○石渡
会計検査院説明員 それでは御説明いたします。二十八年度の検査
報告につきましては、
さきに一応の御説明を申し上げてございますから、一般的な説明を省略しまして、二十九年度の検査
報告について一般的な御説明をいたします。
まず二十九年度の検査
報告の三〇五ページでございますが、この失業対策事業補助金の精算
状況を検査院で検査したのであります。これは緊急失業対策法によって失業対策事業に対する補助金を交付するのでありますが、これは公共職業安定所の紹介を経た就労適格者等に対して地方
公共団体が支払った賃金あるいは資材費、これに対して補助を交付するものであります。それで二十九年度中の交付済み額が百十九億に対しまして、労働省
関係の
経費としては非常に大きなウエートを占めておるのでありますが、検査院におきましては、全国の千三十八事業主体のうち約九%に当る北海道外二十一都道府県、七十五市町村、九十七事業主体について国庫補助金の精算
状況を
調査したのであります。その結果、補助金基本額に算入してはならない
経費、すなわち労力費におきまして、就労適格者でない者に対して支払ったもの、職業安定所の紹介を経ない者に対して支払ったもの、あるいはこの基本賃金以外の手当等に対して補助を交付している、また資材費におきまして、本事業に
使用しなかった資材の
経費等に対して補助金を出しておる、あるいは補助対象外の事業に使った
経費に対して補助金を出している、こうした補助の基本額に入れてはならないところの
経費を除外して、検査院におきまして再計算しますと、国庫補助金がよけいに来過ぎておりまして、返納または減額を要するものが山形県外十二府県におきまして七百六十五万七千五百八十円というものがあります。そのうち一事業主体でやり過ぎの
部分が二十万円以上あるものをあげますと、そこに表がありますように、二〇五五号から二〇六五号まで十一件、六百八十八万三千二百十二円、これが国庫補助の返納または減額を要する金額になっております。検査院におきましては前年度におきましても失業対策事業の検査を一部施行しまして前年度におきましても三件ばかり補助金のやり過ぎの
部分が検査
報告に上っておりますが、本年はもっと手広くこうした事態があるのじゃないかというねらいを持ちまして検査を施行しましたところが、相当多くの件数が出て参ったのであります。こういうような事態を生じましたのは、各都道府県の職業安定主務課の事業主体に対する指導監督が十分ではない、かつ労働省における認証において、認証してない事業を相手がやったような場合に、精算の際に確実に精算の
状況を確めて、認証外の事業をはずすというような注意が十分に行き届かなかった。要するに精算の審査について注意が行き届かなかったという点があるように認められます。この中にもありますように、対象の事業をやったように精算を作って しおりますが、実際は認証以外の事業をやりまして、そのために労力、資材を使った、それをあたかも認証の該当事業をやったように精算を作っている、こうしたものも中に含まれておりまして、各都道府県の主務担当者が、現場に行ってよく監督をする、こういうような注意が十分に行き届かなかった点があるように思われます。
それから失業対策事業の事務費の補助金について見ますると、事務費の補助と申しますのは、その府県が失業対策事業の監督指導に要する必要な事務費、旅費とか文具費、臨時職員の人件費、こうしたものの
経費に対する補助でありますが、この補助の
目的を逸脱しまして、その補助金と府県の
経費あるいは寄付金、そうしたものを一緒に合せまして、事務庁舎に類するものを作ってるものがありまして、こうしたことは、もし必要があれば官庁営繕費とかいうような正当な予算科目で経理するのが適当であると思われます。
それから次に労働者災害
補償特別
会計についてでありますが、この損益
状況を見ますると、利益の部が保険料等収入が約二百五十一億、損失の部が保険金等約二百六十八億、こうありまして、差引十六億の損失になっております。これは前年度が五億二千万円の損失であったのに比べまして、だいぶ損失がふ、えております。この損失がふえましたおもな原因は、災害
補償の件数が二十八年度に比べまして約一〇%も増加している。それに対して保険金の支払高も約一六%ふえている。しかるに保険料の収入の方では、約四億五千万円程度の増加にとどまっている。こうしたことが労災保険の赤字になった大きな原因であると思われます。労働省におかれましても、こういうような事情にかんがみまして、三十年度からは労災の特に発生しそうな危険な事業につきまして、たとえば高い腰堤の
