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西村(力)
委員 私、今
政府提出になっておる
土地収用法の一部を改正する
法律案に対しまして
質疑を必要としておったのでございますが、
委員長はこれを許可賜わりませんので、この
政府提出の
土地収用法の一部を改正する
法律案に対しても、いささか言及することをお許し願いたいと思うのでございます。
土地収用法は、御
承知のように財産権と、それを公共のために収用する、そういう
立場とが調整されなければならない、こういうことでありますが、今回
政府提案になりましたものは、ただ一方的に土地収用の手続を簡素化して、それを容易ならしめようとするのみでありまして、そのように起
業者側の利益をはかったならば、それと調整をとるための被収用者側の保護の
措置は、当然バランスとして均衡をとる必要上、この
法案に盛られなければならないことであると思う。ところがそういう点がいささかも盛られずに、実際何でも簡略に取り上げることができればいいのだ、こういう思想でもって考え、そういう政治的意図のみ勝っておるという点に、私たちは
政府提案の
改正案に対して了解ができず、反対をせざるを得ないという
立場になってくるのでございます。しかも前々の
委員会あるいは合同
審査における
政府側の答弁は、実際その確信に満ちた答弁がなされない。たとえばいろいろな一業認定を、都道府県知事にあったものを建設大臣に取り上げるということになっても、都道府県知事に子、の認定をまかしておった、都道府県知事の権限の
範囲内に置いておったということによって生じた不便、そういうものが具体的に何ら説明されない。あるいはまた土地収用の
事業認定の
申請書のようなものを
提出する場合における
意見書もつけるという問題についても、実際きょう
提出になった資料を見ますと、せいぜい七十日間を要したということであって、全然その
意見をとることができなかったという資料は出ていない。であるから、とにかく七十日を要してもその
意見書を付することができたのだから、そういうものを付さなくてもよろしいというような簡素化をはかる必要も何もないのじゃないか、こう考えられてくるわけなのでございます。
なお、この前法務
委員会との合同
審査において明瞭になりました
通り、起
業者にある地位を与える、協議という段階を省略することができるということにすることは、法理論上もこれは正しくないという
意見が出され、それに対して明確なる答弁がなかった。そんな点から、私たちはやはり
土地収用法に対する別途の考えに立つ改正君を
提出せざるを得ない、こういうことになって参ったような次第でございます。
私たちの改正の
要点は、第一番目に、この
事業認定が公正に適正に行われるということを何らかの形によってこの段階でチェックしていかなければならない、こういう
立場に立って、もちろんこの
事業認定をやる場合においては、建設大臣にせよ、都道府県知事にせよ、
相当慎重に考慮せられるでございましょうけれども、われわれは、建設大臣が
事業認定をやる場合には、土地調整
委員会、都道府県知事にあっては、その収用
委員会の
意見を徴して
事業認定の処分を進めなくてはならぬ、しかも必要ある場合に公聴会を開催するという現行規定を、必ず公聴会を開くべきである、かように修正をいたそうとするものでございます。とにかく収用の第一階梯としての
事業認定は、
相当その地域住民の
意見を聞き、あるいは
相当権威ある
機関の
意見を聞き、慎重を期することが、結局その後の
紛争を回避することができ、期間的にも短縮し得られるものであると考える。そういう
意味でこの改正を考えたのでございます。
次にこの
事業認定に対して、土地所有者あるいはその地域住民の福祉を確保するために努力しておる市町村長、そういう人々が慎重なる手続を経た結果であるけれども、なおその
事業認定処分に満足することができない、こういう場合には、再
審査を
申請することができる、かようにいたそうとするものでございます。現在の再
審査請求は、御
承知の
通り起
業者が手業認定の拒否の処分を受けた場合、再
審査を請求することができる、こういうことになっておりますが、これでは起
業者だけが一方的に保護されておる、こういう調和のとれない規定だと申すのでございます。そのために、
関係市町村長あるいは土地所有者も、その再
審査を
申請し得るものとして、その均衡をはからんとするものでございます。
第三番目には、土地収用
委員会の
委員は七名であって、予備
委員が二名、こういうことになっておりますが、予備
委員の数を五名以上という工合に改正しようとするものでございます。そのわけは、この収用
委員の除斥の規定がありますが、機械的な除斥ばかりではなく、やはり
関係人あるいは土地所有者が、その収用
委員が公正なる審理ができないという判定に立った場合には、その忌避を申し立てることができるという工合にすることが必要であると考えた次第でございます。そのことは、実際の経験から言いましても、たとえばある県の土地収用
委員が、県
会議員が二名、商工
