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1956-04-13 第24回国会 衆議院 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月十三日(金曜日)     午前十時五十六分開議  出席委員    委員長 小澤佐重喜君    理事 青木  正君 理事 大村 清一君    理事 淵上房太郎君 理事 松澤 雄藏君    理事 山村新治郎君 理事 井堀 繁雄君    理事 島上善五郎君       相川 勝六君    臼井 莊一君       岡崎 英城君    加藤 高藏君       菅  太郎君    椎名  隆君       田中 龍夫君    中垣 國男君       福井 順一君    藤枝 泉介君       古川 丈吉君    三田村武夫君       森   清君    山本 勝市君       山本 利壽君    佐竹 晴記君       鈴木 義男君    竹谷源太郎君       滝井 義高君    中村 高一君       原   茂君    森 三樹二君       山下 榮二君    山田 長司君  出席国務大臣         国 務 大 臣 太田 正孝君  出席政府委員         法制局次長   高辻 正巳君         警  視  長         (警察庁刑事部         長)      中川 董治君         自治政務次官  早川  崇君         自治庁次長   鈴木 俊一君         総理府事務官         (自治庁選挙部         長)      兼子 秀夫君  委員外出席者         法制局参事官         (長官総務室主         幹)      山内 一夫君         総理府事務官         (自治庁選挙部         選挙課長)   皆川 迪夫君         検     事         (法務省参事         官)      勝尾 鐐三君         衆議院法制局参         事         (第一部長)  三浦 義男君     ――――――――――――― 四月十三日  委員川上貫一君辞任につき、その補欠として久  保田豊君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  公職選挙法の一部を改正する法律案内閣提出  第一三九号)  政治資金規正法の一部を改正する法律案中村  高一君外三名提出衆法第二一号)  公職選挙法の一部を改正する法律案中村高一  君外四名提出衆法第二二号)     ―――――――――――――
  2. 小澤佐重喜

    小澤委員長 これより会議を開きます。  前会に引き続き、内閣提出公職選挙法の一部を改正する法律案中村高一君外三名提出政治資金規正法の一部を改正する法律案中村同一君外四名提出公職選挙法の一部を改正する法律案、以上三案を一括議題といたします。  質疑を継続いたします。森三樹二君。
  3. 森三樹二

    ○森(三)委員 私は、昨日に引き続きまして、政界浄化並びに選挙粛正選挙費用軽減に関しまして、選挙公営等につきまして質問を継続したいと思うのでありますが、この重大な質問に関しまして、太田自治庁長官の御出席のないことは、まことに遺憾でございます。私といたしましては、太田自治庁長官の御出席がなければ、本米この質疑を続行することは見合せたい、かように考えておるのでありまするが、しかし政府委員として早川政務次官その他御出席になっております。私はまたあらためまして、太田自治庁長官出席の場合において、本問題を再度質問することがあることを十分御了解を得たいと思うのであります。なおこの選挙粛正に関しましては、その責任者である大麻国務大臣並びに牧野法務大臣等出席もただいま要求をしたのでありまするが、いずれも差しつかえがあって御出席にならないことは、まことに遺憾であります。しかし、許す限りにおいて賢間を続行いたしたいと思いますので、政府においてもできる限り十分なる御答弁を願いたいと思うのであります。  従来、政界の腐敗あるいは堕落等という問題は、特に政治に莫大な資金を要する、平素の党の運営に関しても相当費用が用いられており、並びに、選挙に関しましてはこれまた莫大な費用を要するのでありまして、この莫大な費用というものがどこからまかなわれておるのか、これに関しまして、一昨年、国会をゆるがすような造船疑獄あるいは保全経済会日本殖産金庫、その他もろもろの疑獄事件が発生いたしまして、われわれは日本政界のいかに腐敗堕落したかということを、国民とともに糾弾をした次第でありますが、この莫大な費用は、常にこうしたところ政府が支給するところ補助金であるとか、あるいは利子補給金その他財政の投融資等の国の予算が流れる先の会社その他の法人から、莫大な寄付金政党に行われておる。その寄付金によってまかなわれておるという事実もあるのであります。これらは政治資金規正法関係にもなりますが、政治資金規正法に関する部分につきましては、他の委員から質問があるはずでございます。しこうして、私は直接この選挙に関するところの財界からの寄付金等につきまして、どういうようにその資金が実際使われておったのか、これにつきまして資料を要求いたしました。昨日自治庁選挙部から、昭和三十年における各政党に対するところ寄付金並びにその寄付金の使途について、収支報告書要旨が各委員に配付されたのであります。その昨年の各政党収支報告要旨を見ますと、まず自由党本部に対して行われました収支報告書によりますと、昭和三十年一月の一日から昭和三十年六月三十日まで、すなわち昨年の春行われましたところ選挙に関する寄付と見なされるものが二億三千百七十七万七千二百円という膨大なものになっております。それから日本民主党に対する寄付金は三億五百三十六万三千四百四十三円、こういう金額になっておる。それから、日本社会党の右に対するところ寄付金は六千三十万円、次に日本社会党左に対し行われておるところ寄付金並びに収入の総額は六千七百九十一万四千五百六十一円、こういうようになっておりまする。ただいま申し上げましたように、各政党においてはおのおの非常に金額の相違がありまして、日本民主党日本自由党のごときは、二億、三億というような莫大な金額寄付を受けておる。しかしこれは実際において表面に現われたものであって、届出によらないところのものが、私は相当政党に行われておるということを聞いております。これらのものに対しましては、どの程度のものが記載されておるか。これは表面だけのものでありますが、それ以外につきまして、自治庁当局はどのようにお考えになっていらっしゃるか、お尋ねしたいと思うのであります。
  4. 兼子秀夫

    兼子政府委員 政治資金規正法によりまして、政党に対する寄付並びに支出につきましては、これを届出、公表する規定になっております。私はその政党に対する寄付は正当に届け出られておるものと考えます。
  5. 森三樹二

    ○森(三)委員 ただいま兼子選挙部長から御報告がありましたが、これはつまり政党の窓口に届けられたところ寄付金であります。ところが、それ以外に、各政党幹部役員等法人その他個人から寄付されたものも相当あるわけでありますが、これらに対するところ調査は行われておらないのかどうか。実際上は政党に対する寄付ばかりでなく、本来ならば、政党の各役員とかその他の者に寄付されているものも相当にあるわけなのです。それらについて、自治庁としては御調査になっておらないのかどうか。
  6. 兼子秀夫

    兼子政府委員 政治資金規正法は、政党政治団体に対する政治上の寄付だけを対象といたしておるのでありまして、たとえば、政党の有力な方に相当資金後援会の名前で動いておる場合も、それは政治資金規正法届出政党ということになりまして、届出が出ておるのもございます。政党に対する寄付は、政治資金規正法で届け出なければならぬ、このような法律になっておりまして、私は正規に届けられておるものと考える次第であります。
  7. 森三樹二

    ○森(三)委員 そうしますと、選挙法上認められたところの各政治家等に対する、あるいは候補者等寄付されたものというのは、この中に含んでおらないというふうに了承するのでありますが、私の判断からするならば、一応これは政党寄付されたものでありまするが、それ以外に、各政党役員幹部その他一般候補者に対するところ寄付というものは莫大なものである。これはもちろん選挙が行われまして、収支計算書当該選挙管理委員会提出する場合におきましては、当然これを記載しなければならない義務を候補者は負担しておるのでありまして、これを調査すれば、各候補者等寄付をされたものが明確になってくるのであります。これらを総合いたしますと、選挙費用内容というものは非常に莫大なものがあるのであります。聞くところによりますと、昨年の選挙におきましては、当時の民主党候補者に対しましては、一人当り五十万円の公認料を支給した。また自由党についても、最低五十万円の寄付を行なったということがいわれております。候補者にいたしますと、党から五十万円の公認料を受けまして、さらにまたその候補者縁故縁辺等にたよりまして、相当寄付金を受けておる。中には、法定費用以上の寄付金を受けて、ある候補者のごときは、選挙費用を償ってもなお余りがあるのだというように申しておる者さえもあるのでありまして、この選挙費用というものは、いかに莫大なものであるか、われわれはここに政界を浄化し、選挙粛正を行わなければならないと思うのであります。それに関しまして、一方では選挙費用軽減をはからなければならないという強い主張があるのであります。法定費用は、現行法では大体一人当り七十五万円と言われており、改正法では小選挙区制なるかゆえにという理由によって六十万円という線を出してありますが、実際の選挙になりますと、五十万、六十万でもって選挙費用は償われない。すなわち、法定費用相当オーバーしなければできないということは、ほとんどの人が常識的に言われております。もっとも、一つの例をとりますと、そこにおります島上君などは、十万円程度でもって選挙を行なっておるということを私にしばしば言っておりますが、私はあまりにも僅少なので、その真実を確かめましたとこる、なるほど島上君のごとき非常に粛正された選挙をやりますと、十万円程度のわずかな金で選挙が行えるのでありますが、なかなか一般にはそうは参りません。そこで、この選挙費用とまた選挙寄付金というものが、非常に大きく選挙に左右して参るのでありまして、たとい法定費用以下に軽減いたしましても、実際に使うところの金はその二倍、三倍、多くは十倍と言われておるのであります。このように莫大な選挙費用が、実際の法律で規正された以外に、選挙についてはかかるというところに、選挙粛正はなかなか行われないという事実があるのであります。そこで私は選挙の公平という問題を昨日も主張したのであります。非常に金がない者は、選挙にも出ることができない。金がなくとも、人格識見のある者は、選挙戦に出ることが当然認められなければならないのであります。今回の改正法については、単に選挙費用を六十万円にしたということをもって政府得々としておるようであります。私が判断いたしますと、軽減が何らされておらない。すなわち従来七十五万円であったところ選挙費用が、今回小選挙区制になったからといって、六十万円そこそこになった。そこで、軽減されたといって得々とされておるようでありますが、これは単に選挙運動期間の問題からしても当然であります。従来は選挙運動期間が二十五日となっておりましたが、今回は二十日にするということを改正案として出されております。大体計算しますと、従来は選挙運動期間が二十五日でありますから、一日三万円見当とすると七十五万円という線が出る。今回の改正法によると二十日でありますから、三万円をかけるとそれが六十万円になる。日数の点から計算しただけでも、軽減されるのは当りまえであります。ところが、実際の選挙区画割りが、一人区あるいは二人区になったのでありまして、この面積、すなわち選挙運動が行われるところの場所的な条件というものが、何ら考慮されておらない。そういう点を勘案するならば、単に面積関係からいっても、五分の一あるいは四分の一に軽減しても、差しつかえないような形であります。この日数軽減と、加うるに地域的な面積の狭小ということを計算いたしますと、私は何ら選挙費用軽減は行われておらないと考えるのでありますが、御答弁を願いたいと思います。
  8. 早川崇

    早川政府委員 実質的には、七十五万円平均が六十万円になるわけでありますから、減っておることは明らかでございます。ただし、六十万円を限度とするのであります。これをこえますると、直ちに選挙違反として告発されるわけであります。また今の中選挙区と比べまして、非常に地域的にも小範囲選挙運動で済みます。また交通とか動員する運動員その他におきましても、やはり四分の一くらいに地域がなったことによる費用軽減は、当然あると思います。さらに、選挙運動期間二十五日が二十日間ということになりますと、その面におきましても、これまた非常に軽減になることは明らかであります。さらに、公営個人演説会場は、従来一回無料でありましたが、このたび二回無料にいたしました関係上、これによって三千八百万円という国費が新たに支出される次第でありまして、この面におきましても選挙費用は楽になります。ただ、立会演説がなくなりました関係上、そういう面でどうかという議論もございまするが、従来立会演説をやっておったから、個人演説会をやらないというのではございません。やはり六十回の個人演説をやっておるわけであります。従って、そういう面による費用の超過もさして大きいものではあるまい。かように考えますと、非常な違反をして、買収してやろうという前提であるならば、なるほどそれは費用が要ることになりますけれども、われわれはそういう前提に立っておらない。それは選挙違反にかかる問題であります。そういう前提に立たない限り、選挙候補者といたしましては、明らかにこれは選挙費用軽減になると信じておるのであります。
  9. 森三樹二

    ○森(三)委員 今政務次官の御答弁がありましたが、これは実際は全くなまぬるい御答弁であります。前回の選挙法改正で、その前は大体一選挙区四十万円程度法定費用となっておったのを、一人当り七円という線を出しまして、その計算の結果、七十五万円に引き上げられたのです。ですから、七十五万円に引き上げられたのは昨年の春の選挙だけでありまして、それ以前の法定費用は、大体四十一、二万円が標準になっておったのです。そうした計算から判断して参りますと、今度は小選挙区になって、従来の選挙区が五つあるいは六つというような数字に区分されたのでありますから、地域的に狭められたというこの計算は、どうしても考えなければならぬ。すなわち、昨年以前の選挙法定費用は四十数万円でありますから、私は、少くとも法定費用はこれ以下に軽減されなければならぬと思う。私はその当時選挙法委員でありましたが、法定費用が高められますと、結局実質上の、やみの選挙費用もおのずからそれに比例して引き上げられていく、そういう状態になるのでありまして、法定費用はできるだけ減縮して、何人にも立候補の機会均等を与えなければならないと確信しておるのです。従って、昨年の選挙に関する七十万円をきめるときにも、私は反対をしておる。われわれ社会党反対をしておる。従って、今回小選挙区になったという実態から勘案するならば、これを六十万円にしたということをもって自治庁当局得々としておられるようでありますが、これは私は当らないと思う。この際もっと法定賞用というものを軽減しなければならない。このように考えるのでありますが、これは当時の事情を非常によく御承知兼子選挙部長からでもよろしいから、一つ詳細に御答弁願いたいと思います。
  10. 兼子秀夫

    兼子政府委員 法定費用の問題でございますが、小選挙区になりますれば、確かに面積も狭くなるのでございます。従来の中小選挙区でも、その中で事実上の区割りと申しますか、そうやって狭い区域で活動しておる方もあるでございましょし、今度小選挙区にして確かに面積は小さくなったのでございますが、なおいなかの府県に行きますと、相当広汎な地域一つ選挙区になっております。そうなりますと、やはり運動員が出て、宿屋に泊らなければならないというような選挙区もあるわけでございます。これは法定費用のきめ方の問題でございますが、有権者一人当り幾らというきめ方をいたしておりますので、最高限度をきめておるのであります。そのような趣旨からいたしまして、実際はここまでかからないで選挙をおやりになる方もあろうかと存じますが、これは最高限度をきめたものでございます。  それからなお先ほどのお話にもありましたように、現在の法定費用のきめ方が実情と合わないのじゃないかというような御趣旨お話があったと思うのてございますが、現実の選挙の金が、とかくわれわれの耳に入って参りますのは、やはり非常に金がかかるんじゃないかということが言われておるのであります。法定費用の制限は、これを超過いたしますと、直ちに候補者の当落に影響を及ぼす峻厳なものであります。われわれといたしましては、その決定費用のきめ方が、実態ともし食い違ってくるのであるならば、これを実態にできるだけ合せていくべきであろうかというふうな考え方もとったのであります。法定費用は、中小選挙区から見れば、おっしゃる通りに七十五万から六十万に少くなっておるのでございますが、実態により近づくという意味において、これは先ほど申し上げましたような、選挙法制の確守と申しますか、そういう面からも、われわれは有権者一人当り六円程度が至当ではないか、このような判断をいたしたのでございます。
  11. 森三樹二

    ○森(三)委員 兼子選挙部長が一応の御答弁をなさいましたが、しからば一昨年まで施行されておったところの一人当り四円ですか、この平均値によるところの四十数万円という選挙費用との関連において、今回の小選幸区を実施するところ費用はいかがなものか。私はやはり一昨年まで施行されておったところの四十万円の線――その当時と物価の指数からいたしましてもそう変化もありません。私は、従来の一つ選挙区が、五つに分れ、四つに分れるというような事情にかんがみまして、法定費用をできるだけ減縮することによって、お互いが選挙費用を節約するという観念があるのでありまして、これを低めることによって選挙違反の増加を防ぐ、こういう役割を演ずることができるのでございますから、どうしても一昨年まで施行されておったところの四十数万円という一つの線をくずしてはならない。従来一つ選挙区でありましたものが、五つに分れ、四つに分れて、そうして選手運動期間が五日間も短縮されたのだから、この六十万円という数字は、この際どうしても修正しなければ、選挙粛正はできない、かように考えるのです。これは非常に重大なところだと私は考えております。少くとも四十万円程度に引き下げなければ、小選挙区を実施したところの価値というものは失われていく、私はこのように考えるのです。選挙におきましては、保守党諸君は、自他ともに認めるよりに、相当選挙資金をまかなわれまして、あとで私がお聞きしようと思っている選挙違反計数等に関しましても、これはまことにはばかるような言葉であるかもしれぬが、保守党諸君選挙違反内容というものは、相当大きな実態がある。われわれが選挙粛正をするという建前に立つならば、やはりできるだけ選挙費用軽減しなければならぬ。それに関して、私は早川さんからまたあとで聞きますが、とりあえず兼子選挙部長から、この選挙法定費用というものをさらに検討しなければならぬという私の意見に対しまして、重ねて御答弁が願いたいと思うのです。特に、一昨年まで施行されておったところ選挙費用との関連において、小選挙区になって、それ以上に六十万円という線が出ていることは、私は納得できないのであります。あなたの御答弁を願いたい。
  12. 兼子秀夫

    兼子政府委員 現行有権者一人当り七円に引き上げられましたのは、第二十国会におきまして選挙法改正されたときに引き上げられたことは御承知通りでございますが、それ以前は御指摘のごとく四円であったわけであります。なぜ七円に引き上げたかと申しますと、これは非常に実情に合わないということから七円に引き上げられたものでありまして、今回六円になりましたのは、小選挙区制によって、確かに面積は少くなり、都市等で必ずしもこの最高限までは使わないという場合あろうかと思いますが、やはり限度といたしましては、一三%の減をして六円にいたしまして、その範囲内でやっていただく。やはり従来実際の選挙費用がかかるという声も、私ども選挙を実際にやっておらぬので、内容はよくわからないのでございますが、守り得る限度というものに法律はしておくべきではないかということから、小選挙区制の実施に伴って、七円を六円に引き下げることにとどめた次第であります。
  13. 森三樹二

