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1956-05-25 第24回国会 衆議院 決算委員会 第37号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月二十五日(金曜日)     午前十一時一分開議  出席委員    委員長 上林與市郎君    理事 生田 宏一君 理事 關谷 勝利君    理事 田中 彰治君 理事 本名  武君    理事 山本 猛夫君 理事 吉田 賢一君       臼井 莊一君    櫻内 義雄君       床次 徳二君    松岡 松平君       小松  幹君    山田 長司君  出席国務大臣         通商産業大臣  石橋 湛山君  出席政府委員         通商産業事務         官         (鉱山局長)  松尾 金藏君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      川上 為治君  委員外出席者         通商産業事務         官         (鉱山局鉱政課         長)      磯野 太郎君         会計検査院事務         官         (第四局長)  中川  薫君         会計検査院事務         官         (第五局長)  上村 照昌君         証     人         (北陸電力株式         会社社長)   山田 昌作君         証     人         (北陸電力株式         会社建設部部         長)      鵜飼 孝造君         証     人         (片掛部落沿岸         保全期成同盟会         長)      林  唯義君         専  門  員 黒田 久太君     ————————————— 五月二十三日  委員辻政信辞任につき、その補欠として田村  元君が議長指名委員に選任された。 同月二十五日  委員木下哲辞任につき、その補欠として小松  幹君が議長指名委員に選任された。 同日  理事山本正一辞任につき、本名武君が理事に  当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事の互選  証人出頭要求に関する件  政府関係機関収支日本開発銀行電源開発  融資)に関する件     —————————————
  2. 上林與市郎

    上林委員長 これより会議を開きます。  政府関係機関収支日本開発銀行電源開発融資)に関する件について調査を進めます。本件につきましては去る第二十二会国会以来調査中のものであり、今年一月には特に委員を派遣して実情を調査したのでありますが、本日はさらに本件につきまして証人より証言を求めることといたします。御出頭になられました証人方々は、山田昌作君、鵜飼孝造君、林唯義君、相違なきものと認めます。  あらかじめ文書で御通知いたしておきました通り、ただいまから政府関係機関収支日本開発銀行電源開発融資)に関する件について証言を求めたいと存じますが、証言を求める前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならないことと相なっております。宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言が、証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係にあった者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び、医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあった者がその職務上知った事実であって、黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになっております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは一年以下の禁固または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは三月以上十年以下の懲役に処せられることとなっておるのであります。一応このことを御承知になっておいていただきたいと思います。では、法律の定めるところによりまして、証人宣誓を求めます。御起立を願います。  山田昌作君、代表して宣誓書の御朗読を願います。   〔証人山田昌作朗読〕    宣誓書   良心に従って、真実を述べ、何事もかくさず、また何事もつけ加えないことを誓います。
  3. 上林與市郎

    上林委員長 それでは署名捺印してください。   〔証人宣誓書署名捺印
  4. 田中彰治

    田中(彰)委員 ほかの証人をちょっと別室へ控えさしておいて下さい。
  5. 上林與市郎

    上林委員長 証言を求める順序山田昌作君、鵜飼孝造君、林唯義君の順序になりますから御了承下さい。山田昌作君以外の方はほかの控室でお待ち願います。  それではただいまより証人の方から証言を求めることといたします。質疑の通告がございますので、申し合せの順序に従ってこれを許します。まず田中彰治君、発言願います。
  6. 田中彰治

    田中(彰)委員 山田証人に対しお尋ねいたしますが、崩壊発生によって部落民が大なる不安を感じておりますか、この不安を除去するために、あなたは今どういうお考えを持っておられますか、それからお尋ねいたしておきます。
  7. 山田昌作

    山田証人 崩壊いたしました地区の方々所有権を侵害されたというお立切にあると存じます。これに対しましては前回も参考人として出ました折に申し述べたのでありますが、その損害をなからしむるためにその土地をできれば買収させていただきたいということを考えたので、そのように今でも考えております。
  8. 田中彰治

    田中(彰)委員 あなたが土地買収をさせてもらいたい、あるいはまた今ダムになっておる土地を借料を払って借りているからというように簡単に考えておられますが、これは私は非常に重大な問題だと思うのです。たとえばこの部落民人たちにしてみますと、この土地の価値、こういうものに対して考えていることは、あなたの考え第三者考えと非常に違うのです。これは釈迦に説法のようなことですが、たとえばここに植木が一鉢十万円のものがある。この十万円の植木植木の好きな人、つまり植木を見ることの目のある人のところに持っていくと、この植木は一鉢やはり十万円するのです。これはどこへ行っても相場が十万円するのです。しかるに植木に趣味のない人にこれを持っていって買えといったって、そんな植木よりむしろ三寸か五寸の杉丸太の方がいいのだ、杉の木の方がいいのだ、雑木の方がいいのだということになる。そうすると雑木値段幾らになるかというと、そんなものは千円か五百円しかないではないか。しかし相場だから、どこへ行っても雑木値段でいいじゃないか、あなたと部落民考え方はちょうどそういう工合に変っておるのです。部落民は何百年という歴史をそこに持ち、そこに住んでいる。そして一生懸命それを守って働いてきた。しかも自分土地じゃないのだ。祖先から伝わった土地だから自分の代にはそれをなくしたくない。なくすとするならば、その土地に住むよりももっと幸福な生活、あるいは子孫教育あるいは子孫の繁栄ができるようなことがあるなら、それは公益のためにしかたがない。そういう将来性のある、将来安心のできる生活に対する保障がないならば、彼らがそういう土地から離れるということは——あなたが考えておられるような土地買収値段とかそういうものと非常に違うのです。たとえば借りておる土地代としてあなたの方は借り料を払った。ここに公益局長がおりますが、この人たち考え方というものは、第三者が人の所有物に対して、その人がそこに持っておったところの歴史とかいろいろな因果とかいろいろな将来とかいうものを全く没却して、ただその持っているものの値段によってそれを売買したらそれでいいじゃないか、こういう考えなのです。だから、今の公益局長なんかが戦争中に統制をやったのだが、あのやったことをごらんなさい。あなた方も御迷惑なさったと思う。日本の国民はみんな迷惑した。本来ならばこういう人たちは現在役人に置くべきものではない。それは何だというと、たとえば杉の丸太が一本五円だという。そういうように公定の価格がきまっておる。しかし一里のところもあれば五里のところもあり、十里のところもあり、駅のそばもある。そういうことを考えないで、杉の丸太一本五円だということを書いて、そうしてたくさんの農民をいじめ、民衆をいじめてきた。その考えをいまだ持っている。そのようにこの農民土地もあれは幾ら値打しかないのだという。これはとんでもないことだ。  ここにいい例がある。安い金では土地を買えないということは、朝日新聞の二十四日の朝刊に出ておった。それは、今は昭島市に住んでおるのですが、元小河内村の人たちを、東京都が水を確保するために都の水道局でこの人たちの住んでおる奥多摩の旧小河内村にダムを作るために、約六、七十名立たした。そのときにこの人たちに与えた補償金は一戸当り百五十万円であります。そして百五十万円与えてもこの人たちが住むところはないというので、今度は親切にも水道局があっせんしまして、大蔵省の持っている土地を一坪五百円から六百円でみんなに二十七年ごろ分けてやっている。そして六十三戸の人たちをここに住まわした。百五十万円もらって、土地東京都のあっせんで大蔵省から買ってもらってそこへ住んだのだけれども、それでも百姓というものは百姓をやめたら何のすることもないから、今度は家を建てて進駐軍のパンパンの宿みたいなものに家を貸した。それが今度売春法によってそういうことができなくなる。そこで警察が、君たちも百五十万円ももらってこれまでしたのだから、そんなことしないでいいじゃないかと言う。そうすると彼らは、それじゃもとの土地を返してくれ、私たちがあそこに住んでおるときは、たきものがほしくなれば山へ行けばあった、井戸を堀ればたくさん水が出た、ところが今は水道代を払い、ガス代を払っている、百五十万円金をもらってここにおるけれども百姓の転業なんかないから食うのに困っている、二百五十万円の金でも要らないから土地を返してもらった方がいいのだ、こう言っている。これだけ百姓というものはその土地に対して魅力を持っておる。そこから離れたらちょうどカッパが丘へ上ったようなものであって何にもならないから、そういう点をあなたの方がよく考え土地買収とか何かを考えられないといかぬ。その土地幾ら値打なんだからというように、人の持っているものをそういうふうにされるようなことでは問題にならない。  私はつい二、三日前に行ったのですが、大塚に私のおいがいて、そこで一つ商売をしている。そのかどにたった三十坪の土地がある。区画整理のためにその三十坪の土地が三割減って、私のおいのところの屋敷に入っている。おいはその屋敷に入られたのでは商売ができないからどうか一つ売ってくれと言うと、よろしい、あなたも代議士として私の住んでいる家を立ってくれと言われるからには十分な覚悟で来たのでしょう、それじゃ何にも言わないから二百万円もらおうじゃないか。大塚土地は今一坪一万円か一万五千円しかしない。それが、三十坪が三割減った二十何坪かの土地が二百万円です。とうとう頭を下げて百五十万円できめて、この間金を払いました。そうすると、その土地が一坪七万から八万円についている。それでも人の持っているものをこちらの都合によってやめてくれ、立ってくれということになれば、そういうものを払わなければならぬ。それをあそこの土地よりもう少しいいから坪二万円で売買しようじゃないか、こういうことでは済みません。向うが頼みに来て、反対に十万円の値打のする土地を買ってもらいたいとか金を貸してもらいだいとかいってきたときは、あなたのお考えのように、幾ら値打がしているからその値打でいいと言える。しかし、あなたの方の勝手な事業のためにそういうものを取り上げたときに、そんな考えであなたが土地買収されるなんということはとんでもない。公益局長も、あの土地幾らだからあの土地相場でいいじゃないか、こういう人はその事情を知らない。生まれてからげたの一足製造したこともなければ、あんまの笛一つ売ったこともない、学校出てから役人としてやってきて何にも知らない。こういう人たちがどんどんそういうことをやったならば、この人たちの過去にさかのぼってこういう人たちを処分しなければならぬ。だから、あなたは公益局長がこう言ったからああ言ったからでなく、もし土地買収をされるならそういう考えでやらなければいけない。またその土地ダムのために借りた土地だと言っても、土地を借りて金は払った、契約が済んだからこれが借地借家法によってやったような気になったら大へんだ。そういうものにそんな制限はない。部落民が上げてくれといったら上げてやらなければならぬ、部落民が買ってくれといったら買うことも必要だ、部落民がこうしてくれといったらそれもしなければいかぬ。そんなものは法律で縛ってないのですから、そういう点もあなたがよくお考えになってそして土地を買われる意思があるのか。いや、そんなことは考えない、時の相場で、そこらで売買去れた相場標準として買うというお考えなら、そういうお考えのように私の方も考えなければならない。それについて御答弁をお願いします。
  9. 山田昌作

    山田証人 ただいまのお話は主として土地価格に関するように伺いました。工事着手前におきまして、湛水する場所等についての価格につきましては十分双方協議いたしまして、そのときの事情に応じて、妥結した価格で買い取らせていただいてきたわけであります。今度の問題はその後に起った事態でありますので、私どもは適正なる価格——適正というのは、その場所そのときすべての問題が置かれておる状態下における適正という広い意味でありまして、いかなる値段がこの場合に処しての適正であるかは今後の問題であろうかと存じております。今お話のように丸太一本と植木ばちというような考えは持っておりません。御了承願います。
  10. 田中彰治

    田中(彰)委員 あなたの方で土地を借りた、それはなるほど協定で借りたとおっしゃるのですが、資本家が人を雇う場合でも、資本家が物を買う場合でも、契約をする場合でも、よくそれを考えないから問題が起る。私は、現在の日本争議なんかの問題でも、発端はあなたの今のような考えが原因をなしていると思う。これは事は違いますが、たとえば人を一つ採用してもらいたいといってあなたのところに来るときには、方々で採用してくれないから失業して困ってやってくる。そこであなたが、君を一つ幾らで採用する、私のところは一万五千円だといわれる。そうすると、うちの生活は三万円ないとできないのだが、今遊んでおっておかゆ一ぱいも吸えない、だから一万五千円でもいいから、あとは何とかなるからここでつないでもらわなければならぬということでそれを承諾した。   〔委員長退席吉田(賢)委員長代理着席〕 それで、資本家がそれを雇った場合に、君は私が一万五千円でいいかと言ったときに一万五千円で承諾したじゃないか、それをあとで何を文句言うのだといっても、その承諾は、ほんとうはそのときの立場によって、生活がそういう逆境にあったときにあなたのところへ頼んできた、従って承諾したからといって、心から承諾したものじゃない、それを資本家が、承諾したものなりとして労働者をその契約通りに使って、給料も上げてやらないで、家族のことも何も顧みないから、争議という問題が出てくる。あなたは土地をお買いになったと言うけれども、それは承諾して契約書を書いたでしょう。けれども百姓というものは土地を放すのはいやなんです。そこで放せといえば、やはり私が今申し上げたように、村の現在の相場より一割か二割高い程度だ。それなら貸してやれ、そんな相場土地を放すよりも貸しておればその土地が戻ってくるとか、自分所有権があるとかなんとかいうわけで、売るよりいいんじゃないかというので貸す。その貸すときも相場がその周囲の土地相場標準をとられているから、貸し料もその相場標準で貸さなければならない。貸すのだから安くてもよい。電気のことは公益のことであるから何とかしてくれるだろう、流しっこないだろうということで契約したのであるから、心から納得して契約したものでもない。また心から納得して契約したものであるといっても、あとで、借りた土地だ、不平があるならと、あなたの方でこれを返すぞと言って畑を返され、水田を返されても、返してもらった人がすぐにそれを畑として耕すことができればなんですが、一たんダムにしてしまったものは返してくれと言っても返されないものですから、売ったのか、取られたのか、永遠に貸してしまって権利がなくなったものかわからない。あんなところに住んで、今まであの村に何百年もししとして耐乏生活に耐えてきた純朴な百姓考えるのは無理ないと思う。従ってこれはあなたが承諾契約したのだからあれだよというような、一方的な、資本家的なお考えを持たれると、この契約そのものが問題になってくる。そうするとお貸ししたのだから、土地があんなに崩壊したのだから補償して下さい、そこへダムを作って下さい、こうして下さいああして下さいと言えば、あなたの方は幾ら金がかかってもそれをするかということなんです。やはりあなたの方は実業家として予算があるからできない、あなたの方としては借りるときにはそんな崩壊するとかなんとか思っていなかった、何もこんなことになるとは思わなかった、どうもそういうことになったのは地質上の見誤まりであったと言われるが、それはあなたの言われるのと、百姓があれは承諾で貸したのだけれども、あのときは売って安い値段で取られるよりも貸した方がいいと思って貸したのだというわけで、いつまでも水かけ論です。そこであなたの方で思い切って大きなダムを作られて安心だというようなことをされるのか、百姓土地を取られても、これだけいただければどこへ行っても生活できる、子孫教育もしていけるからその方がけっこうでございます、どうでもして下さいというようにしてやるのか、この二つの決意がなければきまらないと思うのですが、その点についてどう考えておりますか、その点を一つ伺いたい。
  11. 山田昌作

