○瀬長
参考人 委員長の許可を受けまして、
沖繩問題について
参考人としての
意見を申し述べたいと思います。
その前に、外務
委員会がこういった
機会を作って下さったことに対しお礼を申し上げます。
沖繩の軍用地問題解決の四原則が琉球
政府立法院で全員一致可決されたのは一九五四年の四月三十日でありました。この四原則は八十万沖繩県民が生きる
権利と財産権を守り、異民族に一坪の土地も売り渡さないで
日本国民の
領土主権を守り、独立と平和をかちとるための、だれが見ても無理のない正しい要求であります。ところが
アメリカ政府は、この四原則を完全に踏みにじるプライス勧告の骨子を六月九日に発表しました。それ以来プライス勧告反対、四原則を貫徹する対米抵抗の運動が八十万県民総ぐるみの戦いとなって展開され、それは祖国九千万同胞の共感を呼び起しました。それで現在では幅広い国民運動となって胎動を続けております。プライス勧告反対、四原則支持、沖繩の施政権の返還は、自民党を含む全政党、百余の各種団体共催の日比谷の国民大会で決定されしました。しかし
アメリカの現地軍はこういうことを踏みにじりまして、現在でも非常に残虐な行為を行なっております。その三つについて
お話を申し上げます。
第一番目には、新規接収について今冷却期間を設けておると言っておりながら、沖繩北部の国頭村安田区におきましては、新規接収するための強制測量が行われております。これは七百六十五町歩にわたる国、県、私有地を含んでおりまして、この
関係者、戸数にいたしまして百二十一戸、六百六十名の部落民の生活を脅かすことになっておりますが、今月の四日以来、
アメリカのヘリコプターが安田区の部落におりて参りまして、新規接収の通告をやりましたが、村長以下村民はこれを拒否しております。ところがこのヘリコプターは、毎日飛んで、今部落民は恐怖のどん底に突き落されております。こういうふうに新規接収の前ぶれである強圧が現在沖繩で行われておるという事実があります。
さらにもう
一つ、これは
アメリカの現地軍が従来とりました暴虐な、残虐な行為であります。この行為は天人許すべからざる行為として、現在八十万県民は総立ちになっております。この事件と申しますのは、去る七月十二日さらに一日置いて十四日、十五日の三日間にわたって行われました沖繩北部の伊江村にかけられました焼き払い事件であります。この焼き払い事件の真相を発表いたします。これは資料にも書いてありますが、七月十二日午後二時ごろ、真謝区——これは真謝区と申し上げますと、伊江村の部落になっておりますが、下スメガ原で草刈りをしていた同区一班島袋盛徳という子供が、米兵が畑や山に火をつけて燃やしていると部落にかけつけて報告をして、そうして石川という人が自転車に乗っていって現場にかけつけました。もちろん島袋という子供の報告によって、全部落民が現場にかけつけたことは当然でありますが、石川さんが現場にかけつけるや、米兵三名が下スメガ原を中心に小型石油カンからさらに小さいカンへ移して、付近のススキ、砂糖キビ、松、想思樹その他に石油を散布し、焼き払っております。石川さんが
アメリカ兵に焼くことはいけない、
向うの山は私の山であるから消してもらいたいと言ったら、
アメリカ兵は、消すどころかそれに何の返事もなしに上の方に消えていった。その晩は午後八時過ぎまで燃え続けて、鎮火しております。
さらに一日置いて、八月十四日午前十時、真謝原というところで
アメリカ兵七名が消防自動車に乗ってきまして、ガソリンを注ぎ込んで、その一人の軍曹がライターで火をつけて、さらに燃え残りの砂糖キビ、イモ畑、山林、原野の区別なく、ガソリンをつぎ込んで散布し、すっかり焼却し去っております。そしてそのとき真謝部落の荻堂盛徳という人外一名が火を消すためにいろいろ努力しておりますと、米兵からけ散らされて逃げ去ってきている事実もあります。十五日の午後二時ごろ、スメガ原を中心にその一帯をさらに同じような方法でガソリンをばらまいて、そして全部焼き払っております。
アメリカ兵は、戸惑って右往左往している部落民をながめてにやにや笑いながら、高台でその焼けておる現場をながめておるといった事実であります。さらに真謝区の区長東江保さんは次の
通り語っております。七月十二、十四、十五の三日間にわたり射的場中心地付近約三十万坪が米軍消防車により、ガソリンを散布され、畑、山林、原野の差別なく焼き払われ、同区知念佐太郎の落花生畑二百五十坪を初め、甚大な損害をこうむっております、七月十五日午後二時ごろ真謝区一班知念木麿夫婦がたきぎ用としてカヤを刈っているところを焼き払いに合い、危うく焼き殺されるところを命からがら逃げて参りました、私たちは土地を守り、子弟の教育のため、また生きんがために命をかけて植え付けた大事な農作物を爆弾で焼くのみでなく、また今かかる無慈悲な仕打にあうことは区民一同憤慨にたえませんと訴えております。さらに流球
政府の行政主席が派遣した調査員もこの焼き払い事件を認めて、その報告の中で次の
通り申し述べております。その真謝区の耕地が十四万六千七百二十五坪、山林三万三千坪、原野十三万七千坪、合計三十万七千七百二十五坪のうち類焼合して十六万坪の焼き払いの事実であることを明記しております。
さらに琉球
政府の
意見として、何らの通告なしに突如として焼き払われ、
アメリカ軍は接収以来樹木やその他に一文の賠償もなくしてこういった焼き払いの事実があったということは実に遺憾であると、任命された琉球
