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1956-04-18 第24回国会 衆議院 建設委員会法務委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月十八日(水曜日)     午後一時五十七分開議  出席委員   建設委員会    委員長 徳安 實藏君    理事 内海 安吉君 理事 大島 秀一君    理事 荻野 豊平君 理事 瀬戸山三男君    理事 三鍋 義三君       逢澤  寛君    木崎 茂男君       仲川房次郎君    二階堂 進君       松澤 雄藏君    山口 好一君       今村  等君    石田 宥全君       楯 兼次郎君    中島  巖君       西村 力弥君    前田榮之助君       山田 長司君    渡辺 惣蔵君   法務委員会    委員長 高橋 禎一君    理事 池田 清志君 理事 椎名  隆君    理量 高瀬  傳君 理事 三田村武夫君    理事 猪俣 浩三君 理事 佐竹 晴記君       犬養  健君    小林かなえ君       林   博君    古島 義英君       宮澤 胤勇君    横井 太郎君       武藤運十郎君    吉田 賢一君  出席国務大臣         建 設 大 臣 馬場 元治君  出席政府委員         総理府事務官         (調達庁不動産         部長)     大石 孝章君         建設政務次官  堀川 恭平君         建設事務官         (計画局長)  町田  稔君  委員外出席者         総理府事務官         (調達庁不動産         部連絡調査官) 矢崎 高儀君         建 設 技 官         (計画局総務課         長)      前田 光嘉君         法務委員会専門         員       小木 貞一君         建設委員会専門         員       西畑 正倫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  土地収用法の一部を改正する法律案内閣提出  一五〇号)     —————————————     〔徳安建設委員長委員長席に着く〕
  2. 徳安實藏

    徳安委員長 これより建設委員会法務委員会連合審査会を開きます。  先例によりまして案件を所管する委員会委員長であります私が、委員長の職務を行います。  土地収用法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。質疑の通告がございますから、これをお許しいたします。吉田賢一君。
  3. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 直接本法案について一、二伺ってみたいのであります。この法律案提案理由説明書によりますと、各般土地収用手続すなわち土地収用法運用簡略化をはからんとせられる意図が明確であります。そこで伺いますのは、申すまでもなく土地収用法は、一面におきましては公益事業に必要なる土地収用を主目的とした規定であり、同時に他面におきましてはその土地所有者、その他の使用権利者等の地位を十分に確保せられなければならぬ、この両者の関係がありますので、特にわれらといたしましては、所有権基本的人権のうち重要なものであることは申すまでもございません、従って所有権に対し何らかの制限規定がなされようとするときは、よほど慎重な態度をもって臨まねばならぬことを痛感するのでございます。そこで政府といたしましては、この法律土地収用を重要な目標にした法律内容改正でありますので、この重大な国民権利が、何らかの制限ないしはこれを喪失するような結果を来たすべき法律構成になっておる土地収用法運用につきまして、この手続を簡略にせんとするのにはよほどの理由がなければなるまいと思うのであります。最近ひんぱんに、たとえば駐留軍のための施設提供等によりまして深刻な土地紛争が起っておりますが、政府といたしましてはどういう経験からこのような改正法律案を出そうとするに至ったか、おそらくは今世上問題になっておりますような、そういう基地問題等も含んで何らか相当大きな経験があったものと推定するのでありますが、いやしくもこの収用法手続簡略化せんとするというような場合には、やはり相当明確な根拠が必要と思われます。よって、政府はどういう経験等からこの改正法案を出すに至ったか、その点まず明らかにしていただきたい。
  4. 町田稔

    町田政府委員 ただいま吉田先生の御意見にございましたように、土地収用法公共の利益の増進と私有財産との調整をはかり、国土の適正かつ合理的な利用に寄与することを目的として定められた法律でございまして、この法律適用することによりまして所有権等があるいは制限され、あるいは消滅をするわけでございますので、特にかかる法律手続等に関しましては慎重な規定を要しますことは御意見通りでございます。今回改正を考えるに当りましてもその点につきましては特に慎重に考慮いたしまして、今回の改正案におきましては、いやしくも私人権利が従来よりも保護を受けることが少くなるような改正は全然意図いたさなかったのでございまして、その点につきましては何らの改正をいたしておりません。それ以外の点につきまして、たとえば従来起業者各種手続上の負担をかけておりました点を、これを事業認定をいたす者の負担に変えまして事業認定等の促進をはかるとか、あるいはその事業認定をいたしますのには各種書類縦覧等を地元の市町村で要するのでございますが、その経由機関をはぶいて直接市町村書類を送付するとか、そういう点につきましてこれを改正することにいたしたのでございまして、特別な私権の保護を少くするというような改正の点はないのでございます。それで今回特にこういうように改正をいたしました理由は、近年御承知のように用地の取得がきわめて困難になる傾向にございまして、土地収用法適用して土地収用または使用しなければならない事例が漸次相当な件数に上って参っております。これらの場合におきましてはすべて事業公共目的を持った事業でございまして、あるいは道路を作るとかあるいは病院を作るとか、その他公共の必要からぜひとも施行せざるを得ない事業のための用地がなかなか獲得できないということでございますので、私人権利を阻害しない範囲内におきましてこれが収用手続を合理化することはきわめて必要になって参っておるのでございます。そういう意味におきまして、今回特にこの改正案を提案いたしまして御審議をわずらわすことになった次第でございます。
  5. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 お説によりますと、近来の経験として広い土地収用案件があり、また例として道路病院などの建設についてこれら手続をできるだけ簡素にするという必要を感じられたようでありますが、もっと端的に、たとえば今私どもがこの改正案を一覧いたし、また提案理由説明書を通読いたしまして受ける印象は、どうもやはり基地問題が一つひっかかっておるのじゃないかと思われるのでございます。基地問題の経験本件提案の何らの根拠になっておらぬ、もしそういうことに関係がないというのであるならば、また別の角度から本法案を検討してみたいと思います。つまりあなたが病院とか道路とかおっしゃっておりますが、道路にもよりけりでありますけれども、そうじゃなしに、やはり最近の基地問題がかなり深刻な経済、社会、政治各般の問題にも発展しておるということは御承知通りであります。これをできるだけうまく何とか早く解決したいというのがほんとう政府の腹であるのではないか、この点は一つ、いろいろ事務的な御事情もあるかもしれぬけれども、そうであればそうであるとしてやはりお述べを願いたい。そうでないならそうでないとして、またわれわれとして考え方があるのです。
  6. 堀川恭平

    堀川政府委員 計画局長からも申し上げましたように、御承知のように近時、ダムとか道路とかあるいは河川事業に対しまして、相当用地を必要とする点が出てきておるのであります。またこれに対して収用法適用する点が非常に多くなってきたことは御了承の通りだと存ずるのであります。基地に対する収用手続はこの法律には入っていないので、別の法律、いわゆる日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定実施に伴う土地等使用等に関する特別措置法というものでやっておるのでありまして、今提案いたしております土地収用法ダムあるいは道路あるいは河川、こういうものに対してのみ考えておるのであります。
  7. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 基地関係安全保障条約に基く行政協定によりまして、土地収用法は準用されておると私は理解しておるのです。ちょっと今条文を探しておったのですが見当りませんので、それは事務当局がおわかりであろうから御説明願いたい。
  8. 町田稔

    町田政府委員 政務次官から今お答え申し上げましたように、基地等に関しましては、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定実施に伴う土地等使用等に関する特別措置法という非常に長い名前の法律がございまして、この法律によりまして土地収用が行われるわけでございますが、この特別措置法におきまして、ただいま吉田先生からお話のございましたように、土地収用法が非常に多く適用されておるのでございます。今申しました法律の十四条に適用いたすべき条文が列記してございますが、ただしこの十四条におきましては、これらの事業に関しまして事業認定をいたします際の規定につきましては適用がないのでございまして、今回特に改正を主として考えております事業認定関係手続は、土地収用法によらず、この法律自体規定がされておるのでございまして、この法律の第四条、第五条等に認定に関する規定をいたしてございます。それで今回の土地収用法のこの部分に関する改正は、これらの基地等収用には関係がございません。ただ今回の改正におきましては、協議に関する部分収用委員会の会長の審理指揮権に関する部分については改正をいたしました条文がこの特別措置法におきましても適用を見ることになるわけでございます。
  9. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 安全保障条約第三条に基く行政協定実施に伴う土地等使用等に関する特別措置法十四条の土地収用法適用、この中には土地収用法の十八条は適用されておらぬのですか。
  10. 町田稔

    町田政府委員 お答え申し上げます。特別措置法の第十四条におきまして、土地収用法のうちこの第三章は適用から除かれておりますので、適用がございません。
  11. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そうしますと、今政務次官基地に関しては収用法適用がないとおっしゃったが、適用は多数にある。条文事務当局から指摘された。そこでこのたびの法律改正点は、基地に関するものはほとんど、少い、こういうような御説明ではあるのでありまするが、そういたしますと、このたびの改正案を出すに至った根拠は、ほとんどもしくは全く最近の基地問題についての経験によって提案されたというのではない、こういうふうに理解していいのでございますか。
  12. 堀川恭平

    堀川政府委員 その通りでございます。
  13. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 少し伺ってみたいのでありまするが、この改正案は、第十七条の一項に三号を新たに付加いたしております。この三号のうちに、「利害影響を及ぼす事業」ということになっておりますが、この利害影響を及ぼすというのは、ここにあげてあるイからヘまでは例示的なものであるのか、あるいは何らかの限界をあらかじめ法律は考えておるのだろうか、その点いかがでしょうか。
  14. 町田稔

    町田政府委員 十七条の一項の三号に列記いたしました事業限定をいたしまして、例示ではなく、このイからトまで書いてありますものがすなわち三号の柱に書いてあるものであるということに限定をいたしまして規定をいたしたのでございます。
  15. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そこの改正のロでありますが、この口の「航空法による飛行場又は航空保安施設」というのは、駐留軍が関与するというような場合は全然想定をしないのでありますか。その趣旨はどうなんでしょう。
  16. 町田稔

    町田政府委員 ただいま御質問の駐留軍関係飛行場は、全然想定をいたしておりません。これによるものではございません。
  17. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それから次の第十八条の、起業者相当期間内にこれを得ることができなかった、つまり意見書起業者が得ることができなかったというような場合には必要としない、こういう条文が付加されておりますが、これはまたどういうわけでありましょう。十八条の行政機関意見書というものは、事業認定の上に非常に重要なものと思うのでありますが、なぜこれを必要としないというふうにいたしたのでありますか。その根拠を明らかにしたいと思います。
  18. 町田稔

    町田政府委員 ただいま御意見にございました通りに、事業認定申請書に基き事業認定をいたします際には、これらの機関意見はぜひとも必要でございます。しかし今回は「起業者相当期間内にこれを得ることができなかったときは、添附することを要しない。」といたしましたかわりに、第二十一条におきまして、起業者にかわりまして、事業認定をいたします建設大臣または都道府県知事がこれらの意見書を必ず関係機関から取りまして、それに基いて事業認定をすることに改正をいたしました。それで起業者といたしましては、事業認定申請書には、これらの書類添付できない場合には添付する必要がございませんが、建設大臣なり都道府県知事は、事業認定をいたします際には、必ずこれらの意見を徴した後に行うことに、二十一条によりましていたしたのでございます。
  19. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 しかし、いやしくも公共事業を行う認定をしようというときに、ここに記載されてある第三号から五号まで——第三号といえば、起業地内において、その土地に関する調書図面及び土地管理者意見、第四号におきましては、土地利用について制限があるときは、当該法令施行について権限を有する行政機関意見、あるいは第五号は、事業施行に関して行政機関免許許可または認可等処分を必要とする場合においては、これらの処分があったことの証明書、または当該行政機関意見——ところが、土地管理者意見というものは、実態把握の上にぜひ必要なんです。また行政機関意見というものは、これはまた除外すべからざるもの、また免許認可等についても同様である。これが得られないような起業者事業認定をする必要はないじゃないか。たとえば土地図面もつけられない、調書もつけられないような管理者——そういうものはつけなくてもよろしいというほど簡略化しなければならぬという改正根拠はないと思うのです。私は劈頭に申し上げましたごとくに、土地所有権というものは、個人基本的人権の中で重要なものでありますから、制限、消滅せしめようというような法律手段に訴えるような事業認定するときに、土地調書ができない、図面も取れないようなものは、図面は出さぬでもよろしい、調書は出さぬでもよろしい、また法令制限のあるときは、その制限等に関する行政官庁意見書も出さぬでよろしい、あるいはまた行政機関許可免許証明等も出さぬでよろしいというようなことは、これはいかがなものでしょうか。起業者期間内に得ることができないような、そんなものに進んで事業認定をするということは危険じゃないでしょうか。事業認定をしてしまう、紛争があとで起る、一体跡始末はだれがするのですか。あるいは事業はどんどん進行していく、そして損害を受けるものは所有者である、権利者である、個人である。個人権利救済を訴訟によって求めても、その救済ほんとうに実現せられるのは、あらゆる被害をこうむった後のことであります。だからこれによれば、事業を先に進行してしまう危険がありはしないか。事業を先に進行してしまうようなことは、あなたが当初申されたごとくに、個人所有権を十分に保護尊重するという趣旨と全く背馳することになりはしないかと思うのですが、いかがですか。
  20. 町田稔

