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1956-02-23 第24回国会 衆議院 建設委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月二十三日(木曜日)     午前十時十二分開議  出席委員    委員長 徳安 實藏君    理事 内海 安吉君 理事 荻野 豊平君    理事 薩摩 雄次君 理事 瀬戸山三男君    理事 前田榮之助君 理事 三鍋 義三君       大高  康君    久野 忠治君       中村 寅太君    二階堂 進君       松澤 雄藏君    山口 好一君       島上善五郎君    楯 兼次郎君       中島  巖君    山下 榮二君                 山田 長司君  出席国務大臣         建 設 大 臣 馬場 元治君  出席政府委員         建設事務官         (計画局長)  町田  稔君         建 設 技 官         (道路局長)  富樫 凱一君  委員外出席者         建設事務官         (計画局東北興         業株式会社監理         官)      小林 忠雄君         専  門  員 西畑 正倫君     ————————————— 二月十七日  委員松澤雄藏辞任につき、その補欠として中  曽根康弘君が議長指名委員に選任された。 同日  委員中曽根康弘辞任につき、その補欠とし  て松澤雄藏君が議長指名委員に選任された。 同月二十三日  委員原彪辞任につき、その補欠として山田長  司君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 二月二十日  積雪寒冷地域における冬期道路交通確保に関す  る法律制定請願渡邊良夫紹介)(第八一  三号)  府県道藪原高山線等の一部を国道に編入の請願  (唐澤俊樹紹介)(第八一四号)  第二国道名豊線改修工事施行に関する請願(  久野忠治紹介)(第八一五号)  蒲生町の都市計画街路事業促進に関する請願(  池田清志紹介)(第八一六号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  東北興業株式会社法の一部を改正する法律案に  ついて、商工委員会連合審査会開会に関する  件  道路整備特別措置法案内閣提出第二三号)  日本道路公団法案内閣提出第二四号)  東北興業株式会社法の一部を改正する法律案(  内閣提出第三四号)     —————————————
  2. 徳安實藏

    徳安委員長 これより会議を開きます。  道路整備特別措置法案及び日本道路公団法案の二案を一括して議題といたします。  まず参考人指名の件についてお諮りいたします。両案に対する参考人といたしまして、道路審議会委員金子源一郎君、日本トラツク協会会長小野哲君、国土開発中央道調査審議会委員平山復二郎君、鮎川道路調査会幹事橋本元三郎君、以上四名を参考人指名するに御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 徳安實藏

    徳安委員長 御異議なきものと認め、さように決しました。
  4. 徳安實藏

    徳安委員長 次に連合審査会開会の件についてお諮りいたします。商工委員会より当委員会に対し、東北興業株式会社法の一部を改正する法律案について連合審査会を開きたいとの申し出がありました。この申し出をいれ、商工委員会連合審査会を開会するに御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 徳安實藏

    徳安委員長 御異議なきものと認め、さように決します。     —————————————
  6. 徳安實藏

    徳安委員長 それでは前会に引き続き両案に対する質疑を行います。
  7. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 前会の委員会におきまして、日本道路公団法案の御説明を申し上げましたが、第十五条の説明を留保させていただきましたので、本日御説明申し上げることをお許し願いたいと存じます。  第十五条は、監事以外の役員代表権に対する制限についての規定でありまして、公団総裁、副総裁または理事との利益が相反する事項については、これらの役員はすべて代表権はないものとし、最も公平な立場にある監事公団を代表することといたしたのであります。これは副総裁及び理事総裁の任命にかかわりますので、連帯することが可と考えられるからであります。
  8. 徳安實藏

  9. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員 ただいま御説明のありました十五条についての解釈は、了承いたすことにいたします。それは今の御説明で明らかになつたと思いますが、もう少しざつくばらんに申し上げると、総裁、副総裁あるいは理事、こういう役員のうち、一人でも公団と利害が反するような事項については全部代表権失つて、その事項については公団監事がそれを代表する、こういうふうな趣旨と了解してよろしゅうございますね。
  10. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 その通りでございます。
  11. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員 もう一つただしておきたいのは、この前資料として、例の「特定道路整備事業の現況」をいただいているのでありますが、私はこの前資料提出を要求いたしましたときに、現在やつているもの、あるいは済んでいるもの、結局現在有料道路として使用しているもの、あるいは工事中のもの、その他まだ確定はしないかもしれぬが、一つ構想として、あるいは具体的に取り上げられつつあるもの、あるいは将来そういう有料道路としてすみやかにこの道路公団特定道路としての整備をした方がいいというものの資料も要求しておいたのでありますが、その資料は出ておりません。これはなかなか出しにくいと思いますが、このほかに相当あるということは了解できるのでありますが、その点はどうでしょうか。
  12. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 お話の三十一年度以降において新規として取り上げていくべき有料道路の案は、ただいまわれわれとしては持っているわけでございますが、そのうちどれを三十一年度にとるかというようなことは、まだ申し上げる機会でございませんので、留保させていただいたわけでございますが、構想といたしましては、今後有料道路として取り上ぐべきものは、相当延長の長い、また交通量の非常に多いところを取り上げて参りたい考えでございまして、東京—大阪弾丸道路などを含めて考えますと、約三千億くらいの事業量有料道路として取り上げ得るものでございます。
  13. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員 私が今やつている以外のものの構想をお尋ねしたのは、何も昭和三十一年度に新しいものはどういうところをやるかということをお尋ねしているんじやありません。今後の問題でありますから、この委員会で一々具体的にそういうことを取り上ぐべき問題でないと思います。その点はいいのでありますが、こういうことを一応確かめておきたいのは、結局道路公団事業、これは機構関係がある、こういう考えがあるからであります。というのは、この前、道路公団人員と申しますか、機構について簡単に御説明を承わつたのでありますが、総裁以下の役員、そのほか大体七百名ないし八百名の公団職員を必要とする、こういうふうな御説明があったのであります。そこでこの前の御説明で、たとえば公団中枢部における構成と申しますか、今の考え方総務経理計画工事管理、そういうふうな部制と申しますか、大よその仕事内容考えておられる、こういうことで私が一応さらに御意見を承わつておきたいのは、本案役員として、公団総裁、副総裁おのおの一人、それから理事五人以内、監事二人以内。これが局長も御存じの通り原案ではいろいろ変つたのであります。最初には七人以内の理事というふうに原案がなっておりましたが、今度の提案されましたこの法律案では五人以内となっておる。それは、理事はどういうことをやるべきものであるということを考えながらこの案を立てられたと思うのでありますが、私の考えでは、人間を何人くらいにした方がいいかということは、非常にむずかしい問題であるとは思いますけれども、最初に七人以内の理事を予定されておつた。これは仕事内容事業規模、こういうものを頭において、役職員その他の人員構成というのは当然考えなくちやならないと思うのです。それで仕事内容を前からお尋ねしておるわけでありますが、現在やつておるほかに約三千億くらいの仕事を一応頭に置いて、人員その他の構成考えておられるということです。私の考えでは、先般できました住宅公団においても理事は五人以上ということになっておりますが、とにかく現在は五人でやつております。人間はできるだけ少くて効果を上げるのがこれは当然のことでありますが、道路公団の場合は、住宅公団とは多少考え方違つて道路の場合は最も技術重点を置かなくちやならない。技術中心であろうと思うのです。そういう意味でお尋ねしておるのでありますが、職員と申しますか、そういう方も技術が大部分になると思うのです。と同時に、いわゆる役員の間にも、技術を相当重視しなければならない問題だと思っております。そういう意味最初に七人で原案をずっと出しておられたのを今度五人にされたのは、先ほどの事業内容とそういう部面とどういうふうに考えてこういうふうにされておるかということをお伺いしておきたいと思います。
  14. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 お話のように、原案におきましては理事七名以内ということになっておつたわけでございます。その考え方は、本部に五部程度の部を設けて、おのおの理事に一部を担当してもらうということにいたしまして、本部においては理事が五人、そのほかに東京大阪等仕事量の多いところには理事である所長をおきたいという考え方から、七人以内と考えたわけでございます。大阪のごときは、今後高速道路を実施いたすということになりますと、相当の規模のものになりますので、その考え方をいたしたわけでございますが、さしあたりはそういう事業を実施することにいたしておりませんので、理事五人以内ということで発足することにいたしたわけでございます。将来機構が大きくなるに従って、また改正していただいて理事をふやしていただきたいという考えであります。
  15. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員 当局考え方は大体わかりました。そこでこの前の委員会で御説明のありました、先ほど私の申し上げたように、総務経理計画工事管理、こういうふうな五部制を大体とりたい。それを理事の数に合せると、ちようど理事がこれに該当するであろう、こういうふうに考えられるのでありますが、この中に技術者と申しますか専門家を何人くらい育てられるつもりか。もちろん技術者ばかりでは仕事は成り立ちませんが、重点道路を作るんですから、技術中心であると思うのですが、その点はどうですか。
  16. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 技術中心になるものと考えておりますが、理事のうち技術関係の者をどれだけ充てるかということは、副総裁きまり方にもよりますので、まず三人ないし三人くらいと考えております。
  17. 徳安實藏

    徳安委員長 この際お諮りいたします。東北興業株式会社法の一部を改正する法律案をあわせて議題として質疑を行いたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 徳安實藏

    徳安委員長 御異議なしと認め、さように決しました。  それでは質疑の通告がありますから、順次これをお許しいたします。三鍋義三君。
  19. 三鍋義三

    三鍋委員 私は前回の委員会におきまして、本二法案審議を進めていく過程といたしまして、道路行政の大綱につきまして大臣に御質問申し上げようとしたのでございますが、大臣が当日お見えになりませんで、政務次官から御答弁願つたのでございます。この御答弁は必ずしも私の理解することのできないものでございましたが、きょうはこの二法案中心といたしまして、審議過程におきまして大臣の御所見を承わりたいと思います。私がただいまから御質問申し上げるその内容におきまして、途中ほかの委員会関係で中座した場合もありますから、あるいは重複する点があるかもしれないと思いますが、これはあらかじめ御了承願いたいと思うのでございます。この二法案は非常に重要な意味を持っておるものと考えますので、この道路整備特別措置法が制定された過程を、いま一度われわれは振り返つてみる必要があるのではないかと考えます。御承知通り、この法案衆議院を二十七年の三月二十五日、参議院を同年の五月の二十八日に可決通過しておるのでございます。その問題となつた点は、第一は道路公共性という点であります。第二には無料公開根本原則と本制度の限界こいう点についてであります。第三には道路財源について、第四には本制度一般交通政策との関連について、第五には料金徴收業者負担の問題、そして第六には料金徴收方法、こういったことが問題点であったと思うのであります。これに対しまして当時の建設大臣であったところ野田さんは、どのような答弁をされておるかと見ますと、第一に本制度は臨時特例的な措置であつて道路行政根本を変えるものではないということ、公共事業現状をもってしては道路整備が十分な進捗を期しがたい。特に一カ所に多額工事費を要する個所に対しては、工事費の性質上経費を集中しがたく、これが交通の重大な隘路として残つておる状況であること。第二番目には根本道路財源については、公債発行の道は開かれているが、十数年来その企図はなされなかったこと、ガソリン税目的税とする問題もあるが、これは一般税制の問題として処理される必要がある。また道路予算増額等については今後も極力努力をする。第三点といたしまして、有料道路は主として既設路線の改良をはかるものであるが、運輸当局との連絡には十分留意をする。第四番目に関係業者負担は、受益の限度内に限るため、負担の過重を来たすものでない。そして第五点といたしまして、料金は必要な個所にゲートを設けて徴收する見込みである。また運輸委員会から建設委員会に対する要望事項といたしまして、有料道路制度は、基本、建前としては好ましくないが、道路の急速なる整備をはかるさしあたりの処置として必要があるならば、他の高速度交通機関との調整をも考慮し、総合交通政策の一環としての道路政策に基いて施行すること。従って隧道及び長大橋梁のごとく明確なものに厳格に制限するように考慮しなければならないというように言っておるのであります。次に参議院において附帯決議がなされております。「本案道路無料公開原則とする我が国道路立法精神に馳背するものであるが、道路現状に鑑みて止むを得ざる一時的の措置として、これが運用には長大橋長大トンネルのごとく、集中的に巨額の工費を要するもの、或いは経済効果に富む産業道路並びに急施を要する観光道路等、いずれも国民が等しく要望するもので、而も短期間に料金徴收により、容易に收支の償う個所を厳選の上、適用することとし、」云々、このように附帯決議がなされておるのでございます。以上は現行法であるところ特別措置法に対する審議経過の大要であります。私がこれを前提として掲げましたのは、先ほども申し上げましたように、この法案審議に当って、一つのものが生まれいずる過程を振り返ってみる必要があると思うからであります。  そこで私がお伺い申し上げたいのは、参議院においてなされましたこの附帯決議であります。これは非常に重要な意義を持っておるものと考えるのであります。参議院ではこの附帯趣旨を確実に実行することができるかどうかというしっかりしただめ押しのもとにこの法案が成立しておるのであります。もちろん時代の進歩とともにこれがいろいろ変化改良されていくことは私はこれを認めます。しかし根本的な考え方がゆがめられていくことは私は承知できないのであります。どうも政府やり方は、今までのやり方を見ますと、徐々に既成事実を作っていって、そうして当初の立法精神というものをゆがめていくという事例があまりにも多いのであります。たとえば憲法問題にいたしましても、再軍備の問題にいたしましても、警察予備隊はオタマジャクシかカエルかの論議から保安隊となり、あるいは自衛隊となり、現在はりっぱな軍隊となっております。そうしてこれが海外派兵の問題まで論議される段階に至っております。徐々に変化していく過程におきましては大きな変化を私たちは見ません。しかしそれを中間を切断して頭としりと比べてみたときにここに大きな変貌を来たしておる。こういうやり方は私は承知できないのでございます。新設されようとしておる公団法道路整備特別措置法立法精神及び附帯決議に反するものと思うが、大臣の御所見を承わりたいのであります。
  20. 馬場元治

    馬場国務大臣 道路無料公開であるべく、この原則は古来からの法則でありまして、私もこれを承認するにやぶさかでございません。参議院でも現在のわが国道路状況、従って交通運輸観光、その他の状況から考えをいたしまして、さきにただいまお話立法をいたしまする場合、現状をもってしてはこの無料公開原則だけではとうていわが国の実情に沿わないものである。こういう観点からいたしまして、ただいまお話のありましたような立法に賛意を表したものであろうと考えます。附帯決議趣旨はよくわかるのでありますが、衆議院並び参議院を通過いたしましたこの法律の成立の当時と現在の状況は、むしろ自動車の数は激増をいたしておりまして、交通はますます窮屈になっておるから、道路整備は急を要することしきりでありますことは御承知通りであります。参議院附帯決議趣旨を体しながらこの無料公開原則例外といたしまして有料道路整備いたしますことが、国家並びに国民の要求に応ずる道である。かように確信をいたしましてこの法案提出いたし、審議をお願いいたしておる次第であります。
  21. 三鍋義三

    三鍋委員 ただいまの大臣の御答弁は私は理解できないのであります。これに対するところの私の考え方は逐次審議過程においてただしていきたいと思います。  次に現行道路特別措置法との関連についてお伺いしたいのでございます。第一点はこの法案現行道路特別措置法整備したものであって、法の趣旨は変らないのであるかどうか。第二点は現行法には新設は含まれてないが、この法案によって新設道路対象としなければならなくなってくる、その必然性というものについてお尋ねいたします。
  22. 馬場元治

