○橋本
参考人 御指名をいただきました橋本でございます。私は
鮎川道路調査会におきまして、
道路経済という出のを少し勉強さしていただきましたので、そういう立場からこの
法案に対する
意見を御
参考までに申し述べたいと思います。
お手元に要点を書きましたガリ版を差し上げてございますが、それにつきまして、考えますところを申し上げます。今日
わが国の
道路網
整備の声は朝野をあげて盛んでございますが、実態がほとんど動かない状態であります。これは一に
予算不足というように断わっておるようでございますが、この際、その
予算不足を傍系的に援助するという意味で
民間資本を動員して、
有料道路を作るという考えのもとに、用意されておりますこの二つの
法案に対しましては、日本の
道路網が
整備される方に寄与するという意味において、私は賛成をするものでございます。ただし一たび成立した
法案となれば、その立法者の意図がどこにあったか、それを作るときの雰囲気が何であったかというようなことは、時が移り人が変りますれば自然に離れて参りまして、あとはそれを引き継ぐ人がその法文の文字によって
運用をするということになると思いますので、私はこの
法案の文面に現われた
範囲に対して、考えを申し上げたいと思います。
その第一は、
一般道路網
整備計画と今回の
有料道路計画との
関係について、考えるところを申し上げます。現在の
措置法に対して、ただいま用意されておる
措置法を新法といっておられるようでありますから、その新法第三条によって一体いかなる場所を
有料道路にするのかということを見てみますと、有利な近道を
有料道路にすると書いてあるように思われるのであります。その際旧法には、工事費を償還すべきものを
有料道路にするというふうに書いてあったのでありますが、新法にはそれが落してあります。その理由は文面だけでは私はわかりません。しかしまた
有料道路は
公団だけが作るのではなくて、
管理者である府県でも作ることができるということがあとの条文にありますが、そのときは工事費は償還を要するものに限ると指定してあります。その考え方のわかれ目というものは文面からは察知できないのでありますけれども、とにかく近道でそれを
交通に利用することが非常に有益であるというようなところを
有料道路にすると書いてあるようでございます。ところが一般の
道路網
整備計画、国家の
道路網の
基本は、そういうところこそ力を入れて早くやるということになっておりますから、どっちがそれを取り合うのかということについては、文面だけでは判定ができません。そういうところもございますけれども、結局この新しい考え方は、大原則となる
道路整備網の補助的位置にあると考えますので、原則は国家
基本道路計画というものがあって、その中の一部をとりあえず
民間資本を導入して
整備するものと考えておる次第であります。
それで、
道路公団が過去四カ年においてすでに完成されたものが十三本、目下工事中のものが十六本というふうに、短い
道路を盛んに
有料化されておる。こういう
仕事をだんだんと今後十年二十年にわたって進めていかれるつもりであろうが、もしそういうことで進めていかれるならば、
有料道路は、一旦
有料制をもって出発いたしますならば、おそらく十五年、二十年というような長期にわたって
有料制がしかれなければ、
建設費を回収することは困難であろうと思われますので、年々二十本ずつふえて参りましても、十年、十五年先には数百区間の
有料区間が日本の
道路網上に散在する。かような姿が予想されるのであります。そうしますと、これはちょうど古ぼけた網のところどころを新しい糸で修理していくというような
道路網ができ上りまして、網全体の経済効果はあまり期待できないというおそれがあるのじゃないか。それで、一般通路網が、ある区間をまとめて
整備するときに、その一
部分として両方ともに国費をもって
無料公開の
道路も新しくなるか、もしくは補修されるが、それの
一環となるところが
有料制で新しくなっていくというならば、その
部分は網全体として新しくなるから強くなるだろう。しかし、ただ思いつきで拾い縫いをするようにちょいちょいとあちらこちらを
有料道路制によって
整備されたのでは、大へん使いにくい。たとえば百キロを走りますのに、その間に三キロ、五キロ、十キロというように二、三点ちょいちょい新しくなっても、そこを走る
トラックは一番悪い条件に応ずるように荷役梱包をしなければならないわけでありますから、新らしさが何もありがたみを与えないで、ちょっと三キロ、五キロ、十キロぐらいは気持のよい所を通れますけれども、あとはがたがたであるというようなことでは、せっかくこの
道路法で
道路網を
整備されるということが言葉だけに終って、実がつかないということになるのじゃないかと心配いたします。それで
一般道路網の推進とあわせて一本になるような進め方をされなければならない。今回の
