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1956-02-08 第24回国会 衆議院 社会労働委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月八日(水曜日)    午後三時二十九分開議  出席委員    委員長  佐々木秀世君    理事 大坪 保雄君 理事 大橋 武夫君    理事 中川 俊思君 理事 野澤 清人君    理事 藤本 捨助君 理事 赤松  勇君    理事 岡  良一君       植村 武一君    熊谷 憲一君       小林  郁君    田中 正巳君       田子 一民君    中村三之丞君       中山 マサ君    亘  四郎君       阿部 五郎君    井堀 繁雄君       岡本 隆一君    栗原 俊夫君       滝井 義高君    八木 一男君       山口シヅエ君    吉川 兼光君       中原 健次君  出席国務大臣         労 働 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員         警  視  長        (警察庁警備部長山口 喜雄君         労働事務官         職業安定局長) 江下  孝君  委員外出席者         検     事        (刑事局公安課長桃澤 全司君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 二月八日 委員多賀谷真稔君辞任につき、その補欠として八 木一男君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 二月七日 公務死認定基準拡大等に関する請願山本猛夫  君紹介)(第三一八号) 同(森島守人紹介)(第三一九号) 磐梯朝日国立公園施設費国庫福助に関する請願  (田中利勝紹介)(第三三〇号) 未帰還者留守家族等援護法の一部改正に関する請  願(保科善四郎紹介)(第三三一号)  健康保険法改正反対に関する請願中村英男  君紹介)(第三三二号)  同(受田新吉紹介)(第三三三号)  同(臼井莊二君紹介)(第三五九号)  同(宇都宮徳馬紹介)(第三六〇号)  同(吉川兼光紹介)(第三六一号)  同(小西寅松紹介)(第四〇〇号)  同(高橋等紹介)(第四〇一号)  同(松田竹千代紹介)(第四〇二号)  同(横錢重吉紹介)(第四〇三号)  同(田中武夫紹介)(第四〇四号)  同(西尾末廣君紹介)(第四〇五号)  国立療養所付添廃止反対に関する請願外二件  (受田新吉紹介)(第三三四号)  同外一件(中村英男紹介)(第三三五号)  同外一件(多賀谷真稔紹介)(第三三六号)  同外一件(吉川兼光紹介)(第三五七号)  同(臼井莊一君紹介)(第三五八号)  同外一件(菅野和太郎紹介)(第四〇六号)  同外一件(高橋等紹介)(第四〇七号)  同外二件(小西寅松紹介)(第四〇八号)  同外一件(松田竹千代紹介)(第四〇九号)  同外一件(横錢重吉紹介)(第四一〇号)  同(田中武夫紹介)(第四一一号)  同(中村英男紹介)(第四一二号)  同外一件(西尾末廣君紹介)(第四一三号)  衛生検査技師身分法制定に関する請願(松  井政吉紹介)(第三三七号)  元満州開拓民及び青少年義勇隊員処遇改善  に関する請願菅太郎紹介)(第三五一  号)  教護院国営化に関する請願田中武夫紹介  )(第三九六号)  同外三件(石坂繁紹介)(第三九七号)  社会保障費増額等に関する請願横錢重吉君紹  介)(第三九八号)  生活保護法による市町村負担額全額国庫補助  に関する請願野田卯一紹介)(第三九九  号)  の審査を本委員会に付託された。     —————————————  本日の会議に付した案件 労使関係労働基準及び失業対策に関する件     —————————————
  2. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 これより会議を開きます。  労使関係労働基準及び失業対策に関する件について調査を進めます。昨日に引き続きまして質疑を続行いたします。中原健次君。
  3. 中原健次

    中原委員 一昨日来いろいろ質疑が展開されましたので、この場合まず最初に昨日何ぼか触れておいでになったと思いますけれども政府の御答弁が私にちょっと明確につかめません。従ってその点につきまして最初お尋ねをしてみたいと思います。それはほかではないのですが、昨日質疑の中に触れておいでになりました、労働力率問題が、政府の新しい経済五カ年計画期待に反しまして、だんだんかえって力率が高まるような結果に相なっておるという問題に関しまして、このことは政府の御見解をもってすればどのような基礎の上に立ってそういう力率の高まりを見せるようになってきたのであるか、この点について御質問申し上げます。
  4. 江下孝

    江下政府委員 労働力率の問題でございますが、過去におきまして労働力学が若干ずつ上昇傾向にあったということは申し上げることができると思います。ところが申し上げるまでもなく労働力率が高いということは結局働かなくてはならぬ人が多くいるといることでございまして、過去におきましてそういう上昇をたどったということは、そういう全体の労働力がふえたということであろう、こういうふうに考えるのであります。
  5. 中原健次

    中原委員 大体労働力率の問題は、生産雇用関係の中から当然割り出これてくることになると思いますが、てこで私は、今国会の再開劈頭政府施政方針の御演説の中で、総理大臣もそうでありましたし経企長官もそうでありましたが、かなり楽観的な展望の御放送があったと思うのです。そうなりますと、少くとも先年来からのデフレ政策のねらうところによって少しでも好転気配を見せ・なければならなかったはずの、そしてまたそのように政府も放送しておいでになるようなそういう経済状況の中では、いささかこれを意外とするような状況を見ることができるのじゃないか、そう思うのです。労働力率が少くとも、わずかにしても下へ向っていくというのでなくては、政府の先般来からの各場所を通しての御説明と一致せぬのじゃないか、そう思いますが、この点いかがですか。
  6. 江下孝

    江下政府委員 御案内の通り経済六カ年計画は二十九年度に始まって三十五年度に終るわけでございます。ただいま政府で考えておりますのは三十一年度から三十五年度の五カ年計画でございます。ところで数年前に政府がとりました緊縮政策、これの影響によりまして相当雇用の情勢が悪化したということははっきりした事実でございます。そういう関係もありまして労働力率が若干上ったということでございます。そこで今後の問題といたしまして、この労働力率をできるだけ下げるということでなくては五カ年計画になりませんので、この点についていろいろ産業振興計画等を通じまして、どうにかまあ三十五年度におきましては昭和二十九年度労働力率、六七・八%に押えるという一応の目標が出たわけでございます。
  7. 中原健次

    中原委員 六七・八の線に押えることができる——もちろん数字上の操作についてとやかく議論しようと思いませんが、少くとも傾向としては前年度よりは、二十九年平均あるいは二十九年一月から十一月までの平均などから考えまして、やはり労働力率が上に向っているということだけは残念ながら否定できないかと思います。従ってそういう発表をしなければならぬ状況の中で、この雇用問題を好転させることができると見る確信的な政府施策基礎といいますか、そういうふうなものをどこに求めておいでになるのか、その点をお尋ねいたします。
  8. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 中原さん御承知のように、政府は五カ年計画というものを策定いたしまして、その計画年次を追うて、最善努力を払ってあの計画通り進めることによって、いわゆる経済自立雇用量増大をはかっていくということでございまして、あの年次順にあの計画通りに、われわれは間違いなく進める最善努力をいたすつもりでございます。そのようにして御存じのように最終年度の三十五年度には四千五百万と想定される労働力人口に対して完全失業者はそれの一%にとどめる。先ほどの応答の中にもございましたように、労働力人口というものは逐年増加いたして参るのでありますから、それでなおかつその力率を六七・八にとどめるということは、一方においてそれだけ吸収を見ているということなのであります。その吸収は御承知のような日本経済状況で、幸いにして物価は安定し輸出は増進されて参りまして、これらの大きな原因は海外の好景気にももちろん影響されておりますけれども、そこで私どもはいわゆる合理化もやり生産力増強もいたしまして、なおコストダウンをはかって輸出を増進いたし、そしてさらに日本経済規模拡大して、そのことによる雇用力増大をはかり、一面民間産業のそういう方面雇用量増大をはかるだけではなお不十分と存じますので、例の北海道開発公庫であるとかあるいは愛知用水であるとかあるいは道路公団といったような、そういう公共事業計画いたしてまして、その方面にも雇用量増大をはかっていきたい、こういう考えであります。
  9. 中原健次