    山田証人 お答えいたします。ダムといっても結局護岸工事であろうと思いますが、護岸工事を施すにつきましては——これは先回話が出ましたので、私どもとしては護岸工事科学的調査に基いて、必要とあれば工事はしなければならぬというふうな考えでいろいろ調査の準備も進めて参ったのであります。しかしやはり土地買い受けによって解決する方が国家的に見ましても穏当の措置である、このように考えまして、適当な範囲は適当な値段——それは先刻も申しましたようにいろいろなことを含めまして、この価格を決定し、買い取らせていただく、そういう方針にいたしたい、ただし崩壊が非常に広範にわたるということであれば、ある程度の護岸もまたやむを得ないかもしれぬというような事態が出るかもしれませんが、今のところそのようには考えられませんので、やはり土地買い受けによる解決策が最も妥当である、このように考えておるような次第であります。大体今そういうふうに考えておりますから御了承願います。
  12. 田中彰治

    田中(彰)委員 山田証人にお尋ねいたしますが、あなたは三月五日参考人として当委員会おいでになったときに、約束された現地調査を自身でしてみたいというようなことをおっしゃいましたが、その後その調査をされましたか、御答弁願います。
  13. 山田昌作

    山田証人 その後現地に参りまして、私、親しく地方の専門家を帯同いたしましていろいろ意見を求めました。これに対しましてはその専門家から私に対して意見書が出ておりますけれども、それはごく私の調査であります。まずこれならば護岸には及ぶまい、地質学的にこういうわけだというような意見がありましたが、それはそれといたしまして、かりにその学者の言がそのままといたしましても、とにかく湛水後における事態発生で大なり小なり崩壊があるといたしますれば、それに関係なくやはり何か補償させていただきたい、こういうふうに考えております。
  14. 田中彰治

    田中(彰)委員 山田証人にお尋ねいたしますが、あなたの会社の費用で調査をさせたとおっしゃるのですが、その調査された方は何人くらいでどなたですか、今御記憶がありましたらお伺いいたします。
  15. 山田昌作

    山田証人 富山には富山大学というのがありまして、その地質学飯山教授並びにその助手の方に御依頼いたしまして、一緒に参りまして、いろいろ調べられることは調べた、またその資料となるべきものもその後教授の注文によりまして製作いたしまして、教授資料に提供いたしました。
  16. 田中彰治

    田中(彰)委員 この前このダムをお築きになるときには、やはり通産省からも調査されたのだろうし、あなたの会社側からも相当の調査をされてこのダムお作りになった。ところがそのダムお作りになってから非常に崩壊いたしまして、現在崩壊しておるのは三月二十六日の朝で、部落道路の一角が大崩壊した、一千立坪の土砂崩壊して、その土砂によって水田一千坪が埋没しておるという状態なんです。大丈夫だと思ってそこへダムを築かれたのが、今になってこんな大きな崩壊をしておるのですから、ただ大学教授が行って、目でもって一日や二日見ただけではわからぬと思う。そこであなたがこの前おいでになったときに調査するにはボーリングを入れてやらなければならないということをあなたも納得して行かれたのですが、ボーリングをお入れになりましたか、それをお伺いいたします。
  17. 山田昌作

    山田証人 ただいまその後の崩壊についての御発言があったのでありますけれども、もちろんダムを作る場合には、万一ダム建設後に崩壊がありますと、単なる地面の崩壊ではなくて、下流地帯に対して大被害を及ぼすことでありますので、ダム建設自体に対する地質調査は完全に行わるべきであり、また現実にやって、その点については何ら違算はないのであります。今問題になっておるのは、そのダムによって湛水されたる上流における非常に広範にわたる地域の両岸の問題であります。ダム建設当時予定いたしましたる地質の堅牢さには違算はないのであります。今お話道路の大崩壊というのは現実にありました。しかしそれは湛水とは全然無関係でありまして、ダム建設のために資材を運搬する道路を私どもの方で作ったのであります。土を盛り上げて鉄道線路に沿って道路を相当長く作りました。これはむしろ土というよりも砂に近い土質でありまして、その道路が決壊したのでありまして、天然自然の道路が決壊したのではないのであります。その崩壊のために下にありました田地が一部土砂で埋まるというようなことで、非常に御迷惑をかけたのでまことに恐縮しておりますけれども、これはいわゆるダム建設に伴う必要なる地質調査というものではなくて、その後の仮設いたしました道路の決壊であるのでありまするから、この点は一つ御了承をお願いいたしたいのでございます。大学教授地質調査はその点ではなくして今問題になっておりまする数カ所の崩壊、その地質の点でありますので、これは場所も離れてまするし、今の道路崩壊というものは湛水とは全然関係のない場所でありますので御了承願います。
  18. 田中彰治

    田中(彰)委員 今の一千坪の崩壊が、これはなるほどダムのところでないにいたしましても、ダムが作られたために、そういうものの土盛りをしたり何かしたところがこういう崩壊をしたとすれば、やはりあなたの方のこの工事が原因しておるのですから、あなたがやっぱりそれは違うのだというような考えを持たれることは、——あなたの方では何でもいいから理屈があるなら理屈でやり込めてやろう、法律で適用するなら法律一つのがれてやろう、何とか通るなら無理でも通してやろうということが、あなたの御答弁を聞いて私にはっきりわかる。大学教授ですが、その教授証人に呼びましょう。どんなえらい教授か知らないが、しかし崩壊しているところを見て、土砂を見て、ボーリングも入れないで、これは今言う通り防波堤を築く必要がないなんて、そういう安易なことを言う教授なら、あなたの会社の御用教授であって、そういうものは全く学者として恥ずべきことです。私も炭鉱をやっておりますし、銅山もたくさんやっておりますが、たとえばここに石炭があって露頭があって、隣りのうちでも露頭が出ておれば、つなぎ合せて間違いないのだといいましても、それが往々に間違えるから大きな事故を起すのであって、大きな失敗があるから、坑内で杭口を切るときにはちゃんとやっぱりボーリングを三つも四つも打って、そうしてやることが当然なんです。大学教授あたりもやっぱり見ることは見ても、これの正確なものはやはりボーリングをお打ちになった方がいいだろうというのが最後の結論なんです。だから今大学教授と助手が幾日くらいか知りませんが、ほとんど一日か二日なんでしょう。それも水がたまっておるところを見て、外に現われているところを見たので、水の中に入って見たわけではないでしょうし、これを表から見て、これはとにかく防波堤をする必要がないというような、そういう軽卒なことであなたが動かされており、そういうものをあなたが参考にして放置されるということなら、あなたはよく河川法なんかをずっとお調べになりなさい。これはあなたに申し上げるまでもなく御存じのことですが、こういうものをお調べになれば、あなたはそういうことを言えないはずです。またあなたがおっしゃるように、あなたが法律でやられるということになると、こちらでもこういうものを研究していけば、あなたがやっておられることが一つの法にもしこれが合致しておらなくても、大へんな——あなたの方でもやっぱりいろいろなそれに対する方法をとらなければならぬことになってくるのです。だからあなたの考え方を私はこれはお改めになった方がいいと思う。今の工事によって農民たちが貸した貸料も、彼らの土地を売ったり、売買しておるものも、全国のダムを築くときに立ちのきをくった農民から見るとあまりに違うのです。佐久間ダムあたりでもみんな何百万の金をもらって出ておる。こういう人たちはどういうことをやっておるか、しかもこれは普通と違います。あすこの人たちは山林や何かを売っておるが、ここはわずか十町歩かそこらしかない土地なんです。その中の半分もあなたの方にやられてしまって、今ではどうすることもできない。私も小さな農場を持っておりますが、私の農場でも都内にやはり三万坪ある。この百姓水田の面積というものは私の農場くらいの面積しかない。二万六千坪くらいしかないのです。こういうものが今度は半分も少くなってしまって、それでやっておるのですから、この点についてあなたの方がもっと事業家として同情的な、もっといろいろ他の方面も研究された方法でいかれないと、これは将来非常な大きな問題を起すことになると思う。大体あなたの方はボーリングを入れるという約束を、どうしてお入れにならないのですか。それを一つ忌憚のないところをお聞かせ願いたいのです。
  19. 山田昌作

    山田証人 道路崩壊問題につきまして、簡単に考えているようにおくみとりになったかもしれませんが、これは別個の問題としまして、十分修復いたしまして実害なからしめるように復旧するという方針で、今やっておるようなわけでありますから、この問題はさようにして御了承を願いたいのであります。  ボーリングをやることにつきましては、先回は立ち会いボーリングをやるということがありまして、やはりやる以上は立ち会いにいたしたい。またボーリングをやりましても、やはり専門家のそれだけの力を持った人がやらなければ効果はありませんし、そういう態勢につきまして、私どもはさっそく県当局その他その道の専門家一つの組織を作っていただきまして、やる準備をいたしておったわけなのであります。決して等閑に付しておるわけではないのでありますが、何と申しますか、地元との話し合いと申しますか、まだそういう機運になりませんのでおくれておるわけであります。私どもはむしろ進めたい気分ではおりますが、なるべくそういうことでなしに、土地を譲り受けるという形で進んだ方がいいということで、多少遅延いたしておることを御了承願いたいと思います。
  20. 田中彰治

    田中(彰)委員 それはあなたの御答 弁を聞くと、まんざら知らぬ存ぜぬではないのですが、何回申し上げても同じことですが、こうやって三百年も住んでいた村の水田というものは、二万五、六千坪しかない。そのうち半分つぶされてしまって、一万二、三千坪しかない。こういう状態になり、またそれがだんだんと崩壊して、とにかく不安が生じてきた、そして持っているわすかな山林だとか畑のようなものは貸して、契約書をとられて上まっているからあとでにっちもさっちもならぬような状態だ。こういうようなことになって農民が苦しんでおる。一方あなたの方は公益事業として、金が足りなければ政府からも金を融資してもらえる。それからまた今言う通り電気なんかで欠損があれば、電気の値上げ等も政府に求めてしてもらえるというふうに、幾ら公益性を持つので政府に補助してもらっている事業です。それで他の方ではみな相当なことをしている。小河内の村なんかも一番いい例なんです。昨日か一昨日の問題ですが、百五十万もらっても元に戻してもらいたいといっている。われわれにしたら何だガスの方がかえってたき木よりも便利じゃないかというが、この人たちにすると裏にいってたき木を拾った方が、毎月ガス代払うよりもいい。売春宿などをしているが、幾らもうけておるか、最高のもので二万五、六千しかとっておりません。二万五、六千とっても、彼らはその収入だけなんです。税務署からやはりこれは調査されて、貸しておればまたこれから税金をとられるとすると、一万四、五千くらいしかとれないのだ。農民というものは相当な財産を持ち、そうして一生懸命になって、とにかくまずいものを食って朝暗いうちから夜の暗いなかまで、労働基準法なんか除外して働いても、彼らの得る利益というものはほんとうにわずかなんです。それで満足しているのです。こういう階級がわが国のあらゆる山間にあって不平を言わないで働いてくれておるから、われわれも三度三度の米にも困らなければ野菜ものにも困らない。一方漁師もその通りですから魚にも困らないということなんです。この階級を事業家がよく理解して、この階級の痛いところ、米びつの中、生活状態をよく察知されて、そうしてこの土地の解決をおつけにならぬということになると——これはあなたが証人に見えて、あなたの方のこういうものが出て、何とかしたいということがあるから、これ以上お責めいたしませんが、あなたの方が平気なことでお通しになりますと、これが一つの点火点となって、ダムとかそういうものをやるときは今度は土地を売らない、動かない、それに対して政府が土地の収用令なんかで持っていけば、今度は団結して立ち上る。そういうときには社会党のみでなく、やはり保守党の中からも実業家の横暴をどなってそれに協力してやるということになれば、あなた方がそうやって回転いすにおすわりになって、会社に出て社長としての位置が保っていけなくなります。そしてこういうものは国家管理の事業になったり、国営になったりするようなことになってくる、私たちはそういうことを希望しません。やはり民間の私有財産は私有財産であなた方が持たれて、おもうけになった中から税金を払っていくことが、われわれの主義としては一番いい。そういうことをやるためには解決をされるときに、ただ契約を結んだからこうだというわけにいきません。家賃とか土地代は古い統制時代に立てたもので、上げることはできないようになっているんだけれども、入っている人に地主が、六畳間がこれでは安いから——こんなに安い、坪一円から二円ばかり、東京のまん中ではできない、何とかしてくれ、それは認めましょう、いやごもっともです、よそでは六畳間一つで三千五百円というのは安い方、高いところでは四千円もしているんだから、六畳間二つ借りているところで五百円や七百円の家賃のものを二、三千円とってもらってもけっこうですというように、お互いが妥協しながらそういうものに盛り上げていくようなこの借家住まいでおる人たち、そして昔の統制時代のわずか五軒か十軒しか借家を持たない人たちにも、そういう美談が広がっている。それを今の公益局長みたいに、あそこの土地幾らしかしなかったから買ってしまいなさい、こういうわけにいきませんよ。こういうものはこの人の罪ではありません、わが国の戦争中にこういう人たちがほんとうに国家のすべての物資を握ってやってきたから、やがて負けてしまった。社会党の左派が天下を取ったり、共産党が天下を取れば、みんな針金に首をくくって銀座あたりの電信柱にくくりつけて、これは元何々課長、こういう罪でこれを罰する、そういう罪になる人たちなんです。幸いに天下を取ったわれわれ保守党なんていうのは人間がほんとうにいいですし、温厚なものだから、こういう人たちを戦争中にも大事にして、古ぼけたものを使っておられる。そういうことをあなた方はお考えにならぬならいかぬ。そういう民間なんかの借家を五軒か六軒持った、土地の百坪、二百坪持っておる者にさえも、そういう美談が第三者との間にある。しかるにこういう土地をあなたの方が、別に借地法にも何にもかなった土地ではない、百姓がもう貸さないと言えば、それを訴訟法上の問題にする。約束が違う、貸すんじゃなかった、土地は貸してあるけれどもこんなにくずれるはずじゃなかった、その土地にこんなにまで水が張るはずじゃなかった、大水が出たってこんな被害を受けるはずじゃなかった、それは約束が違うから土地を返してくれということになったらどうするんですか。これはやはり訴訟法の一つの問題として提起される。だからそういう問題をお起しにならぬように、あなたが善処されるということならば私は質問をやめます。しかしあなたがあくまで法律でいく、あくまで土地値段で、あるいは契約書によっていくというふうにおっしゃるならば、私たちもほんとうにもう少し大きな力を動員して、そして、政党政派というものを超越してこれは戦わなければならぬ。しかしそこまでやるべき問題ではないと思う。あなた方が善処されるという誠意と農民に対する御同情、それからまた法的に考えられても土地を返してくれ、あれまで水が来るんじゃなかった、あれまでくずれるんじゃなかった、あれまで被害をこうむるんじゃなかった、約束が違うから土地を返還しろということで訴訟すれば、判事だってどんな判決を言い渡すかしれない。土地をどんなにくずしてもいい、何してもいい、どこへ被害がいってもいいという契約書ではない。そんな一方的なものであれば、刑事問題で長いこと拘留して自白させたのが証言にならぬと同じで、それはむしろ一方的な契約書で、契約書がかえってそれによって破れるのだから、あなたの方では相当これに対して考慮されることがあると思う。また被害をこうむるところが出てくると思う。だからどうかそういうことのないようにあなたから善処していただけるという御返答を伺えば、私は質問をやめていい。しかしあなたがそうじゃないとおっしゃれば、また法律的な問題を出して私は当然ここで戦わなければならぬ、あなたの一つ忌憚のない御意見をお伺いいたします。
  21. 山田昌作

