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1956-02-28 第24回国会 衆議院 建設委員会商工委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月二十八日(火曜日)     午前十時二十六分開議  出席委員   建設委員会    委員長 徳安 實藏君    理事 内海 安吉君 理事 荻野 豊平君    理事 薩摩 雄次君 理事 瀬戸山三男君    理事 前田榮之助君       大高  康君    久野 忠治君       志賀健次郎君    仲川房次郎君       二階堂 進君    廣瀬 正雄君       松澤 雄藏君    山口 好一君       今村  等君    島上善五郎君       中島  巖君    三鍋 義三君       山下 榮二君   商工委員会    委員長 神田  博君    理事 小笠 公韶君 理事 鹿野 彦吉君    理事 小平 久雄君 理事 笹本 一雄君    理事 中崎  敏君 理事 永井勝次郎君       阿左美廣治君    内田 常雄君       大倉 三郎君    菅  太郎君       椎名悦三郎君    首藤 新八君       鈴木周次郎君    田中 角榮君       田中 龍夫君    伊藤卯四郎君       加藤 清二君    佐々木良作君       多賀谷真稔君    田中 武夫君       松平 忠久君  出席国務大臣         建 設 大 臣 馬場 元治君  出席政府委員         大蔵事務官         (理財局長)  河野 通一君         通商産業政務次         官       川野 芳滿君         通商産業事務官         (軽工業局長) 吉岡千代三君         建設政務次官  堀川 恭平君         建設事務官         (計画局長)  町田  稔君  委員外出席者         日本開発銀行理         事       中村 建城君         日本開発銀行管         理部長     淡河  正君         商工委員会専門         員       越田 清七君         建設委員会専門         員       西畑 正倫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  東北興業株式会社法の一部を改正する法律案  (内閣提出第三四号)     —————————————   〔徳安建設委員長委員長席に着く〕
  2. 徳安實藏

    徳安委員長 これより建設委員会商工委員会連合審査会を開きます。  東北興業株式会社法の一部を改正する法律案を議題といたします。まず本案に対する提案理由説明を聴取いたしたいと存じます。馬場建設大臣
  3. 馬場元治

    馬場国務大臣 東北興業株式会社法の一部一を改正する法律案につきまして、その提案趣旨及び法案概要を御説明申し上げます。  東北興業株式会社は、東北地方振興をはかるため同地方における殖産興業目的として、昭和十一年に設立された、会社でありまして、政府財政援助のもとに東北地方振興に関する各種事業経営投資を行なって、同地方開発に大きな役割を果して参ったのでありますが、戦後政府財政援助がすべて打ち切られたため、事業整理縮小して近年に至っております。  今回収府におきましては、同会社東北地方開発の一環としての使命を一そう積極的に遂行させるのを適当と認めるに至りましたので、同会社事業資金の調達に万全を期するため、同会社の発行する東北興業債券元利支払いについて政府保証をいたすことを必要と認めるものであります。  現行の東北興業株式会社法には東北興業債券元利支払いについて政府保証をなし得る旨の規定がありますが、この規定法人に対する政府財政援助制限に関する法律規定によりまして、その効力を停止されている状態であります。そこで今回同法の規定にかかわらず、国会の議決を経た金額の範囲内において、政府東北興業債券元利支払いについて保証契約をすることができるように規定を整備いたそうとするものであります。  以上がこの法律案提案理由法案概要であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたす次第であります。
  4. 徳安實藏

    徳安委員長 質疑の通告がありますからこれを許します。鈴木周次郎君。
  5. 鈴木周次郎

    鈴木(周)委員 ただいま大臣よりの法案に対する提案理由説明はこれを了承しておりますが、第一に東北興業における現況におきまして、他に仕事を求めんとする前に、彼らが今までやっておった、あるいは投資したその会社の成り行き及びそれが成果に対して、政府はどういう援助を行い、また資金融通に対してそれが保証までするかどうかを一つお聞きしておきたい。
  6. 町田稔

    町田政府委員 東北興業株式会社概要に関しまして、お手元資料をお配り申し上げてございますので、これに従いまして、ごく簡単に従来の実績等を御説明申し上げたいと存じます。  東北興業株式会社は、この資料にもありますように、昭和九年の東北地方が受けました大冷害に対する総合振興計画中枢機関となるべきものといたしまして、昭和十一年十月七日、東北興業株式会社法に基いて設立されました特殊会社でございます。会社目的は、概要に掲げてございますように、肥料工業、その他の電気化業工業水産及び鉱産資源開発事業水面埋立事業農村工業、その他東北地方振興に関する諸事業でございます。会社は当初三千万円で設立されたのでございますが、その後何回かの増資をいたしまして、現在は一億九千五百万円となっておるのでございます。株式及ぶ株主構成は略しまして、現在会社本店東京事務所、それから工場を二カ所持っておるのでございまして、本店は仙台にございます。  事業の従来の実績及び現在の事業概要について申し上げますと、実績につきましては別にお配りいたしました会社実績表をごらんいただきたいと思うのでございます。これにごく簡単でありますが概略が記載いたしてあるのでございまして、東北興業創立以来、二十年間に行なってきました事業は非常にたくさんありますが、大別いたしますと、みずから経営をいたしました事業と、東北地方各種事業投資をいたしました事業と二つに分けることができると思うのでございます。  官営事業について申し上げますと、会社創立以来の直営事業化学機械、農林、水産鉱産その他にわたりまして二十五の事業をいたしました。その投下資金は五億一千九百六十万円に達しておるのでございます。各事業別の数はその下に書いてございます表にあげておるところでございまして、化学工業機械工業、その他でございます。県別事業数は、東北の六県全県にわたりまして事業経営いたしたのでございますが、これらのうち特に主要な直営事業は次の表に載っておるところでございまして、ここにございますように大貫砿山及び金製練所アルコール工場、漁船貸付事業等多種多様にわたりまして主要な事業に手をつけたのでございます。このうち現在残っておりますのが、まるのしるしのつけてあります山形県の木友鉱山、それから福島県の石灰窒素、カーバイドを製造いたしております福島工場、それから秋田県において土地造成をいたしており一ますものなどであります。直営いたしましたこれらの主要な事業はこの三種を残しまして現在はおおむね閉鎖をいたししておるのでございまます。これらの閉鎖理由につきましては御質問に応じまして申し上げたいと存じます。  次に投資関係事業でございますが、創立以来の投資事業は、会社の数にいたしまして九十九社に及んでおります。その投資額は一億九千二百余万円に達しておるのであります。その事業種目及び県別の全社数投資額は次のページにある通りでございますが、これら投資いたしました会社の中には、東北振興電力、現在の東北電力の前身でございます。それから東北パルプ東北肥料、同和鉱業、合同酒精等会社が含まれておるのでございます。こういうように各種事業投資いたしておったのでおりますが、昭和二十一年の八月に御承知のように会社経理応急措置法に基く特別経理会社に指定されましたので、投資事業整理を行なって、現在においては別表にございますように投資会社数は二十九社にとどまるのでありまして、投資額は六十余万円になっております。投資事業種目別の数及び投下資本の額は別表イにある通りでおります。県別投資会社数及び資本額別表ロにある通でございます。  大体以上が会社の従来の実績及び現況のごく簡単な御説明でございます。
  7. 鈴木周次郎

    鈴木(周)委員 答弁漏れがあるようですが、自分投資しておった会社に対して今後どういう方針をとるか。要すれば五〇%以上を投資しておる会社に対する実権を持っている、それをどうするか、これの御答弁がないようですが、これを一つお聞きしたい。
  8. 町田稔

    町田政府委員 御答弁申し上げますのを落しまして大へん恐縮です。これらの投資をいたしました会社で現在なお残っておりますものが二十九社ございます。これらの会社のうちには事業経営等がきわめて困難をいたしておるものも多数ございます。ただ東北興業株式会社は御承知のように各種東北振興事業をいたしますためには会社法によって従来から社債を発行いたしまして、それによりまして必要な事業資金を確保し、それにより直営なり投資なりの仕事をするような仕組みになっておるのでございます。ところが昭和二十三年でありましたか、法人に対する政府財政援助制限に関する法律によりまして東北興業社債を発行いたしましてもこれに対しまして政府保証が不可能になったのでございまして、そのためにこれらのいわゆる子会社に対しまして資金的に援助をいたします能力を欠く結果になったのでございます。そういう関係もございますので、現在ではこれらの会社に対しまして、引き続いて投資をすることは不可能な状況でございまして、東北興業親会社自体を今後育成していき、そての力を増すことによりまして、これらの地方振興に投立つ子会社等投資にも従事させるというように指導して参りたいと考えておる次第でございます。
  9. 鈴木周次郎

