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1956-02-07 第24回国会 衆議院 決算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月七日(火曜日)    午前十時五十五分開議  出席委員    委員長 上林與市郎君    理事 赤澤 正道君 理事 臼井 莊一君    理事 櫻内 義雄君 理事 田中 彰治君    理事 片島  港君 理事 吉田 賢一君      小笠原八十美君    椎名悦三郎君       木名  武君    神近 市子君       山田 長司君    吉川 兼光君  出席国務大臣         労 働 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員         大蔵事務官         (管財局長)  正示啓次郎君         労働事務官         (大臣官房会計         課長)     三治 重信君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      富樫 總一君  委員外出席者         通商産業技官         (公益事業局開         発業務課長)  市浦  繁君         労働事務官         (職業安定局失         業対策部長)  渋谷 直蔵君         労働事務官         (職業安定局失         業対策部業務課         長)      横山 武蔵君         会計検査院事務         官         (第三局長)  石渡 達夫君         参  考  人         (東京都労働局         失業対策部長) 坂田 正一君         専  門  員 黒田 久太君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和二十八年度一般会計歳入歳出決算  昭和二十八年度特別会計歳入歳出決算  昭和二十八年度政府関係機関決算報告書  昭和二十九年度一般会計歳入歳出決算  昭和二十九年度特別会計歳入歳出決算  昭和二十九年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和二十九年夏政府関係機関決算書  派遣委員より報告聴取  参考人より実情聴取     —————————————
  2. 上林與市郎

    上林委員長 これより会議を開きます。  去る一月十一日議長の承認を得まして、国有財産管理及び処分状況、並びに政府関係機関の収支に関する実情調査のため、現地委員派遣いたしたのでありますが、本日は派遣委員より報告を聴取し、委員会における調査参考にいたしたいと存じます。まず第一班片島港君より御報告を求めます。
  3. 片島港

    片島委員 先般決算委員会より派遣をせられましたる私外一名が、徳山燃料廠視察いたしたのでありますが、その概況について御報告を申し上げたいと思います。  徳山市所在旧第三海軍燃料廠は、旧四日市、旧岩国各燃料廠とともに、旧軍の三大燃料廠として、その土地建物工作物機械施設等の膨大なること、またその位置はそれぞれ太平洋岸に面し、将来東洋における石油精製及び貯蔵中心地となり、単に国有財産管理処分の問題としてよりも、石油政策及び国防上、また平和産業の上から見るも、重要な意義を有するものであって、これが三燃料廠については、三十年八月二十六日閣議了解事項として別記のように具体的処理条項を申し合せているが、これらの施設をめぐって、石油精製業者間、特に英米資本と密接なつながりを持つ業者間にも、種々の画策があり、これが成り行きについては、深い注意を要するのでありますが、主として旧徳山海軍燃料廠概況を御報告申し上げます。  (一)まず概況についてでありますが、旧徳山海軍燃料廠は、旧海軍原油を南方より輸送して精製し、当時連合艦隊根拠としていた瀬戸内海徳山沖の各艦船に給油するほか、各地航空隊工廠等に給油していたのでありますが、これがため徳山市外山中には地下に五キロ大タンク十一基を施設、戦時五カ年間の貯油を目標として精製しつつあったのであります。しかるに終戦直前爆撃を受けて、多大の損害を受け、しこらして終戦大蔵省がこれを引き継ぎ、普通財産として管理処分しつつあるのでありますが、その概要は左の通りであります。  (1)当初引き継いだもの  土地二十二万三千七百十坪余、建物三万二千六百七十一坪余、工作物百六十五件、機械二千九百九十九台、船舶三隻、これが台帳価格は三千百二万六千円であります。  (2)右のうちすでに処分したるもの  土地所管がえをしたるもの四千百十八坪余、土地の売り払いをしたるもの八万九百十九坪余、建物の売り払いをいたしたるもの二万五千五百九十七坪余、工作物で売り払いをしたるもの八十一件、機械所管がえをしたるもの五十八台、機械の売り払いをいたしたるもの二千四百三十七台、機械の貸付百九十七台、機械駐留軍使用四台、船舶所管がえ三隻  (3)未利用として現に財務局において保管のもの  土地十三万八千六百七十一坪余、建物七千七十三坪余、工作物八十七件、機械三百三二件、売り払ったもののうちおもなものは次の通りであります。  (二)出光興産株式会社に対する払い下げ  出光興産石油販売業者であって、原油を輸入してこれを精製する設備を有していないので、徳山燃料廠払い下げを受け、これを根拠として、主として米国の資本により、ここに精製工場施設する計画を立て、すでに廿四、廿五両年度において左記の通り土地建物等払い下げを受けたのであるが、石油精製のほかこれに付随する石油化学精製工場を設置するには、少くとも二十万坪以上の土地を必要とするので、下記徳山払い下げ土地返還を、さらに払い下げ予定であり、また昭和石油下記通り払い下げを受けた土地を、再び国は返還せしめ、これを出光払い下げしょうとする計画で、昭和石油に対してこれが代替として、旧四日市海軍燃料廠払い下げしょうとしている。しかし閣議了解事項としては出光に対する払い下げ予定地東川以東として、現に昭和石油払い下げられた地域は含めていたいが、同了解事項中、旧四日市海軍燃料廠の処置の中には、昭和石油払い下げる旨が定められているのであって、昭和資金関係においては、四日おと徳山をともに払い下げを受けることは不可能な状況にあり、徳山については目下何らの工事も進めておらず、荒廃のまま捨てられ、四日市については、石油各社払い下げ地の分割について協議が進められ、多数の就業員によって着々と準備が進められております。  出光興産払い下げられた土地建物等は左の通りであります。  第一回払い下げ分として、土地五千八百三十一坪、価格二百十三万円、単価坪当り三百六十五円、建物坪数千三百三十六坪余、価格四百七十五万四千円、単価三千四百七十五円、工作物一式六万八千円。第二回払い下げ分として土地一万八千三十八坪、価格五百九十五万三千円、単価三百三十円。建物七十三坪余、価格二十四万六千円、単価三千三百六十九円。工作物一式五万二千円。その他九件五十九万七千円であります。第一、二回とも契約はすべて随意契約であり、その使用目的は、ともに石油精製工場であって、向後十年間は国に無断使用目的を変更し、または廃止することができないこととなっている。なおこの物件契約締結後三カ月以内に(第二回の分は一カ月以内)に指定用途に供さねばならぬこととなっている。  前記払い下げ価格について考察するに、本廠は旧海軍が巨額の経費と、強権を使用して施設したものであって、瀬戸内海中心地に位し、陸上は山陽本線徳山駅に接近し、海上は自然の良港に加え、人工による施設は完備し、中央突堤は二百メートル、東突堤は二百五十メートル、水深は九ないし十二メートルで、優に二万トン級の船四隻は同時に係船可能である。また徳山駅からは坂内に教条の鉄路が引かれ、海陸の運輸はきわめて至便であり、石油貯蔵については、鉄管により山腹に五万トンタンク十一基(一基は破損せるも改造は容易である)同時に五十万トンの貯油ができる。わが国唯一の大貯油庫を控えている。従ってこれが土地の売価は、一般地価と比較して考えられるべきものではなく、かかる土地を新たに入手するについては、どれほどの経費を要するかについて考慮せられねばならぬ。