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1956-06-03 第24回国会 衆議院 外務委員会 第57号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年六月三日(日曜日)     午後三時十五分開議  出席委員    委員長 前尾繁三郎君    理事 石坂  繁君 理事 須磨彌吉郎君    理事 高岡 大輔君 理事 山本 利壽君    理事 穗積 七郎君 理事 松本 七郎君       伊東 隆治君    植原悦二郎君       菊池 義郎君    福永 一臣君       福田 篤泰君    田中 稔男君       戸叶 里子君    森島 守人君  出席政府委員         外務政務次官  森下 園雄君         外務事務官         (アジア局長) 中川  融君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         厚生事務官         (引揚援護局         長)      田邊 繁雄君  委員外出席者         外務事務官         (アジア局第二         課長)     小川平四郎君         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 六月二日  委員高岡大輔君及び南好雄辞任につき、その  補欠として塚原俊郎君及び芦田均君が議長の指  名で委員に選任された。 同日  委員岡良一君及び塚原俊郎辞任につき、その  補欠として大西正道君及び高岡大輔君が議長の  指名で委員に選任された。 同月三日  理事高岡大輔君同月二日委員辞任につき、その  補欠として同君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事の互選  国際情勢等に関する作     —————————————
  2. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これより会議を開きます。  この際理事補欠選任についてお諮りいたします。理事高岡大輔君が昨二日委員辞任せられ、再び当委員に選任せられましたが、そのために理事が一名欠員になっております。そのゆえこの際理事補欠選任を行いたいと存じますが、これは高岡大輔君を再び理事に選任いたすことにいたして御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕     —————————————
  3. 前尾繁三郎

    前尾委員長 御異議がなければ、さように決定いたします。
  4. 前尾繁三郎

    前尾委員長 次に国際情勢等に関する件について質疑を許します。穗積七郎君。
  5. 穗積七郎

    穗積委員 中川アジア局長に御発表を願いたいと思いますが、実は先般中国周恩来総理日本戦犯抑留者を相当多数に釈放するということを声明なすって、しかもそのことをわれわれ確かめてみますと、四月二十五日に開かれた全国人民代表大会、これは国会に当るわけですが、その常務委員会第三十四回会議で、最高人民検察院検察長張鼎丞氏から、次のような発表がなされたということが明らかになったわけでございます。それは現在抑留中の日本戦争犯罪分子状況に関する報告として、そしてその返還処理が採択されたということがわかったわけでございます。もとより問題は、そういう資料があったというだけでは、日本としては受け取り方の態度をきめるわけにいかないので、かの国の政府、またはこういう問題を今まで取り扱って参りました国家機関にかわると理解していいような中国の紅十字会等から、日本政府あるいは日本赤十字社、その他引揚団体に対して、正式な意思表示がございましたかどうか。もしあったとすれば、それが何月何日にどういう形式でなされ、どういう内容を持ったものであるのか、この際御発表をいただいて、日本国民にもその報道でなしに、確定した事実を知らしめることが必要だと思いますので、まず第一にそのことの御報告を承わりたいと思います。
  6. 中川融

    中川(融)政府委員 ただいま穗積委員の御質問になりました中共におけるいわゆる戦犯者日本に帰すという件につきましては、周恩来氏がただいま御指摘のようなことを日本訪問者に話したという記事は新聞で見たのでありますが、その後政府には直接これに関しての通報はないのでありますが、向う中国紅十字会から日本のいわゆる三団体あて電報が来ておるのでございます。これは先月の二十九日でございますが、三団体あて中国紅十字会から次のような内容電報が来ております。「中国紅十字会は今般中国政府から次の通知を受け取りました。中国最高人民検察院は、中国において勾留中の日本人戦犯中、起訴を免除された者を五回に分けて送還する、その第一回三百三十五名を日本送還する事務を援助するよう中国紅十字会に委託することを決定した。」これが中国政府から中国紅十字会が受け取った内容であります。電文はその後これに引き続きまして、中国紅十字会から三団体あての通牒としてなお次のことをつけ加えているのであります。「かつ前記の第一回三百三十五名は、六月中旬天津に集結を完了するはずである旨通知がありました。貴三団体事務局は、六月十五日から十八日の間に天津に到達するよう、船を派遣されることをお願いいたします。かつ貴三団体代表同船に便乗させて、天津に来、今後の送還事務並びに今なお中国に拘留中の他の日本人戦犯家族であって、中国に来て、その身内をたずねたいという者があった場合、いかにしてその往来に便宜を供与するか等に関し協議するよう希望します。貴三団体が派遣する船の名、代表者名簿及び天津港入港の正確な日時を至急電報で御通知下さい。」この電報に対しまして三団体から五月三十一日付をもちまして次の趣旨の返事をいたしております。「五月二十九日付電報を受領いたしました。三百三十五名の件について感謝します。三団体帰国船として興安丸を派遣するが、同船修繕検査の必要上、第一の日時に間に合わず、二十日門司発、二十三日塘沽着の予定で準備するから御承知請う。留守家族としては今回の紅十字会の措置に対し深く感謝するとともに、釈放された戦犯者氏名を一刻も早く知りたいと希望しているので、放送その他適当の方法で周知方取り計らわれたい。」こういう返電をとりあえず出したのであります。そうしますと、また本月一日付をもって紅十字会から三団体あてに次の電報が来ております。「五月三十一日付電報を受領した。貴三団体配船の技術上の困難にかんがみ、本回は興安丸が六月二十三日に塘沽に到着することに同意する。」そういう旨の、電報が来ているのであります。  以上御報告を申し上げます。
  7. 穗積七郎

    穗積委員 留守家族往来というか、慰問または見舞のための訪問はどういうふうになっておりますか、ちょっと伺っておきたいと思います。
  8. 中川融

    中川(融)政府委員 今回の先方からの電報の中には、今度戦犯者引き取りのために三団体代表が来た際に、留守家族往来の問題についても協議したいということが書いてあるのでありますが、それに対しまして三団体で今協議いたしております。われわれにも御相談があったのでありますが、われわれもこのことについては趣旨として異存はない、賛成であるということであります。問題は北京協定のはっきりした内容から申しますと。内容からちょっとずれているということから、これはできれば三団体でなくて、人道問題として日赤一本で紅十字会上訴し合う方が適当ではないかという考えから、目下三団体間でそういう方法でやろうということについて打ち合せ中でございます。大体打ち合せは順調に進んでいるということを聞いておりますが、明日あたり最終的な意見決定があるということを日赤から通報を更けております。
  9. 穗積七郎