    鈴木(周)委員 ただいまのお話の最後を見ますと、資金融通が今度の法案によってできますが、余裕があれば子会社にもやる、余裕がなければ切り捨てるというようにも解釈されるのですが、切り捨てる御意思最初に御表明なさっているのかどうか、それを一つお聞きしておきたいと思います。
  10. 町田稔

    町田政府委員 今御質問の切り捨てるというお言葉でございますが、私の解釈が間違っているかもしれませんが、特に、現在投資いたしております株式等所有を放棄するという意思は、現存会社にはないようでございます。
  11. 鈴木周次郎

    鈴木(周)委員 株式所有権は放棄する意思がない。しかしそれに投資あるいは助成をする意思はあるのでしょうか。その御意志を先ほどお聞きしておったのですが、今度の法案によって資金が出たならば、今までの会社に対しても投資及び助成をする、そういう資金まで出すのか。それをまだ答弁いただかないのですが、いただきたいと思います。
  12. 町田稔

    町田政府委員 将来会社にそれだけの経済的な実力ができましたら、必要に応じまして投資事業会社としては続けて参りたいという方針のようでございます。
  13. 鈴木周次郎

    鈴木(周)委員 そうしますれば、今度の法案による資金融通ができる、そのうちに直接含まれるということを承知していいのかどうか、セメント工場ばかりでなく——セメントは第二段にして、今までやっていた方に対してはどうか。それを一つお聞きしておきたい。
  14. 町田稔

    町田政府委員 今回会社の発行いたそうといたしております社債の額では、セメント工場以外に投資をするだけの額はございません。
  15. 鈴木周次郎

    鈴木(周)委員 たとえばここに東北船渠というのがあります。ここに九三%投資をしておる。あのドック東北一つきりない。忙しい造船業関係しておるのだから、新しい事業をやるというよりは、ここに最初に金を投ずるのがほんとうではないか。今の評価額からいえは、十億とかあるいは五、六億とか、それを投げ捨てて、新しい事業をやるということはどうか、東北板輿のためにどれを先にとるのか、国家のためにこれを先にとるのかということをお尋ねしたい。
  16. 町田稔

    町田政府委員 私からお答え申し上げます。東北船渠再建について会社が投費する意思があるかどうかという御質問だったと思いしますが、御承知のように、東北興業は従来から地元要請にこたえて投資をいたして参ったのでありますが、東北船渠の場合につきましても、地元の要望に基きまして昭和十三年に東北興業出資をいたしたのでございすが、東北船渠は終戦に至りますまで、戦時要請に基きまして、もっぱらこれに応ずる施設を行なって参りましたために、戦後は経営が不振に陥りまして、御承知のように昨年末に工場を閉ざしまして現在に至っておるのでございます。しかるに出資者としての東北興業東北船渠に対しまして増資その他の方法によって資金上の救済をいたしますことは、先刻も申しましたように、現在の東北興業自体経営が困難な状態にありますので、きわめて遺憾ではございますが、なかなか困難な状況でございます。それで東北船渠再建方策につきましては、目下宮城福島県知事を中心といたしまして、地元において着々進められておる次第でございますので、政府といたしましては、地元の具体的な再建方策の確立を待ちました上で東北興業に善処をいたさせたい、こういうように考えておる次第でございます。
  17. 鈴木周次郎

    鈴木(周)委員 ただいま、両県知事による東北船渠の更生の案ができれば、東北興業にそれを命じて、あるいは資金を出させることによって更生させるべきようなお話です。そうしますれば、今度の法案による資金で優先的にそれをやるかどうか。見通しのつかないセメント工場に出すよりも現在あるものを活用するのが、実業家としての一般の通念だと思うが、この点に対してはっきりしたことを申し述べていただきたい。
  18. 町田稔

    町田政府委員 東北船渠再建につきましては、ただいま申しましたように、現在のところ宮城、徳島両知事でいろいろと策を考えておられるわけでございますが、御承知のように東北船渠の現在の規模、施設のままで再び稼働させることが東北船渠再建上策の得たものであるかどうかにつきましては、非常に研究を要すると思うのでございます。それでこれをどういうふうに施設を変え、どういうふうに操業の方針を定めるかということは、まだ結論が出ておらないように承わっておるのでございます。しかし早晩その再建策につきまして決定があることと思うのでございますが、今どういうような方法にいくかというようなことにつきましては、まだ私から現在申し上げるだけの結論に達しておりません。ただ東北興業といたしましては、先刻から申し上げておりますように、資金的にはこれを、いずれの計画ができたといたしましても、援助するということは、なかなか困難な状況にあるのではないかということを考えておるのでございまして、資金的な方面以外の面におきまして援助をすることになるのではないかと予測をいたしておる次第でございます。
  19. 鈴木周次郎

    鈴木(周)委員 ただいまのお話を聞くと、どこに何があるかわからぬようなお話ですが、九三%も出して自由になる会社で、東北興業一心同体のものを私たちは見ている。それに対して今の答弁では、今度のセメント工場をやってもどうなるかわからぬというような危惧も出てくるわけですが、それで第一、現在あるものをやるという決心をしなければ、私たちもよほど考え直さなければならぬ。馬場建設大臣はどう考えられますか。いやしくも五〇%以上も東北興業という名前によってやっておるものが、今度新しい事業にのみ補償をして、旧事業をかまわぬというごとき不親切きわまるやり方では、東北興業役員そのものは何をしているか。またどんな意味でこういうものをやっているか。
  20. 馬場元治

    馬場国務大臣 東北ドックは、御承知通り戦時中に軍の要請によりまして事業を開始いたしたのであります。その後御承知通りの不振な状態に陥りまして、現状に立ち至っておることはまことに遺憾に存じております。そこでこれが善後措遷につきましては、先ほど局長から申し上げました通りに、ただいま関係宮城福島県知事において具体的にその対策考究中でございますので、その具体案を待ちました上で政府としての方針も立てたいと、かように考えておるのであります。
  21. 鈴木周次郎

    鈴木(周)委員 ただいま戦時中に軍の要請あるいは国の要請でできたからあとはどうでもかまわぬというように聞き取れるが、至るところの造船会社要請によってできたところもあるだろうと思う。それが隆々としているのに、ひとり東北ドックだけがこんなことをやっているのはどうかと思う。そういうような経済能力のない役員では、今後非常に私たちも困る。こういうことに対しても一つ更迭するかどうかをお聞きしたい。  それからもう一つは、知事が明日でも、私はやりません、仲裁しませんと持ってきたときには、あなたの方で今度の法案によって資金を出すかどうか、その点一つ聞きたい。
  22. 馬場元治

    馬場国務大臣 戦時中にできたんだからということを申し上げたのは、戦時中にできたんだからこれを放任しているんだ、眼中に置かないんだという意味では決してございません。その点は誤解なきようにお願いいたしたいと思います。そこで先ほども申し上げますように、現地の事情に一番精通しております両県知事手元において、今その対策考究中であるということを申し上げたのでありまして、決してこれを放任をいたしておる意味ではないのであります。  なお知事の方で、自分たちの方には対策がないということになったらどうなるか、というお尋ねであったと思いますが、両知事におきましても地元の問題でありますので熱心にそれらの対策考究中であると信じておりますので、やがて具体案が出て参るであろうと存じます。その上でよく考慮いたしたいと思います。
  23. 鈴木周次郎

    鈴木(周)委員 地元知事が熱心にやっていることは当然でしょう。もし地元知事が、東北興業でこれを引き受けてやるべしという御意見が出た場合においては、今度の法案によって資金融通するのを優先的にするかどうかをお聞きしたい。
  24. 馬場元治

    馬場国務大臣 かりにそうであるとしたらという御意見のようでありますが、仮定的なことではちょっと具体的な答弁をいたしかねます。いずれ両知事意見を徴しました上で具体的な方策を定めたい、かように考えておる次第であります。
  25. 鈴木周次郎

    鈴木(周)委員 そうしますれば、この議案の審議は多時日を置いても、その現実性が認められた場合においては、私の先ほどからの質問趣旨に対してあなたが御共鳴なさるかどうかをお聞きしたい。
  26. 馬場元治

    馬場国務大臣 ただいまの御質問、よく聞き取れませんでしたが、その御趣旨は、この東北ドックの問題が解決しなければ本法案審議を延ばす意思があるか、こういう意味でございましたか。
  27. 鈴木周次郎

