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1956-08-22 第24回国会 衆議院 公職選挙法改正に関する調査特別委員会閉会中審査小委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年八月二十二日(水曜日)     午前十時五十五分開議  出席小委員    小委員長 青木  正君       三田村武夫君    山村新治郎君       椎名  隆君    古川 丈吉君       山本 正一君    山本 利壽君       井堀 繁雄君    佐竹 晴記君       島上善五郎君    田中織之進君       山下 榮二君    山田 長司君       小山  亮君  小委員外出席者         警  視  長         (警察庁刑事部         長)      中川 董治君         総理府事務官         (自治庁選挙部         長)      兼子 秀夫君         総理府事務官         (自治庁選挙部         管理課長)   桜沢東兵衛君         検     事         (刑事局長)  井本 台吉君         衆議院法制局参         事         (第一部長)  三浦 義男君     ————————————— 八月二十二日  小委員加藤高藏君同日委員辞任につき、その補  欠として山本正一君が委員の指名で委員に選任  された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公職選挙法改正に関する件     —————————————
  2. 青木正

    青木委員長 これより開会いたします。  昨日に引き続き公職選挙法改正の問題につきまして質疑を行います。なお、本日は自治庁から兼子選挙部長皆川選挙課長桜沢管理課長が見えております。また、警察庁から中川刑部長法務省から井本刑事局長がお見えになっております。通告順によって質疑を許します。井堀繁雄君。
  3. 井堀繁雄

    井堀委員 法務省にまずお尋ねをいたしたいと思いますが、実はさきに行われました参議院選挙の結果、なおさかのぼって三十年の衆議院あるいは地方議会、首長の選挙などの結果について現地調査をいたした結果が、この委員会報告になったわけであります。それに関連してお尋ねしておくのですが、先日はもっぱら選挙管理会自治庁に対してお尋ねをして参りましたが、本日は法務省に一、二お尋ねいたしたいと思うのです。  それは、この調査関係をいたしまして、選挙取締り官憲に対するいろいろな訴えや、あるいはわれわれの責任に対するそれぞれの注意や注文がたくさんありました。その中で、現在の選挙法のもとにきわめて多くの違反事項が続出して、ことに買収供応といったような悪質なものが跡を断たない、さらに、形式犯などについてもこれをどら扱うべきかという問題など、いろいろな質問が行われたのでありますが、私どもといたしましては、この選挙法のもとに公正な選挙を行うということについては、先日来抜本的な対策について政府にただし、われわれの考え方もまたこの委員会で結論を出すことになると思うのであります。もちろん、理想とするところは、選挙は、選挙民政治常識と、選挙を行う者の自粛自戒によって、いきさかも選挙違反などということの起らないようなことを願っておることには相違はないのですが、しかし、まだ日本の民主政治経験も浅いし、十分な啓蒙宣伝も徹底してない現状では、どうしてもこれと並行して、ある程度、選挙というものが公正に行われまするためには、取締りを必要とするところに、現行法の存在があると思うのです。こういうものではありまするけれども、少くも法治国として一つの秩序を維持する場合に、法律に甲乙の差があるはずはないと思うのです。ここに、その法律精神と、この法律を適用されまする、こういう現実の問題にタッチされる法務省関係、特に検察庁仕事というものは非常に苦心を要するものだと私は考えるわけです。それが如実に出てきておるわけであります。この点について、きょうは少しくその指導的立場にある刑事局長見解を率直に伺っておきたいと思います。  これは、二十日の中央の各紙に、次席検車の会同で、首脳部から訓示が行われたことが報道されております。この中で、牧野法務大臣から選挙取締りについてかなりはっきりした訓示が行われたことが報道されております。まず、この点についてお尋ねをいたしたいと思います。  私の手元にありまする新聞記事によりますと、見出しは、「選挙権はく奪へ」といったような、かなり強い見出しが出ているので、興味を引いて中を読んだのですが、実際の訓示を私聞いておりませんから、新聞面だけで判断をいたしますと、今回の参議院選挙の結果について言及されておるようであります。そして、今後の方針については、こういう悪質違反については厳罰主義をもって臨むという趣旨のようであります。特に、この紀要によりますと、法相の訓示の要旨の中には、こういう犯罪については選挙権停止する措置を内容とするかなりきつい処分、そういうことを訓示しておるようであります。私は、この記事を拝見いたしまして、こういう悪質違反に対して厳罰主義をもって臨むことには大賛成です。しかし、われわれの調査とこの法務大臣訓示とをこのまま対照的に見ました場合に、最初検挙の際に、一体他の犯罪と同じようにこの法律というものが強行されておるかどらかについては、先ほど来私の前提に基くようにいろいろな疑いを持つわけです。というのは、これは私どもの聴取してきた範囲内のもので、私は、第一班に所属して、宮城と北海道の高検、それに両方地検、青森の地検関係者の、ごく狭い範囲人々報告資料しかもらっておりませんし、また意見もきわめて短かい時間に聴取したもので、すべてであるとは申し上げかねますが、少くともこの直接私どものちょうだいしておりまする資料や、お話の間で理解できることは、選挙違反の摘発が、この統計資料でいきますと、いずれも検察官認知によるものが大半でありまして、一、二他の事犯と関連して出てきた、こういうような経路が明らかになっております。この経路についていろいろお尋ねをしたのですが、選挙違反ことに買収供応なんというものは、現行犯というものはほとんどあり幸せん。警察がこれを認知する過程において一これは私ども経験があります。違反経験というわけではありませんが、いろいろな選挙運動をやって、取締り当局との関係をいつも持つわけであります。この取締りについては、他の犯罪と、違って、行為者というものが、犯罪意識というものが希薄であったり、ひどいのになると、選挙関係犯罪なんというものは、まるで、検挙する方が無理で、悪くいえばひっかかったのは連が悪いのだといったような、こういう考え方がまだ一般に強いのです。それと、検挙する方の側からいえば、とかく相手が中央地方政治権力、非常に直接の強い権力を持つ立場に置かれる人なので、こういう関係は、そうでなくても、人権じゅうりんその他の問題で、やかましくこれが統計によく出てきている。というのは、これはおもしろいから私はいろいろ資料を展開しておりますが、検挙総数のうちの大部分はおおむね身柄は拘束していない。身柄を拘束するようなものは、かなりはっきりした事態、しかもその証拠がくろうとでなくて第三者が見ても歴然たるものが逮捕され、その他のものは、やはり証拠が正確でないと、あと責任の追究が、他の場合と違いまして鋭くかかってくる性質のものであるからであろうと思いますが、やらない。こういうことは、私は結果において不公正を来たすと思うのです。限られた検察官と、しかも短時間の広範囲運動でありますから、それ全体に対して皆さんの目が届くという主張であれば、私は伺っておきたい。私は、今日の検察能力は、今日行われておる選挙に対して、まんべんなく目を通して、余すところなく違反をキャッチできる機能だとは考えがたいのでありますが、そうだとすれば、目の届くところと届かぬところができるわけであります。かてて加えて自由裁量に対しては、他の犯罪と違って、指揮者態度によってかなり幅があるということを発見することができるのであります。こういう性質取締りを行わなければならぬものなのか。そこに、私は、選挙取締りに対する公正を期するといいながら、自然公正を期しがたい足場の上に立って行わなければならぬという悩みがあるのではないか。こういう問題をどうするかということをはっきりいたしませんと、幸いにして今のあれは政党政治を採用してはおりますけれども、往年の政党政治のもとに行われた選挙のように、反対党選挙干渉で徹底的にやつつけるといったようなことは、今のところは幸いにしてそうございませんけれども、二大政党になり、今後政党政治が明確な線において行われるようになってきますと、自然こういう状態の中においては危険をかもしやすいものだと判断されるのであります。終戦後十一年の間に行われた選挙は比較的弊害が少かったと私は思う。しかし、それが今後そのままの状態でいけるかどうかということに対して疑いを持っているわけであります。ことに、法務大臣はいうまでもなくそれぞれ党籍を明らかにした大臣であります。ですから、悪質違反だからそれを厳罰に付するということに対しては、異論のないところであります。それがまんべんなく取締りが行われ、その上に結集されたものに対する処罰であれば、私は何をか言わんやであります。しかし、最初から取締りの段階において荒い網ですくってきておる。そして、ことにこれが起訴になるか不起訴になるかというような問題については、問題のあるところだと思う。そういう点をお扱いになっており、しかも実際上の指揮権を持っております刑事局長の、こういうものに対する見解を伺いたいと思います。そこで一、二具体的なものをあとお尋ねいたしたいと思いますが、以上言ったような選挙取締りというものに対する現行法とあなた方の立場、そういうものに対するお考えを伺って、それから具体的な問題について質問を進めたいと思います。
  4. 井本台吉

