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1956-02-06 第24回国会 衆議院 社会労働委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月六日(月曜日)    午前十一時二十九分開議  出席委員    委員長 佐々木秀世君    理事 中川 俊思君 理事 野澤 清人君    理事 藤本 捨助君 理事 岡  良一君    理事 吉川 兼光君           植村 武一君    越智  茂君       亀山 孝一君    熊谷 憲一君       小島 徹三君    田子 一民君       中村三之丞君    八田 貞義君       阿部 五郎君    井堀 繁雄君       岡本 隆一君    滝井 義高君               堂森 芳夫君    長谷川 保君       三宅 正一君    中原 健次君 出席国務大臣         法 務 大 臣 牧野 良三君         労 働 大 臣 倉石 忠雄君 出席政府委員         警察庁長官   石井 榮三君         警 視 長         (警察庁警備部         長)      山口 喜雄君         法務事務官         (人権擁護局         長)      戸田 正直君         労働事務官         (大臣官房会計         課長)     三治 重信君         労働事務官         (婦人少年局         長)      谷野 せつ君         労働事務官         (職業安定局         長)      江下  孝君 委員外出席者         検     事         (刑事局公安課         長)      桃沢 全司君         労働事務官         (大臣官房総務         課長)     村上 茂利君         労働事務官         (職業安定局失         業対策部長)  渋谷 直藏君         労働事務官         (職業安定局失         業対策部企画課         長)      中村  博君         専  門  員 川井 章知君     ――――――――――――― 二月六日  理事山花秀雄君去る十二月二十三日委員辞任に  つき、その補欠として赤松勇君が理事に当選し  た。 同日  理事吉川兼光君同日理事辞任につき、その補欠  として岡良一君が理事に当選した。 一月二十七日  釧路市に国立釧路労災病院設置請願伊藤郷  一君紹介)(第一号)  歯科技工法の一部改正に関する請願石坂繁君  紹介)(第二〇号)  国立療養所付添廃止反対に関する請願田中  武夫紹介)(第二七号)  未帰還者留守家族等援護法による療養給付期間  延長に関する請願武藤運十郎紹介)(第二  八号)  健康保険法改正反対に関する請願山下榮二  君紹介)(第二九号)  同(田中武夫紹介)(第三〇号)  同(前田房之助紹介)(第四二号)  健康保険法による被保険者負担反対に関する請  願(森本靖紹介)(第三一号)  同(櫻井奎夫君紹介)(第三二号)  同(茜ケ久保重光紹介)(第五二号)  同外三件(臼井莊一君紹介)(第七四号)  元満州開拓民及び青少年義勇隊員処遇改善に  関する請願亀山孝一紹介)(第三七号)  未帰還者留守家族等援護法の一部改正に関する  請願亀山孝一紹介)(第四一号)  失業対策事業費全額国庫負担に関する請願  (床次徳二紹介)(第七五号)  教護院国営化に関する請願赤澤正道君紹  介)(第八三号) 同月三十一日  健康保険法改正反対に関する請願井手以誠  君紹介)(第一三八号)  同(中村時雄紹介)(第一六三号)  同(滝井義高紹介)(第一九四号)  同(松岡駒吉紹介)(第一九五号)  未帰還者留守家族等援護法の一部改正に関する  請願菅太郎紹介)(第一三九号)  同(中村時雄紹介)(第一六一号)  元満洲開拓民及び青少年義勇隊員処遇改善に  関する請願中村時雄紹介)(第一五五号)  未帰還公務員留守家族処遇改善に関する請願  (中村時雄紹介)(第一五六号)  日本住血吸虫病撲滅対策確立に関する請願  (眞崎勝次紹介)(第一五九号)  国立療養所付添廃止反対に関する請願(川村  継義紹介)(第一六〇号)  同外二件(滝井義高紹介)(第一九六号)  国立療養所常勤労務者増員等に関する請願  (中村時雄紹介)(第一六二号)  教護院国営化に関する請願外三件(吉田重延  君紹介)(第一九一号)  ふん尿処理施設費補助に関する請願高木松吉  君紹介)(第一九二号)  失業対策事業費全額国庫負担に関する請願  (池田清志紹介)(第一九三号) 二月三日  国立療養所付添廃止反対に関する請願(菅野  和太郎君紹介)(第二二八号)  療術既得権存続に関する請願淡谷悠藏君紹  介)(第二二九号) の審査を本委員会に付託された。 一月三十日  療術既得権存続に関する陳情書  (第一  七号)  台風二十二号による星塚敬愛園の災害復旧に関  する陳情書  (第一八  号)  保育所設置費増額等に関する陳情書  (第一九号)  労働基準法改正等に関する陳情書  (第五四号)  未帰還者留守家族援護強化等に関する陳情書  (第五五号)  戦没学徒隊遺家族援護強化に関する陳情書  (第五六  号)  伊勢志摩国立公園樋の山、日和山間のロープウ  エー架設等に関する陳情書  (第五七号)  南島町を伊勢志摩国立公園に編入の陳情書  (第五八号) 二月四日  元満州開拓民及び青少年義勇隊員処遇改善に  関する陳情書外一件  (第一〇八号)  教護院国営化に関する陳情書外二件  (第一二  八号)  同(第一  九六号)  社会福祉事業制度確立に関する陳情書  (第一三四号)  戦没者遺族処遇改善に関する陳情書  (第一三五号)  同外一件  (第一四九号)  生活保護法特別基準緩和に関する陳情書  (第一三六号)  伊勢志摩国立公園施設整備に関する陳情書  (第一三七号)  国立公園部を局に昇格の陳情書  (第一三八号)  国立公園施設整備費国庫補助復活に関する陳情  書  (第一三九号)  国際観光施設整備に関する陳情書  (第一四  〇号)  失業対策事業費国庫補助率引上げ等に関する  陳情書外一件  (第一四一号)  失業対策事業労務者の冬期加給金国庫負担等に  関する陳情書(第  一四二号)  保健所費国庫補助率引上げに関する陳情書外  三件(第  一四三号)  簡易水道設置費補助額増額等に関する陳情書  (第一  四四号)  身体障害児童に対する育成医療費増額  に関する陳情書  (第一四五号)  精神衛生対策確立に関する陳情書外一件  (第一四六  号)  療術既得権存続に関する陳情書外一件  (第一四七号)  戦没学徒隊遺家族援護強化に関する陳情書  (第一四八号)  労働基準法の一部改正に関する陳情書外一件  (第一五〇号)  国民健康保険法の一部改正に関する陳情書  (第一五一号)  社会保障制度確立に関する陳情書  (第一五二号)  健康保険国庫負担金増額に閲する陳情書外二  件(第一五三  号)  保育所設置費増額等に関する陳情書  (第一五四  号)  母子福祉に関する総合法制定に関する陳情書  (第一五五  号)  未帰還者留守家族等援護法の一部改正に関する  陳情書  (第一五六号)  衛生検査技師身分法制定に関する陳情書  (第一五七号)  社会医療保険制度改正反対に関する陳情書外  一件  (第一五八号)  社会福祉関係費増額に関する陳情書外一件  (第一五九号)  世帯更生資金全額国庫補助に関する陳情書外  一件  (第一六〇号) を本委員会に参考送付された。 本日の会議に付した案件  理事の互選  労使関係労働基準及び失業対策に関する件     ―――――――――――――
  2. 佐々木秀世

    佐々木委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。理事吉川兼光君より理事辞任したいとの申し出がありますので、これを許可するに御異議ございませんか。   [「異議なし」と呼ぶ者あり]
  3. 佐々木秀世