    町田政府委員 今回の改正におきましては、第十八条の三号の改正によりまして特に添付を要しないといたしましたのは、関係土地管理者あるいは行政機関等意見書だけでございまして、三号にございます、今御指摘のありました、起業地内に第四条に規定する土地があるときは、その土地に関する調書図面等は、やはり今回も事業認定申請をいたしますものが添付を要することになっております。今回省きましたのは管理者等意見書だけでございます。それからなおこの管理者等意見を特に相当期間内に得られないときは添付を要しないといたしましたのは、ここに書いてございます土地管理者等は、たとえば水路等につきましては私人の場合が多くございまして、これらの管理者がときに長期旅行をいたしているというようなことでその意見を徴し得ない場合等が往々にしてあるのでございます。それで申請書は一応その事情を書いて出させておきまして、事業認定認定権者がいたしますまでには、事業認定権者においてこれらの書類を必ず徴した上で事業認定をいたしますので、ただいま御心配に相なりましたような事態は実は起らないように考えておるのでございます。
  21. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 十八条の第二項第三号の解釈でありますけれども、この場合に管理者長期旅行をしておって不在であるというならば、管理者本人管理するのでありますから、法律一般理屈から申しますならば、本人意見書があればいいと思うがその点に対する御解釈はいかがですか。
  22. 町田稔

    町田政府委員 ここに書いてございます土地管理者と申しますのは、いわゆる私法上の管理者ではないのでございまして、たとえば道路等におきまして公法上の管理者をここではさしておるのでございます。「起業地内にある第四条に規定する土地」とございまして、この第四条に規定する土地と申しますのは、「この法律又は他の法律によって、土地等収用し、又は使用することができる事業の用に供している土地」となっております。それの管理者ということになりますので、例示として申し上げますならば、道路管理者または河川管理者等をさしておるのでございます。本人があってそれの管理者という意味管理者ではないのでございます。
  23. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 その場合にたとえば河川管理者府県知事というのであれば、府県知事長期旅行、たとえば外国へ旅行しておるような場合は、どうせ知事を代行する副知事その他があるわけでありますから、常時代行官がおるのであります。何も河川管理者知事がアメリカに旅行しておるからといって、それで不在だから管理者がない、管理者がないから必要でないというような理屈にはなってこないのですが、その点はいかがですか。
  24. 町田稔

    町田政府委員 お話通り道路管理者河川管理者等の場合につきましては、旅行等によってその意見を徴することができないという事態が生ずることは想像できないのでございますが、河川水路事業等につきましては事業主体を必ずしも縛っておりません。それで事業主体制限がありません結果、私人等水路事業管理をいたしておることがあるのでございまして、それでこの水路事業につきましては、まさにこの法律の第四条の適用のある事業でございます。ここで水路事業等私人管理者となって管理をいたしております場合には、その個人長期旅行等をいたしますと、その意見を徴することができないという事態が事実生じてくるのでございます。
  25. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 ただいまお述べになった設例公法上の管理者かも存じませんが、しかし公法上の管理の場合には例外なく管理者代理する者が設置されておると思うのであります。そうでなければ公法上の機関の運営ができないことは自明の理であります。ただいまお述べになりました設例が私には若干のみ込めないのでありますが、前者の場合道路とか河川等管理の場合のようであれば、これは常に代理があるのでありますから、その代理によってこれを行うことは何の支障も生じない、こういうことになるのでありますから、その点は非常にたくさんある中の一部の例をもって多くのものを律してしまう危険があるのではないかと思うのであります。ことに管理者意見というものは相当重要なウエートを占めるべき現象であろうと思いますので、特にそう考えます。これはあなたの方で法案作成の際の何かミスにでもなっているのじゃないでしょうか。
  26. 町田稔

    町田政府委員 ただいま御意見のございましたように、これら管理者意見認定には必ず必要でございますから、当然起業者添付させるのが原則でございます。今回もその原則は全然変えておらないのでございまして、起業者相当期間内にこれを得ることができないようなきわめてまれな場合には特に添付を省略してもよろしいということにいたしたのでございまして、御意見通り原則といたしましては常に起業者申請いたす場合に管理者意見添付すべきものというように考えておるのであります。
  27. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私はこの事業認定につきましては十八条の二項というものは非常に重要な関係にあると思いまして、特にお尋ねするのであります。そういうような相当期間内に意見書もとれない、行政官庁意見書もとれない、その他の必要書類もとれないような、そんな事業主体につきましては事業認定するということは災いを後日に残すもとになると申し上げたいのであります。何らかの故障があるのであります。何らかの故障があるということはその原因事業主体にあるかもわからない、起業者にあるかもしれない、あえてその所有者等責任において意見書がとれないとは一がいに断ぜられないのであります。ことに多くの場合において、最近の紛擾の実例に徴してみるならば、独占起業者が小さな所有者を非常にさいなんでおるような事例すらずいぶんあるわけでありますから、だからこういうものはあなたの基本論である人の所有権を奪うものであるから慎重に手続はなさねばならぬという原理からするならば、こんな相当期間内に意見書をとれないような起業者事業認定というものは、それこそもっと逆に慎重な何かの規定があってしかるべきだと思います。たとえば相当期間内に必要な十八条第二項の三号ないし五号の書類がとれないというような、そういう起業者に対してはその原因を調査して、もしとれないことについて起業者自体責任があるような理由が明らかになったならば、これまた認定を消極的にするような一つの資料に考えてもよいのではないか。ここで初めて国民所有権を尊重するという意味が事実に現われてくると思います。こういうことを思いますと逆行です。こうまで起業を促進する必要は断じてありません。人の所有権というものはそんなに軽く扱うべきではありません。他の委員諸君も十分にあらゆる角度から御検討を願いたいと思います。今あなたのお述べになったことは答弁になりません。この点についてはやはり建設省の大臣がその所見を明確になさらなければならない案件であろうと考えるのであります。  その次に二十一条の条項、これもまた行政官庁行政機関から意見を徴する際に行政機関のほかに、土地管理者でもよい、こういうようなまた緩和規定を設けられたらしいのであります。これは十八条の第三項規定意見書添付されなかったとき、その他必要があると認めたときにおいては、「第四条に規定する土地管理者又は当該事業施行について関係のある行政機関若しくは」というふうにお改めになるようであります。でありますから、これはやはり管理者というものを加えたように見受けるのでありますが、そういう趣旨でありますか。
  28. 町田稔

    町田政府委員 第二十一条におきまして「第十八条第三項の規定上り意見書の添附がなかったとき、」とございますが、この十八条第三項の規定により意見書添付がなかったときには、必ず起業地内にある第四条に規定する土地管理者または当該事業施行について関係のある行政機関もしくはその地方の支分部局の長の意見を求めることに考えておるのございまして、法文もそういう趣旨規定いたしたのでございます。従って、起業地内にある第四条に規定する土地管理者意見書がない場合には、必ずこれを徴しますし、また第四条に規定する土地管理者意見書はついておるが、十八条の二項の四号または五号の行政機関意見書どちらかがない場合には、それにつきまして必ずこれを徴するという意味に第二十一条は規定をいたしたのでございます。いずれにいたしましても、十八条の二項の三号以下の意見書がない場合には、二十一条の改正によりましてその意見書はこれを必ず徴することに規定いたしたのであります。
  29. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私はなお質疑を続けたいのでありますけれども、時間の関係がありますので、土地収用法全体に関連しまする事項を一、二質問させていただきたいと思うのであります。本法案自体ではありませんので、まことに恐縮であります。  先般例の立川飛行場並びに小牧飛行場につきまして、協力謝金なるものをお出しになっておりますが、その協力謝金なるものについて伺いたいのであります。第一に、協力謝金というものは、立川飛行場、すなわち砂川町関係において何ほどお出しになったのか、小牧飛行場において何ほどお出しになったのか、ちょっとその御説明を願いたいと思います。
  30. 矢崎高儀

    ○矢崎説明員 私矢崎でございます。本日長官並びに次長が差しつかえがございまして、私が説明させていただきます。  ただいま御質問のございました協力謝金につきまして、立川、すなわち関係の砂川町につきましては、件数におきましてただいまのところ二件でございます。一件五万円ずつ、都合十万円の協力謝金をお支払いしております。  なお、ただいまの御質問にございました小牧飛行場に対しましては、関係町村が旧楠村、小牧市、豊山村の三市町村に及んでおりますが、件数にいたしまして二百三十八件でございまして、協力謝金合計二千二百八十五万円を支払っております。  今日のところですでに支払ったものは、ただいまの砂川町関係及び小牧飛行場関係だけでございます。
  31. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 これをお支払いになったのは、調達庁の長官から当該地主に対してでありますか。
  32. 矢崎高儀

    ○矢崎説明員 それぞれ関係者にお支払いしております。
  33. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それは、予算の根拠は何になっておりますか。
  34. 矢崎高儀

    ○矢崎説明員 防衛支出金の三十年度の予算の範囲内で出しております。
  35. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 昭和三十年度の防衛支出金のうちのどういう目になりますか。
  36. 矢崎高儀

    ○矢崎説明員 目は、特定施設区域等提供協力謝金という目になっております。
  37. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 その防衛支出金は、移しかえはいつ行なったのですか。年月日、金額を教えて下さい。
  38. 矢崎高儀

    ○矢崎説明員 大蔵省に計上しました防衛支出金を、一般会計予算総則第二十二条によりまして、昭和三十年十二月に、総理府所管調達庁で第一回の移しかえが行われました。金額は、昭和三十一年一月の第二回の移しかえと合せまして、六千五百余万円でございます。
  39. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 その、去年の十二月の分と本年一月の分は、立川、小牧の両方いずれも含んでいるのか、あるいは両方区別されているのか、その点を伺いたい。
  40. 矢崎高儀

    ○矢崎説明員 両方を一緒に含んでおります。
  41. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 去年の十二月の分は、金額は幾らですか。
  42. 矢崎高儀

    ○矢崎説明員 ただいま申し上げましたのは、二回の移しかえを合せて六千五百余万円を申し上げましたが、第一回と第二回の移しかえの内訳につきましては、取り調べまして御報告申し上げたいと思います。
  43. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そのうち立川の分は幾ら、小牧の分は幾らと、その区別があって移しかえをしたものと常識上考えるのですが、そうじゃないのですか。
  44. 矢崎高儀

    ○矢崎説明員 その細目別はございません。
  45. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そういう意味じゃないのです。立川の分は幾ら、小牧の分は幾ら——細目について、何番地の何兵衛に何ほどを支出するというような細目はないにしましても、移しかえをしようとしましたならば、そのときには、支出負担行為の実施計画も伴っているのじゃないかと思うのですが、それはいかがですか。
  46. 矢崎高儀

