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1956-07-12 第24回国会 衆議院 外務委員会 第59号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年七月十二日(木曜日)     午前十時二十七分開議  出席委員    委員長 前尾繁三郎君    理事 石坂  繁君 理事 北澤 直吉君    理事 須磨彌吉郎君 理事 高岡 大輔君    理事 山本 利壽君 理事 穗積 七郎君    理事 松本 七郎君       愛知 揆一君    伊東 隆治君       植原悦二郎君    大橋 忠一君       菊池 義郎君    並木 芳雄君       松田竹千代君    大西 正道君       田中織之進君    田中 稔男君       戸叶 里子君    福田 昌子君       細迫 兼光君    森島 守人君       和田 博雄君    岡田 春夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 重光  葵君  委員外出席者         法制局参事官         (第一部長)  龜岡 康夫君         総理府事務官         (南方連絡事務         局長)     石井 通則君         検     事         (民事局参事         官)      平賀 健太君         外務省参事官  法眼 晋作君         外務事務官         (アジア局長) 中川  融君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務官         (情報文化局         長)      田中 三男君         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 七月十二日  委員池田正之輔君辞任につき、その補欠として  松澤雄藏君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会に関する件  国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これより会議を開きます。  まず連合審査会開会の件についてお諮りいたします。内閣委員会及び法務委員会より、沖繩土地接収問題等について連合審査会開会申し入れがございましたので、この際この申し入れを受諾いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 前尾繁三郎

    前尾委員長 御異議なければ、さように決定いたします。  なおただいまの連合審査会において本日招致いたしました参考人よりその意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 前尾繁三郎

    前尾委員長 御異議なければ、さように決定いたします。  なお連合審査会は午後一時より開会いたしますから、さよう御了承願います。     —————————————
  5. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それでは前会に引き続き、国際情勢等に関する件について質疑を許しますが、質疑者の数が多いので、一人二十分程度にとどめてもらいたいと思います。ことに御注意申し上げました節は、ぜひこちらの御注意を尊重していただきたいと思いますから、どうぞ……。  大橋忠一君。
  6. 大橋忠一

    大橋(忠)委員 沖繩問題について、問題の土地問題はすでに大体論じ尽されていますので、その他の問題についてお尋ねしたいと思います。  アメリカ沖繩基地強化に非常に力を入れている、その事情についてはよくわかります。なぜアメリカがあの基地強化するのか。ある一説によりますと、日本におけるナショナリズムが起りまして日本基地が危なくなった場合に、沖繩に退避するというようなことが盛んに言われております。それがほんとか、うそかは知りませんけれども、とにかく沖繩基地強化しようとしておるし、かつその事情はわかりますが、しかし沖繩基地強化するためには、沖繩人協力を得ない限りは、基地強化は、ただ物質的にいろいろ装備をしただけではできるものではない。かるがゆえに、国務長官ダレス氏も、沖繩住民福祉のために全力を尽すという声明をしたのであります。また今回のプライス氏もその報告の中で、沖繩問題処理は、必要を第二として、道義を第一にする、こういうことを言っておるのだと思うのであります。ところが、五月末日に行われました沖繩代表者陳述を聞きますと、土地問題について、はなはだ言語道断の処置をとっておるのはもちろんのこと、その他いろいろな点についてわれわれの理解し得ないようなことをアメリカはやっておるようであります。ことに私の頭に残っておるのは、アメリカが進駐してきてから犯罪数が非常に激増し、あるいは殺人、強盗、強姦というような犯罪が非常にふえた。以前には犯罪がなかったのに、アメリカ軍が進駐してきてからそういう犯罪が非常にふえた。しかもこの犯罪に対する処置が全部軍事裁判である。犯人の処置がどうなっているかさっぱりわからぬ。これはある意味において治外法権であり、もう少し極端に言えば切り捨てごめんのような、日本占領中において実行されたと同じような制度が沖繩においてもまだ実行されておるので、そこでこれはわが政府としても、当然沖繩においても、少くとも現在の安保条約行政協定のもとにおいて行われておると同様、公務以外において普通の犯罪アメリカ人沖繩人に加えた場合においては、やはり沖繩の裁判所において処理して、沖繩のプリズンに入れるようにする。しかも全体としてアメリカ司法権も握っておるのだから、そうしても一つも私は差しつかえないと思う。こういう点において私はアメリカに対して一つ交渉を願いたい、こう思うのでありますか、いかなるものでありましょうか。
  7. 重光葵

    重光国務大臣 今御質問前提となっておる、アメリカ基地を設けるその政治上の理由はしばらくおくとしても、基地を設ける以上は住民協力がなければならぬということは、まさにその通りであって、それは沖繩側主張日本側主張というだけでなくして、アメリカ側主張でなければならぬと思うのであります。また事実アメリカもそういうことについては少しも異存もなく、努力しようとは言っておるわけでございます。しかるに沖繩住民の陳情によると、いろいろな事件が起っておる、こういうことでございまして、私も米国軍が多数入り込んでおる関係上、その他種々事態が変ってきました関係上、いろいろなことが起っておると思います。これはあくまで最小限度にとどめて、前提となっておる住民との協力ということを進めることが、私は日本側要請であるとともに、アメリカ側もそれは十分考えるべきことだと思います。そうして、そういう意味で実は常に折衝もし、要請米国側日本政府としてやっておるわけでございます。そこで結論として御質問安保条約等は、沖繩に適用がないことは御承知通りでございます。アメリカサンフランシスコ条約によって沖繩を統治する権利は持っておるわけでございます。それを沖繩に対してそういう条約を適用して、さような事態に対する処理をしたらばよかろうという御意見は、私は御意見方向としてはお話を申し上げます。ただ、今それを直ちに着手すべき時期であるか、今日すぐ着手すべきであるかということに対しては、私はまだその点は考えが熟しておりません。機が熟しておらぬと思っております。しかし、さようなことについてあくまで住民との間の関係を円滑にしていくということについては、これは当然な要請でございますから、あくまで要請をして参ろう、現下の条約関係でも要請ができることでありますから、十分それを要請して実現をはかろうと考えております。
  8. 大橋忠一

    大橋(忠)委員 なお、その他いろいろアメリカとの御交渉を願いたいことがありますが、私は必ずしも安保条約沖繩にすぐ適用せよとは言っておりません。ただ安保条約で定められたと同様の実質を有するところの待遇を与えてもらうように交渉ができぬのか、こう言うのです。しかしそう言うと、いかにも内政干渉であるというようなことを言う者があるかもしれませんが、沖繩において沖繩人がいじめられるということは、これは今回の事件ではっきりした通りに、すぐ日本国民の間に連鎖反応を起しまして、そうして日米親善というものを非常に阻害する。沖繩においては軍事的に圧迫されておるから、いわゆる沈黙の抵抗以外にできませんが、それが日本に現われると、直ちに日本ナショナリズムを刺激することは今回の事件ではっきりしておる。従って日米親善を外交の根本原則としておるわが鳩山内閣としては、こういうことをやっておってもらったら日米親善にひびが入る、従って一つこういうようなふうにしてもらえぬか、こういうふうな持ちかけ方で、本問題のみならず以下申し上げるような問題についても少しく執拗に御折衝を願いたい。それならばそれは一つ内政干渉ではない。日米親善大義の名において私は交渉を継続していただくべきものだと思いますが、一つ簡単に御答弁を願いたい。
  9. 重光葵

    重光国務大臣 今の御説明を伺っておりますと、全く私の考えと同様でございます。私もそういう趣旨によって十分に要請をしていって、そうして住民協力を求め、あわせて日米関係に少しでも悪い影響を与えるということを避けたい、こう考えております。
  10. 大橋忠一

    大橋(忠)委員 沖繩日本本土交通の問題でありますが、これも聞くところによると、沖繩には日本外国管理令というものがありまして相当厳重に取り締っておって自由に交通ができない。これは日本国民たる沖繩人、その沖繩人本土日本人との交通を阻害するというのはどういうわけであるか、いかにも、自由に出入すると沖の内部の実情が日本国民にさらけ出れて問題を起すから取り締るといううな、そういう暗い影をそこに残しておるのであります。私は一つこの沖繩で取り締っておる取締りを、少くとももっと緩和して、原則として自由に交通する、それをアメリカに対して御交渉願ったらどうかと思う。  いま一つは、沖繩の今日の一番の不平のもとは土地問題であります。今度新たに接収されると全島の二〇%にわたるような耕地が取り上げられる。ところが戦争以来南洋群島に五、六万の沖繩人がおったが、それが全部追い帰された。フィリピンのダバオには二万からの沖繩人がおったが、全部追い帰された。その他インドネシア、マレー半島におった沖繩人も全部追い帰されて人口が非常に稠密となった。しかるに一方においては土地を取り上げる。これでは沖繩人全島をあげて反対するのが当然だと思う。そこで南洋委任統治領というものは、これは沖繩人の手によって開発された土地でありまして、ある意味において第二の郷土といってもいいくらい沖繩とは密接な関係があるのであります。しかもこの委任統治領の原住民も、沖繩人がおって砂糖を耕し、漁業をやった時代のことを非常に今恋しがっておるという話があるのでありまして、このカナカ土人福祉のためにも沖繩人向うの方に送るように一つ要請してもらいたい。ところが南洋委任統治領は戦略的の軍事基地だから困るというので、今日本人を一人も入れておりませんが、沖繩軍事基地こそ委任統治領以上のアメリカにとって重大な、極東におけるジブラルタルというような重大な軍事基地なのであります。従って重要さにおいて沖繩の方がはるかに重大なのだ。しからばなぜその沖繩人南洋委任統治領の方に送ることができないのか、はなはだ了解に苦しむのであります。私はそういうこそくなごまかしをやるよりも、沖繩人に善政を施して、アメリカに帰服せしめ、そして進んでこれを使うというくらいの、それぐらいの度量がなければ、アメリカ世界政策なんというものは失敗するだろうと思う。従ってこの彼らの行動の矛盾を指摘されまして、もう少し沖繩人口のプレッシャーを緩和する方向として、さしあたり南洋群島に行かせる。さらにアメリカ同盟国たる英国交渉をして、英領北ボルネオ、ここに沖繩人の吐け口を開いてやる。あるいはシンガポールその他、英国と話し会えば沖繩人が発展する余地は東南アジアに一ぱいあるのであります。従ってこういう方面に積極的に親切心を持って、そうしてアメリカがめんどうを見るように、これは私は同胞であるわれわれ日本国民として要請してちっとも差しつかえないことであると思うのであります。これについての御所見はいかがでございましょうか、お伺いいたしたい。
  11. 重光葵

    重光国務大臣 今日さしあたっての目下の問題は御承知通り土地問題でございます。沖繩における沖繩住民生活緩和ということに集中されておるわけでございます。最初にお話交通制限の問題のごときは、もうずいぶん前からアメリカ側に対する要請の問題として取り扱ってずっと努力をしてきておる。それで多少は緩和いたしたのでございますけれども、十分にまだその要請を達成したというわけではございませんから、それは引き続いてやらなければならぬと思います。そこでさしあたって土地の問題は、沖繩における沖繩住民生活緩和ということに集中しておるのでございますが、お話のように沖繩住民生活緩和ということは、沖繩以外方面における沖繩住民の活動を増進するということも必要であるのでありますから、そういう方面には十分努力を進めたいと考えております。
  12. 大橋忠一

    大橋(忠)委員 ダレス国務長官沖繩人福祉のために全力をあげると言っておられます。沖繩代表陳述を見ますと、アメリカ土地を返してもこんな厚いコンクリートの土地を返して、これをつるはしで一反歩耕すに三年かかったというようなことを言っております。こういうような場合にもアメリカのブルドーザーを使ってやれば、そんなものは一日で済んでしまうのであります。従って返すには返してもそのあとの取扱いがいかにも不親切であります。またゴルフ場にいたしましても、なぜもっと北部の耕作に適しない土地アメリカ機械力をもってならして、そしてゴルフ場にしないのか。りっぱに耕作のできる良田を取り上げてゴルフ場を作るものだから、問題を複雑にすると私は思うのであります。しかしそういうことよりも、沖繩人民が非常に不満に思っておるのは、アメリカ人優越感——この間の沖繩代表陳述によりましても、今度土地問題を契機にして爆発したが、沖繩人アメリカ人に対するふんまんというものは今日に始まったのじゃない、占領以来長い間それが累積して、その累積したふんまんが今度の土地問題を契機として爆発したんだ、こういうようなことを述べております。しからばどういう点において優越感が現われているかと申しますと、たとえば沖繩人賃金というものが、私の計算によるとフィリピン人の八分の一、内地人の二分の一というような、そういう低賃金しか払われておらない。小笠原におきましても混血児だけしか帰還を許さぬ、純粋の日本人帰還を許さない。私はそこに明白に人種的の差別待遇というものが存すると認めざるを得ないのであります。アメリカ沖繩のみならずフィリピンにおいてもきらわれ、少くともアジアアフリカ方面において、至るところ評判が悪い一つの大きな原因は、これは西欧コロニアリズムというものをアメリカが支持している点ばかりでなく、いわゆる人種的の優越感——実に不愉快なものであります。私は在米七年の大半をアメリカ排日運動と戦った体験を持ったものでありますが、これほど不愉快なものはないのであります。どれだけ金をくれても、それを犬にものをやるように下にほおってくれることはありがたくないのであります。しかもこのアメリカにおける排日家のおもな人は、南部黒人に対する反感を持った、偏見を持った人が多いのであります。この人種的優越感というものほどわれわれの感情を刺激するものはないということは、太平洋沿岸において御体験のある重光外相のよく御承知のところであります。従って私はこの人種的の優越感というものを去らざれば、日本のみならず、全アジアからアメリカは結局退去しなくてはならなぬ事態がくるのではないかということさえ憂うるのであります。私はこの点を盟邦以上の関係を持っておる日本として、日米親善大義とするわが日本としては、アメリカ側に深甚な御注意をありたいとい思うのですが、この点いかがでしょうか。
  13. 重光葵

    重光国務大臣 その根本優越感の問題でございます。優越感原因として人種的の偏見ということも申されました。またこれを実際問題に見まして、今度は区別的待遇ということにもなります。それを今申されました。これらのことが私は世界の平和の根本関係のある問題であるということは、十分にこれは頭にとどめておかなければならぬことだと思います。これが世界の今日の指導者の最も大きな問題だと私は思います。これは単にアメリカの問題ではむろんございません。歴史的にいろいろございましょう。それからまたある意味において日本人自身も非常に反省を促さなければならなかったことが過去においては幾多ございます。これは大きな問題だと思います。そこでアメリカにおきましては、特に第一次世界戦争民族主義が唱えられ、第二次世界戦争アジア民族主義実現をいたしました。これを実行し、日常の社会運動としてまでも理想的に実行するにはなかなか時間はかかりましょう。しかしこれはあくまで実現して人類の福祉、平和の基礎にしなければならぬということは言うまでもありません。そこでさようなことについては、私は米国指導者はおそらく日本側から指摘するまでもなく、最も関心を持っておることだろうと思います。しかしながらこういうことについて、常にそういういいことを思い起さして遺漏のないことを要求することは、これまた私は最も適切なことだと思いますので、御趣旨には少しも異存はございません。
  14. 大橋忠一

