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1956-02-13 第24回国会 衆議院 社会労働委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月十三日(月曜日)    午前十一時七分開議  出席委員    委員長 佐々木秀世君    理事 大坪 保雄君 理事 大橋 武夫君    理事 中川 俊思君 理事 野澤 清人君    理事 藤本 捨助君 理事 赤松  勇君    理事 岡  良一君       植村 武一君    越智  茂君       加藤鐐五郎君    亀山 孝一君       熊谷 憲一君    小島 徹三君       小林  郁君    高橋  等君       田中 正巳君    田子 一民君       中村三之丞君    中山 マサ君       八田 貞義君    亘  四郎君       岡本 隆一君    栗原 俊夫君       滝井 義高君    堂森 芳夫君       長谷川 保君    八木 一男君       山口シヅエ君    吉川 兼光君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 小林 英三君  出席政府委員         厚生政務次官  山下 春江君         厚生事務官         (大臣官房会計         課長)     堀岡 吉次君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      山口 正義君         厚 生 技 官         (医務局長)  曾田 長宗君         厚生事務官         (社会局長)  安田  巖君  委員外出席者         厚 生 技 官         (公衆衛生局環         境衛生部長)  楠本 正康君         厚生事務官         (保険局健康保         険課長)    小沢 辰男君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 二月九日  委員井堀繁雄辞任につき、その補欠として矢  尾喜三郎君が議長指名委員に選任された。 同月十一日  委員滝井義高辞任につき、その補欠として足  鹿覺君が議長指名委員に選任された。 同月十三日  委員足鹿覺辞任につき、その補欠として滝井  義高君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 二月十日  健康保険法改正反対に関する請願八木一男  君紹介)(第四六三号)  同(菅野和太郎紹介)(第四九二号)  同(櫻井奎夫君紹介)(第四九三号)  同(長谷川保紹介)(第五二三号)  同(堂森芳夫紹介)(第五二四号)  同(岡良一紹介)(第五二五号)  国立療養所付添廃止反対に関する請願八木  一男紹介)(第四六四号)  同(滝井義高紹介)(第四九四号)  同(長谷川保紹介)(第五二〇号)  同外一件(堂森芳夫紹介)(第五二一号)  同外一件(岡良一紹介)(第五二二号)  同(岡本隆一紹介)(第五五八号)  同(小林郁紹介)(第五五九号)  同(岡崎英城紹介)(第五六〇号)  療術既得権存続に関する請願小笠原八十美君  紹介)(第四九一号)  国立只見資源公園設定に関する請願八田貞義  君紹介)(第四九五号)  港湾労働法制定に関する請願正木清君外二名  紹介)(第四九六号)  公務死認定基準拡大等に関する請願山本猛  夫君紹介)(第五一二号)  健康保険における医療給付費の二割国庫負担に  関する請願岡良一紹介)(第五二六号)  生活保護法に基く医療扶助費支払促進に関す  る請願長谷川保紹介)(第五二七号)  教護院国営化に関する請願田子一民君紹  介)(第五六一号)  し体不自由児施設設置費国庫補助に関する請願  (山本猛夫君紹介)(第五六二号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  社会保障制度医療制度及び公衆衛生に関する  件     —————————————
  2. 佐々木秀世

    佐々木委員長 これより会議を開きます。  社会保障制度医療制度及び公衆衛生に関する件について調査を進めます。  昭和三十一年度厚生省関係予算を中心とする厚生行政について、厚生大臣より説明を聴取することといたします。小林厚生大臣
  3. 小林英三

    小林国務大臣 ただいまから昭和三十一年度の厚生省所管予定経費の要求額の概要につきまして御説明申し上げます。  昭和三十一年度の厚生省所管一般会計予算の要求額は九百三億一千七百万円でありまして、これを昭和三十年度の当初予算八百四十六億一千二百五十五万九千円に比較いたしますと、五十七億四百四十四万一千円の増加と相なります。  次に右予算のうち、特に重要な事項につきましてその概要を御説明申し上げます。  まず第一は、社会保険整備育成の施策に必要な経費であります。まず政府管掌健康保険の財政は、昭和二十九年度以来年々多額の赤字を生じまして、三十一年度においても六十七億円の赤字が予想されており、その抜本的再建方策樹立の必要に迫られているのであります。よって昨年来学識経験者からなりまする七人の委員に保険財政再建強化の施策につきまして調査、審議をお願いいたしますとともに、政府部内においても鋭意研究を重ねて参った次第でありますが、その結果、本年五月より医療給付費についての被保険者の一部負担の実施と、標準報酬等級改訂等を行いますとともに、国庫におきましても保険財政の再建ための補給金三十億円を負担することといたしたのであります。  船員保険疾病部門につきましても健康保険と大体同様の措置を講ずるほか、疾病部門保険料率につきまして若干の引き上げを行います反面、財源に余裕のありまする失業保険部門料率引き下げを行いますとともに、財政再建のための補給金一億円を国庫において負担することといたしているのであります。  なお三十年度以前の赤字補填のための借入金に対する償還財源として三十一年度に予定されていました一般会計より厚生保険特別会計及び船員保険特別会計に対する繰り入れ措置は、借入金の償還を三十二年度以降に繰り延べることといたしましたので、三十一年度はこれを行わないことと相なっております。  次に国民健康保険につきましては、逐年その育成強化をはかってその普及に力を注いで参ったのでありますが、三十一年度におきましては、さらに、一そうの普及を期して被保険者を前年度の二千六百八十五万人より三千万人に推算いたしましたほか、受診率、一件当り点数及び一点当り単価についても、それぞれ若干の上昇を織り込みまして、さきに改正を見ました国民健康保険法に基いて療養給付費の二割に相当する金額を六十三億六千七百万円と算定計上いたしました。また事務費につきましては、人件費におきまして若干の改善を行うこととし、その標準事務費の全額を補助するため二十億五千八百余万円を見込みましたほか、保健婦の設置及び直営診療所の整備のため三億七千余万円を計上いたしました。  さらに、国民健康保険の運営の改善強化をはかりまするために、保険者等指導監督府県当局に委託して実施することとし、このため、新規に府県に各三人の指導職員を設置する等に伴いまする経費として二千四百余万円を計上いたしておるのであります。  以上、国民健康保険育成強化のため、合せて八十八億一千九百余万円を計上いたしておりまして、前年度より十五億五千六百余万円の増加と相なっているのであります。  次に、社会保障制度の推進をはかる上におきまして医療保障の達成が当面最も緊要な課題とされておりますので、そのすみやかな実施を目途として、全国民を対象とする医療保障制度を確立するために、臨時に厚生省学識経験者からなる五人の委員を置きまして、その具体的方策調査企画に協力を願うことといたしておるのでありまして、その設置並びに資料調査等のために必要な経費といたしまして九百余万円を新たに計上いたした次第であります。  第二は結核対策の強化に必要な経費でございます。結核は年々強力な撲滅策の推進にかかわらず、今日なお国民生活に重大な脅威を与えている実情にありますので、引き続いてさらにその予防の強化徹底を期することに努力を傾注いたして参ることといたしました。このため、健康診断予防接種の徹底をはかることとし、特に従来最も不完全でありました一般住民健康診断の徹底をはかるため、実施率の引き上げ及び実施連絡費の計上を行いましたほか、中小企業、特に十人未満の事業場、事務所の健康管理の徹底を期するため定期外の健康診断を励行せしめる措置を講じますとともに、保健所の検診機能の強化のためX線自動車の整備等に努めます等、予防施策充実強化のため四億七千余万円を計上いたしたのでございます。また医療費の公費負担のため十五億六千三百余万円を計上いたしているのでありまして、このうちには、社会保険の適用を受けていない人々に対し、外科手術に伴う入院料及び看護料を公費負担するための経費が新たに見込まれているのでございます。  結核病床の整備はかなりの進捗を見ているのでありますが、地域的にはなお稀薄の地方も存在しているので三千床の増床を予定し、できるだけ稀薄な地域の整備に力を注ぐことといたしまして、一億二千二百余万円を計上いたしております。  右のほか、国立療養所老朽不良施設整備改良看護体制強化のため看護要員二百八人の増員を行います等、その経営の充実をはかる予定でありまして、このため国立療養所の経営のための経費として百十二億六百余万円を、結核回復者の後保護施設二カ所の新設及びその維持経営のための赤字補助に必要な経費のほか、居宅隔離療養室千五百戸の設置助成に必要な経費等一億七千九百余万円を計上いたしております。  以上、結核対策のための経費合せて百三十五億四千百余万円と相成り、前年度に比較いたしまして三億八千六百余万円の増加となっておるのであります。  第三といたしましては、医療機関整備拡充に必要な経費であります。ままづ国立病院施設整備改善のため、十二億二千六百余万円を病院特別会計繰り入れて、引き続いて基幹病院の整備を行いまして、その効率的経営指導的機能の発揮を期するとともに、老朽不良施設の改善をはかることといたしたのであります。  次に公的医療機関の整備でありますが、一般病床は今日いまだ相当不足を告げているばかりでなく、その分布が依然として都市に集中しており、このため病床の稀薄または空白のままに放置されている地方がいまだかなりありますので、都道府県単位医療サービスの基幹となるべき病院の整備を逐次行なって参ったのでありますが、引き続きその整備を行いますとともに、僻遠の地で経済的に民間診療所の開設を期待出来ない無医村に公立病院出張診療所を開設せしめるために必要な経費として四千五百万円を計上いたしております。  次に精神病床は現在入院治療を必要とする患者に比して病床が過小な実情にありますので、引き続いて覚醒剤慢性中毒患者用の分を含め、三千三百床を整備拡充するため二億三千二百余万円を、また伝染病予防上必要であります伝染病院隔離病床一千三百四十床の整備に必要な経費一億一千余万円を計上いたしておるのであります。  第四は、公衆衛生改善等国民保健向上施策に必要な経費でございます。  まづ公衆衛生行政の地方におきまする第一線機関として重要な役割をになっております保健所の機能の強化充実をはかるため、C級からA級への格上げ九カ所、不良施設改良整備七カ所を予定いたしますとともに、X線装置等重要設備拡充整備を行うため、一億二千百余万円を計上いたしているのであります。またその運営費につきましては人件費において新たに期末、勤勉手当所要経費を織り込む一方、従前補助対象とされておりました用人の諸給与はこれを交付税交付金一般財源に振りかえることといたしたのでありまして、このため、運営費において前年度に比して二億三百余万円の増加を示して約十八億四千七百万円と相なっておるのであります。  次に水道施設の整備につきましては農山漁村に対し、簡易水道の普及をはかって伝染病発生の予防と生活改善に資するため、前年度同様八億四千万円を計上いたしまして、その布設を助成いたして参ることになっておるのであります。  また下水道施設の整備については所要経費五億円を労働省所管特別失業対策事業費のうちに計上いたしており、実施の際は厚生省に予算を移しかえの上実行される予定であります。このほか、特別鉱害復旧臨時措置法及び臨時石炭鉱害復旧法に基きまして鉱害の復旧事業のため一億四千八百余万円を見込んでいるのであります。  次に清掃施設の整備でありますが、近時都市の屎尿処理の困難性は化学肥料普及発達によりましてその農村還元の困難に伴い一層倍して参っておりますので、その衛生的処理を促進するためさしあたり急を要する都市に対しまして、屎尿消化槽の整備を助成し、可及的すみやかにその合理的処理をはかることとして、これに必要な経費として五千万円を計上いたしたのであります。  次に近く原子力の平和的利用の研究が開始される運びになっておりますのに対応いたしまして、放射線障害に対する予防と治療の研究を組織的に行います必要がありますので、その所要経費といたしまして一千七百余万円を新規に計上いたしましたほか、従来より行なっております広島・長崎地区におきまする原爆被爆者精密検診治療研究につきましても拡充いたすことといたしまして、前年度に倍する二千五百余万円を計上いたしておるのであります。  第五は生活保護に必要な経費であります。  最近経済基調に若干好転の兆が見えているようでありますが、なお過去のデフレ施策の浸透が引き続き予想されますので、三十一年度の生活保護費所要見込みは被保護人員につきまして二・五%の増加を予想し、最近一カ年の実績単価をもって推算計上いたしました。なおアメリカの余剰農産物による学校給食の拡大に伴いまして、教育扶助に所要の経費を増加計上いたしましたほかは、扶助の種類及び保護基準は前年度同様となっております。従いまして三十一年度の扶助費総計は三百五十七億八千余万円となりますが、一・方旧軍人恩給裁定進捗及び日雇健康保険の実施等による減少が十億円予想されますので、差引三百四十七億八千余万円が生活保護費として計上されておるわけであります。今これを前年度予算に対比いたしますれば、当初予算で十二億八千五百余万円の増加となっておりますが、近く補正を予定しています分を含めて比べますればかえって十億三百余万円の減少となります。しかし前年度予算には過年度不足分が十億円含まれております上、旧軍人恩給の復活等に伴う減少が補正予算において二億円と予想より少額にとどまったために、減少見込み額において三十一年度で八億円ふえたことによるものであります。  右のほか保護施設の整備のため一億一千二百余万円、施設事務費に八億四千九百余万円、法施行事務費に四億三千六百余万円を計上いたしておりますので、以上生活保護のための経費合せまして三百六十二億七千八百余万円と相なるのであります。  第六は児童保養に必要な経費でございます。まづ児童福祉施設に収容しております児童の生活を保障する児童措置費につきましては施設の増加に伴います児童の増加を見込みますとともに、収容児童の食糧費の単価につき若干の増額を行なってその改善をはかったほかは大体前年度と同様でございますが、前年度予算には二億円の過年度不足分が含まれておりますので、これを除いたものと対比いたしますれば二億四千三百余万円の増加を示して五十六億八千四百余万円となるのでございます。  次に身体障害児の福祉をはかるために、その身体的障害をでき得る限り早期に治療したしまして、正常な機能を回復せしめるため実施して参りました育成医療につきましては、その実施成果に照らし、さらに一層これを助成促進することといたしまして、従前の実施人員の約三倍の実施を見込んで八千三百余万円を計上いたしましたほか、補装具の支給等身体障害児の援護のため合せて一億一千二百余万円を計上いたしておるのであります。  次に児童福祉施設の整備につきましても引き続いて保育所に重点を置いて拡充する予定でありまして、特に今回は新たに精神薄弱児通園指導センターを六大都市に各一カ所設置いたしまして、家庭にある精神薄弱児で保護者のもとから通園できる者に対しまして生活指導を行なって、その福祉の増進を期しているのでありまして、児童福祉施設の整備のために四億円を計上いたしておるのであります。  また母子福祉貸付金制度は実施以来好成績をおさめております。償還も順調に行われているのでありますが、最近に至り、地方財政の窮迫等の事情によりまして、やや消化難の傾向を示しておりますので、大体前年度程度の貸付を予定し、既往の貸付の償還財源を考慮いたしまして四億五千万円を計上いたしました。  なお修学資金の貸付につきましては一部貸付限度額引き上げを行う予定でございます。  第七は婦人保護その他社会福祉の増進に必要な経費でございます。売春問題対策の一環といたしまして、いわゆる転落婦人保護更生せしめましてその自立を促進するため、新たに婦人保護相談事業等を実施するほか、既設の婦人更生寮十七カ所の経営等に必要な経費といたしまして六千五百万円を計上いたしているのであります。  右のほか身体障害者保護更生のため、更生医療の実施と補装具の支給を行います等に必要な経費といたしまして約三億七千万円を、また困窮世帯自立更生を促進する世帯更生運動実施助成のために一億円を、いわゆる特殊部落生活改善をはかるために隣保館及び共同浴場の整備のために一千二百余万円を、庶民階層金融機関として重要な意義を持つ公益質屋の整備のため一千六百余万円を、民間の社会福祉施設整備充実を促進助成するために社会福祉事業振興会に対しまして、さらに追加出資を行うため一億円等を計上いたしておるのであります。  第八は引揚者等戦争犠牲者の援護に必要な経費でございます。まづソ連及び中共地域に残留する邦人の引き揚げにつきましては、一応三千百人と見込みまして、その受け入れ援護のため六千余万円を計上いたしました。また引揚者の定着援護に必要な引揚住宅につきましては、新規引揚者分といたしまして二百三十戸、北海道にある老朽集団収容施設の疎開用として五百戸を建設省において建設する第二種公営住宅の中より優先確保することになっており、前述の集団収容施設でなお使用可能の施設の補修のため七百余万円を 前年度に引き続き計上いたしているのであります。  次に戦傷病者戦没者遺族等援護法に基きます遺族年金及び障害一時金の支給に必要な経費といたしまして三十五億二千四百余万円を、また未帰還者留守家族援護法に基く留守家族手当、障害一時金及び療養費の支給等のため十四億四千四百余万円を計上いたしました。遺族年金及び留守家族手当はいずれも本年七月以降旧軍人恩給公務扶助料引き上げに対応いたしまして増額支給を予定しておりますほか、留守家族手当については過去七カ年以内に生存していたと認めるに足りる資料のない未帰還者の留守家族に対しましては、本年八月以降留守家族手当の支給を打ち切るごとに相なっておりますが、未帰還者の消息の究明調査進捗状況に照らしまして、さらに、その支給期限を延長することとしてその所要経費を織り込んでおる次第であります。  右に申し述べましたほか、受胎調節普及促進のため五千八百余万円、国立公園施設整備拡充のため七千四百余万円、保健婦等養成施設整備助成のための経費一千八百万円を計上いたしますとともに、医薬品の輸出振興のため香港に輸出あっせん所を設置するための経費を通産省所管に計上いたしました等、保健衛生社会福祉の各費目につきましてもそれぞれ所要の経費を計上いたしておるのであります。  以上、昭和三十一年度厚生省所管一般会計予算につきましてその概要を御説明申し上げたのでありますが、次に昭和三十一年度厚生省所管特別会計予算の大要につきまして御説明申し上げます。  まず第一は厚生保険特別会計についてでございます。さきに申し述べましたように、健康保険財政再建のため、一般会計より三十億円の補給金繰り入れを見込みますとともに、標準報酬の改訂等を予定いたしました。右に要する経費といたしまして健康勘定におきましては歳入歳出ともに五百九十五億一千五百四十五万八千円日雇い健康勘定におきましては歳入歳出とも二十五億七千六十六万二千円年金勘定におきましては歳入四百七十一億三千六百二十万三千円歳出百七億四千五百六十一万円業務勘定におきましては歳入歳出とも三十五億三千四百八十三万二千円をそれぞれ計上いたしました。  第二は船員保険特別会計についてでございますが、さきに申し述べましたように、大体健康保険と同様の措置をとることといたしておるのでありまして、これに要する経費といたしまして、歳入五十一億七千四百十六万九千円歳出四十三億三千五百十九万円を計上いたしております。  第三は国立病院特別会計についてでございます。  さきに述べましたように、国立病院施設改善のため、所要財源一般会計より繰り入れを予定いたしましたほか、三億円の債務負担行為を計上いたしております。また新たに特殊小児疾患と心臓病の治療センター等をそれぞれ若干個所整備する予定でありまして、右に要する経費といたしまして、歳入歳出とも八十一億四千七百二十九カ三千円を計上いたしておるのであります。最後に、あへん特別会計についてであります。本年度のあへん買い入れ予定量は輸入三十八トン、国内産三トンとありまして、一方製薬原料としての売り渡しは三十五トンを予定いたしております。この専売事業遂行のため査般会計より本特別会計運転資本といたしまして一千五百万円の追加出資を予定いたしております。右に要する経費といたしましては歳入歳出とも二億五十九万七千円を計上いたしました。  以上、昭和三十一年度の厚生省所管一般会計及び各特別会計の予算につきまして概略御説明申し上げたのでございますが、何とぞ本予算算の成立につきましては、格別の御力添えをお願い申し上げる次第でございます。
  4. 佐々木秀世