建設事業とか、あるいは水力発電の
建設事業とか、こうした事業については非常に大幅な保険料の引き上げをしまして、そのつじつまを合せるように考えられております。
なお、労災保険特別
会計につきまして注意を要する
事項を申し上げますと、二十九年度の保険料の収納未済額が約六億五千万円に上っておりまして、既往の二十八年度以前の収納未済を合せますと、十三億円ばかりの
多額に上っておる。これについて労働省におかれましてもいろいろと対策を考えておられる様子でありますが、なお一段の努力をされて、この収納未済額の徴収について努力をお願いしたいと思います。
もう一つは、保険料の徴収決定が漏れているものが相当にある。これは次にあがっておりますが、この徴収決定の漏れているものにつきましては、毎年検査院でも御注意を申し上げておるのでありますが、なおこれが跡を断たない、こういう点につきまして、なお努力をお願いしたいと思います。
それから保険料の納付を怠った場合には、延滞金を徴収するということに規定上なっておりますが、この延滞金の徴収が漏れているものが非常に多い。保険料は徴収しているが、延滞料は取っていないというのが件数が非常に多く、全部で約二万件、金額にしまして二千五百万円、こうした
多額になっております。この延滞料に対しまして毛、適当な対策をお願いしたいと存じます。
それからさっきの徴収決定さえしていないという
事項につきまして、二〇六六から二〇六七号にあがっておりますが、これは労災保険でおもにこうした事態が発生しますのは、土木建築事業というような有期事業、期間がきまっておりまして、ある期間で
工事ができ上ってしまうと、保険
関係がそれで一応終るというような有期的な事業におきまして、土木建築
業者から申告をしない、そうして災害が起った場合に保険料をもらうために申告をするというような事態が多くありまして、災害が起きなければ知らぬ顔をして、ほおかぶりをして、保険料を納めないという事態が相当あるのであります。検査院におきましても、本年はその有期事業に主力を注ぎまして税務署そのほかに府県等から別に資料をとりまして検査をしたのでありますが、この徴収不足の大
部分は土木請負等の有期事業について見られるのであります。全体の金額が、二百七十五事業場、三百七十八万円でありますが、そのうち、今申し上げました有期事業は百七十六事業場、二百十一万円となっております。そのほかが九十九事業場、百六十六万円というふうになっております。従いまして、こうした問題につきましても、有期事業について
労働基準局等におきまして十分に現場の監督をされまして、よく実態を把握され、またこの
業者の賃金の申請につきましても、中には事実に合わない点がありますから、そうした
業者の把握につきましてもなお一そうの御努力をお願いしたいと存じます。
それから失業保険特別
会計について申し上げます。失業保険特別
会計は、損益の
状況を見まするのに、利益の部が保険料収入等三百八十三億、損失の部が保険金等三百七十七億、差引五億円ばかりの利益に一応なっておりますが、本年度中に、保険金財源が不足いたしまして、積立金から十三億五千万円ばかりの受け入れをしております。従って、この受け入れした
部分を
考慮しますというと、実体的には約八億円ばかりの損失になっております。このように欠損になりましたのは、失
業者が非常にふえた、失業保険金の受給者が前年度を平均しまして約四十四万人ばかりでありましたが、本年度はこれが非常にふえまして六十万人というふうに著しく増加している、こうしたところにおもな原因があったと存ぜられます。
この
会計につきまして注意を要する
事項を申し上げますと、まず第一に、保険給付について給付の適正を欠いている事例が相当に見受けられる。それから次には、保険料の収納未済が相当
多額に上っている。既往年度分の収納未済だけで約十二億万円に達しております。それから保険料の徴収決定さえしていないものが生じている。これらに対しては適切な措置を講ぜられるようお願いしたいと存じます。
次の二〇六八号は、上野公共職業安定所におけるところの不正行為でありますが、これは失業保険の保険金の支払いに当りまして、担当者が必要支出額よりもよけいに小切手の金額を書きまして、小切手の原簿にはその支出額を書いて、その