    馬場国務大臣 ただいま提案いたしております法案との間に趣旨の上の変更はないつもりであります。  なお道路新設の問題につきましては、道路整備特別措置法にも道路新設とうことをうたっておりますので、今度の場合の提案と別に変りはないつもりでございます。
  23. 三鍋義三

    三鍋委員 この道路新設費用は三十一年度予算には全然見込まれていないと私は思います。このようにして当然なすべきことを公団に転嫁していくのではないかという点に私はやはり大きな疑問を持つのでございますが、これも以下御質問申し上げる過程においてただしていきたいと思います。  次に道路行政原則の点から御質問申し上げたいのでございます。その第一点は道路国民日常利便に供され、またなくてはならぬものである。しかも国家財源によって主として建設されるところ公共性の保たれるゆえんがあると思うのでございますが、この法案による道路は、道路公共性無料公開原則を阻害するものではないかと思うのでございますが、道路行政上どのようにお考えでございましょうか。
  24. 馬場元治

    馬場国務大臣 さきにも申し上げました通り無料公開原則であるべきことはお説の通りであります。ただ現在の日本道路の情勢よりいたしまして、有料道路を設定いたし、これによって道路整備をいたしますると同時に、これに要しました費用回收をはかり、維持修理をもはかって参る、この方法をとらなければ日本道路整備は容易でない、かように考えましたのでこの方式をとることにいたしました。これはひとりわが国ばかりでなく、諸外国におきましてもこの種の有料道路建設は着々進んでおりまして、その成績を上げておりますことは三鍋さんもよく御承知ところであろうと存じます。
  25. 三鍋義三

    三鍋委員 諸外国の例をお引きになりましたが、私はこれは全然観点が違っておると思います。これにつきましてはまた後ほど御質問いたしたいと思います。  次に第十三国会におきまして、現行法審議の際に、当時の野田建設大臣は何と言っておられるか、この制度は臨時特例的な処置であって、道路行政根本を変えるものではないと言っておられるのでありますが、三年経過後にさらに本案提出されるということは臨時特例的な意義を失っており、しかもこの法案によって道路建設が促進されるとすれば、道路行政根本的変革ではないか、このように考えるのでございますが、大臣の御所見を承わりたいのであります。
  26. 馬場元治

    馬場国務大臣 元来無料公開原則といたしますので、道路有料にするということはこの例外であると申さなければなりません。もしわが国の財政が許し、事情が許しまして、有料道路を設定しなくとも無料公開道路だけで十分道路整備ができるという事情になりましたならば、もちろん有料道路は撤廃いたしたい、かように考えております。その意味におきまして御了解を賜わりたいと思います。
  27. 三鍋義三

    三鍋委員 結論は財源の問題になってくるのでございます。この財源に対するところの見解の相違、私たち政府並行線でありましてとうてい一致しない点であることを非常に残念に思うのであります。それではお尋ねいたしますが、この法案道路道路法にいうところ道路をさしているのでありますか、主として高速度を要する道路建設は含まれていないと解釈してよいか、もし含むとすれば一般交通政策との関連をどのように調整されるのか承わりたいと思います。
  28. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 この法律に規定いたしております道路道路法道路でございます。
  29. 三鍋義三

    三鍋委員 次に道路財源についてお尋ねいたします。多額工事費を要する個所対象として本法がその機能を持っておるものである、こう考えるのでありますがどうでございましょう。この法案が施行されることによって、現在の道路費が圧縮されていくという危険性考えるのでございますが、そういう心配はないでございましょうか。一般会計その他から道路源財を今後も確保していくところの自信が大臣におありでございましょうか、お尋ねいたします。
  30. 馬場元治

    馬場国務大臣 道路公団ができますことによって、一般道路整備制約を受けるのではないかという御心配のように拝聽いたしました。私どもの考えでいたしますれば、この道路公団を作りまして、有料道路の実施をいたしますことによって、道路整備を飛躍的に発展せしめたい、かような目的をもって本法案の御審議を願っておるのであります。道路公団ができましたために、一般道路整備制約を受けるというようなことは毛頭予想もいたしておりません。
  31. 三鍋義三

    三鍋委員 ただいまの大臣の御答弁を信頼申し上げたいと思います。  次に法案内容について若干御質問申し上げたいと思います。第一条の目的においてでありますが、道路法趣旨と反していないか、道路法道路というものは、第一点というものは、第一点といたしまして、一般交通の用に供する道である。第二点といたしまして、道路法第四条各号に掲げるものの二つを要件としておるが、この法案にある道路は、料金を払うもののみに通行させるのであるから、その負担にたえ得る特定通行者という解釈からするならば、一般無料公開原則に反する立法措置ではないか。徒歩、緩速、高速という交通実体による制限特定と見られないけれども、この法案のごとく、財の負担能力において制限するということは、道路法に反するものではないか、このように考えるのでございますがいかがでございましょう。
  32. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 有料道路道路法に言う道路を実施いたしますが、道路法の特例として実施いたすものでございまして、道路整備のためやむを得ずとる処置であります。
  33. 三鍋義三

    三鍋委員 とりわけてお尋ねしたいのは、第十二条において、その第二項にトンネル及び橋並びに渡船施設道路用エレベーターその他政令で定める施設については、利用する人からも料金徴收することができるようになっておるのでありますが、これは明らかに道路公共性に反すると思うのであります。かりに渡船施設のあるところに並行して有料橋ができたときに、渡船をするよりこの橋梁を利用したいのは人情でありますし、また生命保護の安全性から考えましても、だれしも選びたいところであります。こういう場合にも、料金徴收することができるという法をたてにとりまして料金をとられたのでは、私は著しく道路公共性をゆがめるものであると考えるのでございます。今渡船施設によって対岸に渡っているそういう個所に、この有料橋ができた場合、この渡船施設はどうなるでございましょう。  もう一つ、この有料橋を作った場合、どうも橋を通るのにはお金がかかって通れない、安全で便利であるけれども通れないという人がありますときに、渡船施設をこれに並行して作られるのかどうか、これをはっきりしていただかないといけないと私は思うのでございます。局長さん、いかがでございますか。
  34. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 この十二条の二項はごく特殊の場合でございまして、われわれも利用する人から料金をとるということはなるべく考えたくないわけであります。たとえば関門のエレベーターのようなものは御理解願えると思いますが、そのほかに、そういうトンネルあるいは橋で、人間を通すための特別の施設を要するものがあろうと思うわけであります。たとえば若戸に橋をかけますと、これは歩行者に対してはエレベーターを用意しなければならないかと考えますが、そういう場合には人からも料金はとることができるようにしたいという考えでございます。
  35. 三鍋義三

    三鍋委員 新しく有料橋を作りましたね、その場合に人の問題はどう処理するか、渡船施設をされるのかされないのか。
  36. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 普通の場合には、人から料金をとらないことにいたしたいと考えております。
  37. 三鍋義三

    三鍋委員 わかりました。なお、十二条の「政令で定める施設」というのは、どんなものをいうのでございましょうか。人が利用するもので、この法案に明示した以外で、どんな施設をいうのでございましょうか。
  38. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 この法にきめられておる程度が今考えられるものでございますが、将来できるものがあるかもしれませんので、このように規定いたしております。たとえばエスカレーターというようなものを作るようなことがありましたならば、そういうものがこの中に入るわけでございます。
  39. 三鍋義三

    三鍋委員 次に第三条第一項の一、二にいっている「当該道路通行者又は利用者がその通行又は利用により著しく利益を受けるものであること。」また「通常他に道路の通行又は利用の方法があって、当該道路の通行又は利用が余儀なくされるものでないこと。」という趣旨の認定についてお尋ねしたいのでありますが、「著しく利益を受ける」というこの受けるということは、その経済的効果をさしているのでありましょうか。もし経済効果といつうことを取り上げて考えるとしましたときに、かりに著しく利益を受けなぐても、距離の短縮はわずかしかでないけれども、直線道路であるとかあるいは舗装が完備してあるとか、そういうことで車で利用する者の人間感情によって新しい有料道路の方が行きやすい、こういう場合も起るのでございますけれども、著しくという認定をされるのは大へんむずかしいと思うのでございますが、この点どういう御解釈でございましょう。
  40. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 著しく利益を受けるというこの利監でございますが、これは主として経済的の利益で計算できるものをさしておるわけでございますが、著しく利益を受けるという著しくはどうであるかということになりますが、この判定はそれぞれの個所についていたすわけでございまして、こういう有料道路ができてもその方が便利だというところはこの一に当てはまると思います。
  41. 三鍋義三

    三鍋委員 次にお尋ねしたいのは、現行有料道路では沿道に住居を有する者、または常時利用者に何か無料パスといったようなものでも出していられるのでございましょうか。第二十三国会におきましてはたしかパスを発行したいといったような意思を表明されておったやに承わるのでございますが、お尋ねいたします。
  42. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 お話通りでございます。
  43. 三鍋義三

    三鍋委員 出しておるのですか。
  44. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 出しておるところもございますし、それからその区間にそういう沿道に人家のないところなどは必要ないのでありますが、人家のあるところなどは出しておるところがあります。
  45. 三鍋義三

    三鍋委員 その近くに人家がなくても、その他に住居を有する人でそこを通らなければならない人があるわけですね。そういう者には当然出すべきだと思うのでありますが、出しておるのでございますか。
  46. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 沿道に家を持っておる場合には出しておりますが、沿道でない場合については出しておりません。ただし歩行者は無料で通しております。
  47. 三鍋義三

    三鍋委員 帰り車、これらもやはり料金をとるのでございましょうか。これは大へん大事なところだと思うのでございますが……。
  48. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 帰り車からも料金徴收いたしております。
  49. 三鍋義三

    三鍋委員 そこらへんのところちょっと納得いかないところでございます。  次にお尋ねしたいのは、有料道路ができることによって並行するところのほかの道路管理が乱れるのではないか、こういう心配がありまして、ますます有料道路にたよらざるを得ないという結果になると思うのでございます。この法案提出の腹の奥底にあるものをさらけ出して、いうならばむしろ並行道路管理を怠っておけばこの成果が上るのではないかと、こういうちょっと人の悪い考え方と言われるかもしれませんけれども、有料道路にあらざる並行道路もりっぱに当然国の責任として管理すべきであると思いますが、これがりっぱにできた場合、今後はせっかく作った有料道路にぺんぺん草がはえる結果になるのではないかという心配がある。何も一見営業行為のようなむだな道を作らなくてもよかったといったような後悔をすることにならないかどうか、これをお聞きしたい。
  50. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 在来の道路の維持管理につきましては万全を尽す考えであります。また並行道路をこしらえましてそれが有料として成り立たないようなところには計画いたさないつもりでございます。
  51. 三鍋義三

    三鍋委員 もちろん計画されるときにはそういう御考慮はなさるべきでありますけれども、実際やってみるとなかなか思うようにいかなかったという場合が予想されるし、現在もあるのではないかと思うからの質問でございます。  次にお尋ねしたいのは、通行者のうち駐留軍人、軍属、家族等の通行、あるいは政令で定める自動車等とはどんなものか。国または公共団体の自動車が全部政令によって除外されるのか、またたとえば陳情団がバスに乗って東京へやってくる、あるいはどこかへ行くといった場合、ゲートで阻止されるのではないかということが一応考えられるのですが、そういうことはありませんか。
  52. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 駐留軍の車からも料金徴收いたしております。それからこれはバスからも料金を取るわけでございまして、中のお客さんのいかんによってその料金を取る取らないはきめないわけでございます。陳情団の場合は、陳情団がバスで来られますと、お客さんでありますからこれは別に阻止することはないわけでございます。また歩いて来られれば無料で通すことになるわけであります。
  53. 三鍋義三

    三鍋委員 そうであろうと思います。それでは次にお聞きします。争議団が通る場合はいかがですか。
  54. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 有料道路といたしましては歩行者は無料で通すことに考えております。またバスで通行する場合にはバスから料金を取ります。
  55. 三鍋義三

    三鍋委員 その点を将来悪用されないように私心配するからお尋ねしておるのでございます。  次に第八条第五項におきまして「第三条第二項第四号若しくは第五号に掲げる事項又は元利償還年次計画のみを変更しようとするときは、建設大臣に届け出ることをもって足りる。」となっております。この四号の「工事の着手及び完成の予定年月日」は単なる届出で事足りるとあるが、単なる届出制では不完全ではないかと思います。工事の着手と完成予定年月日が著しい天災地変による不可抗力によって絶えず変更されることにでももしなると、許可だけを受けてあとは放置するといったような政治的な悪用の取引の具にされる懸念がある。また五号の「收支予算の明細」については、工事予算が許可制になっている以上これも許可制にする必要はないか。頭は押えてあるから内容はどうでもよいということ自体が矛盾であって、少くとも公団あるいは道路管理者におきまして、かかる法が適用される以上は許可の原則を貫くことが望ましいと思います。事務上煩雑であり不便の場合が多いといっても、ここらあたりから道路建設に醜聞が出るようになるのではないか、出るか出ないかの分れ道があると思うのでありますが、これに対する道路局長の御所見を聞きたい。
  56. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 第三条の二項の四号、五号は、この変更の場合は届け出ることだけでよろしいようになっておりますが、六号、七号で「料金」及び「料金徴收期間」については許可を得なければならないことになっておるわけでございます。従いまして工事の着手及び完成の予定年月日等が単なる変更であればこれは届出だけでよろしい、と申しますのはこの料金料金徴收期間で押えられるからでございます。五号の「收支予算の明細」についても同様でございまして、これは料金なり料金徴收期間に影響があるということでございますから、その方面で押えることができるわけでございます。
  57. 三鍋義三

    三鍋委員 次にお尋ねいたしたいのは、不慮の事態の発生によって償還が非常に困難になる、こういう場合が考えられると思うのでございますが、こういう場合に何か減免の措置をお考えになっておるかどうか、お尋ねしたいのであります。
  58. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 ただいまお話の不慮の事態というのは災害のことなどがあるのではないかと考えますが、災害につきましては公団法の第三十条で補助ができるように規定してあります。
  59. 三鍋義三

    三鍋委員 次に、第二十七条に「建設大臣は、公団に対して、公団管理する道路管理に関し必要な勧告、助言又は援助をすることができる。」このようになっております。この条文は、公団道路管理者としての権限を代行するのでありますから、第二十六条ともからみ合せまして、大臣は勧告、助言ではなくして、ある程度強く指示するところの必要性があるのではないか、このように考えるのであります。私はこういうところにこの公団法の性格のあいまいさを感ずるのでございますが、これに対する御見解を伺いたいと思います。
  60. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 建設大臣は第二十六条におきまして公団を監督するわけでございますから、また道路法の七十八条におきましても「建設大臣は都道府県又は市町村に対し、都道府県知事は市町村に対し、道路を保全し、その他道路整備を促進するため、道路の行政又は技術に関して必要な勧告、助言又は援助をすることができる。」と規定してあるのでありますから、その監督のほかに必要な勧告、助言、援助を建設大臣公団に対してできるようにいたしたのでございます。
  61. 三鍋義三