しかるに一般住宅地としての市価との比較においてもきわめて低廉であるのみならず、二万トン級の係船可能なる岸壁に接する土地が、わずかに坪当り三百三十円ないし三百六十五円で払い下げられていることは不当もはなはだしく、少くとも精油施設として地理的にも、工場施設しても、最適地を得んとするならば、坪当り十万円を投ずるも至難である。いわんや大部分外国資本によらんとする場合、将来のわが国防的施設の増強と考え合せても深い考慮が払われねばならぬのである。さらに出光興産に対しては、後記徳山市にすでに払い下げられたる土地二万一千余坪を返還せしめて、これと接属する未処分国有地約十三万八千坪余、さらに昭和石油に対する既払い下げ地四万五千余坪を返還せしめてこれもあわせて出光払い下げられんとしているが、出光はこれが払い下げを受けたる後はこれに接属する海岸約十万坪を埋め立てする計画を持っている。しかして未利用地十三万八千坪の台帳価格は、四十六万余円、すなわち坪当り三円余であるが、かかる台帳価格基準として払い下げ価格を算定せらるるならば、もってのほかといわねばならぬ。  またすでに払い下げられた建物払い下げ価格は、平均坪当り三千二百六十九円ないし三千四百七十五円となっているが、その建物の中には鉄筋鉄骨煉瓦等もあり、将来払い下げられようとする建物中には、特に鉄筋鉄管のものが多く、しかも建設年次昭和十七年以降のものが多いので、小修繕により半永久的の建物となることも可能であるから、出光に対するこれからの払い下げについても、特に部外専門家鑑定等を待って、国損のないように留意されなければならない。  (三)昭和石油株式会社に対する払い下げ  旧徳山燃料廠処分地、川東は、米軍に提供されているが、残存地東川以西約四万五千坪に対しては、大蔵省昭和二十八年八月二十一日の省議において、石油精製業者を指名して競争入札に付することとし、一応通産省に対して支障の有無を照会したところ、通産省昭和二十八年九月二日付をもって、昭和石油に売り払うことが適当である旨回答があったので、かねて払い下げ申請中であった、昭和石油払い下げることとし、昭和二十八年九月四日の閣議において小笠原大蔵大臣から口頭でこの旨を報告した。  昭和石油は本施設最新式装置を備、えた新製油所建設して、経営の合理化をはからんとする趣旨であった。これに対して払い下げられた物件及び価格等は左の通りであります。  上地四万五千百七十三坪余、価格八千八百八万八千余円、単価千九百五十円。建物坪数は四千五百十八坪、価格五千八百五万七千余円、単価一万二千八百五十円。工作物四十一件、価格千七百四十五万七千余円。立木竹十九石、価格九千五百円。機械器具百四台、三千五百九十二万余円。合計一億九千九百五十八万四千余円。  右は随意契約であって、払い下げ金額は十カ年分納(ただし年八分の利子)払い下げ物件を担保とすることとし、使用目的石油精製施設とし、払い下げ後二カ月以内に着工を要し、十カ年間はその用途を変更し、または第三者第三者転売または貸付することを禁じ、やむを得ない場合は財務局承認を要することを定めています。  昭和石油はこれが払い下げを受けた後は、着工後二カ年で原油精製能力月産一万五千バーレルの常圧蒸溜装置を主体とする一連最新式製油装置とし、これに付随する諸設備建設しようとするものであって、これが資金シェル社借り入れ十八億円、社債発行五億円、長期借り入れ四億五千万円、短期借り入れ八億五千万円、計三十六億円、しかるに出光石油販売業から精製業を営むこととなり、これが施設として前述の通り徳山燃料廠払い下げられたが、石油化学一連工場設備とするには狭いため、未処理国有地のほか、徳山市のすでに払い下げを受けたる土地返還と、昭和の本払い下げ土地返還を国から払い下げ計画を立て、大蔵省としては徳山市に対しては次のように払い下げ契約違反理由にこれが国に返還を求め、昭和石油に対しては、本契約にある払い下げ後二カ月以内に着工しないことを理由としてこれが返還を求め、代替として旧四日市海軍燃料廠残存地払い下げ計画を進めている状況であります。  未払い下げ契契約に解約せらるる予定ではあるが、もしこのまま払い下げられるとしたならば出光ほどはなはだしくはないが、この土地地理的条件において石油精製工場としての条件において最好適地であって、新たにこのような好条件を得んとするならばとうてい土地坪当り千九百五十円で入手することは困難であり、鉄筋鉄骨等建造物機械類等においても格段の低廉であり、いわんや昭和石油はその八割を英資本に待っている関係上、旧四日市燃料廠との代替払い下げについても深い考慮が払われねばなりません。  次に徳山市に対する払い下げ契約解除のいきさつについて申し上げます。徳山市においては昭和二十五年三月三十一日付で、財務局契約を締結して、旧徳山燃料廠土地建物工作物等払い下げを受けることとなったが、市がこの土地払い下げを受ける目的は、市民住宅建設にあるとしているが、この契約締結の前後の経過から見て、市民住宅建設にあらずして徳山市内住福燃料株式会社転売する目的か、あるいは住福が直接財務局から払い下げを受け得られないので、徳山市に委嘱してこの名義を借りて、随意契約、特に低廉なる払下金によって払い下げを受けたのではないかと確定せられるのであります。徳山市に対する払い下げ契約の要項を申し上げますならば、土地二万一千余坪、価格百八十三万円、単価坪当り八十七円。八十七円といいますと、相当の価値のあるこの土地において、一坪ピース二個の値で払い下げられておるということに相なるのであります。建物は二百九十八坪余、その価格九十九万六千余円、工作物一件、大万三千円、計二百八十八万九千余円であります。使用目的市民住宅、十カ年間は国に無断使用目的を変更または廃止してはならない、三カ月以内に使用目的用途に供すること。かくして徳山市は財務局支払い代金住福から受領してこれを納入し、所有権の登記をした。しかるに住福はこれが払い下げ契約より以前、鉄道局から現に住福工場所在地鉄道拡張敷地にしたいから、他に移転方要望があったので、徳山市の払い下げを受けた本土地転売方を市は財務局に申し入れたが、財務局はこれが転売を許可せず、やむなく徳山市は住福に対して五カ年間の地上権を本土地に設定する契約を締結しました。  しかして昭和二十五年十二月二十三日駐留軍徳山市及び出光その他の国有地等接収したが、住福は必ず近い将来において解除せられるものと考え、徳山市との契約はそのままとせられていた。しかもこの接収による使用料及び建物工作物等取り払いに対する補償については、表面所有者である徳山市の会計に収納し、徳山市はこれを次の通り住福損害金として交付した。しかして右の土地は三十年一月十四日接収解除した。使用量合計は百五十六万六千余円であります。建物取り払いに対する補償合計百五万九千余円であります。  かくして徳山市は財務局に対しては土地建物払下金として二百八十八万九千余円を支払い、これを住福転売して四百五十二万五千余円を収納し、その差額百六十三万五千余円を利得し、さらに住福はこれを駐留軍使用せしめて、特■から二百六十二万六千余円の使用料及び補償金を得たことになる。しかも後述の通りこの契約解除によって、土地を国に返還するとともに、財務局から売払金の返還を受けることとなれば、結局国庫の損害において徳山市及び住福が不当利得したこととなる。  これに対して徳山市はこの差額は不当利得したのではなくして、当該土地財務局より一時使用を受け博覧会を開催したときに整地をした、その金に充当したと称しているが、この博覧会は大徳山博覧会と称し、単に徳山市のみの主催ではなく、しかも本払い下げ契納の二年前、昭和二十三年三月から五月まで開催されたものであって、すでにこれが整地については、当時の一時使用契約の折に解決がついているはずであるから理由にはならない。いずれにしても公共団体である徳山市が、国を欺いて払い下げを受け、しかもこれを転売して多額の差金を不当に利得したとすれば、しかもこの金が万一市の収入に入っていないとするならば、不正もはなはだしいといわねばなりません。これについて市当局は当時の書類は見当らないと称しております。  以上のようにこの物件払い下げについては不当性があったので、財務局は三十年五月二十七日付で契約違反理由で払下契約解除する旨徳山市長あて通達しております。概略以上でありますが、なお専門員室の方に文書になっておりますので、各委員の方にはこれを配付して御了承を得たいと存じます。  なお私の方は吉田委員及び山田委員も出張いたしておりますので、また各委員からお尋ねがありますならは、両君からも補足をしていただくことにいたしまして、私の御報告はこの程度にとどめます。
  4. 上林與市郎