    中原委員 ただいままでの政策の動きにつれて起っておりますことから考えられることで力率を下げることができるという、そういういわば雇用好転を確信することができるという見通しに立っておいでになりながらも、実はそれとは違った結果が出るのではないか、こういうことがただいままでの政府のあらゆる報告の中から察知できると思うのであります。従ってそれをあえてその方向に持っていこうとするためには、いわゆる生産性向上の問題とからみついた関係で、極度の労働圧迫という関係がその中から出てくるのではないか。そのことをせずして雇用好転をはかることができるというように、経済の動向がなっておらぬのではないか、そういう風に思いますが、この点についてはさような心配はないということになるのですか。
  10. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私どもの一番気を使っておるところはそこで、ございまして、経済自立五カ年計画を策定するにあたりましても、現在の状況では、生産力増強も、あるいは計画通りにいけるかもしれないか、一番しわ寄せのしてくる難問題は雇用失業の問題であるいうことを常に私ども心配いたしておるわけであります。そこで昨日もここで論議せられましたが、日本が今国際競争力を維持することに努力をしていかなければ落後することはわかり切っておることであります。国際競争力を維持して立ち向っていくためには、われわれはどうしても生産性向上をやっていかなくちゃならない、生産性向上の終局のわれわれのねらいとするところは、製品の品質の向上であり、生産コストダウンである、こういうことでございますが、そのコストダウンというところで労力に圧迫が加わるのじゃないか、こういうことでございます。そこをきのうもここでお話がありましたけれども、私どもはそういうふうにすることによって輸出を増進して、その結果日本産業基盤拡大し、さらに輸出を増進することによって第二次産業方面雇用量増大していく機会を作りたい、こういうわけでございます。もちろんそこで、そういうふうにだんだんすることによって経済力が充実をするようにして、そうしてそのためにはアメリカでは御承知のように生産性向上の結果、労働時間を短縮するという傾向に向っておると言われておりますけれども、私どもの方でも結局はそういうふうになることを理想といたしますが、ただいまのところでは労働に圧力を加えないようにして、新しい経済基盤拡大することによってその方面雇用量吸収していく、そういうふうにして雇用量増大をはかっていきたい、こういうねらいでございます。
  11. 中原健次

    中原委員 雇用量増大をはかる、そのために規模拡大をはかる必要から、生産性向上を打ち出していく、こういうふうに承わりましたが、ところでその生産性向上方針を進めていくために、その道すがらにどんどん容赦ない労働圧迫という現象が出てくるのじゃないか、今すでに出ておりますが、そういうことについてはそんなことは仕方がない、つまり労働者が甘受すべき事柄であるこういうふうになるのですか、その点はいかがですか。
  12. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 生産性向上を続けていく過程において、必ず労働圧迫が出るというのはどういうところで御指摘になっておるか私もよくわかりませんが、生産性向上をやっていく場合に、やはり機械力を利用することによって人の手間が要らなくなる、そういうことの結果失業を出すのじゃないかという意味のことではないかと思いますが、生産性向上をし、コストダウンをして、輸出を増進することによってその規模拡大いたして参るのでありますから、若干その点に時間的ずれはあるかもしれませんが、それが何年というわけでもないのでありますから、私どもとしてはあなたのおっしゃるように、もちろんそういう点については警戒をしていかなければなりませんが、結局生産性向上ということは労働に対する圧迫にはならないようにしていかなければ、それは生産性向上にはならないのでありますから、私どもはそういうことのないようにいたしたいと思いますし、生産性向上によって、つまり輸出を増進することによって、さらにその経済規模拡大していって、それに雇用吸収していく、こういう段階であります。
  13. 中原健次

    中原委員 日本生産性向上のさしづめのコースとしては、いろいろ現存の産業設備をそのままにいわば合理的に使っていくという形になろうと思いますが、現状から考えまして一応そのことはわかるのですけれども、それにもかかわらずもう本年度くらい、つまり三十一年度くらいからはだんだん設備高度化というようなことが出てくることは免れないのではないかと思います。従ってオートメーションなどというところまでいくかいかぬかは別としましても、そういう傾向に不可避的に進むのではないかということも予想されます。そういう点については今のあなたの見通しはどのようになっていますか、その点をお尋ねいたします。
  14. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 労働省の立場から、ただいま御指摘のような点を実は非常に心配いたしておるわけで、ありますが、すでに御承知のように、いわゆる生産性向上運動がありましてから高度の機械化をしかかっているものもございますが、昭和三十年度輸出入貿易のバランスが非常に改善されて黒字が生じたというこの景気結果、それがどういうところに現象として現われてきておるかと申しますと、失業保険受給率が御承知のようにだんだん低下してきております。従って失業保険受給者が少くなってきておるということ、今までだんだんふえておったああいう現象改善されてきておるということはやはり好景気の結果であって従って私はこの生産性向上運動が結局労働圧迫になるのではないかという心配は決して失ってはおりませんし、警戒もいたしておりますけれども、今日までの状況から見ますと、さらにこの経済規模拡大し、予算においても御承知のようにことしは昨年の投融資のほかに民間資金千三百六十億円余りを活用して、経済規模拡大に資していこうという方向でございますから、私は民間産業においても、また先ほど申しました公共事業的なものにしても、雇用量増大経済五カ年計画初年度見通しのように大体やっていけるのではないかと思いますし、そういうふうにやるように政府としても全力をあげておるわけであります。
  15. 中原健次

    中原委員 失業保険受給の数量がだんだん減りつつあるというお話でございましたが、そのような観点からすると、労働行政はいい方向に向いつつあるという説明のように拝承するわけです。ところが実際の状況から申しますと、たとえば生産性向上ということが言われ出したのは最近のことでありますけれども、事実は数年来そういう方向政策は進んでおったと思います。従ってそういう方向に進んでおりました今日の労働政策の実態を見ますと、実情はむしろそうではなくて、たとえば完全失業にしましても、あるいは離職票受付数にしましても、決して下向きにはなっておらぬのであります。この点はむしろ逆に上昇線をたどっておるというのが実情ではないか。もちろん数カ年間の一、二の微少な変動はかりにあるにしましても、方向としてはやはり失業者増大する、あるいは離職票受付数は減らない方向になっておるというのが偽わらざる実情ではないか、こういうように思いますが、この点は数字的にどうなっていますか。御指摘を願いたいと思います。
  16. 江下孝

    江下政府委員 失業保険離職票受付の数が減っておるじゃないかというお話でございますが、私ども計算で見ますとこれはもうはっきり減って参っております。ことしの一月に失業保険受給しておった者が五十六万三千人おったわけでございます。十一月には三十七万という数に減っております。これははっきりと企業整備等による離職者の数が減ったということが言えると思います。ただお話しのように、あるいはこれにつきましては今こうだから将来もこれよりずっと減るだろうという予想を立てることは必ずしも当を得ないかもしれません。この数ヵ月間の傾向を見ておりますと、失業保険は大体減りつつある、しかも一方におきまして企業整備統計がございますが、これも歩調を合せまして大体減少の傾向をたどっております。ただ完全失業者の数でございますが、これは先生のおっしゃる通り、二十九年の一−十月平均と昨年の一−十一月平均とを比べますと約十万上っております。しかしながら最近の傾向といたしましてはこれも若干下りぎみ気配が見えますが、この点については予測はむずかしいんではないかというふうに考えております。
  17. 中原健次

    中原委員 さらに、たとえば政府労働事情報告書をちょっと見ましても、就業者就業方向が、ほんとうに雇用問題が安定に転換しつつあるということが言えるような数字になっておらぬのです。むしろはなはだ不安定な、はなはだ不健全な方向にその就職の状態が向っておるんじゃないかと思いますが、これらはたとえば第三産業部門における就業者増加数などの中に大体うかがわれると思うのです。そういう点はただいままでの御答弁では非常に楽観材料になると思うのですが、実はそうじゃなくて、この統計からだけ考えても非常に悲観的な傾向を示しておるのじゃないか、こう思われますがいかがですか。
  18. 江下孝