    三鍋委員 二十八条は、「公団が取得した道路構成する敷地又は支壁その他の物件は、公団に帰属する。」ということでありますが、道路管理者との関係はどうなのでございましょうか。私はこれは重要な条項だと考えるのであります。この御所見を聞きたいと思います。
  62. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 「公団道路新設又は改築のために取得した道路構成する敷地又は支壁その他の物件は、公団に帰属する。」と規定してありますので、道路構成する敷地及び道路構成しておるものは公団の所有になるわけであります。ただこの道路管理権は、公団がその道路建設費及びその他の費用を償還した後は道路管理者に渡すわけであります。だから所有権は公団に残りますが、管理権は管理者にいくわけでありまして、この敷地その他の物件は、公団の財産として持たれるわけでございますが、公団解散の際には国の所有になるわけでございます。  第二十八条の二項に「普通財産である国有財産は、」「公団に無償で貸し付けることができる。」ということになっておりますが、こういうことでもし公団が解散されました場合にはそれらの財産はそれぞれの道路管理者に無償で貸し付けることができるわけでございます。償還が済めばその道路はいわゆるただのものになるわけでございますが、これをただで県なり指定市に譲渡することは適当でない、やはり公団の財産として持っておって、解散のときに処置すべきものと考えたからかように規定しておるわけであります。
  63. 三鍋義三

    三鍋委員 私はこの条項は非常に問題があると思うのでございますが、先へ進みたいと思います。  次に道路公団法案につきまして若干の御質問をいたしたい。第三条第二項「公団は、建設大臣の認可を受けて必要な地に従たる事務所を置くことができる。」こうあるのでありますが、どういう地域に何カ所ぐらい予定されておるのか、その他の地域に対しては業務をどのようにして所管されるのか、あるいは府県へでも委託されるのかどうか。地方はただでさえ国の業務の負担が多いときにますます加重にはならないだろうか、財政上の負担は絶対に地方にかけるようなことはないのかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  64. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 従たる事務所の名前はまだきまっておりませんが、たとえば支所というような名前になったといたしますと、この支所を東京、名古屋、大阪、福岡の四カ所ぐらいに置きたい考えであります。その下に各工事現場に工事事務所を置くことになろうと考えております。公団は国または地方公共団体に委託することもできるように規定してありますが、委託いたしました場合には、その委託された国または地方に負担をかけないように公団費用負担するように考えております。
  65. 三鍋義三

    三鍋委員 第二十五条二項「公団は、毎事業年度、経営上損失を生じたときは、前項の規定による積立金を減額して整理し、なお不足があるときは、その不足額は繰越欠損金として整理しなければならない。」その項でございますが、公団の利益というものは一体どういうものか、Aという有料道路の利益とは何か、借入金とかあるいは利子、これらを完全に償還いたしましてその後になお何カ月か何年間か引き続いて料金徴收することによって初めてここに利益というものが出てくるのではないかと思うのであります。料金徴收期間を決定するのにどのような配慮がなされておるのでございましょうか。もし利益を見込んで徴收期間を延長されるとするならば、これに対して、その場所によっていろいろ違いましょうけれども大体の基本的構想をどのようにお考えになっておるかお聞きしたいと思います。
  66. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 この第二十五条の二項は、毎事業年度についてこういう勘定をすることをきめておるわけでございますが、料金徴收期間につきましては、建設費並びにそれに伴う諸経費を償還いたしましたならば、これは無料にする考えでございますが、公団の経営状況ともにらみ合せて多少の延長はやむを得ないと考えております。
  67. 三鍋義三

    三鍋委員 その延長の期間がやはり問題だと私は思います。それではお尋ねいたしますが、A有料道路がなかなか初めの目的通りに成績が上らない。しかしB道路が非常に成績が上りまして、そして初めの予定よりもずっと早く短縮されて償還ができた、こういった場合、当然料金徴收期間を短縮さるべきであると思うのでございますが、短縮されるのかされないのか。それとも予定の徴收期間をずるずる延ばしていって欠損の伴うA道路に補填されるのか。こういう操作が当然出てくる必配があると私は思うのでございますが、そこにまた公団のねらいがあるんじゃないかと思うのでございますが、私はここに割り切れないものを感ずるのでございます。これに対する御所見をお聞きしたい。
  68. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 お話のように各個所について料金徴收状況が同様であることは期待できないわけでございます。ある個所は非常に成績がよく、ある個所は非常に成績が悪いということが起ろうと思いますが、それらを総合的に運営するために公団ができるわけでございますが、これは全体が総合的に運営されることが望ましいわけでございますが、さりとて非常に成績のよろしいところがいつまでも料金をとられるということは不当でございますからその延ばし方にもおのずから限度はあろうと存じます。できるだけ早く無料にしたい考えで進めておるわけでございますから、それらの線から徴收期間を延ばすといいましても当然に限度が出て参ることと考えております。
  69. 三鍋義三

    三鍋委員 当然に出てくる限度、これは一応うなづかれますし、またそう言わなければならぬでしょう。しかし私はやはりそこに問題があると思うのです。結局ずさんな計画のためにB道路の受益者が不合理な負担をかけられるという結果になると思います。そこでやはりこの料金徴收期間というものをどのように設定するかという論拠をしっかりと示してもらいたい、ずるずると言葉巧みに、言い過ぎかもしれませんけれども、うまい理屈を並べて、そうして半永久的に料金をちょうだいするといったような、そういう方向にどうもいく心配があるのでございます。この点しっかりとそういうことのないようにしていただきたい。これに対する御所見を、これは大臣から一つお聞きしたい。
  70. 馬場元治

    馬場国務大臣 ただいま局長から申し上げました通りさようなことのないように全体をにらみ合せまして、善処して参るつもりでございます。
  71. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員 関連して。今の三鍋さんの御質問の要点は非常にむずかしい問題で、しかも非常に重要な問題だと私は思います。これをどういうふうにやられるつもりか。公団を作るのは、一応プールするという考えでありますけれども、今の三鍋さんのお話のように、自動車が主たるものであろうと思いますが、日本全国の自動車が、どの有料道路でも同じ程度に利用するのではないのです。たとえば、ここに表が出ておりますように、現在有料道路として料金を取っておる道路は相当あるわけでありますが、これには非常に成績のいいところと、成績の悪いところがあります。成績のいいところは、日本全国の利用者が利用するのではなくて、大体その地方に関連のあるバスその他が利用するわけです。そういう人たちが始終利用して、料金はとうに建設費をペイしておるのに、ほかの成績の悪いところ負担をいつまでもかぶるということは、きわめて不公平な、ありがた迷惑なことです。たとえば、これは今始まったばかりでありますから、全部の成績だとは言えませんけれども、大川橋という橋は御承知通り、予定より一二〇%以上の成績を上げておる。ところがずっと低いのになると一〇%、そういうところが済むまで大川橋の料金を取られたのでは、あそこを利用する人たちは、いつまでも人の迷惑をかぶっていくということになるのです。公団全体からいうと、プール計算にすればいいかもしれないけれども、道路原則からいくと、それは非常に困るのです。それではどういうふうにきめるかということになると、むずかしい問題ですけれども、一一ペイしたところを落していったのでは公団が成り立たないという考え方もある。この点は非常にむずかしい問題でありますけれども、重要な問題ですから、もう少しはっきりした考えを持って——きょうお答えができればけっこうですけれども、それでなかったら、この次の機会にでもよくお打ち合せなさってから、答えていただきたい。これは一つの例でありますけれども、この西海橋が済むまで大川橋の料金を取るということになったら、西海橋を利用する人と、大川橋を利用する人は全然違うのですから大へんなことになると思いますが、これはどういうふうに考えておりますか。
  72. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 原則として、償還したら無料にするという考えで進めておるわけでありますが、全体として多少プールしなければならぬということもあろうかと思いますから、それで期間を明示しておりません。ただ考え方は、ペイしたら無料にしようということでございます。
  73. 楯兼次郎

    ○楯委員 ちょっと関連して。しろうとがこういう質問をするのはおかしいのですが、ただいま各委員の御質疑を聞いておりまして、この道路公団法を作る一つのねらいが、採算の凹凸を調整する、採算のプールをするというところにあると感じ取れるわけです。従って今瀬戸山委員から御質問をされました点については、よほど慎重に御答弁をしていただかないと、この公団法審議というものがうまく進まない。私は公団を作る一つの原因が、いわゆる採算の凹凸をプールするところにあるのではないか、こういうふうに考えますが、この点どうですか。
  74. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 これは個々の有料道路について償還したら無料にするということを建前にして参りますが、公団としては全体を運営していかなければなりませんので、ペイしたら直ちに無料にするという原則原則でありますが、そうもならないことがあろうという考え方でございます。
  75. 三鍋義三

    三鍋委員 これは大きな問題だと思うのです。これに対する私たちの納得いく御答弁政府はしていただきたいと思います。  次に第三十条でありますが、「政府は、予算の範囲内において、公団に対し、第十九条第一号及び第二号に掲げる業務に要する経費の一部を補助することができる。」とあります。この経費の一部の補助は一般会計からなされるのか。本法の附則第十二条と関係はないと私は思うのでございますが、一般災害の場合と同じように補助をするのか。これに対して別に法律をもって定められるのか、補助されるとすれば、どういう率で補助を出されるのか、これをお聞きしたい。
  76. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 この三十条の補助金でございますが、第十九条の一号は新設、改築に要する費用でございます。第二号は災害復旧に関する費用でございますが、第一号につきましては、附則の十二条の補助が入るわけでございます。それから第二号につきましては、一般会計から補助をする考えでございますが、補助をする率等については、今後決定いたす考えでございます。
  77. 三鍋義三

    三鍋委員 慎重に検討されまして、こういった問題を解決される気持でございましょうけれども、私この項も非常に問題があると考えます。これに対しましては後ほどまた関連して質問いたします。  次に五ヵ年計画による道路整備公団による道路整備と何か非常にややこしいことになってくるように私は考えるのでございます。私の勉強の足りない点からかもしれませんけれども、この混淆せる、不分明な間隙に乗じまして、またいろいろな問題が出てくるのではないかという懸念がされて仕方がないのでございますが、そういう点に対する心配はないのでございますか、これをお尋ねしたいと思います。
  78. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 第十二条は道路整備費の財源等に関する臨時措置法の特例として設けられたものでございます。昭和三十一年度から三年間は、道路整備五ヵ年計画に関する道路工事に対して公団が実施するものに要する経費の一部を補助することができるという特例でございます。これは御説のように五ヵ年計画公団が実施する有料道路との間に紛淆が起らぬかという心配があるわけでございますが、これにつきましては限度を定めまして、道路整備五ヵ年計画関係のある道路工事だけに補助をするという考え方にしておるわけでございまして、御心配の紛淆はできるだけなくしたいと考えておるわけでございます。
  79. 三鍋義三

    三鍋委員 五ヵ年計画道路整備公団道路整備関係を画然と区別して、もう少しわかりやすいように御説明を願いたいと思います。五ヵ年計画中のどういう個所がその対象になるのか、御説明願えないでしょうか。
  80. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 まだ決定いたしておりませんが、三十一年度におきまして北九州も有料道路で取り上げたいと考えておるわけでございます。この北九州の現在あります道路は非常に悪い道路でございますが、これを別に線を設けまして、門司から八幡まで新しい道路をこしらえて、これを有料道路にしたい考えでございます。これは関門国道が開通いたしますと当然に予想される交通量に対処するための道路工事でございますが、これは五ヵ年計画にも一部入れておきました。これはその新しい線に沿いまして、現在の関門国道に接続して新しい道路を作るべく五ヵ年計画に入れておきましたが、これは有料道路として早くやった方がいいという考え方も成り立つわけでございます。こういうものに対しては、今後五ヵ年計画にかかわる道路工事考えておるわけでございます。
  81. 三鍋義三

    三鍋委員 ただいま北九州の例を引いて御説明願ったのでございますが、私も北九州の道路を視察いたしまして、関門トンネルとの関係から、これは切実な問題であり、妥当な線である、こう思います。しかし何も北九州だけでなくして、全国至るところにこういう問題があると思うのでございます。  次にお尋ねしたいのは第三十二条でございます。「公団はその役員及び職員に対する給与及び退職手当の支給の基準を定め、又は変更しようとするときは、建設大臣の承認を受けなければならない。」とあります。これについてお尋ねしたいのは、第十八条には「役員及び職員は、刑法その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。」とあります。従って給与その他身分の保障も、私は公務員に準じて取り扱わるべきである、このように考えるのでございますが、この点についての御説明をお願いいたします。  もう一つ、現在の有料道路に働いていられる職員の方の数、それからこれらの人々の取扱いをどのようにされようとしているのか、これをお聞きしたい。
  82. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 三十二条でございますが、その役員及び職員に対する給与及び退職手当は、国家公務員及び民間事業の従事者の給与その他の条件を考慮して、適正に定めるように考えておるわけでありますが、これは公務員の給与よりも上回ることになろうと考えております。  それから現在従事しておる職員の数でございますが、直轄においては二百五十人ほどでございます。それから県の方の職員は約四百名でございます。直轄の二百五十名のうち二百名をちょっと超える数、——これは関門の国道に従事しておる職員でございますが、この関門の仕事は地建に委託したいと考えますので、これらの職員は直ちに公団職員とはならないわけでございます。その他の残った直轄の人員並びに県の有料道路に従事している職員は、公団の方に転任と申しますか、移す考えでございます。
  83. 三鍋義三

    三鍋委員 この関門の二百名を地建が受け入れる対象になっているのか受け入れられるのか、その点について……。
  84. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 公団工事を地建に委託する関門の職員は、そのまま地建の職員として残るわけでございます。
  85. 三鍋義三

    三鍋委員 次に附則についてお尋ねいたします。第九条第二項「前項の規定により公団が国の有する権利及び義務を承継したときは、その承継の際における特定道路整備事業特別会計の資産の価額から負債の金額(前項に規定する繰入金に相当する金額を除く。)を差し引いた額は、政府から公団に対し出資されたものとする。」こうありますが、現在の状況を少しお聞きしたいと思います。
  86. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 昭和二十八年度におきまして一般会計からこの特定道路整備事業特別会計に十億を繰り入れられております。それはそのまま公団に出資されることとしたわけでございますが、なおその他の積立金が三千六百万円ほどございますので、この二項の額は十億三千六百万円くらいになります。
  87. 三鍋義三

    三鍋委員 次に第二条についてお尋ねいたします。第一点は、臨時措置法によって舗装、改築、修繕、北海道は維持をも含むんですが、この実施計画をなされておると思います。その個所公団が別途に事業をやるということができるのかどうか。これは私は非常に大きな問題だと考えるのでございます。これは臨時措置法の立法精神根本からゆがめるものであると考えます。臨時措置法で計画完成した道路は、これは無料で大手を振って通ることができるのであります。それを横合いからおせっかいにこういうものが入ってきて、しかも臨時措置法の金額の一部を補助してもらって道路ができ上ったら通行料が取られる。取らないなら話はわかりますが、今度はどうしても取らなければならないでしょうこれは私にはどうしても理解できない点であります。この点につきまして御答弁をお願いいたします。
  88. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 五ヵ年計画にきめられております道路有料道路でやる場合のことを申されておるのかと存じますが、それは五ヵ年計画にきめられております道路を全部有料道路にするということは、これはお話のようなことが起ろうと思います。先ほどの問題に関連いたしまして、いわゆるガソリン税から入った金は有料対象にいたさない。これは償還を必要としない金でありますから、それからは料金をとらないことになります。その金を合せて有料道路をやるということになりますと、結果は料金が安くなるということになって現われてくるわけであります。また道路計画するに当りましては、一級国道、二級国道につきましては道路管理者と協議し、その他都道府県道、指定市の市道につきましては、管理者の同意を得るということにいたしておりますが、そういうことで五ヵ年計画に載せられてあります道路につきましては処置いたしたいと考えております。
  89. 三鍋義三