    佐々木委員長 以上で説明は終りました。  次に質疑に入ります。発言の通告がありますので、順次これを許可いたします。長谷川保
  5. 長谷川保

    長谷川(保)委員 私はただいま御説明をいただきました三十一年度の厚生行政及び最近の厚政行政等につきまして少しく伺ってみたいと思うのであります。最近の厚生行政を見ておりまして、私はどうしても納得のいかない線を幾多見るのであります。たとえば今非常に重要な問題になっております医療保障の問題でありますが、ただいまの御説明にも健康保険財政赤字対策といたしまして一部負担あるいは標準報酬引き上げというようなこともうたってございましたが、厚生省としては、この赤字問題解消のために、その他にどういうことをお考えになっておるか、それをまず承わりたいのであります。
  6. 小林英三

    小林国務大臣 今御説明申し上げましたように、国で三十億円を負担する、それから一部負担で約二十三億、標準報酬引き上げで六億数千万円、そのほか行政措置赤字対策に充てたい、こういう考えを持っております。
  7. 長谷川保

    長谷川(保)委員 七人委員会の答申その他それらに対します厚生省の御方針等をいろいろ伝え聞くところによりますと、この健康保険赤字問題を非常に重要な問題としてお考えになっておるように思うのであります。それで一部負担をする、あるいは官給証明書を出すとかいろいろ伺っておるのでありますが、受診率を何とかして下げようという考えがそれらの至るところににおっておるのでありますが、やはりそういうように御努力なさっておるのでありましょうか、承わりたいのであります。
  8. 小林英三

    小林国務大臣 そういうことを全然考えておりません。受診率を引き下げようというようなことは全然考えておりません。
  9. 長谷川保

    長谷川(保)委員 そうすると、一部負担を被保険者にさせるというようなことは単なる財政問題だけでありますか。受診率の問題は全然考えておらないのでありましょうか。
  10. 小林英三

    小林国務大臣 赤字昭和二十九年からずっと出ておりまして、やはり三十一年度は六十数億円の赤字を見越しておるのであります。この赤字の解消ということにつきましてどういうふうにするかという問題でございますけれども、たびたび予算委員会等でも申し上げましたように、今日の健康保険というものは非常に赤字が出ておるが、数年前から考えますと相当内容が向上進歩しておるのでございまして、その赤字を克服いたしまして、健康保険の健全な財政に持っていくということにつきましてはどうするかという問題でいろいろ私どもは苦慮をいたしたのであります。そこで、これを全額国庫負担さすという問題につきましては、これはやはり今日の社会保険の中で相当数の国民がこの恩典に浴していないということも考えられます。これら数千万人の人々は、やはりそういう恩典に浴していないで税金を取られておる。そこで今日の相当進歩向上した健保の内容を勘案いたしまして、これはやはり一部は被保険者負担をしていただく、それに見合う程度のものは国でも出してもらう、そうして標準報酬引き上げまして、事業体にも一部負担していただく、こういうことによりまして、そのほか行政措置等によりまして健康保険赤字の態勢から軌道に乗っけていこう、こういうことに苦慮いたしておるのであります。従いまして、しからばこの一部負担という問題をできるだけ受診率を阻害しないような方向に持っていくという問題が一つの残された大きな問題でございまして、この点につきましては、できるだけ受診率を阻害しないように、早期診断ということにつきましても、被保険者の心持を阻害しないような方向に持っていきたいということでいろいろ今日検討をいたしておるのでありまして、先ほど御質問になりましたように、厚生省は特にこの一部負担受診率を阻害するように持っていこうということではないのでございます。
  11. 長谷川保

    長谷川(保)委員 しかし今日被保険者にあるいはその被保険者の家族に、現在より以上の一部負担をかけるということになれば、当然これは受診率が下ると考える。私は少しうがち過ぎているかもしれませんが、どうもこの一部負担をかけていこう、今までよりもより強化していこうというお考えをなさいます方々のほんとうの腹は、受診率を下げようということだと思うのであります。また事実そういう結果になると思うのですが、そういう結果にならないというようにお考えでしょうか。お考えであれば、どういう論拠のもとにこの一部負担強化していっても受診率は下らないというようにお考えになるか、その具体的な論拠を承わりたい。私はこれは非常に重大な問題だと思います。
  12. 小林英三

    小林国務大臣 受診率を下げないように、しかも一部負担をしていただくという問題は、なかなかいろいろの方法があるのでありまして、たとえて申し上げまするならば、私どもは今いろいろな案のうちで一つ考えておりますが、かりに一日当り三十円を出してもらう、こういう問題につきまして、従来初診料といたしまして五十円取っておって、これが五日間なら五日間でありますと百五十円になり、その差額は四十円新規負担するということになるのであります。そういうようないろいろの問題から考えまして、この一部負担の問題をできるだけ受診率を阻害しなような方向に持っていきたいということでただいまいろいろ慎重に考慮いたしておるのであります。
  13. 長谷川保

    長谷川(保)委員 これはこの前も委員会で私は申し上げたことがあるのでありますけれども、今日たとえば結核療養所などに入院しております者を、その治療費の支払い方法によって見て参りますと、御承知のように、国民健康保険あるいは健康保険の家族、あるいは生活保護法によりまする医療扶助を受けておりまする患者の中で、もちろん自費患者というようなものは非常に減っていっている。これは厚生省の方で先刻御承知の通りであると思います。必要であれば、ある病院の統計がここにありますからごらんに入れてもいいのでありますけれども、非常に急速に減っていっている。これは明らかにそういうような医療費負担にたえ得ない、自分で出すことにたえ得ないという国民生活実情を率直に表わしているわけであります。今日やはり勤労階級の生活は決して楽になっておらぬ、ことに政府管掌健康保険対象でありまする中小企業、零細業等々におきます対象が、あるいは勤労者が、生活が非常に困難に陥っていることは大臣非常によく御承知の通りであります。ですから、そういうものに一部負担強化すれば、どんなことをしても受診率が下るのは当りまえであります。これは最近だいぶいろいろやかましくいわれているのでありますから、その点を厚生当局もお考えかもしれませんが、事実はそうなるに違いない。一部負担強化してそうならないという方法があるというお考えならば承わりたい。どういう方法で具体的になりますか、私どもにはとうてい考えられない。これを強化すれば受診率が下るにきまっている。やはりそこが目的なのだということが私どもの見抜いているところでありますけれども、一部負担強化していって受診率が下らないという方法が具体的にこういう方法であるということであれば承わりたい。
  14. 小林英三

    小林国務大臣 今御質問のありましたように、健康保険赤字財政というものを全然一部負担でなく解決していくということは、これは最も望ましいことでございますけれども、今日の国家財政は窮迫いたしておりまするし、また私が先ほど申し上げましたように、健康保険そのものが数年前よりも内容が非常に向上しておるのでありまして、従いまして、今日の健保の状態においては、被保険者にも一部負担していただく、また国家も負担をいたして、そうしてこれを健全な健康保険にするということが、ひいては被保険者のためにもなるわけであります。もちろん今お聞きのように、今まで初診料五十円しか取っていなかったものに対して、ある程度の一部負担をかけますということにつきましては、これは国民感情といたしましても、被保険者の感情といたしましても、多少は今の御説のようなことが一時はあり得るかもしれませんが、健康保険の今日の状況というものを十分被保険者の方にも御認識を願っていただきまするならば、そういうように永久に受診率を下げるということはないと思いまするし、また被保険者諸君にも十分に御了解を願えることと私は考えております。
  15. 長谷川保

    長谷川(保)委員 今の御答弁では、具体的な方法は別にないのだけれども、ただ、そういうことが永久に下げるということにはならないと思うというような御推測のように承わりましたが、それでは逆に私は承わりたいのでありますけれども、厚生省からいただきました資料の4のDの二十三ページを拝見いたしますと、そこに二十八年の受診率、二十九年の受診率がございます。二十八年の受診率は、百人に対して二十八・五人が医者の診療を受けているのです。そのほかのものは医者の診療を受けない。二十九年になりますと三十四・一人が受けている。大体病気になりましたものの三分の一が医者の診療を受けている。この受診率はどうでしょうか。十分とお思いでしょうか。これで今日におきましては病人が出たときに診療の状態はよろしい、こういうようなお考えでございましようか。
  16. 小林英三

    小林国務大臣 お尋ねの点につきましては、そういう資料を差し上げたごとにつきましては、相当正確を期したいと思いますから、担当局長から一応答弁しました上で私からまた申し上げたいと思います。
  17. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 ただいま御質問のございました資料は、たしか国民健康調査の結果ではないかと思うのでございます。私今手元に持ってきておりませんのですが、それでございますれば、国民の間の疾病量を調査いたします方法は、これはいろいろ問題がございます。疾病というものの範囲をどの程度に見るかということでもってこの数も非常に変って参ります。厚生省におきまして、これはたしか昭和二十三年からだと思うのでありますかこの種の調査をずっと続けて参っておるのであります。しかしながらその疾病の範囲というものが調査によりまして多少変っております。またこの調査対象になります人たち、あるいは調査をいたします調査員、こういうものがなれて参りますと、割合にこまかい小さな病気も残りなく拾われて参るというような事情がございますので、数年前の調査に比べますとここ二、三年の調査というものは非常に正確になってきております。と申すことは、非常に軽微な傷病も取り上げられるようになって参ったというようなことでございまして、そういう点から参りますると、ただいま言われました最近の数字の三十数形というようなものが、それでもって満足すべきものであるか、これでは不満足かということにつきましては、私どもも断定ができかねるのでございまして、この数字自身からは何とも申し上げられないのであります。むしろ他のいろいろな事情から、私どもとしても今日における国民の疾病に対する正規の医師、歯科医師による手当というのは、必ずしも十分に行き渡っておらないというふうに考えておりますが、これはこの数字だけから申すわけではございません。
  18. 長谷川保

    長谷川(保)委員 ただいま局長がこの数字だけから言うのじゃないけれども、必ずしも満足すべきものとは考えないというお話でございました。申すまでもなく、理想から申しますればすべての病人は医師に診断をしていただきまして、そうして薬をそれぞれのところで投薬してもらう、すべての人がそうなるべきだと思うのであります。しかしこの二十九年の調査、数年来非常に正確になってきたということでありますが、百人のうちの三十四人が医者に見てもらい、薬をどこそこから買っておる、こういう状態は今後下ってはならない、順次向上させていかなければならぬ、こういうように私は思うのでありますが、その点大臣はどういうふうにお考えですか。
  19. 小林英三

    小林国務大臣 ただいま事務当局から御説明をしたようであります統計表と申しますか、それがどういう程度のところをねらったものであるかということは私よく存じませんが、いずれにいたしましても受診率がそれによって極端に低下するというようなことは、私どもぜひ避けたいと考えております。
  20. 長谷川保

    長谷川(保)委員 赤字の問題が非常に重大化しておるというふうな御意見が順次あちこちで出てきておるのでありますけれども、毎度私申し上げることでありますけれども、今日の日本国民の死亡率の低下、これは二十年に比しまして死亡率はちょうど二分の一くらいになっております。一九五四年の統計から申しますと、八・二という世界の最高水準に近づいております。結核の死亡実数から見ましても、一九四三年に十七万一千人ありました結核の死亡者が、一九五二年には五万七千人になっておる。差引いたしますと、年間それだけで考えてみますと、十一万四千人減っておるわけであります。こういうことは、実に私はとうといことだと思うのです。何と申しましても、こういうことが出てきたということは、これは医療機関普及、あるいは医療を受けます機会の非常に普遍的になってきたこと、あるいは日本の医学の非常な進歩、あるいはまた厚生当局の行政のよろしきを得た等、いろいろな問題が含まれてきておると思います。この年間十一万四千人から死ぬ人が減ってきておること、これはきわめていいかげんな考え方でありますけれども、かりに十一万四千人という人が、平均二十才で死ぬのが死ななくて、生き延びるようになった、こういうように考えてみますと、二十才まで大きくなりますのに、一カ月に五千円ずつかけて大きくなって育っていくと考えてみますと、それが死ななくてよくなりますと、千百四十億円から直接の金で浮んでくる。もちろん死ぬことがなくなったということは、金の問題でありませんけれども、もっと大きな問題を含んでいると考えますが、そういうように考えてみますと、今日おおよそ受診率が下るような方向を持ちます施策は絶対にとってはいけない。たかだか政府管掌の国民健康保険赤字といっても、六十七億円というように先ほどご説明をいただいたのであります。一方でそういう多くの人の生命が助かって、今申しましたようないいかげんな考え方ですけれども、簡単に申しましても千億日余からの金が浮いてきておるとも考えられますようなとうとい国民の生命が助かっていっておるというようなこと、これはもっともっと受診率を当然ふやして参る、これは先ほど来の御説明の中にありました、国民健康保険の三千万に対する普及というようなことも、どんどんやるべきであって、同時に健康保険のそういうような受診率を下げるようなおそれのあることは、たとい一時的にせよ、そういうことは絶対にすべきではないと思う。こういうように考えて参りますと、たった六十七億円の赤字に厚生当局も大蔵省もそれからこれに関係します一般の方々も、変にびっくりし過ぎていはせぬか、こんなものは何でもないのであって、社会保障、公衆衛生の向上増進ということを考えるならば、当然このようなことは歯牙にもかけないというくらいの腹が厚生当局になければならないと思う。それを健康保険を改悪していこう、またそれにからみまして新医療費体系その他が出て参りまして大騒ぎをしている。およそこういう考え方は根本的に変えなければならぬと私は思うのでありますが、大臣はどうお考えでありましょうか。
  21. 小林英三