    上林委員長 次に第二班、臼井荘一君より御報告を求めます。
  5. 臼井莊一

    臼井委員 第二班の視察報告を申し上げます。  第二班のメンバーである上林委員長と私が調査いたしましたのは、北陸電力株式会社の神通川第一発電所貯水池左岸、すなわち富山婦負細入字片掛地内における沿岸崩壊の問題であります。これが詳細な経過等についてはこれまでの委員会において明らかにされておりますので省略いたしますが、ただ崩壊の具体的な事実について、通産省地質調査所調査並びに地元の指摘する事実、さらに会社地元との主張対立点等について、まず簡単に申し上げます。  昭和二十八年十月三十一日、第一次仮通水後、本件貯水池左岸、すなわち富山婦負細入字片掛地内において崩壊等の発生を見るに至ったのでありますが、これについて通商産業省工業技術院地質調査所調査によれば、崩壊の年月日及び規模は次の通りであります。第一回がA地点昭和二十八年十一月三日、約四十九坪、高さ約十メートル、幅約十二メートル。B地点、同日、約十五坪、高さ九メートル、幅五メートル。第二回がC地点昭和三十年一月二十八日、約九坪、高さ五メートル、幅五メートル。これに対して地元片掛部落においては、崩壊第一号ないし第六号の六カ所、陥没一カ所であると主張しております。地質調査所調査によると、崩壊沿岸の不安定な砂礫層の存在と、工事用地山荒しといいますか、いろいろな建設用材料を流して、地はだの荒れた跡が雨水のために崩壊を生じたもので、湛水崩壊の原因とは考えられない。さらに南北東西の両湖壁ともに基礎に強固な岩盤が存在して、この砂礫層支持盤となっており、急斜面の湖壁は、水面上に岩盤が露頭し、また岩盤の出ていない部分はゆるい斜面をなしているから、上部の畑地から大量の流水がない限り崩壊の危険はない。現在の崩壊は、岩盤に対する砂層自身安定勾配で落ちつくから、今後これが大規模に発生することは考えられないと見ております。これに対して地元側では、湛水面に接触している砂礫層は、湛水によってかなりの速度で陥没崩壊作用が進行しているとし、また湛水面上に露出している岩盤上の砂礫層崩壊については、その崩壊は一見雨水の浸透による侵食崩壊であって、湛水の影響によるものでないことく考えられがちであるが、本地域岩盤と称せられるものは、粘土質水成山石よりなる頁岩、シェールであって、節理に富んでもろく、水が浸透すれば脆弱となり、衝撃を受けると崩壊しやすい、かような岩盤の上の砂礫層が六十度ないし七十度の傾斜面になっている場合には、雨水による侵食と、湛水による岩盤の脱落とによって崩壊の危険がある。さらにまた長さ五百五十メートルにわたる陥没地帯は、湛水前現在の地表から三十メートル以下の部分まで砂層が続いて岩盤が現われていないから、今後陥没作用は連続的に起る危険があると主張しております。  結局、地元側主張は、本地域における崩壊陥没は間断なく続けられているから、この危険を除くため、沿岸二キロメートルにわたって全面的に護岸築堤をなすべきであるというのであります。これに対して会社側は、部落の要求する護岸施設貯水池の放流による莫大な損失と、多額工事費を要し、電力コストに波及するため、とうてい応じられない。崩壊地域に対する適正な金銭賠償解決したい、こういうのでありまます。  一月十八日、派遣委員は、崩壊地域について貯水池上及び沿岸地域周辺を踏査視察いたしましたが、その所見は次のごとくであります。  第一、地質調査所の指摘する崩壊A地点B地点C地点は、崩壊規模がかなり大きいもので、これは地元側の指摘する崩壊第五、第四、第三号に相当し、砂礫層崩壊が顕著に認められました。  第二に、地元の指摘する崩壊第六、第二、第一号は、前記地点と比較してやや小規模でありますが、存在しております。そのうち第二、第一号の底部水面上には岩盤の露頭は認められませんでした。  第三に、地元の指摘する陥没地帯については、同部落北部突出部沿岸にこれと認められるごときものがありました。すなわち水ぎわから幅約十五メートル、高さ約五メートル以下の細長い低地帯が約五百メートル続いており、その地盤はやや不安定なものではないかと考えられます。  なお視察終了後、部落民が集合して派遣委員に対し、沿岸崩壊部落民にとって直接毎日の生活と結びついた切実な問題であり、深刻な生活権の侵害である土地に対する部落民の愛着は断ち切れないもので、格段の御配慮を煩わしたい、こういう陳情がありました。  翌一月十九日、県庁において本問題につき関係当事者たる片掛部落代表北陸電力株式会社及び関係官庁たる通産省金沢農地事務局富山土木部責任者出席を求め、意見の開陳を求めました。派遣委員からも質疑をなしましたが、その内容は本委員会におけるこれまでの審議並びに本報告全般に記載した部分によって尽されておりますし、別に速記録もございますので、省略いたします。  ただ、そのうち特に記すべき事項として、第一、富山県は建設省河川局からの照会により本件を治水上の問題として、目下土木地質学専門家である京都大学村山教授本件地域の再調査を依頼しておる。第二に、地質調査所本件調査担当者である近藤技官は、今回の視察に立ち会いました結果、崩壊地点については、崩壊地の数は地元の言う通りだが、その性質等大局の点ではさき調査報告を修正する必要を認めない。陥没については、さきにこれを調査しなかったので、これについてはさらに調査の必要がある、かように申し述べております。  以上要約するのに、現在のところ、地元部落北陸電力株式会社とは、将来における崩壊の見通しの点で根本的に対立しておりますので、その主張も、一方は土地に結びついた生産権擁護のため沿岸全域護岸を要求し、他方は公共的経済性の見地から崩壊個所に対する金銭補償による解決を求めておるというわけであります。われわれ派遣委員は、現地におもむいて直接部落民の切実な要望を聞き、さなきだに狭小な山間の耕作地電源開発によってさらに狭められた彼ら部落民祖先伝来永住地に対する愛惜の情、また深刻なる生活権の動揺に対し同情の念を禁じ得ないものがありますが、本問題の解決に当っては、まず沿岸崩壊が将来連続的に、あるいは大規模に発生するかどうかの判定が根本問題であります。これによって解決の方途を見出すべきでありますから、目下県専門家に委嘱しております現地調査の結果を待つとともに、地質調査所さき調査において触れなかったいわゆる陥没地帯についてさらに慎重な調査要望いたします。  以上の調査には地質、降雨のほか、流水その他力学上の検討も踏むべきものと考えられます。  本委員会としては、全般技術的調査報告を得た上で、さらに慎重なる検討を加えるべきものと思われます。  以上御報告いたし一ます。
  6. 上林與市郎

    上林委員長 ただいま、先般の委員会の決議によりまして派遣いたしました旧徳山燃料廠第一班、並びに富山県ダム関係の第二班のそれぞれの代表委員から御報告を受けましたが、これに御質疑はございませんか。
  7. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 両御報告事項につきましては質疑を次会に譲りまして、直ちに昭和二十八年度及び九年度の労働省関係につきまして、会計検査院、政府当局の説明を求め、質疑をなすように議事を進められんことを望みます。
  8. 上林與市郎

    上林委員長 ただいまの吉田委員の御発言の通り、これまでの御報告を御了承願いまして、日程通り議事を進めるに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 上林與市郎

    上林委員長 御異議ないようでございますから、さよう取り計らいます。     —————————————
  10. 上林與市郎

    上林委員長 それでは日程に従いまして、本日は労働省所管について審査を進めます。  昭和二十八年度決算検査報告二九三ページより二九九ページに至る報告番号二〇一六ないし二〇二九について審査をいたします。  なお昭和二十九年度決算につきましては、いまだ政府の説明書の提出がありませんが、審査の都合もありますので、検査報告三〇四ページより三一五ページに至る報告番号二〇五五ないし二〇八三をもあわせまして一括議題として審査を進めます。  なおお諮りいたしますが、昭和二十九年度決算検査報告番号二〇五六につきまして、参考人として東京都労働局失業対策部長坂田正一君を招致し、実情を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 上林與市郎

    上林委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  それでは会計検査院当局より説明を求めます。石渡説明員。
  12. 石渡達夫

