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1956-02-07 第24回国会 衆議院 社会労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月七日(火曜日)    午前十時五十三分開議  出席委員    委員長 佐々木秀世君    理事 大坪 保雄君 理事 大橋 武夫君    理事 中川 俊思君 理事 野澤 清人君    理事 藤本 捨助君 理事 岡  良一君       植村 武一君    小川 半次君       越智  茂君    加藤鐐五郎君       熊谷 憲一君    小林  郁君       高橋  等君    田中 正巳君       中村三之丞君    八田 貞義君       井堀 繁雄君    岡本 隆一君       栗原 俊夫君    多賀谷真稔君       滝井 義高君    堂森 芳夫君       長谷川 保君    三宅 正一君       山口シヅエ君    吉川 兼光君       中原 健次君  出席国務大臣         法 務 大 臣 牧野 良三君         労 働 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員         警察庁長官   石井 榮三君         警  視  長         (警察庁警備部         長)      山口 喜雄君         法務事務官         (人権擁護局         長)      戸田 正直君         通商産業事務官         (鉱山保安局         長)      正木  崇君         労働事務官         (労政局長)  中西  實君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      富樫 總一君         労働事務官         (婦人少年局         長)      谷野 せつ君         労働事務官         (職業安定局         長)      江下  孝君  委員外出席者         検     事         (刑事局公安課         長)      桃沢 全司君         労働事務官         (大臣官房労働         統計調査部長) 堀  秀夫君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 二月七日  委員八木一男君辞任につき、その補欠として多  賀谷眞稔君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 二月六日  検疫法の一部を改正する法律案内閣提出第二  一号)  の審査を本委員会に付託された。 本日の会議に付した案件  労使関係労働基準及び失業対策に関する件     —————————————
  2. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 これより会議を開きます。  労使関係労働基準及び失業対策に関し調査を進めます。昨日に引き続きまして質疑を続行いたします。  まず、昨日の井堀繁雄君の質疑に対する山口警備部長よりの説明を聴取いたします。山口君。
  3. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 昨日御質問のございました埼玉東松山市のディゼル機械株式会社の労組の問題につきまして御説明いたします。  この組合は年末手当の要求をめぐりまして、昨年の十二月十三日から争議に入っておったのであります。十六日の午後、松山市内デモを行う計画をいたしまして、前の日の十五日午後二時ごろ、東松山署県公安条例による届出をしたのでありますが、公安条例におきましては、四十八時間前に届け出ることになっておる旨を警察側お話をいたしまして、時間がございませんので、市内デモを中止するということになったのであります。ところが翌十六日に、第一工場及び第二工場松山市内にあるのでありますが、ピケに配置した残りの約二百五十人の組合員待機要員として第一工場構内にありまして、構内デモを行なっておったのであります。十一時ごろに至りまして、第二工場の方から交代してもらいたいという連絡がありましたので、組合長の指揮のもとに、午後一時ごろピケ交代のためということでこの工場を出発いたしました。第一工場から第二工場に直接行かずに遠回りをしまして、約三千五百メートルの距離でありますが、松山市内の目抜き通りプラカード組合旗十数本を揚げて、労働歌を合唱し、スクラムを組んで行進をいたしたのであります。そこで警察といたしましては、実は前日に、十六日のデモの問題につきまして、公安条例の取扱いに関しまして組合といろいろお話をいたしておりましたのでありますが、当日の実際の状況を見まして、県公安条例の第一条及び第五条に該当するものといたしまして、取調べをいたしたのであります。  大体以上が概要でございます。  なお御質問がございますれば、詳細にお答え申し上げたいと思います。
  4. 井堀繁雄

    井堀委員 ただいまの御報告を伺いますと、ますます私どもの疑問が強まってくるのであります。そこで、今の御報告の中だけで非常に大きな疑問を感じますことは、構内デモという言葉をお使いになりましたが、これはきっと工場内のことをさすのであろうが、一体そこの従業員工場内において——千二百人からの多数の従業員を擁しておるものが、構内においてデモをやっておるということはどういうことであるか。  それからもう一つ聞きましょう。公安条例労働法との関係について、あなたのお考え方をこの機会に率直に明らかにしていただきたい。
  5. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 構内デモという言葉は、私どもで別に新しく使っておるわけではありません。組合争議等においてそういう言葉が使われますので、工場内においてデモのようなことを行いますことはしばしばあるのであります。構内においてそういう行為をすることにつきましては、警察といたしまして、別段これをどうするという考えは持っておりません。  公安条例労働関係法規との関係でございますが、やはり埼玉県の条例をもちまして、一定の条件のもとにおける集団示威運動・について規制をしております場合には、それが労働運動のためでありましょうとも、やはり公安条例規制を受けるもの、かように考えております。
  6. 井堀繁雄

    井堀委員 法務大臣、今お聞きになったと思いますが、重大な発言をしておられる。労働法規規定されておる運動であっても、公安条例違反をすると思われるものがあったときには、それによって取り締るということを言明されておる。非常に重大なことなんです。私も今埼玉県の公安条例を調べておりますが、七条、五条の規定というのは集団デモに対する事柄規定しておるのです。労働組合法あるいは憲法の規定に基いて、労働者団体行動というものについては明らかにされておる。たとえばストライキという場合、あるいは今たまたま問題になっておりますがピケという問題であります。このピケの問題については、この国会においても何回もその当否について限界が明らかにされておるのであります。ことに工場内において千二百人の人々が大会をやるとか、あるいは工場内において同志の間における意気を喚起したり、結束力を強化するための行動がとられることは、言うまでもなく正当の労働者団体行動であるということは、あまりにも常識的に明らかなことであります。こういうような行為が一この例をもって言いますならば、第一工場と第二工場がある場合には、第一工場から第二工場に多数の人が往復することは当りまえのことであります。しかもそのときたまたま同じ目的をもっておる場合、その団体行動を統一していかなければストライキにならぬのであります。その場合にこの条例をもってすれば、たとえば今も言うように旗をかざしておった、労働歌を高唱しておった、遠回りをした——一体道直線コースを通らなければならぬというような非常識なことはあろうはずがない。どこを通ったっていい。それがこの条例をもってすれば、これは違反になるのは当りまえなんだ。葬式の場合にお寺から火葬場までまっすぐ行かなければならぬという規定がどこにある。いろんな都合で大回りすることもありましょう。そんな条例を持ってきて、労働組合運動がたまたま条例に引っかかるというのでは、片っ端からかかってしまいますよ。たとえば公務員人たちが同時に出、同じ場所から同じ停車場に向って歩行する際に、ただ普通の通勤ならともかく、ある種の目的をもって、あるいはこの団体行動を勇気づけ活溌にする必要があって労働歌を歌って通るかもしれません。そういう場合に、この条例違反になるのか。大臣一体今の部長見解を是認される御意思であるかどうかをはっきり聞きたい。
  7. 牧野良三

    牧野国務大臣 ただいまの政府委員答弁は、おっしゃるようなことを言ったのではないと思うのであります。この点において、これは法律問題ということよりも事実問題だと思いますので、具体的事実に対してどういう法律上の措置をすべきかということを決定するのだと思います。
  8. 井堀繁雄

    井堀委員 私もその通りだと思う。ただ問題となるのは、そういう事実問題に対する判断警察官がやらなければならぬかどうかという事態、ここに問題炉ある。そこで警察官いたずら労働争議に介入してはいけないということを規定しておるのは、これは正常な労働運動をやるかいなかということで先日も申し上げましたように、戦前警察官訓練を受け教育を受けた人は、労働運動というものは治安維持法治安警察法、あるいは行政執行法違警罪即決例のような法律をもってして、労働組合運動というものを非合法と規定して弾圧をする諸法規の中で取締りをし、その訓練とその常識で養われてきた警察官が多いのです。こういう人々には、これが正常な労働争議行為であるかどうかという判断はできないし、また実情に精通していない。きのうもその点をお認めになった、その通りなんです。このケースはその最たるものです。今の報告だけで明らかじゃありませんか。第一工場から第二工場に通ずる通路が直線コースでなかったということと、その間に労働歌を高唱しておった、旗をかついでおったということ、それがどうしていけないのです。それ以外にどこに事実がありますか、事実の問題についてもう一度御答弁を願います。
  9. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 事実の問題につきましては、私が先ほど申し上げた通りでありますが、何ならば地図をもちまして御説明してもよろしいのであります。第一工場はここにあるのであります。第二工場はここにあるのであります。この警備要員交代ということで、こう出まして、左のこちらに来て、こう繁華街を通って、わざわざここに来て、ここで二百名の行列をした人々交代——全員交代したのではなくして二百数十名のうち、最後部のものがわずかに二、三十人、交代ということできたのだから、交代しなければいけないのじゃないかということで来て残っているのであります。あとの二百人以上は、さらに第二工場から第一工場に戻って、しかも行列のやり方は当時の警察官が見ましたところ、単にピケ交代のために行くのではなくして、その実態が公安条例違反して行われた示威行進、こういうように認められたのであります。私どもはそういういたずら公安条例というようなものをもちまして正常な労働運動に対してどうこうというような考えは毛頭持っておらないのであります。当時の実情からいたしまして、これはやむを得ず公安条例違反として処置せざるを得なかったのでございます。
  10. 井堀繁雄

    井堀委員 今事務当局の御説明はお聞きの通りだとするときわめて明確になる。地図で示されたように、第一工場と第二工場の所在が明らかになる。それを直線コースをとらず迂回をしたということをもって、さらにまた旗をかついで労働歌を高唱したということが条例にいう無届デモだということで処罰をすることは妥当だといっている。ここで私ははっきりさせてもらいたい。一体千二百人の労働者ストライキを敢行した際に、その小さな町の中を直線コースをとらなければならぬ、迂回をしてはいけない、あるいは町中で労働歌を歌ったり、あるいは旗をかついで通ってはならないということになりますと、一体労働者労働争議工場の中以外は一歩も出られないことになる。出る場合には手続をしなければならない。この法律的手続は、さっきも言われている公安条例によると、四十八時間以前に届出をしなければならない。一体このような労働争議団体行動に対する制約はどの法律によって、労働関係において律せられているかを法務大臣から明らかにしていただきたい。公安条例はわかっている。
  11. 牧野良三

    牧野国務大臣 私はその点はわかりません。政府委員から適当に答弁してもらいます。
  12. 桃沢全司

    桃沢説明員 組合運動警察権との関係でございますが、もちろん工場内においていろいろの運動がされる、これは多くの場合問題にならないと思います。工場外ということになると、一般治安という観点からある程度労働運動制約を受けるということはやむを得ないところと思います。特に諸外国の例などを見ましても、一般交通権というのはやはり治安維持上大きな要素をなしているのでありまして、これとの関連において、たとえば行進とか示威とかいうものがある程度制約を受けるということもやむを得ないのではなかろうか、かように考えられる次第でございます。
  13. 井堀繁雄

    井堀委員 私のお伺いしておりますのは、一体ストライキの場合に——一人や二人のストライキではありません。千人以上の労働者あるいは万を数えるような労働者が、どこの場合でも工場の中だけで運動をやるということはこれは不可能なんです。ましてや二つ工場に分れたり、三つ工場に分散している場合には必ずその間に往復が行われるにきまっておる。そういう行為は今言う条例によって四十八時間以前に届けさせなければできぬかということを聞いておる。今の労働法の範囲ではそれはできるかできぬかということを明確に聞いておる。その回答を一つ伺いたい。
  14. 桃沢全司

    桃沢説明員 工場外においての労働運動がどの程度できるかということは、これは大体良識をもって決定さるべき問題だろうと思います。従って許されるピケ要員がある程度移動するということではこれは問題にならないと思いますが、先ほど山口政府委員からのお話もありましたように、ぐるぐる不必要のところを回るということ、これはやはり一般社会常識から申しましても、公安条例の対象になるという場合があってもやむを得ぬかと考えます。なお私の方は事実関係を詳細確認いたしておりませんので、その点取調べをし、特に条例等関係を研究した上で正確なお答えをいたしたいと思います。
  15. 井堀繁雄

    井堀委員 私はそういうことを伺っているのじゃないのです。今の労働法に対する政府解釈を伺っておるのです。労働者団体行動権というものの常識、こうあなたは言われました。何人の常識を言うのです。常識ということになれば労使関係の問題については目的意識ははっきりしているのです。その目的意識がどこにあって、その目的意識を達成させるためにはどうかということが労働運動に対する常識です。労働法に対する解釈上の問題については、あなたも御案内のように労働委員会といったような特別の機関を設けて、法律運用等に対する完全を期することにしておるということは、また警察官いたずらに労働問題に介入することをこういう手続方法によって阻止しておりますものは、常識というものが労働問題については警察官において不十分だし、また間違いを起しやすいからというところにあるわけなんです。今度のケースは、今あなたはぐるぐると言っておりますが、ぐるぐるじゃない、あなたの説明通りなんです。ただ直線に行くやつを大回りしているだけなんです。大回りすること炉なぜいけないのですか。労働者ストライキが起る場合に警察が一々ついて回っていて、そっちのコースは間違いだ、こっちのコースでなければいけないというようなことをなさるのですか。そこに常識というものがあるわけなんです。労働者団体行動というものは示威が伴わなければ意味をなさないのです。世論を喚起するためのプラカードがそうじゃありませんか。一体あなたの言う労働問題に対する常識は、だれがどこで判断をするのですか。そういうあいまいな御答弁をなさらずに、労働法限界においては団体行動というものの常識はおのずからきまっておるのですよ。どこでもやっておるじゃないですか。お葬式じゃあるまいし、お葬式だって威勢のいいお葬式は、お念仏を唱えて太鼓をたたいていくお葬式もあります。これは事実問題で、私は極端な例だから申し上げておるのです。このことをもしあなた方が是認されるようなことになれば、あとに控えております問題がある。それは政府は官公庁に対して今しきりにどうかつをやっておる。正常な労働争議をやらせようとしておらぬ。雇い主側立場に立って政府治安閣僚懇談会をやる。やるかやらないかわからないストライキの前に取締りをやるなんて——違法があったと遂にやればいい。要するに政府考え方をこういう事実の問題で明らかにしたいのです。あなたは今のように言い張るなら私はもう一ぺんはっきりさせたい。これは公安条例で取り締る方針ですか。
  16. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 公安条例規定してございます集団示威運動でありますれば、その規定に従いまして処置をいたします。
  17. 井堀繁雄

    井堀委員 法務大臣に伺いますが、今のお言葉ではっきりいたしました。公安条例違反すると思えば、労働組合法による団体行動はこっちの法律で正しいという常識があっても取り締ると言っておられる。この方針政府はおとりになる考えでありますかどうか、法務大臣から責任ある答弁を承わりたい。
  18. 牧野良三

    牧野国務大臣 御質問の御趣旨がよくわかりました。法律は全般的にこれを許しておる。それについてはストライキを実行する場合には条件を定めておる。その条件内容に入ると、条例の支配を受ける、こういうことになっております。直線コースでなければ大体ならぬでしょね。それを上手に迂回コースをとってくると四十八時間の適用を受ける方が——常識と言ったのじゃない、良識と言ったのです。そこでそういうことは、役人と摩擦を起さないように上手にやろうじゃありませんか。そこで今のあなたのおっしゃる通りに、警察官には、古い戦前の知識しかない人たちがあって、何だか無理なことをするおそれがありますから、これからはこんな問題に対しては、いい教訓を受けましたから、労働当局と私どもとは一緒になりまして、あやまちのないようにやりますから、過去のことはこの程度でお許しを請います。
  19. 井堀繁雄

    井堀委員 私は、牧野さんのようなお考え方を持った警察官であってほしいと思うのです。ところが不幸にしてそうでないのが事実でありますから、警察労働争議に直接介入してはならぬということで、はっきりした方針を貫いていただきたい。そうしないと、今のように同じ事柄二つ三つ法律でもって判断することによって違った答えが出るのです。十分今後御注意をいただきたい。ことにあとには政府雇い主立場をとる公務員あるいは公企業体との間に労働問題がまさに発生しようとしているわけです。そういうときに日本の、雇い主立場をとる政府に今の警察当局答弁するような考え方施政方針の中にあったとするならば、これは重大な事柄です。どんなに弁解したところで日本民主主義はここからくずれます。こういう点については私は非常に時期も重大であるし、こういう事実問題こそはっきりした処置をとることが大切だと思いましてお尋ねをしておきました。しかし問題は残ります。これは時間の関係でこの程度にいたしておきます。  次に、これは外務大臣法務大臣、おそろいでお答えを願う方が適切であろうと思いまして外務大臣出席を求めましたところ、外務大臣は御病気のよしで、きょう午前中はまだ出席ができない。午後になればあるいは出られるかもしれないという御回答でありましたので、法務大臣に先にお尋ねをいたしたいと思いますが、事件はこういうことなんです。福岡県の板付基地に働いております労働者と軍の間に発生した事柄であります。昭和三十年十二月の二十二日から起った問題でありますが、その事件概要を簡単に申し上げますと、十二月二十日の午前十時ごろ、春日原資材事務所、これは基地内にある軍の事業場であります。ここに板付基地特別調査事務所、これを通称OSIと名づけておりまして、このOSIに所属いたします米軍属二名と日本人の通訳一名が、執務中の日本の労務者に対しましてきびしい思想調査をやっております。あるいは労働組合行動に対する詳細な調査取調べをい灯しておるのでありまして、その取調べ方が、非常に大きな、日本国民人権をそこなうような措置であると思われる事件であります。それを申し上げますと、二十日の午前十時に執務中の吉村孝雄君外三名、さらに同日の午後一時には春日原モータープール林源四郎君外一名、さらに二十一日には同じく春日原の第三食堂に勤めております鳥井啓之君、さらにモータープール、あるいは第六食堂、あるいは司令部に勤めておる人、こういったように十二名の人々について次のようなきつい調査尋問をいたしております。すなわちこの人々は全駐労の組合員でありますが、その労働組合の一つの事業としていろいろな文化的なグループがあるわけであります。そのグループコーラスの部のメンバーを一一、今言った人々にきびしく尋問をしております。そしてそのメンバーをみんな答えさしております。あるいはひどいのになりますと、その曲目の一々に対して取調べをしております。あるいは練習の方法について、あるいはコーラスの団に加入する動機や、あるいはその団体との交流関係などについて詳しくきびしい態度で尋問をいたしております。さらにこの事業場に働いておる人々映画鑑賞のためのグループを作っておる。これは各地にありますが、その映画鑑賞会加入メンバーや、あるいはその協会の行動内容その他についてきびしいせんさくをいたしております。さらにまたこの連中は幻燈会を持って、お互いの教養あるいは娯楽のための運動をやっておりますが、その幻燈会の結成に対しても一々こまかい尋問をいたしておる。それから読書会、これは一般にどこでもやりますが、その読書会に使ったテキストの内容について、あるいはその読書会方法メンバーを一々、あるいは講師を招けばその講師の名前から思想の状態について、さらに海べでありますから、その海べで海浜キャンプ祭というのがあったそうでありますが、そのキャンプ祭に参加した人員やあるいはその動機に至るまで調査をしておる。さらに支持政党やあるいは個人の思想的傾向についてきびしい取調べをしておる。こういうように並べて参りますとおわかりであろうと思いますが、普通、一般労働運動の中で言います文化活動あるいは教養のためのいろいろな計画的な教育運動であります炉、そういうものについて一々今申し上げたような調査をしたり、あるいは支持政党について雇い主側の権限を持つものが労働者に職権をもってこういう取調べをするということは、これは明らかに国内法で言いまするならば、思想の自由やあるいは教育の自由や団体行動の自由に対する干渉であることは疑いをいれないところであります。これが基地内において行われるというところに特別なケースがあるわけでありますが、こういうことは一体今の日本労働者にとってやむを得ないことである、あるいは当然こういう場合においてもわれわれの思想の自由あるいは教育活動の自由あるいは団体行動の自由というものは守らるべきものである。守らるべきものであるとするならば、こういう事実は一体許さるべきものであるかどうか。まずこの点について法務大臣見解お尋ねいたしておきたい。
  20. 牧野良三

