○首藤
委員 私は、この
東北の経済を
強化し、産業を
振興するために
東北興業に
政府が格別の措置を講じますことには無条件に賛意を表します。しかしながらその
振興のために新しく
事業を開始いたします場合には、あくまでもその
事業が将来性のある、発展性のあることを絶対的条件とすることはもうすでに議論の余地はないと思います。特に
東北興業は、
昭和十一年でありますか、
東北全般の
振興のために
特殊会社として発足いたしたのでありますが、自来どういう経過をたどっておるか。
先ほどの
局長の御
説明によりますと、
直営あるいは
子会社九十九の
会社を
経営いたしておる。その後二十一年の
会社経理応急措置法によって非常に圧縮したといいますが、それにしても一体この九十九の
会社が現在幾ら残っていて、それが
経営の採算がとれているものが幾つ残っているかという点に私
たちはこの際深く思いをいたさなければならぬと思うのであります。従って過去のこの失敗にかんがみ、そして将来を
考えた場合、今度こそ間違いのない
事業を起すということが
東北興業といたしましては、まず最も重要な関心を持つ対象でなければならぬと
考えます。しかるにただいま承わっておりますところのセメント工業が果して将来性あるかいなや、この点に私
たちは大きな疑問を持つ。むしろ私の長い間の経済的知識から
考えますと、大よそこれほど無謀な
計画はないと断ぜざるを得ないのであります。すなわちその
事業の需給の
関係あるいはこの原価が他社に比較してどうなるか、こういう点が
会社経営の基礎条件であります。現在セメント工業は、御
承知のごとく終戦後十年の間いんしん産業である、そのいんしん産業の原因は、常に供給が不足であった、いわゆる供給不足はセラーズ・マーケット、売手の市場でありまして、従ってセメント
会社は各社ともおそらく適正利潤以上の利潤を獲得したであろうことを私は想像いたしますが、それがために増設に次ぐ増設をいたし、今日ではすでに千五百万トンの生産の
能力を持ち、そうして一方の費用は千百万程度と推定されておるのでありまして、この間に四百万トンの生産過剰の
能力を持っておる。これは否定し得ないところの事実であります。もし各
会社が全
能力を上げますれば、千五百万トンの生産が上げられるのでありまして、その結果市価がどうなるか。今日まではセラーズ・マーケットであったが、今度はバイヤーズ・マーケットであります。しかもこの十年の長い間のいんしん産業でありました
関係上、既設の
会社は大幅な減価償却をいたしております、合理化をいたしております。そうして品質の点におきましても、あらゆる検討が行われて、今日各社の生産するところのセメントはおそらく世界的に
考えましても、その水準は第一位に行くであろうことを私
たちは想像をいたしておるのであります。その際にわずかな生産量——月に二万トン、年産二十四万トンであります。従ってこの二十四万トンが全量生産されても、千百万トンの需要に比較しますならば、これがために
日本のセメントの需給
関係に大きな影響があろうとはごうまつも
考えておりません。ただ本質的に他社の製品コストに対抗し得るかどうか、この点に私
たちは格別の関心を持たざるを得ない。ただいま申し上げましたように大幅な減価償却をいたしておる、合理化をいたしておる、品質は向上いたしておる、その際に新しい
会社が時価による非常に高いところの設備をいたし、
一つも償却をいたしていない、ありのままの原価が出てくるのであります。
先ほど佐々木
委員が目論見書があるか、あるということでありますが、ここの
資料を見ますと、ただ
計画だけでありまして、これによって一トン当りの原価がなんぼになるか、あるいは販売総額はなんぼになるか、あるいは支出はなんぼになるかというような肝心の収支の明細がこれについておりません。従って明確なことは申し上げかねますけれども、おそらく私の想像は不適当でないと
考えますが、これは既設の
会社に比較しまして、原価が非常に高いであろうことを想像をいたすのであります。かような競争できないような原価の高い製品を作って、しかも
日本全般のセメントの需給
関係は四百万トンからの余力を持っておるというような中に飛び込んで、
会社の存立の可能性ありやいなや、これはどうしてももう一度再検討をしていただく必要があるのではないか。開銀当局かおいでになっておりますならば——あえて私はかような不健全と申します。かような不健全な
会社に開銀がさらに融資をするおつもりがあるかどうか、この点を伺っておきたいと思います。
それから、三年や五年国費を投じて、その後には必ずペイするという望みがあるならばこれは、私はいいと思う。しかしおそらく現在のセメント工業の実態を見た場合、永久にこれは国費を次から次へつぎ込んで
経営しなければ、
会社の存立はできないということになるおそれが多分にある。
先ほど吉岡
局長は、絶対的に失敗とは思わぬ、こういう表現を使っておりましたが、私もこの表現は適当だと思う。絶対的に失敗とは申しませんが、おそらく九割九分までは失敗するであろう、こういうふうな
考えを持ちまするから、さような前途のわかったものに対して、わざわざ国費を投じて、過去の失敗を再び繰り返すような愚は、この際おやめになった方がいいのではないか。それも、
東北にセメント工業でなければほかに適切な産業はないというならば、これはまた別の
考え方をいたします。しかしながらこの
東北の資源は、必ずしもセメントを製造しなくても、あるいは現在やっております窒素肥料も、
東北の需要
状態から
考えますると、まだまだ生産の発展性を多分に持っておるのであります。あるいはまたカーバイドの方もまたしかり、あるいは最近繊維界が非常な勢いで
化学繊維をねらっておりまするが、
化学繊維の原料である石灰石、これも私は非常な将来性を持つものと
考えておるのであります。あるいはまた
東北特有の砂鉄でありまするが、これも最近チタンの利用が非常にふえております。こういうこともまたこの際あらためて御検討なさる必要はありはせぬか。しかもこれらの産業はいずれも将来性があります。と同時に
先ほど鈴木同僚
委員が申されておりましたが、既設の
会社、たとえばさっき話題に上っておりました
東北ドックだそうでありますが、そのようなものも
東北の漁業という観点から、やはりある程度
政府資金を投じてこれを育成するならば、
東北の経済に大きな寄与をいたすのではないか、かように
考えるのであります。要するに
会社の山存立あるいは将来性は、現在やっておる
会社をいかにしてペイさせるか、まずそのやっておる
会社を
育成強化いたして、余力があって初めて新しい
事業に進出するのが私は常識であると思う。今日までの
会社はどれもこれも不成績な
状態になっておるにもかかわらず、それをそのまま放任いたし、何らの
育成強化をいたさず、そしてまた危険千万な新しい企業に着手するということは、私はおよそこれほど軽率の構想はないと思うのでありますが、なおかつ建設省当局に、かように前途の見通しがはっきりしておるにもかかわらず、セメント工業でなければならぬという御見解を持つかどうか、この点を私は伺っておきたい。