    佐々木委員長 御異議なしと認め、辞任を許可いたします。  次に、去る昭和三十年十二月二十三日に理事山花秀雄君が委員辞任せられておりますので、現在理事二名の欠員を生じております。つきましては、理事補欠選任を行わねばなりませんが、委員長より指名するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 佐々木秀世

    佐々木委員長 御異議なしと認め、赤松勇君及び岡良一君を理事に指名いたします。
  5. 佐々木秀世

    佐々木委員長 労使関係労働基準及び失業対策に関し調査を進めます。まず労働大臣より昭和三十一年度労働省関係予算等について説明を聴取いたします。倉石労働大臣
  6. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 この機会に、昭和三十一年度予算を中心に、労働行政一般につきまして私の所信を申し上げたいと存じます。  前回臨時国会で、労働問題に関する私の基本的な考え方を本委員会においても申し述べたのでありますが、その後三十一年度予算案編成に当りまして、失業対策を初め、私どもの考えております諸施策をできる限り予算にも反映せしめたいと存じまして種々努力して参ったのでありますが、所要予算をおおむね確保いたしまして、来年度における労働行政運営につきましては万支障なきものと存ずる次第であります。以下重要項目ごとに御説明申し上げたいと存じます。  第一に雇用政策について申し上げます。年々八十万に達する労働力人口増加不完全就業者存在等を考えますならば、最近のわが国経済の好転にもかかわらず雇用失業問題は本年も引き続ききわめて深刻なものがあることは否定できないのであります。政府におきましては、その根本的解決策として昨年十二月経済自立五カ年計画を策定し、その遂行による経済拡大発展の過程においてできるだけ雇用量増大し、失業者及び増加労働力吸収をはかりたいと考えておるのでございます。  しかしながらこのような雇用失業問題の根本的解決には、なお相当の時日を要するので、当面の対策としては、三十一年度も引き続き失業対策強化拡充公共事業等への失業者吸収をはかりたいと存じております。  しかして失業対策につきましては、これを単なる失業者救済措置としてでなく、広く経済誌施策と密着した雇用政策重点を指向することが肝要であると存じまして、三十一年度は本年度に引き続きさらに一段と、その方向に努力することといたしております。  特別失業対策事業は、失業者の多数発生する全国主要都市及び重要鉱工業地帯において、労働能力の比較的高い失業者をこれに吸収する生産的建設的事業として、昭和三十年度から実施いたしたものでありますが、昭和三十一年度におきましては引き続き、三十年度とほぼ同額の三十五億円の予算をもって実施することといたしまして、さらにこの他三十一年度においては新たに公共事業中六十九億円の予算をもって臨時就労対策事業を行うことといたしました。本事業は、労務費の比較的高い道路及び都市計画事業を選定し、失業対策的見地から、一般公共事業を上回る失業者吸収を確保しようとするものでございます。なお特別失業対策事業による失業者吸収人員は二万人で、前年度に比べて一万人減少しておりますが、臨時就労対策事業において二万人の失業者吸収いたしますので、実質的には一万人の増加となっております。  次に一般失業対策事業は百五十七億円をもって二十万八千人の失業者吸収することといたしておりますが、これは昭和三十年度に比べ予算額において約二十四億円、吸収人員において一万八千人の増加であります。また本事業については規模拡大のみならず資材費の単価及び国軍補助率の引き上げを行い、事業効果の向上をはかるとともに、地方財政の現況にかんがみまして、失業者が多数発生し、かつ、財政事情が特に困窮している地方公共団体に対しては高率の国庫補助を行うことにより地方財政負担軽減をはかることといたしているのであります。また、公共事業による失業者吸収措置につきましては、昭和三十一年度におきましてもこの点を一段と強化し、北海道開発公庫愛知用水公団等が行う事業においても失業者吸収をはかる所存であります。  以上要するに昭和三十一年度における質疑用対策事業は、特別失業対策事業及び一般失業対策事業をあわせ、予算額において百九十一億八千万、吸収人員にして二十二万八千人でありまして、これに臨時就労対策事業国鉄川崎線建設による失業者吸収を加えますと、失業者吸収人員総数は、二十五万人となり、昭和三十年度の二十二万人に比べ三万人の増加となるのであります。  その第二は職業補導事業充実であります。職業補導事業については、昭和三十一年度におきましては四億七千万円を計上し、前年度の三億五千万円より一億二千万円の増額をはかりましたが、さらに失業保険福祉施設たる総合職業補導所における職業補導事業についても五億五千万円の予算を計上してこれが一層の充実をはかった次第であります。  このほか、失業保険制度につきましては、さきに行われました失業保険法改正の趣旨に即応して一層その円滑なる運用をはかる所存であり、また労働市場合理化を進め、就職の促進に努力して参りたいと考えます。  第二は労使関係についてであります。私は前に労使問題の解決につきましては、国民経済的視野に立って、労使が相互の立場理解、尊重し、納得ずく話し合いによって事に処するという慣行を確立することが必要であることを申し上げたのでありますが、政府としても国民経済的見地から労働問題について話し合いを行う機会を持つことが必要であると存じまして労、使、中立の委員をもって構成する労働問題懇談会を設置することに閣議決定し、去る一月十六日初会合を行なった次第であります。しかしてまた、来年度におきましては、別に産業別協議会を新たに設けまして、主要産業ごとに具体的に労働に関する諸問題を協議することにし、所要予算措置を講じた次第であります。  労政行政関係におきましては、右のほか、労働教育刷新強化中小企業労働問題に対する指導及び援助等に要する経費につきましても増額をはかった次第でありますが、今後労働問題に対する国民的関心を強め、国民経済的視野に立って労働問題を認識し解決することが一段と緊要と存ぜられますので、労働経済に関する知識の普及、労働統計調査整備充実等につきまして予算増加をはかり、積極的に努力する所存であります。  次に労働政策分野において、労働福祉対策強化は緊急の要務と存じます。労働省としましては、三十一年度において、最近特に産業災害の頻発している建設業港湾荷役業林業等重点を志向して災害防止対策を一段と強力に推進すると共に、昨年成立をみましたけい肺及び外傷性脊髄障害に関する特別保護法の施行につきまして、引き続き対象労働者健康診断の実施に万全を期することとし、さらに同法に定める重要な制度一つであります要配置転換労働者のための就労施設として、とりあえず、希望者国立種畜牧場に収容することとし、保護に遺憾なきを期する所存であります。  また三十一年度におきましては、さらに労働衛生研究所を設置し、各種の職業病対策健康管理基準等労働衛生上の諸問題につき、労働行政に直結した立場からの科学的な研究を実施せしめたい所存でございます。  また労災保険につきましても右に述べましたけい肺等特別保護法制定を契機として、主としてけい肺患者重点とする地域に病院を新設しますほか、既設の二十一の労災病院整備をはかるため十二億三千六百万円を計上し、広く被災労働者保護に万全を期する所存であります。  なお労災補償事務につきましては、その内容が複雑多岐にわたる上、年々事務量増加しており、事務処理に円滑を欠くうらみがありますので、三十一年度におきましては労働基準局労災補償部を設け、事務適正迅迷処理責任体制確立をはかりたいと存じている次第であります。  また労災保険失業保険等労働保険に関する審査の公正かつ統一ある運用を確保する必要がありますので、中央に労働保険審査会を、地方労働保険審査官を設けて審査機構整備をはかるとともに審査手続適正化をはかる所存でありまして近く労働保険審査官及び労働保険審査会法案国会に提出し、御審議をお願いする予定であります。  次に婦人少年行政についてでありますが、まず戦後における未亡人問題市重要性にかんがみ、婦人職業対策を推進するため内職職業補導所簡易家事サービス職業補導所整備充実をはかりたいと存じます。一般婦人労働者及び年少労働者保護対策につきましてもその理解と認識を高め諸般調査啓蒙宣伝等に遺憾なきを期するため、予算増額措置を講じましたが、来年度におきましては売春問題の対策につきましても更生を望む婦人のための相談、職業補導等の機能を強化するため予算措置を講じました。  以上昭和三十一年度予算に関し、所管行政について私の基本的考え方を率直に申し述べたのでありますが、今後さらに各方面の御意見を十分に伺いまして参考にいたしたいと存じます。  委員各位におかれては、私の意とするところを何とぞ御了解の上、御協力を賜わらんことをお願い申し上げる次第であります。
  7. 佐々木秀世

