは、他にも国庫に税金を納めながら社会保険の恩典に浴してないという人も三千万人もいるような状態でありまして、一方におきましては、健康体の人で全然保険にかからないような人も相当いるのでありますから、私は受益者でありまする被保険者が、今までの五十円の一部負担に対して多少の一部負担をして、そうしてこれに見合う程度国庫負担をしていく、一方需要者の方は標準報酬引き上げ等によりまして使用者側においても犠牲を払っていただいて、そうしてりっぱに健康保険赤字を克服いたしまして軌道に乗っけていくということが私は望ましいことだと考えておるのであります。
  153. 岡良一

    ○岡委員 先ほども申しましたように、強制加入の現在の健康保険制度でありますが、そこで好ましき理由に基いて保険収支のアンバランスが起っておる。ところがそのアンバランスに対して、今度は被保険者などがその収入の不足分をある程度まで負わなければならぬ。とすれば結局保険料を引き上げるかあるいは保険一部負担を多くするかしかありません。そこで、そういうふうにして被保険者の責任にこれを転嫁する。御存じのように病気になれば、家族を持っている者でも六割の傷病手当金しかもらえない。そこへ持ってきてお医者さんの窓口へ行くたびに、そのつど一部負担を払う。入院すれば毎日どれだけかを払わなければならぬ。それではどうしても国の経済建設に協力を求めなければならぬと言っておられる大臣の仕打ちとは思われないじゃありませんか。病気になってわずかの賃金が六割に減らされたところへ一部負担をまたかけられるということでは、弱り目にたたり目じゃありませんか。それではあなた方がいかに口でもって労働者に国の経済建設に協力を求めると言っても、まっこうから弓を引く仕打ちだといわなければならぬと思います。この点についての大臣の御所見を承わりたいと思います。
  154. 小林英三

    小林国務大臣 勤労者の諸君に国の建設に対して御協力を願う。それらの勤労者の諸君が常に健康であるということはもちろん必要でありまするし、そうなくてはならぬことであります。しかし健康保険そのものが非常に最近進歩向上している。しかも国家財政は非常に貧弱である、こういう意味におきまして今までの一部負担を少し上回った一部負担、もちろんこの一部負担という問題につきましては、できるだけ被保険者ががまんをしていただく程度のものにわれわれは考えておるのでありますが、そういうふうに持っていきたいと思っております。これは私が先ほど申し上げました理由によりましてまたやむを得ないことであると考えております。
  155. 岡良一

    ○岡委員 いずれ健康保険法等の改正が出ましたときは私ども十分検討いたしたいと思いますので、私はただ原則的な大臣の所見を伺っておるのであります。そこで国の経済建設のためには不可欠な労働者の健康を守るための現行健康保険制度が収支のアンバランスを来たしておる。そこで六十七億五千万円のうち、かなりの部分というものを被保険者である労働者やその家族に転嫁されようとする。そして国は昨年度借りたうち十億を返さなければならないものはがまんしてやろう、二十億だけは出してやるということで済まされる。一方では千三百二十七億の防衛関係費は千四百億になり、大手を振って通っておるじゃありませんか。守るに足る国を作ると政務次官は言われましたが、防衛関係費は八十億近くふやされて大手を振って通っておる。一方ではこのように国の経済建設のための大きな原動力であり、彼らの生活の源泉である健康というものを守る制度が、しかも国の強制によって加入し、強制によって保険料を徴収されておる現行の健康保険制度が、六十七億五千万円ばかり赤字が出るからといって、たった二十億で口をぬぐわれるという、これでは一体厚生当局としても、大臣としても、真に日本社会保障制度に忠実なものではないといわれても抗弁できないのじゃないかと思う。この点についての御所信を伺いたい。
  156. 小林英三

    小林国務大臣 国が独立いたしました以上は、ある程度の自衛力を持っていく、しかもこれを国家財政にマッチして漸増していくということは、先ほど申し上げた通りどもはそういう意見を持っております。しかも岡さんはそういう意見には反対であると考えられるのでありまして、私は国の自衛力は自衛力、社会保障費は社会保障費である、それをどのくらいに見合っていくかということは大きな問題でありますけれども、それらのものをほっておいてほかの施策に使っていいか悪いかという問題は、これは岡さんの方の属する党派の諸君とわれわれとは、おのずから意見が異なりますから、これもまたやむを得ないところだと思います。
  157. 岡良一

    ○岡委員 私は防衛が是か非かということをあなたにお伺いしておるのではございません。現在の一兆三百何十億という提出された予算の中で、予算編成の過程をみると、結局健康保険制度に関しては、六十七億ばかりの赤字が見込まれておる。これに対して政府の方では、わずかに事実上二十億の負担をされる。一方防衛関係費が八十億もふえたまま、のうのうとしてまかり通っておるではございませんか。ことしの一月に予算のぶんどり競争でもって、とうとう本会議に予算の提出がおくれておる。なぜおくれたかということは、当時井上良二君から御指摘いたしましたが、与党のぶんどり競争です。しかしそれにもかかわらず、与党の諸君は千四百億円の防衛関係費には一言も触れません。こういうふうに防衛関係費は重しとされ、社会保障費というものは軽しとされるということになれば、守るに足る国を作ろうという先ほどの山下政務次官のお言葉は、全くの空文にひとしい。防衛が是か非かということを申すのではございません。予算の規模の内容における社会保障関係費と、そして健康保険の収支のアンバランスの問題について、大臣はいかに考えられるかということをお伺い申し上げます。重ねて所見を承わりたい。
  158. 小林英三

    小林国務大臣 ただいまの御質問の中に二十億というお話がありましたが、これは一般会計から毎年資金運用部に返しますものも合せて三十億円使うのでありまして、つまり償還期限を一年延期するだけでありまして、正味は国庫が三十億円の負担をするということと同様であるのであります。  なお、後段の御質問でございますが、私、先ほどから申し上げておりますように、国の自衛力の問題としての防衛費と、社会保障に使いまする経費というものは、おのずから別個の問題でありまして、ただ問題はどちらによけい使うか、使わぬかということがいわゆるその内閣の方針でございまするから、これは今ここで私が岡さんとこの問題に対して議論することもどうかと思うのであります。
  159. 岡良一

    ○岡委員 厚生大臣はわが国の社会保障制度そのものの発展に重大な責任を持たれることは当然なことであります。従って、予算編成の過程においても、予算閣議においても、あなたは責任ある御発言があってしかるべきだ。ところが事実上ふたをあけてみたら、繰り返し申しますように、防衛関係費の八十億増がのうのうと大手を振ってまかり通り、一方健康保険制度赤字については、今御指摘の三十億でもけっこうですがということで、結局窮余の一策として財政上の理由から被保険者に対して一部の負担をあえてさせなければならぬということになってきた。そこでこの問題についてはこれで終りますが、とにもかくにも国として国庫負担をするという事実が存在する以上、国費で負担するのでありますから、健康保険法は当然国庫負担ということを明文化すべきだと私は思うのでありますが、この点に対する御見解をお伺いいたします。
  160. 小林英三

    小林国務大臣 ただいまの御意見は、国庫負担の問題は法文の中に入れろということでございます。もちろん私ども厚生当局といたしましては、国庫負担という問題を法制化したいという気持で大蔵当局にも折衝したのであります。それから金額の問題にしても、私は鳩山内閣の閣僚の一人、しかも岡さんのおっしゃるように厚生行政をあずかっている私といたしまして、できるだけ国庫負担をよけいしてもらいたいと言うことは当然の帰結であります。ただいろいろいな国家財政の上かりいたしまして、ただいま申し上げますように、本年は三十億円の金が出だ。そこで今の法文化の問題でありますが、この問題もけさほど申し上げましたように、またただいまの岡さんのお説のように、私どもといたしましては、健康保険の一部改正法律案の中にもぜひ国家がいつも出すのだというように法文化いたすべく目下努力中であるのでございます。
  161. 岡良一

    ○岡委員 これはぜひとも明文化せらるべきものと私は思うのであります。門も大蔵省に御相談になる必要は私はちっともないと思う。厚生省としては堂々と一つ思い切って明文化いたさるべきだと思います。なお次に二、三お尋ねいたします。先ほど山下政務次官から、日本の全国民医療保障を与えたいというような御構想を二、三簡単にお聞きいたしました。この予算を見ますると、やはり九百何十万円が見積ってありまして、医療保障体系確立費とうたってありますが、これはどういうことをなさるのでありますか。
  162. 堀岡吉次

    ○堀岡政府委員 予算の執行の中身でございますので、私からお答え申し上げます。きのうも御説明申し上げたかご思いますが、厚生省といたしまして国民の疾病量、それから医療施設の分布、そういうことを調査し、なお国民健康保険を実施しておりますところと未実施の地域、これはいろいろ段階がのりますので、それらの比較、それから別途五人未満の事業所の調査を現在やっておりますが、引き続いてやる。それからなお老齢世帯の調査をやっていく。それらを勘案しまして、ここ四、五年の間に国民健康保険を全国的に実施したいという基礎資料と、それの遂行途上におけるいろいろの問題がありますが、この問題は私から申し上げるよりも、岡先生が一番よく知っておると思いますが、そういう問題に対処する方策のために使う経費を今実は予定しております。
  163. 岡良一

    ○岡委員 昨日滝井委員からいろいろお聞きになったそうでありますから、全国民を対象とする医療保障についてはこれ以上お尋ねはいたしません。  ただ厚生省は、いつも調査が大へんお好きでありまして、しかもその結果いつも調査倒れになっておる。調査の結果がちっとも実行に現われてこないといううらみが非常にあるので、調査倒れにならないように、このお金を十分に活用していただきたいということ、なお社会保障制度審議会の昨日の勧告で、国民健康保険の全国市町村に対する強制設立ということで、ぜひともこの点からまず全国民を対象とする医療保障の普及をしてもらいたいという決議があったようであります。五人未満の事業所については、七人委員会答申によれば、特別国民健康保険を作るという制度もあるようでありますが、何と申しましても、一応はやはり現在の国民健康保険給付内容やあるいは保険料負担等についての平準化をはかりながら、全国民を対象とする全国市町村への強制設立によって国民国民健康保険組合に包括する。その上で給付内容の平準化からひいては給付内容向上へと進む。この道が厚生省医療保障の普及徹底に対する一番の道であると私は信じておるのでありますから、どうかその辺に十分なお心を配られて、調査費が調査倒れにならないように実を結ぶように御努力を願いたいと思います。  それから、医務局長がおられますから……。医療内容の適正化について新医療費体系をめぐって関係団体がいろいろ意見をかわしておるようであります。そこで、医療内容の適正化、医療報酬の適正化ということになりますと、まず一点単価が問題になろうと思います。現行の一点単価は全国平均十一円七十二銭でありますが、これはどういう積算の基礎から出たものでありますか。
  164. 館林宣夫

    ○館林説明員 ただいまの一点単価十一円五十銭並びに十二円五十銭につきましては、昭和二十六年の当時、諸種の点を検討いたしまして医療協議会の御審議を経て決定いたしたのであります。
  165. 岡良一