    ○森(三)委員 一応兼子選挙部長の御答弁は御答弁でありますが、小選挙区制を採用して選挙費用軽減をはかるんだということも言われておるのでありますから、一人当り四円程度の線を出して、この際四十万円程度に引き下げるべきだという見解を私はどうしても捨てることができないのであります。  そこで、次に、中選挙区と小選挙区制との選挙関係について私ども見解を述べるならば、小選挙区制が施行されたからといって、実際の選挙運動期間中はもちろんでありますが、選挙運動期間外平素費用についても候補者の負担は相当増加するものと私は考えておるのであります。すなわち、小選挙区になりますと、一人区等におきましては、保守革新、それにまじるにあと一人や二人の候補者はあるにしても、大別して保守革新の激しい選挙が行われるのであります。これは、たとえば市町村長選挙というような実例をとりますとよくわかるのであります。この市町村長選挙などは、地域的には非常に狭い選挙でありますが、実際においては激烈な選挙が行われて、多い者は百万、二百万というような莫大な金を使っておる、この実情は、私は全く無視できない憂うべき現象であると思うのであります。一つの例をとりますと、私の義兄がある町の町長をしている。これは非常に選挙の激烈な町でありますが、百万近い金を使って双方が戦っております。すなわち中選挙区の場合ですと、定員が三名、四名、五名でありますから、大体自分の得票の計算をいたしまして、自分はその三人なり四人なり五人のうちへは入れるという目標がつきますと、そう無理はしないのであります。一人一区になりますと、どうしても他を排撃して、時分がトップにならなければならぬという建前から、おのずからもう最高度の、あらん限りの費用を投入いたしまして、相手方を屈伏さす。しかも選挙がだんだん激烈になってきますと、大勢はだんだんと判明してくるのでありますから、あと何千票、あと何百票程度の差でもってこの選挙の結果が判明するのだというようなことが自然に予想されてくる。そうしますと、あと何百票かの票を買収とか供応とかいう形において獲得したければならない、こういう建前によって、選挙というものは非常に激烈になるのでありまして、衆議院選挙法定費用として計算されておるその費用よりも、市町村長選挙の方が、さらによけい使っておるという実例があります。私はさらに一つの具体的な選挙違反が起きておるところの例をとるのでありますが、幸い中川警察庁刑事部長も御出席でありますから、これは一つお取調べを願って、あと報告をしていただきたいと思うのであります。すなわち、北海道の幌別郡の幌別町という町があるのでありますが、この町が、昨年の町長選挙におきまして、非常に激烈な選挙が行われ、当選いたしました現町長は、数千万円の出金を持っておるといわれておるところの人であります。この人が当選いたしましたが、選手期間前に、事前運動でもって相当な供応、買収を行い、選挙の結果、何十人という違反が摘発されまして、現在多数の者が起訴されております。私はこの実例を見ましても、小選挙区という小さな舞台におけるところ選挙というものは、競争が激烈になるから、従って、実際上使うところ費用というものは莫大に投入される。先ほども申しましたように、二人区、三人区、四人区というような複数の者の当選てなく、単数の、一人の者の当選でありますから、絶対に自分が第一位の票数を獲得しなければならぬというところに無理が出てくるのであります。そこで、私は、小選挙区にすれば、選挙費用軽減されるという論については、どうしてもこれを肯定することができないのであります。これにつきまして、政府委員の御答弁を願いたいと思います。
  14. 早川崇

    早川政府委員 お答え申し上げます。一例を私の選挙区にとりますと、中選挙区の場合に、買収とか違反ということを別にいたしまして、合法的な選挙活動を言うのでありますが、多数の候補者その他は、非常に範囲が広いものでありまするから、一々宿屋に泊るなりしまして、宿泊旅費が非常に多いのが現在の実情でございます。これが小選挙区になりますと、私の選挙区を例にとると、全部日帰りで自分の家から通える選挙区になるわけであります。その結果、旅費並びに自動車賃その他が、莫大な軽減になることは明らかだと私は信ずるのであります。そのほか、今市町村長の二例を申されましたが、私は全国を通じて考えますると、市町村長選挙の方が金が要るというのは、例外たと思います。やはり区域が大きい全国区の参議院選挙とか、それから中選挙区、小選挙区、県会議員、それから町村長、また小さい村長、これがだんだん費用が少くなるというのが原則であります。一、二そういう例外的大問題があったといたしましても、それは選挙違反として、小さいところでそういう買収をやりますと直ちにわかる。従って、それは選挙違反行為として告発さるべきものでありまして、かような例外をもって全般を推すということは、私はとらないのでございます。今申し上げました理由から、小選挙区は、中選挙区、よりも、合法的な選挙活動において、はるかに少い費用で済む、かように考えておるのでございます。
  15. 森三樹二

    ○森(三)委員 ただいま早川政務次官から御答弁がありましたが、なるほど表面上はそういうようなケースも出てくるわけでありますが、私の申しているのは、選挙戦が激烈になるから、どうしても自分がただ一人の当選者になるためには、最高点の得票をとらなければ当選することができない、そういう見通しのもとに、あらゆる方法を講じまして、そこには莫大な選挙資金が注入せられ、買収、供応その他の悪質な選挙違反が行われると同時に、戸別訪問等も非常に激しくなる。従って、選挙費用というものは、その法定費用関係なく、実質上の選挙費用というものが莫大にかさむというところに、すなわち国の政治あるいは地方自治体の政治の上に、非常に腐敗堕落したところの、いろいろな利権というような問題が起きてくる。これを私は非常に憂えるのであります。また一つの例をとりますと、昨年の仙台の市長選挙におきましては、やはり日本を震撼するような大き違反問題がたくさん出ている。すなわち、供応、買収はもちろんでありますが、敵を倒すために、法定の認められたポスターにあらざるところの、相手候補を罵詈ざんぼういたしましたような極端なビラを作りまして、それを夜陰に乗じて市内に張りつけてしまった。そしてまた、これは皆さんもよく聞いていただきたいのですが、投票用紙の五十枚の束になったものを、二枚とか五枚とか抜きまして、そうして自党を有利にした。選挙の管理に従事している者が、開票のときに当りまして、お互いに票を計算していくとわかるわけであります。とにかく一対一の候補でありますから、もう開票中にどちらが勝つかということはわかっている。そこで投票用紙の五十の東から十票とか十五票とか引き抜いた。そういう問題があった。(「よく知ってるな」と呼ぶ者あり)これはなぜ私が知っているかというと、昨年の当委員会においてこれが問題になりまして、徹底的にこの問題を究明し、しかも現在これが選挙無効の争いになりまして、非常に大問題になっておるんです。私はもちろんこの委員会におきましても、本法案が審議されておらなければ、この仙台の選挙問題は当然取り上げて、その跡始末をしなければならないと考えておったのであります。あの市長選挙の事例が、いかに大きな違反とそれから悪質なものであったかということを私は考えるときに、今回施行されんとするところの小選挙区制というものは、たった一人の当選者を作るというところに、非常に激烈な選挙違反の問題が起きてくると私は思うのであります。こうした小選挙区制を施行するならば、あとで私が質問したいと恐っておりますところの罰則の強化という問題は、必然的にこれは行われなければならないと思うのであります。これに関しまして御所見を承わりたいと思います。
  16. 早川崇

    早川政府委員 先般も申し上げましたように、われわれは国民の良識を信頼するという立場に立たなければ、小選挙制というのは成り立たないと思います。従って、たとえば森委員が昨日朝日新聞の記事を読まれて、鳥取で何か保守党候補者に供応みたいのがあったのか、ひどく一般選挙民の反感をかって、票を失ったと言われたが、私はそこにやはり良識が働いておるのだと思うのであります。さらにもう一つ私が考えたいのは、このたびの小選挙区になりますと、御承知のように隣でたとえば供応があった、また買収があったといえば、すぐうわさになり、国民の監視が、現在のような広範囲選挙区よりも一そう行き届きまして、違反が目立つのであります。そういう関係から取締りも一そう容易になるのではなかろうか、かように私は考えておる次第でございまして、小選挙区になったならば、買収、供応が勝手気ままにできて、それが見のがされるということは、断じてなきものと私は考えておるわけでございます。むろん競争が激烈になるあまり、仰せのようなことが仙台市にあったというお話でありまするが、これまた一つの例外的事件でありまして、投票を察知するとかいうことは、とうてい考えられないことであります。それをもって全般を推すということは、われわれとしてはとらないところでございます。
  17. 森三樹二

    ○森(三)委員 ただいまの、小選挙区制の施行によって競争が激烈になる、そうして選挙の当時においても、あるいはまた平素費用についても、選挙費用というものが膨大になるということは、保守党諸君もみな知っているのです。小選挙区が施行されると、平素のいわゆる供応とかその他の費用というものが非常に要るのだということは、保守党諸君といえどもみな憂えておるのであります。そこで私は、平素のいわゆる選挙地盤培養、選挙には地盤、カバン、看板ということが昔からいわれておりますが、いわゆる地盤培養のために、事前運動というものが非常に激しくなるということを私は憂えておるのであります。すなわち大選挙区の場合におきましては、選挙区が広いために、個人個人とのつながりというものは薄いのであります。広い選挙区から投票というものがまんべんなく集まってくる。いわゆる政策を中心としてお互いに戦うのでありまして、この政策によって広い選挙区から投票が行われるのでありますが、いわゆる小選挙区になりますと、政策よりも情実因縁、絶えず選挙民に接触して、そうして選挙事前運動を行なっておる者が選挙には強いという形が私は生れると思う。そこでこの事前運動の限界でありますが、一般の取締り法規によるならば、供応、買収その他は、その時効が六カ月となっております。一体事前運動というのは、選挙の前のいつまでを言うのかということが、よくいわれております。これはもちろん明確ではないし、またこの次の選挙に出るということの自分が決意を表明して、そして行うところ選挙運動は、一切事前運動として、それは処罰の対象になるわけであります。しかし現在のような短い時効では、今回はその目的は達せられないと思うのです。どうしても事前運動の処罰というものは、その時効というものを一年以上に延長しなければ、現在のような短期時効では、いわゆる平素選挙地盤の培養、すなわち慢性買収を防ぐことはできない。かように考えておりますが、その御所見をお伺いしたいのであります。
  18. 早川崇

    早川政府委員 事前運動の時効六カ月を一年にという御意見、これも一つの御意見かと思うのであります。しかしながら、事前運動というものが、いろいろな人のめんどうをみる、お世話をするということ、これ自体は事前運動にならないのであります。その解釈が非常にむずかしい問題でございます。われわれといたしましては、現行の六カ月という程度で十分だと考えておりまするが、むろんこれは絶対的な基準というわけには参らないことは、われわれも了承しておるのでございます。現在これを一年に延長するという考えは持っておらないということを申し上げます。
  19. 森三樹二

    ○森(三)委員 早川政務次官から御答弁がありましたが、私は、この選挙に当っている兼子選挙部長にもお尋ねしたいのです。ということは、小選挙区になれば、事前運動が活発になるということは、これはもう与党の諸君もすべてが認めておるところです。絶えず選挙運動に類するところの事前運動をしなければならないということを言われておるのでありまして、どうしてもこの事前運動的なものを防止するためには、現行法の短期時効では、私はその目的を達成することができないと思う。少くとも一年以上の時効というものを認めなければ、小選挙区制を行なっても、あなた方が言われるようないわゆる選挙粛正も、あるいは実質上の選挙費用軽減もとうてい行えない、かように私は考えておりますが、兼子選挙部長の御所見をお伺いしたい。
  20. 兼子秀夫

    兼子政府委員 時効の問題でございますが、これを一年にしたらどうかという御意見でございますが、ただいま政務次官からお答えがありました通り、非常に傾聴すべき御意見だと思うのでございます。ただ六カ月を一年にいたしますと、これは私どもの方でなく、捜査の方の問題と思うわけでございますが、さかのぼりまして証拠固めその他技術的の問題がいろいろあろうかと思います。そういう点においてなお検討を要する点があろうと思います。私、考えまするのに、中選挙区から小選挙区に移った場合、選挙実態がどうなるかという問題でございますが、中選挙区でありますと、同じ党派に属する候補者が、一人だけでなく、二人おる、あるいは三人おる場合もあろうかと思います。そういたしますると、その選挙実態は、有権者は、自分はこの党派を支持すると思っておりましても、そのうちからさらに具体的の候補者を選び出さなければならない。そういたしますと、選挙実態は、候補者有権者に呼びかけて、いわば有権者を引きずると申しますか、車でたとえて申しますならば、候補者が車をひっぱっていかなければならない。そういう努力が必要であろうと思います。小選挙区になりまして、政党が二大政党ということになりますれば、政策によってどっちの党を選ぶか、こういうことになるわけであります。いわば候補者は車から押され、有権者から押されて選挙をやっていく。そういうことが選挙実態として違ってくるのではないかというふうに考えておるのであります。大正九年の小選挙区制の事例から、直ちに買収が多くなるというような御心配は、有権者が非常にふえておりますので、私は違うのではないかというふうに考えておるのであります。
  21. 森三樹二

    ○森(三)委員 時間がないので、私は選挙費用の問題はまたあと質問しますが、今回の改正法によって、いわゆる小選挙区になるから、選挙費用が非常に少くなるのだと政府は盛んに答弁をしております。これに関連して、立候補の際におけるところの供託金の問題でありますが、供託金という制度は、これはできる限り軽減しなければならないということをわれわれ社会党は常に唱えておるのです。ところが、それに対して保守党諸君は、供託金は引き上げなければならぬというふうなことを、つとにこの委員会において従来言われておるのであります。今回十万円の供託金を二十万円に引き上げたということは、私はどうしても納得できない。十万円の供託金を五万円に引き下げたというならば、これは小選挙区の趣旨にのっとるかもしれませんが、何がゆえに二十万円にこれを引き上げたのか。金のない者は絶対に選挙に出られないというような建前を、この選挙法では取り上げておるじゃありませんか。この供託金というものは、もしも法定の得票を取らない場合には没収される。従いまして、これは実質上の選挙費用だと私は思うのです。しかも候補者たらんとすれば、とにもかくにも二十万円の金を作らなければ、立候補の届出ができないということであり、私は非常に無理があると思うのでありますが、これに対する御所見をお願いたします。
  22. 早川崇

    早川政府委員 二十万円の供託金が高いじゃないか、こういう御意見でありますが、この際知っていただきたいのは、日本選挙は非常に公営が徹底しておりまするので、大体平均いたしますと、衆議院選挙をやるたびに、一候補者に五十万円の国費がかかっているわけです。そういった関係から、国費は五十万円もかかるのでありまするから、そういったことも考えなければならぬ、同時に、二十万円にいたしますゆえんは、あまりにも泡沫候補が出て、かえって二大政党の運営上よくないということも、これまた二大政党の発展のためにはよくないのであります。かように考えておるわけでございます。
  23. 森三樹二

    ○森(三)委員 ただいま政務次官からも、泡沫候補を押えるためだ、この前、太田自治庁長官も、泡沫候補という言葉を使われたように思いますが、憲法第十四条にはいわゆる人種、性別、その他門地、家柄によって差別待遇をしてはいかないということが規定されている。同じ候補として、日本国民は立候補の自由というものが当然に認められておる。しかるに、金のない者は立候補することができない。しかも泡沫候補を整理するというがごときは、国民を侮辱するもまことにはなはだしいと私はいわざるを得ない。この供託金制度を引き上げた趣旨というものは、いわゆる保守党諸君の金権候補を擁護するために作られたところの、全く悪質な改正であると私は考えますが、重ねて一つ答弁を願いたい。
  24. 早川崇

    早川政府委員 問題は、二十万円が高いか安いか、こういう問題になろうかと思います。これがさらに五十万、百万と非常に大きい金額であれば別でありまするが、この程度の供託金をするということは、政党の場合にもあるいは個人の場合におきましても、決して憲法上の立候補の制限にならない。ある程度の法定得票数を得なければ、これは没収される。選挙に立候補する以上、ある程度の信用というものをわれわれはこの選挙法で従来とも考えておる。十万を二十万にしたということは、われわれは決して高過ぎる供託金だとは考えておらないのでございます。
  25. 森三樹二

    ○森(三)委員 高い安いというような観念は、その人その人の考えかもしれません。しかしながら、少くとも従来十万円という供託金が認められておったのです。それが、選挙区が小さくなり、選挙費用軽減するのだということを政府は提案されておるのです。しかる以上は、いわゆる供託金制度というものは――これは一つの目標でありますが、でき得べくんば、供託金というものは廃止しても、理論的には差しつかえない。しかし一つの制限としてこの供託金制度というものがあるのでありますが、この供託金をなぜ引き上げなければならぬか、私どもは引き下げるべきだと思うのであります。少くとも現行法通りにしておくならまだしもでありますが、これを引き上げるに至っては、これはいわゆる保守党を擁護するところの目的があるのだ。先ほど私が読み上げましたように、政治資金規正法によって届出をしたところ政党に対する寄付金額を見ましても、自由党あるいは民主党のごときは、二億、三億の寄付金がなされておる。いわゆる財界からそのような莫大な選挙資金寄付されておるところ政党ならいざ知らず、われわれ社会党のごときは、この二十万円の供託金というものに対しては、非常に不利益を受けることは明らかでありまして、われわれはとうてい承服できないのであります。私はこの供託金は五万円に引き下げるべきであり、引き下げないとすれば、とにかく現行法通りとしなければならぬということを強く考えるのであります。重ねて一つ御所見をお伺いしたいと思います。
  26. 早川崇

    早川政府委員 むろん十万を二十万に引き上げなければならぬという絶対的根拠はないと私は思いますが、小選挙区実施に伴いまして、過渡的に、泡沫候補という言葉はどうかと思いまするが、乱立の候補者が――無責任な売名的な候補者も出るでしょう。そういった関係で、現在選挙運動費用も、先ほど森委員も言われましたように、六十万円を超過するのではないか、現在の選挙運動費用並びに国において一人当り五十万も国費を持ち込んでおる、そういう諸般の事情を考えまして、二十万程度の供託金というものが妥当ではないか、かように私は考えておるわけでございます。むろん供託金制度は、御承知のように、法定得票数が取れなかった場合においてのみ没収されるのであります。決して妥当でないものとは考えておりません。
  27. 森三樹二

    ○森(三)委員 私は、残余の質疑はまた後日やることにいたしまして、午前中は一応この程度にいたしておきたいと思います。
  28. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、暫時休憩いたします。     午前十一時五十八分休憩      ――――◇―――――     午後一時五十八分開議
  29. 小澤佐重喜

    小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。島上善五郎君。
  30. 島上善五郎

    島上委員 午前中の森三樹二君の質問に対する早川次官の御答弁関連して、大臣から御答弁を願いたいと思います。  供託金を二十万円にしたのはどういうわけか、経費節減と矛盾するではないか、こういう質問をしたことに対して、早川次官は泡沫候補の乱立を防ぐためだ、こういう意味の答弁をされました。私は泡沫候補などということ自体が非常に不穏当な言葉だと思うのです。国民は、選挙する自由と選挙される自由、同等に持っているはずなんです。それを、大臣も、早川次官と同様に、泡沫候補の乱立を防ぐために供託金を二十万円にしたのであるかどうか。そうかと思うと、早川次官は、一人について国でおよそ五十万円ほど経費がかかるのだから、その経費の一部負担であるかのような答弁もされましたので、そのいずれであるかを、はっきりと大臣から御答弁を願いたい。
  31. 太田正孝

