○佐竹(晴)
委員 広島における第三班の現地調査について、
班長大村清一氏より
報告書が
提出されまして、その要綱はあげられておりますが、その
調査会は午前と午後と約五、六時間にもわたって、長時間に及んでの
意見陳述並びに質疑応答でありましたので、簡単なその
報告書だけでは十分その実情を尽し得たものとは
考えられません。ところで、本
法案、
審議に当って、
地方の実情を十分しんしゃくいたしますることは最も必要であるのはもちろんのことであり、これがためには、
政府並びに与党の
考え方が
地方民にどういうふうに響いているのか、また
地方民としてはどのようなことを求めているかというようなことを十分検討しなければなりませんことは、多言を待つまでもありません。私は、こういう見地に立ちまして、
班長報告に漏れた点はもちろん、要綱だけではぴんとこない
地方実情にも触れて、現地調査の結果を一そう明確にいたしたいものと
考えます。また、われわれのこの発言は、
理事会できめられました通り、
意見の開陳でありまするので、右現地調査の
内容をつまびらかにいたしまするとともに、これに基くわれわれ
委員の
意見をも忌憚なくこの際披瀝いたしまして、もって現地調査の結果を意義あらしめたいと思う次第であります。
まず、広島県
会議長の林與一郎氏は、
政府案に
賛成をいたしまして、政局安定のためにはこの案の実施が必要である、二大
政党になれば政局の安定が期せられる、自由民主党、社会党に二大
国民政党として育成発展してもらうために、
県民は深い関心を持っているとお述べになりました上、
区割りについては大体
政府案でよろしいと断定をいたしました。この
意見陳述者について強い印象を受けましたことは、二大
政党の育成、政局安定とは言っているものの、この
陳述人は
自民党の広島県支部幹事長でございまして、心の中では
自民党でこり固まっており、社会党に対してまるで対抗するかのごとき感じが露骨に現われている点であります。すなわち、その
陳述の後に、
山下榮二議員より懇切に質問いたしましたのに対しまして、頭からその問いを抑えつけるがごとき、まるで対抗するがごとき言辞をもって応酬しておられたのであります。そこで、私から、林さんに対して、二大
政党の育成
強化を希望なさるならば、二大
政党の勢力の均衡を得ることと
政策の近寄ることが必要でありまして、社会党に好意的であってこそ、その希望が達成されるのではありますまいか、しかるに、今回の小
選挙区制がいたずらに
政府与党を大きくし、独裁専制の方向に押しやる実情ではないでありましょうか、
政策を近寄らしめようとするのならば、社会党に天下を渡す方が早道ではありますまいか、社会党が天下を、取れば社会党も理想論だけでは済まされず、
国民の
批判を受けてより現実的ならざるを得ない、それでこそ初めて
自民党の
政策とだんだん近寄ってくると思うのでありますが、どうですか、
一つ社会党に天下を譲ってもよいというお気持になりませんか、こう言って私は問いを発しますや、いたけだかになって、社会党には断じて天下を渡されませんと気張っておられました。これは、二大
政党の育成
強化などとおっしゃるけれ
ども、全くそれとは相反するお
考え方であるとしか受け取れなかったのであります。口では二大
政党の育成
強化と言いながら、心では社会党には断じて政権は渡されない。
自民党の独裁の永続を熱望している姿が、
地方有力者の間に
浸透いたしておりますことが、ありありと看取されたのであります。(発言する者あり)
意見でありますから、主観のまじりますことは当然であり、最初お断りいたしております。これが今回の小
選挙区制
法案提出の真の意図でもあり、
政府のねらうところでもあり、県
会議長というような
地方の指導者に対しても、以心伝心、よくその気持が通じておるとしか見られなかったのであります。私はこの
陳述者の言を聞いて、日本の二大
政党制と政局安定などとは、およそほど遠いものであるとしか聞かれなかったのであります。
次いで、広島市長の渡辺忠雄氏は、小
選挙区制
賛成を唱えて、区別り別表も、ずいぶん練られた案で、よいと思うとお述べになりました。そして小
選挙区制
賛成の
理由として、
費用の軽減、
候補者が身近になり、よく知ることができ、
政策の徹底を期することができるなど、一応
一般論をお述べになりました上、次の通りお述べになりました。
すなわち、
法案二百一条の三、第四項に規定する、他党の
候補者の支持、推薦を禁止することは少しく行き過ぎではないかと思う、二大
政党の維持育成のためとはいえ、小さな
政党もあるのであるから、法律でこれを押えつけるのはどうかと思う、無所属や、中立でも、臨時結社を作って、推薦団体を作ってやっていいではないかと思うとお述べになりましたことは、傾聴に値する
