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1956-08-30 第24回国会 衆議院 外務委員会 第63号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年八月三十日(木曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 前尾繁三郎君    理事 北澤 直吉君 理事 須磨彌吉郎君    理事 高岡 大輔君 理事 山本 利壽君    理事 穗積 七郎君 理事 松本 七郎君       伊東 隆治君    植原悦二郎君       菊池 義郎君    並木 芳雄君       古川 丈吉君    松田竹千代君       山本 正一君    石橋 政嗣君       大西 正道君    田中 稔男君       細迫 兼光君    門司  亮君       森島 守人君    岡田 春夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣 高碕達之助君  委員外出席者         内閣官房長官  根本龍太郎君         外務政務次官  森下 國雄君         外務事務官         (アジア局長) 中川  融君         外務事務官         (欧米局長)  千葉  皓君         外務事務官         (条約局長事務         代理)     高橋 通敏君         外務事務官         (審議官)   森  治樹君         厚生事務官         (社会局保護課         長)      尾崎 重毅君         参  考  人         (沖繩土地守る         協議会理事沖繩         人民党書記長) 瀬長亀次郎君         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 八月三十日  委員池田正之輔君園田直君、石橋政嗣君及び  門司亮辞任につき、その補欠として古川丈吉  君、山本正一君、戸叶里子君及び田中織之進君  が議長指名委員に選任された。 同日  委員古川丈吉君及び山本正一辞任につき、そ  の補欠として池田正之輔君及び園田直君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  沖繩問題に関し参考人より意見聴取  国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それでは会議を開きます。  国際情勢等に関する件について質疑を許します。先般の順序に従って参りますが、まだ質問者がたくさん残っておりますから、一人二十分程度にぜひお願いいたしたいと思います。菊池義郎君。
  3. 菊池義郎

    菊池委員 まずまっ先にお伺いしたいことは、去る二十七日の本委員会におきまして、わが党の植原長老発言された中に、西村条約局長答弁として、南千島は千島列島の中に含んでおるということを局長が言っておる、であるからしてわれわれは南千島を要求することはできないと思うがどうかというようなことを言われたのに対しまして、大臣はそれについては何とも言えぬという不明瞭な怪しい答弁をなさいましたが、大臣にお伺いいたしますか、大臣は当時の西村局長答弁とそれから鳩山総理大臣がしばしば本会議において、委員会において言明したように南千島は日本領土である。それから重光外務大臣も同じことを言って、歴史的にも理論的にも南千島は厳然として日本領土であるということをしばしば言い切っておる。それから自由民主党の党議においても、この線に従って南千島は取らなければならぬと決定しておるのであります。それで、西村条約局長答弁総理大臣及び外務大臣答弁とどちらが正しいと考えておられますか、その点についてはっきりと御答弁を願いたいと思うのであります。
  4. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 先般の委員会において植原委員から御質問がありまして、私は西村条約局長がどう言ったということは存じなかったものでありますから、何とも言えない、こういうお答えをしたのでありますが、いろいろこの問題につきまして検討いたしました結果、私の考えといたしますれば、サンフランシスコ講和条約におきまして、日本全権ははっきり、日本固有領土は含まれない、こういうことを言っておりますから、私は、日本固有領土ということが択捉国後についてはっきりいたしますればこれは含んでいない、こう解釈いたします。
  5. 菊池義郎

    菊池委員 ダレス長官発言日ソ交渉が停頓したあとでもってなされたので、従ってこの警告が果して日本支援熱意があってなされたものであるかどうかということはちょっと疑う余地があるのでありますが、停頓の前になされたというならば、彼らは非常な熱意を持っておるということを察することができるのです。ところがダレス氏は、これまでも幾たびか日本に対しまして同じような警告を発したということを伝えられておりますが、それは事実でありましょうか、お伺いしたいと思うのです。
  6. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ダレスさんの発言についていろいろな憶測が新聞紙上で伝えられますが、これはいずれ重光全権か帰ってからよく検討いたしたいと思いますが、今日の段階においてはっきり申し上げられますことは、ダレス長官声明は少くとも日本対ソ交渉に対して日本のためにあと押しをしてやる、この趣旨から出たものであるということは、ただいまの状態でははっきりしております。それが一点と、それからもう一つ現在の階梯におきましては、日本対ソ交渉に対しては、サンフランシスコ条約を無視したようなそんな大きな利益ソ連に与えることによってこれを妥結するというような考えはいたしておりませんから、従いましてこの問題を取り上げる必要はないと存じております。
  7. 菊池義郎

    菊池委員 私がお尋ねしているのは、今までもそういったような警告外務省に対してあったかどうか、その点でございます。
  8. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 今までダレスさんが個人的に何かお話しになったことはあるかも存じませんが、公文としてそういう話は聞いておりません。ただダレスさんはあのサンフランシスコ条約を作りれた一番の親玉として、日本がほかの国に対して、あの条約以上のいい利益を与えるということになれば、この条約を締結した国は承知しないぞということが二十六条で書いてあるぞ、こういうことを言われたのだと存じております。それはダレスさんの方針でありますから、お漏らしになったことはあるだろうと思いますが、公式にはわれわれは受けていないわけであります。
  9. 菊池義郎

    菊池委員 ダレス長官警告はまことにずさんなものであって、まるで日ソ交渉に水をさすような疎漏な、理論的にも何もなっていないと思うのでありますが、こういう人がアメリカあたり条約の草案の起草に当ったということを考えると、まことに不思議に考えられるのであります。もしこの二十六条に領土の問題が含められることになりますると、条約加盟国でありました四十八ヵ国にも同じような領土を与えなければならぬ。これだけでももうすでにこの警告はむちゃであるということがはっきりわかるのでありますが、外務省といたしましては、やはりこの、ダレス意見を不当なりとして、独自の見解によって今後の日ソ交渉に臨むつもりであるということははっきりしておるのでありますかどうですか。
  10. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 これは御批評になることは自由でございますが、外務省といたしますれば、ダレスさんの声明というものはそうでたらめなものであるというふうなことは解釈いたしておりません。従いまして、あの条約もそうでたらめにそういいかげんにやられたものとは解釈いたしておりません。
  11. 菊池義郎

    菊池委員 それは理論に合わない警告であるといたしましても、アメリカ国務長官であり、しかも条約起草に当った人の発言であります以上は、日本といたしましてはこれを尊重するということは当然であって、外交というものはしばしば理論を超越しなければならぬ場合がある。でありますから、日本としてもこれを尊重しなければならず、従って今後の交渉に当っては、このダレス警告に相当拘束されなければならぬということをわれわれは心配するのでありますが、その点外務省としてはどうお考えになっておられましょうか。
  12. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 私はごく短期間外務大臣代理させていただいておりますが、私の外交交渉に対する考えを率直に言わしていただきますれば、どうもえてすると、ダレスさんはこう言ったとか、あるいはソ連シェピーロフはどう言ったとかいうことにつきましては、御本人が言っておることを通訳する人の主観によっていろいろ解釈される、こういうことによって両国の間に誤解が起ることがたくさんあるということを、身をもってしみじみと感じたのであります。まず第一にこの機会に私がお話し申し上げたいと思いますことは、シェピーロフがこの十一日に垂光さんにお会いしたときに、十三日までになるべく回答してもらいたいという希望条件を言ったのであります。それをある新聞は、これは十三日を期限として最後の通牒を出したんだ、こういうふうに翻訳した情報を私は得ております。またこの二十二日に、重光さんが日本に帰りたいから一時交渉を中絶したい、こう申し出たときに、彼はちょうどわれわれも八月一ぱい働いておるから九月には休暇をとりたい、またブルガーニン、フルシチョフも八月に休暇をとってないから九月に休暇をとりたい、九月は休んだ方がいいと思う、こういうふうなことを言ったと思いますが、それが鳩山総理が行くことになったから九月一ぱいやらない、こういうふうな想像をもって翻訳された新聞もあったのであります。今回のダレス言明に対しても、これをいろいろ翻訳する人が、ダレスさんの心にもないことを翻訳されて入ってくることが、ただいまの委員の御質問のように私は感ずるのでありますが、世の中のことというものは、リンゴはまるいが、切りようによってこれは四角にも三角にも料理人の手によってなる。食べる人はこのリンゴは元来はまるいものであるという感じで、世の中のすべてのことを処理していくということが大事だと思います。そのことはごく短期間でありますが、外務大臣代理をいたしまして感じた点でございますから、どうかこの点につきましてはよろしく御了解を願いたいと存じます。
  13. 菊池義郎

    菊池委員 下田条約局長アメリカでシーボルド氏に会いまして、ダレス長官のあの警告の真意についてただされた結果、よくこれがわかったということを言っております。ところが朝日新聞の論説はこれを取り上げて、下田条約局長の言うことは、これはどうも不思議であるというようなことをいって、これを非難したような論文が書かれてある。それで下田条約局長はこのダレス警告を是認し肯定しておるのか、あるいはまた理論上間違っていて、自分たちはそれに従うことができないけれども、とにかく聞き置くにとどめるというような態度であるか、どちらであるか、これをお伺いしたいと思う。もちろん本人でなければわからないかもしれませんが、外務当局といたしましては、全く同じ頭を持っておられるはずでありますから、おわかりになると思うのであります。
  14. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 これは下田条約局長が帰って、本人から聞かなければわかりませんが、大体私ども考えと同じ考えで進んでおることと思います。
  15. 菊池義郎

    菊池委員 つまりそれには拘束される必要はないという考え方でございますか。
  16. 高橋通敏

    高橋説明員 私どもとしましては、第二十六条は前段も後段もやはり三年で満了するのじゃないか、たとい満了しない場合でも、領土問題のごとき特殊な問題には適用がないのじゃないかと考えております。
  17. 菊池義郎

    菊池委員 米国日本を支援する意思がありますならば、この際この機会を逸せず、われわれは米国に頼み込んで、国際会議を開いてもらって、そしてこの領土問題を決定してもらうことが外交上の手であると考えるのでありますが、その実現の見通しはどんなものでございましょう。できるかできないか、その点について外務省見解をお伺いしたい。
  18. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいま菊池委員のおっしゃったような方法で頼み込むことがいいか悪いかということもまた十分検討する必要があると存じます。
  19. 菊池義郎

    菊池委員 全権団インドあたりを仲介としてアデナウアー方式でいったらいいというような意見も漏らしておられるということでりますが、これについて外務省の御意見があったら承わりたい。
  20. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 そういうことも一案でありましょうが、またアデナウアー方式で進むことを直接ソ連と話すことも一案だと存じております。
  21. 菊池義郎

    菊池委員 重光全権は、ロンドンダレス長官に会ったあとで、モスクワで調印しておけばこういうめんどうは起らなかったと漏らしておられます。日本では強硬論を唱えて行きましたが、向うへ行って急に豹変した。われわれはこれをはなはだ遺憾に思っておるのでありますが、今調印しなければ歯舞、色丹までもとることはできないというような請訓を仰いでおります。そういった態度の急変は一体何が原因となっておるのでありますか、外務省の御見解を承わってみたいと思うのであります。
  22. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 九月三日の午前八時四十五分に重光さんが帰りますから、よく聞いてお答えいたします。
  23. 菊池義郎

    菊池委員 岸幹事長は、過日外人の記者団に向ってこういうことを言っております。日本領土の解決の根本方針として三つある、一つは南千馬の潜在主権を認めさせる、もう一つアデナウアー方式によって日ソ国境の画定を延期する、第三は南千島を含む千島列島南樺太日本が放棄するとして、この島々の領土権の所属を明記しないでおく、この三つのうちの一つを選びたいと言っておりますが、これは外務省も同じ意見でありますか。
  24. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 いろいろな意見がありますが、相手のあることでありますから、私どもはここではっきり申し上げることはできません。
  25. 菊池義郎

    菊池委員 そうすると、これは岸幹事長が勝手に自分だけの意見を発表しておるのですか。外務省は、こういった意見にはどれにも全然御賛成なさらないのでありますか。
  26. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 これはやはり各自てんでんに自分の所信を述べて、これを一括して国策として打ち出すのが外務省方針だと存じます。従いまして、岸幹事長の御意見等も十分尊重して傾聴するつもりでございますが、外務省としての意見は発表する機会でございません。
  27. 菊池義郎

    菊池委員 大臣河野農林大臣にしばしば会っておられて、モスクワにおけるブルガーニンとの会談の内容についてもお聞きになったことであろうと思うのでありますが、ブルガーニンが南千島は日本としても譲りたくない、ソ連としても譲れない、両方とも譲れないのだからこれは一時たな上げにして話を進めようじゃないかというようなことを言ったと言っております。ところが向うの方ではそういうことは全然ない、河町全権ソ連意見を承認しておると言っております。そうだと思うならば議事録も見せると言っておりますが、こういう点について農林大臣からどういうふうにお聞きになっておるのでありましょうか。
  28. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 前回委員会においてお答え申しました通り河野さんからは、この問題につきましては、漁業問題で交渉に行ったときにブルガーニンに会った、そのときに択捉国後両島については、ソ連としても放棄することにできないが、日本としても放棄することばできないだろう、こういうことを言った、この事実だけは私は河野さんから詳しく聞いております。それ以後の問題につきましては、交渉をどうするか、あるいはアデナウアー方式にするとかなんとかいうふうなことは、河野氏はそういう権限を持って行っていないわけでありますから、こういう点については自分は触れることは困るといって河野氏は拒絶したはずでございます。
  29. 菊池義郎

    菊池委員 話をきめることは、河野全権としては権利がないからできないが、話し合うことは自由自在であります。それで向うが南千島を譲ることができないという場合においては、こちらの方としても自分意見を述べるべきであるが、そのときに河野全権沈黙を守ってしまった。沈黙を守るということは、向う意見を承認したというように向う解釈されても弁明の余地はないわけでありますが、こういう点についてどういうようにお聞きになりましたか。
  30. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 沈黙したからといって向う条件を受け入れたわけではなく、自分はその交渉には権限を与えられてないから、これ以上入ることは困ると言っただけの話でありまして、その点を私は詳しく河野さんから聞いておりません。ただいま御報告申し上げました程度しか私は河野氏から聞いておりません。
  31. 菊池義郎

    菊池委員 河野全権通訳もつけないで単身乗り込んで行ったということについて、世間でもってだいぶ疑惑があります。何らの秘密もなく、堂々と話し合うならば、すべからく通訳をつけて行くべきである、単身乗り込むところに不思議な点があるということでもって、世間で非常に誤解を受けておりますが、通訳をつけないで行ったという点について、河野君からどういうようにお話を聞かれたのでありましょうか承わりたい。
  32. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 そういう点は、私河野氏に話を聞いておりません。
  33. 菊池義郎

    菊池委員 それではこのくらいにして……。
  34. 松本七郎

    松本(七)委員 議事進行前回委員会で、西独共産党非合法化の問題について御質問したのに、政府はまだそのとき答弁できないというので、次会の冒頭に御答弁願うという約束になっておりますが、もし見解がはっきりきまっておれば、一つ発表していただきたい。
  35. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 前会で御質問がありまして、さっそくこの点は検討いたしました。ただいま政府委員から御回答申し上げます。
  36. 森治樹

    森説明員 西独共産党非合法化につきましては、かねて西独政府が一九五一年に連邦憲法裁判所に対して非合法化違憲性の確認の訴えを提起しておったのであります。その口頭弁論が昨年のたしか七月に終りまして、そうして今年の八月の十七日だったと記憶しておりますが、連邦憲法裁判所によりまして非合法であるという判決が下った次第でございます。以上が概略の経緯でございます。
  37. 松本七郎

    松本(七)委員 経過報告ではなく政府見解を聞いておるのです。そんな経過報告を求めているのじゃない。大臣政府見解を聞いておる。
  38. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 これはこの間の質問がありましたから、その経過についてよく調べたのでありますが、これは全く西独そのもののことでありまして、政府としてはこの見解を述べることはできないわけなんであります。
  39. 松本七郎

    松本(七)委員 全然質問の的にはずれている。きょうはそれでよろしい。
  40. 前尾繁三郎

  41. 岡田春夫

    岡田委員 大臣に二、三お伺いしたいと思いますが、この前の委員会ときょうの委員会に比べて、その間に非常に大きく変った問題が幾つかあります。その問題は先ほど菊池君も取り上げられましたように、ロンドンにおけるダレス発言の問題について高碕外務大臣代理として、はっきり言われたことは、そういう事実はないという公電が入っているということの御答弁があった。ところがそれから旬日を出ずして、そういう事実はあるということをダレス長官記者団会見があり、あるいは重光外務大臣もそれを肯定しているような態度が出てきたわけであります。これは大臣発言としては私はきわめて重大だと考えているのだが、先ほど菊池君の御質問に対する答弁では、あまり責任をお感じにならないで、しゃあしゃあとこの点については触れておられないような気がするのですが、あまり責任をお感じになっておられないのでございますか、いかがでございますか、この点が第一点。  第二の点は、ダレス長官発言の中で特に重大な点は、ロンドン会議以前においても数回にわたって日本政府連絡しているということを明らかにしている。ところがこれに対して根本官房長官は、そういうことは全然知らないと答えた。私がきょう根本官房長官出席を求めたのは、この関係を明らかにしたかったからでございます。しかし根本官房長官が出られないので、これは大臣にお伺いいたしたいと思いますが、大臣はこの前あのような間違った答弁をされた責任の上からいっても、数回の連絡があったかないかをお調べになっているはずだと思うのだが、この点についても日本政府としてどういう関係になっているのか、この経過をまず第一にお伺いいたしたいと思います。
  42. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 前回委員会において私が申し上げたことは、沖繩問題その他についてアメリカはそういう要求をしたことはあるか、領土問題について話があるか、こういうことでありまして、そういうことについては全然ないということは重光全権から参っておる公電があったのでありますからその通り報告したのであります。今日においてもそれはその通りでございます。何も曲げる必要はないと思います。ただこの条約の締結に至ったことにつきましては、この法律的の解釈等につきましては、ダレス長官はよく検討してまた知らす、こういうことを言っているわけでありまして、そのことも事実であります。従いまして今日問題になっております、日本があのサンフランシスコ条約において調印した以上は、そのほかの国に対してより以上の利益を与えた場合には、われわれはこういうふうなことを要求するぞ、こういうことを言われたことはあるいは事実だと存じます。このことは領土問題とは関係ないと私は存じております。従いまして、私の申し上げたことは今日とちっとも変らないわけであります。  それから第二の問題につきましては、これはあらためてそういうふうなことはダレスさんからこうだとか、ああだとかということを一々言ってきたことは私も記憶いたしておりませんが、あのサンフランシスコ条約を作られたダレスさんとしてみれば、日本に対してお前の国がほかの国に対してより以上の利益を与えるような条約を締結するなれば、われわれはまたこれに対して要求する権利があるぞということは、おそらくは何かの機会に話されたことはあるだろうと思いますが、私ども外務省に対して直接その話があったということは記憶いたしておりません。
  43. 岡田春夫

    岡田委員 大体の要旨はわかりましたけれども、それではダレス長官が数回にわたって連絡をしたという事実はあったということになるのですか、なかったのですか、あったのかもしれないが御存じないということになれば、あなたも大臣であったのですからそういう連絡は聞いていないとするならば、あなただけが御存じないのかもしれない。ダレス長官がうそを言ったのですか、それともどうなんですか。
  44. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 これはダレス長官に聞かぬとわかりませんが……(岡田委員日本政府が受け取っているのですよ。」と呼ぶ)日本政府はそういうふうな主張をされることは当然だと思っておりますが、あるいはあったかもしれませんが、私は当時外務大臣でないから外務大臣に直接お話があったかどうかということは、私は今お答えできません。
  45. 岡田春夫