    牧野国務大臣 お答えをいたします。お答えに入る前に申し上げますが、外務大臣は義足のつけ根が傷をしましてそれが化膿しておるらしい。だからきょう午後に出られるかどうかと思っております。今のその問題はやはり外務大臣が出ないと適切な答えができないと思いますが、井堀委員の言われるような事実だとすると不愉快なケースですね。こんなことがあっちゃいかぬと私は思います。そこで私の手元へ事実の報告がございます。それによりますと、昨年の十二月二十日、板付基地において駐留米軍が同基地の駐留軍要員九名に対して、同人らが加入しておる全駐労板付支部文化部の活動目的、それへ入会した動機等について質問調査し、さらに本年一月の二十日に今おっしゃった通りに、同基地において右の文化部員二十二名に対して、保安上の理由によって無期限出勤停止処分にしたというのです。これはどうもこの内容はおっしゃる通りちとおかしゅうございますね。こういうものに対しては相当びしびしした態度をとらないと、基地の問題だからといって、私はそう簡単に見のがしちゃならぬと思います。ところで、私の方の取扱いといたしましては、刑事上の問題を生ずる余地がないので、この点はちょっとしっかりやる余地がない。保安上の必要に名をかりて不当な労働行為があるとすると、やはりこれは法律上の問題です。そうしてこの点については労働委員会の問題になろうと存じます。そういうふうで、一つ事実をはっきりして、そうして不当なことをやっているなら相当しっかりした態度を向けたいと思います。この点は外務当局が来ましたときにさらに打ち合せて、答弁の補足を請うことにいたします。
  21. 井堀繁雄

    井堀委員 基地の問題につきましては、行政協定の解釈上の問題についてたびたび問題を起しておることでありますから、これが特別のケースというわけではないと思うのです。私がここで法務大臣お尋ねをいたしましたのは、この行政協定の中では当然日本の労務者を使用する場合には日本労働法を守るという約束をしておるわけでありますから、その約束の上からいたしますならば、当然国内法によってこういう問題が犯罪の対象になるのではないか、こういう意味で私はお尋ねしたわけでありますが、しかし基地内だからということで、このケースでなく、他の場合においても、保安解雇というような問題についてたびたび問題を起しております。前回も外務大臣に、私は治外法権を認めるならばともかく、認めないとするならば、この行政協定を正しく解釈して、当然日本労働法規によって、日本の国民の権利が守れるような措置を講ずべきであるということを要望いたしたのに対して、外務大臣は、その通りいたしますということを確約いたしているのです。にもかかわらず、また再びこういう問題が起りましたので、実は日本政府一体軍に対してどのような措置をおとりになったかをただすことによって、この問題の結論は明らかになると思いまして、外務大臣に、さらに法務大臣と同時にお答えをいただこうとしたわけであります。そこで今法務大臣の御答弁のように、明らかに国内法によって、日本労働者人権が不当にじゅうりんされる疑いの濃いものであります。こういうものが国内問題でありますならば、私はこういう事態にまで発展しない、しかも解雇という事態に発展するということは、これは先ほど来言っておるように、常識としてあり得ることではないと思うのです。これが基地内において発生しているだけに、われわれといたしましては、この機会にこういう問題の解決を明らかにするために政府当局の所信を伺っておこうと思ったのです。あなたの所管ではないと言われればそれだけでありますが、しかし一応あなたも閣僚として、こういう事態が発生して一しかも行政協定の内容についてあなたも御存じだろうと思う。明らかに行政協定の前文の後段に、安保条約に基く各自の義務をこういっている。「両国民間の相互の利益及び敬意の緊密なきずなを強化する実際的な行政取極を締結することを希望する」条約文書でありますから、ややこしいのでありますけれども、この意味は何人にも理解できるように、不当に日本労働者の権利がじゅうりんされるようなことは、この前書きからいってもあり得ぬし、さらに条約の後段において、基地においても労働三法が当然守られるという約束も明らかにされているわけです。こういう問題は、その条項からいけば、即座に結論が出てくるものである。すなわち解雇は不当であり、こういう思想調査などというものは、当然人権を侵害する行為であるということは明らかなんであります。こういう事実については、政府は責任をもって日本国民人権を守る義務を有しすまから、即刻解決されるように、至急にそういう措置政府の機関に促進されんことをこの機会にきびしく要求いたしまして、この問題を打ち切ります。
  22. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 午前中はこの程度にとどめ、午後一時半より再開いたします。    午前十一時五十四分休憩      ————◇—————    午後二時七分開議
  23. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 休憩前に引き続きまして会議を再開いたします。  労使関係労働基準及び失業対策に関する件について調査を進めます。井堀繁雄君。
  24. 井堀繁雄

    井堀委員 先日は労働大臣に雇用の問題でお尋ねをいたしましたが、続いて賃金政策についてお尋ねをいたしたいと思います。  倉石労働大臣は、去る三十一日の本会議で、わが党の代表質問に対しまして、賃金問題に触れて御答弁がありましたが、その中で、賃金問題は、単に個々の企業における労使関の力関係の問題としてだけでなくて、国民経済全体の問題との関連において考えなけなければならぬといった意味のことを御答弁なさった。まことにその通りだと思います。しかし、ここで、労使関係の直接の問題だけではなく、国民経済全体に影響を持つことは今さら言うまでもないのであるが、一体国民経済全体の関連においてこの問題をどう処理なさろうとするかということを明らかにする義務があるはずであります。この点については、分配問題についてはかなり多く言及されたようであります。しかし、先日も雇用の問題で言及をいたしましたように、鳩山内閣の施政方針三つの大逆な主張というものは、分配問題もさることながら、むしろ附加価値生産の問題に対する事柄を明らかにしなければ、経済五カ年計画に対する賃金問題というものは全然無関係のものになってくるわけであります。でありますから、この問題は労働大臣の重要な政策の一つになってくると思いまするから、以下具体的にお尋ねをいたそうと思うのでありますが、そのお尋ねをいたしまする前提として、一体国民経済全体にどのような関連を持たせようとするかということについていま一度明確に御方針を伺って、それから個々の問題をお尋ねいたします。
  25. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 賃金問題が国民経済全般に及ぼす影響のことについては、今井堀さんのお話通りでございまして、こういう点をわれわれ重視していかなければならないと思っておりますが、私どもの見るところによりますれば、申し上げるまでもないことでありますけれども、インフレの時代には幾ら名目賃金を上げましても、物価の高騰がそれを追っかけ、あるいは追い越していくのでありますから、名目賃金を上げられましても実質的な労働者の生活改善にはならない。私どもはそういうことを最も警戒いたしまして、二十九年度予算以来思い切って緊縮財政をやりました。この緊縮財政をやりましたゆえんのものは、日本の経済力を国際競争に何とか勝てるところまですみやかに物価を安定させようではないか、こういう考え方から、諸般の政策を実施に移して、昭和二十九年度及び三十年度の予算においては御承知のようにいわゆる緊縮財政をやりました。その結果、御承知のように物価は安定して参りまして、輸出も増進された。しかしその輸出の増進ということについては、もちろん昭和三十年度においては外国の好景気ということも大きな影響はありますが、それらと相まって輸出のバランスは非常に改善されてきた。そこで私ども考えますのは、そういうときでありますから、この際一つ日本の経済力の底を深めるように蓄積資本を増そうではないか、そういう段階であるから、生産量が増加し、利潤率が上回ってきたからということで、今すぐ賃金をふやすというような考え方はしばらく待つ方がいいではないか、こういうように考えておるわけであります。すなわち今申し上げましたような形で、さらに今年、三十一年度の下半期に果して三十年度のような欧米の好景気を期待できるかどうかということについてはなかなか疑問はありますけれども、そういうやさきでありますから、私どもとしては国民経済の底力をつけるために、もうしばらく一つみんながしんぼうするようにしようではないか、こういう考え方で、当面の賃金問題に対処していこう、こういうわけであります。
  26. 井堀繁雄

    井堀委員 今のお答えは、前回の三十一日の本会議でもそのようなことをちょっと触れております。それから予算編成の方針の中にも、そういうようなことは他の閣僚からも明らかにされております。私が今労働大臣お尋ねいたしたいと思いますことは、もっと労働大臣の所管に深い関係がある、といいますよりも、労働大臣の責任において答弁をしていただかなければならぬ事柄についてであります。それは、現在の日本の賃金の実態というものは、統計の上で正確なものを把握することに多少の困難と疑問はありますけれども、大勢を捕捉することには事欠かないと思うのであります。そこで現在、統計上の問題で、われわれと政府との間に食い違いを生ずるようなことがあってはならないと思いますから、この問題を先に明らかにしておきたいと思います。政府の用いております統計の大部分について一応目を通したつもりであります。そこで、これは本会議で、大蔵大臣あるいは高崎長官の演説の中にも言及しておるのでありますが、国民生活の安定をある程度楽観的に見ておられる。この点については、日を黒と言いくるめようとする深い魂胆があるとすれば別でありますが、私はできるだけ善意に理解してお尋ねをいたそうと思うのであります。と申し上げるのは、二大政党の対立の時代を作っております今日は、野党、与党それぞれの立場において相違こそあれ、お互いにやはり日本の現状を一日も早く困難から脱却せしめて、経済の自立はもちろん、名実ともに独立国として、進んでは憲法に掲げております理想のように、国民のすべてに健康で文化的な生活を与えるための努力を払わなければならぬことは申すまでもないと思うのであります。そのために私は政府にあやまちなからんことを念願いたしておるわけであります。かような立場で私どもは責任ある主張を掲げ、かつ政府の失敗なからんことを念じながら、事実問題を明らかにしていきたいと思うのであります。  そこで、今あなたの御答弁がありましたように、日本経済を建て直していこうとするためには、底の浅い日本経済に対しててこ入れをしなければならぬ。すなわち経済基盤の強化をはかろうということについては、私どももいささかも疑問を抱くものではない。しかしその方法において問題があると思うのであります。その点についてお尋ねしようと思う。  そこで、そのことについて賃金問題がまっ先に出てくる。これは今ちょうどなまなましい労使の対立の形において論戦が展開されております。一方は総評、一方は日経連、この二つ団体の主張が今世論の上に浮び上っておるようであります。こういう問題もあることでありますから、こういうものに対する私ども見解も明らかにする時期に当面しておると思います。聞くところによれば、明日、自由民主党においてもこれに対する声明をなさるそうであります。わが党においても、この点に対する態度についてたびたび声明いたしておるところでありますが、この問題を国民に十分理解してもらうためには、もっと事実問題について、政府の的確な見解なり、また野党である社会党の主張なりを明確にする必要があると私は痛感する。そういう意味で事実問題を一、二出してみたいと思います。  私の手元で調査いたしました賃金の実態を見ていきますと、政府の用いております国民所得の分配の統計におきましては、全体的に勤労所得の上昇しておることは間違いのないところでありますが、今取り上げられております賃金、すなわち働いてその労働の対価として得た収入で生活をしていく人人の立場——これは国民の大半を占める人々であります。しかもこれは、善意な国に対する奉仕をしておるのであります。その労働の質と労働の量によって日本経済が左右されておることは言うまでもないのであります。ことに国際的なきびしい競争の一中においてこの問題が取り上げられてきておるのでありますから、そういう意味で一つ労働大臣からも、国を思う立場として、歯にきぬ着せぬ的確な御答弁をいただこうと思うのでありますが、今までのいろいろな統計の中でやや信憑力の高いものを二、三あげてみました。それによりますと、平均所得というものはやや正確なものが出ております。それも三十人未満の零細事業場においてはおおむね推定に基くものでありますからここに一つの大きな盲点があると思うのでありますが、それは一応あとで論ずるとして、三十人以上の事業、における賃金の実態を見てみますと、非常に憂慮すべき状態にあると私は信じます。それは大蔵省の国税庁がここ九、六年続けておりまする民間給与実態調査というものは、私は事実につい工かなりつつ込んだ調査をされておるものとして、非常に期待をかけてこの統計を分析してみておりましたが、その中で小額所得者に対する統計が出ております。これを見ますると、非常にこれは恐るべき現象だとあります。すなわち調査対象六百二十万に限っての数字でありますが、その六百二十万、事業場におきまして五千八百四十三の事木場を調査しておりますが、日本の統計で非常に不備であります三十人未満り小規模事業場を私は例にあげてみましょう。この統計に従って見ていきますと・月収千円に満たないという人々がかなり多い。これは政府のいう、雇用の問題で論議したときの、こういう人たちも生業を持っておる、失業者じゃないという事例になるわけですが、その人員がなんと二万七千をこえる。それから三千円以下千円以上の者でありますが、十三万四千五百二十四人、さらに四千円から五千円未満の者、これが四十一万八千九百四人、六千円から七千円未満の者、これが四十一万六千四百八十三人、この給与の階層をさらに上に上げて参りましても、こういう数字をずっと見ていきますと、おおむね小規模事業場における賃金収入というものは、一体その収入で生活をささえるどころではないのです。これは生活保護法のあるいはニコヨン以下の実情であることは間違いがない。これは全く今の労働行政の中から目こぼしされておる。放置されておる。ひどいのはこの中から賃金未払い問題が起っておる。実に残酷な政治といわなければならぬと私は思う。こういうような実態が明らかにされないで、賃金問題を論ずるわけにはいくまいと私は思う。こういう点についてただ私は一例をとっただけでありますが、きっと労働省はその職責からいって労働者の生活を保護し、労働条件のためには基準法の例をとるまでもありません。人たるに値する労働条件を守らなければならぬ任務を課せられておるわけであります。こういう実態が現実である限りにおきましては、まず賃金問題としてはこういうものに対してどうするかという措置は、これは政治問題になる前に行政的な責任の範囲内において私は解決すべき問題だと思う。これに対する何か措置をお考えになっておるかどうか。また今まで努力されたその結果がどうであったか、あるいは今後どうされようとするのかといったような問題について、一応御意見を伺って順に進んで参りたいと思います。
  27. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 中小企業の問題につきましては、その企業自体の経済が非常に弱体であることは、これはもう歴代の内閣も頭を悩ましておるところでありますが、中小企業というようなものは、その間において特殊の労働問題といったようなものを別に考えなければならぬので、働く人と経営者とが全く同じような立場に立っておるのでありまして、今あなたの御指摘になりましたように、いわゆる中小企業の弱小産業の方では、非常に今御指摘のようなものもたくさんあることをよく承知いたしております。私どもといたしましては、従って三十一年度予算の編成に当りましても、この中小企業をどうやって維持し、さらにこれを立っていけるようにするかということについては、政府全般として非常に気をつかっておるところでありますが、労働省の分野といたしましては、御承知のように中小企業の相談所というようなものを設けまして、そうしてひとり労働問題だけでなくして、中小企業をどうやって維持し育成していくかということについて私どもがともどもに相談をして、これを守っていくようにいたしたい、こういうことでございまして、今のお説のように、中小企業に働いておる人々の低賃金であることはよく私どもわかっております。
  28. 井堀繁雄

    井堀委員 今私が大臣の御答弁をいただこうと思うことはそれとは違うのです。事実については御存じないはずはないのです。そのために大ぜいの人人にお骨折りを願っておるわけでありますから。またあなたの方から出されております統計書なんかでも明らかになっております。ただここで申し上げておきませんといけないことは、何か中小企業の問題は特別の問題のようにおっしゃられたのですが、遺憾千万と言わなければなりません。日本の労働問題の大半はここにある。質的に見ても、量の上から見ても非常に重大なのであります。私は労働行政というものはまずこの問題と取り組んで、その上に立って諸般の問題を判断するという行き方をして間違いないと思う。それ・は数の上から申し上げますならば、あなたの方の御調査になっております統計資料の中から出てくるのであります。が、五百人以上の事業場の数と、さらにそれを分類いたしております統計から見ていきますと、少くともこの統計だけから見ても、四八%から五〇%が、統計によってその程度の違いがありますが、労働者の数において中小企業、弱小企業といわれまする百人未満の事業場。これを小企業といい、中小企業という人もありますが、また今中小企業という定義についてはまちまちでありますけれども、中小企業等協同組合法を見ると、三百人未満の事業場を中小企業と規定しておるようでありますが、これになりますと、事業場においては九九%、その労働者においては七八%。でありますから三百人未満の事業場労働者の問題を取り上げていけば八割方の問題が解決するということになるわけであります。事業場の問題からすれば九割九分で大部分であります。でありますから、日本の中小企業対策ということは特別のワクではなくて、日本の産業経済の問題のすべてといってもいいくらい大きなウェートを占めておるのであります。労働問題といたしましても同様のことが言えるのでありまして、これを特殊のワクで解決しようなどということは、労働行政をなおざりにするおそるべき見解となるのであります。全くそういうお考えじゃないと私は善意に理解してお尋ねするわけであります。そこで問題は、今日の賃金問題は、量的に見て多の日本労働者事業場、それの雇用の問題のときにも分析をいたしましたように、賃金の場合においてもこの事実を正確に把握して、その事実と取り組まなければいけないと思うわけであります。今の御答弁でも明らかになりましたように、また政府の経済五カ年計画の内容を見ましても、この問題が一向取り上げられていない。一向取り上げられていないということは言い過ぎかもしれませんが、この五カ年計画の中におけるウエートというものはほとんど用をなしていないという状態であります。こういうものをもって日本の国政が論ぜられ、またそういう土台の上に予算が組まれ行政が推し進められたのでは、日本の将来は危ないものです。こういう意味で、もっと真剣にこの問題を取り上げるべきじゃないか。ことに労働大臣としては、この点を強調さるべきではないかと私は思います。そういう意味で、ここにあります三百人以下の中小企業というもののワクの中で、一体賃金問題をどのように扱うか、その人々の賃金収入というものは、一体生活を維持できる収入であるかどうか、この点に対する労働大臣の責任ある見解を、もし数字があるなら数字でお答えいただいてもけっこうだし、数字がめんどうであるならば大体の見通しでけっこうでありますから、その点のはっきりした見解を承わっておきます。
  29. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 井堀さんのお話、まことにごもっともでありまして、先に数字のことについては、政府委員から御説明申しまして、あとで申し上げます。
  30. 堀秀夫

    ○堀説明員 労働省の統計調査によりますれば、ただいまお話のように、最近大企業と中小企業間の賃金較差が増大しておることは事実であります。毎月勤労統計によりますと、規模別の製造業の賃金較差は、二十六年におきまして五百人以上を一〇〇といたしました場合、百人以上五百人未満の中事業場におきましては七九・五、それから九十九人未満の小事業場におきましては六一・七であったのでございますが、それが昨年の一−十一月——これはとらえ得る最も新しい数字でございますが、その平均を見ますと、五百人以上を一〇〇といたしました場合に、中の五百人未満百人以上の事業場の賃金が七四・九、九十九人未満は六〇・五というように拡大しつつあることは事実でございます。このような状態でございますので、経済五カ年計画等におきましても特に中小企業の雇用の観点、あるいは民生安定の観点から中小企業対策の拡充強化をはからなければならないという工合に、節を起して述べておる次第であります。
  31. 井堀繁雄