陳述であったと存じます。市長の要職にあり、公平な
立場にある人々でさえも、しかも与党に味方する
立場にありまする人々でさえも、このように述べておりますことは、
政府といたしまして大いにしんしゃくしてしかるべきではないかと私
どもは
考えたのであります。
次いで、山口県
会議長三木謙吾氏は、小
選挙区制
賛成を唱えて、
報告書にもあるような
理由を述べておりましたが、その中で私の感じたことは、二大
政党ができ、政局安定が肝心であると述べた上、ことしの予算案も年度内に議決を見たことは、政局安定のおかげで、
県民も非常に喜んでおると
陳述をいたしましたことは、少々牽強付会な言説ではないかと
考えたのであります。ことに、その予算案が、どれほど保守反動的
政策実現のためであり、社会党の要望などに一顧だも与えておらないところの独善、独裁的なものであっても、これが年度内に通りさえすれば
県民は大喜びだというがごときは、全く与党かぶれもはなはだしい。いわゆる公正無私の
陳述とは受け取ることができなかったのであります。ところが、この
陳述人ですら、
選挙の粛正と浄化のための
法案が社会党から出ているが、これには
賛成であるとお述べになっておりました。これは、やはり、
選挙の粛正、政界の浄化を希望する声の高いことが、
地方にも徹底いたしておりますることが、よくわかったのであります。しかし、この
陳述人が、小選考区制をしけば
選挙費用がよけいかからなくて済むとか、
費用が多くかかれば利権あさりやその他の害を生ずるので、小
選挙区制はその
意味からも必要である、
選挙ブローカーやボスは許されないなどと述べておりましたが、これは私は全く逆ではないかと
考えたのであります。また、小
選挙区制では新人が出られないとの懸念があるが、その心配はない、新人はどんどん出てくるとお述べになったあたり、これは必ずしも実情に即しているものとは
考えられません。あまりに与党擁護に偏する口先の弁解としか聞かれなかったのであります。しこうして、
最後に、
区割りについてはいろいろの見方があるが、神様でないからやむを得ない、原案に
賛成であると述べておりました。全く与党案うのみの気持を露骨に表わしておられたのであります。これに対して、細迫
委員から、山口県の
区割りやゲリマンダーについて詳細な質疑応答がかわされまして、温厚な細迫
委員の言に対しては、さすがに二木議長も笑みをたたえて、ともによい
選挙区を作りましょうと同調いたしておりまレたことは、印象的であったのであります。
仏供いで、 神戸新聞の論説
委員長の畑専一郎氏は、小
選挙区制には概念的には
賛成である、ただし条件付であると前提をいたしまして、貴重な
陳述をいたしております。
報告書にもありますが、十分でありませんので、さらに詳細をここに述べてみたいと
考えます。
均衡を得た二大
政党の基盤が確立された場合にこそ、りっぱに運営ができる、日本の現状では浮動票で決定するウエートが少いので、小
選挙区制を実施するのは尚早であると述べております。この点は
報告書に大体書いてありますが、これだけでは十分私
どもが理解することのできない点がございます。この畑氏の
供述は、日本の実情とイギリスの例を比較検討いたしました論証でありました。すなわち、日本では、農村は
自民党の固定票が絶対的に多く、都市、労働団体は社会党の基盤になっている、この固定票の差があまりに大きいので、浮動票で決定するウエートが少い、これでは小
選挙区制をしくのは危険であるというのであります。すなわち、イギリスは、五百三十の議席中、
保守党が二百、労働党二百と大体均衡を得た固定票が基盤になっている、
あと百三十が浮動票によって決定される、従ってこの浮動票のウエートが非常に高い、日本の場合も、固定票がイギリスのそれのごとく確立し、その余の分が浮動票で動くようなことになって、そこに均衡を得た二大
政党とならねば、小
選挙区制を実施するのには適当でない、日本は現在
自民党と社会党の二党間に一千万票の開きがある、しこうして一カ年大体百万票程度、社会党が伸びている実情にある、四、五年の後に初めて並列状態になるであろう、この状態ですぐただいま小
選挙区制を実施することは危険である、少くとも二年くらい延ばして実施しなければ、小
選挙区制をしく目的に反することになると思うとお述べになりました後に、
選挙区制別表の点に詳細言及されました。この点がどういうわけか
報告書には一切これを抜きにいたしております。しかし、この点はきわめて重要でありますので、私はここにさらにこれを述べておかなければなりません。すなわち、兵庫県について見るのに――これは畑氏の言うところでありますが、兵庫県について見るのに、現在
自民党が十、社会党が八の議員を持っておる。今度定員が一人増して十九名になる。ところが、今度
選挙をやったならば、