    岡田委員 そういう主張があったのは当然だと思うからという意味は、二十六条によって同一利益を求められるということは当然であるという意味にあなたはお話しになったわけでございますか、その点はいかがですか。
  46. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 日本サンフランシスコ条約にきめられた条約以上の利益を特殊の国に与えた場合には、二十六条によってこの条約国もこれと同じだけの利益を請求することの権利があるということはちゃんと書いてあるのでございますから、その通りのことだろうと思います。
  47. 岡田春夫

    岡田委員 それが問題なんですよ。高橋条約局次長もそう言っておる、三年間の期限をつけてそういうことは認められるのであって、三年以降はそういうことはないんだとはっきり言っているじゃありませんか。あなたの場合には三年以降においても、他の国から利益を求められたならばアメリカに対しても同一利益を与えなければならぬという解釈をあなたはされておられるのですか、その点は重大ですからはっきり御答弁を願いたい。三年以降においても同一利益アメリカに与えなければならぬ、そういう意味で、当然であるとあなたはお考えになっている意味でありますか。その点はどうなんですか。
  48. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいままで外務省におきましては、二十六条につきましては問題としたことは一度もないのであります。従いまして、そういう問題は今後検討すべき問題だと存じます。
  49. 岡田春夫

    岡田委員 そんなことはありません。この間条約局次長答弁しているじゃありませんか。三年以内の問題——三年というのは二十六条全体にかかると答弁して、あなたもおられたじゃありませんか。そういう答弁をしているのに、あなたはそういうことは知らないし、外務省は問題としたことはないとおっしゃるのだが、言っているじゃありませんか、はっきり言っているのに、あなただけはそういうことはないとおっしゃるのですか、そういう解釈新聞にも発表しているじゃありませんか。同一利益を与えない、与えるものであるというのではないんだという解釈の反対をしているじゃありませんか。それじゃ二十六条の解釈外務大臣代理からはっきりもう一度伺いましょう。
  50. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 この二十六条の解釈につきましては、三年経過すれば日本は自由にできるということは言っておるわけでありますが、この問題につきましては、まだアメリカから正式に何ら言うてきたことはないのであります。
  51. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ日本政府アメリカから解釈を聞かないと解釈できないのですか。あなた自身の態度はどうなんです。日本政府態度はどうなんです。日本政府態度を聞いているのですよ。
  52. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 日本政府態度といたしますれば、これを法律的に解釈して、かくあるべきことが正しいということであれば、これはどこに対しても主張できることだと存じます。
  53. 岡田春夫

    岡田委員 重光外務大臣ははっきり三年以内であって、三年以降は無効だと言っていますよ、あなたの場合は解釈をまだなさらないのですか。条約局次長も言っていますよ。あなただけなぜそういう答弁をされないのか。アメリカに遠慮されているのですか。ダレスが今そういうことを言っているから慎重にかまえて言っているということは、アメリカからひもがついているということを意味しますよ。あなたはそういう意味で御答弁を避けているのですか。はっきりここでおっしゃったらどうですか。重光外務大臣だって言っている。外務省の官僚だって言っている。それを外務大臣代理は言えないんだということは、どういう理由ですか。はっきり三年間と、三年の期限以内ということを言っているじゃありませんか。それ以降は無効だということをはっきり言っている。それ以外の解釈ができるならどういう解釈ができるのですか。政府は今研究しているのですか。今みんな解釈の回答は出しているんですよ。あなたはなぜ御答弁できないのですか。もう一回御答弁を願いたい。
  54. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 この問題につきましては、法律の問題でありますから、法律の解釈ということについてよほど検討しなければならぬと思いまして、私自身といたしますれば、短期の外務大臣で法律は知らないということは、岡田委員も御承知の通りだと思います。従って私は今ここで自分意見を申し上げることはできないのでありますが、少くともはっきり申し上げられることは、私は決してアメリカへ遠慮してどうだとかこうだとか言うのじゃありません。ただ私の法律の知識がないということをここで暴露しただけであります。さよう御了承願います。
  55. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃあなた自身御存じにならないとしても、今までに委員会で唯一の発言である高橋条約局次長答弁が、政府答弁であるとわれわれは解釈して間違いございませんね。あなたがこの委員会において何らかの否定をされない限りにおいて、それは正当なものであると解釈せざるを得ない。しかも重光外務大臣もきのうの新聞記者団会見で、三年以内という期限付であるとはっきり言っているのですから、あなた自身は御存じなくとも、政府見解はこの見解であると解釈して間違いないと思うのですが、どうなんですか。いいですね。
  56. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 間違いないと解釈していただいてけっこうです。
  57. 岡田春夫

    岡田委員 それがわかればけっこうなんです。問題はこの点なんです。日本日ソ交渉をやる場合に、アメリカからひもをつけられてやれないというような態度を見せるということは、断じてわれわれは許さない。日本の国の外交政策は、日本の国が独立だとあなた方が言っているならば、ほんとうに自主独立の立場で外交政策を進めてもらわなければならない。そこであと二週間か一週間かしてからダレスから何を言ってくるか知れません。何を言ってくるか知れないが、その場合においても、今の三年の解釈に基いて、二十六条の拘束を受けないという考えでソビエトと交渉をされる決意があるのかどうか、 この点をぜひ伺っておきたい。
  58. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいま申し上げました通りに、日本政府方針として、法律的に解釈してこれが正しいということは、私はだれが何と言おうが、特にアメリカが何と言おうが、それに制肘を受けるべきものでないとはっきり申し上げます。
  59. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃもう一点。この点についてあまり時間がなくなりますから伺っておきますが、先ほど、ダレス長官の言っていることは日本を支援しているんだ、こういう意味お話しになっている。これは新聞にもそう書いてあるが、しかし私は、支援しているにしてはきわめて奇妙な支援の仕方だと思う。どうしてかといえば、南千島の領土問題について、ダレス長官が、南千島の領土日本に明らかに主権がある、固有領土であるというようなことをもし言ったんだとするならば、これは明らかに日本を支援している態度だと思う。ところがダレス長官の言ったのはどうですか。ソビエトが南千島をとったならば、それと同一利益アメリカがとるであろう。これはどういう支援の仕方だ。あなたの背後から銃剣を突きつけて、ソビエトと決戦をしなければうしろの銃剣がこわいのだぞという、こういう支援の仕方なんですが、これはどういう支援の仕方なんですか。アメリカ日本の国を植民地のような形でこき使おうという、そういう支援の形じゃないですか。そういう支援の仕方でけっこうだとあなたはお考えになっているのですか。これはほんとうの支援じゃないのです。アメリカの言っているのは、領土根性がアメリカにもあるということを言っているのですよ。南千島をとろうというなら、アメリカは沖繩をとろうということを言っているんですよ。火事場どろぼうの根性ですよ。こういう根性に対して、日本政府がほんとうに自主独立の考えがあるならば、いかにアメリカといえども日本と友好関係にあるアメリカであるならばなおさら、はっきりと日本はそういうような支援では困るという立場を断言すべきじゃないかと思うのです。この点について、この二十六条の問題あるいは第二条の問題に関連して、すなわち日ソ交渉領土の問題はサンフランシスコ条約に抵触するものではないということを明らかにするような政府声明を発表するお考えがありますかどうですか。抵触するとあなたがお考えになっているのだとするならば、その理由を一つお答え願いたい。私は抵触しないと思う。
  60. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 サンフランシスコ条約において日本南樺太及び千島を放棄したということは事実であります。それで放棄したが、これに対してソ連との間に特殊の所有権について協定をするということは、これは日本は差し控えなければならぬことだと存じております。これは日本が放棄したものを、さらに自分がこれに対する主張をするということになりますので、その意味におきまして、ソ連との間にある一つの取りきめをすることについては、少くとも連合国との間のある了解を得る必要があるだろうと存じます。またアメリカの支援につきましては、岡田委員は、アメリカは獅子の分け前を取りたいからこう言ったんだと、こういうお考えでありましょうが、私は断じてそうではないと思う。自分の友だちが、困った、どうもあれとの交渉には困るのだ、こう言うと、まあ、しっかりやれよ、そんなこといって譲るようなら、おれだってこれくらいのことはあるぞというぐらいのことは、お互いに話し合うことがよくあります。私はあなたよりも老人ですから、そういうことは苦労しておりますから、そういう意味から、決して悪くとらずにやるのがいいと存じます。
  61. 岡田春夫

    岡田委員 あなたは老人なだけに非常に危険な人だと思います。あなたは、お前が譲ったらお前のものをおれもとるぞという、そういう友人ですよ。とんでもない老人の友人だと私は思う。あなたの言っているのはそれじゃありませんか。お前があの人にとられるなら、おれもお前のものをとるぞと銃剣を突きつけているんですから、これが友人としての支援ですかというのです。支援などとごまかされてはいけない。日本の国の独立を考えれば、こういうことは断じて許すべきことではないと思う。こういう点についてやはり外務大臣としてははっきりした態度をこの際に、二十六条の法律解釈についてもアメリカ政府と違うのだから、その解釈の違った点を明らかにして、態度を鮮明すべきだと私は思う。こういう点についてはあまり申し上げていくと時間がなくなるから、続いて進めますけれども、いいですか、ともかくあなたのそういうような形ではわれわれはだまされない。国民はだまされませんよ。もしあなたがそういうようなやり方でやるなら、非常に危険な人としてだれも相手にしないでしょう。  そこで私は次に進みますけれどもサンフランシスコ条約と抵触するようなことがソビエトの交渉においてあったら困るんだ、こういうようなお話ですが、サンフランシスコ条約の場合には完全放棄なんでしょう。完全放棄をして、千島をソビエトに渡すということにこの間のモスクワ交渉でなっておるわけですね。これは何も日ソ交渉が初めてじゃないんですよ。台湾の場合どうです。台湾だって、完全放棄をして、日華条約で台湾所属というものがきまっておるじゃありませんか。それ以外に、新南群島あるいは西沙群島はどうですか。新南群島、西沙群島というのは、これは日本の国が発見した固有領土であるということになっておる。これがどうです。完全放棄をして台湾関係の帰属に納められておるじゃないか。千島はこれと同じじゃありませんか。そうなったらあなたどうなんです。こういう例があるのに、ソビエトの場合だけは、それはサンフランシスコ条約に抵触するというのは理由にならぬじゃないですか。それだったら前の場合にも抵触するじゃありませんか。前が抵触しないなら、今度だって抵触しないのは当りまえじゃありませんか。こういう法律解釈はどうなんですか。   〔発言する者あり〕
  62. 前尾繁三郎

    前尾委員長 静粛に願います。
  63. 高橋通敏

    高橋説明員 桑港条約との関係でございますが、これはいろいろの解釈、いろいろの見解が成り立つかと思うわけでありますが、ただいままだ考究中であるというふうに申し上げたいと思います。
  64. 岡田春夫

    岡田委員 それはどういう意味ですか。研究中ということは抵触しないという意味なんですか。抵触するかどうか研究しているのですか。二十六条は抵触しないというあなたの御解釈がありますね。そうするとどの点で抵触するのですか。
  65. 高橋通敏

    高橋説明員 ただいまの問題は、二条のc項の問題とソ連が提案されたと伝えられる領土条項の関係でございます。二十六条の問題ではなくて、二条のc項において一切の権利、権原を放棄したという条項と、ソ連が提案したとしました領土条項との関係でございますが、いろいろ解釈その他の問題がありますので、ただいま考究中であります。
  66. 岡田春夫

    岡田委員 研究中とおっしゃるけれども、あなたは前条台湾の問題に関してはそういう点は桑港条約と抵触しないということで明文化されているわけでしょう。だから日華条約ができているわけです。ところが今度の場合はそれと同じような形をとって抵触をするという理由はあるのかないのかということを伺っておるのです。特にこれは台湾の場合にはいわゆる外国から盗取した地域としてこれは幾らか南千島と違うという解釈ができても、新南群島、西沙諸島の場合にはそういう解釈はできないわけです。しかも日華条約の中でそのサンフランシスコ関係が書いてあるわけです。しかもそれに対して財産権の放棄までうたってあるわけです。事実上向うに帰属されている関係ができているわけです。ですからそれが条約上抵触しないとすればこっちだって抵触しないのは当りまえじゃありませんか。
  67. 中川融

    ○中川説明員 日華平和条約の問題でございますが、御承知のように平和条約は台湾、澎湖島を日本が中華民国に渡したという意味の規定はしていないのでありまして、台湾及び澎湖島についての日本の権原及び新南群島、西沙群島に関する権原を桑港条約の規定の通り日本は放棄するということをまず大原則として規定しているわけであります。従って領土条項に関しましては、少くとも形式上は桑港条約をそのまま中華民国政府に対しても認めたということになっているわけでございます。もっとも具体的な内容につきましては、たとえば財産権の問題あるいは住民の国籍の問題等につきましては、台湾が中華民国政府の管轄権のもとにあるということを前提とした規定は事実ございます。しかしながら領土に関する限りこれは桑港条約をそのまま認めたという形になっておるわけでございます。
  68. 岡田春夫

    岡田委員 それは条約技術の問題ですよ。事実問題としてはあなたお認めになったように、台湾に帰属するという意図のもとにおいて作られたのですよ。そういうことであるから、そういう内容を持っているのなら同じだということを言っているのです。これは大臣よく覚えておいて下さい。こういう内容を持っているのですから抵触しないのですよ。  条約問題ばかりやっていると時間の関係がありますから先に進みますが、いいですか、最後にこれは大臣にどうしても伺っておかなければならないことは、この間のあなたの答弁を伺っていると、妥結する気でもあるようであるし、決裂してもやむを得ないというような気でもある。一体妥結するのですか、やる気なんですか、やらない気なんですか、この点まず一つどうしてもあなたに伺っておかなければならない。日本の国民は、鳩山内閣は妥結してくれると考えているのですよ。領土の問題についてはいろいろな国民感情もありましょう。しかし今表面に現われていない国民感情をあなたは無視しているのですか。ことしの十一月には安保理事会で国連加盟の問題が出てくる、この問題をどうするのですか。あるいはソビエトにいる人たちの引き揚げの問題をどうするのですか。決裂さしてあなた方は引き揚げのあの人たちは帰ってこなくてもいいと考えているのですか。あるいは漁業条約の問題をどうするのですか。あるいはこのまま戦争状態が続いて、ソビエトといやな関係を続けていくことがいいのですか。日本は妥結をしなければならない。だから鳩山内閣が公約しているじゃありませんか。これをなぜ万難を排して妥結をするのだというように努力をしないのですか。決裂するかもしれないというようなことで、私はこの国交回復の問題について、少くとも鳩山内閣で野党側からいえば一番信頼のある高碕さんからそういう意見を聞きたくなかった。あなたがなぜ野党から信頼があるか。あなたは誠意があるからです。その誠意を裏切るようなことをしていいのですか。今度の自民党の中を見ていると、自民党の中に、ほんとうに日本の国内の百年の大計を考えて即時妥結をするという勇気を持っている人がいないのです。あなただってそうじゃありませんか。百年の大計を考えるならば、こういう日本の国の問題について万難を排して妥結をするということにまで努力をする決意がないというのは私は残念だと思う。そこで、もしこれが妥結ができなくて決裂になったら、あなた方はこれはソ連が悪いのだなどといってしゃあしゃあとして鳩山内閣に残るつもりですか。決裂した場合には、鳩山内閣のたった一つの公約じゃありませんか、鳩山内閣がやめるという決意があるでしょう。鳩山内閣が命をかけてもやるという決意があるのですか、どうですか。決裂した場合にあなた方は総辞職しますか、どうなんですか。国民をだますつもりですか。公約だといってだますつもりですか。相手が悪いのだといって、あなた方の責任はてんとして恥じないで平気な顔をしてそれをやっていこうというのですか。あなた方は命をかけた問題じゃありませんか。公約を果せられないどういう事情があったのか。公約を果せられなかったならば、決裂したならば、あなた方は総辞職しなければならないという決意を持ってやっておられるのですか、どうなんですか。この点が一点。  第二の点は、ほんとうに国交の回復をやるのならば、ソ連が悪いのだ、悪いのだといってわめき立てるよりも、問題は、引き揚げの問題が解決できるか、国連の問題がどうなる、漁業の問題がどうなる、こういう点に立って、日本国家の百年の大計に立って、小村寿太郎のような気持になって、ここで国交回復をやらなければならないと思うんだ。それをなぜやらないのですか。日本の国民の気持の中には、領土の問題もあるけれども、しかしほんとうに妥結してもらいたいという気持のあることをあなたは忘れないでがんばってもらいたいと思うのです。この点はっきりあなた自身が決意をされて国交回復をやられる決意があるか。そのためにはアメリカ一辺倒の外交政策をとっておったらだめだ。日本の国は自主独立の立場に立って、そうしてあなたが行かれたバンドン会議のようにアジア・アラブの諸国と仲よくして日ソの国交回復をやって、日本アメリカと対等な立場に立って友好関係を結ぶという関係を作らなくちゃだめだと思う。今の鳩山内閣の政策の行き詰まりというのは、結局アメリカに依存しながら中ソと仲よくしようというようなやり方があるから、これが行き詰まりの原因なんです。外交政策の根本を改めなければならない。ダレスがあのように言っているときには、日本の国は独立しているのたからとはっきり言って、外交政策を改めて、日ソ国交回復をやられる決意があるかどうか。これは国民の一番考えている点ですから、この点だけを伺っておきたいと思います。もうあまり時間が許してもらえないらしいですから、この程度にしておきます。
  69. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 前委員会においてお答えいたしました通りに、鳩山内閣は組閣以来日ソ交渉を一日も早く妥結したい、この熱意に燃えておるのであります。特に今日これが決裂するといった場合はいろいろの差しさわりもありましょうが、特に鳩山さんが心配しておりますことは、あの千人以上にならんとする引き揚げ問題が解決できないということについては、非常な政治的な責任感じておるのであります。従いましてこの問題は身命を賭して、もちろん早期妥結をするという考えで進んでおるわけなのでありますけれども、しかしながら国の将来というものは非常に大きな問題でありまして、それがために悔いを千載に残すようなことがあっては困るということも考えなければならぬ、これがためには鳩山内閣が一つつぶれるとか、内閣が一つ二つつぶれるとかいうふうなことを考慮しておってはいけません。いわんや私どもの個人の立場などというものは断じて考えないで、国のために一番いいということについて十分の努力をいたしたいと存ずる次第であります。
  70. 前尾繁三郎

  71. 植原悦二郎

    植原委員 私は政府当局に対して四、五の質問を試みたいと思います。  実は、与党に属する議員でありますがゆえに質問を避けたいと思いました。しかし、重要なる問題に当って、国家国民を誤まるようなおそれのある場合には、勇敢にその所見を述べることが国民として忠実なるゆえんとして、この質問を試みることを御承知願いたいのでございます。  私は、今や日ソ国交調整下の問題は、非常にデリケートな段階に逢着していると思います。一歩誤まるならば国家百年の計に禍根を残すのではないかとさえ考えて、非常に憂慮しているのであります。従って質疑も応答もきわめて慎重を要すると思います。私は、現政府外交の基本的観念は、世界のあらゆる自由国家との親善提携、特に米国との緊密なる提携を保つということで、これがわが国外交の基調であるべきものと信じておるのであります。この私の見解に対して政府が異論があるならば伺っておきます。これが第一の質問であります。
  72. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいまのお説は、私ども同感であります。
  73. 植原悦二郎