    三鍋委員 それは所定のいろいろの合法的措置をとられるだろうと思いますけれども、私はやはりこれは根本的に臨時措置法の精神を踏みにじっておるものであると思うのでございます。私はさき大臣に対しまして政治の欺瞞性を突きました。前回の委員会において一くれの砂糖にたかるアリのようにと表現いたしましたのは、この臨時措置法の財源根本精神をだんだんと虫ばんでいくところ政府やり方について義憤を感じているからであります。地方道路税の行方は一体どうなっているのか、その実態を確認する余地もない、また今このような道路公団なるものによってねらわれておる。これは絶対に承知できないのであります。今ここで見ますと、全国乗用自動車協会からもこれに対する陳情が来ておるのでございます。当委員会におきましては、保守党の方といえども私の尊敬する人が非常に多い。そして正論を常に吐いておられると思いますが、このように臨時措置法の特例を設けることが法的にできるのかどうか。私はこの点修正される必要があると思うのでございますが、大臣の御所見を承わりたいのであります。
  90. 馬場元治

    馬場国務大臣 道路現状から考えまして、何としても有料道路制度によって、しかもこれを公団方式によって経営をいたしますことが最善の道であると考えまして本法案提出し、御審議をお願いいたしておることは先ほど来しばしば申した通りであります。いわゆるガソリン税の一部を道路公団に用うることが誤まりではないかという御意見のように拝聽をいたしましたが、ガソリン税は、御承知通りに、一般道路整備に用うべく限定をせられたものであることは申すまでもありません。しかしながら、先ほど来しばしば説明をいたしましたように、この有料道路のいわゆる五ヵ年計画の一部にも充当いたしますことは御承知通りでありますので、ガソリン税目的税として設定をいたしました趣旨にも反するものではない、かように考えておる次第であります。とにかく道路整備いたしますことが緊急の要務でありますので、あらゆる努力を傾注し、この有料道路の設定、それが経営のための公団の設立によりまして万全を期して参りたい、かように考えておるのでありまして、道路整備に対する熱意につきましては三鍋委員のお心持と寸毫も開きはない、かように考えておる次第であります。
  91. 三鍋義三

    三鍋委員 道路に対する整備の熱意、この問題を私はお聞きしたのではではございません。これは当委員会におきましても私が初頭に申し上げました通り、人体でいえば血管に相当する道路を何とかしてりっぱなものにして早く整備したいという熱意はみんな一致した考えなんです。その一致した点に私は触れておるのではありません。ただこの目的税ガソリン税道路整備五ヵ年計画、これに対する考え方がだんだんゆがめられていく、実際ゆがめられていっております。私はこれをやはり道路整備促進の立場から御質問申し上げておるのでございます。  次に局長にお尋ねいたしますが、三ヵ年と限定してありますね。臨時措置法はまた延長さるべきものであると私は思うのでありますが、その延長された場合に関連いたしまして、やはりさらに延長する含みを持っていられるのか、あるいは三ヵ年限りと考えていられるのか、この点について承わりたい。
  92. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 これは三カ年と考えております。これが延長されました場合にはかような規定はいたさないつもりでございます。
  93. 三鍋義三

    三鍋委員 次に第二十六条について。道路債券が公団で発行できるということは、結果的には目的税の転稼のような形になると思います。債券の償還というものは道路利用料金からなすのでありますから、これでは道路債券の意味をなさないのではないかと思うのでございますが、これについて御説明を願いたいのであります。
  94. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 道路債券につきましては、有料道路で上る料金がありますので、これをもとに民間から資金を集めようという考えに出たものでございます。
  95. 三鍋義三

    三鍋委員 先ほど来の私の質問に対しまして、大臣及び当局は、米国の有料道路の例、あるいは西ドイツの有料道路の事例をお引きになっております。私は、アメリカの有料道路が今日の発達を見た原因というものを考えましたときに、それは、第二次大戦の自動車交通の増大ということに基くものだと思います。その第一点は、自動車輸送の長距離化ということ、第二点は、都市生活の外延的発展ということ、こういうことに伴って飛躍的に増大した自動車交通量を既設の道路ではもはやまかない切れなくなったところに発していると思うのであります。たとえば日曜にニューヨークの郊外で目的地に到達するためにはふだんの二倍、三倍の時間を要する、このようにいわれておるのでありますが、この状況のもとにあっては、新しい有料道路の登場は確かに福音であったのであります。より早く、より快適に通行できることによって、時間とガソリンの節約は言うまでもなく、これはまたドライバーの神経にとって救いでもあったのであります。何がしかの料金を払ってでも、その負担を負ってでも余りがある。こういうところ有料道路の盛んになってきたゆえんがあると私は思うのであります。これが料金の收入もまたきわめて好成績であるゆえんであると思うのであります。現在開通しているのは二千マイル、建設中のものが二千マイル、なお建設を予定されているものは五千マイル、こういった状態になっておるのであります。有料道路というものに対する観点日本とは根本的に違っているのではないかと私は考えるのであります。一本の道路ではどうしても間に合わない、だから別に有料道路を作ったところにアメリカの道路政策意味があると私は考えるのであります。だから、料金を出すのがいやだったら、あるいは急がない旅であったならば通らなくても、りっぱな道路があるのであります。こういうことを政府は考慮に入れておられるのかどうか、世の中には便乗という言葉がありますが、根本的に違った要素のもとに発展しているアメリカの有料道路を、その形だけにあえて便乗するものではないか。また世の中にはサルまねという言葉があります。これはむしろあいきょうがある。しかし軍事費を天引きして、その予算のしわ寄せをこういうところまで持ってこられては、ますます迷惑するのは国民ではないかと思います。一朝事あるときは自衛の価値さえない軍隊、しかしまだ価値のない間は安心しておられるのであります。一度自衛の実力を有するところの軍隊に成長したそのときこそは、すなわち日本は破滅の道をたどっているのではないか、こういう工合に私は考える。私たちはこの道を歩いてきたのであります、歩かされてきたのであります。この二法律においても、国の当然なすべき処置をなさないで、税金のほかに通行料をとる。歩く人からまでとって整備するといったやり方は、何としても正常な道路行政ではないと私は考えるのでございます。これに対する大臣所見は必要ありません。大へん長くなりましたけれども、以上で私の質問を終ります。
  96. 中島巖

    ○中島(巖)委員 この道路公団に対する私どもの党議も決定いたしておりませんので、はっきりしたことは申しませんが、私個人としては大賛成であります。その理当といたしますところは、昭和二十九年のわが国道路費とアメリカの道路費を比較いたしますと、ここにはっきりした資料もありませんが、かつて委員会でこの点を申し上げたのでありますが、あれほど整備のできておるアメリカにおいてすら、四十九億ドル幾らというような数字になっておりまして、一人当り一万二千円の道路費負担しておる。日本はわずかに四百何十円かの負担をいたしておる、こういうような状況で、全く現在の日本には道路らしい道路はないといっても過言でない、こういうように考えますので、いろいろ条文のことなんかについて御議論がだいぶあったようでありますが、あるゆる面から道路政策を強力に推し進めていくより日本の産業発展の道はない、こういうように大きな観点から考えておるのであります。  そこで今回御就任になった馬場建設大臣でありますが、実はこの前、私の方のここに見える前田委員からの中央道の質問に対しましても、建設省といたしましてもその他の役所でも官僚勢力がなかなか強くて、大臣が思うような意思の発表や仕事のできないというのが慣例でございましたが、なかなかすっぱりしたお考えを表明していただいて、非常に私道路行政に対して馬場建設大臣に期待するところが大きいのであります。この法案提出を閣議で決定するにも相当の御苦心があった。こういうように大ざっぱな日本道路行政といたしましては非常に不満な点がありますけれども、馬場建設大臣に対してはおせじではありませんが敬意を表しているわけであります。そこで先ほど三鍋委員からも御異議がありましたが、今回道路公団一般会計から二十億出した。これはガソリン税から出しておるというような状態でありまして、この点非常に私としては不満でありますけれども、自動者業者からとったガソリン税道路公団をこしらえて、そのできた橋と道路でまた自動車業者から通行料をとる、こういうような結果になって、まことにどうも国の体面として、外から見て不細工きわまるものだと思うのですが、しかし現在の政府の内情と申しますか、大蔵省なんかが講じておるこの実態から考えて、まあこの呼び水でもって数百億、数千億の有料道路をどんどん建設していくということになれば、これもまた実態として忍ばざるを得ぬ、こういうように私考えるわけであります。そこで政治力のあるところ馬場大臣にお尋ねと申しますか、注文をつけるのでありますが、御承知のように十六国会におきまして、議員立法といたしまして衆参両院議員全員一致して、非常に国の財政は苦しい、苦しいけれども、日本の悪い道路を急速に整備せねばならぬという観点でもちまして、ガソリン税目的税といたしまして道路整備財源等に関する臨時措置法なるものが制定された。これは御承知通りであります。しかるにその後、これだけ両院議員の多数の結集した意思表示と申しますか、応援があるにもかかわらず、建設省は朝に夕に大蔵省の言いなりになりまして、常にこの予算を削られて、そうして臨時措置法の趣旨に一致しないようなところにそれらの金が常に回っておる。道路公団の方はまだいいのです。昭和二十九年度におきましては、地方へ流した金は、長崎県なんかではその金で警察を建てておる。こういうような状態でありまして、この点は、政治力ある建設大臣は特に強力にこの状態を今回は断っていただかなければならないと考えるのであります。  それからもう一つの問題としまして、今回軽油税が新しく創設になると聞いております。この軽油税創設に対しましては根本的に反対であります。と申しますのは、軽油自動車には軽油税をかけないかわりに、自動車税をその理由でもって率を上げております。にもかかわらず、今度新しく軽油税を創設いたしまして、さうして農林水産漁業用にはその税を課せずにおきまして、自動車のみにこの税金をかける。これは非常に反対である。これは大蔵委員会に所属する問題でありますので、ここで建設大臣答弁を求めても無理だと思いますので、あえて答弁は求めませんけれども、もしこの軽油税をかけるとしたなれば、この道路整備財源等に関する臨時措置法の目的そのものと一致すべき性質のものであるから、これはそっくり道路整備費に充てねばならぬ。従って、もしかけるとすれば、ただいま言ったような趣旨道路整備財源に充てるように要求する意思が建設大臣にあるかどうか。そうして先ほど申し上げましたところガソリン税目的税をいろいろな理屈をつけて地方公共団体にやるというようなことなしに、本来の姿の国においてこれを持って、そうしてこの立ちおくれておる日本道路をよくするようにお努めになる考えがあるかどうか、この二点をお伺いする次第であります。
  97. 馬場元治

    馬場国務大臣 先ほどの三鍋委員の御意見とただいまの中島委員の御意見にあわせてお答えを申し上げたいと思います。  米国の有料自動車道路の発達につきましては、全く三鍋さんの御意見の通りであろうと思います。輸送の距離が長距離になりましたことも一つの大きな有料道路設定の原因になったに相違ありません。道路状況有料道路を設定するにあらざればとうてい交通量をさばくことができなくなったことも、また一つの大きな原因だったろうかと考えます。これは御指摘の通りであると思いますが、わが国道路状況も、御承知通りに、輸送の距離もだんだん長距離になって参ります。今日の道路状況は、ただいま中島さんから御指摘になりましたように、まことに残念ながら貧弱な状況でありまするので、何とかの方法をもちましてこれが整備拡充をはからなければならぬのは全国民の要望でございます。そこでわれわれは微力ながら道路整備に対して万全を期して努力をいたしておるのでありますが、しかもなお至らざるところ遠いのでありましてまことに残念でありますが、さりながら先ほど三鍋さんからのお言葉の中にありましたような欺瞞も何もございません。あからさまに情勢も申し上げ、皆さんの御協力をお願いいたしておるつもりであります。有料道路を通らなければ通れないというような場所を選んで有料道路を作るのじゃないか、さような考えは毛頭持っておりません。さきにも申しました通り、かつ条文にも規定をいたしております通りに、有料道路を通らないでも通れる、必ずしもその有料道路を通らないでも通過ができるというところを設定いたすつもりでありまして、そのために有料道路交通のネツクになって、料金を払わなければ交通ができないというような措置は一切とらないつもりでございます。便乗でもサルまねでもないつもりでありまして、ほんとうにまじめに道路整備に対して全力をあげておるということの衷情を御了承を願いたいと存じます。なお予算に関しまして、自衛力を持つことが誤まりじゃないか、さような費用があるならばこれを道路に投入すべしという御議論も拝聴をいたしましたが、これは問題の根本に触れた議論でありまして、残念ながらわれわれの考えておりますことと三鍋委員のお考えとは平行線的に相違をいたしておりますので、さような議論をいたしまする必要がないと思いますが、とにかく現在の状況をもっていたしましては、道路整備を促進いたしまする最善の方法と確信をいたしまして、本法案提出いたしたのでございます。どうかさよう御了承を賜わりたいと存じます。  なお中島さんの御質問でございましたが、ガソリン税を——ほんの一部でありますけれども、これを公団に交付するということがけしからぬじゃないか、ただしこれを呼び水にして道路整備ができることは趣旨においては賛成できる、こういう御意見でありましたが、まことに御理解を賜わったことを私ども感謝をいたします。でき得ればガソリン税なんかをこの方面に投入しないで済ましたいのが実は山々なのでありますが、いかんせん財政の都合もありまして、今お話のようにこれが呼び水の役目を勤めまして道路整備が進展するということになれば、大体の趣旨は同じ目的に使われるのでありますから御了承願われるか、かように考えておる次第であります。なお道路全体の整備につきまして熱意を持ってやるかというお話でございますが、関係当局ほんとうに一体になりまして全力をあげておるつもりでございます。いろいろな忌憚ない御意見も承わり、それも虚心たんかいに御意見も拝聽して、改むべきところは改めつつ、道路整備に万全を期したい、かように考えておる次第であります。
  98. 中島巖