    大橋(忠)委員 時間がありませんので最後に二つほど一括して御質問申し上げます。かくのごとく沖繩については、日本にその事情がよくわかっていない。わかっていないがゆえに日本においてアメリカのやり方について非常に猜疑心が起っている。そこでこれも日米親善大義からして、沖繩事態日本国民にはっきりさせることが私は一番必要なことだろうと思います。そこで私は国会議員団向うに行って調査することもよろしいが、あるいはその他日本側も同意し、アメリカ側も同意する公平なる第三者として、サードリイに、一つ沖繩人がどういう待遇を受けているかということを調査してもらって、それを日本国民に知らして、そして日米両国間の誤解を解くということを、堂々と一つアメリカに御要請になることが、これまた日米親善大義の上から私は必要であると思うのでありますが、どうお考えになりますか。  最後一つお伺いしたいことは、最近沖繩問題に関連いたしましてアメリカの当局が日本軍事基地を、アメリカ日本が安全と認めるまでは百年でも撤退しないというようなことを言ったと新聞に載っておりました。私は今の安保条約及び行政協定の解釈がそうであるかどうかということについてはまだ研究はしておりませんが、今のような安保条約行政協定があって、アメリカが要求すればどれだけでも基地は拡張しなければならぬ、新しい基地も設定を認めなくてはならぬ、はなはだしい場合においては日本全土でも基地にし得る。そんなことは事実上ないかもしれないが……。また日本国防力の自主権も完全にアメリカに握られている。こういうこともいいのです。もしわが国民納得ずくでそこまでアメリカに身をまかせるというならばそれは仕方がない。仕方がないが、御承知通り安保条約講和条約とともに、われわれが占領治下にあるときにアメリカが作って、講和条約とともに日本に押しつけたところの条約でありまして、当時インドも、かくのごとき条約は、結ぶにしても、講和条約発効後において、日本国民納得ずくで結ぶべきであるということを主張したことは御承知通りであります。従いまして、私はかくのごとく、からだをアメリカ側の鉄のたなごころの中にはめ込まれてしまった今の日本では、日本国民がいかに自分で独立国であるということを主張しても、外部から見るとアメリカの鉄のたなごころにぐっとつぶされてしまうところの独立国でしかあり得ない。従って憲法改正といってみても、結局改正そのものアメリカ改正であるということになっては私は意味をなさぬだろうと思う。従って私は憲法改正主張する前に、まず安保条約を改廃して——私は基地というものをアメリカにやらぬとは言わぬ。英国のように納得ずくならよろしい。一ぺんこれを再検討して、われわれの納得、完全なる同意によって新しい条約関係、対等の条約関係、こういうようなふうに私はぜひ交渉することが必要であると思う。しこうしてこの運動日本ナショナリズムを結集して、憲法改正なんかたな上げにしてこれにぶつかってそうしてまず日本独立さしてから憲法改正する、こういう段階に臨むのが当然だろうと思うのであります。日ソ交渉にしても、今日の状態において、この姿において南千島をソ連が渡したくても、私はなかなか渡せないだろうと思う。従いまして、私はどうしてもわが国としてはこの際安保条約及び行政協定というものの改訂に向ってわれわれの全力を注ぐべきものであると考えるのでありますが、いかがお考えですか。これをもしわれわれができなかったら、おそらく私は保守の政権は社会党の諸君にとってかわられるおそれがあるとさえ思うのでありまして今度の選挙においてわが党が非常に不利に陥った重大なる原因はここにあるとさえ私は思うのでありますが、外務大臣の御所見を伺いたい。
  15. 重光葵

    重光国務大臣 今御意見るる拝聴しました。今御指摘の通り時間がないと言われるから、私もあまり長く申すことは差し控えます。差し控えますが、御趣旨のあるところ、すなわち日本独立を完成をすることがすべての基礎であると、こう言われます。私はその通り考えてそれに向って、これはほとんど国民全体としてある意味において超党派的にこれはやらなければならぬことだと私は思います。それが基礎であって、それからすべての施策が出るのだと考えます。そういう意味において私は御説を拝聴したわけでございます。  それから沖繩の調査は私は御同感であります。その趣旨は御同感であります。そこで実はそういう趣旨のことは米国側にも意見を出してはおるのでございます。その結果が漸次結実してくることを今期待しておるようなわけでございます。
  16. 大橋忠一

    大橋(忠)委員 私は与党でありますのでこれ以上食い下って御質問は差し控えます。なお時間がないので、さらに詳しいところは次の機会に譲りまして本日はこれで質問を打ち切ります。
  17. 前尾繁三郎

  18. 岡田春夫

    岡田委員 今日はいろいろ伺いたいのでありますが、根本官房長官出席を要求いたしておきましたけれども、いまだに出席がございません。外務大臣であり、副総理大臣である重光大臣に特にお伺いをいたしますが、最近の模様を聞くと、臨時国会をやるというような話がだいぶあるようでありますが、臨時国会をおやりになることをおきめになったのですか。それともまだきめておらないのですか。おやりになる方針でありますか。  もう一つは、大体やるとするならばいつごろおやりになるか、その点をまず伺いたい。
  19. 重光葵

    重光国務大臣 全然その問題はきめておりません。いまだ考慮中であることを私は承知しております。
  20. 岡田春夫

    岡田委員 それはきめておらないというのは、おやりにならないという考えでありますか。あなただけが例によって御存じなくて、ほかの者が大体きめて、あとであなたがそれを御通知を受けるという程度で、御存じないのじゃありませんか、どうですか。
  21. 重光葵

    重光国務大臣 相談を受けておりません。
  22. 岡田春夫

    岡田委員 それでは新聞に二十三日ごろやるということを根本官房長官が発表いたしておりますが、これは全然うそなのですか。
  23. 重光葵

    重光国務大臣 私は承知いたしておりません。
  24. 岡田春夫

    岡田委員 それではあなた自身御存じない。そうすると日ソ交渉の問題は、御承知のように七月の末までに日ソ交渉の再開をやらなければならないのですが、これに関連して当然全権の問題が出て参ります。この全権国会議員であった場合には国会承認を求めなければならないことは、国会法で規定されているわけでありますから、当然そういう形で国会承認を得なければならないと思いますが、こういうことをまだお考えになっていないという意味なのですか、どうですか。
  25. 重光葵

    重光国務大臣 日ソ交渉全権は、まだ確定いたしておりません。確定の上は必要な手続をとらなければなりません。
  26. 岡田春夫

    岡田委員 確定の上はということになると、今すでにともかくもやっている。やっている限りにおいてこれは国会議員がだいぶ名前に出ているというわけなのですがあなた自身は、大体どういうような全権を今お考えになっておられるのですか。その点を伺いたい。
  27. 重光葵

    重光国務大臣 各方面事情をも考慮に入れて、最も国家的に日本の権益を擁護するに適当なる全権を選ぼうと思って、今いろいろ検討をしているところでございます。
  28. 岡田春夫

    岡田委員 各方面の云々というお話ですが、もう少し具体的に伺いたいのですが、きょうの新聞あるいはきのうの夕刊等を見ると、あなたは強く佐藤氏を支持しておられる、こういう話を伝え聞いているのでありますが、そういう事情についてはどういうことになっておりますか。
  29. 重光葵

    重光国務大臣 大体のわれわれのとりました態度は、選挙が済んだ後に日ソ交渉の、再開の準備をしよう、そういうことに相談して、選挙が済みました九日以後において、いろいろ考慮をしているわけであります。全権をだれにするかということは、むろん総理の考えが一番の中心になります。そこで新聞に昨今あります佐藤氏ということも、総理の考慮のうちにあることは、私は承知をいたしております。これらのことをすべて今検討をいたしておるわけでございます。
  30. 岡田春夫

    岡田委員 今の佐藤氏を含めて全権の編成を今進めつつある、これは進めなくてはならないわけでしょう、七月末まであと二十日しかないのですから。そういう見通しについて、あなたは外務大臣なんだから、外務大臣として、これはどうする、いつごろどこで行う、全権の人数は何人にする、こういうあなた自身の方針がないのでありますか、どうなんでありますか。あるいは総理大臣にまかしておいてあなたは黙っておられるのか、どうなんですか。
  31. 重光葵

    重光国務大臣 むろんそれは外交の問題として、私はこの問題について十分考慮しなければならぬのであります。でありますから検討をしていると申し上げているのであります。そのことについては、今申し上げる大体の考え方をもって、すべての具体案を検討して、そうして確定案をこしらえて必要な手続をとろう、こう申し上げているのであります。
  32. 岡田春夫

    岡田委員 佐藤氏を一人の人としてあなたは考えておられるならば、当然国会をやらなければならないということになってきましょう。あの人は参議院議員です。国会議員であれば、国会承認を得なければならない。そういう点で、臨時国会をあなたは現在考えておらないということですが、当然臨時国会をやらなければならないということになってくるじゃありませんか、そういう点をお考えになっておらないのですか。
  33. 重光葵

    重光国務大臣 それはそういうことになるかもしれませんが、考えるといったって、それは確定した上で考えます。また十分にそういうことはでき得られます。
  34. 岡田春夫

    岡田委員 これはなるかもしれませんなんというようなことは、きわめて常識のない話。国会法できめてあるのだから佐藤氏というものがもしきまったならば、やらなければならない義務があるのです。しかもあなたはこの前から、きょう問題になっている沖繩の問題、この沖繩の問題は日本の国籍を持っている日本国民の問題として、領土の問題も潜在主権があるということは明らかになっている。これほど重大な問題について、国会を開いてここで日本国民の問題をいろいろ議論をしていこうというお考えをお持ちにならないのですか。
  35. 重光葵

    重光国務大臣 それはどういう意味かわかりませんが、この委員会で御意見を伺っているのもその趣旨でございます。
  36. 岡田春夫

    岡田委員 それは外務委員会でやるのも国会です。しかし正式の本会議を開いて、その中で議決するのがもっと重要な国会の任務です。こういう点を、あなたがほんとうに一生懸命にやるというお考えならば、そこまでやるのが当りまえじゃないか。本気でやっているのか、うそ気でやっているのか、本気でやっているなら本気らしくなさったらいいじゃないですか。
  37. 重光葵

    重光国務大臣 私もそう思います。あなた方の御議論も本気でやっていただきたいと思います。それから国会の意思表示を十分に私は受けていると思います。国会の決議もこの件においてしました。これは実は私はりっぱな決議で、十分にこれを実行したいと思って努力しておるわけであります。そういう意味で十分にさらにこの現下の問題についても御意見を伺わせていただきたい、こう考えております。
  38. 岡田春夫

    岡田委員 全権の問題にもう一度戻りますが、佐藤氏を全権にするという問題については、あなたの党内にずいぶん反対があるようです。そういう反対を押し切ってまで、あなた自身がしいて佐藤全権を作らなければならないという根拠は、一体どこにあるのですか。党内事情の問題については私は伺いません。外交政策の基本として、佐藤氏を全権にしなければならないという特別の理由があるのですか、自民党の党内でもずいぶん反対があるようですが、そういう点に関連してあなたのはっきりした考え方を伺っておきたいと思います。
  39. 重光葵

    重光国務大臣 私は今申し上げた通りに、日ソ交渉の再開の準備をしなければいかぬ、そうして人の問題はむろんこの中に含まれている、それは今検討しているが、まだ確定しておらぬ、総理の意見も、当然のことでありますが、十分に検討するということを今やりつつあるということを申し上げておるのでありまするそこで私は個人の問題について、まだ私の意見を申し上げるのは早いと思います。しかしながら私は先ほど申し上げた通りに、最も国家的利益を代表するのに適当な人を得たい、こう考えていることは繰り返して申し上げました。私は個人の問題に入るようでございますけれども、佐藤氏も確かにその一人だと考えております。
  40. 岡田春夫

    岡田委員 佐藤氏が適任であって、しかも自民党の中で反対がある。それは自民党員でない緑風会の人が全権の中に入って実質上の首席全権になる、こういうことが困るのだということで、いろいろ意見があるようだが、それにもかかわらず佐藤氏を適任者として考えているとするならば、これはいわゆる超党派的にこの問題を解決していく、日ソ交渉をそういう考え方に基いておやりになるのだ、そういうようにわれわれ解釈してもよろしいのですか、どうですか。
  41. 重光葵

    重光国務大臣 私はこの問題について超党派がよい、党派の間の考え方を調節するという意味で超ならば、私はそういうふうにこの人選の問題を考えておりません。党と党との間で協議をしてどうするという問題ではないのであって最も適任者を探してみたい、こういうことで今頭を悩ましております。そこでいろいろな問題に具体的にいきますといろいろ意見がございましょう。これも十分聞かなければなりません。これが検討のうちに入るわけでございます。しかしながらほんとうに適任者であれば、これは何と申しますか、その人がどこに議席を持っておろうとも、議席があるとないとを問わず、これは私は十分にその人を推薦する価値があると考えております。
  42. 岡田春夫

    岡田委員 今の御答弁を聞いていると非常にはっきりしてきたことは、最も適任者として佐藤という人を考えている。そうすると自民党の中に適任者がいないのだということがあなたの一つの御意見ですね。それからもう一つは、こういうように新聞が毎日書くほど日ソ交渉のこちらの全権をきめるのにごたごたやっているということは、すでに鳩山内閣がもうがたがたきているということなんですよ。そう思いませんか。もうあまり長くなくなってきているということじゃないですか。そういう答弁をあなた自身が今お答えになっているところからみると、そういうように感じられる。しかしわれわれ日本国民としては恥かしいですよ。恥かしくありませんか。ソビエトの方に交渉に行くのに全権をだれにするのだかまだきまらないのだ、重光の推しているのは佐藤だ、鳩山の推しているのは砂田だ、あるいは石井を出して何とかまとめよう、こういうていたらくなんです。まさにていたらくなんです。だらしない状態なんです。これは外務大臣として、外交上のこういう問題の責任をどういうようにおとりになるのですか。モスクワでやるのか、東京でやるのかあるいはロンドンでやるのかさえまだきまっておらない。しかも外交の方針について国会におかけになるのですか、どうですか。全権の問題についてだけかけるのですか。外務大臣がもっとしゃんとしていれば、こんなごたごたは起らないで済んでいると思う。少しだらしがないとみずからお考えになりませんか。
  43. 重光葵

    重光国務大臣 私はこういう問題を今検討中だと申し上げましたが、その何によって結論を得ると思います。皆さんの——御満足——御満足と言わなくとも、御納得を得る結論が出ると、こう考えております。いろいろお立場からいろいろなお言葉が出ましたが、それは御批評として伺っておきます。
  44. 岡田春夫

    岡田委員 みずからだらしがないということを含めて御検討されるそうそうですから、それもけっこうだと思います。それもけっこうだろうと思うが……、(「そんなことは言っていないよ」と呼ぶ者あり)いや彼自身も合点しているのだから。それもけっこうですが、しかし佐藤氏が適任者であるというならば——最も適任者を選ぶというならば、社会党からも入れたらいいじゃありませんか。超党派的にやったらいいじゃありませんか。労農党からも入れてくれなんて私は言わない。社会党からも入れて超党派的にやったらどうですか。そういう考えはないのですか、どうなんです。それはアメリカさんから何か言われているのですかどうなんです。
  45. 重光葵

    重光国務大臣 今のは社会党の御意向を代表された御意見ですか。代表された資格はどういうことになりますか。私は超党派的と申し上げたんじゃない。あなたの言葉を解釈した私の解釈では、先ほど申し上げた通りであります。責任はあくまで政府がとります。責任は政府及び政府与党がとらなければなりません。これは当然のことであります。しかしこれを今、党派の代表者を選ぶという考え方で進んでおるわけではないという内情を申し上げました。私の考え方を申し上げました。すべてのことは今検討して、お話の件もよく検討してみてやりましょうということを申し上げておるのであります。
  46. 岡田春夫