    鈴木(周)委員 第一については、砕いて申し上げましょう。県知事が仲裁に入って整理をしあるいは再建を希望している、しかしこれは東北興業再建する資金及び人材等をやるべしと彼らが言ってきた場合においては、今度の法案によって資金が出る場合において、優先的にこれに資金をやるかどうかということを聞くのです。おわかりになりましたか。   〔徳安建設委員長退席神田商工   委員長着席
  28. 町田稔

    町田政府委員 現在予定をいたしております社債は、先刻も御答弁申し上げましたように、東北ドック再建のためには使用する予定をいたしておりません。
  29. 鈴木周次郎

    鈴木(周)委員 そうしますと、東北興業政府の出店と私たちは見ているが何でも、いいころかげんにして、間に合わなければ捨てるのだ、こういうような意味にも聞えるし、事実そうなっているのだが、現在における状況から見ると、セメント工場もこしらえばなしで、もとはどうでもいいのだというように解釈してもいいのでしょうかどうでしょうか。
  30. 町田稔

    町田政府委員 今御意見のございましたような状態東北興業がございますことは、まことに遺憾でございます。従来投資いたしました東北ドック等会社が、現在非常に苦境に陥っておりますが、それを見捨てた形に事実なっておりますことは、まことに仰せの通りでありまして、遺憾に存ずるのであります。今回いたしますセメント事業につきましては、再びこのようなことが起りませんように、十分な指導と監督をいたして参りたい、こういうように考えておる次第でございます。
  31. 内海安吉

    内海委員 鈴木君の御質問も、われわれ承わっておりまして共鳴する点は多いのでありますが、まずその前に、町田局長鈴木君の質問に対する最初答弁によると、大体政府援助は戦後不可能になったために、引き続き二十九社に対する投資ができなくなったから、そこでとりあえず現在の親会社である東興本社自体の存立をするためには、当分何とかしなければならぬという考えの結果が、ここに新しく岩手県にセメント工場を設けるのである。そこで自後今日までのいろいろな、東北ドックであるとかなんとかいう問題については、先般も私は繰り返し質問したのであります。これに対する善後処置については、すでに当時答弁のあった通りであろうと思うが、まずこれは今度の改正法案を出した唯一目的、すなわちその目標というものは何であるかということを御答弁になって、しかる後にこのドックの問題に入られたらどうかと思うのです。どうも答弁が非常に複雑錯綜して参りまして、何が何だかさっぱりわからなくなってくるような状態になっている。そこで戦後においてはとにかく東北興業本社それ自体を生かしていくためには、とりあえずこうしなければならぬのである。次に来たるべき幾多の問題については、東北興業、すなわち東北全体の総合開発の線に沿うて進まなければならぬ、こういうようなことに説いてもらえば、ちょっとわかりやすく、そうして質問もあまり食い違いができないでどんどん進められると思うのでありますが、この点先ほど答弁なさったことと食い違わないでしょうか。
  32. 町田稔

    町田政府委員 ただいま内海先生のおっしゃった通りでございまして、東北興業につきましては、まず今回の社債の発行によりましてセメント事業経営さす、それによりまして本社の十分なる実力をつけさせまして、以後東北地方要請されております各種事業経営、その中には既存の投資会社育成強化も入っております。それに着手をいたして参りたい、こういうように考えておる次第でございます。
  33. 内海安吉

    内海委員 そこで私も鈴木君と同じ考えで進めたいと思うのですが、先般も御質問をいたしましたが、何ら的確なる御答弁は得ておらぬので、ちょうど大臣が御出席でありますからお聞きしておきたい。それは今鈴木君の質問東北ドック再建問題であります。われわれは今東北の立場においてあるいは国土総合開発を唱え、あるいは国土保全を唱え、さらにまた水産日本としても三陸全体というものは日本で有数のところであります。ところがこの三陸全体の漁船が、一たび故障ができますと、函館方面に回すか、あるいは神奈川県方面に持ってこなければ修繕ができないというのが現状なのであります。しかもこれはその経営方法によっては、おそらく東北興業においては唯一無二の宝庫でなければならぬはずであります。これに手をつけないで、そうして別な見当違い方面に対していろいろな計画をなさるということは、どうも基本的な考えがわれわれと違うのではないかというようなことも考えられるのでありますが、この点に対して大臣の御答弁をちょっと承わりたい。
  34. 馬場元治

    馬場国務大臣 東北ドック重要性につきましては、お説の通りでありまして、これを決して軽視いたしているわけではございません。非常に関心を持っておりますので、先ほど来申し上げました通り、今その現状に対する対策考究してもらっているのでありまして、その具体策が立ちますのを待ちまして善処いたしたいと考えております。これらの仕事を放擲しておきながらほかの仕事に着手するのはおかしいじゃないか、こういう御審議であります。一画ごもっともでありますけれども、京北興業本社自体を育成いたしましてこれを強化することも、東北振興の一助といたしまして欠くべからざる喫緊の問題であると考えまして、かような計画を樹立して御審議を願っている次第であります。
  35. 鈴木周次郎

    鈴木(周)委員 ただいまの御答弁から見ますと、どうも東北ドックは切り離すような方針に思われる。もしわれわれの議会の希望によって資金ができた場合においては、東北ドックを優先にやる気があるのかどうかを一つ聞いておきたい。
  36. 町田稔

    町田政府委員 将来社債等を東北興業におきまして十分に先行して、資金的にも余裕ができる時期が参りましたら、東北ドックにつきましても資金的な援助をし得ると思います。またこれはいたすべきだと考えます。
  37. 鈴木周次郎

    鈴木(周)委員 資金余裕ができるということは、私達の決意によってもできるし、また東北興業意思によってもできるし、政府の指図によってもできると私たちは思う。この余裕というのは含みのある言葉で、今この法案審議する時分にはちょっと妙に私たち考えるが、そういう言葉でなく、やれますとか、やれないとか、こうはっきりきょうは聞きたい。
  38. 町田稔

    町田政府委員 御満足のいく答弁ができなくてはなはだ恐縮でございますが、両県知事に現在のところ東北ドックにつきましては再建方策考えてもらっているわけであります。この方策資金を必要とするものでありますならば、その資金の調達につきまして可能な場合には、その資金をそちらに回したい、こういうふうに考えます。
  39. 鈴木周次郎

    鈴木(周)委員 それでは私の質問は保留いたしておきたいと存じます。両県知事意思発表を求めたいと思うから、参考人か何かとしてここに至急お呼びを願いたい。それまで私はこの委員会を延期しておくことを皆さんにお諮りを願います。   〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  40. 神田博

    神田委員長 ちょっと速記をとめて……。   〔速記中止〕
  41. 神田博

    神田委員長 速記を始めて。ただいま鈴木委員より東北船渠の問題につきまして両県知事を呼ぶようにという御要望がございましたが、これは後刻理事会を開いて御趣旨に沿うようにいたしたいと思います。  次は佐々木良作君。
  42. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 それでは鈴木さんを中心としての質問の途中でありますけれども、私の質問を行いたいと思います。  まず第一に、この東北興業という会社の所管官庁は今建設省のようでありますが、 この東北興業の行ういろいろな仕事につきましても、全部建設大臣が所管しつ采配を振われることになっておりますかどうか。
  43. 馬場元治

    馬場国務大臣 御説の通りであります。
  44. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 それでは先ほど来のお話にありましたように、今度の法案改正の意図は、大体東北興業に新しいセメント工場計画を推進させるためのように聞えますけれども、そのように解してよろしゅうございますか。
  45. 町田稔

    町田政府委員 その通りでございます。
  46. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 それではこの法案の改正措置によります融資見込みはどれくらいでありますか。
  47. 町田稔

    町田政府委員 全体といたしまして十四億の資金を要することになっておりますが、、そのうち今回社債発行を予定いたしておりますのは九億でございます。
  48. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 それは開銀融資を大体予定されておるのでしょうか。もしそうでありますならば、開銀の方の見込みもあわせてお聞かせ願いたいと思います。
  49. 町田稔

    町田政府委員 一般の社債発行でございます。
  50. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 セメント工場計画のために社債を大体十億程度発行して、それから始められるというお話でありますが、そうするとやメント工場計画概要を簡単に御説明願いたいと思います。
  51. 町田稔

    町田政府委員 お手元に差し上げました概要の中に新規事業としてのセメント事業計画のあらましが書いてございます。生産規模は月産二万トン生産方式はシャフトキルンということに考えております。工場敷地等はここに書いてあります通りでございまして、約三万坪の所要敷地地を予定いたしております。機械といたしましては、シャフトキルンを四基、ミルを四基、その他必要な施設考えております。  大体以上の通りでございます。
  52. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 事業の目論見書はできておりますか。
  53. 町田稔