    井本説明員 選挙違反の実態についていろいろ御調査をいただきまして、私からも感謝いたします。なかなかこの選挙違反取締り実情というものは、実際に状況を調べていただきませんと、ほんとうのところがわかりませんので、われわれは各所で質問などを受けまして、法律ができればそれで全部やれるのではないかということで、法律だけは非常にきびしく規定されますが、実際は何らその法律が行われていないということをたびたび見聞きするのでございますが、選挙違反につきましては、全く、お話通り、実際の違反者が全部問題になってくるということは、私どもといたしましても考えられない。一般犯罪につきましても、全部の犯罪者検挙せられるということはあり得ないのでありますが、選挙違反におきましては、その幅が非常に違うということは、たやすく想像できるのでございます。私どもの方といたしましても、各地の現地検事正選挙違反検挙処理がいかに適正になされたかということで、検事正の日ごろの腕前も中央ではっきりわかるというふうに言われておるくらいでありまして、違反に対して厳正に、しかも公平にやるということは、なかなかむずかしいのでございます。私どもといたしましては、現地検事正が十分その間の事情は承知の上で検挙取締りをやっておると思いますけれども、なお、中央でも、この検事正行動あるいは現地検事行動につきまして、違反状況などを折々に報告も求めまして、足らざる検察能力で数の多い選挙違反検挙することがどのような効果一般に及ぼしておるか、不公平になるようなことはないかというような点について、慎重に考えつつ指導し、注意しておるような実情でございます。お話の点はまことにごもっともでありまして、全体的に見まして、いま少しく、選挙違反罰則などは、整備できるものは整備していただきまして、きまった罰則につきましては厳重に励行したいということを、私どもは念願いたしております。
  5. 井堀繁雄

    井堀委員 具体的な点について一、二お尋ねすることによって、だんだんはっきりすると思いますが、先ほど申し上げたきわめて狭い範囲資料だけで判断しておるのですが、札幌と仙台の高検両方資料を見て、たとえば大種別にあげてみましても、衆議院の場合と、参議院の場合と、都道府県知事選挙などがみなここに出ております。これで奇異に感じた点を現場で私はお尋ねをして、明らかになったのですが、まあ形式犯はいずれも共通した立場に立って取締りが簡易に行われるわけであります。それから第三者からも発見せられます。それから、対立して行われる競争でありますから、反対派からも指摘できる、こういうものに対しては、おおむね統計の数を見ても共通した数字が現われておる。ところが、一番数が多くて、しかも把握の困難だと思われる買収供応の問題になりますと、非常に数の上で異同が激しいのであります。たとえば、宮城高検資料を見ましても、前の県会で一千人に及ぶ検挙が行われ、次の衆議院の場合には買収関係でわずかに七百六十四人、こういう数字の非常に激しい変動がどこにも出ておるのでありますそれでは、あとの場合は買収が行われなくて、前の場合に買収が行われたか。これはそういうことはあり得ると思います。それはその候補者選挙状況によっていろいろ様相が変ることはわかるのであります。実は、そういうことをあらかじめわれわれが調査をして、知識を持ってお尋ねをしたのです。そうすると、その大体は検挙端緒によっておる。また仲間割れなどがある場合には一番大きく発展していつておる。ですから、この統計でいきますと、警察及び検察庁認知したということにはなっておりますけれども、その認知内容については異なるのです。これに出ております原因については、私いろいろ聞いてみたのですけれども、そういうものに対する調査を行なってないということで、統計的な資料はいただけなかった。個々の見解だけしか聞いてない。それを聞きますと、日ごろこういう人が選挙にはこういうことをしておる。まあ何といいますか、警察としては、あらかじめ、選挙関係する人々の中で、そういうことをやりそうな人と、そうでないという人の色分けがある程度わかっている。それに注意を払っていて、その端緒をつかむというような御報告がございまして、また私どももそういうことを日ごろからよく聞いております。こういう点にも現われておりますように、他の犯罪でありますと積極的な調査があり、また殺人なんか行われましたなら、大がかりの捜査を行なってやっております。また世間もそのことを求めております。こういう買収をなくすと言いながら、厳罰主義をもって臨めといって最高責任者が命じておりますものの検挙については、この統計資料だけで見てもわかりますように、手かげんをしておるとは私申しません。手かげんをしておるとは申しませんけれども、そういう者に対する積極的な方針指示できるものかできないものか、あるいはしておるのかいないのか、こういう点に対する取締り方針としてはあると思うのです。この点に対するあなたのお考えを率直に伺いたい。
  6. 井本台吉

    井本説明員 具体的に文書で出したことはございませんが、買収とか供応とかいうような実際につきましては、これは厳重に検挙、処罰する手続をとるようにということをたびたび申しております。形式犯につきましては、その状況のいかんによりまして、処罰すべきものは処罰する方向に進むべきものであって、全体に、形式犯に触れたからといって、全部形式犯検挙処分するというのは苛察に過ぎるおそれもあるから、この点については十分考慮するようにということをたびたび申しております。
  7. 井堀繁雄

    井堀委員 その趣旨はよくわかるのであります。ただ、今あなたの冒頭に御回答いただきました買収などの悪質犯に対しましては厳重に取り締れ。それは法律の命ずるところの精神だから、それは常識として検察官も心得ていると思うのですけれども、その厳重という言葉は、かなり幅のある言葉である。実際こういう仕事にタッチしておりまする人々については、何らかの指示を与えるのではないか。そうでなければ、法務大臣のようなこういう結果に対する強い訓示は、ちぐはぐになってくるはずだと思うのです。こういう点に対するこういうところでの発表が適当でないならば、これを追及しようとは思いませんが、それはあってもなくても、ないとするならば、こういう訓示は不都合だと思う。それは厳重に取り締れということであればいいですけれども、さっき読みました訓示内容は具体的に指示している。刑の裁量に対する具体的な表示とも言えるのです。罰金刑とか懲役とか、あるいは違反の場合に選挙権停止するかせぬかということは、きわどい発言だと思う。私はそのことを反対とか賛成とか言うんじゃありませんよ。こういう発言をする前には、必ず選挙に対するそれぞれの取締りに対する指示が行われていなければ、こういうことは出てこぬと私は判断しておる。ないとすれば、あと法務大臣が出て参りましたらその矛盾を追及して、政治の公正を期したいと思っておりますが、出ておるとすれば、こういうことはあり得るというのでお尋ねをしておるのですから、はっきりしていただきたい。
  8. 井本台吉

    井本説明員 私も一昨日の会議に出席しておりまして、大体新聞に出ておったような御訓示があったことは聞いております。公民権停止の問題でございますが、実は、一昨年ころでございますか、全国的に選挙事件の裁判がどうなつておるかということを調べました。その際に各地方によりまして、公民権停止されない処分になっておるのが九〇%以上になっておる地方と、それからわずかに二〇%くらいにとどまる地方とありまして、非常に均一を欠いておるわけであります。それで、公職選挙法の二百五十二条の規定は、一体公民権停止するのが原則で、停止しないのが例外か、あるいはまたその反対であるかということについて、われわれの間でだいぶん討議いたしまして、結局、この法律規定そのものをよく読んでみますと、選挙違反を犯した場合には、公民権停止されるのが原則であって停止されないのは例外であるという法律のように私どもは理解いたしまして、全国的に、選挙違反起訴されたものにつきましては、公民権停止をされるように検事としては主張すべきであるというように指示しております。従いまして、罰金の刑、あるいは体刑の刑などにつきまして、裁判所見解が同じでありましても、公民権の点だけで見解が違う場合には、われわれといたしましては、さらに上級の裁判所の裁決を求めるというような態度に出まして、全般的にはその点についてもう少し強くやるべきであるということで処理いたしております。おそらく、大臣も、そのような話を聞いておられたので、文書にした訓示ではございませんが、確かにお話のようなことが訓示の際に出たことは私も承知しておりますが、そのような点からお話しになったのであるというように理解しております。
  9. 井堀繁雄

