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1956-06-01 第24回国会 衆議院 決算委員会 第40号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年六月一日(金曜日)     午前十時五十九分開議  出席委員    委員長 上林與市郎君    理事 生田 宏一君 理事 關谷 勝利君    理事 田中 彰治君 理事 本名  武君    理事 山本 猛夫君 理事 坂本 泰良君    理事 吉田 賢一君       赤澤 正道君    臼井 莊一君       櫻内 義雄君    床次 徳二君       辻  政信君    林   博君       松岡 松平君    佐竹 新市君       細田 綱吉君  出席政府委員         防衛政務次官  永山 忠則君         防衛庁次長   増原 恵吉君         防衛庁参事官         (装備局長)  小山 雄二君         通商産業事務官         (鉱山局長)  松尾 金藏君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      川上 為治君  委員外出席者         防衛庁事務官         (調達実施本部         長)      武内 征平君         防衛庁事務官         (調達実施本部         契約部長)   石井由太郎君         通商産業事務官         (鉱山局鉱政課         長)      磯野 太郎君         会計検査院事務         官         (第二局長)  保岡  豊君         証     人         (関西電力株式         会社取締役副社         長)      森 寿五郎君         証     人         (関西電力株式         会社取締役)  藤田友次郎君         証     人         (井上工業所) 井上信貴男君         専  門  員 黒田 久太君     ————————————— 本日の会議に付した案件  閉会審査申出に関する件  委員派遣承認申請に関する件  政府関係機関収支日本開発銀行電源開発  融資)に関する件  歳入歳出実況防衛庁における靴の調達)に  関する件  小委員長より報告聴取     —————————————
  2. 上林與市郎

    上林委員長 これより会議を開きます。  国有財産に関する小委員長日本国有鉄道経理に関する小委員長及び需品調達に関する小委員長より小委員会における調査についてその中間報告をいたしたい旨の申し出があります。これを聴取するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 上林與市郎

    上林委員長 御異議なしと認めます。それでは順次これを許します。  まず国有財産に関する小委員長山本猛夫君、御発言を願います。
  4. 山本猛夫

    山本(猛)委員 国有財産に関する小委員会の現在までの審議状況につきまして、御報告申し上げます。  小委員会は五月十五日、五月二十三日、同二十九日の三日間にわって会議を開きまして、まず大蔵省当局から国有財産の管理及び処分状況について、また行政管理庁当局からこれに関する観察の結果について説明を聴取いたしました。  次いで大阪拘置所敷地に関する問題、井上印刷局長に対する住宅払い下げ問題、日本電信電話公社所有の、旧三福ビル処分問題等につき、それぞれ政府並びに公社当局より説明を聴取した上、質疑を行なったのでありますが、いずれも結論を得るに至っておりません。つきましては、閉会中も引き続いて審議を進めることのできますように、委員長においてお計らい下さるようお願いいたす次第であります。  以上中間報告を申し上げます。
  5. 上林與市郎

    上林委員長 次に日本国有鉄道経理に関する小委員長田中彰治君より御報告を願います。
  6. 田中彰治

    田中(彰)委員 日本国有鉄道経理に関する小委員会の現在までの審議状況について、御報告申し上げます。  本小委員会は、五月二十三日、同二十五日の二回にわたり会議を開きまして、まず小委員会運営について協議いたしまして、次いで、鉄道会館等外郭団体の問題、乗車券等売上代金市中銀行預け入れの問題、物資購入問題等につきまして、国鉄当局に対して質疑を行い、さらに今後の審議に必要な資料提出を求めたのであります。小委員会審議はかようにまだほんの序の口でありまして、   〔委員長退席山本(猛)委員長代理着席〕 何ら結論を得るに至ってはおりませんので、閉会中も引き続いて審議を進めるべく、本委員会においてお計らい下さるよう、お願いいたす次第であります。
  7. 山本猛夫

    山本(猛)委員長代理 次に需品調達に関する小委員長吉田賢一君。
  8. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 需品調達に関する小委員会中間報告を申し上げます。  需品調達に関する小委員会は、去る五月二十六日各省各庁における事務担当者出席を求め、開会しました。  まず調査方針を決定し、大蔵省当局並びに小峰会計検査院事務総局次長との間において質疑を行い、あわせて各省各庁の資料提出を求めました。  需品調達については一省一庁についての調達制度の問題、綱紀の問題等、現実の問題として防衛庁中央調達の、調達実施本部の機能についても検討を要する事項があります。今国会会期も余すところ少く、自然この小委員会閉会中も続行して結論を得たいと考える次第でございます。何とぞしかるべくお取り計らいのほどをお願い申し上げます。     —————————————
  9. 山本猛夫

    山本(猛)委員長代理 閉会審査に関する件についてお諮りいたします。  会期も切迫して参りましたので、目下審査中の昭和二十九年度一般会計歳入歳出決算昭和二十九年度特別会計歳入歳出決算昭和二十九年度国税収納金整理資金受払計算書昭和二十九年度政府関係機関計算書昭和二十九年度国有財産増減及び現在額総計算書及び昭和二十九年度国有財産無償貸付状況計算書につきましては、本会期中に審査を終了する見込みもありませんので、閉会中も引き続き審査を行いたいと存じます。  また歳入歳出実況に関する件、国有財産に関する件及び政府関係機関収支に関する件につきましても、閉会中に調査を行いたいと存じます。これにつきましては、国会法の定めるところによりまして、院議によりこれらの案件閉会審査案件として本委員会に付託されなければなりません。つきましてはその手続をいたしまして、これらの案件について閉会中もなお審査したい旨の申し出を、議長に対して行うことにいたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 山本猛夫

    山本(猛)委員長代理 御異議なしと認め、それではさよう取り計らうことと決しました。     —————————————
  11. 山本猛夫

    山本(猛)委員長代理 なお、お諮りいたしますが、ただいま申し出ることに決しました閉会審査案件が付託されました場合には、実地調査を行う必要もあると認められますので、そのための委員派遣につきまして、規則の定めるところにより、議長に対して承認申請をいたしたいと存じます。派遣委員の数、その人選、期間派遣地等につきましては、議院運営委員会の定める閉会中の委員派遣に関する基準に従いまして、委員長理事と協議して決定することとし、その手続等委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 山本猛夫

    山本(猛)委員長代理 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————
  13. 山本猛夫

    山本(猛)委員長代理 またお諮りいたしますが、閉会中も引き続き三つの小委員会を存続して調査いたしたい旨の申し出が、各小委員長よりありますが、閉会審査案件が付託になりました場合には、以上の三つの小委員会を設けることとし、各小委員及び小委員長は、現在通りといたしたいと存じます。また、小委員及び小委員長に欠員が生じました際の補欠選任等につきましては、委員長が適宜指名するということ心御一任願っておきたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 山本猛夫

    山本(猛)委員長代理 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。     —————————————
  15. 山本猛夫

    山本(猛)委員長代理 政府機関収支日本開発銀行電源開発融資)に関する件につきまして、調査を進めます。  これより本件につきまして、証人証言を求めます。御出頭になりました証人は、森寿五郎君、藤田友次郎君の御両君であります。相違なきものと認めます。あらかじめ女書で御通知いたしておきました通り、ただいまより本件について証言を求めたいと存じますが、証言を求める前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならないことと相なっております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言が、証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあった者、及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあった者がその職務上知った事実であって黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになっております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは三月以上十年以下の懲役に処せられることとなっておるのであります。一応このことを御承知になっておいていただきたいと思います。  では、法律の定めるところによりまして、証人宣誓を求めます。御起立を願います。  森君、代表して宣誓書を御朗読願います。   〔証人森寿五郎君朗読〕   宣誓書良心に従って、真実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。   昭和三十一年六月一日           森寿五郎
  16. 山本猛夫

    山本(猛)委員長代理 それでは宣誓書署名捺印を願います。   〔証人宣誓書署名捺印
  17. 山本猛夫

    山本(猛)委員長代理 では、これより証言を求めますが、証人発言する場合には、そのつど委員長許可を求められること、及び、証言証言を求められた範囲に限ることになっておりますから、御承知おきを願います。  それでは、委員長よりの尋問は省略をいたしまして、委員各位より直ちに尋問することといたします。生田君。
  18. 生田宏一

    生田委員 前に太田垣さんがお見えになりましたときにつまびらかになりませんでしたことを、順次お聞きしたいと思います。  簡単なことから伺いますが、関西電力椿原ダムによって湛水をしました湛水敷地、その用地をお買いになりましたり、また官有地借地なさったりしておりますが、太田垣さんが前にお話しになったのは、後刻土地台帳等を調べてみましたのと違うようでございますが、いつが正しいのでございましょうか。
  19. 山本猛夫

    山本(猛)委員長代理 森証人、御発言を願います。
  20. 森寿五郎

    森証人 ただいまの御質問でありますが、この問題はこの前会社社長証人としてこの席にまかり出まして、そのときに差し上げております椿原発電所湛水用地取得関係資料、この資料の中に詳しくこの取得の年月日が書いてございますが、御質問は、この中にさらにどこか、たとえば間違いでもあるというようなお考えなんでございましょうか。
  21. 生田宏一

    生田委員 関西電力は、昭和十一年四月一日より同年十一月十日までに土地の買収を行なっておる、こういうように言っておられます。ところがあなたの方でお買いになったのは違うように思うのですが、どっちが正しいのでございましょうか。
  22. 森寿五郎

    森証人 これにありますのは、これは皆さんお持ちであるかもしれませんが、ごく古いところになりますと、昭和十年十一月二十五日ごろから始まっております。あるいは十年十一月三十日というのがありますが、新しいところになりますと昭和二十七年九月十日というのが見えております。それからずっとあとに参りまして十五ページのところに昭和二十八年四月十四日というのが一、二カ所見えております。この前社長が申しましたのは、おそらくただ記憶の上で申したと思いますが、ここに差し上げましたこれば、その後調査いたしました詳しいものでありまして、これが最後のものと考えます。
  23. 生田宏一

    生田委員 それから国より借地をいたしましたのは、お話によりますと湛水前だ、湛水は二十八年十一月十四日ですが、湛水前というお話ですが、国より借地契約をされましたのはいつでざいましたか。
  24. 森寿五郎

    森証人 この三ページに書いてございます。三つあるわけでありますが、昭和二十八年十一月から昭和三十三年三月まで、これば有効期間であります。二十八年十一月に結局借地をやった、こういうことでございます。
  25. 生田宏一

    生田委員 何かばく然としたお答えですが、借地契約は十二月六日にこの借地契約をしておるのと違いますか。
  26. 森寿五郎

    森証人 それはその日にできたわけではありませんので、前から話は進めておったと思いますが、そのどこをとったかわかりませんが、役所と御相談の結果十一月からやった、こういうことであります。
  27. 生田宏一

    生田委員 話を開始したのはいつか知りませんけれども、国から借りたのは十二月六日、こういうことではないのですか。
  28. 森寿五郎

    森証人 きまりましたのは十二月六日のようでありますが、有効期間はここにありますように十一月から、こういうふうに御了解願います。
  29. 生田宏一

    生田委員 何か有効期間を十一月の何日から何日までとするという証書をあなたの方でお持ちでございますか。役所がさかのぼって貸すということをしましようか。台帳にちゃんと十二月六日貸し与えたということが、これに営林署の方からも証明書がきております。その貸し与えたのは昭和二十八年の十二月六日で、湛水は十一月十四日ですから、湛水前に土地を借りたとおっしゃるのは、自分土地または自分の借りた土地湛水したと太田垣さんがおっしゃいましたから、どうも事実と違うようですので、お尋ねをするわけですが……。
  30. 森寿五郎

    森証人 きょうはその資料を持ってきておりませんが、内容はここにあります通り十一月からということになっております。
  31. 生田宏一

    生田委員 営林署の方からこちらへ書類がきておるのですが、十一月一日より貸したとは言ってきておりません。これは営林署の公文書できておりますが、それには十二月六日から三十三年の三月三十一日まで、こういうように言うてきております。そうするとあなたのおっしゃるのと違うようですが、どうしてもあなたがそうだとおっしゃるならそれでけっこうですから、それはまたあとお尋ねします。  それからもう一つ伺っておかなければなりませんのは、あなたの方では庄川の水利権をお持ちになっておるというのですが、水利権というのは、その内容はどういう権利でございますか。どういうようにわきまえて水利権をお受けになっておりますか。ちょっとそれをお尋ねしておきたい。
  32. 森寿五郎

    森証人 水利権と申しますのは、会社でたとえばある地点堰堤なら堰堤を作りまして、幾らの高さの堰堤を作る。それから水路でどこそこへ導いていきまして、そうしてそこに発電所を作る。その水路に何トンの水を導いていって、そうして発電所地点幾ら落差があって幾ら出力が出るということを会社から役所の方へ申請するのであります。その結果それを役所の方から許可してもらうのを私どもの方で水利権と申しておるのでありまして、結局堰堤を作って水路を引っぱっていきまして、そして発電所へ落す落差があります。そこでその水の量と落差から出力を計算しまして、そうして発電所ができる。これが私ども水利権と申しておるところであります。
  33. 生田宏一

    生田委員 水利権というのは、私の承知しておるのでは、その川の水と、それからその河川の敷地利用に限られておると思うのですが、あなたのは、今のあなたの電力会社発電事業をするということだけで考えているようですが、それはだいぶ違って参ります。その川の水の利用河川敷使用ということになっていると思うのでありますが、あなたの今のお考えは、自分事業に勝手のいいようにお考えになっていると思うのですが、いかかがですか。
  34. 森寿五郎

    森証人 私ども発電事業しかやっておりませんので、私ども水利権と申しますのは、その範囲に解釈しております。もちろん椿原の場合は、これは水路もごく短かいのでありまして、大部分が湛水になりまして、その二、三キロ上流までいっておりますが、堰堤式でありますから、多少普通の場合と違いますが、結局水路取り入れ口から水を落すところの場所、その間の落差によって生ずるもの、これを私どもの方では水利権と申しているのであります。
  35. 生田宏一

    生田委員 あなたのおっしゃるのは、水利権を行使するときに、そういうようなことに行政官庁認可を受ける。ですから最初あなたの方が水利権を得られたという場合には、ほんとう施行認可を得るまでは、あなたの方ではそういう具体的な認可を受けたとは言えない。ですからあなたの最初水利権を得られたという考え方は、そういうことではなくて、やはり水の利用河川敷使用以外にはないと私は思っているのですが、あなたはそういうお考えで何でもできる、それが他人財産他人権利に障害を与えても差しつかえないというようにお考えだと思うのですが、やはりそういうようなお考えでやっておられますかどうか。
  36. 森寿五郎

    森証人 これはただいま申しましたように堰堤から発電所、それからその間をつなぎます水路があるのであります。これは初め、私ども水利権といっておりますこの水利使用許可をもらいます場合に、計画を立てまして、そうしてその計画にはもちろん水路をどういうふうに通す、堰堤はどういうものを作るというはっきりしたものを出します。それによって許可をもらうのでありまして、許可をもらわなければ、われわれの方はもちろん水利権というようには言わないのであります。
  37. 生田宏一

    生田委員 そうするとあなたの方は水利権をもらうのには、具体的な計画官庁から許可をもらわなければ熟したものではないわけですね。
  38. 森寿五郎

    森証人 もちろんそうでございます。
  39. 生田宏一

    生田委員 今あなたのおっしゃった具体的計画についての官庁許可というのは、工事施行認可のことをおっしゃるのだと思いますが、そうでございましょうね。
  40. 森寿五郎

    森証人 工事許可といいますが、どこそこへ落すという水利使用許可というものは、これは適当の方法で役所審議されまして許可をもらうのであります。それからその通り工事ができます場合と、いろいろ調査した結果それを変更する場合があります。変更する場合はもちろん変更する手続をとりまして、そして許可をもらうわけであります。
  41. 生田宏一

    生田委員 どうも副社長さんは私がお尋ねすることに全然法律的には無知といいますか、無能力者だと思うのです。これは一つ公益事業局長にこの際確かめておきたいと思うのです。水利権の確認の日というのは工事施工認可の日をもってする、これは法制局の意見ですが、そう解釈して間違いないと思いますが、どうですか。
  42. 川上為治

    川上政府委員 それは私もそういうふうに考えます。
  43. 生田宏一

    生田委員 副社長さんに申し上げますが、水利権使用することを許してあげる、しかし実際にまとまった水利権として確認されるのは施工認可の日をもってする、公益事業局長もそう言っておるし、私が法制局へ行って調べてみてもそう言うのです。あなた方のほんとう水利権というのは、昭和二十八年八月二十四日、すなわち椿原ダム工事施行認可を受けたその日をもってする、こういうことになっておりますので、それをあなたはよくお考えを願って、これからの御説明なり御答弁をしていただきたいと思うのです。よくおわかりになりましたか、いかがですか。
  44. 森寿五郎

    森証人 いや、私どもが言っております水利権というのはこういう意味であるということをさっき申し上げたつもりであります。
  45. 生田宏一

    生田委員 今の話わかりましたか。
  46. 森寿五郎

    森証人 わかりました。
  47. 生田宏一

    生田委員 それじゃお尋ねいたします。この間社長さんが参られましていろいろおっしゃったのですが、私としても少しどうかと思うことがある。たとえば自分土地湛水しましたと言っても、自分土地でないものもある。先ほども土地をいつ買ったかという話を詳しくお聞きしようと思いましたけれども昭和二十八年十一月十四日に、自分土地でないものもあるようですし、また役所から勧告書を書いたのもそれ以後のことですから、現に太田垣さんのおっしゃったこととだいぶ違ったことをおっしゃっておる。それからもう一つ石川鉱業所に対しては、関西電力椿原ダム工事計画を問われても、これに答える必要はない、こういうように言われておるのです。このことも一つお尋ねしておかなければなりません。水利権鉱業権というものは一カ所で確かにせり合ったのです。ところがあなたの方の水利権として確認された日は昭和二十八年の八月二十四日ですから、それより一カ月前に石川鉱業所鉱業権取得いたしておりますので、その鉱業権をあなた方の方で無視されることはできない、こう思うのです。しかもあなた方の方には石川鉱業所の方から、認可に当っては関西電力の施設に支障を来たさないようにせよという条件がありますので、そのようにしたいからあなたの方の計画はどうなっておるかということをお尋ねしておるのですが、それには答える必要はない、こういうように社長さんはお答えになっておるのです。石川鉱業所からは、役所からこのような付帯条件がついてきたということをあなたの会社の方へお示しをして、あなたの会社計画を知らせてもらいたい、こういっておるのですから、それにはお答えにならなければならないと思うのですが、答える必要はない、自分のところの土地自分湛水したのであるから勝手だとおっしゃるのですが、どうもここらのところが私にはわかりませんのでお尋ねをいたします。
  48. 森寿五郎

    森証人 なるほど石川鉱業所から御照会がありましたが、そのときはまだ会社最後計画が実はきまっていなかったのであります。きまっておりませんために、しばらく御返事を延期さしていただきたいということを申し上げておりました。それから約半月か二十日くらいでありましたかおくれまして、会社の方から文書でこれの説明書を出しております。
  49. 生田宏一

    生田委員 そんなことを言っちゃいけません。この時日の経過を言いますが、そんなことではいけません。あなたの方は十一月十二日に土地をお買いになったのです。それから二日目の十一月十四日に湛水をしたのです。そして、おれの土地湛水したのだからお前に何ら関係はない、こういう返事を出したのです。ところが、あなたの方が土地を手に入れた十一月十二日以前に石川鉱業所の方から、あなたの方の計画はどうかと言って聞くと、知らぬ顔をして返事をしない。まだ最終計画がきまっていないから答えられない、と十月に御返事になっている。十一月十四日が来るとぱたっと水をためて、おれの土地へ水を勝手にためたのだからお前ら何も言うことはないという御返事なんです。  もう一つ申し上げますが、あなたは今うそをおっしゃった。けしからぬと思いますが、ダムを作って水をためるのに、水位は何によってきまるのですか。
  50. 森寿五郎

