○松本(七)
委員 私は日比賠償について、今後これを判断する上で一番大事な点は、やはりこれほどの負担を
日本国民が背負って、今後この賠償の義務を果すわけでございますから、
日本の国民がよくこの賠償の協定ができるに至った
事情を
理解してそうして納得の上でこれに協力するということが一番大切だと思うのでございます。もちろん
政府はこの
賠償協定が
日本の経済負担能力の限度であり、これがフィリピンのためにもなり、両国にとって好ましいという
結論を得たればこそ、これを調印されて国会の承認を求められる段取りになった。フィリピン
政府でも同じくこの
程度で妥結するのが、両国にとって好ましいという
結論があったればこそ、こういう事態になったと思いますから、これはその当事者としては、なるべく早く両国で、それぞれの国会でだれ一人
反対する者なく、全会一致でこれが承認される運びになれば、これに越したことはない。けれ
どもそれは
政府、当事者の考え方であって、国民の側からすれば、やはりその間に十分納得のいく
説明があって、そうして
理解をされなければ、これを軽々しく、早い方がいいということで、全会一致が望ましいということだけで承認するわけにいかないと思います。そういう観点から私
どもは
政府に十分伺わなければならない大きな問題がたくさんあるわけなのであります。ただ額がどうか、初めの四億ドルが五億五千万ドルになったので、一億五千万ドルふえてこれでは負担にたえないではないかという議論ももちろんあるし、また十分検討してみなければならない点だと思いますが、こういう問題を検討するに当っては、やはり
政府の大きな基本的な方針というものがある
程度明らかになってこないと、たとえばこのフィリピン賠償で
日本の通常貿易が阻害されるのではないかというような問題
一つとってみましても、
政府では先ほど高碕長官の御
答弁にもありましたように、大丈夫、輸出はむしろこれによって伸びる見込みなのだ、こういうことを言われますけれ
ども、特恵的な待遇を受けておる
アメリカの有利な
立場というものを打破しないでも、ベル・アクトを廃止しないでも、十分競争はできるのだ、こういうことを長官は言われますが、しからば通常のやり方で果してこの競争場裏に
日本が臨んで勝つ見込みがあるかどうかということになると、大きな問題だと思う。
日本が安い品物を、しかも優秀な品物をどんどん競争場裏に乗り出してこれを売るということになった場合、一時は有利に展開されても、
アメリカがこれを黙って見ておるわけない。すでに世界全体における
アメリカの市場がだんだん狭まってきつつある今日においては、この
日本の貿易の優秀な伸張ぶりを見た場合に、
アメリカが必ず政治的ないろいろな手を打ってくることは覚悟しなければならぬことなんです。そういう場合に
日本は果して万全の備えがあるかどうか。一体何を背景にして、世界的な背景において
日本がこの競争場に臨むかというような構想について、私
どもはやはりある
程度の具体的な構想というものをここに明らかにしていただかないことには、われわれはおいそれとこれを判断するわけにもいかないと思うのです。そういうわけで、先ほど、
戸叶さんも、ただ長官の貿易はむしろ伸びるのだというような言葉では納得できないということを言われましたが、今後はそういう
立場から私
ども一つじっくり
政府の方針なり具体的構想なりあるいけ確信のほどを伺って、その上で果してこの
賠償協定が、
日本にとって有利とまではいかなくても、この場合はやむを得ないものであるかという判断をしたいと思っておる。
そういう点から考えますと、まず第一に私
どもが疑問に思いますのは、大野・ガルシア協定から今度のに変ってきたいきさつについては、いろいろ世間に伝えられておるのです。大野・ガルシア協定がフィリピンの政治情勢に影響されて御破算になったとわれわれは聞かされておるのですが、その当時どういう
事情であったかも、これは後ほどお聞したいと考えておるのですが、まず私
どもが疑問に思いますのは、昨年の八月十三日にいわゆる八億ドル賠償案についてフィリピン側の
要望が伝達されましたときに、鳩山首相がこの線を内諾を与えたというふうに伝えられておる。当時この点が問題になって、
政府筋では、いやそういう鳩山首相が内諾を与えたようなことはないのだということが、極力強調されておりましたけれ
ども、その後ずっと今日に、至るまで、フィリピンに対する賠償
交渉の経過を見ておりますと、結局はこの鳩山首相がのんだといわれるところの今度の八億ドル賠償案は、なるほど二本建になって、一方は二億五千万ドルの経済借款ということにはなっておっても、これをいかにして表面上合理化するかということに努力が集中されてきたように、私
ども外部から見ると見える。この点は旧自由党でも非常に問題にして、合同前はもちろんのこと、その後においてもずいぶんこの点を問題にされて、聞くところによると、どうにか今日では納得されたとけ表面は言っておられますけれど、おそらく釈然としないものがあるのではないかと考えられるのです。そういうふうにこの
交渉過程について、私
どもは大きな疑問を持っておりますので、自民党の中の旧自由党の
諸君でさえ、そういう点をずいぶん問題にされてきたことなのです。ましてやわれわれが、それをもっと徹底的に十分釈然とするような
説明を求めるのは、当然だろうと思います。
もう
一つ、これは私
どもが今後質問をするときの態度として、あらかじめ大臣諸公に十分御
了解を得ていただかなければならぬと思うのでありますが、この日比賠償
交渉に乗り出すに当っては、
日本側としては科学的に十分
調査をされて
日本案というものを作成していくことが私は当りまえだろうと思います。それはおそらく経済企画庁が中心となってそこの計画部ですか、そういうところで十分な案を練られておったでありましょうし、また私
ども聞くところによると、そういう点を詳細に計画されておったということでございますが、結局さっきの問題と関連するのです。そういう基礎的な資料に基いて、この案ならばよろしいのでなしに、
日本の官庁では企画庁を中心にして、そのように科学的な
調査も一生懸命にやり、こういう
程度ならば
日本の能力——聞くところによると四億ドルで抑えなければ絶対にいけないという案が企画庁あたりでは出されておったということでございますけれ
ども、その額はともかくとして、いろいろ厳密な
調査に基づいた案ができつつあったにかかわらず、これを何ら考慮することなく、総理を中心にしたところの最高首脳部で、政治的ないわゆる腹芸というか、八億ドルというものをまずのんで、そうしてその後において、いかにこの八億ドルという
金額を合理化するかということに努力されたように、私
どもにはどうしても見える。またそういう材料もたくさんあるわけです。そういう点に今後詳しい御
答弁をだんだん求めていくことになるのでございますが、まず
一つ企画庁長官に御
答弁を
お願いしておきたいのは聞くところによりますと、この日比賠償では、大蔵省としてはやはり一ドルでも低額の方がよろしい、できるだけ安い方がよろしい、こういうことを終始主張されておった。ところが通産省の方では、そんなに額を切り詰めることばかり意を払う必要はない。もちろんこれは限度の問題で、幾らでも多いほどいいという無制限のものではないと思いますけれ
ども、なるべく多くして、そしてそれをてこにして、
日本の経済の発展の土台にするのだ。そういう産業の発展という
立場から、むしろそう切り詰めなくても、フィリピンの言うように相当多額のものでこれをやること差しつかえないという意見を通産省は抱いておった。これに対して企画庁側としては、やはり大蔵省の考え方を支持して、そしてフィリピンに強く突っぱねる態度に出るようになったのだということがいわれているのでございますが、この点についてまず企画庁長官から経過を御報告願いたいと思うのでございます。