    山田証人 いろいろ御意見を承わりましたが、今御発言のお言葉に含むであろういろいろな点を深く考慮いたしまして、私は決して法律一点張り、契約一点張りを主張するつもりでないことは誓って申し上げておきます。ことに電気会社の使命といたしまして地方産業の興隆ということを深く念頭に置いておりまして、農村の荒廃その他につきましてはいろいろの施設、特に富山県におきましては工場誘致というような問題に対して、失業者をなからしむることに従来数十年にわたって努力いたしてきたつもりであります。この片掛地帯は大正初期におきまして発電所を建設いたしました。当時私どもも現場に参りまして、非常になじみ深い因縁のあるところであります。今回の工事も実は地方の要望にこたえ、かつまた地方のためによかれかしと思って、ダム地点をあのところに一応変更したのでございます。ところがその気持が逆にこのような事態を引き起しましたことは、私自身として非常に残念に思っております。しかしそういうような気持があるに拘らず、こういう事態を起しましたことは非常に遺憾であります。何とかいたしまして村の方々の喜んでいただくようなことに解決できれば非常にいいのでありまして、ただいま善処するというお言葉でありましたが、もちろん善処するのでありますが、真に村も喜び、会社も成り立つという共存共栄であり、しかも国家資金を使わせていただいておる電気会社としての立場も相成り立つという点におきまして最善の努力はいたしたい、このように存じております。どうぞ一つお含み下さい。
  22. 田中彰治

    田中(彰)委員 もう一点。なるほどあなたの御誠意ある御答弁を伺って私もなにしたのですが、ただここに私は一言釈迦に説法のようなことになるが申し上げておくのでありますが、あなたの方の力と部落民の現在の力とは、これは全く馬と子供の力ぐらいに違う大きな力の相違がある。そこであなたが善処される場合、百姓人たちも村全体の人たちも満足するように、私らの方もいいようにという善処は、私はこの今問題になったようなものは、そういうお考えでは満足した善処はできないと思う。私がこんなことをあなたに申し上げなくてもおわかりでしょうが、われわれの間でも、人が一つ命を助けてと言うてくれば、その人を救うためには自分の命を投げ出さなければ、その人は救われません。国会の代議士の間でおれの名誉を救ってくれないかと言ったら、私が引き受けた場合は、私の名誉をなげうたなければその人の名誉は救われません。一つ物質的に助けてくれと泣き込んだときには、自分の物質というものは投げ出して、目分が裸になってその人を物質的に救うという考え方を持たなければ、これは救えないと思う。こういう問題になったことを解決されるのに、村の方もいいように、力のある会社の方もいいようにということであなたがされれは、村に対することが三分、あなたの力に対することはもう七分になります。これはまま母が自分の腹を痛めて産んだ子供とまま子と二つ並べて、必ず公平に育てますと言っても、自分の子供が六でまま子が四であるということは、昔からの歴史がよく示すところである、事実が示すところであります。会社が少しくらい損をしても、少しくらい迷惑しても、この問題だけは解決してやる、こういうような社長の大きな腹、こういう犠牲心というようなものをお持ちになって、この解決にお当りにならなければうまくいかないと思う。どうかそういう工合に解決いただくように私からお願いいたしまして、私の証人に対する質問を打ち切ります。
  23. 吉田賢一

    吉田(賢)委員長代理 松岡松平君。
  24. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 山田証人にお尋ね申し上げますが、今ほど田中委員から詳しく本件に対する証人の解決方針についてお尋ねがありましたので、私はそれを補足する意味で一、二点お伺いしたいと思う。  この崩壊並びに陥没の部分の関係土地を買い取りたい、そして自分の所有に帰した上で適切な方途を講じたいということを申されたのであります。そしてその買い取りの価格については適正な価格である、適正な価格というものは、田中委員からもお尋ねになったように、単なる農地とか山林の普通の売買価格を意味するのではなくて、崩壊とか陥没からよって生じた不安並びに危険、そういうものを除く意味を含んだものである、加味したものであるという証人のお言葉がありましたが、まさしく証人のお考えはそれに相違ないのであるかどうか、さらに私は確認を得たいのであります。単にそれは一種の修辞であって、内実は普通一般に行われている、その地帯の農地とか山林とかというものにやや色をつけた程度のものであるとするならば、この場合の適正という言葉は私は当らないのじゃないか、この場合の適正というのは、世に行われる農地、山林の売買の適正をさすのではなくて、この問題の該心を除去するという意味を含んだものであるということに了解してよろしいか、その点を一ついま一応解明していただきたいと存じます。
  25. 山田昌作

    山田証人 非常に微妙な表現でありますので、正確なお答えが非常にむずかしいのでありますが、私どもは先刻田中委員の御発言のように契約一辺倒という意思は毛頭ありません。けれどもいわゆるいろいろの不安を解消するに足る適正価格ということになりますと、非常にこれまたやっかいな言葉でありましで、その不安の程度、範囲、いろいろ入ってきます。でありますから、今後適正価格をいずれに求めるかにつきましてはよほど御相談申し上げまして、私ども一方的にきめるとかという考えはみじんもないのでありまして、十分納得できる適正価格を求めるように努力しなければならぬと考えております。   〔吉田(賢)委員長代理退席、委員長着席〕 その価格がとっぴなものになりまして、それによっていわゆる不安を解消するに足るものであるということになりますと、これはちょっとどの程度であるか、その私どもの受け取り方が非常に違うのでありますから、今後適正価格を求める、この場合における適正価格は何であるかを求めるためにはいろいろ御相談申し上げ、また教えを請いたいと思っています。
  26. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 証人のお言葉の中に含まれている御意思のほどもうかがうことはできますが、私どもはあの付近にも現に建っているような——対岸にりっぱなうちができております。箱根とか熱海とかに見られるようなりっぱな別荘のような家ができております。これもこの発電の計画から生まれてきた一つの現象で、私は片掛部落の人々にその家をさして、委員長もごらんになったが、ああいうものを求めていることならば私は協力をしない、ああいうものを現出したいという希望を持って、こういう問題についてあなた方が委員会に助けを請われるならわれわれは協力をしない、この点は私は重ねて証人に申し上げておきたい。しかしながら今この片掛部落は、現状のままでは証人会社に最大限の解決策を講じていただいても、少くとも二十家族くらいは他に移住しなければならぬ状態であります。それは結局農耕地の不足からくることである。もともと不足なところへもってきて、この水没になったために耕地が減少しております。ために全体から見て二十家族くらいは移住しなければならぬ。このためにこの部落の人たちが現在切望していることは、今懸案になっておる鉄道誘致の問題であります。神岡鉱山の現在の私設軌条が国鉄化されていくということが今懸案になっておりますし、これは実現する状態に進んでいると思うのであります。そこでどこへその発着点を求めるかということになりますと、地元ではこの片掛へ接着駅を設けてもらいたいという要求がしきりに起っておるのであります。これに対して部落は、もしそういうようなことになりますれば、三百年来も住んできたこの部落のうちの二十家族がその地にとどまって永久に繁栄し得るという可能性がここに生まれてきておるそうであります。こういうことに対して証人は気の毒な部落の共同体の行く末に対するあたたかいお心持をどの程度に持っておられるか、この点についての御意見を承わりたいと思います。
  27. 山田昌作

    山田証人 お答えいたします。鉄道の一つの駅があそこにできるかどうかという問題につきまして、これはお役所におきましてどんな計画になっておるかは全く存じませんし、またそれが技術的に可能かどうかも実は何にもわかりません。けれどもそれが可能であり、実現するとなれば、会社側といたしましても非常に都合がよくなる。会社と地元と全く利害関係が一致しておる点でありまして、これは当然この問題と切り離しましてもわれわれは御協力申し上げたい。できればわれわれはその実現を期待しておるのであります。でありますから、ただいまの御発言に対しましては、もちろんできるだけの御協力はいたしたい所存であります。
  28. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 今、鉄道の接着駅の誘致に対しては証人側の会社おいてもできるだけの協力を惜しまないと、まことによろしいお言葉をちょうだいいたしまして、私も喜んでおります。要は鉄道の接着駅がここに誘致せられることによって部落民が平和な生活を続けていけると同時に、その地域のまた繁栄にもなることであります。  次に、今まで住民の人たちは苦しいふところの中から相当犠牲を払ってこの問題のためにあるいは集会を催し、あるいは上京する、あるいは庁舎におもむくなど、相当の経費を費しておると思うのであります。これに対して会社におかれましても何らかの方法によってこの気の毒な人たちの犠牲を幾らか償ってやるというお考えはございましょうかどうか、この点を承わりたいと思います。ちょっとお答え願う前に、石橋通産大臣がお見えになっておりますから、大臣に一言お伺いいたします。  本件につきましては大臣も概略のことは御存じなのかどうか私はまだ存じませんが、実はこれは北陸電力株式会社の神通第一発電所のダム建設に伴って、護岸の不十分から起ってきた崩壊と陥没の問題に関連するケースであります。これにつきましてただいま出ておられるのは会社の社長でありまして、三月の上旬に参考人にお出で願ってこの問題をただし、さらに証人の見解を伺いまして、その後調査並びに折衝が続けられて今日に至ったのであります。今日証人から伺いますと、関係土地をぜひ買い取って自分の方で適切なる方法を講じたい、あわせて部落の繁栄のために神岡鉄道の国有化について一も協力を惜しまない、さらに今まで住民が費してきた犠牲に対しても何とかするというようなことを伝えられておるのであります。まだその点はお答えを承わりませんが……。これに対する大臣の御所見がございましたら承わりたいと思います。
  29. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 電源開発についてはそういう問題が往々にして起るのでありますが、これは山田社長からそういうふうな答えがあったそうでございまして、一つできるだけ話し合いをつけて、関係者に満足を与えるようにしてもらいたい、通産省といたしましても、できるだけそういうことには助力をしたい、かように思います。
  30. 田中彰治

    田中(彰)委員 これは大臣に申し上げておきますが、なるほど今松岡委員が言われたように、鉄道も敷くように努力する、土地は適正な価格で買い取る、こういう話がもう二年も三年も前から両者の間に行われつつ、問題が暗礁に乗り上げたのはなぜかと申しますと、この部落は三十何戸で水田というものはわずか二万五千坪しかないのに、半分もダムを作るためにつぶされてしまった。わずかばかりの畑とか山林のようなものもダムのために永久に貸した。その貸す時分にも、会社は永久に借りる契約を結んだのだから借り料さえ払えばよいだろうというのです。大臣など民間におられてそういうことをよく御存じだろうと思いますが、電力は公益的なものだから、部落に協力してくれといえば協力する。わずかばかりの土地を売らないか、売るとすれば幾らかというと、今まで部落民が売買したものより一割くらいの高い値で売れというのです。けれどもそんなことで土地を売れるものでない。金に困ってどこかへ行くなら売れるけれども、わずか二万五千坪しか持っておらぬ土地ですから売れない。そこで、そんな安いことではどうにもしようがないと言うと、それなら貸さないか、もし貸さないならば土地収用にかけるという。そんなことをされては困る、売るよりも貸しておけば自分所有権があるし、困るときは取れるくらいの簡単な考えで貸した。その貸した値段はやはり売買値段を基準にしたのだから実に安いのです。貸してしまったら、今度はその土地へ水をためられてしまうから、返してくれと言っても永遠に返さない。売ったと同じことである。これは電力会社ばかりの罪ではないと思うが、山は木を切ったりするから、雨が降ったとき水が出て残った土地崩壊していく。それでは困るからそこに一つ防波堤を作ってそういうことのないようにしてくれと言うと、そんなことは金がかかってとてもできない、土地を買おうじゃないか、売ってもよいが、買うとするならばどのくらいかというと、近所と同じくらいの値段で買うという。一般のダム土地貸し料はどんなものかというと、大臣も御承知の通り、二日か三日前新聞に出ておりましたが、小河内では百五十万からの金をもらって売ったが、売ったところで百姓は転業もできないので、家を建ってパン助なんかに貸しておった。ところが、今度はそれが売春防止法にひっかかるからそれもできない。今まで幾らもうけておったかというと、一番もうかったものでも月二万五、六千円である。それから税金とか何かを取られて、百姓なんかもうけているものはわずかばかりである。それで彼らはこういうことを言っている。東京都が水道を作るためになるほど百五十万もらったけれども、私らはそんな百五十万なんか返してもよい、もとのところへ帰してもらいたい。それはなぜかというと、たきものがなくなれば山へ行って取れるし、種をまけば野菜もできる、その方がよほど生活が楽だ、百五十万もらって都の水道局のあっせんで、とにかく大蔵省土地を一坪五百円くらいで分けてもらってそれだけの恩恵を受けても、もとのところに帰してもらった方がよい、と百姓なんかの転業したものがいかに哀れであるかということをを申している。これは二十四日の朝日新聞です。大体三百人からそこにおった人の土地を安く借りて、貸せば水をためようがいいじゃないか、と統制時代百姓から土地を借りたような考えでやられる。そこにおる局長は、この間それは高いとかなんとか言っていたが、大臣も御存じの通り、この人たちがこうやっておられることが不思議である。戦争中材木なんか統制したときに彼らはどうですか。杉の丸太何々の駅渡しで、五里もあるところから持ってくるものも、駅のそばから切るのも、一里くらいのところのものも全部まとめて五厘と言っていばって取った人たちです。そういうのだからやはりこの土地を高いとか安いとか言っているが、そんなことで解決してもだめである。こちらが鉄道に対して協力すると言っても、口では協力することもできます。金を出して協力することもできます。会社が総動員して協力するということも、社会党の委員長は人のよい方だから信用するが、こんなものはわれわれが見ればおかしくてしようがない。知らない人から、田中さん、まことに済まないが三井銀行から金を借りたいが協力して下さい、できる限り協力しましょうと言うのは何でもないのです。金を貸してくれと言われて、三井銀行へ電話をかけただけで協力したというのと同じで、善処すると言われますけれども、これはよほど電気会社に覚悟してやってもらわないと、ほかのダムなんかみんな何百万もらっているのだからだめなんです。さっきも局長に言った。大塚のすぐそばに私のおいっこが小さい商売をしている。その買おうとした土地区画整理がきた。三十坪の土地へ入ってくる。入られては困るから何とか解決つけてくれないかとそこの家で言うのです。あなたも国会議員として私の住んでいるところをどいてくれというからには、御覚悟があるでしょう、覚悟してきたか。一体幾らか。二百万下さい。区画整理で三十坪の土地が三割取られて、二十一坪の土地が二百万だと、坪十万円になってしまう。君、それはあんまり高いと言っても、君の所有権のあるところをどいてくれというのだが、あなたは高いのを覚悟して来ないのか。とうとう手を合わせて百六十万できめて、それで十万中に入った人にとられたから百七十万です。その周囲の土地はみな高いところで一万五千円ですが、人のものをどいてくれ、貸してくれということになると、そういうことなんです。局長あたりもそういう点をよく考えてもらいたい。わからなければ社会のあれを教えてあげます。あなたは役人としてはりっぱな方か知らないが、いずれげた一足作って売ったこともない、あんまの笹一つ作って売ったこともない。ただ机の上にかじりついておるから世の中のことがわからない。こういうわからぬ人がどこの土地も同じような相場ということで大臣にやられるのだから、ただ社長にまかせたからよいというような、そんなことでいいものではない。だからこれはあなたの方から局長を呼んでいただいて、よほど——わからないことは私が連れていって教えてあげます。こういう人は実地を教えてやらなければならぬ。教えてこちらと話してもらわないといかぬ。松岡松平君は人がいいんでしょう。これを見て喜んでおるが、鉄道を敷くのに協力します、土地を買います、買うのはきまっておるが、百姓が言うだけの値段で買えるかということなんです。百姓が無理言ったらどうする。これは全国の例があるが、今の東京都のダムなんかいい例なんです。大がいのダムで、あるいは電力会社で立ちのきさせたもので、百万以下の金で出ておる人は一人もありません。一人前こんな金をとったかどうか、十万もとっておらぬと思う、あなたの会社であの富山県の奥にいって、山の土地が一坪二円で、それを倍の四円で買ったからよいのだ、そんな会社の善処ではいけない。だからそこを一つ、大臣は民間から出られて、そういうことはよくおわかり一のはずです。役人というものは政治家をごまかすことを研究しておる、ごまかしますから、わからぬときは私に言って下さい。私が言って教えてあげます。そういう人たちが寄ってやることなんだから、一つ大臣からよほどにらんでおって善処してもらうようにしないと、ただあなたからうまくやってくれというくらいではそれはとんでもないことになってしまう。そこを一つ大臣からよく含んでおいて善処してもらいたい。
  31. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 田中君の御意見は十分承わっておきますが、これは根本問題として、水道とか電気とかいう公益事業と、それに関係する水没地域の人たちの利益、これはいつでもお話しの通り利害が衝突するのです。それでは水がなくてよろしいか、電気がなくてよろしいかというとそうでもない。住民の御要求通り補償を払えば自然原価は高くなる、それでも困る、そこでそうかといってその水没地域の人たちあと生活が困るようなことをするということも、これもむろん困りますから、補償については十分話し合いをして、そのあと生活が立つようにしていくというところから、政府としてもただ安くすればいいというような考えを持っておるのじゃありません。多くの場合は水没地域の人たちの利益をはかる方に進んでおりまして、その結果電気も高くなるという御非難も現在受けておりまして、そういう点はむろん御意見は十分承わって善処するようにしたいと思います。こういうわけであります。
  32. 上林與市郎