    穗積委員 それらのことについては、まだ向うには意思表示はしておりませんね。
  10. 中川融

    中川(融)政府委員 意思表示はまだしておりません。
  11. 穗積七郎

    穗積委員 今の送還に対する向う好意がある措置に対して、もとより紅十字会からでございますが、今の紅十字会の応報にも示されておりますように、政府がやることを紅十字会に依願をしたという形になっているわけでございます。従って政府意思表示であることは言うまでもないわけでありますが、それに対して日本政府はそれにこたえる何らかの意思表示——今の電報によりますと、日本赤十字社並びに関係団体向う好意に対して、感謝意思表示をしておりますが、日本政府はこれに対して、たとえば直接、あるいはまたジュネーヴでこの問題について今まで話し合いのありました田付総領事から沈総領事を通じてでも、いずれにしても何らかの意思表示をなさいましたか、なさる意思がございますかどうか、これも伺っておきたいと思います。
  12. 中川融

    中川(融)政府委員 先般周総理がそういうことの言明をしたという報道のありましたあとで、政府から面接ジュネーヴの道を通じまして、先方意向を問いただそうかと考えたことがあったのでありますが、そうこうしておりますうちに、この三団体あて電報が来たわけであります。先方抑留されている日本人帰国問題は、従来から日本としては、直接政府間で取り扱ってしかるべき問題であるという考えから、ジュネーヴにおきまして、両国政府直接の話し合いをしておるのであります。先方は、これは政府間の問題ではなくしてすでに三団体向うの紅十字会の間でルートができているから、そのルートでやればいい、なおいわゆる戦犯者の釈放問題は、もっぱら国内事項であるということで、外交交渉と申しますか、政府間の交渉という軌道に乗せることを、事実上向うはいつでも断わってきているという事情にありました関係上、今回三団体に来ました向う電報について、日本政府からジュネーヴで直接先方に問い合せをする、あるいはさらに意向を聞いたかすという措置は、今のところ考えておらないのであります。結局この点は三団体中国紅十字会のルートでやっていくのが実情に即しているように思いますので、そのルートでやっていくことが一番いいのではないかと考えております。
  13. 穗積七郎

    穗積委員 こういうことはいかがお考えになりますか。つまり向うの所管の役所最高人民検察院になっているわけでありますが、それは中国政府代表して周総理がそういう声明を内外にわたってしておるわけであります。しかしそれは、今おっしやる通り面接日本政府に対する申し入れでは、ございません。そこでこちら側は、今おっしやったように、向う政府相手感謝その他の意思表示をすることは今控えているということでございますが、そうであれば、周総理声明発表に対応して、鳩山総理が、向う政府に直接そういうものを文書をもって送るわけでは、ございませんでも、はなはだ好意ある取扱いをしてくれて日本政府としては感謝にたえないという意味の、いわば中国人民全体に対する日本人民代表する意思表示として、周総理声明にこたえるものとして、談話発表するというようなことは、私どもとしては礼儀上当然しかるべきことであると思う。しかしてこれは国交回復国でごさいますが、人道上の問題であるというので、人道上の問題に関する限り、主義主張国交回復、未回復を問わず、この問題を処理するという態度は、日本政府の基本的な態度でもございますから、私どもはそれをぜひやるべきだという要望政府に対してするわけです。それをするかしないか、今アジア局長政治的な判断においてどうされますかということをお尋ねするのは、これはいささか筋違いだと思いますから、お尋ねいたしませんが、外務省事務当局からごらんになって、未回復国間、でそういう談話発表やりとりをするような、実際はやりとりになるわけですが、そういうことをするのはちょっと困るというふうなお考えをお持ちになりますか、そういうことは両国の現状から見て、支障なきことであると事務的にお考えになりますか。これは担当中川局長、または条約上の解釈からいきますれば、下田条約局長の御所見を伺ってもいいと思うが、従来日中間の問題は、領土または賠償またはその他の問題ではなくて、一に台湾政府との関係にかかっているわけですから、そういう観点事務当局として政治的判断を加えないで、ラショナルにお考えになって、そういう点について差しつかえがあるとお考えになりますか、支障なきものとお考えになりますか。両局長から御答弁をわずらわしたい。  ついでに申し上げておきますが、政府政府として、向う周総理声明に対する答えとして、対応するものとして、鳩山総理感謝意思表示が貴重なものであると思うし、またすべきものだと私は思うが、国民代表するものとしては国会意思表示、これも先ほどわれわれが知り谷たように、向う国会での席上において、最高人民検察院検察長がそういう発表をして採決され了承を得たのですから、これは国会の決議でもあるわけです。従って日本国会としては、われわれ社会党またはその他の野党の方々はみんな賛成だと思うのだが、多数を占められる与党方々が、今申しましたような趣旨によって、未回復国であるけれども人道上の問題だというので、国民代表して国民大衆感謝意思表示をするように取り計らいたいものだ、そういうふうに与党の諸君の人道的な理解ある御了解がいただけるものだと私は確信をしておりまして、これは国会自身あとの問題になります。私の申しますのは、そういうことをも照し合せて、政府声明が果して支障ありとお考えになりますか。そういうものではない。何ら差しつかえがないのみならず、歓迎してけっこうだ。歓迎すべきだというふうにお受け取りになりますか。御所感をちょっとこの際承わっておきたいと思います。
  14. 中川融

    中川(融)政府委員 初めのお尋ねでは、それは政治的な問題を含むから、内容のことには関係なく、もっぱら事務上から見て国交回復国政府のしたこと、あるいはすることに関連して、日本政府当局あるいは総理大臣が一方的にたとえば声明をする、あるいは談話発表するということが、外交技術的に可能であるかどうかというお尋ねでございましたので、その点からお答え申しますが、これは外交技術的にと申しますか、事務上から見まして、どのような声明なり談話なりを総理ないし政府当局発表しようとも、それは可能であると思います。これは戦争中において敵国政府のすることについて発表したり意見を言うということもあるのでありまして国交回復国のすることにつきまして、政府がこれについて何か意見を述べるということはこれは当然できることだと思います。またこういう人道上の問題につきましては、外交チャネルと申しますか、ジュネーヴ等のいわゆる政府レベルの道も実は開いておるのでありまして、その意味ではそういう方法ももちろんあるわけであります。従って人道上の問題である引き揚げ問題について、政府があるいは直接にジュネーヴを通じて話したこともありますし、あるいはその内容について、情報局長談によって日本政府考え方発表したこともあるのでありまして、技術的に見てそういうことはできないということはないわけであります。  御質問の終りの方で、今回のことについて感謝の意を表明することがいいと思うがどうかというようなお話もあったのでありますが、これになりますと、実質的な内容を含んでくることで、いわば政治的な問題になると思いますので、御質問の最初の趣旨からいって、私が答弁する限りでないように思いますので、第一のお答えだけで一応打ち切らしていただきたいと思います。また重ねて御質問があれば……。
  15. 穗積七郎