    森証人 それは堰堤の高さできまります。
  51. 生田宏一

    生田委員 堰堤の高さでなく、むしろゲート関係できまるのではございませんか。
  52. 森寿五郎

    森証人 ゲートの高さといいますと、その構造、場所によりいろいろ違いまして、堰堤の高さまで水がたまります。
  53. 生田宏一

    生田委員 堰堤の高さがきまったのはいつでございますか。
  54. 森寿五郎

    森証人 それは会社計画を出しまして——はっきり申しますと、役所からそれでやってよろしいということがきまったときと申して差しつかえないと思います。
  55. 生田宏一

    生田委員 請負人に請け負わしたとき、堰堤の高さというものはいつおきめになりましたか。
  56. 森寿五郎

    森証人 それは私もはっきり記憶がないのでございますが……。
  57. 生田宏一

    生田委員 請負人に請け負わしたのはいつでございますか。
  58. 森寿五郎

    森証人 不用意にしてそれを持って参りませんので、調べて御返事申し上げます。
  59. 生田宏一

    生田委員 それでは別の方で聞きます。水圧鉄管の長さがきまって、それをメーカーに御注文になったのはいつでございますか。
  60. 森寿五郎

    森証人 何分古いことなんでございまして、はなはだ申しわけないのでありますが……。
  61. 生田宏一

    生田委員 今私がお尋ねいたしました各項は昭和二十八年八月以前にすでに御注文なすったのでありますが、そうでございましょうね。
  62. 森寿五郎

    森証人 どうもそれがはっきり記憶ございません。
  63. 生田宏一

    生田委員 水圧鉄管は大体注文して何カ月たったらできますか。私は十カ月と見ておりますが、十カ月でできますね。
  64. 森寿五郎

    森証人 普通常識で申しますと十カ月ぐらいだと思います。といいますのは設計とかということによりましていろいろ変ることがございます。
  65. 生田宏一

    生田委員 湛水をしたときにすでに発電ができる状態になっておるはずですが、少くとも十一月十四日以前にはちゃんと注文して、そうしてでき上って、現地据付に二カ月や三カ月かかりますから、少くとも一年以上前に発注しておるはずです。そのときはもうこの椿原ダムの最終決定といいますか、どこまで水がたまり、幾らの電気が起きるということはすでに計画がちゃんと立って御注文なさっておるはずです。そういうのに石川鉱業所の方に最終決定がしていないからといってあなたの方で回答を拒絶される理由はどこにございますか。そういうことをされてはいけません。
  66. 森寿五郎

    森証人 石川鉱業所に御回答申し上げましたのは昭和二十八年の九月二日でございます。
  67. 生田宏一

    生田委員 それはどんな内容の回答でございますか。
  68. 森寿五郎

    森証人 九月二日に御回答申し上げております。それは「岐阜県庄川筋の電源開発計画鉱業権関係について、表記のことについて、去月三十日附貴発内容証明郵便を拝承致しました。早速詳細調査の上御回答申上げますが、御指定の期日より万一若干遅延の場合は何卒御海容下さる様御願申上げます。右御返事申上げます」これが九月二日の御回答でございます。
  69. 生田宏一

    生田委員 その次は……。
  70. 森寿五郎

    森証人 先ほどの会社の庶務部長から御回答申し上げておりますが、九月二十四日の回答は社長名でやっております。「貴鉱区に於ける当社発電計画につき御回答の件、拝啓昭和二十八年八月三十日附貴翰にて御照会を得ました首題のことにつきましては、かねて昭和二十八年八月二十五日附を以て御諒承方御願い致しました通り、数日の遅延を見ましたが、ここに許左記の通り御回答致します。追て左記記述を含むこの御回答書は事実関係の記述のみに止まり、如何なる意味でも貴方の権利を容認し、弊方の義務を確認する等法律関係を記述するものでなく且将来訂正又は変更することあるべきものであることを申添えます。一記、一、貴第参鉱区、当鉱区につきましては、未だ当局の御許可なく従いまして登録もおすみになって居りませんので一応回答外と致します。二、貴第弐鉱区当社工事中の椿原発電所調整池湛水区域が若干当鉱区にかかって居ります。但し該地域につきましては既に弊社にて水利権を獲得し、且弊社の所有地であります。尚この地域の詳細な面積は貴御送附の図面のみでは確言致しかねますが、僅かなものと認められます。三、貴第壱鉱区弊社計画支取水隧道約二〇〇米乃至三〇〇米程度が通過致します。以上であります。
  71. 生田宏一

    生田委員 それに対しては石川鉱業所の方は十月十七日付をもって「御社の施設計画につき前述の通り具体的誠意ある御開示が右期日迄にない場合は御社の計画は何ら当方の鉱区とは関係なきものと認め当方としては設備の拡大新設等自由に致すべく御承知相成り度い。というので、抵触してもほんのわずかだと書いてありますが、そのわずかとは幾らかということを聞いて、それに対するあなた方の御返事がなければ私の方は大した影響がないと見て、設備の拡大新設をしますから、さよう承知相なりたい、こういう手紙を出しておりますね。あなたはそれを受け取っておりますね。
  72. 森寿五郎

    森証人 受け取っております。
  73. 生田宏一

    生田委員 それについてはあなたの方はお答えがありませんね。
  74. 森寿五郎

    森証人 出しておりません。
  75. 生田宏一

    生田委員 出しておらないものとして、石川鉱業所は十一月三日になって、御回答がない上は、当方鉱区内において確たる施設計画もなく、当方が今後その鉱区内でいかなる施設を行うも何ら異存がないものと考えますから御了承を願いたい。それからもう一つは、伝聞するところによれば、十一月中に湛水を開始するということでありますが、椿原ダム湛水によって当方鉱区の地域中の水没する部分については、妥当なる損害賠償を実行せられた後に湛水をせられること、また当該ダムの満水時における貯水面と、当方鉱区の接触点を境界線として、その境界線に完全なる浸水防止施設によって、当方鉱区の採掘に浸水の支障なきことを保証せられること、上記二項目について貯水以前に当方と折衝相なりたく、もしこのことなくして独断で貯水を開始せられるにおいては、遺憾ながら御社は常に円満な解決の誠意なきものと認めます。なお私がかくも当鉱区の開発を切望する理由は、当鉱区は、MOS2九八%以上の優秀なモリブデンは、世界でも稀少金属に属する貴重なものであるから、日本国内においても同様に少いものである、こういうことを言っているのですが、あなたの方からは、これに対してもまた何も御回答がなかったといいますか、それに対する御回答をあなたはしておられますか。
  76. 森寿五郎

    森証人 してございません。
  77. 生田宏一

    生田委員 そうしてそれに対してほおかむりをして十一月は済んで、二十九年九月十五日、一年たってあなたの方から庶務部長難波恭一の名前で石川鉱業所の方へ返事を出した。それには「弊社は同発電所水利権を獲得し、且弊社の所有地に湛水いたしたのでありますから、弊社は正当の権限に基き適法に湛水したものであると確信いたしておりますので、左様御承知願いたいと存じます。」と言って突き放したのですね。そうでございますね。
  78. 森寿五郎

    森証人 九月十五日の書面は鳩ケ谷の関係が二項目ございまして、一番最後椿原発電所湛水は、会社といたしましては鉱業権の侵害にならないからということを書き加えております。
  79. 生田宏一

    生田委員 そうするとお聞きしますが、少くとも二十九年九月には多少抵触するということをあなた方の方は御回答になっておる。ただし変更することがあるということで逃げておるけれども、ともかく多少抵触するということになっておる。抵触するならば抵触する限度を言ってもらいたいと言うと返事をしない。そして十一月十二日には土地を買って、十一月十四日に湛水をして、そして一年ほうっておいて、一年目におれの方は勝手に自分土地湛水したのだから、お前の方とは何の関係もないと言ってほうかむりをする。これは関西電力株式会社という大きな会社が、石川鉱業所という小資本家に対する正当な交渉の経過であろうとは私は考えないのですが、いつもこういう他人の権益とか、他人に対してば不親切というか横暴というか、あるいは非道といいますか、そのような処置を、常にあなた方はやられておることと私は思うのですが、これはどのようなお考えで、こんな矛盾きわまる御回答をなしたものであるか、お聞きいたします。
  80. 森寿五郎

    森証人 これはこの前も社長が参りましてお話申し上げましたように、会社の発電計画は、実ばこれが漏れますといろんな問題が出て参りまして、工事の進捗を妨げることがたびたびあるのでありまして、そういう意味で多少御回答をおくらしたという点もあるかもしれませんが、別にほかに大した理由はないのであります。
  81. 生田宏一

    生田委員 川上公益事業局長お尋ねいたしますが、石川鉱業所なるものは七五一二、七五一四等の鉱業権政府から許可を受けております。そして石川鉱業所はそれぞれこの事業を遂行したいとして、施業案を鉱山局に出しております。この石川鉱業所は、関西電力株式会社水利権をここに行使しようということを奇貨として、この鉱業権をとって、その鉱業権を高く売りつけて、一もうけをしようというような悪意の鉱業権者でありますか。あるいはこの石川君は、戦争前非ら当地において、このモリブデンの採掘をしておって、昭和二十年以来多少休山をしておったけれども、しかしながら二十六年からまた再出願をして、認可を受けたときには、関西電力の施設に抵触しないようにやれという条件がついておるから、直ちに関西電力の方へどうすればよいのか、あなたの方の計画を知りたいと言って、照会を出して、関西電力に聞きに行っておる。すなわち役所の命じた通りのことを石川鉱業所はやっておるのですが、それを悪意の鉱業者と見なすのですか。あるいは善意の鉱業権者と見なすのですか。公益事業局長、あるいは公益事業局長が答弁できなければ鉱山局長——これは鉱山局長にお聞きした方がいいと思うから、鉱山局長にお聞きしますが、これは善意の鉱業権者ですか、悪意の鉱業権者ですか、お尋ねいたします。
  82. 松尾金藏

    ○松尾政府委員 ただいまお話のございました鉱業権の設定なり、また工事の経過を見ますと、私承知しておる限りでは、別段悪意であるとかなんとかいうことを考えられることは毛頭ないと思います。
  83. 生田宏一

    生田委員 そうすると、石川鉱業所関西電力の方の施設に抵触しないようにという条件ですから、当然役所の命ずるところによって、あなたの方にお聞きしなければならない立場なんです。それをお聞きせずして開発することはできない。善意でもってあなたの方に交渉しているものを、何も石川君に言うのですから、石川君が悪意の鉱業権者に、あるいは悪意の補償を要求するような人たちに漏らすことは予測つきがたいのですが、こういう善意の人には、どうしてあなたの方ではあかしてやらないのですか。
  84. 森寿五郎

    森証人 水力発電所は火力と違いまして、その工事の区域が非常に広いのであります。堰堤から発電所までの水路の相当長いものがあるのであります。そうしますと、なるほど石川鉱業所範囲というものは狭いかもしれませんが、あとの部分がまた外部にわかるということになりますと、これは私の方からいっておりますが……、(「その影響する部分だけでもなぜ言わぬ」と呼ぶ者あり)それはなかなかそういかないのでございまして……。
  85. 生田宏一

    生田委員 鉱山局長お尋ねしますが、鉱山局は、関西電力の施設に影響のないようにしろということを条件にしておられますので、石川鉱業所は当然その指示に基いて関西電力に交渉したのですが、関西電力は、お前には社の秘密はあかさぬ、その他第三者がこれを利用するおそれがあるということですが、行政的には関西電力をしてその内容石川鉱業所にあかさしめるのか、またそうしなければならないものであるか、あるいは関西電力があかさないといえば、もうそれで仕方がないものであるか、鉱山局長の御意見を伺います。
  86. 松尾金藏

    ○松尾政府委員 私は当時の詳しい事情を——私は当時鉱山局長でもありませんでしたし、また現地の処理は御承知通り現地の通産局長が処理をやることになっております。私今まで聞いておりますところで、そのような場合にどのような、つまり今問題になっておりますような法律的な処置をどうこうできるかということは、これは法律的云々の問題ではないと思います。むしろ関西電力なりあるいは電力事業を経営する立場から、常識的な判断で当然やっていただけるものであろうというふうに存じております。
  87. 生田宏一

    生田委員 公益事業局長の御意見も今の鉱山局長の御意見と同じでありますか、あるいはまた別に御意見がありますか。
  88. 川上為治

    川上政府委員 今の鉱山局長の意見と私は同様であります。もしそういうような、石川鉱業所の方から、どうしても自分の開発をするために、関西電力計画がどうなっておるかということを聞きに参りましたときには、その計画がこういうふうになっておるのだということは当然回答すべきものだ、こういうふうに考えております。
  89. 生田宏一

    生田委員 どうですか、森さん、両局長の意見は右の通りでありますが、なぜあなたはそれをしも自分の社の秘密を守るとして、そうして第三者の権利者に迷惑をかけて、それでよいというお考えでございますか、承わります。
  90. 森寿五郎

    森証人 なるほどお話のように、私どもは回答すべきであったと思います。が、その当時の情勢から申しますと、まだほんとうにはっきりきまらなかったこともあります。それからまたただいま申し上げましたような第三者がこれを利用するのではないかというような心配もありまして、回答しなかったのが事実であります。
  91. 生田宏一

    生田委員 そうしますと、こういうことになるのですか、石川鉱業所は、あなたの方の御回答がないから、どうしても施業案を作ることができない。そこで仕方なしに、あなたの方には御回答がないから、私の方が勝手に施業案を作って開発に着手いたしますからさよう御承知願いたいという文書を作って、施業案を出しておるわけです。ところが施業案というものはちゃんと九月には出しておるのですが、その九月に出した施業案というものが——ここが私は問題になると思うので、私は鉱山局長にお聞きするのですが、なぜ九月に出した施業案というものを、あなたの方では受理なさらないのか。そうして昭和二十九年に関西電力が、おれの方の土地に勝手に湛水したのだといったような、その時期になって初めて施業案というものをあなたの方では受理しておる。認可でも許可でもない、受理です。しかしながら施業案を出さなければ、石川鉱業所はこの試掘権を開発することができないのですから、どうしてあなたの方ではこの施業案というものを一年近くも受理しなかったのだろうか。何か正当な理由があってのことなのか。実際に名古屋通産局は関西電力の人に頼まれて、そしてその施業案の受理というものを遷延さしたかのごとく人は疑っておるのですが、私は必ずしもそう疑っておりませんけれども、あなたの方のお答えによって、これははっきりわかることなんです。どういう理由でこれを受理されなかったのでしょうか。
  92. 松尾金藏

    ○松尾政府委員 この施業案の提出の当時の状況は、当時二つの鉱区の施業案を合併して出たようであります。そういたしまして、その提出されました施業案の内容を当時の名古屋通商産業局で検討いたしました。当然そのような施業案について、鉱業権の利益保護の立場から十分検討しなければなりませんが、同時に、このような問題になっております電源開発事業にこの調整問題が当時当然予想されました。そのような競合を未然に防止するような調整措置をやりたいというので、当時通商産業局でいろいろ検討をしたと思います。その間特にその二つの鉱区のうちの一つの鉱区については、水路計画地点と技術的な調整の問題がかなりあったというふうに聞いております。そのようなことで、その正式の受理通知を出すのに、ただいま御指摘のございましたように、普通の場合よりは相当長い時日を要したということでございます。
  93. 生田宏一

    生田委員 そうすると、鉱山局の方では関西電力の発電計画について何か事前によく知っておられたがごとくに見えるのですが、それは関西電力の方から何かお話があったのですか。
  94. 松尾金藏

    ○松尾政府委員 御承知のように、通商産業局では電力関係と鉱山関係と二つに仕事を分担しておるわけであります。電力関係の方にはそのようなことが、最終的ではないでしょうが、ある程度わかっておっただろうと思います。たまたま二つに部がわかれておったからというわけではないでありましょうが、双方連絡をとりながら調整の相談をしたというのではなかろうかと思います。
  95. 生田宏一

    生田委員 それではお尋ねいたしますが、川上公益事業局長はこの前に石川鉱業所に対しては行政指導をしたことばない、そういう回答文をいただいております。そうすると、公益事業局はそれをやっておらぬのですが、鉱山局はやっておりますか。ちょっと今のお尋ねが少しはっきりしませんから……。川上公益事業局長は、本件については関西電力に対してはいろいろ相談をした。そして行政指導もしたが、石川鉱業所に対しては行政指導をしておらぬ、こういう回答文をよこしておるのです。そこで、一体それでは公益事業局長はどのような行政指導を関西電力にしたか、それを一つお尋ねします。
  96. 川上為治

    川上政府委員 この鉱業権ダム関係につきましては、いろいろとあとで問題が起ることになりますので、やはり関西電力としましては十分慎重にこういう問題についてはよく検討して、またその相手方に対しましてもそういう気持で折衝してやれということは、当時の公益事業局として関西電力に対しまして指導したというふうに私は聞いております。当時私公益事業局長でありませんので、この回答しましたのは、当時そういうことをやったということを聞きまして、御返事申し上げた次第でございます。
  97. 生田宏一

    生田委員 そうすると公益事業局の方ではそういうように配慮をして、関西電力の方には、競合する鉱業権者に対しては十分に親切に相談をしてみろ、こういうように行政指導をしたというのですが、関西電力の方は何らしておらず、また石川の方からいってみても、そんなことはおれの知ったことではないといってけ散らかしておるのですが、関西電力は、公益事業局の行政指導については、話は聞いたけれども、そんなことは知らぬ、おれはそんなことはいやだといって公益事業局の指導に従わなかった、こういうことになりますね、いかがですか。
  98. 森寿五郎

    森証人 これは先ほども申し上げましたように、私どもは時期ということを主にしておるのでありまして、その当時は時期でないと考えました。
  99. 生田宏一

    生田委員 あなたの時期でないというのは、湛水をしてしまって、そうしてやってしまったあとでは知らぬ顔をして、おれの方はやってしまったから知らぬ顔をする、こういうことじゃないですか。あなたの時期というのは、文句を言ってきても、その文句は今聞いておったのでは何にもならぬから、とにかくあなた方は知らぬ顔でほおかぶりしてやってしまえ、既成事実ができてしまえば向うは泣き寝入りする、こういうのが時期でない、こういう意味なんですか。
  100. 森寿五郎

    森証人 そういうわけでもありませんが、あそこは御承知のようにたくさんモリブデンの鉱区が至るところにありまして、それでこれはおそらく私どもの勝手だとおっしゃるかもしれませんが、私ども事業を遂行するためにもどうしてもそうせざるを得なかったのであります。
  101. 生田宏一

    生田委員 それでは承わりますが、あなたの方でそういうようにやられたために第三者の財産権利が侵された場合に、あなた方はそのことについてはどのような責任をお感じになりますか。あなたの方はほおかぶりで、とにかく人の権益財産についてはこれに損害をかけることを無視してやったのだから、もし損害をこうむった人間があったならば、あなた方はそれをどうされますか。
  102. 森寿五郎

    森証人 これはどこまでもほんとうに損害がかかったりすれば、私ども補償しなければならぬと考えております。
  103. 坂本泰良

    ○坂本委員 関連して。どうも私さっぱりわからぬですが、何か発電事業鉱業権があったかのようなお話ですが、それの侵害みたいなお話だと思うのですが、石川というのはどういうふうな会社でどういう鉱業権を持っておる人ですか。石川鉱業所というものは、森証人調査になったのですか。
  104. 森寿五郎