    上林委員長 証人に対する質問者の了解を得ておりますから、石橋通産大臣に対する質問をお願いいたします。吉田賢一君。  なお大臣の時間の都合がありますから、その点考慮して質問して下さい。
  33. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 ただいま問題になっております詳細は事務当局からお聞き願うこととして、私は希望的な御質問を申し上げるのでありますが、電源開発と、これによって受ける住民あるいはその土地、建物の所有者の被害、これに伴う損害補償等の問題の解決は、今後電源開発事業を進める上におきまして重要な問題であることは、これは申し上げるまでもないと思います。従ってこれに対する各般の御方針もあることと存じまするが、実はここの委員会でも取り上げまして、今問題になっておる片掛部落の件につきましても、現地調査までしたのであります。そういうことでやっておりますので、やはり積極的に問題がどこにあるか、どう解決すればよいのかということにつきましても、政府は格段の御注意になって、そして何か解決の示唆があればいいのじゃないか、こういうことすら考えるのであります。これはやはり全国的な問題であろうと思いますので、あちらでは非常に納得ができない状態で解決し、こちらでは一方が満足して、他方が不満足であるというような、全国まちまちになるということも、これもまた考えなければいけませんし、というてこの場合のように、力に非常に相違があって、百姓が困ってしまっておるということも、これも困った問題であろうかと思いますので、一つ実情に即しまして適切な解決案かできますように御配慮を特にお願いしたいと思いますので、善処なさると存じますけれども、格段の御配慮あらんことを御希望申し上げておきたいと思います。  それからこの機会に大臣に伺いたいのでありますが、先般来いろいろ問題になっております例の御母衣と佐久間ダムの問題であります。御母衣につきましても地元の人々からいろいろ申してきておりますのですが、きょうは時間がありませんので、これは割愛しておきます。佐久間ダムの問題について聞きたいのでありますが、これは少し角度が違いますので、関連してあなたに伺っておかなければならぬと思うのであります。  先般来新聞紙上などでずいぶんと問題にしておりますのですが、それは工費の値増しの問題に関連しております。これはやはり今後の開発全体の上に影響してきますので、私どもそういう意味におきまして非常に重視しております。大臣は電源開発会社を監督なさる大臣でおありになるので伺いたいのです。この佐久間ダム工事の、特に間組関係の工費の値増しの問題につきまして、今年の一、二月ごろに小坂総裁と会見なさったことはございませんでしょうか。
  34. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 そのために小坂君と会ったことはございませんが、そういう機会に小坂君からある程度報告を受けております。
  35. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 大体それはどういうような趣旨の報告でございましたか。
  36. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 あれは新聞にも出ておったかと思いますが、最初佐久間ダムを作るスタートをしたときに、急いだために中部電力が非常に荒っぽく作っておりました予算を基礎にして、——これは今の小坂君ではなくて、高碕長官が総裁をしておったときでありますが、それで始めました。しかし実際はその後工事の方法を変えましたので、そこでどうしても工費がふえることになった。しかしそれはこれこれの理由であるというような詳細な報告を受けました。それから今までの習慣によって工事が進みますと、ある程度の謝礼金みたいなものを出すような習慣が一般にはあるそうでありますが、これは電源開発株式会社としては、ああいう性格の会社であるから困る、そういうのは自分としては出しがたいと思っておる、こういう意味の報告でございました。
  37. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私どもが知っておる範囲では、工事——工事ですが、本工事は四十二億円とか、新聞にも四十億とか書いてあるようでありますが、それが何でも九十二億円あまり増額を要求された、これがもし適正な増額であれば、これは当然受けるべきである、また適正でなければ受けるべからざるものである、こういうふうにも実は考えるのでありますが、そういうような数字がやはりほんとうなのでありますか。
  38. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 そういう具体的な数字は事務当局から申し上げますが、それは増額されたことは事実であります。しかしこれは実際に工事がそれだけかかったという、はっきりした根拠があって増額したのであります。根拠のないものは増額してない、かように考えます。
  39. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 ところでまた工事は完成しておらぬようにも思います。私もほかの用であの辺を視察いたしましたが、まだ九割ほどしか完成してないのではないかと実は思っております。未完成であるから、未完成の状態で請負金を払うということは、これは契約によって当然であろうと思います。そこで一たん九十二億円の値増しが、さらにまた次に八十六億円になったり、あるいは七十九億円になったりというふうに、だんだん下ってくるという、そういうような数字のあやもやはりあったのが、ほんとうなのでございましょうか。
  40. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 一たん大きくなって、それが減ったという事実は聞いておりません。
  41. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そうしますと、それは数字は公益事業局長が御承知だと思いますから、それはその方に伺います。  そこで、こういうことがなければけっこうなのでございますけれども、あなたの方では事業監督の主管庁であるから、通産大臣は申すまでもなく、電源開発に対して監督の権限をお持ちになっておられます。そこでこの一、二月ごろにほかの用でお会いになりましたときに、小坂総裁に対して辞職を強要——強要という言葉は悪いけれども、辞職を要求なさったというようなことが新聞では伝わっておりますが、これはそういうようなことがあるのでございましょうか。
  42. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 何をだれにですか。もうちょっとはっきり言って下さい。
  43. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 ほかの用でお会いになって、談たまたま電源開発の佐久間ダムの問題に及んだときに、小坂総裁に対してあなたはやめてはどうかという、そういう趣旨の辞職を要求なさるような御発言があったか、そういう問答があったのか、こういうことであります。
  44. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 いや、辞職を要求したというようなことはございません。
  45. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それならば、そういう辞職を求めないまでも、やめることが穏当であるとかいうような、それに類するような問答が、辞職に関してお互いにあったのでございましょうか。小坂総裁からでも、あなたの方からでもどちらからでも、辞職という問題が出ましたでしょうか。それはいかがでございますか。
  46. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 それは詳細は忘れましたが、当時いろいろ世間にうわさがありました。でありますから、そのうわさについては話し合いが出ましたけれども、これは私の方としては、人事の問題でさような任期中にだれにやめてくれというようなことは言うつもりはないし、そういう意味のことは申しておきました。
  47. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そうしますと、そのうわさというのは、小坂総裁の方ではどういうふうにそのうわさを印象してあなたに申したのでございしょうか。
  48. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 これは小坂君はまあいろいろそういうような話もあるので、自分としては総裁にどこまでもかじりついていようという意思は毛頭ない、しかしながら、いろいろと佐久間ダム工事関係、あるいは工事費の関係もありますから、その責任だけは果していきたいというようなことを言っておられたかと思います。
  49. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それであなたとしましては、一応やめてほしいというような意思表示、そういうような意向はお述べになったのでございますか。
  50. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 いや、それは一向述べておりません。
  51. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そうすると世間のそのうわさは、あなたとしては否定して、そうしてまた大いにやってくれというような、そういう趣旨になったのでございますか。
  52. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 その問題は、私の方から申したのではなく、小坂総裁の方からいろいろ事情を報告といいますか、話をしておりましたから、それを私は承わっておいたのでございます。特に小坂君にやめてくれとか、やめるな、いつまでもやれとかいうような積極的な発言はしておりません。
  53. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 この電源開発会社ができました経緯にかんがみましても、この会社、そしてその総裁は、日本の電力会社電源開発会社の中心的な大きな存在であろうと思うのです。そこで、かりにも小坂総票やめるという問題を、主管大臣であり、監督大臣であるあなたに、非公式にしろ、うわさをもって話すということは、まず普通でないと私は見るのです。これらがそこらの事務官とか課長とか、あるいは部長というなら別であります。やはり日本全体の発電会社を背負って立っておるところの総裁とあなたとの間に、非公式にしろ、辞職問題を中心にして話を交換するということは、相当重要な根拠がなければ出ないものと思います。そこで私はやはりそのときはもっと突っ込んだ話があなたとあったのじゃないだろうか、実はこう思うのであります。これはあなたといたしましては、自分から進んでお言いになったのではないというようなお話でございますが、やはりあなたに向っての辞職に関する話であったとしても、どうもそんなことを言わなくてもいいというようなことをわれわれは考えるのです。それならばうわさならうわさでほうっておいたらいいじゃないか、そんな意思がないならば、あなたも別に言い出したのでなければ、それを言葉に出す必要もないじゃないか、こうすら考えるのであります。やはり相当うわさには神経も使って、小坂総裁はやめることについて心を使って、あなたに対する発言になったのではないか、こう思います。これは電源開発事業が非常に重要であることにかんがみ、また申すまでもなく、これは大半以上が国の出資による会社でもあり、またその事業が国利民福、産業等に関する重要な事業であるし、その中心人物であるし、その進退問題である、こう突き詰めて参りますと、一挙一動ともかく日本に相当一重要な影響を与えるべき言動である、こう考えますので、いやしくも主管大臣のあなたと話があるというのは、何か小坂総裁は相当心を使ってそれをなさったのではないか、こう思いますので、この点はやはり相当明快にしていただくことが非常にいいと思いますので、伺って、おるのであります。
  54. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 先ほど申しましたように、特にそういうことについて話し合いをしたわけではございません。ただ当時小坂君の私に申しておられたのは、今の佐久間ダム工事費が増額したそれよりも前に、たしか私の方から佐久間ダム工事費が逐次増額することについて、電源開発会社に注意を促したことがある。そういうようなことから、それと当時またいろいろ新聞等でうわさされておったこともからんでおりましょう、工事費が何ゆえに増額したか、それから現在どういうような問題があるかというようなことについて、一応の報告を私が受けた、こういうことであります。
  55. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 これはあなたと小坂総裁との間の話ですから、第三者がうかがい知り得ないことであります。いろいろと取りざたする者は、あなたとしては一応小坂総裁にやめてほしい、しかしそれは強い態度ではなかったけれども、小坂総裁としては開き直って、一体やめる理由は何だ、いや別にそう強い意味ではないのだというようなことで、そのままになってしまっておるといううわさが飛んでおるのであります。そういったうわさはあったのでございますか。
  56. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 そういうことはございません。小坂君が開き直って云々というような話は全然ございません。
  57. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私はこういうことを聞きますのは、一つは、たとえば先月二十九日付の朝日新聞によりましても、あるいは今月二十三日の読売新聞によりましても、佐久間ダム請負工事費値上げ折衝問題というものは、相当重要な関心をどうも新聞社は持っておるらしい。そこで値上げの交渉があったことを経過的に記載事実等について見ますと、これは去年の三月ごろかららしい。また現地方面のいろいろな関係者について、別の機会こ私も聞いたことでありましたけれども、やはりこの工事の方式が当時の手掘りというのですか、非常に旧式なものは機械化に一変いたしまして、いろいろと設計変更と申しますか、そういうこともあったので、従って契約金額に変更を生ずる、そういう原因もあったというような客観的な事実があって、そこで去年の三月ごろから値増し要求というものが発端してきた。しばしば申されてきておるけれども、値増し要求が単価の値上げであるというようなことで、現場におきましては厳としてこれをはねつけられて、そしてまた現場においていろいろと交渉がされておる。東京おいてはそうではないけれどもというようなことが、いろいろな関係からほとんどこれは少し事情に通じておる者の常識になっておる。あなたは申すまでもなく、とくと御承知であります。そこで去年の十月ごろになりますと、少し政治的な圧力が会社に加わったのではないかというようなうわさも新聞で聞いております。そういうことと、それからあなたの、一、二月ごろにやめてはどうかというようなことが出ておる。やめるわ、やめないわというのがこういうふうになって、新聞記者会見談というものが発表されておる。いやそれならば七月が任期だから、任期が過ぎたらそれでやめさしたらいいんだというようなことまで、次々ととりざたされておる。こういうことが真実でありましたならば、これは国家の立場から見ましても捨てておくことができないと私ども考えるわけであります。これは非常に重要な事柄であります。それで事態を明らかにしておかなければならぬ。こういうことがないというならば、それはそれで大へんけっこうです。あるということであれば、何ゆえにそうかということを究明しておかなければなりません。われわれは国家財政に国会として関心を持ち、また国会自身は監督の責任もあります。国家資金が投資され融資されておることは言うまでもありません。こういうような関係からしましてもそう思います。また電源開発促進法等によりましても、理由なくして解任要求なんかできないことは、法律上明らかであります。そういうことも考えて、どういうわけだろう、これはやはり明らかにしておかねばならぬ。とかくどうも電源開発事業につきまして、近ごろ問題が多過ぎるということを私ども憂慮しております。実際憂慮しております。そういうようなこともございまして、その間の時間的前後の事情というものが、相当究明されなくてはならぬのではないか、こう思いますので、実は伺ったわけであります。そういうことでありますので、その間の事情を相当明らかにするということは、政府としてもお望みになることだろうし、また国会も当然望まなければなりませんし、また電源開発事業自体に見ましても当然のことであります。きょうもまた新聞は報道いたして、昨日も新聞は報道いたしております。この報道によりますと、二十四日付読売新聞に、「小坂総裁語る」といたしまして、「間組から要求のあった佐久間ダムの土木工事費値増しのうち工事量の増加にともなう分は支払うつもりでこれだけで相当の金額にのぼる見込である。しかしいわゆる単価の値上げは筋の通らない限り受付けない方針であり、」こういうようなこと等々、いろいろと次々と新聞記事になっていくのであります。これは単なる風説じゃなしに、そこにやはり相当事実の経過があるのではないかと思いますので、あなたに伺うわけなんです。政府といたしまして、政府の内部の正式なそれではなくても、やはり小坂総裁に対してやめてもらいたいというようなお考え方でも従来はあったのでありますか。あなたはそれは言っておらぬ、向うからそんなうわさを持ち出して話が出たのである、そんな強い言葉ではなかった、こういうふうにおっしゃっておられますが、その点どうなんですか。
  58. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 それは今の日本の習慣でありましょうが、内閣がかわるとああいう重要ポストの者がかわるというような習慣があったためでありますが、特に新聞方面では非常にそれに注意して、私が通産大臣になると同時に、一体電発総裁はどうするのだというようなことをしょっちゅう新聞記者の諸君に会うごとに聞かれるようなことでありましたが、私はいつも否定しておった。できないことでもあるし、私としてもそういう意思は持っておらぬ、それは小坂君自身がやめるとかどうとかいうことを申し立ててくれば別でありますけれども、そういうことを全然こちらでは考えておらぬということを申しましたし、現在でもその通りでありますが、将来の電発の経営をどうするということは、これは別問題であります。それはそのときに考えるわけであります。現状においてそれをかえるつもりは一向ありません。  それから工費の問題は、幾度も増額されておりますから、それは一つ注意をしてもらいたいという注意は、通産省としていたしたことはあります。それに対する弁解ではなかったのであろうと思いますが、いろいろのこまかい事情も話しておられました。私は率直に申して、覚えておりませんが、私は小坂総裁のそのときのお話通りでけっこうだ、工費については不当な増額要求というものは承認すべからざるものであると考えておりますから、これには特にはっきり私はその通りでよろしいとか何とかいうようなことも言わなかったかもしれませんが、小坂君の報告を大体満足に思って聞いておったわけであります。
  59. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 あなたのほかに大麻唯男さんからもはやはり去年の十一、二月ごろと聞いているのですが、やめてはどうかというお話があったというようなことで、これは監督の立場からお聞きになっているかどうか。  それからまた一体値増しの要求というものが会社に向ってせられるというようなことについては、通産省としてはこういうことには関与しないのかどうか。この二点だけ伺っておきましょう。
  60. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 大麻国務大臣のことは聞いておりません。  それから値増しというのは、これは工事の費用についてはむろん通産省の承認を受けなければなりませんから、もし実際に工費を増額するというようなことが起りますれば、その場合には相談があると存じます。
  61. 上林與市郎

