○高
碕国務大臣 第一におっしゃった例の
フィリピンに
賠償したこの
資本財というものを、
フィリピンにおいてできるだけ有効適切に使ってもらうということは、これはもう和田さんのお
考えと私
どもとは全然一致しておるのでありまして、そうすることがこの
賠償をやって
両国の間をよくするかどうかということにかかっておることだと存じまして、今後の
実施に当りましては、御
趣旨に沿うように十分努力していくことは、当然のことだと私は存じておるわけでございます。
第二の
貿易拡大の問題につきましては、大体の材料は
提供することになってやってきたのでございますけれ
ども、これを見ますと、ちょっと数字には私自身賛成しかねる点があるわけなのでもう少し訂正して差し上げたいと存じます。
大体から申しますと、昨年一月から十二月までの
貿易は、八千八百万ドルの輸入に対して、約五千万ドル近くの輸出をいたしたわけであります。戦前の
フィリピンに対する
日本の
経済の依存度というものはそんなになく、ごく軽かったわけでありますが、今日いろいろな関係上、非常に依存度が多くなってきた。その一番最たるものは何かと申しますと、
日本が鉄鉱石を要求するということ。
フィリピンの鉄鉱石の中には、御
承知のクロームが入っております。クロームが入っているために、あの大きな鉄鉱
資源を使うということについては
相当問題にいたしておったわけでありますが、クロームを分離することに
戦争中アメリカで成功したものでありますから、この方法をとっていけば、今後
日本の鉄鉱石は
相当フィリピンから持ってこなければならぬと思います。それからもう一つ、今日
日本の現状におきましては、銅の鉱石が非常に少くなっておるわけなのです。それで銅鉱石のいいものは
フィリピンにおいて、しかも
日本人の手においてこれが
開発されつつあるということは、非常に大きな将求があると存ずるわけなのであります。そういうわけで一方は
日本の木材が足りなくなっておる、それに対してラワン材を三千万ドルも持っていってこれを加工するといろ工合に、
フィリピンに対する
日本の
貿易の依存、つまり
向うから原料を持ってくるということが、非常に必要なことになってきたわけであります。そのほかに砂糖もございまして、そういう点もありまして、地理的の関係からいえば
フィリピンに対する依存度が多くなる。そうなれば
日本の輸出はだんだん伸びないで、輸入だけふえるのじゃないかと御心配になるだろうと思いますが、現在
日本で輸出いたしておりますものにつきましては、綿製品、雑貨類で、これが
相当の制約を受けておったわけであります。これはどうなっておるかというと、大体アメリカから綿製品、雑貨類、紙の製品それから食料品、これはおもにカン詰でございますが、そういうものがアメリカとの間の関係で、これはベル・アクトがあったために
相当入っておるわけでございます。それに対しては、ベル・アクトがこの一月から一般の関税の三五%をかけるということになっておりますが、それにしてもやはりアメリカは
相当特恵の税率をとっておるわけであります。これと同率にしてもらえば問題ないと思いますけれ
ども、私
どもはこれは少し無理だと思っております。一体ガットの精神から申しましても、一国と一国の間に特殊の関税を持っておるというふうなことは、将来国際間における災いをなすもとだと存じまして、こういうふうなことはアメリカの方にもっと早くベル・アクトを撤廃してもらうということを私
どもは
希望するわけなのでございますが、これと同じにしてくれというふうな要求をすることは、少し無理かと存じておるわけなのであります。しかしながらこういうふうに漸次アメリカとのベル・アクトというものは緩和されんとしているときでありますから、地理的に
考え、実際の原価計算から申しましても、これにかわりまして
日本の
貿易というものは、現在アメリカに依存しておる八〇%の輸入量に比べて、
日本は現在
フィリピンの輸入量の八%にしか達しておりませんが、これは逐次ふえていくというのは当然だと思いますし、特に
日本が
フィリピンから買います輸入量が増加いたしますにつれては、当然これは今後の
貿易協定というものは、輸入に対するバランスをとるということが今日の世界の大勢になっておるわけでありますから、よけい買えばそれだけ
日本から買ってくれという
貿易協定はできることだと存じまして、私は、はなはだ楽観論と言われますかもしれませんが、楽観しておるわけなのであります。