有料道路計画というものは、もちろん、原案者である
建設省もそのような考えで進めておられることとは思いますけれども、文面から見ますと、その辺が明らかでないのでありまして、そういうところを何とか補足していただきたい。たとえば第三条第三号といたしまして、
有料道路として
整備すべき
路線の区間は、
道路網
基本整備計画中に策定された区間またはそれに準ずべき区間といったようなふうにでも示されたならば、今のような心配が文面の上からだけでも解除されてくるのではないかと思うのであります。これによりましてせっかく出発するであろうところの
有料道路制が、全体の
道路網の経済効果に一ぱいに寄与するように進めていただきたいと思うのであります。
第二といたしまして、
公団の業務種目とその規模につき申し上げます。
公団設立の
目的は
公団法第一条と新法第一条に明らかにされておりますように、
有料道路の
建設保守ということがはっきり掲げてございます。ところで
公団法第十九条にはさらに
有料自動車駐車場の
建設と
管理、それから副業的な考え方によりまして、第五号に
公共団体の委託により
一般道路の工事等を行うと書いてあるのでございます。これは
公団の
運営、
仕事の変動ということを見越しまして、安定というか、この副業の中に含まれると思うのでありますけれども、
公団の機能がその両法の第一条に示されておりますように
有料道路の
建設、保守のほかに、このように
有料自動車駐車場の
建設と
管理あるいは請負業者と同一のごとき立場において
一般道路工事を行うというようなことを取り上げますならば、そこに
公団の
資金と機能というものが横に流れる、主
目的以外に分散流失いたしまして、本業がおろそかになるのではないかというようなことが懸念されるのであります。それからまた、どのような
仕事は
公団でやり、どのような
仕事は民間でやるというようなことの分け方などにつきましても、必要でない複雑な
関係を生ずるというようなこともあるのじゃないかと考えます。それで
公団はこういう副業的なことは一応やめることにしまして、今の第三号及び第五号を削除されまして、この
有料道路の
建設保守ということにまっすぐに貫徹を期されたらどうかと考えるわけであります。
次に規模について申し上げます。これは第一に申し上げたことと重複いたしますけれども、この
公団の
仕事の幅、どこまで
仕事するかという
仕事の大きさについて推定する根拠がございませんので、先ほど申し上げたように幾つもつなぎ目のある使いにくい
道路網が十年、二十年後にでき上る。数百区間の門ができる。本来大道無門として、天下の公道としてだれでも通れるはずのところに門が数百もできて、そこで切符を買って乗ったり降りたりしなければならないというような
道路が日本の
道路になるのではないか。そのような
道路は大へん使いにくいまずい
道路だ。おそらく経済計算から考えましても非常に割の無いものだと思われますので、このような誤解を避けるために、この
道路はそういうものではないのだ、たとえば
有料制というものは損得
いかんにかかわらず、十五年とかそういうところで切り上げるのだ、最大幾つしか日本には
有料道路区間というものは存在しないから使いにくいはずはないといったようなことが明瞭に出ますように、何かそういうことにつきまして
公団はどのような
路線をどのような幅までやるのだ、そしてそれは作ると同時に自然に開放されていって、ネット・ワークとしてはそう使いにくいものにはならないし、経済効果上も十分期待できるというような
仕事の幅をつけ加えてもらいたいと思います。
次に第三といたしまして、
有料道路の開放条件について申し上げます。これは同じく今のあとを受けるのでございますけれども、法文中には「
料金の徴収期間」なる字がところどころにありますから、それが過ぎますれば当然自動的に無料開放となるということはもう疑いのないところでございます。しかし新法第三条によりますと、収支の
予算の変更は単に届出をすることになっている。そうしますと
予定より
収入が少かったから
料金徴収期間を延ばしたいということの根拠になるのじゃないか、それから第五条には維持修理費大なる場合は
料金徴収期間を延長すると書いてあります。そうしますと維持修理費が高い
道路はずっと引き続き
有料期間に繰り越されていく。それから構造物ですから十五年、二十年たてば大いにいたんでくるでしょう、そこで大修理を要する、あるいは
交通量の増大によりまして拡幅しなければならぬ、あるいはそれを使ってみての欠点によって
相当大きな修理を要するというようなことになりますと、これもなかなか無料開放に至る時間が長引くようである。それから第二十八条には、
公団の取得した
道路を構成する敷地その他の物件は
公団に帰属すると書いてありますけれども、その開放のことが書いてない。そうするといつまでも国民は
