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1956-05-15 第24回国会 衆議院 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月十五日(火曜日)    午前十時一十三分開議  出席委員    委員長 小澤佐重喜君    理事 青木  正君 理事 大村 清一君    理事 松澤 雄藏君 理事 三田村武夫君    理事 山村新治郎君 理事 井堀 繁雄君    理事 島上善五郎君       相川 勝六君    安藤  覺君       臼井 莊一君    岡崎 英城君       加藤 精三君    加藤 高藏君       菅  太郎君    椎名  隆君       瀬戸山三男君    田中 龍夫君       中垣 國雄君    二階堂 進君       淵上房太郎君    藤枝 泉介君       古川 丈吉君    森   清君       山本 勝市君    山本 利壽君       片島  港君    佐竹 晴記君       鈴木 義男君    竹谷源太郎君       滝井 義高君    田中織之進君       原   茂君    森 三樹二君       山下 榮二君    山田 長司君       小山  亮君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君         国 務 大 臣 太田 正孝君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         自治政務次官  早川  崇君         自治庁次長   鈴木 俊一君         総理府事務官         (自治庁選挙部         事務代理)   皆川 迪夫君  委員外出席者         議     員 中村 高一君         衆議院法制局参         事         (第一部長)  三浦 義男君     ――――――――――――― 五月十五日  委員福井順一君、淵上房太郎君及び山本勝市君  辞任につき、その補欠として安藤覺君、加藤精  三君及び藤枝泉介君が議長の指名で委員に選任  された。     ――――――――――――― 五月十五日  山武郡の選挙区分制反対に関する請願外一作(  福井順一紹介)(第二三四六号)  小選挙制反対に関する請願杉山元治郎君紹  介)(第二二七六号)  同(神近市子君外二名紹介)(第二三二〇号) の審査を本委員会に付託された。 同日  埼玉県第十、十一及び十二区の選挙区に関する  陳情書(第七五九  号)  小選挙制反対に関する陳情書  (第七六〇  号)  同外一件  (第七八五号)  上総町の選挙区を第十二区に編成の陳情書  (第七八  四号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  公職選挙法の一部を改正する法律案内閣提出  第一三九号)  政治資金規正法の一部を改正する法律案中村  尚一君外三名提出衆法第二一号)  公職選挙法の一部を改正する法律案中村高一  君外四名提出衆法第二二号)     ―――――――――――――
  2. 小澤佐重喜

    小澤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出公職選挙法の一部を改正する法律案中村高一君外三名提出政治資金規正法の一部を改正する法律案中村高一君外四名提出公職選挙法の一部を改正する法律案、以上三案を一括議題といたします。  右三案並び青木正君外二十名提出修正案を一括いたしまして質疑を継続いたします。原茂君。
  3. 原茂

    ○原(茂)委員 昨日、総連と長官に対する同僚委員からの政治責任の追及がありましたのに関連いたしまして、総理に、議長裁定の詳細な内容に関して御承知かどうか、今回与党の出した修正案に対して、表面に出ておる文字のほかに議長裁定精神というこまかいものがあるが、これらを御承知の上でおられるのかどうかを質問いたしましたところが、その件に関してはこまかいことを知らない、こういう御答弁がありましたので、きょうあらためてそれの御回答をいただく約束になっておりましたから、まずこの点の御回答をいただきたいと思います。
  4. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 原君の御質問お答えをいたします。  議長裁定精神等に関しましては党執行部より連絡を受けております。承知をしております。
  5. 原茂

    ○原(茂)委員 大体そういう責任者としての御回答をいただけば満足であります。  そこで、一問だけお伺いしておきたいのですが、この委員会審議の過程におきまして、特に与党諸君から、私ども審議態度に関して議事引き延ばしだという非難が、再三行われてきたわけであります。総理は、今日までのこの委員会審議経過等をごらんになって、われわれ社会党の慎重な審議態度に対して、この非難が当っているとお思いになるかどうかを、一点質問しておきます。
  6. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は委員会に出席しておりませんものですから、その点についてのしえはどちらとも申し上げかねます。
  7. 原茂

    ○原(茂)委員 時間がありませんから、一言だけ次のお答えを願いたいと思うのですが、この委員会審議経過がわからない——ちょうどお隣自治庁長官がおられますが、地方行政委員会における自治法改正に関して、すでに当然討論採決さるべき段階になって、修正案を出すと言いながら、政府与党は、二十日になんなんとする今日まで、河川委員会を招集しても出てこない。与党にもし審議の熱意さえあればできるものを、全然委員会の部屋をからっぽにして今日までやらないでいたこの態度は、この選挙法委員会でわれわれ慎重審議してきたことと比べて、まさに審議引き延ばしだ、地方行政委員会における与党態度こそ、審議引き延ばしの非常にいい例であると私は思うのですが、お隣自治庁長官がおられますから、総理は、一つ耳打ちをしながら、どっちが議事引き延ばしであったか、この点一つお伺いいたしたいと思います。
  8. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は委員会の模様を知りませんから、太田自治庁長官に御答弁いたさせます。
  9. 太田正孝

    太田国務大臣 ただいま原委員の御質問にありました議事引き延ばしについての、自治法関係についてのことを申し述べます。日付ははっきりいたしませんが、先月の下句でございましたが、最後の私の出ました……。(「二十七日だ」と呼び、その他発言する者あり)お聞き願います。一番しまいの日に、自治法の中の今回の一番大きい問題は、五大都市権限委譲の問題でございます。社会党の方々から御質問がございました。資料も要求されたのでございます。しかるに、その次の日になりまして、私に何も関係なく質問打ち切りの決定がされたことを聞きまして、はて、おかしい、資料を出せと言っておられたにかかわらず、もうわかったのか、それはしないでいいのかと非常に私は疑いました。同時に、与党理事及び委員の方にどういうわけかということを聞きましたところが、とにかく質問打ち切りになった。それならば、この間じゅうから言っておる修正の問題はどうなるか、こう申しましたところが——修正についての内容は、私はその当時ほんとうに知っておりませんでした。その翌日修正内容を聞きましたところが、選挙管理委員会等の手当に関する問題でございまして、それはよく考えておこう、それならば、党としてきめるのには政策審議会も経なければならないが、その方はどうなっておるのか、修正文とすれば法制局にも相談しなければならないが、どうなっておるのか。これが今月に入ってからのことでございます。しかして、この問題につきましての処理が党の方でどうなっておるかということは、私が申し上げる段ではございませんが、決して議事引き延ばし意味でなく、全然うっちゃっておいたという原委員のお言葉は、私の了知しておる党の半肩とは異なっておるようでございます。そうして、申し上げるまでまでもなく、今月に入りましてから約一週間というものは、国会も休む日の多かったことは御承知通りであろうと思います。しかして、今日までの経過におきまして、修正案を作り、法制局に回すという手続、すなわち政務調査会政策審議会にかけるという手続と、法制局にやっていくという手続を進めておるのでございまして、決してこのために私は与党我事引き延ばしをしているとは承知しておらないのでございます。
  10. 原茂

    ○原(茂)委員 これを論議していると、総理への質問時間がなくなるおそれがありますから、大臣に一言言っておきますが、いわゆる内閣委員会で行われてみたり、文教委員会で行われた質疑打ち切りなどは、与党の御都合では常にやっているのであります。今の大臣の御答弁ですと、私に関係なく質疑打ち切りをやった、こういうことを言っていますが、これは、先例あるいはたくさんの前例というものは、与党である自民党が多くやっているのであります。従って、こういうことに関しては、単なる言いわけにしかすぎないので、ほんとう議事引き延ばしの好例は、今田会においては、この地方行政委員会において行われたのであります。この選挙法に関する限りは、慎重なる審議を十分にやってきた、一切むだの時間のない審議ぶりであったということを、総理一つ承知置きを願いたい。私は、関連質問ですから、一応これで終っておきます。
  11. 小澤佐重喜

  12. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 総理大臣にお尋ねいたします。今回与党が大修正案提出し、政府もこれをうのみにするのでなければ時局収拾がつかないような異常な事態に陥ったのは、一体何に原因するものと思われますか、これを一点承わりたいと思います。
  13. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 修正に応じた力が、案の通過に便利だと思いましたから……。
  14. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 質問に対してお答えがないのでありますが、私より申し上げましょう。  今回政府がこの大修正案をのまなければならぬようになった、また与党がそういう大修正案を出さなければならぬようになったということは、結局、政府並びに与党が、当初党利党略の案を一方的に強行しようとしたのによるものと私は考えます。政府は権力を持ち、与党は絶対多一数を占めているから、野党がなんと反対しようとも、一方的に押し切ることができると過信されたでありましょうが、正義はこれを許さなかったのであります。言うまでもなく、選挙法与党のためにのみ存するものではありません。すべての国民、すべての政党の共通の利害の上に立っておりますることは、申し上げるまでもございません。よって、まず利害を異にする野党とも前に話し合うべきであったと考えます。この話し合いをすることなしに、一方的に独善的に多数を頼んで強行しようとしたところに、今回のごとき混乱が起ったものといわざるを得ないのであります。総理も、昨日この席で、話し合いでいくべきであった、一方的にはなかなかできないと言われました。それならば、何がゆえにこの法案提出以前に十分話し合いの機会をお作りにならなかったでございましょうか、これを承わりたい。
  15. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 政府としては、選挙法委員会に重きを甘きまして原案を出したわけであります。党利党略を主として出したことはございません。国会を無理押しに通すということは、常にほめたわざではございません。話し合いをして国会を無事に通過させるという方法をとるべきものと思っております。しこうして昨日たびたび申しましたごとく、修正案根本において原案と変っていないと私は考えております。
  16. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 せっかくの御説明ではありますが、当初から何がゆえに話し合いをしなかったか。何一つ話し合いをしないで多数を頼んで一方的に押し切ろうとしたところに、この混乱が起きたのではないかということに対しては、何一つお答えにならぬのであります。総理は、昨日この席で、与党修正に応ずる旨を答えた上に、別表を全部削除した大修正に対しても、政府は何の責任も感じないとお述べになりました。しかし、あの法案を出したためにあれだけの混乱に陥ったことは、これは事実であります。それがために、議長あっせんとなり、与党修正となりました。よって、辛うじてその混乱を避けることができたのも、これまた事実であります。あれだけの混乱が今回の修正でおさまったとしたならば、その修正はあの混乱収拾するに値するものであったことも否定することはできません。その大混乱こそは、政府与党において小選挙区制の実現を貫徹しようとするに対して、社会党が絶対反対をいたしまして、正面衝突をしたことに起因することも言を待ちません。この正面衝突による大混乱が、ともかくあの修正でおさまったといたしますならば、その修正は、内容的にもまた政治的意義においても重大な結果をもたらす修正であったことも、否定することはできません。政府が本法案を出さねばあの混乱は起らなかった、そしてその非を悟って与党から修正案が出された、ここに辛うじてその重大なる事態収拾されたといたしまするならば、政府は当然その責任をとるべきであると考えるのでありますが、いかがでございましょう。
  17. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、昨日申しましたように、議会混乱については責任を感じません。
  18. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 混乱についての責任は、なおあとで掘り下げて扱わることにいたしまするが、私の申し上げるのは、あなたがともかくこうした法案を出して、無理やりに押し切ろうとしなかったならば、あのような混乱はなかったであろう、よって、議長あっせんも必要でなければ、大修正の必要もなかった。ここに大修正をのんで時局収拾をはからなければならない事態に陥ったということは、あなたの責任ではないかというのであります。
  19. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 人間相互の間には誤解があるものですから、その誤解に基いてあの混乱が起きたものと思います。政府原案は決して党利党略のものと私は考えておりません。
  20. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 総理は、今回の修正に対して責任がないという理由といたしまして、昨日は三項目に分けて御説明をなさいました。その第一は、小選挙区制の基本原則には変りがない、第二には、政党本位制度を貫いている、第三は、区割りは慎重を期するため適当の方法をとった、だから法案原則修正でくずれていない、ゆえに責任はないとおっしゃったのであります。これは全く厚顔無恥、黒を白と言いのがれ、ほおかぶりをして知らぬ顔をするところの態度であると私は思う。まず私は具体的に申し上げましょう。単なる形式的な抽象的な言葉でもってあなたに迫るのではございません。  まず第一に、修正で小選挙区制の原則はくずれないとおっしゃるのは、それは、今回の修正案で、選挙区割り案は本年三月十三日の選挙制度調査会答申を尊重すると定めたので、小選挙区制の原則に何の変りがないというのでございましょう。しかし、われわれが政治責任を問うているのは、小選挙区の原則変りがあるかないかということを聞いておるのではございません。われわれの言うところは、小選挙区制に名をかりて党利党略をはかり、保守独裁政権強化をはかろうとしたということが、もってのほかではないかというのであります。また、世論が最も強く批判いたしておりまするものは、選挙制度調査会答申を求めながら、政府はその答申の半分を採用し、その半分は政府与党党利党略のために曲げたゲリマンダーであるというのであります。そこで、今回政府案を一切白紙に戻し、選挙制度調査会答申を尊重しようというのでございます。調査会案を無視し、尊重せずに、党利党略のためにゲリマンダーをやろうとしたのはよくないというので、世論批判に耐え得ずして、答申を尊重いたしますというのでございましょう。ゲリマンダーは、多数にものを言わせて公然と法律を作って、御自分都合のよい選挙区をわが手におさめようというのでありまして、人の財物をわが手におきめようとするよりもさらにひどいものといわなければなりません。そこで、世間からゲリマンダーと騒ぎ立てられて果さず、国会でも乱闘寸前にまで至りまして、ついに大修正となって、仕方がないから、それならやめようということになったのでございます。そこで、やめたら責任はないというのは、厚顔無恥であります。ゲリマンダーをやろうとして、世間からとがめられて、それをやめなければならなくなって、公正な機関を作ってそれにやらせようと、出直しをしなければならぬことになったのであります。そこで、出直しをすることにいたしたから何の責任もないというがごときは、これ全く厚顔無恥ではございませんか。
  21. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 答申案原案とは、昨日たびたび申しましたごとく、根本には変更がないと思いましたので、同意したのであります。
  22. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 私は、今冒頭にお断わりいたしておきました、小選挙制案根本変りがあるかないかということを聞いておるのではありません。小進学区制に名をかりてゲリマンダーをやって、公然法律の名のもとに自分都合のいいような選挙区制を作って、もって保守反動政権強化をはかろうとするがごときは、よくない。これが世間批判を受けて、その批判に耐え得ないので出直しをしなければならぬ、与党側もまたこれを認めて大修正をやり、事態収拾をしなければならぬようになり、あなた自身これをのまなければならぬ事態に陥ったことは、あなたの不明のいたすところではないかということを聞いておるのでございます。いかがでございますか。
  23. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 原案党利党略のものとは私は考えません。
  24. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 答弁がありません。  第二に、あなたのおっしゃる政党本位を貫いているから差しつかえないと言われます。政党本位というのは、太田長官説明によれば、背の選挙は人と人、今は政策政党争いである、また公認制度を認めて、政党本位にしたというのであります。しかし、人と人の争いであるとか、政党政策争いであるとかいうがごときは、大正八年の改正のときと別に変っておりません。ことさら今回の改正につき特徴づける課題ではございません。すでにこれは口をすっぱくして申し上げておる。また公認問題は、要するに、党内規律の問題で、これを法制化すること自体穏当を欠くのみならず、実際は、この公認制度政治的意義は、自民党内部主流派がその主導権強化するための思いつきである。今回の改正案審議をめぐって、事志と違い、逆に主導権にひびが入って、岸幹事長のごときは、次の通常国会ではまた対決になるだろう、だが、その時分には自分幹事長ではあるまいなどと漏らしておるようなことでありまして、このいわゆる政党本位の問題も、もはやもぬけのからとなっております。この点をあげて政党本位変りがないというがごときは、これは全く気の抜けた話であります。かりにまた政党本位考えを貫いておられるにせよ、このことのために、他の重大な部分の修正が行われ、法案としてすでに骨抜きとなったといたしましたならば、その政治責任を問われたことに対する弁解となるものではありません。この一項をあげて、それでなお政治責任はないとおっしゃるのは、一体いかなる意味でございましょうか。
  25. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 佐竹君は政党本位がじゅうりんされたとおっしゃいましたけれども政党本位は維持せられておると思っておるのであります。公認制度は認めるのみならず、厳重にいたします。政党選挙運動強化せられておるのでありますから、政党本位は維持せられておる。強化されておると思いますので、修正案原案と異なるもの、別の性格を持っておるものとは、私は決して考えないのであります。
  26. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 私の質問の趣旨を一向わきまえられず、少しも質問に対する御答弁になっておりません。  しかし、時間がないそうでありますから、さらに第三に、今回の修正で、区割りの慎重を期するために、適当な方法をとったのだと弁解をなさいますが、それならば、まず聞きたいのは、別表改正に慎重を期し、野党利害をも一考慮して、話し合いで公正な法律案を出したならば、今回のような混乱はなかったものと思われます。これがため混乱を惹起し、またもや出直しをしなければならぬということになったのは、政府の重大なる責任を自白したものと思うのでありますが、いかがでありますか。
  27. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 昨日も申しましたように、すべての政策について話し合いによってやっていくということは、非常に必要なことであります。このたびもそういうような工合にして参りたいと思っておるのであります。  区割りは、委員会の中正の組織を作りまして、区割りの基準を定めていきたい。議員の定数もまた同じであります。
  28. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 おそかりし由良之助であります。混乱を起して、与党から修正されて、今ごろ話し合いをするとは何事でありますか。混乱を起させ、大修正が起り、世論を沸騰させ、政局を混迷に導いた責任は、あなたにあります。その責任を負わなければなりません。今ごろ慎重を期するなどとは何事でありますか。  私はあと五分時間があるのでありますが、森君が質問をいたしたいそうでありますから、これに譲りまして、あと太Hk宜に御質問をいたします。
  29. 小澤佐重喜

  30. 森三樹二

    ○森(三)委員 私は鳩山総理に対して質問をしたいと思うのでありますが、作目同僚委員並びに今日の佐竹委員等質問に対しまして、あなたは責任政治を何ら考えておられない。あのように全国民を憤激せしめ、またあなたの所属しておるところの自由民主党議員諸君の約三分の一に当るところの人々でさえも、今回の政府提案選挙法改正案はまことに不当きわまるものである、益谷議長さえもこのような不当なる改正案はこれは無理であるということを、しばしば述べておられたのであります。そのような政府原案というものをあくまでも支持せんとせられましたその責任こそ、私はまことに重大であると考えておる。鳩山総理は、現在においても、あなた自身政治的責任を痛感されておらないのかどうか、重ねてお伺いしたいと思うのであります。
  31. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 昨日申しました通りであります。
  32. 森三樹二

    ○森(三)委員 昨日申しました通りとあなたはおっしゃいますけれども国会においてこのような混乱を起さしめ、しかも国民が納得しないところの法案を出されて、今ここに与党から大修正案が出されまして、本文区画表を截然と区別し、しかも本文においてもいわゆる七人区画委員会というものを作って、そうして来たるべき通常国会でこれを審議する。審議しましても、この附則によりますと、六カ月たたなければ効力が発生しないという。おそらく来年の末ごろにならなければこの附則効力というものは完全に実施されない状況です。そのような法案を、つまりここにおいて修正されようとしておる。あなたは、なぜ、政府原案というものを、国民を無視し、議会の意思を無視いたしまして提案されて、これを強行されたのか。私はその責任こそはとうてい免れるものではないと考えておりますが、重ねて総理の御答弁を願いたいと思う。
  33. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 この問題につきましては、昨日たびたび申しましたように、国会混乱については、私は関係がありません。根本原則修正案原案とにおいて変りはないの、であります。責任をとる必要はないと思います。
  34. 森三樹二

    ○森(三)委員 あなたはいわゆる小選挙制度とそれから政党公認制が入っておるから、根本精神はくずれていないと言われますが、私ども考えからするならば、すでに与党修正案なるものが出まして、政府原案は、いわゆる半身不随のあなたのからだ以上にずたずたに、もはや基本精神というものはなくなってしまっている。しかるにかかわらず、あなたが便々としてあくまでもその責任を痛感されないという事態は、とうていわれわれは承認できないと思うのであります。  さらに進んで、あなたは、小選挙区制を施行せんとすることは、いわゆる二大政党を育成したいためだということを主張しておられました。しかし、今日の日本の鳩山内閣政治をもってしては、二大政党の対立ということは、むしろ国民を、政治を不幸にせしめるものである。今回議長裁定がなければ、この国会混乱はどうしておさまったか。すなわち、自由民主党が合同され、いわゆる二百九十九という多数横暴のもとに、あのような政府与党提案がされたの、であります。もしもここに少数のキャスチング・ボートの政党があったならば、あのような政府原案というものは、私は出されなかったと思うのでありますが、これに対する総理の御所見、すなわち、あなた自身が今回提案されました政府原案というものは、二大政党根本を否定する法案であったと私は思うのでありますが、これに対するところの御所見をお伺いしたいと思います。
  35. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、二大政党を否定はいたしません。小選挙区制にした方が二大政党の対立には都合のよい制度だと考えております。
  36. 森三樹二

    ○森(三)委員 総理はみずから二大政党対立を主張しておきながら、今回のこうような政府原案というものは——現在まだ現存している。なぜ撤回しないのか。二大政党を育成すると言われるけれども、二大政党を破壊するものはあなたといわなければならぬと思うのであります。私はこの際、鳩山総理政治的良心があるならば、すみやかに、今からでもおそくない、政府原民を撤回されたいと思うのであります。
  37. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、二大政党を破壊するというような意志は毛頭持っておりません。小選挙区制を出したのは、二大政党育成のためであります。
  38. 森三樹二

    ○森(三)委員 あのような暴虐なるところの政府原案というものは——今でも現存している。私は、政府原案を撤回すべきところの政治的責任があるということを言っているのであります。何ゆえにあなたは撤回しないのか、それを私はお尋ねしているのです。
  39. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 修正案原案とは、幾度も申します通りに、根本原則変りはないのであります。ゆえに、これは撤回はいたしません。
  40. 森三樹二

    ○森(三)委員 あなたは根本精神は何ら変更されないと言うけれども根本精神は、すでにいわゆる本文区画表というものは截然と区別されてしまっている。半身不随の状態になっているということを、あなたはなぜお認めにならないか。私は、この際、特に本法案政府原案に盛られている公認制度について申し上げたいのでありますが、今回の政府提案並びに修正案が通過したとするならば、政党公認制というものは強化されて、政党の幹部の統制力というものは非常に強化せられて、公認されない者は、立候補しようとしても、当選の可能性さえも奪われてしまう現状であります。あなたは、かつて、東条内閣時代について、かの翼賛選挙反対した人と言われている。しかるに、今日のこの公認制度というものは、かの東条軍閥内閣時代の翼賛選挙以上に、政党の幹部の統制力を強化し、公認されざるものはほとんど当選できないというような、実におそるべき政党公認制である、このように考えております。鳩山総理が真に民主政治家であり、二大政党を育成せんとするならば——このような公認制度強化して、おそるべきところの立候補の自由制限という精神まで法案の中に織り込まれている。私は、この法案公認制度に対しては、絶対に反対せざるを得ない。これに対しまして鳩山総理の御所見をお伺いしたいと思うのであります。
  41. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 公認制度政党本位制度と解釈しておるのでございます。政党もだんだんと進歩して参りますから、つまり進歩して参りますから……。
  42. 小澤佐重喜

    小澤委員長 森君に申し上げますが、申し合せの時間が過ぎましたから簡潔に願います。
  43. 森三樹二

    ○森(三)委員 あなたは公認制度強化したのは二大政党にするためであると言いますけれども、あなたはかって翼賛選挙反対した人でしょう。いわゆる推薦されない者、非公認なる者は、全く選挙活動の自由というものを制限されておったではありませんか。私も当時立候補しようと思っておりましたが、軍閥並びに憲兵隊、警察の弾圧をわれわれは完全に受けた。今回のいわゆる政党の公認綱も、公認されざる者は選挙の運動についても大幅な制限を受けておる。しかも公認ならざるところの者は、第三者に対して公認されたがごときことを公けにした場合には処罰されるという規定も、この政府原案の中に入っておるのを御存じでありますか。そのような処罰規定までも設けて、公認候補と公認されない者とが全く選挙運動において大きな懸隔を設けられておるようなこの法案を、あなたは何と思われるか。私は、公認制度というものが全く選挙運動の自由を阻害し、公認と非公認の間において大きなハンディキャップを加えられるところの政府原案というものは、全く民主政治を無視したものであると考えております。これに対する御所見を鳩山総理より率直に私はお伺いしたいと思うのであります。  さらに、もう一つ、いわゆる小選挙区制を施行するためには連座制の規定を強化しなければならぬということを、われわれはしょっちゅう申し上げてきておる。しかるに、政府原案は、いわゆる選挙運動員あるいは総括主宰者、出納責任者等の選挙違反に対して、その処罰者、候補者に対するところの連座規定というものを全く無視しておる。あなたが小選挙区制の柱を立てんとするならば、この連座制の規定というものを強化することが絶対私は必要であると考えております。しかるに、今回の政府原案を見まするならば、この連座制の規定というものは全く失われておる。この意についても、私は最後にあなたにお尋ねしたい。それが……。(発言する者あり)総理——総理——この修正案に規定されておるところの区画委員会というものは、七人をもって構成されるようになっております。区画委員会というものは七人でもって設けられることになっております。しかも、この七人の任命は、内閣総理大臣たるあなたがそれを任命することになっておる。従いまして、この七名の委員任命に対しましては、あなたが党利党略をもってこの七人の委員を任命するというようなことになっては、いわゆる正当なる区画割りを作るべきところの七人委員会が、全く党利党略に用いられることをおそれるものであります。しからば、この区画委員が作りましたところの案に対しまして、これを政府は尊重するのかしないのか、この区画委員会の七人の区画画定委員が作りましたところの案に対しまして、政府はどのような精神をもってこれに対して処する考えであるか。この点はまことに重大であると思いますので、私は鳩山総理に対しましてこの点もあわせてお尋ねしたい。すなわち、私があなたに尋ねんとする三点につきまして、明確なるところの御答弁を願いたいと思うのであります。
  44. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 第一点の御質問は、民主制度、今までの公認制と推薦選挙とを同様に御解釈になっておるようでございますけれども、推薦選挙の母体と政党の幹部とは違いますから母体が違えば従ってやることも違うはずであります。公認制度と推薦選挙とを同一視するわけには参らないと思います。これが第一点。第二の点は、連座制度のことのお話がありましたが、連座制度強化されております。この程度においてけっこうだと私は考えております。第三点は、区画委員委員のことについてお話がありましたが、区画委員委員の任命は中正をできるだけ期するつもりでございます。
  45. 森三樹二

    ○森(三)委員 それでは、私の質問はこれで留保しまして、山田君に譲ります。
  46. 小澤佐重喜

    小澤委員長 山田長司君。申し合せによって時間も過ぎましたので、一点だけ許すことにいたします。
  47. 山田長司

    ○山田委員 ただいま委員長から一点だけと言いますが、長く前述するのを避けて、要点だけをあげて話をいたしますから、その点考慮を払った上で委員長一つお許し願いたいと思う。うしろの方で総州のお話を伺っておる関係で、よく総理のお話が伺えないのです。私が質問する範囲に、あるいはきのうないし同僚のただいままでの質問の中において、あなたがお答えになっておる部分もあるかもしれぬと思うのですが、とにかくうしろの方で聞えない点を一つ御考慮下さって、お答えを願いたいと思うのです。  きのうもきょうも伺っておりますと、前の調査会案なるものを尊重する尊重するというお話で総理はおられるのでありますが、一体正しいと思ってこれを尊重しようとしておるのか、正しくないと思っておるのか、どうお考えですか。
  48. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 調査会の答申ですか。
  49. 山田長司

    ○山田委員 そうです。
  50. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 調査会の答申は尊重すべきものと思います。
  51. 山田長司

    ○山田委員 私の言うのは正しいと思うか思わないかということです。
  52. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 参考になるものと思っておるということです。   〔発言する者あり〕
  53. 山田長司

    ○山田委員 聞えないのです。
  54. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 参考になると思います。
  55. 山田長司

    ○山田委員 少くとも政府機関として設立した調査会の案を、参考にする程度であなたは一体今日まで過してきたのかどうか。私は正しいか正しくないかということを聞いておるのです。あくまで参考程度であったのかどうか。もう一ぺん伺います。
  56. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 絶対に正しいということはなかなか世の中にあるものではありません。正しい点を採用して参考にするのは当然だと思います。
  57. 山田長司

    ○山田委員 それでは伺いますが、今度できるいわゆる委員会なるものは、一体どういうお考えで新たに作られんとしておるのか、これを伺います。
  58. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 区画についての意味ですか。——むろん、先刻申しました通り、中正なる意見を持っておる人を集めまして決定して参りたいと思っております。
  59. 小澤佐重喜

    小澤委員長 その点だけにして下さい。
  60. 山田長司

    ○山田委員 これも参考にしようとしておるのかどうか。さらに私があなたに付いたい点は、一体今度設けようとしておるところの案の中に落ちておる問題で重要な問題は、やはり何といっても公平な選挙を行うためには、連座制の規定や政治資金規正法の問題を落しておってはならぬと思うのです。そういう点を次期国会までに出さんとしておるのかおらないのか、この二点を伺いたい。
  61. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その点は、先刻申し上げました通り、連座制の規定は、修正案についても相当の規定があると思います。ただいまの世の中においては、この程度において足りると私は考えております。
  62. 山田長司

    ○山田委員 政治資金規正の問題がまだ残っているじゃないですか。   〔「答弁したらどうだ」と呼び、その他発言する者あり〕
  63. 小澤佐重喜

    小澤委員長 答弁だけしておいて下さい。
  64. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいまの最後の御質問ですね、政治資金についての……。
  65. 山田長司

    ○山田委員 そうです。
  66. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 それは検討中でございます。
  67. 小澤佐重喜

    小澤委員長 これにて鳩山内閣総理大臣に対する質疑を終了いたします。(山田委員「私の言おうとしておるのは、次の国会までに作るかどうか、出すか出さないかということなんです」と呼び、その他発言する者多し)  滝井義高君。
  68. 滝井義高

    ○滝井委員 先に太田長官一つお伺いいたします。実は、政府がこの公職選挙法の一部改正案を提案するときの一つの大きな理由は現在日本の政治において一群必要なことは「政局を安定せしめ、国民多数の支持を持つ政党を基盤とする政府が、責任をもって内外にわたる政策を遂行することにある」こういうことであったのです。従って、そういう一つの理由のもとに、あなた方は、これは急速に今度の国会で成立せしめなければならない、こういう御、主張であった。ところが、今回与党から出されました修正案によりますと、この法律が通過しても、実際に効力を持って動くところは、この附則の第二項から十二項までが動くだけで、あとは早くても来年、昭和三十二年の十月ごろまでは眠ってしまうのですね。これは、大臣のこの公職選挙法の提案理由の、日本には早く二大政党を作り、政局を安定せしめて、内外の重要政策を遂行しなければならぬという、これに反することになる。少くとも来年の秋以降でなければ、この法律というものは動かない。効力を発生しない。これは一体どういうことになるのですか。実はお尋ねしたいところでございましたが、時間の関係でできなかった。これはあなたとしては一体どういうことになるのですか。
  69. 太田正孝

