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1956-05-23 第24回国会 衆議院 外務委員会 第48号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月二十三日(水曜日)     午前十時二十一分開議  出席委員    委員長 前尾繁三郎君    理事 石坂  繁君 理事 北澤 直吉君    理事 須磨彌吉郎君 理事 高岡 大輔君    理事 山本 利壽君 理事 穗積 七郎君    理事 松本 七郎君       愛知 揆一君    植原悦二郎君       大橋 忠一君    菊池 義郎君       重政 誠之君    並木 芳雄君       福田 篤泰君    松田竹千代君       岡  良一君    田中織之進君       田中 稔男君    戸叶 里子君       福田 昌子君    細迫 兼光君       森島 守人君    和田 博雄君       岡田 春夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 重光  葵君         国 務 大 臣 高碕達之助君  出席政府委員         総理府事務官         (調達庁不動産         部長)     大石 孝章君         総理府事務官         (経済企画庁計         画部長)    大來佐武郎君         外務事務官         (アジア局長) 中川  融君         外務事務官         (欧米局長)  千葉  皓君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君  委員外出席者         防衛庁課長         (装備局武器課         長)      山本 一彦君         外務事務官         (欧米局第二課         長)      安川  壮君         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 五月二十二日  委員高岡大輔辞任につき、その補欠として野  依秀市君が議長指名委員に選任された。 同月二十三日  委員大西正道君及び野依秀市辞任につき、そ  の補欠として岡良一君及び高岡大輔君が議長の  指名委員に選任された。 同日  理事高岡大輔君同月二十二日委員辞任につき、  その補欠として同君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事の互選  日本国フィリピン共和国との間の賠償協定の  批准について承認を求めるの件(条約第一六  号)  国際情勢に関する件     —————————————
  2. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 これより会議を開きます。  内灘試射場に関する問題について、岡良一君より緊急に質疑をしたいとの申し出がありますので、この際これを許します。岡良一君。
  3. 岡良一

    岡委員 ちょうど三年前に内灘が、米軍演習場として接収されるというそのことを通じて、国の内外に大へんな衝動を与えた問題を提起したことは政府御存じ通りでありますが、この内灘演習場としての継続使用について、最近また地元との間にいろいろ政府としても御折衝のようでありますが、その間十分なる意思の疎通を欠いておるようであります。その点をこの機会に若干ただしたいと思うのでありますが、順序といたしまして、当時内灘米軍演習場としてその使用に供するということについて、裏づけとなるいろいろな決定が、あるいは日米合同委員会なり閣議においてなされました。この決定内容をまずお聞きをいたしたいと思います。
  4. 大石孝章

    大石(孝)政府委員 お答えいたします。内灘試射場の問題につきましては、いろいろ世間でも問題になったケースでございますので、岡委員のいろいろ御承知のことも多いと思いますが、この経緯昭和二十七年の十二月五日の閣議了解で、二十八年の一月一日より四月三十日まで一時使用する、こういうことになったわけでございます。それで実際は米軍はこれをその間四月三十日まで使ったわけでございますが、地元との話し合い継続使用についてつかないので、いろいろその間に交渉がございまして、また二十八年の六月十三日から現実に使った。しかしながらその間において地元政府との間の約束は、本試射場使用期間を三年以内とする。その起算点は二十八年の五月一日である。従いまして三年は本三十一年の四月の末までが使用期間ということになっております。  以上のようなことでございますので、国といたしましては、三カ年という地元約束がございますので、これを今後継続使用するならば、地元との間に再交渉いたしまして、そして御納得をいただかなければいかぬということになるわけでございます。  それで本年の三月以降、私どもの方と地元の方と実際上のお話し合いを開始したのでございますが、地元におきましてはいろいろな議論があったようでございますので、とにかく現実には地元に来てはっきりとした国の意思を伝え、また地元要望を聞いてもらいたいという申し入れがございましたので、私命ぜられまして四月二十一日の晩から現地に出かけまして、四月二十二、二十三、二十四と三日間石川県当局のごあっせんのもとに、国の方では一月一日以降も引き続き米駐留軍試射場として使用いたしたい。使用期間米駐留軍使用する相当な期間であるというようなお話を申し上げたわけでございます。  それに対しまして地元側結論を要約いたしますと、今後継続使用する件についてはよろしいだろう。ただし条件がある。その条件は、この内灘村の更生策として内灘地先河北潟の一部を、耕地造成のために埋立工事を実施してもらいたい、この内容造成面積三百町歩、これを三カ年計画で完成するということを条件とする。そのほか要望事項といたしまして、夏の期間海水浴のために日曜日、少くとも三カ所の部落の地先を開放してもらいたいという問題、防風林地帯をもう少し強化してもらいたいというような問題、それから交通上の問題についてもう少し考えてもらいたい。それから地元と二十八年当初取りかわしたいろいろな約束を完全に履行してもらいたいというような要望事項があったわけでございます。  それに対しまして私は、この河北潟の一部埋め立ての問題は、試射場継続使用条件としては非常に困難な問題であるので、これは私端的に申し上げて、ちょっと成立しかねる問題だと思う。その他の要望事項については、私ども誠意をもってどこまでもこれを解決いたしたいというような話し合いであったのでありますが、地元におきましてはどうしても河北潟の一部埋め立て問題は、絶対的な条件というふうに判断されておるので、これを折れるわけにはいかない。その点でお互いの話し合いがつかなかったのでございまして、いろいろ県当局あっせんその他もあって、とにかく国の方では今後も継続使用したい。それから地元でもその継続使用はよろしいだろう。ただ問題はその河北潟埋め立て問題にかかっておるので、この問題はやはり期間を置いて検討するようにこれを双方においてよく考えたらいいだろうということで、とにかく話し合い期間を設けるということで、一カ月半の話し合い期間を置く、すなわち五月一日から起算して一カ月半、六月十五日までは従来通り使っておってよろしい、その間いろいろ考えたらいいだろう、こういうふうになっておるわけでございます。  なぜ国の方で今後とも継続使用したいかということにつきましては、実はこの地元と国が三カ年と約束した当初におきまして、合同委員会におきまして、地元の方の約束米軍ともはっきりさせなければいかぬということから、三カ年間しか米軍の方には使用期間を与えないということを米軍に申し入れしてあるわけでございます。それに対しまして、いろいろ米軍の方でも、これを検討中でございましたが、昨年の十二月六日の第八十一回の施設特別委員会におきまして、米側から内灘試射場は当分の間これを継続使用したい、その理由は、本会計年度におけるいろいろ砲弾発注の未済の点もあり、また今後もその発注が継続される予定であるので、この試射場継続使用したいというのでございます。それで関係各省これを吟味の結果、やはり相当期間継続使用する必要があるというふうに判断したので、これを現地の方にお願いに参った次第でございます。
  5. 岡良一

    岡委員 政府委員の方に要望いたしたいのは、私の質問申し上げた点だけを具体的に、簡潔にお答えを願いたいと思います。  それでは昭和二十七年の七月四日、閣議了解によって内灘演習用地として接収使用するに伴う損失補償要綱決定されました。この要綱に基いて今日までどの程度損失補償がなされたか、その金額もともにこの際承わりたいと存じます。
  6. 大石孝章

    大石(孝)政府委員 現在まで金額地元にお支払い申し上げたのは、総計で七億五千二百三十万円でございます。その内訳は、見舞金としまして五千五百万円、文化施設拡充強化費として五百万円、いろいろ移転補償等の当初補償金としまして四百二十四万円、防砂林補助金として三十四万円、道路改修費二億三千万円、畑地灌漑工事費二億五千万円、大野港改修工事費六千万円、賃借料約七百万円、漁業補償金一億四千万円、以上でございます。
  7. 岡良一

    岡委員 そこでお尋ねいたしたいのは、今大石部長からも御指摘があったように、第一点の問題は、二十七年の接収交渉の過程において、内灘村から強い要望として、沿岸干拓をやってもらいたいという要望があった事実であります。現在の村当局がそういう約束があったということを強く固執いたしておることは、現地に出向かれた大石部長御存じ通りであります。当時私どももそういう事実があったということを確認いたすものでありますが、当時の事情を申し上げますと、当時村長であった中山君がこの河北潟干拓、特に沿岸の一部埋め立て伊関国際協力局長との間にすでに確約されておったということを現在もはっきり公言をいたしております。しかもこの口約については、あるいは当時の国務大臣であった林屋亀次郎氏とか、また物故された緒方竹虎氏等もすでにこの約束については、いわば保証の立場にも立っておられるのであるということも申しておるのであります。  そういうようなわけで、御存じのように、内灘村はほとんどが砂丘地でありまして、漁業の道が奪われるとすれば、農業に転換して、多少なりとも耕地を求めなければ、村が生きていけないということは、現地御存じ大石部長も十分御認識のことと存じますが、そういう事情から、一部埋め立て条件というものは、すでに当時にあって村が提示した約束であります。今申し述べましたように、当時日米合同委員会日本側代表としても、また現地交渉に来られた政府側代表としても、伊関氏がはっきり約束しておられる、その立ち会いの人も指名をして前村長がはっきりそれを訴えております。村議会としてもこのことを固執して、これがまず第一に今継続使用難点として交渉の大きな暗礁に相なっておるのでありますが、一体このような約束はなかったとおっしゃるのでしょうか。この間の経緯を明らかにいたしていただきたいと存じます。
  8. 大石孝章

    大石(孝)政府委員 結論は、なかったということでございます。その経緯を若干申し上げますと、なるほど当時要望事項といたしまして、河北潟全面干拓の問題、あるいはそれが達成でれない場合は、お話にございましたような一部埋め立ての問題が強く要望されたことは事実でございます。ただし、いろいろ技術的な問題あるいは財政的な問題その他から判断いたしまして、この内灘村の耕地が狭いというようなことについては、御主張の通り、何か救済策を講じなければいかぬ。しかしながら今にわかにこれをやるには、先ほど申し上げたような理由から、適当でないと判断されまして、当時の施策として、今御説明申し上げたように、砂丘地を一億五千万円でいわゆる畑地灌漑工事をして、御要望にかえるというような施策約束された次第でございます。以上により、まして、河北潟の、干拓問題及び埋め立て問題ということは、国の方ではお約束はしてないというふうに承知いたしております。
  9. 岡良一

    岡委員 この点は外務省の方でも伊関局長——当時接収の衝に当られた責任者方面から、このような一部の埋め立て約束というものは引き継がれておらないのでしょうか。
  10. 千葉皓

    千葉政府委員 外務省におきまして、この問題について当時の局長から何ら引き継ぎは後任者の方にございません。ただ、当時河北漁川干拓について地元から伊関局長申し出があったということは聞いておりますが、それについてどういう話し合いがあったかということについては聞いておりません。
  11. 岡良一

    岡委員 そういたしますと、今内灘継続使用について大きな難点と相なっております沿岸河北潟の一部埋め立てという約束は、昭和二十七年の第一回の接収当時、政府側としては何ら与えておらない、こうおっしゃるのでありますか。
  12. 千葉皓

    千葉政府委員 約束は何ら与えられていないと了解いたしております。
  13. 岡良一

    岡委員 問題はそこに大きく存在いたしておるわけであります。先ほど申しましたように、当時の村長伊関局長との間に確かにその約束をいたしておる。ただ、これを明らかな公文書等で明らかに公表するということは、今後他の基地使用等に影響するところもあるから、これは口頭の約束として押えてほしい、こういうふうな話し合いがあったということを、当時交渉代任者である前村長がはっきり今公言をいたしております。またそのように村の諸君も一応了承しておったのだということが、継続使用をお断わりしたいという村側一つの大きな理由に相なっておるのであります。約束をしたと一方は言う、しないと一方は言う、これは大きな問題だろうと思うのでありますが、この点についてはさらに私どもも事実に即して政府責任を明らかにいたしたいと存じます。なおこの際、いま一つ条件として、先ほども大石部長が御説明に相なりましたように、この使用期間が三カ年に限定されたこの点であります。実は私どもも当時の現地の実情からこういうふうに考えられたのであります。と申しますのは、内灘米軍演習場接収されるということに対して、村当局はもとより、石川県議会、あるいは石川所在の各市町村議会反対をいたしております。問題は米軍使用に供するということに、県民の感情としての大きな反対の根拠があったわけであります。その結果といたしまして、政府側代表して最終的な交渉に来られたときに、伊関局長記者団を通じて政府の態度、方針を明らかにしておられます。これは当時の新聞が大きく伝えておるところでありまして、どう言っておられるかというと、米軍使用は三カ年間以内であるからということをはっきり言っておる。従って使用期間も三カ年という限定が生まれたわけであります。ところが御説明によると、さらに昨年十一月施設に関する委員会米軍継続使用申し出られたということでありますが、政府がこれをのむということになれば、三カ年だけを使用するという当初の村に対するお約束というものは、その公約というものは全くほごに相なるわけであります。この間の事情、またこの間の責任所在という点について、いま少しくあなた方のお立場からの経過なりを御説明願いたいと存じます。
  14. 大石孝章

    大石(孝)政府委員 お話通り、三カ年という約束でございますので、私どもの方もこれを三年で打ち切るという施策が一番よろしいし、またこれがほんとうだろうと存じておる次第でございます。しかしながら、これをやはりある相当期間米軍に使わせる必要がある、こういったような判断に基きまして、三年は約束によって切れますので、その前に今後も引き続き使用させていただきたいというお願いをいたしておるような次第でございます。
  15. 千葉皓

    千葉政府委員 ただいま大石不動産部長から御説明がありましたように、政府といたしましては三カ年という約束地元にしておるわけでございます。その後米軍のこの試射場使用する必要は依然として認められますので、政府といたしまして、三年はもう経過いたしましたけれども、さらに引き続き使用方地元交渉いたしておる次第でございます。
  16. 岡良一

    岡委員 結局そうしますと、二十七年当時、村民としては米軍使用は三カ年であるということ、また河北潟の一部を干拓するという、村長局長との間における口の上の、しかしかたい約束、これを期待をし、またこれを信じて三カ年間の使用を認めた。この二つの約束が、むしろ道路や船だまりやあるいは畑地灌漑よりも、村の諸君、また石川県民の、この使用に対してある程度まで傾いた大きな原因であったというわけであります。ところが今になってみると、河北潟の一部埋め立て約束したことは全然ない、三年間ということであったが、米軍からさらに当分の間使わせろと一言ってきたから万やむを得ないから使うのだ、これではあれだけ問題を起した内灘接収について、当時納得せしめる最も大きな理由として掲げられておったものが一片のほごになってしまっておる。内灘のこの問題は、こういうような姿で、そのときのいわば便宜的な約束をかざしながら、事実を積み重ねつつ、日本の領土というものが基地使用に提供されるという、まことに嘆かわしい現象の大きな現われではないかと僕は存じます。  それはそうといたしまして、防衛庁の方にお尋ねをいたしますが、一体現在内灘試射されておる砲弾というものは、自衛隊使用するものであるのか、あるいはまた在日米軍使用するものであるのか、またそれとも別途に振り向けらるべき砲弾がその性能検定のために試射されておるのか、この点を明らかにいたしていただきたい。
  17. 山本一彦

    山本説明員 お答え申し上げます。内灘試射されております砲弾は、必ずしも自衛隊に全部来ておるとは限りません。今までの実績で見ますと、いわゆるOSPと申しまして、米軍日本発注しておりますたまのうち、かなりの部分自衛隊にその後来ておりますが、全部来ておりません。来てない部分がどこにいっておりますかは、私の方で明らかにしておりません。
  18. 岡良一

    岡委員 そうしますと、現在内灘で主としてその性能検定と申しましょうか、そのために試射されておる砲弾というものは、在日米軍調達部に納められるものである、こういうふうに了解していいのでありますか。
  19. 山本一彦

    山本説明員 御説の通りでございます。
  20. 岡良一

    岡委員 在日米軍調達部日本で生産された砲弾が一応納入される、その上でまた在日米軍から自衛隊に引き渡される、こういう順序を踏んでおるのでありますか。
  21. 山本一彦

    山本説明員 御説の通りでございます。
  22. 岡良一

    岡委員 それでは現在内灘において試射されている砲弾については、たとえばMSA協定等に基き他の国々等軍事援助として引き渡される砲弾は、それが日本におけるいわゆる域外調達の形で在日米軍に納入されなければならない、あるいは発注されるということも考えられるのでありますが、そういう砲弾もやはり内灘においては現在試射されておるのか、あるいは将来はこういう砲弾についても試射をされるとすればやはり内灘が用いられる、こういうふうに理解をしていいのでしょうか。
  23. 山本一彦

    山本説明員 米軍の方がどこへMSA援助でやりますかは、私の方で明らかにしておりませんが、内灘で武射されましたたまが全部自衛隊に来ているとは考えられませんので、あるいはお説のような経路をたどっておるかもわかりません。
  24. 岡良一

    岡委員 現在いわゆる演習場試射場として私どもが聞いておりますものは、全国で大体六十六カ所程度ではないかと存じます。これは一品に演習場と言われておりますが、この中で特に日本で生産された砲弾性能検定のための試射場というのは、六十六カ所の中で内灘だけなのでしょうか。他にまた幾つかの演習場がこの目的的に使用されておるのでしょうか。
  25. 山本一彦

    山本説明員 私の存じている範囲におきましては内灘だけと思いますが、詳細についてはよくわかりません。
  26. 岡良一

    岡委員 そこで最近の新聞紙報道等からお尋ねをいたしたいと思います。というのは、米軍の特需の発注でありますが、その受注実績昭和二十九年をいわばトップといたしまして、最近は急激にカーブが落ちております。二十七年六月までが五億五千余万円、二十八年の六月までが百八十四億四千五百万円、二十九年の六月まで、これはいずれも米会計年度でありますが、二百十六億九千万円、これが三十年度になりますと六月までにはわずかに十五億、三十一年度は、今年の三月までにわずかに六億五千万円というふうに急激に低下いたしておることは、皆さん御存じ通りだと思います。しかも米軍発注するものはほとんど九五%までが砲弾であるとも言われております。そこで問題はこのように米軍受注というものが激減をいたしておる、これは通産省が印刷して私どもに配付していただいた書類に出ておるわけであります。ところが一方銃砲弾については米軍から供与されたものが最近非常にふえて参っておるということも新聞紙やあるいは「文芸春秋」あたりでも大きく伝えられておるわけであります。しかもそのストックというものが自衛隊の三十カ年分、五十カ年分の演習に充てることができる程度であるというようなことが伝えられております。一体現在の自衛隊米軍からMSA協定等に基いて供与を受けておる銃砲弾の量、またその現在の措置はどういうことに相なっておるのでありますか、この間の経緯を承わらさせていただきたいと思います。
  27. 山本一彦

    山本説明員 現在米軍から供与を受けております弾薬類は約十三万トンでございます。これらはキャンプ所在地並びに弾薬補給廠において保管しております。
  28. 岡良一