新聞人として何と公平に
考えても、今度の
区割りでは、
自民党が十四名、社会党が五名当選すると大体見られておる。社会党は約半分の議席を失い、
自民党は十四割に膨張すると思われる。これはあまりにも公平を失した案であるというのであります。また、神戸は、調査公案は一人五区であったが、
自民党案では二名区を二つ作った。これは、社会党が強いので、一人一区とすると
自民党の方に都合が悪いと見たためであろう。尼崎や淡路に考慮を加えているが、その淡路について言えば、
自民党の票は九万、社会党の票は七千、そこで淡路の票をそのままにしておくことはもったいない、よってこれをちょん切って、三万を明石にくっつけた。これも第三者としてはどうしても合点がいかない点である。こういうふうに
党利党略で、
区割りを定めているので、全国を通じて、今度の改正
選挙区割りに基いて
選挙をやったならば、
自民党はおそらく当選四百名、社会党は八十名程度しか当選者を出すことができないであろう。これは
新聞人として公平な観察であるとお述べになっておりました。こうなると専制横暴に陥り、これに対してはゼネラル・ストライキ等で対抗しなくてはならぬようになり、だんだん乱世化していくおそれがある。今回の
政府案は、古今を通じ、えげつない案であり――これは畑さんの言葉通り私筆記しておりましたので申し上げますが、古今を通じ、えげつない案であり、日本の民主
政治のために承服できないところであると、かように具陳をいたしております。次に、小
選挙区には買収はつきもので、
連座制の
強化は必要条件である、また立会演説を廃止しようとするのは解するにしむと述べた上で、質疑応答に際して、このような案は、かりに多数で無理に押し切っても、実行は困難と思う、少くとも二、三念施行を延期するとか、次の
選挙には適用しない、次の
選挙は現行法でやって、次の次から施行するというような考慮が払われない限り、これを実行したならば大へんなことになるであろうと強調されておりましたことは、傾聴に値すると思うたのであります。その説くところ、
新聞人、ことに論説
委員長として多年の
経験を持ち、また該博な知識に基いて、また
地方の実情に即して、公平な見地に立って、民主
政治を守らなければならぬという熱意のほとばしるところ、かような
陳述になっておることを一承わりまして、私
どもえりを正さざるを得ないものがございました。
次いで、東洋レーヨンの労働組合役員、これは愛媛の方でありますが、増田正雄氏が次の通り述べております。
まず、
自分は経済闘争
中心で来たもので、総評には
反対の労働
会議に属し、穏健な
考え方の方であるとみずから任じておるものであると前提をいたしまして、今回の
政府提出小選区
法案には
反対である、
自分は、過去二回にわたる
地方選挙の
経験から見て、現在の日本
国民は
政治常識が十分発達しておらず、小
選挙区制をしこうとするにはまだしもの感を深うする、今日の状態では
選挙区が小さくなればなるほど、小ぜり合いが激しくなり、当落のためには手段を選ばず、また地盤温存のために必死となるから、今直ちに小
選挙区制を採用したならば、政界を非常に腐敗させる危険がある、小
選挙区制になると、議員は当面する地域的利害と地盤内の情実に狂奔をいたしまして、足元のことばかり
考え、大局に立って論議することを忘れて、建設的な
考え方が自然に消極的になってくる、また顔の
選挙が幅をきかし、利用価値の
選挙となり、顔のない、利益提供のできない新人や婦人の進出が阻害されることは、
地方の実情に照らしてきわめて明確である、また有権者の側に立つて見ても、議員選択の自由を失う、これは有権権者のための
選挙改正ではないと、はなはだ
不満を述べておりました。また一票少くても落選し、少数
意見は議会から抹殺される、現在
審議中の原案を見るのに、
政府与党だけが勝手に作ったもので、あまりにも独善的なものである、
選挙区制の問題は、
政党の運命と立
候補者の当落に直接影響することであるから、書く
政党の間によく話し合ってフェア・プレーでやるべきであるが、今回は何の話し合いもなく、野党の要望をにべなく拒否いたしておる、一方が満悦すれば、一方が
不満足であるのは当然で、今回の
法案のごとき一方的なものはフェア・プレーではなく、はなはだよくない、また定員四百六十七から四百九十七に増加し、経費の膨張を来たすことは、
国民多数が大いに
不満とするところであると、
地方の実情を訴えておりました。
しこうして、問題の
区割りについては、全画的に承服いたしかねると述べました上、るる論証をいたしておりましたが、そのうち、二十区の二人区を作ったのは、地理的その他きれいな言葉で
説明をなすっておるが、われわれ
地方におる者は、
政府のさようの