    岡田委員 あなたはいつも、すべては検討して検討してと言っているから、外交方針がほかの方できまってしまうのですよ。あなた自身だけで検討しているもんだから、ほかの方で待っていられないから、河野外務大臣ができたりいろいろな外務大臣ができたりして、あなたの知らないうちにきまってしまうのですよ。あなたが外交の責任者なら、もっとはっきりおっしゃったらどうですか。これからどうするのか、日ソ交渉は今月の末までにきめるのか、どこでやるのか、外交の方針はどうなのか、平和条約方式でいくのかあるいはアデナゥアー方式でいくのか、あるいは混合方式でいくのか、こういう点をこの機会にはっきりおっしゃったらどうですか。私はむしろあなたに助け舟を出しているのです。河野さんに負けないように、しっかりやりなさいと言っているのです。ただアメリカのひもつきになっているあなたじゃ困るといっているのです。しかしあなたがほんとうに日本国民のために、日本とソビエトの国交回復をやるというならば私は協力を惜しみません。あなたがいつも手おくれの状態で、ほかの方でやられるから、われわれも気の毒だと思って今激励をしているのだから、はっきりおっしゃったらどうですか。はっきりおっしゃいなさいよ。どこでどういうふうにやるのだ、全権はだれとだれにするのだ。おれは砂田がきらいだというなら、きらいだとはっきりおっしゃいなさい。社会党も入れるのだ、あるいはロンドンでやるのだ、あるいはモスクワでやるのだ、外交の方針はこうするのだ、こういうようにはっきりおっしゃったらどうですか。私はむしろ激励しているつもりで言っているのですよ。何か抽象的な雲をつかむようなことをおっしゃるよりも、もっとはっきりおっしゃった方がいいと思うのです。もう一度全体的に、総括的にあなた自身がはっきりおっしゃるようにお願いをしたいと思うのですが、大臣に一つその点だけもう一度だけ伺っておきます。
  47. 重光葵

    重光国務大臣 あるいは今の御意見については私はお答えするのもどうかと思いますが、せっかくの御激励でございますから、御激励にこたえてお答えします。私は外交問題は、あなたの言われるように早急に交渉の始まらぬ前から、交渉を見通したようなことをどんどんぽんぽん言って回ることは禁物だと考えております。私は慎重にやります。日本の国家の将来を考えてこういう問題を軽率に、ただある一部の満足を得るために、具体的に結論することは慎しまなければならぬと考えております。そこで方針がないじゃないか、方針はちゃんときまっておる。これはもうはっきりと申し上げておる。国会の了承も得ておると思う。その方針でいくわけであります。あなたもその辺は十分に耳にたこのできるほど聞かれておるわけであります。それだから新しい何か変ったことがないかといえば、ありようがないじゃないですか。そういうことをどんどん言うことが非常に国家のために利益にならぬということは、もう御承知の上で言われておることと私は思う。そうしてみれば、私はその御激励のお言葉にはあくまでこたえて、できるだけ私の正当と信ずる、またいいと信ずる方針に向って努力をしたいということをお答えしまして、一つ納得を得たいと考えます。
  48. 岡田春夫

    岡田委員 もう一つだけ。これは君子は豹変するということがあるけれども、あなたもずいぶん豹変する人らしいのだということを私は感じたのですが、つい一週間前にあなたは——まだ一週間もたってない、日ソ交渉の方式については、今までの方式通り松本全権でロンドンでやるのが当りまえだと言ったじゃありませんか。それなのにいつの間にか今度は松本全権じゃなしに佐藤全権だとか、だれにしようとかいって、ぐるぐるぐるぐる回っている。私の言っているのは、いかにも方針がなさ過ぎるじゃないか、ふらふらしているじゃないかということを言っているのですよ。あまりだらしがないじゃありませんか。こういう点を私ははっきり伺っておきたいとているのです。こういう点があなた自身がいかにもだらしがない状態であると国民は全部そういうふうに感じる。ソビエトからも、感じられる。日本の外交を交渉する場合に、もっとはっきり日ソの国交回復をやったらいいじゃありませんか。何かはかの方に遠慮して、言いたいことも言わないでいることが外交の政策であると考えているのは、外交の政策かもしれませんが、しかしそれは戦争前の外交政策でしょう。今の外交政策はそういうものじゃなくなっているんじゃないですか。もしそういうことが正しいと思っているのなら、だんだんずれて、きているんじゃないですか。こういうことを言っているのです。こういう点をもう一度はっきり伺っておきたい。  もう一つ沖繩の問題です。沖繩の問題については、この間条約局長が、外交保護権はございます、法務省の言っている通りでありますと、その点については、通りでありますと速記録に残っていますよ。閣議ではだいぶ牧野法務大臣とやり合ったらしいのですが、その点については法務大臣の意見通りだということを了解されたのですか、どうなんですか。そこの点を一つ伺っておきたいと思います。
  49. 重光葵

    重光国務大臣 いろいろ私個人に対する御非難もあるようでございます。それは私は慎しんで伺って、自分の反省に供したいと考えます。しかしながら、ずれがあると言われるが、あなたの御調査も実にずれだらけのように私は感じます。(笑声)私は、終始一貫日ソ交渉は再開するのだ、現にわれわれは日ソの国交の正常化を目的としてずいぶん努力して、交渉もして参ったのである。これが不幸にして中断されたのである。だからこれを再開するのが至当じゃないか、これを繰り返して私は言っているわけであります。しかし再開する場合に、だれが局に当るかということは、これは従来の再開をするのだから、従来のことを一応考えるのは当然じゃないか、こう言っております。しかしながら人間のことでありますから、病気もしましょう、いろいろなことがありましょうから、またかえる必要があるかもしれません。またほかの考慮もありましょう。しかしそういうことは第二義的なことであって、日ソ交渉を再開するのだということを繰り返し繰り返し申している。それはだれも誤解はないと思う。そこでそれがまた変っているとか、ずれがあるとかいうのはあなたの御観測で、私はそれをどうというわけじゃございません。しかしこれはずれも何もございません。日本はあくまで日ソ国交の正常化を希望してその目的のために過去においても交渉を開いている。しかしながら、それだからといって国交の正常化だけをすると言って済ますわけにはいかぬということは、あなたも御承知通りであります。そこで、ここに交渉の必要が起ってくる。日本日本主張を十分に貫徹すべく努力しなければならぬ。その努力をしようというのが交渉のなにでございます。これは終始一貫同じことでありまして、そういう点においては、私はこれは正しい、日本の行く道であると考えております。これは終始一貫で、ずれも何もございません。  それから……(岡田委員「法務大臣の意見を正しいと認めるかどうか。」と呼ぶ)私は、国際法の問題は国内的の法律関係として取り扱うわけにはいかぬと思います。そこで国際法的に外交権とはどういうものであるかということは十分検討しなければなりません。しかし、外交権という国際法の法理はまだ確定していないと思います。そこでこれが権利であるとかないとか言って議論をし合って、時間をむなしく費すひまは私はないと思います。だから、私はこれはあくまで交渉をして目的を達するように、最善の努力をしなければならぬと申しているわけであります。
  50. 岡田春夫

    岡田委員 ひまがないと言うけれども、何もやってないのに、ひまがないどころか、ひまでしょうがないじゃないですか。何もやっていないのです。それくらいのことは研究したらいいじゃありませんか。日本政府の方針じゃありませんか。あなたの下の下田条約局長は、あれは正しいと言っているのですよ。あなたはそんなひまはないと言ったって、考えたらいいじゃないですか。わからなかったら、これはどうかといって局長に聞いたらいいのです。そんな簡単なことをやるひまがないなんてそんな話はありませんよ。だから困ると言っているのです。はっきりなすったらどうですか。しかもあなたの外交政策は、吉田内閣のときの少しいかれているのから見てもっとよくなるのかと思ったら、悪くなっているじゃありませんか。一九五二年すなわち昭和二十七年には貿易関係の問題の通達が沖繩に対して出ているんだ。その通達の場合においては、沖繩は内国としての扱いをするといっているじゃありませんか。しかもこの場合には、条約でない限りにおいてこれは政府、大臣の正式のあれでないのですよ。局長の通達ですよ。局長の通達ということは、行政事務というものは沖繩にまで及び得るということを現わしているのですよ。これほど内国の扱いをやっておったのに、近ごろになったらどうですか。重光さんの場合においては、その言い方だけは日本の国籍があるとかなんとか言っているけれども、さっぱりやっていないじゃありませんか。何をやっているか、もっと聞きたい。さっきあなたはお前の方がずれていると言ったけれども、私はあなたの方がずれていると思う。ずれているというのは、この間の穂積君への答弁を聞いてごらんなさい。穗積君への答弁において、アイゼンハワーが沖繩占領は期限がないと言った、これに対してあなたは期限をつけていない、こういうふうに解釈するのだと言っているんですよ。これでは笑い話ですよ。期限がついていない。それでは期限がついているのならどういうふうに期限がついているか。戦争前だって——私よりもあなたの方は戦争前の外交問題は詳しいでしょうが、大連はどうですか。大連だって日本が持っていたときには九十九年間という期限がついている。それと同じことじやないか。それは永久占領ということではないかというんですよ。しかも永代借地でなくして所有権だ。これだって笑い話ですよ。ところが今お話のように、これは国際法上の問題で、国内法の適用はしないというふうにあなたがおっしゃっているのなら、なぜ国内における民法上の所有権なんか持ってきて苦しい答弁をするか。永代借地じゃないか。これははっきりしているじゃないですか。国が持っているんですよ。期限がない。国が持っていて期限がなかったら、永代借地にきまっているじゃありませんか。そんな答弁をして、なぜアメリカのために奉仕しなければならないのか。はっきりなさったらいいじゃありませんか。日本国民政府なら、日本の立場ではっきりなさったらいいじゃありませんか。なぜそれをやれないかと言うんですよ。こういう点をもっとはっきりなさいよ。アメリカとの交渉は対等の立場でなさいよ。それができないじゃありませんか。やってないじゃありませんか。そういう点をもっとしゃんとしてもらいたいと言うんですよ。  もう一つ、これで終りますが、最後に水爆の実験についてどうですか。あなたは、五月の初めから二回行われた実験については、事前に通告があった。今月になってから三回あった実験については全然無通告だ。これはどうしておくのですか。ほうっておくのですか。水産業者も漁民もこれは大へんなことだと言っていますよ。アメリカから通告がなければもうしょうがないんだといってだまっておくのですか。それが重光さんの外交政策の基本方策なんですか。アメリカさんの言うことならばだまっておきましょうというのが、重光さんの基本方針なんですかというのですよ。もっとはっきりアメリカに要求したらいいじゃありませんか。日本国民が困っているんだ。国民が困っているなら、国民を代表する政府だとあなた自身考えるならば、はっきり交渉なすったらどうですか。国民を代表する政府でないんだとお考えなら交渉する必要はないかもしれぬ。国民を代表する政府であるならば交渉なすったらいいじゃありませんか。この原水爆の問題についてどうするのですか。  外交保護権に関連して沖繩の問題に対しては、吉田内閣のときよりももっとずれてきている。はっきりと交渉するという態度、これについてどういうような見解を持っているか。それから水爆の無警告実験というものについて、外務省としては今後どういうように御措置をされるのか、これだけを伺って、私終りにしたいと思います。
  51. 重光葵

    重光国務大臣 私は今の御激励のお言葉に対して、特にかれこれ批評申し上げるわけじゃございません。(岡田委員「激励に批評する人がいますか。まじめに答弁すればいい。」と呼ぶ)しかし、いかにも、たとえば沖繩の問題については法律論を述べられておるようだけれども、あなたの言われた法律論はいかにも法律的でないことを私は結論として申し上げて、そうしてこの法律論についてはちょっと意見を伺う値打がないように私は考えております。(岡田委員「わからないんだ。新しい国際法はわからないんでしょう。」と呼ぶ)君がわからないんだよ。ところが沖繩の問題について、沖繩人日本人として取り扱うということはこれは当然のことであります。それだから国籍法とか、恩給法だとかいうことは、これはやっておる。しかしながら沖繩において統治権が日本にはないということも、これは法理論として当然のことであります。そこでそれは何もアメリカ側にどうとかこうとか、しきりに大声疾呼されるには及びません。私にはアメリカのひももついていなければ、ソ連側のひももついておりません。  原水爆の問題については一括して予告も受けておりまするし、それから参衆両院の決議等に関連して——その前にもやっておったのでありますが、それに関連して、日本の立場は関係国にはっきり申し入れて、そうして常にその立場を主張してきておるのであります。その主張は漸次各方面に浸透して、効果を現わしつつあるように私は観察します。このごろではちらほら原水爆の実験に対する反対の空気が、各国の間に漸次出てきておることは事実でありますから、結局これは日本主張ということも関係があることだと考えてその点だけは満足をいたしております。なお一そうそれについて主張を貫徹すべく努力したい、こう考えております。
  52. 岡田春夫

    岡田委員 あなたは一括とかなんとかごまかすけれども、だめですよ。五月のときには事前通告二回ともあったのでしょう。今度の場合、事前通告が三回ないのですよ。これはどうなんだと聞いているのですよ。漁民なんかも困っているのですよ。なぜこれを抗議しないんですかと私は言ってるのですよ。いいかげんな答弁技術だけでごまかしたってだめですよ。漸次国際的にも認識しつつある、とおっしゃるが、そんなことは、ずれていると言わざるを得ない。原水爆禁止の署名は七億ですよ。その七億に対して近ごろだんだんに認識して参りましたというから、あなたはずれていると言わざるを得ない。国際的には、大きな原水爆禁止の問題はジュネーヴの巨頭会議でも話し合いがついているじゃありませんか。それなのに、漸次なんて言っているのは、日本政府外務大臣ぐらいなものですよ。事前通告があったのなら、なぜ正式に発表しないのです。そうしなければ、漁民はわからないじゃないか。あなただけ知っておったって、日本国民は、ほかの人はわからないですよ。なぜ発表しないのです。はっきりしなさい。五月のときには事前通告が二回あったのです。今月になっての三回は、全然無通告です。無通告の場合は漁民は出てしまうじゃないか。あなただけ知っておったってだめですよ。なぜ公式に発表しないのですか。事前通告がなかったならなかったで、なぜアメリカに抗議しないのですか。日本国民の生命の問題に関係しているから、私は言っているんですよ。一括してあるからどうでございますとかという、そんなことだけの答弁技術はよしてもらいたい。まじめに聞いているんですよ。(重光国務大臣「まじめに答えている。」と呼ぶ)あなたの答弁はまじめじゃない。さっきから何を言っているのかわからない。そこの点、アメリカ政府に対してどういうふうにするのか、はっきりお答え願いたいと思います。この点だけでもはっきり伺っておきたいのであります。ないならない、あったならあった、そうしてあった内容は何であったか、なかったならどうするかということをもう一度はっきり伺いたいと思うのです。この点だけでもはっきりまじめに答弁して下さい。どうですか、事前通告があったのか、なかったのか。今月に入ってから三回ですよ。日付も言いましょうか。日付も知らないのかもわからないから言っておいた方がいいでしょう。日付は、七月に入ってから三日、九日、十一日と、三回あった。これは事前通告がないのです。五月のときには二回行われたが、これは事前通告があったのです。このなかったことに対して、ほんとうに事前通告があったのか、なかったのか、この点が一つです。大臣が御存じなかったなら、うしろに情文局長田中さんも見えておられるから、あったのか、なかったのか、問い合せてもらってもけっこうですから、事前通告があったのかなかったのか、なかったのならどうするのか、アメリカに対してどうするのか、あったのなら、発表したのかしないのか、この点もう一度だけ伺っておきます。どうですか。日本国民の生命に関することですから、はっきりお答え下さい。
  53. 重光葵

    重光国務大臣 原水爆の実験があれば必ず通告がございます。その通告はむろん全部遅滞なく発表をいたします。今日までその手段はとって参りました。そこでその後において原水爆の実験が行われておるようである、こう言われます。(岡田委員「ようだというのじゃなくて、やったんですよ。三日、九日、十一日にやっておるのですよ。戦後最大のものをやったんですよ、十一日のきのうのやつは……。」と呼ぶ)三日、九日、十一日、それはですな……。(岡田委員「それは知らされなかったんでしょう、だから——やっているじゃないか。」と呼ぶ)でありますから、通告のあったのは全部発表します。むろん発表します。発表しないのは通告がなかったから発表しない。しかしそれがどういうものであるか、果してどういう事態においてそれが行われたかということは、これは向うに問い合せをしなければなりません。今しております。
  54. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ三日、九日、十一日には事前通告がなかったんですか、どうなのですか。通告があったなら発表しているでしょう。発表していないのなら、それじゃわれわれとしては通告がなかったと解釈してもいいのですか。だから三日、九日、十一日はあったんですかなかったんですかと私は聞いているのですよ。通告があったのかなかったのかということをまず伺いたい。なかったならなかったとおっしゃい。
  55. 重光葵