    岡委員 そういたしますと私は非常に疑問が起るのです。私は常識上疑問に思うのでありますが、米軍がこのように莫大な十何方トンという弾薬日本に持ち込んできておる。従ってその保管にも困難を感じておるというようなことも伝えられておりますが、それほどに無計画にどんどん中古の砲弾が持ち込まれてきておる。ところが一方そうなればアメリカ軍が実際かりに日本において演習に使うとしても、この砲弾というものはアメリカ本国において生産をされて、アメリカ本国検定を受け、アメリカ本国米軍に納入されたものを在日米軍が使っておるものと常識上考えます。そうしてくれば問題は一方ではどんどん自衛隊用として振り向けられるか、あるいはまた他国への援助として一応日本にストックして蓄積されるか知らないが、持ち込まれてきておる。これは別に内灘試射をする必要はごうもないものだと私は了解をしておるのでありますが、この砲弾の取扱いはどういうことになっておりますか。
  29. 山本一彦

    山本説明員 われわれの方で受け取っておりますところの弾薬は、大部分OSPつまり内灘試射を経て性能検定されたたまでございますが、そのほかアメリカ自体で作りましたたまもかなり受け取っておるような状況でございます。
  30. 岡良一

    岡委員 私はアメリカから今どんどん持ち込まれてきておる銃砲弾は、すでにアメリカ検定済みだから内灘で再び重ねて検定する必要はないのではないかということをお尋ねしたわけでありますが、これは今の御答弁でわかりました。  そこでさらに内灘使用目的についてお尋ねをいたしたいのでありますが、先般東南アジア方面経済調査と称して日本の公式な調査団が派遣をされました。その一つの使命としては、東南アジア諸国に対する武器の輸出についても市場の調査をしたいということも、目的一つにうたわれておったようでありますが、もし万一かりに日本防衛産業資本家が、これらの国々砲弾等を輸出する引き合いが成立した場合、やはり内灘がその試射場として使われるという事態が当然予想されるわけでありますが、そのように理解をしていいのでありましょうか。
  31. 山本一彦

    山本説明員 その点は防衛庁としては何ともお答えできないのじゃないかと存じます。
  32. 岡良一

    岡委員 外務省に考えがありますか。
  33. 千葉皓

    千葉政府委員 そういうことは全く内灘試射場使用目的外のことでありましてそういうことはあり得ないと考えます。
  34. 岡良一

    岡委員 域外調達になれば当然米軍がやるわけだが、日本防衛産業資本家と向うの政府との間の独自の引き合いであれば、内灘を使うか使わないかは現在は問題にならない、こういう御答弁ですね。
  35. 千葉皓

    千葉政府委員 そうです。
  36. 岡良一

    岡委員 今私は事務当局皆さんにごく具体的に今日までの事務処理の過程、今後における事務処理の方針ということについてお尋ねをいたしました。結局私が若干の疑問を持ちました第一点は、何と申しましてもすでに昭和二十七年の当時において三カ年の使用期限というものは、使用を認めようという地元民なりの考え方を決定した大きな要件であったということ、いま一つは当時他の基地使用に影響があるからということで、文書で表に公表はされておらないが、前村長と当時の日米合同委員会におけるわが方の代表であった、しかも現地政府代表して乗り込んで交渉の衝に当られた伊関協力局長との間に固い口約束があったということ、これが全然そういうことはなかった、またそうは言うたもののさらに米軍から使用方を要求されたので、日本側としてはどうしてもさらに継続使用の方針であるということ、しかもまた内灘で現在試射に供されておるところの砲弾の使途の目的が、あるものは自衛隊に向き、またあるものは域外調達等に向き得るものであるということ、言いかえれば、今域外調達という問題は、やはり特需が激減した現段階における日本防衛産業資本家の大きなめどであろうと思いますが、こういう大きな財界の力というものが、内灘継続使用のバック・ボーンにあり得るということを私は考えるわけであります。しかしこれは私の考え方でありますが、いずれにいたしましてもこの問題、特に当初の政府の方針については、やはり口約があったかなかったかというような点は、政府責任においても明らかにする必要があるし、国会としても、これは当然明瞭にいたすべきものと私は存じます。一内灘の問題ではなく、全基地にまたがる問題として、こういう点は明らかにいたしたいと存じます。  そこで最後に一点だけお尋ねをいたします。率直な御答弁を願いたいのでありますが、政府はまず第一に何としても内灘継続使用したいのだというお気持であるかどうか。もう一つは、今後とも銃砲弾等の生産が予想されるということになれば、内灘はむしろ永久的に試射場として使用したいのであるかどうかということ。この内灘試射場に対する政府の根本的なお考えをこの際一つ承わりたいと存じます。
  37. 千葉皓

    千葉政府委員 政府におきましては引き続き内灘試射場銃砲弾試射場として使用するため、米軍に提供する必要があると考えております。しかしこれは決して永久的にそうではないのであります。今の特需が完了すれば返還してよろしいことになると考えております。
  38. 岡良一

    岡委員 せっかく外務大臣もお見えになりましたので、今私がお伺いした問題をもう一度申し上げますが、この内灘継続使用というのは、米軍から昨年十一月に申し出があったので、政府としてはその努力をしておられます。そこでこれは米軍の要求のまにまに、あくまでも継続使用をする意思であるかどうかというこの点が一つ。  いま一つは、先ほど来お尋ねをいたしておるのでありますが、昭和二十七年の当時、日本側代表して日米合同委員会に参加をしておられた伊関国際協力局長が、その当時の村長にはっきりと、内灘沿岸河北潟の一部の埋立工事をしようという約束をしておられる。ところがこれについては何ら引き継ぎを受けておられないという御答弁でありましたが、こういう口約は伊関君個人のものであって、外務省は何ら責任をとる必要のないものであるとお考えなのかどうか。この二点を外務大臣にお尋ねをして私の質問を終りたいと思います。
  39. 重光葵

    ○重光国務大臣 第一点は私から十分申し上げられると思います。内灘使用は、必要な限り、これはぜひ実現しなければならぬことになっております。そこでこれは実現することに決定をし、またそれの努力をしておるわけであります。しかし永久にということは少しも考えておりません。その必要がなくなったならば、すぐ解除のこともきめなければならぬと思います。もっとも内灘については、ずいぶん住民の不便等がありまして、非常に考慮しなければならぬところがある。そこでそういうこともむろん考慮に入れなければなりませんけれども、国際的に  約束したことはどうしても実行いたさなければならぬと考えております。それも今申しました通りに、必要のある限りで、必要がなくなったならばすぐ適当な処置をとらなければならぬと考えます。  それから伊関局長の口約ということについお話がございました。これを今係の局長に開いてみますと、そのはっきり引き継ぎはないそうでございます。しかしながら私は伊関君が当時いろいろと住民の不便等を察知して、その希望に対してできるだけの努力をしようということを申し上げたことは、想像にかたくないのでございます。さようなことでございますから、そのことを頭に置いて、住民とその関係者の希望に沿うように、せいぜい努力をしなければならぬ、またしておるそうであると聞いております。さようなわけでありますから、これは約束とかはっきりした何はないということを申しますので、それで一つ御了承を願いたいと思います。
  40. 岡良一

    岡委員 外務大臣の御答弁を聞きまして端的に感じますことは、先ほど来るる申し述べましたように、あれだけ内灘問題が大きく内外に衝撃を与えたこの解決の大きな条件は、三年間でもまあ使用をさせようということに住民がなった大きな原因は、米軍使用するのは三年間だけだ、こういう約束が大きな条件なのです。いま一つ砂丘地ばかりの村でもあるから、漁業ができないとなれば農業に転換したい、それには当然沿岸河北潟干拓してもらいたい。これは地元とすればそのときから言うべき当然な要求です。これが先ほど来申し述べましたように一応の約束になっておるわけです。地元約束をしたとはっきり申しておるわけです。ところが約束はしないと言う。そうすると政府内灘基地に対する態度というものは、アメリカとの約束はさらに延ばせと言えばそれをうのみにして現地に折衝しよう。——一方現地の切実な生活の唯一のめどとして要求しておる、しかも約束されたものは、約束はしないとほおかむりで守らない。私は全く内灘問題は単なる内灘住民の利害の問題じゃない。日本の外交そのものの方針にかかわる重大な問題だと存じますので、この点は私どもは  もっと明らかにする責任があると存じます。  なおこの際お聞きいたしますが、先ほどの発言に、日本で生産された銃砲弾を在日米革の調達部に納入するためには、抽出して性能の検査をするために内灘試射場として用いられる。一体自衛隊が用いる銃砲弾は、なぜ一応米軍に納入しなければならないか、しかもその性能の検査が米軍の手のもとに行われなければならないか。その理由と、そういう取りきめがいかにして行われておるのか、その問の経緯が私ちょっとわかりがたいので、この際御説明を願いたい。
  41. 山本一彦

    山本説明員 これは米軍米軍の予算において日本発注しておるものでありまして、その間自衛隊は何ら関与しておりません。従い、まして米軍が自分の手で自分のスペックに合うように内灘で検査をいたしまして、自分が受け取る。受け取ったあとでMSA、MDAPの方針に従いましてある量を自衛隊供与する、こういういきさつになっております。
  42. 岡田春夫

    ○岡田委員 議事進行について。この問題は大臣もお見えになっておるから一言だけ申し上げますが、きわめて重大な問題です。というのは、国際的な約束は守らなければならないことであると言いながら、国内的な約束についてはどうでもいいというようなことでは困ると思う。当時の関係者をどうしても御出席を願って、事態を明らかにしなければならないと思う。当時の関係者というのは、当時の中山村長あるいは現在の伊関香港総領事、これらの人々の御出席を願って、この間においての関係を明らかにすればはっきりすることでありますから、この際私はこの両人の関係者をこの委員会に参考人として御出席を願って、事態を明らかにされんことを動議として提出いたします。どうぞ御採決願いたいと思いす。
  43. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 しかし東京におる人なら簡単ですが、香港から今すぐ呼ぶわけにもいきませんので、理事会で相談します。
  44. 岡田春夫

    ○岡田委員 委員会でおやりになるというのですか。
  45. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 ええ。
  46. 岡田春夫

    ○岡田委員 今の委員長の発言は、委員会でおやりになるということのために、理事会で相談をするというように回答されたという点を了解いたしまして、動議を撤回いたします。
  47. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 御趣旨に沿うように善処しましょう。
  48. 松本七郎

    ○松本(七)委員 私は外務大臣にこの機会に駐留軍に勤務している日本労務者の問題で、一つ伺っておきたいことがあるのです。それはこの間から日本政府の見解なるものをかねがね伺っておるのですが、まず大臣に質問する前に、その日本政府の見解を初めに確認しておきたい。それはいつも問題になる行政協定範三条第一、項とそれから第十二条の第五項との関係です。御承知のように第三条において基地管理権というものが米軍に認められておるわけです。しかしこれはそこに働いておる労務者に対する人事管理権は含まっておらないという見解を日本政府はとっており、アメリカ軍はこれに人事権が含まっておるがごとき回答をしばしば寄せてきておるわけなのです。この行政協定第三条第一項の第一段は、つまりアメリカ合衆国が駐留軍の施設または区域の使用、運営それから防衛または管理のため必要なまたは適当な権利、権力及び権能を有することを定めておるわけでございますが、他面この第十二条の第五項によりまして、労働者の保護のための条件その他労働者の権利は日本国の法令の定めるところによらなければならない、こういうことになっておるわけです。ですから行政協定第三条第一項第一段の権限の行使は、同第十二条の第五項に違反しない範囲においてなされなければならない、こういうふうに私どもも解釈しておるし、日本政府もそういうふうな解釈をされておるように、今までは理解しておったのです。従って当然日本の各労働委員会の命令あるいは裁判の判決については、米軍といえどもこれに従わなければならないということになると思うのですが、これに対して米軍側の見解は、この日本の裁判判決あるいはこれに準ずるところの行政機関の命令、判決には従わない。従って出頭する義務もない。この種の問題解決は、日米合同委員会を正当な機関とみなす。これが米軍の解釈であって、日本政府の解釈とは、そこに食い違いがあるように聞いておるのですが、まずその点についてはっきり確認をお願いしたいと思います。
  49. 千葉皓

    千葉政府委員 ただいま松木委員から御質問の点につきましては、駐留軍労務者の労働条件その他は、行政協定第十二条五項の規定によりましてすべて日本国の法令による、そういうことになっておりまして、その点につきましてはわが方と米軍の間に何ら意見の相違はございません。
  50. 松本七郎

    ○松本(七)委員 相違がないと言うが、最近起っておる保安解雇の問題なんかは、その間に解釈の相違があるからこそ、ごたごたしておるのじゃないでしょうか。
  51. 千葉皓

    千葉政府委員 最近起っております解雇事件につきましては、目下合同委員会の分科委員会でありますところの労働委員会においてその問題を討議中でございます。
  52. 松本七郎

    ○松本(七)委員 日本の法令に基いて裁判の判決その他米軍の出頭命令をなした場合に、向うはそれに従わないでしょう。その間の事情はどうなっておりますか。
  53. 千葉皓

    千葉政府委員 裁判管轄権の問題はまた別個の問題でございまして、これは米軍としては必ずしも日本の裁判管轄権に服しないという立場に立っておりまして、それでいたし方がないと考えております。
  54. 松本七郎

    ○松本(七)委員 裁判管轄権と言うけれども、そこが問題であって、米軍に働いておる労務者にそういう不当解雇の問題が起った場合には、この行政協定の趣旨からいうと、当然米軍が従わなければならないという解釈を日本政府はとらないのですか。
  55. 千葉皓

    千葉政府委員 この法令の実体的な規定には従わなければならないと考えますが、日本国の裁判所の管轄権に服するかどうかということは、別個の問題であると考えております。
  56. 松本七郎

    ○松本(七)委員 大臣に伺いますが、最近駐留軍に勤めておる日本人が保安の名によって大量に解雇されておる。これはもう例をあげれば実に驚くべき理由によってどんどんなされておる。たとえばキャベツの切り方が大き過ぎたとかそういうことで解雇されておるのです。それを向うに抗議をしますと、いや、それはキャベツの切り方が大きいばかりじゃない、三年前にはハムをつまみ食いしたとか、そういうくだらぬ理由をあげて現に解雇されつつあるわけなのです。これをそのまま現地で問題にして、あるいは県庁あたりを通じて問題にして解決しようとしても、うやむやになってこれが解決されない事例がたくさんあるわけなのです。それから思想調査と疑い得るようないろいろな調査も現に日本人労務者にはなされておる。こういうことをこのまま放置しておきますと、米軍の近くで働いておる者ほど、米軍あるいはアメリカに対して非常に悪感情を抱くおそれがある。従いましてこの機会に私は日本外務省がこういう問題について、日本米軍との関係は労働省あるいは調達庁、そういうところにまかせ切らないで、もう少し根本問題として外務省が中に入って、問題の円満な解決に乗り出す必要があると思うのでございますが、そういう点について外務大臣の御意見をこの機会に明らかにしておいていただきたいのでございます。
  57. 重光葵

    ○重光国務大臣 そういう問題もできるだけ双方の間を円満に解決をしたいと考えるのであります。従いまして機会があればそういうことについて十分尽力して入たい、こう考えます。
  58. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 それでは日本国フィリピン共和国との間の賠償協定の批准について承認を求めるの件を議題といたします。  質疑を許します。戸叶里子君。
  59. 戸叶里子

    戸叶委員 質疑に入る前に私は委員長並びに外務大臣にお願いしておきたいことがございます。それは昨日塩見長官、その他のソ連に行かれた一行の方が帰られました。私は当然きょうの委員会に来ていただいて、漁業協定その他の問題についてお伺いしたいと思いましたが、きょうはお見えになっておりませんのと、もう一つは新聞やラジオ等で見たり聞いたりいたしましても、先に帰られた方々は河野代表が帰られるまでは、はっきりしたことをおっしゃらないようにも見受けられます。そこで河野代表は二十六日の午前 八時に着かれるようでございますが、着かれましたらすぐ重光外務大臣とおそらくお打ち合せもあろうと思いますが、そのあと直ちにちょうど土曜日でございますから、委員会がありますのでおいでをいただきまして、そうしてこの委員会交渉の過程、内容等をお聞かせ願いたいということを、まず委員長並びに外務大臣にお願いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  60. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 土曜日というわけにはいかぬかもしれませんが、できるだけ早い機会にそのように取り計らいます。
  61. 重光葵

    ○重光国務大臣 私もできるだけ御希望に沿うように努力します。
  62. 戸叶里子

    戸叶委員 土曜日というわけにいかないということはおそらくないのじゃないかと思うのです。八時半ごろお着きになるのですから、少しくらいおくれてもかまいませんから、なるべく土曜日にしていただきたいということを重ねてお願いいたします。午後でもけっこうでございます。  日比賠償について、私はきょうは総括的な質問だけをいたしたいと思いますが、まず重光外務大臣に伺いますが、先ごろ藤山使節を団長とする使節団が日比賠償について行かれまして、そうして仮調印を四月二十七日になされました。それから間もなくそのあと高碕長官を団長とされて本調印に行かれ、九日に調印されまして帰られました。大体仮調印と本調印というような場合には、非常にその間に長い期間があるのではないかと思いますが、今回の場合はわずかな期間に仮調印と本調印と両方なされておりますけれども、これは何か特別の事情があったのでございましょうか。
  63. 重光葵

    ○重光国務大臣 何も特別の事情はございません。できました以上は、すぐ仮調印をしてそうしてなお準備ができました上は正式の調印をする、こういう順序になるので、期間の問題は何も関係はございません。
  64. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、仮調印を省いて直接本調印されても、別にどうということはなかったというわけでございますか。
  65. 重光葵

    ○重光国務大臣 それはそのときの都合によるので、本調印をしてもむろん差しつかえはございません。これは便宜によるわけでございます。
  66. 戸叶里子

    戸叶委員 何かフィリピン側の都合でもあって、一応この線できまったから、あとからまたくずれるようなことがあってもいけないというので、仮調印をし、さらにまた本調印をした、こういうふうにも伝えられておりますけれども、この点はいかがでございますか。
  67. 重光葵

    ○重光国務大臣 そういう工合にお考えになってもよろしゅうございます。これは便宜によって、できたものから順次にやるわけでございます。
  68. 戸叶里子

    戸叶委員 そういたしますと、これからこういう協定なりあるいは何か結ぶ場合には、仮調印並びに木調印というふうな二重の手続をこれからもお踏みになるおつもりでございましょうか、いかがでございましょう。
  69. 重光葵

    ○重光国務大臣 そういうこと便宜によります。一定のことはありません。
  70. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは今度両方なさいました便宜ということは、どういうことでございましょう。
  71. 重光葵

    ○重光国務大臣 まずきまったものをかりに取りまとめて、それから本調印をした、こういうことでございます。
  72. 戸叶里子

    戸叶委員 重光外務大臣は例によって例のような御答弁でございますから、私はこれ以上追及いたしません。高碕長官に伺いますが、仮調印をされた内容と本調印をされたときの内容とは、多少違っているように伺っておりますが、この点はいかがですか。そうしてその違っている点をお伺いします。
  73. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 原町的にはちっとも変っておりません。ただ字句の上におきまして一億五千万ドルの借款が、これが交換公文に変ったというだけでございます。
  74. 戸叶里子