    森証人 この鉱区というものはまことに広いのでありまして、ほんとうの一、二の地区に……。
  105. 山本猛夫

    山本(猛)委員長代理 証人に御注意申し上げます。先刻来しばしば証人に御注文を申し上げておりますが、あなたのお声が低声でありまして、速記等に困難を来たしますから、再び御注意を申し上げます。もう少し高い声で御証言を願います。御証言をお続け下さい。
  106. 森寿五郎

    森証人 はっきり地図の上からつかめないのです。そうかといって、現地で調査できるかといつってもなかなか調査もできませんから、大体見当をつけるわけでありますが、なかなか見当がつかないのです。なるほど石川鉱業所からあの関係の地図をちょうだいしておりますが、ただいま申しましたように、はっきりわかりません。ですからどの部分がほんとう石川鉱業所の部分であり、どの部分がそうでないかということがつかめないものですから、一つはこういう問題も起るかと思いますが、その調査はそういったような意味でありまして、調査が十分できません。しかし照会はちょうだいしております。
  107. 生田宏一

    生田委員 それでは一つお尋ねしたいのですが、前に太田垣さんも来られてお話があったのですが、電源開発政府融資でやるようになって以後、水没等の補償要綱というものが閣議決定でなされておるのですが、あなたはそれは御参考にされるのでありましょうね。開銀融資を受けておる以上はそうだと思いますけれども、いかがですか。
  108. 森寿五郎

    森証人 それはもちろん参考にしてやっております。
  109. 生田宏一

    生田委員 そばではその水没等の補償要綱でお尋ねをいたしますが、その第二条に、「この要綱において「電源開発等」とは、電源の開発及び送電、変電施設の整備をいう。」とある。二項に「この要綱において「財産」とは、」ずっといって「鉱業権」、この鉱業権というものをその財産の中に認めている。これはあなたの方ではお認めになるのでございましょうね。もちろん鉱業権には試掘権もあれば採掘権もあり、租鉱権もありますが、この三つを含むとお考えになりますか。
  110. 森寿五郎

    森証人 それは認めます。
  111. 生田宏一

    生田委員 それから第四条に「この要綱による買収価額及び損失補償額の支払は、原則として前払とする。」時によっては概算払いをやってもよろしい、こういうことになっておりますが、それもお認めになりますか。
  112. 森寿五郎

    森証人 認めます。
  113. 生田宏一

    生田委員 そうしますと、原則として前払いである。算定が困難なときには概算払いということになっておるのですが、あなたはどうして湛水をして、鉱区に水を埋める前になぜ前払いの原則によって事前折衝をしないのでしょうか。そうするとあなた方はこれを無視したことになるのです。ともかくわしの方は事業をしてしまって、それからしばしば権利を侵害したが、向うが言うてくればよし、言うてこなければほうっておくということになりますると、この前払いという補償要綱というのをあなた方は全然無視したとお考えになるのか、いかがですか。
  114. 森寿五郎

    森証人 この問題につきましては、ちょうど藤田支配人も来ておりまして、その方面を担当しておりますので、その藤田証人から……。
  115. 藤田友次郎

    ○藤田証人 それでは私からその点をお答申し上げます。なるほど御指摘の通り、われわれは補償いたします場合には、閣議決定の補償要綱を尊重してやっておることは間違いございません。その中に、補償すべき場合は原則として前払いをしろということを書いてあることも承知いたしております。ただこの場合に現実に問題になっております鉱業権そのものは、法律的解釈を前回社長から申し上げました通り、これは権利の侵害になっていない、こういう解釈をいたしておるのでございます。ただ補償要綱には、水利権に対しても損害補償せよ、こう書いてありますけれども、いついかなる内容を持っておるものにも補償せよという意味ではなくて、水利権鉱業権の中で補償すべきものはこういうふうにせよ、こういうふうにわれわれは解釈しておるのでございます。現実に問題になっておりますこの場合ば、前回社長から申し上げましたように、法律的解釈といたしましてはわれわれは権利を侵害してない、こういう主張をして参っております。それからこれとほとんど内容的に同じものが、実は富山の地方裁判所で今訴訟係属中でございます。この訴訟に当りましてもそういう主張をやっておりますので、法律的の解釈といたしましては、ただいまのところその解釈を変えるわけには参りませんので、そういう点を一つ御了解願いたいと思います。
  116. 生田宏一

    生田委員 今の冨山のことはあとで聞きますが、水没補償要綱の二十五条に、「鉱業権及び租鉱権の価額は、次の各号により算定した額とする。」こうあって、二に、「未着手のまま措置期間のある場合の鉱山における鉱業権については、次の算式により算出した額」とあって、未着手の鉱山に対してもちゃんとここに補償の対象になっている。ところがあなたの方の太田垣さんもこの前に来られましたけれども、ただこの場合は鉱業権をもらったままであって、未着手であって土地も買っていない。立ち入りも土地所有者の同意を得ていない。何らそこに権利を行動に移したことがなくして、そのまま据置をしている。そのものについて、これを鉱業権とみなさないという一つの判例あるいはそういう意見があるから、それで私はそれをそのように信じているので、それを鉱業権の対象にしないというお話ですが、この二十五条にはちゃんとこういうことを書いてある。この二十五条の二というものをお認めになりますかお認めになりませんか。
  117. 藤田友次郎

    ○藤田証人 もちろん、二十五条の条文にそういうものがあるということは確認いたしますけれども、これはこの前も申し上げましたように、単なる鉱業権だけを持っておりまして、これを現実に採掘する状態になっていない場合、そういう場合に、会社の方で正式に土地の所有権を得、また行政許可を得て湛水したような場合には、そういう権利の侵害じゃない、こういう解釈をしているのでありまして、そこに、私は詳しくは存じませんが、今お読み上げの未着手云々というような場合は、これはそういう現実の採掘をする姿になっておって、なおかつ着手していない場合、こういうようにわれわれは一応解釈をいたしておるのでございます。
  118. 田中彰治

    田中(彰)委員 ちょっと関連して。鉱山局長でもよろしいし、公益事業局長でもよろしいのですが、鉱山局長の方がいいでしょう。試掘権を持っているといたしますれば、その試掘権が、たとい採掘していなくても、試掘権のある土地を買ったからといって、その土地を買った所有者が、試掘権を侵害するような、試掘をすることができないような方法をとることはできないと私は思う。たとえばAの土地を買った。しかしそのAの土地には試掘権がある。石炭なら石炭の試掘権がある。その土地を買った人が、自分の所有権だからといって井戸を掘った。そうしたら石炭が出てきた場合には、これは土地の所有物じゃなくして試掘権者のものでなければならない。井戸を掘った人がそれをとれば、やはり盗掘になって刑事問題になる。そうすればこういう解釈は成り立ちませんか。試掘権を持っているその土地を買って、そこに水をためて試掘することができないようにして、鉱業権を無視してしまって、無効にしてしまって、無価値にしてしまって、それを財産と認めないということになると、試掘権というような権利は何もなくなってしまう。それは昔の石灰やバラスのように、土地の所有者がすべてをやって、鉱業権というものはそこになくなるわけですが、その点鉱山局長はどう考えておられますか。
  119. 松尾金藏

    ○松尾政府委員 今お話のございましたように、試掘権も明白に鉱業権という権利でございますから、財産権でございますから、土地の所有権と鉱業権は、別個のものとして両立するわけです。すでに試掘権と所有権が両立しておりますので、一応両方の権利がそれぞれ主張できるわけであります。所有権のある土地に試掘権がありますれば、その鉱業権に含まれている鉱石その他の権利は、鉱業権者の方にあるわけでありますから、土地の所有者が、今たまたま例としておあげになりましたような場合に、鉱業権者の権利内容になっている鉱物を勝手に掘ることはできないことは、お話通りであります。
  120. 田中彰治

    田中(彰)委員 そうしますと、こういう理論が成り立ちますね。試掘権のあったところを買ってそれをダムにした。そうしてその試掘権をめちゃめちゃにして。それが損害賠償の対象にならないし、財産の侵害にならないというなら、試掘権者が、今のダムの水のたまっているところを、よそから坑道をあけていって、そのダムの水を全部出しても問題になりませんかどうですか。それを一つお聞きしておきましょう。
  121. 松尾金藏

    ○松尾政府委員 ただいま申しましたように、二つの権利があるわけでありますから、いずれもその間に自分権利を主張する際に、他の権利にむやみに損害を与える二とはできないわけであります。従ってその場合に、土地の所有権と鉱業権権利内容に、具体的な認定の問題として、どの程度の受忍の義務があるかという問題が残るかと思いますけれども、今お話のございましたように、土地の所有権者の方がむやみに受忍の限度を越えてやる場合には当然補償しなければならぬでありましょうし、また鉱業権者の方が土地所有権の上に水利権を持っている者に対して、今お話のように坑道を掘っていって水を漏らすというような侵害の事実が起れば、これは逆に鉱業権者の方が補償しなければならないという立場にあると思います。
  122. 田中彰治

    田中(彰)委員 そうするとここでお尋ねせんければならぬのは、ダムのときに試掘権がある場合、しかも話を聞くと施業案が出てくる。これは鉱山局長が一番よくおわかりでしょうが、鉱業権者の通例として、施業案を出したときにはもう大てい仕事に着手しておるのです。施業案の許可のくるまで待っておるところはそうないのです。どんな石炭でも金でも施業案を出したときは概略その仕事に着手しているという例が往々にして多いのです。そこで施業案が出ておって、それを許可してないとはいいながら、そこに土地を買ったからダムを掘って水をためるというような場合に、あなたの方はそこに対してストップ令を出されるとか、何かそこに注意を喚起されるとか、あるいはそれをとめるということをなされなければならぬ。それをなさらないで、鉱業権がありながらほっておいて、そして土地を買ったからとダムを掘らして、あなたの方でそれを放任しておかれるならば——その周囲の土地からどれだけかかろうと、土地収用令にかけてもいいでしょう。それをほっておいて、故意にはダムの水を出さないけれども、結果的には、穴を掘ったためにそれが破れて水が全部流れていくということになっても、あなたの方ではそれを許可なさるのでしょうね。
  123. 松尾金藏

    ○松尾政府委員 施業案を受領して許可をいたします際には、当然そういうことの予想されるような——つまり二つの権利が同じところに両方成立しておるわけでありますから、施業案の内容を検討いたします際には、そのような事態を未然に防止するような調整の問題を配慮しなければならぬと思います。
  124. 田中彰治

    田中(彰)委員 鉱業権の施業案に対しては、あなたの方はいろいろなことを考えてやっておると言われるが、ダムの水をためるとかいう鉱業権を侵害するようなものに許可されるのには、そういうことをお考えにならないのですか、お尋ねしておきます。
  125. 松尾金藏

    ○松尾政府委員 先ほどから申しますように二つの権利の調整の問題でございますから、双方からそのような調整の配慮をしなければならないと思います。
  126. 田中彰治

    田中(彰)委員 あなたは二つの権利とおっしゃいますけれども、それは土地の所有者は上の土に対しては権利があります。鉱業権を願ったら、鉱業権者はたとい国会の下を掘っても、故意で被害をかけたことに対して弁償するという条件が成り立つといってもいいと思う。鉱業権が先にあるんですよ。そこへその土地を買って、そして水をためるということになっても、あなたの方はそれを許可されるが試掘権はないわけです。反対に水利権は持っている、ここへダムを作るんだというときに鉱区の出願をしてもお宅で許可にならぬ。そこで施業案を出しても——所有権者の侵害に対してはそういう条件があるが、鉱業権者に対してはそういう利害に対する考慮を何も払わないということはおかしくはないですか。今あなたのお話を聞いておると、鉱業権者の権利は認める、しかし土地は買ったのですから、土地権利者がダムを掘って水をためてもしかたがないのだ、だから鉱業権者が許可されれば掘ってもいいでしょうと、明日から行ってあのそばを掘って坑道から水を出してもいいじゃないか、あなたの理論からいくとそれでも却下できないでしょう。少くとも鉱業権が先にあれば、あそこに鉱業権があるのだ。これは試掘、採掘にもあります。たとえば、私は石灰山に対して金、銀、銅の試掘を願っている。これが先である。石灰は、自分土地の所有のものであるから、鉱業法第七条によって権利を持っておる。私は土地の所有者で石灰は自分のものでありながら、石灰の鉱業権を願う、そういう場合あなたの方が許可される場合、普通には願ってある先の金、銀、銅の鉱区を処理されて、その処理がついてから石灰の採掘権、試掘権が許可される。もし先の試掘権を放任しておいて、あとのものを許可される場合、前の出願した権者の了解を得て先に許可してやってもいいというふうに了解を得なければ許可できないと思います。そういう点から見るとこればおかしいじゃないか、その点を御答弁願います。これは役所が悪い。
  127. 松尾金藏

    ○松尾政府委員 ただいまの一つの例示としておあげになりました場合でありますと、金、銀、銅の鉱石と石灰石は鉱業法の扱いで一種の鉱物になっております。その二つの鉱業権は別々に成立し得るわけでございます。それは同一鉱床の中で両方まじり合っているのは問題になりませんが、そういう状態は普通の場合にはないのでありますから、そういう場合は金、銀、銅の鉱区が前にありましても、石灰石の鉱区が前の金、銀、銅の鉱区と競合しないという事実の認定がありますれば、そのあとでもまた石灰石の鉱区が成立する、こういうことになります。
  128. 田中彰治

    田中(彰)委員 鉱山局長は現場をよく御存じでしょう。石灰山があって、石灰山の金、銀、銅を願った場合は、金、銀、銅が固まってあるわけではない、金、銀、銅の脈は石灰山の中のどこかを通っておれば、それをどこまでも追いかけて石灰山を掘る、片っ端から石灰の穴を掘っていく。だからこれば同一鉱床みたいなものである。それは異種鉱床でなくて同一鉱床である。石灰山が十あって、そのうち三だけに金、銀、銅が許されている。七は石灰が許されているのだ、これはいいです。石灰山の全部に金、銀、銅がかけられて、その上にまた石灰を許されるというのは、みな許されると思う。どこでもそうです、われわれの持っているのもそうなんだ。そういうようなことをする場合に、前の権者とあとの権者が相談するとか、前の権者の認可を得るとかいうようにして、許可されている。しかるに先に試掘権があって、その試掘権のあるものの土地を買ってダムを作る場合は、鉱業権があるのだから、それを侵害した場合は——これはあなたの方がやってやる。これは重大な問題です。あなた方言いのがれをするのは、これは重大な問題ですよ。  われわれは、関西電力が倒れるとかそんなことはこの委員会関係ございません。そういうような取扱いをして、そして国家の重要物資を、とにかく土から掘ればものになるものを、なくしてしまったり、また今度けんかをして開発銀行から金を辛うじて借りてダムを作って、ダムをだめにしてしまうことはいけないから、ここで取調べている、これはよく考えて答弁して下さい。石灰が同一鉱床であるとか違った鉱床であるというような問題に大きな影響を来たす、今後の鉱業権にも大きな影響を来たす。その点はあなたの方の考え方は非常におかしいと思う。もし試掘権のあるものをあなたの方でダム許可されたたならば、よそから掘っていったためにダムの水が全部坑道から流れて、ダムがむだになろうともあなたの方は許可しなければならない。  もう一つ関西電力の話を聞いておって、試掘権だから、鉱業権ではあるけれども、採掘権よりえらい権利のないように考えているように僕は見受ける。これはとんでもないことです。試掘権であっても試掘請願中であっても、その方法によっては採掘権より強いものがあると思う。たとえばある人が試掘を願って、試掘の許可は生きておる。しかし試掘は御存じの通り年限があるのでこれを採掘転願にする。そういう場合、試掘権利が二年半なら二年半ぐらいで試掘の許可を得てから採掘転願にする。採掘転願は一年後には許可がくるが、五年も十年も及ぶでありましょうけれども、そういう場合試掘願のようなものでも、採掘転願する前に試掘許可をしたところに願い出があったとして、試掘権に一年から採掘転願をして、二年半なら二年半の試掘権の切れるまでにこの採掘権の許可がくれば採掘権がある。試掘権の年限が切れても採掘権が許可になってこない場合には、この切りかえた一年後の試掘権というものは生きています。しかし許可になっていないから二年半なら二年半で試掘権は無効になる。試掘願は印紙を張って出しただけのもので、この試掘願を切りかえた一年から、採掘に転願した一年から、試掘権が生きて、試掘願が生きて採掘転願よりも強くなるというような訴訟が始終起っておるし、そういう事実もある。こうなると試掘権は採掘権と何ら変るべきものでない。ただ年限を付せられておるということと、それからたとえば鉱物を掘ったときに、政府に鑑定してもらって売るとか、政府に届けて売るとかいうだけであって、採掘権と試掘権は鉱業権としては何ら差異はございません。こういう点をあなたの方は考えてこの処置をとらなければいけないし、関西電力でもそういう点をお考えにならないと——私は石川鉱業の人はどんな人か知りません。私はむしろどっちかといえば関西電力の方が重要だと思う。しかしあなたの方が法律を無視して、監督局あたりの頭の悪いのを相手にしてやっておって——もし私が石川鉱業におったならば、こんなところに持ってきません。私は必ず下を掘ってみせる。どんなに金がかかってもいいじゃありませんか。ダムの下へ掘っていって底から水を出してしまえばいいじゃありませんか。あなたの方が何十億かけたダムがだめになる。そんな手だって打たれますよ。だからこういうことは法律を無視しないでやらなければいかぬ。あなたがどんな大きな邸宅をお建てになっておっても、その邸宅から十間、二十間、三十間離れた人が、その下を掘ることを許されていれば、あなたの邸宅の下を、石炭を掘り、金を掘って、邸宅がひっくり返るかもしれないが、それは弁償すればいい。一々その山はいけないとかその谷はいけないとかいうことは、こういうものがあったらやれません。家が没落して人が死んだりすることがあれば別だが、一々掘る前にあの家が反対だから許可しない、この家が反対だから許可しない、この水田が、この畑がということでは絶対に掘れません。鉱業権というものはそんなものではない。こういう点をよく考慮されてやらないと、私は重大な問題が起ると思う。その点をよく鉱山局長あたりはお考えになってやらないと、この問題はこんな小さい争いだけでなくなってくる。その点をよくお考えになっておやりになったらいいと思う。
  129. 生田宏一

    生田委員 もう一つ、二つ聞きますが、この二十五条の二の未着手云々というのは、この対象は何でございますか。
  130. 磯野太郎

    ○磯野説明員 今お尋ねの二十五条の二項は、第一項のところで可採年数というのがありますから、この可採年数のところをごらんいただきますと、確定鉱量、推定鉱量及び予想鉱量を含むと書いてございますので、第二項の未着手のままというのは、鉱量が一応わかっておりますけれども、なおまだ操業していない。操業するについて、ある計画があって二年間は操業しない、三年目から操業するというような場合の鉱業権を対象としております。
  131. 生田宏一

    生田委員 そうするとこの鉱業権は採掘、試掘あるいは租鉱権でも……。
  132. 磯野太郎

    ○磯野説明員 鉱業権というように書いてございますから、試掘権でも租鉱権でもあるいは採掘権でも、その点はいずれでも問いません。
  133. 生田宏一

    生田委員 そうすると、今関西電力から、これは試掘権である。そして何ら具体化する措置が講ぜられておらないような試掘権に対しては、これを財産権あるいは権利と認めないというような見解があったのですが、鉱山局の御見解はいかがですか。
  134. 松尾金藏

    ○松尾政府委員 これは鉱業権であります以上は、試掘権であろうと採掘権であろうと、財産権であるということには間違いないのであります。今御質問になっております補償基準は、私直接所管でもございませので、あまり詳しくは存じておりませんけれども、要するに財産権であるということには間違いないのでありましょうが、それに対して補償の必要があるかどうかという観点よりの議論ではないか。権利であることにはもちろん間違いないのであります。
  135. 生田宏一

