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井堀委員 まだ数字が整理されておらぬようでありますが、私は別の作業を今やっておりますので数字と取り組んでおります。そこでだんだんこわくなってくるわけであります。しかしここで私の
お尋ねしようとするところは、そういう数字的な相違をどうこう論ずるというのではない、大きなことでいいと思います。それで私は乱暴な引例をいたしました。これは総理府の
事業統計の中から取り上げたのでありますけれ
ども、さっきも申し上げましたように、
雇用の状態がよくなったか悪くなったかということの
政府の統計、ことに私は五カ年
計画を拝見いたしまして驚いた。
雇用の問題を論ずる資料が、この統計の中から採用されてきている。そして
雇用のカーブがよくなった、悪くなったということを論断されておるところに、あの五カ年
計画の根底に危険があると思う。先ほど
倉石労働大臣が強調されておりましたように、この
雇用の問題は、根本的には
日本の
産業それ自身の健全化をはかるより仕方がない、
日本の
経済の底の浅いものを
解決するより仕方がないということについては、われわれも同感であります。
そこで問題は本論に戻るわけでありますが、
日本の
経済を立て直すために、それではどうすればいいかということが、
雇用の問題の中で論ぜられなければならぬ。ただ
完全失業者が減ったからいいということは、今申し上げた点で、それは統計上のいわば気休めにすぎないのであって、実際問題として今の
雇用の
対象になるべきものは、仕事を持っていてもそれで生活のできない者、その収入では家族を養うことのできない者は完全な
職業じゃない。あとでちょっと見ていただきたいと思いますが、一体
労働省の任務というものは何かということを、私はばかけたことのようでありますがまず言った方がいいと思う。
労働省設置法第三条の規定が空文になってはならないと思う。
労働省設置法第三条には、
労働省の任務を規定いたしておる。「
労働省は、
労働者の福祉と
職業の確保とを図り、もって
経済の興隆と
国民生活の安定とに寄与するために、左に掲げる国の行政
事務及び
事業を一体的に遂行する責任を負う行政機関とする。」と明文化されております。ことにこの中で一から九までそれぞれ規定されておりますが、二の中に「
労働条件の向上及び
労働者の
保護」という重要な任務が
労働省に負わされておることは申すまでもありません。四には「
職業の
紹介、指導、補導その他労務需給の調整」ということが規定されておるのであります。
労働省の最も重要な任務はこの四項にあると私は思う。ことに今当面しておりまする
鳩山内閣の政策を完全に遂行しようとすれば、
労働省の機能というものはこの上にかかってくると思う。もし
労働力の需要供給
関係において誤まった行政が行われますると、五カ年
計画はがらがらになって空中の楼閣になるわけであります。
雇用の問題を私
どもは従来のように
失業対策、限られた部面における
失業者の問題として考える状態でないことは、
政府の
施政方針の中に明らかであります。この点に
立場をはっきりさせまして、この
雇用の状態を改めていこうとすることは、たとえば鳩山総理の言葉をかりていいますならば、民生の安定とかいっております。それは五カ年
計画の基礎になりまする
日本産業の機構をどういう工合にするかということには触れておりませんけれ
ども、それを志向するような
生産基盤の
強化といったような言葉で言い現わしております。あるいは貿易
振興と
産業基盤の
強化といったように結びつけて言っております。私はこの点については非常に共鳴いたしておるものでありまして、これを果して看板通りこの
政府が
予算の中に実施していくであろうか、あるいは五カ年
計画はこの道行きを正しく進むであろうかということを私は今日非常に強い
関心を持って見守っているわけであります。また国民もこれに期待をいたしておるわけであります。
鳩山内閣がよし退陣して、われわれがその地位についても、この道はやはり進まなければならぬものと思う。それだけにこの問題を
解決していくためには、どうしても
雇用の問題、しかもその
雇用の問題は実地に取り上げられてこなければならぬ問題だと思う。これはここにも
政府はいっておりますが、これはあとで賃金問題で論議されると思いますが、この問題がはっきりされてこなければ賃金問題をここでむやみに論ずることは危険であります。一体
日本の今一番重要なことは、
政府が指摘しておりまするように、貿易
振興、海外の市場をいかに確保していくかということであります。海外の市場、すなわち市場争奪の競争というものはそう安易なものではございません。
大蔵大臣は
予算説明の中で、五億ドルばかりの黒字を誇っておりまして、貿易がいかにも好転したようなことを言っておりますがこっけい千万であります。確かに数字の上には黒字になっておりますけれ
ども、それはいろいろな理由があるにいたしましても、主たる理由は国際的な
経済関係の中に
日本がいわば思わざるくじを引いたというだけであります。この状態はむしろ将来三十一年度にとっては危険信号になってくるのであります。御案内のように貿易の黒字になりました大きな原因は、世界がそれぞれ新しい
経済へ切りかえようとする過渡期であります。すなわち国内態勢
充実のために国内需要が
増大して、国際的な
輸出に対する余裕を欠いておったところに、思わざる
日本の市場獲得の
機会を得たというだけであります。しかしこのことはその国内態勢を
充実することによって、さらに高度の世界市場競争が行われてくるということを考えなければならぬのでありますから、このことは今まで繰り返してきた中でも明らかなことであります。でありますからこれに対応していくための
雇用対策でなければならぬのであります。その
雇用は
政府の言葉をかりていいますならばコスト高、
輸出貿易の際におけるコストの問題はもちろん重要なことでありまして、このコストをいかにすれば低くすることができるかということでありますが、そのコストを低くするための、たとえばさっきの賃金論、これはあとで出てきますけれ
ども、その前に出てくる
雇用の問題は、今のような
不完全労働とか
不完全就業とかいったような状態を解消していかなければなりません。どこの
労働市場を見ましてもこんな状態はありません、この状態を
解決することが
雇用対策であります。ところがそれに対する資料も今日十分でないというようなことで、
対策は成り立とうはずはありません。しかし今からでもおそくはありません。この状態を
解決していかなければ決して
日本の
産業の基礎は
確立するものではありません。もしそれがあるとするならば、独占資本の夢を見ているか、あるいは外国依存の姿になるかでありますから、そういうことはよもやおとりにならぬはずであります。
日本の
中小企業、ことに零細企業の占むる地位は非常に大きな政治問題になってきておるときであります。こういう
関係から、私は
雇用の問題の内容についてぜひはっきりさせたい。これを改善する道をくどいようでありますけれ
ども労働大臣に求めたいと思うのであります。これは数字をもって言えばわかるように、これは
事業所統計の中からの数字にすぎませんけれ
ども、その数字を見ていきますと、五人未満、二人未満のところへ非常に
雇用が
増大していっております。全体からいうと三八・七%という。こういういろいろな数字が展開していきますともっと興味深いものになって出てきますが、傾向として申し上げますると、ちょうどホタルのおしりをつぶしたようなもので、
一つの灯が百人、二百人とふえておるだけであって、それはただ光っておるだけであって、それは生命を失っておる。そういう生命を失った
労働の状態が
日本の
雇用の姿に展開されていっておる。この問題を
解決する措置が出なければ
雇用対策を持っておるなどと言ってはいけない。こういう点に対して
倉石労働大臣の
対策を伺っておきたい。