    井堀委員 法務大臣発言についてはまた別な方法ではっきり確かめたいと思っております。私の今お尋ねしようとすることは、取締り——まあ選挙法それ自体について議論はたくさんありますが、時間を節約する意味で、あなたの勘の上でお答えいただくことになると思いますが、御案内のように、この選挙法には、刑罰と周知の義務を国や選管に負わしておるわけです。もちろん、それは、広い意味での政治意識向上という点に主力があることは間違いございませんけれども、同時に、周知せしめるということは、法律精神選挙民にも一般選挙をやる者も理解せしめるという義務があることは言うまでもない。しかも、公民権停止ということは、私はそれは建前がどちらになるかということは別といたしまして、それが建前であるということであるならば、公民権停止ということは政治罰としては最高の罰だと思う。そのことが周知徹底されていないというようなことはあり得ぬことだと思う。昔と違って知らしむべからず、よらしむべしということなら別ですが、こういうような極端な事例を一つあげてお尋ねしているだけなんです。ですから、私どもとしては、この法律をどうするかというこれは立法府としては非常な責任がある。作りっぱなしで、あとはかまわぬというような形で、この法律くらい取締りの問題で問題を起すものはないんじゃないか。これが事件になって法廷で争われておるものは記録に残つておるという程度であって、そういうものはそう大して重要じゃないと思う。そういう点で、こういう問題が、今まで方々で私も調査してみておりますが、国会の記録なんかを見ても、こういうことがあまり論議されていない。法律を作るときには、いろいろな考え方をそれぞれ計画にのせて発言をしておる。また一方提案もしておるようです。それが実施面においてどうなるかということに対する調査が不十分であるということは、今までの速記を見ても私は明らかだと思います。特にこの選挙法を立案した当時の速記録を読んでみても、そういうものに対する研究が十分行われておりません。それだけに取締りの面に幅が出てくる。それは、一つには、選挙取締りというようなものは、見方によっては一罰百戒という効果をねらうということもあると思う。そういう効果をねらうとすれば、なおさら取締りの上で公正が期せられ、そうしてそれがどういう工合に処置されたか、すなわち、一罰百戒なら、一罰百戒だということが国民に了解されるような形でなされなければならない。そうしなければ、次の際に効果が上つてこない。この点でも私は実際には効果が上っていないと思う。効果というよりも、悪い傾向が出てきつつある。それから、全く行政司法の事務的にものを考えていきますと、最初検挙の際に非常に幅のあるもので、当事者の自由裁量というものがこのくらい幅を持たせるものはないのじゃないか。でありますから、選挙に臨んで取締り上の指示を与える際に、どうなければならぬかということが非常に重大だと思う。それでしつこく聞いているわけです。そういう指示を与えないということでありますならば、私は方針が違っておると思う。必ず与えておると思う。それを、今あなたが冒頭に言われたように、悪質犯を厳重に取り締る、形式犯に対しては実情に対して十分な指示を与えるということぐらいは、これは聞かなくてもわかっている。そういう指示はまさかなさるわけはないと思う。こういう点に対して、今ここで発表するのが困難なら、書面ででも出していただいてけっこうですが、私はぜひ知りたいと思う。
  10. 井本台吉

    井本説明員 犯罪検挙は、御承知通り発上したものを検挙していくのでありまして、計画的にどのような犯罪があるかということでねらい撃ちにやる検挙というものは、私は犯罪というものの性質賛成できないのです。自然発生的に犯罪のわかったものを片っ端から検挙していく。それ以外にはないのでありまして、また、一罰百戒というような、一人だけを犠牲にしてほかの犯罪者が全部その陰に隠れるということは、私はその点については昔から非常に反対意見を持っておりまして、違反した者が、全部公平に、それぞれの責任を持つべき場だということでやっているのでありますが、何せ実質的に非常にたくさんの違反があると思われるのに、検挙の陣営の方はそう多い人数ではありません。しかも、買収供応——供応などは多数が供応を受けることがございますから、かなり大ぜいの人に知られることもありますけれども買収などについては隠微のうちに行われるということで、いつどこでどういう金銭の授受があったかということはなかなかわかりません。しかし、さればといって、そういうようなものを放置しておくわけにはいきません。冒頭に申し上げましたように、買収供応などは厳重に取り締れと言っております。ただ、買収供応違反検挙が全体にどういう影響を及ぼすかということは、これはそれこそ現地検事正の腕でありまして、うっかり流れるままにまかせますと、一派だけをとことんまで検挙してしまって、そのために、全部の力がそこに注がれてしまって、ほかの違反が見のがされるというようになっては、非常に不公平なことになりますので、さようなことがないように、やや大所高所に立って公平な検挙が行われるようにということは、現地検事正はとくと承知しておると私は考えております。
  11. 井堀繁雄

    井堀委員 私のお尋ねしたいと思うことについてはっきりしたいことを、まことに残念に思うのですが、それでは次の点についてお尋ねをいたしたいと思います。それは、今後の日本の議会政治がどうなるかということについて前提があるわけですが、私どもは二大政党を希望しているわけです。二大政党の健全な発達がいいと思っている。二大政党を志向する場合には、言うまでもなく、大きな特徴もありますが、選挙の面にきては弊害が私は出てくると思う。それは党と党の争いになりますから、党の政策、他の政策の面においてもそうでありますが、選挙取締りの面で強く色彩が出てきますと、これはとんでもないことになる。そういう意味で、われわれは、警察権というようなものと政治権力と結びつくことを非常に警戒して、反対を続けてきているわけであります。しかし、日本の警察法も残念ながら一部改正されて、今の機構からいえば、政府の警察に対する指導権も従来よりは強くなった。こういうような状態がばらばらに行われてはいけませんので、選挙取締りの際における警察とか検察庁とかの取締りの面の仕事をできるだけ少くするということは、この委員会でも別に討議をしているわけであります。しかし、これがにわかに期待できないというのは、法律には、そういう理想を高く掲げて、自治庁長官に、あるいは選管に命じております。国が費用を出さぬために思うようにいかぬという訴えが方々にあり、われわれもその費用をさくことに努力しておりますけれども、なかなか理想と現実は距離があり過ぎて、それではその間行われる選挙は、ということになるわけなんです。そういう点、残念ながら今日やはり取締りに相当の期待を寄せざるを得ない。そういう実情なんです。それを前提にしてお尋ねしているのです。でありますから、今度二大政治党の傾向がだんだん色彩をはっきりしてくると、選挙干渉というものは——今までの政治家は特に私は悪い人間がおったとは思いません。政権の争奪を党でやろうとする場合は、争いが激しくなることは当りまえだ。その渦中に警察検察庁を巻き込んではならぬというわれわれの配慮があったのですが、実際上できないという問題があるわけです。そういう意味で、この選挙法精神からいいますと、かなり理想を高く掲げてそのための主張があまり大きくて現実の問題で浮いてしまっている。先ほど来申し上げておりますように、今までは比較的長い間占領下が続き、また独立しても、事実上日本の政党によって日本の政治というものが——特に選挙なんかもそうだったと思う。しかし、だんだんその色彩が変ってくると見ている。よい意味にも悪い意味にも、事実個性を明らかにしてくることは言うまでもありません。こういう点で、私は今のままでは非常に危険だという心配をしてそれを排除する道を、一つには法律そのものをどうするかということにもなりますけれども、しかし取締りの問題で今論議している。何ぼ法律をきちっと作ってみても、条文をそんなにこまかく規定して、取締りに対して自由裁量の必要のないようなりっぱなものにすることが一番いいのですが、そういうことは望みがたいと思う。どうしても現在では出てくる。抜本的にはあなた方が関係せぬで済むようにするということなんだが、それはできぬということになれば、どうしてもそうなるということになれば、これはいやでもおうでも選管と検察庁並びに警察というものの関係——これを私は調査して参ったのでありますが、今のところはほんのおつきあい程度なんです。ところが、この選挙法と日本の選挙管理の機構からいいますと、形式上、選挙管理委員会にあなた方が協力して、選挙粛正をやるわけなんです。ですから、選挙管理委員会というものは、これはもう言うまでもなく、今の構成なり、それからその建前もありますが、人物からいっても、法律家はいましても、そういうものをどうこうするというような立場の人じゃない。ですから、ややもすれば、取締りの面ではあなた方が管理委員会を引っぱっていくという形になる。そうしなければ取締りができなくなる。この関係というものが、法務大臣のこういう指導の仕方で、どっちへでも行く一番危険なところではないか、こういうふうに考えます。この際にあなたの大方針は伺いましたけれども形式犯についてちらほら出てきておる。選挙管理事務をやっている人たちからすれば、形式犯が一番やりいいのですね。ですから、あなたのおっしゃられたことと逆のことを聞いてきている。たとえば、ポスターは、検印のないポスターを張れば、これはすぐにわかります。それから、撤去を命じて撤去しなければ、だれが見てもそれはわかる。   〔青木委員長退席、三田村小委員長代理着席〕  実際は、こういうものに、管理委員会の、選挙法選挙取締りに対しての注意が集中されてきているということを聞いている。要望もわれわれは聞いてきたのです。これはあなた方の取締り方針とは別な形、対立した形になってきている。これは罰則規定もありはいたしますけれども、全国区の例で、全国区のポスターだって、実際の選挙運動経験から言いますと、選管の希望するように、各選管別あるいは府県別に責任者を設けて連絡を十分取るようにしてもらおうということは、取締りの上からは一番適切かもしれない。しかし、選挙運動の上からいえば、全国区の人は全国に均等した運動を展開するとは限っておらぬ。そこには濃淡が自然にあるわけです。それは初めからきまっておるという場合もあるし、きまってないという場合もある。全国区は相当短かい期間に広い範囲に集めることは事実上不可能です。そういう要望がありましたけれども、事実できぬと私は思う。そして責任者をだれか一人便宜きめて、全国一緒にやるということを聞いてもらえぬかという要求が出てきているわけです。こういうことはあなた方に直接関係はありませんが、そういうような一例をあげてわかるように、形式犯に対する問題は今後はよほど強く出てくると私は思う。それは、今言う選挙管理委員会検察庁関係というものは、片っ方を強化していけば、必ず今のような状態からもっと接近してこざるを得ぬと私は思う。こういう関係について実は地方のそれぞれのあれはありますが、何か選管と選挙に臨む際に打ち合せ、協議を遂げられておるか。さっき言うように、選挙取締りについて一つ方針を持とうとする場合、選管との間の連絡、協議というものはどういう形で行われておるが、現在行なっているが、今後行おうとしているが、その点についてお伺いしたい。
  12. 井本台吉