    小林国務大臣 今の御質問にありますように、医学の進歩によりまして、日本の人口の死亡率がだんだん減少しているということはきわめて望ましいことであります。しかし、たとえば国民健康保険にいたしましても、数年前まではとにかく黒字でやっておった。ところがたびたびもうしあげますように、二十九年あたりから四十億近くの赤字が出てきたわけです。今年は六十億の赤字、来年は六十七億の赤字というような形になっている。この赤字のよって来る原因をつぶさに研究してみますと、いろいろな原因がある。乱診乱療なんという言葉もありますが、これはそう大した大きな数字ではないと私は思うのであります。二十八年度には、御承知のように点数が一部改正になった、あるいは二年間の療養期間が三年間に延長された、あるいは従来採用していなかった進歩した新薬、いわゆる抗生物質が二十八年度から採用されてきた、こういうことがやはり二十九年度から赤字になった一つの大きな原因であります。また今まで、健康保険そのものの赤字が出る原因につきましては、皆さんいろいろ御研究になっていると思いますけれども、しかしこれにはやはりいろいろな大きな問題が含まれておると私は思うのであります。たとえば、先ほどお話がありましたような医学の進歩によって、健康保険といえども相当な手術を行えるようになった。それから被保険者も非常にふえて参っておりますし、全国的には病院も診療所も毎年相当ふえておる。保険医も六千人も六千五百人もふえておるというようなわけでありまして、とにかく健康保険といたしましては、数年前よりも相当進歩している。進歩しているということは結局被保険者から考えますならば、相当の利益であると私は思います。ところが一方政府管掌の健康保険でありますから、保険財政に入って参りますところの金は、比較的零細な事業主ばかりの政府管掌の健康保険でありまして、それらの全体の被保険者諸君の給料は毎年上っておりますけれども、その上り方というものは、カーブで申しますと非常に遅々としている。一方医療費はどんどん非常に急激なカーブによって向上しているということでありまして、保険の財政は、とにかく二十九年から四十億あるいは六十億、来年はまた六十数億というように増しておるのであります。しからば、これを全然被保険者負担させないで国庫が全部出してやるかどうかという問題が一つある。ここまで健康保険が進歩向上しておるのだからして、被保険者受診率を低下させない程度において被保険者にも十分理解をしていただき、そうして一部をわれわれも負担しよう。国家も負担して利用者も負担するというような、みなのお互いの利益のために、健康保険そのものが軌道に乗って健全な健康保険として医者にもどんどん支払いができ、また被保険者にもどんどんりっぱな手術ができ医療ができるという態勢でありますことは、私はやはり被保険者諸君としても大きな利益であろうと思うのであります。ただ、何でもかんでも国が全部を負担すべきであるという理屈も立ちますけれども、これは国家財政といたしまして、十億の金といえどもなかなか容易なことではない今日の状態でありますし、また国家財政に多少の余裕があったといたしましても、健康保険がここまで進歩向上しておるのだから、やはり一部は被保険者が自分の利益のためにも十分に理解していただいて負担をするということでお互いによいのじゃないか、私はこういうふうに考えるのでありまして、受診率が低下するということにつきまして先ほどからいろいろ御心配願っておりますが、これは私も考えないのじゃないのでありますけれども、私どもは、なるべく受診率を低下させないで利用者に一部負担をしていただく方法を講じたい、こういうことで今考慮いたしておりますから御了承願いたいと思います。
  22. 長谷川保

    長谷川(保)委員 健保の赤字の最大の原因は、医学の進歩ということもありますけれども、しかしその直接の問題が結核であることは御承知の通りです。結核が伝染病であり、また社会病であるということも言をまたないのであります。最近の社会保険の統計をずっと見て参りますと、大体医療給付費の三五%が結核であります。被保険者の入院の六二が結核であります。保険と違いまして医療扶助の点を見ましても、医療扶助の四五%が結核である。またごく最近の統計を見てみますと、政府管掌の入院費の増加分の四分の三が結核である。こういうように考えて参りまして、その金額から申しましても医療給付の結核の関係は百十五億という数字があげられておるのでありますが、こういうようにこの健保の赤字の問題を結核という面から考えて参りますと、国家はこれに対して相当責任をとるのがあたりまえだと思います。しかるに今度の予算を見ましても、国庫負担という形ではないようである。単に何ということなしに国が三十億円——事実は二十億円らしいのでありますけれども、それを入れていこうというようなことらしい。そんな筋の通らない話はないと思う。これは結核なんです。ほかの急性伝染病ももちろん御承知のように政府がみんなやっておる。この結核で健保財政赤字になっておるというのに、なぜ政府はれに対してそんな消極的な態度をとるのか。どうしても私には筋が通らない。わけがわからないし納得がいかない。ただいまあげました数字のように問題は結核である。それならば、社会病であり伝染病であるこの結核に対して政府が責任を負うのは当然ではありませんか。先ほど申しておりますように、大臣はいつまでも受診率が下るとは考えないとおっしゃいますけれども、当分は下るということはお考えになっており、言外にそれが現われておるわけでありますが、それをしもそうやっておるということは私は間違いだと思います。どうしてもこれはやはり国庫が大きくその責任をしょっていくという態度をとるべきだと思う。今度伝え聞くところによりますと、継続給付の条件を半年から一年延ばすというふうに伺っておりますけれども、継続給付の入院者の五五・二%が結核であるという事実を私どもが見ますならば、これまたそういうように継続給付を受けられないようにしていくとして、一体そのしりはどこへいくのか。もし退院をし、治療が受けられないようになるとすれば、これは結核の非常な伝染源を家庭に戻すことになる。またもしこれを本人が出せないから、その能力がないからということで、医療扶助に持っていくとすれば国が持つことになる。同じことじゃないか。だから継続給付の五五・二者が結核であるという、この数字を見ますと、これは今の健康保険の六十七億というような赤字を、あちこち方々へ負担をさせていこう。ことに私が理解に苦しむのは、なぜ政府が、あるいは医療の担当者が、あるいはまた被保険者が、みんなでそれを分担しなければならぬという理論が出てくるか。先ほど来のお話ですと、健康保険の内容が非常によくなって、被保険者が多くの利益を得た、だからそれを分担すべきだという、そんなことは当りまえじゃありませんか。どんどん健康保険の内容がよくなっていくことは当然でありまして、それができないなら厚生省も何もいらない。医療の内容が社会の進歩とともによくなっていくのは当りまえだ。それは政府もまた当然に国民を医療の進歩の恵沢に浴せしめるという方法を講じなければならないはずです。それを、内容がよくなったから一部はお前たちが負担しなさい、こういう理論は成り立たない。これはずいぶんいいかげんな割勘的な考え方だと思う。  先ほど来お話し申し上げておりますようにその内容は結核の問題だ、こう考えて参りますれば、これは当然国が負担すべきだ、こう思うのでありますけれども、大臣のお考えはどうでしょう。ただいま数字を申し上げましたが、これほど結核のためだということがはっきりしておりますのに、それでもなお国がこの六十七億円全部を負担すべきじゃなくて、一部を被保険者負担すべきである、受診率が下っても当面のあれで仕方がない、こういうお考えでやっぱり合理的だとお思いでしょうか。
  23. 小林英三

    小林国務大臣 今御質問のありました内容につきましては、このパーセンテージ等におきまして、相当専門的にお当りになったようでありますから、一応その問題につきましての説明を担当事務当局にさせまして、その後に私の御意見を申し上げたいと思います。
  24. 長谷川保

    長谷川(保)委員 もう一つ、率直に大臣のお考えを承わりたいのでありますが、御承知のように政府管掌、組合管掌合せまして、健康保険の医療給付は一九五四年度が六百八億六千六百万円です。この一割と考えますと、組合も政府管掌も両方合せまして六十億であります。御承知のように国民健康保険では医療給付に対する二割の国庫負担をしている。先ほどの御説明にも六十三億という数字が出ておった。被保険者及びその家族を入れますと、健康保険が約四千万人、国民健康保険の方は、先ほども数字で出ておりますように二千六百万人。二千六百万人の国民健康保険が特に医療給付の二割国庫負担。これは私も出すべきだといって数年来主張いたしまして、昨年皆さんの御協力を得て、幸いにしてそれが実現して非常に喜んでおります。二千六百万人の国民健康保険の被保険者に当然なすべき二割の国庫負担をした。私どもは三割ぐらいすべきだと思うのであります。それは私どもは、どんどん医療の内容を向上すべきだ、給付の内容を向上すべきだと思いますから、三割ぐらいを主張したいと思うのでありますが、ともかく二割を出した。それが六十三億円。今度は、約四千万人にわたります健康保険保険者及びその家族に対しては、一割として約六十億円——六十五、六億円になりましょう。最近では六十七億円の負担ができない。こういう論理は立たないと思うのであります。どうも健保の考え方から申しましてもこれは変だ。もちろん残されておる三千万人がおります。これはわれわれは、即時に強制加入の道を開くべきである、強制適用の道を開くべきであると考えておるのでありますけれども、さしあたり健保、国保の問題二つを取り上げましても、今の人数から申しましても、国庫負担率から申しましても、片一方は二割で六十三億円、片一方は一割もできない。一割かければ大体今日の赤字が全部おさまるのに、それができないという理論的根拠はどこにありましょうか、教えていただきたい。
  25. 小林英三

    小林国務大臣 今御説の国保の問題につきましては、二割国庫負担の法制化ができている、しかるに健保においては一部負担さしているということは合点がいかないというような御趣旨だろうと思いますが、御承知のように国保というものは、地方財政の関係からいたしましてまだスタートしていないところもたくさんありますし、スタートしておりまする既存の国保にいたしましても非常に経営が困難でありまするし、また医療内容は健保に比べますと非常に落ちている。従いまして国保を健全に発達さすために、国会におかれまして国庫負担を二割にするということに御議決になって、今法制化されているわけであります。私は健保と国保との間には今なお相当の懸隔があると思うのであります。
  26. 長谷川保

    長谷川(保)委員 医療内容に懸隔があるということは、多分一部負担の問題もあります。給付に対する半額の負担というのが国保では一般的でありますから、それをおさしになっておると思いますが、いずれにいたしましても、大体双方ともに健康保険のある医療の規定を同様に受けているわけです。ただ半額自己負担であるから受けにくいという点がありますけれども、これは同じような医療の内容を受けているのであります。だから今の大臣のお言葉は違うのであります。本来は医療内容は違っておらない。ただ半額負担ということがありますから、そこで受けにくい、受診率が低いというようにはなって参ると思います。そういう条件になっておると思います。いずれにいたしましても、今申し上げましたように、人数から申しまして二千六百万人が六十三億という二割国庫負担、四千万人が全然受けられないという理論はないと私は思うのです。一割やれば健保の赤字が今日の状況としては解消できるのであります。組合もみな入れましてそうです。どうでしょう、どうも今の大臣の答弁は私は不満足だ。一割すれば大体赤字の解消が当然できると数字から見るのでありますけれども、どうもそれを片一方はやって片一方はやらなくてもいいという理論は成り立たないと思うのですが、大臣の意見をもう一度承わりたい。
  27. 小林英三

    小林国務大臣 健保の問題につきましては、私が先ほどからいろいろ御説明申し上げましたような理由によりまして、この際できるだけ受診率を下げないような意味におきまして、一部の負担をしてもらうことがよろしいと考えております。
  28. 長谷川保

    長谷川(保)委員 これ以上この点についてお伺いしても方法がないと思いますから、あまり突っ込みませんけれども、これは私は今のお話を承わって、こんな筋の通った話をできないなんて、大蔵省にそんなことを押えられてはだめだと思う。一割国庫負担をすれば大体埋まってしまいますのに、それができないで今日の大騒動を起しておるような状態ではだめだと思う。もっとしっかり厚生省はやってもらいたいと思う。  それからもう一つ次に承わっておきたいのでありますが、五人以上の事業所は、法律によりますればみんな健保を適用しなければならぬことになっておると思いますが、どうも最近の実情は、健保に入ろうと思っても厚生省の方で入れない、こういう実情があるわけです。どうも法律違反だと思いますが、そうでないでしょうか。
  29. 小林英三

    小林国務大臣 私はそういうことは考えておりませんが、そういうふうなことがもしあるといたしますれば、そういうことは大いに戒めなくてはならぬと思いますが、なおその問題につきましてどういうことになっておりますか、一応事務局から説明いたさせます。
  30. 佐々木秀世

    佐々木委員長 今いないそうですから……。
  31. 長谷川保

    長谷川(保)委員 それではあとに保留しておきます。もう一つ結核の問題が出て参りましたから聞いておきますが、結核予防法の改正を昨年いたしまして、六才以上の全国民の検診をするということになったのでありますが、三十一年度の予算を見ますと、どうも幾らもそれが入っておらない。一体何人をやって幾らの予算をとってあるのですか。ここに少し書いてあるのでありますが、その内訳を伺いたい。
  32. 小林英三

    小林国務大臣 局長から答弁いたさせます。
  33. 山口正義

    山口(正)政府委員 健康診断費に対します予算でございますが、実施予定人員といたしましては、昨年結核予防改正の御審議をお願い申し上げましたときにも、実施対象者六才以上の全国民になりますと、七千数百万人になるのでありますが、過去の実施の状況あるいは現在の保健所その他の実施能力から見まして、なかなかこれを百パーセント実施するということは、事実上むずかしいということは申し上げたのであります。できるだけその実施率を上げていきたいということで、当時御了承を得たわけでございます。従いまして三十年度におきましては、予算上は約三千二百万人予定いたしておりましたが、三十一年度におきましては約四千三百万人、前年度に比べまして一千万人の増が見越されております。健康診断に要します予算は、三十年度は、お手元に差し上げました資料にございますように、二億四千七百万円余りでございましたが、三十一年度は三億六千八百万円、一億余の増ということになっておるわけでございます。
  34. 長谷川保

    長谷川(保)委員 そうすると残余の人はやらぬでもいいということになるのですか。
  35. 山口正義

    山口(正)政府委員 建前としてやらなくてもいいというわけではございませんが、実際問題としてなかなか十分手が回らない状況でございますので、できるだけ手を回してやっていく。実際にどんどんできるというような状態になりますれば、またそのときには別の予算措置考えなければならぬと思っております。
  36. 長谷川保

    長谷川(保)委員 どうも結核対策に対しても、最近の厚生行政はきわめて私は後退をしていくおそれがあるということを思うのであります。それに関連した一つの問題としまして、例のつき添い婦廃止の問題があります。最近の状況はどうなっておりましょうか承わりたい。
  37. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 すでに御了承を得ておりますように、大体本年の一月一日から二千二百七十人のつき添い婦と申しますか、常動労務者を新たに入れる予算をちょうだいいたしておるのであります。あるときを限って一気に切りかえるというようなことは困難でございますので、前々からいろいろ各施設の状況をこまかく調査いたしまして、また準備もできるところは着々と進めさせまして、この時期よりも先に着手できるところは着手いたしまして、もちろんそのことは逆に申しますれば、一月一日になりましても直ちに実施できないところもあると考えられます。今のように傾斜をつけて逐次無理のないように実施するという方針で進んで参ったのであります。私どものところにまだ十分な資料がそろっているとも申し上げかねるのでありますが、大体昨年末までに一部分切りかえたところもあるのでありますが、それも含めて大体九十六個所においては新しい態勢に全面的あるいは一部分的に入り始めたというような状況であります。実際の看護量と申しますか、こういう面につきましては、おおむね三分の一程度ではないかというふうに考えておるわけであります。たくさんの施設でございますので、必ずしも全部のところで何ら問題なしに進んでいるとは申し上げかねますけれども、おおむね順調に切りかえが進んでおるというふうに私どもは見ております。
  38. 長谷川保

    長谷川(保)委員 数日前に参議院の重盛社会労働委員長が、清瀬病院及び東京療養所の施設に行かれ、厚生省の方からも係官が一緒について行かれたということでありますが、重盛君から直接伺い、また後に東療の方からも報告を受けておるのでありますけれども、清瀬病院の方は、厚生省の方からあらかじめいろいろ打ち合せをして行かれたようで何とかその場をつくろったようであります。ところが重盛委員長が突然東療に行くと言われた。東京療養所を見るということは、だいぶ厚生省当局はお困りになったようであります。向うに参りまして、管理部、医局、看護婦、つき添い婦、患者、等々の者を集めて率直に重盛君が問うた。この切りかえができるかというのに対して、全部の者が、そんなことされたら方法がなくなる、どうにもならなくなるというような非常な不満を現わしたというように伺ったのでありますけれども、この実情を簡単でいいから報告していただきたい。
  39. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 ただいまお話しのございましたような事情は、私どもも聞いておるわけであります。清瀬病院の方は、ただいまお話しのように大体順調に計画が進んでおる。それに対しまして東・京療養所の方におきましては、いろいろ重盛委員長がお聞きになりましたところが、必ずしも準備が順調に進んでいるとは言えないというようなお話しでございました。実はそのうでございまして、その後療養所長自身私のところに参りまして、いろいろと自分たちの方で準備は進めているのだけれども、まだ確定的にしっかりと固まった案にはなっておらないというようなところで、所内の意見等も必ずしも統一されておらなかった、こういうようなところを委員長にいろいろとお尋ねを受けて、それで非常に意見が不統一だというようなところをお見せして、非常に自分としても申しわけなく思っておる。しかしさような状態なので、自分としては所員はもちろんのこと、患者の人たち、こういうような人たちとよく話し合いをして、自分たちのこの計画をできるだけ円滑に進めて参りたいというようなことを申しておりましたが、私どもの方も決して無理をしないように、しかしあるべき姿というものはどういうところに行くかというようなことについては、私どもとしても、また療養所の所長としてもいろいろと考慮いたしておるのでありまして、この療養所の看護態勢をりっぱなものにしていくということについては、できるだけ努力していただかなければならぬ、しかしそれにしても、決して無理をしないように、着実な計画を立ててやってもらいたいというふうに話した次第でございます。
  40. 長谷川保

