○三田村
委員 第三班
北陸方面について
調査の
報告をいたします。
去る八月一日より四日まで、
島上善五郎委員と私とで
富山、
石川、
福井の三県を
調査して参ったのでありますが、初めに総括的な
意見を取りまとめて
報告し、次いで個別的な問題についての
意見を逐次
報告することにいたします。
なお、第一班、第二班の御
報告とその
報告内容が重複する
ところがありますが、
調査の対象が同一でありますから、その点重複の煩を避けることなく、
参考として御
報告いたしたいと思います。
まず、総括的な
意見でありますが、第一に、
公職選挙法の構成についていろいろ
意見がありました。
現行の
公職選挙法は、
衆議院、
参議院、
地方公共団体の
議会の
議員及び自治体の長の
選挙について適用されておりますので、方式の異なる
各種の
選挙が一本の
法律で
規定されております
関係上、
法律の
規定が非常に複雑、錯綜し、このため
法律がはなはだ難解とたり、かつまたこの
公職選挙法はしばしば
改正されるので、
選挙に
関係する者は非常に困惑を来たす結果となり、ひいては国民の
選挙に対する意識を低下させることともなりますので、この
法律を平易簡明なものに改め、根本的に
改正して、恒久性あるものにされたいというのであります。この点について、
富山県の
社会党支部よりは、衆、参、
地方公共団体の
議会の
議員及び首長の各
選挙について、それぞれ
別個の
法律を作つてもらいたいとの
意見がありました。また、
石川県
選挙管理委員会では、将来
一定期間は
改正しない
法律の制定を望むとの
意見がありました。
福井県
警察側よりは、
各種の規制をなるべく減らし、直截簡明なものに
改正されたいとの
意見が表明されておりました。この
警察当局の
意見は、非常に肯綮に値するものでありまして、たとえば、
悪質犯罪だけ抽出してこれを厳重に処分する
規定を設け、
文書図画その他一般の
選挙運動についてはできるだけ開放的にやったらどうか、これは
取締り当局の立場からの
意見でありましたが、しかしこれは
選挙法改正の場合に考慮されていい
意見じゃないかと考えられます。
第一に、
選挙運動と
政治活動との
関係についてであります。
現行の
公職選挙法は、
候補者中心の
選挙運動という立場で組み立てられておりますが、
政党の組織と
活動が充実して参りました今日、
政治活動と
選挙運動との実質的区別が非常に困難な実情であります。これを
候補者中心の
選挙運動から、
政党中心または両者の妥協点を見出す方向に規制しすべきであるという
意見であります。
選挙における
政党の
政治活動はもっと活発にやらすべきであるという
意見は、各県で非常に活発に出ておりました。
富山県の
選挙管理委員会及び
社会党支部よりは、
候補者中心を改め、
政党中心の
選挙に移行すべきであるとの
意見が強く述べられておりました。
富山、
福井両県の自由民主
党支部及び
石川県の
社会党支部よりは、
選挙期間中といえども
政治活動は最大限度認めるべきであって、全県一区のごとき
選挙に宣伝車一台ではとうてい政策の徹底はできない、また政談
演説会の
回数や
ポスターの
枚数を大幅に増加すべきであるとの
意見が出ておりました。
第三に、
選挙に関する
裁判並びに罰則の問題でありますが、
選挙に関する
裁判については、従来非常に遅延している
現状でありますので、これを特別な
裁判制度に切り離して、赤松の促進をはかるべきだとの
意見も出ておりました。つまり、
選挙裁判の
制度を作ることでありまして、
富山及び
福井の
地方検察庁側より、この点について特に具体化をはかるべきであるのと
意見が出ました。また、
富山県、
石川県の
社会党支部よりは、
選挙裁判の促進を
要望するとともに、
裁判中に任期が終るという悪慣例は断固打破すべきであるとの
意見が出ました。これは相当具体的な事例についての
意見が述べられておりました。これとともに、
選挙違反に関する
裁判を、単独の判事、つまり現在
地方裁判所の第一審は一人の判事の
裁判になっておりますが、こういう現在のあり方を改めて、
会議制の
裁判でやるようにしてもらいたいとの
意見もありました。さらに、