    太田国務大臣 今回提案の理由におきましては、ただいまあなたのお示しになった通りのことを申しました。急ぐとかそういうことは私はつけ加えておりません。しかし、私は、ここで言ったと信じておりますが、近く解散があるとか、近く選挙があるなどということは申さないのであります。その証拠には、連座制の規定についての附帯訴訟は次の国会できめることを私は申し上げております。その意味におきまして、すぐ行うというような意味で私は急ぐというように申しておらないのでございます。しこうして、私がもう一つ言った言葉は、この制度がよくなるかならぬかということは、組織がしっかりしなければならぬ。公選の方式がうまくいかなければならぬ。このことがうまくいかなかったならば、今日の大きな政党明日を語るべからず、私ははっきり言っております。従って、ここには、相当のこの制度になれる訓練時期を要するということを胸に置いて、そのことを何ら偽わりなく申し上げたつもりでございます。私は、今おっしゃいましたような、急に急ぐとかいうような意味において言わなかったこと、並びに私の説明を一貫して申し上げたことを御了解願いたいと存じます。
  70. 滝井義高

    ○滝井委員 盗人たけだけしいという言葉があるが、今の大臣言葉は、私は五十数時間にわたってここで休みなく大臣の御答弁をお聞きしておったのですが、どうも少し違ってきておる。なるほどあなたは急ぐとは申しませんでした。急ぐとは申しませんでしたが、この二十四国会でこれを通したいということが、終始一貫あなたの答弁の中にあふれておったことは事実なんです。しかも、その目的は、政局を安定せしめて重要政策を内外にわたって遂行していく、そのためにもこれは急がなければならぬ、あるいは公選の組織のトレーニングをやる、すなわちその組織の訓練が必要だということ、これももちろんあなたは申しました。それによって、いわゆる小選挙区制を実施することによって、近代的な組織の政党を作るということを申しました。同時に、それは、これを早く通して促進をするのだという意味で、あなたは申しておったと私は思うのです。それから、今のあなたの御答弁の中にありました政治資金規正法についても、これは、次の国会とか、できるだけ早い国会とかいう御答弁を私はいただきました。そのときにおいても、私は、しからばその政治資金規正というものは次の国会で必ず作るかということを念を押したが、そのことについては御言明がなかった。今になって、あなたは、私は急ぐとは印、さなかったとか、あるいは公選の組織の訓練を必要とするとかいうような、顧みて他を言うようなことを言うものではないと思うのです。少くともあなた方は今度の国会で通すということが目標であった。ところが、実際に出てきたこの法律が動くためには、来年の十月前後でなけれで動かないということです。来年の十月まで鳩山内閣が持てるかどうかわかりません。あなたが自治庁長官であるかどうかもわからない。こういうことから考えてみても、明らかに、今回の与党が出した修正案というものは、あなたの提案理由として意図せられたことと、客観的に見て大きく違っておるということは明白なんですが、あなたはこれは客観的に見て違っていないとここで申されますか。
  71. 太田正孝

    太田国務大臣 ただいま申し上げた通りでございまして、この法律が行われるときにつきまして、私は滝井委員の言われるような意味には申し上げなかったことは、速記録にはっきり出ております。私はそんなことでうそをつこうという考えは持っておりません。しかも、この大きな仕事をするには相当な時期が要るということは、たびたび申し上げたのでございます。従って、顧みて他を言いません。直接この選挙法を見て申し上げているのでございます。また政府は明日にもつぶれるかもしれぬ、これもあり得ることでございましょう。しかし、いやしくも法案を作るにつきましては、国家の長きにわたる制度考えてやるのでございますから、その意味におきましても、私の申し上げたことに何ら私は誤まりなかったことを申し上げるのでございます。
  72. 滝井義高

    ○滝井委員 あなたの申すことが誤まりなかったとあなたが強弁されるならば、私はそれ以上ここでは申し上げません。しかし、これは、客観的に見て、だれが見ても政府案とほど遠いものなんです。少くとも、政府案というものは、この法律が通ったならば、選挙に関する規定というものは衆議院については次の総選挙からすぐに動き出すものであった。ところが、今度は、与党修正をした案では、これは解散になっても、この法案が通っておっても、この法案は動かないのですよ。これほど大きな違いがあるじゃありませんか。あなたが出したところの政府提案のものは、衆議院が解散になれば、連座制の規定ができておろうと、できておらなかろうと、衆議院の選挙に関しては動くのです。ところが、与党の出した修正案は動かないのです。この点は大臣お認めになるのでしょうね。
  73. 太田正孝

    太田国務大臣 法文にあります通り、この法案は六カ月たった後の次の選挙から行われるということになっております。
  74. 滝井義高

    ○滝井委員 大臣、間違いないようにして下さい。私は、あなたの提案をした法律というものは、この国会を通って衆議院選挙があればすぐに動くものなんです。効力を発生するものなんです。今度の与党修正した法案というものは、この国会が終った後に解散をされて選挙があっても、功かないものなんです。これだけの違いがあるのです。これは本質の違いでなくして何でしょうか。あなたがこの国会で意図しておった法律とは全然違った法律が、この国会で出ようとしているじゃありませんか。それはお認めになるでしょう。
  75. 太田正孝

    太田国務大臣 法案の形式につきましては御説の通りでございます。しかし、前の法案ができればすぐ選挙を行うとかいう意味でないことを私は申し上げたのでございますから、実質的におきましては私は変りないと思っております。
  76. 滝井義高

    ○滝井委員 太田さん、政治家ならばそういう答弁をするものでない。あなたの出した法案が通った後に選挙を行わないと、あなたが断定することはできないでしょう。それは客観的な政治情勢によって解散というものはきまってくるのです。一体あなたの主観的な意図によって解散ができたりできなかったりしますか。それはどうですか。
  77. 太田正孝

    太田国務大臣 もちろん解散を決定するのはそのときの政治情勢でございます。しかし、今日これを意図して作ったかという御質問でございましたから、それを意図しておらなかったと申し上げたにすぎません。
  78. 滝井義高

    ○滝井委員 いいですか。私はここでは政治論を言っておるのではない。法律そのものの本質を私は論議をしておる。あなたの作って出した法案というものがこの国会を通ったならば、その後その効力を発生する。少くとも衆議院の選挙があればそれにすぐ適用できるものなんです。ところが、今度与党の作って出した修正案というものは、総連挙があっても、この国会でこの法案が通っても、これは動かないものなんです。これだけの違いがあるものを、あなたは同じだとはどうしても言えないでしょう。法律の本質が違っておる。これをもって前と同じ法律なんと言ったって、これは三才の童児といえどもだますことができない。その点お認めになりますか。
  79. 太田正孝

    太田国務大臣 私は法文の施行期日につきましては滝井委員の言われた通り申し上げたのです。ただこれを実際行うかどうかという問題について私の考え方を申し上げたのです。法文の解釈としては御説を信じております。
  80. 滝井義高

    ○滝井委員 法律論としては私の解釈をお認めいただきました。そこで提案者——どちらでもけっこうでございますが、今大臣もそう認めたのですが、あなた方の出された修正案政府提案とは、私は法の実態的な内容において今私が大臣質問した通りの相違があると思いますが、あなた方もその通りお認めになるでしょう。
  81. 山村新治郎

    ○山村委員 ただいま大臣お答えした通りでありまして、法の精神変りませんが、あるいは実際問題においてはそういう影響があるかもしれません。
  82. 滝井義高

    ○滝井委員 あるかもしれませんではなくて、あるのですよ。これはあると断定ができるでしょう。
  83. 山村新治郎

    ○山村委員 解散があるかどうかわかりませんから、かもしれませんとつけ加えた次第でございます。
  84. 滝井義高

    ○滝井委員 精神は同じだが形式が違っておるということをはっきりお認めになったようでございます。そこで、昨日ちょっと問題にしておったのですが、衆議院の区画を作る委員会修正案におけるいわゆる七人委員会ですね。これは通常国会の前日までに別表第一を作ることになっております。これは昨日提案者の方から臨時的なものであるという提案理由の御説明をいただいておるわけなんです。政府の方は、通常国会の前日までに作っても、ずっと生き延びていくのだという恒久的なものの解釈をとられて、食い違いが出ておった。そこで意思の統一をはかっていただくことをお願いしておいた。きょうは意思の統一ができておると思うのでございますから、一つその意思の統一できておるところを御答弁願いたい。
  85. 太田正孝

    太田国務大臣 私は政府考えとしては恒久的とは申しません。その点はそんな誤解のないようにお願いいたします。政府考え与党修正考えとは、一緒におります青木正君からお答え申し上げたいと思います。
  86. 青木正

    青木委員 ただいまの滝井委員の御質問でありますが、提案者の考え政府側の考えは差はないのでありまして、政府側の説明はもっぱら形式的な法律論としての御見解を述べたのであります。私どもは画定委員会の実質的な任務、こういう観点から臨時的ということを申し上げたのであります。従いまして、この際明らかにするためにはっきり申し上げますと、画定委員会通常国会召集の前日までに区画割りを提案することになっております。従って、区画割りを提案すればその任務は終了するのでありまして、実質的には臨時的な機関ということができると思います。しかし、形式的には、法律によって設けられた機関でありますので、法律が廃止されるまでは存続することになることは当然であります。従って、区画案が提出されて任務が終了した後、法律改正によってこれを廃止するか、あるいはまた廃止せずにこれを恒久的な機関に直すか、これはそのときの情勢によって法律によってきめるべきもの、かように存ずる次第であります。
  87. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、提案者としては、そのときの政治情勢で、これを存続するものとするか、あるいはそこでなくしてしまうかをきめると申しますが、別表を作ってしまったあとでこの委員会は何かやることがありますか。
  88. 青木正

    青木委員 この画定委員会自体の任務としては、区画割りが提出されればそれで任務は終るのであります。しかし、当初政府案に入っておりましたような審査会というような性格を持たせる必要がある、あるいはそういう審査会を置くことが適当であるというようなことになりますれば、あるいはこの委員会の旧格を変えて——委員会の性格を変えるというと語弊があるかもしれませんが、別個に法律改正してそういう機関を置く必要があるのではないか、これはそのときの政治情勢によって判断し、決定すべきものである、かように存ずるわけであります。
  89. 滝井義高

    ○滝井委員 この政府原案にありました衆議院議員選挙区審査会の役割と、あなた方の修正案の中に出されておるいわゆる七人委員会の役割は全く違うのです。従って、私は、少くとも別表の作成が終ったならば、その仕事がなければ、これはここでもう廃止をすると言明されても差しつかえない。それをあえて全く役割の違う審査会の関係などを出す必要はない。審査会は審査会で当然やるべきだ。私の見解によれば、むしろあなた方がこの審査会をこの中から削ったことの方が間違いなんだ。これは置いといてもいい。なぜかというと、昨日の太田長官答弁にもありましたように、この区画画定委員会の作ったものを、そのまま政府国会原案として出すということを御言明になっておる。ただし町村合併その他の区画整理によって境界が変更になったという列外の場合は、その画定委員会の作った原案をそのまま出せぬ部分があるということを、わざわざただし書きまでつけて答弁された。そういう答弁がただし書きで必要ならば、ますます審査会というものを法案で削る必要はなかったんです。なぜ一体あなた方はそれを削られたんですか。
  90. 青木正

    青木委員 審査会の規定は、申し上げるまでもなく政府原案では別表がついておるのであります。そういう形においてすでに別表がきまっておりまして、その別表にきめられました行政区画等の変更があった場合にその審査会で直す、こういう考えになっておるのであります。私ども修正案別表を切り離しましたので、別表がすでにでき上っておるという見解に立って設けられました審査会は一応切り離して削除する、今回の修正案におきましてはまず区画割りをきめる、こういう考え方になっておるのでありますので、区画割りができた後において、政府原案のごとく審査会を置く必要があるとすれば、そのときに設くべきものだ、かような考えに立って、審査会を原案から削除いたしたのであります。
  91. 山田長司

    ○山田委員 ただいまの選挙区画定委員会の様子を聞きますと、さらに太田長官のきのうの答弁とただいまの答弁——もう少し発言を許してもらったら、総理質問してこれを突きとめようと思ったんですが、実は、あなたのきのうの委員会における発言は、そのまま区画画定委員会答申は採用するとおっしゃったんです。ところが、今帰られた総理答弁では、参考にするだけだと、こう言うんです。一体どっちがほんとうなんですか。
  92. 太田正孝

    太田国務大臣 山田さんの御質問お答えしますが、先ほど総理が言われましたのは調査会のことについて申し上げたので、今申しましたこの区画画定委員会できめるものにつきましては、私がきのう申し上げた通りでございます。なお、滝井委員の言われた事柄の中に、区画の改訂があった場合というのは、政府がその区画の場合をきめるのでありまして、将来においての問題ではございません。その点も誤解のないようにお願いいたします。
  93. 山田長司

    ○山田委員 そうすると、さっき言ったのは、参考にするというんじゃなくて——どうも私は総理言葉がよく聞えなかったんで、もう一ぺん伺うわけなんですが、区画画定委員会答申は参考にすると私はさつき聞いたと思っているんですが……。
  94. 太田正孝

    太田国務大臣 総理の言われましたのは、調査会のことについて申し上げたのでございます。きのう私が修正案について申し上げたのは、そのままを出すと、かように申し上げたので、総理の言われたことと私の言ったこととは、言った主体が違うのでございますから、そこを御了解願いたいと思います。
  95. 滝井義高

    ○滝井委員 今のこの七人委員会の性格を、形式的な法律論の立場からと実質的な任務の問題から、二つの性格の御説明をいただいたわけなんです。しかも、その委員会の任務というものが、御答弁の中で、政府原案にある選挙区の審査会との関連で御説明をいただいたんですが、それではちょっと納得がいかない。大体次の通常国会の前日までにこの委員会別表をお作りになったら、何かそのほかに存続しなければならぬと考え得る理由がありますか。
  96. 山村新治郎

    ○山村委員 残務整理の問題、あるいは国会に対するところの答弁等の問題で、仕事は実質的には前日までで終りまするけれども、残務整理として残っておると思うのでございます。
  97. 滝井義高

    ○滝井委員 どうもなかなか苦しい答弁らしいですが、残務整理というようなものは——いいですか。今御答弁をいただきました山村さんに、あなた方の附則の7をごらんになりますと「公職選挙法第五条の二第十一項の規定は委員会委員について、同条第十二項及び第十三項の規定は委員会委員長について、同条第十四項から第十六項までの規定は委員会について、準用する。」こうなっておる。そこで、まず国会答弁というものは——この委員会がなくても参考人としてここに出られるということは、昨日議論済みなんです。そうしますと、残務整理というものは、この七項の中にある十六項をごらんになると、委員会の庶務は自治庁の選挙部において行うことになっておる。そうしますと、残務整理というようなことは委員が、いなくても、自治庁の選挙部長のところでしゃっとやってくれてしまう。そうすると残務整理ということでそう委員会を二カ月も三カ月も半年も置く必要はない。今までの法律で規定されたところの委員会の慣例というものは、そういう工合になっておるはずなんです。しかも、今の十六項で明らかに委員会の庶務は自治庁の選挙部がやる。そうしますと残す理由というものはどうもなくなってくる。それで自然法律的にはこれは生きております。生きておるが、実体的な議論であなた方は臨時的だとおっしゃるなら、その先に残されるとするならば残す理由がなければならぬ。それをここで明白にしておかないと、そのときになってから、いや残すんだ、残さないんだといって議論が出たら大へんなんです。ですから、この際提案者の意思が少くとも明白になっていなければならぬと思う。それは話し合いがついていると思う。少くともこれは政府の方に置くことになるのですから、政府の方とも御相談になって、存続するなら存続する理由をここで明白にしておいてもらわなければならぬと思う。何か理由がありますか。
  98. 青木正

    青木委員 実質的には、お話のごとく召集日の前日をもって任務が終るのでありますから、終了いたすわけであります。ただ、しかし、法律論から申しますと、廃止の法律が成立するまで存続する、こういうことになるわけであります。しかし、実質的には、政府の方に答申をすればそれで終るという見解であります。従って、できるだけ早く法律提出いたしまして、終了後は廃止すべきものと考えております。
  99. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、結局これは別表提出が終れば法律が、廃案同様になっておる、ただ法律が形式的にあるだけだ、こう理解して差しつかえありませんね。——そういう首の振り方でございますから、そのように理解をいたします。  そこで、次の質問に入りますが、これは太田長官責任問題とも関連するのですが、私は今この法律が衆議院を通り六月三日までに参議院を通ることを前提として御質問を申し上げました。この法律はきわめて先のことを予定しておる法律です。従って、われわれも、ここで大臣に、通らなかった場合についてやはりお尋ねをしておかなければならぬ。もしこの法律が参議院で継続審議——まあまあいい場合は継続審議ということになりますと、これは次の通常国会までに出さなければならぬということになっておりますが、そういうところの関係はどういう工合にお考えになっておりますか。これは政府からでも提案者からでもけっこうでございます。
  100. 山村新治郎

    ○山村委員 せっかく 長の裁定のもとに置かれましたこの条項に基きましての提案でございますから、一応われわれといたしましては参議院も通過をするものと期待いたしておる次第でございます。
  101. 滝井義高

    ○滝井委員 いや、参議院を通った場合の議論はやったんです。これはあなた方がきわめて先のことを規定する法律なのです。これは、御承知のように、昭和三十二年の十月以降でなければこの法律は動かないのですよ。そういう先のことをあなた方は作っている。私の今する議論の方が早い。参議院は六月三日まであと十七日そこそこしかないのです。あなた方は来年の十月以降のお話をここへ持ってきておるが、私は、きわめて近い、少くとも六月三日までの話を今しておる。だから、これは今の情勢では継続審議という情勢は明らかにあり得る情勢なんです。そうしますと、その場合に一体どういうことになるのか、こういう法律論をお聞きしておるのです。
  102. 山村新治郎

    ○山村委員 その場合におきましては、その場合の情勢に応じて処置をとりたいと考えております。
  103. 滝井義高

    ○滝井委員 そのときの情勢に応じて処置をとるとおっしゃいますが、これはやはりあり得ることなんです。審議未了とかいうことになって次に起るものは継続審議なんです。私は通る議論はしちゃった。その次の次善のことを言っている。最悪の場合じゃないのです。だから、これが継続審議になった場合の取扱いというものは一体どうなるのかということです。それをお尋ねしておる。それに対する態度というものを提案者はどうお考えになっておるのかということを聞きたい。政府の方はあとでお尋ねいたします。
  104. 山村新治郎

    ○山村委員 御存じのような事情のもとにおいて提出された修正案でございますので、おそらく、そういうふうなことが起った場合におきましては、参議院において調整される点も一応予想されておるのであります。しかし、いろいろな点におきまして最善の処置を講じたいと考えております。
  105. 滝井義高

    ○滝井委員 提案者はそれでいいと思う。その場合に、これは太田長官にまただんだん触れていきますが、まず、太田長官は、この与党修正案というものは一人一区の小選挙区の原則は少くとも貫かれておるということで、責任をとる必要はないという御言明がありました。いよいよこれが参議院で継続審議ということになると、この法案の見通しというものは全くつかなくなることは御存じの通りです。なぜならは、次の通常国会でこれはやるというような規定もあるので、次の通常国会ではこの法律が通らなければもうできなくなる。こういう重大な事態が起ってくる。いわゆる次善の場合の継続審議の場合においては、これは、自治庁長官として、太田さんは今度は責任をとりますと言えるだろうと思いますけれども、これはどうですか。これを一つ簡単に明瞭に答えて下さい。
  106. 太田正孝

    太田国務大臣 私は簡単に明瞭に申し上げます。私の責任という問題につきましては、小選挙制度根本に触れないという意味におきまして述べたのでございます。この法案が参議院におきましていかなる結果になるかは予想し得るところではございませんが、ただいま申されたような場合、たとえば継続審議になるような場合におきましては、参議院において調整の道を考えるのがほんとうと思います。すべての法案がかような筋を通っておるものと私は思っております。
  107. 滝井義高

    ○滝井委員 私は参議院の調整のことをあなたにお聞きいたしておりません。今までのあなたの御答弁は、少くとも修正案の中にあなたの基本的な精神が貫かれておるから自分責任をとる必要はないというのが、先般私の御質問申し上げたときのあなたの御答弁でございました。しかし今度はそうはいかない。継続審議になるということになれば、この法案の目途としておるところの目的というものはいつ達成できるかわからなくなってしまう。さいぜん申しましたように、すでに修正案自体が、その目的を達成するためには、昭和三十二年の十月以降でなければはっきりしないという、こういう中においてもなおあなたは責任をとろうとしない。そこで、私は、あなたの責任追及の態度をゆるめて——これが参議院で継続審議になった次の段階にまでゆるめて、あなたの態度をお尋ねしておる。これが参議院で継続審議になるならば、あなたの所期の目的というものはいつ達成されるかわからないという事態になる。そういう事態のときには、あなたは当然自分はいさぎよく責任をとるのだということが明白に言われると思うのですが、どうですか。
  108. 太田正孝

    太田国務大臣 継続審議は否決ではございません。否決して私の趣旨とするところを否定する場合におきましては、私の責任は当然とらなければなりません。継続審議はまだどうなるかわからぬという状況でございまして、私の言う小選挙制度を否定するものと意味が違うと私は思うのでございます。
  109. 滝井義高

    ○滝井委員 なかなか逃げたと思う。というのは、私は二段階に逃げてきたと思う。まず与党修正精神が貫かれているから責任はとらぬでよろしい。継続審議になった場合には、まだその運命がはっきりしないからとらぬでよろしい。それならば、太田さんは、参議院で審議未了や否決になった場合は、当然これはおとりになることでしょうな。
  110. 太田正孝

    太田国務大臣 もちろんでございます。
  111. 滝井義高

    ○滝井委員 わかりました。審議未了とそれから……。
  112. 太田正孝

    太田国務大臣 否決された場合はもちろんでございます。審議未了の場合は別でございます。私は別に考えたいと思っております。
  113. 滝井義高

    ○滝井委員 前には審議未了と否決と一緒に言われたんですが、もう一回よくお尋ねしておきます。
  114. 太田正孝

    太田国務大臣 否決されるとかいうような確定的なことが起る場合は当然私は責めをとります。審議未了とか、あるいは継続審議になります場合には、それは否決でございませんから、はっきりと申し上げた次第でございます。
  115. 滝井義高

    ○滝井委員 今の大臣の御答弁は、おそらくこれはマイクで全国に聞えていくと思うのですが、大臣政党政治を確立するということを大上段にかまえてきた。それが政党政治家の態度ですか。あなたがお出しになって、そしてそのお出しになった政府原案がずたずたに引き裂かれて、しかもそれがいつ効力を発するかわからぬというような修正を受ける、その修正の場合は精神が貰かれているからやめる必要はない、参議院で継続審議になったらどうだと言ったら、その場合はまだはっきりしないからという、あるいは審議未了の場合でもそうだ、否決された場合だけだというようなことを言う大臣でございますから、これは大へんな政党政治を混に陥れる、言葉だと私は思う。これは、少くとも良心的な学者的な精神を持っておられる私が尊敬する太田長官としては、どうも私は受け取れぬと思いますが、もう一回念のためにお尋ねしておきます。
  116. 山村新治郎

    ○山村委員 瀧井さんの御質問の中に、ずたずたに引き裂かれたとおっしゃいますが、われわれはずたずたに引き裂かれたとは思っておりません。その精神はあくまでも貫かれていると思いますので、その点誤解のないように願います。
  117. 滝井義高

    ○滝井委員 それは出した人と質問をする方との認識の相違もあると思いますが、私はそういう認識を持っておる。そこで太田長官のために非常に惜しむんですが、今のような太田長官の御態度でございますから、これは全国の国民諸君がよくこの耳で聞いておいて下さると思いますので、これ以上追及いたしません。  そこで、私は今度は提案者の方にお尋ねいたしますが、今私が読み上げましたこの附則の中の第七項の中にあります第十六項で、委員会の庶務は自治庁選挙部において行う、こういうことになっている。今後七人委員会で案を作ってもらわなければなりませんが、この庶務というものは大体どういうことをやることにあなた方はお考えになっておりますか。
  118. 青木正

    青木委員 これは、委員会が活動するに当りまして、いろいろと必要なる資料の収集等もあると思うのであります。そういう資料の収集であるとか、あるいは会議の開催についての雑務であるとか、こういったような事務的なことを目的としております。
  119. 滝井義高

    ○滝井委員 実は、私の心配するのは、すでに政府原案というものがわれわれの脳細胞の中に植え付けられております。それから選挙制度調査会の案というものがあるわけです。従って、そういう観点から、それらのものを作ったところの推進力というものは、何といってもこれはやはり自治庁の兼子さんあたりの役割というものは非常に高く評価していいことで、これはこの委員会における兼子さんの答弁を見てもわかる。いよいよ質問が核心に触れ機微にわたると、早川さんなり、兼子さんなり、あるいは鈴木次長さんなりが御答弁になっておる。そうしますと、今度出てくる七人委員会というものは、これは全くしろうとなのです。今度の区割りについては少くともしろうとなのです。そうしますと、庶務の役割を演ずるところの自治庁の部長さんを初め次長さんや政務次官さんたちが、なかなかこれは重要な役割を演ずるおそれがあるのです。事務的にそうならざるを得ない。そこで私はこの際特にお尋ねをしておくわけです。今あなたのおっしゃるように、資料の収集とか、全く事務的なことに終る、いわゆる選挙部の方で積極的に案を作って出すものではない、こう理解して差しつかえありませんね。
  120. 青木正

    青木委員 私どもはさように理解しております。そうしてまた、委員各位も、その良識に従って、公正な立場に立って案を作っていただくことと考えております。
  121. 滝井義高

    ○滝井委員 これは非常に問題になった法案ですから、念には念を入れておいてもいいというために、私はわざとずっとそういう頭の悪い質問をしておるわけです。そこで、この委員会委員は、やはり七項のところで委員は非常勤になる。こういう経費というものは、ことしの予算の関係はこれが通ればすぐに出てくるのですが、これはどういうことになるのですか。
  122. 青木正

    青木委員 私どもは予備費から支出されるものと存じておりますが、なお自治庁当局から説明を願うことにいたします。
  123. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 政府といたしましても、もしこの法律が成立いたしました場合に、庶務の経費は予備費等から支出するようにいたしたいと思っております。
  124. 滝井義高

    ○滝井委員 予備費から支出するということでございますか、それでいいと思います。  そこで、少し具体的になりますが、今度はいよいよ七人委員会別表を作成する場合においては、私は四つの点にこの委員会は注意をして別表を作ることになると思います。そのまず第一は、次の通常国会の召集の日の前日までに作らなければならぬということが一つ、それから三月十三日の選挙制度調査会答申を尊重して作らなければならぬということが一つ、それからあなたの方が修正案附則の中に書いておりまする三つの基準を総合的に考慮しなければならぬということが一つ、さらに四番目は、衆議院議員の定数というものは、四百九十七人をこえてはならぬという、こういう四つの原則、四つのいわばワクの中で作業をしなければならぬことになってくると思うのです。  そこで、まず第一に、三月十三日の調査会の答申を尊重して作るという、こういうことなのです。今鳩山総理から重要な発言がございました。調査会の案は参考だ、こういうことになったのです。まあ尊重と参考は——なかなか日本語はむずかしいのですが、私は、おそらく鳩山総理が使ったのだから一緒だろうとは思いますが、修正案提出者としては、この三月十三日の調査会の答申を尊重するということは、どうお考えになっておるのですか。一つこの答申案を尊重するという態度、これを明白にしておかないと、七人委員会が作る場合に混乱を生じてくると思います。
  125. 山村新治郎

    ○山村委員 この点は読んで字のごとくでございまして、尊んで重んずるという意味でございます。
  126. 片島港

    ○片島委員 今の山村委員から答弁がありましたが、政府の現在提出をしておる提案の中には「調査会の答申を基礎として」と、こういうふうに書いてあります。今度の修正案の中には、「尊重し」と、こういうふうに書いてあります。基礎として作ったものは、御承知のようなゲリマンダーになっております。これを作る場合に、この基礎とした場合と尊重した場合とはどういうふうに違いますか、両方から御説明を願います。
  127. 青木正

    青木委員 字句の解釈でありますが、私ども考え方といたしましては、政府の「基礎として」よりは、「尊重し」という方が強い考え方に立っております。強く調査会の答申を重んずる、かように考えるわけであります。
  128. 滝井義高

    ○滝井委員 それは、青木さんは、今基礎としての方が尊重より弱い、尊重の方が強いのだとおっしゃったのですけれども自治庁長官は、もとにして、基礎としてということは、今度は少くともそのままするのだ、こういうことなんです。画定委員会、七人委員会が作った案は、そのままあなた方はもとにしてというように書いてある。これは「基礎として」ということなんです。そうすると、「基礎として」よりも「尊重し」という方がなお上手だというのならば、選挙制度調査会の案をあなた方はそのまま持ってくるということになってしまうのです。そこらあたりは政府答弁と違うのです。もう少し意思の疎通をほからなければならぬ。
  129. 山村新治郎

    ○山村委員 決してそのことは政府答弁と食い違っておりません。あくまでも調査会案を尊重したい意思でございます。
  130. 滝井義高

    ○滝井委員 これは末梢の小さい問題ですから、私はそれ以上追及いたしません。それは、太田長官が今昔を振られたように、もとにするということについては、七人委員会をもとにして、作ったものをそのまま政府案として国会提出するのだということは、言質を得ておる。速記録にとどめておいてよろしいと太田長官みずからおっしゃった。ところが、あなたの尊重というのは、基礎よりももっと尊重することだ、こういうことになるとおかしいのですが、それはまあこまかいことですからいいです。
  131. 山村新治郎

    ○山村委員 その点、滝井君の御質問は、調査会案というものと画定委員会というものと混同されておるような感じがいたします。さっき自治庁長官のおっしゃったのは、画定委員会の案という意味でございまして、われわれが申し上げておりますのは、調査会案という意味でございますから、誤解のないようにお願いいたします。
  132. 片島港

    ○片島委員 この政府提案説明書の中には、「調査会の答申を基礎として」と書いてあるのです。そうすると、今度の修正案附則の第十番には「その案に基いて」、こう書いてある。この「基礎として」というのと、「基いて」というのとは、これは同じ意味なんです。「基礎として」というのをもう少し砕いて言えば、「基いて」ということなんです。その「基いて」というのが、そっくりそのままだ、こういうことを太田長官は言っておるのです。ところが、この「尊重し」ということは、それより重いということならば、どういうことになりますか。前の調査会案のものは、それよりも重いのですから、そのまま以上に重いということなんです。基礎ということと基いてということとどういうふうに違いますか。「基礎」の「基」というのは、「基いて」の「基」じゃないですか。そういうでたらめな答弁をしては困りますよ。
  133. 山村新治郎

