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1956-08-27 第24回国会 衆議院 外務委員会 第62号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年八月二十七日(月曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 前尾繁三郎君    理事 北澤 直吉君 理事 須磨彌吉郎君    理事 山本 利壽君 理事 穗積 七郎君    理事 松本 七郎君       伊東 隆治君    植原悦二郎君       大橋 忠一君    菊池 義郎君       並木 芳雄君    野澤 清人君       松田竹千代君    渡邊 良夫君       石橋 政嗣君    大西 正道君       田中 稔男君    福田 昌子君       細迫 兼光君    森島 守人君       和田 博雄君    岡田 春夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣 高碕達之助君  委員外出席者         外務政務次官  森下 国男君         外務事務官         (アジア局長) 中川  融君         外務事務官         (欧米局長)  千葉  皓君         外務事務官         (移住局長)  矢口 麓蔵君         外務事務官         (条約局長事務         代理)     高橋 通敏君         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 八月二十七日  委員愛知揆一君、田中織之進君及び戸叶里子君  辞任につき、その補欠として野澤清人君、門司  亮君及び石橋政嗣君議長指名委員に選任  された。     ――――――――――――― 同日  委員野澤清人辞任につき、その補欠として愛  知揆一君議長指名委員に選任された。      ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  国際情勢等に関する件     ―――――――――――――
  2. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これより会議を開きます。  国際情勢等に関する件について質疑を許します。山木利壽君。
  3. 山本利壽

    山本(利)委員 今回の日ソ交渉の結果がどういう形において落ちつくかということは、今後のわが国政治の動向を決するものとして、全国民が非常に期待して待っておるのでありますけれども、今の段階においては、われわれの期待通りには進んでいないようでありましてこの点まことに残念でございます。重光全権がお帰りにならなければ会議の模様やその他について、詳しいことは御発表になれないと思いますけれども内閣として、あるいは留守を預かっておられる高碕大臣としては、大局の問題についてはよく御存じのことと思いますから、おわかりになる範囲においてお答えをいただきたいと思うのでございます。  重光全権は現地においていろいろ折衝した結果、もうこれ以上交渉余地はないということをたびたび発表しておられるようであります。だけれども政府部内におきましてはまだ努力の余地があるとして、場合によっては鳩山首相みずから出かけていこうかというお考えであるようでありますけれども、まだ重光全権交渉では余地が残っておるとお考えになられるその見解について御説明をいただきたいと存じます。
  4. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいまの御質問でございますが、これは重光全権が帰ってきて御報告を願わなければはっきりしたことはわかりませんが、私どもが想像いたしまする点につきましては、重光全権は八月の十二日と記憶いたしますが、最後にシェピーロフと会ったときに、十三日までになるべく回答したい、こういうことで従前のいきさつを報告したのであります。そのときの情勢から判断いたしますと、これは先方の申し分はそのままのむということでなくて最後の場合に決心をせなければならぬから自分にまかしてくれろ、こういう電信であったのであります。これに対しまして政府といたしましては、十三日まではまだ回答し得る時期に到着していないからこれを延ばしたらいいだろう、こういうことの指令を与えたわけであります。従いまして重光全権はこの状態を、先方要求をそのままのむというまでには到着していないと私どもは想像いたしております。従ってまだ交渉余地があるものと私ども解釈いたしております。
  5. 山本利壽

    山本(利)委員 今度の交渉の行き詰まりは領土の問題がおもなものでございますが、この領土の問題については、私は理論的に非常な疑問があると最初から考えておるのであります。その理由は、日本南樺太及び千島列島サンフランシスコ条約において放棄した、そしてソ連の方では、まだこれをソ連にどこからも与えられていない、ソ連領土であるということを国際的に証明するところの何らのものがない、こういう点については、今回モスクワにおける交渉において、重光全権のいろいろ発表されたるところによっても明らかであると私は思う。そうであるなるば、この資格のない二つの国が寄って領土問題というものを論議するということは、ある会合の席上で重光全権も言っておられるようでありますが、常識的にそう――この問題についてはソ連日本とが話し合って円満に解決するものであるならば、常識的にそう計らうことがあり得るという立場で今日やっておられたと思うのであります。しかしながらソ連は御承知のようにそれを聞かないのであるから、わが日本としては純粋な理論的な立場に立って、これはどうしても将来国際会議に持ち込んで、その国際間の判定によらなければならないのであるから、わが国としてはただサンフランシスコ条約において放棄した千島列島の中には南千島は入らないものと考えるということを強く主張しておればよいのであって、択捉国後島をソ連からもらおうという態度は理論的に間違う、交渉において理論を離れた場合においては、私は世界の支持も受け得ることはむずかしいと考えるのであります。だからこの理論的な立場を根底に戻して、われわれはあくまで、千島列島の中に南千島は含んでいないということをソ連側に強く主張して、そしてその他の領土の問題をソ連とあれこれ取引するという態度は、日本外交としてはやめるべきであるというふうに考えますが、この点について高碕大臣の御見解を承わりたい。
  6. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいまのお説は私はごもっともだと存じております。従いまして日本といたしましては、サンフランシスコ条約において南樺太千島をこれは放棄したということも事実であります。これに対して千島の中には南千島、つまり択捉国後が入っていないということ、これは日本の国の領土であるということは重光全権も強硬に主張しておる通りであります。ただいまのお説の通り、かくのごとく主張するのが当然だと私は存じております。
  7. 山本利壽

    山本(利)委員 高碕大臣は二十六日の午前九時半から軽井沢に鳩山首相を訪問されて懇談されました際に、日ソ交渉に対する日本側の譲り得る最低線を確立する必要がある旨を強調されたと伝えられております。それに対して首相も同意されたということでありますけれども、一体全権を他国に派遣して交渉せしめる場合に、その最低線ということは今まできまっていなかったのであるかどうか、その点をお尋ねいたしたいと思います。
  8. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 この問題は、私は当然重光全権がおいでになる前にきまっておったことと存じております。私はこれに対してはその相談によくあずかっておりませんから、私の考えといたしますれば、最低線というものはどうしてもきめなければならぬという私の考えをさらに強調いたしたわけでございまして、総理は当然であるというお考えでありました。
  9. 山本利壽

    山本(利)委員 重ねてお尋ねいたしますが、そうすれば、全権が行かれる場合には、すでに日本態度として最低線は大体きまっておったと考えるが、さらにこの際きめなければならぬと言われることは、高碕大臣のお考えでは、全権が持っていかれたところの最低線よりも、今の状況においては最低線をさらに引き下げてここに考え直すべきであるということでございましょうか。その点についてのお考えを承わりたいと思います。
  10. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 これは相手があることでありますから、あるものについては引き下げるとか、あるものについては引き上げるとか、それがいわゆるこれから協議する点だと思っております。
  11. 山本利壽

    山本(利)委員 多数の方が御質問でありますので、時間を急ぐために私も先に進みますが、ダレス米国務長官重光全権に対して、日本千島列島及び南樺太ソ連領有を認めるならば、米国沖繩領有主張できると警告したというが、そういう事実はないということは、その後に至って重光全権も申されておりますし、どこかで高碕大臣もそのように御発表になったと思いますけれども米国内にはそういう声もあるやに報道されておるのでありますが、この点に対してあなたの持っておられる情報について承わりたいと思います。
  12. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ダレスさんが重光全権にただいまの御質問のような点を言ったという事実はないということは、はっきり全権から報告が参っております。私どもの想像といたしましてそういうような意見アメリカの国務省の側には一部分あるというふうなことは想像しておると申し上げたのであります。
  13. 山本利壽

    山本(利)委員 それでは将来この問題は千島樺太の問題とは切り離しても、あるいはことにそれがソ連領となった場合においては、米国はそういう立場をとることができると高碕大臣はお考えでございましょうか。大臣及び日本外務当局としては、将来そのようなことはサンフランシスコ条約から考えてみてあり得る、あるいは言うならば言えるというふうにお考えでございましょうか。その点をはっきりしておいていただきたいと思います。
  14. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 だいぶ法律の問題になりまして、私どもはよくわかりませんが、サンフランシスコ条約をそのまま見ますと、そういうふうな要求はできないことだと存じます。
  15. 山本利壽

    山本(利)委員 私はこの点について一つの懸念を持っておるのでありまして、希望としてはそういうことは言ってもらいたくないということは、国民の一人として当然なことでございますけれども、場合によってはあり得る、しかも日本外務省というものは、私はとかくこういう問題について過去において手抜かりがあったと思う。それは、サンフランシスコ条約締結されるときに、私もこの委員として最も懸念したのは、日本海にあるところの竹島の問題であった。ちょうど竹島がマッカーサー・ラインの上にあるから、今後この問題は紛糾を来たすおそれがある。しかしながら、長年島根県の管轄区域にあってあの山陰沿岸漁業者が生活を営んだところであるから、これはこの際はっきりと日本領であるということを主張しておかなければだめだということを申し上げたのに、その当時の外務省首脳部においては、これはほとんど一笑に付せられた。それはもう問題外のことであるというふうな立場をとっておられたのでありますけれども、その後に至って李承晩ラインなるものができて、事実上これを占拠されておることでありますから、このサンフランシスコ条約解釈についてよほどはっきりしたところの態度をとり、それを自分ひとりよがりのことでなしに、国際間において十分にそれを徹底しておかなければ、私は後日において非常な問題が起ると考えるのであります。私がその点を懸念いたしますのは、そのサンフランシスコ条約の第二十六条においては、「この条約署名国でないものと、この条約に定めるところと同一の又は実質的に同一条件で二国間の平和条約締結する用意を有すべきものとする。」この主語は日本国であります。日本国はそういう二国間の平和条約締結する用意を有すべきものとする。それがその次に「但し、この日本国義務は、この条約最初効力発生の後三年で満了する。」と書いてある。だから他の、サンフランシスコ条約に加盟しなかったところの諸国と、二国間の条約をするように努力しなければならぬというところの義務は、三年間で消えるという解釈も私は成り立つと思うのであります。そうしてその次に至って「日本国が、いずれかの国との間で、この条約で定めるところよりも大きな利益をその国に与える平和処理又は戦争請求権処理を行ったときは、これと同一利益は、この条約当事国にも及ぼされなければならない。」と書いてある。義務は三年間の義務を持つ、これが最後に書いてあるならば私は問題はないと考える。ちょうどここに原文を持っておりません、訳文でありますから、もしこれが原文と違うというならば、その点の御説明をいただきたいのでありますけれども、どうも並行の常識で考える場合に、日本サンフランシスコ条約において加盟しなかった他の国と二国間の条約をするような心がまえがなければならぬ、そういう義務は三年間で終る。そうして最後に至ってまたこのサンフランシスコ条約よりも有利な条件で他の二国と条約を結ぶ場合においては、そのサンフランシスコ条約にそのときに加盟した国もまた同等の待遇を受けなければならぬというふうなことを私は言えないことはないと思う。言ってほしくないということは、これは日本国民として同じように考えるけれども、こういうところに私はどうも疑義があると考えるから、私のこの考え方というものは、単なる相愛にすぎないものであるかどうか。そう言われればそうも思える。何しろ力のない日本に対して、力の強い相手国が強力に押しつける場合においては――今度の日ソ交渉の場合においてもわれわれはしみじみと弱国であるさびしさを感ずるのであるから、ましてアメリカが強硬にこういう問題を取り上げるならば、私は主張し得る論拠にはなり得ると考えるのであります。この点に対するところの外務省見解を承わりたいと思います。
  16. 高橋通敏

    高橋説明員 ただいまの問題でございますが、外務省事務当局としましては条約解釈の問題といたしまして、三年という義務は、前段のみならず後段にも及ぶものであるという見解をとっておる次第であります。(「当りまえだ」と呼ぶ者あり)後段義務と申しますのは、前段に引き続いて――リダクションの問題ともなるのでありますが、前段に引き続いて新しい条項を起さずに、そのまま引き続き書いてある次第であります。それから前段義務は第三国が平和条約と実質的または同一条件条約締結を求めてきた場合には、これに応じなければならないという義務を言っているわけであります。そうしますと、そうでない場合はどうするかといいますと、後段の問題、すなわち均霑するという問題が起ってくるわけであります。従っていわば同一の問題についてたての両面から、すなわち前段同一義務を求めてきた場合、後段はそうでない場合、すなわち同一の問題についての義務を規定したものであるというふうに考えますと、この三年というも当然その後段の方にも適用し、従って満了するのではないかというふうに考えている次第でございます。
  17. 山本利壽