    ○中島(巖)委員 私の建設大臣に希望するところは、建設行政以外の国全体の基本的の問題をここでいろいろ申し上げてもしようがないから、それに対しては別に触れぬことにいたしますけれども、ただいま質問のうちで、新しく創設するところの軽油税を、建設省としては道路整備の中へ——これは十六国会できめた道路整備費の財源等に関する臨時措置法そのものの精神にぴったり合うものであるから、要求するお考えがあるかどうか、この問題が一つ。  また新しい問題としまして、すぐ即答はできかねると思いますけれども、例の国土開発縦貫自動車道建設法案に対しまして当委員会で前田委員から質問があり、そしてあなたの明確な御答弁があった。新聞で拝見いたしますと楯代議士からも質問がありまして、そしてまた建設大臣の明確な御答弁があった。実際私どもはわが意を得たりと考えておるのであります。そこで問題は現在の道路法と、運輸省所管になるところ道路運送法と競合と申しますか、かみ合うようなことになる。しかも高速自動車道は法規の上からいえば道路運送法に該当するものであるけれども、これは一般常識として運輸大臣に質問する者はない。みんな建設大臣に質問し、また建設大臣もそれに対して答弁しておる。この理由というものは、かねてこういうような自動車の発達を予想しない時代にこしらえた法律でありますので、現在この時代に適応せぬ。その結果こういうようなことが生まれる。従いまして建設大臣道路運送法と道路法との調整と申しますか、これを一元化するようなお考えをお持ちであるかどうか。いつまでもこういうような状態で放置しておくお考えであるかどうか、この点を追加してお伺いして私の質問を打ち切りたいと思います。
  99. 馬場元治

    馬場国務大臣 軽油税の問題につきましては御指摘の通りにこれを道路整備に使いたいものであります。本質上そうすべきものであると考えるのでありますが、御承知通りの地方公共団体の財政状態でありますので、その方面にこれを用いようということに相なりまして、まことにやむを得ざる次第であると存じます。  次に先ほど長崎県の問題にちょっとお触れになったようでありますが、これは一時流用をしたという話を聞いておりますが、やがてまた道路に使用をいたしたそうでありまして、なお必要があれば精査の上にお答え申し上げたいと存じます。  それからいわるゆ道路法道路とそれから自動車道との問題でありますが、これにつきましては種々議論もあることでありますし、御疑念の点もごもっともであると考えますので、最近のうちに政府関係各省ともよく協議をいたしまして、意見の調整をはかるつもりでございます。
  100. 徳安實藏

    徳安委員長 楯兼次郎君。
  101. 楯兼次郎

    ○楯委員 二、三大臣に御質問いたしたいと思いますが、すでに予算委員会ににおいていろいろ総合的な交通政策につきましてはお伺いいたしておりますので、端的にお伺いをいたしたいと思います。ただいま中島委員から指摘されましたように、わが国交通政策というものはちりぢりばらばらであります。早急に何らかの方法によってこれを統一をしていただきたい、こういうふうに希望として申し上げます。  そこで第一番にお伺いをいたしたいことは、日本現状からいって、日本交通というものは、道路と鉄道と、それから例の自動車道でありますが、この三つから作っていかなければならぬと考えるわけでありますが、大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。
  102. 馬場元治

    馬場国務大臣 交通の総合的な問題についての御質問であると思います。道路と自動車道と、しこうして鉄道という御意見でありましたが、私どもは交通全体の総合的な計画につきましては、今後なおそれに加うるに飛行機あるいは船舶といった問題をも加えまして、総合的に計画を進めて参らなければならぬ、かように考えております。交通審議会等におきましても、総合的な調査並びに計画を急いでおるのでありますが、ただいま御指摘になりました道路法上の道路と、いわゆる自動車道との問題のごときも、急いで調整をはからなければならぬ問題かと考えますので、先ほどお答え申し上げました通り、なるべく早い機会にこれの調整をはかりたいと考えております。社会党の諸君の中からも、そういう私に対する好意ある、個人的なお話もありましたし、最近のうちにこれを処理いたしたいと考えておる次第でございます。
  103. 楯兼次郎

    ○楯委員 くどいことは申しませんが、経済五ヵ年計画からいきましても、現在はやりくりをいたしておりますが、もう二、三年たったならば、どうしても自動車道というものを実現しなければ円滑な輸送ができない、こういうふうに考えますので、さらに強力に御推進を願いたいと思います。  それから道路公団法でありますが、道路の改修あるいは整備についてはもちろん全面的に私ども賛成はいたしますが、この公団法が提案をせられて参りました原因の一つに、二十二国会におきまして、縦貫自動車道を私ども有志が提案をいたしました。それに刺激されまして、いわゆる自動車道と、この道路法による道路整備が混淆をされて、当初この草案ができた。こういう予感がするのでありますが、この点について、そういうことがあるのかないのかという点を簡潔にお知らせ願いたいと思うのです。
  104. 馬場元治

    馬場国務大臣 これはしばしば申し上げました通り、現在参議院に継続審議になっておりますあの法案に対処するために、競争的な立場から立案したものでも何でもありません。いかにすれば道路整備がうまくいくかということをいろいろ考慮いたしまして、単に政府の資金ばかりでなく、民間の資金も導入して、しかも一元的にこれを運営して参りますためには、現在の特別の会計制度だけではどうしてもうまく参りません。経理が別々になっておりまして、いわゆるプール計算などというものもできがたい状態にありますので、何としても満足な運営も維持も管理もなかなか困難な状況でありましたので、従来の欠点を是正して、運営の完璧を期して参りますには、どうしても公団方式によるほかに道がない、こういう結論に到達いたしましたので、この法案提出いたした次第であります。どうかその点御了承賜わりたいと存じます。
  105. 楯兼次郎

    ○楯委員 過日の予算委員会の席上で、高碕長官は名古屋—神戸間の道路計画しておる、こういうような御答弁があったのでありますが、受け取るわれわれの万から感じます点は、自動車道ではない。いわゆる人も馬も自動車も通る混淆交通道路考えられておるようでありますが、この点について建設大臣並びに運輸大臣、高碕長官等の意見が一致しておらないと私は感じたのでありますが、この点どういうことになっているか、お知らせ願いたいと思います。
  106. 馬場元治

    馬場国務大臣 私は別に高碕経企長官と意見が違っておるとは考えていないのであります。私どもの考えと同じだと考えます。
  107. 楯兼次郎

    ○楯委員 そういたしますと、高碕長官が答弁をされましたのは、この道路公団法案にいうところ有料道路であるか、あるいは自動車道であるか、この点は長官が見えませんから、建設省の見解をお伺いしたいのでございます。
  108. 馬場元治

    馬場国務大臣 私どもは名古屋の北の方から神戸に至る有料道路をなるべく早い機会に作りたい、かように実は考えております。そこでこの道路公団ができました暁におきましては、その一部分なりとも着工にかかりたい、かように考えておるのでありまして、おそらく高碕経企長官の御意見もこの点をさされたものではないかと想像いたします。
  109. 楯兼次郎

    ○楯委員 名古屋—神戸間の道路考えられておりますのは、公団法によるところ道路である、こういうふうに私受け取れるわけです。しかし今参議院に私ども提案をいたしております自動車道は混淆交通では使命を達することができません。従って今ここで大臣にいろいろなことを申し上げるより、お帰りになりまして、われわれが提案をいたしております自動車道とこの公団法によるところ道路との比較をよく御研究願って、そごのないように取り扱っていただきたいと思います。もしあそこに公団法による道路ができまして、あとであそこにだけ規格の違ったものができるということになりますと、将来の自動車道に相当影響を及ぼすものではないかというふうに考えますので、この点一つお願いをいたしておきたいと思います。それから昨日新聞で拝見したのでありますが、自民党の交通部会においては、縦貫自動車道が提案をされておる、なお建設省から公団法が出てきた、同じような性格のものに対して二つの法案は必要ないじゃないか、こういうような論議がかわされたということを新聞で拝見いたしておるわけでありますが、この点について御存じならお知らせを願いたいと思います。
  110. 馬場元治

    馬場国務大臣 自由民主党の党の方でさような議論があったことをまだ私承知をいたしておりませんが、党の建設部会かあるいは政策審議会かどちらかで、そういう議論があったのでしょうか。私まだよく承知をいたしておりません。
  111. 楯兼次郎

    ○楯委員 次にこの公団法について一点お聞きいたしたいと思いますが、私は道路整備するという目的でこの法案が出されて参りましたことは非常にけっこうだと思います。軒を貸しておもやを取られるということわざがございますが、そういう目的でせっかくこれを出しましても、窮屈な政府の財政状態からいって最後には受益者負担という方向に追いやられる、こういうふうに私は考えております。と言いますのは、公社と公団とどういう点が違うかあまりはっきりいたしませんけれども、たとえば国鉄の場合を一つ例にとりますと、一昨々年大水害が起りまして国鉄は百億近い損害を受けておるわけでありますが、独立採算制という建前から、政府からはびた一文補助されておりません。なお今国会におきましては御承知のように受益者負担という名目で固定資産税が三十六億円取られようとしております。従ってこの公団も今は整備をするんだということで参ったわけでありますけれども、将来はやはり国鉄その他の公社の例と同じように税金を取り、あるいは災害を受けた上きは受益者負担で当然お前のところでまかなっていけ、補助を出しても他と比較して少い、前例がありますのでこういう形に必ずなっていくであろうと考えまして、せっかく整備をする目的で出したのが、年数がたつに従って弊害が生じてくるのではないかと考えます。この問題が一番危惧されるのは、災害復旧の預であります。この点は各委員心配いたしましていろいろ質問をされておったわけでありますが、今私はこの三十条について具体的なことは聞きません。聞きませんが、国鉄その他の公社にとられましたような措置が必ずや将来とら回る、そういうことになりますと道路整備改修というものについては莫大な予算が伴う、工事費をめぐって相当各党が紛糾を来たすのであります。結論的に申し上げますと、そういう莫大な予算を食って、仕事政府の直接機関から切り離していく、切り捨てていく、将来はこいう結果になってくるのじゃないかということを私はおそれておるわけでありますが、この点について大臣並びに事務当局の見解を承わっておきたいと思います。
  112. 馬場元治

    馬場国務大臣 せっかく公団を作っても将来長きにわたれば本来の使命を失うことになりはしないかと国鉄に例をとっての御心配、まことにごもっともであると私は思います。そこでこれは将来長きにわたる問題でありますから、今御心配の点の起らないようにお互いに努力を続けていかなければならぬと存じます。国鉄の状況に明るい楯さんの御意見は特に拝聽すべきものであると考えまして、そういうことの起らないように経営その他について万全を期していかなければならぬ、かように考えております。
  113. 富樫凱一

    富樫(凱)政府委員 災害復旧につきましては、第三十条で補助をすることができるようにいたしておるのでございますが、お話のような心配も懸念されるわけであります。しかし他の公団全村等にはない災害復旧の補助をこの公団についてはやり得るようにしてございますので、できるだけお話のようなことがないように努力いたしたいと考えます。
  114. 楯兼次郎

    ○楯委員 具体的な条文その他については後日お伺いをいたしたいのでありますが、すでに先ほど各委員が主張されておりましたように、政府が全面的にめんどうを見ない、だからこの法案整備をするということで出されましても、私たちの見方からすれば建設省は一歩後退しておると思います。仕事からいってもそうです。公団を通じて道路を作る、そうするとあなた方の仕事はそっちの方にとられてしまう。しかも国家財政からいっても非常に窮屈であるから受益者負担に追いやられてしまう。これは三十条でその点をおそれてうたっておられますけれども、補助をとるといっても、額の分配については限度がございます。そういう点からは非常に危険であって、よくしょうと思っても、かえって自分みずからが後退をしていく。こういうことは私の短い経験ではございますが、各公団、公社の前例から見ましてそういうふうになるのじゃないかという点を非常に危惧いたしますので、こういう点も考えていただきたいと思います。こまかい質問につきましては後日に譲ります。
  115. 徳安實藏

    徳安委員長 暫時休憩いたします。午後は一時半より再開いたします。     午後零時二十六分休憩      ————◇—————     午後一時五十七分開議
  116. 徳安實藏

    徳安委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  三葉に対する質疑を続行いたします。大高君。
  117. 大高康

    ○大高委員 ただいま審議中の東北興業株式会社法の改正案について二、三質問をいたしたいと思います。  私は、勿来の関を境にいたしまして東北ときわめて近接しておる土地に生まれまして、まだそこに住んでおります関係上、東北地方の天然資源の豊富なことは承知しております。またこれが開発振興についても少からざる関心を持っておるのでございます。しかしながら、ただいま議題となっております東北興業株式会社の監理、保証に関連いたしまして、セメント工場設置につきましてはいささか納得がいかないものがありますので、それを御質問したいと思います。  東北興業株式会社の輪郭は、配布されました資料によってのみ知ることができるのでございますが、昭和十一年十月に発足いたしたというのでありますから、今日まですでに二十年の歴史を持っております。大ていの事業は二十年過ぎますと、大体一通り格好がつくものでございます。いわゆる武士の商法とでも申しましょうか、予期した成果が上らないのではないかという一まつの不安を禁じ得ないものであります。先般当委員会において内海委員より質問がありましたように、東北興業株式会社は造船ドツクの規模を持っていながら、水揚高におきましても全国有数の産地である東北地方の漁船の改造につきましては何ら貢献もなく、設備がただ捨てられておるというような話を聞きまして、私はがく然としたのであります。まことに本末転倒しておると私は思うのでございます。民間であるならば、起業いたしまして長年の歴史を持ち経験を持っている事業というものは、そんなに等閑に付せるものではございません。何とかしてこれを復興したいという気持で一ぱいであるのに、それを捨てておいて、今度はまたはやりものの新しい仕事に手をつけるということはどういうものでありましょうか。極端な例を引くならば、あたかも道楽むすこがはやりものの仕事に次から次と手をつけてその財産を蕩尽したようなものでございまして、現在セメント事業がいいからといってまた人の金を当てにして安易な計画のもとにこの事業に手をつけるということは、まことに割り切れない感が私はするのであります。そこでお聞きしたいことは、初めは直営事業が二十五、投資事業が会社数にいたしまして九十九社あったが、会社経理応急措置法に基く特別経理会社に指定されたため、直営三、投資二十九社に縮小されたといっておりますが、この最後に残った二十九社は現在どのくらい稼働しておるのであるか、また初めの九十九社のうち一本立ちになった会社はどのくらいあって、また全然引き合わないで休止しておる会社はどのくらいあるのか、詳細に御答弁を願いたいと存じます。
  118. 町田稔

    ○町田政府委員 今御質問のございました東北興業株式会社は、以前は累計いたしまして九十九の会社に投資をいたし、それから累計いたしまして二十五の直営でやって参ったのでございますが、先般も内海委員の御質問にお答え申しましたように、この会社はもともと社債を発行いたしまして、それによりまして事業資金を得まして、投資をいたし、直営事業を経営いたして参ったのでございます。ところが、その後これらの債券の発行につきまして政府保証ができないことになりましたので、所要の事業資金を得ることができずに、そのため直営事業等も非常に縮小いたしまして、今お話のございましたように、直営につきましては現在では三種類だけ残っておるという状況でございます。  それから投資につきましては、二十一年八月に会社経理応急措置法に基きます特別経理会社に指定されましたので、その際に非常に多くの投資会社を整理いたしまして、現在は二十九になっておるわけです。これらの投資をいたし、または直営いたしました会社のうちで、特に残っております二十九社のうちで、現在活発に活動をいたしておるものはどれどれかというお話でございましたが、今各個別の会社につきましての活動の状況資料として持ち合せておりませんので、後刻調査をいたしまして提出申し上げたいと思いますが、特にこれらの会社のうちで、独立をいたしまして現在活躍いたしております有力なものは、資料等にも書いてございますように、東北電力があります。それから東北パルプ、東北肥料、同和鉱業、合同酒精等の会社がこの中に入っておるのでございます。もともとこの東北興業株式会社は、投資なり直営なりをいたしまして事業を育てまして、だんだんそれらの事業が独立してみずから経営をすることができるようになって参りますと、それから手を引きまして、そちらに向けておりました資金を別個の新しい会社に投資をしまして、東北地方の会社を興していくというような使命を持っておりますので、いい会社はだんだん手放していくという形になっております。そこで、現在持っております投資会社等が、そういう意味におきましてまだ十分育たないままで戦後の経済の変転にあい、事業がそのまま伸びず、不良の投資になっておる、そういう形のものもかなりあることは、この会社の性質上やむを得なかったものと思います。以上のような状況でございまして、九十九社の全部につきましての現在の状況は、後刻調べまして資料としてお手元に差し上げたいと存じます。
  119. 大高康