    町田政府委員 事業の目論見書はできております。
  54. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 それでありますならば、あわせて事業の目論見書を出していただきたいと思います。その事業の目論見言を見ましてから内容の検討に入りたいのでありますが、出ておりませんので、それはあとに回しまして質疑を続行いたしたいと思います。  先ほどこの会社の所管官庁は建設省だというお話でありましたが、こういうセメント工場を作るという仕事はほとんど通産省の仕事に属するかと思いますが、この改正法案を提出される場合に通産大臣は協議を受けられましたか。
  55. 川野芳滿

    ○川野政府委員 建設省から昨年の二、三月であったと思いますが、セメント工場の増設並びにカーバイト等の増産をする工場を設けたい、こういう御相談が実はあった次第であります。そこで通産省といたしましては、いろいろと現下の事情を御説明申し上げ、こういう面の専門家を御紹介いたしまして、そうして専門家についてよく御検討されたらどうか、こういうようなお話を申し上げた次第であります。その後社が縦がま方式の機械を採用されるというようなことを私たちは承わりましたので、この点につきましても専門家について検討をされたらどうか、こういうようなことをいろいろと御注意申し上げた次第であります。
  56. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 そうすると通産大臣は今度の東北興業法案の改正について、この改正の内容が今お話にありましたような、セメント工場を作るための改正であることを承知をして賛成をされて提案されたものですか。
  57. 川野芳滿

    ○川野政府委員 御承知のようにセメント工場の増設施設というものは、法的には委任許可の制度がとられておりません。本社計画は年産二十万トン、こういうことにも実はなっておりますので、そういう点から考えますると、全国セメントの需給関係にはそう影響はなかろう、こういうふうにも考えておるわけであります。しかしながら現在のセメント業界の実情を見ますると、まことに多事多難であるといわねばなりません。すなわち昭和二十九年の合理化三年計画の線にのっとって、相当設備も増強されておりますので、従って現在の設備におきまして十二分に将来の増産あるいは輸出振興等の需給関係にも間に合う、さらに市価の面を見ましても、先般国鉄等の契約高を検討いたしましても、昭和三十年十二月の間におきましては約一千円内外のセメントの下落を見ておるというようなことでございますので、通産省としては口をさしはさむべき筋合いではないのでありますが、こういう点についてはよく御検討を願いたい、こういうふうに考えております。
  58. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 そうしますと大体におきまして、本来セメントの需給なり、セメント工場なりというものを見て、経済計画を立ておられるところの通産省の立場から見ると、大体あまり賛成の計画ではないという立場であるし、それからこの会社の主管官庁になっておる建設省はやりたいということでありまするし、先ほど来の鈴木さんを中心としての質問を聞いておりますると、東北興業の内部で東北振興のためにまだ具体的にやらなければらない仕事、あるいはやり得る仕事があるのにもかかわらず、何かセメント工場計画ということに、どこからか知らないけれども、えらい強くそこに拘泥されておるように見受けられますけれども、その辺建設大臣と通産大臣との問の意見の食い違いがあるように思いますが、建設大臣の御所見はいかがでござています。
  59. 馬場元治

    馬場国務大臣 セメントの問題につきましては現在生産過剰であるとかあるいは東北興業のただいま計画いたしておりまする技術的な、いわゆるシャフト・キルンの問題であるとかいろいろ御議論があるように承知をしております。そこでそれらの点も十分考慮いたしまして今度の計画を樹立いたしたのでありますが、先ほど通産省当局の御答弁もありましたけれども、御承知のように法案を提出するにつきましては、各省大臣の閣議における署名がいりますので、もとより通産当局も内容を御承知の上で御賛成になったものでありまして、その点に政府の間における意見の食い違いはございません。ただ先ほど通産政務次官からのお答えは、こういう点も考えられるので、十分注意をするようにというお考えであったと存じます。もちろんそれらの点につきましては、十分勘考をいたしました上、これが最善であると考えるような結論を得ましたので、提案をいたしておるような次第でございます。
  60. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 東北振興するための目的を持った東北興業会社が、先ほど鈴木さんを中心として意見を言われましたように、東北内部におきまして、まだ東北ドック等仕事の方が、なお振興に役立つかのごとき意見がずいぶん出ておるのは御承知通りであります。それからセメントを扱う方の役所でありますところの通産省の方からは、今次官が言われましたような批判的な意見が十分出ておることも御承知通りであります。それであるのにもかかわらず、東北振興とセメント、この二つを、いわば専門でないところの建設省がどこに根拠を持ってこの計画を遂行されるようとするのか、私どもはその意図がどうも了解しかねるのですが、私どもに了解がいくように御説明が願いたいと思います。
  61. 馬場元治

    馬場国務大臣 通産当局の御意見が私どもと違っておる、こういうようにおとりのようでありますが、それは先ほども申し上げました通り、この事業が万が一にも失敗することがないように、念には念を入れて、注意には注意を重ねてという政府の一角としての御心配であろうと思います。その御心配はまことにごもっともでありますので、われわれといたしましては、それらの点も十分に考慮に入れました上で、本計画を立てたのであります。しかしセメントを作るということが、何で東北振興関係があるのか、こういう御疑念のようでありますが、これにつきましては東北振興しなければならぬいろいろな方面から見まして、何としても他の地方に比較いたしまして、東北がその開発の点においてあるいは交通の点において、文化の点においてだいぶ劣っておる。東北をすみやかに開発しなければならぬかような観点からいたしまして、いろいろ検討をいたしたのでありますが、東北六県の知事諸君の熱望もありまして、その熱望にこたえて研究をいたしました結果、これが最善である、かような結論に到達いたしましたので、あえて本計画を樹立いたした次第であります。
  62. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 専門の官庁であるところの通産省自身が、必ずしも今の大臣の御意見のごとくに、東北振興するために、今の東北興業が当核地点にセメント工場を持つということのそろばんの立ちにくいことを、むしろ逆に証別しておるじゃございませんか。専門であるところの通産省の方が疑念を持っておるのにかかわらず、建設省の方が大丈夫々心々といいましても、私どもは疑念が晴れないのでありますが、重ねて御所信を伺いたいと思います。
  63. 馬場元治

    馬場国務大臣 たびたび申し上げます通り、通産省といたしましても、万一にも失敗することのないようにという御心配御好意から、われわれに対していろいろな御忠告もあり、御注意もあったものであると思います。その御注意、御忠告を十分尊重いたしまして、研究をいたしました。その結果こういう結論に到遥いたしたのでありまして、通産省といたしましては、注意すべき点は注意しながら、しかも結論においては私どもの計画しかるべし、こういうことで御賛成の決定を得た次第であります。
  64. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私はこれはやっぱり通産大臣と両方並べてほんとうはお話を聞きたいと思いますが、次官がおいでになりますから、一応念のために尋ねておきたいと思います。  商工省といたしましては、先ほど次官はセメントの需給関係から必ずしも賛成でないような御意見があったように承わるわけでありますが、現在のセメントの需給関係並びに輸出を含めて、ここにセメント工場を作るということが妥当であると、ほんとうに考えておられるかどうかという点、それからさらに工場建設計画につきまして、今ここに概要を出されておりますところの十四億という資金でもって、これだけの計画ができるとほんとうにお考えになっておるかどうか。それから原価並びに品質についても、建設省で今言われる通りの、あるいは興業の計画通りの見込みが立ち得るかどうか、お伺いいたしたいと思います。  念のために申し上げますけれども、セメントの工場の建設につきましては、私は実に苦しい経験を持っておるのでありまして、磐城の浜村工場を電源で作ろうとしたとき、政府からどうしても御理解が得られなかった。私はあの二十七年、二十八年のセメントの一番必要なときに、しかも一番経済的に私どもが重ね重ねて考え計画を立てたのにかかわらず、とうとう事実上了承を得られなかった。そうして今セメントがこれだけだぶつき、そしてあれだけにいわば不利な地点に、しかも他の事業があるところに、こういう計画が推進されようということにつきまして、私は疑念なきを得ないのであります。従いまして、今度は通産省として、今のセメント工場計画につきまして、需給、輸出を含め、それから工場計画の建設費、原価、品質等について、完全に経営が成り立つとお考えになっておるかどうか、もし成り立つとお考えになっておりますならば、その御批判のデータを全部お出しになっていただきたいと思います。
  65. 川野芳滿