    生田委員 その議論はあとにしますが、富山の裁判云々ということで言っておられますが、今富山の裁判はどういう状態になっておりますか、ちょっとお尋ねします。
  136. 藤田友次郎

    ○藤田証人 富山の裁判所は、先ほど申し上げましたようにこれとほとんど同様なケースでございますが、これは順次進行いたしまして、まだ最終結論には参りませんが、進行過程から申しますると、むしろ会社側に有利に進展をいたしておる、かように考えておるわけでございます。しかしまだ最終結論は出ておりません。
  137. 生田宏一

    生田委員 あなたの方から提出されました調書を見たのですが、これによりますと、本年二月には示談に入っておりますね。会社側の方から示談の意思表示をしたことになっておりますが、今あなたの方が有利という言葉を使いましたが、あなたの方の主張が通って、あなたの方が勝訴するということになれば、何も示談に入る必要はないと思うのですが、その示談の内容はどういうことですか。
  138. 藤田友次郎

    ○藤田証人 最近の経過を申しますと、実は、先方の担当の弁護士から訴訟取り下げの申し出があるのは事実であります。ただ当社といたしましては訴訟の面で取り下げで解決いたしましても、また他の面でいろいろの補償の問題が起きるおそれもございますので、そういうものを一切含めて解決するというふうに処置したい、こういうことで、まだ向うからの申し出に対して同意をいたしてない、これが事実でございます。
  139. 生田宏一

    生田委員 その他の問題というのはどういうことをさすのでございますか。
  140. 藤田友次郎

    ○藤田証人 これは訴訟で一応問題を取り下げましても、訴訟外でまた一般の損害賠償の請求というようなことはあり得ると思います。そういう要求をされることは先方さんの御自由でございますから。そういうものがありますから、そういうものを一切込めて解決をいたしたい、こういう考え方を持っておるわけでございます。
  141. 生田宏一

    生田委員 あなたの方が有利になっておるか不利になっておるかということは、裁判の結果を見なければわからぬはずです。ところが示談の申し入れはあなたの方からしておる。被告から示談の申し入れをしておる。——原告からしておるわけですね。それで、この裁判の結果によって、同じケースだから、あなたの方は腹をきめたい、こう言っておられる、そうですが。
  142. 藤田友次郎

    ○藤田証人 これはその方が解決しなければこちらも解決できぬというほどのものでもございませんですけれども、少くともそういうものが進行しておる途上におきましては今までの主張を一応法律的には続けざるを得ない、こういうことでございます。その方が解決いたしますれば、自然本件に関しましても法律的の解釈は一応きまりますけれども、しかしそれと関連してそっちが解決しないのだからこっちをほうっておくというつもりもございません。
  143. 生田宏一

    生田委員 公益事業局長お尋ねしますが、この水没の補償要綱に関する二十五条の二でございますが、先ほど鉱山局長からも聞きましたが、公益事業局長のお考えはいかがですか。これに対しては試掘権、採掘権、租鉱権を含むということは間違いないと思いますが、この「未着手のまま据置期間のある鉱山」というものはいかなる性質のものであるか。
  144. 川上為治

    川上政府委員 先ほど鉱山局長から話がありましたように、鉱業権には試掘権と採掘権というのがありますので、この鉱業権というものは試掘権ももちろん入るわけであります。  それから未着手というのは、これは字の通りまだ着手していない鉱山でありましても、補償の対象にはなる。問題はその鉱山に果してどの程度の鉱物があるかという問題が、現実の問題としての補償の問題にかかってくると思います。
  145. 生田宏一

    生田委員 今まででよくわかりましたが、重ねてお聞きしますが、普通の民事訴訟による訴訟の方法については富山裁判所で係争中でありますから、その結果を待つというお考えも一応は了承いたします。しかしながら普通の民事とは別個に、開銀等の融資による電源開発を行うために特に政府が閣議決定によって、電源開発に伴う水没その他による損失補償要綱というものを作って、あなた方もこれを順奉するという以上、二十五条の二を順奉されるということになると思うのですが、そのときには今の鉱山局長の見解というものをあなた方は同意されますか、いかがですか。
  146. 藤田友次郎

    ○藤田証人 私たちの考え方は先ほど二十五条の二につきまして申し上げた通りでございます。また試掘権そのものに対する根本的な考え方も先般来申し上げておる通りでございます。しかし社会良識と申しますか、そういう法律論は法律論としてあくまでも主張しなければならぬわけであります。実際問題としてはこういう問題が係争で起っておりますので、これの解決につきましてはできる限り努力をいたします。こういう考えを現在持っています。
  147. 生田宏一

    生田委員 私はあなたの具体的な努力ということをお聞きしておるのではなしに、この補償要綱というものをあなたの方で順奉される以上は、この二十五条というものも同様に順奉されるのではないか。そしてこの二十五条の解釈は先ほど鉱山局長公益事業局長とが見解を示されましたものをあなた方においても同様にお認めになりますか、そういう解釈でおられますかということをお聞きしておるわけです。
  148. 藤田友次郎

    ○藤田証人 非常にデリケートな問題でありますけれども、われわれの会社考え方といたしましては、先ほど申し上げましたように、もちろん補償要綱というものは尊重いたして、これによってやっておるのでございます。鉱業権そのものを否定するような発言があったというふうに御了解を受けられたと思いますけれども鉱業権そのものを否定しておるわけではございません。こういう場合に、果してわれわれの方で補償をする義務があるかないかということを、法律的に会社の建前においていろいろ研究をいたしておりますが、また法律専門家の意見も聞き、いろいろのものを参考にやっておりますので、少くとも法律解釈といたしましては、先ほど来申し上げておる主張は変えるわけには参りません。先ほど両局長お話のありました点も、もう少し掘り下げればそういう矛盾したことにならぬのじゃないかとわれわれも考えます。
  149. 生田宏一

    生田委員 一般の民事訴訟による法律関係というものは、裁判所のきめることです。これは私はよくその事情はわかるのですが、あなたの方は開発銀行から国家の資金の融資を受けてこれをやるということであるから、この閣議決定の補償要綱というものができて、あなた方これを守るというから開銀の方も資金を出しておる。あなたの方がこれを守らぬというのならば仕方がありませんから、開銀の融資を停止する、あるいは開銀の融資を引き上げる、こういうことになろうかと考えます。もしあなたの方が補償要綱を順奉しないならば、関西電力は開銀融資を受ける資格のない会社だという性格を付せられてもいたし方ない。あのような公共事業ですから、あなた方の機能をとめることは、国民に対しては経済的に大きな打撃を与えますから、そんなことは国家観念からするならばいたしたくないというのが常識です。しかし理屈を押していくならば、これを順奉しないならば、そういう事態も起るということになるわけです。ですから鉱山局長公益事業局長なりが見解を示したことをあなた方が御同意されるということでなければ、あなた方は開銀融資を受ける資格がないものと解釈せざるを得ない、そこのところをお聞きしておるわけです。
  150. 藤田友次郎

    ○藤田証人 たびたび申し上げておりますように、補償要綱を守らないということは申しておりません。補償要綱は尊重をしてやる、こういうふうに考えております。二十五条の解釈につきまして今両局長からお話がございましたが、これもいろいろな条件づきの御解釈のように私たち拝聴いたしました。もう少し時間をいただいてよくお話し合いをいたしましたならば、われわれの主張も納得していただいてその解釈も二十五条の違反ではないのだというふうに御了解願えるのじゃないか、かように期待をしております。
  151. 山本猛夫

    山本(猛)委員長代理 この際暫時休憩いたします。午後は二時より再開して、同案件につきまして調査を進めます。    午後零時四十七分休憩      ————◇—————    午後二時十六分開議
  152. 上林與市郎

    上林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます、  森並びに藤田証人に対する尋問はこれにて終ります。証人は長時間御苦労さまでした。退席されてけっこうであります。  本件に関しまする調査は、本日のところはこの程度といたします。     —————————————
  153. 上林與市郎

    上林委員長 歳入歳出状況防衛庁における靴の調達)に関する件について調査を進めます。本件につきましては、さきに防衛庁当局より説明を聴商し、特に調達実施本部の久保検査第二課長を証人として喚問し、証言を受けたのでありますが、さらに、本日は、ただいまより証人より証言を求めることといたします。  御出頭になりました証人井上信貴男君ですね。間違いございませんか。——相違なきものと認めます。  あらかじめ文書で御通知いたしておきました通り、ただいまより本件について証言を求めるのでありますが、証言を求める前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならないことと相なっております。宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言が、証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係にあった者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び、医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあった者がそその職務上知った事実であって黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになっております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは三月以上十年以下の懲役に処せられることとなっておるのであります。一応このことを御承知になっておいていただきたいと思います。  では、法律の定めるところによりまして、証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書の御朗読を願います。   〔証へ井上信貴男君朗読〕   宣誓書  良心に従って、真実を述べ、何事もかくさず、また何事もつけ加えないことを誓います。
  154. 上林與市郎

    上林委員長 それでは宣誓書署名捺印して下さい。   〔証人宣誓書署名捺印〕  では、これより証言を求めますが、証人発言する場合にはそのつど委員長許可を求められること、及び、証言証言を求められた範囲に限ることになっておりますから、御承知おき願います。  それではこれより証人に対して証言を求めることといたします。総括的な点についての委員長よりの尋問は、時間の関係もありますので、これを省略して、直ちに委員各位よりの質疑に入ります。質疑の通告がございますが、申し合せの順序に従って御発言を願います。それでまず吉田賢一君、御発言願います。
  155. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 細田綱吉君が先に質問することになっておりましたけれども、まだ参りませんので、私から少しお尋ねして、来れば交代をしたい、こう思います。  井上さんに伺いますが、あなたはくつの製造販売などの営業をしておられるそうでありますが、保安庁、防衛庁などへはいつごろから納入をしておられるのでございますか。
  156. 井上信貴男

    井上証人 お答えします。昭和二十六年からと思います。
  157. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そこで、非常に御盛大にやっておられるようでありますが、最近一両年、大体何足ぐらいで、どのくらいの金額納入になっておりますか。
  158. 井上信貴男

    井上証人 最近一年間に受注した数量は、十万八千二百七十四足でありまして、回数は、業者の指名競争入札で十二回にわたって、十万八千二百七十四足を受注したのであります。
  159. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 代金はわかりませんか。
  160. 井上信貴男

    井上証人 代金はわかりません。
  161. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 概略でいいですが。大体でいいです。
  162. 井上信貴男

    井上証人 大体一億八千万円か二億円くらいだと思いますが、これははっきりした数字はわかりません。
  163. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そこで、あなたの方はどこに工場をお持ちになっておりますか。奈良県と承わっておりますが、奈良県のみでありますか。みずからの工場でやっておいでになっておりますか。あるいは下請などへもお出しになっておりますか。その辺はどういう製造方法になっておるのでありますか。
  164. 井上信貴男

    井上証人 奈良県生駒郡安堵村で工場を持っておりまして、下請工場には一足も出しておりません。
  165. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 これは随意契約によるのでありますか。あるいは指名入札などによっておりますか。これはどうなんでありますか。
  166. 井上信貴男

    井上証人 随意契約で一足も受けたことはありません。指名競争入札で落札しております。
  167. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そこで、あなたは政界にも出ておられ、国会議員にもなっておられまして、ただいまはなっておいでになりませんが、ずいぶん顔もお広く、従って政界のいろんな方にそれぞれと広い交際をしておられるのでありますが、大体、失礼ですが、政界の有力者ではどういう人があなたの最も懇意な人なんでありますか。
  168. 井上信貴男

    井上証人 政界の懇意の人ですか。
  169. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 有力者では……。
  170. 井上信貴男

    井上証人 自由党の方々はよく知っております。元自由党の方々……。
  171. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 どういう方々でありますか。
  172. 井上信貴男

    井上証人 それは自由党の代議士をしておりましたから、元自由党の代議士の諸君をよく知っております。
  173. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 大野伴睦さんはお心やすくなっておりますか。
  174. 井上信貴男

    井上証人 知っております。
  175. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 大野伴睦さんとときどき防衛庁に一緒においでになることがございましたでしょうか。
  176. 井上信貴男

    井上証人 ありません。一回だけ行きました。
  177. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それはいつごろのことですか。
  178. 井上信貴男

    井上証人 それは民主党内閣の、鳩山の民主党内閣時代のときでありました。
  179. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 民主党内閣でははっきりわからぬのですが、ことしですか去年ですか。
  180. 井上信貴男

    井上証人 去年です。
  181. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 去年の何月ですか。冬ですか、夏ですか、秋ですか。いつごろです。
  182. 井上信貴男

    井上証人 秋ごろだと思います。
  183. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 防衛庁では大体どの方面をお回りになりましたですか。
  184. 井上信貴男

    井上証人 それは紹介してもらっただけです。
  185. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 どこを紹介になりました。あなたも代議士をしておられたし、ずいぶん顔もお広いし、それから二十六年来納入しておられるし、日本で第一のくつの納入者でもあるしというような関係等から、別に大野さんに紹介をしてもらわなくても、あなたはみな心やすいのじゃなくても行き得ると思うのですが、それはどんなものでしょうか。
  186. 井上信貴男

    井上証人 それは民主党内閣のときでしたから、私は最初宮澤胤勇代議士に紹介してもらおうと思って宮澤さんのところに電話をかけたのですが、宮澤代議士は留守だったのです。それから僕は二十七年九月に代議士をやめてから初めて自由党本部に行ったわけなのです。自由党には心やすい代議士がたくさんいるから、そこへ行ったところが、玄関に大野代議士が出てこられたのです。それでついでに自衛隊へ行って紹介してくれないかと話したわけで、紹介だけに行ってもらったわけです。
  187. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そこで、去年の秋はいずれ自由民主党が成立した後でしょう。合同後でしょう。
  188. 井上信貴男

    井上証人 合同以前です。
  189. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 合同前ですか。
  190. 井上信貴男

    井上証人 自由党が野党のときです。
  191. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 去年の秋はもう今の合同した政党ができておったのじゃないですか。あなたも政治にくろうとなのだが……。
  192. 井上信貴男

    井上証人 合同以前であります。現長官の船田さんでなしに砂田長官時代ですから。
  193. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 砂田長官の御紹介ですか。それともほかの幕僚とかその他の幹部の御紹介ですか。どっちなのですか。
  194. 井上信貴男

    井上証人 砂田長官に紹介してもらうために何してもらっただけです。
  195. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そこでついでですかどうか知りませんが、あちらこちらへお回りになったようです。それは大体どこへ行かれましたのですか。
  196. 井上信貴男

    井上証人 僕は防衛庁へは三回か四回しか行っておりません。防衛庁にくつを納入してから、社長がいつも来ないからというお話を聞いておりましたから、それで二、三カ所行ったと思いますが、はっきり記憶しておりません。
  197. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 調達実施本部に検査するところがありますね。御承知と思いますが。
  198. 井上信貴男

    井上証人 はい。
  199. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 検査課にも行かれたように証人に出た人が言っておりましたが、調達実施本部の方にもお行きになりましたですか。
  200. 井上信貴男

    井上証人 多分行ったと思います。
  201. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 三、四回しか行っておられないのだから、従って、砂田長官に紹介を求められたいきさつにかんがみて、大体どこへ行かれたか御記憶ありませんか。まだほど遠からぬ前ですからね。去年の秋といえばまだ一年にもならぬくらいです。大体どの課どの課へ行かれたか、今お思い出しになりませんか。
  202. 井上信貴男

    井上証人 記憶しておりません。忘れました。
  203. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 紹介は砂田長官だけですか、ほかの方への紹介はありませんか。
  204. 井上信貴男

    井上証人 ほかへは、先ほど述べました通り僕が一ぺんも来ないからというので、あそこへ行ったついでに僕はあいさつに行ったのです。そのときに大野先生も一緒においでになったですが、ただ単に僕が行くからついてこられただけであって、そこで紹介も何もしてもらっていません。
  205. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 大野さんは特に有力者であり、あなたもまたなかなかな有力者であるので、いずれ御商売のことならくつのことであろうと思うのですが、あまり来ないから来いと言われた以外に、くつの問題につきまして当時いろいろお話をなさる関係があったのじゃないでしょうか。と言いますのは、真偽はどうかわかりませんけれども、ここで宜誓をした証人の方並びにそうでない政府の方々の御答弁なんかを聞いておりますと、あなたの方の納入なさるくつについてとかくどうも非難が出たというのですね。非難という意味は、何も直ちに不適格品かどうかということは別でありますけれども、いずれにしてもとかくいろいろと非難、批判があったらしいということが現われておるのであります。そこで、そのこまかいことはいずれほかの委員の方がお聞きになるかしれませんが、私はそれらからいろいろと帰納いたしまして、あなたが防衛庁に行かれてあちらこちら大野さんと一緒に行かれることになったのは、顔を出すだけでなしに、そういう問題を解決するか、あるいは契約等についての話し合いをするか、そういう用事を一緒になさったのじゃないだろうかということを一つあなたに伺っておきたいと思います。
  206. 井上信貴男

    井上証人 そういうことは全然ございません。それは揣摩憶測と解釈します。
  207. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 くつの問題につきまして問題にされなすったことは従来ありませんか。
  208. 井上信貴男

    井上証人 聞いておりませんが……。十一月だったか、打ち抜き文数のことで聞きましたときに武内本部長のところに行ったことがあります。それくらいのことです。
  209. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 武内本部長のところに文数についてどういうことが問題で行かれたのですか。ちょっとしろうとにはわかりにくのですが……。
  210. 井上信貴男

    井上証人 半長靴の横に打ち抜き文数といって文数を打つのです。何丈何分と書いてある文数を打つ。その文数を打つのが、一ミリか二ミリ上か下であったというのです。それで検査不合格にするとおっしゃいましたから、その問題で武内本部長に会いに行きました。
  211. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 文数を打つのに打たなかったので不合格と言った、それは検査官が言ったのですか本部長が言ったのですか。
  212. 井上信貴男

    井上証人 検査官がです。
  213. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 検査官の名前は覚えておりませんか。
  214. 井上信貴男

    井上証人 覚えております。
  215. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 何というのですか。
  216. 井上信貴男

    井上証人 中村とかいう人です。
  217. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 防衛庁の方は見えておりますね。中村という検査官はおありですか。
  218. 武内征平

    ○武内説明員 中村というのはおると思います。
  219. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 中村という調査官はおりますか。
  220. 武内征平

    ○武内説明員 中村三佐というのはおると思います。
  221. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 不合格と言われて、それで調本の武内部長にお会いになって、不合格にあらず、合格なりということに今度はなったわけですか。
  222. 井上信貴男

    井上証人 それは不合格ではないんですよ。打ち抜きとしては不合格と言ったのは誤まりで、訂正します。不合格ではなくて、文数が違うから、原価計算で原価を引くとかなんとかおっしゃっておったのです。それです。
  223. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そうすると不合格と言うたのは訂正する。文数が違うから原価を引く、引くという意味は価格を引き下げるという意味ですね。
  224. 井上信貴男

    井上証人 はあ、そうです。
  225. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 価格を引き下げるということを言われて、それをお話しになって、今度は引き下げないことにきまったのですか。
  226. 井上信貴男

    井上証人 それは原価計算をした結果は——一ミリとか、ほんのわずかで、何も引かなくてもいいらしかったのです。
  227. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 大野さんが一緒に行かれたということは、どういう趣旨の話し合いがそこでかわされたか、実はまだこの委員会で明らかになっておりません。それであなたに伺うのですが、単に紹介とかいうのではなしに、それは砂田長官に対しては紹介でありましょうが、事務当局に対しては紹介じゃなしに、やはり契約上の問題について大野さんが顔出しをせられて、その結果契約が締結されたか、あるいはよくなったか、そういう結果を得たのではないのでございますか。
  228. 井上信貴男