    江下政府委員 過去の労働力就業方向につきましてのお話でございますが、これは大臣からも再々申しあげております通り日本の場合におきましては、雇用実情というものが、先進諸国と非常に違っておりまして、いわゆる家族従業者あるいは自営業者というような方々の占める比率が全体の六〇数%、三分の二程度を占めておる。こういう就業の形はなかなかこれは一朝一夕に改まらないというのが正直な話でございます。ただこういう状態を続けておりましたのでは、これはいつまでも進歩がないわけでございますので、今度の五カ年計画におきましては、できるだけそういう就業の形態につきましても、現在よりはよくなるような方向計画を立てておる次第でございます。
  19. 中原健次

    中原委員 なるほど日本の特徴的な一つの現われとしての就業方向ということは言えると思いますが、しかしながらそれは最近特にそれが顕著になってきたということがいえると思います。大体そういう方向がずっとそのままに変化なしに一つ方向に向っては私はただならぬことだと思うのですが、おそらくだれの気持といたしましても、健全な産業の面へどんどん出ていきたいという考え方、あるいは健全な就業を求めようという方向にいこうとするのは説明の余地はないと思うのです。にもかかわらずその志と違って、違った方向へ不可避的にいかねばならなくなってきた。これは食わずにおられないから何でも手っとり早く業につこうとするあせりから現われてきた現象ではないか、こう思うのですが、この古風はいかがですか。
  20. 江下孝

    江下政府委員 繰り返して申し上げますように日本年令別人口構成を見ますと、ちょうど戦争中に産めよふやせよで生まれました者が、最近におきまして労働力人口生産年令人口にだんだん達してきておる。そこでそういう非常に多くの増加労働力が、ここ数年間特に大きく実は出て参るわけでございます。そういうさ中におきまして、この五カ年計画を考えていくということでございますので、非常にむずかしいことであることは私ども承知をいたしております。経済五カ年計画でも、前期の三カ年においては、これらの雇用面においてすぐ直ちに大いなる改善を見込むということはこれは困難である。最終年度におきまして、大臣が申し上げましたような程度までいけば非常にいいという目標を掲げておるわけでございます。そこで今申し上げましたように、特に生産年令人口増加が総人口増加をはるかに上回るというここ数年の実情から見まして、直ちに雇用面改善が実現できるというふうには私どもも考えておりません。ただ六カ年計画をやるということによって、少しでも完全雇用の達成へ近づいていくこういうことで考えておるのでございます。
  21. 中原健次

    中原委員 少しでも完全雇用方向に進んでいこうとする、その指向されることについては賛成ですが、ところが実はあなたの方で御発表になられました雇用指数を見ても、実はなかなかほど遠い感じがするわけです。しかもそのほど遠い感じがする雇用指数内容を見ると、今のようなことが内容になっておるということに関して考えますと、これはかなり悲観材料の方がきつく考えられるじゃないか、私はそう思いますが、そのような議論はとやかくとしましていずれにしましてもこういう形で先ほどからの労働力率低下をはかる、あるいは低下を予想するということができるという方向にいくためには、根本的な経済施策の再検討が要るのではないかというふうに思いますが、今その議論をする時間でもないと思いますが、一応私はそう思うのです。従って今のままの五カ年計画が果して完全雇用方向にどんどん進むかといえば、むしろその逆になるのじゃないかということを思います。なお、先ほどからの、生産性向上ということが成功的に進めばというあなたの方の御期待のようでありますが、なるほどそれが進めば、たとえば生産高は上る、あるいは労働生産性も上る、あるいは資本の利殖率も上る、こういう点は必ずしもそうではないとは思いません。そうなりつつあるし、またそうなるであろうと考えますけれども、その一方の一番大きい要素である労働条件は悲観的な材料がはなはだ多過ぎるきらいがいたすわけであります。たとえば今までの経験からでもはっきり出ておりますが、なるほど確かに労働生産性はどんどん上って参りました。これはまだ五カ年計画の緒についたばかりのときにもすでに上っておるわけであります。どんどん上りつつあると言えます。ところがそれと引きかえに、実質賃金の方ははなはだ遅々として進んでおらない。従ってこの実質賃金生産性向上に対する低下率計算してみると、これは実におそるべき方向にどんどんけ落されつつあるということが言えるわけであります。ここで一応こういう係数を持つのですが、たとえば二十五年を一〇〇にいたしましてその実質賃金低下状態を見ますと、二十六年は八一・五、二十七年は八一・〇、 二十八年は六八・七、二十九年は六四・六、こういう数字が割り出されてくるわけであります。これはおそらく労働省におかれてもこのような計算はしておいでになることと私は思いますが、発表になったものは拝見しておりませんけれども、やはりこういう数字が出てくるということは、それ自体が確かに雇用あるいは賃金状態等々に大きな不安な条件がおおいかぶさっているということをたちどころに予想することができるように思いますが、そういう点について政府の方では計算をなさったことがおありになるかどうか、もしおありになるとすればどういう係数が出ましたか、そういう点について一応お尋ねいたしたい。
  22. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 ただいま中原さんの御指摘の、その統計基礎がどこから出ておるか、私よくわかりませんが、生産性向上されることによって実質賃金低下するというのはどういう理屈でございましょうか、もう一ぺん……。
  23. 中原健次

    中原委員 それは生産性向上賃金とのつり合いなのです。この両方の比較、つり合いです。この基礎は、労働生産性あるいは実質賃金数字労働省統計です。その労働省統計から割り出してみると、そういう計算が出てくるわけであります。つまり、生産性向上につり合わないということなのです。労働賃金が逆に非常に後退しておる。そこでそういう計算が出るわけなのです。これは当然労働省として、労働者の今の立場がどういう地位に置かれているかという計算をなさる必要があると思うのです。そうでないと労働者というのは生産性というものと全く切り離されて考えられておるということになる。生産性向上にいやしくもおくれずにというほどに私は厳重に申し上げておるのではない。けれども生産性向上がどんどん成績を上げていくならば、やはり方向は少くともそれに並行しなければならぬ、こういうふうに思うのです。ところが並行しないので、今申し上げたような数字が出てくるわけです。むしろ逆に距離がどんどん開きつつある、こういうことなのです。だから、このことはやはり労働省の立場からは相当御判断になる必要があるのじゃないかと思うのですが、いかがでしょう。
  24. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 よくわかりました。中原さんのお説によれば、生産性向上されて企業の利潤が上回るそのカーブと同じように賃金上昇を見なくてはいけない、こういうお説かと存じますが、それは私どもとしても、できればけっこうなことでありましょう。しかしそこで少しあなたと私どもとのものの考え方においてギャップがあるかと思うのですが、私ども生産性向上をすることによってねらうところは、きのうも申し上げておりますように、商品の価値を高めて、そしてコストダウンをすることだ。そうやって国際競争に打ち勝って、もうしばらく日本経済力の底を深くしようではないか、こういうことでございますから、私ども経済政策がそこに力点を置いておるわけであります。そこで、もちろん生産増強されまして、そして日本経済がより以上安定する見通しがついてくるようになれば、私ども賃金というものの上昇も当然考えられるでありましょう。しかし私どもが現在の場合に賃金に対してどういう考えを持つか、とこういうことになりますと、現在は、政府もしばしば申しておりますように、最近の統計によりますと消費者物価、これは中原さんもお手元にお持ちでございましょうが、二十九年の初めから三十年の十一月までの消費者物価、全国都市を比較いたしますというと一・七%の下落をしておる。小売物価は三・六%の下降率を示しておる。卸売物価は五・六%という下降率を示しておる。しかもなお三十一年度予算の編成に当りましては、賃金及び物価の基礎計算されるべきところの主食である米の消費者価格は引き上げない。鉄道運賃も引き上げない。しかも窮屈な財政の中でも御承知のように、勤労所得の軽減をしておる。こういったようなことで物価が下降率を示しておる。そして低物価政策をとって国際競争力を増していこうという段階であるからして、現在ただいまのベース・アップということは考えない方がいいではないか。そしてなおかつ、国際競争力を増していくといたしましても、中原さんも御承知のように、二十年度のような外国の好景気を果して望めるかどうかということにも若干の不安はございます。そういうわけでありますからして、われわれとしてはよけいこの国際競争力を維持することを考えていかなければ、せっかく立て直って参りました日本経済の回復力がおくれるのでありますから、そこで今申し上げましたような諸般のファクターを考えてみまして、そして今はベース・アップをしない方がいいではないか、こういうことを言っておるのであります。さらに生産性向上が進んで参りましてそして日本産業基礎がほんとうに確立されるということになったときに賃金を引き上げる、ということは、毛頭私どもは異議のないところでございます。それで、今御指摘のように、生産力向上したそのカーブと同じカーブを描いて賃金が上っていくべきではないかということについては、賃金は御承知のように、大産業については相当な賃金もありますが、昨日同僚の万の御指摘になりましたように中小企業、弱小産業などにおいては非常に低位置の賃金でありまして、その較差がだんだん差を生ずるというふうなことは、国民経済全般の立場に立って私どもは慎重に考慮しなければならない、こういう立場をとっておるわけであります。
  25. 中原健次