    ○矢崎説明員 立川、砂川あるいは小牧というような細目には分れておりません。
  47. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それならば、今申し上げました支出負担行為の実施計画は伴っておるのですか、いないのですか。伴うというのに語弊があれば、その計画はいつお出しになったのですか。
  48. 矢崎高儀

    ○矢崎説明員 第一回は十二月に立川の分を移しがえいたしまして、第二回目の一月は小牧の協力謝金の分について移しがえをいたしております。
  49. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それならば立川の分を例にとってお尋ねしますが、立川の分について、これは支出負担行為の実施計画がなされたものと思うのでありますが、それは相当な協力謝金の基準というものでお出しになったのか、それとももっと具体的に何町歩というようなものをお出しになったのか、何人という人数をお出しになったのか、その点いかがですか。
  50. 矢崎高儀

    ○矢崎説明員 謝金の基準がございまして、それによりまして大体の予算を出しております。
  51. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それも含んで、たとえば人数とか町歩、土地の面積とか、そういうものをお出しになったかどうか。
  52. 矢崎高儀

    ○矢崎説明員 面積及び関係者の数もにらみ合せて出しております。
  53. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そうしますと、さらに別に伺いますが、これをお出しになりまする特定施設区域等の提供協力謝金、こういう目が設置されたようでありますが、これは一体、法律根拠は何による経費に該当するのですか。
  54. 矢崎高儀

    ○矢崎説明員 防衛支出金の中におきますただいま申し上げました目によりまして……。
  55. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 条約を示して下さい。
  56. 矢崎高儀

    ○矢崎説明員 大蔵大臣の承認を得て、目の新設をしましたのが、先ほど申し上げました提供に対する協力謝金の目でございます。
  57. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 アメリカの駐留軍のための一定の施設提供の中に入るのかとも推定いたしますが、そのアメリカとの関係における条約上の基礎、それは何に該当するのか、こういうふうにお尋ねしておるのです。
  58. 矢崎高儀

    ○矢崎説明員 行政協定によりまして、在日合衆国軍に提供する範囲として、合同委員会並びに政府の決定によりまして、これらの範囲がきまったのでございます。
  59. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 これは行政協定の第何条による性質の経費なんですか。たとえば施設提供費に該当するのかどうか、行政協定の二十五条で実施されるものかどうか、何の経費に該当するのでありますか。
  60. 矢崎高儀

    ○矢崎説明員 安全保障条約第三条に基く行政協定二十五条の第二項及び第三項によりまして、施設提供のための経費として算定されております。
  61. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 どうもはっきりいたしませんが、三項というのは、これは取りきめの合意の規定であろうと存じます。そうするとその実質的な規定は第二項であろうと思いますが、二項の(a)なんですか(b)なんですか。
  62. 矢崎高儀

    ○矢崎説明員 第二十五条二項の(a)によりまして施設及び区域として提供するための経費として算定いたしております。
  63. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 施設及び区域提供の経費、それではちょっと意味がわからないのです。施設なら施設、区域なら区域、これはどれに該当するのか、もう少しきちんと言って下さい。
  64. 矢崎高儀

    ○矢崎説明員 広大な範囲におきましては、大部分は区域でございますが、施設も包含されておる場合がございますので、一般的に施設及び区域という用語を使ってございますが、飛行場の拡張におきましては主として施設区域でございますが、この土地そのものも施設である場合があると考えております。
  65. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それならばそれは一体施設の何ですか。代金なのか何なのですか。法律的に申しますと、他人に金を支払いするのであるから法律的な性質が明らかになってお払いになるのだろうと思いますが、施設に対する何ですか。
  66. 矢崎高儀

    ○矢崎説明員 施設及び区域の提供諸費であります。
  67. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 もう少し明確にしていただきたい。これはやはり重大な国の予算の執行でありますので、あいまいに理由なく、法律上の性質なしに渡すことはできません。
  68. 矢崎高儀

    ○矢崎説明員 ただいまの拡張に要する経費として支払うのでございます。
  69. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 だから経費はわかるのです。わかりますけれども経費の法律上の性質は何でありますかと具体的にお尋ね申し上げております。経費というのはいろいろあります。人にただ金をやることもあろう、またものの代金として支払うこともあろう、運賃に払うこともあろう、いろいろありますが、それをおしなべて経費というのであろうと思いますけれども、もっと具体的に法律上の性格はどういう種類に属するものとして国はお払いになったのですか、それを聞いているのです。
  70. 矢崎高儀

    ○矢崎説明員 土地を買収する、あるいは賃借いたしまして事業の用に供するための経費でございます。
  71. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 土地を買収して、何とかの経費々々という前の形容詞は要らぬのです。その経費の内容、性質さえ伺えばいいのです。一体それは何ですか。支出官はだれなんですか。
  72. 矢崎高儀

    ○矢崎説明員 各調達局の総務部長でございます。
  73. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 ともかく施設を国が取得して、それに件う経費ということであれば、経費の内容、法律上の性質が明らかでなくても、経費は使ってもいいということになるのですか。
  74. 矢崎高儀

    ○矢崎説明員 国がその拡張のために区域及び施設を提供するために必要なる行政措置でございます。
  75. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それは答弁になりませんので、これはこの程度にしておきまして、長官にあらためて別の機会に質問いたします。
  76. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 関連して。ただいまの吉田法務委員からお尋ねになりました改正案の第十八条第三項として一項を加える、この点で先ほど質疑応答がありましたが、私伺っておりましても明確じゃなかったように思います。吉田委員は非常に時間を急いでおられるので途中でこのくらいにしておきましょうということでしたが、これは考えようによっては、私自身はそれほど考えておりませんけれども、吉田さんのような立場であれば、相当これは重大問題だと考えておられるようであります。でありますから土地収用法は今非常に問題になっておる法律でありますから、できるだけなるほどというようなことで、この法案をできれば通したい、こういう考えで私はさらに建設省の明快な意見を聞いておかなくてはならぬ。そこで十八条の第三項は、表面から見るときわめて簡単な改正であります。今までつけておった三つの場合の意見を、今度意見というものを意見書に改めて、そうしてその意見書相当期間内にこれを得ることができなかった場合には付けなくてもよろしい。従って第二十一条の改正によって意見書をつけなくてもいいときにはやはりその管理者から意見を聞かなくてはならないという新たな条文を作り出している。これは非常に合理的にできております。合理的にできておりますが先ほど吉田委員の質問に対してはそれほど明快じゃなかったようなお答えがあった。そこで現行法の第十八条の第二項第三号から第五号まで、これを第十八条の第三項として加えておられるのでありますが、この第三号から第五号までのうち第四号、第五号、先ほど問題になりましたが、行政機関意見を聞くことができないということはおそらく日本ではちょっと想像ができない。行政機関が、これはすべて公共企業に関する問題であって、国あるいは地方公共団体、簡単に申し上げると国家国民のために必要欠くべからざる事業として強制収用までするという事業でありますから、そういう事業に対して行政機関意見を付しないなんていうことは、ちょっとあり得ないことだと私は思います。でありますから、こういう場合にあってもなくてもいいじゃないかという気がいたしますが、それは別問題として、ただ問題は、第十八条の二項第三号の場合、「起業地内に第四条に規定する土地があるときは、」云々と書いてあります。これが多少問題になるんじゃないかと私は思うのです。私は正直なところこの土地収用の実際の仕事をいたしたことがありませんからどういうふうになっておるかよく知りません。知りませんが、第三号の第四条のというのは、現行土地収用法の第三条の場合であります。たくさんの場合が規定されておりますから、これを一々ここで拾い上げてこういう場合はどうじゃなんていうことは、とてもそういう検討をしておる時間がありません、三十二もいろいろな事業が並んでおるのでありますから。この場合にいろいろ不都合があるんじゃないかと一応想像するのです。そこで繰り返して申し上げますが、第三号に掲げておる第四条に規定する土地というのが——先ほど第四条がちょっと問題になりましたが、いわゆる土地の使用あるいは収用云々と書いてある。でありますから、この場合に、あるいは先ほど申し上げましたように行政機関意見を付することができないなんていうのは想像がつきませんので、四号、五号は別問題として、三号の場合に、第四条に規定する事業がたくさんありますから、意見を今度意見書に改めて、意見書添付することがなかなか実際上この仕事を進めていく上についておくれる場合がある。そういうことでこの第十八条の第三項を新たに規定されたんじゃないか。従ってそれらの救済策として第二十一条にさらにそういう場合には特にそういう管理者からまた意見を聞かなくちゃならないという新しい規定を設けられた、こういうことだと思うのです、改正の案文から見れば。そこで先ほど吉田委員が言われたように、これは相当重要視されておりますから、なぜにこういうふうな改正をしなきゃならなかったか。これは今新しい法律を作る場合じゃありません。現在までずっと現行法があったのであります。この法律に従って仕事を今日までしておるのですから、法律改正する場合には、現行法であるいは国民のためにならないとか、あるいは国民のためにやろうとしておる事業が現行法では非常に不都合がある、こういう場合に改正するのが法律改正でありますから、何かこうしなければならないという不都合があったに違いない。なければ改正する必要がないのであります。でありますから、もしありとすれば——先ほど吉田委員が問われたときにはその点がどうもはっきりしなかった。言葉の問題じゃありません。何か不都合があったのかなかったのか。従って相当期間内に意見、今までは意見、今度の法律意見書、そういうものが添付することができなかったときとありますから、そういうことがあって土地収用までしなければならない、いわゆる起業認定をしなければならない事業が非常に促進を欠いた、従ってあるいは国家、国民のために悪かった、こういう事情があるのだろうと思います。ないならばそんな改正はいらぬのですから、そういうことがあったと思う。それを明らかにされれば、この法律改正が必要であるかどうかがわかるのですから、その点を一つ明らかにしていただきたい。
  77. 町田稔

    町田政府委員 十八条に特に第三項をつけ加えた理由につきまして御質問がございました。その中に、私たちがこの三項をつけ加えました理由を非常に明快にお述べいただいたと思うのでございます。実は従来の十八条第二項の第三号から第五号までの意見書添付起業者が必要といたしました期間が、実績に徴しますと長くかかっておる例が非常に多いのでございまして、たとえば第三号の土地管理者意見を徴するのに一カ月以上、あるいは二ヵ月以上かかっておる例は時々起っておるのでございます。第四号、五号につきましても同様に意見書を得るのに二カ月も要しておる例が非常に多いのでございまして、ここに第三項をつけ加えましたのも、相当期間内に第三号から五号に必要といたしております意見書を得ることが困難な実績がございますので、それを特に第三項としてつけ加えた次第でございます。
  78. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 趣旨はそれでなければ、何も不都合がなければこの法律改正はいらぬのです。ことに今のように国会が複雑なときに、立川基地なども出て、多少でも不都合を来たすというようなときには、こういう法律は出すべきではないのです。しかしそれをやらねば国家、国民のためにならぬというような場合、従って今お答えになったのはそれでいいのですけれども、それだけじゃまだ済まない。何ゆえにそういうようになっているかということは、たとえば今四号、五号のときもそうだ、いわゆる行政機関のときもそうである、これはそこの根本の理由まで突き詰めていかなければ、ただ法律改正しただけでは解決しないと思うのです。ましてや第三号の場合は一番多いのじゃないかと思います。今は一カ月とか二カ月とか概括的に言われたのだと思うのですけれども、一体行政機関土地収用事業認定までして強制的にやろうというのは、非常に必要な事業でなければそういうことはやってはいけないのです。それであるのに行政機関でそれがおくれるのは、あるいは職務の怠慢であるのか、あるいはそういう事業認定をしてはならないといういろんな複雑な事情があるか、何か理由がなければいけないと思うのです。全部の場合をおっしゃる必要はありませんから、何かこういうわけである、あるいは職務の怠慢なら怠慢でよろしゅうございます。第三号の場合は、民間も相当加わっておりますから、あるいはそんなことをされては困るのだ——先ほど吉田委員は人権の保護ということを非常に主張されました。人権の保護ということを忘れて法律を作ってはならないが、この法律自体が人権の保護をある程度制限しようという法律なんですから、どこでその調整をとるかというむずかしい法律であります。しかし、いかに人権の保護をしようと思っても、人権と公益とが合致しないときには、人権を制限するのは国家のためなんですから、そういうことはちっとも遠慮なく、制限すべきときは制限しなければならない、そうでなければ政治はできない。だからといって遠慮なしにこうだった、ああだったと制限をしたり、あるいは正当な理由があるのをこれで片っ端から縛っていくということもこれは適切でないから、実際の例を一つでも二つでもよろしゅうございますからここでおっしゃれば、この法律改正についてはどなたもなるほどとお考えになる。法律を作るとき、審議するときはなるほどと思ってこの国会で決定しなければならぬ。国会で決定したあとで、国民からなぜそんなことをやったのか、それはわからなかったけれども、そうしたのだというようなわけにはいかないから、どうか一つもう少し具体的に、せっかく法律を作られるのですから、改正するということについては、よほどの決意がなければ、改正案はできない。そこを一つ簡単でいいから御説明願いたい。
  79. 前田光嘉