    井本説明員 選管と警察検察庁は密接な連絡をいたさなければ実際仕事ができませんし、選挙のたびに中央並びに地方の各部署の方々が密接な連絡をとりつつ仕事をしておるのが実情でございます。
  13. 井堀繁雄

    井堀委員 そうお答えになりますけれども、実際はそうでないことを地方に行って知ってきたのです。今まではそう必要でなかったかもしれない。しかし、今後はこの問題が相当重大視されなければならぬと思います。われわれの方もこの問題に対して検討いたしたいと思います。ですから、現行法を合理的に活用しようということになれば、選挙管理事務を、やっております。選管と捜査取締り当局との間がどうあるかということは非常に重要だと思いますが、法律にはそういう問題に対して何も具体的な命令がありません。こういう点にも大きな盲点があると私ども思うのであります。しかし、それはそれとして法の精神は生きております。今あなたがお答えされたように、連絡しながら取締りをやっていく、その内容が問題になってくる。そこで、私どもの今調査した範囲内では、出席を私どもの方から要求して一堂に会して懇談をいたしましたが、全くちぐはぐなんです。それから、連絡いたしましたかどうかということを、私は何もしつこく聞いたわけ百ではありません。こういう点でちょっと伺っておきたいと思いますが、選管と検察庁警察との有機的な関係というものは一体どういうふうに具体的にあるべきか、あなた方の立場でけっこうです。ただ連絡をとっている——話し合ったのも連絡でしようし、あいさつに行っても連絡でしょうし、私はまさかそんな程度のものではないと思う。それで形式犯の問題をさつきちょっとここで出したわけです。だから、そういう点に対してあなたが答弁していただけば、何もしつこく聞こうとは思いまん。連絡といっても軽い連絡もあるし、具体的にどういう連絡をしているか、その点はっきりしておいていただきたいと思います。
  14. 井本台吉

    井本説明員 連絡がよくいかなかったというお説でございますが、私どもといたしましては、中央中央で、自治庁検察庁法務省の刑事局、最高検というようなところがときどき会合いたしますし、ことに、選挙が始まりますと、おもに形式犯の点でございますが、それをどういうふうに扱っていくかというようなことにつきましては、密接な連絡をしながら仕事をしておるわけでございます。ことに、形式犯のうちで、何というか、選挙投票の前に違反をやっておって、注意をするうちに投票になってしまうというようなことで、違反をした方がむしろ得だというような観念を選挙をやる方々に与えては困るのでありまして違反状況はすみやかに元に戻すというようにしなければならぬということで、これは主として要望的な、警告的な方が多いので、自治庁とか警察の方にお願いして、せっかくそういう面をやっていただいております。ただし、私どもに対しましては、形式犯でも、あらかじめ法規を無視するということを計画しまして検挙されたらこういうふうに答弁するとか、法律にこう書いてあっても、そんなものはかまわないのだということで、形式犯検挙されることを覚悟しながらやっておるような形式犯が相当あります。こういうものは全く法の蔑視でありますから、厳重に取り締らなければならぬということでやっておりますが、法規を間違って解釈してうっかり形式犯に触れたというようなものを取り締るのははなはだ苛酷でありますので、さようなものとは厳重に区別するように言うておるわけであります。しかし、お話通り、この選管と警察検察庁は、選挙取締りにつきましては、どうしても緊密な連絡をしなければ十分な取締りをやっていけないのでありまして従来中央地方がどのような・連絡をやっておったか私ども知りませんが、ぜひこれからも連絡をしてやっていきたいと考えております。
  15. 井堀繁雄

    井堀委員 これは私の尋ね方があまり遠回し過ぎたと思いますが、率直に伺えばわかると思います。  選挙管理委員会取締り当局とは、今の場合不離不即の形にあることは、この法律の体裁からいえば当然なんです。しかし、選管の性格からいけば、取締り当局をわずらわさないようにやりたいという高い理想を一方に掲げております。これは理想なんですが、現実は、先の御答弁で言われるように、選管の人たちの言うのは、形式犯取締りに手をやいておるということです。いま一つの例をあげますと、ポスターの撤去なんかの命令は、選管がやるのではなくて警察が、やられた方がいいという声が出てきている。これは小さなことではありますが、一つの具体的な事例として申し上げるのです。それは警察でやれば迅速かつ能率的になるだろうが、それをやることがいいか思いかは問題があると思う。そういうことを論議する前の問題があったので、私どもは、そういうものに対しては、あまり深く掘り下げてはそこで質疑応答をやったわけではありません。ただ聞きおく程度で帰ってきたのです。しかし、このことは何を意味するかということです。さっきあなたからお答えいただいたように、形式犯に対する考え方と、買収供応のような本質的な取締りの対象になるべきものに対する考え方を、あなた方は一貫して持っておられる。しかし、それが選管との間にどういうつながりが実際事務の上で行われているかということを確かめてやろうと思って行ってきたが、それがないのです。それは中央の選外と他の機関とがいろいろ会合をやるということはあるかもしれぬが、それは単なる儀礼的な会合しか行われていないのです。これは私は法の盲点だと思うのです。法の盲点といいますか、これは、一つには、選管はそれぞれ歴史が浅いし、予算の裏打ちやあるいは機構の上に不備があるからでありましょうが、ほんとうは選管がやる定価なんです。あなた方はそれの補助機関なんです。ほんとうに選管が選挙管理をこの法の理想とするようにやっていくということになれば、あなた方をここへお呼びして聞く必要はないので、選挙に答弁させればそれでいい。しかし、選管の委員長にこんなことを聞くことはナンセンスなくらいに距離があるわけです。こういう点についてもっとはっきしりさせたいと思って私は質問したのです。つまり、どういう会合を持っておるか、たとえば中央選管と府県の選管と市町村の選管の三つに分れておるようですが、有機的な連絡とはどういうものであるか、その点を実はお尋ねしておるのです。あるとかないとかでもけっこうです。あるならどういうものがあるか、お答え願いたい。
  16. 井本台吉

    井本説明員 具体的の状況はちょっと私しばらく留守にしておりましたので、つまびらかにいたしませんが、中川刑部長あるいは私と一緒に参りました山根検事らに開きますと、中央でも地方でも密接に連絡いたしまして、たとえば違反文書などの撤去については選管がやるか警察がやるか、とにかくいろいろ連絡しながらやっておるそうです。なお、これについて、どうしても言うことを聞かない者につきましては刑事処分にするというふうなことは、遺漏なくやっておるというように聞いておりますが、御希望とあれば、もう少し現地の事情を調べてみたいと思います。
  17. 井堀繁雄

    井堀委員 それでは、お取り調べになって、その結果を書面でけっこうですから御提出いただきたいと思います。  それから、いま一つだけお尋ねしておきたいのですが、警察検察庁それ裁判所と、どうい形を作って、選挙取締り、それからその処置の問題が出てくるわけです。裁判所と検察当局、これは明確に制度の面ではなっておりますので、どうこう思いませんが、問題になりますのは、警察検察庁関係と今の公安委員会の制度の問題ですが、それに選挙管理委員会の制度というようなものは、法律体系の中で見ていきましても、一つは古い法律でずっと筋を通しておるところに持っていって選挙管理委員会とか公安委員会とかいったような新しい思想を背景にして出てきた法律との食い違いであるとは私は思いますけれども、それを要するにどうコントロールするかということは、法律技術だけでは私は不可能なことだと思う。実際土の問題の中でコントロールするよりしょうがないと思う。そういう意味で、選挙取締りについて出てくる問題の選挙法選挙管理委員会との関係についてはだんだん明らかにしてもらおうと思いますが、公安委員会の制度と検察庁との関係選挙管理委員会との関係について、私は、今まで、寡聞にして、選挙の問題についてそういうものが有機的な関係を持ったことを全然聞かないのでありますが、そういうことがありましょうか。あるなら、どういう形でどういうことを行なっているかということを聞きたい。
  18. 井本台吉

    井本説明員 犯罪捜査の関係でございますと、私の所管でございますから、その点についてお答え申し上げますが、これは警察法が改正になりますときもだいぶ問題になりまして、法律的には刑事訴訟法と警察法との関係ははっきり割り切っております。警察検察庁関係は、刑事訴訟法では一般の場合には協力関係になっておりますし、特殊の百九十二条以下の場合には、検事が指揮をして警察に働いてもらうという形になっておりますし、それの上部関係問題につきましては、それぞれ都道府県の公安委員会、国家公安委員会検事総長の関係は、全部法律並びに閣議決定ではっきり割り切っておりますので、問題のそごはないと私どもは自覚しております。実際の問題はいろいろ力関係がありまして、その法律通りいっておるかどうか問題がございますけれども、これは事実問題でありまして、法律的にはきちんと始末ができております。
  19. 井堀繁雄