    中原委員 それは議論になるので控えますが、もちろん生産性向上あるいは資本の利殖率向上等につれてそのままに賃金上昇期待するほどにのんきではないのです。それほどには思っておりません。しかしながら、少くともその方向方向づけられなければならないことは当然なことです。しかもただいまの御説明で物価指数のことがありましたが、これはことしの予算で果して低物価の方向が一層確保されるかどうか、これはいろいろ議論がある点かと思います。従ってその点はあとにしまして、とにかく労働者賃金の全般的な傾向としては、数年来大体ストップ方針が相当災いいたしておりますから、必ずしも実質上は上向きになっておらぬのが実情であります。従って、賃金の引き上げの問題に関しては大きく議論のあるところでありますが、それにもかかわらず、そういう見解の非常な開きを持ちながら、労働者は組合の闘争を通じて賃金の引き上げを獲得しようというので、いろいろな動きを示しておることは御存じの通りであります。そのことに関連して、昨日もちょっと問題になっておったと思いますが、大臣を初めとする政府のそれに対する態度、これが労働省の態度としてはちょっとうなずきがたいように思えるのです。もちろんきのうの大臣の御答弁の中では、それは新聞社の方でいろいろ設問があったので、それに対してただこのような場合はかくのごとくにということを話しただけであるというお話が出ておりました。私は今ここに「日経連タイムス」を持って参っておりますが「日経連タイムス」に、よりますと、そういう意味からの扱いになっておりません。まず労働大臣の所見が述べられており、その述べた所見に対して、日経連の関西経協の方でいろいろな注文がついておる。そういう記事が載っております。この中で、私ははなはだ残念に思いますことは、春季闘争に対して、あらかじめその違法性を予見するようなお言葉が出ておるのです。これはまことに遺憾にたえない。春季闘争に対して、労働大臣がまず違法性につながっておる闘争になるであろうという見解を持たれるという、これは非常に大きな責任問題じゃないかと思うのです。こういう点についていかがでしょうか。「日経連タイムス」の記事は、やはり新聞記者がかってに書いたものでしょうか。それとも責任のある記事として考えていいでしょうか。
  26. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 先ほど予算委員会でも私は申し上げたのでありますが、政府は挑発的ではないかとか、いろいろただいまお尋ねのような御意見がありましたが、政府として私が正式な意見を発表いたしておるのは、この国会を通じて申し上げておる以外に何もございませんので、それは先ほどあなたのおっしゃったように、聞かれたことに答えたのでありまして「日経連タイムス」というものを私はまだ読んでおりませんけれども、大阪に参りましたときも、労働組合代表の人と、それから経営者団体と個別に会見をいたしました。それで、いずれにも向うさんが主催者でございますから、向うさんがいろいろ御意見を発表になって、それに対するお答えをいたしたわけであります。従来とちっとも変っておりません。ただその場合に、問題として提供されましたことに、労働大臣の見解を要望されましたときに、スケジュール闘争というスケジュールが発表してあります。そのスケジュールの中には、たとえば官公労のことでも、公務員法に照らして、こういうことは違法ではないかというお尋ねがありますから、それを実際に移す場合には違法であると存じます、そういう場合にはどうするかということでありますから、政府は国民の利害休戚を預かっておる責任上、違法なる行為があればこれは断然取り締る覚悟である、こういうことを申しておるわけでありまして、こちらから積極的に言い出したことは今日まで一ぺんもございません。
  27. 中原健次

    中原委員 大臣の御所見と同時に中西労政局長が関西経協の懇談会でかなり堂々と述べておいでになる。大体最近そういう性格が出ておるのじゃないか、これは何といいますか、経営者団体の万に気に入るようなことを言うために政府が一生懸命になっておいでになるのかもしれませんけれども、相次いでこういう記事がどんどん「日経連タイムス」などで報道されますと、やはり政府の心がまえを私は疑わざるを得なくなってくるわけです。さきには中西労政局長の談話が出、次いでまた大臣の談話が出た、これはいろいろその場その場の関西の経済団体の懇談会あるいは大会等々であろうと思いますが、そうなりますと非常に国民がおどかされるわけです。労働組合は労働組合の当然の権限の範囲の中で、組合運動の許された範囲の中で活動するのは、むしろ今の段階としてかくあるべきであって、別に不思議でもなんでもない。官公労の場合もそうだと思います。国家公務員法でああいうふうに縛られておる、その縛られておる国家公務員に対する窮余の措置としての人事院などの動きは、最近全く無視されてしまっている、機能を失っておるというような形にさえ追い込まれておる。これは政府の方がむしろ違法的な態度になっておるのではないかというふうに考えられると思います。ただそういう場合に民間企業にしましても官公労にしましても、やはりやっとこさで年に一度そういう自分の要求をいろいろな形で意思表示をし、生活を守るための動きを示すということは、むしろ労働者のそういう要求をしなければならぬようなそういう心配の根を絶つことの方が、労働省自身としてほんとうじゃないか、つまり労働者のそういう率直な要求をむしろ可能ならしめるように考えるという立場の方が労働省としての立場じゃないか、私はこう思います。従って「日経連タイムス」がでかでかとこんな大きな活字で出しますと、これはどうしても刺激を受けますし、それに関連して一般の民間の新聞もちょこちょこ似たことを報道せざるを得なくなっておると思います。こういう点につきましては、私は少くとも新大臣が御登場になられて以来、特に目立たしい傾向になっておるのじゃないかという感じがするから、申し上げておるわけです。そうなると、もっと悪く言えば、ダンピラを抜いて、来るなら来いと言わぬばかりのかまえで、労働組合に一つの立ち会いを申し込んでおる、そういうことになるじゃないか。これではむしろ国民が失望すると思う。労働省はそういう役割を果すものかという心配を、かえってそのことによって受けるのじゃないかとさえ思うのですが、この点についてはいかがでしょうか。局長もそう言っておりますし、大臣もさっき申し上げたようなことですが、これは依然として平らかに受け取るべきものなのかどうか、もう一度お伺いしたいと思います。
  28. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 労政局長も私も労働省の立場でありますから、きわめて慎重にものを言っておるのでありまして、それをどういうふうに「日経連タイムス」が書きましたか存じませんが、私どもといたしましては、常々申しておりますように、労働省の立場はどこまでも中正でなければならぬ。ことに労働組合法という現存している法律があるのでありますから、中原さんも御存じのようにわれわれがあの法律を作りますとき第一条及び第二条に——労働組合の正当なる運動を育成していくのが、あの法律の目的でございますから、われわれはどこまでもこの健全なる労働運動を保護し育成いたしていくのであります。従ってしばしば申しておるように、民間産業の個々の争議などにはタッチはしないのであります。この間も総評の幹部諸君と会見をいたしましたときに、労働大臣はどういう考え方でおるかというお話でございましたから、労働大臣というものはプロレスのレフェリーみたいなものだ、だからキング・コングがレフェリーの言うことを聞かないで乱暴に反則を犯せば、やはり力道山も空手チヨップと出てくるんだから、それでは健全なる労働運動日本産業の復興もできないじゃないか。そういうことをしないようにということで、健全な労働運動が育成されるように労働省としては指導していきたいのだ、こういうふうに申しておりまして、ちっともこの方針は変っておりません。現在私どもの気持もまた鳩山内閣の労働政策も決して中立性を失っておるのではありませんので、そういうふうに何と申しますか偏見をもって私どもをごらん下さらないように、私ども労働政策を援助していただくように中原さんにもお願いをいたします。
  29. 中原健次