    ○石渡会計検査院説明員 それでは御説明いたします。二十八年度の検査報告につきましては、さきに一応の御説明を申し上げてございますから、一般的な説明を省略しまして、二十九年度の検査報告について一般的な御説明をいたします。  まず二十九年度の検査報告の三〇五ページでございますが、この失業対策事業補助金の精算状況を検査院で検査したのであります。これは緊急失業対策法によって失業対策事業に対する補助金を交付するのでありますが、これは公共職業安定所の紹介を経た就労適格者等に対して地方公共団体が支払った賃金あるいは資材費、これに対して補助を交付するものであります。それで二十九年度中の交付済み額が百十九億に対しまして、労働省関係経費としては非常に大きなウエートを占めておるのでありますが、検査院におきましては、全国の千三十八事業主体のうち約九%に当る北海道外二十一都道府県、七十五市町村、九十七事業主体について国庫補助金の精算状況調査したのであります。その結果、補助金基本額に算入してはならない経費、すなわち労力費におきまして、就労適格者でない者に対して支払ったもの、職業安定所の紹介を経ない者に対して支払ったもの、あるいはこの基本賃金以外の手当等に対して補助を交付している、また資材費におきまして、本事業に使用しなかった資材の経費等に対して補助金を出しておる、あるいは補助対象外の事業に使った経費に対して補助金を出している、こうした補助の基本額に入れてはならないところの経費を除外して、検査院におきまして再計算しますと、国庫補助金がよけいに来過ぎておりまして、返納または減額を要するものが山形県外十二府県におきまして七百六十五万七千五百八十円というものがあります。そのうち一事業主体でやり過ぎの部分が二十万円以上あるものをあげますと、そこに表がありますように、二〇五五号から二〇六五号まで十一件、六百八十八万三千二百十二円、これが国庫補助の返納または減額を要する金額になっております。検査院におきましては前年度におきましても失業対策事業の検査を一部施行しまして前年度におきましても三件ばかり補助金のやり過ぎの部分が検査報告に上っておりますが、本年はもっと手広くこうした事態があるのじゃないかというねらいを持ちまして検査を施行しましたところが、相当多くの件数が出て参ったのであります。こういうような事態を生じましたのは、各都道府県の職業安定主務課の事業主体に対する指導監督が十分ではない、かつ労働省における認証において、認証してない事業を相手がやったような場合に、精算の際に確実に精算の状況を確めて、認証外の事業をはずすというような注意が十分に行き届かなかった。要するに精算の審査について注意が行き届かなかったという点があるように認められます。この中にもありますように、対象の事業をやったように精算を作って しおりますが、実際は認証以外の事業をやりまして、そのために労力、資材を使った、それをあたかも認証の該当事業をやったように精算を作っている、こうしたものも中に含まれておりまして、各都道府県の主務担当者が、現場に行ってよく監督をする、こういうような注意が十分に行き届かなかった点があるように思われます。  それから失業対策事業の事務費の補助金について見ますると、事務費の補助と申しますのは、その府県が失業対策事業の監督指導に要する必要な事務費、旅費とか文具費、臨時職員の人件費、こうしたものの経費に対する補助でありますが、この補助の目的を逸脱しまして、その補助金と府県の経費あるいは寄付金、そうしたものを一緒に合せまして、事務庁舎に類するものを作ってるものがありまして、こうしたことは、もし必要があれば官庁営繕費とかいうような正当な予算科目で経理するのが適当であると思われます。  それから次に労働者災害補償特別会計についてでありますが、この損益状況を見ますると、利益の部が保険料等収入が約二百五十一億、損失の部が保険金等約二百六十八億、こうありまして、差引十六億の損失になっております。これは前年度が五億二千万円の損失であったのに比べまして、だいぶ損失がふ、えております。この損失がふえましたおもな原因は、災害補償の件数が二十八年度に比べまして約一〇%も増加している。それに対して保険金の支払高も約一六%ふえている。しかるに保険料の収入の方では、約四億五千万円程度の増加にとどまっている。こうしたことが労災保険の赤字になった大きな原因であると思われます。労働省におかれましても、こういうような事情にかんがみまして、三十年度からは労災の特に発生しそうな危険な事業につきまして、たとえば高い腰堤の建設事業とか、あるいは水力発電の建設事業とか、こうした事業については非常に大幅な保険料の引き上げをしまして、そのつじつまを合せるように考えられております。  なお、労災保険特別会計につきまして注意を要する事項を申し上げますと、二十九年度の保険料の収納未済額が約六億五千万円に上っておりまして、既往の二十八年度以前の収納未済を合せますと、十三億円ばかりの多額に上っておる。これについて労働省におかれましてもいろいろと対策を考えておられる様子でありますが、なお一段の努力をされて、この収納未済額の徴収について努力をお願いしたいと思います。  もう一つは、保険料の徴収決定が漏れているものが相当にある。これは次にあがっておりますが、この徴収決定の漏れているものにつきましては、毎年検査院でも御注意を申し上げておるのでありますが、なおこれが跡を断たない、こういう点につきまして、なお努力をお願いしたいと思います。  それから保険料の納付を怠った場合には、延滞金を徴収するということに規定上なっておりますが、この延滞金の徴収が漏れているものが非常に多い。保険料は徴収しているが、延滞料は取っていないというのが件数が非常に多く、全部で約二万件、金額にしまして二千五百万円、こうした多額になっております。この延滞料に対しまして毛、適当な対策をお願いしたいと存じます。  それからさっきの徴収決定さえしていないという事項につきまして、二〇六六から二〇六七号にあがっておりますが、これは労災保険でおもにこうした事態が発生しますのは、土木建築事業というような有期事業、期間がきまっておりまして、ある期間で工事ができ上ってしまうと、保険関係がそれで一応終るというような有期的な事業におきまして、土木建築業者から申告をしない、そうして災害が起った場合に保険料をもらうために申告をするというような事態が多くありまして、災害が起きなければ知らぬ顔をして、ほおかぶりをして、保険料を納めないという事態が相当あるのであります。検査院におきましても、本年はその有期事業に主力を注ぎまして税務署そのほかに府県等から別に資料をとりまして検査をしたのでありますが、この徴収不足の大部分は土木請負等の有期事業について見られるのであります。全体の金額が、二百七十五事業場、三百七十八万円でありますが、そのうち、今申し上げました有期事業は百七十六事業場、二百十一万円となっております。そのほかが九十九事業場、百六十六万円というふうになっております。従いまして、こうした問題につきましても、有期事業について労働基準局等におきまして十分に現場の監督をされまして、よく実態を把握され、またこの業者の賃金の申請につきましても、中には事実に合わない点がありますから、そうした業者の把握につきましてもなお一そうの御努力をお願いしたいと存じます。  それから失業保険特別会計について申し上げます。失業保険特別会計は、損益の状況を見まするのに、利益の部が保険料収入等三百八十三億、損失の部が保険金等三百七十七億、差引五億円ばかりの利益に一応なっておりますが、本年度中に、保険金財源が不足いたしまして、積立金から十三億五千万円ばかりの受け入れをしております。従って、この受け入れした部分考慮しますというと、実体的には約八億円ばかりの損失になっております。このように欠損になりましたのは、失業者が非常にふえた、失業保険金の受給者が前年度を平均しまして約四十四万人ばかりでありましたが、本年度はこれが非常にふえまして六十万人というふうに著しく増加している、こうしたところにおもな原因があったと存ぜられます。  この会計につきまして注意を要する事項を申し上げますと、まず第一に、保険給付について給付の適正を欠いている事例が相当に見受けられる。それから次には、保険料の収納未済が相当多額に上っている。既往年度分の収納未済だけで約十二億万円に達しております。それから保険料の徴収決定さえしていないものが生じている。これらに対しては適切な措置を講ぜられるようお願いしたいと存じます。  次の二〇六八号は、上野公共職業安定所におけるところの不正行為でありますが、これは失業保険の保険金の支払いに当りまして、担当者が必要支出額よりもよけいに小切手の金額を書きまして、小切手の原簿にはその支出額を書いて、その差額をポケットしたという事件でありまして、本件につきましては目下訴訟が係属中でございますが、この責任者及びこの犯人に対する処分につきましては、労働省ですでに懲戒の処分をとっております。  次には、二〇六九号から二〇七七号の保険給付の適正を欠いているものでありますが、これは、本年度の検査におきまして初めてこうした点にわれわれも重点を置きまして広く見たのでありますが、相当に不正事件があがっておる。三十年三月中における保険金受給者は六十六万九千人、非常に多くの失業者が出ております。それでこれに対する保険給付がどうなっているかという状況につきまして、全国に六百六十カ所の安定所がございますが、そのうち九十二カ所について見たのでありますが、まずねらいとしましては、一応失業しまして、保険の給付を受けておる、その受けておる者がそのうちに再就職した、こういう者にねらいをつけまして、四千百四十八名について実地に検査したのであります。全体の受給者六十六万に対しまして、検査しましたのはわずかに四千名ばかりでありますから、それによって全体を推定することは無理と思われますが、この四千人検査しました中で不正な者が六百二十九人発見されております。調べました対象は、おもに不正受給がありそうだという職業の種類を選定しておりますから、この率をもって全体を類推することはできないと思いますが、しかし相当程度の不正受給があるということはその一端がうかが、えるように存じます。この不正受給しております者を態様別に分けますと、受給する資格を喪失しておるのに給付したもの、すなわち一たんは失業して受給する資格ができましたけれども、そのうちに就職しているにかかわらず知らぬ顔をして失業保険を受けている、これが一番多いのでありまして、六百二十九人のうち五百十四人がそれに該当しております。金額から申しますと、不当な全額千百万円のうち、受給する資格を喪失している者に給付したもの、これが五百十四人、七百四十七万円、大部分がこれに該当しております。次は、失業してすぐにほかのところに就職しまして、当初から受給する資格がないのに受けている、これが九十三事項、三百四十一万円。次は、離職票に記載する賃金を水増ししたもの、これは本人が作ったもの、あるいは旧使用人と結託してやったもの、いろいろ事態はございますが、これが二十二人、十四万七千円、こういうような数字になっております。  こうした事態を生じますのは、要するに失業保険の担当機関におけるところの受給者の状況に対する把握が不十分である、こういうことに尽きると思われるのでありますが、労働省におかれましてもこうした点に非常に苦心されまして、三十年の九月に失業保険法の改正をされまして、従来離職した場合に、離職したということを職業安定所に届け出る義務は業者にはなかったのでありますが、今度はその改正によりまして業者が届け出る、それによって労働大臣が被保険者資格の得喪の確認をする。そしてその施行規則によりまして、各職業安定所に被保険者台帳を作りまして、失業保険金の受給の資格あるいは本人の就職の状況、こういうのを一吉瞭然と把握するような建前を作っております。従って、今後におきましてはこうした制度を活用されましてこの不正受給の問題は非常に改善されるだろうということを期待しております。  今の失業保険の受給当を得ないもののうち、都道府県別に二十万円以上のものをあげますと、そこの表にございますように二〇六九号から二〇七七号まで、五百四十一人、千十四万三千円ばかりになっております。  次は、失業保険料の徴収決定を漏らしたもの、これについて検査をしたのでありますが、全国の事業所二十三万五千、このうち五百八事業所について調査をした結果、保険料及び追徴金の徴収不足を来たしているものについて、検査院の注意によって徴収決定させたものが九十四事業所、二百五十八万円ばかりになっております。  このような事態を生じましたのは、関係道県の担当の方におきまして、事業所についての調査が十分じゃない、この給与等につきましてしっかりと把握をしてないということがおもな原因でありまして、今後におきましては、ほかの社会保険あるいは税務署等と連絡をされまして、給与の実態をよく握るということが必要のように思います。  そのうちおもな事項をあげますと、二〇七八号から二〇八三号に記載したような事項でございます。以上。
  13. 上林與市郎

    上林委員長 労働大臣が出席しております。この際労働大臣が発言を求められておりますので、これを許します。倉石労働大臣。
  14. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 昭和二十八年度並びに昭和二十九年度、労働省所管の決算に関しまして批難されました事項は、失業対策事業費、補助金の経理に当り、労力費並びに資材費等の精算が適正を欠いている点であります。これはいずれも会計検査院御指摘の通りでありまして、まことに遺憾に存ずる次第でございます。  補助金等の効果的使用と精算の適正なる処理につきましては、さきに補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律が公布、施行され、この法律に基きまして、失業対策事業費補助金の交付手続を改訂いたしましたので、今後は本事業の実施に遺憾なきを期しまして、一そう指導監督に努め、このような御指摘を受けることのないように、十分注意いたします。  労働者災害補償保険特別会計並びに失業保険特別会計の未収金の原因につきましては、石炭鉱業等の事業経営の不振によるものがあげられますが、収納未済額の徴収につきましては、事務機構を一段と整備いたしまして、また完全納付強調期間等を設定し、事業主の啓発に努める等、鋭意収納に努力いたしております。その他、給付の適正を欠いたものにつきましては、御要望の趣旨にかんがみまして、被保険者資格の確認制度の厳正な実施をはかるとともに、不正受給調査並びに適用事業所監査を強化いたしまして、不正受給の防止と発見に努め、保険給付の適正を期する所存でございます。
  15. 上林與市郎