    井堀委員 私は賃金較差の問題を論ずる前に、先ほど中小企業のもとに雇用されている労働者の数を申し上げた。ですから、上の方はとにかくあとにして、今当面しております生活費を割るような低い賃金がこのような広い範囲である、この実態をどうするかということを見たわけであります。統計はけっこうであります。あなたの言われたその統計の根拠については、あとでいろいろ議論をしたいと思いますが、もう少し正確のものを日本の労働統計に生かさなければならない。どうもいけません、最近のは作為的な政治的な、政策的なものがややともするとのぞこうとする、第一大臣統計調査部長を並べて聞くのは薬のきいたことではないが、数字は正直でなければならない。その数字が曲っている。こういうことは大事なことでありますから、統計調査部長はあまり保守党の政権の上に特殊の意思を持つものが入らぬようにお願いしておきます。今あなたの御答弁のように賃金較差がずっとひどくなっているということよりもっと重要なことは、基準局長も来ておりますから聞いておきます、労働基準法を読んで見ましょう。「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。」というように書いてあります。労働基準法を改正しようと思っているかもしれませんが、これは私ども立法すると遂にいろいろ委員会に出たのでありますが、絵にかいたもちにならなければいいということを申した。理想としてはなるべく高い方がいいが、現実に近づけるようにしろ。今日の労働条件の中でも一番大遂なウェートを占める賃金問題が今のようになっているということは、労働行政をあずかるものとして緊褌一番考えなければならぬ。午前中私は未払い賃金の問題について労働大臣にただしておいた、これもうかつ千万これから法律をこしらえて未払い賃金の法をつくろう、これは法務省の方は多少ゆっくりしていていいかもしれませんが、監督行政の方では賃金未払いの方ははっきりさせなければならない、こういうような状態をなぜ私が申し上げるかというと、賃金対策はここに中心を置いてその問題をどう解決するかということについて御用意がないようでありますけれども、なくても、これからでもおそくありません。三十一年度の予算の中には全くこの問題が入っていないということを確認されたものと思う。これは大ごとです。そこで倉石さんにお尋ねいたそうと思いますが、あなたはこういう賃金の非常に低い状態で日本経済の危機を切り抜けて、少くも五カ年計画を遂行して、その目的である輸出貿易の振興をはかるということでありますが、こういう低労働条件というか、雇用の状態においては不安定であります。こんな賃金の状態においては食うや食わずであります。そういうようなところに一体健康な労働力を期待できますか。近代文化を誇る先進国との市場競争において、こういう劣等条件の中で一体生産性を期待することができますか。労働省は生産性に対する予算をおとりになっているようであります。生産性に対する統計を拝見して驚きました。四業種の生産性の問題を統計の上に表わしている、なによりましだというようなものです。そんな大きいところの統計じゃない。今いう七八%を占める日本経済を背負って立っております。この状態の中に生産性の問題を取り上げてこなければならない。一体こういう点に対する生産性向上運動に対する労働大臣の所見を伺いたい。
  32. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 お活の中小企業につきましては先ほどから申し上げているように、それはもう歴代の内閣が頭を悩ましており、なおこれは日本産業の大部分を占めている特殊の事情にあるのでありますから、あらゆる角度から従来も検討を続けて参ったのでありますけれども、私どもといたしましては、やはり昭和三十一年度の予算の編成と五カ年計画を樹立するに当りまして、まずこの中小企業について一番のネックになっているところがどこにあるかということで、たとえば親会社の支払いが非常に遅延しているようなものについては、今度通産省でその支払いを促進するような立法措置をとろうといたしておりますし、また金融面については特段な措置を講じようといたしていることは御承知の通りであります。金融の面において非常に困難をしている。ちょっと賃金不払いのお話がございましたが、そういうような関係もありますので、昨年末に私の方から約四億円でございましたか労働金庫に融資をして、そういうものを手伝いするといったようなことも一助になるであろうと存じてやって参ったのでありますが、なお中小企業に対しては・やはりその業者の協同体といったようなものを作ることによってお互いに防衛し合う、産業別に防衛し合うこともいいのではないかといったようなこともどうやって法制化していくかということを目下政府でも検討しておるようなわけでありまして、そういうあらゆる角度から中小企業の維持振興については力を入れておるわけであります。
  33. 井堀繁雄

    井堀委員 この問題は非常に悩んでおいでになるという、その通りだと私は思います。ただしかしその悩みがどう政治の上に具体化してくるかというとが問題なのであります。一挙にこういう大きな問題を解決づける道があろうとは私も思いません。それは全体の努力に待たなければならぬということはその通りであります。そこでそういう状態の前に政府は真摯な態度で臨まなければいくまいと思うのであります。労働問題がこういう日本の背景を別にして起り得るはずはないのです。絶えずこのことを考慮の中に入れていろいろな現象にそれぞれの処置を講じていかなければならぬと思うのであります。私はもっと賃金の問題について申し上げたいし、また私ども方針もあるのでありますが、正直にむずかしい問題だとおっしゃられておりますので、これ以上追究しようとは思いません。しかし十分考えて下さい。それから近く私は中小企業対策については別な関係お尋ねをするわが党の方針もありますので、これはもうそこに譲って両々相待つことにいたしますが、しかしこれについてはただ単にここでむずかしいからということでなく、どういう形かで頭を出してこないと、労働行政に対しては国民の信頼を失墜すると思うのです。労働省の予算はから回りすることになる。税を下げることも大事だけれども、その零細な、国民の血のにじむような税金を効率的に使用してこそ、私は予算を公正に使用できることになると思います。この点では労働省の予算は非常に貴重なんです。各省いずれもそうでありますけれども、特に労働省に職を奉ぜられる人々の御努力を私は特段と期待するわけでございます。  そこで、これは各般にわたることでありますが、次にもう一つ具体的な点をただしておきたいと思います。外国は一品に日本のチープ・レーバーを非難しておりますけれども、この点はやむを得ぬのであります。そういう統計がまあこの場合には幸いになっておる。三十人未満の事業場の労働状態なんていうものは外国の人たちが知るよしもない、だから日本の上の方の都合のいい統計だけでそれを見てもチープ・レーバーだ、こういっておりまするが、三十人未満の今私がお尋ねしたような問題を出した日には、こんな状態で世界市場に競争されてきたらソーシャル・ダンピングどころじゃないですよ。しかし幸いにしてというか、日本にとっては不幸でありますけれども・そういうチープ・レーバーと長時間労働の中で世界の競争に勝つなんていうのは昔の夢であって、高い技術と能率の上に期待した生産が土台になって、背景になって競争が行われなければならないことは申すまでもありません。ことに私の申し上げたいことは世界の全体の動向でありますが、これは倉石さんもご存知だと思いますし、説教になりますからやめときますけれども、世界のいずれの国におきましても、イデオロギーで申し上げることはいろいろな誤解があると思いまするが、古い形の利潤追求の生産ではもうだめなんですよ。国民全体の立ち上りの上に競争しようという、ニュー・ディール政策の中にも出ておりますし、あるいはフランスの新しい経済政策の中にも出ております、資本主義の国々においても今日はやはり公益優先の立場で企業を考えていることは事実なのであります。ところが残念なことは日本の企業は非常に封建的なのです。この点労働大臣はどういうふうに見ておいでになるか。午前中私は具体的な事実をあげてお伺いしましたが、ちょうどあなたは御不在でありました、しかし昨日もちょっとやりましたから御案内だと思・いますが、日本の経営者というものはまだ近代資本家としての労働管理をやる熱意を  持っておる者もなんぼか現われてきておりますけれども、実態をどう把握するかということが大事だと思うのです。そういう点で賃金の形態の中にそれが出てきております。これはもっと基準監督局長が考えなければならぬ問題だと思います。午前中ちょっと言いました埼玉県の松山事件の例を申し上げましょう。一方の工場労使関係が非常にうまくいっていたし、千二百人もおりますから大きい口の工場です。そこの重役専務は地労委の委員をしておられて労働法に対してはよくわかっておられる。そこの工場で年末手当の要求をしたのに対して、越年手当は困る、賞与でなければいけない、だから賞与なら出してもいいが越年手当は出さないということで、団体交渉が決裂した。これとよく似通ったものが、あなたの三十一日の御答弁の中で、公務員のベース・アップはいかぬ、定期昇給は認めると言っておられますね・これは私の見方が間違っておるか知らぬが、どうもこうくっついてくるような気がいたしますけれども、その点に対してあなたの御見解をここで明らかに聞いておきませんと、こういう質問をしていく際に、あなた自身が封建的な労務管理を考えているとするならば私の議論の進め方を変えなければならない。私はあなたは進歩的な近代的な感覚をお持ちになっておいでになる方だ、こう日ごろから思って尊敬しておるものだから、間違っておるといけないと思いますので、この点を一つ明らかにしていただきたい。
  34. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 最初のお話はまたあとへ続くのだと思いますが、公務員のベース・アップのことについて私が申し上げたことに繰り返してお尋ねがあったのでありますが、今ベース・アップをしようということにお答えして、ベース・アップに賛成すれば進歩的だと言われるならば、私はこの際は進歩的でないようであります。私ども考え方によりますと、この前ベース・アップをいたしましたのは二十九年の一月でございました。人事院はその前年に勧告いたしました。それで二十九年の一月にベース・アップをいたしましてからのCPIその他のものを検討いたしてみますと、現在でベース・アップをすることは適当ではないではないか、こういうふうな結論が出ましたので、それにまた給与関係を預かっております人事院もべース・アップをなすべしという勧告をしておられません。ただ昨年末の〇・二五を支給せよいう勧告でありましたから、私は率先してこの勧告を尊重すべきだと主張いたしましてその通り実施いたしましたが、ベース・アップのことについては勧告もありませんし、それについていろいろ資料をもって検討いたしました結果、現在の段階ではベース・アップをする時期ではない、こういうふうに考えて、三十一年度予算には昇給原資だけ確保いたしておこう、こういうわけであります。
  35. 井堀繁雄

    井堀委員 それに関連してもう少し−具体的にお尋ねいたします。今度の定期昇給に対する予算の中にどの幅を見込んでおいでになるかということ、それから今年は五カー年計画の初年度ですが、その初年度の中で公務員の問題を含めて、賃金、給与の上昇率というものをどの程度が妥当だとあなたはお考えになり、またそれが具体的に実行できる限界というものをあなたはどういうふうにお見込みになっておるか、この点についてちょっと伺いたい。
  36. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 これは新陳代謝もございますし、三十年度は御承知のように行政整理の直後でありまして、割合に公務員の新陳代謝はございませんでしたが、今年は昨年よりは少しあるような模様であります。そういうことも・各省の調査をいたしまして、大体四%余りの昇給原資を確保いたしたわけでございます。
  37. 井堀繁雄

    井堀委員 これはあといろいろ幅も必要であろうと思いますので、あまり追及することは避けますが、今度あなたが給与担当大臣になったことには私は感心しないのです。実際は給与担当大臣と労働大臣とは別にしなければいかぬと思うのですが、給与大臣というものはやはり雇い主の利害関係を代表することになる。労働大臣は労働省設置法の中に明文化されておりますように、労働者の生活の問題はもちろん、それが広い意味で国民経済に貢献するような方向をとるということになるのでありますから、いわば労働者側の利益を擁護する役所の長であります。それが雇い主側立場をとるとなると、雇い主の方はよかれあしかれ立場上分配問題については反対側の立場に立つわけですから、この点に対するあなたは矛盾をお感じにならないかどうか、あるいは勇ましくそこを引き受けられておやりになろうというのか、これは非常に大事なことでありますから、この点に対するあなたの御見解を伺いたい。
  38. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私は自分が閣僚として能力のない男であることをよく自覚しておりますから、二つ三つも仰せつけられるたびごとにお断りいたしておるのであります。労働大臣の給与担当はもちろん非常に適当ではないと存じますが、これも国の命令とあればいたし方がございませんが、大体民間産業の使用主と違いまして、私は同じ使用者の立場と申しましても、政府すなわち国民でございますから、政府が独自の考えというものを——これはなるほど形の上では政府をあずかっておるものが意見を決定いたしますけれども、その背後にはやはり八千万の国民を代表して行政を担当いたしておると思っておりますから、そういう立場で厳正公平に、とらわれないようにやっていくつもりでありまして、労働大臣としての立場を混淆しないようにやっておるつもりであります。
  39. 井堀繁雄

    井堀委員 今の問題は非常に重要だと思いますから、もう一言伺っておきましょう。今あなたの私に対するお答えでは、とり方によっては別な意味が一つあるようであります。というのは、労使関係が民間のような営利企業とこういう公法人のようなものとでは、これは公益のための国の機関でありますから全く違うと思う。その点におきましては私は別な見解を持っておりますが、とにかく雇主を政府とするならば国民すべてが雇い主である、営利企業ではありません、またそうありたいと思う。公務員という定義の中にもあるように、役人は国民全体に奉仕する義務がある、その奉仕する者の長です。そういう意味では私は労使関係というふうに持っていきたくはないと思う。しかしそれはわれわれの理想であって、そこで現実とその理想をマッチさせるところに、今度の官公庁の問題をどうさばくかということが大きな問題になるわけです。ところが今あとに述べられた、公務員の長として国民に奉仕するという立場で、給与の問題あるいは労働時間その他の労働条件全体を含むわけでありますが、仄聞いたしますのに、人事院を格下げしようとすることがひそかに政府の間であるということを聞いております。人事院と公務員の待遇の問題とは不離不可分の関係にあることは申し上げるまで −もない。こういうように全体を見ていきますと、あなたの答弁されましたことと実際の動きとに非常にずれのあることを感じておる。この点に対して、政府方針でなくあなたのお考えでけっこうです炉・人事院を格下げされるというようなことはございますかどうか。
  40. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私は新聞その他で行政機構改革が伝えられておることは承知いたしておりますが、人事院をあなたのお言葉のようにいわゆる格下げするとかなんとかいうことについて、政府部内で何の話も聞いておりません。
  41. 井堀繁雄

    井堀委員 もちろん今のあなたの前段の主張からすれば、そういうことには反対なされる結果に相なると思うのでありますが、こいねがわくは公務員の問題については民間の労使関係のような——これは一方は利潤追求を建前としておる営利社団でありますから、株主に対する責任もありましょうから、分配問題については鋭く対立もし、争いもまた自然立場を異にして行われることは当然だと思います。しかし公務員と給与担当の大臣との間は、そういう形は私は好ましくない。あなたの御答弁に私は全く共鳴しております。この立場を一つ問題処理の具体的な方針として、すなわち理想と現実はまるきり違っておるようなことになったのでは困る。あなたはここで公の御答弁でありますからよもやそういうことはないと思いますが、これから発生いたします事柄であります。いままであなたは吉田内閣にも多少つながりがあった。閣僚ではないけれども、同じ政党です。どうも過去の実績からいいますと、今のあなたのお言葉は信用することができぬような気もするし、また信じたいような矛盾も感ずる。これは私の気持です。しかし公の立場に立って考えますならば、雇い主と被雇い人という関係でなしに、国民に奉仕する公務員の待遇をどうすればいいかという考え方でお進みいただきたいと思うのです。そこで今後間違ったことがありますと、きょうのあなたの御答弁と約束が違うぞということで、当然私どもあなたの責任を追及しなければならぬ立場に立つわけであります。そういうことの発生しないように十分御留意いただきまして、給与問題の解決に当っていただきたい。これだけここでは希望しておきましょう。  そこでこれと関係して、またこれもあなたは御迷惑かもしれませんが、きようの朝日新聞に出ておりました、これは小さな記事ですけれども、私はひどく気にしております。それは「政府は六日の次官会議で、総評の春季労働攻勢に対して情報交換や対策協議のため、治安関係事務当局首脳の連絡会議公務員の服務規律を担当する各省官房長、人事課長らの連絡会議二つを当分の間設けることにした。事務当局首脳の会議には、情勢に応じて関係閣僚も出席する。なお九日の次官会議では、官公労に発する警告文を検討する予定。」、こういう記事がございます。あなたはこの記事に対して心当りございますか。これは事実でしようか、それとも新聞の想像記事でございましょうか、この点は非常に重要だと思いますので、ちょっとお伺いしたい。
  42. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいまお読みなさいました中に治安関係という文字が使ってございましたけれども、おそらく政府側でそういう言葉を使ったことはないとご思います。それはお書きになる方の側でいろいろ想像されてお書きになるかもしれませんが、労働問題は治安問題ではないのでありますから、これを厳格に峻別して考えなければなりません。ただしかし、井堀さんも御承知のように、お互いわれわれは民主主義というものにまだなれておりませんから、いろいろな論争をしている間に激高して、とかくいわゆる治安というような方面に逸脱することもなきにしもあらずでありまして、私は今度新聞に伝えられております争議のことについて、民間産業の争議について、政府が初めから介入しようなんということは毛頭考えておりません。またこれを治安問題だとも労働大臣考えたことはありません。しかしながらいわゆるスケジュール闘争というようなことが新聞にも発表されまして、そうして公務員立場からいえば違法な行為と思われるようなことを指示するようなことが新聞にも伝えられておりますので、そういうことのないようにしなければなるまいということを相談し合うことは、私は当然だと思います。そこで一月元日に神様へお参りして清らかな気持になろうというので弥彦神社にお参りをした、騒擾を起すつもりじゃないのにああいう結果を招来して、そして警戒を怠っておった警察官の上長が処罰をされた、こういうようなこともあるのでありまして、いわんや違法のようなことをやるかもしれないということを伝えられたときには、そういうことのないように万全の策を事務当局が講じるということは当然ではないかと思います。
  43. 井堀繁雄