    井堀委員 その事実問題について、選挙取締り関係だけに限ってお尋ねしておるわけです。選挙取締りというものは一番その点が強く出てくるべき性質を持っておると思う。これは警察関係になりましょうが、公安委員会選挙取締りの問題について、どういう打合せといいますか、そういうようなことをどの程度おやりになっておりますか。
  20. 中川董治

    中川説明員 御案内の通り警察は公安委員会が管理するのでございますが、公安委員会も御存じの通り行政機関でございますから、すべて法律に基いて公安委員会の管理が行われます。法律に基くということになりますと、刑事訴訟法、公職選挙法、こういうふうな法律に基いて警察活動が行われることについて公安委員会が管理する、こういうことでございますので、たとえば、公職選挙法犯罪につきましては、先ほど来お話がございましたように、相当困難な点がずいぶんございますが、犯罪があれば、なかなかわかりにくい犯罪でございますけれども、そういった点を法律に基いて一生懸命捜査して捜査したところのものは検察庁に送致する、こういうような法律に基いての警察活動が行われるわけですけれども、その警察活動全般について法律に準拠しながら、ことに公安委員会制度の実際上のねらいは、一党一派に偏することがないということを中心にして管理が行われて参る、こういう筋になっております。  実際上の問題についてのお話でございますが、選挙は、事務管理権肉におきまして公示または告示される以前から、犯罪の内偵はしなければならぬと思いますが、告示後においては同時多発の犯罪が行われる。警察といたしましては、また公安委員会といたしましても、同時多発の犯罪については周密に内偵しなければならぬのですが、先ほど来申し上げましたように、何のそれがしだけをねらい撃ちにする、どういう政党だけをねらい撃ちにするという方針は全然あり得ないのであります。それはまことによくないことでありますので、先ほど来刑事局長からお話がございましたように、見つかった者はできるだけ取り調べる、また見つけ方につきまして公平に見つかるように、常平生からの心がけが大事ですけれども、正常の警察活動において、ある特定の者をねらい撃ちにしないという角度でもってしかもその犯罪が行われそうなところにつきましては発見に努めて参る、こういうやり方を法律に基いて警察がやるのでございます。公安委員会がしょっちゅう開かれますので、公安委員会にその活動の状況報告いたします。公安委員会はそういう活動について、もっとこういう点に気を配ったらどうか、こういうような御注意等もございますが、その御注意もすべて法律の定むるところに基いてやっておりますので、たとえば、そんなこと絶対に事実はございませんけれども、どういう党派だけやれ、どういう候補者だけやれ、何だけやれ、こういうふうな御指示法律違反でございますから、そういう御指示はございません。ところが、実際上いろいろ警察官の教養として常に人権を尊重して犯罪の発見に努める、こういう点についての教養的なお話、御指示は公安委員会から十分いただきます。そういう法律に基いての公安委員会の管理でございますので、そういう管理と法律とそれから健全なコモンセンスに基いて適正な施行を保障する、こういう建前であろうとわれわれ理解いたしまして、公安委員会の管理のもとに、ほかの仕事もそうでございますが、こういった仕事も行なって参る。ただし、特定の事件について公安委員会が、これは途中でやめておけ、これはこの程度にしておけとか、そういうようなことはございません。
  21. 井堀繁雄

    井堀委員 もちろん法律範囲を越えてやろうとは思いませんが、ただ、私の今お尋ねしておる点は、選挙法罰則規定はできるだけ事前に効力を発生させたい、防犯上に有効に使えるように選挙管理委員会などが周知徹底する、こういう罰があるからやるなということではなしに、こういうことはやってはいけない、あれはいけないということを事前に周知させていきたいという趣旨法律であることは、今さら言うまでもない。でありますから、警察選挙の際に持つ関係というものは犯罪があったらそれを取り締るというだけであなたはお答えになっておるようですが、そうはいきませんよ。選挙管理委員会との間の関係はそこに出てくる。ただできたものだけを取り締るという形式上のことであれば、これは私は徹底した検挙はできないと思う。ただできた現象だけをつかまえてやるというような、そんな乱暴な検挙をやったら人けがすると思う。その原因に対してある程度きわめておかなければならぬ。公安委員会の問題でありますけれども、公安委員会警察との関係は、言うまでもなく、人民の意思というものが警察との間に不可分の関係に置かれなければならぬということです。特に選挙というような問題に対して、選挙管理委員会と公安委員会とが関係が全然なくて今のように行われておるということは、そういう法の精神の上からいって私は矛盾を感じておるわけです。それをどうこう言っておるわけじゃないですよ。実際上どうなっておるかということをお尋ねしておるのじゃないが、あるならどういう工合にあるかということをちょっと聞かしていただきたい。
  22. 中川董治

    中川説明員 お話通り公職選挙法違反を防止するのには、検挙もやむを得ざる一つの作業だと思いますけれども、御案内の通り、こいねがわくは、こういった犯罪がないような状態選挙が行われる、これが理想だと思います。それで、そういう方法を講ずるについては、先ほど来もお話がございましたように、何と申しましても選挙管理機関中心で運営していただくことが相当であろう。法律趣旨が、ことに公職選挙法六条にそういう趣旨が明示されておりますので、選挙管理機関中心に、防犯活動と申しますか、そういう問題をやって参りたい。それで、先ほどお話がありましたように、警察、検察、選挙管理委員会、この連絡はしょっちゅう行なっております。連絡はしょっちゅう行なっておるというのでは具体的じゃございませんが、内容的に申しますと、どうもこういったような犯罪が従来の経験に徴して多い、こういった、項は年前に選手管理機関の方に御連絡いたしまして、選挙管理機関の啓蒙活動に資していただく、こういう作業をやっております。それから、第二の作業は、公職選挙法で——これは国会の御制定になった法律でございますが、いろいろ個々の解釈等についてこまかい点等になりますと疑義が若干出て参ります。そういった点について三者間で疑義を統一して、統一した結末明らかにされる解釈上の疑義は、でき得べくんば選挙管理機関から周知徹底していただく、こういう方途を講じております。これを具体的な例で申しますと、そういう方途を請じて一般的に徹底するのも一つの方法ですけれども選挙が行われますと、それぞれ候補者の方が届けられる。そうすると、事務長さん並びに候補者等の打合会を選挙管理委員会で持っていただく。打合会の席上、選挙管理委員会が中心になられまして、こうこうこういうふうに法律は読めるので、こういった点に いてはこういうふうにしてもらわないと法律違反になります、こういう周知徹底活動を管理委員会にやっていただく。そういった事柄を警察、検察、選挙管理委員会で打ち合せて具体的にやる。さらに、第三点におきましては、選挙管理機関もいろいろ優秀な方が多数いらっしゃいますけれども一つの欠陥は、最末端で見つける機関が乏しいものですから、自然、警察が駐在所その他がありますので比較的見つけやすい。そうすると、張ってはならない文書等が警察の眼によって発見された。それは、その状況等によって、直ちに刑事事件としてやってしかるべきものも、先ほど刑事局長お話にもありましたような部分もございますけれども、でき得べくんば選挙管理機関の措置によって、その文書が撤去されるということが好ましいので、これは発見のつど選挙管理機関に連絡する、こういう作業をやつております。そういった作業をする警察が、いろいろ検察庁及び選挙管理委員会と作業をするにつきまして、公安委員会の御意見を十分にお伺いし、個々の場合に事件があったら直ちに公安工員会を開くということでなしに、一般的にいろいろ御相談しておりますので、そういった選挙管理委員会の積極的な活動を促すという意味におきまして、公安委員の皆さんに御了承を得、御協力を得て、選挙管理委員会はそういう趣旨でよく具体的に連絡し御協力をお願いしておる、こういうのでございます。
  23. 井堀繁雄

    井堀委員 選挙管理に関する警察ことに公安委員会との関係というものを、私どもの知る範囲内ではまことに無関心であるといったような事実しか、私の限られた範囲調査ですが、ありません。しかし、これはあなたの御答弁の中にも遠回しに言われたように、警察行収と公安委員会関係はいまさら言うまでもないのです。これが選挙関係してくる場合には、公安委員会の制度と選挙管理委員会の制度というものが新しい思想のもとに発生したものであり、仕事性質からいっても、私はもっと深いつながりを持つべきものであるというふうに信じておりましたけれども、実際は全く遊離しておる。これは、今まであなた方の御答弁を伺っていてそれぞれ長い経験と歴史をもて権威づけられております。しかし、こういう新しい制度というものとのつながりが全く希薄だということを痛感しておるわけです。そういう意味でそれぞれお尋ねしたわけでありますが、ほかにまた機会があると思います。われわれは、ただ法律をいじるだけじゃなくして、法律が実際に行使される場合に、立法の精神とマッチしないものがあれば、これは改めてもらわなければならぬ、そういう意味で、選挙取締り関係し、あるいは防犯上の機能というものが全くばらばらではないかという感じを強く受けたので、お寺ねしたわけです。一応私の質問はこれで終りたいと思います。ありがとうございました。
  24. 三田村武夫