    ○岡委員 いや、館林さんにお尋ねしたいのは、いわゆる平均は十一円七十二銭か三銭かと思いますが、それがいなかでは十一円五十銭、都会では十二円五十銭、これが二十六年の春暫定的のものとしてきめられたということ、それも私は承知しておるのでありますが、この平均十一円七十二銭という一点単価が出てきた積算の基礎は一体どういうところかというのです。
  166. 館林宣夫

    ○館林説明員 平均単価は十一円八十三銭でありまして、それが甲地十二円五十銭、乙地十一円五十銭となっております。その当時労働者の平均賃金を一応の基調に置きまして、その他の諸点から算定いたして作ったものでございます。
  167. 岡良一

    ○岡委員 私は数字をもう少し詳しくお聞きしたいと思いまするが、それでは二、三の指標的な数字についてお伺いをいたします。今労働者の平均賃金といわれましたが、昭和二十六年当時における労働者の平均賃金は幾ばくであり、また医師の生計費は、十一円八十三銭という中において、どういうような基準において計算をされたんですか。これは何人世帯の医師の世帯の生計費として計算されたんですか。もう一つは、その当時における労働者の生計費と今日における労働者の生計費は、国家公務員である皆さん方のお立場についてどの程度のベース・アップをしておるか。ちょっとその三点だけお伺いしたい。
  168. 館林宣夫

    ○館林説明員 その当時の算定の基準は、労働者の平均賃金の二割増しというものがある程度の積算の基礎になっておったわけでございますが、なおそのほかに稼働点数の算定が大きな要素になっておったわけでございます。これらの点は、今日においてはなお相当稼働点数も増加しておるという点でございますが、当時の一応の算定の基礎はそのようになっております。
  169. 岡良一

    ○岡委員 それは一つもう少し詳しく——御存じのようにその当時相当数の診療所について、診療行為あるいはその総点数等を計算をし、一方では公租公課とか衛生材料費とか生計費とかいろいろなものを計算して、結局それが五万数千円になる。診療行為の総点数が四千八百何点になる。割って一点単価が十一円八十何銭というものが出ているんです。この点は一つもう少し資料にしてぜひお願いしたいと思うんです。  それから医務局長にお伺いをいたしますが、一点単価については、昨年私ども医療費体系で三週間、国会の閉会中にもかかわらず、いろいろあなたの御意見を聞かしていただきました。あのときに厚生省が提示された資料では十一円八十三銭という一点単価は不当に安いものである。なぜ安いかというと特に私立の病医院においては、土地家屋に関する資本というものが算定に入っておらないんだという資料が出ておりました。これを算定するならばもっとこれを引き上げなければならぬという資料が出ておりました。私は数字をちょっと忘れましたので、その点についてこの機会にお聞かせ願いたい。   〔委員長退席、大坪委員長代理着席〕
  170. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 ただいまその資料を持ってきておりませんので的確なことは申し上げかねますが、私記憶いたしておりますのでは、先般お示しいたしましたもののうちには、土地あるいは家屋というようなものの借料というものは入っておったと思うのであります。それを入れまして若干のマイナス、収入と経費とを引き比べますと若干支出の方が多かったというように覚えております。
  171. 岡良一

    ○岡委員 いずれにいたしましても、現行の一点単価というものは、御存じの通り昭和二十六年当時の労働者の賃金統計というものに、医者の生活費は二割ぐらいよけいかかるであろうというようなことが一つ資料になっておる。しかもあの当時の一点単価は暫定的だということで、当時の橋本厚生大臣とわれわれがいろいろ交渉を重ねた結果、暫定的という文書まで日本医師会ではいただいておって、それがそのまま据え置かれている。ところがその間に労働者の平均賃金は非常にふえていることは御存じの通り。官公吏のベースにしましたところが、一万三千円から一万五千四百八十円と伸びておる。ところが医師の生計費は、昭和二十六年春以来据え置きなんです。一点単価が不当に低く押えられておるということは医務局長にもお認めいただいておる。どれだけ押えられておるかということは別でございます。そこで厚生大臣にお伺いいたします。今そういうような事情でありまして、一点単価は事実上非常に不当に押えられておるということ、言葉をかえて言えば、社会保険医療報酬によって病院を経営する場合においては、政府の不当な一点単価のために常に赤字を強いられているという事態に落ち込んでいる、こういう事実をお認めになりますかどうか、厚生大臣の御答弁をいただきたい。
  172. 小林英三

    小林国務大臣 一点単価の問題につきましては、私はなお一そうこれを確かめて参りたいと思いますし、またかりに一点単価が今事務当局が説明いたしました通りであるといたしましても、これにはほかのファクターがたくさんついて収入というものが決せられるかと思いますから、その問題につきましては、なお正確を期しますために、関係事務当局から一応答弁さしていただきたいと思います。
  173. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 ただいまの一点単価の問題につきましては、私どもとしましてもこれはきわめて重要な問題だというふうに考えておりまして、その後検討もいたしておりますし、またその点については各方面の御意見も伺って決定いたさなければならぬというように考えておるわけでございます。  ただいまの御意見について一言つけ加えさしていただきますならば、ただいまのように医師の生計費、生活費というものだけで見ましても、これは年次とともに若干ずつ増加いたしておるということは認められるのでございますが、一方におきまして、医師の診療の量と申しますか、従いまして保険で見るならば、診療点数というものは相当に増加いたしております。結局医師の一ヵ月なら一ヵ月の収入というものは、かりに一点単価当りの実収というものが同じでございましても、その場合に応じてはふえております。ただこのふえ方が妥当であるか、足りないかということにつきましては、今申し上げましたように十分検討せねばならぬと考えております。
  174. 岡良一

    ○岡委員 この点は、要するに医務局長なり厚生大臣の大体の腹づもりとすれば、いわば総医療費というもののワクは広げたくないという前提の上で、いろいろワク内操作をされてくると、結局一点単価というものはいろいろ批判があっても据え置きという結論に実はなってくるのです。しかし一点単価というものは医師の生計費だとか人件費だとか、公租公課とか研究に要する費用とか、いろいろな要素を積み重ねてできてきたものなんです。この基準が移動する限りにおいてやはり一点単価の基準も移動させなければならぬ。ここから点数の体系等はさらにまたこれを考え直す必要があるわけでしょう。しかし事実上一点単価が医療報酬の基礎である。これが事実、医療費ファクターの上昇とともに、すでに改訂を必要とする段階にきております。しかし一方では、その医師に支払われる診療行為の総点数がふえてきておりますから、これとのバランスで、結局一点単価をそのままに据え置いてもいいのではなかろうかという御議論は、方法論としては逆じゃありませんか。その点、大臣厚生省の方でもってよく検討すると言われましたので、十分御検討願いたい。やはり社会保険医療を守る場合においては、医療報酬の適正化ということは重大な問題であろうと思う。一点単価を一円上げると、百億ばかりの財政支出が必要だというようなことを久下さんから聞いたことがあります。しかしそうならば、一点単価が五十銭安いところに押えられたものを昭和二十七年四月の資料に明らかにされておるとするならば、四年間のうちに私立の医療機関だけでも二百億近い赤字を出しておることになる。そういうような事情でありますので、医療関係者としては診療報酬という問題に非常にセンシブルになっているという事情を十分御勘案になって、新医療費体系というものの前に一点単価というものが適正か、合理的な基礎の上に一点単価をどこに求めるかという点は、逆算的な方法じゃなく、一点単価を作り出したときのその基礎を考え直していただくか、さもなくば医療報酬体系というものを徹底的に変えた形において考え直さねばならぬ段階にきておるのじゃないか。それをただ小手先で一つの前提的なワクをいろいろ設けて、そして方法もいわゆる逆算的な方法で、小手先的にやってみようということでは、ほんとう担当者も納得できるような医療体系というものはなかなか出てこないのではないかということを心配しておるのですが、これはいずれまた新医療費体系等が問題になるときに、具体的な事例について当局の御意見を伺いたいと思います。  さて次の問題に移りますが、結核対策についてはいろいろ皆さんからお尋ねもありました。そこで厚生省のいわゆる結核白書とでも申しますか、私がいただきましたときには、何でも療養を要する者が三百万に近い。入院を要する者が百四十万に近い。ガフキーの陽性の者が百四十万に近いという、まことにおそるべき結核の実態があの報告書に報告されておる。ところが先ほどの御意見を聞くと、医務局長あたりは、まあそれはそれとしてそこまで心配しなくてもいいのではなかろうかということで、その通りであればまことにけっこうでありますが、しかし事実上私は予算についてお尋ねをいたしますが、健康保険の療養に関する費用の中で、結核に必要とされるものは大体何%でございますか。
  175. 小林英三

    小林国務大臣 政府委員から御答弁させます。
  176. 館林宣夫

    ○館林説明員 昭和二十九年十月の調査によりますと、入院におきましては、被保険者の結核が、件数では五五上一%、被扶養者が二九・九%を占めております。全体の数字は、政府管掌につきましては結核の医療費は三一・八%でございます。
  177. 岡良一

    ○岡委員 生活保護法の医療扶助費に占める結核の医療扶助費は幾らでありますか。一〇安田(展)政府委員ちょっと正確に覚えておりませんが、大体二十九年度が六四・五%になっておりますが、最近ではやはり七〇%に近いんじゃないかというように考えております。
  178. 岡良一

    ○岡委員 そういたしますと、健康保険の中で政府管掌部分でも三割前後という結核療養に関する給付費の支払いがある。金額にすれば、本年度三割ということですから百三、四十億、それから生活保護費の医療扶助の部分では七〇%というと、大体どれくらいになりますか。
  179. 安田巖

    ○安田(巖)政府委員 大体百三十億から百四十億の間くらいです。
  180. 岡良一

    ○岡委員 厚生大臣にお尋ねいたしますが、このような形で結核の療養に要する費用が健康保険給付費の中において非常にふえてきておる。現に非常に大きな割合を占めておる。生活保護法の医療扶助においても同様である。さらに激しい姿である。こういうことは、日本の国の社会保障制度の中でも大切な制度である健康保険なり、同様なことが国民健康保険にもあると思います。あるいはまた生活保護法にいたしましても、財政的基礎が結核によって食われてきておる。これはゆゆしき問題だと思うのでありますが、日本社会保障制度財政の基礎を脅かす今日の日本の結核に対しては、厚生大臣はいかなる対策を講ずるか、これをこのままにして置くというと、他の社会保障制度財政的に結核で全部突きくずされる事態が今明らかになっておりますが、これに対する厚生大臣の基本的な御決意と構想があったら承わりたい。
  181. 小林英三

    小林国務大臣 お説の通りに、わが国の社会保障制度の経費のうちにおきまして、結核の占めるウエートは非常に大きいのでございます。ただ最近結核に対しまする手術その他技術の進歩によりまして、非常に死亡率は減少をいたしつつあるのでありますが、今日の推定の患者といたしましては二百六、七十万人を推定されておりまして、このうちで要入院者がどれくらいの。パーセンテージを占めているかということにつきましては、いろいろの御議論があると思うのであります。従いまして、政府といたしましてまず根本的に一番考えなければならないことは、結核の患者をどうするかという問題が一つ。その前にこれの予防の問題、これが一番大きな問題であると思いまして今年は、まず結核の健康診断、これを昨年度よりも、予算書にもございますように大体一千万人くらいをふやして対象としておるのであります。それから予防接種等につきましても、約七十万人あるいは七十五万人くらいを増員いたしまして、その対象人員にいたしておるのであります。なお今年は社会保険の対象外の人であって、手術を要するというような人の取扱いにつきましては、これは公費負担にするというような予算も立てておるのでありまして、このほかアフター・ケアの問題につきましても、今後結核全体の問題について、できるだけ推進をして参りたいと考えております。
  182. 岡良一