    重光国務大臣 私は御指摘の点はまことに理由があると思います。それは私ども十分検討しなければなりません——検討じゃない——ただこういうことはあります。通告があれば必ずすぐこれは発表します。しかしながらそういう実験をしたという事実をアメリカ側は今日まで認めておりませんことを申し上げます。それでありますからさようなことがあなたの御調査にあれば、それをもととしてなぜそういうことになっておるかということを抗議してもよろしゅうございます。しかしそれは向うに十分問い合せをしなければ、ちょっと真相はわかりません。
  56. 岡田春夫

    岡田委員 そんな話じゃないのだと言っておるのに困る。通告があったものは発表しておるでしょう、それはわかります。その点は外務省に落度があったとは私は思いませんよ。アメリカが通告をよこさないのはけしからぬじゃないかと言っておるのだ。これは私だけが調査したのではない。外電が言っておるじゃありませんか。三日、九日、十一日に実験をしたと外電が言っておるじゃありませんか。それをまだあなただけが知らないのですか。そういうことがあったかなかったのか知りません、それこそ無責任な政府じゃありませんか。国民が死ぬか生きるかわからないというときに、そういうことは通告がなかったから知りませんと言っておるのはだらしがないじゃありませんかとさっきから言っておるのですよ。政府はこの点についてアメリカに対して厳重な抗議をなぜなさらないのですか。そういう実験に対してなぜまだ通告をしないのだと言ってあなたは抗議しないのですか。その態度を明らかにしたらよろしいじゃありませんか。君の言うことには理由があると思う、理由があるどころの話ではない。外電に発表しておるじゃないですか。実験をやっているのは事実です。その実験をやっておるのに通告がないなら無通告でやっておるということじゃないですか。それに対して、無通告でやっておるのに日本の外務省が黙っていてよいものかと言っておるのです。その点はどうなんだということを言っておる。抗議をしなければならぬじゃないですか。なぜ抗議しないのですか。一括の通告であったというなら、五月に二回事前に通告があったのはどうなんだと言ってなぜ抗議をしないのですか。抗議をするといったらよいじゃないですか。約束が違うじゃないかとアメリカに言ったらいいじゃありませんか。
  57. 重光葵

    重光国務大臣 今度は僕に言わせてくれたまえ。(笑声)そこで私の言いました——お話の点は理由があると思います。そういうことであれば私は十分に処置をとるつもりであります。(「厳重に抗議しますか」と呼ぶ者あり)私の言うことも聞いて下さい。三日、九日十一日に実験をしておるということについて外電がこうである、外電がこうであるということを言いますけれども、外電もうそがずいぶん多い。(笑声)そういうことを検討しないで、十分議論をするわけに参りません。だから、今は一体そういうことがほんとうであるかどうかということを聞き合しておるところであります。(岡田委員「しているのですか。」と呼ぶ)しておるのです。もしそういうことがありますならば、十分に向うに抗議を申し出るということは、理由があると思います。
  58. 岡田春夫

    岡田委員 問い合せておるのなら、いつ問い合せしておるということをはっきり答弁したらいいじゃありませんか。しかもこの問題については、国会であれほど決議をして、あなたも再々答弁をして事前の通告はいたしますという三条件を——われわれは三条件なんか作るのは反対だった。原爆の実験なんかやるのは反対だから……。しかしとにかく三条件については、アメリカ政府日本政府とお互いに了解をしたわけでしょう。その三条件さえ無視されているじゃありませんか。あなたは外電もいいかげんなものもあるからと言うけれども、あなたは最近の科学の知識がない。実験をやれば日本の国内だってわるる。カウントの何ばかりでなく、振動によって、地震計でちゃんと出るのです。あなたはそういうことをわからないでいてそういうことを言うからいけない。そういう事実があがっておるのに、あなた自身やっておるのか、やってないのかわかりませんから、今聞いておるのであります。アメリカに対して、その三条件を無視されているのなら、なぜ抗議をなされないのかと聞いておるのです。われわれの今言っていることは、われわれの主張よりもうんと程度を下げて、日本の外務省でさえやれるのだ、重光外務大臣でさえやれるのだという程度で言っているのですよ。なぜ厳重に抗議しないのですか。厳重に抗議するとおっしゃったらいいじゃありませんか。そしてそういう点を問い合しているというのなら、はっきり伺いたいのです。いつ問い合したのですか。三、九、十一日ですよ。きのうもやっているのですよ。いつ問い合せたか、はっきりおっしゃい。何日、どういうように、だれを通して——日本アメリカ大使館ならアメリカ大使館を通して、どういうようにしたのだということをはっきりおっしゃったらいいでしょう。これほど大きな問題となっているのを、どうするのですか。
  59. 重光葵

    重光国務大臣 決して私はこの問題はつまらぬ問題だとは申し上げません。しかし三、九、十一日と——今月です。それだから、こういう新聞記事について真否を問い合せ中であるのであります。きょうは十二日ですか……(笑声)(岡田委員「きのうやったのです。」と呼ぶ)そういうことについて問い合せをしています。
  60. 岡田春夫

    岡田委員 いつ問い合せたのですか。
  61. 重光葵

    重光国務大臣 いつ問い合せたということは……(岡田委員)「問い合せていないから、日にちも言えないのでしょう。」と呼ぶ)そんな乱暴な話はないでしょう。これは、もう必ずやります。そうしてその上で適当な処置をとります。
  62. 岡田春夫

    岡田委員 いつ問い合せたかということを聞いておる、その日付を言えないでしょう。
  63. 重光葵

    重光国務大臣 日付は、問い合せてみなければわからないでしょう。
  64. 岡田春夫

    岡田委員 それではこれで終りますけれども、もし実験を、三、九、十一日にやっていたとするならば、しかも今日まで通告がなかった、その場合に政府はどうしますか。
  65. 下田武三

    ○下田説明員 事実の点を申し上げたいのでございますが、わが方の、日本政府の要求に応じまして事前通告をアメリカ側がやってきておるのでございますが、ただ未決点があるのでございます。それは個々の実験の一々について事前に通告するということまでは、まだアメリカ側は約束していないのであります。それは、やはり軍事上困る、のぞきにこられても困る、どこか国籍不明の飛行機が来て実験装置を爆破されても困る、それは、軍事上個々の実験場所を事前に通告するということは困るということでございまして、わが方はそれは要求はしておりますけれども、アメリカ側は軍事上それだけは困ると今言っておるのであります。ですから、七月になりまして、三、九、十一日に実験があると仰せになりますが、それはアメリカ側はまだちっともコンファームしていないのでありますから、真相は、七月以前のそういううわさがあったときからもうすでに問い合せておるのであります。しかしそれは、向うの通告を個々の場合について約束をしていないのでありますから、約束違反だということをわが方から責める地位には今ないのであります。それは今要請中の事項でありますから、その点の関係だけをちょっとはっきりしておきたいと思います。
  66. 岡田春夫

    岡田委員 それでは条約局長に伺いますが、あなたの今の答弁を聞いておると、三、九、十一日の事前にそういう点を打ち合せておる、これは明らかに語るに落ちておるじゃありませんか。実験をやっておるか、いないかわからないのに問い合せておる、何を問い合せているのですか。
  67. 下田武三

    ○下田説明員 地震計でございますか、私も科学的なことは知りませんが、とにかく空気中の波の変化によって原爆の実験が行われたのではないかという新聞紙の記事は、七月になる前から実はあったのであります。あるものは、それはソ連だろうというようなことを書いておるものもございました。しかしそういうことは実は推測なのでありまして、外交上申し入れをするというのには、まず事実を確認しなければ新聞記事でそういうことが推定されるということでねじ込むわけにはいかないのであります。でございますから、向うが約束したならば約束違反だとねじ込むことはできるのでありますけれども、向うでそれは軍事上ちょっと困ると言っておるのに対して、わが方はそういうふうに日本側の希望に応じてくれという要請中の関係でありまして未決点でございます。従いまして法律上から見ますと抗議をするという地位にはないのであります。
  68. 岡田春夫

    岡田委員 それは下田さん、ますます語るに落ちるから、そういう言い方をしない方がいいですよ。七月三日以前に囲いたというのなら、いつのものを聞いたのですか。三日にあったということは、あとにならなければわからないじゃないですか。いつのものを聞いたのですか。あなたは語るに落ちますよ。いつのものを聞いたのですか。五月のものを聞いたのですか。冗談じゃないですよ。三日のものについて聞いたのか、九日のものについて聞いたのか。三日のことを聞いたのは、いつ聞いたのですか。何日に聞いたんです。そうしてそれに対して返事があったのですかどうなんですか。あなたがさっき御答弁になったように、三日以前に聞いているなら、それに対しての御答弁があってもいいと思うが、それはどうですか。
  69. 下田武三

    ○下田説明員 私はその主管者ではございませんけれども、私の接触しておる法律的の部一向においては、この問題は常に話しておるわけであります。また日本側といたしましては、できれば事前の通告も得たいということを話しておるわけであります。しかし先ほど申し上げましたように、この点はまだ不幸にして意見の一致を見ていない点であるということであります。  なお申し上げますが、日本側の一番の、要点はわが国民に、日本の漁船や漁民に被害が及ばないということであります。それで事前通告を求めておるのも、なぜかと申しますと日本国民に、口日本の漁船や漁民に被害が及ばないということを願うからこそであります。その点につきましてはアメリカの言い分は、これはもう人間としてあらゆる可能な予防措置をとっておるのだから、もしその点だけから事前通告を個々の場合において要求されるなら、それは御心配ありませんというアメリカの立場なのであります。そういうことで、まだアメリカ側から個々の実験についての事前通告をいたしますという約束をとるということはしていない、そういう実情であるのであります。
  70. 岡田春夫

    岡田委員 そんなことはどっちだっていいじゃないですか。これはもう切りがないからやめますけれども、大臣最後に伺っておきますよ。この三条件について合意があったかなかったかということが問題なんじゃないでしょう。日本国民に被害があるかないかということが問題なんでしょう。無通告のそういう実験があったのなら、日本政府としては抗議するのは当りまえじゃありませんか。外務大臣そう思いませんか。…条件の話合いができたからとかなんとかいう、そんなことを考えているから、陳情し歎願するのだ、それでいいのだなんというのですが、重光さんの外交方針というのはそういう方針なんですか。日本国民に生命上の影響があるから、厳重に抗議するのは当りまえじゃありませんか。アメリカが何と言おうと、日本が抗議するのは当りまえじゃありませんか。外務大臣どう思いますか。実験がもしあって通告が今までなかったとするなら、これに対してあなたはどうするんです。抗議しないのですか。抗議しないのならしないとおっしゃいよ。日本国民にしないのだと発表なさいよ。抗議するならするとおっしゃいよ。はっきりおっしゃったらいいじゃありませんか。あなたのとる態度はどうなんですかということを伺っているのです。しないならしないとおっしゃい。国民はそれに対してどういう反応を下すか。抗議するのが当りまえじゃありませんか。いつまでも切りがない。ほかの人に迷惑がかかるから、私はこれでやめたいのです。実験があって通告がなかった場合、抗議するのかしないのか、私は聞きたいのです。条約局長に聞いてはいません。大臣にはっきり聞いておきたいのです。
  71. 重光葵

    重光国務大臣 原水爆の問題について国民的利益を擁護するということは、これは当然であります。方針はそこにあります。事実を正確につかまなければなりませんから、正確につかむだけの処置をいたします。そのことを私は申し上げておるわけであります。
  72. 岡田春夫

    岡田委員 もしそういう事実があったらどうするのだということを聞いておるのです。
  73. 重光葵

    重光国務大臣 そういう仮想的のことではちょっと困ります。事実をはっきりした上で処置をいたします。
  74. 前尾繁三郎

    前尾委員長 戸叶里子君。
  75. 戸叶里子

    戸叶委員 私は沖繩の問題で二、三点伺いたいと思いますけれども、今岡田委員重光外務大臣との質疑応答を通じましてまことに遺憾にたえないことは、私自身重光外務大臣は非常にまじめな人のいい方だと思っておりましたけれども、今日のような国民に非常に被害を及ぼす重大な問題に対しても、しかも原水爆実験に対して国会で何度も禁止してほしいということを国民の要望として出しておる、さらにまた実験が三回通告なしに行われたということが事実であるにもかかわらず、事実を調べた上で考えるというふうな発言をされていることを、私ほんとうに国民の一人として悲しく思うものです。やはりこの問題は堂々とアメリカに向って日本国民はこういうことを願っているのだということを、はっきり言う立場に立たれている外務大臣でございますから、無通告でこういう実験が行われたということに対しては、はっきりとこういうことをしてもらっては因るということを抗議すべきだと私はこう思うのですけれども、そうお思いにならないかどうか、もう一度私は御意見を伺いたいのです。
  76. 重光葵

    重光国務大臣 そういうことを抗議する場合には、抗議の基礎がなければなりません、その基礎を十分に、正確につかむことが必要でございますから、その手続をやっておるわけであります。私はその上でどうするかということを考えても少しもおそくはないと思います。それがまた政府の措置が手ぬるいとかなんとかいうようなことにはならぬと私は思います。十分にやります。
  77. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは事実であったときにはどうぞアメリカに対して抗議を申し込んでいただきたいと思いますけれども、いかがでございますか。
  78. 重光葵

    重光国務大臣 そういう御意見は十分に拝聴して私は処置をいたします。十分御意見として拝聴いたします。
  79. 戸叶里子

    戸叶委員 大へん御答弁に慎重で、御意見として拝聴しますだけで、拝聴してその通りいたしますとまでおっしゃっていただけなかったことは大へん残念だと思います。  それでは沖繩の問題を二、三点伺いたいと思いますが、六日の日に沖繩代表がレムニッツアー司令官と会ったけれども、その会談の結果プライス勧告の範囲内で自分たちの案を進めていくというようなことを言明された、非常にがっかりして沖繩代表が帰ってきて、重光さんに会見をいたしましたところが、外務大臣は、アメリカでも十分考慮を払っている様子だから相当の希望が持てると思う、こういうふうにお答えになったように私は新聞で了承しております。そういうことを私はちょうど選挙の二日前に読みまして、それではある程度希望が持てるのかなと思って非常に喜んだわけですけれども、この希望というのは一体具体的にどの程度の希望ということを意味しておられたのか伺いたいと思うのです。つまりプライス勧告を変える余地があるという程度の希望であるか、あるいはまた補償措置などもある程度する、総理大臣がちょっと漏らしましたように、代替地を探すとかあるいは地代を上げるとか、こういった末梢的な問題での希望であろうか、それとももっと根本にさかのぼっての希望であろうか、この点を伺いたいと思います。
  80. 重光葵

    重光国務大臣 沖繩代表米国軍司令官に会っての要請は私も間接に聞きました。しかしその際に私は沖繩住民の代表に会う時間がございませんでした。私が会ったというのは何かの誤報でございましょう。私はその一両日は選挙のために出ておったものですから、そういう機会はございませんでした。しかし外務省の当局から沖繩住民に、正確ではございませんかもしれませんが、大体そういう考え方を言ったことも事実でございます。そこで今の御賛同の点でございますが、これは沖繩住民の、要請を全部理由あるものとしてわれわれは支持して参おるのでありますから、全部アメリカ側がこれをいれることを希望しておるわけであります。しかしアメリカ側に言わしてみますと、プライス勧告というものはそんなに倉卒の間にできたものじゃないのだ、沖繩事情も十分調査をし、沖繩における住民、特に責任者の意見をも十分に聞いた上で、長い間の調査の結果できたのだ、だからすぐこれを全部変えるということはアメリカ側としては困難な立場にあるのだということは言っておるようでございます。言っておるようでございますが、今問題になっておる、土地をもうこれ以上は——アメリカ側の言葉で言えば、最小限度の必要を満たすためならば別として、新たに土地をどんどん収用するというような考え方はないということも承知しております。  それから一括払いの点でございますが、これらも今一括払いをやめるのだというようなことは少しも表示していないようでございますが、しかし日本側の、また沖繩住民側の要請一つ十分に聞いて、そしてこれを東京においてもワシントンにおいても検討していこう、気持は、あくまで調和して、協力を得るために努力しようという気持であることは確かでございます。その後ほとんど連日のように米国当局者と私の方は連絡をいたしております。その結果、アメリカ国内の方面にも、ずいぶん強い議論もあるし、また非常に弱い議論もある。そういうわけだから、こういうことを少しでも前進させるためには時間を要するのであって、一つそのつど十分意見を聞かしてくれ、時間をかしてもらって、できるだけの努力をしてみようというのがアメリカ側の今の態度でございます。レムニッツアー将軍も、自分みずから沖繩にも行って自分の目で見たいということも漏らしております。これは果して実現するかどうかは別問題でございますが、さような方向に進んでおるわけでございます。そこで根本問題は、すぐ容易にこれが変ることは困難であるように向うの態度はうかがえますけれども、しかしそうかといって、沖繩住民のがまんし得る程度の調和点を発見しようという努力は、十分にする用意があることをわれわれは承知しておる、こういうことだけを申しておきます。
  81. 戸叶里子