    太田国務大臣 私は泡沫候補という言葉はふさわしくない言葉だと思います。たくさん乱立するという言葉は私も言いたいところであります。たくさん出るであろうと想像されるという意味であります。
  32. 島上善五郎

    島上委員 今度の改正によりますれば、大政党に非常に都合よくできておる。そして、大政党はそれぞれ公認候補者をしぼる。社会党民主党もおそらくそうである。そうしますと、そこに早川君のいわゆる泡沫候補が乱立するということは、少くとも従来に比較してはないと思う。従来に比較すると、そのような候補者がなかなか出にくくなる。そういう二大政党以外の候補者が、いわゆる早川君の泡沫候補者が乱立するということは私はないと思う。少くとも、従来に比較すると、二大政党以外の候補者の立候補は事実上きわめて制約されることになると思う。これが従来に比較してより多く乱立するというふうに大臣はお考えになるかどうか。もしお考えになるとしたら、その根拠、理由をお示し願いたい。
  33. 太田正孝

    太田国務大臣 もちろんこれは将来に対する見込みでございますが、小選挙になると、今申された通り二大政党の方がしぼられて参ります。またしぼることを望んでおります。けれども、その以外の人が出るか出ないかという問題になると、今までの小選挙区のときにどうも多かったという例もございますから、その意味で申し上げたので、将来に対する見込みでございますが、二大政党にしぼられるということも事実でございます。その方から少くなるでしょう。これは今までになかった例でございますが、地域が狭くなる関係及び政治的の立場から二大政党に属せざる者もしくは二大政党をやめた方々、いろいろな点が考えられると思います。むろん見込みでございますが、見込みとしては多くなる、こういう見込みでございます。
  34. 島上善五郎

    島上委員 太田長官も選挙のしろうとではないと思う。長い間選挙をやっている経験がある。選挙に立候補するには相当の金がかかる。供託金十万円であってもその他の費用がかかる。二大政党にしぼられて、二大政党がそれぞれ候補者をしぼる。もしたくさん出るという場合を想像するとすれば、それはおそらくは自由民主党で非公認された人が多少出るでしょう。社会党は、ちゃんと近代的な組織政党として規律と統制がありますから、そのようなことは断じてありません。そこで、それ以外に出るということは、よほどの人でなければ出にくい。出るからには当選を期して出るのですから、供託金を没収されても恥をかいてもけっこうですといって出るものは、よほど頭がどうかしていなければ出ないと思う。第一出にくくなる。選挙区が広くて定員が多ければ、この中で当選する可能性もあるし、出やすい。ところが、一人の選挙区、そうして二大政党からそれぞれ公認候補者を出す、その他の人々は、立っても選挙運動の面においても非常な制約を受ける、こういうことになりますれば、私は、選挙をまるきり知らないしろうとならいざ知らず、選挙について多少苦労し経験を持っている者ならば、少くとも従来に比較して候補者が乱立しないと見るのは当然だと思う。それが、従来に比べて乱立するであろう、やってみなければわからぬ、こういうでたらめなことで――やってみなくたってわかる。従来に比較して乱立しない、こう見るのが当然なんです。私は、もう一ぺん、選挙のしろうとならざる太田長官に、従来に比べてより乱立するというような、そういう考えは一どう考えてもやってみなければわからぬというけれども、これはそういうことはないと脚う。もう少しはっきりと、将来のことだからわからぬと言わずに、大体想像される私の考えは、少くとも従来に比べれば候補者の乱立ということはないと思う。二大政党以外に立っても、もう一人か二人に制約されてしまう、こう考えますが、長官はどのようにお考えになりますか。
  35. 太田正孝

    太田国務大臣 この制度が国民によくわかりまして、二大政党による対立を期待しつつ政局の安定をはかるという意味におきまして、国民がほんとうに知りましたならば、少くなるでしょう。またイギリスなども少いのです。しかし、制度の切りかえどきでございますとか、あるいは小選挙区であった過去の例を考えてみましても、狭くなると何か出やすいというような誤解があるのじゃないかと思います。私は永久にとは申しません。今日の見値しといたしましては、私としては相当たくさんの方が出るのじゃないか、こういうように考えるのでございます。
  36. 島上善五郎

    島上委員 それはいずれ事実が示すでしょう。私は私の言うことは間違いないと確信を持っている。  そこで、その二十万円にした根拠ですが、早川次官はこれという根拠はない、とう言っておった。根拠がなしに変えるわけはないと思う。十万円から二十万円と言えば倍です。たくさん持っている方ならば、十万円ぐらいポケット・マネーかもしれませんが、私どもにとっては大へんな金です。十万円の金があれば選挙のすべり出しが十分にできる。これは大へんな金だ。この十万円を二十万円にするということは、新しく立つ人々、金権候補者ならざる公明選挙をやろうとする候補者にとっては大へんなことです。この大へんな改正をしたからには、一定の恨拠があるはずです。その根拠を明確にお示しを願いたい。
  37. 太田正孝

    太田国務大臣 金の点につきましては、貨幣価値の問題もございましょう。しかし、大体において、十万円論におきましても、その当時の大体の考え方から来たのであります。ただあまり多く出るという私どもの見通しのもとにおいて、これを倍にしただけでございます。物価の点とかそういう点から考えたのではございません。
  38. 島上善五郎

    島上委員 どうもそれでは根拠らしい根拠と受け取れません。先ほど私が言いましたように、国民は選挙をする自由と選挙をされる自由を対等に持っているはずです。何人が立候補しようと、これは自由であるべきはずだ。しかるに、このような多額の供託金を課するということは、御承知のように一定の得票数がなければ供託金は没収される。一定の得票数以上あるものは、再び自分ところに返ってくる。それだけでも非常に大きな差別扱いをしている。大政党の有力候補者は返ってくる。早川君の言ういわゆる泡沫候補者は没収されてしまう。それだけでも非常に大きな差別がある。私は、これは新人の立候補をはばむものだ、ひいては国民に対等に平等に与えられておる選挙をされる自由を大きく制約するものである、こういわざるを得ない。ちゃんとした根拠なしにこのような改悪をするということは――これは改正ではなくて改悪です。改悪をするということは、国民に平等に与えられた権利の制約であると思う。没収する、返ってくるということ自体に、もうすでに大きな差をつけておるのに、さらにこのような差別をするということは、国民に与えられた権利の剥奪である。制約ばかりでなく、剥奪であるとさえ言ってもいいと思う。この点について大臣はどのようにお考えになりますか。
  39. 太田正孝

    太田国務大臣 どこの国の制度でも、こういう供託金の没収という制度は常に伴っておるのでありまして、およそ、選挙制度を考えます場合において、このことを考えない者はないと思います。しこうして、小選挙区のもとに多く出るという見通しのもとに立てたのでありまして、今までの改悪でも何でもないと私は思います。
  40. 島上善五郎

    島上委員 それでは、多く出ることを一体なぜ阻止しなければならぬか。供託金をふやして阻止しなければならぬのか。私は、大臣といえども、国民は立候補する自由を対等に平等に与えられるということは認められると思うんです。立候補を否定するという考えはなかろうと思う。国民は立候補する自由が対等に与えられておるという私の見解に対して、大臣はどのようにお考えですか。
  41. 太田正孝

    太田国務大臣 もちろんお互いは立候補する自由を持っております。ただ、こういう限界を設けましたのは、普通の選挙におきましても考えられるがごとく、一つの目安にすぎないのでございます。
  42. 島上善五郎

    島上委員 目安と言いますけれども、対等に持っているはずの立候補の自由が、これによって著しく制約されることは事実なんです。一体なぜたくさん立候補しちゃいかぬという根拠があるか。私は、政党が定員一人のところに公認候補者一人にしぼることは、政党みずからがやることですが、当然そうなるだろうと思う。一定数の候補者を持った大政党でなければ、選挙運動期間中の選挙活動ができない。ほとんど何もできないというふうに制約される。その制約がついている上に、さらに供託金によって制約をして立候補を阻止するという。これは立候補の阻止です。私は、小政党であろうと、政党に属しない者であろうと、どんどん立候補してよろしいと思う。第一、泡沫候補などと軽率にもそういう言葉を使いますが、私はまあ名前はあえて言いませんけれども、かつて、愛知県では、自転車に拡声器を積んで、泡沫候補だとみんなが思っていた者が当選したことがある。それが自由民主党へ入ったら、その次には泡沫候補になってしまった。前は当選した人が今度は泡沫候補になってしまった。それから、私はあえて名前は出しませんが、この中で大いにヤジっておる者の中にも、東京では泡沫候補で問題にならなかった者が、いなかへ行ってヒョコリと当選して出てきた者がある。一体泡沫候補であるということを政府の次官がきめつけるということ自体が、私は大きな間違いだと思う。候補者に対する侮辱である。泡沫候補であるか、ないかということは、選挙民がきめることだ。(「その通り」)政府の次官が泡沫候補などと言うとは何事か。これはなまいき千万なことだ。私はそういうようなことで……。(「この中にもいるというのはだれだ」と呼ぶ者あり)言ってやる。(「何を言ってるか」「だれが泡沫候補か」「言ってみろ」「東京で泡沫候補であった者が、いなかへ行って当選したというのはだれのことだ」と呼び、その他発言する者多し)早川君の言った言葉で言えば、とこう言ってるじゃないか。(「自分で言ってるじゃないか」と呼ぶ者あり)誤解しているようだから、私はあらためて言いますが、私が泡沫候補と使っている言葉は、すべてこれはいわゆる早川君の言う泡沫候補だ、こういう意味であるということを御了解願いたい。このようにして、いわゆる泡沫候補であるかないかということは、選挙民がきめることなんである。そういうことで供託金の額をきめて国民の立候補権を制約するということは、大いに問題があると思う。何人が当選するかしないかは、選挙民が選択する。選挙民には候補者選択の自由があるべきものだと思う。一票を投ずる投票の際には、候補者を選択する自由があるべきです。同じ自由民主党候補者の中でも、今日のように広い場合には当選する人もあれば落選する人もある。同じ政策を掲げておっても、政策が同じであっても、人物とか力量、才能によって候補者を識別して、自分のとうとい一票を行使して投票する権利があるはずなんです。供託金をふやして立候補を阻止するということは、反面においては国民の候補者選択の自由をも制約することになると思う。この点に対して大臣に重ねて御質問をいたします
  43. 太田正孝

    太田国務大臣 もちろん、金で制限するということは、あるいはよくないことでしょうが、現状におきましても十万円という制限がございます。制度を変えて将来の見通しがどうなるというので、ふやすと、私はこう申し上げたのでございます。なきにしかずという議論も成り立つでしょう。けれども、どこの国におきましても、私の知る限りにおきましては、供託金をとらずにやっておるところはないように思います。あるいは例外はあるかもしれませんが。そのときにおきましても、今島上委員の言われるような金の制限というような議論が起るわけです。現在の制度のもとにおけるこの金額をなぜふやしたかと申し上げるならば、私の申し上げたような、たくさん出るような場合も考えたのである、かように申し上げたわけであります。
  44. 滝井義高

    ○滝井委員 昨日と、けさの森委員質問関連して御答弁を願いたいと思います。  それは、まず第一に、供託金十万円を二十万円にした点でございます。これは、今も島上委員との間にいろいろ論議がございましたが、午前中の委員会で、泡沫候補ということは乱立を防ぐことだということ、第二番目には、国費が一人当り五十万円かかっておるのだ、こういう莫大な国費を使っておる選挙であるので、候補者としては供託金を二十万円出すのは当然だ、こういう意味の二点についての政務次官の御説明があったわけでございます。もちろん、数学的に十万円を二十万円に上げた理由いかんというようなことは、これはむずかしいと思いますが、やはりそこに何らか十万円を二十万円に上げなければならないという、万人を納得せしめる理由が必要だと思う。その理由としてあげたのが、乱立を防ぐということと国費が五十万円いっておる、こういう二点であったのでございますが、この二点については大臣はお認めになりますか。
  45. 太田正孝

    太田国務大臣 私は、乱立の点につきましては高上委員にお答えした通りでございます。五十万円かかるからということの理由については、政務次官がどういう意味で言われたか私はわかりませんが、小選挙区のもとにおきましてはたくさん出るという見通しのもとにやったのでございます。また、今のお言葉の通り金額がどうという問題につきましては、これは別個の問題でございますが、乱立する見通しなるがゆえにやったと御了解を願いたいと思います。
  46. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、午前中の、五十万円の国費が一人の候補者にいっておるということは、お取り消しになりますか。
  47. 太田正孝

    太田国務大臣 私、速記録を拝見しておりませず、午前中ほかの委員会に出ておりましたので、どういう意味で言われたか、前後の関係もわかりませんから、ただいま私はそれを批判する材料を持っておりません。
  48. 滝井義高

    ○滝井委員 それは私ははっきり耳に聞いております。五十万円の国費を費しておるからという御答弁があった。それじゃ御本人を一つ呼んでいただきましょう。私たちは、政務次官というものは大臣のかわりに御答弁願っておるのであって、政務次官の御答弁が、今度はあとから参った大臣によって肯定をされないということになれば、私たちは政務次官答弁では満足できません。だから、この点をはっきりしていただかないと、私たちは御協力申し上げることができない。鈴木次長なり、兼子選挙部長なり、あるいは政務次官の御答弁は、これ大臣の答弁なりと考えて議事を継続してやっておったわけです。従って、大臣が、前の政務次官の御答弁を基礎にして今度質問をしたときに、どうもそれは速記録を見なければわからないということになると、私たちは速記録ができるまでは質問を中止をします、こういわざるを得ないことになるのです。その点、一つ横に兼子さんもおられたんですから、大臣よくお話しになって答えて下さい。
  49. 太田正孝

    太田国務大臣 もちろん私はよく調べないからと言ったので、調べないままでお答えするのはかえって失礼だと思います。決して政務次官そのものの言われたことを拒否しようとか、そういう考えじゃございませんです。それは、人格的にも私は尊敬している早川君でございますから、悪しからずお願いいたします。なお、その当時のことにつきましては、選挙部長から申し上げるごとにいたします。
  50. 兼子秀夫

    兼子政府委員 午前中政務次官が供託金につきまして御答弁申し上げたのでありますが、その際に、現在公営費用が議員一人当り五十万円近くかかっておるということを申し上げたのであります。これは直接には供託金の引き上げの理由とは関係がないと思いますが、そういう事情でありますので、乱立をするということが、ただいまの大臣の答弁にもありましたように予想されますので、そういう事態でありますので、供託金を引き上げる理由と相なっておる、かように考える次第であります。
  51. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、乱立をするおそれがある。乱立をすれば、結局国費である公営費用というものが一人五十万円もかかっておるので、予算的に非常に多く出さなければならぬ、こういうことになるので、あわせて一本という形になって、十万円を二十万に引き上げた、こういうことに解してよいですか。
  52. 兼子秀夫

    兼子政府委員 必ずしもお尋ねのような趣旨ではなかったと思いますが、ただ現在の選挙実情の説明として申し上げたと理解しております。
  53. 滝井義高

    ○滝井委員 百歩譲ってそうとしましょう。乱立をする。従って乱立は多くの公営費用を要する。こういうことのために供託金というものを十万円引き上げた。こういう一連のものとして質問を進めたいと思います。そこで、そういうことになりますと、二大政党というものを育成するために小選挙区制をしいた。二大政党を育成するということは、これは、少くとも、あなた方のこの委員会を通じての御答弁は、二大政党である社会党と自民党とが相対決して選挙場にまみえる、こういう形が今まで一貫して流れてきておる。ところが、もし小さな選挙区の中で乱立をするということになりますと、二大政党というものは必ずしも達成できるということにはならない、こういうことになる。乱立をすることにならねばならないということになるわけなんです。理論として、乱立のあるところに、必ずしも二大政党に行くという結論は出てこない。従って、その点は大臣の御答弁一つ得たいと思います。
  54. 太田正孝

    太田国務大臣 私は、先ほど島上委員にもお答え申し上げました通り、二大政党論及び政局安定論が習熟してきまするならば、候補者の数は少くなる。ただ、過渡期におきましての問題と、従来ややもすれば、過去の結果においても現われておる通り、小選挙区になると多く出るのは事実でございます。私どもは、その過去の判断と、今の実際に、お言葉通り二大政党ができてしまっていきまするならば、またそのときには少くなります。これはお言葉通りだと思います。けれども、その過渡時期においてふえるということは、私はどうしても見通しとして正しいのではないか。育成という問題とその点におきましてからみ合わすことは、私は過去のこの進み工合によってできることだろうと考えます。
  55. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると、それは、二大政党ができるということは、この小選挙区制を実施したならばできるということじゃなくして、できるかできないかわからぬが、大体将来においては二大政党に多分十中六分か七分なるだろう、今の太田さんの議論でいけば、こういう想定の議論になってしまうのです。その点はどうですか。
  56. 太田正孝

    太田国務大臣 私は、二大政党というものがほんとうに国民にわかれば、二大政党ならざる国におきましても、この制度によって二大政党になる。すなわち、二大政党をやっていくのには、手段として小選挙区がよい、またなっちゃった後におきましても、これを支持していくがよい、こう申し上げたのでございます。決して、これは、かようなことをしたならば、二大政党ができないかというような立場から申し上げたのではございません。
  57. 滝井義高

    ○滝井委員 私は、二大政党ができておるときに、この小選挙区制を実施するならば、これは二大政党を維持していくための最上の私は選挙区制であると思います。その点については、私は認めたいと思います。そこで、これは、この前も言ったように、今のように数の開きが、政策の開きがあるというときには、そうはいかないのです。しかもあなた方自身が乱立をお認めになった。私は必ずしも乱立は起らぬという考えを持たなければならぬという考えを持つのはどうしてかというと、すでにこの法案の中にもある通り、公認候補者以外は立つことができない。しかも、同じ自民党なり社会党の党員でも、その党名を名乗ってはいけない、こういう規定になっているわけです。そこで厳重に個人政治的な関係の自由まで拘束をしている。この立法の中において、なお乱立が起るという見通しをあなた方が持つとするならば、あなた方の二大政党の育成論なんというものは実にあやふやなものであり、しかも現在の自民党を伸ばすため以外の何ものでもないという感じがしてくる。だから、少くとも、同じ党員であっても公認でなければ立つことができない、あるいは公認候補者と似通ったような党名を名乗る宣伝をしてはならぬというような規制をしている現情において、なおあなた方が乱立をするという理論的な根拠は、一体どこにあるのですか。
  58. 太田正孝

    太田国務大臣 党が限定されたる公認をするという意味におきまして、しかもお互いは立候補の自由を持っております。そのやめた人間が必ず引っ込むかという問題も考えなければなりません。従って、そういう方々が党を退きまして立候補する場合も、相当考えていいと思います。あなたのお言葉によりますように、そういうものはそれで引っ込んでしまうというような見通しでなければ、その議論はできないのじゃないか、こう考えます。
  59. 滝井義高