    ○岡委員 いろいろ技術的なことをお伺いいたしましたが、結核と真剣に取り組もうという太い、力強い、頼もしい線が出ておらないように私は思います。他に質問希望の方もありますので、私はまだまだお尋ねしたいことはたくさんありますが、いいかげんでやめたいと思います。そこでお伺いをいたしたいのは、この予算の説明を見、今大臣の説明を聞きますと、今度結核予防法の中における療養費が十五億何千万円ということであります。昨年度はどれくらいありましたか。
  183. 山口正義

    山口(正)政府委員 十六億一千二百四十五万七千円ということになっております。
  184. 岡良一

    ○岡委員 結核白書は、結核の療養を要する者が三百万に近いとか、入院を要する者が百四十万に近いなどといっておるじゃありませんか。結核予防法というのは、御存じの通りおそらく昭和二十四年以来厚生委員会が小委員会を持って、三年越しに検討して、どうやら厚生省の方からお出しを願った法律です。結核を予防し、撲滅するための支柱として、私どもはこの法律に期待をしておるのでありますが、これに含まれておる予算の療養費というものは、昨年よりも減っておる。厚生省の統計によれば、患者数は非常に深刻な数を示しておる。非常に矛盾しておるじゃありませんか。しかも今承われば、健康保険に加入している被保険者については、結核予防法に基く医療費の公費負担というものは与えられないということになるのでありますか。
  185. 山口正義

    山口(正)政府委員 結核予防法によります医療費の公費負担は、御承知のように結核予防法の第三十四条によりまして適正な医療が普及せられますように、その財政的な突っかい棒をするという意味で、特殊な医療に対して公費負担をしているわけでございます。結核に対する医療費は、先ほどからお話の出ております社会保険あるいは生活保護法による支出というようないろいろな方面で、相互扶助あるいは公費負担という線で、財政的な支持が与えられているわけでございます。従いまして、結核予防法におきまする医療費の公費負担の割合は、全体からいたしますときわめてわずかな部分でございまして、これはまことに遺憾でございますが、いろいろ御意見が出ておりまして、結核の医療費は結核予防法によるものにできるだけ集中して、大幅に増額すべきではないかという御意見が出ておったことは、よく承知いたしております。私どもも、そういう点十分勘案していろいろ検討したのでございます。昭和三十一年度におきましては、これは両三年来御議論のあったところでございますが、前年度と同じような三本立の方針で進むということになっているのでございまして、医療費の減りましたことにつきましては、対象者の数は、健康診断の幅も広げて参りますので、前年度より一割増しというところで、化学療法におきましても、対象者をふやすということでやっているのでございますが、ただ薬価の値下り等によりまして、金額の上におきましては減少を示しているのでございます。  それから、先ほど大臣の申し上げました手術に伴う入院費につきましては、社会保険の被保険者は一応除外するということになっているのでございます。しかしそのほかの医療につきましては、従来通り社会保険の被保険者も同じように含んでいくという建前でございまして、プラスした部分についてそういう特別の措置が講ぜられているわけでございます。
  186. 岡良一

    ○岡委員 厚生大臣にお伺いいたします。今局長から御答弁があった通りでありますが、私は基本的な結核に対する真剣な取っ組み方の方針を一つお伺いをいたしたいのであります。たとえば健康保険においては百三、四十億というものが療養給付費の中で結核に使われておる、生活保護法の医療扶助でも百三、四十億という莫大なものが使われて、結局現在の社会保障制度が結核に食われて財政的な基礎がぐらぐらしておる。この際しかも一方では、結核予防法においては療養に関する予算はわずかに十五億ということであります。こういう事態はこのままに放置すべきものではないと私は思う。これに対して何かこうすべきだという厚生大臣としての御抱負があったら承わりたい。
  187. 小林英三

    小林国務大臣 この健保財政に対しまして 今お話のような結核のために非常な大きなウエートが加わっておることは事実でございますが、しからば今直ちに現実の問題といたしまして、結核の取扱いにつきまして、たとえば重症患者であるとかあるいは軽症患者であるとかいうようなものにつきまして別個にこれを取り扱って、一挙にして結核の問題を解決するかどうかという問題につきましては、これはよほど慎重に考うべき問題でございます。私は現実の問題といたしましては、これは至急に取り上げて、医療保障の問題につきまして医療保障体系調査費というのがございまして、将来健保をどうするか、あるいは国保をどうするか、あるいは五人以下の事業所の人々をどうするか、あるいは結核の問題をどうするかというような問題につきましてできるだけ早く成案を得ましてそうして将来これらの総合的な一つの案を立てたい、こう考えております。
  188. 岡良一

    ○岡委員 結核の予防、撲滅ということはもちろん短兵急に期し得る仕事ではないのでありまして、これは相当長期にわたる計画的な施策が必要であることは私も否定いたしませんが、しかし今明らかにされたように、結核のおかげで他の社会保障財政的に根拠がゆらいでおるという事態は、これは結核の予防、撲滅とは別個な問題として私どもは重要に考えなければならぬと思う。そこで私どもは予防法を強化する、特に療養費の公費負担という制度については慎重に御検討いただきたいが、現在のような地方と国の任意負担というようなことでは、結核予防法に基く療養というものがなかなか行き渡らない。しかも地方財政が非常に困難であるという実情において、その上任意であるということになれば、五割五割というようなことではついつい地方としては回避される傾向があるのではないかと思う。おそらく府県においては結核予防法により公費負担を願い出て、これが断わられておるところ、まるまるいれられておるところというように、府県において地方的な多少のでこぼこがあるのではないかと私は推察をいたしておる。だから国費と地方費との負担率というものは、もっと国に重く地方に低くする、同時にまたこれは任意負担ということにはしないで、義務負担にする。そうしてその適用についてもやはり適正な基準を設けてこれを実施するということにして、結核に対してはそういう方針で、結核予防法というものを支柱としてここで結核問題の解決をはかる、健保に負わす、生活保護法にも負わす、国保にも負わすということでそれぞれの制度財政的にお手上げをしておる、こういう姿は、今申し上げたような基本方針をきめなければ、根本的な解決は立たないと思う。この点についての厚生大臣の御所見を承わりたい。
  189. 小林英三

    小林国務大臣 岡さんの御意見は、私は大いに傾聴に値いすると思います。実は本年度の予算につきましても、私どもとしては、地方財政関係からいたしまして、できるだけ国庫負担を多くいたしたい。それから、患者自身の負担も少くしてあげたい、こういう関係からいたしまして、ただいま患者が二分の一持つことになっておりますが、これを三分の一にいたしまして、その残りの三分の二のうちから、さらに国と地方団体その間を二と一の割合で、国を二にして、地方団体の方を一にするという計画のもとに予算の要求をしたのでありますが、いろいろの財政上の関係からいたしまして、現状のままになったのは、大へんに遺憾に思っております。将来私ども考えておりますことについて、十分に実現をいたしたいと考えております。
  190. 岡良一

    ○岡委員 私はなおほかに、生活保護法の問題、それから現在のきわめて不均衡、不統一な年金制の問題、ひいては将来の国民年金制への展望、見通し、構想についての問題、厚生年金積立金の莫大な積立金の運用に関する問題等、いろいろ厚生省の所見を、特に大臣の責任あるお答えを実は期待をしておったのでありますが、それは次の機会に譲りたいと思います。  そこで、重ねてお願いをし、要求いたしたいことは、厚生省においても特に進歩的な、そこにずらりとお並びの局課長さんは、いろいろ構想を持っておられるようであります。しかしいざ実施ということになりますと、予算等の制約で、非常に私どもの期待にはずれておる。これはやはりその国の政府社会保障というものに対する重点の置き方がずれておるということに大きな原因があろうかとは思いますが、われわれは大いにしり押しをしますから、進歩的で良心的な厚生省の局課長さんは一つ大いに御奮闘を願いたいと思います。以上をもって御質問を終ります。
  191. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 岡本隆一君。
  192. 岡本隆一

    ○岡本委員 大臣も岡先生との論戦でだいぶお疲れでしょうから、私は今度の予算の二、三の問題にきょうはとどめて、大臣にお尋ねしておきます。  まず最初に、児童保護費の問題でございますが、昨年の秋に、ちょうど国会の休会中に、ある近くの児童保護施設でもって集団赤痢が発生いたしました。私、医者として参ったのであります。参りましたときに、いろいろ施設の話を聞いたのであります。何か子供の食べたものに心当りはないか、こういうことを尋ねましたが、その施設にいるところの子供が、秋のことでありますので、カキが赤く熟して下に落ちているのを拾って食べた。熟して落ちたカキを食べて、それが原因かどうかわかりませんけれども、とにかくその子は疫痢になって死んでおります。そういうような状態に置かれた施設の子供の食物の模様を聞いたのであります。かなりかわいそうなんであります。そしてまた施設にいる子供を見ますと、道で遊んでおっても、これはどうも施設の子供じゃないかなというような印象がぴたっと当る。それほど体位に違ったところがあるのであります。収容施設の児童に対する、ことに食費に対する措置がついこの間も新聞に出ておりましたが、少しばかり値上りになった模様でありますが、それをもって十分であるとお思いになっていらっしゃるかどうか、大臣の御考えを承わりたいと思います。
  193. 小林英三

    小林国務大臣 児童保護の問題につきましては私ども非常にこれが内容の推進改善に努力をいたしたのでございます。今たぶん御指摘になっていることは、いわゆる施設におります収容された子供たちの食費の問題等も御指摘になっているのじゃないかと思いますが、これらの問題につきましても少くとも私どもは法務省関係の所管の少年院並みには一つ上げたい、こう思いましていろいろ交渉をいたしたのであります。そこまでは参りませんでしたけれども、とにかく年令的に申しましてカロリーの点から多少でも私どもが上げ得たことにつきましては幾らかこれでも気をよくしているのでありますが、いずれにいたしましても将来は食費が五十七円六銭だったのでありますが、それを六十一円六十八銭に上げたのでありますが、なお私どもはこれでも満足いたしていないのでありまして、将来ともこういう問題につきまして、その他の児童保護の問題につきましても十分に考慮いたしたいと思っているのであります。
  194. 岡本隆一

    ○岡本委員 四円五十銭値上りになった模様でありますが、なお満足しておらないということでございます。しかしながら値上りになった六十一円でもってそれではどれだけのまかないができるかということを考えてみるときに、肌寒い思いがする。先般新聞に報ずるところを見ますと、大蔵省のお役人が一食六十一円というのは高過ぎる、こういうようなことを言った、三食と一食とを間違えたというようなことを折衝の過程で言ったということが出ておったのであります。おそらくだれでもそう思うと思うのです。そういうふうな問答の中において強くそういう点を追及して、もっとなぜがんばれなかったかと思いますが、そういうふうな失言があったのかなかったのか、一ぺん念のために承わらしていただきたいと思います。
  195. 小林英三