    上林委員長 それでは質疑に入ります。  質疑に入る前に、政府関係並びにその他の出席者を申し上げます。労働省、倉石労働大臣、富樫労働基準局長、三治会計課長、江下職業安定局長、松永労災補償課長、和田失業保険課長、渋谷失業対策部長、横山業務課長会計検査院、石渡第三局長。なお、先ほど委員会の御承認を得ました、東京都労働局失業対策部長坂田正一君等々でございます。  それでは、質疑の通告がございますので、順次これを許します。吉田賢一君。
  16. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私は失業対策事業補助金の不当経理についてまず質問いたします。二十八年度決算報告書二九四ページ、報告番号二〇一七号福島県における失対事業の不当経理事項、それから二十九年度報告番号二〇五六、同二〇五九、二〇六四、三〇六ないし七ページであります。各事項につきまして順次伺ってみたいと思います。  政府当局に伺いますが、この福島県の失対事業は二十七年度でありまして、補助金基本額が二億九百五十余万円、国庫の補助金を受けました交付済みのものが一億三千三百五十余万円、こういうことになっておるのであります。ところが検査院指摘によれば、労力費を重複計算しておる事実、第二点は、使用もしないセメント代を計上しておる事実、このような二つの重要な事実が指摘されておるのでありますが、何ゆえにこういう事実が発生したのでありましょうか、その点の御説明を伺います。
  17. 渋谷直蔵

    ○渋谷説明員 ただいま御質問のございました福島県の事項でございますが、労働省からも現地に行きまして調査いたし、また同時に県の方からも関係課長の出張を求めまして詳細に検討いたしたのでございますが、これは事務の手続を進める上に非常に精密を欠きました結果このような事態になったのでございまして、その点は県当局も十分にその非を認めております。労働省といたしましては昭和二十九年の十一月十二日に返納指令書を交付済みでございまして、県の方でも本年度内にこれの所要額を予算計上いたしまして、年度内に必ず返納するという約束をいたしております。
  18. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私はその返納の指令の事実を聞くのじゃなしに、また単純に県当局の事務の手続が精密を欠いておったというような抽象的なことじゃなしに、もっと具体的に政府はこの原因について——第一使いもしないセメント代を使ったとして報告しておる。そうすると補助金をそれだけ取られ過ぎることになりますし、またこの労力費の重複計算というのは事務粗漏ということが一応考えられるのですが、もう少しあなたの方は精密な原因をつかなければならぬ。あなたの方は、本委員会に対して資料として説明せられておるところによりますと、本件の決算事務に慎重を欠いておった、こういうようなことを指摘されておるのみでございますので、これはやはりもっとその原因があなたの方でははっきりわからなければならぬと思うのであります。  一つ御説明願います。
  19. 横山武蔵

    ○横山説明員 福島県の昭和二十八年度の批難事項でありますが、労力費の誤計算の問題を申し上げます。  賃金は年間支払い総額において労力費から支弁するようになっておるのでありますが、それを事務費の方から支弁しておりました金額を誤まって労力費に計上したのが労力費の誤計算でございます。  それから資材費の方でございますが、これは郡山市と平市において公共事業と合併して事業を行いました場合に、ちょうど国民体育大会が開催される関係から失業対策事業を一応やめて公共事業の方に集中したのでありますが、その際に失業対策事業に使用すべき資材を公共事業の方に振りかえて使用したというような原因でございます。
  20. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 この批難事項によりますと、二十九年度におきましても、たとえば東京都におきましても、使用もしない砕石の代金が計上されておる。大阪府におきましても、二十八年、九年ともに超過勤務手当が計上されておる。愛媛県のごときも使用もしない砂利代が計上されておる。それから静岡県の清水市におきましても、これは報告番号二〇五七でありますが、これも使用しないセメント代が計上されておる。ここに摘記しております二十九年度の二〇五五号ないし二〇六五号の十余りの批難事項を通覧いたしますと、使用しなかったものがずいぶんとあがっておるのであります。使用しない資材が使用したかのごとくに報告をされておる。福島県のごときは二十七年度の事業でありますが、その後いつあなたの方はこれを確認されたか存じませんけれども、長い間わからずにおった様子であります。一貫して感じますところは、資材費につきましては特に事業に使わなかった資材費が計上せられておるというものが随所に出てくる。二十九年度のごときは全国で事業主体が千三十八あるようであります。このうちのただ九%のみを会計検査院は調査したにすぎないのであります。百に足らぬものを調査して十のこのような事実があがっておるのであります。こういうことを考えますと、表へ出ない隠れた資材費の不当請求といいますか不当精算がどれだけひそんでおるかわからぬというような想像さえされるのであります。そのよってきたるところをもっと厳重に一々について調べるということをしないのでありましょうか。労働省としては、二十八年度の検査院報告はわずか三事項であります。岩手県、福島県、静岡県の三県にとどまりますが、これはおそらくは手不足等の事情によって十分に検査に手が届かなかったと思う。しかし二十九年度は一躍してふえておる。こう思いますと、この種の補助金の予算額が膨大になっておりますること、及び年々増額しておりますることを思いますとき、また労働省におきまして労働省の予算中失業対策の補助金予算というものの占めておる比率が大きいことは申すまでもありません。こう思いますると、使用しなかった資材費というものの性質は、これは重大に考えて原因を究明するということをしなければならぬと思うんです。大臣は就任日が浅いのと、当時は当該大臣でありませなんだので、直接御承知でないかもしれませんけれども、しかしわれわれが推測しましても、全国千幾らの事業主体についてこの種の事実がないかということを相当調査しなければなるまいかと思うのでございます。事務当局は果してこの批難事項すべてについてまたこれによって資材費の不当経理の有無について精密にその原因を追及されたのであじましょうか。その点一つはっきりと御答弁願っておきます。
  21. 渋谷直蔵

    ○渋谷説明員 お答え申し上げます。ただいまの御質問の点でございますが、御承知のように失業対策事業費の補助金は緊急失業対策法に基きましてこれをしておるわけでございますが、普通の公共事業と違う点が二つございます。
  22. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 御答弁中ですけれども、簡明直截に御答弁願います。
  23. 渋谷直蔵

    ○渋谷説明員 資材が年度末に残存した場合にこれをどういうふうに経理するかという点に関連しましてこの不当経理ができておるのでございます。労働省としましては、国庫補助を条件に国庫補助対応額をもって購入した資材が年度末において残存した場合は、時価に換算して国庫に返納しなければならないというふうに補助条件に明記しておるのでございますが、時価の算定に困難性があるので、残存資材につきましては当該資材の購入価格に基いて国庫補助相当額を返納させるという点をはっきりとしたのが第一点でございます。  もう一つは不可抗力によって年度末において残存資材を使用したという場合にどういうふうに処理するかという点に関しまして、明確な指示を欠いておったのでございますが、今回その点にかんがみまして次のような通達をいたしましたのでございます。すなわち年度末において天災地変その他不可抗力による等やむを得ない事由によって残材を繰り越した場合は、これを翌年度第一・四半期の事業計画、資材の範囲内においてその資材の使用を認める。それでこの不可抗力による等やむを得ない事由によって残材を繰り越さざるを得ないというような場合は、労働大臣に対して認可の申請書を出させる。それを労働省が審査の上正当な事由があると認めた場合は翌年度に繰り越しを認めるというふうに手続をいたした次第でございます。
  24. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 大臣に伺いますが、あなたの方から通牒を発せられておる各種のフォーム等によってみまして年度を経過した六月末に精算報告書を本省に対して事業主体が出すことになっております。一体この精算報告書によって、この種の、私どもからいえば不正でありますが、このような過失であろうと故意であろうと、不当経理の内容が精算報告書によって直ちに確認し得るとお考えになっておるのだろうか、確認し得ないのでしょうか、その点いかがですか。
  25. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私はこのたびの会計検査院の報告を承わりまして、非常に遺憾に存じたのでありますが、実はこの内閣ができましてから、例の補助金の問題について厳重に監査しなければならないということを、しばしば閣内でも問題になりまして、きょうもちょうどそんな話をいたしたところでございます。ただいまのお尋ねのことは、事務当局に聞いてみますと、書類だけでは明確に判断がつきかねるという状態のようでございます。
  26. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 事業主体からの精算報告書によって、正確に補助金の経理の適否だとか、あるいは数字の適否が判断つきかねるということは、とくとわかっておる事実ではないかと思う。これは何も今さらというふうな感じがするのでありますが、会計検査院から指摘された後に、やっと労働省はわかった。それであわてて事業主体の方に返納を命ずるというような手続に出ておるらしいのだが、そういうことで一体いいのだろうか。そもそもあなたの方としては、やはり府県において事業を監督すべき責任者が配置されておるはずでございますが、そういうのが無能なんだろうか、動かないのだろうか。その辺の欠陥はどこにあるのだろうか。精算報告書を信用しておれば、この種の不当事項は幾らも出てくる。精算報告書によっては、数字は正確につかむことはできない。そういうようなことで、補助金の使用運用をなさるということはもってのほかだと思うのですが、それはどうなんですか。事務当局でもよろしゅうございます。
  27. 渋谷直蔵