    ○滝井委員 どうもその点私は納得がいたしかねるのです。あなた方が乱立ということをお認めになっている限りにおいては、二大政党の育成というものは非常に困難であるということを語るに落ちた言葉だと思います。そこで、これは議論をしても始まりませんので、先へ進めます。  今十万円を二十万円に引き上げたということについて質問しているわけなんですから、そうしますと、この改正の前に、参議院の全国区においては十万円を二十万円に引き上げました。これはどういう理由から引き上げたのですか。
  60. 兼子秀夫

    兼子政府委員 去る三月十四日に成立いたしました公職選挙法改正で、参議院の全国区につきまして供託金の引き上げが行われたのでありますが、この提案は参議院の方で当初なされまして、形式的には衆議院の提案ということになっておりますが、趣旨とするところは、全国区につきまして供託金が従来低過ぎたという判断のもとに各党の御意見が一致した、このように承知いたしております。
  61. 滝井義高

    ○滝井委員 参議院の全国区の供託金が従来いろいろ客観情勢を考えて低過ぎた。それは一つ納得しましょう。そうしますと、政府は、今回の改正に当って、なぜ参議院の地方区の供託金を十万円のままにしているかということなんです。参議院の全国区は低過ぎるということで上げましたよ。衆議院は、一人当り公営費用が多くを要している、乱立を防止するためだ、こういうことで二十万円にお上げになった。そうすると、参議院の地方区だけ依然として十万円なんですね。これは、一体、どういう理論的な根拠から、そのまま据え置くことに相なったか。
  62. 太田正孝

    太田国務大臣 参議院の制度におきまして、全国区と地方区の区別があることはもちろんでございますが、地方区そのものと今度の小選挙区とを比べてみますと、大へんな違いがあると私は思います。従来の制度のままでいくならば、私は現情の参議院の地方区の供託金はいいと思います。
  63. 滝井義高

    ○滝井委員 乱立を防ぐ、一人当り公営費用が多く要るという点については、何も衆議院独特のものではないと思います。全国区が二十万円になったから一つ今度は地方区に回ろうかということで、ますます乱立を促進する形が出てくるわけです。全国区は低過ぎるから高くしたのでしょう。そうすると、衆議院も供託金が十万円から二十万円と高くなったから、今度は一つ参議院に行こうということで、乱立を促進する形になるじゃないですか。もう少し筋の通った御説明をやっていただきたい。行き当りばったりの御答弁では、どうも少し筋が通らないのです。
  64. 太田正孝

    太田国務大臣 参議院のいわば大選挙区的な広さにおきましての選挙と、今回の、今までの中選挙区を四分の一くらいに縮小しようという選挙区制の考え方と、私は非常に違うと思います。また、参議院の全国区の供託金を高めたから地方区が非常に多くなるというのは、見通しの問題でございますが、私はそんなことはないと思います。その問題と、小選挙制度におきましての乱立という問題とは、数字においても違っておるものじゃないか、かように考えるのでございます。
  65. 滝井義高

    ○滝井委員 大臣は見通しの問題とおっしゃいました。いわゆる小選挙区になったら乱立するかしないかということ、これも見通しの問題なんですよ。あなたは乱立をすると言うし、私らはしないだろうと言っておるわけなんです。これは見通しの違いなんです。ところが、現実に、参議院というものは、これは今度は逆になって、われわれは、十万円をそのまま据え置けばむしろ多く出る可能性があると言い、あなた方は、今度は乱立しないと言う。こういう見通しの違いだけの問題でこういう問題を決定されたのでは、大へんなんです。やはりそれ相当の何か理論的な、根拠ある、客観的な明白な、万人の納得する情勢というものがなくては、こういうものを、そう身勝手に、片っ方は変えてみた、片っ方は変えなかったということでは困る。ところが、今度は、選挙区の広さからいえば、県会議員の選挙より狭いところが大きな市なんかでは出てくるのですよ。県会議員の供託金は幾らかというと二万円ですよ。あなた方が、今度衆議院選挙区が小さくなったから乱立するというなら、県会議員も当然上へ上げてこなければならぬという理論が出てくるのです。それをそのまま据え置いておる。あるいは都道府県の教育委員選挙あたりでもそのままだ。ところが、都道府県の教育委員選挙については、部分的な改正がほかの方面においてはある。だから、その点もう少し理論的な、供託金を十万円から二十万円に上げたということについての妥当な、あなた方が説明のできる原理といいますか、何かそういう基準というものを出してきたならば、同じようにこの九十二条に並んでおる他の選挙においても上げなければ、上げない理論的な根拠、基準というものが出てこなければ、これはなかなか納得しないのですよ。その点を一つ大臣もう少し明確にして下さい。
  66. 兼子秀夫

    兼子政府委員 供託金につきまして、参議院の地方区との関連がどうなるかということでございますが、参議院につきましては先般改正が行われまして、今般の選挙法改正は、衆議院議員の選挙につきまして、小選挙区制実施に伴うという面から改正をいたしたのであります。従いまして、参議院の点につきましては、権衡論等の検討は別の機会に考えるべきであろうと存じます。
  67. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、教育委員や何かの改正も今度は部分的にあるわけですね。あなたは衆議院の中選挙区を小選挙区に変えた。衆議院だけではない。今度の改正はこれは別注をしてきて改正をしておる。だから、当然、これは教育委員にしても知事にしても、明らかに供託金というものは、他のビラやチラシなどが関連しているならば、当然供託金も関連をしておる。だからそこを明白にしなければならぬといけないと私は思う。それならば文句を言いません。衆議院選挙だけ、しかもそれに関連するものだけならばよろしい。ところが他に及んでおる。だからもう少し明白にしてもらいたい。
  68. 兼子秀夫

    兼子政府委員 教育委員や知事の選挙等に関連をしておる、いじっておるではないかというお話でございますが、これは、小選挙区制の実施に伴う衆議院の分だけを改正いたしまして、その他の教育委員とか知事の選挙あるいは市長の選挙というような点は、実質を変えないで、条文の整理の関係でいじっているだけでございます。
  69. 滝井義高

    ○滝井委員 実質を変えないと言ったって、たとえば、ビラならビラが今まで教育委員の五千枚のものが三千枚になれば、これはやはり変ってくることになります。
  70. 兼子秀夫

    兼子政府委員 お尋ねのような教育委員についてビラを変えるというような改正はいたしておりません。
  71. 滝井義高

    ○滝井委員 百四十四条の第一項の一号ですか、衆議院議員の選挙、それからその下に知事やら教育委員があって、公職の候補者一人については五千枚が三千枚になるというふうに変っている。
  72. 兼子秀夫

    兼子政府委員 百四十四条につきましては、これは、教育委員会法が提案されておりまして、その教育委員会の整理に伴いまして、その提案を前提としての改正でございます。公職選挙法の前回の改正とは関係ないわけであります。
  73. 滝井義高

    ○滝井委員 それはあなたの方は教育委員会法の改正前提としての改正かもしれません。しかし出てきた法律の中にあることは事実なんですから、改正としてあることは事実なんですから、同じ公職選挙法の一部改正の中に出てきていることは事実なんです。その出てきているものを、これはわれわれは改正をいたしておりませんと言ったって、実際改正が出てきている。五千枚が三千枚になっている。出てきていることは事実じゃございませんか。
  74. 兼子秀夫

    兼子政府委員 教育委員会につきましては、教育委員会の整理に関する法律の方で改正が行われておるのでありまして、公職選挙法改正ではございません。
  75. 滝井義高

    ○滝井委員 私は公職選挙法の中に改正が出ていることを言っているのであって、その中に教育委員会の改正が出ていることは、何と言おうと事実なんですから、これはもうお認めになるでしょう、出ていることは事実なんですから。
  76. 兼子秀夫

    兼子政府委員 教育委員会につきましては、教育委員会を廃止するという法律関係で、この公職選挙法では、委員会が廃止されますならばという前提で、整理をいたしておるのでございます。
  77. 滝井義高

    ○滝井委員 前提はそうかもしれません。前提はそうかもしれないけれども、それは現実に教育委員会があることは事実なんですから、まだ法律は通っておりませんよ。通るか通らぬかもわかりませんよ。地方教育行政の組織及び運営に関する法律というのはまだわからない。(「並行しているよ」と呼ぶ者あり)並行しておっても何しても、現実にわれわれが審議する上においては、現実にあるものとして考えていかなければならぬ、あるものとして考えていく限りは。明らかに廃止をするというならば、あなたは、九十二条の中の「都道府県の教育委員会の委員選挙四万円」というものも、当然削除してこなければならぬ。ところが、廃止をするということを前提にして話を進めてくるなら別だ。ところが九十二条なんか廃止をしていないでしょう。廃止をしておりますか。
  78. 兼子秀夫

    兼子政府委員 先ほど申し上げましたように、教育委員会の整理に関する法律で、教育委員会が廃止される立法手続といたしましては、あとから出します法案はその先に提案いたしました法律案を基礎として提案をいたすことが、従来の慣例になっておりまして、われわれといたしましても、そういう角度で整理をいたしております。
  79. 滝井義高

    ○滝井委員 私はその将来のことはいいです。現実論をわれわれは言っている。問題はやはり政治の現実なのです。将来の見通しの問題その他をここで議論をしても、平行線になるのです。だから、現実の問題として、教育委員会その他が四万円というふうにぴしっと供託金があるわけです。しかも、あなたは、さいぜん、そういうものはもう関係ないのだとおっしゃったけれども、実際に公職選挙法の中には、それは廃止するかは知らぬが、条文をいじっておることは確実なのです。従って、あなたは、今の私に対する御答弁としては、衆議院に関することだけしかやっておらぬと言われるから、そうじゃない、教育委員会もあるじゃないか、こう言っているわけです。
  80. 兼子秀夫

    兼子政府委員 教育委員会の廃止の法律と、廃止に伴う整理の法律――整理の法律の方でそのようなことをいたしておりますけれども公職選挙法では無関係であります。この教育委員会の廃止ということを前提にして、立法は準備を進めでおる次第でございます。ただ、教育委員会の廃止に関する法律が万一通らない場合には、おっしゃったように、またこの点は直さなければならぬという事態には立ち至って参りますが、立法の手続としては、その先に出しました法律に基礎を置きまして、従来こういう提案をいたしております。実質は変えておりません。
  81. 滝井義高

    ○滝井委員 実は、百四十四条は、すでにもう直しておるわけなんです。私は、通らなかったらまた元に戻すとかなんとかいうのじゃなくて、現実に、公職選挙法の一部改正の中には、五千枚を三千枚に直しておる。そのことを言っておるのです。直しておるじゃないか。
  82. 兼子秀夫

    兼子政府委員 百四十四条の第一項第一号のポスターにつきましては、今回の提案においては、教育委員会の関係が向うの法律で廃止ということになっておりますので、それを削っておる。教育委員会のポスターの枚数を変えたりなどいたしておるのではございません。
  83. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、この公職選挙法の中では、教育関係は全部削っておりますか。
  84. 兼子秀夫

    兼子政府委員 それは整理に関する法律の方で整理をしております。
  85. 滝井義高

    ○滝井委員 たとえば、今申しましたように、教育委員会が廃止されるということになれば、ここに、九十二条の第一項第八号ですが、都道府県の教育委員会の委員選挙の供託金の四万円もみんな削らなければならぬ。あなたの方は削っていないのですよ。まだ教育委員会というのはあるのですから、今の百四十四条のところだけはあなた方は削ったとおっしゃるけれども、それは削っても直してもいないのですよ。ポスターの枚数が違っているだけなのです。
  86. 兼子秀夫

    兼子政府委員 先ほども申し上げましたように地方教育行政の組織及び運営に関する法律の施行に伴う関係法律の整理に関する法律案におきまして、「第九十二条各号列記以外の部分中「並びに町村の教育委員会の委員」を削り、同条第八号及び第九号を削る。」というように、全部整理をいたしております。
  87. 滝井義高

    ○滝井委員 まあ、そちらの法律の方でお削りになっておるそうでございますが、しかし、実は、私たちとしては、この法律を見てやっておるわけなのであります。実は、なかなか法律も多いことだし、そう全部見るというわけにはいかない。従ってこういう混乱が生じてくるわけなんです。あなた自身もよく答弁がまごつく状態なんです。われわれ自身だって、これを本職でやっているわけではないので、まごつくわけです。しかし、それにしても、これは相当矛盾が出てくるわけなんです。だから、これ以上は言いませんが、矛盾があるという点だけを指摘しておきます。  その次に、昨日の点なんですが、政談演説会の回数の問題ですね。一人の候補者については十回やる、全国を通じて五十回をやることができるという条項なんです。あれをもう少し明瞭に一つ御説明を願わなければならぬと思う。全国の四百七十六区ですかの全選挙区に十回ずつみんなやってしまった。そうすると、あとの五十回というものを一体どこでやるのかという限界がはっきりしない。これは、私は政治的な関係が非常に濃厚になって参りましたのて、兼子さんではなくして、大臣にお尋ねをしたい。これは、昨日も御質問をいたしまして、保留をいたしておった事項でございますから、その限界を大臣から明白にしていただきたい。
  88. 太田正孝

    太田国務大臣 五十回、これはきのう次長は東京とか大阪とかいろいろ例をあげましたが、私はどこでやってもいいと思います。政党の考えによって、どこでやってもいいと思います。もちろん総数の五十回の回数は限られておりますが、どこでやってもいいと思います。従って、同じところでやる場合もあろうかと思います。やらぬ場合もあろうかと思います。ただ、全国において総数が五十回、回数の制限しかないと私は思います。
  89. 滝井義高

    ○滝井委員 政談演説会の回数というものは、「一選挙区につき当該選挙区における公認候補者の数に十を乗じて得た数に相当する回数」こうなっておる。そうしますと、私なら私の選挙区で十回やれば、一人一区ならば十回やるならば、それ以上やることはできぬことになる。それは大臣はお認めになりますか。
  90. 太田正孝

    太田国務大臣 今の問題は、法律にちゃんと、「公認候補者の数に十を乗じて得た数に相当する回数及び外に全国を通じて五十回以内」とありまして、「及び」とこうつながっておるのでございます。
  91. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、十回やりまして、そのほかにそこで五十回の範囲なら何回でもやっていい、こういう解釈が成り立つと思うのですが、それでいいのですか。
  92. 兼子秀夫

    兼子政府委員 これは、考え方は、東京とか大阪、あるいは福岡とかいうような大きな公会堂を予定をいたしまして、政党が本来の政治活動、大演説会をするということが今後ひんぱんになろうと思いますが、その回数を五十回ということにいたしたのでありまして、政党平等にこの権利が与えられておるわけでございまして、政党が、その判断によりまして、一個所に集中して五十回をお使いになるということも差しつかえない、このように考えております。
  93. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、一つの極端な例は、この条文が極端に作用した例は、私の選挙区で十回やってそのほかに五十回、六十回やっても差しつかえない、こういう解釈が成り立つわけですね。
  94. 兼子秀夫

    兼子政府委員 おっしゃるような場合もあり得るわけでございますが、政党は、国全般の宣伝力を考えて、上手に回数を使うのじゃないか、分散させるのじゃないか、このように考えております。
  95. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、昨日からだんだん明白になって参りましたが、いよいよそういうように政談演説はやることになります。そうしますと、政談演説と非常に類似の関係にあった立会演説というものが、今度の小選挙区のためになくなってしまったわけです。今までの百五十三条では、立会演説というものは、公職の候補者の政見を選挙民に周知させるためにやっておったのが立会演説です。あなた方は、小選挙区を実施したということの一つの理由として、政党の政策というものを選挙民に徹底をせしめなければならないとおっしゃっておるわけです。そうすると、いいですか。ここが大事なところです。小選挙区における衆議院候補者の政策、政見というものを選挙民に徹底させるためには、どういう理論的な根拠から立会演説が必要でなくなるのか、これが私はわからないのです。どういう理由ですか。
  96. 太田正孝

    太田国務大臣 有権者といたしましては、立会演説によって政策を知る方法もございましょう。また人物を知る方法もございましょう。それがなくなった場合におきまして、政党は掲げた政策を忠実に各選挙区において説くことと思います。そのやり方が、今までの候補者を通してやる以外に、新たに政党の強い力をもって政策を宣伝していくということは、立会演説の場合と違うと思います。何となれば、立会演説の場合におきましては、たくさんの候補者が立ちまして、これを中選挙区という限界の制度においてやるのでございますが、今回これをやめて、しかも小選挙区になった場合に、政党の力をもって広くかつ深く政談演説をして、その政策を国民に知らしめるという意味でございます。
  97. 滝井義高

    ○滝井委員 政談演説あるいは個人演説で広く深く政見をお知らせになることは、私も異議はございません。しかし、私がお尋ねをいたしておるのは、この公職の候補者の政見を選挙民に周知せしめる方法として、明らかに公職選挙法第百五十三条では立会演説をやらなければならぬ、こうなっておる。ところが、法律でなっておるのに、政党政治になった、あるいは二大政党が対立できるであろうという、その小選挙区を実施したがゆえに、衆議院議員だけなぜどけなければならぬかということです。この百五十三条をあなた方が全部抹殺するならば、私はそういうことを申しません。しかし、百五十三条には、依然として政党に所属する参議院の地方区あるいは県知事も党派で争っております。それについては明白に開催しなければならぬと義務規定になっておる。ところが、同じく一つ政党に所属する衆議院だけ、なぜ立会演説というものを政見、政策を周知させる方法としてとられることができないのかということです。それが私にはわからない。参議院と知事はそれをしなければならぬと義務になっておって、衆議院だけはやらぬでもよろしい、やってはいけないということになぜしなければならぬのか、その理由を述べてくれということなのです。
  98. 太田正孝

    太田国務大臣 選挙の区域も方式も違いますので、衆議院議員の選挙を小選挙区にするにつきましては、立会演説の方法をやめてよい、こういう信念のもとにいたしたのでございます。
  99. 滝井義高

    ○滝井委員 それは答弁になりません。大臣は、今まで、二大政党を作り、しかも政局を安定させていく、これが小選挙区の目的だ、しかも、小選挙区になれば、政策、政見というものが選挙民に徹底をするであろう、こういうことが大臣の御主張でございました。ところが、同じ政党に属する参議院と衆議院とが、衆議院は政策、政見を徹底せしめるために立会演説をやることはできない、参議院はやらなければならぬというのは、どういう理論から出てきますか。自民党あるいは社会党に属しておる国会議員であって、一方は立会演説というものをやることができぬ、一方はやらなければならぬ、こう規定しておるではないか。それならば、一つ政党の同じ政党人でありながら、所属は二つに割れてしまう。一方はやらなければならぬ。一方はやってはいけない。これは、どう言っても、現在のこの法律がある限りは筋が通りません。どういうふうに筋を立てていきますか。
  100. 太田正孝