    井上証人 そういう結果は全然ありません。総理大臣でもどうもできません。
  229. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 ところが大野さんが見えたことは、係官にはやはり精神的に相当な圧力を感じるということも述べているのです。あなたの御意思はそうでなかったかもしれぬけれども、とかく問題があるときに、その問題の大小、性質のいかんにかかわらず、問題の解決について政界の有名な人が商売人と一緒に担当官のところへ行くということは、やはり相手は何か圧力を受けるのは当然だろうと思う。そういうことはむしろしないで、単独にあなたが行くという方が、あなたも長い間堂堂と天下の大商人としてやっているのですから、そんな政治家みたいなものを使わないでもよかったと思うのです。相手の方はそこに何か精神的威圧を感じたと言っているのだから、そういうことでなしに、むしろお一人の方がよかったのではないだろうか、話はちょっと一緒に回った程度というお話だけれども、そうではなしに、受けた相手としましては、何か問題の解決を迫られたというふうな印象を受けているというふうにわれわれは推定をしているのでありますが、実際はそうではないのですか。
  230. 井上信貴男

    井上証人 そうではありません。そのときにはそういう問題も何も起っておりません。
  231. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 あるいは検査問題で少しごてて、その結果検査はうまく合格したということはございませんか。これもまたそういったことを世上言う人もありますので聞くのですが、そういうことはありませんか。
  232. 井上信貴男

    井上証人 そういうことは絶対にありません。
  233. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それではもう一つお聞きしますが、あなたは大野さんのみならず、その他の多数の政治家ともいろいろ心やすくしておられるの、だが、防衛庁関係はともに行かれたのは大野伴睦さんのみでありますか、ほかにはないのですか。
  234. 井上信貴男

    井上証人 ほかにはありません。
  235. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 あなたの方の工場へ検査に来た人たちの間に何か相当もんちゃくが起ったようなことが今年になってございませんか。
  236. 井上信貴男

    井上証人 ないと思います。
  237. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 ないと思うのではなしに、その程度は存じませんけれども、ともかく政府の役人が来て、あなたをきめつけたようなことはないですか。今年になってから政府の役人がくつの問題であなたの方へ検査に来た、それに対してあなたは相当怒号叱責するような場面ができたのではないですか。
  238. 井上信貴男

    井上証人 そういうことはないと思います。話はしましたけれども、怒号叱責するようなことはないと思います。
  239. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 脅迫、威迫はどうなんですか。
  240. 井上信貴男

    井上証人 そんなことは全然ありません。
  241. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 あなたは平素は非常に温厚な方であるけれども、場合によると、なかなかいたけだかになって相手に迫っていくことで有名だということが世上伝えられているのでありますが、そういうように防衛庁のくつ問題につきまして、あなたはだれかにどなり込んだことが最近あるのではないですか。
  242. 井上信貴男

    井上証人 私はどなり込んだとは思いません。自分は当りまえのことを話したと思います。
  243. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 これでよろしゅうございます。
  244. 上林與市郎

    上林委員長 細田綱吉君。
  245. 細田綱吉

    ○細田委員 あなたのところは井上工業所というのですね。
  246. 井上信貴男

    井上証人 そうであります。
  247. 細田綱吉

    ○細田委員 個人経営ですか、あるいは会社組織ですか。
  248. 井上信貴男

    井上証人 個人経営であります。
  249. 細田綱吉

    ○細田委員 あなたは、くつ類その他皮の職業はいつごろからやっておられるのですか。
  250. 井上信貴男

    井上証人 おじいさんの時代からやっています。
  251. 細田綱吉

    ○細田委員 大へん古いことを伺うのですが、昭和十五年ごろは所得税はどのくらいお払いになっていらっしゃいますか。
  252. 井上信貴男

    井上証人 記憶しておりません。
  253. 細田綱吉

    ○細田委員 現在はお宅の資産はどのくらいありますか。
  254. 井上信貴男

    井上証人 御質問の趣旨は時価ですか、公定ですかわかりませんから……。
  255. 細田綱吉

    ○細田委員 時価であなたが見積られる資産というものはどのくらいございますか。
  256. 井上信貴男

    井上証人 数億だろうと思います。
  257. 細田綱吉

    ○細田委員 数億というのは、二、三億から八、九億まであるので、大体どんなものですか。
  258. 井上信貴男

    井上証人 それは評価はわかりません。かりに不動産でありましたら、買手と売手がありますから、明確なことはここで……。
  259. 細田綱吉

    ○細田委員 所得税は現在幾らお納めですか。
  260. 井上信貴男

    井上証人 今欠損をしております。
  261. 細田綱吉

    ○細田委員 昭和二十二、三年ごろはどうですか。
  262. 井上信貴男

    井上証人 一千万円くらいの所得であります。
  263. 細田綱吉

    ○細田委員 終戦後お宅は、膨大な皮革類の隠匿物資の摘発を受けたことがありますか。
  264. 井上信貴男

    井上証人 隠匿物資の摘発は受けません。
  265. 細田綱吉

    ○細田委員 昭和二十三年十月十四日の不当財産取引調査特別委員会報告によると、だいぶ摘発を受けたが、特に大阪の警察から、お宅の方に手入れがあったというようなことが記載されておるように記憶しております。これはいかがですか。
  266. 井上信貴男

    井上証人 これは摘発でなくして、そういう問題がありましたが、結局裁判所においては、いわゆる申告か何かの違反という程度のものでございました。
  267. 細田綱吉

    ○細田委員 わかり切ったようなことを申し上げるのですが、当時申告しなかった物資を隠匿物資というのですよ。それはあなたの方で当時の時価でどのくらいお出しになりましたか。
  268. 井上信貴男

    井上証人 一つも出しません。結局それは裁判所において還付されました。というわけは、私の方は届けなくともいい物資たと思ってやってましたから、裁判所の方で全部還付してくれました。
  269. 細田綱吉

    ○細田委員 その当時衆議院から取り調べに行きましたね。その当時あなたの方ではだいぶ手ごわくて、取り調べができなかったという報告が速記録に出ている。これはいかがですか。
  270. 井上信貴男

    井上証人 取り調べにきた者は、その当時の代議士で、民主党の代議士のだれかが来られたけれども、よく案内してなにしたんですかね。(笑声)
  271. 細田綱吉

    ○細田委員 これは古いことですが、当時行った中村委員の随員中村元旦という人なんかは、ずいぶんあなた自身におどかしあげられた。翌日もまたつけ回されたというか、裁判所構内でもいじめられた、そういうようなことがあったのですが、御記憶はありませんか。
  272. 井上信貴男

    井上証人 それは僕にたしか選挙資金をもらおうとして、中村君が人を介して話があったのですが、僕はそれは断固拒否しました。
  273. 細田綱吉

    ○細田委員 それはおかしいじゃないですか。そういう話がかりにあったとしても、不当財産取引調査特別委員会で調べに行ったときに、まさかあなたにそんな金の請求をしたわけではないと思うんです。中村委員のしかも秘書ですよ。これは随員ですよ。(井上証人「息子ですよ」と呼ぶ)息子にしても随員ですよ。(井上証人「何もそういうことをやったことはありません」と呼ぶ)
  274. 上林與市郎

    上林委員長 発言は、委員長許可を得て発言して下さい。
  275. 細田綱吉

    ○細田委員 あなたのところは、おじいさんの代からやっておる点ではしにせですから、御存じだと思うんだが、あなたのところは日本で何番目くらいの製靴工場を御経営になっているのですか。
  276. 井上信貴男

    井上証人 僕の考えでは、日本で五番目の中へ入るところの工場と思っております。
  277. 細田綱吉

    ○細田委員 あなたのところは専従者というか、専属の職工さんが割合に少くて、なれておるかどうか知りませんけれども、大量の注文があると大勢近所の人をかり集めてこられるそうですね。どうですか。
  278. 井上信貴男

    井上証人 そういうのじゃありません。専門の技術者はたくさんおります。今でも三十人か四十人くらい家を建ててそこに住んでます。それは昭和二十一、二年ごろ東京から来た人たちばかりであります。
  279. 細田綱吉

    ○細田委員 全三百六十五日勤務している職工は、何人くらいおりますか。
  280. 井上信貴男

    井上証人 二百人くらいおります。
  281. 細田綱吉

    ○細田委員 製靴工場とすると、二百人くらいで五本の指の中に入りますか。
  282. 井上信貴男

    井上証人 しょっちゅう三百人くらいおりますが、おそらく私の方の職工は最低三百人前後おります。三百人前後でしたら、おそらく日本で三番目くらいだと思っております。
  283. 細田綱吉

    ○細田委員 五本の指の中に入ると言われているけれども、御承知のように、あなたの方が御存じだと思うが、防衛庁で一カ年の注文高は、大体三十二万足くらいですね。そこでお宅はどういう点で十万八千足というそんな大量の御注文を受けられたのですか。
  284. 井上信貴男

    井上証人 それは一般競争入札ですから、指名競争入札ですから、値段が安かったらとれるのであります。しかも私のとった入札回数は十二回ですよ。一回でとったんじゃないのですよ。一年中を通じて十七、八回の入札があって、そのうち私どもの落札した入札回数は十二回なんです。それで十二回のうちでとったのであります。
  285. 細田綱吉

    ○細田委員 ほかの工場と同価格でお宅が相当量の注文をとっておられるのもあるわけですね。そういうのは大体何%くらいになるのですか。割合はどれくらいになるのですか。
  286. 井上信貴男

    井上証人 そういうこまかい点はわかりませんが、入札で、とにかく一番安い単価のものが落札するときまったものであります。
  287. 細田綱吉

    ○細田委員 大体一足幾らくらい安いのですか。
  288. 井上信貴男

    井上証人 それは今詳しい資料を持っていないからわかりません。
  289. 上林與市郎

    上林委員長 質問者に注意するわけじゃないのですが、今までの調査でわかっている範囲は、具体的な事実を知らせてやったら、答弁しやすいじゃないですか。
  290. 細田綱吉

    ○細田委員 そうですが。防衛庁の調本部長に伺いますが、大体井上工場の受注したくつは、一足当り幾らくらい安いのです。
  291. 武内征平

    ○武内説明員 井上工業所で受注せられましたくつは数種類ございます。以下例を半長靴にとってみます。これは脚絆官給の半長靴ですが、これが千五百九十円であります。
  292. 細田綱吉

    ○細田委員 ほかの方は……。
  293. 武内征平

    ○武内説明員 桜組工業がやはり千五百九十円、旭成製靴が千六百円、大塚製靴が千六百円、スタンダードが千六百円、日本製靴が千六百円、こういうふうに複数入札になっております。数が多い場合におきましては幾つかのロットで注文いたします。
  294. 細田綱吉

    ○細田委員 同じ価格のものがありますね。この前あなたの方で御発表になった……。それは何でございますか。数量と……。
  295. 武内征平

    ○武内説明員 やはり同じく半長靴で千七百五十円というのがございます。これは全部で八万八千百足でありまして、旭成製靴が五千足を千七百五十円、桜組工業が三万一千足を千七百五十円、東邦工業が一万七千百足を千七百五十円、井上工業所が三万五千足を千七百五十円、これだけの四つのロットに分れて落札したわけであります。
  296. 細田綱吉

    ○細田委員 お宅の工場がでか過ぎるのか、お宅の商売が大き過ぎるのか知りませんが、あなたは、あなたの工場でこしらえるくつの状況をあまり御存じないそうですが、そういうことは意識されておりませんか。
  297. 井上信貴男

    井上証人 知っています。
  298. 細田綱吉

    ○細田委員 検査に行った検査官が、どうも知識が乏しくて困ると言っているのですが、どうでしょう。
  299. 井上信貴男

    井上証人 それはその人の考えであって……。
  300. 細田綱吉

    ○細田委員 もちろんその人の考えですが、そういう検査官というものはたくさんの工場を調べるのですよ。だからその人の考えは割合に公平なんです。あなたが、私はよく知っていると言っても、その人から見れば一番知らないかもしれない。御勉強が足りないか、あるいは工場へ行くことが少いのかもしれない。検査官の方はたくさん見ておるのだから、ここの工場長が一番知っている、ここの工場主が一番知っているということはわかるわけです。あなたはほんとうによく御存じなんですか。
  301. 井上信貴男

    井上証人 それは先ほど答弁した通りであります。その人の考えによって違うと思います。
  302. 細田綱吉

    ○細田委員 会計検査院の大坪検査官外一名があなたのところへ行ったが、お宅で検査を十分させなかったというのですが、どうですか。
  303. 井上信貴男

    井上証人 十分検査をさせました。ぼくはあまり工場へ行かないのに、わざわざぼくは工場へ行って、ぼく自身で工場を案内しました。
  304. 細田綱吉

    ○細田委員 お宅の全部であるか一部であるか知りませんが、くつ底にボール紙が入っておる。これは仕様書というか注文書というか知りませんが、そういうものにはコルクと指定してある。どうしてこんな間違いが起きたのでしょうか。
  305. 井上信貴男

    井上証人 そういうくつが一足でもありましたら、あすからくつの商売はやめます。そういうことはあり得べきものではないのです。これは私は新聞で見たんだが、海軍のくつにそういうものが入っておったということを言っておりますが、ぼくが海軍のくつを受注して契約したのが二十八年の九月十日であって、くつを納めたのが二十八年の十月か十一月であります。だからそういうことはあり得べきではない。ボール紙の入ったくつが一足でもありましたら、あすから防衛庁だけじゃない、全般のくつを一切やめますよ。はっきりやめますから、そのくつを提示して下さい。
  306. 細田綱吉

    ○細田委員 あなたはそういうたんかを切られるけれども、われわれの先輩、同僚のところへも、われわれのところへも、海軍というか海上自衛隊の修繕をやっている人が、自分の身分証明をして、実は井上工業所にこういうものが相当あったということを報告してきている。あなたはくつのことをよく知っていると言うが、検査官はよく知らないと言う。だからあなたが知らない間にそういう不正なものが製造されて納めてられているかもしれない。検査官が実際あなたのその方面の知識は割合乏しいと言うのだから、そういうような報告が全然うそだということはわれわれには考えられない。この点についてはいかがですか。
  307. 井上信貴男

    井上証人 もしボール紙のくつがあったとすれば、ぼくはあすから商売はやめます。はっきり重ねて断言します。
  308. 細田綱吉

    ○細田委員 最後に、先ほど吉田委員から伺ったが、大野伴睦代議士が防衛へただついていってくれたという。われわれの知っている大野伴睦代議士は、現在自由民主党の大物です、また吉田内閣当時の大物で、国務大臣までやったその人がただであなたについて防衛庁へ行った、ただで調達実施本部に行ったということは、ちょっと想像のほかですよ。何かそこに特殊な事情でもあって、あなたについて行ったんですか、どうですか。
  309. 井上信貴男

    井上証人 そういうことは全然ありません。先ほども述べた通り、そのときは自由党内閣で、自由党本部のだれか、宮澤代議士にでも一緒に行ってもらって、紹介してもらおうと思って行ったところが、留守だった。ところが玄関で、大野先生に出会わしたので、大野先生、紹介して下さいと言って頼んだんです。
  310. 細田綱吉

    ○細田委員 大野さんはお宅の工業所の顧問をやっておられますね。
  311. 井上信貴男

    井上証人 そんなことはやっておられません。
  312. 辻政信

    ○辻委員 ただいまの細田委員質問に関連いたしまして承わりたいと思います。それは昭和二十三年十月十四日の不当財産取引調査特別委員会議録、これにはっきり書かれております。それを読みますから、証人はよくお聞きになって、それについての御答弁を伺いたい。「○小松委員 この機会に大口やみ取引調査委員会におきまして、奈良県生駒郡安堵村東安堵井上信貴男に対しまして、本年八月十七日及び九月二十六日、同月三十日の二回にわたりまして委員が出張いたし、調査をいたしました結果を御報告申し上げたいと存じます。  第一に事案の概要を申し上げます。井上信貴男昭和十三、四年ころより屑皮加工による靴の積上踵の製造業を営んでいたのであるが、終戦直後皮革統制会大阪支部が奈良県庁及び大阪府庁より払下を受けた元軍所有の特殊物件たる皮革を独占的に同支部より配給を受け、その教量は同人の自称する現在庫量のみにても、皮革屑三百四十七トン及び皮革百四十七トンに及ぶほか、実際はこれを奈良市所在陸軍被服廠より引取りの際、右リスト外に大量の皮革、繊維、靴類、亜麻糸、鉄鋲を密かに搬出窃取の上、これを同村皮革業者四名を介して、大阪市内はじめ各地業者へやみ売し、莫大なる不正利得を得たる疑いあり、現在わが国におけるこの種のやみ肥りの巨魁と称せられ、その間の消息は同人の所得税額が、昭和十九年に一万三千二百六十七円、昭和二十年に一万七百二十九円、昭和二十一年に八万三千三百三十四円、昭和二十二年には一躍四百六十三万六千百六十円、昭和二十三年には五百七万円と終戦後著しく飛躍せることよりも推測せられるのであります。  本件につき奈良検察庁は、本委員会の活動に刺激されてか、本年九月十九日及び同月二十一日の両日にわたり、右安堵村ほか各所に所在する同人所有の二十一箇所の倉庫を捜索して、時価数十億と称せらるる隠匿物資を押収し、現在安堵村所在倉庫の物資を点検中であります。  次に本調査妨害の不祥事件を御報告申し上げたいのであります。九月二十日午後一時ごろ小松委員、中村委員及びその随員中村元旦の一行が本件調査のため、奈良地検次席検事とともに、右安堵村所在の井上方工場に臨んだところ、井上は中村委員に対し種々の暴言をもって、その調査を拒否し、同委員及びその息子元旦氏を同工場構外へ立ち去るのやむなきに至らしめました。翌十月一日午後一時ごろ、中村委員及び元旦氏が他用のため奈良地方裁判所公衆控室にいたところ、たまたま右井上が来かかり、元旦氏を見るや、「お前はきのう一緒に来たな、中村のせがれか」と放言の上引き返し、約二十分後、約二十名の暴徒を引き連れ来たり、元旦氏に対し、「用事がある」と称して屋外に連れ出し、右多衆が元旦を取囲むや、卑劣にも井上は「おれは知らぬぞ、おれには関係ないぞ」と放言して姿をくらました。よって元旦は公衆の迷惑を避け右暴徒とともに奈良公園に到り、「君らはどうするのか、けんかする気か」と詰問しているところへ、再び井上が現われたので、同人に向い「卑怯なことをするな、やるならさしでやろう、時と場所をきめろ」と言ったところ、井上は「トラック二台で呼び集めてこい」と大声にどなりながら、右暴徒とともに坂を降って走り去った。同月三日午後零時三十分、中村委員親子は、用務を終えて奈良を引揚げ帰宅したが、その後同日午後三時ごろ、右井上の徒党約三、四十名が二列縦隊をなし、手に手にこん棒、鉄棒を携えて、「中村をやってしまえ、市場をつぶせ」等と口々にののしりながら、中村委員女婿経営の市場へ向け走り行く途中を、警察官及びM・Pのために阻止され、奈良警察署へ連行され取調べを受けたが、その取調べ中、井上は同署へ来て「お前らは用がないから帰れ」とどなり、無法にも暴徒を勝手に立ち去らしめ、警察官に種々暴言を吐いたため、警察官及び検察官の一部は非常に憤慨しているとのことであります。しかして右事実は翌十月四日午後七時及び九時半のラジオ放送のニュースで、不当林産取引委員会調査に基因する井上対中村の衝突事件として、大阪放送局より放送されておるのであります。  右御報告を申し上げます。」ということが厳然として権威ある国会資料に今なお保存されております。これについてのあなたの所見を承わりたい。
  313. 井上信貴男