    前田説明員 ただいま局長が説明いたしましたように、所要日数が相当かかっておりますが、このかかっておる折衝の中を見ますと、土地管理者ないしは関係行政機関の長として、当然つけるべき意見以外のことに関連いたしまして、起業者と折衝を重ねておって、その交渉がなかなかつきにくいという場合も相当あるようでございます。特に例としましては、ある村の関係意見を求めます場合に、起業者に対してその補償なりあるいはそれに関係のない特定の事業をしてもらいたいということを、強く意見を出しまして、その話がつきにくいために意見書がなかなか得られないということで、相当時間がかかりましても、なおかつ適当な意見がきめられぬという例もございます。こういうふうなことは起業者が直接に管理者なりあるいは行政機関意見を求めるから、そういう弊害が起るように考えられますので、そういう場合には折衝の経過を明らかにしていただければ、事業認定する側が直接その土地管理者なりあるいは関係行政機関意見を求めるという方が公正平明に意見が聞ける、それを参考に事業認定をするというふうにすべきである、こう考えまして立案した次第であります。
  80. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 大体わかって参りました。非常に遠慮しておられるからそういうことになるのです。今おっしゃることは、私の想像ではこういうことだと思うのです。たとえば発電会社が仕事をしよう、あるいは電源開発をやろう、ほかにもたくさんありますが、そういうときに意見書をもらわなくちゃならない、こういうことになっておると、補償の問題を主張するのは当然のことですから、それを主張して長くかかったからということじゃ、これは理屈にならない。それ以外についてというお話がありましたが、これは言葉が過ぎるかもしれないが、あるいは地方にはボスがおって、そして何か因縁をつけて、自己の私利私欲をはからんがためにこの意見書を遷延させるという場合もなきにしもあらずということをおっしゃったのだと私は思う。そういうこともあって、従って公共事業がおくれる場合がある。少数の利益のために多数のといいますか、あるいは国家、地方の利益を阻害するおそれもある場合もあり得るからこういう道を開いた、こうおっしゃるのですね、そういうふうに了解してよろしゅうございますか。
  81. 町田稔

    町田政府委員 説明員から説明いたしました趣旨は、今おっしゃった通りでございます。
  82. 徳安實藏

    徳安委員長 佐竹晴記君。
  83. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 それでは建設大臣にお伺いいたしたいと思います。今回の改正は十七条の一項に三号を加えまして、府県知事の権限に属しましたものを大量に建設大臣の権限に移管をいたしておりますが、何ゆえに大臣の権限にしなければならなかったのであるか、府県知事の権限にしておくということは何か弊害があるというのでございましょうか、これを承わりたいのでございます。
  84. 馬場元治

    ○馬場国務大臣 今回新たに、従来知事の権限にありました部分の一部を建設大臣に移した、この点に関する御質問であると存じます。法案に明記してありまするように、事業施行地が一府県内に限られておりましても、その及ぼすところの影響が単なる一府県にとどまらずして二府県以上にわたる、あるいは道全体に影響が及ぶ、こういった種類の事業につきましては、どうしても一都道府県知事の判断にまかするよりは、国の機関において判断をする方が公正かつ妥当なる判断に達する、かような考えで大臣の権限に移すということにいたしたのであります。これは何も特に知事の権限を制限するという意味ではないのでありまして、何を申しましても都道府県の知事は自分の都道府県の利害をまず優先的に考える傾向があると思われますので、国家的な総合的な見地から判断をいたしまする事案につきましては、一都道府県知事にまかせないで、国の機関である建設大臣において判断をいたしますることが公正かつ妥当である、かような考え方からこの改正をいたそうとするのであります。
  85. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 旧来、二都道府県にわたって利害影響を及ぼす事業等については、各府県ごとに勝手な決定をいたしておったか、あるいはその利害関係のある都道府県が協議の結果処理いたしておったか、旧来の処理はどうなっておりますか。
  86. 町田稔

    町田政府委員 従来は、施設そのものが二府県以上にわたっておりました場合には建設大臣事業認定をいたしておりましたが、いかにその施設の影響力が全国的でございましても、施設が一府県内に行われます場合には知事事業認定をいたしておりまして、特に影響の及びます他府県知事との協議等はいたしておらなかったのでございます。
  87. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 そうすると、旧来でも施設が二都道府県にわたっております場合においては建設大臣がこれをいたしておった、そういったような場合においては改正の必要がないということになるものと考えられます。そうするとそういった施設が二府県にわたっていないで、しかも「利害影響を及ぼす事業」というのは、こういった抽象的なことでは解しかねます。「利害影響を及ぼす事業」というのは、いま少しく具体的に説明いただきますとどういうことになりますか。
  88. 町田稔

    町田政府委員 ただいま御質問にありました通りに、利害影響が一の都府県の区域を越える場合はいろいろ考えられるのでございまして、単に「一の都道府県の区域をこえ、又は道の区域の全部にわたり利害影響を及ぼす事業については建設大臣事業認定をする」と規定いたしますと、その範囲が確定いたしません。そこで今回の改正におきましては、これらの事業は「次に掲げるもの」と書きまして「イ」から「ト」までに列挙いたしまして、これらの「イ」から「ト」までに掲げてございます事業は全部「一の都道府県の区域をこえ、又は道の区域の全部にわたり利害影響を及ぼす事業」であるというふうに確定をいたしたのでございます。それでこの確定によりまして、これらの事業につきましては、起業者は疑いなく事業認定建設大臣にすることができるというように規定をいたした次第でございます。
  89. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 私の聞こうとするのはそれではございません。たとえば一つの川がある。その下流において発電事業をやろうとするといたしますと、その上流の方面には何の利害関係がないものと見ていいのか、下流については影響があるものと見ていいのか、こういったようなぐあいに、いま少しく「利害影響を及ぼす事業」ということについての具体的な、何と申しますか、およそ具体的に判断のできるところの標準というものをお示し願いたいというのであります。
  90. 町田稔

    町田政府委員 ただいま具体的に例をあげての御質問でございますが、たとえば発電関係の施設を設けます際には、第十七条の今回の改正の三号の「ホ」または「ヘ」によりまして、これらの事業は常に一の都道府県を越えて利害影響が及ぶ事業規定をいたしましたので、この「ホ」なり「へ」なりに該当いたします電気事業、発電事業等は、いかなる場合にも全部建設大臣事業認定をするというように規定いたした次第でございます。
  91. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 ただいまの河川の発電について、下流の方において発電施設をいたしますときに、上流の方では自然に流れております水をそのままにいたしておきますならば、上流の方には何の利害関係はないものと見なければならぬ。しかしもしも上流の方において別のダムを作って、そこで発電事業をいたして、その水をまたわきへ移すということになると下流の方の発電に影響があります。こういったようなときに下流において発電所を設けるということになると、上流の方においてその後にまた発電所を設けられると、はなはだ重大なる利害関係を生じます。こういったようなときに一つ河川のどこかで発電事業をやるということになれば、その河川の区域全部が利害関係影響の及ぼす区域というべきであるかどうか。それからそうでなしに発電なら発電をいたしまするというと、その発電をいたしましたものを送電をいたしまして他へ持っていく、その送電線を建設しなければならぬといたしますと、その送電線を立てる範囲内の地域がいわゆる利害関係影響を及ぼす地域といわれているのか、私はそういう利害影響を及ぼす事業区域の全部——一の都道府県の区域をこえ、または道の区域の全部にわたり利害関係影響を及ぼす事業、こういったようなときに利害関係の及ぶというのは、一体どういったようなことを基準にしてこれを言うのか、こういうのであります。
  92. 町田稔

    町田政府委員 ただいまの御質問の場合におきましては一地域におきまして発電事業を起しますと、その発電されました電気が、これは全国的につけなくとも一つの都道府県の区域をこえて利用されるわけであります。そこでここに書いてあります「一の都道府県の区域をこえ、又は道の区域の全部にわたり利害影響を及ぼす事業」と申しますのは発電による電気の影響という意味におきまして規定をいたしたのでございまして、そのために河水の影響が他府県に及ぶという場合をさしておるわけではございません。すべてその施設の効用が全国的にあるいは府県の区域をこえて及ぶという場合を特にここに規定をいたしたのでございます。
  93. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 私が聞きたいのはそれであります。そういたしますとどうでしょう。東京に飛行場を設ける、ロならロの「航空法による飛行場又は航空保安施設公共の用に供するものに関する事業」東京なら東京に飛行場を設ける、その飛行機は大阪、福岡に行くといたしますとこれは東京だけに飛行場を設ける、それは一つの東京だけの区域と見るべきか他の府県に影響のある事業と御認定なさるのでございますか、どちらでございますか。
  94. 町田稔

    町田政府委員 ただいまの御質問の場合は三号ロに該当いたしまして他府県にも影響のある事業飛行場を設けることは他府県にも影響のある事業というように解釈をいたしております。
  95. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 旧来の都道府県知事の権限にごさいました事業中から特に今回十七条一項三号を加えて、これだけのものを大臣の権限に移したのでございますが、旧来土地収用法規定いたしておりまする多くの事業中からこれだけのものを特に引き抜いて大臣所管に移しましたその基準はどこに置いたのであるか、これを承わりたいと思います。
  96. 町田稔

    町田政府委員 特に今回三号に列挙いたしました事業は、従来は土地収用法の第三条にいずれも列挙されておった事業の中から選ばれたのでございまして、これを特に建設大臣事業認定権を移しました基準といたしましては、これらの事業が、いずれもすべてその影響が他の都道府県に及ぶ事業でございまして、これらの事業に対しまして、土地等収用権を付与するかどうかの判断を、その事業施行地の都道府県知事に行わせますと、自己の県内の利害に重点を置いて判断しがちになるものが多いのでございます。たとえば電気を起しますためにダムを設置する場合、ダムを設置する府県におきましては水没等によりむしろいろいろの被害を受ける人が多く出るのでございますが、発電されました結果は、他府県においてその利益を享受するということになるのでございまして、そういう場合には、とかく当該施設の行われます知事といたしましては、事業認定をする際に事実上なかなか公正なる判断をいたしがたいのであります。またそれを期待することが無理な場合が多いのでございまして、そういうような種類の事業をここに特に選びまして列挙をいたしたのでございます。しかもこれらの事業は、その事業の計画に当りましては、すべて国においてみずからこれを計画し、あるいは承認をするという種類の事業ばかりでございまして、そういう国家的な見地からぜひ行われなければならない事業を基準として、ここに選んで列挙いたしたのでございます。
  97. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 御説明によりますと、各府県ごとにまかせておくと、府県ごとの特殊な利害関係に災いされて、せっかくの国家的事業の遂行に支障を来たすおそれがあるという点を考慮されたようであります炉、今回この法案が出まするや、全国知事会議におきましては反対の決議をし反対の要望をいたしておるようであります。各府県の知事におきましても必ずしも自己の利害のみにとらわれて、かような反対をいたしておるものとのみ見ることはできません。それにはそれ相当理由もあったかのようでありますので、これら府県知事会議における反対の理由等については、十分これに考察を加え、一般国民をして納得せしむるものがなければならぬと思うのであります。たとえば最近新聞の報ずるところによりますれば、富山県の電源開発について、富山県が非常に反対をいたしておるようでありますが、ただいまの御説明を承わりますると、地元の人は地元の利害にとらわれて国家的な利害関係の上に立つことが困難な場合がある、こういう御説でありましたが、何か富山県の電源開発について具体的に、その地方の利害関係に終始して、国家的な見地を忘れて自分の利害のために電源開発なんかを十分にしなかった、こういったような具体的実例でもございますならばこれを承わりたいと思います。
  98. 馬場元治