    佐々木委員長 以上で説明は終りました。  次に質疑に入ります。発言の通告がありますので、順次これを許可いたします。井堀繁雄君。
  8. 井堀繁雄

    井堀委員 ただいま労働大臣から労働行政一般についての所信発表がございました。さらに鳩山内閣としましては、さき施政方針総理大臣外務大臣大蔵大臣経審長官等によって明らかにされたのでありますが、その全体を通じまして、政府の三十一年度予算編成基本方針というものがおぼろげながら明らかにされたと思うのであります。この基本方針の中で特に私どもの注意を喚起されますのは、生産基盤強化輸出振興、さらに雇用促進を基本的なものにいたしておるということをそれぞれ強調されておることであります。なお、ただいま労働大臣労働行政一般説明の中でもこの点に多少触れておるようでありますが、私は、この鳩山内閣予算編成基本方針でありまするこの三つの重要な主張は、いずれも労働行政に深い関係があることはもちろん、今日わが国の客観的な諸条件を勘案いたしますと、どうしても困難な事態に当面しております労働問題を解決しなければこの基本政策というものはにっちもさっちも行かないものであると断ずることができると思うのであります。かような立場から、私どもは本年の労働行政に対しましては重大な関心を持っておるのであります。かような立場から、従来わが党から代表質問を行なって、政府所信をただしておるのでありますが、不徹底なかどがはなはだ多いのでありまして、ことに労働行政一般についてはその感が深いのであります。こういう意味で、具体的に率直な所見をただしまして、われわれの意のあるところも述べ、日本の最も困難なこの事態を打開することのために、私どもといたしましても施策実行のために協力を惜しまないつもりであります。かような立場からお尋ねをいたしますので、どうか率直な見解を述べていただきたいと思うのであります。まずお尋ねをいたします第一は、政府がそれぞれの立場から主張されております雇用の問題と生産性の問題は、政府基本政策であります輸出振興することによって日本経済の危機を打開し、国民生活の安定をはかる基礎を確立しようとするものでおりまして私どもはこの考え方にいろいろな疑問とその施策の中にはなはだ不徹底なものを感ぜざるを得ないのであります。ただいま労働大臣は、その所信発表の中で雇用の問題について言及をされましたが、この雇用の問題につきましては、具体的な対策として一般失対、特別失対、さらに公共事業の何がしかによってわずか一万八千人の雇用増大するということ以外には、雇用の問題については、ただ困難だということのみ主張しておるかのうちみがあるのであります。もちろんわれわれも日本雇用の問題がいかに困難であるかということについては十分理解しておるつもりであります。私はこの雇用の問題は、一つには過剰人口で悩んでおります日本の現状をどう打開するかという当面の問題もありますが、政府がここに意図しようとしております輸出貿易振興による日本経済の打開をはからんとするためにはこの問題の扱い方は非常に大きな結果をそれぞれの分野に及ぼすものと思いますので、やや掘り下げてお尋ねをいたします。  まず第一に、今御発表になりましたものは私はすべてだとは思いません、思いませんが、たださき総理大臣言及をいたしましたし、高碕長官も言及をされておりますが、その中で私がはなはだしくふに落ちないと思いましたのは、大蔵大臣雇用の問題に対して楽観的な見解を述べ、これを高碕国務大臣は裏づけするような発言を行なっております。さすが倉石労働大臣は、雇用の問題については、その困難であるということを指摘しておりますが、その思想の中には、私はいろいろな矛盾があると思いますので、この点についてまず明らかにいたしたいと思うのであります。  今日雇用の問題は、完全失業者対象として考えられるものでないということで、われわれはたびたび政府雇用対策に対する考え方の誤まりを指摘しておりまして、前回予算委員会で、高碕国務大臣はその非を認めております。すなわち今日雇用対象となるべきものは、日本労働人口をどう把握するか、この労働人口をどういう職業に、どういう仕事に配置するかということでありますことはだれも承知しておることでありながら、実際は雇用の問題を分析していきますると、それはきわめて質の悪い雇用でありまして、この質の悪い雇用こそが、今日日本経済をいろいろな意味において混乱させておるのであります。ここで労働大臣雇用の問題に対する解決は、完全失業者に対する対策としては一応頭を出しております。今言う日本の一番大切な雇用対象は、その就業の状態、ある者はこれを不完全労働と言い、ある者は不完全就業と言っておりますが、これをどのように・扱うかということが雇用対策でなければならぬと思うのでありますが、この問題に対しては言及されておりません。ただ困難だということは言っておりますが、一体労働大臣としては、こういうものに対していかなる方針をお持ちになっておるかをまず伺いたいと思います。
  9. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私はこの前の本会議のときに言ったと存じますが、今井堀さんのお話の通り、雇用の問題については決して楽観をしておらないのであります。そこで政府が三十一年度予算編成いたしますときの一番大事な項目をあげました中に、雇用量増大をはかっていかなければならないということをいっておるのは、やはりその点に頭を悩ましておるということを正直に告白いたしておることでありまして、決してこれは楽観を許さないことでありますが、今御指摘のように、出しくるであろうと想定される完全失業者に対する対策については、できるだけのことをいたしたい。ただ問題はいわゆる不完全就業就業希望を持っておりながら十分なる場所を与えられない、時を与えられないという者について、御承知のように日本雇用関係は、アメリカとか英国のように、普通の雇用関係に立っておる者の比率は非常に少いのでありまして、それがいわゆる第三次産業——あるいは第一次ならまだいいとしても、第三次産業方面に一番多くの人が雇用されておるにもかかわらず、なおかつ、その不就労者が割合に多い。これは日本経済機構の一番の悩みであると存じます。そこでこれをどうするかということについて、私どもは今の経済規模拡大していくことによって産業増大をはかって、その方面吸収する以外にはなかなか方法を考えることはできない。そこで政府が、高碕長官の口を通じて、経済規模拡大することによって雇用量増大していく考えだと申しておるのは、その点を率直に告白いたしておるのでありまして、私どもといたしましても、あるいは愛知用水であるとか、あるいはまた北海道開発公庫といったような方面に人を吸収することを考えてはおりますけれども、そういうような方面だけでは労働の質の向上ということは言えないと思うのでありまして、私はそういう点についても大きな悩みを持っておるということを率直に申し上げていいのでございますが、どこまでも日本経済を今よりもインフレを防ぎながら拡大していって、いわゆるその拡大均衡の中でわれわれの希望する第二次産業方面雇用増大していきたい。こういうことを目標にして経済五カ年計画の初年度に着手いたしました。こういうわけであります。
  10. 井堀繁雄

    井堀委員 お考え方はよくわかりましたが、そこで一体不完全労働者、あるいは潜在失業とも思われますが、そういうものをどの程度にお踏みになっておるか、もしそういうものに対する予想を持っておいでならば、この際明らかにしていただきたい。
  11. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いわゆる潜在失業者の統計につきましては、発表いたしておる役所の、しかもその調査の方法によって、ある者は六百万と称し、ある者は三百万と称しまして、私どもにもその実態を把握することはなかなか困難なことは御存じの通りであります。そこで二つの方法で発表いたしてあるものは、大体あの程度のものと私どもも捕捉して考えております。
  12. 井堀繁雄

