○石渡
会計検査院説明員 前会におきまして三二八ページのところまで御
説明申し上げてございますが、引き続きまして三二九ページの二二〇一号から二二〇七号、「
昭和二十八、二十九年発生
災害復旧事業の査定額を減額させたもの」これ以下について御
説明申し上げます。
この
会計検査院の
検査は、本体としましては、工事が終ったあとその工事がよくできているかどうかということについて
検査をするのでありますが、二十八年度からこの工事の完成前に査定の
内容を
検査しまして、もし査定に不当な点があれば御注意申し上げる。そうして直していただく方が工事が完成した後に申し上げるよりも直すことも簡単にできますし、効果が上るという見地から、二十九年度も引き続きまして工事完成前に
検査をしたのであります。その結果二十八年度と同様な
案件がまだ見られまして、同一の個所について建設省と農林省との双方が重複して査定をしている、あるいは
災害がないのに改良工事として査定をしている、あるいは設計の
内容が現地の事情に即さない過大なものになっているというような
事項がございまして、御注意申し上げましたところが、建設省におかれましても五百八十工事につきまして、工事費において二億二千六百万円のものを減額された次第でありまして、件数におきましては相当な件数でございますが、二十八年度に施行しました当初の
検査から見ますると、件数も
金額も相当減っておりまして、ちょっと御
参考までに申し上げますれば、二十八年度は
検査した個所が一万四百十九カ所、これに対しまして不当
事項の含んでいる件数が約二〇%になっております。それが本年度は、
検査個所が九千四百五十五、それに対して不当
事項を含んだ工事の件数は七・二%、こういうふうに二〇%から七%くらいに減っております。それから
検査の
金額といたしましても、二十八年度は
検査をした
金額が五百一億六千百万円、これに対しまして約四・一%の不当工事の
金額を摘発しているのでありますが、二十九年度は
検査した
金額が百四十五億ばかりでありまして、これに対して不当工事費の
金額は一・八%、昨年の四・一%から一・八%に減っております。こういうふうに工事完成前の
検査におきましても、昨年と比べますと成績がだいぶ上っておりますことは、建設省におきますところの
監督が徹底をしてきた。これは建設省が工事の査定をされます場合に、現地に行かれまして実際に現地を見て査定される場合と、机上査定がありますが、間違いが起りますのは机上査定の部分について非常に多く発見されるのであります。そうした例にかんがみまして、建設省におかれましても、できるだけ現地査定を実行される、こういう方針で実施されております。二十八年度の
災害につきましては、全体の査定に対する実地査定の割合が八一%になっておりますが、二十九年度の
災害につきましては、実地査定が九四%まで向上しているというふうに、非常に
努力されている結果でもありましょうし、また
災害の申請をする
地方の町村等が自覚をされて、そういいかげんな申請をしなくなったという点もこれによって現われていると思います。しかしなおさっき申しましたような件数の不当査定が相当ありますことはきわめて遺憾に存ずることであります。
次に、この分類をしまして、二二〇一号から二二〇七号まで上っておりますが、ごく簡単に申し上げますと、二二〇一号は重複査定の代表的な事例でありまして、和歌山県八幡村が施行しました
災害復旧工事につきまして建設省の護岸工事と、農林省の路側工事が重複して査定されている。これは、建設省は二十九年十一月に査定しまして、農林省がその後三十年一月に査定している、こうした事態でありまして、建設省をやめまして農林省の方で施行するといった例でございます。
また同じ県の川上村が施行した工事ですが、この工事は建設省の護岸と農林省の護岸がダブっておりまして、農林省の方は二十八年
災害としまして二十八年十月に査定している。それを建設省が二十九年十一月にダブって査定をしたという例であります。
次に二二〇二号は、愛媛県の伊方町の施行しました復旧工事ですが、これは建設省の護岸工事と農林省の堤塘工事がダブっている例でありまして、これは農林省の査定が二十九年十月、建設省の方はその直後の二十九年十一月に査定をしましてダブった査定をした次第であります。
以上いずれも農林省と建設省とが
協議されまして、建設省の工事の方を解工している例でございます。
次には和歌山県が施行した工事でございますが、二二〇三号でございます。これは
災害の事実がないのに