    戸叶委員 借款が交換公文に変っただけとおっしゃいましたが、他に変ったことはございませんですか。
  75. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 その他の点についてはありません。
  76. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、借款が交換公文に変りました理由はどういうことでございますか。
  77. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 これは原則においては初めからわれわれの考えは一つでありました。ところが初めの交渉におきまして、フィリピン側は八という数字にとらわれておったものでありますから、そういうふうな関係上、われわれは初めからこれは分けた方がいいと思っておったのですが、フィリピン側の都合で、これを賠償協定と同じような形式にしてほしい、こういう考え方があったわけであります。ところがだんだん調べてみると、一億五千万ドルはこれははっきり両国政府責任のない借款であるということがわかったから、それでは向うの方でもこれは交換公文にしようじゃないか、こういうわけでありまして初めのこちらの意向とちっとも変らないことに変ったわけであります。
  78. 戸叶里子

    戸叶委員 形式上の問題だけでなく、交換公文にした場合と協定にした場合との内容といいますか、責任といいますか、そういうことの違いはどういうことになりますか。
  79. 下田武三

    ○下田政府委員 形式上協定と交換公文と違いましても、要はその内容の実質によるわけでありまして、その実質が政府間の法律上の権利義務を規定するというものでありましたならば、たとい形式は交換公文でありましても、いわゆる憲法にいう条約として国会の承認を求むべきものと思います。
  80. 戸叶里子

    戸叶委員 その内容の実質の違いですけれども、交換公文の場合と、それから協定の場合と、いずれも国会の承認を受ける、こういうことはわかりましたのですが、その内容について交換公文にした場合と協定にした場合と、拘束力とかあるいは権限とかそういう点で何か違いはございますか。
  81. 下田武三

    ○下田政府委員 形式の差異によって拘束力の違いを来たすということはございません。もっぱらその内容がものを言うわけでございます。
  82. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、フィリピン側がこれを協定にしようと主張された理由はどこにあるわけでしょうか。
  83. 中川融

    ○中川(融)政府委員 フィリピン側が初め何で借款の方も協定にしたいと言いました事情は、ただいま高碕国務大臣から説明された通り、先方の交渉者といたしましては、一応フィリピンの国民に対するいろいろの考え方から、やはりこれを賠償協定と同じような形のものにしたいという考えであったのであります。しかしながらその後先方側で協議いたしました結果、その内容がそのような実質を備えていないということがはっきりいたしましたため・に、最後になりましてむしろ形式も交換公文にしたいということに向うの考えが変ったわけであります。
  84. 戸叶里子

    戸叶委員 二億五千万ドルの借款については、日本政府はこれを援助しなければならないような義務は何かないでしようか。
  85. 中川融

    ○中川(融)政府委員 援助しなければならない義務はないのでありまして、これを容易にし、かつ促進するということだけが、日本政府のする義務になっておるのでございますが、その容易にし、かつ促進するということも、今回のこの交換公文に明らかになっております通り、現在この種のものに日本がやっておる措置以上のものではないということを明らかにしたのであります。それだけが政府のする措置であります、
  86. 戸叶里子

    戸叶委員 政府責任がないとおっしゃいますけれども政府が容易にし、促進するということをうたっている以上、何も責任がないと私は言えないと思いますが、高碕長官はいかようにお思いになりますか。
  87. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 常識的に申しまして、じゃまをしないことです。たとえば日本からいたしますと、そういうふうなことは為替管理上やれないとか、またフィリピン側としてみると、その役務の人が入ってくる、人間が要る、こういう場合入国を許すとか、両国政府はじゃまをしないで、そうして二億五千万ドルの仕事がしやすいようにこれを援助する、これだけの義務はあると思います。これは今後においてこれを両国の国民ないし会社が実行することでありまして、それで二十年間に約二億五千万ドルを投資するようにしなければならない。こういう申し合せをして、両国政府はこれをじゃましないで援助しようじゃないかということで、二十年後にできなかった場合は両国政府はこのしりをぬぐう、つまりあとの措置をする責任はない、こういうことであります。けれども責任がないからといって全然これを援助しないでほっておくということは道義上許されないことでありますから、すこぶる常識的でありますが、さように御承知を順いたいと思います。
  88. 戸叶里子

    戸叶委員 私大へん割り切った表現を使うことが好きなものですから、今おっしゃったような御説明であるとするならば、なぜこれに阻害しないというような言葉を使われなかったか。むしろ容易にし、促進するという言葉と、じゃまをしないという言葉では非常に違ってくると思うのです。初めの方の言葉は積極性がありますし、それからじゃまをしないということは消極的なことだと思うのです。そういう点でやはり政府が適当に責任を負わされているのじゃないかというように感じられるのですけれども、これはいかがか、もう一度伺いたいと思います。  それからもう一つは、私はまだ交換公文の方までは時間がなくてよく読んでいないのですが、日本からもし借款をするような場合の利率の問題などは、どんなふうになっているのでございましょうか、その点をお伺いいたします。
  89. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 この問題は両国の国民及び会社の間で、折衝すべき問題でありまして、その間において、政府政府の間には何ら申し合せがなく、自由にやるということに相なっております。  それからじゃまをしないと言いますけれども、こういう実際の例があります。ブラジルあたりへ私は一昨年参りましたが、ブラジルの人たちは、日本の機械を持ってきて、人を連れてきてやってくれ、こういう話があって、私はその機械を持っていくように、また人をきめてやったわけなのです。ところがどうも現在の日本の法規上からいいますと、そういうものを送るときには無為替輸出のものは許さない、こういうことであります。それからブラジル側からいってみると、それに対してブラジル側はライセンスを出してくれというと、ブラジル政府はそんな盲機会に対する輸入は許さない。こういうような実例があるのでありますから、そういう実例に即して両国政府もよく理解をし合おうじゃないか、こういう申し合せをしておるわけでございます。これは実例について申し上げたわけであります。
  90. 戸叶里子

    戸叶委員 借款の問題ですが、日本から向うへ資金等を提供する場合、つまり会社同士の話し合いとして借款をするにいたしましても、政府からこれは大丈夫だという裏づけがなければ、なかなかそういうことは実現できないのじゃないかと思います。けれども、これはいかがでございますか。できるという自信がおありでございますか。
  91. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 これはもうすでに実行しておる事実があるのであります。今度は資金を投資するのではなくして設備、役務をもって向うへローンする、こういうわけであります。もう現にすでに実行しておるような方法でやる、こういうことであります。これは私自信がございます。それで、政府がこれを責任を打つとか保証するということになりますと、かえっていろいろ弊害が生ずるように私は感じます。
  92. 戸叶里子

    戸叶委員 その問題について私ちょっと今具体的な実例がないので、あとから調べた上でもう少し深く伺ってみたいと思うのです。  次に賠償の内容なんですけれども、五億五千万ドルのうち二千万ドルは加工賠償というのがございますが、この加工賠償というのをちょっと御説明願いたい。
  93. 中川融

    ○中川(融)政府委員 この加工賠償は、今提案されております協定案の付属の交換公文のところに出ておるのでありますが、一応、五億五千万ドルのうち日本人の役務として提供されるものが五千万ドル、そのうちの二千万ドルが今御指摘になりました加工による賠償ということになっておるのであります。これがどんなふうにしてやられるかということは、今回協定いたしました限度におきましては、日本の生産物でフィリピンに通常送り出されるもののその加工に要した部分を賠償として支払うということだけが書いてあるのでありましてそれ以上どのような方法によってやるか、具体的に、たとえばどのような品目についてそういうことをやるかということは、一切今後両政府間で実施段階において協議してきめることになっておるのであります。これは、御承知のようにサンフランシスコ平和条約十四条の原則におきましても役務ということがうたってありまして、その役務の一つの典型的な例として加工による役務賠償ということが書いてあるのでありますが、その原則をいわばそのままとりましてここに特記してある次第であります。
  94. 戸叶里子

    戸叶委員 この加工賠償は、本質におきましては、結局フィリピンの政府に支払うはずの現金を、日本の業者に日本政府がかわって払うという形で、日本の国民が負担するという意味からは変りはないと思いますが、この点はいかがでしょうか。
  95. 中川融

    ○中川(融)政府委員 その問題は、サンフランシスコ平和条約そのものからすでにあるのでありまして、サンフランシスコ平和条約によりまして役務による賠償をいたしました際に、原料は自弁であるけれども加工賃は日本が払うということが書いてあるのでありまして、加工賃を日本が払えば、その分だけ先方は安く手に入る。同じ問題がサンフランシスコ平和条約自体にすでに予見されておるところであると考えます。
  96. 戸叶里子

    戸叶委員 これはフィリピンの戦争の犠牲者になられた未亡人の方々から等の強い要望もあって、初めは現金賠償というような話もあったのを、現金賠償であるとサンフランシスコ条約に違反するというので、いろいろ考えた末にこういう形をとったとも伝えられておりますけれども、こういう点はいかがでございましょう。
  97. 中川融

    ○中川(融)政府委員 賠償交渉経緯におきましては、先方がぜひ現金をほしいといった事実はあるのであります。その後、日本側におきましては、サンフランシスコ条約の原則によりまして、いわゆる現金賠償はできないということを強くそれに対して主張いたしました結果、ただいま提案いたしておりますような形のものができたのでありまして、フィリピン側がこの中の得る品物ないし役務を自分の国において現金にかえましてどのように使うかということは、もっぱらフィリピン側の自由でありまして、日本側はそこまではもちろん干渉しないのであります。従って、ただいま御指摘になりましたような、たとえば戦災孤児だとか寡婦等にフィリピン側が賠償から究極において得ましたペソ貨の現金を分けるということもあるいはあろうかと思いますが、協定自体からはそのような結論は出てこないことになります。
  98. 戸叶里子

    戸叶委員 この問題は結局今もおっしゃいましたように、フィリピン側が現金を望んでいたけれども、そういうことができないのでこういう形になった。私どもとしては、結論から見れば日本の国民が負担するという意味では同じではないか、つまり現金賠償というものを直接現金で払えないから、こういうふうな形をとったものと、こういうふうにしか考えられないわけでございますが、フィリピンの方の未亡人の人たちは、これは現金賠償としてもらったもの、こういうふうに理解しているように私は報道で読んだのですけれども、この点はいかがでございますか。
  99. 中川融

    ○中川(融)政府委員 フィリピン側がこの賠償によって得ました生産物ないし役務をどのように分配するか、どのように使うかということについては、先方でもまだ研究中でありまして、結論はまだ出ていないようであります。一方フィリピンの国内におきましては、賠償がフィリピンの手に入ったならば、ぜひ自分たちに分けてほしいという運動は非常に広くあるのでありまして戦災孤児、寡婦のみならず、あるいは戦争によって不具になった兵隊の人たち、あるいはその他一般の戦災者も広く賠償の分け前にあずかる権利があるということを主張して、いろいろの運動をやっておるようであります。フィリピンにおきまして、そのような運動がどのような結果を生ずるか、政府がどの程度これに応ずるかということは、今後の問題だろうと思います。なお自分らにも当然分けてもらえるという前提のもとに、いろいろの言動をしている向きもあるようでありますが、いずれもこれはフィリピン側の問題でありまして、われわれとしては的確なことは承知いたしておりません。
  100. 戸叶里子

    戸叶委員 高碕長官に伺いたいのですが、今回の賠償額というものは、日本の今日の経済事情から考えまして、多額なものではない、こうお考えになりますかどうですか。
  101. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 これはひとりフィリピンのみでなく、ビルマ、インドネシア、その他の対外債務を考えますと、決して私は少額とは思わないわけであります。相当大きな負担である、こう存ずるわけでございます。しかし相手のあることでありますし、日本が戦争中にしたあの問題を解決するためには、先方の言うことも無理はないというふうな点からきめたことでありますから、これは万やむを得ずこういうことに相なったと思うわけでありまして、決してこれは少額であるというふうな感じはいたしておりません。
  102. 戸叶里子

    戸叶委員 重光外務大臣に伺いますが、インドネシアの方からもフィリピンと同じ程度の賠償を要求してきているということを聞いておりますが、この点いかがですか。それからまたヴェトナムその他からも賠償の請求をされてきているようでございますが、どうでございますか。
  103. 重光葵

    ○重光国務大臣 それらの国々からは日本側に対して賠償をしてもらいたいという意思表示は直接、間接あります。ただし具体的の要求、提案等はまだ一切ございません。
  104. 戸叶里子

    戸叶委員 今お聞きのように、高碕長官、インドネシアあるいはヴェトナムその他からも賠償の要求をしてきているわけなのですが、私どもの聞くところによりますと、インドネシア等もフィリピンより下らない額においてということを言っているということも聞いております。そうなって参りますと、日本の経済状態から見まして、非常に国民負担というものが多くなって経済が圧迫されるというふうにお考えにならないでしょうか。私どもは、当然賠償というものに対しましては、負けた国でございますし、それからまた他国にかけた迷惑ということから考えて、支払うことを別にいとうものではございませんけれども、あまりにもその国の経済に合わないような賠償の支払額というものは、結局国民の生活がますます窮乏になり、その責任を十分負えないような結果になると思いますので、そういう点を非常におそれるわけでございますけれども、この点どう考えておられますでしょうか。
  105. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 インドネシア等におきましては、まだ具体的の提案がありませんですが、先方とすればフィリピン並みあるいはそれ以上ということを希望するでしょう。また日本側とすれば、こっちの立場の考えもありますが、これは今日その額についてかれこれ申し上げることはできないわけでございます。いずれにいたしましても国民経済に負担力がかかってきて、これに及ぼす影響は非常に甚大なるものと存じます。いわんやこれは一年二年でなくて、十年二十年という長期にわたりますから、よほど政府としても慎重に考慮いたさなければなりませんし、ただいま戸叶さんのおっしゃったごとく、これは国民の経済に合わないようなもので、かりに履行できなかったという場合があれば、より以上の悪い結果をもたらすという点から考慮いたしまして、この賠償問題の解決に当ったという考えでありますが現在われわれの考えておりますことは、経済五カ年計画におきまして、ごく大ざっぱに各一年ごとの支払いがどのくらいあるかということから割り出しまして、各方面の賠償問題の解決に当っているような次第であります。  いずれにいたしましても、賠償の金というものは、戦争に負けたのだから、負けた罰金を払うのだ、簡単に言えば、手切金を払うのだ、こういうような考え方になれば、できるだけ安く値切ってしまうということが必要である、できるだけ引き延ばした方が得だと思いますが、これは手切金でなくして、結納金だという考え方でありまして、これだけは払っていかなければならない、そうしてできるだけ将来お互いに手を握ることにしたい、こういう考え方です。さよう御了承願います。
  106. 戸叶里子

    戸叶委員 大へん先方に同情的なお言葉を伺ったわけでございます。そこで私どもは別に払うことをいとうものではございませんけれども日本の経済をあまり圧迫されるような払い方はしたくないということを考えているわけです。そうしますと、これを結納金というふうにお考えになってお払いになるという立場に立って考えてみますと、そのあとでこれからフィリピンと大いに提携していろいろな面において発展をはかっていくのだ、さらに日本としては、ときどき新聞等で漏らしておられましたように、今後貿易の拡大をもはかられようとするのだ、こういうようなお気持が含まれていると思うのですが、それならばそれで今度は貿易拡大ということに対して、どういうふうな自信をお持ちになっていらっしゃるかを伺います
  107. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 現在の統計を見ますと、戦争前の一番多かった年が昭和十二年でございます。その当時フィリピンに対する輸出は六千万円であった。その円は半分にするか四分の一にするかわかりませんが、かりに半分としても三千万ドルの輸出しかできなかった。フィリピンからの輸入は四千五百万円。これを半分にいたしましても二千二百五十万ドル。ところが戦争後、三十年の昨年一月から十二月までの統計を見ますと、日本からの輸出は五千百万ドルになっておりまして、非常に大きな数字にふえている。特に輸入の方におきましては八千八百万ドルという工合に非常に大きくふえているわけであります。これはなぜかと申しますと、戦後における日本、フィリピンの関係は、両国とも依存関係が非常に多くなってきつつある、こういう状態でございます。その上に、現在日本の商品がアメリカの手を経て入っているものもあれば、香港経由で入っているものもある。これは私が目で見たのでありますから、間違いありません。そういう点から見ますと、今後日本がフィリピンに依存すべき材料、これは言葉をかえて申しますと、フィリピンから輸入すべきものの金額は非常に大きくなる。同時にそれに対してフィリピンが日本から物を買うということがふえて参るのでありますから、私はこれは近い将来において相当大きな発展をなし得るという確信を持っております。
  108. 戸叶里子

    戸叶委員 机上では、理想的にはそうなるかもわかりませんけれども、私どももう一つ心配いたすのは、賠償によって日本から資材等を持っていかれます。そういうものが輸出貿易に影響を与えることがありはしないかと思うのですが、こういう点は何か賠償で、持っていくものは、輸出のワクからはずすとか、何かそういうお話し合いでもついているのでしょうか。
  109. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 先方が希望いたします賠償物資は、まだ正確にわかりませんが、大体機械類とお考え願っていいと思います。あるいはセメントとかそういうものだと思いますが、現在のところ輸出しておりますおもなるものは雑貨で、機械類は五千百万ドルのうちで現在大体四百万ドルぐらいだと私は記憶いたしております。それぐらいのものは賠償によって幾らか減るだろうと思いますが、反対に雑貨類が非常にふえる、こう見ております。
  110. 戸叶里子

    戸叶委員 雑貨類がふえるという自信のほどを示されましたが、アメリカとフィリピンとの間のベル・トレード・アクトというものによって、アメリカからフィリピンに品物を入れる場合には税率が非常に有利になっている。そうなって参りますと、日本からの品物の方が高いということになると、日本の品物を買う可能性というのは、アメリカの品物を買う可能性より少いのじゃないか、それがまず一点と、それならば一体日本とフィリピンとの間の貿易の通商協定を結ぶ場合には、ベル・トレード・アクトと同じような税率にするというような考えでいられますか、どうですか。
  111. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 御承知のベル・アクトは昨年の十一月に改正されまして、これでは一般の輸入の税率の一割五分をかける、こういうことになっております。要するに日本から入る四分の一の税金でアメリカはいいわけであります。それくらいのものならば、私はアメリカと競争してそう心配ないと思っております。日本アメリカと同じベル・アクトのあの税率を適用してくれということは、現状におきましては私は無理だと思っております。またそういうふうな無理をしなくても、一般の最恵国の条約日本が入ることができれば、これは増加し得るという確信を持っております。
  112. 戸叶里子