    ○山村委員 決してでたらめな答弁は申し上げません。われわれの申し上げておりますのは、調査会案を尊重するということを丁寧に答弁しておる次第でございますから、この点御了承のほどをお願いいたします。
  134. 滝井義高

    ○滝井委員 まあとにかく調査会案は非常に尊重していただくということでございます。  そこで、私は尋ねなければならぬことになるのですが、調査会案答申を尊重して今度はいよいよお作りになるわけですが、そうしますと、その場合に調査会案のもとになったものは、この答申にあります七つの基準が基礎になって調査会案というものができておるわけなんです。これはおわかりです。そうしますと、調査会案を尊重するということは、同時に矢部起草委員長説明をしたこのものさしとなる、基準となる七つをあなた方は御尊重になるか、これを一つ答弁願いたい。
  135. 青木正

    青木委員 区画を定めるに当りましての共準として、私どもはこの委員会の良識に信頼しておるわけでございます。しかしながら、その根本となる最も重要なる点、つまり人口と行政区画と地勢、こういう三つの基礎的な点だけをあげたのであります。それ以外の、起草委員会委員長から報告になっておりますものの中には、御指摘のごとく七項目あげておるわけでありますが、私どもは基礎的な三項目だけをこの法律できめまして、それ以外のものさしにつきましては、委員会の良識に待って、委員会独自の考えによっておやりを願いたい、基礎的な点だけを法律できめたのでありまして、それ以上あまり制限することはどうかと考えて、基礎的な三項目だけをあげたのであります。
  136. 滝井義高

    ○滝井委員 委員会の良識を尊重するとおっしゃいますけれども、あなた方の附則をお読みになると「昭和三十一年三月十三日に内閣総理大臣に対し提出された選挙制度調査会答申を尊重し、かつ、次の各号に掲げる基準を総合的に考慮しなければならない。」とあなた方はきびってしまっておるでしょう。良識に訴えるといっても、しなければならないと、きびっておるのです。従って、この調査会の答申を尊重して作るからには、当然これは調査会の答申のものさしになったものをまず考えなければ、具体的に今度は展開していく場合——今調査会がA地区で一人一区を作っております。A地区で作ったものが、具体的にどういう理由でそういうA地区というものができたかということは、当然調査会が七つの基準を知らなければどうしてできたかわからないのです。そうでしょう。そうしますと、あなた方が調査会の案を尊重して、次の三つの基準を考えて総合的に考えなければならないということになれば、そのA地区を作った七つの基準というものがわからずして、尊重しようも何もないのです。この点はどうですか。これはきわめて重要なところです。
  137. 青木正

    青木委員 調査会の答申を尊重するのでありまして、調査会の答申、そのままを採用せいというわけではないのであります。この調査会の答申を尊重して、基本的な人口、行政区画、地勢については、こういう考え方に立って、委員会の良識によってきめていただきたいということであります。調査会案そのままをとれという意味ではないのであります。従って、委員会におきましては、もちろんこの起草委員長の報告も参考にはするでありましょうが、このこまかい点はどうきめるかということは、委員会の自発的な決定に待つほかはないと存ずるわけであります。
  138. 滝井義高

    ○滝井委員 だんだん焦点がぼやけてきました。今までは、一人一区の原則というものは一体この法案のどこに入っているのだと言ったら、それは選挙制度調査会答申を尊重しというふうに入っておるのだとおっしゃった。これを金科玉条にあなた方は掲げてきた。今の青木さんの御答弁によりますと、それはもう大して重要でない、ただ参考にすればよいと言っている。太田長官、今まであなたの眼前でお聞きの通りだ。そうすると一人一区制という原則はどこにありますか。
  139. 太田正孝

    太田国務大臣 私どもの信ずるところにおきましては、選挙制度調査会における区画の委員会答申の中には、一人一区をもってするということが書いてあります。これを尊重するのはその言葉意味を含んでいるものと考えるのでございます。その意味におきまして、私どもは小選挙制度であると解釈しておるのでございます。
  140. 滝井義高

    ○滝井委員 大臣はそういうふうに理解しているが、青木さんの御答弁はきわめて軽いものであったので……。
  141. 太田正孝

    太田国務大臣 ちょっと言わしていただかなくちゃならないのでございます。私も今拝聴しておりましたが、青木さんの言われているのと私の今言うのと違っておりません。青木さんは、三原則をもとにしてそのこまかい点などについては委員会の方が考えられていい、こう言われただけでありまして、小選挙制度の実体につきましての考え方は違っておらないと思います。
  142. 青木正

    青木委員 ただいま太田長官答弁した通りであります。私は先ほど区割りの基準についてのお話がありましたから、区割りの基準について起草委員長の報告のことを申したのであります。これはあくまで起草委員長の報告でありまして、答申そのものではないのであります。答申そのもののことと区割りの基準についてのお話でありましたので、そのときにそのお話を申し上げたのであります。
  143. 滝井義高

    ○滝井委員 青木さんらしくない御答弁をされますが、この七つの基準がなくて一人一区四百九十七の選挙区ができますか。これがなければできないのです。これがあったからこそ初めて選挙制度調査会別表ができてきた。あなた方はこれを無視して選挙制度調査会答申のどこを尊重するか。具体的に調査会の答申のどこを尊重すればいいのですか。
  144. 山村新治郎

    ○山村委員 最もわが党として尊重いたしたい点は、一人一区を原則とする点であることを御銘記願いたい次第であります。
  145. 滝井義高

    ○滝井委員 一人一区を原則とするということになれば、一人一区をいかにして現実の都道府県に具体的に実現していくかということになれば、七つのものさしがなければ実現できない。そのものさしができて初めて一人一区の原則が現実に生々発展していくところの国土の上に具現をしてくるのですよ。その途中を全部なくしてしまって尊重しないということになれば、一人一区はできない。そうでしょう。この基準というものはあなた方は尊重をしないという答弁はできないと思う。これは尊重しなければならぬと思いますが、どうですか。
  146. 青木正

    青木委員 ただいま滝井委員の御指摘になりました七つの原則は、私が申し上げるまでもなく、答申というものにはないのであります。これはあくまで、起草委員長の書いております通り、作業を進めるのにこういう方針によって作業を進める、こういうことを述べておるのでありまして、答申そのものには、明らかに衆議院議員選挙区については一人一区を採用するものと書いてあります。私は、先ほど、区割りをきめるときのどういう基準によるかというお話がありましたので、御指摘のごとく委員長の報告の問題を答弁いたしたのでありますが、あくまでも答申そのものではなくて、作業を進めるときの方式を委員長が報告したものと思います。
  147. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、ここに書いてある選挙制度調査会答申というのは、別表ではなくて、選挙制度改革に関する件という抽象的な文章を尊重するということですか。
  148. 青木正

    青木委員 この選挙制度の改革に関する件、それから別表とを申すのであります。
  149. 滝井義高

    ○滝井委員 わかりました。そうしますと、調査会の答申を尊重するというのは、別表とそれからこの選挙制度の改革に関する件というこの文章を尊重するということでございますね。われわれ議員は物事の結果だけを見て論議することはできないと思います。少くともその物事が出れば歴史的な経過を見ることが、審議をする科学的な態度だと思います。結果だけを見ていると、これは多く間違う。いかにしてその結果が出たかというその経過を見なければならぬ。であるからこそ、われわれは、委員会においてこの選挙制度調査会答申というものの速記録その他はいただくことになるわけなんです。当然、これは、選挙制度調査会答申を尊重するということになれば、七人委員会だっておそらくこれを要求します。これを要求せずして、ただ出た結果だけを、あの別表とそれからこの文章だけをもらって、それをよしとはしないだろうと思う。これは常識なんです。従って、私が申し上げるのは、その常識論をやはりここで明白にしておかないと、先になって間違いが起ってくると思うのです。あなた方はきびっておかなければならないが、尊重しなければならないと、これはきびっておる。しかも、尊重した上で総合的に考慮しなさいと、きびっておる。そこで私はくどいようだが言うわけです。  さらに、あなた方の出された基準は法律には三つしか出てこなかった。この基準についてはすでに昨日私はここで予行演習をやっておいた。死児のよわいを数えることにはなるけれども、あなた方の答弁ができるだけスムーズにうまくいくように練習をしておいたのですが、あなたの方の修正案の中に出ておる三つの基準というものは、大体において調査会の七つの中にやはり三つ出ておるわけです。それは起草委員長の報告の第一と第二と第四に当ることになるわけです。そのほかは出ていないわけです。そうしますと、昨日も非常にここで私が問題にいたしましたように、やはりこれは、町村だけをあなた方は問題にして、同じ行政の単位である市、区、あるいは郡というものを——郡は最近そうでもないのですが、しかしやはり昔の伝統となごりがありますから、郡というものはやはり行政区と同じ取扱いをしなければならぬ。市や郡については何もここには与えていないのですが、これはどうして基準の中に一つも与えなかったのですか。
  150. 山村新治郎

    ○山村委員 滝井さんの御質問も、そんなにわれわれの者えと違っておらないようにわれわれは考える次第であるのであります。すなわち、実際問題といたしましては、この三つの原則だけで、あとは画定委員会の良識によってこれらのことが実行に移されることもあり得ることと考えておる次第でございます。
  151. 滝井義高

    ○滝井委員 少くともやはりあなた方がこういう三つのものをお与えになったからには、町村だけは、これは分割しない。この文句からいくと、町村は絶対に分割しちゃいかぬと解釈して差しつかえないのですか。
  152. 青木正

    青木委員 申し上げるまでもなく、行政区画はなるべく尊重しという意味は、市あるいは郡は——郡は厳密な意味において行政区画ではありませんが、そういうものを尊重する、こういう気持が入っておるのであります。しかし、特に町村の区域は分割しない。市の場合になりますと、人口の増加等に関連いたしまして、町村の場合と同律にいかぬのではないかという考えもありますので、そこで一般的に市の行政区画、これはもちろん尊重するのでありますが、特に町村は分割しないようにする、こういうふうな表現をいたしたのであります。
  153. 滝井義高

    ○滝井委員 郡や市は一応例外だ、しかしなるべくその行政区画を尊重していく、しかし町村は絶対に分割をしない、こう了承をして差しつかえありませんね。町村は絶対にやらない。——頭を縦に振ったので、そう了承いたします。  そこで昨日も問題にいたしたように、やはりこれはあなたの修正案の基準の二項なんです。これがやはり一番問題になるところなんですね。調査会の抽象的な答申案の文句の中には、人口の問題は何も出ていない。これは委員長の報告の中にしか出ていない。そこで私がさいぜんからるるその経過の重要性を申し上げるのはここなんです。いよいよまず一番大事なものは、何といっても各府県にどういう工合に人口を配分するかということで、昨日もここで太田長官や早川さん等と論議をした通りなんです。あなた方の各選挙区の人口は、なるべく均等になるようにということになっておるのですが、ここらあたりが、これはいわゆるすべてをそこにおまかせするというにしても、やはり立案者というものが一つのワクを与えておって、それでまかせるということにしないと、政府案のように十一万のところの一人一区の選挙区と二十五方の一人一区ではなかなか困るのです。だから、そういう矛盾をなくするためには、やはりそこに幅というものがある程度与えられておかなければならぬと思うのです。どうしてそう申すかと申しますと、この政府案によってみますと、大体人口十四万台から二十一万台のワクの中に入るのが、八割くらいはそのワクなんです。ところが、これを今度は二万ずつ下げて十五万から二十万としますと、その開きを五方くらいにすると、六割くらいになってしまう。四割というものはそのワクからはみ出てしまう。ワクからはみ出た四割というものは、これはゲリマンダーではないかという疑いをこうむるおそれがある。だから、どうしても、これは、たとえばその人口の開きというものをなるべく均等という、なるべくという字のワクを、たとえば三万にするとか五万にするとか、あるいは二割五分にするとか三割にするとか、何かそういうものを修正者としては考えておく必要がある。こういうことをここであなた方に御答弁願っておけば、それを基礎にして委員諸君というものはやられる。委員の自由裁量に、良識にまかせるといっても、今のような政党政治のもとにおいては、良識々々といってもなかなか良識が通らない世の中なんです。七万二千円の中古エンジンが千二百五十万円に売られる世の中ですから、(「暴力々々」と呼ぶ者あり)暴力が通る世の中だと言っておる。それも一つかもしれません。そういうように、やはり理性と科学的な精神というものがなかなか貫かれない情勢にあるのですから、ここでお互い、与党の提案者のあなた方と野党の私との間の質疑応答の中には、提案者である与党から、このワクというものはこのくらいが適正妥当であろうという答弁さえしてもらっておけば、委員諸君というものは正直なんですから、絶対に公正な人なんですから、絶対にその心配はないと思うのです。だから、そこにやはりちょっぴりものさしだけは示してやる必要があると思うのですが、これは、青木さん、どのくらいが適当とお考えになりますか。
  154. 青木正

    青木委員 お話の点もよくわかります。そういう考え方も一つ考え方と思うのであります。しかしながら、実際問題として法律で人口を幾らにするというようなことをきめることが果して適当かどうか、非常にむずかしい問題だと思います。しかも、先ほど滝井委員も御指摘のごとく、この画定委員会は公正なる立場に立って良識をもって判断する、こういう委員会でありますので、ことにすでに区割り案につきましては、政府案あるいは調査会案等発表された経験にかんがみまして、それに対するいろいろ世間の評判と申しますか、またそれに対する識者の見解等も新聞その他に出ておるのであります。そういうことから判断いたしまして、画定委員会は良識に従って最も公正なる区割りをするであろう、あくまでもこういう画定委員会の良識に信頼する、かように考えるのであります。できることならば、お話のごとく、ある程度人口の基準を設けることもいいのでありましょうが、実際問題として私どもさように参りかねるのではないかと思います。これは画定委員会の良識に信頼しておまかせする方がいいのではないか。抽象的ではありますが、できるだけ均衡を保つようにやってもらいたい、こういうことでおまかせすることが適当ではないかと考えております。
  155. 滝井義高

    ○滝井委員 青木さんにしても、山村さんにしても、なかなかそのこまかい数字をはじく時間的余裕がなかったと思いますが、私これは政府の方にお尋ねいたしたいと思います。政府政府原案を作る過程において、あるいは調査会の審議の全過程を通じて、いろいろ選挙区の人口の問題については御苦労なさったと思うのです。去年の五月以来十カ月以上御苦労なさっておる。あるいは吉田内閣の当時においても三カ月以上も御苦労なさっておるのですから、苦労なさった人は苦労人としてやはり適正な人口の幅というものをきわめられておると思うのです。政府の方の幅というものは、どの程度の幅を持てば大体ゲリマンダーとの汚名をこうむらずに済むかということを、今は率直に言える段階だと思うのです。政府の見解をこの際参考的に述べておいていただく方がいいと思うのです。一つ述べてみて下さい。
  156. 早川崇

    ○早川政府委員 お答えいたします。なかなか区割り作業の場合に一概には申せないのであります。たとえば壱岐、対馬、あそこは十一万なのです。どうにもならないのです。これはやはり壱岐対馬として一選挙区を設けざるを得ない。こういう例外はやむを得ません。内地というと語弊がありますが、そういう島嶼以外の場合におきましては、大体上下五割くらいの振幅を見るというくらいで行くべきだと思うのであります。同じ県の中で、片方の選挙区はたとえば十万、片方は二十万、二倍以上というようなことは避けるべきだ。ただし七人委員会の御判断によって決すべきものでありまして、これはわれわれが政府案を作ったときの体験だけを申しておるのであります。七人委員会の良識に待つよりほかはないと思います。
  157. 滝井義高

    ○滝井委員 今政府の体験から五割と申しましたが、政府案の上下の幅は集中的にどういうワクの中に一番多く置くことがいいかという論議なのです。今、言ったように壱岐、対馬のようなものや淡路島あるいは佐渡島というようなものは、一人一区の選挙区へ置かなければならぬ。そういう特殊なところはあると思うのです。そういう点は、これを原則の中に入れて論議するという、そういうこちこちの頭は私は持っておりません。それはやはり弾力を持たなければいかぬと思うのです。すでにイギリスにおいても、農村地帯と都市の選挙区というものは違う。私は、そういうように、むしろ二本建の基準で日本もやるべきだということを主張するくらいなのです。しかし、一般論として、基準というものは、少くとも本土——こういう平坦地やある程度の山岳地帯においてどの程度のワクの中に置くべきかということなのです。多分、自治庁の課長さんが何かお書きになっておった中を見ると、一三〇%をこすものは十八、七〇%以下のものは五で、三〇%のワクを設けて、五割と今あなたはおっしゃいましたが、三割のワクの中ではみ出すものは上下合せても二十三しかないのです。だから、基準は三割にするのか二割五分にするのか、五割というのはちょっと大きいのじゃないかと私は思うのです。そこらはやはり過去の実績を分析してみれば——たとえばあなた方がよくお出しになる明治二十二年、大正八年の例あるいは今度お作りになった案、こういうものがすでに過去の歴史的な実績として残っているのですから、こういうものを基礎にして、もっとそれよりかシヴィアな、ある程度厳格なものにすれば、一つの基準というものは出てくるのじゃないかと思うのです。こういう点やはり科学的な根拠というものを、自治庁みずからが——幾ら七人委員会の良識に待つといったって、自治庁なり政府与党がそういう良識を出さなければ、なかなか出てこないものなのです。そういう点、多分三割くらいだったと思いますが、課員さんがおられるからよく御答弁願うといいと思うのですが、五割ではちょっと問題があるのじゃないかと思います。その点どうですか。
  158. 早川崇

    ○早川政府委員 皆川政府委員からもお答えいたしますが、五割とか三制とかいうのは、それが限度という意味でありまして、われわれが参与いたしました結論から申しますと、なるべく十三万以上としたら十二万を切れるようなことは避けたい。上の方は、二十五万以上というようなものは非常に困る。十三万と二十五万を最高限にいたしまして、十八万を中心に区割りを作っていくというのが、大体私の経験の結論でございます。なお統計的な問題は吉川政府委員から……。
  159. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 人ロのおおむねの幅をきめたらどうかという御意見でございますが、従来の大正八年あるいは明治二十二年におきます小選挙区制の例では、二倍以上ということが実にたくさんあります。従って、日本の今までの例から帰納的にそういう基準を導くことは非常に困難であります。むしろそういう結果が出ないのじゃないかと考えております。なお、いろいろな外国の例等を見ましても、どうしても大多数のものはせいぜい平均人口の土下三、四割の間に入って参ります。その例外となる、その中に入り切れないものがどうしても出てくるわけであります。御参考のために西ドイツの例を申し上げますと、平均人口の上下一〇%内であるものが百二十四、一〇%をこえて二〇%までにあるものが七十一、二〇%をこえて三〇%までにあるものが二十三、大きいところになりますと五〇%をこえるものもなおまだある、こういう実情になっておりまして、これはイギリスにおいてもアメリカにおいても同じような事情があるわけであります。従って、およその見当は立ち得ますけれども、これのワクをはめて、これから出てはいかぬということをきめるのは非常に困難ではないかと思います。
  160. 滝井義高

    ○滝井委員 私が申し上げますのは、大よその集中的に集まる一つのバンドを作っておく必要がある、こういうことなんです。それのワクは上下やはり三〇%くらいじゃないか。今度の案もそういう形になっておるのですから、その点、社会党の意見もいれて、私個人的に見てそれくらいのところにすべきだと思う。五割というのはちょっと多い。しかし、島その他については別個に考慮する必要がある、そういうことなんでございます。  時間の関係もあるそうでございますから、これ一点でやめたいと思いますが、この別表の施行期日は大体いつになりますか。
  161. 青木正

    青木委員 この附則に書いてあります通り、画定委員会から区割り答申がありまして、それに基きまして政府は次の通常国会法案提出いたしまして、それが国会で成立をいたし、法律が公布されて六カ月たった後の最も近い総選挙から実施される、こういうことになるわけであります。
  162. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、施行の期日はわからぬことになるわけですね。そう理解して差しつかえありませんか。
  163. 青木正

    青木委員 はっきりした日時は、申し上げるまでもなく、国会でいつ法案が通過するかきまらぬ限りは申し上げかねます。
  164. 滝井義高

    ○滝井委員 太田大臣、今お聞きのように施行期日はわからない。私が問題にしなければならない点は、これは一番初めの問題に返ってくるのですが、この法律は公布されてもいつから施行されるかわからぬです。別表もわからないのです。どこにも書いてない。わからないということは、大臣が意図した一大政党、政局の安定、内外にわたる重要政策の遂行というようなものがどうにもならないのですよ。浮いてしまったのです。別表ができて法律が公布されても、これは何日から施行するかわからぬのですよ。(「法律に書いてあるから読めよ」と呼ぶ者あり)書いてない。どこにも書いてない。
  165. 太田正孝

    太田国務大臣 先ほど青木さんの言われたのも、法律の通る日がわからぬから、その点についてはわからぬと申し上げたので、これを行うのは次の選挙のときから、こういう意味でございます。
  166. 滝井義高

    ○滝井委員 だからわからぬですよ。これは次の選挙がいつ行われるかわからぬことを私は問題にしておるわけです。だから、わからぬことは何ぼ言ったってわからぬことなんですよ。わからぬことを基礎にしながら——大臣が二大政党を作り政局を安定させ、そうして内外にわたって重要政策を遂行していくというのは、わからぬことを基礎にした二大政党というものはできやしないじゃありませんか。一体これはどうなるんですか。
  167. 太田正孝

    太田国務大臣 私の申し上げたのは、二大政党がすくすくと伸びていくために、こういう選挙制度が必要であると申し上げたのでございます。
  168. 滝井義高

    ○滝井委員 いいですか。そういうものを作るためには現実のわれわれの国民生活の中に政治が動いていくためには、この法律が現実に動かなければ、それは架空の議論じゃありませんか。今われわれのやっておることは架空の議論をやっておる。(「そんなことはないよ」と呼ぶ者あり)これは施行の朝日さえわからない法律をやっておるのですから……。いつ解散があるかわからぬ。そう向えばこれは三年後になるかわかりませんよ。そういうことなんです。そうしますと、ここが問題なんですよ。少くとも政府原案提出したときのあの切迫した空気——あなた方は社会党の暴力々々と申しますけれども、われわれがそれを阻止しようとするその気持、こういう緊迫した気持というものは、施行期日のわからぬような法律ならば起ってこない。だからこの法律はまるっきり足も何もないのですよ。架空の議論をやっておる。幽霊なんです。これは、太田長官、私はまああなたの責任追及の冒頭に返ってこなければならぬ。いろいろ私は追及していきました。あなたは、この法案が参議院で審議未了になったりあるいは継続審議になっても、否決されなければだめだと言ったけれども、一体これはいつごろ動くことになるかわからぬのですよ、全くわからない。次の総選挙が行われるときでなければわからぬというような法律は、次の選挙がいつ行われるかわからぬのですから、わからない。だから、その点もっと明白な解明を与えてもらわぬことには、これは幽霊法案です。
  169. 山村新治郎

    ○山村委員 何か、滝井さんの御質問は、政府原案が出たときには、立ちどころに解散をされるような恐怖心を社会党が起されておったような感じがするのであります。われわれは毛頭そういうことは考えておりません。現在においても二大政党は厳然としてあります。しこうして、太田長官考えられた点は、この二大政党をぜひともすくすくと維持育成したいという点から、この法案を出されたものと考えておる次第であります。従いまして、選挙の期日がいつ行われるかわからないといたしましても、決してこれは太田長官の提案された趣旨とは違反しておらないと私は考える次第でございます。
  170. 滝井義高

    ○滝井委員 二大政党はなるほど現存をいたしております。しかも、それをすくすくと育成せしめるために、小選挙区というものが必要だ、こういうことだったのです。ところが、これは、国会を通ったって、現実に動かないんだから、三大政党の育成にちっとも役に立たない。だから、あなたが幾ら二大政党を小選挙区で育成しようと言ったって、できるものじゃないんですよ。これはもうはっきりしている。太田長官は、この政府原案を通して、そうしてやはりはっきりさしてやることだった。ところが、あなたの方はそうではないのだ。通ったってそういうことはできないのですから、一番初め申し上げましたように、何もこの法律というものが通っても、実体がはっきりしない。動かない。別表ができても施行期日がないのだから……。
  171. 山村新治郎

    ○山村委員 私どもが二大政党を育成するということは、社会党諸君考えておられるような点とは大きな相違がありそうでございます。現に、私は、この委員会におきまして、当時政府に、この案が出されるということは社会党育成案ではないかというような質問をしたこともございますが、私は、政策におきまして同じ土俵の上におきまして両党が相争うというような境地が出ることが、ほんとうに健全な二大政党育成の理想境であると考えておる次第でございます。
  172. 青木正

    青木委員 滝井委員の御質問でありますが、言葉を返すようでありますが、いつあるかわからぬということでありますけれども、私どもは、そうであればあるほど、なるべくこういう法案を早く通しておかなければいかぬ、こう考えるわけであります。総選挙の日がはっきりきまっておれば、あるいはそのとき出せばいいという御議論かもしれませんが、そのときでは間に合わないのでありまして、やはり今日から小選挙区制を実施して、次の選挙には小選挙区法によって選挙が行われるように準備する必要がある、かように考えるわけであります。
  173. 滝井義高

    ○滝井委員 今までの議論を通じて明白になったことは、この法律が通っても、この法律は実際に現実の政治の上には何らの効果も及ぼさない。しかも実際に別表ができるのは来年の十月以降になる、しかし、それは十月以降にはなるけれども、できた別表が具体的に効くためには、その公布の期日が総選挙なのだけれども、総選挙はいつあるかわからない。はっきりしていない。こういう、きわめて幽霊みたような大きな矛盾を持っておることだけを言っておいて、私はこれで質問を終りたいと思います。
  174. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際暫時休憩いたします。    午後零時四十七分休憩      ————◇—————    午後二時五十三分開議
  175. 小澤佐重喜

    小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。井堀繁雄君。
  176. 井堀繁雄

    ○井堀委員 青木正君外提案にかかりまする公職選挙法の一部を改正する法律案に対する修正案内容について、質疑をいたしたいと思います。  まず、修正内容の点について、政府と提案者側の関係についてただして参りたいと思うのであります。それは、今度の修正を見ますると、政府改正案に比較いたしますると、ほとんど全般にわたる大幅の修正であることは理解できるのでありますが、その中でちょっと理解しかねる点は、繰り上げ補充または補欠選挙に関する事項については修正を加えていないのであります。この点は、私どもは、全体の改正案に対する修正関係から言いますと、これにも手を染めるべきではなかったかと思うのでありますが、これに手を染めなかった修正者側の見解をただしたいと思うのであります。というのは、これは一人一区制をとる小選挙区の場合においては、同点者であって、くじ引きによって、落選した者が繰り上げられるということは、言うまでもなくこれは小選挙区制をとる、すなわち二大政党を前提とするところの政党政治が建前である小選挙区の場合におきましては、選挙民の意思に反するからということで、選挙民が同じ点数を与えた者に対しては同様に扱うという趣旨は理解できるのであります。しかし、ここに修正案として提案されております一貫したものの中には、原則的にあるいは一人一区制を施行するかもわかりませんが、それも明らかではありません。しかし、二人区がすでに政府改正案の間に二十区も認められているという現状であり、また本案が修正案として与党から修正をされるような事態になりました。しかし、提案者の説明によると、議長あっせんの次第の中にも二人区を例外として認める、また、区画委員会などの意見により、あるいは各党の同意を得られる場合には、三人区というような特例をも考慮されるということが話題になっておる折柄であります。こういうことになりますと、二人区、三人区というようなものができました場合に、この条項というものは一体どうなるかということを、いかにお考えになっておるかについて、まず一つ明確なる見解を伺っておきたい。
  177. 青木正

    青木委員 御承知のごとく、政府原案は一人一区を原則とした小選挙区案でありまして、御指摘のごとく、繰り上げ補充は、わが国の過去の例に見ましても、一人一区の場合に繰り上げ補充を採用いたしております。こういう考えに立って政府案はでき、しかも例外的に二人区が二十ほどありますが、しかし、法案全体の建前としては、一人一区の小選挙制度を採用いたしておりますので、繰り上げ補充を採用いたしておるのであります。私ども修正案におきましては、いろいろな議長あっせんの次第もありますが、附則の第九に明示しておるごとく、調査会の答申を尊重することといたしております。従いまして、私どもは、この修正によりましても、政府原案の趣旨というものの根本的な考えは変えられていない、かような考え方に立ちまして、繰り上げ補充の問題は政府原案通りそのままに残すべきもの、かように考えておる次第でございます。
  178. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私のお尋ねいたしておりまする趣旨に対する御答弁としては、ちょっと理解できないのであります。私のお尋ねしておりまするのは、一人一区の場合、これは考え方としては正しいと思う。しかし二人区、三人区が採用された場合には、こういうやり方になりますと、結果は違った答えが出てくることは明らかなんです。というのは、もっと具体的な例をあげて申しますとよくわかると思う。A党とB党がその選挙区において戦いをやった場合に、定員一名であります場合にはA党が負け——B党があるいは負けるかもしれない。その場合次点になった人が必ずしも一つ政党の候補者であるとは限らぬわけです。でありますから、それが同点であると——今この政府原案の中にありまする同点者であります場合にはくじ引きで落ちたのですから、それは選挙民の意思というものはどちらをあげてもいいわけでありますから、それが自動的に繰り上げられてくるということは、選挙民の意思に逆らわぬことになるから、それでいい、そういう原案になっておる。ところが、二人区になった場合において、候補者が四人出るか三人出るかわかりません。あるいは二人きりであった場合はこの条文は適用にならぬわけですから、必ず二人以上、定数以上の候補者がある場合を予想している。三人あるか四人あるかわかりません。三人の最小の場合を予想いたしましても、二人が当選して一人が落ちた、その次点の人がB党だ、しかも一、二位の人がB党で次点の人がB党であった場合には、それが繰り上げられてきても、選挙民の意思については、政党を選ぶという点からいけば問題はないわけです。こういう点はいえるかもしれませんけれども、この一人一区制について繰り上げ当選を禁止した精神というものは、同点でなければならぬというところにあるわけです。ところが、現行法は、御存じのように一定の期間の制限はありますけれども、次点者の繰り上げが認めらておって、次点者は法定数に達する得票数さえ取っておれば、同点でなくても繰り上げができるというのが現行法の精神なんです。その現行法の精神は、言うまでもなく二人区、三人区等の場合においても、またよし一人区はありませんけれども、あった場合においても、この繰り上げが一般に認められておるわけであります。こういう関係を考慮いたさなければならぬことは言うまでもないのでありますから、ここに修正案といたしましては、一人一区ということはどこにも規定しておりません。ただ、せめていえば、選挙制度調査会の三月十三日の答申精神を尊重するという点は附則の中にうたわれておるのでありますから、この精神をどういう工合に尊重するかということについては、すでに政府改正案審議の際にもたまたま政府の方で明らかにいたしましたように、二人区を作ったものについても、これは決して答申案精神を無視したものではない、いな尊重したものであることは、たびたび述べられておるところであります。でありますから、政府改正案の中にも二人区が公然と出てきておるのであります。ところが、今度は三人区ができるかもしれない。あるいはできぬかもしれません。しかし、一応区画画定委員会については、条件を付していない限りにおいては、この自主性というものはそういうものを決定するに何らの障害がありませんから、ここで三人区が作られて議会が認めれば、これは法律になって出てくる。そうすると、三人区が出たときに、この条項が必ず問題になってくるわけです。こういう点に対して、あなた方がどういうふうにお考えになっておるかということは重大でありますから、お尋ねをしておるのです。これに対する御答弁でないと適しません。
  179. 青木正