    井上証人 それは裁判所において明らかになっておりますから、裁判所でなにして下さい。(「あなたに聞いているのだ」と呼ぶ者あり)そういうことは事実に相違した点も多々ありますから……。
  314. 上林與市郎

    上林委員長 質問に対して答弁して下さい。
  315. 井上信貴男

    井上証人 当時の事情は、七年も八年も前のことですから忘れておりますが、そういうことはあることもあるし、ほとんどがないことが多いと思います。
  316. 辻政信

    ○辻委員 それじゃ、これは私の知らぬことでありますが、こういう記録が出て参りましたので、御参考にお伺いしたわけです。  今度は本論に入ります。五月二十二日の本委員会の席上における私の発言に対して、井上氏は非常に憤激をされて、五月二十五日の午前十時から自由民主党党紀委員室におきましてあなたに面会を求められたのであります。約二時間事情をお聞きしたときに、おれは天下の井上だ、税務署員を井戸に投げ込んだり、検査官を監禁したり、ドスでおどした事実は全くない、もしあったらおれは腹を切る、なかったら君も元軍人だから腹を切れ、こう言われましたね。
  317. 井上信貴男

    井上証人 そうであります。二十四日に僕の秘書を通じて辻議員に対して面会を求めたら、二十五日の十時に議員会館の方へ来てくれとおっしゃったのであります。だから私は二十五日の九時三十分に辻議員を訪問のために第一議員会館へ行ったところが、一人で、院内の二十四控室でお会いしたいからというお話でありましたので、私は十時にあなたのおっしゃった二十四控室に行ったのであります。それで聞かれたときにさよう申したのであります。
  318. 辻政信

    ○辻委員 それではこれにつきまして三つの事実、すなわち、ドスでおどしたり、監禁したり、井戸に投げ込んだりしたことはない、あったら腹を切るということなんですね。問題は二つあって、一つなかったら半分切るのかどうか。
  319. 井上信貴男

    井上証人 そんなことは一つもありません。もしあったら腹を切ります。
  320. 辻政信

    ○辻委員 一つだけでも。
  321. 井上信貴男

    井上証人 もちろんです。
  322. 辻政信

    ○辻委員 これはだんだんおもしろくなってきました。私も実は腹を切った経験がある。なかなか痛いもので、容易に切れないのです。そこで問題は、この言葉に関連しまして念を押しておきたい。あなたは元国会議員であったが、現在は官庁にくつを納める商人の立場であります。国民の税金で国を守る人のためにくつを納めて、二億円に近い契約を受けて——正確に言えば一億八千何百万円。そのあなたは、よいくつを納めるという商人としての契約上の義務があるはずであります。そこで、井上のくつは、外見は悪いかもしれないが、耐久力において実用的には他の商社にまさるとも劣らないということをおっしゃっておりますね。もしそれがはっきり劣っているという結論が出たらどうされますか。
  323. 井上信貴男

    井上証人 劣っていないと思っておりましたが、劣っているという結論が出たらあやまるより仕方がないと思います。(「腹を切るか」と呼ぶ者あり)それは腹を切る問題とは違いますよ。
  324. 辻政信

    ○辻委員 そう簡単に腹を切らぬ方がよい。それでは証拠をあげておきましょう。五月二十八日当委員会において、防衛庁の検査二課長の久保功君が参りまして証言をしました。ところが、検査官の公平な立場から見まして、あなたのくつを他の商社に比較すると確かに悪い。この意味から武内本部長へ、指定商としては適当でない旨の意見を検査官の立場から上申したという証言をしておるのです。私は偶然の機会にある電車の中で自衛隊の兵隊二、三人と会った。いろいろ話をしているうちにくつの問題が出ました。悪いくつをはいているなと言いましたところ、実はこれは井上のくつだ、右と左と合わぬで困っている、縫い目が荒くて水が入る。これからその井上という言葉が印象に残った。あのまじめに働いておる隊員のためによいくつをやらなければいかぬというのでいろいろ掘り下げた結果が、二十二日のこの委員会における私の質問になった次第なんであります。  次に申し上げたいことは、ある業者、それは某地の海上自衛隊で二年間隊員のくつを専門に直しておった良心的な商人であります。本人の身分を証明するために当時交渉のあった海上自衛隊地方総監部総務部長から出されておる昭和二十九年八月二十七日付の業者に対する感謝状の公文と、当時大阪毎日新聞に掲げられました記事を切り抜いてそのまま送っておるのであります。ごらんに入れましょう。これが当時海上保安庁の地方総監部の総務部長からその業者に与えられた感謝状の公文の本物です。これがその当時の毎日新聞の切り抜きです。この日付をよく覚えておいて下さい。日付は二十九年八月二十七日となっております。あなたは先ほどの証言で、二十八年の十一月には海上自衛隊にくつを納めておるのですね。そしてこの商人は当時ある海上自衛隊のくつ修理の専門家です。それが私に手紙をよこしたのであって、これは決して根拠のないちまたのデマではない。それを御参考に読んでお聞かせする。「上申書 今般くつの購入に対する新聞紙を拝見いたし、私の経験した件を申し上げます。別紙新聞紙は血税の浪費として大阪毎日新聞に発表した私の所感です。なおそれに対する当地海上自衛隊の総務部長の私の意見書に対する礼状であり、その回答文です。いかに支給される皮ぐつが従来と違い乱費されておるか、御想像下さい。その当時私はなぜしろうとの井上が指定され、従来最も優秀であり、設備能力等健全な商社が無視されていたかの点に疑問を持っていたのです。海上自衛隊発足当時私は二年間専属にくつ修理に従事した業者です。その破損した井上のくつを分解した結果、内部にボール紙が入っていた事実があります。ほとんど全部です。その当時の実物をごらんになれば判然とすることと思います。その当時の補給の係官で現在防衛本部情報部の〇〇一補」これば元の上等兵です。「に聞いていただいても判然とします。その当時の自衛隊出入業者の乱脈ぶりは想像に絶するものがあります。」これは防衛庁の諸君特によく聞いていただきたい。「売店指定を受けんとする業者は、その当時の係官に十万円記念料として贈呈し、当地の旅亭において六、七万円の供応をした業者が指定され、それに当地の警察官までが供応を受けた事実をうやむやに葬った事実です。——なお今回の自衛隊(海上)のくつの乱費について申し上げます。海上自衛隊の現在のくつの支給は入隊と同時に皮ぐつ二足、ズックぐつ一足、ゴム長ぐつ一足です。これがいかに処分されるか申し上げます。当地は雨、雪のはなはだしい土地です。支給の皮ぐつの利用は少いのです。皮ぐつは外出時か訓練の勤務時間くらいの程度であって、ほとんど一年を通じて訓練にはズックぐつ、外出にはゴム長ぐつが多いのです。その皮ぐつが一年使用後従来からの出入り業者某により選別され、入札なくして、一部は、その某に補修させ、一部は廃品として古物商に払い下げにより、それを選別した某は裏面にて全部買い取り、鉄道方面に払い下げ価格二十円程度のものが五百円、七百円で販売される事実です。私は経験上現在の皮ぐつは優に三、四年修理いかんにより利用されることを上申いたします。昔の軍隊のように一襲(儀式用)新品、二装(外出用)、三装(訓練用)修理加工したものとして利用価値が十分あることを上申いたします。私はかかることを海上自衛隊に上申したがために、優秀設備を有しながら自衛隊内部をスパイする反逆業者として、従来の実績も無視され、出入禁止の弾圧を受け、廃業の運命に遭遇した一業者であることを申し上げます。万一この点が明らかになりその結果何とぞ本庁の〇〇一補もこれがため左遷されないよう身辺を守っていただくよう、切に切にお願い申し上げます。何とぞ正しき者が助けられる世の中に一日も早く実現下されるよう神かけてお祈りいたします。何々。決算委員会辻議員殿」全く知らない業者が自分の信用を証明するために、当時の海上自衛隊の総監部の公文書をここに添付して私のところにきたのが、たしかあなたにお会いした翌日であります。この事実です。くつ直しが井上のくつを分解したところが、ほとんど全部にボール紙が入っておった事実、しかもこれはあなたのおっしゃる通り昭和二十八年の十一月に納めたくつを二十九年に修理したその結果ですよ。これについてどう思われますか。
  325. 井上信貴男

    井上証人 一足もそういうボールを張ったものは神かけてありません。万一ありましたら私はあすから商売をやめます。(「腹切るか」と呼ぶ者あり)腹切るのじゃない。絶対にボール紙を張ったくつはないのであります。
  326. 辻政信

    ○辻委員 これほど言っても否定されるならば、それでは次の事実を御説明申し上げましょう。それは価格が安いとのことでありますが、五月二十八日当委員会調査したときに、ただいまも聞きましたが武内本部長の説明によると、一足たった十円安いだけですね。たった十円安くて悪いくつをはかされる隊員はまことに気の毒じゃないかと思う。それでもよいと信ずるならば、あなたのくつが絶対いいと思われるならば、どのメーカーの製品と比較をしてよいとお信じになるのか。他の商社のくつをあなたは見学して比較されたことがあるかどうかを承わりたい。
  327. 井上信貴男

    井上証人 最初防衛庁が警察予備隊と言ったときには、このくつの単価は二千四百円であったのであります。その当時はほかのくつ業者は一般市販、民間に売っているくつばかりやったのであります。だから二千四百円のときでもその当時他の市販くつ業者はそれはしたくなかったのです。ところがデフレになって市販のくつが売れなくなってから、初めてこっちの防衛庁のくつをやりたくなったのであります。それから競争になりまして、二千四百円のくつを千六百円くらいに下げたのは、私が下げたのであります。質も中身も私は負けないと思っておるのであります。
  328. 辻政信

    ○辻委員 そこで、二十五日にあなたが来られて、お前間違ったら腹を切れと言うから、私は腹を切ったら痛いから一生懸命資料を集めています。さらに二、三の資料を御説明いたしましょう。防衛庁のみならず東京においてあなたが納入されておるほかの官庁を、実はあれからことごとく調査したのです。そうすると、直接検査に当っておる責任者は、一人の例外もなくあなたの商社を指定からはずしたいと述べております。それが上からの指図でまあまあということで押えられておる。これは断じて間違いがない事実です。いいですか。また業者に指定された場合もほとんど上からの指図のようであります。そこであなたが元代議士、天下の井上としてその経歴を利用されて、政治的に動かれたと見られても弁解の余地がないのではないか。
  329. 井上信貴男

    井上証人 そんなことはありません。
  330. 辻政信

    ○辻委員 それではもう一つ。某官庁では五月三十日に私が直接ほんとうに詳細に調べた。その結果によると、二十六年、七年ごろは上からの指図で四万足内外をあなたのところに発注した官庁があります。それが技術が劣り、品物が悪いので、取り消そうとしたら、上から強力に押えられております。会計検査院がやってきて、なぜくつを競争入札にしないかと突つ込んで参りました。そこでその公務員は、もし競争入札にすると井上さんがダンピングをやって、不良品を納められるし、指定商からはずそうとするとあとのたたりがこわいので、指定商のままに残して、あなたの方への発注の数を極力少くした方が被害が少いと説明して、余計検査院の了解を求めた事実があります。現在の発注数を四万足から二千足に減じておるのであります。これについても思い当りがございませんか。
  331. 井上信貴男

    井上証人 それは随意契約でもらったことは一回もありませんが、一般指名競争入札でやっておりますから、競争で負けたらとれないのであります。単価が高かったら僕の方へ落札できないのであります。いわゆる競争入札ですから、四万足とれたときはそのときの単価が私の方が安くできたから四万足いただいたのでありまして、二千足いただいたのは競争で負けたときです。いわゆる競争単価が私の方が高くてとれなかったときにそういうことになったのであります。
  332. 辻政信

    ○辻委員 あなたがそういうふうに御解釈なさるのは当然だと思いますが、検査官は指定からはずすとこわい、おどかされる、それから随契にするとダンピングされるからなおさらこわい。それを万々承知の上で指定をはずさないようにして、悪いくつを買いたくないから計画的に少しずつ減らしておるということを述べております。  しかしあなたが否定されればそれまででありますが、それではさらに別の事項についてお伺いする。それは、別の官庁調査した結果によると、値段は確かに多少安いが、製品が悪いのでだんだん減らしておる。二、三年前は極端に悪かったが、最近は少しは改まってきた。これはあなたの言う通りです。しかしほかのメーカーの製品に比べると、まだまだはるかに見劣りする、こういうことを言っております。そこでこの官庁では、中央で一括して購入すると指定からはずせないので、やむを得ず全国を数ブロックの調達区域に分割をして、東京ブロックでは東京以外の商社からは買わないということで、あなたのお入りになるのをはずしたという説明をしております。検査を不合格にしたり指定からはずすような意見を漏らしますと、直接その係官を脅迫してくるので、どうか私たちの名前は絶対に発表しないでくれということであります。それでもあなたは自分の製品が他よりよいとお考えになりますか。
  333. 井上信貴男

    井上証人 僕は脅迫した事実はありません。そういうことはないと信じています。
  334. 辻政信

    ○辻委員 脅迫した事実はあとから言います、今問うておるのはその事実じゃなくて、こういうことを各官庁の主任者がみんな言っておるが、それでもあなたは主観的に自分のくつはいいんだと信じ込んでおられるかということを聞いておる。
  335. 井上信貴男

    井上証人 信じ込んでおります。
  336. 辻政信

    ○辻委員 そこにあなたの性格がよく現われております。人が何と言っても聞かない。  そこで、それでは私が次に申し上げることは、この委員会であなたの工場を屯田兵工場と言ったのは私で、それにあなたは憤慨しておられるが、これは私のみの感じじゃない。常識になっておる。あなたは五月二十五日の面会のときに私に、自分の工場は設備もよく決して他に劣らないと言われましたが、ほかの工場を御見学なさって比較された結果かどうか、それを承わりたい。
  337. 井上信貴男

    井上証人 方々のうわさを聞いていますが、私は自分の設備が悪くないと思っております。そうして去年の暮れに割当を受けまして、二千万円余りの機械がもう来月着くと思っておりますが、それが着いたら日本で一番優秀な設備を誇る工場だと思っております。(「それが来ない間は一番悪い」と呼ぶ者あり)来なくても、いいと思っております。
  338. 辻政信

    ○辻委員 あなたは主観的なんですよ。とにかくおれのものはいいのだ、いいのだと言われるが、いいと言うからには、認定にはほかと比較しての客観的条件が要るのです。今聞くと、あなたはほかの工場を見学していない。そして自分のはいいんだ、それで客観的な一つの信憑性がございますか。
  339. 井上信貴男

    井上証人 それはいいと信じております。それともあなたがだれかに頼まれてやっているのじゃないかと私は疑っています。
  340. 辻政信

    ○辻委員 それではさらに根拠のある証拠をあげてみましょう。ドイツから近々二千万円の機械を入れるというが、それは将来の問題でありまして、そうなったらおそらくあなたは日本一になるかもしれぬが、私が今聞いているのは、将来の日本一じゃなしに、現在及び過去においての工場設備がどうであるかということを聞いているわけです。ドイツから入れるということは問題にならない。  そこで、さらに権威のある証言をここに提出します。防衛庁の久保証人が、そのあなたの席上で宣誓をして述べている言葉の中に、井上の工場へ行ったと同時に東邦工業の牧工場を視察したが、それを比べてみると、牧工場は実によく整備されているが、あなたは工場管理が悪く、社長が現場を掌握せず、統計を知らず、品質を知らない。井上の工場は設備においても管理においても技術においても、他の商社の工場に比較して確かに悪い。こういうことを久保証人ばその席上で五月の二十八日に述べておる。あなたは、おれはいいんだとおっしゃるけれども、責任ある者が宣誓をして述べておる。それでも、いいとお信じになりますか。
  341. 井上信貴男

    井上証人 東邦工業よりもいいと信じています。しからば当委員会から、東邦工業の工場と私の工場を視察されまして、どちらがいいか、辻委員は視察していただいたらけっこうと思います。
  342. 辻政信

    ○辻委員 承知しました。  次に問題を転換しましょう。幾ら証拠を出しても、あなたは自分でいいと思っていればしょうがないから。そこで、あなたに対して私がこの委員会で大へん失礼なことを言りた。それは奈良県の大ボスだと言った。それは事実です。それで五月二十七日付の奈良市民から私に寄せられた手紙がありますから、それを御参考に御披露申し上げてみます。これは奈良の市民から四日前に来ております。「拝啓、貴下の決算委員会における井上問題についての発言には満腔の敬意を表するところであります。奈良のボス井上云々は、貴下のごとき代議士にして、おそれを知らぬ方でないと、申されぬ言葉であります。あなたの発言の大半は信じて可なるものと存じます。朝日、毎日が大々的に報じましたので、その反響は全国に広がり、痛快にたえません。井上に負けず、この際徹底的に究明して、日本を毒す井上ボスを打倒して下さい。井上の地方の行跡の一端を御報告いたします。」これは失礼ですが、そのまま読んでみます。「三、四年ほど前、時の奈良市長、奈良警察署長上りの名により、上女中を新聞に募集せる際、その文面いかにもめかけの募集の意味あり、それにより奈良日日の記者が取材のため井上家に至り、めかけは見つかりましたかと質問せるに、井上烈火のごとくいかり、なぐりつけ、逃げた記者を新聞社まで追いかけて、けんかとなり、連日その記事で紙上がにぎわったことは奈良在住の者の記憶にあるところです。新聞社にお聞きになればもっとはっきりするものです。また奈良市警に子分が留置されたとき、警官に無断で逃がしてしまった。これも新聞に出た。これは署長にそでの下を使っているので、警察はおれの勝手だと放言した由。なるほど署長上りの奈良市長、当時の署長は住宅をもらっている。税務署の役人もこわがって井上家には行きたがらぬ由。すべて井上のやり口は、一番上の人に物を持っていく。その下の者は暴力でやっつけても、上の者よりうまく言わす方式のものである。財産税も六百万円と査定されたとき、財産は数億あると友人に話した由。終戦のどさくさに皮をただほどの価で払い下げてもらった男で、奈良の大ボスに絶対間違いはありません。あなたの御健勝を心からお祈りいたしています。」こういう手紙が来ております。奈良の、あなたの地元の市民ですよ。そこでこういう手紙を見ますと、なるほど私がボスと言ったのは失礼かもしれぬが、社会的通念としましては、こういうものをボスと言うんです。私一人の意見で言ったのならはなはだ失礼だが、これが事実とすれば。またこの国会会議録に載っておるこの記事は、あなたは、全部真実でないが、真実のものもある、こう認めておられるのですね。そういうことを社会通念ではボスと言っているんですよ。いかがでしょう。
  343. 井上信貴男

    井上証人 今お読みになった事実は全然無根です。新聞に載ったことはありません。事実無根のことばかりあなたは言っておられるが、何か僕に含むところがあるのですか。また他の業者から頼まれてやるのですか、その点を明確にしてもらいたいのです。
  344. 辻政信