    穗積委員 条約局長もそれでよろしゅうございますね。
  16. 下田武三

    下田政府委員 お話のような声明なりステートメントを出しますことは、法律上不可能だということはないと思います。それは適当であるかどうかという問題だろうと思います。しかして適当であるかどうかの判断は、これは全く政治的の観点からなさるべきものだと思います。
  17. 穗積七郎

    穗積委員 そこで最後に要望してその問題については終りますが、実はきょう外務大臣がおられると、その政治的な判断の御意向も伺いたいし、そうしてまた要望もしたいと思うのだが、きょうは不幸にして参議院の関係で御出席がありませんので、両局長にここで確約していただきたいのは、下田さんにしても、あなたにしてもまた担当小川課長もおられますが、三人とも非常に善意な、そうして国際常識にすぐれた、しかも有力な三局長課長でございますから、一つ責任をもって外務委員会において国民代表するわれわれが、政府として、外交関係ですからぜひまず外務大臣責任においてお考えいただいて、そうして政府としての声明なり、談話発表をすることを考慮してもらいたいという要望があったということを、責任をもってお伝えをいただきたい。それに対するお答え、結論、イエス、ノーは政府または大臣がなさることですから、そこまでは要求いたしませんが、、ぜひお伝えをいただきたいということだけはここで確約していただけると思いますが、よろしゅうございましょうね。
  18. 中川融

    中川(融)政府委員 よろしゅうございます。その通り伝えます。
  19. 松本七郎

    松本(七)委員 今の問題に関連して、大臣局長方々からぜひ一つ進言してもらいたいことがある。それはだいぶ前に外務省中国白書と申しますか、中国に対する考え方はある程度最近のものをまとめておられるということを聞いておる。これは新聞にも出ました。けれども、これは新聞が抜いて出したのであって、外務省が正式な意見としてこれを出したのではないという御答弁だったのですが、聞くところによると、大臣としてはあの白書はまだ発表してもらいたくないというような御意向のようですけれども、こういうふうに周恩来首相初め向うの方はしきりに日本に対して好意的な措置をとっておるときに、外務省があのような白書を新しい見方をもってあれしておるということは、非常にけっこうなことなのです。遠慮する必要はないので、ああいうものをこういうときにこそ私はむしろ国民の前に明らかにすべきだと思いますので、これは一つ外務大臣にぜひ私どもはこれを公表されることを熱望しておる、また極力要求しておるということを一つ局長さんからも、絶好の機会だと思いますから、いつまでもああいうものを役所だけで握っておかないで、一つこの機会に堂々として発表するように大臣に進言していただきたいと思います。これも一つ約束して下さい。
  20. 森島守人

    森島委員 これに関連しましてジュネーヴ両国中国日本との総領事の間の話がその後どういうふうに進展しておりますか、最近の様子をちょっと聞かしていただきたいと思います。
  21. 中川融

    中川(融)政府委員 第一の御要望の点でありますが、これは外務省としての現在までの考え方は、中国問題についての研究はできるだけ熱心にいたしますが、その研究結果についてはやはりまだ公表するのは適当でないと考えております。しかし松本委員の今の御要望、御意見松本委員の御要望ということで大臣お伝えすることはお約束いたします。  第二の森島委員お尋ねでございますが、ジュネーヴにおける両総領事間の交渉の道は開いておるのでありますが、最近におきましては実質的な内容についての話し合いということは行われておりません。これは結局日本人道問題について話し合おうと、言っておるのでありますが、先方先ほど申しました通り、この問題はすでに民間団体間で話し合いルートができておるから、それでいい。今後はそれ以外の貿易とか、あるいは政治上の国交正常化というような問題について話し合うべきだということで一貫してきておりますので、その点については日本側としてはそこに入るだけの段階がきているとまだ判断していないために、従って話し合いは事実上中止されておると申しますか、中絶されておる。しかしこれはいつでも開き得る態勢にあるわけであります。
  22. 森島守人

    森島委員 ジュネーヴ会議で取りしげられた問題は、主として戦犯と申しますか、抑留邦人帰国の問題だったというふうに聞きますが、ただいま局長の御説明に上りますと、今回日本に三百数十人の帰国決定した、これは起訴を猶予されたと申しますか、起訴を免除された者というような御説明がありましたが、どっちなのでございましょうか。
  23. 中川融

    中川(融)政府委員 先方からの電報では、起訴を免除された者ということになっております。御承知のように、中共ではいわゆる戦犯としてまだ抑留されておられる人が千六十四名おられるわけでありますが、この全部がまだ起訴していない人であるか、あるいはその中にはすでに起訴を受けて、刑のきまった人がおられるのかどかという情報はわからないのであります。しかし今先方の話によりますと、越訴を免除される者が第一回として三百三十五名帰ってくる。さらにその後引き続いて四回も帰ってくるということでありますので、それから判断いたしますと、約千名近い方がやはり起訴を免除され得るのではないかというふうにも考えられますので、できるだけ全部の人が起訴を免除されて帰国されるように希望しております。これについては先ほども申しました通り、三団体からは今回釈放される人たち名簿をできるだけ早く知らしてくれということを言っております。その名前がわかれば自然その辺の事情もわかってくるのでありまして、できるだけ早急にこれらの人の氏名を知りたいと考えおります。
  24. 森島守人

    森島委員 ただいまの御説明判断いたしますと、大体戦犯容疑者として抑留されておった人々は大部分帰るのではないか、こう思われますが、私一つ不審にたえぬのは、中共政府が成立して以来大体六、七年です。その長い間戦犯ともつかないで未決定のままに六、七年の間おった——大体帰ってくると思いますが、もしそういうふうな状況にある人がほかにもありますれば、これはなるべく早く帰国させるように政府としてもジュネーヴ会談を通じまして先方に要請することが必要ではないかと思うのです。私はその点を特に政府でもお取り上げになって、中絶しておるジュネーヴ会談においてそういうような点をきっかけとして、戦犯の問題ももちろんですが、少くとも容疑者として六、七年間の長い間抑留せられておる人々帰国に対して最善の努力を払われんことを切望してやまぬ次第でございます。
  25. 中川融

    中川(融)政府委員 ただいま森島委員のお述べになりましたことはまことにごもっともと思います。その方向に従って至急研究いたしまして善処したいと考えます。
  26. 戸叶里子

    ○戸叶委員 関連して一点だけ。ソ連地区から帰られる方を日本の船が迎えに参ります場合には、慰問品を持っていくことをようやく許されたのですけれども、今度は中共地区におられる方の慰問品はどういうふうになっておるか、今度の船で積んでいくようなお考えはないかどうか伺っておきたいと思います。
  27. 田邊繁雄