    青木委員 井堀委員の御質問を承わっておりますと、基本的には政府原案におきましても一人一区が原則であっても、例外的には二人区もある、そういう選挙制度においては繰り上げ補充制度を採用すべきでない、例外的に二人区があっても、それはおかしいのではないかという点が基本になっておるのではないかと思うのであります。私どもは、建前として一人一区をとっておる以上、例外的に二人区がありましても繰り上げ補充の制度をとることは、政府原案考え方の通りいいと思うのであります。従いまして、修正案におきましても、調査会の答申を尊画して区割りができる以上、やはり基本的には政府原案と同じような建前で立つべきものと考えておりますので、従って、政府案において繰り上げ補充を容認する以上、やはり修正案におきましても同じような考え方に立って繰り上げ補充制度を残しておいていいのじゃないか、かように考えるわけであります。答申の結果が御指摘のごとくどうなるかわからぬということもあります。しかしながら、調査会の答申を基礎とする以上、大体の考え方はやはり政府原案と同じような考え方に立つべきもの、かように思うのであります。
  180. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私の尋ね方が少しくどいかと思いますのでお答えを正確に得られぬと思いますから、それでは簡単に申し上げます。順序を追うて申し上げますと、この修正案を貫く考え方というものは小選挙区だということを言おうとしておることはわかる。しかし、これは必ずしも一人一区制でないということは、今のあなたの御答弁でもわかる。二人区もあり、あるいは三人区もできるかもしれない。その点間違わないで下さい。そうすると、一人一区の場合は、この案は残したらいいのですよ。二人区、三人区のときにこれがあると、非常に矛盾が起りはせぬかということをまずあなたの方に伺って、その矛盾を感ずるならば、ここにも修正を加えるべきではないか、修正を加えないとするならば、その矛盾がないという説明をしなければならぬ、その点お答えをいただきたい、こういうわけであります。
  181. 青木正

    青木委員 私が前段お答え申しましたのはそのことでありまして、井堀委員の御質問のごとくであるとするならば、政府原案それ自体も本来そういう姿であるべきではなかったか、こういうことが基本になると思うのであります。その点につきまして、私どもは、政府原案のような考え方でいい、こういう考え方に立っておりますので、つまりほとんど大部分が一人一区であり、例外的に二人区がある程度でありますので、一人一区の建前に立った繰り上げ補充の制度を残しておいてもいい、こう考えるのであります。従って、基本的には、政府原案そのものが、井堀委員考えでは、おかしい、こういうことになっておると思うのであります。私どもは、政府原案そのものに対しまして、これを容認する態度をとっておるわけであります。
  182. 井堀繁雄

    ○井堀委員 政府と同じだから、政府が誤まっておれば、誤まったことをまねをするということになるわけですが、それはそれでもいいと思います。  それでは一つ政府の方から順次にいきましょう。早川次官にお尋ねをいたしますが、今申し上げたように、一人一区を貫けば、私はこの案でいいと思う。二人区の場合のことを一つ説明をいただこうと思う。政府はこれに対する矛盾を感じないのか。
  183. 早川崇

    ○早川政府委員 一人区の場合には、確かに同位者の繰り上げ補充を認めることにする以上、同じく小選挙区のいろいろな制度の上における例外的な二人区におきましても、一人区の場合には同位繰り上げを認めて、二人区の場合には同位者でないものも繰り上げ補充を認めるということの方が、説明が実はつきにくいのであります。従って、大正八年の小選挙区の場合にも、一人区の場合と同じように、二人区、三人区も同位者以外は選挙をしなければならぬ、こういう規定になっておる次第でございます。
  184. 井堀繁雄

    ○井堀委員 大正八年のそういう事例があるからという御答弁でございますが、そういう事例はとにかくとして、そのときでも今でも矛盾はする。もう一回前のやつを繰り返しますけれども、一人一区の場合はいいのです。候補者が何人出ようと、かまやしません。そして同点者でなければ、これは選挙民の意思にそむくから繰り上げができないという考え方を貫いている。これは正しいのです。ところが、二人区の場合ですよ。二人区の場合には、その次点者、三番目の方が、二番目の方と同点であったと仮定しても、同点であった場合、これは繰り上げ当選になる。ところが政党政治でしょう。二大政党を施行するという考え方でしょう。A党とB党とがある。そうすると二位の人がB党で三位の人がB党であれば、それは選挙民の政党に対する意思表示としては合致するが、不幸にして一位がB党で二位がA党で三位がB党であったという場合には、同点であってもその政党に対する選挙民の意思というものは全く反対になる。この矛盾は一体どうして解決しますか。大正八年にはそいつをほおかむりしたというだけの話で、その当時は政党政治の建前が違っておった。現実にも小党分立しておった。それから理想の中にもそういうものをうたっていない。今度の場合は二大政党を施行することを立法精神の中に説明者は強く主張されておるわけであります。すなわち二大政党というものは人を選ぶと同時に政党を選ぶのです。でありますから、その次点者が二番目に当選した人と反対の党であった場合には、選挙民の意思に違う人が上ってくるではないか。これは重大です。この矛盾をどこにも割り切ってないじゃないか。それを大正八年の例だけでお答えになったのではお答えにならない。この点に対する答えができますか。
  185. 早川崇

    ○早川政府委員 井堀委員の御質問の趣旨はよくわかりました。それはおそらくこういうことを言われておるのではないかと思うのであります。たとえば、二人区の場合には、最高位がA党であった。その次がB党であった。その次がB党であったという場合におきましては、理論上は、たとい同点でなくても、政党を選ぶという建前において、繰り上げ補充を差がありましても認めるというのは、理論的には考えられると思います。ところが、一人一区の場合に、同位者以外は繰り上げ補充を認めないという理由は、たとえば数の少い第二位者が、同位でない者がA党の場合に、その当選したB党の者が欠格しますと、必ずA党になる。そうしますと、明らかにB党を選んでおるのに、必ず二大政党、一人一区の場合には反対党に回るのはおかしいではないかというのが、一人一区の場合には、同位者以外には繰り上げ補充を認めないという理論的根拠でありまして、同じ理屈からいいまして、二人区の場合に第三位の人が同位者であれば、それに限って繰り上げ補充を認めるというのは、理論的には一貫しておりますが、その反対党になったというのでは、これはまたおかしいことになるのであります。そこで、そういうことは非常に混乱を招きますので、二人区が原則で一人区が例外の場合には、お説のように、今度は、一人区の場合にも、差が開いておっても繰り上げ補充を認めるというのが正しいであろうし、大部分が一人区である場合に、例外的に二人区がある場合には、やはり一人区の場合にとっておる原則を準用するという方がいい。三位者が反対党である、同じ党であるという場合を区別することは、実際上法律上不可能であります。そういう観点から一人区と同様な方式を準用した、こう私たちは考えざるを得ないのであります。
  186. 井堀繁雄

    ○井堀委員 だから、今の御答弁によりますと、全く矛盾をそのままのんでかかっておるわけです。ですから、その場合には、政府原案として出てきております考えは、あなたのおっしゃることでよくわかった。でありますから、二人区を認めてはならぬということが一つここで出てくるわけです。二人区が出てくればどうしてもその矛盾は拡大せざるを得ない。ですから、これを残す場合には二人区を作ってはならぬと思うのです。そうすると、二人区が出てくるとここでくずれてくる。あなたの御説明通りです。それから、いま一つの問題は、繰り上げを否定してしまえば、同点であっても何であっても、とにかく当選者がきまったらあとは補欠選挙をやるのだということにきめてしまえば、矛盾がなくなる。繰り上げ当選を認めないということにしてしまえば、その矛盾は、ほかの理由が出てきてもこの場合は矛盾がなくなる。割り切ろうとすればこうする以外にない。それから、繰り上げ補充を認めるならば同点者に限るということは、二人区、三人区の場合にはやってはならない。この点に対しては、政府原案は、私の想像でありますけれども選挙制度調査会答申案考え方に基きまして、一人一区を貫いたものとしてこれが出てきた。これは矛盾がない。そこに、二人区のような、あるいはゲリマンダーをくっつけてきたから、こういうところに馬脚を現わした、こういうことになる。知恵の足らなさかげんがここに出てきた。あるいは、知恵があっても無理をするものだから、無理というものはどこかにはみ出してくるということを、ここに露呈してきておるわけです。そこで、せっかくここに修正案が出てきたのだから、こういう修正案を作るときには、こういうものに対してやはり訂正を加えて出すべきものではなかったかと私は思うのです。そういうわけで、実はこう言って修正をされた青木さんに伺えばよくわかったと思いますが、今お聞きの通りで、政府改正案というものは以上の矛盾をはらんでおるわけであります。お認めになったように……。その矛盾のまま、政府が間違っておるけれども、同じ政府の同類だから間違ってもいいということは、常識的には判断はできる。しかし、建前を異にして出てくる以上は、そういう矛盾が発見された場合には、そういう点を改めるという行き方が正しい行き方だ、こう思うのですが、こういう点に対する改正の御意思はございませんか、どうですか。
  187. 青木正

    青木委員 井堀委員のお話はよくわかるのでありますが、認識の問題といいますか、あるいは見通しの問題といいますか、私どもは、選挙区画定委員会において答申さるべき新しい区割りというものが、やはり一人一区を原則とした、大部分は一人一区制を採用したもの、こういう認識のもとに立っておるのであります。井堀委員のお考えは、おそらくそうではなしに、この画定委員会の結果は二人区あるいは三人区が出てくるんじゃないか、こういう御判断のもとにそういう議論になったと思うのでありますが、われわれは、そうでなしに、調査会の答申を基礎として尊重して作成さるべきものである以上、やはり大体の筋としては一人一区を中心としたものが出てくる、かように考えるのであります。そういたしますと、お話のごとく、大部分が二人区、三人区であるならば、同位者の繰り上げ補充という問題はおかしいのでありますが、大部分が一人一区である以上、やはりこれは政府考え通り同位者の繰り上げ補充、こういう制度を採用する方がより適当ではないか、かように考えるわけであります。
  188. 井堀繁雄

    ○井堀委員 青木さんの答弁で、二つの事柄にお答えいただかなければならぬ。一つの、仮定上の事実でありますが、一人一区が貫かれれば矛盾がないということは、これはたびたび私が言っておる。提案者は何か一人一区を画定委員会に押しつけるというお考えであれば、これはいい。これは押しつけられるのですか。
  189. 青木正

    青木委員 私どもは、画定委員会に対しましては、これはあくまでも公正なる第三者として、その判断のもとに作っていただきたい、こういうことで、押しつける気持は毛頭持っておりません。ただ、しかし、この附則に明らかにしておるごとく、調査会の答申を尊重してやってもらいたい、こういうことを希望しておるのであります。しこうして、調査会の答申というものは、私が申し上げるまでもなく、はっきりと一人一区という線を出しておりますので、これを押しつけるわけじゃありませんが、調査会の答申を尊重する以上、必然的にそういう結果が出てくるんじゃないか、こういう認識に立っておるわけであります。だからといって、画定委員会が一人一区制を採用しなければならぬなどということを押しつけることを、私ども意味するものではありません。
  190. 井堀繁雄

    ○井堀委員 もちろん、この法案を見れば、どこにも決して強制はしておりません。ただ尊重という問題が出てきましたから、この点をこの機会に明らかにしておきたい。話がちょっと脱線いたしますが、午前中の総理大臣社会党質問に対する御答弁の中で、調査会の答申に対するお考えが実にあいまいに答弁されておるように私は善意にとったのです。しかし、答弁の中から結論を出しますれば、明確な答えになると思う。その明確な答えは、調査会の答申を尊重するということに対して、参考にするというお答えをしておるわけであります。これは非常に重大な答弁だと思うのです。先ほど、滝井委員だと思いましたが、参考ということと尊重という言葉意味について論議がありましたが、これは常識で、そうむずかしい論議を必要としないと私は思う。尊重ということは、これは言うまでもなく非常に道義的にも強い圧力を感ずるわけであります。参考にするということになれば、これはきわめて軽く扱う結果になることは間違いありません。だから、総理大臣は総裁でもありますが、あなたの党の代表者は参考にするという程度のお気持で、またそれを逆に言えば、画定委員の裁量というものに大幅の信頼をかけておいでになるということにもなると思う。こういう意味で私は善意に理解しておるのであります。それは今の青木さんの答弁がいわゆる政治的な答弁になると思うのでありますが、尊重という言葉を使いながら、他の面で拘束するという、言い方にもなるわけであります。ですから、こういうことがこういう条文の中に出てきたので、疑義をただしておかなければならぬ責任を私は感じましたから、この点に対する質疑はもっと明確にしておきたいと思う。あなたの言葉を借りて言いますと、二人区を絶対に作らぬということ、あるいは三人区は間違ってできないという確信はどこにもないということは、大へん明らかだ。何回も明らかにされた。そうすると、二人区はあなたの方の政府の出されたものにも二十区もあるのですから、このことは何人も今日の場合に断言はできないと思う。だから、一応ここの場合には大事をとって、二人区もしくは三人区が出てくる場合があってもという覚悟はなければならぬと思う。その上に立って私は御答弁を求めたいと思う。あなたが一人一区を貫きたいという御意思であるということと、次に生まれてくるものとは違うわけです。希望的な観測と現実とは答えが違ってくることはやむを得ぬということは、ここにおいて明らかになった。そうすると、二人区が出た、三人区が出た、そういうときに、この条文は非常に矛盾するという例をさっき私はあげたわけです。これに対するあなたのお答えがないわけです。矛盾しないというなら、どう矛盾しないかということを説明しなければならぬ。矛盾があればそれをどうして除去するかということを、ここに明らかにしなければならぬ。これは言うまでもないことである。まず第一に迷うのは、画定委員会が迷惑をする。その次には、この法案審議しなければならぬ次の国会におけるわれわれの任務の上においても、重大な過誤を来たすと思う。ひいてはこの法律選挙の全体に影響を及ぼすことでありますし、のみならず、先ほど来繰り返しておりますように、われわれ当事者の問題ではなくて、有権者である善良な第三者に対して制限を加える結果になるわけでありますから、事柄はきわめて重大である。このことを明らかにする任務がありますから、どちらかにはっきりしておく必要がある。
  191. 青木正

    青木委員 附則の第十項にありますように、画定委員会別表を作成した場合には、内閣総理大臣がその案に基いて提出しなければならぬ。この場合においては「その案に基いて」と書いてあります。これは、先ほど来政府からもしはしは答弁がありましたように、「基いて」というのは、事務的に非常な見落しがあるとかいうような場合は別として、大体そのまま出す、こういう考え方になっているわけであります。  それから、第九項の方の調査会の答申を尊重する、こういう考え方は、その第十項の基いてというほどの意味ではもちろんございません。そのまま出すということではないのでありまして、調査会の答申をあくまでも尊重するという考え方でありますが、しかしながら、私どもは、決して画定委員会に押しつける、あるいは、画定委員会の作業に何らかの制肘を加えるという意味では毛頭ないのであります。しかし、何といっても調査会の答申を尊重するという考え方に立っておりますので、調査会の答申が一人一区制を採用している以上、結果として出るものは一人一区制に重点を置いたものが出てくる、かように判断するのが常識ではないかと私は思うのであります。しこうして、政府案で繰り上げ制度を認めたその考え方に賛成いたしまして、例外的に二人区があるといたしましても、大体が一人一区である以上は、繰り上げ補充の制度は存続しておくべきである、かように存ずるのであります。
  192. 井堀繁雄

    ○井堀委員 提案者の青木さんに重大なことで私は一つ警告をいたしたいと思うので、あります。それは、提案者が提案理由の中でも言っておる。この提案説明をあなたがなさったときに、こう言っておられるのです。右改正案——というのは政府案ですが、右改正案が一日も早く成立することを期待し、これに努力をして参った。しかるところ、先般本院議長あっせんの次第もあり、諸般の情勢を考慮し、この際この改正案に対する修正案を出してきた、こうあなたは説明をされておる。でありまするから、あなた方のお考えは、政府原案を支持するというお考えであることは間違いないわけです。しかし、それを変えなければならなかったのは、議長のあっせんがあったからだ。言うまでもなく、議長のあっせんは、これを尊重しなければならぬというのである。議長のあっせん案は二回行われた。第一回目のあっせん案は不調に終りました。第二回目のあっせん案が実を結んで、今日修正案の形であなた方が出してこられたことは明らかです。そこで、あなた方が、また私どもも協力を誓いました議長のあっせんの内容というものは自民党にはどういう工合にしたか知りませんが、社会党に提示されましたものは二案あった。この二つの案のうちいずれかを選んでもらいたいという決定的な態度で協力を求められた。そのうちの一案が、ここにあなた方の修正案として出されて、これの審議を進めようということになったわけであります。いま一つの案については、ここに私はメモをいたしておきましたが、こういうのです。これは、今あなた方が出されたのは、附則の中に調査会の案を尊重することを表明して、そうして次期の通常国会までに区画画定委員会の七人ないし九人くらいの委員によって区画をきめて、次の常会でこの案を取り上げたらどうかという意味のことなんです。これはここに詳しく出ております。もう一つのは、小選挙区制を原則とするということを附帯決議の形で明らかにして、そうして例外として二人区も認め、また区画画定委員会が三人区を必要と認め、あるいは与野党がこれに対して一致の同意をした場合には、こういうこともあり得る。こういう二つのものを示されて、このうちのいずれをとるかということで、わが党ではそれぞれの機関に諮り、私どもも相談を受けたわけであります。そして結局前者をとり、ここにあなた方が修正してきたものと四つに組んでいる、こういう形になっている。でありますから、議長の発意の中には三人区があるのですこれは私は何も法律的な拘束を受けるわけではございません。政治家が道義を無視すれば別でありますけれども、私は、民主主義政治の際における政治家の道義的な要素というものはきびしく要求されておると思うので、このことを申し上げるのでありますが、そういうような問題をも考慮いたします場合に、この関係というものは私は非常に重大だと思います。こういう前提もあることでありまするから、画定委員会というものがどういう区割りをしてくるかということについては、ここに設けられておりまする抽象的な要望事項以外は決して強制されないということは、たびたびあなたの方も明らかにされまして、私どももそう信じておる。そうしますと、二人区あり三人区ありと一応考えなければならぬ。絶対ないということは言えぬ。あった場合にはどうするか。これは非常に困ります。どっちをとりますか。二人区、三人区が出てきたら、二人区、三人区をたたくか、あるいはこの方を直すか、どっちか一つですが、どうしますか。
  193. 青木正

    青木委員 前段の議長あっせんの問題につきましては、私ども法案審議に当りましてそうした問題を論議するのはどうかと思いますので、もっぱら法案についての考え方を申し上げたわけであります。例外的にそういうことが出ましても、私どもは、政府原案がそうであったがごとく、同じような考え方に立って、やはり繰り上げ補充の制度をそのままに残しておいていい、かように考えております。
  194. 井堀繁雄

    ○井堀委員 例外として認められる——よろしいと思います、そうすると、この条文は例外は認められていません。だから、例外を認めれば、これも自動的に例外に処すべき修正が行われなければならぬがこの点どうしますか。
  195. 早川崇

    ○早川政府委員 井堀委員の御案内のように、たとえば一人一区の場合には同位繰り上げをして、二人区の場合には次点者繰り上げも例外を認めろということであろうと思うのでありますが、現在の選挙法の建前を見ましても、たとえば参議院選挙を見ましても二人区の方が多いのです。二人区が原則になっておりますから、次点者の繰り上げを認めている。中選挙区の場合にはむろんのことでございまして、原則の方を中心にこの問題は考えられておりまするので、先ほど申し上げましたように、一人区が少くとも原則であり、例外の二人区がもしできた場合にも、今の選挙法の場合から考えましても、別に次点者繰り上げの例外を認めるというのはおかしい。やはり原則に準じて同じ繰り上げだけを認めるというのがむしろ理論的ではなかろうか、かように考えておる次第であります。
  196. 井堀繁雄

    ○井堀委員 早川次官は割合良識的な答弁をしておる。それは、一方に例外を認めれば、例外に付随したものをこの場合考えなければならぬというのは常識なんだ。だからここはどうしてもその点の手入れが必要だ。手入れがないとすれば、すべての国民法律の前に平等であるということからいきましても、二人区のところで選挙権を行使する者と、一人区のところで選挙権を行使する者の差別ができる。答弁が簡単に得られませんが、修正する方の側は、まだ時間がありますから、悪いところに気がついたからお直しになるように、少し考える時間を残して次に進むことにいたしましょう、  次に、修正された個所についてお尋ねいたしたいと思うのであります。それは、第一に、世論の前に頑迷な態度を改められたということは、さすがにりっぱな態度であったと思うのであります。その一つは、立会演説会を復活されたということは大いにほめてあげていいと思う。そこで、立会演説会には今までの経験を通じて是正を要すべき意に手を入れられたという点についても、私どもはこれを認めてよいと思う。そこで問題がある。すなわち立会演説会の特徴について世論の前にあなた方が率直に従われた。同時に、その欠点の一部をこの際修正の形で改めようというので、この条文の中ではこう言っております。すなわち、演説会の秩序を維持するために、演説会を妨害するような行為に対しては、今までの既存の法律でいきますと、そういう行為者を退去させることができるという表現であった。それをさせなければならないという規定に置きかえた。これは私は一つの特徴があると思うのであります。一つの前進だと認めてもよいと思うのであります。しかし、この規定を設ける場合に考慮を要すべきことがある。この点について、私は、政府とそれから修正案を出された側とその立場が違うと思いますから、それぞれ変った答えでけっこうでありますから、お答えをいただこうと思います。そしてこれはできれば警察行政の責任者でありまする大麻国務大臣あるいは法務大臣の出席を求めてたださなければならぬ事柄だと思うのでありますが、私どもの方からその要求をしておきませんでしたから、また別な方法で明らかにしなければならぬと思いますが、これは、御案内のように、退去させることができるという場合においては選管は義務づけられておるというけれども、消極的な義務なんです。今度は積極的な義務を行使しなければならない。そして立会演説でありますから必ず複数であります。甲乙をつけてはならぬわけであります。ある者は、甲の候補者に対しては好意的に聞いて、乙の候補者に対してはヤジを飛ばすとか、あるいは妨害行為をするということは必ずあり得ることであります。その場合に、同じような程度で取り締るという言葉は適当でないかもしれませんが、その処置をとらなければならぬことは言うまでもない。それは行政的処置であります。この発動は非常な義務づけとなりまして、選管としては重大な決意を必要とすると思うのであります。もちろんそれは政令で定めると言うかもしれませんが、この点に対して、自治庁は今後の選挙の秩序を維持するための直接間接のいろいろな責任の行政庁にもなりましょうし、これが警察と関係がどうなる、あるいはこれがやはり選挙妨害のかどによって選挙違反で告発をされれば、起訴不起訴の関係で裁判の関係にもなるわけでありますから、罰則規定が厳重にあるわけであります。この辺の関係について、まず政府は、こういう規定が出てくると——これは政府は提案者ではなくて、そういう行政庁との関係についてどういうふうにお考えをしておられるか、この点を一つお伺いいたします。
  197. 早川崇

    ○早川政府委員 政府原案におきまして立会演説に非常に消極的であった理由は、御承知のように、二大政党対立になり、会場の秩序がなかなか保ちにくいのではないかという心配が一つの理由であったと思うのであります。従って、従来のようにできるというのを、会場外へ退去させなければならぬとしたことは、確かに私たちはけっこうな修正だと思うのであります。しかし、これは限度がございまして、今申されましたように、Aという候補者のときのヤジに対しては手心を加えて、Bという候補者のときのヤジに対しては退去を命ずるという不公平があってはなりませんので、秩序保持のためにほんとうに必要であるという場合に限るべきものだと考えます。また、候補者によって非常に差別的なことをやりますると、これは選挙の公正を害します。そういった面からまた候補者の方から抗議をする道も開かれておるわけであります。これが非常にひどくなりますると、選挙無効の訴えもできるわけであります。そういう点で救済規定がございまするから、乱用に陥るということはあり得ないものと考えます。
  198. 井堀繁雄

    ○井堀委員 これはその認定が問題になるのです。公平の原則は抽象的には何人も疑う余地はない。選管は公平であるべき立場であります。また公平であることを信じたい。信ずることができる。しかし、発生する事態については公平の原則がなかなか適用しがたいということもまた予想ができる。でありますから、このことは今始まったことではないのです。たびたびこういう専門家の間では論議されたことなんです。しかし、これを取締りの形において行うことは、警察権を用いるとか、あるいは行政的圧力を加えてこれをやるということになれば、どうしても選挙が暗くなる。でありますから、七分三分のかね合いということが言葉の上ではありますけれども、これを実施する上には非常に苦心を要する。その一番苦境に立つのが選管の当事者なんです。この判定は選管がやる以外にない。選管もまた人の子です。政治的に全く空白とは言えません。政治思想を持っておるわけです。この点に対して、修正をなさった方の側の、これはお二方ともいずれも経験豊かな方でありますので、確かにいい意見があると思いますから、一つ聞かせていただきたい。
  199. 青木正

    青木委員 立会演説会を復活した理由等につきましては、私も、ただいま早川政務次官から述べたと同じような考えで、できるだけ演説が正常な形で行われるようにすれば、立会演説会そのものは望ましいことでありますから、そういう障害をできるだけ少くして立会演説会ができるようにしたい。そこで、現行法におきましては、御指摘のごとく、「立会演説会の会場の秩序をみだる者があるときは、これを制止し、命に従わないときは会場外に退去させることができる。」とあるのであります。それが、改正案におきましては、「命に従わない者がある場合において立会演説会の会場の秩序保持のため必要があると認めるときは、その者を会場外に退去させなければならない。」となっております。この考え方は突然退去を命ずるのではないのでありまして、一たん制止する、制止してもなおかつ聞かない、しかも、聞かないばかりでなしに、さらに放任しておくと会場の秩序を乱すおそれがある、こう認められるときに限って退去させなければならない、こういう考え方であります。その認定の問題はもちろん選管がやるのでありまして、こういう場合はこう、ああいう場合はああというように規定することは困難と思うのですが、そこは選管の良識に待つより以外にやむを得ないと思うのであります。そのやり方が行き過ぎであったり、あるいは会場の秩序を保持する上に遺憾の点があっては困りますが、その点は十分選管の方々の良識に待って、法の考え方が適正に行われるように私どもは期待するわけであります。
  200. 井堀繁雄

    ○井堀委員 通例社会秩序を維持するための行政官にはいろいろありますけれども、警察が一番こういう仕事に関係が深い。その警察官については質の向上が長く叫ばれ、警察の民主化が叫ばれておるが、なかな理想に達することが容易でないという現状にある。この警察官の養成については、かなり大きな経費を使って国も力を注いでおるわけであります。にもかかわらず、思うようにいかない世の中だ。ところが、選管は非常勤である。これは、この前もちょっと私が言及いたしましたように、今の選挙管理委員制度を充実しなければならぬというものの一つにも入ってくるわけです。いわばしろうとです。ところが、この会場における取締りというのは、治安警察法や治安維持法あるいは違警罪即決令、行政執行法といったように、一警察官が人の自由をいつでも拘束できる、いつでも逮捕できるような、そういう強権を与えて、多衆運動を取り締った戦前の日本の経験があるわけであります。そのときにも激しいトラブルが幾回となく繰り返されて、なかなかこういう取締りというものは困難なものとされておるわけであります。ことに、選挙運動の場合においては、他の犯罪取締りの場合における警察官の行為と異なりまして、相手は自分の行為に対して反省する、すなわち自分が悪いという意識をもってやるよりは、自分の行為が是なりと信じている者すらある。たとえば、自分の支持する政策をぜひ政治に実現させたい、こんなりっぱな候補者をぜひ一つ議政壇上に送り込みたいという情熱を込めて、会場に詰めかけている人たちが相当あるであろうとみなさなければいけない。それをこの規定は取り締れということを命ずるわけです。これはむずかしいですよ。(笑声)諸君は不謹慎に笑っておられまするが、これは笑いごとじゃない。実際問題になりますと、非常にむずかしい。むずかしいから、これを忌避する、あるいは見て見ないふりをする。避けて通ったら今度は逆に選管は責任を追及されますよ。今までしなければならぬということじゃない。「ことができる」、だから、やらなくたって責任は追及されない。今度は、しなかったら、必ず、職務に不忠実であるという道義的責任はとにかくとして、積極的に選挙妨害をしている者に対してお前は見送ったということは、これはえらいことになる。この点に対しまして、一体選挙管理委員会の機構をこのままの姿で、こういう非常に至大な困難な任務を遂行させることができるか。これは自治庁に伺うことはどうかと思うのでありますが、自治庁はこの点に対して選管との間の関係をどうお考えになりますか。早川次官はかわるから、ほんとうは次長の方がよかったかもしれないが、こういうことについてお考えがあるはずだから、こういう事態が出た場合に、一体政府は選管に対してどういう扱いをされるか、処置を伺いたい。
  201. 早川崇

    ○早川政府委員 実は、立会演説会なんかの会場が非常に混乱した場合に、候補者から突っ込まれる場合の心配を各地の選管委員は持っております。そこで、政府原案におきましては、立会演説会はやめたわけでありますが、しかし、いずれにいたしましても、立会演説会をやる以上、この前中垣委員なんかの話を聞きますと、全然聞えないような妨害をするのがあるそうです。それでは立会演説会の目的を達しませんから、選挙管理委員会は若干これによって責任は加重されまするけれども、しかし、ここに書いておりますように、そこにはおのずから程度があるのであって、立会演説会の会場の秩序保持に必要な限度というものは、かなり妨害がひどい場合をさすと私は思います。そこは、各候補者の良議をもって、ちょっとヤジがあった、いや、これは妨害じゃないかということでなくて、大体の良識でこのことは処理されると思いますので、選挙管理委員会がこれによって非常に困るという場合は出ないのではなかろうか。この条文は、そういうことをも考えまして、実に懇切丁寧に慎重に書かれておると、実は政府側としても敬意を払っておったような次第でございます。
  202. 井堀繁雄