    小林国務大臣 これは私どもの方の会計課長初め専門の事務当局が、大蔵省の厚生省関係の事務当局と下折衝をいたしまして、連日連夜戦っておることでございます。ことに数字も、私どもが申し上げましたことは、野犬狩りの犬にも劣るのじゃないかということまでも、厚生省では大蔵省に詰め寄っているのでございまして、一食と一日分と間違ったということにつきましては、私は信ずることができないのでありますが、いずれにいたしましても今申し上げましたように将来すべての児童の保護の問題については推進をしていきたいと思っております。
  196. 岡本隆一

    ○岡本委員 大臣は大体施設の子供がどういう点において一般の子供より劣っておるかという点について御承知でございましょうか。
  197. 小林英三

    小林国務大臣 私はこういう施設も視察したことはございますが、専門家であります皆さんがお考えになっているほどは知らないかもしれませんが、将来努めて現場の視察をしていきたいと思っております。
  198. 岡本隆一

    ○岡本委員 それでは一つ大臣に特に御勉強をお願いいたすことにいたします。とにかく施設の子供は一般的に背が低いんです。そして横に太いんです。それから色が悪いんです。何となしにさえない色をしている。そして少し青ぶくれしているというふうな感じがするのです。施設の子供が表で遊んでおるのですが、施設のそばへ行きましてそういうふうな子供をふっと見たときに、これは施設の子供だなと思うとそれが中へ入ってくるのです。からだではっきりわかるのです。それはもう医者でなくてもわかるのです。それほどはっきりしているのです。それはやはり毎日々々の粗食というものが積み重ねられてそこへいっている。だから私はいじらしいと思うのです。それからその施設の方に子供の性質について何か違うところはないかと聞きますと、やはりどうしても明朗性がないと言うのです。何となしにすべてすることに消極的だ、自主性がない。そういう子供もみんなだんだん大きくなっておとなになるのです。そうして将来の日本を背負って立つ人になるのです。そういう人たちがこれから後、せっかく施設であたたかいと言いたいのだが、まだあまりあたたかくないんですね。とにかくも施設の中で大きくしてやるというのなら、せっかく施設の中で大きくしてもらった子供が、からだは弱い、しかも性格にどこか影がある。そういうようなものを作っているのじゃ施設を作った意味はないと思うんです。だから施設を作っている限りその中の子供がすくすく育つようにすべきだと思う。そういう点について私はいつも思うのですが、とにかく施設の子供というのは戦争で両親をなくしたとか、あるいはまた戦災で孤児になったとかいうふうな戦争の落し子が多いのです。いわば先ほどもあなたがおっしゃった日本が非常な不幸に陥った。その戦災の落し子がおる。ところで一方今年の予算を見ても、やはり戦争の落し子が予算の中にもおるのです。たとえば造船の利子補給ですね、今年は三十一億予算の中に盛られているのですが、あれは御承知のように吉田内閣時代にものすごい汚職疑獄をやって、その汚職疑獄の上で成立して造船だけに利子補給をやろうということになったのです。そうしてあの汚職の結果生まれたその子供の利子補給というものが今なお年々続けられて、ちゃんとはぐくみ育てられておるのです。私はあなたにこの機会にお考えを承わっておきたいと思うのでありますが、ほんとうにかわいそうな戦災孤児であるとかその他のみなし子のこの施設の子供、これと造船の利子補給というふうな悪徳政治の落し子、これとあなたはどっちがかわいいとお思いになるか、一つ承わりたい。
  199. 小林英三

    小林国務大臣 これはもう常識的にお考え下さっても私がわざわざ申し上げる必要もないと思います。
  200. 岡本隆一

    ○岡本委員 そうであろうと思うのです。そこで私はあなたにお願いしたい。よく保守党の方は、たとえば組合のデモあるいはまたすわり込み戦術、そういうものをごらんになったときに、あいつらはやかましくあつかましく何でも言うてくる、だから取るものを取っておる。しかしながら声なき声を聞かなくてはならぬ。よう取らぬものがたんとおるじゃないか。君らよりもっと貧しい暮しをしておる者がおるじゃないか。そういうものを考えろ。ことにことしの春期闘争なんかについてそういうふうな声が一部に出ておる。しかしながら一番声なき者は施設の子供なんです。おとなはああして下さい、こうして下さいと、戦傷病者でもあるいはまた戦争犠牲者でも、みんなそれぞれ自分の要求を言っております。しかしながら施設の子供が団体交渉なんかしたことを聞いたことがない。だから団体交渉を一つもやらないかわいそうな子供はそのまま忘れ去られておるのです。私はこの機会に声を出さないそういうような子供に、ほんとうにあたたかい心を恵む政治をあなたにやってもらわなければならぬと思うのです。厚生大臣といえば、あなたはさっき日本厚生行政を預かっている私だ、こう言うのです。厚生行政をあずかっていられるあなたであれば、ほんとうに、それらの子供はあなたをたよりにしておるのです。頼みの綱にしておるのです。その頼みの綱のあなたがほんとうに自分の子供のような気持を施設の子供に持ってやっていただかなければ、だれもそれをかばってやる者はないと思うのです。だから一つせひあなたの任期中に一ぺん幾つかの施設を見てまわって下さい。そしてその施設の子供の着ているもの、食べて写るもの、それをとっくり見てやって下さい。ただしいつ行きますと言うて行ったらそれはその日だけごちそうをこしらえますから、やはり抜き打ちに行ってもらわぬとだめですよ。もし何なら一つ京都へ来て下さい。私が抜き打ちで御案内します。一緒に見て回りましょう。  食費の問題を今申し上げましたが、それじゃ食費のほかに被服費、日用品費あるいはその他の費用としてどれくらい盛られておるか、数字を見ていただきたいと思うのです。
  201. 小林英三

    小林国務大臣 局長から答弁させます。
  202. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 ただいま合算をしなくてはなりませんので計算をいたしております。
  203. 岡本隆一

    ○岡本委員 それじゃけっこうです。私京都府の児童課へ行って表をもらってきたのですが、一日十六円六十五銭です。その一日十六円六十五銭の費用の中からタオルを買い、石けんを買い、ハンカチ、ちり紙、シャツ、ズボン、くつ下、くつ、学校へ行く通学服というようなものまで、全部一日十六円幾ばくでもってまかなっていかなければならないのです。そうしますと、年に一着の通学服がやっと精一ぱいなんです。春夏秋冬を通じて一着の通学服というようなことになって参りますと、それはもうボロボロになるのです。だからつぎの当ったのを着ている。そういうことになりますと、もう小学校へ通っている子供が格段みすぼらしい風で通わなければならない。勢いその子供はほかの子供のかげに隠れるようになるのです。性格がおのずから暗くなるのです。それはその子供が持って生まれたというのではない、その子に対するあたたかい心——その子供が日の当るところにいないからそういうふうな暗い子供になっていく、大臣、あなたはこれについてどうお思いになるか、何とかしてやらなければならぬというふうにお思いになるか、御信念のほどをこの機会に御披瀝願いたいと思うのです。
  204. 小林英三

    小林国務大臣 実は私もこの一月に広島県の方に参りまして、今お尋ねのような施設にも数カ所参りました、私個人でみんなにやるような菓子なども持参いたしまして訪問したのでありますが、これは今お話のように、私が行くということをあらかじめ知っておったものでございますか、非常に健康体のように見えました。またにこにこして−またそこの世話をやいている人がいい人であったかもしれませんが、孤児でありましたけれども。ひねくれたような格好もない、生き生きした姿を見て非常に私も喜んだのであります。しかしそれにはやはり今おっしゃったようなあらかじめということもあったかと思いますが。いずれにいたしましても戦争の結果としてできたこういう子供であるから特別に同情をかけていくはもちろんのこと、すべての社会においてこういうような人たちに対しては特別な同情をしてそういうひねくれたことのないように、将来すくすくと育つようにしていくべきものだと思います。なお御質問の件も十分に拝聴いたしておりますから、こういう問題につきましては慎重に考えたいと存ずる次第でございます。
  205. 岡本隆一

    ○岡本委員 大臣がお越しになった施設の子供は、たまたま元気そうであった模様であります。しかしながらここへ私が参りました施設の子供の身体検査表をもらって参りました。それをグラフに書いて持ってきております。これを見ますと、数字の上で明らかに身長はずっと全部下回っています。この赤い線が施設の子供です。黒い線が全国平均です。またその学区の子供は割合にいいのです。上の線が学区の子供です。まん中が全国平均、そして施設の子供は赤い線です。明らかにこのように背が低いのです。これはたまたまそうだというのにはあまりにはっきりそろい過ぎているのです。こういうようにはっきり身体検査表というものに施設の子供の体位が劣悪であるということが出ておるのでありますから、せめて人並みに育つようにしてやっていただきたい。それからまた性格の点でも人並みに明るい気持を持てるようにしてやってもらいたいと思います。施設のお方に会っていろいろお話を聞きますと、修学旅行にもやってやれないと言うのです。金が足りないから修学旅行にやるのも困難だ。しかしながら卒業のときに一ぺん行く旅行にだけは何とかしてやらしてやりたいと思って、その金の捻出に苦労しておる。そういうようなお話を私は聞いて参りました。そこでそういう施設の子供を養育していく方針といたしまして——私は大臣にお考えをお尋ねしたいと思うのですが、ある施設によりますと、一人の保育の責任者に対して数人の子供を預けて、そうして家庭的な形でもってその子供のめんどうを見ていくというのと、それから寄宿舎式に幾つもの部屋に入れておいてそうして幾人かの人が一緒になってめんどうを見ていくという二つの方法があると思うのでありますが、私はでき得るなら子供のなにはいわゆる里親のような形でもって、一人々々の保母と申しますか、そういうふうな保育をするところの係の親がわりの人ですね、こういうふうな人たちの中に数人の子供を分けて責任を持って養育をやってもらうというふうな形に将来していくべきではないか、それによって初めてあたたかい愛情のつながりの中で明るい子供が育つ、いくのではないかと思うのでありますが、将来そういうふうな形へ持っていくということについてあなたのお考え一つ承わらしていただきたいと思います。
  206. 小林英三

    小林国務大臣 実は私がこの間参りました二カ所とも——これは尾道といりところでございましたが、二カ所とも、やはりあなたがこういう方がいいという、いわゆる部屋を一人の保母が受け持ちまして、そうしてそこで温情をかけてめんどうを見ておる。それから所長もやはりその寮に一緒に泊りまして、それらの者と起居をともにしてやっておるのを見てきまして、非常にこれはいい方法であると私は思ったのでありますが、今お説のような二通りの問題につきましては、やはりあなたのお説のようにあたたかみを持ってやるというような方法がいいと私は思っております。  なお一応里親等の問題につきまして児童局長から意見を述べさせたいと思います。
  207. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 ただいまお話の里親の開拓につきましては、特に児童委員方々にも去年来非常にお骨折りをいただきまして、開拓に努力をいたしております。今後もこの努力を続けていきたいと思っております。現在里親として登録されておられます方は約一万五千でございまして、そのうち約八千の方々に子供を預かっていただいておるような次第でございます。これらの数字がさらに伸びていくように努力をいたしたいと考えております。
  208. 岡本隆一