    山本(利)委員 ただいまの外務省見解というものは、そういう工合に外務省考えておられるという説明でありましたが、それではそれは国際的に、ことにアメリカに対してはっきりと了承されておる問題であるか。なお今回のような声が起るということは、この点について問題が起る懸念はないが、あるいは今日こういうことが起ったからあらためてこの第二十六条の解釈については、強くアメリカその他に向って日本解釈が正しいということをすでに申し送られたか、あるいは申し送るところの覚悟があるか、その点について伺いたい。
  18. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 その問題がたまたま起ってきたものでありますから、重光全権は先般ダレスと会見いたしましたときに、ヤルタ会談における南千島解釈いかんという点と、そういうふうな点につきましてダレスにいろいろ質問いたしたのでありますが、それに対しましては、ダレスはよく法理的の検討を加えて回答するということを申し出たのであります。従ってこの問題はここ二、三週間のうちにはっきりいたすことと存じております。
  19. 山本利壽

    山本(利)委員 ただいま高碕大臣がおっしゃいましたように、新聞紙上でも米国は近く日ソ間の領土問題についてその見解発表するという報道があったのでございますが、そういう場合においてその報道千島樺太さらに南千舟ソ連領有となった場合に、沖繩小笠原列島アメリカもまた領有し得るということを主張し得るかどうかということをはっきりさせるというのであるか、あるいは日本が放棄した千島列島の中には今日日本が言っておるように南千島は含まれないものであるという解釈をするということであるか、あるいはまた日ソ間で日本の放棄した領土について論議することは間違いであるということを発表しようというのか、これらの点については私は日本外務省としては、強く日本外務省が欲するようなことをアメリカに向って働きかける必要があると考えるのであります。アメリカ側がいかような内容発表するかは、これはよその国のことでありますからわからないことでありますけれども、こういう際にこそ、日本外務省は強く日本見解及び希望を述べて、これらの今回発表されようとするところのアメリカ見解の中に含ませてもらうところの態度が、外交上においてはなければならぬと考えるのでありますけれども、これらに対してすでにとっておられますところの手段及びお考えについて承わりたいと考えます。
  20. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 重光全権ダレスに書面で出したというその内容は、まだこちらへ参っておりませんからはっきりいたしませんが、ただいまお説のような問題は当然重光全権からの質問の中に入っているものと私は信じております。
  21. 植原悦二郎

    植原委員 関連して。非常に重大なことだから関連質問を許していただきたいと思います。千島列島のことについては、国会が関する限りは、その問題が問題となって、西村条約局長が当時はっきり択捉国後サンフランシスコ条約では千島列島に含まれていると国会で声明してある。(「その通り」)これは取り消されておりません。国会の声明であるから、この問題をいかんとも動かすことはできないものであると思います。吉田総理はそのときに取り消しておりません。だからこれははっきりした問題であるということを御了承願いたい。  次にこれは外務当局に私伺いたいが、サンフランシスコにおいて千島列島の問題について日本が放棄する場合に、ソ連ソ連フェーバーにおいてこれは放棄してくれろというころを言ったときに、それを否定しています。それだからして千島列島というものは現在においては、国際法上、日本の関する限りは主人公のない無主地であるという解釈が正しいと思うのであります。そう解釈すべきであって日本が放棄した。ソ連フェーバーにおいて放棄したのではない、こういう事実がサンフランシスコ条約においてはっきりしておりますから、これは日本立場からいえば、これは無主地である。主人公がない、日本が放棄した土地であるということにおいては一点の疑問も差しはさむ余地はないと私は思いますよ。  さらに今の二十六条の解釈でありますが、二十六条の解釈領土問題には触れておらぬ。なぜかならばそれは賠償問題とか通商上のある特殊な権益を日本が第二国に与えた場合においては、サンフランシスコにおいて条約を結んだ締盟国は、これに均霑するという意味であって、(「そんなことどこに書いてあるか」と呼ぶ者あり)そう解釈することが条約の本義であります。その条約を読むならばそう解釈するよりほかにありません。そうでないとするならば、それは曲解の解釈といわなければならないのでございます。世界中に私の言う解釈を通じて私は誤まらざるものと断じて疑わないのであります。領土の問題は、二条において、かように規定しております。アメリカに対しては、御承知通り沖繩列島において立法、司法、行政の三権、この施政権を与える、潜在主権日本のものだとはっきり規定してあるのでありますがゆえに千島の問題をどう取り扱ったからというてアメリカが、これに関してかれこれ言うべきものではない。そういう宣伝を流布することは、日米両国国交を乱すものだと私はかたく信じて、その、宣伝の策源地がいずれであっても、日本国内のある一部の者から生ずるにしても、またアメリカにおいてそういう説をなす者があるにしてみたところが、もし日本千島列島に対してソ連主張日本が容認するならば、それに対してアメリカ沖繩において同等権利主張するということは、サンフランシスコ条約アメリカ締結したものをみずから修正しなければならないということになって、さようなことは私はあるとは信じておりません。そういう宣伝をするものは日米両国国交を阻害するものだと私はこれを非常に憂慮いたしておるものであります。  そこで千島列島の問題でありますが、これは無主地国でただ日本ソ連主張を容認し得るか得ないかというところに問題があるのであります。日本は放棄したものであるからこれに対してかれこれ言うことはできないわけであるが、これをどう取り扱うかということが残された問題であると思うのであります。もし私の意見外務当局において異論があるならば承わっておきます。
  22. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 外交官のベテランの植原先生から昔のありさまを詳しく承わりまして私は御同感に存じます。
  23. 山本利壽

    山本(利)委員 ただいま党の長老である植原委員からのお話がありまして、この点については非常に重大でございまして、うっかりするとこれからまた誤解を生ずるおそれもございますから、一言私はこの点についてつけ加えたいと思うのでありますが、最初にわれわれは理論的にこの日ソ交渉に対する態度を再検討すべきではないかということを申し上げたのは、この点にあるのでありまして、南千島千島列島の中に含まれるという態度サンフランシスコ条約締結のときに吉田内閣においてとったということが事実でありましても、その帰属はまだきまっていないから、歴史的にあるいは地理的にいろいろの観点からこれを検討して、再びこれは日本領土であるという立場日本主張することは、今後においても外交上あり得る問題でございますから、今の植原委員お話によりまして、直ちに日本がこれについて言及を避けてソ連に譲るべきだという態度は、私は外交上とるべきではないと考えるのであります。  時間がございませんから最後に一点お尋ねいたしたい。この点について同じく高碕大臣鳩山首相に向って二十六日に御報告になりました点に、スエズ国際会議日本ダレス提案を支持したことは、必ずしもアジアアフリカ会議グループ不信を買う結論にならないということを報告されておるようでございます。このスエズ運河に関するロンドン会議に対してはまたわれわれの全権も行っておられることでありますから、詳しいことはその報告に待たなければなりませんが、国民が一まつの疑義を持つ点は、これによって日本アジアアフリカ諸国不信を買うのではないかという点、同時にまたこれに対して全面的に協力するならば、日本協力関係にあるアメリカが中心になって動きつつある西欧諸国に対して不信の感を抱かせるのではないか、正直に言ってこのジレンマがあったと考えるのでありますが、この点について何らアジアアフリカ会議グループ不信を買う結論にはならないという点を、こういう席上において高碕大臣から御説明を願い、さらに今度のロンドン会議結論がどうであろうと、今度のスエズ運河に対するような問題が起ったために、これが日本経済界あるいは政治にいかなる影響を与えるものであるかということを御説明いただきたいと考えます。
  24. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 スエズ運河の問題につきましては、わが国の方針といたしまして、あの緊迫したる空気をどうしても平和的に解決するということが主眼でなければならぬ。第二といたしましては、日本の現在における地位、つまり利害関係というものにつきまして考慮しなければならぬ。第三にはエジプトの今日盛り上らんとする民族意識にわれわれは共鳴していかなければならぬ。この精神をもって臨んだのでありますが、あの結論におきまして御承知のごとく、簡単に言えばエジプトは今日あの国有の権利をようやく確保したのであります。これはエジプトとしては大成功だと私は思っております。第二の問題といたしまして、この管理につきましてダレス案は国際連合の管理下に置こうじゃないか、こういう案であります。これに対しネールの考えは、これはやはりエジプトが管理をして国際的なこれの諮問機関を置こう、こういう点で対立しているようであります。これは私個人の意見を申しまして、間違いがあるかと思いますけれども、忌憚なく言わしていただきますれば、私が、外交の知識もありません、また政治の知識もありません一商人として考えましたときに、最も将来性のある人と思って信頼しておるあのナセル、この人と私は約一週間一緒におったのであります。この人はどうしても成功させたい人でありまして、この人が今日あの力においてあの三十七歳の若さをもって、自分の力を頼んでどんどんまだ熟さないくだものを取るというふうなことを考えないで、一応あれだけの成功をしたのであるから、今日第二の問題の管理権の問題はおもむろに機の熟するのを待って、実を取るということが彼のためにいいことだ、私はそう信じます。そういう意味において日本としてはそうすることがいい、またナセルのためにもいいことだと私は信じたわけであります。
  25. 山本利壽

    山本(利)委員 与えられた時間が参りましたので、私はまだ高碕大臣及び森下政務次官に特にお尋ねしたいことがあるのでございますが、これは次の順番が回りましたときに保留させていただきますことを申し述べて一応私の質問を終ります。
  26. 穗積七郎

    穗積委員 本日は他の委員質問者も多うございますから、私は日ソ交渉について数点の質問をいたしたいと思いますが、質問に入ります前に委員長にお尋ねいたしますが、今日日ソ交渉につきましてはソビエトとの交渉の過程から見ましても、また国内の政治的の動きから考えてみましても、河野農林大臣という者が重要な地位に立っておる一人であることは言うまでもありませんから、従って本日はぜひ河野農林大臣の出席を当初から強く要望しておったにもかかわらず、今日御出席がありませんが、委員会としてはこれをどういうふうに処理されたのかその経過を第一に説明しておいていただきたいと思います。
  27. 前尾繁三郎

    前尾委員長 連絡はずいぶんやっておるのですが、まだ出席がありません。できるだけ当該大臣によって話を進めていただくことが肝心です。
  28. 穗積七郎

    穗積委員 どういう理由で出てこないか、明らかにしていただきたい。
  29. 前尾繁三郎

    前尾委員長 いろいろ出席しない理由も聞いておりますけれども、まだはっきりしたことはわかりませんから、もうしばらく待って下さい。
  30. 穗積七郎

    穗積委員 それでは委員長にお願い申し上げますが、次の委員会には必ず出るように強く交渉していただきたいと思います。それでは河野農林大臣に対する質問は留保しておきまして、高碕大臣に御質問申し上げます。  質問に入ります前に私は国民を代表して遺憾の意を表したいのであるが、今度の日ソ交渉ほど国際的にも国内的にもその醜を天下にさらしたものはないと思います。実はこの交渉は一年以上も前から交渉して、マリク・松本会談でもう問題の焦点は明瞭であり、しかも今度の交渉の結果を見ましても、ソビエト側の態度は終始一貫いたしております。それに臨むのに、しかも最終的に決定をするということで、副総理であり、外務大臣としての外交の責任者の重光外務大臣が行かれまして、そうしてまるで何とも言えない――私は時間がないから、そのことは説明しないが、これは天下周知の事実であるから申し上げません。やっておる間に非常な醜態をさらされた。なおかつ最後にこれに醜態をさらに重ねましたのは国内の動きであります。私の聞いておるところでは、重光外務大臣が立たれるときに、鳩山総理と話し合いをされて いわゆる慎重派であった重光さんが鳩山総理の早期妥結の線に沿って必ず交渉を妥結させてくる、それについての条件並びに形式については一つ私に一任をしてもらいたい、鳩山総理も一任をしようということで立っておるとわれわれは聞いておる。そうしておいて――二階に上げてはしごをはずすということがあります。めぐる因果は何とかというが、かって松本さんをロンドンに送って、重光さんがはしごをはずした、それが返ってきたといえば、そういう皮肉な言い方もあると思うが、そういう党内や省内の個人的なさや当て、そういうことに興味を持ってわれわれはこの問題を笑い去るわけには参りません。あなたが実業家としてごらんになっても、今度の交渉の経過を見ると、こういうことでは、ばらばらであって 一つの会社の体をなしておらぬと思う。はなはだ私は遺憾の意を表せざるを得ませんが、それに対しての内閣の所信なり御感想を伺っておきたい。今後もこういうことではまことに心もとない。重光さんが帰ってくるならばますます混乱するでしょう。あなたは一昨日ですか、鳩山総理お話をされたようですが、そういうことについても話されたと思うから、一つ閣内におきますこういう問題に対する所信を明らかにして外国に対しましても国民に対しても、政府の基本的な考え方、態度を明瞭にしていただきたいと思うのです。
  31. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 私はただいまの穗積さんの御意見はごもっともだと思いますが、しからば穗積さんのおっしゃったごとく、現状はそうであるかというと必ずしもそうでないと存じます。できるだけ国内の意見を統一し、いやしくも外交問題に関する限りにおきましては、政党政派を超越してこれは実行に移すということで、国論を一致して当るべきであるということは、昨日総理にも詳しく申し上げ、総理も御同感であったわけであります。
  32. 穗積七郎