    植原委員 次に、質問の要旨はほぼ了解しておるから、あえて質問する必要はないと思いますけれども、私は順序を追って書きましたから申し上げておきますが、第二十六条の規定に関する解釈題あります。これは一党一派や一国の便宜のために解釈さるべきものではない。条約解釈は世界に通ずる、万古に通ずるものでなければならないと信じております。従って、この条約解釈は、先日条約次長が申されました通り、賠償と通商関係関係するものであって、これを領土にひっかけようとすることは、この二十六条の曲解であると私は考える。これに対して条約局次長は御異論がないと思いますが、いかかでしようか。
  74. 高橋通敏

    高橋説明員 御所見の通りだと思います。
  75. 植原悦二郎

    植原委員 ややもすればこの条約の二十六条の解釈が、領土問題にも適用し得るかのごとき諸説が流布されて、これによって日本が千島諸島に関してソ連領土権を容認すれば、米国はこれに準じて沖繩諸島の領土権を要求するであろうというような宣伝が試みられているように感ずるのでありますが、この宣伝の出所はいずこであるのか。よしこれが米国の一部から起るにせよ、もしくは日本の一部から起るにせよ、これほど両国民の国民的感情、特に日本国民の感情を害するものはないと信じて、私はすこぶる憂慮しているものであります。これに対しても、私はこの場合に政府の所見をただしておく必要があると思います。
  76. 高橋通敏

    高橋説明員 その点は、先ほどの大臣からの御説明で、ダレスが沖繩のことに関連してそういうことを述べたことはないということを御回答になったかと思っております。
  77. 植原悦二郎

    植原委員 この問題は、大臣からもはっきりお答えがあってしかるべきだと思う。現在世間に流布されているような宣伝は、これほど日米両国の親善関係を傷つけるものはないと信じております。ただいま申す通り日本は独立国であります。一つの国交回復の問題を他国と交渉する場合には断固たる信念を持って向わなければならないのであります。それに対して、他国の世論によって左右されるとか、あるいは日本の国民のある一種の一派の宣伝によって左右されるようなことがあったら、これは国家百年の計を誤まるものであります。現在世間に流布されているところの宣伝ほど両国の国民の感情をそこなうものはないと信ずるが、これは大臣も同感であろうと私は思うが、お答え願いたいのであります。
  78. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 私は、これは必ずしも宣伝とは思っておりませんが、解釈の相違で、そういうことを言う人はあると思いますけれども、先ほどお答えしました通りに、アメリカの今度の発言領土問題ということについては触れていないのでありまして、この二十六条ということにつきましていろいろの話がありますが、これは主として日本を擁護せんがための話題ある、こう解釈しております。
  79. 植原悦二郎

    植原委員 宣伝であるか宣伝でないかはものの見方ですから、これ以上私は議論しませんが、昨今国論が乱れているのはいろいろな策動や宣伝によっておることと私は思いまして、これを痛感しておりますからあえてこの発言をなしたことを御了承願いたい。宣伝か宣伝でないかの議論は私ここでいたす気はありません。  次に、千島列島の帰属の問題であります。これは太平洋に国を連ねるすべての国に対して防衛上の非常に重要なる地位を占めるものであり、重要なる関係を持つものでありますがゆえに、太平洋に面する国日本はもちろんのことでありますけれども米国もカナダもこれに対して深い関係を持つのは当然であります。従って、これらの国が日ソの交渉について深甚なる注意を払われておることはあり得ることで、さようでなければならないと思いますが、千島については実は議論になると思いますけれども、私は、この問題は国会の議事録にリファーしておきます。西村条約局長は、この問題が国会において取り上げられたときに、千島列島の中にはっきり南千島が含まれておることを声明しております。当時吉田総理は非常にあいまいな言葉を使っておりますけれども、それを突っ込まれて、やむを得ず西村条約局長が立ってこの問題をはっきりいたしております。これに対していろいろの意見の立場から御議論なさるは自由でありますけれども条約解釈として、その当時の実情として、私は西村条約局長答弁については一点の疑問を差しはさむべき余地がないと思いますが、これに対して条約局次長のお答えを得たいと思います。西村条約局長の当時の答弁御存じであるか、御存じでないかお答え願いたい。
  80. 高橋通敏

    高橋説明員 西村条約局長答弁は、速記録で私も読みまして、十分承知いたしております。
  81. 植原悦二郎

    植原委員 もし西村条約局長答弁を見たといたしますならば、先日私が申した通り、南千島は国際公法上からいえば無主地であります。主人公のない土地であります。おそらく世界の国際公法学者はこれは無主地であるというこの説を肯定されると思います。それゆえに、ソ連の要求通りこれがソ連に帰属するということに日本が立ったならば、これは非常な問題がありましょう。なぜその問題があるかと申しますれば、サンフランシスコ条約の際に、ソ連は、日本千島列島の問題を放棄するについては、ソ連のフェーバーにおいてという文字を入れることを主張したけれども、これは全体会議において拒否されて、その一句は削除されております。それゆえにソ連がこれをソ連領土なりと主張することも私はできない問題だと思います。ここに大きな問題のあることを冷静に考えて、日ソ交渉の問題に強き信念を持って当らなければ、この問題は解決できぬのだ、条約上においても他の意見を聞く要はない、はっきりとした文書がある。それを日本独自の立場において、独自の解釈、独自の信念をもって国家百年の計のために解決するという方針に進むべきであると思います。だからして、この問題は非常時むずかしい問題で、日本が放棄した、しかしソ連のために放棄したものではないといって、この問題を連合国の連合会議を開いて決定したらよかろうでないかというような説がありますが、私は今の世界の列強で、この火の中へ飛び込んでこのクリを拾おうというような愚かな国はないと思います。それゆえに、この問題を列強の会議によって決定せしめようなんということも、少くも国際関係を知っている者からいえば、愚論この上なしと私は申さなければならないと思うのであります。これに対して政府はかなりお困りだろうと思いますから、私はあえてこれに対して答弁を求めようとも思いませんけれども、私のこの議論は、世界に通じて誤まらざるものである、また日本の国家の立場としてかようになければならないと確信いたしておりますがゆえに、あえて与党の議員の一員であるにもかかわらず、このことをこの場合に公けにして、世の批判を求めておく次第であります。  次に、ソ連はヤルタ協定または戦勝国の建前で、諸島の領有を主張しておりますが、日本がこれをたやすく承認することはなかなかむずかしい問題だと思います。この問題につきまして私は政府に希望することは、今まで政府は、この千島列島、南千島の問題とサンフランシスコ条約意味を徹底的に国民に知らしておりません。これは政府の怠慢であります。これを西村条約局長の言う通りサンフランシスコ条約において日本は南千島の列島を放棄したのだ、これの所有権の問題を日本はかれこれ言えない立場にあるということです。これをはっきり国民に知らして、これはすでに日本領土ではないのだ、サンフランシスコ条約を見てこれを正当な解釈をするならば、ここに一点の疑問はないのです。なぜ政府は全国民に向って、この南千島列島サンフランシスコにおけるところの日本の協定を国民に知らせないのですか。これを知らせないところに国民が惑って、今日の国論が沸騰しておるのもここにあることをよく御了承願いたいと思うのであります。  私は日・ソ交渉に当る者は、日本の国家の運命を賭する重要なる問題でありますがゆえに、私心や野心や、自分の地位のことを考えていくような外交官は、だれであろうともだめだ。御承知でありましょう、小村寿太郎外務大臣はポーツマスに出かけて、日露戦争のあとの跡始末をする条約を結ぼうとするときに、日本はたくさんの金を使ったからソ連から賠償金を取らなければ承知しない、国論は沸騰するがごとくだった。小村外相はそんな世論に少しも惑わされず、自分の信念に向って償金を取らず、そのときの国論からいえば、日本は敗北したのだ、小村ぶち殺してしまえというような意見があったにもかかわらず、小村は泰然として横浜に帰って参りましたが、上陸をすることができなんだ光景を御記憶でありましょう。かような決心をもって日ソの国交回復に当らなければ、右顧左眄するような状態では私はだめだと思う。命をかけて日本の国家百年の計を立てるか立てたいかが、今度の日ソ交渉責任者であるということを御了承下さって、だれが行くにしても、そういう信念をもって国家のために命を捨てるものでなければならぬということを僕は政府当局に警告しておきたいのであります。  私は重光外務大臣交渉を見まするに、もっぱら法理論にとらわれておって、一八五五年の安政条約、あるいは一八七五年の南千島、権太交換、それらの条約で実は南千島の所属は日本である。ソ連はヤルタ協定を言うが、ヤルタ協定は日本題認めておらぬものだ。そんなものを引き出してもしようがないといって、法理論にとらわれた交渉でありますが、私は日ソ交渉の正常化については、もっと高い高所から外交政策、政治論をもってこれに当らなければだめだと思います。ソ連は世界の平和を希望するといっている。ことに極東の平和については熱心だという。日本アメリカと親善関係を保っていかなければならないのでありますが、ソ連日本の一衣帯水の隣国であります。この国とけんかし合っておって平和を求めても、なかなか容易でないということをまず第一に考えなければならない。そこでこの平和問題を論ずるについては、御承知の通り、ヤルタ協定がどうだとか、あるいは一八七五年の条約がどうだとかいうことよりは、竿頭一歩進めて、どうすれば日ソ両国の国民が融和できるか、国本の国民の感情を害しておってソ連日本と国交を結んだところが、決して平和にはなりません。また日本も誤まって国民を指導しておって日ソの関係を結ぼうとしたって、これもだめであります。それゆえに、どうしても両国民の国民感情の融和をはかることが、日ソ両国国交回復の先決問題であると思います。残念ながら、重光君はこの問題に対して一言半句触れておりません。のみならず、抑留者をソ連は戦争犯罪者と申します。私ども日本ソ連に戦争しておりません。日本の立場からいえば、日本人に関する限り、ソ連に戦争犯罪者はないわけであります。これはソ連が抑留者を勝手に使用するためにいっているのである。これはいわばソ連が口に平和を唱えるといいながら、内心また平らかならざるものがあるがゆえに、これを人質にとっているということであることは、どんなことがあっても争われない事実であるから、これをはっきり言うたらよい。この抑留者を帰さないでおいて極東の平和なんどどうして望めるのだ、なぜこういう政治論をなさらなかったのか。のみならず漁業の問題、魚族を保存するについては、これは日本のような海の国では人後に落ちてはなりません。けれども、公海においての漁業権は、これは強く主張してしかるべきだと思います。のみならず、海難船の救助に対しては、人道上申すに及ばずいたさなければならない問題であるが、これらの関係にも考慮いたさなければならない。なおさらソ連は平和を望むといい、日本と国交を回復したいという。にもかかわらず外蒙のようなソ連のほとんど衛星国とも思われるような国を国連に加盟せしめようとして、日本の国連加盟を拒絶しておるがごときは、ソ連の誠意を疑うものである。日ソ両国の国民感情を融和しようとするならば、まずそういう問題をはっきり片づけていこうではないかという立場をとりまして、道の問題を解決し、領土の問題は両方とも議論のあるところでありましょうから、これらは互いに歩み寄ってこの問題を片づけることが、日ソ国交正常化の根本問題であると思います。政府はこれに対して御意見があれば伺いたいし、御意見がなかったら、参考としてよくお聞きおきを願いたいのであります。
  82. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいまの御意見は、政府といたしましても十分尊重いたしまして、今後も善処いたしたいと思います。
  83. 前尾繁三郎