    ○岡本委員 そこでそういうふうなあたたかい養育ということになりますと、どうしても問題は人手の問題につながってくると思います。ところで現在厚生省が示しておられるところのそういう施設への事務費の限度額というものが非常に低いのです。従ってその地方の給与の実態に合わないのです。低い給与でもって事務費が見られておる。ところが長い間そういうふうな仕事を続けてきておられるという人が多いと、だんだんその人たちは年功でもって給与が上ってくるのです。そういたしますと、やはり補助費の限度額が少い限りにおいて地方財政でもって足りない分はそれだけ補っていかなければならない。ところが地方財政は苦しいものでありますから、今度はその地方財政の支出をどうしても押えるわけであります。でありますから、勢い限度額の中でまかなえるような人員構成をやるものだから人員が減る。だから十五人でやらなければならないところを十人、十一人というふうに少い費用でもって養護施設が運営されている。これは私京都府のいろいろの施設の定員と現員を見てみましたが、ほとんど全部にわたってそういうことが行われておる、そういうことでありますと、これはもうどうしても子供に対する心づかいというもの、継ぎ一つ当ててやる人手というものがやはり不足している。よごれているハンカチを洗ってやる、鼻から流れ出る鼻汁をふいてやるその手がやはり不足であると、どうしても子供というものは性格的にいい子供になっていかないと思うのです。やはり親が子供を見てやると同じ愛情を持っておったとしても、手が少くなればそれだけの心づかいが劣ってくると思う。だからそういう点において、厚生大臣一つ十分お考え願って、ことしは予算を編成されたんだから仕方がないとも思うのですが、少くとも来年度の予算の編成に当っては、あなたはほんとうにそういう子供たちのつえなんだ、柱なんだ、あなたはほんとうにその子の親なんだ、こういう気持でがむしゃらに一つがんばって、まかり間違うたら大臣のいすをぽんとほうり出す、それくらいな元気でなければいかぬと思うのです。たとえばいつか橋本龍伍さんが、遺家族に対するお燈明料が少いというので敢然といすを捨てた。私は保守党ながらあの人は見上げた人だと思う。あなたも一つそういうふうな気概を出してもらいたい。それだけのあなた気概があるかどうか、やる気があるのかどうか、一つこの機会にあなたの御心境を承わりたい。
  209. 小林英三

    小林国務大臣 有益な御意見を拝聴いたしまして非常に感謝をいたしております。今後十分にこういう問題につきましては一つ検討いたしたいと思っております。
  210. 岡本隆一

    ○岡本委員 かわいそうな子供のために、ほんとうにいいおじいさんというと失礼かもしれませんが、お父さんになっていただきたいことをお願いいたしまして次の問題に移ります。  それは薬品や食品衛生の問題でございまするが、これは大臣にお尋ねしてもちょっと無理かと思いますので、薬務局長にお尋ねしたいと思うのであります。昨年森永の事件が起りました。それから血清事件、あるいはその前には結核予防のためのBCGでもって結核が発生したというようなことも思い出されるのであります。あるいはまたジフテリア・ワクチンで京都はひどい目にあっておるのです。そういうような一連の事件のあとにまたレントゲン検査のために硫酸バリウムを飲ましたところが、そのためにその患者が死んじゃったというような事件があったのを、つい先ほどの新聞記事で見たのであります。その大体の経過、真相というふうなものを一つ教えていただきたいと思うのです。
  211. 森本潔

    ○森本政府委員 ただいまお話のように、薬品関係でいろいろ事故があったのでありますが、最近のお尋ねになりました硫酸バリウムの事故について御説明申し上げます。この事故は本年の一月十五日でございますが、茨城県下の横田医院におきましてレントゲン検査をするために造影剤として硫酸バリウムを飲ましたのであります。ところがこの硫酸バリウムは工業薬品でございますが、試薬二級の硫酸バリウムという表示がしてあります。ところがだんだん調べてみますと、その中身は試薬の硫酸バリウムではなくいたしまして炭酸バリウムであります。この炭酸バリウムは御存じのように劇薬でございます。従いましてその造影剤を飲みました患者は死亡いたしたわけであります。事故の内容というのはこういうことであります。そこで問題として考えられますのは、造影剤として飲ます場合に、局方の硫酸バリウムを飲ましておれば問題はなかったのではないかという点が一つ。ところが今回飲ませましたのが試薬の硫酸バリウムであったという点が一つでございます。これは私の方で号に何とも申し上げませんが、第二の問題としましては、硫酸バリウムという表示がありながら、中身が炭酸バリウムであった。劇薬であるところの炭酸バリウムに劇薬でない硫酸バリウムという表示があった、こういう問題が一つあります。これにつきまして、この状況も判明いたしましたので、さっそく取り調べましたところ、これは東京の純正化学という薬品会社でございますが、そこで小分けする際に炭酸バリウムを間違えまして硫酸バリウムと表示した、その該当数がどのくらいな量であろうかということをだんだん調べてみますと、三十キロの炭酸バリウムを小分けしております。これを五百グラム入りのびんに小分けをしておりますので、六十本という炭酸バリウムが硫酸バリウムという表示で流れていた、こういう事実が判明いたしました。もちろんこれは毒物劇物取締法違反の行為であります。それでこれに対する行政処分は別といたしまして、ともかくこれに対してさらに事故が起らないようにすることが大事であろうと考えまして、さっそくラジオ、新聞をもって造影剤として試薬の硫酸バリウムを使わないようにということを一般に知らせますとともに、関係府県に対しましてこの純正化学から出た経路を追及いたしまして、直ちにこれを回収する措置をとりました。ただいまの回収状況は六十本出ておりますうちで、十九本が回収されました。残りのものは目下追及中でございます。御存じのようにこれは純正化学から第一次に製品が約五十カ所出ております。それから末端に行きまして二次、三次と出ておりますので、全部回収するにはなお若干かかると思いますが、警察の方の援助も得まして関係府県の監視員を動員いたしまして極力すみやかに回収するようにいたしております。なおこの違反したところの業者に対しまする処分につきましては別途考えることにいたしております。
  212. 岡本隆一

    ○岡本委員 私どもこの事件は森永の事件に非常によく似ておると思う。薬品を取り扱う人が小分けしたり、あるいは封をするときに薬品を間違える、森永のときには第二燐酸ソーダと砒酸ソーダを間違えた、それから今度の場合は硫酸バリウムと炭酸バリウムとを間違えておる。しかもその粗悪品が片方は薬品会社、片方は医師のところに医薬品として持ち込まれておる。なるほどそれには薬局方というレッテルは張ってなかったかもしれません。しかしながら医者が薬屋に注文する限りにおいては医薬品以外にないのです。ことに医者が硫酸バリウムを注文したら、それはもうレントゲン検査に使うものだということはわかり切っている。それをもしも薬剤師か局方品でないということを知って持ってきたとすれば、その薬剤師は私は不徳だと思う。レッテルを見なかった医者は不注意です。不注意ではあるにしても、そういう点では薬剤師の方がもっと責任があると思うのです。レッテルを見なかった方が悪いなんということを言うのは、ちょっとそれは酷だと思うのです。そこで、薬品が流通していく経路について、こうなってくると、国民はちっとも信頼ができぬようになってくる。われわれがさじでいろいろな薬を分ける。しかしながらこれほんまにそうかいなと思い出したら、おそろしゅうて調剤ということはできなくなる。さらにまた患者が薬をもらうときに、これ間違うてへんかいななんて思い出したら、もう日本医療行政は全くでたらめだというふうに思わざるを得ないと思う。そんなことでもってわれわれが安心して診療にタッチできないということでは困ると思うのです。だから、これについて大局的にどういう方法でこれを未然に防いでいこうという方針を、これだけいろいろ行き当ったらあなた方もすでに立てていらっしゃるだろうと思うのですが、一つその大方針を承わらさしていただきたいと思います。
  213. 森本潔

    ○森本政府委員 ただいまお話の通りでございますが、これにつきましては別に改まって格別に大方針という考え方は実はないと思うのでございまして、医薬品の販売、流通系統につきましては、まず第一に製造業者、それから販売業者、これは成規の手続を踏んで許可を受けておる者でなければやってはいかぬ、それ以外は流さない、こういうルートが確立しております。それから今お話のように薬剤師等につきましては、薬事法におきましても、不良薬品でありますとか不正表示の医薬品を売ってはいかぬ、製造もそうでありますが、売ってはいかぬ、こういう規定もあるのであります。ともかくこれらの規定を関係者が十分重視する。それからさらに及ばない部分につきましては、役所の方の監視、指導を厳にする。きわめてじみでございますけれども、業者は法律を厳正に順守し、取締りの官憲は熱心に真摯にこれをやっていく、これしか私はないと思うのでございまして、ただいまお話のようにいろいろ事故が起りますので、そういう方針を、じみではあるけれども大いにやるべしというような指示をして参っておるわけであります。  それからなお誤解があると思いますので申し上げますが、ただいまお話の本件の硫酸バリウムにつきましては、これは試薬硫酸バリウムという表示があったのでありますから、医師へ売りましたのは医療器械店で販売したようであります。薬局ではないようでございます。
  214. 岡本隆一

    ○岡本委員 医療器械店がそういう医薬品を取り扱って、それが間違いを起したというふうなことでありますと、やはりお考えを願わなければならない点があるのではないかと思うのです。薬剤師以外の者が医薬品を、どういうものであるにいたしましても、ことに医師のところへ持ち込んでおるというふうな点においては、薬事行政のあり方について一応考え直していただかなければならぬ問題があると思うのです。  そこでもう一つお尋ねしておきたいのは、例の血清事件です。事件の概要についてはもう新聞紙等を通じて存じておりますし、あるいはこの前の臨時国会でこれが論議されたかもしれませんが、私あいにくそのときにおりませんで、その状況を知りませんので、簡単に私の考えておるところだけをお伺いしたいと思うのでありますが、あの血清事件の発生の原因はどこにあるとお考えになっていらっしゃいますか。
  215. 森本潔