災害復旧として工事をやっている。三百八十四万円の査定額でありますが、このうち下流部の方は全然被害がない、上流部の方は被害が軽微であって、この設計にあるような大規模な工事はする必要はない。もっと小規模な工事で間に合う。三百八十四万円の工事費は百七十三万円ばかりで間に合う、こういう
ケースでございます。
それから、同じ和歌山県の川原村が施行しております村道の復旧工事です。が、これは幅員メートルばかりのごく小さな道路でございまして、しかも本件で工事をしましたところから五百メートルばかりでこの道路は行きどまりになっている。そうした道路に延長四十五メートルの鉄筋コンクリートの機道を作っている。これはもともと幅員二メートル未満の工事ですから、負担法による適用の対象外になるべき事態であります。
その次の二二〇四号は、島根県邑智郡の施行した工事であります。これは床止工一基復旧しておりますが、この二基は全然なかったものである。その上流と下流に古いものがありまして、本件の工事の一基はもともとなかった。しかも河床低下のこの
災害復旧をするような事態がこの分については見出されないという事態でございます。
その次の二二〇五号は、徳島県が施行した工事でありますが、これは被害が軽微である。しかもこれは天然の海岸でありまして、まわりに別に施設物がない、天然の砂丘になっておりまして、こうした場所には原則は負担法の適用がないのでありますが、特別例外として侵蝕のおそれがあるような場合に例外的に
災害復旧として認めるというふうになっておりますから、工事としましてもできるだけ簡単な
範囲にとどむべきである、こうした考えで査定を直しまして、当初査定額が一千万円ばかりのものが六百十七万八千円、これで間に合うという事態であります。
次の二二〇六号は設計過大の問題でありますが、現地の
状況をよく見なかった、それで実際の地盤よりも設計地盤を低く見ましたために水たた遂に使うところの玉石コンクリートの数を非常に多く積算しまして、設計には五百個必要であるというようになっておりますが、現地を見ますと地盤がそれほど落ち込んでいない。従って二百三十二個で間に合うという事態でございます。
次は山口県の施行する大坊川の
災害復旧工事でありますが、これは川の片側を掘さくしまして土を二千四百六十一立米掘る。その掘った土を三キロメートルも向うに運搬するというふうに一方では査定しておりまして、また一方ではその対岸におきましてほぼ同量の土量を築堤として用いるというふうになっております。この築堤の査定の場合に、築堤用の土の採取場所をこの対岸の掘さくしました場所として考えれば築堤をする工事費とほぼ同額でもって掘さくもでき、築堤もできるという事態でありまして、そういうふうに考えてやればさきの掘さくの方の査定額の二百八十万ばかりは節減できるという事態でございます。これは前の掘さくの方は二十九年十一月に建設省が査定しておられまして、築堤の方は三十年一月に査定しております。ごく接近しているのでございますが、こういうふうに担当者の連絡が不十分なために両方がばらばらに査定してしまったという事態でございます。
それから二二〇八号につきましては前に御
説明してございますから省略いたしまして、二二〇九号について御
説明申し上げます。これは安全保障諸費の補助金にかかる問題でございますが、群馬県の妙義山演習場に連絡する道路の改修工事といたしまして五百五十三万五千円の補助をしております。しかしこの妙義山の演習場は三十年の二月二十八日に
使用解除となりまして、本件工事はその後の三月二十五日に請け負わしております。この工事は横川の駅から演習場までの連絡道路でありまして、本件工事の場所から手前の横川駅寄りの方は大体において改修が済んでいる。橋も四カ所ありまして、そのうちの三カ所は工事が済んでおる。若宮橋が
一つ残っていた。それで本件工事の一番演習場寄りの方の橋ができておりまして、その間の道路がなおできておらぬ。それで先の道路を生かし、本件道路と先にでき上った道路の区域まで活用したいというような建設省の御意向から、本件工事をやられたようでありますが、これに関連しますほかの区の工事は、三月一日までに着工しない工事については全部打ち切っておられます。特に本件の工事だけ例外的に、その後に
契約をして着工した分について補助を出しておられますが、道路を利用する上において必要がありとしますれば、この妙義地区の演習場はすでに廃止になっておりますから、本件は安全保障諸費からの補助でなくて、本来の
予算から出してやられるべきだというふうに考えております。以上をもちまして御
説明を終ります。