    ○渋谷説明員 労働省それから地方の府県を通じまして指導監督が十分でないために、このような不当事件が発生しておるというのは御指摘の通りでございます。労働省としましては、何とかして指導監督の能力を強化したいというふうに毎年考えまして、大蔵省にも増員の要求をして折衝しておったのでありますが、今に至るまでなかなか実現を見なかったのでございますが、幸い本省におきましては本年度の八月から失業対策部が設置を認められまして、すでに業務を開始しておるわけでございます。それから地方の府県におきましても、本年度の予算折衝の結果、失業対策事業が当初昭和二十四年に出発しましたときは、わずか八億の予算で出発したのでございますが、現在では本年度はすでに百六十八億の非常に膨大な額になっておるのでございまして、それに従いまして事務量も当然非常な膨張をしているわけでございます。かような事情を加味されまして、新たに地方の失業対策事業の監察官を設置することになりまして、来年度からは各府県に少くとも一名は失業対策事業の監察官を設けることができることになったわけでございます。
  28. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 大臣今お聞きの通り、精算報告書によっては、補助金経理の適否をつかむことはできない。そこでそれならば事業監督指導がうまくできなかったことに原因しておるという御答弁で、そのまたよって来たるところは人間が足りなかった。人間が足りなかったので増員の要求を大蔵省にして大体認められた。監察官を一人府県に置くことができるようになったという御説明なんですが、監察官を一人置いて 一人の監察官がすべての事業場を把握して、実際の書類、現物を検査する、そういうことでもできるのでしょうか、一体何をなさるつもりで監察官を置くということになったのですか。新しい制度らしいですし、大臣御承知でしょうから答弁してもらいたい。私の聞きたいのは、この種の問題を根絶するにはもっと真剣に原因を追及して取り組んでもらわなければならぬと思うのです。それで伺うのですが、どうです。
  29. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 今申し上げました監察官は新しく設けます制度でございますが、従来もある府県では常に本省からも派遣しておりますし、地方の方でも監察はいたしまして、不当な支出があればそのことについては返還を命じたり、いろいろな取り扱いをいたしておりましてそういうところの漏れたのが、たまたま会計検査院に御指摘を受けるということになったのだろうと思います。なお先ほど申し上げましたように、その点は大事な国費でございますから、遺漏のないようになお監察を厳重にしていきたいと存じております。
  30. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 この問題はあなたと抽象的な議論を上下するということでは私はとうてい納得できないのであります。でありますから、きょうはやはりこれらの点をめぐりまして、相当具体的に数字も明らかにして、ほんとうに適切な措置をとっておられるかどうかということもはっきりしておきたいと思うのです。きょうできなければまた日を延べてしたいと思います。そこでそのために伺うのですが、従来のたとえば職安行政の主務官は府県にそれぞれおる。一体何人おってそうしてどれほどの事業場を担当しておるのか、それをまず事務当局から聞きます。
  31. 三治重信

    ○三治政府委員 現在全国で七百八十五人でございます。安定所に八千二百人ございます。それで失対事業の方は補助事業でございまして、その府県の主務課の方で、——県の事業主体並びに市町村の事業主体が事業をやるわけでありますが、その事業の計画について適否を判断し、それを本省に連絡する、本省に連絡して、許可になった、認承を受けたものについて実施を指令して、その実施の状況、並びに済んだあと府県の職員が検査をするとともに、本省からも特定のところには随時出張して監査するというような実情であります。失対部長からの御説明の通り、現在の府県の失対の係というものは、定員としては割合に少いわけであります。従って今申し上げた七百八十五人というのは職業安定行政全体でございまして、失業対策事業の指導監督だけに従事しておるのではございません。その点今後もできるだけ十分な監察並びに指導ができるようにやりたいと存じます。
  32. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 ちょっとよくわかりかねますが、そうしますと七百数十名というのは全国の数で、府県は——一々述べる必要はございませんが、例を二、三とっていただきたいのですが、その府県に失業対策事業の監査ないしは監督をするという、専任ないしは兼任でもよろしゅうございますが、それは何人おって、おのおの幾らほどの事業場を持っておるのか、これを聞きたい。
  33. 渋谷直蔵

    ○渋谷説明員 詳細な資料がないのでございますが、二十九年中につきまして四半期に一ペん全事業場を監察するということにいたしております。そのうち二千二百十一件の事項について実地監査の結果是正させております。また詳細な点につきましてはあとで資料として提出することにいたしたいと思います。
  34. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私は全体の統計をお聞きするのではなしに、一応具体的に二、三例示していただきます。府県の職安行政の主務官でありますか、そういうところがやはり事業の監督をした。監査したりなさるのだろうと思いますが、この補助金の行方、補助金の使い方、従って事業、そういうものをあなたの方の直接命令しておる公務員が、県において何人くらいの人が、幾らほどの事業場をつかんでおるのか、これを聞きたいのです。それで客観的にその能力あたりを検討してみたいと思う。
  35. 渋谷直蔵

    ○渋谷説明員 北海道の例を申し上げますと、失対事業の専任の監察官が二名、兼任が一名で、三名でございます。事業主体数では百四でございまして、うち七十八を監査いたしております。次に岩手県におきましては専任一名、兼任一名、計二名、事業主体は十九でございます。
  36. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 大臣に伺いますが、今お聞きの通りに、たとえば北海道におきまして百四つの事業主体の補助金の行方を監査するのに、兼任が一人、専任が二人で、一体これでほんとうにつかめるのでしょうか。検査院も手が足らぬ、手が足らぬからわずか十しか出しておらない。ほんとうに手が足りて、二十九年度ならば千三十八の事業主体の調査をやりましたならば、おそらくそのうち何百出るのかわからないとさえ想像する。そこで大臣に伺いますが、北海道の実例、兼任一人、専任二人で補助事業の監督がほんとうにできると思いになりますか、補助金の行方をほんとうに正確につかむことができるとお思いになりますか。どうお考えになりますか。
  37. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 どうもそう十分にはいかないだろうと思います。
  38. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そう十分にいかないということであれば、また来年これを繰り返すことになります。私の推算によりましても、おそらくこれは一億円かの補助金が隠れて浪費されておるものと思うております。そこでそういうようなのであれば、これは抜本的にないしは来年からはこれをぜひなくするというくらいな気構えがなければ、決算委員会の答弁にならぬと思うのですがね。今後十分注意いたしますというようなことがことごとく書いてある。いつも注意いたしますというようなことは、実はここの常套文句になっておるのであります。そして年々同じことが繰り返されておる。年々何億円という税金がむだに使われておるのであります。そこで大臣もすでに不十分であるということを御確認なさるようでありますが、十分な管理、監査の対策をお立てにならねばなるまいと思いますが、どうでしょう。
  39. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 来年度予算のときも、そういうことでいろいろ失対関係の予算も要求いたしておりますが、若干事業費の方ではふえましたが、なかなか財政の都合で人件費の増というのは困難でございますが、大事な仕事でございますから、私の方でも心して十分にできるように努力をいたすつもりでおります。
  40. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 失対の事業量がふえて、それで精算報告書によっては監査ができない、末端の現場を監督する人間が足りないことは認めていながら、これに対する具体的対策はない。非常に大事な事業だから心してやりますというのでは、実に心細い御答弁なんですが、これはもっと具体的に県の段階においてなり、事業主体のあなたの方の関係の場面においてなりもっと具体的に直ちに経費の内容をつかむ方法はないでしょうか。たとえば、これは四半期分を四回に補助金を交付しているらしいのですが、概算払いなるがゆえに、年度末を経過して六月末に至らぬと精算書を出してこない。すでに相当の不正もあると見るのだが、過失の誤算のみでないと私ども見ております。従って今度の補助金適正化法に触れるものが相当出てくると思うのですが、いたずらに出すということになりましたら、また事業は萎縮します。あなたの本来ねらっております失業対策事業の結果は得られないことになるわけであります。四分の一ずつを概算交付して一年を経過して、さらに半年も後になってから、会計検査院に指摘せられる。こういう結果になっておるのですが、中間で数字を把握するということを必要としないかどうか。中間に四回も概算交付して、中間で把握できないというようなことで一体いいのであろうか、それに対するお考えを一つ承わっておきましょう。
  41. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 失対の事業につきましては、お話のように、四半期ごとでございますが、そのことに私どもの方では報告書をとりまして、監査をいたしております。それからなお来年度の予算では、乏しいながらも監察を十分にしなければならぬということで、来年度は五十六名の監察官の増員を予算に計上いたしております。
  42. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 もしあなたの方が今おっしゃるがごとくに報告書を年に四回も出させておるということであるならば、その報告書によって、経理の当否が明らかにされなければならぬと思うのです。ところが、検査院の指摘によりますと、二十八年のものが二十九年と同時にこれは見つかっておるのであります。山形県のごときも二十八年のものが二十九年の検査のときに見つかっておる。愛媛県のごときも、二十八年の事業が二十九年の検査の際に見つかっておる。ずっと後になって見つかるということになっておるのであります。そうしますと、途中の報告書の検討というようなものも、やはり最初にお述べになりました精算報告によっては、数字の適否がつかめないのと同じようにほんとうはつかめないのじゃないだろうか。これでは一体あなたたちの指導しておる末端の行政官が数字を把握しないで、そのままうのみにして本省へ報告しておるというのであろうか。あるいはほんとうに現場をつかまずしてきたのであろうか。そういう場合に、使いもしない資材の経費を、使ったとして補助金をとる、こういうようなことがどうしてそんなに見つからないのでしょうか。精算でも見つからない。途中の報告書でどうして見つからないのか。途中では見つかったような御答弁の趣旨に理解するのですが、途中で見つかっておらぬらしい。途中で見つかるという自信はおありなんだろうか、どうだろうか。人間の関係も大事だし、資材の関係も大事です。ことに法律によって四十八時間の労働時間を超過することを許さないということになっておるのに、そんなものが数年後に会計検査院に指摘せられて見つかってくる。たとえば二〇五九号の大阪市のごとき、こんなばかばかしいことはないのです。あなた方の報告書というのは全く上も下もめくらです。めくらでそのまま決算してしまうのかどうかとさえ私どもは疑わざるを得ない。中間的な報告によっては確認できないと思うのだが、どうです。
  43. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 政府委員から答弁いたさせます。
  44. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 委員長、こういう問題について今一々大臣に具体的な答弁を求めることは少し困難らしい事情に拝しますので、この辺は適当に一つ大臣と政府委員とこもごも御答弁になるようなことに進めたいと思いますから……。
  45. 上林與市郎