    穗積委員 実はそういう態度を持っておるのは野党である社会党であったのです。実は交渉の過程でありますから、発言したいことも発言しないで様子を少し見ようという態度委員会その他において重光さんが立たれる前からとって参りました。ところが党内、閣内がめちゃくちゃで百鬼夜行の姿であって、これをぶちこわすのみならず、天下に醜をさらしてしまった。一体日本にはまとまった政府があるのか、無政府状態ではありませんか。こういうことでは、この重大な問題は鳩山内閣のためではない、日本民族の将来のために非常な禍根を残すのみならず、鳩山内閣最後の罪悪を残されることになるので、そういう意味で私は聞いておるのです。一つ今後交渉に当る場合に閣内、党内をどういうふうにまとめていかれるつもりであるのか、それに対する当局としての御決意を伺っておきたいのです。
  33. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 事はきわめて重大な問題でありますし、国運を賭すだけの大きな問題であります。従いまして意見が個々に分れるということは無理ないことだと思います。この意見をどうしても統括してまとめていかなければならぬということが、今後政府のとるべき唯一の道だと存じまして、現在まではいろいろな意見があったことも事実でありますけれども、これをまとめるということにつきましてはお説のごとく十分の努力をしていきたいと存じます。
  34. 穗積七郎

    穗積委員 その御答弁ではまだ不十分ですが、この党内、閣内混乱の元凶である河野さんが見えてからよくその所信を伺うことにいたしましょう。  そこで続いて具体的な質問に入りますが、実は先ほど私が申しましたように、重光さんが立たれるときには、これはもう一年にわたる交渉の結果、相手態度が明確であり、交渉余地というものは領土問題に対する最後の一点だけにかかっておってこれはもうこちらの態度をどう決定するかということに交渉の妥結またはその不成功のかぎがかかっておったと思うのです。従って交渉して打ち合せをしてみてからでなければ態度がきまらぬというような問題ではなくて、行く前から腹をきめることができ、またきめるべきことであった。事実またきめて行ったのではないかと私は思う。高碕大臣は先ほど山本委員質問に対して、最低線に対する腹はきめて行ったのだ、こうおっしゃいますが、私が先ほど言いましたように、鳩山さんは重光さんに条件、形式については一任をされて、それで副総理であり、外務大臣である重光さんは大いに気負い立って立たれて、向うからも先ほど報告通り、電報も打たないで私に一任をしてもらいたいという公電しか入っておらない。そういうことをわれわれは事実として認めてよろしゅうございましょう。そこで私は、さきに鳩山・重光会談で最後の腹をきめた最低線については決定があったと思うのです、あったと思うのですが、当時は私は外交の衝に当っておる責任者じゃなかったからその内容については聞いていなかったとおっしゃいますが、今日留守中この日ソ交渉の過程において外務省の責任のある地位におつきになって、そこで政府を代表して訓令を出されたり、国内をまとめなければならぬのがあなたの立場ですから、鳩山・重光会談というものは、もうすでに外務大臣代理に就任せられまして以来聞き及んでおられるはずでありますから、この際その内容を一ぺん明らかにしていただきたいと思うのです。最後の腹はどこにあるかということを伺いたい。
  35. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 これは相手があることでありますから、今ここでこうだった、ああだったということをはっきり申し上げることは、私は存じておってもできません。いわんやこれにつきましては重光全権が帰って参りまして、よく彼の意見を聞いてからでないと、私はここで意見発表できないことをはなはだ遺憾に存じます。
  36. 穗積七郎

    穗積委員 はなはだ遺憾でございますが、先ほどから言う通り交渉余地はない。こちらの腹をどこにきめるかということであって、交渉余地があることなら交渉の過程だから、これは国民に知らせられないということだが、われわれの判断によればもう交渉余地はないのですよ。だからこちらの腹をどこできめるかということだけですから、それではあなたは鳩山さんとお会いになって、総理がソビエトへ行って、最終的な決定をするということですが、一体どういうふうにお考えになっておるか。どれだけのことを交渉して取るつもりであるか。交渉余地をどこに認めていくか、そのことについてどうお話し合いをされたか。あなたと鳩山総理の会談の内容発表していただきたいと思います。
  37. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいま穗積委員は、交渉余地はないとおっしゃるのですが、私はそうでないと思っております。なお交渉余地はあります。しからばどの程度におくかということは、ただいまここで言明ができないのははなはだ遺憾と存じます。
  38. 穗積七郎

    穗積委員 それでは重光さんが帰ってからにいたしましょう。  続いてお尋ねいたしますが、いわゆる重光案によって重光さんが決定をしようとしたときに、あれは十一日でございましたか、閣議が開かれて、その問題を討議されて、まだこれを受ける時期でないという否定的な結論を出された。そのときに重要な影響を持ちましたのは、河野農林大臣の発言であるということがあなたを通じて新聞に発表になっております。従って河野農林大臣がブルガーニンとの会談において、重光・シェピーロフ会談の線よりは、さらにわが方に有利な条件で妥結の可能性があると品いうことを、ブルガーニンが南千島問題について発言をしたというような話をされたように新聞には発表になっておりますが、国会としてはまだそのことを政府から正式に伺っておりません。すでに新聞に発表になったことでございますから、国会においては当然発表して差しつかえないことであると思います。河野農林大臣の口から実は伺いたいと思ったが、それは伺えませんから、外交の衝に当っておられるあなたから、河野農林大臣とブルガーニンとの会談における了解された内容をこの際明確にしておいていただきたいと思うのです。
  39. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 十一日の閣議の内容については、私はここで発表することのできないことを遺憾に存じますが、ただあのとき閣議におきまして問題になった点は、領土問題だけでなくて、海峡問題等も未解決であるというふうなことであったのであります。そういうふうな点から考えまして これはよく考慮をし、また重光全権意見も聞かなければこれを一任することはできないということに相なったわけであります。河野さんの発言等につきましては、これはしょっちゅう河野さんが言っておられる通りに、漁業交渉で行かれて、ブルガーニンとたまたま会ったときに、ブルガーニンは国後択捉というものはソ連としても譲ることはできないが、日本としても譲ることはできないだろう、こういう話で、この問題に入りそうになったのでありますが、そのときに河野全権は、自分は領土問題については何ら話をする権能を与えられていないといってそれたということを私はよく河野全権から聞いております。
  40. 穗積七郎

    穗積委員 閣議における河野農林大臣の発言はそれだけではなくて、君の方も国内の情勢から見て譲りがたいような事情にあり、わが方としては絶対にこれを譲るわけには条約の建前上いかない、そういうことであるならば、平和条約形式によっても南千島に対する帰属の問題については触れないで条約を結ぶ可能性があるということをブルガーニンが言った、私はそういうふうに――私というのは、河野農林大臣はそういうふうに理解したということまで発言なすったのではございませんか、その事実をお尋ねいたします。
  41. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 そういう立ち入った事実はありません。
  42. 穗積七郎

    穗積委員 それでは外務大臣の御理解といいますか、お考えを伺いたいのです。私どもが伝え聞いておるところによりますと、ブルガーニンの発言というものは、そういう意味ではなくて、本来からいえばマリク・松本会談のように平和条約でいくべきだ。それが両国の利益であり、特に日本利益になると思う。しかしながら南千島問題にひっかかって国内の政治事情からこれで妥結することができないということであるならば、決裂するよりは領土問題には触れないで、国交を回復する方法があると思う。それは言いかえるならば、アデナウァー方式または平和条約によらざる他の方式、そういうことを意味したとわれわれは解釈してソビエトに当るべきだ、これが私は順当だと思う。河野さんがどう聞き違えられたか、善意であるか悪意あるかは知りませんが、もし河野さんの解釈が、平和条約方式によって南千島の帰属を不明確にすることができるということを、ブルガーニンが私に、個人的な判断であったが約束をしたというふうに理解されて、閣内または外務省当局がその方針でお臨みになる、鳩山さんもそのつもりで出かけられる、そこに交渉余地ありというふうにお考えになるならば、これまた天下に醜をさらに重ねる結果になるのではないか。講和条約方式でいきます以上は、領土の所属を明確にすることは当然である。ブルガーニンが言ったのは、その領土問題に触れないでいくのがアデナウアー方式なんだ。講和条約方式によって、条約の中でその帰属を不明確にするということができるというふうに言った、そういう態度を向うがまだとっておると理解することは、これは情勢判断としても、理解としても私は誤まっておると思いますが、大臣のお考えはいかがでございますか。
  43. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 アデナウァー方式でいくとか、あるいは講和条約締結してからいくとか、領土問題をたな上げにするとか、どっちをとったらいいかといったふうな問題につきましては、今後やはり交渉するときに考えていくべきでありまして、これをただいまこの式でやるとか、あれでやるとかいうことは、申し上げかねることであります。
  44. 穗積七郎

    穗積委員 問題をそらされましたが、私の質問はこういうことです。平和条約方式でいって領土の所属を不明確にするということは、論理的にもまた相手態度から見ましても、これは考えられないことだと私は思います。が、大臣はいかがでございますかということを伺っておるのです。平和条約方式かアデナウァー方式か、どっちでおいきになりますかということを私は聞いておるのじゃなくて、平和条約方式でいくならば、領土条項を不明確にしてやるということは、条約上の論理からいきましても、またはソビエト側の態度から見ても、これは考えられないことではなかろうかと私は思うのですが、それに対して大臣はどうお考えになっておるかということを聞いておるのですから、その点は焦点をそらさないで明確にお答えをいただきたい。
  45. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 相手のあることでありますから、相手がどう出るかということでこっちは考えなければならぬ。今相手の出方のわからぬときに、こっちの方でどういう方針でいくかということは、申し上げかねると思います。
  46. 穗積七郎

    穗積委員 いや、それは事務当局からお答えいただいてもいいのだが、条約方式でいった場合領土問題を不明確にするということは、条約上から考えても論理から考えても、または相手の今日までの態度から見ましても考えられない。すでに河野発言なるものは全く間違いだった。そういうことを言うならば、あのときの速記録を見せてみようかと言って向うはいきり立っておるわけですね。このことは明確ですよ。今ごろそういうふうなことを言って、おかしなふうに国民に望みを持たしているから、さあきめようというときにきまらない。自縄自縛なんです。重光さんがそうだった。重光さんがどえらいことだけ言ってみて、それで無条件で向うの案で妥結しようというところに、おろそかなああいうことを言うから、にっちもさっちも動けなくなった。これを明確にしていただきたい。平和条約方式でいって、領土問題を不明確にするというようなことが可能だとお考えになっているのかどうか。まだ交渉余地があるとお考えになっているのかどうか。そういうことで鳩山さんが行かれると、鳩山さんもさることながら、日本国民も迷惑をいたしますよ。そういうことで国民の世論を引っぱっていくということになると……。そんなできもしない、通りもしない理屈に望みを持たしめて、国民に思わせぶりをするというようなことは、私は、あなたとしてははなはだとるべき態度じゃないと思うのです。どうぞもう一ぺん、その点は大事な点ですから明確にしておいていただきたい。
  47. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 アデナウァー方式でいくとか、あるいはただいま申し上げた……。(穗積委員「いや、条約方式でいった場合です。」と呼ぶ)条約方式でいくかということは、これは相手のあることでありまして、そのときに……(穗積委員大臣卑怯だ、平素に似合わず。」と呼ぶ)その点につきましては、条約方式でいって、それじゃ領土問題をたな上げにできないとか、こういう穗積さんの御意見のようでありますが、その点につきましては、私はよくわかりません。(笑声)
  48. 穗積七郎