    前尾委員長 田中稔男君。
  84. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 重光外相がモスクワに参りまして、急に態度を変えた。重光豹変ということがいわれております。しかしながら私は決してそうではないと思います。   〔委員長退席、須磨委員長代理着席〕 重光外相は外務委員会その他管公開の席上でもたびたび言われたのでありますが、日本外務大臣として領土問題で初めからソ連主張をそのままのむとは言えない。外務大臣としてもちろん正当な要求は堂々としなければならないが、相手あってのことであるから、どうしてもソ連が聞かない場合には、それは考えなければならぬ、こういうお話があったのであります。その重光外相のお気持をそんたくすれば、私はああいうふうな態度に変られることは、一つの必然性を持っておると思う。それだけでなく重光外相がモスクワに御出発に当って、鳩山総理との間に私は十分話をやっておると思うのです。その場合鳩山総理としては、君、一つ必ずこの交渉はまとめてくれ、その他のいろいろな条件については君にまかせるという話くらいはやっておると思う。だから私は重光外相がああいう態度をとられた際に、これを鳩山総理はしっかり支持すべきであったにかかわらず、これをやらなかったということは、総理ははなはだ男らしくないと思いますが、こういうことにつきまして高碕外相代理はどういうふうにお考えになりますか。これは非常に大事な、いわばスタート・ラインのようなものなのです。これを御答弁願いたい。
  85. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 重光全権モスクワに参りますときに、総理との間にどの程度の話し合いがあったかということにつきましては、これは機密に属することで、私どもはそれに参画いたしておりません。どういう話があったということも私は存じません。また重光全権がどういうお考えで今日の心境になっておられるかということも、今日は想像いたすだけでありまして、これはもう近いうちに重光全権が帰ってくると思いますから、よく確かめた上において、全権からお答えいたします。
  86. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 今は一切が重光全権管帰国待ちという情勢であります。それで今はっきりしたことは言えないとおっしゃれば私ども仕方がないのでありますが、しかし私どもがたびたび言っておりますように、今度の日ソの交渉はすでにロンドンにおける交渉においてほとんどすべての問題が論じ尽されて、いわばトランプでありますと、双方カードを全部机の上に並べて相手に見せておる、こういうことだと思うのであります。重光全権が出発の際に、日本政府の最終的態度はきまっておらなければならなかった。ところがああいうことになるときまっていなかった。しかし今日はもうきめなければならない。重光さんが二、三日後にお帰りになるにしましても、それを待っているのでなく、今すでにきめるだけの材料が全部そろっておる。どうかこれから私が質問をいたしますのについては、そういうつもりで御答弁を願いたい。  もう一つ申し上げたい点は、高碕外相代理代理でありますから、しばらくのことだということでありましょう。しかしながら国の外交は一日といえども休んではいない。重光外相のいない間あなたがかわって外相の地位にあられるということは、私はただ腰かけという気持ではいけないと思う。やはりあなたのおいでになる間に国の外交の大事がきまっていくのです。いやしくも外相を引き受けた以上は、やはりあなたとしての判断と見解を持たなければならぬと思うのです。そういう意味でありますから、あなたの誠意ある態度はこの間から私ども評価しているところでありますから、お逃げになるような態度ではないと思いますが、きょうは一つそういう点において特に御注文しておきたい。  そこで申し上げたい点は、この間の委員会におきまして、穂積委員質問に答えて、あなたはモスクワにおいてはまだ交渉余地がある、こういうふうにおっしゃった。実は私ども交渉余地がないと思う。イエスかノーかだけだと思う。しかしあなたはそうおっしゃった。それでは一体具体的に領土の問題で、ソ連で従来シェピーロフが述べ、あるいはブルガーニンが述べたところ以上に日本側に有利に譲歩する余地があるとお考えになるか、一つあなたの御見解をお聞きいたしたい。交渉余地が一般にあるかどうか、特に領土問題についてはシェピーロフ外相、ブルガーニン首相が今まで公けに言ったところよりもっと日本に向って譲歩する、そういう可能性があるかどうか、あなたの御見解を聞きたい。
  87. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 私は重光外務大臣が留守中、外務大臣あとを引き受げたのでありまして、これはきわめて短期間でありますけれども外交の事というものは対外的のことでありますから、日本の信用を高める上におきましても、これはその間にとぎれては困る、こういうふうな考えでありまして、田中委員のおっしゃるごとく、私といたしましては、できるだけの勉強をしてこれをやっているわけなのであります。そういう点から考えまして、重光全権から参りました電信そのほかの情勢から見まして、私はまだソ連に対しては政治的の折衝をする余裕が十分ある、こういうふうに考えておるわけであります。しからば具体的にどれどれということの御質問でありますと、はなはだ残念ながら今後重光全権が帰りましたときに、私の所見はよく申し上げるつもりでございますが、この席上におきまして申し上げることは、どうかごかんべん願いたいと思います。
  88. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 そこでブルガーニン河野会談の内容でありますが、あなたもこれはお聞きになったと思います。あなたのお聞きになった範囲内のことは、南千島についてはソ連も譲れぬが、日本もあきらめることができないのだ、そういうふうな話だ。それ以上それではどういうふうに措置するかうという具体的な話は出なかった、こいうことです。そこでその場合といえども南千島がはっきりソ連領土であると確認することはないにしても、日本にこれが戻ってくるという可能性はまずないということですね。これは河野農相も感じておられたと思うのでありますが、そういうふうに解釈してよろしゅうございますかどうか、一つ考えを聞きたい。
  89. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 今私はすぐにこれは日本に返ってくるものでないという断定をすべきものでないだろうと存じます。
  90. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 そこで今度はさらに、先ほどもこれは菊池君の御質問にありましたが、党の幹事長である岸氏が外人記者に対してこの間話をされております。その中で、自由民主党としては領土問題については具体的には三つの方式のいずれかによって解決したいと考えておる。それがいわば交渉余地ということだろうと思う。その具体的な三つの方式は、第一には沖繩、小笠原同様南千島に日本潜在主権を認めさせる、これが一つ。第二にはこの南千島を日本は放棄はする、放棄はし、暗黙裏にこれがソ連領土であるということは認めるにしても、しかしながらはっきりこの択捉国後日本領土との間に国境線を画する、こういうことはしない。そこを条約の表現その他でぼかそう、これが第二の方式。第三は一切の領土をたな上げするいわゆるアデナウアー方式、この三つの方式考えるという、こういうお話であった。この三つの方式はいずれもこれはもう択捉国後、すなわち南千島が日本に返還されないということを前提とした話ですね。返還はされないけれども、その善後措置としてこの三つの方式考えている、こういうわけでしょう。これが党の幹事長であります、単なる個人の放言でもないと思う。このことについてはあなたも自由民主党の大幹部であり、現在党では外交のことを内閣にいてやっておられるわけでありますから、そういう意見をいろいろ参酌して外務省態度をきめますという今のお返事であったが、それは私はやっぱり逃げ口上だと思う。与党の大幹事長がこの三つの方式を言った。だからこれは岸さんが言った、だれが言ったということを別にしまして、この三つの方式のいずれかが実現する一体見込みがあるかどうか、これを一つあなた独自の御判断としてお聞きしたいと思う。
  91. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 これは私独自の見解を申しますとあるいは誤解を受けるかと存じますが、しかしながら岸幹事長の申しましたことにおきましてもアデナウアー方式であるということは、これは択捉国後の主権を捨てたものでない、捨てたもんだということを断定することはできないのであります。そういうような工合に私は今からいろいろなこの領土の問題につきまして断定したる考えを持っているということはすこぶる危険だと思っております。
  92. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 私は捨てたと言ってるのじゃない。実は対日平和条約第二条で捨てておりますけれども、捨てたというのじゃなくして、要するに南千島が今度のこの交渉日本には返らない、少くとも即時返らない、条約成立と同時には返らないということだけは前提としているわけですね、そうでしょう。だからあなたも今日この国難に逢着した日ソの交渉において、いずれにせよこの南千島が条約成立と同時に日本に返らないということは、これはもう大体お考えになっていると思う、これはどうですか。
  93. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 現在におきましては、私はこの国際情勢が緊迫しておるとき、米ソの関係が大いに緊迫しておるときに、ソ連が一応占領して軍事的の考えを持つときには、なかなかソ連としても、択捉国後は譲ることはできないことだと想像しております。ただ択捉国後日本といたしましては全面積の二・七%になっておるのであります。ところがソ連といたしますれば一万分の五以下なんでありますから、それだけの小さなものについて、ただ領土問題だけで利益を得るためにソ連主張するものでないだろうと私は考えますことと、これは私の想像でありますけれどもサンフランシスコ条約におきましても、わが全権日本固有領土は譲ることはできないということをはっきり言っておるのであります。またソ連といたしましても大西洋憲章におきまして、戦争の結果によって各国が領土を取ったり分け合ったりするということはやめようじゃないか、これは巍然としてきめられたる事実であります。これからおきまして日本は、戦争によって拡大したる領土は全部出すということは言っておりますが、日本固有領土を捨てるということは言っていないわけでありますから、こういうことによってソ連の名誉のために、私は日本固有領土をこの戦争によってソ連が取ったということはソ連のためにもとらないことであります。また日本のためにももちろんとらないことと存じております。これは私の偽わらざる所見であります。
  94. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 南千島が日本に返ってきたらいいということは、これは国民の気持であります。わが党ももちろんそう考えます。しかしながら今御答弁にもありましたように、択捉国後ソ連が今日保有しておるということ、自国の領土に編入しているということ、これは単なるソ連領土欲に基くものである、こういうふうには私は考えない。あなたも考えないとおっしゃった。それでは一体これはどういう理由かということ。太平洋憲章もありましょう。しかもそれにもかかわらずこれをソ連が現在支配しておる。そのためにはもちろん対日平和条約もあります。ヤルタ協定もソ連はこれは一つ主張の根拠にしております。あるいはポツダム宣言もありましょう。しかしとにかくそういういろいろなことを抜きにしても、事実上ソ連がこれを占領しているんですね。それは単なる領土欲でないとすれば他に理由がなければいけない。あなたは一体その理由はどこにあるとお考えになりますか。私の方からも答案を出せば、すでにわが党が多年言っておりますように、これは日本ソ連との関係よりもソ連アメリカとの関係に問題があるんですね。日本がほとんど全土をあげてアメリカの軍事基地になる、アメリカ一辺到の外交政策、沖繩、小笠原は今アメリカにほとんど取られてしまった形でしょう。こういう日本であってみれば、そうして極東における国際緊張が依然として続いておる現在、ソ連アメリカの極東軍事政策というようなものに対する顧慮から、これをなかなか渡さぬということが、私は理由の最大なものだと思うのであります。あなたの御所見を聞きたい。
  95. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいまお答えいたしました通りに、私は単純なる領土欲でどうこうということよりも、むしろその点に、つまり現在の国際情勢、これはアメリカソ連関係ということでしょうが、現在の国際情勢から考えて、ソ連が一応占領してしまっておったときに、軍事的の価値からいって、かりにこれを、きのう穂積委員の御質問にあったがごとく、またお考えにあったがごとく、あれを日本が取って、すぐにまたそこにアメリカが軍事基地を作るというふうなことになれば、これはソ連としても許すことができない点だと存じます。そういうふうな点が今後の政治的折衝として残された問題だと存ずるわけであります。
  96. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 そこで問題はやはりきわめて深刻な問題になるわけであります。日本が安保条約の体制下に置かれているということですね、これは事情が変らぬ以上はなかなかソ連はこの領土は返さないと思うんです。安保条約、日米行政協定がある以上は、やはり日本領土になった以上は、千島だってどこだってアメリカの軍事基地が設定される。そこでこの方面の外交アメリカに対する外交上の努力が行われて、そうして日本がほんとうにアメリカに対する軍事的、政治的、経済的従属を脱する、そういう状態が実現しなければ、今度の交渉で、しかも口先だけの交渉で私はなかなかこの領土は返らない、こう考えるのが国民の常識だろうと思うんだな。いわんやいろいろな事情がおわかりになっており、ソ連との折衝でソ連側の腹も一切わかっていらっしゃるあなた外務大臣として、国民も大体常識としてわかることがどうしてわからぬか。わかっていても、しかし外務大臣としてそれは言えないとおっしゃるならそれまでですけれども……。  もう一つ聞きますけれども、つまり南千島は今度の交渉で、日本にこれを返してもらうということだけはちょっとむずかしい。条件があって将来のことは別ですよ。今度の交渉で鳩山内閣の手で今交渉しても、これが日本に戻らないということ、戻らないからソ連の帰属をはっきりさせるということはそれはまた別の問題ですけれども、戻らないということは、あなたにはおわかりになっているのじゃないですか、どうでしょう。まだ戻る可能性はありますか。
  97. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 その点はさらに交渉してみなければわかりませんが、現況におきましては、現在すぐに戻るということは私は考えられないというのが常識だと思います。ただ戻らないといって、これは永久にソ連領であるということをきめるということはこれは別問題であります。だからその問題はたな上げにするということは一つの方法だとは存じております。
  98. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 私はそこが聞きたかったところなんです。つまり領土問題については、どうしても日本政府主張は通らぬから、いっそのこと全部これを未決の状態にしておいてたな上げしよう。これだと結局はいわゆるアデナウアー方式になりますね。そうして河野農相がブルガーニン首相と会って、そしてその間話があったときに、その話は結局はアデナウアー方式でもやれますぞという向う側の話だったと私は思う。それ以上何も私は何か色よい話があったとは思わないのです。なるほどアデナウアー方式といっても、国交は一応それで回復します。漁業協定の効力は発生します。あるいは帰国の問題、国連加盟の問題というのはこれはある程度解決するでしょう。だからこれは決裂よりもいいですね。しかしながら私ども考えますことは、先ほど植原委員からお話がありましたように、いやしくもソ連と国交を回復するならば、これはやはり積極的に友好関係を実現しなければならぬ。アデナウアー方式を結んだ西ドイツの今日の国交は、開いたけれどもいわゆる冷たい講和でありまして、不信と疑惑の中にただ国交を結んでいるだけだ。これじゃいかぬ。国交を回復する以上は、やはり完全な友好関係を打ち立てなければならぬ。もちろんわれわれはアメリカとも友好関係を打ち立てなければならぬ。われわれは両陣営に対して、ひとしく友好関係を打ち立てようというのがわが党の主張であり、私の主張でありますが、とにかくそういう私の考えであります。アデナウアー方式では半ば開かれた国交であり、不完全な国交である。それではほんとうに友好関係というのはできないのだな。そういうことになりますと、やはりいろいろな点で日本は損をする。まず領土だって、歯舞、色丹はこれまで放棄しなければならぬ。ところが歯舞、色丹だってやはり確保しておきたい。それだけの実利を収めておきたいというのが、北海道あたりの道民の考えであり、国民の大部分の常識だろうと思う。また千島の帰属にしましても、どう片づくにしても、やはり何かはっきりけじめをつけませんと、北洋漁業関係者が、漁業上の基地をここに設定しようとした場合に、ソ連領土とはっきりわからぬその地域に対して、ソ連に対して基地の借用を交渉することが論理的にできないわけなんだ。そういうことは実利の問題でありますが、今後日本がやはり今の両陣営に対して友好関係を持ち、そうして平和外交を進めていく。これがつまりあなたがおいでになったバンドン会議のバンドン精神だと思う。そのバンドン会議の精神によって、アジア・アフリカの諸国と広くつき合おう、こういう外交を今後行う場合に、日本ソ連と何か疑心暗鬼でつき合っているような関係では、やはりアジア・アフリカ諸国との国交はうまくいかぬと思うのだな。そういうわけでありますから、私はこの際アデナウアー方式はとるべきではないと思う。しかしあなたはアデナウアー方式一つの方法だとお考えになりましたから、一つ私の所見を述べて、あなたの御答弁を促しておきたい。
  99. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 このソ連との間の国交関係を回復するために条約を結ぶということの根本の趣旨は、ソ連との間の友好関係を確立するということが目的でありまして、これはその手段にすぎないのであります。従いまして、私は今日アデナウアー方式というものにとらわれる必要はないと思いますが、アデナウアー方式をやった結果、西独ソ連との間は決してうまくいっていないということが事実だとすれば、私は決してアデナウアー方式というものはとらないということでありますけれども、しかしながら、この方式はともかくといたしまして、目的はそこにあることでありますから、できないむずかしい問題、あるいは領土問題等はたな上げしておいても、両国の条約関係をお互いが結んでいくということも一つの案だと存じまして、その条約を結ぶということは、ただいま申しました通りに、両国の親善関係を増進するためであるという根本方針は曲げることはできないと思います。
  100. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 それでつまり決裂を避けたい。平和条約で国交の回復ができなければ、最後はアデナウアー方式とおっしゃる。その気持はわかる。私はさっき言ったように決裂よりは、これはいいと思う。しかしさっき言ったように、それじゃ不十分であるから、一つ平和条約で何とかしてもらいたい。それには領土問題は、少くとも日本にこれは戻るという公算はないのでありますから……。そうしてそれ以外に岸さんがお考えになった潜在主権方式、あるいは桑港条約方式、あるいはアデナウアー方式、こういうのは向うがのまないのですから、そうとすれば、最悪の場合は重光全権が決意されたような態度で、私はやはり国交を結ふべきではないか、条約を成立さすべきではないかと思うのです。しかも鳩山首相だって、私そんたくするのに、歯舞、色丹だけだって最後はやむを得ない、それだけでも妥結しようというお考えは私はあったと思う。しかし総理の心理をごそんたくしての話で、ここで御答弁を要求しません。  そこで最後に聞きたいのは、今度重光さんがお帰りになりますが、交渉をやめるのじゃないから、だれか行くわけだ。重光全権が再び行くか、あるいは重光全権にかわって鳩山総理が行くか、鳩山総理が行く場合に、それに重光全権が同行するか、あるいは河野農相が同行するか、こういう四つのケースがあると思う。この全権の人選いかんによって私はこれは妥結するか、決裂するか、あるいはまた妥結する場合、平和条約方式でいくか、アデナウアー方式でいくかが大体きまると思うのです。だから全権の人選は大事です。この四つの場合はどういうことになるか、今あなたの外務大臣としてのお考えはどうか聞きたい。
  101. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 この問題は非常に重要な問題だと存じます。従いまして現在日ソ交渉は継続中であります。わが政府、国民を代表して重光全権が現在全権の地位にあります。その全権意見によって私は決すべきものだと存じております。
  102. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 そこでこの日ソ交渉についてもっと聞きたいのですが、時間がないということで、あと渡航関係のことで三点聞きたい。  七月二十八日の外務委員会において、私の質問に答えて高碕外務大臣代理は、現在外務省にある渡航制限の内規は国際情勢の変化によって変るべきものと思いますから、私もこれを確固不動のものとしてきめることは間違いだと思います。情勢の変化によってはこれは再検討しなければならぬ、こう御答弁になっている。まあ、ついこの間のことでありますから、最近盛んに中国に行こうとしてたくさん旅券の申請が出ているときでありますから、この点について何か御検討の結果があればお尋ねしたい。これが第一点です。
  103. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 現在の情勢におきましては、非常な情勢の変化があったものと認めない方針で進んでおります。
  104. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 それじゃはなはだ困るのです。そして何でも一部の地方議員の中国行きは大体お認めになっておるということで、すでに実績はできつつあるようですが、どうか一つたくさんだまっておる中にも、日青協から行くことになっている二十六名、これは与党の川崎君だとか田中君だとかいろいろな人があっせんしまして、日本の各府県の青年団の代表二十六名は中国にやるとちゃんと内諾が与えられておりますから、これはぜひ渡航を許していただきたい。そのほか最近また青年婦人会議から三十何名か参ります。こういう中に実は公務員が若干おりますが、それを含めて一つやっていただきたいということを要望しておきます。  第二の質問は、共産党の野坂、宮本両君が、中国共産党の大会に招かれて、近く向うに行きたいということをかなり前から外務省に言っておるのですが、これに対して外務省態度はノーということらしい。しかしながらこれは私はおかしいと思います。というのは、日本共産党といえども、これは堂々たる合法政党であります。いわんや野坂君のごときは国会議員の職責を持っておる。そういうふうな人に対して旅券を出さぬというのは一体どういうのか、これは重大な理由がなければならぬ。その理由を一つはっきり示してもらいたい。旅券法には拒否する場合の事由がちゃんと書いてあります。その具体的な内容をはっきり御答弁願いたい。  なおつけ加えておきたい点は、日本社会党といえども社会主義インタナショナルの会合に行きますし、アジア社会党会議の会合にも行きます。各国の社会党に招かれたら行きます。私は党によって扱いを異にしてはいかぬと思う。それからまた中国の共産党といえば、中国における政府与党なんです。この中国といずれは国交の回復をしなければならぬと思うのです。ことにあなたは御熱心です。その中国の政府与党である中国共産党の大会に、合法政党である日本共産党の代表が招かれて行くということを阻止するについては、よほど重大な理由がなければならぬ。その理由を明示していただきたい。理由がなければ一つ出してもらいたい。もちろん出してもらいたいことが私の第一のお願いです。これは憲法上の権利だと私は思う。これについての御答弁をしてもらいたい。
  105. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 私は、中国の渡航につきましては、できるだけ緩和する方針をとっていきたい。この間議員団の方のことにつきましても、これはできるだけ認めたのでありますが、今日問題になっております日本青年協議会につきましても、できるだけ何とか実現できるように努力いたしたいと思っております。  また野坂さんの問題につきましては、これは直接御意見も聞いたのでありまして、私といたしましては、どうか好意的に何とか渡航できるように検討してもらいたいということで、現在事務的に検討中であります。
  106. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 今野坂君らのことについては、事務的に検討中ということで、まだ最終的にノーじゃないそうですから、それなら今申しました諸点の理由に基いて、これはぜひ出していただきたい。これは私の党じゃないけれども、広く日本国民の権利を擁護するという立場から望んでおきます。  最後に、現在大牟田に四十七名の朝鮮人の諸君が、帰国を待って待機しております。これはこの間も申し上げましたが、日赤のお世話で、イギリスのバターフィールドの船かなんかで帰ることになっておった。行きましたところが、何か李承晩の方から苦情があって乗船できない。そういうことで困っておりますが、これは早く帰れるように外務省の方でごあっせん願いたい点が一つと、もう一つは、厚生省の保護課長が見えているそうですからお尋ねしますが、彼らが一日たしか五十円の食費でもって、自分のうちに住んでいるのなら、それでも口をのりすることができるだろうけれども、国に帰る旅行の途次、見知らぬところに今待機している。それにわずか五十円の食費で一体生きていけるかどうか。このことは、なるほど生活保護法の規定の建前からいえば、特にこのケースだけ六十円、七十円、八十円にすることはできぬでしょうが、何かもっと、いわば一種の人道上の問題でもあるから、もう少し給与をよくしていただくように、一つ考え願いたいと思います。このことは、帰国の問題、乗船の問題で外務省の御答弁を願い、それから厚生省の方には、彼らの生活上の問題について——実はきょうからハンストを始めるということです。そういう深刻な事態になっております。だからこれについて、一つ人道的な思いやりのある態度で厚生省の御見解をお聞かせ願いたい。
  107. 中川融

    ○中川説明員 外務省関係についてまず御答弁申し上げますが、国内にある朝鮮人の方が、南鮮に帰られるという方もあり、あるいは北鮮へ帰られるという方もあり、帰りたいという人の間に二種類あるわけでありますが、南鮮の方は、もとよりこれは南鮮の韓国政府が許可すれば自由に帰れるわけでありますけれども、しかし北鮮の方へ帰る分につきましては、これは日本としてはもちろん出国は自由であるという原則に立っているのでありますが、現実の問題といたしまして、韓国側がこれについてはいろいろ反対をしている模様であります。従って便船等の関係が非常にむずかしいのでありまして、現に大牟田に今滞在しております四十七名の方々も、本人方の自由意思に基いて日本から出国するということで大牟田に集まったのでありますが、便船として予定しておりましたイギリスの船が、急に予定を変更して日本に入らないということになったために、その後帰る道がなくて、あそこに泊っているというのが実情でございます。政府が何かこれに援助の手を差し伸べて、そして政府のあっせんによって帰国できるようにしたらいいじゃないかというお話もあるのでありますが、この点につきましては、韓国側とのいろいろな関係から、韓国側としては日本政府が積極的に北鮮の関係について援助するということには、絶対反対という立場をとっているのであります。日本として、もとより韓国の言い分をそのまま聞く必要はないわけでありますが、現実問題といたしましては、日韓関係を何とか打開いたしたい、また釜山に抑留されております七百名からになる日本人の漁夫を、何とか一日も早く帰したいという意味での交渉を今しているところでございますので、韓国側との関係から、日本が積極的にこの帰国について援助するということは、差し控えているわけであります。しかし帰国することは本人方の自由意思で、それぞれの道を見つけて帰国されることは自由というのが政府の立場でございます。なお日赤におきましては人道上の立場から、政府方針とはまた別に、これに対してできるだけの援助をしたいということで努力しております。この問題につきましては、むしろ国際赤十字の力をかりてやるのが一番早道ではなかろうかということで、日赤では国際赤十字にもその方の援助を求めておるのであります。国際赤十字も原則的にはそれに同意いたしまして、目下日本、韓国及び朝鮮人民共和国との、この三国の赤十字に働きかけまして、何か打ち合せのための会合でもしようという心組みがあるようでございます。われわれとしてはそういう形によって、政治を離れた人道上の問題として、これが赤十字の手で解決されることが一番適当ではないか、かように考えております。
  108. 尾崎重毅

    ○尾崎説明員 厚生省関係についてお答え申し上げます。生活保護法は、法の建前からして大体日本国民に適用されることになっております。ただ人道上の問題と申しますか、そういうようなことから、現在相当多数の外国人、特に朝鮮人関係の方が適用になっております。今度の大牟田の場合も、大牟田に集結しまして早々に、生活に因るということで保護を適用している状態でありまして、御指摘の五十円の食費でやっていけるかという点につきましては、実は生活保護法がきめられました基準そのものが、高いか安いかという議論になりまして、その点は私ども機会あるごとに基準の向上には努めたいというふうに考えております。現行がそうなっております以上、保護法の範囲内でこの五十円の問題を解決するというわけにはいかない。しかしお話のようにできるだけそういう困った方々に対しまして、外国人とはいってもできるだけのお世話をするという趣旨は、まことに私どもも同感でございまして、日赤の方で今まで非常にいろいろお世話をしております。申し落しましたが、五十円の食費で、あるいはまたそのほかの事情でたとえば病気にかかるとかいうような場合には、それにはそれに対する生活保護法上の医療扶助の措置がございますので、私どもとしましては現地の福祉事務所、あるいは福岡県の民生部当局等に連絡をいたしまして、そういう事態が起ればすぐ必要な措置をするようにという連絡はとっておるわけであります。そこで日赤の方でもいろいろ心配をいたしまして、特に八月九日の日でございましたか、診療班を派遣いたしまして、相当詳細にそういう健康状況の視察をしております。その結果は大体入院を要するような患者は今のところない、病気といたしましても大体かぜを引いておる、あるいは水虫にかかっておる、そういう概して在宅で手当をすればなおる程度の病気であるというふうな報告も聞いております。なおそのほか日赤関係としましては石けんやタオル、パンツあるいはシャツ、そういうものを特別に配給をしております。さらにドライミルク一ポンド入り百カンばかりを寄贈してそういう御趣旨に沿った措置をとっておるわけであります。なお今後ともその点は日赤等と連絡をとりまして、御趣旨に沿ってやって参りたいというふうに考えております。
  109. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員長代理 細迫兼光君。
  110. 細迫兼光