    長谷川(保)委員 局長の話は大へん穏やかな話でありますけれども、私の方に来た報告によりますと、その席上で一同からそういうような話がありましたので、あとでどなたか知りませんけれども、課長が残って、三時間お説教をした。重盛君はそれを憂えて、絶対に圧力をかけてはならないぞということを言い残していったにかかわらず、三時間余にわたってお説教をした。その結果、多分所長がおわびの形で局長のところに行ったと思う。こういうことでお説教をして、無理やり押しつけるというようなことは困ると思うのです。そういうことでその場は済むかもしれませんが、済まないものが起ってくるのです。私はこの問題を非常に心配しまして、昨日もある地方を調べに行きました。そこには国立の療養所があります。千人少し足らない定員の設備です。そこでは二割空床になってきました。なぜかといえば、やれないというのです。これを切りかえられたらやれないから、重症があってもとらない、手術は今までの二分の一にしようというのです。驚くべきことには、その療養所から、その近くにありますある私立の療養所に向って、済まないけれどもお宅の方で重症者をとってもらいたいと申し出てきている。病院当局はそれで済むかもしれませんよ。しかしこのために療養所に入れない、医療を受けられないという患者が出てきておる。さらにその私立の診療所に行って、そこの主任の人に聞いてみました。おととしまではあまりなかったけれども、去年ごろからこういう問題が起ってきてから、だんだん最近になって、非常な重症者が、外来として診療所に来る。本来ならば、国立療養所が私立の受けられないものはみな受けてやるから持ってこいというならばわかるけれども、重症者や手術患者は手がかかってだめだから、手術は二分の一にする、重症者は受け取らないといって、約一千ベッドあるものが、二百ベッドもあいている。こういう事実が起ってきたときに、ここで捨てられる肺病患者はどうなる。私は厚生省のお役人がおどかしてきて事が済むならばけっこうだと思うのです、けれども済まないのです。日本のわれわ他の同胞が、かわいそうな結核を病んでいる者がちまたにほうり出されて、だれも受け取り手はない、こういう事態が起っているということです。もうすでにあの医療扶助を締め出したことと合わさって、地元の清瀬病院で満床のものが幾つありますか。清瀬で、あれだけたくさんな療養所で、満床の病院が幾つありますか。これは十分調べてはありませんけれども、私のざっと調べたところでは、清瀬病院と東療と織本病院だけです。ほかはみなあいておる、それは重症者はとらない、手術患者はとらない、こういうことになってきておる。織本病院でちょっと聞いたところではこういう話がある、ほかの病院からお宅へ手術患者を必ず世話しますから、私の方に患者を回してもらいたいという申し込みがある。さらにまたある地方へ行って調べてみましたところが、やはり療養所で重い患者は困る、あきベッドになってきた、保健所に軽い患者を回してもらうように頼んでおるという事件がありました。こういうことがすでに行われておるのです。私はこういうようなことであってはならないと思うのです。生活保護予算が足らないとかあるいは健康保険赤字になるとかいうようなことで、それを埋めることを先に考えて、病人がどうなってもいいというような考え方をしては困ります。これは根本問題です。こういうような今日の実情というものを憂えたから、われわれは昨年あの決議をしたのです。厚生省のお役人のところへ行けば、ただいまのお話のように、上からお説教してしまっておどかしつけてしまうということになるから、長いものには巻かれろで、所長あたりはやむを得ずいいかげんのことで済ましていくかもしれぬけれども、われわれの方に患者が苦衷を訴えてきておる。皆さんの手元にもいっておるでしょう。重症患者がちまたに投げ出されておる。せっかくここまで進んで参りました結核死亡率の減少がまた逆戻りします。大した金じゃないじゃありませんか。一体つき添い婦を切って幾ら金が浮ぶか、私の記憶では全国で年間三億です。生活保護のあの医療扶助を切って結核患者を裏切り、一部負担を強めていって、入れないようにして、一体幾ら予算が少くなるのですか、知れておるではありませんか。それよりも私はこういう考え方自身が根本的にも間違いだと思う。こんな考え方を持っておる役人は厚生省へいてもらっては困る。こういう考え方を持っておる役人は私は全部地方の税務署の課長あたりに行ってもらいたいと思う。こんなばかなことはありませんよ。国民の一番大事な生命を守り、しかも日本の国民病である結核をなくそうとするときに、こんなことでどうしますか。私は、先ほどの健康保険赤字問題とともに、結核対策についてもっともっと大臣は考え直してもらいたいと思う。そうして厚生省の当局を督励して根本的なやり直しをしてもらいたいと思う。こういう点について一つ大臣の御意見を伺っておきたいと思います。
  41. 小林英三

    小林国務大臣 ただいまお話のような問題につきましては、十分に調査いたしまして善処いたしたいと思いますが、ただつき添い婦の問題につきましては、かつて私が社会労働委員長をいたしておりましたときに起った問題でちりまして、これに対しましては参議院の社労におきましても決議をいたしております。また衆議院におかれましても決議があったのでありますが、十分にその趣旨を尊重いたしまして、万違算のないようにするように、関係当局にも申しつけてあるのでありますが、なお今の問題がおっしゃるようなことでありますならば、十分に検討いたしまして善処いたしたいと思います。
  42. 長谷川保

    長谷川(保)委員 なお母子福祉の問題その他いろいろ伺いたいことがありますけれども、お約束の時間が参りましたので、一応私の質問は後日に譲りまして、きょうのところはこれで終ります。
  43. 佐々木秀世

    佐々木委員長 午前中はこの程度にとどめ、午後一時半まで休憩いたします。    午後零時四十一分休憩      ————◇—————    午後三時十二分開議
  44. 中川俊思

    ○中川委員長代理 休憩前に引き続いて会議を再開いたします。  午前中の質疑を続行いたします。滝井義高君。
  45. 滝井義高

    滝井委員 一昨日予算委員会でいろいろ御質問をしたのですが、どうも時間の制約を受けて理解ができない点がございましたので、きょうは会計課長もお見えだし、少しわかるように御説明を願いたいと思います。まず第一に、健康保険の会計で、三十年度に六十億の借入金がありました。三十一年度においても六十億の借入金があるわけです。これは大臣の御答弁によれば、資金運用部から借りた、こういうことになっております。ところが資金の運用計画には六十億が出ていないのですね。これは一体どうして出なかったのか、こういうことなんです。ところがその御答弁は——私は六十億は長期借入金だ、こう心得ておったのです。従って昨年もこれは資金運用部の資金計画に出ていなかった。私はここでも問題にしましたし、予算委員会でも問題にするし、野田宇一さんも問題にした。大蔵省の福田資金課長をここに呼びまして、昨年の十二月末までには必ず運用計画に載せるんだ、こういう約束を得ておったのです。ところがそれが載せていない。しかも昨年の分を載せていないのならとにかく、また三十年度分も載せていない。こういうことは、これは議員がこういう詳しいところまで見ないからごまかしていけるかもしれないけれども、明らかに法律の上からいって一時借入金です。余裕金というものには利子がつかない、しかしこういう長期の借入金というものはむろん利子がつくんです。しかもそれを大蔵省がいうように、年度を越したものが全部一時借入金ではなくして長期借入金だ、こういう理論でいきますと、どうもこれは長期借入金の性質というものがだんだんおかしくなってくるのですね。これは今までもそういう行きがかりもありましたからやむを得ませんが、本日はこれを一つはっきりして、将来そういう変なやり繰りをやらずに片をつけておく必要がある、こう思うのです。だから三十年度に借りた六十億の利子というものは当然その年の予算に計上しておくべきなんだ。ところが昨日の答弁では、三十年度に借りた六十億の利子というものは、三十一年度に計上いたします、こういうことなんですね。そうしますと、借りた六十億の金は歳入に出た。しかも歳出には来年度、三十一年度になって六十億返して利子がついてくる。ところがその借りた金のもとの運用部には出ていない。歳入歳出はあるが一番もとが出ていない。こういうきわめて不可思議なやり方で、予算書を見てもわからないのです。説明を受けて初めてなるほどとわかるような予算の組み方をやっている。健康保険というものは、今きわめて国民が注目しており、しかも国民生活、ことに低額所得層に密着しておる問題なんだ。それを、そういう予算の組み方をするということは重大なことなんだ。これは大蔵省の責任だと思いますが、同時にまたそういう組み方に屈服した保険局の責任でもある。保険局長を一つ呼んで下さい。保険局長が出てないので、会計課長から……。
  46. 堀岡吉次

    ○堀岡政府委員 ただいまのお話は、御質問の通り前年度も非常に大きな問題になりました。たしか昨年予算委員会におきまして、大蔵大臣並びに主計局長からただいま御質問のようなことで、資金運用計画を直すということで御説明があったと思います。その点は私も同席いたしておりましたので、よく存じております。お話の通りこれが長期資金の運用計画に計上すべきことはもちろんでありますが、厚生省特別会計運用の建前といたしまして、利子がつかぬということであれば、国庫余裕金をもって泳ぐことが当然得なことでありますので、ただいま御指摘のような運用方をしてきたのであります。三十一年度におきましてもこの点をどうするかということは、政府部内におきましても予算の組み方として問題になった点であります。そこで在来非常にまれな例でございまするが、年度末に返しまして、そうして翌年度にただちに国庫余裕金をもって返還するという措置を資金運用部においてはとってきたことでもありますので、それで済むならば厚生保険特別会計の保険勘定といたしましても利子の分が助かりますので、そうしたらどうかというので、同じようにしたのであります。なお利子の方は償還のときの年度で払うということでございますので、三十年度は計上いたしませんで、三十一年度につきましてはその分、たしか三千万円だったかと思いますが、利子は計上いたしたわけであります。三十一年度の借り入れにおきましても、ただいまの予定は長期資金の借り入れを固定的にずっといたします場合は、利子が年間通じて何億かにたしかなるはずですが、財政逼迫のときでありますので、その利子をさらに健康保険勘定から支払うということになりますと財政を圧迫いたしますので、三十年度同様という政府部内の了解をつけたわけであります。資金運用部資金の会計の建て方等につきましては在来やっておりましたので、そういう建て方が大蔵省において承認されたものと思います。この点は当省所管でございませんので御返事申し上げかねますが、いきさつはそういういきさつであり、了解はそういう了解のもとに成立しましたものであります。厚生省限りといたしましたならば、むしろ利子が要らぬということであれば、大蔵省がそういう措置を講じてくれるならばより有利であるということで了承いたしましたのであります。そういういきさつでありますので御了承願いたいと思います。
  47. 滝井義高

    滝井委員 それならば長期借入金下なく、国庫余裕金をもって泳いだ方が利子が要らないです。なぜ国庫余裕金で泳がなかったんですか。
  48. 堀岡吉次

    ○堀岡政府委員 国庫余裕金で泳ぎますことは元受けに繰り入れるということだけでございまして、予算面に国庫余裕金の計上をいたすわけには参りません。一応長期借入金——長期短期は別といたしまして、借入金というものは歳出面また年間における歳入面でありません。予算の建て方として国庫余裕金の場合は単なる一般会計から特別会計国庫余裕金に移すということでございまして、手元現金に移すだけでございまして、従いまして国庫余裕金の一時繰りかえ使用でありますので、右のような処置を講じたわけであります。
  49. 滝井義高

    滝井委員 健康保険の会計の運用は結局同じなんです。金繰りだけやっていて、たとえば年度末の三十一日になって返して、また四月一日に借りるということで、同じなんですよ。結局利子を払うだけ損した。おそらくこの国債整理基金への繰り入れの六十億三千万円、この三千万円は利子だと思う。一カ月分の利子なんですね。資金運用部から特別会計に貸す利子というのは五分五厘か六分なんです。過去の資金運用部の原資の運用状態を見ると、特別会計に六十億なんていうものを貸した例はない。せいぜい五億か十億なんです。そういうように六十億もの金を貸した例はないのに、特に今度はそういう例を作って、しかもそれを計上しない。しかも年度末のたった一日だけで一カ月分三千万円の利子を——−年六分にしても三億六千万円、ですからおそらく月三千万円の利子だと思うのですが、これを計上していると思う。それならば三十一日に返したらよい。余裕金を一日に借りればいい。それの方が三千万円倹約になるんです。だからこの前も私はそれを主張したんです。そういう泳ぎ方ができるならば——特別会計には今まで一時借入金が多いんですよ。だから余裕金でやるべきだ。一時借入金をやっている会計は、備考欄に一時借入金千五百万円と書いて予算には計上しないで、特別会計で泳いでいるものが多いんです。ところが今度の健康保険に限って長期借入金だというので、六十億借りて、しかもそれを資金運用部から借りて——ところが原資のことは予算計画には載っていないからわからぬ。財政投融資の計画にも載っていないんですね。それで昨日以来森永主計局長に文句を言いましたところが、森永君から、実はあまり文句があるので、資金運用部審議会ですか、大蔵大臣の諮問機関ですね、あの議を経なければだめなんですけれども、あの議決を年末にもらっておるのを忘れておった、だから当然ここに載せてもいいということになりましたとさいぜん通知がありました。ありましたが、やはり厚生省がもしそういうことで年末にたった一日だけ借りたようにして、今度は来月分から借りるというならば、三千万円倹約するために一時借入金か余裕金でいく方がいいと思う。けっこうそれで泳げると思いますが、何かそれで経理の運営上大きな支障がありますか。あればこういう点があるのだということを御答弁願いたい。
  50. 堀岡吉次

    ○堀岡政府委員 一時借入金につきましても利子は当然計上しなければならぬわけでございます。一日の一時借入金というのは、実は向うとの話し合いによればできるだろうと思いますけれども、御質問の中にございましたように国庫余裕金は三月三十一日までに返さなければならぬということで、この規定を動かすことは不当だということで、実は政府部内におきましてずいぶん大蔵省とも折衝いたした問題であります。つまりこれを出納閉鎖期までに返すということではどうかという問題で、実はいろいろやった問題でございます。ところが出納閉鎖期までに返すということにつきましては、向うの方の会計の建前がくずれるということで、どうしても政府部内においてこの間の意見の一致を見なかったのであります。従いまして利子の節約そのものといたしましては、これは一時借入金にしろ長期借入金にしろ、これ以上の節約はちょっと不可能であります。従いまして御指摘の通り一カ月分の利子を予算としては計上いたしております。国庫余裕金はさような建前でありますので、私の方では実は全般の資金繰りでは年度末に返すということでありますが、大体十二月ころから賃金繰りが非常に窮屈になります。そういう点でむしろ大幅な長期の借入金計画を立ててくれた方が、利子の問題は別にしまして、資金繰りは非常に楽なのであります。ところがそうは相なりかねますので、かような予算の計上の仕方になったわけであります。厚生省といたしましては、三十年度予算の計上の際に、この問題は長期債として利子が何億円かになりましても、国庫余裕金そのものの余裕の状況というものは非常に弾力性、幅のある問題でありまして、必要によっては直ちに返還を命ぜられるということでありますので、それの見返りのために長期借入金というものを予算に計上しなければ国庫余裕金の振り返しはまかりならぬというのが向うの建前でございます。当然それに伴うところの利子を計上して、国庫余裕金で泳がしてもらうためにも、予算上返還金に相当する借入金並びに返還金並びにその利子というものを計上いたさなければ、国庫余裕金の運用上の主管部局の建前からいたしまして簡単には参らぬ。いわば国庫余裕金は一種のコール・マネーという性質のものでございますので、かようなことになっておりますということで御了承願いたいと思います。  なお長期債の立て方につきましては、森永主計局長から滝井先生の方に御通知があったということでございますので、大体そういうことで大蔵省では責任を持って処理をするということになっておりますので、さような次第にいたしたのでございます。
  51. 滝井義高

    滝井委員 大体この六十億の借入金が資金運用部の計画に載らないというのは、昨年から郵便貯金が伸びない、従って大蔵省自身がこの運用計画を立てるときに、郵便貯金が伸びないために実はその金がない。そのためにきわめて悪らつと言えば悪らつですが、こういうことになって、しかも一番弱い厚生省にしわを寄せているというのがほんとうなんです。実を言うと、それをまたはいはいとのんでいる厚生省もまた厚生省なんですね。こういうところは大臣、あなた自身がもつとしっかりやらなければいかぬのです。そうしますと、ことし借りた三十一年度の六十億の借入金も、今のような状態でずっと泳いでいって、年度末になりましてから再び三十二年度の予算を計上するときに、やはり同じように国債整理基金特別会計繰り入れて、六十億三千万円を組むという形になるわけですね。
  52. 堀岡吉次