    上林委員長 石橋国務大臣に対する質疑は他の機会に譲りたいと思います。  それでは前に戻りまして、山田証人に対する質疑を継続いたします。松岡松平君、御発言を願います。
  62. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 先ほど中間に大臣の御発言があったものですから、それではもう一ぺん戻りまして、先ほど質問いたしました部落民が、この問題が起ってから相当長い期間諸種の費用を支出していることは、会社側でもほぼ推察がつくことと思われますが、解決に当ってこの点の費用を補てんするということに対する御所見はいかがでしょうか。
  63. 山田昌作

    山田証人 この問題に関して関係の村の方々がいろいろと経費をお使いになっておられたことは御推察申し上げます。これに関しましては、私ども会社の性格上、いかが支給しますか、方法は別といたしまして、できるだけ筋道を立ててある程度応分の御協力をいたしたいという気持を持っております。ただいまそういうふうな気持を持っておりますから、御了承願います。
  64. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 今の証人の御発言では応分と仰せられますが、しかしながらこれは部落側からの要求を全部申せば、すでに貸してある土地も、貸借はやめて売買に引き直してもらいたいという要求も前々からあるのです。その他正当な要求がたくさんあるのですが、もしこれが円満に妥結になるとすれば、関係土地も売りたくないのを売るのです。これは決して村側は一坪の地面といえども、現在縮小された状態おいては売ることを欲していないのであります。しかしながら事態を勘案して、関係者もかなり村に対して説得も試みた結果、話によっては売ろうというところまで接近した状態であります。従って解決に当っては、土地価格も問題でありましょうし、また鉄道の駅の誘致についても、これは含まれてくる問題であるし、また費用の補てんということも、当然含まれてくる問題でございますから、応分などと思わないで、これは当然補てんしてやるという意思がないとするならば、なかなかこういう問題は端的には解決しない問題ではなかろうか。なぜかというと、費用だからそれは勝手に使ったんだ、使ったんだからある程度、少し出せばいい、こういうようなお気持ですと、全体に響いて参りますので、ただ言葉はそういう言葉を使っておりますが、これはみな全体に関連のあることでありますので、その点について証人はもう一段と突き進んだお考えがあるかどうか。単におつき合い程度で応分の寄付をする、どこそこで銅像を建てるからおつき合いをする、学校を建てるからおつき合いの寄付をする、そういう問題じゃない。これは全体の解決の一つの科目をきめた意味にとどまるもので、真の意味はそういう意味のものではなかろう、こう私思うのですが、証人の御所見はいかがでしょうか。
  65. 山田昌作

    山田証人 それは金額の多寡にもよることでありまして、今のお話の御趣旨は理解するといたしましても、全部補てんするというようなことは、この席で申し上げることはどうかと思いますが、一応応分に、できるだけおさまるようにいたしたいという気持を持っています。
  66. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 次に鉄道の誘致の問題につきまして、これは必ず実現するものとはお互いに断定できないものであります。もしそういう場合に、鉄道の誘致はできなかった。従って部落民二十家族も他に移住するという、これをとどめておくには、何らかの産業でも考慮して、生活の基礎を考えてやらなければならぬということにも相なるのですが、こういう点に対するお考えはいかがでしょう。鉄道はできなくなったんだからもうこれでいいんだ、こういうことになりますると、せっかく相寄ってきた話し合いも、また亀裂を生ずるおそれもあるので、この点に対して何らかの第二次的なお考えはございませんですか。
  67. 山田昌作

    山田証人 鉄道が、必ず敷設されるということは断定できない。もしも不幸にしてできない場合にはどうするかという、次の解決策を持ち合せているかという御意味のようでありますが、実は鉄道問題は、先ほども申し上げましたように、会社といたしましても非常にこれを期待しているのであります。現にあの鉄道の出願につきましては、北陸電力の名義も加えまして、今日まであの敷設に協力して参っているのでありまして、幸いに実現することになったのであります。その意味におきまして、できるだけの協力をすると申し上げたのでありますが、この鉄道があすこにできないということになったら次の手というところまで、実は私どもは第二、第三の準備の具体的なものは持ち合せておりません。しかしながら、これは先刻も申し上げますように、電力会社と農村、山村、これは切っても切れぬ因縁があることは、もちろん片掛村ばかりではありませんが、できるだけ地方繁栄に仕事を通じてやってきているつもりであり、今後も一そう御相談に乗るという考えは持っておりますけれども、今どういうふうにという案は、実は持ち合せておりません。
  68. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 それでは最後に、証人にお尋ねしかつ私の希望意見も申しておきたい。五月二十四日付で委員長あて御書面が出てきたが、これについて先ほど個々に、具体的にその趣旨をお伺いしたのでありまして、この実現方について、今まで証人からも、解決策についてそのお気持の一端は、あらゆる機会に承わっているのでありますけれども、さてなかなか具体的進行のテンポがスローでありまして、今までのように、話し合いするのに一カ月、二カ月と次の段階までかかるようでは、はなはだこの実行が心もとないと思うのであります。どのくらいの期間にこの話し合いをお進めになる腹がまえがございますか、これをこの際承わっておきませんと、せっかくの御意思もまたまた遷延して、わけのわからぬことに相なっては、問題は紛糾するのみであります。問題は、要するに解決を急ぐということは、この事案の円満なる解決の大切な要件じゃないかと私は思うので、証人の御意見を承わりたい。
  69. 山田昌作

    山田証人 私どもといたしましては、いわゆる早期解決を希望するがゆえにと申し述べている通りでありまして、そのようなことがあまり久しく未解決のままにあることは、お互いに好ましくないのであります。ただ問題は、いかにして今後結論を具体的に出すかという手段の問題であります。これにつきましてはいろいろ教えを受けまして、どういう方法によるべきかということも考えられるわけであります。その方針にのっとったる具体的の手段につきましても、いろいろ地元にも御意見がありましょうし、私の方で一方的にどうということは申し上げられませんので、それによってなるべく早く解決させていただきたい、このように念じております。
  70. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 私の質問はこれで終ります。
  71. 上林與市郎

    上林委員長 他に御発言はございませんか。——それでは山田証人に対する尋問はこれにて終ります。山田証人には長時間御苦労様でした。退席されてけっこうです。  次に鵜飼並びに林証人に対する尋問に入ります。質問の通告が田中、松岡両委員からございます。まず田中彰治君から御発言願います。
  72. 田中彰治

    田中(彰)委員 鵜飼証人にちょっとお伺いいたしますが、この会社の取締役建設部長ですか、ただ普通の部長ですか。またこの会社おいでになってからどのくらいの年限勤めておられますか、それをお尋ねいたします。
  73. 鵜飼孝造

    鵜飼証人 私は鵜飼孝造と申します。ちょうど電力再編成が二十六年五月にございまして、五月から北陸電力会社へ入っております。身分は理事でございます。建設部長をいたしております。
  74. 田中彰治

    田中(彰)委員 取締役じゃないのですか。
  75. 鵜飼孝造

    鵜飼証人 そうでございます。
  76. 田中彰治

    田中(彰)委員 そこでお尋ねいたしますが、一月十九日に当委員会委員長の上林君があなたの方に伺いまして、あなたに対して、部落としては護岸工事をやってくれと言っているがどうなのかと委員長から聞いたときに、あなたは、金がべらぼうにかかってできないと言っております。金がべらぼうにかかるからできないのですか、やらなくてもいいのだというつもりで言われたのですか。こういうことを述べておられるのが速記録にあるのです。これについてお答えを願います。
  77. 鵜飼孝造

    鵜飼証人 金がべらぼうにかかるというような発言をしたことはございませんですが、大体そういったものは補償関係買収さしていただきたい、こういうふうに述べたつもりなんでございます。やらぬでもいいとか何とかいったそういう発言はいたしておりません。
  78. 田中彰治

    田中(彰)委員 この護岸工事は必要ないというのですか、それとも金がかかるからできないというのですか、あるいはまた護岸工事は必要だというのですか。
  79. 鵜飼孝造

    鵜飼証人 ああいう荒廃した土地だものですから、できれば買収さしていただいた方が両者のためになるのではないか、そのときの発言はそういうふうにいたしたかどうかは記憶がありませんが、そういうことを今考えておるわけなんであります。
  80. 田中彰治

    田中(彰)委員 あなたは人の持っておるものを、会社の都合が悪いから買収さしてもらえばいいというようなことを始終——社長もさっき言われたのですが、そんなことを常識的に考えてやっていいのですか。そんなことを考えてものを処理していいのですか。あなたが私のうちの隣に来られて、どうも田中のうちの土地がおれの住むのに工合が悪くて困るから買収した方がいいのだがと言われても、私がおらなかったらどうするのですか。建設部長というのはやはり技術部長であって、技術であなたは生命を保っていられるのだから、たとい部落民が文句を言わなくても、護岸しなければならないものなら幾ら金がかかっても護岸しなさいと言うべきだ。どうしても会社にその金がないなら、売るか売らないかわからぬけれども、一応部落民に御都合を伺ってみようかというような考えがなくて、護岸していいのか悪いのか言わない前に、ああいう土地だから買収した方がいい——買収した方がいいというのは安い土地だからでしょう。もし東京土地のように一坪三十万も二十万もしたらそんなことをお考えにならないでしょう。安く買える土地だから百姓をたたいて買う方が護岸するより得だというのでしょう。人の持っておる二万五、六千坪の土地を、買収した方がよいと言う。技術屋としておかしいと思うが、あなたのほんとうの意見はどうなんですか。あなたはここでうっかりしたことを言うと偽証罪になりますよ。護岸すればよいんだ、けれども護岸するにはとても金がかかる、それでは会社がやっていけないから部落の人に話して、承諾してくれればその方がよいというお考えなのか、いや、ああいう荒れた土地だから買収できるなら買収しておこうという考えなのか、どっちなんです。それを承わりたい。
  81. 鵜飼孝造

    鵜飼証人 持主から言えばいろいろ御希望がありましょうけれども、できれば買収さしていただきたいと考えておるわけであります。
  82. 田中彰治

    田中(彰)委員 それはわかるけれども、しかし護岸は必要ないですか。どうしても安全を保つには護岸が必要なんだ。社長がどう言おうが、決算委員会がどう言おうが、通産省がどう言おうが、あなたは一流の技術屋だから、技術屋としての良心から見て、護岸をしなくてはならないところだ、した方がよい、しかし護岸をするには大した金がかかるしいろいろめんどうだから、買収さしていただけるとすればその方がよいとおっしゃるのですか、はっきりして下さい。
  83. 鵜飼孝造

    鵜飼証人 この点につきましては、護岸をするとかしないとかいうことがどういう事柄ですかわかりませんが、きょうまでいろいろ調べていただいたのですが、できれば持主の御承諾あらば買収さしていただくのが一番いいではないかというように思っております。
  84. 田中彰治

    田中(彰)委員 あなた、そんなことを言うと偽証罪にひっかかりますよ。あなたは技術屋でしょう。社長は技術屋じゃないのです。あなたは技術屋としてこれに護岸をすべきか、不必要なものというのか。どっちでもいいじゃないのです。あなたはさっき良心に従ってうそは言わないと宣誓されたのです。それをよくおっしゃい。問題はそれからなんです。あなたが護岸すべきものだと言ってもわれわれはそれを信ずるわけでもない。すべきでないと言ってもそれを信ずるわけでもない。くずれをとめるのに護岸をすべきものか、ボーリングも打たなければならぬしいろいろありますけれども、しなくても何か方法があるのか。土地の売買は別です。あなたが売っていただけばよいと言っても、売らなければどうするのです。人のものなんです。私のこんな洋服一着一万円か二万円のものでしょうが、売りたくなければ百万円でも売りません。そんなことはよけいなことです。護岸すべきか、ほっておいてよいのか、それを技術屋としてあなたの良心に問うてお答え下さい。
  85. 鵜飼孝造