    太田国務大臣 衆議院選挙と参議院の選挙におきまして性質の違いがあることは、私が申し上げるまでもございません。内閣総理大臣を選ぶのも衆議院議員からの選挙によってやるなどの点も違っておりますが、さらに、区域の点におきまして、小選挙区という狭い区域におきましては、この方法が一番よい、政談演説等政党の力によって強くやるのがよい、しかも、狭い区域でありまするから、立会演説までしなくとも、これによって十分やっていけるという考えからでございます。
  101. 滝井義高

    ○滝井委員 大臣に百五十三条をもっとよくお読みいただかなければいかぬと思う。百五十三条というものは、少くともこれは人口をまず区切ってきておる。四千以上のものは大体義務的にやらなければならぬような形になってきておる。しかも、そうでないような小さなところは、県の選挙管理委員会が、交通や人口の状態を勘案して、やれあるいはやらなくてもいい、こう指定することになっておる。これを、小選挙区になろうと、大選挙区であろうと、演説会を行う単位というものは、小さな――しかしながら、あるいは町村の人口を単位として行なっていくのですから、何もこれは選挙区が大きかろうと小さかろうと、そういうことは無関係なのです。目的は、あなた方のおっしゃるところの政権、政策というものを選挙民に周知徹底をせしめることが目的なのです。その目的のために法律で規定をしておるものを、一方においてはそれを削除するというその理論が成り立たないのですよ。しかも、それは、同じ政党に属しておる自民党なり社会党の国会議員なのです。だから、これは、百五十三条に衆議院議員だけやることができないと除外をして、ほかの者はやってもよろしいというその理論的な根拠が、あなたのおっしゃるように小選挙区になったからなんて言ったって、人口に区切りをつけているのです。だから納得がいかぬ。もう少しこれは明白にしていただきたいと思うのです。(「頭が悪いよ」と呼ぶ者あり)頭がよ過ぎてわからないのかもしれません。
  102. 太田正孝

    太田国務大臣 これは、現行制度におけるお言葉でございますが、百五十二条におきましては衆議院議員の関係を除いております。今回の改正衆議院議員に関する選挙改正でございます。私は、現行法においての議論におきましては、滝井委員の言うその通りと思います。ただし、今回の選挙衆議院代員の選挙に関してやったことである。百五十二条におきまして衆議院議員という文字を削った関係と、百五十三条の現行法関係をお比べ願えば、私の言う意味が御了解願えるではないかと存じ上げます。
  103. 滝井義高

    ○滝井委員 それは、私は、百五十二条の衆議院をのけたということも、削ったということも、よく知っておるのです。知っておって、なお私が納得いかないのは、同じ国会議員である。国会というのは一つのハウスと一つのハウス、この二つのハウスが集まって国会というものを形成しておる。しかも、参議院において、すでに、あなた方の自民党というものが過半数を占めんとして、政党政治というものがあそこにおいても具現をしようとしておる現段階において、小選挙区制を実施して政策を普遍的に周知徹底せしめようという段階において、参議院の方は立会演説をやらなければならぬと規定しておきながら、衆議院はやってはいけないというふうになぜ言わなければならぬかということなのです。しかも、目的は、小選挙区制は政策、政見を徹底せしめるためにやるのだ、こういうことになっておる。立会演説会は政策、政見を徹底せしめるためにやるのだと片方は法律で書いてある。だから、その片方の法律ではそううたっておって参議院はやらしておいて、片一方では、衆議院は今度は政策、政見を徹底せしめるために立会演説はやっちゃいけないのだ。これは、どうもあなた方は、たての両面を一挙で言おうとしておるのです。そういう論理というものは論理が立たない。だから、ここは明らかにあなた方が立法上の大きなミステークをやっておると見なければならぬと思う。ほんとうは、立会演説をやらないなら、参議院も全部一緒に削らなければならぬ。ところがそれをやるとなかなか工合が悪い。今の教育委員のような問題が出るので、お茶を濁して衆議院だけを削ってこういうことをやっておるところに、立法の大きな矛盾と弱点があるのです。これはもう少し大臣に明白に御説明を願わぬとわからぬ。一方はやれという、片方はやっちゃいかぬということは、どうしてもこれは納得がいかない。
  104. 兼子秀夫

    兼子政府委員 公職選挙法は、衆議院それから参議院、知事、市町村長、教育委員、すべての選挙を網羅して、総括的に規定した立法でございます。今回の改正は、衆議院議員の選挙につきまして、小選挙区制をとるという建前のもとの改正でございます。でありますから、現行法の中にある参議院の選挙等との権衡論を議論いたしますれば、いろいろ御意見があろうと思います。なぜ参議院議員の選挙について立会演説会を残したのかという議論につきましては、先ほども申し上げましたように、衆議院だけの改正でありまして、参議院の改正には触れておらないという結果から、そうなるのでございます。
  105. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、政府の方では、機会を改めてまたその参議院等もやる、こういうことになるのですか。
  106. 兼子秀夫

    兼子政府委員 参議院の選挙は、衆議院選挙とは趣きを異にいたす面があろうかと思います。従いまして、そういう点については十分検討をいたさなければならない、かように考えております。
  107. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、まず一応、あなた方の主張としては、衆議院選挙法改正することを主眼にしたから、衆議院だけに限ったのだ、こういうことになっているのです。ところが、この百五十三条をお読みになると、「公職の候補者」と、こう書いておるのですよ。公職の候補者というからには、衆議院議員も公職の候補者なんです。公職の候補者の政見を選挙人に周知せしめるためには立会演説をやらなければならぬということなんです。これは特別な一つのものを区切ってはいない。一般論なんです、公職の候補者というのは。そして、しかも、その公職の候補者の中で、百五十二条で一応衆議院議員とか参議院議員、都道府県知事、それから都道府県の教育委員と、こういう四つくらいに限ってきております。このことは、何も選挙区が小さい、大きいの関係じゃない。こういう四つのものが日本政治の上においてきわめて重要な役割を演ずるという形で、この立法が行われてきておるわけなんです。そういう形なんです。これは区域が狭い広いじゃないのです。区域の狭い広いの関係ではない。従って、今のような御答弁では、「公職の候補者」と、こういう書き方をしておる関係からして、これは、どうも、あなた方が衆議院だけだとおっしゃっても、論理が通らないのです。そうして、しかも、政見を選挙人に周知させるためにこれこれしなければならぬと、こうなっておる。だから、立会演説会というものが政見を周知させるものでないというなら、私は衆議院はのけてもいいと思うのです。ところが、ここに周知をさせるためとあなた方が書いてくれておるのだから、それは、大臣が政策を周知させるために小選挙区をやるのだというのと、目的が一致しているのです。だから、目的が一致しておるものをなぜのけなければならぬかという理由が、これはおそらくだれも納得いかぬでしょう。
  108. 兼子秀夫

    兼子政府委員 御論旨を拝聴しておりますと、百五十三条を先にお読みになって、それから百五十二条をお読みになっておられるようでありますが、百五十二条で衆議院議員を削るということからいたしまして、百五十三条には衆議院選挙は入らない、こういう改正に相なるわけでございます。公職の候補者という言葉には、当然、衆議院議員も、町村長まで、みんな含まれるわけでございます。それで、小選挙区制をとっておる場合に、立会演説会が適当かどうか、採用すべきかどうか、採用をそのまま継続すべきかどうかという議論が先になりまして、それが今百五十二条で衆議院議員を削ることになりましたから、百五十三条の立会演説会の規定は衆議院議員については入ってこない、こういうことに相なるわけであります。
  109. 滝井義高

    ○滝井委員 くどいようでありますが、私は、百五十二条の衆議院議員というのを削ることもよく承知の上で、聞いているわけなんです。私は目的論で聞いている。政見を周知徹底せしめるため小選挙区制をとったのでしょう。二大政党を作るために……。そうしますと、百五十二条で削る削らぬということは、これはあとの問題でいいんですよ。とにかく、あなたの方は、政見を選挙民に徹底せしめるためには、立会演説会をやらなければならぬということを、少くとも、衆議院はのけましたけれども、参議院の地方区ではとっておるのです。そうしますと、小選挙区を作る目的と、政見を周知徹底せしめるという――たまたまあなた方が削っておりますが、その百五十三条の目的は一致しておるということを言っておる。一致しておるのに、なぜ衆議院だけを今度はこう削らなければならぬか、そういう点だけなんです。その点を私は言っておるのであって、その点、あなた方が、今まで小選挙区を政見なり政策を周知徹底せしめるためにとるんだということを言うていなければ、私はそういう質問はしません。ところが、そうおっしゃっておって、しかも、おっしゃっておるそのことが、参議院――今まで衆議院もそうだったのですが、参議院にちゃんと書いてあります。だから、それを削らなければならぬという理論的な根拠が、ただ選挙区が小さくなったというだけでは筋が通らないのです。だから、衆議院は今までと違った選挙区になりますから、それでのけました、こういうことでは筋が通らぬのです。なぜならば、立会演説会は政見を周知徹底せしめるためにやるんだから、そこらあたりの筋がどうも通らない。あなたの方は、百五十二条でのけておる、こうおっしゃる。それはわかっております。
  110. 兼子秀夫

    兼子政府委員 百五十三条の立会演説会の開催の主体並びに運営の規定でございますが、これにつきまして、衆議院選挙について立会演説会を削ったことはわかるけれども立会演説会に関する百五十三条の規定の趣旨からいって、なぜ削ったか、このようなお尋ねと思いますが、なぜ廃止したかということにつきましては、先ほど大臣がたびたび御答弁申し上げておる通りでございます。その判断のもとに百五十三条を削る。従いまして、百五十三条は衆議院についてはサイレントになる。それに関する限りは読まないということでございます。
  111. 滝井義高

    ○滝井委員 まあそれでよかろう。
  112. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 ただいま演説会の問題で滝井委員から質問がありましたが、私はこれを他の方面からちょっとお尋ねしておきたいと思います。  政府は、二大政党を維持育成する、そのためには小選挙区制が必要であり、しかも、この小選挙区の制度下におきまして、二大政党が広く深く政策を選挙民に宣伝をいたしまして、そうして政党が政策をもって争うというのでありますが、小選挙区制の是非は別といたしまして、政党が政策をもって戦うということについては、われわれは大賛成である。そのために、よろしく選挙法は政策宣伝が十分に徹底するような、そのような制度でなければならないと思うのであります。ところで、今回の小選挙区制におきまして、しからばそのような政策宣伝の方法が万全を期せられておるかということについて、お尋ねをしたいのであります。むろん政党が今までよりも政治活動を盛んにやれるような規定にはなったのでありますが、何といっても、選挙の場合には、候補者選挙民に向って強く政策の宣伝活動をやらなければならないと思うのでございます。その場合に、政策の宣伝を候補者がなすに当ってやる方法といたしましては、あるいは文書により、あるいはポスターなり、あるいは放送とか、いろいろございますけれども、何といっても、まのあたり候補者の演説を聞いて、そうして政策を実感をもって胸にひしひしと受け入れるためには、演説会以上の政策宣伝の方法はないわけであります。従って、政策宣伝の最高の手段である演説会というものを最高度に尊重されなければならぬ、こう思うのでございますが、太田自治庁長官のこの演説会の尊重ということについて、今までよりも一そうそれを盛んにするようにしなければならぬか、どうかということについての御意見を承わりたい。
  113. 太田正孝

    太田国務大臣 演説を聞く人の立場からお考えになることと思いますが、今までよりも狭い範囲、そうして狭い区域において選挙運動が行われておりまするときに、筆もありましょう。また、ビラにおきましていろいろな宣伝をしていく以外に、個人の演説もあり、政党の演説もあります。その場合に、多々ますます弁ずという意味で、何をやってもいいという理屈もございましょう。しかしながら、今まで中選挙区下において立会演説をやったのが、非常に狭い区域におきまして――非常にというのは四分の一見当でございますが、狭い区域におきまして政党の演説も非常に多くなる。また個人の演説も十分にやれる。狭い区域において目にとまるべきビラとかいろいろなものも多くある。こういうような点から考えまして、選挙民が政策を知るという意味におきましては十分である。中選挙区下におきましての立会演説と、小選挙区下における立会演説とは考え方を異にしておるということは、私が毎度申し上げた通りでございます。
  114. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 どうも長官の答弁は的をはずれている。私の言うのは、政党は政策宣伝をもって戦うべきだ、こういう政府の主張であるが、ついては、小選挙区になりましても、一そう演説会による選挙運動政治活動というものを尊重するか、今までのように尊重しないか、どういう考えだということを抽象的に聞いているのであって、立会演説の廃止を前提とするような御答弁を私は要求しておるのではなく、演説会というものを尊重するか、あるいは尊重しない考えであるかということを聞いておる。
  115. 太田正孝

    太田国務大臣 もちろん尊重いたします。
  116. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 そうだとすれば、今回の政府案によりますると、どうも従来に比べて尊重しているとは考えられない。と申しますのは、個人演説会は、従来も、改正案においても、同じく六十回である。ただ、改正案では、演説会場の公営施設を、同じものを今まで一度であったものを二度使えるという。これは費用の面で候補者が助かるわけでございますが、結局、それは、便利だといえば便利ですが、今だってもできる。六十回には変りはない。従って、個人演説会は従前通り、そして立会演説会は、それぞれの選挙管理委員会によって相談してきめますから、度数はきまっておりませんが、二十回ないし四十回、大体三十回前後は少くとも行われてきていた。これは自治庁のわれわれに示した資料によってもわかるのでありますが、三十回という政策宣伝の絶好のチャンスを今度は禁止をする。これは、自治庁から配られた資料を見ましても、市部においては一万五千、郡部においても二千か三千という、非常に膨大な選挙民が一つの演説会場に集まって各党の政策を聞こうという、非常にすばらしい効果を上げてきておる立会演説会を禁止する。そうしてただ政党の演説会が十回だけ一選挙区についてできるようになりますが、これを加えましても七十回しか演説の機会がないのである。ところが、従来は、個人演説会が六十回と立会演説会が三十回、これを加えまして九十回、二十回も前の方が演説の回数が多い。こういうことは、小選挙区下において政策宣伝のために大いに演説会を尊重するという長官の言葉とは反対に、非常にこれを尊重しない、他の何か隠密なる、不法なる選挙運動の方を尊重して、公明なる演説会という選挙運動を軽んずるという態勢であると、われわれは断定せざるを得ない。これはどうお考えになるか。
  117. 太田正孝

    太田国務大臣 私は回数についての御議論を拝聴いたしましたが、区域の違っておるところにおける回数ということ、選挙運動日も短縮したということ、効果的に有権者は果していかにしてその個人候補者の意見及び政党の政策を知るかという点については、結局、受ける方の立場からいいまして、立会演説を廃止しても十分に今まで以上に受け得る力を持っておる、そういう結果を来たす、こう信じたからでございまして、選挙運動期日も違っており、選挙の区域も違っておるものを、同一に、ただ二で割ってお話しするというようなことには、私はどうも了解できないのであります。
  118. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 多分そういう答弁をすることを予期しておりました。たとえば、今まで五人区であった選挙区を五つに割って、そうして五分の一の選挙区になったならば、演説会は五分の一でいいかという問題でございます。しかるに、候補者の対象とする選挙民は、全部の選挙民を対象とするというわけには当然いかない。五人区になれば五分の一の対象になるということに結局はなる。だから大選挙区の場合も小選挙区の場合も、対象となる演説を聞く選挙民は大体同じと見てよろしい。だから、五分の一になったから、演説会の度数を五分の一でいいという、そんなわけにはいかない。それならば選挙費用も五分の一でいいわけだ。もし今までの選挙費用が六十万であったならば、五分の一の十二万円でけっこうなはずです。区域が狭くてそれだけ費用が少い。また演説会の度数も少い。何でも少くていいなら五分の一で済むはずだ。それなら、選挙費用が六、七十万かかっておるのを、十二万円なら十二万円に削減をしてもいいということになるのであります。結局、今までの選挙区において、五十万も百万もにわたる有権者全部に各候補者がそれぞれ働きかけをするということは、実際問題として困難である。やはり働きかける場所は五分の一くらいである。そこで、あるいは六万で当選する人もあり、あるいは五万で当選する人もありますが、そんなに大きな幅はないのです。ということは、結局、対象とする選挙民は、小選挙区であろうと大選挙区であろうとそう区別はない。従って、今まで九十回認められた各候補者が、かりに五人の選挙区で十人の候補者が出てやったとすると、今度五分の一にしたところで、二人でやる演説会の度数は同じでなければならない。それならば、各候補者についての演説会の度数は同数で、初めて同じだ。それを減らすということは、演説会を尊重しない、選挙運動をはばむ結果になるのであります。今までのように選挙区が広ければ、一カ村に一同行って演説をすることは困難である。なぜならば、立会演説会を加えても九十回しかできない。私の選挙区について言いましても、仙台市を含めて一カ村で一回なんて絶対できない。自分の例を申し上げては何ですが、今度は昔の三十カ村くらいになろうと思う。だから個人演説会で一カ村で二回できますけれども、二回といっても、今度はそれでは当選できないのです。今は深く大きく取らなければならない。だから、十部落があれば、十カ村で演説会をしなければならない。今までは、十人の候補者がやってきて、同じ村で十回演説をした、今度は二人で二回しかできない、そうなってきますと、深く広く、自分選挙民に対しては、全部の選挙民に行き渡るような選挙運動をしなければならない。今までは十人の人が同じ町村に来て選挙民に働きかけをした。今度は二人です。だから五分の一の人しか来ない。だから、度数は今までと同じにしないと、同じような政策宣伝ができないということになる。これは当然です。これは皆さん選挙をやっておるからおわかりのはずです。厚く取るには何回もやらなければならない。薄くやるなら一回くらいぱっとやればいいかもしれない。これはよく考えていただきたい。そういう意味から申しましても、個人演説会の度数と立会演説会の度数は、今までより多くとも少くしてはならない。それを立会演説会を禁止する。立会演説会は、少くとも平均して約一千人の選挙民が集まっており、各党の政策を比較対照して、また候補者の人物、人柄をまのあたり見て、ちょうど裁判官が証人を証人台に呼んで、その人から聞いて判断するように、たとい買収、供応や因縁情実がありましても、それよりも、まのあたりに見た候補者の識見並びに政策を聞いて、初めて良心的な判断をして、選挙民をして正しい選挙権の行使を行わしめる機会を与えるのである。演説会の尊重こそは、真に民主政治確立の基本でなければならぬ。これが最も有効適切な選挙運動の方法であると思う。それを、三十回も演説会の機会を失わせ、しかもその聴衆は五十人や百人でなくて何千人という人、一ぺんで十回分くらいの効果をあげるところ立会演説会を禁止するということは、この小選挙区制において、政府は大いに政策をもって争うのだと言いながら、逆に政策をもって争わないような仕組みにしたと、われわれは思わざるを得ないのでありますが、これに対して大臣は何とお答えになるか、お聞きしたい。
  119. 太田正孝