    ○井堀委員 敬意を表するほどりっぱなものでないことを私は残念に思う。これは、御案内のように、秩序保持のためにはいろいろな法律が日本にはございます。しかし、そのいずれの法律を見ても、とても見切れないほどたくさんの条文によって満たされているように、今日の治安維持のための法律もなかなかうまくいかぬのです。このことは私は別な見解を持つものでありますけれども、これを選管の取締りにまかせるというやり方は、根本的に考えなければいけないことじゃないかと思う。これは提案者側も政府も選管の良識に訴えておるようであります。しかし、いかに選管の人が公正であっても、神ならぬ身でありますから——選挙を競っております候補者もしくは運動員あるいはそれを取り巻く一つの勢力というものは、自分のために不利益が行われたということになりますと、必ず選管を責めます。この法案では責められる。なぜ取り締らぬか。その次に、選管がこれは取り締る必要があるとかないとかいう意が、私は非常に重大だと思う。この点は、あなた方がこれをもって非常によくできているなどとおっしゃられることは、冗談だろうと思いますけれども、もう少し真剣に考えなければ、私は重大な事態を起すと思う。選管になり手がなくなる。私はその動機はいいと思うのですよ。立会演説会を静粛に、かつその目的である候補者の演説があまねく聴衆に徹底できるようにしようというその考えについては、私は何らの疑いを差しはさむもの、でない。敬意を表している。しかし、その状態をかもし出すための措置として、選管にその取締りを全く期待するというやり方は危険である。この点に対する明確な御答弁がいただけぬことは私は残念に思うのでありますが、これ以上追及することはどうかと思いますので、またお答えをいただきましてから……。
  203. 青木正

    青木委員 井堀委員の御指摘の点は、確かに傾聴すべき、点があると思うのであります。ただ、私どもがこの条文を作るに当って考えましたことは、選管の委員は、言うまでもなく、中立性を保っておりますので、一党一派に偏することはないであろうということはもちろんであります。同時に、立会演説会場でこの措置をとるのであります。立会演説会場には多数の聴衆がおるのであります。従って、およそ聴衆が納得できるようなあり方でなければ、つまり立会演説会場における聴衆の大多数の者が見て、なるほどこれは無理はないというような状態でなければ、おそらく、選管の委員といえども、この条項によって退去させるということはあり得ないことだと思うのであります。つまり聴衆の大多数が考えまして、退去させることが当然であるというような場合において、初めて、実際問題としては、この条文が発動されることになるのじゃないか、聴衆が見ても無理だというような場合に、選管の方が退去させるというようなことはあり得ない、こういうふうに私ども考えておるわけであります。
  204. 井堀繁雄

    ○井堀委員 今青木委員説明を聞いて、私はますますおそれを抱くのです。聴衆の同意を得られる状態において、こういう職務権限を行うであろうという予測のようであります、私は全く別なことを予測しておる。なぜかといえば、会場騒然としてということは、これは別な言葉をもって簡単にわかるように、群集心理というものは数学的な答えと違うのです。一人々々の心境はいかに静かであり、いかに良識に満ちておっても、その会場に集まった人の雰囲気の中から生まれてくる心理というものは、そうあなたが言うように、良識をもって結論を下すような状態はとうてい期し得られるものではないのです。またそういう状態の場合においてのみ、この条項が働きをするのであります。そこの聴衆が納得できるような状態のところだと、ヤジる者があるものですか。でありますから、この問題は、こう言っては失礼ですけれども、なぜ、原文の中に、しなければならないと書かないで、「できる」と書いておったかということは、このことを考慮のうちに入れておったから、こうしたいのではあるけれども、こうすることが困難だということで、こうした。これは私は非常に重要なことだと思います。決して私は、あなた方に責任を負わして、あげ足をとろうというのではない。私どももその立場になって心配をしておるわけであります。通れば、少数派といえどもやはり共同の責任を問われるのです。むしろそのことからかえって目的と反する事態が起ってくるということになっては大へんでありますから、これは一つ慎重に御考慮を願いたいと思います。
  205. 山村新治郎

    ○山村委員 さすがに選挙に体験を持たれる井堀委員のことでございまして、非常に傾聴すべき点があると思います。ただ今度の小選挙区制を前提とする場合における立会演説の点につきましては、先般来の委員会において相当議論されたことでございまして、小選挙区制を前提として、選挙区が小さくなれば必ず立会演説会は相当にエキサイトするであろう、従って、それによって混乱が起きるだろうというような心配があったのは、これは社会党諸君も認めざるを得ない事実であると思うのであります。特にわれわれが各地の公聴会へ出席いたしましたときも、選管の諸君から、何とか一つ積極的な権限を選管に与えてくれという要望があったのは事実であるのでございます。こういう点等も考えますときに、これが「しなければならない」ということになっておりますと、積極的に選管が両候補者あるいは両候補者の代表のような方々に相談をしまして、その代表のような方がその立会演説会に参っておられる、たとえばAの候補者を代表する者を頼んでくる、Bの候補者を代表する者を頼んで参りまして、AへのひいきのためのBに対する反対ヤジ等が猛烈に出た場合には、その方々が整理をする、あるいは反対の場合には別の方が整理をするという方法を講ずることが、積極的な意味を持つ解決方法ではないかと思うのでございます。従って、先般来の選管の大部分の意見である、ぜひもっとこれを強力にしてもらいたい、強力な権限を与えてもらいたいという要望に基きまして、こういうように強い規定を設けてきたのでございます。あとは、実際問上題といたしましては、たとえば候補者に対してB候補者側のひいきのための反撃があった場合において、その反撃のやり方というものが、あまりにA候補者に対して卑劣なやり方であった場合におきましては、決してこれはB候補者に対するプラス面にならないという点等から考えまして、今、井堀君のおっしゃった御心配は大体ないものじゃないかと、私は考える次第でございます。従って、確かに群衆心理という点につきましては予期せざるものがございますが、ただ、その場合には、積極的な警察権の行使ということがあるかもわかりませんが、一応積極的な権限を持ってもらうという意味から、強い規定にいたしただけであるのであります。この点一つ御了承を願います。
  206. 井堀繁雄

    ○井堀委員 選管の人々から異口同音に会場の秩序保持をいたすための強い要望がありましたということは、私も、今回の地方公聴会の際の選管との懇談会のときに強い要望がありまして、知っております。また、われわれが日ごろ選挙活動をやっております際に、出先の選管の人々がそのことを強く訴えております。しかし、その訴えは、ただ単にわれわれに強い力を持たしてくれというふうに響きますけれども、そうではなく、よくかみしめてみれば、もう少しこういう会場の秩序を維持するよい方法はないであろうかという言葉にとれるのです。というのは、先ほど来この問題で私の意見を述べて質問をいたしておりますように、今また山村君のお答えの中にもありましたように、このことを選管にやらせることは事実上私は不可能であると思う。秩序保持のための協力を聴衆に求めて得られる状態のときは、さして問題はない。今までの通りでよろしい。しかし、もっと拡大されて、喧騒をきわめてきて、演説会の目的が破壊されるような状態もわれわれはたまたま経験したことがあります。そういう場合には一体選管の限られた人でどうしますか。警察権の発動ということになると、選管としてはよほどの決意が必要になるのです。そういうことは好ましくないことであります。そういうような状態に対し、この法律は、ただ単に「させることができる」とある。これは文字の上では簡単なんです。「退去させることができる」とあるのを「させなければならない」と変えては、えらいことになるわけです。私自身も、それではどうしてその秩序を保持するかということについては、この形においては答えが出ないのでありますから、これを追及するのはどうかと思いますが、時間を割愛してもらいましたのは、こういうことに対する何かきめ手でもあるのかと思って、念押しの意味でお尋ねしたのです。私どもと同様の心配があるようでありますから、これは、一つ十分御検討をいただくよう、提案者側にきびしく要求をいたしておきたい。時間の都合もありますから、次に移りたいと思います。  次に、供託金の政府改正案の二十万を現行法の十万円に戻されましたことは、これまた世論に忠実であるという点において賢明であったと思います。そこで、政府と提案者にこの点についてお尋ねをいたしたいと思いますのは、修正案をお出しになりました方は、この十万円を二十万円にするということは、立候補者に対して制限をするおそれがあるという説明をいたした。   〔委員長退席、大村委員長代理着席〕 政府は、十万円を二十万円にしたのは立候補の乱立を防止するという説明に中心を置いておるようであります。この考え方について、この際両者に伺っておきたいと思う。  まず、政府側については、他の委員からも質問がありまして、ある程度意思が明らかになっておりますが、なお念のために伺っておきますが、供託金を十万円を二十万円にするということで乱立を防止できるというのは、どういう根拠に基くものでございましょうか。この点に対して、一つ考え方をこの際はっきり伺っておきたいと思います。
  207. 早川崇

    ○早川政府委員 むろんこれだけでは乱立を防止できるものではありませんので、この前の委員会で申しましたように、いわゆる世にいう泡沫候補——地方の公聴会に参りましても、相当多数の公述人から、いわゆる選挙に名を売るためにやるような候補者が出るので困る、そういう意味で二十万円に引き上げるということは賛成だという御意見も実は承わりましたので、政府といたしましては、そういう立場から、これを二十万というようにいたしたのでありまして、このたびこれを御修正になられるわけであります。
  208. 井堀繁雄

    ○井堀委員 泡沫という言葉がよいか悪いかは別といたしまして、とにかく適当な候補者と一般の大衆が認めがたいような人が、議員になるということとは別の目的で、売名的な目的で立候補する者、あるいは選挙外の特殊の目的を持っていろいろ選挙を利用しようといったような人たちを阻止しようということは、私ども考えるべきだと思います。しかし、こういう者を抑える場合に、貨幣の額をもってそれを抑えるというお考え方が一体どこにあるかを、私はお尋ねしておかなければならぬと思います。というのは、必ずしも貧乏人という言葉が穏当でないとすれば、十万円の金は用意できるが、二十万の金は用意できないから、そういう者を抑えることができる、あるいはまた大体十万円、二十万円くらいの金が今日用意できないような者は、それは他目的を持った不心得な候補者だというように、貨幣の額でこれを抑えようとするのには、何か根拠があるはずです。十万円、二十万円の金額によってそういう者を制限するというきめ手は、一体あなたの方はどこに基準を置いておられるのか、これをまだ伺っておりませんので、伺いたい。
  209. 早川崇

    ○早川政府委員 絶対的な根拠はむろんないわけでありますが、十万円というのはもうずいぶん物価の低い時代からのもであります。さらに、政党本位の公認候補者制度争いでございますから、いやしくも大政党の公徳候補となり得る人の場合には、これは取り上げるのではありませんので、法定得票数を取れば当然返るものでありまして、公認候補になる以上は、その二十万程度の信用力というものは選挙にもやはり五十万、七十万という金は要るわけでございますので、不当な金銭上の制限とはわれわれは考えなかったわけでございます。お金によってきめるという意思はむろんございません。
  210. 井堀繁雄

    ○井堀委員 あなたのお答えは非常に大きな矛盾があると私は思うのです。今一つお答えになった中で、二つの違った意味が私に受け取れる。一つは、十万円を二十万円というものの表現は、信用度——信用というお言葉をお使いになったが、なるほど十万円のお金ができる者より二十万円のお金ができる者の方が——そのケースは別として、財力その他の信用度というものは、そういうもので考えることはできるが、選挙の場合に立候補する者に対して、そういう信用測定のものさしというものは、どうもわれわれには理解できない。この点に対する説明一つの必要になってくると思う。もう一つは、あなたが、今、もちろん金だけではない、ほかの要素もありましょうけれども、相当選挙には金がかかる、と同時に大政党の公認ということになればと言って、政党をここに持ち出しております。政党が公認する場合に、供託金だけは政党が出すというふうにでもきまっていれば、政党の大きさを財政力によって測定するということも一つの道ではある。しかし、政党の公認を得るために供託金の額がどういう影響があるでございましょうか。この二つの問題について、あなたはお答えいただかなければなりませんが、これはどうでしょう。
  211. 早川崇

    ○早川政府委員 これは自分が二十万を持っているという必要はないのでありまして、たとえば、社会党で出られるのであれば、日教組とか組織を通じまして百万、二百万とたくさんの金を集めておるような現状でございます。それが一つの信用力。そういう点から申しまして、法定得票数を取れば返してもらえる二十万程度のお金を、あるいは組織を通じ、支持者を通じ——自分自身が持っている必要はないのですから、その程度は、世にいう選挙に売名的な泡沫候補というものを防ぐ意味においてのめどとして、さして高過ぎるものではないじゃないか、こういう意味でございます。だからといって、政府としては、十万に引き下げたならばけしからぬというように、絶対的な反対をするものではむろんないのでありますが、われわれとしては、この程度のものは不当な高い供託金だとは決して思っておらないのでございます。
  212. 井堀繁雄

    ○井堀委員 あとの方の答弁はいただけなかったのですが、信用を貨幣で表明することは、資本主義社会における商取引としては私は一つの常識だと思う。そういう常識をここへ持ってこられたというならばとにかくでありますが、しかし、これが国民の納得を得るようなりっぱな候補者であるか、あるいはそれがしからざる候補者であるかということを金額で表明するという考え方は、私は非常な誤まりがあると思う。なぜかというと、供託金の性格というものに言及していかなければいけないのじゃないか。供託金の問題は、ただ単に乱立を防止するというだけのものではなくて、やはり供託金を没収されるということは、一つには、選挙に、ちょうど裁判所その他における保証金の制度のようなものの思想が、ある程度取り入れられていると思うのです。でありますから、返すには返す信用保証金というように考えられている向きもあるかと思いますが、額の問題は、この際インフレの水準に従ってという議論が出てくれば格別なものになりますが、そういうことよりも、もっと大事なことは、この法案改正の基本的な方針に並行して、マッチして、こういうものが考慮されて出てきたものであれば、私は格別不思議と思わない。これは、政府もたびたび言っているように、この選挙法改正は、まず選挙を公正に行なって、国民の信頼が政党に集まる、その信頼された政党議会内に多数を占めた方が政府を作る、言うまでもなく、間接的ではあるが、国民の信頼をかち得る、真の民意を代表した政府を作りたい、こういう考え方にほかならぬわけでありますから、これはあくまで民意を正しく反映する選挙を行おうということであります。その場合に、日本の現状からいきまして、十万、二十万という金額をどの水準に持ってくるかということが、私は判断の一つの対象にならなければならぬと思うのです。これは理屈を並べていきますと、むずかしいことになるのでありますけれども、一応大まかに見なければならぬことは、国民所得の、あるいは国民の冨の所有高に対する一つの目安というものが必要になる。それを簡単にいいますならば、貧乏人、金持ちということではありません。要するに日本の国民の所得水準というものはかなり低い。それから貯蓄の限度、富の高というものは非常に低いのです。私はここに統計を持ち合せておりませんけれども、これは内閣の統計を見ればすぐわかるのであって、その統計から十万円の負担能力という水準を引いてきますと——さっき早川さんは自己支弁の形という言葉を使われたが、私もそう考えたい。他人の力によらないで、候補者の自己の力によって納め得る限界を十万、二十万という金額で言い表わしますと、私は、国民の全体の水準からいうと、かなり高いところに引くべき水準になってくると思うのであります。それを、ただ十万から二十万——百万も二百万もいつでも金が自由になる人にとっては、これは五十歩百歩で、しかも選挙期間中預けておけば返ってくるのでありますから、大したことではありますまいが、しかし、何とかして自分の政見、政策政治に反映させたいという情熱を持ち、またその行動力と能力を持っております人々は、必ずしもその十万円水準以下の者にはないということは言えないはずである。相当あると思う。でありますから、もし政党公認制度を確立し、政党選挙責任ある地位を持とうとする場合においては、こういう供託金のごときものを政党が負担するという建前が一方にとられる場合においては、これはまた十万、二十万ということが別に議論されていいと思うのです。しかし、自己支弁の場合においては、候補者にだれでもなれるという門戸はできるだけ広くするという行き方が、私は民主的な望ましいあり方ではないかと思う。そういう意味で、高くするよりは低くした方がいい。しかし、それは限度をどこに置くかという良識水準があるわけでありますから、こういうことが十分に検討されて、十方が二十万になったということでありますれば、意見は別として正しいと思うのですけれども、何だかとにかく漠然と、インフレが高進してきたからそれに並行して上げるというようなことでは、これは不見識きわまる。選挙法改正の中に取り入れるべき意見ではない。  そこで、政府の意見はわかりましたので、修正をされました側の所見を一つ伺っておきましょう。政府は以上のような御見解のようであります。どうせ、あなた方の方は、評判が悪いから、どうも十万を二十万にすると言ったら、金持ちのために貧乏人を制限したように受け取られるというような見方もあったようですが、そういうことで、私今ちょっと触れましたように、選挙法根本的な精神から考えてこれは現行法の方がよろしい、二十万ははなはだどうも当を得ない、こういうふうにお考えになったのですか。世間がうるさいから、とにかく風よけのためにここまで下げてきたのか、そこら辺を正直に聞かしていただきたい。
  213. 山村新治郎

    ○山村委員 供託金を十万円にしたがよろしいか、二十万円にしたがよろしいかという問題は、非常に議論の分れるところだろうと思うのでございます。私どもの方においてこれを修正する場合におきましても、あらゆる角度から議論が展開せられました。特に先ほど政務次官からお話がありましたように、現行法におきましては十万円ということがもう当りまえのようにして守られておるのでございます。この現行法が最初に十万円ときめたときから思いますと、貨幣価値も相当違っておりますし、あるいは泡沫候補というとまた問題が起るかもしれませんけれども、いわゆる売名候補、ほんとうに当選の見込みのない方々がいたずらに立候補するということは、それによって名を売ろうとか何か目的があるはずでございます。従って、そういうような売名行為なりその他のからの立候補をいたすことによって生ずる利益というものと、供託金をなくなした損害というものと、どっちがバランスがとれるかということによって、初めてそういうような候補者がなくなるということも事実じゃないかと思います。そういう点からいいまして、ある程度まで——十万を二十万にするという議論もりっぱに成り立つと私は思うのでございます。しかし、このことは、一面におきまして、井堀さんがお金がないということはないと思いますが、あなたのようなりっぱな方々が立候補の制限をされるという結果になることは非常に困るということも考えられましたので、立候補に制限はないものという意味合いから、現行法通りにしたわけでありますから、これには社会党諸君も御賛成のことであろうと思うのでございます。
  214. 井堀繁雄

    ○井堀委員 山村君から大へんよい意見を聞いてうれしく思うのでございます。ただ、それにつけても、政府の無定見を与党がこきおろす結果になることも、まことにお気の毒と思うわけです。この点では、政府のお考え方よりは、同じ政府責任をもってささえております与党議員の良識の方が、はるかに高いものであったということになるわけであります、これは議論の外になりますが。  そこで、もう一点だけこの点についてお答えをいただくことが今後のためにいいと思いまするが、片方は、供託金を一千万円にするということによりまして乱立を防止するという建前でこれを上げたが、片方は、制限をすることになるからこれをはずしたというお考えで、きわめて明確になりました。これは正直にそうあるべきだと思います。そこで、供託金の制度政党責任との関係であります。供託金は個人が積むわけでありますから、これは個人本位の建前を貫いておるわけでございます。現行法はそうなんです。ところが、今度の改正束については、あなた方はそれはそのまま是認されておりますから、政党選挙活動に入るわけであります。これは、当然、個人が供託金を積むと同じ意味において、政党選挙に対する責任をどういう工合に果していくかということが、この場合考慮されてこなければならぬ。こういうものに対して何かお考えがございますかどうか。
  215. 山村新治郎

    ○山村委員 お互いに将来は一つ政党でもって供託金を積んでいただけば、こんなありがたいことはないと考えておる次第でございます。
  216. 井堀繁雄

    ○井堀委員 これは簡単に。政党が供託金を積むなんということは私は考えてはおりません。そうではないのです。これは政党法の構成の内容に言及してくることになるのでありまして、当然、こういうものをやる場合には、一方には法人格を持たない——法人格を持たないから社会に対する責任が問われないというふうに私は考えたくはありませんが、道義的には問われるにしても、法律的には人格のない——たとえば、もし政党責任を問われる場合に、その責任を総裁が負うというふうには、法律の上では必ずしもならぬわけである。こういう点からいきましても、供託金制制度考え政党がやはり個人と同じような意味において選挙責任を持つことになれば、供託金制度だけではなくて、政党法に考えを移すべきであって、こういう点に対する修士は今度は何らなされていない。政府は、私ども質問に対して、政党法を同時に出したかった、しかし間に合わなかったという意味答弁をしておりますが、政府より進んだ考え方を持っておられる皆さんの方では、政党法については一体どういうお考えを持っておられるか、次の常会までだいぶ間があることでありますから、そういう法案を用意される御用意があるかどうか、この点に対する御見解をお伺いしたいと思います。
  217. 青木正

    青木委員 お話のごとく、私ども政党法を作ることが適当と思うのであります。そこで、私ども自由民主党におきましても——お話でありますので率直に申し上げますが、政党法を研究しなければいかぬ、こういうことで、実は自民党内の憲法調査会におきましても……。   〔私語する者多し〕
  218. 大村清一

    ○大村委員長代理 お静かに願います。速記がとりにくいそうですから……。
  219. 青木正

    青木委員 政党法の問題を取り上げまして、研究をいたしたのであります。御承知のように、ドイツ憲法におきましては政党のことがはっきりと規定されております。そういうようなドイツ憲法のあり方等もいろいろ考えまして、将来日本におきましてもやはり政党法というものが必要じゃないか、こういうことで研究を重ねておるのでありますが、まだ法案提出に至るまでの段階に、至っていないのであります。しかしながら、考えといたしましては、お話のごとく、私どもも、できるだけ早い機会に政党法というものを作りまして、政党をはっきりした基礎の上に置くべきである、かように考えております。できることならば、できるだけ早い国会に提案ができるように私どもも協力いたしたい、かように考えております。
  220. 井堀繁雄

    ○井堀委員 政党法をお作りになるという御意思が明らかにされましたが、それも、今回の法案改正修正案に貫かれておりますように、次の常会までにお出しになるというふうに受け取ってよろしいかどうか。この点、政府が出すかあるいは議員立法の形で出されるか、政府と両方にお尋ねいたしたいと思います。
  221. 青木正

    青木委員 今の段階において、はっきりと次の国会に出すという言明をいたすまでに至っておりません。なおいろいろ研究すべき点がありますので、果して次の常会までに提案の運びに至るかどうか、党側の考えとしても、まだそこまで明確に御答弁申し上げるまでに至っておりません。
  222. 早川崇

    ○早川政府委員 政府といたしましても、ただいま青木委員の言われました通りでありますが、ただ、どうしてもきめなければならぬと私個人が考えておりますのは、公認の規定、これは御承知のようにアメリカあたりでは予備選挙というものが法律できまっております。こういった面でさらに検討いたしたい、かように考えております。
  223. 井堀繁雄

    ○井堀委員 政党の問題につきましては、ぜひ政党法を考慮すべきだと私は思うのでありますが、これは、今の御答弁で、不満足ながら一応期待をそこら辺にかけておきたいと思います。次に、改正の中で、これも世論に従って改正をされようという項目であります。法の二百五十三条の二項の中にあります一年を二年に、さらに三項の二年を四年に変えられた点は、確かに世論に順応した考え方であると思いまして、私どもも敬意を表したいと思いますが、これの改正に対しましては、政府の所見をこの際伺っておく必要があると思います。この点に対するわれわれの質問に対しては、政府はなかなか明確な答弁をされなかった。まっこうから反対ではないようでありましたが、とかく原案に固執された答弁を繰り返しておる。与党世論の前に順応されたのだと思いますが、政府がこれに対して釈然として同意されたについては、何か用意がございますか。また、これに対する政府責任は、依然期限は長いようでありますが、責任は必ず次に具体化されなければならないと思いますが、その用意等についてお尋ねしたい。
  224. 早川崇

    ○早川政府委員 この問題は、私は現在の日本の逃亡時効というものは必ずしも重いとは考えません。過般の選挙で出納責任者が逃げて時効にかかったというような例もございまするので、修正案は適当な改正ではなかろうか、世論の要望にこたえたものではなかろうか、かように考えて賛成をいたしておる次第でございます。
  225. 井堀繁雄

    ○井堀委員 これは他の法律改正が必要になってくると思うのでありますが、その点に対しては政府はいつごろまでにこういう手続をおとりになろうとするか。
  226. 早川崇

    ○早川政府委員 他の法律には関係をいたしません。
  227. 井堀繁雄

    ○井堀委員 これは自治庁にお伺いするのはどうかと思いましたが、御案内のように、ただこれは世論の中にはいろいろな意見がございます。たとえば、逃亡期間一年を二年というふうに延長することによって、そういう犯罪を事前に抑えるという効果をねらっての声もありまするが、私はそれよりも国民に与える思想的な影響を考慮すべきだと思うのです。それは、数はそうたくさんございませんけれども、時効になるまで逃げ切った例を私どもも幾つか知っております。しかし、その逃げた人たちも、しょうすいして全く気の毒なほどで、苦労して出てきておられるという姿を見て、むしろその人にとっては一年でも長きに失すると思われるのであります。しかし、それが国民の無数の第三者に与える思想的な影響というものは、法治国にとっては見落せないことなんです。その日の生活に困って——もっと弁護的に申し上げまするならば、個人の責めではない、社会制度責任であり、政治の貧困から起った、せっぱ詰まって子供のために耐えかねてやったわずかの窃盗がきつい刑罰を受ける。これなんかに対する他の刑法その他の時効の問題もありまするけれども、やはりそういう全体の法体系の上から見て、時効の制限というものをやかましく言ってきておる人人があるわけでありまして、こういう点から、この問題はむしろ政府自身与党修正とは逆な立場をとっている。なぜかというと、与党の立場は、御案内のように議員は同様被疑者あるいはそういう犯罪の対象になる方の側でありますから——みななるというわけではありませんが、だれかなるかもしれません。しかし、政府の場合は、選挙をやる者と国民全体とを等分ににらんでこなければならぬ。この点を、私は、日本政府鳩山内閣にとりましては——与党がこういう修正を加えたということは、もちろん世論の前にこたえたということであっても、政府に対しては猛省を促さなければならぬと思う。法治国における政府責任は、こういう点からいきますと、きわめて重大でありまして、この一点をもってしても、これは政府責任を追及される大きな黒星だと思う。これに対する御答弁としてははなはだどうも単純な御答弁で、私どもとしては、そういう御答弁ではなく、もっとしっかりした御答弁が伺えると思いましたが、遺憾であります。しかし、この選挙法といたしましてはすでにこういう修正案が出ておるので、このことに対する質問はこの程度にいたしておきたいと思います。次は、この改正の中で、附帯訴訟制度手続の意について、政府改正案は別な法律で近いうちに定めるという無期限なものでございましたけれども、今度はこれを期限付で出してきたということも、一つ世論に対する忠実な態度であって、これに対しましても同様敬意を表しておるわけであります。そこで、内容の問題でありまするが、これは言うまでもなく連座制の強化意味するわけでありますから、連座制に対する論議をしておかなければならぬと私は思うのです。修正案を出されました提案者としては、これは必ず次の常会までには立法化をしてくるという約束をはっきりうたってありますから、そうすると、その内容でありますが、この内容についてはつまびらかでございません。これは私どもにとりましては非常に大切なところであって、内容を伺わなければ、ただ単に申しわけ的なものが出てきたのでは、世論を瞞着するという結果になって、世論に忠実な結論にならないのです。世論は連座制を強化することを前提としての要望であることは間違いありません。こういう点について連座制の内容がどういうようになっておるかを、この際私どもは伺っておきたいと思うのです。この点については少し詳しく説明をしていただきたいと思います。
  228. 青木正

    青木委員 連座制それ自体の内容につきましては、私どもは現行法でけっこうだと思うのであります。例のおとりの免責の問題に対するいろいろな見解もありますが、私どもは、現在通りの連座制で、附帯訴訟を次の国会に成立させることによって十分連座の目的は達する、かように考えます。
  229. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 連座の要件、つまり出納責任者あるいは総括主宰者が選挙に関する罪を犯した場合に、検事が、連座して失格するというよりに認めた場合には、附帯訴訟を提起する、刑事事件に附帯して訴訟を提起する、こういうことでその実質は十分ではないだろうか。これ以上、こういう原則のもとにおいて、これをどうこうしようということはできないだろうと思うのでありまして、将来作ります法律は、ただその附帯訴訟の手続をどういうふうにしてきめるかということでございまして、おざなりのものを将来作っていくというようなことは考えられないのじゃないかと思うのであります。
  230. 井堀繁雄

    ○井堀委員 連座制の問題につきましては、私ども考え方は別に明らかにいたしておりますから、述べる必要はないと思うのです。この問題は、世論にせっかくあなた方が順応なされるのでありますから——これはどういうことかといいますと、小選挙区制を採用する場合に、ことごとくにイギリスの例を政府もおとりになるし、また一般もそういう例にならおうといたしておりますけれども、イギリスの場合は、御存じのように、小選挙区制によって選挙違反が全く皆無になるような理想的な姿に達したのには、幾つかの段階と、長い間のかなりのしんぼう強い訓練と経験が重ねられておることと回持に、その中で私どもが強調いたさなければならぬ点は、選挙違反の際における罰則規定が、やはり実際に適応したかなり思い切ったものであった。その一つに連座制の問題があげられております。ことに、この機会に私どもが言いたいことは、これと直接ではありませんが、失格条項などについても考えていかなければならぬ。御案内のように、イギリスの場合には、選挙違反で罰を受けますと、同一選挙区では数年間立候補ができないという規定がある。これは痛いと思うのです。これは候補者にとってはかなり有効な処罰だと思うのです。これは一例でありますが、こういうように、刑罰というものは、他のものと違いまして、選挙をやる者の一番痛いものであって、第三者に最も悪影響の少いものを選ぶという点では、私は一つの特徴のある罰だと思うのです。こういうことはイギリスの特徴を出したもので、日本でもそのままを学べるかもしれません。私は特に日本のように封建色の強い——封建色必ずしも悪いとは言いません。中にはいいものもあるでありましょうけれども選挙の面で出てくる封建的な色彩で、最も悪い点は、それがお家芸になりましたり、事大思想と抱き合って出てくる。そういう弊害をつむためにやはり選挙法違反に対する罰則というものは、そういうものを加味したものを考慮していくべきだ。こういう点が、今度の選挙法改正の中には、政府案からも片りんだに聞くことができません。与党修正についてもこういう点に対する考えが出ておりませんが、ちょうどこういう場合に考えられる事柄ではなかろうか。今までの論議の中にもそういうことがある程度表明されておりますが、この点に対する政府のお考えと、修正をなされようとしたものとの間に——今度の場合なぜ私がこういうことを言うかというと、研究をする期間が十分ある。どんなにあがいても一年間ある。さらに選挙法ができてもすぐ解散選挙があるというわけでもないかもしれませんから、今度は相当川間があるわけです。この期間をわれわれは有効に使っていくべきではないか。提案者側も原案に固執するという酸度はよくない。われわれも勉強したいと思います。この点に対するお考えを今伺っておくことは非常に大事だと思いますので、今これをすぐ直せというのではありませんが、そういう方向を一つ率直に明らかにして、お互いが切磋琢磨し、いろいろ資料を集めて勉強をする。こういう点に対する見解をお伺いしたい。
  231. 早川崇