    中原委員 その問題はさておきまして、もう一つお尋ねしておきたいと思います。それは災害の問題です。例のメリット制を採用するに至りまして、ちょっとしばらく災害が減っておったかのような様子を示しておりました。しかしそれはいわゆるメリット制の特徴であって、むしろ実質は減っていなかったのでありますが、そのような性格をもって災害が登録されてきたにもかかわらず、最近どんどん災害の発生件数が上昇しておる。これは一体どういうことなんですか。私ここにちょうど昭和二十五年以降の災害の計数を持っておりますが、これはもちろん労働省自身の統計であります。従って、それを見ましてどんどん災害がふえておるということ自体は、一体何を語るのか。それとも減っておる数字があるとすれば、減っておる数字の御説明を求めてもいいのですが、私はそう減っていないと思います。これは労働省自身の統計でそうなっておるのでありますから、これに対する御所見をまず承わっておきたいと思います。
  30. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 詳しいことはまた機会を見まして基準局長から申し上げますが、産業災害につきましては、労働省も特に意を用いまして安全に協力をしていただいたような工場、事業場を表彰するといったようなことをいたしまして、災害の防止には力を入れておるわけでございます。中原さんも御承知のように、産業災害の頻発しております建設事業、港湾荷役業及び林業などについては特に重点を置いて、災害防止について不断の努力をいたしておるわけでございます。ただいま労働省統計によると最近災害がふえておるというお話でございましたが、昭和二十九年一月から十月までの件数と三十年一月から十月までの件数では三百十六件ほど減っておることになっております。私どもの方としては、今申し上げましたようなことで、事業場の安全ということについては特に意を用いて努力させておるようなわけでございます。それからまたあなたの方に御関係があるかもしれませんが、鉱山保安関係の災害についても、労働基準局といたしましては、担当者である通産省に鉱山災害の少くなるようにしばしば厳重に警告をいたしておるわけであります。
  31. 中原健次

    中原委員 ごめんどうでもその減っておる数字を一応御説明いただきたい。どうもちょっとその点うなずけません。
  32. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私どもの方の資料によりますと、昭和二十九年の一月から十月までに死傷全体の件数が二十七万三千二十五件であります。死亡件数が四千百四十一件でございます。それが昭和三十年の一月から十月までの統計は、死傷件数が二十五万八千八十四件であります。死亡件数が三千八百二十五件こういうことであります。
  33. 中原健次

    中原委員 数字の問題はもう少し研究を要すると思いますが、たとえば昭和二十九年に死亡が五十五百二十という発表が出ておるわけです。このことは、その前年来から見ますると、とんとん拍子に死亡者がふえておるという数字になるわけです。そうすると、その間の責任を今あなたに問うわけではありませんが、そいうう傾向から、労働者が受けております災害は非常に強度になっておる。従ってその強度な災害のために労働者が終身労働不能に陥り、あるいは労働者のとうとい生命が失われておるということに対して、その反面正常なる労働が保障されておらぬのではないか。つまり労働が非常に危険に追い込またておるのではないか、従って労働が強化されておるのではないか、こういうことが予想されるわけであります。労働の強化されていく過程の中に災害は当然ふえるわけですが、そこで災害のふえる傾向生産性向上ということは無縁故ではない。今までの傾向からいえば確かにそこに縁故があるわけです。従って私は、労働者の災害がどんどん起ってくる。しかも言葉をかえていえば容赦な上に労働者の災害が突発してくるという傾向の中に、日本産業の正常でない運営の形があるのではないかということが予想されるわけなんです。そういう点について政府が今その災害を防止上、あるいはなくしていくということのために積極的に持たれている施策は一体どのようなものであるかということを伺っておきたいと思います。
  34. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 お話の中の生産性向上が労災と密接な関係かあるというお説はどういうことか私も理解に苦しむのでございますが、御承知のように生産性向上というのは今まで日本の持っておりましたような、何と申しますか、旧式な機械力などではとうてい立ち向えないということで、優秀なる機械に置きかえる。たとえばきのうも中小企業のお話がございましたが、日本の中小企業で使っております諸機械、ことに工作機械などというものは、アメリカなどに比して問題にならない旧式なものでございましてそういう旧式な機械を使っておるところに国際競争力に負ける大きな原因があるといので、政府はこの議会で多分後日御審議を願うことになるのでありましょうが、開発銀行から特別な融資をさせまして、そして機械事業団というようなものをこしらえて、日本のそういう機械力を全部更新して、国際競争に立ち向っていけるようなものに置きかえよう、こういうわけでありまして、それをそういうふうにやって参ろうとする機械力の革新ということによって、生産性向上はかえって私は進歩した機械を用いることによって工場災害などを防止することができるのではないか。この間関西に参りましたときも、労働大臣の表彰を受けましたある工業所へ行ってみましたけれども機械力が更新され、近代化されるに従って、安全率は高まっているということを、そこの組合の人が私に報告をいたしておりました。ただ先ほど申し上げましたように、割合に労働災害が多いのは建設業であるとか、そういうような仕事でございます。しかし中原さんもすでに御承知のように、各地の基準局を中心にいたしまして、各地で経営側とそれから基準局とが一緒になりまして、基準の行政に対してこれを援助するような民間団体がたくさん出て参りまして、ともども協力して基準を守りながら労働災害を防いでいこうという傾向が出て参っておることを、私は非常に喜んでおる次第でありますが、なおかつ出て参りました災害については、労災保険によっても救済することにいたしております。労災保険は、御承知のように来年度の予算においても相当病院も増設するようになって参りまして、政府といたしましては、労働者が安全を保っていくということが、日本産業復興五カ年計画を遂行していくのに、ぜひ必要な条件でございますから、そういうことについては、予算の許す限り、万全の策をとっていきたい、このように思っております。
  35. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 中原委員に申し上げますが、大体お約束の時間が過ぎておりますので、一応結論に入っていただきたいと思います。
  36. 中原健次

