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穗積委員 これは
下田条約局長、あなた慎重で賢明な方ですから、ちょっと御注意申し上げておきたいが、日ソ
交渉の問題は、
政府の
態度は御承知の
通り国民の顔色を見てと、こういうことなんですよ。従って
国民がどういう受け取り方をするという印象が非常に大事なのです。従って今おっしやったように、西欧側では話をきめたことを
あとでくつがえすことはないけれ
ども、ソビエト側ではきめた話をくつがえすようだというような
お話になると、これは
あと非常に信用ができぬということでしょう。たとえば領土問題について留保して、適当な時期に
話し合いをしようということも、そんなことでは、とってしまうまでは当てにならぬぞということでございますから、信用の上に立つ
話し合いというものは、もう一切できないという感情を持たしめることになるので、私はこういうふうに思うのですよ。
向うの言うことは非常にはっきりしておると思うのです。これは
松本さんにお聞きになっても、
松本さんは半年話し合って、相手の言うことがあいまいでわからなんだ、ごまかされたようなことがあった、意外なことが出てきたという
情報は
一つも今までなかったと思う。われわれもそういうことは
松本さんからも聞いていないし、
松本さんのいろいろな
発表の中でも、そういうことはございません。今のあなたの言うのは、それは河野さんの思い違いですよ。
日本の
政治家は腹をたたいて、はっきりした話がなくても、ぜにを置いて、
あとは頼みますよと言えば、聞いてもらったと思う癖がある。だから、イシコフと話をしてくれということは、原則が了解に立って、ブルガ一ニンと河野との方で、原則については
向うがオーケーをして、こまかいことについてはイシコフと相談してくれと言ったと、こっちは理解しておるのだが、そんなことを理解するのはこっちの早合点です。軽率ですよ。そうではなくて、その問題については話し合うことはけっこうだ、しかしあなたの言う提案については、そういうことは直接イシコフと話をしてくれというのですから、原則を含む細目についての
話し合いをしてくれということを言ったのであって、それに対して河野さんが、原則はブルガーニンが了承して、
あとは細目についてのみイシコフと話をしてくれ、と理解したのが早合点なんです。それは通訳というような不便がございますから、必ずしも河野さんを責めるわけにはいかぬと思うが、それは、それで十分認めていいと思うのです。しかし
外交の専門家から見れば、その点ははっきり確約した、それは常識的に見て間違いない、それをその原則が了承されたと
判断するのがこっちのあやまちもではなくて、こっちは何の早のみ込みも早合点もないと
判断されたのに、
あとになって了解された原則をくつがえしてきたというようにとることは、私は第三者の
判断で、とりようが間違っておりはせぬかと思うのです。その点は、ちょっと誤解、推測がおありになるように私は思いますから、慎重にして賢明なる
下田条約局長の今の御解釈としては、ちょっと手落もがあるのではないか。私
どもの印象では、また同様により長く話をされた
松本さんの印象も、そういうような筋の通らぬこと、前言をくつがえしてくるというような
態度、狡猾なる
態度、または人を欺瞞するような
態度というものはなかったということは、これは直接当った
松本さんの
報告の中でも明瞭でございますから、そういうふうな、ソビエトの
外交はちょっとおかしいぞというような印象を与える御
答弁御解釈は、この際慎しんでいただきたい。これは私の
要望でございますが、申し上げておきたいと思います。