    戸叶委員 今回の沖繩の人たちの態度というものは、はっきり言っておりますように、別に反米闘争ではない、自分たちの祖先伝来の土地を守るという意味から、一致団結して結束しておるということをはっきり言っております。そういうところから考えてみましても、もしもアメリカの方で、今重光外務大臣がおっしゃったように調和協力の気持があるというようなことを考えているとするなら、これは当然プライス勧告を退けるなり、あるいはプライス勧告をはっきりと大幅に変えるなり、そういうことになろうと思いますけれども、先ほどの希望というのはそういうように了解してもよろしいわけでございましょうか。
  82. 重光葵

    重光国務大臣 その点は今私がるる申し上げた通りございます。
  83. 戸叶里子

    戸叶委員 今おっしゃったように、ほんとうにアメリカがプライス勧告というものを退けるように、外務大臣としてもぜひともその強い線で進めていっていただきたい、こういうことを要望いたします。  そこで、きのう少し問題になったことですけれども、フィー・タイトルの問題で、アメリカ大使館の法律担当官が、この解釈について、これは絶対所有権と同一であるということを言い、それを非公式に外務省の方に言ってきたということを私伝え聞いたのですけれども、そういう事実があるかどうかを伺いたい。
  84. 下田武三

    ○下田説明員 実は私がフィー・タイトルの意義を聞いたのでございまして、アブソリュート・オーナーシップということを申しておりました。アブソリュート・オーナーシップというのは、他人からとやかく言われないで、自由に、自分が好むように土地を使えるという意味のアブソリュートでありまして、これこそまさに日本法で申します土地所有権、日本土地所有権はまさにアブソリュート・オーナーシップでございます。フィー・タイトルというのは、日本法でそれに対応するものを見れば、これは永代借地権でなくて、むしろ土地所有権に該当するということを申し上げたのであります。
  85. 戸叶里子

    戸叶委員 そこで問題になって参りますのは、昨日の条約局長の御答弁によりますと、たとえば日本の国内においても外国人が土地を所有している場合がある。しかしそういう場合と今回の場合とは明らかに私は違っているんじゃないかと思います。それはなぜかと申しますと、沖繩の場合にはアメリカの個人の人が持っているのではなくてアメリカの国が所有していることになる。そうすると、どうしてもそこに国家権力というものが介入して参ります。そうすると、きのうの条約局長の御答弁で、沖繩からアメリカが退くときには、日本の国が全部そのあとを引き継ぐことができる、こういうふうにおっしゃいましたけれども、その場合に、国家が買って国家権力というものが介入している場合には、条約局長のおっしゃるようなことにはいかないんじゃないかということを私は考えるのですけれども、この点はいかがでございましょうか。
  86. 下田武三

    ○下田説明員 沖繩におきましてアメリカ政府が買い取る、あるいは合意が成り立たないで、土地収用法によりまして強制収用したというような土地が、日本沖繩が返った場合にどうなるかという問題がございます。これはそのときにいろいろ協定で取りきめる必要があるのでございますが、その場には二つ事態が想像できるのであります。一つは、沖繩日本にお返しするけれども、まだ基地アメリカに使わせてもらいたいという場合でございます。その場合には、ちょうど内地におけると同じように、行政協定上の基地として引き続き提供するかどうかという問題になると思います。それからもう沖繩を全部返して、アメリカ基地も要らないのだといってすっかりまる裸で渡す場合でございます。その場合には、アメリカが持っております土地は、これは基地としては要らないけれども、あるいは沖繩に総領事館を置きたいから、総領事館の敷地として、ある部分は引き続き使わせてくれというようなことがあるかもしれぬ。そういう場合には、内地で外国の総領事館に対する敷地契約を結ぶと同じように、民法上の契約をアメリカと結びまして処置するということになる。それからアメリカが使っておりました土地が、日本の見地から、日本の自衛隊としてこんな広い土地は要らないということになりますれば、これはまたもとの所有者に返すなり、あるいは所有者が要らなければ、売り払うなりして、完全に日本側日本法によりまして処理できることに相なると思います。それから先ほどのフィー・タイトルも、これも日本法の土地所有権として認めるということにおそらくなるだろうと思います。
  87. 戸叶里子

    戸叶委員 今条約局長は二つの例をお引きになりましたけれども、その二つのいずれをとる場合にも、結局日本アメリカとの間の協定を結ばなければならないということになるのだと思います。それがそのときになってアメリカ側日本側の望む通りの協定に応じてこないというような心配もありはしないかと思いますけれども、この点はどうですか。
  88. 下田武三

    ○下田説明員 先ほど申しましたような場合は、これは国際法上幾多の先例があるのでございます。これは実は領土の割譲の場合と同じことでございましてある領土が一つの国から他の国に移った場合に、その国に住んでいる自国人も持っておりましょうし、また外国人もたくさん土地を持っている例があります。そういう場合にどう処理されているかという大体の基準がございますので、その基準に離れるということは、これは日本はもちろんでありますが、アメリカ考えていない。ですから一般の私法関係土地の問題はほとんど私はないと思います。問題がありとしますのは、アメリカがやはり引き続き何らかの公けの目的で土地を使いたいという事項がありました場合に、その事項はどうしても両国間の取りきめできめなければならぬ、そういう関係に相なると思います。
  89. 戸叶里子

    戸叶委員 そうなって参りますと、それではアメリカがここを公けの目的で使いたいということで申し出た場合に、日本にとってそれが不利な場合とか、日本がどうしてもそれがほしいような場合には、日本としては主張できないわけですか、やはり向うに譲らなければならないということになりはしないかと思うのですが、いかがですか。
  90. 下田武三

    ○下田説明員 先ほど申しました第一の仮定の場合、つまり沖繩はお返しをするが基地だけは使わしてくれという場合、その場合には、沖繩安保条約及びそれに基く行政協定をそのまま適用するかどうかという点がまず協議の題目になると思います。その場合に、それじゃそうしようという場合と、いや沖繩については一つ別個の協定を結ぼうという場合があると思います。いずれにいたしましても、これは、アメリカが使用しておったから当然そのままなるというのではなくて、行政協定に ける施設の使用を許可する場合と同じように、合意によりまして、何もアメリカの必要とするものをそのままうのみになる必要はない、十分協議の余地があることと思います。
  91. 戸叶里子

    戸叶委員 協議の余地があると思っておられてその通りであればいいのですけれども、今までの例を見ますと、今の外務省のあり方ですと、どうしてもアメリカから大体においていろいろな点を押しつけられてきておりますから、そういう点を非常に心配をするものですが、この問題につきましてはほかの国の例などをもう少し調べた上で、後の機会にまた伺いたいと思います。  そこでもう一つ伺いたいことは、サンフランシス平和条約三条で、日本沖繩の行政、司法立法権を一応アメリカにゆだねた、そうして信託統治になるまでというふうなことが書いてあるのですが、国連憲章の七十六条の信託統治の目的というところを読んでみましても、沖繩を信託統治にすべき必要は何も認められないわけです。その目的に合った点が、私は沖繩には何もないと思うのですけれども、従ってそういう意味からいっても信託統治にすべきでもなく、一日も早く日本にそれを復帰せしむべきだ、こういうふうに考えられるのですけれども、信託統治にしようというふうにもしもアメリカから言われた場合に、何か国連憲章の七十六条の目的に合うような点があるかどうか、その点を伺いたいと思います。
  92. 下田武三

    ○下田説明員 国連憲章の七十六条は、ある地域を新たに信託統治にする場合の規定ではございませんで、信託統治になった場合にはどういう目的で施政権国は統治しなければならぬかという統治の大原則をうたったわけでありまして沖繩なりどこなりの地を信託統治にしようかどうかということを決定するのは、むしろ第七十七条の方の規定でございます。そこで七十七条に、「第二次世界戦争の結果として敵国から分離される地域」分離というのは、領土権まで取ってしまうという意味でなくて、その立法、司法、行政の三権を取るという場合も包含されると思います。ですから、かりに沖繩を信託統治にするということになりますと、第七十七条のもの規定が該当することになると思います。すなわち「第二次世界戦争の結果として敵国から分離される地域」というのであります。
  93. 前尾繁三郎

    前尾委員長 戸叶さん、まだあとでどうしても二、三人やってもらわなければなりませんから、時間をできるだけ……。
  94. 戸叶里子

    戸叶委員 私は大体時間制限をされているのは知っておるつもりなんですが、今始めたばかりなので、そう言われるのは何か少し……。(「十七分たっている」と呼ぶ者あり)わかりました、協力いたします。今の問題でももう少し伺っておきたいのですけれども、時同がないようですから、それではもう一点伺いますが、きのうの、やはり重光外務大臣でしたか、条約局長の説明で、土地を取り上げられた場合に、最後には、訴願とかいろいろな手続があるということをおっしゃいましたけれども、その土地接収委員会の委員というのは、大体アメリカ側がやっているのだそうでございます。そうなって参りますと、沖繩に住んでいる住民の人が土地問題でどんなにいろいろな要望を出しましても、おそらく聞き入れられておらないのじゃないかと思いますが。聞き入れられた例がありますかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  95. 中川融

    ○中川説明員 今の御質問の訴願委員会でございますが、これは御指摘の通り、構成は、アメリカ人が三名で構成しております。これに当該の人たちがほとんどみな訴えを出しているのであります。そうして現在までその訴えについて裁決が下ったものはほとんどなかったのでありますが、最近の情報によりますと、若干裁決が下ったそうであります。数は幾らでありますか、的確にはまだ報告に接しておりませんが若干裁決があった。その結果は、初めの価格の大体三倍程度のもので裁定しておるそうであります。
  96. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは外務大臣に二点だけまとめてお伺いします。先ほど大橋委員が、沖繩の人たちが非常にいろいろなひどい目にあっている。たとえば私どもが先日参考人意見を聞きましたときにも、婦人が間違って基地に鉄くずを拾いに行って発砲された、にもかかわらず何ら補償もされずにそのままうやむやになってしまった。こういうような事件のあることも聞いたのです。このことを指摘されておっしゃったと思いますが、大橋委員が、司法権アメリカにあるのだから、アメリカの方ではっきりそういうことを裁判すればいいじゃないか、そういうことを要請する意思はないかどうか、こういうことをお聞きになりましたけれども、それに対して外務大臣何の御答弁もございませんでしたが、これをどうお思いになるかそれからもしもそういうことが現地で取り上げられないで、日本政府まで持ってこられたときに、外務大臣としてどういうふうな措置をとられるか。  それからもう一つ日本に原爆基地というようなものが置かれる場合にはおそらくアメリカの方から一応前もっての相談があろうと思うというふうな御答弁を前々からしておられますけれども、沖繩にそういうふうな原爆基地というふうなものが——もうすでにあるという人もございますけれども、置かれるような場合には、外務大臣として、一応アメリカに何らかの話し合いを求めるかどうか、それとも沖繩はもうそういうことをされても仕方がないのだ、こうお考えになるかどうか、この点を伺いたいと思います。
  97. 重光葵

    重光国務大臣 原爆基地の問題から私の考え方を申しましょう。原爆を沖繩に持ち込むかどうかということは、アメリカがすべての権力を持っておるのでありますから、私はこれは法律上の問題じゃなくなってくると思います。しかし政治上の問題として、沖繩に持ってくるということは日本の最も関心を持つところでございます。それについては、もしそういうことが報じられた場合には、十分アメリカ側に問いただすつもりをいたしております。  それから発砲があった。これはさっき大橋君からそういう質問がありましたかどうか……。
  98. 戸叶里子

    戸叶委員 そういう具体的な例はお示しになりませんでしたが、総括的な問題としていろいろな問題があるけれどもということでお話しになりました。
  99. 重光葵

    重光国務大臣 そういう総括的な問題については、また具体的の問題があるならばそれを指摘して、米国側に対して十分に一つその点について要請をし、沖繩住民納得するような方法を講じてもらいたいということを私は申すつもりであります。
  100. 戸叶里子

    戸叶委員 これでやめます。
  101. 前尾繁三郎

  102. 田中稔男

    田中(稔)委員 時間もあまりありませんので、きわめて簡単にお聞きをしてみたいと思います。沖繩が平和条約の第一条で規定されておりますように、アメリカを唯一の施政権者とする信託統治制度のもとに置く、こういうアメリカ側の提案には同意を与えておるわけであります。朝鮮戦争が起ったあとにできたこの平和条約でこういう取りきめをしましても、実際問題として沖繩が国連の安全保障理事会において信託統治制度のもとに置かれるということは、ソ連の反対を予想します場合には、これはおそらく実現は不可能であろうと思う。これはあの当時からすでにわかっていたことだと思います。当時平和条約に調印した全権を呼んでその意見を聞けば非常にいいと思いますが、きょうは見えておりません。アメリカの方でそういう提案をする試みが今までに行われたかどうか、またそういうことについて日本側にそういう意向を伝えてきたことがあるかどうか、外務大臣にお尋ねをしたい。
  103. 下田武三

    ○下田説明員 この平和条約前後のことから関係をいたしておりましたので申し上げます。御承知のように日本は、ドイツからとって日本の委任統治にした旧委任統治領を信託統治にされるのは仕方がないけれども、沖繩はなるべく信託統治にしないでくれということを希望しておったわけであります。同胞たる沖繩住民を信託統治民にはしたくなかったからであります。実は日本の希望でアメリカは信託統治にしないでおるわけです。御指摘の今まで信託統治にする提案をしたことがあるかどうかという点につきましては、これはまだしたことがないとお答えを申し上げます。
  104. 田中稔男

    田中(稔)委員 そうしますと、日本側の希望に基いてアメリカがそういう提案を国連にまだ行なっていない、こういうわけですか。
  105. 下田武三

    ○下田説明員 その通りでございます。
  106. 田中稔男

    田中(稔)委員 そうすると、アメリカ側としては、その希望をいれて今後そういう提案はもう半永久的にしない、こういう見通しなのですか。
  107. 下田武三

    ○下田説明員 日本の吉田全権が講和会議前からそういう意向を通じておられましたので、そこでこの講和会議の席上、いわゆる潜在主権の声明をダレスがしてくれたのであります。これは沖繩を信託統治にする底意がありましたら、実はダレスとしては言えないことであったわけであります。そういうことを講和会議の席上で言ってしまった関係上、今さらアメリカとしては、信託統治にするぞということは言えない立場にあると思うのであります。
  108. 田中稔男

    田中(稔)委員 それはおかしい。平和条約に、信託統治の提案をする、それに日本は同意するということをはっきり明文でうたってあるわけです。もしダレスにそういう意向がない。吉田全権の希望をいれて、そういうことをアメリカとしてはもう考えないというならば、第三条の規定は全くナンセンスですね。どうしたわけですか。
  109. 下田武三