    穗積委員 事務当局から一つ……。条約上そういうことは……。
  49. 高橋通敏

    高橋説明員 条約で、領土問題をできるだけ明確にきめるということは、もちろん望ましいことであると思います。ただ明確とか不明確と申しますのは、いわば程度問題であろうと思います。そこでサンフランシスコ条約自体、第二条C項であっても、やはり明確、不明確の問題は起ってくるであろうと思います。ただ技術的に解釈しまして、全然領土条項のない平和条約があるかどうかというような問題でございますが、別にはっきりきまったことじゃなくて領土条項がなければ平和条約の体をなさぬというふうなことは、法律的に厳格に言って、そういうことはないじゃないかと思っております。
  50. 穗積七郎

    穗積委員 実はサンフランシスコ条約の例が出ましたが、あの第二条、第三条は、形式、内容が違っております。その場合に第二条で、南樺太並びに千島列島に対する帰属を不明確にしたのは、これはどういうわけかといえば、言うまでもなく背後的の事情によるのです。アメリカとすれば、条約上の論理は一貫いたしております。これは日本人が関知せざるところでしたが、アメリカにすれば、千島列島並びに南横太に対しては、これはソビエトにプレゼントしているのですから、そういうヤルタ協定を正確に結んでいるのだから、だからそれを結んでおいてサンフランシスコ条約で、千島列島の帰属を国連に移すとか、アメリカに移すとか、すなわちソビエト以外のものに移すということになれば、これはアメリカとしては論理はなはだしく不明確であってそれはソビエト側からやられる。そこで、そのことをよく承知しているから、非常に異例の異例でございます。が、あそこでは帰属を不明確にして、問題を将来に残そうという、多少狡猾な考え方から出てきているのが明瞭です。ところで日ソ間においてはそういうことはないのです。今まで終戦後条約を結んでいないのだから、そこで終戦後の他の条約にオブライジされる点はございません。ですからそういう点については、私は高碕大臣並びに高碕さんを通じて鳩山さんに忠告申し上げておきますが、そういうところに交渉余地があるというふうな考え方でお臨みになったならば、これはもう土俵に上る前から泥がついてしまって、国民利益からいっても、鳩山さんとしても、これはとらざるところでありますから、私はかたい所信をもって忠告を申し上げておきたいと思いますから、どうぞお伝えをいただきたいと思うのです。  次にお尋ねいたしたいのは、実は重光外務大臣交渉の仕方については、いろいろな言い分がお互いにあると思うのですが、その中で、一つは政治的な交渉が全然行われていないということです。これは重光さんが帰ってからも正確に報告を聞きたいと思うが、おそらく外務省に入っている情報、または他から入った情報から見ましても、政治的な交渉というものは全然していないと思うのです。問題は、一体なぜソビエト側が千島列島の問題について峻厳な態度をもって臨んで一貫してきておるかということは、これはこの島に対する、この問題の解決の仕方に対する将来の日本政治的な方針というか、思惑を見抜いているからです。すなわち、これに対して留保条項をつけろというようなことは、サンフランシスコ条約と符を合せておいて、そしてアメリカなりイギリスの力をかりて、それを糸口として再びまたソビエト侵略に対する攻撃のための軍事基地を置くなり、あるいはまたそういうことに利用するなり、そういうふうな領土問題並びに軍事基地問題とからんで、そしてソビエト側に敵意を示すような政策を日本がとる、そういうことがソビエト側に最もこの問題に対する峻厳な態度をとらしめておる原因だと私は思う。逆をいえば、これは我田引水ではございませんが、たとえば社会党が示して参りましたような中立平和外父政策というものを口で言うだけでなくて、政策の上でこれを実現する、そういうことが客観的にソビエト側に十分理解される場合においては――この問題に対して条約の上では、なるほどそれはきめるときの過程から見て、一応国境線なり領土の所属は明確にしなければならないけれども政治的に見て将来そういうような中立平和政策、すなわちこれらの領土日本に返った場合にアメリカの基地が置かれるとか、またはソビエトを攻撃するためにこれを利用するというような政治的な意図なり政策がないということが、現実に客観的に明瞭になる場合においては、ソビエトは将来のそういう政治条件が整った場合には考慮する余地が私はあるだろうと思う。その点が遺憾ながらアメリカの最近の態度なりあるいはまた日本政府の今までやった外交政策から見まして、ソビエト並びに中国を仮想敵国とする武力政策というものをアメリカに便乗してやってきておる。そういう外交政策をとっておる政府に対して、そこでいささかなりとも今の言いがかりをつけるような余地を残しておくということ、これは将来の両国のためにならぬ。先ほど植原さんが言われたように、問題を残すことは両国のために利益じゃなくて、かえってそのことが悲劇を生み、不利益になるから、この際明確にしておかなければならぬというように考えられることは、私は当然だと思うのです。私は先般も申しましたが、南千島を無条件で即時返還することになれば、安保条約下における日本としては、アメリカ要求があるならば、ここに軍事基地を設定しなければなりません。そうするならば、ソビエトとしては日本に返したのではなくて、アメリカに向ってソビエトを攻撃するための軍事基地を提供する結果になるのですから、そのようなばかばかしい政治的判断をするほどソビエトの指導者は間抜けではないと思う。そういう判断がつかぬほど日本政府のあなた方は愚鈍だとも思わない。そういう点を明確にするような態度政治的な交渉をされなかったのが、私は今度の交渉の欠点の一つだと思う。政府は一体なぜそういうことを訓令なさいませんでしたか、これから一体どうおやりになるつもりであるか。鳩山さんがもし行かれるとするならば、そういう点についてこそ交渉すべきであって私はその態度を明確にすべきだと思う。それについて責任の地位におられる外務大臣の御所信を伺っておきたいと思うのです。
  51. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 国際情勢というものは刻々に変化いたしておるわけでありまして、今日の米ソ間の対立は果していつまで続くか、いつどうなるのかということもわれわれは想像できないと同時に、これがこのままで行くとは考えられないのであります。またソ連に、ただいまおっしゃったごとく、日本択捉国後を取り返してアメリカに渡すだろうとか、現状においてはあるいはこういうふうな考え方もあるだろうということもわれわれは想像しなければならぬことは当然であると私は考えておるわけであります。それらの点につきまして重光全権は全然そういう政治的折衝をしておらぬという御判断をなさっておるようでありますけれども政治的折衝というものはその機微に触れてやるわけでありまして一々訓令を仰いだり、あるいはこちらへこうだったとかいうことを報告してくるものではないと思いましてその点は相当重光さんはやっておることだ、私はこう存じております。そういう意味におきまして重光全権が帰った後におきましてよく打ち合せましてそれらの点をよく考慮し、ただいまこちらの希望通り領土問題が解決するならばこれは妥結してもいいでしょうが、妥結をいたずらに急いで悔いを千載に残すということをしてはいけないということで、今日の国際情勢の変化、また政治折衝がたくさん残っておる点がありますから、そこで重光全権に帰っていただいてよく打ち合すということになったわけであります。
  52. 穗積七郎

    穗積委員 私は今の御答弁は高碕さんにしてははなはだ不満足で、従来の電光さんのような答弁で、遺憾の意を表します。しかし重光が帰ってから、重光が帰ってからということですから、それじゃ重光さんの帰るのを待ってその点は明確にしていただくことにいたし、他に質問者もございますからやめます。  最後に一点伺いたいのは、実は択捉国後の問題でございます。これは打ちあけ話をいたしますと、河野さんが向うへ行かれる前後でしたが、当時この問題に対して代表であったドムニッキー氏が東京におったわけですが、そのころから得たいろいろな情報や判断によりますと、ソビエト側は将来領土の帰属はどちらにいたすにいたしましても、漁業問題でここに日本の漁業とソビエトの漁業とがほんとうに平和的に相互主義に立って協調ができるならば、その場合においては日本に便益を与えるために択捉国後に漁業基地を設定する可能性が十分あると私は思ったのです。だからわれわれの希望では、実は漁業基地設定は必ずしも領土の帰属を決定するものではございませんから、河野さんが行かれたときの漁業協定の中にこの問題を提起すべきだとむしろ希望いたしました。そうして提起するならばその可能性があるとわれわれは判断した。ところが漁業基地の問題は特に漁業の大資本である母船式よりは独航船にとってこれが必要である、そういうような国内におきまする経済上の利益の厚薄、この違いがあることが河野さんをしてこの問題を取り上げせしめなかった原因の一つではないかと判断をしておるのですが、そういう漁業法地設定の問題についてわれわれは今後話を進めるべきだと思うし、それが択捉国後におきまして実をとるものでございます。特にあなたはそういう問題に対する専門家であるし、閣内においてそういうことを進言するとすればあなたのほかにないと思うので、あなたの考えなり政府考えなりをこの際伺っておきたいと思うのです。どういうふうに情勢判断をされ、どういうふうにお考えになっておられるか。
  53. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 私はこの八月の三日に日高の沿岸を歩いたのでありますが、当時日高の沿岸に打ち寄せるコンブというものは子供たちが行っても一日に二千円からのかせぎをするわけでありまして、これを乾燥してコンブとして大阪に送り、加工して輸出品になります。何億という大きな水揚げをしておるのであります。過去におきまして国後択捉はコンブの産地として非常に大きなものでありまして、今日日本人がこれをやらなかったときにはだれがこれを利用するか、天然の資源をここで冒涜しておるわけでありましてソ連人ではできないし、またソ連にはそれだけの消費がないのでありますから、当然私は日本民族といいましょうかあの漁民のなりわいをあそこで営むということにつきましては、これは外交だとかなんとかいう問題でなくて、経済問題とし社会問題としてぜひ実行に移したい、こう存ずる次第でございまして、ただいまの穗積委員の御意見につきましては十分努力いたしたいと存じます。
  54. 前尾繁三郎

    前尾委員長 伊東隆治君。
  55. 伊東隆治

    ○伊東(隆)委員 日ソ交渉が重大な段階になりましたが、私ども与党といたしましては、何分にも来月三日に帰国される重光全権報告をしさいに承わってからでないとあるいはこの委員会におきまして質問をするようなことになれないかと存ずるのでございます。こういう日ソ問題のような重大な国家の問題がここに白熱して参りますときには、ともすれば他の重要な国家の外交問題が影を薄くするおそれがあるのでございます。特に沖繩の問題は一時あれだけ騒がれ、特に選挙戦におきましては大きな材料にすらなったほどの重要な問題でありましたのに、日ソ問題がかくのごとく白熱して参りますと、沖繩の問題はここに影をひそめてしまって、新聞紙上においてはこれに言及することが少い。そこにおきまして、私はこの機会に高碕国務大臣並びに外務当局に対しまして二、三の事務的な質問をいたしたいと存ずるのであります。  新聞の伝うるところによりますと、米官憲は現地交渉をもってこの問題の解決の道に資する、しかしながら、日本外務省が在日大使館を通じてワシントンと交渉するという道は開いてあるのだ、こういうことを伝えております。あるいはまたこのことを多少ゆがめたような報道もありますが、この点につきましてはっきりした答弁をいただきたいし、そういう道が開けておるならば、その後のこの問題に対しまする外務当局交渉の経過はどうか、この点をまずお伺いいたしたいと存ずるのであります。
  56. 中川融

    ○中川説明員 今御質問のありました問題につきましては、われわれの知っております情報をここで御説明いたしまして御参考に供したいと思うのであります。  沖繩の問題につきまして、現地の住民の代表の方々は、現地の米軍当局に対しましてこの問題は沖繩住民と米軍当局両者間の折衝という形でなくて、できればそれに日本政府当局をも入れまして、三者の間で会合して話をしていきたいということを要望したのであります。それに対しまして米軍当局から、米軍といたしましては日本政府を入れまして三者会談を沖繩で行うという方式には賛成できない、これはあくまでも施政権者である米軍当局と直接の施政を受けます住民代表との間で話すべき問題であると考えておる、なおその際に、住民の代表であります沖繩政府意見を聞くことは当然である、こういう回答をされたのであります。これは米軍当局から現地住民に対する回答であります。一方それと前後いたしまして、アリソン米国大使は声明を出しまして、その声明の中におきまして、沖繩の問題について直接米軍当局と住民とが話し合いをすべきであるという米軍司令官の声明は、決して別途アメリカ政府日本政府との間に話し合いが行われるということを妨げる趣旨でない、そういう話し合いは従来も行われていたし、今後もそういう形式における話し合いは米側として拒否するところではないということを明らかにしておるのであります。従って、伊東先生の御指摘になられました通り、両政府間の話し合いの道は開けておるわけでありまして、この道を通じまして、この問題が始まりましてから以来一貫いたしまして、日本政府といたしましては米側に対し現地住民の正当な要望を伝えまして、これについて慎重に考慮を払うようにということを要望してきておるのであります。この要望及び現地における強い要請と相待ちまして、米軍当局も、プライス報告というものはあるわけでありますが、あの大きなワクの中において何とか現地住民の正当な要望をいれまして具体案を作成したい、それによって住民の満足し得るようにできるだけしたいということで、目下その方式について検討しておる模様であります。われわれとしても、その方式ができるだけ住民の希望をいれたものであるように、今後とも米側に対しまして、このルートを通じて折衝と申しますか話し合いを重ねていきたいと考えておるわけでございます。
  57. 伊東隆治

