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井堀委員 今の
お答えは、前回の三十一日の本
会議でもそのようなことをちょっと触れております。それから予算編成の
方針の中にも、そういうようなことは他の閣僚からも明らかにされております。私が今労働
大臣に
お尋ねいたしたいと思いますことは、もっと労働
大臣の所管に深い
関係がある、といいますよりも、労働
大臣の責任において
答弁をしていただかなければならぬ
事柄についてであります。それは、現在の
日本の賃金の実態というものは、統計の上で正確なものを把握することに多少の困難と疑問はありますけれ
ども、大勢を捕捉することには事欠かないと思うのであります。そこで現在、統計上の問題で、われわれと
政府との間に食い違いを生ずるようなことがあってはならないと思いますから、この問題を先に明らかにしておきたいと思います。
政府の用いております統計の大部分について一応目を通したつもりであります。そこで、これは本
会議で、大蔵
大臣あるいは高崎長官の演説の中にも言及しておるのでありますが、国民生活の安定をある
程度楽観的に見ておられる。この点については、日を黒と言いくるめようとする深い魂胆があるとすれば別でありますが、私はできるだけ善意に理解して
お尋ねをいたそうと思うのであります。と申し上げるのは、二大政党の対立の時代を作っております今日は、野党、与党それぞれの
立場において相違こそあれ、お互いにやはり
日本の現状を一日も早く困難から脱却せしめて、経済の自立はもちろん、名実ともに独立国として、進んでは憲法に掲げております理想のように、国民のすべてに健康で文化的な生活を与えるための努力を払わなければならぬことは申すまでもないと思うのであります。そのために私は
政府にあやまちなからんことを念願いたしておるわけであります。かような
立場で私
どもは責任ある主張を掲げ、かつ
政府の失敗なからんことを念じながら、事実問題を明らかにしていきたいと思うのであります。
そこで、今あなたの御
答弁がありましたように、
日本経済を建て直していこうとするためには、底の浅い
日本経済に対しててこ入れをしなければならぬ。すなわち経済基盤の強化をはかろうということについては、私
どももいささかも疑問を抱くものではない。しかしその
方法において問題があると思うのであります。その点について
お尋ねしようと思う。
そこで、そのことについて賃金問題がまっ先に出てくる。これは今ちょうどなまなましい労使の対立の形において論戦が展開されております。一方は総評、一方は日経連、この
二つの
団体の主張が今世論の上に浮び上っておるようであります。こういう問題もあることでありますから、こういうものに対する私
どもの
見解も明らかにする時期に当面しておると思います。聞くところによれば、明日、自由民主党においてもこれに対する声明をなさるそうであります。わが党においても、この点に対する態度についてたびたび声明いたしておるところでありますが、この問題を国民に十分理解してもらうためには、もっと事実問題について、
政府の的確な
見解なり、また野党である社会党の主張なりを明確にする必要があると私は痛感する。そういう意味で事実問題を一、二出してみたいと思います。
私の手元で
調査いたしました賃金の実態を見ていきますと、
政府の用いております国民所得の分配の統計におきましては、全体的に勤労所得の上昇しておることは間違いのないところでありますが、今取り上げられております賃金、すなわち働いてその労働の対価として得た収入で生活をしていく人人の
立場——これは国民の大半を占める
人々であります。しかもこれは、善意な国に対する奉仕をしておるのであります。その労働の質と労働の量によって
日本経済が左右されておることは言うまでもないのであります。ことに国際的なきびしい競争の一中においてこの問題が取り上げられてきておるのでありますから、そういう意味で一つ労働
大臣からも、国を思う
立場として、歯にきぬ着せぬ的確な御
答弁をいただこうと思うのでありますが、今までのいろいろな統計の中でやや信憑力の高いものを二、三あげてみました。それによりますと、平均所得というものはやや正確なものが出ております。それも三十人未満の零細
事業場においてはおおむね推定に基くものでありますからここに一つの大きな盲点があると思うのでありますが、それは一応
あとで論ずるとして、三十人以上の
事業、における賃金の実態を見てみますと、非常に憂慮すべき状態にあると私は信じます。それは大蔵省の国税庁がここ九、六年続けておりまする民間給与実態
調査というものは、私は事実につい工かなりつつ込んだ
調査をされておるものとして、非常に期待をかけてこの統計を分析してみておりましたが、その中で小額所得者に対する統計が出ております。これを見ますると、非常にこれは恐るべき現象だとあります。すなわち
調査対象六百二十万に限っての数字でありますが、その六百二十万、
事業場におきまして五千八百四十三の事木場を
調査しておりますが、
日本の統計で非常に不備であります三十人未満り小規模
事業場を私は例にあげてみましょう。この統計に従って見ていきますと・月収千円に満たないという
人々がかなり多い。これは
政府のいう、雇用の問題で論議したときの、こういう
人たちも生業を持っておる、失業者じゃないという事例になるわけですが、その人員がなんと二万七千をこえる。それから三千円以下千円以上の者でありますが、十三万四千五百二十四人、さらに四千円から五千円未満の者、これが四十一万八千九百四人、六千円から七千円未満の者、これが四十一万六千四百八十三人、この給与の階層をさらに上に上げて参りましても、こういう数字をずっと見ていきますと、おおむね小規模
事業場における賃金収入というものは、
一体その収入で生活をささえるどころではないのです。これは生活保護法のあるいはニコヨン以下の
実情であることは間違いがない。これは全く今の労働行政の中から目こぼしされておる。放置されておる。ひどいのはこの中から賃金未払い問題が起っておる。実に残酷な政治といわなければならぬと私は思う。こういうような実態が明らかにされないで、賃金問題を論ずるわけにはいくまいと私は思う。こういう点についてただ私は一例をとっただけでありますが、きっと労働省はその職責からいって
労働者の生活を保護し、労働
条件のためには基準法の例をとるまでもありません。人たるに値する労働
条件を守らなければならぬ任務を課せられておるわけであります。こういう実態が現実である限りにおきましては、まず賃金問題としてはこういうものに対してどうするかという
措置は、これは政治問題になる前に行政的な責任の範囲内において私は解決すべき問題だと思う。これに対する何か
措置をお
考えになっておるかどうか。また今まで努力されたその結果がどうであったか、あるいは今後どうされようとするのかといったような問題について、一応御意見を伺って順に進んで参りたいと思います。