    ○大高委員 私の聞きたいのは、初め九十九手をつけて、よくなった会社は一、二表に載っているようでありますけれども、採算がとれないで投げてしまった会社は、全然表には載っておりません。これについて私は詳細なる御答弁をお願いしたいと存ずるのであります。
  120. 町田稔

    ○町田政府委員 今申し上げましたように、九十九社の中には、現在ではすでに閉鎖いたしまして事業をいたしておりません会社もかなりの数に上っております。これは事実であります。ただ東北興業株式会社は、今申しましたように、東北地方の産業を興すという意味におきまして、過去におきましてはかなりリスクのある仕事にも投資をいたして参っているのでございます。しかもそれが十分に芽を出さない間に、経済上のいろいろの変転によりまして閉鎖を余儀なくされたというような状況になったものが多いのでございます。これの詳細につきましては、十分正確な調査をいたしましてお示しをいたしたいと思います。
  121. 大高康

    ○大高委員 よくなった会社はあげてありますが、悪くなった会社はありません。かように惜しげもなく投げてしまった会社を忘れてしまうというようなことは、官業の通例でございまして、民間業においてはとことんまでやるのが通例でございます。要するにこの事業に対する熱意が少いからだと私は思うのであります。そもそも東北興業株式会社の成り立ちというものは、たしか東北地方の大冷害から出発して、今日においては文化、交通、産業の各般にわたる東北総合開発の使命を持たれていることは、これは当然でございます。三日景気といいまして、非常にセメント工業が景気がよかったときはすでに去りまして、今日の状況下においては、セメント工場を設置せんとする理由がどこにあるかというような疑問を私は持たざるを得ないのであります。しかも非能率、不経済といわれる点においては定評のある官業にこれを移すということは、私は当を得ないと存ずるのであります。由来官営事業は、国民生活に重大なる影響があるとか、しかも民間資本だけでは公共性に欠けておって、規模が大き過ぎるからやり切れないという仕事とか、あるいはまた営利上民間会社では立ちいかないというように、その範囲はおのずから明らかであると思うのであります。それを押してセメント事業を新たに東北興業株式会社においてやるというような理由の発見に私ははなはだ苦しむのであります。どうせ官業でやるならば、二万トンや二万五千トンの中途半端な工場を作るよりも、月産五万トンとか十万トンとかいう、設備内容も最も充実し、そうして理想的にできて、コストもきわめて低廉に提供できるような工場を持つことが私は官業としては当然であると存じます。こういう点につきまして大臣所見をお伺いいたしたいと存じます。
  122. 馬場元治

    馬場国務大臣 東北興業が設立以来相当の年月がたちましたが、その間戦争等の影響を受けまして、経営がはなはだおもしろくない状況になりましたことは遺憾千万に存じております。そこでこれが処置につきましてはいろいろ考慮いたしたのでありますが、東北地方にはセメントの原材料になるべき石炭石が無尽蔵にございます。セメントを製造せしめることによってこれが復興をはかりたい。なお東北振興ということが現在問題に相なっておりまして、道路の面におきましても、あるいは河川の改修の面におきましても、その他産業各般にわたって東北地方が他地方に比較いたしまして、比較的おくれておる、これを開発しなければならぬ、こういう要請が強いのでございまして、その要請にこたえるためにも、この種の事業を興すことによりまして貢献することができる。東北振興の一環といたしましてもこの種の事業が必要である、かように考えましてこの計画をいたした次第でございます。
  123. 大高康

    ○大高委員 東北地方に石灰石が豊富なことは私も実地調査をいたしまして承知いたしております。しかしながらセメント工業というものは石灰石のみによってできるものではございません。それに付随いたしまして、あるいは燃料であるとか、あるいはその他のいろいろな条件がありまして、今日の事情からいえば石炭石が豊富だからといって必ずしも好条件ではないと思うのであります。私は今回興りました東北のセメント事業に関しましては、さような意味において前途はなはだ関心を持たざるを得ないのでございます。もし東北興業の計画が完成の暁、東北地方における諸官庁の需要は当然当社の独占するところとなるおそれもありますし、また官業であるがゆえに低金利融資あるいは債務保証あるいは低課税処置等、官業なるがゆえをもって戦後営々として合理化を進めてきた民間業者に対して不当な圧迫をなすおそれがないかどうか、私はこの懸念を持つのでございますが、大臣の御所見を承わりたいと存じます。
  124. 馬場元治

    馬場国務大臣 民業を圧迫するものではないかという御懸念のようでありますが、民業を圧迫するつもりは毛頭ございません。ただいまも申し上げました通り趣旨によって運営いたしていきたい、かように考えております。
  125. 大高康

    ○大高委員 私はセメント事業に対しては全然のしろうとではございません。この際政府委員の認識を新たにしていただきたいと存じますが、今回起案されておる月産二万トンそこそこのセメント工場の前途が果してうまくいくかどうかということを心から心配しておるのでございます。既設の工場はすでに三日景気の時代において減価償却を終り、あるいはまたその内容の充実、設備の改善、機械の整備等を十分に施しております。新会社が生産コストの点におきまして、民間のその他の会社と太刀打ちができるかどうかということを、私は非常に疑問を持つのであります。また各般の状況において今日の段階におきましては、セメントの販売その他の点につきましては、われわれが考えておるほどそんなになまやさしいものではございません。その需給の状況はすでに飽和点に達しております。青森にあり、岩手にあり、福島にあるところの既設会社は、みな大会社の資本によって興されておる会社でございまして、すでに飽和状態にこの需要の面においてもなっておるのであります。それでその余剰生産の大部分というものは、今日関東、信越地方にどんどん送り出されておる。これらの会社が政府に太刀打ちをして、もし東北地方においてダンピングをやった場合には、二万トンそこそこの会社では太刀打ちができるであろうか、私は疑わざるを得ないのであります。かような状況のもとに、どうせやるならばほんとうに金をかけて、そして十万トンとか二十万トンとかいうような月産を持つところの、コストにおいてもほかの追従を許さないというような大きな会社を作るべきであると存じます。今日各セメント会社はどんどん増産設備をやっております。しかしながらこれは需要に間に合わないために増産設備をやっておるのではございません。おそらくことしの夏か来年の春には、操短によりまして一カ月十五日くらいの稼働しかないであろう、その稼働の日数を得んがために増産設備をやっておるのでございまして、セメント事業というものはほんとうに今日深刻になって参りました。また海外輸出を旺盛にいたしますけれども、これらは出血輸出によってやっておるのでございます。その損害というものは各会社の生産トン数割りによりまして各会社が負担をしております。かような状況のもとにあるときに、何のために好んでセメント会社を興すのであるか、私ははなはだ疑問を持たざるを得ないのでございます。もしそれ、東北地方におけるところのセメントが、地域の関係で従来は幾分高かったけれども、その単価の牽制策としておやりになるとすれば、これははなはだ誤まったものでありまして、今日セメントは東北地方におきましてはトン当り約一千五百円の値上りをしておるような状況でございます。かような状況下において、中途半端なセメント会社を興すというようなことは、前途はなはだ危険であると思うのであります。かような点について大臣のお考えを伺いたいと存じいます。
  126. 馬場元治

    馬場国務大臣 セメントの仕事を始めることはきわめて危険ではないか、こういう御心配のようであります。私どもといたしましては、この事業技術的並びに経済的に果してうまくいくかどうかということにつきまして、十分検討をいたしたつもりであります。ただ漠然と計画したわけではないのでありまして、東北興業の当事者の意見を聽しますのはもちろんのこと、さきに現在セメントの製造を新しい方法でやっております宇部に、局長並びに技術者を派遣いたしまして、製造の現場を見聞し、その実績を検討いたしました結果、これならば必ずいける、かような強い確信のもとに発足をいたそうと決意をいたした次第であります。  この東北興業をしてやらしめようといたしておりますセメントの製造の方法は、いわゆるシヤフト・キルンとかいう、私詳細を存じませんが、そういった新しい方式だそうでありまして、原価もずいぶん安くなるということを聞いております。そこで民間会社との太刀打ちはできないのじゃないか、こんな小さいものではしょうがないじゃないか、こういう御意見もあったようでありますが、東北興業で生産をいたしますセメントは市販はいたさないつもりであります。建設省でやっておりまする仕事のために使いますセメントの量は、御承知通り河川局関係だけでも年間には百四十万トンくらいを使います。道路局だけでも八十万トンくらいを消費いたしますので、建設省の関係において使いまするセメントの十分の一にも当らない程度のものなのでありまして、これは市販には出さないつもりであります。従いまして既設のセメント会社がまさかダンピングなどというようなことはあるまいかと思いますが、さような問題に対しては値段の点において既設の会社にたたかれて立ちいかなくなるという懸念はないと考えております。
  127. 大高康

    ○大高委員 先ほど私は民間企業の圧迫になるではないかというようなことを申し上げたところが、大臣は絶対圧迫はしないというような御答弁でございました。しかしながらただいまお話を聞きますと、大体官庁においては優先的に市販に出さないのでこのセメントを使うというようなお話でございました。そういうことになりますと私は民間事業の圧迫になるではないか、かように考えるものでございます。もし市販がこの東北興業のセメントよりも安く下回った場合においては、それを買わないで、やはりコストの高いところの東北興業のセメントを使うように、値段にかかわらず官庁においては東北興業のセメントを使うようになるのかどうかということを大臣に伺いたいと思います。
  128. 馬場元治

    馬場国務大臣 一面において民間の業者を圧迫するのじゃないかという御心配があり、一面においては民間業者から圧迫されて立ちいかなくなるではないかという両方の御心配があるようでございます。民間の業者を圧迫するつもりはありませんのと、また民間から圧迫を逆に受けて立ちいかなくなる心配はただいま申し上げた通りない、かように考えておるのであります。なお私の答えに足らざるところ局長より答弁いたします。
  129. 大高康

    ○大高委員 そうしますと、たとえば市販が東北興業株式会社のセメントよりも安くなっても、これは投資をしたのであるから、官業については東北興業のセメントを使うというような御意思でございましょうか。
  130. 町田稔

    ○町田政府委員 ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、東北興業のセメントの生産方式はシャフト・キルンでございます。シャフト・キルンにつきましては、大臣からもお答え申しましたように、建設費が非常に安くて済みます関係上、生産コストが従来のロータリー・キルンに比べますと大へん安くなる。従いましてこれを売ります際にも、かなり従来のものと比べますと安く販売が可能でございますので、そういう意味におきまして、既設の施設のセメントと十分競争ができて、今御注意がございました、ほかの大きな資本でやっております会社と対抗しましても十分やっていけるというように私たち考えておるのでございます。ただ官庁等でセメントを購入いたします場合には、もちろん競争入札でございますから、東北興業が生産いたしましたセメントにつきましても入札によって購入をいたすわけでありますが、生産費が安うございますから十分さばけるという見通しのもとにやっておるわけでございます。
  131. 大高康

    ○大高委員 技術的のことは私よく存じませんが、シャフト・キルンというのは非常に危險性のある装置でございます。かような装置をやることが果してよいかどうかということは、これは見解の相違でございますからあえて私が申し上げるまでもございません。しかしながら、この東北興業会社のセメント工場ができ上って稼働するころには、セメントも決して今日のような状況ではないと思います。従ってその経営面においては非常な苦労をしなければならぬというように私は想像するのでございます。私の言うことがほんとうであるか、大臣考えがほんとうであるかということは、おそらく二、三年の後には結果として生まれるものでございまして、私はこれを予言いたしまして私の質問を終りたいと存じます。
  132. 徳安實藏

  133. 松澤雄藏

    松澤委員 ちょっと席をはずしておりましたので、大高委員の質問とあるいは重複する点があるかもしれませんが、私はあまりこまかしいことは申し上げないで、端的に大臣の御意向を伺ってみたい、かように考えます。それは東北興業が設立になった当時の趣旨と、今日における東北興業の相違点を、まずその監督に当っておられる大臣から率直にお聞きいたしたい、かように存じます。
  134. 馬場元治

    馬場国務大臣 東北興業の設立当初の趣旨は、現在も趣旨においては別に変ってないと思います。
  135. 松澤雄藏

    松澤委員 趣旨においては変ってないとかりにするならば、現実においての実行面において変っておる点が相当あると思いますが、これをお聞きしたい。
  136. 馬場元治

    馬場国務大臣 お尋ねの趣旨につきましては、最初非常な意気込みをもちまして東北振興のための使命を帯びて誕生いたしましたのでありますが、遺憾ながらその後の成績おもしろからず、特に戦時中いろいろな事情のために業績不振に陥りまして、御承知通りの実情に相なったのでありましてまことに遺憾千万に考えておる次第でございます。
  137. 松澤雄藏

    松澤委員 大臣も就任日なお浅いのですから、おそらく実際面に当りましてはそう詳しくは御存じないと存じます。従いましてそれはその程度にして次にいきたいと思うのですが、東北興業の元来の生い立ちは、昭和十一年の東北における冷害を基準に置いて、東北を開発していくんだ、その中枢機関であらねばならない、こういう点において発足いたしたのであります。そういう点からいきまして、いまだにその趣旨が変ってない、こういうことになって参るわけでありますが、しからばここにおいてわが政府においてとってきておる経済五ヵ年計画というものとも十分にかみ合して、いろいろと今日においては公団とか、開発公社とかいうものが生まれております。この経済五ヵ年計画も、特に最近非常な意気込みで閣議決定等も見ておって、しかも建設省自体がその推進役を勤めている。国土総合開発の一つである特定地域というものまで承認をされております。従って、こういう方面とこの会社との今後の結び合せというものは相当大きく考えていかなければならぬのじゃないか。かように考えられますが、これに対する大臣の御意見を伺いたいと存じます。
  138. 馬場元治

    馬場国務大臣 まことに御意見の通りでなくてはならぬと思います。東北の振興につきましては、この会社の設立当初の使命にもかんがみ、総合的な計画でこれを実行に移していかなければならぬ、予算の背景を持ちました具体的な計画が立てられなければならぬ、かように考えておる次第であります。東北興業のごとき、東北振興の一環として考えられる問題であると考えております。
  139. 松澤雄藏

    松澤委員 そうしますと、政府としては今後この会社を、現在わが自民党において東北開発の特別委員会まで設置いたしまして、東北方面の開発に乗り出していこう、こういう基本線のもとに、われわれはその傘下に服して、いろいろと検討いたしておるわけでありますが、大臣としては、党内の考えておる点と、本会社をいかなる方向に指導し、育成していく御予定か、これを簡単に御説明願いたいと存じます。
  140. 馬場元治