    中原委員 その生産性向上のことは、もちろん現状の日本産業構造の規模の中で、今あなたがおっしゃったような傾向はこれから出ようとする一つの形です。今までの災害の状況というものはそうではなくて、まだそこまで必ずしも高度の機械化に成功していない。今の災害というのは過去の形の中での災害だと思うのです。従って過去の形の中であるいは現在までの形の中で災害が起ってくるということは、やはり生産率を高めようとするためのせっかちな強化が当然起ってくるからです。これは全然無関係ではないのです。やはり関係があると思います。しかしながら今お言葉のように、高度な機械を取り入れながら生産規模の進歩性を確保していくということになれば、そういう中から起ってくるのは、幸いにも災害が減るとしまして、やはり失業は当然予想されてくる。労働力がだんだん縮小されていくということになると思うわけです。従ってこの点は当然そこに失業生産性の問題というものがからみついてくることが予想されるわけでありまして、これは議論する必要はありませんけれども、決して楽観材料にはならない。もちろん私は生産性が高まって、日本産業拡大して完全雇用がもし幸いに保障されてくるならば、非常にうれしいことでありましてわれわれは双手をあげて賛成しますけれども、その過程においては非常に大きな犠牲の万かむしろ先行するのではないか、そういうことがいろいろ過去の国際的な経験の中から出ておると思います。生産性向上日本が初めてやるわけではないのでありまして、各国のいろいろな経験も相次いで報告されておるわけでありますから、そういう中から考えられることは、どうしてもその過程における犠牲が非常に大きい。これは現実の経済機構の中では避けられないことであるかもしれませんけれども、しかしそういうことが避けられないことであるとしましても、その経済の持っておる矛盾の中にやはり問題点が出てくると思います。いずれにしましても、そういうことですから、この問題は問題を後日に譲ることといたしまして、とにかく政府がそういう段階の中で労働政策をどのようにとっていくかについて、非常な注意をみな持っておるわけです。従って今後おとりになる労働政策については、少くとも労働に問題をしわ寄せすることが当然であるというような考え方でやられることがあったのでは、大へんだと思いますので、あえて申し上げておるわけなんです。従って先ほどからも問題になりましたように、労働者が少しでも労働条件をよくしようとするために、いろいろな動きを示すのですが、そのいろいろな動きに対して政府がまず法規を、場合によれば改正でなくむしろ改悪して、その労働者のすなおな動きを抑圧しようとする、そういうことを予想せしめるような言動をお用いになられたり、あるいは労働者の当然の権利として争議権の行使、あるいはその他の労働条件をよくするためのいろいろな労働側の動きに対して、何かワクをはめるような動きを示されるということが、やはり政府方針としては適当なことではないか、むしろそういうことはかえって問題を悪化させることに役立つのほかはないではないかというふうに気づかうわけです。そういう意味で、政府が今までもそうであったし、これからもおとりになるのであろうと思われる労働政策の中に、真実に日本経済が国民のための経済としての性格を持ち、従ってその経済上昇、発展が国民の生活の上昇と安定になるための施策を持たれなければ、そしてそのための実現の努力をせられなければ、今までのいろいろなお説を伺いまして非常にりっぱであったと思いますけれども、そのりっぱなお説が全部美辞麗句に終ってしまうのではないかというふうに感じられるわけなんです。これは決して私の思い過ごしでも何でもない。今までの経験からもそうなってくる。だから事があらたまるにつれてだんだん人権がむしろ抑圧されてくる、縮小されてくる。あるいは労働者労働権がだんだん不安になってくる、こういう傾向が最近露骨に出ておる特徴なんです。そこで私はそれではいけない、それはとんでもない逆コースである、そういうことでは人類の社会は一歩も前進するものではない、むしろだんだん人類の社会が後退してしまうのではないか、こういうことを感ずるわけです。  時間もないようでありますから、ただ一応それだけのことを申し上げまして、なお次の機会にこまかい問題についてもう少し聞かしてほしいと思っております。本日はこれだけにして質疑を終ります。
  37. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 中川俊思君
  38. 中川俊思

    ○中川委員 雇用の問題については、先般来野党の諸君からいろいろ御質問がありましたし、また政府からもこれに対するいろいろな御答弁があったようでありますから、大体私どもは質問するほどの点はないのでありますが、ただ先般来野党の諸君の質問を通じて私が感知しましたことは、雇用関係については政府と野党の諸君との間に根本的な理念の相違があるように実は私は感知したのであります。先ほど大臣からの御答弁の中にもありました通り生産性向上をはかるためにはコストを下げるとかあるいは輸出増大するとか国際市場に飛躍するというようなことでありますが、野党の諸君の御意見をずっと静かに聞いておりますと、極端な例でおしかりをこうむるか知りませんが、そんなことよりもまず問題は労働者賃金を上げてもらいたいことだというように、これが優先しておるように私どもは感知できるのです。何ぼ賃金を上げても国家が倒れてしまったのでは何にもならないのでありますから、まず国の基礎を確実にするということが第一条件ではないかというふうに私は感じておるのであります。戦後の日本労働運動を通じて感知しますことは、どうもこういう、ただいま申し上げましたような傾向が優先しておるように私は感知するのであります。一九五一年でありましたか、私ドイツに参りましたときに感心しましたことはあれだけひどくやられたドイツを復興するのにはとうてい規定の八時間労働をやっておったのでは復興できない。よその国の国民が八時間労働をやれば、ドイツはさらに二時間の労働時間を延長して、これを愛国労働時間と称しておりましたが、そのくらい働かなければドイツの復興はできないということを宣言をして実行していたことを今思い出したのでありますが、どうか日本労働者諸君も国家的な観念に基いて、大臣がしばしば強調しておられますような労使協調で国家再建に御努力を願いたいと思うのであります。特に私は痛感しますことは、毎年賃上げ闘争、賃上げ闘争で騒がれるのは大がい大企業でございます。先般来野党の諸君の御質問の中にもありました通り、今日中小企業であるとかあるいは二人、三人の者を使っておりますところのいわゆるごく零細な事業等におきましては、いわゆる潜在失業者と申しますか、そういうものが非常にある。これらは賃金闘争をやろうと思ってもなかなかできない。私どもはむしろこういう方面を考えなければならぬと思うのであります。日本におけるところの大企業であるとか、官公労あたりは私は一言にして言えば労働貴族だと思っております。昨年も方々歩いて私は感知しましたことは五現業三公社にいたしましても、大企業にいたしましても、夏になれば何々海の家であるとか、あるいは何々山の家であるとか、こういうものをみな逗子であるとか熱海であるとか別府とかいうところに寮を持っておる。ぜいたく千万をやっておるのであります。国鉄なんかは御承知通り鍛冶橋のところに数億円も出して大きな会館を建てております。とにかく私どもから見ましたならば労働貴族である。今日住むに家のない者が多いときに当って、相当な家に住んでいて夏になれば冷房装置をしてもらいたい、冬になれば暖房装置をしてもらいたいというのにひとしいと私は思う。かような見地から私ども雇用関係の問題につきましても、政府はどうか先ほど来お述べになりましたような国家的見地に立って善処をしてもらいたいと思うのであります。去る六日以来この委員会で野党の諸君の質問に対して労働大臣経済規模拡大して失業者を収容するという御答弁があったやに承わったのであります。すなわち五カ年計画を完成して昭和三十五年でございますか、そのころには失業者をかなり収容することができるというふうなお話があったように承わったのでありますが、経済規模拡大することももちろんだれしも望むところでございます。しかしこの点もしかく簡単には参らないと私は考えます。国家財政とのにらみ合せもございましょう。またインフレを防止するという観点から見ましても、いたずらに公債発行等をして拡大生産を簡単に押し進めることはできないのではないかと思うのでありますが、大臣は先般来野党の諸君の質問に対してお答えになりましたこの経済規模拡大について、どの程度の御自信をお持ちになっておるのでありますか。さしあたって昭和三十一年度に何か具体的な方針でもお持ちになって、相当の失業者吸収できるというような方策がもしありましたならば、一つお示しを願いたいと思います。
  39. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 前段の方のお話につきましては、私どももしばしば機会を見て申し上げておる通りでありまして、健全なる労働運動が行われることを期待いたし、またそれを助成いたしていくようにしたいと思っております。またもう一つはどうしても終局において労使の利害関係は一致しているのでありますから、あらゆる機会に話し合う機会を作りたい、こういうことご労働省にまず労働問題懇談会というものを設けましてそれからまた一昨日御発表申し上げましたような考え方で、企業系列の中で、八大産業については企業別の協議会を作りましてそこで話し合いの場を作っていきたい。やむを得ざるときにだけ争議行為に移るのはやむを得ないが、ぜひともそういう方向で平和裏にやっていきたい、こういう考えでございます。経済自立五カ年計画につきましては、政府が策定いたしましたその趣旨は、経済企画庁長官が国会で御発表申し上げた通りでございますが、ただいま御指摘のように私どもはインフレを防ぎながら拡大均衡に持って参る、こういうことのために皆さんの御協力を得て、昭和二十九年度予算以来いわゆるデフレの経済をやりました。このデフレ経済をやりました主眼点は何であるかと言えば、日本輸出物価を国際水準に引き下げる、こういうことに集中いたしたわけでありますが、幸いにして二十九年、三十年度のデフレ経済に国民の協力をいただきましたのと、あわせて今度は外国の景気が非常によかったことも原因し、加うるに前古未曽有といわれる米の大豊作なども非常ないい影響を持って参りまして、経済は安定して参りました。そこで昭和三十一年度を初年度とする経済自立五カ年計画を策定して発表いたしたのでありますが、あの計画及び初年度における計画政府発表いたしましたか、あの初年度、すなわち三十一年度において、私どもはまず第一年度計画を推進していく、それは先ほど来ここでもお話がありましたように、まず国際競争力を維持する方策は三十一年度予算で御説明申し上げた通りでありますが、あの方策を推進していくことによって経済規模拡大をはかっていく、民間産業については国際競争力増強に基いて規模拡大をして、その方面に人員を収容していく。そういう一つの例を申しますならば、たとえば中学校、高等学校の昭和三十一年三月卒業生の就職率は非常によくなって参りました。昨年度よりずっと上回っておりまして、高等学校卒業生などは就職希望者の大体一〇〇%がすでに予約されておるような状況でありますし、大学卒業生などは昨年よりはずっと上回っております。そういうことで雇用量をその方に拡大していく。なお民間産業だけでは不足であると存じますので、これから御審議を願います北海道開発公庫であるとか、道路公団であるとかいうものに吸収をして参る。それでなおかつ出てきたいわゆる完全失業者に対しては、特別失対あるいは一般失対などで吸収をしていく。大体三十一年度に策定いたしました当初の年次計画によって、計画に近い雇用量増大は私ども、見込めるという方針で進めて参っておるわけであります。
  40. 中川俊思