選挙犯罪による当選人の失格についてでありますが、当選人の
選挙犯罪による当選無効の
規定を実効あらしめるために、処刑の判決があったときは、控訴、上告の有無にかかわらず、当選人の身分を停止するものとし、なお、
選挙運動を総括主宰した者または出納
責任者が
買収等の罪を犯し刑に処せられたときも、刑事
裁判の結果直ちに当選無効が確定するものとするようにしたらという
意見であります。この点については、
検察、
警察、
政党各支部の
方々からいろいろな論議がありまして、
法律上あるいは
裁判手続上相当問題がありますが、これも考慮すべき点ではないかと考えられます。
さらに、
公民権停止についての問題でありますが、
富山、金沢、
福井の各地検では、
現行法のもとにおいては、
裁判所は、第二百五十二条第三、項によって、
公民権停止を適用せず、もしくは短縮する場合の選択の自由を与えられているが、運営の実績は多くの場合
公民権停止の
規定を適用していない。従つて、法第二百五十二条の
規定の存在も
有名無実となることが多いから、これを
改正し、停止
規定を適用しない旨の
規定を削除し、当然停止するようにすべきであるという
意見がありました。
次に、個別的な問題について一、二の点を申し上げます。
第一に、
投票の
方法についての
意見であります。これは冨山県の
選挙管理委員会より出された
意見でありますが、
投票の
方法に記号式を採用せよというのであります。その理由とする
ところは、第一に無効
投票が少くなること、第二に
按分投票の
制度が不用となること、第三に
投票の効力に関する争いが少くなるというのであります。これについて、島上
委員より、
参議院の
地方区ならば立
候補者が少いからいいが、
全国区の場合
候補者が非常に多く、記号式だと困るのではないかという質問に対し、これについてはちょっと具体的な考えがないということでありましたが、研究の対象になる問題であります。
第二に、補充
選挙人名簿の調製についてでありますが、これは
福井県
選挙管理委員会よりの
意見であります。その要旨は、
現行法は補充
選挙人名簿の調製について申請調製主義を採用しているのでありますが、この方式によるときは脱漏が多く完璧を期しがたいので、申請調製主義と職権調製主義との二本建を採用し、さらに、異議申し立てについては、登録申請をなした者についてのみ認められているのを、申請をしなかった者についても、これを認めるようにすべきであるというのであります。
第三に、
違反文書図画に対する
選挙管理委員会の
撤去命令の権限を削除すべきであるという
意見であります。これは
富山県
選挙管理委員会よりの
意見でありますが、その理由としては、
選挙管理委員会は、
調査能力がないし、代
執行能力もない、また、
参議院全国区選出
議員選挙については、連絡先がほとんど遠隔地であるから、実質的に活用できないし、また行われていない、それゆえこれは
取締り機関の所管とすべきが適当であるというのであります。
第四に、
選挙運動用の
ポスターの掲示についてであります。
選挙運動用ポスターの掲示
責任者は、当該
選挙の行われる区域、つまり当該都道
府県内の者であることが必要であり、また、その掲示した
選挙運動用ポスターは、
選挙終了後掲示
責任者においてすみやかに
撤去するよう義務づけるべしというのであります。これは、三県とも、
選挙管理委員会、
警察側で大体共通した
意見でありました。
第五に、
選挙の公告に関するものについてであります。
選挙の公営を拡大強化せよという点については、三県の
社会党支部より共通して出されておりますが、
立会演説会については、その
回数を一日三回あるいは四回とし、その他私設の立会形式の
演説会を開くことができることとする、これは
富山、
福井の
社会党支部よりの
意見でありますが、
石川の
社会党支部よりは、
立会演説会に多数を動員するため、バスを提供し、応援団をかり集める行為及びこれらの応援団が集団的に拍手またはヤジ、退場をせしめる行為があったが、これは明らかに気勢を張る行為であり、
立会演説会の完全公営の趣旨に反している、
市町村の
選挙管理委員会の統制権の強化が望ましいとの
意見がありました。また、これと別に、