    戸叶委員 高碕長官の確信だけじゃ事実うまくかないのですね。そういうふうにお考えになっていらっしゃっても、現実にそういうふうにならない場合もあると思います。今アメリカのフィリピンに占めている貿易の割合を見ますと、大体八割ぐらいだということまでいわれているわけであります。これが急に減って、そして日本とフィリピンとの間の協定が給ばれたから日本のものがどんどん入っていくようになるということは、私ども何かそこに裏づけがなければ考えられないわけなんですけれども、その自信を、お持ちになっていらっしゃる具体的の裏づけは一体どういうところにあるか伺いたい。
  113. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ご承知のように今後の貿易いうものは、どうしてもバーター式になりまして、輸入をよけいすれば輸出をよけいできる、お互いに両国間の決済がバランスするようにという原則に近づきつつあるようであります。その意味から申しまして、現在フィリピンはアメリカから七一%買っております。日本からは八%でございます。輸出は、アメリカに対しては六七%、これは統計はだいぶ古いのでございますが、日本対しては一一%という工合になっておりますが、日本がフィリピンから買いますものは、私は非常な勢いでふえると思っております。現在ラワン材を買ってこれを加工する、あるい最近に向うの鉄鉱石を——クロームが入っているというのでなかなか使えなかったのですが、このクロームを分離する方法がわかりましたので、鉄鉱石をうんと輸入するそれから非常にいい銅鉱が発見されました。そういうふうな点からいたしますと、昨年は八千八百万ドルという輸入でありましたが、ことしは日本の必要量からいって、どうしても一億ドル以上の輸入をしなければならぬ、こういうことに相なってくると思います。そういたしますと、輸入をよけいすればそれだけお前の方も買ってくれ、こういうことは貿易協定においていろいろ話し合いがつき得ると私は信じております。ただし日本の商品が非常に高いとか、悪いとかいうのでは別でございます。現在におきまして日本の商品は非常に安い。運賃も安くつく。私が確信があると申しましたことは、そういう意味でございます。
  114. 戸叶里子

    戸叶委員 日本のような貿易にたよらなければならない国ですと、やはり輸入より輸出に重点を置かなければならないと思うわけです。フィリピンとの貿易が盛んになって輸出入がふえたとおっしゃいましても、やはり依然として三千万ドルの入超になっているわけですね。こういうふうな割合から見て参りますと、日本が相当輸入に力を入れて今の御構想のように一億ドルぐらい輸入してみましても、果して日本からの輸出がそれに見合うだけ、あるいはそれ以上のものができるかどうかということは、なかなかむずかしいことじゃないかと思うのですが、日本からこういうものはたくさん出そうだというものは、具体的にはどういうものがございますか。
  115. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 現在フィリピンが輸入しておりますものは、綿製品類が多いのでございます。それから紙の製品——私ちょっと今記憶がありませんが、そういうふうな雑貨類が多いわけであります。それで日本が輸入をふやすということは、決してフィリピンのために輸入をふやすのではなくてこれは日本のためにどうしても持ってこなければならぬわけでありまして、先ほど申しました通り、ラワン材を持って参まして、加工してベニヤ板にしてアメリカに輸出するとか、あるいは銅鉱石を持ってきて銅を製練して輸出するとか、こういうことになっておりますから、フィリピンから輸入をふやすということは、対外輸出をふやすということにも相なってくるわけであります。そういう意味から申しまして、フィリピンのために輸入をふやすというだけでなく、将来は貿易というものは、どうしてもバランスをとるように折衝していきたい、こういう方針でございます。
  116. 戸叶里子

    戸叶委員 日本から出るものの中で綿製品等のお話もございましたが、一九五〇年に発令された大統領令で、日本の綿製品の一部がたしか禁止されているのじゃないかと思うのです。そういうようなものがこの協定を結ぶことによって当然解除されると思いますけれども、これはいかがでございますか。
  117. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 賠償問題が解決し、国交が回復すれば、禁止品目は当然改訂されると御了承願ってけっこうであります。
  118. 戸叶里子

    戸叶委員 もう一度念のために伺いますが、禁止されていた数品目がありますが、それは全部向うへ輸出されるというふうに了解していいかどうかという点が一点と、それからそういうものを日本から輸入することを禁じていた理由は一体どこにあったのでございましょうか。
  119. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 これはフィリピンの方針ですからはっきりわかりませんが、やはり自分の国の産業を擁護したい、こういう意味からだと思います。しかし最恵国待遇がなかったということが、日本の物が禁止されたおもなる理由だと存じております。(「解除の見込みはありますか」と呼ぶ者あり)解除の見込みはもちろんあります。
  120. 戸叶里子

    戸叶委員 どこの国でもやはり自分の国の産業の保護ということは考えておるのです。そこでもしフィリピンが日本とまだ協定を結んでおらないから、戦争状態にあるから、こういうようなものは入れないのだというふうな考えで、日本からの綿製品の輸入を禁じていたのならば、今度は解除されるということははっきり言えると思うのです。ところがそうでない意図で日本から入るころを禁じていたとするならば、日本とフィリピンとの間に賠償協定ができたからといって、そうやすやす解除されるとも思えませんけれども、この点について何かお話し合いがございましたでしょうか。
  121. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 そういう細則にわたって一々は話をいたしませんが、こういうような禁止品目があることは非常に残念である、これを契機として解除してもらいたい。一々について当たったわけではありませんが、全面的にそういう話し合いをつけてきたわけであります。大体解除されるということに御了承願ったらいいと思います。
  122. 戸叶里子

    戸叶委員 この協定が成立発効いたしますと、今度は賠償協定によって通商航海条約なり何なりが結ばれていくと思うのですけれども、これのお見通しはいつごろでございますか。
  123. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 もちろん通商航海条約は、この賠償問題が解決され、両国の国会において承認されると即刻入りたいと思います。すでに現在におきまして五月三十日に貿易協定が切れるわけですから、これをとりあえず二カ月延ばそうということを申し合せて帰っております。
  124. 戸叶里子

    戸叶委員 今貿易協定の方にも触れようと思いましたが、長官の方からお話がありましたが、そうすると貿易協定を二カ月延ばしてその間に通商航海条約を結んで、そうして貿易協定は廃止されるわけでございますか。
  125. 中川融

    ○中川(融)政府委員 貿易協定は五月三十日に現行のものが終期がくるわけであります。これはただいま高碕長官が申されました通り若干延長いたしたいと思っております。その延長いたします趣旨は、その間に現行の貿易協定を、もっと今後の日本の貿易を促進するのに都合のいいような、あるいは双方に都合のいいような形のものに変えたい。これは相当前、占領中にできたものでありますから、変えたいという趣旨であります。二カ月の間に通商航海条約が締結されればそれに越したことはないのでありますが、通商航海条約はやはり相当長文のものでもあり、慎重に協議をする要がありますので、交渉はすぐに始めますが、おそらく数カ月はかかるのではないか、通常の例によりますと、数カ月はかかるのであります。従って貿易協定だけをとりあえず改訂しよう。御承知のように貿易協定は通商航海条約と両立するものでございまして、通商航海条約で基礎を定め、それに基いて具体的な貿易の取りきめをするのが貿易協定であります。二本建でいきたいと思っております。
  126. 戸叶里子

    戸叶委員 その協定の改訂の場合にでも、日本から品物を輸入した場合の輸入税の問題なんか、アメリカのベル・アクトと比較してお話し合いをする御意思はございませんですか。
  127. 中川融

    ○中川(融)政府委員 通商航海条約、あるいけ貿易協定によりまして、関税について最恵国待遇を受けることは当然でございます。しかしながらどこの国でありましても、最恵国待遇と申しても特殊な関係にある国の待遇に対しましては、除外例を設けることがあるのでありまして、米比間の経済上の関係というものは、まさしくこの特殊の除外例に当るものでありまして、これにまで均霑するということは無理ではないかと考えております。その点は先ほど高碕長官の申された通りであります。
  128. 戸叶里子

    戸叶委員 私がそれを固執いたします理由は、非常に貿易拡大に希望をお持ちになっていらっしゃるものですから、そういうふうなところまでいかないと、とても貿易拡大は望めないのじゃないかという非常な懸念を持つのでお尋ねするわけです。この通商航海条約が結ばれるということは伺ったのですが、そのほかに賠償協定に伴って何らかの協定は考えられておりますか。
  129. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 その他の協定といたしましては、文化協定だとかいろいろなそういうふうなものにつきまして、他国とやっております一番よさそうなものにつきまして協定をしていきたいと思っております。
  130. 戸叶里子

    戸叶委員 漁業協定のようなものはお考えになりませんか。
  131. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 多少触れた問題でありまして、先方は日本漁業を一緒にやってくれという希望が農林大臣からあったものでございますから、その前に一応漁業協定をやろうじゃないかということをいってきたわけであります。先方はやはり何かブルガーニン・ラインとか李承晩ラインのようなものを主張しておるようでありますから、これはやめてもらわなければならぬ。やめて話し合いをつけようじゃないか、よろしかろうということでありますから、これはぜひやろうと思っております。
  132. 戸叶里子

    戸叶委員 ビルマの賠償協定をここで審議いたしましたが、その後もビルマで考えておりますことで、日本とビルマとの間の合弁会社が考えられておるわけですけれども、フィリピンの場合にもこの賠償の取りきめになって、合弁会社というものは作られるのでしょうか。
  133. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 さしあたりフィリピン側が合弁会社ということは希望してないようであります。けれども実際の両国における商社間が話し合いをつけてくれば、合弁会社でなければならぬように追い込まれてくるだろうと私は想像いたしておりまして、民間の人たちと話し合ってみると、当然そういうふうになるべきものだろう、ただ現在フィリピンでは外国との合弁ということについては、相当いろいろな規約があるようでありまして、これをよろしいとビルマのように簡単には言っていないようであります。
  134. 戸叶里子

    戸叶委員 フィリピンの方ではこの賠償協定をいつ批准されるというふうな話でございますか。
  135. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 これは即刻批准したい、するというような考えで進んでおったようでありますが、先方の議会も五月十七日で切れたのでありますが、これは今後大統領の権限でいつでも国会を召集して、すぐに批准する。それには日本側が先にやってくれ、こういう話があったのでありますが、日本側も一生懸命やるけれども、どういうふうになるかわからぬからということで、両方同時にやろうじゃないか、こういうことになっておりますから、どうか一つぜひ御賛同を願って、早く批准を受けるようにお願いしたいと思っております。
  136. 戸叶里子

    戸叶委員 あとのことはなかなかいろいろ問題がありますが、一応参考までに伺っておいたのであります。  これはよその批評でございますが、今度高碕長官が調印においでになりましたときに、大へんたくさんの人が御一緒にいらしたようでありますが、あんなにたくさんの人が行って署名しなければならなかったのかどうかということを聞いておいてほしいということを、町の人たちが言ったのでございますけれども、これはどらでございますか。それぞれどんな役割を持っていかれたのでございますか。
  137. 中川融

    ○中川(融)政府委員 こういう重要な協定を署名する際に、全権が一人でなくて数人行かれるということは、サンフランシスコ条約のときからすでにその前例があるわけでありまして、決して大ぜい全権が行かれたというふうには考えておりません。またその全権の方々がおのおの担当事務を持っておるという趣旨のものでもないのでありまして、それは長期にわたる交渉をするような際は、そのようなことがあり得ましょうが、今回のような短期のものにつきましては、皆さんがやはり同じ全権として、高碕首席全権のもとに行かれたのであります。またもう一つ全権をどうしても複数にしなければならなかった理由といたしましては、先方がこれをいわば超党派的と申しましょうか、国をあげてこれに賛成するという意味合いから、全権を非常に多く任命いしたしまして、全権の数は一三名に達しておるのであります。従って日本の全権もぜひ多くしてもらいたい、まあ十名くらいにしてもらいたいという希望があったのでありますが、日本としてはそうたくさんは出せないということで、いろいろ考えました結果、結局具体的には五名おいでになったわけであります。五名ということで向うの了解をとったような事情があるわけであります。
  138. 戸叶里子

    戸叶委員 私あとこまかい点は後に回しまして、きょうは一応これで終ります。
  139. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 それでは暫時休憩いたします。午後一時半から開会いたします。     午後零時十分休憩      ————◇—————     午後一時五十五分開議
  140. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。並木芳雄君。
  141. 並木芳雄

    ○並木委員 今度のフィリピンとの賠償協定が成立いたしますと、日本人の役務が役立ちますので、この点について日本からフィリピンに出ていくことが多くなるのではないか、そうするとかたがた労務者の失業救済になるのではないかという見地から大きな期待をかけておる向きがあるのでございます。実際この協定から相当の役務というものがフィリピンに輸出される。要するに向うへ行って働いてそれを賠償に充てるという道が開かれておるのではないかと思いますが、なるべく具体的におわかりでしたらお示し願いたいと思います。
  142. 中川融

    ○中川(融)政府委員 今回賠償協定が成立いたしますと、それによって日本人が役務を先方に提供することになるわけでありますが、役務の内容としては特に制限はございません。しかしながら単純な労務者は日本からは来てもらいたくないということははっきりしておるのであります。いずれにせよ日本人で専門家あるいはある意味におきましてのテクニシアンはぜひ来てもらいたいということになっております。これらの人たちにつきましてはフィリピンに入国する際及び入国いたしましてから先方が便宜をはかるということが規定にも載っておるのでありまして、相当数の日本の技術者が賠償の関係で先方に行くというふうに期待せられております。たとえば現在すでに沈船引き揚げが行われておりますが、この沈船引き揚げのために行っておる日本の技術者は今六百人に達するのであります。このようなことは一つの例でありますが、今後役務賠償が本格的に行われるにつれまして、相当数の技術者が行くものと予想しております。
  143. 並木芳雄

    ○並木委員 その点は私は役務及び生産物の提供からくる非常な朗報であろうと思います。一つ先方との摩擦をなるべく避けるようにして、なるべく多くの役務が提供されるように措置していただきたいと思います。  次に、この協定でいつも一番問題になりますのは、大野・ガルシア協定で四億ドルという線が出たにかかわらず、五億五千万ドルに額が上ったではないか、これは明らかに交渉が適当でなかったからであるという非難なのですが、私はこれに必ずしも当っておらないと思うのです。と申しますのは、この前の交渉のときに四億ドルではありましたけれども、あのとき特に強調されたのは、経済価値としてこれは十億ドルになるということを日本政府が一札とられておったわけです。ですからかりに四億ドルであっても、実際は十億ドルに相当する経済価値を生むものを提供しなければならなかったのではないか、そうだとすれば今度は五億五千万ドル、多く見ても八億ドルという経済価値になるわけなのですが、その点四億ドルから五億五千万ドルになっても、決してこれは大きな負担をわれわれが負ったものではないというもう少し的確な説明はないものでしょうか。それとともに大野・ガルシア協定とはいいながらも、決してあれは最終的のものではなかった、言いかえれば私はフィリピンの方で不完全なものを、まだ実を結ぶべからざりしものを、あたかも実を結んだように持っていったところに、フィリピン側も早計があったのではないかと思うのです。その証拠には、あとから上院方面でくつがえされてしまった。ですから、四億ドルでできたのだということ自体にまた脆弱性があるのではないかと思いますが、その辺のところを御説明願いたいと思います。
  144. 中川融

    ○中川(融)政府委員 ただいまの御指摘の通りでありまして、大野・ガルシア覚書に一応四億ドルということが出ておりますが、同時に、これによって十億ドルの経済価値を生ずるということがあるのであります。従って具体的に四億ドルをいかにして十億ドルの経済価値を生むものにするかというような点について、今後折衝すべき、あるいは検討すべき問題がたくさんあったのであります。また支払い年限につきましても、御承知のように、一応十年となっておったのでありましてその十年をさらにどちらかの要請があればもう十年延期をするという規定になっていたのであります。たとえば第一年度にそれでは幾ら賠償を支払ったらいいかというようなことが、もしあれがかりにできておりましたとするならば、さっそく問題となったのでありまして、おそらく先方は四千万ドルを出せ、日本はその半分しか出せないということで、いろいろ議論が尽きなかったことと思うのであります。従って、今回の協定は五億五千万ドルではありますが、最初の十年間には二億五千万ドルを出せばよいということになっておりまして年額は二千五百万ドルということではっきりきめてあるのであります。それらの点を考えますと、大野・ガルシア覚書が必ずしも日本にとって有利であり、今回のが不利であるという結論はそのままは出てこないと思うのであります。また御指摘のように、大野・ガルシア覚書それ自体がフィリピンで非常な反対を受けまして、結局あれはガルシア外相は一応あれでできるものと考えたのでありましょうが、フィリピンの国内の情勢は、とうていあの案でままとまらないという事態にあったわけであります。従って、その後今回の案が一応形ができるまで一年有余を経たわけでありまして、大野・ガルシア覚書をあのまま取り出しまして今回の協定と比較対照するということは、やはり御指摘のように、必ずしも当を得た措置ではないように思うのであります。
  145. 並木芳雄

    ○並木委員 そういうように説明していただくと、今度の五億五千万ドルというものは、決して不当な額でないということがわかってくると思うのであります。今度の場合は、経済価値として十億ドルに持っていくという話は全然出なかったと思いますが、その通りでございますか。
  146. 中川融

    ○中川(融)政府委員 経済価値云々という考えは、今度の協定には全然ございません。五億五千百ドルの価値のあるものを提供するということで日本の賠償義務が終るわけでございます。
  147. 並木芳雄

    ○並木委員 こういう点は非常に大きな違いだろうと思います。それをこの前大野・ガルシア協定において、とにかくまだ本格的なところまではいっておりませんでしたけれども、当時の一フィリピン政府としては、やはり大きな外交上のミスでございますから、日本政府に対しては何らかの了解があったと私は思うのです。そうしないとおかしいわけです。とにかく一国を代表して大野さんとイニシアルをかわしたのでしょうから、それがその通りにならなかったということに対して、当時のフィリピン政府は国内的にどういう責任をとられたか。国外的に、対外的には日本政府に何らか了解を求めるような申し出があったかどうか、その点いかがでしょうか。
  148. 中川融

    ○中川(融)政府委員 当時のフィリピン政府といたしましては、外務大臣が一応仮調印いたしたものが、国内で反対が多いために実現し得ない、その通りできなかったということについては、深く遺憾の意を表していたわけであります。しかしながら国内の情勢があのような情勢でありましたので、正式に日本に対してそのような遺憾の意を表示したわけではないのでありますが、非公式にはまことに遺憾であるという意向は表示しておるのであります。またああいういきさつもありましたから、その後の経過におきましては、フィリピン側は非常に慎重な態度をとりまして、再びあのような轍を踏まないようにということで、万全の準備をした上で今回の協定調印の措置をとっておるのであります。その意味では、決してあの経緯も全然むだではなかった。フィリピン側の考え方をより現実的にし、より堅実なものならしめるという意味では効果があったのではないかと考えております。
  149. 並木芳雄

    ○並木委員 私は当然そうであったろうと思うのであります。  それからもう一つ議論になるのは、平和条約第十四条の(a)で、賠償は日本人の役務というふうになっておるにかかわらず、このたびは資本財たる生産物を多量に提供するようになったという点でございますが、これは実質的の論議はもう尽きております。ただ形式的にちょっとお尋ねしておきたいのは、あの平和条約にはなるほどそう書いてはあったけれども、フィリピンは調印をしただけでまだ批准はしてなかったのです。そうだとすると、形式的にいって、平和条約をたてにとって、日本人として日本人の役務で、賠償、をするようになっておるのだという根拠が出てくるかどうかの問題なのです。調印をしてあったから、十四条に基いて日本人の役務でいくべきだという主張ができるようにも思われますし、まだ批准をしておらないのであるから、サンフランシスコ条約を型通りたてにとることはできないのだという議論も成り立つわけであります。これは条約の国際間の問題でありますが、正式にいいますとどういうことになるでしょうか、確かめておきたいと思います。
  150. 下田武三