    ○早川政府委員 この連座制の問題はたびたび議論をいたしました。ただいまの選挙区において立候補の資格を失うというのは、英国の非常に特異なあれであります。ところが、これは日本はすでにとっておるのでありまして、公民権停止というのがそれに当るわけであります。候補者が、あるいは候補者でなくても、選挙違反になりますと、買収犯その他では公民権が停止になります。その場合には当然立候補で、きない。英国の場合にはその選挙区だけでできない、その以外においてはできるというのでありますから、ある意味で日本より軽い面があるのです。従って、井堀さんが今言われました点は、むしろ公民権停止をそういった選挙区だけに限るか限らぬか、むしろ軽くしようという方向での研究課題でありましょう。それ以外におきまして、たとえば減票規定というのは、これは日本にございません。英国で採用されておる制度でございまして、社会党がこのたび御提案になりました。これに対しましては、裁判官の判断で何票ときめる点が難点でございますが、確かに一考の要がある問題だと思います。ただ、ここで、井堀委員にもぜひ一つ御研究願いたいのは、日本の退歩罰則は非常に道義的に重い制度でございます。行政的な行為までも罰する。さらに連座制も限度まで来ております。それ以外の面で選挙違反の悪いところをどうするかという方向に、われわれは検討の重点を置いていかなければならぬ。その点におきましていささか井堀委員とは違いますけれども、今後選挙違反をなくするために、よき罰則の方法がありましたら、どうか今後ともお教え願いたい、かように思います。
  232. 青木正

    青木委員 私どもといたしましても、どうして選挙違反をないようにするか、お互いに真剣に考えなければならぬという基本的な考え方につきましては、井堀委員と全く同感であります。御承知のように、選挙につきましては、あまり厳重に過ぎて選挙の明朗さを害してもなりませんし、だからといって、あまり軽きに過ぎまして違反が出ても困りますし、その間の調整の問題、またどうすれば最も適当にそういう違反をないようにできるか。これはお話のようになかなか一朝一夕にはできないことと思います。しかし、一朝一夕にできないからといって、これを放任すべきことではないのでありまして、お互いに時間を惜しまずに不断に研究いたしまして、何とかして公明な選挙ができるように、これは啓発宣伝もさることながら、法律的にも改善すべき意がありましたら、お互いに研究して改善していきたい、かように私ども存じております。
  233. 井堀繁雄

    ○井堀委員 今早川次官の御答弁の中で、日本の選挙法は列国に比較してかなりきびしい罰則規定があると言われるが、私もそう思う。しかし、それは罰則の共準対象というものが穏当でないという意味に私どもは解しておるのです。それは、さっき申し上げたように、公職から追放する、あるいは公民権を停止する、こういう点は、私は、一つのきびしいながらも他の刑法に比べまして特徴のあるものだと思います。しかし、罰金刑、懲役刑といったようなそういうやり方がきびしいから選挙違反が防止できるというふうには、必ずしも直ちにとりたくないと私は思うのです。これは、もっと道義に通う、あるいは民族の慣習などの中に溶け込んだやはり新しい立法というものが取り入れられてこなければいけない。ローマ法あるいはドイツの刑法をそのまま翻訳したような形のものがかなりあるようでありますが、そういう点ではイギリスのような慣習法に基く法律の体系にやはり特徴があると同じように、われわれは、新しい日本の姿で選挙法の中に斬新的なものが出てくるというように、もっとわれわれ自身が心がくべきだと思います。こういう点で、私は、この機会に、委員長代理でございますけれども委員長にも配慮をわずらわして、この特別委員会法案がこれでなくなるわけですけれども、ぜひ一つ選挙に関する何らかの議題を求めて、休会中も、できるだけ国政の余暇をさいて、委員会は特に勉強していくべきではないか、こういう機会を持つべきだと思っております。  そこで、尽きないのでありますが、最後に、選挙区画定委員会の性格とその機能についてぜひこれはお尋ねしておきたいと思います。   〔大村委員長代理退席、委員長着席〕 これは、さきにもちょっと言及いたしまして政府の所見をただしたのでありまするが、私は、まず第一に、この選挙区画定委員会の性格というものが、さきにも述べましたように、総理府設置法の中の十五条によって、選挙制度調査会という付属機関が厳然として存在しておるわけなんで、ことにその法律の政令によりますると、ここでは七人になっておりまするけれども、五人以内という人数の上では違いがありまするが、これと性格もまたその機能も全く選ぶところのない臨時委員制度あるいは専門調査員の制度、こういうものがあるわけでありまするが、これとどう違うかということについて、私は、たびたび両方を比較いたしまして検討をいたしてみればみるほど、一向に遜色がない、なぜこの法律によらないでこういう新しいものを作ったかについては、どうしても納得ができないのでありますが、この点に対して、何か特別にこういうものを設けたことについては根拠がおありだと思いますが、この点について、一つ提案者側の御回答をいただきたいと思います。
  234. 青木正

    青木委員 申し上げるまでもなく、選挙制度調査会は、選挙制度全般につきまして、国会選挙はもちろん、地方の選挙につきましても調査の対象になっているのであります。その中に専門員を設けて、それでやればいいじゃないかということも、一つ考え方かもしれません。しかしながら、私どもは、この選挙区画定委員会は、形式的には、なるほど総理府設置法に掲げた恒久的なと申しますか、別段臨時的という形はとっておりませんが、しかし、その仕事の内容は、午前中申し上げましたごとく、次の通常国会の前日までに案を作る、これだけの限られたる使命であります。従いまして、それだけの特定の任務を持っておりますので、やはり別個の委員会を作ることが適当であろう。調査会は全般的の選挙制度全体についての調査であります。これは限られたる特定の任務についての機関でありますので、別個に作ることが適当であろう、かように考えて作ったわけであります。
  235. 井堀繁雄

    ○井堀委員 ただいまの答弁では納得ができないのみならず、今の説明によれば、政令にまかされておりまする専門要項を調査せしめるための専門員の制度というものが、全くその目的を注するに十分な制度であるということを説明されるにほかならぬのじゃないかと思うのであります。ただ、こういうことを私がお尋ねをいたしまするのは、御案内のように、今政府はいろいろな委員会の整理に大わらわでありまして、こういう制度をあちらにも作りこちらにも設けるということは、必ずしも好ましいことではない。この点では、委員会の整理に対して一部共鳴をしているわけでありますが、しかし、その犠牲になって、せっかく民主主義を育成していくための新しい一つの試みとして残しておかなければならぬものまでが遠慮なくぶつぶつと切られてきている傾向を考える際に、こういうものを新しく別に作るということによく政府は同意されたものであると思うのでありまして、これは政府の今までの行政整理の行き方と全く矛盾すると思うのでありますが、何か、これに対しては、政府としてこういうものを特に設けた方がよいと思われる強い特徴でもお考えになっておりますなら、一つ説明を伺っておきましょう。
  236. 早川崇

    ○早川政府委員 選挙制度調査会はすでにもう案を出しております。従って、この機会に英国のバウンダリー・コミッションにならうわけではありませんが、純粋の第三者的なコミッションを作るということが必要だと考えるわけでありまして、そういう面で政府としても賛成をいたしたわけであります。
  237. 井堀繁雄

    ○井堀委員 伺ってみると、どちらにも格別私ども納得をさしていただく根拠を伺うことができません。なぜ私がこれをお尋ねするかということは、あなた方修正案を出された方も政府も異口同音に言っておりまするように、選挙制度調査会の三月十三日に答申されましたものに対しては、その尊重を誓っております。また今度の修正案の中でそれをことさらに附則の中に強調されるということは——その調査会の答申をそれほど重視するならば、それ自体を軽視するようなかくのごとき屋上屋を架すようなものを設けることは、非常な矛盾があると私は思う。この矛盾にお気づきにならないでこういうことをおやりになったのか、あるいは、そういう矛盾を乗り越えて、要するに必要性を強調されるものであったと思うのであります。ところが、その後者については、今御答弁があったように、一向にわれわれうなずくものがない。そうすると、日では調査会の決定いたしました答申を尊重するといいながら、その制度それ自身に大きな疑いをかけるようなやり方をするということは、趣旨が一貫せぬのみならず、このことは、この案全体を通じての非常な一つの跛行性が、今後一年ないしはそれ以内に、次の国会でこの法案を論議する場合に、また画定委員会が発足いたして機能を発揮する際に、これは非常な矛盾に遭遇するであろう、こう私は考えまして、建設的な立場でお尋ねをしておるわけであります。しかし、まあこれに対する何かお答えがあれば何でありますが、なければ次に進みます。
  238. 青木正

    青木委員 私ども選挙制度調査会を軽視するような考えは毛頭ありません。また、井堀委員のようなお考えに立って、専門員に画定区割りを委嘱した方がいい、こういう考えもあり得る。同時にまた、私ども考えのように、別の機関を作ることが適当であるという考えもあり得ると思うのです。私どもは、その後者である。別の機関を設けた方がいいであろう、かような考えに立って、こうした方針をとったのであります。井堀委員のようなお考え——専門員に確定区割りを委嘱する、こういう考えも確かにあると思うのでありますが、しかし、この際われわれは別側の機関にこれを委嘱した方がいい、こういう考えに立ったわけであります。
  239. 井堀繁雄

    ○井堀委員 それで十分だと思いますが、私のこの際明らかにしたかったことは、この調査会の答申を尊重するということは、一種の要するに世間をはばかる一つの口実であって、ほんとうは調査会の答申というものはまず政府によってじゅうりんされました。さらにまた、この修正案によって別な機関を設けるということは——その目的のよしあしを論ずるのではありません。調査会に対する不信をきわめて明確に形によって打ち出されたということにほかならぬと私ども思うのであります。この点は今後の選挙法の運命を左右するものになるであろうと私は思うのでありますが、内容について少しく触れてみたいと思うのであります。そういうような意味でここに区画委員会を特に設けられ、この委員会に対し、この法律は次のことを求めておるようであります。まずその一つは、選挙制度調査会答申を尊重して、議員の定数について四百九十七人をこえないようにという、定数に対する一つの条件を持ち出されておるのであります。この条件について私はただしておく必要があると思う。これは政府案に対する質疑応答の中でも何回か言及いたしましたが、ここに新しくお尋ねをいたしたいと思うのは、きのうもちょっと関連質問長官にお聞きしたように、四百九十七という数字に一体どれだけこだわるかどうかということは、この委員を引き受けられる方にとっては非常に心配なことだと思うのであります。これをある程度こなしておかないといけないと思いますので、そういう意味でお尋ねいたします。わかりやすく御答弁をいただきたいと思います。記録に残せばいいのです。四百九十七人以内ということは、四百九十七人から下はどこまでというのか。四百六十六名の現行法でありますが——実際は四百六十七名ですか——この間を言うのであるか、あるいはその四百六十六を下ってもよいという意味なのか。一体どの程度の幅をここに持たしておるか。
  240. 青木正

    青木委員 言葉通りにとれば、四百九十七人をこえないようにということでありますから、それは四百六十七名でも差しつかえないということが言い得るかもしれません。しかし、私ども考え方、またおよそ画定委員が良識に立って判断いたしまする場合に、四百六十七名以下にするというようなことはあり得ないことじゃないかと考えるのであります。しこうして、四百九十七人をこえない、四百九十七人を限度にいたしましたのは、緑風会がさきに作りました小選挙区案によりましても、定員が四百八十名になっております。それから御承知の小選挙区促進会の定員も四百八十名であったと承知しております。現在出ておりまする各方面の考え方、社会党側からは——これはもちろん正式の案とは承知いたしておりませんが、新聞等に伝えられました御意向も、やはり四百八十何名かというふうに承わっております。従いまして、今日まで世間に発表されておりまする議員の定数は、人口増加に伴いましても大体四百八十名か四百九十七名程度、調査会の答申は御承知のごとく四百九十七名になっておりますので、その限度まで、そうしてそれをどの程度にきめるかは、画定委員会の御判断によって御決定を願いたい、かように考えておるわけであります。
  241. 井堀繁雄

    ○井堀委員 その定数を算出する基礎につきましては、さきに私もお尋ねをして、他の議員からも質疑があって、政府の所見は明らかになっておりますが、いま一つそれに追加して明らかにいたしておきたいと思いまするのは、定数の問題を、従来は人口に比例するという、すなわち人口比例の問題がかなり強く前提をなして、また今回の法律案を見ましても、各選挙区の人口は当該都道府県においてなるべく均等になるようにという、都道府県別に対する割当を一応いたしておるようでありますが、そういう割合のほかは、人口についてはこれに比例するやり方を原則のように考えております。この問題については、従来まではそうでありましたが、私どももそのやり方をそのまま踏襲していくか、あるいはこの際、それにはこだわらないで、もっと本質的なものについて考慮を払うべきかということは、今すぐこの国会でやろうとする場合には間に合わなかったのでありますけれども、幸か不幸か相当長期にわたって、区画委員会にも御検討を願い、われわれもこれに側面から協力する立場が作れると思うのです。そういう点から、まだあまり強くワクを与えないでいくべきではないかという考え方が実現できそうに私どもは思いまするので、お尋ねをするわけです。それは、先日も政府に、資料を検討して、きょう出してもらいたいということを要望しておきましたから、これは事務当局からある程度のお答えがきょうはいただけると思いますので、その方を順次発表していただいて、もし時間の関係で困難であるならば、書面で出していただくという便法も考えてよいと思うのです。  そこで、お尋ねを順次いたしまするが、まず第一に、人口に比例させると同時に、人口の配分というものの政治的な一つの背景についてはわれわれが与える。しかし、ここにはちょっと条項の中に、それと思われるものの中で、二つの項目が掲げられております。行政区画、それに地勢、交通、産業などの地域的一体性をあげております。これは事務当局から当然用意されなければならぬことでありまして、法律できまればこれを命ずるわけであります。そこで、きのうちょっと要求した中で、わかりやすいものから申し上げますと、地方、交通、産業、このほかにまだ文化があると思います。こういうような、すなわち文化的な要素や、経済的要素や、歴史的な要素、それに地勢、交通といったような、こういうやや具体的に把握のできる諸条件というものがあるわけでありますから、こういう条件というものを選挙法の定数に並列して、一つの案を作るべきだと思うのであります。ただここで抽象的に地勢といいましても、あるいは交通といい、産業といい、この三つのものだけをあげましても、産業といっても、必ずしも産業が日本全体に上手に配分できているものではありません。重工業地帯があるかと思えば、軽工業地帯がある。あるいは郷土的な産業があるかと思えば、きわめて近代的な高い水準の産業がある、こういう工合に千差万別であります。でありますから、その産業をどういう工合に選挙法に合せて把握するかという基準は、検討しなければいけないのです。そういうものを持たないで、——この七人の人たちが万能ではございませんから、そういうものの便宜をはかるために、資料は用意しておかなければいけないと思う。この用意を私どもはお手伝いしなければならぬと思う。  そこで、産業の一例をとってもこれほどある。交通といっても、鉄道もあれば、船の便もありましょう。あるいは自動車の便利もありましょう。あるいは航空機もありましょう。あるいは徒歩もありましょう。こういう鉄道だとか川だとか海だとかいう程度のものは、一見地図などでわかるものでありますけれども、バスになりますと、なかなかそうはいきません。こういうものについても、もっと体系的な、すなわち選挙法に見合うような体系図を作らねばいけません。運輸省が鉄道計画を進めるために、あるいは海運局が港湾の計画を立てるために用いるような資料をもって、直ちに選挙法資料に持ってくるということは、乱暴ろうぜきであります。こういうものをちゃんとこなしておかなければいけない。  さらにまた、地勢関係でいいましても、山あり、川あり、平野あり、こういうようなもののほかに、この前も論議したときに、盆踊りなどというようなごくわかりやすい話が出たのでありますが、人情、風俗といいますか、文化の交流と申すものは必ずしも一様ではありません。東北と九州と同じようにするわけにはいきますまい。同じ東京といいましても、三多摩地区もあれば、丸の内のようなところもあるわけです。そこには人口の密度というものも出てくるわけであります。でありますから、人口の配分というものは、そう簡単に出てくるものではないのでございます。でございますから、人口の密度の高いところに代表者をよけい持っていくというのは妥当だという議論が許されるのは、こういう諸条件が勘案されて出てくるのであります。こういうものを提案する場合においては、資料として出され、またわれわれとしてもそれを中心にして論議をして、一体人口の配分というものに対する議員定数というものの割合をどう持ってきたらよいか、こういったような論議がなされてこそ、私はよい結論が生まれてくると思う。そういう意味で、こういうものを法律に書く以上においては、その程度の用意は当然しておかなければいかぬ。これはありましたら、あと説明を伺いましょう。  それから、立ったついででありますから、行政区画の問題について言及をいたしておきます。行政区画の問題につきましては、ここでは町村の問題をきびしく規定しておりますが、他の郡でありますとか、その他のたとえば警察管区でありますとか、税務署の管区でありますとか、あるいはいろいろなそういう行政上の幾つかの区画というようなものがあるわけです。特に学区というようなものも出てきておる。こういう区画というものの歴史をわれわれはやはり一応検討する必要があると思う。日本で今起っておりますのは、町村の図面の変更が、ある意味においては革命的に行われておると見ていいのです。この問題は自治庁の所管でもあるかもしれませんが、町村の合併問題というものは、これは私は十分思考に値するものがあると思う。これと選挙法改正を別に考えるわけにはいかぬと思います。でありますから、政府原案の中には、そのことを調整するための機関を用意されたことは、むしろ当然だと思うのであります。今度はこれをはずしました。はずしたゆえか私にはわかりません。しかしまああの案が適当とは思いませんよ。しかし考え方は一つの急所をついておる。そこで行政区画というものは今変更の過程にあるわけです。これは、大きく抽象的に考えますならば、今日のように文化、産業経済、特に交通機関、通信機関の飛躍的な発展を遂げた現状におきましては、ああいう狭い区画や、あるいは従来自然発生的にできた部落から、郷土的な状態というものをつなぎ合せたようなものを、ただそのままにとられたということでは、実情に即しないということになると思う。こういうものを要するに新しい意味での政治の立場から言いますならば、日本の民主政治を確立するその基礎的条件である自治というものを、ただ抽象的に自治制の発展をはかる、政治の自治的訓練を実情に合せて発展せしめるという抽象論は言っておりますけれども、これを実情に即して建設的に運びますためには、どうすればいいかということが出てこなければいけないと思うのであります。私はこれは今後持続する問題だと思いまして、今後これは必ず自然の要求の中からも起ってきます。それから、政治的な成長を拍車いたしますためにも当然考えなければ、それは政治が眠ることになります。こういう要請が一方にあるわけでありますが、そういうときに、ここに一年間の状態を見通して、また近い機会を見通して、この町村の区画だけは割らぬ方がいいということでしょうが、これをなまで私は考えられぬ。こういう点から考えて、もっと行政区というもののあり方について、別な方で論議がされておりますから、これを要するにキャッチしてきて、ここでまた消化する必要があると思う。こういうものに対するある程度の資料が出されてこなければいけない。こういう点に対して、私は昨日ごく簡単に注文をいたしまして、きょうどの程度の御用意ができておるか知りませんが、これを伺ってから、またこの点についてお尋ねを進めようと思っております。大体そういう意味で御質問をして資料を要求したのですが、この資料について、何かできておれば出していただきたい。
  242. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 井堀委員から資料の要求がありましたが、議員三十人が増加することによって、どれだけの経費が見込まれるか、こういう点であったろうと思いますが、これは、昨日御指摘のありましたように、直接的な経費、つまり議員の歳費であるとか通信手当、滞在雑費、立法事務費、秘書手当、こういった直接的な経費の分ははっきりわかるわけでありまして、これは議員一人について約百九十四万五千円ということになっておるわけでございますが、それ以外の間接的な経費になりますと、どういう算定をいたすべきか、予算の組み方が議員と一般の国会の事務費を共通にしてありますので、非常に算定が困難なのでございます。それで一応ある一つの方式で出したものであることを御了承いただきたいのでありますが、庁費、印刷費、審査雑費、こういうものにつきまして事務局と共通な分は、事務局と議員を通じました人間一人当りの費用を算出し、委員旅費のように委員だけで算定できるものについては、それだけで一人分を算出するというような方法でやってみますと、そういった間接費が十二万五千円ということに一応計算されるのでございます。しかし、これは普通の、たとえば議員宿舎の問題とか、そういう臨時的な経費を見込んでございませんので、非常に不正確であるということを御了承いただかなければならぬと思います。なお、そのほかに、三十人定数がふえることによりまして、これも一種の臨時的な経費でございますが、選挙の際に選挙公営の費用が相当増加することが予想されるのでございます。これがもし現在の議員定数と立候補者数との比率がそのまま増加するというように仮定をいたしますと、一人当り九十五万三千円というような公営費が算出されるわけでございます。そういたしますと、この三十人議員定数がふえることによりまして、経常的な経費において約六千万円、それから、何年かに一度起ります選挙によって、選挙公営費についての経費が二千八百万円くらいよけいかかるというような計算になるわけでございます。  それから、選挙の区画画定に必要ないろいろな地形上あるいは行政上の資料についてでありますが、これは、選挙制度調査会において区画の調査をいたしております際にも、いろいろ資料を集めて検討いたしたわけでございます。若干の制約等もございまして、これを本日委員会にお配りするような準備ができておりません。たとえば、先ほど御指摘のありました交通系統、特にバス等の交通関係につきましてもいろいろ資料を作ったのでございますが、これがまだまとまっておらないのであります。  それから、行政的な沿革につきましても、特に市と町村、郡部との関係、またいろいろな行政上の単位につきましては、警察の管轄区域と地方事務所あるいはこれにかわるいろいろな出先機関の事務所については、印刷をしてお配りをいたしたわけであります。それ以外につきましては準備がございませんので、本日提出できなかったわけであります。
  243. 井堀繁雄

    ○井堀委員 議員定数と直接議員の増加に伴う、経費の増大については、概略でも数字がいただけましたのですが、私はこれを一つの足がかりといたします。だから、われわれは、きのうも言及いたしましたように、定数をふやすということによって民意を迅速にかつ正しく国会に反映するという機械的な判断は別といたしまして、もっと工夫をして、もっと少い人員で民意を正しく国会に反映するような道を選ぶということは、選挙法改正の中にとって重大だと思う。そういう意味で経費の問題を考えますと、日本の今の苦しい財政の中から人員をふやすことは、そう簡単にはなしてはならぬことだということは、明らかになったと思います。こういう意味で、とかく議員のお手盛りということについては一番やりいいところでありますから、きびしく反省しなければならぬところであると思います。そこで経費について伺ったわけであります。  これも私は出してもらいたいと思いますが、私の調査したところによりますと、議会が開会されております場合といない場合との関係も考慮したのであります。会期が一日延長されるとどれだけ費用がかかるかということを調べさせたのでありますが、一日会期が延長になりますと約百六十五万二千円の直接費を増額しなければならぬということが、きわめて狭い範囲の予算でも出てきているわけです。こういうものも考えているわけです。今後は図書館とか、その他議院活動を能率的に効果的に行うためには、そういう制度がだんだん発達してくるわけでありまして、このことはぜひ私はしていただきたい。経費はかさむ一方でありますから、議員の質を向上させることによって量の点を補うという行き方も、選挙法改正の際には重視さるべきものだと思います。そういう点が論議されないで、ただ定数の問題のワクをぽこんと画定委員会に与えるということは、責任の所在を問われると思うのであります。こういう点についてもわれわれも勉強しますが、事務当局はもっと懇切な資料を用意されて、質疑応答にいつでも間に合うようにしておくべきではないか。こういう点を要望いたしまして、あまり長くなりましたので、一応この辺で終ります。
  244. 小澤佐重喜

  245. 森三樹二

    ○森(三)委員 修正案につきましてお尋ねしたいと思います。提案者の代表としての青木、山村の両委員並びにこれに関連いたしまして早川政務次官にもお尋ねをいたしたいと思います。  私の最も関心を持つ問題は、この修正案によると、区画割り表は、先般の選挙制度調査会答申を尊重して画定委員会が区画割りをきめると、政府はこれに基いて区画表を次の通常国会に出すわけでありますが、果して、そういうような区画割り表ができました場合に、提案者であるあなた方は一体これをのめるのかどうか。区画画定委員、会が作って、それに基いて政府案が出された場合、あなた方は、その政府案を大幅の修正もしないでのむだけの用意があって、このような修正案を出されたかどうか。先般の答申案におきましても、四百七十七区のうち二百十七、それに二人区は二十、それだけの多くのものを全部変更してしまっている。ゲリマンダーを作ってしまっている。すなおに答申案をのまずに、大幅な修正をし、しかも政府提案という形でもってこれを提案された。そういうような沿革を見ましても、あなた方が修正案として出されたところの案によって画定委員会が作った案が政府原案として出た場合に、あなた方はこれを率直にのむことはできないと思う。従って、私は、あなた方がこの修正案を出されているが、あなた方はわれわれを欺くばかりでなく、あなた方自身の良心からいっても、みずからを欺いておるのじゃないかと思うのです。とうていのめない法案を現在出されておる。従いまして、私は、結局、こういうようなものは議長裁定という名において出されておるけれども、実際はこの法案というものはとうてい実行不可能なんだ、こういうように考えざるを得ない。政府が出したところの原案を撤回するわけにもいかない、さりとてこれをこのままにするわけにもいかないので、とにかく修正案という形でこれを出しまして、当面の国会選挙法委員会におけるところの舞台というものを糊塗しよう、こういう意図に基いて出されたものである、かように考えるのですが、御答弁を承わりたい。
  246. 山村新治郎

    ○山村委員 議会運営あるいは選挙法のベテランの森さんの御質問といたしましては、いささか私どもふに落ちない点がむしろあるのでございます。わが党といたしましては、今回は全議員の名におきまして承諾いたしまして、この案を提出した次第でございます。いろいろな政治情勢の変化がその間にあった場合は別でございますが、わが党といたしましては、この案を出した以上におきましては、あくまでも尊重して参りたい、こう考えております。
  247. 森三樹二

    ○森(三)委員 自民党の代表としての山村さんの御答弁としては、私はまことにこれを受けることはできない。現在政府提案として出されたものに対しましても、あなたの党としては、われわれの調査したところによりますと、百名近い反対者がいる。この政府提案が通らないことを心から願い、私どもに何とかしてあれを君、通さないようにしてくれといって頼んできている人がたくさんおる。(「いいかげんなことを言うな」と呼ぶ者あり)そうじゃない。名前を言えといったら、私は名前をあげますよ。現在政府が出した案でさえも、あなた方の党では百人近いところの反対者がいるのです。従いまして、もし今後この法律案が通過しまして、そうしていわゆる区画画定委員というものが案を作り、その案を作るということは、いわゆる区画画定委員というものは、先般の三月十三日の選挙制度調査会答申を尊重するのですから、大体これにのっとったものと見なければならぬ。そうして、これにのっとったところの案を出しました場合は、太田自治庁長官答弁によれば、区画画定委員の出したものは、行政区画の変更のない限りは、それをそのまま政府案として出すということを言っておられる。そうしますと、いわゆる先般の選挙制度調査会の作ったところの案というものを、先ほども申し上げましたように、二百十七区というものを全く大修正を加えて政府案として出されておる。そのいきさつから見て、今度この区画画定委員会が作った案というものが法案として出されました場合に、あなた方が率直にこれを受け入れることができるということは、これは、山村さん。詭弁じゃないですか。あなた方はみずから欺いて答弁なさってはいけないと思う。
  248. 山村新治郎

    ○山村委員 お答え申し上げます。先般出された政府案についてもいろいろな反対論があるというお話でございましたが、社会党の中にも、ぜひとも小選挙区を通してくれということについての熱望者のあることも事実であるのであります。従って、一つ法案につきまして党内で多少の異論のあるのは、政党の実態であろうと思います。ただし、常識として決定した以上は、党人としてその党議に従うのは責務であるとわれわれは考えるのであります。
  249. 森三樹二

    ○森(三)委員 これは、山村君の答弁ばかりでなく、私は、この際、この委員会の権威のために、小津委員長にも御答弁を願いたいと思う。この際特に小津委員長答弁を願いたい。せっかく区画画定委員というものが、選挙制度調査会答申案というものを尊重して、そうして作りました案を、そのまま政府法律案しとして出すというのです。その場合に、あなたは、たとえば御自分選挙区において二人区を作るような、そういうようないわゆる選挙の公正を害するようなお考えを持つことはしてはならないと思う。もしもこの法律案が通過いたしまして、そうして区画画定委員会に基いたところの政府提案が出ました場合に、率直にこれを受け入れるという、いわゆる自民党から代表として出ておるところの選挙法特別委員長の小澤君が、これを率直大胆に記録にとどめるだけの勇気を持って御発言できるかどうか。しかも、もう一つ、その場合において、またまた今度は自民党からその区画表に対するところの修正案が出されることも予想されるのでありますが、これについて小津委員長答弁を私は特にこの際語録にとどめておきたいと思うのであります。
  250. 小澤佐重喜

    小澤委員長 森君の質問お答えいたしますが、私の考えといたしましては、政府の方針通り七人委員会の結果が出ますれば、そのまま賛成するつもりでおります。
  251. 森三樹二

    ○森(三)委員 その答弁はまことに表面はよろしい。しかし、腹の中を探れば、ゲリマンダーが満ち満ちておると私は思うのだ。あなた方は、いわゆる区画画定委員が作ったところの案というものが今後出ました場合に、それをとうていのむことはできない。そこで、私は、この修正案というものを、言葉はあまり過激かもしれませんが、欺瞞に満ちたものである、すなわち廃案同様のものであると私は断ぜざるを得ないと思う。
  252. 山村新治郎

    ○山村委員 お答え申し上げます。この修正案はあくまで政府原案精神が生きておるのでございます。  私は参考に森さんに申し上げたいのでございますが、今、森さんは、これが画定委員会でもって決定されて政府原案として提出された場合に、お前の方はのむかという御質問があったのでありますが、私の方で伺いたい点は、それが画定委員会でもって決定されて政府原案として出されたときに、社会党はこの前のような暴力を再びふるうかどうかということを聞きたいのであります。
  253. 森三樹二