    ○下田説明員 昭和二十六年九月八日に平和条約が調印されたのでありますが、たしか八月七日だったと思います。平和条約の最終提案が発表されましてそのときに第三条の規定はこの通りになっておった。それを見まして日本政府は再応申し入れたのでありますが、各国と長い間交渉をしてきまった平和条約の内容を今さら変えることかできな、という向うの立場もありました。そこで条約はあの通りに調印するといたしまして、吉田総理が沖繩人は同胞であるから日本国民である。あの領土はまだ日本に潜在的に残しておるのだということを認めてもらいたい、これはもう日本民族の悲願であるということを切言されまして、それでダレスは、それではというので、今さら条約は変えることはできないけれども、日本の希望に沿った声明をしようということでああいうことになった経緯があるのであります。
  110. 田中稔男

    田中(稔)委員 条約草案がすでにでき上っておった、これを直すわけにいかぬという行きがかりでこういう第三条ができたというのは、全く当時の日本の外交の大失態でありますが、私は、これは大して意味がないのじゃないか。問題はやはり後段の部分であって、信託統治にどうせならない。ならないなら、その信託統治が実現するまでの間、立法、行政、司法の三権をアメリカにまかせるという後段の規定が非常に重要だ。アメリカのねらいもやはりそこにあったのだと思う。そうとすれば、信託統治にはアメリカはソ連のヴィトーがあってなかなか実現できない。それまでは主権の全内容をアメリカに譲渡したようなかっこうでありますから、そうだとすれば、この第三条の規定がある間は、アイゼンハワー大統領の教書の言葉を引用して、アメリカがこれをインデフィニトリーに、無期限に保有するという、あの言明ですが、それはそれとしまして、対日平和条約においてアメリカ沖繩保有を永久的に、しかも法的に確定しておる、こういうふうに私どもは考えるのでありますが、どうでありますか。
  111. 下田武三

    ○下田説明員 日本側の見地からいたしますと、信託統治にしてもらいたくないということは、もう一つの角度から見ますと、とにかく国連の決議を経て信託統治という国際的制度ができてしまいますと、その国際的制度はなかなか解消し得るものではございません。第一次大戦後できました委任統治についても、これもだんだん民族を発達させて独立向うということは言われておりましたけれども、実は委任統治を手放した国は、日本を初めどこもないのであります。ですから信託統治にされてしまったら、一度国際的にそういう制度ができたら、これはもうほとんど半永久的とあきらめるほかはありません。そうであるとしますと、信託統治にしてもらいたくない。それで今御指摘の後段の規定で暫定的の状態のままで持つとしまして、そうして国際情勢の変化に応じて日本に返してもらう道を広くあけておいてもらった方が、日本側から見ましても私は有利であったというふうに考えておるのであります。
  112. 田中稔男

    田中(稔)委員 外務大臣は先ほど、沖繩問題土地問題だとおっしゃった。なるほどそれは、当面問題になっておるのは土地問題であります。しかしやはり沖繩問題については、これは土地問題ではなくて、沖繩の国際的な地位自体が問題である。国会におきましても施政権を一つ日本に返してもらいたい、こういう決議をした次第なのであります。そこで今問題になっております第三条において、ことに後段の規定において、こういう主権の全部、ほとんどアメリカに施政権を譲っておる。だから沖繩問題の解決はどうしても平和条約の改訂に至らなければならないわけでありますが、平和条約には改訂について何も規定がないようでありますが、情勢の変化により日本として強硬に主張しまして相手国が納得すれば、これはできることであります。そこで一昨日あたり、淵上さんの御質問に対して外務大臣は対日平和条約について改訂の意向はないということでありますが、私どもやはりどうしても改訂を問題にしなければならぬ。それも一度や二度の外交交渉でおいそれとアメリカが応じるわけのものではないのであります。今からやはり改訂のための努力を始めなければならぬ。改訂の時期というより改訂を準備する時期には来ていると思う。外務大臣としてやはりこれは非常に大事なことであります。他にもありますが、日米平和条約の第三条、ことに第三条の後段の規定、こういうものを改訂する、そのために努力する意向があるかどうか。直ちに今というわけではありません、あなたが外務大臣在任中にできるかどうか疑問でありますが、そのために、あなたが今外務大臣の地位にあられるのですから、今から努力を始めるというだけの決意は国民に知らしていただきたい。御答弁願います。
  113. 重光葵

    重光国務大臣 沖繩の領土は日本も主権を持っておるという建前をとっております。沖繩住民日本国民であるということにはっきり相なっております。かようなことを進めていくことが今の国民的の希望、すなわち沖繩を名実ともに返してもらいたいという国民的希望を達成するゆえんだと私は思います。そこで絶えず沖繩に対する日本国民の希望を表示して、そしてその希望の達成の時期を早めるように努力することは当然のことであろうと思います。またそれを極力やっておるわけでございます。そこで御趣旨の点は御同意でございます。講和条約の第三条をそのままにしておいても、アメリカが行政権を返す、何も返す、こう言って、そういうふうな時期がくれば、またその時期をこさせるために今のお話のような方向努力しておるわけでありますが、そういう時期がくれば、条約はそのままにしておいても私は実質は得ることができると思います、要するにそういう時期を醸成することが重大だと思います。今日平和条約を改訂するのだ、改訂、改訂でいけばかえって時期が熟しないかもしれぬと見られる節もございます。そういう考え方でもって進んでおるわけでございます。
  114. 田中稔男

    田中(稔)委員 それで平和条約の改訂ということは、ただアメリカに、あるいは関係国に申し込んだだけではだめです。やはり他方においていろいろな努力をしなければならぬ。国際情勢の変化というお話もありましたが、国際情勢の変化を日本が黙って寝て待つというような態度ではいかぬ。やはり国際情勢を変える主体的な努力日本自身がやらなければならぬ。今ちょうどそういうお話がありましたが、私は今の政府、ことに外務大臣が、そういう国際情勢を変え、極東の国際関係を変えるために、特に平和のために努力されておるとはどうも考えられない。たとえば沖繩問題についてその国際的な情勢を変えようというのには、やはり中国との国交回復ということが必要である。ソ連とももちろん国交回復を早く実現するようにしなければならぬ。そういうことについての外務大臣の御意向はきわめて消極的で、私は努力と見るべきものはほとんどないと思う。日ソのことは日ソのことですが、この機会に、たまたま関連しますので伺います。中国との国交回復については、今まで外務大臣は何やかやいろいろな口実で、何ら熱意がないようでありますか、沖繩問題について国際情勢を変える、そのために日本が主体的な努力をする場合は、やはり中国との国交を正常化することが一番必要だと思います。それついての御意向を一つ承わりたい。
  115. 重光葵

    重光国務大臣 沖繩に関連して国際情勢を改善するということについて中国との関係が重要なポイントであるということは、私も御同意で、その通りであります。そういうことを考えて措置しておるのであります。しかしその国際情勢を改善するというのは、中共と日本との国交を立てるということが、国際情勢を直ちに目的通り改善するゆえんではないと私は思います。中国の問題はさよう簡単な問題ではないと思います。これは米国との関係、その他の国との関係、中国の問題は非常に関係するところが深うございます。そういうことを常に頭に置いて改善を期さなければなりません。私どもが主張するアジア外交また平和外交、それもそういうことを大きな目的として、その目的を達せんとして努力しておるものであるということを、はっきり申し上じ得ると思います。
  116. 田中稔男

    田中(稔)委員 いつも変らない御答弁でありまして、これ以上御質問することは意味がないと思いますからこれは打ち切ります。  次に、今度の参議院議員の選挙の結果はアメリカ政府に相当大きな衝撃を与えたようであります。ダレス国務長官が発言をしておりますが、その中でこういうことを言っております。日本で再軍備反対の勢力がだいぶ強くなったようだ、ところが日本は西ドイツとは違うのだから、再軍備について国際的な義務はないのだ、つまり西ドイツはNATOに加盟しており、その加盟国としての国際的義務に応じてやはり軍備をしなければならぬ、しかし日本は日米安全保障条約があるけれども、集団安全保障体制には何も加わっていないわけです、だからそういう意味において国際的な義務として日本は再軍備をする必要はないのだ、こういうことを言っております。これは当然のことだと思いますが、外務大臣一つ確認していただきたいと思います。
  117. 重光葵

    重光国務大臣 私はダレス長官がどういうことを育っておるかということについて、その内容についてかれこれ申し上げる地位にはおりません。しかしながら私は、日本が軍事上の義務を外国との間において負うておらないということだけは、はっきり申し上げておきます。日本の軍備、軍備と申しますが、日本の自衛軍備というものは、これは日本独特で日本自身がやるべき問題だと考えております。そして日本自身がやり得ると考えております。
  118. 田中稔男

    田中(稔)委員 それでまず国際的な義務として日本は軍備をやる必要はない、これは外務大臣が御確認になった、よろしゅうございますね。——その次に、義務はなくても事実上アメリカから強制されておるということはないか、これが一つの問題なんであります。昨年でしたか、外務大臣アメリカに行かれまして、やはりいろいろ話があったようでありますが、義務はなくともアメリカから事実上再軍備を強制され、そしてそれについてあなた、その他日本政府の高官がたびたび約束をしてきておるという事実はあると思う。数も三十五万とかいうような話がある。そういう強制された事実はなかったかどうか、どうでしょう。
  119. 重光葵

    重光国務大臣 それはございません。しかしながらアメリカとの間に安保条約等条約上の義務のあることも否定することはできません。それによりましていろいろ協議をするということは、これまた条約上の義務でございます。そういう話し合いをするということはありました。しかしそれは強制ではございません。
  120. 田中稔男

    田中(稔)委員 ダレスの話の中に注目すべきことは、日本の参議院議員の選挙の結果、再軍備の反対の勢力が勝った、これは一般的にもう世界戦争はないのだ、世界はもう平和になるのだ、こういうふうな考え方が支配した結果だ、こう言っておりますが、私はその通りだと思う。そうだとすれば——そうしてそれは事実なんですから、日本は今日無理な財政支出までして再軍備をする必要はないわけです。そしてまた今の御確認によれば、国際的な義務もない、アメリカから強制されることもないというのだから、日本は再軍備する必要はないということになるのでありますが、日本の再軍備問題について、外務大臣であり、同時に副総理でありますから、一つあなたの御所見を聞かしていただきたい。
  121. 重光葵

    重光国務大臣 私の所見は今申した−通りであります。外国との間に軍備に対して義務を負わされておることはございません。しかしながら日本日本として、独自の立場でもって自衛軍備をするということは当然であろうと私は考えます。
  122. 田中稔男

    田中(稔)委員 いや、そうじゃない。今世界の……。
  123. 前尾繁三郎

    前尾委員長 時間がありませんから……。
  124. 田中稔男

    田中(稔)委員 それでは、あと二人控えておりますから、また別の機会に質問します。
  125. 前尾繁三郎

    前尾委員長 松本七郎君。
  126. 松本七郎

    ○松本(七)委員 沖繩問題でいろいろ質疑応答がなされたのですが、大体明らかになったところは、政府としても沖繩の県民の要求しておるところの四原則は支持して、これを実現をはかりたい、こういう政府の気持はわかったわけです。それに基いて、いろいろ法理論が展開されたわけですが、それならばその支持し、これを実現するについてどのような方法で、今後やられるかということが、まだあまり明らかになっておらないわけです。そういう点を少し伺いたいと思うのですが、それについての政府の基本的な立場、これをもう一度確認しておきたいと思うのです。四原則を支持して実現をはかるについて、今までの重光さんの答弁あるいは新聞に現われたところから見ますと、大体国民はこういう印象を受けておると思う。メッセンジャー・ボーイみたいに沖繩県民の要求を重光外務大臣がアリソン大使を介してアメリカ政府に伝える、つまりあっせん役はするけれども、主権者としてこの要求を沖繩県民と、われわれ本土におる者と、日本国民全体を結束させて、そして政府が先頭に立ってアメリカに抗議を申し込むという、そういう戦いの姿はまだ出ておらないように思うのです。番大事な点は、私はそこにあると思う。果してこの沖繩県民の要望なり要求を重光さんがアメリカに伝える。そうしてそういう要求をいれてもらわないと、大橋さんの言うように、日米協調も破れるぞ、あるいはそういうふうな観点から警告を発するという程度なのか、あるいはもう一つ進んで、先頭に立ってこの要求が貫徹されるまであらゆる方法をもって戦うという決意があるのが、一つそのことを明快に御答弁をお願いしたい。
  127. 重光葵

    重光国務大臣 私は、その点について申し上げました通りに、沖繩住民要請実現するために最も有効な方法をとるように努力したい、そう考えております。そこで、外交は戦いじゃございません。私は戦うつもりはございません。しかしあくまで努力をする決心でございます。その目的を達するのに最善の努力を尽したい、また尽すべきである。今日われわれが東京において、またワシントンにおいて米国側折衝しておるのは、すなわちそのためでございます。
  128. 松本七郎

    ○松本(七)委員 外交は戦いじゃないと言われるけれども、戦わなければならぬ場合もあるわけです。協調を保つために戦わなければならぬ場合がしばしば出てくる。それは基本的な考え方の相違ですから、これ以上は申しません。  しからば具体的にどのような方法で——われわれから言えば戦いである、あなたから言われるならば戦いじゃない、これを実現する方法があるかということについてもう少し伺いたい。  それは穗積委員からも指摘されましたが、国際連合に調査を要求するというようなことはまだ考えておらないという御答弁だったのですが、なるほど今日の沖繩の状態から、これを直ちに国際連合の安全保障理事会の問題とすることは少しむずかしいのではないか、これはアルジェリアのように相当擾乱が激しくなれば、初めてこの対象になり得るのでしょうが、しかし経済理事会の人権委員会にかけて取り上げてもらう、あるいは総会に取り上げてもらうということはできると思うです。どっかの国から取り上げてもらえば……。しかし、これもやはり取り上げてもらわないよりはいいと思いますが、やはり人権委員会やあるいは総会では弱いと思う。そこでどうしても私の考えでは、この桑港条約第三条の規定について、現在のようなアメリカの施政権の行使の仕方は、この第三条に照らしても違反である、この間穗積委員から指摘されたように違反であるという立場に立って、われわれは日本国民の、またその一部である沖繩県民の利益を守法理論はいろいろあるでしょう、ありましょうけれども、われわれの利益を守るために有利である法理論をひっさげて臨まなければならないと思う。そうして法律的な戦いもやらなければならぬ。これは戦いという言葉がおきらいならば、法律的に訴える。今日のアメリカの施政権の行使の仕方は講和条約第三条に違反するという訴えを、応訴の義務があるのですから、当然国際司法裁判所に訴えるべきではないか。しかし裁判のことですから、この結論を出すためには長くかかるでしょう。またたびたび外務省の言うように、裁判で確定されたのでは、にっちもさっちもいかぬからというような弁解もあるいは出てくるかもしれない。しかしそういうおそれがあるならば、私はやはりこの際旧連合国とそういう問題について話し合う機会を作るとか、あるいはそれがまずければ、今アメリカが戦略上の立場から沖繩はどうしてもこういう政策は必要だという立場をとっておるのですから、それというのもやはり台湾をめぐるところの国際情勢をアメリカとしては一番重視しておるわけです。ですから旧連合国との会議が適当でなければ、やはり直接関係の深い台湾の政府の代表とか、あるいは中国の代表、日本米国、ソ連、こういったもので、こういうアジアにおける問題点を話し合うという機会を日本が積極的に提唱して、持ったらどうか。そういういろいろな手はあると思うのです。そのような方法を講じながら、あるいは国際司法裁判所に訴える、あるいはさっき守ったように人権委員会でもいい、国際連合で扱ってもらう。あらゆる方法でやはり国際世論に訴える具体的な手段を講ずべきだと思うのですが、そういうことを御検討なさる御意思はございませんでしょうか。
  129. 重光葵