    田邊政府委員 中共地区抑留者に対する慰問品の問題でございますが、中共抑留者の状態を伺いますと、ソ連地区抑留者の場合とよほど事情が違うようでございます。特に政府から慰問品を送るという必要性も、現在のところそこまでいってないわけでございます。今回向うから電報が参りまして、おそらく大部分の抑留者は帰ってくるのではないかと思っております。私どもといたしましてはどの程度の人が残され、それがだれであるかということを早く知りたい、またでき得ればその方々も全部起訴免除という処分に該当して帰ってくることを希望しておりますけれども先ほどお話がありました通り、そういうことになりました場合は、外交その他の方法によって引き揚げ促進をはかるようにいたしたいと思います。また残られた方の状況を見まして慰問品等の問題を考えてみたい、こう思っております。
  28. 戸叶里子

    ○戸叶委員 政府態度はわかったのですけれども、今中共地区へ個人々々で慰問品を送れるようになっておりますか、なっていないように聞いておりますが、いかがでしょう。
  29. 田邊繁雄

    田邊政府委員 従来興安丸で持っていっている例があると思います。現在ソ連政府日本郵政省と連絡しているような、ああいうやり方は現在のところやっていないのではないかと思います。
  30. 前尾繁三郎

  31. 田中稔男

    田中(稔)委員 私も穗積委員にならって、有能な外務省高官連中一つお願いかたがたお尋ねしたいのであります。中国の方で、戦犯を帰すというような周恩来総理談話発表されたのでありますが、これは必ず実現するものと考えております。何でも、第一回に三百何十名帰ってくる。そうしますと興安丸向うに送るわけでありますが、行きはから船であります。慰問品を積んでいくのもけっこうでありますが、かねて問題になっております遺骨の送還の問題をやはり考えなければならぬと思います。御承知のように、戦時中日本に連れてこられて虐待を受けて死んだ中国人の遺骨が無数にあるのでありますが、現在まで五回にわたってこれが中国に送り返されておるのであります。すなわち、第一次には秋田県下の遺骨五百六十柱、第二次には北海道、神奈川、栃木、新潟関係五百七十八柱、第三次には静岡、長野、群馬関係三百三柱、第四次には東京、山口、愛媛、長野関係八百七十六柱、第五次には北海道、大坂、山口、福岡関係百三十一柱、合計二千三百四十八柱、この送還はすでに経っておるのでありますが、なお今後送還しなければならないものが四千四百八十七柱あるのであります。そうして民間のこれに関係して、おります団体の方では、興安丸に乗せることができるならばいつでも乗せることができるように準備の完了しておる遺骨が五百五十柱ある。それで周恩来総理からの非常に好意ある声明でありますし、これはソ連との関係におきましては、平和条約が成立しなければ戦犯を帰さないというようなことになっておりますけれども中国の場合には日本政府中国との国交正常化について少しも努力をしていないにもかかわらず、先方から自発的にこういう措置が行われておる。しかもまた戦犯ということを考えますならば、ソ連に抑留せられておる戦犯につきましては、国民の間にも、いろいろ見方の違いがありますが、中国抑留されている戦犯につきましては、御当人を責めるわけではありませんが、満州事変以来十数年にわたる日本の帝国主義侵略戦争の結果生じた戦犯でありまして、これはやはりわれわれとしては非常に重大に考えなければならぬ。そういう戦犯をこういうような破格の好意をもって帰してくれる、この好意にこたえるためには、ちょうど往航はから船でもありますし、幸い準備も完了しておる五百五十柱を第六次分として送還するということは、全く望ましいことであり、当を得たことであると思う。そこで民間のこれに関係しておる団体の、要望も非常に切なるものがあります。私どももこれは国民として当然取り上げなければならぬことと思いますので、ぜひこの機会にそういうふうに一つお願いしたいと思うのでありますが、外務省あるいは厚生省の関係局長が見えておりますから、御意向一つ承わりたいと思います。
  32. 中川融

    中川(融)政府委員 今回興安丸中国本土に、派遣されるに当りましてやはり遺骨をお運びしたいと考えております。従って第一回の船はもう遠からず出るわけでありますが、間に合うものは全部お乗せしていきたいと考えております。なおその後も興安丸がまた出る機会が次々とあるわけでありますから、そういう際にもできるだけ遺骨をお乗せして運びたいと考えております。
  33. 田中稔男

    田中(稔)委員 それは非常にいい御答弁を承わったと思います。なおまだ多数の遺骨があります。今後これをいろいろ処理していよいよ送還するという段取りまで運ぶには、相当金を要することでありますが、民間の方ではこの資金にずいぶん難渋しているようであります。これはかねて問題になり、お願いしておることだと思いますが、政府としてそういうための資金を何らかの名品で補助していただく、あるいは援助していただくというようなことはお願いできますかどうか、一つ答え願いたい。
  34. 中川融

    中川(融)政府委員 この問題は御承知のようにだいぶ前からどういう団体が遺骨のお世話をするかという問題があるわけであります。今の関係者の大体の気持としては、従来の慰霊実行委員会から日本赤十字社にこの仕事を移したい、また大体移ったというふうに聞いておるのであります。今後日本赤十字社がどの程度この戦争当時の華人労務者の方の遺骨を探す仕事に当られるかということにつきましては、御指摘のような経費の問題がからんでくるのでありまして、赤十字社としても全力をあげてこの仕事に協力したいとは言っておるのでありますが、経費の関係でそう日本のすみずみまで探して遺骨を見つけ出すというわけにもいかないのでありますが、政府といたしましてもこれについて特に予算を計上して日本赤十字社に協力するというところまでは実は行っていないのであります。これはどうしても毎年の予算というものが非常に限定されまして、なかなかこのために予算を請求するということがむずかしい事情にあるわけであります。しかしある程度経費をそう要しなくても実施し得る面がまだまだあるわけでありまして、そういう方一面において日本赤十字社とわれわれあるいは厚生省協力いたしまして、できるだけの措置をとっていきたいと考えております。なおそれによってなおどうしても予算を必要とする、また予算をかければまだまだ非常に効果が上るというような事実がわかりますれば、その際に大蔵省とも折衝して、さらに研究していきたいと考えております。
  35. 田中稔男

    田中(稔)委員 遺骨の処理の仕事が慰霊実行委員会から大体日赤の手に移ったということでしたが、私最近その辺の事情をよく知らないのですが、日赤の方にこの仕事が移ったのですか。
  36. 中川融