    ○川野政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、市況といたしましては昭和二十九年の秋から三十年の十二月の間におきまして、約一千円内外価格は下落いたしておる、こういう実情であります。さらに今後も軟調ぎみを実は続けるのではなかろうか、こういうふうに考えております。さらに需給の関係でございますが、これもただいま申しましたように、合理化計画に沿って相当設備も増強されましたので、現在の実情におきましては、需給のバランスはある程度合うのじゃなかろうか、こういうふうにも考えておる次第であります。しかし計画が二十万トンでございますので、従いまして全国的に見ますと、需給関係にそう影響を及ぼすものとも考えられぬのであります。そういう関係から通産省といたしましては、かれこれ適当であるかどうかというような意見を差しはさむことはどうであろうか、こういうふうに実は考えておるような次第であります。  なお数字等につきましては関係局長から詳細申し述べることにいたします。なお資金面等におきましても、関係局長から答弁させることにいたします。
  66. 吉岡千代三

    ○吉岡政府委員 御指摘のようにセメントは最近まで、比較的設備が十分ではないかというような考え方のもとに、財政当局等におきましても積極的にこの設備資金の面において、新規資金の貸し出し等はどちらかと申しますと、抑制するという方針できておったわけであります。しかしながら先ほど御指摘のように、昭和二十九年のころに至りまして、需給関係から申しますと、大体生産能力が二十八年度現在におきまして約一千万トンでありまして、これに対して需要が九百数十万トン、操業度にいたしまして九四%であるというような状況に立ち至ったわけであります。セメント工場は御承知のように定期にかまの補修等の必要もございますので、安定操業度といたしましては大体八〇%から八五%、時期によりまして九〇%ないしはそれ以上の操業をする場合はございましても、年間を通じましてはその程度が妥当な操業度ではないか、こういうわけでございましたが、二十八年度から二十九年の初めにかけましては、ほとんど一〇〇%に近いような需給関係になって参った。価格の面におきましては、昭和二十六年の朝鮮事変以降非常に需要がふえましたか、これは業界にも自粛を要請いたしまして、引き上げはいたさなかったのでありますが、二十九年の途中におきまして、公正事業費について七%でありましたか、節約が要請されるという関係からいたしまして、建設大臣からも閣議で、セメント価格の安定についての御要望がございまして、それによりまして二十九年の八月に次官会議の決定を経まして、閣議にも報告されたわけでございますが、とりあえずある程度の価格の引き下げを行政措置として大臣から慫慂いたしまして、実施をいたしますと同時に、価格の安定をはかりますためにはどうしてもこの際設備の増強の必要があるということから、大蔵当局、日銀等にも御協力を得まして、二十九年度から三カ年間に、当時の約一千万トンの能力に対しまして五、六百万トンの設備の増強計画を立てました。これについては、従来と異なりまして、ある程度必要な資金はごめんどうを見ていただくという措置をとりまして、大体その線に沿って現在まで設備の増強が行われておるわけであります。そこで現在の見通しといたしましては、二十八年度の一千万トンに対しまして、三十年度の終りにおきましては約千四百万トン、三十一年度の終りにおきましては千六百万トン近くの能力になる。一万、需要の面は、内需も相当の増加を見込みまして、また輸出につきましても、昨年以来公取の了解も得まして、輸出入取引法による最初のケースとしての生産業者の輸出協定をいたしまして、これによって輸出の拡大と輸出価格の維持をはかるという措置を実施いたしました。これによりまして輸出も当初の目標以上に順調に伸びておる現状でございます。  そこで現在の全国の操業度は、先ほど申し上げました二十八年度の九四%に対しまして、二十九年度が八八%、三十年度は七五%、三十一年度は七二%というようなことで推移するのじゃなかろうか。で、当初の見込みに対しまして、輸出は先ほど申し上げましたように予想より若干伸びておりますが、内需がやや予想より下回っておりますので、大体八割程度の操業を前提として計画を組んだわけでございますが、現状はそれよりやや下回っております。  次に地区別に考えますと、これは工業製品のことでございますから、厳密にどの地区でどうということも必ずしも妥当でないかと思いますが、東北地方自体といたしましては、やや全国の操業度より低くなっております。しかしこれは北海道の方におきまして、北海道の操業度が全国平均より若干高いというような関係から、両地区を平均いたしますと、まず全国平均より多少低いという程度ではないかと考えております。  それから品質の面でありますが、当社の採用せられますのは、先ほど次官から申し上げましたようなシャフト・キルン、縦がまの方式でございまして、これにつきましては、実は日本としては明治年間以降最近におきましては経験がない方式でございます。戦争中一時蒙疆におきまして磐城が試みたことがあるわけでございますが、最近におきましては、宇部興産がドイツの特許を買いまして、昨年の九月以降試験操業をやっております。そういういわば初めての試みでございますし、技術面にも若干の問題があるようでございまして、それらの点はそのつど建設省にも御連絡し、また宇部興産の担当重役を計画局長にも御紹介いたしまして、十分御意見を聞いていただくということにいたしております。  原価の点につきましては、会社計画において若干余裕の少いような画も認められるようでございますが、この点につきましては、ただいま会社から開発銀行に融資の申請が出ておりますので、開銀等にその意見を申し述べまして、そういう収支採算について専門の知識を持っておられます開銀において御検討をお願いするということにいたしております。全体といたしまして、通産省といたしましては、この際産業政策なりあるいは立地的に見まして、東北にどうしてもセメント工場がなければ困るというような点は、実は認めにくいわけでございますが、これは企業のことでございますから、これらの技術面なり収支採算面について十分の努力をされまして、適正に事業が運営せられますならば、必ずしも絶対に失敗するということも断言できないわけでございます。(笑声)それらの点は、当事者はもちろん、直接の監督である建設省におきましても十分に御努力をされる、それによってどうなるかというような感じを持っておるような次第であります。
  67. 中崎敏

    ○中崎委員 関連して……。いろいろ問題もあるようでございますが、一つ聞いておきたいのであります。この会社において採用せんとする例のシャフト・キルンの方法についてですが、この点については、今軽工業局長から、日本においては宇部興産に一つ例があると言われた。ところが宇部興産の場合においては、一体どういうような原料を使って、品質的にはどういうものであるか、さらにまたこれが事業採算的にはどういうものであるかということを一応聞いておきたいのであります。それと開発銀行に採算的な内容等について調べさすということでありますが、その前にこれを法律を通して、ことにこれは国策会社でありますから、これを許すかどうかという問題を先にきめなければならぬ。それか会社ができて、さらに開銀が金を貸すかどうかという問題をきめる前に、先行する問題でありますから、その点についての見通しを聞いておきたいと思うのであります。
  68. 吉岡千代三

    ○吉岡政府委員 実はこれは一社の関係の問題でございますので、できましたら速記をおとめいただきましたら、詳細説明いたしたいと思います。
  69. 大高康

    ○大高委員 ちょっと関連して……。ただいま当局の説明を承わりますところによると、非常に矛盾がありますし、また前途何だか危ぶまれるような気がいたすのであります。シャフト・キルンというものは非常に危険性があって、日本ではまだ使っていない。しかも宇部興産においては試験的に使っておるというような御答弁でございましたが、どうして今度の機械の採用についてそういうふうな危険性のあるシャフト・キルンをお選びになったか。わずかに生産面において少し安くつくというだけでもって、このシャフト・キルンを採用したのかどうかというようなことにつきまして、一つお伺いしたいと思うのであります。
  70. 神田博

    神田委員長 では速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  71. 神田博

    神田委員長 速記を始めて。
  72. 大高康

    ○大高委員 ただいまシャフト・キルンのことについて説明を願ったのでございますが、御答弁中には、きわめて危なっかしい印象を受けたのでございます。少くとも国策会社としてこれをやる場合に、そういうような目下試験中のような機械を使って果してうまくいくかどうかという点について、私は非常な不安をを持つものでございます。また根本的に見て、先般申し上げましたように、今日のセメントというものは非常に飽和点に達している。そして出血輸出をしたり、あるいはいろいろやっております。また値段の点につきましては、全国平均一千円、また東北地方においては従来不便の地域であった関係上、千五百円も安くなっておる。今日生産面においてはなかなか容易でないというような状況下において、どうしてセメントを作らなくちゃならぬかという理由を見ますのに私は骨を折るのであります。先般の御説明によりますと、東北興業会社が経済面において薄弱である、その内容を充実する意味において、どうしてもセメントによってこれを救ってもらわなくちゃならぬという御答弁でございましたけれども、そういう甘い考えでやって、今日セメントの状況が、前にも申し上げたような状況であるにかかわらず、セメントにあまりに期待をおき過ぎて、東北興業会社の前途にあまりに期待を持つということは、私はこれは容易でないというように考えるのでございます。それで先般も建設大臣の御返答には、購売については絶対民間は圧迫しない、そして市場には出さない、政府建設のダムであるとか、あるいはその他の点に使うというような御答弁でございましたけれども、この東北セメント会社のセメントの購入に対しては、政府が特別なお取扱いをもって高いものであってもこれを買わなくちゃならぬかどうかということについて、私は建設大臣に御質問申し上げる次第でございます。また、このセメントの前途の見通しについて、そういうような暗い影があるにもかかわらず、通産省としてはこれをやるべきであるとかやらない方がいいとかなんとかいう見通しがあると思うのですが、通産省の考えとしてはこれはほんとうに心から賛成しているのかどうかということを通産次官に御質問申し上げる次第であります。
  73. 町田稔