    ○森(三)委員 それは逆だ。   〔「答弁々々」と呼ぶ者あり〕
  254. 山村新治郎

    ○山村委員 この質問をもって答弁にかえる次第であります。
  255. 森三樹二

    ○森(三)委員 私は質問しておるのであって、答弁する必要はありませんけれども、特に質問がありましたので答弁をするならば、われわれは、党の方針に基きまして、正当なるところの政府案が出るかいなかということによってわれわれは党の態度を決定すべきでありまして、現段階においてはその法案内容を見なければ何とも言えない。この際暴力を使うとか使わないとかいうようなことを山村君が質問すること自体がおかしいのであって、われわれは暴力などを用いたためしはないと繰り返さざるを得ない。  そこで、先般の例を見ましても、せっかく選挙制度調査会が作りまして答申案を出しても、その答申案というものを政府与党が尊重するというのは全く名ばかりであって、その実は全く党利党略ゲリマンダーのあの法案であった。われわれは、その例からいいましても、あなた方がこの修正案という名のもとに出されておるところの法案は、とうてい実行不可能だというのです。あなた方は表面上はこれをもってこの委員会を糊塗して国民欺瞞しておるけれども、実際の腹の中は、もはやこの法案は廃案になったのだということを御自覚なさっておると思いますが、これについて私は重ねて質問をいたしたいと思います。
  256. 青木正

    青木委員 私どもはこの法案修正することによって法案がつぶれた、かようには考えておりません。  それから、なお、私ども考えを率直に申し上げます。選挙制度調査会答申そのものをかりに採用いたしまして、そうして政府案ができておったならば、あるいはいろいろ世評がなかったかもしれません。それを政府案として変更したこと、その変更した理由につきましては、私ども世間で言っておるように単にゲリマンダー考えておりません。実際問題として、あの答申の中には事務的にもいろいろ支障のある点もあったのであります。そこで変更したことがいろいろと世間から批評の的になったのでありますから、今回画定委員会区割りをきめましてこれを政府案として提案されたる場合、私どもは、調査会案に対する場合のことも考慮いたしまして、それを変更するというような考えは毛頭持っていないのであります。その公正なる画定委員会のきめました区割りに従って、あくまでも日本の政局の安定、そうしてまた二大政党による新しい時代を作るために小選挙区の制度を作り上げたい。その作る熱意におきましては、ごうまつも変っておりません。ただ区割りがたまたま変更したことによっていろいろと世評を受けましたので、今回は公正なる第三者の判断によって区割りをきめていただく、その区割りに基いて政府案提出し、これによって小選挙区の理想を達成したい、かように考えておるわけであります。
  257. 森三樹二

    ○森(三)委員 青木さんの御答弁を聞いておると、一応筋の通ったような御答弁をされておりますけれども、実際のあなたの口と腹の中というものは、私はもう見え透いているのです。とうていこの区画委員会の作った案というものは、あなた方の党でのめるはずはない。これは先般のいわゆる選挙制度調査会の案というものをずたずたにゲリマンダーしたことによっても当然でありますが、現に、この修正案が出ましたときにも、あなたの党の相当な方が、いや社会党はなかなかよくやってくれた、今度の修正案が出たので、あの区画割りというものは廃案同様だ、全く君に感謝するといって、私ども自民党諸君に相当感謝されておるのであります。もうすでにそういう状態になって、これでもって廃案同様になったということは、あなたの党の多数の諸君が認めておるのです。青木さんは、非常にまじめなような顔つきで、そうして画定委員会が案を出し、政府案が出た場合においては、これを率直に認めるというような御答弁をなさいましたが、それはあなたがそういうふうにお考えになりましても、あなたの党の大勢というものは、そうしたところのいわゆる区画画定委員会が作った案というものはのめるはずはないのです。これはしかし幾らあなたが答弁をされましても、今のあなたの御答弁以外にはならないと思うのであります。私はこの記録にただいまの質疑応答を記載いたしまして、将来の一つの警告、将来の選挙区画割りの大きな目標、羅針盤にしたい、このように考えまして質問をしたのでありますが、さらに進んで、私はこの七人委員会の構成について御質問をしたいのです。  早川政務次官も御承知通り、昨年の五月から審議いたしました選挙制度調査会委員というものは、大体三十八人だと思っておりますが、そのメンバーを見ますと、あなたも入っております。政府委員の早川政務次官、それから太田自治庁長官、それから法務大臣とか、いろいろな政府諸君も入っておる。それからその他の学識経験者あるいは評論家、政党人も入っておりますが、あの比例を見ますと、三十八人のうちでもって小選挙区に賛成しておるものが大部分です。反対の立場に立っておる者は、われわれ社会党の四人の委員と、あと労働代表の二名の諸君と六名、その他学識経験者に二、三名でありまして、大多数の者は小選挙区制に賛成の者を選んで任命なさっておる。従いまして、あの結論に小選挙区例というのが出たからといって、慎重審議した結果、小選挙区制が、二大政党を育成し、絶対に日本の政治のために必要なものだというような結論が出たといって、鬼の首でも取ったような御答弁をされておりましたが、私もその選挙制度調査会委員の一人として毎回欠かさず出席しておったのです。しかし、その人たちの言うところ、議論するところは、いつも同じであって、私はいつもその人たちと対立しておる。結論も初めからわかっておるような調査会の委員の任命の仕方をしておるのです。そこに大きな問題があった。あれがかりに五分五分の、つまり小選挙区賛成と反対の五分五分の人であったならば、私はあのような結論は出なかったと思う。逆に小選挙区制の賛成者が初めから少く選ばれておったならば、その結果というものは逆転しておっただろうと私は思うのです。従って、今回この改正案に盛られているところの七人の委員の任命は、この法案によりますと内閣総理大臣が行うことになっております。   〔委員長退席、三田村委員長代理着席〕 私は、その任命権が内閣総理大臣にあるということ自体——すでにもう政党色を持った政党の総裁、政党の首領であるところの内閣総理大臣がこれを任命するということ自体が、党利党略の大きな事の始まりだと思うのでありますが、これに対する御所見を青木さんなり、山村さんなり、あるいはまた政務次官から伺いたいと思うのであります。
  258. 青木正

    青木委員 それは、御指摘のごとく、総理大臣の勝手な判断によって委員を任命するということになりますと、お話のようなことが出てくると思うのであります。そこで、私どもといたしましては、そうでなしに、ポストをきめまして、そのポストの人を任命する。そうしてただ二人の学識経験者だけを任命する。それは総理大臣が任命するという形式ではありますが、実際は衆議院議長が推薦する者を総理大臣が任命する、こういう形をとったのであります。総理大臣が勝手に自分の好きこのんだ人を任命するということのないように、こうした配慮をいたしたであります。
  259. 山村新治郎

    ○山村委員 森さんの前段の御質問といいますか、御意見の中に、何かわが党の一部の方が、これで実質上においては廃案になったからけっこうだと、あなたに礼を言われたというような御発言があったのですが、私はこの御発言を遺憾に思うのです。たまたま偶然に反対の現象もあるのでございますというのは、あなたの方の一部の方から、実際にはこの法案がこういうようにして妥結を見て、一応修正案提出されたということは、この議会で一人一区の小選挙区が通るか、あるいは来議会でもって一人一区の小選挙区が通るかということの違いだけであるからして、ようやくこれでもって小選挙区の通る見通しがはっきりついた、おれの党には子供っぽい議論をする者が多くて困る、これではほんとう社会党の将来は暗たんたるものだと言った方がありますから、これも後学のために記録にとどめておきたいと思います。
  260. 森三樹二

    ○森(三)委員 私の方にはそういう人はおらないと私は考えております。とにかく内閣総理大臣に任命権はあるのでありますが、ここで私は早川政務次官に特にお聞きしたいのです。衆議院議長が推薦する学識経験者二人となっておりますが、従来の例からいっても、やはり当該の選挙関係を担当しているところの大臣とか、あるいは政府関係と、やはり相談をしてきめるというような例が多々あるように思うのです。それで、これは質問と希望を兼ねるのですが、この学識経験者の中に先般の選挙制度調査会委員として入っておられたような方は、私はなるべく入れない方がいいと思うのです。ということは、すなわち、その三十八人の委員のうちの六名があの区画割り表を策定したことは、あなたも御存じの通りです。従いまして、先般の選挙制度調査会の案というものが出て、今回の法律案ができ、修正案ではその答申を尊重しとなっているのです。従いまして、同じ調査会の構成にあったものが、またこの委員会に入っているというようなことであっては私はならないと思う。この表面上の文章からすれば、衆議院議長が推薦するとなっておりますが、おそらく、議長は、その場合、自治庁長官とかあるいはその他の方々にいろいろ相談するような場合もある。もちろん、公平な議長であればこそ、いろいろな人の意見を聞いてきめるということがあり得ると思うのです。私の考えからすれば、先般の調査会の委員であった方々は遠慮していただくべきだ。しかもこの学識経験者という中には、なるほど先般の方々には学者もおりました。評論家もおりました。いろいろな方がおりましたが、やはり、私は、この学識経験者という中には、政党の圧力やあるいは政治家の圧力に屈することのないような、いわば裁判官的な、いわゆる不覊独立な裁判権を行使をするとかいうような裁判官に類するような人の方が私はいいのではないか、このように思っているのでありますが、御所見をお伺いしたいと思います。
  261. 早川崇

    ○早川政府委員 大臣に相談されるかというお話でありますが、そういうことは今後の問題で、法律上はそういう必要はむろんないわけでありますから、議長が是と信ずる人を私は選べばいいと思うのであります。その間において選挙制度調査会委員をやっておろうがおるまいが、選挙制度調査会の案を尊重して、それに基いてやるわけでありますから、それがいかぬとかいいとかいう必要はないんではなかろうか。しかし、これは議長みずから選ばれるわけでありまするから、私の単なる意見にとどめておきたいと思います。
  262. 森三樹二

    ○森(三)委員 もちろんそれは議長が推薦するようになっておりまするが、おそらく、議長といえども、単独でもってこういう適任者があるということがわかる場合もあるかもしれませんが、ない場合もある。その場合いろいろな人の意見をしんしゃくするだろうと思うのです。そこで、先般の選挙制度調査会答申案そのものも、私どもの目から見るならば、相当政府与党の色合いというのもが入っておると思う。これは早川君も御存じだと思うのですが、いわゆる自民党選挙特別委員会委員長は川島正次郎君です。何ゆえに川島君が委員長になったのでしょうか。すなわち、彼は前の自治庁長官である。いわゆる自治庁の選挙部に対して非常に密接不可分の関係にあった人である。いわば上司と部下の関係になるのでありまして、自分の意見というものを相当大幅に答申案の中で動かすことのできる人である。しかも、この選挙制度調査会の中にも、あなたも御存じの通り、兼子選挙部長を初め、いわゆる自治庁の選挙部の方々がおられたことも、これは事実ですよ。そういうような関係において選挙制度調査会答申案というものはできておるわけですから、あの答申案というもの自体についても相当着色している、色がついている、このように私は判断しているのです。従いまして、やはりかつての選挙制度調査会委員であった者は私は任命すべきじゃない、このように考えておるのです。だから、早川君は、これは議長が独自の判断で推薦するのだから、われわれとしては容喙する限りではないという御意見であります。もちろん表面上はそうなんです。しかし、内面は、過般の選挙制度調査会委員の任命に当りましても、内閣総理大臣が一人でやったかというと、私はそうだとは思いませんよ。それは、あらゆる政党の機関を動員して、そうして御自分の御都合のいいような人を選んだに違いないと私は思っておるのです。だから、今度はいろいろ肩書きがつけてありますけれども、ここにやはりいろいろ魂胆が生まれてくることを私は非常におそれておる。公正な人を選ばなければならぬと思うのでありますけれども、これに対しましてあなた御自身の御所見はどうでありますか。あなたは選挙制度調査会委員であった人でもかまわぬという御意見でありますが、私は、やはり、そういう人はこの際入れないで、新しい、フレッシュな人、そして特に裁判機関にあったような人を、公正な立場から私は選ばなければいかぬだろうと思う。あるいは科学者のような見地から——イギリスの区画委員会委員のような、そういうような人を選ばなければならぬと思うのです。  それから、その次のところに、「前項の任命に当っては、同一の政党その他の政治団体に属する者が二人をこえないようにしなければならない。」ということになっております。そうしますと、これは政党人が当然に入るという考えのもとに作られてあるものが、政党人はなるべく避けようという建前にあるけれども、これらのいわゆる肩書きのあるところの人々が、偶然か偶然でないか別といたしましても、いわゆる政党色を持った人が出てくる場合があると思う。私はこの際やはり政党色のない人を選ぶべきじゃないか。政党色のある者が入れば、これは政党人としては自分政党に右利な立場を作ろうというのは、人情上当りまえの話です。しかも政党と連絡をとりながらやることも私は当然だと思うのです。これについてどういうお考えか、一つお尋ねしたいと思う。
  263. 早川崇

    ○早川政府委員 私に御質問委員の問題でございますが、森委員の御案内のように、英国のバウンダリー・コミッションは、五人のうち四人までは、政府が任命する役人と、大臣の推薦する者になっております。そういう点から申しますならば、このたびの修正案の七人委員会は、はるかに中立的な人であろうと思うのであります。   〔三田村委員長代理退席、委員長着席〕 その間、議長の推薦する人が選挙制度調査会の人であってはいけないという御意見でありますが、われわれといたしましては、選挙制度調査会の案を尊重して行う以上、何も調査会の人を排斥する必要もなかろう。要は世間が真に公平な学識経験者であると判断するというような人を議長がお選びになればいいのじゃなかろうか、かように考えているのでございます。
  264. 青木正

    青木委員 この七人委員会の構成につきまして、後段におきまして、「同一の政党その他の政治団体に属する者が二人をこえないようにしなければならない。」ということは、御指摘のごとく、この委員会から政党色を排除しようという考えに立っているのであります。二人まで入ることはいいという意味じゃなくして、政党色を排院しようという考えであります。そうして、御承知のごとく選挙管理委員会は中立性を持っているのでありまして、実際問題としてはおそらく政党に所属している人はないと思うのであります。また国会図書館長は政治活動を慎しむという規定がありますので、国会図書館長または政党色はないと思うのであります。ただ、しかし、政党には所属いたさなくても、その他の政治団体に所属する場合もあり得ますので、こういう規定にしたのであります。   〔「休憩」「休憩」と呼ぶ者あり〕
  265. 森三樹二

    ○森(三)委員 それでは、私は一応休憩します。
  266. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際暫時休憩いたします。ただし、六時半正味に再開いたします。    午後五時五十七分休憩      ————◇—————    午後六時三十四分開議
  267. 小澤佐重喜

    小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  三案並び修正案につき議事を進めます。  佐竹晴記君。
  268. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 今度の修正案で、修正の理由中に、諸般の情勢を考慮して、この際本文別表とを分離することを適当であると認めたと言われておりますが、諸般の情勢というのはどういう趣旨でございますか。
  269. 青木正

    青木委員 諸般の情勢という意味は、御承知のごとく、今回の政府提案につきまして、私ども現地調査会を開催し、あるいは公述人の意見を聞き、各方面の意見を承わった、そういう各方面の意見等を考え、あるいはまた、院内におきまして、社会党側の当委員会における質疑応答に現われた御意見、そういったような各方面の諸情勢を勘案いたしまして、分離することが適当である、かように考えたのであります。
  270. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 議長の御配慮のあったことをうたっておりますが、この議長裁定以外に院内の諸情勢をも含めての意味でございましょうか。
  271. 青木正

    青木委員 議長裁定関係につきましては、御承知のごとく、いわゆる裁定として出されましたのは、十二日までに委員会を上げること、国会の運営を正常化すること、こういうようなことが表面に出ておるのであります。しかしながら、提案説明に書いてありますように、あっせんの次第もあり、あの裁定が出るにつきまして、いろいろ議長があっせんされたそのお気持等も考えて、こうしたのであります。後段の面は、院内のあり方と申しましたのは、当委員会における社会党側の御意見等を考えてというような、議長あっせんの問題と別個な諸般の情勢、こういうふうに二つに分けて考えたのであります。
  272. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 要するに院内外における本法案をめぐっていろいろと反省なさいました結果、かような修正が適当とお認めになったというのでございますか。
  273. 青木正

    青木委員 私どもは、この法案の重要性にかんがみまして、謙虚に世論に従う、かように考えまして、世論等も考えましてこうした修正をいたしたのであります。
  274. 山村新治郎

    ○山村委員 佐竹君にお答え申し上げます。この際重要な問題でございますので、つけ加えてお答えしたいのでありますが、これは決していわゆる暴力に屈したるがゆえの諸般の情勢ではございません。むしろ、国会を正常なあり方に、国会を正しいあり方に導くための諸般の情勢でありますことも御了承願います。   〔発言する者多し〕
  275. 山下榮二

    ○山下(榮)委員 関連。ただいまの山村君の答弁はまことに遺憾であります。過般来の国会のあの混乱は、決して社会党混乱に陥れたのではないのであります。国会の正常な運営と委員会の議決を待たずして中間報告を求めるという、きわめて多数横暴の暴力的行為に訴えられたことが、あの混乱をなさしめた原因であることを、よく了承していただきたいと思うのであります。このことが過日の議会混乱となったので、その責任はあげて政府与党とが負うべきものであることを、この際銘記していただきたいと思います。
  276. 山村新治郎

    ○山村委員 決して山下さんの御意見に逆らって答弁を申し上げるわけではございませんが、いわゆる委員会委員諸君によって占拠され、委員長が入れなかったり、委員長がおみこし騒ぎによって委員室からほうり出されたことは、それはだれが見ても暴力と見なくちゃならぬと私は思う次第であるのであります。しかし、わが党は決してそういう暴力があったがゆえに修正案を出したのではないということを説明いたした次第でありますから、その点御了承願いたい次第であります。
  277. 山下榮二

    ○山下(榮)委員 山村委員が今申されました、修正案提出に対するその暴力に屈したのではないというその御意見——先ほども申し上げましたように、われわれは、先月の二十七日まで、正常な姿で本委員会を継続して参ってきたのであります。しかるに、突如として中間報告を求めようとされたところにこの混乱の原因があったので、私は、この際さような言葉は山村委員の方から進んで取り消しをされることを要求してやまないのであります。   〔「取り消せ、取り消せ」「休憩休憩」と呼び、その他発言する者多し〕
  278. 小澤佐重喜

    小澤委員長 ただいまの山村新治郎君の発言のうち、不穏当の個所がありましたならば後刻速記録を取り調べて善処いたします。
  279. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 ただいまのお言葉でありますが、静かにお取り消しになるならば、あえてこの点について多く質疑応答を重ねたくはなかったのでありますが、せっかく山村さんからさような御答弁がありましたので、果してあの混乱の実情というものが、どこに責任があるかということを、一応明らかにしておかなければならぬと考えます。御承知通り、四月二十九日の読売新聞の編集手帳欄をごらんになったでありましょう。こう書いてあります。本社の世論調査でも、政府案賛成二五%に対して四四%が反対している。国民の半数の反対意見を踏みにじった暴力政治だ。国会を利用するクーデターだ。乱閥国会の再現といわれることをおそれて、乱闘一歩手前のもみ合いをしたところで、この案の強行突破を意図する政府与党態度そのものが、すでに審議話し合いを頭から無視してかかっている乱闘主義に立っている。多数の暴力で無理を通そうとする横車政治である。党利党略だけで国民の利益を無視した案を、たとい乱闘なしで押し通してみても、これは乱闘国会にさらに輪をかけた民主主義を破壊する最大のマイナスである。そのようなマイナスを印するよりも、まだしも乱闘国会の方がましなくらいなものだ。多数の暴力によるクーデターを排し、民主主義を守るために、乱闘もやむを得ないとの世論の台頭いたしておりますことを、あなたは御存じでありましょうか。一体あなたは国会内におけるあの混乱を云為する前に、党利党略のあのゲリマンダーを多数をもって押し通そうとしたところに反省をなさって、その反省のための修正であることにお気づきになりますならば、あえて先ほど言われたような挑戦的な言葉を用いられないでも、穏やかにこの際あなたはお取り消しになってしかるべきであると思うが、いかがでありますか。
  280. 山村新治郎

    ○山村委員 国会の権威のために一言御答弁申し上げたいと思うのでございます。今佐竹さんの読まれました読売新聞の編集手帳は、国会における乱闘、暴力を肯定するかのごとき感じを与えました記事でありましたがために、翌日の読売新聞において明らかにこれが取り消されておることを御銘記していただきたいと思います。
  281. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 それならばいかがでございましょう。おやじとおふくろが子供にパンを与えない。そこで子供が、お父ちゃん、お母ちゃん、私にもパンを一切れ与えなさいと言った。おやじとおふくろが自分だけでそれをとろうとして子供に与えない。そこで子供があばれたとする。子供のあばれるのが悪いのかおやじやおふくろが子供にパンを与えないのが悪いのか、よくそれを考えなければならぬと思う。もしあなたが子供のあばれることを挑発したとするならば、その挑発した原因をまずみずから省みる気になりましたならば、あなたのここに御提案なさっておるところの修正は、そのみずからの反省をここに修正案として出されたものとして敬意を表し、あえて私はこの点について言及しようとは思わなかったのでありますが、あなたがあえて挑戦的におっしゃるのであるから、私はあえて質問する。あなたはこの読売新聞の編集手帳の言が取り消されておるというならば、その証拠を示されたいと同時に、それよりもまずみずからあなたが修正案を出しておるところの良心に振り返って、ここに穏やかにお取り消しになったらいかがでございますか。
  282. 山村新治郎

    ○山村委員 大臣がおいでになりまして、すでに質疑打ち切りの時間も迫っておるようであります。(「その答弁は何だ」と呼び、その他発言する者多し)お答えを申し上げます。どんなことがありましても国会は暴力に屈してはなりません。
  283. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 あなたは取り消すかどうか。
  284. 小澤佐重喜

    小澤委員長 先ほども申し上げました通り、山村新治郎君の発言中不穏当な個所がありますれば、速記録を取り調べの上善処いたします。
  285. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 委員長、それは承知なりません。平和に穏やかに議了しようというのではありませんか。あえてあなたは挑戦しないでもよろしい。静かにお取り消しになってしかるべきであると思う。いかがですか。
  286. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この問題は委員長の職権によって適当に処理をいたします。   〔「約束が違う」「取り消せ」と呼び、その他発言する者多し〕
  287. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 委員長の職権によることなしに、山村さんが穏やかにお取り消しになったらいかがでありますか。その方が平和のためによろしいと思う。あなたがいつも混乱を買うように挑戦してきておるじゃないか。明らかな暴力主議だ。   〔「張本人だぞ、混乱の」「取り消せ」「休憩だ、休憩だ」と呼び、その他発言する者多し〕
  288. 滝井義高

    ○滝井委員 私はちょっと大臣に最後に大事な点だけ一言お尋ねしなければならぬことがある。それは、三十一年の三月二十四日に、公職選挙法の一部を改正する法律案修正案政府が出しておることを御存じですか。
  289. 太田正孝

    太田国務大臣 修正案を出しております。
  290. 滝井義高

    ○滝井委員 修正案を出しておって、どうしてその修正案の提案理由を御説明にならないか。   〔「そうそう」「でたらめじゃないか」と呼び、その他発言する者多し〕
  291. 太田正孝

    太田国務大臣 私の記憶は間違いないと思いますが、私の提案理由の説明委員会においてするときになしたことを記憶しております。
  292. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 これは、申し上げるまでもなく、国会法五十九条によれば、「内閣が、各議院の会議又は委員会において議題となった議案を修正し、又は撤回するには、その院の承諾を要する。」とあります。あなたはまだこの院の許諾を得ておりません。(「その通り」)従って議題になっておりません。議題になっておらないのに、説明——あらかじめ他の案におけるところの説明の中にその一部が加わっておりましても、修正案説明にはなっておりません。従って、まずこれは成規の手続を踏んでくるべきものであると思いますが、大臣いかがでありますか。
  293. 早川崇

    ○早川政府委員 ただいまの……。    〔「大臣々々」「大臣がいて政務次官に答弁させるとは何事だ」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然〕
  294. 太田正孝

    太田国務大臣 政務次官に答弁させまして、私はそれを補足いたします。
  295. 早川崇

    ○早川政府委員 ただいまの修正は、当委員会に付託になる前に修正されておりますから、あらためて説明する必要はないのでありまして、事務総長と相談をいたしてなしたことであります。(発言する者多し)委員会付託前のものであります。
  296. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 あなたは三十一年三月二十三日衆議院会議録第二十六号をごらんになったでしょうか。これに議題になっておりますよ。(「そうだ、そうだ」「読んでみろ」と呼び、その他発言する者多し)すでにこれとこれと比べてごらんなさい。あなたの今の御答弁が間違っておることがわかりましょう。いかがでございますか。   〔「休憩々々」「さあ大へんだぞ」「理事会を開け」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然〕
  297. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 事務の手続のことでありますから、私から答弁さしていただきます。ただいまの修正の点につきましては、衆議院の事務当局、事務総長とも御相談を申し上げまして、付託になります前でございまするならば、先ほど政務次官が申し上げましたような手続で、特に院の許諾というようなことなくして修正がなされる、こういう扱いになっておりますので、そういうふうにいたしたのでございます。
  298. 滝井義高

    ○滝井委員 三月の十九日に政府は提案をいたしました。そして三月の二十三日に本会議で議題になって、提案理由の説明をして、質問をいたしました。そして三月の二十四日にあなたの方は公職選挙法の一部修正申入書というものを出して、議長が受け取っております。それが二十四日。そしてなるほど二十六日にこの委員会は開かれておりますけれども、すでに委員会の付託というものは二十三日になっている。従ってこの修正案というものは行方不明になっている。行方不明になった修正案の中で、与党の皆さん方は、今度は、与党の方の修正案の中で、百五十五条というもの——行方不明になったものを削除してきておる。われわれはまだ審議も何もしていないものを、してきておる。ところが、行方不明になってきておるものは、だれがどういう工合にやったか知らぬけれども、二十六日の速記録にはちょっとそういうふうに直してしまっている。一体これはだれが直したかということです。行方不明になっているこの法案は……。
  299. 早川崇

    ○早川政府委員 先ほど申し上げましたように、委員部でお調べになってもわかりますが、委員会付託前でございますから差しつかえないことだと思います。
  300. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 国会法五十九条には委員会とはございませんよ。内閣が、各議院の会議または委員会において議題となった議案を修正するには、院議を必要とする、とある。しこうして二十六号官報号外によれば二十三日議題となっております。二十三日本会議大臣説明をし、議題となっておる。これは国会法五十九条の「議院の会議」にかかっておる。その会議にかかった翌日二十四日にこの修正案が出ておる。従って、二十四日のこの修正案は、すでに議題となっておるところの案件であるから、院議を必要とすることは議論の余地はありません。いかがでございましょうか。   〔「大問題だ」「休憩々々」と呼び、その他発言する者多し〕
  301. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 ただいまの佐竹委員の御指摘になりました点は、私どもといたしましては衆議院事務当局に十分相談をいたしまして……(発言する者多く、議場騒然、聴取不能)私どもといたしましては十分手続は尽したつもりでおります。
  302. 滝井義高

    ○滝井委員 あなたは衆議院の事務局とおっしゃいますけれども国会法にはちょっと書いてあります。そればかりじゃございません。私たちの手元に、あなたの方から修正案がくる前に正誤表の方が先にきた。しかも、正誤表に書いてあることと修正案に書いてあることと、ほとんど同じことが書いてある。ただ修正案と違うところは、法文が二つだけ修正案にはついておる。従って、あなた方は山犬は正誤表に全部出したかったんであるが、先に正誤表で出したところが、あとでなお選挙区の区割りについて変更しなければならぬところが出たために、一緒にこれをつけ加えてきている。しかも、これがわれわれに配付されたのはいつかというと、三月の二十六日に配付されている。二十三日に付託になっておることは確実です。これはもう二十三年に付託されておることはちゃんと調べてきておる。だから本会議に諮らなければだめなんだ。   〔「休憩々々」と呼び、その他発言する者多し〕
  303. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際暫時休憩をして、理事会を開きます。     午後六時五十九分休憩      ————◇—————     午後九時四十三分開議
  304. 小澤佐重喜

    小澤委員長 休憩に引き続き会議を開きます。  三案並び修正案を一括して議題に供します。  佐竹晴記君。
  305. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 ただいま問題となっておりました点について、当局あるいは提案者からでもけっこうでございますが、修正案が適法であるということの御説明をまず承わっておきたいと思います。
  306. 太田正孝

    太田国務大臣 先ほどの問題につきまして、お答え申し上げます。政府修正の申し入れをいたしましたのは、三月二十四日でございまして、政府案が議題に供せられる以前でございますので、院の許諾は要しないものと思っております。
  307. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 三月の二十三日の本会議において、太田長官は提案理由の説明をいたしました。これに対してわが党島上議員より質疑をいたしまして、これに対して大臣は応答をなさっております。本会議においてすでに質疑応答がかわされております。これはまさに国会法五十九条の、議院の会議にかけられ、そうして議題となった議案であると見なければならぬと思います。本会議において大臣が趣旨を説明し、これに対して議員質疑をして、これに対して大臣説明をいたしておるのでありますから、本会議においてまさに議題となったものと解釈いたしまするが、これに対しましては太田長官はいかなる御見解をお持ちでございましょう。
  308. 太田正孝

    太田国務大臣 問題は議題になったということにあると思います。私が本会議において説明をいたし、また島上議員の御質問お答えいたしましたが、議題となるということは、さらに討論、採決までつながるという解釈のもとに、議題になりましたのは、その後におきまして、委員会において委員長からここに議題となりましたると申されたときから議題になるという解釈でございます。
  309. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 二十三日の第一の議題は、内閣提出公職選挙法の一部を改正する法律案の撤回を求むる動議をわが党淺沼稻次郎君外二名により提出をいたしまして、これが議題となって議決されております。これは本法案と関連を持っておりまして、この政府提出法律案関係をいたしまして、これがすでに議題として議了されております。議題となっておらないというわけには参らぬと思いますが、これに対する御見解はいかがでございましょう。
  310. 太田正孝

    太田国務大臣 私はそれは別個の案件であると存じ上げます。
  311. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 私はここでは多く議論しようとは思いません。一応筋を立てておきたいと思います。国会法五十九条に、「内閣が、各議院の会議又は委員会において議題となった議案を修正し、又は撤回するには、その院の承諾を要する。」とありますのは、本会議において論議されて、内容がある程度特定されたときに、特定された内容と違う別個の修正あとでなされるときは、思惑が違うから、もとの本会議において院議に問うてその許諾を得ておかなければならぬ。その趣旨であると私は解釈をいたしております。すなわち、大臣は、二十三日の本会議において、この速記録にあります通り、趣旨を弁明して説明をなさっております。しこうしてその翌日二十四日に修正案が出されております。この二十四日出された修正案は、二十三日本会議においてあなたが説明をなさっておりまする内容と違っております。本会議において内容説明し、各議員にこれを知らしめておきながら、これと違う別個の修正案を出したときは、各議員が思惑が違うから、そのときは、もと本会議においてなした内容と違うということをさらに明らかにし、院議に問うてその許諾を御なければならぬ趣旨の規定であると、私は解釈をいたしておるのでありますが、いかがでございましょう。
  312. 太田正孝