    ○下田政府委員 サンフランシスコ平和条約の第十四条に御指摘のような規定がございますが、これはきわめて抽象的な規定でございまして、あの規定に基いて個々の国と具体的の賠償協定を結ぶということになりますと、国によってそれぞれの差異が起り得ることも桑港条約締結の当時から予想されたわけであります。そこで、今回の賠償協定の前文にもございますように、サンフランシスコ平和条約の規定の趣旨に従って行動し、ということをちゃんと書いておるのでございます。日本側も先方も趣旨に従って行動しておることは確かなのであります。そこで、平和条約の規定の趣旨は、この敗戦後の経済困難な日本に対しまして、重い負担、つまり外貨の負担をかけないということが実は一番大きな点でございまして、役務——純粋な役務のみに限ると必ずしも解する必要はないのではないかと思う。純粋の役務と申しますと、フィリピンの麻を日本で加工して製品にしてまた出す、そういうような純粋な役務だけでなかなか何億という役務を積み上げるということは、とうてい不可能のことでございます。またそういうとうてい不可能なことを平和条約が予想したとも考えられないのでございます。そこで、今度の協定によりましていきます賠償は、結局は機械でございますとか、プラントの部品でございますとか、そういう生産財——完成品ではございますけれども、純粋なる軽工業品のようなものはむしろ賠償ではいかないのでありまして、従って製品賠償というよりもやはりもっと基本的なキャピタル・グッズがいくわけであります。それから日本の外貨に負担をかけないという点については、ちゃんと留保の規定がございます。かれこれ勘案いたしますと、平和条約第十四条の趣旨に沿って両国とも行動しておるということは明らかなことであると存ずるのでございます。
  151. 並木芳雄

    ○並木委員 次にお尋ねをしておきたいのは、フィリピンの使節団の問題でございます。これはかなり多くの特権を与えられるようになっておりますので、よほど運用をよくしないと職権を乱用されるおそれが出てくるのではないかと思う。かなり大ぜいの人数も来るでしょうし、事務所も一カ所以上持つことができますし、直接日本の国民またはその支配をする日本の法人と契約を結ぶということになっておりますから、日本政府としても、指導ないし職督を厳重にしていかなければ、思わぬところでそごを来たすのではないかと思いますが、その規模の構想、それに対する政府の指導監督、それらの点についてはどういうような準備をもって進めておられますか。
  152. 中川融

    ○中川(融)政府委員 フィリピンからこちらに派遣いたします賠償使節団の仕事は、非常に重要な仕事になるわけでございまして、この使節団が五億五千万ドルに相当する賠償を究極的には契約を結びまして向うに持っていく仕事をするわけであります。従ってその間に日本の業者との間等におきまして、もしも不都合なことが行われるということになりますと、これは非常に及ぼす害が大きいことになるわけでありますが、これにつきましては日比双方ともに、政府当局としては万全の措置を講じようということに打ち合せております。すなわち日本側といたしましては、日本の業者に対してできるだけ行政的な措置によって指導したい、また監督もしたいと考えております。またフィリピン側といたしましては、自分の国の利益のために受ける賠償でありますから、それがそのような自分のところの官吏の不正行為によって非常に国の利益に反するように運用されるということになりますと非常な問題でありますので、この使節団の人選に当っては万全の注意をして最も廉潔な人を選ぶ。そういう汚職等の懸念のない人を選ぶということを第一義として人選しようという決意であります。またそういう人たちに万一何か悪いことがある、あるいはそういううわさでもあるということになれば、さっそくそれを検査いたしまして、そうして即刻そういう人は懲戒にし、新しい人とかえるということもぜひやろうということで準備を進めておるのでありまして、この点につきましてはフィリピンの世論が非常に注意をしておりますので、フィリピン政府もおそらくわれわれが想像する以上に強力な措置をとって、この運営に万全を期することになろうと考えております。
  153. 並木芳雄

    ○並木委員 フィリピン使節団はフィリピンの政府代表しております。ところがこれと交渉して契約を結ぶ日本の国民及び法人は、日本政府代表しておりません。そのために、私は位負けするのじゃないかと思うのです。つまり競争の激しい商品などでは売り込み競争が行われ、うまくたたかれてしまって、もっと高く賠償として提供できるものを、大きな不利を受けなければならないようなことが心配されるのでありますが、いかがでしょうか。政府としては年度実施計画をやるという点で、ある程度これはチェックできると思うのですけれども、その計画のみならず、進んで政府がこういう業界の人、国民の代表者となって向うの政府代表である使節団と責任をもって交渉していくというような形の方が、より有利じゃないかと思うのですけれども、その点はお考えになったのでしょうか。またお考えになってもそういうふうにならなかったとしたら、どういう理由でしょうか。あるいは今後そういうことをまた考え直す余地があるのかどうか。
  154. 中川融

    ○中川(融)政府委員 賠償物件の調達に当りまして日本政府が直接表に出て、そしてフィリピン政府交渉して、一々の物品をきめるというやり方も理論上あるわけであります。これはビルマ賠償のときからの問題でありますが、最初はそれを考えたこともあったのであります。しかしながら同時にそれの欠点も非常にあるのでありまして、その第一の欠点といたしましては、その場合、先方の政府日本政府の——たとえば日本政府なり業者の入札した価格というものについて、先方がなかなか納得しない。そのために交渉によって先方の納得する価格までこれをきめて、その上で日本の業者と契約するというふうなことになりますと、非常に煩瑣な手数を要するのみならず、その間に日本政府に対する不信の念を非常に起すおそれがあるのであります。これは御承知のように沈船引き揚げの中間賠償において、その苦い経験をなめたのであります。そういうおそれをなくし、契約を非常に簡単にする、また先方としても心配なくこれを実施するという意味におきましては、先方の政府機関が直接日本の業者と取引をするというやり方が適切であるという結論になったのでありましてその意味で、ビルマの賠償のときから直接方式というものを採用したのであります。しかし直接方式にはまた、御指摘のように日本の業者の地位が弱く、相互に競争して不当に安い値で契約するということがありはしないかという懸念があるのであります。この懸念はもっともでございますが、これはできるだけいろいろの方法によってチェックするということにしたいと考えまして、ビルマのときからそうでありましたが、日本側から業者を推薦するという制度を作っておるのであります。日本政府は、ビルマ政府ないしフィリピン政府に比べますれば、日本の業界の事情もわかりますし、信用のある業者とそうでない業者との区別もつくわけでありますので、先方に対してこういう業者となら大体信用して取引して間違いないと思われる業者の名前を知らすという推薦制度を採用しておるのであります。しかしもちろんこれを限定的なものにいたしまして、推薦された業者とでなければ先方が契約できないということにいたしますと、またそこに先方の不信の念が出てくるのでありまして従ってこれはその意味で制限するわけではないが、御参考までにこうやられたらどうですかという意味のものを先方に提示するつもりであります。先方におきましてはこれによるかよらないは自由でありますが、結果的にそれによらない場合は、どうしてもたちの悪い人と交渉するということになりまして、一時的には値が安くてよいと思うようなことがあるかもしれませんが、結果的に見ますと、質の悪いものが提供される、あるいは全然契約不履行になるというようなことが起きてくるわけでありまして、しばらくすれば日本政府の推薦する業者と取引をするのが、結局一番自今たちの利益にもなるということがおのずからわかってくると思っておるのであります。しばらく長い目で見る必要がありますが、そういうような方法によって今の直接方式の欠点は補うことができる。また同時に当局といたしましても、日本の業者に対していろいろ指導を行いまして、あまりにひどい競争等をやらないようにというような指導はするつもりでおるのであります。  なおこれは内々の話でありますが、フィリピン側といろいろ話しました際に、先方は今後の賠償の発注契約等については、全面的に日本側の意見を参考にしたいということを申しております。自分らは日本事情は知らないし、そうして悪い業者にかかれば非常に痛い目を見るということがよくわかっているので、日本側当局と十分協議をして個々の契約をきめていきたいと言っておりますので、ただいま御心配のような点は、そのような方法で実際上解消し得ると考えております。
  155. 並木芳雄

    ○並木委員 フィリピンの使節団の身分、地位など、取扱いに関して、何らか日本の国内として法的措置が必要になってくるのではないでしょうか。またただいまの日本の業者の扱い、ことに推薦したり、指定したりするようなことについては、やはりある種の法律が必要ではないかと思われますが、その点はいかがでしょう。
  156. 下田武三

    ○下田政府委員 御指摘の二点につきまして、日本の国内法制を改める、あるいは新たな立法をするというような必要は全然ございません。
  157. 並木芳雄

    ○並木委員 多額の生産物が日本から向うへ参ることになりますが、その場合の輸送関係でございます。日本からフィリピンへ輸送するには主として船で運ぶのですが、そのことについてどこかに条項があるかと思ったのですが、私の見落しかまだ見当らないのですが、どうなっておりましょうか。要するに使節団が来ても日本の国民または法人から買い取ってそこでけじめがつくのですか、いわゆるFOBでいくのかCIFでいくのか、こういう問題なのです。賠償の価格はフィリピン渡しになるのか、日本に来る使節団が買い取ったそのときをもって打ち切られるのか、それによって運ぶ船というものの利用価値なんかも変ってくるわけですが。どうなっておりましょうか。
  158. 中川融

    ○中川(融)政府委員 賠償物件は先方に渡します際にFOBにするかあるいはCIFにするかということは、個々の契約で当事者間できめるということが大原則であります。個々の契約によりまして、日本の港で渡してしまって、あとの船積みあるいは保険等の関係は、別個の措置にまかすことも一方法でありますし、あるいはフィリピン渡しといたしまして船の輸送関係、保険関係をも賠償契約の中に含めるということもまた一つの方法であります。具体的な現実の問題といたしましては、CIFの形によることが大部分であろうと思います。これはその方が便宜でありますのでそうなろうかと思います。その際は運賃及び保険料をどう支払うかという問題が出るわけでありますが、これは賠償の原則に従いまして、日本の船、日本の保険会社にかける場合のみ賠償の中に繰り入れることができるということになっております。従ってCIF契約で、賠償物資を向うに送り届ける場合には、日本の船及び日本の保険会社にこれをやってもらうということになるわけであります。FOBの場合には運賃、保険料は別になりますから、それを日本の船会社、日本の保険八会社と契約する場合には、賠償に繰り入れることもできます。その場合には別にその旨の役務の賠償契約を締結することになります。外国船による場合は、賠償とは無関係に先方が外貨によってこれらに払うということになるわけであります、
  159. 並木芳雄

    ○並木委員 今後の相談によってきまる問題だとのことでございますから、ぜひ日本の苦しい立場説明して今の御説明通り、CIFでいくように尽力をしていただきたいと思います。  使節団の人数は、大体どのくらいの見当でしょうか。大ざっぱでけっこうですが、幾人くらい日本に駐在することになりますか。
  160. 中川融

    ○中川(融)政府委員 これはまだ全然きまっておりません。ただいまビルマの使節団が来ておりますが、ビルマ使節団の数はそう多くありません。たしか十人以内であると思います。フィリピンの場合はあるいはもう少し多くなるかもしれません。ことに東京のみならず、もしも関西等に支所を設けるというようなことになれば、その人数はもっとふえるかと思いますが、これは今後の問題でありますので、果して何人になるか、的確に申し上げる段階ではないわけであります。まあさしあたっては十人くらいではないかと思います。
  161. 並木芳雄

    ○並木委員 生産物を提供するためにいろいろの重要物資というものが日本において欠乏するようなおそれはないでしょうか。これは特に高碕長官にお伺いするわけでありますが、今後五年、十年と続いていく上に、賠償のために提供するいわゆる優先割当の制度などということが出てこないだろうか。今は比較的物資が豊富で、そういう心配もなさそうですけれども、すでに金属類は、金へん景気と申しますか、そういう方面には原料の不足を来たしておるような現状でございます。場合によっては原料の入手に困難を来たして、賠償も円滑にいかないような問題も起り得るのではないかと思いますが、そういう場合に経済計画というものをどういうふうにやっていくお考えでございましょうか、その見通しをお伺いしておきたいと思います。
  162. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 その問題は私は相当重要な問題だと思うのでありまして、今日鉄類が世界的に消費が非常に増大しておりますが、わが国としても、これはまただんだん消費が増大するわけであります。その割に生産が伴わないことになりますと、相当問題だと思っておりますが、これは今後の実施計画につきまして、両方ともよく話し合いをつけて、日本でできるだけまかない得るようにしてやっていきたい、こう思っておりまして、これがためにまた特別に輸入するというふうなことは断じてやらないで、日本の生産をもって充てていきたい、こういう考えでございます。
  163. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 松本七郎君。
  164. 松本七郎

    ○松本(七)委員 私は日比賠償について、今後これを判断する上で一番大事な点は、やはりこれほどの負担を日本国民が背負って、今後この賠償の義務を果すわけでございますから、日本の国民がよくこの賠償の協定ができるに至った事情理解してそうして納得の上でこれに協力するということが一番大切だと思うのでございます。もちろん政府はこの賠償協定日本の経済負担能力の限度であり、これがフィリピンのためにもなり、両国にとって好ましいという結論を得たればこそ、これを調印されて国会の承認を求められる段取りになった。フィリピン政府でも同じくこの程度で妥結するのが、両国にとって好ましいという結論があったればこそ、こういう事態になったと思いますから、これはその当事者としては、なるべく早く両国で、それぞれの国会でだれ一人反対する者なく、全会一致でこれが承認される運びになれば、これに越したことはない。けれどもそれは政府、当事者の考え方であって、国民の側からすれば、やはりその間に十分納得のいく説明があって、そうして理解をされなければ、これを軽々しく、早い方がいいということで、全会一致が望ましいということだけで承認するわけにいかないと思います。そういう観点から私ども政府に十分伺わなければならない大きな問題がたくさんあるわけなのであります。ただ額がどうか、初めの四億ドルが五億五千万ドルになったので、一億五千万ドルふえてこれでは負担にたえないではないかという議論ももちろんあるし、また十分検討してみなければならない点だと思いますが、こういう問題を検討するに当っては、やはり政府の大きな基本的な方針というものがある程度明らかになってこないと、たとえばこのフィリピン賠償で日本の通常貿易が阻害されるのではないかというような問題一つとってみましても、政府では先ほど高碕長官の御答弁にもありましたように、大丈夫、輸出はむしろこれによって伸びる見込みなのだ、こういうことを言われますけれども、特恵的な待遇を受けておるアメリカの有利な立場というものを打破しないでも、ベル・アクトを廃止しないでも、十分競争はできるのだ、こういうことを長官は言われますが、しからば通常のやり方で果してこの競争場裏に日本が臨んで勝つ見込みがあるかどうかということになると、大きな問題だと思う。日本が安い品物を、しかも優秀な品物をどんどん競争場裏に乗り出してこれを売るということになった場合、一時は有利に展開されても、アメリカがこれを黙って見ておるわけない。すでに世界全体におけるアメリカの市場がだんだん狭まってきつつある今日においては、この日本の貿易の優秀な伸張ぶりを見た場合に、アメリカが必ず政治的ないろいろな手を打ってくることは覚悟しなければならぬことなんです。そういう場合に日本は果して万全の備えがあるかどうか。一体何を背景にして、世界的な背景において日本がこの競争場に臨むかというような構想について、私どもはやはりある程度の具体的な構想というものをここに明らかにしていただかないことには、われわれはおいそれとこれを判断するわけにもいかないと思うのです。そういうわけで、先ほど、戸叶さんも、ただ長官の貿易はむしろ伸びるのだというような言葉では納得できないということを言われましたが、今後はそういう立場から私ども一つじっくり政府の方針なり具体的構想なりあるいけ確信のほどを伺って、その上で果してこの賠償協定が、日本にとって有利とまではいかなくても、この場合はやむを得ないものであるかという判断をしたいと思っておる。  そういう点から考えますと、まず第一に私どもが疑問に思いますのは、大野・ガルシア協定から今度のに変ってきたいきさつについては、いろいろ世間に伝えられておるのです。大野・ガルシア協定がフィリピンの政治情勢に影響されて御破算になったとわれわれは聞かされておるのですが、その当時どういう事情であったかも、これは後ほどお聞したいと考えておるのですが、まず私どもが疑問に思いますのは、昨年の八月十三日にいわゆる八億ドル賠償案についてフィリピン側の要望が伝達されましたときに、鳩山首相がこの線を内諾を与えたというふうに伝えられておる。当時この点が問題になって、政府筋では、いやそういう鳩山首相が内諾を与えたようなことはないのだということが、極力強調されておりましたけれども、その後ずっと今日に、至るまで、フィリピンに対する賠償交渉の経過を見ておりますと、結局はこの鳩山首相がのんだといわれるところの今度の八億ドル賠償案は、なるほど二本建になって、一方は二億五千万ドルの経済借款ということにはなっておっても、これをいかにして表面上合理化するかということに努力が集中されてきたように、私ども外部から見ると見える。この点は旧自由党でも非常に問題にして、合同前はもちろんのこと、その後においてもずいぶんこの点を問題にされて、聞くところによると、どうにか今日では納得されたとけ表面は言っておられますけれど、おそらく釈然としないものがあるのではないかと考えられるのです。そういうふうにこの交渉過程について、私どもは大きな疑問を持っておりますので、自民党の中の旧自由党の諸君でさえ、そういう点をずいぶん問題にされてきたことなのです。ましてやわれわれが、それをもっと徹底的に十分釈然とするような説明を求めるのは、当然だろうと思います。  もう一つ、これは私どもが今後質問をするときの態度として、あらかじめ大臣諸公に十分御了解を得ていただかなければならぬと思うのでありますが、この日比賠償交渉に乗り出すに当っては、日本側としては科学的に十分調査をされて日本案というものを作成していくことが私は当りまえだろうと思います。それはおそらく経済企画庁が中心となってそこの計画部ですか、そういうところで十分な案を練られておったでありましょうし、また私ども聞くところによると、そういう点を詳細に計画されておったということでございますが、結局さっきの問題と関連するのです。そういう基礎的な資料に基いて、この案ならばよろしいのでなしに、日本の官庁では企画庁を中心にして、そのように科学的な調査も一生懸命にやり、こういう程度ならば日本の能力——聞くところによると四億ドルで抑えなければ絶対にいけないという案が企画庁あたりでは出されておったということでございますけれども、その額はともかくとして、いろいろ厳密な調査に基づいた案ができつつあったにかかわらず、これを何ら考慮することなく、総理を中心にしたところの最高首脳部で、政治的ないわゆる腹芸というか、八億ドルというものをまずのんで、そうしてその後において、いかにこの八億ドルという金額を合理化するかということに努力されたように、私どもにはどうしても見える。またそういう材料もたくさんあるわけです。そういう点に今後詳しい御答弁をだんだん求めていくことになるのでございますが、まず一つ企画庁長官に御答弁お願いしておきたいのは聞くところによりますと、この日比賠償では、大蔵省としてはやはり一ドルでも低額の方がよろしい、できるだけ安い方がよろしい、こういうことを終始主張されておった。ところが通産省の方では、そんなに額を切り詰めることばかり意を払う必要はない。もちろんこれは限度の問題で、幾らでも多いほどいいという無制限のものではないと思いますけれども、なるべく多くして、そしてそれをてこにして、日本の経済の発展の土台にするのだ。そういう産業の発展という立場から、むしろそう切り詰めなくても、フィリピンの言うように相当多額のものでこれをやること差しつかえないという意見を通産省は抱いておった。これに対して企画庁側としては、やはり大蔵省の考え方を支持して、そしてフィリピンに強く突っぱねる態度に出るようになったのだということがいわれているのでございますが、この点についてまず企画庁長官から経過を御報告願いたいと思うのでございます。
  165. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 今大蔵省の意見はこうだとか、通産省はこうだとか、企画庁はこうだとか、いろいろ御意見があったようでございますが、これは必ずしもその通りとは申し上げかねます。けれども、大体におきまして政府といたしましても、これは日本の経済が耐え得る程度でなければ、かりに約束をしても実行できないのだ、こういうふうなことが根本であります。しからばどの程度に払うことが経済に耐え得るかという問題につきましては、ひとりフィリピンの賠償といわずに、ビルマ賠償そのほかいろいろ対外の債務があるものでありますから、この外外債務を検討いたしまして、一年にどれくらいの程度なら耐え得るだろうか、こういうふうな程度の研究は十分いたしておったわけなのであります。そういう趣旨に基きまして、今回のフィリピン賠償問題につきましては、昨年の五月十日に初めてネリがこっちへ参りまして、そのときに外務大臣からのお話がございましてこの問題は経済問題であるから、経済企画庁の、当時経済審議庁でございましたが、長官の私が当ったらどうか、こういうお話がございました。それで私は外務大臣と御相談の土に当ったのでございますが、その当りましたときにおきましても、大野・ガルシア案というものは相当検討された結果、あの四億という数字と十億という数字とが出ておったのでございますから、この大野・ガルシア案というものを基礎にいたしまして交渉いたしたようなわけであります。その結果につきましては、最初ネリは十億ドルということを主張したのでありますが、これはわれわれは受けられないというので、その場合われわれは四億ドルということを言ったのであります。そしてこれは二十年でなければ日本の経済では払うことができない。と申しますことは、四億ドルを十年に払うということは、一年に四千万ドルを負担しなければならぬ。現在の日本の経済状態におきましては、フィリピンに年額四千万ドルを払うということは、これは不可能であります。どうしてもこれは二十年でなければならぬ。しからば、お前の方の都合によってこれを二十年にするということなら、これに対する金利を負担しろ、こういうふうなことを言ったのでありますが、賠償というものについては、金利は配慮しないことが原則だというようなことで、いろいろ話し合った結果、大体において二十年間に五億五千万ドル、それで最初の十年間は二千五七百万ドル、ということは、最初の十年の間は年に二千五百万ドルずつ払うということであります。最後の十年間に三千万ドル、その時分になれば日本の経済は相当よくなるだろう、これならば不可能じゃないだろう、こういうことから総計五億五千万ドルということに大体腹をきめたのでありますが、それにつきましても、大野・ガルシア案に一応彼らはイニシアルをして仮調印をしても、またこれをくつがえすといったような実例もあることだから、あなた方の方でよく御相談になって、そうして来られたときにはわれわれも考慮いたしましょう、こういうふうなことで話しておったのであります。その結果先ほどお話が出たごとく、八月十三日にマグサイサイ大統領の名前において手紙がきた、こういうことになっておるわけであります。以上経過について御報告申し上げます。
  166. 松本七郎