    井堀委員 今の御答弁で私はいろいろの疑いがますます深まって参りまして非常に残念にたえません。前の御答弁は非常にはっきりしておったようでありますが……。なるほど豆まきももちまきも、神様参りに来た人々の気持としては、群衆、心理その他でああいうことが起るだろう、特に人口の多い日本にとっては、どこにもここにもそんなことがあるだろうと思いますが、しかしこれは倉石さん、あなた例の用い方を誤まったと思う。それは逆なんでありまして、問題はさっきあなたが、私が労働大臣と給与大臣を別にされたらどうかと言ったことに対してお答えになったあの気持が大事なんです。労使関係というものはあなたが本家なんです。労使関係というものは一方的に起ってくるものではない。これはあなたもスト規制法のときに論議し合っておわかりのように、ストライキというものはひとりで発生するものではない。ちょうど鐘と撞木みたいなもので、鐘だけがひとりで音を発するものではない。撞木がなければ鳴るわけはない。撞木と鐘がぶつついたときに発するものです。労使関係というものはそういうものなんです。聖徳太子はうまいことを言うた。およそ上下の争いはその責め上にある。だから雇い主労働者の間に争いが起きたと遂には、大体その責任は雇い主の方にある。これは日本の古い政治でありますけれども、そういう言葉は私は含蓄のある言葉だと思う。特に公務員の場合はストライキ権がない、団体交渉権が制約されておるのです。それはあの立法当時の議事録をごらんになるとわかる通り、あなたも参加されたお一人だろうと思うのです。だからそういう関係をどうすればいいかというところに人事院の存在のうまみがある、給与大臣のうまみというものはそこにある。それをここで治安関係——これは新聞記事をその通りとりたいと思う。きょうも午前中私は警察の人に来てもらったのですが、どうも感覚が悪い。まだやはり治安警察治安維持法時代の感じです。人を見たらどろぼうと思え、まあ世の中が悪いから多少仕方がないにしても、労働問題について感覚がない。そういう人を集めてあなたがさっき言われたような問題を議せられたら、それは決していい方向には進みませんよ。私はそういう点について十分御留意いただかなければならぬと心配してお尋ねしたわけです。そこでこれから出てくるわけですから、そういうことがありますと、一方は生活の問題がありますから、その生活の問題とからみまして出てきたときには、現象だけをもって判断したり処置を講じてはならぬのじゃないか、こういう点についてそういうことのないように私ども念願しております。  それからもう一つこれと関係してお答えをいただこうと思いますのは、今度の総評の春季闘争の中には、公務員と民間企業と両方含めての戦術が発表されております。それが実際どういう工合に展開されていくかということについては、多少労働運動に経験を持っておる私としても非常にむずかしい問題だと思うのですが、それは新しい時代には新しい戦術が必要になるのでありまして、これは結果を見なければ何とも言えないと思います。しかしそういう問題を一番手ぎわよく解決していかなければならぬのは給与大臣だと私は思うのです。またそれに側面から建設的な民主的な助言を与えていく立場が労働大臣だと思うのであります。それが一本になったということで、便利のような気もしますし、そこのところが最初あなたが御答弁されたどっちかによってきまってくると思うのです。これはくどいようでありますけれども、治安関係はおやめになる方がいいのではないかと思うのであります。給与方面について政府それぞれのあれがありますから、準備をされることはけっこうだと思うのです。その辺についてあなたの今後おやりになろうとする方針を一つ御発表いただいておきますと、今後の問題に処する上にいいと思いますので、くどいようでありますが、この点はもう一回聞いておきたい。
  44. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 よくわかりました。私は、政府側の方の考え方についてもたびたび問われるごとにお答えはいたしておるのでありますが、かねがね申しておりますように政府は民間産業の個々の争議に対して介入しようということは考えておりません。ただその争議行為に違法のような行為があれば、そういうことは健全なる労働運動の発達を阻害することなんだから、そういうことのないように注意もし、過激になれば取り締る、こういうことでありまして、今回のいわゆる春季闘争と伝えられますものは、全労働者の要求でないことも御存じの通りであります。古い歴史を持っておる総同盟その他全労会議人々は、特に声明を出して、そうしてこの春季闘争の方向に反対の意を表明しておられますし、中立系もそういう組合があるのであります。従って、私はどうか一つ、せっかく発達して参りました日本労働運動をますます堅実な方向に持っていく、要するに政府がこれを批判するのじゃなくて、労働運動というものは、あなたもよく御存じのように、国民大衆の理解と同情がなければ成功しないのでありますから、総評の方々も、どうかせっかくここまで発達して参りました日本労働運動に対して、何も御存じない国民大衆から反感を持たれるような行為をしてもらいたくない、こういうことであります。  それから公務員につきましては、政府は、いわば自分の子供のようなものでございますから、危なっかしいどぶぎわに走っていきそうになったら、そっちは危ないのだぞ、こっちの方に来なさいという注意をするのは、これは親心で、親切気の発露であると思うのでありまして、私はそういうあたたかい気持で公務員人々に応待していくつもりであります。
  45. 井堀繁雄

    井堀委員 この問題はこれでやめておこうと思いましたが、御答弁にちょっと気になるところがありますからはっきりいたしておきます。それはあなたのおっしゃったように、労働戦線の中で批判があることは事実なんです。その批判をあなたはどういうようにおとりになっているか知りませんが、総評の春季闘争のすべてに対する反対でないことは言うまでもない。ただ戦術上の問題についてだけ考えを異にしておるということを、全労、総同盟が表明しておるのであります。一番大きな問題は、公務員と民間企業とを一本にして戦うということは、非常にむずかしいことだし、そこにはいろいろなことが起るだろうということについての戦術上の見解でありまして、それをいいことにして、今度はあなたが直接、さっきのお言葉をかりると、子供のようにかわいい公務員を扱っていくわけであります。そういう人たちに対しては、それぞれあなたの心持で手を加えておやりになることは、ぜひそうしてほしいと思います。ただここで大事なことは、今の公務員の給与をどれくらいにしたらいいか悪いかということは、私は今さら言及するのではないのです。しかし要求については聞いてあげなければならぬ任務があるわけです。それが了解できないようなことがあっては、あなたの腕を疑われるわけです。自分の子供にそむかれるということは、親の不徳のいたすところです。そんな不徳が起らないように私は期待をし、そういうことのないように強く念願しておるわけであります。そういう意味での問題がありまするので、次は、この問題は政府も言外に含めて言っているように、日経連が一ここにもおかしな形が出ているとも思いますけれども、日経連が政府の態度に歩調を合しておるところもあれば、逆に政府が日経連を期待しておるというふうにも見られるところがある。それは今度の賃金値上げの戦術論については意見があるにいたしましても、賃金値上げの必要を認めるか認めないかの問題については、これははっきりする必要がある。日経連は、今あなたが御答弁なさった中にははっきりしておりませんけれども、役所の関係は民間と違いますから、これは議論をはっきりしたらいいと思う。民間企業の場合には、日経連と総評の論争に対する書類を私は手に入れて見ております。そうすると、さっきあなたと私の間に賃金論で明らかにしたように、日本の特殊事情といいますか、日本の最も多くの分野を占める人々の賃金がチープ・レーバーで低い。これをどうすればいいかということにいてて、日経連はそれを別ワクにしておるわけです。もっとも上手に言いわけをしているところを見ますと、理想を説いて現実を糊塗するような声明をしておるのです。ここに日本の資本家の正体が見られる。決して進歩的な経営者の表明じゃない。きわめて陰険な封建的なものの考え方から来ておると私は思う。いま一つは事業の共同体、社会性を理解しないところから来る答弁だと思うのでありますけれども、その批判は別にして、あなたは今度労働大臣立場で、民間の労使関係というものが荒れてくれば、それが自然響いて公務員の問題になってくることは、共同の闘争戦術を組む組まぬは別ですが、必然的な傾向であるわけであります。でありますから、あなたの場合は両方の一定のわらじをはいておるわけでありますから、民間企業における賃金問題が引上げられて、すなわち労使が理解と話し合いの上で妥結がつけば、政府の方の問題についても、いい影響があっても悪い影響はない。逆にここでつき上げてストライキにまで発展すれば、これは火の子をかぶらざるを得なくなるわけです。こういう意味で直接的にも関係がありますし、また労働大臣としても、当然平和的な解決が行われるような、やはり行政的な配慮というものがなければならぬと思うのです。あなたが言うように、権力を動員して争議に介入するようなことをかりそめにもあなたが考えるとは思いません。思いませんが、それではその問題を解決するためにはどうすればいいかという労使関係のあり方についてであります。そのあり方、  一つにはこれは政府の行政的な措置に大きな影響を持つことであり、一つには具体的な当面の問題である賃金問題に対する政府見解は、私はよほど慎重であってほしいと思う。どうもあなたが方々で発言されておるものを見ますと、何だか日経連ときびすを合せておるように思われるところにも無理がないなと思うことがあるので、そういうことはなかろう、またあってはならないと信じます立場から、この点を明らかにいたしておきたいと思いますが、先ほどの問題に戻ってくるわけであります。七五%から七八%の人々の賃金がいかに低いかということはあなたもお認めになりました。しかし今総評の出している大企業の問題はその上だ、こういろいろな意味で言っておられますが、ここで民間企業におけるべース・アップの問題について、あなたはどういう判断をお持ちになり、そういうものに対して政府がいろいろな形で表明される場合があると思うのですが、そういうことに対して労働大臣としてはどういうふうに閣内において御発言なさるか、われわれにとっては重大であります。このベース・アップに対する率直な見解を伺いたい。
  46. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 官公吏に対しましては、先ほど申し上げました通りでありまして、民間産業の賃金のことにつきましては、私は概括的に先ほど申しましたように、なるほど諸般の情勢がよくなって、日本の経済も安定し、それから国際貿易のバランスも黒字になって参った。ここでさらに資本の蓄積をして経済力の底を深くする努力が必要ではないかという程度のことは言い得るのでありますが、個々の産業については、御承知のように合化労連の関係事業は非常に利潤率がよくなっております。石炭鉱業のごときはあなたもよく御存じの通りでありまして、そういうような個々の産業のベース・アップについて労働大臣として所見を述べるということになりますと、やはりこれから行われるであろう団体交渉などにも影響を及ぼしてはいけませんから、こういうことは私の立場としては遠慮いたす方がよいのではないかと思ます。
  47. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 井堀君に申し上げますが、御承知の通り午前十時五十三分からやっております。きょう一日野党の時間ですからかまいませんが、ほかの委員の方々にも公平に取り扱いたいと思いますので、できますならば結論をお急ぎ願いたいと思います。
  48. 井堀繁雄

    井堀委員 大へん冗漫な質問をいたしまして時間的に御迷惑をかけましたことをおわびいたします。それでは率直に委員長の御注意に従いまして結論に入りたいと思います。  賃金問題につきましては、先ほど来申し上げております通りでありますが、二つに分けて、第一、対策がどうしても必要だ、緊急の対策としてはどこで線を引くかという問題に議論があるといたしましても、大まかに中小企業のうちの小企業、三百人以下、特に百人以下の事業場においての賃金問題は、即刻に解決せられなければならぬ必要に迫られている。それは賃金値上げという形がすぐできないまでも、実質賃金を引き上げるということについては、私は諸般の政策があると思うのです。またこのことをおやりになるべきだと思うのですが、こういう点に対する何か新しい御計画なりあるいはそういうことをお考えになったことがあるか、この点を一つ伺っておきたい。  それから賃金値上げの問題に対する根本的な問題で、今あなたがおっしゃられるように、労働大臣としては民間の賃金値上げの問題に対して遠慮される方がよい、その通りだと思う、言うべきではないと思う。しかし政府としては、あなたも説明を加えられたように、資本の蓄積という形において賃金をあと回しにしょう、賃金の値上げを押えるというのではないけれども、賃金の値上げよりは資本の蓄積、すなわち企業の近代化をはかるためにその方面に利潤を回して、労働賃金の分配はあとにしたらどうかということを言っておることは、これは間違いがないのであります。私が所管大臣としてのあなたに伺いたいのは、この点についてであります。私はこの考え方では日本の産業はおくれると思います。これは雇用の問題その他とも影響してくるわけでありますけれども、生産性本部の運動というものに対して政府は一枚加わってきたわけであります。僕は生産性運動労働者側からボイコットを食うかどうかはこれからだと思うのです。今のところ条件付で参加しておる労働団体と全く批判的な立場を持っておる団体とがあることは御案内の通りであります。しかし今後の問題は・生産性本部の問題というものは、労働の資質を引き上げて、特に日本のような場合においては狭い領土の中で少い資源をどうして開発していくか、横に延びるということが危険であることは言うまでもないが、縦に掘り下げていくという行き方、そうすると労働の創意工夫——自発的に自分がこうしょうという積極的な労働意欲というものをどうして喚起していくかという労働行政というものが行われなければ、ここに言っておりますように、附加価値生産というものは高まってこないと私は思う。この点に対する労働大臣見解を伺っておきたい。この二つについてはっきり御答弁をいただきたい。
  49. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私は賃金値上げということを常によくないことであるとは決して申しておらないのでありまして、当該企業の生産が増強されて利潤が上回ってきたときにおいてはなるべく分配をするということは当然なことでありますが、現在の日本の経済情勢を見て、また国際競争力の立場から見て、今はそういうふうなことをなさらない方がいい時期じゃないだろうかというふうに考えておるわけであります。もう一つ、生産性向上運動でございますが、あなたも指摘されておりますように、私どもは生産性向上運動ということは、一品に申せば商品の価値を引き上げて、製品のコスト・ダウンをすることだと思っております。従って製品のコスト・ダウンをすることによって生産力を増強して、国内競争に立ち向っていく、そういうことになりますと、アメリカのようにオートメーション・システムをとり入れぬでもやはり労働力を節約するという場面が出てくることは当然のことであります。そこで一時的にそういう傾向がありますけれども、さらにそういうことによって製品のコスト・ダウンができ、商品の価値が上ってくれば、国際競争力を増すのでありますから、なお輸出は増強することができるではないか。その方面に雇用量を増大いたしていきたい、こういうわけであります。もう一つ、その反面においては、御承知のように労働科学研究所の仕事など私ども非常に興味を持っておるのでありますが、あそこでは非常に熱心な御希望がありまして、その中には政府としても大いに尊重して実行に移したいような項目もございます。そういうようなことで労働に従事する人々の福利を増進するために・そのあげられたる利潤をなるべく使っていく。そして労働に従事する人々の体位を向上したりあるいは生活環境をよくしたりする方面にも使っていく方がよいではないか。賃金ということで分配になりますと、先ほど申しましたように、それが国民経済全体に響き、また物価の高騰も来たすというようなことになるのでありますから、今申し上げましたような方向によって、実質的な生活環境をよくするということをやっていくべきじゃないか。生産性向上についてはそういう考えを持っておるわけであります。
  50. 井堀繁雄

    井堀委員 中小企業に対する賃金問題のお答えがなかったのでありますが、これはあとお答え願うことにいたしますが、今の御答弁で大分はっきりしたと思うのです。これはお気の毒ながらあなた個人ではなく党の立場もありましょうし、政府立場もありましょうが、大体あなたの今の御答弁ではっきりしたことは、コスト・ダウンの問題を労働者の犠牲でこの際やっていこうとする、その犠牲でやるということが果して成功するかしないかということは今後の問題だと思うのであります。しかしこれはもう国際的な一つのケースができておるのです。もちろん労働者の賃金をむやみに上げるということは資本主義経済の中ではあり得ることではありません。いつでも利潤の中において考えられることでありますから、それはここで心配しなくてもジェネララィズされてくるわけでありますけれども、ただそこに国の政策と企業との間に関係がある。そのことをお聞きしたので、今の御答弁ではっきりした。私はもっと進歩的な労働政策を、また近代的な産業政策をとっておるのじゃないかという多少期待をかけて見ておりましたけれども、各大臣の御答弁は、最後にあなたのところに来てきわめて明確になった。これは今日国際競争に勝つためには残念ながら賃上げを阻止するとは言わぬけれども、賃上げをあと回しにして資本の蓄積にということで、大体日経連の考え方とその点は一致しておるようであります。  その次に、コスト・ダウンの問題はあなたはどうお考えになっているか知りませんけれども、さっき私が言ったように雇用量の分布の状態あるいは労働条件の状態で、日本の中小企業、零細企業のもとに——これは全然貿易に関係がないというなら別ですけれども、あるものによっては八〇%から九〇%が零細企業によって生産されて輸出の一線に立っておるのです。ですから日本経済の場合これを考えなければいかぬ。コスト・ダウンというものは、個々の一人当りの生産性というものについて、全体を見ていきますとよく出てくるものです。この統計が今のところ不十分だけれども勘の上ではおわかりだと思う。これはどういうところにあるかと言えば、私は労働力が需要供給の関係から考えてみてもあまりだぶつき過ぎている。日本ぐらい世界中で労働力をむだに使っているところはありません。俗に言えば粗末にし過ぎている。でありますから高率な、すなわち附加価値の生産性というものが高まる余地がないのです。その余地をどう切り開いていくかということが政治なんです。そこにこそ初めて私は政策の輝きが出てくると思う。それが保守的な立場に立つか、革新的な立場をとるかという違いが出てきてもいいと思う。しかしいずれにしても資本主義経済の中において古い資本主義の形態ではいけない。貿易優先の立場をとり、国際的な視野においてということになりますならば、残念ながら——これはあなたと議論をする意味ではありませんけれども、少し期待がはずれた気がしてまことに遺憾です。しかし、これ以上この問題を追及しても仕方がありますまい。そこでその問題は党と党との政策の問題で今後各面で大いに争うことになると思います。労働問題だけは少し進歩的にいける、この点をはずされたことはまことに邦家のため、日本のために残念だ、でありますが、これは仕方がない。  次にもう一言御答弁いただきたい点は、さっき申し上げた中小企業、零細企業で賃金を上げているところはあまりありません。これに対して何か可及的の措置をとらなければいかぬと思う。こういうものに対する何かのお考えで、それはきめ手というものはない。しかしいささかでも保守党なら保守党なりに計画があると思う。私は野党としていろいろな計画をしまた努力をしておりますが、こういう点で協力の余地があれば私どもは勇んで堂々とあなた方のちょうちん持ちもいたしますし、しり押しもいたします。しかし何も計画して下さらないと、こっちが出すとつい対立的なものになるが、こういうものはそういうところで争わない方がいいんじゃないかと私は思います。これは私どもも党としてまだはかっておるわけではありませんが、そういう点についてあなたのお考えが伺えれば私ども党内においてそういうものを持ち出していきたいと考えております。この点に対してあなたの所見でけっこうですが、伺いたい。
  51. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 中小企業の育成につきましては先ほど申し上げました通りでありまして、ああいうようなことをやって中小企業の維持育成をはかっていかなければならない。そこで井堀さんにもよく御存じのように・私も実はそういう商売を長い間やっておったからでございまして、私ども三十一年度予算編成に非常に強力に主張いたしましたのは、日本の中小企業というものは大体下請的な立場をとっているものが非常に多いようでありますけれども、そういうところを概括をしてみますと、とにかく機械力が非常に劣っていることが大きなネックであります。これはどうしても近代的なものに置きかえてやることをしなければなりませんが、小さな中小企業を初め大きな方でも自力でこれを交換するということはなかなか困難であります。そこで近くあるいは法案として提出されると思いますが、この日本の機械を近代化する事業団というようなものを作らせまして、開発銀行から今の構想では約二十億円ほど出資せしめる。そして日本の機械をことごとく近代化していこう、こういうような考えを持っておるわけてありまして、日本の中小企業を保護育成していくという点においては、御指摘のようになかなか困難で、きめ手はありませんけれども、先ほど申し上げましたことや今申し上げたようなことを総合的にいたしまして、ぜひこの中小企業の育成をやっていきたいというわけであります。非常に堅実な労働運動をやってこられた進歩的な井堀さんにも、一つ御意見があれば教えていただきまして私どもの施策にも十分に参考にいたしたいと存じます。井堀委員大へん長い時間をとって恐縮でありましたが、なお具体的なものについてはあとの機会がまたあると思いますが、注文だけを先にいたしておきたいと思います。それは日雇い労働者の失対事業の問題でございます。特別失対と一般失対のほかに何か計画をしておるようなことを、ちょっと政府の予算説明の中にも伺いましたし、またそういう点についていずれ具体的な事実を、私どももそれぞれあげて御意見を伺い、また方針を変えてもらうものは変えてもらうというものがたくさんございます。そういう点についてはいずれまた日をあらためてお尋ねいたしたいと思いますが、この機会に希望しておきたいと思いますることは、これは時間があれば質問をいたしたいと思いましたけれども、時間がありませんので。私ども緊急失対法の設けられた時代から今日までの推移を見ますと、もう少し手入れをしなければならぬということは気がついておるわけであります。そういう点でこの扱い方は非常に重要でありますが、そういう点に対して私どもの意見もありますし、またあなた方の新しい試みもあるかもしれぬ、これはいずれ伺いたいと思います。こういう問題はできるだけ数字を私どもあげて、それに対する批判をいたしたいと思いますから、ぜひ一つ資料を事務当局に命じて、今までの失対事業——ちょっと具体的に言いますと、地方それぞれ多少の相違はあると思いますが、二百八十二円のコストで二十一日という就労で予算を組んでおいでになる。これをもう少し上げられないかということはたびたび言っておるのですが、この問題は次にいたします。ところでこの失対の中で言ってみると、賃金の格差がまた非常に大きい。ABCになっていて、そのAクラスを一から五級にわけて、さらに、BC、ひどいところになるとBCの中でまた六つも切ってある。公務員の給与と同じで、何号俸、同級というような工合です。一体こういう必要を生じたところに問題があると思うのです。こういう扱い方についてはどういう工合にしたらいいかということは私議論があるのでありますが、そういう点を一つ数字をあげて、どこの府県ではどういうクラスに切って、その予算がどういうふうになっておる。それからわれわれはここで二百八十二円で、去年論議しておったのでありますが、それが地域によって違ってきておる。それは公務員の地域差のようなものである。あるいは民間給与と均衡させると言うから、だからさっき言ったように民間給与という体系が問題なんです。ですから労働省の役人の配慮というものが多分に動いておる。これは労働大臣と局長とよく話し合って、そういう点に対するお尋ねをしますから勉強を一つしていただきたい。失礼ですけれども、これは出し抜けではいけますまいから……。  それからもう一つお願いしておきたいことは、技能養成の問題であります。これもあなた方の系統でいうと二つに分れておるようでありますね。基準監督署関係と安定所関係。こういう問題はさっき言ったように生産性の問題と非常に関連がありますし、分けると使い方がよければ・非常に能率的になりますが、悪いとどぶへやっちゃうような結果になる。こういうようなものに対してそれぞれ具体的に——私も調べてきますが、それらのものに対してお尋ねをいたしますので、それもできるなら前もって資料が提出していただけるならば、全国のこういう施設にこういうことがしてあったということを一つ提供していただきたいと思います。  それから港湾労働の関係でありますが、これは港湾労働法で今までやってきたわけであります。法律よりは実際問題が大切だ。神戸に今度共同宿泊所ができた。一般のものも国のもできたが、こういうものをほかにも作る必要があるんじゃないですか。計画はないかどうか。そういうものを準備しておるならば、それについても資料があったらいただきたい。  それから未払い賃金債権の問題も法律を作るとか言っておりましたが、今度の国会に間に合うかどうか、今のところ労働大臣説明では明確でありませんけれども、未払い賃金問題解決のための行政措置についてどういうふうにされるか。法律ができても一ぺんでそれが解消できるようになるかどうか、そういう点もありますから、その辺も見合って、未払い賃金に対して火急な措置を講ぜられる具体的なものについて——各地方それぞれの事情がありますから、御調査になってそういうものに対する資料並びにそれに対する意見があれば加えて出していただきたい。こういう点についてあらかじめ注文を申し上げておくと言っては恐縮でありますが、能率的に会議を進める意味で注文を申し上げまして、私の質問は本日はこの程度で終りたいと思います。
  52. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 滝井義孝君。
  53. 滝井義高