    ○辻委員 それほど言ってわからなければ、また一つ出しましょう。これは大阪の方の方から来ております。これは墨でつつしんで書いております。「新聞の報ずるところによりますと、このたび先生が奈良県の井上というくつ屋の不正を摘発されまして、それに対し井上が先生と対決すると言っているそうですが、この井上の生活及び横暴は大阪にも聞えておりまして、かようの者をそのままにおくことは社会正義に反するのであります。彼は不浄の金と暴力によって邪を通そうとたくらむかもしれませんが、かような者は社会正義のために粉砕せられんことを切に希望いたします。在阪市民有志一同」これも私の作りごとだとおっしゃればそれまででございますが、これはけさ着いた手紙であります。それからもう一つやりましょうかな。あまりたくさん来るので近ごろは困っておる。では代表的にもう一つ御参考に申し上げておきましょう。これは東京から来ております。しかもこれは東京のあるくつ会社に勤めておる下級のサラリーマンです。でありますから商売的にはあなたと対立的になるものがあるかもしれませんけれども、あなたの会社じゃありませんから。でありますから、これだけは私は全幅的に信をおかないのですが、参考のために見ますと、「謹啓、貴下決算委員会におきまして目下調査中のくつ納入問題につきましては、小生の見聞の一端を参考までに御報告申し上げ、かつ徹底的究明の上、かかるボス的生産者を処分し、貴重なる税の乱費を防止し、国土防衛の士に不正によって作られた製品を使用されることのなきようお願い申し上げる次第でございます。  一、まず今回の井上工業の件につきましては、機械製靴会社関係では、すでに有名な事実で、今回の表面化はむしろおそ過ぎたほどで、反面今日まで摘発し得なかったことこそ不思議であったといわねばなりません。  二、過般新聞紙上に掲載されておりました暴力的威圧の数々は、われわれ製靴会社の下級者に至るまで以前から聞いておったことで、今さらに新しい事柄ではありません。この事実は毎年受注ごとに来社される検査官より聞かされることで、なぜかかる件を上司に報告して生産発注の中止処分を行わないのか、とわれわれは不思議な気持でおった次第です。そこに中間幹部以上のその方面よりの何らかの圧力があったものと想像されます。」「発注配分数の調査よりして、なぜかかる横暴をきわめて威圧納入する井上工業が、他社に比して多数の発注をしているのか、この点も究明されたい。」「検査官が不良品を摘発すると、数人が取り囲んで威圧して帰宅させないとのことも、昨年その検査官から聞いている。  四、今回の点を徹底的に究明されるには、形式的と思われる上級者の喚問よりも、実際面に担当した第一線の検査官を喚問することで、なおこの際本人の安全性を考慮して氏名の紙上発表を考慮することでありましょう。現在の喚問状況は、実情を直接知る者を避けて、あるらしいという程度の証言しかできない上級職の者のみを喚問していることで、結局はこのままで確証を得ずとのことで消滅するのではないかとの不安を抱いております。  五、そこで次の関係者の喚問による調査を進言したいと存じます。1、防衛庁の第一線検査官よりの陳述、2、五大製靴KKの幹部級の者、3、靴労連の幹部、4、井上工業所在の警察署幹部」「井上工業の件に関しては、靴工業会ではあまりにもそのボス的行為とやくざ的行為はすでに有名であることは、何人も肯定するところであることを証します。」こういうことが東京の市民から私のところに寄せられております。これはあなたはもちろん否定されるでしょう。要するに結論的にいいますと、関係官庁の主任者、それからくつの修理業者あるいは奈良や大阪の市民または自衛隊の隊員、それに至るまで共通して悪いと非難されておる事実に対しては、その中には一部不確実な要素もないとは申しませんが、元国会議員であったあなたとしては、そこに謙虚におのれを反省なさるべき何ものかがあってしかるべきじゃないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  345. 井上信貴男

    井上証人 御参考にいたします。
  346. 辻政信

    ○辻委員 次は五月二十五日、私との会見におきまして、また当委員会に出されたあなたの陳情書、これは委員全部が研究しております。その陳情書の中で、あなたが最も憤慨されておること、すなわち税務署員を井戸の中へ投げ込んだこと、ドスでおどしたこと及び検査官を監禁したという三点についてその後私は奈良税務署及び関係官庁に再び真偽をただしたのであります。その結果は、口をそろえたように、ほかの官庁の人はやられたといっておるが、私はやられなかった、こう答えております。後害をおそれる弱い公務員の心理があるように私は想像いたしました。想像です。私がこの三つの問題を直接聞いたのは、防衛庁内部のこの仕事に最も関係ある良心的な中堅公務員であります。はっきり申し上げておきます。事実でなかったら腹を切れといわれたから、さらに詳しく聞いた結果が、大阪支所の検査官たちがあなたの工場に検査に行ったときこれは——よく聞いて下さい、大事なことです。あなた御自身の口から、税務署のやつが来たから井戸へ投げ込んでやったとか、ドでおどしてやったとかいうことを直接聞かされたということであります。本人が言っておるのだからそれは真実に違いないと思った。しかしながらこのような話を聞いておりますと、自分たちまでがあなたから間接におどかされておるような感じを受けた。どうもあなたの工場は気味が悪い、命がけで検査に出かけていますとの回答であります。  ただ一つ、私の前回申し上げたことに間違ったことがあります。それは久保証人はドスでおどされたということを聞いたのですが、久保課長自身の証言によって、それは事実なかったことであるということが明らかになりましたから、この一点だけは私の聞き違いで、この際訂正いたしておきます。  それに反して、さらに新しい事実が一つ持ち上ってきました。これは五月三十日、私が某官庁の主任者によってはっきり聞いた事柄であります。それは検査に行ったときに、検査官が車で行きましたところが、あなたの工場の入り口に工員がまる裸になって寝ておる。そうして車の通るのを拒んだという事実であります。また久保証人自身も、久保課長の部下たちの間に脅迫されたとか、監禁されたとかいううわさのあることを耳にしております。あなたから直接聞いたという大阪支所の検査官たちも、これを調べてみると、録音をとっておらぬから、あなたが否認されればそれまでですが、どう考えても、どこの検査官も薄気味悪く思っていることは事実であります。戦々きょうきょうとして検査に行くことだけは、結論として誤まりないように私は観察いたしました。このような空気に対して、あなたは自分ではそう思っておられぬでしょう。しかし率直な方ですから、他に与えられる反応といいますか作用といいますか、それがそういうことを及ぼしておるということは、やはり先ほどの御答弁のように、お互いに自己反省をしなければならぬ点だと思うのですが、いかがですか。
  347. 井上信貴男

    井上証人 先ほど述べられた、検査支所の人に、ドスでおどしたり井戸へ放り投げたとか、そういうことは言ったことはありません。それは虚構もはなはだしいと思います。
  348. 辻政信

    ○辻委員 私が言っておるのは、これは耳で聞き、口で言ったということでありまして、その場で録音をとっておるわけではなし、また私は検事ではないのですから、これ以上調べることは無理であります。しかしすべてのものを総合してみると、私の接した何十人かの人は、だれ一人あなたのところに気持よく行った人はないのです。おどすおどさぬは別問題として、これについてはあなたも代議士をやられた方ですから、やはり反省なさる必要があると思うのです。いかがですか。
  349. 井上信貴男

    井上証人 参考にしておきます。
  350. 辻政信

    ○辻委員 そこであなたは、おそらく本人の名前を知らせ、連れてこいとおっしゃるでしょう。多分その疑問が起ると思います。名前も言わない証拠は確実でない。ごもっともであります。それで私はその名前を知らしてもいいかと言いますと、これらの人は、名前が新聞に出たりあなたにわかると、後難を極度におそれておる。新聞に出たり井上さんの耳に入ったら命の危険があるから、これだけはどうぞかんべんしてくれ、絶対に発表してくれるなという条件つきで申されたのであります。  次に申し上げることは、五月二十八日の当委員会において武内本部長より確かめたところ、あなたのくつが仕様書通りになっていない。号文数の標示位置が誤まっておることを指摘したときに、あなたは武内本部長に不愉快な感じを与える態度で、検査官はおれのところだけきびしく責めるのは実にけしからぬということをおっしゃった事実がありますか。
  351. 井上信貴男

    井上証人 そういう事実はあります。
  352. 辻政信

    ○辻委員 そこでもう一つ伺いたいことは、あなたは天地に誓って良心に恥じないりっぱなくつを納めておるという信念があるなら、検査なんかきびしいほどいいじゃありませんか。むしろ進んできびしい検査をしてくれ、どうぞ御随意に見てくれといって、開放的な態度に出てこそ、そのあなたの信念というものが現実に証明される。それを弱い公務員をひっつかまえて、脅迫的な態度で、おれのところだけお前はいじめる、けしからぬやつだということは、これはあなたの製品に自信がないといわれても仕方がない。
  353. 井上信貴男

    井上証人 脅迫はしておりません。
  354. 辻政信

    ○辻委員 それでは最後にお伺いします。これは私の党内のことに関係しますからそのつもりで伺いますが、久保証人及び社会党の諸君から、わが党の長老大野伴睦氏にお願いして、砂田防衛庁長官に面会に行ったと、あなた自身もはっきり言われておるし、久保証人も述べております。久保証人は、大野さんとあなたが、久保君の不在中にその部屋に来られて名刺を置いて行かれた。久保証人は、大野さんの名刺を光栄と思って今も保存しております、と言っておるのであります。いやしくも天下の井上が、大野さんをわずらわさなければ砂田長官に会えないという理由はどこにあるか。
  355. 井上信貴男

    井上証人 それは僕が直接行っても、すぐ会ってくれないという場合がありますから……。   〔「そんなことないぞ」と呼ぶ者あり〕
  356. 辻政信

    ○辻委員 それでは天下の井上じゃなくて、生駒山の井上になってしまうじゃないか。
  357. 井上信貴男

    井上証人 仕方ありません。
  358. 辻政信

    ○辻委員 そこで前に述べたように、指定商にする場合も上からの指図であったと言っておる。指定をはずそうとすると上から押えられると、責任者が口をそろえて述べておるところから判断すると、あなたは大野さんを商売に利用したと言われても弁解の余地はない。そうするとあなたは、それはへそ曲りで、邪推するからだ、とこの間おしやったが、この点についてどうですか。
  359. 井上信貴男

    井上証人 上から頼んで指定業者になったのではありません。その当時の警察予備隊は、われわれがおもにやったのでありまして、ほかの業者は市販のくつをやったのであります。デフレになってから、ひまだから防衛庁のくつをやりたくなったんです。その当時は二千三百円でも二千五百円でもみながやらなかったんです。よく調べて下さい。
  360. 辻政信

    ○辻委員 そのことを聞いたんじゃないのです。あなたも代議士をやられた政界人だから言っているんです。われわれと同じ保守党員なんです。大野さんはわれわれの党の大事な人なんです。その大事な人に少しでも疑惑をもたらしたくないというのが、党員の私の気持なんですよ。しかるに遺憾なことに、大野さんが回ってこられたときに、防衛庁の下っ端の役人が、大野さんがちょっと顔を出したら百万円だ。おれたちの三年間のサラリーよりも多いよ。政治家というものはいいものだなあ、とうわさしていることも事実である。私の方では大野さん自身はきれいであると信じておりますが、この大野さんを連れて、直接利益代表のあなたが二億円の発注を持った防衛庁に行くということ自体が、心ない人たちに痛くもない腹を探られて、あなたの尊敬する大野さんに迷惑をかけ、ひいてはわれわれ保守党にも疑惑をもたらすような結果になるということを、私はこの事件最大の遺憾事として、かつての代議士であり、将来代議士に出ようとする希望を持った井上さんに、今度は政治家の立場において、あなたの見解をはっきり承わりたい。
  361. 井上信貴男

    井上証人 先ほど説明した通り、宮澤胤勇代議士に行ってもらおうと思って電話をしたのであります。宮澤代議士は留守でありましたので、自由党本部に行ったらだれか代議士がいるだろうと思って、自由党本部に行ったのであります。そうしたら大野先生が玄関に出てこられたから、大野先生に頼んだのであって、ほかにおられたらどの代議士でも一緒なんです。別に大野先生に頼まなくてもよかったんです。ところが自由党本部に行ったら玄関に大野先生が出てこられたから頼んだんです。別に大野先生をわずらわしたくなかったのであります。その前に宮澤代議士に電話しておるのでありますが、宮澤代議士が留守であったから、自由党本部に行けば同僚代議士がたくさんいるから、そこへ行ってどの代議士でもいいから紹介してもらおうと思って行ったんです。ときたまたま玄関へ行ったら大野先生が玄関へ出てこられたから紹介して下さいと言ったんです。
  362. 辻政信

    ○辻委員 その経緯は先ほど聞いたからわかっております。私がお伺いするのはそうじゃないのです。あなたは官庁契約関係を結んでいらっしゃる利益代表です。その利害関係のある官庁に、われわれの長老をわずらわしてもらいたくない。今あなたが、原子力の正力さんに会いたい、正力さんには顔見知りがないから、どうか大野さん名刺を書いて下さい、というのなら私は文句はないんです。またくつを納めていないならかまわぬのです。われわれ保守党はありもせぬことを宣伝されて全体が迷惑をしておる。保守党というものは必ず悪いことをするものだ。——さればこそ与党の私が質問しているんです。私は保守党を守るがために、保守党をきれいにするために、同じ保守党人のあなたに、政治家の信念として将来そういうことは慎しんでもらいたいということを、同僚の一人として心から申し上、げます。
  363. 井上信貴男

    井上証人 同僚としての忠告は甘受します。
  364. 辻政信

    ○辻委員 最後防衛庁の増原次長、武内部長に所信をただしたい。中古エンジンでは世論のごうごうたる非難を受け、国民の税金でブローカーと間組をもうけさせ、くつの問題では、たった十円安いことを理由にして十万足以上の靴を、設備技術の劣っておるものに発注をしておる。しかも検査官の良心的意見を無視して、依然として指定商としてそれに最大量の発注をしている事実をどう考えるか、ほかの官庁においては年々発注量を少くしておる。数字をあげて説明すればわかるが、あなたの官庁においては、昭和二十八年度において七万六千足、昭和二十九年度において十万六百六十二足、昭和三十年度において十万八千二百七十四足も注文しておる。直接検査に当った検査官は、適格じゃないと言っておる。そういうことをなぜ継続するのか、私は井上証人に何の恩怨もございません。要は、あの国を守る隊員たちに少しでもいいものをはかせてやりたいということが、この事件を究明した動機なんです。井上さんは今、私がほかの業者に利用されておりはせぬかと言うが、私はそのような男じゃございません。他のくつのメーカーはどんなものだか知りません。事の起りは兵隊のくつを見てからの疑問です。そういうことから考えると、この指名業者に依然として十万足という三分の一の発注をするということについては、慎重に検討なさらなければいけない。そのことを最後に忠告して、私の本委員会における質問を終ります。増原次長の所信を承わりたい。
  365. 上林與市郎

    上林委員長 答弁の要求が二人にわたっておりますが、増原次長、武内本部長の順序に従って答弁を求めます。増原次長。
  366. 増原恵吉

    ○増原政府委員 この問題は先般証人に出ました久保検査二課長からも、事情を申し上げましてお聞き取りを願っておるのであります。本日の証人証言も私ここで承わっております。私どもが今までとって参りました態度は、指名業者としての資格に欠くるところがないという形で指名に参加をさせ、競争入札で最低値段あるいは同額値段ということでこの品物を受け取り、先般久保検査二課長もここで申しておりましたが、特にこの品物が悪いという事実を的確につかんではおらないということを、証言として申ら上げたのもお聞きを願ったと思うのであります。指名業者としての資格ある者として指名に参加をさせ、競争入札の最低値段もしくは同額値段ということで、注文を発したということでございまするが、この委員会を通じて明らかになりました事実は、十分検討をいたすことにしたいと存じます。
  367. 武内征平

    ○武内説明員 久保課長の報告のある以前からも、調達全般につきまして、調達本部発足以来すでに一年有半を過ぎたのでありますから、その購入されたものの品質がいいか悪いかということについての検査実績は、全般的に出てきております。従いまして今後の発注につきましては、この検査の実績を反映いたしまして、指名随契審査会に諮りまして、適切なる技術を秤量いたしまして、指名の範囲を限定することも十分研究いたしたい、かように考えております。
  368. 臼井莊一

    ○臼井委員 関連して、簡単に一、二御質問井上さんにしたいのでありますが、お宅では原料はどこか他からお仕入れでございますか。あるいは一部はお宅の工場で、たとえば屠殺したものをなめすとかですね、原料等はどういうふうなことになっておりますか。
  369. 井上信貴男

    井上証人 うちでは他の製革工場から買っております。
  370. 臼井莊一

    ○臼井委員 お宅ではなめすというようなことは全然やっておられないのですか。
  371. 井上信貴男

    井上証人 やっておりません。
  372. 臼井莊一

    ○臼井委員 それからもう一つ、先ほど検査で自分のところだけが非常にきびしい、こういうふうにお考えのようだったのですが、それもあなたのいろいろの証言を伺っておると、他から比較してきびしいというふうでなくて、何かあなたの独断のように思うのですが、その点他よりもあなたのところだけがきびしく検査を受けているというふうに考えられておる点はどうなんでありますか。他から比較された点があるのですか。
  373. 井上信貴男

    井上証人 それは聞いておりますが、証拠がありませんから、うわさで聞いておると申し述べておきます。
  374. 臼井莊一

    ○臼井委員 もう一つ、大野先生を一緒に同道されたのは、何か紹介のためにということだけれども、その前に宮澤先生を紹介してもらおうと思った——その前にすでに防衛庁と取引をされておるのに、その紹介という意味はどういう点の紹介をするつもりで同行を希望されたのでありますか。
  375. 井上信貴男

    井上証人 他の指定業者が防衛庁へ僕のことを中傷しておるといううわさ、話を聞きましたから……。
  376. 臼井莊一

    ○臼井委員 そういうような点ならば、あなたも出入りの商人として面識がないわけじゃないのだから、どんどん行かれて——あなたも政治をやった経験があるので、そういう際に政治家を利用するように世間から誤解されるということがこういう問題の起る原因だと思うのです。そういう際にはあなたとして率直に行かれる方がいいと思う。この間この委員会でわれわれ感じたことは、やはりその検査などがどうも厳重過ぎる、あなたは他より厳重過ぎるというふうに考えられたからじゃないかと思うのですが、検査官のところへそういう政治家と一緒に回られるというところに、何か政治家を利用して寛大な検査をしてもらいたい、こういうふうな一般の誤解を受けるもとになっていると思うのですが、そういうふうな御意思はなかったかどうか。
  377. 井上信貴男

    井上証人 そういう意思はありません。ただ検査官の方で、僕が一回も行ったことがないから、君のところの社長は一ぺんも来ないじゃないか、検査官の方から一ぺんよこしてくれというお話があったからそこへ行ったまででございます。そのときは検査のいざこざはなかったのであります。
  378. 臼井莊一

    ○臼井委員 私の質問はこれで終えますが、やはり世間から見ると、政治家、ことに有力な政治家と一緒に行くという事実は別として、もちろんそういうことがあるとわれわれ信じなくても、やはりあなたの方で利用するようなふうに一般からは見られるのでありまして、そういうことはわれわれの希望としてはできるだけ避くべきことである、こういうふうに考えるので、この点も一つ将来のためにお考えいただきたいということを申し上げまして、私は終ります。
  379. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 関連してちょっと一点だけ、増原次長及び調本の部長に伺うのですが、実は井上証人の取引の関係についての各般の非難等については、私の手元にでもあなた方の部下の名前はいろいろな課において八人実はあるのであります。でありますけれども、これは一々申し上げてその事実を追及するということはこの機会はもうする必要はないと実は思っておるのであります。でありまするが、たとえば二十八年から海上自衛隊にくつを納入なさったらしいのだが、こういうようないろいろな内部、外部等々から非難等があります人に、そういった経歴を十分に調査することなくして、ただ単に指名入札するというようなことは、これはやはり調本のあらゆる資材、需品等の納入制度の上におきまして私は考えてもらわなければいかぬじゃないかと実は思っておるのであります。これはやはり相当別の理由からそういったことが寛大に扱われてきたのではないかと見るのであります。これはたとえば今の自衛隊の分の初めての納入の際、過去の経歴等について、今辻委員からも朗読しましたごとく、さかのぼって慎重にその事業経歴とか、官庁との信用関係等について調査しなかったか、その点はどうですか。調本部長は当時そうでないとすれば、一つ次長から伺ってみたいのです。
  380. 増原恵吉