    馬場国務大臣 東北振興の基本的な問題について、ただいまわが党で計画が進められていることは私も承知をいたしております。従って昭和三十一年度は、ただいま御審議を願っておりますセメントの生産のために努力をいたして参るつもりでありますが、三十二年度からはただいま進行中の計画の一環として、この東北興業の方の運営をいたして参りたい、かように考えております。
  141. 松澤雄藏

    松澤委員 ちょうど時同じくして、北海道の方では御承知のように、北海道開発という目的のために金融の開発公庫を設立するというので、今議会に提出になることにすでに決定いたしまして、やっておるわけでありますが、同じような意味を持つ東北方面にもかようなたぐいのものもぜひ必要じゃなかろうか、かようにも考えられますが、これに対して大臣はどういうふうにお考えになっているか。
  142. 馬場元治

    馬場国務大臣 北海道に類似の金融機関、こういうものも必要であろうかと存じます。ただ先ほど来問題に相なりました、党における基本的な計画を策定いたしました上、政府としての総合的な実施計画に基いて進行せしむべきものである、かように考えます。
  143. 松澤雄藏

    松澤委員 大臣の御意見ごもっともであると思います。従いましてわれわれ党自体における委員会においては、そういう方面のものが間もなく現われてくるだろうと存じますから、その節には大いに一つ張り切って政府部内をまとめていただくようにもこの際お願いをいたしておきたいと存じます。今度は東興自体でありますが、東興自体の運営というもので、これは大臣よりも局長にお聞きした方がいいかと存じますが、特に政府として今日この方面を指導せねばならないというふうに痛感している点があるのではなかろうかと考えますが、局長から一言その点に関してお答え願いたいと思います。
  144. 町田稔

    ○町田政府委員 東北興業は御承知のようにこの数年前まではいろいろの事業をやっておりました。その事業が多くの困難にあいまして、極端な緊縮整理をして、この二、三年というものは現在直営をいたしております福島工場にいたしましても、木友鉱山にいたしましても、あるいは本社の経営にいたしましても、最小限の職員をもって経営をいたしているのでございまして徹底的な合理化を実施したのでございます。ただその結果、いろいろな方面におきまして実は人が、ことに幹部の数等が足りません。経営が今後伸びて参りますためには、こういう方面にも十分な職員等を充実していく必要があるというように考えているのでございます。それからなお今後はセメント事業の経営と関連しまして多額の経費を使用することになりますので、なおそういう経営についても十分なる指導監督を監督官庁として加えていく必要があると考えているのでございます。
  145. 松澤雄藏

    松澤委員 先ほどあとの方のお話でしたからよくわかりませんでしたが、幾分かそういうような趣旨も入っていやせぬかと存じて聞いておったのですが、大高委員の質問でございますが、現状のままの東興にもしも投資とかあるいは元利の補給をするというようなことは、ただ個人会社の生きていくために対してのみ援助するのだというふうに一部では言うている、というような傾向すら見受けられるのでありますが、これに対して直接の衝に当っている局長はいかがお考えですか。
  146. 町田稔

    ○町田政府委員 今の東興を一般に個人会社的な色彩のあるように見ているという御意見、ごもっともだと思います。先刻も大臣が御答弁になりましたように、東興の趣旨は変っておりませんけれども、現在の姿はまことに個人会社を思わせるような規模の小さいものになっております。しかしこれを今後東興の設立されました趣旨に従って事業をやらせますためにセメント事業を選んだわけでございまして、現在の姿から見ますと、少し荷の重すぎるような形に見えるわけでございますけれども、過渡的にはやむを得ないという感じをいたしているのでございます。ただこの大きな仕事が成功いたしますように監督官庁といたしましては今後東興の足りないところを十分指導監督をいたして、当初の目的を達成させるようにいたさせたいと思うのでございます。
  147. 松澤雄藏

    松澤委員 少し中身に入ってお聞きしてみたいと思うのでありますが、これはすぐにお答えできない問題であろうと思いますからお答えは別に要りません。  投資勘定の記録がここに出ておりますが、二十九年三月末から三十年三月末までのバランス・シートによりますと、四十一万八千四百万円というものが一年間のうちにどこかに投資されておるのであります。こういうふうな点とか、あるいはまた同じく二十九年と三十年の預金及び現金の項を見まするに、二十九年においては六千百五十一万円、三十年においては三千七百五十二万円というような、この会社にとっては莫大な現金、預金を手元に持っておったということになります。これらをさかのぼって考えてみまするに、しからばその当時投資があったか、どこから何の目的で借りたのかということになってくると思いますが、こういう問題になって参りますと、株主総会みたいになってしまってまことになんでありますので、この点の質問はいたしませんが、そのほかのものをながめて見ましても、仮払金が二十九年においてこの会社にふさわしくない三千四百四十五万円という仮払いをいたしておる。普通の会社経営においては仮払いというものはそんなに多くなすべき性質のものではありません。同じく三十年において四千二百四十万円というふうになっております。それから起業仮勘定を見ましても一億六百四十五万円というものが三十年になってにわかに一億八千三百万円というふうに飛び越えております。こういうふうなことは、おそらく会社の経営に当っておる方々はみずからの生活の根拠でありますし、決して間違ったことをやっておるとは思えませんけれども、少くとも経営の衝に当っておる方々はより一そう慎重なる考え方のもとに、またこれを監督される監督官庁といたしましても、ほとんど政府の資金を投資してやっておる会社であればあるほど、他から疑惑の目をもって見られるようなことのないように、指導監督しなければならぬと私は存じます。この点につきまして、どうか今後とも一そう慎重にやっていただきたい、かように存じます。損益計算表を見ましても、総係費などちょっとわれわれには考えも及ばない一千八百九十三万円というものが二十八年度には計上されている、こういうふうなものはどういうことになっておるのか。こういうふうに考えてみますと、それとなく指導監督を相当厳にしていただいて——今回のような問題が起きた場合には、われわれ東北地方にとりましても、特に雪国地方にとりましては、重大なる関心の一つのポイントであるのでございます。こういう会社に皆さんが喜んで賛意を表して、北海道なり東北なりの開発に当るのだという気持を国民全体に与えるような御指導を願わなければならぬのじゃないか、かように私は考えるわけでございます。どうかこの点政府におかれましても一そう慎重にやっていただきたい、かように存じます。運営面における指導監督を厳にするとともに、要は政府として東興のごときをいわばヘビのなま殺しのようなことにしないで、もしもほんとうに東北開発を従来の趣旨のもとに生かしていくのだということでありますれば、積極的に新しく公社なり公団なりを作らなければならないとすら言われる今日でありますが、せっかくこういうものがせっかくあるのでありますし、幸いにしてすでに占領治下から離れて独立した今日でありますから、政府当局にやる意思さえありますれば私は十分にやっていけると思うのであります。従って政府当局においてもその気持のもとにやっていただきたい、かように存じます。  ただ少しくお聞きいたしてみたい点は、関係書類を見ていきますと、概要書には直営分と投資分の二つに分れて出ておるようであります。ところがこの直営分と投資の方の面を両方にらみ合してみますに、案外直営の方は芳ばしくない、そして投資した連中の方がうまく行っておる、これはバランス・シートの面が全部こまかくはこれに対する関係書類がありませんからわかりませんけれども、ここに現われた面だけを見ましてもそういうふうに見受けられるようなきらいがあります。これはまた人情から無理からぬ点だと思います。投資した方のものは、これ以上援助が得られないのだから何とか自分たちが独立してというふうな気持から専心努力して自分の会社の経営に当っておるだろうと思います。ところが直営の方は、昔の言葉でいうならば日の丸をバツクとしたところの会社経営でございますから、どうしてもその点がルーズになる。こういう点から見てみますればこれは万やむを得ないというようにも存じますし、あるいはまた会社みずからが直営をするというのではなくして、広範囲にわたった開発でありますから全体的にその方面に投資をして、そして逐次あらゆる方面を開発していくのだということになっていきますから、その方がこの会社としては持って生まれた趣旨にも合うというふうに思われるわけです。こういう点から見ていくならば、ある一定の限度に達したらこれを完全に独立せしめてその責任の帰趨を明らかにし、もってそれらの利潤なりあるいは年度金額を樹立いたしまして、そしてこれを国なりあるいは親会社に返還せしめて、これによってまた他の方の開発に当るというふうに行くべきが至当じゃなかろうか、私はかように存じますが、これに対しまして大臣の御意見を承わりたいと存じます。
  148. 馬場元治

    馬場国務大臣 経営並びにこれが監督に関しましてきわめて傾聽すべき御意見を承わって、まことにありがたく存じます。私ども責任の衝に当るものといたしまして、ただいま御指摘に相なりましたような諸点は十分戒心の上にも戒心をいたしましてさような憂いのないようにいたすべきである、かように存じますし、またさように努力をいたす所存でございます。今御指摘の諸点はうなずける点が多々あるのでありますから、十分検討をいたし、善処をいたしたいと存じます。
  149. 松澤雄藏

    松澤委員 最後に局長にこまかいところをお尋ねしまして、私の質疑を終りたいと存じます。先ほども大高委員からお話がございましたが、この概要書の中には、セメント製造に当りまして豊富にして低廉なものというふうに出ております。豊富という言葉は今日における二万トン級ではとても申しかねる問題だと思いますので、おそらく紙に書いたところの修飾語にすぎないというふうに見まして、私は率直にその通りとっておきます。ただ低廉の問題でありますが、一体低廉というのはどの程度になさるおつもりか、現在の相場と比較いたしまして、竣工時期にもよるでしょうが、一応今日における見通しでは、一体一トン当りどの程度の低廉さをとっていくか、その点をお尋ねしたいと存じます。
  150. 町田稔

    ○町田政府委員 セメントを東北興業で作ります方式は先刻も申し上げましたようにシャフト・キルンの方式でございますので、大体設備資金等は従来の方法の半分くらいで済むと思っております。なお各種のセメント工場を作る上におきましても、設備以外に各種の経費が必要でございまして、土地その他いろいろの購入がございますが、全体といたしまして現在の計画ではそれらのものも非常に安く入手できるということがございまして、価格におきましては現在市販されておりますセメントよりはトン当り一千円以上は大体安くなるというように予定をいたしております。
  151. 松澤雄藏

    松澤委員 先ほども同じようなことをお聞きになっておったようですが、セメントは現在御承知のように非常に安いのでございます。今から二、三年前までですと、特に朝鮮方面の特需のときには約一万円を突破する、こういう時代もありましたし、また九千五、六百円という時代もありました。最近に至りましてはずっと離れまして七千円台に落ちている、まあ万やむを得ず八千円くらいで売ろうということにまでなっております。従いましてこの方面に対する見通しもお間違いのないように願いたいと思うわけであります。しかして一体いつごろこれは竣工する予定になっておるか、それをあわせてお聞きしたいのですが、大臣お話では私もふにおちないし、調子に乗ってちょっと口がすべったのではないかと考えたのですが、そういう意味に私はとっております。ということは、これらのものは一般市販しないで全部官庁で買うのだ、こういうようなお話でございますが、こうなって参りますと、現在入札とかいろいろの規定がございますが、その方面とはおよそかけ離れたようなことになってきまして、政府みずからがその法を破るということになりがちであります。しかしながら特別の場合にはこの限りにあらずということがまた半面出ております。従って非常に値段が違ってくればその特別な限りに入ってくるわけでありますから、おそらく大臣はその意味をもって、一般の市販のものよりは非常に安い価格、一割や二割じゃない、三割くらいは安いのだから、国家経済の上から見てもぜひそうしなければならぬという建前の上でお話しになったのが言葉の上において端的に示されたもの、こういうふうに解釈いたしましたが、少くとも国会の席上でありますから、この点に対しましてはもう一度念のためにお聞きいたしておきたい、かように存じます。
  152. 馬場元治

    馬場国務大臣 私の言葉が足りなかったのでありますが、今のお話の御趣旨通りであります。
  153. 松澤雄藏

    松澤委員 社会党の方にも質問があるようでありますから私の質問はこれで終りますが、くれぐれも申し上げることは、あくまでもこの会社本来の趣旨を今後政府が十分に体しまして、是が非でもこれをわれわれの期待する方向に育成していっていただきますようにお願いいたしまして私の質疑を終りたい、かように考えます。
  154. 徳安實藏

    徳安委員長 前田榮之助君。
  155. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 まず馬場建設大臣にお尋ね申し上げますが、私がお尋ね申し上げることについて、一建設大臣としてでなしに、国務大臣として、あるいは内閣の閣僚としてお答えを願いたいと思います。  第一に伺いたいのは、東北興業株式会社というものを建設省の所管事項とされておる点であります。この東北興業株式会社の目的には、建設事業に関する東北振興と、商工関係ともいうべき産業の開発に関する東北振興、この二つの部面が明確にされ、会社の性格ともなっておると思うのであります。私は今日の東北の事情から考えますると、むしろこういう特殊会社によって地方の振興をやろうといたしまするならば、商工関係の産業の開発をやらしめて、建設関係の開発等については、北海道の国土総合開発等の行き方が地についた今日の時代に即応したものであると思うのであります。そこで、建設大臣にお尋ねいたしますると、建設省の所管事項にしたものを、それは間違っている、建設省じゃないよとも言いにくいと思いますけれども、今通産大臣がいらっしゃるわけでございませんから、閣僚として、国務大臣として、こういうことで東北の振興の目的が達せられるかどうか、こういう点についての馬場さんの御所見をまず第一にお尋ね申し上げます。
  156. 馬場元治

    馬場国務大臣 会社の趣旨からいたしまして建設省に置くのは不適当ではあるまいか、こういう御意見のように承わります。国土の総合開発その他の計画につきましては、御承知通り建設省がこれを主として担当をいたしております。そういう関係で東北振興、東北開発という面に重きを置きまして、建設省の所管にせられたものである、かように考えます。それが今日の実態に即していずれの省に属すべきかということにつきましてはいろいろ議論の余地もあろうかと存じます。沿革的に申し上げますと、御承知のように昭和二十二年十二月三十一日に内務省がなくなりまして、建設省が新しく設けられましたときに、内務省の中にありましたのが建設省に移管をせられまして、そのままこれを引き継いでおるという形に相なっておるのであります。内容的に申しますと、さき申しましたように、国土総合計画の一環としてこの問題を取り扱っておる、かような意味において建設省にただいま所属をいたしておる、かように御理解を願いたいと存じます。
  157. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 建設大臣の今の御答弁は、私にもそれはわかるのです。それはわかるのでありますが、今日の東北振興の実態から考えてこれが適当であるか。終戦後の行政の一般的な移行からいたしまして、内務省から建設省が引き継いだ、これは説明を要しないのであります。ことに内務省という官庁の性格と建設省という官庁の性格は、非常に似たようで実質的に似ていないのでありまして、内務省でやるならば内務省の性格からしてあるいは東北振興もうなずけるわけでありますが、しかしながら今日の建設省がやるということになりますと、この目的の中の資源の開発、水面の埋め立て事業というようなことは非常に適合するのでありますが、肥料工業であるとか、電気化学工業であるとか、あるいは水産、鉱産、こういうものの資源開発、農村工業、こういうことは建設省の所管としては適当でないと私は思う。馬場建設大臣が所管されることについては異議はございませんけれども、建設省の行政官がこの行政事務をとることは、これは通産省の行政官がとるのとどちらがいいかということになりますと、この事業の性格からいたしまして、当然この大部分は通産省がやるべきじゃないか。現在そうなっておるからこうやっておるのだということは理解できます。そこで国務大臣としてこういうことについてはもっと検討して、真に東北振興に地に足のついたようなことをやろうとするお考えがあるのか、いやそういうことでなしに、現在で十分だ、こうお思いになっておるか、御所信をまずお伺いしたい。
  158. 馬場元治