説明に信を置くことができないと述べた上に、具体的にその証拠として、広島二人区のところでは、地盤調整のつきがたい二人のために作られたものであることをあげ、群馬、三重、愛知、東京、埼玉、日立、北海道岩見沢、福岡、門司等の具体的事例をあげて詳しく講じておりましたが、私はこれは省略いたします。ともかく複雑怪奇な実情であることを詳しく述べた上、さらに愛媛県
地方にもその実例のあることをあげておられました。
次いで、小
選挙区制で党公認制を認めたのは、最高
幹部に絶対服従せしむるねらいのあることが、
地方民の間にも強く
批判されておると言うておるのであります。また、
自民党総務会で、代行
委員の一人が、小
選挙区実施のためには一年くらいの準備を与える、現議員は全議員を公認すると公言し、また川島
選挙対策
委員長が、こうした配慮をしてやって、それでさえ落選する者は、よほど
選挙が下手だと言っているなどは、あまりにも
自民党の党略本位であることを露骨に表わしたものであって、
国民としては憤慨にたえないと述べておるのであります。中央におけるわれわれの論議の際にも出てきた言葉で、ありますが、
地方の人々はこのようなことに対して深き関心を持っております。こういったような気持が深く、また
地方局の脳裏り中に
浸透いたしておるのでありますから、十分この点をお
考えにならなければ、そういったよ、うな
考えを持つておる人を承服せしむことはできないと私は思うたのであります。
次いで、広島
県会議員の山崎実君は、次のようにお述べになりました。
小
選挙区制自体には、長所もあれ、ば短所もある、しこうし
一般論としては、長所はこれであって短所はこれだといろいろ項目をおあげになりましたが、これは省略いたしましょう。そうして長所、短所の要点をあげました上に、ただいまの日本にこの小
選挙区制をやろうとすると、長所は発揮されないで、短所のみが現われるであろとお述べになりました上、
内容に入って次のように
陳述いたして、おります。
すなわち、まず二大
政党の育成、政局安定を眼目としているというが、小
選挙区という技術的改正で、事ほど簡単にその目的を達成できるものではない、フランスにもその例を見るがごとくに、日本の実情は階級的、社会的条件の非常に複雑であることにかんがみて、小
選挙区制をしいても、二大
政党は育たず、政局安定を期し得られるものとは、私
ども地方にあって
考えるこきができないと言って、その
地方の実情のまことに
意味あることを言外に表わしておりました。さらに、党略的
区割りとして、その
政党のための
選挙区制をしけば、真の
政党本位の、
政策本位の
選挙などは行われよう道理がない、また
選挙費用は少くなるというが、小
選挙区になれば、
自分たちの体験から見ても、買収、供応がやりやすくなり、その競争が激化して、当選のためには手段を選ばないようになる者が続出してくる、よって、かえって
費用は増大する、これはまことに
地方の実情に照らして明らかであると述べております。さらに、人物選定が容易になるというが、地域的に小さくなるほど情実因縁にとらわれやすく、小さな人物が当選してくるであろう、かように述べた上、さらに、今回の改正は、単なる技術的
区割りの改正といったものではなしに、背後に何かあるとの印象を深うする、
国民は非常に
批判的である、異常な強引さでやろうとする、三木武吉さんが言ったところによると、今度の小
選挙区制は、一回だげやれば、また元へ戻すのだと言うているが、これは強く
地方に響いている、広島の
県会議員の中でも、
自分の肩をたたいて、君、山崎君、一回だけでこの小
選挙区制はやめるんだよと言う者さえもあった、
憲法改正をやったならば、また元へ戻すであろうという印象は、だれもが心の中に描いている
一般的な事柄になってきていると、かように述べておられたのであります。現在の実情では、必ず
選挙粛正に開する方策の樹立が先決問題で、このままで小
選挙区制をしいたならば、長所は
一つも出てこない、短所ばかり出てくるのである、しかるに、
選挙粛正に関する方策を非常に軽んじ、それに対する十分な対策を立てず、かつ立会演説なんかを廃止しようといたしているあたり、理解に苦しむと述べております。
なお、これら
陳述人の
陳述の後、各
委員より活発な質疑応答かかわされましたが、その際、私より、広島県のゲリマンダーについて新聞旧紙記載の具体的な事例を読み上げまして、
陳述人の
意見を求めたのでありますが、だれもこれに反論する考はなかったのであります。ただ、広島市長のごときは、にやにや笑いながら、おもしろい記事ですと漏らしておられたのであります。
私に、この
地方の実情を察知いたしまして、相当この
地方の実情は本案
審議に
参考にすべきものであり、また十分この意を体してその
結論を求めなければならぬことであると
考えた次第であります。
以上、私の
意見を
陳述いたします。