    ○増原政府委員 当時の事情を私こまかく報告を受けたりして記憶いたしてはおりませんけれども、業者を選定する場合には業態調査は行なっておる二とが原則でございまして、業態調査は行なったと信じまするが、ただいまいろいろ明らかになりましたような事実をそのときしっかりつかんでおりましたかどうか、ちょっと確言いたしかねるところがございます。
  381. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 たとえば具体的に申しましたなら、この四月ごろ、習志野という個所がありますね、習志野の空挺用のくつについても、やはりくつの破損問題につきまして、これは井上工業所の分でありますが、一つの文書が出ておるのであります。その係官の名前も私は存じておりますけれども、これは係官も全体として根本的に改善をしてほしいと思いますので、一々その名前を言うの煩にたえませんから言いませんが、そういった書類も出ておるはずであります。従ってこれは御調査願いたいのです。たって確認をしたいとおっしゃるならば、一々名前を言ってもいいのです。  そこで、今だんだんと明らかになりましたごとくに、この商人の世評というものがこんなに悪いのであります。こんな悪い世評の商人が、くつにおきましては最大の納入者なんです。またくつはあなたの方の需品の最も大きなものであります。この人を今日の政界の第一人者がつれて防衛庁に出かけていくというようなことは、私はもってのほかだと思う。またこういう人を第一流の政治家、元大臣、議長をしておったような人が一々つれていくということも実におかしい。単に紹介するなら名刺でもよろしい、秘書にやらせてもいい。これが普通です。われわれ国会議員の生活の実情から見て、一々自分がのこのこ出かげていって一々課長の前に名刺を置いて歩くというようなことはもってのほかであります。こういうようなことは一つの官紀紊乱のもとであると思います。だからそういったことについては、あなたの方の立場におきましても厳重に抗議的態度をとってもらわなくてはならぬと思います。よしんばそこに金銭の請託等があったとかなかったとかいうことは、今はもう問題じゃありません。少くとも無形の圧力というものが防衛庁の事務に向って加えられておると思いますが、次長、いかにお思いになりますか。
  382. 増原恵吉

    ○増原政府委員 この問題は、私もせんだって久保証人が召喚をされましたときに承知をしたのでございます。私どもといたしましては、ことに調達の事務等につきましては、いやしくも間違いのないように、請託その他によって動くようなことのありませんように、あくまでも懸命の努力をいたすつもりでおります。
  383. 上林與市郎

    上林委員長 本会議の開会時間とにらみ合せて議事を進行しておりますから、前の委員質問と重複しないようにお願いします。
  384. 山田長司

    ○山田委員 関連して。先ほどからいろいろお話を伺っておりますと、どうも私ふに落ちない点が二、三出ておりますので伺うのですが、あなたのお店はおじいさんの代からおやりになっておるそうでありますけれども、じいさんが先ほどの報告の中にもありましたように、何億という資産におなりになったというが、一体いつごろからそういう隆昌の段階に立ち至ったのか、商店の隆昌し始めた原因を、一つあなたに御説明願いたいと思います。
  385. 井上信貴男

    井上証人 それは昭和七、八年ごろに、僕は土木建築請負業もやりましたし、いろんな商売をやっておりましたから、その時分から隆盛になったと思います。
  386. 山田長司

    ○山田委員 そうしますと、あなたの資産の数億になったという原因は、必ずしも皮革の仕事によってなったのではないということが言い得るわけですね。
  387. 井上信貴男

    井上証人 皮革でもなったのであります。
  388. 山田長司

    ○山田委員 そこであなたに伺いたいのは、先ほど大野さんを連れて防衛庁に行かなければならなかった理由というのは、いろいろ中傷を受けておるので、連れていかなければならなかったという御発言がありましたが、どういう中傷を受けておって大野さんを連れていかなければならなかったのですか。
  389. 井上信貴男

    井上証人 その意味ではないのです。防衛長官を紹介してもらうために何したのです。
  390. 山田長司

    ○山田委員 さらに、検査がひど過ぎるということを先ほど言われましたが、どういう点があなたは検査がひど過ぎるということをお考えになられて、そうせられたのですか。
  391. 井上信貴男

    井上証人 それは大野先生と別です。あとの問題です。
  392. 山田長司

    ○山田委員 あとの問題であっても、検査がひど過ぎたと言われる点は、どういう点にあなたは言われる理由があったのですか。
  393. 井上信貴男

    井上証人 ほかのくつ検査に対していろいろなことを承わっておりまするが、僕の方は文数の抜き打ちが、ただ一ミリか二ミリ上か下かというだけでも、非常に注意を受けたという点でいったのであります。
  394. 山田長司

    ○山田委員 そういう点で、どういうひどいことを防衛庁が言ったというのです。
  395. 井上信貴男

    井上証人 もう一度言って下さい。聞えません。
  396. 山田長司

    ○山田委員 検査のとき検査官が、そのことについてどういう検査のひど過ぎることを言われたというのです。
  397. 井上信貴男

    井上証人 ほかの検査よりも、私の方の検査は厳重であると解釈して、言うたのであります。
  398. 山田長司

    ○山田委員 あなたは今度の決算委員会におけるこの状態を察知するやいなや、将来は、個人でこういうもうけをしていたのではいかぬから、一つ会社を作ろうという意図になられて、それでさらに政界の巨頭連中に連絡をとって、一つ今度は会社でもうけてやらうということを言われたそうですが、一体そういうことを言われたか、あるいはそういうお考え一つ今までのような個人もうけをしまいとお考えになられたのか。その点について一つ心当りがあったらおっしゃって下さい。
  399. 井上信貴男

    井上証人 そういう考えも心当りもありません。あったら御教示願いたいと思います。
  400. 山田長司

    ○山田委員 増原次長に伺いますが、井上証人の経歴、営業状況等を調査した書類があれば、それを本委員会提出してもらいたいと思います。なおここでわかるならば、ここで御発表願いたいと思います。
  401. 上林與市郎

    上林委員長 出していただけますか。
  402. 石井由太郎

    ○石井説明員 井上工業所のみならず、業者の、たとえば敷地面積でございますとか、従業員数、あるいは資本金、創立年次といった程度のことでございますれば、一覧表がございますが、井上工業所に特に限って、たとえば各年次の納税状況でございますとか、営業成績といったようなものにつきましては、一覧表に載っておりませんので、もし御要望でございますれば御報告いたしたいと思います。
  403. 上林與市郎

    上林委員長 どちらになさいますか。
  404. 山田長司

    ○山田委員 こういう問題を防衛庁自体が調査をしてなかったということ自体が、こういう大きな注文をされる場合におかしいと思うのだ。今日まで持っていなかったこと自体が、これはおかしいと思うのです。
  405. 上林與市郎

    上林委員長 ちょっと待って下さい。今資料の問題を一応解決して質問に入って下さい。どちらになさいますか。全般の資料と、井上さんの資料と、どちらになさいますか。
  406. 山田長司

    ○山田委員 両方を……。
  407. 上林與市郎

    上林委員長 それでは両方出して下さい。
  408. 石井由太郎

    ○石井説明員 資料として後刻提出いたします。
  409. 山田長司

    ○山田委員 もう一つ井上さんに伺っておきますが、こういう大量のくつを製造されるには、おそらく手縫いで作られておるくつじゃないことははっきりわかります。そこでミシンを何台くらいお持ちになって、こういう事業をやっておられるのか、参考に伺います。そのミシンの機械はどこから購入されたのか。
  410. 井上信貴男

    井上証人 ミシンは十八のミシンとかあるいは特殊ミシンで約百台くらい持っております。自分では一番最高だと思っていますが……。
  411. 山田長司

    ○山田委員 そのミシンは終戦のどさくさに手に入れたのではないかといううわさがあるが、どこからそのミシンを手に入れたのか、参考に伺います。
  412. 井上信貴男

    井上証人 終戦のどさくさに一台も買っておりません。
  413. 山田長司

    ○山田委員 どこから買った。
  414. 井上信貴男

    井上証人 ミシン業者から買っております。
  415. 山田長司

    ○山田委員 業者はどこだ。
  416. 井上信貴男

    井上証人 業者は、僕の店の寺田孝夫君が買いに行ったやっと、それから大阪の五光商会というところで買っています。
  417. 山田長司

    ○山田委員 それからいつごろそのミシンを手に入れたのか。さらにその当時の値段は幾らであったか。なおその取引に当ってあなたと衝に当った人はだれか。
  418. 井上信貴男

    井上証人 五光商会と申しております。
  419. 山田長司

    ○山田委員 値段は。
  420. 井上信貴男

    井上証人 その当時の時価であります。今は記憶しておりません。
  421. 山田長司

    ○山田委員 いつごろであったか。
  422. 井上信貴男

    井上証人 それは昭和二十一年、二十二年、二十三年、二十四年と、四、五カ年にわたって買っております。
  423. 山田長司

    ○山田委員 その当時は、日本の状態から推してみて、こういうくつを作る機械などはなかなか手に入る状態でなかったのです。あなたの政治的な手腕をもって入れたのであるから、それはおそらくいろいろな手で入れられたと思いますけれども、一体それではどういう手を通してそのミシンを手に入れたか。
  424. 井上信貴男

    井上証人 商売人から買ったのであります。
  425. 山田長司

    ○山田委員 その商売人は今名前を言われた会社であることはわかったが、一体あなたの政治的な手腕をもってすれば、おそらくその当時の物のないときでも手に入ったことはわかるけれども、一体その手に入れたときの状態を参考までに伺いたいのです。
  426. 井上信貴男

    井上証人 商売人から買ったと言っています。何回も同じです。
  427. 山田長司

    ○山田委員 私が政治的なことと言って伺うのは、当時は、単にくつを縫う機械だけではなくて、あらゆる鉄を使用した製品というものは禁製品なんです。だからよほどあなたは政治的な手でそのミシンを入れられたと思われるから、私は伺うのですが、何もそんな大きな声をされないで、当時の経緯を伺いたいというのです。それを買うときに証明書が必要だったことはわかるのですが、どこからその証明書を手に入れ、どうしてそれが入られたか、一つあなたから誇りを持ってその当時の政治的な手腕を承わりたいというのです。
  428. 井上信貴男

    井上証人 そのときは、ミシンを買うのにはそういう証明も何も要りません。商売人から買ったのであります。
  429. 山田長司

    ○山田委員 商売人から買われたことは、あなたが先ほどかと何べんも言われておる通りなんです。ところがそれが私たちのような人が考えてみた場合に、なかなか手に入る状態でなかったから、あなたの政治的な品物の入れ方がどういうものであったのか、参考までに、後日のお話に私は伺いたいのです。当時はなかなかこれが手に入る状態でなかったのです。商売人も、それは軍需省で統制しておりまして、その製品が何台できたというような報告も、当時の軍需省はおそらく手にしていた時代だと思うのです。もしあなたがそういう製品を手に入れるときには、軍需省のそういう係が証明書を出さなければ手に入らなかった時代なんです。だから伺っておるのです。
  430. 井上信貴男

    井上証人 戦後にそんな証明も何もないです。買ってくれ買ってくれと、商売人が何人も来ています。何十人と来ています。
  431. 山田長司

    ○山田委員 あなたの言われたのは、最後の二十一年というのは戦後かもしれないけれども、それ以前のことは、何年も——数年間の話が出たから伺っておるのです。
  432. 井上信貴男

    井上証人 それ以前は——商売は戦後やったので、戦時中はやりかけたけれども、やめたのであります。手に入らなかったから、ミシンとか何かは……。
  433. 細田綱吉

    ○細田委員 ちょっと二、三点だけ。井上さんに伺うのですが、久保第二検査課長、久保証人が、あなたのところは、初度検査とか言っていましたが、最初の検査には不合格品が非常に多い。それを作り直させる、こういうことを言っている。これは検査官が現実に宣誓の上で言っている。これをあなたは御存じなかったのですか。
  434. 井上信貴男

    井上証人 それは知っています。最初検査を受けて、もし不合格だった場合は、もう一ぺんこちらで、かりにミシン糸が少し出ていたら、それをはさんだらいいわけです。そういうものは検査は不合格になりますから、それをはさめばいい。そして所内検査をして再検査を受けるのであります。
  435. 細田綱吉

    ○細田委員 ほかのところはそういう初度検査に不合格品が少い。お宅が非常に多い。こういうことを見ても、あなたのところの品物は若干粗製乱造のそしりを免れないということだけは、御認識なのですか。
  436. 井上信貴男

    井上証人 品質においては自分では最優秀と思っております。
  437. 細田綱吉

    ○細田委員 もう一点だけ。一つ本部長に伺いますが、かつては代議士であり、あなたのところの最大の受注者であり、二億も取引している人が、あなたの方を訪問すると、そんなこっぱ商人には会わないと言って、あなたの方では一般的には会わないような慣例、しきたりになっているのですか。
  438. 武内征平

    ○武内説明員 私は業務の関係でおいでになる方には、時間の許す限り広く面会する方針であります。
  439. 細田綱吉

    ○細田委員 これで最後です。井上さん、あなたは防衛庁長官のところへ行ったのだが、また本部長のところへも、久保検査課長のところへも行っているのです。それで久保検査課長さんの話では、あなたの名刺と大野さんの名刺とちゃんと置いてありました、私の留守に給仕がおいでになったと言ったとはっきり言っている。そんな大野さんを連れていかなくても、今お聞きのようにいつでも会うのです。どうして大野さんを連れていったのか、これを最後に伺っておきます。
  440. 井上信貴男

    井上証人 どの代議士でもいいのですが、自由党本部へ行った場合、その玄関にたまたま大野先生が出てこられたから、大野先生と紹介に行ってもらっただけであります。
  441. 細田綱吉

    ○細田委員 なぜ……。
  442. 井上信貴男

    井上証人 ただ商売に連れていってもらっただけなのです。
  443. 上林與市郎

    上林委員長 他に御発言はございませんか。——それでは井上証人に対する尋問はこれにて終ります。  井上証人には、長時間御苦労様でした。退席されてけっこうです。  議事進行について発言を求められておりますから、これを許します。坂本泰良君。
  444. 坂本泰良

    ○坂本委員 本日間組の社長の病気欠席について、医師の遣沢忠三郎氏を参考人に呼んでおるのですが、これが出てこない。この点が一つと、もう一つは、期日があと二日しかありませんが、本委員会電源開発の小坂総裁を参考人として喚問することに決定しておりまして、余すところ二日しかありませんが、これはどうなっておるか。この問題は重大な問題でありまして、会期あと二日しかないのであります。これは当初四十二億の契約に対して前渡金が相当渡されており、さらにこれに対して八十億の増額が要求されておる。なお一番問題は、嘆願金として四億近い金が要求されておるということを聞いておるのであります。この点を明白にするために、小坂総裁を参考人として当委員会に出てもらってこれを聞くことが決定して、その呼ぶ期日が数回理事会できまらずに今日に至っておるのであります。この点についてはどういうふうにやられるか。われわれとしては明日でもこれをやらなければならない。この会期中にぜひともこの参考人喚問をしなければ、国民の疑惑を招く、当委員会の権威のためにもやらなければならないと思います。この二つの点についてお伺いいたします。
  445. 上林與市郎

    上林委員長 それでは私からお答え申し上げます。理事の方々はすでに御存じの通り理事会ではすでに参考人として呼ぶことを決定していただいております。なお委員会でも決定していただいております。しかしいろいろ経過がございまして、一応二十九日の理事会で日時等は決定する申し合せができておりましたので、そういう経過も十分考慮して理事会を開催いたしましたところが、いまだ結論に達しておりません。そのような事情から、今日のところ出頭を決定する段階に立ち至っておりません。従って今後の問題といたしましては、私がいろいろ今までの経過を総合的に判断して、善処さしていただきたいと存じます。  参考人としての医者の問題は、きょう理事会で御報告申し上げましたが、遣沢参考人はきょうも出頭できないという申し出がございましたので、御報告しておきました。なおこの問題について御相談がございますれば、明日午前十一時から理事会を招集する予定でございますので、その際なお皆さんに御相談を申し上げたいと思います。
  446. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 ただいまの問題につきまして、第一に遣沢医師の件でありますが、これはやはり数回にわたって重症患者を持っておるという理由で出頭をがえんじないのであります。同君が出頭しないばかりに、間組の社長をしばしば日をきめながら、ここでお尋ねする機会がないのであります。かくして日がたって会期あと二日になっておるというのでありますから、これは非常に重大な支障であります。これは即刻ただいま、あるいは本日散会直後でも即刻、この医師について明白に出られない理由、あすでも出られるかどうかについて、文書か何かもっと明らかになるべき方法で一つ確かめていただきたい。これを一つお計らいを願いたいと思います。
  447. 上林與市郎

    上林委員長 今の御意見は、私の手元でそれをやってくれという趣旨ですね。
  448. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 文書ですぐ出すとか何かの方法で一つ明らかにされたい。  それからいま一つの小坂総裁喚問の件でありますが、これも理事会で意見が一致しないままに今日まで至っておりますことは、これはいたずらに世の疑惑を深めるのみでありまして、国会のためにも、またお互いのためにも、決して有利なことではございません。一日も早くこれはやはり事態を明らかにするために、私は喚問の日時決定を運んでいただきたい、こう思うのであります。これは会期中に調べられるということがお互いの希望でありますので、できれば直ちにこれにつきましても御意見をきめていただきまして、あすもしくはあさってのうちになし得るようにこれもお計らいを願いたいと思います。これは別にあなたに対して御質問するわけではありませんが、しかるべき発言があってよかろうと思います。
  449. 上林與市郎

    上林委員長 坂本委員の御発言の御趣旨と同様と思いますので、同様の御趣旨で私善処させていただきます。
  450. 坂本泰良

    ○坂本委員 この小坂総裁の呼び出しの期日の問題については、この委員会散会後、直ちに理事会で決定される御意思があるかどうか。
  451. 上林與市郎

    上林委員長 先ほど理事会の席で私が申し上げました通り、今日散会後に理事会を予定しておったのです。ところが不信任案上程の重要案件が本会議に上程されるので、それと見合いつつ審議を進めたものですから、理事会を招集する時間的余裕がないと思って一応開かないことに申し合せ、御了承願ったのですが、しかしたっての要求がございますれば、時間をにらみ合せて招集しても、私としては一向差しつかえございませんが、いかがでございますか。
  452. 田中彰治

    田中(彰)委員 小坂総裁の問題は、理事会で日にちをきめることになっておるのだから、こういうところで出さなくてもいい。どうしても呼び出すならここで採決した方がいい。
  453. 上林與市郎

    上林委員長 理事会を招集するかしないかの御意見を願います。
  454. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私が坂本君の御発言に次いで発言するゆえんのものは、田中さんの御意見はごもっともでありますけれども理事会は何回開いても意見が一致しないで今日まできております。かくしてあと二日であります。相手もあることです。きょう来い、あしたの朝来いというようなことは常識上許されない。かくしてじんぜん日を空費して会期が終了してしまいましたならばまことに遺憾なことになりますので、かくは委員会において発言したのであります。当然のことであります。すみやかにお諮り願いたいと思います。
  455. 上林與市郎

    上林委員長 本日本会議の開会時刻がはっきりしないそうです。時間的な余裕があるようでございますから、一応散会後に理事会を招集いたします。  本日はこの程度にて散会いたします。次会は公報をもってお知らせいたします。    午後四時三十五分散会