    太田国務大臣 竹谷委員の言われる通り、私も言論を非常に尊重しております。またそのおかげで選挙を戦ってきました。個人の演説会も今までより減らしません。選挙区域は小さくなったにかかわらず、今までの回数を認めております。また今までなかった政党の演説会も加えられたのでございますから、狭い区域におきまして今までの回数を同じように認めるということは、個人演説でさえも今までより非常に重く見ているという勘定には、当然なるわけでございます。ただいま五分の一論などの御説がございましたが、その意味で言いまするならば、今までの個人演説会の回数というものは、選挙区が四分の一になったならば、四倍の力があると申していいと思うのでございます。私は、究極するところ、竹谷委員の言われるのも、選挙民がいかにこれをこなすか、いかにこれをよくのみ込ますかという回数の問題であり、しかも、実際に狭い区域におきまして説きまするのに、今までの回数を、狭い区域であるにかかわらず、個人演説も維持している、その上に、狭い区域であるにかかわらず、政党演説か浸透して、しかもそれが、選挙制度調査会の答申にもありまする通り個人を本位とせずして、政党本位であるという意味におきまして、今まで以上に政党の政策演説が深く入るということを考えまするならば、立会演説を軽しというにあらず、有権者が了解し得る上においては十分な制度である、今までより軽んずるものではない、かように申し上げる次第でございます。
  120. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 遺憾ながら太田さんの説明はどうも良心に反しているようで、非常に苦しそうですが、これはまた別の機会に追究したいと思います。  先ほど滝井委員から御質問のありました、教育委員選挙に関するポスターが、旧法では二千枚であり、現行法、五千枚、改正案は三千枚ということになっているのです。ところが、ちょっとお尋ねしたいのは、自治庁が資料としてわれわれに配った「第二十四国会公職選挙法の一部を改正する法律案新旧対照」という印刷物がございます。この十七ページの一番しまいに、先ほど問題になりました第百四十四条の第一項第一号の条文、これには「衆議院議員の選挙にあっては、公職の候補者一人について五千枚」これを「三千枚」に改めると書いてあるのでありますが、実際には衆議院議員とそれから教育委員会の委員も入らなければならぬ。これは何で落ちているのか、またなぜ正誤をしないのか、削除したなら削除したように新旧対照がなければならぬが、どういうわけでこの新旧対照の中から勝手に引き抜いたのか、伺いたい。
  121. 兼子秀夫

    兼子政府委員 先ほども申し上げましたように、教育委員会の整理の法律が提案されておりますが、それに従って、あとから出ます法律は、その法律に従って立法するのが従来の手続でございまして、そういうふうにいたしました。従いまして、御指摘の通り現行法と違っているのじゃないかという点は、確かにおっしゃる通りでございまして、教育委員会整理に関する法律の方は、また資料をお出ししなければならぬ、こういうことになりますが、そういう前提であの資料を作っておりますことを、御了承願いたいと思います。
  122. 井堀繁雄

    ○井堀委員 わが党は、公職選挙法についてはきわめてこれを重視しております。申すまでもなく、選挙制度は、議会の性格を決定する大きな問題でありますのみならず、今わが国の国民がひとしく願望いたしております、平和的で文化的な国作りをいたさなければならぬ段階にあるわけであります。こういう重大な段階に当面して、政治もまたこれとおくれないような制度を確立するとともに、活発な行動を伴わなければならぬわけであります。こういう意味において、選挙制度の改正についてはきわめて慎重であると同時に、また、その決定については、多く国民の意見を取り入れなければならぬことも申すまでもないのであります。こういう点で、私どもは、今回政府提案になっております法案に対する審議につきましても、十分審議、検討をいたす準備をいたしているわけであります。ただいままで、この法案を審議する前提条件である国会の新しいルールの問題について、まだ問題が未解決のままになっているのでありますが、これは政党間において話し合いも進めるでありましょうし、この委員会においても並行して審議をすることになると思うのでありますが、われわれは、ここで、大体この法案に取り組みます立場を五つの角度から検討することにいたしました。すなわち、提案理由の一つになっております二大政党を指向する理想的な姿、ことに政局の安定を強調しておりますが、私どももこのことについては重大な関心を持っております。さらに、選挙で最も注意を要すべきことは、一般に叫ばれながらその理想を容易に実現することのできません公明選挙、すなわち選挙粛正であります。これを選挙費用軽減に結びつけて検討を加えて参りたい。また、ここに提案されております小選挙区が可であるか、あるいはいかなる選挙区が理想に最も近づくよい方法であるかについて、すなわち選挙区割りについても、われわれの意見もあれば見解もあるわけであります。こういう点についても、われわれは、できるだけ実際問題に触れて討議を進めていきたい。さらには、選挙運動、すなわち、どんな制度を作りましても、選挙運動それ自身が軌道に乗らなければ目的を達することができぬことは、言うまでもありません。そこで、選挙運動はどういう方法で行うべきであるかということは、この法律にとって大きな眼目であることも、申すまでもありません。この選挙運動について、われわれは、それぞれの経験と将来の見通しの上に立って、法案について検討いたしたい。またその準備もいたしておるわけであります。さらに、今後選挙法を検討いたします上にどうしても欠くことのできないのは、各国のそれぞれの経験を多くわれわれは学ばなければならぬ。あやまちは再び犯すことのないように、さらによいものは取り入れていくという態度でなければならぬと思いますので、そういう事例についても、政府も勉強され、議員も勉強する。やはりあやまちのない対策を講ずべきだという慎重な態度をもって、それぞれ委員は担当を命ぜられまして勉強を続けておるわけであります。こういう立場から、私ども政府に対して資料の要求をいたしました。ところが、この資料がまだ今日全部そろわないことは、審議を進める上にまことに大きな障害になっておって残念に思っております。今日まで私どもの希望いたしました資料のうちで、大事なものがまだ五つばかり残っております。さらに重ねて二、三要求いたしたいものも出て参りました。こういう資料が全部そろってから検討するということが理想的でありますが、議事の日程等の関係もありますので、不十分な資料の中においてわれわれは検討いたしております。従いまして、その点は質疑応答の中で多少むだがあるかもしれませんが、お互いに努力をいたしたいと思っております。  以上のような関係からいたしまして、私の命ぜられました部分は、選挙粛正選挙費用に関する部分であります。この点について時間の許す限りお尋ねをいたして参りたいと思っております。  そこで、ちょうだいいたしました資料について全部の検討を終えておるわけではありませんが、その私に与えられました課題の関係資料の中で、ぜひ早くちょうだいいたしたいと思いますのは、国の経済的援助を受ける法人団体の調べであります。これが一番要るのですが、おくれているわけです。この点については、お尋ねしてお答えできれば承わりたいが、できなければあと回しにしてもけっこうだと思っております。  そこで、今いただいております資料の二つをここに取り上げてみたいと思います。それは法務省の刑事局が提出された資料でありますが、われわれは、これを拝見いたしまして、今さらじくじたるものを感ずるわけであります。御案内のように、この資料は、昭和二十七年、二十八年、三十年の三回に行われました衆議院選挙における選挙違反案件の受理並びに処理された結果の報告であります。これを見まして非常に残念に思いますことは、浜のまさごは尽きるともという言葉がありますが、一向に選挙違反の数が減ってこないということ、しかも、その数の多いことについては、諸外国の例を見ましても、決して名誉にならない非常な勢いを示しておるのであります。この問題を解決できる選挙法改正でないと、私は意味を持たぬと思うのです。それは、よし小選挙区であろうと、大選挙区を用いようと、選挙違反がこのように現存しておるようなことでは、それは、選挙法改正に手を染める者といたしましては、まことに責任重大といわなければならぬのでありますから、この点についてまずお尋ねをいたそうと思います。  そこで、この資料についてみますと、かなり多くの件数の中で、しかも私どもの一番嫌悪いたしております買収、利害誘導という事犯が最も多く、またその起訴された率において高いことを遺憾に思うのであります。昭和三十年の例をとってみましても、全体の事犯の中の八一・三%がこの買収、さらに起訴されたものを見ましても、その全体の中の七六・一%という割合を示しておるわけであります。こういう買収、利害誘導といったようなものは、これは、諸外国の例を見ましても、いろいろ表現の仕方は違いますけれども、最高の恥辱としておるわけであります。この問題を、この選挙法改正の中では、どの部分をもって一体是正していこうとなされるか。もちろん、あなたは、小選挙区をしくことによってこれが是正できるという御説がおありになるなら、まずこの点を伺わなければならぬと思います。私はそれのみをもってしてはなし得ないことだと信じます。この点について、あなたの方から出された資料や、また今までの御説明や質疑応答の中においては、まだ触れられておりませんので、まずこの点について一つ根本的なお考え方を伺って、順次具体的な事実についても検討をして参りたい。
  123. 太田正孝

    太田国務大臣 井堀委員にお答え申し上げます。  先ほどの資料の最後の国の経済的援助を受ける法人団体の調べは今印刷中でございますから、間もなくお手元に行くと思います。さよう御了承願います。  それから、今まで、わが国における選挙におきまして、買収、利害誘導が非常に多かった。諸外国にはない例た。申し上げるまでもなく、悪いことはどこまでも悪いのでございまして、ことに公明選挙という建前からいえば、これは排除しなければなりません。私どもは、今回の選挙区制度を小選挙区制度にするに当りましては、買収の行われるような場合とか、利害誘導のような場合が、小さい区域においてどうなるか、中選挙区においてどうなるか、大選挙区においてどうなるかということは、一応われわれとしても判断をいたしております。だんだん世の中が進んでき、狭い範囲において、その村に、その町に、あるいはその市におきましての互いの目も光るわけでございますし、また有権者の知識も進んでおるわけでございますから、特に狭ければ狭いほど、こういう点は縮減されるのではないか、一応さように考えておるわけでございます。もちろんこれは見通しでございますが、小選挙区の方がその点はかえっていいのじゃないか、かように考えております。
  124. 井堀繁雄

    ○井堀委員 いいのではないかという。あなたの見通しはそうであるかもしれません。しかし、私はそうじゃないという見解をとっております。しかし、それをここで論議をする前に、この選挙法改正の中に、ただ選挙区域を小さくすることによってそういうものがなくなるというお見通しだけでなく、どういう方法によってそういうものが除去されるかということが付加されてこなければならぬ。選挙法というものは、教育などと異なりまして、ただ単に理想を掲げるのみでなく、激しい利害関係を持った競争の行われる場裏に適用される法規でありますから、この点に対する具体性がなければならぬ。今のあなたの御答弁は、われわれとしては承服することができぬわけであります。この法案の中で、こういう方法で小選挙区制は買収を除去することができるというお見通しがなければならぬはずだ。その点に対するあなたのお考えを承わりたい。
  125. 太田正孝

    太田国務大臣 もちろん、そういう悪質なものが出るか出ないかということは、一方に候補者及び運動者の関係であり、他方においては有権者選挙に対する正しい考えが進んでいるかという問題でありますが、今回の法案の中におきまして、私どもは連座制の強化を出しております。
  126. 井堀繁雄

    ○井堀委員 連座制の問題についてはまた後刻お伺いいたしますが、その他にどういう方法がございましょうか。
  127. 太田正孝

    太田国務大臣 選挙制度調査会、あの第五項目に掲げております通り、公明選挙の啓蒙及び徹底化ということにつきましては、相当力を入れて今後やっていくつもりでございます。
  128. 井堀繁雄

    ○井堀委員 啓蒙、宣伝、けっこうでありますが、相当ということでは、こういう法案の場合においては意味をなさぬと思います。たとえばこういう予算措置を講じておる、こういう公的な機関を活用する、それぞれの具体的な方法というものが考慮されていなければ、こういうものの討議には役に立たぬと思います。そういう点をお尋ねいたします。
  129. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 選挙の公明化につきましては、御案内の通り選挙法の六条に、すでに、あらゆる機会を通じて選挙人の政治常識の向上に努め、また選挙違反その他に関し必要と認めることを選挙人によく周知させて、公明化をはからなければいけないとあります。これが現行法の根本の建前でもあるわけでございまして、やはり罰するというよりも、あるいは取り締まるというよりも、基本は啓蒙運動に置いて、その点を大いに推進をして参る、こういうことであろうと思うのであります。
  130. 井堀繁雄

    ○井堀委員 そういう御答弁では、こういう重大法案を審議するに当りまして、提案者としてはまことに不誠意だと、残念ながら申し上げなければなりません。まだおありになって、お答えにならないのかもしれません。そうであればお答えをいただきたいと思います。  それから、今次長の方の御答弁がございました。次長にはまた別の機会にお尋ねしたいと思いますが、こういう問題については、提案者としては、こういう場合はこうすると具体的にそれぞれの御用意がなければならぬと思うのです。そういう議論に入ります前に、きょう私は法務大臣の御出席を要望いたしましたけれども、御病気だそうであります。なお、かわるべき次官も何か御都合でおいでにならない。できれば刑事局長と存じましたが、刑事局長も御都合で御出席ができない。参事官の勝尾さんでいらっしゃいますか、御出席いただきましたから、あなたに御答弁願うのは少しお気の毒だと存じますけれども、やむを得ませんので、お答えできにくいところは正直にお答えいただけば、また別な方法を講じてお尋ねいたします。私は、過去のわれわれの経験を取り入れて将来の改善の資にしたい、こういう考えでお尋ねするのであります、最も近い例でありますが、昭和三十年のあなたの方の報告によりますと、買収、自由妨害、戸別訪問、文書違反、その他としてありますが、この買収事犯であります。犯罪には動機があるわけです。このことは選挙法にとりまして非常に重大だと思うのでありまして、私ども選挙を争って出てきたものであります。でありますから、私たちの主観的な主張はまた別といたしまして、ここで論議する者は、答える方も質問する方もその争いの渦中にある者です。あなた方はそういうものから超然としていられる立場です。ですから、そういう人の公正な判断は、こういうものを討議するときに非常に重視されなければならぬと思うのです。選挙の際の買収のことについて聞きましょう。買収というのは一体どういう動機と経路が統計の中に出てきておるか。そういうことに対する率直な見解を聞かしていただきたい。
  131. 勝尾鐐三

    ○勝尾説明員 買収事犯につきまして検察庁で検挙した事犯を概観いたします場合に、形態はいろいろございます。いわゆる選挙ブローカーと称するものが中間に入って、全く選挙ブローカーが自分の利得を目的にして買収事犯を行なっている場合もございます。さらに、いわゆる個人的な情義と申しますか、個人的なつながり、これを利用して投票の買収を行なっているという場合もございます。従って、買収事犯の形態はいろいろございますが、要するに買収をする方も利得あるいは何らかの利益を求めている。また買収される方も利益あるいは間違った人情と申しますか、そういうものにからんで行われている場合が大部分であると思われるのであります。
  132. 井堀繁雄

    ○井堀委員 今選挙をやる者といたしまして、買収する方の側と買収される方の側との二つの問題があるわけであります。買収する方の側は、何でもかんでも当選したいというあせりがあるわけです。これはまあ候補者の人格や理想追求に対する強い信念と申しますか、意思と申しますか、そういうものは抽象的には求められると思うのであります。しかし、そういう観念的な論議は、この場合理想論としてはあるけれども選挙法討議のときには役に立たぬので、それは一応たな上げにいたしまして、一般的にいえば、民族の教養を高めていくということ以外にないと思う。もっと具体的に言いますなら、民族の文化を高めていくということになると思うのでありますが、民主主義は経験主義と先輩に申しております。やはり一定の経験を積まなければ、なかなか急には理想に到達することができまい。そういうふうに考えられるのでありますが、その距離をできるだけ縮めていこうという努力が、われわれの間でなされなければならぬわけです。こういう意味で、私ども一生懸命取り組んでいるつもりであります。御答弁願う方もそういう工合に御答弁願いたいと思います。買収する方の側の問題についてのお尋ねは少し後に回したいと思います。あなたは今ブローカーの点をあげました。ブローカーというものはどうすれば駆逐できるかということが、当面問題に出てくるわけです。これはあとで長官にお伺いします。あなた方の取締りの立場から見て、ブローカーというものをどういうふうにお考えになっておるかということを、一つ飾らないで率直に聞かしていただきたい。
  133. 勝尾鐐三

    ○勝尾説明員 選挙違反にはいろいろな形態がございます。従って、その選挙違反選挙の公正を害するという点では、いずれもまことに憎むべきものだと私は考えるのでございますが、選挙ブローカーというのが、犯罪の性質から申しますならば、最も悪質なものの一つである。従って、選挙ブローカーは徹底的に検挙、処罰すべきであろう。また、その選挙ブローカーを厳罰に処するについては、まず容赦する必要はないのじゃないだろうか、このように考えております。
  134. 井堀繁雄

    ○井堀委員 それで太田長官にお尋ねをいたしますが、今検察当局の過去の経験の中から重要な御指示をいただいたわけであります。それは、選挙ブローカーと個人的つながりをあげておりましたけれども候補者有権者との関係あるいは運動員関係を言うと思うのです。こういう関係について、今度の改正の中で、あなたは、選挙区か小さくなればこういうものが排除されると申された。一体、選挙区が大きいか小さいかということによって、選挙ブローカーを排除する働きは何らしないのじゃないか。さらにまた個人候補者のつながりをあげております。個人候補者のつながりは、大きい選挙区よりは小選挙区の方が密接になってくるということは、あなたがたびたび述べられたことです。候補者と言うまでもなく、選挙の買収事犯を誘導するような悪質な犯罪行為の温床になるのは、悪い意味における人情関係だと思う。ことに狭い範囲で競争をやりますから、競争は熾烈になることは言うまでもないことであります。それに正比例して、このブローカーの問題は別といたしまして、個人的なつながりにおける選挙違反というのは増大してくるというのが、過去の事例から言っても、私は幾多の資料をあげることができると思うのです。これを、小選挙区に切りかえることによって、どうして是正されるかというお答えをはっきりしていただかないと、意味を持たぬと思いまするから、まずこの二つの点、ブローカーの問題と候補者有権者の人情関係における弱点をどうしてこの法の中で改正されようとしておるのか、この方法がなければ小選挙区案を出すことは危険です。
  135. 太田正孝

    太田国務大臣 私の狭い経験と範囲でございますから、あるいは十分でないかと思いますが、私は、何といたしましても、人を取り締る、あるいは罰するという考え方よりも、先ほど文化及び平和のために民主主義的に国民が発展しなければならぬと井堀委員の言われたその言葉の通りに、一番大きなのは啓蒙運動だろうと思います。いかに法を作りましても、悪いことをする者が絶えないということは、先ほどのお言葉にもありましたが、しかし、法律を作る、制度を置きます場合には、その国の民度、その国の経済力、その国の道徳の発達というようなものを考えに入れなければならないから、今ここに問題になっておることと思います。しかし、私の見る限りにおきまして、今のブローカーであるとか、あるいは近親関係等をこの選挙制度のもとにどう考えたかという問題につきましては、先ほども申しました通り、小選挙区になれば目も光るということは大きな問題でございます。しかし、うっちゃっておくことはできませんので、取締りの方法をとっていくことも必要だと思いますし、もちろんその取締りが干渉になるようなことはいけないと思います。私は、どちらかといえば、第一には、どこまでも選挙意識というものが国民に行き渡る。これなくしては、いつまでたってもほんとうのいい選挙はできないと思います。各国の例もお引きになるということでございますが、イギリスで選挙がなぜああなったかといえば、二、三十年前までずいぶん悪質な選挙もありましたのです。だんだんああなったのは、その国の経済情勢あるいは道徳関係選挙になれてきたということでございましょうが、何としても一番大きいものは啓蒙運動だと思います。しかし、日本の現状におきまして啓蒙運動だけでいけませんので、取締りの方法、罰則の点につきまして考えなければならぬことは、言うまでもないことでございます。
  136. 井堀繁雄