    中川(融)政府委員 大体そういう方向で考えようということになっておりまして、この前の第五次ですか、遺骨の送還がありました際に、慰霊実行委員会としてはこれをもって最後の送還とする、今後は日赤にまかせるという大体の御意向で、われわれもそういう御意向を約一年くらい前に聞きました。その後日赤にはっきり事務を移管したということはまだ聞いておりませんが、関係者大体みなそういう方向で了解しておると考えております。
  37. 田中稔男

    田中(稔)委員 まだ移管はしていないがその方向で話が進んでいるということでありますが、私も日赤責任を持って処理していただくならば、純民間の団体よりも政府の援助を受ける上においては好都合だと思いますから、私はそれはそれでよろしいと思います。その場合は政府がいろいろな点で援助する、特に必要ならば経費についても考えるという条件で、日赤にこの仕事をまかせるということでなければならぬと思うのであります。四千幾らと申しましても、そう全部が全部所在がわからぬというようなことじゃないので、大体は所在がわかっておる。ただ辺陬の地にあって発掘その他に経費を相当要するというようなことがありましょうが、それも今後いずれは中国との国交も正常化しなければならぬし、また貿易の拡大が日本の経済にとって将来非常に大きな問題でもありますので、この処理のために政府が資金的な援助をお考えになるということは私は真剣に考えてもらいたい。それは特にこれについてはっきりした予算を計上するということをしなくても、政府の予算のうちから何とか処理する道はおのずからあろうと思いますから、これは私の要望でありますが、ぜひそういう点につきまして親切な御配慮をお願いしたいと思います。  今度は別の問題で一つお尋ねしたいと思います。実は私のところに陳情書が参ったのでありますが、それは大牟田市本町六丁目九十一番地浜田実という人から参ったのであります。その内容を簡単に申し上げますと、浜田実氏の長女であります浜田三三子という人が、国民学校の訓導として朝鮮に在勤されており、その後北鮮に抑留されておったのであります。それがいよいよ北鮮から抑留者が帰ってくるというので、家族の方は一日千秋の思いで待っておられたのであります。ところが厚生省から、浜田三三子というその長女の方は、昭和二十五年十日十八日——それはちょうど朝鮮戦争のたけなわのころでありますが、米軍の爆撃によって爆死された、そしてその事実について昭和三十一年四月十日朝鮮民主主義人民共和国の赤十字社から日本赤十字社あてに通知があった、こういう知らせがあったわけであります。それで非常に落胆されたのであります。そしてそのことにつきまして私のところに陳情の手紙が参ったのでありますが、第一にお尋ねしたいのはそういう事実があったかどうか、厚生省の援護局長一つお尋ねいたします。
  38. 田邊繁雄

    田邊政府委員 本年の三月二十七日付で北鮮の赤十字社から日本赤十字社にあてて、かねてから安否照会をしておりました抑留者または未帰還者のうちの二十七名について品等が参ったのであります。その中にただいま御指摘になりました浜田三三子さんという方がございまして、一九四六年の六月十九日に五年の刑を受けておられた。それで受刑服役中に爆死をせられたという結果がわかったという通報があったのであります。これは関係都道府県にも連絡し、家族にも御通知を申し上げておる次第でございます。
  39. 田中稔男

    田中(稔)委員 それでいろいろなことが書いてありますが、政府、厚生省はこのことを確認されたわけでありますが、そうだとすれば、政府はこのことにつきまして、アメリカ政府に対して被害者のためにあるいは被害者の遺族のために、何らかの補償を要求するという外交交渉を行われたかどうか、アジア局長からお答え願います。
  40. 田邊繁雄

    田邊政府委員 ただいまアジア局長に補償の問題についてお尋ねでありますが、日本政府としてどういう援護の措置を講ずるかという問題につきまして、お答えを申し上げておきたいと思います。  御承知の通り戦没者遺族等援護法におきましては、抑留者抑留中に自己の責めに帰すべからざる事由によって死亡した場合においては、若干の弔慰一金を差し上げることになっております。この浜田三三子さんという方のケースを調べてみますと、おそらくこの法律の該当者として弔慰金を差し上げられるのじやないかと思っておりますので、なお十分検討いたしまして、なるべくそういう方向で措置をしたいと思っております。
  41. 中川融

    中川(融)政府委員 今御指摘になりました北鮮で収容中に爆死された方の件について、アメリカ政府に補償金の請求をしたことがあるかというお尋ねでございますが、これはそういう交渉をしておりません。われわれといたしましては今回初めて実は知ったことでございまして、まだ詳細な研究もしていないのでありますが、そのような補償請求をアメリカ側にすることが果してでき得るかどうか、国際法その他の関係から今後さらに研究してみたいと思っております。
  42. 田中稔男

    田中(稔)委員 田邊援護局長お尋ねしますが、今アジア局長お話によれば、この事実を今初めて知ったということですが、厚生省としまして国内措置として弔慰金をお出しになる、これはけっこうですが、しかし同時にこういうことはアメリカに対して当然私は補償を請求すべき事柄だと思いますが、厚生省として外務省には今日まで本件については何らの御連絡はなかった、こう考えてよろしいのですか。むしろ私は怠慢だと思いますが、その点をお伺いします。
  43. 田邊繁雄

    田邊政府委員 この通知は北鮮の赤十字社から日本の赤十字社にあったわけでありまして赤十字社は厚生省にこの通知を、情報があったことを連絡してくれたわけでございますが、情報としてはおそらく外務省にも行っておるのではないかと思っております。また一般的な情報としては常に緊密な連絡をとっておりますので、連絡はあった思いますが、特に賠償の問題として外務省に申し入れたことはございません。
  44. 田中稔男

    田中(稔)委員 外務省には今まで何らかの連絡はなかったのですか。もう一度……。
  45. 中川融

    中川(融)政府委員 あるいは私の事務不行き届きであったのかと今考えておりますが、私はこの事実をきょう初めて知ったのであります。今書類を拝見してみますと、日本赤十字社から厚生省に書類が出ておりますので、おそらく同じ書類の写しが外務省にも情報として来ておるのではないかと考えます。私どもの方の中の事務上の関係から私が見ていないことは事実であります。書類としてはあるいは来ておるかと思います。これはさらに調べてみたいと思います。
  46. 田中稔男

    田中(稔)委員 条約局長はお帰りになったのですか。それではあと条約局長にもお尋ねします。その方が専門家ではないかと思うのですが、アジア局長にお伺いします。今後研究してみると今おっしゃったのですが、第三国人が自己の過失に帰すべき事由がなくて他国間の戦争に際し丁爆撃というようなことで犠牲になった場合、その本人の属する国がその本人の利益のために補償を要求するというようなことは、正当な権利と認められないでしょうか。私はこれは当然だと思うのです。
  47. 中川融

