○片島
委員 私は、日本
社会党を代表いたしまして、ただいま議題となっておりまする
内閣提出、
公職選挙法の一部を
改正する
法律案につき、
自由民主党提出の
修正案及び
修正部分を除く
政府原案に
反対の討論を行わんとするものであります。(拍手)
われわれは、このたびの小
選挙区
法案の賛否を論ずるに当りましては、
鳩山内閣が前回の総
選挙において二度も口にしなかった本
法案を、保守合同の後において
選挙制度調査会に命じて
——私はあえて諮問してと言わないで命じてと言うのでありまするが、それは
選挙制度調査会に対する
政府の
態度及びその運営によって明らかでありまするから省略いたしますが、早々の間に
答申案を
提出せしめ、多数の暴力によって強引に本
国会を通過せしめようとする魂胆を、まず究明しなければならぬと思うのであります。(拍手)
まず、私はわかりやすい方から究明をいたしたいと思うのでありまするが、その第一は、政局の安定にあらずして
自由民主党の安定であり、もっと突き進んで申し上げるならば、
自由民主党内部における現主流の
主導権を確立するためであります。
公認制度という伝家の宝刀によって、党内反
主流派を抑圧して幹部独裁を確立することをもって(「ノーノー」)政局の安定というオブラート表現を使っておるのでありまするが、このことはつとに党内から反発せられ、党内に多くの署名運動まで行われていた事実から見ても
——われわれはその署名簿の控えを持っておるのであります。(拍手)さらに、個人個人を通じて、まことに数知れぬ
自由民主党の
議員諸君が、わが党の
議員に対して、本
法案の粉砕方を熱心に陳情していた事実からも明々白々であります。(拍手)これらの不平不満に対しましては、
ゲリマンダーによって辛うじてふたをしてきたのでありますが、このことは後ほど論述をいたします。
その第二の魂胆は、しかも最も重要なる点でありまするが、党内独裁の確立後における独裁政権の確立であります。
鳩山内閣は憲法
改正による再軍備の
強化を中心の柱として組み立てられた政権であり、これが
政府及び
与党間における唯一の最大の共通の広場であります。しかも、憲法
改正、再軍術の
強化ということは、あらゆる逆コース、反動
政策の糸口となっておる。その
意味で、今の
鳩山内閣は、保守内閣ではなくて反動内閣であります。よく聞いていただきたいと思うのでありますが、保守というのは現行諸
制度を守ることであって、現行諸
制度が前に向っていくのが革新、うしろへ向っていくのは反動の逆コースであります。(拍手)二大
政党による政局の安定のためには、二大
政党間における
政策の歩み寄りが必要であるということは、四ブロック公聴会等において耳の痛いほど聞かされたことであります。わが日本
社会党は非常に急進的なことを言っているようには見えますが、その実は、現行憲法を守る、地方自治を守る、民主教育を守る、個人の自由、人権の尊重、平和を守る
——守る、守るであります。(笑声)われわれは今や現行諸
制度を守ろうとする保守であります。(拍手)
鳩山内閣及び
与党は、憲法を改悪する、地方自治を破壊する、民主教育を破壊する、
国民健康保険
制度を破壊する、家族
制度しかり、内務省の復活しかり、これは保守ではなくて反動であります。(拍手)今や保守対革新でなくて、保守対反動であります。
政策の歩み寄りをしているのはわれわれであって、うしろ向きに逃げているのが
政府及び
与党であります。われわれは今や穏健なる保守、主義者であり、
自由民主党は危険きわまる反動的なる破壊主義者である。(拍手)今次の小
選挙区制が党内独裁を確立し、反動的独裁政権を安定せしめんとしていることを天下に明らかにすることが、われわれの任務である。そのためにも、われわれは本
法案を粉砕することが喫緊の要務であると思うのであります。
これからぼつぼつ本論に入りたいと思うのでありますが、調査会に命じて小
選挙区制は晴れて正式の
答申として本年三月十二日
政府の手元に届きました。もとより
答申の
内容は事前に
政府及び
与党幹部にはわかっておった。
調査会案と並行して川島君のもとで
党利党略案が調整せられていた。作成ではなく調整であります。
党利党略案が固まる前に
調査会案が発表せられたのでは、党内がてんやわんやで調整が困難になるために、
答申が延ばされていたのであります。調査会の
答申で
政府が最も関心を寄せたのは
区割り案であります。
答申の中には連座制、
政治資金、
選挙公営、
選挙監視等、
選挙犯罪を抑えて公正なる
選挙が行われることを前提条件として小
選挙区制が
答申せられておるのに、これら前提条件には何らの関心も示さず、従って、ほとんどこれらの事項は