    町田政府委員 シャフト・キルンを採用いたしました理由につきましては、先般も申し上げましたように、この方式によりますと、建設費、生産費、労務費等が従来のロング・キルンでやりますよりも安くなりますので、従って販売の価格等も安くなるという意味におきまして、これを採用いたしたのでございます。シャフト・キルンの状況につきましては、現在の日本におきましては、ただいまも軽工業局長から御説明になりました通りでございますが、なおドイツ等におきましてはセメント生産の三分の一がシャフト・キルンで作られた製品でございます。ヨーロッパにおきましては、かなり広く普及いたしている生産方式でございます。日本で採用いたしますには、粘土の関係等から特殊の注意を必要といたしますので、実際の操業につきまして東北興業等の技師をドイツに派遣いたしまして、十分操業につきましての熟練をさせる予定でございます。なお東北興業に特にセメントをやらせますことに決定いたしました理由は、先刻も大臣から御答弁申し上げましたように、東北地方で特に東北興業にやらせたい事業につきまして六つの県の知事の意向をも聞いたのでございますが、その際に東北地方で特に豊富に生産されます石灰石を使ってのセメント事業を起しますことを希望の中に特に強く表明されておりまして、なお建設省といたしましてもこれらの希望を十分考慮いたしまして、この事業を起すことに決定をいたしたのでございまして、セメントを東北興業にやらせることによりまして会社自体の発展をはかるとともに、シャフト・キルンで作りました廉価なセメントを東北地方に供給することによりまして、東北地方の公共事業等の振興を一層はかりたいというように考えて、これを選んだ次第でございます。なお東北興業株式会社が作りますセメントは、先般も申し上げましたように、政府におきまして特別の取扱いをいたす所存はございません。一般に販売をいたしまして、政府の購入におきましても入札によってこれを購入る予定でございます。
  74. 川野芳滿

    ○川野政府委員 セメント業界の現況並びに将来の見通しにつきましは、先ほど来申し述べた通りであります。こういう情勢下におきまして新らしい会社ができた方がいいか悪いか、こういう御質問でございますが、すでに閣議も決定いたしまして法案になっております問題もございますから、一通産政務次官といたしまして、かれこれ言うことは慎むべききであろう、こう考えて、私どもといたしましてはこれの具体的な答弁は遠慮さしていただきます。
  75. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 政府部内で遠慮さしてもらっても、私どもには十分納得のいくように説明してもらわなければ委員会の審議は務まらないことになりますので、どうか委員には十分納得のいくように御説明をお願いしたいと思います。  通産省では、一時こういうセメントのような業種につきまして官営的な色彩を持つものはなるべく遠慮さしたいという方針をとっておられたと承わりますけれども、今度の場合にはそれを撤回されたのでありますか、方針についてお伺いしたいと思います。
  76. 川野芳滿

    ○川野政府委員 一般論といたしましてはできるだけ民間にやらせたい、こういう考えは変っておりません。しかし今度の場合は東北振興という地区的の問題でもございますので、従って通産省といたしましても御賛成申し上げた、こういうわけでございます。
  77. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 わが田に水を引くようでまことに恐縮でありますが、ちょうど先ほど申し上げましたようにセメントの事情からいたしましても、その他の経済事情からいたしましても、私どもが電源の付帯事業としてやろうとしたときには、一番都合のいいときであったし、そして明らかに現在成功しておる。そのときに私どもが電源開発でやろうとしたときには、これが事業を圧迫するといって、いろいろな事業目論見書を出してこまかく打ち合わした結果、よさそうだという結果になったのにかかわらず、官営的な企業が民営を圧迫する、これはまことにまかりならぬという方針で、とうとうあのときに御了解を得られなかったのであります。今度の場台それが豹変した理由につきましてお伺いをいたしたいと思います。
  78. 川野芳滿

    ○川野政府委員 ただいまの問題はまことに大きな問題でございますので、一つ大臣出席したときに御質問下さいますようお願いいたします。
  79. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 そうすると、私は先ほど申し上げましたように、このセメント工場につきましての収支予想書を添えての事業目論見書を御提出願い、そして建設大臣と通産大臣と立ち会いのもとでもう一度質問をさしていただきたいと思いますので、一応この辺で留保いたしたいと思います。
  80. 神田博

    神田委員長 次は首藤新八君。
  81. 首藤新八

    ○首藤委員 私は、この東北の経済を強化し、産業を振興するために東北興業政府が格別の措置を講じますことには無条件に賛意を表します。しかしながらその振興のために新しく事業を開始いたします場合には、あくまでもその事業が将来性のある、発展性のあることを絶対的条件とすることはもうすでに議論の余地はないと思います。特に東北興業は、昭和十一年でありますか、東北全般の振興のために特殊会社として発足いたしたのでありますが、自来どういう経過をたどっておるか。先ほど局長の御説明によりますと、直営あるいは子会社九十九の会社経営いたしておる。その後二十一年の会社経理応急措置法によって非常に圧縮したといいますが、それにしても一体この九十九の会社が現在幾ら残っていて、それが経営の採算がとれているものが幾つ残っているかという点に私たちはこの際深く思いをいたさなければならぬと思うのであります。従って過去のこの失敗にかんがみ、そして将来を考えた場合、今度こそ間違いのない事業を起すということが東北興業といたしましては、まず最も重要な関心を持つ対象でなければならぬと考えます。しかるにただいま承わっておりますところのセメント工業が果して将来性あるかいなや、この点に私たちは大きな疑問を持つ。むしろ私の長い間の経済的知識から考えますと、大よそこれほど無謀な計画はないと断ぜざるを得ないのであります。すなわちその事業の需給の関係あるいはこの原価が他社に比較してどうなるか、こういう点が会社経営の基礎条件であります。現在セメント工業は、御承知のごとく終戦後十年の間いんしん産業である、そのいんしん産業の原因は、常に供給が不足であった、いわゆる供給不足はセラーズ・マーケット、売手の市場でありまして、従ってセメント会社は各社ともおそらく適正利潤以上の利潤を獲得したであろうことを私は想像いたしますが、それがために増設に次ぐ増設をいたし、今日ではすでに千五百万トンの生産の能力を持ち、そうして一方の費用は千百万程度と推定されておるのでありまして、この間に四百万トンの生産過剰の能力を持っておる。これは否定し得ないところの事実であります。もし各会社が全能力を上げますれば、千五百万トンの生産が上げられるのでありまして、その結果市価がどうなるか。今日まではセラーズ・マーケットであったが、今度はバイヤーズ・マーケットであります。しかもこの十年の長い間のいんしん産業でありました関係上、既設の会社は大幅な減価償却をいたしております、合理化をいたしております。そうして品質の点におきましても、あらゆる検討が行われて、今日各社の生産するところのセメントはおそらく世界的に考えましても、その水準は第一位に行くであろうことを私たちは想像をいたしておるのであります。その際にわずかな生産量——月に二万トン、年産二十四万トンであります。従ってこの二十四万トンが全量生産されても、千百万トンの需要に比較しますならば、これがために日本のセメントの需給関係に大きな影響があろうとはごうまつも考えておりません。ただ本質的に他社の製品コストに対抗し得るかどうか、この点に私たちは格別の関心を持たざるを得ない。ただいま申し上げましたように大幅な減価償却をいたしておる、合理化をいたしておる、品質は向上いたしておる、その際に新しい会社が時価による非常に高いところの設備をいたし、一つも償却をいたしていない、ありのままの原価が出てくるのであります。先ほど佐々木委員が目論見書があるか、あるということでありますが、ここの資料を見ますと、ただ計画だけでありまして、これによって一トン当りの原価がなんぼになるか、あるいは販売総額はなんぼになるか、あるいは支出はなんぼになるかというような肝心の収支の明細がこれについておりません。従って明確なことは申し上げかねますけれども、おそらく私の想像は不適当でないと考えますが、これは既設の会社に比較しまして、原価が非常に高いであろうことを想像をいたすのであります。かような競争できないような原価の高い製品を作って、しかも日本全般のセメントの需給関係は四百万トンからの余力を持っておるというような中に飛び込んで、会社の存立の可能性ありやいなや、これはどうしてももう一度再検討をしていただく必要があるのではないか。開銀当局かおいでになっておりますならば——あえて私はかような不健全と申します。かような不健全な会社に開銀がさらに融資をするおつもりがあるかどうか、この点を伺っておきたいと思います。  それから、三年や五年国費を投じて、その後には必ずペイするという望みがあるならばこれは、私はいいと思う。しかしおそらく現在のセメント工業の実態を見た場合、永久にこれは国費を次から次へつぎ込んで経営しなければ、会社の存立はできないということになるおそれが多分にある。先ほど吉岡局長は、絶対的に失敗とは思わぬ、こういう表現を使っておりましたが、私もこの表現は適当だと思う。絶対的に失敗とは申しませんが、おそらく九割九分までは失敗するであろう、こういうふうな考えを持ちまするから、さような前途のわかったものに対して、わざわざ国費を投じて、過去の失敗を再び繰り返すような愚は、この際おやめになった方がいいのではないか。それも、東北にセメント工業でなければほかに適切な産業はないというならば、これはまた別の考え方をいたします。しかしながらこの東北の資源は、必ずしもセメントを製造しなくても、あるいは現在やっております窒素肥料も、東北の需要状態から考えますると、まだまだ生産の発展性を多分に持っておるのであります。あるいはまたカーバイドの方もまたしかり、あるいは最近繊維界が非常な勢いで化学繊維をねらっておりまするが、化学繊維の原料である石灰石、これも私は非常な将来性を持つものと考えておるのであります。あるいはまた東北特有の砂鉄でありまするが、これも最近チタンの利用が非常にふえております。こういうこともまたこの際あらためて御検討なさる必要はありはせぬか。しかもこれらの産業はいずれも将来性があります。と同時に先ほど鈴木同僚委員が申されておりましたが、既設の会社、たとえばさっき話題に上っておりました東北ドックだそうでありますが、そのようなものも東北の漁業という観点から、やはりある程度政府資金を投じてこれを育成するならば、東北の経済に大きな寄与をいたすのではないか、かように考えるのであります。要するに会社の山存立あるいは将来性は、現在やっておる会社をいかにしてペイさせるか、まずそのやっておる会社育成強化いたして、余力があって初めて新しい事業に進出するのが私は常識であると思う。今日までの会社はどれもこれも不成績な状態になっておるにもかかわらず、それをそのまま放任いたし、何らの育成強化をいたさず、そしてまた危険千万な新しい企業に着手するということは、私はおよそこれほど軽率の構想はないと思うのでありますが、なおかつ建設省当局に、かように前途の見通しがはっきりしておるにもかかわらず、セメント工業でなければならぬという御見解を持つかどうか、この点を私は伺っておきたい。
  82. 馬場元治