    ○中川委員 こういう問題はそう一気に実績が上るものではございませんから、ただいま大臣お話通り逐次好転していけばけっこうでありますが、しかしまた一面考えますと、食えない失業者政府施策ができ上るまで待つというわけにも参りませんので、今年の予算編成にあたりましても、失対事業費の獲得に御努力になったことについては私どもは敬意を表するわけでありますが、また大体今お話を承わったことに尽きるのでありますが、私がここでちょっとお聞きしたいと思うことは、駐留軍労務者の失業対策は一般失業者と切り離して個々に考えてもらいたかったのであります。けれども労働省はどういうお考えからそういう処置をおとりになら、なかったのか、この点を一度お伺いしたいのであります。  なお今後駐留軍の撤退であるとかあるいは特需産業の縮小等によって地域的には非常に失業者増加するのではないかということを私ども、考えておりますが、これに対して何か特別な措置をお考えになっておるかどうか、お伺いをいたしたいのであります。
  41. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 駐留軍労務者のおるところで、駐留軍が引き揚げるためにまとまって多数の失業者が出る、いわゆる失業多発地帯につきましては、全額国庫負担で失対事業をやれというふうな御要望もございましたが、いろいろな事情からそれができませんでして、御承知のように五分の四というふうに負担額を増額いたしました。  そこで日本の置かれました特殊な立場にかんがみますと、いわゆる駐留軍労務者または特需関係の労務者についてはことに特需関係などは先方に私どもの方から、事前に計画的に事業を縮小できるならばそういうふうにやってもらいたいということを申し入れておるわけでありますが、この駐留軍及び国連軍関係離職者の就職対策につきましては今までも格段の努力をして参りました。前内閣時代に政府は特需対策連絡協議会というものがございまして、そこで具体的にいろいろな検討をし、時々いろいろなことをやっておるわけでありますが、その方針は最近新聞紙上にも発表した通りでございます。  そこで、特需関係及び駐留軍労務者につきましては、この連絡協議会で具体的な問題についてその都度善処していくように努力をいたしておるのでありますが、労働省側から申しますと、この連絡協議会の御相談はもちろんのことでありますが、その駐留車関係失業者に対しましては、特にほかの方面で駐留軍が増強する面もありますから、そういう方面に配置転換をすることもやっておりますし、またそこでおやめになった方で自家営業を希望されるような方には、それぞれ政府としてはお手伝いをする施策をやっているようなわけでありまして、私どもこの特殊事情による失業者については今申し上げました内閣の連絡協議会で万全の措置を孝えておるわけであります。
  42. 中川俊思

    ○中川委員 失業対策の国庫負担の引き上げをしていただきましたことは、窮乏した地方財政のためまことにけっこうなことだと思うので、あります。私ともの希望いたしますことは、労働省でもこの問題は十分にお調べになっているところでありますけれども、地方都市財政とにらみ合せまして非常な極端な失業者を出すようなところに対しては、全額国庫負担に持っていくように将来とも一つお考えをいただきたいと思うのであります。雇用関係の問題は先ほど申し上げました通り、野党の諸君から十分に御質問もありましたし、大体政府のお考えも承っておりますから、私はこの程度にとどめまして、この際、昨今非常に問題になっております春季攻勢に関する問題についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。御承知通り総評並びに社会党がしり押ししておられると思われる三月ゼネストを目標に春季の賃上げ闘争が企図されております。私どもの手に入ったところの資料によりますと、この参加人員は官公労を合せて無慮二百九十一万二千名に達しているということでございます。なお情勢のいかんによりましてはさらに六十万名近い者が参加するということでございますが、まことに憂慮すべき問題でございます。張る一月十一日総評で発表した今回の闘争方針を見ますと、独占資本の利潤を吐き出させて国内市場を拡大して大衆の利益を擁護する云々とあります。もし彼らの言うがごとき独占資本の利潤が莫大であるといたしますならば、生産性向上を目途としていろいろな設備改善にまず利潤を充当して、先ほど大臣お話になりましたようなコストダウンをする、そして国際市場に備える、物価引き下げによる実質賃金向上をはかるべきが私は本筋ではないかと考えるのであります。較差を増大する賃上げはいたずらにインフレの危険を生じます。さなきだに激増する失業者増加に拍車をかけることにもなります。よって社会不安を増大することにもなります。また国際市場を失う愚劣きわまる方策と私どもは考えざるを得ないのであります。すなわち結果におきましては民主的労働運動の本旨に反するばかりか、国民大衆の利益を裏切り、わが国経済を混乱麻痺せしめんとするマルクス主義の陰謀とする考えざるを得ないのでありますが、この問題に対して先ほど来大体に倉石労働大臣お話を承わっておりますから了承いたしまするが、どういう御所信をお持ちでございましょうか、重ねてお伺いをいたしたいのであります。
  43. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 その点につきましては、しばしば私が申し上げておりますように、健全なる労働運動を保護育成いたしていきたいというのは、政府の変らざる立場でございます。日本にもなかなか地道な労働運動をやっておられる大きな労働組合のあることは御存じの通りでありまして、そういう堅実な労働運動をやっていくように助長いたした、こういうわけでありますが、伝えられますいわゆる春季闘争——総評りおやりになるものにつきましては、しばしば申しましたように、現在の物価の状況、それからまた現在までの実質賃金上昇率などを見合せまして、さらにまた国民経済全般に及ぼす影響等を考慮いたしまして、政府は現在の段階でベース・アップを強く要求せられることはおもしろくないではないかという考えを持っておるわけであります。しかし個々の民間産業の争議について、政府が介入しようということは毛頭考えておりませんが、伝えられますいろいろな労働組合、総評傘下の組合の中には、御存じのようにしばしば逸脱しておるのではないかと思われるような争議行為もあるようであります。私は法を守るのが政府の義務でございますから、民間産業であっても違法な行為が行われる場合においては、政府としてはこれは取り締らなければならない。すなわち健全なる労働運動は、日本民主化のために役立つのでありますが、民主主義の敵である違法行為を行うようなことは、労働組合の健全なる発達の敵でありますから、こういうものは防がなければならない。  官公労につきましては、官吏は公けに奉公する義務を持っておることは公務員法の示すところでございますから、この公務員法に規定せられたる行為を逸脱する行為があるならば、取り締らなければならないのでありますが、実は本日正午にいわゆる官公労の代表者に、労働大臣は会見をいたしまして、今申しましたような趣旨で、間違いのないように、そしてお互いに国のために働いておるのであるからして、そういう方向でやっていこうではないかということを話し合いましたようなわけであります。
  44. 中川俊思