    ○堀岡政府委員 三十二年度の形はこのままで推移いたしますならばまさに仰せの通りであります。ただ先ほど大臣から予算説明の際にも申し上げました通り、本年度三十億円借りる際には、ざっくばらんに予算説明として申し上げたのでありますが、本年度十億もらって十億返すというやつは、本年度は返さないという建前にいたしましたので、三十二年度においてはその建前をまた復活するということになりますれば、受入金別途十億円ということで、六十億円は五十億円と別途受入金十億円、合せて六十億返すという建前になって、三十一年度とは若干財源的に食い違うということだけであります。
  53. 滝井義高

    滝井委員 そうなるのがほんとうであります。私も一応今の建前でいけばそうならざるを得ないと思います。そういたしますと今の十億が問題になってきます。昨年の厚生保険特別会計法の一部を改正する法律を作るときに私ははっきり久下さんにもよく念を押した。あの法律というのは、一昨日の予算委員会でも言ったのでありますが、厚生保険特別会計に十億円に限って入れることを得ということになっておる。入れなければならないとはなっておらない。そこで厚生省は弱い官庁であるから、入れなければならないということを書いておかないと来年あたりになるとその点大蔵省から肩透かしを食うぞということで、実はわれわれはわが党の大蔵委員の横路委員に言って、大蔵委員会でも発言をしてもらって、この法律を出すときに、入れなければならないということにしなければだめだということを念を押さした。ところが大蔵省の答弁では、それを入れることを得と書いてあっても、来年は必ず入れますという約束だった。また久下さんにもここで念を押したら、そうしますということだった。ところが案の定今年は三十億の金をもらったが、十億というものは三十億出したから繰り延べだとやられた。そうしますと三十年度より七カ年間毎年一般会計より十億を限って厚生保険特別会計繰り入れることを得るといっておるが、これが今年はもうくずれた。来年もあなたのようにやるならば、大蔵省は法律を改正しなければならぬ、おそらく改正を出してくるでしょうが、これも怪しくなる。昨日の大蔵大臣の答弁では三十億の補給金というものは来年はそのときの情勢で出すか出さぬかはっきりきめたい、こういうことなのです。来年必ず出すものではない、これは一時補給金臨時補給金ということを予算説明書にも書いてある。そういたしますとその十億も怪しくなってくる。これは大臣に御答弁を願いたいと思うのですが、来年は必ずこの十億というものはあなたは政治的責任を持ってやるかどうか、この前一割国庫負担についても川崎君とそれから一萬田大蔵大臣は一割国庫負担については責任を持ってやる、あなたもここで言明しておった。私もまたあなたの首をかけなければ一億はあぶないぞということを言明をしたはずです。ところが一億ではない、三十億になる。しかもその三十億の中には十億というものが含まれた形、十億円というものは繰り延べられた形、こういう形になってきている。そこで大臣、あなたは一つこの十億円というものを来年は必ず責任を持って——来年になってあなたが大臣であるかどうかは疑問でございますが、次の大臣には必ずこれを受け継ぐ、こういう確信がある御答弁がいただけるかどうか。これは法律できめておることなんです。一つ御明快な御答弁をお願いしたいと思います。
  54. 小林英三

    小林国務大臣 ことしの三十億円の問題につきましてのいきさつは、会計課長からお語いたしますが、ただいま御質問の十億円の問題につきましては責任を持っていたすつもりでございます。
  55. 堀岡吉次

    ○堀岡政府委員 補足して申し上げますが、当初予算について、御案内のように数回の予算内示折衝ということがあるわけでありますが、大蔵省は初めからこの十億については三十一年度予算に計上いたしておったのであります。従いまして、それを返還する意思は、厚生、大蔵両当局の間にはなかったのであります。それで大蔵省を弁護するつもりはございませんけれども、初めから計上しないことになっておったというわけのものではないのであります。ただ最終的に全般の予算が非常に詰まりまして、そのために十億円は返還しないということで三十一年度だけは泳ごうという約束をしたのであります。なお三十二年度におきましては、この十億円につきまして繰り入れすることができるということにつきましては、一般的な特別会計法に対する繰り入れの条文上さような形になっておりますが、中身の問題につきましては、先般の予算委員会における説明も、今回の予算委員会における説明等を見ましても、十億円については別段問題がない、こういうふうに考えております。なお三十一年度の三十億につきましては、これは補給金とするということで名前は変っておりまするし、政府の財政再建のためということで患者の一部負担の見合いといういろいろややこしいことにはなっておりますが、三十一年度限りであるということは、少くとも大蔵事務当局の方では考えていない、そういうふうなことははっきりわれわれにも言っておりますし、予算委員会等におきましても、大蔵当局からさような言明は今日までしておらぬわけであります。
  56. 滝井義高

    滝井委員 十億は来年大臣は必ず責任をお持ちになる、こう言ったので、一つはっきり速記録にとどめておきたいと思います。  そこでその三十億の性格ですが、国庫負担金ではないわけです。臨時補給金です。来年の健康保険財政の状態によって必要ならば出す、こういう程度のものなんです。そこでさいぜん長谷川委員と大臣の間の問答をいろいろ聞いておりますと、現在日本にはなお二千万の国民が保険に組織されていないのだ、そういう現状であるときに、わずか五百万の労働者を対象とする政村管掌の健康保険に対する国庫負担金は出せないのだ、せんじ詰めると、こういう御議論であった。これは逆に解釈すれば、三千万の国民が組織されるまでは定額の国庫負担はできないのだという結論にもなる。財政の状態によっては国庫負担ではなくて、臨時の一時的な財政再建のための補給金として出して行くのだ、こうなるわけです。そうしますと、現在失業保険は、全部の国民には組織されておりません。ところが国は三分の一出しておる。これはどういう理論からお出しになっているのでしょう。
  57. 小林英三

    小林国務大臣 私が本委員会におきまして先ほど申し上げましたと同じ理由におきまして、失業者が全国民という意味ではございませんから、国家はそういうふうにいたしております。
  58. 滝井義高

    滝井委員 それでは御答弁にならないのですが、失業保険は雇用労働者の半分も適用されていないのですよ。それに三分の一国庫負担を出している。そうして全国の雇用労働者で、少くとも五人以上の職場の労働者には健康保険が強制的に適用されてそれが赤字で困っているというときに、失業保険には三分の一の国庫負担の理論が出てきて堂々とやっておるが、なぜ低額所得の中小企業の労働者が組織しておる政府管掌の健康保険にもう少し国庫負担が出ないのかということなんです。それはさいぜんも三千万の国民が保険に組織されていないから出ない、こういう御答弁だったから、それでは失業保険はなぜ出ておるのだということなんです。これはきわめて簡単なことで御答弁いただけなければならぬと思うのですが、大臣に御答弁願いたい。
  59. 小林英三

    小林国務大臣 事務当局から一応答弁させます。
  60. 堀岡吉次

    ○堀岡政府委員 非常に高度の御議論でございまして、私ごときが御答弁申し上げて恐縮千万ですが、失業保険につきましては、もちろん私もつまびらかにいたしておりませんが、失業の発生する原因の一つは経済機構にある、そしてそこにその三分の一を負担する大きな理由があるのではなかろうかと思います。  それから先ほど大臣は、健康保険についての国庫負担という形で政府管掌の健康保険負担する必要がないということを申し述べたのではないと思います。その点は、昼の休みのときにも大臣に十分確かめたのですが、そういう意味で言ったのではなしに、現段階においては三千万の国民の組織されていない階層もあるといとことで、これを一挙に赤字の全額を負担するわけには財政上ちょっと参りかねるという程度のことを申し上げたので、われわれ厚生当局といたしましては、疾病保険に国が負担をして悪いということは全然考えておりません。これは、もう予算要求のときの負担すべきであるという主張は、現在厚生当局は一歩も変えていない。ただ何割であるかという問題は、これは、失業保険が三分の一であり、雇用が二割であり、日雇い労働者が一割であるというふうにニュアンスはいろいろあります、ニュアンスはありましょうが、疾病保険について国庫負担をして悪いということは全然考えておりません。  なお現在疾病保険の対象外の人々を疾病保険の対象にする場合に、いかなる形にするかによってまたその議論は違うと思いますが、現段階においては五人未満の事業所における労働者階級を除きますれば、将来の考え方としては大部分のものは国民健康保険という形で解消すべきである、のみならず、国民健康保険は本来は非常に小さな市町村でもやっておりましたので、その存在の基盤等が非常に危ういものであったということは、滝井先生長年の御主張の通りであります。しかしながら現在合併促進法によって市町村の規模は相当大きく変化してきております。そこで、今後の問題でありますが、大体厚生省考え方としては、合併された大きな基盤における市町村の立場に立った地域疾病保険として進んでいくならば、遠からず三千万の保険化されない階層も保険化するであろう、その場合には、現在の法律の建前においても二割を国庫負担するということになりましょうが、ただそれを待つことなく、遠からざる将来においては疾病保険についての国庫負担が確立するであろうということで、厚生当局としては確信を持ってそれを目標に進んでおります。
  61. 滝井義高

    滝井委員 事務当局の答弁はそれでいいと思います。あなた方は最低一割と言い、川崎君のときは政府管掌健康保険に対する国庫負担の一割五分実現に邁進していくのだということは再々ここで言明された。ところが大蔵省の考え方は違う。だから、私は大臣の政治的な答弁を求めたいのですが、大蔵省は国庫負担の理論を全然持たない。これはもう一昨日の大蔵大臣の答弁を聞いても、国庫負担はできませんと言っておる。ただ来年度の健康保険の会計の情勢を見て、もしそれが必要ならば、ことしと同じような金を出します、こういうことなんです。国庫負担の理論はない。だから事務当局の答弁としてはそれでよろしい。しかし私は、今大臣の政治的な答弁を要求しておる。三分の一を失業保険では出しておるが、なぜ健康保険は出さないのか。その説得をなぜ大蔵省なり大蔵大臣に向ってやらないのか、こういうことなんです。このままでいけば、来年もやはり同じ運命です。これははっきりしておる。あとで薬価の問題も出ますが、製薬企業に対するメスの入れ方、それからこの一割の国庫負担というものは、大臣の首をかけなければできないのだということを私はそのために申した。大蔵省の意向というものはもうはっきりわかっておる。大臣、これはどうですか。もし今の事務当局のような御意見であれば、三十億もほんとうは予算の上にはっきり国庫負担と書かなければならぬ。あなたの方から出た予算書には国庫負担と書いてありますよ。大蔵省から出た説明書には、国庫負担ということはどこにも書いてない。全部臨時財政補給金と書いてある。あなたのところは国庫負担金と書いてある。これは事務当局が国庫負担金と思っておるから書いているのでしょう。しかし大蔵省は書いておらない。予算書がここにありますが、書いてない。どこにも国庫負担という字はない。同じ内閣の中において、厚生省考えておる三十億というものの出し方と大蔵省の出し方とは根本的にこれだけ違うのです。だからこの違うものがどっちがほんとうかということは、当然大臣の政治的な責任で御答弁を願わなければならぬ。三十億は国庫負担だ、来年も少くとも国庫負担としてやっていくんだということならば、これは少くても筋が通ってくる。ところが来年は財政の状態で出るか出ぬかわからぬのだということならば、それは国庫負担ではないのです。この点どうですか。大臣はあくまでも三十億を国庫負担として、大蔵省のこの予算説明にも、国庫負担として修正せしめるだけの熱意と力と情熱とをお持ちですか。
  62. 小林英三

    小林国務大臣 大蔵省の三十億円の支出に対する説明といたしましては、健康保険財政の立て直しによりまする臨時的な補給金というふうにいっておりますけれども、これはやはり国家が健康保険の立て直しのために出すものではありませんから、私どもは国庫負担考えておるのであります。しかしながら滝井さんも、この間の予算委員会における大蔵大臣の答弁並びに私の答弁等につきましてもお聞きの通りでありますが、私は厚生当局といたしまして、来年度のこの健保の対策につきましても、必ず国庫負担として適当な金額を出してもらう意思があるのであります。
  63. 滝井義高

    滝井委員 一つ大臣は、国庫負担としてあなたの方のこの予算書にも書くし、それから大蔵省から出るこの予算説明書にも国庫負担とぜひ書くようにしてもらわないとなかなか困るのですね。あなたの方は国庫負担と書いておるが、これには一般会計よりの受け入れとしてしか書いてない。そして同時に、その説明はどう書いておるかというと、「臨時補給金として三十億円をこの会計の健康勘定繰り入れることとしている。」こういうことです。だからこれは、文字の端にとらわれるようでありますけれども、国庫負担の形で出すのとそれから臨時補給金として出すという意味とは相当違っておるということです。こまかいことを言うようでありますが、問題の本質ですからぜひそうしていただきたいと思うのです。  そこでもう一ぺんもとに返りますが、さいぜん失業保険のことを申しましたが、失業保険の方ではどうも大臣は御答弁ができないようでありますから、今度は失業保険ではなくて、大臣の御要望されておる、全国に国民健康保険普及したら、そのときは国庫負担をはっきり健康保険にもやるんだ、こういう御議論についてお伺いしたいと思うのです。  そこで国民健康保険というものは、大臣がここで先般答弁をされ、また予算委員会でも答弁をされたように、少くとも昭和三十一年から三十五年までの五カ年間に残りの三千万の国民を組織していくんだ、こういうことです。そうしますと、ことしの国民健康保険予算の中にそういう展望が見えておるかというと見えてないのです。これは各新聞社がみな社説に書いている。鳩山内閣は社会保障制度を確立するんだという看板を掲げたけれども、ことしの厚生省予算を見ると、何ら日本の社会保障が進展をする片りんさえも見えない、出しておる予算は、人口の自然増といわゆる生活保護費のボーダー・ライン層から脱落をしてくる者のための生活保護費がふえただけで、厚生省予算の中には社会保障の進展というものは何ら見られないんだ、もう鳩山内閣は社会保障の拡充ということは初めから言わない方がいいんだということを、天下の大新聞である朝日も毎日も一月の初めに社説に掲げました。私はその通りだと思う。ところが五年間の社会保障の中核であり、少くとも三千万の国民を組織する国民健康保険をやられるとするならば、私が予算委員会でも指摘をいたしたように、少くともあなたの方の事務当局が作られた案では、これは一年に百九十五億だけ出さなければならぬ、ことしの倍だけ出さなければならぬ。もし今のままでいっておったならば、これは十年や十五年はかかります。ことし国民保険をやっても、国民保険が組織される者はおそらく三千万の国民のうち二百万か三百万です。三百万ずつ組織されても十年かかりますよ。十年間日本の零細な所得階層が組織しておる政村管掌の健康保険国庫負担が出せないとするならば、もしそれを三千万の国民を組織するまで出さないということがその理論的な背景をなすならば、十年間は国庫負担が出ぬということです。大臣どうですか。それであるならば国民保険を五年でやれるだけの御自信と政治力をお持ちでしょうか。これを一つ御説明願いたい。
  64. 小林英三

    小林国務大臣 先般の予算委員会等におきまして申し上げましたように、経済五カ年計画の最終年度でありまする昭和三十五年までには国民皆保険の実をあげたいということは申し上げた通りであります。今日の国保の状態並びに健康保険におきまして、五人以下の事業所における従業員の問題、あるいは国民健康保険の未加入者の三千万人の問題、あるいはその他の問題、あるいは健保の赤字の問題につきましては、結核対策に対するいろいろの考え方もあると思いますが、これらの問題を、あるいは国保と健保一本にするとか、あるいはその他の未加入者を全部一本にして、最後の年度でありまする三十五年までにはこれを国民皆保険に持っていくというようなことにつきましては、いろいろの問題がその間にあると思いますから、それらの問題を総合的に調査研究をいたしまして、そうしてでき得れば年次計画を作りましてやっていきたいと思っております。
  65. 滝井義高

    滝井委員 総合的にやられることはかまわないです。ぜひそうしていただかなければならぬのでありますが、政治というものはやはり現実に足場を置いている政治でなければどうにもならない、空理空論ではどうにもならぬのです。保守党の諸君は、社会党は空理空論だとよくおっしゃったけれども、今の大臣の理論では空理空論になってしまう。少くとも三千万の国民を五カ年間でやらなければならぬ。五年間でやるのだとおっしゃるからには五カ年間でやる構想というものが具体的になければならぬ。しかも三十一年度というものは五カ年計画の第一年度ですから、そこに三千万の国民を五カ年で組織する将来の展望というものの足場が出ていなければならぬが、ことしの予算の中にはそれが出ていない。そうしますと、大臣が今おっしゃったように、五年でやるのだといっても、まず第一に、国民皆保険の百九十五億の金が出るか出ないかということです。ことしは八十八億千九百三十九万円出ておりますが、この倍出なければならぬ。助成費は全部で八十八億出ている。   〔中川委員長代理退席、委員長着〕  ところがわずかに一割の健康保険負担財政のためにできないという。日本の財政の中から、あなたの理想であり政治的な一大スローガンである五ヵ年間での国民皆保険の金が出るかどうかということですが、私はこれはたいこ判を押しても出ないといっていい。たいこ判を押しても出ないとするならば、政府管掌の健康保険のための国庫負担も出ないということになってくるが、その点はどうでしょう。
  66. 小林英三