    ○松本(七)委員 企画庁の方では、検討の結果として賠償の総額及び年限は、総額四億ドルで二十年、これが限度である、そういう新論に到達されたのではないのですか。
  167. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 いや、必ずしもそういう結論ではございません。
  168. 松本七郎

    ○松本(七)委員 そうすると、財政負担力を加味して考えた場合の賠償品目を作成されるに当っての基準というようなものを企画庁では作られておるのではないでしょうか。
  169. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 現在の日本の経済状態から申しまして、将来のことは別といたしまして現状におきましては、いろいろな賠償、対外債務等を入れまして、年額にして大体一億ドルをもって最高限度として考えておるわけであります。
  170. 松本七郎

    ○松本(七)委員 企画庁でそれの結論を出されるに至ったところのいろいろな研究資料があるわけですね。日本の財政負担能力を加味した場合に、いよいよ賠償品目をきめる場合にどういうものが適当であり、どういう点を注意すべきかという点についての一応の基準というものが、科学的な調査研究の結果、できておると思うのです。そういうものを少し私どもにも参考資料として提出していただきたい。それをお出し願うものが企画庁自身に私はたくさんあると思うのですが、いかがでございますか。
  171. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいまその係の者がおりませんですから、参りましたら、よく調査いたしまして、お答えいたします。
  172. 松本七郎

    ○松本(七)委員 ここで委員長一つお願いしておきたいのです。私どもは、この日比賠償が国民経済にどういう影響を与えるかということについていろいろ調べてみているのですが、早い話が、今の日本で出ている経済雑誌、こういうものをとってみても、まだいずれもはっきりした結論が出ている資料というものはそうないのです。私は東洋経済新報もちょっと見るけれども、これもはっきりした結論らしいものはない。資料としては、外務省で出しておる国際週報、これには相当詳しく材料が集まっておるし、それから日英両国語のものも集められておるのですが、なかなか結論づけるのに足るだけの材料がないわけであります。それで少し企画庁あたりから、われわれの希望する材料を今度要求しますから、一つそのつど委員長特にお取り計らいを願いたい。それから、先ほどちょっと大蔵省の考え方、通産省の考え方と私申しましたが、通産大臣に来てもらうように要求しておいたのですが、これも来ておられないし、それから大蔵大臣にぜも出席してもらいたい。ところが大蔵大臣は、残念ながらきょうは不信任案がまた出ておるというから、委員会に来てもらうわけにいかないかもしれませんので、これは次会まで保留しておきますが、委員長に特にお願いしたいのは、先ほど私が触れましたように、交渉過程において、総理大臣の言質と言われておるものをめぐってどうも釈然としないものがあるのです。ですから、この前から私は日ソ漁業問題でも総理大臣にぜひ出席していただきたいということを要求しておるのですが、これもまだ実現できない。たまたまもうすでに日比賠償の問題にも入りました。日比賠償自体についても私は総理からぜひこの委員会を通じてはっきりした納得のいく説明を求めなければならぬ。その問題だけではなしに、先ほど高碕長官から御答弁のありました貿易の伸展という問題についても、どのような世界的な背景を持って今後の貿易に処するかということは、これは非常に大きな問題なのです。もちろん、日ソの国交回復なった後のソビエトとの関係もございますでしょう。特に私は、中国との関係がどのように今後経済的になってくるかということが、やはり日比賠償をめぐった日本の今後の経済の動き、アジアにおける日本の今後の立場というものを左右する大きな要素になってくると思うのです。通産大臣は、中国に対するところの輸出の問題も閣議に持ち出されておられるようですが、代表部の設置の問題も閣議に出されておるように新聞では伝えられております。こういう点を関連させて今後の日本経済のあり方というものについて政府の構想をはりきり伺わないことには、肝心な点が抜けて、目をふさいで、ばく然と貿易は勉強すれば伸長できるのだというようなことでは納得できない。従いまして、これは委員長としては、なるべくフィリピンの国会とも歩調を合せて、すみやかにこれを通したいという気持はよくわかりますが、私どもの判断する上においては、今申すような点が非常に大事なポイントになりますので、ぜひ早い機会に総理大臣の出席を求めるように、一つはっきり委員長約束をしていただきたい。それでないと、委員長はやるやると言いながら、ちっとも実現しないのだから、通すだけ通してあとはもう野となれ山となれでほおかぶりじゃ因る。一つその点はっきりと委員長から確約していただきたい。
  173. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 それは担当大臣に十分お聞き願って、それでどうしてもあれだったらお話しますけれど、とにかく担当大臣に十分説明なり何なりお聞きにならなければ、総理大臣が全部そういうことを知っておられるというわけでないので……。
  174. 松本七郎

    ○松本(七)委員 もちろん、総理大臣に全部聞こうというのではなく、総理大臣に聞くことは少いのです。それで総理大臣に聞いてからでなければ、ほかのものは聞かないと言っていないのです。今から御出席の外務大臣と高碕大臣にはおもな点は聞きます。詳細なことはまた先に延ばしますけれども、ある程度は聞こうと思っている。けれども委員長がこの審議の終るまでに総理大臣を必ず出席させるという約束だけはしていただかないことには、大事な点に触れているから、私どもとしては困る。
  175. 前尾繁三郎

    ○前尾委員 どうしても必要なら、出席してもらいますよ。
  176. 松本七郎

    ○松本(七)委員 こっちは必要だと言っているのです。
  177. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 やはり担当大臣に十分説明を、聞き願って、今ここですぐ確約してくれといっても——必要があればむろんやりますよ。
  178. 松本七郎

    ○松本(七)委員 そういうことを言うからいけない。担当大臣に聞くのと総理大臣に聞くのとでは問題が違う、観点が違う、スケールも違う。従って、担当大臣に聞かないとは言わないのです。これから聞きます。それと並行して、総理大臣の出席をわれわれは前から要求しているのです。日比賠償でもその必要を認めている。そのくらいの約束委員長にはやっていただかなければならぬ。この審議をする上においてわれわれの、要求も入れていただかなければ困る。
  179. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 お互いお聞きになる質問事項なんかで相談しましょう。
  180. 松本七郎

    ○松本(七)委員 質問事項といっても、具体的にここで全部言ってしまうわけにいかない。総理大臣と質疑応答しているうちに、またふえたり減ったりするんだから……。
  181. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 それは関連していろいろな問題が出てくるのはいいですよ。しかし大体の質問事項は……。
  182. 松本七郎

    ○松本(七)委員 だからさっきから言っているように、フィリピン賠償の問題で、日本の今後の貿易がどうなるかということが非常に大きな点である。それについては日本とフィリピンだけの問題ではない。日本アメリカの関係があり、日本と中国の関係があり、日本東南アジア諸国の関係と、いろいろあるのだから、そういう大方針というものを伺う必要があるということを言っているのです。それを日比賠償の今日まで至った経過については総理大臣はノータッチではないのですから、そういう点を釈然とするまでよく聞きたいというのです。
  183. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 あとで理事会で相談してやりましょう。
  184. 松本七郎

    ○松本(七)委員 理事会で相談するというのは、扱い方としてはいいです。ただ委員長としてその必要を認めるかどうかということを答弁したさい。
  185. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 理事会できめなければ、委員長として確約するとか、せぬとかいうことはできませんよ。
  186. 松本七郎

    ○松本(七)委員 委員長として賛成かどうかだけでも言いなさいよ。
  187. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 必要があればもちろん呼びますよ。
  188. 森島守人

    ○森島委員 その点に関連して……。私も委員長は非常にりっばな方だと思いますが、資料提供の点において、私は非常な不満を持っている。たとえば日ソ交渉の問題につきましても、私は数度資料の提供を、委員長を通じて正式に要求している。しかしこれまでほとんど一回も資料の御提供はなかった。それでこのたびは一つしっかりやっていただきたい。これは資料の提供ばかりでなく、大臣の出席についても、一つ委員長から十分に御勧奨していただきたい。
  189. 穗積七郎

    穗積委員 きょう資料をいただいたが、フィリピンの対外貿易、そのうち対日貿易を含む対外貿易の総額と分類別を一つぜひいただきたいと思うのです。それとそれからいろいろな事情があるでしょう。その説明をつけていただきたい。
  190. 松本七郎

    ○松本(七)委員 私は高碕長官に特にお願いしておきたいのです。それは経済企画庁では、必ずこの日比賠償については相当膨大な資料、詳しい研究に基いた資料ができていると思うのです。その一部は私も知っておるのです。ですからその資料に基いて、どうしても四億ドル以上に出てはいけないという結論がかりに一応出ておっても、これは政府がいろいろ総合的な観点から、いやこれは五億五千万ドルやむなしという結論になったかもしれない。従って今出た結論だけをいろいろ合理的に説明することに急ではなしに、やはり今までの日本の官庁で研究されたところの研究過程というものを、そして一応出たところの結論というものをわれわれの前に明らかにされて、そうしてその上でなおこういう事情でこういう結果になったのだということを、ざっくばらんに御説明していただかないと、この問題はなかなか私どもは納得できない点が多いと予想されますので、どうぞそういう意味で、できるだけたくさん資料の御提出をお願いしたいと思います。  そこで大蔵大臣、通産大臣に少し最初聞かなければならぬのですが、おられませんから飛ばしまして、初めに外務大臣にちょっとお伺いしたいのは、この賠償協定ができると同時に批准されることに予定されております、サンフランシスコ平和条約が発効すると、日本国民がフィリピンに入国することはずっと容易になるのは当然だろうと思いますが、外務大臣の御答弁一つお願いしておきたい。
  191. 重光葵

    ○重光国務大臣 そう私も予期しております。
  192. 松本七郎

    ○松本(七)委員 その場合の在留邦人の国際法上の地位について、それがどういうことになるか。それからフィリピンにおける日本国民の商業活動、それから自由職業に従事する上での権利義務はどういうことになるのか。通商航海条約がない間は、こういうことを規定することが困難だろうと思いますが、通商航海条約ができるまでの間相互主義によるのか。あるいは内国民待遇をされるのか、この四点を御答弁お願いします。
  193. 重光葵

    ○重光国務大臣 つまり国交が回復されれば平和条約ができるわけでございます。それでサンフランシスコ平和条約がおそらく生きてくると思います。サンフランシスコ平和条約によって、大体のことは規定がございますから、それによって規律されるわけでございます。ただし今言われた具体的のことは、おそらくこれは通商航海条約によらなければ詳細な規定はできないと思います。それで大体通商航海条約によって規定し得ると考えております。
  194. 松本七郎

    ○松本(七)委員 その通商航海条約ができるまでにブランクがあると思うのですが、その間の取扱いはどうなるのでしょうか。
  195. 下田武三

    ○下田政府委員 御指摘の通り、フィリピン側が桑港平和条約を批准いたしますと、例の第十二条の規定が、日本とフィリピンとの間に発効になるわけでございますが、ただ第十一条の(a)項、すみやかに通商航海条約を締結するということは、日比間にも妥当いたしますが、(b)項の通商航海条約ができるまでの暫定的措置、つまり連合国側が与える限度において日本も最恵国待遇なり、あるいは内国民待遇を与えるという、あの規定は桑港条約が最初に発効いたしましてから四年間ということになっておることは御承知の通りでございます。そこでこの四年間というのは、もう四月二十八日に期限がきておりますので、残念ながらこの第十二条(b)項の特定的の取りきめが日比間については発効いたさないわけでございます。そこでさしあたりは白紙になるのでございますが、この(a)項によりまして、すみやかに通商航海条約を結ぶという規定が生きておりますのと、高碕全権がおいでになりまして発せられました共同声明においても、御丁寧にまたその上に通商航海条約をすみやかにやるということを明らかにしておられるのでございますから、これは桑港条約批准後直ちになすべきことは、通商航海条約交渉と相なるわけであります。アジア局長も申しましたように、通商航海条約というものはなかなか複雑な浩瀚な条約でございますので、これが短時日に妥結するということは、まずなかなか困難だろうと思わなければなりません。そういう際にどういたしますかということは、ただいま研究中でございますが、あるいは日比間にとりあえず桑港条約の第十一条(b)項のような暫定的な取りきめを結ぶ、またあるいは日本とカナダのように全面的な通商航海条約ではありませんが、さしあたり必要な規定を含みますところの簡単な通商協定、さらにあるいは貿易取りきめ等の中に事実上最恵国待遇を与えるというような何らかのアシュアランスを取りつける、二段、三段といろいろ手はあると思います。それをただいま検討いたしておりますが、まず当然なすべきことは、通商航海条約の締結申し込みということに相なると思うわけでございます。
  196. 松本七郎

    ○松本(七)委員 最近フィリピンがだんだんアメリカの政策に対して批判的になりつつあるような報道がしきりにされているわけですが、その反面私は賠償協定ができ上ったのを契機として、日本に対する感情というのは、これはよくなるだろうと思います。そこで高碕長官も言われるように、貿易の面その他でも有利な条件が出てくるのではないか、これは一応考えられる。けれどもその反面私どもが心配するのは、日本とフィリピンの貿易その他の条件が好転すればするほど、アメリカもやはり今度はその市場の拡張にあせりを生じてくる、これは必至だと思う。そこでこの前も高碕長官にこれはお伺いしたのですが、きょうは外務大臣にこの点を一つお伺いしておきたいと思いますが、日本の綿製品をアメリカはしきりに禁止しようとする動きがある。  こういう点が私は日比の賠償問題解決、友好通商の拡大というようなことと正比例して、アメリカはいろいろな点から日本の経済を圧迫する動きが強化されてくるのじゃないか、こういう点は十分考えられるのです。ですから、そういう場合の覚悟というものが十分なければならぬと思うのですが、高碕長官はさすがに商売のことには敏腕家ですから、この前の御答弁でも、場合によってはアメリカの綿花を買うことを手控えて、別のところから買うぐらいのことを商売上やらなければならなくなるかもしれない、それで必要があればそのくらいの覚悟はあるのだ、こういう御答弁があったのであります。これは非常に大事な点であって、外務大臣としてもそういった覚悟を持って今後対処していかなければ、国際経済場裏に日本が有利な地位を占めることは不可能だと思う。アメリカから買うだけのものは買って、その買った綿花によってできたところの綿製品は、今度はアメリカの方で締め出しを食うというようなことを放置しておったのでは、日本の経済は伸びいく道を閉ざされてしまうと思う。それを打開するには、やはりソビエトあるいは中国その他の社会主義周との提携というようなことでいかなければならなくなるだろうと私は思うのですが、そういう問題は今日は御答弁は求めませんが、アメリカのそのような処置が今後強化されるような動きがある場合には、アメリカの綿花を、買わないというような政策も、ある場合には必要になろうと思います。そういう点についての外務大臣の所信を明らかにしていただきたいと思う。
  197. 重光葵