    馬場国務大臣 御指摘のように、ほとんど各省にまたがっている広い面を持っておりますので、いずれの省でこれを所管した方が一瞬適当であるかという問題は、相当に困難な問題であると存じます。沿革的には先ほど申し上げた通りでありますが、これにつきましては、ただいまわが党において検討中の東北の振興の基本的な問題、それらの問題ともにらみ合せて考うべき問題であると存じます。検討の余地は十分ある問題であると存じますが、ただいま政府を代表しての意見は差し控えたいと存じます。
  159. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 私は建設委員であると同時に衆議院議員としてこの問題をお伺い申し上げたのですが、お答えを差し控えておきたいということでありますから、この点は日本の国務大臣として一つ十分お考えを願っておくことにいたします。  そこでこの会社の性格の問題でございますが、今私が申し上げましたように、会社の事業の中に、商工関係的な事業、それから建設、開発関係的な事業、こういうものがあわせて行われておるわけでございますけれども、われわれ社会党の社会主義計画経済の観点から進めていくことになりますると、非常に違って参るのでありますが、現政府は自由主義経済をもってやはり経済の発展の基礎に置いてやられる観点からいたしますると、この東北興業株式会社というものは、この会社が今までやってきたように、いろいろな東北に適合した事業を始めるのは始めますけれども、始めて一応一人歩きができるようになりますると、これを純粋か、あるいは純粋に近い民間事業に移して地方の発展をさすようにされて参った、またそうであるのが東北人の希望ではないかと思う。そうなりますと、たとえば農業試験場の原種圃やいろいろな種類の試験場みたいに、いい種を作って、それを東北全般へ配布をついたしまして、種を作って芽立つようには社会はするけれども、これがうまくいって、経営が利益を得るようにするのは東北人である、こういう会社の性格が相当あったと思うのであります。そうだといたしますと、その行き方も非常におもしろい行き方であって、現在の自由民主党的な感覚ではよろしいと私は思うのであります。ところが、そういうことをやった結果として、東北のためには相当工業を興したでしょうけれども、会社自体はヘビのなま殺し——ヘビのなま殺しにしてはいかぬという説もございますけれども、むしろヘビのなま殺しになったことが、東北の振興という会社の目的を達したのじゃないかと私は思う。それで今後の東北振興については、そういう性格をもういいかげんに清算いたしまして、これら東北に必要な産業の立地条件をいかにして作ってやるか、こういうところに力を注いで、東北人みずからのいわゆる産業熱というものを引き出して東北の発展をせしめるということこそが、今日の必要な条件じゃないか。そういたしますと、立地条件の中の重要な点は、すなわち電力を豊富に起したり、交通機関を完全にしていろいろな産業資材の輸送関係に便利を与えてやる、そのほか、産業資材の開発を行なってやる、こういうことにならなければならぬと思うのでありますが、この会社の性格をどこに置いてやられようとするのか。従来のままの性格でヘビのなま殺しになるようなことでよろしいという考えでやっているのか、もうだんだん東北にもいろいろ産業人もできたことであるから、むしろこの際はただ立地条件を作るというところだけに重点を置いていこうとするのか、つまり会社の今後の性格の点について、これは大臣でも局長でもいいですから、お答えを願いたいと思う
  160. 町田稔

    ○町田政府委員 会社が現在いわゆるヘビのなま殺し的な状態にありますのは、今おっしゃった通りの経緯によりましてそうなっているのでございます、先刻もちょっと申し上げましたように、この会社が投資しあるいは直営いたしました会社が現在独立しております会社には、非常にいい会社が幾つもあるのでございまして、これを独立させずにみずから経営し、または親会社でありましたならば、会社は現在非常に大きな会社として成り立っておったろうと思うのであります。ただこの会社の性格が、今お話のありました通りに、従来はその地方でほっておけばできないような種類の仕事を、投資をし、あるいは直営して育てていく、一人前になればこれを独立させて、そこに投資あるいは使用しておりました金をまた別の事業につぎ込んでいくということで参ったので、現在のようなことになったわけであります。ただしかしながら、こういうように子会社を育てていくということと、親会社がそのために非常に細ってしまうということとは必ずしも関連がないのでございまして、子会社を育てて、たくさん有力なものを作っていきますためには、親会社自体も実は健全でなければならないと思うのでございまして、親会社をこの際かなり強く育てて、それを元にして投資能力もできるようにし、子会社を作っていくという考えでございまして、その意味におきましては、今後もこの会社につきましては従来と同じような働きをさせたいと思っておるのでございます。ただいま今後はむしろ会社に立地条件の整備等についての仕事を指導さした方がよくはないかという御意見でございました。具体的に立地条件の整備のための事業として電力等のお話がございましたが、電力につきましては、かつてこの会社も電力をやりまして、それが現在の東北電力として独立をいたしておるのでございますが、しかし今後果してそういうような立地条件の整備だけでこの会社が株式会社としての性格を保ちつつやっていけるかどうか、この点は非常に研究を要する点だというように考えておるのでございます。
  161. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 この会社の性格を明確にすべきであるとは思いますけれども、この会社の性格が明確でないのにその性格を明確にせいというような無理な注文のような気もいたしますので、これは内閣の基本的な政策の問題に触れなければならない問題でありますから、これはまた後に譲ることといたしまして、今親会社ともいうべきこの会社を、ます経営について安定せしめるということのお話でございましたが、これが一定のわらじであってこういうことが今日の経済情勢において果して可能か不可能かという問題をわれわれは考えなきゃならぬと思うのであります。今日の日本の産業は、そういうなまやさしいものではないのであって、親会社として地方産業にいろいろな立地条件を与えるためにやる会社といたしましては、やはり犠牲を払ってやらなければならないのであって国家資本を十億や二十億つぎ込んだ程度では、東北全体の振興などというようなことは思いもよらぬことであって、そういう考えからこのセメントの生産を考えられたんだろうと思うのですが、生産の立地条件をよくするためにセメントを非常に安く提供して、そうしてダムの建設あるいはその他交通道路網の完成というようなものに、他の地方とは一線を画した発展のやり方をやるというようなことをやらなければならぬと思うのでありますけれども、しかしながらこの計画を見ますと一トン当り千円くらい安くなるというようなお話でございますが、むしろ国の費用を相当つぎ込んでセメント事業をやるといたしまするならば、何ゆえに国営でやらないかという問題であります。国営でやることになりますとどういう特徴があるかというと、一つには、まず税金が要らないということ、今産業のガンになっておるものは、金融のために多額な利子を要する。それから宣伝広告等の営業費がたくさんかかる。それから法人税その他の営業費が高い。もしこれらを国営で行いまするならば、一割や二割でなく、私らの計算からいたしまするならば、セメントのごときは三割も、その上も安くなる。ある人は、一時高かった時代においては五割くらい安くできるだろうと言った人もございますが、今日では価格が非常に市販が安いために、そこまで安くはならぬと思いますけれども、相当安くなることは間違いないのであって、そういうことをお考えにならないか。これは局長には無理な御答弁ですが、馬場建設大臣は、この東北興業会社を育てるというよりも、東北の振興のために行う施策といたしましては、この東北興業株式会社にこのセメント工場を建設するようなことをやらせるほどならば、むしろ国が直接に国営の工場をやつて、そうして只見川とかあるいは北上川というような多くの開発を要する個所、またはその他の道路等の問題でも、国営事業については、国営で生産したところのセメントをどんどん使って、東北に関する限りは特別な工事が進歩するようにする。一つのモデルケースとでもいうべきものを作るということこそが、同じ国費を使うにいたしましても生きた国費が使えると思うのでございますが、馬場建設大臣の御所見をお伺いしたいのであります。
  162. 馬場元治

    馬場国務大臣 東北振興のために会社はある程度犠牲になってもいいじゃないか、こういう御意見のようでございます。御意見まことにごもっともでありますが、この会社の事業を通じまして東北振興に寄与せしめたい、かように考えまするので、従いまして、会社自体もまた運営よろしきを得て発展をいたさなければ東北の振興に寄与することができないわけでありまして、さような意味におきまして会社がりっぱに立ちいきまするように、しこうして東北の振興に寄与することもできるようにやっていきたい、かように考えております。むしろ国営にした方がいいじゃないか、こういう御議論でありますが、これに関しましては、いわゆる根本的な基本的な問題でございまして、今直ちにこれを国営にするがいいかいなかということについては、よほど議論の余地もあるけれども、ただいまのところ国営にするという考えは持っておりません。
  163. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 次にお尋ね申し上げたい。東北は、船舶の造船所あるいは修理ドツク、港湾、こういうものについては他の地方に比べますと割合貧弱であると思います。この海の交通のために、産業に非常に支障を来たしておると私は思う。それで東北興業株式会社の方でもドツクも持っておられるように聞いておりますが、これらが有効に使われておらないということで、これらのごときは私から言わせるならば建設省に監督する所管事務があることからきた問題ではないか。むしろこれを通産省等にやらしめたならば、やはりこういうことについてはもっと積極的に行われるのではないかと思うのでありますが、こういう点について、もう少し積極的に海の交通機関を整備することに力をお入れになる御意思があるかどうか、この点、お伺いしたい。
  164. 馬場元治

    馬場国務大臣 実は東北興業が出資いたしまして、東北ドツクというものを経営せしめておったのであります。それが不幸にして失敗をいたしておるのであります。その原因はいろいろあるであろうと思いますが、御指摘のように、東北方面におきまして特に海運を盛んならしめるということの必要性は、ひとしく、痛感されておるところでありますので、こういう施設をいたしますことは、最も緊要なものの一つであると考えております。ただしこの東北ドツクの始末につきましては、ただいま宮城、福島、両県の知事にこの再建の方法につきまして、具体的な方策を確立するように委嘱をいたしておりますので、その具体策ができ次第、両県ともよく協議をいたしまして、具体的な再建の方策をとりたい、かように考えて努力をいたしておる最中であります。
  165. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 最後に、セメント工場の機械の問題ですが、御答弁の中にありましたように、シヤフト・キルンの生産方式をとられるために、わざわざ宇部に、宇部興産がやっておるので御派遣になっていろいろ研究になっておるようであります。しかしながら、私の聞いておるところによりますと、宇部興産もこの生産方式には相当苦心をいたしておる、非常によかったというほどでもなかったように聞いておるのであります。現在、何かドイツへ技師を派遣して調査をいたしておるやに承わっております。その点の調査は十分できてはおると思いますが、ただ宇部興産といたしましては、自分のところでやっておるものについて、自分のところでは失敗だというようなことはなかなか会社としては言えるものではないのであります。しかしながら古い生産の歴史を持ち、多くの技術者を持っておる宇部興産なら、何とかこれはそう失敗というほどでなしに、成果を上げるものだと思います。それだけの力があると思うのでありますが、東北興業に果してそれだけの力があるかということになりますと、われわれとしては相当危惧の念があるのでありますが、その点十分なる調査が行われておるのかどうか、その調査の事情を聞かせてもらえれば幸いだと思いますが、いかがなものでしょうか。
  166. 町田稔

    ○町田政府委員 シャフト・キルンは今お話のございましたように、日本では宇部興産が今やっております。これは昨年の七月ごろに一応操業を開始しております。日本では初めてでございますが、ドイツでは古くからシャフト・キルンをやっておりまして、ドイツのセメント生産の三割まではシャフト、キルンの方式でやっておるわけであります。それで非常に安くセメントができておりまして、現在でもシャフト・キルンの方式がだんだん広まっていっております。なおドイツばかりではなくて、ヨーロツパにおきましてはかなり多くの国でシャフト・キルンの方式を採用しておるわけであります。宇部興産の操業の状況でございますが、日本では初めてでございますので機械も全部ドイツから輸入いたしまして操業開始をしたのでございますが、ロング・キルンと違いまして、このシャフト・キルンに使いますセメントの材料である石灰石、それから粘土等は、従来のものよりも多少特別の操作なり配慮なりをして入れなければならないのでございますが、そういう点につきまして宇部では、最初のことでございますのでいろいろと迷ったのであります。本年になりましてから、従来のロング・キルンで作っておりますセメントとそう変らないものが順調にできるようになっておるのであります。これは私どももこの二月になりましてから現地に参りまして見てきたのでございます。なおその際に、私は技術のことはわかりませんので十分なる判定ができませんでしたが、東北興業のセメントの技術の人と一緒に参りまして、この人は日本におけるセメント技術の最高権威の一人でございます。幸いに東北興業がシャフト・キルンの新しい方式でセメントを始めるということに非常に関心を持ちまして、実は今までセメントの技術協会の理事をしておった人がそちらの方をなげうって、こちらの方に来てくれたのであります。シャフト・キルンの日本における権威で、その方も一緒に行って見てくれたのですが、その結果は、大体宇部のものは十分やっていけるという結論を出しておるのでございます。それで今後東北興業が、今御心配のありましたような結果になりませんために、シャフト・キルンを据えますために、実際に設置します前に、技術長を初め二、三の者をもう一度ドイツに派遣いたしたい、そして向うの生産方式をもう一回実際によく修得しまして、それから施設をいたして参りたいと思っておりますので、新しい方式を採用いたすことによりまして、万々あやまちを犯すようなことはないものと確信をいたしておる次第であります。
  167. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 いろいろ御苦心もあるようでありますが、必ず失敗しないように、万全を期して進められるように希望を申し上げておきます。  それでもう一つお尋ね申し上げておきたいのは、この東北興業株式会社の将来について、まず第一着手としてセメント工場をやり、次には何か御計画があるのか、また何かやらなければならぬと思っておるのか。東北興業の将来の経営について、一つ御抱負を承わっておきたいのであります。セメントをやったら当分うまくいくだろうということから一安心だということになっておるのか。これはわれわれが東北興業株式会社を将来いかに育てなければならぬかということの基本的な信念をわれわれに与えるものでありますから、そういう点について御所信をお聞かせ願いたい。
  168. 町田稔

    ○町田政府委員 東北興業がセメントを始めましたのは、かつて東北興業にいかなる仕事をさせることがいいかということをいろいろ研究いたしまして、その資料としまして、地元であります東北六県の知事、議長等に特に研究してもらったのであります。それでその際東北地方においていろいろの希望いたします事業が出て参ったのでありますが、まずそのうちセメントを選んだのでございます。しかしながらそれ以外に各種の要望の事業がございまして、これらの事業もいずれも東北地方で興しますことが適切なものばかりでございます。なお現在御承知のように、経済企画庁を中心といたしまして、東北地方で今復興すべき事業についての研究がなされております。東北興業につきましてセメント事業が一段落いたしましたならば、次にはぜひこれらの地元の要望、それから現在企画庁で考えられております東北地方に興し得べき事業等をいろいろ研究いたしまして、順次適切なものから東北興業にやらして参りたい、こういうように考えておる次第でございます。
  169. 徳安實藏

    徳安委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後三時三十六分散会