    ○滝井委員 井堀委員から非常に広範に、ほとんど全部の問題を質問いたしましたので、私は一、二ちょっと疑問に思う点だけお尋ねしたいと思います、それは今年度の予算を見て見ますと失業対策費が昨年に比べて六十二億増加しておることになっておるわけです。私は失業対策事業とかあるいは失業保険あるいは大臣がよく主張せられる公共事業、そういうようなものをずっと見てみますと、大体そういうものが失業対策として活用せられてきて、本来の目的とはだんだん違った方向に向いているのではないかと思う。たとえば失業対策事業というものは労働者が再就職するまで、一時労働力を保全するために失業対策をやることになっており、やがてこれを一つの足場としてすぐに新しい職についていくのだということで失業対策事業とういものはできているのだと思う。ところが現在この失業対策事業というものは、非常に膠着状態にきておると見ておる。というのは、現在その失業対策事業につくということ、いわゆるニコヨンになるということが一つの職業になりました。現在ニコヨンになることでさえも非常に運動しなければならないという状態が出てきました。二コヨンには自由になれない。ニコヨンの中に入るためには相当な運動をしなければニコヨンになれない、こういう事態が出てきた。あるいは失業保険でも、失業保険をもらっている間に次の就職の機会を見つけるのです。ところが今はそうではない。失業保険が切れると次の段階は生活保護に転入をしていくという形が出てきておる。あるいは公共事業あるいは財政投融資というようなものが、失業者に対する雇用についてあまり意を用いていない。こういうことは明らかに現在の日本失業対策が一つの行き詰まりの状態がきておって、改善しなければならない状態がきておるのではないか、そういう感じがどうもしてならないのです。予算はなるほど三十年と三十一年を比べると六十二億増加しているが、失業対策事業は将来の展望というものが何もない。ただ何か、失業者がふえたのだから予算も少しふやさなければならぬだろうという、行き当りばったり的な失業対策であって、将来の展望というものがどうも見えないという感じがするのですが、それに対する大臣考え方を一つ承わりたい。
  54. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 これは日本ばかりではございません。ほかの国でも今までずっとあったことでありますが、いわゆる失業対策事業というものは決して好ましい雇用の状態でないことは当りまえのことでありますが、いかんせん、日本の現実は人口増加ということの圧迫がありますので、雇用を御承知のように、五カ年計画でかりにそれがそのまま成功して進められて参るといたしましても、なおかつ最終年度においては四千五百万人の労働力人口のうちの一%は完全失業者というものを見込まなければならない、こういう状態でございますので、失業対策事業というものは当初始まったときにはお説のようなことでありますけれども、現在はこれをやめていいという日本の雇用状況にない、こういうことを私どもは非常に遺憾としておるわけであります。そこで、このいわゆる失業対策事業というものを非常に非能率であるといったような攻撃をされないようにということで、なるべく経済効果の上る仕事をやってもらおうというふうに政府は努力いたしておるようなわけであります。
  55. 滝井義高

    ○滝井委員 私は失業対策事業をやめろというんじゃない。そういう膠着状態にある失業対策事業というものをこの際何か考え直す必要はないのか、こういうことなんでございます。いわば本来あの失業対策事業は、失業保険ができたときの精神というものが非常に薄れてきた、この際何か考え直して、そこに失業保険をもらった者について何か将来の展望がきく・そういう何か政策の転換というか、失業対策自体についても考え方を変えなければならぬ時期が来ておるのではないかということを言っておるわけなんであります。私は、失業対策事業に反対というわけではないのであります。その点、何かこう将来に対する希望と申しますか、失業保険をもらった者が次には生活保護ということではなくして、失業保険をもらったならば、その次に何か就職へいけるという、こういう展望というものはないかということなんです。
  56. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 御承知のように、政府のやっておりますいわゆる一般失業一対策事業に吸収されようとして安定所に来る方々のうちでも、全部がいわゆる失対事業に行くんではないのでありまして、なるべくわれわれの方は安定所の窓口から民間産業の方面の雇用の方に振り向けるようにいたしておるのでありますから、私どもとしては、いわゆる五カ年計画で増強していこうとするその民間産業及び公共企業の事業の方へなるべく就職をあっせんするように努力をして、そしてなおかつやむを得ないものは今までのような失対事業をやっていく、こういうわけであります。ことに御承知でもございましょうが、たとえば愛知用水とか北海道開発公庫の事業などというものについては、雇用量の相当なものを見込まれるつもりでありますし、特別失業対策事業というのは農山村の方においては相当な成績を上げておることも滝井さんすでに御承知の通りであります。そういう方向で、なるべく完全なる雇用の方面に市場を開拓していきたいということはもちろんでございますけれども、現在ありまするこの失対事業について、あなたは何かの方向づけをしていく考えはないかというお話でございますが、まだそこまで私どもとしては計画的な雇用量の増大が見込まれないのが今日の実際の状況であります。
  57. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますとお尋ねしますが、あなたの政策は失業対策に重点を置いた労働政策をやるのか、雇用政策に重点を置いた政策をやるのか、どちらでしょう。
  58. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 それはもちろん雇用量の増大という方に重点を置いてやって参るつもりでおります。
  59. 滝井義高

    ○滝井委員 いわゆるせつな的な失業対策ではなくして、少くともある程度継続的、長期的、建設的ないわゆる雇用政策に重点を置く、これは私当然だと思います。今度あなたが大蔵省等に予算折衝された当初の構想というものはわれわれが非常に期待してやまない構想を持っておられた。たとえば三十一万人くらいのものをやるのだということでしたが、実際は二十五万人に減ってしまった。そういう形から見て参りますと、たとえば労働省にある三十五億と建設省の六十九億、実質的には五十三億くらいになりますが、そういうようなものの中には、数は緊急就労対策なんか二万と出ておりますが、実際に失業対策審議会ですか、ああいうところあたりの答申でも、どうも公共事業にひもつきの財源をやっても効果はないということを再三にわたってあなたに答申をされておる。あなたの意図が少くとも失業対策から雇用政策へ、こういう方向に向いているにもかかわらず、実際に予算編成の上で出てきた結果を見ると、数はなるほど二万と出てきている、また形は長期的に考えるという形になっておるが、実質的には主流というか、主体的なものにならない、いわゆる刺身のつま的なものにさせられておる。日本失業対策というものが雇用対策に転換されたようなニュアンスだけは持っておるが、実質はそうでない形が出てきておる。私がさいぜん将来への展望というものが失業対策の中にないと言ったのは実はここを言っているわけです。これは二万のニコヨンの諸君にとって、建設省のそれは決して幸福になるものではないという感じが私はする。こういう点がどうもあなたの労働政策そのものが内閣に一つの筋金を入れるというか、内閣を引きずっていくだけの力を発揮できない状態にあるのではないかという感じがするのですが、そういう点を一つ明快にこの際していただきたい。
  60. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 この政府ができましたときに社会に発表いたしました政策の中でも、雇用量の増大、失業対策ということをうたっておるのでありまして、政府はこういう問題について五ヵ年計画の目標もやはり経済自立と雇用量の増大ということでありまして、決して政行はこういう問題をおろそかにしておるわけではありません。当初の予算は御承知のように百億円を特別失対事業としてこれは各省に配分するということになっておったわけでありますが、私どもそういうことについてでき得べくんば各省と緊密な連絡をとらなければなりませんし、ことに、私どもの方で予算を持っておりましても、実施官庁はやはり建設省であり、運輸省であり、厚生省であるわけでありますから、そこと緊密な連絡をとっていかなければならない。そこでいろいろ検討いたしました結果、滝井さんも御承知のように、百億円のうち七十九億円はガソリン税をもって充てるということになっておりました。ガソリン税は御承知の他の法律で道路五カ年計画の整備に使用するということになっておるものですから、主としてその方を重点的にすべき財源である、こういうことで、建設の方の仕事も大切でありますからそれを無にするわけにはいかないということで、事務的にいろいろ相互折衝検討いたしました結果、三十五億円程度の仕事ならば、労働省に予算をつけて、労働大臣の指導のもとに失業対策事業をやることができる地域はある、その他はせっかく予算をもらっても、なるほど仕事はあるけれども、失業者がそこに集結しておらないといったようなことでは、実際に予算を取っても仕事になりませんので、いろいろ検討した結果、三十五億円程度でよかろう。そこで各代議士さんの御要望もありまする通りに、今まで補助率が非常に低い、あるいは事務費の負担額が少いということは、さなきだに赤字に苦しんでおる地方財政に多くの負担をかけるということから、そういう点を引き上げることにいたしましたために・総額において三十五億円・これは昨年度と変りませんけれども、人員においては二万人ということになります。そこで、あとの六十九億の財源をもってする建設省主体でおやりになるところの就労対策事業につきましては、滝井さんのお説まことにごもっともでございまして、私どももその点については当初からいろいろ検討いたしました。そこで政府部内で申し合せをいたしまして、この事業は建設大臣が常に労働大臣と連絡をとって、そうして労働大臣の指定する二万人の雇用を必ずやるという契約のもとに六十九億円は建設省につけた、こういう実情でございます。
  61. 滝井義高

    ○滝井委員 ぜひその通りにやっていただかないと、二万人というものは実質的には大して役に立たない、こういうことになる。というのは、今まで千五百億の公共事業の中で実際に一日平均五、六万人しか使われなかったことは、これはもう労働省自身が御指摘になっている通りなんです。過去の実績がそういう状態なんでございますから、現在この失業対策事業というものを社会保障的に扱うのか、それとも建設省の言うように、効率第一主義で扱うのかということは、まだ私は日本政府自体の内部で解決していない状態だと思う。むしろ大蔵省の行き方からすれば・予算を効率的に使うということになれば、それはガソリン税本来の目的からいえば、道路というものは早く効率的に作らなければならぬ、こういうことになると、社会保障の面というものは消えてしまうのです。こういう点で、これは社会保障を主とするのか、あるいは効率的な面を主とするのかということは問題になると思いますが、これは倉石さんの立場・からいえば、当然社会保障にある程度重点を置いてもらわなくてはならないということになるでしょう。これは答弁を求めなくても当然そうなると思いますが、しからばあなたの方でそれほどまでの、六十九億の建設省にある道路整備五カ年計画の予算まで失業対策の費用としてとっていただくというありがたいその気持をもう一歩進めてもらわなければならぬ点があるのです。それはさいぜん私が一番初めに申しました、いわゆる財政投融資の面なんです。今までの日本失業対策というものは、財政投融資については、ちっとも考えていないと言っていいくらいに無関心だった。ところが今年はあなた方の党で新例を開かれた。いわゆるこの二千五百九十二億の財政投融資のほかに、千三百九十七億の民間資金の活用というものを考えたのです。私はこの行き詰まろうとしている、膠着状態にある日本失業対策に一つの活を入れるものは、この千三百九十七億の活用だと思うのです。労働大臣は何か民間の資金活用について、そこの中にいわゆる雇用問題というものを大きくくさびを打ち込むという構想でもお持ちかどうか、これを一つお聞かせ願いたいと思います。
  62. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私の方で当初この三十一年度予算を編成いたしますときに、インフレを防ぎながら拡大均衡の方向に持っていくのだという建前をとりましたと遂に、御承知のような今日の金融状況でありますから、市中銀行にだぶついておる資金を援用して、一般会計でやるべきような仕事に、そういうものを流用する方がいいではないかということで、ただいま御指摘のように千三百億円余りの民間資金を使うことになりました。これの配分も政府炉発表いたしておる通りであります。そこで労働省側といたしましては、たとえば道路公団などもその一つでありますし、先ほど申し上げました北海道開発公庫あるいは愛知用水といったようなところには、抜かりなくその方面に存在いたしておる失業者を雇用してもらうように、万全の策を講じてやっていこうと思っておるわけであります。
  63. 滝井義高

    ○滝井委員 今いわゆる道路公団や北海道開発のことが出ましたが、大体民間資金の活用というものは重点産業、公社、住宅建設、有料道路整備、北海道開発等の資金になることになっておりますが、労働省として具体的にどの程度のものをこの中に入れ得るという御自信があるのですか。これを一つ御説明願いたい。もう予算がきまっておるのですから、大体あるはずだと思います。
  64. 江下孝

    ○江下政府委員 御質問があるかと思いまして実はそれらの点につきまして、各省といろいろ予算の内容等について検討いたしておりますが、今日までまだはっきりそれではどの程度の失業者を吸収できるという点までの話し合いがついておりません。しかしいずれ今、国会中に、この点についてはある程度の見通上を立てるつもりでおります。
  65. 滝井義高

    ○滝井委員 ちょっとそれをいただきたかったのでございますが、ではやむを得ませんから、またそれが出たら一つ質問さしていただくことにして、それはそのくらいにいたしておきましょう。  次に、ちょっと井堀さんと関連のない点でございますが、日本の生産人口というものは非常にふえてきました。同時に労働力人口はふえてきたのですが、経済審議庁はこのごろ生産人口の増加に対して労働力人口、いわゆる労働力化率と申しますか、そういうものを六五・六%から六七・八%くらいに修正をしておるわけなんです。その結果、三十年度に比べて百十万くらいことしはふえることになるわけなんですが、イギリスあたりの状態を見てみると、労働力化率というものは五五%くらいなんです。日本はおそらく今年以降六八%くらいにずっと私はなっていくと思うのです。問題はこの労働力化率を下げるということが、産業が健全であるかどうかということの一つの指標になると思うのです。これについて何か具体的に、こういう工合にやってするのだという御方針でもお持ちですか。
  66. 江下孝

    ○江下政府委員 お話通り、労働力率は、大体来年度六八・四−昭和三十年度見込みが六八・五%ということで、〇・一%だけ下げております。当初この六カ年計画を作りました際は、この労働力率は経済事情が好転すれば当然下るものであるという予想で、実は相当これが低下する数字を作っておったのであります。しがしながら諸般の経済計画を検討いたしまする過程において、なかなか五カ年程度で、はこの大きな人口雇用という問題はそこまではいかないであろう、こういうことからいたしまして、この六八・四というものをそう大きく引き下げるということは困難だろうということで、一応計算をいたしたのであります。そういたしましても、御承知の通り労働力率と申しまするのは、労働力生産年齢人口の中の就業者と完全失業者の割合でございますので、生産年齢人口は戦争中の生めよふやせよの時代の増加が今現われておりますので、率的にはかりに同じとしましても、絶対数は明年度以降非常にふえるわけでございます。むしろそういう意味におきましてこの労働力率を本年度程度にあまり動かさないということは六カ年計画としては相当勉強した線でございます。以上申し上げましたような事情で、日本の場合はイギリス等とは経済の実勢が違いますので、なかなかそこまでは至らないというのが正直な話でございます。
  67. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、なかなかそういう状態ができないとするならば、いわゆる増加していく労働力人口に対する就労の機会というものは、政府がいうように、三十五年には四十五万なんという甘いことではなくなってしまうわけなんですね。実際にここ四、五年の間に五百万以上の就職希望の者が出てくるわけなんですから、なかなかそうはいかぬ。数字の上でそれはいっておるように見えますが、実質的にはなかなかいかない。たとえば貿易のごときも、今年なんかは幸いだったのですが、十六億五、六千万ドルの貿易だといっておったのが、輸出は二十億ドルにもなったという、こういう初年度から非常な見込み違いもあるわけなんです。こういう点から見ても、これは五年の先のことで、なかなか問題にならぬと思いますが、現実のこの労働力率の状態から見ても、なかなか二の就職機会を作る雇用の規模というものがそう増加するとは考えられない。たとえばイギリスのような五五か五六くらいのところであるならば一家で一人の主人が働けば、一家の生計というものは維持できる賃金があるわけなんです。ところが日本では、一家の主人一人ではその一家の生計を維持することができないのであります。どうしてもむすこか娘が働かなければ食えないという形が出てきておるわけであります。そこにいわゆる労働力化率が上ってくるという結果が出てきておるわけなのですから、それを少くとも一人で生計が維持できるという形を作るということ、いわばさいぜん井堀さんが言っていた、あまり働き過ぎるという形が結果的には出てきているということになるわけですね。こういう点・もっとそれを具体的に下げる政策が私は出てこなければならぬと思う。これは井堀さんが指摘をしておりましたが、雇用の状態を見ても、ふえておるものは、第一次産業は飽和状態、第二次産業は産業合理化で輸出の促進のために停滞して、比較的に見るとふえていない。そうすると、ふえているものは第三次産業だ。しかも井堀さんが言っていたように、パチンコ屋か露店か夜店だ。しかもふえているところは弱少労働力か婦人労働、老人労働、こういうものがふえている。従って私はこの際倉石労働大臣にお願いしなければならないことは、この日本の労働力化率を下げていくためには、これはもう必然的に社会保障政策がどうしても強く出てこなければならないのです。それは老人が働き、婦人が働き、年少労働者が就職戦線に出てくるということに上って、現実に筋骨隆々たる労働力の低賃金を来たすことは、もう火を見るより当然なんです。そういう点で、あなたが労働政策だけをやっておれば足れりという状態ではないと思う。どうしても厚生大臣とともに、そういう婦人とか少年とかあるいは老人のための社会保障政策と申しますか、社会政策をもっとバック・アップしなければ、日本の雇用問題は私は解決できないと思う。そういう問題とともに、今度は一方、現在日本における雇用の重要な吸収面である中小企業対策というものが同時にそれに並行的に出てこなければならない。ところが今の問題は、いわゆる社会保障というようなものも、今度出てくる健康保険が非常にむちゃな改正が行われようとしておりますが、そういうように後退をしてくる。中小企業にしても抜本的な対策が立てられてこない。しかも重要産業というものは、あと質問しますが、いわゆる合理化の線が進んでいくということになれば、もう雇用の機会は半失業状態、一日に二時間か三時間しか働かぬという半失業の就職状態になってくることは当然なのです。そこで私は、そういう意味で、社会保障に対するあなたの熱意を一つ聞いておきたいと思います。労働対策と社会保障との関連をあなたはどういう工合にお考えになっておるか、それをお聞きしたい。
  68. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 あなたのお説、私どもも全く賛成でありまして、日本の国の財政・経済が充実して力を持ってくるに従って社会保障というものは充実していくべきであると思っております。ことに経済自立を目標といたしております五カ年計画は、予定通り参るには非常な努力を要しますが、そういうふうにして五カ年計画の中にも申しておりますように、社会保障の充実をやっていく、こういうことを申しておるのでありまして、私どもは社会保障を増強いたしていく点においては全く御同感であります。
  69. 滝井義高