    馬場国務大臣 まことに顯聴すべき御意見でありまして、私どもといたしましても、万一この事業が失敗するようなことがありましては、巨額の国費を使っての仕事でありますだけに非常な責任を感ぜざるを得ません。万一にも失敗しないようにあらゆる方面から実は検討いたしたのであります。技術の方面に関しましては現在シャフト・キルンを使って生産をいたしておりまする現地に、計画局長並びにその道の権威であります技師を派遣いたしまして、十分に調査もいたさせました。なおいろいろな方面から検討をいたしまして、この事業が一番よろしいという結論に和なったのであります。お説の通り事業の将来性も考えなけれになりません。御指摘になりました砂鉄の問題であるとか、硫安の問題あるとか東北地方に何が一番よろしいかという問題については、実はあらゆる方面から検討をいたしたのであります。そこで現地の東北地方の各県の行政の衝に当りその責任を持っておりまする六県の知事とも協力をいたしたのでありますが、これらの御指摘になりました問題についてももちろん検討をいたし、その結論が、セメント工業が一番よかろう、こういうことになりましたので、現地の事情に精通をいたしておりますし、しかも当面の責任者でありまする知事意見を尊重をいたしまして、技術的にも経済的にもあらゆる方面から検討をいたしましたる結果、このセメント工業を計画をする。これによって東北興業——従来お説のように失敗続きでありましたことは、まことに遺憾千万でありますが、その失敗いたしました東北興業を何とか再興いたしまして、これを呼び水として東北振興をはかりたい、かような熱意からいたしまして、現地の事情も十分調査をいたしました上、実はかような計画を樹立いたしたのであります。御指摘のように、これが失敗したらば大へんである、これは仰せまでもありません。十分考慮をいたした上に、かような計画をいたしたということを御了承賜わりたいと存じます。
  83. 首藤新八

    ○首藤委員 今の大臣の後答弁では、遺憾ながら私は納得しがたい。先ほど申し上げた通りに、事業の発展性は、その事業そのものの需給関係あるいは地理的条件あるいは品質の点等々、幾多のファクターを対象として検討しなければならめのでありまするが、それらの条件を私たちが検討いたした結果、セメント工業はきわめて経営が困難の状態に陥るであろうという結論を下しておるのであります。従ってそれにもかかわらずなおかつ検討の結果セメントが一番いいという判断を下したということでありまするならば、私たちを納得させるような、私が申し上げた条件を十二分に克服できるような何らかの信頼ある資料を提供していただかなければ納得できないのであります。率直に申しますれば、先ほど局長が公共事業の推進に非常に寄与するということを申されたが、なるほど建設省は公共事業が大部分の事業であるために、本来の事業にあまり拘泥し過ぎておりはせぬか。もう少し建設省というものを離れて、日本全般の産業という観点に立ってお考えになる必要がありはせぬか。特に私たち日本の繊維の将来に思いをいたした場合、今のような輸入綿花に依存せず、内地に資源を持つものを使って、そうして化学繊維に進出するのが国策だ。これによって外貨を節約いたし、そうして国内の産業を振興いたし、そうして品質の向上をいたす。セメントよりもるかにこれの方が国策に沿うのではないか。いわんやこれによって非常な将来性を持ち、東北振興の本来の目的を達成するということにも考えられるのであります。それにもかかわらず、これらのいい条件のある事業一つも顧みずして、一番危険なセメントに拘泥するその理由がどうも私には納得がいかぬのでありまして、私たちが疑念といたしておりまする会社経営のいろいろのファクターを、なお打ち消すような、これにはこれだけの理由があるのだ、そういう不安があるかもしれないが、これにはこういう根拠があるのだという材料がありまするならばあわせてこの際御説明を願いたいと思います。
  84. 町田稔

    町田政府委員 セメント事業に関します御意見は私たちもまことにその通りだと存ずるのでございます。それで従来の方式をもっていたしましては、新たな事業を起して既存の会社等と競争いたすことは無理であるとおえたのでありまして、その点を十分考慮いたしまして、特にシャフト・キルンの方法を採用いたしたのでございます。シャフト・キルンの方法につきましては、かなりいろいろの問題がございますが、あえてシャフト・キルンの方法を採用いたしましたのは、この方法によりますと、従来の方法による生産と比較いたしまして相当程度生産費が安くなるのでありまして、そういう意味におきましてシャフト・キルンの方法を採用いたし、これによりましてセメント事業経営いたしましても、東北興業といたしましては十分に成功するという確信を持っておるのでございまして、私たちといたしましてはこれが成功ををいたさせますことに万全の指導監督を注いで参りたいと思っておるのでございます。なおセメント以外に例をあげまして、東北地方におきます各種事業をお示しいただきましたが、いずれも東北興業といたしましては、将来それらの事業に第二段階の際には着手すべきである、考慮すべきであるというように考えておる事業ばかりでございます。ただ現在の資金状況等から考えまして、第一着手といたしましてセメント事業を選んだ次第でございます。
  85. 首藤新八

    ○首藤委員 開発銀行に先ほど質問しましたが、かような状態にある会社の融資の申請があった場合に、あなたの方は融資できてるかどうか、この点一っ伺っておきたい。
  86. 中村建城