    鵜飼証人 湛水によってくずれるかどうかわからないというようなことからは、護岸する必要はないと思います。
  86. 田中彰治

    田中(彰)委員 湛水によってくずれる、それについては護岸は要らないというのですね。
  87. 鵜飼孝造

    鵜飼証人 はあ。
  88. 田中彰治

    田中(彰)委員 護岸しないために村の者が不安を感じておるのはどうなさるのですか。あなたは護岸しなくてよいのだと言う。しかし護岸しないためにくずれて危険が迫って田地もいろいろなことになってくる。それに対して技術屋としてどういうお考えですか。そんなものはほっておけばよいというお考えですか、それをまず承わりましよう。
  89. 鵜飼孝造

    鵜飼証人 湛水によっては大したくずれはないと思います。私はそういうふうに信じます。
  90. 田中彰治

    田中(彰)委員 大したくずれがないと言ったって、幾らかでもくずれたり、くずれる傾向を示しておれば、これは人の土地ですからあんたはもう一つそこをお考えにならなきゃいけない。あんたが土地をお借りになっているんですよ。借りた土地はあなたの所有じゃないんです。だから土地を貸した人がもし、こんなにくずれては困る、この原形を変えてもらっちゃ困る、土地を貸したために他に被害を及ぼしてもらっちゃ困る、約束が違うから土地を返してくれと言ったらどうやるんですか。いや返さないと言うんですか。お返しするんですか。どうやるんです。技術屋として、そういうことを言ってこられたらあなたはどうされるんですか。まずそれをお尋ねしましょう。
  91. 鵜飼孝造

    鵜飼証人 くずれた土地につきましては買収さしていただきたい、とこういうふうに、返してくれと言われたならば申し上げたいと思います。
  92. 田中彰治

    田中(彰)委員 あんたのような技術屋がおるから、あんたのうちの会社の社長にいい進言ができないんですよ。あんたは技術屋の資格がありませんよ。人のものを借りて、くずれたらそれを買収すればいい。——それじゃ、隣で新しくうちを建てた。そのうちは三階建なので危なくて困る。君、そんな三階建を建てるなよ。うちの方がつぶれるじゃないか。何こわれたらお前のうちを買収すればいいんじゃないか。——そんなことが通ると思いますか。あなたはそんな考えを持っておられるからこんなことになるんですよ。こうやってくずれていく。くずれる傾向を示している。今後ますます山の木を切りますから、雨なんか降ると、今想像もつかぬ問題が起きてくるかもしれぬ。そういうような場合を考慮されて護岸をしていけばいいんだ。金がかかっても護岸をしていけばいいんだ。それをおれの会社では護岸をすれば何十億という金がかかってできない。何とかして護岸をしたいんだけれども、金がかかるのでできない。経済上やっていけない。それは会社ですからね、会社は経済が重大問題です。会社の経済上、護岸をするよりも土地を売っていただけるならば土地を買った方が安いんだ、便利なんだ、それだから土地をできたら分けていただきたい、こういう話ならわかりますよ。くずれたら買えばいいじゃないかという話がありますか。どういうわけなんです。それに対してはっきりとほんとの答弁をして下さいよ。
  93. 鵜飼孝造

    鵜飼証人 やはり湛水によっては大したくずれはないと思います。まあ今現状ではくずれておるじゃないか、こういうことはございますが、それはいわば上側がくずれる程度だ、こういうふうに考えておりますので、その程度のものならば買収さしていただけるんじゃないか、こういうふうに考えております。根本的にそれが全部くずれるとかなんとかいうことは、私としては考えておりません。
  94. 田中彰治

    田中(彰)委員 あんたはね、借りてる土地が原形を変えても、借地人が地主から文句を言われるんですよ。いわんやそれが幾らかでもくずれて、ずいぶんこの写真にもあるじゃないですか。これはにせの写真じゃないでしょう。写真というのはにせじゃとられないでしょう。こういう工合になって、今後村の者が安閑としておれないということを訴えてここまで来るには、ずいぶんあんたの方も問題にされたんじゃないですか。あんたの社長なんかは、ぜひとも村の方とも相談して一つ善処したい、そう言っているんですよ。あんたの言われるようなことなら話をする必要はない。そういうことだから問題が起きるんです。ほとんどこわれているんだ。それを、大したことはない、だからこわれたのはあと土地を買えばいいんだ……。そういう考えなら話し合いはいらぬじゃないですか。そんな考えであなたがおられるから百姓たちが怒って、こんなような問題になるんですよ。あんたの話と社長の話と違うんです。社長は、いろいろ迷惑をかけて申しわけない、くずれておるところもある、これは放任しておけないから大学教授と助教授に見さしたと言うけれども、それもボーリングしたのではなく、上側から見たわけだから水の中はわからない。これはやはり迷惑をかけているんだから、何とか土地を売ってもらうように妥協したいということを言っておる。あんたの考えだと、湛水によってくずれる心配はないんだから、そんなものは考える必要はない。今言った通り護岸する必要はない。護岸する必要がないなら買う必要もないじゃないですか。何で買うんですか。迷惑がかからなければ買わぬでいいじゃないですか。今後砂利がちょっと落ちるぐらいで、迷惑がかからぬなら、買わぬでいいじゃないですか。どうして買うとおっしゃるんですか。将来くずれる傾向があるから、現在くずれておるところが今後大きくなるから買うと言うんですか。大したことはないから買わぬでもいいと言うのか。買うというのは何で買うと言んですか。あなたは国会に証人として出ているんですよ。参考人じゃないのです。よく考え答弁なさい。
  95. 鵜飼孝造

    鵜飼証人 湛水によってくずれたのは、大体六十センチくらいの程度じゃないかと思います。私はこの村が不安になるような大くずれはないと信じております。そういうくずれは申しわけがないから、そういうところは売っていただきたいということを前々から申し上げているわけなんでございます。大きなくずれはないと思っております。村が非常に不安になるほどのものではないのではないかと思っております。
  96. 田中彰治

    田中(彰)委員 村の人がこんなことを訴えてきておるのは、あんたの言っているような十センチや二十センチくずれたことを言ってきているのではないのです。写真をよくごらんなさい。これはにせでとったのですか。そんなことを言っているから、君の会社はいろんな問題を起すんですよ。それじゃここで絶対くずれませんと保障できますか。保障できるならあなたの方の社長に保障させる。あなたも技術屋を使っているんだから、十センチか二十センチしかくずれないということをあなたが保障できるなら、会社から一札もらおうじゃないか。あなたは技術屋としてそういう保障ができるんですか、まずそれを承わりましょう。
  97. 鵜飼孝造

    鵜飼証人 絶対くずれないという保障はできません。
  98. 田中彰治

    田中(彰)委員 絶対くずれないという保証はできない。今幾らかくずれておる。くずれた土地は買えばいいんだ。——そんなことが、他人の所有物があなたの自由になるんですか。隣りの奥さんがいいから買いたいと言ったって、隣りのだんなさんが売りますか。人のものを、迷惑をかけて買うと言ったって人が売りますか。あなたは少くとも会社理事でしょう、技師長でしょう。人の土地をくずしておい——あなたを会社に採用するより、どっかの口ききみたいな者をよそから採用して、何とかして村の土地を売ってくれろ、売らぬと土地収用にかけるぞ。——会社はそういう利権師みたいな者は頼んでおけないじゃないですか。それができないから、あなたのようなりっぱな経歴のある、学校を出ておられる人を技術屋として頼んだ。そういうことに対して危険を防止するように、人に迷惑がかからぬようにということであんたを採用しているんでしょう。それをあんたは技術をどこかに投げちゃって、迷惑をかければ買えばいいんだ、それはくずれない、大したことはないと言う。それじゃ保障できるかと聞くと保障はできないと言う。あなたの土地ならいいんですよ。おれの土地だから、こわれたってまた別に買えばいい——あなたの土地ならそれでいい。しかし人の土地ですよ。しかも百姓なんというものはわずか三百坪か四百坪しか土地はない。あんたのようにてんとして、技術屋が三百みたいなことを言っていて月給をとれるなら別です。百姓というものはまずいものを食って、朝早くから夜おそくまで働いて、労働基準法に抵触したようなことをやってもまだだめなんです。労働基準法を除外して働いている人たちですよ。そういう人たちがいるから、われわれはこうやって生活をしておられる。そういう人たちの持っておる土地を借りて、それを原形を変えたりくずしたりなどすれば、その人がそういうことは話が違うから土地をお返し下さいということで問題になるんです。さっき社長にも言ったんですが、いわんや人の土地ですよ。少しぐらいいいじゃないか、と考えるかもしれぬが、どろぼうしても、少しぐらいならいいのか。ちっとぐらいなら犯罪を犯してもいいのですか。これはおかしいじゃないですか。あなたが正直に、そんな政治性をおやめになって、いやあれは絶対くずれないのだ、それから護岸する必要もないし、少しもくずれません、会社と私とくずれないことを保障いたします、もし崩れた場合には、いかなる損害を訴えられてもけっこうでございますということを書けるか。書けないとしたら、技術屋として、それは将来護岸をしてとめるとかなんとか防備をしてやらなければならぬことは当然だ。たとい一センチであろうと一尺であろうとも、人に迷惑をかけることはよくないのですから、人の土地に迷惑をかけているから、何とか方法を講じなければならぬという良心的なものがあるはずです。あなたのような考えの技術者がついているから、あなたの会社が人に迷惑をたくさんかけるのです。どうなんです。ほんとの良心的な答えをして下さいよ。百姓土地だって、そんなわけに参りませんよ。どうですか。
  99. 鵜飼孝造

    鵜飼証人 崩れた土地につきましては、そういうふうに先ほどから申し上げております買収をお願いしておるわけでございますが、これがどうしてもできない。それじゃ困る、ここに護岸してくれ、こういうことを言われれば、やはり護岸をしなければならぬと思います。
  100. 田中彰治

    田中(彰)委員 それでいいんですよ。そこであなたが今度土地をお買いになる場合に、あなたはよくお考え願いたいと思う。あの土地はいなかの土地で、わずかなものです。しかし、あの土地から出て行った人が転業することは、とても普通じゃできません。ここにさっきからいろいろな方が見えておるが、あなたも新聞でごらんになったと思うのですが、東京都が水道の水を確保するために、小河内というところにダムを作った。そこにいた住民たちが、ここにとにかくダムを作るために、そこを売って、そして昭島市というところに行ったのです。一人当り百五十万ずつもらって行っている。百五十万くれた上に、東京都では水道局があっせんして土地がなくては困るだろうというので、大蔵省土地を一坪五百円か六百円で分けてやって、六十三名がそこに集まった。ところが百姓というものは、百五十万もらって転業しても食えないのです。そこで小さいアパートのような下宿屋みたいなものを作って、そこにパンパンのような女を下宿させておいた。今度それが売春法でひっかかるんで警察が取り締るという。そうすると、百姓たちは、われわれは土地を取り上げられて、転業しろといっても、一体何ができるんだ。百五十万の金なんか要らぬから土地を返してもらいたい。あそこにおれば、たきぎがなくなれば裏の山に行けばとってこれた。水がなくなれば、井戸を掘れば水が出てくる。裏に物を作ればちゃんと物ができて、どうやら生活しておったのが、百五十万円もらって人にうらやましがられてここに来たけれども、こういう商売をしても幾らももうからぬ。最高が二万六千円です。これから税金や何か引かれると、二万円以下のものになっちゃう。こんなことしか百姓はできないのです。どうですか。百五十万円もらって、土地を坪五百円でわけてもらっても、われわれやっていけないから返してもらいたいと言っている。二十四日の朝日新聞をごらんなさい。書いてあります。いわんやあんなところにいる人たちは、あそこから追われたらどこに行って何をしますか。あの人たち土地への執着心は、われわれ第三者の想像できないものだ。さっき社長にも言ったのですが、植木の好きな人に十万円の値打ちのある植木があったとしても、植木を知らない人から見れば、夜店にいけばもっと大きなものがあるよ。それが三百円か五百円で買える。倍に買っても千二百円で買える。何で十万や二十万出す必要があるかとおっしゃる。植木の好きな人たちには、十万円出しても植木を離したくない。どこに持って行っても、そういう人には十万円で売れるのです。百姓土地に対する執着心は、十万円の植木を持った植木の好きな人のごときものなんです。それをあなたが、松であろうとケヤキであろうと杉であろうと、それを夜店で買う植木と同じに見て、それの倍くらいに買ってやればいいんじゃないかというような考え土地買収されると、大へんなことになる。全国のダムから追われた人を見てごらんなさい。新潟県にもたくさんおります。みな百万以上の金は持っています。百万以上の金は払っています。あなたがそういう考えでいてさえも、最後には土地の者が困るというならばダムを作らなければならぬというようなことを言うのです。ダムを築くには何十億とかかる。それを考えたら、百姓に、ダムを作ると金がかかるんだ、君たち会社のためだ、電気は公益事業でもあるし、何とか一つ話し合いにならぬかという気持であなたの方でやれば、こんな問題は起きません。そんなことはあることなんだ。あなたの社長にも言ったが、私のおい大塚の駅をずっと離れたつまらないところで商売をしている。そこに三十坪の土地があって、区画整理になった。それでおいのところへ入ってくる。困るから何とかしてくれ、区画整理をすると、三割減って二十一坪になる。その二十一坪の土地を売ってくれといって交渉に行ったが、話がつかない。そこで僕が話しに行った。そうするといわく、あなたが私の住居から出ろと言われるんだから、相当のお覚悟があるでしょう。それはある。それじゃ二百万円で買ってもらおうじゃないか。二百万円だと、坪十万円だ。その辺は、どこを見たって二万より高いところはありません。二、三日前に二万円で売買している。それでも坪十万円だ。それじゃ困るからまけてくれないか。それじゃあなたの顔を立てて、せいぜい百六十万円にまけましょう。そのかわりこの中へ人が入ったから、その人に十万円やって下さい、私の方では出せませんからというので、百七十万円になった。これでも坪八万か九万についているでしょう。そういうふうに、こっちがほしいと思えば、だれが見たって一万五千以下でなければならぬものが、そう高く買わなければならぬ。それでも売ってもらってありがとうございますと言わなければならぬ。そうして私が帰ると、おいが高いと言うから、ばか言うな。人に立てということがあるか。自分がいい住まいをしたいために、自分の利益を得たいために、住まっている人に立っていけということになるならば、大へんな問題だ。だから高い金を出すのは当りまえなんだ。あなた方がこれをお買いになるのにも、やはりそういう考えを持っていただかなければ困る。そういう考えであなたが処理されるのかされないのか。  またもう一つあなたにお聞きしたいのは、あなたは水没地の補償擁護の精神でものを考えると言われたが、この水没地の補償擁護の精神というのは、一体どういう精神だとあなたは考えておられますか、それを一つ承わります。
  101. 鵜飼孝造