    ○井堀委員 今あなたが御指摘になりましたその悪を是正する二つの方法は、これは一般に考えられていることであります。一つは民度を高めるということかもしれません。一つは取締りを厳重にするということ。もちろん、私も、あなたと同じように、取締りを厳重にやるということは選挙を暗くする結果になりますから、できることなら取締りによらない方法でこういうものを絶滅するということが、一番望ましいと思うのであります。ところが、そこで今問題になってくるのは、あなたもイギリスの例を用いられましたように。これはひとり選挙に限ったわけではありません。いろいろ経験を積んできて、それから世論も成長してくるということでありますから、私は、選挙をやる方の候補者側よりは、むしろ投票を行う方の選挙民の側の方に大きな成長があったということが、イギリスその他で言えると思う。このことは、言いかえれば、客観的条件の判断が正しくなければいけない。もっと縮めて言いますと、私は、小選挙区には、今の党の立場もわれわれも反対でありますけれども、理想的な選挙をやる場合にどういう区割りがいいかということを、全く現実を離れて理想論を唱える場合には、私は私の意見もあります。しかし、いかに高い理想でありましても、現実とはなはだしくかけ離れておる場合には逆な結果が出てくる。このことは非常に重大だと思うのです。問題は非常に狭いところで論議をしておりまするが、こういう最も憎むべき、おそるべき選挙買収の状態をなくさなければ、あなたが選挙法改正の大理想としてあげておりまする国民の信頼を受ける政党、さらに、その政党が正しい選挙を行なって、しかもその代表者によって今日の内閣を作り上げるわけでありますから、こういう基礎的な、いわば一番大事な積み上げをしておるわけであります。その積み上げの中で、これは事柄は小さいようでありますけれども政界浄化を唱えたりあるいは政局の安定を言ったりするが、問題は選挙に戻ってくる。選挙が理想的な姿にならぬ限りは、なんぼ言ったところで、組織の上、制度の上に結果を求める今の建前からすれば、これはとうてい意味をなさぬと思う。そこで大事になってくるわけだ。だから選挙違反、特に買収や供応のような腐敗した行為を排除する道を前提にしてくるということになりますと、イギリスのようにやや理想の道に近づきつつある学ぶべき選挙状態を日本に求めようとする場合に、こういう急なカーブの切り方は弊害を誘導してくる危険が一方に出てくる。民主主義は経験主義ということはあなたも認められると思う。日本は経験を積んでおるのが十年なのです。もちろん、戦争前における帝国議会、衆議院選挙も一応立憲政治の形はとっておりますけれども、今日のように多くの有権者選挙に動員されたのは戦後のことであります。新しい経験は十年であります。そのわずかな経験と、たとえば一世紀半に近いイギリスのあの長い苦闘の経験の中においても、なおかつ容易に理想が実現できなかった。日本の場合、そう急速にカーブを切って、その危険が一体除去できるかどうかということは、あなたとしては非常に重大な責任があると思う。一ぺんやってみよう、一ぺんやってみてうまくいかなければ戻そうというわけにはいきません。この点は非常に重大だと思いますので、抽象論でなくて具体的例をあげました。この一つの課題とお互いに真剣に組んで解決づけるかどうか。これは小選挙区によって解決できるというのなら、われわれをその一事においても納得させなければならぬと思う。私どもは、不幸にして、こういうように急にカーブを切りかえると反動が起ると思う。理想はりっぱだけれども、高い理想を掲げて、現実はかえって大きなマイナスを起すということがわかったら、これはよほどわれわれとしては考え直さなければならぬことだと思う。そういうふうなことに対する――もちろんあなたは自信を持っておいでになると思いますが、そういう自信を一つわれわれに納得させるために、率直に具体的な例をあげておりますから、これに対する御答弁を願いたい。
  137. 太田正孝

    太田国務大臣 小選挙区制度を高い理想というお言葉がございましたが、私をして言わしむるならば、むしろ卑近な過去数年来の政治の動きを見まして、国民の声としてきゅう然として起ったものであるとわれわれは見ております。従って、これを高い理想に持っていくという意味よりも、われわれが要望しておる政局の安定によって国民生活を豊富にしていくという建前からいえば、われわれの近接した問題として考えなければならず、できるだけ早くこれを行うのがいいと私は考えております。もちろんお言葉のように客観情勢というものは非常に大切な問題であり、また国民生活の問題も、経験によって文化が動いていくという点も、私はこの点においては全部御同感でございますが、高い理想だといって小選挙区制度を見て、もう少し先にやったらばという考えには私はならないので、この点は不幸にして井堀委員と考え方、見方を違えている次第でございます。
  138. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私のお尋ねいたそうと思いますのは、あなたのそういうお考えが前提になって出されたことですから、それをここで今具体的に事例を提供しているわけです。私自身が、実は、この方法によっては、買収犯を排除するどころでなくて、買収犯は増大してくるという心配をしておる。それを、あなたはしない、私はすると言う。こういう抽象論は、この場合は、私はこういう問題を解決するのに役に立たぬと思いますから、抽象論を避けて具体的なものをぽんと出したのです。しかも取り扱った当事者から発言していただいて、それを材料にして今あなたに伺っておるわけです。これに対する御答弁をいただかぬと、まじめな討議にならないと思うので、ぜひ一つこの点に対する具体的な御答弁を願いたい。
  139. 太田正孝

    太田国務大臣 小選挙区において買収等を徹底的に減らすなり、もしくはこれを罰して目的を達することができるという見通しにつきまして、井堀委員のお考えがございました。私は、過去の例といっても、大正八年の選挙法改正によって行われた大正九年のあの選挙をすぐ引き合いには出せないと思うのです。当時は有権者の数も非常に少かったし、先ほど御引例になったように、選挙実態がかくのごとく広くなったのは戦後十年でございます。その間におきまして幾多の苦々しいことがありましたが、国民の政治意識というものも進み、ことに民主政治のもとにおける有権者の教が増し、婦人の加わったということなど、全面的に考えましても、過去の例によく引かれるのは大正九年の例でありまして、狭い区域でやった買収があった。いろいろなことの例を聞いておりますが、今日のこの戦後において十年の経験を経た日本選挙が、なるほど現実に中選挙区における買収等の事実はございましたが、小選挙区におきましては、先ほど言う目の光るということやら、進んだ頭で見るというか、この点において非常に違った点を考えなければならぬと考えるのでございます。
  140. 井堀繁雄

    ○井堀委員 能率的に質疑を続けます意味で、率直に一つお答えを願いたい。お考えがなければやむを得ませんが、それは、今あなたは小さな区域になれば目が光ると言われる。目が光るのは、一つの目より多くの目がいいと思う。だから広い方がいいんです。近いところで見るということと遠いところで見るということなら、近いところで見た方がいい。これは科学的な現象ですけれどもところが、目が光るという反面に、さっきも選挙違反を取り扱った方の言にあるように、選挙ブローカーの問題、これは私は議論があると思いますけれどもあと回しにいたしまして、今言うように、一番私どものおそるべき事柄は、情における、すなわち候補者運動員あるいは選挙民、そういうものの情実の関係というものは近ければ近いほど濃度なものだということは、これは御否定にならぬと思う。すなわち、見たことのない人よりは一度でも会ったことのある人、一度でも会ったことよりは、さらに口をきいた、口をきいたよりは、何らかの生活その他の社会的環境の中で取引が行われればなお濃い。その上は肉親的にということになってくることは、これは当然のことなんです。そういう点では、小選挙区というものは決定的な事実が出てくる。だから、よい面と悪い面があるわけです。物事はすべてそうです。あなたはそのよい面を強調されておる。私はその面は認めたい。すなわち、その人物の表も裏も知ることができるというのは狭い地域がいい。そういう点では、人物の日常の生活から、すなわち素行から、その人の一挙手、一投足まで目が届いた人を選ぶということについては、私も一つの特徴が出てくると思う。しかし、そこでこの選挙法全体が問題になってくるわけです。その特徴は、よいところはこの選挙法で変えなくても、ただ区域の問題で論議されればよいのです。しかし、その小さくなるということの弊害は、今言う情が深くなるから、しかも候補者が二人とか三人とかで一つのいすを少数で争うという形に持ってくれば、その関係は最も強く出てくる。ことに、ここに手放しで論議ができませんことは、客観的な条件が出てくるわけです。すなわち、選挙民の民主的な訓練あるいは民主主義に対する深い理解というものがどの程度に成長しておるかということで、この問題をさばく以外にないと私は思う。そういう点において、今日時期尚早という言葉は語弊があると思いますけれども、その点においてあなたのお考え方をはっきりとわれわれに納得させる任務がある。それは逃げられてはいけません。あなたの考えておるところを率直に述べて、間違っておればその点世論に従うべきだと私は思う。
  141. 太田正孝

    太田国務大臣 私は、狭い区域において、人が親しくなり、知り合いが強くなり、深くなっていくということは認めます。しかし、この小選挙区制度の大きなねらいというのは、申し上げるまでもなく、個人本位でなく政策本位といって、政党というものに力を置いていこうという意味は、その判断をするのに、血の流れ以外に、近親関係以外に、われわれは日本の国をどうしていったらよいかという政策をもとにしていくのであります。現状のままでは飛躍いたしません。たとえば、革新政党をひいきなさるお子さんの投票と、そのおやじさんの投票が保守党に分れておるがごときは、悪いことではない。政治的に見たならば、その信念によって、その発達によっていったならばよいのて、血がだんだん濃くなるとか、あるいは近親関係において政治を見ていきましたならば、いつの日に至っていい政治ができるでございましょうか。われわれが、民主政治として、権利としての選挙権を行使するに当りましては、どうしても政治というものから見なければならない。この意味におきまして、今まで小選挙区を考えるのに、ただ近親関係ということを主としたねらいとしてやるならば、私の考えと違っております。かるがゆえに個人本位でなく、かるがゆえに政策本位でなければならぬ。政党の力がなければならぬ。そのかかり合い、近親関係を主として考えることは、今の世の中においてまだそこまで進んでおらないならば、これこそ啓蒙を要することである。そういう意味をもっと進めますならば、近い区域において肉親相はむような政策だけでけんかするのがいいとは私は申しません。     〔委員長退席、山村委員長代理着席〕 ことに自治体の発展ということを考えればそう思いますが、しかし、選挙政治というものをもとにしてやるというその本義から言うならば、近親関係というものよりも、第一義的に考えるのが民主政治としての一つの基点であると私は思うのでございます。
  142. 井堀繁雄

    ○井堀委員 今大事なお話を伺うことになったのです。もっと具体的な御方針があるかと実は思ってお尋ねしておるわけでありますが、今あなたの御説明を伺うと、私の不安はますます深まってきたわけです。それは、あなたが主張されておることは、私と同じように理想をあまり急に求めておる証拠だと思うのです。もちろん、個人的な情実よりは、政治それ自身はもっと違ったものでなければならぬということは、お互いの念願であります。しかし、現実はそうでないということは、さっき私がこの資料をちょうだいして説明したのはそれなんです。この事実をここではっきりこの方法で断ち切れるということが盛り込まれてこないと、その論議はお互いに夢を求めておるだけであります。私はあなたにここではもっと切実な問題を出したのですから、これはあなたの言質をつかまえてどうこうしようというものではありませんから、そう用心深く御答弁なさらないでけっこうです。だから率直にお答えいただきたいと思うのは、あなたも認められたように、言葉をかえていえば、今日の選挙違反のうちで、買収犯のブローカーを除けば大がい情実関係なんです。私どももいろいろなことを聞いて知っております。局長さんがおいでになればもっと聞いてもいいと思ったのですけれども、ほかの人に迷惑だと思いますから、私がかわって申し上げます。それは憎めない事実があるのです。それは、自分のお世話になった人、それからよい意味で自分の尊敬する人、そういう人にぜひ議政壇上に出てもらいたいということは、私は正しいことだと思う。その手段が問題になってくるわけです。それが利害誘導をやったりあるいは金銭で相手の自由を奪うようなことになるからいけないのだ。そういうことが今日出てくるということは、法律でこれは犯罪だ、けしからぬというだけでなく、そういう点を実際見ていきますと、これは私は封建的なよい意味が残っておると思う。だから、日本の封建制というものが十年かそこそこの民主的な訓練で払拭できるということを言い切るのは、少し乱暴だと思う。こんなことは大事なことである。あなたの主観や私どもの主観できめるべきではなくて、あらゆるものに出てきておる。これは次の問題で論議すればすぐ出てくる。それを私はあなたに尋ねたのですけれども、一向にらちがあきません。そればかりやっていたのでは論旨が進みません。そこで、一つ次の段階に人ってみましょう。  あなたは、今の答弁では、そういう弊害を、組織の力すなわち党の組織を持ち込んで、この弊害をためようというふうにお考えのようであります。民主主義はやはり組織ですから、特に今日のように多数の何万、何十万という有権者の意思を統一していこうとすれば、あなたはどんなに弁解されたところで、あの候補者は、お弔いのときに、お祝いのときに、あるいはどぶの世話をしてくれた、そういう身近な利害関係につながる者には切実な感情が起ってくる。高邁な、日本国民全体の幸福をどうするか、あるいは日本の行き方をどう定めるかという、直接自分の利害関係よりは遠く離れたものではあるが、自分の住む社会をどうするかという大きな問題であっても、これはもう私が議論するまでもありますまい。たた、どっちをするかといえば、あの人は日本の全体の民族のことを考えているから、あの人を選ぼうというよりは、あの人を選ぶことによって自分がすぐに何がしかの利益を受けるという切実な問題も働いてくるということは、もう論議の余地がないのであります。その事実をわれわれは無視して考えるわけにはいかぬのです。そういう現実をどういう方法でよい方向へ持っていくかということが、選挙法でなければならぬわけです。こういう意味で私はこの問題を出しておるのです。あなたに耳をかすことができると思うのは、候補者個人本位の競争から政党の組織の競争へ持ってくる、それはいいと思う。その点は私は賛成なんです。賛成だけれども、その方法が果して実際に行われるかどうかということが大事なことだ。そうして、それが、あなたのお考えのように、私どもの希望するような理想の形に成長するのであるかどうかということに問題がありますから、この点について一つ言及してみましょう。個人の問題はすぐ入ることができる。しかし、百歩譲って、それでは組織へ持っていきましょう。そういう組織の問題をお考えになりますならば、これは、私たびたび言っておりますが、この選挙法で大事な点を後退させております。それは政党をどういう工合にするかということを全然ワクの外に置いて考えねばならぬことになるのでありますから、一体今後政党が民主的にこの選挙と取り組めるかといったら、私は、個人よりも徒党を組んで悪くなりはせぬか、これは社会党も含み、保守党がなお悪い、こういうふうに程度の差でものを言うことはできると思いますけれども、今日の政党のあり方をそのままにしていって、この制度を持ち込んで――広い意味のことは言いますまい。買収の問題だけ言いましょう。どうして排除しようとしておりますか。あなたは抽象的に言っておられます。それから、条文の改正を私は詳しく拝見いたしましたけれども、その組織からこういう買収、供応といったような悪質な犯罪を排除するがために、どういう働きが出てくるのです。これはあなたの説明がなかった。組織の力を導入するのなら、どうしてこの組織の力がこういうふうに働いて買収を排除することができるかというお答えをまずいただきたい。
  143. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 特に組織それ自体が、今お話のような、たとえば買収という行動に出るという正面からの規定はないわけでありますが、この組織を構成する個々人の問題として、それは現行法で処置ができるものと考えております。
  144. 井堀繁雄

    ○井堀委員 そのことは私も承知しておるわけです。そういうことをお尋ねしておるわけではございません。これは政治論ですから、あなたにお答えいただくのは無理だと思うのですが、太田長官にぜひお答えいただかなければならぬ大事なことなんです。これは、あなたは、政党本位とかあるいは個人よりは政策本位、こう言っている。ですから、それは、やはり国民を納得させる前に、直接利害関係の強い私ども議員を納得させなければいけません。一体政党は、小選挙区でも大選挙でもいいのですが、どういう方法でこの中に入り込んで欠点を除去できますか、それを一つもっとわかりやすくあなたの気持を私に言って下さい。
  145. 太田正孝

    太田国務大臣 私は遠い理想を申し上げているつもりは毛頭持っておりません。選挙制度調査会の答申の第一に掲げておるのも、遠い理想を申し上げたのではなく、個人本位より政策本位という考え方である。しかし、あの答中には、公明選挙のために罰則の強化等を主張されております。おそらくその問題と一緒にしてのお考えかと思いますが、私は、今の政党全部がこの小選挙区にするについて整っておるかということにつきましては、なまなましい政党の批判になりますから、私は申し上げませんが。しかし、ずいぶん新しい問題として、公認候補者を選ふこと及び政策にどれだけの深さ、強さを持って当っていくかということなどは、この小選挙区制度を実行する前提問題でございます。われわれは、党員としてそれぞれの道に十分努めますとともに、この選挙の完全を期したい、かように考えております。
  146. 井堀繁雄