    細迫委員 すでに多くの委員諸君から、いろいろな角度からの質問がありましたけれども、まだ私の気にかかることを一、二質問いたしたいと思います。  さきに田中委員が指摘せられ、高碕さんが同感を表明せられましたように、今日のように日本外交路線がアメリカ一辺倒的な路線であり、進んでは日本領土に返されたあかつきには、直ちにアメリカの軍事基地になる危険があるという状態のもとにおいては、今日の国際情勢からソ連がどうしても千島を返す気になれないだろう、いろいろな理屈は言っているが、ほんとうの返し得ない理由はそこにあることは、これはもういやしくも外務省に籍を置き、あるいは外務委員会に籍を置く者として、だれしも一点の疑いない判断であると思うのです。この一番のむずかしい問題に何らかの条件をつければ、ソ連態度も少しは変化を予期し得るではないかということが当然に考えられる。すなわち返してもらったならば、その土地には軍事基地を置かせないのだ、あるいは空も飛行機で飛ばせないのだという行政協定の例外をここに設けることをアメリカとも交渉して、そういう条件になったらば一体どうだということは一本突っ込むべき問題だと私は思うのです。そういうことを表明して交渉したのであるか、そういうことを表明して交渉しても、なお今のソ連態度が出てきたのであるか、あるいは全く触れてないのであるか、この点の経過一つ御説明願いたいと思うのであります。
  111. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいまの御質問の点は、これは政治折衝としては当然やるべきことだと存じております。しかし重光氏がそういう折衝をしたかどうかということは、まだ公電が入っておりませんから何もかわりませんが、政治折衝でありますからこれは公表しないことだと思っておりますが、これは当然今の御意見等のことは必要な点だと思っております。
  112. 細迫兼光

    細迫委員 千島を返してもらいたいという熱望においては、われわれも人後に落ちるものではありません。でありますから、そういうまだ尽すべきことを尽したかどうかわからない状態において何とか結論をということには、いささかわれわれは未練を感じておるわけでありますから、明確に一つ重光さんがお帰りになりましたらその点をただして、後に御答弁を願いたいと思います。  次にさっき御説明のように、これから再び交渉は開かれるのであります。鳩山さんが行くにしましても、重光さんが行くにしましても、どうにか今度は決着をつけてこなければならない。現在こういう中断の状態になっておりますことは、いわば国論の統一ができていないこと、その内容は領土問題はあくまで主張すべきか、あるいは妥結ということでいくべきか、この点について国民の世論が統一していないだけではなくて、与党の態度が統一していない。これは国民世論のまた一つの反映でありましょうが、一つには楠原さんも指摘なさいましたように、一部のあるいは意識的な偏向した宣伝もないとは限らない。それでありますから、これを何とか決着するには、鳩山さんが行くにしましても、重光さんが行くにしましても、何とか国論を統一していかなくては、あるいは与党の意見を統一していかなくては、また再び同じ轍を踏む危険性があると私は憂えるので、そこにおきまして、政府としてはこの国論統一、ことに与党の意見の統一、これはぜひ日ソ交渉に当ってやらなくてはならない義務だと思います。そこで、果してこれから領土問題はあくまで固執するのだというふうに国民の世論を強めていく方針をとられるか、あるいは妥結ということが何よりも最上位に位すべきものだということでもって、国論統一の処置に出られようとするか、いずれの路線を今後政府としてはとっていかれようとするか、この点を一つはっきりしていただきたいと思います。
  113. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいま全権意見とそれから与党、閣僚間の意見とが必ずしも一致していないということは、御指摘の通りであります。そういう意見を調整せんがために、交渉中途にして重光全権が今度帰ってくるのでありますから、帰った以上はここではっきりこの方針をきめたいと存じます。しからば、御質問のごとく領土問題を捨てておいても妥結を先にやるのか、あるいは領土問題をどうするかという御質問でございますが、これは重光全権が帰った上において、よくきめた上において御答弁申し上げたいと存じております。
  114. 細迫兼光

    細迫委員 相手のあることでありますから、そういう御答弁もやむを得ないということも私わからないではありません。でありますが、世論を統一していかねばだめだということは確かなことでありますから、ぜひこのことはやっていかなくちゃ、鳩山さんがやっても、重光さんが二度やってもだめでありますから、よくよく御勘考願いたいと思うのであります。  時間もありませんから、国際情勢を一問。韓国問題でございます。事実に属することですから、アジア局長あたりの御答弁でよろしゅうございます。  現在韓国との間の事柄は、あのままどうも投げやりになっておるようであります。御承知のように韓国からは、堂々と公使館を設けてやってきております。しかるにわが国からは、公使や領事はおろかなこと、公務員一人行っていないのじゃないか。これは御答弁を待つまでもなく、私が答弁すれば、行っていない。こんな屈辱的なことはないと思うのです。しかもそうしておいて漁民を抑留し、あるいはまたああいう不合理な李承晩ラインというものを引いて、漁業のわが権益を乱すといった状態であります。もっと私は、きぜんたる、とまで言わぬでも、平等を要求する、互恵を要求する、こういう態度くらいは韓国に対してとられなくちゃならぬと思うのです。今の状態では、李承晩氏に対しましては全くはれものにさわるがごとく、北鮮に帰国する者に対する妨害ですら、人道問題ですが、それに対してもほとんど一言の抗議もようしないという卑屈な態度ではだめだと思うのです。すなわち平等な権利状況、具体的には公務員、外交官を受け入れせしめるくらいなことを直ちに要求していって、平等状態をまずその形においてでもとるというようなことに出るべきお考えがあるかどうか、この点を一つお伺いしたいと思います。
  115. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 日韓問題の解決は、両国だけの関係でなくて、日本が東南アジアそのほかの諸国と友好親善関係を結ぶ上においては、どうしてもまず最も手近な日韓の間の国交を一日も早く調整したいということは、政府が特に念願としておる点でございます。従いまして、今後手近な方面からまずもって解決して、逐次なるべく早い機会において全面の交渉に入りたいということに努力いたしておる次第でございます。
  116. 細迫兼光

    細迫委員 現在の状態では、さき言いましたように、非常に屈辱的な不平等な状態であると思います。そういうところから、ただ感情的にいけば、日本としてはもっともっときつく反発的態度にも出るべきであると主張したいような気持が率直にはいたします。でありまするが、一方韓国との経済関係が非常に重大であるならば、これまた少しは遠慮すると国民に説明する理由にも相なると思うのですが、一体韓国との間の経済関係、輸出入関係というものはどれくらいの状態にありますか。密輸出入はだいぶあるようでありますが、経済関係はどれくらいの重大性を持っておるのか、一応御説明が願いたい。
  117. 中川融

    ○中川説明員 元来日韓間は経済的に非常に重大な関係にあると思うのでございます。これは戦後の実績に徴しましても、日本から韓国に対します貿易といたしましては、四、五千万ドルのものが輸出されたのでありますが、いかんせん韓国から日本が買うものが非常に少く、約十分の一の四、五百万ドルが実績でございまして、一対十という関係でありますので、韓国側はその日韓間の貿易につきまして、どうも日本側がいろいろ細工をしているのではないかというふうに疑ったこともあるのでございます。日本としてもできるだけ多く輸入したいということで努めたのでありますが、そのうちに政治的な問題がからんで参りまして、韓国側としては日本からの輸入はぜひ少くする、これは韓国における日本色を払拭するというような思想から、日本からの輸入を押えましたために、現在では輸出入とも約四、五百万ドルというところでおさまっておる、きわめて小さなものになっておるのであります。しかしこれはやはり政治上の関係からこういうことになっておるのでありまして、本質的には日韓間には相当の量の貿易が行われ得るものであるというふうに考えておるのであります。
  118. 細迫兼光

    細迫委員 聞けば、経済関係もきわめて稀薄なように判断せられます。実際韓国問題につきましては、私山口県でございますが、知事を初めとして非常に心配しております。ぜひともこれはもっと早く熱意を込めて日韓関係を調整していくことに御努力が願いたい。その態度の根本としては、今のようにはれものにさわるような態度ではだめだと思う。どうか決意を新たにして促進していただくことを要望して終ります。
  119. 岡田春夫

    岡田委員 根本官房長官が御出席になりましたので、官房長官に伺いたいと思いますが、大へんおそくなったので簡単に伺います。あなたに来ていただくという理由は、実はこの委員会で再三にわたって鳩山総理、もし鳩山総理出席せられないという場合には、河野農林大臣に御出席を願いたいという要求をいたして参りました。しかし遺憾ながら今日まで御出席がないわけでありますので、きょうは内閣を代表する立場に立って、根本官房長官から一つ意見を伺いたい、こういう意味できょう御出席願ったわけでありますから、その立場とその責任の上において一つ答弁を願いたいと思うのであります。  そのことは、あらためて申し上げるまでもなく、日ソ交渉の問題ですが、最近の日ソ交渉は、重光全権があのように努力したにもかかわらず、今日のような状態になっておる。しかも数日来のダレス長官との会見で事態はますます紛糾した事態になっておる。こういう事態に立って、鳩山内閣は果して日ソの国交回復の公約を実行し得る自信があるのかどうか、こういう点について国民の懸念は非常に強くなっておる。こういう点で問題になっておるのは、何といいましても、これはもうあなたも御承知のように、日ソ交渉経過の問題じゃなくて、むしろ問題は国内問題にある。自民党の内部にこのような対立、混乱があり、こういう問題が原因となっていまだに妥結ができないということであるならば、政府自身としては、与党である自民党の中をまとめて、ほんとうに日ソの国交回復を妥結に持っていく決意があるかどうか、こういう点についてはっきりした内閣としての責任ある答弁をまず伺いたい。そうして、もし妥結ができないとするならば——というようなことを高碕大臣代理はこの前の委員会でもって答弁されておられるが、そういうことはわれわれとしては、自民党があのように公約しておる限りにおいては、聞くわけにはいかない。妥結ができないというような場合においては、ソビエトに難くせをつけて、ソビエトが悪いんだ、おれたちは悪くないというような顔をして、平然として内閣に居すわっていくというようなことでは、国民は断じて許さないのであるが、こういう点は一体どのような決意を持ってやろうとしておるのか、この点からまず伺って参りたいと思います。
  120. 根本龍太郎

    ○根本説明員 政府といたしましては、終戦十一年の今日、ソ連との間において正常なる国交が結ばれないということは、世界平和のためにも日本の存立の安定の意味からしてもこれは好ましくない。そういう意味におきまして、日ソの間の正常なる国交を回復いたしたい、こういう念願には変りはないのでございます。しかし外交交渉でありまするがゆえに、日本主張ソ連主張とが歩み寄りをいたしまして、そこに妥結をするということが外交交渉でございます。早期妥結と申しましても、日本主張を一切捨てて、ソ連の言うことを無条件に受け入れるということの立場はとり得ないということは、これはあなた方も同感だろうと思うのでございます。従いまして、今日まで日本主張を十分に説明し、また国民もこの主張を支持しておるということは一般の情勢だと思うのでございます。現在の段階はそういう状況でございまして、政府としてはどこまでも日本主張をも入れつつソ連との間に妥結をすることは、依然として変りなく念願しておる次第でございます。
  121. 岡田春夫

    岡田委員 もうすでに領土の問題の交渉を始めてから約二十カ月近い期間がたっている。しかもその間において最も慎重論といわれた重光外務大臣が行ってさえこのような状態である。こういう状態になってくると、領土の問題だけを中心にしてあくまでもがんばるといっても、これは相手のあることですから、そういう相手に対して納得のできる場合とできない場合がある。そういうことになってくると国交の回復はできないということも出てくるわけです。しかも日ソの国交回復の重要性は、あなたのお話通りに、これは世界の平和のために、日本が国際的な一員として、ほんとうに一本立ちをしていくために最も重要な問題です。しかも国連加盟の問題もある、引き場げの問題もある、漁業の問題もある。これらの問題をあわせて考える場合において、領土の問題が必ずしも十分な目的を達せられない場合においても、国交の回復を即時行うということが、日本の国家百年の大計の道であるとわれわれは考えるのだが、こういう考えまで幅を持ってそういう交渉をされるという決意があるのかどうか。こういう点についてはまだまだ日本の希望を交渉してみてということを言っても、これは話の通らないときと通るときとあるのであるから、やはり見通しを立てた御意見を伺っておかなければならない。それだけの幅を持って交渉をされるのかどうか、この点が第一点。  第二の点は、そういう交渉をやるとするならば、当然これは鳩山総理大臣がソビエトを訪問して、これによって問題を解決するというようなことが、最近新聞に再三出ているわけであります。この鳩山総理モスクワを訪問して解決をするというところまで踏み切ってでもやられる努力を現在やっておられるのかどうか、この点も重光外務大臣が帰って参りましてからよく相談いたしましてというようなそういうなまはんかな態度で今重光待ちをやっているのかどうか。内閣としては鳩山総理をやっても解決をするというところまで準備を進めているのか、この二つの点を御答弁願いたいと思います。
  122. 根本龍太郎

    ○根本説明員 御指摘のように現在の日ソ交渉の問題は、主として領土問題の意見の全面的対立がその難点になっておることは事実でございます。しかもこの問題は日本国民の世論といたしましても、領土問題をソ連の言う通りにのむべきだという世論ではないとわれわれは考えております。政府もそう考えておるわけでございます。社会党その他の御意見においても、今ソ連領土問題に対する一方的主張を全面的にのめという御議論でもないようでございます。従いまして、集約的に申すならば、この領土問題は非常に重大な問題でありますがゆえに、今直ちにソ連の提示したあの案だけでのむというわけにはいかないという態度をとるということは当然のことではないかと考えておる次第でございます。  なおこの日ソ交渉の問題を解決するために、鳩山総理がみずから出馬してその任に当りたいという意思表示は先般出されたようでございます。しかしこの問題については、ただ行ってできなければ決裂するというような簡単なことでもございますまい。従いまして、向うの方においても九月一ぱいは首脳者が休暇をとるというような関係もあり、しばらくこの問題は両方とも国内の情勢をも考えて、さらに若干の時間を置いて継続するということにおいては同意しておるようでございますから、その間において国家の重要な問題でございますから、慎重な考慮をしてさらに継続の態勢をとるということが、政府として当然のことではないかと考えておる次第でございます。
  123. 岡田春夫

    岡田委員 ちょっと不明確ですが、鳩山総理をおやりになる、鳩山総理を出してその交渉に当るという考えはあるのかないのか、それはそういう点も含めて考えておるのか、どういうことを考えておるのか。
  124. 根本龍太郎

    ○根本説明員 総理が自分がこの難局に当ってよろしいという意見は述べられております。しかしこの問題についてはまだ閣議において具体的に決定いたしておりません。先ほど申しましたように、現在の段階におきましてはソ連側においても若干の期間を置いてさらに継続するという意図もありますので、その間十分に検討の上に最後的に決定すべき問題だと考えております。
  125. 岡田春夫

    岡田委員 それではそういうことがきまるのはいつごろですか、たとえばあなたの今の御答弁によると、九月中はソビエトの方も休みだからというのは、これは重光外務大臣ロンドンで言った話、ところが高碕外務大臣代理は九月中でも交渉し得るという発言をしておられる。こういう点になる、その時期のおくれるというのはソビエトの責任ではない、日本の態勢がまとまらないからそういうことになっておる。日本の態勢を一体いつまでにまとめるのか。特に自民党の内部がまとまらないからこの体たらくになっておる。自民党内部の態勢をどのようにまとめるか。しかも鳩山総理を出して、そこでまとめるという見通しなり時期を持ってやっておられるのか。重光外務大臣が帰ってこられてから鳩山総理をやっていいかどうしようかというようなまるで他力本願な、そういう形でもって政府態度をきめようとしておるのか。公約でありますから、もっと責任を持って国民に対して実行するという決意をあなたは明らかにされなければならないと思う。閣議できまってないということは私は知っております。しかし鳩山総理が行きたいという限りにおいて、総理大臣が言っておるのですから、あなた方がどのように言われようとも、総理大臣方針に従って行動するのが現在の内閣制度の一つの建前でなければならないと思うのだが、そういう点においても、鳩山総理をやっても日ソ交渉を妥結に導くという決意があるのかどうなのか、その点を国民が聞きたいわけであります。こういう点をもっとはっきりと率直にお話をいただきたい。ソビエトにいわゆる中断の責任があるのではない。日本責任があるのだという点で、はっきりお話を願いたい。
  126. 根本龍太郎

    ○根本説明員 政府与党の意見の調整をいつまでやるかということの御質問でございますが、これは重光全権が帰られましてから、十分にその重光全権意見をも徴し、でき得るだけすみやかに政府与党としての態度を決定いたしたい、こう思っておるのでありますが、いつという期日を今明確に申し上げることは困難だと思います。  それから総理が決意したらそれでいいじゃないかというような御意見でもありますが、しかしこれはただいま申しましたように、言外にあなたの方では、とにかく領土問題はもう仕方がないからのめというような意図のようでありますが、政府はその態度をとっていないのであります。御承知のように政府与党といたしましては、日本固有の頭上についてはどこまでもこれは主張いたしたい。しかもその理由としては、重光全権ソ連代表と交渉の際に明確に示したように、大西洋憲章その他いろいろなことにおいて言っておるのであります。従いまして、今直ちに政府領土問題についてソ連側の言うことをそのままにのむという決意はいたしていない、こう申し上げるほかはございません。
  127. 岡田春夫