改正案に織り込むことをしないで、もっぱら
区割りに対してのみ異常なる熱意を示したのであります。私が先ほど申し上げましたる
通り、今次の小
選挙区制のこの魂胆を究明いたしますならば、
区割りにのみ熱意を示すことは理の当然といわなければなりません。
太田長官は、提案理由の
説明において、白々しくも
調査会案を基礎として云々と言っておるのでありますが、小
選挙区制実施の前提条件をほおかむりして、さらに
区割りについては、
自民党の
党利党略、私利私略の
区割りと
調査会案の
区割りがたまたま約半数の
区割りについて符合していたというだけのことであって、これだけでは
調査会案を基礎としたなどとは言えた義理ではありません。これでは
答申をするまで熱心に小
選挙区制を主張していた調査会の
委員の
諸君が怒るのも無理はありません。ここに、ゲリー知事の墓石もゆらぐほどの、古今東西にその類例を見ない
党利党略による公職
選挙法改正案なるものが白日のもとにさらされたのであります。私は、今、調査会の構成、その運営についての不当なる点、一事不再議の
原則にもとる党については、
同僚委員より強く発言せられておりますので、ここでは省略をいたしますが、この
法案くらい天下の悪評を受けた
法案は、憲政史上まれにも見ることのできないものである。こういう
法律案を提案いたしました者及びその同調者は、わが党が作成をいたしました、この部屋にもその一部を掲示いたしましたあの
ゲリマンダーの地図とともに、幾世紀の
あとまで法制史の記録にとどめておく価値のあるものであります。(拍手)
この悪
法案に対しては、われわれはまじめに
質疑を続けることさえばからしく感じたのでありますが、国を思う心から(笑声)休日まで返上して終始熱心に
審議を進めて参りました。しかし、本質的なる悪
法案というものは、
質疑を続けておる間にいつの間にかりっぱなものになっておるという性質のものではないのであります。
政府がいかに抗弁をしたからといって、
世間を納得させるものではありません。
質疑、応答を繰り返せば繰り返すほど、その悪臭ふんぷんとして鼻をつき、
世論はますます不利となるのを見てとった
与党諸君は、強引にも
審議半ばにしてこれを本
会議に持ち込み、
委員長の中間報告を求め、多数を頼んで一挙にこれを通過せしむる謀略に出たのでありますが、わが党のきわめて合法的なる反撃によって、(笑声)ついに中間報告を取りやめ、
委員会差し戻しとなったのであります。(拍手)いずれは撤回か大幅
修正がきまっておる
法案に対して、天皇誕生日も休まず、五月五日の子供の日も返上して、まさに天下の笑いものであります。の
どもかわいておらないのに、無理にひなた水を飲まされるようなものであります。(笑声)
それにつけても、私は、
太田長官及び早川政務次官の
態度は不可解千万といわなければならぬ。
世論の反撃とわれわれの追究を見るに見かねた
自民党出身の
益谷議長のきも入りで、
党利党略の
区割りは削除され、立会演説会は復活し、供託金も現行
通り、時効期間は延長され、附帯訴訟の
手続の法制化等々、われわれの
質疑に対して白々しくまことしやかな
答弁をしておりました事項は、あなた方の
与党から大幅
修正をされているのに、何の抗弁もなく人ごとのような顔をして、連日この
委員会に出席して白々しい
答弁を続けておられる。
修正以前の五十数時間の
自分の
答弁について何らの
責任も感じていない。そんなことだから、私
どもは初めからあなた方の
答弁には信を置いていなかった。そのときその場所での出たとこ勝負の詭弁にすぎない。単に語彙が豊富であるというだけであります。
特に、早川君は政務次官でありまするが、言うまでもなく政務次官というものは、
政府と
議会との連絡調整に当るのがその任務であるが、
地方行政委員会は、四月二十七日全会一致で地方
自治法の一部
改正案は
質疑が終了し、
与党の方から
修正案を出すから待ってくれといって、すでに半月以上も
委員会は開けない状態であった。こういうときこそ、
政府と
与党の間に入って、急速に
修正案をまとめて
委員会の
審議を促進すべきであるのに、ことさらにその労をとろうとせず、
太田長官も
鈴木次長も出席しているこの
委員会に熱心に出席して、
長官が
答弁すべき事項についてまで、進んでみずから発言を求めて
答弁に立っている。ときには、
長官が、これは
自分の役割を横取りされたというような渋い顔をしているのもおかまいなく、熱弁をふるっている。(笑声)本家の
地方行政委員会よりも、この
委員会の方がよほど気に入った、好きだと見えるのでありますが、公けの職にある者が好きじゃきらいじゃといって、事分の