立会演説会の
回数について、
石川県自民
党側よりは、
立会演説会は
候補者がくぎづけにされて非常に不便であるから、
現行の半分くらいに減らしてもらいたいとの
意見がありました。なお、この
立会演説会の開催単位について、
石川県の
選挙管理委員会では、
町村合併後の事情を考慮して、
町村については
人口八千以上、
人口十万未満の中については二万を一単位、
人口十万をこえる市についてはおおむね四万を一単位として開催するようされたいとの
意見がありました。
政見放送についてでありますが、政見放送は
現行の三回を四回以上の偶数にせられたいというのであります。
石川県の
社会党支部より述べられましたが、その理由は、NHKと民間放送との配分に困惑を来たしているというのであります。これは、公平の原則といいますか、どうも大正数でやると、あっちに二回、こっちに一回では工合が悪いという具体的の事例があげられております。
福井の
選挙管理委員会では、政見放送、経歴放送に関し、テレビの使用を認め、民間放送にも経歴放送を認めるべきであり、政見放送は、NHK、民間放送と同
回数行わせるようにすべきであるという
意見であります。その理由は、放送機関の高度に発達した今日において、なお現在程度の利用度では不都合であってむしろ
選挙運動は放送機関を
中心として行うべきものであるというのであります。また、
選挙運動はどうしても
人口稠密な都市に集中し、いなかにおいては
候補者の
演説を聞く機会が与えられないので、この欠陥を補うためにも必要であるというのであります。
次に、氏名掲示についてであります。これについては、報道機関が発達している現在において利用度が少いし、氏名掲示を完全な
状態で維持することは非常に困難であるから、これを廃止するかあるいは掲示の箇所を縮減し、期間を短縮するかまたは
投票所の入口に
選挙当百のみ掲示することにしたらどうだという
意見であります。これは三県の
選挙管理委員会共通の
意見であります。
第六には、
自動車、拡声機の使用についてであります。
富山県の
社会党支部から、
選挙運動用自動車は二台とし、一台を政策宣伝普及のみに使用し、一台を
演説会告知のみに使用することとし、
参議院全国区の街頭
演説に拡声機を使用できるようされたいとの
意見がありました。各県とも、
政党関係者からは、
自動車の台数増加を望む
意見があり、また
連呼行為についても大体同様に復活せよとの
意見が述べられておりました。
最後に、
選挙に関する啓蒙宣伝についてであります。従来とも
選挙に関する啓蒙宣伝は行われたのでありますが、今後さらに
選挙の重要性を国民に訴えるため不断に啓蒙宣伝を行わねばならないのでありますが、これが
費用については、はなはだ微々たるもので、国は
選挙啓発のため
費用を毎年十分に出すべきであるとの
意見が強く述べられておりました。特に、
福井県においては、この点どの程度の
費用があればできるかという
委員側の質問に対して
福井県では、国からの
費用が年に二十三万五千自だそうであります。これでは何ともいたし方がない、大体
全国で三億、
福井県で三百万円くらいあると、
選挙に関する啓蒙宣伝が徹底するだろう、ぜひこれは考慮していただきたい、こういう
意見でありました。
以上で大体の
報告を終るのでありますが、なお、一点、これは私ぜひつけ加えて申し上げたいと思いましたのは、
石川県の社会党から出た
意見でありますが、非常におもしろい用語を使って
意見を述べられました。慢性合法的
買収と
連座制の強化——慢性合法的
買収、つまりいろいろな
団体あるいは個人の後援会等が常時行う
買収行為、手ぬぐいを配ったり折詰を配ったり酒を配ったりそういうことを始終やる、これは慢性非合法的合法
買収行為だというのであります。これは、自民党の支部の人々も、前に述べられた、今後の
選挙運動は個人本位から政策本位、党本位になる建前上、できるだけこういう面は取り除いてもらいたい、
選挙法改正の場合にはぜひ考慮してもらいたいという
意見でありました。
以上で大体の
報告を終りますが、本
調査に特に協力をいただきました
関係各
府県の各位に対してこの席からお礼を申し上げて、
報告を終りたいと思います。