    上林委員長 了承いたしました。
  46. 渋谷直蔵

    ○渋谷説明員 経理報告書と書面審査だけでは、果してその資材が実際に使われているかどうかという点までは正確には把握が困難でございます。
  47. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そうすると、やはり年度を過ぎて六月になってから出てくる精算報告書によって正確に数字は把握できない。使いもしない資材代を使ったこととして報告せられてもわからぬ。途中の中間経理の報告書によっても同様であるということになりましたら、そういうものだけでは国費の費途の正否を確認できないということに結論せざるを得ないと思うのですが、そんなことで一体失業保険の補助金を正しく使いましたとして国会に御報告できるのだろうか。結局末端の現場を調べ上げていろいろな帳簿をひっくり返さなければわからぬというのでは、これは実に愚かな話なんですが、これは一体事務当局としてどうお考えになっておりますか。
  48. 渋谷直蔵

    ○渋谷説明員 私どもは補助金を適正に補助目的に従って使うようにという指示をし監督をいたしておるわけでございますが、大部分の事業主体におきましては、本省の方針を体しまして適正に経理をいたしておるというふうに考えておるわけでございます。しかしながらその間に故意あるいは善意の過失によりまして、たまたまそれが適正に使われなかったという場合も、これはもちろん想像されるわけでございますが、そういう点につきましては、補助金の適正化法の施行も見ましたので、そういった経理事関係を再検討いたしまして、できるだけそういったあやまちの生じないように十分の指導をいたしたいと考えておるわけでございます。
  49. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 今度の法律の補助金適正化法、そういう法律におたよりになるということは末の話です。また本末顛倒なんです。あなた方の方はそんなものにたよるべきじゃない、あなたの方自身で制度上、行政運用上全然事なきを期せなければいかぬと思うのです。ところが現われております精算書によってはこれを発見することができない。中間報告の経理書によってもこれを発見することができない。末端行政の人が足りない。一体そんなことで行政ができるのかというのが私のお尋ねする趣旨なんです。それでは具体的にこの種の問題は跡を断たない。ことしはまだ出ておりません。三十年度のこの精算書はまだ受け取っておるまいから出ておらぬだろうけれども、中間報告はどんどん出ておるはずです。三十年度にどれだけ出てくるか。もし検査院の人間を十倍にしたら十倍出るかもしれないとさえ、われわれは心配しています。あなたは大部分は適正で、ごく小部分が適正でなかったというようなお話でありますけれども、これはあまり甘く見過ぎます。そうじゃないはずであります。ですから今私が伺いますのは、そんな刑罰法規の末端をたよってするべきではないのでありまして行政機構運用自体の欠陥が事ここに至らしめておる相当大きな原因でないか。それをほったらかしておいて、他の法律にたよって事の絶滅を期することは不可能だ、そう思うのであります。  東京都の方が見えておるから伺いますが、あなたの方も昭和二十九年度の失対事業につきまして、補助金を返さねばならぬものが百五十三万円あります。これはもうすでにその後の交付すべきものと減額して相殺したらしいんだが、これも砕石代を計上してはならぬものを計上しておるのであります。これは足元であります。私ども時間があればことごとくこれを呼びたいんです。事そこに至らずしてあなただけ来てもらったんですが、そこで一体なぜ使いもしないものを計上するに至ったのか。大臣御多忙であろうけれども、しばらくお聞きとりいただきたい。御答弁を願います。
  50. 坂田正一

    ○坂田参考人 東京都失業対策部長です。ただいまの御質問でありますが、まず百五十三万の実質的なものがどういうものであるかということの御説明から始めますことが妥当だと思っておりますので申し上げますが、この百五十三万という資材費の計上されているものは、すでに設計書といたしましては、二十九年度の事業に使用すべく設計されたのでありまして、別段その百五十三万というものが架空の計上ではないわけであります。つまり二十九年度の事業として実施すべく百五十三万というものは、やはり計上されておったのであります。ただここに御説明申し上げますことは、その百五十三万が、計画といたしましては、二十九年度の三月三十一日までに完了して、それが完全に消化される性質のものであったのでありますが、工事の現場の実情、その他あとで申し上げますが、私の方としては一応不可抗力を理由といたしましてその百五十三万が年度内に消化できなかったのであります。そこでその百五十三万というものは、昭和三十年度の次年度に繰り越されまして、そして四月にその百五十三万は事実上当初の二十九年度の計画に基きまして消化されたわけであります。その間の本省との手続関係はどういう形になっておるかと申し上げますれば、これは本日最初に労働省の政府委員から御説明がありました通りに、一応東京都といたしましては、不可抗力に基く百五十三万といたしまして、本省の通牒に基きまして、それの承認申請をいたしておるわけであります。そしてその承認申請に基きまして承認を得まして、三十年度にその百五十三万は消化いたしておるわけでありますが、同時に三十年度の資材費の予算といたしましては、その百五十三万が減額調整されておる形になっておるわけであります。あとでまだいろいろと御質問にお答えいたしますが、一応不可抗力的な立場を御説明申し上げようと思いますが……。
  51. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 その程度でよろしゅうございます。  そうしますと、あなたの方の分につきましては、労働省から本委員会に対して、説明書として報告が出ておるのであります。労働省の本委員会報告は、会計検査院指摘の通りとなっております。会計検査院の指摘しておるところは、砕け石などの代金を事業に使用もしなかったものを計上したといっているのです。そこであなたに聞きますが、あなたはこの国へ返さねばならぬ百五十三万円は差引相殺しているんです、そこで不可抗力によって事業に使用しなかったという趣旨なのでありますが、あなたに伺いたいのは、そうすると二十九年度の失対事業にここに記載されている砕石などの代金を使用したのかしなかったのか。しなかったことはしなかったけれども、それが不可抗力だ、こうおっしゃるのか、その点どうなんです。
  52. 坂田正一

    ○坂田参考人 ただいまのお話はこういうことでございます。つまりその百五十三万というものにつきましては、いわゆる残存資材として次年度へ繰り越したわけであります。つまり二十九年度の事業としてその資材が消化されていないということでありまして、購入しましたその百五十三万円に相当する資材は消化できなかった。残存資材として三十年度べ繰り越されております。
  53. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 政府は東京都に対して国庫補助金の指令書を出したはずであります。これは御承知だと思います。この指令書によれば、別紙の第七項に、「国庫補助対応額をもって購入した資材が年度末において残存した場合は時価に換算して国庫に返納しなければならない」と書いてある。だから年度末に残存した資材があれば、これは時価に換算して返納することになっ、ている。従ってこれらの点については精算をはっきりしなければならぬ。あなたの今おっしゃった使わなかった、しかし計画に従って翌年に使うことになった。翌年に使うことになったというのと二十九年度の精算ということは別であろうと思う。二十九年度は二十九年度として購入した資材を、幾ら使って幾ら残って、残ったものをどうして精算するというようなことはちゃんと指令書に書いてある。こんなことはわれわれしろうとが申すまでもないことですけれども、そこは不可抗力の、あるいは天災のと、そんな弁解をする余地はないと思うのです。要するにこれはあなたの経理が少くとも適正を欠いておったと思う。精算に当りまして、この残存資材に対する経理は適正を欠いていると思うのです。しかるにかかわらず、これが不可抗力として翌年度に調整されたということならば、これはもし検査院が指摘しなかったなら、国民はこのまま百五十万円の税金をあなたによけい使われるのです。われわれの立場からしたらそういう計算なんです。あなたの方としては精算が事めんどうであったか存じませんけれども、そういうことになるのでありますから、少くとも事業に使用しなかったことをお認めになる。従ってそれが経過適当でなかったということは、私は当然だろうと思う。だから不可抗力的な原因をこれにひっつけることは、少しどうかと思うのです。
  54. 坂田正一

    ○坂田参考人 不可抗力という言葉を使用いたしましたのは、本省の通牒に基きまして、不可抗力による場合はその繰り越しが承認されますから、その不可抗力の事項にそれを入れて申請したということを申し上げたわけでありまして、なお私の説明が不十分であると思いますので……。
  55. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 あまり時間がないから長い説明は要りません。今お聞き及びのような問題はどこにもあることかと思いますけれども、私どもは資材費につきましては、精算書の金額の適否を労働省で把握できない。資材費というものの適否もまた把握できない。これは大臣から御答弁願ったら大へんけっこうなんで、できたらしていただきたいのですが、一体資材費というものが、今の東京都のように、倉庫に入れてあったのか広っぱに置いてあったのか存じません、砕石です、二十九年度の事業に引き当てるべく購入した資材が、どこに置いてあったか存じませんが、そういうようなものは、一体現場を把握しなければ、精算書の適否を認定できないということになるのであろうか。資材がことごとくそうであるとするならば、全国の現場をつかんでこなければ、あるいは現場における受け払いの帳面を、現場においてはっきりとしてくるのでなければ、精算書の適否の確認ができないように思うのですが、手残り資材と精算の適否との関係については、どういうふうにお考えになりますか。
  56. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 やはり報告書だけでは、使い残りの資材が果してそこにそれだけあるかどうかということは、現場で監査をしなければわからないと思います。
  57. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 結局そうしますると精算書、報告書によっては、労力費も資材費も、資材も、もしくは労力費の内容をなす人間の数も、あるいはこの失対の適格、労働資格の有無もわからぬということになる。そうしますと、あとに出てきまする大阪の超勤手当の問題、こういうものについてもわからぬことになりましょうか、それはどうでしょうか。
  58. 渋谷直蔵