    小林国務大臣 経済審議庁等でやっておりまする経済五カ年計画にいたしましても、やはり経済五カ年計画の昭和三十五年までにおきましては、今日の自由民主党内閣といたしまして、必ずこういうことをやっていきたい、こういう計画を立てまして、それに向って進んでいくのでありますから、今あなたは単なる健康保険赤字財政さえも一部負担によって糊塗しようとしているが、それはできないという議論のようでありますけれども、国民皆保健というのと今の赤字態勢における一部負担というものとは別個の問題だろうと私は思っております。
  67. 滝井義高

    滝井委員 大臣、政府委員に聞いてごらんなさい。ピントが狂っていますよ。その議論というものは第一三千万の国民をやるためには、五カ年間に国民健康保険をやるのだということをあなたはおっしゃった。一昨日も大蔵大臣、高碕さんも、あなたの御意見とは違うんです。大蔵大臣はそんなことはどうもと言って高碕さんと話し合っておった。私には聞えましたが、違うんですよ。だからこういう点はやはり厚生省、大蔵省あるいは経済企画庁との間に十分意思の疎通をはかって、そうして五カ年計画をお立てにならぬと、経済企画庁の立てておる五カ年計画とあなたと違うことは一昨日の予算委員会でおわかりの通りだと思う。ずいぶん違います。経済企画庁は狭められた社会保障の五カ年計画を持っている。あなたの方は主管省として非常にゆとりのある、しかもある程度理想を入れたものになっておる。それが非常に食い違っておるということなんです。これは今の国庫負担の理論の背景にあなたが五カ年計画をされるということは一つの大きな間違いです。その理論からは国庫負担をしないという議論は出てこないということなんです。これ以上大臣を追究してもしかたがありませんので……・。次にもう一つの問題なのは、二十三億の一部負担をやることになったわけですね。一人出づら一律三十円、医者に行くたびごとに三十円、入院六カ月まで三十円というのが社会保険審議会等に御諮問になった案なんです。その集計が二十三億になるのですが、これは昨日、最終的な二十三億がとれなかったときの責任は一体どこが持つのだ、患者が払わなかったときの責任は一体どこが持つのだと言ったら、大臣の御答弁は、これはお医者には持たせないのだ、こうおっしゃった。ところか小沢さんか何か事務当局がうしろからメモをもって、いや最終責任は医者にあるのだ、こうなった。実は今筑豊灰田のまん中に住んでおるのですが、炭鉱は不況です。医者に金を払いません。家族の半額も払いません。私の友人なんか無料診療所と同じです。家族はほとんど払いません。そこでどういうことをやったかというと、私はこういうことを指導した。労働基準法では賃金の中からそういう医療費や何か差し引くことはできません。そこで労働組合と労働協約を結ばせるのです。これは労働基準法の二十二条でできるのです。そして賃金から源泉的に医療費を引いた。ところが労働者は医療費を引く金がないのです。どういう結果が出てきたかと申しますと、労働者は賃金をもらう前にもう見合いというものを切ります。今炭鉱地帯では一カ月働くうち、給料が十五日にあるとすれば、十五日間食いつげないのです。だから一日か二日ごろに見合いといういわば自分の働いた賃金の先取りをやるのです。これを見合い金というのです。これをもらいますと配給所や何かに行って子供の文房具や何かを買います。そして配給所では全部通いで米やみそをとってしまいます。そうしますと、配給所では今度は十五日の勘定日になりますと、その賃金の中から配給所の米代、みそ代を引いてしまいます。そうすると労働者の手元に残る金は、はなはだしいのは五十銭くらいしか残っておりません。うんと残っておる人でも二十円か三十円です。医者の医療費を労働協約で引くようにしたけれども引けない。引けない結果どういうことが起ってくるかというと、保険証をまず私なら私に持ってきます。そうして私にかかります。先生、勘定日に金を払いますから待って下さいということになる。よろしい待つ。そうすると今度は保険証をとってBという次の医者に行きます。そしてまた同じことをやる。結局ぐるぐる回ってお医者にかからなければ医療にかかれないというにが実態なんです。だから全国の医師の実収を調べてごらんなさい。おそらく炭鉱地帯では三割、全国平均では一割五分から二割が引けないと思います。一昨日申しましたように、政府管掌の健康保険は平均標準報酬は一万一千円。あとで健康保険のときにまた御質問いたしますが、ことしは一万二千二百五十二円などというものは無理です。私は大蔵省からおそらく押えつけられて、保険当局がのんだものと思いますが、昨年の七月は、平均報酬はむしろ下っているのです。あなたの方は昨年よりぐっと上げておりますが、そういう中で、一万一千か二千しか取れないような被保険者の扶養家族の状態を見ると、四人、五人いる。七人委員会の報告を見ますと、家族は半額負担する。本人が休んだときにもらう給料というものは、平均標準報酬の六割しかもらえません。一万一千円ならば、六千六百円しか一カ月にもらえない。六千六百円の中から家族を養い、毎月医者に行ったことによって出づら三十円を払うことができるかというと不可能でしょう。それは全部医者の負担です。だから二十三億というものは労働者の負担だというけれども、私は全部医者の負担になると思う。そうしますとどういう結果が起ってくるかというこ、その結果は治療内容の低下です。はっきりしています。一番損するのはだれか、労働者なんです。なるほどそれはどこかの会議で保険局長が言われたそうです。一部負担を払わぬような労働者は、被保険者としての権利を放棄したものだ、これは保険局長がおったら、暴言だと思います。医者は、大臣も医師法で御存じのように応招の義務がある。うどん屋ならきのううどんを食って、うどん代を払わないできようまた食いに来たら、きょううどん代を払わなければ食わせませんと言うことができる。しかし死にそうな患者を連れて来たときに、医者は、お前はきのう金を払わなかったから見てやらぬとは言えません。もしそういうことをいうならば、その医者は刑事犯罪人になります。この点を大臣は一体どうされるつもりですか、これは一番重大問題です。これによって日本の医療が低下をし、日本の大衆が医療を受けられない。そして医者に不満を与えるということになったら大問題です。人道問題が起る。それとも医師法を改正して、金を払わない者は見なくてもよろしいと健康保険法に書きますか、あなたがそれを書くだけの勇気と信念をお持ちならば、私は何も言いません。どうですか。
  68. 小林英三

    小林国務大臣 滝井さんの今の御質問というものは、もう最悪の場合のことをお考えになっておるようであります。中にはそういうような意味の被保険者の方もおられるかと思いますけれども、そういうような生活の困窮の方につきましては、やはり生活保護法というものもありますし、私は全部が全部そういうような場合を想定することはできないと思います。一部負担といたしましても、われわれが考えておりますことは、できるだけ受診率の低下を避けるような意味のものにいたしたいと思っております。これらの問題が全国の被保険者に十分理解を得られますならば、私は今お尋ねの極端な——極端と申しては誤弊がありますが、そういうような全般的の心配をする必要はないであろうかと思います。
  69. 滝井義高

    滝井委員 大臣も御存じのように、千丈の堤もアリの一穴からという言葉を若僧の私が言わなくても十分御存じと思います。千丈の堤もアリの穴から崩壊しますよ。大臣は極端なこととおっしゃるけれども、現実に私たちの筑豊炭田にきてごらんなさい。日常茶飯事のことです。払えないですよ。どうも保険局長を呼んでもらわぬと工合が悪いのですが、保険局長に私は言わなくてはならない。保険局長は社会保険審議会に行っておられるそうだがこちらに来てもらわぬと困るのです。社会保険審議会は政府の諮問機関だから、国会の方が大事です。それを中止しても来てもらってくれ。はっきり責任ある答弁をもらわなければできないのです。課長で責任ある答弁ができれはいいのですよ。——今のことで大臣はごくまれなことだとおっしゃった。しかしまれなことではないのです。至るところ、筑豊炭田にあるのです。私は実際に幾らでも実例を持っている。たとえば現在政府はこういうことをやっております。Aという会社で保険料の滞納があります。その炭鉱は六百人くらい労働者がおります。ところが保険料の滞納があるために保険証を全部無効にしてしまいました。法律では五人以上の事業所というのは強制適用です。ところが事業主が保険料を払わないために——労働者は働いておるのですから、当然源泉徴収で保険料を払うことになるが、払わないのです。事業主が保険料を払わないために保険の受診をストップしている。そしてお前の方が保険料を持ってくるまでは保険証を使うことはまかりならぬ、こういうことになっておる。その結果どういうことが起っているかというと、事業主が医者に向って、私の方は患者がかかった場合は私が責任を持ちますから、どうか見てやってくれ、そういう事態が起ってきた。保険医は事業主が責任を持つというからやるのです。もしそういうことがなければ医者はできないことになる。保険証を持っているけれども、保険証を使うことはならぬ、こういうことになる。政府の方は保険料を払わなければ受診権さえも停止します。現実に労災保険はどうですか。労災保険は事業主が労災保険料をかけないと、労働者が死んでも保険金をくれないのです。労働者は死に損です。ところが医者の場合だけはそうはいきません。これは医師法で応招の義務がある。もし金を払わないからといって医者が拒否したらこれは刑事事件になる。生命をあずかるのですから、ほかのうどん屋さんやパン屋さん、そういう業態とは違うのです。だから患者が金を払わなかったときの責任は健康保険法で政府か持つとか、あるいは保険者が持つとか、そういうことがはっきりしない限りは、この問題は千丈の堤もアリの一穴から、日本の社会保障はここから崩壊してくる。それは医者も人間ですし、労働者も人間です。金を払わなかったら、その患者に対してどういう気持になるかということは、大臣失業家だから御存じだと思う。いつもいつもあなたの方の品物を買っていつ、金を払わぬ者に、あなたは品物をやるはずがない。これは実業家の冷酷な心理であると思う。患者も、もし医百に金を払わなかったら、その医者にいつも行けるはずがない。必ず医者をかえなければならぬ。だからだんだんかわって、近所の医者を行き尽くすと行き場がなくなる。そうするとやはり元の医者に泣きついていかなければならないことになる、こういうことです。だからこの問題は、大臣あたりはわずかに二十三億、一日三十円の金だから何のことはないと単純に考えておるけれども、三十円でも、十円でも、零細な労働者や零細な農民にとっては莫大な金です。私の近所の農家がありますが、今から十年も前には、百姓は当時一日に十銭使ったら大へんだという勤勉な農家もありました。それと同じです。一日に三十円ずつ医者に行くたびにやることになると、病気が重くなる。しかもこれはさらに多くの金を食ってそうしてその労働者が医者に行けないようになって、結局死を選ぶよりほかにないという人道上の問題が起ることははっきりしておる。これに対する明快な回答をその責任は医者にないのだ、それじゃ労働者にあるのか。この前保険局長は、払わない労働者というものは保険の権利を放棄したものだ、こうおっしゃったそうですが、大臣は、もしそういう払わなかった労働者は保険の権利を放棄したものだといって、医者は見てやらなくてもよろしい、こうおつしゃれますか。
  70. 小林英三

    小林国務大臣 先ほどからいろいろ御質問になっておりますこの事項というものは、いわゆる今回われわれが考えておりますところの健康保険の一部被保険者負担という問題があるなしにかかわらず起ってきておる問題とも考えられるのでありまして、あなたが先ほどからおっしゃっておるようなそういう事例に対してどういう態度をとっておったかというような問題につきましては、今局長はおりませんけれども、担当の課長がおりますから一応お答え申し上げまして、その上で……。
  71. 小沢辰男

    ○小沢説明員 まず最初に、一部負担金というものがとれなかった場合に医師が責任を負うべきか、あるいは保険者が最終的には責任を全うするのかという点のお尋ねについてお答えをいたします。現在の健康保険では、一部負担金というものを被保険者が療養の給付を受ける際に支払うべしという法律上の義務を四十三条の二で課しております。同時に四十三条の六で、保険医あるいは保険薬剤師あるいはこれを使用する人が療養の給付につきまして保険者に請求をすべき金額というものは、療養に要する費用から一部負担金を控除したる額とするということに法定されております。従いまして現行法の建前では、私どもの考えとして保険者の方に一部負担金の支払い義務があるものと解釈いたしておりません。これは私どもの考え方を申し上げますと、療養の給付というものは保険医に保険者にかわって担当せしめる。しかしながら保険者に請求をする額というものは、法律上きめられた一部負担金を差し引いた額なんです。それが健康保険の仕組みです。そういうことで行政庁の方で保険医をきめまして、その保険医は健康保険のその他のいろいろなきまり、同時にこの保険法に基きまして厚生大臣がきめておる療養担当規定その他を守るという約束、いわば保険のルールというものを守っていくという義務があるわけでございます。そういう義務をお持ちになる保険医の方が療養の給付を担当して、それでその請求する額というものは一部負担金を差し引いた額なんだということを一応保険のきまりとしてきめておるわけでございます。従って現在のところでは、それでとれないと困るというようなこともありましょうというところから、保険の方では建前として被保険者に療養の給付を受ける際に一部負担金を支払うべしという義務を法律上つけておるのであります。そういう意味で現行法の建前では、一応保険者に一部負担金を支払わなかった場合の責任があるとは私ども解釈いたされないのであります。  なお、もちろんおっしゃるように一部負担金を払えない場合もあろうと思いますし、あるいはまた、るる実情をお述べになりましたような気の毒な場合があろうかと思いますが、それは保険の制度と一応別の問題だろうと私は思うのであります。健康保険制度というものは、法律上一応事業所の指定をしまして、この被保険者は全部強制的に健康保険法の網の中に入れておりますけれども、それは一定の保険料をみんなで分け合い、そうして疾病という保険事故が起った場合に、それをいろいろ健康保険の制度の中で担当してやろうという保険制度の建前といたしましては、やはり現在でも保険財政の観点から、家族療養費というものは被保険者に半額しか給付しないということになっているのです。それでどうしてもいかぬ、払えないという場合に——その家族の療養費が半額自己負担になっておる、その負担ができないというような現実が決してないとは私ども申していないのです。ただしかし、それを解決するのは健康保険の中の問題ではなくて、やはりそれは法的な扶助の問題ではないかと思うのでございます。従って、そういうような場合には健康保険の別の制度としての法的扶助、すなわち生活保護の医療扶助の問題で解決をしていくべきものと思っておるのでございます。  なお医師が取れなかった場合に、これを断わっていいかという点につきましての御指摘は、おそらく社会保険審議会で保険局長がいろいろと諮問案につきまして説明をいたしましたときの言葉の引用、あるいはそれをお聞きになってのお話だろうと思うのでございますが、そういうような場合に一体医師は患者を断わっていいかという問い合せがあったのです。そのときに私どもとしては、健康保険法では一応そういうような保険のシステム、あるいはきまりというものを作って、その中に被保険者あるいは事業主というような要素がいろいろございますが、それらの保険関係の人は全部一応健康保険法という法律並びにそれに基きますいろいろな仕組み、しきたり、大きいきまりというものを守っていくという前提の制度でございますので、もしも医療費の一部負担金を払うべしという被保険者の義務を行わないような人がおりましたならば、それは保険の給付を受ける権利を一応放棄したものと考えられるということを、健康保険法の立場で申し上げたのであります。  なおこれを断わった場合に、しからば医者は医師法でいくと、いろいろな義務があるのだ、それはどうなるのかという問題につきましては、これは健康保険法のほかの問題で、医師法なり、あるいは歯科医師法なりの問題でございます。またその場合に、現実に人命を預かるものとして医者は断われないじゃないか、あるいは断わった場合に、その本人は病気のために非常に困るじゃないか、それをどう解決するのかというような問題は、それはやはり医療扶助の問題なり、あるいはその他の健康保険以外の面で解決をしていく問題である、かように考えておるのでございます。
  72. 滝井義高