    ○伊東(隆)委員 ただいま中川アジア局長お話によりまして、その道がたんたんと開けているということが明らかにされましたことは非常に喜ばしいことでございますが、実は御承知通りこの基地の問題につきましては、またこの沖繩の問題につきましては、国務省は相当の理解があるにかかわらず、国防省が依然としてただ軍略の意味だけからしてやはりストップしているということがよく言われますし、また奄美群島の問題におきましても、国防省が強い発言権を持っておったことは過去の経験にかんがみても明らかなことでございます。そこで、先般ラドフォード三軍の議長日本に見えられた。海軍の軍人が三無の議長になったということはかってなかったごとであるのにかかわらず、ラドフォードがなったということは、彼自身の個人的な力であると当時言われたほどであるのであります。奄美大島の返還の当時からやはり三年の議長であったラドフォードの了解を求める、理解を増すということが、問題解決のかぎであるように当時も感じたのでありますが、そのラドフォードが先般見えたときに、井口元駐米大使が非公式にラドフォードに会った。そのときにラドフォードは、新聞に対しては、自分は沖繩問題に対する発言権はないのだと言ったものの、相当そこに効果があったというふうにも伝えられております。内容のことにつきましてはもとより具体的にラドフォードが言うわけもありませんが、この種の交渉は今後とも進めらるべきものであって、国務省よりも国防省に意向が十分伝わるように外務当局がいろいろの方法を講ずることは、非常に私は賢明なことと思うのであります。重光外務大臣がアリソン大使と何回会ったとか、七回会ったとか、アジア局長も数回会ったといわれますが、こういう方面のことで国防省に対する外務省の働きがあったか、それらのことについてこの席上でやはり何か発言ができれば承わってみたいと思うのであります。
  58. 中川融

    ○中川説明員 日本アメリカとの両政府間の正式な話し合いのルートは、これはもちろんこの大使館と日本外務省、あるいはワシントンにあります日本の大使館と向うの国務省というのが経路であるわけであります。従って、話し合いもそういう経路で行なっているのでありますが、別途伊東委員の御指摘のように軍当局に話をするということも効果のあることは間違いないと思われるのでありまして、これは公式のものではないのでありますが、機会がありますれば軍の要路者に対しましてことに琉球、沖繩現地住民の方々の正当な要望というものを伝えまして、それによって先方態度の好転に資したい、こう考えて、これは随時機会を見ましてやっておるのであります。今御指摘になりましたような井口前大使がラドフォード提督に話をされたということも事実でございます。これは新聞等ではそういうふうな話を聞くわけにいかないというラドフォード提督の正式の話はありましたけれども、非公式のそういう方法も講じたのでありまして、このような方法によりまして今後もそういう道をできるだけ利用していきたいと考えておるわけでございます。
  59. 伊東隆治

    ○伊東(隆)委員 伝うるところによりますと、プライス報告なるものは、アメリカ側においては主義として少しも――少しもと申しては何ですが、根本的に変えていない。すなわち、分割払いを希望する者には分割払いをするけれども、一括払いを希望する者がもしそれありとすれば、一括払いはやはりするのだ、しかし土地はいずれは返還するのだ、永久占領はしない、こういうような複雑なことをこの問題について言っておる。言いかえれば、やはり一括払いはするのだということになります。将来土地を返還するのだ、また分割払いもするのだというなら、何も一括払いを希望する者にはするなどと言う必要はないと思う。一括払いなどを希望する者はただの一人もあろうはずはござません。そこで近くレムニッツアーが沖繩へ行く。沖繩に着いたときに依然として一括払いということを主義として曲げない態度をとるならば、かえって今一応アメリカ態度に対して沈黙をもって好意的な回答を待っておる沖繩の住民といたしましては、またその機会に勃発するおそれがあるので、沖繩の友人からの情報によりますれば、この一括払いという言葉にこだわるわけでありませんが、分割払いをする、また将来は必ず土地は返すのだというこの二つのことをはっきりとレムニッツアーが言い得ない限り、沖繩にレムニッツアーをよこしていただきたくないということを内々に申し入れてきております。この問題の内容に立ち入りますが、外務当局としては、この沖繩住民の真剣な気持、これについて十分な理解を持って、近くレムニッツアーが、あるいは軍の用事で行くのなら別問題といたして、この問題解決のために乗り込むのだというのであれば、この点に関する十分の交渉を遂げた後にやっていただきたい、かように私は存ずるのであります。アメリカ側におきましては一部極左の運動を口実にいろいろのことを言っておる。そうして冷却期間と申しますか、日ソ交渉の白熱したこの期間に適当に解決しようというふうであるとも聞いておる。この間の事情に関して外務当局の御意見を承わっておきたいと思います。
  60. 中川融

    ○中川説明員 アメリカ軍当局は、沖繩の問題につきまして何とかしかるべき案を考えたいということで、目下研究しておるということはわれわれも聞いておるのでありますが、その内容がどんなものになるであろうかということにつきましては、まだ推測の域を出ないのであります。しかしながら最近新聞情報としてワシントン電報として伝えてきているところによりますと、ただいま伊東委員の御指摘になりましたような、たとえばプライス勧告の大ワクは変えない。その中でいろいろの操作をするというようなことが伝えられておるのであります。そうしますと、たとえば半永久的に使わなければならないような施設、こういうものを作る土地につきましては、いわゆる一括払いと申しますが、十六年半分の借地料をまとめて払う、こういうことを原則といたしまして、しかしながら具体的な支払い方法については、一括払いを欲しない人には分割払いをするというようなことをあるいは考えているのではないかということも推測されるのでありまして、もしさようなことがアメリカ側の案でありますときには、これはわれわれが今まで聞いて承知しておる現地住民の方々の要望とはやはり相当隔たりがある。現地の方々の要望としては、契約というものは何年間ということがはっきりきまっていなければ困る、これが不定期なものである、必要な間だけ使うというような形の契約では困るというのが第一の点でありますし、第二の点といたしましては、将来の物価変動に相応して借地料というものはやはり改訂する余地を残したものでなければ困る、こういう要望が二つの強い要望であります。従ってこういう余地を残さないような解決案でありとすれば、伊東委員が御心配になられますように、こういう案を提示するというようなことを、もしかりに今米側が考えているとしますと、かえって事態を悪化させるおそれがある。むしろ急激な運動を試みようとしておる分子が力を得まして、穏健派が力を失う。そういうようなところから事態が悪化するというおそれもわれわれとしては考えておるのであります。従って、こういう事態、われわれの見ておる情勢、判断というようなものは、逐一先ほど申しましたようなルートを通じて米側に伝えておるのでありまして米側の参考に資しておる。またそういう考えに基いて施策をするように強く要望しておるのであります。
  61. 伊東隆治

    ○伊東(隆)委員 沖繩の問題につきましてはただいまの御説明で大体わかりましたが、この問題は民族的な、しかも真剣な問題でありますだけに、島民の気持をよく察知して、どうかうまずたゆまず交渉を進めていただきたい。  もう一つこの機会に、重大な日ソ問題が白熱いたしております際に、私どもが忘れてならない重大な問題について一、二お伺いいたしておきたいと思います点は韓国の問題であります。韓国の問題につきましては、同僚山本委員から累次当局鞭撻の質問があったのでありますが、最近私はある事情に刺激されまして、本日あえてここにこの問題を携えて質問いたす次第でございます。多分法務当局も来ておられると思いますが、従来わが国新付の領土として台湾と朝鮮がある。台湾の住民は大体富裕なる者が来ておる。また学校に入るとかあるいは商売をするとか富裕なる者が来ておりますので、内地におきまして多くの問題を惹起しなかった。しかるに朝鮮からは、一口に言えば、ごく無学文盲なる労働者をかり集めて日本に連れてきて、炭鉱とかその他の重労働にこれを使用した。そして戦争中は何といっても日本の生産向上に多大なる貢献を朝鮮人はやった。しかるに、一敗地にまみれて、ここに十年間、これら朝鮮人に対してわが国は何らの対策を講じていない。いわばこれをほったらかしてしまった。ここにおいて朝鮮人といたしましては悪いことをせざるを得ない。朝鮮人とさえ言えば悪いことをする者かのように日本人としては思って、あるいは侮蔑の感を拘く。こういうようなことで内地におきまする朝鮮人は非常に苦しい立場にあるのであります。そこでただいま大村におります四百人の鮮人と、朝鮮におります約七百人にも達しつつあるわが漁夫との交換の問題については、御承知のような経過をたどった。結局交渉してみますと、その四百人は戦前からおったのであるからして、これを日本内地において釈放することはやむを得ないということに、外務当局も法務当局も一致したようでありますが、一千人の密入国者に対しては依然としてこれを引き取れという態度で臨んでおられる。ところがこの一千人の密入国者というものは、いずれも親日者である。五十歳未満の朝鮮人にして心から日本を憎む者はないと聞いておりますが、これらの密入国者は、要するに日本の教育を受けておる日本で生活をしなければ愉快でない。すなわち日本を慕って日本に密入国したと好意的に考えてもよい連中である。この鮮人を無条件に韓国に引き取れというと、あるいは生命の危険すらあると伝えられております。そういうような連中が今大村に一千人収容されておる。日韓交渉が進まない原因は、この交換問題がはばんでおることは御承知通りでありますので、私が今言わんとするところは、この一千人の密入国者も、四百人の戦前からの在住者同様に日本で受け入れたらどうか、まずこの点に関して御意見を承わりたいと存ずるのであります。
  62. 中川融

    ○中川説明員 ただいま御指摘になりました日韓間の問題につきましては、政府としてもぜひこれを急速に実現したいというふうに考えまして、いろいろ努めてきておるわけでございます。  最後政府に対する御質問の点でございますが、千人に余る密入国者を内地において引き取ったらどうかという点につきましては、これはいかにも内地に来ましたのがもっともな事情がある、同情すべき事情がある。たとえば両親が内地にすでに合法的に入っておる、それで両親をたよってむすこや娘が密航してきた、こういうような場合におきましては事情をいろいろ調べまして、まことに同情すべきものがありと考えれば、例外的に滞在を許可する道も開けておるのでございまして、これはある数の密入国者はすでに日本に滞在することを認められておるのもあるのであります。しかしながら一般論といたしましては、やはり密入国で参りました者につきましては、入国管理令の規定しておりますところに従いまして、やはりその本国にこれを送り返すというのが原則でございまして、この原則を変えるわけにはいかないと思うのであります。目下の事態は韓国側がその原則を認めながらほかの問題との関連において引き取りを拒否しておるというところに問題があるのでありまして、本人たちも韓国側がこれを引き取り、韓国に送られるという事態が起りました場合に、決してこれに対して不服を唱えるということはないと思うのであります。従いまして原則論としてはやはり従来の方針でやりたい。しかし例外的な同情すべきケースにつきましては、個々に判断いたしまして滞在を許すという方向で処理したいと考えております。
  63. 伊東隆治

    ○伊東(隆)委員 時間がございませんのでごく簡単にいたしますが、密入国者をそのまま合法的にこの機会に入れろということは多少無理なことであることはもちろんでございますが、そういう気持をもって今後朝鮮人の扱いについては心してやっていただきたいということを私は要望するのでございます。  ここに一つお伺いいたしたいことは帰化の問題でございます。これらの朝鮮の人たち、やはり五十歳未満の朝鮮の人たちは日本の教育を受けておる関係から、やはり真から日本人になりたい者が多い。しかるに帰化の条件が非常にむずかしい。むずかしいのはこれはよろしいといたしまして、これらの朝鮮の帰化希望者に対しまする法務当局の扱いに幾多の非難がある。そのうわさにいろいろまたスキャンダルがある。そういうことについて私は最近いろいろのことを聞きますので、この帰化問題に関します法務当局の概括的な説明を一応この機会に聞いておきたいと思うのであります。
  64. 中川融