    ○滝井委員 どうも少しもの足らぬ点がございますが、だいぶ井堀君が質問しましたから……。  その次は、生産性向上の問題について尋ねたいのですが、さいぜん大臣は生産性を向上して資本の蓄積をやる、これが何より先決だ、こういうことをおっしゃったのです。私たちが中学生のころに産業合理化運動というのがあったのを記憶しているのですが、これは昭和三、四年ころだったと思うのですが、現在生産性向上運動と名前は変わりました。産業革命以来そういう作業の機会が進歩する、あるいは動力機が進歩するということで、非常に製品が規格化され大量生産ができる、労働の工程が標準化されていく、こういう形が進んできました。そうしてアメリカあたりではテーラー・システムとかフォード・システムとか、あるいは炭鉱あたりでベルト・コンベヤが用いられる、こういう形が出てきた。最近はオートメーションが出てきた。よく内容を見ると、言葉はニュー・フェースです。これは昔われわれが柳腰のものが美人だといっておったが、今は八頭身というふうに違ってきましたが、この美人の相違ほどの違いはない。現在のこの生産性向上と産業合理化には変化はない。いわば表面的なニュー・フェースであって、中身というものは依然としてあなたの言われる通りこれは資本の利潤の蓄積なんです。いかに巧妙に労働を搾取していくか、私はこれ以外には現在の生産性向上運動には一どう考えてもない感じがするのです。そういうところに総評あたりがなかなかついていけない。生産性向上をやる・そうすればその後には賃金が増加するんだというような一つの甘い幻影はニュー・フェースで抱かしておるけれども、実質的にはその中身はそうでない感じがするのです。具体的に言ってみますと、たとえば国鉄の状態を見てみると、昭和二十四年ごろには国鉄の職員は六十二万おりました。現在国鉄は四十四万そこそこしか職員はおりません。十七万減ったのです。ところが国鉄の列車の数あるいは貨物の輸送力、乗客の輸送力、そういうものは五割増加しておる。そこに働いておる従業員の数は十七万も減った、輸送力というものは五割増加した、これは結果的には一人の労働者にとって一体どういう結果が出てきたか。われわれは労働科学を専門的にやったことがありますが、必然的にそれは労働の密度が増加してきておるということなんです。いわば今まで一人の運転手が五十キロ走ればよかったのが、今度は一人で百五十キロ走らなければならない。その一人で百五十キロ走るということは一人の労働者にとってはどういうことになるかというと、多くの神経と多くのエネルギーをその労働者が使っておる。いわばその労働者の生き抜くであろう寿命を見てみると、それはおそらく六十五才まで生きますのがその神経の使い方によって、いわば労働の密度が非常に高まることによって、寿命というものが非常に短かくなる可能性が出てくる。たとえば、ちょっと労働科学を戦争中にやったのですが、一万分の一、十万分の一というような精密な機械を見るのは、もはや四十五過ぎるともうだめなんです。勘で十万分の一、二十万分の一のを見るのは、少くとも三十五ぐらいの非常に視力の強いときでなければだめなんです。それだけ労働の密度というものは非常に高まってきているわけです。そうすると、国鉄なんかの状態を見ると、しからば国鉄の賃金等はずっと上っておるかというと上っていないのです。最近は雇用は新規採用というものはやっていない。こういう点ですね、いわば生産性の向上が行われていった・資本の蓄積もやらなければならぬ、しかし一方労働の密度というものは非常に高まってきた、こういう場合の賃金に対する考え方というものは非常に違ってこなければならないと思うのです。今までのように単に資本の蓄積をやらなければならぬのだ、五カ年計画でやるんだ・お前らはあとだというわけにはいかない。労働の密度が非常に高まっておるというこの点について、大臣はどういう御見解を持っておられるか。これはまあ私は国鉄の一例をあげましたが、国鉄だけではありません。民間の炭鉱労働においても、私鉄においても、すべていわゆる機械化、規格化というものが密度を高めておる。こういう点です。同じ八時間の労働時間ではあるけれども、その中における精神的なエネルギーの消耗ははるかに大きくなっておる。こういう点に対する大臣見解を一つ承わっておきたいと思い
  70. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 滝井さんの非常に専門的な御意見は私どもは非常に参考になるのでありますが、先ほど井堀さんのお話にもちょっと出ましたように、生産性向上が常に労働者の負担においてなされる結果になるんだという点については、私は賛成できません。つまり一時的にはそういう現象はあるかもしれない。しかしそれが生産性向上の最終目的ではないのでありまして、アメリカあたりでは、滝井さんも御承知のように生産性をうんと上げていくものですから、労働時間短縮の問題が起きていることは御承知の通りであります。わが国でも生産性を向上することによって、いかにして国際競争力を増すか。私どもは、さっき機械事業団のお話をちょっと申し上げましたけれども、しからば日本炉生産性向上をやらないで、立ちおくれた機械をがたがた動かしていることによって、国際競争に立ち向うことができるかといえば、これは劣敗国になるのは当然のことであります。そこで私どもは、やはり生産性の向上をやって、さっき申しましたように商品の価値を上げて、製品のコスト・ダウンをすることをしなければ、日本の国際競争力は維持できない。そこまではいいのでありますが、さてそこで滝井さんのお話のように、結局生産性向上運動が成功することによって人員の整理ということになりはせぬか。それが私ども一番勉強しなければならないところであります。その結果、私どもはさらにその産業をいんしん産業に振り向けていく土台ができるのだ。国際競争力に打ち勝つことによって、さらに私どもはその規模を拡大していこうというのが五カ年計画のねらいでございますからして、その規模を拡大することによって、雇用量の増大をはかっていこうというわけでありますから、私は必ずしもそのために労働力がロスになって、従って失業者を出すという結果にはならないのでは広いか。またそうならないように仕向けていくべきではないか、こういうふりに思っております。
  71. 滝井義高

    ○滝井委員 その間にいわゆる時間が要るのです。輸出を振興するためにはコストを下げなければならない。そのためには第二次産業を振興しなければならぬ。これは当然です。ところが、第二次産業を合理化し、生産性を向上せしめ、コストを下げて輸出を上げるということは、同時にそこに雇用が停滞をし、あるいはその第二次産業自体の中から失業が出てくるのです。ところがその失業を今度は救済をする対策というものが同時にそこに持っていかれておらなければならない。そこに出てきたものがすぐいんしん産業に切りかえられるということは時間が要るのです。それはなるほど競争力ができて、そして余裕ができ、資本の蓄積ができて、根治は次の段階でいんしん産業ができていく。できると同時に、それが一つの呼び水になって第三次産業を振興させていく。そこに雇用が出てくる。これは当然です。その循環のためには時間が要るのです。三年か、五年か、十年か知らぬが時間が要る。その間隔の間に何か対策が必要なのです。この対策というものが、私は中小企業対策と社会保障の政策だ、こう主張したいのですが、日本の現実においては、その対策が現在打たれていないのです。あなたの説明では、産業五ヵ年計画をやるのだ。そしていんしん産業を作ってそれに吸収するのだ。論理はその通りです。ところが産業がいんしんになるためには、そこに時間的なずれが必ず出てくる。これは産業五ヵ年計画のワクの中ではいかぬと私は見ております。だからそこに何かやらなければならぬ。それで失業対策をやるということになるが、失業対策ではもう膠着状態でどうにもならぬ。現実はこういうことなのです。ドイツにおいても合理化をやりました。そしてコストを三割ないし四割下げた。ところが重要産業における生産物は下らなかった。なぜ下らなかったか。これは独占のために価格のつり上げがむしろ行われた。日本でもそういう傾向が現実にあることははっきりしておる。企業は系列化し、集中化し、合理化してきて、なるほど普通の品物は下りました。ところが、重要産業のコストは下らなかったのです。これは当時のドイツの合理化の書物をお読みになると一番先きにこういうことが出ております。現実の日本においても、雇用というものが三十人以上の事業場には増加しておらない。さっき井堀さんの言ったように、三十人以下の中小企業に増加をしておる。そうして大企業と中小企業との間に賃金の較差ができて、そこに断層ができてきているのです。だから私がいわばひがんだ目で見れば、保守党の政策というものは労働階級の分裂政策をやっているのだ、こう見ようと思えば実は見れる状態なんです。今度あなたの方の出されるという声明にも。大企業というものが賃金のベース・アップやあるいは何かを要求するということは、これは中小企業がかわいそうだという声明を出すというようなことを新聞で見たのですが、それは一つの分裂政策をとるのじゃないかとさえ、悪意の見方をすれば——私は善良ですから、そういう見方をしませんが、実際はそういうことも言えるのです。これは一つの断層が今できておる。たとえばそれは具体的に政府管掌の健康保険と組合管掌の健康保険をごらんになるとわかるように、組合管掌の健康保険は家族まで無料なんです。お金が要らない。ところが政府管掌の健康保険は今度は一部負担をして保険料もうんと取ろう、無理にでも取り立てる方策をとらなければやっていけない。すでに同じ健康保険法という一つの法律の中における、社会保障の重要な中核をなす労働者の健康保険においてさえもそういう断層ができておるということです。雇用は増加をしない、賃金は停滞をしておる、大多数の中小企業というものは半失業状態だ、こういう断層の状態ですが、これは当然何らかの形で打開をする以外にはないことになるわけです。   〔委員長退席、藤本委員長代理着席〕 こういう点、どうも今の倉石さんの御議論では、いかにも五カ年計画をやる、そうすると産業がいんしんになって雇用が増大するというけれども、私はその公式論ではいかぬという感じがしてならないのです。そういう点、もうちょっと明快にお答えをいただきたい。私は割合に明快に質問をしているつもりなんですが……・。
  72. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私ども考えますのに、経済五カ年計画を策定いたしましたときから見ましても、五カ年計画の経済自立の計画に進んでいく、経済政策としては一生懸命やれば大体あの目標まで行けるかもしれませんが、雇用の問題についてだけはなかなか困難であるということを私自身自覚をいたしております。決して楽観をいたしておりません。ことに国際競争場裡における日本の産業の立場考えましたとき、生産性向上は必要なことでありますが、その生産性向上を続けていく間においても、二、三の大きな労働組合から生産性向上本部に参加する条件として八つほど申し入れておられますが、私どもは非常に参考になることが多いのでありまして、ああいう点を十分参考にいたしまして、今の滝井さんのお話のようなことについて、さらに労働省の立場として一段の研究をいたして参りたいと思っております。
  73. 滝井義高

    ○滝井委員 ぜひそうしていただきたいと思います。あと多賀谷君がおりますから、一、二点お尋ねしますが、それは昨日の大臣のあいさつの中にもあったのですが、予算書を見ますと、労使関係の安定促進に必要な経費四百五万五千円というのがあるのですが、これは多分重要産業ごとに具体的に労働に関する諸問題を協議する産業別協議会ですか、これを作る経費だと思うのです。別に労働問題懇談会というものをお作りになっております。この労働問題懇談会は、説明を見ると、五カ年計画策定に伴って国民経済的な見地において、国民多数の納得と協力が得られる労働政策樹立を推進するために作ったのだ、こういうことを書いておるようでございますが、労働問題懇談会はずっとはるかを見通した、労働政策の長期的なものを立てるものだ。そうしますと、今度できる協議会との関系は一体どういうことになるのですか。
  74. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私が就任いたしました当時にも申し上げましたように、私は民間産業においても、企業側と組合側との利害は必ず終局において一致しておるのだという見解をとっておるわけであります。従ってただいま公共企業体等労働関係法などについても、いろいろ不便だという声を聞きますから、これを改正した方がいいではないかという考えを持ちましたときに、労使・公益三者に集まっていただいて、いろいろな相談を続けておるといったようなことで、政府が一方的な判断だけでやらないで、そういう方向をとって話し合っていく方がいいではないかという建前をとっておるようなわけでありまして、そういう精神から労働問題懇談会を持ちました。幸いにして第一回の会合などは、評論家の一、二の人が欠席されただけで、組合側も経営者側もほとんど全部御出席になりまして、非常に熱心に御相談がありました。非常に私は成果を上げるであろうと思っております。それはいわゆる労働問題全般についての御相談をする場といたしまして、昨日申し上げました企業別のものは、もっと・身近な問題について、企業系列のおもなものを企業系列順に配置して、そこでやはり三者構成で話し合いをしていきたい。従前ございましたような経営協議会といった個々の産業内においての経営協議会は、たまたまその闘争の場に利用されるような傾向がありましたが、今申し上げておりますような企業別の系列に分けた話し合いというものは、あの当時から見ると両方とも非常におとなになっておりますし、そういうことで話し合う場を作ってなるべく円満に協調していきたい。こういう趣旨で始めたわけであります。
  75. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、それは労使協調的な産業報国会的なものなんですか。
  76. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 産業報国会という言葉は、私ども戦時中承わった言葉でありますが、ああいう思想は私はあまり好きじゃございませんので、話し合いをしていくということであります。
  77. 滝井義高

    ○滝井委員 倉石労政は話し合い労政だということを新聞等で書いております。話し合うということになると議題が必要なんですが、新聞なんか八つの大きな産業にこういうものを作るのだとちょっと出ておったのですが、その通りですか。どういう産業にお作りになるのですか。しかも話し合うということは、経営協議会で取り上げるような産業一般の賃金の問題から労働協約、そういうようなすべての問題を取り扱うのですか。現在労働組合と経営者との間には、労働協約その他いろいろ団体交渉の方式もあるわけです。そこに別に第三者を入れたものを作っていくということになると、これはちょっとなかなか今までの労働組合事業主とのあり方には、非常に大きな変革を来たすことにもなるわけですね。そういう点、もうちょっとそこらあたりの構想を具体的におっしゃっていただきたいと思います。
  78. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 今申し上げましたように、重要な産業について産業別に話し合いをしていこうということでありまして、必ずしも三者構成でなくてもいいのでありまして、三者構成の方がいい場合には三者構成でやっていくということでありますが、ただいまのところは、鉄鋼、石炭、金属工業、造船、私鉄、化学、繊維、電気の八産業について右の協議会を設ける予定でございます。企業別の協議会でございますから、そのそれぞれの企業の特殊性に応じたものについての具体的な相談をしていってもらう、こういうわけであります。
  79. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、そういう委員労働者側の委員、それから経営者側の委員、それから公益の委員というものは、労働大臣が御任命になる委員なんですか。
  80. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私の構想が、さっき申し上げましたなるべく話し合って円満にやっていこうという考えでありますから、こういうものを企業別に作らせるという方針だけでありまして、その委員について労働大臣がとかくの干渉をする必要はないと思います。
  81. 滝井義高

    ○滝井委員 いわば労働省が仲立ちの役をやって、石炭なら石炭の労働組合の代表も来ていただく、それから石炭鉱業の方の資本家の方にも来ていただく、そうして適当な人を入れるといっても、なかなかそうこれは——予算でこの経費四百五万円ばかり取っているのだから、出てくれば、事業主と労働者側は出日当はやらなくても、やはり公益委員は依頼をしなければ、忙しくてそう出てくるものではないと思うのですが、そういう運営の面——ただどうも、話し合いだから話し合ってくれでは、これはなかなか行かないと思う。議題も必要だろうし・おそらく労働問題懇談会みたような常置的な機関になると思うのですが、そこらあたり、大臣の構想はまだ固まっていないのでしょうか。
  82. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 その具体的にどういうふうにやるということは、これから労働省内で事務的に検討してもらって、一番専門的にわかっている人々がいいと思われる方法をとっていただくつもりでおりますが、根本的な建前は今私が申しましたそれをこの予算に計上して、これをやっていく、こういう趣旨でございます。
  83. 滝井義高