    ○重光国務大臣 私もさような通商貿易については具体的の利害関係について常に考えなければならぬ、そうは思います。でありますから、たとえば綿花なら綿花というような問題についても考えなければならぬが、しかしながらある場合においては一つの商社の利益についてもまた考えなければなりますまい。そういう場合において、あるいは相手国の態度いかんによりましては、また貿易の品目の振りかえ等も考えなければなりますまい。私はそれはそう遠慮する必要はないと思います。私はそれよりもさらに一般的のことも考えなければならぬと思います。一般的のことというのはどういうことであるかというと、フィリピンの問題について申せば、今たとえばベル・アクトの問題があるといって非常にやかましい、そこでアメリカとフィリピンの間には特別の関係もあって特恵関税が設定をされておる。これが日本に対して非常に不利益に動きはせぬかというようなことが非常に言われております。私はそれはそういうことがあるだろうと思いますけれども、その不利益な障壁を乗り越えていくということもまたいろいろ考えられることでありますから、それもやらなければならぬが、しかしそれよりもアメリカとの関係におきまして、やはりこういう通商上の問題においても全面的によく了解を遂げていって、日本の通商が阻害を受けないようにするということが、さらにわれわれのやるべきことだと考えておるのであります。たとえばフィリピンの問題についても特恵関税はあるけれども、一体それを全面的に振り回して、日本の通商がフィリピンにおいて伸びるということについてどういう態度をアメリカがとるか、親切な態度をとるか、また対抗的な態度をとるかということはよほど関係を持つと思います。今日アメリカは、これは全般の問題として、大体において日本東南アジア方面等において、正当な通商関係を伸ばしていくことは、むしろ歓迎するという態度をとっておるとわれわれは承知をしております。常に聞いております。またそれを常に日本側としてはアメリカ側に勧めておるわけであります。日本の人口問題、その他いろいろな関係がある。そこにおいて日本側の通商の発展というものは、どうしてもいろいろ障害を各方両において受けておるわけでありますから、それで東南アジア方面において正当な通商はできるだけ伸びるように考える。そこでアメリカもこの特恵関税、ベル・アクトのごときものを持っておるけれども、あれはだんだんなくなります。何年でございますか、十年ぐらいたってからなくなることになっております。その間において日本がだんだん伸びてきて順次障壁が低くなるに従って、日本がそれを埋めてくるようになることはアメリカの歓迎するところだとアメリカの方は言っておるようなわけであります。それはまたそういう工合にしてもらわなければならぬと私は思っております。だから、そういう全面的なことについては少しでも障害がなくなるように、また日本の通商が伸びるようにやっていきたい、こういふうに考えておるのであります。しかしながらそれは全面的なことであります。個々の問題についていろいろな故障があり、また通商上の技術的のやり力については、私は正当なことはどんどん遠慮なくやってよい、こう考えております。
  198. 松本七郎

    ○松本(七)委員 今大臣から全面的なことについてのお話がございましたが、個々の問題については、たとえば綿花を買わなくするというようなことも、場合によっては必要で、やってもよかろうという御答弁であったわけですが、この機会に全般的なことで大事な点を一つ伺っておきたい。   それは最近イギリスその他欧州、いわゆる西欧諸国と共産圏、ソビエトや中国との貿易をアメリカでも歓迎する動きがある。それは経済上そうなるのです。これはヨーロッパの各国が、いわゆる社会主義圏と貿易を拡大して、それだけ経済活動が活発になれば、アメリカからの輸入もそれに比例してふえてくるのです。アメリカからの輸入する能力が西欧諸国が共産圏との貿易によって拡大されてくる。そういう基礎に立って、アメリカとしてもこれを歓迎せざるを得ない、商売上から言えば歓迎せざるを得なくなる。政治的考慮は別です。そうして結局アメリカ自身も、この共産圏との貿易をやるべきだという声が財界から出てきておるでしょう。そういう点を考えても、私どもはこの日比の賠償を解決し、そして今後、単に日比ばかりではなく、その他の国との貿易の拡大をやっていくためには、どうしても日本は特に中国との通商関係ということを、今後真剣に考ていかなければならなくなると思う。そういう点から、すでに閣議で石橋通産大臣からああいう通商代表部設置のお話が出ておることは、これは歓迎すべきことだと思いますけれども、どうしても外務大臣としては、そういう商売のことよりも、世界的な政治的情勢、政治的考慮というようなものからこれに牽制を加えるというか、これを阻止する動きがとかくありがちに心配されるのでございます。そこで今後こういう点、特に中国と日本との間の通商問題の打開、拡大について、外務大臣にはどの程度積極的にやる考えであるのか。さしあたり通商代表部を設置することについての石橋通商大臣の説を心持して、その実現に御努力していただけるかどうか、この点を伺っておきたいと思います。
  199. 重光葵

    ○重光国務大臣 アメリカが共産圏との貿易の増大を歓迎しておるというお話がありましたけれども、私はそういうことは知りません。私の情報は反対でございます。歓迎はいたしておりません。  それから貿易の全体について、共産圏も入れて貿易を増大すれば世界の経済活動がそれだけ増すのであるから、全体としていいことじゃないかというお話が一般的な御議論としてありました。私はそれはそうであるべきだと思います。そういう事態が来ることを私も非常に希望しておるわけであります。  その次の中国との貿易は御承知の通りに制限を受けております。これは国際的に制限を受けております。この制限はない方がいいことは日本としてはもちろんのことであります。そうでありますからその制限を少しでも少くするよう努力をして——これは相当動いておることを申し上げて差しつかえないと思います。しかしながら制限がある以上は、その制限を尊重いたさなければなりません。しかしその制限内において貿易の伸張ということは考え得るのであります。年々増しております。これは制限に関係のないことでございますから、つまり国際上の義務に関係のないことでございますから、これはあくまで伸ばすことにいたしたいと考えておるわけであります。また現に非常に伸びておるわけであります。これは外務省も通産省も何もございません。みんな共通の意見でございます。  それから通商代表部をどうするかということにつきましては、これが特に通産大臣から閣議へ強く持ち出されたということが新聞にはございましたけれども、そういうことは実はないのであります。それは通産大臣と私あるいはその他一、二の他の閣僚との間に話し合いをしたことはあります。それは今日中共との関係は、遺憾ながら国交の回復とかもしくは正常な取引をする段階にはなっておらぬ、だから代表部を置いてこれに外交特権を与えるということは困難である、そういうことでなくしてでき得る範囲の貿易をやるのであるから、その間において民間の代表というような意味で貿易の事務をやる、世話をするエージェントを置くとかなんとかいうことは差しつかえないじゃないかというようなことで話をしたことがございました。しかしそれについて何か具体的な方法があるかというようなことについては、さらにまた関係の向きで研究した方がよかろう、こういう話し合いを私は通産大臣といたしました。私はそれで大体さしあたってのことはよかろうかと考えております。
  200. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 高碕長官に一言お尋ねしたいと思いますが、松本委員から最近のフィリピンの政治的な動向についてお話がありました。フィリピンがアメリカの植民地主義に対して、非常に批判的な傾向を強めておる。私どももそう聞いておる。最近読みましたものでも、下院議長のラウレル・ジュニアがある機会においてアメリカに対して非常に強い批判的な言辞を弄している。今度高碕さんは調印のためにマニラに行かれました。わずか数日間の滞在でありましたし、新聞のゴシップ欄によると、何でも宴会とシャワーで数日間を暮されたというようなことで、あるいはフィリピンの政界、財界の要人なんかと意見を交換されるような機会はなかったかと思います。けれども、もし高碕さんがフィリピン政界の重立った人といろいろお話しにでもなったとすれば、その話し合いを通じてお感じになったところを、一つお聞かせ願えばけっこうだと思います。ただわれわれ賠償の問題を考えます場合は、やはりフィリピンが今後一体どういう方向をたどるかということを、実は非常に注意深く見守っておるわけでありまして、フィリピンがほんとうにアメリカの従属から離れて独立的な立場に立って、日本とも政治的に経済的に密接な関係を今後結んでいくということになりますならば、貿易の発展にもなるわけでありますから、フィリピンのそういう政治的な動向、外交的な動向というものを知るための参考として、そういうお話でもあればみやげ話を聞きたいと思います。
  201. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ざっくばらんにお話いたしますと、私は昨年の四月のバンドン会議に参りましたときに、フィリピンの代表のロムロという人が見えまして、その人の意見を聞いておりますと、フィリピンは全然アメリカ一つだ、こういう感じがしておったのであります。それで私はそういう感じで今度はフィリピンに行ったのでありますが、これが私の想像と全然変っておった。あのバンドン会議の結果、フィリピンの上下を通じて民族意識が非常に強くなってきた、それでロムロさんのごときは、今日はフィリピンにおいてはあまり発言力がないということも聞いたわけであります。特に民間人——これは私は時間がなかったのですけれども、外務大臣に特にお願いいたしまして、十一日に帰るものを二日延ばしまして、できるだけ民間人にも会ってみたのでありますが、そういう方面の意見につきましては、お説のごとく民族意識が高唱されるということになると、自然同じ有色人種同士が手を握ろうじゃないか、この力は非常に強いようであります。さてそうしたときに実際日本が賠償を実施する場合に、資本財を持っていったところがその資本財を活用するのにはほんとうの資本があるか、金があるか、こういうことになると、ちょっとアメリカの金でも借りなければ仕事ができぬじゃないか、どうだろうかということを相談してみると、これも一つ考えなければならぬということになっておりますが、上層の人つまり政府責任者においてはさのみ露骨なる排米的の意見はございません。しかし民間人及び全体の空気は、よほどただいまお話のような空気になってきておるようでありますから、これはやはりどうしても日本と手を握らなければならぬということの空気が強かったように私は感じております。
  202. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 いいお話を聞きました。それでは宴会とシャワーだけではなかったわけであります。大体高碕長官はわが党で非常に評判がいいのでありまして、バンドン会議に行かれただけに、バンドン精神がだいぶわかっておるように思います。最近はセイロンなんかでも非常な大転換をいたしまして、私どもが注目しているのはパキスタンの動きでありますが、おそらくパキスタンにしても、フィリピンにしても、やはりセイロンにならって、だんだん中立的立場に変っていくと思うのです。ただ日本だけが取り残されるような格好になるのでありますが、そうなりますと、今後の東南アジアさらに広くはアジア・アフリカに対する日本の外交や経済政策というものは、やっぱり非常に根本的に考え直さなければならぬ。従来のやり方ではだめでありますが、高碕長官の今のいいお話と関連して、重光外相は一体このことについて、どういうふうな御感想を持っておられますか、一つ外務大臣として詳細に信念のほどを披瀝していただきたい。
  203. 重光葵

    ○重光国務大臣 私は、高碕長官と同様の考え方を持っております。
  204. 松本七郎

    ○松本(七)委員 終戦後賠償問題について御承知のようにポーレー調査団とかストライク調査団というような調査団日本に来て、そうしてそれぞれ賠償取り立てについての報告書を出したわけですが、あれによると、きわめて手きびしい報告がなされておるわけです。それか桑港条約で大幅に緩和されたということに相なったわけですが、これはなるほどわが国にとっては非常に喜ばしいことでありますが、この処置は果してアメリカ日本に対する好意によるものか、あるいは、当時非常に激化しておったところの米ソ対立の世界情勢のもとにおいて何とか日本アメリカに抱き込もうという政策の現われではないか。これは二つの見方があると思う。全くこれは日本に対するアメリカの好意の現われであるという見方もあるだろうし、それから日本アメリカの友好国としてどうしても離したくない、抱き込み政策としてやられたのだという見方も当時から行われておったわけですが、外務大臣はどのような判断をされておったのでしょうか。
  205. 重光葵

    ○重光国務大臣 これはだいぶ前のことのようでございます。私は今言われたことは全部ほんとうだと思っております。アメリカ日本に対する政策はむろんありましょう。しかし同時にまたアメリカの世界政策からくるところもございましょう。そういうことが相待ってサンフランシスコ条約のごとき——その前にはもうほとんど日本やドイツを破壊するような考えすらあったのでございますが、それとは違った方向に出てきたということは、全くアメリカ日本に対する政策、東洋に対する政策、アメリカの世界政策、その結果からきたのだとこう思っております。しかし外交のことは要するに単に感傷的な原因ですべて動いておるものではないことは明らかであります。以上をもってお答えといたします。
  206. 松本七郎

    ○松本(七)委員 先ほど問題になりました大野・ガルシア間で、大体四億ドルの協定ができてこれがまた最終案として通るだろうと世間一般に思われておったのが、フィリピン側の事情で破棄される結果になったのですが、当時のフィリピンの政治情勢は一体どういうものであったか、どういう理由でああいう結果になったか、外務大臣はこれに対する判断をどういうふうにつけておられるか、当時の情勢を少し詳しくお知らせ願いたい。
  207. 重光葵

    ○重光国務大臣 私は実は当時の模様をよく研究しておりません。おりませんが大体のところにおいてこの、案は無理が多かった。なぜ無理が多かったかと申しますと、四億ドル、しかし経済的に十億ドルにするのだというような考え方は非常に無理がある。そこでフィリピンの、これを受け取る方の側から見てこれに対するいろいろな非難と申しますか、クリティシズムが出てくるのは当然のことであろうと思います。むろんフィリピンの政情が当時は今日のようにはまだ安定しておりません、さような状況でありますから、これを受け付けることを拒絶した結果に相なったのだ、こう考えております。
  208. 松本七郎

    ○松本(七)委員 フィリピン人の対日感情が最近非常によくなっておると聞かれておるのですが、事実好転しておるのでしょうか。向うでは日本人の生命財産の危険が全然ないと考えていいものでしょうか、外務大臣の御答弁を願います。
  209. 重光葵

    ○重光国務大臣 私の得ておる報告によりますと、大体そうでございます。先ほど高碕長官が触れられた御説明によって、よく理由づけられておると思います。フィリピンもよほど変ってきた。それは心がこれを解決したものがだいぶありましょう。戦争の印象がだんだん消えていったという点もございましょう。それからまたフィリピン自身の都合からもありましょう。フィリピンとしては東アにおける新しい独立国であります。どうしても東アにおける存在を全うしていかなければならぬ運命を持っております。それでありますから隣国ともいわれる日本との関係は自然に経済的にも、いろいろなことにおいて近くなります。そういうような点もございましょう。いずれにいたしましても、よほど変ってきた。特に日本に対する、日本人に対する感じが非常に変ったと申しますか、緩和してきた。前には居住すら不安な状況であったのが、今日はそういうことは全くなくなった。むしろ日本人を歓迎する気持もできてきた。こういうことはそういうことに原因するのだろうと思います。これにつけ加えて、また日本の上下と申しますか、日本人の努力も、これは非常に大きく影響しておることと思います。こちらのいい気持が向うに反映したということも争われぬことだと思います。これは日本人の努力だと考えております。
  210. 松本七郎

    ○松本(七)委員 この協定が成立して、平和条約が効力を発生した後、さしあたり日比間でどういう条約、あるいは協定を結ぶ御予定ですか。
  211. 重光葵

    ○重光国務大臣 これは先ほど条約局長からお話した通り、通商航海条約が一番重要だと思います。それから、貿易協定をすぐやらなければなりますまい。その他どういうものがございますか、今の思いつきを申し上げれば、文化協定のごときものも考えてしかるべきものだと思います。
  212. 松本七郎

    ○松本(七)委員 航空条約などはどうですか。
  213. 重光葵

    ○重光国務大臣 そういうこともあると思います。
  214. 松本七郎

    ○松本(七)委員 これは日比の賠償もできようというときにあまり強調はしたくないのですけれども日本にいるフィリピン人で犯罪を犯すものがいるのですね。相当いるのですよ。これが将来いろいろなことで多くなると、相当ふえるのじゃないかという心配があるのですけれども、犯罪人の引渡条約というもの——これは原則として引き渡さないのが建前でしょうけれども、そういう条約を作れば引き渡しはできる、政治逃亡人以外の普通の犯罪人引渡条約というようなものが必要になってくるのじゃないかという気がするのですが、どうでしょう。
  215. 下田武三

    ○下田政府委員 その点に関しましては、実は戦後日本アメリカただ一国とだけ、犯罪人引渡条約を結んでおるのでございますが、これは一般国際法の規定を適用しましても可能でございますし、また日本には国内法がございますので、相互主義のもとに、条約がなくても引き渡しができるようになっておりますので、さしあたりこれを早く結ぶ実益はないと考えております。
  216. 松本七郎

    ○松本(七)委員 外務大臣に所信を伺っておきたいのですが、アメリカでは各州法で外国人の自由職業——弁護士なんかですね、それが法律で禁止されているのです。現在日本には相当米国系の弁護士がいると思いますが、これはどのくらいいるか、そうしてまた日本政府が今どういうふうな措置をしているか、それもあとでどうせ聞きますが、外務大臣に聞きたいのは、日本人の弁護士の利益をもっと保護する立場に立って、対処しなければならぬのじゃないか。このりっぱな才能のある日本の弁護士が、アメリカ人の弁護士の代弁を勤める、そういうような状態に放置しておくわけにはいかぬと思う。ですから日本の司法独立の建前から申しましても、両国の間はやっぱり双務的でなければならない、こう思うのです。アメリカでこの弁護士のような自由職業が禁止されるならば、日本の国内でも向うの自由職業を禁止できる、やはりそういう建前に置くのが当然だと思いますが、このことについての所信を伺っておきたい。
  217. 下田武三

    ○下田政府委員 私から細目の点を申し上げたいと存じますが、その点につきましては、日米通商航海条約の御審議のときに問題になりましてアメリカは御指摘の通り、州によりまして外国の弁護士のプラクティスを認めないという法律があるところがございます。日本も留保をいたしまして、米国でそういう方針をとっておる州の人間に対しては、日本も対抗的に禁止することができるという旨の留保をいたしました。それからさらに日本の弁護士法の改正をいたしまして、占領期間中に特におびただしく入って参りました米国の——米国に限りませんが、外国人の弁護士は、現在も仕事をやっておる者はその既得権まで奪いませんでしたけれども、今後は最高裁判所の認定で、そういうプラクティスのできるような道を開いておったのを閉ざすという法律の改正が成立いたしておるのでございます。  そこでフィリピンとの関係になりますと、フィリピンは排他主義で、合弁事業を原則として認めないというような点もございますし、それから伝統的にアメリカの法制をまねておる点もございますので、ただいま通商航海条約の案を作る資料としてフィリピンの法制の研究をいたしておりますが、弁護士、医者等の自由職業は、おそらくアメリカと同じような割合に自国への弁護士を保護して、外国人の弁護士が  フィリピンに入ってきてプラクティスを行うことを閉ざす方の色彩が強い法制をとっておるように見ておりますので、ちょうどアメリカと通商航海条約を結ぶときに問題となったと同じような点が、日比通商航海条約の締結の際に問題になりはしないかということを、ただいま予想をいたしておりまして、その対策を検討しておるような次第であります。
  218. 松本七郎

    ○松本(七)委員 大臣はその対策をどうお考えですか。
  219. 重光葵

    ○重光国務大臣 これは先ほどの一般的な大きな御議論とは離れて、むしろ非常に具体的な、いわば国と国との関係におきましての細目的な問題だと考えます。むろん弁護士や自由職業に対する取扱いは、通商航海条約締結の際にも、十分に審議しなければならぬ問題だと思います。その審議する方針は、むろん相互主義でいかなければならぬと思います。相互の関係で、何も日本だけが一方的にどうするということにもいきますまいが、一方的に不利益な立場に置かれるということはいかぬと思います。これは相互的にやるべき問題だと考えております。
  220. 松本七郎