    井堀委員 あの程度ではなんですが、それでは私の方から申し上げましょう。  さき雇用の問題は、少くも今出ております完全失業者の七十万かあるいは七十五万の問題に限定すべきではないということは明らかになりました。すなわち統計の上で一番はっきり出ておりまするものは、年々人口が加速度町に増大してきて、二十九年と三十年の一比較を見ても、二百万以上の人口増を見ている。なかんずく労働人口増加率というものは、戦前の増加率よりもはるかに高い比率を示しております。こういう意味雇用対象になる人口というものはおびただしい数字になってくるのでありますが、それが二十八年、二十九年から雇用の状態がよくなったと政府が言っておりますのは、この統計を見て言っておると思うのであります。それを、今の不完全な統計でありますが、比較的信憑力のあるものと思われます統計を総合してみましても、こういう状態が出てきております。従業員総数千八百七十八万七千何がしと発表しておりますが、これを一〇〇と仮定いたしまして、二百人以上の事業場に雇用された吸収率と二百人以下の事業場、さらに五十人以下の零細事業場、こういったような規模別にその雇用の配置の動きを観察することもできます。また農林、非農林の二つに分けて観察することもできます。また業種別にこれを展開して見ることもできるわけでありますが、いずれの統計をとってみましても、たとえば業別の方で見ていきますると、比較的雇用が安定し労働条件も高いと思われる大規模事業場の就職率というものはぐっと減ってきている。それが下に行けば行くほど雇用量増大してきているのであります。これは賃金の問題であとでお尋ねをいたすつもりでおりますけれども労働条件、すなわち賃金の問題や労働時間の問題、あるいは福別施設その他の一般の労働条件というものが、大規模事業場と中小企業、ことに零細企業との比較の上におきましては今日非常な較差が現われてきて、一口に申せば、不安定な雇用と、きわめて長い悪い労働条件のもとに雇用されておりまする事業場というものがこの零細企業、中小企業分野に大半を占められ、その雇用の割合かり見ていきましてもこの問題は軽視できないと思う。さらに今度の統計で非常に私がおもしろく見ておることは——おもしろいということはなんですが、奇現象を感じますることは、農林関係には、二十九年から三十年の推移を見ていきますると、四十六万人の雇用が減じておるのであります。これは、ある意味において、農村の経済がやや上昇しつつあるということを意味することもできると思いますが、一つには日本の特殊事情として戦前考えられてきました農村が失業の危機を救う緩衝地帯でありましたものが、今日農村は都市の失業者吸収する能力を持たないのみではなぐ、農地改革その他によって農村の失業人口というものが都市に排泄されておる姿をこの統計は説明しておると思うのであります。全部て約三十三万の雇用の増を政府の統計は発表しておりますけれども、三十三万人の増加の中に農村は逆に四十六万を減じております。そのかわり七十九万が非農林関係増加したということになるわけでありますが、このことは何を意味するか、一日のうちにただ二時間か三時間、あるいは職を持っているというほんの内職程度の者が非常にふえつつあるということです。こういうものが一体雇用増大になるというような見方をもしして雇用対策を考えるなら、きわめて危険きわまるものといわなければならぬわけであります。今度の雇用問題はここを明らかにして対策を立てたければ雇用対策とは言えない。こういう点は私は非常に重要だと思いますので、こういう雇用の実態について、ただ完全失業者が減ったとかふえたとかいうようなことで雇用問題を論ずることがいかに無意味であるかということを申し上げたいために、非常に不徹底な説明ではありますけれども、こういう大体のことが言えるのでありますが、政府はもっと、特に労働省労働統計については重要な任務として規定されておることでありますが、あなたの手元にはこういうものに対する相当の統計が整理されていなければならぬはずだと思うのであります。そういう統計なくして雇用対策を論ずるなら、それはまことに無策といわなければならぬと思うのでありまして、必ずやこういうものに対する一通りの資料がおありだと思う。これをこの際明らかにしていただくことが非常に大切な政府の責任であると考えまして、もう一度この点について統計の上に立って一つ説明をいただきたいと思うのであります。
  13. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 非常にごもっともな御質問でございますが、一ぺん統計について政府委員の方から御説明申し上げます。
  14. 江下孝

    ○江下政府委員 先ほど大臣があのような数字ということを申し上げましたのは、総理府で発表いたしております労働調査によりまして、追加就業希望者等の調査というのがございます。この内容の数字でございます。この数字が最近ので三十年三月でございます。が、約三百五万という数字が出ております。内容といたしましては、就業時間週三十四時間以下の追加就業希望者が九十万、転職希望者が百七十七万、非求職の就業希望者七十一万、これを合計いたしまして雇用増三十三万を差し引き三百五万、もちろんこれが全部潜在失業者であるかどうかという点は問題でございますが、一応これらの者の大部分が相当不満な職業状態にあるということから、この数字が統計的には考えられる一つのよりどころであるということでございます。  それから今井堀先生のお話の、三十年度と二十九年度の比較の数字でございますが、同じく労働調査によりますと、二十九年度と三十年度で比較いたしますと、第一次産業におきましては十九万の増、第二次産業で二十九万の増、それから第三次産業で七十九万の増、こういうように私どもの方の数字では相なっております。そういう数字を基礎にいたしまして、来年度の要求人員九十万というものを政府といたしましては考えておるわけでございます。
  15. 井堀繁雄

    井堀委員 統計については、総理府の事業所統計あるいは労働省の統計等すっとそれぞれ拝見いたしますと、統計のとり方に多少の相違はあるようでありますけれども、大体三十人以上の事業場でないと正確なデーターがないという結論に達すると思うのであります。しかし今私ども対象にしておるのは、三十人未満の零細事業場、もしくは、極端な例をとりますと行商をやる、夜店をやるというような者も失業者でないことになっておる。この人口が非常に大きく統計の上から出てくる。あなた方は三十人未満の零細事業場、もしくは一人、二人といった、あるいは一人でやるといったような、そういうものの数をどのくらいに押えておるか。またそれがどういう状態に展開されていっておるか、これは労働力の非常に大事な部分だと思う。それを労働省がつかんでいないはずはないのでありますから、そのことをどの統計から推計されてもけっこうであります。そういうものに対する労働省の所見をひとつ伺っておきたい。
  16. 江下孝

    ○江下政府委員 まことに申しわけございませんが、実は三十人夫満につきまして、詳細な雇用別の具体的な調査は、労働省にも実はございません。先ほど申し上げました内閣の総理府でやっております労働調査によりまして、これは井堀先生御承知の通りの抽出調査でございます。抽出調査によりました分につきまして、先ほど申し上げました三十年三月、三百五万という数字が今のところ唯一のこれらに対する資料である、こういうことになるのであります。
  17. 井堀繁雄