    ○馬場国務大臣 今度の改正案に対して全国知事会が反対の意向を漏らしておられるということを承わっております。しかしながら、この改正趣旨は先ほど来申し上げます通りに、知事の権限を縮小せんがための改正ではなくして、国家的な事業を総合的に判断をいたします場合に、都道府県の知事一人に判断せしむるよりも、その利害の及ぶところが広範囲な場合においては、どうしても総合的な判断をなしやすい地位にある機関において判断をすることが、公正かつ妥当であり、迅速な判断をなし得る、かような考え方からこの改正をいたそうとするものでありまして、知事の権限を縮小せんがための改正ではさらさらないのであります。この点については全国知事の各位もよくお考え願えれば、十分事情御了承を得ることである、私はかように確信をいたしておるのであります。  富山県の具体的の事例につきましては、私まだ承知をいたしておりません。いずれ取調べをいたしましてお答えを申し上げたいと存じます。
  99. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 たとえば高知県の奈半利川の電源開発の問題については、御承知通り知事の権限に属しておりますために、知事を中心といたしまして財閥の手が動いて、あれだけ大きな紛糾を惹起し、これがために中央の裁定を仰がなければならぬような事態に立ち至っておりますことは、私どももよく承知をいたしております。現行法のもとにおいてもかような場合においては、やはり中央におけるある機関の御裁定に待つのほかでございませんことは申し上げるまでもございません。結局高知県の問題等についても、中央の裁定によってこの問題が解決されたのでありますが、こういうような問題は、単に土地収用といったようなもののみで決定されることではありません。土地収用以外の幾多の問題を総合して解決すべき問題であって、土地収用のみを切り離して、そうして建設大臣の所管に移し、その余の関係府県知事の権限にまだある程度ゆだねておくということでは、せっかく総合された計画というものが分裂される結果に至るではないか、かようにおそれるのでございますが、いかがでございましょうか。
  100. 町田稔

    町田政府委員 今御意見のございましたように、重要な施設をいたします際には、知事が県内の事情等を十分に勘案いたしまして、総合的に行政を行うべきでありますし、その力に待たねばならぬことはもとよりでございます。それで今回建設大臣事業認定をいたすことに考えておりますこれらの事業につきましても、地元の意見等につきましては、現在の土地収用法各種規定を活用いたしまして、たとえば、現在土地収用法には二十二条に、専門的学識及び経験を有する者の意見事業認定をします際に聴取することになっておりますので、これらの意見の聴取をする、あるいは二十三条には公聴会等をも開くことに関して規定がありますので、こういう規定をも活用する、なお二十一条には、関係行政機関意見を聴取することを必要とする規定がございますので、知事に対しましては関係行政機関としての意見を十分述べさせるというようにいたしまして、地元の知事等の総合的な行政施策を特に協力せしめまして、今後事業の遂行をしていくというようにいたしたいと思うのでございます。
  101. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 全国知事会議の要望書の第一にかように書いてあります。「事業認定に際しては、特に現行法第二十条に規定されている事業認定の要件を判定する場合には、地域的な凡ゆる条件を熟知していることが、公正な判断を行い得る必須の要件であって、現行法の如く、土地所有者利害関係人と常に接し実情を熟知している都道府県知事が、事業認定を行うことが適当である。」かような意見が出ておりますが、その府県知事意見を排除いたしまして、建設大臣の所管に移さなければならぬという根拠はどこにございましまうか。
  102. 馬場元治

    ○馬場国務大臣 現地の事情を一番よく熟知しておるものは当該都道府県の知事であるということは、これは仰せの通りであると思いますが、事業認定をいたすにつきましては、ただ単に事情の詳細を承知しておるというだけでは必ずしも適当であるということはできないのでありまして、ここに列挙をいたしておりまするように、その及ぼすところの影響が一都道府県にとどまらずして、広い範囲に及ぶ、二府県以上に及ぶというような広範囲にわたる影響を持っておりまする事業につきましては、一都道府県知事にまかせることなくして、総合的な見地から現地の事情を十分に調査いたしました上で、総合的な判断を国家の機関においていたしますることが一番妥当であり公正である、かように考えたのでこの改正を行おうとするものであります。
  103. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 次いで、知事会議の要望の第二に、「公益事業の用に供する電気工作物に関する事業並びに電源開発株式会社が設置し又は改良する発電施設又は送電施設に関する事業については、県政の総合的運営という見地から、現行法通り知事認定処分を行わせることが必要である。この知事の権限をとりあげて、建設大臣事業認定に関する処分を行うことは適当でない。」こう言うておりますが、これに対する御所見はいかがでございましょうか。
  104. 町田稔

    町田政府委員 現在の土地収用法におきましても、国または都道府県が起業者である事業だとか、事業施行する土地が二以上の都道府県の区域にわたる事業につきましては、建設大臣がすでに事業認定権を持っておるのでございまして、これらの現在建設大臣事業認定をいたしております事業につきましても、知事会で申しておりますこの二のような県政の総合的運営という見地から知事の協力を得る必要がありますことは同じでございます。要するに、県政の総合的運営という見地からそれを必要としないので、建設大臣事業認定権を引き上げたのではないのでございまして、その事業自体が、ただいま大臣が答弁申し上げましたように、国でこれを考慮することが必要なものを取り上げたのでございまして、事業認定をいたしましても、その後の事業実施等につきましては、まさに知事会等の要望通り各種の点を考慮して総合的にこれを経営していくということは、従来通り行われるべきものでもありますし、それを取り上げるという意思は全然ないのでございます。
  105. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 お説のように、旧来から持っておる都道府県知事の権限を全部取り上げるのではなくて、この土地収用法関係部分だけ取り上げる、そしてそれを建設大臣に移す、他の面においては相変らず府県知事にこれを持たしておく。そうするとこれが分裂されて、結局県政の総合的運営という見地からの考慮がはなはだ欠けるところがありはしないか、かように私どもは憂うるのであります。むしろそれを全部、電気なら電気事業に関するすべてのものを、あるいは中央の適当な機関に全部権限を移してしまって、総合的にやらせるとか、あるいは今の制度のごとく府県知事なら府県知事に権限を与えておいて、そうして高知県の場合のごとく何か問題があったときには、中央において監督者の立場にあって適当にこれを処理していくといったようなことが、むしろ県政の総合的運営という上において、かえって一本の姿でいいのではないかと、かように思うのでありますが、これはこの程度にしておきます。  第三に「都道府県知事は、改正案によれば第二十四条第三項の通知があるまで管内の事件を正式には知り得ず、行政上当然起り得べき種々の問題につき何らの意見を述べる機会がなく、問題に対処する上に著しく不都合である。」と訴えておりますが、これに対する御所見はいかがでしょうか。
  106. 町田稔

    町田政府委員 この点につきましては、この全国知事会の方の誤解ではないかと思うのでございまして、二十四条には従来のように市町村長に書類を送付いたします場合に、経由は取りやめたのでございますが、第三項におきまして「建設大臣は、第一項の規定による送付をしたときは、直ちに、起業地を管轄する都道府県知事にその旨通知し、事業認定申請書及びその添付書類の写を送付しなければならない。」と規定いたしまして、経由のかわりに写しを直ちに知事に送付することにいたしたのでございます。それで従来府県知事経由機関になっておりまして、もとの書類を自分の手元に保管することができませんでしたので、その後いろいろの、たとえばこれらの書類を縦覧した場合に利害関係人等から意見が出て参りましても、もとの書類が手元にない関係上不便をいたしておりますが、今回はむしろその不便を取り除くために写しを知事に送付いたすことにいたしまして、手続上は従来より一層知事にとっては都合のいいように改正をいたしたのであります。特に三に書いてございますようないろいろの不都合は、今回の改正によって起ることはないのでございます。
  107. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 次いで第四に、「従来、都道府都知事が行なっていた事業認定建設大臣が行うとすれば、その事業認定に不服な者は直ちに司法上の問題とせざるを得なくなるため、関係者の利益救済にも欠けることとなる。この点においても都道府県知事事業認定を行い、行政処分の当否を行政権の作用により審判する手続すなわち建設大臣への訴願が規定されている現行法の建前が妥当である。」と主張いたしておりますが、これに対する御見解はいかがでございましょうか。
  108. 町田稔

    町田政府委員 従来事業認定につきましては、知事事業認定をいたした分につきまして不服のある者が大臣に訴願するようになっておったのでございます。それが今回大臣事業認定がふえたので、その分については訴願の方法がなくなるので、これらの者に対する保護が薄くなるという意味意見でございますが、これは実は従来知事事業認定をいたしました場合にも、事業認定そのものによっては何人も権利の侵害をされることがなかったのでございます。事業認定という行為は、ただ単に事業土地収用のできる事業であるかどうかについて判定をし、それを告示しただけでございまして、それによって関係地域の者の権利が何ら侵害をされなかったのでございますが、土地収用法におきましては、知事事業認定をいたしました際の建設大臣の一般的な監督規定として、訴願の形によってこれを監督するという方法を設けておったのでございまして、一般の意味の訴願とは内容を異にしておったのでございます。そこで建設大臣みずからが事業認定をいたす場合には、これは上級官庁のいわゆる監督的な意味における訴願の方法を存置する必要がございませんので、もとより建設大臣認定に対しましては訴願の規定が置いてございません。しかしながら今申し上げましたように、知事の場合にも、これはいわゆる権利を侵害された者の保護という意味規定ではない、取締り、行政指導という意味規定でございましたので、この点も全国知事会のこの意見は、多少趣旨を誤まっているというふうに解釈いたしておるのでございます。
  109. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 知事会の要望書の第一ないし第四、この四項目について、ただ項目だけをお尋ねいたしました。私といたしましては、これについて多少の意見があります。しかしきょうは他にもいま一つ委員会を持っておりまして、時間がありませんので、ただ項目だけを並べて御所見を伺うだけにとどめたのでありますが、しかしただ私どもの心配をいたしますことは、このような法律改正し、権限を移管いたしまする場合において、その両当事者の間にいろいろと将来に禍根を残すようなことがありはしないか。たとえば大臣は強い権限を持っておるんだから知事は何でもついてくるだろうと思えば、必ずしもさようには参りませず、知事意見もよく尊重し、これを協調を保っていかなければならぬ場合も多いことは申し上げるまでもございません。従ってかような法律改正するに当って、全国知事会の名をもってかような要望が出ておるといたしますならば、それに対しては、ただいまの御説明のごとく、もし誤解がありとするならば、丁寧にこの誤解を解き、しこうしてまた忍ぶべきものは忍んでもらい、またさらにこの要望に対して積極的に、こういう改正を行えばこういうことにもなるという希望をも与えて、相互の間を調整し、この法律改正の結果がうまく運営されていくように配慮しなければならぬと存じます。よってこの改正案をめぐってかくのごとく知事会より要望があるのに対し、大臣としてはいかなる説得の方法を講じられたのか。また知事会の方においては十分これに納得をしておるのかどうか、スムーズにいっておるかどうか、この点を承わっておきたいと考えます。
  110. 馬場元治