    滝井委員 うまく逃げましたから、一つあれしますよ。そうしますと、一部負担金が取れないときは、健康保険上から言うと、健康保険という法律の建前からいけば、これはその患者が保険法を守っていないんだから、権利を放棄したことになる、これははっきり確認をいたしました。これはきわめて重大な問題ですから確認をいたしました。  それから一部負担金については、これは現在は一部負担をやれということになっていますね。これはわかる。ところがその一部負担というものは初診料相当額なんですね。今度新しく変える法律でやるのは初診料じゃないんですね。三十円ずつで、違うんですね。初診料だけじゃない。そうしますと、全く情勢は変ってくるのです。情勢の変ってくるものを今の健康保険法で律するというわけにはいかない。だから、さいぜん私が大臣にお尋ねしたのは、そういう情勢の変化があるので、健康保険法を変えて、一部負担というものを患者が毎回々々払わぬで累積していくという場合に最終的の責任はどうするかという点を、新しく健康保険法に盛る必要があるのではないかということを言うておる。この点について一つ小沢さんの御意見を先に伺って、それから医務局長にお尋ねしますが、どうですか、そういう点で、あなたは、今の健康保険法昭和二年にできたあの時代の思想のままを貫いていくか、それとも、大きく時代は転換をしておる、健康保険は、ダーウィンの進化論じゃないけれども、もう労務管理から社会保障に進化してきたということは、予算委員会で前の答弁をお取り消しになった。大蔵大臣も進化をして社会保障になりつつあるとおっしゃいました。そうしますと、健康保険というものは違うのです。このことはあとでまた触れますが、今の健康保険というものはずいぶんだめなところが多いのです。医者は一方的に押えつけて、医者のものを言う場がない。健康保険法というのは、お上が一方的に、お前は保険医にしてやるぞ、はい、かしこまりましたという、こういう官尊民卑の法律なんです。ああいうところはいけないんです。これはまたあとから質問しますが、そういう点がある。大きく時代は転換をしておる。時代が転換をしておるとするならば、その一部負担金の思想も、初診料四十円、五十円払っておったときと同じ思想で、新しくできる一部負担の問題を考えることはできないと思うのです。小沢課長は進歩的だと思うのですが、どうです。あなたは昔ながらのままで満足するのか、それとも変られるおつもりか、その点はっきり言ってもらいたい。まだ法律が出ていませんから、間に合いますよ。
  73. 小沢辰男

    ○小沢説明員 私は現在法律改正案をいろいろ逐条審議をいたして、成案を得つつあるのでございますが、その点に関しましては、現在のところ今の出方を変える意思はございません。  それから、一部負担金の点が一日三十円ずつということで、実はその内容も法律事項になるだろうと考えておるのでございますが、それ自体も、御承知の通り社会保険審議会あるいは社会保障制度審議会というものの答申を——土曜日には審議会の答申をいただきました。また本日社会保障制度審議会の総会で御決定を得た上に答申をいただくことに相なっております。この両審議会の御意見も十分参酌いたしまして、あるいは他の関係方面ともいろいろお打ち合せ、あるいは十分その御意見を承わりまして、最後的にはこの一部負担の内容、方法の問題につきまして検討いたしてきめたいというふうに思っております。そういう点だけをちょっと申し上げておきたいと思います。
  74. 滝井義高

    滝井委員 先のことはいいです。現在の法律の考えを変える意思はない、今度の改正にもない、最終的には未納は医師の責任である、これは大体はっきりいたしましたから、確認をいたしておきます。  次に医務局長に一つお尋ねいたします。健康保険患者が一部負担金を払わない、そのときには健康保険患者は権利放棄だと、こういうことになった。  そうしますと、医者がその患者を見てやらなかった場合には、あなたの方はどういう処置をとりますか。
  75. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 非常にデリケートな問題が起るかと思うのでありますが、個々の事情によりまして判断せざるを得ないと思うのであります。私ども医師法の立場から参りますならば、かりに健康保険の被保険者としての権利のない人でございましても、病人が参りますれば、他に正当な事由がない限りは診療を拒否することはできない。その正当な事由というのは、個々のケース、ケースによって判断いたして参らなければならぬ、こういうように考えております。
  76. 滝井義高

    滝井委員 はっきりしておるのですね。個々のことははっきりしておる。毎日健康保険証を持って来たけれども、一部負担金を払わなかった。これははっきりしていますがね。現実にあり得ることなんです。払わなかった。そこで医者は、もうあなたは払わないから見てあげられません、これは厚生当局が言明いたしました、健康保険の権利放棄者だ、だから見てやれません。あなたがお金を現金でお払いになって普通患者になるというならば見ますが、あなたが健康保険患者である限りは見られません。本人がおれは健康保険の権利は放棄しないと言っても、見ないでよろしいですね。これは個々の具体的な、はっきりとした事例なんです。それは正当の理由になるかならぬかということですね。正当な理由になりますかなりませんか、はっきりして下さい。
  77. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 ただいまのような事例にぶつかりました場合に医師が断わっていいかどうかということでありますが、かような場合には、私少し砕けた答弁になるかもしれませんけれども、一応事情をよく話しまして、そして本人が、被保険者の義務としてこれだけは支払いをしなければならぬのだということをよく申しまして、今ちょっと持ってきておらぬのだ、この次にしてもらいたいというようなことを言われましたときに、ただ一回、二回払わなかったからということで拒否するということは、必ずしも正当な理由とは認められない。今度は逆に極端に申しまして、これが一カ月、二カ月もたまっておるのに、まだ払わないというようなことになりました場合には、これは多少事情が変ってくるというふうに考える次第であります。
  78. 滝井義高

    滝井委員 これは限度の問題のようでございます。限度がある程度長くなると正当な理由になる、こういう御解釈のようでございますからそう解釈をいたします。これは後になって必ずこういうものが裁判の問題になりますから、私ははっきりこれをここで確認をいたしておきます。  そこで社会局長さんおいでになりましたからお尋ねしますが、今案は医療費の一部負担を払えない者がだんだん多くなってきている。家族の半額負担がもちろん多いのですが、今度それに本人が一部負担をやるということになる。一カ月かかってこれが毎日行くことになれば、一日三十円ですから九百円になる。毎日行かなくても一日置きが多いのですから四百五十円になるわけですね。それで本人と家族の二人が病人になったら、家族半額と本人ですぐ千円をこえてしまってなかなか払えない。そういう支払えないときにどうするのだと言ったら、小沢さんの方は、それは健康保険の問題を離れます、医療費扶助の問題ですということなんです。そこでこれは重大なところなんですが、医療扶助についてはあなたの方でもいろいろ御調査になると思いますが、現実に医者に払えないということは事実なんです。そのときにはおかけになりますか。実はこういうときになかなかおかけにならない例がある。ここにAという労働者がございまして公傷を受けました。脊髄の骨折で寝ております。ところがその事業主が労災保険を払っていないために、労災は半額に給付の制限を受けます。従ってその労働者の平均賃金の六割が一万二千円だとしますと、六千円だけは労災保険からくれるのです。一万二千円はくれない。事業主が保険料を払っていないので、半額の給付制限を受けている。その給付制限の半額はだれが払うかというと事業主が本人に支払わなければならない。ところが事業主は赤字で半額が出せない。本人は落盤で脊髄骨折でかかっているのですから本人は労災で見ます。ところがその家族に病人が多くて、家族が病気になりますと、これはその人の収入は一万二千円になる、五人家族は大体八千円。ところが実質的には半額の給付制限を受けておるために六千円しかない。ところがこういう人は医療扶助対象にはならない。一カ月、二カ月どころじゃございませんよ。半年も一年もおやじが脊髄カリエスで寝ておる。外傷性脊髄並びにけい肺というものは、今度は三年が切れても労災で見るようになった。ところがそういうものには事業主から半額もらうという権利があるので、これは事業主が払えませんというまでは医療扶助の適用はありません。今小沢さんは、きわめて単純にそういう払えない患者が出た場合は、医療扶助の問題だとおっしゃった。これは厚生省内部の意見を統一した御答弁だと思いますが、その通りやりますか。
  79. 安田巖

    ○安田(巖)政府委員 生活保護法は原因のいかんにかかわらず無差別平等に適用することになっておりますから、一定の水準に達しない場合には、その足りない分だけを生活保護で出す。それは生活扶助であろうと医療扶助であろうと同じでございます。そこでお尋ねの場合でございます。けれども、もしほんとうに一部負担が払えない、そしてその人のミーンズ・テストをやってみたけれども水準を切るということになれば、当然生活保護を出さなければならぬ。しかし実際は一日三十円か二十円か私よく知りませんけれども、それが重なって二、三百円になったという程度で、医療扶助の単給をやる場合はミーンズ・テストをやってみてほとんどございません。そういうことは話の上ではあると思うのでございますけれども、実際はそんなにないのじゃないかと思います。
  80. 滝井義高

    滝井委員 その通りなんです。とにかくラジオを持ったり、ミシンを持っておったらだめなんです。ミシンなんかをまず売って、そうして少くとも最低の生活を維持することができないという認定がこのケース・ワーカーによってなされた場合に初めて医療券が出る。初めから医療券はくれません。まず初診券が出てから、初診券によって十分医者が見て、この人は大体長くかかってとても払えないだろうという証明をつけ、そうして民生委員が近所の評判を聞いて、どのくらいの借金があるかを調べて、そうして今局長さんが言われたように、これはほんとうに最低生活を維持しておるんだ、それ以外の収入はないんだ、こういう認定があったときにのみ初めて医療扶助にかかるのであって、あなたがおっしゃるように、ラジオも持っておる、ミシンも持っておる、たんすもある、たんすの中には着物があるけれども、医者にかかる現金だけはない、米はどうにか食っておる、こういう者は医療扶助はだめなんです。そうしますとあなたが今言ったように医療扶助の問題だといって片づけるわけにはいかないのです。どうですか。あなた方の政治力で、社会局長にそういう長く払えない者は医療扶助対象にして上げますと言明し得ればこの問題は解決できると思います。ところがそれがないとすれば、今あなたはあなたの答弁をする、あなたはあなたの答弁をしたということであって、あなたは医療扶助というものの実体をお知りにならぬでそういう答弁をされておるということになる。これは限界がある。一定の限界以下でなければ医療扶助は受けられない。私がそういうことを言って説明したってあなた方は納得しないので社会局長をして御託明いただけば、一つ保険局の方でも考え直そうということになるわけです。これは大臣は現在非常にまれな場合と言ったけれども、現実は入院患者なんか多いのです。そこで国立療養所の未納の状態を医務局長説明願いたいと思います。総収入の予定に対してどの程度の未納が現在あるか、これを御証明になって大臣と小沢さんに御説明してやっていただきたい。
  81. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 国立の療養所におきましては、入院料及び治療費等の支払いが困難でこれを免除いたしております者は大体三%程度であります。
  82. 滝井義高

    滝井委員 未納が幾らあるかということです。
  83. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 未納と申しますか、これもいろいろあると思うのであります。すなわち年度内に支払わないで過年度払いというようなものもあるのであります。ただいま資料を持って来ておりませんので、間違ったことを申し上げてもいけませんから後ほど申し上げます。
  84. 滝井義高

    滝井委員 一昨日御質問した中に、保険料の未納が三十五億九千九百万円、きのう大臣は三十億とおっしゃったけれども、あれは取り消しましたが、三十五億未納があるのですよ。しかも一昨日検査官がはっきり証明したように、三十五億九千九百万円の中で、十一億七千幾らというものはとれないものです。十一億をこえるかもしれないと東谷さんは言明された。保険料でもこれなんですよ。健康保険のかかるもとの保険料が四百億から五百億のうちに、未納が三十五億もあるということです。しかもその三十五億の未納の中には、未納欠損として落さなければならぬというものが十一億以上ある、十一億をこえるかもしれないということをはっきり言っておる。強制執行力を持っておる保険料にしてしかり。二十三億の一部負担金は、今から医者に強制執行力を与えるというのですか。まさか日本の医者は、強制執行力まで持って患者のうちに薬代をとりに行くほど心臓は強くございません。それほど無情ではないのです。そうすると、そこに何かやらなければならぬ。健康保険の建前は——あとは私の方の健康保険の問題でございませんと小沢さんは言われるかもしれません。それならば、医務局長なり社会局長の立場はなくなってしまう。今言ったように、払わなければ払わなくてもいい、しかも一カ月も二カ月も払わないものは、正当の理由で拒否してもよろしいとなっている。あるいは拒否された者は生活保護にいけばいいじゃないかとおっしゃるけれども、生活保護は限界があっていけないというならば、その患者は進退きわまるじゃありませんか。これでもあなた方は社会保障というものは躍進をし、保守党の社会保障というものは輝かしいものであるということを言えますか。現実に強制執行の力を持っている保険料さえ未納じゃありませんか。
  85. 小沢辰男

    ○小沢説明員 未納額につきまして、一昨日の予算委員会で数字が不確かでございましたので、この際はっきり先生の御質問にお答えしておきたいと思います。三十年度の予算は四百六十億に組めまして出しましたが、現在までのところ標準報酬引き上げも当初の見込みよりもあまりいっておりませんので、私ども現在収入見込みをしております総金額は、概数でありますが、四百四十二億一千三百万でございます。そのうち調定額として二十九年度以前のものと現年度分に分けてみますと、二十九年度以前のものが、お話の通り約三十五億ございます。正確には三十四億八千万円でございます。これはいわゆる過年度分であります。確かにおっしゃるように、徴収実績はそう上っておりません。と申しますのは、現実に中小企業が多いものですから、もうすでにつぶれてしまってないとか、いろいろな状況がありまして、事業所得そのものの把握が困難であり、あるいは健康保険の滞納処分の優先順位が現在では割に底い方でございますので、国税、地方税に次いですぐ滞納処分のあれをできるような順位になっておりません。従いまして、この徴収率というものは非常に低いのでございまして、私ども四百四十二億一千万の見込みを立てております現在においても、過年度分につきましては三三・八形程度しか出ないのではないかという見込みを持っております。その他のものはもちろん徴収努力をいたしますが、やはり中には未納欠損として落していかなければならぬようなものもあるのであります。その他の現年度徴収分は、最近は徴収実績が非常に上っておりまして、九六鬼程度までいっております。それを全体を勘案して、今年度の収入見込みを四百四十二億一千三百万円に見・込んでいるわけであります。やはりこれは来年度も累積して参ります一方、若干の未納欠損を立てるものもございましょうが、なおできるだけ保険官署を督励して徴収実績を上げるように、私どもの保険の立場での責任をできるだけ果すように努力をいたしておるのであります。  それから関連しまして先ほど私申し上げましたのは、今社会局長がおっしゃいましたような意味でのそういうような立場にあるような人は公的扶助でいいのであろうと申し上げました。私その点社会局長さんの方のお話と食い違っておるように申し上げますのではないのでございます。
  86. 滝井義高

    滝井委員 とにかく四%の未納としても、五百四億の四%だったら二十億なんです、二十億というのは小さくないです。あなた方がそういう権力を持っておってなお二十億の金がとれないということなんです。繰り越しの状態はだんだん多くなってきた。昭和二十四年は前年度繰り越し六億三千八百万円であったものが、だんだん繰り越しが多くなって、二十五年には十四億四千八百万、二十六年には十四億、二十七年には二十二億、二十八年には二十七億、二十九年には二十九億、そうして今度は三十五億とだんだん累積してきておる。二十八年以来デフレ政策のために滞納になってきた。それで二十九年から保険料をうんと一生懸命取り立てるのだということをあなた方は対策に掲げてきておる。それにもかかわらず、収納率は上っておるかもしれぬが、収納未済額というものは依然累積してきておるという現状なんです。これは何を意味するかというと、そういう中小の企業というものは保険料さえも払えない現実です。その保険料さえも払えない中小の事業場で働いておる労働者は、賃金が大体もらえておるかというと、遅配、欠配です。賃金が遅配、欠配の労働者が今度は医者に行った場合に、医療負担が払えるかというと、うまく払えない、これは当然の論理です。その当然の論理の帰結のところに持ってきて一部負担をやらせる、それは医者の責任だ。しかし払えなければ健康保険の権利を放棄したものであるという、何と冷酷な論理ではありませんか。それであなた方が厚生行政をやれると思ったらやってごらんになるがよい。おそらく全国の労働者と医者と歯科医師と薬剤師も加わって、今度の参議院の選挙で総反撃を食うでしょう。これは確実ですよ。私はこれ以上言いたくはありません、もうはっきりしたのですから……。  そこでさいぜんの未納額というのはまだわかりませんか。未納額というのは年度を越したということではなくて、さいぜんあなたの御説のように、一カ月、二カ月払わなければ、これは正当の理由になるのですから、少くとも昭和三十年度の未納は幾らあるかということです。
  87. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 先ほど申し上げましたように、的確な資料は持っておりませんが、いわゆる収納率と申しますか、一応の支払いを請求いたしまして、それに対してどれだけのものが支払われるかということは、予算を立てますときに一応の見積りを持っておるのであります。ここに国立病院の収納率は昭和三十一年度におきましては九匹%というふうに見ておりますから、六%がとれないであろうということを予算として予想しておるわけであります。
  88. 滝井義高

    滝井委員 予算ではなくて、現実に国立病院治療をして請求書を出して入った現金は幾らか、パーセントでなくて、金額で言って下さい。
  89. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 金額ではちょっと……。もちろん計算すれば出来ますが……。さような意味でこれは予算ではございますけれども、年々大体これに近い成績を得ております。おおむねこの程度と御了承願って差しつかえないと思います。事実決算によりましても大体この予算の収納率とおおむね同じ結果を上げております。
  90. 滝井義高