    井堀委員 まだ数字が整理されておらぬようでありますが、私は別の作業を今やっておりますので数字と取り組んでおります。そこでだんだんこわくなってくるわけであります。しかしここで私のお尋ねしようとするところは、そういう数字的な相違をどうこう論ずるというのではない、大きなことでいいと思います。それで私は乱暴な引例をいたしました。これは総理府の事業統計の中から取り上げたのでありますけれども、さっきも申し上げましたように、雇用の状態がよくなったか悪くなったかということの政府の統計、ことに私は五カ年計画を拝見いたしまして驚いた。雇用の問題を論ずる資料が、この統計の中から採用されてきている。そして雇用のカーブがよくなった、悪くなったということを論断されておるところに、あの五カ年計画の根底に危険があると思う。先ほど倉石労働大臣が強調されておりましたように、この雇用の問題は、根本的には日本産業それ自身の健全化をはかるより仕方がない、日本経済の底の浅いものを解決するより仕方がないということについては、われわれも同感であります。  そこで問題は本論に戻るわけでありますが、日本経済を立て直すために、それではどうすればいいかということが、雇用の問題の中で論ぜられなければならぬ。ただ完全失業者が減ったからいいということは、今申し上げた点で、それは統計上のいわば気休めにすぎないのであって、実際問題として今の雇用対象になるべきものは、仕事を持っていてもそれで生活のできない者、その収入では家族を養うことのできない者は完全な職業じゃない。あとでちょっと見ていただきたいと思いますが、一体労働省の任務というものは何かということを、私はばかけたことのようでありますがまず言った方がいいと思う。労働省設置法第三条の規定が空文になってはならないと思う。労働省設置法第三条には、労働省の任務を規定いたしておる。「労働省は、労働者の福祉と職業の確保とを図り、もって経済の興隆と国民生活の安定とに寄与するために、左に掲げる国の行政事務及び事業を一体的に遂行する責任を負う行政機関とする。」と明文化されております。ことにこの中で一から九までそれぞれ規定されておりますが、二の中に「労働条件の向上及び労働者の保護」という重要な任務が労働省に負わされておることは申すまでもありません。四には「職業紹介、指導、補導その他労務需給の調整」ということが規定されておるのであります。労働省の最も重要な任務はこの四項にあると私は思う。ことに今当面しておりまする鳩山内閣の政策を完全に遂行しようとすれば、労働省の機能というものはこの上にかかってくると思う。もし労働力の需要供給関係において誤まった行政が行われますると、五カ年計画はがらがらになって空中の楼閣になるわけであります。雇用の問題を私どもは従来のように失業対策、限られた部面における失業者の問題として考える状態でないことは、政府施政方針の中に明らかであります。この点に立場をはっきりさせまして、この雇用の状態を改めていこうとすることは、たとえば鳩山総理の言葉をかりていいますならば、民生の安定とかいっております。それは五カ年計画の基礎になりまする日本産業の機構をどういう工合にするかということには触れておりませんけれども、それを志向するような生産基盤強化といったような言葉で言い現わしております。あるいは貿易振興産業基盤の強化といったように結びつけて言っております。私はこの点については非常に共鳴いたしておるものでありまして、これを果して看板通りこの政府予算の中に実施していくであろうか、あるいは五カ年計画はこの道行きを正しく進むであろうかということを私は今日非常に強い関心を持って見守っているわけであります。また国民もこれに期待をいたしておるわけであります。鳩山内閣がよし退陣して、われわれがその地位についても、この道はやはり進まなければならぬものと思う。それだけにこの問題を解決していくためには、どうしても雇用の問題、しかもその雇用の問題は実地に取り上げられてこなければならぬ問題だと思う。これはここにも政府はいっておりますが、これはあとで賃金問題で論議されると思いますが、この問題がはっきりされてこなければ賃金問題をここでむやみに論ずることは危険であります。一体日本の今一番重要なことは、政府が指摘しておりまするように、貿易振興、海外の市場をいかに確保していくかということであります。海外の市場、すなわち市場争奪の競争というものはそう安易なものではございません。大蔵大臣予算説明の中で、五億ドルばかりの黒字を誇っておりまして、貿易がいかにも好転したようなことを言っておりますがこっけい千万であります。確かに数字の上には黒字になっておりますけれども、それはいろいろな理由があるにいたしましても、主たる理由は国際的な経済関係の中に日本がいわば思わざるくじを引いたというだけであります。この状態はむしろ将来三十一年度にとっては危険信号になってくるのであります。御案内のように貿易の黒字になりました大きな原因は、世界がそれぞれ新しい経済へ切りかえようとする過渡期であります。すなわち国内態勢充実のために国内需要が増大して、国際的な輸出に対する余裕を欠いておったところに、思わざる日本の市場獲得の機会を得たというだけであります。しかしこのことはその国内態勢を充実することによって、さらに高度の世界市場競争が行われてくるということを考えなければならぬのでありますから、このことは今まで繰り返してきた中でも明らかなことであります。でありますからこれに対応していくための雇用対策でなければならぬのであります。その雇用政府の言葉をかりていいますならばコスト高、輸出貿易の際におけるコストの問題はもちろん重要なことでありまして、このコストをいかにすれば低くすることができるかということでありますが、そのコストを低くするための、たとえばさっきの賃金論、これはあとで出てきますけれども、その前に出てくる雇用の問題は、今のような不完全労働とか不完全就業とかいったような状態を解消していかなければなりません。どこの労働市場を見ましてもこんな状態はありません、この状態を解決することが雇用対策であります。ところがそれに対する資料も今日十分でないというようなことで、対策は成り立とうはずはありません。しかし今からでもおそくはありません。この状態を解決していかなければ決して日本産業の基礎は確立するものではありません。もしそれがあるとするならば、独占資本の夢を見ているか、あるいは外国依存の姿になるかでありますから、そういうことはよもやおとりにならぬはずであります。日本中小企業、ことに零細企業の占むる地位は非常に大きな政治問題になってきておるときであります。こういう関係から、私は雇用の問題の内容についてぜひはっきりさせたい。これを改善する道をくどいようでありますけれども労働大臣に求めたいと思うのであります。これは数字をもって言えばわかるように、これは事業所統計の中からの数字にすぎませんけれども、その数字を見ていきますと、五人未満、二人未満のところへ非常に雇用増大していっております。全体からいうと三八・七%という。こういういろいろな数字が展開していきますともっと興味深いものになって出てきますが、傾向として申し上げますると、ちょうどホタルのおしりをつぶしたようなもので、一つの灯が百人、二百人とふえておるだけであって、それはただ光っておるだけであって、それは生命を失っておる。そういう生命を失った労働の状態が日本雇用の姿に展開されていっておる。この問題を解決する措置が出なければ雇用対策を持っておるなどと言ってはいけない。こういう点に対して倉石労働大臣対策を伺っておきたい。
  18. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 政府発表いたしました五カ年計画を基礎にしてのお話しでございまして、井堀さんのお説は私ども全く御同感の点が多いのでありまして、あなたがおっしゃることは、やはり一番雇用量充実しておると言われておるアメリカとかイギリスのような、ああいう正常な雇用関係があって初めて労働者は安定をするんだ、今御指摘のような小さな家内工業で、荷物をしょって歩いて販売をいたしておるような者は完全なる就労とは言えない、こういうお説のようであります。そういう点から申しますと、いわゆる第二次産業雇用量は、日本は英米に比してきわめて低率であることはわかっておることでありますが、私ども経済五カ年計画を策定いたしましたのもそこにあるのであります。そこで来年度を初年度とする五カ年計画において、まずそういう完全なる雇用増大いたしていくように仕向けなきゃならぬ。しかしながら日本の置かれたる立場は、先ほど井堀さんのお話しにもありましたように、ちょうど世界大戦争が終る前後からの傾向でございましょう、あの時分にできた子供たちが今いわゆる生産力人口と称されまして仕事の市場に出てきております。これが百六十万というふうな数え方をされておるようでありますが、つまりその当時の産めよふえよといったような政策の現われが現在生産力人口として一番出てきておる。こういうところにも私どもの悩みがあるのでありまして、現在御承知のようにだんだん低減いたしておりますが、そこで私どもの立てました五カ年計画で、この方向を志向して進めて参りまして、私どものねらいは、三十五年度までに御承知のように年率にして四・五%ずつ第二次産業を増強いたしていく、そういうことによって雇用量増大をはかっていく、こういうことであります。ところが一方において、今御指摘のように、昭和三十年度はなるほど輸出は非常に伸びた、走って国際貿易のバランスは黒字になってきた、そこでこれをさらに推し進めていくという政府の方向には危険が伴っているではないか、なぜならば、それは外国の好景気というものに依存しておるのだ、こういうお説でありますが、私ども経済五カ年計画を策定いたしました当時の資料をもってわれわれが考えてみますと、なるほど海外の市場に三十年度のような好景気を期待するということについては、多くの危険もあるかもしれませんが、私どもとしては、日本の現在程度の輸出物価の標準からいえば、三十一年度、三十二年度においては、まだややこういう状態を維持していくことができるのではないか、こういう考えのもとに、五カ年計画の最終年度においては、御承知のように雇用量増大をして、完全失業者はいわゆる労働力人口の一%程度にとどめ得るように努力していく、こういう目標を立てておる次第であります。
  19. 佐々木秀世