    ○中川説明員 本日の委員会には法務当局といたしましては入国管理局長が来ることになっておったのでありますが、今の帰化の問題は入国管理の問題でありませんで法務局の問題になっておるのであります。従いまして正確なことは法務局から答弁するのが、適当でございますが、私外務当局といたしまして従来帰化問題につきましては関心を持っておるのでありまして、これについて法務当局から聞いておりますところを御披露いたしたいと思うのでありますが、朝鮮人の帰化問題に対しましては、法務当局といたしましても、ほかの一般外国人に比べますと相当簡易な方法を講じておる。これは善良な朝鮮人につきまして、しかも相当長く内地に居住している朝鮮の方につきましては容易に帰化できる道を開きましてそれによって内地におきまする今八十万と称せられる朝鮮人問題の緩和に資したいというのが政府全体を通じましての考え方であります。従いまして法務当局といたしましても、個々の条件といたしましては、ほかの外国人に比しますと相当好意的に帰化問題を処理しておる、かように聞いておるのであります。現に毎日の官報を見ましても朝鮮人が帰化したという公告が相当数多く出ておるのでありまして、この数は決して少くないというふうに聞いておるのであります。ただいま伊東委員が御指摘になりましたような、いろいろ帰化に当りまして不正なことが行われる、あるいはむずかしいことを言われまして困難を来たしておるというふうな事態につきましては、具体的事例等もあればさらに伺いまして、法務当局の善処をお願いしたいと考えております。
  65. 伊東隆治

    ○伊東(隆)委員 一言結言を申し上げたいと思うのであります。いずれこの帰化の問題につきましては、法務当局の出席を待って後日適当な機会にお伺いしたいと思うのでありますが、要するに日韓問題は重要な問題であることは言を待ちません。しかるにこの抑留者の交換問題によりましてすべてがはばまれておる、久保田発言にしろ財産権放棄にして、大体両国の間には暗黙の了解ができておるにかかわらず、このつまらない抑留問題によりまして、この日韓問題がはばまれておることを非常に遺憾に思うのでございます。李承晩ラインがこれらの好意ある取りきめがだんだん進むことによりまして撤廃されました暁には、この水産上の利益は百億以上に上るであろうということは土曜日の日本経済が伝えておる。日露漁業による魚の利益は二十億だと伝えられておりますが、水産上の利益だけを比較いたしますならば、一番近いこの韓国との関係を早く打開することによって水産上の利益は百億にも達し得るのであって、今や経済的に非常に困っているわが団の現状といたしましては、やはり経済面からいたしまして、こういう問題の解決にも全力をあげてやるべきだと存ずるのであります。  以上私は簡単に意見を具しまして私の質問を終りたいと思います。
  66. 前尾繁三郎

    前尾委員長 松木七郎君。
  67. 松本七郎

    ○松本(七)委員 日ソ交渉がこういうふうに最後の段階になりますと、いよいよ問題となって浮び上ってくることが一つあると思う。それは国交回復ができても私は今後いよいよその問題の重要さは増してくると思う。それは一度重光外務大臣アメリカに行きましたときに、アメリカ当局との談話の中でそれを発表して、その後問題になったことなのですが、当時重光さんの話によりますと、国交回復はしても親善関係は結ばないのだ、こういうことを言われたことがある。これは私は今日の日ソ交渉が大詰めに来たときに、最後の決定をするときの根本的な基準になると思う。現在の政府日ソ国交回復を公約をして、今日までずいぶん長い間交渉をやってきたのですが、国交回復をやって、それを土台に親善関係を促進しようという気持が果してあるのか、それともこれを切り離して国交は回復するが、親善関係は結ばないというようなかたくなな態度で今後臨もうとしておるのか、その点を一つはっきりこの際お伺いをしておきたい。
  68. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 これは重光全権アメリカでどういう発表をしたか、私はよく存じませんが、おそらくは国交を回復するということは、やはり親善関係を結ぶ一つの前提であると存じますから、従いまして国交回復をするということは親善関係に入る入門だと存じております。
  69. 松本七郎

    ○松本(七)委員 そこで具体的になおはっきり伺っておきたいことは、先ほどの御答弁によると、重光外務大臣全権が帰国されるのは、これはなお交渉する余地があるのではないかという考えのもとに、離れておっては詳細なことがわからないから一度帰ってもらいたい、十分情報を聞きたい、こういうふうな御答弁だったのですが、私はこの問題については最近の鳩山総理大臣の発言なり、その他外国の評論などを見てみまして、主観的に政府がどう考えていられるかは別として、客観的にはこれは非常に大きな意味があると思うのです。それはいやしくも外務大臣全権として行かれておるのですから、よほどの落度がなければ帰国を命じてやるというような必要は、私は生じないと思う。それでなければ外務大臣政府当局の考え方が非常に違って、どうしても外務大臣が引き続いて交渉しておったのではまかせられない、何とか政府が別な人、いわゆる投手でも交代して、首相みずから出かけなければ、これ以上の打開はむずかしいという点が、はっきり国民の前に明らかにされる必要があると私は思う。その点はどうもあいまいなのです。それは何かそれ以外の要素がこの中にからまってきておるのではないか。ということは、要するに自民党の党内事情、政権をめぐったところのいろいろの争い、そういうことはすでに外国の評論に出ておるのです。あの日ソ交渉の過程においては、日本主張はあまり世界の世論の支持を得なかったようです。どこの新聞でもあまりこれを取り上げておらない。たまたま取り上げた雑誌や新聞は、日本主張に対してきわめて冷淡なのです。たとえばエコノミストの評論の要旨を見ますと、まず第一に日本は歯舞、色丹以外の国後択捉は放棄しなければならないだろう、これはロンドン会議以来はっきりしたことだ。自民党だけがソ連からさらに譲歩をかちとることができるかのように作り話を掲げている。第三に交渉の遷延策は、何らかの内閣改造を気ままにやろうとする鳩山氏の試みである。もしそうだとすると嘆かわしいことだ。これは講和に際して日本利益が国内の党略の犠牲にされていることを意味するからだと、外国でもこういう評論をすでに掲げておるように、今日の日本外交なり鳩山内閣というものは、醜態を天下にさらしておるわけです。ですからこの際はっきり伺っておきたいことは、重光外務大臣が帰国されるのは、この交渉に大きな落度があったためではないという点は、さっきの御答弁で大体想像はつくのですが、その点を一つもう一度確認しておきたいと思う。
  70. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 批評はみなの心々で任意でありますから、どんな批評もされましょうが、これはわれわれ責任をとることはできません。今回重光全権交渉いたしていますことにつきましては、彼は十分努力をいたしていることは事実でありますし、またこれについて大きな手落ちがあったとは、私ども考えておりません。従いまして重光全権がロンドンから帰ることにつきましては、政府といたしましては彼に帰朝を命じたわけでもありません。もし交渉をこのままにしておいて帰ってきてもいいという情勢なれば帰ってもらいたい、それでよくお話を承わりたい、こういう気であるということは向うへ知らしたのであります。重光全権もいろいろ考慮した結果、国内の情勢等も多少変化している点もあるだろうから、自分も帰って自分の意見をよく話をし、またこちらの意見も聞きたい、こういうことで帰りたいという希望があったわけであります。この希望政府希望とが合致して ここで帰ってくることに相なったわけであります。
  71. 松本七郎

    ○松本(七)委員 最近の新聞の報道によりますと、重光さんが帰ってきた後に、この交渉の不手ぎわを理由に辞任を求めるというようなことがちらほら新聞に出ておるのですが、ただいまの御説明によれば、それではこの交渉のやり方に責任をとらして辞任を求めるというようなことは絶対にないと了解してよろしゅうございますか。
  72. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お説の通りでございましてこの交渉のてんまつについて辞任をせしむるというふうな考えは毛頭ございません。
  73. 松本七郎

    ○松本(七)委員 高碕さんがきのう総理大臣に会われたときに、最近はどうも世論が非常に硬化しておる。そういうことでもう一ぺん日ソ交渉についても十分考慮しなければならぬというようなことを総理は言われたと報道しておりますが、これは事実ですか。
  74. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 世論が硬化するとかせぬとかいうことでなくて、世論は重光さんが行ったときと比較して一本にまとまりつつある、こういう情勢にあるということは総理と私の意見は一致しておったのであります。
  75. 松本七郎

    ○松本(七)委員 それじゃその世論はどういうふうに一致して、まとまりつつあると判断されておりますか。
  76. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 それは御想像の通りであります。
  77. 松本七郎

    ○松本(七)委員 政府はどう判断しておるか聞いておるのです。
  78. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 それは御想像の通り、国論はだんだん一致してきておるのであります。
  79. 松本七郎

    ○松本(七)委員 それでは私が想像する通りの推測に基いてさらに質問いたしますが、今度鳩山さんがいよいよ行くようになるかどうかまだわかりませんが、この総理みずからの訪ソの問題がこうやって持ち上り、一方ではしきりに世論は硬化しておるというようなことが談話の形式で発表される、また一方ではアメリカダレスを通じ、あるいはダレスは今のところそういうことは言っておらないと重光さんは取り消しておりますけれども、少くともアメリカ政府の法律専門家では、これらの問題についていろいろ検討しておることが向うからも報道されてきておる。これはアメリカが今度どのような回答を出すか、その回答の内容の程度は別としまして、結局において日本国民の世論に牽制を加え、そうしていよいよ世論を硬化させる効果があるだろう、私はそういうことになるだろうと思う。そうすると鳩山内閣はもう一年半も前から早期の国交回復ということを公約にうたっておって、そうして今日まできたわけですが、その間にやはりなぜ早期の国交回復が必要であるかということを、世論を作っていく責任が鳩山内閣にはあったと私は思う。それをその努力はしないでおいて、今日の事態になってから、やれ世論が硬化してきた――どうもこの決裂したときの責任を、国民世論硬化あるいはアメリカの意向だとかそういうものに転嫁し、あるいは自分の方は総理大臣まで出かけていって主張すべきことを最後まで主張したが、どうしてもソ連は理解しないのだ、あいつは権力外交だ、けしからぬやつだ。一切を他人の責任に転嫁しながら、決裂の責任を回避しょう、公約の不履行をほおかぶりしていこうという結果になることを私は非常におそれておるのですが、そういう憂いはございませんか。
  80. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいまの御質問の中で、アメリカの了解によって日本の国論が強化することを政府は待っておるのだろう、こういうふうな御意見のように拝聴いたしましたが、そういうことは断じて考えてもおりません。またそういうことがあってはならぬと私は考えております。
  81. 松本七郎

    ○松本(七)委員 重光さんはダレスなりアメリカ政府にこの領土問題についてあるいは日ソ国交回復の問題についていろいろ相談するというのは、当然のことのように言われておるのですが、政府はこのやり方というものを是認されておるのですか。
  82. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 これはアメリカとの関係もありますし、またヤルタ会談その他におきましては、アメリカソ連とは当時同一の歩調であったというふうな点から、そういう点はよく聞き合わす必要はあるだろうということで、よく連絡をとっておることは事実であります。
  83. 松本七郎

    ○松本(七)委員 政府もそれを是認されておるような口ぶりですが、そうするとこれは九月一ぱいは大体今度の交渉は休会になるようですけれども、その以前にアメリカのいわゆる回答が来るかどうかは保証できないと思います。アメリカの回答が来ることを今後の日ソ国交についての交渉再開の条件とされるのですか。アメリカの回答が来る来ないにかかわらず、交渉を再開すべきときには再開されますか。
  84. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 もちろんアメリカの回答というものは重光全権が話しておる一部分でありますから、その問題につきましては考えておりますが、これが来ないといってこの交渉を引き延ばすというような考えは毛頭ございません。
  85. 松本七郎