    ○馬場国務大臣 御所見まことに傾聴すべき御意見であると思います。本法の制定の準備に当りまして、知事会にもそれぞれ係の者を派しまして説明をいたしたのであります。その説明の足らざる点もあったかと心得ますが、とにもかくにも、こういった要望書が提出せられておることは事実なんであります。およそ国の機関と府県の機関との間に相剋摩擦あるいは誤解、そういうようなことがあるということは悲しむべき現象でありまするので、さような要望の諸点については、なお将来にわたって十分に説明するのはもちろん、知事各位の理解ある御協力を得るべく最善の努力をいたしたいと考えております。
  111. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 ただいままでお尋ねいたしました権限移管に関する点以外には、今回の改正は大体事務簡素化にあると考えます。事務簡素化はまことにけっこうではありますが、これがために被収用者の立場を軽視するようなことになっては大へんであります。被収用者の権利を侵すことなくしてという御説明がありましたけれども、往々にして事務簡素化は被収用者の権利を軽視するおそれがあるであります。その御心配がないとお考えでございましょうか。またその簡素化に伴うところの何の弊害もないものとお考えでございましょうか。
  112. 馬場元治

    ○馬場国務大臣 御指摘のように、この改正目的一つといたしまして、事務の簡素化をねらいといたしておりますることは、まさにお説の通りでございます。事務簡素化がややもすれば私権を侵すおそれがあるのじゃないか、こういう御意見でありますが、いやしくも公益のために私権を制限する場合におきましては、私権を侵すことのないように、これには仰せの通り十二分に注意を払わなければならぬ問題である、かように存じておるのであります。その点につきましては常に注意を怠るべきでないと考えておるのでありますが、今後とも事務の簡素化をはかりつつ、同時に私権を侵害することのないように十二分に注意をいたすつもりでございます。
  113. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 十八条二項の三号、四号、五号の「意見」を「意見書」に改めて、第三項に、この三号ないし五号の意見書相当期間内に得ることができなかったときは添附をしないでもいいということを規定し、「この場合においては、意見書を得ることができなかった事情を疎明する書面を添附しなければならない。」と改正しようとされております。そうしてこれに伴う二十一条の、土地管理者及び関係行政機関意見の聴取に関する改正をなさっておるのでありますが、この点についでは、先に他の委員からいろいろとお尋ねがありましたので大体了承いたしました。ところが先ほどの御説明の中で、この意見を求めた場合に、旧来非常に遅延するおそれがあるというのは一体どんな理由によるものであるか、具体的に示せと迫られてやっと、たとえば電源開発の場合等においては、いろいろ補償問題の折衝等がおくれた、それからまたこれにボス等が私利のために介在をして、躍動して、それがために遅延するような場合が出てくると御説明なさいました。こういったときにボスならボスの活動を押えるためにのみ、そういったようなことのみをお考えになっての、これは改正ではなかろうと思います。かりにボスがなかろうとも、意見書があんまりおくれてどうにもならぬというようなときには、やはりボスに関係なくとも、あまりおくれたら困るという御意見であると考えます。先ほどの委員の御質問の中に、ボスの問題に触れて、あたかもボスの場合においてのみ、そういう不都合なできごとが出てくるから、これを救わなければならぬような場合を想定いたしたような御答弁でありましたが、必ずしもそれのみでなしに、補償問題等の折衝がおくれてどうにもならぬようなとき、建設大臣の所管に移して事務を簡素化して、もっとさらりとやってのけるということを意図されたものではないかと思います。もしそうだといたしますると、一方いろいろと利害関係の対立いたしております連中が、いろいろと情を尽して折衝をしておる、いま少しかすに時間をもっていたしますならばまとまるであろう、こういう場合におきましても——これを地方における府県知事が所管をいたしておりますると、地方の実情等にも明るいし、また地方の直接の利害関係に理解のあるところの地方の自治団体の長といたしましては、できるだけのことをしようというので自然それがおくれるようになることでありましょう。ところがおくれるからといって、今度は大臣に所管を移しておいて、そういうことには目もくれないで事務簡素化だ、手っとり早いのがいいというのでその補償問題等の折衝が十分妥結を見ないでも、事業事業でやったらいいというようなことで押し切ってしまいますと、非常な禍根があとに残るのではないか、私はこれを非常に心配するのであります。早くやるのはけっこうだ、だがいま少しく時日をかすならば一切の妥結を見て、官民ともに協力をして事ができ上るのに、建設大臣に所管を移して大臣の所管になったからというので、なにそんなにぐずついているのならおれの方でやってしまうといってさばさばとやってしまったために、補償の問題等の将来の見通しもつかず、不安なうちに、しかも深刻なる争いがかえって激化をして、将来事業はなるほど成り立ったが、いかんともすることができないほどの禍根を残すような事態が起りはすまいか、私はこれを憂えるのでありますがいかがでございましょうか。
  114. 町田稔

    町田政府委員 ただいまのお説はまことにごもっともでございまして、当事者間におきまして協議を尽させることは最も必要でございます。それで今回の改正はその点についての改正ではないのでございまして、ただ単に意見書相当期間内に得ることができなくても、事業認定申請書を出すことができるということにいたしたのみでございまして、実際に事業認定をいたしますまでには十分関係者等の意見をも徴しますので、それからまたいよいよ収用委員会にかけます際には協議の手続を十分とりますので、特に御心配になるような結果には今回の改正によってならないというように確信をいたしております。
  115. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 第十八条に改正に「相当期間内」とありますが、いわゆる相当期間というのは大体どれくらいを想定なさっておりますか。
  116. 町田稔

    町田政府委員 相当期間は個々の場合によりまして違いますので、特に約何日間ということを申し上げるのは困難でございますが、意見書を得るのに通常必要と推定される期間というように考えております。意見書の内容が本来意見書を作成する側にとってその作成に長期間を必要とするような種類のものでありますならば、その相当期間はそれに応じてかなり長く見なければならないと考えておりますが、一がいに何日間程度ということを申し上げることは事情によって違いますので困難があります。
  117. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 私は他の委員会の時間の関係でいま一、二点題目だけ並べる程度の御質問をして終りたいと思います。  二十四条一項の後段の点については先ほど触れられておりましたからこれを省略いたしまして、四十条を改正して協議を省略することができるといたしましたのはどういうわけでございましょうか。
  118. 町田稔

    町田政府委員 事業認定がありました後、土地収用法規定いたしておりますあっせん委員のあっせんがありましたときには、そのあっせん委員収用委員会の推薦にかかるものについて都道府県知事の任命したものでございまして、収用法上の正式なあっせんによってあっせん行為がなされるのでございますから、収用手続上の協議はこの段階において確実になされたものとみなし得るのであります。また土地細目後の協議を再び行なってもこういう場合におきましては単なる当事者間の話し合いでは協議が成立する見込みはないのでございまして、あっせん委員のあっせんがあった後において再び協議を必要といたしますならば、これは単に形式的にこの手続を踏めということだけを要求する結果になると思うのであります。それで実質に着目をいたしましてあっせんが不調に終った場合にはすでに事実上の協議が済んだのだ、形式的に再び協議を繰り返す必要はないという意味におきまして、四十条の改正をはかったのでございます。
  119. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 この点なお同僚委員から詳しい質問があるようでありますから、私はこの程度にいたしまして、六十四条の収用委員会会長の審理指揮権を拡張しておりますが、すなわち「裁決を不当に遅延させる虞があると認めるとき」この認めるときというものは非常に主観的に左右されまして、運営上非常に弊害をかもすおそれがあるではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  120. 町田稔

    町田政府委員 従来の規定におきましても第六十四条におきましては「相当でないと認めるとき」とございまして、この点につきましては特に今回の改正によって意味を不明確にしたというような結果にはなっておりません。ただ相当でないと認めるときという従来の規定の仕方がかなり例示が少く、いかなる場合をさすかがはっきりいたしておりませんでしたので、特に「裁決を不当に遅延させる虞があると認めるとき」というふうに例示を一事項加えたという意味改正でございます。
  121. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 それでは最後に一点だけお尋ねいたしまして、私の質問を終ります。  今回のこの改正を見ても、大体この土地収用法におけるところの補償の問題について物質的の面だけ考えまして、精神的の損害に対する補償の点を考えていない、今回の場合においてもその点には考慮を払われていないように思われます。たとえば軍事基地に対して協力謝金の支給が閣議によって決定されまして、これが問題となっておりますことは先ほどの同僚委員の質問によっても明らかであります。さてかように、たとえば軍事基地の問題等についてはいろいろ精神的な面についてまで考慮を払っておるようでありますが、この考え方はそういう一部の軍事基地なら軍事基地の問題について考えるならば、それのみにとどめるのではなしに、土地収用に関するあらゆる面において物心両面にわたって考慮を払うべきではないかと考えるのでありますが、いかがでしょうか。
  122. 町田稔

    町田政府委員 精神的の損失に対する補償も土地収用法として考慮すべきではないかという御意見でございます。この点は私たちも種々考究をいたしておるのでございますが、現在の土地収用法は、御承知のように物質的な損失に対して完全に補償するという建前になっておりまして、精神上の損失に対する補償は規定をいたしておりません。これは、土地収用は適法行為によって土地収用するのでございまして、適法な行為による損失につきましては、法規上起業者にその精神上の損失を補償させるよう規定いたしますことは、いろいろな意味におきまして研究を要する重要な、また困難な問題でございます。これにつきましては、将来もなお検討いたして参りたいと思いますが、ただいまのところ、適法行為に基く精神上の損失につきましては、特別なる補償を土地収用法としては規定すべきではないというように一応考えておるのでございます。
  123. 徳安實藏

    徳安委員長 猪俣浩三君。
  124. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 現行土地収用法は、憲法の規定と相待って相当慎重な手続規定をきめられておるものであります。この改正法律案は、その慎重な手続規定を、事務を簡略にするという理由のもとに、何らか戦前の土地収用法に逆行する一つの端緒になるのじやなかろうかというふうに、実はこれは杞憂であるかもしれませんが、考えられる。そこで私は、他の質問者の質問した点につきましては省略いたしまして、この四十条のただし書の改正について、法理論的にお伺いしたいと思います。  申し上げるまでもなく、この四十条の協議というのは、土地細目の公告後の裁決審判の準備手続一つの段階である重要なポイントなんであります。これをあっせん委員会がさじを投げたならば、協議ということは省略していいということに対しまして、法理論的に私は疑義がある。御存じのように、あっせん委員会というのは、事業認定の前の準備手続であります。それから事業認定というものが行われる。これは事業認定の行政行為の性格をどう認識されるかによっても関係がある。事業認定というものは特別なる権利の設定処分であるのか、あるいは認定処分であるのか、ただ起業者にある法律上の地位を与える処分であるのか、それによって相当違ってくるのでありますが、いずれにいたしましても、事業認定だけではその相手方というものは特定しておらぬはずであり、不特定の相手方を前にして事業認定というものが行われる。ですから、起業者権利というものはまだ確定しておるものではない。ところがあっせん委員会の活動はそれ以前なのが原則なんです。ある特定の土地所有権者と起業者とが当事者として登場するのは事業認定以後であります。それは申すまでもないことです。その事業認定以後に初めて法律関係が発生するはずです。その重要なる段階の一つである当事者間の協議というものを省略するような手続をきめるということは、法理論的に私は重大だと思うのです。こういう点から、この改正法律案の根底に横たわっている精神は何であろうかという疑問が出てくる。私人権利を収奪するのであります。これは公益上やむを得ない場合でありましても、慎重にしなければならない。しかるにあっせん委員会がさじを投げたならば、裁決準備手続の重要なる段階であります当事者間の協議というものを省略していいということは、これは法理論的に一体どう解釈なされるか。これは事業認定の行政行為上の性格とも関連いたしまして重大な点であると思う。これに対する明確な法理論的な説明を願わないと、この土地収用法における最も重大な一段階を全く簡単にオミットしてしまうということが露呈せられることに相なる。そこでこの四十条のただし書のあっせん委員会がもうだめだと認定したらば、協議というものは省略していいのだというのは、法理論的にどういうふうに解釈なされるか。  なお答弁のために私は言いますが、この協議が成立するかしないかということは、次に発展いたします起業者土地収用裁決請求権、これが発生するかしないかということにかかってくる重大な段階であります。しかもある一部分土地とある一部分の人とはあっせん委員会によって妥結ができたが、ある他の土地と他の人とが妥結ができないという場合には、これはどういうふうに分離してこの使い分けをなされるのであるか。一体始末がどこでつけられるのであるか。裁決請求権はいつ発生するのであるか。ある一人の人間について、やはり土地の地盤によって裁決請求権が発生したり発生しなかったりするのであるかという幾多の疑問が出てくる。私は時間をかけるのはいやですから、私の質問の趣旨をみな申し述べますから、これに対して統一ある御説明を願いたい。一体四十条をどう解釈なさるか。その前提として起業認定というものの行為をどういう法律上の性格と考えておられるか。あっせん委員会が一体いかなる土地収用手続上の性格を持っておるものであるか。この協議というものは法律上いかなる性格があり、いかなる効力を有するものであるか。そういう理論的説明をなさって、この四十条というものはその理論とそごしないものであるかということについて御答弁をいただきたいと思います。
  125. 町田稔