    ○滝井委員 それは具体化したら一つもう一ぺん御発表願いたいと思います。  その次には、これは地方的な問題になるかと思いますが、実は昨年あなたの非常な御努力によりまして、日雇い労働者諸君に六日分の、何といいますか、越年手当的なものをいただきました。ところが日雇い労働者の中で生活保護を受けている諸君が相当いるわけです。それはもちろん地域によって多少の相違はありますが、相当おります。その生活保護を受けている諸君に対しまして、あの六日分というものが、いわば十二月における臨時収入という形になったわけです。従って六日分、たとえば私の方の筑豊地区でいいますれば千五百三十円ぐらいになったかと思いますが、その六日分を、これだけはいわば十二月における超過収入である。そこで、たとえば毎月就労して、そうして失業対策に出て六千円のお金をもらっている。その一家の生活費が八千円要るとするならば、二千円だけは国の方から生活保護をもらっているわけです。ところがたまたまそこに六日分が入ったので、その生活保護からもらっている二千円というものは、これは一月においては六日分が入ったのだから、その分はやらない、こういうことになったわけです。これは六日分を出すときに、この六日分は一月の生活保護費から差し引くのだということでやっておれば問題はなかったのです。ところが突如としてこれを差し引いちゃった。これは、国から生活保護費を幾分でももらうということは気の毒だ、だからどうしてもこれは自分が一つ労働をして、そうして自分の労働で賃金をもらって足らぬところは生活保護費で見てもらおうという、こういうきわめて旺盛な労働意欲をもって失業対策に出ていった。ところがあなたの非常な御努力で六日分いただいたのが一月の生活保護費から引かれるということになれば、これは働きに行かぬ方が得なんです。いわゆる生活保護費のワクをこえる分は全部没になってしまうわけです。もちろんこれは生活保護法の建前からいけば、シビヤーにいえばそうだと思います。ところがこれは一つの政治的な問題として六日分というものはあなたが主張していただいたわけですから、それを今度しゃくし定木に生活保護を適用して、はなはだしいのは一月から一挙に引く、いいところで一月、二月、三月から引いてやるのだ、こういうことです。しかもそのほかに新しい主張は、その六日分はもちろんそうだ、それから十二月分は、たとえばわれわれの地区でいえば、今までは十八日くらいしか働いていない。ところが十二月は二十五・六日も働いたのだから、今までの平均と、十二月にうんと働いた分の差額も、これは収入が増加したんだ。それから市から地下たび一足と六百五十円か何か出したんですが、それもこれも臨時の収入だ、こういうことになって、四千五、六百円一月から引かれることになっちゃった。それでわれわれは、それはいかぬということで、結局国の六日分だけを引くという形になったのですが、こういう政策というものをもし自由民主党がおとりになるとするならば、これは私は労働者の怨嗟の的になると思う。この点は大臣の政治力で閣議で問題にしていただいて、やめさしていただきたいと思う。今までそういうことはないのです。昨年までそういうものを引いた例はないのですが、今年はそれをやっておる。なるほど昨年国の生活保護費というものは増加をしておりましょう。しかし増加をしておるからといって、日雇いに出たわずかの、六日分まで、生活保護費と引きかえに差し引いていく政治というものは、血も涙もない政治だと思う。それで日雇い労働者諸君はどういう主張をしたかというと、それなら役人は一・二五あるいは一・五の年末手当をもらったのだから、一月、二月は給料をもらわないでくれという極端な主張まで実は出てきたのです。こういう点一つ大臣御努力がいただけましょうかどうか。とっさであるいはまだお聞きになっていなかったかもしれませんが、お聞きになっていなければ、職安局長は知っているはずですから、よくお聞きになって、一つ努力していただきたいと思いますが、とりあえず御答弁をいただきたい。
  84. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私どもは、皆さん方の御協力で六日分やりましたことが、今のようなことで抹殺されることは、まことに、残念なことでございまして、厚生省にもかけ合ってみたのでございますが、厚生省の方では、生活保護の立場から、事務的にどうもやむを得ないという主張でございまして、まことに残念に思っておりますが、これからはそういう問題のと遂には、あらかじめそういうことに処して対策をとっていきたいと思っております。
  85. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると、そういう施策は全国的に各県全部とられておるものでしょうか。労働省の調査を一つ……。
  86. 江下孝

    ○江下政府委員 大臣から御答弁いたしましたように、生活保護法の建前として、そういう措置をとっているのが建前だと思います。今までもしやってないとするならば、それは運用上そういう措置をしておった、こういうことではないかと思っております。そこで大臣からもお話しがありましたように、この前滝井先生からもお話しがありましたので、厚生省とも話してみたのでありますが、事務的になかなか話が本年度は片づきませんでした。これは御趣旨ごもっともな点も私はあると思いますので、この点については、今後において厚生省とも十分打ち合せをいたしたいと思います。
  87. 滝井義高

    ○滝井委員 その理屈はわかるのですが、全国的な状態なのですか、それを一つわかっておれば御説明願いたい。
  88. 江下孝

    ○江下政府委員 今手元にございませんので、後刻お届けいたします。
  89. 藤本捨助

    ○藤本委員長代理 多賀谷真稔君。
  90. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 先ほどから雇用の問題を中心に井堀委員並びに滝井委員からお話がありましたので、私も補足的に雇用の問題について若干質問をいたしたいと思います。  このたびの政府の行政措置で、多発的、集団的な失業者発生の地域には特別な補助率の引き上げができましたことは、これは私も非常に喜ばしいと感謝をしている次第であります。しかし私はもう少し根本的な対策が必要である。この地域はいわば慢性的な不況地域になっているような状態であります。本年は失業者が出たが、来年は失業者が少かったという地域ではどうもございません。終戦後ずっと統計を見ましても、私ここにそういう市町村の統計を持っているわけですが、標準税収入と失業対策事業費の割合を見ましても非常に高率の地域、たとえば荒尾市であるとか、大牟田市であるとか、直方市であるとか、唐津市であるとか、伊万里市、小城町、こういった地域は炭鉱地帯であります。さらに呉市とか、舞鶴市、江田島町、佐世保市、こういった地域はこれまた旧軍港地帯であります。あるいは旧海軍がいろいろ施設を持っておった地帯である。しかもこれは最近数年間ずっと失業地帯としていろいろ政府に対しても特別な配慮を願うべく要求しておった地帯であります。そこで補助率を引き上げられたことは非常に感謝にたえませんけれども、私はもう少し国務大臣である倉石大臣お尋ねいたしたいのですが、根本的な対策が必要であります。地域的に非常に多発的な失業者が発生しているというのは、日本だけでなくて、各国の実情である。失業者の新しい一つの型に現在なっているわけであります。英国におきましては、一九三三年に非常な不況にあって、ことに炭鉱地帯と造船地帯、要するに単一産業で立っている地域が非常な不況にあいました。そこで特定地区開発並びに改良法という法律を作って、特別の施策をいたしました。一九四五年には産業配置法というのを作って、これは専任の行政機関の設置をして、そうして産業誘致政策としては、政府によって工場用地の造成をやっている。あるいは工場用建物の新築をやって、それを貸しつけている。その地域の小企業には特別の免税恩典と補助を行なっている。あるいは財政投融資において特別に考慮をしている。こういうことを特別にやっております。あるいは労働政策でも地域的移動の助成を行なっている。住宅問題その他です。あるいは土地の問題もございます。あるいは職業的移動のための特別な職業訓練をやっている。こういうふうに英国の場合はたしか七地区であったと記憶するのですが、そういう特別な施策をやっている。アメリカでも、現在のアメリカの経済は非常な繁栄をしているわけですが、ほとんどの産業が繁栄しております中で、やはりある産業は非常に衰微をしている。ある地域は非常な失業者に悩んでいる。そこで現在のアメリカの失業はむしろ地域的な失業に重点が置いてある。この対策というものが非常に大きな問題になっている。ここに資料がありますけれども、これは労働省が出された海外労働経済月報ですが、これにかなり詳細に紹介をされております。そういう地域はどうして起ったかというと、やはり天然資源の枯渇あるいは需要の不足、これは日本でいいますと、ちょうど炭鉱あたりに当るわけですが、あるいは一産業の全般的な衰退、あるいは産業の単一性と雇用の季節的変動、兵器工場、造船所、航空機工場ないしその他の国防施設の閉鎖、さらにその他、地域の住民が主として従業している大企業が閉鎖している、こういう理由がいろいろあげられておりますが、そういう地域に対しては、州がやるとか、あるいは労働組合もいろいろ援助しておりますが、さらに連邦政府としては、国防産業の発注に非常な注意を払っております。同じコストでありますと、その労働が過剰な地域、いわば不況地域に注文をする、こういう処置をとられている。あるいは国防産業に対して、不況地域における工場建設や拡張について特別の融資をし、奨励をしている。こういうことが行われており、さらにそれでも足らぬというので、最近では上院議員の中から、不況地域法というのが出されんとしている。こういうふうに紹介をされているのですが、私も日本におきましてはこの問題は、もう数年来大きな問題になっておりますので、倉石労働大臣になって初めて補助率が上ったことは敬意を表しますが、もう少し産業立地の面から、特別の配慮が必要ではないか。今日本経済は、過剰の労働人口をかかえておるわけですけれども、これが繁栄に向いまして、あなたの計画されております五カ年計画が軌道に乗って、ほんとうの意味の完全雇用ができたと仮定をいたしましても、私はこういう地域は依然と  して不況地域になって困るのではなかろうかというようなことを憂慮するものであります。そこで何らか特別の産業政策が必要ではないか、かように考えるわけです。実はきょうは通産大臣並びに経企長官に出ていただくことをお願いしたのですが、いろいろな支障で出られないということでありますの、で、一つ代表して倉石国務大臣から御答弁を願いたい。
  91. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいまのお尋ねは、最も労働政策中の大事な部面でございまして、私どもも五カ年計画策定のとき及び三十一年度予算編成に当りまして、私は就任まぎわでありましたが、労働省の当該事務当局からは、ただいまお尋ねのような件について熱心にいろいろな意見が述べられました。そこで呉とか大牟田とか、いろいろただいま御指摘のような、いわゆる失業多発地帯のそれぞれの市長も参られまして、そういう方々ともいろいろ御相談をいたしましたが、まず今の財政事情でやむを得ませんので、多発地帯の補助率の引き上げということでがまんをしていただくより仕方がなかったのでありますが、予算編成のときに事務当局で熱心に検討いたしましたのは、たとえば愛知用水といったようなところで非常に長期間にわたって人員を要する、そういうようなところには移動住宅というようなものを考えて、そうして多発地帯のそれに該当するような人々をそこへ移住してきていただいて、そこで仕事を完成するまでやっていただくとか、そういったようないろいろな計画も実は立案いたしてみたのでありますけれども、何といたしましても来年の予算編成も差し迫っておりましたし、財政事情も許しませんので、これは懸案事業として研究を続けていく、こういうことで一応は本年は多発地帯の補助率引き上げで満足せざるを得なかった、こういう実情でありますが、非常に大事な問題でありまして、私どもも検討を続けて参りたいと−思っております。
  92. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 大臣から答弁をいただいたわけですが、私もこれが一年やそこらで法案になるとは考えません。なかなかむずかしい法案であろうと思います。しかし日本の開発というのは、未知数の土地、たとえば北海道というような土地を開発する、要するに白い地図を新しく描く、こういう点も確かに必要であります。しかし私は古い地図を新しく書き変えつつ新しいものを生んでいくということも、この狭い日本においては非常に必要な、これは忘れてはならない政策であると考えるわけです。そこで一つ大臣には特別の御配慮を願いたい。ことに雇用の問題をかかえておられるのは、主管大臣は労働大臣でありますから、ほかの方は、資本主義体制であり、自由経済を建前としております党としては、なかなか経済関係大臣は、私は首を振らないだろうと思いますので、一つ強力に御推進をお願いしたいと思います。それからもう一つ関連をいたしまして、現在の緊急失業対策法という法律があるのですが、この法律があったであろうかというような、いわば力のない、やってもやらなくてもいいような法律の形態になっておる。そこで今かように雇用問題が大きな問題となり、失業対策というものが大きく浮び上ってきておるときに、私はこの法律でやれないことはないと思いますので、もう少し私は抜本的な失業対策法の制定は必要ではないか、かように考えるわけですが、その点はどういうようにお考えですか。
  93. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 お説の通りでありまして、私どもが特別失業対策事業の予算を労働省に置かなければ実際に失業対策にはならないのではないかということを強く主張いたしたのもそういう点でございまして、今御指摘の法律は、これは私どもが当委員会において作りました法律でございますけれども、こういうものでは、私どもの所期している十分なる成果を上げることは一困難でございます。そこでこの失業対策について何らかもっと強力なる立法措置が必要ではないかということでございますが、先ほどお話のございました失業多発地帯に対する措置と同様に、こういう問題も根本的に検討をいたして参りたいと思っているわけであります。御指摘のように、産業の底を深くして日本の経済が国際競争に打ち勝つような措置はできるといたしましても、やはりしわ寄せをしてくる労働失業関係というものは大問題であります。そういう見地から政府はこの点に力を入れているわけであります。
  94. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 次に私は今から申し上げます事件についてお尋ねをいたしたい。これは婦人の労働者が坑内で落盤その他のために死んだという事件でございます。これは一回の事件ではありません。二回も相続いて起っているわけでございます。福岡県嘉穂郡二瀬町下相田というところの炭坑でありますが、中島スエさんという五十一才の方が落盤事故でなくなっている。これは昨年の十一月二十二日でございます。ところが本年に入りまして、一月の同じく二十二日に山田市にあります三友炭坑というところで田中トシ子さんという二十八才の御婦人がやはり落盤で即死をされている。こういう事件が相次いで起ったわけでございます。そこで本日は鉱山保安局長にも来ていただいておりますけれども、鉱山保安の問題よりも婦人が坑内で労働したという事実、労働しているという事実、しかもこれだけではなくて筑豊炭田では二百名くらい婦人が坑内で労働をしているだろうといわれている。こういう事実に対して労働大臣はどういうふうにお考えであるか、まずお聞かせ願いたい。
  95. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 婦人及び年少者の坑内労働につきましては、法律の施行当時から厳重に取り締って参ったつもりでございますが、御指摘の点は昨年の十一月の事件でございます。被疑者は山元正雄という者であります。すでに労働基準法第六十四条違反として所轄の検察庁に送致いたしてございます。それから本年一月の事件につきましては、目下現地におきまして調査を命じて調査中でございます。
  96. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 国際労働条約にも、一切の種類の鉱山内の地下産業における婦人使用に関する条約、こういうのがあるわけですが、これには抵触しないのですか。これは基準局長にお尋ねいたします。
  97. 富樫總一

    ○富樫(總)政府委員 労働条約全般につきましてはいろいろ検討しております。できるだけ近い機会に推進し得るものは取りまとめて推進したいということで事務的に検討しております。ただいまお話の女子の坑内労働の条約は、現在のところまだ日本政府として批准してございませんので、法的にはその条約に違反するという関係にはなりません。しかしただいま大臣から申しましたように、その条約と見合う労働基準法の条文には違反しまするので、断固これを送検して処分を期待する、こういうことになっておるわけでございます。
  98. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 この条約は日本国内法には何ら抵触しない、要するに条約と国内法とはいわば同じものである、日本国内法から見ればこの条約は批准してもいい適格性を持っておる、こういうように考えるのですが、間違いありませんですか。
  99. 富樫總一

    ○富樫(總)政府委員 条約全般につきましていろいろ検討しておりますが、その条約につきましては大体現状におきまして批准し得ると一応事務的に考えております。
  100. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 批准し得る条約を今までなぜ放置しておったのですか。これは一つも現在の国内法と抵触しない。日本でも十分批准し得る。しかも基準法ができてもう九年にもなる。それにこういう重大な条約を批准しないというのは私は非常に不見識だと考えるのですが、労働省は今まで何をしておったのですか。
  101. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいま御指摘の条約ばかりでございませんで、私ども日本側として批准して差しつかえないと思われるようなものを私は就任以来検討いたしておりまして、でき得べくんばこの議会になるべくそういうものを一括して批准を願うようにいたしたいと思っております。
  102. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 では国内法を変えなくても批准し得る、こういうものについては今国会に批准の手続を取られる、かように解釈してよろしゅうございますか。
  103. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 条約批准につきましては、私ども労働省ばかりでございませんで、他のいろいろな行政省に関係のあるものもございますから、そういう方とも関連いたしておるものは十分検討して、なるべく批准をする方がいい、こういう考えで目下検討を続けておるわけであります。
  104. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 この国会に出される、こういうわけではないのですか。
  105. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 支障がないものはなるべく今国会に提案いたしたいと思っております。
  106. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実は私も条約の一条々々を検討してみたことがあるのですが、第一には、今問題になっております婦人の地下作業、これはもう的確にどこも国内法に抵触しない。それから実際問題では労働統計という問題がありますが、その次には社会保障最低基準の条約、これはこの条約そのものに非常に弾力性があります。一部、二部、そのうちいずれかあればいいとかいろいろございますので、私は社会保障の最低基準に関する条約は批准し得る条約ではなかろうか。さらに賃金の保護に関する条約というのがある。これも批准し得るのではなかろうかと思いますが、これは先取特権のところで制約がある。日本では六ヵ月という賃金を限っておる。一方は優先債権だということで全面的にそういう制限を認めていない。これはどうだろうかと思ったのですが、これなんかは私は六ヵ月も賃金を払わぬというこういうことはちょっと考えられませんので、むしろこれは国内法を変えていただいた方がいい。従来まだ六ヵ月でなくて一ヵ月のうちでもたしか四分の三とかそういう制限があったと思いますが、その制限は二十四年になくなったのですから、六ヵ月も結局撤廃してもらえばこれはまるまる入るではないか、こういうような簡単な私の調査でありましたけれども、そういう気持を持ったわけですが、労働省では大体どういう条約が今批准し得る適格性のある条約である、こういうようにお考えであるかお聞かせ願いたい。
  107. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 今御指摘のようなものについて研究を続けております。
  108. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 例のILOの決議があるわけですが、加盟政府に対するあれは勧告決議になっておると私は記憶するわけですから、この問題は何か機関を設けて検討される、こういうようなお気持はないかどうか。ただ政府だけで検討されてそれをかけるかかけないか、こういうことをおきめになるのですか。それとも何らか公的な検討機関をお持ちになるのですか、それを一つお聞かせ願いたい。
  109. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 御承知のようにILOの諸条約はそうややこしいものでもございませんし、そのことが国際外交関係に影響を持ってくるとかいうようなものでもございませんで、政府部内で各省と連携をとりまして研究をいたして、支障のないものはできるだけ早く批准をする方がいいと思っております。
  110. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私はややこしいものでないということを考えておりました。ところが外務委員会等で公定訳がないんだとか、まだできていないとか、公定訳なんというものはその条約を批准すると遂にちゃんと訳してそれを公定訳にすればいいのですが、そういうことを理由に延期をされておる。それから国際的に云々と言われましたが、私はやはり国際的に非常に重要なる問題があると思います。この前にお話しましたようにガットの加入の場合に三十五条の適用をした国が十四カ国もあるし、今いろいろな綿製品その他のもうけが非常に問題になっておる。ですから私はやはりそれについて批准をされるのがしかるべき処置である、かように考えるわけですが、大臣早急にぜひ一つ・批准し得る条約はなるべく批准してもらいたい、かように考えるわけであります。  続いて今の婦人労働の問題に返るわけですが、私が二百名という数字を申し上げたのは、実は現地から二百名程度おるらしいという報告を受けたから申したわけですが、最近非常に婦人の坑内労働が多くなってきておる。これはなくなったのが二名ですから、働いておる者はさらに何百倍おると言ってはちょっと大げさですが、かなりおる、かように考えざるを得ないわけです。これについてはどういうように監督処置をなされておるかまずお聞かせ願いたい。
  111. 富樫總一

    ○富樫(總)政府委員 先ほど大臣が申されましたように、この基準法のうち女子の坑内労働事案はこれは正真正銘掛値なしに最も悪質違反事案の一つと干して、法施行以来取り扱っております。これの検挙、送検の比率はその違反事案に対してきわめて高率を示しておることは、ここに数字はございませんが、事実でございます。見つかり次第で送るだけ厳重な処置をするようにいたしておるのでありますが、それだけ相手方はできるだけ見つからぬようにしてやろう、こういう努力をいたします。たとえば先般も仙台の近所の炭鉱で、ちょっと見ると男にしか見えないような風采をいたしまして、何とか菊子というのは、賃金台帳でも菊夫というふうにして、男装して働いておったのを発見するというふうに、なかなか相手も、わからぬようにやっておるようでございます。しかし最近の福岡の事案は、社会的にも相当問題にされております。特にこういう同質の違反の摘発につきまして、福岡の基準局におきましては、特別の一斉監督といったようなことをやらせております。その成果を期待しておりますが、まだ取りまとまった報告を受けておりません。
  112. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 鉱山保安局長にお尋ねいたしますが、一般的な炭鉱災害につきましては、また商工委員会等で質問をいたしたいと思います。この前明治赤池が爆発いたしましてから、さらに九採高陽炭鉱でも非常な悲惨な事故が起っておる。そこで、そういったことは別の機会にお尋ねいたしたいと思いますが、ただここに婦人が坑内で事故で死んでおる。こういうことについて、一つ監督官庁であるあなたの方からお聞かせを願いたい。  それからもう一つ、ついでですが、鉱山を再開する場合、あるいは施業する場合に、施業案等を出すわけでありますが、そういう施業案は、あなたは直接の関係でないかもしれませんけれども、それを認可する場合には、どういう手続をとられておるか、どういう条件で行われておるか、こういうことも一つお聞かせ願いたいと思います。と申しますのは、昨年の十一月に事故のありました炭鉱は、純然たる鉱業権者でなくて、もちろんタヌキ掘りでありますけれども、さらに盗掘であった、こういう実情であります。そこで施業案認可についてどういう態度で臨んでおられるか、お聞かせ願いたい。
  113. 正木崇