    ○森本政府委員 血清の問題についてお答えする前に、先ほどのバリウムの件で誤解があるようなのでちょっと申し上げておきますが、試薬硫酸バリウムと申しますのは医薬品ではありません、工業薬品でございますから、医薬品としての取締りはしてございません。従いまして、他の工業薬品と同様に医療器械店でも売って差しつかえないと思います。こういうことになっておりますから、その点ちょっと付加して申し上げておきます。  それから次の血清の問題でございますが、これにつきましては、御存じのように長野日赤病院におきまして判定用血清を使って血液型を判定した。ところが0型に出るべきものがA型に間違って出た。従って間違った血液を輸血して死亡した、こういう事件でございます。これには二つの原因があろうと考えるわけでございます。一つ使用する方法の問題、それから一つは血清自体の問題と二つあると思うのであります。この使用する方法についてでございますが、この使用方法も、血液型判定の判定する際の使用方法といたしましては、御存じのように全血法でございますとか、あるいはまた枸櫞酸加食塩水を用いて溶かしてやる方法でございますとか、生理食塩水を用いて溶かしてやる方法とか、およそ三種の方法があるわけでございますが、その方法の中で今回の問題になりました血清を使いましても、枸櫞酸加食塩水の浮遊液を用いる方法によりますれば、正確な判定ができるという結果が出ております。ところが全血法で用いますと往々にして間違った結果が出る。それで今回の場合は全血法でその血清を御使用になったようでございます。その辺の使用方法について今申したような安全な方法でやれば、これは間違いない結果が出るであろうと思いますが、全血法でやったためにそういう結果が出た、こういうことであります。なお専門家の御意見を伺いますと、全血法でありましても、熟達した医師が正規の方法と申しますか確実な方法を用いてやりますならば、正確な反応が出る、こういうような結論も承わっておりますので、その辺に、全血法によった場合の使用方法が正確であったかどうかというような問題も実はあるようであります。  もう一つはその血清の中に従来予想もしておりませんでしたような抗N抗体というものが入っておりました。これが入っておりますために、全血法を用いますれば特に今申したような疑わしき反応を生ずる結果が生じております。従いましてこの血清は、現在の検定基準でやりますれば合格をいたしておりまするが、検定基準にひっかからないような新しい物質が入っておった。従って今申したような判定の際特に疑わしい検査をしておるというようなことも考えられます。従いましてその辺二つの原因があろうと思います。そのいずれなりやという断定はちょっと私いたしかねます。およそ二つの場合が考えられる、かように申しておきます。
  216. 岡本隆一

    ○岡本委員 そこで一つお伺いいたしたいのですが、今一般的に血液型の判定に、どういう方法が用いられておるかということについて、厚生省で御調査なさいましたか、これを機会に。
  217. 森本潔

    ○森本政府委員 現在一般の臨床家におきまして使用されております方法は、全血法が多いと思います。それから学術研究とか、特に血液の専門家が研究する際には、枸櫞酸加食塩水の方法を用いておると聞いております。
  218. 岡本隆一

    ○岡本委員 臨床家が輸血をやる場合に枸櫞酸加食塩水法をやっておるところはまずありません。全部全血法です。全国どこの大学病院でも、国立病院でも御調査になってごらんなさい、全部全血法です。今まで全血法でやって間違いなかった。ところがそういう事故が起った。そこに私は問題があると思います。それで先ほどの局長の御意見でございますと、全血法の使用法が途中で欠陥があった。もう一つは血清自体も悪かったという二つの因子でこういう事件が起きた、そういうふうなお考えである。なるほどそれはあるいはその通りであるかもしれない。しかしながら私の見るところでは、もっとやはり根本的な原因があると思うのです。それはその検定基準に間違いがあったと思います。検定基準が甘過ぎたと思うのです。殉職酸ソーダ法でもって正確に出れば、それでよろしいというような検定基準をとっていられるから、ややこしい血清が出たわけです。そのややこしい血清に基いて事故が起っておる。私はその点をこの機会によく厚生省の方で、今までの厚生省の検定基準というもののきめ方そのものに間違いがあったということを考えていただかなければならぬと思うのでありますが、これは私がちょっと言い過ぎですか。
  219. 森本潔

    ○森本政府委員 仰せの通りでございまして、原因につきましては、およそ二つほど考えておりますが、それでこのような事件がありましたので、いろいろ検討いたしました結果、次のような結論に達しました。一応今お話しのように検定基準には合格しておったけれども、そういうようなことがあったといたしますれば、これは検定基準の制定当時においては、それで間違いなかったと思いますが、そのようなことが発見されました以上、検定基準の改正ということを考えなければならぬというので、専門の委員を委嘱いたしまして、目下これを検討いたしまして、さような因子を除去するようにいたしております。  それからなおこの判定の方法に関連いたしましても、現在多くの臨床医家は全血法を用いておられますので、枸櫞酸法とかそういう複雑な方法でなく、一番簡単な方法で判定できるような血清を作る、この二つの問題を解決するように、目下委員会を開きまして、検討を進めておりますので、御意見通りの感じを持って処理いたしております。
  220. 岡本隆一

    ○岡本委員 この機会に特にお願いしておきたいことは、これはもうどうしても臨床医家は全血法で調べるのです。輸血をやる必要があるのは緊急の場合なんです。もう患者の脈がない。こっちはもう手がふるえるような気持でもって輸血を急ぐ、手っとり早くやれる方法でなければ、実際の間に合わない。だから試験管を持ってきて食塩水をまぜて遠心沈澱しるというような、手術をやっていてどんどん出血しているというのに、そんなまどろこしい方法でもってやらなければならねような血清なら、そんな標準血清は役に立ちません。全血法で検査して絶対に間違いないというふうな検定を標準血清にしていただかなければ、私は将来とも事故は続発すると思います。なんぼ役所の方から右側通行々々々々といっても、右側なんかだれも歩きはせぬ、みんな左を歩いているのです。どんなに言われても実際地についたこと、しみ込んでしまったこと、さらにまたどうしても緊急必要だということは、なんぼ規則できめたってそれは守られません。だからほんとうに臨床家の立場に立って、臨床家ならどうする、こうでなければならない、そういうふうな間違いのない血清を一つ生み出していただきたい。  そこでもう一つそれについてでございますが、その事件が起ったときに、厚生省の東京の衛生試験所の技師かだれか知りませんが、検定には間違いがない、その血清を使った医者の方に手落ちがあったのだというようなことを、事件の直後に発表しておられるのを私新聞で見たのです。これは臨床家にとってはほんとうに酷な意見の発表であると思います。そういう軽率な意見を、しかも権威ありと見られておるところの国の機関から出されるということは、実地にその衝に当った医師にとっては致命的な打撃です。あとでどのようにそれが訂正されようとも、そのときにはものすごくこずかれるのです。お前が殺した こういって詰問されるのです。だれしも一生懸命患者をなおそうと思って全身を打ち込んで手術するのです。そうして事故のために死んだ、そんな場合にはほんとうに気も転倒せんばかりにその医師は責任を痛感しているのです。かりに自分のやったことに間違いがなくても、患者が死んだというその現実の前には、ほんとうにその人は責任を感じているのです、責任を感じ心からその患者の死をいたんでいる医師に向って、罪もないのに、お前がやったのだというふうなことを国の機関がはっきり言い出されるということは、これは非常に酷だと思います。あなたも新聞をごらんになってそれは御記憶になっていらっしゃると思うのですが、そういうふうなことを明言されて非常な迷惑を与えられたということに対して、何らかの措置をおとりになったかどうかということを、この機会に一つ承わりたいのであります。
  221. 森本潔

    ○森本政府委員 ただいまお話のような意見があるいは外部に対して発表があったということを私承知いたしております。この点につきましては、先ほど申しましたような結論が後ほどの研究に出たのでありますから、簡単にさような結論を出すのは尚早であったという考えを持っております。従いましてわれわれ関係者といたしましては、その点よくないという反省をいたしたわけであります。なお措置ということでございますが、実はこの点につきまして医師会の方からもどうだというようなお話もありましたので、軽率な措置でございましたというようなお話もいたしておりまして、別にそれ以外の措置はいたしておりません。
  222. 岡本隆一

    ○岡本委員 事件がございまして私さっそく私の方で使っておりました血清の使用書を見てみたのです。そうすると、私の方で使っておる血清は、北陸血清製造所の血清でございますが、これにも血液型判定法としてオブエクト・グラスにとる全血法と食塩水法と二つの検査法が並列しており、そのどちらかでやれとこういうように書いてある。厚生省の方では、あの事件の当時血清検定基準を出してその方法によってやらなければ医者の方の手落ちだ、こういうふうなことを発表している。片一方で売り出されておるところの血清には、ここに持ってきておりますが、この通り全血法でもよい、全血法でやって下さい、こういうふうに使用書に書いてあるのです。それがどんどん全国に出ているのです。それがどんどん全国に出ておるのを当時御承知であったのか、なかったのか聞かしていただきたい。
  223. 森本潔

    ○森本政府委員 当時各社の使用書と申しますものは、その表示の仕方等必ずしも一定でございませんので、すべて均一な使用書がついておるという考えを持っておりませんでしたから、特にどの社のどこが悪いかということは、当時十分に認識しておらなかった。それでもう一つ、先ほども申し上げたように、従来全血法でやりましてもほとんど事故はなかった。それから全血法でよほどの間違いがない限りは、今回のにおいてももうあるいは判定がついたのではないかというような考え方もございますが、その表示が不正表示と申すほどのものであるというような断定も実はまだいたしかねておるのであります。
  224. 岡本隆一

    ○岡本委員 私はこれは何といっても厚生省の方の黒星だと思うのです。片一方で検査基準の通りやらなければいけないんだ、検査基準は食塩水法だ、こういうことをいっておられる、しかも同時に、全国には全血法でやって下さいというところの血清が流れておる。血清の製造会社自体に検査基準が徹底していないのです。そういうふうなことであっては、そういう事故が起るのは当然なんです。しかも片一方で検定は——あのときにもしも全血法で検定をやっておられたら、あの事故はなかったかもしれない。食塩水法で検定をおやりになってそれで。ハスしたものを出されたというふうなところに、検定の仕方そのものに間違いがあったから、検定が甘過ぎたから、結局はああいうふうな事故の原因になったのだ。しかもその責任が一応事件直後に医師に転嫁されているということになってくると、医者の方は大した迷惑です。私はその方を罰しようとかそういうことは別に申しません。しかしながら礼だけは尽していただきたいと思います。その言明された方はあなたは御存じでしょうが、一つその方を事件を起した当事者の医者のところへ、済まぬことを申しましたとおわびにやっていただきたいと思うのです。それくらいのことは当然なすべきだと思う。それだけの責任をとることによって、また事件の責任者という地位にある者は、それだけの責任をとらなければならないということによって、初めて何事も出処進退が慎重にされると思います。だからその言明は間違いであった、それを内輪で言うているのだ、それだけじゃちょっとその方にあまりやいとになっておらぬ、やいとをすえておかぬといかぬと思います。だから今からでもおそくはない。一つ長野県の赤十字病院へ行って、その事件の当事者である医師に会って、どれだけ迷惑をかけたか、その医師がどんな目にあったかということをその医師自身の口から聞いていらっしゃる、そのことによって私は罪滅ぼしができると思いますので、このことを厚生大臣にぜひやらしてもらうように、一つお願いいたしておきたいと思います。  血清の問題はそんな程度にいたしまして、もう一つこの機会に食品衛生の問題で、森永事件の跡始末についてお伺いしたいと思います。森永事件の起りました当時、私は森永のあの製品について、あるいはその他の乳製品について定性試験をやるようにしてもらいたいというようなお願いをしておいたと思うのでございますが、その後おやりになっていらっしゃるかどうか、お伺いいたします。
  225. 山口正義

    山口(正)政府委員 ただいまのお尋ねは、森永のあの製品についての定性試験でございますか、あるいは全品について今後食品についてのことでございますか。
  226. 岡本隆一

    ○岡本委員 一切の売り出されておるところの乳製品について、抜き取り的に定性試験をやって下さい、こういうことを私お願いしておいたと思うのです。その方法もスペクトルムでやれば簡単にできるからスペクトルムでもって定性試験をやってもらいたい。同時に手入れもできますから、簡単ですからそれでもってやるように指示してもらいたい、こういうふうなお願いをしておいたと思うのですが、やっているでしょうか。
  227. 山口正義