    ○三田村小委員長代理 島上善五郎君。
  25. 島上善五郎

    ○島上小委員 私ども調査に参りまして、地方の選管その他運動しておる当事者の諸君からも聞いた声ですが、どうも選挙法はむずかし過ぎる、それからあまりちょいちょい改正するので非常に困るという声を聞く。そうして、そういう人たちから、選挙法を、地方議会選挙法衆議院選挙法参議院選挙法というふうに別々にしたらどうかという意見がある。私ども法律はしろうとですから、一体、法体系の上からいって、別々にする方が適当かどうかということについては、にわかに結論を下せませんが、この点について、三浦部長に、衆議院選挙法地方議会選挙法参議院選挙法あるいは地方の首長の選挙法——知事、市町村長の選挙法といったように別々にするということが考えられないものか、諸外国の実例などはどうなっておるか、これは地方の非常に切実な声ですから、もしそれが適当であるとすれば、今後、選挙法の改正に際して、そういう考え方の上に立って研究をするということも必要かと思うので、これをまず三浦部長に伺いたい。
  26. 三浦義男

    ○三浦法制局参事 現在の公職選挙法が議員立法として立案されましたときに、私もお手伝いをいたしておりますので、そのときの関係を申し上げたらいいかと思っておりますが、昭和二十五年に現在の公職選挙法ができましたときに、初めて、いわゆる各種選挙を統一立法といたしまして、公職選挙法という名のもとに包括いたしましたわけでございます。そのときにやはり、今おっしゃいましたような、いろいろな賛否両論の御未見がございましたが、結局、選挙運動の期間とかあるいは態様とかにおきまして、それぞれの選挙に応じまして多少違うところが出てきておることは事実でございますし、また違っておりまするし、選挙の管理の方法というような点につきましては、大体各種選挙を通じまして同じようなことが考えられるのじゃないか。大体、国会議員と申しますか、衆議院選挙につきましては都道府県の選挙管理委員会が管理事務を行いますし、それ以外の地方の——知事の選挙も都道府県でございますが、市町村等につきましては市町村の選挙管理委員会、こういうように分れますけれども、管理事務の根本につきましては、大体同じような原則のもとに取り扱われているというようなことからいつて、そういう方が便宜ではないだろうか。それからまた、ある場合におきまして、甲の選挙と乙の選挙がいろいろ重なって同時に行われるような場合等もございますので、その場合におきまして、別々の選挙法を引っぱり出しまして、ひっくり返していろいろその関係を見るよりも、一つ選挙法の中でそれらの事項の関係をたどった方が便宜ではないだろうか、こういうような意味等もございまして、統一選挙法ということになったわけでございます。ところが、地方の末端の管理事務の方におきましては、いろいろ選挙運動の態様とかあるいは文書とかいうものにつきましても、枚数とかいろいろ違うところもございますので、それぞれの選挙ごとにその選挙法と首っ引きして、そうしてそれに忠実にいろんな点を執行上見ていった方がいいというような意見もあるかと思いますが、私の個人的な考えといたしましては、まだ、現在の段階におきましては、やはり現在の公職選挙法の方が大体論としてはいいんじゃないか。ただ小選挙区制というようないろいろな問題が起って参りまして、そういう問題がどうなるか存じませんが、根本的にほかの選挙と違うというような態様にでもなりましたら、また別問題じゃないかというような気が一応いたしておるわけでございます。
  27. 島上善五郎

    ○島上小委員 この問題は、今後お互いに研究する問題として、この程度にしておきます。  あと簡単に二、三伺って、また次の機会まで保留いたしておきますが、今度の選挙では、自衛隊の中で問題が二、三あるようです。これは警察庁の方に伺いたいのです。御承知だと思いますが、投書で出された問題で、私ども今多少調べておりますが、警察の方ではもちろんちゃんと調べがついていると思うので、聞きますが、一つは、神奈川県下の自衛隊で、ある隊長が隊員に訓示をして、今度の選挙は私法を改正して本格的な再軍備をするかしないかという問題につながっておる選挙である、諸君の運命に重大な関係のある選挙であるから、諸君は、憲法を改正して本格的な軍備を持つという、すなわち保守政党に投票することが適当である、こういう訓示を与えた。こういう事実が、これは投書によって明らかである。これは全く無根のことではないということも、私ども調査に行ってほぼつかんでおりますが、この問題に対して警察庁はどの程度お調べになつておるか。もう一つは、三重県下において、これも自衛隊ですが、自衛隊内で中曽根康弘君の選挙討論のテープ・レコーダーを隊員に聞かしておる。こういう事実がある。この二つの事柄は、ともに公職選挙法違反になる事柄であろうと思います。今後自衛隊がだんだんふえて、各種選挙にそういうようなことが行われるとしますれば、これは非常に大きな問題ですから、この二つの事実について、どの程度に調査されておるか。また、単に調査だけではなしに、事実をつかんだとすれば、それに対する適切な措置をされたことと存じますが、どのような措置をされたか、伺いたい。
  28. 中川董治

    中川説明員 馬上先生に御了解を得たいのですけれども、こうした選挙がありますと、各地で違反がある。また違反容疑がある。こういう事件につきましては、各地の警察におきまして、それぞれ資料を収集して、犯罪と思量した場合はどんどん捜査する、こういうことでやっておるわけでありますが、すべての事件を私の方で全部承知しておりませんので、ただいまお話の神奈川県の自衛隊の事件、三重県の自衛隊の事件につきましては私承知しておりませんので、よく事情を調べましてお答えいたしたいと思います。
  29. 島上善五郎

    ○島上小委員 選挙には各種の形式違反から各種の違反事件があって、一々あなたが把握しておるとは私恩っておりませんが、しかし、この二つの事件は特異なケースで、それからこういうようなことが今後もし起るとすれば、ゆるがせにできない性質のものである。それで私が聞いたのです。御承知になっていないとすれば、さっそくこの二つの事件についてお調べを願って、この次の機会に一つその事情を聞かしてもらいたい。私の方は私の方なりに調べておりますが、その御答弁をいただいた機会に、またわれわれの調べたところも発表できょうかと思います。これはこの次の機会までに詳細にお調べ願いたいということを要求しておきます。  それから、今度の選挙違反ですが、買収、事前運動等の違反もたくさんあったようですが、文書違反についてかなり顕著な事実が見られたようであります。それから戸別訪問、この二つについて簡単に伺っておきます。が、文書違反については、事前の法すれすれのポスターは別といたしまして公示後の文書違反がかなりあったように思う。これは地方へ行きますと、知らないでやっておる諸君も相当おるようです。たとえば、政談演説会の場所においては政策浸透のチラシは散布できる、こういうことになったわけですが、地方へ行くと、それは個人演説会の場所においても差しつかえないものと考えておる。政談演説会でまいて差しつかえないならば、個人演説会でまいても差しつかえたいではないかというので、個人演説会の場所でまいたところもかなりあるようです。さらにそれが進んで、街頭演説会の場所でチラシあるいは新聞に類するものをまいた、こういうような事例も少からずあるようです。それから、ポスターについては、選挙運動用のポスターの無検印のポスターがかなり張られておる。それから公共建造物、電柱とかその他の公共建造物に張られたのは、ほとんど枚挙にいとまなくあると思うのです。選挙運動用のポスター、無検印のポスターではなくして、これははっきり言ってもよいのですが、例のいわゆる乱闘国会の写真入りのポスター、何とか議会政治擁護連盟とかいうポスターですが、これは地方へ行くと電柱ごとにずっと張ってある。これは、私の承知している範囲では、いわゆる確認団体の合法的なポスターではなくて非合法のポスターである。これはもちろん告示前に張ったポスターであるならば法律上差支しつかえないわけですが、告示後確認団体でない議会政治擁護連盟による乱闘の写真入りのポスターを張る。これはどう考えても違反行為なんです。こういうような事実はもちろんあなたの方で大体はつかんでおるはずです。その事実とこれに対する推置を一つ伺いたい。
  30. 中川董治