    ○中村説明員 開発銀行といたしましては、東北興業とは復興金融全庫以来の取引がございまして、その後開発銀行になりましてからも石灰窒素に融資をいたしました。その融資にからみました結果につきまして、なおペンディングの問題が残っておるという状態であったのであります。そこで昨年の春ごろセメント三十四万トン計画というのを東北興業がおやりになる、それでおそらく開発銀行に一部を融資してもらうのじゃないかという話を聞きましたが、しかし何分にも二十四万トン計画というだけでありまして、どこにとういうふうにやるかということはちっともきまらない。私ともの方へ特ってくるような計画並びに数字が最終的にきまりましたのは、おそらく昨年の暮れ押し詰まってからだと思います。それから正式に私どもの方へ申し込みがありましたのは今年の正月でございます。私の方はセメント計画という大きな計画をおやりになるならぬは別として、ペンディングの問題を片づけなければならぬというので、石灰窒素におきますベンディグの問題を片づける方向に進みまして、大体最近におきまして解決のめどがついたのであります。そこでセメント計画を、お申し込みを受けました以上は調べなければならぬというので、私ども審査部に回しまして目下調査中であります。開発銀行は非常に調査がのろいというおしかりをこうむっておりますが、何分にも自信のある調査をいたしますには一月、二月の時間をいただきませんと調査がつかぬのであります。しかも普通のセメントでありますと、昭和二十八年ごろに融資したことがありますので既存知識があるのでありますが、今度のは新しい方式でありますので、やはり相当な技術の経験者をお頼みいたしまして、たとえば現地も拝見いたし、宇部興産の成績も詳しく拝見いたしまして、その結果によって判断いたします。コストが果して会社の言う通りであろうかどうか、あるいはまた人間がどのくらいになるであろうか、しかもその値段で売れるであろうかどうか、売り先があるであろうかどうかということも調べます。そしてその結果ある程度の利益を上げて何年間で返るだろうか——返るとしても非常に長く二十年、三十年になるので困るので、適当の時期に返るかどうか、そういうことを厳密に調べました結果、審査の方で報告を出します。それによって総裁以下役員の方で判断をいたしまして結論を出したい、それまでもう少し時間をかしていただきたいと思います。私どもは融資機関としての使命にかんがみまして厳密に調査いたしたいと思いますので、もう少し時間をおかしいただきたいと思います。
  87. 首藤新八

    ○首藤委員 開発銀行としてはお話通りだと思いまするから、これ以上の質問は控えます。  そこで局長にもう一度伺いますが、シャフト・キルンを採用することによって原価が安くつく、従って販売価も安くなるから十分競争し得るというようなお考えのようでありますが、もしさようなお考えであるとするならば、私ははなはだ甘いお考えたと申さなければなりません。これは先ほども主管局長軽工業局長説明されておりました宇部興産におきましては、なるはど原価は若干安くつくけれども、品質が非常に劣るがゆえに販売価格もやはり安くしなければ売れぬだろう、これは当然であります。メリットの点におきましては非常に相違がある、従って原価が五百円安くつく品物を千円安くしなければ販売できぬというような結果に陥らぬとも私は保証しがたいと思うのでありまして、そういうことになりますれば、シャフト・キルンを採用したことによって前途の経営がまことに不安になってくるという想像もつくのでありまして、これらの問題もこの会社の運営上非常に問題になりまするし、セメントの需給状態先ほど申し上げた通りに千五百万トンの生産に対して千百万トンの需要がある。四百万トンの余裕がある、現在の民間設備で十分間に合っておるにもかかわらず、しかも前途に非常な不安を持つにもかかわらず、それに対して政府がしいて投資をしなければならぬなどということは二重投資であります。これは卒直に言って国費の乱費という非難を受けてもやむを得ないと思うのであります。政府投資する必要があるという場合、民間ではどうしても経営が成り立たぬ、しかも国家がどうしてもこれを必要とする場合にはあるいはそういうことも考えられまするが、民間で十分に供給が足りておる。余っておるこの際に政府がその上にまた乗り出して供給をますます過剰ならしめるというようなことは、卒直に申して民業の圧迫であります。むろん生産二十四万トンでありまするから、かれこれ申すほどの価値はないと思いまするけれども、とにもかくにも根本的に考えて二重投資である。しかもそれが将来に非常に不安を残す産業であるということ、それらを無視してセメント工業に着手することには、私たちはどうしても納得がいかぬのであります。私はもう一度建設省の方で再検討をしていただきたいということを切に大臣に要望いたしたいと思います。
  88. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 私はセメント工業については全くのしろうとでありますから、そういうことはお尋ねしません。セメント工業が成り立つか成り立たぬかということは専門家に研究してもらわなくてはなりませんが、私手元東北興業株式会社セメント工場建設計画反対陳情書というのを受け取っております。セメント会社六社、反対の理由は六項目書いてある。いろいろ書いてありますが、軽工業局長の見解を聞いておきたいのは、これをごらんになったと思うのですが、この反対陳情を受けられてどういう感想を持っておられるか、正直なところを一言伺いたいのであります。もしセメント会社の六社の方々が相当の国費をつぎ込んで、国策会社セメント工場を建てるというのは失敗であるから、国費の乱費であるので、それはおやりにならぬ方がいいというほんとうの親切心であるならば、珍しい良心であります。ところが非常にひねくれて考えると。これをやられたのではセメント業界に相当の打撃があるからという意味ならば、このセメント工場は成功するという反論が出てくる。こうゆう二つの考え方があるのですが、そういうことは非常にまずいからおやりにならない方がいい、国費の乱費になる、失敗しますぞ、それよりもほかのことを考えた方がいいというならば、非常に良心的な考え方です。ところがそれをやられたのではセメント業界に相当の打撃があります。それでこれを一つやめてもらいたいということであれば、セメント工場は成功するから打撃になるこういうふうにも考えられる、これは受け取り方が二つある。私どもはセメント工業界の今日までの行き方に対して相当不満を持っておる。もしこれを審議するならば、各セメント会社の原価計算をここに出してもらって、それから審議を始めたいと私とも思っおるが、この陳情書に対してどういう感想を持たれたか、卒直に一つこれだけ聞いておきます。
  89. 吉岡千代三

    ○吉岡政府委員 東北地区におけるセメントの能力は、現在のところ約百二十万トン程度でございまして、これに対する需要は八十万トン程度でございます。ただし北海道を合せますと、能力が百六十万トン程度でございまして、需要は百三十万トン程度である、来年度になりますと、もう少し生産能力の方が多くなる。こういう現状でございます。従いまして全国的に見れば、千数百万トン中の二十数万トンでございますが、東北地区を中心とする業者といたしましては、競争者の現われることは好まないということは御指摘の通り関係があると思います。ただ通産省としての立場から申し上げますと、先ほど申し上げましたように、この種の工業製品につきましては、そう厳密に地区の観念ということを考えるのは、多少行き過ぎではないか。ただいま申し上げましたのは、東北地方に所在する工場能力でございますが、他のたとえば関東その他に所在する工場におこましても、東北地方におきましてセメントを担当量貯蔵する、いわゆるサイロと申しております貯蔵設備を持っております。従って地区の観念は、そう私どもとしては重きを置いていないわけでありますが、業界の立場としては競争者の現われることはもちろん歓迎しないところであろうと思います。しかし通産省の考え方といたしましては、全国一千万トン以上の能力に対して二十万トン程度の増加でございますから、これは全体の需給関係にそれで直ちに影響するというようには考えておらないわけであります。従いましてその点はおのずから、業界はどういう気持で出しておりますか、私どもとの間には立場の違う点があります。ただ先ほど申し上げましたように、今後相当競争も激しくなるであろうという際に、それに対抗して十分に採算をとっていかれる上におきましては、十分なる御努力なり御研究を必要とするであろうということは、率直に感じておる次第でございます。
  90. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私はこの際、委員長に動議と申しましょうか、要望でもけっこうですが、それを提出してみたいと思います。と申しますのは、先ほど来承わっておりますると、本法案に関しまして、答弁者側にも悪意のある程度の相違があるようでございまするし、また法律のもとになるところの開発銀行の融資その他の計画につきましても、審査がいまだ十分に行われていない。その結果はここでまだ発表ができない。こういう状態のようでございます。また承わっておるところによりますると、与党の内部でさえも意見の統一ができていないようでございまするが、これをここで早急に結論を出すということは、やや困難ではないか、こう思われるわけでございます。そこでぜひ東北地方開発についてはだれしもらぶさかではないが、この事業たるや完全を期さなければならない。過去においてすでに失敗を繰り返した会社であるとすれば、一そうのことなお慎重を要するではないか。この意味においてぜひ一つ、もう一度意見の統一なり答弁の統一なりをよくはかっていただいた後に、あらためて審議をする。その際には要求されたところのデータも完全に出していただく、こういう姿においてあらためて審議されんことを要望するわけでございます。
  91. 神田博

    神田委員長 諸般のデータの要求がございますが、これは政府におきまして十分一つ急いでお出し願いたいと思います。  それでは暫時休憩いたします。  午後零時三十六分休憩      ————◇—————   〔休憩後は開会に至らなかった。〕