    重光国務大臣 いろいろな案を今御披露になりました。そういう点を検討する意思がないかという御質問でございますが、そういうことは全部むろん検討してみたいと思います。さしあたっての私の考え方を申し上げたいと思います。私は全体として今沖繩住民要請を達成するためには、そこを押えておるアメリカをしてこれをやらせるという住民要請をいれさせるというのが、第一義だろうと私は考えております。それが一番近道だろうと考えております。むろん政治的の大きな問題で、先ほど御議論になった沖繩全体を日本に返してもらいたいとかどうとかいうことは、これは別問題として別々にやりますが、さしあたっての私の言う土地問題などについては、アメリカを説得してやるということが一番近道だろうと思います。国際司法裁判所のお話もございました。それはそういう主張実現するために助成的方法としていろいろ検討する値打はあると思います。あると思いますが、先ほど言われた通りに、実はそれで日本要請——日本のいう理屈と反対の理屈をきめられてもそれは困るということにもなります。それからまた国際会議を開いてやることも、それは検討もよろしゅうございます。しかしながらそれはすべて沖繩住民要請を事実達成するその目的にかなうかどうかということによって検討の結果はきまると思います。さような意味で検討はいたしたいと思います。要点はアメリカをしてこの要請をいれさせるということに目下全力を尽したい、集中したい、こう考えております。
  130. 松本七郎

    ○松本(七)委員 そこでアメリカにこの要請をどうやって実現させるが一番効果的かということが次の問題になります。それが問題だから私はいろいろ国際司法裁判所の問題その他もあげたわけなのです。この前アイスランドの基地の問題で選挙の結果、基地反対派が相当勢力を占めたということについてダレス国務長官が、これは共産陣営の勝利ではないかという質問に対して、これは共産陣榮の勝利じゃないんだ、アイスランドで基地反対派が勝利を占めたのは、あれは世界の緊張緩和のためだ、こういう意見を吐いている。私はこれは正しい意見だと思いますけれども、そういうふうな国際情勢をダレス自身がすでに認めておりながら、依然として沖繩でも基地のために新規農地の接収もやられる、あるいは日本基地についても半永久的に一方的に居すわることができるというような発言さえアメリカでやっておる。そういう事実に基いて私どもが考えるならば、どうやってアメリカをして沖繩県民の要求四原則実現させるかということについては、私はおのずから方法が出てくると思う。今世界情勢が緊張緩和されてきておるということを沖繩の県民はもちろん、日本人全体が、また世界の世論が、そういう声が大きくなってくれば、アメリカの今とっておる沖繩基地を必要としておる根本前提というものが変ってくるのですから、当然アメリカとしても今の政策を根本的に反省し直さなければならなくなると思う。現在の沖繩県民の要求は、基地全面的反対ではないけれども、アメリカが立っておる立場から考えますと、この問題と切り離してこれが解決できるとは思えない。しかしそのアメリカの立っておる立場も、アイスランドの選挙の結果、ダレスが言っておるようにすでに変りつつあるのですから、この変りつつあるということをどのようにしてアメリカの国際政治、アジアにおける政治の具体化の面に影響させるかということにしぼってこなければ、この問題の解決はなかなか困難だろうと私は思うのです。こういう意味新聞その他を通じて国民の目に映った重光外務大臣というのは、ちょうど東洋におけるアメリカのはんてんを着た番頭さんみたいな格好に見える。事実そういう格好に見えるのです。ですからやはりそのはんてんを脱ぎ捨てて、ほんとうに日本の、日本人外務大臣という姿で、これはそういたしてもらうのでなければ解決できないのではないか、沖繩の県民もそこのところを一番心配しながら、一縷の望みを持ってこの問題と取り組んでおるのが今日の姿だろうと思うのです。そういう観点から考えて、先ほどからおっしゃるように安全保障条約なりあるいは桑港条約の改訂あるいは廃棄ということと今すぐ取り組む時期ではないかもしれない。しかし少くともこの沖繩基地前提になっている日米共同防衛という点は、再検討をすべき時期に来ているのではないか、この点は重光外務大臣は一体どのように考えられるか。まだまだ再検討をする時期ではないというふうに思われるか、それとももうその時期に来ていると思われるか、この点を御答弁願いたい。
  131. 重光葵

    重光国務大臣 私は沖繩の問題に限らず、すべての問題は日本自身の見地から考えなければならぬと考えております。今のお話の問題は、先ほども田中委員の展開された御議論にすぐつながる同じ問題だと思います。そこで今の問題は、沖繩住民要請を最大限に実現するということに集中しなければならぬ、こう思っております。しかしお話通りに、一体沖繩根本問題は、沖繩の潜在主権が認められているのを、潜在でなくして日本に返してもらいたいということにあることは当然だと思います。それに向っていろいろな素地を作ろうとして努力しているということも御答弁申し上げました。それならば基地の問題、つまり沖繩を返すということは基地の出題に直接なるわけで、沖繩基地の問題が必要でなくなるようにすることが、また重要な行く道ではないかという、それはその通りであります。そこでこれはまたお答えした通りに、基地がなくなるというのは東アにおける形勢が平和的に好転するということに相なります。アイスランドの問題を引かれましたけれども、アイスランドの方で好転しても、こっち側でそうはいかぬということにもなりましょう。もっとも世界の情勢は共通でありますから、これは必ずしも関係のないことはございません。それだから世界情勢を好転させ、平和的に進めていく、この政策が日本の政策であり、われわれの政策であるということは、繰り返し繰り返し申し上げました通りであります。そこで先ほど中国の問題が一番関係しはしないかというお話がありました。その通りであります。しかし中国の問題は中共と日本との間の国交を開くことがすべて解決のかぎではないと私は申し上げました。これは全局の情勢を改善しなければならぬ、その改善をするために各方面において努力を進めなければならぬ、これは当然のことであります。それをやらなければなりません。それをやっているのが日本の外交であると私は申し上げて差しつかえないと思います。それだから共同防衛も将来において形が変ってくる時期が来るだろうと思うのです。それは日本の今の現状——私どもは空想を申しておるのではありません。現実の歩みを申しているのです。そういう情勢を見つつ、徐々に進んでいくということが今の日本の要求であってこれを一足飛びにすべて基地は必要ではないのだというふうに結論をすべきではないと私は申し上げておるのであります。それは日本の防衛などはどうでもいいということになれば、それは見解の相違であります。
  132. 松本七郎

    ○松本(七)委員 これは議論するつもりはないのですが、今の御答弁はあまり的確じゃないですけれども、共同防衛については再検討する時期にあらずと、こういう御見解であると了解しておきます。  それから大臣は沖繩の返還の問題は基地問題だと言われるけれども、そうではないのです。沖繩の返還の問題は、基地問題ではないのです。施政権をこちらに返してもらう問題でしょう。そのまま基地問題ではない。日本は主権者であり、施政権を持っているにかかわらず、基地問題というのはやはり起っているのです。それは大臣の考え違いだろうと思います。これは議論をしてもしようがないですから、共同防衛についてはもう再検討しなければならぬ時期に来ているにかかわらず、外務大臣は再検討する時期にあらずという考え方では、おそらく今後行き詰まりばかり来たすだろうと思います。一つすみやかに再検討されるように要望しておきます。  それから日ソ交渉の問題を少しまとめてお伺いして終りにしたいと思います。全権の問題はさきほどちょっと御質問があったようですが、これもやはり新聞を通じて国民が心配しているのは、かねがねこの内閣は二元外交だとか三元外交だとかいわれ、慎重派だとか促進派だとかいわれてどうもまとまりがないように思われている。そこへ持ってきて全権の人選において、またかねがねまとまっておらないことが、全権の問題でもまた現われてきたのではないか、こういうふうな心配をしておるわけですが、一体外務大臣としてはどのように解釈されておるでしょうか。あのように内閣が、あるいは与党である自民党の内部が紛糾しておるような形であれが出てきているのは、どういうところに原因があるのか、この日ソ交渉に対する基本的な態度について、やはり党内なりあるいは内閣なりに意見の不一致があるために出てきたものか、あるいはその発表の仕方その他の不手ぎわから単に来ているものか、そこのところを外務大臣はどういうふうに感じておられるか、御答弁願いたい。  それから第二点は、日ソ交渉に臨まれるに当っての基本的態度です。これは従来と少しも変らないと言われるけれども、私は変らないのではおかしいと思う。というのは、ロンドンの交渉においてはすでにいろいろな問題をほとんど、妥結して領土問題だけ残ったわけでしょう。しかし、聞くところによると、松本全権の場合はこっちの主張主張として出す、向うの領土に関する主張主張として出す。出しっぱなしなのです。一体、どういう方式が考えられるか、いろいろ方式はあると思う。たとえば鳩山さんはこの間混合方式というようなことを発表されたが、これに対して外務大臣は、総理大臣はたわごとを言っていると批評された。これでは私は心配なのは、ロンドンのときは松本全権にくつわをはめたかどうか知りませんけれども、こっちの主張するだけの権限しか与えられておらない。それ以上にわたってこの両者の主張をどういうふうな形式でもって妥協できるか、その可能性については何ら討議がされておらないように私ども聞いておるのです。今度は、今までにお互いに主張を出し合っているのですから、これをどうやってまとめるかということについては、一々外務大臣に訓令を仰いで交渉をやる全権なのか、あるいは妥結ということを目標にしながら、妥結方式についても幅の広い全権を文字通り委任を受けて名案ともの全権として交渉に臨ませるのか、どうもまだはっきりしない、その点が第二点。第三点は交渉地ですが、これは佐藤さんが、条件でもなさそうですが、  ロンドンを希望するということを言っておられた。外務大臣も以前からロンドンの継続だという意味から、ロンドンが適当だと言っておられたから、佐藤さんと同じ意見だろうと思うのですが、しかし御承知のようにソビエト側は東京またはモスクワというような希望を持っている。そういう希望をおそらく言ってくるかもしれない。その可能性は十分あります。さらにソビエト側としては、東京を希望してくる可能性があるのではないか、もしもロンドンを固執されると、向うからはねつけられる可能性も十分あると思う。そこで私は、最初はロンドンで交渉し、河野さんは漁業問題ではあったけれども、やはり日ソ交渉を再開する話し合いもモスクワでやられた。ですから今度は東京でやられるのが順序としては一番いいのではないか、それからいろいろな問題についても、万一領土問題その他でまたはち合せをして、にっちもさっちもいかないような場合に、モスクワでやる場合には、ソビエト側からそういう状態ならもう帰ってくれ、こう言われたときに、帰らざるを得ない。東京ならばそういうときに、これは日本国内で意見がいろいろある、自民党の中にも慎重派で署名運動までしているような状態のときに、そのつど国内に向うの言い分なり主張をよく徹底させるというような意味でも、妥結させるということが今度の交渉の目標であるならば、私は東京の方がさらに妥結しやすいと思うのですが、その点についての御見解、この三点を一つ明快に御答弁願いたい。
  133. 重光葵

    重光国務大臣 御質問の第一点は人の問題、第二点は領土関係交渉の題目の問題、第三は場所の問題、大体こういう順序であります。私はこれらの問題についてはすでに明快にお答えをしているつもりでございます。そこで繰り返します。私は、日ソ交渉は日ソの国交正常化の目的をもって交渉をずっと今日まで開いておったわけであります、それが中断されている、今回は再開するということでありますから、これは歓迎しなければならぬ、再開をしてやったらよかろう、こういう趣旨のものだと、こう繰り返し外部にも私の意見として申しております。これは間違いのない意見だと思っておるのであります。そこで、それならば今までロンドンでやったから今回はどこにするか、こういうことはまだ何もこっちの考えをきめておりませんが、漁業条約に関連をして発表されたコミュニケによりますと、場所の問題に関する限り、東京かロンドンかモスクワかということがはっきり合意されております。でありますから、日本としてはこの中のどこでやるかということを選べばよい順序になっております。それを選んで、選んだことを向うに通告をして、向うの同意を求める、こういう順序になっておりますから、日本考えをきめればいいと思います。それをどういうところが一番都合がいいかということについては、いろいろ考え方があるようであります。今申されましたことも、一つ考え方として参考の資料になると思います。こういうわけでありますから、そういうことを考慮してそうして先方と打ち合せをする、こういうことでよかろうと考えます。  第二の交渉の題目、領土の問題、これはお話通り、領土の問題で合意ができなかったのであります。これを合意すべく努力をすることが今後再開される交渉のおもな目的だ、こう考えております。そこで交渉をしてみたいと思います。してみた上で、どこまでどういう工合になるか、これを交渉前にいろいろ意見を発表するということは、あまり交渉のために利益ではないと考えております。これは交渉の上で十分検討をして決定をして差しつかえない、こう考えております。  それから全権の問題についていろいろ今意見が区々にわたっておるということは、これは私も推察をいたしております。しかしこれも今検討中でありますから、その検討が済みましたときには、はっきりと確定することが近く、できる。こう考えております。さようなわけで今これらのすべての問題について準備をいたしておる時期であります。準備が大体完了次第発表して一般に知らせるという考え方を持っております。
  134. 松本七郎

    ○松本(七)委員 ロンドンの場合と同じだとしきりに言われますけれども、私の聞きたいのは、松本全権が行ったときには、こっちの主張向う主張をただ出し合うだけで、領土問題については対立して全然妥結しなかったわけですね。しからばどういう妥協の可能性があるかということについては、全然話し合いもしなかったと私どもは聞かされておるわけです。これでは先へ先へと前進していくことができなくなると思う。ただ対立する主張を出し合う、そのままではロンドンの二の舞を繰り返すだろう。ですから全権として今度話し合う場合には、そういう妥結の可能性についても、全権が一々外務大臣に訓令を仰がなくても話し合える権限を付与されて今度は行くかどうか、この点を聞いておるわけです。
  135. 重光葵

    重光国務大臣 それも私が申し上げる通りに、一般の国際交渉と同じことであります。ロンドンの交渉においても同様であります。何もこちらの言うことを机の上に並べ、向うの言うことを聞いて帰ったわけでも何でもございません。非常に努力をして、何とか妥結点を見出したいということで、互いに相談もし、論議も尽して、結局領土問題—領土以外の問題については大要の妥協を得たということも、詳しく御報告に及んだ通りであります。その妥結を見なかった点は、今後の努力によって妥結を見るように一生懸命やらなければならぬと思っております。それは交渉の結果を見て、交渉によってそれが決定できることだと思います。しかしそれじゃ初めから妥結をする、向う考え方を全部いれるんだということであるならば、これは交渉じゃございません。わが方の立場は十分に擁護して主張をしなければなりません。しかしそのことは全権のやり方にも非常に関係がございましょう。そこで全権の選択にも十分注意をしなければならぬということにも相なります。国家の最大の利益を擁護して目的を達しよう、こういう考え方でございます。
  136. 松本七郎

    ○松本(七)委員 それではいろいろな交渉のやり方、それから形式などは、ここでは、御答弁御無恥でしょうから申しませんが、今度は妥結を目標に何とかやりたいという気持が相当強いように見受けられますので、何とか決裂しないように、一つ極力党内をまとめて御努力を願いたいと思います。  それから沖繩の問題でも一つ要望しておきたいのですが、闘争ということを外務大臣はしきりにきらわれますが、今の実情は何といっても沖繩県民、また私ども日本人から見ても、アメリカのやっておるやり方は、いわば留守番役を買っていながら居直り強盗をやっておるようなものです。客観的にそうです。ですから政府は、日本国民全体と一緒になって先頭に立って、強い立場でアメリカに対する。そうして抗議でも申し込む。こういう気持でなければ私はこの解決はむずかしいと思う。ただ沖繩県民あるいは日本人全体の要望を伝えて、何とか考慮してもらうというようななまやさしい態度ではできないことは、大橋委員もしきりに言われた通りでございます。従ってこの問題については、そういう気持を国民は十分持っておるということを外務大臣として十分腹に入れて強い交渉に出ていただきたい。これを要望して私の質問を終ります。
  137. 前尾繁三郎

    前尾委員長 菊池義郎君。
  138. 菊池義郎

    ○菊池委員 野党の諸君がまだ二人控えておられますので、私は簡単に申し上げますが、外務大臣の答弁が長過ぎるんです。話はさかさまにしっぽから答えるように気をきかしていただきたい。総理大臣がいつも沖繩のことについて、かえ地を与える、かえ地を与えるということを言っておりますが、そのかえ地のことについて政府は何か考えたことがありますか。
  139. 重光葵