    中川説明員 お話のように、文書事件というのは——買収供応はもちろん大事ですから一生懸命やりますけれども文書事件もだんだん違反容疑が出て戻りますと、公職選挙の期待する公正な選挙ができませんので、先ほど来申しましたように、一般的には選挙管理機関を通じて 一般的な啓蒙活動及び予防活動を大いにやっていただいて、それでまず防止する。これは考えなくちゃならぬ。ところが、そういう防止活動をやつていただいても、なおかつ違反文書が出てくるということにつきましては、やむを得ませんので、公職選挙法の定めるところによって刑事事件として措置せざるを得ない。こういうことで、文書事件として、今回の選挙で私の方で現在統計でまとまった数字だけでも、文書違反事件は千二百三十九件、千七百十七人の被疑者の方が送致されております。  それで、ただいまお話の具体的の文古違反事件の態様でありますが、お話のあった事件等もこの中の一部であろうと思いますが、各種の態様がございまして無検印のポスターを張る態様、それから個人演説会の会場で選挙運動文吉と認められるものを頒布する態様と各種ございますが、お話の二件だけではございませんけれども、そういった文書にかかわる犯罪事件として送致いたしましたものが、ただいま申しました千二百件余り、これが今回の参議院選挙について立件された事件でございます。
  31. 島上善五郎

    ○島上小委員 私が聞いているのは、そういう数々の違反があって、警察が怠慢だったということを必ずしも追及しているわけではない。そういう点ももちろんありますよ。今の公職選挙法から申しますと、今言ったような文書違反は、警察あとを追っかけて歩いておる程度であって、実効をあげるということは実際上至難だと思う。それを承知の上でやっている個人なり党なりがあるのだから、実効をあげることが至難ならば、これは改正して、文書を大幅に自由に認める、いっそこういうふうになることがいいのではないかという考えを持ったから、聞いたわけなんです。あとを追っかけて歩いて、撤去命令を出した、やれ何だとか言っているうちに、張った方は張った効果をあげているんですから、実際上実効をあげることができない。そういう意味もあって伺ったわけですが、実際、今度のはんらんした文書違反については、警察取締りとか防止とか——やり方が怠慢といって責めるわけではないが、全く何らの実効をあげることができなかったという実情であったと思うんです。ですから、ある地方においては、文書についてはもっと緩和して、大幅に自由を認めてはどうか、特に候補者個人の文書を自由に認めるということになれば、費用等の関係もありますが、党の活動の面においては自由に認めてはどうかという声もあったので、伺ったのです。こういう声に対して警察の側からはどのようにお考えですか。
  32. 中川董治

    中川説明員 これは、先ほど井堀委員が御指摘になりましたように、公職選挙法違反捜査に当る者の常の悩みなんでございますが、神さまから見れば違反はもっとたくさんあるんだろうと私も想像するのですけれども、それを取り締る機関といたしまして、これを立件するについては、証拠に基かなければならない。証拠を収集するという点に、特定の団体、特定の候補者をねらい撃ちをしないで、一般的にずっと一生懸命公平に均霑するという建前でやって参っておるのでございますが、何と申しましても同時多発と申しますか、日を限った二十日とか三十日という期間内において、文書違反事件、各種買収事件、各種戸別訪問等が行われて参りますので、それを、人権を尊重しながら証拠を収集するという作業には心を砕いて、一線の者も夜を日に次いでやっておるのでありますが、根こそぎにめっからぬ。——めっけようと努力する方は善意でありますけれども、客観的には根こそぎめっからぬという点が悩みなんであります。ただいま島上委員からるる御指摘があった通り、私傾聴いたしておったのでありますが、そういう角度から申しまして、ひとり文書違反事件に限りませんが、現行法律に基いて忠実に履行せなければならぬというのが公務員の建前でございますが、公務員は現行法建前で一生懸命にやるように努めますけれども、しいて立法論についてどう思うかという御意見でございますので、一般的に申しますと、なるべく、犯罪は、啓蒙活動及び選挙民の自覚活動を大いにやっていただいて犯罪が少い状態に追い込むように、まず御努力を僣越ですけれどもお願いする。そして犯罪の型はなるべく少く限定していただきまして限定されると自然そこへどうしたって人数が集中いたしますから捜査しやすくなる。こういうことも言えるでしょうから、一般的には公職選挙法罰則をなるべく簡明にしていただきたいという希望は持っておりますが、そういった点は立法上に各種の問題もございますので、この点は一つ御検討をわずらわしたらありがたいと思っております。
  33. 島上善五郎

    ○島上小委員 時間がおそくなりましたので、もう一つだけ簡単に伺います。  これは自治庁及び警察側と両方に関連すると思いますが、最初兼子君に一つ伺っておきますが、戸別訪問でございます。地方へ行きましたら、これは富山だったと思いますが、個々面接と戸別訪問との限界をはっきりさしてもらわぬと困るという話があった。今度の選挙では、今までのそれとは違った意味の戸別訪問、これは、何というか、少し悪質の戸別訪問というか、そういうものも二、三あったように私ども承知しております。もっと具体的に申しますならば、例の何とか学会という宗教団体が、隊伍を組んで戸別訪問、上から指令されて戸別訪問をして検挙されると、法律だった、もっと一生懸命やらなければいかぬといった工合で、そういう戸別訪問がかなりあった。そういう法律を無視した悪質な戸別訪問に対しては、今後といえども厳重に取り締らなければならぬと思うのですが、例の宗教団体の、法難だと称してますます盛んに戸別訪問をやったという事実に対して警察側に聞きたいのですが、どういう措置を講じたか。法律だと称してどんどんやるときには、警察へデモをかけるとかいったような事実もあったそうですが、警察側のこれに対する事実と措置について概要を伺いたい。
  34. 中川董治

    中川説明員 特定の団体、特定の候補者の方について申し上げない方がいいかと思いますけれどもお話になりましたように、団体が盛んに戸別訪問を組織的にやっている。法律等の言葉を使ってこれを検挙いたしました警察に対しては盛んに文句が出てくる、こういう事実がございました。ところが、私ども法律に基いて厳正にやる使命を帯びておりますので、戸別訪問をやられた以上は立件送致せざるを得ない。そういう事件については立件して送致いたしました。そういう意味で厳存に措置いたしております。
  35. 椎名隆

    ○椎名(隆)小委員 今創価学会の戸別訪問の問題が出たのですが、これは本省に報告があったかどうかわかりませんが、千葉県においてはきわめて特色のある事犯が出ているのです。船橋市で任意出頭で戸別訪問をした被疑者を呼んだのです。そうすると、今度船橋市に、さっそく、警察署と検察庁が共謀して選挙運動を妨害するといって、選挙妨害対策本部というものを樹立した。そして本部から新聞を発行しまして、検察庁並びに警察署のやり方を非常に攻撃した。これに対するいわば捜査の妨害をしておるところの団体組織ができたのです。取締り当局に対して選挙妨害対策本部というようなものを作って捜査を妨害して、きゃつらはきゃつらとしての目的を達しようとした。その対策本部に対してどういうふうな収締りをするか。もしこれを法の盲点だとしてそのままにしておくとするならば、今後、選挙のあるごとに、かりに警察庁あるいは検察庁において取調べをするということになりますと、選挙妨害対策本部を作ることはだれでもやるだろうと思う。検察庁並びに警察庁を攻撃して、自分の利益の方に持っていくというようなことになると思うのですが、これに対する取締り方針はどういうふうになっておるのか、その点をお聞かせ願いたいと思います。
  36. 中川董治

    中川説明員 ただいま椎名委員の御指摘のような事実はございました。それで、そういうことがございましても、戸別訪問、文書図画制限違反等をおやりになるものにつきましては、どしどし捜査検挙して参る、こういう方針——方針というより当然の処置を各警察ともして参りました。お尋ねの要点は、そういう警察活動をすることについて、選挙妨害対策本部を作ること自体に対して何か取締り対策はないかということでございますが、私も若干研究いたしてみたのですけれども、その取締り対策本部を作ること、それだけをもっては犯罪と言いがたい、こういうので、その点につきましては別段の措置はしておりません。しかし、そんなことがあるがゆえをもって取締りを緩和するとか、そういうことは絶対にいたしておりません。
  37. 山村新治郎

    ○山村小委員 兼子さんにちょっと伺いますが、一つの職場に集まりがある。その場合に、候補者なりあるいは運動員なりが行ってその集まりで候補者の推薦なりあるいは立候補のあいさつなどをするということは、これはどんなか手順を経ていけば法にかからないのですか。
  38. 兼子秀夫

    兼子説明員 会合があってたまたまそこへ行くというときには、個人演説会の回数に入らずその手続は要しない、現在そういう解釈をとっております。
  39. 山村新治郎

    ○山村小委員 そこで、お尋ねをしたい点は、現実の問題として、社会党の諸君は相当有利に御利用になったと思いますが、千葉県なら千葉県単位の日教組の会合を持たれる、あるいは郡単位の会合を持ってそこで特定の候補者をかりに流して参るということにつきましては、どういうことになりますか。
  40. 兼子秀夫

    兼子説明員 日教組の会合に候補者または運動員がたまたまぶつかって話をするということですが、日教組の会合は、本来組合としての活動をする、何らか組合の関係の集まりである、政治目的でないということであれば、これは一般の会合に出る場合と同じだろうと思います。ただ、教員組合でございますから、教員そのものが公務員法上の政治活動の制限を受けるという点は、別の問題としてあるわけでございます。ただ組合としてそのような制限にかからないという範囲内であるならば、選挙法上ただいまの問題は普通の会合の場合と同様だろうと思います。
  41. 山村新治郎