公団財産の上を走ることになるから、そうすれば人の財産の上をただで走るということにはならないので、これもまた
有料期間を延長するような解釈を呼ぶ。このようなことを考えますと、いつ
有料道路が無料開放になるかということは文面からでは察知できない。それに対しまして、何かこういうものを総合されて
有料道路は次の条件で
無料公開するという条項でも差しはさんでもらいまして、しかもそれには理由の
いかんにかかわらず最大限といったような仕切りをつけてもらう方が、
道路を使う方の側にいたしましても、
管理をする方の側にいたしましても、いろいろの経済上の
計画にも響くところがあるだろうと思うのでございます。また全体の
道路経済を考えるものの立場といたしましても、そのようなはっきりとした
一つの条件をおろしておいていただくことが、非常にものを考えるについて頼りになる資料になる。そういうことが漠然としておって
有料道路がだんだんふえていくのでは、日本の
道路経済網の
計画算定ということはできなくなってしまうのであります。
その次は
有料道路の経理
計画において申します。これは先ほど
参考人の皆様からもお話がありました
ガソリン税の問題が
一つあるのであまりすが、三十一年度
予算を拝見しますと
道路債券五十億円、
資金運用部から十億円、
ガソリン税二十億円が
予定されておるようでございます。この
道路債券と
資金運用部のお金は
民間資金の
運用でございますから大へん立法の趣旨に沿うものと思うのでありますけれども、これが年々歳々累増いたして参りまして、百億ずつ参りますと十年で千億というような
道路債券が出る、まあそのころまでにはほとんど償還もされておらないでありましょうから、千億というようなけたのもの、あるいはもっと
事業拡張するといたしますとそれの二倍、三倍というような
民間資金の導入ということも予想されることになるでしょうし、そういうようなことは安直にただ要るから集めるというだけの考えでいくものだろうかということが
一つ懸念されるのであります。それから
ガソリン税は、先ほどもお話がありましたように
ガソリン税そのものは無料
道路を
建設するための原資として設定されたものでありますが、それを使って作った
道路の上を再び
料金を払って通るというような複雑な印象を納税者に与える。今後
ガソリン税を拡張する、もっと大
道路工事をやるためにもう少し
ガソリン税その他から
民間資金をつのるというような場合にはこういうものの扱いは非常にガンになると思われますので、これは大いに
予算措置上の再考が望ましいと思うのであります。
次に
有料道路の経理
計画についての第二点でございますけれども、この法文を拝見いたしますと、
公団の経費に対する
政府補助、元利償還に対する
政府の保証、
道路債権の
政府の引き受け、長期、短期にわたる貸付というふうに、実にたくさんの
財源のひもがついておつのでありまして、
公団は金については少しも苦労のない、ありがたい世帯になるように見えるものであります。従来お役所で製造されるこういう団体は金の苦労はないようにできておるのが多いようでありまして、そういうことが原因ではないでしょうけれども、非常に楽々と
経営される、従ってほかの真剣な
経営体に比べますと
経営的
成績のあがらない例がちょいちょいあったようでありますので、この
公団もそのようなことにならないように、十分に経済的な効果をあげられるようにお考えを願いたいのであります。ことに過去四ヵ年におきましては、大体三〇%近くの赤字を立てておるような十三本の
道路を作って
運営している。それは
公団がやったのではありませんので、そうならないようにあらためて
公団が設定されるということがこの法文から見受けられるのでありますけれども、しかし従来
地方におきましてもあるいは国でおやりになったのでも、
有料道路は非常に散漫にいいかげんにやったから赤字が出たということではなかろうと思うのであります。担当者はそれぞれ最善を尽しておやりになったにもかかわらず、すでに三割の赤字が出ておるということは、今後の
公団の
仕事に対しまして大いに何らかを示すものであろうと思われるのでございます。しかも先ほど申し上げましたように赤字が出れば
政府がしりをぬぐう、足りなければ貸してやるというようなひもがついておるので赤字を恐れないというようなことになったのでは、せっかくの
公団が経済的に国民の
道路交通関係の期待に沿わないというようなことが懸念されるのであります。但し
公団は金もうけ
機関ではありませんので、
道路整備を
促進する
機関でありますから、お金をもうけるということのために全力を振うということはむろん必要ではないでしょう。しかし
予算を組んでお
仕事をさせるその
予算面を全うするように、赤字というようなものをああまり出さずに、きれいなお
仕事をされるように切望するわけであります。特に
公団が
地方の
道路財源が不足しているのに対して総花的にその原資をばらまく