責任が果せるものではありません。われわれは早川君に対しても解任要望決議案を出そうかと思ったのでありますが、イノシシを追う者が、たといついでであってもウサギを撃つというようなけちなことは(笑声)これはこけんにかかわると思って思いとどまっただけであります。
さて本論に戻りますが、本
法案は、
議長の肝入りによって
与党の大
修正となり、半殺しの姿になった今日、何ゆえにこの
法案を急いで今
国会を通過せしめようとするのであるか、われわれにはどうしても理解することができない。本
法案は、いかに大幅の
修正があっても、
政府提案に
変りはない。
太田長官も早川次官も、来年の
通常国会には今のポストで相まみえることはあるまい。
鳩山内閣も今のままの姿ではなく、
与党もまた同じでありましょう。本
法案は、最短距離をいっても、来年の
通常国会において区画割り、附帯訴訟の
手続の法制化が成立してから六カ月を過ぎて後の総
選挙から適用されるのであるが、問題は、
選挙区画定
委員会によって簡単に
区割りがきめられるものではなくして、またよし
答申がなされても、
与党内部において、また
野党を向うに回して、その成立の困難さは予知できるのであります。中味のないからだけを今
国会で無理押しをすべきではない。今
国会においてはこんなボロボロの
法案はいさぎよく撤回して、次の
国会で新装をこらして出直すことが最も賢明なる
方法であることを、特に忠告をしておきたいのであります。
本
法案はすでに申し上げました
通り大幅な
修正はなされておりますが、
政府が一縷の望みを持っておるというよりも、いささか幹部の顔を立ててくれといって残しておるのは、一人一区を
原則とする小
選挙区制ということでありましょう。このことは、
選挙区画定
委員会を設けて、調査会
答申を尊重して、一定基準によって来たるべき常会までに区画割りを作らせようとしている点でありますが、さらに繰り上げ補充の問題、候補者公認の
制度、
政党の
政治活動の拡大について明文を残しておることで明瞭であります。一人一区という文字を
本文に書かずに、
附則に
調査会案尊重といっても、一人一区制そのものがわが国の政情に照らして適当でないというわれわれの主張には何ら
変りはありません。
私は、詳しくは申し上げませんが、いささか公聴会などに現われました意見をもとにして、一、二ここで理論的に
反対の根拠を明らかにしておきたいと思う。
もともと小
選挙区割りは、われわれの今日の社会生活の進展に逆行するものである。われわれの共同生活の範囲は、交通、通信、マス・コミュニケーション等の事由によってますます拡大せられておる。さらに、われわれは、職業上、思想上、学術上の横断的な組織的な団体に結びついた社会生活をしておる。労働組合あるいは農民組合、あるいは特定郵便局長の会、売春業者の組合、理髪組合、こういうふうにわれわれの社会生活、共同生活がだんだんと拡大をされてわるのでありまするが、これらの社会生活は、
法律によって強制せられたものではなくして、時勢の進運に応じて自然に発展をしたものであります。小
選挙区制は、これらの事実を無視し、われらの共同生活、組織的な社会生活を分断するものであります。
イギリスの小
選挙区制は七十年前、アメリカは百十三年前であって、社会生活の範囲がきわめて狭小なる時代であり、これをまねること自体が時代逆行であります。
政府の主張する二大
政党論のごときも全くの詭弁にすぎない。イギリスでは、小
選挙区制は七十年前であるが、二大
政党は二百年前からできておる。アメリカの小
選挙区制が全州に実施をせられたのは一八四二年であるが、二大
政党は、ワシントン執政のときの連邦党と反連邦党によって始まっております。フランスは、八十年前から第二次大戦まで、数回小
選挙区を実施しておりますが、いまだ二大
政党ができたというためしはありません。わが国の大正十三年の小
選挙区は逆に三大
政党になっておる。
選挙費用その他の
政府の提案理由ことごとく同断でありますから、私はこの点は省きます。
繰り上げ補充を認めず、補欠
選挙によることの不合理についても、るる同僚
議員から究明せられております。
政党の
政治活動の規定が、大
政党、金のある
政党にのみ有利であり、
選挙の公正を全面的に否定する規定であることも、また詳細に論述せられたところであります。
これすべて
国民党の
党利党略であることは、今やあらためて申し上げる必要がありません。
私は、
政府がこの際この悪
法案が長きにわたって
世間を騒がした大罪を天下に謝罪せらるるとともに、すみやかに本
法案を撤回せられんことを強く要望いたしまして、私の
反対討論といたします。(拍手)