    ○山村小委員 おそらく自治庁でも御調査になっていると思いますが、現実の問題として各県ごと、各部ごとに先生方の会合が持たれて極端な話をしますと、一人の先生に五票ないし六票という割当をして特定候補者のために運動を命令されるのは事実だろうと思うのですが、自治庁としてはその事実を確認されておりますか、並びに警察当局としてこれに関連して何か事案か起っておりますか、それを伺いたい。
  42. 兼子秀夫

    兼子説明員 自治庁といたしましては、ただいまお尋ねのような事実は承知いたしておりません。
  43. 中川董治

    中川説明員 先ほどもお答えしたように、全部の事件を暗記しておりませんので、ちょっと正確を期しがたいのですけれども、そういったことで割当を受けて先生が戸別に家を回られるという場合、戸別訪問事件として立件したことはあろうと思います。
  44. 山村新治郎

    ○山村小委員 先生が割当を受けて、その命令に従って動くということは差しつかえないでしょうか。
  45. 中川董治

    中川説明員 合法的な選挙運動についているいる御相談する点は差しつかえないと思うのですが、その方法が戸別訪問になったり、文書、図書制限違反になったり、教育者の地位を利用して、たとえば父兄、生徒を利用して運動なさる、こういう方法を講ぜられた場合は犯罪となりますので、そういった面につきまして取締りはやっております。
  46. 山村新治郎

    ○山村小委員 これが社会党の強力な基盤になっていることは天下の常識だと思います。従って、この問題について、ただばく然と自治庁も知らないという答弁はいささか無責任な気がしますし、警察としても、戸別訪問等の小さな違反だけはあったけれども、組合の大会の名のもとに実際は特定候補者を強力に推薦する運動であったのを徹底的に取り締らなかったのは、私は遺憾に思いますが、その点責任を感じておりませんか。
  47. 中川董治

    中川説明員 いろいろ運動の方法をなさいます場合、合法のワクを越えて、たとえば教育者の地位を利用した文書、図画制限違反その他に触れるものにつきましては重大な関心を持っておりましてそういったものにつきましては各県の警察におきまして厳重に取締りをしております。私ずっと事件数字を覚えておりませんので申し上げかねますが、そういったものにつきましてはそれぞれ措置をしております。現在根こそぎ見つかっているかという点につきましては、ちょっと自信がございませんが、証拠のあるものにつきましては、どしどしやっているということを申し上げることができると思います。
  48. 島上善五郎

    ○島上小委員 時間がないから結論にしますが、今の創価学会の問題、さっき関連質問でもありましたが、この戸別訪問は非常に悪質です。神がかりで法律を無視してかかっている。戸別訪問の違反があると、法律だ、弾圧だといって、それを選挙運動に利用している。これは、自民党といわず、社会党といわず、法律を尊重して運動しようとする立場にあるものは無視できないと思う。それをまた選挙運動に利用する。極端に言えば、こういった生ぬるい扱いをしたならば、法律は要らぬと思う。これに対して厳重に措置したと申しておりますが、私の承知している範囲では、どうも神をおそれてか、あまり厳重でなかったように思う。  悪質違反は徹底的に取り締らなければならぬ性質のものですが、そうではなしに、たとえば演説会場の学校のかどの文房具屋に、かねがね非常に懇意にしておった人だので、演説に行ったついでに、演説に来たという程度のあいさつをする。これは選挙運動常識だと思うのです。学校の前で自動車に乗り降りするのに、顔が見えても知らぬ顔をして歩くというわけにいかぬと思うのです。ところがこういうものを戸別訪問だと称して調べている事案がある。それからもう一つは、労働組合は山村君はおきらいのようでありますが、労働組合ばかりでなく、農業協同組合あるいはその他青年会の団体でも同じですが、そういう団体が選挙に際して共同して推薦をするということは、しばしばあり得ることです。これは社会党も保守党も同じことです。共同して推薦する。さらに進んで共同闘争をする。もちろんこれは合法的な運動範囲でのことですが、その際に、選挙の事務所からは、そういう共同推薦を受けた団体あるいは共同闘争に参加している団体に連絡をする必要がある。これはどうしてもそういう必要も生ずる場合があると思うのです。共同推薦を受けた団体あるいは共同闘争に参加している団体に、すぐそのそばで個人演説会をやる、あるいは何月何日にはその辺へ街頭演説に回っていく、こういうスケジュールを立てた場合に、そういうスケジュールを連絡する。これは有権者個々に対する投票依頼行為ではないわけです。純然たる投票依頼行為ではないことは明白なんです。これは連絡です。共同推薦をしてくれた団体あるいは共同闘争に参加している団体にスケジュールの連絡をする。これをも戸別訪問と称して手を加えておる事実がある。私が今言った二つの事例、演説会の会場の前のかどのたばこ屋とか、文房具屋とか、車を乗り入れると、黙っておっても見えるような状態の懇意の人のところへ、いや、今日はと言った場合、共同推薦あるいは共同闘争に参加している団体にスケジュールの連絡に行った場合、これをも戸別訪問と称して手を加えている事実があります。私どもの解釈によると、これは戸別訪問じゃない、個々の有権者に対する投票依頼のための戸別訪問じゃないと解釈しておりますが、念のため自治庁から見解を承わりたい。
  49. 兼子秀夫

    兼子説明員 戸別訪問は第百三十八条の規定を相当受けた場合でございますが、ただいまのお話のごとく、演説会場の前の文房具屋へたまたま入るとか、あるいは協力を受けている団体に連絡をするというような場合には、それだけでありますならば、これは常識上戸別訪問にはならないのではないかと思います。やはり、戸別訪問である以上、投票を得もしくは得しめる目的で戸別に訪問をするということで、やはり連続して訪問をするということが要件じゃないかと思うのでありますが、たまたま知っているうちに入るというだけでは戸別訪問とは言いがたいわけでして、おそらく警察もその辺は常識上処理をされているのじゃないかと思います。  それから、戸別訪問であるか個々面接であるかという先ほどのお話でありましたが、路上で頼むということは個々面接で差しつかえない。戸別訪問はいけない。戸別訪問自体もわが国の法律は禁止しておりますが、外国の立法では必ずしも禁止をしておりません。果して戸別訪問の規定を置いておくことがいいかどうかということは、やはり相当根本的に検討を要する問題ではないかと思います。先ほど来御指摘の宗教団体等の戸別訪問が最近起っているようでありますが、そういう事態も考慮に入れまして、戸別訪問の規定自体は検討を要するものと考えております。
  50. 島上善五郎

    ○島上小委員 もう一つ簡単に伺っておきますが、今度の選挙で、例の同姓の問題ですが、上条君ですか同姓の投票の按分問題が問題になりましたが、途中で投票の票数の発表を改正し、あらためて発表したりなどして、投票の按分が必ずしも適当に合法的に適切に行われていなかったという感を深くするわけです。だいぶ時間もたっておりまするが、全国的に自治庁が同姓の候補者の投票の按分を適切に指導し、その通りにちゃんと行われておるかどうか。当落にかりに影響がないにしても、あるところにおいては半分々々にしたとか、あるところにおいては無効にしたというような事実がもしあると、やはり今後の選挙関係考えて困ると思いますが、ちゃんと適当に指導し、結果においてその通り按分されているかどうか、これを一つ伺っておきたい。
  51. 兼子秀夫

    兼子説明員 先般の参議院選挙に際しましては、日にちはちょっと忘れましたが、六月中ですが、同一の姓あるいは類似の氏名で按分を必要とすると思われるカテゴリーのグループが相当多数ございましたので、そういう氏名を明示いたしまして都道府県選管に連絡をいたしております。従いまして府県からは市町村末端に同様趣旨の連絡をいたしておると思うのでございますが、選挙の結果、開票の結果を見てみますと、ごく一部のところで、必ずしも私どもの方から指示いたしましたその方針通りにはやっていない——もちろん、私の方から指示いたしましたものは、その通りやれという命令的なものでなく、法の建前は開票立会人の意見を聞いてきめるということになっておりますので、あくまで有力な参考意見としてお伝えをするわけでございますが、必ずしも末端へ統一的に行われておらない。ごく一部のところにおいては、上条さんの関係で按分をしておらなかったというところがあったわけでございます。すでに、本件につきましては、御承知のごとく訴訟が提起されておりまして、訴訟の過程におきましてその間の事態がはっきりすると思うのでございます。その後の按分の問題につきましては、選挙候補者の氏名が特定しました上で指示をいたさなければなりませんので、こういう事件があったということは地方には知らせておりますけれども、この次の選挙がありますときには、さような間違いがないように、さらに注意をいたすつもりにしております。
  52. 三田村武夫

    ○三田村小委員長代理 本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十九分散会