    山口(正)政府委員 乳製品について森永の事件が起りましたので、これは各地の検査機関において全品検査あるいは抜き取り検査を全部やったらどうかというようなお話がございまして、岡本先生から御注意をいただいたことは私記憶しております。その後森永を含みます乳製品の技術者協会というのがありまして、そこへ品物を集めて、あるいはそこから出向いております技術者が、単なる従来の細菌検査だけでなしに、金属元素から——なかなかたくさんありますが、砒素、鉛等についても定性検査を抜き取り的にやるという方法を現在実施いたしておるわけであります。
  228. 岡本隆一

    ○岡本委員 今度食品衛生法の改正法案が出るようでありますが、そういうようなこともその中へ織り込まれているのですか。
  229. 山口正義

    山口(正)政府委員 食品衛生法の改正につきましては、現在省内でまだ検討の段階でございまして、いろいろ議論をいたしておるところでございます。現在のところ食品衛生法はでき上ったものについての規制がおもでありますが、その製造の過程におきまして添加いたしますいろいろな物質について新しく規制を設ける、あるいはそういう非常に重要な食品について製造いたしておりますところ、加工いたしておりますところにおきましては衛生管理者を設けよう、あるいは先般森永の問題で議論になりました、化学的合成品というものの定義をはっきりさせようというようなことを、現在やっているわけであります。そのほかにもいろいろ考えていかなければならない点があると思うのでございますが、先般も森永の中毒事件でいろいろ御指摘いただきましたように、従来乳製品については特に細菌方面だけに重点を置いておる、化学的な物質の方面についての注意が不十分であったのじゃないかという御指摘を受けているわけです。それを法律事項の中に盛り込みますか、あるいはその検査の内容につきまして、省令その他になりますか、御指摘の点は十分今度の改正考えていきたい、そういうふうに考えております。現在省内で検討中でございます。いずれ成案を得ましたら御報告を申し上げたいと思います。
  230. 岡本隆一

    ○岡本委員 ああいうふうな幾つかの不幸な事件がもうこれからは絶対に起らぬように、いろいろ法的にもそういうふうな気持でもって一つ御検討を十分お願いしたい。  そこで今度は厚生大臣にお願いでございますが、昨年の十一月の終りの読売新聞にこういうことが出たのです。大阪大学の微生物研究所の谷口腆二先生がマシン・ワクチンの製造に成功したという新聞記事が出ていた、これは私は画期的な事件だと思います。とにかくマシンという病気は昔の天然痘と同じように一生に一度は必ずかからなければならない、かかった限りにおいては相当の死亡率がある。しかもマシンというのは御承知のように命定めというようにいわれておるほどひどい。しかも今まだきめ手といわれるほどいい治療法はないのです。ただ一つ早期に成人血清を大量に注射するとかあるいは回復患者の血清を非常に早期に注射してやる場合には軽減できる、そういうふうに非常にマシンという病気日本のいや世界の子供にとって大きな負担になっておる。これがもしもワクチンによって、予防に成功するというふうなことであると、人類の非常な福音であると思う。しかもそれが初めて培養されたのです。ヴィールスの培養というものはなかなかむずかしい。それを初めて日本でマシンワクチンに成功したということであるとするならこれは私は非常に大きな世紀の発見だと思う。ところでやはり文部省の予算が少いので微生物研究所でも大量製作をやって大量の試験をやるというふうな点で相当行き悩んでおるというようなことを新聞で報じておった。厚生省からこれを一つ大々的に援助して早く大量生産に成功させ、これをどんどん日本中の子供に使えるようにやっていただくというふうなことをお考え願えないか、これはぜひやってもらいたいと私は思うのですが、大臣のお考え一つ承わりたい。
  231. 小林英三

    小林国務大臣 今の御意見でありますが、これはまだ私自身として新聞に出たことも存じ上げていないのでありまして、たとえば新聞に出ておりましても、今お話のような重大な発見であるといたしますならば、その発見の内容等も十分につまびらかにいたしましてそうしてそれがほんとう日本のマシンの治療に対して役立つというものでありますならば、私は日本の社会に非常に稗益するものだと思いますから、これは相当厚生省としても考えてもいいと思いますが、まずそれがどういうものであるかということをつまびらかにする必要があると思います。多分私の方の担当局長はその問題についても関知しているかと思いますから一応局長から話をさせます。
  232. 森本潔

    ○森本政府委員 ただいまお話しのような新聞の報道があったことは承知いたしております。しかしまだその詳細な内容なり見通しなり、それらの点につきましては取調べ中でございまして、十分はっきりしたことをまだ承知いたしておりません。いずれ調べました結果、それに応じた措置をとりたいと思っております。
  233. 岡本隆一

    ○岡本委員 それでは大臣のお考えは十分に調査してみて、見込みのあるものならうんと援助しよう、こういうお考えと承わってよろしゅうございますか。
  234. 小林英三

    小林国務大臣 これはお話しのような、事が非常に画期的なものであるということであればあるほど検討してみる必要があると思います。先ほど私が申し上げた通りであります。
  235. 岡本隆一

    ○岡本委員 次に日本赤十字社の問題で大臣に御所見を承わりたい。日本赤十字社というものがこれは国際間の紛争にも中立であるというふうな機関であり、戦争のさなかでも、そこは攻撃を受けないというふうな機関であります。従ってこれは完全に国際的な政治からも、国内的な政治の問題からも、中立性のものでなければならないと思うのでございますが、大臣の御所見を伺いたいと思います。
  236. 小林英三

    小林国務大臣 その通りであると思います。
  237. 岡本隆一

    ○岡本委員 そこで一つ承わっておきたいのですが、白い羽根の募金は何に使われるものかということであります。
  238. 安田巖

    ○安田(巖)政府委員 赤十字の事業を遂行いたします上に使っておりますけれども、たとえば血液銀行でありますとか、あるいは身体障害者のための巡回診療でありますとか、あるいはその他のそういった種類の福祉施設に使っております。
  239. 岡本隆一

    ○岡本委員 ある一部の赤十字機関において、そういうふうなことが無視されているというふうなことがあった場合には、大臣はどういう御処置をおとりになりますか。
  240. 小林英三

    小林国務大臣 これは十分に探究をいたしまして、もしそれに沿わないような点がありましたならば、厚生省といたしましても十分に注意しなければならぬ問題かと存じます。
  241. 岡本隆一

    ○岡本委員 実は京都にそういう具体的な事例があるのです、京都の赤十字社の支部長が赤十字社を使って盛んに政治活動をやっておる、これは京都府の知事選挙に出た人ですけれども、知事選挙に出る前に、赤十字社の自動車を使って府内をどんどん歩いておる。そして例の十三号台風が起りましたときに、日本赤十字社京都府支部長何の何がしと書いたところの名前入りのタオルを、被災者のみならず、災害地方へは災害を受けていない人にまでずっと、選挙前に赤十字社の金で配って歩いておる。それから知事戦に落ちまして、府会議員に立候補して当選したのです。ところがやはり赤十字社の車を使って、どんどん自由民主党支部の結成運動に歩いておる。参議院の選挙には赤十字社の自動車を使ってどんどん応援演説に行く、あるいはまた白い羽根の募金、その金の使途にすらいろいろな疑惑が出て、うわさが出ておるのです。だから私なんかもばからしいから白い羽根には金を出さないのです。そういうふうなことが現実に行われておる。これは赤十字社の動きとしてはきわめて私は重大であると思う。中にはこういううわさも飛んでおる。白い羽根の募金を協力してもらったお礼だといって、今度は赤十字社の班というのですか、支部の下にもう二つ機関がございますね、その班長を集めてごちそうしたりしている。そういうふうなうわさも出ている。それが結局政治目的に使われているというふうな事態があるのでありますけれども、しかしながらそういうことについて今私が申したからといって直ちにあなたも言明されることは困難と思いますので、一つ京都へ調査に来てもらって、十分な調査をなすってそういうふうな間違った動きがあるとするならば、私はこれは断固粛正していただく必要があると思う。その辺大臣はその必要ありとお考えになるかなしとお考えになるかお考えを承わりたいと思います。
  242. 小林英三

    小林国務大臣 よくそういうような問題につきましてうわさからうわさを生んでだんだんとそうでもないものがそうでもあるようなことに世の中に伝えられているような事実もままあることでございます。今おっしゃるような問題が事実であるかどうか、どの辺まで事実であるかどうかは私存じ上げませんけれども、今直ちに厚生省として取り調べに回ろうということは考えておりませんが、いずれにいたしましても、そういうことがどの程度あったかどうかということにつきましては、何かの方法で調査はしてみたいとは思っております。
  243. 岡本隆一

    ○岡本委員 これはちょっとお答えが変だと思う。私は私が見聞きしていることをあなたに言っているのです。私は少くもここで速記の残る場所で無責任なことは申しません。私が言うことをあなたはでたらめだと今おっしゃるのですか。
  244. 小林英三

    小林国務大臣 いや、ただお話の中に、こういううわさもあるというようなお言葉も二つ三つあったようでございましたから、私はうわさのみによってものを判断することはいけないということを申し上げたのでありまして、おっしゃることの中に、実際にそれを立証できるような事柄もあったといたしますならば、これは相当考えなくちゃならぬ問題だと思っております。
  245. 岡本隆一

    ○岡本委員 話半分という言葉もございますが、私はかりに私の言うことを話半分とお聞きになっても、少くも赤十字社というものはそういうものであってはならないと思うのです。だからそういう間違った赤十字社の動きというものを矯正しなければならぬと思うのでありますが、大臣はどのようにお考えになりますか。
  246. 小林英三

    小林国務大臣 社会の中におきまして最も公正中立な立場をとらなくちゃならぬ赤十字社でありますから、ことに白い羽根等の問題については国民一般の支持のもとに社会事業をやっていくのでありますから、そういう選挙等においてかりにそういうことがあったということになりますと、これははなはだけしからぬ問題だと考えております。
  247. 岡本隆一

    ○岡本委員 それでは一つだめを押すまでもなく、何らかの方法で御調査あるものと私は信じておりますが、それでよろしゅうございますか。さらにまたその結果を御報告願いたいと思いますが、今会期中にお返事をお願いしたいと思います。
  248. 小林英三

    小林国務大臣 今の問題につきましては社会局長が多少聞いているそうでございますから、この問題につきまして一応社会局長からも答弁させていただきたいと思います。
  249. 安田巖

    ○安田(巖)政府委員 京都の日赤のことにつきましては私ども過日調べたこともございますので、その結果をもう一度調べ直しまして御報告申し上げたいと思います。なお支部長というのは直接は日赤本社の社長の監督下にございますので、不正は私ないと思いますけれども、適当でないものがありますならば、厚生大臣は日赤の役員に対していろいろと監督権を持っておるわけでございますから、そちらから一つ適当な注意をする、こういうような措置をとりたいと思います。
  250. 岡本隆一

    ○岡本委員 おそくなりましたのでもう一点だけで、あとはまた次の機会に譲りたいと思いますが、結核対策についてでございます。今度は健康診断を大きく拡張してお取り上げになっている模様でございます。健康診断を広くやればそれだけより多くの感染者及び発病者を掘り出してくると思うのであります。これについての治療費というものを今度の予算の中に見込んでおられるでしょうか、その辺を承わりたいと思います。
  251. 山口正義