    ○松本(七)委員 外務大臣に対する質問はこのくらいでおきましょう。  次に高碕さんにお伺いいたします。これはいろいろな資料に基いてお伺いしないと、私どもの納得のいくような説明もしていただけないでしょうし、また大臣としても御答弁しにくいと思いますけれども順序として日比賠償のみならず、ビルマ賠償を含めた賠償支払いが、わが国の経済にどういう影響を及ぼすかという全般的な見通しをお話を願いたい。
  221. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 けさ私は申し上げたわけでありますが、賠償というものは、ばくちで負けたからそれを払うんだとか、女と別れるために手切金を払うんだ、こういう考えに立った場合は、できるだけ引っぱってできるだけ安く値切るのが当然だと思う。ところが賠償というものは、結婚生活に入る一つの結納だ、こう考えて私どもはこれに当っておるわけなのであります。その意味から申しますと、この賠償を払うことによって、日本の経済が立っていくかいかぬかということをまずもって考えなければならぬ。それからその払うことによって、将来どれだけの代償が相手の国にもまた自分の国にも得られるか、この見通しを立てなければならぬということで今やったわけなのでありますが、その意味から検討いたしまして、現在の日本の経済力から申しましたなれば、十年、二十年先のことは別といたしまして、私どもがやっております、五カ年計画等におきましては、大体一カ年間にビルマ、フィリピン、それから今後支払うべきインドネシア、そのほかガリオアの跡始末、あるいは戦争前の負債等の支払い、そういうふうなものを合計いたしまして大体年額一億ドルぐらい、つまり日本金に直して三百六十億円くらいを出しても、日本の経済には大きな影響がないということの大体の見通しをつけてやっておるわけであります。これは申し上げるまでもなく大へん大きな金額でございまして、国民に対する負担に非常に大きく響くことと存じまして、私どもはその点について非常な責任を感ずるわけでありますが、しかしながらこれを払うことによって貿易も増進し、かつ各国における対日の感情もよくなる、こういうことが先決問題だと存じまして、これならば実行できるという関係で進んだわけであります。
  222. 松本七郎

    ○松本(七)委員 一説によりますと、この賠償支払いによって一部の企業家は、賠償物件の受注ということで利潤が増大するであろうが、生産は拡大再生産を伴わないから、日本の国内においてはインフレの要素が著しくなってくるのじゃないか、こういう見方をしておる人もだいぶおるようですが、この点はいかがですか。
  223. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 これは賠償を支払うことによって、大きな資本家だけがこの利益を受けるであろうというような御意見がときどきあるのでありますけれども、私はこれは間違いだと思っております。かりに一つの機械を作るにつきましても、それを作る工場は大きな工場かもしれませんが、これによって雇用の機会も増大するということにもなる。また対フィリピンの投資等におきましても、これは大資本家だけでなければいけないかと思っておったのでありますが、今度実際に参りますと、むしろ中小工業者ができるだけよけい行くということを先方は希望しておるようでありますが、これはやり方いかんによっては実行できる。現在日本の中小工業が数が多過ぎて困っておるときでありますから、これを持っていくということも考えなければならぬ。また日本の過度になっておるところの労働力、これは単純に言えば労働者はいかぬと言っておりますが、現在六百人の沈船引き上げの人たちが行っております。これは日本では労働者と見るかもしれませんが、ああいう仕事はフィリピンにはできない。こういう人はテクニシアン——技術者だというふうに見てくれておるわけでありますから、今日中小工業としてあるいは小さな工業が参りましたときには、その工場を動かす人たちは大体日本人が行かなければいけないだろう、その意味から申しまして、これによって潤う人たちはひとり大資本家だけでなくて、中小工業ないしは多数の労働階級の人たちが救われると存じております。  またインフレーションの問題につきましては、この程度の生産をふやすことによっては、現在の日本の経済状態におきましては、インフレーションは起らない、こういう結論に到達したのであります。
  224. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 議事進行について。熱心な質疑応答が行われておるのに、与党席はこんなりょうりょうたるありさまですから、こういう状態ならばもうやめたらどうですか。
  225. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 すぐ動員して参ります。
  226. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 動員がきかなければ一つ適当なところでやめて下さい。明日もありますから……。
  227. 松本七郎

    ○松本(七)委員 貿易拡大の点ですが、さっき外務大臣にお伺いしたのですが、現在の日本・フィリピン間の取りきめによると、片道五千万ドル、ところが貿易実績昭和二十九年度は輸出が三一十百万ドル、輸入が六千七百万ドル、三十年度が輸出が五千百万ドル、輸入が八千八百万ドルというふうな実績になっておるので、一方的な輸入超過になっておるわけです。その上に賠償支払いが行われると、これはどうしても米国・フィリピン間の貿易には貢献するが、日本の正常貿易の方は悪化するのだろうという見通上を持っておる人が多いわけです。午前中の戸叶委員の質問に対する御答弁でも、ばく然と希望を述べられたにすぎなかったわけですが、先ほどの外務大臣の御答弁を大臣が聞かれてどのように思われたか存じませんが、経済的な面に重点を置いて考えると、あの外務大臣の御答弁は少しおかしいと思う。それは私が指摘しましたように、西欧諸国が社会主義圏と貿易をやっておることを、アメリカ政府が政治的考慮からもおもしろくないという考えを持つのは当りまえだろうし、そういうことも方々に出ております。けれども私の指摘したのはその反面の方であって、経済界では西欧諸国がああいうふうに共産圏との貿易をだんだん拡大してくるということは、とりもなおさず彼らの輸入力を増す結果になって、経済的な面から見ると、必ずしも害はないのだ。そこでこれを放置するのじゃなしに、アメリカ自身も共産圏との貿易をもっとやれ、こういう意見が財界その他から出ておることは私は見のがせないと思う。政府はこれに対してどう言っておるかは別として、純然たる経済面からいえば、世界において大きな力を持っておるアメリカでさえ、そういう必要に迫られてきておる事実を、私はおそらく高碕長官はお認めになるだろうと思うのですが、それをどういうふうに御認識されておるか。それと関連して日本とフィリピンの貿易の拡大、さらにその他の国との日本の貿易の拡大、もちろん他国の競争が激化してくることを予想して、そういう場合にはどうしても中国、それからさしあたりは国交を回復するソ連と、貿易という面に取り組まないと、この競争場裏に耐えていけないのじゃないか、そういう背景が私は必要じゃないかと思うのですが、どうでしょう。
  228. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 政治的の意味合いから貿易に対するいろいろな制限が加えられることは、最もよしむべき現象の一つだと私は思います。フィリピンの貿易につきましても、アメリカの大多数の業者といたしますれば、政府はどういう方針をとっておっても、業者自身の意見がありましょう。アメリカ政府の方では日本の貿易を拡大してやりたい、そういうことのためにフィリピンに日本の商品が入ることは、アメリカ政府は助けてくれるだろうと思いますが、アメリカの業者にとってみると、これは黙っていない。すでにその現われはアメリカでも起きておるわけでありますから、そういうものがくるものだと覚悟してフィリピンとの貿易をやっていかなければならぬと存じております。ただ私は今日世界の貿易の大勢から見まして、どうしてもこれは好むと好まざるとにかかわらず、貿易協定というものは輸出入のバランスを平均さすことが一つだと思います。今日日本の対米貿易を見ますと、御承知の通り輸入超過になっております。それならば日本のものをもっと買ってくれ、買ってくれなければお前のものは買わぬというのは当然だと思います。フィリピンに対しましても、戦前と比較いたしますと、日本の商品は相当ふえておる。昨年度五千万ドルになっておりますが、今度は八千万ドル以上買い入れるのだ、これから日本の経済を立て直す上におきましては、もっともっと向うのものをたくさん持ってこなければならぬ。私は一億ドル以上には必ずなる、またしなければならぬと思っております。一億ドル買えばお前の方も一億ドル以上のものを買ってくれというのは当然の要求だろうと思います。その意味から申しまして、けさほどの戸叶先生の御質問に答えましたように、私はこのフィリピン貿易は、日本がフィリピンに原料を要求しておる以上は、そう悲観すべきものじゃないという結論に達したのであります。   なお今後の貿易につきましては、中共及びソ連などとはもちろんでありますが、政治的の意味においてこれが途絶されておるということは悲しむべき現象でありますから、この問題は一日も早く解決せんことを希望いたしますと同時に、現在日本の貿易の拡大につきましては、単に商品を売るというだけのことではいけない。日本のプラント輸出をする、日本の工業を持っていく、特に中小企業を持っていくということによって、ブラントも輸出し、同時に人もやり、技術者もやる、そうして両国の間の関係を密にしていくということに重点を置くということはもちろん必要だと存じます。その意味から申しまして、私は東南アジア、中共、並びにアフリカ、中南米という方面の貿易というものは、ここに一段の考え方を変えていかなければならぬかと存じ  ておる次第であります。
  229. 松本七郎

    ○松本(七)委員 日本から基礎物資をたくさん持っていって、向うでいろいろな事業を興す、当面はそれによってまた需要を呼び起すということはあり得ると思うのです。ところが、それがものによっては日本の生産物と競合して、その結果先々では日本の輸出をはばむ力にそれが変ってくるということは十分考えられると思いますが、この点はどうですか。
  230. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 現在フィリピンあたりに行っておる商社の人々とか、あるいは中南米に行っておる人たちは、今の松本さんの御心配になるような意見を言う人がたくさんあります。けれども、私はそれは間違いだと思っております。もし日本がそういうことを相手方のために尽してやらなかった場合には、必ずどこかの国がそこへ行ってやる、またやるべき運命にあるのが今の状態だと思います。これはやはり日本日本だけのエゴイズムの考え方ではなくて、相手のためを十分考慮してやる必要があると存じます。そうすることによって先方の経済がよくなり、生活が向上すれば両方の貿易は必ずふえる、こう存じております。
  231. 松本七郎

    ○松本(七)委員 これは外務大臣に聞かなければならなかったのです。そういうふうな高碕長官の御答弁を大臣に聞いていただきながら私は質問したかったのですが、どうも一人々々になると工合が悪いのです。  アメリカは日比賠償に対してはおそらくそう反対しないだろうと思うのですが、政府としてアメリカの態度をどういうふうにキャッチしておられましょうか。
  232. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 私はアメリカ政府はこの問題が早く解決し、日比両国間に提携が完全にできて、両国の経済がよくなるということについては断じて反対していない、こう存じております。
  233. 松本七郎

    ○松本(七)委員 私どもの得た情報によると、イギリスがむしろこの日比賠償については、あまり快く思っておらないということを聞かされるのです。それは高碕長官が初耳ならばお耳に入れたいと思うのですが、特にイギリスの紡績関係のものが非常に不安を抱いておる。今後どうしてもイギリスのねらうところは——インドが御承知のようにあまり買わなくなる、自分で作るし、これがあまり買わなくなる、そこでどうしても中国あるいはソ連というようなところを今後ねらわなければならぬ。ところが、日比の関係が賠償協定ができて深くなっているということになると、日本の貿易拡大からも、先ほど私がしばしば言うように、西欧諸国がたどったような道をやっぱり日本がたどってきてこの日比賠償、フィリピンとの関係打開を契機にして、アジア諸国との経済関係が日本は深くなってくるだろう、そうすると、影響するところは結局イギリスのランカシア方面だ、早く言えばこういうふうな結論です。そういうことからあまり歓迎しておらないというニュースを聞くのですが、どうでありましょうか。
  234. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいまお説のごとくマンチェスターの連中、ランカシアのあの綿製品の業者は、フィリピンと日本との間の関係がよくなれば、これは自分たちの仕事が食い込まれるということで、快からざる感情を持っておるということは聞いておりました。しかしイギリス全体の空気がどうだということは私はまだよく存じませんが、  この問題は、すでにフィリピンにおきましても、日本との通商関係が正常化いたしますと、当然日本におきましてはあり余っておる紡績、綿製品の業者が経済提携によって進出するだろう、こういうふうなことを非常におそれているようでありますが、これはおそれられても実行しなければならぬことだと存じております。
  235. 松本七郎

    ○松本(七)委員 五月十九日の毎日新聞の記者によると、石橋通産州の談話として、日米比の共同出資、国際金融機関を設ける、百比賠償を円滑化する、こういうことを言われておるのですが、政府はこういう構想を検討中なのですか。これは石橋さん閣議後の記者会見で日比賠償を円滑にするための手段として出された構想なのです。
  236. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 この問題は、以前にアメリカからジョンストンが参りましたときに、ジョンストンがアメリカの資本を持ってきて、そうして東南アジアの方に日本なんかと一緒に投資に行って一つの会社を作ろうじゃないか、こういう申し出があったのであります。それを契機としたわけじゃありませんが、いろいろな点から考えまして、私どもが賠償を払う具合に、日本の賠償は役務とそして資本財を持っていきたい、これを動かしていくのしは相当の資本が要り、技術が要る、そういう場合、日本から資本の出資をする  ことができとない場合にどうしたらいいかというふうなことをいろいろ考慮しておりまして、そういう案につきましては、一案、二案、三案、四案といろいろな案を実は私ども経済企画庁の方が中心で練っておりました。大蔵省の案もありますれば、通産省の案もあり、また民間の案もあり、いろいろございます。ところが、このことを日本側が中心になってイニシアチブをとって、こうやったらどうかというふうなことを今切り出すことはすこぶる早いと思う。何となれば、相手国では、フィリピンにいたしましても、ビルマにいたしましても、インドネシアにいたしましても、過去において日本が経済進出をやったそのいやな経験を持っておるのでありますから、また日本がこういうことをやって経済進出をやるだろう、経済進出という名前でいわゆる侵略をやるだろう、こういうふうな誤解を受ける点がはなはだ多いと思いますから、これはできるだけ先方側の要求に応じて立っていくというふうな方法でやっていきたいと思っておりまして、今日は私どもの考えております案はできるだけ発表することを避けて、研究はいたしておるような次第であります。
  237. 松本七郎

    ○松本(七)委員 けさいただいた資料で対外債務説明資料というものの中にごく大ざっぱにしか出ていないのですが、この三の「平和条約にもとずく諸クレーム」というので、「戦時中日本にあった旧連合国財産の蒙った損害に対する補償請求は米、英、蘭、印等十八カ国からなされ、」件数もこれこれとある。そこで、おそらくこの協定以外に、サンフランシスコ平和条約十四条、十五条、十八条、十九条によるフィリピンに対する債務補償その他の支払い義務のものがあるだろうと思うのですが、もしそれがあれば件数と金額、これは今すぐでなくても、資料でもいいですから、出していただきたいと思います。
  238. 中川融

    ○中川(融)政府委員 今のは資料として調査の上御提出いたしますが、私今記憶しているところでは、フィリピン関係はないと思います。
  239. 松本七郎

    ○松本(七)委員 さっき並木さんからちょっとこれに似た質問が出たのですが、賠償物件の競争入札の場合、相当私は激しい競争が行われるのではないかと思うのです。そこでそのために向うの代表団と日本側の商社との間に、いろいろ不正収賄、そういうことが行われて、不当につり上げてみたり、あるいは不当に安くされたり、いろいろわが国に不利益を招来するようなおそれがあると思うのですが、そういう御心配、それからそれに対してはどういうふうな処置をされるおつもりかお伺いしたい。
  240. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 この問題は一番私ども実行に当って心配しておる問題なのでございまして、フィリピン側から言いいますと、日本政府が中心になって、そうして業者を糾合して高い値段で売って賠償を値切るようなことをするだろう、こういうふうな心配をする向きがあります。またわれわれの側といたしますと、日本の業者が不当な競争をしてしまって、そうして出血輸出をする、これが実際の賠償額よりよけい金を払ったという結果になる、こういうことになります。これはよほど正確にそして正当にやっていかなければならぬ。これは一にかかって先方から来る賠償使節団の団長その人の人格と手腕によることだ、こういうことを私どもは考えておりましたが、ちょうど同じことを先方のガルシア外務大臣、マグサイサイ大統領、それから今度参りますネリ等も心配しておるようでありますが、私どもこれを非常に心配いたしまして、どうやったらいいか。これは幸いすでに日本ではビルマに対しての問題について適切に今当っておる問題でございまして、これはなかなかむずかしい問題でございますから、そういうふうな点から考慮いたしまして、全体として政府は行政指導をもって公正なる価格で、できるだけいいものをやる。これは値段が安くなるといいようだけれども、結局それによって悪いものをやれば、日本の商品に対する苦情あるいは日本に対する信用を失墜するわけでありますから、できるだけ公正な値段で、できるだけいいものを渡すということにいたしたいと思います。それはどういう方法でやったらいいかということにつきましては、今度賠償使節が参りますから、その人とよく折衝いたしまして、具体案を練っていきたい。今の御心配の点は私一番心配しておりまして、今度フィリピンとの間にようやく賠償協定というものが成り立ったのでありますが、これは賠償の第一歩に入ったわけでありまして、これからがほんとに一番大事なときでありますから、これによって両国のほんとの親善関係が結べるか、賠償の趣旨が徹底するかという重大な問題でありますから、こういう点につきましては、十分御検討願いまして、御注意を願いたいと存じておりまして私どもも御意見も承わって善処したいと存じております。
  241. 松本七郎

    ○松本(七)委員 次には終戦後マッカーサー司会官の指令によって中国賠償という形で取り立てて外国に送ったわけですが、そのときに送った国別と金額、これを現在の価格に直して。それからその中には軍艦だとか兵器なども含めたものが、おわかりでしたら、これも資料でけっこうです、あとでお願いしたいと思います。
  242. 中川融

    ○中川(融)政府委員 承知しました。
  243. 松本七郎

    ○松本(七)委員 それから桑港平和条約の第十四条(b)で連合国が賠償請求権を放棄しているわけですが、これに関連して当時連合国の中に相当異論があったように聞いているのですが、その当時の状況を明らかにしていただきたい。
  244. 下田武三

    ○下田政府委員 十四条(b)の賠償請求権、つまりこれは戦争中の国家または国家機関がとりました行動から生じた連合国民の損害に対する請求権を放棄するという点は、実は連合国内部におきましてはそう問題がなかったのでございます。これはヴェルサイユ条約、イタリア平和条約等にも前例のあることでございまして、他方において賠償を課する規定を置きますと同時に、その賠償の規定に基くもの以外のいわゆる賠償請求権、いろいろな戦争があったためにこうむった損害は一括放棄するということは、むしろ平和条約の通例でございますので、この点につきましては問題がなかったように聞いております。
  245. 松本七郎

    ○松本(七)委員 あとは事務的なこまかいことになりますし、整理ができていないから、この次にしましょう。     —————————————
  246. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 この際理事補欠選任についてお諮りいたします。理事高岡大輔君が昨二十二日委員辞任せられ、再び当委員会に選任せられましたが、そのため理事が一名欠員となっております。この際その補欠選任を行いたいと存じますが、これは高岡大輔君を再び理事に選任することにいたしまして、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  247. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 御異議がなければさように決定いたします。  次会は公報をもってお知らせいたします。本日はこれにて散会いたします。    午後四時七分散会