機関として見られるというようなことになったならば、大へんこの
公団に期待しておる
道路利用者側から見ても不満なものになるのじゃなかろうかという心配をするものでございます。そういうことがこの
公団の経理について心配されますので、大へんこういうことを申し上げるのは失礼でございますけれども、御
参考に供したいと考えております。
次に第五点といたしまして、本案成立に伴う
道路基本整備計画の去勢の危険について申し上げます。今回の
道路公団法というものは、先ほど申し上げましたようになかなか本格的な
道路整備が進まないからそれを助けてやろう、補助的な考え方から一
部分先行しようというので立案されているものと思うのでありますけれども、何かこの
道路公団ができますと、急いでやらなければならないところ、大事なところは片端からこの
公団が解決する、そうするとほかの方はもうあまり急がぬでもいいのじゃないかというふうな錯覚を生ずるのじゃないか、従って
道路関係者がここ数カ年特に
道路整備を叫ばれておった、その熱意が去勢されるような危険を感ずるものであります。そういうことになっては、今回の
道路公団が一生懸命働きまして年々百億程度の
道路整備を進めるといたしましても、現在拝聞千億以上の通路
整備を一気呵成にやらなければ、日本の経済が年々三千億、四千億円というふうに計算されるくらいの
道路上の損失を生じておるものを追いかけ切れない、焼石に水であります。それで
道路整備を大いにやらなければならぬという気合いを、この
道路公団という小さな動きによっていなされるというような危険を感ずるのであります。そういうことのないように御配慮をいただきまして、この
道路公団の進め方を御
研究を願いたいと思うのであります。
第六に、
公団設立の、必要性と
運用についてということで申し上げます。以上のような見方を総合いたしまして、
道路公団は、国家
道路網の
整備につきましての
基本的な動きが、声だけ非常に大きく実体が動かないというときだけに、仕方がないから
民間資本を若干導入いたしまして、その先駆として出発するという意味において価値がある。しかし将来の日本の
道路網が
有料道路において大いに
整備されるということであれば、これはひさしがおもやにかわってしまうということになるのではないか、こう考えられます。従ってこの本格的な
整備がだんだんと進行いたしますならば、
公団の
仕事はなくなる、こう考えるべきではないかと思うのであります。国家
予算をもってやりたいところをやれないから、仕方がないから
民間資本を若干活用して
公団が働く。国家の
資金をもちまして本格的な
道路整備をいたしますならばその必要がなくなる、こういうふうな考えをいたしておりますので、
公団の役割は、国の
道路基本計画の一
部分として、当てがわれたワクにおいて十分に効力を発揮されるようにお考えを願いたいと思うのであります。それにつきまして
公団が今回出発されて
基本計画の一部を進められるならば、すでにきまったところをおやりになるのでありますから、一応の
調査が済んでおる、あるいは
建設計画がお金を待っておるところを
実施するということになるものと思われますけれども、
公団法が成立して
予算が裏づけされたから、それではというのであわててあちらこちらを工事されるということにならないようにお願いしたいと思うのでございます。
参考でございますけれども、先般ペンシルバニア・タウン・バイクを
建設した首脳の方が鮎川さんとお会いになりまして、
有料道路の進め方についてこういうお話がありましたそうでございますからここで御報告いたしますけれども、少しまとまった
道路を作りますときには、三年くらい
調査計画をしたものを二年くらいで工事をするというような程度の考え方で扱うものだそうであります。そういうふうに向うではやっておると言っております。そういう二、三年も
調査してあと二、三年で工事をするということを次から次に重ねていくわけでありましょうけれども、それが政権とかそういうものの
影響によりまして常にぐるぐると方針が変るようではとてもやっていけない。ですから独立した、ある
範囲委任された事項においては安定した機構と理念とを持った
道路建設主体というものがあって、ゆっくり落ちついて二年も三年も勉強して、その結論に基いて工事をしていくというものでなければいい
道路はできない、経済的な
道路はできないと言っておられます。今回生まれる
公団もまたたくさんの
道路を
研究計画されまして、それを
実施に移されるでありましょうから、もちろんただいま私が申し上げたようなことはもう皆さんも聞きましたことではありましょうけれども、落ちついて
仕事をされるように安定した態勢をとられまして、十分に御活動なされることを希望するものであります。大へんわかり切ったようなことをくどくどと申し上げまして恐縮でございましたが、私から申し上げることはこの程度であります。