    山口(正)政府委員 健康診断の範囲を拡大すれば患者がよけい出る、御指摘の通りでございます。どの程度見込むかということはなかなか困難なことでございますが、予算上は一応一〇%増しを見込んでおります。
  252. 岡本隆一

    ○岡本委員 ベッドを三千床増床される、さらにまた健康保険で発病者を探すというようなことになって参りますと、より多くの結核治療費を必要とするわけですが、そこで先ほどの岡先生のお話にもございましたから端折りたいと思いますが、それだけ多くの治療費というものに対して、地方は公費負担の額を耐え切れないものだからどんどん断わっていくのです。従って公費負担を拒否するものでありますから、勢いそれが生活保護法あるいは健康保険法財政の上へ転嫁される、そのことがより多く保険財政あるいは生活保護法の財政を苦しめていると思います。これについて大臣としてそういうものを計算の中へお入れになっていらっしゃるのかどうかということを承わりたいと思います。
  253. 山口正義

    山口(正)政府委員 御指摘のように結核予防法によります医療費の公費負担、これは先ほど大臣からも将来の方針について話がございましたように、現在におきましては国と地方との負担の割合が二対一になっておりますために、地方財政困窮の折柄どうしても地方ではなかなか予算化しない。従いましてその恩恵を受け得る人が限定されてくる。岡本先生もしばしば御指摘のように、階層によってはその承認率というものが非常に低くなってくるということもまことに遺憾なことでございます。そのために生活保護法の方に落ちていくという事態が起り得ることは考えられるのであります。ただ結核予防法で見ます医療の範囲はある程度一部分でございますので、そのためにすぐ生活保護法にどうこうというようなことはないかとも存じますけれども、しかし御指摘のようなことは考えていかなければならぬと存じております。
  254. 岡本隆一

    ○岡本委員 その点についてもっと掘り下げたいと思いますが、時間もおそいようですからこの次の機会に譲りまして、私は最近遭遇した一つの例について厚生大臣の御意見を承わっておきたいと思います。  それは私が診察いたしました六十幾才の結核のおばあさんで、三間ほどの家でむすこ夫婦と子供三、四人あったと思いますが、一緒に暮している、しかもものすごい開放性結核なんです。そこでこれはもうとても家へ置いておいてはいけない、子供に対して危険で仕方がない、どうにもならぬから入院させなさいと私も申しますし、また私の方におる主治医もそのように申しまして入院をすすめた、いやがるのをやっと入院する気にさせましてそこである療養所に頼んだのです。ところが療養所の方で入院を断わった。少くも結核予防法は病毒伝染のおそれのあるものは収容をする、そのためにできた私は療養所だと思う。もちろん治療もやらなければならぬ、しかしながらまず隔離ということは予防措置として大事なんです。しかもたくさんの子供がいるのです。それが入院を拒否されている。そういう事実について大臣はどういうふうにお考えになりますでしょうか。
  255. 小林英三

    小林国務大臣 今のお話のような事例でございますれば、それを拒否した療養所の処置につきましては、私としては遺憾に存じます。
  256. 岡本隆一

    ○岡本委員 ところで先ほど八木さんからも質問があったと思うのですが、そういうことは種々ある。そのことは療養所に対する国の施策の問題だと思う。療養所に対してベットの回転をやかましく言う、あるいはまたそれに対して十分な人員を配置しない、あるいはつき添い婦を取り上げていく、そういうようなことで結局片一方に空床があってもそんなに手のかかる、何年置いておかなければならぬかわからぬ、死ぬまで置いておかなければならぬような患者——なるほどその患者さんはもう老齢でありますからおそらく手術ということは困難だと思う、だから化学療法でやっていかなければならぬ、化学療法でいく限りにおいてはなかなか全治ということは望めない、病毒伝染のおそれがある、いつまでも置いておかなければならぬということになってくるとあまり歓迎しない。これは私が体験した一つの事例ではありますけれども、こんなことは全国的にたくさんある。それはやはり厚生省の施策のあり方が末端へはそういう形で出る。大臣厚生省の方針としてそういうことについてどうお考えになるか伺いたい。
  257. 小林英三

    小林国務大臣 今お話のような末端でやっておりますことが事実といたしまするならば、それは大へんよからぬことでございまして、十分に注意をいたしたいと思っております。なおこの問題につきまして担当局長からも御答弁をさせたいと思います。
  258. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 ただいまのお話はどこの療養所でございますか、お話だけではわからないのでありますが、私どもといたしましてはお預かりしております結核の病床をできるだけ有効に使って参りたいと考えておる次第でありまして、一時ベットの非常に足りなかった時代には、入院いたしましても直ちに治療効果の上らない患者さんには一応あと回しと申しますか遠慮していただいて、早く治療効果の上る人にべットを譲っていただきたいとお話し申したことがあるかと思うのでありますが、最近は御承知のように多少ベットに余裕が出て参りましたので、今までどっちかといいますとあと回しにされておりました患者さんに、ベットのあきましたようなときには今までと違うから御遠慮なしにお申し込みいただきたいというようなことをお話ししているような状態でございまして、ただいま御注意いただきました点については、私どもも今後重々心して各施設に申し伝えたいと思います。
  259. 岡本隆一

    ○岡本委員 なかなか局長、体裁よう言うておられますけれども、療養所というところはあなた方の言うことを非常によく聞くところなのです。清瀬の病院でもすぐにあなたのところへあくる日には所長がちゃんとおわびに行く、それほどあんたらぴりつかしている。あんたらがぴりつかすから末端でちゃんとメーターがそのように出るのです。あなた方に施策の責任がある。あなた方の一挙手一投足が末端でもってちゃんとそういうように出る。だからそういうところがあったとしたらまことにけしからぬ、こう言われるけれども、そういうことを作るあんたらがまことにけしからぬ。大臣どう思われますか、一つお前けしからぬと一言言って下さい。
  260. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 岡本君に申し上げます。だいぶ時間が迫りましたから要点に触れて御質問願います。
  261. 岡本隆一

    ○岡本委員 もう一つ、これは私真剣な問題であると思うのでありますが、先日京都のある療養所へ私の病院の事務員が肺葉切除で入院して手術を受けました。手術前に見舞に参ったのでありますが、そのときに手術が済んだあとここへ入るのだといって連れていかれたのですが、この委員会くらいの部屋を二つに仕切ってそこに六人いる。そしてカーテンで仕切ってあります。まん中にテーブルを置いて、そこで看護婦が一人と常勤つき添い婦が一人と二人でもって六人を看護する、こういうのであります。御承知のように肺葉切除という手術は大した手術です。これはぜひ一ぺん大臣に見てもらいたい。どれほど手術としては大きな手術であるか、またその手術を受ける患者自身はどれほど真剣に、手術に対する不安恐怖におののいているかということを一つ大臣見ていただきたいと思います。しかも手術を受けたあとの患者を——とにかく二人でもって六人のめんどうを見ていかれるということになるのでありますが、それではどうも心細い。私だってそれだったらまっぴらです。そんな心細いことでもって手術を受けるのはいやです。大臣だっておそらく私と同じ心境になられると思う。従って手術後の患者に対する措置については、療養所の経費の節減というふうな問題でなく、もっと真剣に考えていただかなければならないと思いますが、大臣どのようにお考えになりますか、お答えをお聞きしたいと思います。局長には何べんも聞いておりますから、大臣からぜひお願いしたい。
  262. 小林英三

    小林国務大臣 今おっしゃる通り考えます。
  263. 岡本隆一

    ○岡本委員 おっしゃる通り考えるとおっしゃいますが、それでは私が希望するようなあとの措置を、あなたは責任をもって実行されますか。療養所に対する人員の増加ということについて、あなたは責任を持たれますか。
  264. 小林英三

    小林国務大臣 事務的の問題でございますから、私が掘り下げてお答え申し上げることは、かえって当を得ないこともあるかもしれませんから、一応事務当局にお答えしていただきます。
  265. 岡本隆一

    ○岡本委員 それではお答えを承わらないでけっこうであります。局長の意見は何べんも聞きました。聞いてもあかぬのです。(笑声)それだけ大臣は誠意を持たないということになると私は思います。そういうふうに私は断定いたします。  あとは社会保険の問題ですが、聞き出すとまた時間が長くなると思うので、きょうはこの程度で終らしていただきます。どうも長い間いろいろ勝手なことを申しまして、申しわけありませんでした。
  266. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 滝井義高君。
  267. 滝井義高

    ○滝井委員 実は今からもう二、三時間くらい——実はきょう一日は社会党の時間なんです。あしたから保守党の時間になるんですが……。まだ社会保険実態、それから結核対策、生活保護法の問題と、どうも私わからぬことばかりでありますから、たくさん聞かなければならぬことが多いのです。しかし委員長が五時半には何か会合があって行かなければならぬそうで、委員長なしに大臣と二人でやるわけにいきませんから、あす自民党のやったあと時間をいただけるそうでありますから、きょうはこれくらいでやめたいと思いますが、今一つこういう情報が入りましたから大臣にお聞きしたいんです。豊岡の療養でつき添いを七名ほど常勤に切りかえてお雇いになったそうであります。ところが厚生省ではつき添いを七名も常勤で雇うのはいかぬ、こういうおしかりが療養所にあったそうでございます。それから岩手の療養所に、これは名前がはっきり出てきておりますが、岩手の療養所で十名常勤を置くことになったそうであります。現在二十名のつき添い婦の諸君が、ぜひその十名の中に雇っていただきたいという要望をしたそうであります。ところが療養所の方はそれを振り切って、十名は職業安定所に募集をしておるそうであります。そうしてこれは十六日締め切りだそうでございます。これは、実は八木君が大臣に御質問をして、誠意をもってやるやるとおっしゃるけれども、どうも末端では誠意が現われていないという具体的な証拠をもって、大臣に迫るつもりであったらしいんです。ところが八木君も急な用ができて帰りましたので、実は私の質問で受け継ぐことになったのでありますが、質問もできそうもないのですけれども、これだけは前の八木君の質問でございますから、一つ大臣、こういう点を明確に、そういうことはいけないと、岡本君の意見じゃないが、この場でピリッといわしていただかなければならぬと思うのです。一つこれに御答弁を願いたい。
  268. 小林英三

    小林国務大臣 けさほどもその御質問があったようでありますが、十分調査いたしまして後刻お答え申し上げたいと思います。
  269. 滝井義高

    ○滝井委員 いや、豊岡療養所のごときは厚生省からいっているのですから、大臣がお知りにならなくても医務局長は御存じのはずだと思います。
  270. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 豊岡の事情につきましては、最近所長からもこまかい話を聞いております。大体豊岡ではこの配置になりました定員をできるだけ今までついておりましたつき添い婦さんの採用に充てたいということを所長が申しておりましたので、大体順調に進んでおるものと思います。
  271. 滝井義高

    ○滝井委員 それならば大体七名はそのまま雇うということは確認できたわけですな。厚生省がおこっておるということはない。ただ岩手の方は一つ早急に御調査になって、そういうことのないように、御善処願うことを御希望申し上げて、その報告はいずれもあとで承わりたいと思います。
  272. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 次会は明十五日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十五分散会