    中川(融)政府委員 実は私詳細なことを研究しておりませんので、条約局長が参りましたら、条約局長からお答えすると思いますが、今回の御指摘の件を拝見しますと、この方は北鮮当局に抑留されて、収容中にその収容所が米軍の爆撃にあって死亡されたという事実のようでございます。そうしますと、この死亡の原因はもとより米軍の爆撃によるわけでありますが、その本人が自由を拘束されてそういうところに入れられていたということが、その前提としてあるわけであります。従って完全な自由の身として北鮮に滞在していた場合とは若干事情が違いまして、帰りたくても帰れない、あるいは動きたくても動けない状況のもとに、たまたま収容所が爆撃の対象になったということでありますので、もしも補償の要求をいたしますとすれば、私今とっさの考えとしては、やはり北鮮当局にまず補償の要求をすべきものかと考えます。しかしこれらの点はもう少し前例その他のこともいろいろ調べてから最終的な意見をきめたいと考えます。
  48. 森島守人

    森島委員 今の問題に関連しますが、私らは局地戦争というふうに常識的に言っていますが、国連方面においてはこれは警察行為だというふうな解釈をとっているのではないのですか。
  49. 中川融

    中川(融)政府委員 一種の国際的な警察行為と考えていいのじゃないかと思います。
  50. 森島守人

    森島委員 そういたしますと、戦争中に起きた行為であって北鮮の責任に帰するということは、私はどうかと思うのです。警察行為なら、これは平時の異例な問題だと考えられる。そう解釈していきますと、これはやはりアメリカの方に責任があるのではないかと私は判断するのですが、御見解はいかがでございましょう。
  51. 中川融

    中川(融)政府委員 条約局長が見えられましたので、条約局長からお答え願いたいと思います。
  52. 下田武三

    下田政府委員 朝鮮事変の際の双方の敵対行為は、やはり部分的には全部国際法規の適用があるという、両当事者の暗黙の了解のもとに行われております。従いまして平時状態にありとすれば不法行為となり得べき身体、財産に対する損害も、必ずしもすべてが不法行為にならないで、戦争の結果やむを得ない、つまり敵対行為の飛ばっちりを受ける限りにおいてやむを得ないという法律関係にあったと存じております。
  53. 田中稔男

    田中(稔)委員 交戦国同士ならともかく、日本人の、全然戦争には関係のない善意の第三国人が、戦争の犠牲になった場合、国際法上補償を要求する権利はない、とこういうふうに考えていいのですか。
  54. 下田武三

    下田政府委員 日本中国でやりました支那事変中におきましては、実は米英等世界における有力なる第三国は、これは戦争ではない、従って日本軍は戦時法規に認められる行為をなすことができない。従ってパネー号その他の軍艦あるいは英米人の身体、財産に対する損害は、戦時法規をもって免責できないという主張をしておりました。ところが朝鮮動乱の際は、その点につきまして世界の有力な国が、あれは戦時法規の適用がないのだという主張をした国はほとんどなかったという関係で、敵対行為に関する賠償責任につきましては、大体戦時法規が適用になっておりまして従ってその飛ばっちりを受けた者の損害賠償の請求の問題につきましても、あたかも戦時状態にあったと同じような法律関係が発生した、と各国とも認めておったと解するほかはないと思うのであります。
  55. 田中稔男

    田中(稔)委員 それで今の条約局長の御答弁によりますと、これは国際法上請求する権利がないということをはっきりきめて、あきらめるようにというお考えであったのでありますが、たとえば条約局長の御見解が完全に正しいとしましても、アメリカ政府に対して道義上の責任というものは追及していく、そして慰謝料というような性質のものを要求するくらいなことは私はして差しつかえないと思います。それを外交交渉としてやるというようなお考えは外務当局にはないかどうか、またそういうことをすることは間違ったことであるというお考えかどうか、御答弁を願いたいと思います。
  56. 下田武三

    下田政府委員 これは間違ったことと申しますよりも、日本は権利として主張し得ないために、たとい申しましてもその目的を達する見込みがほとんど薄いという関係であろうと思います。
  57. 森島守人

    森島委員 条約局長にお伺いしたいのですが、今の点に関連しまして世界の各国は、大体戦時法規の適用があるのだというふうな解釈をとっておるというお話でしたが、アメリカはどういう態度をとっておりますか。アメリカはやはり警察行為というふうな解釈をとっておるように、私はいろいろなもので読んだのですが、もしアメリカが警察行為だという解釈をとっておるとすれば、第三国人に対する損害として、当然の権利として、今御指摘の日華事変中の英米人の財産に対して与えた損害と同様に、損害賠償は当然請求できると私は解釈するのですが、この点のアメリカ政府の朝鮮事変に対する公的な立場を、おわかりでしたらお知らせ願いたい。
  58. 下田武三

    下田政府委員 アメリカ政府が法律上警察行為だと申したというよりも、むしろジャーナリスティックな表現で、つまり国連自体がイニシアチブをとって、国連の行う行動であるから国連の警察行動だという形容をしておるわけでございまして現実に米国政府並びに米英軍は、これはやはり部分的に戦時国際法の適用のある敵対行為だと解しておったと私どもは了解しております。
  59. 森島守人

    森島委員 その点はただいまの御説明だけでははっきりしないと思いますから、念のためにアメリカ政府がいかなる態度をとっておるか、いかなる解釈をしておるかという点につきまして再度御調査の上適当な機会に御返事を求めたいと思います。  もう一つお伺いしたいのは、シーボルト次官補が日本に来ており、新聞の伝えるところによりますと、日韓問題等についてもあっせんと申しますか、何か一つやってみたいというふうな気持のように伝えております。重光大臣も議会における演説において、日韓問題に関してアメリカのあっせんを求めるのだというふうな趣旨を、はっきり言われておると記憶しておりますが、政府はこれまでアメリカに対して何らかあっせんとか調停とかいうふうな措置を求めることをおやりになりましたかどうですか、この際お伺いしておきたいと思います。
  60. 中川融

    中川(融)政府委員 日韓問題の打開につきましては、ここ三年くらいの間一貫いたしまして、日韓両国間で直接交渉いたしますと同時に、並行して、双方にとっての友好国であるアメリカの協力を求めてきておるのであります。これは日本側から求めます同一に、韓国側も同じくアメリカに協力を求めておるのであります。その意味におきましては、すでに何回となくアメメカにそういう申し出もいたしますし、アメリカ側もそのたびごとに、それにはぜひ積極的に、でき得る限りの協力をしようということを約束してくれておるのであります。現実の問題といたしましても、今までいろいろの段階がありましたが、その冬段階に応じまして、アメリカ側が事実上あっせんの措置もとってきてくれておるのであります。ただ遺憾ながら、それらの努力にもかかわらず、まだ日韓会談再開ということにはなっていないのであります。このアメリカの態度、及び日韓双方がアメリカに対して協力を求めておる態度というものは、引き続き変りがないわけでございます。
  61. 森島守人