会議所会頭が一名、銀行の頭取が一名、大学の学部長が一名、このような
構成になっておる、事促そういうことがありました。そういう場合、県営中業の
事業進捗がうまくいかないために、結局伝家の宝刀である土地収用
委員会にかけた。私たちはその
関係者の代理人として出て参りましたが、県
会議員の諸君あるいは大学の学部長はいいとして、商工
会議所の会頭は、その商工
会議所は年々五百万円
程度の県費の助成を受けている、その会頭なんです。しかも起
業者は県なんです。あるいは銀行の頭取は、県の金をほとんど大部分預託している銀行であり、その利害
関係は県と全く密接にしている、こういうような
事情にあったのでございます。そういう
事情を考えてみると、今自分の権利である財産権を侵されようとするこの土地所有
関係人から見れば、どうも公正なる審理というものは期待できない。あの人に公正な審理をやるのだと言われても信用ができない、こういう気持にならざるを得ない。それでありますから、機械的な除斥規定に加えまして、忌避を申し立てることができるという条項はぜひ必要であると私たちは思量した次第でございます。そのために忌避ということが行われて、収用
委員会がその者を除いて忌避申し立てが妥当するかいなかということを
審査した結果、一応この収用
委員会からはちょっと遠慮してもらおう、こういうことにだんだんとなっていきますと、
委員会構成の定足数に欠けることも考えられるので、予備
委員というものを増員することが必要だ、こういう工合に考えたようなわけでございます。
次に損失補償の問題でございますが、この損失の補償については個別
払いの原則というものがございます。しかしもっと大事な点は、憲法第二十九条の第三項に規定されているように、正当なる補償によって財産権は侵すことができる、侵した場合には正当なる補償をしなければならない、こういうことになっておりますが、正当なる補償というものは
一つである。正当なるという補償が、三つも四つも差があるということは、これはあり得ないはずだ。ところが現実にそういうことが行われている。しかも砂川とか小牧の飛行場の土地収用に当っては、協力奨励金なるものが支給されている。これは土地の補償ではない。しかし個別
払いされてその個人々々に金が渡る限りにおいては、総括して補償額、こう称せざるを得ない。ところが、実際に条件派と称する諸君が
政府の施策に協力したということに対しておほめにあずかったというか、そのごほうびとして、
一般市井の売買において行われる博労的な包み金的な協力謝礼金が支給されておる一方、自分の生活を守ろうとして
政府の
立場と国民の
立場というものを対等であるんだ、財産権の保障をわれわれが主張することは当然である、こういう民主主義の原則に立って主張した人面が、土地収用
委員会にかけられて、最後に強制的に取り上げられる、こういう場合にその協力謝礼金は出ないということになる。そういうことになればこれは損失の補償に対して軽重がつけられる。しかも最も大事な点は、
政府の施策に対して協力した者に対しては応分の金が出る、反対した者にはそれが出ないということになれば、結局
政府の
方針がいつでも善であるというようしな考え方、国民はこれを守らなければいかぬというような考え方になって、結局
政府の
方針がわれわれの考え方なりあるいは暮し方なりに押しかぶさってくるファッショ政治の形になってくるのではないか、こういうことではほんとうの民主主義をくずそうとするものだとわれわれは憂えざるを得ないわけです。そういう
立場からやっぱり損失の補償に当っては、あくまでも公平算定の原則が貫かれなければならない、こういうことを考えましてその条項を加えたような次第でございます。
私たちとしてはこのほかにもいろいろ問題点を持つのでございます。たとえば
委員の
構成にしましてももう少し
一般耕作農民の
立場を守り得るような経済とか政治とかいうものに精通するばかりでなく、農民の生活の実感をおのれのものとしておるような者も加えられるというような
方法もぜひ考えられなければならぬと思っておりますし、収用
委員会も第一審において最後の
決定であるがごとくならないように、第二審的
中央土地収用
委員会というような形態のものを考える必要があるのではないか、あるいは土地収用
委員会にこの
事業認定が適正であるかいなかということを判定する権能を与えるべきである、これがほんとうに国民の意思によって
政府あるいは都道府県、そういうものの意思をコントロールする形になるんだ、私たちはその土地収用
委員会に
事業認定そのものに対する適否の判定がなし得る権脂があるとするなら、私たちは法によって自分の地位を守ろうとする権利を待つとともに国民の代表として、人民の代表者として土地収用
委員の諸君によってわれわれの権利が守られるんだという形が出てくる、かように考えましてそのような改正をも考えようとしたのでございますが、なかなか時間的に余裕がありませんので、そういう点は割愛いたしまして、さきに申し上げましたような四点にしぼって本
改正案を
提出したような次第でございます。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。