    重光国務大臣 ございません。
  140. 菊池義郎

    ○菊池委員 たとえば、日本の領土でなくてもアメリカの植民地、キューバであるとか、あるいはハワイであるとか、そういう所へでも出してもらうといったような交渉もおもしろいと思うのです。向う土地のあり余っている国でありますから、聞いてくれないとも限らない。外交の歴史を見ますと、そういうこともあるのです。土地土地ととりかえることもある。そういうことは全然お考えになったことがございませんか。
  141. 重光葵

    重光国務大臣 簡単にお答えします。そういう経緯はございません。今までは沖繩における住民福祉を十分に増進したい、こういう気持であります。
  142. 菊池義郎

    ○菊池委員 それから日ソ交渉における全権の数でありますが、サンフランシスコ条約のときにはたしか五、六名くらいであったと思うのです。今度もやはりそのくらいにして差しつかえないと思うのですが、今まで新聞紙上に現われたところを見ますと、わずか二、三名程度のようでありますが、全権の数はやはり二、五名というようにお考えでございましょうか、どうですか。
  143. 重光葵

    重光国務大臣 それについても目下検討中でございます。
  144. 菊池義郎

    ○菊池委員 たとえば商工界の代表であるとか、漁業代表であるとか、そういう民間人を加えて、やはり数名にした方がいいように考えられるのでありますが、それについて外務大臣はどうお考えでありましょうか。少い方がいいとお考えでしょうか、多い方がいいとお考えでしょうか。
  145. 重光葵

    重光国務大臣 適当な数を考え出したいと思っております。漁業代表を加える考え方はございません。
  146. 菊池義郎

    ○菊池委員 それから日ソ交渉交渉地でございますが、河野全権は、向うに行ってモスクワでもって開くということを約束してきたというように、しきりに伝えられております。これはもちろん事実ではないと思いますが、そういうことも話にあったのでありましょうか、どうでございましょうか。河野さんが約束してきたのだから、その約束を重んじてモスクワで開く方がいいというように政府考えておるというような説が一般に伝わっておりますが、それはどうでございましょうか。
  147. 重光葵

    重光国務大臣 さようなことは私は承知いたしておりません。承知いたしておりますことは、河野君が署名した共同コミュニケでございます。それは交渉地としては先ほど御説明した通り、東京か、ロンドンか、モスクワかというところでまた再開しよう、こういうことでございます。
  148. 菊池義郎

    ○菊池委員 モスクワでは電報の秘密を守るというようなことはなかなか困難だといわれている。われわれは向うに行って、秘密電報を打ったことはありませんが、そういう何も聞かされております。ロンドンなら秘密を守れるだろう、日本ならさらに秘密を守ることができる。秘密を守ることにおいても私は日本が一番最適地であると考えておるのですが、外務大臣は秘密を守るという点についてどこが一番適当だとお考えですか。
  149. 重光葵

    重光国務大臣 その点はどこが適当であるかということは私は考えをきめておりません。すべての問題を検討してこっちは最適地を考えたい、こう思っております。
  150. 菊池義郎

    ○菊池委員 終ります。
  151. 前尾繁三郎

    前尾委員長 大西正道君。
  152. 大西正道

    ○大西委員 前の岡田君の質問に対して、日ソ交渉全権として国会議員が今予定に上っておる、こういうことなのですが、全権として決定される前には国会承認を得なければならない、こんなことは当然でありますが、新聞で見ますと、どうやら政府の方ではその承認のみにとどめて、約一日か二日、こういうふうな意向のように聞くのでありますけれども、私は今回の日ソ交渉の問題、さらに沖繩の問題等を考えまして、ただ全権承認という形式的な短期間のものでなしに、現下の国際的ないろいろな問題についてこの際国会においてその経過を明らかにし、かつまたその方針を鮮明にすることが最も必要であろう、そういう意味で、外務大臣並びに副総理として、今回の国会の会期の問題についてどのようにお考えか、一つお聞きしたいと思います。
  153. 重光葵

    重光国務大臣 臨時国会を開くとか開かぬとかいう問題に対する御答弁はもう私は申し上げました。全権の問題について必要な手続はむろんとらなければなりません。また十分それをとる意思を持っております。それからこの問題に関連していろいろ国会で議論を尽すことも、これも私何ら異存はございません。現に外務委員会をたびたび開いて繰り返し繰り返し同じことを応答しておることも、大いにこれはその方面にあずかって力のあることだ、こう考えてせいぜいやっておるわけであります。
  154. 大西正道

    ○大西委員 私の言う一つの根拠は、今回の参議院選挙の結果です。御承知のごとく政府与党の方は減少、社会党勢力が大きく伸びた、こういう結果になっております。今回の選挙の中心のテーマは、もちろん憲法改正可否の問題でありますが、その背景はやはり国際問題です。また憲法改正と並んでやはり日ソ交渉に対する政府自民党の態度、あるいはまた社会党の主張する態度並びにプライス勧告から問題になりましたあの沖繩問題に対してやはり国民の関心が非常に大きく、そうしてその一点をめぐってああいう結果になったのであります。もちろん日ソ交渉全権派遣の問題も、交渉の内容の問題も政府の責任においてやられるのは当然でありますけれども、事外交であれば重光さんも言われますように、超党派的な国民的な支持がなければならぬ。こういう建前を考えますと、やはりこの際この参議院選挙というまあ一般の世論をくつがえしたところのこの大きな変動に対してただ単なる衆議院の外務委員会でのこういう討論のみならず、国会を開いてそうしてこれは堂々と本会議場においてその所信を明らかにし、経緯を明らかにして交渉に臨まれるということが、当然の外交のコースであろうと思います。そういう意味から私は申しておるのでありまして、もちろん衆議院の外務委員会では繰り返し繰り返し同じような問題を論じておりますけれども、今言いましたような意味で会期はやはり相当長く、私どもは二週間程度と申しておりすが、そういうようなことに対してさらに一歩進めて御主張なさるつもりはございませんか。
  155. 重光葵

    重光国務大臣 私は外務委員会の討議も国会の討議であると考えております。そうして非常に有意義な重要なものである。こう思っております。さらにそれだけで足りぬという御意見もまた検討するなにがあろうと思います。しかし今の御質問の点は日ソ交渉関係しておる問題であります。この日ソ交渉関係して今準備いたしておるということであります。その準備をいたしておることが進みまして、どういう手続をしなければならぬかということになれば、それは所要の手続をする意向も十分ある。こういうことを申しておるわけであります。そこでこの会期のこと等はまだどう臨時国会を開くかどうかという根本の問題もございますので、今ここで申し上げることは差し控えたいと思います。
  156. 大西正道

    ○大西委員 大へん通り一ぺんの御返事ですけれどやはり国会を開かなければならぬのでありますから、開くためにはただ全権承認という形式的な問題のみならず、その時期なり、日ソ交渉の問題に国民の世論を盛り上げるためにも、政府一つの態度を明らかにするためにも、私はもっと実のある討議ができるように会期を延長されることについて、重光外務大臣は進んでそういう方面に持っていかれるべきだ、こういうふうに申し上げておるのです。もう一ぺんその点について一つお答えを願いたいと思います。
  157. 重光葵

    重光国務大臣 その点は、十分伺って、私の準備を進めるに従って考えてみたいと思います。
  158. 大西正道

    ○大西委員 それから沖繩の問題でありますが、大体土地問題の四原則については外務大臣もその線に沿って努力をする、こういうように言っておられるのであります。しかし私ども今日までのこの政府の動き並びに当委員会における答弁の態度から見まして何かまことに物足らぬ気持を感じておるのであります。これは私のみではないと思います。かってこの問題を突っ込んで交渉をやることは内政の干渉になるというようなことまで言われたのであります。今はどのようにお考えになるか私はわかりませんけれども、もっともっと突っ込んだ態度をもって、沖繩の問題の取次というような態度でなくして、やはりこれは日本民族の問題として一つ腰を入れてやっていただきたいと思うのです。そこで私の見通しといたしましては、土地問題はあるいは外務大臣の言われるように、紆余曲折の末何らかの解決に到達するかもしれません。しかし私の憂えるのは、この土地問題のみならず、調べたところによりますと、いろいろな人権問題、すなわち言論、結社、集会の自由が拘束されているとか、あるいは労働条件の問題、教育問題、さらには、これは末梢的な具体的な問題ではありますけれども、琉球人民というような表現をもって、ことさらに、日本国民であるという考えとは別な考えを持とうとしておるというようなことを考えますと、その根ざすところはまことに大きいと思うのであります。単なる経済的な問題の解決というだけでは、この沖繩の問題の最終的な結論は、私はあり得ないと考えるのです。やはりこの問題は、重光外務大臣も今、沖繩問題基地問題だと言われましたが、私もその点は同感です。そこでこの沖繩の具体的な土地問題の解決と同時に、この際、国際的な視野においていろいろな問題が起っておりますが、そういう関連において対米関係の一環としての基地問題に対して、重光大臣がこの際自分のこれまでの考えに一応検討を加えられる必要がないか、私はお聞きしたいのであります。  国際的な問題は、私が申し上げるまでもなく、アメリカ軍事基地の問題は、アイスランドにおきましても、あるいはまたモロッコにおきましても、あるいはまたフィリピンにおきましても、基地撤退、あるいはまた基地の期間の問題等につきまして、いろいろ多くの問題が出ております。イギリスの基地問題につきましても、もう御承知のごとく西独におきましてもああいうふうにどんどんと出ておるのでありましてこういうふな情勢の中におきまして、ひとり日本のみがこれまでの借地をさらに一括払いによって永代化しようというような考え方は、これはもう世界の風潮とは逆行であります。このことは重光大臣も冷静に国際情勢をごらんになれば、私は胸の底にはよく感じておられることだと思うのです。この際私どもはそういうふうな世界的な視野におきましても、かつまた基地問題の根源であります安保条約その他に規定されておりますところのアジアの国際緊張の問題にいたしましても、これは大きく緩和方向に向っておるのでありますから、外務大臣といたしましては、従来の基地問題に対する考え方を一つ御検討願えないかと思うのでありますが、もしそういうふうなお気持がありましたら、所信の一端を一つ聞かしていただきたいと思うのです。
  159. 重光葵

    重光国務大臣 沖繩問題に関連して基地問題——私は基地問題が沖繩問題に重要な関係を持っておるということは繰り返し申し上げました。沖繩問題基地問題ではないかもしれない。しかしながら重要な関係を持っておることは当然なことであります。そこでこういう重要な問題について、常に全般の情勢からこれを検討することは、もちろん必要でございます。私は検討をし、また再検討もする気持を持って常にこれに対処しておるわけでございますが、しかしそれらのことはすべてきわめて冷静な理性的な検討が必要である、こう考えます。そこでさような理性を持った検討を続けていくことが必至であるので、私の気持は常にそういうふうに心がけておるつもりでございます。これで御答弁にはなったと思います。しかしさらに進んで、それならば今すぐ基地はもう廃止してもらいたいのだということを交渉しろということであるとするならば、私はまだその時期でない、こう繰り返し申し上げておるのであります。しかし日本としてはあくまでも自主独立の見地に立ってさような問題を処置しなければならぬのでありますから、その方向に絶えず努力をすべきことは、これまた私は当然のこととしてその努力をすべきである、こう申し上げておるわけでございます。
  160. 大西正道

    ○大西委員 そういう基地反対運動を起すか起さぬかという客観情勢その他の問題につきましては、時間がありませんからここでは申し上げませんが、それなれば、これは前に自民党の大橋さんからの御意見もありましたが、今直ちに基地撤退の問題には乗り出さなくても、安保条約の改訂、特に基地の廃棄条項については、これはあの内容はあの種の国際的な取りきめのどれにも該当しない、全く日本の主権が拘束されておるような内容を持っておりますが、少くともああいう問題に対して、今からあの廃棄条項を一つ修正するというような安保条約の修正の一つの研究等をやられる必要があるのではないかと私は思うのであります。もちろんわが社会党といたしましては、今安全保障の問題といたしましては、安保条約の破棄というような具体的な方向には進んでおりません。それは御承知のように米ソの参加によるところの一つの不可侵条約の構想を持っておりまするけれども、しかしながら政府与党の側において、もし基地の問題を将来その時期が来るならば取り上げると言われるならば、安保条約のああいうアメリカの了解がなければ永久に日本に対してアメリカの軍隊が駐留する、こういうようなことで、日本の一方的な意思においてこれが破棄できないというような、この問題は私は今から検討をしていく必要があるのではないか、こういうふうに思うのです。この点はいかがでしょうか。
  161. 重光葵

    重光国務大臣 御質問のポイントを非常に明確に私は理解しかねるのでありますが、安保条約条約そのものとしては、これはいつ安保条約はやめてもいいのかということはちゃんと規定はございます。それから行政協定のごときも、これを改める規定があったと考えます。それだから必要なことは改めるように交渉するということを検討することは、当然のことでございます。ただそれでは安保条約をすべて根底から今やめてしまうとか、また根底からこれを変えていく時期であるかというと、私は今日の全般の情勢から見て、そうはまだ言えないのである、こういう判断をいたしておるわけであります。これは御意見とは相違するかもしれません。しかし私はそう考えております。これが国の利益に合するものだ、こう判断しておるものでございます。
  162. 大西正道

    ○大西委員 安保条約の廃棄の条件ということは、私は第四条の効力の終了ということを言っておるのです。これは「日本国及びアメリカ合衆国の政府が認めた時」というように両方出ておる。このところを私は言っておるのです。日本の意思によって効力の終了を一方的に実現することはできません。ですからこれはよく論じられたことですけれども、やはりほかのこの種の条約等については類例のないことですから、少くも今からこの条項については一つ改めるだけの準備と用意が必要じゃないか、こういうことを言っておるわけです。
  163. 重光葵

    重光国務大臣 これは繰り返すのもいかがかと思いますが、これは条約の普通の形式であると私は思っておるのであります。条約をやめるかどうするかということは、双方の合意によらなければならないということは当然のことであります。一方的にやめるということは、特別のやり方だと考えます。だから時勢の変化に応じてそういう情勢が来た場合においては、これは相談をする必要があると思います。また相談をして少しも差しつかえないと考えております。
  164. 大西正道

    ○大西委員 そうしますと、われわれが極東においてそういう侵略の危険がないというふうに判断をしても、アメリカ側がそういうことに対して同意をしなければ、これはいつまでたっても日本に対するアメリカ軍の撤退はないということになりますね。
  165. 重光葵

    重光国務大臣 条約論を今いたすのもどうかと思いますが、それはむろんここに侵略云々ということはございません。いろいろな国際連合の措置またはこれにかわる個別的もしくは集団的の安全保障措置が効力を生じたと両方の国が認めたときには効力を失う。こう書いてあります。しかしいずれにいたしましても、ちょうどこの文句に当てはまるような事態ができなくとも、双方の合意ができるような時期が情勢の変化でぐっとできてきますれば、それはまたその話し合いができると思います。だからそれは話し合いをすればいいのですが、日本側ができても、向う側がそうじゃないと意思表示をするでしょう。それが国際交渉なんで、すべての問題は一方的にはできません。すべて話し合いで合意した上で、初めて結果を生むわけであります。
  166. 前尾繁三郎

    前尾委員長 大西君、二時から連合審査が始まるそうですから、適当に……。
  167. 大西正道

    ○大西委員 それではこの条約問題では話をいたしませんが、後ほど私も研究いたしますけれども、この安保条約アメリカの合意がなければ効力の終了がないという、こういう条件のもとにおいては、当地問題の撤収について努力をするといわれましても、この条約がなかなか問題になって、私はできないと思う。従ってそういう御意思があるならば、今からこの条約の不備な点は改正をする方面努力をされてはどうかということを私は申し上げたかったのであります。
  168. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それでは暫時休憩をいたします。    午後一時四十六分休憩      ————◇—————   [休憩後は開会に至らなかった]