    滝井委員 ちょっと私予算書のあれを持ってきていませんので、国立病院のことしの収入は幾らなんですか。いわゆる一般会計からの配分ではなくて、患者からもらう総収入です。
  91. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 予算額で申しますと、明年は六十七億となっております。それから三十年度は六十四億となっております。
  92. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、国立病院というのは、多く入院をしていわば患者を人質にとっているようなものです。私の知っているある奥さんが、ある国立病院で精神科に入院しました。ところが、金を持って行かなかったのですが、それで帰らせぬのです。初めのうちは、もうよくなっているのだということで、すぐ連れて帰っていいというものだから、連れに行った。金を少ししか持たぬで連れに行ったら、もう三カ月いなければいかぬということであった。実はこういう例があるのです。これだけでも、六十四億の六%というと、三億ばかりになりますか、これだけの未納なんです。これは、国立病院だからこれでやっていけるのです。個人では、三億の欠損があったら倒れます。国立病院は営繕費も、運営費もみんな国から出ている。しかも患者は、入院さして人質にとっているようなものなんです。それでなお三億五、六千万ないし四億の未納があるということでしょう。これは国だからやっていける、個人だったら一体どうします。未納のために個人の病院が倒れるということはあり得ることなんです。われわれの炭坑地帯では、小売業者というものは労働者にかけでとって、炭坑がつぶれて労働者が払えないために倒れたのが幾らもあります。医者だって、そのために打撃を受けたものは幾らもあります。一つ大臣はよくこの実態を御注意願いたい。国立病院でさえもが六%とれない。おそらく会計検査院でもっと正確に調べれば一割くらいあるかもしれない。一割だと六億です。未納保険料はだんだん累積をしておる。会計検査院の証明においても、十一億というものはとれないのだ、三十五億というものは年々累積してきたものなんだ、こういうことなんです。しかもその企業というものは零細な企業であって、一部負担がとれるかというと、絶対とれません。それをさいぜん大臣は、これは九牛の一毛だという極論をされましたが、これは一つ大臣の御認識を改めていただかなければならぬということなんです。私はこの問題に非常に時間をとりましたが、きわめて大事なところなんです。今後の日本の医療保障というものを遂行していく上に、こういうものをかけた日には日本の医療保障は後退します。それはいつか私がお話申し上げたように、現在の農村においては、富農は健康保険を使うけれども、貧農は健康保険を使わないのです。なぜ使わぬか。保険はかけるけれども、保険料は差し押えされるということを聞きます。健康保険料はかけるけれども、受診票を使って医者には行かない。そのために売薬がふえるということは私が言った通り、さいぜん長谷川委員も言ったでしょう。健康保険の医者には三八%しかかからないのに、売薬はどのくらいかというと、四五%も売薬でやっているというこの実態が、いかに日本の大衆というものは貧しくて医療機関にかかれないかということを具体的に示しておるじゃありませんか。私はやはりこういう点をもっと考えなければならぬと思う。なるほど、しばらくの間は医者が負担できるでしょう。ところがそれは治療内容を低下せしめるところの負担です。そういうことになれば、日本の福祉国家への公約につながろうとするところのこの社会保障の中核をなす医療保険は必ず崩壊してくると思う。私はここに断言してもはばからない。そういう政策を民自党がわずか二十三億のためにとろうとするならば、木を見て森を見ざる政策である、こう断定してはばからない。たくさんあるのですが、五時までだそうですから、少し問題を変えていきます。  今度の予算を見ると九百六十二万三千円という医療保障体系確立に必要なる経費というものがございます。これはおそらく医療保障委員会というものをお作りになる経費だ、こういうのであります。五人の医療保障委員会をお作りになるようでございます。一体この医療保障委員会というものは医療保障を達成するためにと、こういうきわめて抽象的にお書きにっているようでございますが、一体どういうことをやるのか、もう少し大臣の構想を具体的に御発表願いたい。
  93. 堀岡吉次

    ○堀岡政府委員 九百六十二万三千円というものは委員を五人お願いしまして、大体週二回見当で会議を開く、そしてそれに外部から人を頼みます。それらの手当、会議費、それらの旅費と、それから大部分は調査費ですが、調査費の内訳は疾病の量、医療施設の分布、それを中心に調べたい。そこで国保の実施しているところと実施していないところの比較並びに五人未満の事業所の実態の前年度に引き続きましての調査、次の問題は老齢者の世帯の生活実態調査、それを大体調査の内容として将来の医療社会保障五カ年計画、それの基礎の確立に充てたい、こういう意味で予算を計上しております。
  94. 滝井義高

    滝井委員 そうすると五人の委員の方を御任命になって、疾病の量や分布、五人未満の事業所の実態、老齢者の実態の調査、こういうことをおやりになるのだそうでございますが、この五人の委員は大臣の諮問機関でしょうね。
  95. 小林英三

    小林国務大臣 そうでございます。
  96. 滝井義高

    滝井委員 そうしますとこれは法律で、新しく医療保障委員会法とでもいう法律をお出しになるのですか。
  97. 堀岡吉次

    ○堀岡政府委員 これはただいま大臣が諮問機関とおっしゃいましたが、諮問というのは事実上の諮問ということでございまして、私の方でさような法律で設置するということは考えておりません。これは事実上五人の方にお願いを申し上げまして、何と申しますか、諮問というか顧問というか、むずかしい法律上の根拠でなしに、御相談を願って、今後における医療社会保障の体系なり立て方なり、問題の所在点を十分研究願って、これの施策確立の基礎にしたい、こういう意味でございます。従って窮屈に法律的にどうこうすることは全然考えておりません。
  98. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、川崎厚産大臣の当時に設けました七人委員会的な性格のものになるのでございましょうか。
  99. 堀岡吉次

    ○堀岡政府委員 法律的には七人の委員の方も、何ら根拠がなくて、ただ厚生省からお願いしますということで委嘱をするということでありますので、そういう点では同じだと思います。
  100. 滝井義高

    滝井委員 私は、お作りになるならば、そういうちゃちな委員会はお作りにならぬ方がいいと思う。現在厚生省には、そういう同じような系統の委員会が多過ぎると思うのです。もしそういう基礎的な調査をおやりになるのならば、これは厚生省の専門家もおられるし、企画室もお持ちになったし、将来は企画庁に発展をしていく、川崎君当時こういう構想もありました。今度小林厚生大臣は、必ずしもそうとは言われませんで、それは検討してやり直すのだ、こうおっしゃいましたが、あるわけなんです。厚生省はそういう隠れみの的なものをお作りになっているのですが、何だったら法律で——あとで質問しますが、日本の無醵出の老齢年金制度を確立していこう、あるいは三千万の未組織の国民健康保険を組織していこうという大理想を掲げていくならば、むしろ法律で確固不抜の委員会をお作りになるべきだと思うのです。こういうわずかの九百万かそこらのお金を出して、いかにも厚生省はそれをやっておりますぞということではなくて、私はもっと権威のあるものを作るべきだと思う。もしそういう権威のないものならば、これは社会保障制度審議会か、あるいは臨時医療保険審議会といいますか、何かああいうところでもできるはずだと思う。臨時医療保険審議会は単価を論ずるところですが、おそらく五人委員にしても、厚生省が今まで使った同じような学織経験者のような方をやる以外にはないと思う。おそらく七人委員会のメンバーか、あるいは社会保険審議会に出ているメンバーか、あるいは社会保障制度審議会に出ているメンバー、そういうところに出ている人を持ってくるだろうと思う。それならば、もっと構想を大きくして、法律の根拠のある、そして予算の裏づけをしっかりとって、日本の国民年金制度を確立していく、あるいは医療保障の体系をほんとうに確立していく、こういう形を私はとるべきだと思う。そうしないと、法律の根拠もないし、大臣の諮問機関か何かもわからぬというようなあいまいもこたる形のものを持っておっても、これは経済審議庁のれっきとしたあの企画に負け、あるいは大蔵省の財政を握っている役人の諸君に一挙にこれを押しつぶされてしまう。七人委員会の結論を見てごらんなさい。厚生省は七人委員会のいいところは利用せずして、あの中の悪いところばかりをとったじゃないか。これは委員会が権威がないからです。ほんとうにあの委員会が法律的に権威を持ってやっているならば、厚生省はまさかあんなことはできなかったと思う。これは高橋さんにでも今井さんにでも聞いてごらんなさい。日本の厚生省は悪いくせがある、われわれを働かしておって、そしてわれわれの全般の構想というものを何ら見ることなくして、われわれのやった答申の中から、厚生省に都合のいいところだけをとっちゃったと言っているじゃありませんか。私はこれも同じだと思う。こういうものをお作りになるならば、ほんとうに日本の無醵出の老齢年金制度をやるのだという気魂を持った委員会にしなければならぬと思う。それには法律の根拠のある、しかも国会の同意を得るような委員にしてもらいたいと思う。そうでなければ、こういう委員会ではあなた方の隠れみのにはなるかもしれぬが、日本の社会福祉国家としての荒野を開拓するようなものにはなれぬと思うのですが、今からこれを変える意思はございませんか。
  101. 小林英三

    小林国務大臣 いろいろ御議論があるのでありますが、私どもはまず最初御説のような法律的根拠がある相当のものを作ろうという考え方もいたしたのでありますが、いろいろな国家財政の見地からいたしまして予算を削られたものであります。しかし九百万円といえども私は相当の学識経験者を動かしまして、そうしてタイアップして研究いたし調査いたし、あるいは立案をいたしますならば相当の成果をあげると思いますし、また将来適当な機会におきまして相当の計画のもとに今御議論のようなこともやり得ることと思いますから、とりあえずこれによりまして成果をあげたいと存じているような次第であります。
  102. 滝井義高

    滝井委員 実は私がなぜそういうことを申すかというと、厚生省調査というものはいつでもばらばらなんです。医務局の調査の結果、保険局の調査の結果、みんなこれは統一が取れておらぬと私は見ております。そこで私は法律的なものを作って、それらの各局ばらばらにやっているものを一つのところに統合してくるということが必要だと思う。たとえば今度の予算面を見ても、医療保障体系調査費二百四十三万六千円というものがございます。社会保障調査委託費七十七万五千円というものがございます。点数新設調査委託費十万円というものがございます。支払方式調査委託費三十四万五千円というものがございます。社会保険給付実態調査委託費五十六万円というものがございます。医療保障基礎調査委託費四百十一万八千円というものがございます。診療圏調査委託費ほか四目というものはことしは計上されておりません。去年は二十四万九千円を計上されておった。こういうようにこれがこの委員会に一括されてくるというのならば話がわかるが、おそらくそうではないだろうと思う。各局ばらばらにこういうものはいくと思う。このほかに国民健康保険のいろいろな調査もある。そうしますと、こういうようにわずかの十万かあるいは三十四、五万の金をばらばらやっておってもほんとうの調査はできない。それならばそれらのものを一つにひっくるめて、そうして企画室なら企画室にそれを置いて各部局から資料を集めて、そうして社会保障委員会というものががっちり上を握ってやっていくというならいいのです。ところが省内のなわ張りがありますとそれぞれ統計が違う。これはいずれ医療費体系のときにあれしますが、そういうようなわけであって、総医療費だって厚生省の出した総医療費というものは同じ二十九年でも二百億も三百億も違っている。こういう形でばらばらと予算項目をばらまいているけれども、むしろこういうものならば一括してどこか企画室か何かに入れて五人に握らせる、その五人を大臣が握る、こういう形をとるべきだと思います。大臣、こういう点はどうですか。
  103. 堀岡吉次

    ○堀岡政府委員 予算の執行のことでございますからちょっと申し上げますか、確かに御指摘の通り調査費が各局にまたがって計上されてございます。予算計上のときには、調査費については一括してこれは企画室並びに統計調査部と相互連絡の上これこれこれこれということできめるわけでございます。ものによりましては御指摘のように十数万とかあるいは二十万というような少額の調査費もございますが、これはある局部的目的のために調査範囲が限定されるということによりまして、御案内の通り統計局の調査費はものによって大きいものもあれば小さいものもあるということで、内部的には十分企画室並びに統計調査部の方で総合の上実施いたすことになっておりますし、また予算面におきましてもそういうことで、私の会計の方で予算の統合をやります際に、調査費につきましては一括統計調査部並びに企画室と連絡の上これこれこれこれということでやっている次第であります。また実施の際におきましても、これらの予算についてはそれぞれ医療関係に純粋に関係のないものなら別でございますが、さようなものにつきましては調査室におきましてこれを総括して、実施はそれぞれ所管局で実施いたすとしましても、調査の各項につきましては十分な連絡をとってやることになっております。なおこの五人の委員の方々にお願いすることは、先ほども御説明申し上げましたが、医療保障体系確立ということで、これは単に三十一年度限りの問題ではございません、数年後にわたる問題でありますので、それらの点について諸般の問題点がたくさんございます。とりあえずこの関係で調査いたしますのは、先ほど説明いたしましたものを調査立案並びに実施をいたすわけでございますが。諸般の調査におきましてもここと十分連絡をとってやる、現在のところ方向についてはそういう予定であるということだけは承知いたしております。
  104. 山下春江

    ○山下(春)政府委員 ただいま滝井委員のご質問の医療保障委員会の性格でありますが、今会計課長が御説明申し上げた通りではございますけれども、あまり予算が小さいものですから何かわけがわからないので特に御指摘になったと思いますが、そもそもこの問題が生まれて参りましたのは与党からの強い御要求がありまして、与党の御意見とわれわれの考えとが全く一致いたしまして、これはこの予算が示すような小さなものの考え方ではないのでございまして、御指摘のような無醵出老齢年金あるいはその老齢年金の中でも特に戦後十年非常な苦労をしてきた未亡人等に対しては特に優先的に実施すべきではなかろうか、あるいは三千万のいまだ保険の恩典を受けない国民をわれわれとしては直ちに強制設立を法制化して、そして国民健康保険の全面実施をはかる、あるいは五人未満の工場に対してはいかなる方法をもってすぐにこの保険に入れるか。特別健保を作るかあるいはどのような方法をするかというようなこと、あるいは結核問題に対してはどうするかというようなことの議論ばかりをいたさないで、すみやかにこれを具体的な実施法案に移すのにはどうすればいいかということでございまして、その構想につきましてはあるいは法律をもって規定されております社会保障制度審議会あるいは社会保険審議会等から毎度勧告が出ますけれども、これを事務的に処理いたしますと御指摘のように都合のいいところだけとったというようなことになりまして、七人委員会等のせっかくの御苦労も必ずしも直ちに実行できない。そこでこの五人の委員の方々に対しては議論をしないで、それらの法律が認めておる審議会の答申をすみやかに実施に移すのはどうすればいいかということを具体的にきめていただくという、予算の金額は小さいけれども、自民党が責任をもって、誇りをもって天下に示し得る具体案を作っていただくということがそもそもの考えでこれが生まれたのでございます。そのようにこの委員会運営されるべきものと私どもは確信をいたしておるのでございます。
  105. 滝井義高

    滝井委員 そうしますとその委員会の所管の局はどこでございましょうか。
  106. 堀岡吉次

    ○堀岡政府委員 所管は一応官房企画室において所管いたすことになっております。
  107. 滝井義高

    滝井委員 所管は官房だそうでございます。山下政務次官から今五カ年間で保守党の社会保障をやるんだということでありますが、一つ今の発言は野党に聞かせるよりか大蔵大臣によく聞かしておいて下さい。それから経済企画庁の高碕さんによく聞かしておいて下さい。というのは、昨日の御説明では五カ年間で社会保障関係は多分四千九百億、年間八百三十九億しか使わない。厚生省の五カ年計画の試算では七千七、八百億くらい使っておったと思うんです。だから千三、四百億の開きが五カ年間であるのです。こういうように与党の強い要望であったならば、一つ同じ与党である大蔵大臣と高碕企画庁長官によく因果を含めて、来年度の予算も一つ国民健康保険なりあるいは無醵出老齢年金ができるような予算国民健康保険で言えば約百九十億、無醵出の年金をやるとすれば、六十五才以上にしても七百万人おります。私どもの党で五千円ずつやる計画をしたところが三百五十億要ります。山下政務次官、小林大臣が、国民健康保険に百九十億、無醵出年金三百五十億出していただいたならば、社会党は解散してよろしかろうと思います。今の与党のたっての委員会だそうでございますから、その委員会社会福祉国家の広野を開拓できるようにお願いをいたしたい、ちゃちなものでないようにしたいと思います。  五時にやめるという約束でありますから、まだ二時間かかるのでありますが、あとはあすさしていただくことにいたします。
  108. 佐々木秀世

    佐々木委員長 本日はこれにて散会し、明日は午前十時より開会いたします。    午後五時六分散会