    鵜飼証人 今その精神と申しますのは、要するにその保護される、たとえば土地の経済価値とそこへそれを保護するための経済価値のウエートによってどちらがいいかということをきめた方が、国家的に見て双方の得じゃないか、そういうふうに私は承知しております。それでそういう発言をいたしました。
  102. 田中彰治

    田中(彰)委員 国家的に見て得じゃないかとあなたはおっしゃいますが、それはたとえば国家で少し得があっても、あなたの会社が得があっても、そのために何百年も黙々としてやってきたこの小さい三十名か四十名の百姓を犠牲にするということは、日本の政治じゃないのです。これは日本の政治の貧困です。これは暗黒な政治です。やはりこういうものも生かしていかなければならぬ。あなたがりっぱな国家的のことをお考えになるなら、会社の利害なんかやめて、あすこの土地なんか買う必要はないじゃないか。あすこへ堂々と防波堤を築いてボーリングを入れて、これだけのりっぱなものを築いて文句のないようにされたらどうか。そういうお考えはないのですか。国家的にお考えになるのなら、そういう会社の利益を考えなくていいではないですか。そういうお考えでいかれたらどうか。
  103. 鵜飼孝造

    鵜飼証人 今の御質問の要旨がわかりませんでございますが、どういうことでありますか。
  104. 田中彰治

    田中(彰)委員 国家的の見地で水没地補償擁護の精神をあなたは強調されておるが、あなたが考えておられる水没地補償擁護というものはどういう精神なのかと今あなたにお尋ねしたら、あなたは国家的見地から考えて両方ともいいようにすればいいのだとおっしゃった。国家的にお考えになるならば、部落民土地を買ってくれというのではなく、部落民が迷惑して泣いているのだから、今後その土地がくずれるかどうか保障もできないので、村が承知しないならば護岸工事もしなければならないと考えておるのだから、会社の利益とかそんなことを没却されて護岸工事をしてやったらどうかとそれを聞いておるのです。それはできないのだとおっしゃればそれだけが、護岸工事をしてやれば、土地も買わぬでいいし問題も起さないし会社にも今後文句はいかない。どう考えていられますか。
  105. 鵜飼孝造

    鵜飼証人 それはやはり今の精神にのっとって護岸の費用とかくずれ方とか、くずれることによって迷惑をこうむるとかいうことを判定しなければならないのではないかと思います。すぐそれでは護岸すればいいというわけには、判定の問題があるのではないか。今の御質問がよくわかりませんですが……。
  106. 田中彰治

    田中(彰)委員 もしこれを判定したら護岸しますか。地主は承知しないというようになったら護岸しますか。護岸しなければならぬけれども会社の経済としては護岸できない。だから土地買収にいくというのですか、どうですか。
  107. 鵜飼孝造

    鵜飼証人 その通りでございます。
  108. 田中彰治

    田中(彰)委員 それではあなたにお願いしておきますが、あなたは建設部長だから、河川法は何条とたくさんありますから、お読みになると、あなたが今おっしゃるように護岸工事をしなければならないことになる。あなたがこれを拒否されて、理屈契約法律でいくということになると、この一点だけ引っかかってもやはり問題にされて全部御破算にされてしまうのです。そんなことは河川法なんかよく研究されてみるとよく納得できるところがあります。決算委員会は村に土地を売れと勧めていない。妥結すればいいのです。村が決算委員会でそう言っても土地は一坪も売らない、石ころ一つ取っても承知しないといってがんばってもしょうがない。それをあなた方は、土地買収とかなんとかいうとすぐ六法全書を出して土地の定価を出してやるから問題が起る、社長にそういうことを言われて、早くうまくおさめてやって下さい。決算委員会土地を買えとか護岸しろとかいうことは申しません。迷惑がかからぬように——迷惑がかかれば法的に処理していかなければならぬ。その点をよく含んでいただくようにお願いいたします。私の質問はこれで終ります。
  109. 上林與市郎

    上林委員長 松岡松平君。
  110. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 ただいま田中委員からお尋ねになって長時間かかって証人はようようほんとうのことを言われたが、結局他人の土地が寸土でも侵されれば、侵した部分を直してあげなければならぬのです。その直し方については、がけくずれすれば石がきを積むとか何か工事を施さなければならぬ。それはくずれた度合いにもよるし、将来の見通しにもよる。陥没地帯でもそうです。一尺侵水でも侵水、三尺侵水でも侵水、十尺侵水でも浸水だが、他人の土地を侵せば、岸壁を作って水の侵入を防がなければならぬ。しかしもしこの関係地所を売ってもらえば、わが土地であるがゆえに、その侵入の度合いが他の地点に及ぼす影響が大きくはないと思えば小なる補強で事足りる場合もある。そのことを勘案して買収ということを言っているのでしょう。このことは田中委員に直接間接にあらゆることを攻め立てられてようやくあなたは答えられたけれども、結局あなたが言われたように、被害状況を施すべき工事に比較してウェートを考えると言われるのは、それでしょう。買うということは護岸の必要上から起ってくる問題で、自分土地ならばある程度で済むが、他人の土地なら完全なる護岸を施さなければならぬことになるのではないか。その点をいま一ぺんお答え願いたい。
  111. 鵜飼孝造

    鵜飼証人 どういう御質問だかちょっとわかりませんが、こういうことに承知してよろしゅうございますか。つまり……。
  112. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 自分土地になった場合には——だから買いたいというのだろう。いかがですか。
  113. 鵜飼孝造

    鵜飼証人 そういうことでありますね。
  114. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 証人は肝心のところにくると政治的な考慮を払われるが、その必要はないのです。あなたのところの社長さんはりっぱな方で、何とかしなければならぬということをちゃんとここで証言しておられるのですから、政治的な考慮を払うのはおやめになっていただきたい。技術者としてがけがくずれてきたら直さなければならぬが、それはくずれの度合いによっては工事の内容も違う。そこで他人の土地に侵水すればどうしても防壁を築いて水の侵入を防がなければならぬけれども、この地所がわがものになれば、その施行工事に影響するところがあるだろう、だからあなたの方は売ってくれ売ってくれと言っておられたわけです。もっと端的に言えるでしょう。
  115. 上林與市郎

    上林委員長 いたずらに時間を空費しますから、委員の質疑の要旨をよく聞いて具体的に答弁して下さい。
  116. 鵜飼孝造

    鵜飼証人 他人の土地に侵水するといえば完全に防がなければならぬと思います。
  117. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 そうすると、今あなたはもぐもぐ言うておられるが、結論について言えば、他人の土地ならば完全なる防衛を施さなければならぬ、しかしわが土地となればそれは小なる犠牲をもってしても防ぎ得る場合もある、従って買収を希望するゆえんなりと、こう了解してよろしゅうございますか。——じゃ、わかりました。  次にお尋ねをいたしまするが、あなたのところの会社で、重役の間が、何というか、こんなものはもうほっとけという説と、何とかして解決せんならぬという説と、二派に分れているようだが、その点はどうなんです。これをちょっとお答えいただきたい。
  118. 鵜飼孝造

    鵜飼証人 私はそういう会議も、そわからそういうことも、重役でありませんからよくわかりません。
  119. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 それじゃ、あなたの上の重役というのは山本副社長ですか。
  120. 鵜飼孝造

    鵜飼証人 そうでございます。
  121. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 では山本副社長の本件に対する当初からの考え方一つここで述べていただきたい。
  122. 鵜飼孝造

    鵜飼証人 この前一月の十九日に県で第一回の諮問があったときに山本副社長が発言しておりますが、あの趣旨だと思います。
  123. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 あの趣旨ではわかりません。その内容を言って下さい。
  124. 上林與市郎

    上林委員長 松岡さん、証人自身の意見を聞いて下さい。
  125. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 証人は他人の言葉にとらわれないで……。  もう一ぺん言いますが、あなたの上司である山本重役は、本件に対して、これは護岸をするには大へんな費用がかかるから、買収してもらって、小なる犠牲で何とか話し合いをつけたいと言っているのか、それともこんなものはどうでもいいと言っているのか、それをあなたに伺えばいいんですよ。
  126. 鵜飼孝造

    鵜飼証人 それは今の松岡先生のおっしゃる通りに、やはりできるならば、他人に御迷惑をかけているので、買収さしていただきたい、こういうふうに考えておると思います。
  127. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 そうすると、買収すれば他人に迷惑をかけない、買収しないとすれば、迷惑をかけないように施工をやらなければならぬ、こういうことになるわけですね。
  128. 鵜飼孝造

    鵜飼証人 買収はいやだ、どうしてもくずれた所を護岸してくれ、こういうふうになれば、これはどうしてもやらなければならぬと思います。
  129. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 これでよろしゅうございます。
  130. 上林與市郎

    上林委員長 林証人に対する御質疑はございませんか。——では、松岡松平君。
  131. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 林証人に伺いますが、会社側崩壊個所並びに陥没地帯の付近の土地を最小限度に売ってもらいたい、そして自分の所有に帰させて適切なる方法を講じたいという解決案を持っておられるようでございまするが、部落民の意向はどうなのか、端的に一つお述べ願いたい。
  132. 林唯義

    ○林証人 部落といたしましては、部落沿岸保全期成同盟会というのがありまして、そこで一応沿岸につきましては買収いたしまして、それから会社と折衝してもいい用意があるのであります。
  133. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 そうすると部落民個々じゃなくて、沿岸保全期成同盟会が一たん買い取って、それと会社と話をするという意味ですか。
  134. 林唯義

    ○林証人 さようであります。
  135. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 そうすれば、一つの解決の様式で、具体的に言えば、個々の人と会社と話をするのであるが、ただ話の形式としてそういう方法をとるんじゃないでしょうか。
  136. 林唯義

    ○林証人 今先生のおっしゃいます通り、ただ話の形式としてそういうふうな形に持っていかないと、取りまとめた相談に都合が悪いと思いますので、そういうことを村で協議したわけであります。
  137. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 証人にお尋ねしたいことは、委員会あてに、五月七日午前二時半に決議された期成同盟会の総会の議事録が出ておりますが、そのときの出席者総計八十九名、そうして議案は一号議案から六号議案までありまして、その要旨は、話し合いがつけば売買に関する件は代表者に各出席者が付託したのでありますか。付託したということになっておるのですが、それに相違ありませんか。
  138. 林唯義

    ○林証人 相違ございません。
  139. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 そうすると、この売買についての価格ということがかなり問題になるのでありますが、普通の農地売買、山林の売買というものは、およそその地域においても通り相場というものがあると思うのでありますが、その点についてどのような考えをお持ちですか。
  140. 林唯義

    ○林証人 それにつきましては、ぜひしばらくお聞き願いたいと思いますが、簡単に申し上げます。部落が不安を抱きました原因、依然この不安を抱いておるという現実の問題は、たびたび先生方に陳情申し上げました通りでありまして、大体田を二万五千坪有しておりましたが、そのうち湛水によりまして約一万坪、それからなお会社以外に二号国道がつきまして、一千二百坪がつぶれまして、今年の三月二十六日におきまして、北電の湛水による影響で一千坪を崩壊したのであります。それによりまして田が半分になりました。今まで部落の米の入り高は、大体二百六十石と計算しておりますが、三百名の住民を有しております。そうして残りの田が大体半分になりましたので、約半分、百二十石を見込まれておりますので、そうすると、食糧の約半分にも満たぬたんぼになってしまうということで、現在五十四戸ありますが、その五十四戸のうち、従来の計算で言いますと約半数はどうしてもこのままの農業経済状態では部落に踏みとどまることはできないという状態にありますので、いわゆる北電の陥没、湛水の水没によって生じた不安の原因はここにあるのであります。そこへかてて加えまして沿岸の陥没崩壊が、湛水の三日目に始まったというので、そういう感じでおったところへ起ったので、一そうその感を深くしたのであります。そうして部落ではこれは大へんだということになった。これは現在でもそういう不安があるのに、そこへもってきてまた今崩壊をし始めたということになって、どんなことがあっても護岸をしてもらわねばならぬ。これでさえもおることができぬと思っておるのに、これ以上崩壊し出したら大へんだというのが部落の不安の始まりであり、そういうふうに主張したわけであります。  もう一つ申しおくれましたが、部落が現在五十四戸になったのは、高山線がつく、ちょうど二十九年かと思いますが、約三十年前からを境いといたしまして、今日約半数の五十四戸になってしまったのであります。それが高山線のつくまではそのままでおりましたのが、駅ができないで他部落へ駅がついた。その当時までは細入村の中心地でありましたのが、そういうことで駅がつかなかったので、それから村に居住することができなくなって半分になった。そこでその半分で歯を食いしばって、どうでもこれ以上は農業をして、あらゆる努力を払って、それこそ日夜牛馬のごとく働き続けて、これだけでも部落を安住の地として細々ながら暮らそうという円満な部落であったのであります。ところがそこへ公益事業であるこの水力の開発が始まりましたので、これは否認するわけにもいきませんし、やはり公益事業でありますので、自分らの農地が半分になってもやむを得ないということになっていったのであります。そのときの交渉の仕方におきましても北電は小作かまたは……。
  141. 上林與市郎

    上林委員長 なるべく簡潔にお願いいたします。
  142. 林唯義

    ○林証人 はい。小作かまたは売り渡しか、あるいは土地収用法による強制買収か、こういう三点で交渉に当ってこられたのであります。そうすると部落では土地収用法とはどういうもんやら知らないのが大方なところであって、何しろ公益事業だから返事せねばとられてしまうのだ、そうかというて土地を離してしまうのもこわい、今まで持っておった土地をなくしてしまうのはこわい、それに惜しい。賃貸借ということでありますが、じゃあ小作として賃貸借にしておけばいいというので、その土地を惜しむ心からそういうことになりました。ところがその小作たるもの、大体従来の計算で一升が普通でとれておった土地を、現在は五合六勺で借りてあるのであります。五合六勺と生産者価格で計算しておられる。そうすると、従来の百姓をしておれば一升は一升でとれるのでありますが、現在の五合六勺の生産者価格では、そのあとの約半分の不足分はやはり不足になっていくということになりますので、とにかく部落ではその交渉の工合も法律がわかりませんものですから、押しつけられてついにそういうふうになったということなのでありまして、別にその当時食っていけぬとか、そういうことを考えておらなかったということでありまして、土地を惜しむということだけでそういう状態になっていった次第であります。
  143. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 大体その耕地が減るということは、もうすでにそのときにわかっていた。それから貸した地面は水没して、もうこれは永久に耕地にならないということもわかっておった。それをいかに無知だからといって、小作契約をして、そしてその小作代をしかも一升とれるものを五合六勺で譲歩するなどということは、一体村の何人がそういうような契約会社側としたんですか。村全体の意向だったのか、それとも村の一部の人の意向だったのか。
  144. 林唯義