    町田政府委員 事業認定法律上の性質につきましては、ただいま御意見のございましたように、いろいろ法学者の間におきましても説がございまして、私たちは事業認定はそれによって直ちに起業者権利を与えるものとは考えないのでございますが、事業認定によって起業者にその後の手続を進める収用法上の地位を与えるものであるというふうに解釈をいたしておるのでございます。  次に協議と土地収用手続との関係でございますが、土地収用をいたします際には、いきなり起業者が協議もなく収用委員会土地収用について裁決の申請をいたしますことは不適当でございますので、何らかの段階において当事者間に協議をさせる必要があるわけでございます。そこでその段階といたしまして土地収用法土地細目の公告後を協議の時期と原則的には定めたのでございます。これは何らかの段階において協議をすればいいのでありますが、ただ、協議があったかいなかを特にはっきり確認をいたしますためには、収用委員会に裁決場の申請をする比較的近い時期が適当でありますから、そういうように規定をいたしておるのであります。  そこで、今回の四十条の協議を省く場合でございますが、この四十条におきまして協議を省きます場合は、あっせん委員が特に中に入りましてあっせんをした結果、しかも協議が成立をしなかった場合のみ協議を省くことにいたしておりまして、この場合におきましては土地細目公告前といえども、あっせん委員という第三者が入っておりますので、協議があったことが明確に確認をし得るのでございます。そこで、あっせん委員のあっせんがあって、しかも当事者間の合意が成立する見込みがないということを理由として協議が打ち切られた場合には、もう一度また形式上土地細目公告後に協議をすることを実質的に必要といたしません。そこで、ここにその際には協議をする必要がないものと規定をいたしたのでございます。しかも、そのあっせん委員のあっせんが、当事者間の合意が成立する見込みがないことを理由として打ち切られた時期は、事業認定があった後でなければならないのでございまして、四十条には、今のお説の通りに、事業認定というものは非常な意味がございますので、事業認定のあった後に打ち切られた場合のみ、これを協議を省く理由というようにいたしたのでございます。
  126. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 あなたの説明は私の質問に答えておらない。そんなことは今までもやっておったでしょう。あっせん委員会というものはあっせんをやっておった。しかるに四十条というものはちゃんと置いてある。これはあっせんじゃないのです。当事者間の協議なんです。たとい形式的なものであっても、この協議というのは一つの段階です。協議というのは公法行為だと言う学者がある。またある学者は私法行為だと言い、売買の申し込みであり、承諾であるとまで言われておる。そういう重大な、第三者なしに初めて当事者間で顔を合せるという一つの段階が協議です。これは土地収用法手続上重大な段階なんです。あっせん委員会というのは前にもあったでしょう。あったけれども、四十条というものが存置するところに、形式にも慎重さをここに表わしておる意味がある。それを直ちにあっせん委員会のあっせんがあったということだけで、この四十条の協議という、学者に言わせても大へんな——私法行為説をとるならば、売買の承諾であり、申し込みであるという段階ですし、公法行為説をとるにしても、いわゆる裁決請求権発生の段階です。こういう段階を他人のあっせんというようなことで打ち切る。あっせんということと当事者間の協議ということは全く違った行為じゃありませんか。あっせんというものは、たとえば土地のブローカーのような行為でしょう。申し込みであり買い受けであるというのは、当面当事者が対立しなければならないはずである。そうして対立して相談するのが協議です。ブローカーが活躍したというだけで、私法説をとっても公法説をとっても重大なる協議という一つ手続段階を省略した法理論はどこにあるか。私の質問はそれなんです。あっせん委員会というものは前からもあった。前も活動したに違いない。それを今回何がゆえにそういうふうに省略したのであるか。これは、諸君が説明するような、そんな簡単なものじゃないのです。これは最も重要な一つの行為なんだ。協議行為という法律上の性格を持っている。それを省略してどうして説明ができるか。そうしてなお、今私が質問したように、たくさんの土地の中のあるものは妥結したが、あるものは妥結できないという場合にはどういう取扱いになるのか、その質問に対する答えはされていない。それをもう少し法理論的に説明して下さい。     〔徳安建設委員長退席、瀬戸山建設委員長代理着席〕
  127. 町田稔

    町田政府委員 前の御質問に対しまして御答弁申し上げます事項を落しておりましたので、その点から先に御答弁申し上げます。  まず、当事者間におきまして、ある部分については合意が成立し、ある部分については合意が不成立であった場合にはどうするかという御質問でございますが、この点につきましては、現在の土地細目公告後の協議における場合と特に違った点はないのでございまして、従来の協議の場合と同様に、あっせんの経過説明書等にその旨を明確に記載するということになるわけでございまして、合意がどの点について成立しておるかということは、経過説明書に、第四十条の場合におきましても明記すべきものであるというように考えております。  それからあっせんについては、協議の場合のように、あるいは申し込みであったりあるいは承諾であったりというような、当事者間の話し合いが必ずしも行われたということはできないのではないかという御質問でございますが、これはあっせんに関しまして土地収用法第十五条の二に「土地等の取得に関する関係当事者間の合意が成立するに至らなかったときは」という規定がございまして、特に当事者間の話し合いがこの際に行われたということを前提といたしておるのでございまして、事実上土地細目の協議の場合と同様の行為がそこにあったわけでございます。ことにその点あっせん委員には土地収用委員会委員が必ず一名加入いたしておるのでありまして、いわゆる何ら関係のない無責任な第三者がこの中に介入をしておるというのではなく、土地収用委員のだれかがその中に入ってあっせんをいたしておるので、土地細目後の協議と同様の効果のある当事者間の協議があったということを実質的に認め得るわけでございます。そういう意味におきまして、このあっせんによって合意が成立しなかった場合には、形式上協議をする必要がないというようにいたしたのでございます。  なおあっせんに関しまするこの規定は、御承知のように土地収用法の当初から規定されておったのではないのでございまして、二十八年に特に土地収用法改正によりましてこの規定を挿入いたしたのでございまして、あっせんのその後の実情等から考えまして、四十条にこの改正規定を挿入いたしたのでございます。
  128. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 今あなたの事業認定の性質は起業者にある権利を付与したものではない、ある法律上の地位を与えたものであるという解釈、これは学者の通説で、それをおとりになっている。それはいいのですが、そうしますと、なおさらこの協議という一つ法律行為、これは重視しなければならないのです。あなたの説明法律論と事実問題とを混同して説明されておる。それは実際上はあっせん委員というものがあっせんしてもだめなものはだめかもしれませんけれども、土地収用というある一つの強制収用の段階といたしまして、三つの段階を経てきておる。その一つの段階を省略するということは重大なことなんです。たとえば裁判の問題におきましても、死刑になるやつはどこまでいったって死刑になるでございましょうけれども、死刑になることがわかっておるからといって審級を省略するわけには参りません。手続が複雑であってはなはだめんどうくさいけれども、そういう形式が存することによって弊害を防ぐ効用はあるわけです。あっせん委員会なるものの性格というものは、説明申し上げるまでもなく、事業認定以前の準備手続として登場するのが本来なんです。この改正案を見れば、事業認定のあった後に打ち切られたということでその間の調和をなさっておるのでありますけれども、本来は事業認定以前の活動機関です。そこで先ほど申し上げましたように、事業認定の際、事業認定はある起業者に一定の法律上の地位を与えるのみにすぎず、相手方というものは不特定な状態である。これが土地細目の公告があってから特定の土地というものが出現してくるのであって、これから先は純然たる一つ法律関係として展開せられる段階であります。その法律関係として展開せられる段階の一段階を省略するということは容易ならぬことなんです。これをただ何か実際上あっせん委員会を経て、だめならだめじゃないかというようなことで、その審級段階を省略されるというようなことは、あたかも三審制度において一つの審級を省略するのと同じことなんです。形式というものはある程度重んじなければならない。これを省略なさるについて、何がゆえに法の精神や体系をある程度乱すようなこういう改正を今しなければならぬのであるか、その立法の理由が僕にはわからない。今あなたの説明を聞けば、結局同じことであるからそんな手続を省いてしまう。いわゆる事務簡略の一つの方法としてお考えになっているようですが、それはとんでもない間違いです。この四十条の協議というものは重大なる法律上の性質を持っておる。これは公法行為説をとるにしても、私法行為説をとるにいたしましても重大なる段階なんです。それをあっせん委員会においてどうせまとまらぬのであるからというて四十条にこういうただし書きをくっつける、私はどうしても納得いたしかねる。そうするとただし書きをつけたのは便宜の規定ですか。どうせまとまらぬものはまとまらぬのだから、こんなものは要らない。あなたはあっせん委員会の協議とおっしゃったが、それが大体間違いです。四十条の協議というものはあっせん委員会の立ち会いの協議じゃないはずです。特定した土地及びその所有権者と起業者の対面の意味です。まわりにどういう人がくっついていてもよろしゅうございます。そういう法律の性格を持っておるものを省略するということは理論が通らないのじゃないか。それを省略する理由とするならば、便宜上事務の簡略ということになる。そうすると四十条の協議という法律上の重大なる性格というものを抹殺してしまっておる。もしあなたの言うように、あっせん委員会というものがあとからできたというならば、なぜあっせん委員会を挿入する際に四十条の改正をしなかったか。あっせん委員会にそれだけの性格を持たせる意味であるならば、そのときに四十条の改正をしなければならぬ。そのときはしなかった、そのときは、四十条というものはそんなあなたが今解釈するような意味解釈しておらなかったに違いない。そうすると重ねてお尋ねいたします。四十条のただし書きは事務簡略のためにお設けになったのであるかどうか、もう一ぺん御答弁を願います。
  129. 町田稔

    町田政府委員 協議が非常に重要でありますことは今のお説の通りでございます。それで私たちはあっせん委員のあっせんがあって、当事者間において話があり、それが成立しなかったときには、事実上の協議があったということを考えたのでございまして、これは協議を省くというよりも、これをもって協議とみなすというように解釈をいたしておるのでございます。それによりまして、土地収用手続が一そう迅速に行われますことを目的といたしまして、この改正案を提案いたしたのでございます。
  130. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 その説明ではまたおかしいのです。そうするとあっせん委員会で当事者間の合意が成立する見込みがないという理由がつくと、これは協議したとみなす、こういう意味ですか。それはこの協議なる性格を全く心得ておらぬめちゃくちゃな理論です。協議という法律上の性格というものをまた無視したことになる。それではあんた方そう言うならば、改正案は要らぬのだ、そこに協議があるんだという解釈ならば、あっせん委員会でやつても、合意の中にもうすでに協議があるんだ、四十条の協議があるということになるなら、この附則は要りません。しかしこういうただし書きがある以上は、ただし書遂によらざる通常のものが四十条の本文となっておるに違いない。だからここに二つのことがある。現行の四十条の本文と、そしてただし書きによるものと二つの段階があることになるわけです。もしあなたの言うように、もうすでにあっせん委員会でやっておることが協議なんだというならば、このただし書きは要らぬわけです。それは協議じゃないから、このただし書きをおつけになったに違いない。そうするとこのただし書きをつけることについて私は疑義があるという質問なんです。あなたのは答弁にならない。あっせん委員会の活動はどこまでもあっせん委員会の活動で、四十条の協議じゃありません。四十条の協議じゃないから、このただし書きが出たのでありましょう。それがあなたの言うようにもう協議があったものとするならば、ただし書きは要らぬはずです。そのただし書きがつく以上は、このただし書きのものとただし書きでないものと二つあるに違いない。そこの説明がどうも私には不可解です。いたずらに法律でみなすというような言葉を使うのは容易ならぬことなんです。みなすなんて何も書いてないじゃありませんか。みなすという言葉はない。そこが法理論構成上、非常に不用意な乱暴な規定だと僕は思います。
  131. 町田稔