    岡田委員 時間があまりありませんから進めますけれども、あなたのお見えになる前に南千島の所属問題については与党の植原さんからもはっきりいろいろ意見があったわけであります。われわれも今さら言わなくてもはっきりわかっていると思うから言わないのだけれども、これは日本サンフランシスコ条約その他において、南千島も含めて放棄しているということについては、国会の答弁の速記録の上においても明らかになっておる。こういう点を事実を無視して今固執しているということは、日ソ交渉を妥結するのじゃなくて、日ソ交渉をぶちこわすための魂胆でやっているとしかわれわれには考えられない。しかもそういうことに対して、ダレス長官あと押しをしたりするというようなことで、問題はむしろアメリカ日ソ交渉を妨害しているというような国民の感情か生まれつつあるわけです。こういう意味においても日ソ交渉を早く妥結しなければならない。日ソ交渉を早く妥結するということは、日本がほんとうに独立をして世界の平和のためにやっていくということのためにも重要であるわけです。しかもここでぜひ申し上げなければならないのは、国民感情がなかなか承知しないであろうと、こう言われた。それがですよ、国民感情を作ったのは一体だれですか。これは政府自身じゃありませんか。さっき申し上げたように、吉田内閣の当時において、いわゆるサンフランシスコ条約が締結されたころにおいては、南千島は残念だけれども、これは千島列島一つとして放棄したのであるということを言っておりながら、今になってから南千島は日本領土であるというようなことを言い始めておる。しかもこういう事実があるのです。これはあなたはあとでお調べになって、ぜひあとのときに御答弁願いたいと思うのです。こういう事実がある。去年の八月の二日に、私はこの新聞で今調べたのでありますが、八月二日、八月の九日には、ロンドンでマリクと松本全権日ソ交渉の会談が行われた。この会談の内容はあまり詳細に新聞に発表されておらない。ところがこのときに、実は八月の二日にマリク全権は歯舞、色丹は場合によっては譲ってもよろしいという旨のことを言っておる。八月九日の正式会談においては、その点が相当はっきりした形で言われている。ところがどうですか。八月の十三日に、朝日新聞で申し上げましょう、重光外務大臣記者団会見を行なって、こう言っておる。歯舞、色丹諸島などの領土の問題について、これらの地域をソ連が占領している状態を変えまいという態度については変っておらない、こう言っておる、これはどうですか。ソビエト側は歯舞、色丹を譲るということを言っておるのに、日本の国内には政府はこれを発表しないで隠しておいて、そうして重光外務大臣がわざわざ歯舞、色丹についてはまだ返すということは言っておらないということを十三日に発表しているじゃありませんか。八月の十三日ですよ。そうしてソビエト側の提案というものをごまかしておいて、八月の二十日になって何と言っておる。八月の二十日になってから日本政府態度は一歩譲って、歯舞、色丹と南千島だけはどうしても守らなければならない、北千島と南樺太はそのかわり放棄してもよろしいという。こういういわゆる陰謀をやっているじゃありませんか。ソビエトが譲ると言っておる点を隠しておいて、歯舞、色丹を返せ返せと八月十三日に言っているじゃありませんか。こういうインチキをやっておる。国家統制です。国民の世論をこういう形で誤まった方向に向けつつあるじやありませんか。こういう事実を政府がやりながら国民感情が承知しませんというのは、あなた自身たちの責任なんです。それ以外にどうです、今度の場合にだって大体外交交渉の発表というものはコミュニケ以外は大体発表しないことになっておる。これは慣例だ、こういう慣例にもかかわらずどうですか、モスクワ交渉において、コミュニケ以外において重光外務大臣の演説要旨は全部発表しているじゃありませんか。ところがシェピーロフ外務大臣の演説要旨を日本政府が発表したことがあるか。国民感情をこういう形であなた方が作っているじゃありませんか。こういうことをして国民感情を作らしておいて、そうして国民が承知しないからこれはまとめないんだというのは、あなた方が無責任で、国民に責任を転嫁しているのじゃありませんか。こういう事実は幾つでもある。ダレス長官記者団会見においても、あなたは連絡はなかったと言っておる。しかしダレス長官は数回にわたって連絡したと言っておる。先ほど高碕外務大臣代理連絡があったかどうかははっきり知らないけれども、個人的に話があったかもしれないという、あなたっ自身の連絡がなかったというそのうそを暴露されているじゃありませんか。こういううそで国民をだましつつある。日ソ交渉をこういう形でぶちこわそうとしておるアメリカの言うなりに動いておる。アメリカはうしろからひもをつけて国民を引っぱっておる。そうして国民感情は納得しないから日ソ交渉は妥結しなくてもやむを得ないといって、公約を裏切ろうとしておる。こういう事実に対してあなた方は国民感情は納得しないからよりも、さっきから再三私は言っているのだが、国交の回復をするというのは領土の問題ではなくて引き揚げの問題もある。この冬の引き揚げの問題を考えてごらんなさい。漁業の問題もある。十一月の安保理事会における国連加盟の問題もある。その他貿易通商の問題もあるではないか。こういう意味日本のほんとうの将来を考えるなら、政府は断固として、自民党の中で旧吉田派が反対するなら切ってでもやりなさい。それが国民が期待している道なんだ。それをあなたは断固としてやる決意があるかどうか、この点を最後に伺っておきたいと思います。この国民感情を捏造させた政府の言論統制、この事実に対しましてもお調べの上でぜひとも適当な機会に御答弁を願いたいと思います。コミュニケの問題につきましてもお調べの上で御答弁を願ってけっこうであります。
  128. 根本龍太郎

    ○根本説明員 まず第一に、日本固有領土を放棄しないという立場は、これはあなたも御承知のように、サンフランシスコにおける調印の際、日本全権が明確にこれは宣明しておる次第であります。(「そんなことを言っていない」と呼び、その他発言する者あり)従いましてその点には変りはないのであります。  それからもう一つ、国民世論を政府が作って、そうして今国民世論の名において責任転嫁しておる、こういうような御議論でありました。(「締約国が認めておりますか、南千島を」と呼ぶ者あり)国民世論ということは現在民主的な今日において政府自分の都合のよいように世論を指導しようとすることは不可能です。そのように思う通りにすることはできません。国民はいろいろな政府意見あるいは政府の政策を自由に判断し、国民みずからの主権者としての国民の判断において意見立てるわけでありますから、政府政府考えておることを国民に知らしめるということはこれまた政府として当然でございます。従いましてこれは意見の相違でございますから、私はここで政府が陰謀をやったとかなんとかということは全然ないということだけを明らかにしておきたいと思います。
  129. 岡田春夫

    岡田委員 あなたは今非常に重大なことを言われております。が、陰謀云々という事実よりも、私は日付を明らかにしているんだから、これは客観的に事実であるかどうかを見ればはっきりわかるでしょう。あなたはこういう点をお調べにならないとおっしゃるのですか。私は事実に基いて調べておる。松本全権が帰ってきてから言っておることと、その当時の新聞記事とを対照して見ればわかるのです。こういう事実をあなたはお調べになるおつもりはないのですか。それを調べてみただけでも、あなた自身が国民をだます気持はないにしても、客観的にだますという結果になっている事実だってないということは、あなたは否定できないでしょう。こういう事実について、あなたお調べ下さい。それからサンフランシスコ条約において固有領土としてはっきりしているというが、あなた、それじゃ、そこでサンフランシスコのときの吉田総理の発言のあれをお持ちですか。読んでごらんなさい。そんなこと書いてありますか。どこに書いてある。はっきり読んでごらんなさい。そんなことはないんですよ。ないから、当事の西村条約局長日本に帰ってきて、当時の農民党という党の高倉定助君——これは北海道の人だ。この人の、南千島は千島列島に入っていないと解釈すべきではないかという質問に対して、西村条約局長は、南千島は千島列島の中に入っていると解釈すべきですと答弁しているのです。しかも、クーリール島というのは南千島を除いた島だけで、いわゆる北千島、中千島を言うのではないかと高倉君が重ねて質問した。これに対して西村条約局長は、クーリール島というのは千島全列島をいうんだ、南が入るんだと言っていた。そのときに吉田総理がふちにおったんだ。私は傍聴していた。吉田総理はそのときに何にも、一言も言っていない。違うとは言っていない。しかも吉田総理は何と言ったか。詳細のことにつきましては西村条約局長発言をさせまして、これによって御了解を願いたいと言っているじゃないか。吉田総理は否定をしていないじゃありませんか。否定をしていない人が、サンフランシスコ条約において反対したなどということは、どこに客観的な証拠がありますか。あるならあると言ってごらんなさい。具体的に出してごらんなさい。言葉のやりとりだけで言っているのでは話にならぬですよ。はっきり客観的にも、国際的にもこれは筋である、道理である、こういう点がはっきりしているんだという点ならば、私も勇敢にそれをやりましょう。あなただって勇敢にやるべきだ。しかし国際的に筋が通ってないことを日本にやれといったってやれないじゃないかということを言っているんだ。筋の通るようなお話ができるならここでなすってごらんなさい。先ほどの固有領土云々、サンフランシスコにおいて云々ということについて、あなたがそこにそういうものをお持ちならば、はっきりとお読み下さい。それから、八月二日、九日、十三日、二十日の関係については、あなたはお調べになる考えがあるかどうか、この点についてもはっきりお答えを願いたい。コミュニケ以外に重光外務大臣の演説だけは発表して、シェピーロフ外務大臣の演説は発表しないということは、これは国民感情をこういう形で指導しようとした、いわゆる新手の言論の国家統制です。こういう手を使いつつあるということと、あなた自身は、どういう事情によって重光外務大臣の演説だけを発表したか。コミュニケ以外を発表するというのは、これは日ソ交渉の過程において、ソビエトに対しての不信行為であります。こういう不信行為をなぜやらしたかということについても、あなたはお調べになる考えがあるのかどうか、こういう点についてもはっきり御答弁下さい。
  130. 根本龍太郎

    ○根本説明員 私が先ほど申したのは、サンフランシスコ会議において日本全権は、日本固有領土を放棄せずと言明したという、それだけのことを私は言ったのであります。それから、今のコミュニケの問題でございますが、これは重光全権から、日ソ交渉経過についてはコミュニケに双方の主張を全部発表しようと提案したのであります。しかるに先方は拒否して、かつ、各自が勝手に自己の主張を発表しようとするのは差しつかえないという了解のもとにやっているのでありまして、全然これはあなたの解釈とは違っているのでございます。決して陰謀をやったのではございません。  それから新聞の点は、これは当時において重光外務大臣がどういう情報に基いてやったかについては、私当事者でないからわかりませんから、調べることは調べてもいいのでありますが、この問題に関してどういう意味において、マリク・松本会談の話し合いと外務大臣の発表との間にそういうふうな相違があったかについては、これは当事者がその経緯を説明することが最も適切であると私は考えます。
  131. 岡田春夫

    岡田委員 私はだから政府の代表者としてあなたに聞いているんじゃないですか。最初にあなたにお断わりしたでしょう。私は鳩山総理が来たら鳩山総理に聞くつもりだったのですよ。鳩山総理が来ないからあなたに聞いているので、これについてお調べになって発表して下さいというのなら、あなた発表していただきたいと思うのです。なぜ発表できないのですか。そういう事実関係を発表する——日にちは何日にあって、どれがどうであったというのは、何も重光外務大臣に聞かなくたって、外務省の方を調べればすぐおわかりになるじゃないですか。私は外務省に聞いたんじゃないのです。新聞記事を前のとあとのとをずっと合せていけばこういう結果になるのですよ。新聞というのは、われわれはそのときだけを記憶しているが、系統的に調べてみるとそういうボロが出てくることがあるんですよ。政府はそのときだけをごまかしたつもりでも、そういうものは印刷に残っているから、調べてみればわかる。お調べになったらどうです。こういうことを調べるのは簡単じゃありませんか。ロンドン会議の第一回目に何があって、その次に何があって、その次には重光外務大臣記者団会見があって、その次には二十日に何があったというようなことを調べるのは簡単じゃありませんか。あなたが内閣官房長官としてこういうことをお調べになる——重光さんにやらせるというのは、あなた自身そういう権限がないとおっしやるのか、あるいは能力がないとおっしゃるのですか、どういう意味なのですか。
  132. 根本龍太郎

    ○根本説明員 これは私が先ほど申したように、重光全権が、ロンドン会議のいろいろな報告に接して、どういうふうに判断してこれを処理し、またそれについて意見を述べたか、これは私が今そんたくするわけにも参りません。事実は、あなたが調べて事実ならそれでいいでしょう。それを重光大臣が何ゆえにそういうふうにしたかということが問題です。それに関連して政府が謀略をやったとかなんとかいうことでありますから、その点は重光大臣に聞くことが正しいことで、今その点について、その当時相談を受けていない私が言うことは正確でない、こういう意味であります。
  133. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ、私がこれを調べているならそれでいいでしょうとおっしゃるならば、これは正確なものであるということをあなたが確認されるという意味ですね。あなた自身はお調べにならないで、私が言っているのはいいでしょうというなら、これは正確であるとあなた確認される意味でしょう。あなたお調べになるつもりはないんですから、いいのですね。
  134. 根本龍太郎

    ○根本説明員 それは違うわけです。調べはいたしましょう。調べても、あなたはその調べることを問題にしているのではなく、それは事実であるから、こういう事実に基いて政府が国民世論を、一方的に引き曲げるために陰謀をやったというから、私はその点については、その当時の責任者でないからわからない。ただし事実を調べることは、調べてけっこうです。
  135. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員長代理 岡田君に申し上げます。簡単に願います。
  136. 岡田春夫

    岡田委員 だからそれが陰謀であるとかなんとかいうことは、あなた方の判断もあるでしょう。私たちは客観的にこういう判断をすることもあるんだから、こういう事実をお調べになるという点は、私わかりました。問題は、しかしお調べになっても、これが事実であったとかどうとかいうことを委員会か何かの機会において発表されないと、あなただけはわかっておったって、国民はわからないわけだ。私はこれは事実だと思って調べている。これが事実だといって、たとえば新聞に出たとする。あなた方もこれを調べて発表しなかったならば、私の言っているのが事実であるか事実でないかというのは、国民はわからないわけでしょう。だからそれを委員会を通じて御発表下さいと私は言っている。それが客観的に陰謀であるとかどうとかいうことは、その事実であるかどうかを見てから国民が判断し、われわれが判断するんだから、その事実をお調べになるのはぜひ一つお願いしたい。それと同時に、委員会を通じて御発表願いたいということを私は申し上げているのですから、その点は一つはき違えのないようにして、御発表下さるようにお願いをしておきます。
  137. 根本龍太郎

    ○根本説明員 これは外務省でいつどういう報告に接し、どういうふうこれを受理し、そうしてこれに対する処置をしたかということでございますから、これは政府に対する要求でありますけれども、これの事実を調べることは外務省でやることが本来の職務でございます。従ってこれは外務省において、この事実について、しかるべき時期に外務大臣から報告することが正しいと思います。
  138. 穗積七郎

    穗積委員 根本官房長官が見えて非常に重大な発言が多いので、私も内容にわたってお尋ねしたいのですが、きょうは時間がありませんから割愛いたします。そしてただ一点だけ要望して長官の御答弁をいただきたい。  それは重光外務大臣が帰られて早々の時期に臨時国会を開くという問題です。実はこの日ソ交渉は単なる外交問題の中のワン・オブ・ゼムのささたる問題ではございません。国民全体に重大な影響を持つとともに、内閣にとってもこれは生死を決定するほどの重大な責任のある問題でございます。そしてそれを先ほどからのお話によりますと、国民の感情または世論云々ということを決定のかぎに置いておられる傾きも——それが全部ではないが、決定のかぎの一つをそこに求めておられるようですから、従って先般からわれわれが、もうすでに参議院選挙が済んだ向後から臨時国会を開いて、その他の問題もあるけれども、この日ソ交渉交渉中に国会を通じて国論を統一してかかるべきだ、そうでないと失うところ多くして得るところがないということを指摘して参りましたが、果せるかなその杞憂が実際になって参ったのです。国論の統一、その統一も錯覚や錯誤で無知によって築き上げられたる感情論が非常に多いのですから、そのことを基礎にして内閣が責任のある決定をしようとしても、それ自身にひっかかってしまって、自殺的に自縄自縛というか、そういうようなことで実は抜きさしならぬような格好になっている。ですから、今からでもおそくはないわけですから、どうぞ重光さんが帰られたならば直後、政府並びに党内のこの報告なり相談が済まれるならば数日にして国会を開くことができるとわれわれは常識的に考えますから、ぜひともこれを開いていただきたい。そうすれば根本官房長官は、国会の審議をわれわれは妨害するものではない、それは外務委員会なりその他の所管の適当な委員会で審議してもらったらいいじゃないかということをおっしゃるかもしれませんが、実はこの問題は、われわれの言いがかりではなく、客観的に見てあなたの腹の中でもおわかりでしょうが、もうこれは外務大臣ひとりの問題ではなくなってきています。内閣の責任者、党の責任者としての鳩山総理の決断の問題になってきている。鳩山総理の判断と決断に一にかかってきているわけでありますから、そういう意味からいたしますと、休会中の委員会では、これは国会を代表する審議にはならぬし、またあなたの方の解釈では、休会中の委員会には総理は出ななくともよろしいということを固持して、今までこの重要なる問題を審議する委員会に総理は出てこられない。河野農林大臣、この人は農林大臣ですが、日ソ交渉については重大なる焦点に立っている人です。十一日の閣議における発言等から見ましても、シェピーロフ案をのむかのまぬかということに重大な影響を持つのは、河町農林大臣ブルガーニンとの会談の内容だということが伝えられておる。その人すら出てこないというような状態ですから、これでは国会がその審議権の責任を果して十分この問題を審議することもできなければ、それを通じて国論の結束、統一をすることもできません。そういう意味で私の党からすでに与党または内閣に対して臨時国会召集の手続を正式に踏んだ上で要求いたしておるのですけれども、われわれは専門の委員会の良心と責任から判断いたしましても、これを臨事国会に移して本会議または内閣全体の総動員のもとにこれを審議して、世論の帰趨もきめていかなければならぬ、こういうふうに思いますから、われわれは外務委員会の野党の理事の立場において——これは与党の理事の諸君も委員長もおそらく賛成だろうと思うが、そういう立場において重ねて強く要望いたしまして長官のお考えを伺っておきたい。
  139. 根本龍太郎

    ○根本説明員 臨時国会会をすみやかに開くべしとの要求は、先般来二回にわたってお聞きしております。本日も淺沼書記長、勝間田対策委員長外四名の方々が参りまして申し入れを受けました。政府としては先般米社会党の方々に、あるいはまた議運において、今直ちに開く意志はないということは申し上げておりますが、今重ねての御要望でありますので、いずれ重光全権が帰りまして、いろいろ日ソ問題その他全般的な問題が討議されることでありましょうから、そのときには十分にお伝えいたしまして善処するように考えております。
  140. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員長代理 お諮りいたします。これから沖繩の問題についての参考人お話に移るのでありますが、その前に、所用もあられるようでありますから、国務大臣、官房長官の退席をお顧いいたしますからご承知を願います。     —————————————
  141. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員長代理 沖繩の方々が長くお待ちになっておるそうですから、これから沖繩の土地接収問題等について参考人から御意見を聴取することといたします。  本日御出席の方は、沖繩土地守る協議会理事、沖繩人民党書記長瀬長亀次郎君であります。  なお、本日出席の予定でありました兼時佐一君は御都合で出席できません旨連絡がありましたので、さよう御了承願います。  瀬長参考人には御多忙中のところわざわざ当委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それではこれより御意見を聴取することにいたします。
  142. 瀬長亀次郎