    ○渋谷説明員 大阪の超勤の事例は、これは報告の仕方によると思うのでございますが、たまたまこの場合は、書面で把握できなかった事例でございます。
  59. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 しかし書面で把握できなかった報告の仕方——報告の仕方によって書面で握把させまいと思ったらできるわけです。だからうんと超勤させておいて、法律違反して、そして報告にはそれが現わさないでも、あなたの方には報告のみでいくのだから、二年も三年も先になって、会計検査院で指摘されて、そうだったかということになる。そういうことなんでしょう。
  60. 渋谷直蔵

    ○渋谷説明員 この大阪の事例は、先ほど吉田先生がおっしゃいましたように、労力費から超過勤務手当というものは支給できない建前になっております。それて本省に対する報告には、労力費の中に含めて報告が来ておるわけであります。ところが実際は超過勤務手当として出しておる……。
  61. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 ですから私が申し上げるように……。
  62. 上林與市郎

    上林委員長 委員長の許可を得て発言して下さい。
  63. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 であります。から、超勤手当を出しておいて、法律に違反しておいて、そして報告書はそれをごまかしておっても政府ではわからぬ、こういうことになる。そうすると労力費、その内容をなす人間の数、資材、資材の実物の有無、消費、使用の有無、超勤手当のあるなし等々、これは凡百の事例、というほどでもありませんが、幾つも原因はあるようでありますけれども、ことごとくこれはどうも報告書、精算書でわからぬということになって、わからすまいと思えば事業主体はごまかし得る、そういうことになると判断をしてよろしいのでしょうか。これを大臣どうお思いになりますか。
  64. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 会計検査院の報告を承わっておると、そういう心配がいろいろと私どもにも出てくるわけでありますが、先ほど申し上げましたように、出先は県とも共同いたしまして常に監査はやっておるわけであります。将来も監査を厳重にすることは今申し上げた通りでありますが、まあその実際に仕事をやる役所の者を全然信用しないということならば、これは非常にむずかしくなりますけれども、ある程度の信頼感は置いて、私どもは仕事を——ことに失業対策などという特殊な大事な仕事でありますから、取り扱ってくれる官吏は善意をもってやってくれると思って、その信頼感をもってやっておりますが、なおかつ、やはり職責上監察はできるだけ手の届くように、なお注意をいたしたいと思います。
  65. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私はそれでは一応この失対の補助金につきましては終りたいと思いますが、要するにこの問題は、労働省の現在及び将来の予算内容から見ても、その他事業の性質から見ましても、またあなたがかねておっしゃる失業対策全体の上から見ましても、非常に重大な問題になって参りまするのだが、しかし今幾ら伺いましても、部下を信用しないということはよくないことでありまするから、大いに御信用になって、事業主体も御信用になっていいのだけれども、具体的に検査院から指摘せられたことが事実で、そうしてこの事実を制度上なくするということはどうも確言ができない、たた人を信用していくほかは仕方がないというようなことになるのでありまするが、やはりここは報告書にいたしましても、ないしは補助金の交付にしても、あるいは中間の報告にいたしましても、監査にしましても、もっと根本からこういうことをなくするということについて考え方をもう一度新たにするという必要があるのじゃないだろうか、私ども来年はほんとうに減ってほしいと思いますけれども、ふえるのじゃないかとこう心配するのでありますので、これは重ねてあなたに伺っておきまするが、今の制度では書面の審査調査だけでは、どうもこの非違をなくする、確認する方法はないと思いまするので、特段にこの点につきまして何らかの方法をとるべきでないかとも考えまするが、そういうふうにあなたもお考えにならぬだろうか、どうでしょうか。
  66. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私は今日この席であなたの御指摘なさいました御精神は全く百パーセント同感でございまして、どういうふうにかして、ただいまのあなたの御期待に沿うように、全力をあげるようにいたしたいと存じます。
  67. 上林與市郎

    上林委員長 他に御質疑はございませんか。
  68. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 他の問題もありますけれども、私がひとり独占することも悪いですから、この程度にいたしまして、いずれまた……。
  69. 上林與市郎

    上林委員長 吉田さん以外の方の御質疑はありませんかという意味です。山田さんが関連質問があるそうですから、関連質問を山田君に許します。時間も相当たっておりますから、一つ簡潔にお願いいたします。
  70. 山田長司

    山田委員 大臣に伺いたいと思います。三〇七ページの最後に載っておる事件に関連してであります。国の施設を作られる場合に、正規に予算措置を講じないでいろいろ事業をやられることについての大臣の所見を伺いたいのです。地方の財源が非常に行き詰まっておられる今日、権力をたてに着て、刑務所を作る場合とか、あるいは拘置所を作る場合とか、あるいは税務署を作る場合、あるいは消防署を作る場合とか、あるいは警察の後援会とか、あるいは労働基準監督署を作る場合とか、こういう場合に、かなり寄付募集が多いわけです。それで小さな町村にいても、一年間に七、八十万の寄付の仰せつけがある。ちょっとした町になりますると、二百万くらいの寄付があるというようなことで、まことにその地方の公共団体、地方の自治体というものが財政的に困る状態に今日あるわけですが、この案件を見ますると、やはり公共職業安定所を作られる場合に、地方で寄付を募集されて作られておると思うのです。こういう点で、労働大臣は、こういう国の施設についての寄付についてはどんなお考えを持っておられるか、その所見を一つ伺いたい。
  71. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 お説まことにごもっともでございまして、私どももかねがねそういうことを痛感しておったところでございますが、三十一年度予算編成に当りまして、太田自治庁長官から特に地方財政の赤字対策の問題に関連いたしまして、山田さん御指摘のようなことを強調されまして、政府は今後そういうことについて何らかの確たる態度をきめて、そしてそれぞれの出先の官庁に通達をして、そういう迷惑を地方にかけないようにしようではないかということを話し合っておるような次第でございます。なおただいま御指摘の具体的なことについては、政府委員からも補足して御説明申し上げます。
  72. 山田長司

    山田委員 その内容はいいです。  さらに伺いますが、戦時中及び戦後の場合は公共職業安定所というものの活躍する余地がかなりあったと思うのですが、毎日の新聞を見ましても、あるいは新聞に類する報道機関などに、人の雇い入れの報道などがいろいろな角度でなされているが、これらについて、公共職業安定所という形のものの将来性について一体どんなふうに大臣はお考えになっているか、決算委員会でありますけれども、ちょっとそのことを伺います。
  73. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 御承知のように戦後非常に失業者ができた、こういう場合に何らかの対策を講じなけりゃならぬというので失業対策法をきめまして、そして初めのうちは生活保護的な気持で、とにかく出てくる失業者の方に何かやっていただいて現金収入を与えようではないかというのがこの事業のねらいでございました。だんだんこれが世の中に認められるようになりまして、今日ではいわゆる失対事業というものが経済効果を持つような仕事をやってくれるようなことになって参りました。私はやはり、国際条約のことなどもございますが、そういうことがある、ないにかかわらず、公共職業紹介所というああいう形のあっせん機関を政府で設けておくことは非常に必要であると存じます。
  74. 山田長司

    山田委員 大臣でなくて、一応関係政府委員に伺いたいのですが、こういう庁舎を作る場合に寄付を募集した事例というのは、おそらく全国にもたくさんあろうと思うのです。その寄付の募集の主体は、どんなところを中心にして寄付の募集をしたものであるか、参考に伺っておきたいと思います。
  75. 三治重信

    ○三治政府委員 この寄付の募集につきましては一般的には例年禁止してあり、また本省からも、寄付は役所としてそういうことについて募集をしてはいけないというふうに再三厳重に注意し、また地方からの主務課長会議基準局の局長会議ではそういうことについての指示もいたしております。従ってそういう寄付の関係は役所が主体ということではなく、市町村とか特別の団体でそういうふうな発議をしたような格好でやっているのが実情でございます。従って安定所長とか基準局長とか監督署長とかいうものが主体になって庁舎の寄付を集めるということはやっていません。ただ関係市町村とか、その庁舎を建てる特殊な目的で団体を作ったり、何かほかのネームで団体を作って庁舎を作るのに寄付の募集をするのが、実質上はいかにも役所がやっているようにとられている実情でございます。そういうような面もなるべく押えておりますけれども、やはり一面純粋に援助的な気持でやっていただくという部面もあるわけです。それが実情でございます。
  76. 山田長司

    山田委員 権力をもって臨むのは、そういう話しかけを一応されるなりあるいは地方の特殊な団体がそういう形で相談を持ってくるような形式をとるにしても、それに協力方をやはり役所が要請しているのが事実だと思うのです。大臣も先ほど自治庁長官といろいろ話をされているということを伺ったが、これはやはり労働省ばかりに限ったことではない。やはり各省ともにこういう問題は自治庁と特によく連絡をとって、地方の自治体に二重にも三重にも負担のかからぬように極力お願いしたいと思うのです。このことについては答弁は要りませんけれども、私の方から懇請しておきたいと思います。
  77. 上林與市郎

    上林委員長 それでは本日予定いたしておりました労働省関係についての質疑は、昭和二十八年度決算については一応終了いたします。  なお本日東京都労働局失業対策部長坂田正一君には参考人としておいでを願いましたが、長時間まことにありがとうございました。  次会の開会日時は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時七分散会