    森島委員 私らの見るところによりますと、アメリカはいわゆる火中のクリを拾わぬということで、責任を回避するような態度をとっておるので、私は日本政府においては、いま一段はっきりした措置をおとりになることを希望してやまないわけです。私もこの席上で日韓問題についてお伺いしたかったのですが、いろいろな重要問題が山積しておりましたのでその機会を今日まで得なかったのでありますが、これこそ現在無期限中断に入ったと申して私はちっとも差しつかえないと思う。事務官同士の会談はどの程度進歩しておりますか。またこれを再開し得る見込みがあるのかないのか。重光外務大臣はなかなか楽観的な見解をこの席上で述べられたはずですが、私はそういうふうにはいかぬと思う。この点に対する事務当局の御見解を伺いたいと思います。
  62. 中川融

    中川(融)政府委員 御承知のように、約二月前に重光大臣が金公使と会談いたしまして、その結果日韓会談をできるだけ早く開こう。また大村収容所と釜山の収容所の問題もこれに並行して片づけようということの話し合いがあったわけであります。それに基きまして、事務的な話し合いを進めたわけでありますが、双方の収容所の問題につきましては、若干意見の相違があったために、今日に至るまでまだ片づかないのでありますが、日韓の根本問題についての会談の再開ということは、必ずしも収容所問題の解決ということを前提とするわけではなく、これは二つの別個の問題でありますので、日韓会談の方はその収容所問題とは必ずしも関係しないで、再開ということができ得るわけであります。しかし全体の空気としては、何といっても人的問題である収容所問題を、まず時間的に最初に片づけて、それから全般的な問題をやりたいというのが希望であります。しかしてこの収容所の問題は、一応双方の意見が合わないために中絶の状態でありますが、しかしこれも人道問題であるということから、何とか双方にできるだけ歩み寄るように努力して、これを一日も早く解決したいという気持には変りないのでありましてその意味での折衝はその後も内々ではありますが、いろいろやっておるのであります。私はこれについて決して悲観はしておりません。相当近い期間にこの問題がさらに進展を見るであろうと考えております。
  63. 森島守人

    森島委員 重光・金会談と申しますか、両人の間にできた了解事項というものがあります。大作三つの項目からなっておると聞いております。大村収容所に抑留中の韓国人の刑余者を釈放する、韓国からの密入国者は向うで引き取って、これと交換に韓国に抑留せられておる漁夫を帰す、この三つからできておるように承わっておりますが、これは両人の間の口頭の了解でありますか、何らか書きものでも取りかわしたことはあるのでございますか。
  64. 中川融

    中川(融)政府委員 そういう原則で本問題を片づけようではないかという意味の口頭の話し合いでございます。
  65. 森島守人

    森島委員 その問題に関連しまして、法務省と外務省との間に意見の疎隔を来たしているというふうに聞いておる。法務省では刑余者を釈放した上は、さらに犯罪を犯した場合にはこれを向うが引き取ってくれるかどうかという点について、非常に強い態度を取っている。この点に関する法務省と外務省との間に十分なる了解がなかった、こういうふうに聞いておるのでありますが、この点はその通り解してよろしゅうございますか。
  66. 中川融

    中川(融)政府委員 重光大臣と金公使との間の口頭の話というものは、ただいま申しました通り原則についての話でございます。その具体的なことは、両国政府委員を指名して、その委員事務的に折衝させよう、打ち合せさせようというのが第四の項目としてあるわけであります。その事務的折衝でどういうことをきめるかということは、何らそのときの打ち合せにおいてはその内容についてまでは言ってなかったわけでありまして、その一つの問題といたしまして、将来そういう悪質の韓国人は韓国側が引き取るのかどうかという点について、もう少しはっきりした考えを聞きたいというのが法務省の考え方であります。そういうことでそれを先方事務的折衝の段階で聞きましたところ、先方はその点について今ここで言明する限りでないということで話が行き詰まったわけでありまして、これは外務省と法務省との意見の相違ということは、日本の国内的な問題としてはいろいろあるわけでありますが、先方との事務的折衝ではそういうことで向うに話をした、その点について話が合わないままになっておるのが現状でございます。
  67. 森島守人

    森島委員 私も韓国側のとっておる態度が非常に頑迷で了解しがたいものがあることは認めます。しかしさりとて、韓国に抑留せられておる漁夫の家族が、女の人たちは子供をおんぶしたりして、二、三日前から集団的に陳情に参っております。この状態を見ますと、私は非常に気の毒に思う。何とか法務省と外務省との間に打ち合せを了されて、一日も早く問題の解決に進まれんことを私は希望してやまないのです。  さらに一点、昨日沖繩の施政権を日本に戻せという決議案が上程されたことは御承知の通りでございます。世界自由労連の代表者として向うに調査に行った門司亮君の演説、それから同僚委員高岡君がしさいに沖繩の状態を説明されたが、この状況は政務次官も聞いておられた。大臣一つ速記録を読んでいただいて、その窮状を十分理解した上で、一日もすみやかに適切な措置をとられんことを私は希望して質問を終ります。
  68. 前尾繁三郎

    前尾委員長 菊池義郎君。
  69. 菊池義郎

    ○菊池委員 条約局長にお伺いします。鳩山総理が過般の本会議において、ソ連との平和回復を普通の平和方式によって進めたいという希望をちょっと披瀝いたしましたが、まだはっきりした決意は言っていない。アデナウアー方式によるかあるいはロンドン方式によるか、これに関しまして昨日も東京会館に会合があり、百二十名が集まり、その前には長老会議があった。政府の媚態外交を非常に心配するの余り、こういったような会合が行われておるのであります。国民はまだどちらの方式でこの条約を締結するであろうかというはっきりしたことを知らされてない。みな迷っておるわけでありますが、国内の世論は二つに分れておるような大きな問題であります。どの方式で平和会議を推進するかということはさまっておりましょうか、どうでしょうか。その点お伺いしたいと思います。
  70. 森下國雄

    ○森下政府委員 これがきまっているかいないかという問題は、既定方針通りに進めて参るわけであります。
  71. 菊池義郎

    ○菊池委員 そうすると、つまりロンドン方式でございますか。
  72. 森下國雄

    ○森下政府委員 別にロンドン方式、アデナウアー方式という方式に限定したものではありません。やはり既定方針によって固有の領土としてどこまでもそれを主張しながらこれから交渉して参るのでございまして、また一面交渉の過程のような状態にもありますので、今ここでどういう方式でということを決定するわけにはいかない、既定の方針という立場で参るのであります。
  73. 菊池義郎