    ○井堀委員 抽象的なお答えは時間の空費になると思います。私も大体はのみ込んでおります。それでは、私の方でもう一つ別な角度から問題を提起して、お答えをいただきましょう。  これも、さきに御提出願った資料の中で、さっき森委員からも伺っておりましたが、買収事犯その他を排除するために組織を有効に使うとか、あるいは個人的な利得よりは政策本位に選挙に動員していこう、こういうお考えは、私どもも提案者もそう違うはずはありません。その通りです。しかし、それが実際に行えるかどうかというと、いま一つ大事なことは、あなたが描いているような理想とは逆に、反対に大きな弊害となって現われてくるということを私は指摘したいんです。それに対する的確な御答弁をいただかなければならない。そういう意味で、今の政党は――この法律ではどこにもこの点をとめておるところはございませんから申し上げますが、これは事実でいきましょう。さっき例に引かれておりましたが、私ちょっと計算をしてみたんです。昭和三十年の一月一日から三十年の十二月末日までの、政治資金現正法第十二条の規定により提出された、すなわち寄付金その他の収支関係というものを、この規正法の規定に基いて自治庁その他に届け出たものですが、それが、政党がその後統合されたりしておりますけれども、一番最初は自由党日本民主党、それが後になって自由民主党、それから日本社会党が二つであったものが一つになった。日本共産党、労働者農民党、幾つかありましたものが四つ政党に集約されたのですが、その総額を見てみますと、自民党の寄付は収入が八億二千八百九万何がしということになっておる。日本社会党が一億六千四百七十六万円、それから日本共産党が八千七百七十五万円、労農党が六百一万円、こういうふうに届出がなされたことになっております。しかも、その寄付者の五百円以上、千円以上の者がずっと届け出されております。そういうものがこの資料の中に出ておるのです。さっき私があなたと論議いたしました大事なところです。すなわち、イギリスの例をとりますと、党の運営のための資金というものがどこに原資を求めておるかという点に、あまりに違いがあり過ぎる。これが、今言うように、抽象的に、日本の民主主義の成長の度合い、あるいは選挙民の政策に重きを置いて個人の動きを軽視する、あるいは口の上で、個人本位から党の組織に選挙運動を切りかえるという言葉を使う前に、こういう一つの組織団体の基本的な財源というものがどこに求められておるかということが、客観的な情勢を判断する上に一番近い材料になると思うんです。政党自身が、こういう状態で、一体客観的な情勢が、どういうふうに成熟しているか、いないかということを、関連して考えなければなりません。客観的な情勢は寄付者によってわかる。それから、受ける方の党の側は、言うまでもなくこれが組織の中から出てくる。私は、金でありますならば、政党を構成する党員が浄財を集めて、それによって団体を運営するということは、当然の常識だと思うんです。しかし、そういう常識にまで日本政党は発達していないということを、この情報書はわれわれに説明を与えておるわけであります。要するに私はここを知りたいのです。一年のうちに八億二千八百万円、莫大な金であります。これだけの大き金が政党を維持するために必要なんです。その金がどこから入っておるかということは、ずっと羅列されております。全部は申し上げませんが、ここに問題がある。船会社あり、石油会社あり、製鉄所あり、自動車製造業者あり、石炭業者あり、電鉄会社あり、製糖会社あり、紡績あり、製糸あり、漁業業者あり、ガス会社あり、セメント会社あり、電力会社あり、保険会社あり、銀行協会があり、医師会あり、ありとあらゆる事業の中で、それが、今、国会と、あるいは政府の行うております行政面との関係の中に、どういうつながりがあるかということを知りたいために、私は資料を要求した。その資料がまだ届いていないわけです。(発言する者あり)この問題は、私は、何も私どもがきれいで他の人々が悪いなどと言っておるのではありません。そういうことを言っているのじゃないのですから、何も自民党は気にしなくてもいいよ。いや、すねに傷持つと、とかくどうとかいうから……。そういう意味ではなしに、私のここであげておりますのは、政党というものは、あなたはさっきイギリスの例をとられましたが、政党の活動資金というものは、党の組織を通じて浄財が集められてくるということによって、その組織がこういう欠陥を是正するために大きな役割をなし得る一つの原理であるということを、あなたはどの程度理解されておるか。すなわち、政党を小選挙区単位に活用することによって、よい面を伸ばして悪い面をチェックする、こう言わんとしておられるのだろうと思う。その点この政党の姿でやっていけるという確信がございましょう。
  147. 太田正孝

    太田国務大臣 私は、この寄付数字などを見まして、やはりそれぞれの政党に対する支持者が出しておることと思います。その使い道が悪かったということがありましたならば問題が起りましょうが、党の運営として使ったお金その他につきましては、どうも、あぶり出しのように、この中に悪があるということはわかりません。労働組合関係寄付社会党に多いという事実も、やはり支持者がその層にあるということだけでございまして、保守的な、また進歩的な党を支持したいという考えから、そういう寄付があったことと思います。     〔山村委員長代理退席、委員長着席〕 私は、どうもこれだけの表をもって――ただ支持層が違っておるということははっきりわかるのでございますが、これをいかに使ったかという使途も出ておりますけれども、どうもこの資料だけで私の判断をしていくということは――この支出の目的の何々、何々ということを見るだけで、それ以上のことは今考えを持って、おりません。
  148. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私のお尋ねしようと思いますことが少しばく然としたから、お答えがはっきりいただけなかったと思うのですが、私が今ここでこれを出しましたのは、幾つもの例をこれで求めたいためであります。まず第一に、それでは端的にお尋ねいたしましょう。さっき数字を申し上げましたが、自民党、社会党、労農党、共産党、これらの政党が、党員の党費だけによらないで、他の大きな収入が党の財源をなしておるという点については、あなたはお認めになると思います。こういうものが政党の健全なあり方であるかどうかという判断の資料にはなると思います。それじゃ、まずこの点について伺いましょう。一体こういう寄付金が根幹をなすような財源で政党が維持されておるという姿は、正常なものであるかどうか、これに対するあなたの御判断を伺いたいと思います。
  149. 太田正孝

    太田国務大臣 支持している層が寄付するということは、私は何も悪いことではないと思います。もちろんその党員だけで全部ができ得るなら、それに越したことはございますまい。人様の力によらなくてやっていければけっこうでございますが、しかし、いわゆる浄財がいずれの党にかかわらず寄付されるということは、これは私は差しつかえないことと思います。
  150. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私のお尋ねしておることにピントをはずさないでいただきたいと思います。私のお尋ねしているのは、浄財であるかないかということを言っておるのじゃありませんか。あなたは組織のことを言われた。すなわち、個人よりも組織、個人候補よりも党の公認とかあるいは党の組織を選挙の中に持ち込む。その点は私も同感なんですが、政党それ自身が民主的でありまた健全なものでなければ、あなたのおっしゃるような役割を果すことはできぬのですよ。だから、その政党のほんとうの姿をわれわれはつかむことが大切だ。ここであなたと論議するのではありません。事実に対するお互いの見解をはっきりさせたいと思うから、お尋ねしておるのであります。ですから、ここにはっきりしておりますように――これは数字ですからね。言うまでもなく政党資金は党員の党費が主をなすべきです。だけれども、自民党で、一年のうちに八億二千八百万円の寄付金が、しかもその大半がここにずうっと羅列してあるような会社です。あなたは党を支持すると言われたけれども、まあ支持層という言葉についてはあとで議論があると思いますが、その主体がこういうものにあるのは健全だというふうにあなたはお考えですか。この状態で――私の今聞こうとしておることは、選挙違反の問題を取り上げているのですから、広い範囲を申し上げているのではありませんよ。非常にしぼったお話をしてきているのですよ。だから、買収というものが行われておるという事実は、さっきの言葉の通り、残念ながら三つの選挙を通じてこれだけ大きく行われておる。その原因は何かということを聞いたら、一番大きなのは、やはりブローカーの動きと、候補者有権者の人情関係という説明があった。私どももその通りだと思う。この点を排除しようとすることについて、あなたは、本案説明の際に、個人よりは政策本位、個々の候補者よりも政党の公認候補という形がよいということを何べんも言っておられるが、そうとすれば、政党それ自身がそういう弊害をため得る能力をどれだけ持っておるかということの判断が必要になるわけなんです。私は、あげ足取りをやったり、主観を強調しようとするのではありません。一緒になって考えようというのです。よかったら私はあなたに賛成をするのです。また、あなたも私どもの考えが正しかったら賛成するというのが、この委員会の態度でなければならぬと私は思うから、そういう意味で、この数字は、あなたごらんになっていないかもしれませんが、これはちゃんと調べて、そろばんをはじいて出したものですから、もとが間違っていなければ、この通りで間違いない。合計いたしますとこういう大きな金額です。そして支出も両方出ている。自民党の方は七割八分くらいまでがここへずっと並べてある人の寄付金なんですよ。あなたは支持層というが、なあ支持層ということはあとで聞きましょう。こういうふうに党員ではないのです。党外の収入、はっきり言うと党の組織外から――社会党もだいぶ集めておりますけれども、割合が違うのです。組織外から多くの活動の原資を求めておる。その活動の原資がこういう状態であっても、その政党は一体現在のそういう欠点を補うだけの力を発揮するかどうかということを判断するために聞いておるのですから、これが一体許される姿かどうかということについて、まあ許されるという見方もありましょうが、こういう状態であなたは政党に期待できるかどうかということを、率直に一つ聞かしていただきたい。これは政治的な判断でけっこうです。
  151. 太田正孝

    太田国務大臣 実は、私も、政治資金の問題ははなはだ未熟な経験ですが、調べようと思いまして、初め外国へ行くとき、当時の床次竹二郎さんがイギリスの政治資金を調べてくれというわけで、ずいぶん当時おりました人のこまかいところまで入っていきましたが、ほんとうには私つかめませんでした。なかなかこういうものはむずかしいものと思います。あるいは、これだけでなく、まだほかにあるかというような疑義も起るのです。だが、お話のように、組織者自身が金を作るということは第一にけっこうと思います。しかし、りっぱな政治家の素質を持っておる人は、金を出せなくてもやはり党員にしていかなければならぬ。第一義はそうであると思います。しこうして、今日ここに表われているものは、自民の批判を待つべくはっきりしようという意味で、政治資金規正法の規定によりましてこれを公表しておるわけでございますから、その判断は、また国民の声も聞かなければならぬと思います。政治建前から見ますれば、組織者が主体になっていくことはけっこうと思います。しかし支持者のものを拒否する必要は何もないと思います。また、この費目につきまして、果してこれがどういうように行ったかということも、国民の批判があろうかと思いますが、一つ選挙に当って使われた額がこれで正しいかどうかということをはっきりさすために、この公表制度をとっておる次第でございます。私は組織者が第一義の金を作るということについては賛成でございますが、支持者層から出るものを除外するという意味は私は考えておりません。いいか悪いかという批判は、これを発表する趣旨から御判断を願いたいと思います。
  152. 井堀繁雄

    ○井堀委員 大へん渋っておられるようですが、あなたが言外に漏らされておりますように、組織の中で組織の活動資金は求むべきだということは常識だと思うのです。しかし、その常識通りに党の資金が集まってこないということを証拠立てる資料として、私は申し上げておる。それを私はここでけしからぬとかどうとか言うのじゃありません。集まらぬから、仕方がないからそうやっておるのだろうということの事実は、認めざるを得ぬわけです。ですから、そういう実態から、党の性格というものをその部分だけで論ずるわけにいきませんが、しかし、党の性格を決する意味において、また特に今私が答えを求めようとしております買収事犯のようなものを排除するために、政党の現在の行き方がいいか悪いかという判断の資料として出てきたわけです。もう一歩進めましょう。そういたしますと、今あなたも言われておるように、組織の中で集めるべきであるか、組織の金が集まらぬので、こういうところで持っておる。それから、党を支持するという言葉がありましたから、もう一つ念を押しておきましょう。支持層とあなたは言われておりますが、支持層といっても、その政党を支持するものについては私は二通りあると思う。シンパサイザーといいますか、党員ではないが党員並みの考え方をして、党員にはなれぬけれども、経済的な協力をして、その党の主義主張なり政策を実現さしていきたいという意味でこれを支持する。この支持者は私は正しいと思う。しかし、そうじゃなくて、まあ寄付をすることによって反対給付を期待するというような意味で、打算的な考え方から支持する者があると思う。こういうような二通りのものが現実にあるわけです。大ざっぱに二つに分けて――三つに分けられるかもしれませんけれども、あなたはここに並べてあります会社は一体そのうちのどっちだとお考えですか。
  153. 太田正孝

    太田国務大臣 この会社の名前などを見ていきますと、保守党側に寄付している会社が同時に、たとえば八幡製鉄という会社などは社会党へも寄付なさっております。また川崎製鉄所も出しております。たくさんの名前がここに列挙されておりますが、私は両方に出した場合のことが一番問題になると思います。しかし、会社としても、これをどうしたいきさつでやったかどうか存じませんが、ほかの悪の道に使うということを意識しての寄付ではない。私はこの使った費用の公表されたものを見ても、かように判断するのでございます。支持層という意味が非常に複雑なる感じを抱かしめることは、社会主義政党に対しても保主主義政党に対しても、両方に名前が出ておる場合で、私の一番判断に苦しむところでございます。いろいろの意味において、あるいは両方支持したいという立場もあるかもしれません。だからそれを一がいに割り切って申し上げることはできないので、私の判断といたしましては、この点について保守党の考えを支持する、こういう点についてはというように問題別もあろうかと思います。それで一がいに判断することはできないかと考えております。
  154. 井堀繁雄

    ○井堀委員 それであなたのお答えが二つになったわけです。最初は、一般の支持層から資金を集めることは決して悪いことではないと、こう言う。その点は私も決して悪いとは思わぬ。それが浄財であるかないかという言葉になると、今あなたも言っておられるように、全く主義、主張を異にする――すなわちイデオロギーという言葉をこの前から使っておりますが、ことに資本主義を指向するものと社会主義を指向するといったような全く別個の政党寄付をするということは、決してその党の主義、政策、主張を助ける意味の支持でないことだけは、これはもう明らかになった。そういう資金がもっぱらこの寄付の中核をなしている、大半をなしておるということだけはおわかりでしょう。そうすると、こういうものが党の運営の基本財源をなすという、こういう政党のあり方で、一体、あなたは、この組織の力を導入して、一番骨がらみになっていると思われるような買収事犯等に対してどういう役割をここに期待されておるか。この点に対して、あなたは、やはり、私どもだけでなく、国民に対しても十分判断できるような説明をする義務があると私は思うが、これはどう思いますか。
  155. 太田正孝

    太田国務大臣 この寄付金と支出の関係はここに出ておる通りでございまして、買収費等がかりにあるとしたならば、関連性は私からは申し上げることのできない問題でございます。またそういうことを判断し得る材料も持っておらないのでございます。
  156. 井堀繁雄

    ○井堀委員 ここで問題はいろいろに出てくるわけでありますが、あまりこまかく突っ込んで、しつこいと思われるかもしれませんが、この問題は、私は、これから選挙浄化の問題を論議していくとさに足がかりになると思うから、くどいようですが、お尋ねをしておるわけであります。今あなたも迷われておられるように、私どもも迷っておる。これが純真な党活動を援助するという意味の資金にそのままとっていいかどうかという点については、非常に迷っているわけです。今あなたがちょっとおもしろい説明をして下すったと思うのは、ある部分では社会党の政策を、ある部分では、自民党の政策を――そういうことがあり得るかどうかは問題ですが、まああり得るとここの場合仮定いたしましょう。そういう考え方を持っておる大口の寄付者によって、党活動というものがなされていくわけです。それが小選挙区の小に入り込んで、さっき午前中も論議の中心になっておりましたが、これはこの選挙法の盲点ですが、この点私は非常に意識的かどうか知りませんけれども政党が、今度の選挙運動に対して、かなり大幅な活動がこの改正によってなされるわけです。そういうことになりますと、私の考えでは、個人の場合の弊害はこれよりも少いと見ている。これをあなたが違うというなら、反論していただきたい。なぜかといえば、今までは個人か親譲りの財産を選挙につぎ込んだ先輩の事例を私どもはよく承知しておりまして、頭が下るような思いがいたします。「井戸へい」という言葉が通用するのでありますが、先祖の遺産を選挙に使い果して、井戸とへいだけが残った。それまでに私財をはたいて選挙運動をやったということについて、そのやり方はいろいろ問題はありましょう。批判の余地はあるにいたしましても、これは浄財だけだったと思う。それが買収に使われたら、浄財であってもよくないと思いますけれども、それがそうではなくて、さっき言うように、どの政党でもいい、まあ先物買いをするものと現物というように、変ったような考え方もこの中にはあるでしょう。それから、これは、あとで資料が出てきてから、そこの問題と結び合せてお尋ねしますから、あなた一つよく御検討いただいて、あとでお答えをいただくことになると思いますが、私の言おうとすることは、そういうような浄財であるかないかということを、われわれはこの際はっきり事実を見きわめて、そういうものが悪いと思えば、そういうものによらない方法があるかないか、なければそういう実態を認める、認めた以上は、その団体がこういうあなたのお考えになっているような小選挙区の区割りの中に個人にかわって活動をし始めたら、それは罪悪は倍加いたします。こんなことは何も見解の相違や資料の違いで判断すべきことではないと思う。こういう点に対する御検討をあなたはなさっておいでになると思いますが、この点に対して何か確固たるお考えがあったら伺いたい。
  157. 太田正孝

    太田国務大臣 私の判断におきましては、たとえば保守党社会党の両方へ寄付しているような人のお考えには、通俗にいう健全なる政党の発達を望むというようなお方もあろうと思います。また二大政党の出るために出そうという方もあろうと思います。  第二に申し上げたいことは、政党寄付金が多くなってきて、そこで小選挙区下において非常にたくさんな金が使われるという、それが選挙の腐敗にならぬかというようなふうに考えられる問題がございますが、きのうの御質問に対して私どもお答えしたのですが、今回小選挙区になりまして、政党の使い得る金は、今までの中選挙区下において政党が使っておる金よりそんなにふえておりません。すなわち、使い得る範囲は、あるいは政談演説会、あるいは街頭演説会、ポスターの問題、あるいはビラの問題、その他でございますが、回数を多くしたとか、枚数を多くした程度でございまして、小選挙区下において政党が金を使い得る限度等に対する規定というものは、中選挙区下以上にほとんど違っておらない。わずかにあるいは政談演説が新しく加わったとか、枚数か多くなったという点以外には、この法案の中におきまして私どもは予定しておらないのでございます。何となく政党がやるという事柄を非常に大きくとりまして、費用の点まで非常に大きな金が使われるようにお考えになりましたならば、二百一条の三か五かにございます通り限定されておりますので、その点もどうぞ御了解を願いたいと思います。
  158. 井堀繁雄

    ○井堀委員 この問題は、あと国の経済的援助を受ける法人、団体の調べを出していただきまして、この寄付者との関係において、そちらの方でも一つ検討をしていただきたい。そういう関係は、決して私はあぶり出しでものの裏を見ようなんという情ない根性を持っておりません。常識で判断のできる範囲というものはおのずからあるわけです。そういう問題を正確につかんで、そうして悪を是正するために、これがよいというものを考え出す。その考え出したものが選挙法の中に生きているかどうかということが大事だから申し上げておる。どうも何かさっきから非常に警戒されておりますために、簡単で済むお答えが長引いていると思う。まあ一つお調べをいただきましてお答えを願うようにいたしたい。  それから、私がこういうお尋ねをしておりますのは、もう一ぺん念のために心しておきますが、政党選挙の中に取り入れるということは私は賛成なんです。だけれども、それがよいことであっても、現実に来してそれがそれだけの役割を果すか果さぬかということについは、十分見きわめる必要がある。そういうためにお尋ねをしておるのです。せっかく出してもらった資料を生かして使いたいと思うから、今お聞きしておるわけです。これは二十分か三十分でできる討議だと思って私は始めたところが、大へん時間をとりました。これは私の質問の仕方が悪かったのでそういうことになったかとも思いますが、これからはもっと上手にやりたいと思います。  きょうはこの程度にいたします。
  159. 小澤佐重喜

    小澤委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後四時五十一分散会