    佐々木委員長 井堀君に申し上げますが、ただいま法務大臣並びに警察庁長官が見えております。法務大臣は予算委員会関係で時間があまりないそうですから、できましたらその方から御質問願いたいと思います。
  20. 井堀繁雄

    井堀委員 それでは労働大臣の方はあとでお願いすることにしまして、法務大臣にお尋ねをいたしたいと思います。これはお聞きいただいておって御答弁をいただくのがよいと考えましたけれども、それがかないませんので、先にお尋ねしますから、おわかりにくいかもしれません。  前回、私が臨時国会の際に予算委員会で法務大臣にお尋ねをして御回答を得ておりますが、それは莫大な労働者の被害になっております賃金未払いの債権がじゅうりんされておる点であります。これはどうしても法的処置を講じなければ、労働者の債権を保護することができない、これは労働大臣に伺わなくてもわかります。基準監督署がこの問題でそれぞれ出先でかなり努力されておることは私どもも認めます。しかし今日の基準監督行政をもってしては、未払い賃金を解決するためにはいかにも無力で、これはやはり法的処置を講ずる以外に賃金債権を保護する道はないと私は考えまして、あなたにお尋ねいたしましたところ、あなたもそれに同感の意を表されておりましたが、この国会で賃金未払い債権を保障される立法措置をおとりになるお考えがございましょうかどうか、この点を伺いたいと思います。
  21. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 お答えいたします。私はあなたのおっしゃることはまことに当然だと思うので、省議のときに局長に相談しておるのです。簡単でないようです。しかし簡単でないからといってなおざりにしたくない、何とかいたしたいと思って、その積極的な意図のもとに研究しております。いずれ御返事ができると思います。
  22. 井堀繁雄

    井堀委員 この国会に出しますか。
  23. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 出せるのか出せないのか、私どもまだ法律措置に対する理解ができませんので、もうちょっと待って下さい。あとであなたによく御返事申します。
  24. 井堀繁雄

    井堀委員 労働大臣と法務大臣お二人おそろいのところで、ちょうどいい機会でありますから伺いたいのですが、未払い賃金の問題は、社会秩序を維持していくための基本的な条件です。ことに、未払い賃金の状況を労働省の方から御発表になればよくわかるが、あなたは御存じになっていると思うけれども、その額が非常に大きいということに一驚せざるを得ないのであります。なお驚くことは、その未払い賃金の内容というものが、零細企業にいけばいくほど多いということです。非常に安い賃金で働かした上に、賃金が払えなくなってしまう、このこと自体重大なことであると同時に、いま一つの問題は、立法化するときに問題になってくる。それを保護することはむずかしくない、むずかしいと思うのは、それを保護する際、法律がじゃまになってきている、古い法律と新しい法律の矛盾がここに出てきておるのですから、一方には立法措置を講じて完全にその債権を保護すると同時に、私は当面の問題としてのやり方が一つあると思う。それは法務と労働の行政上の調整がとれればこの問題は大部分解消できるのじゃないかと私は思っておるが、その一つは未払い賃金が他の債権にじゅうりんされておる、この点の解決はできると思う。その一番やさしいのは税金、すなわち公租公課——国の税金と地方税が含まれますが、これが労働賃金より優先するということ、その理屈はそれぞれあると私は思う。しかし労働者もすでに労働力を提供してそれで生活しなければならぬまぎわになって税金でぽっと持っていかれてしまうというようなことは——国のものでありますけれども、持っていかれて食えなくなり、生活保護法で国が出すということになる、そんなむだなことをしなくても、そういう金は当然差し押えから除外するということは法律を変えなくてもできると思います。この点に対して法務大臣、労働大臣どちらも関係があると思いますから、その扱い方に対して一つはっきりお答えを願いたいと思います。
  25. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 中小企業の未払いがことに相当ございます。大企業にも御承知のようにございまして、この問題は実は基準局としては非常に頭の痛いことでございますが、御承知のような日本の今までの中小企業の状態でございまして、これを非常に厳格にやるということになれば、井堀さんも御承知のように、経営が成り立たなくなってしまうといったようなことで、中小企業の企業体自身に対しても非常に気の毒な面もありますが、一方において、今のお説のように、働いた労働賃金で、これは当然支払うべき義務を持っておるのであります。そこで基準局といたしましては、あまりに法的にきびしくやるというよりも、むしろ中に入ってその促進をはかるようにお手伝いをいたしておるのが現状でありますが、一ころは未払い賃金が約二十億あまりもございました。昨年の暮れごろの調べによると、約十五億円ぐらいに城ってはきております。これは非常に口数の多いものの総計であります。そこですべてのことに優先して税を取り立てられてしまうから、従って未払い賃金も多くなるのだというお説でありますが、その点については私ども政府部内においてもとくと相談をいたしまして、なるべくこういうことを解消できるように努力をしていきたいと思っております。
  26. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 井堀さん、あなたのおっしゃるところがむずかしいので、あれは法律の措置をやらないと、現行法ではできないのです。そうして金額は多いし、相手は労働者だし、何とかしなくちゃならぬ、といって税金の方を無条件にまけろと言うわけにいかぬ。ですからこれは法律措置をやらなければならぬので、まじめに研究します。だからもうちょっと待っておって下さい。いずれ見込みがつくとかつかないとかいうことをあなたにお答えしてからのことにお願いいたします。
  27. 井堀繁雄