    ○林証人 それはお恥かしい次第でございますが、実はそういうことはあまりわからないものですから、結局不安は不安であっても公益事業には勝てない、こういうことを思いましたので、そのあとほっておけば結局とられちまうんだ、こう思えば、交渉する度胸とかそういうものは村中なかったわけであります。
  145. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 そこでお尋ねしますが、今関係崩壊地点及びこの陥没地点の土地を売る。売るが、この売るということは、相手方に所有を移転してあとかまわずということではなくて、会社側の所有に帰して適切なるその土地に対する防衛方法を講じてもらいたいという意向なのか、それとも、骨董品を売るように売りっぱなしてしまうという意味なのか、その辺はどうなんですか。
  146. 林唯義

    ○林証人 その点誤解のないように、私の言い方もあるいはもし言い誤まりがありましたら訂正させていいただきた いと思いますが、ただその土地を売る相談にしても、いいとかということは、先生方の内々の話で、もし会社護岸をすればどうしても金がよけいにかかってどうにもならぬというときは話し合いに応ずる気があるかどうかというお尋ねがあったことがありますので、その場合先生方に御返事する対策といたしまして、部落で相談したものでありまして、私は代表者といたしましては、この際ただ売る売らぬということは軽率に、今日までの経過から見まして——会社もまた非人道的な、今日まで四年間にわたり片掛が血の涙を流して、この国会にまでお願いにきておるこの情勢を見ながら、資本にものを言わせて、四年目にもわたってのんびりとこちらの弱るのを待つ、また統制の破れるのを待っておるような態度に至りましては憤慨せざるを得ない私の村中の立場でありまして、この点部落民の意思も顧みまして、やはりこの際は徹底的に安心でき得る解決策でないと、ただ売る売らぬと簡単に言うわけにはいきません。あくまでも物質的解決であろうが護岸であろうが、不安を一掃でき得る解決策でなくては、代表者といたしましては納得するわけにはいきません。
  147. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 それはよくわかりました。要するに土地を売るのもまた護岸を要求するのも、ひっきょうするところ不安と危険を除去してもらいたい、この一点に集約されるわけであると了解してよろしゅうございますね。  次にあなたの方で神岡線の国鉄化に対して駅の誘致を切望しておられるのでありますが、もし駅が誘致せられるようなことになれば、現在の二十家族の移住ということは大体解決されるのであるかどうか。
  148. 林唯義

    ○林証人 お尋ねに対しましては、三十年以前におきまして細入の中心地でありました片掛は、当時百余戸もありましたのが、高山線開通以来半分に減っていった状況から見まして、いかなる公共施設もけっこうでありますけれども、まず私らの無知な頭で考えた場合においてもその結果は明らかであります。五十四戸くらいの維持はまず確実だということはわかっておるのでありまして、それどころでない、なお一そうまだ増加しても生活でき得るという信念でございます。
  149. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 それでは最後にお尋ねいたしますが、三月二十六日に北電側が工事用につけた道路で、約六千立坪の土砂崩壊して、そして一千坪の水田が埋没した。それに対する北電側の水田救済工事というものが施されておるかどうか、これに対する交渉の経過があったら簡単に申し述べて下さい。
  150. 林唯義

    ○林証人 三月二十六日の大崩壊はその後そのままになって、何ら工事を進めるでもなし、本年度も耕作はしないでそのままになっております。現在は四人の関係者になっていると思いますが、いまだにそういう話は聞いておりませんし、また一千坪の耕作もまのあたりそのままになっておることだけは間違いありません。ないしょで相互にどういうことが行われておるかは私は存じませんけれども、目で見たところでは耕作不能であります。
  151. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 林証人に対する質問はこれで終りますが、これに関連して鵜飼証人にもう一度お尋ねしたい。今証人もお聞きの通り、三月二十六日に約六千立坪の土砂崩壊した。その崩壊したのは、北電側がかつて工事を施工されるために設けられた道路であるということは御承知のはずであります。これが崩壊して水田一千坪が埋没した。あの辺の地勢から申しますと、山地ですから少しおくれますが、もうそろそろ田植にかからなければならぬ。この時期においていまだに三月から今日までほってある理由はどういうわけですか。この部落にとっての一千坪、四家族がこれによって生計を辛うじてささえていかなければならぬ貴重なる水田を、何がゆえに一体今日まで放置せられておるか。少くとも二ヵ月あれば十分に救済策がとれたはずであるが、これは一体所有者との間に何かそういう契約でもあって今日までほってあるのか、それとも何らの交渉もなくして放置してあるのか、この点を明らかにしていただきたい。
  152. 鵜飼孝造

    鵜飼証人 私は建設部長でございまして、今支店の方でそれは交渉しておりますので、ここでどういうふうになっておるか、あるいはどういう交渉が持たれておるのか、私としては今ちょっと即答しかねます。
  153. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 あなたの所管ではないからわからない、これは無理もないことでしょう。だがしかし、この崩壊の現状をごらんになったことがありますか。
  154. 鵜飼孝造

    鵜飼証人 あります。
  155. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 それではあなたがこれを見られて、あなたも少くとも建設の担当者として、こういう悲惨な状況を衆人の前から早く除去するよう適切なる工事をするように、支店に対して言われたことがあるか。ことにこの地点は崩壊、浸水問題について争議を続けてきておるのですから、あなたは何か支店の方に言われたことがあるのですかないのですか。
  156. 鵜飼孝造

    鵜飼証人 ございます。早くその問題については解決するよう、鎌田支店長に特別に頼んでおりますし、会社としてはできるだけの方法をとっておるはずでございます。
  157. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 あなたはできるだけの方法と言われるけれども、三月二十六日に崩壊して今日五月二十五日ですから、この間二ヵ月間あるのですよ。こんなものは一ヵ月あればあなたのところの会社の力をもってすれば完全に水田にしてやれるのですよ。なぜこういうことをしないかというのです。そういう社の全体の空気がどうもわれわれには納得いかないのですよ。そういうてきぱきしないというのが一体ほんとうに社の流儀なのですか。それともあなた方が言うても動かないのですか、あるいはまた社長、副社長とかいう手配は誠意がないのですか。われわれに言わしめれば奇怪しごくですよ。いわんや決算委員会にこれがかかってあなたのところとしてはもう頭を痛めておるでしょう。この痛めておるところへ崩壊しておる。その崩壊した水田の救済策くらいはとってもいいですよ。あなたは帰られて会社の幹部に、決算委員会おいてこの問題が問題になって大いに批判されたということをお伝え願いたい。これは重大問題ですよ。百姓にとっては自分水田を失って、しかも作付どきにきて作付できないということは首をはねられるにひとしいのですよ。先ほど田中先生が言われたように、あなた方は月給をもらえるかもしれないけれども百姓土地を耕して食うていくより道がないのですよ。これに対する真剣な考え方が社にないとするなら——今後多くの開発にこれからあなた方乗り出していかれる幾多の問題がある。これはだれも住んでいない山の中の林において水がつくとかがけがくずれたということなら問題は別です。人間が集団して生活しておる個所における問題は深刻ですよ。いわんや百姓土地が千坪も流されて、その土砂の除去もされておらないということはあまりにもやり方が残酷です。私の意見を申し上げておきます。  これで終ります。
  158. 上林與市郎

    上林委員長 他に御発言はありませんか。——それでは鵜飼証人及び林証人に対する尋問はこの程度にいたします。両証人には長時間御苦労さまでした。退席されてけっこうです。  なお通産省当局に対し質疑の通告がございます。これを許します。吉田賢一君。簡単に願います。
  159. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 川上公益事業局長に簡単に伺います。さっき大臣は、事務当局から説明さすということでございましたが、佐久間ダムの工費関係をまず伺いたいのです。請負関係の工費につきましては、請負工事は間組と熊谷組が請負っておった、こういうことになるのですか。
  160. 川上為治

    ○川上政府委員 相当大きな部分につきましては間組、それから熊谷組がやっております。
  161. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それからあなたの方の資料の本年四月十四日付の佐久間発電所工事費内訳の第三ページによりますと、本工事は間組が三十七億二千七百余万円、熊谷組が十億七千一百余万円、こういうことになっておりますが、この通りでございますか。
  162. 川上為治

    ○川上政府委員 実はきょう、その御質問があると思っていないものですから、何も資料を持ってきておりませんが、通産委員会資料を出しましたその中では、たしか先生の今おっしゃいましたような数字になっておると考えております。
  163. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そこで、さきに伺いました昨年の三月ごろに間組から値増しの要求があった、その内容を聞かせて下さい。御記憶の程度でよろしゅうございます。
  164. 川上為治

    ○川上政府委員 最初の契約とその後工事が非常に変って参りまして、工事が実はふえて参りましたので、間組の方からも熊谷組からもそれぞれもっとふやしてくれという要求があったことは事実でございます。それに対しまして電発としましては、この際はっきりどの程度といことをきめることはなかなかむずかしい問題もありますので、一応仮渡しと申しますか、そういう意味である程度増額いたしまして金を払っていることも事実でございます。従いましてまだ最後的に本契約というものはできておりません。ただその内容につきましては、単価を上げるという問題ではなくて、工事量そのものが非常にふえたということから、増額問題が起きておるというふうに私どもは了承いたしております。
  165. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そこで元へ戻りますが、三十七億二千三百万円というのは、出来高九〇%になっておりますので、九〇%においての数額、こういうふうに理解したらよいと思いますが、それで間違いありませんか。
  166. 川上為治

    ○川上政府委員 その通りだと思います。
  167. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 去年の三月の値増し要求というのは、伝えられるところによりますと、九十二億六千五百万円、こういう要求になっておるようでありますが、それはいかがでございますか。
  168. 川上為治

    ○川上政府委員 実は今その数字を持ってきておりませんので、はっきりしたことを覚えておりませんが、大体向うの要求はその程度ではなかったろうかと考えております。
  169. 上林與市郎

    上林委員長 資料を出してもらったらいかがですか。
  170. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 よろしゅうございます。  それからその後七月になって八十六億、十月になって七十九億円、なお約四億円の嘆願金ですが、だんだんそういうような要求に値増しは少し下ってきた。その事実と、それからこれは会社としては拒否し続けているというようにも聞いております。この二点をお伺いいたします。
  171. 川上為治

    ○川上政府委員 間組の方と電発の方とでどういうような交渉があったかという点につきましては、詳しいことは私どもの方では聞いておりませんが、最初出した数字とあとから出した数字がだんだん違ってきて低くなっておるということは詳しく私聞いておりません。それは交渉の最中におきまして、そういう事実はあるのではないかというふうにも考えますけれども、その点ははっきり私、まだ聞いておりません。  それから会社の方で拒否し続けているという問題につきましては、まだ拒否と申しますか、話し合いが十分まだついてないというふうに私どもの方では了解しております。というのは、あそこの工事につきましては、最初の計画、またその次の計画といって非常にいろいろ計画が変ってきておるような関係で、あまりはっきりしたことを最初からきめておくということは、やはりむずかしいのではないかというふうにも考えられますので、そういうようなことになっておるのではないだろうかと考えております。
  172. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 一方拒否し続けてい るということが世上伝えられ、また私どもが聞くところでもそういうふうにいわれておりますが、一方三十五億円程度ならこれは妥結しよう、こういうことが最近急速に台頭してきたように聞きます。そこで大臣の説明によりましても、やはり契約金の最終計算については、相当監督なさる立場にもありますので、関心を持っておられることはもちろんであろうと思います。そこでそういうように急速に三十五億円も出して妥結するというようなことがほんとうであれば、国民としてはわからぬのであります。やはりそこは究明していかなければならぬと思いまするので、あなたの方も、一年以来続いている問題でありますから、その間消息は十分御承知であろうと思いまするので、一応伺っておるんです。どうなんです。
  173. 川上為治

    ○川上政府委員 これは、先ほど大臣からもお話がありましたように、私どもの方としては、佐久間の工事費が最初の計画よりは非常にふえておる、どういうわけでふえたのか、間組との関係だけではなくして、全体の工事量、工事資金が非常にふえておりますので、そんなに工事資金がふえては困る、国家資金でございますので、なるべく切り詰めてやってもらいたいということを再三言って参ったのでありますが、特に相当大幅にふえております関係から、私どもの方としては先般も強く電発に対してその点についてはちゃんとやってもらいたいということを言っておりますし、また今お話のありましたような点につきましては、十分監督してやるつもりでおります。
  174. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 ただ当初の契約関係、従ってその数額とか年月等が明らかになる事実、それから最近の進捗の状況、交渉の模様、これはあなたのところへ公けに報告がなければ、おわかりの程度でよろしゅうございます。従ってそれに伴って生じます数字の動き、この工事の方式の変更があったとが聞いておりますので、それを知り得るような資料を至急お出し願いたい。
  175. 上林與市郎

    上林委員長 出していただけますね。
  176. 川上為治

    ○川上政府委員 商工委員会の方にも出してありますので、できるだけ早く出します。     —————————————
  177. 上林與市郎

    上林委員長 お諮りいたすことがございます。すなわち理事山本正一君より、本日理事辞任の申し出がありました。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  178. 上林與市郎

    上林委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  次に、これが補欠選任でありますが、これは先例によりまして、選挙の手続を省略して、委員長おい指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  179. 上林與市郎

    上林委員長 御異議なしと認めます。  それでは、委員長は、理事本名武君を指名いたします。     —————————————
  180. 上林與市郎

    上林委員長 またお諮りいたしますが、政府関係機関収支日本開発銀行電源開発融資)に関する件につきまして、さらに調査のために、証人として、来たる二十八日午後一時より、関西電力株式会社社長太田垣士郎君、同社本店総務室支配人藤田友次郎君を喚問し証言を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  181. 上林與市郎

    上林委員長 御異議なしと認め、衆議院規則第五十三条により議長を経由して出頭を求めることといたします。  またお諮りいたします。歳入歳出の実況(防衛庁におけるくつの調達)に関する件につきまして、調査のために、証人として、来たる二十八日午前十時半に、防衛庁調達実施本部検査第二課長久保功君を喚問して証言を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  182. 上林與市郎

    上林委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。よって衆議院規則第五十三条により議長を経由して出頭を求めることといたします。     —————————————
  183. 上林與市郎

    上林委員長 またお諮りいたします。ただいま小委員会が三つ設置されておりまして、それぞれ調査中でありますが、委員辞任等によりまして小委員及び小委員長に欠員が生じました際の小委員及び小委員長補欠選任につきましては、適宜委員長より指名することに御一任願っておきたいと存じます。これに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  184. 上林與市郎

    上林委員長 御異議なしと認めさよう決します。
  185. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 実は会期もだんだんと迫っておりますが、さっき御質問申しましたように、間組の工費三十五億値上げがきまるというようなことが二、三日前新聞にありました。三十五億円に値上げすることがきまりましたら、これはみんな国費ですから大へんなことでありますので、真相を明らかにしておきたいと思いますから、この際、他の関西電力の社長なんぞお呼びの日に小坂電源開発会社の総裁を参考人として御喚問願っていきさつを詳細に聞いておきたいと思いますが……。
  186. 上林與市郎

    上林委員長 吉田委員の発言の要旨は十分了解いたしました。幸い明日十一時から理事会を招集いたしますから、その際提案願って理事会で決定さしていただきたいと思います。  次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時十二分散会