政府さえそれを発表しております。焼き払いをかけられた土地の面積の広狭いかんにかかわりませず、農作物や立木の被害の多少に問題があるのではありません。この事件の本質的なものは同村民の八千万同胞への訴えにもあります
通り、一九五五年三月十一日、完全武装兵によっての強奪にひとしい土地の接収以来、水攻め、食料攻め、住家の焼き払い、軍用犬による逮捕、投獄などで同村民に挑戦してきて、今また農作物と一切の草木に焼き討ちをかけ、攻撃しておるのであります。
アメリカ軍の焼き払いは天人ともに許しがたい行為であります。食糧や水攻めだけで足りないで、脅迫し、逮捕し、投獄して、何の罪もない
日本国民である伊江村の人々を死地に追い込んでおります。民主主義の旗を掲げ、自由を叫んで世界の世論を指導し、世界政治を導こうとしている
アメリカ現地軍のかかる野蛮な行為が許されていいものでありましょうか。伊江島村民に加えられたこの無軌道きわまる恥知らずの行動は、八十万沖繩県民だけでなく、県民を含めて、九千万
日本国民に対する一大挑戦であると私は
考えております。八十万沖繩県民は、
日本政府が本腰を入れて
沖繩問題につき対策し、対米折衝してくれるよう熱望しております。そうして、県民八十万が切望してやまない四原則を貫き、八十万県民をも含めまして、九十万
日本国民が熱願する沖繩の施政権を一日も早く国民の手に返してもらうため一切の努力をしていただきたいと
考えております。
次に、流帳大学学生に対する
アメリカの弾圧措置について簡単に証言をいたします。
一九五六年の八月十日、
アメリカの民
政府は、琉球大学
理事会に対してこれまで支出をしていた補肋金を打ち切ることを
声明しております。七月の二十七日、那覇高校庭で行われたプライス勧告反対四原則貫徹県民大会に参加しました琉球大学学生のデモ行進が反米的であると断じ、デモを指導した学生の処分を要求してきたのであります。同大学
理事会は、学生の当日の行動に少々の行き過ぎはあっても、合法的にかつ大学学長の許可を受けて行なったことであるので、厳重処分するに忍びないとして、五名の学生に謹慎処分をすることを決定し、
アメリカ民
政府に報告しました。ところが
アメリカ民
政府は、謹慎処分ではなまぬるい、だれかれを加えて退学処分せよと
理事会に強圧を加えてきました。最後の決定権を
アメリカ民
政府副長官に握られております同
理事会は、再三
理事会を開いて、ついに
米国民
政府の厳命に屈せざるを得なくなり、古我地学生自治会長を初め六名の学生を退学に、一人の女子学生に謹慎の処分を断行せざるを得なくなっております。四原則貫徹運動の最初の犠牲者を出したわけであります。これでわかりますように、沖繩の最高学府をもって任じている琉球大学には、学園の自治も学問の自由もありません。この事件は本土にもいち早く伝わり、全学連、私学連を初め、中央、地方の民主団体がこれを取り上げ、
アメリカ現地軍や
理事会に対して抗議のメッセージを送り、琉球大学学生に激励を送るなど、国民運動に拍車を加えている現状であります。伊江島村民にかけられました残虐な焼き払い事件といい、琉球大学事件といい、まさにわれわれ
日本国民の常識では
考えられないものであります。弾圧ではなく民主主義が、そしておそろしい原水爆基地の設定ではなく平和が、野蛮ではなく文明が沖繩にも行き渡り、隷属ではなく
日本国民としての独立が、苦しい生活を脱して
日本国民としての楽しい生活が八十万沖繩県民にも与えられるよう、貴
委員会と
日本政府に切望して私の
意見を終りますが、けさ飛行便で参りました伊江島の区民からの報告を簡単に申し上げます。
それは
アメリカの兵隊が八月の八日に、
アメリカ兵に対する訴えとして書いてあった立看板をたたきこわして、引き裂いていったという事実であります。この立看板には次のことが書かれております。「賢明なる
アメリカ人の皆さんへ」という立看板、大きいトタン板の三枚張りであります。
一、地主の承諾もなくして土地を取り上げ、適正補償もなされず、歎願した地主を縛り上げ、武力によって家を焼き払いまたは破壊するなどして地主を窮地に追い込み、農耕する地主は食うに困り、食糧のイモを掘る少年は軍用犬にかみつかせて逮捕の上投獄し、次々に故意に罪人にでっち上げ、無理じいに土地取り上げと罪名を承諾させようとすることは、神の意思にそむく行動だと思います。
二、かかる行為は私たちと私たちの同胞を苦しめるのみであって、自由、平等、博愛の精神を持って世界を指導する米合衆国の行為とは、われわれには絶対に理解することはできず、承諾もできません。よってこの非人道的、非民主的行為によって取り上げた私たちの土地を一日も早く私たちに返して下さい。
伊江島真謝区軍用
地被害地主一同
ということになっております。
これで私の
意見を結びたいと思いますが、現在でも
アメリカの兵隊は従来に変らないで残虐な行為を行なっております。一日も早く、残虐な行為を行わないように、平和のうちにすべてを解決するよう
政府が努力して下さること、さらに現地では国会あるいは
政府から調査団の派遣を非常に要望して、私のところにも数回にわたって手紙が参っております。話によりますと、何か拒否されたとかされぬとかいうことでありますが、国会、
政府から正式に調査団を何名か送ってもらって、私の今話しましたことがほんとうであるかどうかを調査していただき、そうして国民の世論を巻き起して、現在やかましくなっている
領土問題を正しく解決し、一日も早く、十一年間祖国から切り離された沖繩県を
日本の一県にしてもらいたいことを希望し、私の
意見を終ることにいたします。ありがとうございました。(拍手)