    井堀委員 まことに残念でございますが、こういう問題がから回りするようなことでは、労働者は今度の政府を信頼することができなくなります。こういう当然の権利が守られぬ。それは法務大臣のおっしゃられるように、立法措置を講じないと法的盲点にもなるのでしょうが、こういう点については、今すぐといっても無理かもしれません。今日、今でも数字を発表していただけばわかりますけれども、あまり気の毒な人が数多いということです。そういうものの解決を、時日を遷延することは、われわれも含めての責任だと思いますけれども、即刻解決するように、政府の善処をこの際強く要求しておきます。  次に、もう一つ法務大臣にはっきりしていただかなければならぬことは、警察庁長官もおいででありますから、一緒にお答えをいただきます。それは労働争議と警察の関係です。戦前は私どもはストライキといえば警察官が出てくるもののように考えていた。存外ひどい目にあわされていましたけれども、腹をきめてやっておりましたから、またそういう憲法の建前でもありましたから、海や山に戦いを進めてきたわけであります。しかしながら、今日の日本の国民は、それぞれ基本権が憲法で保障されているのみでなく——これは労働省の所管でありますから、この機会にお二人にお伺いするのであります。労働組合法あるいは労働関係調整法、労働基準法、これらの労働三法によって労働者の団結権、団体行動権、団体交渉権、こういうものを基本的なものとして憲法がこれを宣言して、それをさらにこの法律で保護を与えるという、世界的に見ましても、やや完備した法体系の中に労働者の団体行動権は認められて、保護を与えられてきているわけであります。ところが、これは制度だけではなくて、人の関係にもなるかと思いますが、今日なおかつこの事実を無視するかのごとき傾向が現われております。たとえば、昨今の新聞を見ましても、政府の方におきましては、労働者の今度の戦術的な発表がありますと、その戦術におびえてか、あるいは過大評価してか、何か治安閣僚懇談会というような名前で、政府はいろいろ協議されているということを伝えております。あの名前は新聞がつけたのかもしれませんけれども労働者が当然に労働法によって得ております公正な権利を行使するためのいろいろな動きが発表されたからといって、直ちに治安対策立場政府方針を立てるということは、いかにも労働行政に対する無能をみずから暴露することになるのでありますから、私は治安対策ということではないのじゃないかと思います。この辺について、法務大臣が中心になられると思いますが、今度の労働者の賃上げ、ベース・アップの問題ですが、ベース・アップがいいか悪いか、それはあとで労働省とこっちとの間で論議をいたしますが、これは雇い主と労働者の関係なんであります。それについてどういう工合に治安対策を講じなければならぬのでし、占うか。その辺の見解労働大臣ではなしに法務大臣の方から伺っておきます。
  28. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 これは労働関係のことが基礎になっているようでございますから、私から先にお答えいたしまして、なお必要があれば法務大臣から申し上げます。  あなたのお説の通りでありまして、憲法二十八条は、われわれは十分尊重すべきものであることは、もちろんのことでございます。治安対策閣僚懇談会というふうに新聞には書いてございますが、私どもは、労働問題を治安対策として考えたことは一度もございません。治安対策というのは、ほかのことについてはもちろん政府部内にはございますが、今ちょっとあなたもお触れになりましたが、まじめな労働運動はむしろ育成していかなければ日本産業の発展はできないのだというのが根本的な政府考え方でありますから、穏健な堅実なる労働運動は非常に歓迎するところであります。ところがたまさかいろいろいわゆる政治的偏向といったような争議が行われるようなところに、特にまじめな労働運動をやっておられるにもかかわらずそういう機に乗じて治安を撹乱するようなおそれがあるものもないことはない。そういうようなことはやはり考えておかなければならぬということは派生的にあるでありましょうが、労働運動についての治安対策なんということを考えてはおりません。そこで今御指摘の今度の争議のことについておっしゃったようでございますけれども、私どもは民間産業の個々の争議に介入しようなどということは毛頭考えておりません。しかしながらその争議行為の中で違法な行為がもしありとすれば、これはやはり法を守る建前から申しまして警察が出て行ってもらわなければならないようなことは、不幸なことではありますが、やはりあり得ることでありましょう。従って違法な行為があったときの考え方政府としてはきめておかなければならぬ。そこで従来の労働運動がたまさか逸脱したような行為のあることも私は認めざるを得ないことでありますから、そういう場合についてはやはり国民の政府として法を守るという建前で警察力を動員することがあるかもしれない。しかしそれはどこまでも正常なる労働運動に介入しようというのではなくして、逸脱されたる違法行為のある場合には警察力を動員する、こういうことであります。
  29. 井堀繁雄

    井堀委員 意外な御答弁を伺った。今私のお尋ねしているのは、総評が春季闘争を発表したのに政府がいろいろ対策を講じている。しかしこれはまだ争議になっていない。なるかならぬかわからぬ。(「なってからでは間に合わぬ」と呼ぶ者あり)そこで問題があるのであります。今政府は私が質問しないことをみずからお答えになっているわけであります。それは馬脚を現わしているということになる。労働争議が起きた際にどうすればいいかということをわざわざ先に考えなければならぬ、そんなに頭に使っておりましたら日本の治安行政をあずかる者はそれこそノイローゼになります。なぜ労働者の問題だけにそう神経をとがらすか。なぜ労働者の問題だけに治安対策が必要か。治安は国民全体のために必要なものであって、特定に労働団体だけを指すということは、まだ労働団体に対する認識が足らぬことをみずから暴露しているものである。それを労働大臣が買って答弁するということは意外千万で、法務大臣が今のような答弁をするならしろうと考えでということもありますけれども、ともかく党内でも政府部内でも労働行政については自他ともにオーソドックスをもって任じている今の倉石さんの答弁は少し早まりすぎたと思う。それはどんなことでも、株主総会だって、なぐり合いをやれば暴行ですから直ちに縛られる。あるいは国会だってそうです。乱闘騒ぎをやれば懲罰をやります。警察も来る。それは全体に対する問題なんです。違法行為があれば取り締ることは今さらいうまでもない。しかし違法行為があるだろうという予想を特に労働問題のときにするということは、政府の性格というものが私どもにとって非常に危険なんです。このことを憂えて私は法務大臣に、今の仕事と違うところでありますから、あとで申し上げようと思ったが、あなたが先に言ったから逆になってしまった。よく労働省と連絡されて軽々にお動きにならぬことを。私は先にお尋ねしかけたのでありますが、結論が先に出ちゃった。  そこで具体的なことを一、二お尋ねしましょう。今のは抽象的なことで予想の上に立ってでありますから、論議を進めることにいろいろ聞違いが多いと思いますので、過去の事実を一、二申し上げて、そして一つ御判断を伺っておきましょう。  今労働大臣が他の問題をお答えいただきましたように、労働争議、雇い主と労働者の問題に警察権が介入するときは、それが違法行為になるだろうといってやることは古い、すなわち戦前の労働対策であります。われわれは予防検束といって行政執行法でお前は乱暴するだろうという警察署長の認定で翌日の日没まで何回も入れられました。出てくるとまたたらい回しというやつで、どうかすると二十九日間警察署長の権限で黙って豚箱に入れておくわけであります。こういう非文明な、野蛮な国は日本からなくなったわけであります。そういう野蛮な考え方が残っておろうとは私はつい思わなかったわけでありますけれども、今のお話の中に私の疑いがまたむくむくと持ち上ってきたのであります。はっきり一つ事実を聞いておきましょう。それは幾多の事例を持っておりますが、一番新しいところを一つ紹介いたしましょう。千二百人ばかりを雇用しておりまする工場——工場の名前ははばかっておきますが、そこで年末手当の問題で労使間の団体交渉がうまくいきませんでした。押し詰まってから決裂したためにストライキに入ったわけです。ところが工場が小さな町に二つにまたがっておりますために、向うの工場との連絡のために大ぜいの人が行き来をするわけであります。ところがこの県には県条例によって示威取締り規程というものができておる。その条例によると多数の人が一つの方向に向って歌を歌って通ったりすると、示威行為としてそれは事前に届け出を要するわけであります。届け出なしだと示威行為の違反だというので、その警察が争議中に委員長以下を引っぱって取調べをしておるわけであります。これは私の言うことに間違いがあるならば、事実をどうぞお調べをいただきたい。それをその警察は取調べをして調書を作って起訴をしたということであります。これだけのケースで一つ御答弁願った方が便宜だと思いますが、私の言うことに間違いがあればあとで訂正願います。私の承知しておる事実はもっと詳しいのでありますが、もっとわかりやすく言いますと、この工場で年未手当の要求をして会社と労働者の間の主張が食い違ってストライキをやった、これは合法的です。争議になりますと、千二百人の大ぜいの人が二つの工場に分れておるものでありますから、その連絡をやり、大会をやるときには一カ所に集まる、そのときコースが、狭い町でありますから一ところを通るときは、ちょうど豆まきで大ぜい集まるのと同じことであります。これを一々示威運動であると認めて取締りをいたしますか。この点に対する法務相の考え方をはっきり聞かしておいて  いただきたい。
  30. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 その事実に関して報告がございません。一体あんたの言うようなことはあっちゃよくない。それは必ず私は明朗にします。
  31. 井堀繁雄