    太田国務大臣 従来の慣例といたしまして、議題になったという意味は、趣旨説明をいたしましたときでなく、その後におきまして委員長がこれを議題とすると言ったときからであると、私は解釈しておるのであります。
  313. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 その先例は、おそらく事務当局の言うことをうのみにした無知恵のいたすところであると考えます。議員は、事務当局がいかなる解釈をしようとも、議員としての見識を持って、より高き見地に立って解釈をなすべきものであると思います。私の申し上げる趣旨は、一たん本会議においてあなたが内容説明します。しておるのにかかわらず、ひそかに修正案が出たときには、各議員に徹底しないので、もとの本会議にかけて、説明した内容と違うということを院議に諮って、承諾を得ておかなければならぬ趣旨でありますることは、申し上げるまでもないと思います。あなたが事務当局の慣例のみを引いて、その内容をきわめぬ事務当局の愚論をうのみにいたしますがごときは、国会の権威を失墜するもはなはだしいものであると思います。よって、この問題は、慣例がそうなっておるといたしまするならば、私がひとりただこの議事妨害をするがごとき印象を受けることを私は避けるがために、ここで遠慮はいたしますけれども、あなた方はいやしくも本会議において堂々と説明をし、これに対して質疑応答があった以上、これが議題になってないなどということは、とんでもないことであると思います。いやしくもこれが全議員に公表されている以上、それと内容が違う修正案が出されたときには、これと違いますということを、さらに院議に諮ってこれを明らかにすべきことが公正なる態度であると同時に、事務当局といたしましても、もしそれだけの先例があるといたしますならば、その先例をつぶさに明確にいたしまして、政府当局にこれをのみ込ましめると同時に、与野党をして異議なからしむるように、お互いにその徹底をはかるべきであったのにかかわらず、事務当局も何らその用意をいたしておりません。この間違った慣例を引いて、もってこれのみが正しい、われわれの抗議が絶対に間違っておるかのごとき印象をもって本日われわれに対しますることは、われわれ国会の権威のために残念に思うのであります。従いまして、私は、この問題はなお後日に残すことといたしまして、本日は本案についての審議がスムーズに進むことを念願いたしまするがために、これ以上多くは申し上げませんが、しかし、この問題であなた方の議論を断じて承服いたしましたわけではございませんから、この点は十分に御了承を願っておきます。(拍手)     —————————————
  314. 森清

    ○森(清)委員 動議を提出いたします。すなわち、内閣提出公職選挙法の一部を改正する法律案並びにこれに対する修正案質疑を打ち切られんことを望みます。
  315. 小澤佐重喜

    小澤委員長 ただいまの動議を採決いたします。ただいまの森君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  316. 小澤佐重喜

    小澤委員長 起立多数。よって森君の動議は成立いたしました。  これより、内閣提出公職選挙法の一部を改正する法律案並びにこれに対する修正犬を一括して討論に付します。片島港君。
  317. 片島港

    ○片島委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となっておりまする内閣提出公職選挙法の一部を改正する法律案につき、自由民主党提出修正案及び修正部分を除く政府原案反対の討論を行わんとするものであります。(拍手)  われわれは、このたびの小選挙法案の賛否を論ずるに当りましては、鳩山内閣が前回の総選挙において二度も口にしなかった本法案を、保守合同の後において選挙制度調査会に命じて——私はあえて諮問してと言わないで命じてと言うのでありまするが、それは選挙制度調査会に対する政府態度及びその運営によって明らかでありまするから省略いたしますが、早々の間に答申案提出せしめ、多数の暴力によって強引に本国会を通過せしめようとする魂胆を、まず究明しなければならぬと思うのであります。(拍手)  まず、私はわかりやすい方から究明をいたしたいと思うのでありまするが、その第一は、政局の安定にあらずして自由民主党の安定であり、もっと突き進んで申し上げるならば、自由民主党内部における現主流の主導権を確立するためであります。公認制度という伝家の宝刀によって、党内反主流派を抑圧して幹部独裁を確立することをもって(「ノーノー」)政局の安定というオブラート表現を使っておるのでありまするが、このことはつとに党内から反発せられ、党内に多くの署名運動まで行われていた事実から見ても——われわれはその署名簿の控えを持っておるのであります。(拍手)さらに、個人個人を通じて、まことに数知れぬ自由民主党議員諸君が、わが党の議員に対して、本法案の粉砕方を熱心に陳情していた事実からも明々白々であります。(拍手)これらの不平不満に対しましては、ゲリマンダーによって辛うじてふたをしてきたのでありますが、このことは後ほど論述をいたします。  その第二の魂胆は、しかも最も重要なる点でありまするが、党内独裁の確立後における独裁政権の確立であります。鳩山内閣は憲法改正による再軍備の強化を中心の柱として組み立てられた政権であり、これが政府及び与党間における唯一の最大の共通の広場であります。しかも、憲法改正、再軍術の強化ということは、あらゆる逆コース、反動政策の糸口となっておる。その意味で、今の鳩山内閣は、保守内閣ではなくて反動内閣であります。よく聞いていただきたいと思うのでありますが、保守というのは現行諸制度を守ることであって、現行諸制度が前に向っていくのが革新、うしろへ向っていくのは反動の逆コースであります。(拍手)二大政党による政局の安定のためには、二大政党間における政策の歩み寄りが必要であるということは、四ブロック公聴会等において耳の痛いほど聞かされたことであります。わが日本社会党は非常に急進的なことを言っているようには見えますが、その実は、現行憲法を守る、地方自治を守る、民主教育を守る、個人の自由、人権の尊重、平和を守る——守る、守るであります。(笑声)われわれは今や現行諸制度を守ろうとする保守であります。(拍手)鳩山内閣及び与党は、憲法を改悪する、地方自治を破壊する、民主教育を破壊する、国民健康保険制度を破壊する、家族制度しかり、内務省の復活しかり、これは保守ではなくて反動であります。(拍手)今や保守対革新でなくて、保守対反動であります。政策の歩み寄りをしているのはわれわれであって、うしろ向きに逃げているのが政府及び与党であります。われわれは今や穏健なる保守、主義者であり、自由民主党は危険きわまる反動的なる破壊主義者である。(拍手)今次の小選挙区制が党内独裁を確立し、反動的独裁政権を安定せしめんとしていることを天下に明らかにすることが、われわれの任務である。そのためにも、われわれは本法案を粉砕することが喫緊の要務であると思うのであります。  これからぼつぼつ本論に入りたいと思うのでありますが、調査会に命じて小選挙区制は晴れて正式の答申として本年三月十二日政府の手元に届きました。もとより答申内容は事前に政府及び与党幹部にはわかっておった。調査会案と並行して川島君のもとで党利党略案が調整せられていた。作成ではなく調整であります。党利党略案が固まる前に調査会案が発表せられたのでは、党内がてんやわんやで調整が困難になるために、答申が延ばされていたのであります。調査会の答申政府が最も関心を寄せたのは区割り案であります。答申の中には連座制、政治資金、選挙公営、選挙監視等、選挙犯罪を抑えて公正なる選挙が行われることを前提条件として小選挙区制が答申せられておるのに、これら前提条件には何らの関心も示さず、従って、ほとんどこれらの事項は改正案に織り込むことをしないで、もっぱら区割りに対してのみ異常なる熱意を示したのであります。私が先ほど申し上げましたる通り、今次の小選挙区制のこの魂胆を究明いたしますならば、区割りにのみ熱意を示すことは理の当然といわなければなりません。太田長官は、提案理由の説明において、白々しくも調査会案を基礎として云々と言っておるのでありますが、小選挙区制実施の前提条件をほおかむりして、さらに区割りについては、自民党党利党略、私利私略の区割り調査会案区割りがたまたま約半数の区割りについて符合していたというだけのことであって、これだけでは調査会案を基礎としたなどとは言えた義理ではありません。これでは答申をするまで熱心に小選挙区制を主張していた調査会の委員諸君が怒るのも無理はありません。ここに、ゲリー知事の墓石もゆらぐほどの、古今東西にその類例を見ない党利党略による公職選挙法改正案なるものが白日のもとにさらされたのであります。私は、今、調査会の構成、その運営についての不当なる点、一事不再議の原則にもとる党については、同僚委員より強く発言せられておりますので、ここでは省略をいたしますが、この法案くらい天下の悪評を受けた法案は、憲政史上まれにも見ることのできないものである。こういう法律案を提案いたしました者及びその同調者は、わが党が作成をいたしました、この部屋にもその一部を掲示いたしましたあのゲリマンダーの地図とともに、幾世紀のあとまで法制史の記録にとどめておく価値のあるものであります。(拍手)  この悪法案に対しては、われわれはまじめに質疑を続けることさえばからしく感じたのでありますが、国を思う心から(笑声)休日まで返上して終始熱心に審議を進めて参りました。しかし、本質的なる悪法案というものは、質疑を続けておる間にいつの間にかりっぱなものになっておるという性質のものではないのであります。政府がいかに抗弁をしたからといって、世間を納得させるものではありません。質疑、応答を繰り返せば繰り返すほど、その悪臭ふんぷんとして鼻をつき、世論はますます不利となるのを見てとった与党諸君は、強引にも審議半ばにしてこれを本会議に持ち込み、委員長の中間報告を求め、多数を頼んで一挙にこれを通過せしむる謀略に出たのでありますが、わが党のきわめて合法的なる反撃によって、(笑声)ついに中間報告を取りやめ、委員会差し戻しとなったのであります。(拍手)いずれは撤回か大幅修正がきまっておる法案に対して、天皇誕生日も休まず、五月五日の子供の日も返上して、まさに天下の笑いものであります。のどもかわいておらないのに、無理にひなた水を飲まされるようなものであります。(笑声)  それにつけても、私は、太田長官及び早川政務次官の態度は不可解千万といわなければならぬ。世論の反撃とわれわれの追究を見るに見かねた自民党出身の益谷議長のきも入りで、党利党略区割りは削除され、立会演説会は復活し、供託金も現行通り、時効期間は延長され、附帯訴訟の手続の法制化等々、われわれの質疑に対して白々しくまことしやかな答弁をしておりました事項は、あなた方の与党から大幅修正をされているのに、何の抗弁もなく人ごとのような顔をして、連日この委員会に出席して白々しい答弁を続けておられる。修正以前の五十数時間の自分答弁について何らの責任も感じていない。そんなことだから、私どもは初めからあなた方の答弁には信を置いていなかった。そのときその場所での出たとこ勝負の詭弁にすぎない。単に語彙が豊富であるというだけであります。  特に、早川君は政務次官でありまするが、言うまでもなく政務次官というものは、政府議会との連絡調整に当るのがその任務であるが、地方行政委員会は、四月二十七日全会一致で地方自治法の一部改正案質疑が終了し、与党の方から修正案を出すから待ってくれといって、すでに半月以上も委員会は開けない状態であった。こういうときこそ、政府与党の間に入って、急速に修正案をまとめて委員会審議を促進すべきであるのに、ことさらにその労をとろうとせず、太田長官鈴木次長も出席しているこの委員会に熱心に出席して、長官答弁すべき事項についてまで、進んでみずから発言を求めて答弁に立っている。ときには、長官が、これは自分の役割を横取りされたというような渋い顔をしているのもおかまいなく、熱弁をふるっている。(笑声)本家の地方行政委員会よりも、この委員会の方がよほど気に入った、好きだと見えるのでありますが、公けの職にある者が好きじゃきらいじゃといって、事分の責任が果せるものではありません。われわれは早川君に対しても解任要望決議案を出そうかと思ったのでありますが、イノシシを追う者が、たといついでであってもウサギを撃つというようなけちなことは(笑声)これはこけんにかかわると思って思いとどまっただけであります。  さて本論に戻りますが、本法案は、議長の肝入りによって与党の大修正となり、半殺しの姿になった今日、何ゆえにこの法案を急いで今国会を通過せしめようとするのであるか、われわれにはどうしても理解することができない。本法案は、いかに大幅の修正があっても、政府提案変りはない。太田長官も早川次官も、来年の通常国会には今のポストで相まみえることはあるまい。鳩山内閣も今のままの姿ではなく、与党もまた同じでありましょう。本法案は、最短距離をいっても、来年の通常国会において区画割り、附帯訴訟の手続の法制化が成立してから六カ月を過ぎて後の総選挙から適用されるのであるが、問題は、選挙区画定委員会によって簡単に区割りがきめられるものではなくして、またよし答申がなされても、与党内部において、また野党を向うに回して、その成立の困難さは予知できるのであります。中味のないからだけを今国会で無理押しをすべきではない。今国会においてはこんなボロボロの法案はいさぎよく撤回して、次の国会で新装をこらして出直すことが最も賢明なる方法であることを、特に忠告をしておきたいのであります。  本法案はすでに申し上げました通り大幅な修正はなされておりますが、政府が一縷の望みを持っておるというよりも、いささか幹部の顔を立ててくれといって残しておるのは、一人一区を原則とする小選挙区制ということでありましょう。このことは、選挙区画定委員会を設けて、調査会答申を尊重して、一定基準によって来たるべき常会までに区画割りを作らせようとしている点でありますが、さらに繰り上げ補充の問題、候補者公認の制度政党政治活動の拡大について明文を残しておることで明瞭であります。一人一区という文字を本文に書かずに、附則調査会案尊重といっても、一人一区制そのものがわが国の政情に照らして適当でないというわれわれの主張には何ら変りはありません。  私は、詳しくは申し上げませんが、いささか公聴会などに現われました意見をもとにして、一、二ここで理論的に反対の根拠を明らかにしておきたいと思う。  もともと小選挙区割りは、われわれの今日の社会生活の進展に逆行するものである。われわれの共同生活の範囲は、交通、通信、マス・コミュニケーション等の事由によってますます拡大せられておる。さらに、われわれは、職業上、思想上、学術上の横断的な組織的な団体に結びついた社会生活をしておる。労働組合あるいは農民組合、あるいは特定郵便局長の会、売春業者の組合、理髪組合、こういうふうにわれわれの社会生活、共同生活がだんだんと拡大をされてわるのでありまするが、これらの社会生活は、法律によって強制せられたものではなくして、時勢の進運に応じて自然に発展をしたものであります。小選挙区制は、これらの事実を無視し、われらの共同生活、組織的な社会生活を分断するものであります。  イギリスの小選挙区制は七十年前、アメリカは百十三年前であって、社会生活の範囲がきわめて狭小なる時代であり、これをまねること自体が時代逆行であります。政府の主張する二大政党論のごときも全くの詭弁にすぎない。イギリスでは、小選挙区制は七十年前であるが、二大政党は二百年前からできておる。アメリカの小選挙区制が全州に実施をせられたのは一八四二年であるが、二大政党は、ワシントン執政のときの連邦党と反連邦党によって始まっております。フランスは、八十年前から第二次大戦まで、数回小選挙区を実施しておりますが、いまだ二大政党ができたというためしはありません。わが国の大正十三年の小選挙区は逆に三大政党になっておる。  選挙費用その他の政府の提案理由ことごとく同断でありますから、私はこの点は省きます。  繰り上げ補充を認めず、補欠選挙によることの不合理についても、るる同僚議員から究明せられております。  政党政治活動の規定が、大政党、金のある政党にのみ有利であり、選挙の公正を全面的に否定する規定であることも、また詳細に論述せられたところであります。  これすべて国民党の党利党略であることは、今やあらためて申し上げる必要がありません。  私は、政府がこの際この悪法案が長きにわたって世間を騒がした大罪を天下に謝罪せらるるとともに、すみやかに本法案を撤回せられんことを強く要望いたしまして、私の反対討論といたします。(拍手)
  318. 小澤佐重喜

    小澤委員長 松澤雄蔵君。
  319. 松澤雄藏

    ○松澤委員 私は自由民主党を代表して、ただいま議題となりました政府提出にかかる公職選挙法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について、修正案及び修正案を除いた政府原案に賛成の討論を行わんとするものであります。  私がこの法律案に賛成いたす理由は、二つに大別されるのであります。第一は、この法律案の骨子をなす小選挙区制の採用について賛成だからであります。第二は、この法律案内容がきわめて公正妥当なものであるからであります。以下順次この点について申し述べてみたいと存じます。  まず第一に、私は、本法律案の基調をなす小選挙区制に対し、双手をあげて賛成の意を表する次第であります。わが国の民主政治も戦後すでに十年をけみしてようやく軌道に乗った観があるのであります。ことに昨年には保守、革新の二大政党が成立し、政党政治の理想を達成すベき重大な機会が訪れているであります。民主政治議会政治においては、選挙区制として小選挙区が最もすぐれていることは、広く識者の認めているところであります。小選挙区制は、二大政党の健全な発達と、それによる政局の安定をもたらし、国民多数の支持を保つ政党責任を持って内外にわたる政策を遂行できるという政治体制が確立できるのみならず、同一党派に属する者のいわゆる同士打ちの弊をなくし、国民としても、政党の掲げる政策を簡明直截に判断できることとなるのであります。社会党諸君は、小選挙区制の長所には目をつぶり、いたずらに短所を針小棒大に誇張し、これに反対しておられるが、およそ、政治選挙に関する制度は、その国、その時の国情に応じて相対的にすぐれたものを採用すべきは、けだし当然であります。私は、この意味において、現下わが国の政治における最大の要請である二大政党の育成と政局の安定に最も大きな要件をなす小選挙区制の採用を基調とするこの法律案に賛成するものであります。小選挙区制の採用には賛成であっても、これを基調とする本法律案内容が公正妥当を欠くものであれば、われわれは賛成できないのでありますが、この法律案内容は、さきに政府提出されました選挙制度調査会答申を基礎として、きわめて公正かつ妥当な案であると考えるものであります。これが賛成の第二の理由にほかなりません。  この点についてやや詳しく申し述べてみますると、第一に、個人本位の現行選挙制度政党中心の選挙に移行せしめるために、公認候補者制度を法的に採用し、また、選挙運動期間中における政党政治活動が選挙運動にわたっても差しつかえないものとしていることであります。小選挙区制の採用に伴って、選挙は必然的に政策を中心とする政党政党との争いとなるので、候補者も政党を代表してそれぞれ他の候補者と当選を争うこととなります。従って、公認候補者制度を法的に確立し、一つ政党の公認候補者となった者は同時に他の政党の公認候補者となることができないこと、政党一つ選挙区において選挙すべき議員の数をこえる数の候補者に公認証明書を発行することができないこと、政党及びその構成員は、公認候補者を有する選挙区においては、他の候補者を推薦し、または支持してはならないこと、政党の公認を受けない候補者は、その政党に所属する旨を公表して選挙運動をすることができないこと等を規定していることは、きわめて妥当であると考えるのであります。この公認制度の確立は、健全なる政党の育成強化に寄与するところが大きいと信ずるものであり、また政党選挙運動期間中の政治運動が選挙運動にわたってもよいものとしている点についても、政党政治のもとにおける選挙の実態を考えて、きわめて適正な改正であると賛成するものであります。  第二に、選挙の公正確保のため附帯訴訟制度の採用、時効期間の延長等の措置を講じている点も賛成であります。連座制の強化のためにおとりによる免責規定を削除すべしという意見もありますが、おとりによる免責には十分の理由があり、これよりも、むしろ、かつて衆議院議員選挙法時代にありました附帯訴訟の制度を復活し、訴訟の促進により連座制の強化をはかった改正案に賛成いたす次第であります。  その他、小選挙区制の採用に伴い、繰り上げ補充は同点者に限って議員の任期中行うものとすること、繰り上げ補充によって当選人を定め得る場合のほか、議員に欠員を生じたつど補充選挙を行うものとすること、選挙運動の期間を五日短縮すること、法定選挙運動費用を七円から六円に引き下げること等は、いずれも適当な改正であると信ずるものであります。  なお、修正案において、本法案の一部をなす選挙区の具体的な区割りにつきまして、今回の改正から一応除外し、新たに公正な七人の委員からなる衆議院議員選挙区画定委員会を設けて、法的の基準にのっとり、選挙制度調査会答申を尊重して区画案を作成し、次の通常国会までに内閣総理大臣提出せしめ、内閣総理大臣は、その案に基いて、別表改正案を作成して国会提出しなければならないものとしていることは、本法案国会における審議経過等にかんがみ、妥当な措置であると信ずるものであります。  以上、私は、修正案及び修正部分を除く政府原案に賛成の意見を申し述べた次第でありますが、選挙区画定委員会が一日も早く発足して、公正なる区画案を作成し、小選挙区制が実現することを切望いたし、賛成の討論を終るものであります。(拍手)
  320. 小澤佐重喜

    小澤委員長 小山亮君。
  321. 小山亮

    ○小山(亮)委員 私は、公職選挙法の一部を改正する法律案修正案並びに修正部分を除く改正法律案反対の討論を行わんとするものであります。(拍手)  本案の内容はあまりにも乱暴であり無理であり、自己の政党所属員の選挙を有利にするために傍若無人の区画を作ったことは、世界政治史上においてもまれに見るところの悪法案である。国民のあらゆる有識者、言論人、文化人から痛烈なる批判を浴びたことは、当然過ぎるほど当然であります。自民党の代議士諸君の中で、常識的なしかも尊敬すべきところの私どもの友人は、ことごとくこれに対して反対であります。私は、本法案を出さんとするところの自民党のいわゆる指導者が、何ゆえに自分政党の中のこの猛烈なるところの反対論をつまびらかにしなかったか。敵であるところの反対党を攻撃するだけに急であって、味方の中にこの法案に対して多くの反対の伏兵があったことを知らなかったということは、(拍手)大よそ戦いをする者は、敵を知り味方を知らずして勝利を考えるということは間違いであります。それゆえに、日本の政治史あって以来、本法案のように、絶対多数を持ちながら、議会の中に絶対多数を持って、何事もなさんとすればなし得る立場におりながら、かくもむざんなる修正をいたしまして、そうしてほとんど原案とは似ても似つかないもの、骨も抜かれ筋もとられて、ほとんど何だかわけのわからない化けものみたいな法案、満身創痍の法案を辛うじて通した、かようなことは、おそらく、日本の政治史上においても、私はいまだ知らないところであります。自治庁長官であるところの太田君は、いろいろのことについて十分に博識な方であるが、かようなみじめな姿で通った法案が今日までありましたか。  私は、選挙担当の大臣であるところの太田君が、なぜこういう法案を出したか、責任者として提出したか。私は、聞くところによれば、太田自身もこの法案に対しては多大の疑惑を持っておったということを聞いておる。うそかほんとうか知りません。うそかほんとうか知りませんが、しかしながら、自分が自信のない、しかも自分が好まざるところの法案を、いかにこれを政府から押しつけられたからといったところで、なぜこれを議会提出したか。私は、自治庁長官というものは、総理大臣の奴隷じゃない。また、総理大臣の命令であれば、自分の意思も全く無視されて、そうしてあたかも警察官か軍人が上官の命令に従うように、どんな無理な法案でも通すというようなものじゃない。なぜ、自分責任のある立場におるならば、敢然としてかような法案に対して反対をなさらなかったか。私は、太田君の長い政治生活において、かようなことをやって太田君の晩年を汚すことを実に悲しまざるを得ない。ちょうど、かような法案は、たとえて言いますれば、ボロボロの車に気違いの狂っているところのエンジンをつけて、そうして方向も知らない、操縦も知らない運転手がその車を運転しているのと同じなんです。でありますから、議会の迷路に入ってくると、あちらにぶつかり、こちらにぶつかり、満身創痍で今日ではばらばらになってしまって、機械も車も車輪もみんな飛ばされてしまって、ほんとうに何が通っているかわからない。一体この法案が通って国家のために何の利益がありますか。国民のために何の利益がありますか。また、この法案審議するのに、三月十五日に法案が発表されて、そうして三月二十三日に本会議に上程されてから今日に至るまで実に五十三日です。五十三日の間もみにもんだこの法案なんです。そうしてそれが国のために何の利益がありましたか。得るところは何ですか。何にもありはしないじゃないですか。  この事実をごらんになって太田君は何と考えられるか。だれ一人としてこの法案のために利益を得た者はないじゃないか。おかげで評判がよくなったのは議長一人だ。(笑声、拍手)だれ一人としてこれがために利益を得た者はありはしない。何のためにこんな法案をお出しになったか。今回の議会は、議会が始まりましてから後、二大政党対立の初の議会であって、議事が非常にスムーズに運んだ。予算案のごときは、まれにみるところの迅速なる審議をやった。何にも事なく議会が済むべきはずのやつを、こんなキングコングみたいな法案が出た。(笑声)そのために議会は荒れに荒れたじゃないか。こんな法案さえ出なければ、あなた方は社会党の暴力だなんと言って弱音を吐く必要はない。こんな法案を出せばいろいろの波乱が起るのは当然ですよ。国民全体が好まない、国民全体が反対するところの法案、これを通さないように努力するのは、議員は当りまえじゃないですか。国民の要望にこたえない、全く国民反対の動き方をするところの政党が大政党だなんて、世論を代表した大政党だなんて、片腹痛いじゃないか。国民の意思なんか一つも代表していないようなことをやっている。多数党のレッテルを張っているだけで、事実は多数党ではありはしない。  この際この修正案一つ見ましてもそうです。すでにこの反対論は社会党から詳細にやっておられますから、私はあえてそれを繰り返す必要がない。ただそれに対して一、二の自分考えをそこに加えれば、たとえて申しますと、修正案を見ても、議員の数を四百九十七人という数にふやそうとしている。今日、太田君も御承知のように、地方自治におきましても、県会議員なり町村会議員をだんだん減らそうとしているのです。合併をされて、どんどん減らそうとしている。費用を節約しようとしている。それにもかかわらず、なぜ衆議院議員だけが人をふやさなければならないか。何ゆえに三十数人という人をふやさなければならないか。それからまた、議員一人当りの選挙人の数、国民の数が十七万七千幾らということになっている。一体その根拠はどこにあるか。十七万七千でなければならぬ根拠はどこにあるか。十八万でもいいじゃないか。二十万でもいいじゃないか。三十五万でもいいじゃないか。議員の数をふやすということをやめて、議員の数を減らして、そうしてもっと費用を節約するというようになぜ考えないのか。県会や町村会の人を減らして衆議院をふやす。そうして政府の言うことを聞けといったところで、地方自治は聞きはしませんよ。やはり、国会でやれば、地方自治はそれをまねていくのです。でありますから、地方自治体に対しても、あなた方の方でいろいろな強制を加えようとするならば、それはどうしたって衆議院からその範を示さなければならないのに、やっていることは全く逆じゃないか。そういう点から見ても、この法案というものは全く未熟な案なんです。もっと十分に考えてやらなければならない。  しかも、また、先ほど自民党の討論で、修正案は公正妥当な修正案だと言った。そうすると、原案は公出妥当じゃなかった。(拍手)公正妥当でなかったから、世論の袋だたきにあった。世論の袋だたきにあい、野党の猛烈なる反対にあって、そうして初めて目がさめて、公正妥当な案に立ち返った。(笑声)これで公正妥当と思っているかもしれないが、むしろ公正妥当にしようとするなら、もう一つ考えてなぜ出直さなかったか。岸君が骨と皮だけの法案になって通ったということを自民党の代議士会で言ったそうだが、骨と皮だけになって、そうしてこれに紅やおしろいを塗って、りっぱな花嫁さんのような顔をして嫁入りさせようとするのか。(笑声)骨と皮だけになったものを嫁入りさせるのは無理じゃないか。もっと肉づきのいい、水のたれるような花嫁にして出直してきたらいいじゃないか。(笑声、拍手)今日の政治家がなぜ面子なんかにこだわるのか。感情や面子や行きがかりになぜこだわるのか。太田君は知っておられるでしょう。この思い出の深いいやな戦争の前に、日本の陸軍と海軍がただわずかな自分の面子やあるいは行きがかりや感情にこだわらなかったら、こんな敗戦のみじめな姿は見ないで済んだ。わずかな感情、面子、行きがかり、それが何ですか。そんな意地が何です。そんなことをやっておるなら、あなた方の政党だって中が分裂してきますよ。あなた方の中だって、たとえば今度の修正案で一人一区制を厳守するというが、もしそんな案を通すとしてごらんなさい。自民党の中に反対の決死隊が出ますよ。(笑声、拍手)あなた方自体が反対なんだ。あなた方の方はゲリマンダーにしたから賛成した。ゲリマンダーにしなければ、全部反対ですよ。大多数が反対ですよ。それをまたあえてやろうとするということは、結局においてこの法案は次の国会にも出す意思がないんだ。また出せないんだ。この法案は出せない。命がとられちゃって、ほとんど息がない。(笑声)それを面子だけを立てるつもりでこれをやる。また、太田君は、本法案の骨子が通ったから、おれは一向責任を負わなくてもいいんだと言う。私は太田君のために惜しむ。実にこの法案というものは、あなたがあんなに強く突っぱられた立合演説も全部もとへ戻された。それからこの法案の骨がみな抜かれた。通っても何もならぬ法案だ。五十三日議会に迷惑かけただけだ。(笑声)そうして惨たんたる姿で通って、あなたは平気な顔をしておいでになる。あなたが辞表をお出しにならなくたりて、議会が済んだら、あなたにやめてくれということを党の幹部が言いますよ。(笑声、拍手)この次の国会に、この法案を直して、そうして他の法案を出そうとおっしゃっても、あなたはそのときは、自治庁の長官じゃないのです。(笑声)だれがやるかわからない。自民党だって今のままでいるかいないか、それすらわからない。(笑声)この法案を出したために、あなた方の党の中まで非常な亀裂を生じてきたじゃないか。もしも先の見通しのつくところの政治家が一人でも自民党におったなら、なぜ面を冒してでもこの法案提出前に阻止するような態度をとらなかったか。太田君は責任ある地位におりながらなぜそれをやったか。私は、太田君がこの法案自分の運命をかけて、そうしてあなたは本法案の成り行きに見て必ず態度を決せられるだろうということは信じて疑わない。  私は、これだけの討論をいたしまして、本案に対する反対の討論といたします。(拍手)
  322. 小澤佐重喜

    小澤委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決いたします。  まず、内閣提出公職選挙法の一部を改正する法律案に対する青木正君外二十名提出修正案につき採決いたします。右修正案に賛成の諸君の起立を願います。   〔賛成者起立〕
  323. 小澤佐重喜

    小澤委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。  次に、ただいま議決された修正部分を除く内閣提出公職選挙法の一部を改正する法律案につき採決いたします。これに賛成の諸君の起立を願います。   〔賛成者起立〕
  324. 小澤佐重喜

    小澤委員長 起立多数。よって、修正部分を除く原案原案通り可決いたされました。(拍手)  これにて内閣提出公職選挙法の一部を改正する法律案修正議決されました。  本案の委員会報告書の作成については、先例によって委員長に一任を願いたいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  325. 小澤佐重喜

    小澤委員長 御異議ないものと認めます。よって、その通り決しました。  これにて散会いたします。    午後十時三十七分散会      ————◇—————