差額をポケットしたという事件でありまして、
本件につきましては目下訴訟が係属中でございますが、この
責任者及びこの犯人に対する処分につきましては、労働省ですでに懲戒の処分をとっております。
次には、二〇六九号から二〇七七号の保険給付の適正を欠いているものでありますが、これは、本年度の検査におきまして初めてこうした点にわれわれも重点を置きまして広く見たのでありますが、相当に不正事件があがっておる。三十年三月中における保険金受給者は六十六万九千人、非常に多くの失
業者が出ております。それでこれに対する保険給付がどうなっているかという
状況につきまして、全国に六百六十カ所の安定所がございますが、そのうち九十二カ所について見たのでありますが、まずねらいとしましては、一応失業しまして、保険の給付を受けておる、その受けておる者がそのうちに再就職した、こういう者にねらいをつけまして、四千百四十八名について実地に検査したのであります。全体の受給者六十六万に対しまして、検査しましたのはわずかに四千名ばかりでありますから、それによって全体を推定することは無理と思われますが、この四千人検査しました中で不正な者が六百二十九人発見されております。調べました対象は、おもに不正受給がありそうだという職業の種類を選定しておりますから、この率をもって全体を類推することはできないと思いますが、しかし相当程度の不正受給があるということはその一端がうかが、えるように存じます。この不正受給しております者を態様別に分けますと、受給する資格を喪失しておるのに給付したもの、すなわち一たんは失業して受給する資格ができましたけれども、そのうちに就職しているにかかわらず知らぬ顔をして失業保険を受けている、これが一番多いのでありまして、六百二十九人のうち五百十四人がそれに該当しております。金額から申しますと、不当な全額千百万円のうち、受給する資格を喪失している者に給付したもの、これが五百十四人、七百四十七万円、大
部分がこれに該当しております。次は、失業してすぐにほかのところに就職しまして、当初から受給する資格がないのに受けている、これが九十三
事項、三百四十一万円。次は、離職票に記載する賃金を水増ししたもの、これは本人が作ったもの、あるいは旧
使用人と結託してやったもの、いろいろ事態はございますが、これが二十二人、十四万七千円、こういうような数字になっております。
こうした事態を生じますのは、要するに失業保険の担当機関におけるところの受給者の
状況に対する把握が不十分である、こういうことに尽きると思われるのでありますが、労働省におかれましてもこうした点に非常に苦心されまして、三十年の九月に失業保険法の改正をされまして、従来離職した場合に、離職したということを職業安定所に届け出る義務は
業者にはなかったのでありますが、今度はその改正によりまして
業者が届け出る、それによって労働大臣が被保険者資格の得喪の確認をする。そしてその施行規則によりまして、各職業安定所に被保険者台帳を作りまして、失業保険金の受給の資格あるいは本人の就職の
状況、こういうのを一吉瞭然と把握するような建前を作っております。従って、今後におきましてはこうした制度を活用されましてこの不正受給の問題は非常に改善されるだろうということを期待しております。
今の失業保険の受給当を得ないもののうち、都道府県別に二十万円以上のものをあげますと、そこの表にございますように二〇六九号から二〇七七号まで、五百四十一人、千十四万三千円ばかりになっております。
次は、失業保険料の徴収決定を漏らしたもの、これについて検査をしたのでありますが、全国の事業所二十三万五千、このうち五百八事業所について
調査をした結果、保険料及び追徴金の徴収不足を来たしているものについて、検査院の注意によって徴収決定させたものが九十四事業所、二百五十八万円ばかりになっております。
このような事態を生じましたのは、
関係道県の担当の方におきまして、事業所についての
調査が十分じゃない、この給与等につきましてしっかりと把握をしてないということがおもな原因でありまして、今後におきましては、ほかの社会保険あるいは税務署等と連絡をされまして、給与の実態をよく握るということが必要のように思います。
そのうちおもな
事項をあげますと、二〇七八号から二〇八三号に記載したような
事項でございます。以上。