    ○菊池委員 既定の方針といいますが、ロンドンでまず懸案を先に解決する。領土問題、漁業問題、貿易問題、それから国連への加盟を支持してもらうといったようなことを先に——国連加盟はあとか先かわかりませんが、そういう懸案を先に解決して、それから平和を回復しようということでありますか。既定の方針といいますと、それ以外にないわけでありますが、その点いかがでございましょうか。条約局長から伺います。
  74. 下田武三

    下田政府委員 先ほど政務次官が申されました通り、まず平和条約方式というのが、日本のみならずソ連側も同様にとってきた態度でございますので、やはり平和条約方式で話を始める、再開するということに相なろうと思います。従いまして平和条約というのは懸案の解決を含んだ平和条約ということに相なると思います。
  75. 菊池義郎

    ○菊池委員 懸案の解決が先でございますか。
  76. 下田武三

    下田政府委員 懸案の解決は、同時に、平和条約ができて調印されるときが——懸案が先に解決されて、しかる後に平和条約ができるのではございませんで、平和条約の中に懸案の解決の仕方が含まれておる、そういう意味でございます。
  77. 菊池義郎

    ○菊池委員 外務省には情報が来ておるだろうと思いますが、河野全権がブルガーニンと暫定協定を約束して、それから漁業大臣に会うと、手のひらを返すようにひっくり返っておるのでございますが、実におそろしい連中だと思うのです。これは一体どういう事情からああいうことになったのでしょう。それを聞かしていただきたい。外務省にはその情報が詳しく来ておるだろうと思う。
  78. 下田武三

    下田政府委員 これは会談録がございませんので、詳細な事情はわかりません。しかし……(菊池委員「推測でもいいですよ。」と呼ぶ)五月九日の河野代表とブルガガーニン総理との会談におきまして、日本側は明らかに本年度の暫定取りきめについて話をする、そしてブルガーニン総理が河野、イシコフ両代表に対して、二人で話し会えという指令をしたと了解しておったわけでございます。従いまして五月十二日の調印まぎわに、その暫定についての了解を遂げんとした場合に、日本側の目には、そのまぎわになりまして、ソ側が態度を変えたということでございます。そこで河野代表は、そういうことでは署名できないと言って、すぐ翌日帰国をするために、飛行機の留保を申し出られました。それに対してそれならさようブルガーニン総理と相談してみるから、出発は十日に延ばしてくれということで、十四日に会いますと、やはり暫定——本年度の漁業についての話し合いができた、そういうわけでございます。
  79. 菊池義郎

    ○菊池委員 それはわかっていますが、そのいきさつは、ソ連側の方はどうなんでしょう。あなた方くろうとだからよくわかっていると思う。
  80. 下田武三

    下田政府委員 ソ連側は私ども事務当局、随員の話を聞きましても、西欧側の交渉とはだいぶ模様が違うようでございます。せっかく話を遂げまして、さあこれでそれでは一つ上司に相談して、念を押してみて、それじゃ完全な合意を作成しようとしますと、その次に会いますと、そんな話はまるでけろりと忘れておるような顔をした、こっちがびっくりしたというような場合もあったそうでございます。ですからやはり誤解が存しますか、あるいはソ側の故意でございますか、その辺のところはソ側自体でなければ的確な説明はできないと思います。日本側はただそういう結果であったという事実を確認する以外には道がないわけであります。
  81. 穗積七郎

    穗積委員 これは下田条約局長、あなた慎重で賢明な方ですから、ちょっと御注意申し上げておきたいが、日ソ交渉の問題は、政府態度は御承知の通り国民の顔色を見てと、こういうことなんですよ。従って国民がどういう受け取り方をするという印象が非常に大事なのです。従って今おっしやったように、西欧側では話をきめたことをあとでくつがえすことはないけれども、ソビエト側ではきめた話をくつがえすようだというようなお話になると、これはあと非常に信用ができぬということでしょう。たとえば領土問題について留保して、適当な時期に話し合いをしようということも、そんなことでは、とってしまうまでは当てにならぬぞということでございますから、信用の上に立つ話し合いというものは、もう一切できないという感情を持たしめることになるので、私はこういうふうに思うのですよ。向うの言うことは非常にはっきりしておると思うのです。これは松本さんにお聞きになっても、松本さんは半年話し合って、相手の言うことがあいまいでわからなんだ、ごまかされたようなことがあった、意外なことが出てきたという情報一つも今までなかったと思う。われわれもそういうことは松本さんからも聞いていないし、松本さんのいろいろな発表の中でも、そういうことはございません。今のあなたの言うのは、それは河野さんの思い違いですよ。日本政治家は腹をたたいて、はっきりした話がなくても、ぜにを置いて、あとは頼みますよと言えば、聞いてもらったと思う癖がある。だから、イシコフと話をしてくれということは、原則が了解に立って、ブルガ一ニンと河野との方で、原則については向うがオーケーをして、こまかいことについてはイシコフと相談してくれと言ったと、こっちは理解しておるのだが、そんなことを理解するのはこっちの早合点です。軽率ですよ。そうではなくて、その問題については話し合うことはけっこうだ、しかしあなたの言う提案については、そういうことは直接イシコフと話をしてくれというのですから、原則を含む細目についての話し合いをしてくれということを言ったのであって、それに対して河野さんが、原則はブルガーニンが了承して、あとは細目についてのみイシコフと話をしてくれ、と理解したのが早合点なんです。それは通訳というような不便がございますから、必ずしも河野さんを責めるわけにはいかぬと思うが、それは、それで十分認めていいと思うのです。しかし外交の専門家から見れば、その点ははっきり確約した、それは常識的に見て間違いない、それをその原則が了承されたと判断するのがこっちのあやまちもではなくて、こっちは何の早のみ込みも早合点もないと判断されたのに、あとになって了解された原則をくつがえしてきたというようにとることは、私は第三者の判断で、とりようが間違っておりはせぬかと思うのです。その点は、ちょっと誤解、推測がおありになるように私は思いますから、慎重にして賢明なる下田条約局長の今の御解釈としては、ちょっと手落もがあるのではないか。私どもの印象では、また同様により長く話をされた松本さんの印象も、そういうような筋の通らぬこと、前言をくつがえしてくるというような態度、狡猾なる態度、または人を欺瞞するような態度というものはなかったということは、これは直接当った松本さんの報告の中でも明瞭でございますから、そういうふうな、ソビエトの外交はちょっとおかしいぞというような印象を与える御答弁御解釈は、この際慎しんでいただきたい。これは私の要望でございますが、申し上げておきたいと思います。
  82. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それでは暫時休憩いたします。    午後四時三十九分休憩      ————◇—————   〔休憩後は開会に至らなかった〕