    ○瀬長参考人 委員長の許可を受けまして、沖繩問題について参考人としての意見を申し述べたいと思います。  その前に、外務委員会がこういった機会を作って下さったことに対しお礼を申し上げます。  沖繩の軍用地問題解決の四原則が琉球政府立法院で全員一致可決されたのは一九五四年の四月三十日でありました。この四原則は八十万沖繩県民が生きる権利と財産権を守り、異民族に一坪の土地も売り渡さないで日本国民の領土主権を守り、独立と平和をかちとるための、だれが見ても無理のない正しい要求であります。ところがアメリカ政府は、この四原則を完全に踏みにじるプライス勧告の骨子を六月九日に発表しました。それ以来プライス勧告反対、四原則を貫徹する対米抵抗の運動が八十万県民総ぐるみの戦いとなって展開され、それは祖国九千万同胞の共感を呼び起しました。それで現在では幅広い国民運動となって胎動を続けております。プライス勧告反対、四原則支持、沖繩の施政権の返還は、自民党を含む全政党、百余の各種団体共催の日比谷の国民大会で決定されしました。しかしアメリカの現地軍はこういうことを踏みにじりまして、現在でも非常に残虐な行為を行なっております。その三つについてお話を申し上げます。  第一番目には、新規接収について今冷却期間を設けておると言っておりながら、沖繩北部の国頭村安田区におきましては、新規接収するための強制測量が行われております。これは七百六十五町歩にわたる国、県、私有地を含んでおりまして、この関係者、戸数にいたしまして百二十一戸、六百六十名の部落民の生活を脅かすことになっておりますが、今月の四日以来、アメリカのヘリコプターが安田区の部落におりて参りまして、新規接収の通告をやりましたが、村長以下村民はこれを拒否しております。ところがこのヘリコプターは、毎日飛んで、今部落民は恐怖のどん底に突き落されております。こういうふうに新規接収の前ぶれである強圧が現在沖繩で行われておるという事実があります。  さらにもう一つ、これはアメリカの現地軍が従来とりました暴虐な、残虐な行為であります。この行為は天人許すべからざる行為として、現在八十万県民は総立ちになっております。この事件と申しますのは、去る七月十二日さらに一日置いて十四日、十五日の三日間にわたって行われました沖繩北部の伊江村にかけられました焼き払い事件であります。この焼き払い事件の真相を発表いたします。これは資料にも書いてありますが、七月十二日午後二時ごろ、真謝区——これは真謝区と申し上げますと、伊江村の部落になっておりますが、下スメガ原で草刈りをしていた同区一班島袋盛徳という子供が、米兵が畑や山に火をつけて燃やしていると部落にかけつけて報告をして、そうして石川という人が自転車に乗っていって現場にかけつけました。もちろん島袋という子供の報告によって、全部落民が現場にかけつけたことは当然でありますが、石川さんが現場にかけつけるや、米兵三名が下スメガ原を中心に小型石油カンからさらに小さいカンへ移して、付近のススキ、砂糖キビ、松、想思樹その他に石油を散布し、焼き払っております。石川さんがアメリカ兵に焼くことはいけない、向うの山は私の山であるから消してもらいたいと言ったら、アメリカ兵は、消すどころかそれに何の返事もなしに上の方に消えていった。その晩は午後八時過ぎまで燃え続けて、鎮火しております。  さらに一日置いて、八月十四日午前十時、真謝原というところでアメリカ兵七名が消防自動車に乗ってきまして、ガソリンを注ぎ込んで、その一人の軍曹がライターで火をつけて、さらに燃え残りの砂糖キビ、イモ畑、山林、原野の区別なく、ガソリンをつぎ込んで散布し、すっかり焼却し去っております。そしてそのとき真謝部落の荻堂盛徳という人外一名が火を消すためにいろいろ努力しておりますと、米兵からけ散らされて逃げ去ってきている事実もあります。十五日の午後二時ごろ、スメガ原を中心にその一帯をさらに同じような方法でガソリンをばらまいて、そして全部焼き払っております。アメリカ兵は、戸惑って右往左往している部落民をながめてにやにや笑いながら、高台でその焼けておる現場をながめておるといった事実であります。さらに真謝区の区長東江保さんは次の通り語っております。七月十二、十四、十五の三日間にわたり射的場中心地付近約三十万坪が米軍消防車により、ガソリンを散布され、畑、山林、原野の差別なく焼き払われ、同区知念佐太郎の落花生畑二百五十坪を初め、甚大な損害をこうむっております、七月十五日午後二時ごろ真謝区一班知念木麿夫婦がたきぎ用としてカヤを刈っているところを焼き払いに合い、危うく焼き殺されるところを命からがら逃げて参りました、私たちは土地を守り、子弟の教育のため、また生きんがために命をかけて植え付けた大事な農作物を爆弾で焼くのみでなく、また今かかる無慈悲な仕打にあうことは区民一同憤慨にたえませんと訴えております。さらに流球政府の行政主席が派遣した調査員もこの焼き払い事件を認めて、その報告の中で次の通り申し述べております。その真謝区の耕地が十四万六千七百二十五坪、山林三万三千坪、原野十三万七千坪、合計三十万七千七百二十五坪のうち類焼合して十六万坪の焼き払いの事実であることを明記しております。  さらに琉球政府意見として、何らの通告なしに突如として焼き払われ、アメリカ軍は接収以来樹木やその他に一文の賠償もなくしてこういった焼き払いの事実があったということは実に遺憾であると、任命された琉球政府さえそれを発表しております。焼き払いをかけられた土地の面積の広狭いかんにかかわりませず、農作物や立木の被害の多少に問題があるのではありません。この事件の本質的なものは同村民の八千万同胞への訴えにもあります通り、一九五五年三月十一日、完全武装兵によっての強奪にひとしい土地の接収以来、水攻め、食料攻め、住家の焼き払い、軍用犬による逮捕、投獄などで同村民に挑戦してきて、今また農作物と一切の草木に焼き討ちをかけ、攻撃しておるのであります。アメリカ軍の焼き払いは天人ともに許しがたい行為であります。食糧や水攻めだけで足りないで、脅迫し、逮捕し、投獄して、何の罪もない日本国民である伊江村の人々を死地に追い込んでおります。民主主義の旗を掲げ、自由を叫んで世界の世論を指導し、世界政治を導こうとしているアメリカ現地軍のかかる野蛮な行為が許されていいものでありましょうか。伊江島村民に加えられたこの無軌道きわまる恥知らずの行動は、八十万沖繩県民だけでなく、県民を含めて、九千万日本国民に対する一大挑戦であると私は考えております。八十万沖繩県民は、日本政府が本腰を入れて沖繩問題につき対策し、対米折衝してくれるよう熱望しております。そうして、県民八十万が切望してやまない四原則を貫き、八十万県民をも含めまして、九十万日本国民が熱願する沖繩の施政権を一日も早く国民の手に返してもらうため一切の努力をしていただきたいと考えております。  次に、流帳大学学生に対するアメリカの弾圧措置について簡単に証言をいたします。  一九五六年の八月十日、アメリカの民政府は、琉球大学理事会に対してこれまで支出をしていた補肋金を打ち切ることを声明しております。七月の二十七日、那覇高校庭で行われたプライス勧告反対四原則貫徹県民大会に参加しました琉球大学学生のデモ行進が反米的であると断じ、デモを指導した学生の処分を要求してきたのであります。同大学理事会は、学生の当日の行動に少々の行き過ぎはあっても、合法的にかつ大学学長の許可を受けて行なったことであるので、厳重処分するに忍びないとして、五名の学生に謹慎処分をすることを決定し、アメリカ政府に報告しました。ところがアメリカ政府は、謹慎処分ではなまぬるい、だれかれを加えて退学処分せよと理事会に強圧を加えてきました。最後の決定権をアメリカ政府副長官に握られております同理事会は、再三理事会を開いて、ついに米国政府の厳命に屈せざるを得なくなり、古我地学生自治会長を初め六名の学生を退学に、一人の女子学生に謹慎の処分を断行せざるを得なくなっております。四原則貫徹運動の最初の犠牲者を出したわけであります。これでわかりますように、沖繩の最高学府をもって任じている琉球大学には、学園の自治も学問の自由もありません。この事件は本土にもいち早く伝わり、全学連、私学連を初め、中央、地方の民主団体がこれを取り上げ、アメリカ現地軍や理事会に対して抗議のメッセージを送り、琉球大学学生に激励を送るなど、国民運動に拍車を加えている現状であります。伊江島村民にかけられました残虐な焼き払い事件といい、琉球大学事件といい、まさにわれわれ日本国民の常識では考えられないものであります。弾圧ではなく民主主義が、そしておそろしい原水爆基地の設定ではなく平和が、野蛮ではなく文明が沖繩にも行き渡り、隷属ではなく日本国民としての独立が、苦しい生活を脱して日本国民としての楽しい生活が八十万沖繩県民にも与えられるよう、貴委員会日本政府に切望して私の意見を終りますが、けさ飛行便で参りました伊江島の区民からの報告を簡単に申し上げます。  それはアメリカの兵隊が八月の八日に、アメリカ兵に対する訴えとして書いてあった立看板をたたきこわして、引き裂いていったという事実であります。この立看板には次のことが書かれております。「賢明なるアメリカ人の皆さんへ」という立看板、大きいトタン板の三枚張りであります。   一、地主の承諾もなくして土地を取り上げ、適正補償もなされず、歎願した地主を縛り上げ、武力によって家を焼き払いまたは破壊するなどして地主を窮地に追い込み、農耕する地主は食うに困り、食糧のイモを掘る少年は軍用犬にかみつかせて逮捕の上投獄し、次々に故意に罪人にでっち上げ、無理じいに土地取り上げと罪名を承諾させようとすることは、神の意思にそむく行動だと思います。   二、かかる行為は私たちと私たちの同胞を苦しめるのみであって、自由、平等、博愛の精神を持って世界を指導する米合衆国の行為とは、われわれには絶対に理解することはできず、承諾もできません。よってこの非人道的、非民主的行為によって取り上げた私たちの土地を一日も早く私たちに返して下さい。         伊江島真謝区軍用         地被害地主一同 ということになっております。  これで私の意見を結びたいと思いますが、現在でもアメリカの兵隊は従来に変らないで残虐な行為を行なっております。一日も早く、残虐な行為を行わないように、平和のうちにすべてを解決するよう政府が努力して下さること、さらに現地では国会あるいは政府から調査団の派遣を非常に要望して、私のところにも数回にわたって手紙が参っております。話によりますと、何か拒否されたとかされぬとかいうことでありますが、国会、政府から正式に調査団を何名か送ってもらって、私の今話しましたことがほんとうであるかどうかを調査していただき、そうして国民の世論を巻き起して、現在やかましくなっている領土問題を正しく解決し、一日も早く、十一年間祖国から切り離された沖繩県を日本の一県にしてもらいたいことを希望し、私の意見を終ることにいたします。ありがとうございました。(拍手)
  143. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員長代理 門司亮君。
  144. 門司亮

    門司委員 局長だけしかおいでにならないから、簡単に局長にお聞きするが、一つは、この問題が起って非常に日本政府考えたことがあると思うのであるが、問題が起りましてから今日までの間に、政府は問題解決のためにどういう処置をとられたかということをこの機会に明らかにしておいていただきたい。
  145. 中川融

    ○中川説明員 ただいまの御質問の御趣旨は、今回の伊江島における山地を焼却いたしました事件、七月十二日から十四日における事件、こう考えますが、その通りですか。
  146. 門司亮

    門司委員 そうじゃありません。この新しく起った事件は、今公けにされたのは、瀬長君がここで証言したことでありまして、それ以前には公けにされていなかった。私が聞いておりますのは、この沖繩問題がプライス勧告を中心にして行われて、日本の国会でも、問題を解決するように、あるいは施政権の回復に努力せよということを私自身が提案し、説明している。その後安里君以下四名の代表が参りまして、プライス勧告に対する四原則の貫徹をするために日本に訴えてきた。そのために日本の国会は、外務委員会あるいは法務委員会、その他の委員会の連合審査等によってこれがかなり大きな問題になっている。従ってその後政府沖繩問題の解決のためにどういう処置を今日までとられたかということを一つ明らかにしていただきたい、こういうことです。
  147. 中川融

    ○中川説明員 沖繩の問題につきまして、軍用地の問題につきましては、問題になりましたプライス報告が出まして以来、政府といたしましても、外務大臣がアリソン大使に数回にわたって沖繩住民の方の正当な要望について折衝を行なった、またワシントンにおきましても、現地のわが大使館がアメリカ政府に対しまして同じような趣旨での話し合いを行なったということは、すでに御承知の通りでございます。その日本政府からの申し入れ、及び現地住民の非常に熱烈な軍当局に対する御要望というようなことの結果といたしまして、アメリカ側といたしましても、プライス勧告というものはあるけれども、あのプライス勧告の範囲内においてできるだけ現地の住民の方を満足させるような解決策を講じたいという趣旨のことは言っているのであります。そうしてそういう趣旨で検討を続けているから、日本側からまた具体的に何らかの案でもあれば出してもらいたいということも言っておるのであります。そういうことでありますので、日本側といたしましては、四原則ということを依然として強く主張しておりますと同時に、できれば何らかのさらに四原則に基く具体的な提案というものをしたいと考えておるわけでございますが、実はこの具体的な提案という点につきましては、現地の住民の方々の御意向というものが四原則貫徹ということでありまして、さらに具体的にどうするというような点につきましての御意見の一致が実はないのであります。従って政府といたしましては、大体沖繩の方々が考えておられるだろうと思うところにつきましては、機を見ましてアメリカ側に非公式の形で伝達はしております。しかしこれは正式に沖繩の住民の方の要望がこうであるという意味での具体案というものは出し得ない段階にありますので、四原則というものの貫徹ということを依然アメリカ側に強く要望しておるというのが現状であります。アメリカ側ではその要望に基きまして何らかの案を考えているようでありますが、その案がまだ提示されるに至っておりません。新聞報道で伝えられるところによると、アメリカ側としても最近何らかそういう点についてのアメリカ側の一応の案を得るのではないか、その案を得たならば、それをさらに現地に提示するということになるのではないかという報道が伝わっておりますが、これらの報道について的確にわれわれはその内容を知りますまでに至っておりません。しかし相当向うの研究は進んでおる模様でもありますので、われわれとしては非公式ではありますが、もし四原則と根本的に違うような提案を考えておるのだとすれば、それは沖繩の方々の満足を得るゆえんでないということはアメリカ側に強く伝えておるわけでございます。
  148. 門司亮

    門司委員 局長考え方ですが、私は非常に誤まっていると思うのでございます。沖繩の諸君の意見がまとまっていないということはないでしょう。四原則がきまっている。しかもこの四原則は立法院がきめている。立法院のきめたことは——しかも日本政府並びにアメリカ政府に対して立法院が要請文を書いたことは事実でございます。ただこれがたしか一九五三年だったと記憶するが、できた立法院の決議したものが日本にこなかったということは、琉球憲章第三十五条が災いしておる。あなたは琉球憲章は御存じでしょう。これに、琉球政府は民政府を通じない眠りは外交の手段を持たないことをはっきり書いてある。従って沖繩八十万島民の唯一の意思決定機関である立法院の議決したことも、琉球政府がこれを執行しようとすれば、事外国に関する限りは——日本も含まれておりますが、民政府の手中に握られておる。従ってどんなに琉球政府並びに琉球の住民がこれを海外に訴えようとしても、この琉球憲章の三十五条が災いして、これは公けにされなかったのである。もしあなたの御意見が、この立法院の議決したことが正式に日本に来てないから四原則が沖繩住民の意思でないというお考えであるとするならば、これは私は非常に大きな誤まりだと思う。これは単なる手続上の問題であって、現実に立法院で議決してこの四原則というものを守っていこうということを八十万住民諸君が決議しております以上は、日本政府はこれを受けて琉球政府の、あるいは沖繩の住民の意志というものはこの四原則であるということを確認される必要がございます。それすら今の御答弁では確認していないような答弁でありますが、ここに至ってはこの問題の解決はつかぬと思う。あなた方がそういう態度であるから、見てごらんなさい、四原則の中の一番大きな問題、もうこれ以上接収してくれるなという問題が、予定されておった国頭に一万二千エーカー、これがすでに強制測量が行われて、しかも九十三戸に対して立ちのき命令が現在出ておる。これはあなた方は御存じだと思う。四原則の一番大きな問題、一番先に掲げてある、これ以上土地を接収されては困るという項目自身が、もうすでに破られてきておる。しかも、これを接収するということは明らかな事実だと思う。あなた方は今のようなお考えを持っていて、アメリカに何らの交渉をされないうちに、既成の事実はどんどん進んでいく。八十万の沖繩の島民を考えてごらんなさい。これはいても立ってもいられないですよ。われわれとしても、日本政府がそんなことではしょうがないと思う。ほんとうにあなた方は、四原則を沖繩八十万島民の考え方でないというお考えなのか、あるいは沖繩の島民の考え方であるというようにお考えになっているのか、もう一度はっきりここであなたの答弁を要求しておきます。
  149. 中川融

    ○中川説明員 立法院で決議されました四原則というものが沖繩島民の一致した要望であるということは、われわれはよく承知しておるのであります。そうしてその立法院の決議されました四原則というものは、日本政府にも詳細に伝達されております。従って日本政府は当初より、四原則を貫徹することが問題解決の根本であるという趣旨でアメリカ側と折衝しておるのでございまして、その一点について何ら行き違いはないのであります。私が申しましたのは、さらにアメリカ側はその四原則に基き今度は具体的に、たとえば契約は何年契約とするか、毎年の契約でなければいけないのか、あるいは二年としてよいか、三年としてよいか、五年としてよいか、いろいろの具体的の問題が出てくるのでありまして、そういう問題時ついての具体的提案があれば聞きたいということでありますが、これらについては住民の方々の一致した見解をわれわれは聞いていないのであります。そういうものがないから、これを公式に言うわけにはいかない。従って基本的な四原則でまだ突っぱっておるということを申し上げたのであります。
  150. 門司亮

    門司委員 非常に答弁があいまいですが、もう四原則というものはあるのですよ。これで沖繩の意思が一体きまらぬということになれば、それはあなた方はアメリカの意思をそんたくして、アメリカの意思を入れてきて協議しようという考えでおるから、そういう意見が出てくる。その通りなんです。四原則以外に一体何を協議しようというのですか。こちらの要求は四原則できまっているじゃないですか。これを一括払いにしたい、あるいはもう少し接収したいというようなことは、これはアメリカ側の意見です。そのアメリカ意見をそんたくして、これに沖繩島民が妥協——という言葉が正しいか、あるいは不適当であるかもしれないが、これに何らか答えを出すようなことを沖繩島民に要求するということでは、四原則を守って交渉しておるという言い分にならぬでしょう。
  151. 中川融

    ○中川説明員 四原則が根本的な要望であるということは、これは問題ないのでありまして、その趣旨で今まで一貫して折衝しておるのであります。問題は、四原則の、たとえば第一にあります一括払い反対というような問題につきまして、一括払い反対ということからいえば、それでは十年の契約でもいいのか、十五年の契約でもいいのかということが出てくるわけでありまして、そういうことば住民の方の御要望じゃないだろうと思います。これは一年契約であるとか、あるいは三年くらいならがまんできるのか、五年くらいならがまんできるのかという段階があるわけでありまして、そういう具体的な問題についてでされば意見を聞きたいというのが、アメリカ側からの話であったのでありますが、これについてはっきりした見解を言うという段階にはまだ至っていない。従ってただいま御要望のありましたような四原則で突っぱれという点につきましては、御縣念ないのであります。四原則で突っぱっておるのであります。
  152. 穗積七郎

    穗積委員 最初に、時間が予想外におそくなったですから、各委員ともおのおのあと都合があると思うので、政府に対する質問は次の機会にしたいと思います。ただ参考人に一問、政府に一間お尋ねしたい。そのお尋ねをする前に私は、与党である委員長にお願いしておきますが、この問題は実は与野党共同に取り上げて、四原則支持、施政権回復、これは絶対譲れないものとして国会もこれを承認し、決議をし、さらに外務大臣もこの線は譲らないでやるということをここで確約しておるわけです。ところが与党の方は伊東さん以外には一人もおらぬ。おのおの都合があるかもしれぬが、私も都合があったが、問題が重大だから残ったのですが、ただいま参考人の報告を聞くと、われわれがああいう警告を発したにかかわらず、その後のやり方というものは全く非道理不尽なやり方をやっておるというなまなましい報告が今なされたわけです。ですから与党の諸君にも、委員長並びに伊東さんを通じて、このことは重大ですから、ぜひ一つ正確に間違いなく報告して、党内の意見をまとめていただくように要望いたしておきます。  続いて参考人に一点お尋ねいたしますが、いろいろこまかいことについてお尋ねしたいのですが、結論は、実はこの問題を解決するには、第一は政府の腰が強いか強くないかということが一つ。というのはわれわれは万事これにまかしておくというわけには遺憾ながらいかない、安心ができないような気持が多少あるわけですから、従って現地の沖繩八十万島民の結束、それと手をつなぐ日本国内における国民の結束が、われわれの要望を実現することができるかできないかという、私はかぎになっておると思うわけです。そのことは参考人の方も十分認識しておられると思いますが、その後国内における一部の親米派の諸君の伊デマであると思いますが、現地における運動がやや下火になりつつある、または分裂する傾向すら見受けられるというようなことが、デマとして一部で伝えようとする空気があるのであります。そういうことはわれわれは方々ないと確信いたしておりますが、安里氏を団長とする代表が見えて、日本でも大会が行われて、非常なる結束をお互いに誓い合ったわけだが、その後現地におけるこの反対運動の結束というものは、私どもは一歩も、みじんもゆるんでおらぬというように確信し、そういう情報を聞いておりますが、そういうようにわれわれ確信してよろしいですかどうか。その後の運動の結束の状態について、結論だけでいいですから一言この際日本国民にも知らしておいていただきたいと思いますから、御発言をお願いしたい。
  153. 瀬長亀次郎

