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穗積委員 実は
サンフランシスコ条約の例が出ましたが、あの第二条、第三条は、形式、
内容が違っております。その場合に第二条で、
南樺太並びに
千島列島に対する帰属を不明確にしたのは、これはどういうわけかといえば、言うまでもなく背後的の事情によるのです。
アメリカとすれば、
条約上の論理は一貫いたしております。これは
日本人が関知せざるところでしたが、
アメリカにすれば、
千島列島並びに南横太に対しては、これはソビエトにプレゼントしているのですから、そういうヤルタ協定を正確に結んでいるのだから、だからそれを結んでおいて
サンフランシスコ条約で、
千島列島の帰属を国連に移すとか、
アメリカに移すとか、すなわちソビエト以外のものに移すということになれば、これは
アメリカとしては論理はなはだしく不明確であってそれはソビエト側からやられる。そこで、そのことをよく
承知しているから、非常に異例の異例でございます。が、あそこでは帰属を不明確にして、問題を将来に残そうという、多少狡猾な
考え方から出てきているのが明瞭です。ところで
日ソ間においてはそういうことはないのです。今まで終戦後
条約を結んでいないのだから、そこで終戦後の他の
条約にオブライジされる点はございません。ですからそういう点については、私は高
碕大臣並びに高碕さんを通じて鳩山さんに忠告申し上げておきますが、そういうところに
交渉の
余地があるというふうな
考え方でお臨みになったならば、これはもう土俵に上る前から泥がついてしまって、
国民の
利益からいっても、鳩山さんとしても、これはとらざるところでありますから、私はかたい所信をもって忠告を申し上げておきたいと思いますから、どうぞお伝えをいただきたいと思うのです。
次にお尋ねいたしたいのは、実は重光外務
大臣の
交渉の仕方については、いろいろな言い分がお互いにあると思うのですが、その中で、一つは
政治的な
交渉が全然行われていないということです。これは重光さんが帰ってからも正確に
報告を聞きたいと思うが、おそらく
外務省に入っている情報、または他から入った情報から見ましても、
政治的な
交渉というものは全然していないと思うのです。問題は、一体なぜソビエト側が
千島列島の問題について峻厳な
態度をもって臨んで一貫してきておるかということは、これはこの島に対する、この問題の解決の仕方に対する将来の
日本の
政治的な方針というか、思惑を見抜いているからです。すなわち、これに対して留保条項をつけろというようなことは、
サンフランシスコ条約と符を合せておいて、そして
アメリカなりイギリスの力をかりて、それを糸口として再びまたソビエト侵略に対する攻撃のための軍事基地を置くなり、あるいはまたそういうことに利用するなり、そういうふうな
領土問題並びに軍事基地問題とからんで、そしてソビエト側に敵意を示すような政策を
日本がとる、そういうことがソビエト側に最もこの問題に対する峻厳な
態度をとらしめておる原因だと私は思う。逆をいえば、これは我田引水ではございませんが、たとえば社会党が示して参りましたような中立平和外父政策というものを口で言うだけでなくて、政策の上でこれを実現する、そういうことが客観的にソビエト側に十分理解される場合においては――この問題に対して
条約の上では、なるほどそれはきめるときの過程から見て、一応国境線なり
領土の所属は明確にしなければならないけれ
ども、
政治的に見て将来そういうような中立平和政策、すなわちこれらの
領土が
日本に返った場合に
アメリカの基地が置かれるとか、またはソビエトを攻撃するためにこれを利用するというような
政治的な意図なり政策がないということが、現実に客観的に明瞭になる場合においては、ソビエトは将来のそういう
政治的
条件が整った場合には考慮する
余地が私はあるだろうと思う。その点が遺憾ながら
アメリカの最近の
態度なりあるいはまた
日本政府の今までやった
外交政策から見まして、ソビエト並びに中国を仮想敵国とする武力政策というものを
アメリカに便乗してやってきておる。そういう
外交政策をとっておる
政府に対して、そこでいささかなりとも今の言いがかりをつけるような
余地を残しておくということ、これは将来の両国のためにならぬ。先ほど植原さんが言われたように、問題を残すことは両国のために
利益じゃなくて、かえってそのことが悲劇を生み、不
利益になるから、この際明確にしておかなければならぬというように
考えられることは、私は当然だと思うのです。私は先般も申しましたが、南
千島を無
条件で即時返還することになれば、安保
条約下における
日本としては、
アメリカの
要求があるならば、ここに軍事基地を設定しなければなりません。そうするならば、ソビエトとしては
日本に返したのではなくて、
アメリカに向ってソビエトを攻撃するための軍事基地を提供する結果になるのですから、そのようなばかばかしい
政治的判断をするほどソビエトの指導者は間抜けではないと思う。そういう判断がつかぬほど
日本政府のあなた方は愚鈍だとも思わない。そういう点を明確にするような
態度で
政治的な
交渉をされなかったのが、私は今度の
交渉の欠点の一つだと思う。
政府は一体なぜそういうことを訓令なさいませんでしたか、これから一体どうおやりになるつもりであるか。鳩山さんがもし行かれるとするならば、そういう点についてこそ
交渉すべきであって私はその
態度を明確にすべきだと思う。それについて責任の地位におられる外務
大臣の御所信を伺っておきたいと思うのです。