    町田政府委員 このただし書きの場合におきましては、前にも御答弁申し上げましたように、実質上協議と同様の効果がこの際あるものと認めまして、特に事後の協議を省略することができるように規定いたした趣旨でございます。
  132. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そこで私が最初から言うたように、あなた方は協議という形式を非常に感じていたのだ。法律というものは形式が非常に大切な場合があり得る。それを事務の簡捷というようなことから、非常に大切な一つの性格を持っておる協議という段階をあなたはオミットされておる。実質上協議というものがあったものなんだからこれをオミットする、こう説明になるのです。ですからこの四十条の性格というものをよく把握なさっておらない。もう一ぺんよくお考えになっていただきたい。みなすなら、みなすような法文にしていただきたい。この四十条は、事情認定の性質及び協議なる当事者間の裁決請求権発生段階にある法律行為とはなはだ矛盾した規定になってしまう。法律の体裁上もよろしくないです。もう一ぺんお考えになっていただきたい。  そこで時間がありませんので、もう一カ所だけお尋ねいたします。     〔瀬戸山建設委員長代理退席、徳安建設委員長着席〕  第六十四条二項の収用委員会の会長の権限の規定でありますが、この中に「、裁決を不当に遅延させる虞があると認めるとき、その他相当でないと認めるときは、これを制限することができる。」というように会長の指揮権を規定されておるのでありますが、この六十四条は、現行法でもこういうような裁決を不当に遅延させるおそれがあるというときには、いわゆるここにある「その他相当でないと認めるときは、」に入るのではありませんか。どういう理由でこれだけここに抜き書きされたのであるか。その提案者の意思を私はそんたくしたい。どういうわけですか。六十四条でちゃんとできているはずです。何ゆえにこれだけをここに書き表わしたのか。
  133. 町田稔

    町田政府委員 「その他相当でないと認めるときは、」という場合に、裁決を不当に遅延させるおそれがあると認める場合も解釈上入っておったと思います。しかし当事者等にこの点を特に規定上明確にすることによりまして、お互いに協力をして委員会の運営の迅速化をはかるという意味におきまして、この規定を特にこの際つけ加えたのでございます。
  134. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 ちゃんと規定されておるものを、わざわざこういうことを書き出すというのは、その積極的な理由がありません。私が最初に述べたように、何かこの土地収用法という法律を非民主的に運用しようとするような精神がひそんでおるのじゃないか。今までだって会長にはさような指揮権はあったのです。それをわざわざそういうことを法律に浮き彫りにされて、全国の会長に対してそういうことを大いに激励する意味が含まれておるのです。あなた方がそういう気持でやったことは明らかなんです。そうしてその例は福岡県です。あの土地収用委員会には私も数回出ました。相当延びておることは事実です。しかしそれにはそれだけの理由があるのです。御存じでしよう。福岡市会が満場一致で反対しており、市長が先頭に立って反対しておる。そういうような土地です。収用委員会相当慎重に長い期間かけることは当然のことです、あんなことを頭に置いてこんなことをひょいと書き出したのじゃないですか。それだからこの四十条の改正といい、先ほどの同僚委員の質問した改正点といい、何かそこに妙なものを含んでおるとわれわれは考える。適当な会長があって適当に指揮するならば現行法でちゃんとできるじゃないですか。それが延びるには延びるだけの理由があるのです。それを諸君がこんなものを書き表わして激励する必要は何もない。あまり激励すると非民主的になる。あなた方だってよく御存じでしょう。いかなる学者の本を見ても、この六十四条の会長に指揮権を与えることに対して非常に憂慮しておる。もしこれが乱用されることになったなら、土地収用委員会という最も民主的に運用させんとした委員会が非民主的になって一般大衆に重大なる迷惑をかける、だからこれはみだりに使ってはいけないということはどの解説本にも書いてあります。ところが諸君の方ではむやみにこれを使ってもらいたいという意味でこういうものを書き表わしておる。はなはだ私どもはふに落ちないのです。こんなことは書き表わす必要はないと思います。相当と認めたならば会長はやるでしょう。不相当と認めたらやらぬでしょう。そんな激励するような意味は私は不要のものであると思います。そういう御意思でやったのではありませんですか、もう一度あらためて聞きます。
  135. 町田稔

    町田政府委員 今御指摘になりましたような激励の意味で書いたのではないのでございまして、理由があって委員会が審理に日にちを要しますことは、これは決して今回の改正によりましても制限をすることはないのでございます。ここに書いてありますように、「不当に遅延させる虞があると認めるとき、」というわけでございまして、その点は御了承いただきたいと存じます。
  136. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 結局この土地収用法改正法案は、例のアメリカとの行政協定に基く土地等の使用に関する特別措置法、これにも適用になるのですか。この適用条文を拾えばすぐわかるのですが、そこまで勉強しておりませんので、ちょっとお尋ねいたします。
  137. 町田稔

    町田政府委員 事業認定に関しまする部分につきましては、全部適用がございません。特別措置法によって特別の規定がございますので、適用がございません。その他の部分につきましては適用いたしております。
  138. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると第四十条とか、それから六十四条とかいうのは適用になるわけですか。
  139. 町田稔

    町田政府委員 御意見通りでございます。
  140. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そこで、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定実施に伴う土地等使用等に関する特別措置法、とても長い名前でありますが、この第三条に、「駐留軍の用に供するため土地等を必要とする場合において、その土地等駐留軍の用に供することが適正且つ合理的であるときは、この法律の定めるところにより、これを使用し、又は収用することができる。」とある。これは土地収用法収用することのできる場合と目的は違っておると思うのであります。これを見ると、「駐留軍の用に供することが適正且つ合理的である」場合のことでありますが、そこで一体「駐留軍の用に供することが適正且つ合理的である」ということは、どういう標準からなされるのであるか。一定の標準があると思うのです。それを一つ説明願いたい。
  141. 大石孝章

    ○大石(孝)政府委員 お答えいたします。ただいまの特別措置法の第三条に規定する、その「土地等駐留軍の用に供することが適正且つ合理的である」という基準のお尋ねでございますが、当該土地が日米両国間の安全保障条約第一条に掲げますところの軍隊駐留の目的の遂行のために必要な施設及び区域であるという判断を基準といたしましておるわけでございます。
  142. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 あなたの説明条文と違っているじゃないか。必要だなんということは書いてない。駐留軍の用に供することが適正かつ合理的である。駐留軍の用に供することが必要だなんて書いてありません。そういう説明はどこから出てくるのですか。適正かつ合理的というのは、何を基準にして適正かつ合理的であるかということを判断するのかと聞いているのです。必要でないものは問題にならぬでしょう。
  143. 大石孝章

    ○大石(孝)政府委員 「駐留軍の用に供することが適正且つ合理的」という条文でございますが、具体的には、両国間の安全保障条約履行上必要であるかどうか、そういうような施設、区域であるかどうか、もっと具体的に申しますと米駐留軍の方から安全保障条約の履行上必要であるという要請があった場合に、日本国の方でしかりと判断するために適正であるか合理的であるかという基準でございます。
  144. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 駐留軍の用に供するためというんだから、これはもうあなたの言うように、安全保障条約行政協定から出てくる駐留軍の用のわけなんです。だからこれはわかっている。行政協定目的にかなうための駐留軍の用に供する土地でしょう。しかし、一体この適正かつ合理的というのは、日本側が判定するのですか。アメリカ駐留軍が判定するのですか。日本側が判定するとするならば、その判定の基準はどういうところにあるのか。それを承わっているのです。たとえば、抽象的でおわかりにならぬならば説明しますが、ここに都市のすぐ近くに土地がある。ところがちょっと離れるとそこに草原地帯がある。アメリカ側からは都市の近くだ、こう言うてきた場合に、日本側が判定するのに、都市の近くはいろいろめんどうのことがあって、都市の人たちの必要も満たさなければならぬ関係もある。ただ飛行場にするなら、飛んだりおりたりできればいいんだから、草っ原でいいわけです。だからその場合は草原地帯が適正かつ合理的じゃないかとぼくは思うんだが、一体その場合は、アメリカの方で、いや、都市の近くの方がいいんだ、それがほしいんだといったら、それが適正かつ合理的になるのか、それをお尋ねしているのだ。あなたのさっきの説明では、アメリカがそこがいいんだといえば、それが適正かつ合理的なように聞えるからお尋ねしている。その判定は日本がやるのかどうか。やるとすればどういう標準でやるのか、それをお尋ねしておる。
  145. 大石孝章

    ○大石(孝)政府委員 判断は、御意見通り日本側でするものと存じます。  それから設例をもって猪俣委員から御質問がございましたが、アメリカの要請する当該土地が、条約義務履行上の、いわば軍事上の目的に合致しているかどうかという判断とあわせて、後段に御意見のございましたように、一体日本のその土地柄が民生上、産業上あるいは経済上どういうような影響があるか。これはあくまでも母法である土地収用法にいってありますように、国土の適正かつ合理的な利用ということは当然考えなければいかぬと思います。ただその選定をなす場合に、米駐留軍の駐留目的を達成する、いわば軍事目的上そこが必要であるか必要でないかということがあわせて考えられなければいかぬ点だろうと存じます。
  146. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、アメリカ軍がある都市の付近を、ここはアメリカの軍事上必要なんだというふうに、アメリカの戦略上の地点ということになると、日本政府は直ちにそれを適正かつ合理的だと判断しないで、そう言われても、それも一つの参考条件として、日本の国内の経済上、社会上、その他いろいろなあれを勘案して、そうしてこの適正かつ合理的を考える、こういう趣旨ですか。アメリカの戦略的な地点ということが重要なことになるのか。実は私はそれを聞きたかったのです。適正かつ合理的というのは、アメリカの軍事目的、戦略上の目的から考えるのか、日本の立場を考えて判断するのか。それからアメリカがここだといった場合に、日本側はそれを拒否できるのかどうか、それを承わりたい。
  147. 大石孝章

    ○大石(孝)政府委員 アメリカ側の戦略上の要請が、日本の立場から考えましても防衛上しかりと判断いたしましても、申し上げますように、他のいろいろな国土利用上の影響ということを考えます。ただし、その戦略上の要請が他に代替性がないという場合には、それをとるべきだというふうに判断いたしております。
  148. 西村力弥

    ○西村(力)委員 関連して。きょうはこれで次会に移ることになると思うのですが、私が伺わんとしたことについていろいろ今まで質問されましたけれども、どうしてもいろいろ不明な点がたくさんありますので、資料やらあるいは答弁の統一やらぜひお願いしなければならぬわけです。資料につきましては第十八条の第三項、これを起したという、このことを必要とする具体的の例にはどういうことがあったか。全然意見書を得ることができなかった例、あるいは意見書を得るに相当期間を要した例、それを一つ示していただきたい。  それから第二十一条も同様に意見を求めることができなかった例、あるいはそれが相当期間を要した例、こういう具体例があって審理の進行上どうしても改正をしなければならないという障害、これもやっぱり示していただかないと、なるほどと私たちは了解することができないわけです。  それから四十条の協議を打ち切ることができるということに対する、今猪俣委員からの質問に対するもっと統一ある積極的なる理由を示されるように御準備が願いたい。  それから六十四条、この点につきましても「裁決を不当に遅延させる虞があると認めるとき」ということをわざわざ例示して参りましたが、このことによって不当なお会長の指揮が行われないということ、これを例示してもそういうことが行われないという保証、それをどうするかということ、この解釈を統一してまた積極的にお述べを願いたい。  そういう点について次会までぜひ御準備なりあるいは御提出なりをお願い申し上げたいと思うのです。
  149. 徳安實藏

    徳安委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後五時十四分散会