    ○瀬長参考人 今の御質問にお答えいたします。結論といたしまして、土地防衛の住民組織はますます強化されております。理由を申し上げます。アメリカ軍は四原則を踏みにじるために、言いかえますとプライス勧告を強行するために、沖繩土地守る協議会に攻撃をかけてきたのであります。この土地守る協議会は沖繩の四原則貫徹のための住民組織の中核体となっております。だからこの四原則を粉砕して、プライス勧告を強行するためには、どうしても土地守る協議会を内部から破壊しなければならないといった意味で、最初に加えましたのが、さっき報告しました琉球大学の学生に対する弾圧であります。琉球大学の学生大会は、土地守る協議会の構成委員の有数なメンバーであります。さらにもう一つは、この土地守る協議会の構成委員の有力なメンバーであります沖繩教職員会、これに対してもいやがらせを言い、さらに強圧を加えております。ところがこの琉球大学の学生会も、さらに教職員会も、この弾圧は内部分裂を策しておるものであるということを考えて、それぞれ総会並びに大会を開いて、どこまでも初志を貫徹する。それまでいかなる強圧にも屈しないで、土地守る協議会をますます強化して、そして各村で作り上げられておる土地守る会と合体して、沖繩土地守る住民会議、これを結成していくということを宣言をしております。さらにアメリカの軍隊は内部分裂をさせるために、沖繩中部の基地経済に依存しておりますコザという町にオフ・リミッツをかけまして、オフ・リミッツによって打撃を受けますので、商人たちが集まって、アメリカにわびをして、アメリカは一週間くらいして、解禁したという事実があります。しかしアメリカとしてもオフ・リミッツを永久にかけるわけにいかないということは、アメリカがオフ・リミッツをかけまして、三日目にもう二名の脱走兵が出ております。アメリカ軍は四万五千といわれておりますが、その精力のはけ口はやはり自分たちが作らせた特飲街にあるのです。そういうことも沖繩県民はよく知っております。がんばれば勝つということをよく知っております。そういう分裂工作にも乗せられないで、ますます現地では団結を固めておりますが、アメリカの民政府がいろいろな手を加えて、攻撃をかけてきますので、地理的に分断されておる沖繩の現地の戦いは非常にその点が弱いのであります。抵抗運動としての民族運動を貫徹するための一番の弱点は、海でもって切り離されておるということであります。こっちから行く場合もアメリカ軍の許可がなくちゃいけない。出る場合も許可がなくちゃいけない。いかに支援をしようと思っても、人の力でどうもできないというこの地理的な条件を国民の手によって解決することが一番大切なものではないかと私は考えておりますが、以上申し上げましたように、アメリカが強圧を加えれば加えるほど、内部分裂を策すれば策するほど、土地守る組織はそれに拍車を加えられて、次第々々に強くなってきておるというのが現状であります。以上お答え申し上げます。
  154. 穗積七郎

    穗積委員 ありがとうございました。そういうことをわれわれも信じておりましたが、御報告を聞いて安心をいたしました。  なお実はこちらからちょっと要望として申し上げたいのは、私ども社会党もこの問題は党をあげて娘心に対策を立てて、そのいろいろな根拠も明確にして努力いたしております。同時に与党の方々も、実はここには伊東さんが副会長としておられますが、特別委員会々作られて、与野党の間において沖繩対策合同協議会ができまして、先ほど申しましたような四原則は絶対支持する。それから施政権回復を目的とする。これも当面の共通の最小限度の公約数として実はやっております。それが現地からごらんになると、いささか日本国内における運動も下火になっているのではないかという危惧をお持ちになることはないと思いますが、万一そういう御心配があるとすれば、その点もどうぞ御心配ないように、われわれあくまで努力するつもりでございますから、お伝えが願いたい。ただ、今国会が何分休会中なものですから、国会を中心とするいろいろな活動が表面から強く見えない。そのことがいささか熱がさめたというふうな誤解をお持ちになる材料に使われているようですが、そういうことはございませんから、こちらからも一つ結論として申し上げておきます。  当面の対策としてはいろいろありますが、その中の一つとして先ほど御要望がありましたように、ぜひとも一つ与野党を含めまする国会議員の視察団をまず派遣をする。わが党の門司君は先般お伺いしてつぶさに見てこられましたが、われわれが聞いても、やはり百聞は一見にしかずでございまして、同時に同地域における反対運動の結束も固めたい、こういうことで努力したいと思いますから、その点了解を得ておきたいと思います。  次に政府に対して御注意とともに質問を一問だけさせていただきたい。これは担当局長だけではなくして、大臣にも聞いていただくといいと思うのだが、実は私最近日本政府のだれからであるか、その点必ずしも明確でありませんが、この問題に対して日本政府からアメリカ大使館へ報告された情報として相当確かな筋から私は聞いているのですが、それによりますと、アメリカ大使館の諸君は、日本政府、特に外務省の、この反対運動に対する情勢報告といいますか判断については、これはもうしばらく冷却期間をかければ、この運動はアメリカの希望されるように大体峠が見えました、ですから、その点は時間を相当有効に利用して、あまり刺激をしないようにやっていただくならば、アメリカの希望される通りにいくと思うという趣旨の報告がなされた。従ってアメリカ大使館では、この問題の焦点は、外務省の腹はもう見えている、その背後にあるものは最後に現地並びに本国における国民運動ですが、その国民運動に対する報告も、外務省の報告によって大体見当がついているということで、いわばなめてかかっているというか、逆に言えば現地の悲痛な叫び、またわれわれ国会においても決定しているこの四原則の支持、こういうことについてはもう全然問題にしていないというような空気すら流れつつあるということを情報として私は聞いている。これは単なる観念的な推測ではなくして、先ほど言いましたように、相当これは信用していい筋から実は最近伺っているのです。もとより私は担当局長である中川さんが、アメリカの大使館またはその他の参事官なり、諸君に、そういうようなことを個人的意見、またはオフィシャルなレポートとして報告なさるはずはないと思いますが、外務省関係大臣を初めとする方々が会見のあったとき、茶話の間に話される個人的な観測なり、意見というものが、相当大きな影響をアメリカ側に与えると思うのです。今の公式な答弁を伺えば外務省としてそういうことを正式のオフィシャルなレポートとしてやった、意見として述べた覚えはないとおっしゃるでしょうけれども、今言いいましたように茶話の間に接する機会が非常に多い。いろいろな人がいろいろな機会で接せられるのだが、そういうときに出ておらぬとも限らない、私はそれは必ずしもないとは思えない情報を聞いておるのですが、その点は一つ中川さんにお願いしておきたいと思う。そしてこれを調査していただきたい。この問題についての相互同の話、個人的な話、非公式な話でもいいですが、情報の交換またはアメリカ大使館側がこの現地並びに国内における四原則支持の運動についてどういう判断をしておるか、そういうこともこの情報を一ぺん調査整理して報告してもらいたいと思います。もしそういう事実が多少なりともあるとするならば、これはわれわれは政府に対して重大な抗議を申し入れなければならないし、当然政府としてもそれを取り締って、今後そういう誤解のないようにしてもらわなければならぬと思うのです。それらの点を含めて一つ中川アジア局長の誠意ある御意見を伺っておきたいと思います。
  155. 中川融

    ○中川説明員 ただいま穗積委員がお述べになりましたことは、はなはだ意外でありまして、われわれが日ごろやっていることとは全然反対のことでございます。われわれといたしましてはもしもかりにアメリカ側が、あるいは現地軍なりアメリカ政府当局がそのような楽観的な観測をもししておることがありとするならば、またそれに基いていろいろな案を立てておるとするならば、それは全然事態の認識が間違っておる、現地の事態はそのような簡単なものでは決してない、非常に根の深いものである。もしかりにそういう間違った判断をして、それに基いて施策をするということがありとすれば、これはかえって事態を根本的に悪化するのみである。四原則に基礎を置いた解決案をはからなければいけないということを常に述べておるのであります。従ってそのような見解日本外務省の観測として伝わるということは全く想像されないところであります。しかしただいま穗積委員から相当根拠のある情報であるというようなお話もありましたので、これはもちろん省内上から下までよくそういうことについては注意を喚起しておきたいと思いますが、私が店内で接しております人の中にでもそういうような意見を持っておる人は一人もおらない。従って私には全然それは想像のできないことでございます。もしも何か少し具体的なあれがあればさらに別途お伺いしたいと思いますが、私にはその懸念は一つもないと思っております。
  156. 伊東隆治

    ○伊東(隆)委員 申し上げたいことはたくさんございますが時間がだんだん迫って参りますので、ごく簡単に瀬長参考人に申し上げておきたいと存じます。実は先ほどいろいろお話通り与党の出席が非常に少いので、あるいは瀬長参考人が気を回しておられるのではないかと存じますが、わが与党におきましても、非常なる熱意を持って沖繩特別委員会も設けましてほとんど隔日ごとに一瞬は会合を催して、この問題を真剣に検討いたしておったような次第でございます。本日はほかにも会合もありましたので退席者が多いのでございますが、沖繩特別委員会は実質的にいかにしてこの問題を沖繩島民の希望する通りに解決しようかという、そういう政治的な問題と同時に、また援護の方画にも実質的な案を考えたいと思いまして、沖繩援護協会というような組織を作っていろいろの援護事務をいたしたい、そのようなことも考えておる。また今の南方連絡事務局をもっと強化しようというようなことも今度の国会において考えておるというようなことでございまして、非常なる熱意を持って皆様方の運動を支持しておるということを強くこの機会に申し上げておきたい。しかしただいま穗積委員から懸念が申されましたが、その通りでございまして、肝心な沖繩の現地におきまする運動が、いろいろな軍当局の誤まった判断のもとに圧力を加えられて、そのためにだんだん弱っていくのではないか、この点を非常に縣念いたしておりましたるところ、瀬長さんのお話で、絶対にそういうことはない、どこまでも沖繩島民の真意、すなわち排米運動ではないのだ、これは沖繩島民の死活の問題、民族的な叫びである、また生活的な要求に基いてやっているのだというその真意をもっと強め、そして適当な方法で、この上とも強く現地関係の人々に印象づけていただきたいということをこの機会に特に要りいたす次第であります。おっしゃる通りあなたの方におきましては、本国における熱意はさめておるのではないか、同情を失いつつあるのではないかというような御心配がありますと同時に、私どもにおきましても、現地における皆様の運動がだんだん冷えるのではないかという心配もあることをこの機会に申し上げておきたい。  それから中川アジア局長に対してでありますが、ただいま穗積委員からのお言葉でございますが、われわれ与党と政府事務当局との間の会合等におきましての印象からいたしまして、そういうことは絶対になかった。中川アジア局長答弁を私は支持するものであります。それは私どもが加わっておるのですから、どうぞ御心配なく。それというのも、これは委員長に要望いたしますが、与党野党の会合を前から穗積委員が熱心に主張されておる。これを適当の会合でやれば、こういう誤解もだんだんなくなるし、これは超党派的にやろうじゃないかというようなことできているのですから、これだけは議論なしに、みんなが一致団結、現地も本国も一致団結して目的の達成に当りたい、かように存じまして、ごく簡単に申し述べた次第であります。
  157. 岡田春夫

    岡田委員 参考人にちょっと伺っておきたいのですか、現地としてこういうことをお感じにならないでしょうか。アメリカ軍当局は何かやるんだ、やるんだというようなことで、先ほどからお話のあるように冷却期間という格好でひっこずっていって、来年春には極東軍司令部はなくなってハワイに合流になる、そのときまでひっこずっていって、ハワイまで行ったら、だいぶ本家の方は離れてしまうのだから、交渉してもなかなかうるさくならないだろう、そういう格好でひっこずってしまうというような腹でアメリカ軍当局が動きつつあるのではないかという感じが私は率直にするんですが、現地の方でもそういうような動きが出てきておるものでしょうか、どうでしょうか、その一点が一つ。  もう一つは、二、三日前の外電の伝えるところによると、プライス勧告以上のものを何か近いうちに発表するという作業をアメリカが始めたというような動きがあるようでありますが、こういう点についても現地の方が相当敏感であるだけに、そういう情報等がもしわれわれとしてお聞きできるならばお話を伺えないかと思うのですが、その点いかがでありましょうか。
  158. 瀬長亀次郎

    ○瀬長参考人 最初の御質問でありますが、これははっきり具体的に現われております。レムニッツアー民政官から比嘉行政主席あての書簡によりますと、日本政府を加えないで現地で相談をまとめるという書簡であります。そうなりますと、従来やっていたような、ただ沖繩だけの問題にして強圧政策をもってやる、プライス勧告を実行するということになると思います。これは現地でもそういうふうに見ております。これに対しまして現地の世論は、どうしても日本政府責任を持って当らないと、今のレムニッツアー書簡によって対米折衝すると、従来の収奪政策がそのまま実行されるおそれがある、この点を非常に注意しております。だから日本政府としても国会としても、その点を十分やってもらいたいというのが県民の要望であります。  さらにもう一つあとの問題でありますが、この問題ははっきり現われております。今さっき申し上げました新規土地接収に対する強制測量の安田部落は、以前予告された予定地じゃないのです。新しく民間有地を約一万坪以上接収しようといったようなことになっております。そういったところを見ますと、非常にプライス勧告以上の新規接収が行われるのじゃないかということを、現に現地の青年団が立ち上って電報を打ってきております。そして安田の青年団は、打ち込まれたくいを引き抜く運動をやっておる、これはおとといの電報です。これはわれわれの私有地であります。予定しないところの私有地にくいを打ち込まれた、これを引き抜く運動をするから代表団はがんばれといって、向うの青年団からおととい電報がきております。そういったものを考えますと、プライス勧告に含まれていない、なおさらそれ以上のものが現地では強行されつつある。またそのきざしが現われているということでありますので、以上お答え申し上げます。
  159. 岡田春夫

    岡田委員 ただいま参考人お話のような情勢であるわけなんですが、ここでまた桑港条約に戻るわけなんだけれども、やはりサンフランシスコ条約の第三条の施政権と潜在主権関係、これはやはり日本アメリカの駐留軍がまだいるというような、ここが沖繩のセンターの問題であるというならば、潜在主権と施政権との関係、いわゆる第三条との関係を事実上統一していく場合には、また話し合いの余地があると思う。ところが事実上統治権、施政権を行う中心がハワイに移ってしまったということになると、ますます潜在主権というものは名目上だけのことになってしまう可能性が非常に出てくるわけです。そういうことはまた沖繩永久領有、占領というか、そういう関係ともつながっていくと思うのですが、そういう意味でもやはりこの際は、日本政府は明らかに国会で議決しているから当然のことであるけれども、その潜在主権の立場に立って、沖繩の問題についてははっきりと日本政府が解決の中に入っていくという態度を明らかにしていかないと、いつの間にかあなた自身は冷却期間を砕くつもりではないにしても、事実関係としてはそういうようになってしまうのではないかというわれわれは心配がある。特にアメリカの方は一時は先ほど参考人お話のように、日本政府を入れないで話し合いをしようじゃないかといって、最近になってまた取り消しているという事実を見ても、日本政府あるいは日本の国民がこれに面接連絡を持っていくということは、アメリカとしては一番心配なんです。しかしこれだけは日本政府としてはどうしてもやっていかなければならないだけに、これははっきりとこの際日本政府は——先ほど中川アジア局長の御答弁だけでは、私は率直に言ってどうもあまりまだ熱意が足りないのじゃないかという気がしてしようがないのですが、この際にはっきりとこの問題に対して日本政府が具体的にやるというような方向を打ち出していくことがやはり重要なのじゃないか。こういう点をしみじみと今の参考人お話を開いていると感じるのですが、こういう点についての御感想を伺いたいのと、もう一つは国会議員の中で実は沖繩の調査に行きたいといって、初めは外務委員会で行こうと言っていたが、外務委員会で行くのはいつの間にか取りやめられてしまった。それは与党の理事諸君に非常に責任があるのだが、与党の攻撃はあとにして、ともかく国会で超党派的に自民党、社会党で行こう、こういうことがきまった。そのために小会派であるわれわれ労農党は落されてしまったのだか、それはいいとして、こういう手続か踏まれていたのかどうか。これは外務省に踏まれておりますかどうか。何かアメリカ筋ではこれを断わってきたといっているようだが、そういういわゆるサウンドしてみてだめだからといって、国会側の関係で手続をまだしていないのじゃないか。伊東さんは非常に一生懸命にやっていられることは知っているけれども、自民党の諸君はそういうことで冷却期間に客観的には同調しつつあるような方向に動いているのではないか、それはなぜならば手続もしていないということから言えるのじゃないかと思うのだが、こういう手続の関係は一体どうなっているか、そういう点を聞きたい。二つだけ局長に伺っておきたい。
  160. 中川融

    ○中川説明員 沖繩問題に関する対米折衝に対して政府が熱がないというお言葉でしたが、これはわれわれ実は一生懸命やっておるのであります。その点はこれ以上具体的にそれを証明しろと言われても、なかなかむずかしいのですが、やっておることを申し上げたいと思います。またここの総司令部と申しますか、極東軍の司令部がハワイに来年の七月だと思いますが、移駐するということになった場合に、軍の指揮系統が日本と沖繩と違ってくるということで、東京に司令部がある場合に比べて、いろいろ沖繩の問題の処理がやりにくいのじゃないかという御質問の点については私も実は若干そういうふうな気持がないわけではありません。しかし正式にいえばやはり政府がやる相手はアメリカ政府である、この大使館と折衝する、大使館は本国政府の国務省にそれを報告していく。木国政府におきまして国防省との間に折衝が行われるということでありますから、経路に関する限り支障はないわけだと思っております。しかし事実問題としてたとえば正式ではないにしろ、ここで軍の当局者にじかに話すという道も今あるのであります。また大使館当局としても軍の当事者に直接話すという道もあるであろうかと思うのであります。これらの便宜がなくなるということはいなめないと思うのであります。現在の沖繩の問題というものは、やはりそれまでにはいずれにせよ何らかの形で発展があるだろうと思われますので、直接の問題としては関係がないのではないかと考えております。  なお国会の超党派的な視察団が現地に行かれるということについて、外務省を通じてアメリカ側に話をしておるかという点につきましては、これは私どもの事務当局を通じての話はございません。これについてはしかしおそらく別途何らか政治的な話し合いがあるのではないかと私想像しておりますが、これについては直接的には承知いたしていません。しかしアメリカ側が今日本から調査団が来られることを時期がよくないと見ておることはわれわれも聞いておるのでありまして、これは現に政府から調査団を出したいという希望を申し入れました際にも、しばらく時期を見たいというふうな返事が来ておるのでありまして、アメリカ側の態度は相当はっきりしておると考えます。
  161. 岡田春夫

    岡田委員 それはどういう理由ですか。アメリカ側が適当な時期でないというのは……。
  162. 中川融

    ○中川説明員 理由は、これは推測するほかないのでありますが、結局何といいますか、現地の空気がこれ以上激化することは問題解決に資するゆえんではないと感じているのではないでしょうか。
  163. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員長代理 次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時三十分散会