    ○松本(七)委員 河野農林大臣の談話によると、鳩山さんが訪ソするのは決裂したときの責任をとるためだという意味のことまで言われておるのです。どうもそういういろいろな総理の談話それからアメリカの今日の動き、そういうことから考えますと、決裂したときには内閣が責任をとらないで、ほかに責任を転嫁してほおかぶりする危険を多分に感ずるのです。そこでお聞きしたいのは、一年半以上もかかった今日の交渉が万一決裂した場合――もうすでに第一早期国交回復の公約は、私は不履行の責任を負わなければならぬと思う。そんなに長くかかったこと自体が……。けれども寛大に見て大体今年中にまとまればまあ許せるとして、万一決裂した場合には、これは責任をとるべき問題だと思いますけれども、そういうことを河野さんは事前に放送しておるように感ずるのです。けれどもこのことは、果して責任をとるかどうかは別として、だんだん総理まで出ていったけれども言うことを聞かないソ連、というようなソ連攻撃の材料に、後使われる傾向を私は感ずるわけです。そこで先ほどから、果して親善関係を進める気持があるのかどうかということを伺ったのですが、これが今後必ず、国交が回復しようが決裂しようが中心問題になってくると思う。そこで私は政府考え方を一つ伺っておきたい問題は、最近御承知のように、西ドイツで共産党を非合法化するという裁判をやりました。あれに対していろいろな、アデナウァーもまたヒトラーがやったと同じことをやり始めたといって非常に不安がっている。私は日本政府はこの西ドイツにおける共産党の非合法化をどのように考えられるかということについては、今後のあらゆる国際政治に対処する方法なりあるいは国内政治の動向を判断する場合に、非常に大事な要素だと思いますので、この点に対する外務大臣考え方を一つはっきり御披瀝願いたい。
  86. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 鳩山総理は、当初から言明を与えております通りに、一日も早く日ソ国交を回復したいと、これは組閣以来の彼の信念であり、また念願であったわけです。しかるに今日だんだん交渉いたしておりますし、なかなか思うように交渉が進まないということも事実であります。これらの点を考えまして、どうしてもこの交渉妥結については、自分が全責任を持って最後の場合は出かけていかなければならぬというだけの決意をはっきり示しておるのであります。けれども実際問題といたしまして、これを実行に移します上、つまり彼が行くか行かぬかという問題につきましては、まず現在全権である重光氏の意見を十分聞いた上において考慮して、さらに閣内あるいは党内ともいろいろ打ち合せて、みなが行けということになってみなの意見が一致したときには、自分は全責任を負って行って妥結に当ろうじゃないか。もちろん参りますにつきましては妥結をするということが第一であります。どうしても妥結したいという信念で参ると私は存じます。またそれでなければならぬと存じますが、万一の場合は自分が全部の責任を負うことでありましてこれは決してアメリカの責任だとかあるいは国民の責任だとか、責任を回避するというふうな感じは断じてないということは、私は総理にかわって御回答いたします。
  87. 松本七郎

    ○松本(七)委員 みんなが行けというなら行く、という御言葉が今あったのですが、どうも重要な問題が出て総理みずからが最後的な決定をしなければならぬときに来ると、みんなが言う通りする――ほんとにこういう言葉が多過ぎるのです。みなが相談をしてきめかねるときに、最後の決裁を仰ぎに行こうというのだと思う。そういう場合に限って、みなの言う通りにするということでごたごたを起すのだろうと思いますが、今のお言葉、どうぞ早期妥結をするために総理みずからが行かれるならば、われわれも大歓迎でございます。大いに激励もしたいと思いますから、一つしっかりねじを巻いて最後の仕上げをしていただきたいと思います。時間も少いですから先に進みたいと思いますが、スエズ問題について簡単にお伺いしておきたいのは、重光さんがあのロンドンにおけるスエズ問題の国際会議で発言されたことについては、非常にあいまいだという批評が多かったようです。たとえば結局アメリカ案を支持するのだ。けれどもインド案も有益だ。一体どっちを完全に支持するのかこれじゃわからない。それはその言葉だけとればけっこうな言い分です。けれどもあのときの問題は、平和的な解決も大事でしょう。それも言われておる。それから運河の航行の自由も大事でしょう。これは現に今航行の自由は、エジプトが運営管理しておっても保障されているのです。一番大事なことは、私はあの運河に対するエジプトの主権を認めるのか認めないのか、こういうところにかかってきておると思う。アメリカは、その主権は尊重するが結局運営を国際管理という名目のもとにこの主権を制限しようとかかったわけですね、客観的には。それでエジプトとしては承知ができない。インドとしてもそれはいけないというので、諮問機関の方で緩和しようとしたわけです。それに対してその核心に触れないでアメリカ案を支持するような口ぶりで、しかもインドの案も有益だというようなあいまいな態度では、私は今後アジア・アフリカ・グループと手を結んでいく日本としてははなはだ心細い。その証拠には。アジア・アフリカ・グループが会合したときに重光さんはとうとう顔を出さないで、アジアアフリカ諸国に非常な失望を与えたということも報ぜられておる。重光さんに具体的にこういう指示を与えられたのか、あるいは出たとこ勝負で重光さんに全然まかせ切りだったのかという点と、それから今のようなあいまいな態度でいいものかどうか、政府はこれを認められるのかどうか、これをお伺いしたい。
  88. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 吉野全権が参りますにつきまして、政府としての考えをよく指示したのであります。その指示の中には、第一には平和的にこれを解決するように努力すること、それから各国の意見が相当対立するだろうと考えるけれども、できるだけ対立しないで、多数によってこれは平和的に解決するように努力しろ、こういうふうなことをこちらから指示したのであります。その結果によりまして重光全権のある談話等を考えてみますと、よほどあれは苦労した作だと私は思っているわけであります。見方によればどっちでもいいじゃないか、こういうふうに見られるわけでありますけれども、それはほんとうにそうなんであります。結論におきましてこの意見が五ケ国の意見、つまり多数の意見と、あるいは一方のインド案というものとは食い違いがありすが、これは何かの機会において調整することを希望するということを言ったわけであります。今後これがどういうふうになるかということは、今後の成り行きを見た上においてきめなければならぬと思っております。
  89. 松本七郎

    ○松本(七)委員 政府態度も同じようにあいまいだと思いますが、時間もありませんからこれはこの程度にしてまた折を見てあれしたいと思いますが、先ほどの質問に対して御答弁のない問題、西ドイツの共産党の非合法化の問題について政府考え方を一つはっきりしていただきたい。
  90. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 私ははなはだ不勉強でありまして今の西ドイツの状況をよく存じておりませんから、これからよく検討いたしましてお答えいたします。
  91. 松本七郎

    ○松本(七)委員 それじゃこれはこの次の機会に、そちらからはっきりした態度の表明をお願いいたします。  それから沖繩の問題ですが、この前から私どもは、国会でも沖繩に調査団を派遣しようということをこの委員会でもきめたわけです。自民党と社会党の問題もまだ残っております。そういうことはありますけれども、それと別に社会党では独自に、国会議員が中心になって調査に行く準備をしたわけなのです。ところが結局これはアメリカ軍の方で時期が適当でないといって拒否しておるわけです。これはただ社会党とアメリカとの関係だからといって放置できない問題だと思う。いやしくも日本の国の公党が、この大事な民族的な問題について調査団を派遣しようというのに、アメリカ軍がその時期にあらずといってこれを拒否したということは、これは大きな問題なのです。従って政府は積極的にこの沖繩の問題を、現地の沖繩県民八十万の意向を体して、あの四原則を支持しようという気持が、以前御説明があったように堅持されて積極的に努力されようというのならば、私は政府も私どもとともにこのアメリカ軍の不当な干渉に対しては、抗議を申し込むくらいの御協力を一つお願いしたいと思います。政府の御決意のほどを伺っておきたい。
  92. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 沖繩の問題につきましては、行政、司法、立法ともアメリカにその権限を委譲しております以上、政府はこれに対して交渉するとかいう発言権はないわけでありますが、しかし沖繩の県民は日本人でありますので、多数の日本人がある以上というものは、これに対して政府はできるだけの交渉をいたしまして、話し合いをしておるわけなのでありまして、アメリカ自身におきましても、日本政府との話し合いということについては十分いれておるわけでありますから、ただいまのお説のような工合に、日本人を擁護するという意味におきまして政府といたしましては十分話し合いをつけていきたい、こういう所存であります。これは変りありません。
  93. 前尾繁三郎

    前尾委員長 次に石橋政嗣君より、駐留軍労務者のスト問題について緊急に質問したいとの申し出がありますので、この際これを許します。石橋政嗣君
  94. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 御承知通り昨日の午後六時、けさの午前零時、あるいは午前六時を期して、全国の駐留軍労働者が一斉にストライキに入っておることは皆さん方十分に御承知のことだと思うわけであります。大体朝日新聞の報道等を見ますと、十四、五万人の駐留軍労働者が、このストに参加しておるのでありますが、非常に憂慮すべき事態であろうと私は考えます。特に日米友好というようなことを基本に置いて外交をやっておる現内閣といたしましては、非常の事態というか、不慮の事態というふうに考えておられると思うのでありますが、このストライキに入った事実というものを通してわれわれの知ることは、追随は決して友好の基礎にはならないということでありまするもう少し日本政府が自主性を持ってこの問題に当っておったならば、私はこういう不測の事態を招かずに済んだのではないか、それをアメリカの言うなりにやろうとしたところに、こういう大問題を引き起し、失態を引き起すことになったのではないかと思うわけであります。  問題は制裁規程でありますが、この制裁規程を何ら協議ととのわずして一方的に調印し、そうして発効させようとしたところにあるわけです。これは私が今さら説明するまでもないかと思いますが、このような態度で労務管理をやろうとするわけでありますから、問題が起きないのが私不思議だ、かえってそのように考えたいと思うのです。日米行政協定の十二条の五項によっても、駐留軍関係労働者は日本の国内法によって保護されることをはっきり規定されておる。しからば日本の国内法ではこの問題についてどういうような規定がなされておるかと言えば、基準法の九十二条にはこういった制裁規程といったようなもの、就業規則の部分に属するものを作る場合には、労働協約に反してはならないというふうに明確にうたわれておる。そうしますと、今度のストの主力になりました全駐留軍労働組合と日本政府との間には、明確に労働協約が締結されております。その中でこのような問題は協議会で協議決定しなければならないというふうに明文がある。それだけではありません。基準法でいきましても、基準法の八十九条、九十条には、就業規則を作る場合には新たに労働組合の同意を得なくちゃならないということもうたわれておる。にもかかわらず全く協議ととのわないうちに、話し合いのつかないうちに、一方的に日本政府が米側と調印をしたというふうなことは、国内法をも無視することになると思うわけです。関係組合はすでにこの点裁判所に提訴もいたしておるわけでありますが、なぜこのような無謀なことをやったのか。もう少し慎重にこの問題にどうして日本政府は当らなかったのか。私はそこのところを中心に、過去こういった不測の事態を避けるためにどのような努力をなさったかということから聞いていきたいと思うのです。直接担当しておる調達庁の関係者が、この問題の処理のために、今かけ回って出席できないというので、非常に私残念でございますが、外交の衝に当っておられる方方の今までの努力というものを、この角度から一つ最初に御説明願いたいと思います。
  95. 千葉皓