    井堀委員 それで明らかになりましたが、石井警察庁長官がお見えになっておりますから、一つ聞いておきましょう。これは御存じですか、御存じないですか。
  32. 石井榮三

    ○石井政府委員 ただいまお話のありました具体的事実は私は報告に接しておりません。
  33. 井堀繁雄

    井堀委員 これは埼玉県の東松山市にあります民生ディーゼルという会社であります。この会社で、昨年の年末に年末手当の要求が起ったのに対して——これはあとの問題とも関係がありますから、抽象論でなく、方々からはっきりしてもらった方がいいと思います。そこで、このいきさつは私も詳しく承知しておりますが、労働組合の方は年末手当として、生活補給金として二ヵ月分を要求しておるわけであります、会社側の方はその金額についてはあまり問題ではない、しかし越年手当として出すことは反対だ、賞与としてなら出してもいい、この賞与と手当の食い違いで実は紛争が起きていると思うのです。これは何を意味するかということは後に問題になってきますが、今あなたにお尋ねするのは、そんなことはどうでもいいが、そこでその相手方には地労委の委員をやっておられる人が重役の中に一人いるわけであります。ですから労働法の何たるかを知らないということはあり得ないと思う。その意見の食い違いのために団体交渉が決裂して会社側は賞与としてならば交渉に応ずるけれども、越年手当の交渉には応じられないということで、団体交渉が打ち切られてやむを得ずストライキになったわけであります。そして会社側は団体交渉の申し入れを拒否して、重役以下は本社に引き揚げて現場にいないということです。それで本社まで追いかけてきて団体交渉の申し入れをするという運動が一方で行われておりましたときに、たまたま第一工場と第二工場の間を往復している際に社長が自動車で通りかかったので、その自動車をつかまえて団体交渉を開始したという事態があったわけであります。こういうものを事前に無届の示威行進だということで警察が飛び込んできて引っぱった。その事実を私はちゃんと調べに行って、そういうことは適当でないということを、私は私の立場で埼玉県の警察隊長に注意しておきましたにもかかわらず、しかも団体交渉の行われている最中に引っぱった。これは明らかに争議介入だと思う。よくお調べになった方がいいと思う。注意したにかかわらずまだやっている。もちろん会社側には労働組合切りくずしの策がある、しかしそれは証拠を出していないだけなのです。これは一つのケースにすぎぬのですけれども、こういう事例がどっさりある。一体そういうときに警察がのこのこ出て行くというのは物好きとしか考えられないのでいろいろ調べてみた。どうもくさいです。こういうことに対して一体警察庁長官としてはどういう指示監督をなされるのか。まだそういう報告を受けていないとするならば報告をとられて、あとでまたお伺いしてもけっこうです。
  34. 石井榮三

    ○石井政府委員 先ほどお答えいたしました通り、ただいまお話の件については私具体的に報告に接しておりませんので、詳細はむろんのこと、私承知いたしておりません。ただいまお話のありました点につきましてはさっそくその事実を詳細に調査いたしたいと思っております。  なおこの際申し上げておきますが、先ほど労働大臣からも御答弁がありましたように、私ども警察の立場におきましては正当なる労働組合の行為に対しましては、警察はあくまで不介入、不干渉、中立の立場であるべきは当然であります。従来ともそういった基本方針を堅持するように指導いたしておるつもりであります。もし不幸にして御指摘の点がありますならば今後十分是正して参りたい、かように考えております。
  35. 井堀繁雄

    井堀委員 それでは以上の事実について御調査いただいてはっきりした回答をいただくことにいたします。  そこで一応はっきりいたしておきたいと思いますことは、労働争議というものは御案内のように千二百人が集団になって行動をするわけであります。外部から見ると威勢のいい声を張り上げてどなり歩くから、これはちょっと奇異に感ずるかもしれません。そういうことに警察が多少でもタッチしなければならぬという考え方を起すか起さぬかということが私は問題だと思う。一体警察が労働争議に関与するときはどういうときであるか。そういうものに対してどういう指示を与えておいでになるか。警察官の職務には大体それぞれの限界があると思う。労働争議の際にはどの程度まで警察は関係したり何かなさるのか、その点を一つ明らかにしておいていただきたい。
  36. 石井榮三

    ○石井政府委員 先ほど申し上げました通り、正当なる労働運動に対しましては警察は何ら関与しない、中立の立場を堅持するという基本方針をとっておるのであります。不幸にして一たび違法状態が発生いたしますならば、警察の職責にかんがみ、これは放任するわけには参りませんので、警察権を行使するわけであります。
  37. 井堀繁雄

    井堀委員 そこで問題は労働省との関係と法務省の関係になりますが、一番われわれのおそれますことは、今のところに行って、私調べてみますと、戦前の警察官がだいぶおります。これはまだ頭が古いから話してもわからない。それは私どもをつかまえたときにむほん人だ、あれは国賊だという扱いをした連中なんです。その人たちが手の平を返すように物事を処理できないということは私も認めます。しかしそういう人を排除してしまえということを私は言うのじゃありません。使いどころによってはそういう人は使えるでしょうからできるだけ使われることはいいと思う。しかしそういう人がおるということを承知して、だから労働争議のようなものに対しては警察がどうあるべきかということは、警察庁長官としては十分な注意を与えておく必要があると私は思う。この際、今後こういうことを再び繰り返さないようにするためにはどうすればいいかということが問題だと思う。あなたは警察はノー・タッチこう言っているけれども、これはその通りなんだ。それをさらに徹底させてあるかどうか、ないとするならばそれを徹底させる必要があると思うが、その点を一つはっきりしてもらいたい。
  38. 石井榮三

    ○石井政府委員 現職の警察官の中には拝命の相当古い者もありまして、お話の通り戦前の警察経歴の長い者もありまして、いまだにあるいは古い経験で頭もかたい融通のきかないという者も、数多い警察官の中にはおるかもしれません。しかし私どもといたしましては、戦後すでに十年をけみしました今日、戦後の新しい警察のあり方というものにつきましては、長い年月をかけまして絶えず指導教養を加えてきておるのであります。数多い中には、あるいはその新しい警察のあり方について十分身につけていない者が若干あるかとも思います。今後ともさらにその点につきましては一そう指導教養を加えまして、すべての警察官が真に新しい民主的警察のあり方というものを身につけ、それに基いての日常の職務の執行が行われるようにこの上とも指導教養を加えていきたい、かように考えております。
  39. 井堀繁雄

    井堀委員 まあ事実問題はいろいろありますが、ほかの問題もありますから、これはこれでとどめたいと思いますけれども、この際いい機会でありますから、あなたもはっきりお認めになっておりますし、また法務相にもお願いしておきたいと思いますことは、やはりどうも問題に関係してきますと、自分の責任をさらに逆に相手に転嫁するという傾向が強い、また職業柄そうならさるを得ないという傾向も認められます。そういうために一ぺん引っぱり出すと、今度は自分が責任を問われるので、それをこじつけるために埼玉には二重犯人も出ておるような調子でありますから——拷問はかけないでしょうけれども、今の新しい取調べからいけば誘導尋問はならぬことになっておりますが、そういうことは平気でやっております。そういう関係労働争議のような複雑な関係の中に飛び込んでくる。すなおに引けばいいものを責任を回避しようとして深入りをする。深入りをすると無実な問題を作り上げるという結果になってくる。だからこういう点に対しては機会がありましたら法務大臣からもあるいは警察庁長官からもそれぞれの立場において労働争議のようなものに対しては十分注意をするように、日ごろから入念の御指導を希望しておきたいと思います。
  40. 佐々木秀世

    佐々木委員長 次会は明七日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。   午後零時五十六分散会