    ○中川委員 ただいま労働大臣は、大きな労働組合ほど法を無視しない健全な労働運動をやっておるというような御趣旨でございましたが、私は反対でございます。大きな労働組合ほど違法行為をやる。これはもう私がここで一一例をあげて言うまでもなく、労働大臣は非常に遠慮して言っておられるのかしりませんけれども、戦後のわが国におきます労働運動を見ればすぐわかります。大企業や官公労等、こういう大きなところほど正当な団体交渉権の域を逸脱して 裏には政治的野心や革命闘争の野望を蔵しておる。そうして表に暴行脅迫の不法行為は日常茶飯事であります。小さな労働組合ほどまじめであります。この点私は労働大臣と反対な考えを持っております。しかも今日までのこれに対する政府方針でございます。これがまことに優柔不断、かかる不法行為を看過した事例は枚挙にいとまがございません。その結果がこの不法行為をますます助長する作用をなしております。まじめな国民をして政府たよるに足らずというおそるべき思想さえ植えつけたのではないかと私は考えておるのであります。予想される今次ゼネストに対しましては、どうか一つかかる既往の弊風を一掃していただきたい。細大を問わず、不法行為者には即刻適切な処分を行なって、瞬時もゆるめるべきではないと考えます。今日のこの予想されますところのゼネストに対して、どういうお考えを持っておられるか、労働大臣並びに取締り当局から御所信を承わりたいと思います。
  45. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私が申し上げました言葉が足りなくて誤解をされたかもしれませんが、今いわゆる春季スケジーユル闘争を計画しておるのは総評でございまして全労会議とか中立系の組合の中には、ああいう政治闘争的な運動は反対であると標榜いたしておるものがあるのでありますから、全労働者の要求ではないということを常に申しておるのでありますが、現在その春季闘争に反対をいたしておる大きな労働組合で、きわめて穏健着実な労働運動をやっておるものがあるということを崩したのでありまして、大きな組合で違法と見られるような行為に逸脱していくのではないかと思われるようなものもなきにしもあらず、そういうことに対しましては、政府は厳として取締りをいたします、こういうことを言っておるのであります。  それから公務員のことにつきましては、これは政府の立場から申せば親と子供みたいな関係から、子供に間違いのないように十分手を引いてやる親心が必要であると存じまして、本日の会見にそういうことを申したのであります。ところが伝へられるスケジュールによりますと、逸脱したような行為をしたと思われるような指示をしそうでありますから、そういう行為を実際に行う場合にはどうであるかという設問に対しては、新聞社などに対しても、私は違法な行為は政府としては断然取り締る。従来政府がその点について寛大であったというお話がただいまございましたが、あるいはそういうこともあったかもしれませんが、今回はさようなことは断じていたしません。厳に違法行為は取り締る決意で、万全の措置を政府がとりのは当たりまえのことだと思っております。
  46. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 春季労働攻勢の問題につきましては、ただいま労働大臣からお答えがございましたが、その通りでございまして、私どもとしましては違法な争議行為に対しましては厳正な態度をもってこれを取り締る方針のもとに進んで参るつもりでございます。
  47. 中川俊思

    ○中川委員 この問題は、従来もこうした労働争議の起った場合に政府は今と同じようなことを言っておるのであります。同じようなことを言っておきながら、さて取り締りに直面いたしますと優柔不断でございました。しかしただいま労働大臣並びに取り締りの任に当られる方から決意のほどを承わって私も了承いたしますが、一体この取り締りの任に当りますところの警察官署は、労働組合法の一条ですか、この一条の規定に萎縮しておるのではないかと思う。明らかに不当かつ不法の争議行為に対しても、取り締りをちゅうちょするの弊がございます。政府はこのたびのゼネストに対しましても、かかる行為を未然に防止する上からも、都道府県警察に対し、不当かつ不法の争議行為に対しては、社会秩序の保持上、断固迅速かつ厳正な取り締りの指令をすべきだと考えますが、政府の御所信を承りたいのであります。
  48. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 労働法の建前から申しますと、つまり争議行為ということは一種の脅迫であります。相手方に対して仕事をやめるぞということでありますから、これは脅迫の行為に違いありませんが、そのことが労働運動である場合には、そういう行為は違法性を阻却されるということでございますから、正当なる労働運動の範囲内においては、政府がそれに介入することはできないのであります。またその必要もありません。そこでただいま取締り当局のお話もありましたが、正当なる労働運動でないものについては、取り締らなければならない、先ほど申し上げましたように、健全なる労働運動を阻害する行為でありますと、そういうものは取り締るのは当然であります。
  49. 中川俊思

    ○中川委員 警察の方はどうですか。
  50. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 過去におきまして、警察が労働組合法の規定に萎縮して、違法な行為を取り綿らない場合があったのではないか、こういう御質問でございましたが、私どもといたしましては、違法な行為に対しましては、厳重に取り締りをいたして参ったつもりでおります。しかしながら、これは見る方の立場によりまして、ある場合にはゆるい、ある場合にはきびし過ぎるというような御批判があると存ずるのであります。今後私どもといたしましては、労働組合法の規定に萎縮するという言葉はいささかどうかと存じますが、少くも違法な行為に対しましては、先ほど申しましたように、厳正な態度で取締りを実施いたしていくということを決意いたしておる次第であります。
  51. 中川俊思

    ○中川委員 どうか一つ、私ども期待を裏切らないように、その決意を今回はぜひ持ち続けていただきたいと思うのであります。さらに私はこの際、特に政府に注意を喚起したいと思いますことは、今日までの不法労働争議に対する取締り関係機関には一貫した連携がございませんでした。たとえば政府の次官会議等できめました問題も、ある省の事務当局はすみやかにこれを地方に流すけれども、はなはだしきに至っては、ある省の連絡は、争議が終ったころに指令が届くというようなばかけたことが今日まであった事例を私は承知をいたしております。そういうような怠慢ぶりでは、とうてい適正な取締りはできないのでございます。あたかも木によって魚を求むるのたぐいだと私は考えておるのであります。幸い、今回は先ほど来の労働大臣お話のように、断固たる決意をもって、政府の中にも治安連絡会議と申しますか、そういうものが設けられておるというふうに私は聞いておりますが、この弊害を除去して迅速適切な取り締りを企団せんとしておられることは喜ぶべきことでございますが、果して緊密なる縦横の連絡がとれて迅速果敢に取締りができるということが私どもは望ましいのでございます。どうか一つ政府は今回の問題につきましては牢固たる決意を披瀝していただきたいと思うのであります。  私は以上簡単でございましたけれども政府の果断なる処置を要望したのであります。もちろん正当なる手続によりますところの交渉は、できる限り謙虚な態度でこれに応ずるだけの雅量を政府にぜひ持っていただきたい。正当な労働運動と団体交渉を故意に拒むというようなことは問題をさらに大きくする懸念がございますので、この点は十分に雅量を示していただきたいと思います。同時に違法、不当な事態に対処いたしましては先ほど来申し上げておりますような毅然たる能度をもっていわゆる信賞必罰を励行願いたいのであります。一体世界のどこの国に、戦後の再建に当ってわが国のごとく不当労働争議を起して国家の立ち直りを阻害しておる国がございましょうか。しかも、先ほど労働大臣からもお話がございましたが、国民全体の奉仕者たるべき公務員が法の禁止するところの争議行為を行なって役所にすわり込んだり、あるいはピケを張ったり非合法的な暴行を敢行している様は、私はまさに亡国の様相を呈しておると思うのであります。今やわが国はかかる争議行為をめぐって、大げさにいえば私は興亡の岐路に立っておると思う。大きな問題でございます。政府は背後に良識ある国民が今回のゼネストに対しましても、政府の果断な処置に期待しておるということを一つ念頭に入れて、勇猛果敢に今回予想されるゼネストに対処していただきたいということを要望いたしまして、私の質問を終る次第であります。
  52. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 次会は明九日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十七分散会