    ○千葉説明員 ただいまお話のありましたように、本件は直接には調達庁の所管に属することでございまして、問題になっております制裁規程につきまして米国側と合意をいたしたのも調達庁側でありますが、私ども外務省におります者といたしましては、駐留軍とわが政府との関係、あるいは駐留軍とわが民間との関係、さらにひいては日米関係の全般から申しまして、この問題に非常に深い関心を持ちまして経過を見ておつたわけであります。  今日のストライキは、御指摘のように直接には制裁規程――七月の九日に調達庁長官と米軍側との間に合意が成立しました制裁規程についてではありますが、そのもとをただしますならば、二年来懸案になっております現行の労務基本契約にかわるべき新労務基本契約についての交渉がなかなか私どもの、従ってまた駐留軍労務者の方々の期待するところと相違いたしまして、非常に時間がかかっているというところに原因があると考えるのであります。ことに新基本契約の中におきまして、政府といたしまして、この労務関係、ことに人事関係の面におきまして、共同管理の原則を確立しなければならないということで、かねて主張をしてきているわけであります。この主張が御承知のようになかなかいれられない。そのために今回こういう問題を引き起したと存ずるのであります。まさにこの新基本契約に盛らるべき共同管理の原則につきましては、調達庁長官が中心になっておりまして、軍側とこのための特別の委員会を開いて今折衝中であります。このストライキにつきましては、組合としても一番問題であるその問題について、政府はせっかく折衝しているのだから、ストライキは今しばらく待ってもらいたいということを政府側からも組合の方に申したのでありますが、組合側の方の事情がございまして、それは待つことができないということであります。政府といたしましては、今の労務基本契約に関する特別委員会におきまして、ストライキの有無にかかわらず強力なる交渉を続けるつもりでありまして、現に明日その委員会の会合が予定されております。この委員会は、御承知のように調達庁長官がわが方の首席代表になっております。外務省外務省立場からその委員会にメンバーを出しております。何とか近いうちにこの問題について満足な解決をしたいと考えている次第であります。
  96. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 少し焦点がそれているのですが、私の聞いたのは、なぜ話し合いがつかないうちに一方的に日本政府は調印に応じたのかということに中心を置いて質問をしたわけであります。この点に関して今までいろいろの方から答弁があるのを聞いていると、六月一ぱいに話し合いがつかなければ一方的に米軍の方で発効させるぞと言うものだから、やむなく調印に応じたのだということを日本政府の当事者は言っておるようであります。そういうことでは話し合いではないのじゃないかと私は言いたいわけなのです。これ、を私は自主性がなさ過ぎるという表現を用いて先ほど言ったわけなのです。六月一ぱいに話し合いがつかなければ、米軍が一方的に発効させるぞ、こう言ったから、しょうがないから調印した、そういう話し合いがありますか。しょうがないから調印したという、その自主性のない態度がこういう不測の事態を引き起しておるのだ、私はこう申しておるのです。そういうことはありませんか。話し合いを終らせずに調印したのは一体どういうわけか。外務省としてこの点はどういうように考えておられますか。
  97. 千葉皓

    ○千葉説明員 その点は調達庁当局にお聞き願いたいと存じます。私どもとしましては、組合との連絡もとっており、さらに今度きめました制裁規程も、従来三年にわたってばらばらにやっておったものをただ整理統一しただけでありまして、従来以上に別に労務者の負担を過重し、あるいは労務者に対してきつくなるものではない、そういう説明を聞いて了承しておったのでありますが、軍側から、六月一日までにまとめなければ一方的にやるというような話があったということは聞いておりません。
  98. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 先ほどの答弁の中で、不測の事態が発生しないようにいろいろ努力したとおっしゃるものだから、私は、こういう一方的な調印をやっておって努力したとは言えない、もしその後、この調印は一方的であり話し合いがつかないうちにやったのであるから悪かったと考えて、米軍に撤回なりあるいは延期なりの申し入れをやったとするならば、私はその誠意なり努力なりを認めるにやぶさかでない。しかしあなたの方はそれをやっておられないようなのです。すでに八月の十四日に日米特別労務委員会が行われて、あなたもそれに出席されておる。私はそう聞いておりますが、その際この問題には触れたのか。少くとも日本政府として、こういう不詳の事態を招くのだからまあ調印はしたのだけれども撤回なりあるいは延期なりをしてくれぬかというような申し入れなどをしたかどうか、そういうふうに私はお尋ねをいたしたいと思います。
  99. 千葉皓

    ○千葉説明員 政府といたしまして一たん軍側ときめました制裁規程についてその実施を延期してもらうとか、あるいはその実行を停止してもらうということは考えておりません。しかしこの制裁規程は、どこまでもその基本になるべき基本契約の精神に、よってその適用が制約さるべきものであり、先ほど申しました新基本契約に盛られるべき共同管理の原則が、幸いにして軍側によって承認されるならば、組合の方で心配しておる問題は解消するわけでありまして、私どもはその点に努力を集中してやっておるわけであります。
  100. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 一応調印したものを撤回するとかあるいは延期するというようなことはできないとおっしゃいますが、この駐留軍労働者の管理を基本的にきめたものは、あなたが再三引用しておるこの労務基本契約です。しかもこの労務基本契約は、昭和二十八年十月九日に、日本政府と米軍当局とが対等の立場で発言権を持ち、拒否権を持つという、いわゆる共同管理の原則に基いて新契約を作ってすでに調印がなされておる。ところが三年間たっておりますけれども、これは実行されておらないのですよ。基本の方は調印したけれども実行されておらない。これの付属の文書になるべきものは調印した以上延ばすことはできないとかあるいは中止することはできないとかいう理屈は通らないと思う。そういうことをおっしゃるなら、なぜ基本契約そのものは、主文の方は、三年前に調印しながら発効しないのですか。ここに日本政府のあなたも矛盾したことをおっしゃっておるわけです。三年前に調印された、日本政府と米軍側によって調印済みのこの契約主文が発効されておりますれば、少くともこういうトラブルは起きなくて済んだかもしれません。あなたはこの手続規定、制裁規程がもうすでに調印済みだから延期とか撤回とかいうことはできないとおっしゃるが、それはちょっとおかしい。日本政府は現に三年前に発効した主文、親元の調印した契約をいまだに実行させようとしておらぬじゃありませんか。しからばこの契約主文の発効のために、どれだけ外務省が日米合同委員会の中で活躍をされましたか、この経過と現状を一つ説明していただきたい。
  101. 千葉皓

    ○千葉説明員 私はここに、いつ幾日にどういうことをしたかという御報告を申し上げる資料を持っておりませんので申し上げられませんが、これはもう御承知のように、かねてから国会において、あるいは予算委員会あるいは社会労働委員会あたりにおきまして、新労務基本契約の問題についていろいろ社会党の先生方から御指摘がありました。また私どもといたしましては、合同委員会におきまして再々この問題について審議の催促をして参った。ことしの何日であったかちょっと忘れましたけれども、数カ月前にようやく軍側においてそれではということでその問題だけを取り上げますための特別委員会を組織することに同意してくれました。先ほど申し上げましたように、この問題に軍側も真剣に取り組んでくれているわけです。私どもといたしましては、早晩何らかの解決を見るものと期待しておるわけであります。しかしこれは相当わが方の立場を強く主張していかなければ希望する結末は出ないということは考えております。そのつもりで調達庁を中心にいたしまして、労働省も加わりまして強くこの交渉を進めるつもりでおります。
  102. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 今申し上げましたように、三年前に調印された労務基本契約の主文が発効されないところに問題があるわけです。主文の方はほったらかしてこれの付属書になるべき制裁規程だけを持ってきて、しかも一方的に調印し、発効させようとしておるところに問題があるわけです。しかもこの付属書たるべき制裁規程は、三年前に調印された、この契約主文の精神を踏みにじったものだ、こういうおかしなことをなぜ日本政府はなさるのか。少くとも三年前に調印された主文の精神を貫こうとするならば、この制裁規程そのものも日本政府と米軍とが対等の立場で発言権、拒否権を持つ性格のものでなければならぬにもかかわらず、今度一方的に実行しようとしておるこの制裁規程は、全く日本政府の関与の余地がない、こういうばかげたものが生れてきておるわけです。私はここに問題があると思う。これはどういうことを意味しておるかといえば、米軍が全然この契約主文を実行に移す意図のないことを意味しておる。私ははっきり説明し、あなたも納得できると思う。あなたがおっしゃるように軍も誠意を示しており、日本政府もこの契約主文の発効のために努力しておるというならば、この主文の精神を踏みにじった制裁規程が今ごろぽっと出てくるはずがないじゃありませんか。これは日本政府も努力しておるというのは当らぬのではないかと考えるわけです。米軍もまた誠意をもって契約主文の発効に努力しておるということも当らないのではないか。てんからこの三年前に調印した契約主文はもう永久に葬ってしまおうという精神が、今度の制裁規程の一方的な通告になってきておるのではないか、こう申し上げておる。ここに山があることを念頭に置いて話し合いを進めていかなければ、幾ら交渉を持ってもこの問題の解決はできないということを申し上げたいわけです。あしたまたこの合同委員会の小委員会的な性格を持っておる特別労務委員会が開かれるということを聞いておりますので、この矛盾点を外務省としてはしっかり腹に持っておいていただいてこの解決に当っていただかなければ、いつまでたってもこの処理はできません。また第二波、第三波のストライキが行われる、それに対して別途の強圧的な手段をとろうなどということを考えておるならば、私はもってのほかだと思う。大臣がおればこの点私は聞きたかったのですが、船田長官のごときは二十四日の毎日新聞の夕刊で、もしストライキなんてやったら重大な事態が発生するかもしれぬというような、全くけしからぬ強圧的な態度を言明しておられるが、これが何を物語っておるか、少くともストライキ権を剥奪するということを言っておるのか、あるいはそのほかの手段をもって強圧しようとしておるのか、私はこの点についても今まで、もし駐留軍の労働者がまた今後ストライキをやろうとするならば重大な決意をしてくれという米軍の申し出があって船田さんがああいう声明をしたのか、一つ大臣意見を聞きたいと思ったのですが、何か外務省に情報があれば私はついでに答えておいていただきたいと思います。
  103. 千葉皓

    ○千葉説明員 今回のストライキそのものにつきまして軍側から日本政府に対して何ら意思表示があったということは聞いておりません。
  104. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それじゃ本論に戻りますが、結局三年前に調印された労務基本契約の共同管理の原則というものをあくまでも確認するということが、現在の日米の折衝の中で一番大切な問題だと思う。やや最近は米軍も譲歩的な酸度をとっておるようで、聞くところによると、交換公文を手交して調達庁――日本政府機関が従来通りこの制裁の手続に関与することかできるような方法をとりたいというようなことも、レムニッツアー司令官あたりが言ったということを私は聞いておるのですが、しかし主文がいまだに発効されないというようなことから、過去のこういう事例から推してもどうも信用ができない、ただ現在のストを中止させる、あるいは回避するというふうなことのために、こういう声明をしたのじゃないかという疑惑をどうしてもぬぐい去ることができない。だから従来通りの、日本政府もこの制裁の手続に関与することができるというようなことが現実問題として何らかの形で保障されなければいけない、その保障の一番いい方法としては。やはり労務基本契約の主文そのものを直ちに発効させるということでなくちゃならぬと思う。そうでない限り、あくまでもこれの付属書の性格を持つ制裁規程は撤回するか、あるいはその主文が生きるまでは延期するか、そういう明確な態度日本政府アメリカ側に迫らなくちゃならないと思うのですが、あなたはそれを正しい見解と思いますか、そうしてまた正しいと思うならばそういう線であすの委員会にはもちろんのこと、今後の対米交渉に臨まれる覚悟であるかどうか、その点を最後にお尋ねしておきたいと思います。
  105. 千葉皓

    ○千葉説明員 石橋先生の御指摘の通りこの新基本契約、また発効に至っております新基本契約の中にうたってあります人事管理に関する共同管理の原則というものが問題の中心でありまして、現在まで、ただいまのようなお話がございましたけれども、軍側がどうしてもそれを承知しないのだというふうには、私ども先方の話を聞き取っておりません。必ずこれは先方の同意を得るものと考えております。しかしもし不幸にして石橋先生が言われるように、結局軍はそれには同意するつもりはないのだということが明瞭になりますれば、その際はこれは駐留軍労務者と米軍との関係について政府は根本的に考え直さなければならないことに立ち至ると私は考えるのであります。そういう意味におきまして政府もこの労務に関する共同管理の原則が本質だということは十分認識しておりまして明日の会合においてはもちろんのこと、今後、時間の長くかかることは望みませんが、とにかくその原則が貫徹せらるるまで努力をいたすつもりであります。
  106. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 今申し上げたようにあくまでも共同管理の原則が現実に生きてくるような保障をとってもらいたい。このことがなければ、ただ口先だけで日本政府も関与できるような方法を講じますという単なる口頭だけの証明では、私は過去の実績からいってどうしても納得いかないから、二波、三波のストライキを打たなくちゃならぬような情勢に追い込まれていく。どうしてもこの点は確固たる保障がなされるように一つ努力していただきたいと思います。調達庁も来ておりませんので、ほかにもいろいろお尋ねしたいことがあるわけでございますが、時間の関係もありますし本日はこれでとどめますが、一つ早急にこういう状態が打破されますように、円満に解決されますように全力をあげて交渉に当っていただきたいことを要望して私の質問を終ります。     ―――――――――――――
  107. 前尾繁三郎

    前尾委員長 この際参考人の招致に関しお諮りいたします。先ほどの理事会において協議いたしました事項でありますが、沖繩の土地接収問題等について、沖繩から来ておられます瀬長亀次郎君及び兼次佐一君の両名を参考人として招致し、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  108. 前尾繁三郎

    前尾委員長 御異議がなければさように決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十六分散会