    ○正木政府委員 御指摘の昨年の事件につきましては、鉱業権者でない者が盗掘をいたしましたために起った事件でありますが、鉱山災害ではありませんので報告が参っておりませんから、詳細は承知しておりませんけれども、鉱業権者でない者が盗掘をする場合は、実は鉱業法上の監督の問題でございまして、鉱業法上の監督は地方の通産局長の権限でございます。しかし私どもの方は、相当数の業務監督官を置きまして、ひんぱんに、鉱山の災害防止、あるいはその技術指導の面におきましての巡回監督を行なっておりまするので、その際にいろいろと実際上の指導もいたしておりまするし、またこれは他省の所管でありますけれども労働基準法の違反事件のようなものを発見いたした場合には、所轄の官庁に通報するという指導をいたしております。  施業案につきましては、これも先ほど申し上げましたように、鉱業法によりまして、地方の通産局長が認可権を持っております。しかしその際に、施業案の内容におきまして、鉱山保安の施設の面におきまして大きな重要性を持つものでありますので、地方通産局長は、認可をいたします前に、地方の鉱山監督部長に協議をすることになっております。協議を受けました鉱山監督部長は、保安上の見地から支障がない場合におきまして、認可差しつかえないという回答をいたしまして、認可をいたしております。
  114. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 通産局長が認可をする場合には監督部長に協議をする、こういうことを言われましたけれども、私はこの協議が十分行われていないのではなかろうかと思うのであります。あるいは協議が行われておっても、簡単にやって、そういう点について監督をされていないのではなかろうかと考えるわけであります。最近起った事件で田川で起りましたが、ちょうど池の下を掘ってそうして池の底を抜いたという事件が起りました。その日はちょうど日曜日でありましたが、公休を振りかえて月曜日にはその池をほして魚をとる、こういう予定であった。ところが日曜日に魚は坑内から出たということで九名も死んでおるのです。それから天草でも古洞に当って三十九名であったと記憶するのですが、三十九名もなくなっておる。ですからその池の下を掘るというような妙な施業案がどうして認可をされるのか不思議でたまらないわけですが、あなたの方は協議をされておるということを言われておるけれども、どうしてそういう事態になるのか、ちょっと問題からはずれますけれども、一つこの際お尋ねしておきたい。
  115. 正木崇

    ○正木政府委員 ただいま御指摘のような実例炉あったことを私記憶にございませんけれども、もしもそれがありました場合にはよほど古い事件として品ございますのでしょうか、最近は私記憶がないのでありますが、天草の事例はたしか古い事件だと思いますが、もちろんそういう池の下を採掘するというような乱暴なことを施業案として申請をした場合にこれを認可することはございませんので、おそらく施業案の認可申請をいたしまして、まだ認可前にそういった採掘を行なっておるということがあるかもしれませんが、いやし一くも認可をいたしました以上そういう事件が起ることはないというふうに私は考えておるわけであります。
  116. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これは古い事件ではございません。たしか一昨年の事件であったと思います。田川は大実炭鉱といいますか、これは真岡炭鉱の斤先であります。租鉱権であります。これが今申しましたような九名の死傷者を出した。しかも調査に行きましたところが図面がない。図面はどういう図面かというとただ単にトレースしたような格好で、わずか薄いトレースの図面が一つあった。私はこういうことをあなたの方から出ておる鉱山保安監督官の会議の議事録で読んでおる。セーフティ・サービスという本が福岡の鉱山監督部から出ておる。それの座談会で、この炭鉱に行ったところがその図面がない。図面はどうかというと薄いトレースをした図面が一つしかない、こういうことが書いてある。鉱山保安監督官が事実座談会で話しておるのですから間違いもないし、しかもその炭鉱の名前をさしておるのですから、この事実に違いはないと思うのですが、そういう図面がないようなものがどうして認可をされるか、これは不思議でたまらないのです。ですからそれを一つお答え願いたいのです。
  117. 正木崇

    ○正木政府委員 これは多賀谷先生よく御存じかと思いますが、鉱業権を設定いたしまして鉱業に着手いたします場合には、施業案を申請いたしまして認可を受けてやっております。しかしながらその後いろいろと事情が変って参りましても、そのままの施業案でやっておる場合がありますので、施業案違反でありますとそういう事案を発見いたしました場合には必ず法律上の措置をするということをやっておりますけれども、非常にたくさんある炭鉱でございますので、あるいは目が届きかねてそういう事案が看過された事態があったかと思いますが、極力そういう事案は防止するように全力をあげてやっております。
  118. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 どうも局長さんばかり責めるので非常に恐縮ですけれども、通産省を代表して見えておるから一つ質問をしたいのですが、私は施業案の許可が非常に不備であるということを知っておる。大体法律が悪いのです。法律に施業案認可の条件が一つも書いてない。ですからこの鉱業法について鉱業法を実施していないじゃないか、けしからぬとは申しません。しかしあなたの方は鉱業法の事務的な規定ですから、これについては改正をする、こういう処置をとらるべきが当然である。これは性格からいえば、私は行政官庁が、こういうように施業案の許可条件が非常にはっきりしてない、それで災害その他が起ってもどうにも取締り方法がない、こういうことであろうと思うのですが、それならそれで私は、施業案許可の条件を十分付して、そして坑内は刻々事情も変るのですから、そういう事情が変更したときは届出をするとか、あるいは許可を必要とするとかという、法的な改正の処置が必要である、かように考えるわけです。それで私はこういう鉱業法というような、いわば手続的な、技術的な規定は、やはり通産省で改正案を出すべきであって、ぜひ一つこの鉱業法の施業案認可について厳重な条件をつけてもらいたいと思う。そうしてそういう面からも一つ災害が起らないように——今申しました例は実にばかげたことで災害が起っておる。坑内の池の下を掘るなんということは……。しかも入っている労働者の連中の方も、大体わかりそうなものだと私は考えるわけですがね。非常に深い坑内ではないのですから、浅い坑内で、しかも浅いところを掘って、池の下何十尺のところを掘って、そして池の底を抜いたというような事件。これで九名も死んだという、笑うに笑われない事件が起っているのですから、一つぜひ通産省として、鉱山保安の面から施業案の検討を願いたい、かように要望をしておきます。  これについてはこの程度にして、次はけい肺の問題を最後にちょっとお聞かせ願いたいと思います。例のけい肺法が制定されましたときに衆議院の決議があったわけですが、その決議についてその後政府はどういうように御処置をとられたか、お尋ねいたしたい。
  119. 富樫總一

    ○富樫(總)政府委員 決議の事項はたしか四つあったと思います。その一つは船員法の関係でございまして、これは運輸省の方でその実現を期する作業をかねて進めておるということを承わっておりますので、さらに詳細はその方からお聞き取り願いたいと思います。  私の方の関係の第一は、けい肺の第三症度にかかった者で配置転換を要するという者、そうしてそれが特にその会社内部で配置転換できずに離職のやむを得ざる場合に至った者に収容施設を設けろ、こういうことでございます。この点につきましては、今後健康診断の進行状況によりまして、その要配置転換者あるいは要収容施設吸収者というような方々の実態が漸次判明するわけであります。そういう者をどういうふうに扱うか、そうして収容施設をどういうふうに経営するかということにつきましては、関係の経営者あるいは特に御関心を持たれる労働組合の幹部の方々も、いろいろ研究の余地があるというふうに言われております。われわれも相当むずかしいので、やるにつきましては十分なる研究及び計画を立てて、いい吸収施設を設けたいと思って、今日研究を進めておりますが、さしあたり来年度におきましては、じんぜん日がたって、そういう人たちが困っても困りまするので、農林省におきまして直接経営しておりまする牧場がございまするが、その牧場に委託吸収をすることができまするように、所要の経費を新年度の予算案に計上しておるわけであります。第二点は、配置転換した場合の転換給付、これが法律で平均賃金の三十日分を支給しろということになっておるのを増額すべしということでございます。これはぜひ何とか実現したいと考えておるのでありますが、これも先ほど申し上げましたように、健康診断が今日なお初期の段階でございます。そういう方々の実態把握がまだ第一歩で、緒につきかかっておるという程度でございます。この実態把握と並行いたしまして、増額の程度をどの程度にしたらいいかというようなことをけい肺審議会等の意見も聞きまして、次の機会にぜひ実現したい、こういうふうに考えております。第三点は、休業給付につきましては、平均賃金のスライド制があるのに、打ち切り補償にはスライド制がないので、その平均賃金について同じような改善を加うべしということでございます。これは基準法の改正に関連いたしまするので、現在臨時労働基準調査会において、この案件をも検討事項の一つにする。調査会におきまするこの案件の討議されたときの空気におきましては、別段皆さん異議なく賛成のような雰囲気がきわめて濃厚であったように私ども見受けております。いずれしかるべき答申が出るかと思います。これもできるだけ次の機会に実現したい、そういうふうに考えておるわけであります。
  120. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 一点お尋ねいたしたいのですが、船員法の改正の問題は、かなり時日がかかっておる。ですからこの国会に当然出されてしかるべきだ、まだ検討中というのは、いささかこれは怠慢ではなかろうかと考えるわけですが、どうも所管官庁が違いますので、責めるわけにいきませんが、あなたの方からぜひ推進をしてもらいたい。  それからもう一つ、転換給付ですが、これは実際転換された方は非転換者と比べると、どの程度の差がついておるか。これは一律には言えないと思いますが、大体どの程度からどの程度調査したところによると、平均はどのくらい、こういうのが出ておると思います。今実態を調べられておると思いますが、今までの調べられた統計ではどういうような数字になっておるかお聞かせ願いたい。
  121. 富樫總一

    ○富樫(總)政府委員 けい肺法施行が昨年の九月、それから十月から漸次計画的に健康診断を実施しております。現在までに健康診断の結果、それに基きまして症度決定をいたしますが、第三症度と判明した者はたしか二十人程度にすぎません。これにつきまして、実際に公式の配置転換勧告すべきものかどうかということにつきまして慎重調査しておる。これは労働組合側の要求が、むしろ慎重に検討した上での勧告を出してくれというような要望もございまするので、さよう扱っておるのであります。従いまして今日までのところ、けい肺法に基きまする配置転換の実績はございません。けい肺法施行前におきまして、自主的に配置転換上た場合の若干の資料はございますが、ただいま手元にございません。次の機会に御報告申してもいいと思いますが、私の大ざっぱな記憶では、相当の差額ができるところと、差額の大したことのないところと、どうも平均化することがなかなか困難である、こういう感じを受けておるわけでございます。
  122. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 せっかくけい肺法ができたわけですから、その推進並びに整備その他につきましてはぜひ御尽力を願いたい、かように考える次第です。  それからちょっと先ほどの問題で質問するのを忘れておったのですが、要するに坑内の婦人労働者が死んだこの補償の問題です。昨年十一月にありました中島さんの場合は、今も話がありましたように鉱業権者でない、これは盗掘だ、こういう話です。大臣の方は  これは送検しておるということですが、本人の家庭は非常に気の毒な状態にあるわけです。本人の御主人は若いときに背馳をやった関係で子供もできないというような状態で、ずっと休まれておる。そこで本人が生活保護の適用を受けるために役場に再三行っておるわけです。ところが役場の方ではとやかく言って生活保護法の適用を受けさせないから坑内に入った、こういうことになっておるのです。そういう方が死なれておるわけですが、こういうものは一体補償の道があるかどうか、それを一つお聞かせ願いたい。
  123. 富樫總一

    ○富樫(總)政府委員 大体これはもぐりでやっておるわけでございまして、むろん労災保険にも入っておらない。従って法律的にいいますと、基準法に基きまして使用者が全額自分で出さにゃならない、こういうことになるわけでございます。しかしながら実際問題としてその使用主に支払い能力が現実的になければ、これは法律上支給金一があるというだけのことで、気の毒な労働者の遺族は救われないわけでございます。われわれ労働行政の立場にある者としてまことに気の毒でならぬわけです。こういう場合におきましては、厳重にこの使用者に全部または一部でも実際に支払い能力があるかどうかを洗い立てまして、払えるというならば払える程度のものはできるだけ事実払わせる、そうして不足分は労災保険法の解釈によりまして——元来これは労災保険に入っておるべかりし者であった、その者が保険料を滞納しておる、あるいは納めていないという場合には、給付制限することができるということになっております。給付制限しなくてもいいという反対解釈もできるわけです。そういうふうに現実的に使用者に支払い能力のない部分は労災保険で補ってやる、こういう扱いにいたしたいと考えます。そういうふうにまずいって、軽々に保険財政を一ほかの事業主さんの納めた金を簡単に出すわけにいきませんので、支払い能力の方をまず厳重に洗って、しかる後その措置を講じようというふうに現地には指示してございますが、その結果の報告はまだ到達しておりません。いずれ何らかの報告があるかと存じます。
  124. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 最後に大臣に一言お尋ねいたしたいのです。あす自民党の方では総評争議に対する声明を出す、こういう話です。どうも今度の闘争について非常に神経過敏になって、必要以上に政府と与党が騒がれておる、こういう気持を持たざるを得ない。倉石労働大臣が予算をとるためにお騒ぎになっておるのはけっこうですけれども、その予算が済んでもさらにその問題を取り上げて、いかにも政治ストあるいは政治闘争のように宣伝をされておる。私はどうもふに落ちないのです。毎年春季闘争というものがあって、そうしてそれが行われておるのですが、私たちの感覚から言えばそう取り立てて騒ぐほどの問題じゃない。純然たる経済闘争です。それをやんやんと騒いでおられるところに、どうも純然たる経済闘争を政府と与党の方で政治闘争に転化されるような動きがあることを私は非常に悲しむのです。実はきょうそこで新聞記者に会ったら、今度の争議は大したことはありませんよ、これは案外大したことにならないのじゃないか、こう言いますから、大したことと考える方が大体間違いじゃないか、それはむしろ政府と与党の方で騒ぎ立てるから大した問題のように聞えて、案外普通の争議の状態で終れば、いやあれはどうもしり切れトンボになったとかなんとか、そういう考え方が間違いだということで、実は新聞記者の方にも私の意見を述べておいたのですが、どうも少しお騒ぎになり過ぎる傾向があるのです。大臣はどういうようにお考えですか。大臣はいわば労働行政ではくろうとであります。そのくろうとの大臣がその旗を持って騒がれるというのはどうも私は解せない。初めて労働行政の担当になったという方ならばびっくりされるかもわかりませんが、大臣はそういう面においては非常に精通なさっておる。その方が騒がれるというのはどうも解せないわけです。どういう気持でこれはけしからぬとかなんとかいってあちらこちらで声明されておるのか、一つお聞かせ願いたいと思います。
  125. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 今度のいわゆる春季闘争といろものについて私は一ぺんも声明を出したこともありませんし、こちらから騒ぎ出した覚えもありません。ただ新聞関係の方々が来られていろいろお聞きになります。そして問いを大体作られて、こういう場合にはどうだというふうな御質問があるときに、こちらもやはり新聞記者に対して黙っておるわけにいきませんから、そういう場合にはこういうふうになるだろうというようなことを言っておるのでありまして、こちらの方から毛頭騒いでおりません。自由民主党の方でおやりになることは、政府としては何ら関与いたしておらないわけです。どうぞ一つ誤解のないように。こちらでは何にも騒いでおらないのでありますから。
  126. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 なるほど自民党と政府とは違うことは十分承知しておるのですが、しかし今政党の責任内閣である。しかもその与党が民間の賃金、給与の問題でいいとか悪いとか、あるいは物価がどうだとか、これは私は慎しむべきだと考えるわけです。その純然たる経済闘争を外からやんやんいう。私は、ことに二大政党というような状態になって、ほんとうに民主的なルールの上に政治をやろうというものが、経済闘争を政治闘争の中に持ち込もうというような動きは避けるべきであると考えるのですが、大臣はどうお考えですか。
  127. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 自由民主党の方でどういうふうに考えておられるか、明日私は役員会に呼ばれて今までの情勢の報告を求められておりますから、率直に私の見解を述べるつもりであります。その上で、党がどういうことをおやりになるか私は存じませんが、ただいまのお話の経済闘争だ、経済要求だというお話でございますが、先ほど私が申しましたし・あなたも御存じのように、同じ労働組合でも他の団体組合では、今ああいうことをやることは政治的偏向であるということで、反対を表明されておるものもあることは御承知の通りであります。そういうことに対して政党が、やはり必要に応じて見解を発表するということは支障がないではないか。ことに鈴木社会党委員長は、やはりこれも新聞の記事でございますからどの程度の信憑力があるか存じませんが、いわゆる三月闘争と間を合せて内閣不信任案を出すのであるということを地方で、いわゆる車中談を発表しておいでになります。そういうことに対して二大政党の立場である自由民主党が、その鈴木委員長の企図しておられる政治的な御意見について意見を表明されるということは、政党としてはあり得ることではないかと思います。
  128. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私はその鈴木委員長の談話そのものは聞いていないので、それについて釈明をすることはできませんけれども、それは社会党ももちろんそうです。社会党でも今度の賃金の内容に立ってそれをいいとか悪いとかいうことは慎しむべきだ、私個人はそう考えている。これは私は与党もそうすべきであると考えておるわけです。党としても、実はそれに対して反駁声明を出すという話がありました。あるいは用意をされておるかもしれませんが、そのときも、同じことを両方でいいとか悪いとかいう論争を政治の舞台でやるべきでない、それは慎しむべきだ、私個人はそう考えている。そこで政党、しかも政府を担当しておる政党ですから、その点はいかに、自民党がおやりになるのは、私の考えではないけれども、いたし方がないと言われても、政党政治の内閣が組織されておるのですから、やはりこれは与党として慎しんでもらいたい・かように私個人は考える次第です。何か外部で非常に騒いで必要以上にあおり立てているという感じを、私自身率直に感ずるわけです。今度の争議を私たちは見て、それほど政治的にやんやん騒ぐほどのものでないと思っております。炭労の話も出ましたけれども、炭労も今非常に賃金が安いので、同じ二千円を要求するについても趣旨がだいぶ違うでしょう。一方が利潤が上っているからよこせといえば、一方はどうしても食えないから上げろというふうに、おのおの事情があって要求しているのですから、私は、これをあまり騒いで、しかも国会の中で論争をするということは、今後の労働運動に非常な支障を来たす、これは倉石労働大臣はよくおわかりであろうと思うわけです。私はそういうことを切望いたしまして、質問を打ち切りたいと思います。
  129. 藤本捨助

    ○藤本委員長代理 次会は公報をもってお知らせすることといたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十五分散会